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1991-06-25 第120回国会 参議院 国民生活に関する調査会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年六月二十五日(火曜日)    午後一時一分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         遠藤  要君     理 事                 宮崎 秀樹君                 刈田 貞子君                 近藤 忠孝君                 乾  晴美君                 寺崎 昭久君     委 員                 石渡 清元君                 小野 清子君                 大塚清次郎君                 長田 裕二君                 鎌田 要人君                 清水嘉与子君                 高橋 清孝君                 大森  昭君                日下部禧代子君                 小林  正君                 西岡瑠璃子君                 堀  利和君                 前畑 幸子君                 村田 誠醇君                 木庭健太郎君                 池田  治君                 西川  潔君    事務局側        第二特別調査室        長        宅間 圭輔君    参考人        東京大学教養学        部教授      岩田 一政君        経済団体連合会        経済調査委員会        企画部会長        株式会社野村総        合研究所取締役        社長       水口 弘一君        筑波大学社会工        学系教授     宮尾 尊弘君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国民生活に関する調査  (内外価格差問題に関する件)     ─────────────
  2. 遠藤要

    会長遠藤要君) ただいまから国民生活に関する調査会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国民生活に関する調査のため、本日、参考人として東京大学教養学部教授岩田一政君、経済団体連合会経済調査委員会企画部会長株式会社野村総合研究所取締役社長水口弘一君及び筑波大学社会工学系教授宮尾尊弘君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 遠藤要

    会長遠藤要君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 遠藤要

    会長遠藤要君) 国民生活に関する調査を議題とし、内外価格差問題に関する件について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり三名の方々に御出席をいただき、御意見を賜りたいと存じます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変御多用のところ、本調査会に御出席をいただきありがとうございます。  本日は、内外価格差問題について忌憚のない御意見を拝聴し、調査参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。大変御迷惑をおかけいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず岩田参考人水口参考人宮尾参考人の順序で、お一人二十分程度意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず岩田参考人にお願いいたします。
  5. 岩田一政

    参考人岩田一政君) 御紹介ありがとうございました。  それでは、内外価格差につきまして既にお手元資料が配付してございます「内外価格差に関する覚書」というややテクニカルな覚書でございますが、主としてその覚書に基づきまして御説明申し上げたいというふうに思います。  まず、内外価格差現状ということでございますが、ここには書いてございませんが、先般、アメリカ商務省通産省合同調査というのがございました。これは二回目のものでありますが、この結果を見ますと、やはり日本における価格外国価格と比べて同一製品をとった場合にやや高いという傾向が残っているということが言われております。特に外国からの輸入品、つまり外国でつくられた製品につきまして日本外国を比べますと、特にアメリカと比べますと、日本の方がなお価格が高いという現象が見られております。  こういう内外価格差原因についてどういうふうに考えるべきかということであります。仮に輸送コストがほとんどかからない、しかも内外市場がともに完全競争に近いような市場であるということがあるといたしますと、同じ製品であれば同じ価格がついて当然である、つまり一物一価の法則と言われるものが必ず成り立っていなければならないということが言えるわけであります。ところが、現実世界輸送コストもかかりますし、それから必ずしも完全競争ではないという問題がございます。  それからさらに、国際的に取引している財、これを貿易財というふうに呼んでいるわけであります。この貿易財については、確かにお互いに取引国境を隔てて行われるということでございますが、貿易財でないもの、それを非貿易財というふうに呼んでおりますが、例えば典型的な例は床屋さんでありまして、理髪店料金が国によって非常に差がある。床屋さんが直接外国に移動しませんと床屋さんの料金というのは同じになかなかならないという問題がございます。つまり、市場がどのぐらい完全競争的であるのか、それから貿易財貿易財のほかに非貿易財が存在するという、この二つの点を内外価格差を論ずる場合には考えなければならないということが言えます。  先ほどアメリカ商務省日本通産省合同調査におきまして、外国生産された、アメリカあるいは第三国で生産された財の方が価格日本かなり高い、特にヨーロッパからのものは非常に高いということがあらわれているわけでありますが、それは一つにはもちろん輸送コストの問題があります。それからもう一つは、輸入品国内に入りましてから流通部門でさまざまなサービスが加えられるということがございます。そうしますと、貿易財、同じ製品であっても販売するまでの過程において、つまり非貿易財に近いようなサービスが加えられるという点がございます。ということで、一つ貿易財と考えられるものにつきましても、サービスのように国内に入ってから付加価値として加えられる部分があるということが言えます。  外国の例をとってみますと、日本アメリカだけではありませんで、ドイツ変動レート制に移 行しましてやはりマルクが大幅に切り上がったことがございます。そのときにもやはりドイツ価格が高い、アメリカの方は価格が安いという現象があらわれました。かなりこれは二、三年その格差がなかなか埋まらなかったということが言われております。この一つ原因は、市場がやはりそれほど思ったほど完全競争的でない。特に工業品の場合には価格差別化ということが行われるということでありまして、ある程度企業価格を操作する力を持っているというようなことがあります場合には、類似した商品でありましても少しずつ品質が違うということでありまして、価格が少し異なるということがございます。  それから、為替レートが短期間に大幅に変動するということがございますと、経済学の方ではメニューコストと言っておりますが、そのメニュー張りかえをする、荷札の張りかえ、値札を張りかえたりなんかするという手続がかかる。それもコストがかかるということで、似たような製品であっても価格がやや差別されて高い価格製品と、それから同じ製品であっても高い価格と低い価格がつくという現象が発生するということが考えられます。ですから、内外価格差の問題は、日本の場合特に一九八五年以降急激な円高というのがございまして、その調整期間、いわば調整期間の間は日本の方がやや価格が高い状況があるというのは調整コスト一つは考える必要もあるということであります。  それからEC、現在、一九九二年に向けまして市場統合、単一の市場をつくるということで運動を行っているわけでありますが、ECの域内におきましてもかなり国によって価格格差があるというふうに言われております。チェッキーニ委員会というのがヨーロッパ統合経済効果について報告書を出しておりますが、その報告書を見ますと、通常一〇%から二〇%ぐらいは価格格差が国によってある、、ひどい場合には二〇〇%ぐらい差がある場合もあるというんですね。ECというのは非常に国境が接近しておりまして、自動車ですぐほかの国に買い物も行けるような国でありますけれども、そういうような場合でありましても価格差というのは存在し得るということであります。  その存在し得る理由は、一つは、先ほど申しましたように市場がどのくらい完全競争的であるのかという問題とかかわりがあるというふうに考えられます。  それから、もう一点の非貿易財部分についてはどういうふうに考えるかということであります。非貿易財の方につきましては、昔、有名な経済学者リカードという方がおいでになりまして、リカードが言った言葉なんですが、製造業の盛んな国というのは概して価格が高いということをリカードは述べているわけであります。この現象経済学の方で説明するとどういうことなのかということであります。  実は、日本の場合も高度成長時代に基調的なインフレ率消費者物価というのは高度成長時代に大体五%ぐらい年平均して上昇しておりました。どうして五%も消費者物価上昇していたかと申しますと、その当時言われた議論といいますのは、生産性格差インフレというのがある。それはどういうことかといいますと、特に日本の場合には、輸出財産業中心にしまして生産性伸びが非常に高いことがあります。ところが、輸出財産業でない非貿易財部門につきましては必ずしも生産性がそれほど高くないということがございます。  ところが、賃金の方はどういうふうに決定されるかといいますと、日本国内労働市場賃金の方は決定されるということでありまして、必ずしも生産性格差をそのまま反映して賃金が決まるということではなくて、むしろ同一水準に近いような賃金率貿易財産業とそれから非貿易財産業で決定されるということになります。そうしますと、輸出財産業生産性が非常に高いような国では賃金が高くなるということを通じまして、全般的に賃金上昇するということで非貿易財価格が高まる。特にサービス価格であります。  先ほど床屋さんの例を挙げたわけでありますが、床屋さんは、もちろん生産性を上げることは機械化することによってある程度は可能でありますけれども、なかなか生産性を上げるということが困難な部門であります。ところが、床屋さんに支払う給料というのは、そんなに低い給料を支払うわけにはいかないということでありまして、生産性格差経済に存在して、そういう場合には、輸出財産業生産性がほかの国と比べて非常に高いような国の場合には、ほかのそうでない国と比べて価格水準が高まるという傾向が生ずるということになります。  それで私も、個人的な経験でありますが、一九七〇年の初めぐらいにスウェーデンという国を訪問したことがあるんですが、そのときに思いましたことは、スウェーデンというのは一人当たりGNPがそのころ世界一位でありまして、日本の何倍かの所得水準であったわけでありますが、実際に行ってみますと、実は非常に物価が高い国だという感じがいたしまして、簡単な食事をするにも三千円、四千円という、当時からすると非常に高い感じ食事代であったという記憶がございます。  そういうことでありまして、経済が、特に貿易財部門でもって生産性が非常に高くなって、一人当たりGNPも上がるというような国におきましては、非貿易財生産性上昇がそれに追いついていかない場合には、国内物価水準はどちらかというと高くなるという傾向があらわれるということが言えるのではないかと思うわけであります。  高度成長時代には日本固定レート制度というのをとっておりまして、為替レートは一定のままという制度でございました。こういう制度のもとでは、国内生産性格差インフレというようなのが発生する。毎年五%ぐらい消費者物価が上がっても、それは許容し得るインフレ率だという考え方で受けとめていたわけであります。ところが、変動レート制という世界に参りますと、国内生産性格差インフレーションというのは実は国内インフレーションであらわれるのではありませんで、特に非貿易財産業については内外価格差という形でもってその差があらわれるというふうに考えられるわけであります。  以上、まとめてみますと、本来一物一価同一製品であれば内外価格というのは一致していなければいけないということでありますが、現実市場が必ずしも完全競争に近くないというようなことがある、あるいは非貿易財貿易財生産性上昇率に大幅な違いがあるということがありますと、日本の方が非貿易財に関する限り価格水準が高くなる。したがって、一般物価水準も高くなるという傾向が生ずるということが言えると思います。  ただ、以上のような二点について、いわゆる価格差があってもそれは何も問題ないのかといいますと、それはやはりそうではないというふうに私は考えております。  まず最初の、市場競争程度がどのくらい有効に機能しているかということは消費者にとって最も重要な関心事であります。日本の場合には、やはり輸入財について単に非貿易財価格差でもって説明できるような小幅の価格差ではなくて、それを大幅に上回るような価格差現実には存在しているということが言えると思います。それはどうしてそういうことになるかといいますと、一つ考えられますのは、外国輸出業者日本に対して逆ダンピングをやる。普通、ダンピングというのは安い価格でもって外国に売り込むということでありますが、日本の場合にはそれが逆でありまして、外国輸出業者は高い価格で売り込みをするという逆ダンピングをしているという可能性があります。  それからもう一つは、やはり日本国内流通部門生産性というのが特に貿易財産業と比べましてかなりおくれている、生産性の改善のおくれというようなことも考えられます。  ただし、労働生産性格差というのが日本アメリカでどのくらいあるのかということで、資料のおしまいの方に表をつけておきましたけれども、表の二というのに日本アメリカの卸売・小売業就業者一人当たり付加価値というのが書いてあります。これも為替レートを幾らで評価するかということで幾らか変動いたしますけれども、日本アメリカを比べてみますとそれほど大幅な差というのは観察されないということが言えます。  ただし、問題でありますのは、製造業生産性上昇率とこうした卸小売業流通部門と言われるような非貿易財部門に属する産業生産性伸びを比べると、日本の場合には製造業生産性伸びというのが、アメリカと比べてもかなり大幅であるというのが表の一に記されているとおりであります。ですから、格差が非常にありますと、やはり非貿易財については価格日本では割高になりやすいということは言えると思います。  ということで、一つ外国企業からの逆ダンピング、それからもう一つは、さらに日本流通部門について生産性をやはり改善するような措置というのが必要ではないか。それから、内外価格差で目立ちますのは、規制によってその価格が決められているような品目は、やはり日本は非常に価格が高いということもはっきりあらわれております。ですから、一層の規制緩和を図るということも同時に必要であるというふうに考えられるわけであります。  それから最後に、特に流通部門におきまして生産性の問題だけではなしに、日本の特有の取引慣行とか、あるいはアメリカでは系列の問題というのが大きな問題になっております。系列には金融の系列生産系列、それから流通販売系列というように三種類あるかというふうに考えておりますけれども、特に流通販売関連におきまして、排他的な取引慣行というのが存在するのではないかということが日米構造協議でも取り上げられているところであります。確かに日本輸入品を見ますと、これはアメリカ側商務省資料でありますが、アメリカから日本に輸出する製品の七割ぐらいは実は日本企業内貿易日本企業企業の内部でもって取引をするという形で取引が行われています。  それから国内におきましても、流通部門外国企業から見ますと、さまざまな排他的な取引慣行というふうに考えられるようなものが存在するということでありまして、基本的にはもう少し競争を有効に作用させるということが必要ではないかと考えられるわけであります。  構造協議でも取り上げられておりますが、そうした競争を有効に保つためには独占禁止法というようなものを有効に作用させるということが必要だというふうに考えます。もとより、日本アメリカ独占禁止法、法律上はかなり似ておりますが、実際の運用上はまだかなりの差があるということが言われております。アメリカでは、独占禁止法というのは域外適用をしてもよろしいという形になっておりますが、日本はそうした原則を必ずしもとっておりません。ただし、今後は企業国際化経済全般国際化ということを考えますと、なるたけ独占禁止法とかあるいはほかの制度規制というようなものは、同一の標準といいますか、同一の基準に従って行われるということが長期的に考えますと望ましいことであろうというふうに考えております。  以上、簡単でございますが、私の意見にかえさせていただきたいと思います。
  6. 遠藤要

    会長遠藤要君) どうもありがとうございました。  それでは次に、水口参考人にお願いいたします。
  7. 水口弘一

    参考人水口弘一君) 経団連経済調査委員会企画部会長を務めております、同時に野村総合研究所社長を務めております水口でございます。本日は、本調査会意見を述べる機会を与えていただきましてまことにありがとうございます。  私の意見を申し上げる前に、先日こちらの事務局からお送りいただきました資料を拝読いたしまして、私一年ぶりにもう一度勉強をし直したというのが偽らざる実情でございまして、ちょうど一年前、昨年六月に発表されました「国民生活に関する調査報告」、「内外価格差問題」という副題が出ておりますが、これを拝読いたしますと、ほとんどここに問題点あるいは調査すべき項目が総括されているように思います。さらに加えるべきものはないように思いますが、要はアクションだというふうに思いますし、また国民の期待もそこに集まっているというのが現状の私の率直な感じでございますが、そうは言いましても、せっかくの機会でございますので、昨年の三月に発表いたしました、経団連企画部会調査いたしました内外価格差問題についての報告中心に、お手元参考資料としてレジュメにまとめてございますが、それを中心にして申し上げてみたいと思います。  私の委員会は、各企業を代表する調査企画部門の部長、取締役中心に、民間のエコノミスト約四十五名で構成されました経団連として初めての委員会でございます。したがって、各企業立場を踏まえながら、具体的な問題を踏まえてあらゆる問題を調査していこうということで、その第一回目にちょうど日米構造協議華やかなときでございましたのでこの内外価格差問題を取り上げた、こういう状況でございます。  それでは、お手元資料に従いまして話を申し上げたいと思います。  まず第一は、この内外価格差問題に取り組みます基本的な経済界としての、あるいは経団連としての考え方ということでございます。これは申すまでもなく、単に日米構造協議の一環としてということではなく、消費者立場を踏まえた国内物価問題として取り上げまして、国民のゆとりと真の豊かさを実現するという観点からその是正を図る必要があるというのが基本的な考え方でございます。この考え方は、経団連記者クラブ記者発表をいたしましたときに、経団連として初めて消費者立場ということを経団連が言うのかというような新聞記者諸公の批評もございましたのですが、こういう立場を明確に出したというのは恐らく初めてではないかと思います。  第二は、内外価格差はそれぞれの国のコスト、条件の違いあるいは為替の動きで当然生じてくるわけでございます。ただいま岩田先生からもいろいろ御説明がございましたが、貿易財については貿易を通してそれが調整され、非貿易財につきましては時間はかかりますがコスト構造の変化を通じて調整される。しかし、政府規制存在等によりまして調整のメカニズムが阻害されている場合にはその是正が求められる。その方法としたら、規制緩和などによる競争政策の活用を基本とすべきである。これが第二点でございます。  第三は、同時に内外価格差の一部は、競争価格だけではなくて価格以外の各種のサービス等によっても行われていることから生じております。競争がすべて価格だけで行われる状態が理想だとは言えません。 規制緩和、撤廃によって消費者価格競争サービスを含む非価格競争を選択できる仕組みをつくることが大切であろうかと思います。  次に、内外価格差の実態と原因ということでございますが、内外価格差につきましては、経済企画庁の物価レポート日米共同価格調査等数多くの調査が行われております。それらの結果と個別業界現状とを考え合わせ、輸出品内外価格差輸入品内外価格差生計費内外価格差と三つに分けて判断いたしますと次のような格好になります。  第一は、輸出品内外価格差でございますが、輸出品については、急激な円高の時期にはドルベース価格引き上げが追いつかず、内外価格差が発生した時期もあったわけでございますが、最近では、これは昨年の初めの時点でございますが、ほぼ解消している。中に価格差が依然あると言われている品目でもその原因は明確に説明でき るものがほとんどであります。家電、自動車部品、船舶、鉄鋼、事務機器等についてこれを実証しておりますが、詳細は時間の関係がございますので省略させていただきます。  次に、輸入品内外価格差でございますが、価格差の大きい輸入品としましたら、ブランド品外国製自動車コンピューター等が指摘できております。  このような輸入品割高の原因でございますが、輸入品が割高な要因取引段階に沿って指摘いたしますと、一、外国企業価格設定円高還元が不徹底、高価格政策等。第二、輸入制限高率関税検査等の水際の要因。第三に総代理店制等流通システム。第四に再販価格系列。第五に物的流通面における規制輸送コスト。第六に高速道路通行料公共料金等公的基盤コスト高等々が挙げられるわけでありますが、これらが複雑に絡み合って内外価格差を発生させていると見られます。  また、本年五月に発表されました日米共同価格調査結果によりましても、我が国の輸出品については日本価格が高いものは二割弱にすぎなくて問題は少ない。これに対し、欧米からの輸入品については九割が日本の方が高い。日本価格が米国の価格よりも六〇%以上高い品目は三六・五%に達する。政府規制関連品目及びブランド商品日本の方が割高という特徴がございます。また、日米共同調査では取り上げておりませんが、農水省の調査、本年三月でございますが、それによりますと、穀物、牛肉、豚肉など政府規制のある品目については内外価格差が存在していると、こういう発表がございます。  次に、第三の生計費内外価格差についてでございますが、日本物価水準が国際的に割高ということは事実でございますし、各種の調査からもそれは実証済みでございます。あるいは国民の感情、生活実感としてもそのような点は事実だろうと思います。  このような背景として四点が指摘できると思います。  第一は政府による各種の規制。第二は、急激な円高の進展に対して国内価格体系が十分に適応していない、あるいは適応がおくれているという場合であります。第三は、一般に一人当たり所得水準上昇するにつれまして国内物価水準も高くなる傾向があります。日本でもそういう傾向がある。第四は、国際競争力の強い工業製品と農産品等国民生活関連品との生産性ギャップが大きいということでございます。  直近の購買力平価を工業製品卸売物価で計算いたしますと、一ドル百五十円程度でありますが、消費者物価では一ドル二百十ないし二百二十円であります。二つの分野の生産性格差内外価格差の大きな背景となっていることがわかります。各種の規制は取得権益の保護につながり、当事者にとって利益になるように見えましても、そのためマーケットメカニズムが働かなくなり競争による切磋琢磨が行われない、それが生産性の向上をおくらせ国際競争に大きく立ちおくれるという結果をもたらします。別紙一に主な商品につきまして若干のコメントを出しておりますので御参考いただきたいと思います。  それでは、このような内外価格差是正に向けての対応でございます。一応、政府、企業消費者というような形で御説明申し上げたいと思います。  第一は政府の対応でございます。国民生活の安定に必要な特定の商品サービスを確保するためには公的規制が必要ではありますが、既に本来の目的、役目を終えた規制も多い。それらが価格メカニズムの作用をゆがめるように働いております。具体的には規制の内容、影響の違いから三つに分類できると思います。  第一、輸入制限価格支持制度、行政指導等による輸入品と国産品の価格競争の阻害。第二は大店法、酒類販売免許等の参入規制による市場競争の阻害。第三に硬直的な一部公共料金の設定方式でございます。これは昨年三月、その是正に向かって提言をしたわけでございますが、その後につきましては、政策措置は、大店法等におきましてはアメリカからは非常に高い評価がございますが、全般的に見ますと政策措置は残念ながら若干おくれぎみではないかと、政治の今後の強力なリーダーシップによる規制緩和の断行を期待されるところでございます。  それから、そのほか政府の対応としたら土地政策の推進、これは宮尾先生が御専門でございますので項目だけ挙げておきたいと思います。それから第五に、内外価格差情報の提供ということが非常に重要であろうと思います。内外価格差を定期的に調査いたしましてその評価を国民に提供することは、消費者が確かな選択眼を養う上で不可欠でございます。今後ともその促進に努めていただきたいと思うわけでございます。またこれは同時に、現在情報化時代でございますし、また情報のグローバル化という時代でございます。まさにボーダーレスの時代でございますので、政府のみでなく、民間企業としてもこの辺の問題の価格差情報あるいは商品価格情報のディスクロージャーということは非常に重要であろうかと思います。  次に、内外価格差是正に向けて企業はどう対応すべきかという点でございます。  まず第一は、国際的視点からの価格政策の見直しでございます。よくアメリカ企業は短期利益志向であり日本企業は長期成長志向というビヘービア、これが価格設定にもあらわれて、アメリカコストに利益を加えて価格を設定するのに対しまして、日本は短期的には赤字であってもまずマーケットシェアを確保する、こういう価格設定をするということが言われてきておりますけれども、今後においてはこのような国内販売のバッファーとしての輸出を考えるとか、あるいは限界利益が取れればよいというような企業行動は厳に慎まなければならないと考えます。  第二は、流通部門における制度、慣行の是正でございます。現在の流通部門における希望小売価格制、返品制、リベート制、派遣店員制等の業界慣行につきましては、これは流通かメーカーか、どちらがコストを負担するかの問題でございまして、マーケットメカニズムが機能している中で生まれてきたものであります。したがって、一概にこれらが悪いとは言えません。しかし、外から見て透明性を欠くこと、競争制限的に働くことなどは問題でございますので、不合理な制度、慣行は是正するとともに、我が国の流通制度についてもわかりやすく説明し、理解を得ることが必要であるかと思います。  また、コンビニエンスストアやスーパーマーケットにおきましても、日本の流通、納品、販売のシステムは一般的にアメリカよりもきめの細かいサービスを行っております。また、消費者にはサービスよりも価格低下を優先する志向もございますので、流通業界としたら選択可能なさまざまな販売形態を実現して、自由なマーケットのもとで多様な商品サービスを提供することが大切であろうと思います。  第三に、系列取引の問題でございます。系列取引につきましては批判が多いわけでございますが、結果としまして系列間で割高な取引を続けているというようなことになれば競争力を失う。また、最近は量販店等の非系列店を通ずる取引が増加しておりまして、例えば家電業界におきましては、系列店の販売ウエートは三〇%にすぎないと言われております。また、自動車メーカーと部品メーカーの関係の特徴といたしましても、厳しい競争の中での結果でございまして、必ずしも閉鎖的な系列関係を意味するものではございません。これは日米構造協議でもアメリカ側から強く批判されたわけでございますけれども、直近は若干ニュアンスが私は変わっているところもあるように思います。  最近、私ニューヨークにおりましたときに、ちょうど六月の十二日、ニューヨークタイムズのトップ記事では、日本におけるアメリカの会社はそう言われるほど悪くはない、案外うまくいってい るというような記事が出ておりまして、その中で二、三の有力な会社の名前が挙がったりしております。そういう点ではいい点も見直されてきているというような感じはいたします。  第四に、談合体質の改善でございます。これはもう言うまでもございません。  第五に、企業ベースでの輸入促進でございます。政府の管理貿易に頼るのではなくて、並行輸入あるいは個人輸入などを促進する、そして消費者の便宜を考慮してカタログ輸入などで送金とか保険、通信等の機能をセットで提供することも考える必要があるのではないかと考えます。  第六は、企業倫理の一層の徹底でございます。企業の交際費が日本の飲食費や高級品の価格を押し上げているという批判がございますが、それが内外価格差一つ原因になっていることは否定できません。経団連としましても、現在進めております企業倫理の確立、虚礼廃止の運動をより一層推進いたしまして、企業の交際費の抑制を図るよう各業界、企業に働きかけていきたい、こういうことでございます。  次に、消費者の対応ということでございます。基本は消費者の選択肢を広げることでございます。その中から価格が機能、品質にふさわしいものであるか否かを厳しくチェックする目を消費者が持てるように企業としても努力する必要があろうかと思います。これはしたがいまして、アメリカや西独のように消費者価格をチェックするための手段、民間主導で客観的情報を提供していくという意味でこういう手段を提供する必要があると思います。  経団連といたしましても、各業界に働きかけまして消費者の利益優先の対応を強化するとともに、経済広報センターでも消費者とのコミュニケーションを強化することとしております。具体的には、各地の消費者グループを対象としたセミナーの開催や各種のメディアを通じまして、内外価格差原因価格形成の仕組みに関する客観的情報の提供等を行う予定でございます。また、個々の企業に設けられている消費者相談窓口を業界ごとに拡大強化して消費者の利用促進を図る必要がございます。  最後に、アメリカ側、米国側への期待、これはちょうど日米構造協議の最中でございましたので特に一項目述べておりますが、米国製品の輸入拡大を図るためには米国企業日本消費者の嗜好に合った製品を開発することが期待されます。先ほど来申しましたように、日本消費者は物の価格だけで買うのではなく、品質を重視し、またサービス、デザイン、包装、容器などに対しても厳しい要求を持っております。米国におきましても最近カスタマーサービスの低下が指摘されておりますが、日本市場で販売する場合にはその是正が強く望まれるところでございます。  最後に一つ、お手元資料の一番最後に載っております内外価格差是正への期待、試算というものについて若干申し上げてみたいと思います。  内外価格差問題に関連いたしまして、日本制度を変えた場合にどの程度効果があるかということにつきましては非常に関心のあるところでございますが、包括的な分析は極めて難しいものでございます。  そこで、作業にいろいろな限界はございますが、定量的な把握をねらいといたしまして、全くの仮定計算でございますが、一定の前提を置いて試算したものがこれでございます。これは経団連ではなくて、もともとは産業連関表を使いまして野村総合研究所で行ったものでございます。種々の波紋を呼んだ試算でございますが、概略申し上げますと、日本の場合小売マージンと卸のマージン比率というものがございますが、このマージン比率を米国並みにしたということ、これは日本の卸対小売比率一・一三倍を〇・二ポイント低下するということを仮定した場合の影響を見ると、消費者物価は三・四四%低下するという結果になるということが第一でございます。第二は、農産物関連規制を撤廃して国産品も輸入品並みに下落するとした場合には消費者物価は二・一五%下落する、米を除いて計算すると二・〇九%になる、こういうような試算でございます。  これらは単に例示のために選んだものでございます。したがいまして、具体的な政策と結びつくものでは必ずしもございませんが、しかしこれらの効果があるということは事実でございますので、これからの政策展開において私は大きな希望は持てるのではないかと思います。同時にまた、民間サイドにおきましても、第一点にありますように、例えば流通業界、自分の努力によって下げていくということ、同時にそれはまたここに書いてございますように労働力不足という問題で、我々の計算では二百万人くらいの労働創出ができるというような試算もございますので、構造改革の効果ということにつきましては今後大きな期待ができるということを申し上げて、ちょっと時間を超過いたしましたけれども私の報告を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  8. 遠藤要

    会長遠藤要君) どうもありがとうございました。  次に、宮尾参考人には特に土地、住宅問題について御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは宮尾参考人にお願いいたします。
  9. 宮尾尊弘

    参考人宮尾尊弘君) 御紹介いただきました宮尾でございます。  私はアメリカやカナダで長く過ごしまして、十五年ほど北米で特に都市問題、土地問題などを研究したり教えたりいたしまして、現在は筑波大学の社会工学系というところにおりまして、特に都市計画、都市問題、土地問題ということについて講義をしております。  アメリカからあるいは北米から戻りまして、一番私が日本に戻って印象的というか気がついたことは、まず土地や住宅ということに関する研究とか教育とか理解が非常に薄いということです。私は筑波大学で都市専攻の学生を教えて、大変意識が高い学生が入ってきているんですが、その学生でさえも基本的に土地の値段というものがどういうふうに決まるのかという理解が全く教育されておらないわけです。ですから、すぐ簡単な需要供給分析になってみたり、それから全く需要供給が働かない投機バブルの世界という議論が浸透したり、大変極端に議論がぶれるわけです。  そこに、非常にはっきり申し上げてマスコミ的な意見で政策が左右されるような状況が生まれてきているのではないかといった危惧をしておりまして、私がまず初めに日本に戻ってやったことは教科書を書くことで、「現代都市経済学」という本を書きまして、これが幸いいろいろなところで現在使われておりまして、一昨年は韓国でも訳されまして韓国でも教科書として使われているということで、非常にこの分野は研究者が少ないということで、ぜひ何らかの形で各大学でこういう専門を、国際経済ですと岩田先生とか、金融、財政、いろいろ分野が確立しているところはいろいろな先生がいらっしゃいますけれども、都市問題、土地政策、そういうものはこれまでは工学系の都市工学とか少しハードな方々かなりやってこられた、あるいは行政の方が多かったわけですが、もう少し経済的な視点というのが必要ではないかと私常々考えておりますので、まず初めにそのことを申し上げて、それでは早速私の意見に入りたいと思います。  まず現状問題点は、確かに土地、住宅というのは非常に日本の場合高いということで、諸外国に比べてそれがいわば内外価格差というふうに考えられる面もあるんですが、私の見るところ、それは問題点の指摘が若干拡散をいたしまして、一種の社会現象化している。したがって、国民の一方的な不満が拡大しているところがなかなか政策的な糸口が見出せない理由ではないかというふうに考えます。ですから、そろそろ問題を少し限定いたしまして、一体何が問題なのかということを絞り込んでいく時期ではないか。そして、それに対して現実的な政治、経済的な対応を日本としてやっていくということが結局は広い意味での内外価格差にも結びつきますし、その際重要なこと は、対応しながら具体的な未来像を、これをやったら一体どうなるのか、一体どういう状態が土地や住宅問題の解決なのかという、そこを提示していくことが政治的、経済的課題ではないか。それがありませんと何をやっても何も解決しないということになります。ですから、どういう状態が土地や住宅問題の解決なのか、それを同時に提示するということは大変大切な一環ではないかというふうに考えております。  まず、私のプレゼンテーションは二つの部分に分かれておりまして、初めは東京を初めとして大都市問題です。  私の議論の組み立ては、後で地方の問題を話しますが、まずはどういう指標を使って、東京の土地問題が深刻であるかという指標をやっぱりこの際少し考えてみなければいけない。これまでのような例えば年収の五倍という、だれも口を開くと年収の五倍というようなことを果たして言い続けることが未来像につながるし、解決につながるのかどうかということをやはりこの際諸外国の常識と照らして考え直してみる必要がある。それに対して、あと主体、地域、職場、交通というテーマを挙げていますが、これは実は後の方でだれが、どこで、何を、どうしているというのに対応しています。主体はだれが、それから地域はどこで、それから職場は何を、交通はどうしているかというそれぞれ具体的なイメージを出して、だれが、どこで、何を、どうしている状態が解決した状態なのかということを頭に置かないと常に問題だけが拡大するということになります。  まず、指標について申し上げますと、年収の五倍ということを言っておるのは恐らく世界日本だけだと思います。私はアメリカヨーロッパ、アジアにも行きましたが、大体そこで使われていますのはアフォーダビリティー、買いやすさという指標です。アメリカではもう日常アフォーダビリティーインデックスという、買いやすさの指標というのがありまして、これはもう何のこともない、買えるか買えないかということです。ですから、例えば地価が上がりますと買える人が少なくなる、金利が上がりますとお金が借りられなくなるし、支払いが非常にふえますから買える人が少なくなるというような指標です。それは当然非常に常識的な指標です。  ところが、日本はなぜかそれが年収の五倍というだけの指標になっています。ここで欠けているのは、じゃ年収の五倍を達成するために金利をどんどん上げて地価を下げればいいかというと、それは金利が上がれば年収の五倍になってもサラリーマンはお金を借りて返す金利が多くなれば買えないわけですから、それはどこかに欠陥があるわけです。ですからそこは指標をまず考えまして、何とか日本で買いやすさの指標というのは何かということを出していかないと理想に通じない。  それについて既にデータがございまして、次のページの図の二を見ていただきますと、一体サラリーマンがどれだけの資金を調達できるんだろうかという、資金調達可能額に対してマンションや住宅の価格がどれだけの比率になっているかというようなことを考えますと、今言った頭金がどれだけたまっているか、お金をどれだけ借りてきて金利をどれだけ返すか、そういう実際のレベルでの指標ができてまいります。  ですから私の提案は、まずは指標を考えれば現実の地価高騰、住宅価格の高騰というのは資金調達可能額に照らしてみますと、実は歴史的に見てそんなに現状は悪化しているわけではなくて、むしろ最近の高金利の方がサラリーマンに住宅を買わせなくさせている面も見えてきますので、ぜひこういう指標の面を考え直すという点が第一点です。  それから、それでは指標を考え直したからといってやっぱり買えない人は買えないわけです。平均的にはそんなに悪化していないということを聞くことは必ずしも慰めにならないわけで、買えない人、お年寄り、所得の低い方、いろんな方は平均の議論では満足しないわけです。ですからそのときにどうするかというのが政策であって、そのときに主体、だれがが問題であります。  そのときに、当然のことながらサラリーマン一般を議論しては全く始まりません。サラリーマンには物すごいお金持ちもいますし、土地持ちも住宅持ちもいっぱいおります。サラリーマン対大企業とか、サラリーマン対不動産屋というような対比がしばしば行われますが、これは大変誤解を招きますし、将来像が見えない形で問題が提起されている例でございます。ですから、この際サラリーマン対何々という議論をやめまして、一体サラリーマンのうちだれが一番困っているか、それは当然のことながら第一次取得者です。第一次取得者にできるだけ焦点を当てた政策を行うということで問題を限定化することが必要です。  第一次取得者というのは、これまで住宅を持っていなくてどうしても持つ必要がある、結婚をして家を買う、あるいは子供が大きくなってくる、住宅が欲しい、そういう場合に、もちろん借地や借家をこれから増していくという政策も必要ですが、当面そういうものは時間がかかります。ですから、そういう人たちにいかに買いやすくさせるかということです。これについてはようやく所得や資産面で補助をするという考え方が遅まきながら出てきております。例えば公庫の「はじめてマイホーム」制度というスズメの涙のような割り増しが多少入ってまいりました。そちらの方向が基本的に正しい方向です。そういう層にターゲットを絞って買いやすくしてあげるように所得や資産面で補助をする。例えば、初めてマイホームを買った人には金利支払いについては所得税の控除をするとか、そういうターゲットを絞った所得資産面でのサポートが最も正しい。これは経済学者の間では世界的に常識になっております政策です。  それから、今度はどこでどういう問題です。世界的に見ても東京の土地は確かに高い。それから日本全国でも東京が高いということですが、これは東京の都心や都内に限るから高いのであって、拡大東京圏で見ますと、二ページ目の一番左下、図の五に「距離別に見た住宅取得の年収倍率」というのがございまして、仮に年収にこだわっても大体五、六十キロ出ますと年収の五倍でいまだに買えるわけです。  筑波学園都市にいますと、筑波は高くなりましたが、最寄りの駅の土浦というのは大変まだ安く、第一次取得者でも買えるような住宅がどんどん建っておりまして、あの辺は大変ポテンシャルが高いところで、私はいつも住宅問題で文句を言っている人はぜひ土浦へ来いというふうに言っているんで、土浦の不動産屋の宣伝みたいになって恐縮なんですが、そういうところはちょっと出ればいっぱいあるんです。それは、しかも国際的に常識的な広がり方なんです。私はボストンにおりましたし、カリフォルニアにもおりましたし、トロントにもおりましたが、大体都心部に住んでいる人というのはごくわずかで、非常に世界的に住居というのは郊外化になっています。何も郊外に住むことは日本では異常でも何でもないんです。ですから、ぜひそこら辺を大いにいい供給をふやす。例えば、市街化区域内の農地を宅地化するという問題も行き過ぎますと問題ですが、まだまだ低・未利用地、農地で農家の方も利用したいという方はいっぱいいらっしゃいますから、そういうことで大いに供給をしていくということで、住宅問題は基本的に私はそんなに問題はないというふうに認識をしております。  ただし、そう言いますと、それじゃ通勤地獄が問題ではないか、片道二時間も三時間も通ってどうしてくれると言います。確かにそれが問題です。しかし、それは住宅の問題ではありません。それはむしろ職場の問題です。これも諸外国で見ますと、職場が東京の中心に集まっているような構造を持っている都市は非常にわずかです。  私もMITの学生だったときに、郊外のちょうど五十キロ圏にある高級住宅地のレイセオンという会社のMIT出の技術者のうちがホストファミリーということになっておりまして、サンクスギビングとかクリスマスというときに招待をしてくれましてよく参ったんですが、その方などは職場 が環状道路沿いにレイセオンという会社がありまして、その環状道路を十分か十五分行きますと自分のうちがあるわけです。  ですから、短時間で自分の職場に行って非常に裕福な生活をしておるわけです。レイセオンの本社が環状道路沿いにあってなぜ都心にないかということを、我々は十年か二十年おくれてやはり日本は、東京は考えていく必要がある。もっとさかのぼりますと、ニューヨークからなぜ本社がどんどん出ていったかということを考えますと、当初は環状高速道路沿いのコネチカットとかニュージャージーの便利なところにまずは本社が移りまして、今そこからさらにテキサスとかいろんなところに移っているという段階です。そういう職場の移動というのが重要であって、それを日本は何とか近いところに住宅をという、近いというのは職場を固定いたしまして、大体国会議事堂から出発して、ここから近いところということの発想がどうしても抜け切らないということになっているようです。  ですから、私の発想は、職場に近い住宅という発想はやめまして、住宅に近い職場をもたらすにははどうしたらいいかということが恐らく土地住宅問題を国際的に解決する重要なポイントではないか。これについては何とか職場の分散ということを、また問題を起こすような規制ではなくて、非常にいいインセンチブを与えながら郊外に張りつかせるにはどうしたらいいか。そのかなめになりますのは恐らく交通網だと思います。  三ページ目の東京圏の幹線道路図、これは何度見ても私は憤りを覚えるんですが、黒い線で中心に向かっているところは現在ある道路です。ところが、白くぽつぽつとなっておりますのはいまだ計画中、調整中、工事中とかというところが三つ、四つ、環状道路は一つもできておりません。これだけ見てもなぜ職場が環状道路沿いに張りつかないかわかります。  なぜかというと環状道路がないからです。この環状道路沿いへの職場の移転というのは、アメリカでは二十年から三十年前、ヨーロッパでも今どんどん起こっておりまして、ここで新しい産業の勃興とか活力が保たれておって、それはアメリカではちょっと行き過ぎまして中心都市部が没落したということがありますが、日本は全く環状道路がないというところが一番大きな問題ですので、これを解決する。そうしますと、だれが、どこで、何を、どうしているかというビジョンが浮かんでまいります。それが恐らく日本の土地住宅問題についての一番実態に即した解決策だろう、それをサポートする税制、金融等の政策というふうに考えるのが順序であって、それをやらずに税での締めつけ、金融での締めつけということをやって土地の価格だけに焦点を当てるということは、実は逆効果になるおそれが大変高いと私自身は考えております。  時間が余りありませんので地方の方の問題に移ります。  この地方分散の問題も実は指標の問題が大切です。この指標の問題を間違えますといつまでたっても地方は疲弊し、東京ばかり集中するというフラストばかりが一方的に拡大いたしまして何の解決の道も見出せません。  実は、指標をきちんと見ますと、一九八六年から七年、大体八七年というのが一つの契機になって、今とうとうと地方分散の動きが出てきております。その例が三ページ目の地図がありました下の方に、これは地域経済レポートの九一年版ですが、ごらんのように戦後高度成長期、工場等の分散で大都市圏への人口の転入は非常におさまりまして、昭和五十一年、五十二年、五十三年、五十四年、つまり七〇年代後半、地方の時代と呼ばれているときには大都市圏への人口の転入は余りなかったわけです。それが八〇年代になりまして、確かに大都市圏への再集中が起こりました。これが一極集中と言われている流れです。  しかし、それは八七年に大体頭を打ちました。今は完全にそれが再び新しい産業構造の変化、情報化、国際化の流れは今地方にとうとうと流れております。それを我々は大体三、四年遅いデータで見ておりますからいまだに東京への集中が激しい。それから五年ごとのデータとか十年ごとのデータで見ると、もう今それでは東京のオフィスの立地規制をしないともうこれ以上はパンクするとか、そういう危機感がありますと非常に対症療法的な、規制的な政策だけが入ってきまして、現在の動きをむしろ固定化する動きが出てまいります。そういうことで、指標を考えますと例えばマンション建設でも地方が大変伸びている等のことが出てまいります。  あとは御質問のときにいろいろお受けしたいんですが、簡単に申し上げますと主体の問題。今地方に行きたいという人が非常にふえております。これは四十代から三十代の男の人、特に地方出身の男性に地方志向が非常な勢いで拡大しております。ですから、こういう人たちにぜひ移転の補助をしたり移行を助ければみんなのプラスになる移行ができるわけで、無理やり行きたくもない人を引っ張ることは何もないわけで、それはぜひ促進をすべきだろうというふうに考えます。  しかし、おもしろいことに最近は女性はますます都会志向になっておりまして、男女差をどういうふうに地方分散で解決するかという方がかなり難問でございます。ですから、かなりきめの細かい、だれが一体地方に行きたがっているのか、そのビジョンとして年齢別、男女別の対策をどうするかという主体に即した政策をやる必要がある。その主体抜きの、地方にいっぱいお金をばらまいたり東京に来るのを規制したり、そういう議論はもうビジョンにはかかわらない誤った政策に導く可能性があるというふうに私自身は考えております。そして、道路についても地方でこれから必要なのは、高速道路と空港及び通信基盤の整備というふうに広域的な交流を促進して地方の発展を図るというのが筋であろう。  結論としましては、そういう具体策を地道にやっていくというそれと同時に、これは一体何に向けての政策なのか、これをやったらどうなるのか、どういう状態が解決の状態なのかということを常に提示しながら政策をやっていきませんと、必ずそれに対して不必要な反論が出てまいります。ですから、解決したときの未来像を含めて、だれが、どこで、何を、どうしている状態が一体夢の実現なのかということをそろそろ政治、経済的レベルで打ち出していくときが来ているのではないかというふうに私は考えまして、発表にかえさせていただきますが、もう少し具体的なデータに即したお話は、御質問の答えのときにやらせていただきたいと思います。
  10. 遠藤要

    会長遠藤要君) ありがとうございました。  それでは、これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 鎌田要人

    ○鎌田要人君 三人の先生方から大変示唆に富む御教示をいただきまして、心から厚く御礼を申し上げます。限られた時間でございますので、私は岩田先生水口先生には共通して二点についてお伺い申し上げたいと思います。  一つ内外価格差問題で、岩田先生のレジュメにもございますが、輸出入における企業価格差別化行動についてでございます。  端的に申しまして、私もかつて輸入ブランド物につきまして、内外価格差の問題についてこの調査会でも質問したことがあるのでございますが、その過程で明らかになりましたことは、一つは輸入の場合におきまして、例えばこれは余り生活必需品でないわけでございますけれども、いわゆるブランド物、ヴィトンでございますとかあるいは外国のレーンコート、こういったもの等で見ますというと、まず海外のメーカーが国内の輸入総代理店に対しまして価格の指示をする、これもわかったことでございますが、極端な場合には、香港の輸入総代理店と日本の総代理店との間でメーカーから卸す価格自身がもう既にかなり格差がついてきて、それが国内におきまして、今度は小売店の方である程度値引きをしようとすると輸入総代理店の方から非常な厳しい締めつけがある、これにつきましては独禁法違反ではないかというこ とで公取の方でも監視を強化する、こういうことをおっしゃっておられるわけでありますが、罰則のない監視でございまして、いわばやり得、こういうことであるようでございます。  そういった面につきましてどのような有効な手があるのか。今の香港あたりの例でありますれば、恐らく日本アメリカであればこれでは済まない、キャンキャン言うんだろうと思うのでありますが、なかなか日本政府もおとなしくて物が言えないところもあるのかと思いますが、そういった基本的な問題があるように思います。あるいはまた、日本のメーカーが、輸出の場合の価格差別化でございますが、私ども国民に対して売るのは高く、アメリカなり欧米で売るのは安くと、これも甚だ我々国民からすれば国益に反することをやられておるような気がするわけでありますが、この辺のところにつきまして先生方がどういうお考えを持ち、これに対してどのような有効打となるべき対策が考えられるか、御教示いただければありがたいと思います。  第二点は、流通過程の合理化の問題でございます。  我が国の卸小売の流通過程は非常に関所が多い。あるいは生鮮食料品の場合でございますれば市場機構というものも、卸売市場、こういったものも旧態依然たるものがあるわけでございまして、総じて流通過程における手数料とマージンを含めましての価格の引き下げを阻害する要因があるわけでございますが、反面、特に生鮮食料品等でございますれば我が国に小売店が多い。これは、やはり一つは生業的な面も非常にあるわけでありまして、これを一遍に簡素化を図ってしまうということになりますというと、一面社会政策的な生業対策というものも考えてまいらなければならない。その点に関連いたしまして、これは例の大店法の出店規制がこれから行われるわけでありますが、この大店法の出店規制というのが我が国の錯雑した流通過程の簡素合理化、能率化ということにどれぐらいプラスに働くというふうにお考えになっておられますか、お教えいただきたいのでございます。  次に、宮尾先生に対しましては、特に土地対策、狂乱地価の問題で税が甘過ぎる。こういうことで、税制につきまして私どもも国会の場におきまして地価税の創設でございますとか、あるいは固定資産税、特別土地保有税の保有課税の強化ということを講じたわけでございますが、これが果たして今日の地価それ自身が、かつてのバブルが消えて鎮静化しておると見るかどうかという状況判断の大きな問題でございます。仮に地価がいささかでも鎮静したとするならば、地価税、これは来年の四月からでまだこれからでございますが、この地価税が創設された、あるいは固定資産税等の保有課税の強化は既にこの四月から行われておるわけでございますが、そういった税制の効果というのが果たして寄与しているというふうにお考えになっておられますかどうか。私どもは、やはり金利の引き上げあるいは融資の規制が一番効果的だったと思うわけでございますが、宮尾先生の御意見をお聞かせいただきたい。  それから第二点は、特に東京一極集中排除あるいは地方分散の促進ということ、我々がこれに手をつけることを怠ってまいりましたことが狂乱地価の大きな原因であると私は判断をいたしておる次第でございます。有効な地域分散というものを図ってまいります上で、私どもは観念的には、地方には緑も豊かであり生活環境もすばらしいし、あるいは子供の教育のためにもいい、あるいは早い話が公共事業一つやりましても、仮に一億の金を使っても、東京では九五%ないし八割が土地代に消えてしまう。地方でありますればまだ四割、あるいは所によっては三割というものが土地代でありまして、事業効果というものもこれは大変な国民の資源の有効利用という面からはプラスでございますが、なぜ地方分散が進まないのかということにつきましての、先生の御示唆を一つだけでもいただければありがたいということでございます。  以上でございます。
  12. 岩田一政

    参考人岩田一政君) それでは二つ御質問をいただきましたので、それぞれお答えしたいと思います。  まず第一点の輸入品価格が高いということで、香港にある総代理店それから日本にある総代理店の間で価格の指示、人為的な価格の操作といいますか、そういうことを行っているような問題に対してどう対応すべきかという御質問だったというふうに考えます。この点につきましては、確かに日本独占禁止法というのは先ほども申し上げましたが、域外適用ができないというんですか、できるという幻想を必ずしもこれまで明らかにはしてきませんでした。  私は、独占禁止法の適用について二つこれからやるべきだというふうに考えております。一つは、外国企業であっても日本に存在する企業については内国民待遇でもって独占禁止法をきちんと適用するという原則をはっきりさせるというのが一点目であります。それから第二点目は、仮に日本企業が存在してなかったとしても外国企業日本に輸出するという場合に、日本国内市場競争を妨げるような行為を行うというような場合には、日本独占禁止法がやはり適用できるような体制というのを今後は考えるべきではないかというふうに考えております。簡単に言いますと、域外適用というようなものをやはり原則的に認めていく方向で考えざるを得ないのではないかというふうに考えております。  ただその場合に、お互いに独占禁止法域外適用しますと、法制度がそれぞれ違いますと、片方の法律では違反ではないけれども片方の国では違反であるという、こういう食い違いが生ずることになります。そういう場合には、何らか国際的な場でもってそれを調整するということがどうしても必要になるというふうに思います。現在OECDの場で、多少情報の交換程度のことは独占禁止法に関して行っております。ただ、今後は恐らくお互いに域外適用を認め合うということになりますと、そういう国際機関の場でもって、法制度の適用についてお互いに調整をするということも恐らく必要になってくるのではないかというふうに考えております。  それから、二番目の点でありますが、大店法等の出店規制緩和ということで、どのくらい流通部門が効率化するかという御質問であったかというふうに思います。これは消費財ではないんですが、実は一昨年の商務省とそれから通産省価格調査、合同の価格調査というのを見ますと、消費財だけでなくて資本財についても実はかなり価格格差があると。資本財というのはどういうものかといいますと主に医療機械でありまして、歯医者さんの先端の機械とか医療のものでありますが、そういうものを合同で調査したところやはり日本の方が高い。  アメリカ側のどうして高いのかという理由が二つ挙げてありまして、一つ日本の場合には、やはり企業価格支配力を持っている場合が多いと。アメリカの方がもう少し各企業競争が激しいという点が一点ございます。それからやはり日本の場合に、資本財についてすらも多段階であるということがもう一つの理由として挙げてありまして、つまり外国から輸入する場合でも中間に貿易業者が入って、それからディーラーが入ってまたサブディーラーが入ってというような、やはり多段階で取引が行われるということも、日本における資本財の価格を高めるような作用をしているという判断をいたしております。  そういう観点からしますとやはり卸と小売の段階、日本の場合には、まだまだもちろんその各段階においてサービスをそれぞれ提供しているというふうに考えることができると思いますが、こういう大店法等が入りますと、やはりそこの卸と小売の多段階の部分はもう少し合理化されていくのではないか、その結果価格ももう少し今より下がるということが期待できるのではないかというふうに考えております。  以上であります。
  13. 水口弘一

    参考人水口弘一君) それでは、まず第一に輸入品について、私は結論としまして輸入品は恐らくブランド物が非常に高い。規制品目というものはございますけれども、これは規制緩和という方向がどんどん進んでおりますのでいずれなくなると。ブランド品、その中でも特に価格決定権をだれが持っているかということが非常に重要な問題でございますが、先生御指摘のように、香港と日本を比べましても総代理店制の強いところははるかに香港の方が高いというのが事実でございます。  この緩和のためには御指摘のように、独禁法、公取という問題もございますが、もう一つは私ども民間の立場からしますと、資料の別紙一にもございますように、例えばこの中の品目で「レーン・コート」と挙げております。これは日米間で一・五倍となっておりますが、この辺は、これはステータスシンボルとしての価格政策ということを価格差発生の主因としております。中身は具体的に言えばバーバリーであるとか、アクアスキュータムとかというブランド品でございますが、政策へのインプリケーションということで消費者情報の充実ということ、繰り返しになりますけれども、性能、品質その他につきまして非常に重要な点であろう、これも大きな要素でなかろうかと思います。  それから、第二の輸出品でございますが、これは先ほど、私具体的な例は全部省略いたしましたけれども、事貿易財に関して言えば全部ほぼこれは問題はなくなっている。日米間で調べた中でも日本の方が高い、アメリカで安売りしているんじゃないかという問題も、これもそれぞれの事情がございまして単なる価格以外にサービスとかほかのもの、あるいは性能の内容とかいろいろございますので、まず現在ではほぼなくなっているのではないか、このように考えております。  それからもう一つ、輸出についてはかっては出血輸出ということが盛んに行われたわけでございますけれども、先ほどちょっと申しましたように、結局相手国との関係からいっても、世界的なマーケットでの調和ということからいきましても非常にまずいことでございますので、まず現在はなくなっているというふうに考えられます。事実、その後の経団連といたしましてもメンバーが、首脳陣がかわりまして平岩新会長のもとで、私ども委員会で初めて「一九九〇年代の日本経済の展望と課題」というレポートをことし春出しまして、これが今後の経団連、ということは民間企業の行動指針ということになっているわけでございます。  若干御説明を申し上げますと、今後の一九九〇年代をめぐる企業行動としてのキーワードといたしまして、人間という問題と市場、マーケットという問題と地球、グローバルという問題三つを掲げまして、しかもこれらを副題といたしまして「調和ある市場経済の確立を目指して」ということで、地域、住民、消費者、それから国際的な環境、経済摩擦、これらとの調和を図っていく、ある程度それによってGNPあるいは成長率が下がってもやむを得ないという、かなり大胆な結論を出して合意を得ているわけでございますけれども、輸出なんかにつきましても、企業の方向としたら全部そういう方向に行きつつあるということは自信を持って言えると思います。  それから、流通の問題でございますけれども、流通機構の簡素化という問題は現に進みつつあるというふうに思います。多種多様な流通店舗が出ているということと、それからもう一つは、例えばスーパーあるいは量販店の内部におきましても、今よく言われておりますのはポイント・オブ・セールスという、POSシステムというかなり合理的なシステムが行われておって、これによって在庫の削減であるとか、あるいは品質の管理その他が非常にうまくいっているというような問題もございまして、これは余談でございますけれども、逆にこのシステムのために、例えば日本におけるセブン―イレブンという会社がございます。これは親会社がもともとアメリカのサウスランドという会社でございますが、その技術提携のもとで日本で発達した。ところが今や逆になりまして、ここの方が合理化が非常に進みまして、サウスランド自身がセブン―イレブンの傘下に入る、それによってこの技術援助、資金援助によって再建を図る、こういうような状況になっているのが事実でございます。  それから大店法の問題は、先ほどアメリカサイドほかなりの評価をしていると申し上げたわけでございますけれども、とはいってもそれぞれの業界から見ますと具体的な執行手続につきましては施行令等にゆだねられておりますので、今後のウオッチということは非常に重要であろうと思われます。例えば、調整過程の公平性であるとか透明性を確保する、あるいは大店審による出店側の意見の聴取等々いろいろな問題がございますので、今後においても十分なお一層の進展が期待されると思います。また期待をしております。それによって、流通過程というのは消費者物価を含めまして相当改善の跡が見られるのではないか、このように考えております。  以上でございます。
  14. 宮尾尊弘

    参考人宮尾尊弘君) 大変大きな御質問をいただきましたので、全部答えられるかどうかわかりませんが、手短に答えたいと思います。  まず第一点、地価の高騰に対する効果という御質問で税と金融の点を御質問になりました。端的にお答えしますと、恐らく金融が現在効いているというのがお答えだと思います。  ただし、税と金融について一言だけつけ加えさせていただきますと、税で地価を抑制するという考え方は国際的には全くございません。税というのは、特に土地の保有税というのは地方税です。世界で国税で土地保有税をやっている国はほとんどございません。これは、日本も戦前は御存じのように地租体制で国でしたが、戦後の民主的な改革で地方税として位置づけられておりまして、第三次行革審でも地方税をもっと強化しなさい、それに、さらに地方債の発行などを自由化しなさいという方向になっております。それに対して、国税で今回土地保有税を入れたということが果たして先ほど言った地方分散の問題なんかにもプラスになるのかどうかという、もう少し根本的な問題を議論すべきであって、単にそれによって地価が下がるかどうかという議論は大変皮相的な意見であったというふうに私は言わざるを得ません。  ただし、固定資産税については確かに実効税率が低い、これは時価と評価の差が余りに広過ぎるという点は世界的に日本問題点として指摘されております。アメリカとの構造協議でも土地利用問題で一番初めに指摘された問題です。これはやはり是正の方向が必要で、多少今回の税制の改革でそっちを直していこうというふうに少なくとも自治省あるいは自治体は言っておりますので、そちらの方は評価をしたいというふうに考えます。  それから税についてもう一言は、譲渡所得課税の強化あるいは買いかえ特例をなるべく絞っていこうという考え方も、少なくとも日本のように、望ましい供給をこれからもっとふやしていかなければいけないような社会においてはマイナスに働くであろうということも言えるわけですから、余り地価だけに焦点を当てますと、先ほど私が申し上げました、それじゃどういう状態が解決している状態なのかという具体的なところに照らしますと、むしろなかなか解決が見えなくなるような政策が出ておりますので、そろそろ正しい方向に徐々に向けていくことが大切であろう。しかし、基本的に税というのは、地方が土地保有税の場合には税率も含めて決めていって自主的に運用するという方向に長期的にはいくべきであって、余り新しい税を入れて税率を上乗せして地価を云々というような発想は望ましくない、しかもそれほど効果はないと私は思っております。  それから、もう一つ言わせていただきますと、税によって地価が下がる部分については、それは実は税の支払いがふえる分だけ地価が下がるというだけの話で、新しく買う人にとっては余りメリ ットがないわけです。新しく買う人は、土地は下がりますけれども、買った上に税金が上がった分だけ払いますから、結局税込みの値段は余り変わっておらないわけです。ですから、それが名目的に地価だけに焦点を当てて解決したがごとく見せかける一番の問題点でございますので、先ほど私が申し上げたような、もうちょっとやはり実態に即した政策をどういう税制をやったらサポートできるかという視点で位置づけるべきではないかと思います。  それから、金融の面で大変効いている。私は、金融の面については先ほど申し上げましたように、これも果たしてサラリーマン、個人、それから特に中小企業の方にどれだけ負担が来ているかということを、この問題こそ格差の問題、負担の公平性の問題で考えるべきであって、単に地価だけに焦点を当てて金融を締めればいいという考え方もそろそろ調整が必要であろうというふうに考えております。しかし、括弧つきですが効果が上がっていることだけは確かで、金融がどうなるかということによって今後の地価の動向も確かに左右されていきます。しかし、問題は地価が高いか低いかということよりは、むしろその土地がどのように一般の国民のために役立って利用されているかどうかということにそろそろ焦点を当てるべきだと思います。  それから、地方分散のことですが、確かにおっしゃったように、今地方はまだ東京に比べれば地価は安いですし自然も非常に豊富です。私の両親の田舎が長野ですから、私も長野によく行きまして、千曲川の源流などで鳥の声などを聞くと本当にほっとしまして生き返るわけです。最近は私の友人の関係で熊本の天草という、日本の一番外れのような島に行きますと非常に自然があって、最近は雲仙の爆発などで少し島の人たちも心配しておりますが、ちょっと余談になりますが非常にいいところが多い、確かです。  それでは、なぜ地方分散が進まないのかという御質問です。これは二つの点があります。一つはもう言い古されておりますが、これは職の問題です。指標で見ますと確かに今地方で職がふえておりますが、これは主に地方の中枢都市、中核都市、北海道で言ったら札幌とか九州で言ったら福岡、あるいは県庁所在地というところが今拡大をしておりまして大変元気です。ですから、数量的にはそういうところが拡大が早いですから、今地方分散の流れが出てきているのはそういうところが引っ張っております。ただし、そういうところでふえている職が果たして東京の中心で動いているような、いわゆる中枢管理というか、それから非常に情報の源を握っている、あるいはマスコミ的な発信人になっているというような仕事かというと、これはもう格段の差がむしろ最近ついておるということですから、やっぱり中枢管理機能の分散、それから情報、特にマスコミ的な情報の分散をどういうふうに図っていったらいいか、新聞、テレビ、雑誌等の情報発信をどういうふうに地方へやっていくかという、その辺のところからまず切るということは当然のことです。  それからもう一つは、しかしそうは言ってもだんだんと日本国民は余暇を楽しむようになりますし、自然を楽しむようになりますし、自分の実現に向けて、外で仕事があろうがテレビが何を言っていようが、新聞が何を言っていようが、自分の生き方を貫くという人はふえてきておりますから、こういう人たちが地方に行くかどうかということは大変重要な課題です。  それにつきまして、私の資料の一番最後のところを見ていただきますと、図の六という四ページの一番最後の図ですが、ここで非常に興味深い最近の総務庁の調査結果がございます。我々はともすると、地方というのは非常にのんびりして、時間があって余暇がとれるんじゃないか、東京というのは非常に忙しくてどうしてこんなに忙しい、余暇もとれないようなところにいるんだろうと思うんですが、実は図の六を見ますと、これは積極的余暇活動時間という非常におもしろい定義をしております。  つまり、余暇というのは、ただごろんと寝転んで自然を聞いていてもそう一日過ごせるわけではなくて、やはり何か自分を実現したいということですから、どうやって余暇を利用しているかということで見まして、積極的余暇活動時間を図の六の注二にございますが、学習活動、趣味・娯楽、スポーツ、奉仕的活動というようなことをどのくらいの時間やっているかということで京浜対全国、つまり東京対地方ということをとっております。そうすると、丸のついている、男性では二十五歳から五十九歳、女性では有業の十五歳から二十四歳のところは、実は東京は余りよくなくて地方の方がいいと思っておりますが、それ以外は実は驚くことに、京浜大都市圏の方が有効な積極的余暇時間は余分にとれるというふうに答えておるわけです。  特に女性については、有業の十五歳から二十四歳という非常に幅の狭い層以外は全部京浜大都市の方がいい、余暇も十分とれる、いろんな活動もできるというふうに言っておるわけで、ここら辺を切り込まないとこれからますます余暇時代になってきまして、自己実現社会において幾ら職に地方でありつけても行かないということになりますので、これはそういう両面で我々がつい考えがちな、職場を、本社を移せばいいんだ、職を地方に移せばいいんだという話だけではなくて、職以外にいかに余暇を活用し自己実現するかというところでもなかなか地方分散は難しい。ここら辺をやはり地道に政策的に、具体的に考えていかざるを得ないんじゃないかというふうに考えております。
  15. 石渡清元

    ○石渡清元君 三先生のお話をお伺いさせていただきまして、結論的には今まで当調査会が取り組んできましたものと比較的似ているわけでございます。そういう意味で、ぜひそれではそれを解決するためにどうしたらいいか、政策的なあるいは施策的な観点からお答えを願いたいと思うわけでありますけれども、いずれにいたしましても内外価格差、土地問題がかなり日本の場合は大きな要素を持っておりますので、三番目の宮尾先生からお伺いをさせていただきたいと思うわけであります。  過般、総合的な土地対策として土地税制改革、いろいろ議論があって一段落したところでありますけれども、私は神奈川県の、いわゆる東京圏の出身でありますので、東京圏としてはいずれにいたしましてもいかに土地を供給してもらい、そこで新しい都市設計、都市計画をしていくかということに尽きるのではないかと思うのですが、土地の供給サイドからいいますと今回の土地税制、地価税にしてもあるいは譲渡課税の強化にしても、その土地税制は土地の供給を逆に抑えているような、先ほど鎌田先生の質問の中にもそういうお答え一部ありましたけれども、そういうふうに見えてならないわけでございます。その辺のところは、それじゃ一体、どのようにしたら東京圏の場合は効果的な土地供給につながるものがあるかというようなことをお答えいただければと思います。
  16. 宮尾尊弘

    参考人宮尾尊弘君) 非常にまた大きな問題ですが、簡単に答えさせていただきます。答えられる範囲で答えさせていただきます。  特に首都圏の場合の土地の供給という問題ですが、これは恐らく二つの面でやはり考える必要があって、一つは都心部の非常に低層の、ほとんど利用されておらない土地、これは低・未利用地に限らず非常に低層の、昔いわゆるげた履きアパートと言われたようなところがなかなか建てかわらないで密集しておったり、一戸建てでほとんど空き家になっているところが大変多いわけです。  私は以前から、これをやはり解決しない限りは大都市中心部の問題は解決しないし、やがては長期的に、諸外国に見られるスラム化等の問題が深刻になるというふうに考えておりますので、いかに大都市中心部の住宅も含めた再開発を促進するか、この点では借地借家法という権利関係の調整をやはり考えていかないと一つは動かないだろうという認識が大変高まっておりまして、これの、 やはりみんなにとっていかにプラスになるような借地・借家法の見直しが可能かという、大変難問なんですが、これに早急に取り組んでいただくというのが一つのかぎになるのだろうというふうに思います。  それで、やはりしかし根本的には、先ほど私が申し上げましたように、周辺部の土地の供給をいかに望ましい形でふやしていくかということですが、一つの目玉は農地、農地といっても実際に農地として十分機能しておらないところを、いかに地主の方が自発的にそこを供給するようなシステムをつくるかということが急務であろうというふうに思います。  ちなみに、大都市法などでもう戸数も決まりまして、各都と県が分担をしてどのぐらい住宅を供給しようかということを決めておるわけですが、数字まで、土地の面積まで決めているんですが、これはもう初年度から、恐らくこの状態では実現不可能な状況に今なってきております、これは金融情勢も含めてですね。それから土地の供給がどれだけ出るか、これはやはり市街化区域内の農地の問題あるいは線引きのある程度弾力的な見直しというふうなことを考えていかざるを得ないだろう。よく言われます首都圏で数万ヘクタール、市街化区域内農地がある。これを有効に使えれば数百万戸の住宅が供給できるということがよく言われておりますので、それを一気にやるということは問題ですが、やはり何年もかけて少しずつ供給をふやしていくことが一つ重要なポイントになると思います。  それから、やはり東京の中心部、郊外部を含めて国公有地及び工場跡地のような低・未利用地の活用というのが非常に重要な課題になっておりまして、例えば都の区の中を見ても国公有地で数百万坪、五百万坪から一千万坪に近いぐらいある。ですから、これで数十万戸住宅が建つということもございますし、それから工場跡地ですと五千ヘクタール、これも数十万戸の住宅が建つという、そういう総合的な住宅供給を考えていくということが必要であろう。  最近、私が仲間たちと研究しておりますのは、やはり土地の供給について日本の場合なかなか土地を手放すということが、特に農家の場合には抵抗がございますから、いかに土地の所有権を、最終的にはまた地権者のものに戻すわけですけれども、実質的にはそれがサラリーマンなどの住宅の持ち家としての供給につながるかという非常に難問を解くシステムを考えるべきである。それは、例えば土地信託の活用であるとかあるいは最近の借地の問題、定期借地権の問題であるとかというような形で土地を長期的に、安定的に確保いたしまして、その上に上物の家は持ち家としてサラリーマンに分譲するという形で不必要な地価の上昇を反映させない住宅、しかもそれはサラリーマンの目から見て持ち家になる。しかも、長期的には土地所有者のもとに土地が戻るというシステムをいろいろなところで今提案をされておりますから、そういうものを考えながら全体の都市計画の中で位置づけていくべきではないかというふうに考えます。
  17. 石渡清元

    ○石渡清元君 いずれにいたしましても、結局土地利用というのが各都道府県の都市計画にまってというような今の法律の姿でございますので、それだったら思い切って各地方にどんどんやらしたらいいんじゃないか、あるいは政府主導よりもむしろ民間の側に土地所有、住宅に供するための土地所有もかなりある、一千ヘクタール以上あるというふうに言われておりますので、そういう意味で、地方とかあるいは民間をもう少し刺激するような何かいい決め手がありましたら一言でお願いをしたいのですが。
  18. 宮尾尊弘

    参考人宮尾尊弘君) 住宅問題というのは、基本的に民間の支持をいかに活用するかということを抜きには語れないわけで、どうしても政策になりますと公共的な住宅という発想になりますが、これはあくまで限界的な層を救うという役割しか担えないわけで、平均的にはやはり民間の供給をいかにふやすかということで、先ほど土地の供給側のお話をいたしましたが、これは長期的にはすぐれて需要側の政策というのが重要でございます。  ちなみに、アメリカの住宅政策を考えますと、短期的には土地の制約もございますし、供給をそれだけふやしますと値段も上がりますが、長期的には供給が出やすい体質にアメリカの方はなっておりますので、政府の政策としましては、できるだけ需要側にいかに平均的なサラリーマンが持ちやすい形でサポートするかという需要側の政策になっております。ですから、日本も供給側のいろいろネックを解消すると同時に、やはり需要側で所得の低いサラリーマンにはいかにサポートするかという、両政策相まってなるべく民間の創意を発揮してつくるべきである。基本的な立場は、私先ほど申し上げましたように、住宅問題については民間の創意を発揮させればそれほど住宅の問題というのは、私は深刻な問題とは受け取っておらないわけです。  問題は住んだ人がどこに働きに行くかという職とのバランスの問題です。ですから、各県の計画もやはりその辺をもう少し考えてみる必要があって、職は来てほしいけれども住民は来てほしくないとか、そういう考え方が出ますとこれは問題ですので、やはりそこも地域ごとの計画と全体のバランスがその辺でどれだけうまくとれているかということを考えてみるべきではないかというふうに思います。
  19. 石渡清元

    ○石渡清元君 それでは、具体的に住宅関係について水口先生にお伺いします。  先ほど生計費絡みで、この資料によりますと資料の三ページでございますけれども、ビルの建設費、日米の東京、ニューヨークの比較で一・八倍。その主な原因としては人件費の高さというふうになっておりますけれども、これ以外に非常に今のビル建設は建設廃棄物等々の最終処理がもうかなりデッドロックにぶつかっておりますし、そうしますとこの差がますます広がっていく傾向にあると思うんです。そして、人件費がこの主因に書いてありますけれども、初めの岩田先生資料によりますと、アメリカ労働生産性上昇率というのは日本の六割程度だと、こういうことになりますので、これは一体これを解決するにはどんなような方策が一番よろしいか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  20. 水口弘一

    参考人水口弘一君) 非常に難しい御質問でございまして、また、私こちらの方を専門にやっておりませんので明確なお答えはできませんが、私自身の体験も含めまして申し上げますと、一般論として、ここで「政策へのインプリケーション」という項目がここだけは白紙になっております。なかなか解決のめどがないというようなのが実態でございます。  一つは、この人件費の高さというものは恐らく現状のままでいったら変わらないし、あるいはもっと高くなっていくという可能性はあるかと思います。それから、昨年来の状況を見ますと、現在幾らかは頭打ちのようでございますけれども、私どもの研究所のつくっておりますコンピューターセンターあるいは新しいオフィスビルなんかを見ましても、現在実は着工を三年間見合わせているということもございまして、恐らく今ピークであるかと思います。例えば建設業者自身、ゼネコンの方が今ピークだから少し様子を見てくれというような状況がございまして、これは人件費だけではなくて材料費、例えば鉄骨であるとか、こういうものが国内においてどうにもならない、もう異常な高さになっているというようなのが実態でございます。  一つは、もちろん客観的な情勢としたら、非常に戦後最大の、恐らくこの八月以降で五十七カ月のイザナギ景気を超える長期な景気持続という問題がバックにはあると思います。恐らくこの景気は私はもっと長く続く、このように考えておりますが、そこへもってきて労働人口が、よく三Kということを言われますけれども、そちらから逃げていくというような問題がございまして、したがいまして景気の動向が一つ。  それから、あとは貿易面での輸出入について、その辺をどう考えるか。例えばアジア諸国との間の、現在民間ベースではどんどん進んできておりますけれども、水平分業というような問題をさらに進めていく。それからもう一つは、非常に常に大きな問題になります、それではだれがこの労働を担うかということになりますと、外国人労働者というような問題が一つ出てきておりますので、それらを総合的に判断していかないとなかなかこの問題は解決できないのじゃないか。  極めて抽象的でございますけれども、以上でございます。
  21. 小林正

    ○小林正君 私は、この委員会に所属をいたしまして一年半以上たつわけですけれども、きょうテーマになっております内外価格差、そして土地・住宅問題をずっとさまざまな参考人の皆さん、そしてまた海外にも行って実態を調査しながら研究を進めてきたという経過できょうを迎えているわけですけれども、お三方それぞれ、私たちの経験を踏まえましても新しい切り口で問題提起をしていただきまして本当にありがとうございました。  まず最初に、岩田参考人にお伺いをしたいんですけれども、いわゆる内外価格差を生ずる一つ要因としての市場の不完全性ということで、幾つか御指摘をされておりまして、その中で政策課題としてこれらを解決するための手だてとして、一つ競争の促進、逆に言いますと独禁法の強化ということを言われております。それから、もう一つはデレギュレーションといいますか、そういうことを通してこのことを進めていくべきだという指摘もされておりますけれども、現在政府が進めています取り組みの中で、独禁法の問題につきましては、特に関係する職員の数が不足をしているということで、増員を図ってはどうかというようなことで具体的にその措置も進められたわけでありますけれども、現状を含めまして政策課題についての取り組みについてどのような評価をされておりますか、そのあたりを伺いたいというふうに思います。  またあわせまして、国際的に統一をされた独禁法の適用というお話、OECDの取り組みの話もございましたけれども、具体的にこうした動きが将来的にどういう形に姿をあらわしてくるのか、そしてあるべき方向性としてどういうものが望まれるのか。域外適用方式ですとどうしても国境という問題が出てくるわけで難しい面もあろうかと思うんですけれども、これらについての展望をお聞かせいただければというふうに思います。  それから水口参考人につきましては、特にこの中で消費者・生活者の視点に立ってという項があるわけですけれども、そういう立場に立って今後取り組みを進めた一つの姿として、資料も添えられておりますけれども、そうした積極的な御努力には敬意を表したいというふうに思います。水口参考人におかれましても、政府の政策のリーダーシップ強化という御指摘をされておりますが、特に今後望まれる強化策といいますか、方向性というものについて御所見をお伺いしたいというふうに思います。  また同時に、岩田参考人そして水口参考人、お二方にお伺いをしたいんですけれども、消費者に必要な内外価格差の情報提供という御指摘もあったんですけれども、本当に消費者というのは、例えば一物一価という比較をしたくても一物が特定できない、一価も特定できないというような状況も一方にある中で、そうした内外価格差情報というものをだれがどのような形で消費者に提供することが必要なのかというあたりについて、お考えがあればぜひお伺いをしたいと、このように考えております。  それから宮尾参考人につきましては、金融面で総量規制が行われているわけなんですけれども、バブルがはじけたということも言われているんですが、供給側の問題としてかなりバブルがはじけたという実態がいろんな形で出てきているというふうに思いますけれども、実際に土地を購入したい、いわゆる需要の側の立場からしますと、どうもこうした土地というのが下方硬直性といいますか、上げどまってなかなか下がらないという状況の中では、引き続き高原状態の中で取得困難な実態があるのじゃないかというふうに思いますけれども、この総量規制の効果と現状というものについてどういうふうに評価をされておりますか、お伺いをしたいというふうに思います。  それから最後に、六月二十日に私たまたま仙台に用がありまして出かけたんですけれども、この日がちょうど東北新幹線、上越新幹線が東京駅に乗り入れた日なんですね。それでかなりにぎやかだったんですが、仙台へ行きましてテレビをつけてみましたら、上野から東京まで三・六キロがつながって、そして東京駅まで東北新幹線が乗り入れができた、いよいよ東北の夜明けだというようなことをテレビで言っているわけです。  この三・六キロ、上野から東京へかわったということが何で東北の夜明けなのかなということがよくわからないんですけれども、これは東京一極集中と言われていた状況が、実は東京駅一極集中なのかなというふうにも思ったりしたんですが、例えばパリの場合ですと、パリから各方面に向けてそれぞれ鉄道が敷かれていますけれども、そのターミナルは一点に集中していないわけですね。それぞれの方面の駅があって、そこから出ていっているわけで、何であれが上野から東京になって東北の夜が明けるのか、上野じゃだめなのかというような点で、日本のそうした受けとめ方について、国際的な御経験も大変おありになる宮尾参考人からどういうふうにこれを受けとめられたかお伺いができればというふうに思います。  以上です。
  22. 岩田一政

    参考人岩田一政君) 二点ほど御質問があったかと思うんですが、まず一番最初の問題は、独占禁止法を実際に施行する公正取引委員会の充実といいますか、機能をもう少し十分に活用できるような体制が、果たして現状でとれているかどうかという御質問だったかというふうに思います。  この点につきまして、日本の場合には、御承知のように日本独占禁止法というのは、戦後アメリカ独占禁止法に倣って日本にもいわば制度輸入されたということだろうというふうに思うわけです。ただ、戦後の過程を見てみますと、アメリカの公正と競争に関するルール、独占禁止法の適用が、どちらかといいますと日本と比べてより厳しく行われていたというふうに考えることができます。例えば損害賠償、違反があった場合に三倍賠償負担を負わなければいけないという、アメリカでは余りに負担が重過ぎるということが逆に問題に、余りにコストが高過ぎるという、企業生産活動をむしろ阻害してしまう、訴訟ばかり起こって逆に生産性が下がるというような問題点が同時に出ておりますが、アメリカの方がどちらかといいますと、公正と競争に関するルールというのがどうも厳しく適用されてきたのではないかというふうに思います。  日本の場合には、もう少し経済発展というようなことに、どちらかといいますと重点を置いて独占禁止法というのも適用されてきたのではないかというふうに考えます。現在の時点で考えますと、やはり特に輸入品価格が六〇%も外国で売っているものと比べて高いというような異常な事態が出ているということを考えますと、もう少し適用を厳しくするという方向をやはり考えるべきではないかと思うわけであります。その点からしますと、先ほどスタッフの点でまだ不十分ではないかというお話があったわけですが、それはもちろんそのとおりだろうというふうに思います。それから、既にこの調査会でも御意見が出ていることでありますが、消費者の代表を例えば委員に加えるとか、公正取引委員会自身の組織をもう少し消費者意見が入りやすいような仕組みに改めるということも重要なことではないかというふうに考えます。  それから第二点目の問題点でありますが、これは域外適用関連した問題でありまして、将来どうなるかという御質問だったわけなんですが、確かに独占禁止法域外適用をやりますと、各国の 国家主権をお互いにやや侵害し合うということになります。現実に、一九六〇年代から七〇年代にかけまして、アメリカがその域外適用というのを外国に対して随分アグレッシブにやった時期があります。それでイギリスと国際法摩擦になったことがございます。イギリスは域外適用をとりませんで属地主義ということで、イギリス国内にある企業についてのみ自国の独占禁止法を適用するという原則で対処いたしました。そこでアメリカとイギリスで論争が起こって、それが国際的な摩擦になったこともあります。  そういうこともありまして、域外適用についてもやたらと乱発するというのではなくて自制というのですか、抑制、自己節度を持って適用するということが望ましいのではないかというのが、国際的なコンセンサスにやや近づいているというふうに考えられます。  ただ、経済統合が生産財だけでありませんで、生産要素の面でも直接投資をお互いに非常に大量に行うというようなことが起こりますと、やはり異なったルールでそれぞれの国が競争の条件を考えるというのはどうしても無理が生ずるわけであります。現在EC市場統合をやっておりますが、そこではやはりEC共通の競争政策というのを設定して同じ基盤でもって競争を行う、各国、国ごとの違いをなるたけなくすという方向に今進んでいるわけであります。  ですから、将来的に長い目で考えますと、やはり最も望ましいのは、共通のルールでもって企業がお互いに競争し合うという制度に次第に近づけていくということが必要ではないかと思うわけであります。ただ、そこに至る過程ではすぐに共通のルールというのはできませんので、さしあたりは自制を、節度を持った域外適用というようなのをやって、それでお互いに意見が食い違った場合にはそこで何らか共通のルールをつくる、お互いが納得し得るようなルールをつくっていくというような形で、少しずつ国際的なルールを形成していくということが必要ではないかというふうに考えております。  以上であります。
  23. 水口弘一

    参考人水口弘一君) 二点かと思いますが、一つは政策、政府へのリーダーシップの期待ということでございます。政府は、昨年一月に内外価格差対策についての五十二項目というものを決定して実行に移されているわけでございますが、これを着実に実施するということが非常に重要であろうと思います。その場合におきまして、総花的というよりも、やっぱり政策的な優先順位をどうするかということを考えていくということが非常に重要であろうかと思います。  私は、大きな流れといたしますと、例えば十年単位で見れば恐らくこの一九九〇年代、これは流通と農業の自由化というものが最大のテーマであろうかと思います。過去さかのぼって見ますと、六〇年代の貿易の自由化から資本の自由化、金融の自由化という流れがあるわけでございますが、その間はすべて外圧によって行われてきたというのがいわば実態でございます。外圧がまた内部の要求とちょうど合致したという面、例えば金融の場合も日米円・ドル委員会なんかはまさにその例でございますけれども、これらの試練を経ましてこれだけの経済大国になったわけでございますが、これからは流通、農業の自由化というようなものを中心といたしまして、国民生活の充実ということを主眼としての日米構造協議というのは、外からということではなくて中からの自由化を十分にやっていくということが一番大事であろうかと思いますので、その場合における政策の優先順位ということが一番重要であろうと思います。  特に数十項目ということになりますと総花的になりやすい。特に日本の行政組織からいきますとそういうことになりやすいものですから、それらの優先順位の選択、したがって、それに伴ってのアクションプログラムをどうつくっていくかということが最大の課題であろうかと思います。  それから第二の消費者・生活者の立場ということでございますが、先生おっしゃいますとおり、経団連としてこういう言葉を使ったのは昨年初めてでございまして、冒頭にも申し上げましたが、ジャーナリストの皆さんから若干冷やかされたようなところがございますが、しかしといって、オイルショック時代企業性悪説というのはどうにかこれは消えてきて、地域住民の皆さんあるいは従業員とともに生きていくんだという立場はどうやら日本経済の中に定着してきた、このように考えておるわけでございます。  それでは消費者情報をどういうふうにするかという問題、現在緒についているところでございまして、例えば先ほど申し上げましたように、地域でのそういうセミナーを開催するとかあるいは具体的にいろいろな情報の提供あるいは各企業においても消費者の相談口を設けるというような格好で、従来のような苦情処理室という後ろ向きのものではなくて、もっと前向きに、商品の説明であるとかいうような格好での前向きなものをこれからやっていくということが必要であると思います。政府においてはもちろん、日米でフォローアップで商品価格調査をしておりますが、民間でも商社、それから同友会、経団連ともに、これからもなお一層情報を充実して公表して、消費者のために役立つようにしていきたい、このように考えております。  先ほども申し上げましたように、アメリカとか西ドイツでは消費者運動が非常に盛んでございまして強いものですから、消費者向けの雑誌がたくさん出版されておりまして、その中で各製品の機能や品質の比較が徹底的に行われているわけであります。そのようなことから、消費者価格をチェックするという手段はたくさんあるわけでございますが、どうも日本ではむしろ誇大宣伝的なものが多くして、こういう内容のチェックをするような情報に欠けていたという反省がございますので、そういう点をさらに充実させていきたい、このように考えております。  以上でございます。
  24. 宮尾尊弘

    参考人宮尾尊弘君) それでは、二つの御質問にお答えいたします。  まず金融の問題ですが、直接お答えする前に、確かに地価高騰によって例えば東京のマンションでもここ数年で倍になった。これは所得が年収六百万が八百万ぐらいにふえた程度なのに、なぜマンションが倍になるのか、これが狂乱でありバブルであり、これを下げなければいけないという議論は大変普通の人の耳に入りやすいんです。しかし、それははっきり申し上げて建前であって、それでは我々が実際マンションを買うときにどういう計算をしているかと申し上げますと、年収六百万のサラリーマンが五年前に三百万の頭金で三千万のマンションを買ったときには、月々の支払いが果たして年収の六百万の例えば二五%におさまるかどうかということを計算いたしまして、おさまれば買うわけです。  現状でどうかと申しますと、今度それが八百万の年収になっておる。貯金の方は三百万から六百万ぐらいに、大体この四、五年で平均的なサラリーマンの貯蓄は倍になりましたから六百万の頭金を出している。問題は、年収の八百万の二五%の中に支払いがおさまるかどうかというところがポイントなんですね、本音は。  そうすると、問題は金利です。お金があるかどうか、どれだけ安い金利で貸してくれるかということであって、結果としてマンションが幾らになるかはそこから出てくるわけです。そういたしますと、もしも金利がもと七%だったのが五%に下がっていれば、年収が六百万から八百万に上がっても、マンション価格は三千万から六千万に上がっても計算は合うわけです。それはむしろ供給がふえなければ価格が二倍になることによって調整が進むわけです。そういう形で、実際我々は本音レベルで行動しているわけです。  しかし、単なる所得とマンション価格だけを取り上げますと、以前は五倍で買えたのに今八倍、九倍だというのだけが問題になるということが、私にとっては非常に金融の問題と密接に絡まりまして、もう少しこの辺のところを本音レベルで議論をして何が問題なのかということを考えなけれ ばいけない。  それをやらないと、金融を引き締めればマンションが再びもとの三千万とか四千万に下がれば問題は解決するだろうというふうに思いやすいんですが、もしそうなったらどうなのかと申しますと、もう既にその兆候は多少あるんですが、まずは供給が大変減ります。今大体百六十万、百七十万戸で供給されていた住宅が、恐らく今年度百三十万戸まで落ち込むだろうと言われています。これは数量的に落ち込んでいますからその分だけみんなが割を食うわけです。それから、各住宅供給会社は今在庫処理に一生懸命で、新たな供給はむしろ抑えぎみです。そういうことが本当の住宅のプラスになっているんでしょうか。ですから、これは建前の議論ではなくて、やはり実態に即して住宅市場に何が起こっているかというのを見ないと、結局これは国民のためになっていないわけです。  確かに、金融当局はいろいろ批判されますし行政は非常に責任を感じますから、過去のしりぬぐいなり自分の失政をあげつらわないようにそういう政策をとるかもしれませんが、しかし、政治、経済の実態を知っている者にとってはいかに第一次取得者が今買いにくくなっているか、銀行に行ってもお金は貸してくれない、金利は高い、総量規制で非常にみんな困っている。買いかえでお年寄りがこれからいいところに移ろうというとマンションが一つも売れない、そういう苦しい状態を政治家が取り上げなければ一体だれが取り上げるんでしょうか。ですから、この問題を抜きにして、やれ総量規制を強めろ、金利を上げたままにしろという議論は日銀の総裁はするかもしれませんが、それは政治家の出す議論ではないと私は確信しております。  ですから、とりわけ金融の総量規制のように、特定の産業部門をターゲットに行政指導のようなことをするというのは、日本ではもう何十年も前に終わっている方法です。この方法でなくて、いかに金融の制度を正常化させるかというような観点から議論をするのが前向きの政治の発想であって、そのためには諸外国の不動産金融はどうなっているかということを調査する必要があります。  諸外国では必ずしも銀行やノンバンクやそういう金融機関からお金が流れるという方法ではなくて、いかにプロジェクト金融とかその他の直接的な資本調達の手段で、リスクを負っていい投資家から資金が集まって、いい開発が進むような資本市場制度ができているか、情報開示の制度があるか、投資家保護の制度があるかというところで、今大分話題になっていました金融制度改革の話にも結びついた前向きの姿勢が出るのであって、そういう議論と金融制度改革は金融制度改革でやらしておくとか、一方、こっちは金融の総量規制をやっておく、その間の矛盾をちっとも感じないような発想というのは国際的な基準から大分ずれていると私自身は考えています。  ですから、金融の総量規制、特に不動産関連融資の総量規制というものは可及的速やかに撤廃をするというのが私の主張です。しかし、それは撤廃したからいいんではなくて、撤廃してそれにかわる新しい不動産金融のあり方というのを国際的な常識に合わせてできるだけ早く整備をする。例えば不動産のプロジェクト金融、不動産の証券化、これはいい意味での証券化ですが、そういう制度をできるだけ取り入れて、投資家が一体何にお金を出しているかというのがわかるように情報開示をして、いい開発には大いにお金を出しましょうという投資家を集めて、住宅開発なりいろんなショッピングセンターの開発、いろんなインフラの開発をすべきである、そういうふうに考えるわけです。  そういうことで、総量規制については私は経済学者として非常に憤っておりますので、私は今学者の意見を集めまして、声明を出すように、アピールをするように努力しておりますので、恐らく一週間以内に学者のアピールが出ると思いますので、新聞その他を読んでいただければと思います。  それから、二番目は大変興味深い御質問で、東北の方が東京駅に連結して東北の夜明けだと喜んだというお話ですけれども、私はこれに非常に興味を持って読みました。なぜかというと、私は常磐線で上野まで出る身ですから、大変上野に親近感を持っておりまして興味深く読んだんですが、私は少し前向きにとらえております。これは、恐らく日本の地方とか地域は三段階ぐらいの段階を踏みまして、特に東北の場合にはとにかく東京に出られるというので、上野に出るという段階がずっとあったわけです。  ところが、今や高度化ばかりか広域化しています。東北の方が大阪に行ったり九州に行ったり、外国に行ったりという時代です。ですから、そのためにまず行きやすいところに出られるということは大変なメリットです。これまで上野に出て、それから東京駅に出て大阪に行くとか大変な苦労をしているわけです。ですから、少なくとも東京駅に行けば東海道新幹線にすぐ乗れるとか、それから成田空港駅の直行の電車に乗れるとか、そういうメリットを考えているというふうに私自身は前向きに考えております。そういう段階が二番目です。つまり、東京を使って全国、世界に出られるという意味では、上野よりは東京の方が便利だというふうに考えております。  それから三番目、私はここが理想だと思うんですが、東京を経由しないで東北の方が大阪にも九州にも世界にも行けるかどうか、三番目の問題でここが恐らく今後の一番の大きな課題です。その点で規模は小さいですが、私がなぜ東京の環状高速を強調したかというと、それは中心を経由しないで職場と家庭を結べるからです。同じように、これは全国的な規模で、なぜ北海道の人がいきなり九州に飛べないか、それは飛べるんですが非常に便が少なくていつも込んでいます。ですから、そういう東京を経由しない交通体系というものをどう考えるかということを国民は望んでいるのであろうというふうに思いますので、今後、地方空港をいかに国際化するか、それから道路、鉄道の整備もいかに環状迂回型のものを、しかも需要に即してつくっていくか、これは大変大きな課題ですが、そういうふうに私は前向きに解釈をしたいというふうに思っております。
  25. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 参考人の皆様、きょうは大変ありがとうございます。  最初に、先生方に私全部質問申し上げますので、後順次お答えをいただきたいと思います。  まず、岩田先生にお伺いをいたしますが、内外価格差の問題が問われてからかなり多くの論議があり調査があり、そして時間が経過しているわけですけれども、ことし五月の二十日に発表になりました先ほどの日米共同調査資料と、ことしの四月に行われた第二回分のものでございますが、拝見いたしますと、やはりまだ価格差が残っていることはさっき水口参考人の方からもお話があったわけでございます。私は、今お伺いしたいことは、一体内外価格差というのは何なのかということをまず伺いたいなというふうに思うわけです。  つまり、この内外価格差の問題が浮上してきた理由としては、やはり日米構造問題協議の中から出てきたわけでございますから、これは政治的にも解決をしていかなければならない課題であろうというふうに思います。しかし、私もそれなりに関心を持ってこれを進めて自分で勉強してみましたけれども、なかなか難しい課題が多うございます、いわゆる価格差要因を拾うことも大変だ、それからその対象になる商品そのものの把握の仕方が難しい、あるいはまた価格を把握することも難しい。そして、先ほど来からお話がたくさんありますようにバック要因がたくさんあるわけですから、これをどう把握するかということに関して私も非常に今苦慮しておるものでございます。  先般私が読みました、これは当参議院が委嘱をいたしました調査でございますが、財団法人日本総合研究所が調査をいたしました意識調査でございます。有識者の意識調査内外価格差に関するものでございますが、そこの中で大変興味深く読んだ意識は、一体どのぐらいの価格比から内外格差というものを感じるのかという問題が載っております。国内販売価格としてはCIF価格プラス適正利潤、ないしはCIF価格プラス流通コストというようなものを考えたとしても一・五倍ぐらいが普通じゃなかろうかというところなのであります、この意識調査。もっといろいろ申し上げたいことがありますけれども、大変興味深く出ている課題でございます。  ところで、今回の日米構造協議の第二回、第一回は一九八九年十月でございますが、それの比較として、ことしの第二回のこの四月調査では、通産省は調べた価格を整理するに当たって、いわゆる価格比較の方法の中で高い低いの基準を決めておりますが、高いというランクに入れるのは日本価格の方が米国の価格より五%を超えたものを高いと称するというふうに整理しております。それから、大幅に高いというものでは六〇%以上超えたものを大幅に高いというふうに比較をしておるわけでございます。今回、この六〇%以上が調査品目の中の三六%を超えてあったと、こういうことなんです。しかし、私たちは感じやあるいはこうした整理上の問題で高い低い、あるいは価格差があるという考え方を決めるのではなくて、政治的に一体どのぐらいのいわゆる値幅があることを内外価格差があると言うのだろうかというところをやはり整理してみなければならないのではないかというふうに思います。そこで、岩田先生にそのことをお教えいただきたい、こんなふうに思っております。  それから、水口参考人には、先ほど来資料を御説明いただきまして、冒頭に、当調査会のいろいろの資料もお読みいただいたようで、言われることは全部網羅して言われているようだ、要はアクションであるということを感じましたということをおっしゃっておられるわけですが、ちょうだいいたしました資料の中で、「企業としても、」ということを二枚目でおっしゃっておられます。先ほども御説明がございましたが、これはおっしゃるのは大変簡単だろうと思いますけれども、長く言われて、だれでも言っていて、そしてしかしなかなか改善の難しいことばかりをここに並べておられるというふうに私は思っています。流通部門のいわゆる合理化あるいはまた慣習・慣行の是正あるいは系列化の改善あるいは談合体質の改善、これは大変なことだと思います。具体的に業界としては、もっと私端的に伺いたいんですが、今当面何からできますかということをお伺いしたいんです。ぜひやはりそこら辺の具体的な、今アクションとおっしゃいましたのでできることからぜひ意思表明をしていただきたい、こんなふうに思います。  それから、宮尾先生にお伺いいたしますのは、大変興味深く住宅土地問題をお伺いしたわけですが、買いやすさということは大変こたえております。大事なことだというふうに思います。買いやすさについてもうちょっと具体的にお教えいただきたいのと、先ごろ私が少し興味を持っている問題で、最近、一戸建て住宅の販売のリーフレットのようなものを見ておりますと、借地権つきの住宅が非常に多くなってきている。そして、底地買い権利はこれは将来事情に応じていつでも申し出によっては譲渡できる、こういう形のものが多くなってきていることに気がつきました。そこで、一億の住宅が借地権つきの一戸建て住宅ですと九千万を割っているようでございます。こういう買い方あるいは売り方はどうなんだろうかという、これ買いやすさの一つの例として今お伺いしているんですが、借地・借家法も次期国会あたりに登場してくるとなると、こうした問題も多々問題があろうかと思いますけれども、買いやすさの原理をひとつ教えていただきたいと思います。  もう一つあわせて、いろいろ世代も変わり価値観も変わって、随分土地や住宅に関する国民考え方が変わってきたようだと思いますけれども、やはり土地や住宅に関する資産性という価値観は日本人の中には根強くあるのじゃないかというふうに思うんです。  先ほど、先生は三百万のお金を頭金にして三千万の家を買うという話をなさいましたが、三百万の頭金を持っていてそれで三千万の家を買った場合に、土地が物すごく上がった場合には二十年後にはこの人は大変な資産を形成するというふうに思います。一方で、土地が上がらなかった場合には、もしかしたら三百万のお金を積み上げていった方がその人には大きな資産が積め、定着した資産が積んでいけることになるかもしれない。こういう問題をいろいろシミュレーションしてみると、やっぱり私は日本人の中に根強くある、土地や住宅に関する資産という考え方の問題をもうちょっと国民一人一人が考え直す今機会ではないかなというふうに思っているんですけれども、そんなことも含めて二点お伺いしたい。  以上でございます。
  26. 岩田一政

    参考人岩田一政君) それでは御質問にお答えしたいと思います。  御質問の趣旨は、端的に言って何%内外価格差があればそれは不当な価格差なのかという御質問であったかというふうに思います。  当初、アメリカ日本の間で内外価格差が政治問題として起こったことの理由を考えてみますと、一つは、日本企業外国では安く売って、国内では高く売るということをやっているのではないか。ある種のダンピング、余りそれが行き過ぎますとダンピングということになりますけれども、そういうことが起こっているのかもしれない。言葉をかえて言いますと、日本消費者企業に輸出補助金を出して輸出が拡大するようなことをやっているのではないかという疑念をアメリカ側一つは持っていたということが考えられます。それからもう一つは、アメリカ自身が日本に輸出をします場合に、どうもなかなかアメリカでつくった品物が日本で売れない。つまり、市場アクセスが非常に限られている、閉鎖的であるという、こういう二つの点で内外価格差というのが日本アメリカの間で大きな問題になったんだろうというふうに思うわけです。  前者の方の問題につきましては、先ほど水口先生の方からお話がありましたように、最近の調査を見ますと、日本の輸出に関する限りは、国内とそれから外国での価格の差というのはほとんどなくなってきているということでありまして、それはどうしてかというと、輸出品の方については恐らく急激な円レートの調整というようなことに企業が十分対応、調整するのにやや時間がかかったという側面がかなりあったのではないかというふうに考えられるわけであります。  もう一つの方の、アメリカ企業日本に対して市場でもってなかなか販売が拡大できないという、この市場の閉鎖性ということで内外価格差というのが現在もその意味では残っているというふうに考えられます。市場がどのくらい競争的であるかということで、競争的であれば余り内外価格差というのは輸入品についても余り大きくならないはずだということが考えられるわけであります。  ただ、価格の設定というのは、実は内外貿易による場合と、それから純粋に国内でつくった産品についても実は価格差というのは存在しているわけであります。これは、ある量販店の方から聞いた話でありますが、新宿にあるカメラの量販店がありまして、西口と東口にそれぞれ置いてあって値段が一割ぐらい違う。片方は田舎から上ってきたような人を相手にするから少し高いという。つまり、情報が完全でない場合にはそういう価格の差が、五百メートルか六百メートルしか離れていないんでしょうけれども非常に違う場合があり得る。  それから、同じようにその量販店の方から伺った話ですけれども、販売先がどういうものであるか、あるいはどのくらいの量を販売するかということで、かなり販売部門価格を変えられるといいますか、長期のもちろん取引関係とかあるいは大量に販売するということでディスカウントができると。そういうこともありますと、例えば同じ品目であっても取引の相手とかあるいは長期的な 関係とか、そういうことも考えますと差が生ずるということは十分あり得る。ですから、取引のマージンというのは二割から三割、大体流通部門であると思いますけれども、その範囲内でありますと、場合によってはそのぐらいの価格差が生ずることはあり得るということなんだろうと思うわけであります。  これは日本だけではありませんで、私が冒頭申し上げましたようにECの内部でもそういうことで、国境が非常に近い場合でもやはり二割ぐらいは差が生ずることがあるということであります。ですから、これは特に貿易による品物ということでなくても、必ずしも価格一つでなくて複数存在する場合があり得るということであります。ただ、情報がより完全になって競争がより完全になるということになれば、その差というのはおのずから縮小せざるを得ないだろうというふうに考えます。  ですから、ヨーロッパの場合も、市場の統合がより完全になって税制とか何かもあるいは規制なんかも統一されるということがあるとしますと、その価格差というのが随分小さくなるであろうというのがチェッキーニ委員会の主な報告の論旨であります。そういうことで、価格が全体として一、二割下がるんじゃないかという報告が出ているわけであります。ですから、日本の場合もやはり競争の条件がより厳しくなる、有効な競争がより有効に行われて、しかも情報がよく行き届くということがありますと、やはり三割も開くというようなことはなかなか起こりにくいということになるのではないかと思うわけです。  日本に進出している外国企業に、例えばフランスの化粧品とかそういうメーカーの方のお話を伺ったこともあるんですが、どうして日本で高いのか、ニューヨークで買う値段の倍ぐらいの値段で売ったりしているわけですね。すると普通の答えは、東京で事務所を持つというのは非常に経費がかかるということを一つ言うわけです。レンタルしていてそのレンタル料が高い、これは土地の問題とも関係ありますが、あるいは広告費というのが非常に日本の場合には過度にかかると言いますね。そういう広告料の問題もあると言います。それからもちろん人件費ですね、維持するための人件費が日本の場合には高いということ。  まとめて言いますと、いわば非貿易財関連したようなサービス価格日本では高いということがあって、その部分は、日本が仮に製造業部門で先ほど申し上げましたように、生産性世界一高いというようなことが仮にあるとしますと、これは豊かさのある意味で代償といいますか、多少高くなるのはやむを得ない。リカードの言葉をかりますと、製造業が盛んな国は、価格があるいは賃金が高くなると言ってもいいと思うんですが、豊かさのある意味で反映という側面も同時にあるというふうに思われます。  それから、もちろん貿易品の場合には輸送コストというのももちろんあるわけでありまして、輸送コストのマージンというのも考えてみなければいけないということであります。  ただそれで、それじゃ何%であれば価格差別をはっきり行っているかどうかという認定をどのくらいできるか、これはなかなか数字で言うのは難しい。ケースによっても非常に違うでしょうし、何%であれば必ず価格差別で不当な価格差別をやっているということが言えれば一番よろしいわけなんですが、なかなか経済学の方ではっきりと何%を超えるとこれは違反であるという、価格差別を行っているということを決めつけることが非常に難しいわけであります。経済学の方では、どちらかといいますと市場で有効な競争がどのくらい行われているか、例えば市場の集中度がどのくらい高いのか、新規の参入がどのくらい容易な状況にあるのかという、有効な競争がどのくらい保たれているかという市場の条件を全般的に勘案して、その企業が不当な価格差別を行っているかどうかということを判断せざるを得ないのではないかというふうに思います。  以上であります。
  27. 水口弘一

    参考人水口弘一君) 非常に厳しい御質問をいただきまして恐縮でございますけれども、私は基本的な問題は、今岩田先生が言われた御意見あるいは理論に全く賛成でございます。  あとは具体的な問題でございますが、輸出品につきましては先ほども申し上げましたし、また今もお話がございましたけれども、個々の製品につきまして調べました結果もほぼ価格差というものはないと思います。  例えば家電ですと、家電の輸出品についていろいろな調査をしてございますが、あるいは業界のそれぞれの方から直接聞いておりますが、日本の方が安いという結果が出ております。アメリカが安い場合は現地生産品か第三国の製品でございまして、これは材料、人件費、土地代、設備投資のコスト、仕様あるいは流通経路等の違いに基づくものだと、こういう結果になっておりますし、自動車とかその部品につきましても、まず内外価格差というものは日本の方が高いということはあり得ない。  船舶について、鉄鋼、重機械、すべてそういうような状況でございますが、問題は日本国内において、一つ国内生産者あるいは流通業者自身の間でどうかということで、談合体質あるいは系列、もう悪いことは決まっておる、それを本当に政府にアクションを要求すると同時に民間はどうなっているんだ、こういう御質問であろうかと思いますが、昨年三月、これはいわば経団連として採用いたしましたのは各企業の行動指針、業界及び企業の行動指針でございまして、これに従って各業界、各企業が具体的にどのようなことを行い、そのパフォーマンスがどうであるかということは、現在まだ具体的なフォローアップの集計ができておりませんので、これはまたできましたら御報告をさせていただきたいと思います。  ただ、昨年の議論の過程でも例えば価格問題、これは消費者へのサービスという問題とも関連するわけでございますが、自動車なんかにつきましてもやたらに頻繁なモデルチェンジをする、性能と余り関係なしに、ということは販売政策上のことであって、これは消費者のためにならぬのではないかというような意見も強く出されたりいたしまして、事実その辺は自動車メーカーのエコノミストも十分に反省してマーケットに即応する、消費者に、ユーザーに即応するようなことをやらなきゃならない。あるいは流通関係、商業関係でも過剰包装というようなことも言われておるわけでございますが、これも消費者ニーズに合ったやり方をすべきであろうというような、各論ではいろいろな意見が出ておりますので、それらが各業界、会社においてどう適用され、どうなっていくか。まだ僅々一年でございますけれども、相当改善されているような面もあるかと思います。  現に、先ほどもちょっと御紹介しましたけれども、海外において日本系列化あるいは日本取引慣行、必ずしも日本のマーケットにインサイダーになって入ってしまったらそんなに悪くないんだ、かえってむしろそれによってプラスをしているところもあるというような面もございます。例えば、このニューヨーク・タイムズでは具体的な例として、日本における金融業でソロモンブラザースであるとかあるいはゴールドマン・サックスというのは、まさに定着して非常にいいパフォーマンスを上げているというようなことも述べておるわけでございますので、今後それぞれの業界の努力によって実績を上げていきたいと思います。  それから、日本国内におきましてはもともとが極めて過当と言われるくらいな競争体質がございますので、技術革新と販売政策あるいは販売競争ということが相まってなかなか寡占体質にはなりにくいという点があろうかと思います。そのために情報、競争という、今岩田先生の言われました表裏になって、私はいいマーケットができて、現状においてもちろん改善すべき点は、先ほど来申し上げましたように非常にあるわけでございますけれども、いい方向に向かいつつあると。それが世界一のパフォーマンスを上げている経済の実 績であろうと思います。  ここへ来まして、一つ消費者という問題と環境という問題が大きくこれからの問題となってまいりましたが、そこにおきましてはやはり消費者あるいは生活者という立場からの監視ということも非常に必要であろうかと思いますし、これは生産者側からの情報提供ということと相まってよりよい生活環境をつくる、したがって価格差問題というものを解決していくという方向が最も望ましいと思います。具体的にどこの会社、どこの業界が今これをこうやっておりますという報告まで私も立場上詳しくございませんが、その辺は後よく集計をいたしまして折を見て御報告申し上げたいと思います。
  28. 宮尾尊弘

    参考人宮尾尊弘君) それでは、まず買いやすさの指標についてお答えいたします。  これは、私がアメリカやカナダに十五年ほどいたときに、普通のテレビのニュースなどでも頻繁に使われた指標でございまして、例えば金利が一%引き上がると、買いたい人のうちこれまで三割が買えたんだけれども、もう二割しか買えなくなったとか、そういう数字が普通のニュースのレベルで出てきているほど一般化している、アフォーダビリティーインデックスと言われている指標が専ら諸外国では使われております。ですから、その観点から言いますと金利が上がるというのは非常に一般の住宅を買う方、国民にとっては負担になるという常識が定着しております。しかし、日本はその指標がないということで、指標だけではないんですが、金利が上がれば不動産価格が下がって、いかにも国民が助かるかのごとくどうしても指標的なバイアスから思ってしまうことがあることは、少し注意をする必要があるのじゃないかということを申し上げた次第です。  それにつきまして、お手元の私の資料の二ページ目の図の二と三を、表がいっぱいありまして恐縮なんですが、二ページの右の上の図の二と下の図の三というのをちょっと御説明いたしますと、まず図の二の方で実線の方がマンション価格の実際値で、これは皆さん御案内のように八〇年代前半はほとんど東京のマンションというのは価格が上がらなかったんですが、八五年から突然目覚めたように上がり出しまして、その時点から倍になったとか三倍になったとかという議論がございます。これは、確かに所得との比率で見ますと、下の図の三にありますように八五、六年までは何となく四倍、五倍の範囲でおさまっていたのが、突然八六年以降六倍、七倍、八倍、九倍、十倍と上がっていってしまった、この数字が、私が申し上げると問題なんですが、ひとり歩きをしているところがあります。  私の買いやすさの指標はどういうふうに見るかと申しますと、もう一回図の二に戻っていただきますと、一番下の点線で資金調達可能額というのがございます。これが平均的なサラリーマンが自分で集めてこられる資金の全額でございます。頭金にまず貯金を全部出して、住宅金融公庫に行って自分の所得の払える範囲内で借りてきて、さらに自分の所得の払える範囲内で民間の銀行から借りてきた場合、幾らまで借りられるかという平均的な借りられる額です。  それを見ますと、実は八五、六年というのは歴史的にもかなり異常な状態で、普通のサラリーマンが平均的に自分自身で貯金を出し、自分自身だけで集めたお金でほとんど東京のマンションが買えたほど、はっきり申し上げて東京のマンションは割安だったんです。ところが、それは歴史的に余りに安いというのでその以降調整された過程が今日までの動きであって、したがって資金調達可能額に一・三という計数を掛けますと、大体現実のマンション価格の動向の真ん中辺を走る趨勢の線になるということが私の研究等で明らかになりましたので、これは恐らく平均的サラリーマンではなかなか住宅は届かないけれども、もう一つ伸びをしたり平均以上のサラリーマンあるいは自分の親、会社、その他の資金源でサポートされれば住宅が買えるというのは、恐らく日本の歴史を通じて今日まで変わらない真実であって、そんなにみんなが買える状態には供給がふえない限りならないわけですから、そういうマンション価格の推計値となっておりますところあたりが現実的な趨勢値かなと。  それに対して、実際のマンション価格は多少波動を持って、現在多少行き過ぎているので調整されているということで、歴史的にそれほど異常なことが起こっているというふうに私は考えておりません。したがって、図の三の下を見ていただきますと、一番下のマンション価格を資金調達可能額で割った比率、この比率が恐らく日本でまず買いやすさの指標として一番みんなにわかりやすい指標ではないか。  ですから、今後年収の五倍ということをやめて、資金調達可能額の一・三倍ぐらいのところに何とか抑えましょうという現実的な指標を提示していけば、今はちょっと一・五、六倍になって行き過ぎだ、これを一・三倍ぐらいまで下げましょうというような議論であれば、これは供給をふやしたりすれば到達可能な目標であって、これをまた再び五倍に引き戻そうとしても、そんなに安くなったらまたお金持ちが安い価格で買っちゃうだけの話で、実は何の解決にもならないということになりますので、アフォーダビリティーインデックスは大変重要な指標ではないかというふうに思っております。  御質問の借地権つき住宅の件は大変重要な御指摘で、借地権つきで安くなった住宅をこの指標にかんがみてどう評価するかということで、私はこういう借地権つきの住宅が分譲されることはもっと進むべきで、これは買う側にとっての多様化、そういう選択の幅が広がる。それについて、将来は不確実ですから、もしインフレヘッジが欲しい個人は多少高くても土地つきの家を買おうとしますし、そうでない方は、ほかでヘッジができる人は安い住宅のサービスを買うために借地権つきを買うかもしれません。そういう選択の幅が広がるということは大変重要なことで、それが先ほど申し上げた借地・借家法の改正のメリットになるかと思います。  時間がありませんので最後、二番目の問題で資産形成の問題、これは大変大きなテーマです。  私は、いつもひんしゅくを買うようなことを言うのが趣味でございまして、あえて言わせていただきますれば、私は資産形成大変結構だと思います。アメリカ、イギリスでなぜ持ち家政策が位置づけられているか。これはサラリーマンの資産形成にとって一番重要な柱が住宅でございます。なぜならば、個人にとって実物に投資できるものは住宅しかないんです。企業は、例えば機械に投資したり設備に投資したり物をつくっていますから、土地がなくてもインフレヘッジができる要素がございますが、個人は、生涯にわたって最も重要な実物投資は住宅であります。土地、住宅です。これも欧米の常識的な話になっております。  ですから、なぜ欧米で持ち家政策が奨励されるかというと、これは資産形成の側面です、財産形成です。これはインフレヘッジになります。これがなければ、インフレが起こったときみんなサラリーマンの持っている金融資産は目減りします。一体だれがこれを救うんでしょうか。これは、サラリーマンが家を持っているということが最大の防御です。しかも、それはコミュニティーの形成にもなります。自分の地域をよくすれば自分の資産価値が上がるという責任も持てます。これが民主社会の基本であるというのが欧米の考え方です。  その考え方は、実はドイツなどのような国にもありまして、ドイツは財産形成のために確かに計画でなるべく公共住宅、借地を出しますが、しかし資産の価値を利用してサラリーマンの資産形成に役立てようという考え方は十分脈々と続いておりまして、これは今話題になっております不動産の証券化という形で所有権を証券化いたしまして、それを勤労者の財形の中に組み込みます。したがって、ドイツでは財形の中に金融資産以外に土地とか住宅とかの固定資産、土地の資産がちゃんと組み込まれております。これはサラリーマン のインフレが起こったときのヘッジです。こういう形でサラリーマンの財産形成の意欲を満足させているわけです。日本もただ財産形成はけしからぬというのではサラリーマンは浮かばれないわけです。じゃ、企業だけヘッジすればいいのかということになります。ですから、これはいい形でサラリーマンの財産形成をいかに達成するかということです。  その点で、恐らく御指摘の趣旨は、今のような形の一戸建てを買わなければ財産形成ができない、それを買えない人はもう一切手段がないんだという極端な形の格差ができるような財産形成の手段は好ましくない。これをいかに小口で所有権を買い増していけるかとか、先ほどのドイツ流の不動産証券化をいかに財形に組み込むかとか、制度の問題として、やはり財産形成の意欲を満たしながら住宅サービスをいかに正常に供給するかということを考えるべきではないかというふうに考えます。
  29. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まず、岩田参考人に質問いたしますが、一物一価の法則が妥当しないその日本における一番の要因は何かということをずばりお答えいただきたいんです。  サービスなどが加わって価格が上がるという、経済要因以外に人為的にこれを崩している、そういう要因が強いんじゃないか、これは先ほど岩田参考人も指摘された。日本の場合には企業価格支配力がアメリカよりも強いということで、二ページの真ん中辺にもそのことが指摘されております。ただ、ここではその度合いが「やや大き過ぎるかも知れない。」、また「ダンピングを行っているのかも知れない。」というかなり遠慮された表現をしておりますが、むしろ私はここにこそ――というのは、特に国際競争力の強い企業国内価格支配力が強くて、それが国内市場でも圧倒的な量、質において地位を占めている、そのことが一番の原因ではないのかと思うんですが、そのことについてずばりお答えいただきたいと思います。  それから、時間の関係で飛ばしまして宮尾参考人に。  先ほどのお話で、住宅取得の可能性について視点を変えるということ。東京から拡大関東圏へ、それから住宅に近い職場と、それはそれでよく私はわかります。問題は東京の土地高騰が地方に及んで、そして参考人が言われた取得可能な土地、そこにもやっぱり及んでいるわけですね。坪当たり十万、二十万であれば確かに取得可能です。しかし、その土地はかって坪千円あるいは二千円であったものが十万、二十万になっているという、要するに日本全体が上がってしまっている、全体として高過ぎるんじゃないかというこの視点、これをやっぱり下げる必要があるということ。その要因は何か、その高騰した原因は何か。買いやすさについては御説明ありましたが、日本の土地高騰の原因についてはお話がなかったのでこれも端的にお答えいただきたいんです。私は一極集中、そして都心部の土地の需要が急激に高まってそれが投機と絡まり、また金融機関の土地への融資がこれを助長したと思っておりますが、その点について参考人はどうお考えか。これが第一点です。  それからもう一つは、参考人のお書きになった文章、これは東洋経済の昨年十二月の文章だと思いますけれども、「土地政策の目的は、」「地価を引き下げることでもなければ、土地を資産として不利なものにすることでもない。」――なかなか刺激的な言葉がお好きなようでありまして、地価を引き下げることが目的でないということ、意味が正確に理解できないので御説明いただきたいと思います。私は、この異常な高騰状況を正常化すること、その第一歩として上がり過ぎた部分を引き下げるというのは、やっぱり土地政策の一番根本ではないかと思うんですが、そこを御説明いただきたい。  それから、先ほどから不動産の証券化ということを盛んに言っておられるんです。  この調査会として昨年ヨーロッパを視察しまして、土地に対する制度考え方が全然違うんですね、多くの国で。やはり日本の場合には土地が商品化しています。しかし、土地が商品化していないことが私は各国でこの高騰を抑えているのじゃないかという理解をして帰ってまいりました。証券化ということは、この土地の商品化を一層促進して土地高騰の歯どめをむしろなくするんじゃないか、こう思うんですが、これらについてそれぞれ端的にお答えいただければと思います。
  30. 岩田一政

    参考人岩田一政君) それでは御質問にお答えいたします。  まず、日本国内市場競争の度合いがアメリカ国内市場外国市場競争の度合いと比べてやや不完全の度合いが強いのではないのかという御指摘だったと思います。その場合に、一つ企業価格支配力ということがございますが、もう一つは政府等の規制ということも価格を決定する上で重要な場合がございます。先ほどアメリカの方が、日本は場合によるとダンピングに近いことをしているのではないかという疑念を持っていたということで日米構造協議が始まったのではないかと申し上げたんですが、金融の方についても実は同じことが言えるわけであります。  アメリカの方は、日本の金融市場というのは競争が十分でない、あるいは規制が多過ぎるということで、端的な例は小口の預金というのが日本の場合には規制されていた。だんだんこれが自由化されておりますけれども、アメリカ側は、いわばその小口の預金者が低い金利しか銀行から受け取らない。銀行の方から見ますと安い資金調達コストでもって資金が集まるということで、海外に出てもそういう安い金利で集めた資金をバックにして外国市場で拡大できるということがあって、アメリカの方ではいわばこれも言葉をかえて言いますと、小口の預金者が銀行に補助金を出してやって日本の銀行の手助けをするということをしているんじゃないか。あるいは銀行が安い金利でもつて日本企業に貸し付けをするということがあるとすれば、つまり銀行のレベルで競争が十分に行われているということですと銀行は超過利潤を余り得ることができないということで、最終的には貸付先の日本企業が安いコストでもって設備投資や何かを行うことができる、それで国際競争力が強くなって拡大しているという、そういう指摘が行われたことがあるわけであります。  こういう指摘にありますように、一つ規制がございますとやはり有効な競争は妨げられるということがあります。  それから、国内企業国内市場においてどのくらい価格支配力を行使しているかということでありますが、先ほど申し上げましたように現在の時点では、現在のデータを見る限り、日本企業国内市場と海外の市場とで価格差別を余り行っていないという結論が、これは商務省通産省の共同の調査の結果出ております。そのことから考えますと、日本製品に関する限りは、価格差別行動を日本企業国内市場でとっているというのはやや考えにくいということになります。  ただ問題なのは、むしろ輸入した品物が、製品がやはり日本国内で高過ぎるという問題が残っているわけです。私は、これは逆ダンピングだというふうに申し上げたわけですが、いずれのダンピング、通常のダンピングも逆ダンピング企業価格支配力を持っている場合にそういうことが可能になるわけであります。ですから、そういう点からしますと、輸入品については、やはり日本市場というのは競争がまだやや不十分な点がいろんな理由であり得るのではないかというふうに考えております。  以上であります。
  31. 宮尾尊弘

    参考人宮尾尊弘君) 先ほど御質問のところで引用していただいたのは、私の本の「土地問題は解決できる」という大変明るいテーマの本を書きまして、その序文で「土地政策の目的は、一部で信じられているように、地価を引き下げることでもなければ、土地を資産として不利なものにすることでもない。」というところを引用していただきまして大変ありがとうございました。  これは私の実は信念でございまして、はっきり 申し上げて国際的な私自身は常識だと考えております。その一つのあらわれは、いろいろ問題はありますが、日米構造協議アメリカ側日本の土地問題を指摘したときに土地利用問題というふうになぜ言ったのか。なぜ地価問題と言わなかったのかという点であらわれております。これは、土地の利用が悪いことを地価が教えてくれているんです。地価はメッセージです。我々はメッセンジャーを殺してはいけないんです。地価が高いということは何かがおかしいということを我々に教えてくれているわけです。ですから、そのおかしなところを探して直すことが重要であって、地価が高いことそのものを下げることではありません。  我々は熱を出したときに熱を下げればいいのではありません。アメリカに私がいたときに子供が熱を出したとき、医者に行ったら水につけなさいというふうに言われました。これはアメリカでみんながやっています。しかし、水につけると悪化するばかりです。これはアメリカの医療の間違っている点であってむしろ汗をかいて出した方がよろしいわけです。あるいはもっと根本的に風邪を治す、病気を治す。  したがって、地価に焦点を当てる政策は誤りです。地価を下げることは目的ではありません。目的ということが重要です。目的はあくまで限られた土地をいかにみんな豊かな生活をするように有効に活用し、しかもそこに分配の偏りもないようにするかという経済の根本的なことが目的であって、その結果供給がふえれば地価も下がるかもしれない、そういう状況が現在の土地問題です。今土地が高いことは確かです。問題があることも確かです。しかし、それはあくまで供給を促進しなければ解決をしないということを教えてくれています。地価が高いことは土地を有効に利用しなさいということをみんなに教えてくれます。したがって地価が、問題が解決しないのに地価だけ抑えるということは、土地がいつまでたっても有効に利用されない、いつまでたっても東京にみんなが集中してしまう、今いる人を温存させる、そういう間違った配分が出てくる可能性が非常に高いというマイナス面があることを忘れてはいけません。  それから、地価の高騰が地方に及ぶというお話ですが、これは今三大都市圏の地価は非常に落ちついてまいりまして、今初めて去年、地方圏の方が三大都市圏より地価の高騰、地価の上昇率が高いという状況が再びあらわれてまいります。これを果たして、東京の地価が地方に波及してこれは困ったものだというふうに考えるべきなのか、それとも金融の引き締め等で東京、大都市周辺がやっと鎮静化してきたんだというふうにとらえるべきなのか。実際、これは地方に行って何が起こっているかということを現場レベルで見てみる必要があります。これもあくまで建前のところで議論していては始まりません。これまで地方の土地というのははっきり言って安過ぎました。全くただみたいな値段でだれも見向きもしない土地が多過ぎたんです。  今地方に行くと何が起こっているか。これは駅前のまず再開発が非常に進んでいます。どの地方の都市に行っても見違えるような町並みがだんだんとできてきております。それから、地方の郊外の高速道路沿いに非常にいいショッピングセンターができ、みんな車社会で広々と動き回り行動が非常に広くなってそれだけ生活水準が上がっております。その結果地価が上がるんです。地方の今の地価の上昇というのは非常に望ましい面がございます。  これは、もし上がらなければどうだったかということをむしろ考えていけばいいので、上がらなければそこに進出した企業が丸々利益をそれではとっていいんでしょうか。地価が上がるということは地主さんに還元されているというふうに考える側面も大いにあるわけです。ですから、その地主さんに落ちたお金がどうやって今度は再び社会還元されるかという発想が必要です。そのために、実は地方の固定資産税なり税で負担していただくなり、あるいはほかの形で社会還元をするという話が初めて出てまいります。その入り口をふさいで地価の上昇は、特に地方で上がることはけしからぬということであれば、それでは今のような東京と地方の地価の格差をそのまま固定化するんでしょうか。あるいは東京の地価を地方並みに下げることが解決になるんでしょうか。やっぱりその辺のところは、もう少し現場に即して具体的に何が起こっているかビジョンを持って、建前ではなくて本音レベルで、毎日自分たちがやっていることを本音レベルで振り返って地価の問題も考えていく、そういう時期に来ているのではないかと私自身は思っております。  それで、証券化について誤解があったようですが、これは証券化こそが、先ほどドイツの例で申し上げましたように、土地、住宅を使いもしないのに押さえるという行動をチェックする非常に有効な手段です。つまりそれは所有権と利用権を分離するわけです。その原型は借地と借家の形です、持っていながら人に貸す。今度は所有権の方をそれなりに小口にあるいは流動性のある資産に変えていって小口の需要に充てるという流れが必要です。  これはなかなか説明が難しくて、御説明しても理解されない点があるんですが、一番簡単な例は会社組織の例で考えますと、会社組織というのは初めに経営と所有が分離しまして、それがちょうど土地で言いますと持っている人と貸し家の関係と同じですが、今度は株式の形で小口に証券化されまして、投資家が所有権を持つという形で初めて企業所有が大衆化されました。そこで、昔ながらの資本家対労働者という対立が大分緩和されまして、皆が少しずつでも株を持っているということになりますから、そこで初めて持てる者と持たざる者との差が企業に関しては大分薄まってきている。それと同じようなプロセスが土地についても起こらなければいけません。まずは土地の所有権と利用権が分離される、所有権は小口に分割されてみんなが土地の所有権を持つ。そこで初めて土地を持つ者と持たざる者との格差がなくなるわけです。それがなければ、いつまでたっても持っている者に相続なりお金のある者がたくさん持って押さえている、買えない者はいつまでも買えない。それじゃ、所有権を制限しろということになりますと、その状況を固定化するんでしょうか。  もう一言言わしていただければ、今社会主義が価格のメッセージを殺したことのツケを全部味わっております。今ソ連等で起こっておりますのは、土地市場を開放して、土地をいかに私有権を認めて取引するかということを今むしろ社会主義が反省してやっている時代ですから、それに逆にそれでは市場経済のメカニズムを生かさない方向に行けというような御意見には私は賛同しかねるものです。
  32. 遠藤要

    会長遠藤要君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  33. 遠藤要

    会長遠藤要君) 速記を起こしてください。
  34. 池田治

    ○池田治君 会長から簡単にということでございますので、できるだけ簡単に質問いたします。  まず岩田参考人一物一価の原則どおりに価格決定ができるとすれば国際貿易もスムーズにいくし、国際経済調整も容易にできると思われるのでありますが、現実的には為替相場の変動で内外価格差が生じてくることが多いと。それで、完全競争を前提に国際貿易のことは論じられないというお話でございましたが、私も全くそう思っております。  最近読みました本に「日米摩擦最前線」という朝日新聞のニューヨーク特派員が書いた本がございまして、この本によりますと、ニューヨークでカメラやフィルムを買った方が日本で買うよりも安い、新宿が一番安いけれどもそこよりもまだ安く入る場合がある、こういうことが書かれております。これは、一九九〇年に書かれた本でありますから若干現在は違っているかもしれませんが、円高による相場の変動というのがかなり大きいということで、ミノルタの場合は一年間でアメリカでは計四回値上げをした、それでも円の値上 がりには追いつかなかった、その結果が米国で買う方が有利になってくる、こういう現象が書かれております。そして、これを拡大しまして、アメリカでは世界じゅうに網を張って為替の安いところの有利な市場から大量に買っては自国に輸入する、そして安く販売する、こういうことも行われているように書かれております。  これは工業製品の一部だと思いますけれども、何といいますか、円安、円高を利用して貿易価格に変動を及ぼすというものは工業製品の一部とは思いますけれども、全体の価格差に影響するような品目があるんでしょうか。貿易量の何%ということはわからないと思いますけれども、大まかなところをお教え願いたいと思います。そうでなければ、ここで幾ら我々が内外価格差を論じても意味がないことになってしまいますのでよろしくお願いします。  それから、水口参考人にお尋ねします。  これは、政府規制関連品目、酒、原料について規制があるチョコレート等、これについては内外価格差があるということでございますが、これは政府規制でございますから、政府・自民党を初めとした我々の努力にまたなくちゃいけないと思いますが、ブランド品目、香水、陶器、自動車、ゴルフクラブ等、これは日本が割高というのが特徴であると書かれておりますが、確かに私もこの前香港に行きまして香水を買いましたら、日本製の時計を一個サービスしてくれました。こういうふうに香港では非常にダンピングが行われているように思います。  そこで、これらの海外で買った方が安いというようなものにつきましては、ガットの問題も大きな問題だと思いますが、輸入業者や小売業者の経営努力といいますか、良心的努力というのも重要な要素を占めると思いますが、経済界ではいかがお考えになっておりますか、お教え願いたいと思います。  三番目に、宮尾先生にお尋ねいたしますが、土地の証券化ということは我々連合の政策局でも考えておりまして、証券化をして土地の流通を図ろうということは、サラリーマンの団体である連合でもそれを考えております。どうすれば実行できるのかというのを今政策局で検討中でございます。これも大変なことだと思いますが、もう一つ、東京圏を拡大していく、拡大東京圏をつくろうという先生のお考えも全く賛成でございますけれども、この拡大をするには日本では市街化調整区域とか農振地区指定とか、こういういろいろな制限がございまして、なかなか拡大ができないという条件があるんですが、欧米の場合はいかがでしょうか。何とか拡大をしたい、規制を撤廃してスムーズに拡大したい、こう考えておりますので、ひとつその点をお教え願いたいと思います。  以上でございます。
  35. 岩田一政

    参考人岩田一政君) それではお答えいたします。  カメラの例を引かれまして、日本製品でありながらニューヨークで買った方が国内よりも安いという、これはアメリカの大統領の諮問委員会委員をやっておりますテーラーという方がやはり同じことを指摘したことがあります。やはり二、三年前だったと思いますが、ニューヨーク五番街の話といって、ニューヨークのディスカウントハウスで買った方が日本製の力メラが随分安いという、議員の方でもわざわざそれを聞いて買いに行った方の話も聞いたことがありますが、確かに安かった時期があるわけであります。一回目の商務省通産省調査、一九八九年の十二月に公表された調査を見ますと、日本の方が価格が全般的に高い。調べた品目の、百二十一あるわけですけれども、七〇%は日本の方が高かった。日本でつくっている製品についても四割ほどは日本の方が高かったというんですね。カメラもその四割の中の一部だというふうに考えられます。  ですから調査時点、例えば一九八九年の前半ぐらいの価格を比べてみますと、明らかに日本製品であっても外国で買った方が安かったという時期があったことは間違いないだろうと思います。  ただ、こういう価格差が生じた理由としては、私最初に申し上げましたように、一つメニューコストというふうに申し上げたんですが、お店で既に値札つきで並べて、カメラ幾らと出しておいて円高になったので翌日すぐそれじゃ値札を、為替レートが三〇%値上がりしました、本当は三割アップした値札にすぐ張りかえられるかというと、売っている現場の人にとってみますと、きのうまで同じものが急に三割上がるという値札をすぐかえるというのはなかなかやりにくいんですね、並べたものを。という意味で、メニュー張りかえはすぐには行われないというんですね。ある意味では調整の期間とかあるいは調整コストというようなものが今度は、逆に考えますと安くなった場合にも同じように、それでは輸入しているものは毎日為替レートと合わせてかえてなくちゃいけないかというと、それはなかなか難しいことだろうと思うわけであります。  ということで、ある程度調整の期間が、為替レートが変わった場合も、このレートで大体落ちつくであろうという見通しが立って初めて調整が行われるということもあり得るわけであります。同様のことは、ドイツでも起こったということは最初に申し上げたとおりでありまして、二、三年あるいは三、四年という大幅な為替レートの変動があった場合に調整の期間が割合長い、思ったよりも長くかかるというのは、日本だけに限らず世界的にもある程度観察される出来事だというふうに思います。  ただ、現状はどうかというと、先ほども何度か申し上げましたけれども、日本製品についてはそうした価格差は既になくなっているという現状にありますので、その問題は、今はほぼ解消しているというふうに考えてもいいんじゃないかというふうに思います。  以上であります。
  36. 水口弘一

    参考人水口弘一君) 今先生御指摘のとおり、例えばジーンズあるいはウェア、バッグ、ネクタイ、スポーツシューズ、キャンプ用品等につきまして、一昨年の八月に総代理店経由の販売価格と並行輸入による販売価格日本で比較しましたところ、約二割から六割近い価格差があったという事実もございます。また、欧米のブランド商品と同じものを日本と香港間で比較いたしますと、まさにおっしゃるとおりでございまして、その場合も商品が正規のルートで日本に入ってきているか、あるいは価格決定権をだれが持っているかというようなことによって異なっておりますが、おおむね香港の方が日本より安いということも事実でございます。一般的にブランドのオーナーが力を持っているあるいは世界統一価格を目指しているという品目価格差は小さい。例えば、シャネルであるとかルイ・ヴィトンというようなのは、これは世界統一価格を目指しておりますので、割合に価格差はないように思われます。  しかし、総代理店制をとっている品目、これは日本の総代理店が価格や供給のコントロールを行っていることが多いものですから、日本と香港の間で大きな価格差が生じている、こういうのは事実でございます。  そこで、一つの問題としますと、先ほども申し上げましたのですが、輸入促進という問題、その場合も今申し上げましたジーンズその他での総代理店経由と並行輸入という問題がございますので、並行輸入あるいは個人輸入というものの促進ということ、これは一つ価格差を解消するという、要するに国内における競争を促進させるということになると思います。  それからもう一つは、何といってもブランドイメジーというもの、これは全く非価格競争の代表でございますので、それに対してどうするかということ、これは結局何回も話がございますように情報を公開して、ブランドイメージとそうじゃないものとの差をどう消費者が選択するかということであろうかと思います。若い人々の間では、大分従来の中年層の持っているブランドイメージと違ったブランドイメージも出てきているというふうに聞いておりますので、この辺は徐々に回復、 解消されていくのであろうと思います。また、事実私ども仕事としまして、欧米の例えばルイ・ヴィトンにしろいろいろなところからの日本のマーケットにおけるマーケティングコンサルティングという相談をよく受けるわけでありますが、彼らは彼らで現在のブランドのステータスを保ちながら、しかも高価格政策をどうするかということに必死になっておりますので、これは次第に競争はいろいろな面で激化してくるのではなかろうかというふうに考えております。
  37. 宮尾尊弘

    参考人宮尾尊弘君) まず、不動産の証券化のことについてちょっと触れられましたけれども、よく不動産の証券化はだれも口にするけれどもだれも見たことがないUFOみたいなものだということが言われまして、実は実体がないだけにいろんな人がいろんな意味で使っております。私はちょっと注意を喚起いたしたいのは、不動産の証券化ということで二つの違ったアイデアが出ております。一つは国が出そう、発行しようと、例えば土地国債とか地価インデックス債とか、大蔵省がアカウントをつくってそこで税金を入れたものを担保に出そう、それを土地と絡まそうという発想が一つございます。私が言っている不動産の証券化はそういうものではございません。これは全くアメリカドイツヨーロッパにある普通の不動産証券です。民間が民間の責任のもとで民間の投資家の資金を集めるために出す証券、これがまず第一歩です。なるべく世界的レベルに合わせる政策が第一歩です。ですから、そちらの方をぜひまず初めに整備をしていただきたいというふうに要望する次第です。  御質問にお答えします。  確かに拡大東京圏をつくるときに、日本の場合その線引き、あと農地の転用、農振法、農地法等のもとで制約が出てきております。諸外国でも確かにこういう種類の制約はないことはございません。特に農業国ですからそこに関連することはかなりありますが、しかし具体的にはそこら辺がネックになっているということではなくて、むしろネックになっていますのは各地域ごとの自治の問題で、アメリカでは各自治がかなり成長を抑制するというような策をとる地域と促進するというような地域がありまして、各地域の意見のばらつきがありますので、成長を促進するような地域にそういうものが出ていく。  ところが、アメリカの場合には興味深いことにそういうところはちょっと過剰供給になるような制度がございまして、例えば証券化が進み過ぎてお金が供給を刺激し過ぎるということで、日本と逆でどんどんつくられちゃうわけです、いいものが。そうするとつくり過ぎてレントが下がり価格が下がって、今アメリカは不動産不況に来ていますのは割と成長を促進したところが供給過剰になって不況になっている、かえって成長を抑制したところが余り供給が出ずに何とか価格がもっているというような状況アメリカでは出ております。  日本では惜しむらく、まんべんなく供給不足ですから、これは全く比較にならないのですが、日本の場合は今ある線引き、それから農振法、農地法その他は恐らくそこに持っていらっしゃる地権者の方も非常に困っている面があって、もう少し有効に利用したい、それから転用したいという使途の制約になっている面が大変大きいと思います。これは実は、私は長野県の川上村に行ったり、いろいろな大量に大規模でやっている農家でもそろそろ農地の多様化を今後考えていかなくちゃいかぬというときに、必ず農振法の問題というのが絡まってきまして大都市周辺でも線引きが問題になります。ですから、これをもう少し弾力化して地域の人の希望に合わせてやっていく、この方向にだんだんいくと思います。実は、農水省なんかももう隠密のうちにそういう話を進めて計画がどんどんできているそうですから、こういうところで議論する以前にもう底流でどんどん進んでいるようです。  ただ問題は、先ほどからお話がありますように、建設費の高騰とか金利の高騰とかいう方がむしろネックになっていて、幾らそういう制度を弾力化しても、今の状況では農家がアパート経営をしようと思っても引き合わないとか、住宅を建てるにしても資金がないとか、そういうものの方が重要ですから、これもやはり制度の問題、同時に先ほどから出てきます政策の問題と絡めて考えていくべきではないかというふうに思う次第です。
  38. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 岩田先生にまず、料金のあるいは価格の横並びという問題についてお尋ねいたします。  昨年の春、銀行の振り込み手数料が横並びであるという批判が起き、これにこたえるかのように四月から七月にかけて引き下げ並びに若干のばらつきが見られるようになりました。ただ、この横並び料金の問題というのは従来からビール業界であるとかウイスキー業界あるいはフィルム、新聞等についても問題視されてきておりますけれども、いまだに消費者から見ると横並び料金であるという感をぬぐえないわけでございます。この同時的値上げ等について有効な防止手段というのがあるのかどうか。あるいは妥当な値上げである、たとえ同時的値上げであってもそれが妥当であるということを消費者が納得できるような説明の方法がないものかどうか。その辺についての御見解をお伺いしたいと思います。  それから水口先生には、再販価格維持制度の問題についてお伺いしたいと思います。  御存じのように、現在千三十円以下の化粧品や大衆医薬品、それから著作物については再販価格維持制度が適用されているわけでありますけれども、消費者から見ると、こういう制度があるのを知らないという人や、この制度というのは専ら売る側の利益を守るためにあるのじゃないかというような見方をされているように思われます。例えばCDだとか録音済みのテープというのは、今この再販価格維持制度の枠外のように承知しておりますけれども、アメリカと比べてみますとおよそ日本の場合は倍になっているように思うんです。消費者のプラスにもなっていない。あるいは、そのために横並びじゃないですけれども、レコードが再販価格維持制度を適用されているからCDも多分そうじゃないかというような誤解をさせて売っているのではないかというような疑問も出てくるわけであります。こういうようなことを考えてみますと、再販価格維持制度というのはもう現状では廃止すべき時期に来ているのではないかと思いますが、御見解を伺いたいと思います。  それから宮尾先生には、家賃補助の問題についてお伺いします。  先ほど持ち家促進を図るには、所得、資産面での補助を行うことが有効であるという御説でございましたが、これに関連しまして税制上住宅取得控除を認めているように、家賃に対しても補助制度を設けてはどうかという意見がございます。どの程度補助できるか、それにもよりけりだと思いますけれども、私は一般的に考えて補助をしたから持ち家が進むとは思えないんです。むしろ今必要なのは、安い公的な住宅をふやすということの方が優先課題ではないかと思っているんですが、御見解を承れればありがたいと思います。  よろしくお願いします。
  39. 岩田一政

    参考人岩田一政君) それではお答えしたいと思います。  先ほど御質問は、銀行の例えば手数料というのが横並びで決まっていて、引き下げる場合も同じ幅でしか下げないという問題の御指摘があったわけであります。特に日本の銀行界あるいは金融業の銀行業というようなものをとってみますと、戦後考えてみても、新規参入というのはほとんど起こってない産業でありまして、逆に統合、より大きな銀行、効率化するために中小の金融機関が統合して大きくなるというようなそういう動きはあったわけでありますが、外から入ってくる場合になかなか入りにくかったという問題点があるわけであります。  金融の問題につきましても、日米構造協議で資本市場に対するアクセスがアシンメトリーがある のではないかという、企業が直接投資を行う場合でも、今アメリカ日本を比べてみますと、日本アメリカに投資している分の十分の一ぐらいしかアメリカ企業日本に直接投資をしていないという問題があります。金融業をとりましても、銀行のマーケットシェアというのは、比べてみますと日本の銀行はアメリカで一二%ぐらいのシェアがあって、日本外国の銀行というのは〇・四%ぐらいしかシェアがないという、直接投資の分野でのマーケットアクセスというのも問題になっているわけであります。  こういう横並びといいますか、手数料がこれまで逆に言いますと非常に高い水準で固定されていたということは、いわばプライスリーダーというのが存在して、そのもとでみんな横並びで価格を決めるということがどうも行われやすかった。これは手数料だけではありませんで、プライムレートの決定についても実は類似したような価格の決定が行われているわけであります。こういうプライスリーダーがあって追随者がそれに横並びにするというのは、やはり競争の度合いが余り十分でない場合にそういうことが起こりやすいということは言えると思います。  先ほども申し上げましたが、第一回目の商務省通産省合同調査というようなのを見ましても、例えば資本財について、やはりプライスリーダーでもって価格を決めるということが、日本の場合には行われやすい状況にあるのじゃないかということが多段階の流通の部門の問題と二つ並んで指摘してあるわけであります。  ですから、日本国内市場というのはある意味で非常に競争が厳しい面があるわけでありますが、プライスリーダーでもって価格が決まるという分野もやはり存在していることは事実として、例えば銀行の手数料なんかを見ますとあるのではないかというふうに思います。  以上であります。
  40. 水口弘一

    参考人水口弘一君) 私、本来は専門は金融資本市場の問題でございますので、先生へのお答え、一つは今岩田先生がお話しになりましたけれども、やっぱりプライスリーダー方式ということで、特に金融ではこれが最後の牙城でございますが、私は金利規制が全部なくなった段階でこれらが自然になくなって競争が出てくるであろう、こういうふうに考えております。ただ、独禁法の適用除外として取引上の手数料のような公共的立場からの統一料金というのはあるわけでございます。  次に、再販価格維持の問題、これは私は基本的に、個人的見解としても先生のおっしゃるとおり廃止してしかるべきであろう、こう考えます。ただ、その場合において非常に業界なりあるいはその価格体系に大混乱を起こすというようなことは、現実的な配慮が必要かと思いますけれども、大きな流れの方向としたらすべて自由化の方向へ行くべきであろう、このように考えております。
  41. 宮尾尊弘

    参考人宮尾尊弘君) まず家賃補助等の件ですが、持ち家について所得面、資産面で補助をするというのと同じように、やはり家賃補助という形が、恐らくこれから借地・借家法の改正によって家賃がある程度上がらざるを得ない場合、お年寄りが今既に建てかえによって出ていかなくてはいけない場合、家賃が上がる場合、特に公団、公社の住宅が建てかわるときに家賃がどうしても上がらなくてはいけない、これは国民の税金をいかに有効に使うかという要請からも上がっていくときにどういうふうに解決したらいいか。これは家賃を抑えているだけでは解決にならないわけです。ですから、家賃はちゃんとした水準に上げるけれども、そこにぜひ入っていただきたい方にはオープンな形で援助をするというのが唯一合理的な解決です。これ以外に解決方法はないんです。したがって、いかに一見余り効果がないように見えてもこれは正しい方向です。  先ほどちょっと、少しぐらい税金をまけても持ち家を余り持てるようにならないというふうにおっしゃいましたが、もともと持ち家をどうしても持たなくちゃいけないという層はごく限られているわけです。ですから、その限界的なところに対応するための限界的な政策としてはこの補助のあり方が一番重要です。そのときに、一体だれがその補助を負担するかという負担の問題を間違えると、この補助も非常に供給制約的になりますし、問題が起こります。  現在、東京の幾つかの区がやっておりますのは、開発者、デベロッパー、あるいはそこにいる企業に基金を拠出させ基金をつくって、その中でそれを運用させた利益で補助をしていこうという政策がありますが、これは若干注意が必要です。こういう形で負担を一つのところに集中することがいいのかどうかということは考えるべきであって、これは元来もう少し幅の広い税金の使い方、ここに例えば固定資産税なりほかの税金の負担の問題が考えられるべきだというふうに思います。しかし、基本的に所得面、資産面、家賃面の補助をするというのが正解です。  それから、公共住宅をやはり張りつかせるというんですが、これは大変注意が必要で、実は今日住宅問題でかなりのネックになっているのが既にこれまで建てられた公共住宅です。これが大変低層化し老朽化し建てかえられずに、しかもそこに入っている人は本来の要件を満たさないほど所得や資産がふえている方が専らで、東京なんかはもう、そういう本来困っている人のはずが、車を一台も二台も持っていて駐車場もつくってくれというふうに要求しているような世の中で、さらにその問題を悪化させるような公共住宅をふやすということは全く逆行しております。ですから、それは恐らく御質問の趣旨ではないと思います。広い意味での公共住宅がどうあるべきかということをこれから考えていくべきで、これは明らかに民間のいい住宅を、貸し家を建てたい人に金利の補助をするとかという補助のあり方の問題だと思います。ですから、これも幅広い補助のあり方をどうするか、民間の活力を生かすための補助のあり方、その負担のあり方、それを検討するというテーマとして考えるべきだというふうに思います。
  42. 遠藤要

    会長遠藤要君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言お礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、大変先生方には御多用のさなかにもかかわらず、挙げて調査会のために御出席を煩わし貴重な御意見を賜りましたことに対し、心から御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。  本日お述べをいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと思います。調査会を代表して厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十七分散会