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参考人(
畑中達敏君) 御指名をいただきました
住宅新報の
畑中でございます。
私も
石原先生と同じく
住宅・
都市整備公団の
基本問題懇談会の
委員をさせていただいており、
家賃部会にも所属しております。また、
仕事柄、
家賃問題に接する
機会もありますので、そのようなことも踏まえまして、
意見を述べさせていただきたいと存じます。
さて、今回の
改定でございますが、この
見直しは
前回の六十三年の
改定の際に設けられた
ルールに従って行われておりますので、
見直し自体は、いわば既定のことと言っていいのではないかと存じております。無論、そうはいいましても、入居者の
方々にとっては
負担がふえることでもありますので抵抗を感じておられると存じますが、経済や社会が変動しておりますので、どのような料金でも二年に一回、あるいは三年に一回くらいは
見直しをするのはやむを得ないことではないかと存じております。
特に、
公団の
家賃は、過去に長い
期間見直しを行わなかったといういきさつがあり、かなりのひずみが残っておりますので、
見直しの必要は他の料金などよりも一層強いのではないかと思っております。
このひずみの第一は、同じ
公団賃貸住宅でありながら、
建設時期の違いや入居時期の違いなどによって
家賃負担にかなりの不
均衡があるということであります。例えば、一平方メートル当たりの
平均家賃額を見ますと、六百円から千三百円以上という開きがありますし、同じ
管理開始年度のものでも六百円のところと九百円余のところとがあります。しかも、立地条件がよく通勤が便利なところが安く、そうでないところが高いといった不
均衡も少なくないと言われております。
古くから住んでいる人の継続
家賃は既得の権利があるのだから安くてもいいという考え方もあろうかと思いますが、それも
程度の問題ではないかと存じますし、それ以上に、公的な施設である
公団住宅は公平ということが大事ではないかと考えております。入居者が不公平感を抱かないように公平の観点から
家賃のあり方を見直す必要があると存じます。
ひずみの第二といたしまして、民間の
賃貸住宅の
家賃との不
均衡の問題があります。
今回の
家賃改定の
申請書によりますと、
改定を見込まれている三十五万七千戸の現在の
家賃額は
平均三万二千三百円となっております。その約半分が二万五千円から三万五千円のところに分布しております。
公団の
家賃と民間の
家賃とを正確に比較するのは必ずしも簡単ではありませんが、私のおります
住宅新報社がことし二月に調べた民間
家賃の
調査、これは毎年二回
調査しておりますが、それによりますと、この二月の
家賃の
水準ですが、
東京圏の二DKのマンション、広さが四十平方メートルで、安いところが九万円、高いところは十二万六千円くらいとなっております。大体これは駅から徒歩十五分くらいのところをとっております。安いところの九万円は建築時期の古いもの、高いところの十二万六千円は新築と考えていただいていいと存じます。
公団の二DKと同じくらいの広さと思いますが、
公団家賃は
平均三万二千三百円ですから、これで見る限り、
公団の
家賃は民間の三分の一ないし四分の一くらいということになります。
また、別のところの
調査ですが、
公団の赤羽台
団地とその付近の民間マンションを比べたものがございます。それによりますと、
公団の三DK、広さ五十一平方メートルの
現行継続
家賃が四万五千二百円、これに対し、ほぼ同じ広さの、駅までの距離もほぼ同じ民間マンションの
家賃は十三万八千円となっております。四万五千円と十三万八千円、やはり
公団の
家賃は民間の三分の一くらいという数字になっております。
この二例だけですべてを尽くしているとは言えませんが、相当の不
均衡があるのは間違いないと考えられます。マンションでなくアパートを見ましても、
東京圏の場合、一DKで五万円から七万円、二DKですと七万円から十万円となっております。アパートの一DKでも
公団の二DKの
家賃より高いということになります。
こういう比較をしたからといって、
公団住宅の
家賃を民間並みにすべきだとか、あるいは市場
家賃を導入すべきだということではございません。民間
住宅の
家賃の決まり方は、投資に対する利回り採算とかあるいは市場の需給関係によって決まっておりますが、
公団の
家賃は、
対象とする中堅勤労者の
所得やそれに対する
負担率を尺度として決めております。その尺度に合わせるために財政資金や各種の
措置による国の援助が行われているわけです。その点が大きく違っているところであると思います。
しかし、尺度やアプローチの仕方が違うからといって、民間の
家賃水準と全くかけ離れた低い
水準でいいかというと、そういうことではないと思います。
使用価値から見て余りに低い
水準では、たまたま
公団住宅に入居している人たちだけに過度に恩典を与えることになり、社会全体として公平を欠くことになると思われるからです。特に最近は
住宅価格が高くなりまして、
賃貸住宅に対するニーズが非常にふえております。当然、
公団の
賃貸住宅の入居希望もふえておりますが、入居できずに高い
家賃の民間の
賃貸住宅に入っている人が多数おります。そういう人たちとの公平を図るために、やはり定期的に
家賃の
見直しを行い、適正な
水準の
家賃にして不
均衡を是正していく必要があると存じます。また、余りに低い
水準の
家賃は、社会的に見て資源の適切な利用ということからも問題があるのではないかと考えられます。
次に、
家賃改定の
算定方式ですが、この
ルールに使っておりますのは
公営限度額方式で、
償却費算定の建築費、推定再建築費率の伸びを三分の一に抑えたり、地代の
算定に当たりましては
地価のバブルが入らない
固定資産税評価額を使っており、
改定家賃額がそう高額にならないようになっております。この
公営限度額方式が万全なものとは言えないかもしれませんが、現在のところこれにかわるいい案がございませんので、この
方式で
算定したのは妥当ではないかと考えております。
しかし、この
方式にも疑問がないわけではありません。一番疑問を感じておりますのは、継続
家賃と
空き家家賃の
算定方法が違うという点です。両方とも
公営限度額方式を使い
公団独自の地域
補正をしておりますが、
空き家家賃の方はそれをそのまま
改定額としておりますのに、継続
家賃はそのように
算定された額の二分の一を
改定額としております。また、
空き家家賃の地代
算定はことし一月一日の
固定資産税の
評価がえの
評価額を使っておりますが、継続
家賃は三年前の
評価額を用いております。この
方式でいきますと、いつまでたっても不
均衡が縮小しない、逆にあるいは拡大するのではないかという懸念もございます。
最後に、今回の
改定額ですが、
平均一二%、三千九百円の
引き上げとなっております。かなりの額のようにも思われますが、一年分にすると千三百円ですので、そう無理のある
引き上げ額ではないというふうに考えております。
これで私の
意見を終わらせていただきます。