○吉川春子君 いろいろな問題があると思うんですけれ
ども、
一つは、一番開拓団をたくさん送り出した長野県の調査によりますと、未帰還者の数が五一%なんです。シベリア抑留者の犠牲者の数も一〇%以上ですから、大変なものだと思うんですけれ
ども、半分以上の方が満蒙開拓団で送り出されて帰ってこない。全部亡くなったというか、行方不明とか、そういう
数字も含めてですけれ
ども、そういう痛ましい結果を出しています。
そして、その
理由は、侵略戦争の一環であったからと言っちゃえばそれまでなんですけれ
ども、例えば土地問題です。今、土地の面積をおっしゃいましたけれ
ども、満蒙開拓団が国策として正式に決定されて、大々的に行われるのは
昭和十一年の広田内閣のとき、七大重要国策として二十カ年計画、百万戸が満州の開拓地に行くというこういう計画をされたわけです。それで、しかも今おっしゃったように、もう
昭和十八、十九年には物すごい作付面積で食糧増産もやっているわけです。あんな寒冷地で、そして非常に条件も悪い土地で、数年にして食糧増産なんてできないわけです、本当に開墾ならば。だから、これはまさにいい土地は現地の
人たちを追い払って、あるいは物すごい安い価格で入手したわけです。
これは
昭和七年八月三十日の
衆議院予算委員会の
議事録なんですけれ
ども、私、
官房長官に
質問するために読み上げます。津崎委員の
質問で、「吉林省ノ熈洽カラ二万町歩ノ土地ノ提供ヲ受ケタカラ、ソレデ満足シテ其処ニ二十万円ノ金ヲ使ッテ試験移民ヲ送ルト云フ吝臭イ問題デナクシテ、移民問題ノ根本問題デアル土地問題、其土地ヲ如何ニシテ日本ガ満州移住ニ対シテ得ルカト云フコトニ付テハ、多大ノ注意ヲ払ッテ戴キタイ」「満州事件費ト云フモノハ、当然其中ニ日本ノ負担デナクシテ、満州国ノ負担ニ属スベキモノガアルト思フ」「言換ヘレバ日本ガ立替ヘタ金ガアル、其資金ト向フノ土地トヲ適当ナ方法ニ依ッテ交換スルト云フコトガ、将来満州移住問題ヲ根本的ニ解決スル要諦デアルト思フ、」「北満ニハ相当ノ土地ガアリマス、ソレニ満州事件費、其他満州国ノ負担ニ属スベキ経費モアル、ソレト交換シテ相当ナル大面積ノ土地ヲ取ッテ置クコトガ、此日本ノ移住計画ヲ実行スル上ニ於テ必要デハナイカト思フ」、こういう
質問をしています。
これに対して、当時満蒙開拓団の全責任を負っていた拓務省の永井柳太郎
国務大臣の
答弁は、「只今ノ津崎君ノ御意見ハ如何ニモ御尤デアリマシテ、吾々モ出来ルダケ其方針デ努力シタイ」「
関係各省ノ間ニ特別ニ相談」をして、「其方針ノ確立ニ努力シテ居ル次第」であると、このように
答弁しているんです。だから、この土地問題、要するに現地の人を追い払って、そこへ日本の移民が入ってそこで
終戦を迎えた。そうすれば、その
終戦のときに、その後そこの
人たちが関東軍にも見捨てられ、もう奥地に行っているわけですから、どういう目に遭うかということは明らかですね。
だから、私は土地を取り上げた中国の人にも申しわけないと思うし、そういう危険なところに国防のための片棒を担がせて、そして日本国民を国策として送った、この
政府の責任はやはり本当に問われなきゃならないし、反省しなきゃならないと思うんです。その上に立って残留孤児、残留婦人対策があると思うんですね。私は、残留孤児や婦人問題が一向に前進しない、微々たる予算しかつけないその根底には、
政府のこの問題に対する反省が足りないんじゃないかと思うんです。その点、
官房長官はいかがお
考えですか。この政策について
政府として強く反省しておられるとか、そういう御見解ありますか。