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1991-04-24 第120回国会 参議院 地方行政委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年四月二十四日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は次のとおり。     委員長         野田  哲君     理 事                 竹山  裕君                 松浦  功君                 渡辺 四郎君                 諫山  博君     委 員                 井上 章平君                 岩崎 純三君                 大塚清次郎君                 加藤 武徳君                 後藤 正夫君                 須藤良太郎君                 野村 五男君                 岩本 久人君                 栗村 和夫君                 野別 隆俊君                 常松 克安君                 神谷信之助君                 高井 和伸君    政府委員        自治大臣官房審        議官       遠藤 安彦君    事務局側        常任委員会専門        員        竹村  晟君    参考人        焼 津 市 長  服部 毅一君        立教大学教授   和田 八束君        法政大学講師   中西 啓之君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 野田哲

    委員長野田哲君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、焼津市長服部毅一君、立教大学教授和田八束君及び法政大学講師中西啓之君の御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、皆様方には極めて御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。心からお礼申し上げます。  本案につきまして皆様からの忌憚のない御意見を拝聴し、本案審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  なお、議事の進行上、参考人方々にはそれぞれ十五分程度御意見を順次お述べ願い、陳述がすべて終わりました後に、各委員の質疑にお答えを願いたいと存じます。  また、発言の際は、その都度委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。  それでは、まず服部参考人お願いいたします。服部参考人
  3. 服部毅一

    参考人服部毅一君) 全国市長会評議員財政分科会委員長をいたしております焼津市長服部毅一でございます。  参議院地方行政委員会の諸先生方におかれましては、日ごろ地方行政の諸問題につきまして格別の御指導、御支援を賜っておりますことに対しまして、まず衷心より厚く御礼申し上げます。  本日は、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして意見を申し述べる機会を与えていただきましたので、直接都市行政に携わっております市長立場から、当面する諸問題について意見を申し述べさせていただきます。  まず、お願いいたしたいことは、現在当委員会で御審議中の本法案早期成立についてであります。申し上げるまでもなく、地方交付税地方公共団体共有固有財源でありまして、地方団体自主性を維持しながら財源均衡化を図るとともに、必要な財源保障を行うことが制度基本であります。  今回の改正案には、平成三年度における国の予算並びに地方財政計画に掲上された各種事業について財源措置を行うため、地方交付税算定方法等改正が盛り込まれております。したがいまして、地方団体が円滑な事業執行を図るためには、地方交付税を早期に確定しこれを示していただくことが必要でございますので、何とぞ本法案の速やかな成立を図られるよう強く要望いたすものであります。  さて、地方財政の現状は、近年、好調な景気にも支えられて一般財源等伸びが順調であったため、昭和五十年代のように毎年多額財源不足が生じこれを借入金によってしのぐという不正常な状態に比べれば好転していると言えようかと存じます。  しかしながら、過去の累積債務は六十八兆円を超えており、また最近の一般財源伸びにはバブルと言われる一時的要因が含まれていること等を考え合わせますと、地方財政の先行きには不透明な要素が多く、楽観できる状況にはないと考えるのであります。  殊に、国との比較において一部で言われているような地方財政余裕論なるものは、私ども現状認識とは全く異なるものであります。また、地方財政は国の財政構造に比べ義務的経費のウエートが高い上、みずからの財源調達力にも限界があること、地方財政国家財政のように単一ではなく三千二百余の財政主体の総体であり、個々地方団体間には相当の財政力の格差があることなどを考えますと、そうした単純な比較は適切ではないと思うのであります。  私ども地方団体は、社会資本整備促進高齢化社会への対応等に重要な役割を担っており、ますます多額財政需要が見込まれるところでありますので、今後とも地方財政充実強化について先生方の御支援お願いする次第でございます。  次に、国庫補助負担率暫定措置について申し上げます。  御高承のとおり、平成三年度の地方財政対策においては、平成二年度までとされていた公共事業等に係る国庫補助負担率取り扱いが大きな問題となりました。私ども地方団体は、平成三年度以降は昭和五十九年度当時の補助負担率に完全復元するよう強く要請したのでありますが、一方において事業量拡大要請等もあり、今回は、昭和六十一年度の水準に復元の上さらに三年間の暫定措置とされたところであります。  今後の取り扱いについては、暫定期間内に関係省庁間でさらに総合的に検討を行うと伺っておりますが、私どもといたしましては、早急に地方団体の納得のいく結論が得られますよう御期待申し上げるとともに、安易な地方への負担転嫁は行わないよう強く要望するものであります。  次に、平成三年度の地方財政対策上の施策について若干の所感を述べさせていただきます。  平成三年度の地方財政計画の規模は七十兆八千八百億円、対前年比で五・六%の増となっておりますが、歳入面では所要一般財源確保される とともに、歳出面では地方団体が抱える課題に対処し得る内容になっているものと存じます。  具体的施策について申し上げますと、まず地域づくり推進事業の拡大が図られていることであります。御案内のとおり、昭和六十三年度以降広く住民参加のもとにふるさと創生事業が推進されており、これを契機として、それぞれの地域の特色を生かした自主的主体的な地域づくり取り組みが行われております。  我が焼津市におきましても、早速、一億円に二千数百億をプラスいたしましてふるさとづくりに取り組んでおります。  昭和六十三年に竹下総理焼津まで足を伸ばして、第三セクターでできました「さかなセンター」を見て、これこそ自分が提唱しているふるさとづくりであるということを言っていただきましたが、そのときには既に終わっておりました。  このふるさと創生事業の一億を受けて、私は二級河川廃川敷の公園化利用にこれを用いました。このことは、既にふるさとづくり特別事業として起債をもとに市単独でやっております廃川敷の公園化、これをあわせてふるさと創生事業を一体化していこうという考え方の中で、自然生態観測公園を考えました。市の職員の方々からいろいろ意見を徴収しまして、十八件のいい案がありましたが、ちょうど昭和平成にかわったときでありまして、私の胸に浮かんだのが生物学に非常に御熱心な昭和天皇のお姿でございました。  自然生態観測公園こそまさにやるべきことであろう、こう考えまして、地下水を水源といたしましてせせらぎの池をつくり、その中へ蛍あるいは水生植物、トンボ、昆虫、水鳥等々、生息のできるような場所一・四ヘクタールを指定いたしまして、約二百十三メーターせせらぎ園路等二百五メーター、照明も六基つけ、なお観察公園を三つつくりまして、樹木は高い樹木、中くらいの樹木、低い樹木合わせて三十八種、合計千九百七十六本を植えまして、ことしの三月初旬にオープンいたしました。いただいた一億へ最終的には二千五百二十万一千円を足したことになりましたけれども、こういうことを焼津市でもやっております。  平成三年度にはこの地域づくり推進事業をさらに拡大して、ソフト事業に三千三百億円、ハード事業地方債三千五百億円を措置するとともに、公共投資基本計画を踏まえ、住民生活に直結した社会資本整備を図るため、地方単独事業を対前年度比一〇%増と大幅に拡大いたしております。  また、地域福祉基金二千百億円の創設は、国の高齢者保健福祉推進十カ年計画に対応し、地域ぐるみで温かい福祉社会を築いていくためにもまことに時宜を得たものでありますし、土地開発基金五千億円の増額も、近年の事業用地取得難公有地確保必要性にかんがみ、今日的課題に対応した措置であると存じます。  さらに、平成三年度においても引き続き交付税特別会計借入金返済及び財源対策債等償還基金の計上を行うこととしておりますが、先ほど申し上げましたように、地方財政が依然として多額借入金残高を抱え、その健全化を図ることが急務となっていることにかんがみ、いずれも必要な措置であると考えます。  なお、今回、国庫当局の強い協力要請により、地方交付税総額から五千億円の減額が行われたわけでありますが、これは当面する地方財政上の課題に対処した上でとられた措置であり、また実質的には借入金返済でありまして、将来の地方財政健全化に資するものでもありますので、やむを得ないものと理解をしているところであります。  次に、この際、地方行財政の将来展望という観点から特に御配慮を賜りたいことを何点かお願いしておきたいと存じます。  まず第一点は、地方税源充実強化についてであります。  国会におかれましては税制問題等に関する両院合同協議会を設置され、消費税問題を初めとする税制上の諸問題を鋭意検討中と承っておりますが、地方団体が自主的な行財政運営を行うためにはまず何よりも安定した財源が必要であり、とりわけ自主財源である地方税充実が重要であります。したがいまして、税制問題の検討に当たりましては、国と地方税源配分見直し等地方税充実強化に御留意いただきたく、特段の御配慮を賜りたいと存ずるものであります。  第二点は、地方交付税総額確保についてであります。  個々地方団体間には財政力の差があり税源の偏在が存在する以上、地方団体が多様化し増大する行政需要にひとしく的確に対応していくためには、地方交付税制度を通じた財源均衡化保障が必要であります。  特に、先ほど申し上げましたとおり、ふるさと創生事業を契機として各地で自主的主体的な地域づくりの機運が盛り上がってきているところでありますが、こうした取り組みを実りあるものとするためには、今後ともに財政上の御支援を拡充し継続していただくことがぜひとも必要であります。  また、公共投資基本計画を踏まえ、下水道等住民生活に直結した社会資本整備を推進していくためには十分な財源措置が必要であります。したがいまして、今後とも、地方財政計画の策定に際しましては地方団体がこれら増大する財政需要に適切に対応し得るよう、所要地方交付税総額確保について御配慮賜りたいのであります。  第三点は、国庫補助金等整理合理化についてであります。  国庫補助金等について私ども地方団体が問題としておりますのは、さきに申し上げました国庫補助負担率暫定措置のような、単に費用の負担のみを地方に転嫁するというそのやり方に対してでありまして、国庫補助金等整理合理化そのものについてはむしろ積極的に推進すべきという立場であります。  すなわち、国庫補助金等整理合理化を行うに当たっては、国と地方機能分担費用負担あり方を徹底的に見直し地方団体自主性にゆだねるべきものについては、補助金等の廃止と一般財源化を図る等適切な財源配分が必要であると考えているところでありまして、よろしく御理解を賜りたいと存じます。  また、補助金等に係る超過負担解消につきましては、年々その解消措置がとられてきているところではありますが、財政秩序の確立を図るためにも引き続きその解消に御支援を賜りますようお願いいたすものであります。  第四点は、国民健康保険制度安定化であります。  国民健康保険をめぐる状況は、高齢化社会の進展、医療費増大等によりますます厳しくなってきており、これが及ぼす国保財政への影響もはかり知れないものがございます。つきましては、医療費適正合理化策とともに、保険料負担平準化検討を急がれる等制度安定化お願いしたいのであります。  最後に、地方団体への権限移譲について申し上げたいと存じます。  私どもは、かねてから地方分権による地方自治充実強化を目指して、地方団体、特に都市への権限移譲を強く要請してきたところでありますが、その主張は新行革審の答申の中でも積極的に取り上げられているところであります。この問題に関しましては、今後、地方制度調査会等においても検討される予定になっておりますが、私どもといたしましては、都市自治体への大幅な権限移譲についてその一日も早い実現を願うところでありますので、具体的な取り組みが早急に行われますよう諸先生方の御配慮お願い申し上げる次第でございます。  以上、当面する地方行財政の諸問題につきまして、お願いかたがた忌憚のない意見を申し述べさせていただきましたが、目下私どもの最大の関心事である本法案の速やかな成立を重ねてお願い申し上げまして、私の公述を終わらせていただきま す。
  4. 野田哲

    委員長野田哲君) ありがとうございました。  次に、和田参考人お願いいたします。和田参考人
  5. 和田八束

    参考人和田八束君) 立教大学和田でございます。  本日は、平成年度地方交付税法に関する問題でありますが、平成年度地方財政計画策定という中では、国庫補助率取り扱いでありますとかあるいは地方税改正の問題など重要なものもあったわけなんですが、昭和五十年代と比べてみますと、それほど大きな問題がなくて比較的順調に進められたような印象を受けております。その中では、地方交付税のいわゆる減額総額特例といいますか、こうした問題が起こってまいりまして、これをどう考えるかということが一つ問題点だろうと思います。  これは平成年度に係る問題ではありますけれども、同時に、より長期的な今後の地方交付税あり方といいますか、そうしたものに一つ問題を投げかけているように思われるわけでありまして、私も主としてそうした観点を織りまぜながら申し上げたいと思うわけです。  地方財政収支というのがございまして、昭和五十年代は、国の方も赤字財政が続いておりましたけれども地方の方も財源不足が続くということでかなり大きな財政上の問題であったわけですけれども、ようやく平成になりましてから、こうした財源不足を生じることなく一応バランスを保つということが可能になってきたわけであります。  特に平成年度におきましては、交付税特別会計借入金返済でありますとか、あるいは財源対策債償還基金への三兆円ほどの繰り入れが行われるというふうなことも含めて考えますと、地方財政において相当な余力といいますか、そうしたものが生じたというふうにみなされることになったわけでありまして、これが一つの問題の背景にあったと思われます。  他方、国の予算の面におきましては、平成年度はやや税収が鈍化するという見通しが出てきたということ、それから国債依存度を引き下げていくという目標が立てられているというふうなことから、財政的にはかなりきついという状況が説明されまして、それが地方財政における交付税減額問題というものにつながってきたのであろうというふうに理解をしているわけであります。  したがいまして、いわゆる減額措置といいますのは交付税総額からの五千億円でありまして、中身につきましては私が申し上げる必要のないことかもしれませんけれども、六十年度補正時におけるいわゆる出世払いとして借りた分が四百九十七億円余り、それから四千五百億円余りにつきましては交付税法附則第三条というものによって特例減額というふうにされたわけでありますが、これは事実上は借入金を国の財政に振りかえるというふうな形になったものと理解しているわけであります。  ここで問題になりますのは、この減額措置地方財政妥当性を持っているかどうか、またそれが附則第三条で行われることが正当であるかどうかということであろうと思います。  地方財政平成年度以来、先ほども申し上げましたように財源不足解消となっているわけでありますけれども、しかし先ほども申し上げました交付税特会への借入金返済でありますとかあるいは財源対策債償還基金への繰り入れというふうなものを見てみますと、これを地方財政余力、あるいは余剰というんですか、というふうに見るかどうかということはいささか問題点がありまして、これはやはり過去債務といいますか過去の借金のツケが回ってきているということでありまして、決してこれが財源的な余力の証拠であるというふうにみなすことはできない。そういう点からいいますと、地方財政が見かけほど好転しているというふうには判断できないわけであります。  それから、これからの財政需要、特に公共投資でありますね、福祉支出でありますとか、そうしたものを考えますとなお一層体質強化が必要になっているというふうに言われているわけでありまして、仮に以前に比べまして地方財政体質が相当に改善されてきたというふうになったとしても、それはそれで非常に結構なことでありまして、地方財政が一層自立性を強めるという方向に進められるということが望ましいのではないか、こういうふうに考えるわけであります。  それから、国の予算立場というのも先ほどちょっと触れましたけれども、今回のような形で借り入れるということは国の予算の上からも決して好ましいとは言えないように私は考えるわけでありまして、予算秩序といいますか、そうしたものをあいまいにする結果になるのではないか。これは地方財政とは直接関係のないことかもしれませんけれども、やはり国の予算の上からもこのあいまいな形での借り入れというのはなるべく避けて、それで国債依存度適正規模といいますか、あるいは国債政策あり方といいますか、そういうものをきちんと踏まえて行われることが必要なわけでありまして、今回のこの貸し借りというふうな形は非常にわかりにくいというふうに言わざるを得ないわけであります。  次に、地方財政にこの余剰といいますか余力といいますか、これが生じた場合には、地方交付税法第六条の三第二項の適用が考えられるというふうにされているわけでありますが、これは言うまでもないことでありますけれども、引き続き著しい収支の差がある場合には交付税率の変更を行う、こういうことであります。  これは昭和五十年代の地方財源不足の時期には非常に問題にされたわけでありますけれども、結局これは交付税法第六条の改正というのには至らなくて、交付税特会借り入れというふうな形で年々処理がなされてきた、こういう経緯があるわけでありまして、むしろそのときにもう少し議論がなされてもよかったのではないかというふうに考えるわけであります。  さらに、昭和五十九年度になりますと、そうした貸し借りというふうな制度にピリオドを打つということから、新しい特例措置必要性ということで附則第三条というのが設けられたように思われるわけであります。  したがいまして、附則第三条は、私ども理解でいいますと、そうした貸し借り地方財源不足というものに対応する一つの新しい財源措置というもの、いわゆる財源措置のために設けられたというふうに理解しておりまして、今回この条項が増額方向でなくて減額方向に適用されるということについては、いささかこの本来の趣旨とは違うのではなかろうかというふうに考えられるわけであります。  しかし、通説的にいいますと、借入金範囲であれば減額もあり得るという解釈もあるわけでありますので、今回、平成年度につきましては、形式上はその点可能な範囲であるというふうには言えるわけでありますけれども、今までの歴史的ないきさつ等から考えますと、余りにもわかりにくいというふうに言わざるを得ないわけであります。  しかし、問題はさらに交付税制度の根本的なところにもあるわけでありまして、それは交付税総額算定方式あるいは基準財政需要額算定方式というふうなものがやはり将来に向けてこの時点で再検討される必要があるのではないか。先ほども言いましたように、公共投資でありますとか福祉充実時代に即応したものに改めていくという作業を早急にやっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  交付税制度について振り返ってみますと、昭和三十年代におきましては、総額確保といいますか、交付税率を毎年改定するというふうなことで調整がなされてまいりまして、それから昭和四十年代になりますと、都市化の急速な進展等にかんがみまして、態容補正等補正というふうなところで幾つかの目につく改定がありました。それで、五十年代になりますと、そうした交付税制度の是正というよりも、財源不足のもとでの財源確保といいますか、こうしたことに力が注がれてきた。  こういうふうに十年ごとに区切ってみますと歴史的に振り返ることができるわけでありまして、これからは、やや地方財政も安定してきたということを前提にいたしまして、もう少し現在のいろいろな状況に対応した内容に向けて見直していく必要があるのではないか。  特に、今年度で事実上の借入金返済が終わったということでありまして、借金の重荷というものがなくなってきたわけであります。したがいまして、来年度平成年度以降になりますと、今年度借金返しに用いられていた三兆円以上のお金がこれまた余剰というふうなことで浮かんでくるというふうなことになってしまいます。  そうしたことも踏まえて考えますと、地方交付税における財政需要見直し、それから、せっかく設けられました地域福祉基金への大幅な積み立てというふうなこと、それから分権化時代へ向けての地方財政体質強化というふうな観点で、ひとつこの重要な役割を果たしているところの地方交付税制度についての見直しといいますか、こういうことを促進していただくよう期待するものであります。  以上で終わらせていただきます。
  6. 野田哲

    委員長野田哲君) ありがとうございました。  次に、中西参考人お願いいたします。中西参考人
  7. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 法政大学自治体行財政論を講義しております中西でございます。  最近の地方財政の一般的な特徴につきましては、八六年暮れから日本経済が好況に転じておりますので、一見、国の財政地方財政も、国税収入地方税収入が増大して好転しているというふうに見ることができるわけでありますが、しかしその内容をよく分析してまいりますといろいろな問題点を含んでいる。特に、本年度地方財政措置を具体的に検討していくとさまざまな問題があるように思われます。  私は次の二点について意見を申し述べたいと思います。第一は、ただいま和田参考人からも御意見がございました地方交付税特例減額措置についてであります。第二は、地方交付税基準財政需要額における公債費の項目の数字が非常に増大しているという特徴についてでございます。これにつきましては、ただいまお配りしております表に沿って私の意見を申し述べたいというふうに思っております。  まず第一の地方交付税特例減額措置でございますが、御承知のように、現在の地方交付税制度におきましては国税五税の法定割合によって算定されるという仕組みになっております。ところが、本年度地方財政対策におきまして、国と地方、大蔵省と自治省との協議の結果、交付税総額を五千億減額するという措置がとられたわけでございます。当初、国の側、大蔵省は、地方交付税法第六条の三第二項に基づく特例減額、具体的に申し上げますと交付税率の引き下げということを主張したと報道されております。  この交付税法第六条の三の第二項、これは、基準財政収入額と基準財政需要額を計算いたしました場合に、交付税の算定額と交付税財源総額とが著しく開きがあるという場合には地方行財政制度改正を行うかあるいは交付税率の変更を行うということが決めてあるわけでございますが、この規定が、先ほど和田参考人が申されましたように、そもそも果たして減額に、つまり交付税引き下げにこれが適用できるかどうかという問題、これは非常に重大な問題であろうかと思います。  私はこの交付税法の規定の趣旨は、本来、地方財源保障するために国がその財源保障を行うという趣旨で設けられたものでございますから、拡充には適用できても減額に適用することは非常に問題があるのではないかという考え方を持っております。  一九五六年から六六年にかけまして交付税率が漸次引き上げられてきたということは、この法律に基づく適用がされてきたわけでございます。ところが、第一次石油危機に続く七四年のマイナス成長、それに基づいて、一九七五年度年度途中で地方税及び地方交付税地方財政計画に比べまして著しく不足するという事態が発生したことがございます。具体的には、地方交付税について一兆一千百九十九億円の不足を来した。なおその後数年にわたって、年度当初で地方税及び交付税財源不足するということが続いたわけでございます。  私はこのときにこの交付税法の規定を適用して、自治体の財源を拡充するための財政制度を確立するかあるいは交付税率を引き上げるという措置が当然とられるべきであったというふうに考えているわけでございますが、御承知のようにそれが行われずに、資金運用部資金から交付税特別会計へ貸し出しを行ういわば臨時応急的な措置のみがとられてきたという経過がございます。つまり、拡充が必要なときにこの交付税法の本来の趣旨を適用せずに、表面上地方財源が若干増大したように見えるときに減額だけ行うということは大変筋が通らない、道理に合わないというふうに考えるわけでございます。  しかも、その資金運用部資金からの貸し出しにつきましては、その後元金及び利子の一定部分についての返済がかかってまいったわけでございまして、後年度地方財政を非常に圧迫するという結果をずっともたらしたわけでございます。地方交付税のみならず地方税につきましても、減収補てん債の発行等々の方法によって、基本的には起債を増発するという方法で対処してきたわけでございまして、これが今日でも地方財政の非常に大きな重荷になっているということは御承知のところであります。  こういう措置の結果、交付税特別会計が多大の返済義務を負わされてきたわけでございまして、その返済義務を負ったために、交付税財源を拡充する上で長年にわたってマイナスの影響を与えてきたというふうに私は見ているわけでございます。  一九八七年以降経済が好転してまいりまして、国、地方の税収が伸びてまいりましたので若干事態が変わってきたわけでございますが、そういう状況の中で、税収の伸びが若干ある、地方財源に余裕があるというふうなことを理由に減額が出されてきているわけでありますが、私は、実際に余裕があるのではなくて予算運営上の余裕ではないか、つまり、余裕のように見えるけれども実際に余裕があるわけではないというふうに見ているわけでございます。これは後ほど表で御説明したいと思っております。  こういう状況の中で、国の側はいわゆる特例減額を行う。これは交付税法の六条の三の適用ではなくて、先ほど申されましたように、今回は交付税法附則第三条に基づく特例減額を行うという措置がとられたわけでございますが、これもこの第三条をよく読んでみますと、「交付税総額の安定的な確保に資する」というふうに書いてございます。  つまり、地方財源をあくまで安定させるということを目的としてこの附則第三条が設けられているわけでございますから、不足した場合には補てんをする。しかし、余裕があるからといって、これはすぐに安易に減額していいかどうかということは私は大変疑問を持つわけでごさいます。そういう意味で、この一方的な減額措置というのは、地方自治体の側の国に対する不信というものを招きかねないというふうに私は考えているわけでございます。  第二の、交付税基準財政需要額において公債費が大変ふえているという問題点でございます。御承知のように、基準財政需要額の行政項目に公債費という項目がございますが、この公債費の需要額がこの間非常に増大してきているわけでございます。  これは表の一と二を比較すると明確に出てくるわけでございますが、ちょうど地方財政危機の始まりました一九七五年、昭和五十年度では、この公債費の需要額が表一にございますように九百七 十五億円でございました。ところが、昨年一九九〇年、平成年度になりますと、表二にございますように一兆五千二百四十三億円になっておりまして、何と十五年間で十五・六倍にふえているわけでございます。  同じ期間、交付税総額はどうだったかと申しますと、四兆四千二百九十五億円から十三兆七千五百九十四億円、三・一倍の増でございます。三・一倍に対して十五・六倍にふえているということでございますから、いかにこの公債費の需要額がふえたのかということが明瞭でございます。  ちなみに、基準財政需要額総額に対する割合を比較いたしますと、一九七五年には〇・八八%だったわけでございますが、一九九〇年には四・二%に上昇しているということでございまして、基準財政需要額における公債費が異常に増大しているということを示しているわけでございます。  基準財政需要額と申しますのは、御承知のように、各地方自治体が一定の行政水準を維持できるよういわば財政的な保障をするために算定する需要額でございますが、その中で公債費の需要額がふえるということは、交付税財源の中で債務返済に充てる部分が非常にふえて、実際に地方自治体の福祉とか教育とかの行政水準を向上させるために充てる財源に回らないということを意味しているというふうに思うわけでございます。  しかも、私が大変問題があると思いますのは、この一九九〇年、平成年度の公債費需要額の内容でございますが、これは表二の後半部分に挙げてございますように、減収補てん債でございますとか調整債としての財源対策債だとか、あるいは地域財政特例対策債とか臨時財政特例債とか、これは広い意味での財源対策債である。もう少しはっきり申し上げますと、事実上の赤字地方債に当たるものではないかというふうに私は見ることができると思います。  このいわゆる広義の財源対策債の公債費需要額が非常に大きな割合を占めておりまして、六千百二十億円、公債費需要額の四〇%に達しているということでございますから、過去の地方財源を補てんする起債政策のツケがこういう形で今あらわれてきている。つまり、本来適切な財政制度の改革あるいは交付税率の引き上げによって対処しなかった、地方財源の拡充を行わなかったということが、交付税基準財政需要額における公債費の需要という形で現在あらわれてきている。ここに私は非常に大きな問題があるのではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、これと関連いたしまして、表三をごらんいただきたいわけでございますが、これは国の一般会計と地方財政計画伸び率を、第一次石油危機が発生いたしました一九七三年、昭和四十八年度から、ことし一九九一年、平成年度まで比較したわけでございます。これを見てまいりますと、八〇年代に入りまして地方財政計画伸び率が極めて低く抑えられているということが一見して明らかでございます。  具体的に見ていきますと、七〇年代は国の一般会計の伸び率と地方財政計画伸び率はさして違わないわけですが、八〇年代の前半になりまして国の一般会計の伸び率よりも地方財政計画伸び率がかなり低く抑えられている。八〇年代後半になりますと国の一般会計よりちょっとまた増大する年が出てまいりますが、これは全体として国の一般会計と歩調を合わせて地方財政計画伸びが非常に低く抑えられてきたということを示しているわけであります。  さらに、一九九〇年、九一年と二年連続して国の一般会計よりも地方財政計画伸び率が下回っている、こういうことが表三によって示されているわけでございます。  これは何を意味するかということでごさいますが、八〇年代以降一貫して、地方自治体の経費を抑制する、つまり地方財政計画全体の伸び率を抑制するという政策がとられてきた。これは当然基準財政需要額全体の伸びを低く抑制するということを意味するわけでございます。  こういう地方財政計画における歳出全体の抑制に加えて、先ほどの公債費の需要額が増大している。つまり実際の行政に充てる財源が狭くなってきているということでございますから、結局、地方自治体の住民の暮らしに密着した福祉でございますとか教育であるとか、あるいは町づくりであるとか、そういうところに回る財源が非常に圧迫されているのではないかということが想定されるわけでございます。  これが一体地方自治体の具体的な行政にどういう影響を及ぼしているのかということでございますが、私は二点、問題点を申し上げておきたいと思います。  第一は、自治体の福祉や教育のいわゆる公的保障の水準が向上しない、あるいは引き下げられるということの結果、住民の負担が非常にふえてきているということが第一点でございます。  それから第二点といたしましては、比較的豊かないわゆる富裕団体と、それから比較財源の乏しいいわゆる農村部の地方自治体との行政水準の格差が拡大しているのではないかということ、これは、この地方財政対策のこれまでのいわば経過がそういう結果を引き起こしているのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  そういう意味で、今年度地方財政対策、特に交付税の対策には私は大変批判的な意見を持っておりますし、もっと根本的に地方財源の安定的な保障の体制がつくられるべきではないかというふうに考えるわけでございます。  以上で私の意見を終わりたいと思います。
  8. 野田哲

    委員長野田哲君) ありがとうございました。  以上で各参考人意見陳述は終了いたしました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 栗村和夫

    ○栗村和夫君 参考人方々にはどうもありがとうございました。  お三人の御意見の開陳を伺っていまして、一つ特例減額問題にお触れになりまして、これは筋論としてどうなのかということと、地方財政の実態をどう見るか、この二つに観点が分かれそうですが、できればかみ合った御意見の開陳を伺いたいと思いますので、その辺が一つと、それから特に服部市長さんには、実務の最高責任者でもあられますので、現在の地方自治体の最も喫緊なといいますか、そういう課題についてのお話を敷衍して伺わせていただければと、こう思います。  そこで、最初に服部市長さんに伺いますが、筋論のことではお二人の大学の先生方は、附則第三条というのはどうもこういう場合の減額などに適用するのはちょっとおかしいぞと、そういう強い疑問を寄せられた御意見の開陳でございましたが、市長さんはそれはやむを得ない。その辺のところはいいんですが、そこで、現在の地方財政に余裕があるというような御認識なのかどうか。お話の中では、昭和五十年代から好転をしてきたというようなお話があり、あるいは近年バブル経済その他で不透明な要因が相当あって不安でもある、こういうようなお話がございましたが、余裕があるかどうか。ということは感じの問題でなく、お仕事をやっておられる市長さんとしてその辺をどうお考えなのか。  例えば、私たちは今度の地方選挙の論戦なんかを通じましても、一方では東京都のように一兆円減税のような気前のいい話が出てきて、しかし三千三百の自治体の大方のものは、どこの国の話なんだと、おとぎの国の話でも聞くような思いであれを聞いておりました。お話にもございましたが、まだまだ借入金の残高も六十八兆円余あり、片方では東京都のようなああいう話が出たりしている。自治体の首長さんの大方は、まだまだできればいっぱい仕事をやりたいんだということが山積しているわけですね。そんなことなども含めながら、余裕問題についてのお話を伺わせていただきたいと思います。
  10. 服部毅一

    参考人服部毅一君) 一言で言って、地方財政には余裕はございません。ただ、御案内のとおり国の財政伸びてきました。同じように、地方財政も前から比べると、まあ余裕があるとは言い切 れないけれども、前と比べればよくなってきたことは事実であります。これはもう国も地方も同じでございまして、地方交付税をとってみましても、二十九年には三税の二〇%でしたが、これが三二%に上がるのに十二年間かかりました。したがって、現在三二%の交付税をいただきながら、財政的に国、県ともにずっと向上してきた中での感覚では、まあまあここまで来たなという感じでありますが、決して余裕があるということはございません。  なぜならば、今言いましたとおりまだ六十八兆円もの負債も抱えておりますし、特に税金の収入面におきましても、相対的に見て、国の方は大体六四%、地方の方は三六%の配分でありますが、しかし仕事の方はむしろ地方の方が七五%もしょっている。住民に直結した仕事をやっていますから当然のことでございますが、そういう面から見ると現在余裕があるということは絶対に言えないわけであります。  そういう中で考えるのに、市民に直結した仕事をやっている市町村に対して、補助金の削減等、これは少なくともやはり五十九年度並みに戻してもらいたい。あるいは超過負担の問題、これが国の方でもって算定する数字と実際とはかなりの隔たりがありますので、こういうものをむしろもっと正確につかんでいただきたいというようなこと等を考えますと、今言われた御質問の地方に余裕はあるかということについては、一言にして、余裕はございません。ただ、予算を組む場合において前よりやや緩やかになったような気持ちはいたしますけれども、決して余裕はございませんということを御認識いただきたいと思います。
  11. 栗村和夫

    ○栗村和夫君 もう一つ、ちょっと敷衍して伺うんですが、お話の中に特に高齢化社会を迎えてというようなお話がピックアップしてございました。それからもう一つは、国保会計の安定化に絡んでお話がございました。  いろいろ高齢化社会とか高度情報化とか国際化社会とか、時代認識のスローガンのようなものがいっぱいありますが、最たるものは、ぼくは高齢化社会にどう対応するかだと思うんですね。地方公共団体として、これまでのこともありますが、これからそういう対応と財政需要、そういうものについてどういうお考えを持つか、伺わせていただきたいと思います。
  12. 服部毅一

    参考人服部毅一君) まさに言われているとおり、今地方公共団体、特に市町村の課題は、老齢化、これに対応するための国民健康保険の現在のあり方をどうするかということが非常に重要な問題になっております。  したがって、各地方におきましても国の方へ国民健康保険の改定等々につきましては要望を出しておりますし、その中で高齢者保険福祉推進十カ年戦略、これを積極的に展開していこうということで、国の方もそのような気持ちでやってくれているようでありますし、もちろん地方もこれに順応してやっていくつもりでございますが、言われるとおり高齢化社会に向けまして、住民と直結しているだけに地方の大きな課題になっておりますので、最後にこの国保への要望を申し上げておきましたが、ぜひこのことにつきましてもよろしく対応のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  13. 栗村和夫

    ○栗村和夫君 どうもありがとうございました。  それでは、和田参考人お願いいたしますが、いわゆる特例減額にかかわる筋論のことですね。財政の余裕があればどうかと、こういうことは別にして、筋として附則第三条というものをどういうふうに解釈すべきかというお話の開陳がございましたが、交付税というのは本来やはり単年度措置を考えていくものであって、年度間調整というものが、便宜主義ということはないですが、しょっちゅうそういうことがやられてはいけないものでなかろうか。これは固有の財源だという認識に立ったときですね。それが一つ。  それから、地方財政需要も物すごくもろもろ多様化している。国民生活が多様化するというのは、そのままもろに地方公共団体が直接受けとめなければいけないことでして、それは同時に行政の多様化、複雑化になってくるわけです。ですから、計画を立てる、決算をする。赤字にしちゃいかぬぞということで帳じりを合わせる、合わせなければならない。そして歳入欠陥を起こしちゃいかぬ。これは財政運営の基本ですから、どこの自治体でもそういう配慮をします。  したがって、単年度決算を見ますと若干黒字だと。こういう形で繰越金がその自治体の規模に応じて一定のものが生み出されてくる。その計画と決算の乖離といいますか、そういうものについてのトリック、簡単にいえばそういうような帳じり合わせですな。そういうようなことで地方財政が少し豊かになったなとか余裕があるなとか、こういう認識は自治体を預かっている者としては非常に迷惑な話だ、こういうふうに思うんですね。  それで、地方交付制度というものはやはり原則として単年度主義というものの原則を貫くべきではなかろうか、こう思うんですが、その辺をめぐる御意見を若干掘り下げていただければと思います。
  14. 和田八束

    参考人和田八束君) やはり非常に難しい問題でございまして、今も固有財源かどうかというふうなお尋ねもございましたが、現在の地方交付税額というのは一応固有の財源であるというふうに見るべきだろうと思うんですね。例えば自治省の矢野さんとかあるいはその他の方の書かれたものを見ましても、独立共有財源であると、そういう定義もありますが、平たくいって固有財源であるというふうに言っていいと思うんです。  固有というのは、もともとあるというふうなこういう意味になるわけですが、もう一つは固定的に存在しているというふうにも言えるわけでありまして、もともとというのは大変結構なんですけれども、固定しているということが果たして地方財政にとって常に有利かどうかということにつきましては問題があるわけです。  昭和二十九年度までの地方財政平衡交付金の時代におきましては、おっしゃるようないわゆる単年度主義でありまして、固有の財源ではなくて財源措置という形で毎年行われるということになっていたわけであります。この場合には、地方財政の実態に即した財源措置がとられるというメリットはあるわけでありますけれども、他方において、固有の財源というものあるいは安定的な財源というものが地方財政にとって確保されにくいというデメリットがあるわけでありまして、どちらをとるかということでございますね。  現在の地方交付税制度は固有でありますので、もともと地方財源であるということが裏づけられていると同時に、対象の国税、現在でいいますと国税五税になるわけですけれども、それと交付税率というものが一応固定されるということになっております。固定された場合には、金が余ったときにはそれはいいんですけれども不足した場合にはどうするのかという問題が出てくるわけで、固有説を強調する場合には、不足のときには我慢して何とかやりくりするというのが筋になってくるわけでありますけれども、なかなかそうはいかないわけであります。  これは地方財政のサイドにおいてもそうでありますが、国の財政の面におきましても、やはり地方財政は受け皿でありますからほっておくわけにはいかないということであります。そうしますと、やはり固有といいながら不足のときには財源措置をするということになりまして、それでは余ったときはどうかというと、余ったときは地方財政がそのままもらうのだというのでは余りにも一方的ではないかということになってくるわけであります。そうなりますと、固有財源といいましてもかなり相対的なものにならざるを得ないのではないか、こういう問題になるわけであります。  しかし、では固有とか固定とか、あるいは不足とか余るとかいっても、どういう計算で余るとか不足だということになるのかということになりますと、一つは基準財政収入額の面でありますけれども、むしろ重要なのは基準財政需要額という面であります。  現行の交付税におきます基準財政需要額というのは地方財政財政需要の実態に即してつくられているかといいますと、そうではなくてむしろ一種の規範的なものでありまして、こうあるべきだと。地方財政というのは全国的に、あるいはマクロ的にはこういうふうな財政需要範囲内でやるべきである、それで基準財政収入額はこの範囲でやるべきだと、こういう規範的なものが中央政府によって設けられて、それが土台になっているわけでありますから、地方財政のそのときどきの実態なり、あるいはミクロ的なそれぞれの三千三百幾つの自治体の実態に即した財政需要でないことは明らかなところであります。  したがいまして、そうなってまいりますと、これもどちらにするのか、実態面にするのかあるいは規範的なものによるのか、こういうことになってくるわけであります。私はどちらかというと実態面の方を支持したいわけでありますけれども、しかし実態といいましてもどこまで実態に近づけるのか、そして実態によってどこまで毎年の総額というものが次に決定し得るのかといいますと非常に難しいわけであります。  現在の地方交付税制度の非常な複雑さというものも、ある意味ではそういう実態面も反映させたいという、こういう一つのあらわれではなかろうかと思うわけでありますが、もう少し単純に、人口とか、あるいはもう少し簡単に行政経費を回帰式等によって出すという方法も従来言われておるわけでありまして、そうした方法によることも一つあり方であります。そういうことも含めて、私はここのところで基準財政需要額あり方について根本的に、規範的なものでいいのかどうか、そしてもう一つの実態面をより反映するためにはどうしたらいいのかというこのところをひとつ研究していただきたい、こういうことであります。  同時に、交付税法第六条の問題とも関係するわけでありますけれども、対象国税あるいは交付税率についてもですから同時に考えなければいけないわけでありまして、国税も現在五税でありますが、これもなぜ五税なのかというのもはっきりしないわけであります。平成年度から五税になって、それまでは三税であったわけですけれども、かなりこれも便宜的に変更されてきておりまして、そうしますと、消費税も含めますので国税のもう八割ぐらいまでは交付税の対象になっておりまして、対象になっていないのは特定財源ぐらいだと。あと小さな相続税等の場合だけでありまして、あとはもう特定財源以外の一般会計における普通税はほとんど全部対象になってきております。  そうなりますと、現在の三二%とか、こういう割合というものがいいのかどうかということと同時に、交付税総額の算出の仕方、これも考えなきゃいけないと思うんです。同時に、しかし私は平衡交付金のような形での単年度主義というのは余り望まないわけでありまして、やはり国税の一定税率で決めるという、総額としましてはその固有財源方式の方が地方財政にとっては将来の財政計画も立てやすいので望ましいであろう。総額はそういうふうに固有財源方式としながら、基準財政需要額はできるだけ実態に即した、そしてまたシンプルなやり方でできないか、こういうふうなことでございます。
  15. 栗村和夫

    ○栗村和夫君 それとも、もう一つ観点なんですが、単年度方式が適当かどうかというふうな議論はちょっとおくとしまして、私は交付税率を引き上げるべきだ、こういう考えなんです。  そうしますと、交付税率も引き上げろ、補助事業もふやせというのではこれは整合性のある財政論になりませんから、できれば、今日不要不急の補助事業というのもありませんが、実際現場で実務を担当してみますとこんな補助事業がまだ残っているのかというようなのがないわけではないですね。これは首長にすればなかなか言いにくいことなんですが、そういうものにメスを入れながら、つまり、焼津市長さんからもお話がありましたが、補助事業の整理合理化とかというふうなことですね。  こういうことに関連して、ふるさと創生事業というのは、これは結果として蟷螂のおののようなものになるかどうかわかりませんが、みずから考えみずから実施すると、こういう方向地方自治体というものは客観的にもう成長してきている、こう思うんです。それは確信を持った認識に立って言えるわけですね。  そうしましたら、一方で補助事業の整理合理化見直しをやりながら、もっと交付税率を引き上げて固有財源自主財源をふやすような方向に、物の考え方をそっちに向けていく時代に来ているのではないか、こう思いますが、ひとつ和田先生、その辺をちょっと敷衍してお話しいただきたいと思います。
  16. 和田八束

    参考人和田八束君) そういう方向につきましては私も賛成であります。ふるさと創生資金ですか、竹下内閣のときの交付税の一億円でしたかの配分というものについてもお触れになりましたけれども、あれはともかく各自治体が創意工夫して自由に使ってくれというふうなことで配分がなされたわけですが、交付税というのはそもそもそういうものでありまして、ひもつき財源ではありませんので、別にふるさと創生でなくても、一般的な性格を持った交付金でありますので何に使っても自由であるということなんですね。  ところが、現在かなりひもつきになっておりまして、先ほど中西さんの方からも公債費にかかわるお話がございましたが、公債費もそうでありますけれども、その他の基金でありますとかそういうものの創設等によりまして交付税の中に何か特定化された費目ができてきておるということは、いささかやはり交付税の性格が変わってきているのではないかという感じがあるわけでございまして、むしろもうすべてふるさと創生資金であるべきだと言いたいわけでありますが、なかなかそうもいかないわけでございます。  交付金といいますか、あるいは補助金は、一般的にいいますと、一般財源的な一般的性格を持ったものと、それから特定交付金といいますか、こういう二種類あると、各国の事例でいいましてもそういうふうになっておりまして、どこの国でも交付金はそういう形になっているわけであります。我が国の場合も、一方において、国庫支出金といいますか、国庫補助金がいわば特定補助金の役割を演じておるわけでありますけれども、これと交付税とのかかわりというのが必ずしも明確でないというのが我が国の場合であります。  最近の地方財政の決算状況等を見てみますと、一般財源の比率がかなり高く、もう七割近くなってきている。六十三年度財政計画でもそうであります。それから単独事業が建設事業費の約五割ぐらい占めてきているというふうなことを見ますと、以前に比べますと地方財政財源的には相当自立化してきておりますし、それから公共事業等につきましても国庫補助に依存しないでできるようになってきたということは、地方財政サイドにはいろいろ問題があるにいたしましても大変結構なことだろうと思います。  もう少しこういうものを推し進めるという観点で、なお国庫補助金とかあるいは機関委任事務というものを整理して、そして地方交付税を拡充するという方向で進められることが望ましいわけでございます。  それで、交付税率の問題もお話しでございましたけれども、その場合には、先ほども申し上げましたように、交付税率の対象となる国税の範囲をどうするのか、あるいは、一時、現在はありませんけれども、赤字国債まで含めてやるのかとか、あるいは建設国債も含めるのかというふうな、そういう議論もありますので、その辺も一つ問題点だろうというふうに思います。
  17. 栗村和夫

    ○栗村和夫君 中西先生、公債費需要額の交付税伸びとの関係、あるいは地方財政計画と国の一般会計の対比、これは一目瞭然で、これですべて語っているということにはならぬと思いますが、重要なところにピンスポットを当てたデータだと、こう思うんです。  そこで、次に地財計画を立てるとき、そのとき はやはり、公債費需要がどうかとか、これからの仕事はこんな予定がある、高齢化の問題とかいろいろ出てきますが、そのとき何か制度として地方団体意見を聴取して地財計画を立てる。これは常に各省庁のヒアリングがあって、それを積み上げてといういろいろな形ではあるでしょう。町村会あるいは市長会等々ありますが、制度としてやはり権威のあるものでそういうものをつくる必要があるのでなかろうか、こう思うんですが、中西先生と服部市長さん、その辺、地方団体意見を聴取するための制度、こういうことについてはどうお考えですか、最後に伺わせてください。
  18. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 大変重要な御質問ではないかというふうに思われます。というのは、私はこの資料で示しましたように、きょう問題になっております交付税法附則第三条の問題も、地方財政計画との関係でこれを見ていかないとポイントが出てこないというふうに考えているわけでございます。  というのは、地方財政計画をずっと圧縮していくと、交付税の収入の方はこれは自動的に国税五税の一定割合で算定されるわけでございますから、好況のときには当然財源余裕が発生してくることは当たり前なんですね。そうすると附則第三条の減額を適用するということになりますと、これは地方財源はどんどん圧縮されていくということになっていくわけですね。ですから、この附則第三条と地方財政計画策定とがいわば私は相関関係にある、こういうふうに考えているわけでございます。ですから、この減額適用というのは地方自治体にとって非常にこれは危険な要素を含んでいるということで私は問題を指摘したつもりでございます。  したがって、附則第三条だけで考えるのではなくて地方財政計画との関係でこれを考えるということになりますと、御質問のように、だれが一体地方財政計画を立てるのか、これはもう地方自治体の意見がそこに十分に反映されるような立案方法が必要だと。もう少し具体的に申しますと、私はやはり地方自治体の代表とそれから国の側とが一堂に会して審議するような、地方財政委員会というふうな組織がかつてございましたけれども、ああいうところで審議をしていくというふうなやり方がどうしても必要ではないかというふうに考えております。
  19. 服部毅一

    参考人服部毅一君) 同じ質問で私の方への御質問でありますけれども、今回の減額適用については、これはいろいろ様子を聞きながら検討してみますと、特に地方財政計画を切ってまでもやったわけじゃないので、地方団体が持っている負債を返すということの中でやったことでございますから、今回のことは、先ほど申し上げましたとおりやむを得ない措置だと思って了解をいたしました。  ただ、今中西先生の言われたとおり、地方財政計画そのものがどういうふうなものになっているかということは、実は私もそう余りよく知らないんですけれども、恐らく各年度ごとの累積がございまして、それによってやっていると思いますから、今先生の言われたとおり、地方の実態をもっと知った上でもって予算をつけていくと。地方財政計画というのは地方の首長がやっていることでございまして、この総元締めは自治省でありますから、制度的につくるかどうかは別として、やはり地方の声も十分に聞いていただきながら実態を把握した上でやっていかないと、かなり時代が進んできておりますから、今までの累積的な考え方でやると先生御指摘のようなことになるのじゃないかなと思いますので、まさに同感でございます。
  20. 栗村和夫

    ○栗村和夫君 どうもありがとうございました。  終わります。
  21. 常松克安

    ○常松克安君 まず、私が割り当てられている時間が十分ということでございますので、端的な申し上げ方をするかもわかりませんことを前もって失礼をお断り申し上げます。  まず服部先生には、実は昨日私ここで国保の問題、制度、これはもう国家的な見地から考えないと大変であると。いろいろな制度の手直しがありましても、結局、昨年度を見ましても赤字の方が二百四十七団体、一般会計からの持ち出しが何と二千五百億円、これが強いられるわけでございます。  そういう中で、一面またこの構造的な欠陥ということを抱えながら進んでおるものでございますからやむを得ないにしても、具体的に申し上げますと、税として取り上げられている場合は五年間でもう取れなくなる、それをどうするか。そうすると、取れるところから、加入者の中からもう一遍値上げということで負担をかけて解消しなきゃならない場面もあるわけでございます。ところが、また一方、保険料として医療費として取るところはこれは時効が二年で、しかし二年ですけれども、こっちは税の方はおくれたら一四・八%の延滞料が取られます。ところが、料の方は延滞しても延滞金は取らないわけです。取れないわけです。  こういうふうな格差というものが、中には給付面、負担面、物すごく増大している。こういうふうな問題を抱えていらっしゃる現場の市長さんとして、それを解決する方法はこうあるべきだと。これは単純に、国の方からもっと金を出せ、こういうふうなことじゃなくして、もしもございましたら御教示、御意見を賜りたいと存じます。  それから、和田先生につきましては、基準財政需要額見直し論と申しますか、この辺で、例えて申しますと、消防の基準は十七万と言っているんですが実質は十三万台。例えば細かい具体例を申し上げますが、消防車を三百二十万円で買えと。実際買うているのは六百万でしか買えないんですというふうなこと。基準需要額のものが、具体的にいったら制度自体がもう今様の時代に合わない、こういうふうな面々がずっと続いてきているわけなんで、私はやっぱり実態面に合わしてやるべきだという考えは持っておるわけでございます。  しかる面、一遍出すべきものはみんなきちんと出して、それはどうなのかと、こういうふうなことの考えでこの見直しということをもう少し御意見を厳しくちょうだいできればと存じます。  それから、最後に中西先生にお願いしたいんですが、もう端的に申し上げます。今回の五千億の減額は違法なんでしょうか、扱いが。あるいは、違法ではないけれども、よくお使いになる適法ではないとかというふうな使い方でございますね。  私一番心配するのは、必ず来年度大蔵省は胸を張って、交付税を下げた、余力があるからと、これを押し通してくると思うんです。自治省も情けないと思います。これを認めた、裏を返せば、絶対に実損はございませんのでどうぞ通してくださいと、こうなる。実損じゃなく法が大事なんです。法というものをもう越権してしまってぐじゃぐじゃにしてしまって、来年度大蔵省とどんな闘いをするのかという危惧を持って、自治省を応援しようとしておりますので、その辺のところを御教示願いたい。  以上でございます。
  22. 服部毅一

    参考人服部毅一君) まさに先生の言われるとおり、今地方公共団体で抱えている問題の一番大きな悩みは国民健康保険の問題でございます。このまま現在の国民健康保険制度のままでもって推移しますと、かなりこれは地方の打撃は大きいわけであります。  私の方も確かに滞納がありまして、滞納をいただきながら整理するのに随分腐心をいたしておりますが、おかげと熱心に徴収していく方々の御努力もあって大変効果があったようでありますので、異例なことですけれども、過日徴税課の方々を秘書室へ呼んでねぎらって、ひとつ昼飯を食おうじゃないかということをやりましたが、それくらい効果は上がっていますけれども全国市長会等々で聞いてみますと、全くこれは非常に大きな問題であります。  なるがゆえに、国の方へは国民健康保険の要望として、まずは老人医療への国の負担を拡充してもらいたい。また、医療制度の給付と負担の公平 化を図ってもらいたい。先ほど申し上げました高齢者保健福祉推進十カ年戦略の積極的な推進、これを展開して進めていこう。なお、保険税の賦課のあり方について、やはりこれも検討をしていかなくてはいかぬじゃないか。  特に、御案内のとおり、国民健康保険へ入っている方々の本人負担が三割でありますが、社会保険は大体一割ということになっております。加えて、御案内のとおり保険料の負担について、応益負担が二〇%、応能負担が八〇%、これはやはり、平準化していくためにはフィフティー・フィフティーに持っていくべきであろうというようにみんな思っているんですけれども、実際行政を進めていく上においてこのことは大変な方々負担がかかっていくことになりますから、理論的にはそう言ってもなかなか簡単にはいかないということであろうと思います。  国へ出しているところの国保制度の改善についての全国大会の要望は今の四本を出しておりますので、何にしても、これは市が単独でもってこうしたらどうかという決め手はありませんけれども、やはり皆様方が協議しながら、この強化について要望した四本のこのことを着実に国の方でも考えていただきたい。もちろん地方もこれに準じた苦労をしなくちゃできないと、そういうふうに考えております。
  23. 和田八束

    参考人和田八束君) お話がございましたように、むしろ来年度平成年度にもう少し大きな問題が出てくるような気がいたします。もうことしで借金は全部返済したわけでございます。今まで、ことしも三兆円ぐらい、広い意味ではそういうお金が出てきたわけですが、それがそっくり余って、今のままですと来年はもっと何兆円もの余裕資金、余剰が出てまいりますので、そういたしますと、附則ではなくて本則といいますか、第六条による減額ということにもなってくるのではなかろうかというふうに思います。  その場合に、今お尋ねのように基準財政需要額を見直す、それから補正あり方を見直すというふうなことで現在の地方財政の実態というものにより即した制度にしないと、かなり減額に見舞われるのではなかろうか、こういうふうに思います。  ただ、どういうふうにしたらいいのかというのは、今ここですぐに申し上げる準備もございませんけれども、投資的経費の方につきましては、できるだけ計画的経費で地方財政の方も計画を立てていくということが必要でしょうし、経常経費につきましてはこれはやはり実態を調査するということで、標準団体の標準経費といいますか、こうしたものの調査、見直しというものが、ここ十年ぐらいは財源対策に追われてしまいまして中身を見直すということが非常におくれてしまっております。四十年代におきましてはある程度なされたと思うんですけれども最近なされておりませんので、これはやはり国の事業としてやるべきだろう。  補正の方も、これはたびたび言われておりますけれども、何か中には矛盾が大分あるわけでありまして、かさ上げと切り下げといいますか、これが同時に行われるケースがあるとかというふうなことではどうも都市的な財政実態とは合ってこないとか、それから特に人件費などにつきましては、これから福祉のためのホームヘルパーとかいろいろあるわけでありまして、こういうふうなものも現在入っていないというふうなことでございますので、余り複雑にしないで見直していく、その実態を調査するというところから始めて来年に備えるといいますか、それが必要じゃないかというふうに考えます。
  24. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 御質問の趣旨でございますが、附則第三条の条文を私ここに持っておりますが、端的に申しまして、私自身の考え方としては、減額は違法に当たるのではないかというふうに考えたいわけでございます。  それは理由はどういうことかと申しますと、この第三条を読んでみますと、「交付税総額の安定的な確保に資するため」と、こういうふうな条文になっているわけですが、今回の減額交付税総額の安定的な確保に資するというふうに果たして解釈できるのかどうか。これは年度間調整というふうな立場から、何年にもわたって安定的な交付税確保するんだというふうに解釈すれば減額もできると、そういう解釈があったということは私も知っておりますけれども、しかし先ほど申し上げましたように、もしそういう解釈をやると果てしなく地方財源減額されていく、こういうことになるわけですね。  私はやはりこの条文の「安定的な確保に資する」というところを素直に解釈して、減額をするのはこれは違法に当たるのではないかというふうに私としては考えたいわけでございます。
  25. 常松克安

    ○常松克安君 ありがとうございました。
  26. 神谷信之助

    神谷信之助君 参考人の皆さん、本当にありがとうございました。  私は時間が二十分と限られていますので、二点について三人の参考人の皆さんの御意見を聞きたいと思います。一つは、地方行革の影響がどういうように出ているかという問題、もう一つは、最近各自治体でふえている積立金の激増問題をどう見るかという問題です。  第一の問題ですが、先ほどからも話が出ていますが、補助金のカットであります。公共事業の関係はこれは六十一年度水準まで戻ってきますけれども、福祉関係の方はもう恒久化されてしまうんですね。カットされたままで来ています。そういう状況がある。  そこで、国保料の値上げというのはどんどんひどくなってきて、大変な不満といいますか、市長さん初め皆さん御苦労なさっている。たしか数年前、当委員会参考人で来てもらった福岡県の田川の市長さんですか、あの当時さえ、もうこれ以上値上げをすれば滞納者がふえるだけで国保財政にはプラスにならぬ、だから国保料はもう限界ですという意見を述べておられましたけれども、それから以後もずっと上がってきている。この原因には国庫補助削減の問題がある。  あるいは、地方財政法でその経費を国が進んで負担すべき事業と言われている生活保護やあるいは障害者の援護施設の補助事業、これらの補助金もカットされて、障害者の負担がゼロだったのが相当の負担になってきているという状況があります。  こういった状況が起こってきていますが、こういった問題についての御見解を聞きたい。片一方でそうやってずっと抑えながら、地方財政計画の圧縮がされてきている。それを土台にして余裕があるかのような現象に思わせているではないのかという問題です。  第二の問題は、積立金が激増しているわけですが、私ども、ため込み主義ということで批判をしています。これは今内閣官房副長官をなさっている石原さんが自治省におられたころに書かれた著書の中にも、実際は住民の税金を扱っているんだから福祉やその他の事業にどんどんやって還元していかなきゃいかぬ、ため込むのは自治行政の趣旨ではないという意味のことを述べておられますが、それからいってもおかしいではないか。一定の積み立ては必要かもしれぬけれども、全体で言うと、総額が十六兆ないし二十兆からに積み立ててなってきているとなると、これはちょっとおかしいではないのか。  あるいはさらに、単年度主義の予算できている、そういう点からいっても余りにもかけ離れているのではないか。だから、ことし二月でしたか、全国の担当者の会議があって自治省の方からも、余りため込んでばかりいたらいかぬ、少しは使いなさいという指導もあったらしいんですけれども、こういった問題についての御見解を三人の皆さん方にお聞きしたいと思います。
  27. 服部毅一

    参考人服部毅一君) 積立金問題については、焼津の場合もこの三月の議会で革新の議員から話が出ました。しかし、これは全国の自治体を見て、財政規模、また市政そのものも違いますから、所によってはあるいはかなりの積立金はあろうかと思いますけれども、私自身、積立金というものは 余り積み立てるべきではない、なるべく当年度予算はいっぱい使いたい、そういう考え方でありますが、さりとて、事があった場合に全然もう積立金がないじゃいかぬので、なるべく積立金というものも置きたい。  したがって、現在焼津の積立金は、財政調整基金、都市整備基金等々を主といたしまして十二本くらいありますけれども総額七十億五千万円程度でありまして、これくらいのものは持っておかなくちゃいかぬであろうと、そういう答弁をいたしましてその議員の方も納得をしていただきましたが、法外に積立金を置くということは、やるべき仕事を後回ししてやっているのじゃないかと言われても仕方がない事柄でありますから、これはやはり市長としても財政当局の方にきつく伝達しておくべき問題じゃないかなと。  しかし、全国六百五十五の市を見れば、中には先生が御指摘いただくようなこともあるかもしれませんので、この点はやはり総体の話の中で話し合っていきたいというぐあいに考えております。  確かに、地方財政計画を圧縮していた上へ立って国が考えているというようなことも、私も実際やっている仕事の中から、先ほども言いました補助金の問題等々、ただ簡単にカットしちゃ困ると。ただ、補助金の整理統合はしなくてはいけない。不要なものには出す必要はない。しかし、あるものはむしろ補助金よりも制度化していくということが必要なこともあるかもしれない。  なおまた超過負担につきましては、まさにこれは学校の例一つとりましても、えらいもう平米当たりの価格が実際二十二万円はかかるのに、十三万円くらいの数字にしかなっていない。九万円も違うようなそういう中でやられたのでは大変これは市の持ち出しも多くなりますから、そういう点につきましては、大いにひとつ実態を把握した負担あり方、補助金のあり方等々をぜひ検討していただきたい、かように考えます。
  28. 和田八束

    参考人和田八束君) 二点御質問でしたけれども地方行革がどういうふうに行われてどういう結果になっているかということについて、今特に私材料を持っておりませんので具体的に申し上げるあれはないんですが、ただ、あの当時は、それまでいわゆる大きな政府というのですか、に対して小さな政府ということで行政改革の目標が定められていたわけでありますけれども、とかくそれが公務員の人員の削減とか人件費抑制という方向が非常に強く作用したのではなかろうか。  それは必要なところもあり、成果も認めないわけではないんですけれども、これからの福祉十カ年計画とかそういうふうなものと照らし合わせてみますと、いささかその時点での考え方というものが問題になるところがありまして、やはりこれからのマンパワーとかそういう面を考えたりいたしますと、将来の地方自治体を支えるそういうマンパワーの点で非常な不安が出てきているのではないか。  私のところの大学の卒業生などでも、なかなか就職では民間志向でありますし、技術者畑ではもっとそうであるというふうに聞いておりますが、それから福祉などでは余計、ホームヘルパーを拡大するといいましてもボランティアばかり頼りにしているというふうなことでは非常におぼつかないわけでありまして、そういう地方行革における何といいますか人員あるいは人件費抑制というふうなものの行き過ぎの面は見直す必要があるのではないか、こういうふうに考えます。  それから基金につきましては、いわゆる財政安定的な調整基金、これはある程度必要ではなかろうか。交付団体の場合には現状では必ずしも必要でないんでしょうけれども、大都市等の不交付団体につきましてはやはり自己責任が大きいわけでありますので、一定の調整基金というのは必要だろうというふうに思います。  東京都などを見ましても、よそのことは知らないんですけれども、非常に多額の基金が積み立てられたということでありますが、これはそれなりの事情がありまして、一つは起債がなかなかできにくいということ、東京都のような団体でも起債が自由でないと、こういう問題であります。それから土地取得の面におきまして、現行の補助金制度その他との間でうまくいかない、先行取得ができにくいということですね。  それから、住民の立場からいいますと、金が余った、平たく言って余っているなら減税してもらいたいというんですが、現在の地方自治体は金に余力があっても自主的に減税し得ないというふうな制度でありまして、結局資金的に余裕ができますと積み立てるというふうなことでそうした問題を解決していくということでありますので、基金そのもののあり方ということからいえば、もう少しやはり地方財政にとって自主的な財政運営ができるような制度にすることによって解決すべきではなかろうか、こういうふうに考えます。
  29. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 最初の地方行革の問題でございますが、私は二点、問題を指摘しておきたいと思います。  第一点は、先ほど和田先生がおっしゃいましたマンパワーの問題でございます。御承知のように、地方行革は公務員の人件費を削減するということを非常に強力に指導した結果、公務員志向が民間に対して減少してきたとか、あるいは人材が集まらなくなったという問題もございますが、特に福祉行政の面でのマンパワーが非常に深刻化してきております。  一つの実例で御説明したいわけですが、この間埼玉県の私立の保育園の園長さんの集まりで、保母さんになり手がなくてもう困っているんですと、こういう話なんですね。それで、そのときに給与表を見せていただいたわけですけれども、四十歳・二十年勤続で公立の保母さんと私立の保母さんと比較して、年収で二百万ぐらいの差がある。つまり、それだけ公的に保障すべき私立の保育園の保母さんになり手がない。これは地方行革によって公的保障をどんどん削ってきたというのがそういう形であらわれてきている。  それから、今、公立病院でも看護婦さんになり手がなくて大変困っている。まして民間の小さいところではもう看護婦不足で非常に困っておる。それから、先ほどおっしゃいましたホームヘルパーになり手がなくて困っておる。こういう人件費に対して非常に悪だというふうなことが広がった結果、福祉行政の面でのマンパワー対策で非常に大きな問題が現在発生しているのじゃないかというのが第一点でございます。  第二点では、やはり福祉行政の面で住民負担が非常に増大してきたのではないか。これは一つの例で申し上げたいんですが、先ほども国保料の例が出されました。私この間調べてみたんですが、例えば年収三百万・三人家族の人で国保料の負担額をいわゆる被用者健保の負担額と比較すると二・九倍とか、それほど国保料が高いということなんですね。これはやはり地方行革の中で「事務事業の見直し」という項目がございまして、この中で、いわゆる料金負担、住民負担を引き上げる、こういう内容が含まれていたということ、これが作用している。  保育料も非常に上がっておりまして、北海道の滝川市で、ゼロ歳児で最高十万九千八百五十円でございます。普通でもゼロ歳児の場合五万円とか六万円を超えるところはかなり出てきている。そういう形で住民負担が非常にふえてきたということとマンパワーの問題、二点、これは私はかなり重要な問題が現在結果として発生しているのではないかというふうに考えるわけでございます。  それから第二点の積立金の問題でございますが、まず、なぜ積立金が大変たまったのか、この実態でございますが、これは八九年度で十三兆、九一年度末には二十兆円ぐらいになるのではないか。地方財政計画が七十数兆でございますから、そのうちの二十兆の積立金というのはこれは物すごい額でございます。この間も武蔵野市に、去年でしたか、行きまして、予算規模が四百五十億ですかのところで百七十億の積立金がある、こういうふうな話でございまして、これはもう非常に積立金がたまってきておる。  これはなぜかと申しますと、理由はよくわかる わけでございまして、今まで地方行革で抑えに抑えてきたわけですね。最初に予算をいわゆるけちって少なく立てるわけです。ところが、八七年以降好況でございますから、いわゆる自然増収というのはどんどん出てきている。予算よりも税収や交付税収の方が上回る。そうすると黒字になる。その黒字を今度は補正予算で使わずに積立金に回す。  これはなぜ回すかといいますと、結局七〇年代半ばの財政危機のときにちゃんとした財政上の保障がなくてえらく苦労した、こういう思いを自治体の担当者は持っているわけです。そうすると、また不況になると困るから積み立てる、こういう発想に現在なっているのじゃないかと思うわけです。  そこで、私二つのことが大事だと思います。一つは、国の側で、かつてこれまでやってきたような借金対策だけじゃなくて、文字通り安定的な地方財源の拡充対策、保障策というのを確立するということが一つと、あと自治体の側としては、やはり過大な積立金は、先ほど焼津市長さんがおっしゃいましたように、住民本位の行政を行うという点から大変問題があるわけでございまして、今住民のためにやらなきゃいけない仕事は福祉面でも教育面でも町づくりでも山ほどあるわけでございますから、ある程度の積立金は必要としても、やはり過大な積立金は住民のために予算化すべきではないかというふうに考えております。
  30. 服部毅一

    参考人服部毅一君) 耳が遠いわけじゃないですけれども先ほど行革の地方に及ぼす影響ということが今先生に聞きましたらあったと、私はそれを答えませんでしたので。  行革というものはやはり国の方と地方が一体になってやるべきでありまして、私たちは行革と言われる前からとにかく少数精鋭主義を唱えまして、そのことが職員に対する過重になっては悪いけれども、民間の企業のいろいろ働いているあり方から見ると公務員の勤務状況はどうであるかということに観点を合わせながらやっているところへ行革という話が出てきましたから、そんなことで、私の方は類似団体四十五市と比べてみて、職員の数が百九十二人少なくなっています。  大体、類似団体四十五市で平均六百十一名職員がおりますが、私の場合は四百十九人ですから百九十二人少ないわけでありまして、少ない方で下から二番目になっております。そのことがよく革新の方々から言われて突かれておりますけれども、職員に過重になるような仕事をさせて現員を減らしていたんじゃ悪いけれども、別にそういうふうな点も見られないからいいであろうと、そんなことでやっております。  今先生の言われた事務事業の見直し、これも、先ほど申し上げました補助金、これはもう廃止すべきものは廃止していく。焼津もやりました。統合するやつは統合しました。メニュー化をいたしました。そんなこと等、あるいは使用料、手数料の見直しもやりました。なお、公設の施設の土曜、日曜の開放もやりました。なお、国保税の本算定一本化、これによって大変事務量が、なるべく細分してやった方が納める方はいいとはいうけれども、とにかく滞納料から何から見るとそう大して全然変わっちゃいませんから、したがってこれはもう本算定一本化にすべきであるということにもいたしました。  なお、専決事項も見直しをやって、なるべく簡便にできるようにやったらどうかと。何でもかんでも市長の専決というようなことでなくして、職権を部長におろしたということもありますし、それから窓口も、なるべく住民登録とか税の証明とかそんなものについては共通の窓口でやったらどうかということ等で、職員に対しましては少数精鋭主義。  議会は、焼津は人口十二万でありますが、法律的には三十六名が議員の数でありますが、これは三十年前に合併するときに三十人に減らしてやったんですけれども、さらにそれを今回の行革によって二名減らして二十八名でやっている。そういうことでありまして、やはり行革そのものはいろいろの問題もありますけれども、公共団体そのものがそのつもりでもってやらないとなかなかできない問題でありまして、決して上から言われたからやるというような、そういうことではだめだというぐあいに解釈をしております。  そういう中で、確かに今先生言われたとおり、保育料の問題一つとりましても、本人負担の保育料に公費が七二・二%出ている。七二・二%出ていますけれども、そのうち、国が定めた計算でやりますと、実際保育園を経営していく上に出す公費が一二・七%足りない。焼津市が持っているんです。そういうところは恐らく全国全部だと思います。したがって、こういう算定基準というものは、今先生の言われたようなことをひとつぜひ検討していただきたい、そういうぐあいに考えます。
  31. 高井和伸

    ○高井和伸君 きょうはお三方の参考人の方、大変ありがとうございます。  それでは、服部市長さんに一点お尋ねいたします。  地方財政現状についておっしゃられました冒頭で、税源は順調である、しかしながら六十八兆円の累積債務があることだし、バブル経済もあって先行き不透明感を持っておられる、このようにお聞きしました。こういった要素で先行き不透明感があるというようなことでございますが、具体的にどんな点があるのか、市長さんが感じておられる点をお述べ願えればありがたいと思います。
  32. 服部毅一

    参考人服部毅一君) なかなか難しい問題でありますが、私の見方ということでございますから申し述べますけれども、やはり今、いろいろの評価等々を見ても、実質と評価とがかなり違っている、バブル現象ということは否めない事実でございます。ただ、これはもう世界の情勢、国の経済情勢等々によって違っていく問題でありますから一概に私がここがこうだとは言えませんけれども、ただ、これから経済一等国と言われている日本が世界に伍していく中で、その伍し方によってかなり地方に及ぼす影響も多いかもしれません。  そういう点を考えますと、現在地方団体は六十八兆円の赤字を持っておりますから、したがって、現在は地方財政富裕論を唱える方もあるけれども決して富裕じゃない。同時に、こういうぐあいの累積債務というものを解消していくことを考えると、この先うまいぐあいに伸びていってくれればいいけれどもどうなるかわからぬという不安もありますから、そういう点で先行き不安だと、そういうことの表現をしたわけであります。
  33. 高井和伸

    ○高井和伸君 じゃ、もう一点だけ。土地の高騰が市政運営上どのような影響を及ぼしているか、端的にお感じになっているところをお願いいたします。
  34. 服部毅一

    参考人服部毅一君) 私の方は田舎というか、それでも何か漁業では世界に向かって漁業の焼津でもって胸を張っていいかもしれませんけれども、土地の高騰等につきましては余り差が出ておりません。これは大変ありがたいことであります。したがって、今回の固定資産の評価も、大体県下平均で二四%ぐらいのアップをやりましたが、焼津は一九%で抑えました。決してこれは人気取りにやったわけじゃなくして、実際に土地を売った実例が大して差がない。開発がおくれていると言われるかもしれませんけれども、実例が現在そう大して差がないものですから、そこでむやみに県下並みに二四%も上げちゃいかぬ、やはり実際に即した上げ方をしようというのが一九%で、これは恐らく一番低い額だったと思います。  そんなこと等を考えてみると、やはりこれは、地震強化地域で津波も来る、地震も来るというところで、案外どうも焼津では土地を物色している方がないじゃないかなと。そんなことでございまして、これが掛川のように新幹線もできた、あるいは林地が相当ありますから、そこへもう東名の第二が通るなんということになりますとかなり不動産屋が目をつけますから、掛川市長はああいうことで条例をつくって区画整理方式になぞらえたことをやって、あれは一つの私は見識だと思うんですけれども焼津はそこまでいっていないもの ですから、今の土地問題については、実際売った実例の差額が余り多くないということは焼津の田舎であるということを証明しているようでじくじたる面がありますけれども、そんな実情でございます。
  35. 高井和伸

    ○高井和伸君 ありがとうございました。  和田先生にお尋ねしますが、先ほど交付税算定方式の中で、算定方式自身を再検討する必要があるのじゃないか、その流れの中でシンプルなやり方があるのじゃなかろうか、こうおっしゃられました。具体的にはどんなことをお考えになっておられるのか、御披露願えればありがたいと思います。
  36. 和田八束

    参考人和田八束君) 御承知のように、現在はかなり細かく基準財政需要額を積み上げて、経常、投資別にいたしましてその上で各種の補正係数を掛けるということで、先ほど私は基準財政需要額の算定は規範的であり過ぎるという意味のことを申し上げましたけれども、その中において実態面を加味するということでそれなりにいろいろなやり方をしているわけなんですが、シンプルなといいますのは、そこまでやらなくて、例えば人口なら人口で、あるいは人口密度というふうなものを幾つかの要素で一定の関係式をつくってやるとどうなるのかということであります。  ドイツなどはそういうやり方で、人口比による回帰式方式ですね、一般交付金の算定をやっておりまして、我が国でもそうした試算がなされたのを見ますと、それほど現在の精密化された基準財政需要額と大幅に食い違うということはないようでありますので、そういたしますと、先ほどもお話が出ておりましたように、地方自治体サイドの発言権ももう少し可能になってきて、そして短時間に地方団体サイドの意見も入れた交付税額の算定というものが可能になってくるわけであります。  今のままですと非常に難しくてなかなか容易でないということがありますので、もしもそういう人口等という非常に簡単な式で実態に即したものが可能であればそちらの方が望ましいのではないかと、こういうことでございます。
  37. 高井和伸

    ○高井和伸君 ありがとうございました。  中西先生にお尋ねしますが、先ほどのお話で、平成年度の公債費需要額の合計額が大変大きな数字になって、十五年ほどの間にこの比率が、対需要額四・二%あるいは対交付税額一一・〇%という数字になっておるということでございますが、こういった四・二あるいは一一・〇というのは、借金がだんだんふえてきて地方自治体の方々借金なれしてきて、いずれは国が面倒見てくれるんだろうだとか、いずれ何ともしようがなくとも国あるいは地方公共団体は倒産しないんだからというような安易な考えに流れがちな雰囲気も中には持っていると思うんですが、そういう発想と、このぐらいの小さい数字ならまだいいんじゃないかという発想と、両方あると思うんです。  この積み上げの中身の災害復旧費あるいは辺地債、地域改善費というようなものを見ますと、さして大きな投資効果があらわれていると思われぬようなものばかりに金が使われている。こういった要素をどのように私ども理解したらいいのか、なお補足的に御説明願えればありがたいと思います。
  38. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 今おっしゃられた問題は、原則的に地方自治体の起債という財源をどういうふうに考えるかという問題だろうと思うわけですが、一つは、地方債そのものを私はすべて悪いとは思っていないわけですね。適切な事業に適切な割合で充てられるということは、これは必要なことだというふうには思っております。  ただ、問題は、いわゆる一般財源不足したときに、その一般財源を拡充するという措置をとらずに一方的に地方債で間に合わせ的に今までそれを財源として充ててきたというところに非常に大きな問題が今日残っている。つまり、その後遺症が残っているのではないかというふうに考えているわけでございます。それが、端的に申しまして、この表の後半にございます財源対策債の二千三百十七億を初め、あるいは減収補てん債一千六百二億円というふうな、これはかなりの額になるわけですね。  加えまして、公共事業につきましてもやはり相当程度起債の占める割合がふえてきたということでございまして、これがいわゆる後年度地方財政そのものの圧迫要因になってきて、見かけ上交付税基準財政需要額はある程度あるように見えても実際の中身はない、中身に使えるものは非常に窮屈だと、こういう現象を引き起こしている。しかも、肝心の地方財政計画そのものもどんどんどんどん圧迫されている。こういうところに私は総合的に問題があるのではないかということを言いたいわけでございます。
  39. 高井和伸

    ○高井和伸君 ありがとうございました。
  40. 野田哲

    委員長野田哲君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたり本委員会に御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回の委員会は、明二十五日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時六分散会