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1991-06-19 第120回国会 参議院 決算委員会 閉会後第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年六月十九日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月十二日     辞任         補欠選任      高井 和伸君     井上 哲夫君  六月十七日     辞任         補欠選任      井上 哲夫君     高井 和伸君  六月十八日     辞任         補欠選任      諫山  博君     高崎 裕子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         及川 一夫君     理 事                 大浜 方栄君                 後藤 正夫君                 守住 有信君                 会田 長栄君                 千葉 景子君                 猪熊 重二君     委 員                 尾辻 秀久君                 鎌田 要人君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 陣内 孝雄君                 福田 宏一君                 大渕 絹子君                 喜岡  淳君                 種田  誠君                 渕上 貞雄君                 木庭健太郎君                 高崎 裕子君                 林  紀子君                 高井 和伸君                 三治 重信君    国務大臣        外 務 大 臣  中山 太郎君        文 部 大 臣  井上  裕君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 堯躬君    説明員        総務庁行政管理        局管理官     木村 幸俊君        防衛庁装備局武        器需品課長    相澤 史郎君        法務大臣官房営        繕課長      高野 利雄君        法務省刑事局青        少年課長     古田 佑紀君        法務省人権擁護        局調査課長    濱  卓雄君        外務大臣官房審        議官       橋本  宏君        外務大臣官房外        務参事官     浦部 和好君        外務大臣官房領        事移住部長    久米 邦貞君        外務省アジア局        長        谷野作太郎君        外務省北米局長  松浦晃一郎君        外務省国際連合        局長       丹波  實君        大蔵省主計局主        計官       岩下  正君        文部大臣官房長  野崎  弘君        文部省初等中等        教育局長     坂元 弘直君        文部省教育助成        局長       遠山 敦子君        文部省高等教育        局長       前畑 安宏君        文部省高等教育        局私学部長    奥田與志清君        労働省労働基準        局監督課長    山中 秀樹君        会計検査院事務        総局第一局長   安部  彪君        会計検査院事務        総局第二局長   澤井  泰君    参考人        海外経済協力基        金理事      天野 貞夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和六十三年度一般会計歳入歳出決算昭和六十三年度特別会計歳入歳出決算昭和六十三年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十三年度政府関係機関決算書(第百十七回国会内閣提出) ○昭和六十三年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百十七回国会内閣提出) ○昭和六十三年度国有財産無償貸付状況計算書(第百十七回国会内閣提出) ○平成年度一般会計歳入歳出決算平成年度特別会計歳入歳出決算平成年度国税収納金整理資金受払計算書平成年度政府関係機関決算書内閣提出) ○平成年度国有財産増減及び現在額総計算書内閣提出) ○平成年度国有財産無償貸付状況計算書内閣提出)     ─────────────
  2. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、諫山博君が委員辞任され、その補欠として高崎裕子君が選任されました。     ─────────────
  3. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 昭和六十三年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は外務省及び文部省決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 及川一夫

    委員長及川一夫君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 及川一夫

    委員長及川一夫君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 喜岡淳

    喜岡淳君 おはようございます。きょうは外務省中心質問をさせていただきたいと思いますが、ひとつよろしくお願いいたします。  昭和六十三年度また平成元年度の決算の大きな特徴点一つとして政府開発援助、いわゆるODAの問題がありますけれども、特に平成元年度の場合はODA総額が一兆二千三百六十八億円、ついに日本アメリカを追い越して世界一の援助大国となった特徴的な決算であるだろうというふうに思います。  これまで外国から、特にアメリカ中心にした援助によって国づくりをしてきた日本が、いよいよこれからはアメリカを追い越して世界一の経済援助国になるという非常に画期的な時期になったわけでありますが、政府としては、ODA目的、そして今まで果たしてきた役割について、どういうふうな評価をされているのか教えていただきたいというふうに思います。    〔委員長退席理事千葉景子君着席〕
  8. 橋本宏

    説明員橋本宏君) 先生指摘のとおり、八九年度におきまして我が国世界で第一の援助供与国になったわけでございます。  政府といたしましては、累次御説明申し上げておりますように、人道的な考慮及び我が国を含む先進国及び後進国との間の相互依存関係の促進という基本理念のもとに、相手国のさまざまな事情を考慮し実施しているところでございます。その関連で、最近でございますけれども、海部総理より軍事援助等に関連し四項目の点を挙げられ、そういった点についても配慮し、総合的に適切な援助を行ってまいりたいということを新たに表明している次第でございます。
  9. 喜岡淳

    喜岡淳君 ODA目的としては、今おっしゃられたように、途上国への貢献ということでよく理解できるわけでありますが、問題は、国民の中にはそうはいってもやはり今のODAの中には何となく不明朗だと思われるような点もあるというのは、これまたいろいろ世論調査が示しておるとおりであります。  そこで、きょうはこれまでの決算報告書の中でなかった画期的な問題についてお尋ねしたいと思います。  それは、昭和六十三年度決算検査報告の中に、特記すべき事項、「特に掲記を要すると認めた事項」として「政府開発援助の実施について」という項目がつけられております。これは、今までにはなかった非常に画期的なことがここにつけられております。  そして、具体的には特記事項として二つ事例記載をされております。一つは、「通勤輸送強化事業」、我が国援助として二回にわたって五十億円近い援助が行われて列車六十五両を購入した、そしてこの国の輸送増強事業に貢献するという計画であったのが実際はそうはいっていないということが書かれております。もう一つは、「研究所拡充事業」、これも予定したようにうまくはいかなかった、こういうことが書かれておりますが、これについては非常に読んでわかりにくいわけですね、具体的にどこの国でどういう事例なのかというのが。  これにつきましては、会計検査院の方にお尋ねをしたいと思いますが、まずこの二つ事例についてどういうことなのか、ちょっとわかるように御説明願いたいというふうに思います。
  10. 安部彪

    説明員安部彪君) 政府開発援助につきましては、一般国民の関心も高く援助額も年々増大しておりますので、会計検査院といたしましても鋭意その検査に取り組んできているところでございます。  それで、全体につきましては、平成元年度中に検査及び調査を実施いたしました結果、直接借款貸付対象となった機材が十分に稼働していなかったり、機材の一部が長期間未利用となっていたり、それから無償資金協力対象となりました施設が十分に活用されていなかったり、プロジェクト方式による技術協力対象となった技術移転が遅延している事態がございました。これらの事態につきましては、主たる原因が相手国における内貨不足等によるものでございまして、直ちにその改善が図られるものではございませんが、今後も引き続き政府開発援助は実施されることが見込まれますので、我が国として全体としてとり得る措置などを検討していただく必要があるということで特記事項という形で問題を提起したわけでございます。  それで、先生が御質問の具体的な第一の事例でございますけれども、これは海外経済協力基金円借款によりまして相手国車両等を調達するなどしまして通勤輸送強化を行うという事業でございますけれども、相手国におきます車両修理基地建設が内貨予算不足等によりまして遅延いたしましたため、故障した車両修理が行えず調達されました車両の大部分が稼働していなかったというものでございます。したがいまして、乗客数計画輸送量を大きく下回っているということで援助効果の発現が十分なされていないという事例でございます。  それからもう一点でございますが、研究所拡充事業でございまして、この事業総合研究所繊維部門強化することによりまして繊維産業の振興に資することを目的として実施されるものでございます。そういうことで、パイロットプラント建設とか生産技術移転研究開発指導等につきましてのプロジェクト方式技術協力が行われているわけでございますが、これも内貨予算不足等によりまして建物の建設がおくれたために、パイロットプラント平成元年にようやく全面稼働されたばかりでございまして、この間事業団として協力内容の中で実施可能な部門についての指導を行いましたものの、パイロットプラントに係る供与機材を用いた技術移転が遅延している、こういう事例でございます。
  11. 喜岡淳

    喜岡淳君 私は、最初にお断りしたように、わかりやすく御説明願いたいということをお願いしたはずです。今のお話を聞いておりますと、まずどこの国でどういうことが行われて、どういう目的だったがどういう結果に終わったのかということが少しわかりづらかったものですから、ちょっと確認させていただきたいと思います。  今の事例の一ですが、これはフィリピン鉄道輸送を増強するという目的で行われた円借款だと。当初、一日当たり二万五千人の人を輸送するという目的海外経済協力基金OECFの方から二度に分けて四十九億円を貸し付けた、そして六十五両の通勤用ディーゼルカーディーゼル列車を調達したわけです。  しかし、フィリピン側車両修理基地建設する予定だったんですが、フィリピン側予算が不足しておったということでこの車両修理基地予定どおり建設ができなかった。そのために、さきに買っていた六十五両のディーゼルカーは故障しても直すことができずに放置をされたままであったと。そして、その車両は六十五両のうち四十二両までが故障したままで動けずに、しかも三両については廃車という手続を受けたと。  当初予定していた二万五千人の輸送目的というのは、六十三年度現在目標の約八分の一、三千二百人程度の実績しか上がっていない、こういう理解でよろしいでしょうか。
  12. 安部彪

    説明員安部彪君) まず、具体的なプロジェクトの実施されました国名及びプロジェクト名につきましては、相手国に対します検査権限等の問題も考慮いたしまして、従来から私ども外部に公表しておりませんので、その点は御理解いただきたいと思います。  それから、先生説明の具体的な内容でございますが、ただいま先生が詳細に御説明になりましたとおりでございます。
  13. 喜岡淳

    喜岡淳君 従来から相手の国の名前については出していないということだったわけですが、その前に、どうしてこの二件を特記事項として検査院の方は明らかにされたんでしょうか。  昭和六十三年度決算検査報告掲記事項ですね、この昭和六十三年度検査院検査については、直接借款が二十件、一千三十九億円分の問題ありそうなところを調べられたようです。そのうち四件、百五十二億五千六百万円分の貸し付けについては、これは非常に問題があるということで問題提起扱いになっております。無償資金協力の中では、二十件の事業総額三百九十二億円を問題ありと調べて、そのうちの一件、十五億七千六百万円分については問題提起という扱いになっております。プロジェクト方式技術協力においては、十六件の案件調査したうち一件、五億八千八百万円分の事業については問題提起という扱いになっております。  こういうふうに見てきますと、五十六件調べてそのうち六件は問題提起という扱いになっておるわけですが、そのうちのまた二件だけが特記事項として記されておるわけですね。どうしてこの二件だけが特別にここへ記載をするという扱いになっているんでしょうか、他のものはここに掲載されておりませんけれども。
  14. 安部彪

    説明員安部彪君) ただいま先生質問のように、掲記した事項は二件ではございませんで、全体として六事業につきましての問題提起をいたしておるわけでございます。  本件のその特記事項というのは、平成元年に本院が実際に検査実施しました結果をもとに我が国政府開発援助の現状につきましての本院の見解を明らかにしまして、それを広く国民及び国会の場で御議論いただくのがその本旨でございます。そういう意味で、本院が特記した全般につきましての問題提起をしているわけでございますけれども、具体的な理解を助けるために必要な事例として二事例の例示を行ったということでございます。
  15. 喜岡淳

    喜岡淳君 わかりました。国会国民の皆さんに幅広く議論をしてもらうために二つを提起したということでありました。  そういうことになってきますと、国民がわかりやすく議論するためには、まずこの記載自体をわかりやすいような記載にしていただいた方がいいかと思うわけですね。もちろん、相手の国への配慮ということもありましょうけれども、読んだだけでどこの国のどういう事例なのか、そういうものがわかりやすいような書き方の方がいいわけでして、まずどこの国かわからない、こういうことでは国民の間で幅広く議論をするにしても非常に困難を伴うのではないかというふうに思いますので、この表記の仕方については改善されるようなおつもりはあるでしょうか。
  16. 安部彪

    説明員安部彪君) 一般論を申し上げますと、会計検査院としましては、従来から検査権限の及ばない先につきましては具体的な名称を明示しないことにしております。  これは、一般論でございますけれども、検査権限のない先につきましては相手方の御協力をいただきまして調査を実施しているわけでございますので、今後の調査上のいろいろな支障というようなことも考えられないわけではないわけでございます。こういうことで、従来から名称外部には公表していないということでございますので、その点御理解いただきたいと思います。
  17. 喜岡淳

    喜岡淳君 わかりやすくという観点からはやはり国民が納得できるような表記、そういう表現が必要ではないかというふうに思います。既に、新聞などの報道では、具体的な写真が入ってみたり国の名前が入ってみたり具体的な報道がされておりますので、やはり国民にわかりやすいような形で表記をしていただければと、そういうふうに思いますので、よろしく検討をお願いしたいと思います。  これはちょっとわからないんですけれども、どうしてこういう通勤輸送強化事業が当初の計画どおりにできなかったのか。これは、外務省の方にせよ、OECFさんの方にせよ、いろいろ調べた結果、この事業については間違いなくやれるという判断の上でやられたと思うんですね。それなりのきちっとした調査、きちっとした資料の収集、そういう計画の上で成立した案件だろうと思うんですが、どうして結果がこんなにずさんなようなことになったんでしょうか。
  18. 橋本宏

    説明員橋本宏君) ただいま先生の御指摘になられた点は、本件だけでなく援助全般についてあり得べき非常に難しい問題でございます。  まず第一に御説明申し上げたいのは、これはあくまでも被援助国側自助努力に対して我々が協力をするということで、彼らのプロジェクトに対して我々が側面から援助するというのが基本的な形でございます。  我々が向こう側と話し合って具体的なプロジェクトを決めます際には、常にこのプロジェクトを実現するためにはこれこれほどの内貨というものを積み立ててもらえないといけませんということを話すわけでございます。向こう側もそれに納得をして、いよいよプロジェクトを実施するわけでございます。本件につきましても同様でございまして、そういった双方の合意に基づいて実施したわけでございますけれども、残念ながら先方の方の経済の停滞によって財政難になりスペアパーツが供給できなくなってしまったという状態が出たわけでございます。  それに対して我々はどういうふうにしたらいいかということでございまして、我々としては丸抱えの援助というのは決してよくないと思っております。したがいまして、それではその内貨はそのまま日本から供給しましょうということは、これは幾ら何でもぐあいが悪いだろうということで、本件につきましては、一九八〇年五月から八二年五月にかけましてJICA専門家を派遣しまして、車両修理技術指導ということをまずやりました。  それから、八三年にはこの車両維持管理能力の向上を目的とした検査修理工場建設のための別のプロジェクトという形で円借款を実施しまして、その双方によって、間接的でございますけれども、この事業が本来の目的を達成するようにということで話し合って今実施しているわけでございます。幸いにしまして、そういった追加的な措置が功を奏し始めまして、現在ではこの車両維持管理体制改善が進められていると承知しております。
  19. 喜岡淳

    喜岡淳君 いろいろ調べて事前の確認もとってやったけれども、相手事情だから仕方がない、その後はきちっとやって今は動いておりますよということだろうと思うんですが、どうもそこが釈然としないわけですね。  確かに、渡したら向こうお金だし向こうの資材だ。しかし、我々国民の側から見ますと、もう既に一人一万円以上の税金、あるいは郵便貯金などいろいろ我々のお金を含めて、国民お金でこの援助が行われていくわけです。しかも、その金額が一人一万円を超えるかつてないような事態を今迎えておるわけですね。だから国民の中には、じゃ渡すだけでいいのか、渡してしまったらもう向こうのものなんだから、こちらは余り口が出せないんだというふうに言うだけでは、なかなか国民感情としてすんなりいかないような気がするわけです。  もちろん、援助先向こうの顔も立てなければいけないということはあるでしょう。それと同時に、国民に対しても、納税者に対してもやはり顔を立てなければいけない。そのバランスというものが必要ではないかというふうに思うんですが、今の御意見の中では、そのバランスを一体どういうふうにとろうとされておるのか、そこがちょっとわかりにくかったんですが。
  20. 橋本宏

    説明員橋本宏君) 先生指摘の点は、非常に重要なことでございます。我々としても、できるだけ国民の方々に広く御理解が得られるよう、また我々の経済協力というものができるだけ効率化するよう努力しているわけでございます。  その努力の一環としまして、事前調査というものについて万全を期すよう従来以上に努力を重ねております。それから、実際に終了したプロジェクトにつきましても、先生指摘のように、ただそれを被援助国側に任せるということではなくて、一体そのプロジェクトが本当にその国の経済発展等のために貢献しているかどうかということを評価するということで、評価体制強化ということにも努めているわけでございます。
  21. 喜岡淳

    喜岡淳君 努力されていることはよくわかります。限られた人員の中で努力されているのはよくわかるわけですけれども、しかし後を絶たないわけですね。  例えば、基金年次報告書、一九九〇年のOECF報告書というのがあります。これを読んでおりましても、またまた同じようなことが書かれております。例えば、アフリカのガーナで電話近代化工事をやった。日本からは基金の方が五十八億九千万円の円借款を供与した。この事業をした結果、ガーナーの市外電話通話数は、工事前と比べると七〇%近く市外通話がよくできるように伸びた。しかし、反対に市内通話の方を見てみると、加入者ケーブル老朽化あるいは盗難などにより事業前の二分の一に減少している。市内通話が半分に落ち込んで市外が七〇%も伸びておる。  こんなことをしておりますと、結局この工事をしても一体何になるのかというような気がいたしますし、こういう事例が後を絶たない。そういう意味で、私はODA計画に当たってはきちっとした監査必要性ということを感じるわけです。  そこでお尋ねしたいんですけれども、基金とか事業団とか外務省とか、それぞれ四省庁体制でやられておるのはわかりますが、それぞれ内部において一体政府としてはどういうような監査指導されておるんでしょうか。効率が上がっているのか、効果が出ているのかいないのか、きちっとした評価をやるべきなんですが、政府の方としてはその内部監査についてどういう指導をされておるんでしょうか。
  22. 橋本宏

    説明員橋本宏君) まず、外務省につきましては、昨年十月四日の参議院決算委員会におきまして、会田委員からの質問中山外務大臣がお答えしたことに関連し、経済協力局評価体制強化ということが重要であるということで、幸いにしまして財政当局の御理解も得て、専任の室長を頭とする評価室というものができ上がりました。そこにおいて現在五名の専門家が業務に従事しております。また、JICA及びOECFにつきましても、それぞれ担当の課の拡充に努め、この評価体制強化に努めているというのがまず第一点でございます。  それから第二点につきましては、そのプロジェクトのそもそもの当初からでき上がった後まで、世界援助国の中でもできるだけ近代化した手法のもとに同じような考え方でできるようにやっていこうということでいろいろな議論が行われ、我我もその中に参加しまして、日本独自のものだけでなく、こういう国際的に通用するいろいろな手法というものを取り入れるように努力をしておるところでございます。  それからまた、評価ということにつきましても、外務省みずから行うものだけでなくて、国際機関とか、それからほかの主要ドナー国とともに評価をやっていくということも、予算の制約はございますけれどもやり始め、拡充に努めているところでございます。それから、毎年みずからの努力といたしまして経済協力評価報告書というものを発表しております。また、近く新しいものも発表していく方向になっておりまして、外務省外務省なりに先生指摘の点につきまして自助努力をしているところでございます。
  23. 喜岡淳

    喜岡淳君 具体的な御努力は今聞かせていただきましたけれども、やはり私は、情報を国民にもっともっと提供していく、国民的な議論の中に情報を広げていくということをしない限り、なかなか国民全体のODAということはつくれないのではないかと思うんです。わからないことがいっぱいあるわけですからね。いつも世論調査なんかで出てくるのは、関心がある、もっと知りたい、これがたくさん出てくるわけですね、過半数は。  そこで、情報の公開ということで、もっと多くの国民が、ODAの実態はどうなっているのか、どういう役割を私たちは果たしているのだろうか、まず知ることから始まるわけです。それが前提でなければ、ますます多くの国民ODAをふやすということになれば負担はまたふえていくわけですから、その前提としては国民全体の議論が行われるように情報が公開されなければならないと思うんです。  そこで、非常に残念なのは、これも年次報告九〇年版に入っておりますが、完成案件現況査察というんですか、現状査察、でき上がったプロジェクトを現実に査察してくるという制度が一九八九年にスタートしたようです。これは、基金の本にはそう書いてあります。その現地査察は、完成後の物件、七年目あるいは三年目に調査を現地へ行って行うんだと。第三者の有識者に委託をすると。非常によい制度だと思いますし、役割を期待されておると思いますが、一九八九年は百七十件現地調査へ行ったと。その結果はどうなったのかと思って調べておりますと、どこにも書いてないんですね。  その結果は、それぞれ朝日ジャーナル、日経ビジネスでも紹介されて、おおむね好評をいただいておりますと。これは自画自賛みたいなものです、こんなものだけでは。やっぱり百七十件見たんだったら、百七十件どういう実態になっておったのか、それをやはり国民がわかるように書いていただきたい。  そういう意味で、私たちはODA基本法をつくろうという立場から情報の公開ということについて求めておりますけれども、この情報公開についてのお考えを聞かせてください。
  24. 橋本宏

    説明員橋本宏君) 先生指摘の情報公開につきましては、我々といたしまして、その被援助国側について我々外交関係として守らなければいけないこと等に配慮しつつ、できるだけ国民の方々の御理解を得るために情報公開ということに努力しているわけでございます。まだまだ至らぬという先生の御指摘、我々なおさら努力していかなければならないと思っております。  OECFのみずから実施した評価につきましても、毎年一回発表しております経済協力評価報告書の中に入れて、同時に発表していくという努力も続けております。何分にも世界各地でもっていろいろ多くの事業が行われており、それらについての経済協力評価というものも大体毎年百五十件ほど行って発表しているところでございます。その経済協力評価報告書内容の高度化ということにつきましても、ますます意を用いていきたいと思います。
  25. 喜岡淳

    喜岡淳君 毎年毎年百五十件ぐらいの数が出てくるというのは、非常に残念なんですが、これがもっとふえるようなことを我々は望んでおるわけです。  検査院の方にお尋ねいたしますが、今検査院昭和六十二年の十二月以来外務検査の体制を充実されて一生懸命取り組んでいただいておるということで、国民の中にも大きな期待が高まってきております。やはり内部監査は、一生懸命幾らやられたって内部だからどうも身内で甘いんじゃないかというような国民の見方というのは免れないわけです。そういう意味では、検査院というところが本格的にODA検査をやると。これは第三者的な立場ですし、検査院の非常に高い能力もありますので、非常に国民としては期待をしておるわけです。  そこで、ODA世界一になった我が国の今日、現実の検査院の体制、人員、予算、十分やれるような体制になっているでしょうか。それをちょっと率直な感想を聞かせていただきたいと思います。
  26. 安部彪

    説明員安部彪君) 会計検査院といたしましては、先生質問のように政府開発援助検査の重要性、必要性ということにつきましては、十分認識してこれまで対処してきているわけでございます。  六十一年十二月に一元的に援助実施三機関を検査し得る体制の整備をしまして、それから六十二年十二月には外務検査課を設置したわけでございます。それから、外国、海外で調査を行うために必要な外国旅費の増額についても努めておりますし、それから職員に対する研修についても充実を図ってその資質の向上を図ってきているところでございますけれども、今後ともさらに一層検査手法の開発を図って検査の充実を図るべく努力を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  27. 喜岡淳

    喜岡淳君 ひとつ検査院には十分頑張っていただきたいと思います。  それから、外務大臣にお尋ねしたいと思いますが、政府は、従来からODAに対する会計検査の問題については、非常に消極的だったというふうに受けとめております。  しかしながら、今日の状況を考えますと、我が国世界一のODA大国になったという全く環境が変わったわけです。したがって、国民の意識も非常に変わってまいりまして、それならどういうふうに使われておるのか、どういう効果を上げておるのか、客観的な問題を知りたい、もし問題があるならば問題として知りたい、さまざまな関心が国民の中にも高まっておるのは当然であります。  しかも、きょうの質疑でも明らかになったように、内部監査では明らかにならなかったけれども会計検査院が入ればこういう問題が出てきたではないか、外部監査ということの必要性というものがはっきりしてきたというふうに思うわけです。  そこで、行革審の方だっていろいろとODA検査のあり方については議論をされておるようですけれども、私としては、ひとつ政府がこれを契機にODAの会計検査について、従来のような立場ではなくて、新しい事態に対応するための御意見を聞かせていただきたいというふうに思います。
  28. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 昨年の国会で私の方から、まず外務省の省内において評価のシステムを確立すべきであるということを御答弁申し上げて、その後直ちに省内にそのような組織を大蔵とも相談して設置をいたしたわけであります。  内部監査外部監査というものについて委員から今御指摘がございました。会計検査院がそのような立場で外部から監査されるということについては、これは会計検査院の当然の使命であろうと思いますし、それをあえて外務省監査を断るとかといったような立場ではございません。堂々と監査を受けるべきであると。  ただ、我々も全力を挙げて尽くしておりますけれども、相手国のいわゆる事情、こういうものがございますから、そういう点で一つの壁があるということだけは御理解をいただきたい。会計検査院検査されても内政干渉にわたることまではできないわけでありますが、できるだけ国民のとうとい税金で国際協力をいたすわけでございますから、委員の御指摘のように透明性を高め、公開性を高めていく。そして、国民の御理解のもとに、ODAがその目的を十分果たすように今後とも努力をするべきである、このように考えております。
  29. 喜岡淳

    喜岡淳君 それでは、引き続いて同じくこれも外務省の関係になりますが、在外公館の問題についてお尋ねしたいというふうに思います。  その前にですけれども、一つ外務省にはお礼を申し上げたいというふうに思います。  けさもNHKの「くらしのジャーナル」で、日本人青年がマニラで行方不明になった事件について取り上げられました。去年の決算委員会でも質疑させていただいたわけですけれども、その日本人青年の行方調査で先月の五月十五日から十七日まで三日間、私とその青年のお母さん、お兄さん、おばさん、四名でマニラの方へ行ってまいりました。向こうへ行くに当たっては、事前の準備から向こうの三日間の日程、その下ごしらえ、段取り、手配、帰ってからの手配も含めて全部外務省を通じて日本大使館に大変お世話になりましてどうもありがとうございました。ひとつこれからも邦人保護の問題として、この瀬戸伸介君の行方不明捜査事件については格別の御支援をいただきたいというふうに思うわけです。  五月二十一日にフィリピンの方で四名の専従捜査班がつくられたということを聞いて家族も非常に喜んでおりますが、この瀬戸伸介君の件で何か最近の新しい情報が大使館の方から来ているでしょうか。ありましたら教えていただきたいと思います。
  30. 久米邦貞

    説明員(久米邦貞君) 五月二十一日付で四名の特別捜査員から成る捜査班が結成されましたことは委員指摘のとおりでございます。ただ、まだそれ以来日が一カ月もたっておりませんで、加えて捜査班の捜査の中途の段階でございますので、捜査班結成以後の捜査状況についてここで御説明するのは差し控えさせていただきたいと思います。
  31. 喜岡淳

    喜岡淳君 ひとつ連絡をとりながらこれからもよろしくお願いしたいというふうに思います。  私は、この瀬戸さんの問題を契機に今日の日本人の海外における行方不明事件の問題、これについて日本じゅうで新しい動きが起きてきておるような気がするわけです。これは手元にあります朝日新聞六月八日の夕刊です。これには「東京で「海外行方不明者家族の会」を結成する。」という記事が書かれております。これは会の代表世話人が武蔵野市の古賀美千代さんという四十歳の方。この方の弟さんは一九八〇年十二月にバングラデシュで行方不明になっている。また、同じく会員の東京の自転車店経営の方、永田さん、この方も長男が一九八四年十月からパキスタンで宿泊して翌日ペシャワルに向かって出発した後行方を絶ったままだと。各地でやはりこういうことをよく聞くような時代になってまいりました。  一千万人の日本人が海外に出ていった。そのうち一万人の人は在外日本公館に何らかの電話をしてきておる。電話をしてくるのは氷山の一角だろうというふうに思います。電話をかけるのが都合の悪い人だっておるでしょう。ですから、そういうことを考えてみますと、もう日本人が海外でトラブルに巻き込まれるということが非常に身近なところで起きるようなそういう新しい時代になっておるというような認識を持っております。パキスタンの問題や台湾、韓国などでも同じような事件が起きております。  私のちょっとした調べでは、在外公館から連絡の入った日本人の行方不明者、一九八六年の四十四人、八七年の五十九人、八八年の九十五人、八九年の七十六人、このほかにも一万件を超える電話によるトラブルの報告。本人の問題も確かにあるでしょう。みんな自分が気をつけて危険な目に遭わないようにする、これは最大の責任だろうと思います。しかし、みんな事故に遭おうと思って行っているわけじゃないわけです。  そこで、このような時期を迎えて、外務省として、一体どのように海外に出ていく日本人に対してトラブルに巻き込まれないような邦人保護の対策を考えておられるのか、ちょっと簡単でいいですが、お聞かせいただきたいと思います。
  32. 久米邦貞

    説明員(久米邦貞君) 海外におきます邦人のトラブルがこの数年間急増しておりますことは、委員指摘のとおりでございます。行方不明事件についても七十二名という平成元年度の数字が出ております。  こういう事態に対応いたしまして、私どもといたしましては、こうした事件が実際に起きましたときに、在外公館において、本省との緊密な連絡のもとに、個々の事案の解決に向けて必要な所要の支援を行うということはもとよりでございますけれども、御指摘のとおりこうした事件をやはり未然に防ぐ努力というのは非常に重要かと考えております。  海外の場合は、日本における状況とは全く違うわけでございまして、国によっては非常に治安状況の悪いところもございますし、そうしたことに対する意識の高揚あるいは旅行者が日ごろからの安全一般についての自覚の高揚ということに努力することが非常に重要かと思っております。  在外におきましては、こうした見地から在留邦人との間に日本人会等の組織を通じまして、安全問題に関する意見、情報の交換というものを常日ごろから行うように努力を行っております。各地ごとに防犯の手引等を作成いたしまして在留邦人の自衛措置指導を行っております。  また、本邦におきましても、私ども領事移住部の中にございます邦人保護課が中心になりまして、旅行業界あるいは在外企業協会といった民間の団体とも協力いたしまして、海外安全相談センターを設置して種々の情報を提供する等の努力、あるいは海外安全ハンドブックというものを作成いたしまして、これを広く旅行者に安全に関する意識と知識を普及していくという努力等を行っておるところでございます。
  33. 喜岡淳

    喜岡淳君 いろいろ御努力されておる中の問題の一つとして、私は在外日本公館の体制が十分とれていないのではないかというような気がいたします。私も先般マニラの総領事館にお邪魔いたしましたけれども、業務に追いまくられて、まあ時間ができたら邦人保護の業務でもしてみようかなというような雰囲気でした。もう人手が足らない、全く。  総務庁の方も在外公館の実態についての調査をされましたけれども、果たして今日の在外公館のあの人数で、領事部のあの人数で、とりわけ東南アジアとか、日本に就労ビザを、働きに来られる人が非常にふえておりますし、しかもその際みんながみんなきちっとした書類を持ってくるのかどうかさえもわかりませんけれども、そういう意味では今日の状況は二十年前三十年前とまた非常に違うわけですね。日本にどんどんどんどんたくさんの人が来たい、来たい、働きに来る。何としてでも来ようという、彼らも生活かかっていますから。  そうなりますと、勢いビザ申請の業務に追いまくられて、本当に邦人保護の業務が十分できるような在外公館の体制があるのかどうか。どういうふうに現実をつかんでおられますか。総務庁の方、調査されましたですね。
  34. 久米邦貞

    説明員(久米邦貞君) 外務省平成年度の領事定員は二百九十五名でございまして、本省の領事移住部百名、それから在外の領事百九十五名となっております。  御指摘のマニラをとりますと、平成年度におきまして十名の領事担当の定員がついております。御指摘のとおり、海外邦人の数及びその邦人をめぐるトラブルの数というものは年々非常に急増しておりますので、こうした事態に対応するために職員及び予算双方の面において拡充努力をしているわけでございますけれども、現在のところはこの与えられた人員、予算で邦人保護に遺漏なきを期するということで全力を尽くして努力しているところでございます。
  35. 木村幸俊

    説明員(木村幸俊君) 先生お尋ねの在外公館を含みます外務省の定員についてでございますが、厳しい定員事情の中で私どもといたしまして最大限配慮してきているというふうに考えております。  ちょうど昭和五十六年に臨時行政調査会が発足いたしまして十年が経過するわけでございますが、この十年間をとってみましても、国立学校、国立医療機関を除きますいわゆる一般省庁の定員につきましては四%減っております。その中で、外務省につきましては二四%の増ということになっておりまして、各省庁の中で最高の伸び率になっているということは事実でございます。  いずれにいたしましても、今後とも外務省からよくお話を聞かせていただきながら適切に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  36. 喜岡淳

    喜岡淳君 大臣にお尋ねしますけれども、僕はちょっと今のは納得しがたいと思うんです。なぜかというと、調べた結果四%と外務省は二四%ということでしょうが、外務省の邦人保護の関係を言いますと、今言ったように状況は昔と違いますよ、実際の話。  マニラの大使館に行って聞きますと、僕たちは五月十五日に行きましたけれども、到着する前の日、大阪発のマニラ着深夜便、これでおりてきた日本人の旅行者がいわゆる暴力団関係者と間違われて十一名が入管に引っ張られていった。深夜ですよ。領事館に電話がかかってきて、来いと言われるから行った。一人一人これは違う、これはまじめな人だ、これはいい人だ、一々領事部の人が一人でやるわけですね。家に帰ってきたら一時半過ぎてもう二時過ぎていましたよ。しかし、実際三人は入国拒否されて帰らされましたとか、もう毎日そういうことに追いまくられて、けさも今さっき寝たばかりですよと言って十五日に僕たちと会ったわけです。  それから何をするかと言ったら、今度は本当だったらビザの発給をせにゃいかぬ。朝早くから人が並んで一日千人ぐらい来るらしいですよ、マニラの大使館だけで。そうして、人が来るところには屋台が出てくる。これで景気刺激になっておるかどうか知りませんけれども、そういう雰囲気の中でビザの仕事はやらにゃいかぬ。しかし、ビザの仕事は現地雇いの人にしてもらえばいいんですが、現地雇いの人を果たして信用できるのかどうか。お金さえもらえれば適当な出生証明書にオーケー出すかもわからない。そこで、どうしても本官がやらなければならない。じゃ、僕たちが行った三日間はどうしたんですかと言ったら、もう何にもできませんよ、迷惑かけたような感じなんですよね。  私の調査でも、幾つかの総領事館と大使館においては、既に査証の関係で影響が出ておるということを聞いております。そういう意味で、ぜひ外務大臣には、こんなような状態で本当に邦人保護行政ができるのかどうか、やはり人をふやしてもらうところにはふやしてもらわなければならない。国民だってそういう税金だったら出してもよい、理屈が通ればみんな納得すると思うんですよ。ぜひトップに立つ外務大臣のきちっとした決意を聞かせていただきたいというふうに思います。
  37. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 委員から外交における人間の不足という点を御指摘いただきましたが、私は率直に申し上げて、限界を超えている状態であると申し上げるのにはばかりません。  総務庁からのお話がございましたけれども、実態を知らないのではないかと思います。数字の上で二四%ふえたとかなんとか言いましても、実際に世界じゅうの公館を歩いてみて、在外邦人がどれだけふえているのか、旅行者一千万人がぐるぐる回っている。しかも、日本に入国のビザ申請が恐ろしいぐらいに出てきている。こういった事態を処理するのに人が足りていると思う方がおかしい。  私は、もう少し実態をよく把握して、国民のために必要なところに必要な人を配置するということをしっかりと考えて行政をやるべきだということを大臣としてははっきり申し上げておきたいと思います。
  38. 喜岡淳

    喜岡淳君 非常に決意のこもった御意見を聞かせていただきまして、全く同感だと思いますました。大臣にはひとつ頑張ってやっていただきたいというふうに思います。  それから予算の関係、ちょっと大蔵省の方出られましたけれども、昭和五十年代は外務省予算は三千億円台、昭和六十年代は四千億円台、平成の時代に入っては五千億円の時代。確かに順調に外務省予算そのものは伸びておりますが、しかしODAのやつを含んだ金額でして、それを除けば毎年一千百億円から一千二百億円。外務省本省の予算はほとんど変わっていない。やはりここも大きな問題があるのではないかと私は思いますので、ひとつこの点について、外務省の充実ということを頑張っていただきますように要望したいと思います。  それから最後になりましたが、日本の島原も火山で大変な状況でございます。と同時に、フィリピンにおいても火山が爆発をして大変な事態が起こっておるようであります。我々日本としてもフィリピンに対するさまざまな援助をやっておりますが、我が国の火山対策もありますけれども、それとあわせて、すぐ近くのフィリピンの火山の災害でたくさんの人が困っておるようですけれども、ひとつ外務省の方としてはどういうような援助の方策を考えておられるのか、ぜひ聞かせていただきたいと思います。
  39. 橋本宏

    説明員橋本宏君) ただいま先生指摘の点につきましては、昨十八日に現金二十万ドル、二千五百八十万円相当の緊急援助を行い、また国際協力事業団を通じまして約二千九百万円相当の緊急物資、すなわち医薬品、食料品、テント、発電機等を行うことを決定いたしまして直ちにフィリピン政府に通報いたしました。これに対しまして、アキノ大統領よりその日に発出されたプレスステートメントにおきまして、我が国の支援に深甚なる謝意が表明されております。
  40. 喜岡淳

    喜岡淳君 それで、最後になりましたけれども、ちょっと一つだけお願いをしておきたいというふうに思います。  先ほどの瀬戸伸介さんの件ですけれども、これはよく私のところにも電話がかかってくるんですけれども、身近でもこういう事件があるという人は多いわけです。案外おるわけです。実は警察庁のある方も、この事件でお世話をいただいていた方も、その人がたまたま親戚の結婚式に行った際、その親戚の中にもそういう人がおったというわけです、行方不明になっておる人が。  ところが、みんな困るのは、こういう事件が起きた際に一体どこへ相談に行ったらいいものなのか、これがもう全くわからないということで、この六月八日の朝日新聞を読みましても、もうみんなわからない。警察へ電話したら、地元の警察は、うちはそういうことを言われてもわからない。外務省へ行っても、どういう対応かといいますと、向こうへ伝えておくから、フィリピンの大使館からやるとか、現地の大使館を通して現地の警察に言っておきますからと、こういうことで終わるわけですね。  そこで、皆さん困るのは、いざこういう事件が起きたときに一体どこへどういうふうに手順を踏んで相談に行けばよいのか、それがなかなかわからないものですぐ一カ月、二カ月たってしまうわけです。そうすると初動捜査ができなくなっていく。そういう意味では、ぜひ外務省としても、センターがあるようでありますけれども、何らかの形で全国的にこういうセンターがありますよというのが国民にわかるように何らかの広報措置というものをとっていただければ幸いかと思います。  このことをお願いして、質問を終わりたいと思います。
  41. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 大渕絹子でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  私は先月、中国の南京市にあります抗日戦争の南京大虐殺になる記念館というところを訪れてまいりました。これは、中国の国民の人たちが抗日戦争によってもたらされた南京市民の三十万人にも及ぶ大虐殺のその戦争の記憶を忘れないためにということで建てられた記念館でございました。  そこに入りまして大変殺伐とした風景に遭遇をしたわけでございます。建物を取り巻く敷地の中には、人骨に見立てた白い石が敷き詰められていました。木は一本もなく、焼けただれた大きな木材が一本横たわっておりました。そして、その塀の周りには、日本軍が行った残虐の数々、放火や略奪や女性たちへの辱め、拷問、連行、こうした数々の彫刻が塀に彫られておりました。  記念館の中に足を入れましたら、万人坑から掘り出された人骨、頭蓋骨を初め手や足の骨が本当にそれはもう山のように積まれて展示をされています。中に入りますと、日本軍が行った残虐の数数が写真パネルとして数多くの展示をされています。まさに目を覆わんばかりのものがございました。  たった今打ち落とした首を高々と掲げている軍人の姿、その生首を道路の上に幾つも並べて記念写真を撮る。ドラム缶でお湯を沸かして、子供たちを次々と投げ込んでゆでてしまって、それを積んでおく。女性たちを裸にして写真を撮る。ひどいものは、まさに臨月を迎えている妊婦のおなかを裂いて赤子を中から取り出して、それをまた写真におさめるというような非人間的な行為が実際に日本軍によって行われた。戦場という極限状態の中において行われた事実であるということを私も承知しておるわけでございます。  これらのパネルについては、日本におきましても本とかあるいは映画とかで私も目にしたことがあるわけでございますので初めて見たわけではないけれども、一堂に集めた記念館の中で見せられたとき、非常にこれはもう何も言うことができない、ただただ日本人として悲しい思いで頭を下げる以外になかったわけです。  私たちは社会党の議員団として、国会議員五名で中国を訪れたんですけれども、私たちの前後に、現地の小学校三、四年生と思われる集団がございました。私たちの前になり後になり、その事実というものをずっと見ていったんです。非常に熱心に勉強しておられました。パネルに書かれた説明文をみんなノートにメモをとって、言葉は、私は中国語がわかりませんので、子供たちが何を話しているかわかりませんけれども、お互いに顔を見ながら確認をし合いながらメモをとっている姿、それを私は、ああ、中国というのはこんな小さな子供たちにもこんな生々しい現実を見せて教育をしているんだなという思いで見ていたんです。  そうしましたら、何か非常に強い視線を感じました。振り返りました。そうしたら、そこには二十代と思われる五、六人の青年の集団がおりました。私たちが日本国会議員と知って、足を一歩後ろに下げて腕を組んで、大変冷たい視線で私たちを見ておりました。私は、南京の市民にとって日本人はこういう残虐な行為をした人たちであるというその認識がまだぬぐい去られておらない、ぬぐい去ることは無理なんですけれども、そういうことをしっかりととらえた中で私たちを見ているんだなという思いがいたしました。ほかの地域を回ってきたときには感じなかった視線だったんです。  それで私は、中国では事実としてこうしてこんなに小さい子供たちにも教育をしていくのに、日本では風化をさせようという風潮の中で教育が行われているというこの現実に対して、これからの日中関係に大変大きな問題を残すんではないかという懸念を覚えたわけでございます。  そして、外務大臣にお聞きをしたいんですけれども、私たちは中国に対して有償資金協力であるとか無償資金協力技術協力、大変多額な援助をしているわけでございますね。  有償については七九年から八九年までの間で八千七百九億円、無償資金協力については八〇年から八九年までで五百六十三億三百万円、技術協力では七八年度から八九年度まで三百四十四億三千百万円、こういうことになっておるわけでございますけれども、この数々のプロジェクトや施設が完成をされているわけです。  これらについて、日本が過去の歴史の反省の上において再び過ち、侵略をしないという友情のあかしとして、友好のあかしとして協力をしているという、そういう趣旨が中国の国民の人たちに正しく理解をされておるのでしょうか。先ほど喜岡委員の方からもODAの情報公開というような問題も取り上げられたわけですけれども、私たちが反省のもとに中国の人たちへのこれからの開発援助をしているんだということが、中国の人たちに本当に真に伝わっているのかどうか、その認識をお尋ねいたします。
  42. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 戦争の結果、第二次世界大戦を通じていろんな国で悲惨なことが起こったわけであります。それぞれの国は、戦争の終了後に歴史的な記念館をつくって自国の国民にその戦禍のすさまじさを伝えたい、こういう考えでそれぞれの政府がそのようなことを行っていることは、私もよく認識をいたしております。  私どもは、過去の過ちに対して謙虚に反省をすべきであるという考えのもとに、国会においても、あるいは先般海部総理がシンガポールにおいても、過去の戦争についての日本人の心を込めた反省の念を含め、歴史的な問題については、教育を通じて後世に、子供たちに語り継ぐように決意を表明されたわけでございます。  今委員から御指摘の中国につきましても、日本は中国に対する反省のために協力をするといったことではないと私は思います。我々の考え方は、反省は反省として、政府の代表者である総理大臣が過去の過ちを率直に認めて反省の言葉を述べております。中国を初め多くのアジアの国々が経済発展の状況の中で、自国の資金だけでは経済発展ができない。幸い我々の国は豊かな経済国家になりましたから、このアジアの地域の繁栄のために日本はできるだけの協力をしていく。  また、ヨーロッパの国々が反対をしましても、やはり中国のあり方、国際平和のための中国の存在というものを無視してはならないということで、私は海部内閣の外務大臣として、中国の孤立を防ぐために日本政府独自で第三次円借款を早期に始めるために各国を説得したわけであります。  我々は、中国の人たちに対して過去を謙虚に反省するとともに、中国が立派な国家として経済が発展するように今後とも協力をしていく、こういう考えでございます。
  43. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 過去の反省の上に立ってやっているだけではないということで、今大臣から答弁をいただいたわけですけれども、外務省と国際協力事業団が八八年の九月十八日から三十日の間に経済援助に対する評価、そういう調査団を派遣されましたですね。そのときの結果として、この報告書の中には、「中国側の日本経済協力に対するパブリシティは必ずしも十分とはいえなかった。」という報告があるわけでございます。  そうしますと、今大臣の御答弁では中国側は確かに認識をした中で行われているということとちょっと食い違うと思うんですけれども、中国側にPRをしていくというか、公開していくというその手段としてどういうことをやられておられますでしょうか。
  44. 橋本宏

    説明員橋本宏君) 今先生指摘JICAの代表団のことにつきましては、今JICAの中にいろいろの国についての国別研究会というのを設けておりまして、中国についても大来先生に座長になっていただいて勉強を進めているところでございます。いずれこの研究の成果が出ました場合には発表していくこととなると思います。  また、先生指摘の我々の行っております経済協力プロジェクトについてのPRということにつきましては、我々も努力しております。引き渡し式等に先方の責任者に来てもらってそれをできるだけテレビ、ラジオ等で報道をしてもらうとか、経済協力プロジェクトに対して現地プレスの視察というものをアレンジしてみたりということで、できるだけの努力をやっていることは事実でございますけれども、まだまだそういった我々の協力につきまして被援助国側においてPRが行き届いていないということも一方では事実でございまして、我々としても努力を今後とも積み重ねてまいりたいと思う所存でございます。
  45. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 日本経済的に優位な立場から援助をしているというPRは行ってほしくないわけです。過去の反省の上に立って、永久的な友好関係を築くためのPR、そういうことをしてほしいわけなんです。  五月三日にオープンをいたしました中国の日中青年交流センターというところを私も訪れたわけですけれども、私は、中国と日本と共同してつくられたその建物の中のどこか一画ぐらいに、これは日中の友好親善のあかしであるというような立て札かあるいは壁に彫られているものが、何かそういうものがあるかなと思って探したんですけれども、私が見つけられなかったのかもしれませんけれども、そういうのは見当たらなかったんです。だから、これからはそういうプロジェクトや建物とかが完成するたびに、日本人が訪れても中国人が訪れてもこれは日中友好のあかしなんだという、そのことがわかるような何か表示をしていただきたいことを強くお願いしたいと思っています。  外務省側から中国側にも働きかけていただく中で、これ以上中国の若者たちの間に反日感情が広がっていかないような努力、施策を積極的にとっていただきたい。しかも、相手に威圧的なそういう立場ではなくて、こちらからお願いをするというような立場でとっていただきたい、そう思うわけでございます。よろしくお願いを申し上げます。やっていただけるものと確信をいたします。  五月二十一日のこの決算委員会におきまして、中山外務大臣は、私の質問に答えられまして、湾岸平和基金に対する累次の拠出はすべて円建てで行われておるから円安による目減りというものは存在しておりません、したがって円安による目減り分を補てんすることは考えておりませんと答弁をされました。五月三十一日付の朝日新聞なんですけれども、九十億ドル目減り補てんは決着したと、七月十五―十七のロンドン・サミットに向けて拠出をしていきたいというようなことが新聞報道されておりますけれども、この真偽のほどをお聞かせいただけますか。
  46. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 先生が引用されましたように、前回中山大臣が御答弁されましたように、まさに湾岸平和基金に対します累次の拠出はすべて円建てで行っております。したがいまして、そもそも円安による目減りというものは私どもは存在していないと考えておりますので、先生が言及をされましたこの新聞報道等に見られます円安による目減り分を補てんするということは考えられない、こういうふうに考えております。
  47. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 中山外務大臣にお聞きいたします。  目減り分ではなくて、新たな国際平和に貢献をするために必要なお金であるならば、求められれば拠出をする、そういう認識と受けとめてよろしゅうございますか。大臣に聞きます。
  48. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 委員お尋ねのこれからの地域の安定のためにさらに日本が必要な貢献がすることがあるということであれば、これは日本として協力をすることも必要であると考えております。
  49. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 今の大臣の御答弁は、国際平和に貢献をするために必要であるならば拠出をしていく考えであるというふうに受けとめさせていただきます。  大蔵省の方にお聞きをいたします。  一九九一年度の予備費は千五百億円ですけれども、この中から五億ドルに見合う分、七百億円を拠出することは、大蔵省サイドとして、財源として支障はないでしょうか。
  50. 岩下正

    説明員(岩下正君) 今先生から五億ドルの予備費からの支出という御指摘がございましたけれども、おっしゃいましたような五億ドル云々といった具体的な措置につきまして、現時点で決定しているということではございません。その点、まず事実関係を述べさせていただきたいと思います。
  51. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それでは、外務省の側から新たな世界平和貢献のために必要であるから拠出をしてほしいという要請を受けられたときには、どうなさいますか。
  52. 岩下正

    説明員(岩下正君) その時点で外務省とよく相談をさせていただきまして、私どもとしても考えてまいりたいと思っております。あくまでも一般的な考え方でございますが、以上のとおりでございます。
  53. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 一般的な考え方ではなくて、きのの質問取りに来られた方に、予備費からの拠出を要請された場合は予備費から出していける状況であるかどうかを答えてほしいというふうにお願いをしておきました。答えてください。
  54. 岩下正

    説明員(岩下正君) 恐縮でございますが、予備費の性格についてまず申し述べさせていただきますと、御承知のとおり予備費は、憲法及び財政法におきまして、予見しがたい予算の不足に充てるために使用するということで認められております制度でございます。したがいまして、その性格上、まさに今後予備費が具体的にどのような中身でどの程度必要になるかということはわからないというのが率直なところでございますが、予備費の効率的な使用ということについては私どもも最大限意を用いてまいりたいと思っております。
  55. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 先ほど外務大臣の御答弁の中にも海部総理大臣のシンガポールにおける演説というものが引用されているわけでございますけれども、その演説の中で、平和国家として経済面ばかりでなく、政治面でも幅広く国際平和の維持に貢献をしたいと、その意欲を強く示されまして、その前提として、第二次世界大戦などの歴史認識の教育を強化していかなければならない、多くのアジア・太平洋地域の人々に耐えがたい苦しみと悲しみをもたらした我が国の行為を厳しく反省すると、総理みずから明快な表現で過去への反省を公式に表明されました。  外務大臣、歴史教育の充実は国際平和への貢献につながるとお考えでしょうか、総理はそうおっしゃっていますけれども。
  56. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 総理の御発言の趣旨は、第二次世界大戦という悲惨な戦争を体験した我々世代というものがやがて日本の社会から消えていく、そういったときに戦争を知らない世代の人たちが日本の過去の歴史また戦争の起こした悲惨さ、そういったものを普通のいわゆる義務教育の課程で認識をする、そのようなことがこの第二次世界大戦に対する日本の反省の一つのあり方、こういうことを踏まえて総理が発言された、私はそう思います。  そのようなことが行われれば、その教育を受けた人たちは、我々がこの社会から消えていっても、我々が経験したその悲惨な思い出というものは忘れ去られることはない、このような認識を持っておられると思います。
  57. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 子供たちを国際人に育て上げるための歴史教育は、世界のこれからの平和に貢献をするというふうにお考えと私は受けとめさせていただきました。  文部大臣、今の外務大臣への質問と同じなんですけれども、この子供たちに施す歴史教育について国際的な平和に貢献をすることになるかどうか、文部大臣からもお聞かせをいただきたい。
  58. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) ただいま外務大臣が仰せられましたとおりでありまして、私どもはやはり過去の戦争におきまして近隣諸国の方々に大変大きな損害を与えたことは事実でありまして、我が国としても反省すべきところは反省し、その上に立ってこれからの国際社会に貢献できる日本人の育成を図っていかなければならない、そういう面につきまして最前線の教育を預かる方々にぜひお願いをいたしたいと、このように考えております。
  59. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 国際平和への貢献に役立つと認識をさせていただいてよろしゅうございますね。――はい、ありがとうございました。  総理は、その中で、「次代を担う若者たちが学校教育や社会教育を通じて我が国の近現代史を正確に理解することを重視して、その面での努力を一段と強化する。」と語りました。ここにシンガポールで発行された中国語とそれから英語で書かれた新聞がございます。この中に、総理はこの演説の後ホテルで記者会見をして記者団の質問に答えられて、「もし必要があれば日本の教科書を検定し、教科書での歴史描写を正確にし、誤りを正さなければならないと語った。」と報道されております。この発言に沿って文部省ではどのような対応をなさったのか、具体的にお聞かせをいただきたい。
  60. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 総理からは、五月三日の日だと思いますが、その発言、そしてまたお帰りになりまして、ASEAN諸国の訪問から帰国した際、我が国の次代を担う若者たちのことにつきまして私は総理から呼ばれました。    〔理事千葉景子君退席、委員長着席〕 そして、我が国の近現代にわたる歴史を正確に理解するよう学校教育においても努めてもらいたい、こういう御指示をちょうだいいたしました。  学校教育における近現代史の取り扱いにつきましては、本年五月末から実施している教育課程講習会、これは各学校段階ごとに全国五地区で実施をいたしておるわけでありまして、この関係者に対して指導に努めているところであります。
  61. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 大臣、この講習会に参加する方は、全国を五ブロックに分けて各県段階から一名か二名しか参加できないんですね。そして、しかも私がお聞きいたしましたら、その講習会での伝達方法は、文書ではなくて口頭であるということなんですね。口頭でその代表者の方に伝えられて、それが各県に持ち帰られて、そこから各市町村の教育委員会あるいは学校を通じて社会科を教える先生方の耳に届くまでの時間というものは、どんなふうに考えておられますか。この教育課程講習会でその趣旨を徹底して、総理の思うように教育を強化させるということはとても不可能であると思うんですけれども、いかがでございますか。
  62. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 平成元年度に告示いたしました新学習指導要領は、国際社会に生きる日本人を育成するという観点から歴史学習の改善を図り……
  63. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 短くお願いします。
  64. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) その趣旨については、指導書等において示したところでございます。  その指導書の中で、例えば小学校について申し上げますと、非常にコンパクトな学習指導要領、中学校で申し上げますと、地歴、社会、経済まで含めまして二十ページでございますが、その非常にコンパクトな学習指導要領をさらに文部省で解説した指導書でございます。その指導書の中で、例えば小学校につきましては、我が国にかかわる第二次世界大戦について指導するに当たっては、「これらの戦争において、中国をはじめとする諸国に我が国が大きな損害を与えたことについても触れること」を示しております……
  65. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 質問に答えてください。
  66. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 短くしてください。
  67. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) そういう意味で、中学校も高等学校もまた同様でございます。  私どもとしては、既に十分これらの指導書を通じて、今回総理の指示に基づく私どもの指導内容については既に現場に行っておると思いますが、改めて、教育課程講習会という機会がございましたので、口頭でその旨を強く指導したところでございます。
  68. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 これまで明らかなところによりますと、学習指導要領は、法的規制を受けるという概念で検定が行われるわけですけれども、今回とられた措置は教科書や指導要領の内容にまで踏み込んでおらないで、教科書を検閲し、指導要領からの逸脱を厳しく規制している今の文部省の姿勢から、必ずしも総理の発言が実現できるものというふうには思えないのです。  今の御答弁ですと、もう既にその指導要領とあるいは学校の先生方に伝達等で十分に教科書の内容もその指導要領も総理の意にかなったものであるという発言でございますけれども、それであるならば、なぜ総理大臣がわざわざシンガポールにおいて今までの歴史教育のあり方を殊さらに問い直さなければならないというような発言をする必要があったんでしょうか。
  69. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 各学校で歴史を教えるわけでありますが、御承知のとおりに、限られた時間の中で歴史を古代から教えてまいりますと、これは通常の授業がそうでありますが、ややもすると近現代史のところまで至らないで明治維新の途中ぐらいで授業が終わってしまう、時間的な関係で、それが現実でございます。  そういうことも踏まえて、総理は近現代史について、指導書等で正確に書いてはあるけれども、現実に学校段階において近現代史まで教えるような段階に至っていない、ややもするとそういう場面があるんではないか、もう少しその辺は学校におけるカリキュラムを工夫して、特に国際協調、国際理解という観点で近現代史まで正確に、かつまた中身についても、先ほど指導書等について御紹介いたしましたが、そういう観点で指導するように、そういう趣旨で総理はああいう発言をしたというふうに私ども理解をいたしております。
  70. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 おかしいですね、それは。昨年、韓国の盧泰愚大統領が見えられたときにも同じ趣旨のことが行われたわけですよ。そして、この教育課程講習会ですか、そこにおいて強化をするということで伝達をされたわけですね。そしてことしの一月、総理大臣は韓国を訪問された。そのときにも同様な発言をし、同様な措置がされているわけです。さらにさかのぼりまして一九八二年、日本軍の中国大陸での軍事行動の記述に関する教科書検定について中国、韓国から非常に大きな非難を寄せられた際に、政府の責任でこれを是正するということで文部省は検定基準を改めた経緯もあるわけですよね。  さらに、学習指導要領については、来年度から実施をされる小学校の教科書はその新しい指導要領で行うということで、今文部省編さんの指導書の中で、「中国をはじめとする諸国に我が国が大きな損害を与えたことについても触れることが大切である。」という文章をわざわざ書き加えているわけですよ。そしてことしの、来年使われる教科書が今できてきているわけですけれども、中学校においては九三年度、それから高校においては九四年度に同趣旨の指導要領の実施がされるということになっているわけです。  指摘を受けた相手国が違うからといって、一年もたたないうちに同じような指導を繰り返さなければならないという現実があるとすれば、これは教育の現場でそのことが徹底されていないからだというふうに思うわけでございます。大臣、いかがでございましょうか。
  71. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) お答えいたします。  学校教育におきましてこの近現代史の取り扱いにつきましては、従来から国際理解と国際協調の見地に立って友好親善を一層進めるように指導してまいったところであります。  今の御質問で、私どもやはり考えることは、今回の学習指導要領改訂におきましては、国際社会に生きる日本人の育成という観点から歴史学習の改善を図り、例えば我が国にかかわる第二次世界大戦について指導するに当たっては、先ほど申し上げましたように、文部省が教師用に作成した指導書に、「これらの戦争において、中国をはじめとする諸国に我が国が大きな損害を与えたことについても触れること」、こう示してあるところであります。  今後、新学習指導要領の趣旨に沿って児童生徒が我が国とアジア諸国の近現代史を正しく理解して、これらの諸国との友好親善を深めるよう、一層私どもは適切な指導を現場においてさせていきたい、このように考えます。
  72. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 口頭だけで指導をするということに限界があることは、もう先ほどから御指摘を申し上げています。正しい教育をしていくためには、そのもととなる教科書がきちんとなっていなければならないということはもうだれもが承知をしていることでございます。  新しい指導要領の中でつくられた小学六年生の社会科の教科書が出そろったと報道されております。私もこの目で確かめてまいりました。  お尋ねをいたします。この小学校の新しくつくられた教科書の中に、シンガポールについて記述をされてある教科書がどのくらいありましたでしょうか。
  73. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 突然のお尋ねでございますので、シンガポールについて教科書のうち幾つ記述があるかというのは必ずしも正確に私ども数字を把握しておりませんが、手元にある資料で申し上げますと、例えば帝国書院の中学校の歴史の教科書で、太平洋戦争のところでシンガポールについて触れております。それから、東京書籍から出しております教科書についてもシンガポールについて触れておりますし、教育出版の教科書についてもシンガポールについて触れているところであります。  まだたくさんありますが、幾つの教科書があって、そのうち幾つシンガポールについて触れているかというのはちょっとここで今数字を持ち合わせておりませんので、まことに恐縮ですが、後刻よく調査をいたしまして先生に通知したいと思っております。
  74. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 私の調べたところでは、小学校の六年生の教科書八社が今提出をされて検定が済んでおります。その八社の中で、今御答弁になりました三社だけです。あなたがおっしゃったその三社はシンガポールに対して確かに記述があります。しかし、その記述は大変短なものです。  教育出版におきましては、日本軍は豊かな資源を求めて東南アジアへの侵略を始めたのです。たったこれだけ。帝国書院につきましては、日本軍は占領した地域でそこに住む人々を無理やり働かせたり食料や資源を取り立てたりしました。こういうことです。こういう短い記述、しかもこの三つの教科書だけしか扱っておらないということ。  総理がシンガポールで東南アジアの侵略した国国に対して反省をして、教育を強化していくという演説とは非常にかけ離れた教科書ができ上がってきている事実をどういうふうに受けとめておられますでしょうか。
  75. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) まことに恐縮ですが、後ろから今メモが入ったりして、それをあれしていましてちょっと聞き漏らしてしまったんですが、恐縮でございますが……
  76. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それでは結構です。  そういうたった三社しかないということは、総理が行った演説とは全く食い違うわけですよ。それではシンガポールに対する反省で歴史教育を充実させるなどと言われる状況じゃないわけです。新しい教科書がこうなんですから、来年から使われる教科書ですよ。それに対して、あなたは、さっきもう既に教科書も指導要領も完璧であってもうそれ以上やることはないという答弁をしたわけでしょう。私は、そのことに対して全く認識が違っているんではないかというふうに思うわけでございます。  この新しい指導要領がつくられた原因になったのは、中国、朝鮮への記述がとても不備であるという指摘を受けた中で改訂をされてきたということは、もうだれもが知っている事実なわけでございます。  それでは、中国や朝鮮に対する記述についてどういうふうになっているかといいますと、さっき質問通告がないからというふうなことをおっしゃいましたけれども、歴史教育についてお聞きをするということになれば、当然教科書の問題に踏み込んでいくことはわかっておられるはずでございますので、通告がなかったというのはおかしいと思うんですよね。  それで、中国の記述のところなんですけれども、南京大虐殺について見ると、八社の教科書の中で記述のないところが帝国、それから日書、光村、この三社が南京大虐殺、大事な歴史の証言についても全く触れておらないという事実があります。そして、関東大震災のときに生じた朝鮮人の大虐殺について触れていないところが三社ございます。朝鮮人の日本人名を強制するということについて触れていないところが八社のうち五社、こういう状況の中で、この新学習指導要領を策定する原因になった中国、朝鮮の記述に対してもこういう内容しか見られないわけですね。これで歴史教育を充実させていく教育ができるとお考えでございましょうか。
  77. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 御承知のとおりに、現在の我が国の教科書制度というのは検定制度でございます。著作者が一定の考え方に基づきまして教科書を作成し、文部省に申請をしてまいります。その場合に、文部省が一応学習指導要領の趣旨に沿って書かれておるかどうかという観点で教科書検定審議会の議を経まして審査をいたしまして、それに基づいて検定をしているわけでございます。  したがって、どういう著者の考え方で、例えば東南アジアに我が国が侵略した、大変損害を与えたという書き方をする著者もおりますし、それからシンガポール、タイ、フィリピンというように国名を挙げて書く著者もおります。そういうものを含めまして、私ども、東南アジアという形でつかまえておる著作につきましても、一応個々の具体的な名前がなくとも学習指導要領の観点から見て差し支えないんではないかというようなことで検定を認めているわけでございます。  ただ、具体的に個々の教科書を学校の先生が使って教える場合には、先ほど先生も御指摘ございましたように、私どもが書いております指導書、先生方の学習指導要領の解説として各学校に配付しております指導書において、「これらの戦争において、中国をはじめとする諸国に我が国が大きな損害を与えたことについても触れること」というふうになっておりますので、東南アジアという形になっておりましても、その場合に具体的にその指導書の線に沿って各学校の先生方が指導しているものというふうに私ども期待をいたしております。
  78. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 先ほどの御答弁で、大変教える事実がたくさんあって時間がなくて触れることができないというような御答弁をされておりますのに、教科書に載っておらないことを先生の自発的な指導の中で教えなさいという今の御答弁というのは全く合わないと思うんですよ。そうじゃないですか。
  79. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 先ほどは先生が、学習指導要領あるいは教科書等をいじらないで、なぜ総理がああいう発言をしたのであるかというその趣旨はどういうように文部省として理解しているかという御質問でありましたので、私どもとしましては、学習指導要領及びその解説書の指導書及び教科書等については、一応万全ではないとしても総理が指摘するような問題については取り扱うようになってはおりますけれども、ややもするとその中身の問題よりも時間等の制約で近現代史にまで来ないで歴史の教育が終わってしまうという事実があるということにつきまして、そういうことがないように総理は具体的にカリキュラムを見直すべきではないかというような御指摘もしておりますが、そういうことで総理が触れたんだろうというふうに私ども理解をいたしております。
  80. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 海部首相は、過去の日本の教科書はアジア・太平洋諸国への侵略行為を歪曲した、そのため中国、韓国などの国で強い抗議があった、そのことを認めて記者会見で質問に答えた。もし必要があれば日本の教科書を検定し、教科書での歴史描写を正確にし、誤りを正さなければならないと語ったわけです。  ただいま指摘しましたように、中国の南京大虐殺についても朝鮮の植民地化についても東南アジア諸国への侵略についても全く不十分のまま新しい教科書ができ上がっているわけですから、首相の発言どおり今後の教科書検定のあり方や指導要領の改正をしていかなければならないと思いますが、大臣、いかがでございますか。
  81. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 先ほど申し上げましたように、私は総理に呼ばれまして、過去において戦争をした中国並びに各東南アジアの方々にえらい御迷惑をかけた、これをひとつ徹底して学校現場で教えてくれ、こういうことを指示されました。また、各局長にこういうようなことがあったとそれを報告いたしました。あくまでも、この指導要領を変えろとかあるいはまたそういうことは言われませんで、いわゆるカリキュラムを考えて、その中で、先ほど局長が答弁したように、ややもいたしますと近現代史をおろそかにする、そういうことのないように徹底して、我が国の今までやった過去の戦争を反省して、そしてそれを二度と繰り返さないように現場で徹底して教えてくれ、こういう指示を受けたのであります。
  82. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 文部大臣にお願いをしておきます。海部総理大臣にお会いになりましたら、新しい小学校六年生の教科書のうち三社しかシンガポールについては記述がないんだけれども、これで問題がないだろうかということをどうぞ問いかけておいていただきたい、そう思うわけでございます。  大臣は、越田稜さんの書かれました「アジアの教科書に書かれた日本の戦争」という本をお読みになったことがございますでしょうか。もしありましたら、これを読まれた感想を率直にお聞かせいただきたいと思います。
  83. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 今先生指摘の、大分厚い本でございましたのでこの十二章を見せていただきました。確かに、御指摘の著書の内容を拝見いたしまして、その国の教科書の位置づけあるいは教科書観の違いがあるかもしれませんが、日本の教科書と比べて大変詳しく記載されているなと。また、内容を見まして、先ほど申し上げましたように、大変かつて申しわけなかったということをひしと感じた次第であります。
  84. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 この侵略をされた側の国とそれから日本の教科書の間に大変大きな隔たりがあることを今大臣もお認めいただきましたわけですけれども、現地の教科書を率直に翻訳されたこういう本は、現場の教育に携わる先生方にとりましてよい参考書あるいは副読本みたいなものになるとお考えでしょうか。
  85. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 各学校現場で教科書以外に副読本として教育上有益、適切なものは教材として使用できるような仕組みになっておりまして、それは個々の教育委員会の承認または届け出で、それぞれの学校が地域の実情に応じて使用するという仕組みになっているわけでございます。  したがって、一般的に大部のものが直ちに先生たちにとって適切な参考書になるかどうかというのは必ずしも、詳細に今先生が御指摘の本を読んで分析してみなければなかなか理解できないわけですが、一般にはそういう仕組みになっておりまして、それぞれの地域の実情において各学校が判断すべき問題であろうかというふうに考えております。
  86. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 大臣は先ほど率直に答えていただきました。大変中身を比べて日本の教科書との違いというのが明快にわかると大臣はおっしゃっていただきました。この日本の教科書とアジアの国国で使われている教科書との差があればあるほど、日本人とそのアジアの人たちとの間に歴史に対する認識のギャップというのは広がっていくばかりでございます。  そのことを懸念する知識人の間では、日韓歴史教科書研究会というものをつくって日本と韓国との間にある教科書のギャップを埋めていきたいというような、そういう運動がことしの三月からでございますけれども日本で始まりました。これは、金沢大学の教授でいらっしゃいます藤沢法暎さんが「ドイツ人の歴史意識」という著書の中で、日本人がアジア諸国にしてきた残虐行為について歴史認識が非常に浅いことを指摘した。これに共感をした韓国の湖南大学の前学長さんが藤沢さんを訪ねてこられて、そして意気投合いたしまして、韓国と日本の知識人との間で、それではこの教科書についての研究会を持とうじゃないかということで発足をされたと聞いています。  本年の三月二十七日と二十八日の両日、日本の明治大学でしたでしょうか、東京で開かれたわけでございますけれども、文部省といたしまして、この教科書のギャップを埋めていくようなこうした研究会のあり方、そういうものをどう評価され、こういう運動に対して何か援助をしていくお考えがあるかどうかお聞かせください。
  87. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 先生が御指摘の研究会が本年の三月二十七、二十八日、明治大学の大学院の教室で持たれたというのは私どもも承知いたしております。このような研究が民間の研究者の間で進められているということは、それはそれで私どもは大変意義があることだというふうに思っております。  例えば、韓国の場合は歴史等については全部国定教科書でございます。検定制度じゃございません。我が国では、御承知のとおり、第一義的には著作者が判断をし、学習指導要領に基づいて教科書をつくり、文部省に検定申請をしてくるという、制度の仕組みが違うわけでございますので、政府関係者がこういった活動に関与するということは差し控えるべきものだというふうに私ども考えております。
  88. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 日本はその検定制度をとっておるということは承知をしているわけでございます。書かれた教科書は、書かれた方たちのその主観によって書かれているということも承知をしておるわけでございます。  その検定制度があるがために、検定が通らない記述をすることによって、教科書をつくり上げていく過程、非常に長い時間がかかるわけですね。四年に一回の見直しというふうに言われていますけれども、そういう長い時間の中で、もし検定が通らなくてアウトになった場合、その損害というようなものを考えると、どうしても検定が通るような中身にして教科書ができ上がってきているという事実というものがあると思うんです。そこら辺はどういうふうに認識をされていますか。
  89. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 先ほど来御説明いたしておりますように、私どもとしては学習指導要領に沿って教科書を作成していただいて文部省に申請してきていただきたいということでお願いをしているわけでございます。  今先生が御指摘になりましたようないろんな教科書の検定制度につきましては、御批判があることも事実であります。そういうこともございまして、先般検定制度をもう少し簡略化するという制度改正もいたしましたし、それからなるたけ中身を公開しようということで、本年度、今度の検定教科書につきましては、どういう点が直されたかということを明確にする意味で、最初に文部省に申請してまいりました原本を一般に公開すると。したがって、原本が公開されて、検定された教科書と原本との比較をいたしますと、どういう点が直されておるか、修正されておるかということが明確になるわけでございます。  そういう仕組みも本年度からとるということで、七月一日にその申請の原本を公開するという今予定にいたしておりますが、私どもとしましてはできるだけ教科書検定の公開ということ、それから検定制度を簡略化するという方向で今後も努力してまいりたいというふうに考えております。
  90. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 文部大臣、先ほどの民間知識人たちの間のその教科書のギャップを埋める作業について、文部省としてもこれから要請がなくても支援をする体制というものをつくっていただきたいと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  91. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 今のお話でございますが、このような研究を国、政府レベルで行うことは、今の検定制度から見てちょっと難しい点があるんじゃないかと。また、民間の研究者の間で日韓両国関係史、こういう研究が今進められていますこと、これは私どもは意義があると、このように感じます。
  92. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 外務省でも日韓の二十一世紀委員会というようなものをつくられて、そのギャップを埋める作業というようなものを取り組んでおられるわけでございますので、文部省といたしましても極力協力をする中で、これからの日本の子供たちのためだと思うんです、そのギャップを埋める作業というものにこれから積極的に取り組んでいただきたいことをお願い申し上げます。  さて、大変いろいろと指摘をしてまいりました。今回の首相発言によってとられた文部省措置、教育課程講習会における周知徹底を図るということは、とても無理であるということはおわかりをいただけたと思います。  文部省側では、マスコミ等でもうこれだけ大々的に取り上げているんだから既に先生方は皆さん承知をしているんだという、そんな認識の中でもしこのことが取り扱われているとしたら、それは大きな間違いであるというふうに思います。  教科書を改めていくには長い年月がかかることは承知をしています。およそ四年ごとに見直しがされるならば、今すぐ首相発言を実現することは無理だと言わなければなりません。特に、小学校の教科書においては既に来年用のものができ上がってしまっているわけですから。  そこで、一つ提案があります。学校の図書や学級の図書にそれぞれの年齢にふさわしい参考書や本を備えていただくことはできないだろうかということです。  それともう一つ、教科書の不備の分を補うために先生方に使用していただく副読本、そういうようなものを積極的に文部省側から全国の各学校に配付をしていただけないだろうかと、こういうことでございます。全国の小中高等学校の歴史教育に携わるすべての教師に行き渡るような、そうした参考書か副読本かそういうものの予算づけを早急にしていただきたいんです。  私は、先ほど冒頭に外務大臣に国際貢献のための拠出はあり得るのかとお尋ねいたしました。大蔵省側からも、予備費は不慮の支出に対して払われるものであると。まさに、海部総理大臣のこのシンガポールでの発言は、大蔵省にとっては不慮というか、予期していなかったものであったかもしれません。そうであるならば、予備費の支出というものはこういうことに使われても当然というふうに私は思うわけでございます。先ほど両大臣から、国際平和の維持に貢献するに歴史教育は非常に重要であるという御答弁をいただきました。そうであるならば、今回の首相発言をとらえた中で、文部省が行ったその講習会の徹底だけでは首相の発言は実現をされないという、そういうふうに思うわけでございます。  そこで、その予備費で使われる部分をこの学校の図書を配付するあるいは先生に対する副読本を支給するという方に配慮をしていただきたい、そういうふうに思うわけでございますけれども、文部大臣にこのことについて明快な御答弁をいただきたいんです。今のままだったら、総理の発言は、シンガポールでこんなに大々的に喜んで取り上げられたこの発言は、全く絵にかいたもちになってしまうんですよ。日本で具体的にこういう予算づけの中で学校にこういうことをした、先生方にこういうことをしたという明快なあかしがなければ、私はシンガポールの人たちに対して、東南アジアの人たちに対して、中国や韓国の人たちに対して、総理の発言は全く無に等しかったということになると、そう思うわけでございます。明快な御答弁をお願い申し上げます。大臣にお願い申し上げます。
  93. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 総括的に私から御答弁させていただきたいと思います。  新学習指導要領の趣旨に沿って、児童生徒が我が国とアジアの近隣諸国の近現代史を先ほど申しましたように正しく理解し、これらの諸国との友好親善を深めるよう、私どもは一層のひとつ配慮をし、適切な指導を行いたい、こういうように私は考えております。
  94. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 外務大臣にそれでは聞かせてください。  先ほど私が指摘をいたしましたように、歴史教育は国際貢献に大きな役割を果たすとお答えになりました。そして、その世界の平和に貢献をするためだったらば拠出をしていきたい、お金は出していきたいと大臣は答弁されました。そして、私は今ずっと教科書のことを取り上げてきました。お聞きになって、今の教科書のありようで、あるいは周知徹底を図ると言われるその講習会で口述によって伝えていくだけで、総理大臣の意思というものは先生方、子供たちに私は伝わっていかないと思うわけです。そういう中で、私が提案をするような、あるいはもっと別な方法でいいかもしれません、何か具体的な方法でこの総理大臣の発言に対する具体的な政策をとっていただきたいんです。いかがでしょうか。
  95. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 我が国の文教行政に対する考え方を総理が言われたわけでありまして、日本の内閣総理大臣が閣僚である文部大臣に自分の内閣としての考え方を示されたわけでありますから、文部大臣の意思に従って文部省当局はこの学校教育にそのようなことに積極的に当たっていただくべきである、このように考えております。
  96. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 一国の総理の発言によって世界的に話題をまいておる、こういうことに対して日本の当局者として具体的な施策が何も講じられない、ただブロックごとの講習会で口述によって伝えられていくような、私はこんな情けない行政であってはならないと思います。  どうぞ文部大臣、予備費の拠出は大丈夫と大蔵省も言っておりますので、積極的に進めていただく中で、総理の発言がアジアの人たちにとっての裏切りにならないような措置をとっていただきますようにお願いを申し上げまして、質問を終わります。
  97. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  98. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十三年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題とし、外務省及び文部省決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  99. 会田長栄

    会田長栄君 会田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  最初にお伺いしたいのは、初任者研修制度が発足をいたしまして小中高とも本格実施に入りました。しかし、初任者研修には余りにも教育を推進する上で問題が多く出てきているというところから、幾つかの点について文部大臣初め関係局長に御質問いたします。  その一つは、結論から申し上げますれば、初任者研修の実施状況実態調査というものに文部省が入っているとお聞きしているんですが、そのとおりでございますか。
  100. 遠山敦子

    説明員(遠山敦子君) 実態調査というお話でございますが、お尋ねの件は、恐らく初任者研修実施計画書というものの調査についてであろうかと存じますが、それでよろしゅうございましょうか。――その調査につきましては、現在文部省といたしまして、年度当初におきまして、その年度の各都道府県、指定都市教育委員会におきます初任者研修の実施計画、それから実施状況を把握するために実施しているものでございまして、今年度につきましては、既に四月十九日付の公文書により各都道府県、指定都市教育委員会に対して調査を実施しているところでございます。
  101. 会田長栄

    会田長栄君 この調査目的、ねらいというのは簡潔に言うと何でございますか。
  102. 遠山敦子

    説明員(遠山敦子君) これは、初任者研修が現在段階的に実施されつつございますので、その実施の状況につきまして、実施の計画とそれから実施の状況を具体的に握把するということが必要であるわけでございますので、そのために実施しているところでございます。
  103. 会田長栄

    会田長栄君 この調査に伴って、文部省としては研究対策協議会というものを発足させて全国三カ所で会合をやるという予定になっているそうですが、そのとおりでございますか。
  104. 遠山敦子

    説明員(遠山敦子君) 研究対策協議会というのはちょっと承知をいたしませんが、先生全国三カ所というお話でございますので、多分それは初任者研修につきましての研究協議会のことであろうかと存じますが、これは今年度から始めさせていただこうと考えております。
  105. 会田長栄

    会田長栄君 それでは、これはもうこの決算委員会でもその他の委員会でも再三議論されている初任者研修でありますから、多くの問題とか課題というのが浮き彫りになっている、こう思いますが、改めて聞かせてもらいたいのは、教職員の初任者研修というものについて、初任者が今日までの試行あるいは小中の本格的実施、こういう中にあってどういう御意見をお持ちか、それを把握しているとすれば聞かせてもらいたい。
  106. 遠山敦子

    説明員(遠山敦子君) 先ほど申し上げましたように、現在は順次段階的に本格実施に移っているところでございまして、その段階におきましてそれぞれの教育委員会において初任者の意見等の把握はあろうかと存じます。その意味では、総括的に文部省としてまだそのことについての把握という角度では取り組んでおりませんけれども、いろんなヒアリングを通じ、あるいは先ほど申し上げましたような協議会の場を通じて初任者の研修を受けている方々の御意見も聞くことになっていこうかと考えております。
  107. 会田長栄

    会田長栄君 それでは、具体的に聞きます。  初任者の教員の立場からは、例えば担任している子供たちから余りにも離れ過ぎるという御意見があると思いますが、そのように把握していますか。
  108. 遠山敦子

    説明員(遠山敦子君) そのような具体的なことについては、私はまだ就任した早々でもございますし、十分には承知をいたしておりません。
  109. 会田長栄

    会田長栄君 これは、研修日数が多過ぎて自分の担任している子供たちから離れ過ぎていて、いわゆる担任と子供たちの信頼関係というのができにくいという、こういう御意見が強いんですよ、受けている人たちは。ましてや、この中にあって、学校を挙げて取り組んでいる学校行事すらこの研修のために初任者が離れなければいけないという実態になっているんです。これが一つですよ。毎年実態調査しているというけれども、毎年実態調査しているならこういう点は明確に押さえて取り組むべきだと思うから私はお尋ねしているわけであります。  午前中、同僚の大渕委員の方から質問が出ていたけれども、これは政府の立場からいえば、本音と建前というものを使い分けているような気がしてなりませんから非常に残念でございます。一国の総理が外国に行って、みずから反省をし、これからの進めるべき施策について公約をしているというのに、なかなかしかし現場実態ではそのような雰囲気になっていないというから、恐らく私は御答弁の中で、総理が公約したことについては既に教科書もでき上がっちゃっていることでございますから、その点は今後補完させていただきますという答弁が出るのだと思って聞いていたんですよ。しかし、その補完という言葉はついに出ません。  しかし、私が今ここでお答えをいただいたり質問したりしたいのは、何としてもそういう問題を一歩でも前進させて子供の教育に役立つようにしていきたいから聞いているわけでありますから、そこはやっぱり本音で言ってもらわないと困ります。本当に年間を通して研修内容が多い、研修出張が多過ぎる、担任している子供たちから離れる機会が多過ぎる、これは何とかしたいと思って、今その点を調査しているのならしているのだというように聞かせてもらえば、受け取る方も非常にいいんですよ、これは非常に大事なところですから。  それからもう一つは、指導のあり方をめぐって問題が出ているんですよ、初任者の中から。これは私もわかります。私もかつて二十五年の教職員経験がありますからよくわかります。  それはどういうことかというと、初任者が授業展開中に、授業展開中ですよ、指導先生に授業を要所要所で取り返されるというんですよ。私もかつて一度経験あるんです。これは若いときですから、学校ってこういうところかなと思っていたから別段余り怒りを感じなかった。その当初はですよ。しかし、よく考えていきますと、やっぱりうちの先生指導員の先生よりも下なんだ、専門的でないのだといって子供の方から不信を買うんですよ。これは非常に難しいところなんですね。この点について出ているんです。もう一つは、宿題が多過ぎると言っているんですよ。まあ子供と同じですわ。大体この三つが出ているんです。  それは、現場の校長先生はどう言っているかというと、参ったと。参ったですからね。その参った中身は何だといったら二つある。一つは、非常勤講師の補充がどうしてもできないと言っているんですよ。だから、初任研の制度をつくった。これは仏をつくって魂入れずというところへきているんです。参ったと言うんですね。それから、もう一つ参ったと言っているのは、初任者が一校に三人、四人と配置されたときに難しいと言っているんですよ。  同僚はどう言っているかというと、とにかく容易でないようだな、あれではストレスたまるのも無理はないわな、これが同僚の共通の意見ですよ。じゃ、PTAは何と言っているか。とにかく初任者の先生には受け持ってもらいたくない、こう出ているんですよ。  そういう意味で、非常に小中高とも本格実施に入った。とりわけ埼玉県などでは、これは新聞にも出ているとおり、非常勤講師を確保できないから大学生を頼むと言っているんですから、もうここまできたら容易でない状況ですよ、これ。そういうことを考えますと、この初任研を本格実施して来年度に向かってどのように文部省がこの問題点を整理していくかということが今日問われています。その意味でぜひ、この初任研の実施状況の実態調査をしているというのであれば、本音をひとつ集約してほしいというのをお願いしておきます。本音です。  それからもう一つは、対策協議会を発足させて全国三カ所でやると、こう言われておりますから、その中には初任者もひとつ意見をまとめて提起できるようにしてもらいたい。初任研についてはこの二つだけお願いしておきます。  最後に、こういう問題点が指摘されているとき、文部大臣といたしまして、本格実施に入った、しかし初任者からも現場の校長からも、PTAの父母の皆さんからも同僚からもこういう問題が指摘されていますから、どうしても私は見直しをしなければいかぬというときにきていると思いますので、そういう点を含めまして御所見をいただきたい。
  110. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) ただいま会田先生から御自分の現場の体験を通していろいろなお話を承りました。また、助成局長からもお答えをいたしましたが、初任者研修制度につきましては、もう先生御案内のように、平成元年度から小学校、また逐次学校種ごとに本格実施しております。その中で、今各都道府県においておおむね順調に実施されているということを承知しておりますが、今埼玉県のような例も伺いました。初任者の実践的指導力の向上が著しい、そういう成果についても私ども報告を受けております。  しかしながら、やはりこれを円滑に進めていくためには、なお幾つかの問題も確かにあろうと思います。例えば、地域によっては今非常勤講師の確保が非常に難しいと、こうおっしゃいましたが、まさにそういうこともあろうと思います。あるいはまた、初任者の負担軽減に一層の工夫やまた努力を要するところがある、このように私も考えておりますので、これらの点につきましては各県の教育委員会からのヒアリングなどでもやはり指摘されているところもありますので、こういう面につきましてももう一回ひとつ勉強いたしたい、このように思います。  今後とも、やはり初任者研修制度が円滑にかつ効果的に実施されるよう、私どもとしては各都道府県あるいは指定都市教育委員会を指導してまいりたい、このように思います。  今おっしゃいましたように、非常勤講師の確保が非常に困難だと。いろいろ今新聞あるいはラジオ、広報紙などでPR活動をやっておりますし、またいろいろ調べますと、例えば鹿児島、栃木などでは、もうこれは大丈夫だと、今先生のおっしゃる埼玉などは非常に厳しいと。私どもこの間も、実は校長会のOBの方ともお話をしたんですが、それなりにやはり御協力をいただいておるというのが現況でございます。  なお、今御指摘の点は、ひとつそういう事情を教育委員会ともよくお話し合いをして、一層この初任者研修が実りあるものに育てたい、このように思います。
  111. 会田長栄

    会田長栄君 どうぞよろしくお願いします。  当然初任者研修の実施要項モデル案というものが常に全国都道府県で基礎になっているんです。このモデル案をもとにして各都道府県が実施しているわけでありますから、もろもろの問題が起きている。したがって、このモデル案というものについてもあらゆる角度から分析をいたしまして、ぜひ見直しを図ってもらいたい、こう思います。この点はよろしくお願いしておきます。  次に、子供の人権問題に関連をいたしまして、法務省、文部省にお尋ねしていきます。  平成三年五月二十三日、朝日新聞「論壇」で鐘紡会長の伊藤淳二さんが、「金銭万能哲学を総括論争せよ」と提起されております。  その一節を読みますと、「二十一世紀は日本の時代という人もいる。」、「日本人の心の中を、少数の例外を除いてほとんど金銭万能の哲学が覆っている。」云々と。これを前段といたしまして、「しかし、このような哲学を持った国が世界をリードし、尊敬されたためしはない。たとえあったとしても、たちまち崩壊していったことは歴史が明らかにしている。」、こう言っています。そして結びに、日本の政界、官界、経済界、文化界、芸能界、教育界などに対して、例外を除いて金銭万能の哲学が善か悪か、日本の未来を真に幸せにするのかということを問いかけています。すなわち、大人社会に警告を発しているのであります。  そこで、まず私は法務省にお伺いしたいのは、少年少女を取り巻く諸情勢は今日まことに殺伐としていると思います。経済的な繁栄の中で、一方では社会的なひずみ、これも拡大している。まして大人の悪、これは日常茶飯事に情報化社会の中にあって目についている。こういう環境の中にあって今少年少女は暮らしている、子供たちは暮らしている。それだけに少年少女の非行、犯罪は一向にとまらないし、その傾向というのは質的にも変わってきている、こういうことが言えるのではなかろうかと、こう思いますが、法務省として少年少女の犯罪の趨勢と背景というものをどのように一体分析しているか、簡潔にお聞かせ願いたい。
  112. 古田佑紀

    説明員(古田佑紀君) 最近におきます少年非行の動向についてまず申し上げます。  数の上で見ますと、刑法の主な犯罪により検挙された少年は、昭和五十二年以降大幅に増加して、五十八年には戦後最高の二十五万四千七百四十七人に達しております。その後、若干の減少ないし横ばいの状況で推移しておりまして、昨年平成二年は十七万七千三百八十二人となっております。  内容的に見ますと、万引き等を中心とする窃盗あるいは放置された自転車の乗り逃げといった比較的軽微な事件が大部分でございますが、中には殺人や強盗などの凶悪犯罪もなお少なからず発生しており、その動向については引き続き警戒を要するものがあると考えております。  ところで、委員指摘のこういう少年非行の背景の問題でございますが、何分にも、委員指摘のような問題も含めまして、さまざまな問題が考えられますので一概に申し上げることは困難だと思いますが、よく言われることではあるものの、価値観の多様化あるいは社会の複雑化とそれに対する少年の不適応、それから都市化が進んでおりまして人間関係が希薄になりまして、地域社会の非行、犯罪を抑止する力が低下したこと、家庭の保護環境の不十分さなどといったいろいろな要因が考えられるものと認識しております。
  113. 会田長栄

    会田長栄君 私が小さいころは、親は子のかがみという言葉がしょっちゅう出ました。大人は子供のかがみということからいえば、少年少女の非行や犯罪の背景を分析するときに、大人社会というものについてもう少し明確に私は答えていただけるものと思いました。情報化社会でありますから、もう毎日のように大人の悪いことが子供のところにどんどん入ってきているわけですね。このことをやっぱり端的に一つ指摘してほしかったというのが私の気持ちであります。  具体的にお聞きします。前回も聞いたわけですが、教師の体罰というものが一向に減らない。文部省が教師の体罰は禁止するという、こういう通達を出しています。しかし、一向に減らないというのはどのように一体考えているか、見解を聞かせてもらいたい。
  114. 濱卓雄

    説明員(濱卓雄君) お答え申し上げます。  教職員による体罰というのは、児童生徒に何らかの問題行為があった際に、その問題行為に対する懲戒及びその是正を目的として行われるのを言うわけでございますが、法務省人権擁護局としては、教職員による体罰は心身ともに健全に育成されるべき児童生徒の人権にかかわる重大な問題であるというふうに認識しているわけであります。  したがって、法務省としては、従来から、一切の体罰は許されないとして積極的な啓発活動を行い、具体的事案については人権侵犯事件として取り組んでいるわけであります。また、六十一年度以降、「いじめ、体罰の根を絶とう」という啓発重点目標を取り上げまして啓発活動を展開してきたところであります。  これらの体罰の問題を初め、子供をめぐる人権問題については、人権擁護の立場から積極的に取り組んでまいりましたし、今後とも取り組んでまいりたい、かように考えております。
  115. 会田長栄

    会田長栄君 文部省にお尋ねいたします。  文部省が体罰禁止の通達を出していても一向に減らないということについて、どのような一体見解をお持ちか聞かせてください。
  116. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 先生今御指摘のように、私ども従来から体罰が厳に法律で禁止されておるということ、そのことにつきまして通達を出すと同時に、あらゆる会議、機会を通じて指導の徹底を図っているわけでございますが、それでも毎年かなりの件数の体罰が行われておるというのは事実でございます。  その原因、背景といたしましては、教師の側の問題としましては、校内暴力等の問題行動に対応するために、場合によっては力の行使が必要であるという意識があるのではないか、あるいは指導上多少の体罰なら構わないのではないかという安易な気持ち、それからまた父兄の方あるいは一般に、体罰を熱心な指導のあらわれと見る一部の親の意識もあるのではないか、さまざまな要因が考えられるのじゃないかというふうに考えております。  ただ実際に、私どもとしましては、体罰は教師の一時的な感情から行われるということが多く、その教師の一時的な感情というのは児童生徒にもすぐわかるものでありますから、その結果、師弟の信頼関係を損なう原因ともなる、教育的な効果も結果としては期待できないというふうに考えております。  そういう意味で、日ごろから児童生徒との人格的な接触を深めて、その意識や行動を十分理解して好ましい人間関係を育成し、その基盤の上に立って児童生徒の指導に当たることが肝要であるということで指導の徹底を図っているところでございます。
  117. 会田長栄

    会田長栄君 私は、今答えられたようなことの認識はしていると思いますよ。それでもなおかつ体罰に走ってしまうという。  だから、文部省が体罰を禁止しても、体罰はなぜ禁止しているかということの中身を先生方に指導してもなおかつとまらないというのは、私はその背景なり今日の学校の置かれている実態なりというものを直視しないと、やっぱり依然としてこの傾向はとまらないだろうと思うんです。やっぱり本当のところをもう少しさわってみなけりゃならぬだろう、こう思っているわけであります。  その本当のところというのは、私も一度やったことがあるんですよ。まあ二十五年にして一度ですから……。それはどういうときかというと、やっぱり仕事が多いときといらいらしているときと、自分の思うように子供が言うことを聞かないときとあるんですね。ところが、私がやったころはたまたまお父さんやお母さんの中には、うちの子にはこれをやってもいいからびしびし教育してくださいという雰囲気があった。しかし、今はそういう雰囲気はなくなってきているということでありますから、私はこの点は本格的に追求してみなければいけないんじゃないかと思っている一人であります。  これに関連をして、今度は外務省にお尋ねいたします。  国連総会で採択された子供の権利条約、これは予算委員会、外務委員会などで外務大臣は、この子供の権利条約について、できる限り次の通常国会には批准できるように提案していきたいということを再三申されました。しかし、いまだに私は不思議でならないのは、私どもにその子供の権利条約というのを国内法と関連して検討していると言いながら、この権利条約の日本語版というものが正式に見せられたことがない、これも不思議な話です。しかし、一般には多く出回っています。一般に多く出回って、政府がこれを国会に提示できないという本当の理由というのは何でございますか。
  118. 丹波實

    説明員(丹波實君) 先生この問題につきまして大変御関心をいただいて、ふだん感謝申し上げている次第でございます。  ただいまの御質問につきましては、一般的にまず申し上げまして、このような条約が国連で採択される場合、外国語で採択されるわけですが、それに日本が署名しあるいは加入する場合に、日本語のテキストをつくりまして、最終的には法制局の審査をいただき、閣議決定を経て国会で御審議いただくという、そういう過程をとるわけでございますが、現在の段階は、このテキストを関係各省庁と協議しながら作成の段階にあるということでございまして、最終的にテキストが確定した段階で国会におかけする。そういう状況のときに、テキストは関係の先生方あるいは国民一般の方にお配り申し上げる、そういうのが一般的な手続で今日まで処理されてきておるわけでございます。
  119. 会田長栄

    会田長栄君 それじゃ、いつごろまでにテキストはできるんですか。
  120. 丹波實

    説明員(丹波實君) この子供の権利条約につきましては、できるだけ批准をお願い申し上げたいという気持ちを私たち非常に強く持っておりまして、先生が先ほどおっしゃいましたとおり、外務大臣以下私たち、でき得れば先般終わりました春の国会におかけすることでやったのですが、関係省庁との協議が調わないままに国会が終わってしまいまして、私たちといたしましては、どんなに遅くとも来年の通常国会には必ずおかけいたしたいというふうに考えております。テキストは、その段階でお配りできるということになるわけでございます。
  121. 会田長栄

    会田長栄君 私がお尋ねしているのは、いわゆる子供の権利条約の原文ではなくて、その原文を受け取って今外務省一つ日本語版をつくって各省庁に御相談を申し上げているんでしょうから、そのテキストができるのが来年の通常国会だなどと言わないで、問題のところは注釈加えてもいいんでしょう、なぜそれを出せないんですかと聞いているんです。そんなに時間とることはないでしょう。
  122. 丹波實

    説明員(丹波實君) これは、この場合の日本語のテキストと申しますのは、恐らく各省庁が例えば国内法をつくられるときの、その国内法の作成過程の表現、文章に該当するものと考えます。  恐らく、関係各省庁におかれましても、そういう法律案というものは、やはり最終的に法制局の審査を経、閣議決定を経て国会にお出しするときにお配りするということでございまして、そうでなければ、ただいま外務省が関係各省庁と相談してつくっておりますいわゆる仮訳的なものはどんどん変わっていくわけでございまして、そのどの段階でお出しするかということになりますと、二カ月たつと表現が違ったところが出てくるということで、国民一般の皆様方にかえって混乱もあるいは起こしかねないということで、まさにテキストが最終的に確定した段階でお出し申し上げるというのが、大体条約につきまして基本的に過去行ってまいりましたプロセスでございます。
  123. 会田長栄

    会田長栄君 それでは具体的に、日本政府が署名をして今日までどのぐらいの月日たっていますか。
  124. 丹波實

    説明員(丹波實君) 日本政府がこの児童の権利に関する条約に署名いたしましたのは、昨年の九月でございます。
  125. 会田長栄

    会田長栄君 実は、この前提にして聞きたかったのは、国連総会で採択されたわけでありますから、国連の加盟国は何カ国あって、あるいは国連に加盟しないでこの子供の権利条約に批准をしたり署名したりしている国は一体あるのかないのかということもお聞きしたい、こう思っていたんです。そして、特に聞きたいのは、先進主要国でこれに署名も批准もしていない国というのはございますか。
  126. 丹波實

    説明員(丹波實君) まず、現在の国連加盟国は、もう先生も御承知と思いますが百五十九カ国ございます。国連に入っていない国でこの条約に署名しておる国は、バチカン、北朝鮮、韓国、リヒテンシュタイン、スイス、五カ国でございます。その中で批准を終わっている国は、バチカンと北朝鮮ということでございます。  それから、先進国を今いかに定義するかという問題はございますけれども、例えばOECD加盟国二十四カ国というふうなとらえ方をいたしました場合に、この条約に署名もしておらず、まだ批准もしたがってしていないという国は、アメリカ一カ国でございます。  ちなみに、サミット参加国七カ国をとりますと、この条約に入っておりますのはフランス一カ国でございまして、残りアメリカを除く五カ国は署名だけをしておりまして、現在批准手続中であるというような状況でございます。
  127. 会田長栄

    会田長栄君 まことに、この子供の権利条約に対する取り組みについては、国民の目には、世界的にも日本はどうも遅々としてその作業が進んでいない。皆さんから言わせれば大変進んでいる、こうおっしゃるんでしょうけれども、私どもから見ては進んでいない。したがって、外務大臣、できるだけ早く国会に提起をして批准を仰ぎたいというのはいつごろですか。
  128. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 次期通常国会にはお願いをいたしたいと考えております。
  129. 会田長栄

    会田長栄君 次期の通常国会には提案をしたいと。そうすると、その原本となるテキスト、これは次期の通常国会と先ほどおっしゃったんですか、改めて聞きます。
  130. 丹波實

    説明員(丹波實君) テキストを最終的に政府として確定し、国会に御審議のため上程申し上げるときという意味でございます。
  131. 会田長栄

    会田長栄君 わかりました。通常国会、次期といえばもう大体見通しが立つわけでありますから、どうぞその点はよろしくお願いしておきます。  それから次にお伺いしたいのは、これは文部省でございますが、公立高等学校入学志願に関する調査書の問題についてお尋ねいたします。  公立高等学校入学志願に関する調査書について全国都道府県に対して指導基準というものを文部省は明らかにしていると思いますが、その点どうですか、これが一つ。  それからもう一つは、この調査書についての特徴的な傾向。特に大阪などで何が今問題になっているとお思いですか聞かせてください。
  132. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) いわゆる調査書、俗に内申書と言っておりますが、高等学校の入学者選抜に必要な書類としての調査書につきましては、各都道府県が作成しているところでございます。  私どもとしましては、特にこの調査書の記載事項、様式についてモデルを定めて指導はいたしておりませんけれども、中学校生徒指導要録等に沿って、準じて各都道府県が定めてもらいたいというような一般的な指導をいたしております。したがって、調査書の記載事項につきましては、全国的に必ずしも一律ではございません。現在、大部分の県で見ますと、まず「学習の記録」、それから「特別活動の記録」、それから「行動及び性格の記録」、「出欠の記録」、「健康状況の記録」などが記載されているところでございます。  なお、大阪の調査書につきましては、全国の中では比較的簡略な部類に入るのではないかというふうに思いますけれども、「各教科の学習の記録」、その他視力聴力等の「身体の記録」とそれから「総合所見」ということで、一般的に当該中学校でそれぞれの担任の先生が判断したところをその「総合所見」に記載できる、そういうような形になっております。
  133. 会田長栄

    会田長栄君 全国各都道府県などで情報公開条例、個人情報保護条例など、多くの市民の権利を保障する動きと今日なっております。この動きと調査書との関連で、文部省はどのように一体見解をお持ちか聞かせてもらいたい。
  134. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 調査書の作成に当たりましては、まず評価が公正かつ客観的に行われなければならないだろうと。したがって、それは本人への開示を前提としない取り扱いをされてきております。したがって、一律に開示するという点については慎重に対処すべきものじゃないかというふうに考えております。  開示する、公表するということを前提で調査書を作成するということになりますと、高等学校の方から見ますと、先生が父兄から、このようなことをうちの子供について書かれるのは間違いではないかという批判やそれから非難が出てきて、結局調査書の中身については父兄から余り文句が言われないような中身にややもすればなりがちになるのではないか。そういうことになりますと、そもそも調査書をつくるという意味が一体何なのかということが問われるわけでございます。そういう意味で、この問題については、一応原則として公表しないということで取り扱うことが妥当なのではないかというふうに考えております。  かつて、昭和五十年でございますが、東京都でやはり調査書の公表の問題が訴訟で争われたことがございますが、公表すると公正な記載が損なわれるおそれがあるので公表はしなくてもいいというような判示が示されておりまして、そういう考え方は私どももやはり今の段階ではとらざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  135. 会田長栄

    会田長栄君 調査書記入に当たって教師の主観に大きく左右されると言われているんですね。だから、大阪でも川崎でも、いろんな都道府県でいわゆる情報公開の条例の問題との関連で今問題になっているんでしょう。  しかし、ここにありますけれども、「行動及び性格の記録」、それから「特別活動の記録」、これに記入させて点数化させるんですね。●は五点、そしてその合計で何点。学力試験と対等に扱って、合計点幾らか、こういうふうになっているんですよ。この「行動及び性格の記録」というところで全く教師の主観的な立場で評価していって、それがその子供を左右するということになったら、これは親にとっても関心事ですよ、この調査書。  だから、教師の中には、調査書あるんだぞ、内申書あるんだからな、それを忘れるなよと言って生活指導しているということもあり得るんですよ、これ。だから、性格とか行動とかというものを点数化して調査書に記入させるということについては、私はそこまでする必要がないし、やってはならないと見ているんです。このことについてどう思いますか。
  136. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 先ほども御説明しましたとおりに、調査書の書式それから書き方等については最終的には各都道府県が判断するところでありますが、ただ私ども昭和五十九年の高校入試の改善に関する通知におきまして、「特別活動の記録」や「行動及び性格の記録」など、学習成績以外の記録の取り扱いにつきましては、生徒の幅広い能力、適性等を判断する資料としてこれらを積極的に利用することを求めると同時に、これらを安易に点数化して利用することのないよう各県に指導しているところであります。  むしろ、私どもとしては、クラブ活動とか生徒の性格、行動の記録というのは、教科以外の分野について生徒を積極的に評価してやろうという場面に使うべきであって、一律に安易に五点満点で五、三、四とか五、四、三とかという点数をつけるべきではないのではないか、そういう指導をいたしておりまして、今後ともこの趣旨が生かせるよう指導の徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  137. 会田長栄

    会田長栄君 安易に点数化することはやめてほしいという趣旨の答えをいただきました。しかし、都道府県によっては安易に点数化していますよ。私みたいなのは一だろう、おそらく。こういうことなんですよ。  だから、非常に教育界でも問題になっているんですよ、これ。野球のキャプテンになったら五で、自転車のキャプテンなら三なんということないですよ。往々にしてそういうふうになりがちだと言っているんですよ、ここのところは。おとなしいのを五にして、自分の思っていることをはきはき言うのは三だなんということはできないんですよ、これ。だから、文部省も安易に点数化することについては慎重を期せ、こうなっているんでしょう。しかし、現実には点数化されている県が多い。だから、その点を踏まえてひとつ御指導を新たにしてもらいたい、こう思います。  それから、最後にこの件に関して、実は子供の権利条約と関連をするわけです、ここは。情報公開条例や個人情報保護条例などの状況あるいは大阪の高槻市に起きた問題、これは何かというと、人権擁護推進室内に個人情報保護審査会というのが公につくられているんですね。ここで中学校三年のA子さんという人が、どうも私が中学校のときに学校で決められた制服を着ないということで先生に抵抗した、したがってこの調査書の中に恐らくそのことが、高等学校の学生として適さないのでないかというようなことが書かれているんじゃないかという不安の中から、お父さんが大学の先生、お母さんが高等学校の先生、そして中学三年でありますが、ひとつ個人的に開示してくださいということを申し立てたんですね。そうしたら、この保護審査会は開示しなさいと言った、答申した。そうしたら、教育委員会はこれを拒否したんですね。それで問題になっているんです、これ。  そうすると、それほど今日の高校入試の選抜に当たって親が心配している、子供が心配しているということについて、本人にも開示できないというのがこの教育委員会の態度だそうですが、文部省も同様な姿勢でございますか。
  138. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 今先生からお話がありましたが、従来から調査書の作成に当たっては、ただいま局長が言われたとおりでありまして、評価がやはり公正かつ客観的に行われるよう、通常本人への開示を前提としない取り扱いとされている。これを一律に開示することについては慎重に対処すべきものと考えております。今回の市の教育委員会の決定は、私どもはやはり基本的にこのような考え方に立ったものであると受けとめております。  いずれにしても、今回の問題は調査書の取り扱いについての基本にかかわる問題でありますので、文部省としても今後関心を持ってその推移を見守ってまいりたい、このように思います。
  139. 会田長栄

    会田長栄君 それでは、次に移らせてもらいますが、時間が残り少なくなってきていますから、外務省に要点のみ質問して見解を聞かせてもらいたい、こう思います。  それは、湾岸戦争で地上戦に突入するかどうか世界の目、日本国民の目がクウェート国境に吸いつけられている同時期に、実はことしの二月二十三日、タイ国軍がチャチャイ文民内閣をクーデターによって倒しました。これは御承知でしょう。もちろん、いち早くアメリカ政府はこのクーデターに怒りを発して、経済援助停止を表明しました。日本政府は沈黙を守りました。私は不思議でないと思っています。  イラクのクウェート侵略、湾岸戦争であれだけ日本のあり方を問われて多くの議論をしたその時期に、内政不干渉という主義をとったのかどうかはわかりませんけれども、日本がタイ国に援助している金というのはアメリカに比べて、アメリカは年間四千万、日本は年間一千億出ていると思いますよ。こういう民主主義に逆行するクーデターに対して日本政府が沈黙を守った。これはODAに関する援助の問題と絡むのではないかと私は思っているものだから、改めて外務大臣初め関係局長にお尋ねするんですが、全く外務省内部でもこの問題についてどういう意見表明をすべきかということも検討されなかった、検討したけれどももっと偉い人にとめられた、こういう疑問を持つわけでありますから、その点を聞かせていただきたい。
  140. 浦部和好

    説明員(浦部和好君) 我が国はASEANの主要メンバーでありますタイとの関係というのが大変大事であろうというふうに基本的には思っております。  委員指摘のように、去る二月の二十三日、そのタイ国でクーデターがございまして政権の交代がありました。まことに残念であります。ただ、そのクーデターというのは、無血であったりあるいは暴力等は一切なかったというふうに聞いております。  その後のタイ国の国内の状況でございますが、早期の民政復帰が公約され、暫定憲法の制定であるとかあるいはアナン首相を首班といたします文民内閣の速やかな成立等が行われました。さらに、このアナン首相の率います政権は、早期民政移管に向けまして着実に努力をしているやに見受けられます。  このような中で、我が国はタイに対する援助をどうするのかということは真剣に検討したわけでございまして、クーデター発生後、今申し上げたような事態の推移を見守りつつ、継続案件中心に慎重に実施するという方針で対応してまいりまして、先般海部総理がタイを訪問されました折に、アナン首相みずから早期民政移管に対する確固たる決意の表明と同時に、経済あるいは国内開発に関する政策につき従来どおりの政策であるというようなしっかりした態度表明を受けまして、新しい援助案件となります新しい借款についても検討する意向を表明したという状況でございます。
  141. 会田長栄

    会田長栄君 クーデターというのは、これは大変なことですよ。それに対して日本政府が沈黙を守ったというのには、今言ったとおり経済援助の問題がある。しかし、クーデターで権力を取り返した人たちが今後のことを考えて連携できるように情勢判断したので何にも言わなかったというのであれば、私は問題だと思うんですよ。外務省としては内部検討して意見表明をしようとした、しかし政府として最終的にそれは慎重を期すべきだということでとまったならとまったと率直に聞かせてもらいたいんですね。これは、ぜひ総括質疑の際にも総理にじきじきお尋ねすることにして、この場ではこれで終わります。  もう一つ、在外公館の役割と任務についてお尋ねするわけでございましたが、これは中身を尋ねていきますと、私どもの同僚委員である喜岡さんと全く趣旨は同様でございますから、この点については質問を省かせてもらいます。  最後に、一つだけお願いしておきます。  これは、過日の決算委員会で厚生省の審査に当たったときに、厚生大臣を通して文部省にもぜひ協力をお願いして解決できるようにと言った問題につきまして、兵庫県の市立尼崎高校の障害を理由にして入学不許可になったという問題について文部省に御努力を今日まで精いっぱいいただきました。しかし残念ながら、結果的になかなかその努力が実を結ばないで、きょう神戸地裁に親御さんが市立尼崎高校の校長さんと尼崎市教育委員会を相手取って不合格取り消しと賠償責任の請求をしたそうでございます。私は、まことに該当する子供にとってこれほど将来を左右する問題はない、こう思っています。  そういう意味で、兵庫県の教育委員会、県も市も市町村もかつて高校入学選抜に当たりまして、一度障害を理由にして不合格にした。しかし、多くの父母の御意見などがあって、これを補完する意味補欠入学を許可したという事例が兵庫県内にあるんです。したがって、親御さんが本日をもって法廷に持ち込んだというようなことがありますが、この子供のことを中心に考えるなら、もう一度文部省が御努力を願って、この子供が法廷闘争の中で結論を出すのではなくて、ぜひ政府の障害者に対する基本的な政策というものを通じて解決できるように図ってほしいという再度のお願いをこの場でいたしまして、努力を今後もしていくということを一言答えていただいて私の質問を終わりたいと思うんですが、いかがなものでしょうか。
  142. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) この問題の経緯につきましては、先生十分御承知のとおりでございます。訴訟になった段階でございますので、私どもとして軽々に判断は差し控えさせていただきますが、この間に努力してきた私どもの考え方というものは、今後も県教委を通じて市教委にも訴えていきたいというふうに考えております。
  143. 会田長栄

    会田長栄君 法廷に持ち込んだからなんといって慎重に対応するんだというのでなくて、かつてそういう例があるわけでありますから、どうぞ最後まであきらめずにこの子供にこたえてほしいということを申し上げて、私は終わります。
  144. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 大変貴重な時間をちょうだいいたしましたので、私は文部省に対しまして、医療関係者の教育の問題を中心に御質問をしたいと思います。  まず一点は、高等教育の中におきます職業教育のあり方についてでございます。  医療関係者の教育というのは、人命にかかわる人をつくるという意味で非常に重要な職務を担っておりますので、一定の要件のもとに指定された教育機関で教育を受け、そして国家試験を受け、そして免許登録というかなり厳しい制度になっております。こういう中で、医師、歯科医師、薬剤師、こういう職種の方々は文部大臣の指定いたします大学の教育を既に受けているという制度でございますけれども、他のそれ以外のいわゆるコメディカルと言われる関係者の人たちというのは、どちらかというと今まで実務者として即戦力になるようないわゆる職業教育として教育が行われてきたというふうに思います。したがって、それは大学の教育とは別体系の中で行われてきたわけでございます。  しかし、最近のように高学歴社会の中で、職業教育でありましてもやっぱり大学だとか短大だとかこういった教育で行ってほしいという要請も非常に強くなりまして、現にOT、PTあるいは看護婦あるいは臨床検査技師、放射線技師というふうに、一部は大学だとか短大だとか、そういう形で教育が行われるようになってまいりました。こういう傾向の中で、もういっそ教育というのはすべて文部省でやってもらったらどうだろうかというような声さえ聞かれているところでございます。  こういうふうに、高等教育の中で職業教育がもう行われている、そのあり方につきましてまず文部省の御認識を伺い、そしてこれらの関係者の要請に今後どうこたえていくのかという点につきまして、まず御質問したいと思います。
  145. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) ただいま先生指摘がございましたように、医療関係技術者の養成につきましては、従来からいわば厚生省の方で主体的なお立場に立たれまして、いわゆる専修学校といいますか各種学校といいますか、そういうところを中心に養成が図ってこられたところであります。近年になりまして、だんだんとそれが短期大学であったりあるいは大学であったりというところでも養成が図られるようになりまして、私どもと厚生省の方で基準について十分相談をさせていただきながら、大学、短期大学については文部大臣が指定をし、それ以外の専修学校等については厚生大臣が指定をする、こういうふうな仕組みで行われております。  看護婦について申し上げますと、もう先生御案内のとおり、私どもの指定をいたしております養成施設での養成規模を一といたしますと、厚生大臣の指定によります養成施設が三というような状況で、養成の規模自体は厚生省の方が主体であろうというふうに考えております。  ただ、御指摘ございましたように、近年におきましていわば国民の高学歴志向というようなものもございますし、またそういった医療関係技術者の教育の充実を図る。さらには、近年において関係の人材の不足ということが言われておりますと、さらにそういった養成施設をふやす。ふやすということになりますと、そこにおける教員の供給をどうするかということもございまして、私どもの方でも大学、短期大学における教育の充実ということで対処をしてきておるところであります。  今先生指摘のように、私どもの方ですべてをというふうな御意見もあることは承知をいたしておりますが、ただ現在厚生大臣が指定しております養成施設においても、極めて優秀なあるいは適切な看護婦養成あるいは医療技術者養成が行われているというふうに承知をいたしておりますので、それぞれの立場をやはり分け合いながら対処をしていく方が適当ではなかろうか、このように考えている次第でございます。
  146. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 それでは次に、医師、歯科医師過剰問題とその削減計画についてお伺いしたいと思います。  昭和四十八年に無医大県の解消計画を進めるというようなことで着工されました。そして、五十六年には既にその目標を達成いたしました。しかし、その卒業生が出そろうより前に、既に医師、歯科医師の過剰問題というものが起こりまして、厚生省の方の検討会から、平成七年を目途に新規参入の医師を一〇%、歯科医師を二〇%削減すべきというふうな答申が出され、そしてそれに従って、教育を担当しております文部省でもその削減計画を進めてこられていることは承知しているところでございます。  ところで、その計画策定後の削減状況でございますけれども、今まで発表されているものを拝見いたしますと、ちょっとその計画どおりにはまだ進んでいないんじゃないだろうかというふうに思っております。このような状況の中でその計画をどういうふうに、これからこの計画は結局引き延ばしを少ししなければならないのかなというふうに思いますが、どのようにしてこの削減計画を進めていかれるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  147. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) 先生今御指摘ございました医師、歯科医師の養成規模の問題につきましては、厚生省で将来の医師需給に関する検討委員会、さらに将来の歯科医師需給に関する検討委員会というのを設けられまして、昭和五十九年度には中間提言、六十一年度に最終的な提言がなされたところであります。  それによりますと、平成七年を目途に新たに医師となる者を一〇%程度、これは入学者の規模で言いますと八百二十八人となりますが、歯科医師となる者については二〇%程度、これも六百七十六という数字でありますが、これを削減すべきであるという提言でございます。私どもといたしましては、この提言をも踏まえ、これまた先生御案内でありますが、学生の臨床実習の充実といったような教育条件の改善という見地をも踏まえまして、国公私立を通じて入学者の数の削減、さらには入学定員を減少するということで指導をしてまいったところであります。  国立大学につきましては、昭和六十年度から平成年度までに医学部三十校につきまして四百八十人の定員削減を行いました。歯学部につきましても十校で百八十人の入学定員の削減を行いました。これによりますと、国立大学といたしましては一〇%あるいは二〇%という削減の目標は達成をいたしておるところであります。  また、公立大学につきましては、六十三年度に歯学部一校で二十五人の減が行われまして、これは歯学としては二〇%の目標を達成いたしております。ただ、公立の医科大学につきましては、これは規模が小さいものが多い。入学定員百人のものが三大学、八十人のものが三大学、六十人が二大学というようなことで、なかなか公立の方は医学部についてはまだ進展をいたしておりません。  また、私立大学につきましては、六十二年度から平成年度までに医学部五校で六十五人の減、歯学部四校で百二十人の減ということが行われておりますが、私立大学につきましては、先生御案内のとおり、なかなか大学の経営自体に大きな影響を及ぼすということもありまして、入学定員自体を減らすということについてはかなり強い抵抗がございます。  そこで、私立の医科大学協会及び私立の歯科大学協会におきまして、定員の削減はしないまでも、募集定員を入学定員よりも抑えていこうではないか、入学定員が百二十人の医科大学については募集人員を十人抑えまして百十人にしよう。また、歯科大学につきましても同様な申し合わせが行われまして、六十一年度には募集人員を入学定員から一〇%減しよう、平成元年度にはさらに二〇%減をして募集しようではないかというようなことでやっておりまして、平成年度には、その結果、医学部では六十人、歯学部では三百三十三人の募集人員の減が行われているところであります。  これによりまして、医学部につきましては、全体として昭和五十九年には入学規模が八千二百八十人でありましたが、これが六百五人削減をされまして七千六百七十五人ということでございます。歯学部につきましては、三千三百八十人であった定員が、募集人員の縮減も含めまして六百五十八人減をされて、二千七百二十二人となっております。  今後とも、私どもとしてはいろんな機会をとらえて指導してまいりたいと思っておりますが、特に医学部、歯学部を持っております私立の大学が新たな、例えばほかの学部をつくるとかあるいはほかの学部に学科を設置するとか、そういうふうな申請がありますときには、できるだけその機会に入学定員自体を削減してほしいという指導を強力に行っているところでございます。
  148. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 次に、そのほかの医療関係者の教育の問題をお尋ねしたいわけでございますけれども、日本のいわゆるコメディカルの教育制度というのは、三年教育というのが主流を占めております。なぜ一般高等教育制度に乗りにくい三年なんだろうかと考えてみますと、本当の理由はよくわかりませんけれども、そのもとはやはり看護婦の教育に由来しているのかなというふうに思います。  戦前の看護婦の教育というのが高等小学校を卒業して二年という程度で、国家試験ももちろんございません、かなり低い制度でございました。戦後新しい法律ができますときに、高等学校を卒業して三年、そして国家試験というような今日の制度ができたわけでございまして、これはGHQの方々のかなり強い要請があったというふうに聞いております。これが根っこになりまして、恐らくこれはそのときの先進国の看護婦の教育のレベルがほとんどこういう制度だったわけでございまして、これによりまして日本の看護婦の教育も大体世間並みになったというふうになったわけでございます。  その後できました専門職がすべて高卒三年ということで教育されてきているわけでございまして、それはやはりアメリカ等を中心にいたします外国並みになっていたのかもしれませんけれども、専門職業人としての教育のベースが高卒三年というふうになってしまったのではないかというふうに思います。しかし、現在見てみますと、各専門分野の高度化もありますし、あるいは先ほど来問題になっております高学歴社会の中で、やっぱりすぐれた人材を確保しなければならない、あるいは他の職種の方々との横並びの問題あるいはさらにこの方々が今国際的にもいろんな交流だとか協力などで開発途上国等へ行かれるわけでございますけれども、そうなりますと、国際的に見ましてもこの教育でいいのだろうかという問題がどうしても出てくるわけでございます。  また、この専門家、専門職の教育を文部省が高等教育制度に乗せたときに、三年の短大という新しい制度をつくられたわけでございますが、本来ですと、やはり専門教育の三年というのは、本当は大学の四年に乗るべきでなかったのかなというふうに思うんです。したがって、その三年の短大というのは余りほかの国では聞かないような制度ではないかというふうに思っております。アメリカ日本にそういう三年の教育制度を持ち込んだというふうに思いますけれども、既にアメリカではその制度が衰退いたしまして、今は大学四年あるいは短大二年というふうな制度にどんどん変わってきているところでございます。日本の三年短大という制度も、やはり全般的に、この医療関係者の教育のレベルアップということから、大学への移行ということが今後求められるのではないかというふうに思いますが、この辺についてはいかがでございましょうか。
  149. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) 先生御案内のように、厚生省そして私どもで相談をしながら決めております看護婦養成施設の指定基準というものによりますと、三年間で三千時間を超える授業ということが要求されておりまして、したがって通常でありますと短期大学は二年でありますが、到底二年間ではその要求するカリキュラムを消化できないということもありまして三年制の短期大学ということになっております。  三千時間を超える授業時数ということになりますと、三年間でも毎週土曜日を含めまして一日五時間程度の授業が行われるという大変ハードなスケジュールになっておりまして、さらに短期大学の場合にはそれに一般教育の関係の負担ということもありまして、さらに多い時間で、平均的には三千五百時間ぐらいになっているんではなかろうかと思っております。しかも、三年でございますから、あと一年の教育を受ければいわゆる通常の大学卒、学士の学位が取れる、こういうふうな状況でございまして、近年におきましては、御案内のとおり、おいおい看護婦養成の四年制大学ということの設置の動きも活発になってきております。  今後、基本的にどう対処すべきかという問題でございますが、私どもとしては、先般私どもの審議会で今後の十八歳人口の減少ということを踏まえて、大学の新増設については抑制的に対処をするという方向が示されたわけでありますが、その中でも看護婦養成についてはこれを例外的に取り扱って積極的に対処をしていこうという方針が示されております。私どももその方針を踏まえまして、各都道府県あるいは学校法人等から看護系の大学の申請というものがございますれば、積極的な対応をしてまいりたいと思っております。  ただ、これは先生に申し上げるのは釈迦に説法でありますが、専修学校の場合、それから短期大学の場合、そして大学の場合とそれぞれにおきます教員の資格というのが問題になるわけでございまして、具体に大学の設置を検討するあるいは短期大学の設置を検討するということになりますと、所定の資格を持った人をなかなか集めることが困難であるということがございます。そういう状況も踏まえまして、これも御案内かと思いますが、六十三年度には我が国で初めて聖路加の看護大学に博士課程の設置ということを認可いたしたところであります。  今後、看護婦養成をどういうふうに運んでいくかということを考えるときには、それに必要な教員の供給ということをも十分考えながら対処する必要がある、このように考えておるところでございます。
  150. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今局長も触れられましたように、三年の専修学校でやっております三千時間を短大でやろうというのはやっぱり無理があるというふうにおっしゃったわけでございますけれども、まさにそうでございまして、しかも三年の短大というのは非常にもったいないといいましょうか、あと一年やれば確かにもう大学になるわけでございますし、看護の場合なんかですとほとんど四分の一は保健婦学校、助産婦学校へと進学している。つまり、四年なり五年なり教育を受けているという実態がございますので、ぜひ早い時期に大学への転換をまた考えていただきたいというふうに思います。  さらに、先ほど局長も言われたんですけれども、必ずしも大学、短大というふうな形でなくても、専修学校、目的意識のはっきりした人たちが集まってきて、そして実戦力になりますその実践者を養成する機関という存在も非常にやはり私は意味があるというふうに思っております。  ところが、本来その専修学校というのは、職業人を育成するための十分な条件をそろえ、教員もそろえ、そして教育条件もそろえて準備されるべきところでございますけれども、実際今の状況を見ますと、非常に数をたくさん養成しなければならないということもありまして、しかも非常に少人数で一人当たりの学費がかかる教育をしているものですから、必要最低限の要件しかそろわないような教育が行われているわけでございます。それは大変残念なことでございまして、こちらの方もぜひ整備充実していかなきゃならないというふうに思っております。  しかし、その一方で、本当に専修学校の持つ最大の問題というのは、卒業して資格を取りますと、それから上に進む道が全く閉ざされているということでございます。大学院に当たります修士コース、博士コースというような研究者あるいは教育者になる道が全く閉ざされているということが非常に大きな問題でございます。そこで私は、やはりこれからの問題といたしまして、専修学校と大学の連携といったことをもう少し真剣に考えていただかなければいけないんじゃないだろうかというふうに思います。  どんなことが考えられるか。いろいろあるかもしれませんけれども、例えば放送大学と各専修学校が連携していくという方法もあると思いますし、また専修学校の卒業生が大学に編入学できるというふうなことでやはり道を開くことも必要ではないかというふうに思います。すべての専修学校にそういう道を開くというのはなかなか難しいかもしれませんけれども、ある一定の要件をそろえた専修学校の卒業生については大学にも編入できるような道をぜひ開いていただくというようなことが、また教員をつくったりする上でも非常に重要なことではないかというふうに思います。  かつて、アメリカでも教員が少ないときに、病院附属の看護学校の卒業生を大学にたくさん編入させて、そしてある一定の期間に学士をつくったことがございます。そういうことで、特に関係者からの要望が多い専修学校の卒業生を大学に編入できるような措置がとれないだろうか、この辺について御検討いただけないでしょうか。
  151. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) 御指摘のように、看護婦養成に限って考えますと、専修学校ということについても厚生省が定めました基準をきちっと守って教育が行われ、そして卒業いたしますと国家試験の受験資格ができ、合格をいたしますと看護婦になる。その看護婦の資格は短期大学を出た者と全く同じ、こういうふうなことに制度的にはなっております。したがって、同様な国家資格を取得できる者のその学習の成果を同様に評価することはできないかというお尋ねあるいは御要望はかねてからちょうだいをいたしておるところであります。先ほども先生おっしゃいましたように、専修学校全体としてという扱いはなかなか難しいところでありますが、今後の一つの検討課題としては考える必要があろうかと思っております。  ちなみに申し上げさせていただきますと、今回の私どもの制度改正で、専修学校で勉強した成果を大学が、これは専修学校を卒業した者が大学に入った場合でございますが、大学に入ったときには過去に専修学校で学んだ成果を大学の単位として認定するということができるような方途を講じたところであります。今後各大学がそういう制度をどういうふうに活用していくか、そしてそれを通じまして専修学校、とりわけ看護婦養成施設の教育というものが世間において大学における教育と同等に評価をされるようになる、そういうふうな世間一般の動きあるいは大学人の評価という問題もあろうかと思います。  こういった専修学校の学習成果を大学が単位として認めるというような制度の今後における動向というものをも見定めながら、先生指摘の点は、私どもとしては今後大学審議会に御検討いただく一つの課題であろう、このように認識をいたしております。
  152. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 どうぞよろしくお願いをしたいと思います。  次に、文部省の持っていらっしゃる看護教育につきましての問題についてお伺いをしたいと思います。  文部省におきましても、大学病院の看護婦確保対策というんでしょうか、専修学校をたくさん持っておられたわけでございますが、それを逐次短大に切りかえ、あるいは大学に切りかえというようなことで、相当もうそれが進んでいるようでございます。その状況、そしてまたその意義といいましょうか、専修学校から短大に切りかえたことによってどういう効果が期待されるか、その辺についていかがでございましょうか。
  153. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) 私どもは、専修学校における看護婦の養成、そして短期大学における看護婦の養成、それぞれがそれぞれの機能を果たしていくということがやはり大事であろうと思っておりまして、これを専修学校がすべて短期大学になるべきであるというようなことは毛頭考えておりません。  ただしかしながら、国立学校としての役割を考えますときには、先ほども申し上げましたように、例えば今後における看護婦養成施設における教員の養成といったようなことも念頭に置いて看護教育の充実を図るという観点から、御案内のとおり、医学部附属の看護学校を逐次昭和四十二年度以来、国会の御了承もいただきまして短期大学に切りかえてまいっております。筑波大学で新設をいたしました一つを含めましてこれまで二十二の短期大学をつくってまいりましたし、先般の国会で成立をいたしました国立学校設置法によりまして、この十月には岐阜大学に短期大学部を併設するということを御了承いただいたところであります。  ちなみに申し上げますと、専修学校当時は教員の数が、看護婦養成施設で申し上げますと四人というのが専任教員の数でございましたが、これを看護短大にいたしますと全体で二十一人という計画で進めるわけでございまして、専任教員の数だけをとりましても充実した教育ができる、このように考えております。  また、御案内のとおり、東京医科歯科大学では、看護学校を短期大学にするということではなくて医学部の学科として四年制で発足をさせたところであります。また、広島大学の医学部にあります看護学校についてもこれを短期大学に転換するということで調査を行ってまいりましたが、大学当局はできればこれも医学部の学科ということで四年制にしたい、こういうふうな要望を持っております。この点についても、私ども今後大学当局と十分意見を交換しながら前向きに対処してまいりたい、このように考えているところでございます。
  154. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 最近になって四年制大学というようなことが具体的になってきたことは大変喜ばしいことだというふうに思っております。  それから次に、新設医科大学の問題でございます。  先ほどの医科大学の建設の中でどんどんつくられましたけれども、看護学校はほとんど持っていないというふうなことでございます。十六校の医科大学の中で十四校の医科大学は看護婦養成がないというふうなことでございまして、いろいろな方々から、新設医大にはもう特に教育条件がそろっているんだから看護学部だとか看護短大だとか、そういったものの付設を条件にしたらいいんじゃないだろうかというような強い意見が出されておりますが、これに対しましてはいかがでしょうか。
  155. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) 先生も御案内のところでございますので多くは申し上げませんが、新設医科大学、御案内のとおり、無医大県解消ということで壮大な計画で進めてまいったわけでありますが、その際に当該新設医科大学の附属病院における看護婦の需要ということについては地元で看護婦養成を行っていただきたいということで進めてまいっておりまして、御指摘のとおり、現在新設医科大学はすべて看護婦養成施設を自前では持っておりません。当初はそれで格段の支障もなかったというふうに承知をいたしておりますが、近年における看護婦の不足ということを受けまして、地元の自治体からぜひ新設医大においても看護婦養成施設を設けてほしいという要望が寄せられておることは十分承知をいたしております。  ただ、まだ新設医大自体が病院におけるいわゆる特殊診療部等々の整備に十分でないような状況もございます。しかしながら、御指摘のような問題もございますので、今後どのように対処をすべきかということにつきましては、国の行財政の事情もございますし、またそれぞれの新設医科大学が置かれております地域の状況によりましては、当該地域が全体として看護婦の供給圏になっておるというような例もあるいはあるというようなことも聞いております。そういった全体的な各地域の看護婦の需給状況というものも見定めつつ、また繰り返しになりますが、国の行財政事情ということも十分踏まえながら今後における検討課題として承らせていただきたい、このように考えている次第でございます。
  156. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 次に、少し看護大学のことあるいは大学院のことをお伺いしたいわけでございますけれども、このいただきました資料によりますと、今看護大学が十一校、そして入学者が、これは平成二年の数でございますが五百四十七名、そして卒業したのが五百十九名で、医療機関に就職したのが三百八十一という数でございますね。そして、修士コースが五校で六十八名勉強している、博士課程は二校で十三名、こういう数をちょうだいしたわけでございます。  どうでしょうか、これは余り比較してもどうかと思いますけれども、例えばアメリカなんかを見ますと、看護大学の教官は博士課程を持っているのが三二%、修士課程を持っているのが六七%、大卒というのは一%くらいで非常に差があるわけでございます。先ほど局長も、教員の養成のために大学をつくらなければいけないというふうなお話もございましたが、これではちょっとまだまだ先が遠いと思います。現在というか今後の増設計画といいましょうか、大学のマスター、ドクターあわせて、もしおわかりでございましたら教えていただきたいと思います。
  157. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) 御指摘のように、我が国で看護系の博士課程というのは早い時期に東京大学の医学部保健学科で保健学専攻として設置をされたのが初めであります。これは先生御案内のところでありますので多くは申し上げませんが、その後必ずしも十分な役割は果たしてなかったのではないかという評価も寄せられているところであります。そして、聖路加の看護大学の大学院で六十三年度に本当に久しぶりのことで画期的な企てとして博士課程が申請をされ、これを認可するにつきまして私どもの大学設置審議会ではかなりな議論がございました。  先生には甚だ失礼ではございますが、お許しをいただきますと、看護学の博士というのは一体どういうふうな性格のものであるかといったような議論もかんかんがくがくあったわけでありますが、結果において博士課程の設置が認められたわけであります。したがって、今後は聖路加の博士課程というものをいわば先例として、私どもとしてもできるものならばそういうふうな体制が整っているものについては積極的な対応をしてまいりたい、このように考えております。  ただ、国立大学では、御案内のとおり、千葉大学の看護学専攻というのが五十四年に修士課程が設置されて以来そのままになっております。こういうところの動きというものも具体に見定める必要があると思っておりますが、少なくとも我が国において、御指摘のように、看護学の大学院が極めて乏しい、そしてしかも博士課程というのは入学定員にして東京大学が九人、聖路加が四人と極めて少ないわけでございます。全体として我が国の高等教育については、アメリカあるいはイギリス、フランス、ドイツといったところと比較いたしましても大学院が量的に極めて少ないということが指摘をされておりますが、中でもこの看護という分野はただいま申し上げたような状況でございますので、それぞれの大学の体制が整うならば積極的な対応をしてまいりたい、このように思っております。  まずは、先ほど申し上げました、例えば広島大学について医学部の保健衛生学科あるいは看護学科という対応をどうするかというようなことで、四年制の看護婦養成施設を育成していくということが基盤を広げるという意味で大事ではなかろうか、このように考えておるところでございます。
  158. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 いみじくも今東大の話が出ましたので、ちょっと何か余り母校のことを言うのもどうかと思うんですけれども、大学の教育のベースを見ましても、東京大学が十一校の中に入っている割にはもうちょっと数も言えないくらいなんで、看護教育に貢献しているというふうな数ではとてもないんじゃないだろうかというふうに思われてなりません。東京大学というところで看護教育を行う難しさというのは私も体験しているわけでございますけれども、やはりこの貴重な十一校の一校でございます。自然に人が集まってくるなんということではないと思いますので、この看護教育をやっている機関としてもう少し学生の教育に責任を持つといいましょうか、積極的になっていただきたいというふうに思うわけでございまして、文部省の方でも随分御努力されているというふうに伺っておりますけれども、さらに一層よろしく御指導いただきたいというふうに思います。  さらに、日本看護協会等から一県一看護大学を推進すべきじゃないだろうかというような非常に強い要請が来ておりますけれども、こういうことについて、実は私ども党の中でも看護問題をいろいろ勉強しておりまして、そのことを唱えているだけではどうしようもないものですから、せめて今世紀中に一県一看護大学をつくりたいということを言っているわけでございますが、文部省いかがでございましょうか。
  159. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) 現在大学の学部レベルでの看護教育、これを協会の方では看護大学というふうにとらえておいでになるというふうに承知をしておりますが、これが設置されておりますのは東京都を含めまして八都県でございます。したがいまして、一県一看護大学ということになりますと三十九の大学を、四年制の養成課程を設置しなければならない、こういうことになるわけであります。  これを国立ですべて対応するというのは、もとより国の行財政事情を別にいたしましても、必ずしも適当なことではなく、公立あるいは私立というようなことでの対応ということをお願いいたしたいわけでありますが、このところかなり地方自治体あるいは学校法人で四年制の看護婦養成施設をつくりたいという意欲が高まっております。私どもがいろんな機会に話を承っておるところでも、公立大学では七校、私立大学では八校といったものがこれをつくりたい、こういうふうな意欲を持っておられるところであります。  先ほど御紹介させていただきました大学審議会の答申においても、全体は抑制しながらも看護婦養成については例外として対処すべきであるというような答申もございますので、私どもとしてはそれらの構想が具体になりますように適切な指導をしてまいりたいと思っておりますし、また具体になりますれば積極的に対処していきたい、このように考えておるところであります。
  160. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 一つお願いなんですけれども、看護大学ができてまいります。しかし、まだ大学生の数も少ないということもありまして、一体看護婦に大学の教育が必要なんだろうかというようなことを率直に言われる方もあります。そして、卒業生が現場に入りましても、どうも数年たつとやりがいを失ってやめてしまうというような話も聞いております。そこで、まだ数も少のうございますので、ぜひ大学卒業生たちの活動状況といいましょうかそういったもの、将来にわたりまして一体本当に活動できているんだろうかどうだろうかというようなこともあわせて調査をしていただけたら大変幸いでございます。  それから、先ほど来もう何度も局長がおっしゃいましたので十分わかったわけでございますが、看護大学の設置に当たって一番困難な問題というのは、やはり教員の確保ではないかというふうに思います。おっしゃいましたように、全国歩いておりますと、あちらでもこちらでも看護大学をつくりたいつくりたいという声は聞きます。聞きますけれども、そのときに必ず言われるのは教員をよろしく、こういうふうに言われるわけですね。見ていますと、ある教員があっち行ったりこっち行ったりしながら設立のときに顔を出しているというようなことでございまして、これではやはり困るんじゃないだろうかというふうに思います。  教員につきましてはアメリカの、いろんな外国のあれでもそうですけれども、募集広告を見ると、本当に日本との違いというのがよくわかるんですね。例えば、アメリカのあれですと、教員となるべき者を募集しているわけですけれども、必ずマスターディグリーを持っているとかドクターディグリーを持っていて、そしてある一定の領域のところで看護の経験を五年以上した者とかというようなことをはっきりと書いてあって、どういう教員を欲しがっているのかということがはっきりしています。  ところが、日本の募集を見ますとなかなかそうはいきませんで、看護婦の経験何年、後で講習に行かせますなんて書いてあったりするわけで、非常にまだレベルがこれはもう大変な差があるなということを思うわけでございまして、やはり教員の育成というものが、まず学校をつくるのもですけれども、並行してというより逆に先行して本当はやらなきゃいけないんじゃないだろうかというふうに思っております。  この教員育成のためには、先ほど大学院のこともおっしゃいましたけれども、今すぐに学校をつくろうと思っても、大学院をこれからつくるのではとても間に合わないわけでございまして、何かいい方法がないだろうかというふうに考えるわけでございますが、例えば日本看護協会が昭和五十四年から国の内外の大学院などで学ぶ者に対しまして今ファンドをつくって、そしてお金の貸し付けをしております。月額十万円とかあるいは外国に行く人は三十万円お貸ししますというようなことで、帰ったらもちろんお返ししなきゃならないことですので大変な負担ではございますけれども、平成二年までに既に二百十七名の看護婦さんたちがそれを借りて勉強しております。また最近では、女優の山路ふみ子さんとおっしゃる方が、国内外の大学院だとかあるいは研究機関において学ぶ者に対しまして、ことしは十七名、年額二百万円の研究助成金、これは下さってしまうそうですけれども、そういうものをお出しになるというようなことが発表されております。  というようなことで、民間の方々が本当にこの問題に取り組んで真剣に具体的なことをやっているわけでございますけれども、国が何もしないでいいのだろうかというふうにつくづく思うわけでございます。せめて文部省が所管いたします学校が短大なり大学なりになったりするときの教員を育成するために、文部省所管の学校あるいは病院の中に優秀な人材がいるに違いないと思いますので、そういう人たちを例えば緊急にそういう内外の大学院なんかに派遣できるような、そんな留学生制度といったようなことを考えることはできないことでしょうか。
  161. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) 御指摘のように、看護系の大学あるいは短期大学といるところでは教員の構成は、極めて大きく分けますと、看護婦である教員とそして医師である教員とこの二つで構成をされるわけでありますが、ただいま先生からも御紹介がありましたように、看護婦である教員を得るというのが大変難しいところでございます。  先般も大学、短期大学の新設について御相談がありましたので、ぜひ看護婦養成を考えてもらいたいということをお願いいたしましたけれども、先方では看護婦養成については、ただいま先生のお話のように、教員を集めるのが極めて大変であるということが一つと、もう一つは実習をさせるための病院を見つけるのが大変難しいということで、どうも自分たちには手が出ない、こういうふうな話もあったところであります。    〔委員長退席理事千葉景子君着席〕  看護系の教員を養成するについてどういうふうな手だてが適切であるかということについては、先生御提案のようなことも考えられましょうが、まずは私どもとしては医科歯科大学で実現をいたしまして、また先ほど御紹介いたしました広島大学における構想といったようなものを踏まえて、四年制の大学をできるだけ広げていくということから着手をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  162. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 まだ先がとても遠い話なんですけれども、しかし日本人ですぐそこの教員に当てはまる人がいないという実態は確かでございますので、いっとき例えば外国人のそれこそ教員をお願いするというようなことも緊急措置としてできるんじゃないかというふうに思います。その辺もあわせてぜひ積極的に、せっかく学校をつくろうと思っても先生がいないからおくれてしまうということがないように、ぜひお願いをしたいというふうに思っております。  それからもう一つは、さきの国会において可決されました学校教育法の一部改正によりまして、短大卒業生に今度準学士という称号が与えられるというようなこと、そしてまた七月から設置されます学位授与機構によりまして、その人たちがその後に学んだ学習内容が学位につながるというような新しい政策が行われることになりまして、やっとこれで短大卒業生にも何かメリットが出てきたなと思って大変喜んでいる次第ではございますけれども、これはこれから動き出すということでございますからまだ不確定な要素が非常に多いこととは思いますが、短大卒業生はもう既にたくさん出ております。  その人たちの中で、もう既に保健婦の資格、助産婦の資格というようなことで学んでいる人はたくさんおりますので、ぜひその一年をむだにすることなく、単位をきちんと認めていただきまして、早くとにかく学位を認めていただくような措置をぜひお願いしたいというふうに思うわけでございます。そこの根っこができますれば、また上の学校へ進むということもできるわけでございまして、東大なんかは基礎のベースは余り十分活用しておりませんでしたけれども、マスターのところではかなり表の方々を教育しているという実績があるわけでございますので、ぜひその辺についてよろしくお願いをしたいというふうに思っているわけでございます。  聞くところによりますと、すべて保健婦とか助産婦の課程の単位が認定されて、即それで学位が認められるようにはどうもなりそうもないというようなお話でございますけれども、その辺よく御検討をいただきまして、ある一定の時期でもいいと思いますが、なるたけ早くそういう学位を認めていただきたいというふうに思います。そしてまた、過去の短大卒業生というのはいっぱいいるわけでございますが、その方々にもそういう恩典が受けられますのかどうか、その辺についてもちょっとお伺いしたいと思います。
  163. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) さきの国会で御理解を賜りまして、学位授与機構の創設にかかわります法律案、そして予算を成立させていただいたわけでありますが、この学位授与機構につきましては、国会でも御議論をちょうだいいたしました。また、法案を提出させていただくまでに大学の関係者とも意見交換を行いながら運んだわけでありますが、大きく申し上げまして二つの意見があるわけでございます。  一つは、大学相当の教育を受けて学士の学位を与えるということであるならば、できるだけそれの範囲を限定的に考えるべきである、広範なものにして制度を緩めてはならないという意見が一つございました。またもう一つは、余り限定的に考えないで、いわゆる単位の累積加算といいますか、あちらこちらの教育施設で学んだ成果を全体総合して、大学教育に相当するという認定の方向まで考えるべきではないか、こういうふうな御意見、大きく分けて二つあったわけであります。  私どもとしては、新たに発足をする学位授与機構による学位の審査ということは、やはり初めてのことでもございますので、当面は極めて厳格に考えていこうということで、短期大学の卒業者、高等専門学校の卒業者、さらには大学の二年まで行っての中退者という者を対象にするということで法案をお願いしたところでございます。したがって、三年制の短期大学につきましては当然に対象になるわけでありますが、先ほど来編入学のことでもお話がありました専修学校である看護婦養成施設については、当面対象にしていない、こういうふうな問題がございます。これも今後における検討課題ではあるというふうに認識をいたしております。  また、過去における専攻科の卒業生ということにつきましては、これも先生御案内と思いますが、短期大学の保健婦あるいは助産婦養成のための専攻科というのは、指定基準によりましてきちっとその教育内容が定められており、しっかりした教育が行われ、しかも国家試験を迎えておるわけでありますので、その教育内容についてはある程度明確になっておりますが、一般的に申しますと短期大学の専攻科というのは基準が極めて緩やかでありますし、それをつくるにつきましても届け出ということで、いわば内容がさまざまでございますので、学位の基礎とする専攻科については、学位授与機構が発足した後で学位授与機構がそれぞれに個別に認定をする、こういうふうな仕組みをとっております。  したがって、そういう制度を前提にいたしますと、過去に専攻科を卒業された方の当該専攻科における学習の成果というのは、今回の学位授与機構では残念ながら学位の基礎としての学習には取り扱いができない、こういうふうなことになっております。  これらにつきましても、先ほど申し上げました過去に専攻科を出られた方、保健婦の方、助産婦の方が大学に入りますと、その学習成果というものを大学が単位に認定する道というものは今回の制度改正で開きましたが、ただそこには先ほど先生指摘の修業年限というのがネックになっております。これも先ほどお答えいたしましたように、今後大学審議会でこういった看護婦養成の専修学校の卒業者を大学に編入させるという新しい制度を開くかどうか御検討いただく一つの課題であろう、このように考えておるところでございます。
  164. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 これから学位授与機構ができるということでございますから、初めから何か緩めておくというのはなかなか難しいことと思いますし、局長の今の御答弁しかやむを得ないというふうに思いますけれども、実際のこれからの機能につきましては、やはり実態をよくごらんいただきまして、そして学位授与機構に当てはまるように逆に専攻科をきちんとしていくというようなこともしていただきたいというふうに思います。  さらに、これもお願いでございますけれども、卒業いたしました看護婦が教育を受ける場として、文部省もおやりでございますけれども、厚生省におきましてもあるいは看護協会等におきましても看護教員育成のための一年の教育等もやっております。こういったものにつきましても、ぜひ学位授与機構の認定に乗るような形で、せっかく四年も五年も勉強いたしましても全然認められないということではやはり問題があろうかと思いますので、ぜひその際に御検討いただきたいなというふうに希望しておきます。  一時間看護問題につきましてお話を伺ったわけでございますけれども、大体了解できました。    〔理事千葉景子君退席、委員長着席〕  最後に、大臣にお願いをしたいわけでございますけれども、看護婦不足ということが大変問題になっておりますが、今何か量的なことだけが問題になっているようでございます。しかし、実を言いますと、この量の問題の裏には、この人たちを指導する指導者層が非常に手薄であるというのがもっと深刻な問題としてあるのではないかというふうに思っております。  アメリカの本なんですけれども、「マグネットホスピタル」という本があります。これは、病院の中で何だかわからないけれども、看護婦が引きつけられる病院が幾つかあるんですね。その病院は一体何でそんなに看護婦を引きつけるのかということを調査したものなんです。それを見ますと、やっぱり働きがいのある職場、働きやすい労働環境、勤務条件だとか、あるいは卒後研修の制度がきちんとしているとか、あるいは婦長等指導者の態度、姿勢がやっぱり非常にいいというようなことが挙げられているわけなんですね。ドクターと対等に地位が与えられているとか、あるいは非常に教育的な人であるとか、あるいは自分たちのことに本当に気を使ってくれる、そういうような指導者の姿勢というものが物すごく引きつける要素になっているというような報告が出ております。  日本でも、やはりその辺についてもっと考えていかなきゃいけないというふうに思いますが、いずれにいたしましても、きょうの議論でもおわかりいただきましたように、基礎教育のレベルから大学院のレベルまで本当に日本がもう先進国に比べて大変おくれをとりましたし、先進国だけじゃありません、実はNIESの国々においても、もうむしろ看護教育の形からいけば日本より進んでいるというような実態になっておりまして、非常に問題が多くなっているのではないかというふうに思います。  文部省がもっと看護教育という点で積極的にかかわっていただきたいというふうに思っているわけでございますけれども、きょうの議論を聞いていただきまして、文部大臣の御所見をちょうだいして、私の質問を終わりにしたいと思います。
  165. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) もう専門家であります清水委員、また高等教育局長のお話を伺っておりまして、看護婦の養成につきましては、現在文部大臣が指定する大学の数は五百八、短大は五百九十三、高校は五千五百六あるのですが、その中で大学の附属の専修学校において行われる場合とまた厚生大臣が行われる場合、今おっしゃいましたように三対一の割合でございます。  このような状況の中で、私どもやはり文部省としては、看護教育の充実、看護教員の養成、これを重点に置いて図る。細かい数字は今高等教育局長から話がございました。私も、実はこの間千葉大学の看護学部並びに高等学校をこの目で見て肌で感じてまいりました。そういうことで、何としても、この養成の学部あるいは看護教員養成課程を設置してきましたが、前向きにもっと充実をいたしたい。  文部省としては、看護婦養成機関としての大学あるいはまた短期大学の必要性につきましては十分認識しているところでありまして、今後とも公私立で設置が計画されている看護系大学、また短期大学があれば積極的に対応してまいりたい。  この間、実は大学審議会から、今後の人口、十八歳人口が二百五万から百五十一万、四分の一減になるわけですが、その中でも看護婦の大学、看護婦の短期大学については例外にしておる、こういうこともいただいております。しかし、国の行財政状況から、先ほどお話ありましたように、その中で国立学校としての看護系大学あるいは短期大学の新増設の対応が極めて困難な状況があろうと思います。しかし、私どもとしては、国立学校における看護系大学あるいは短期大学の今後の対処のあり方につきまして、看護養成施設を持たない新設医科大学の対応を含めまして、国の行財政の状況を踏まえて今後の検討課題といたしたい、このように認識をいたしております。
  166. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 どうもありがとうございました。  一方では医科大学あるいは歯科大学の定員が削減されようとしているところでございます。そこで看護教育をするということができるんじゃないだろうかというふうに思っておりますので、どうぞ大臣よろしくお願いいたします。  どうもありがとうございました。
  167. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 まず最初に、文部省の方に長崎県雲仙・普賢岳の火山噴火に伴う問題で何点かお伺いしておきます。  私も噴火以来三回ほど現地へ行ってまいりました。被災者の皆さんに要望を聞くと、一番多いのがやはり家の確保の問題なんですよね。避難先で長い生活になっている、これをどうするかというのが一番最初。次は、働く場所がなくなっていますから生活保障の問題があるわけです。次に皆さん挙げられるのが教育の問題なんです、実は。いろんな面で子供たちの教育のことを本当に心配されているということを実感した次第でございます。  現地、あすから小中高夏休みに繰り上げでなるということも聞いております。そんな中で特に要望が出ていた点で何点かお伺いしたいと思います。  一点目は、育英会奨学金の問題なんです。  警戒区域の指定によって、農家だけじゃなくて、一般のサラリーマンの方でも実際に職がなくなったり、そんな状態の中で教育費がこれからど うなるんだろうかということを非常に心配されている方が多うございました。特に育英会奨学金については既に一応一般枠というのは決定したばかりですし、これから私たち申請してもできるのかしらと心配されていた方がいっぱいいらっしゃいました。  先日育英会の方にちょっとお聞きしましたら、災害採用とか応急採用みたいなやり方があるんだということもお聞きしました。今後雲仙で被害に遭った方たちから育英会への申請があった場合、私はもちろんこういう枠があるわけですから緊急にでも対応すべき問題だと考えておりますけれども、その辺の見解をお伺いしておきたいと思います。
  168. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) ただいま先生から御指摘がございましたように、日本育英会の奨学生の採用につきましては、従来から災害救助法の適用を受けるような災害が起こった場合には災害採用という制度を持っておりまして、通常の一般的な奨学金の申請の時期とは別に随時申請をしていただくというようなことで対処をいたしております。  今回の問題につきましても、長崎県の育英会の支部の方と本部の方でよく連絡をとりまして、この二十日付で長崎県の日本育英会長崎支部の方から関係の高等学校に対しまして災害特別採用についての通知を出すということにいたしております。貸与の申請は直ちに申請をしていただくということでございまして、選考を終わり次第、貸与の始期は五月分からということで対応することといたしております。  なお、災害の場合の奨学生の採用につきましては通常の場合よりも学力の基準を若干緩めておりまして、通常でございますと日本育英会の奨学生というのは、学力の基準とそして家計の基準で判断をしますときに学力の基準は三・〇以上ということにいたしておりますが、災害の場合にはこれを緩めまして二・八以上で採用するということにいたしております。  現在関係の地域におきます高校生は五百四十四人ということを県の教育委員会と相談をして数字を把握いたしておりますが、仮にこの五百四十四人全員が申請をし、そして全員が基準に適合した場合にでも十分対応できる用意はいたしております。
  169. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 学力基準の問題ですね、いろんな意味で御配慮いただいていること、ありがとうございます。ただ、この学力基準の問題ももう少し柔軟に対応できないものかなというふうにいつも感じておるんですけれども、こういう緊急のものがあった場合、何とかその辺の配慮もいただきたいというふうにそれは感じております。  次は、先ほど言いましたように、あすから現地小中学校は繰り上げの夏休みでございます。ただ今回の場合、現地でもう住むことができなくて避難先を求めて島原市、それから深江町、それから市外に転出された方が、正確な数はわからないとおっしゃっていましたけれどもおおよそ二万人ぐらいになるんじゃないかというふうにこれは長崎県知事がちょっと言っておりました。そんな数になるんじゃないかと言っておりました。小中学校の受け入れについては九州各県教委初めスムーズな受け入れができるように対応をやっていただいているようです。そういう話も聞きました。  ただ、問題になってくるのは高校生の場合なんでございます。高校の転入学の問題については定員の数の問題とかいろんなことから、現在でも普通の場合でもなかなか公立から公立へ移るのは難しい状況もございます。試験の問題ももちろんございます。ただ、今回のようにやむなく出ていかざるを得ないという状況に追い込まれた方たちについては、転入学の試験の問題も含めて、高校生が今から市外へ出ていくわけですから、そういう場合はぜひ柔軟な対応をお願いしたいと思っているんですけれども、これについても見解をお伺いしておきたいと思います。
  170. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 現在島原市内に県立高校が四校、それから私立の高校が島原中央高校一校ございます。先生指摘のように六月二十日から夏休みを繰り上げて実施するということになっておりますが、現段階で県立高校については四校のうち二校、九名の転出者がおるというふうに聞いておりますし、私立高校についてはまだきのう現在で転出者は出ていないという状況のようでございます。  こういうような緊急かつ臨時的な事態を迎えまして、県の教育委員会では各県立高校に対しまして生徒を弾力的かつ迅速に受け入れるよう通知を出しておりますし、同時に他の都道府県教育長に対しましても同じように対応していただきたいというようなお願いの文書を出しているようでございます。  私どもとしましては、県内の問題については長崎県の教育委員会を通じましていろいろと生徒の就学に支障の生じないように指導をしてまいります。島原該当地区の高校生が他府県に転出する場合にいろいろとネックがあるというような事態がございましたら県の教育委員会とも十分相談いたしまして、県の教育委員会も、きのう県の教育長が災害以来初めて文部省事情説明、要望書等を持って参ったわけでございますが、他府県とのやりとりでスムーズにいかないような事態があったらすぐ私どもに御連絡いただきたい、私ども文部省の方からも具体的にぜひお願いするというようなことで働きかけを行うからというふうにその県の教育長にも伝えたところであります。  いずれにしましても、県の教育委員会と十分連絡を密にしながら、必要な転入措置が弾力的に行われるように私どもも努力してまいりたいというふうに考えております。
  171. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一点は、小中学校の校舎の問題でございます。  これは深江町から特に要望がございました。深江町は小中学校現在四校がございますけれども、うち三校までが現在警戒区域内に入ってしまいました。ある意味じゃその地域には立ち入りができないという状況になったわけでございます。今夏休みを繰り上げましたから当面はしのげますけれども、一番心配しているのは夏休みが終わって再開するときの問題です。要するに、あと一校しか残っていない。そこに集中して授業ができるかどうか。その一つの校舎で間に合うかといったら、これは絶対間に合わない。そうなると、やはり仮設の校舎がどうしても欲しい。そうしなければとても授業の再開ができないということでございました。  私もいろんな法律があるということで調べてみたんです。例えば、公立学校施設災害復旧費国庫負担法とか国が補助を出せる制度があるんですけれども、ところが今回のこの深江町の場合どうなるかというと、警戒区域内に今学校が現存している。残っているわけですが、警戒区域になったから使えない。壊れてしまえばまた対応ができるんですけれども、こういう状態の場合、まず何か国として手助けできる法律があるのかどうかというのを確認しておきたいと思うんです。こういう要望にこたえる法律、何かございますか。
  172. 遠山敦子

    説明員(遠山敦子君) 今の御指摘のようなケースにつきましては、現行の国庫補助の制度のもとでは想定されていないわけでございます。ただ、今日の状況というのは大変心痛む状況でございますし、特に児童生徒の修学確保の見地から大変重大なことと考えておりまして、目下この状況に何とか対応し得るように関係機関と鋭意協議中でございます。
  173. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 協議しても法律がないとできないんですよね、国が金出すことは。  きのう私どもの党の委員長と私も一緒に総理にお会いしました。総理にお会いしたときに、今はとにかく現行法内でやれるものはやってみるけれども、法律内にどうしても適応しない場合、特別立法せざるを得ない面もあるということをおっしゃっていました。ですから、もう大臣にぜひお願いしておきたいんです。この問題は今の法律じゃできないわけです。今各省庁できない問題、特別立法をどうするかという問題を検討されていることと思います。文部省としてこういう問題をぜひ特別立法してでもやっぱりやるべきだというふうに、私は大臣として声を上げていくべき問題だと思っております。大臣の決意をこれはきちんと伺っておきたいと思います。
  174. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) ただいま助成局長からお答えいたしましたが、島原には小学校が六、中学四、高校五、それから養護学校一ですか、深江には小学校三、中学が一ございますが、この問題について今現在の法律では、文部省として児童生徒のまず修学確保の見地から、仮設校舎の設置に財政支援の方策について関係機関と協議しつつ、今答えたとおりであります。  ただ、今閣議でも西田国土庁長官を中心としまして、私どももいろいろ、幸いにと言っては失礼ですが、今子供たちに一人も犠牲者が出ておりません。そういう中でもし特別立法の動きが出てきた場合、そういうときは仮設校舎はもう十分配慮して適切に私は対処してまいりたいというふうに考えております。
  175. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ぜひ大臣の方からも、これは文部省にかかわる一つの問題ですけれども、全般的にいろんな問題がひっかかってくるんですよね。そうすると、大臣から総理に対して、この問題やっぱり解決できないものがあると上げていただければ対応が変わってくると思うんです。政府としてみれば、なかなかそういう特別立法をするよりは現行法内で対応したいというお気持ちはあるんでしょうけれども、実際できないものがあるんだということはきちんとお伝えいただいて、何とかその方向でやっていこうということで御努力をお願いしておきたいと思います。  それでは次に、ちょっと体罰の問題で何点かお伺いしたいと思うんです。  先日、法務省が平成二年の人権侵害事件の受理件数をまとめておりました。それによると、公務員による人権侵害というのは二百十四件ありました。うち教師によるものが百四十六件、この中で体罰が百二十二件ということでございました。人権擁護局の調べを見ますと、体罰は六十一年に百件を突破して以来、百件を上回ったままの状態で一向に減っておりません。特に体罰のほとんどは国公立の学校で起きております。ちなみに、平成二年を見ました場合、国公立で起きたものが百十八件、私立はわずか四件でございます。  この現状についての文部省の見解をお伺いしたいし、また体罰をなくすために最近具体的に各県教委に対してどのような指導をなさったのかもあわせてお尋ねしたいと思います。
  176. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 先ほどもお答え申し上げましたとおりに、体罰の解消には教員一人一人が強く体罰禁止規定の趣旨を認識する必要があるわけであります。そういう意味で、私どもあらゆる機会を通じて体罰禁止の趣旨を徹底してまいりたいと思います。  前に本委員会で猪熊委員からやはり御指摘がございまして、文部省が悉皆調査を行ったのは昭和五十九年度ではないかというような、その後どうなったかという御指摘もこれあり、ことしの四月に体罰の悉皆調査、全校に対する悉皆調査を行う旨都道府県教育委員会を通じて通知を出したところでございます。その悉皆調査に基づきまして、私ども関係者で十分調査分析いたしまして、その原因、類型、それから対策等につきまして本格的に、真剣になってその調査に基づく分析を得て取り組んでまいりたい、具対的な取り組みを行ってまいりたいというふうに今考えているところでございます。
  177. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 本当はその質問を次にする予定質問通告しておるのに、先に言うから。  それは話別ですけれども、その調査というのは四月から全国全校に対してやられる調査になるわけですか。じゃ、大体やられたということであれば、いつごろまでにまとめを出されて、私たちの手元にいつまでにそういう現状を教えていただけるのか、大体の時期で結構ですから教えてください。やっぱり実態調査というのは状況をきちんと把握する最も基本だと思いますし、その調査結果をきちんと踏まえた上で対策をとらなくてはいけないと思っておりますので、そのことをお願いしたいと思います。
  178. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 都道府県教育委員会を通じまして全学校種別、すべて悉皆調査を行うことにしております。昨年の実態調査でございますが、十二月まで私どもの方に調査内容を提出してもらいたいということにしてございますので、細かい数字がまとまりますのは早くても来年の春になるんではないかというふうに考えております。これは、悉皆調査でかなり厳密にしていただかないと、体罰であるかもしれないということで問題になった事例、法務省等で指摘された事例につきましては明確にすぐわかるわけでありますが、もしかしたらあれは体罰だったんじゃないかというようなものを含めて調査をお願いしておりますので、やや時間をとって調査をしていただきたいというふうに考えております。
  179. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほどお話あったように、昨年猪熊委員指摘した問題でございます。文部省としてもそういう方向でやりたいということでございました。ぜひきちんとした形のやつを出していただいて、じっくりやっていただいても結構です。ただ、本当に実態のわかるものをきちんと整理していただいて、それを出していただきたいというふうに思います。やはりそういった調査ができてなくて、いつも人権擁護局の話ばかり出てくるということではよくないと思うし、前回お話あったのは懲戒免のやつを調べればそれでわかるんだみたいな言い方もされていましたけれども、それじゃ私はだめだと思います。その辺はぜひお願いしたいと思います。  そして最後に、体罰の問題で大臣にぜひ検討していただきたいのは、そういう調査とともに、例えばさっき大臣おっしゃっていました校長のOBの方たちと話し合ったとかいう話を、別の問題でですけれども、されていました。同じように、この体罰の問題で一番問題になるのは、体罰の問題というのは教師そのもののあり方を問われているわけですから、教員団体でも結構です、校長会の人でも結構です、いわゆる現場に立っていらっしゃる教師の方たちと大臣が直接体罰の問題で話をするというようなことをきちんと私はやるべきだと思います。  また、ぜひ文部省として、いつもやっていらっしゃるのかもしれませんけれども、各都道府県教委に対してはきちんとした指導を、こういうものがまた出たんですから、人権擁護局からまだ多いという話が出たわけですから、そのたびにやっていただきたいと思っているんですけれども、大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  180. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 先ほども体罰のお話が出ましたが、やはり私どもこれはもう教員の一人一人が子供一人一人によく接していただく。そして絶対、これは学校教育法によって厳に禁止されていることですからそれを徹底させることである。そしてまた、きめの細かい調査、分析を早目にやらせる。そしてまた、校長会の方々とも私どもお会いをいたしましていろいろなお話を聞く、これも一つの私は方法であろう、このように感じております。  この問題につきまして、先ほど申し上げましたように、教員一人一人が何といっても自分をみずから戒める自覚、これを深めることが大切でありまして、各種会議指導するなど体罰禁止の趣旨を徹底して図りたい、このように考えております。
  181. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ぜひ大臣、そういうことをやられるときはマスコミの方にも連絡して、大臣は体罰の問題に非常にもう真剣に取り組んでいる、こういうこともやりますよということをきちんとわかる形でしていただきたい。わからなかったら意味がないわけです。そういうことをぜひ取り組んでいただきたいと思います。  じゃ、外務省の方に。外務大臣、本当にお疲れさまでございました。久しぶりに海外にきちんとした形で出られたんじゃないか。これはこういう場で言っていいのかどうかわかりませんけれども、特に中東地域に行ったときに私も実感しましたのは、外交の基本というのは首脳外交という部分があるな、やっぱり大使館の方たちも苦労しているけれども、トップが行かないとみんな苦労しているなということを感じたわけです。そういった意味じゃ、今回ああいった形で中東にも足を踏み込まれ、また東南アジアにも足を踏み込まれたということに対してはもう非常によかったなと私自身は思っております。  中東の問題のときに言いました湾岸戦争に伴って今現地で大きな問題は何かというと、一つは難民問題をどうするかという問題であり、原油流出とか油井炎上の環境問題をどうするかと二つの点が大きな残された課題だったろうと私は思っておりました。今回大臣御自身クルド人の難民キャンプにも訪問されたと聞きました。  これは立て分けて聞いた方がいいと思うので、まず一つ聞きますと、クルド人難民については大臣自身キャンプを見られてどう感じられたのか、そしてこの問題について今後どう対応されようとするのかという点をまずお聞きしておきたいと思います。
  182. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) イランのイラク国境にございますクルドの難民キャンプは、委員も御存じだと思いますが、相当山岳地帯でございます。私どもが立っておっても吹き飛ばされそうな激しい風が吹いておるところにキャンプがありまして、そこに一万人以上の難民が本当に雨露をしのぐような生活をいたしておりました。私どもが訪問いたしましたときはまだ天候が比較的暖かい、問題はこれから冬場にかけてこの人たちがここでどのように生き延びるのかということが、もう率直に言って私は直観的にそれを感じましたし、また日本から医療協力隊が出ておりましたけれども、この先生方も熱心にやっていただいております。  このクルド難民問題というものをこれから国際的にどのようにカバーしていくのかということは、国際社会が協力しながら問題解決をしないと日本一国の力ではどうにもなるものではない。殊にイラクの現在の政権のクルド人に対する弾圧といいますか、そのようなものを国際的な枠組みの中でこの収拾策がとれるようにイラク政府に国連が働きかけることが重要であるというふうに感じて帰ってきたわけであります。
  183. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 また、クルドだけじゃなくて難民問題全体という話をちょっと大臣からお聞きしておきたいんです。といいますのは、クルドだけじゃなくて、エチオピアの問題、スーダンの問題、アフリカだけで二千数百万人とも言われておりますよね、今難民が。そういった難民問題に対して、もちろん資金の面では一番協力してます、日本が。これはすごいことだと思います。UNHCRに行っても、日本のあり方というのは非常にうれしい、ただ騒ぐときは皆さん世界からいろんな形でお金も寄附してもらえる、でも日常になったら非常に正直言って忘れられてしまって厳しいですということもおっしゃっていました。  この辺の問題、大臣御自身どんな考えでいらっしゃるのかなと。私は難民問題というのはこれから日本が取り組む最も大きな課題の一つだと思っているんです。金の問題もあるし人的貢献の問題もあるんですけれども、いろんな形でNGOの人たちにも協力していただいてやらなくちゃいけない。私自身はそういう取り組みは日本にとって一番国際貢献の一つのポイントだと思っていますけれども、大臣御自身、難民問題総体の問題でもしお考えがあれば聞かせておいていただきたいと思います。
  184. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) アジアではやはりベトナム難民、これが今香港では一日百人以上毎日ベトナムから到着して、香港政庁は大変な悲鳴を上げているというのが現実でございます。そういう観点もございまして、この間UNHCRの緒方代表を訪問して、ちょうど緒方さんはアフリカから帰ってこられた直後でございましたが、難民はまだまだ多発する、これにどう対応するのがいいのか自分たちも今真剣に考えている、一番必要なのはお金であるけれども、しかし航空機がやっぱり必要なんだ、そして医薬品とかいろんな機材を運ぶその手段をどう確保するかということが非常に大きな問題だということをおっしゃっておったことが耳に残っております。  アフリカに発生している今委員の御指摘の難民問題あるいはクルドの難民問題、この近所ではカンボジア難民、ベトナム難民、こういうものを総じて考えていきますと、これからの難民問題に対応する方法として、具体的にこの人たちをどのように定住、定住といいますか生活力をつけさせるかということが基本的な問題解決につながる方途ではないか。例えば、香港にいる五万人を超す難民、これがベトナムへ帰る、帰ってまた出てくるといったことで本当に困っているわけでありますが、結局帰っても職がないというところに問題が一つ根深く存在しているのではないのか。  それについては、やっぱりその国の経済をどう活性化させるかという問題とあわせて、そこで生活できるような技術を身につけさせる職業訓練をどうするのかといったような問題が生じてくるわけでありますけれども、地域地域に特性があることは御存じのとおりでありまして、アフリカなんかの場合はいかにして飢えをしのぐかというところから始まるわけでありますから職業訓練までの距離は極めて遠い、そういったところでは再生産のきかない援助というものを先進国が引き続きやらざるを得ないというのが現実の姿ではないか、そのように認識をいたしております。
  185. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今おっしゃったみたいに、日本としては今緒方さんをUNHCRへ送り出しているわけですよね。その意味でもぜひ連携をとられて、一つはやっぱりお金でやらなくちゃいけない問題も続くと思います。それもぜひやっていただきたいし、その一方で日本の場合もなかなか定住の問題になると、じゃ日本に来られるかという、もとに戻るという問題が一番大事ですけれども、それとともに移り住みたいという問題になったときにどう対処するかという問題も残っていると思います。その辺も含めてぜひいろんな意味でこの問題御検討いただきたいというふうに御要望しておきます。  そして、もう一つの大きな柱でありました環境の問題でございます。日本は既にサウジアラビアに原油の回収チームを送られました。また、クウェートに環境調査団ということで派遣もされました。今回大臣がイランに行かれたときに、イラン国内へ環境調査団を派遣する旨を何か現地で表明されたというふうに聞いておりますけれども、具体的にいつごろどのようなメンバー構成で派遣をお考えになっていらっしゃるのか。  特に私が要望しておきたいのは、イランという国は、こんなことを言っていいのかどうかわかりませんけれども、現地で私がお話したときは、観測機材がないという話をイランの政府の方から聞いたんですよね。やろうにも観測しようがないんですという話も聞きましたんで、もし派遣されるならば、そういう機材の面を含めてぜひ対応していただきたいなというふうに考えておるんですけれども、これについてお伺いしたいと思います。
  186. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 先般イランを訪問しまして、政府関係者といろいろ協議をいたしました節に、委員指摘のように、クウェートの油井の火災によりましてイランの環境が極めて厳しく汚染をされている。これに対して日本から調査団を六月中に派遣するということを先方政府に伝達をいたしておりまして、そこで必要な機材双方政府の関係者が協議をし、それによって政府としては積極的に協力をするという考え方を相手政府に伝えております。
  187. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ちょっと時間がないもので済みません、飛び飛びで。  次は、カンボジア問題についてお伺いしておきたいと思います。  大臣がちょうど東南アジアへ行かれる寸前に例のジャカルタ会議がございました。まことにカンボジア問題ではポル・ポト派が孤立するというような構造に今回がらっと変わりまして、大きな変化があった後すぐ入られたということでは、大臣が行かれた時期というのは、ある意味じゃ非常にタイムリーな時期だったと私は思っているわけです。  そこで、ベトナムでもインドネシアでも各首脳にお会いになってお話をお聞きになっているようです。そういった中から、今後日本のPKOの問題も絡んでくると思うんですけれども、このカンボジア問題について大臣が今一番知識があるはずです、各首脳と会ってきたわけですから。一体どんなふうな見通しになるのかなということを、どんなふうにお感じになったか率直な意見をぜひお伺いしておきたいし、日本として今後このカンボジア問題、どんな形でやらなくちゃいけないのかということをどう認識されたか、ここを聞いておきたいと思います。
  188. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) ベトナムを訪問しました際に、ハノイの政府に対して、グエン・コ・タク外相に対して、日本政府としてはベトナム政府がカンボジア和平の一日も早い達成のためにヘン・サムリン政権に対する、何といいますか、和平への促進方を協力してもらいたいということをお願いいたしましたが、ホーチミン市にフン・セン首相が朝私に会うために出てきてもらっていろいろと協議をいたしました。  現在のカンボジアの状況は、ジャカルタ会議の結果、フン・セン首相とシアヌーク殿下、そしてソン・サン、この三派の話し合いが進んでおって、クメール・ルージュが外れる可能性を現出しつつある。そういうふうな中で、カンボジアにおける和平というものは、やはり日本政府としてはあくまでもP5の和平提案というものによって、四派が入った形で和平が構成されるということがカンボジアの安定した国内政情に直結するものという認識を持っております。  そういう意味から、フン・セン首相に対しては、このP5の案を受諾することを拒んでおりますから、フン・セン首相に対して柔軟に対応をすべきであるという話を日本政府としては申しましたし、P5の案をできるだけ受け入れるように努力をしてもらいたい、これが日本側の一つの考え方でございます。  一方、SNCと俗に言っておりますけれども、この構成がこれからどうなっていくのか、これは非常に難しいところでありまして、シアヌーク殿下が議長あるいはフン・セン首相が副議長というような話も出ておりますけれども、この問題の解決がまだ結論に達していない。そういう過程で六月二十四日にタイのパタヤでSNCの会合が開かれるわけでありまして、日本の出先のタイにおります今川公使がこのSNCのパタヤの会議に招かれております。そういうことで、カンボジア和平会議というもののこれからのプロセスにおきまして、やはり日本協力というものを彼らは非常に強く期待をいたしております。  しかし、この和平が成立した後のことを考えましても、クメール・ルージュが外された形でこの和平が実現するということに、実現しても結果的にはゲリラ活動というか反政府活動がまだ続く可能性を残すわけでありますから、そういう状況になりますとPKOが、どの国のPKOが参りましてもこれはなかなか難しい状況になるわけでありまして、そういう意味では日本政府としてはあくまでもP5のこの提案で四派が参加した形のSNC、そして和平会議というものが構成されていくということが大切であろうと思います。  問題は、この武装解除のプロセスの問題、あるいはまたジェノサイド防止の機構をどうするのか、そういったような難しい問題がまだ引き続き協議が続けられるということでございまして、その後に訪問いたしました共同議長国の一国であるインドネシアのアラタス外相との会談におきましても、日本政府とインドネシア政府のアラタス外相との考え方は全く一致いたしておりました。
  189. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 たしかクメール・ルージュの話を大臣されましたから、ぜひもう一つ、多分お言い忘れになられたと思うんですけれども、中国とのパイプという意味でいけば日本は非常に大きなパイプを持っているわけです。このクメール・ルージュをどうするかという問題は中国がかかわる問題でもございます。そういったパイプもぜひ生かされて、ある意味じゃ日本がこの問題については主導権を握ってやれる部分というのは非常に多うございます。  東南アジアの安定ということがアジアの安定だというふうにひとつつながるわけですし、大臣としてはそういう和平のため日本としてもリーダーシップをとるという考えでいらっしゃるわけですから、そういった多方面のパイプを使われてぜひ実現へ向けてやっていただきたい。――しゃべられますか、じゃどうぞ大臣。
  190. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 今中国の問題にお触れになりましたが、六月二十五日、今月二十五日に中国の銭其シン外交部長が日本を訪問されることになっておりまして、その際にカンボジア問題についていろいろと協議をいたしたい、このように考えております。
  191. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もうあと少しですので、ベトナムの話を聞こうか大臣のパリでの発言を聞こうかと思いつつ、やっぱりパリの発言を一言聞いておきたいなということで聞きます。  これは、記者団に対してODAの問題についておっしゃったということでございます。国際貢献に関する資金協力のあり方についてODAや国連への拠出金などを含めた全体枠を設定した上で、これを長期的に拡大してGNPの一%から二%にするという考え方を大臣が明らかにされた。そして、各新聞ではその中に新税の問題も含めてという報道がなされておりました。  私は、このODAの全体枠をきちんと決めていくという方向性、この大臣の考え方には賛成でございます。ぜひそういった形で拡大しなければ、大臣言われるようにわからないわけです、どこでどう出ているかという問題が。ですから、この考えはぜひ総理にも大蔵大臣にも、いろいろ反対はあるのかもしれません、ある新聞によると個人的見解にしろというような話も何か載っていましたけれども、そういう問題じゃなくて、大臣がそういうお考えをお持ちならそれをぜひ政府内に徹底していって、ODAのそういう一つのきちんとした形というのを生み出していただきたいと私は思っております。  ですから、大臣がパリで言われた真意をぜひお伺いしておきたいのと、こういう決意で今後臨まれるということであれば、その決意をお伺いしておいて、私の質問を終わりたいと思います。
  192. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 私がパリの随行記者団との懇談で申しました考え方は、委員がお話のように、日本として経済規模に応じてどの程度の国際貢献をするべきかという大方の考え方というものを国民がいろいろとお考えいただいて、合意をある程度見ることが必要であるという考え方に基づいて発言をいたしたということを御理解いただきたいと思います。  問題はOECD加盟国、例えば国際協力でもいろんな問題がございます。二国間の協力もございますれば、国際機関を通じての協力の仕方もございます。そういう中で、私どもの国は顔のない日本のあり方というものがよく批判の言葉として使われております。  私、今一応日本の防衛費、これは平和のために専守防衛で一%ということになっております。しかし、例えばサミットに参加する国々の防衛費はどうかというと、GNP対比で、カナダでは二・一、あるいはフランスでは四・〇、ドイツは三・〇、イタリーは二・四、それからイギリスは四・七、米国は六・四と、こうなっております。そうして、ODAの比率はGNP対比でどうなっておるかというと、カナダでは〇・五、フランスでは〇・七二、ドイツは〇・三九、イタリーも〇・三九、日本は〇・三二、それからイギリスは〇・三二、アメリカは〇・二一。  この対GNP比で防衛費とODA、つまり国際協力との対比を見てみまして、そういう中で防衛費はG7の中で一番最低で抑えているし専守防衛である。これは平和の理念を持った国家としての顔ができていると思います。  一方では、ODAのOECD加盟国の目標値は〇・七%であります。現在は日本は〇・三二ということで、我々はこれを経済規模に応じてどこまで広げていく可能性があるのか、また国民がどの程度負担をすることができるのかと、こういったことで、もう当面は〇・七という目標値に向かって努力をしていかなければなりませんけれども、これから五年、十年というスパンで見たときに、例えばGNPの一%といったような形が国民の負担にたえ得る限界かどうか、あるいは国家の経済力として負担ができるかどうかということについてそろそろ議論を始めることが必要ではないかという、私は政治家としての考え方を述べたわけでありまして、それが新聞報道にあのように流れていると、私はそのように考えております。  税源等については、私の所管でございませんから、これは私が申し上げるものではございません。あくまでも五年、十年の単位で日本の国際貢献というものをどういうふうに考えたらいいのかと、そういうことが議論一つの大きな課題になってきているんではないか。我々の国は軍事力で国際協力はできないわけでありますから、軍事力で貢献ができないならば、何で国際貢献ができるかということも議論をしていく必要があろうかと、このような観点から申し上げたということを御理解いただきたいと思います。
  193. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  194. 林紀子

    ○林紀子君 私も引き続き外務大臣に御質問したいと思います。  ロンドン・サミットを前に、七月の十一日にアメリカ・メーン州のブッシュ大統領の別荘で日米首脳会談が開かれ、ここでは米の問題が主要議題になるのではないかと報道されております。今までもアメリカがウェーバー条項や農業補助金を、またECが可変課徴金などを譲歩すれば、日本も米の輸入自由化で譲歩せざるを得ないというような意見も出されておりましたけれども、今まで三度国会で決議されたものは決してこういう内容のものではないはずですね。国会決議を体して米は国内産で自給するという、この従来からの政府の外交方針に変わりはないのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  195. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 政府は、かねて国会の御決議の趣旨を十分踏まえて、米及び稲作の重要性にかんがみて、これらのものは国内産で自給するという方針を今日まで堅持をいたしております。総理もそのような考え方で対応してこられておると私は考えております。
  196. 林紀子

    ○林紀子君 昨年十二月のブリュッセルのガット・ウルグアイ・ラウンドで中山大臣は、米の輸入自由化という問題については、農民の要望だけではなく、今や消費者も含めた国民全体が輸入自由化はいけないということを言っているという趣旨の御発言をなさったということを伺いましたけれども、あくまでも米の問題、一部たりとも輸入自由化は許さないという立場で今後も頑張っていただきたいと思うわけです。  次に、私は今広島に住んでおりますが、被爆地広島に住む一人として、国連平和維持活動や災害などを口実にした自衛隊の海外派兵は憲法の平和原則を踏みにじるものであり、決して認めることはできないということを初めに強く申し上げたいと思います。日本世界の信頼を得られる道というのは、憲法の平和原則を貫くことだと思うわけです。  そこで、今広島県には、アメリカ軍が太平洋における唯一の弾薬補修施設といい、また日本にある唯一のアメリカ軍の弾薬貯蔵地区と位置づけております秋月弾薬廠と呼ばれる三つの弾薬庫、これが呉市、東広島市、江田島町にありまして、湾岸戦争の際にも呉市の広弾薬庫から十五トンの大型トレーラー三台がコンテナを積んで陸路長崎県の佐世保基地に向かったと言われております。  そこで、米軍基地、特に弾薬庫と周辺住民の安全確保についてきょうはお聞きしたいと思います。  初めに、防衛庁にお聞きいたしますが、自衛隊の弾薬庫はどのように安全管理をされているのか。火薬類取締法施行規則では、保安距離に関しましては、市街地の家屋や学校、保育所などの第一種保安物件は火薬庫の外壁から最大五百五十メートル、公園などの第二種保安物件は最大四百八十メートルの保安距離をとらなければならないと定められておりますけれども、この火薬類取締法にのっとって安全管理をされているわけですね。
  197. 相澤史郎

    説明員(相澤史郎君) お答えさせていただきます。  今先生おっしゃったとおり、自衛隊の弾薬庫の安全管理につきましては、火薬類取締法及びその施行規則等の関係法令に基づきまして、先ほどのような、例えば保安距離の制限とかいうものを遵守して、そして安全確保に万全を期しているというのが実態でございます。
  198. 林紀子

    ○林紀子君 ところが、同じ弾薬庫でありながら在日米軍の弾薬庫については、いわゆる日米地位協定に基づいて国内法は適用されていないわけですね。どのような安全管理がされているのか、アメリカ軍の安全基準というのはどういうものか、外務省、明らかにしていただきたいと思います。
  199. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 先生質問の点につきまして、最初に一般論でお答えをさせていただきたいと思いますが、まさに先生指摘されましたように、一般国際法上、外国軍隊には特段の合意がある場合を除きまして接受国の法令がそのまま適用されることはないとされております。したがいまして、日米間におきましても、我が国におきますアメリカの軍隊の地位に関します地位協定もこのような考え方に基づいて締結されております。したがいまして、御指摘の点につきましては関係の国内法がそのまま適用されるということはございません。  しかしながら、同時に申し上げたいと思いますのは、一般国際法上、外国の軍隊は接受国の国内法令を尊重すべきものとされております。アメリカの軍隊も我が国の法令を尊重しつつ、公共の安全や国民生活に十分な配慮を払うということは当然であると考えております。現に地位協定上も、アメリカ軍は施設、区域内における作業につき、公共の安全には妥当な考慮を払うということになっております。したがいまして、私どもは詳細については承知しておりませんけれども、施設、区域内の弾薬庫等の安全性についても厳格な内部規則にのっとって維持管理されているものと了解しております。
  200. 林紀子

    ○林紀子君 私はここにアメリカ国防総省が議会に提出しました「九一会計年度軍事建設計画」というものを持っているわけですが、このうち江田島町の秋月弾薬庫についてこう書いてあるわけですね。現状では保安距離の基準を違反しているために三重隔室弾薬監視作業所を建設する必要があり、もし建設されない場合には、保安基準を満たされないまま弾薬の監視作業を行うことにより極度の危険にさらされる、こういうふうに書かれているわけですね。  また、東広島市の川上弾薬貯蔵施設についても、現在の貯蔵施設は保安基準の規定に違反している、あるいは地上弾薬庫は現在の弾薬貯蔵の安全保安基準に適合していないのでエプロン付標準型地表被覆弾薬庫二十戸を建設する必要があり、もし建設されなければ爆発物安全基本計画に定められた目標に合致することはできない、こういうふうに書かれているわけです。  この「九一会計年度軍事建設計画」でこのように書かれているということは外務省もお認めになりますか。
  201. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 先生が今読み上げられましたアメリカ予算要求書を私も手元に持っておりまして、まさに先生が今御説明されました趣旨のことが書いてあるのは私も承知しております。
  202. 林紀子

    ○林紀子君 そして、この「九一会計年度軍事建設計画」というのは、財政赤字を理由にアメリカでは議会から承認されなかったというものなんですね。したがって、秋月でも川上でも、非常に危険である、もし建設されない場合は極度の危険にさらされると、こういうような状況のまま放置されている、こういうことではないかと思うわけです。  外務大臣にお聞きいたしますが、アメリカ軍はどのような保安基準に違反しているのでしょうか。それが明らかにならなければ住民の不安というのは取り除かれないと思います。米軍の保安基準というのをぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  203. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 先生説明のとおり、アメリカ側はまさに予算要求八百四十万ドルと二百万ドルをいたしましたけれども、議会で承認されなかったということは事実でございます。しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、アメリカ軍は厳格な安全基準にのっとって行っております。  したがいまして、まず現状でございますけれども、先生も御指摘のような点は確かにございますけれども、最初に私申し上げたいと思いますのは、先生指摘の川上弾薬庫の弾薬保管の状況でございます。現在私どもが承知しておりますのは、そのうちの約七割は新築されました覆土式弾薬庫という安全な弾薬庫に保管されているということでございます。それから、残りの三割についてでございます。これは確かに地上式木造弾薬庫等に保管はされておりますけれども、米軍の専門用語になりますが、基準適用免除というものを行っておりまして、この運用によりまして危険がないように運用していると。  具体的にどういう運用をしているかということでございますが、細かい点でございますけれども、せっかくの御質問でございますから御説明させていただきますと、例えば監査作業場では夜間の保管をしないとか、弾薬保有量を制限して周囲への危険度をなくすとか、監査時間を最短にする、こういうような運用上の制限をいたしまして、実際上はこの安全性に問題がないようにしております。  それから、さらに申し上げたいと思いますけれども、私どもが承知しておりますのは、九一年中には新たに覆土式弾薬庫が追加建設されまして、すべての弾薬がこの新築の覆土式弾薬庫に保管されるということになるというふうに承知しております。  いずれにいたしましても、繰り返しでございますけれども、先生が今御指摘のような問題点は確かにございますけれども、米軍側といたしましては、安全性には十分配慮をしてやってきておりまして、今申し上げたような措置をとっているということでございます。
  204. 林紀子

    ○林紀子君 安全安全という言葉を繰り返されていらっしゃるわけですけれども、しかしアメリカ側が議会に危険だと提出をしたその問題というのは解決をされていないということじゃないかと思うわけですね。  私はもう一つアメリカ国防総省の「弾薬、爆発物類安全基準」というのを持っているわけです。これは、十一章の消火活動のための危険度識別というものが書いてある抜粋なんですが、これによりますと、1から4までの数字で危険度が示されている。1という表示があるのは大爆発で、核兵器の貯蔵にもこれを用いているということなんですね。消火活動に関係のない人は二千フィート、六百メートル以上離れていなければならない。さらに、弾薬が四十五トンを超えるときはこの範囲に住居を建ててはならないと規制しているということです。  今米軍基地の弾薬庫の周辺はどういう状況かということで、私はここに最近撮った写真を持ってきているわけですけれども、(資料を示す)これが佐世保の前畑弾薬庫というところの写真なわけです。ここには写っておりませんけれども、この佐世保基地ではフェンス一つ隔てたところに子供が遊ぶ公園があるし、市民が憩う天神公園というのもあるんだそうです。そして、この写真で明らかなように、もうすぐ近くに石油タンクやガスタンクがあるわけです。横須賀基地の浦郷弾薬庫ではわずか五十メートルしか離れていないところに老人生きがいの家という福祉施設がある。  また、私がこれは実際に見てまいりました東広島市の川上弾薬庫では、今地域の住民の方たちの大反対を押し切って市が火葬場、共同墓地などのある墓地公園を建設しようとしている。まさにフェンス一つ隔てたところなわけですね。そして、これは広島の秋月弾薬庫の写真ですけれども、(資料を示す)もうまさにこれも覆土式のこの弾薬庫のすぐ近くに家が密集しているという、こういう状況なわけですね。  このままで本当に米軍基地周辺の住民の安全というのが保障できるのかどうか大変不安なわけですけれども、外務大臣いかがでしょうか、これで本当に住民の安全は保障できるのでしょうか。
  205. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) この米軍施設、区域内におきます安全の管理の面につきましては、絶えず日米合同委員会等におきまして、安全確保のために十分配慮するように米側に要請をいたしておりまして、今後ともそのように十分配慮するように要請を続けてまいる、こういう考えでございます。
  206. 林紀子

    ○林紀子君 日本の国内法の火薬類取締法では、保安距離内に家屋などが建てられた場合には、火薬を保有する者は火薬の量を減らして定められた保安距離を維持するか、それができなければ保有している場所を変更して定められた保安距離を保たなければならない、こういうふうにされているわけです。そして、火薬量を変更した場合には、これこれに減らしましたという変更届を出さなければならないと義務づけられている。しかし、アメリカ軍については何も知らされていないわけですね。  例えば、昨年の二月には呉市議会が初めて川上弾薬庫に入ることが許可されまして、先ほど申し上げました危険度標識1の弾薬庫の数、以前は十カ所であったと思っていたのに、そのとき入って実際に数えてみたら二十五カ所にも増加をしていた、こういうことが初めてそのときになって確認できた、こういうことなんです。  アメリカ軍が保安基準を明らかにしないで、周辺住民の安全が確保できないのであれば、アメリカ軍基地、火薬庫というのを撤去すべきではないかと思うわけです。  また、政府が地位協定に基づいてここに弾薬庫があるということを認めるというのであれば、政府の責任において、周辺住民の安全を確保する上から、国内法である火薬類取締法で定められている保安距離内にはせめて先ほど申し上げましたような公園であるとか墓地であるとか老人生きがいの家であるとか、こういう公共施設は建設することはできない。弾薬庫の危険性を住民に知らせて、弾薬庫の中では爆発が起こったときどうするかという訓練がたびたび行われているのに、周辺の住民の方たちにはいざというときどうしたらいいのかということも一切知らされていないということで、大変大きな不安を持っているわけです。  弾薬庫の危険性というのを知らせて、公共施設は建設しない、こういう方向でせめて安全対策をとるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  207. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 最初に先生に申し上げたいと思いますのは、米軍は我が国の安全に寄与し、それから極東におきます国際の平和と安全の維持に寄与するという目的のために、安保条約上、我が国の施設、区域の使用を許されておるわけでございまして、この点に関しましてはぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。同時に、先ほど来申し上げておりますように、米軍が我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動するということは当然でございまして、私どもといたしましてはその見地から、先ほど中山大臣が言われましたように、必要に応じまして日米合同委員会その他の場で米側といろいろ安全確保について話し合いをしてきているわけでございます。  先生が具体的に御指摘になっております川上弾薬庫につきましても、先ほど来申し上げておりますように、米軍は厳格な内部規則にのっとって維持管理をしておりまして、約三割の弾薬が地上式の弾薬庫等に保管されているということがあるわけですけれども、それはあくまでも先ほども申し上げたように基準適用免除ということで、先生もちょっと今お触れになりましたけれども、まさに弾薬保有量を制限するということをすることによって実際上は安全性に問題がないように措置しているわけでございます。  私どもは、この点は重々これらかも念頭に置きまして、日米合同委員会等の場でアメリカ側と話し合いをして、地域住民の方々に不安を持たれないようにできるだけ努力してまいりたい、こう考えております。
  208. 林紀子

    ○林紀子君 保安基準も含めて住民の人たちが納得するような安全対策というのをぜひ明らかにしていただきたいということを重ねてお願いいたしまして、終わります。
  209. 高崎裕子

    高崎裕子君 最初に、外務大臣にお尋ねいたします。  昨年九月に署名を行った子供の権利条約、外務大臣は国会でたびたび早期に批准する旨の答弁をされてまいりました。会田委員への答弁で、各省庁との協議がほぼ終わり、これから法制局と詰めていかれる、そして次期通常国会でというお話でございました。これは、これ以上はおくれない、間違いないという趣旨と理解してよろしいわけでしょうか。そして、批准に当たっては留保なしに批准すべきと思いますが、この点いかがでしょうか。
  210. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 先ほどもお答えを申し上げましたように、子供の権利条約につきましては次期通常国会には間違いなく御審議をお願いする、このように相なろうかと思います。
  211. 高崎裕子

    高崎裕子君 留保の点はいかがですか。
  212. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 現在まだいろいろと作業を進めている過程でございますので、留保案件につきましてこの時点で申し上げるということは御遠慮させていただきたいと思います。
  213. 高崎裕子

    高崎裕子君 各省庁との協議がほぼ終わったわけですから、留保なしにというのは本来なら御答弁いただけるかと思いますが、留保なしに速やかに批准されるよう要望して、文部省質問を移したいと思います。  最近相次いで、高等教育、とりわけ大学の危機的な財政状況、劣悪な研究、教育条件の実態が明らかになっています。この七日には、有馬国立大学協会会長、それから西原私立大学連合会会長ら八氏でつくっている大学財政懇談会が高等教育費充実についての要望を海部総理大臣に提出をしております。  その中で、「昭和五十年代の後半以降行財政改革の影響を受けて日本の高等教育、とりわけ大学の教育研究環境が施設・設備・研究費を中心にして劣悪化し、すぐれた人材が大学に残らなくなりつつある状況に対して、きわめて深い憂慮の念を抱いております。このまま推移すれば」、「人材の養成や学術研究の展開に支障も来す」と窮状を訴えています。  さらに、「私どものような立場にある者が声を揃えて為政者をはじめ関係各方面の方々に窮状を訴えるのは、わが国では異例のことですが、日本の大学はいよいよそうせざるをえない状況に追い込まれたとご理解賜り、私どもの訴えに耳を傾けていただきたい」として、具体的に、「高等教育に対する公費負担を他の先進国並にすることを目標として、順次計画的にこれを実現していただきたい。」、さらに、「その第一段階として、平成年度予算編成においては、高等教育並びに基礎研究にかかわる予算について、概算要求基準にとらわれない概算要求ができるようにしていただきたい。」、この二点を本当に切実に要望しているわけです。  この点について積極的に対応すべきと考えるわけですけれども、特に大臣の決意のほどを伺わせていただきたいと思います。
  214. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 今御質問がございました、実はこの大学財政懇談会の皆さん、今先生がおっしゃった二点、これ海部総理にも私のところへも参りました。  しかし、財政を取り巻く状況は依然として厳しいものがありますが、高等教育の充実及び学術研究の推進のための公財政支出の確保は、大学財政懇談会の要望においても述べられているとおり、将来にわたってこれはやはり我が国の繁栄を継続、発展させていく上で極めて私どもも重要なものと、こう考えております。  平成年度予算においても、国立学校予算あるいは私学助成、科学研究費については所要の増額を図ったところでありますが、今後とも一層のひとつ予算の確保に私も努めてまいりたい、このように考えております。
  215. 高崎裕子

    高崎裕子君 予算の確保に努めたいということで、それ自体は大変心強いお話なんですけれども、この努力についてはこれまでのようなやり方ではとても間に合わないというのが、この大学財政懇談会の要望の中でも明らかにされたと思います。文部省が言わないでどこが言うのかという問題でありますので、ぜひ積極的な対応をしていただきたいと、そう思います。  さて、私は先日、日本共産党の国会議員団の大学調査団の一員として北海道大学にお邪魔をして、理学部長さんや教養部長さんにお話を伺ってまいりました。そして、建物や設備なども見せてもらいました。  北大理学部の液体化学の研究室、これは四十五平方メートルで七人も机を並べている。実験器具、測量計が資材用金属ラックにおさめられて、部屋の通路は一人歩くのがやっとというような状態になっています。それから、海藻標本室ですけれども、これは日本の海藻標本のセンターだと、こう言われているんですけれども、整理をするスタッフがいない。整理番号をつけた標本が約五万五千点あるんですが、未整理の分が二十万点から三十万点と、これだけ残されているというのが実情でした。あるいは、安全であるべき研究室で、危険な液剤を浴びたときに使う緊急シャワーなんですけれども、これが研究室が狭いために廊下に、入り口の壁のところに穴をあけて取りつけられている。だから、危険な液剤を浴びると研究室ですぐシャワーを浴びれなくて、廊下に走り出してそれからシャワーを浴びなきゃならないと、こういう実情でもありました。  また、教養部では三階建ての建物を四階にして使用しているとか、ロッカーが置かれて大変廊下が狭くなっている、あるいは危険落下物注意と立て札があるなどの劣悪な施設の状況なども見て、大変驚いてきました。私の母校ですのでびっくりしてまいりましたが、教官の方はマスプロ教育で、学部が教官一人当たり五・八人の学生に対し、教養では約五倍の一人当たり二十六・三人という実情で、建物もスラム化している、これでは高校や予備校の方がよっぽど立派だと学生が嘆いているというような話も率直に聞かされてまいりました。  四月に公表されました国大協の調査でも指摘されていますけれども、皆さん異口同音に現在の研究費、それから設備、施設ではとても対応できない、研究旅費も満足にないと、こう述べておられました。  例えば、北大には先ほど言いました海藻標本を初め札幌農学校の開校以来百余年にわたる学術研究の成果として、貴重な学術資料が多数蓄積されています。総数で四百一万点にも上るこれらの資料は国際的にも高く評価されて、今後再び収集することは不可能と、こう言われています。しかし、この貴重な資料はばらばらに狭い場所に分散されて、風化、消滅の危険にさらされているという状況なんです。  このため、大学では前々から学術資料館を建設するという構想が検討されています。現在では理学部の再開発計画と関連をして、理学部の本館を残してそこを資料館にするという、こういうことが構想されています。ところが、予算が厳しいために概算要求をしても理学部の再開発計画すらなかなか実現しない、したがって資料館の構想自体も進まないという話を聞いてまいりました。  予算の充実拡充努力されるという大臣の御答弁でした。そうであれば、大学のこうした構想に積極的にこたえていくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  216. 野崎弘

    説明員(野崎弘君) 今先生の方から北海道大学の理学部の問題につきまして御質問があったわけでございます。  この理学部の校舎の改築整備につきまして、学内で検討の結果、研究教育の高度化等に対応するために再開発計画によって整備を図ることとしたいということで、文部省にもお話があったわけでございます。御存じのように、近年教育研究の高度化とか多様化などの社会的諸要請等を踏まえた機関の創設あるいは学科の新設、改組というものが行われておりまして、これらに対応します施設の整備を緊急優先的に行わなきゃならない、こんな状況もありまして、これをまだ採択するに至っていない、こういう状況なわけでございます。  文部省といたしましては、この再開発計画につきましても、これから大学の要求も踏まえまして、一方財政事情もございますので、その辺総合的に勘案しながら検討してまいりたいと思っております。
  217. 高崎裕子

    高崎裕子君 大学から要請があったらぜひ積極的に対応していただきたいと思います。  次に、定員問題についても大変切実な要望が出されたわけですが、国の定員削減によって研究、教育が維持できないという実態は共通しているわけです。助手が削減され研究に支障を来しているとか、事務官や技官も理学部ではこの十年間に二十三名も削減されている。技官の場合は三割の削減となっているわけです。研究活動を支えているこれらの職員の削減でもう大変な状況になっていると。このように研究、教育、医療の充実を図るために必要な定員が措置されないために、大学としてはやむなく定員外の職員として多くの職員を雇用せざるを得ない状況になっているわけです。  きょうはその中で国立大学の演習林に働く林業技能補佐員の問題について質問をしたいと思いますが、まず演習林で働く林業技能補佐員の位置づけ、役割について文部省はどのように認識されておりますでしょうか。
  218. 野崎弘

    説明員(野崎弘君) 国立大学の演習林に林業技能補佐員の方が勤務をされているわけでございますけれども、私どもは、これらの方々は研究の計画に基づきまして教官の指示、指導により森林の維持管理、研究補助等を行っておるわけでございまして、その果たす役割は大変大きいものと、このように認識しております。
  219. 高崎裕子

    高崎裕子君 大変重要な役割という認識だと言われたとおり、名前は補佐員ですけれども、実質は定員内の職員と同様に演習林の試験研究、運営にとって欠くことのできない役割、存在であると。それにもかかわらず、定員外の職員ということで不安定な身分に置かれ、待遇面で劣悪な状態に置かれているわけです。  先日、北大の演習林の林業技能補佐員の方々と懇談もしてまいりましたけれども、そこで一番切実な問題として出されたのは賃金の頭打ちと期限つき雇用の問題です。森林を守り育てるということ、この仕事に本当に誇りを持って愛着も持っておられる。しかし、不公平だなという実感がある。チームワークが大切な仕事で本当に困る。こんな状況では働く意欲もなくなるんです。このままでは地域から出ていかざるを得ない。もう三十を過ぎても賃金が安くて結婚もできないと。本当に切実な問題が次々と出されて、ぜひ改善をしていただきたいと思うわけですけれども、この点いかがでしょうか。
  220. 野崎弘

    説明員(野崎弘君) 一般的に非常勤職員の賃金につきましては、常勤職員の勤務との均衡というものを考えながらこの額が決まっておるわけでございます。そういうことで、頭打ちの話もございました。これは、常勤職員につきましても採用の際の年齢制限というのがあるわけでございまして、そういうようなところから非常勤職員につきましても同じような形がとられているわけでございます。  御存じのように、林業技能補佐員につきましては、従来から加算額、これは演習林が多く過疎地にある、そして労働力の確保が困難である、あるいは林業技能補佐員の職務内容も育林、土木あるいは計測等と幅が広い、それから一定の経験及び技術を有する者を雇用する必要があるというようなこと、あるいは採用が著しく困難であること、並びに林業技能補佐員の多くは高齢者である、そして扶養親族も多く有する、そしてその大部分が世帯主であるというような実態も考慮いたしまして、昭和六十二年度以降、日給額の加算に当たりましては、常勤として採用された場合に受けることになる俸給月額に一定額を加算した額をもとに決定できると、このような措置を講じてきているところでございます。
  221. 高崎裕子

    高崎裕子君 賃金の頭打ちと期限つき雇用の問題というのは、本当にこれは大変な問題で、これだけでも時間がかかる問題ですので、きょうはこれ以上は質問できませんけれども、大変深刻な問題である、その認識を持たれてぜひ改善していただきたいということを強く要望いたします。  加算額のお話が出ましたが、それは後に回しまして、演習林で働く人たち、これはもう定員内外にかかわらずですけれども、例えば雨竜演習林、これは母子里といって日本で一番寒い気温を記録する場所で、冬は零下四十度近い状態になる、四十度を超えたこともあります。夏は三十度を超えるという厳しい自然環境の中で、例えば冬場にチェーンソーを使用しての伐採など危険かつ困難な作業に携わっておられるわけです。しかし、現在は何らの手当もないわけです。このため、例えば特殊作業手当というような形でぜひ新設をしてほしいという要望が本当に前々から出されているんです。  文部省としても早期にこれが実現できるように特段の努力をしていただきたいと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  222. 野崎弘

    説明員(野崎弘君) 国立大学の演習林等に勤務いたします林業技能補佐員に対します特殊勤務手当の支給の話でございます。私どももこの数年来概算要求を行っているわけでございますけれども、大変厳しい財政事情など、そういうようなことで今まで認められていない、こういうような状況でございます。  文部省といたしましては、引き続き手当の支給ができるような努力をしてまいりたい、このように思っております。
  223. 高崎裕子

    高崎裕子君 ぜひよろしくお願いをいたします。  さてそこで、扶養手当の問題、最後にお尋ねしたいわけですけれども、昭和六十二年から、文部省ではこれを加算額というふうに言っているわけですが、支給される根拠については先ほど御説明いただきました。  この扶養手当、加算額、林業技能補佐員と同じような仕事に携わっているほかの省庁で、林野庁ですがございますけれども、国有林で働く基幹作業職員というふうに呼んでいるわけです。この方たちも実は定員外職員なんですけれども、ここでは扶養手当が全額支給されているんです。また、運輸省でも本省の事務補佐員に対して扶養手当相当額を支給するようになっているということで、これは各省庁予算の範囲内でということはありますけれども、文部省がその気になればこれはもうできるということなわけです。もうぜひやっていただきたい。  なぜ今できないのかということをお伺いしたいと思います。
  224. 野崎弘

    説明員(野崎弘君) 非常勤職員一般に考えますと、職務に対応する給与ということでございますので、扶養手当的なものがそこに入るのかという基本的な問題があるわけでございますが、先ほど御説明いたしましたように、林業技能補佐員につきましては加算額を支給している、いろいろな状況の中で昭和六十二年度以降こういう措置をした、こういうことでございます。
  225. 高崎裕子

    高崎裕子君 定員内職員の場合の扶養手当が支給された昭和六十二年当時で、配偶者の場合で一万五千円なんですね。これが一万六千円に現在改善されています。定員外職員の扶養手当、加算額というのは七千円なんですね。半分以下ということで、少なくとも定員内職員が上がっているわけですから、これに準じて加算額の引き上げをすべきではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  226. 野崎弘

    説明員(野崎弘君) 今の加算額の引き上げの話でございますけれども、これは各大学におきましていわゆる校費から支出をしている、そういうようなことで予算上の制約等の問題もありまして大変厳しい状況にある、このように思っております。この問題につきましては、やはり各大学の実情等も踏まえながら慎重に検討していくべき事柄である、このように理解をしております。
  227. 高崎裕子

    高崎裕子君 この七千円というのは固定的ではないというふうに伺ってよろしいわけですね。
  228. 野崎弘

    説明員(野崎弘君) 固定的でないと、当時の状況の中で加算額七千円というものが決まって、ずっとそれが来ておる、こういうようなことでございまして、あくまでもこれは予算上の制約等の問題もあるということでひとつ御理解をいただきたいと思います。
  229. 高崎裕子

    高崎裕子君 もうぜひこれは引き上げていただきたいという要望をいたします。  最後に、大臣にお伺いしたいんですけれども、林業技能補佐員が演習林にとって本当に必要不可欠な基幹的職員であるということで、このいろいろな問題を解決するためには当然定員化の方向でいくべきだと、もう基本的にはこれに尽きるだろうというふうに思うわけです。したがいまして、北大関係者も言っていましたけれども、定員削減は少なくとも文教関係についてはやめてほしいと。国大協も最近、教官と看護婦について第八次定員削減計画対象から除外してほしい、教育研究の遂行に欠くことのできない教育研究支援要員並びに事務系職員についても同様の配慮をしてほしいという趣旨の要望を出しています。  この職員の定員化の問題、またそれに至る前にも予算の充実など、もうぜひぜひ努力をしていただきたいと思うわけですけれども、大臣の御見解をお尋ねして、質問を終わりたいと思います。
  230. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 私ども先ほど言いましたように、この国立大学の演習林に勤務する林業技能補佐員に対する特殊勤務手当、これは数年来、私自身概算要求しているんですが、これ本当に認められないで申しわけないと思います。  また、国立学校の非常勤職員につきましては、いわゆる定員繰り入れの措置を行うことは、非常勤職員制度の趣旨からも、非常に今現在の情勢から、これはやはり私は、できるものとできないもの、この委員会で全部はっきり言えることはちょっと正直困難でございます。やはりできることとできないことありますが、議事録にも出ますから、ちょっとこれは私の口からは非常に今困難である、このように思います。
  231. 高崎裕子

    高崎裕子君 終わります。
  232. 高井和伸

    高井和伸君 文部省にお尋ねいたします。  私が参議院議員になりましてから、今までちょっとぼんやりして気づかなかったことで、学校へ行って気づくことがあります。それは小中を通して制服の問題でございます。私のここで言いたい論旨をあらかじめ先回り言っておきますと、放課後の時間ぐらいはある程度学校の制服の着用を除外してもいいんじゃないか。もう少し自由にした方がいいんじゃないか。日曜日も同じ。お父さんとお母さんと一緒に町へ遊びに行くときも同じ。そういうような観点を持っておりますが、どうも実態はそうでないらしいということを踏んまえての質問をいたしますけれども、この小中学校の制服というのは、これは規制というんですか、そういう生活の対応は具体的にはどのような根拠でだれがどういう方針でどういう考えで行っているのかお尋ねします。
  233. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 小中学校の制服の決まりでございますが、これは当該学校の内部規律を一般的な包括的な規定として校則というのを決めております。これは職員会議等の意見も徴しながら、最終的には校長の責任判断で決めているところでございます。その中で、小中学校につきまして制服を決めているところは制服を決めておるというのが実情というふうに私ども理解しております。
  234. 高井和伸

    高井和伸君 今のお話ですと、そうすると学校内外も及ぶというふうな基本的な発想なんでしょうか。
  235. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) この辺の考え方というのは大変難しい問題であろうかと思いますが、例えば一般的に私ども公務員につきましても、公務員の身分に伴う規制という、服務規律というのがございまして、御承知のとおりに公務員については、その職務外であっても信用を失墜するような行為を行ってはならないとかということが決められているわけでございます。かつてはこの法律関係を特別権力関係に基づく規制であるというような、講学上そういう定義をして学校で講義などで教えている、大学などで教えていたことがございますが、いずれにしましても公務員の身分に伴う規制である。言いかえれば、職務遂行上の義務だけではなくて職務遂行に関係ない分野においてもそういう規律が働くんだという考え方でございます。  学校における小中学校の生徒と学校との身分関係が学校外にまで、果たして放課後とかそれから日曜、祭日などの場合の服装にまで及ぶのか及ばないのかというのは大変議論があって、正直言って難しいところじゃなかろうかと思います。ただ、学校の方からそこまでやっていいかどうかは別といたしまして、学校の方の考え方は、やはり自分のところの学校の生徒は放課後も、それから日曜日などもきりっとした服装で行動してもらいたいという、そういう願いがあって規制をしているんじゃないかと思います。
  236. 高井和伸

    高井和伸君 学校の児童生徒は公務員か、こういうふうな同じだという発想のようなベースにおける御回答というか御答弁は、大変何というんですかね、何と言いようもない、まあちょっと余り失礼な言葉は使えないんで詰まりましたけれども、何とも言いようのないことです。  しからば、文部省として、一般的に学校教育の責任官署としてどのようなそういった問題についてお考えを持っておられるのかお尋ねします。
  237. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 私どもとしましては、一般に児童生徒が心身の発達段階の過程にあるということ、それから学校が集団生活の場であるということなどから、学校に一定の決まりを置いておくということもこれまた必要なこともあるわけでありまして、校則それ自体の存在意義というのはこれは否定することはできないだろうというふうに考えております。ただ、制服の問題を含めまして、校則は日々の教育指導にかかるものでありますから、児童生徒の実態やそれから時代の進展などに応じて絶えず見直していくことが大切だろうというふうに考えております。  さらに、校則に関する指導に当たっては、教師がいたずらに原則にとらわれて一方的な指導を行うんではなくて、一人一人の特性に照らして適切に指導を行うとともに、生徒が校則をみずから守るというようなそういう気持ちを助長することも必要であろうというようなことで、昨年問題になりました高校の校門を閉める事件で死亡者を出してしまったという痛ましい事件の後、私ども積極的に校則の見直しを行うべきだという指導をいたしておりまして、その結果、それから今日までの間に大体七割ぐらいの学校が、中学校と高等学校でございますが、校則の見直しを行うという状況でございます。さらに、ことしの四月に、改めて校則を今言ったような観点から積極的に見直しを行うべきだという指導通知をしたところでございます。
  238. 高井和伸

    高井和伸君 あとは考え、文化、教養、いろんなものでの一般的な議論になってしまうんでこれ以上申しませんが、最後に大臣のお考えを聞きたいと思います。  今のお話の中にもありましたように、時代の流れ、進展、そういったものに原則的な問題にとらわれずにいろいろ対応していくべきだという基本的なお考えがありました。私、きりりという言葉は大好きでございますけれども、放課後まで校則にとらわれて、例えばポリエステル一〇〇%のトレーニングウエア上下を、夏でも長ズボンでいるのは非常に痛ましいというセンスなんですね、私は。きりりじゃなくて痛ましい、何ともかわいそう。何でそんなことを今の時代やらなきゃいけないか。  私岐阜県の選出でございますので余分なことを言いますと、岐阜県はアパレル、衣料品の世界でございますが、余りそんなものに拘束されちゃうと売れなくなってしまうという、番外の希望もあるわけですが、かなり自由に、学校におけることはよろしいとしましても、創造性豊かな、さらに美的センス、いろんな面からいったらもう少し自由さが基本的にはあった方がいいんじゃないか、このような率直な感想を持ったところでございますが、大臣のお考えはいかがでございますか。
  239. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 岐阜県の八幡町立小学校、よい子の暮らしというのを私見てまいりました。  今局長が申し上げましたように、児童生徒が心身ともに発達の過程にあること、学校がまた集団的な生活の場であるということから、学校には私はやはり一定の決まりがある。私は戦争中の育ちですからやっぱり蛇腹の制服というのを誇りに思っております。しかし、家へ行けばこれはやはりそれを脱いで、ゆっくりしたい気持ちになるのも当然であります。やはり校則が毎日の教育指導にかかるものでありますから、児童生徒の実態あるいは時代の進展、そういうものに応じて絶えず積極的に見直しすることが必要であろう。  ただ、一般的に私は、校則見直しはかなり進んでいる、このように思います。現在見直し中を含めて全体の七〇%以上の学校で見直しているということを聞いておりますので、私は、見直しを進めた学校のほとんどが何らかの校則改定を行っているんじゃないか、このように思います。
  240. 高井和伸

    高井和伸君 続きまして、法務省にお尋ねいたします。  日本弁護士連合会というところが会館を持っておりまして、その地代を国にお支払い申し上げておるわけでございます。その地代について、昨今大変日本の土地高騰のあおりを受けまして高くなってきている。年々大変な率で上がっている。通常地代というのは、粘着性という言葉がありまして、余りめったに上がらない。上がっても周りの環境に合わせてやっとこさ三年に一度、五年に一度上がるのが、毎年ばんばんと上がっていくというようなことで、弁護士会、このほかに各地にもございますけれども、ある意味では国の土地の上に建てさせてもらっているというか、過去の歴史上の問題でいろいろあるわけでございます。  そこで、今のような実情から、具体的な数字は求めませんけれども、こういったものに対する歴史的な経過、まあ地代の問題ですがね、そしてこういった日弁連が公益的、公共的な団体としてある程度そういう地代には反映されているんだろう、こう考えております。それなりに私もわかっておりますが、法務省のお考えあるいは事実関係について御答弁願います。
  241. 高野利雄

    説明員(高野利雄君) 日弁連の地代につきまして、昭和三十一年十二月二十日に法務省は日弁連との間で、本件土地につきまして地代を年額十一万九千六百二十八円といたしまして賃貸借契約を締結しております。この地代は昭和四十六年三月まで据え置かれてまいりましたが、同年四月以降昭和四十九年三月までの間の地代は日弁連との協議により毎年値上げされてまいりました。さらに、昭和四十九年四月以降の地代は、会計検査院の御指摘等もございまして、大蔵省通達を基準に、さらに大蔵省との協議の上、軽減措置等を講じながら順次値上げをしてまいりまして、昭和六十二年二月十三日に当初の契約が満了いたしましたのでこれを更新いたしました。最終的に現在の地代は年額二千百八十五万八千五百三十一円をいただいておりますが、この地代につきましては平成元年度の分と同じでございます。つまり、二年間据え置いたままの状況でございます。
  242. 高井和伸

    高井和伸君 今のところで、単純に昭和三十一年当時と現在を比較しますと、ざっと二百倍の地代になっておるということが一つ客観的事実としてわかりました。  そこで、あと一つ、これがかなり高くなってきてしまったというのは、いろんな今おっしゃった会計検査院あるいは大蔵省の通達というようなことで、しかも軽減措置をなさっているという上での話だと思いますが、先進諸国の外国などはどんなぐあいに、同じようなケースがあるとすればどうなっているのか。幅広い調査能力でわかっていたら教えていただきたい。
  243. 高野利雄

    説明員(高野利雄君) 残念ながら現在のところまでそういった資料はございません。
  244. 高井和伸

    高井和伸君 それでは、先ほどの御回答の中にありました軽減措置をとっているそういった根拠は、やはり日弁連、日本弁護士連合会の公的な性格をしんしゃくしてでの話だと思います。このことが、すべての場面に我々としては、我々というのは私本業が弁護士もやっているものですから我我の言葉が出ましたけれども、この公益的な側面をどのぐらいお認めになっているのかというか、参酌しているかというような場合に、どのような回答を聞けますでしょうか。
  245. 高野利雄

    説明員(高野利雄君) 具体的には昭和四十九年三月三十日付で、法務省は理財局長と協議をいたしまして、先ほど申し上げました軽減措置をしております。それは、使用面積につきまして実際に許可した面積の四分の三をもって使用許可面積とするという内容。第二点は、基準使用料に乗率というものがございますけれども、これを普通財産の貸付事務処理要領によりますと、前年分の相続課税標準価額の百分の一・七を乗ずるということになっておりますが、これも百分の二に乗ずるというように軽減措置を講じております。  これは、おっしゃるような弁護士会の公益性というものを考慮の上なされたものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  246. 高井和伸

    高井和伸君 ちょっと事実確認ですが、百分の一・七を百分の二ですか。逆じゃないですか。
  247. 高野利雄

    説明員(高野利雄君) そのとおりでございます。
  248. 高井和伸

    高井和伸君 最後に、要望としてお聞き願っておきたいと思いますけれども、今のお話でそれらに公益性、公共性が認められた上での措置がとられているということになりますけれども、弁護士会、日弁連、特に日弁連の仕事の内容を具体的に考えますときに、法務省などからの例えば司法制度改革について弁護士会はどう考えられますかというような意見照会に対するいろんな提言をやっていて、聞きますと大体それが七、八割の日弁連の仕事になっている。そのほか弁護士会は、自治権が与えられている関係上、資格審査の問題だとか登録の問題だとかそれから懲戒の問題だとか、そういったものもやっています。もっと言えばいろんな委員を公共団体に推薦するというようなこともございます。  そういったことで、ある意味ではほとんど一〇〇%近くが公共的な仕事ばかりだろう、もうけていないということから、非常に地代としては大変あっぷあっぷの状況というふうに一般的になりまして、良質なリーガルサービス提供の上にもこの公益性をぜひ認めていただいて、今後の地代の算定に当たっては御配慮いただきたいということを希望いたしまして、次労働省に移ります。――どうぞ。
  249. 高野利雄

    説明員(高野利雄君) 今お話の点につきましては、大蔵省理財局と協議してまいりたいと存じます。  それから、先ほど申しました普通財産貸付事務処理要領の百分の一・七と申しましたが、その後改定がございまして、百分の四というふうになっておりますので訂正させていただきます。
  250. 高井和伸

    高井和伸君 百分の四が百分の二。
  251. 高野利雄

    説明員(高野利雄君) はい。訂正させていただきます。
  252. 高井和伸

    高井和伸君 労働省にこれで三度目のお話をお尋ねいたしますが、社内預金でございます。  二週前には岐阜において日東あられの社内預金、これは実は九百五十名の方が六億七千万の社内預金、これを積んでいたところ倒産してしまった。そして、二週間前の労働省の御回答は、届けの上からは問題ない、そして先週は目下調査中である、私の方の保全命令を出してくださいということについての回答はそのようでございました。きょうはその後の対応、労働省はどのようになさっておるのか簡潔にお尋ねします。
  253. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 日東あられの社内預金の問題につきまして、会社の関係者あるいは保全管理人等から事情を聴取したりして鋭意調査を進めてまいりました。現在までのところわかった点について主な点だけを申し上げたいというふうに思います。  第一に、これは既に答弁申し上げましたが、社内預金の額、労働者数は、労働者数が九百四十六名、預金総額が六億七千百二十七万三千円であるということ。それから第二番目に、日東あられ株式会社は、保全管理委員会方式という形で保全措置を講じておりますので、それの開催について調べました。少なくとも現在までのところ、平成二年四月一日から平成三年三月三十一日までの一年間において一度も開催されておりません。それから第三番目に、支払い準備金制度をとるということでありますが、それについては少なくとも預金額の全額について用意されていなかったという疑いがあるということ等が明らかになっております。  私ども労働省といたしましては、これにつきまして既に答弁申し上げましたが、既に二度にわたって文書による要請を行ったり、あるいはこの問題の事実関係の把握を行って、これが適正に処理されるよういろいろ働きかけを行ってきたところであります。  お尋ねの今後どのような措置を講ずべきかという点につきましては、現在関係者が会社の再建の可能性を探って御努力をいただいているという状況であるので、先生指摘の貯蓄金の保全措置に係る命令の問題を含めまして事態の推移を注視しつつ慎重に今検討している段階であるというふうに……。
  254. 高井和伸

    高井和伸君 時間も来ちゃったのできょうは、前回は逆だったものですから、最後に私の方の考えを申し上げますと、一つ質問します。  会社の再建が大事なのか、労働者の預金債権確保が大事なのか、このどっちなんですか。
  255. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 私どもといたしましては、この社内預金が円滑に返還されることを最優先に処理すべきであるという考え方に立って対応していきたいというふうに思っております。
  256. 高井和伸

    高井和伸君 今度は労働省が担当でございます。時間が切れましたので、そのときにはもう少し総括的な質問をしたいと思います。よろしくお願いします。そして、預金六億七千万、九百五十名の労働者の方々の預金債権を守ることは、他の社内預金の債権者に対しても安心感を与えることにもなります。ほうっておきますと、労働省が何もやらない、取りつけ騒ぎが起きるんじゃなかろうかと私は予想しておりますので、その点を含んで、さらなる御努力を期待しまして私の質問を終わります。
  257. 三治重信

    ○三治重信君 まず、外務省にお尋ねいたしますが、この問題はもう四十七年以来国会でたびたび問題になっている非常に古い問題であるとともに、去る五月二十一日の参議院決算委員会で、当委員会で北朝鮮の日本人妻の里帰り問題について、外務大臣が人道上大切な問題であり、実現を求める日本の姿勢を明確にするために閣議決定か閣議了解を行う方向で検討したいという旨の答弁があったと、こういうことで、関係の日本人妻の会の方から、ぜひもう一度念を押して、大臣にこの問題についてどう対処される方向かさらに聞いてほしいという切なる要望がございます。よろしくお願いいたします。
  258. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 先般の本委員会におきます私の答弁は、同委員指摘の閣議了解及び閣議決定等も含めて何が最も効果的な方法であるかについて、今後留守家族の方々や関係議員の先生方といった関係方面と相談をしながら検討していきたいという趣旨を申し上げたものでございますが、この問題は御案内のように日朝国交正常化交渉の議題となっておりまして、政府としては今後とも基本的に日朝交渉の場で里帰りの早期実現を求めて、北朝鮮側の誠意ある対応を粘り強く求めていきたい、このように考えております。
  259. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、閣議了解とか閣議決定の問題より先に日朝の正式な外交問題の方で取り上げているから、この閣議決定とか何かのやつは後の問題だと、こういうふうな了解でいいわけですか。
  260. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 御指摘のとおりでございまして、日本を訪問されました北朝鮮側の国際部長が私との会談におきまして、私の方からこの問題は人道的に日本国民が大変大きな関心を持っている、この解決について誠意ある態度をとってもらいたいということを申し上げましたところ、先方から日朝交渉の場で協議をしていく過程においてこの問題は解決される可能性があるという趣旨の返事がございましたので、私どもは日朝間の政府間レベルの交渉においてこの問題をさらに強く要請をしてまいりたいと、このように考えております。
  261. 三治重信

    ○三治重信君 しつこいようですが、先日の北京での会合でもこの問題が出たんですか。しつこくやると、こういうことですから。
  262. 谷野作太郎

    説明員谷野作太郎君) 先般の第三回目の会議におきましても、この問題につきまして私どもの中平代表より改めて強く北朝鮮側の配慮を要請した経緯がございます。
  263. 三治重信

    ○三治重信君 日本人妻の会の方々は、この大臣の閣議決定、閣議了解という方向で検討したいというのを非常に期待を持っておられるが、きょうの答弁ではそういう回りくどいことでなくて、直接北朝鮮と外交交渉で解決するように努力をすると、こういうふうな答弁と、また実際やっているんだと、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  264. 中山太郎

    ○国務大臣(中山太郎君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、閣議了解あるいは閣議決定というようなことがいつの時点で最も効果的であるかということも、外交交渉とあわせて私どもはこの精神を生かしながら引き続き努力をしてまいる、こういうことでございます。
  265. 三治重信

    ○三治重信君 どうもありがとうございました。どうぞ、結構です。  次に、文部省の方にお尋ねしますが、私は学校教育で、義務教育は別として高等教育や学術研究なんかで私学というものが先進文明国では非常に発達してきている。それは、やはりそれぞれ独特の教育精神を持った方々が独自に教育を展開するために私学というものができた。そういうところに、急に何だか私学補助というものができて、私学振興財団なんというものができて、文部省がたくさんの私学補助をやるようになったのでございますが、私はこういうことによって金の方から政府統制が強くなって私学の特徴が非常に失われてきたんじゃないかと。  それは確かに金が要るんだけれども、アメリカがやっているように私学が努力をして献金を集めて、その献金についての免税なりまた献金がしやすいような方法というものをもっと考えるべきじゃないか。私学そのものをもっと自主独立させて文部省の統制から離す方向で文部省はやる必要があると思うんですが、いかがですか。
  266. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 先生の、大先輩の御意見でございますが、私はやっぱり私学助成は私立学校の建学の精神に基づいた特色のある教育機関、これを振興して私立学校の健全な発展に資するためにやはり教育研究条件の維持向上であるとか、あるいは修学費の経済的負担の軽減、また経営の健全性を高めることを目的として実施しているということを考えております。  私学助成開始以来、私立学校それぞれの自助努力もあり、私立学校の教育研究条件が皆さんのおかげで改善されまして特色のある教育研究が推進されていることを考えると、やはり私学助成の私は意義は大きいものがある、このように考えております。  今後とも、我が国の学校教育におきまして果たしている私学の役割、こういう重要性にかんがみて、特に大学は八〇%、また高等学校は二七から三〇、幼稚園におきましては八二%、そういうことでございますので、ぜひやはり私学助成の充実に努力してまいりたい、このように考えております。
  267. 三治重信

    ○三治重信君 その私学助成の方法は、国の財政から直接援助の形もあれば、私学が努力をして集めた金について税金なりなんなりを免除して集めやすいようにしてやるというような方法があるということを先ほど申し上げたんですが、私学の独自の資金集めについての援助の方法について文部省はどう考えているんですか。
  268. 奥田與志清

    説明員奥田與志清君) お答え申し上げます。  ただいま大臣が申し上げましたように、私立学校の果たしている役割というものは先生も御指摘のように非常に大きいものがございます。  そこで、私立学校におきましてやはり基本的には自助努力をしていただくというふうなことが基本でございますけれども、同時に多様な方法でこれを支援していくということも大事ではなかろうかというふうに考えておりまして、現在、先ほどちょっとお触れになられましたでしょうか、私立学校振興助成法という法律に基づきまして私学助成、助成事業とそれから長期低利の融資事業、さらに加えまして税制上の優遇措置、これを規定いたしておりまして、こういう方法で私学が健全な発達を図るようにというふうな趣旨で設けられております。  お話ございましたように、税制の関係で申し上げますと、例えば各学校法人におきます寄附金の受け入れを促進するというふうな趣旨から、企業等が公益法人に対しまして寄附をする場合に、一つは特定公益増進法人への寄附といたしまして特定の損金算入枠が運用される。それからもう一つは、日本私学振興財団を通じまして指定寄附金としてこれは全額損金算入をされるというふうなことになっておりまして、また個人の寄附につきましても同様の趣旨の優遇措置が講ぜられております。したがいまして、私どもはこういう制度を大いに私学におきましても御努力をいただき、また民間の篤志家やあるいは企業等におきましても御協力をいただきたいというふうに考えているところでございます。
  269. 三治重信

    ○三治重信君 それじゃその方向だと、私学への補助金というものと各学校が独自で集める金額との比較バランス、独自で集める方に重点を置いて軽重を考えるというような、利益誘導と言っては悪いかもしれぬが、そういうようなことは別になくて、私学補助は補助できちんと各学校の入学者数とか学科の教員数とかで一律でやって、各学校が独自に集めるやつは独自で集めるやつと関連なくやっているというふうに考えられるが、どうなんですか。その間に関連してできるだけ私学が独自で金を獲得できるような刺激的なことをやっているかどうか。
  270. 奥田與志清

    説明員奥田與志清君) ただいま先生が御指摘のようなことは、実は私学助成経常費補助金の配分におきまして、ちょっと技術的でございますので細かく申し上げることは避けさせていただきますけれども、いろいろな物差しを当てはめて経常費補助金の配分をいたしております。その場合に、今先生指摘のように、自主的に財源を集めるというふうなことをいたしますとできるだけ経常費の配分が間接的に有利になる、そういう効果も期待するような物差しも持っております。
  271. 三治重信

    ○三治重信君 私は、補助金というやつは一遍もらい出すというといつまででもやまらぬ病になってしまって、金が教育そのものを毒するんじゃないか、こういうふうに思って、やはり私学が私学としてやるからにはそれだけ自分の責任を持ってやれるように文部省は環境をつくってやる、私学が立派に育つように独自の環境をつくってやるという方向でぜひやってもらった方がいいと思うんです。助成法とか私学振興財団というようなものをつくってどんどん文部省の支配下に入れることだけが中心になっては、私は何のために私学をやっているのか意味がない、こういうふうに思うわけです。  それから、一つこういう問題があるんです。義務教育の学区制というものを余り厳しくやっているために、いわゆるいじめの問題が起きたときでも親はどうしようもない。学校はもう行くところをきちんと決められている。せめてそういういろんなところで、隣の学校とかへ行く、少しは越境入学でも自分の好きな、親戚なりのところへ預けてでも学校を選択できるようなことをやってほしいということが言われるし、また事実、余り厳格な学区制というものは、これは非常に義務教育の学校の先生をもういわゆる役人的にしちゃって、教育に熱心であろうがなかろうが一定の生徒はあるし施設は全部やってくれるし、まあぬるま湯につかったことになって、義務教育というものがちっとも教育に熱が入らぬというふうに考えるが、どうですか。
  272. 井上裕

    ○国務大臣(井上裕君) 今の先生の御意見も確かにありますが、やはり義務教育のこの通学区域制度は適正な規模の学校と教育内容を保障しておりますし、これによって教育の機会均等とその水準の維持向上を図るという趣旨から設けられているものでありまして、これを廃止するということはちょっと難しいんじゃないかという感じを抱きます。  ただ、通学区域制度の運用につきましては、各市町村の教育委員会におきまして保護者の意向等できるだけ生かせるように弾力的運用に努力されております。  それでは、どういう弾力的なことかというと、細かいことになりますが、例えば保護者の希望によりまして、地理的あるいは体の問題、指定された学校に通学することが他の学校に通学する場合に比べて困難であるとか、あるいはまた家庭環境の場合、住宅地以外の場所で商店を経営してお父さん、お母さんと毎日店に通っており、かぎっ子防止のため店の近くの学校に就学させる場合、あるいはまた転居によるもの、中学三年生で途中で家庭が引っ越した、こういう場合は弾力的にそういうこともできるということになっておりまして、やはり私ども文部省としては地域の実情に沿って多様な方法を工夫していくよう指導してまいりたい、このように考えております。
  273. 三治重信

    ○三治重信君 弾力的な運用の項目を二、三述べられたんですが、この範囲をもっと広げて、実際余りに教育の施設やなんかを守るばかりが中心になって、教育を受ける側の立場に立って学校選択もできるような幅広い――学区制そのものはあっていいと思うんですよ、やはり義務教育だから。しかし、その中で全部住民が拘束されてしまわないように、ある程度希望を入れてほかの学校へも通えるように、ぜひ弾力的に幅を広げてやっていただきたいと思います。  じゃ、以上で終わります。
  274. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 他に御発言もないようですから、外務省及び文部省決算の審査はこの程度といたします。  次回の委員会は六月二十六日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時六分散会