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1991-06-26 第120回国会 参議院 決算委員会 閉会後第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年六月二十六日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月十九日     辞任         補欠選任      高井 和伸君     井上 哲夫君  六月二十日     辞任         補欠選任      井上 哲夫君     高井 和伸君  六月二十四日     辞任         補欠選任      高崎 裕子君     上田耕一郎君  六月二十五日     辞任         補欠選任      秋山  肇君     星野 朋市君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         及川 一夫君     理 事                 大浜 方栄君                 後藤 正夫君                 守住 有信君                 会田 長栄君                 千葉 景子君                 猪熊 重二君     委 員                 石渡 清元君                 尾辻 秀久君                 鎌田 要人君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 陣内 孝雄君                 野村 五男君                 福田 宏一君                 星野 朋市君                 梶原 敬義君                 喜岡  淳君                 西岡瑠璃子君                 渕上 貞雄君                 木庭健太郎君                 上田耕一郎君                 林  紀子君                 高井 和伸君                 三治 重信君    国務大臣        運 輸 大 臣  村岡 兼造君        労 働 大 臣  小里 貞利君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 堯躬君    説明員        人事院事務総局        給与局給与第三        課長       石橋 純二君        総務庁行政監察        局監察官     勝野 堅介君        科学技術庁研究        開発局海洋開発        課長       三木 義郎君        国土庁土地局土        地利用調整課長  伊藤 威彦君        大蔵省証券局業        務課長      堀田 隆夫君        大蔵省銀行局銀        行課長      福田  誠君        厚生省社会局更        生課長      松尾 武昌君        厚生省援護局庶        務課長      田島 邦宏君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    井山 嗣夫君        運輸省国際運輸        ・観光局長    寺嶋  潔君        運輸省地域交通        局長       水田 嘉憲君        運輸省地域交通        局陸上技術安全        部長       松波 正壽君        運輸省港湾局長  御巫 清泰君        運輸省航空局長  松尾 道彦君        労働大臣官房長  齋藤 邦彦君        労働省労働基準        局長       佐藤 勝美君        労働省婦人局長  高橋柵太郎君        労働省職業安定        局長       若林 之矩君        建設省建設経済        局宅地開発課長  橋本 万里君        建設省都市局区        画整理課長    西  建吾君        建設省都市局公        園緑地課長    中山  晋君        建設省道路局有        料道路課長    佐藤 信彦君        建設省道路局高        速国道課長    荒牧 英城君        会計検査院事務        総局第三局長   中北 邦夫君        会計検査院事務        総局第四局長   白川  健君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計歳入歳出決算昭和六十三年度特別会計歳入歳出決算昭和六十三年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十三年度政府関係機関決算書(第百十七回国会内閣提出) ○昭和六十三年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百十七回国会内閣提出) ○昭和六十三年度国有財産無償貸付状況計算書(第百十七回国会内閣提出) ○平成年度一般会計歳入歳出決算平成年度特別会計歳入歳出決算平成年度国税収納金整理資金受払計算書平成年度政府関係機関決算書内閣提出) ○平成年度国有財産増減及び現在額総計算書内閣提出) ○平成年度国有財産無償貸付状況計算書内閣提出)     ─────────────
  2. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十四日、高崎裕子君が委員辞任され、その補欠として上田耕一郎君が選任されました。  また、昨日、秋山肇君が委員辞任され、その補欠として星野朋市君が選任されました。     ─────────────
  3. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 昭和六十三年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は運輸省及び労働省決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 及川一夫

    委員長及川一夫君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 及川一夫

    委員長及川一夫君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 会田長栄

    会田長栄君 おはようございます。会田であります。どうぞよろしくお願いいたします。  実は、本日の決算審査運輸省労働省所管でありますけれども、当面大きな問題となっております四大証券会社などの問題につきまして、大蔵省に来ていただきましたから、これを第一に質問してまいりたい、こう思っております。  既に御承知のとおり、四大証券会社不祥事は今や内外から批判を受けている。まあ、日本の国策では今や国際協調、連帯というのはすべての面で強調されておりますが、この問題はとかく国内だけでなくて国外からも大きな批判を受けていて、これがどのように発展するだろうかということになればゆゆしき問題でありますから、この点についてまずお伺いしていきたい、こう思っております。  平成元年十二月二十六日付で大蔵省は、証券局長名通達を出しました。もちろん、この通達を出すに当たりまして、その背景、実態というものがあって出されたわけでありますが、その内容は「証券会社営業姿勢適正化及び証券事故未然防止について」でございました。きょう時点ではこの通達が出されて、平成三年六月二十六日でありますから、この期間が一年半過ぎようとしております。  この通達に基づいて大蔵件指導監督というものが厳密に行われているとすれば、これは当然未然防止できたんだろうと思うわけでありますが、証券業界にあっては、とりわけ四大証券にあってはこの通達を無視する、なきものとしてやってきたものとしか思われない。これは証券取引法の第三十一条一項二号、第五十条の一項三号、第五十八条の不正取引禁止条項などからいって大蔵省責任はまことに重いものと私は思っています。責任のないところに政治の信頼などは生まれません。その意味では、四大証券会社不祥事というのは、まことに今日政府指導監督という面では大きな責任を持っていると私は思っているのであります。  それに反して、こういう不祥事を起こしながらも次期の日本証券業協会会長大蔵省に太いパイプを持っている人を据えるなどという動きがなされております。その意味では、どうしてもこの問題を本日大蔵省に来ていただきまして国民の前に明らかにしてもらいたいということで質問をするわけであります。  その第一は、証券会社大口顧客に対する損失補てん問題、ゴルフ会員権の購入、仲買や東急電鉄株を担保にしたいわゆる暴力団関係者に対する関連会社融資の事実、まことに連日のように報道されております。先ほど申し上げたとおり、国内はもちろんのこと、国外でも大きな反響を呼んで日本経営体質批判しているわけであります。  そこで、第一にお尋ねしたいのは、政府大蔵省調査を開始しているようでございますが、今までに把握している事実関係報告していただきたい。
  8. 堀田隆夫

    説明員堀田隆夫君) お答え申し上げます。  現在報道されております一連の問題につきましての大蔵省調査状況と申しますか、大蔵省が把握している事実関係について御説明いたします。  まず、損失補てんの問題でございますけれども先生から御発言がございましたように、元年の十二月にこれを自粛するようにとの通達を発出いたしましたけれども、それにあわせまして証券会社に対しまして、そういった損失補てん行為がなかったのかどうかということについて社内的に点検指示いたしました。点検をして、損失補てん行為があった場合には当局報告をしてもらいたいと指導したわけでございます。その結果、一部の証券会社から損失補てん行為があったという旨の報告がございました。  今、報道されている大手四社の損失補てんの中で、いわゆる何と申しますか税務申告上、自己否認しているとされている部分につきましては、基本的にこの自主的な報告の中に入っております。この自主的な報告の分につきましては、私どもとしましては、その報告を聴取いたしまして、関係会社に対しまして厳正な社内処分を要請し、また再発防止に向けて内部管理体制強化指導したところでございます。  それから、そのほかの問題といたしまして報道されています損失補てんの問題、未申告というような形で報道されておりますけれども年金福祉事業団ども含めました別の損失補てん問題が報道されておりますが、それにつきましては、私ども証券会社から現在国税当局との間で税務上の取り扱いにつき意見交換をしている、会社としては会社考え方を国税当局に説明しているという報告を受けております。  それから、暴力団との取引の問題でございますけれども、これについても事実関係調査しておりますが、これまでのところ、先生から御指摘ございましたように、野村及び日興両証券会社関連会社融資をしていたこと、それから関係ゴルフ場会員権をそれぞれ二十億円で取得していること、それから両証券会社の本社の担当者顧客をこうした関連会社に紹介していること、それらについて報告を受けているということでございます。
  9. 会田長栄

    会田長栄君 今までの調査結果というのは毎日のように新聞報道されていますが、その欠損の補てん問題の数字というのはあのような結果に、今までの調査でなっているんですか。
  10. 堀田隆夫

    説明員堀田隆夫君) その自主報告中身につきましては、これは各社が自主的に申告してきた問題でもありますので、また通達発出前の問題が含まれておりますので、従来から公表をすることは控えさせていただいているわけでございますけれども、私どもできるだけ証券会社に対してはディスクロージャーをしろというふうに指導しておりまして、その結果一部の証券会社では自己否認額について既に公表しております。報道されている内容に近い数字になっているというふうに認識しております。
  11. 会田長栄

    会田長栄君 それでは、これと関連をしてちょっと聞きますが、海部総理大蔵大臣に対してどのような指示をいたしましたか。同時に、大蔵大臣みずからどのように今度の問題について意見を表明していますか。
  12. 堀田隆夫

    説明員堀田隆夫君) 私ども伺っておりますのは、昨日、大蔵大臣総理一連の問題について御報告を申し上げておわびを申し上げたと伺っております。その際に総理から、ちょっと言葉はそのとおりではないかもしれませんけれども一般投資家の心というものを重く受けとめて厳正に対処するようにと大蔵大臣に対して御指示があったというふうに伺っております。  私どもは、大蔵大臣からそういった指示があったと、もう既にいろいろな事実関係調査して厳正に指導するつもりにはなっておりますけれども、そういった話があったということを業界の方に伝えてございます。
  13. 会田長栄

    会田長栄君 それでは、もう一つ確かめておきます。  それは、十二月二十六日に大蔵省証券局長から日本証券業協会会長あて通達が出ている。  この通達中身を見ますと、一項から四項ある。ところが、この一項を見ますと、その結諭は何かといったら、「法令上の禁止行為である損失保証による勧誘証券取引法第五十条第一項第三号)や特別の利益提供による勧誘証券会社健全性準則等に関する省令第一条第二号)は勿論のこと、事後的な損失の補填や特別の利益提供も」となっていて、その次の言葉が非常に大事なんですよ、「厳にこれを慎むこと。」で終わっているんですよ。慎みなさいというのは、禁止していないんですよ。ここが大蔵省がなれ合いではないかと言われるこの通達が出ているんです。この点についてどのようにお考えになっているか聞かせてください。
  14. 堀田隆夫

    説明員堀田隆夫君) 先生から御指摘がございましたような文章の通達になっております。これは、何と申しますか事前に約束をして補てんする、その損失保証といったものは現在証券取引法禁止行為になっております。事後的な損失補てんというものは、そこまでは現在は証券会社禁止行為としては法令上入っておりません。  しかし、損失補てん行為というものは、証券市場、何といいますか証券取引が本来的に自己責任原則の世界である、そういう基本に関するものでありますし、あるいは顧客相互取り扱いを公平にしなければいけない、そういった公平の観点からも問題がある。これはあってはならない行為であるという認識のもとにさしあたりこういう形で通達を発出いたしまして、厳に慎むことでございますけれども、私どもとしてはこういうことはやらないようにという指導をもうしたわけでございます。  それからもう一点、この通達の中で、第三項でございますけれども、単にそれを指導するだけでなく、損失補てんの温床となりがちでございます営業特金につきましてこれを浄化する、整理するということで構造面にもメスを入れてこういった損失補てんという行為が起こらないように私どもとしては精いっぱいの指導をしたということでございます。
  15. 会田長栄

    会田長栄君 次にお伺いしたいのは、今ちょっと答えられた中身にもありましたが、住友銀行が暴力団とかかわっていたため問題となったことがありましたね。今回野村証券、日興証券暴力団への資金提供にかかわっているとしたら、したらと私申し上げておきます。報道は、すべてしているということがもうはっきりしてまいりました。だけれども、ここではしたらと、こう言っておきますが、金融機関証券会社に対する不信は決定的なものになるでありましょう。また、政府に対しても国民不信というのが増大するでありましょう。  なぜ、私はそう言うかというと、今自治省あるいは国家公安委員会、法務省、関連をいたしまして全国都道府県にどのような運動をさせていますか。県民ぐるみ暴力追放運動をやれとやっているんじゃないですか。そういうときに、これにかかわっているとすれば私は大変な問題が出てくるだろうと思うから、こうした問題について今後大蔵省がどのように一体考えているのかということをここで率直に聞きたい。明快に答えていただきたいと思います。
  16. 堀田隆夫

    説明員堀田隆夫君) 暴力団との取引の問題につきまして私どもが現在把握している事実関係は先ほど申し上げたところでございますけれども、引き続き事実関係の詳細につきまして調査をしたいと考えております。  しかし、いずれにいたしましても、今お話がございましたように、暴力団新法が制定されるなど暴力団活動の抑制について社会的な取り組みが行われている状況にございます。また、証券市場証券会社に対する信頼性確保というのが現在非常に重要な課題になっております。そうした中でこういう証券会社に対する信頼を損なうような行為、もちろん一部は関係会社行為でございますけれども関係会社行為にいたしましても極めて問題があると認識しておりまして、事実関係を把握の上、いずれ厳正に指導をしたいと思っているところでございます。
  17. 会田長栄

    会田長栄君 損失補てん証券会社に限られたことではないようです、今までの報道を見ますと。そのほかの金融機関等実態も当然出てくるだろう、こう思いますが、今後大蔵省としてはこの点につきまして調査する考えはございますか。
  18. 福田誠

    説明員福田誠君) お答えいたします。  金融機関についてのお尋ねでございますが、銀行などの金融機関の本来業務である預貸金業務につきましては、御案内のとおり、その業務性格上あらかじめ顧客との間で金利、期間その他の条件が設定され、当該条件に従って取引が行われるという意味では、いわゆるリスク商品を取り扱う証券会社業務とは性格を異にするものではないかと考えております。したがいまして、私どもとしては金融機関において損失補てんのような問題は基本的には生じがたいというふうに考えております。
  19. 会田長栄

    会田長栄君 もちろん、ここの結論で私は率直に聞きたいのは、証券会社を含めて金融機関経営体質というのがこのごろ問われているんですね。何が一番問われているかといったら、前回の決算委員会でも申し上げましたが、金もうけ第一主義の哲学が横行しているんですね。金もうけするなら何やってもよろしいという、もう法に触れなけりゃ何やってもいいという、法すれすれのところをかいくぐっているのが今日の状況だろうと思うんですよ。そういう意味ではこれは金融機関証券会社を含めて、まことに経営者、幹部の人たちにとって今日ほど倫理観が求められているときは私はないと思っているんですよ。  これを一体どのように防止していくかといえば、幾つかあるだろうと思いますが、私はこの証券会社損失補てんを受けていた企業というものが一体どことどことどこがあるのかということを明確にしたら、名前公表したら関心が強まるだろうし、ごく一部の経営陣トップグループがそんなことをやれるという状況ではなくなるだろうと私は思うんですよ。その点、この損失補てんを受けていた企業名というものを公表できますか。
  20. 堀田隆夫

    説明員堀田隆夫君) ただいまの御質問の点は、個別取引にかかわる問題でございます。もう一つ、先ほど申し上げましたように、私どもとしては証券会社から自主的に報告を受けているということでもございまして、その相手方の名前を私どもの方から公表するというのは差し控えさせていただくべきだろうと思っております。
  21. 会田長栄

    会田長栄君 要するに、証券会社、四大証券会社などから報告を受けているものをもって大蔵省としては把握している。だから、証券会社から報告のないものについては把握できないし、ましてや金融関係、あるいは補てんを受けた企業名前どもだからできないと、こう言うんだけれども、ここがやっぱり、本気になって大蔵省再発防止する気があるのかどうか、国民にそのことを決意として示すためにも私は必要だと、こう思うんですよ。  そういうところをあっさりと、企業名公表については慎重を期したい、控えさせていただきたいということになれば、この問題というのは一時静かになってもまたぞろ出てくるであろうということを私は推測せざるを得ない、こう思います。ぜひ、この次の大蔵省所管決算委員会審査のときまでにその点もう少し吟味をして、答えてほしいということをお願いしておきます。  それから、損失補てんを受けていた企業実態については当然調査していないでしょう。しかし、ここで私は聞きたいのは、年金福祉事業団も四十五億円損失補てんを受けていたという事実がはっきりしたようですね。これは事実ですか。
  22. 堀田隆夫

    説明員堀田隆夫君) いわゆる自主的な報告とは別に新たに損失補てんしていたものがあった、未申告のものがあったという報道がされているわけでございまして、先ほども申し上げましたように、この点につきましては証券会社から、現在国税当局税務上の取り扱いをめぐって意見交換をしているという報告を受けておりますけれども、そうした中に年金福祉事業団が入っているという報告は受けております。  この問題は、先ほどの御指摘にも関連いたしますけれども、私どもといたしましては、引き続き事実関係の詳細を調査いたしまして、証券取引法令あるいは通達の趣旨に仮にももとるようなことがあれば、違反するような話があれば、そこは厳正に対応するつもりでございます。
  23. 会田長栄

    会田長栄君 私はこれは、年金福祉事業団というのは公的機関でしょう、公的機関ルール違反をしているわけですよ。これは全く大蔵省として私は見逃すことできないだろうと思うんですよ。私はだから、海部総理が厳正な処置をするようにしっかりやれと大蔵大臣に言ったそうだが、そんな問題じゃないというんですよ。公的機関ルール違反しているとすれば、それは政府が、総理がみずからそのことを明らかにしていかなきゃいけないんですよ。総理に一番責任があるんですよ。そのことだけは指摘しておきたい、こう思っています。  次に聞きたいのは、証券取引公正確保観点からすれば、特定の顧客に対して損失補てんを行うことは問題でしょう。大蔵省もその認識行政指導などを行ってきたと思います。その意味では、この損失補てん、これは一体暗黙のうちに認めてきたのか、それともこういうことは絶対だめだといって否定してきたのか、この点をひとつ率直に聞かせてください。
  24. 堀田隆夫

    説明員堀田隆夫君) 損失補てんがあってはならないものであるという認識に立っていることは先ほど申し上げたとおりでございます。通達を出しまして、そうした行為がないように厳正に指導してきたところでございます。  ただ、一生懸命やってまいりましたけれども、今回一連のこういった問題が報道されるということでもございますので、私どもとしてはまことに遺憾でございますけれども一つ一つの問題について事実関係調査してそれぞれに厳正な処理をするということはもとよりでありますけれども、それに加えまして、営業姿勢適正化観点から幾つ指導強化を図っていかなきゃいかぬだろうと思っております。  今、問題になっております損失補てん証券取引法令の中で禁止行為に位置づけるとか、あるいはこれは近々にやろうと思っておりますけれども、いわゆる取引一任勘定を原則禁止する通達を発出するとか、あるいは私ども証券会社に対する検査をしておりますけれども、その検査強化を図って取引内容を厳正に検査する等、一連のことをやっていかなきゃいかぬなと思っているところでございます。
  25. 会田長栄

    会田長栄君 これは証券取引法からいったたって、大蔵省は今言うように否定をしましたね、こういうことは。  そこで具体的にお伺いしますと、一九八九年十二月に大和証券損失補てんが問題となった際、実はこの通達というのが出されているんですね。大和証券のようなことを二度とやっちゃいけないといってこの通達を出しているんです。しかし、その温床となっている営業特金を禁止しようとしたが、それまでは認めてきたということになるんでしょう。そうでしょうか。
  26. 堀田隆夫

    説明員堀田隆夫君) そのとおりでございます。  営業特金は、いわゆる特定金銭信託の中で、投資顧問契約がついていない、顧客が信託銀行に運用を指図する、指示するというタイプのものでございまして、これは、それ自体はまあ普通の財産運用、資産運用の一つの形態かと思いますけれども、しかし、実際に営業特金の運用を見ていますと、顧客が指図するというのではなくて証券会社が一任的に運用するとか、あるいはある意味ではそれが原因でありますけれども、利回り保証とか損失補てんの温床となるあるいはいろいろなトラブルの原因となるということを考えまして、元年末の通達におきまして営業特金の整理を図る、浄化をするということを行ったわけでございます。  具体的には、その営業特金につきまして、投資顧問契約のついたものとする、あるいはそうしない場合には顧客から売買一任や利回り保証等は行わない、求めないという文書による確約をとれ、とってほしいというふうに指導したところでございます。そのいずれかをやってもらいたい。平成二年じゅうにそういう整理措置、浄化措置を講じてほしいというふうに証券会社指導いたしまして、一年たった平成二年末ではほぼ一〇〇%そうした措置がとられたと私どもは理解しております。
  27. 会田長栄

    会田長栄君 この通達が出された後も、九〇年三月決算期において四大証券会社で四百五十億円の損失補てんを自主申告させた、もちろん大蔵省にも報告させた、こういうことであります。ところが、自主申告をさせて、それ以降また申告漏れがありましたというのが今日の実態でしょう。証券会社、事業会社あるいは大蔵省との何となくもたれ合いでないかというのが国民一般のあるいは一般株主の意見になっている。その点についてはどういう見解をお持ちですか。
  28. 堀田隆夫

    説明員堀田隆夫君) 自主報告以外にも損失補てんがあったのかどうかという問題につきましては、新聞報道がされておりますけれども、そこは現在、国税当局会社の双方におきまして意見交換が行われている状態でございます。私どもとしてもそれなりに事実関係を聞いているというところでございますけれども、まだこれが損失補てんかどうかということを認定する段階には至っておりません。  しかし、この損失補てん問題全体につきましては、先ほど申し上げましたように、通達を出して、報告をとって、その報告に基づいて厳正な社内処分等を実施する、あるいは営業特金の原則廃止といいますか浄化をする。行政としては必要な措置を講じてきたと私ども考えておりまして、そういう何といいますか、もたれ合いみたいなことで批判されるのは心外でございます。
  29. 会田長栄

    会田長栄君 最後にお伺いしますけれども証券取引法第五十条では損失補てんは、事前に約束する行為、事後に約束する行為、これはもう禁止しているんです。大蔵省通達を出して強力に指導していると言う。しかし、とまらない。最初この事実が発見されるや、そんなことありませんと必ず経営者は断る。しかし、だんだん追い詰められていくと、一日ごとにその金額が拡大をする、こういう状況になっていましょう。  そこで最後に、大蔵省は、金融関係証券関係人たちが次々とこういうことをやっていったら一体国民信頼、株主の信頼というのは得られるのかということなんですよ。しかし、今日の証券取引法には条項はあっても罰則規定はない。大体重要な法案というのは肝心なところが抜けているということがわかったんですが、その点で大蔵省は今後どのように一体、こういうことが二度と起きないように、再発防止するために今検討されているか、その中身を聞かせてください。
  30. 堀田隆夫

    説明員堀田隆夫君) 損失補てんは、現在は通達で自粛を指導しているということでございまして、事前に約束をする損失保証は証取法で禁止されております。証券会社禁止行為として書かれておりまして、これに違反する場合には、免許の取り消しあるいは営業の停止といった行政処分あるいは役員の解任といった行政処分をすることができるという規定になっております。  この損失補てんは、現在は通達で禁止しているところでございますけれども、なかなか事実認定に難しい面があるといった問題がございますが、証券取引法は金融制度改革の関係で抜本的な改正が予定されているところでもございますので、この損失補てん法令上の禁止行為に加えるということにつきまして、今後の検討課題として精力的に検討をしてまいりたいと思っております。  それから、先ほども申し上げたことでございますけれども、一任運用、取引一任勘定というのが問題でございますので、そこは原則禁止と指導強化する、規制を強化する通達を、これも本来でありますと証券取引法の手直しを要する話で、それは同時に抜本改正の中で手当てをしたいと考えておりますけれども、事は急ぎますので、取引一任勘定の原則禁止を内容とする通達を近々に発出したい。そういった形で構造面に制度面に手を入れまして、行政としては再発防止に向けて取り組んでいきたいと思っているところでございます。
  31. 会田長栄

    会田長栄君 これは、今後開かれる決算委員会大蔵省所管のときまでに詳細にわたってその再発防止のための具体案、私から言わせればこの証券取引法の法改正まで含めて検討しなければいかぬと、こう思っているところでありますから、そのときまでに検討して、具体的に明らかにしてほしいとお願いしておきます。  それでは、次に移ります。身体障害者の自動車にかかわる消費税問題について現状はどうなっているか、そして今後具体的にどのように検討していくか、これをお聞かせ願いたい、こう思います。
  32. 松尾武昌

    説明員松尾武昌君) 身体障害者の社会参加にとりまして自動車の役割というのは大変重要でございまして、従来、物品税の段階では非課税でございましたが、消費税の導入に伴いまして税の対象になりました。それに伴いまして厚生省といたしましては、障害者の方の福祉の措置としまして生活福祉資金、これは障害者の方の就業や技能習得のための低利で融資する制度でございますが、生活福祉資金の対象といたしまして融資で障害者の方に行ってまいりました。  先般の国会におきまして全会一致の議員立法という形で消費税の見直しが行われまして、この際、障害者の物品につきまして非課税措置がとられました。その中で、身体障害者の方が障害の程度に応じまして改造しました改造自動車、これにつきまして非課税措置をしていただくことになりまして、十月一日から施行する予定でございます。  以上でございます。
  33. 会田長栄

    会田長栄君 障害者福祉、この問題に関連しては、大変政府は理解ある見解を常に示している。障害者の足と言えば、これは車。したがって、健常者の足に税金はかかっていないわけでありますから、障害者の足と言われる車に消費税をかけておくようでは、これは政治的に私たちも問われる。そういう意味では、障害者の自立、社会参加と銘打って今日努力しているわけでありますから、もう次の国会までにぜひ解決できるようにしてもらいたい、この考え方を述べておきます。  それで、次に移ります。  平成二年度タクシー料金改定問題でありますが、同僚委員の西岡議員が質問するわけでありますから、私からはただ一点、一つお伺いしておくのは、平成二年度のタクシー運賃改定のときに運輸大臣も労働大臣もこの席上で述べられました、国会の中で述べられました、これは給与改定、労働条件改善に使うんですと。これほど明確に答えたということは、私は余り聞いたことがない。  そこでお聞きいたします。果たしてこの運賃改定に伴ってタクシー業務に携わっている労働者の給与改善、労働条件改善に主たるものとしてこの財源が使われたかどうか、その調査はし終わったか終わらないか、この一点聞かせてください。
  34. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) お答えいたします。  今回の運賃改定に伴います労働条件の改善につきましては、その着実な実施を確保するため、各陸運局において運賃改定実施から一定期間経過した後にその具体的な実施状況について事業者から報告を現在求めているところでございます。現在、その内容につきましては、いろんな地区ごとにまちまちでございますが、出ておるところにつきましては集計作業を鋭意やっているところでございます。大半のところにつきましては今後出していただくというふうな形になろうかと思います。
  35. 会田長栄

    会田長栄君 調査結果はいつまとまりますか。
  36. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) お答えいたします。  一番最初に今回の運賃値上げをやったところでございますが、それは東京あるいは横浜地区でございます。こういう場合でも本年四月を報告の期限といたしているところでございます。先ほど申し上げましたとおり、現在その集計作業を鋭意行っているところでございます。その結果につきましては、一番早いところでも取りまとめは来月ぐらいの段階になろうかと存じます。
  37. 会田長栄

    会田長栄君 これは運輸大臣にお願いしておきますが、労働大臣にも。私の調査結果から見れば、運輸大臣と労働大臣が国会の場で答弁したような実態にはなっていない。私の調査ですよ。したがって、一カ月過ぎたら調査結果はまとまるそうでありますから、そのまとまった段階で改めて両大臣として業界をぜひ指導してほしい。その約束ができますか。
  38. 村岡兼造

    ○国務大臣(村岡兼造君) 今、局長が答弁いたしまして、早いところで来月中にまとまると。先生のあれでは私どもが言いました指導方針になっていない、こういうふうなお話でございますが、その結果を踏まえて、もし運賃改定のときの条件に合っていなければ指導していきたい、こう考えております。
  39. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) 私ども労働行政の立場から申し上げますと、御承知のとおり、関係県の労働基準局を通じましてただいまお話がございましたような観点から御指導申し上げておるところでございます。  申し上げるまでもなく、各団体を通じまして労働時間を中心に労働条件の改善を図っていただくように指導、督励をし、かつまたその結果を御報告願いたいと、かようないきさつになっておりまして、ただいま運輸大臣が御答弁になりましたような気持ちにおきまして今後見守っていきたいと思っております。
  40. 会田長栄

    会田長栄君 第三セクターと在来線の整備の問題については、時間の関係上まことに申しわけありませんが、次の機会のときにさせていただきまして、私の質問を終わります。
  41. 千葉景子

    ○千葉景子君 本日は女性の労働関係などについて、それを中心にして質問をさせていただきたいというふうに思います。  ここ数年来にわたりまして男女雇用機会均等法が施行され、そしてまた労働基準法の改正もあり、また労働者派遣法の制定もあり、そしてつい先日は、育児休業法の成立を見ることができました。大変大きく働く皆さんの職場の環境やあるいは労働法制というものが変わってきているところでございますけれども、実際にそれが実効性あるものとして定着をしているのか否か、あるいはさまざまな問題が新たに発生していないかどうか、やはり順次検証してみる必要があろうかというふうに思います。  とりわけ、男女雇用機会均等法につきましては施行後五年が経過をいたしました。これは当初からさまざまな問題も指摘をされてもおりました。  例えば、募集、採用などはこれは努力義務である、あるいは昇進、昇格などについても努力義務ということで、実際に実効が上がるかどうかという懸念も示されてきたところでございます。しかし、例えば退職、定年、解雇などのような問題についてはやはりこの法律に伴って一定の成果も上がってきている、そしてまた法律の趣旨を生かした取り組みなども進んでいる、こういう面も当然私たちは評価をしていかなければいけないだろうというふうに思います。ただ、この男女雇用機会均等法も一定期間経過をした後に見直しをするということも規定をされているところでございまして、やはり実際の労働現場の状況などを踏まえてその辺の検討をそろそろしていかなければいけない、そういう時期でもあろうかというふうに思います。  そこで、まずお尋ねをさせていただきたいというふうに思いますけれども、この五年を経過し、一定期間経過後の見直しというのが規定をされている、こういう均等法を踏まえて、この見直しの問題などについては労働省としていかなる見解を現在お持ちになっていらっしゃるか、まずその点についてお考えを聞かせていただきたいと思います。
  42. 高橋柵太郎

    説明員高橋柵太郎君) 男女雇用機会均等法、五年を経過いたしました。先生指摘のように、この均等法の施行を契機といたしまして、男女を問わない求人の増加あるいは新入社員研修の同一取り扱い、男女別定年制の是正等、雇用管理を法の要請に沿ったものに改善した企業が多数見受けられるところでございます。  また、大卒女子の就職率の上昇とかあるいは女子の就業分野の拡大などに見られますように、女子労働者自身の職業意識や女子を積極的に活用していこうとする社会の機運も高まっておるわけでございまして、一部に問題のある企業もいまだ残っているわけではございますけれども、法の趣旨は着実に浸透しているというふうに考えているところでございます。  したがいまして、この段階におきまして、私どもはまずこの法の趣旨が着実に浸透し定着し、そしてそれに沿った改善が行われるよう施策の強化に努めることが一番重要なことであるというふうに考えているところでございます。
  43. 千葉景子

    ○千葉景子君 今の御見解でございますけれども、やはり実際の状況を把握するためにはいろいろな現場の状況などの実態把握、そういうものが不可欠であろうというふうに思うんですね。その点については、この間あるいは現在その辺の調査とかあるいは把握はどういう形で行われておりますでしょうか。あるいは今後も行っていく、継続をしていくおつもりなのか、その辺の実態把握についてはどんな状況でございましょうか。
  44. 高橋柵太郎

    説明員高橋柵太郎君) 施行の実態を把握する方法はいろいろございまするけれども、まず私どもといたしましてはこの均等法の趣旨が徹底いたしますように、この均等法の均等促進月間というものを設けまして集中的な啓発活動に努めているところでございます。毎年、一つは事業所訪問調査ということを行っておりまして、これによりましてその普及啓蒙、そしてこの法の趣旨がどのように徹底しているかを把握をしているということが一つでございます。  それから、さらに事業所におきまして、企業においてどのようにこれが雇用管理に結びついているかということで、企業に均等の推進責任者というものを選任をしていただきまして、この推進責任者を通じまして自主点検を行っていただく、この自主点検によりまして法の趣旨に沿った雇用管理が行われているかどうかということを把握するのが第二でございます。  それから、各都道府県に置いておりまする婦人少年室におきまして、相談指導ということをやっているわけでございまするが、このような相談指導を通じましても事態の把握に努めているところでございます。
  45. 千葉景子

    ○千葉景子君 ぜひこれは、やはり一番この法律によって影響を受け、あるいはその権利を行使するのは働く者の側でございますので、ぜひその面からも十分な実態把握あるいは意見聴取などを今後もしていただきたいというふうに思っているところです。  さて、こういう問題がそろそろ土台に上ってくるところでございますけれども、ちょうどこういう時期、そういうことも踏まえてであろうというふうに思いますけれども、総務庁の方で調査をなさいまして「婦人就業対策等に関する行政監察結果に基づく勧告」というのをまとめられまして発表されているところでございます。六月十四日付でしょうか、これはもう既に労働省の方でも御存じのところというふうに思います。  そこで、総務庁の方にお尋ねをしたいというふうに思います。  こういう時期にこういう行政監察をなさる、そして女性の労働実態がどういう問題があるのかということを調査をなさるということは極めて適切なことであろうと私は思います、これ全体としてはですね。そして、その内容を拝見いたしましても、「雇用における男女の均等な機会及び待遇の確保対策」あるいは「婦人就業援助のための条件整備」あるいは「パートタイム労働対策等」というようような形でそれぞれやはり問題になっている部分などを中心に指摘されているということでございます。  この個々の問題につきましては、きょう詳細に論ずることはできませんけれども、ただ私は、この中で一点といいましょうか、一点といってもこれがむしろ基本的な考え方につながるだろうというふうに思いますけれども、大変気になるといいますか問題になろうという部分がありますので、指摘をさせていただきたいというふうに思うんですね。  それは、この中で「女子労働基準の見直し」という問題で「女子保護規定のうち、女子の時間外労働、深夜業等の規制の基本的な在り方について検討を進める」ことを勧告をされているわけですね。これは私は、非常に今後重要な問題であろうというふうに思うんです。そして、総務庁が一体今後の労働のあり方そのものについてどういう御認識を持っているのか、あるいは労働法制について十分な御理解をなさっているのか大変疑問に思うところなんですね。  といいますのは、現在非常に労働問題として全体として取り組まれているというのは、やはりいかに労働時間の短縮を図ってゆとりを持って人間らしく働けるような場をつくっていくか、過労死などという問題も指摘されている中で、これが大きなやはり日本全体としての取り組み課題にもなっている時代でございます。そういう中で、時間外労働の規制あるいは深夜業の拡大に対する歯どめなど、むしろそちらの方向に今私たちは取り組まなければいけない状況であろうというふうに思います。  ところが、そういう問題をわきに置いてしまって、あるいはそこには余り触れられることなく、単にその女子保護規定のうちのこういう時間外労働、深夜労働についてむしろ規定が甘いのではないかというような形で勧告をされるというのは、大変基本的な認識としてどこかに誤りがあるんではないだろうか、そんな思いがいたします。むしろ、やはり全体の状況をもっともっと改善をした上で女子の問題、もし何かあれば指摘をするということもあろうかと思いますけれども、現在はむしろ全体として労働時間を短縮していこうという方向でございますので、この辺について本当に正確に御認識があるのかどうか、その御認識をお聞きしたいと思うんです。  特に、今回の勧告そのものの調査についてもかなり事業所側の意見を取り入れられているという面も強いように思います、この調査の方の厚い資料もございますけれども。そういうことから見ると、もう一度この点については認識を改めていただきたい、あるいは正確な認識を持っていただきたいというふうに思いますけれども、総務庁としてはこの点いかがお考えでしょうか。
  46. 勝野堅介

    説明員(勝野堅介君) 御質問の勧告でございますけれども、この勧告は雇用における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る観点に立ちまして、総務庁が行いました関係行政機関や事業所等の調査結果あるいは事業者団体、労働団体等の意見を総合的に勘案して取りまとめたものでございますが、労働基準法の女子に係る規定のうち、妊娠及び出産に係る母性保護規定を除いた時間外労働、深夜業等の女子保護規定につきましては、この問題、労働時間等男子を含む全体の労働環境の動向を踏まえつつ検討される必要があるわけでございますけれども、男女同一の基盤のもとで均等な処遇等を一層推進する観点からは、さらに緩和すべきであるという意見がございまして、さらに私ども当庁の事業所の調査結果におきましても、意欲、能力のある女子労働者に均等な雇用機会と待遇を確保するためには、これらの規制がネックとなっている状況が認められたわけでございます。  このような状況から見まして、先生質問にございました労働時間の短縮という時代の要請、その中で現在その方向に向かいつつあるということを前提といたしまして、雇用における男女の均等な機会及び待遇を実質的に確保する観点から、労働基準法の女子保護規定のうち、女子の時間外労働、深夜業等の規制の基本的なあり方について検討を進めるよう労働省に対しまして勧告したところでございます。
  47. 千葉景子

    ○千葉景子君 女子の意欲のある者というようなお話もございますけれども、既に特定の業種については前回の労基法改正においても深夜業などが解禁をされているということもあるわけです。そういう意味では、今この時点でほかの問題の進捗状況もまだ不十分なままに、一般の女子労働者にこういう時間外労働、深夜業などを緩和するような方向を打ち出すということは、これは極めてまた新たな人間不在といいますか、そういう問題をもたらし、それからまた新しい差別というものも生み出していくだろうというふうに思います。  育児休業の問題なども今後施行され、どういう形で実行されるかこれから見なければいけない状況ですし、あるいは時間短縮などの進みぐあいもこれからどうなっていくか、まだそこの段階なわけですね。そういう中で、ここでこういう問題を勧告として指摘されるというのは極めて偏った考え方ではないか、やはり事業所側などに依拠した結論ではないかというふうに私は大変懸念をいたします。  そういう意味で、ここはもう一度ぜひ総務庁におかれましても、この点については再検討といいますか、十分深く考えていただきたいというふうに思っております。これは、報道等によりますと、連合など労働団体の方からも大変強い抗議の姿勢が示されているというようなことも私も耳にしたところでございます。そういう意味では、総務庁、ぜひしっかりとした態度を持っていただきたい、こういうふうに思います。これはぜひ庁内におかれましても、もう一度御検討いただくようにというふうに要請をしておきたいと思います。  さて、こういう勧告が出まして、これは直接それに携わっていくということになりますと労働省ということになります。  労働省の方では、この間、今均等法についてのお話もございましたけれども、女子の労働について、あるいは時間短縮などについても取り組みをなさってこられたというふうに思います。今の実情とかいわゆる労働法制の基本的な考え方などを踏まえて、この勧告についてどんなふうに受けとめられておりますか。なるほどそのとおりで、そうせにゃいかぬなというふうに考えられているのか、いや、また違った見解を、やはり働く者の立場ということも十分お考えいただける労働省だと思いますのでその点についてどんなふうに認識をなさっているのかお聞きしたいと思います。
  48. 高橋柵太郎

    説明員高橋柵太郎君) 総務庁で勧告をされましたうちの御指摘の労働基準法の時間外労働、深夜業等の女子保護規定につきましては、これは昭和六十年の法改正におきまして、雇用の分野における男女の均等な機会と待遇の確保を実現するために、男女が同一の基盤で働けるようその労働条件の法的枠組みを同じくする必要があるとの観点から、将来的には解消するという展望に立ちつつ、現実には、女子がより重く家庭責任を負っていること等も踏まえまして、女子に対する保護を一部緩和し、原則として存続させることとしたものでございます。  このような経緯を踏まえまして、これらの規定のあり方を考える際には、男子を含めた全体の労働者の労働条件等の労働環境、女子の就業と家庭生活との両立を可能にするための条件整備の状況等を十分勘案しつつ行う必要があると考えられるところでございます。  総務庁勧告の「労働時間等男子を含む全体の労働環境の動向を踏まえつつ、検討される必要がある」との御指摘もそのような趣旨と理解をしておりますけれども、これらの規定のあり方につきましては、なお慎重に検討すべき重要な事項でございます。当面は、これらの規定の施行状況や労働環境の動向等の把握に努めながら、必要に応じ検討を加えてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  49. 千葉景子

    ○千葉景子君 ぜひ、全体としての労働条件の整備あるいは女性の働きやすい条件づくりなどを含めて検討をいただきたいというふうに思います。  さて、こういう問題とともに、先ほど男女雇用機会均等法、私はぜひ今後の見直しというものについて積極的に取り組んでいただきたいというふうに思っているところでございます。そういう中で、確かに法の改正というだけではなくて、現状の中でも何らか改善をしていく、あるいは労働省指導を強めていただくというような部分も既にあるのではないかというふうに思います。そういう意味で、きょうは時間の都合で何点かになろうかというふうに思いますが、指摘をさせていただき、もしそういう点について、やはり労働省としての取り組み方などございましたらぜひお聞かせをいただきたいというふうに思います。  第一点は、募集、採用というものが努力義務ということになっておりますので、この点については厳しい規制というものがなかなかできにくいというのはあるかというふうに思います。ただ、この均等法が施行された後、新たに出てきた問題として、いわゆるコース別の募集、採用、こういうものがかなり現在定着をするようになってきたように思います。これは実態調査などでもそのようなことだというふうに思うんですけれども、これがある意味では新しいまた男女差別につながっているということも指摘をされ、その点については労働省でも十分に御認識を持たれているんじゃないかというふうに思います。  特に、この中でそれが問題になるのは、転勤というものが必ずコース別採用の場合、それを区分けする一つ条件にもなっているということが言われているわけですね。総合職なりですと転勤が当然あるよ、承諾を含めて総合職、それがない場合には一般職というような形で、コース別選択の条件といいますか要件のような形になってしまっている。それによって女性が現在のいろいろな社会状況の中では総合職というものをなかなか選択がしにくいというようなこともあろうかというふうに思うんです。転勤も一つの人事権でございますので、これを全く認めないというわけにはいきませんけれども、やはりそれが乱用にわたったり不合理なものであったりする場合には無効だというような判例もあるわけでして、総合職だから必ず転勤しなきゃいけない、あるいはすべきだというようなことにはならないだろうというふうに思うんですね。  そういう意味では、この実態、実質的に転勤が要件のようになっているような今の採用の仕方、募集の仕方、この辺について、ぜひ労働省の方でももう少し指導をしていただく、あるいは何らかの措置を考えていただく、そういうことはできないものだろうかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  50. 高橋柵太郎

    説明員高橋柵太郎君) 企業が女子の雇用管理をいろいろ行っていくわけでございまするけれども、その雇用管理を各人の意欲と能力に応じてコース別に区分して行う、また女子自身もみずからの意思で各コースを選択する、そういう限りにおきまして、その結果として女子労働者の働き方が多様化するということは不合理であるということは言い切れないのではないかというふうに考えております。  しかしながら、均等法におきましては、一定の募集、採用区分や職務から女子であることを理由として女子を排除しないように努めることを事業主に求めているわけでございまして、コース別雇用管理制度の運営に当たってはそれぞれのコースが女子に対しても男子と均等に開かれていることが必要でございまして、女子であることだけを理由に女子に対して基幹的コースへの門戸を閉ざすとかあるいは採用選択基準を男子よりも厳格にするというような事実がございますれば、それは均等法の趣旨に反することになるというふうに考えるわけでございます。コース別雇用管理の運用の実態を見ますと、問題のある企業も見られるところでございまするので、この制度の望ましいあり方を示してその定着を図ってまいることを考えているところでございます。
  51. 千葉景子

    ○千葉景子君 女子だということで区別をしているわけではありませんので、なかなか難しい面があろうかとは思いますけれども、実質的な現状を十分労働省の方でも踏まえていただいて御指導いただきたいというふうに思います。  それから、これは労働省の方で直していただける面ではないかというふうに思うんですけれども、福利厚生、これについては、これも当然男女平等にということになるわけですが、この中で福利厚生を受ける対象ですね。供与の対象でもあるわけですけれども、これをほとんどが世帯主ということで決められているケースが多いわけです。これは労働省の方でも世帯主でやるという、世帯主に福利厚生を供与するということは差別ではないというような御見解のようなんですけれども、ただ実際にこのように男性も女性も働いている、それぞれの家族にとってはだれが主であったり従であったりするかというのはそれぞれの個人的な考え方でもあろうというふうに思うんです。そういう意味では、世帯主ということで規定をいたしていきますと、これは実際には形の上ではほとんどがやはり男性であるというケースが多いわけです。なかなか、夫婦であって女性が世帯主で男性が世帯主でないという形はほとんど見られない、これ自体も問題があろうかというふうに思うんですけれども。  そういう意味では、ぜひここは、働く者にとってはそれぞれ平等な立場にあるわけですから、その選択はそれぞれができるようなそういうような形での指導なり通達なり、そういうことをぜひ行っていただきたいというふうに思うんです。やはり現在は、どうしても福利厚生を受けるのは男性であって、女性は男性が受けている以上はなかなか受けにくい、こういう状況が実際に存在をいたします。そういう意味では、これはほかにも家族手当とかそういう問題でもしばしば指摘をされる面ではございますけれども、ここは労働省の方でぜひ御検討いただければ、法改正ということではなしに実態として差別が解消されるということも考えられる部分だろうというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  52. 高橋柵太郎

    説明員高橋柵太郎君) 均等法におきましては、住宅資金の貸し付けとか一定の福利厚生措置に関しまして女子について男子と差別的取り扱いをすることは禁止しているところでございます。これらの福利厚生措置の中で、企業によりまして、先生指摘になられました世帯主が対象要件となっている場合があるわけでございますけれども、その場合でありましても、女子であることを理由としての差別的取り扱いが行われていなければ均等法違反となるものではないと考えております。  しかし、その世帯主の認定に当たりまして、女子につきまして男子と比べて不利な条件を課すとかそういうような場合には、これは女子であることを理由とした差別的取り扱いとなりますので指導の対象となるところでございますので、そういう点におきましては今後とも指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  53. 千葉景子

    ○千葉景子君 何となく、いま一つそれだと余り実効がないのではないかなという感じがするんです。これはまた機会がありましたら、私もぜひ研究をさせていただきたいというふうに思います。  その他、これを実効あらしめるためには、やっぱり救済の仕方が簡易にあるいは迅速に行われるということが大変必要なことであろうというふうに思います。これについては、この法の中では当事者間で解決をするというのは当然のことでございますけれども、その他には調停制度というものが設けられております。しかし、どうも私が認識している限りでは、その調停というのはほとんど使われていない、こういうことでございます。これは両者が合意しなければ使えませんので、これはほとんどやはり実効性がない。これは法制定のときにも指摘されたことではございますけれども、やはりそれが実際にあらわれているんじゃないかというふうに思うんです。  そういう中で、今かなり、先ほど御答弁にも出てまいりましたけれども、都道府県の婦人少年室によるさまざまな問題解決あるいは指導、こういうものが利用されているということもあろうかというふうに思うんです。ただ、残念ながらこの婦人少年室長による解決の仕方も、その体制の問題、これも都道府県に一つということになりますので大変不十分である、あるいは企業などに対しても直接に強制的な権限を持っておりませんので、その辺の十分な対応ができるかどうかということもあろうかと思います。  そういう中で努力をいただいているということは、大変私は評価できるところだというふうに思いますけれども、だとすれば、ぜひこの部分をもう少し充実していただく、そして積極的にあるいは迅速に、そしてだれもが利用しやすいような形にしていただければというふうに思うんです。  人数の体制、いろいろとこれは予算の面での問題もあろうかと思いますので、それは私どもも十分にまた協力をさせていただかなければいけないと思いますが、あるいはその企業に対する少し調査の権限などを考えていただく、あるいは制裁についても罰則というわけにはいきませんけれども、何らかの、例えば氏名の公表であるとかそういうようなことを含めて対処ができないものだろうか。この辺については労働省はどうお考えでしょうか。少し積極的に取り組んでいただけませんでしょうか。
  54. 高橋柵太郎

    説明員高橋柵太郎君) 企業に対する指導調査機能の充実という観点からのお尋ねだと存じまするけれども、婦人行政は、男女雇用機会均等法の一層の定着とかあるいはパートタイム労働指針の周知徹底、今回成立された育児休業法の円滑な施行とか女性が働きやすい就業環境の整備を図ることが重要な課題となっているわけでございまして、こういう課題に対応していくために、婦人行政の第一線機関でございます都道府県婦人少年室の体制整備を図る必要があるわけでございます。これまでも職員の増員等につきましては精いっぱい図ってまいったところでございますけれども、今後とも職員の増員あるいは資質向上のための研修の充実に努めるなど、行政体制の整備を図るための一層の努力をいたしてまいりたいというふうに思っております。  また、指導調査機能等につきましては、都道府県の婦人少年室を中心といたしました婦人就業対策が一層実効あるものとなりまするよう、さらに検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  55. 千葉景子

    ○千葉景子君 ぜひ、その姿勢を崩さずに積極的に機能充実などを図っていただきたいというふうに思います。  そして、その他ございますけれども一つ最近指摘をされるような問題として性的な嫌がらせ、いわゆるセクシャルハラスメントという形でも言われておりますが、なかなかこれは表にあらわれにくいとかあるいはそれが本当に性的な暴力、嫌がらせというふうに評価できるのかというような問題もございまして難しい面ではあろうかというふうに思いますけれども、こういうことによって労働の権利が奪われたりあるいは抑圧されたりというようなことになりますれば、これは大変ゆゆしき問題だというふうに思います。  そういう意味で、これはなかなか法制化というのも一朝一夕にはいかないところかと思いますが、ぜひこの点についての、例えば指導であるとかガイドラインであるとか、そういうものについて御検討をいただき、周知徹底といいましょうか、啓蒙を含めて御指導をいただきたいなというふうに思います。これは多分お考えのところあろうかというふうに思いますが、かなり社会的にも問題になっている、あるいは諸外国などでも法制化などを含めて取り組まれているというところでもございますので、ぜひその点について御見解を伺わせていただきたいと思います。
  56. 高橋柵太郎

    説明員高橋柵太郎君) 都道府県の婦人少年室におきましては、女子の就業に関する相談を受け付けているわけでございまして、女子に対しまして配置や解雇等について差別的な取り扱いが行われた場合におきましては、男女雇用機会均等法に照らし適切な指導を行っているところでございます。  先生指摘の、いわゆる性的嫌がらせ等が原因で雇用の場で女性が十分能力を発揮し、また男性と対等な取り扱いを受ける上で障害となることがあってはならないことでございますが、その実態等は十分把握されているとは言いがたいと考えますので、本年度よりこれらについての調査研究を行うこととしているところでございまして、そのような結果を踏まえまして必要な施策のあり方について検討をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  57. 千葉景子

    ○千葉景子君 均等法などにつきましては、今後も引き続き私もまた意見などを出させていただきたいというふうに思っているところでございます。  さて、この均等法に引き続いて派遣労働、これも女性なども大変多くこういう形で就労しているということもございます。ただ、なかなかこの派遣労働といいますのも派遣元と派遣先があり、その実態が把握をしにくい、あるいは訴えが出てきにくいという就労形態でもあろうかというふうに思うんですね。  これまで労働省の方でどういう実態把握をなさっていらっしゃるのか、ちょっと私も十分に伺ってはおりませんけれども、ここ最近、労働組合あるいは弁護士、いろいろな活動をなさっていらっしゃる皆さんなどを中心にして、一回どんな問題があるかということで電話相談などをなさったということも聞いているところでございます。こういう調査とかを見てみますと、やはりこれも相当な問題が出てきている、あるいは潜んでいる、こういうことがうかがわれるわけなんですね。  こういう中でも、とりわけ多く訴えが出てきたというものとしては、派遣先の都合で余り意味もなく一方的に契約が解除をされてしまう、何か気が合わないとか雰囲気が合わないとかこんなようなことすらあるようですけれども、こういうことで一方的な契約解除などが大変多い。また、予告期間ども大変ばらばらであって、急に解雇をされたり解除されたりする、こういうケースも相当指摘をされております。それから労働条件、これのトラブルというのも相当多いようですね。やはり規定をされている、決められている労働条件から全く外れた仕事をさせられている。とりわけ事務系の仕事などですと、もうお茶酌みから雑用までやらされてしまう。これはその職場にいて、いやそれはやらないとか私の仕事はここまでだから、もうそれ以上は知りませんというわけにはなかなかいかないだろうと思うんですね、実際には。  そういう中で、就労条件などが不明確である、あるいは徹底されていない、そしてそれを超えた就労が求められている、こういうようなことも大分出てきているようです。あるいは差別的な取り扱いがされている、一段低い労働者というふうな扱いがされているとか事前面接が横行しているとか、あるいはまた社会保険の関係などでも派遣元に社会保険の加入を請求しても、入れるけれども、それなら賃金をカットするというようなことまで言われているようなケースもあると。ほかにも多々ございますけれども、ちょっと目につくような問題としてこういうものを私も例として挙げさせていただきました。  派遣労働、これも何らかの形で検証をし、そしてこの本来の法の趣旨、これがどういうものであったかということを踏まえて検討していく必要が今後もあろうかというふうに思うんです。小さな調査かもしれませんけれども、こういう結果なども踏まえて労働省としてどんなふうにお考えか、あるいは今後の取り組み方としてどんなふうに考えられているか、御見解がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  58. 若林之矩

    説明員(若林之矩君) 労働者派遣事業は法律ができましてから五年間になるわけでございますが、現在約二十万人の方がこの制度に基づきまして就労しておられるわけでございまして、昨年、職業安定審議会でこの見直しをしていただきましたときに、基本的には労働力の需給システムとしてそれぞれのニードに合った形で働いておられるあるいは雇用しておられる、その派遣を受け入れておられるというようなことで、基本的には労働力の需給システムとしてうまく機能している、こういう御認識でございました。  しかしながら、やはりいろいろと問題があるということも先生のただいま御指摘いただいたとおりでございます。私も公共職業安定所を巡回いたします際にこういったケースについていろいろと状況を聞いておりますけれども、特にそういったものが現在ふえているとかそういうようなことは聞いておりませんけれども、しかしそういったようなケースもまたあることは事実でございます。そして、例えば御指摘の満了前に解雇される、契約が解除されるというようなケースがございますけれども、こういったようなものにつきましては、これは当然雇用契約そのものが解除されるわけではございません。そういった場合には他の派遣先への派遣をいたしますとかあるいは休業手当とかあるいは解雇手当の支払い、こういったような責任が出てくるわけでございます。  いずれにしても、このような事態を避けますために、派遣先がやむを得ず労働者派遣契約を途中で解除いたします場合におきましても、あらかじめ相当の猶予期間をもちまして派遣元事業主に解除申し入れを行うように派遣先が努めることが重要でございますので、派遣労働者の適正な派遣就業の確保を図るため派遣先が講ずべき措置に関する指針というものを昨年十月に策定いたしましたが、その旨を盛り込んで現在指導を進めているところでございます。  また、労働条件が当初と違うケースというようなことでございますけれども、これも実際に就労したところ、明示されました労働条件と現実の労働条件が異なるということがわかりました場合には、労働者派遣法では、派遣先におきましては派遣先責任者、派遣元につきましては派遣元責任者がそのような苦情に対します窓口となって労働者派遣契約が遵守されるように対処することとされておるわけでございまして、またそのために、派遣元と派遣先が密接に連携して誠意を持って苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならないことになっておるわけでございます。  また、先ほど申し上げました指針におきまして、法律において労働者派遣契約の定めに反することがないように派遣先で適切な措置を講じなければならないとされておりますけれども、その具体的な方法につきましてこの指針で定めたところでございまして、御承知かと存じますけれども、そういった就業条件責任者に書面で交付するとかあるいはそういったような契約がきちっと守られているかどうかを定期的に巡回するとか、そういったことが派遣先に求められております。こういったことを私ども繰り返し派遣先に対しまして指導を進めておるところでございます。  今後ともこういった指導を強力に進めてまいりたいと存じますし、具体的なケースにつきましては公共職業安定所の窓口等でお受けをいたしまして、個別のケースに応じまして適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  59. 千葉景子

    ○千葉景子君 時間もなくなりましたので、大臣、まだまだ不十分なきょうは質疑でございましたけれども、男女雇用機会均等法の実情とかあるいはこの派遣法の実態であるとか、やはりそういうことをぜひよく見ていただいて、今後の新しい取り組み方、法改正、見直し、あるいはまた新しい制度、こういうことを含めて検討いただきたいというふうに思いますが、大臣としての御決意といいますか御認識、そこを聞いて、終わりにしたいと思います。
  60. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) 時間もないようでございますからひとつきちんと結論を申し上げますが、先ほどから女子労働者の基本的権利確保の問題あるいは男女雇用機会均等、その実を上げるためのいろいろな観点からの貴重な御意見をお聞かせいただいております。さらにまた、内蔵いたしておりまする具体的な問題点あるいはまた解決を迫られる問題点、課題等もお聞かせいただいたところでございまして、先ほどそれぞれ関係局長より御答弁申し上げましたような心得を持ちまして、具体的に、そして手がたく対応してまいりたいと思っております。
  61. 千葉景子

    ○千葉景子君 終わります。
  62. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 それでは、通勤災害の問題につきまして御質問申し上げます。  この通勤災害問題につきましては法律制定までかなりいろんな問題がございましたけれども、その制定以降いろんな形で今日まで実施をしてまいりました。したがいまして、この制度の趣旨といいましょうか、立法で意図したものは一体何であったのかを御説明願いたいと思います。
  63. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) まず、基本的なところのお尋ねでございますので、私の方から御答弁申し上げますが、通勤は業務の提供を行うためにいわば不可欠な行為であり、通勤災害は業務上災害ではないが、業務と密接な関連を有する通勤の際の災害であることから、一般の私傷病とは異なった特性を有しておる、単なる私傷病以上に保護する必要があると、こういう考え方でございます。  御承知のとおり、昭和四十八年に労災保険の仕組みを用いまして通勤災害に対する保険制度を設けておるところでございます。通勤災害に対するいわゆる給付については業務上災害と同一基準でされているところでございまして、そういう一つの心得を持って対応いたしております。
  64. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 今、大臣が申されましたように、私傷病とは違うし、業務上と同一の災害として扱う、こういうふうになりまして、国は遺族補償につきましては満額支給、両方とも同じような形で支給をしてまいる。しかし、企業の場合の補償につきましては、労災と通災の場合に差が実は具体的にあるわけでありますが、そういう差のあることにつきまして、労働省としてこの差を縮めるような具体的な指導がどのようになされておるのか。その差のあることについてどういうふうにお考えでしょうか。
  65. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 労働者が業務上災害や通勤災害を受けました場合に労災保険からの給付がなされるわけでございますけれども、またそれとは別個に、今御質問でお触れになりましたように、企業独自に上積みの補償をするということが普及いたしておるわけでございます。  この実態から申しますと、この上積み補償部分につきましては、通勤災害の場合には業務上災害に比べまして、ある調査によれば低いということが出ているわけでございます。あくまでも労災補償保険法におきましては業務上災害、通勤災害、双方につきまして現在適正と思われる補償をいたしておるわけでございますが、それ以外の法定外の上積みということになりますと、これについてどのような上積み補償をするかということは、事業主あるいは労使が自主的に決定して行っているわけでございまして、特に労働省としてそこに差があるのが適切であるとかないとかというような考えは持っておりません。したがいまして、この点につきましては特段の指導はいたしていないわけでございます。
  66. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 この通災の場合に、かなり実施後問題になりました通勤のあり方等をめぐっていろんな議論があったわけでありますけれども、例えば労働者本人のミスだとか怠慢だとか不注意だとかを中心にして重大な過失にはどんな例があるか、二、三ひとつお知らせ願いたいと思います。
  67. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 通勤途上災害につきましては、社会通念上合理的と考えられる方法による通勤ということを想定しているわけでございまして、そういった社会通念上合理的でない通勤の方法というのはどういうことかという御質問でございますけれども、例えば、免許を一度も取得したことがないような方が自動車を運転するとかあるいは泥酔して自動車を運転し通勤するというような場合、それがこういうものに当たる。一、二の例を申し上げればそういうことであるというふうに解釈をいたしておるわけでございます。  しかしながら、こういった程度に至らない程度の過失が認められる場合には通勤災害としての補償は行うわけでございますけれども、重大な過失がある場合には保険給付の支給を一定限度制限をするというような取り扱いをいたしているところでございます。
  68. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 それでは、具体的にお尋ねをいたしますけれども、三月五日の日の午前八時三十五分ごろ、東京都品川区南大井五、JR東海道線桐畑踏切、遮断機それから警報機付で、静岡発東京行き上り普通電車に、遮断機をくぐり抜けて踏切内に入ってきた同区大井、バスガイドの名本晶子さん二十一歳がはねられ、全身を強く打って即死をいたしました。  なぜそういうことになったかという事故の背景につきましては、JR大森駅に待っていた会社の送迎バスが踏切の向こう側にあったわけで、そこに実は通勤のために急いでおったわけであります。事故の背景となるものは、一つにはやはり会社の福利厚生施設の問題だとか通勤の手段の問題だとかあると思います。また、後日同じ踏切で、三月十八日の日に、「開かずの踏切また犠牲者」ということで、日を置かずに二人の方が亡くなられておるわけです。  ですから、この場合、本人の不注意、重大過失の範囲に入るかどうかという問題も含めて、私は通勤災害になると思いますけれども、いかがでございましょうか。
  69. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) ことしの三月五日に、今お話のありましたような事故が起きているわけでございます。この件につきましては、五月十五日になりまして御遺族から遺族給付等の請求が所轄の監督署にございまして、現在その具体的な状況等につきましての調査を始めているところでございます。  厳密に申せば、その調査結果が出なければ結論的なことは申し上げられないということになるわけでございますけれども、この場合、遮断機の下をくぐって通ろうとした、それで死亡をされたということなんで、そういうような行為がこの通勤災害の補償においてどういうふうに評価されるか。つまり、重大な過失になるのかどうかということにつきましては、なお前後の状況等もよく調査をした上で適切な判断をしたいと、こういうふうに考えているところでございます。
  70. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 ただいま、前後の状況等を調査した上で適切な判断を後日明確にしたいということですけれども、この種の事故は現在までありましたかありませんでしたか。
  71. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) ただいま、過去にこういうものがあったかどうかということについては承知をいたしておりません。あったかもしれませんが、あったということもただいまは承知しておりませんので、ちょっとお答えはしかねます。
  72. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 では、いつごろその審理の状況については結論が出る予定になっていますか。
  73. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 監督署におきましては、常に適正であるとともに迅速に結論を出すということを心がけておりますけれども、いろいろ関係者から事情を聞く、その他の調査ということがありますので、具体的にいつになれば終わるかということはちょっと今の段階では申し上げられませんが、できるだけ早く処理をいたすようにしたいと思います。
  74. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 この種の事例の案件につきまして、そういう審理の日程は大体どれぐらいかかっていますか。
  75. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 事故の場合、通勤災害と労働災害、業務上災害両方含めての話ですが、短いものであれば二、三カ月で結論が出る場合もありますし、長いものであれば一年近くかかる場合もありますが、一般的に言いましてこの種の事故についてはそう長い時間かかるということは普通ではございません。
  76. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 恐らく九州から出てきてそこのバス会社に就職をして二、三年たって、親元を離れて働いて、そしてそういう交通事故に遭われて亡くなられたということで、親御さんの気持ちなどを考えますと、この種問題についてはやはり早急に結論を出していくべきであろう。そして、迅速に処理することが私は大変大事じゃないかというふうに思うわけであります。  そこの企業が事故が起こりまして五月の十五日まで申請をしてこなかった理由というのは何かわかりましょうか。私、質問通告はしてなかったと思うんですけれども、わかればひとつ説明していただきたいと思います。
  77. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) この遺族給付の請求は御遺族から出てくるわけでございますので、御遺族が恐らくその間いろいろ亡くなられたという大変悲しい事態で、その後のいろんな行事処理等もあったと思いますし、また、請求書をつくるについての時間もかかったかと思いますけれども、それ以外に特別の事情があったかどうかということについては現在承知をいたしておりません。
  78. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 できるだけ早くやっていただきたいと思うんです。先ほど御質問申し上げましたとき、具体的にこの種の例は承知しないということでございましたが、例えばこのような場合には支給制限というのが行われると思うんですけれども、どういうことになりましょうかね。
  79. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 支給制限がかかるかどうかは一にかかってこの方が事故に遭われたときの行動が重大な過失があるということになるかならないかということでございますので、その前後の事情をよく調べてみないと、この具体的案件についてこういうふうになるということをちょっと今の段階で申し上げることは困難かと思いますが、先生が先ほどからおっしゃいますような適正かつ迅速にというような、また御遺族のお気持ちも察しながらというその点を十分念頭に置いて処理するように所轄の署にも指導いたしたいと、かように思います。
  80. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 では、できるだけ迅速にひとつよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  この場合、この種労働災害が起きた場合の運輸省の扱いでありますけれども、本人に対する所属事業所の扱いはどういうふうな形になっていましょうかね。
  81. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) ちょっと、私直接担当ではございませんので、今担当の者が来ておりませんのであれでございますが、一般的には普通の労働災害に基づく給付が行われているだろうと思いますけれども、ちょっと詳細を存じておりませんで申しわけございません。
  82. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 先ほども申し上げましたように、この踏切において三月五日、三月十八日と事故が実は発生をしているわけでございますけれども、事故発生後、この踏切の改善といいましょうか、そういうものは具体的にどういうふうになっておるか御説明願いたいと思います。
  83. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) お答え申し上げます。  この東海道線桐畑踏切の改良問題でございますが、現在JR東日本と道路管理者、これは品川区でございますが、この両者で協議を進めておりまして、現在あります道路をとりあえず地下道化しようということで、何とか今年度中に工事に着手したいということでいろんな準備を進めている、こういうふうに聞いております。
  84. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 せんだっての踏切道改良促進法のときにもかなり議論になりましたけれども、道路と鉄道の交差箇所が全国で五万七千カ所、そのうち約四〇%、二万二千五百カ所ぐらいが立体交差に実はなっているというのをお聞きしているわけでありますが、その際費用が非常に多くかかったり工事期間が長くかかったり、あるいは地域との協議の間で非常に時間がかかったり環境の問題などがそれぞれありまして、なかなかこういう問題について促進されないし、早急に解決できない場合もありますけれども、やはり交通安全だとか踏切事故防止の観点から、同時にその踏切の周辺における公共性のことなどを考えますと、かなり思い切って予算をつけてやっていかなければならないと考えます。  踏切道改良促進法の審議のときにも議論になりましたが、費用の負担のあり方について鉄道事業者の負担と道路管理者及び都市計画事業者の負担の割合が国鉄と民営の場合に違いますけれども、それらの問題についてはもうJRになって四年以上たつわけでありますけれども、まだ協議が調っていない。協議が調わないのには幾つかの私は理由があると思うんですが、なぜ調わないのかその理由をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  85. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) お答え申し上げます。  先生、今御指摘のように、運輸省と建設省の間でこの連続立体交差につきます費用負担協定がございます。これは昭和四十四年にできておりまして、二十年ぐらいの歴史があるわけでございます。  この費用負担割合につきましては、昭和六十二年に御承知のように国鉄がJRに民営化されたわけでございます。そういうような客観情勢の変化がございます。それから、当時と比べまして高架下の利用の形態、これは高架下から出る利益が鉄道事業者の負担割合と連動するわけでございますけれども、この利用形態が従来とは大分変わってきているということがございます。それから、大都市とローカルといいますか地方とでは高架下の利用形態なんかも大分用途が違ってきているということから、従来国鉄が一〇%、それから民鉄が七%という負担割合でございますが、そういう全国一律でいいのかという議論がございます。それから、JRと民鉄がそういう差が出ていいのか、どちらももう民営事業者じゃないかということでいろいろ議論がございまして、今かなり議論が煮詰まってきているところでございます。  いずれにしましても、JRと民鉄とは同一の負担割合にしようということで、あるいは地域的にも多少その差を設ける必要があるじゃないかということで調整作業をやっております。かなり煮詰まってきていると聞いております。  この費用負担割合につきましては、やはり鉄道と道路管理者の両者の協議が円滑に行われるためにも非常に必要な問題でございますし、さらに将来の問題もございますので十分な検討が必要であると考えております。  私どもとしましては、建設省とももうかなり議論を詰めておりまして、できるだけ早期に結論を得られるよう今後とも鋭意努力してまいりたいと思っております。
  86. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 その結果、工事が進んでいないということはないでしょうね。
  87. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) ただいま協議をやっている最中でございますが、立体交差化の工事そのものにつきましては鉄道側と道路側とが暫定的な協定を結びます。それによりまして工事が遅延することがないようにということで、我々は鉄道事業者、建設省は道路管理者側を指導しているところでございます。  これは、暫定と申しますのは、例えば工事はどういう範囲で行うとか工事の方法はどうするかとかあるいは工事費の総額をどうする、負担割合はとりあえず従来の割合で考えておきまして、この協定ができ次第精算をするということでやっておりますので、工事が特におくれているというような事態があるとは聞いておりません。
  88. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 運輸省として踏切の立体交差だとか地下道だとかということを積極的に進めていくことが交通安全、それから交通混雑の防止、それから周辺地域における環境、これはそこに住んでいる方々の了解を得なければならないと思いますけれども、やはり積極的に運輸省としてもそういう安全問題については補助金を出していくべきではないかと思いますし、本年の十月から施行されます鉄道整備基金を何とか利用していくべきではないかというふうに考えます。これは法案審議のときにもう少しきちっとやっておけばよかったかもしれませんけれども、その点はいかがでございましょうか。
  89. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) 先生、今お話がございましたとおりに、立体交差をするとか踏切の改良をやるという事業は、鉄道それから自動車双方にとりまして安全で円滑な交通の確保という観点から非常に重要でございます。また、町づくりという観点から、鉄道によりまして町が分断されるのを解消するというような観点からも極めて重要な事業であると私ども認識しております。  それで、踏切の改良のうち立体交差の事業でございますが、現在は道路整備事業あるいは街路整備事業として行われておりますけれども、この場合に鉄道事業者の負担分の考え方と申しますのは、一応その踏切が除却されることによりまして事業者側に生ずる受益の範囲内という考えでございます。したがいまして、踏切がなくなりますとそれだけ鉄道事業者側に利益が生ずる、こういうことでございますので、これにいわゆる助成をするといいましょうか、これはちょっと対象としてはなじまないのではないかと思います。  これに対しまして、踏切保安設備、例の警報機などをつけたり遮断機をつけたりする事業でございますが、これにつきましては従来から補助金を交付しておりまして、これは先生御案内のとおり、踏切道改良促進法のときにも御議論いただきましたけれども、着実に進んでいるということでございます。
  90. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 先ほどの踏切では何とか地下道をつくっていきたいという御説明がございました。例えば、何人かその踏切で亡くならないと早急にそういうものは実施しない、こういう姿勢では私はだめではないかというふうに思うわけです。かなり以前の運輸委員会における議論の中においても、東京都内には幾つかの嫌われている踏切があるというようなことも議論されているわけでありますが、何か人柱が立たなければ早急にやらないという言い方は言い過ぎかもしれませんけれども、交通混雑の結果起きてくるそういう問題については、人柱が立たずとも積極的にやはり私はやっていくべきではないかと思いますが、お考えはいかがでございますか。
  91. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) かつてそういう議論があったのかと存じますけれども、私ども決して亡くなる方が出なければ着手しない、あるいは検討しないということはございません。踏切道改良促進法でも、今後五年間に緊急整備する必要のある踏切というのを指定いたしましてこれらの立体交差をする、あるいは警報機をつけるというような事業をやるということで、個別指定でやっております。そのときの考え方といたしましては、鉄道の交通量と道路の交通量の相対関係を見まして、一定の基準に達し次第どんどん指定していく、こういう考えでございまして、決して亡くなった方が出ないと着手しないというような姿勢ではない。今後とも、そういうことはございませんので、頑張っていきたいと思います。
  92. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 余りにもさきの踏切で三月五日、三月十八日と亡くなったものですから、その結果地下道にするというのはちょっと考え方が甘いと思いますが、運輸省はそういうことなく積極的にやるということでございますから、どうかひとつ頑張ってやっていただきたいと思います。  次に、運輸政策審議会の答申についてお伺いをしたいと思います。  二十一世紀を展望した九〇年代の交通政策の基本として約十年ぶりに運輸政策審議会が答申をされたわけであります。八七年の国鉄の分割・民営化以後の答申ということになりますから、従来の基幹運輸といいましょうか基幹鉄道を運営しておりました国主体から、すなわち公共事業体の営業形態から民営化となりましてかなり規制の緩和と競争体制による民間主体への移行ということになってからの実は答申であります。  新聞の報道によりますと、「鉄道重視へ転換」とか「鉄道復権」とか報道されておりますけれども、基本的にはやはり東京一極集中を是正して国土の均衡ある発展を図るためにもひとつ幹線交通システムの全国展開をすべきであろうというのがどうも答申の結論のようであります。  一方で、鉄道の競争相手であります自動車輸送というものが今日の交通事故の問題や慢性的な交通渋滞の問題、そこから引き起こってまいります環境問題、すなわち二酸化炭素、CO2の発生などで道路交通というものが非常に問題化されてきております。したがいまして、多少モータリゼーションの行き詰まり状況ではないか。そういうところが大都市においてかなり多く見られるような状況になってまいりました。したがいまして、鉄道重視ならば、民営化して四年になるわけでありますし、国鉄の分割・民営政策それ自体もやはり私は考慮に入れながら、現在JRを取り巻いておるさまざまな環境を冷静に見つめて客観的にやはり基本的な政策は打ち出していくべきであろうというふうに考えています。  そこで、運輸政策審議会の答申の基本的な位置づけ、特に鉄道の位置づけについて御説明を願いたいと思います。
  93. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) お答え申し上げます。  今回の運輸政策審議会の答申でございますが、これは平成元年の十一月二十七日に運輸大臣から審議会の会長あてに諮問をしておるわけでございます。今回、答申はいろんな部門にわたっておりますが、いわゆる十本ほどまとまって出されているわけでございます。  その中で、先生今御指摘の鉄道の位置づけといいましょうか、このことにつきましては、その中の「幹線旅客交通システムの構築の基本的方向について」、こういう答申がございます。それはどういう認識で答申されているかと申し上げますと、まず国民生活の高度化、多様化が今後も進む、さらに高齢化が進展する、それから地域構造、産業構造がどんどん変化してまいります、それから国際化も進展いたします。こういうように二十一世紀を踏まえますと、我が国の経済社会が相当変わっていくだろう。そこで、交通政策の基本的方向について政策課題ごとに答申をまとめていただいたというものでございます。  御指摘の鉄道につきましては、その答申の中では、鉄道というのはやはり中近距離の輸送に基幹的な役割を果たしておりますと、また環境への負荷が少ない、そういうような交通機関であると認識されておりまして、さらにその大量性あるいは正確性、こういうところにすぐれた特性があるわけでございますので、その特性を生かしまして現在のネットワークを高速鉄道ネットワークへと再構築することが不可欠であるという提言がございます。そのため、具体的には国土の基軸となる新幹線ネットワークの形成を進めるとともに、これと連携する在来鉄道や地方中枢都市と周辺都市を結ぶ路線等のうち特に需要に厚みのある都市間の在来鉄道について高速化を推進する、こういう考え方でございます。  かいつまんで申し上げますと、いわゆる従来でいう幹線輸送と在来鉄道の、特に都市間輸送あるいは近距離輸送につきまして高速化を図ったらどうだという認識、こういうふうに考えております。
  94. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 では、答申の主な内容は、今御説明がございましたように、高速鉄道ネットワークを再構築していきたい、そのためには新幹線の建設と含めて在来線を強化していきたい。在来線を強化していくということにはかなり財政も伴うと思うわけですけれども、その点では新幹線の場合には、具体的にどういうスキームでいくとか財政問題も含めてかなり議論をしたわけでありますけれども、在来線の問題についてはその点いかがになっておりましょうか。
  95. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) 在来線の問題につきまして特に問題となりますのは、大都市圏におけるいわゆる都市輸送と、それから地方中枢都市といいましょうか県庁所在地等を中心とするそういう都市輸送あたりが一番問題になるところだろうと思います。それからもう一つは、在来線の中でも新幹線が引かれない地域の都市間輸送といいましょうか、こういうところをどうするかという問題かと思います。  それで、都市鉄道の整備につきましては、これは大都市圏、特に東京、名古屋、大阪圏につきましては、この運輸政策審議会に地域交通部会というのがございまして、さらにその下に各都市圏ごとの小委員会を設けまして具体的な鉄道のネットワークづくりを考えて、今現には名古屋が検討中でございますが、東京、大阪それぞれ答申をいただいております。それから、例えば札幌、福岡、仙台といったような地方の主要都市につきましては、その圏域を担当いたします運輸局を中心にその地域のネットワークの計画を立てている、こういう実態でございます。  そういうようなことでございまして、私どもとしましては、新幹線のみならず在来線につきましても相当熱意を持って勉強しているつもりでございます。今後とも、たまたま鉄道整備基金が十月に発足する見込みとなりましたので、こういうものを裏打ちしながら勉強していきたいと思っております。  なお、この六月でございますが、つい最近でございますけれども、運輸政策審議会に、二十一世紀を踏まえた鉄道の将来の姿はどうあるべきかという諮問を申し上げまして、これを来年の今ごろ、一年ぐらいをかけまして将来の鉄道の整備のあり方といいましょうか、これを勉強させていただきたいと思いまして先般諮問をさせていただいたところでございます。
  96. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 これまた、後ほどいろんなところでこの答申内容については勉強させていただきたいと思います。  次に、JRの株式上場問題についてお伺いをしたいと思います。  どうも午前中の議論などを聞いていますと、何やらうさん臭い、どうにもならぬような状況に実はなってきたのかなと。受けてくれるところが余りにも悪過ぎる。その結果、国民信頼というものが大きくなくなっているときにJRの株を売ろうというわけでありますから、これまた大変なことだなというふうに思っているところであります。  五月の十四日に東京証券取引所の長岡理事長は、JR株の上場は慎重にするようにと表明をいたしております。大方の慎重論というのは、株式市場が冷え切っている、したがって上場は見合わせた方がよいのではないかという一つの空気があることもまた事実であろうと思います。しかし、完全民営化に向けて一生懸命にJR各社は努力されておると思うんですが、JR本州三社の資本金や経常利益が上場審査基準をパスしたといたしましても、それのみで私はやはり企業としての上場の資格があるわけではないのではないかというふうに実は思うわけです。  企業の基本となるのは、こういう交通産業の場合に安全問題というのがやはり第一義でなければならないと思うし、労使問題が大切であろうと考えているわけであります。JRになって以降、労使問題がなくなったようにも見えますけれども、依然として中労委の場で国鉄から引き継いでいる問題が議論されているということなどを考えますと、やはりそこには労使間の不健全性というものがあると思われますし、そこから不安定性というものも出てくるのではないかと思います。  同時に、あわせて、せんだっての信楽高原鉄道の正面衝突事故というものが鉄道事業者に対する世間からの信頼の度合いとして出てきた場合に、安全問題というのはいかがなものかということになってくるであろうというふうに思っているわけでございます。  同時にまた、一方では、運輸相の諮問機関としてJR株式基本問題検討懇談会、座長は平岩外四経団連会長でありますが、五月の二十七日に意見書を村岡運輸大臣に提出されました。  それによりますと、「できる限り早期に純民間会社に移行することが必要である。」というふうに述べて、売却対象株式が大規模なために、三社で額面五万円で八百二十四万株、そういうものを売り出すと、証券、金融市場への影響が非常に大きいので、一挙に株式を売却するのは問題であると明記をしているわけであります。  しかし、一方では売らなければならないという問題があるわけでありますが、そのJR株式基本問題検討懇談会が出されました意見書、これには売るべきだというものと、今言ったように非常に慎重にすべきだという意見とあると思うのでありますけれども、最終的な意見のねらい、ポイントというのは大体どこら辺にあるとお考えでございますか。
  97. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) この五月二十七日にJR株式基本問題検討懇談会から出されました意見のポイントでございますが、なかなか難しいのでございますが、大きく分けて四つあるかと考えております。  一つは、先生先ほど御指摘のように、JRの完全民営化あるいは国鉄の長期債務の償還等のために条件が整い次第できるだけ早く売却を行うべきだろう、これが第一点でございます。  それから第二点でございますが、売却に当たりましては、公正な価格決定を行うとともに、広く国民に購入機会を提供し得るよう公正かつ簡明な方法による必要がある、これが第二点でございます。  第三点が、先ほども指摘がありました売却対象となる株式数が巨大であるということから、市場の動向への配慮、情報の適正な開示等が必要であること、こういうことを基本的な考え方といたしております。  さらに第四点目で、そうはいうものの、現下の株式市場はなお不安定な状況にあることから、今後の市場の動向を十分に見きわめつつ、弾力的に対応していくことが必要である。大きくこの四点かと思いますが、これがポイントだというふうに思います。
  98. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 それらの意見を受けまして、平成三年度中にJR株式は上場するという閣議決定がございますけれども、運輸大臣としてその上場を延期するかまたは見直すか販売するのか、そこらあたりの認識について、大臣、いかがでございましょうか。
  99. 村岡兼造

    ○国務大臣(村岡兼造君) JRの株式の売却につきましては、平成元年十二月の閣議決定の趣旨に沿って検討、準備を進めておりますけれども、現下の株式市場は不安定な状況にありまして、JR株式基本問題検討懇談会の意見においても「今後の市場の動向を十分に見極めつつ、弾力的に対応していくことが必要である。」とされておりますことから、いま少しの間、株式市場の動向を見きわめた上で慎重に判断してまいりたいと思いますが、極めて難しい状況だと判断をいたしております。
  100. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 時間になりましたので、あと多くの質問通告をしておりましたけれども、これで終わります。
  101. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ─────・─────    午後一時十七分開会
  102. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十三年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題とし、運輸省及び労働省決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  103. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 西岡でございます。  私は、まず最初に、滋賀丸事件の真相究明についてパートツーという形で、昨年の十月三十一日に引き続きお尋ねをしてまいりたいと思います。  当決算委員会におきまして、滋賀丸事件に関して戦後処理の問題をお尋ねいたしましたのは昨年の十月三十一日でございました。  運輸大臣、お尋ねいたします。滋賀丸事件については御承知でございましょうか。
  104. 村岡兼造

    ○国務大臣(村岡兼造君) 正直に申し上げまして、先生からきょう質疑が出るというときに初めてわかったようなところでございます。
  105. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 閣僚がおかわりになるたびに、そして異動があるたびにその都度すべてを白紙に返して御説明しなければならないというのはちょっとロスが多過ぎると思うわけです。既に御承知ということを前提に置いて私はきょうお尋ねをしようと思っていたんですけれども、残念ですけれども、それでは若干説明をさせていただきたいと思います。  第二次大戦中の昭和十九年の五月三十日の未明ですけれども、高知県の室戸岬沖で、高知と大阪を結ぶ定期客船、滋賀丸と申しますけれども、七百四十総トンです。これがアメリカの潜水艦の魚雷攻撃を受けて室戸岬沖で沈没をしたんです。それで乗員、乗客合計百九十人のうち百五十人が犠牲になったのでございます。これが滋賀丸事件です。  滋賀丸というのは明治時代の建造船でございます。戦時海運管理令で船舶運営会によって運用され、そして土佐沖の哨戒船兼客船として海軍司令部の出港命令に従って運用をされていたわけでございます。当時の状況は、既に現場周辺までもう終戦が間近に迫っているわけですけれども、米軍が制海権を握りまして、アメリカの潜水艦が本当にうようよというほど出没をしていたということでございます。  事件の二日前にも、大阪から高知に向かう途中にアメリカの潜水艦を目撃いたしましたこの滋賀丸の船長が、会社を通じて船舶運営会に航行の中止を申し出たわけでございます。乗組員、軍属は覚悟の上だけれども、何にも知らない一般の乗客を乗せるわけにいかない、何とか下船をさせるようにということで申し出たわけですけれども、軍の命令で、そのことが明るみに出ますといろんな機密が漏れてしまうということでございましょう、出港したということでございます。そしてあの悲劇が起こったということですね。  このことにつきましては、NHKテレビが再三にわたって終戦記念日ごとに放送いたしております。また、地元のテレビ局、マスコミ、新聞報道などでも繰り返し巻き返し報道されているわけでございます。  私が最初に質問をさせていただきましてから、既に八カ月が経過いたしております。去る五月二十六日には、戦後十八回目の滋賀丸遭難者慰霊祭が現地室戸岬の日沖港におきまして、遺族や関係者や市民の参列によってしめやかに厳粛にとり行われたところでございます。  運輸大臣にお尋ねしたいのですけれども、先ほど何も承知していらっしゃらないということでございますが、しかし、所管の運輸省国際運輸・観光局の私に対する当時の御答弁まで御存じないというわけではないでしょう。御承知でございましょうね。
  106. 村岡兼造

    ○国務大臣(村岡兼造君) 質問があるということで拝見をいたしております。
  107. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 当時の相原力政策課長さんは、私の会議録を見ていただいたらそのとおりですけれども、御指摘の滋賀丸事件については、戦時中とはいえまことに痛ましい事件であり、運輸省としても遺族の心情を察してできる限りの努力はしたい、犠牲者の名簿の作成については、非常に古い出来事ではあるけれども、可能な範囲でその点についても運輸省としてできるだけお役に立ちたいと考えていると答弁をされました。私は重ねて最後のところで、約束できますねと申し上げましたら、「はい。」とおっしゃったところで会議録は終わっております。時間の都合でそれ以上詳しいことをお話しすることができなかった。  ですから、今私は、きょうどこまでその御答弁を裏打ちする作業が進んでいるかということをお聞きしたいと思うわけでございます。
  108. 寺嶋潔

    説明員(寺嶋潔君) 昨年の当決算委員会での御質問を受けまして、運輸省といたしましては最大限の努力をしてまいっております。  滋賀丸の乗船名簿につきましては、運輸省内はもとより、運輸省所管の公益法人であります海事産業研究所、それから船舶の所有者でありました関西汽船、それから防衛庁の防衛研究所、さらに国会図書館等、広範な調査を徹底的にいたしましたが、大変残念ながら御指摘の名簿、つまり滋賀丸の乗船名簿については発見することができませんで今日に至っております。
  109. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 全然手がかりがつかめないとおっしゃるわけですね。なぜそれが難しいのでしょうか。私はきょう、当時の大阪商船株式会社の取締役社長が民間人の遺族にあてた死亡認定通知の写しを持ってきております。これもうコピーで大分かすれている部分もありますけれども、この通知を出すことができている以上は、沈没した船の乗員、乗客の名簿はどこかに保存をしてあるはずです。  そして、私、先ほど沈没したのは未明と申しましたが、遭難した日時は昭和十九年五月三十日、沈没の時間を防衛庁戦史室の記録では午前九時というふうに記録をしております。これはアメリカ軍の記録を引用したものと思われます。沈没をして、そしてその後六カ月を経過して、海運局からの指示に基づく死亡認定通知をこのように出しているわけですね。六カ月経過しているんです。  その当時は、一体の遺骨も一片の遺品も渡されておりません。そして、当時は憲兵と警官が遺族の家の周りを本当にうろうろと見張って、文字どおり箝口令がしかれた。無言の圧力によって遺族はお葬式すら出せなかった。そして、遺族は声を上げて泣くことすら許されなかった、このように言っております。  政府が名簿の調査、そして作成を約束してくれたことで、地元の滋賀丸事件を明らかにする会が本当に勇気づけられまして、もう今や遅しとその日を待ちわびている、それが今の実情なんですね。  いかがでしょうか、八カ月待たせていただきました。私は、この会議場で申し上げて、本当にじっと、いらいらしないで、誠意を信じて、運輸省のお言葉を信じて八カ月、何にもアクションを起こさずに、運輸省に対しても催促がましいことも申し上げずに、遺族の皆さんと一緒に待っていたわけです。そろそろ当委員会への御報告をいただきたいと思うわけでございます。
  110. 寺嶋潔

    説明員(寺嶋潔君) 運輸省といたしましても、先ほど申し上げましたように、心当たりのあるところは徹底的に捜してもらいまして、残っております古い書類は片隅までひっくり返して見たわけでございますが、滋賀丸については何らの手がかりも得られなかったということで、私どもも大変残念に思っておるところでございます。  今後、さらに努力をしてみたいと思っておりますが、大変手がかりが限られてきておりますので、必ずしも見通しが明るいと申し上げるわけにはまいりませんが、引き続き関係情報の収集に努めていきたいと思っております。
  111. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 当時の生き残りの方ももう御高齢で、この滋賀丸事件の真相をこのようにドキュメンタリーに書き上げた方が、この御本が出版される寸前で亡くなっています、お一人は。それでもまだ何人かの生き残りの証人となれる方もいらっしゃいますし、もちろん遺族の方はいらっしゃるわけです。そういう方々に、厚生省としてもまた運輸省としても、一度お目にかかって、体を張って調査していただきたい。書類の上だけで、それだけでリモートコントロール方式で調査をして、それで事足れりというのでは、私は遺族の方に本当に申しわけがないと思います。  厚生省にお尋ねしたいと思います。  きょうは大臣がお見えになっておりませんから所管の係の方にお尋ねいたしますけれども、前回のときには厚生大臣が津島大臣でございました。滋賀丸の位置づけをどのようにとらえておられるか、厚生省にお伺いしたいと思います。
  112. 田島邦宏

    説明員(田島邦宏君) 先生が御指摘の滋賀丸の件でございますけれども、これは私どもとしては戦後処理問題の一環としての個別のケースの問題であろうかというふうに考えております。  ところで、戦後処理問題に関する事務でございますが、もう先生も御案内のとおり、例えば戦傷病者に対する増加恩給ですとか公務死の遺族に対する年金に当たります公務扶助料、これは総務庁で担当しておられますし、また平和祈念事業特別基金法によりまして、恩給欠格者、シベリア抑留経験者、在外財産喪失者などに対する慰藉事業に対しましては総理府が担当しておられるなど、戦後処理問題につきましては各省庁がそれぞれの立場で分担して行っているところであります。  このうち厚生省が所管しておりますものは、一つは中国残留孤児を初めといたします引揚者の援護措置ですとかあるいは戦没者の遺族を対象といたします遺骨収集や慰霊巡拝等の慰霊事業でありますとかあるいは国と雇用関係あるいは雇用類似関係にあった戦傷病者の方や戦没者の遺族に対する年金給付等の援護措置などの事務でありまして、御指摘の滋賀丸事件につきましては、残念ながら私ども厚生省が所管する立場にはないということを御了解いただきたいと思っておるわけでございます。
  113. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 私は、そのことは前回にも随分議論を闘わせていただきました。自民党と政府との間に戦後処理問題に対する合意が交わされて、戦後処理問題についてはさきの戦後処理問題懇談会報告の趣旨に沿って特別基金を創設し、関係者の労苦を慰藉するという事業を行うということですべてを終結させるものとするというふうにされておりました。つまり、ケース・バイ・ケースで対処をしていては切りがないので、政府・与党の立場としてこういう方法をとらざるを得なかったということを政治的に理解されたいということなんでございますね。
  114. 田島邦宏

    説明員(田島邦宏君) 説明員でございますので、多少そのような御質問に対して私がお答えする立場にはないのではないかと考えます。  少なくとも、繰り返しで恐縮でございますけれども、現在の厚生省が分担しております、所管しております事務の範疇外であるということだけは申し上げられるということでございます。
  115. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 先ほども申しましたけれども、滋賀丸は船舶運営会によって運用されていた船舶であります。滋賀丸の沈没に至る経過と真相を政府責任において明らかにすることは、これは当然のことだと思います。国家使用船だったのに遺族には十分な補償もされておらず、戦後一度も調査されることなく放置をされてきております。室戸岬日沖港わずか一、二キロの沖合でございます。多数の目撃者の前で惨事が繰り広げられているわけです。この船体の引き揚げにつきましては、第百十八国会での衆議院の質問主意書に対する答弁書で、今日においてこのことについては考えていないというふうに含みを残しておられますので、私はいずれ検討の余地があると理解して、政府の若干の誠意を感じ取ってきたわけでございます。  もう一度重ねて申し上げたいと思います。滋賀丸の名簿のことについては、先ほど運輸省の方から、これからも継続してできる限り誠意を持って打ち切ることなく調査を続けてくださると、このように理解をさせていただいてよろしいわけですね。  そして、きょうもう一つ申し上げるのは、先ほど申し上げておりますように、滋賀丸の沈没地点は室戸岬の慰霊碑がございます、そこから東の沖へ約一・五キロ、水深は約七十八メートルの地点と言われております。  喜屋武眞榮先生が沖縄からの疎開船対馬丸の事件につきまして、ずっと十五年以上も参議院でお尋ねをしてこられておりますけれども、これもまた余りにも深海での遺骨及び船体の引き揚げという非常に困難な問題であるということで、まだ継続中だというふうに伺っております。しかし、喜屋武先生の方も一九八九年に完成した「しんかい六五〇〇」潜水艇を出していただくという方法もあるのではないかと。  これは科学技術庁の方にお尋ねをすることになるかと思いますけれども、私どもの場合は「しんかい六五〇〇」じゃなくて「しんかい二〇〇〇」でもよろしいわけです。すぐ目の前で、みんなが港で砂浜のところで沈むのをありありと見ているわけですから、そんなに遠くはありません。そして、そんなに深いところではありません。科学技術庁さんに御協力をお願いできないでしょうか。
  116. 三木義郎

    説明員(三木義郎君) 滋賀丸とともに亡くなられた方々の御遺族の心情につきましては、私どもといたしましても十分に理解できるところでございます。  しかしながら、科学技術庁は、基本的には科学技術の総合調整と研究開発の推進を任務といたしているところでございまして、今お話もございましたように、海洋分野につきましてもその趣旨に沿いまして、「しんかい六五〇〇」を初めとする深海調査船の開発と、これを用いた研究等、海洋科学技術に関する研究開発を進めているところでございます。そういうことから本件に関しましては、なかなか私どもから直接的にお答えできるような立場にはないのではないかというふうに考えるところでございます。  とはいえ、大事な問題ではございますので、運輸省、厚生省等関係省庁のお考えをよく承りながら対応していきたいというふうに考えております。
  117. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 私は、そのお言葉を本当に真摯に受けとめさせていただくわけですけれども、とにかく「しんかい二〇〇〇」にしても「しんかい六五〇〇」にしても、目的というのは、それはおっしゃったことは私もよく知っております。いろんな海底の探査をする、水質の調査をするとか周辺の地形の調査をするとかいろいろございましょう。科学技術の立場でそれをやっていかれるということに私は反対する何物もございません。  しかし、今地元では市民の浄財を募りまして、深海用のサイドスキャンソナー九九〇というのを借りて海底探査をするという準備が進められております。予定どおりにいきますと七月三日から四日の二日間に実施をする、私にどうしても三日に立ち会ってほしいときょう言ってまいりました。この探査にかける費用は、見積書によりますと三百十四万一千六百八十円です。人件費なんかは別です。この中には取引にかかわる消費税額が何と九万一千六百八十円も含まれております。  不幸な戦禍に何の罪もない国民を巻き込んだ我が国の政府責任として、三百六十五日「しんかい二〇〇〇」や「しんかい六五〇〇」が科学技術の課題のために行っているわけじゃないんですから、せめてたった一日でもこれらの遺族のためにその「しんかい」を出動させていただきたい。本当に私たち心からの叫びでございます。本当に私は地元の皆さんの悲痛な叫び声が今目の前にちらつくような思いでお願いをしているわけです。  そして、高知県といたしましても、今回この探査機の確認を受けて、船体の確認がもしできたならば、国に対して要請書を出したいとついせんだって申しておりました。既に地元の室戸市議会からは県及び政府に対して昨年の七月五日に意見書が提出されております。  重ねて私は申し上げたいと思うんです。室戸の漁民の皆さんは毎日毎日、犠牲になった、被害に遭われた人たちが海の奥深く沈められているその場に、漁場に漁に行っているわけです。どんな思いで毎日漁をしているのか、本当に想像にかたくないと思います。漁場であるということ。  そしてもう一つ、何としても政府にもう一度いろいろな観点から私は戦後処理という問題を考え直していただかなくてはならないと思うことは、例を出して申しわけないですけれども、遺族の補償問題に例えば触れるといたしますならば、もう三年前にたりますか、「なだしお」と第一富士丸の衝突事件がございました。あの方々の補償というのは一億一千五百万円と公表されております。平均七千五百万円を国が補償した、第一富士丸が四千万円出しております。締めて一億一千五百万円です。これに比べて滋賀丸犠牲者側には国からも会社からも、補償どころか一片のあいさつ状すら行っておりません。  このことをお考えいただきまして、滋賀丸のこの事件はまだ日本の戦後は終わっていないという一つの大きな象徴であるということを申し上げ、再度、誠意と責任ある今後の政府の姿勢に対して大いに私は期待し、地元のこの滋賀丸事件を明らかにする会の皆さんの気持ちを込めて、きょう滋賀丸問題のパートツーとして質問をさせていただいたわけでございます。  きょうは、ほかにもございますので、もう少しいろいろと詳しいことも申し上げたいと思ったのですけれども、これ以上時間をとれないかもしれません。けれども、NHKの取材班がアメリカへ参りまして、その撃沈をした、アメリカのポンポン号という魚雷を撃ち込んだ潜水艦の艦長さんが今も生きていらして、そして、きちんと滋賀丸を沈没させるに至った経過というものを英文で書いたもの、そして、それを邦訳したものを携えて帰ってきております。そういう証拠もちゃんとそろっております。そして、早くしないと、証言に立っていただける当日乗り組んでいた方、遺族の方、目撃者の方、だんだんとお年をとってまいります。戦後四十六年たっております。本当にこの問題を私はもう一度心からお願いをしたい。地元では超党派で取り組んでおります。  何としても政府にもう一度、ただの船の事故ではないということ、客船でありながら戦時海運管理令によって海軍司令部の出港命令に従って運航されていてたまたま事件に遭遇した。そして、そのことは既にわかっておって、とめることをしなかった。その軍の秘密主義、そういうことによって多くの犠牲を出したということ、これは本当に大いなる私は政府の政治責任として、戦後処理問題として今後も誠意を持って取り組んでいただかなければならないということを、くどいようですけれども申し上げておきたいと思います。  それでは、もう時間が余りございませんので、次に移らせていただきます。  運輸大臣と労働大臣に、これも引き続いてお願いをしたいと思います。  タクシー運転労働者の労働条件の改善とタクシー業界の労使間の円滑な運営についてということでお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、けさ、私ども会田理事がトップバッターでこのことについて若干お話がございました。今、四国運輸局の管内で六月十四日に徳島県市部、そして徳島県郡部、高知市、高知県郡部の四ブロックのタクシー運賃が改定されまして、六月二十四日から実施をされております。この運賃の改定は、さきの運賃改定のときの趣旨と同様に、主としてタクシー労働者の労働条件の向上に充当されるべきものとして認可をされたと認識してよろしいでしょうね。運輸大臣にお尋ねいたしたいと思います。
  118. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) 今回のタクシー運賃の改定につきましては、労働条件の改善というものを非常に重要な目的として掲げておるわけでございます。私どもも認可の際には、その考え方を受けて認可したつもりでございます。
  119. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 このたびの運賃の改定率は、高知市の場合ですと一一・二%、高知県郡部で一一%となっております。改定率のどのくらいがタクシー労働者に還元されると推定されますか。  労働省の賃金構造基本統計調査、賃金センサスを見ますと、このタクシー労働者というのは本当にもう他産業と比較して格段に賃金格差がございますね。特に、私どものところの四国のタクシー労働者は他産業と比較して百万円も格差があるということでございます。  今回の賃金改定というのが他産業とハイ・タク労働者の間の格差を埋めるということをまず前提の条件として、これから本当にタクシー運転手さんがどんどん不足をしていくという状況の中で、より良好な労働条件確保する、タクシーのマンパワーを確保していく、そういう観点に基づいて改定をされたというふうに聞いておりますけれども、いかがですか。
  120. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) 御指摘のとおり、タクシー労働者の場合には一般の産業に働く労働者に比べまして労働条件が悪い、賃金が少ないというふうな問題があるわけでございます。その差を埋めるために今回の運賃改定というものが実施されたわけでございます。先生のおっしゃるようなふうに理解をいたしております。
  121. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 時間がちょっとございませんので、本当に走り走りでございますけれども、私は通告のときに、今回の運賃改定に当たって、運輸省側が運賃改定の査定に当たっての運送収入に対する人件費比率を何%と見て原価査定を行われたのですかとお聞きしたら、そのことは公表しない方がかえってよろしいのではないかというふうにおっしゃっておりましたが、後で御訂正がありまして、公表してもよろしいということでございますので、後で結構でございますから、私はそれを悪用するわけじゃございませんから、ぜひ届けていただけたらと思っております。  時間がございませんから次へ移ってまいりますけれども、この運賃改定の趣旨が労働条件の改善にあるならば、各企業における労働者への運賃値上げ分の還元ということについて、それが実際に履行されたかどうか、その確保の追跡調査というのをどのように今後行っていかれるわけですか。
  122. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) 先ほどお話がありました人件費の比率につきましては、後ほど先生のところにお持ちいたしたいと思います。  それから、今後の労働条件の改善状況についての調査の問題でございます。  この問題につきましては、今回の運賃改定に伴う労働条件の改善につきましては、その確実な実施を確保するということのために、各運輸局におきまして、運賃改定実施から一定期間経過後にその具体的な実施状況について事業者から報告を求めているところでございます。
  123. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 午前中に会田理事に御答弁なさいました、東京、横浜など既に運賃改定を実施したブロックにおいては、来月、七月には調査結果が出せるのではないかと、そういうことを私もしっかりとこの耳でお聞きをいたしました。その結果に基づきまして、これから四国ブロックにもやっていただかなくちゃならないわけですけれども、不十分な企業、そして義務を怠った企業に対してはきちんとした対応、改善指導を行っていただきたいと思うわけです。  なぜ、このように申しますかといいますと、さきに運賃が改定された同じ四国の中の愛媛県や九州で労働条件の改善が必ずしも省側の期待どおりに進んでいない。九一春闘の実情を見る限りにおきましても、そのことがうかがわれるわけでございます。実態の把握はこういったことについてできておりますでしょうか。今回の徳島や高知の運賃改定を機に、私はそうしたことのないように今後一層の監督と指導行政指導を強めていただきたいと思っております。  では、次に、タクシー業界の労使間の円滑な運営ということでお尋ねをしていきたいと思います。  運賃を改定するに当たって、タクシー利用者のサービスの向上に努めるのはもちろん申すまでもない、論をまたないところでございます。そのためには、輸送に従事をする運転者にとっても働きがいのある職場、快適な労働環境が確保されなければならない、そうでございますよね。そして、同時に、良好な労使関係の保持に努力が傾注されなければならないことは言うまでもないことでございます。  ところで、私の地元で私自身調査したところによりますと、まことに前近代的な労使関係によって劣悪な労働条件が野放しになっており、労使紛争が絶えないということがございます。運輸支局並びに労働基準監督署、陸運事務所などからもこれまで再々にわたって改善指導がなされたと聞いておりますけれども、このような実態について全国的に掌握されておりますでしょうか。
  124. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) タクシー事業に係ります労働関係の諸法令や労働条件の改善につきまして問題のある事業者に対しまして、運輸省として直ちに何らかの処分を行い得るというような制度にはなっておりませんわけでございますが、道路連送法に基づく監査等の機会に労働基準法等の違反の疑いが認められた場合には、労働省との相互通報制度を活用いたしまして適切な対応を図っているところでございます。  また、道路運送法上も、過労防止のための乗務時間の制限等を定めた規則に違反する行為があった場合には車両の使用停止等の処分ができるというようなことになっておりまして、この制度によりまして今まで具体的に違反事実を把握して必要な処置をとっておる状況でございます。
  125. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 私の調査によりますと、全自交系列の組合に対しまして組合差別が執拗に継続をされ、一九八六年以降賃上げがストップ、さらに一時金も一九八八年に支給基準が一方的に変更されて、全自交組合員には全く支給をされておりません。  一日平均の営業収入を八八年には二万八千円以上とし、さらに八九年には三万円以上とし、九〇年には三万二千五百円以上とし、ことしは既に運賃値上げ以前に、九一年四月から三万六千円以上という一時金の支給基準を決め、これを達成した者にのみ営収の一〇%の一時金を支給するということを決めております。支給基準をクリアしなければ一時金をもらえませんから、当然そのために長時間労働をタクシー労働者の方々は余儀なくされているわけです。  前回の運賃改定は一九八四年五月で、何と七年間も運賃が据え置かれている。こうした中で一時金支給基準のたび重なる一方的な引き上げは、本当に異常としか思えません。事実上のノルマの強要ではないかと思うんです。自動車運送事業等運輸規則を初め「タクシー事故防止対策要綱の実施について」と、いろいろ運輸省とか労働省関係通達が出ていると思うんですけれども一つも遵守されていると思えないわけでございます。  通達には、労働省さん、運輸省さん、何と書いてありますか。「労働時間等の適正化」、そして「走行距離の適正化」、こういうふうな指示がございまして、「休憩時間を厳格に確保し、洗車、点検等は」「労働時間中に行う」「労働基準法に違反する時間外労働及び休日労働は厳に取締る」、「年次有給休暇制度及び休日制度の確立を図る」、こういうふうに書かれているわけですね。そして、走行距離につきましても、「輸送の安全を確保するのため、」「不当な走行義務を」「課さないよう措置する」と、こういうふうにちゃんと通達が出ているわけですから、これを履行させなければいけないのではありませんか。  私は、きょうは法務省をお呼びしておりませんけれども、まことに恫喝まがいの不当労働行為も出ております。非常に悪質な労務管理としか申せません。  これなんですけれども経営者から家族に対して、解雇権の乱用、暗に解雇をにおわせております。あなたの御主人は一日平均二万九千円を割る営収であると。このままではあなたの御一家が不幸なことになるかもわからないというふうに嫌がらせ、首切りをにおわせる文書を送り、まさに家族も巻き込んだノルマの強要にほかなりませんし、これは人権問題ではありませんか。このままでいきますと、過労死といった運転者の健康問題だけではございません、安全運転という点におきましてもお客様の安全の保障ができかねると。事故、惨事が起こってからではもう遅いのだと現場のタクシー運転者から重大な提起を私は受けております。  運輸省労働省はこのような実態を把握しておりますか。厳しく対処していただきまして、早急にこのような職場が正常に復するように、今後私は積極的な指導、監督をお願いしたいと思います。お約束していただけますでしょうか。
  126. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) 先生のおっしゃるような事案の場合に、私どもといたしましては、労働省と連携をとりながら労働基準法違反の対応をやっていくということが一つあるわけでございますが、さらには道路運送法によります過労防止のための乗務時間の制限という問題があるわけで、この両方の面から、労働行政の面と運輸行政の面の両方から対応してまいりたいというふうに考えております。
  127. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 労働基準行政の立場から見まして、タクシー運転手につきましては特に労働時間が他の業種に比べまして長いという実態がございますので、私どもとしてはその点に重点を絞って指導をしているわけでございます。具体的には、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、これを労働大臣告示をもって定めまして、これに基づく監督指導を実施しております。  ちなみに、平成元年におきます監督の実施件数は、タクシーを含みます道路旅客運送業ということで見ますと千二百四十八件ございます。このうち労働基準法等の関係法令に照らしまして何らかの法違反が認められた事業所が九百十三件ございます。こういった法違反につきましてはこの是正を早急に指導する、悪質なものにつきましては司法処分をするというようなことで対処をしておりますけれども、今後ともこのような方針でやっていきたいというふうに思っております。
  128. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 最後になりましたけれども、私は、とりわけ運輸省におかれましては、今回のみならずこれまでも、運賃改定に当たってタクシー労働者の労働条件の改善を、主としてそれを条件として運賃改定を認めるという、そういう姿勢と申しますか努力に対して、タクシー業界の皆さんもとてもその姿勢については感謝をしているということをお聞きしております。御努力は本当に私もよくわかりますけれども、その一方でこうした劣悪な状態もあるということを御認識いただきまして、今後の運輸行政に、また労働行政に反映をさせていっていただきたい、そのことを心からお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  129. 野村五男

    野村五男君 常磐新線、その他について質問をさせていただきます。  質問に先立ちまして、所信の一端を述べさせていただきます。  先ほど大臣が、余りにも国内問題が多くてなかなか日本を離れることもできないという話をしておりましたけれども、私はおとといまでアラスカの方に行ってまいりました。何十キロという大氷原の壊れる姿を見てまいりまして、自然の恐ろしさといいますか、それを目の当たりに見てきたわけでございます。ホテルの中でテレビを見ていまして、私の頭の中には長崎県の島原市のことがどのように外国から見えるのかと大変心配でもありましたが、やはり向こうからしますと、長崎のことよりもフィリピンの火山活動の方が大きく取り上げられておりまして、こういうものなのかなと私はそう思いながら、実は常磐新線についてあえて質問をさせていただくわけでございます。  常磐新線は、特に茨城のつくば市、研究学園都市を持っております茨城にとりましては大変なインパクト、影響が期待されるのであります。  そこで考えますことは、この間、私日本へ戻ってまいりましたら、埼玉県の補選で二〇%を切るような投票率だと聞いたときには唖然としたわけであります。と申しますのは、この常磐新線に影響と期待を受けます茨城、四・四方式と言われる方法をとりながらも、一体、もっと都心に近い千葉県、そして埼玉県、そして東京というのは今後どのように進んでいくのであろうか。茨城県と意識も違うでしょうし、文化も違います。この場合に、本当に二十一世紀に向かう日本にとりまして、この重要性というものが他県と同じような感覚で迎えられるのか、そういうことを疑問に、また心配に思いながら質問をさせていただくわけであります。  そこで、質問させていただきます。  村岡運輸大臣は第百二十回国会におきまして、当面の運輸行政の諸問題に関する所信を述べられていますが、その中で常磐新線については、「宅地開発と一体的に整備する常磐新線等の都市高速鉄道の整備を推進」していくとされております。この常磐新線は、筑波研究学園都市と東京を結ぶ高速鉄道として計画されているものですが、まずは運輸省から、「宅地開発と一体的に整備する」とされるに至った経緯について御説明願いたいと思います。
  130. 村岡兼造

    ○国務大臣(村岡兼造君) 先生の言われております常磐新線は、昭和六十年の運輸政策審議会答申第七号において、西暦二〇〇〇年、平成十二年を目標として整備すべき路線とされておりまして、その後の関係者の協議によりまして、本年三月、関係地方公共団体を主体とした第三セクター首都圏新都市鉄道株式会社が設立されたところであります。  この線の整備は、首都圏における住宅地需要に対応するとともに、通勤通学輸送の混雑緩和を図るため重要な役割を果たすものであると認識いたしておりまして、運輸省といたしましても、その実現に最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  131. 野村五男

    野村五男君 常磐新線の建設の大きな目的の一つとして、沿線地域での宅地の供給が掲げられており、首都圏の住宅問題の解消が期待されておるところであります。そのために、平成元年六月には、大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法、いわゆる常磐新線法が制定されております。  この一体開発法について改めて御説明をいただくとともに、沿線の住宅供給見込み、すなわちどのくらいの人口を擁する住宅都市をつくる予定であるかについても御説明願いたい。
  132. 橋本万里

    説明員(橋本万里君) 首都圏におきまして著しい住宅宅地需要に対応するためには、宅地開発と鉄道整備を一体的に推進しつつ住宅地の大量供給を行うことが極めて有効な方策であると考えております。このため、宅地鉄道一体推進法におきまして都府県による基本計画の作成、基本計画に基づく一体型土地区画整理事業の実施、関連公共施設整備の促進、国土法による監視区域の積極的指定等の措置を講じることによりまして宅地開発を推進することといたしております。  常磐新線沿線地域における宅地開発につきましては、ことしの三月に実施しました都県からのヒアリングの結果によりますと、約一万ヘクタールの宅地開発事業が構想または計画されていると聞いております。これによりまして、住宅戸数約十七万戸以上、人口にいたしまして約六十万から七十万人の供給が見込まれております。  建設省といたしましても、宅地鉄道一体推進法の適切な運用等によりまして、今後、関係政府機関等と十分連絡をとりつつ、常磐新線整備の早期実現と沿線地域における宅地供給の促進に向け努力をしてまいる所存でございます。
  133. 野村五男

    野村五男君 常磐新線の事業主体として、本年三月、第三セクター首都圏新都市鉄道株式会社が設立されています。今後はこの事業主体を中心として建設が行われると思いますが、この第三セクターについて出資者及び出資比率など概要を御説明いただきたい。
  134. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) 常磐新線建設の事業主体につきましては、ただいま御指摘のとおり、本年三月に首都圏新都市鉄道株式会社が設立されたところでございます。この第三セクターの設立当時の資本金は十四億円でございましたが、本年六月一日に増資されまして、現在では五十六億円の資本金となっております。  その出資者でございますが、現在のところ沿線の地方公共団体というふうになっておりまして、具体的には東京都、足立区、台東区、千代田区、荒川区、埼玉県、八潮市、三郷市、千葉県、柏市、流山市、茨城県、つくば市、守谷町、伊奈町、谷和原村となっており、区市町村を含めました各都県の出資比率は、東京都四、埼玉県一、千葉県二、茨城県三の比率になっているものと承知いたしております。
  135. 野村五男

    野村五男君 常磐新線を開発運営していく上で、既存の事業所の代表でありますJR東日本との協力は欠かせないものと考えられます。常磐新線についてJRが事業主体に参加するのか、また実際の運営ノーハウ等の提供が行われるのかということについて御説明願います。
  136. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) JR東日本の協力の問題でございますが、まず沿線一都三県からはJR東日本に運行を委託したい、それからさらに、第三セクターに対する出資、鉄道事業者としてのノーハウの提供等の協力もお願いしたいというふうにおっしゃっておられるようでございます。そういう希望があるというふうに聞いております。  運輸省といたしましては、この問題については第一義的にはJR東日本の経営判断によるものと理解しているわけでございますが、常磐新線の円滑な整備が確保されるよう、JR東日本に対し必要な指導を行っているところでありまして、今後とも必要に応じ積極的に指導してまいりたいと考えております。
  137. 野村五男

    野村五男君 常磐新線の建設に当たっては、一体開発法に基づく基本計画が各県によって策定されているようですが、どのような状況になっているのでしょうか。各県の間の調整はどのように行われるのでしょうか。また、事業主体である第三セクターとの協議の体制はどのようになっているのでしょうか。
  138. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) 常磐新線の整備につきましては、いわゆる一体化法に基づきまして、沿線一都三県が計画路線及び駅の位置の概要、鉄道整備の目標年次等を内容といたします基本計画を作成する必要がありまして、現在一都三県がその準備を行っているところでございます。その過程におきまして、一都三県は関係市町村や第三セクターの意見を聞くとともに、相互に調整を図っている状況にあるというふうに承知しております。  運輸省といたしましては、速やかに基本計画が作成されるよう、関係地方公共団体が一層努力することを期待しているところでございます。
  139. 橋本万里

    説明員(橋本万里君) 常磐新線沿線開発に係る基本計画につきましては、現在、関係都県において策定の準備が進められていると聞いております。今後、先日設立されました鉄道第三セクターを初め、関係市町村等との協議を踏まえ計画策定が進められることと考えております。  建設省といたしましては、建設省及び都県から成る連絡会議を随時開催し、各県間の連絡調整が円滑に行われ、基本計画ができるだけ速やかに策定されるよう努めているところでございます。
  140. 野村五男

    野村五男君 常磐新線の鉄道部分の施設建設については、日本鉄道建設公団に対して委託する形をとるのではないかと思われるわけですが、鉄道部分の建設体制について御説明を願います。
  141. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) 常磐新線の建設につきましては、一都三県の基本計画の作成、第三セクターによる免許とか工事施行認可の取得等の準備作業が必要でございます。その建設体制もこれらの準備作業を得て決まってくるものであるわけでございますが、今のところ第三セクターの申し出に基づき、運輸大臣が指示を行います形で鉄道建設公団が建設工事を行うことを基本とすることを考えております。
  142. 野村五男

    野村五男君 常磐新線は、都心から郊外に向け延長六十キロ、建設費見込み額は約八千億円とされていますが、国の財政的な支援が必要と考えるが、運輸省は常磐新線の建設に対してどのような助成を行おうと考えているのか御説明願います。
  143. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) 本年十月に特殊法人の鉄道整備基金が設立される予定でございます。この基金によります無利子貸付制度が創設されることになるわけでございます。  常磐新線につきましては、平成三年度は建設に至らない、具体的な工事がないということでございますので、この平成三年度の無利子貸し付けの対象にはならないわけでございますが、先ほど来御説明しておりますとおり、既に第三セクターが設立されているわけでもありますし、四年度以降の建設工事について収支採算上必要とされる出資の確保等の条件が満たされますれば、無利子貸し付けの対象になるというふうに考えているところでございます。  なお、この無利子貸し付けの貸付率でございますが、助成対象経費の四〇%を一応予定しているわけでございます。地方からも同等の助成が行われることを前提としたものでございます。
  144. 野村五男

    野村五男君 本年度より鉄道整備基金が設立されたと聞いております。まず、基金の設立目的、業務内容についてお伺いします。  また、基金への政府の出資金、借入金なども存在するのか御説明願います。
  145. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) 御説明申し上げます。  鉄道整備基金でございますが、前国会におきまして基金法が成立いたしました。現在、十月一日を目指しまして設立の準備を進めているところでございます。  御質問の、設立の趣旨、目的でございますが、まず、鉄道というものに対しましての認識でございます。法律では鉄道が道路とか港湾、空港と並びまして国民生活に必要不可欠な交通施設であるといういうこと、それから、国土の均衡ある発展あるいは地域の振興を図るための重要な施設であるという点から、鉄道がその特性を発揮できる分野においては鉄道網の積極的な整備をすべきと、こういう要請が行われているところでございます。  このために、特に緊急に整備が必要な、例えば新幹線鉄道でございますとか主要幹線、さらに都市鉄道の整備を促進する目的で、既にできております四新幹線を旅客会社に譲渡いたしまして、その譲渡収入の一部を活用する、それに一般会計等からの補助金等を加えまして、総合的かつ効率的に鉄道助成を行う特殊法人鉄道整備基金を設立するという趣旨のものでございます。  御質問の出資金でございますが、基金の設立時におきまして一般会計から一億円の出資があることになっております。  それからさらに、基金は新幹線鉄道保有機構から債務を承継いたします。その償還が必要となってまいりますので、政府と民間から借入金を行うということにしておるわけでございます。  なお、参考までに申し上げますと、平成三年度におきましては、借入金額でございますが、財政投融資で千四百九十四億円、民間からの借り入れが六百四十一億円、合わせまして二千百三十五億円を予定しているところでございます。
  146. 野村五男

    野村五男君 基金は、同整備基金債券を発行できるとされておりますが、その要件等について御説明願います。
  147. 井山嗣夫

    説明員(井山嗣夫君) お答え申し上げます。  基金は、鉄道整備基金法という法律の二十八条第一項というのがございまして、これによりますと、運輸大臣の認可を受けまして鉄道整備基金債券を発行することができると規定されております。  この鉄道整備基金債券の発行は、基金が新幹線鉄道保有機構から承継した債務がございますが、これの償還を行うために必要がある場合に限り行うことができるとされております。  その趣旨は、新しく鉄道助成を行うために、債券の発行でどんどん借入金をしては投資につぎ込むということがないようにということで、一種の歯どめという意味で規定されているわけでございます。  具体的に申し上げますと、基金は保有機構から八兆一千億という債務を承継することとされておりまして、この債務の償還につきましては本州三社から、新幹線を譲渡しますその代金収入によって償還あるいは利払いが行われるわけでございますけれども、ただ、毎年度の収入と、それから具体的な債務なり借入金の償還、利払いのタイミングがずれておりまして、若干資金不足が出る場合もございます。そういう場合に借りかえの資金を調達する、そのときにまさに御指摘の債券の発行を行うことができる、こういう規定になっているわけでございます。
  148. 野村五男

    野村五男君 新線建設で最大の問題は、用地の確保であろうかと思います。用地買収は、県が委託を受け担当すると聞いております。  政府は、用地の確保を宅地開発と一体的に進めるための宅鉄法を制定したところであり、常磐新線の発想は筑波学園都市とともにあったし、新線の建設により筑波の一層の機能強化と在来線の混雑緩和を図ろうとするものであろうと思います。その後の首都圏における住宅問題の深刻さは理解しております。しかし、沿線の宅地開発と一体的にというと用地の確保には相当の期間が必要とならないか。鉄道用地の確保にどのように取り組んでいるのかお伺いします。
  149. 水田嘉憲

    説明員(水田嘉憲君) 常磐新線の鉄道用地の確保につきましては、先生指摘のとおり、一体化法の趣旨を踏まえまして対応していく必要があるわけでございます。  一つには、国土利用計画法の監視区域の積極的な指定等により地価の急激な上昇を抑制するということでございます。それからさらに、この法律によって認められております土地区画整理事業区域内におきます集約換地の手法、あるいは地方公共団体が行います鉄道用地の代行買収等の手法を活用してまいりたいと考えているわけでございます。  なお、地方公共団体が土地区画整理事業予定区域内におきまして、集約換地をも念頭に置きながら既に用地の買収に着手しているというふうに聞いているわけでございますが、こういう事業の推進や鉄道用地の代行買収等、用地の確保に関しての関係地方公共団体の役割は極めて重要であるというふうに考えております。今後、その積極的な協力を求めてまいりたいというふうに思います。
  150. 野村五男

    野村五男君 用地買収を担当している茨城県は、開発手法として四・四方式を提示しております。区域内の四割をまず直接買収し、残りの面積の四割を公共減歩とし、残余を地権者の持ち分とするものと承知しております。  地権者の反応は複雑であると報道されておりますが、政府はどのように受けとめているのか。
  151. 西建吾

    説明員(西建吾君) 現在、茨城県におきましては、常磐新線沿線開発の一環といたしまして、計画的な町づくりを進めるため、地区のおおむね四割を買収し、おおむね四割を減歩して公共施設用地と保留地を生み出す、いわゆる四・四方式によりまして区画整理事業を進めるべく地元と協議中というふうに聞いております。この中で、既に伊奈、谷和原丘陵部地区におきましては、目標といたします用地買収面積の約九割を買収したというふうに聞いてございます。  建設省といたしましては、事業を円滑に進めるために、今後とも地元地権者と十分話し合いを行っていくよう、引き続き茨城県を指導してまいりたいというふうに存じます。
  152. 野村五男

    野村五男君 都心に近い千葉県、埼玉県等における用地買収に対する取り組み状況について御説明を願います。
  153. 橋本万里

    説明員(橋本万里君) 千葉県、埼玉県の関係公共団体におきましては、常磐新線の整備及び沿線開発推進のための専任の組織を設置する等、事業着手に向け推進体制の整備が進められておりますとともに、用地買収のための基金を設置し、必要な用地の先行取得を進めていると聞いております。  建設省といたしましては、鉄道整備と一体となった宅地開発事業の推進のため、用地取得を初め円滑な事業進捗が図られるよう、関係地方公共団体を指導してまいりたいと存じます。
  154. 野村五男

    野村五男君 私が質問したかったのは本当はここなんですけれども、やはり茨城県におりますと、四・四方式というものでかなり進んでいるような感じがするんですが、茨城県から都心に近い千葉県、埼玉県が今後どのように進んでいくかということは大変重要なことでありますので、なお一層の御努力をお願いしたいと思います。  次に、地価問題についてお伺いします。  路線の公表に先立ち動き出すのが不動産業者であります。地価が高騰していることは国土庁の地価調査からも明らかであります。国土利用計画法の監視区域として指定し、きめ細かな地価抑制を図ることが不可欠と痛感いたしますが、その体制はどうなっているのかお伺いします。
  155. 伊藤威彦

    説明員(伊藤威彦君) お答えいたします。  常磐新線の予定ルート周辺におきましては、昭和六十二年以降順次監視区域の指定を行ってきているところでございまして、現在、沿線四都県十二市区町村につきまして、市街化調整区域を含みます全域を既に監視区域として指定しているところでございます。  また、この間、本年四月一日からは茨城県のつくば市、守谷町、伊奈町、谷和原村の市街化区域におきまして、届け出対象面積を百平方メートルに引き下げるということを行っておりまして、こうしたことなどを通じまして、運用についてもその強化を図っているところでございます。  国土庁といたしましては、今後とも、昨年六月に通達いたしました監視区域制度の運用指針を踏まえまして、監視区域制度のより厳正かつ的確な運用を図って、常磐新線予定ルート周辺における地価の安定に資するよう指導してまいりたいというふうに考えております。
  156. 野村五男

    野村五男君 宅地開発と鉄道事業を一体的に進めてきた例として千葉ニュータウンがあります。しかし、宅地開発の停滞が北総開発鉄道の計画までおくれさせたと記憶しております。千葉ニュータウンの問題を乗り越えて常磐新線の建設に取り組んでほしいと思います。  計画では平成十二年の完成と言われておりますが、運輸大臣より改めて事業遂行の見通しをお聞きいたします。
  157. 村岡兼造

    ○国務大臣(村岡兼造君) 常磐新線は、昭和六十年の運輸政策審議会の答申七号におきまして、西暦二〇〇〇年を目標として整備すべき路線とされておりまして、その後の関係者の協議により、本年三月、関係地方公共団体を主体とした首都圏新都市鉄道整備会社が設立されたところでございます。  設立のときに私も出席をいたしました。茨城県知事初め、土地の買収その他御協力を願いまして、私どもも極力御協力申し上げますと、こういうことを申し上げましたので、運輸省としても、先ほどもお答え申し上げましたが、この実現に最大限の御協力、努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  158. 野村五男

    野村五男君 ありがとうございました。  次に、常陸那珂港開発についてお伺いしてまいります。  昨今、東京への人口、諸機能の一極集中がもろもろの問題を生じさせてきております。これは、諸機能の東京からの適切な誘導により是正されるべきものと考えております。  特に、物流分野について見ますと、首都圏の物流体系を見直す上で現在整備が進められている常陸那珂港開発は、単に茨城県だけの発展に寄与するのみならず、北関東地域の物流の効率化を図り、あわせて地域の産業基盤整備の効果を生むものと期待されております。そのような常陸那珂港の計画について、その概要をお伺いいたします。
  159. 御巫清泰

    説明員(御巫清泰君) 常陸那珂港についての御質問でございますけれども、常陸那珂港整備の基本的目的は、東京への一極集中を是正するという意味で、特に首都圏物流の合理的な再編ということを目指すというのが一つございます。そして同時に、茨城県を初めとする北関東地域の経済発展を支えるという意味もありますし、さらに同時に、東京湾諸港の混雑緩和あるいは海上交通の安全確保に資するという目的を持っていると思っております。  港湾計画は昭和五十八年に策定されておりまして、その内容といたしましては、北関東地域の外内貿の物流拠点といたしまして五万トン級の大型船舶の入港可能な岸壁あるいはそのために必要な防波堤等の整備というものをやるほか、埠頭用地あるいは港湾関連用地等の一連の土地造成をその計画内容といたしております。また、エネルギーの供給基地として石炭火力、二百万キロワットというものを前提にいたしまして、その施設整備も同時にその計画内容といたしております。
  160. 野村五男

    野村五男君 常陸那珂港の現在までの整備状況と今後の整備の見通しをお伺いします。
  161. 御巫清泰

    説明員(御巫清泰君) 五十八年に港湾計画がつくられたわけでありますけれども、その後、漁業者等との調整がございまして少し時間を費やしましたが、平成元年から港湾工事に着工いたしております。  現在は、平成五年をめどに作業基地の整備を終えようということで進めておりまして、本年度からは東防波堤の現地工事に着工いたしております。平成十年には第一船を入港可能なようにしたいという地元の御要望もよく承知しておりまして、極力そういうことが実現できるように努力をしていきたいと思っております。
  162. 野村五男

    野村五男君 常陸那珂港の建設予定地であります常陸那珂地区は、米軍水戸対射爆場跡地の処理大綱を受けて、その利用計画が定められたものであります。  常陸那珂地区開発のもう一つの柱として、国営常陸海浜公園の建設が定められております。国営常陸海浜公園の進捗状況をお伺いいたします。
  163. 中山晋

    説明員(中山晋君) 本公園は、関東地方の広域的なレクリエーション需要に対処するために、昭和四十八年に日本政府に返還されました射爆場跡地の一部、約三百五十ヘクタールを国営公園として整備するものであります。  常陸那珂地区における総合的な開発計画のもとに、昭和五十四年より整備に着手しております。本年度平成三年度は、本年十月に予定されています開園に向けまして、大芝生広場を中心とする草原ゾーン、それから大観覧車等の遊戯施設のあるカルチャーゾーン等を含む地域につきまして、約七十ヘクタールを第一期開園とする予定で整備を促進しております。七十ヘクタールというのは、ちなみに、ほぼ水戸にあります千波公園と同程度の規模でございます。
  164. 野村五男

    野村五男君 常陸那珂港が北関東のメーンの港として発展するためには、関東各地区とつながる道路が不可欠であります。また、道路網の整備により将来の物流の変化が期待されております。特に、コンテナ貨物の流れについては大きな変化が期待できます。常陸那珂港によって茨城、栃木、群馬三県をカバーすることができ、東京湾諸港の混雑の緩和を促進できます。  そこでお伺いいたします。国土開発幹線自動車道建設法の別表には、北関東自動車道が掲記されています。  現在、東京への一極集中が進み、道路の混雑などさまざまな弊害が出ており、こうした問題を解決していくためには、早急に北関東自動車道を建設せねばならないものとなっております。この北関東自動車道の重要性というものにつきましてどう認識をされているのか。また、北関東自動車道の具体的構想及び事業の見通しについても御説明願います。
  165. 荒牧英城

    説明員(荒牧英城君) 高規格幹線道路網につきましては、多極分散型国土の形成を図るため、二十一世紀初頭に約一万四千キロの道路網を整備するという目標に向けまして、現在積極的に取り組んでおるところでございます。  お尋ねの北関東自動車道につきましては、高崎市を起点といたしまして、宇都宮、水戸などを経まして那珂湊市に至ります延長約百五十キロメートルの路線でございまして、昭和六十二年に国幹道の予定路線として位置づけられたものでございます。  この路線は、常陸那珂港を初めといたします大規模プロジェクトと沿線の各都市圏を結びつつ、東京から放射状に延びます東関東自動車道水戸線、常磐自動車道、東北縦貫自動車道あるいは関越自動車道を横断的に連結しまして、北関東地域の発展に貢献する重要な路線であると認識しておりまして、これによりまして、また、東京への一極集中の是正にも資するのではないかと考えております。  北関東自動車道のうち、群馬県の高崎から伊勢崎市間十五キロメートル、栃木県の都賀町から上三川町の十九キロメートル、それから、茨城県の友部町から水戸市間の二十一キロメートルにつきましては、平成元年の一月に開催されました国土開発幹線自動車道建設審議会におきまして基本計画を策定し、現在、整備計画策定のために必要な調査を進めているところでございます。  また、予定路線の区間につきまして、今申し上げました区間以外の区間につきましても、道路の整備効果や採算性の双方を勘案しながら高規格幹線道路網調査を進めているところでございます。  なお、茨城県内には北関東自動車道に並行します自動車専用道路といたしまして一般国道六号の東水戸道路の整備が進められておりまして、これを活用することにより規格の高い道路ネットワークの早期利用が可能となる予定でございます。  今後とも、高規格幹線道路網の整備につきまして積極的に努力してまいりたいと考えております。
  166. 野村五男

    野村五男君 次に、東関東自動車道は、潮来インターチェンジどまりとなっておりますが、これらの延伸、常磐自動車道との接続も北関東地域の発展の上で大きく期待されているところであります。実現の見通し等についてお伺いいたします。
  167. 荒牧英城

    説明員(荒牧英城君) 東関東自動車道水戸線は、東京都を起点といたしまして水戸市に至ります延長約百三十キロの路線でございます。常磐自動車道、北関東自動車道とネットワークを形成いたしまして、北関東地域の発展にも資する重要な路線であると考えております。この路線につきましては、御承知のように、既に現在までに市川ジャンクションから潮来インター間、約七十五キロメートルについて供用しておるところでございます。  お尋ねの鹿島町から水戸市間、約五十キロメートルにつきましては、昭和六十二年に国幹道の予定路線として位置づけられたものでございまして、現在、道路の整備効果や採算性の双方を勘案しながら高規格幹線道路の道路調査を進めているところでございます。  今後とも、基本計画策定に向けまして鋭意調査を進めてまいりたいと考えております。
  168. 野村五男

    野村五男君 次に、交通渋滞についてお伺いします。  首都高速道路は、毎日大変な交通渋滞を起こしております。私も茨城から来るときに、常磐高速道路から首都圏に入りますときに、いかにして早く抜けるかということで朝五時ごろ出たりして参ります。普通なら一時間であるところが、今は三時間ぐらいかかるわけでございます。私以外の人でも大変ストレスがたまっているのではないかと思って質問するわけであります。  北関東地域から常磐自動車道、東北縦貫自動車道を走ってきた自動車が合流してからの区間は、なおひどい渋滞に悩まされているところであります。政府は、首都高速道路の交通渋滞の解消策としてどのような案を持っておられるのかお伺いいたします。
  169. 佐藤信彦

    説明員佐藤信彦君) 首都高速道路につきましては現在二百二十キロを供用いたしまして、一日当たり百十万台の車が利用するといった状況でございます。  そういったことでございますが、ネットワークが未整備な点があること、それから、最近の交通量の増加に伴いまして、結果として都心部に交通が集中し、都心の環状線が渋滞するといったことが発生しております。こうした渋滞の状況を緩和するために、特に都心部に集中する交通を迂回するといった目的のために、迂回を図る環状線等の整備を進めていくことが重要でございまして、これを現在鋭意進めているところでございます。  先生指摘の常磐自動車道と東北自動車道方面からの交通についてでございますが、この地点におきましては、既に中央環状の東側の方、これにつきましては二十キロほど供用がされておりまして、そちらの方の渋滞は少ないわけでございますが、むしろ西側の区間、これが未整備であるため、特に首都高速の六号線の小菅付近においては交通が集中して渋滞しているのが現状でございます。  これらの対策でございますが、中央環状線の西側の区間の整備を早急に進めるということで、ただいまの六号線から五号線までの区間、中央環状線の西側の区間の板橋―足立線については既に工事を鋭意促進中でございます。それから、それのさらに西側の区間、中央環状の新宿線と申しておりますが、この区間につきましては事業の説明が終了しまして用地買収がこれから始められるといった状況で、そういったものが徐々に進んでいるところでございます。  それから、渋滞の、むしろそういう大規模なものではなくて局所的な改良、こういったものも特に中心部においてはネットワークの整備とあわせまして行っております。混雑の著しい区間における拡幅とかそれから出口の増設とか、それから渋滞情報の的確な提供といったことについても積極的に推進していきたいというふうに考えております。  今後とも、そういった関係者の御理解と御協力を得つつ引き続き事業が円滑に進みますよう、首都高速道路公団を指導してまいる所存でございます。
  170. 野村五男

    野村五男君 毎日、朝テレビで見ていまして、本当にゆうべのうちに東京へ来てしまってよかったなと私はいつも思うんですが、恐らく皆さんもテレビであの赤く連なった渋滞のあれを見ますと、文化の国、先進国である日本というのには、やはりそれを解消するということが一番大事ではないかと思いますので、より一層の御努力を願いたいと思います。  次に、圏央道についてお伺いいたします。  現在、東京を中心に東名高速道路、中央自動車道、関趣自動車道、東北縦貫自動車道、常磐自動車道、東関東自動車道といった道路が放射状に延びております。しかし、これらの道路に関しましては横の連絡道が少なく、非常に不便であります。唯一これらを連絡している国道十六号線は、常に大変な混雑をしているわけであります。  現在、首都圏中央連絡自動車道が一部の区間で工事中でありますが、茨城県においてはこの道路が完成しますと、筑波と成田空港の間が非常に便利なものとなりますし、研究学園としての筑波の発展に大きく寄与するものでもあります。第十次道路整備五カ年計画の期間中の進捗の見込みを説明してください。一日も早く完成してほしいものだと思いますが、政府考え方をお聞かせ願います。
  171. 荒牧英城

    説明員(荒牧英城君) 首都圏中央連絡自動車道につきましては、東京都心からおよそ半径四十から五十キロメートルに位置します延長約二百七十キロの高規格幹線道路でございます。  この道路は、横浜―厚木―八王子―川趣―筑波―成田―木更津などの中核都市を連絡するとともに、東京湾横断道路、常磐道あるいは東北縦貫道などと一体となりまして首都圏の広域的な幹線道路網を形成し、首都圏の諸機能の再編成を図る上で重要な役割を果たすものと考えております。  この道路につきましては、昭和五十四年度から建設省において本格的な調査を進めてきたものでございまして、整備の必要性の高い区間から逐次事業の推進を図ってきているところでございます。  もう少し細かく見てみますと、昭和六十年度には中央道から関越道間の四十キロメートルの事業着手をいたしまして、それを皮切りに平成三年度まで合計約百七キロの事業化を図っておるところでございます。  今後とも、地元の御協力を得ながら、第十次道路整備五カ年計画期間中に鋭意事業の進展を図ってまいりたいと考えております。
  172. 野村五男

    野村五男君 今までお話ししてまいりました幹線道路のうち、路線によっては一部区間において反対運動が行われているようであります。しかし、圏央道を初めとしたこれらの道路は、いずれも将来の交通事情を考えますとどうしても必要なものであり、しかも早急に建設されなければならないものであります。政府は、地元の住民を十分に説得し、道路建設の必要性を理解してもらわなければなりません。そのためには、環境保全といった難しい問題も解決していかなければなりませんが、その決意をお聞かせ願いたいと思います。
  173. 荒牧英城

    説明員(荒牧英城君) これまでいろいろ御指摘いただきました幹線道路につきましては、建設省といたしましても早急な整備が必要と考えておりますが、その整備に当たりましては事前に環境影響評価を行い、環境の保全には万全を期しているところでございます。  今後とも、環境影響評価に基づきまして、住民の皆様に道路整備の必要性、環境対策の内容等を十分に御説明いたしまして、一層の御理解、御協力を得られるよう最大限の努力をいたしまして、早期整備に努めてまいりたいと考えております。
  174. 野村五男

    野村五男君 最後になりますけれども、要望だけしておきます。  私たちは二十一世紀に何を残していくのか、何に対してお金を使っていくのか、投資していくのかということがやはり大変重要なことであろうと思います。どうか、そのことを常に頭の中に描きながら努力をしていただきたいと要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  175. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 きょうは過労死の問題、いわゆる過労死ですね、労働省流に言うと。この問題で前回も少し質問したのですけれども、若干質問させていただきたいと思っております。  父の日の前日の六月十五日に、過労死問題に携わっている弁護士さんたちが中心になって「過労死一一〇番」というのを全国四十五都道府県、五十二カ所で一斉に電話相談を実施されました。日常的にこの「過労死一一〇番」ということをずっとやっていらっしゃるそうですけれども、それにもかかわらず午後三時までに全国で二百五十八件の相談が、これは過労死そのものというより日本人の働き過ぎの問題、そういった問題でも相談があったそうでございます。  そして、今回やって特徴的なことは何だったかということをお聞きしましたら、五十歳末満の人がふえてきた。前は高齢者からの問い合わせが多かったけれども、だんだん若い人がふえてきた。そして、もう一つ特徴的であったのは、女性の方たちからそういう過労死の話が寄せられてきたというようなことがあったそうでございます。  労働省としても、今平成四年度までに年間総労働時間千八百時間ということで、いろんな形で努力されているということは承っておりますけれども、その一方でこういういわゆる過労死に対する相談が後を絶たないという現実も直視しなければならないと私は思うんですが、こういった問題についてどういう御認識をお持ちか、まず冒頭お伺いしたいと思います。
  176. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) いわゆる過労死と言われるような事態を防止することが私ども労働行政の大切な課題である、まずそのように考えております。  そういう観点から、私ども日ごろ、いわゆる企業におきまして労働時間を短縮する、ただいまも委員お触れのようでございますが、これはもとよりでございまして、さらにまた、成人病を含めましたいわゆる健康指導、あるいはまた健康診断等を適切に、そして確実に実施いたしまして、心身両面にわたる健康づくりが行われるよう督励、指導に努めてまいっておるところでございます。  今後とも、これらの対策を進め、いわゆる過労死というような事態が漸減、そして撃滅できるように努力していかなければならぬと思っております。
  177. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 大臣、今おっしゃったとおり、この過労死の問題というのはいろんなものがかかわると思います。労働時間の短縮をおっしゃいました。もう大事なことです。それに医学的問題、健康づくりの問題も大切だと思います。そしてまた、もう一つ、大臣から言ってほしかったけれども、作業環境の改善という問題も大きな問題だと思います。  もちろんそういう問題あるんですけれども、きょうぜひお聞きしたいのは、そういった長年にわたって過労死という大きな問題を解決するとともに、その一方で、現実、過労死で亡くなった方たちがいらっしゃるわけです。そういった方たちをどう適切に救済するかというのは、私は、これは差し迫った課題であると思っております。  昨年、私が取り上げたときも認定基準の問題、そして年数がかかり過ぎているような問題、そして遺族の方々にどうわかりやすくこの問題を説明してやるかという問題を取り上げたわけでございます。  その中で、労働省の方から答弁がございました。遺族にとっては、やっぱりなぜきちんと認められたのか認められなかったのかというのをはっきり知りたいという思いがあるわけです。せめて調査資料については公開していただけないかという質問を私いたしました。それに対して労働省の方からは、「できるだけ請求人の方の御要望に沿って資料の一部の開示をやるように努力をしてみたい」というようなお答えを私はいただきました。しかし、この質問をした後も遺族の方からは、なかなか公開していただけないんですということが私どもにも直接入ってまいりました。  労働省として、前回質問いたしましたけれども、資料の開示の問題について、現場であります労基署、また労働保険審査会に対してどのように指導なさっているのか、また指示なさっているのか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  178. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 労災の調査関係書類の開示といいますか公開の問題でございますが、これは率直に申しましてそれぞれの出先の行政機関で、例えば個人のプライバシーの問題であるとかあるいは第三者に迷惑のかかる可能性がある問題とかいろいろありまして、大変その取り扱いに苦慮している問題でございますけれども労働省といたしましては、請求人の方、つまり亡くなられた方であればその遺族から事実関係の判断の根拠となった資料の閲覧を求められた場合、ただいま申しましたような第三者に迷惑が及ぶと判断されるものあるいは資料提出者の同意を得られないもの、そういったものを除きましては開示できるものとして取り扱うという方針でやっておるわけでございます。
  179. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それは各現場にもきちんと指示なり通達なりで徹底されているんでしょうか。
  180. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) これは、会議その他いろんな機会に伝達をしていることでございます。
  181. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それじゃ、ちょっと具体的に一つお聞かせ願いたいんですけれども、実は、ことし二月から三月にかけて東京の過労死弁護団が東京労働基準局関係の三つの審査請求事件について、労基署が審査官に提出した資料に対して閲覧謄写請求書というのを提出して資料の開示を求めたそうでございます。しかし、東京の労基局は、弁護団が再三申し入れをしたのに対してこう答えたそうです。   資料の開示は一切できない。その旨を書面で答えることや、その理由を書面にすることもできない。理由は話をしてくれた人のプライバシーの問題や医者に迷惑がかかるおそれがあることである。そのような心配がない場合でも、個々に開示すべきかどうか判断することはしない。横並びで全部非開示である。労働省が国会でどう答弁しているにしても、考えはかわらない。  もし事実なら極めて遺憾であり、私としては許しがたいことであり、怒りすら覚えます。  この件についての労働省の見解を求めます。
  182. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 私ども資料の開示をいたします場合に、請求人といいますから、先ほど遺族と申しましたが、そういう方を念頭に置いているわけでございまして、弁護団というような方が来られましたときに、そこまで対象を広げて開示するということは今のところ考えておりません。
  183. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうすると、弁護団に対してそうだということであって、少なくともこの答えを聞いている場合、「労働省が国会でどう答弁しているにしても、考えはかわらない。」「横並びで全部非開示である。」というような発言を聞く限り、これは弁護団であっても一緒に遺族が行っているわけですけれども、遺族にしてみても、これは労働省考えが変わったのじゃないかととらえざるを得ないんじゃないでしょうか。  それならば、遺族がきちんともしそこに行って開示を求めた場合は、先ほどの言ったと言われる事実、まずこの事実関係、こういうことを実際言ったんですかね、東京の労基局は。
  184. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 先生、今言われました弁護団と労基局の間でどういうやりとりがあったかということは、具体的には実は私は今ここで承知をしておりませんけれども考え方は先ほど申しましたように、プライバシーあるいは第三者に迷惑がかかるというもの以外につきましては遺族に対して開示をするということは差し支えないというふうに、そういう方針でやっておりますが、今いろいろ相互のやりとりについてのお話がございましたので、それが具体的にどういうことであるのかちょっとわかりませんから、そのこと自体についての考えはちょっと申し上げませんけれども、方針としては先ほどから申し上げたようなことでやっておるつもりでございます。
  185. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ぜひ本当は、私としてはどういうことがあったのかというのは質問するということを言っておりましたし、調べていただきたいし、もしこれが遺族が行っているとするならば、きちんと開示する方向でやられたのか。とにかく、こういう言葉が出てくること自体に、ある意味じゃ労働省がやらないんだというふうにとられがちだと私は思うんですよ。そう私は思います。  もう一回確認しますけれども労働省としては、遺族の方がその決定に関してきちんと知りたいということで行った場合は閲覧できるというふうに考えてよろしいんですか。
  186. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 先ほどから申し上げておりますように、それを開示することによって第三者に迷惑がかかるあるいはプライバシーの問題が起きるというようなもの、その他具体的にどういうものが出てくるかいろいろあると思いますけれども、例えば今申し上げたようなものを除いては遺族に対しては開示するのが適当だと、こういうふうに考えております。  それから、先ほど労基局と弁護団とのやりとり知らないと申しましたが、やりとりは知りませんけれども、東京局に対して文書でそういう申し入れがあったということは先生の御質問があるということで調べまして、そこだけはわかっております。ただ、具体的にどういうやりとりがあったかということは存じ上げていないと、こういうことでございます。
  187. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 やっぱりきちんとどういうやりとりがあったかは調べていただいて、ぜひ聞きたいし、聞いておかないと今後こういう問題が起きたときにまた同じようなことを繰り返したくないという私自身は思いがありますし、そういったことでトラブルを起こしても仕方ないと思うんです。ですから、ぜひこの問題は調べていただけませんか。どういうことがあったかということをきちんと報告していただければ結構です。ぜひ調べていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  188. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 局に事情を聞きまして先生の方に、後ほどになると思いますけれども、御報告をしたいと思います。
  189. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 じゃ、一つ確認をさせていただきました。第三者の資料の問題のとき遺族が請求して、先ほどの中にもありますけれども、プライバシーの問題もしくは当事者がだめだといったような問題を除けば開示できるというような答弁だと確認しておきます。  それともう一つ、具体的な問題で聞いておきたいんですけれども、これは労災問題の最高裁とも言える労働保険審査会での資料の公開の問題でございます。  これは、ことしの一月に名古屋の過労死弁護団が労働保険審査会に審査会資料の早期の閲覧謄写を求められたときのことだそうでございます。  審査会はこの求めに対して、「労働保険審査官及び労働保険審査会法、同施行令第二七条によれば、審理期日及び場所の通知については七日前となっているが、現在の運用としては三週間前に通知するようにしている。右の通知の際に「事件プリント」を配付している。」。また、「閲覧・謄写を認めないのはそれを認める条文がないからだ。」というふうに答えられたそうでございます。これに対して弁護団がさらに質問をしておりまして、「閲覧・謄写を禁じた規定もないのではないか」というふうに質問したところ、それはそのとおりですと審査会の方がお答えになって、さらに、「三週間より以前に閲覧・謄写させることについて何らの障害はあるのか」という質問をしたそうですけれども、それに対しては、「早い時期に配付すると事件プリントを紛失する恐れがある」というふうに答えたと私は聞きました。答えとしては、極めてこれは適切な答えじゃないと思っております。  というのは、審査会段階というのは、もう御存じのとおり、再審査請求から公開審査まで今でも二年以上三年未満ぐらいの歳月がかかっているわけですね。そうなると、その公開審査の三週間前にようやく渡すというのは、私自身はわかりにくいと思っておりますし、見せないという理由が「紛失する恐れがある」、相手に対しても失礼な話だと思うし、これについてもこういった事実関係をお伺いしたいのと、もう一点は、やっぱりより一層の早期開示というものができないものなのかということをお伺いしておきたいと思います。
  190. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 審査会におきます審査、審理に当たりましては、先ほど先生指摘のように、事件調書というものを作成し、それを事前に関係者の方に配付する、送付するということになっておるわけでございます。この事件調書は、請求人あるいは原処分庁から提出されました各種資料、それから、必要に応じまして医学上の鑑定等、医証に関する資料などすべてを網羅した上で作成するということになっているわけでございます。それで、その事件調書を作成し送付して、あわせて審理期日等を請求人にお知らせをする。それで、今御指摘ございましたように、大体三週間前ぐらいにそういう手続を終えるということにしておりますので、三週間前までにはその事件調書が関係人のところには届くと、こういう建前になっているわけでございます。  それで、確かに名古屋の方から早期に閲覧謄写をさせてほしいという申し出があったようでございますけれども、具体的な対応につきましては若干不適切なところがあったかもしれませんが、いずれにいたしましても、その事件調書をできるだけ早く作成いたしたいと。要するに、先生指摘のように、ただでさえ審理はおくれているわけでございますので、できるだけ審理を開始したい、そのためには事件調書をできるだけ早く作成いたしたい、こういうような要請が一方でございますので、事件調書を作成している間に個々の書類の閲覧をさせてほしいとかあるいは送付してほしいとかいうことになりますと、調書を作成するのにまた逆な面でいきますと支障が生じたり、そういうようなことがおそれとしてあり得るということもございまして、その事前の閲覧謄写は御勘弁をいただいておるというのが実態のようでございます。  ただ、そうは申しましても、やはり個々具体的にいろいろなケースはあり得るだろうというふうに思いますので、この事件の審理のためにこの書類だけはどうしても早くということであれば、それはそれなりによく審査会事務局と御相談をいただければありがたいというふうに思う次第でございますし、現にそういうようなことで審査会にはよくお話をしておきたいと、こういうふうに思います。
  191. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ぜひ、そういう申し出があった場合、個々いろんな事情があると思いますけれども、その場合に応じてきちんと検討していただいて、もし早目に渡せるようなものがあれば、ぜひ渡すような形をつくっていただきたいと思います。  今度はちょっとかわりまして、この過労死の問題について最近、東京高裁で原告が逆転勝訴する、労働省が認めなかったものにもかかわらず労災が認定されたというような事件が二件続きました。ことし二月四日の宇都宮事件というやつと五月二十七日の宮崎事件、二件の判決でございます。この二件は国側が上告せず、現在確定しているというふうに私理解しております。  この二件の判決を見ると、私自身は、今の過労死の認定基準の枠を超えて認定されているというふうに思えてならない部分が幾つかございます。私自身は、やっぱり労災認定の基本というのは、労働上被害に遭った労働者を救済するというのが大原則だと思っておりますし、逆に言えば、それが労働省でできずに裁判で認められたというのは、極めてゆゆしさ問題だというふうに思うんです。  そこで、判決と今労働省がやっていらっしゃる認定基準が異なっているというふうに思えてならない点について何点かちょっとお伺いします。  まず最初に、いわゆる労働が重いか重くないかという、労働の過重性の判断となる業務をやった期間の問題でございます。  現在、認定基準は、改正された後、原則被災直前一週間に限定してその部分を重視して見ているという形になっております。ところが、判決を見ますと、そういう一週間という枠は余り考慮しておりませんで、やはりどちらかというと長い期間のものを詳細に検討した上で、そのことが労災を認める大きな要素に私はなっていると思いますけれども、この点について、まず労働省の見解をお伺いしたいと思います。
  192. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) この認定基準では、その発症前一週間の期間について原則として見る、その前の期間も付加要因として見るということになっておりますけれども、これは六十二年に、現在の認定基準ができる前に医学者に集まってもらいまして、その発症の原因としてどの期間にあったことが一番関係をするかということを議論していただきました。  そのときは、やはり発症前二十四時間以内のものが一番関係が深い、それからだんだんさかのぼるにつれて関係が薄くなる、一週間もたてばほぼ関係がないのが普通であるというような結論になったことを受けて現在の認定基準が決められておるわけで、私どもはこの認定基準によって認定をいたしておるわけですが、今先生が言われましたその高裁の判決の中では、その認定基準に照らしまして私ども考えと違うのではないかと思われる点もありますけれども、それと同時に、認定基準に沿ってもこういう結論になるという要因と両方あると思われます。  例えば、長期にわたる隔日交代制、夜勤といったものが健康に及ぼす影響というのを論じている一方で、当時はやっておりました企業爆破の予告電話のことで非常に忙しい、あるいは精神的に緊張した、あるいは冬、寒気の中を出たり入ったりするような事情があった。そういったその当時ありました業務上の負荷の点にも触れているというようなことで、どうもそこは必ずしも一方の要因によってのみ判断をしているとも思えないという節がございます。  そういうことで、今御質問の点につきましては、私どもが従来とっている点と考え方が違う点もございますけれども、一致している点もあるというのが私ども考え、見方でございます。
  193. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 言われるとおりだと思うんです。一致している部分もあるかもしれません。しかし、逆に言えば、違っている部分をどんなふうに見ていくかということが私は大事だと思って、まず時間の問題を挙げさせていただいたわけでございます。  労働省の今までの労災認定の問題を見てみますと、やはり変わってからは一週間というものを非常に重視して見ているというのが事実です。それ以前から詳細に検討するかというと、裁判所段階で私は検討されているというふうにこの判決を見たときは思えてならなかったわけです。  もう一つちょっと具体的に聞きますと、今おっしゃった中で、例えば次の問題、宇都宮さんの事件ですからことし二月四日の事件の方です。  これを見ますと、時間外労働というものが全くなかったにもかかわらず、判決では労働内容が過密だったか過重だったか、または作業環境がどうだったかということに着目して、その部分を判決の中で述べております。これは労働省がある意味では労災認定する段階では全然考慮していなかった点だと私は思っているんです。  そうなると、私はこの点で言いたいのは、今の認定基準というのは、所定の業務内容と比較して多かったかどうかが一番の判断の基準です。所定業務の例えば二倍とか三倍働いたということが労災認定する上の一番の大きな根拠になっているわけですけれども、判決そのものを見るとどうなっているかというと、そういう所定時間より多いか少ないかじゃなくて、被害に遭ったその本人にとって業務がどれだけ過重だったかどうかという点を重視しているように思えるんです。この点についても労働省としては範囲内だと考えられますか、私は違っていると思うんですけれども
  194. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 業務起因性を論じます場合に一番典型的なのは、先生もお触れになりましたように、労働時間が非常に長いというような状況一つあるかと思いますけれども、私どもが認定基準によりまして判断をいたす場合に、その労働時間の長さだけ考えているということは決してございません。  それは、労働環境であるとかあるいは精神的な負荷といったものも含めまして考えているわけでございまして、したがって時間が、何といいますか、残業が非常に長くないのに認定をされたのが従来の考え方と違うというふうに見ますと、これはそうではないというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。
  195. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今、精神的ストレスも十分労働省としては配慮してやっているんですよとおっしゃいました。ただ、先ほど局長御自身おっしゃいましたけれども、これはもう一方の宮崎さんの事件の件です。企業爆破予告があったり、そういう問題がいろいろあって、ロッカーの管理人さんをやっていらっしゃった人の問題ですからそういうことがあって、いろんな予告電話もある。そんな中で非常に精神的に過重になっていて、そのことが今回の業務上と認定する一つの引き金になったというような認定を裁判所はしているわけですよね。  じゃ、労働省がこの労災を却下するときにどうだったか。そういう問題は検討されていましたか。事実としてきちんと挙げて、事実として判断してその中で結論を出されたんじゃなくて、私は、これは裁判段階で出てきた話だし、精神的ストレスという面で言うならば、やっぱりその面も労働時間、所定内労働より多いか少ないかというものと同等にある意味では判断していかなくちゃいけない。いろいろなものを総合的に判断しなければ、この過労死という問題は非常に複雑微妙な問題でもございますし、できない問題だと思っているわけです。  その辺を本当に配慮されているのかなと。私自身、今回の判決を見て思ったのは、あっ労働省は余り精神的ストレスを評価していないけれども、裁判所はきちんとやっているなということを率直に感じました。その点どうでしょうか。
  196. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 原処分との関係でどういうふうに違うかというようなことだろうと思いますけれども、判決では原処分において重要と考えなかったところを重要に考えた、あるいは見落としたところを取り上げたというようなことがあると思います。そういうことでなければ違った結論が出ようがないわけです。  端的にそういうことでございまして、これは原処分を裁判で争うということの性質上当然そういうことはあり得るわけでございますし、今回、二件そういう御指摘のような例が続いたわけでございますけれども、まあこんなことを申し上げて何でございますが、大体その原処分が争われる場合に八割ぐらいは原処分が維持されているということもございますし、今回の判決につきまして我々としても非常に関心を持って内容をよく精査をしておりますけれども、ただいまのところのこの問題についての見方というのはこれまで申し上げたようなことであるというふうに申し上げます。
  197. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今、局長も思わずおっしゃいましたけれども、八割は勝っていると。この前、労働省のある方と話したら、いや九割は勝っている、何で九割の方を報道してくれないんだろうか、負けているのはたったちょっとだけなんだと、それがいつもマスコミに大きく取り上げられると、いかにも不満顔でおっしゃっておりました。  しかし、裁判で国が勝つのは、これは当たり前でしょう。再審までやって、きちんと基準を当てはめた上で詳細に調査した上でやってそれが勝つのは当たり前であって、負けたということが本当に問題なんです。一件でも二件でも出たとき、それをどれだけ重視してきちんとやるかということが大事だと思いますし、口幅ったい言い方で言うならば、やっぱり日本というのは法治国家だし、法の判断のもとにやるわけですよね。  そうすると、労働省が一生懸命やってきたのと違う結論が法律の判断を下す裁判所で出てきた。私は、これはもう極めて深刻に受けとめて、負けた問題についてはそれこそもう詳細に詳細に検討して、それをどうするかということ。今の認定基準の枠内でこう判断すればどうにか当てはまるんじゃないかと、ある意味では狭くとらえるのじゃなくて、現在の認定基準でこれはちょっとカバーできない部分があるな、そういう問題が出てくれば、逆に労働省としては認定基準そのもののあり方がどうだったのかというのをやはり私は考えなくちゃいけないと思っております。  先ほど言ったように、労災というのは被害に遭った労働者、この方をどうにかして救済してやろうということでできた制度だと思っております。しかも、それを担当する労働省というのは労働者の味方なわけでしょう。どれだけ救済してあげようかということを根本に考えるわけでしょう。しかし、基準の上で、今やっている行政の枠内でどうしても当てはまらないから、済みません、却下せざるを得ませんというのが私は労働省のあるべき態度だと思っているんです。ぜひそうあっていただきたいし、前回は大臣違っておりましたけれども、塚原さんでしたかね、質問したときに、やっぱりこれからの労働行政というのは血の通った行政が一番大事なんだ、そうおっしゃいました。  そのことを考えると、先ほどおっしゃったみたいに、確かに国が勝っています。でも二件、しかも東京高裁で出たということは、やはり認定基準の上で少し合わない部分が出てきているんじゃないかということを極めて子細に検討していただいて、やはり合わないところがあったら認定基準を変えていく、そのくらいの思いで見直しの問題を含めてぜひ検討を始めていただきたいと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  198. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 八割というのは余計なことを申し上げたというふうに思いますけれども、脳、心疾患に関するケースのことを申し上げたわけで、労災全体では九割ちょっと。  それはどうでもよろしいわけで、こういう判決が出たということについては我々もその中身をよく見て、その医学的知見もある期間たてば変わってくる部分もあると思いますので、医学的知見の収集に十分努める、そういうものの上に立って検討しなければいかぬ、こういうふうに思っています。  ただ、現在運用しております認定基準は、決して行政的な立場から安易につくられたということではなくて、十分医学的な検討にもたえるような内容としてでき上がったものでございます。そういう観点でこの認定基準を適正に運用する。具体的なケースにつきましても、これは認定基準の問題なのか、あるいはその認定基準を当てはめる場合に、その事実の調査あるいはその当てはめ方に問題があったのではないかという場合もありますので、そういう点も含めて今後医学的知見の収集に努めるとともに認定基準の正しい運用をしていきたいと、こういうふうに思っております。
  199. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もちろん、その認定基準が安易な形でできたものと私も思っておりません。ただ、前回、認定基準を改正したのは二十六年ぶりでございましたね。かなりの年月がたっておりました。そういった問題を含めると、やはり認定基準の正しい運用と同時に、その認定基準が今おっしゃったように医学的見地で変わるところがあれば変わってくるわけです。それとともに、やっぱりそういった高裁の判決なりをきちんと見ていただいて、変えなくちゃいけないという部分が出てきたときは決して固執するんじゃなくて、真摯にその点はやっていただきたいと思うわけでございます。  そして、過労死の問題でもう一点だけ伺っておきます。  この二件の判決を見ますと非常に痛感することがあります。それは何かというと、例えば宇都宮事件では解決まで十八年余かかっております。また、宮崎さんの事件でも十四年余という長い年月がかかっております。一家の大黒柱を失ったわけですから、本当は一刻も早く救済をしなくちゃいけないのに、こういった結果になっているという事実がございます。  その中で、特にこれはぜひやっていただきたいと思いますのは、審査会の問題でございます。昭和六十年度の審査会繰越件数は六百七十七件でございます。平成元年度を見ますと九百十二件にまでふえております。そして、先ほどおっしゃったみたいに、申し立てから裁決までの所要期間が平均で二年カ月とも三年とも言われているわけです。昭和三十九年に労働保険審査会の委員を三人から六人に増員しました。その際、政府は、一件当たりの所要期間が十三カ月ぐらいかかり、労働者側のことを考えると迅速に処理できる体制をつくる必要があるというふうに答弁されております。そのときよりもさらに今遅くなっている現状もあるわけでございます。  そういう意味では、この審査会は現在六人体制ではございますけれども、まあ人員をふやすというのは大変な問題であると思うんですが、ぜひともそこまで踏み込む決意を持ってやっていただきたいし、ぜひ大臣、この問題に関してはきちんとある意味じゃ体制を整えるということは最低限やっていただきたいと思うんですけれども、決意を聞いておきます。
  200. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) 先ほどからいろいろ御指摘いただきましたように、また関係局長も御答弁申し上げておりますが、御指摘の点も十分わきまえながら手がたく対応してまいらなければならぬと、かように思っております。
  201. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 大臣は、最近少し手がたくという慎重なやつが何か入りまして、就任当時の決意というときの非常にしっかりした口調と比べると、少しどうなっているのかなとやや心配でございますけれども、しっかり受けとめてやられるということですから、ぜひ要望しておきたいと思います。  もう一つ運輸省質問通告しておりましたので少し聞かせていただきたいんですけれども、先日、鉄道駅におけるエスカレーターの整備指針というのを運輸省が出されたわけでございます。この問題、利用者の利便ということで出されているんですけれども、私は福祉の面からも本当にいいことだな、ようやくこういう指針をつくっていただいてエスカレーターを各鉄道駅に設置するということに取り組んでいただけるんだなというふうに喜んでおります。    〔委員長退席、理事千葉景子君着席〕  ただ、整備指針を見ると、十年後までにやると言っているんですけれども、十年後までに一体何駅ぐらいやられるつもりなのかというのがもしわかればきちんとしていただきたいし、もう一つは、運輸省として鉄道事業者にどのような支援をなされるのかという点も明らかにしていただきたいと思うんです。
  202. 松波正壽

    説明員(松波正壽君) お答えいたします。  今、先生指摘の鉄道駅におきますところのエスカレーターの整備指針につきましては、この六月十七日でございますけれども策定し、関係者に通知いたしたところでございます。  この整備指針は、鉄道事業者みずからが自主的に整備すべき内容を示すガイドラインと考えております。鉄道事業者においては、この整備指針を踏まえて自主的な判断のもとに所要の施設を設置するよう努めるべさものでありまして、各事業者がその整備に向けて努力されることを期待するものでございます。  今、先生質問ございましたように十年目標という中身になっております。したがいまして、現時点におきましては鉄道事業者にまだ指示したばかりの段階でございまして、エスカレーターの整備数を具体的に把握できておりませんが、おおむね十年を目標としてこの整備指針に沿って計画的整備が着実に進むものと考えております。  また、運輸省といたしましてもいろんな機会をとらえて鉄道事業者を指導し、その整備の促進を図ってまいりたいと考えております。
  203. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 鉄道事業者の自主的努力というふうにおっしゃったわけでございます。    〔理事千葉景子君退席、委員長着席〕  これは運輸政策審議会の答申、「長期展望に基づく総合的な交通政策の基本方向」というものの中に「交通弱者対策」というのが、これは昭和五十六年ですけれどももうあるんですよね、十年前です。このときもエスカレーター、エレベーターの問題が取り上げられて、長期的視点でこれを着実に進めることが重要であるというようなことが述べられているわけでございます。  それから十年たったんですけれども、今駅でどんな設置状況になっているか。ようやく何かこういう資料も今運輸省でつくるようになったそうでございますけれども、JRだけ見ても、大体全部合わせると四千六百八十九駅あるんですね。その中でエスカレーターだけ取り上げても、設置している駅は百五十八駅。九州と四国は特に少なくて、私は九州ですけれども、九州はわずかに五百五十七駅あるうちの二駅なんですよね。そんな実態があるわけです。  ですから、そういった努力に任せてとか自主的にということを言われてもなかなか現実と対応しない。せっかく指針をつくられるならば、現実的にいつまでにどうするというのがわかるようなものをきちっとする必要があるし、もう一つは、本気でやるならば、国としてもこういったエスカレーターの設置、エレベーターの設置も含めてなんですけれども、やはり助成措置あたりも検討する。また、融資についても例えば無利子でするとか、そういったことまでやらないと実効性かないわけですよ。そのことをどう考えていらっしゃるかお聞きしたいと思います。
  204. 松波正壽

    説明員(松波正壽君) お答えをいたします。  今、この実現のための助成措置に触れられたと思います。運輸省といたしましては、エスカレーターの整備につきましては、先ほど御説明しましたように、橋上駅あるいは高架駅等が最近非常に増加していることから、より快適な交通環境をつくり、利用者サービスの向上を図る観点から積極的に推進することが必要と考えておりますが、設置に必要な費用につきましては、基本的には利用者負担によるべきものと考えているところでございます。  ただし、大別しまして、これまで二つのケースにおいて助成を行ってきております。  一つは、鉄道新線の建設と同時に施工されますところのエスカレーターの設置につきましては、地下高速鉄道建設費補助金等により助成の対象といたしているところでございます。また、鉄道施設の改良の際に同時に施工されますところのエスカレーターの設置についても、地下鉄の大規模改良に伴う場合に補助対象としているほか、大規模な駅改良に伴う場合にも日本開発銀行からの低利融資の対象とするなどの助成を行ってきているところでございます。  以上のような措置によりまして、所要のエスカレーターの整備は進むものと考えておりますが、今後ともこれらの助成措置を活用していただきたいと考えているところでございます。
  205. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に大臣、来年は障害者の十年が終わるときでもあるんです。そういった意味じゃこのエスカレーターの問題は、指針出されましたから、答えていらっしゃいましたように、より実効性を高めるものにしていただきたいし、またエレベーターの問題も含めて、ぜひ来年までにひとつ具体的な取り組みを本当にしていただきたいんですけれども、大臣の決意を最後にお伺いして、私、質問を終わりたいと思います。
  206. 村岡兼造

    ○国務大臣(村岡兼造君) 身体障害者等の交通弱者のための施設整備の必要性につきましては、十分認識しているところであります。点字券売機とかあるいは身体障害者用トイレ等の施設について早期整備がなされるよう、今後とも鉄道事業者を適切に指導してまいりたいと考えております。  先生指摘のように、いずれにしても駅の数が多く、そしてエレベーター、エスカレーターでも、エスカレーターの場合は一駅三億円から五億円、あるいはエレベーターの場合は二億円から五億円というように承知をいたしておりまして、また、新線の場合は、ただいまお答えしたように、高架駅その他についてはつけるようにいたしておりますけれども、問題は既設駅でございます。大規模な駅の構造改良とか含めますと、単にエスカレーター、エレベーターの二、三億から五億というわけにはまいらないというような事情、あるいはまた用地確保が大変難しいというような困難な問題もございますけれども、今後その設置の促進方につきまして検討をしてまいりたい。  私もいろいろ運輸委員会その他で御指摘を受けておりますけれども、実際面ではシーリングその他で、要望してもなかなか現在まで容易でない。今後も鋭意努力をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  207. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ありがとうございました。  終わります。
  208. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、今問題になりました過労死ともかかわりのある長時間残業、サービス残業、ただ働きですね。それを銀行のケースと、その銀行を指導監督する立場にある労働省自体の問題について、時間があれば取り上げたいと思うんです。  地価暴騰のあの元凶となったいわゆる放漫な不動産投資、それからイトマン事件、さらに巨額の損失補てん暴力団との癒着と、今証券会社、銀行の隠された暗部から不祥事が続発しています。社会的批判も強まっていますが、銀行におけるサービス残業、これは賃金不払いですね。非常に深い病根の一つだと私は思うんです。  まず、法的規制の問題をお聞きしたいと思うんです。欧米諸国では残業の規制は法律でどうなっているでしょう。
  209. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 欧米諸国といってもいろいろあるんですが、若干の例を御説明申し上げますと、労働時間の規制の仕方は国によってさまざまでございますが、時間外労働につきましても全く法規制がない例もありますし、また時間外労働の上限を規定しているというようなものもございます。  例えば、イギリスでは時間外労働及び割り増し賃金に関する一般的な法規制はございません。また、アメリカにおきましても時間外労働に関する一般的な法規制はありませんが、時間外労働に対します割り増し賃金率が五〇%ということになっております。  これに対しまして、ドイツでは時間外労働は法定労働時間を合わせた一日の総労働時間で十時間を上限とする。割り増し賃金率は二五%となっております。ただし、この割り増し賃金率につきましては労働協約で別段の定めをすることが可能でございます。  また、フランスにおきましては時間外労働と法定労働時間を合わせた総労働時間が一日十時間以内、十二週平均で一週四十六時間以内、かつ一週四十八時間以内とされておるところでございます。また、年間百三十時間までは労働監督署の許可なく時間外労働を命ずることができる。ただし、この百三十時間については労働協約で別段の定めをすることが可能でございます。また、割り増し賃金率につきましては、一週について八時間以内の時間外労働に対しては二五%、一週について八時間を超える時間外労働に対しては五〇%と、こういうことになっております。
  210. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 アメリカなど法的規制のない例も挙げましたけれども、先進諸国のほとんどはやっぱり残業の時間が決まっておりまして、それから割り増し賃金も五〇%の国がかなり多いんですね。ところが日本は、いわゆる労働基準法三十六条に基づく三六協定、これもいわば例外的規定なんです。労使の交渉に委任されているという状況になっているんですね。国際的に言うと、この残業についての規制も後進的地位にあると言わざるを得ないと思うんです。  労働省は、八九年二月にこの三六協定についての時間の改正を決められました。これを見ると、目安が決まっておりまして、月五十時間、年間四百五十時間。この前までは六百時間だったんでしょう。六百時間が四百五十時間。労働省が目安で決める残業時間が年間四百五十時間というのでは、政府自身が九二年までに千八百時間というふうに決めているんだけれども、これを一体どうやって達成するつもりなんですか。これも極めて後進的だと思うんだが、いかがでしょうか。
  211. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 今御指摘のように、労働基準法では法律で所定外時間の上限を定めずに、これも労使協定の定めによることにして、言ってみれば労働組合の力に信頼をした制度であるわけでございますが、ただ実態としてその上限はかなり高いところへいくということで、今お話のございましたような労働大臣の目安時間というものを設けておるわけでございます。現在、年間という単位でとりますと四百五十時間、月間で五十時間以内ということで、三六協定の届け出がありましたときにこれに基づいて指導するということでございます。  それからもう一つは、現在の経済計画の期間内に年間総労働時間千八百時間に向けてできる限り短縮するという目標を政府として掲げておるわけでございますけれども内容的には週の法定労働時間四十時間、それから年次有給休暇につきまして二十日付与の二十日消化、それから所定外労働時間については年間百五十時間程度と、この三つが達成されれば千八百時間程度になるということでございますので、この三つの柱それぞれにつきましてそれが促進されるべく諸般の施策を講じておるわけでございます。  特に、法定労働時間につきましては、昭和六十三年の改正労働基準法の実施以降、徐々に本則では四十時間と決めた上で政令で短縮を進めてまいったわけでございまして、この四月からは四十四時間原則に移行したというようなことでございますし、また先ほどから……
  212. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もっと簡潔に、もうそれでいいよ。
  213. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 目安の時間につきましても、ことしはその短縮の見直しをいたしたい、かように考えております。
  214. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 実際には、そういう答弁をされますけれども、恐るべき長時間残業が銀行で広がっていますし、しかもただ働きというのが多いんですね。  ちょっと法的に詰めておきたいんだけれども、労働基準法、これは百十九条で残業の割り増し賃金を払わない場合、「六箇月以下の懲役又は十万円以下の罰金」ということに決まっていますね。これは、もし払わなかった場合は労働基準法違反は明白です。それで、これは刑罰が定まっているんだから、刑罰が定まってその一定の犯罪要件に該当する違法行為、これは犯罪なんですね。  ですから、どうですか。これは労働大臣にお聞きしておこう。労働大臣、銀行だけじゃありませんけれども、もし企業がこの二五%以上、深夜業になればもっと高くなるわけだけれども、その割り増し賃金を残業に対して支払わなかった場合、これは犯罪行為、百十九条違反ですね、こういうことになりますね。
  215. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) 労働時間の問題のみならず、労働関係諸法規は、御指摘のとおり、厳正に履行されなければならないものである、こういう私どもは基本姿勢に立っております。可能な限りこれが現実の行政上の監督指導、啓発等におきましても遵守されておるものと、さように認識をいたしておるところでございます。    〔委員長退席、理事千葉景子君着席〕  しかしながら、率直に申し上げまして、現実の問題としてえてしてそのような不明な点もあろうかと思いますが、最善の努力を尽くしてまいらなけりゃならぬと思います。
  216. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、はっきり答えてください。もし、これが犯されていた場合、企業による犯罪行為だと、百十九条違反の、そう言わざるを得ないでしょう。
  217. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) まず、私から申し上げます。
  218. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ちょっとちょっと、大臣に聞いているんです。大臣に聞いているんです、責任者だから。ちょっと待って、あなたに聞いているんじゃない。
  219. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 法律違反の事実が発見された場合には、当然その是正を命ずるわけでございますが……
  220. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ちょっと待って、大臣に聞いている。
  221. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) それで是正されない場合、悪質重大な違反につきましては司法処分に付する等の方針で厳に監督をしているところでございます。
  222. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) ただいま局長が御答弁申し上げましたとおり、そのようなことがあってはならぬと思いますけれども、かりそめにもそのような事実があり、かつまた重大な一つの違法行為というようなごときにおきましては、ただいま御答弁申し上げましたとおり、きちんと処理されるべきであると、かように思っております。
  223. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 じゃ、国家公務員の場合を次に聞きます。  国家公務員の場合は公務員法附則第十六条で労働基準法の適用が除外されていますけれども、それにかわる法律、人事院規則などがあります。国家公務員に対して超過勤務に対する割り増し手当を支給しなかった場合、罰則はどうなっていますか、人事院。
  224. 石橋純二

    説明員(石橋純二君) 超過勤務手当の関連でのお尋ねでございますけれども、給与法上は、給与全体を通じまして給与の規定に違反して給与の支払いを拒みました場合には、同法第二十五条に罰則の定めがございます。その罰則につきましては、「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金」と、そのようになっております。
  225. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 先ほど大臣は、銀行その他かりそめのとおっしゃったけれども、民間の企業指導監督すべき労働省で、これきょうもう時間がありませんけれども、あればやりたいんだけれども、サービス残業が恒常的、一般的にあるんですよ。  そうなると、今人事院の方が言われたけれども、二十五条は、給与の「支払を拒み、又はこれらの行為を故意に容認した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」。もし大臣が、あなたの部下が長時間残業をやっていて支払われずに、それをもし故意に容認していたら、これはやっぱり犯罪行為になるんですよ。このことをちょっと指摘しておきたいと思います。  大臣は、今かりそめにと言われたけれども実態は恐るべきものがあります。  「金融・広告業における監督実施状況」という資料をいただきました。この中に割り増し賃金の違法もあるというんだけれども、説明をお聞きすると、これは割り増し賃金の計算方法に問題があったというので、いわゆるただ働きというのは銀行になかったという説明です。しかし、東京地方労働組合総連合準佃会から昨年、「東京に働く労働者の労働条件と生活実態調査報告」が出ています。どこの分野にもあるんですね。あるけれども、特に多いのは運輸・通信業、金融・保険業、公務員、この三つの業種が多い。金融・保険業について言いますと、金融・保険業の場合は、残業がすべてただが二%です。一定額以上はただ働き、残業代カットですね、三一%。支払ったり支払われなかったり、二七・一%。六〇・二%の金融・保険業の労働者はこう答えている。大手の場合はもっと多いです。  ここに、ことしの三月に調査した地銀連・銀行労連二十七銀行の「職場実態調査集計結果」があります。  時間外労働について、「慢性的にある」というのがもう五〇%を超えているんですね。手当の請求について、「一部にサービスがある」、六九・九%。七〇%が一部ただ働きと答えている。「ほとんど請求していない」、一二・四%、合わせますとこれは八二%を超えるんですよ。だから、この銀行の実態調査だと八割の銀行労働者がとにかく一部あるいはほとんどただ働きだという実態調査が出ているんです。こういう実態を御存じですか。
  226. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 労働基準法の観点からいいますと、今おっしゃいましたただ働きというのは三十七条の違反ということでございますが、その数につきましては監督の中で把握をしております。  しかしながら、今先生はある調査を申されましたが、ああいうふうな形で一般的に全体でどのくらいあるかということは、事の性質上なかなか把握しにくいということもまた事実だと思っております。
  227. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 把握しにくいけれども実態としてただ働き、企業犯罪としてのサービス残業が銀行業についてあるということを御存じですか。
  228. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) そのような事例は、私どもも耳にするところでございます。
  229. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これはもう広く問題になっているわけで、例えばここに「ニッキン」という新聞があります。日本金融通信。これが社説で取り上げている。  「「勤務はセブン―イレブン(午前七時から午後十一時まで)」とが日常茶飯事。」だと。「男子の場合多い時には月間の残業時間が百時間前後なのに、時間外勤務手当は予算制がとられ二十時間で打ち切りが一般的。」、一般的なんですよ。「経営資料に出てくる時間外手当と実労働時間との大きな乖離をトップはどう理解しているのだろうか。」と。新聞が社説で取り上げるほど一般的なんです。  それで、労働省は、最近、今のようなあいまいな態度だけれども、七〇年代後半には調査もし、いろいろなことをされた。私はここに地銀連の資料を持ってきておりますけれども、これを見ますと、七〇年代後半には銀行全体に対する調査、監督をおやりになって、いろいろ出ていますよ。労働基準局自身が、時間外労働が恒常化しているためと、こういうことを出しているし、不払い分は払えという是正勧告もあちこちで出ている。資料がいっぱいあります。時間がないから余り挙げられませんけれども、こういうふうに実は恒常化し一般化しているという実態があり、しかもそれを労働基準局自身が十分に認識、対応できていないと私は思わざるを得ない。  そこで一つ、ちょっと具体的にお聞きしたいと思います。  三月十二日、衆議院の予算委員会第二分科会で日本共産党の正森委員が富士銀行上野支店のケースを取り上げました。これがその雑誌ですけれども、行内誌です。これを取り上げて、この行内誌で言われている「早帰り体制」、それは「平均退行時間午後は七時半」だと。一年かかって七時半にしたという。銀行は五時に終わるんですよ。一年かかってやっと七時半にして、それで表彰されているんだから。表彰されているところでも大体月間五十時間になるというケースを正森委員が明らかにした。しかも、この五十時間について一部しか支払われていないんです、残業代は。この問題は調査しましたか、富士銀行。
  230. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 平成三年三月十二日の衆議院予算委員会第二分科会の御指摘でございますが、これにつきましては今後の金融機関に対します監督指導の実施の際の参考としてお聞きをいたしましたが、今特定の銀行の名前も挙げられての御質問でございます。  特定の金融機関に関します監督指導の実施状況、全国の状況を個々の銀行ごとに把握をしているというわけにはいかないわけでございますけれども、各都道府県の労働基準局あるいは監督署におきましては管内の実態に応じまして的確な監督指導を実施している。特に、金融機関につきましては残業等の問題が多いという実態もございますので、地域の実態に応じて重点的な対象として扱っているところも多いわけでございます。  ちなみに、富士銀行の例でございますけれども、ある局においてはその管内で平成三年度中に七件の監督指導を実施しているというような実績もございますし、それぞれの地域の実態に応じまして重点的に取り上げているところでございます。
  231. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 富士銀行では基準監督署の今回の調査に備えて、文書で、そういう場合こういうふうに応対しろとひな形を全部通知したんです。それを見ますと、見ますとというか、どうもそれにはこういうふうに書いてあるらしいですよ。何時に銀行を終えるか、退行時間、最終退行、点検当番日誌、勤務時間管理表以外にあるかと聞かれたら、ないと答えるというふうになっていますね。    〔理事千葉景子君退席、委員長着席〕  それで、実はこの勤務時間管理表というのは、これは自分で職員が書くんですから、これ以外にないというのがこの問題の一番大きなからくりなんです。つまり、職員が自分で書き込むわけですよ、いつ銀行を引いたかと。これが実態と違うんです。これが最大のからくり。だから、労働基準監督署が銀行に乗り込んでも、この勤務時間管理表、これ以外にございません。それを見せろと言うと、自分が書いたのだから、ほれちゃんとそうじゃないかと。ちゃんとこれはサービス残業はないということを思わせるようになっているんです。  私は、ここで実際にある銀行の時間の管理表を見ました。これはコピーです。見たら同じ書体で、女性の場合は全部ほとんど五時と書いてあります。押してある判こも同じ色ですよ。インクの色も同じ。一カ月分一回一まとめに書くんですよ。男性の場合もそう。全く同じ書体で同じインクでずらっと一カ月分書いてある。男性の場合残業時間は例えば十八時間とか、女性の場合六時間というふうになっている、自分でこれを書いているんだから。しかし、これが実態と違うんです。  この問題は、実は以前に参議院の社労で日本共産党の沓脱委員が取り上げたことがある。富士銀行の「五十九年度下期時間外予算の運営」という通達です。どう書いてあるか。  つまり、時間外予算時間というのがあるんです。それを守れという通達なんです。予算を組んであるのは管理職が月二十五時間だと、残業は。男子事務行員は二十二時間、女子事務行員は十時間だと。庶務の行員は二十時間だと。この基準が決まっているから、これ以上書くなと。書くなというよりもこれを厳守しろということなんですよ。これが時間外予算時間の厳守と。銀行全体の目標、これを守らないといかぬわけですよ、支店長も課長さんも。だから労働者は、こう来ますから、これ以上の残業時間は書けないんですよ。  ここにある銀行の職場ニュースがあります。「「目標管理が厳しくて」と時間外勤務記録表を修正させられる課長。」、課長さんが修正させられる。「「時間外をつけてもいいよ、どうせその分はボーナスのメリットをおとされるからな」とウソぶく副支店長。」。書きたいんなら書けと、残業時間を。ボーナスのメリットが減りますよと。ボーナス減らすよということになる。そういう仕組み全体の中では銀行労働者は書けないんです。ここに最大の問題があるんです。  そこで、三月十二日の正森質問ではこの問題を取り上げた。それに対して山中監督課長はこう答えている。「労働者の請求の有無とかかわりなく遵守されなければならない」、つまり、労働者の側が書けなくなっているんですから、管理者側が本当の残業時間をどのくらいだったかということを把握して、そしてきちんと法規に従って残業代を支払う義務と責任があると、監督課長はこう答えているが、局長、これでいいんでしょう。
  232. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) そのとおりでございます。
  233. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ですから、労働者はなかなか今の銀行全体の仕組みの中で書けなくなっている。よほど勇気があってもなかなかこれは書けないですよ。だから、労働者は書けないけれども、労働者が申告しようとしまいと管理者側が時間を把握する義務があるんです。銀行はデータを持っています。この証拠に青森銀行の例があります。  これは全国地方銀行従業員組合連合会、その機関紙「ちぎん」の六月十日号。青森銀行の労働組合では、新町支店で五月一日、メーデーの日、早朝三時まで違法残業をさせていたことを知って銀行に調査を要求した。五月七日の団交で銀行は調査結果を明らかにして遺憾の意を表明した。銀行は四月二十六日二十四時まで、二十七日二十二時まで、三十日二十四時まで何人、ずっと残業させた。問題の五月一日、二十一時三十分一般女子二人、二十四時女子役席一人、翌日二時五十五分、やっぱり三時ですよ、一般男子六名、男子役席八名残業させた。原因は計算不突き合わせ、計算が合わないんです。合うまでやらされるんだ、午前三時まで。これは女子について労働基準法違反ですよ、十二時までやらせているんだから。それで、こういうふうに組合が要求したら銀行はぴしゃっとデータを出せるんだ、銀行はつかめるはずですよ、どういう申告をしようと。  どうです、基準局長。銀行自身はしっかりつかめるんだから、管理者にこのことを明らかにさせる、そして残業代をきっちり払わせるということをもっと指導監督強化すべきじゃありませんか。
  234. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 特に問題のある業種について重点的に調査、監督指導を行うわけでございますけれども、ただいまのお話も念頭に置きながらやりたいと思います。
  235. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも本気の答えというのはなかなか聞けない。どうやって銀行を調査させるか聞きました。賃金台帳と先ほどの勤務時間の管理表、この二つだけ見るんだという。この二つだけ見て突き合わせてもこういうからくりを絶対見分けなければいかぬです。どうやってその実態を明らかにするつもりですか、基準局長
  236. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 余り詳細をここで申し上げるわけにもいかぬと思うんですけれども、例えば守衛の記録などと突合することもございます。ありとあらゆる考えられるすべてのものと突合して真相を調査するというつもりでやっております。
  237. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 なぜ手段を言えないかというと、その手段を局長が言うと、銀行はなかなか利口ですから、早くもそれを上回ることを考えるわけです。僕は局長のようにそういう心配は必要ないから、私の調査の結果、こういうことをやったらどうかということを少し提起します。  こういうサービス残業という驚くべき違法行為企業犯罪の実態をつかむためには、一つは精査表というのがあります。コンピューターからデータをとるでしょう、残業についてコンピューターから。その精査表には時間も人名も記録されているわけです。これは機械だから正確に出るんです。外交の職員はハンディー端末というのを持っている。外交員も月末になると目標があって、やれやれ、やれやれといってやっぱり夜やるんです。会社や家庭を訪問して仮領収書を渡したときにハンディー端末で報告するとこれに時間が入ってくるんです。なかなか、五時に帰りましたと言えないような時間がちゃんと入ってくる。今言われた警備保障会社の記録もあります。金庫開閉時間簿、こういうものもある。私は今四つの手段を挙げた。こういうものを調べれば実態は必ずわかる。基準監督署がこういうことを本気でやらないと、一般化し恒常化した銀行のサービス残業というのは広がっていく、波及するんです。  今、過労死が問題になりました。この過労死問題で、例えば岩手銀行の金ケ支店次長の斎藤昭さん、この方も亡くなられたんだが、この方は百時間から百五十時間、毎月残業されている。ところが、支払われているのはその一割なんです。そうすると、表には載っていないんだから、申告もしていない残業時間中にさあ過労死のことが起きたら、これは立証できないじゃないかという問題まで起きる。  それから、今大問題になっているリクルーターというのがあります。大学の後輩を自分の銀行に引っ張りたくて、みんな銀行命令でリクルーターとして後輩を引っ張るのをやるわけです。これは三六協定違反でもあるんです、こういうことをやらせることは。しかも、残業代未払い。しかし、これはさすがに組合の大会で問題になったために、第一勧銀、大和銀行、富士銀行、リクルーターの残業代を一部支払ったということまで生まれている。ですから、放置しておくといろいろ広がっていくんです。  私は、今四つの問題を提起したんだが、真剣にこのサービス残業、長時間残業の実態、違法行為であり企業犯罪、かりそめにも実際にあるんだから、企業犯罪でもあるので、労働省として七〇年代後半には本格的に全国おやりになったんだが、ひとつ本格的に法治国家としてこれを根絶するということをしていただきたい、これは大臣、決意をお伺いしたいと思います。
  238. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) 一連の時間外労働あるいは休日労働などが行われました場合には、法令、規則に従いましてきちんと割り増し賃金が支払われるべきである、まず私はこれが基本だろうと思います。同時にまた、労働基準監督機関等におきましてもそれらの関係法令が遵守されるように、本来も私どもは監督指導に努めてまいったつもりでございますが、今後も適切な指導監督に積極的に努めてまいりたい、かように思っております。  また、後半お話がございました時間外労働につきましても、いわばその削減を図ることが最も重要でございまして、時間外労働の適正化指針なるものに基づきまして、この点につきましても今後とも強く、積極的に指導してまいりたい、かように思っております。
  239. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大臣の今の国会における言明を信頼しますので、ひとつ真剣にやっていただきたいと思います。  私は、この問題は、やっぱり日本の経済が国際的に役割を果たしているだけに、国際的に大きな問題になると思うんです。今度、野村証券の社長の辞任問題が国際的にショックを与えたように、日本の銀行が物すごい長時間労働で、しかも残業代を払っていないなんということになれば、国際的なやっぱり批判になりますよ。  過労死の頻発が先進資本主義国では余りなくて、日本だけの異常現象だと。だから、ジパニーズカローシというのは、それが英語になったと言われますけれども、サービス残業というのも恐らく日本資本主義にしかない異常な現象だろうと思う。  支払われていない賃金、給与の総額というのは恐らく巨額に上るだろう。先ほど富士銀行上野支店の例を試算しました。あれは男子で五十時間、女性の場合も計算があるんですけれども、これを試算しますと、富士銀行全体でおよそ年間百億円に達するのではないかという計算があるんです。銀行全体では恐らく一千億になるんじゃないか。全産業では恐らく兆の単位の残業代が未払いのままということになるのではないか。  一方、都市銀行の利益は莫大なものです。先ほど数字公表されました三月期の業務純益が住友二千六百三十二億円、三和二千百三億円、富士千七百五十四億円、第一勧銀千五百一億円、三菱千六百十三億円、太陽神戸三井九百八十七億円等々で、二千億円を超える純益を銀行は出していて、労働者に対して当然払うべき賃金を一行で恐らく百億円払っていないというようなことは、これは法治国家として絶対許せないですよ。  日本はこういうことをやって、どんどん世界一の債権国家ということになりますと、これは今度アメリカでCIAが日本たたきの論文を大学に頼んで、取り消したりなんか騒いでいるけれども、そういう批判が来る。だから、自衛隊を出すことばっかり一生懸命になるんじゃなくて、こういう問題にメスを入れなければ、本当に日本の国際的な信頼確保できないということを私は強調しておきたいと思うんです。  労働大臣、こういう不法行為を厳しく取り締まる、根絶のために努力されるということになると、それにふさわしい体制が要ります。特に、労働基準監督署の人員の増員が要るし、銀行などに対して遵法の精神を教育し直すことが要るんですよ。局長が心配するように、こういうふうに調査しますということを委員会でなかなか言えないと、言うとすぐそれを上回るなんということを心配されているのでは根絶できない。だから、本当に銀行の幹部の方々の考えを、労働者の権利をしっかり守る、労働基準法を守るという方向で指導監督、教育しなければならないと思うんです。  ところが、ここで人員削減の問題が起きています。  ここに全労働省労働組合の「よろこばれる仕事がしたい 労働行政の増員を訴える」というパンフレットがあります。こういうものその他を見ますと、とにかく人員削減の影響が非常に大きい。労働省の労働基準行政職員をとってみても、一九六五年と八九年、これ二十四年たっているんですけれども、比べると五百人削減。この二十四年間に労災保険の適用事業場数は二・六倍、労働者数も一千万人ふえている。こうしたところが人員削減で、最低労働条件確保、労働災害の防止に重要な監督実施率、実際に監督をどのぐらい実施しているか、六五年と比べると五〇%を切っている。二十四年間に監督実施率が半分以下になっている。こういうことになりますと、これはやっぱりしわ寄せが国民、労働者に来ているという実態であります。  政府は、来年度から第八次定員削減計画を実施しようとしている。さらに削減しようということになるんですね。こういうことはやめるべきです。  特に、きょう質問し、大臣も決意を表明されましたけれども、私はきょう銀行を取り上げたんだけれども、こういう銀行だけじゃなくて多くの企業でそうでしょう。特に銀行、金融業はひどいんだが、ここのこういう不法行為を根絶するためには、労働基準監督官をもっともっとふやさなきゃならない。国民、労働者に対する本当の意味のサービスを実行するために増員を図るべきだ。  昨年、労働省の大幅定員増を求めて三十一万名の国会請願、これに全労働を中心に取り組まれた。衆参両院でこの国会請願は全会一致で採択されている。各党一致です。ところが、これが採択されているのに、実際は今度もまた削減ということになっているわけで、私は、労働大臣、ぜひきょう取り上げた銀行のこういう不当なサービス残業、長時間残業、こういうものを本当になくして、国際的な信頼確保するためにもまず労働基準監督署の増員をして、ふさわしい体制をつくることが必要だと思うんですけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  240. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) 率直に申し上げまして、ただいま先生のお話、御指摘をお伺いしながら感じました一般的な概念と申し上げますかを申し上げてみたいと思うのでございますが、労働行政に対する国民の一般的な期待あるいは需要、あるいはまた行政責任として果たさなければならない役割、これは御指摘のとおり日々ますます増加の傾向にあります。  例えば、先ほどお話がございました労働時間短縮の問題、一つこの政策課題を取り上げてみましても、平成四年末をもちまして一応一千八百時間という目標をどのような手段において、そしてどのような一つの枠組みの中でこれを実現するのか、目下御案内のとおり労働基準審議会に諮っております。あるいはまた、さきの国会で決定をいたしました育児休業法の来年四月一日からの施行の問題、これらもこれから私ども各位の御意見をお伺いしながら、政令、省令あるいは労働大臣指針等をこしらえまして、そして四月一日から関係者の皆様方の御期待に沿えるような育児休業制度の実施に踏み出さなければなりません。  こういうふうに、目前の緊急課題を手がたく具体的に片づけていくための私ども労働省一つの体制、今お話がございました定員の問題等含めまして、確かに御指摘のとおり、私どもは基礎的な一応の体制固めをしなければならぬと、非常に責任も痛感をいたしております。  一方、政府全体におきましては、御案内のとおり、経費節減、そして合理的な行政推進の観点から定員枠の問題も追ってまいりますけれども、前段で申し上げましたような労働行政独特の今日の重要な国民的課題を果たさなければならぬという使命感を私どもはまず先んじて訴えまして、そして御指摘のような体制をできるだけ整えてまいりたい、そして責任の遂行に当たりたい、かように考えております。
  241. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  242. 高井和伸

    高井和伸君 ようやく労働省にお目にかかれることになりまして、私はこれまでの決算委員会で一回、二回、三回、連合参議院として都合三回社内預金について質問させていただいてきました。  それで、きょうは私にとりましては総括的な質問ということになりまして、まず労働行政における社内預金というのを労働省はどうとらえて、どう存在価値を与えて、どのような方針で今後やっていこうとお考えになっているのか、現時点における社内預金に対する労働行政の基本的立場を御説明ください。
  243. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 労働基準法十八条で、御承知のように、強制貯蓄の禁止ということがあるんですが、それとは別に社内預金制度という制度が認められております。これは労働行政にとってどういう意味があるのかという……
  244. 高井和伸

    高井和伸君 簡潔で結構です、簡潔で。もうわかっていますから。時間がありませんから。
  245. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 労働者にとりましては、一般の市中預金金利に比較して比較的利率に魅力があるというようなこと、それから日常就労している事業場への預金であるということで、それだけに便利性があるということ、あるいは他方、使用者にとっても事業運営資金等の原資として利用し得るというような利点があるわけで、そういった意味があると思います。
  246. 高井和伸

    高井和伸君 よくわかりません、今の御説明は。  銀行がありまして、郵便局がありまして、信用金庫がありまして、労働金庫がありまして、その上になぜ社内預金があるのか、それだけ質問しておきます。答えてください。
  247. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) ちょっと余り短く申し上げますとなおわからなくなると思いますので、一通り、繰り返しの部分もございますが。  今申し上げたような労働者あるいは事業主双方にとっての利便があるという点が他の一般の金融機関における貯蓄とは違うところで、そこに特徴があると思います。存在価値があるとすればそういうことであろう、こういうふうに思います。
  248. 高井和伸

    高井和伸君 そして、前回までにお伺いしました数字を挙げますと、平成二年末で社内預金の残高が四兆四十億余りである、そのうちの八割強が保全委員会方式というので保全されている。要するに、私に言わせればしり抜け保全方法だろうと思いますけれども、その数字というものは間違いありませんか。
  249. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) あるいは先生のお持ちになっている資料とは時点が違うのかもしれませんが、私どもは、平成二年におきます社内預金の現状として、預金総額が三兆二千二十七億円、それから預金労働者数三百七万人というふうに把握をいたしております。
  250. 高井和伸

    高井和伸君 それで、問題になるのは社内預金の保全の方法でございます。要するに、それが銀行と同様に支払いが保証されている制度がなかったらおかしいということで、いわゆる賃金の支払の確保等に関する法律というのができてそれなりの制度的な措置がなされているわけですけれども、どうやらその四番目に挙げられている保全委員会方式による保全というのは、今までの答弁を聞いていると、破産した場合は一般債権になるというような説明をしかかって、私はそれ以上説明せぬでもいいということでとめたような経緯がございますけれども、これはきっちり保全されているんですか、労働省としては。
  251. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 保全委員会方式でございますけれども、これは御承知のように、委員の半数以上が当該事業所の労働者で構成される委員会を主体にして保全管理をやるという方式でございますから、もし労働者がその自分たちの利益のためにこれを重視してきちんとやるという、適正に運営されれば、これは法令によって定められた制度でございますからそれなりに意味があると思いますけれども、最近起こったような事例を見ますと、必ずしもそれが適正に行われていないという実態も出てきておるというふうに見ております。
  252. 高井和伸

    高井和伸君 今の話、適正でないという問題でなくて制度的に欠陥があるというふうにお考えになっていませんか。
  253. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 預金総額に見合う担保が実物でない場合があるという点では、おっしゃるような問題があると思います。
  254. 高井和伸

    高井和伸君 欠陥があるということを認められたことは非常に敬意を表します。  例えば、銀行だとか相互銀行、農協、そして労働金庫などにおきます預金の保全方法としては、預金保険法というのできちっと担保されております。問題は、そういったものが社内預金にない。ないときに、しかも三兆二千億円という数字のうち八割方がある意味では今制度的に欠陥がある。倒産してしまったらとても払ってもらえないということをお認めになった制度のままほうっておかれている。そういう状況における社内預金というものは労働行政でどういう立場にあるのだと、私の当初の質問のポイントに戻るとそういうことなんですよ。そんな欠陥制度でも続けるべきなんですか。
  255. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) これは、現在少なからざる事業所でこの社内預金の制度を持っていて、労働者がそれなりに結構なものであると思って現に運用されている制度でございますので、これを直ちにやめることはいかがかと思いますけれども、ただ、保全方式の現状についてよく実態を明らかにして、さてどうなすべきかという検討をやることは必要かというふうに思っております。
  256. 高井和伸

    高井和伸君 私が一番懸念するのは、今のは少なからず結構なものだと認識されておられる方々がおられるにしろ、これから具体的に申し上げます日東あられにおける、労働省が賃確法の四条の保全命令も出さぬような弱腰のままで、社内預金を保全しろというようなことをせぬような労働省指導下における社内預金である、結構なものだと言わなくなりますよということを懸念しているわけですよ。その点についてはどうですか。
  257. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 一般的には、その保全方法がとられていない場合に労働基準監督署から保全命令を出すということがあるわけでございますが、現在先生が念頭に置かれているケースですとちょっといろんな事情を現段階では特に考えなければいけないという事情があると思いますので、そういう点で直ちに保全命令を出すということは控えておる、こういうことでございます。
  258. 高井和伸

    高井和伸君 社内預金について結構なものだと、そして労使にとって双方とも利便なものだと、こういうお話でございました。しかしながら、これは実質中小企業などにおいてはやはり企業の使用者側、会社側がやってくれと言えばやらざるを得ない、天引きでもやってもらわなきゃいけない。形式的には賃確法における、そして労働基準法十八条におけるいろいろ規制はクリアしたとしても、実質賃金の一部を積み立てていくという、そういう要素からいえばかなりの面で賃金に準じた扱いをしなきゃいかぬものだと私は理解するわけですけれども、どうでしょうか。
  259. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 賃金と同じかどうかということについては若干議論があると思いますが、ただ、労働者が自分の賃金の中から預金をしてその労働者に属する金銭であるわけで、そういう意味では、これは当然その労働者のところに必ず戻ってこなければいけない、そういうものだというふうには思っております。
  260. 高井和伸

    高井和伸君 労働者のところに戻ってこない事例があるわけでございます。  岐阜県における日東あられというところで、九百四十六名の方々が六億七千万円余りの社内預金が滞って払ってくれない、こういう状況が今あるわけですが、労働省にこれまでの対応をいろいろ聞いてきました。事実調査、まず初めは、届けはそのままできちっとしているから届け上は問題がないというのが第一週。第二週は、これから調査して対応する。第三週は、それなりの調査をしたけれども、今から保全命令を出すかどうか検討中、こういうことでございました。今はどうなっていますか。
  261. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) これまでの決算委員会で既に御説明したこともあるかと思いますが、ちょっと事の順序として申し上げますと、現状でございますが、昭和四十三年にこの会社では制度が始まっているわけでございます。  預金者数あるいは預金総額は今先生が言われたようなことでございますけれども、一応この利率につきましては、労働省指導しております上限利率の範囲内におさまっているということが一つ。  それから、預金保全委員会につきましては、これは労働基準監督署には正しく行われているような届けは出ておったようでございますけれども、少なくとも平成二年四月一日から平成三年三月三十一日までの一年間においては実際は一度も開催をされていないというようなこと。  それから、支払い準備金制度につきましては、少なくとも預金額の全額については用意されていない疑いがあるということ。  それから、この会社の貯蓄管理協定によれば、社内預金の受け入れ限度額は四百万円ということになっておるわけですけれども、どうもこれを超えて預け入れを行っていた者があるというようなことが明らかになっております。それで……
  262. 高井和伸

    高井和伸君 済みません、先週そこまで聞いております。新たなものは何ですか。一週たちました。
  263. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 続けてください。
  264. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) それで、労働省としましては、会社に対しましては五月二十三日に……
  265. 高井和伸

    高井和伸君 それも聞いております。一週間における行動の説明を求めているわけです。
  266. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) これは、現地の労働基準局と常に連絡をとって現在……
  267. 高井和伸

    高井和伸君 それも前回説明ありました。じゃ、何も動いていないんですね。
  268. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 今、動いていないと申しますか、表面的には動いておりませんが、会社サイドといいますか保全管理人におきましては、会社更生法の適用によって再建を目指していろいろと努力をされておる段階であるというふうに承知をいたしております。
  269. 高井和伸

    高井和伸君 前回から一週間たちまして、保全命令というのは、これは緊急迅速に発令しなきゃ意味がないものだと私は基本的に理解しておりますが、何もやっておられない。表向きは何もやっていないのだけれども、水面下はやっているんだというような説明ですが、具対的には再建を一生懸命やっておられるということだけを承知しているという御回答でございました。これで賃確法の三条、四条の精神は実現しているとお考えでございますか。
  270. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 賃確法によりますいろいろな措置は、これは社内預金が場合によってはこういったような事態に立ち至る可能性があるということでいろんな保全制度を設けているわけでございますけれども、たまたまそれが形の上では行われたことになっていても行われていなかったというところに問題があると思いますので、今後広範囲にわたってこのような方式をとっている社内預金について調査を早急にいたしたいというふうに思っております。
  271. 高井和伸

    高井和伸君 今までの話としては保全命令をいまだ出しておられないというふうに聞いた上で、なぜ出しておられないのか質問いたします。
  272. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) これは先ほどの繰り返しの部分もありますけれども、現在、会社再建に向けて関係者が努力をされている段階で、そのような措置をとることがどういう影響を与えるかということについては十分慎重に考えなきゃいけないということからそうなっているわけでございます。
  273. 高井和伸

    高井和伸君 大臣、今おっしゃった話はそれなりに理解できます。しかし、労働省としてはだれのためにこの賃確法を制定したかといえば、労働者の賃金から天引きされる社内預金を保全するための保全命令、こういう制度であるわけです。それを今局長のおっしゃられるには、いろんな方がいろんなことを努力しておられる、再建を目指して関係者が努力しておられるから、そういうのを見守っているというようなことで労働行政が貫徹できるんですか、私はできないと思うんですが。
  274. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) 実は、けさほど、先生からこの種のお尋ねがあるということで、私も省内の関係幹部の皆さんとも話をいたしました。先ほどまた、先生からいろいろ厳しい御指摘どもお聞かせいただきながら感じておるところでございますが、端的に申し上げまして、労働者の基本的な諸権利を確保する、また当然の経営者として労働者に対して担保するべき基礎的なところがいささか乱れておる、そういうゆゆしい状況であることも否定できないと思っております。非常に厳粛に受けとめておるところです。  ただ、先ほど局長も若干説明を言外にいたしておりまするように、これが決して十分な対策が講じられておるとは思いませんけれども、少なくとも、乱れたとはいえ、現段階におきましてでき得る限りの措置は講じなけりゃいかぬということで、再建問題等を中心にしてという先生のお話でございますが、そのこともさることながら、またただいま御指摘の社内預金の問題等につきましても最高の努力をいたすべく、けさほども助言なり指示をいたしたところであります。  先ほど来いろいろお聞かせいただきました問題はよくわかっておりますから、最大の努力をいたすべく、気持ちを申し上げる次第でございます。
  275. 高井和伸

    高井和伸君 大臣の決意はそれなりに理解させていただきましたけれども、今までの議論の中で、一点、労働省の行政方針が誤っているということを述べたいと思います。  再建を目指しておられるということをしんしゃくして保全命令を出さない。これは、会社を再建することをだれが判断できるかというと、労働省は判断する立場にも地位にも、情報も持っていないんです。これは、会社更生法手続を適用してくださいという会社側の申し立てによって裁判所が会社更生法に基づく再建策を講ずるために保全管理人を命令しただけなんです。開始決定も行われているわけじゃないんです。そういった基礎的なデータとして再建できるかできないか、再建の見込みがあるかどうかを保全管理人をして調査させているわけです。労働省がそんなデータを持てるわけはないんです。持てるわけがないのに再建という言葉を頭に置いて、労働省の行政の中における価値判断の中に、行政判断の中に再建という言葉を取り込んで保全命令を留保しているということは、これは法律の解釈の誤りだろうと思う。賃確法の解釈の誤りでもあり、会社更生法は労働省の所管じゃありません。裁判所は会社更生法によってやるだけです。  この第一条に何が書いてあるかといいますと、念のために読み上げてみますと、会社更生法の第一条の「目的」、「この法律は、窮境にあるが再建の見込のある株式会社について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、」、ここです、「その他の利害関係人の利害を調整しつつ、」、債権者も入りますがね、「その事業の維持更生を図ることを目的とする。」というわけですから、労働省労働省なりの権限を目いっぱいそこへぶち込んでもらうことが賃確法の精神であり労働省の立場であり、それ以上のことを考えることは越権であり能力のないことをやるという全く間違ったことになろうかと、私はそう解釈をするわけです。どうでしょうか。
  276. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 会社更生法のいろいろな手続に関する権限につきましての労働省の役割はおっしゃるとおりでございますけれども、ただ、事業存続ができれば一番いいということは恐らく関係者みんなが思っていることだろうと思います。それが可能かどうかは今の段階でははっきりいたしませんが、私どもとしてはそれが少しでも可能な方向にいくような協力が必要だろうと思っております。  おっしゃるように、労働省自体は別に財産内容あるいは債務の内容を調べたりする権限はございませんけれども、できる限り関係者と接触を保って最も妥当と思われる道をとりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  277. 高井和伸

    高井和伸君 総論としてはそのとおりだと思うんですよ。しかし、各論の問題で、もしこれが会社更生にならなかった場合、保護されなくなってしまう。最悪の場面を考えるのが労働者を保護する労働省の立場じゃありませんかと言うんですよ。中途のところの会社更生になれば、それなりの会社再建における共益債権化ということで社内預金を保護される道が開かれていることはわかっておりますけれども労働省としては再建できなかったことをおもんぱかって、あらかじめやるのが役割じゃございませんか。
  278. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 先生のおっしゃることも十分理解をいたしますが、ただ、おっしゃるような方法を今直ちにとった場合に、それがどういう影響を及ぼすかということは私どもとしても十分考えなきゃいかぬ、こういうふうに思っております。
  279. 高井和伸

    高井和伸君 それは社内預金の方々の犠牲において労働省がおやりになることでございます。犠牲においてですよ、わかりますか。犠牲がないとおっしゃるのかどうか、それだけ確認させてください。
  280. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 我々は、もちろん労働者に属する預金が最終的に労働者に戻るということを最優先に考えるべきだというふうに思っております。
  281. 高井和伸

    高井和伸君 最後に、基本的には労働省サイドとしてのいろんな面でのお考えは大体理解できるんですけれども、しかし、今会社会社更生手続を申し立てたという段階では一種の倒産状態なんです。今、保全しなきゃいけない。平時じゃない、戦時なんです。戦時としての対応が労働省としては、私は非常にゆがんだ判断をなさっている、こう考えているわけです。保全命令を出さないという一点のみならず、全体の発想において会社更生、立ち直りを重視し過ぎている。それは保全管理人、裁判所がおやりになることであって、労働省は一歩下がっておられるはずです、全部じゃないですけれども。  そういうことを踏まえて、このケーススタディーとしての日東あられの関係を初めとしまして、これからほかの同じような事例があり得るわけですよ。そういったことを踏まえて、徹底した究極の保全策は何かということ。今の保全委員会方式は、あれは欠陥だということを先ほどお認めになりました。それを含めて実態調査の上、この社内預金の預金債権の保全方法については抜本的に見直すということをここで言明していただきたいと思います。
  282. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 現在定められております保全方式は、これが適正に行われれば十分その機能を果たすものと思われますが、実際にはこれが適正に運用されていないという例がここに出てきているわけでございますので、先ほど申し上げましたけれども、これを全国的に調査いたしまして、その上で必要な検討をしていきたい、こういうふうに思います。
  283. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) 決して先生の御意見を否定申し上げておるわけではございません。しかも、率直に申し上げて、先生のお話はもうぎりぎりのところを詰めておいでになると思っております。私どもも、ただいま御心配いただいておる、おもんぱかっておいでになる労働者の社内預金の最小限確保、この問題は一番念頭に置かなければならない私どもの立場でございますから、また後刻――後刻と申し上げましてもできるだけ早い時期によく協議をいたしまして、先ほど要請のありました問題等も十分考えながら、適切、しかも可能な範囲の手を打たなければならぬ、かように思います。
  284. 高井和伸

    高井和伸君 よろしくお願いします。  終わります。
  285. 三治重信

    ○三治重信君 運輸省に、まずお尋ねいたします。  御努力をなさっておるのですが、東京国際空港の問題もなかなか第二期工事がうまくいかない。大阪空港も地盤沈下とかいってなかなか予定どおりいかぬ。名古屋空港もお願いしているんですが、なかなかめどがいつ立つかわからぬ。ところが、経済や国際環境はどんどん発展していっている中で、私は日本の経済の発展や国際交流の中で、この国際空港、航空が一番おくれているんじゃないか、こういうふうに認識をしているわけです。  そういうぐあいになってくると、東京空港もうまくいかない、大阪空港も時期はいつになるかわからぬ、おくれるということになってくると、その対応をするためには、やはり千歳とか福岡とか、さらには名古屋の空港なんかを国際空港としてもっと簡便に利用する方法を考えたらどうか。そのためには、やはり国内の千歳と東京、東京と名古屋あるいは大阪と東京というふうに、日本へ来ればすぐそこで日本国内どこへでも行けるという対策をとれば、成田でなくちゃならぬ、大阪でなくちゃならぬという外国の航空会社の路線指定がなくなってくるのではないか。  そういう意味において、空港整備の間はそれを補うし、また事実、東京、大阪、名古屋が全部完備されても、どこへおりても、その人たちはその近くだけではなくして日本のあらゆるところへ行きたいわけですから、そういう国内体制もとっていくべきである。それが国際航空のもとではないか、こういうふうに思うわけです。  特に、私は名古屋で、名古屋国際空港の審議なんかを見ていると、国際空港といいながら、愛知、岐阜、三重というものの利便だけを考えて名古屋の空港の問題を考えている。それでは国家が何十億という金を入れていながら非常にもったいない。名古屋へおりてきた外国の飛行機が名古屋の近くだけに便利になるようなことではなく、それはもう便によっては東京へも行ければ大阪へも行ける、お客さんがおりてすぐ行ける、北海道にも行ける、こういうような国際空港にしてほしい、こういうふうに考えているんですが、いかがですか。
  286. 松尾道彦

    説明員松尾道彦君) ただいま三治先生から御指摘のとおり、今は非常に航空需要が伸びておりまして、国内線では約六千万人、それから国際線でも三千万人というふうな利用状況でございまして、空港の整備が非常に緊急的に必要な段階でございます。  今関東地区では成田空港あるいは羽田の沖合展開、さらには関西地区では新関西、こういうふうな空港整備を一生懸命頑張っておりまして、六次空港整備五カ年計画の中でもこれに取り組んで積極的にやらせていただこうと思っているわけでございます。特に、空港間のアクセスにつきまして、今先生の御指摘のとおり、非常に利用しやすいようにしたいという立場から、空港間の航空機による接続というものを十分考えていきたい、このように考えております。  特に、先般運輸政策審議会で村岡運輸大臣あてに御答申もいただきまして、地方空港の積極的な国際化を図れというふうな話もございまして、現在十二空港につきまして国際線の乗り入れを図っておりまして、このような地方空港の国際化によりまして国際間の空港、さらには国内空港間同士の接続、こういうものを運輸省としては積極的にやってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  287. 三治重信

    ○三治重信君 今のは人の問題ですが、もう一つは、やはり貨物航空というものが非常に重要になってきつつあるわけなんで、殊にハイテクや高い製品については航空貨物で送られるというのが非常に多くなる。こちらからも送るし外国からも来る。それが一定の東京だけ、大阪だけしか受け入れがないというのでは、やはり非常に欠陥の空港であろうかと思うわけで、そういう貨物の受け入れ態勢というものを空港の拡張がなくても地方の名古屋でもどこでもやり、貨物航空の発着が成田からほかへ移転すれば、随分それで用が足りるようになるんじゃないかと思うんですが、その準備はどういうようになっていますか。
  288. 松尾道彦

    説明員松尾道彦君) 今御指摘の航空貨物輸送でございますが、ちょっと数字に言及させていただきますと、平成元年度におきまして国内貨物におきましては対前年度比で六・八%増で約六十六万トンの実績がございますし、また国際航空貨物でございますが、これは伸びがさらに大きくて、対前年度比八・三%増の約百五十二万トン、こういった状態になっておりまして、最近著しい伸びを示しておるわけでございます。こうした傾向は、今後とも我が国の国際経済活動の活発化の中でさらに伸びてくるのではないかというふうに想定いたしておるわけでございます。  このような状況におきまして、運輸省といたしましては、航空貨物需要の大幅な伸びに対応をしていきたいということでございまして、今御指摘の新東京国際空港あるいは新しくでき上がります関西国際空港の貨物取扱施設の施設整備を積極的に進めていく考えでございますが、当面の貨物関係の充実を図るために、福岡空港あるいは御指摘の名古屋空港等、地方空港におきましても、関係各省、特にCIQの体制の整備あるいは国内転送の改善等によりまして活用を推進していきたいと、このように考えておるところでございます。
  289. 三治重信

    ○三治重信君 需要が多くてそれに国の予算として対応できないだろうと思うんですけれども、効率的な空港の現実的な利用というものをやはり考えてもらわないと、国際空港の利用が抑圧されていることによって日本経済が非常に抑えられるということについては十分配慮して現実の対応をしてもらいたい。ただ、地元の要望でいい空港をつくるということで土地の買収にばかり時間がかかっているというようなことではやはり対応ができない。日本の国のどこへ飛行場をつくっても、日本はどこでもすぐ二、三時間で行けるわけなんですから、そういう弾力的な対応を考えてやってもらわないと、やはり余り重点主義だけではますますネックになる、こういうふうに思うので、ひとつよろしくお願い申し上げます。  次に、労働省にお尋ねいたしますが、労働力不足から労務の供給事業といいますか人材派遣法を新しく法律でつくられる。そのほか今までは季節労務やそれから一般労務の関係などはほとんど職安でやっていたのが、最近新しく、労務供給業者と言っては悪いかもしれませんが、あっせん業者等、これは法律で禁止されている業者で、何とも新しい言葉が出ないものだから私は労働者供給事業をやる会社と、こういうふうに言っているわけですが、労務供給事業は労働組合以外は禁止されているから、そのために、労務供給をやる会社との関係は、請負事業ならば職安が認めるということでやっているけれども、何のために請負事業ならば職安がどういう権限でそういうものを認めるとか認めないかというものをやるようになったのか。  最近見ていると、非常に労務供給の会社が雨後のタケノコのごとく愛知県なんかでも出ている。こういうことで本当にいいのか。しかも、職安が請負業しか認めないということになると、請負業を請け負ったその労務供給業者は賃金を全部自分でもらって募集した労務者に賃金を払う、こういう形になってくる。ますます中間搾取になってくる。これをどう考えておられるのか。
  290. 若林之矩

    説明員(若林之矩君) 最近の人手不足の中でただいま先生指摘のような労務提供事業と申しますか、こういったものが増加していることは御指摘のとおりだと存じます。  現在、例えば労働者派遣法におきましても、製造業の直接生産工程というものにおきます業務につきましては労働者派遣事業はできないわけでございますけれども、こういったものに今御指摘のような供給が行われているというようなことであろうかと思いますが、こういうようなことが適正に行われますためには、ただいまお話しございましたように適正な請負としての事業が必要なわけでございます。  個々の事業形態が適正な請負になっているかどうかということにつきましては、これは告示で一つ基準が定められているわけでございまして、この基準に基づきまして適正な請負として実施するためには、大きく言って二つの基準がございますけれども、自己の雇用する労働者の労働力を自分が直接利用するということが一つ。第二は、自己の事業として独立して処理するものである、この二つの基準が必要なわけでございます。  私どもといたしましては、これらの基準に照らしまして、労働者派遣法上等の問題があると思われます事業でございますとかあるいは適用対象業務以外の業務への違法な派遣事業に対します指導監督を重点的に行っているわけでございまして、関係機関とも十分に連携を図りながら公共職業安定機関で臨検指導を行っております。それによりまして実地把握とか必要な指導を行っているところでございます。そして、相当の件数の臨検指導を各公共職業安定所で行っているわけでございますが、指導に従わない等の悪質なものにつきましては、警察に対しまして捜査依頼を行うなどの厳正な措置を講じているところでございます。  今後もこのような違法な事業に対します監督指導を強力に進めていかなきゃならないというふうに思っておりまして、臨検指導を強力に進めてまいりたいというふうに考えております。
  291. 三治重信

    ○三治重信君 じゃ、実態をお伺いしますが、職安の認可を受けて請負契約を会社と契約している業者、会社がどれぐらいあるか、職安で認可をしておる件数がわかりますか。
  292. 若林之矩

    説明員(若林之矩君) この請負と申しますものは、私どもの方でこれが請負ですからといって認可するというような法律制度にはなっておりませんので、それが個別に請負であるかどうかという個別判断の問題になります。したがいまして、私どもはいろいろな情報に接しまして先ほど申しましたような臨検監督を行っているわけでございますけれども、年間大体千件ぐらいの臨検指導を行っております。
  293. 三治重信

    ○三治重信君 じゃ、個々の臨検指導とか個々の契約の認可はいいんだけれども、そういう認可を受けに来る会社が何件、どれぐらいの会社が出てきているかということを御存じですか、つかんでいるか。
  294. 若林之矩

    説明員(若林之矩君) ただいま申しましたように、これが請負かどうかというような形での認可申請というのはございませんで、私どもの方に出てまいりますのは労働者派遣事業としての許可申請か届け出ということでございまして、これが請負であるかどうかということの認可申請というのはないのでございます。したがいまして、その件数というのはないわけでございます。
  295. 三治重信

    ○三治重信君 それじゃ、一般の会社というのはみんな人材派遣事業の認可を受けた会社と認定していいんですか。
  296. 若林之矩

    説明員(若林之矩君) 実態から申し上げますとただいま申し上げましたような、私どもが臨検指導をいたしておりますものにつきましては実態では無許可、無届けと申しますか、一切そういう許可行為などを受けていない会社でございます。
  297. 三治重信

    ○三治重信君 そういう認識ならそれでいいんですけれども、そういう季節労務者とかそれから一般の労務者を引き抜いて、ある会社へ三人、五人入れるというふうなのが、それがもう新しい会社として成り立つような空気があって、そういう会社だけで業界をつくってやっている。御存じですか。そういうふうなのが、どこも僕の見ている限りにおいては、本当の人材派遣業の認可を受けている会社とは考えられない。特殊のそういう、一般の労務者のあっせんをやっているのがほとんど、人材派遣ではなくて一般の労務供給をやっているのが。  だから、そういう会社は、むしろ何というのか請負契約の認可を職安がやっているんでしょう、請負契約。ここをこうやって労務を提供して、その会社の部分的な事業を請け負いますという認可基準を職安でつくっているんじゃないんですか。
  298. 若林之矩

    説明員(若林之矩君) 先ほど申し上げましたように、告示で請負と労働者派遣事業との違いというような基準はこういうものであるということは決めてございます。したがいまして、私どもは臨検指導をいたしました際に、そういったケースに当たりましては、これを請負というふうにするにはここはこういうふうにしなきゃならないという個別の指導をいたします。その個別の指導に従って業務を行う限りにおきましては、それは請負ということでいいわけでございますけれども、それがそういう指導に従わないという場合には、あくまでもそういった形にするか業務を行わないか、そういうことを迫って指導をしているわけでございます。
  299. 三治重信

    ○三治重信君 じゃ、こういうふうに理解していいんですか。職安が会社や事業所を臨検して、そして請負的な作業が行われているのを見たら、どういう請負事業として会社をやっているのか、それはおかしいじゃないか、労務供給事業じゃないか、こういう指導をやっているだけであって、それを認可するとかなんかするということは一切やっていないんだと、こういうふうに理解していいわけですか。
  300. 若林之矩

    説明員(若林之矩君) ただいま先生指摘のとおりでございまして、私どもはそういったようなものを臨検指導いたします場合には、例えば受け入れている企業に対しましても、これは請負とは考えられない、したがってそれを請負という形にするかあるいはそういった形での労働者の受け入れを停止するかのどちらかにしなきゃならない、こういう指導をしているわけでございまして、一つ一つの件についてそれが認可であるとか許可であるとか、そういうものはないわけでございます。
  301. 三治重信

    ○三治重信君 それは僕の認識が誤っていたことになるんだけれども、そういうぐあいにするというと、労務供給をやっている会社が雨後のタケノコのごとく今できつつあって、業界として団体をつくろうというまでに至っているのは、これは労働省から見ると、それはやみの会社ということになるわけですね。人材派遣もやらない、一般の労務者の供給なんです、全部。だから、暴力団が入ってきたり――今のところそういう会社暴力団出身のやつじゃない一般のただの若い連中のアイデアから、そういう労務供給が非常にもうかるということでえらいモダンな名前会社をどんどんつくってやっているわけだが、そういうぐあいになってくると暴力団が入ってこやせぬかと思ったら、そういう会社においては今はまだ……。  もう一つは、やはりそうやってみると、観光ビザで入ってくる外国人労働者に次に手をつけるということになってくると、今のところは、むしろイラン人を見てもごらんのようにイラン人ならイラン人同士でやっていたりするんだけれども、これがみんなそういう会社が労務供給事業で裏でやっていくというようになってくると、みんなもう一般の労務供給の中間搾取の温床になってしまう。これは人が足りないし、あるいはリクルートのように新聞広告だけで入れるとかなんとかということで幾らでもやるようになってくると、それが本当に労務のあっせんだけならまだいいんですが、請負事業になってくるというと、全部賃金を十人分とか二十人分とかその業者がもらって、もらった金で賃金を払う。それは請負ですから、会社の方もああ請負にやったからいいというふうになってくると、これは大変なことになるなと、こう見ているんです。  もう一遍ひとつ、そういう労務供給事業の新しい会社を若い人が新しい名前をつけてどんどんやっている。それがどんどんふえている。この事実をひとつもう少し職安なり都道府県の担当者に言ってその業界の動きをもっと見てもらわぬと、現象、形態で指導しているということだけでは大変ゆゆしい問題が出てくるんじゃないかと僕は思う。  これは人材派遣から派生をしてくる。人材派遣というのは特定の技能を持っている者でしょう。ところが、一般の労務者の方がどんどん需要があるわけなんで、人材派遣というのはそんなにたくさんの量があるわけじゃない。ということから見ると、この新しい会社はみんな労務供給事業の根があると思って見ておるんですから、ひとつよろしくそういう業界の動きというものを見ながらやってもらいたいと思います。  大臣、何か御意見があったらひとつお話し願って、質問を終わります。
  302. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) 大変具体的に現場の状況などをお聞かせいただいております。私どもも重々具体的に調査をいたしまして、ただいま御指摘の問題を念頭に置いて施策を講じてまいりたいと思います。
  303. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 他に御発言もないようですから、運輸省及び労働省決算審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明二十七日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時一分散会