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国務大臣(
橋本龍太郎君) まず初めにお断りを申し上げたいのは、私を含め
政府の責任者が「戦費」という
言葉でこの
追加支援の九十億ドルの性格を御
説明したことはないはずでございます。私自身も、
湾岸における平和と安定
回復のための
日本の
支援、あるいは多
国籍軍に対する資金
協力と申し上げてまいりました。この点については、今
委員は「戦費」というお
言葉をお使いになりましたが、そもそも私
どもは「戦費」という御
説明を申し上げておらないということであります。
また同時に、一応戦闘
状態が終結し、現在
イラクの国内においては非常に別途の困難が生じておるようでありますけれ
ども、今後の
平和回復の費用というものと
クウェートから
イラクを
実力で排除する過程において使われた
経費とのバランスについてのお尋ねがございましたが、
政府側から、この九十億ドルの中で余剰が生じて今後のいわば安定のための費用として使い得るという
説明を申し上げてもおりません。衆議院におきましてそうした場合を想定して何回かの御質問があり、そうした場合においては当然そういうものにも使われるであろうという答弁が
政府側からなされたところでございます。
なお、同時に、先刻北米
局長からの他の
委員に対する御答弁の中でも
説明を申しましたように、既に拠出の意図表明をいたしております、また国会からお許しをいただいております二十億ドルの中で、例えば
イラクが大量に流出させました石油の除去の費用でありますとか、こうした環境の保全のための
経費というものも支払われておるということでありまして、これらは
委員の述べられたような戦費という分け方のものではない、むしろ
湾岸平和基金というものに拠出しておりますから、
日本としては、例えばその石油の流出という事態に対して全く新たな枠あるいは
財源をつくるということではなしに対応できたという事実も、御
理解をいただきたいと思います。
そこで、平和が
回復をいたしました後の
経費がどうなるかということについては、先刻来御答弁を申し上げておりますように、今我々としてはその方向の推察はつきません。
と申しますのは、まず第一に被害額が確定をいたしておらないこと、また
総理並びに
外務大臣がそれぞれ招致された際の在日
クウェート大使の御発言にもありましたように、アラブの方々の非常に強い誇りというものと同時に、
クウェートそのものが巨額の資産を海外に有しておられるということ、さらに
国連で六百七十四に示されております
イラクの賠償責任との絡み、こうしたものがふくそうしておりますために、
イラク及び
クウェートという戦禍に直接に見舞われた
地域、ここについての
経費そのものが全く不分明であります。
また、戦闘行為を全く行っていないにかかわらず一方的な攻撃を受けた
イスラエル、これは当然
イラクに対して求償権が働くであろうと思われます。また、周辺三カ国のトルコ、ジョルダン、エジプトについては
日本はそれぞれ既に意図表明を終わっておりますし、当然のことながら
湾岸平和
協力基金に対する九十億ドルの拠出とは別の
支援財源が既に用意をされております。これは周辺国
支援二十億ドルという昨年の暮れに御
審議をいただきました中から当然のことながら配分されてまいります。
さらに、この
地域に例えば労働者を大量に送っておりました国々、アジアの国々が
中心でありますけれ
ども、働き場を失ったこの方たちがそれぞれの国に帰ったために海外からの送金に依存していた
部分、その分だけ
国家経済に穴があいた、しかも今後簡単にその人々をもう一度労働者として受け入れる情勢に
中東があるかないかという中で、それぞれの国々の
経済にどう手当てをするかという問題、これはまた全く別途の問題でありましょう。
今当面緊急に、例えば食糧でありますとか医薬品でありますとか、さらには石油の流出に対するオイルフェンスの寄贈でありますとか、こういった当面の非常に切実な
経費とは別に、中長期的に見たこの
地域の
復興に対する
財源というものは見当がつきませんけれ
ども、
日本が
負担すべきものが生ずるとするならば、これはまた新たな問題として御論議をいただくべきものになるであろう、そのように推察をいたします。