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1991-06-12 第120回国会 参議院 決算委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年六月十二日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月十日     辞任         補欠選任      井上 哲夫君     高井 和伸君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         及川 一夫君     理 事                 大浜 方栄君                 後藤 正夫君                 守住 有信君                 会田 長栄君                 猪熊 重二君     委 員                 秋山  肇君                 石渡 清元君                 尾辻 秀久君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 陣内 孝雄君                 福田 宏一君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 喜岡  淳君                 種田  誠君                 西岡瑠璃子君                 渕上 貞雄君                 木庭健太郎君                 諫山  博君                 高井 和伸君                 三治 重信君    国務大臣        法 務 大 臣  左藤  恵君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       川嵜 義徳君        最高裁判所事務        総局総務局長   金谷 利廣君        最高裁判所事務        総局経理局長   町田  顯君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  今井  功君        最高裁判所事務        総局刑事局長   島田 仁郎君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 堯躬君    説明員        警察庁長官官房        総務課留置管理        官        小西  哲君        警察庁刑事局刑        事企画課長    泉  幸伸君        警察庁刑事局国        際刑事課長    小田村初男君        警察庁刑事局保        安部保安課長   中田 好昭君        警察庁刑事局保        安部薬物対策課        長        鎌原 俊二君        法務大臣官房司        法法制調査部長  濱崎 恭生君        法務省民事局長  清水  湛君        法務省刑事局長  井嶋 一友君        法務省矯正局長  飛田 清弘君        法務省人権擁護        局長       篠田 省二君        法務省入国管理        局長事務代理   本間 達三君        公安調査庁次長  関場 大資君        外務省アジア局        中国課長     宮本 雄二君        大蔵省関税局監        視課長      本村 芳行君        文部省初等中等        教育局中学校課        長        福島 忠彦君        厚生省薬務局麻        薬課長      齋藤  勲君        海上保安庁警備        救難部警備第一        課長       大森 寿明君        労働省労働基準        局監督課長    山中 秀樹君        労働省労働基準        局労災管理課長  坂根 俊孝君        労働省職業安定        局次長      伊藤 欣士君        会計検査院事務        総局第二局長   澤井  泰君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和六十三年度一般会計歳入歳出決算昭和六十三年度特別会計歳入歳出決算昭和六十三年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十三年度政府関係機関決算書(第百十七回国会内閣提出) ○昭和六十三年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百十七回国会内閣提出) ○昭和六十三年度国有財産無償貸付状況計算書(第百十七回国会内閣提出) ○平成年度一般会計歳入歳出決算平成年度特別会計歳入歳出決算平成年度国税収納金整理資金受払計算書平成年度政府関係機関決算書内閣提出) ○平成年度国有財産増減及び現在額総計算書内閣提出) ○平成年度国有財産無償貸付状況計算書内閣提出)     ─────────────
  2. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十日、井上哲夫君が委員を辞任され、その補欠として高井和伸君が選任されました。     ─────────────
  3. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 昭和六十三年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は法務省及び裁判所決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 及川一夫

    委員長及川一夫君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 及川一夫

    委員長及川一夫君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 会田長栄

    会田長栄君 会田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  まず第一には、昭和六十三年度あるいは平成元年度の決算審査に当たりまして、法務省関連をして出入国管理行政の中で二、三の汚職の問題について、まずお伺いしたいと思います。  一つは、東京入管横田出張所における汚職問題であります。この点については、平成二年五月、東京地裁判決が出たようでありますが、この事件経過につきまして、率直にお伺いしたいとこう思います。
  8. 本間達三

    説明員本間達三君) 本件につきましては、既に先ほど先生の方から御指摘ございましたとおり、東京地裁において刑が確定いたしておるわけでございますけれども東京入国管理局横田出張所出張所長をしておりました岡山浩之が、その在任中の昭和六十三年夏ごろから平成元年の三月ごろまでの間におきまして、特定の仲介人が持ち込んだ多数の短期滞在者在留期間更新申請案件等約千三百件余りでございますが、これにつきまして、共犯であります統括審査官関根重男をして、申請者本人の出頭なしに申請書記載内容どおり期間更新許可を行わせていたという、便宜を図ったわけであります。  その見返りといたしまして、現金あるいは腕時計等わいろを収受したというのが事案でございまして、平成二年二月十五日に両名が収賄容疑で逮捕され、同年七月七日に刑が確定したということでございます。
  9. 会田長栄

    会田長栄君 それはそのとおり新聞でも報道されておりますから、よくわかります。ただ、ここで私は率直にお聞きしたいのは、この事件というのは、経過をたどっていきますと、非常に大事な問題がここに一つ隠されているんですね。隠されているというか、明らかになっているんだから、隠されていたでしょう。  それは何かというと、この横田出張所長、この方が上司に頼まれて断り切れなくなってこの経過が生まれているというところに私は問題があると思うんですよ。それは本当ですか。
  10. 本間達三

    説明員本間達三君) その点につきましては、私ども調査をいたしましたが、明確に、先生のおっしゃるその上司という人が指示をしたり、あるいは依頼したりとか、そういう事実があって本件因果関係があったということは確認することができませんでした。
  11. 会田長栄

    会田長栄君 これは、余のところの部署だったら、今言ったような答弁でも結構だと思いますよ。しかし法務省でございますから、私はそういうようなわかったようなわからないような答え方というのはないと思う。少なくとも地裁判決が出ている。判決が出てその審理の際にそのことがもうはっきりしているんじゃないんですか。そこをもう一度お尋ねしますよ。それは非常に大事なところなんですよ。
  12. 本間達三

    説明員本間達三君) 当該岡山出張所長先生のおっしゃるその上司という者とが、いわゆる親しい間柄といいますか、そういう気安い関係にあって話を通じたといいますか、その程度のことがあったということは私どもつかんでおりますが、本件の場合は、それ以上に何らかの便宜を供与といいますか、図った、いわゆる不正行為でございますけれども、というようなことまでも指示しているということはなかったというふうに私どもは承知しているところでございます
  13. 会田長栄

    会田長栄君 それでは、この問題についての起訴事実というのはどういうことだったですか。
  14. 本間達三

    説明員本間達三君) ちょっとただいま手元起訴事実は、先ほど私が申し上げた程度は持ってまいりましたけれども、詳細につきましては、手持ちがございませんので、ちょっとお答えはしかねるわけでございます。
  15. 会田長栄

    会田長栄君 これは、昭和六十三年十二月から翌年一月にかけ、日本在留韓国人ビザ延長許可に有利な取り計らいをした謝礼として、韓国人ブローカーの金さんという人から現金四十万円と腕時計一個を受け取ったとして起訴されているんですよ。これは認めているんですよ。したがって判決が出たんでしょう。  私は、そのことに深入りするつもりはないんですよ。ただ、ここの審理を通してわかったことは、これはよくないことだなと思いながらも、元上司に頼まれて、上司の顔を立てなければいけないということになって、結果的にこういうことをやってしまったと言っているんですよ。だから私は、この上司というところが一番肝心なところだと見ているんです。一回、二回は断った、三回目はない、その次も断れないというようなことがわかっているんですね、ここで。だから、こういうわかっていることに対してやっぱり率直に答えてもらわなけりゃ私は困ると思うんですよ。  それは何かというと、この元上司という方は、その背景責任を感じてやめているでしょう。それはどうなんです。
  16. 本間達三

    説明員本間達三君) 御指摘のとおり、そういう疑いをかけられたということについて大変反省いたしまして、みずから退職の道を選んだということはそのとおりでございます。
  17. 会田長栄

    会田長栄君 この事件の発端となった責任を感じてやめていっているんですね。それは事実ですよ。  これ、ついでですから後に伺うことの一例としてお聞きしたいと思うんですが、みずからやめたいと言ってやめたんですから、この方は自主退職ですね。そうすれば当然退職金もその他もみんな上げたんでしょう。それはどうです。
  18. 本間達三

    説明員本間達三君) さようでございます。
  19. 会田長栄

    会田長栄君 私は、他の公務員だったらこういうことは通用しないと思いますよ。それは後ほど裁判所関係でも、余りにも長期裁判になっているということで私は一度お尋ねしようと思っていることでございますけれども、これは他の行政機関だったらこういうことは成り立ちませんよ。この件は法務省であるだけに私はやっぱり今後大事にしていってもらわなけりゃ困るというところで言うんですよ、これ。  今まさしく日本は、国際貢献策とか国際協調とか国連中心とかと言って大変でしょう、日本外交をめぐって。法務省の所管のこのような人たちが、金品わいろを受け取って、アジアの人に与える影響というものを考えたときに、これは見逃すことのできない一つの事実です。日本公務員というのは金品を贈ればどうにでもなるんだと。ましてや入国管理事務所の上司の方がそういうことをあっせんするというようなことを外国に宣伝されてみなさい。これは日本人の一人として嘆き悲しみますよ。一方でそんなに努力していても、一方でこういうことが次々と起きていったら、何のための外交努力でしょうと言うんですよ。そういう意味から言えば、この種の問題というのは、私はそのように軽く、何となく、一過性のごとくお答えされるというのには非常に疑義を感じます。まじめにやっている人たちにとっては疑義を感じますよ、これは。  そういうのが問題になる前にみずから退職をして、それが自主退職扱いになって退職金もいただいて、そして次の職場に移るなどというのは、これは決していいものじゃない。この所長以下の人たちがこれに参画をしていったというのは、その上司の一言がなければとまったかもしれないんですよ。私は恐らくとまったのでないかと見ているんです。だから、事実を弁護する気はございませんけれども、携わった者だけがその責めを負い、外国に迷惑を与え、同じ日本政治の中で営々と努力している者にとっては悲しむべき事実としているんだけれども、その張本人というものがのうのうと生きていられるというのは変な話だと思いますから、そこは率直に私は聞いているんですよ。  これ、おかしなものだと思いませんか。大臣、どうです、今やりとりを聞いていてどう感じますか。
  20. 左藤恵

    国務大臣左藤恵君) そうした責任のある立場の者が、今お話しのようなことがあっては、これはやっぱりいろいろ社会的な疑惑を受けるというようなことは少しでもあってはならないというような問題であろうと思います。  そういう意味におきまして、綱紀の保持につきましても機会あるごとに注意を喚起するというようなこともやって、内部指導の体制の強化に努めてまいっておりますけれども、それにもかかわりませず今御指摘のような不祥事件が起こったということはまことに遺憾なことだと、このように考えます。
  21. 会田長栄

    会田長栄君 大臣、私はもう一度言います。  この所長さんが二回ほどは断ったということがこの中で明らかになっているんですよ。しかし三回から、断ろうとすれば上司のメンツをつぶすというところから、入っちゃったんですと、こう反省しているんですよ。そのことにつきまして、事件が明らかになる前にその上司といわれる人がみずから退職していく、そして、そのままこの事件は終わっているということについて、大臣、どうなんですか。
  22. 左藤恵

    国務大臣左藤恵君) 本人も、法的な問題というよりもそういう自分の立場におきます責任というものを感じて退職願を出してきたんだと、このように考えますが、いずれにいたしましても、今お話し申し上げたようなことで、こういったことはあってはならない問題であろう。したがって、そういうことについて今後もそういうことのないように努力していかなきゃならないと、このように考えておるところでございます。
  23. 会田長栄

    会田長栄君 先ほど私が申し上げたとおり、今、日本政治にとって最も大事なことというのは何かといったら、それはアジアの中で日本がすべての面で信頼されるようにならなければならないというところが、アジア情勢の安定を志向する日本にとっても一番中心的なところなんですよ。それをこのようなことを繰り返していてはどうにもならないというところで私はこの問題を質問しているわけでありますから、同じようなことが繰り返されないようにぜひよろしくお願いいたしますよ。  そこで二つ目の問題です。  大阪入管大阪空港出張所における汚職経過というのはどういうものでございますか。
  24. 本間達三

    説明員本間達三君) お答えいたします。  大阪入国管理局大阪空港出張所統括審査官をいたしておりました中元照行でございますが、昭和六十三年の二月二十四日ごろから平成元年八月十一日ごろまでの間に、いわゆる外国人タレント招聘及び興行等を営む者二名から、招聘した外国人タレント大阪国際空港等における上陸審査び許可並びに出国等に関して有利、便宜取り計らいを受けたことに対する謝礼、それに加えまして今後も同様の取り計らいを受けたいという趣旨のもとに供与されるということを知りながら、十五回にわたりまして現金合計百七十五万円を受け取りまして、収賄をしたという事実でございまして、この事件は本年の二月十日、大阪地方検察庁本人が逮捕されまして、現在起訴されまして、公判が係属中というものでございます。
  25. 会田長栄

    会田長栄君 これ、女性の入国問題で非常にわいろをいただいている。これも一度ならず二度ならずと繰り返されている。もちろんこの大阪入管審査官の問題については、これに絶えずアプローチをかけていた業者、ここに問題があると私は思うんだけれども、その点で一体法務省として、この業者ダンサー中国地方に次々と紹介をしているというさまというのは、正規の手続で実際にやられているということなのか、それとも同様な趣旨で送り込んでいるということなのか。この業者のことについて調べたことありますか。
  26. 本間達三

    説明員本間達三君) いわゆる外国人タレントダンサー等日本興行活動をする者でございますけれども、こういう者を日本招聘するという場合には、通常の形態といたしまして、それを専門といたしますプロダクションという組織がございまして、これが招聘をいたしまして、いわゆるバーとかキャバレーとか、そういう興行を行う場所にその者を派出するという形で行われているわけでございます。  本件贈賄をいたしました者はいずれもこのプロダクション経営者でございまして、そういう関係外人タレントを、まあ恒常的にといいますか、引き続きずっと招聘していたという過程におきましてこの中元審査官と知己になりまして、親しく交際して、その関係癒着が生じたというのが経過になってございます。
  27. 会田長栄

    会田長栄君 もう一つお尋ねしておきますと、この入国審査官が、入国するまでのとらの巻というのを執筆していたことは御承知ですか。
  28. 本間達三

    説明員本間達三君) とらの巻と申しますか、要するに事務処理の要領といいますか、部外には普通出さない、審査官事務を遂行する上でのいろいろな要諦を内容とするものでございますが、これが作成された際に本人法務本省に勤務いたしまして、それの作業の一部に携わっていたという事実はあったわけでございます。
  29. 会田長栄

    会田長栄君 これは四国最大あっせん業者でしょう、背景にあるのは。常時アジア女性二百人ぐらいを中国地方あっせんをしているという業者ですよ。まことにこの関係というのは私は深いと見ているんです。  したがって、その後、大阪入管におけるこの事件発覚後、一体法務省入管職員あるいは手続業者との関係、こういったことについて綿密に点検をして、再指導したことありますか。
  30. 本間達三

    説明員本間達三君) このプロダクションの件でございますが、この事案をきっかけといたしまして、私どももこのプロダクション関係で何らかの職員との癒着というものがあってはならないと考えまして、本件発覚後でございましたけれども、この業者の本来の活動場所四国でございましたから、高松入国管理局中心にいたしまして、従来の審査経過等を再度点検いたした次第でございますが、特段、この贈賄側の者について審査そのものの不正といいますか、そういうような事実は全くございませんでした。いわゆる処理としては適正になされていたというようなことがございまして、そういう意味でこのプロダクションをめぐる不正というものの一部は、一応それをもとにする調査というものは実施した次第でございます。
  31. 会田長栄

    会田長栄君 これと関連をして、東京入国管理局における暴行事件というのもこの間あるわけでありますけれども、要するに出入国管理行政の中で考え合わせなきゃならないのは、日本が今アジアで本当に他の国々から真の友人として、今後アジアの安定のためにお互いに築き上げていくんだというような気持ちを醸成する上でも、この問題というのは見逃し得ないものを見ることができる。そういう意味では、法務省としても再びこういう事件の起きないようによくやってほしいし、ましてや上司が部下に対してそのようなことを誘導するなどということはあってならないことだし、二度と再発しないようによろしく最後にお願いして、次の問題に移ります。  次の問題は、司法行政について、幾つかの点をお伺いしたい、こう思います。  それは、かつて私も行政処分事件原告代理人となって、懲戒解雇無効取り消しを訴えた事件に関与して、三十六歳で解雇され、停職をし、公務員の六十歳定年制で、裁判が終わらないまま定年を迎えてしまったという経緯に携わってきた経験から、どうも日本裁判というものは長過ぎる、果たしてこれは、国民皆法のもとに平等で、法のもとに裁判を受ける権利がある、こう言いながらも、結果的に長期裁判のために、持っている有能な能力というものも生かせないままあたら働き時代を終わってしまうという現実を目の当たりに見てきています。  そういう意味で第一に伺いたいのは、訴訟が提起されて終結するまで、どのような現況になっているんでしょうか。端的にわかりやすく聞くなら、訴訟が提起されて終結するまで、平均何年ぐらいかかっているんでしょうか。最も長い裁判というのはどのぐらいかかっているんでしょうかということを端的にお尋ね申し上げます。
  32. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者金谷利廣君) 裁判所に参ります事件はいろいろな種類の事件がございますので、便宜、一番わかりやすい地方裁判所におきます民事訴訟事件刑事訴訟事件を例にとって申し上げさせていただきます。  地方裁判所におきます民事訴訟事件平成元年に終局しました事件平均審理期間というのは十二・四月でございます。同じく地方裁判所におきます刑事訴訟事件平均審理期間は三・五月でございます。平均審理期間といたしましてはただいま申し上げましたような数字で、全体としては裁判が必ずしも長くかかっているわけではございません。  しかし、御指摘のとおり、一部の事件につきましては長期化あるいは非常に長期化している事件のあることも事実でございます。最近相当審理状況はよくなってきてはおりますが、やはり民事訴訟事件で一審だけの審理期間に五年、あるいは、少ない例ではございますが、十年を要するという事件もございます。刑事訴訟事件の中には、脱税事件等事件が複雑で証人を多数調べなきゃならない事件等で十年以上もかかっている事件もございます。  大ざっぱに申し上げましてそういう状況でございます。
  33. 会田長栄

    会田長栄君 この間決算委員会でも一つ話題になりました水俣病訴訟の問題というのは何年ですか。
  34. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者金谷利廣君) 今手元に水俣の事件審理期間を把握した資料はございませんが、例えばカネミ油症の事件だとか大阪空港訴訟等公害関係事件、あるいはその他医療過誤関係事件等では、非常に長くかかっているものがあることは事実でございまして、事件の中には、最高裁で終局し、あるいは和解で終局したりするまでに二十年近い歳月がかかっているのもございます。
  35. 会田長栄

    会田長栄君 前にここで議論になった、和解勧告が出た水俣病の問題については二十六年、こういう議論もここでやっていますが、訴訟を提起して二十六年といいますと、現実には生きているうちに裁判所判決を聞かないまま冥途に旅立つ、こういうことも指摘されました。したがって、一日も早い和解勧告をというのが裁判所から出ているわけでありますから、厚生省も環境庁も一体になって法務省とこの解決に当たらなければいけないんじゃないかということを申し上げました。  一昔十年というのは今から何十年前の話であります。今やもう一年は昔の十年分進む、変化するとまで言われている。しかし、依然としてこの長期裁判というのはなかなか解消できないでいる。もちろん、それには幾つかの理由もあるでしょう。例えば、訴訟主義とか当事者主義とかいろんな言葉をかつて聞きました。しかし、今申し上げたとおりのような長期になれば、それだけ個人の生きる権利というものを阻害するわけでありますから、これは何としても大事なことなんで、これと関連をして、なぜこのように長期になるのかということになれば、あるいは今申し上げたとおり訴訟主義あるいは当時者主義、こういうものがあって長期になってしまうんですと言ってしまえばそれまでであります。そうではなくて、せめて法のもとに平等で幸せに生きられるようにしていくためにも、この問題というのはまことに重要になってまいりますから、これと関連をして幾つか具体的にお聞きいたします。  これは、裁判官が不足しているから長期間かかるんですか。
  36. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者金谷利廣君) ただいま委員から御指摘のとおり、裁判が長引く原因といたしましてはいろいろなものが絡んでおります。事件が複雑困難で、あるいは百人以上の証人を調べなきゃならないとか、そういう事件の客観的な性質の面に起因するものもございますし、あるいは裁判所側の都合、事情によるもの、あるいは弁護士さんを初め訴訟関係人の都合、事情によるもの、あるいはいろいろ審理の進め方、訴訟活動の仕方に工夫が足りないと、そういった面の原因がさまざま絡んでおります。そういう意味では、裁判官をふやせばより早くなるという一面のあることは事実でございます。しかし、今委員からおっしゃいましたように、遅延の主たる原因あるいは最大の原因が裁判官不足にあるのではないか、こういうふうに申されますと、私どもとしては、必ずしもそうではないと申し上げざるを得ないのでございます。  例えば、根拠といたしまして、最近の統計を見させていただきますと、最近、裁判所にその年に新しく入ってくる事件裁判所で新しく受理する事件を新受事件と申します、裁判官がその年じゅうに判決なり和解なりで処理する事件を既済事件と申しますが、最近数年間の統計を見ておりますと、年間の既済件数、要するに裁判官が処理する件数は、その年に裁判所に入ってまいります新受事件の数を上回っております。そういう意味では、裁判所に来る事件処理する程度裁判官の数はあるということでございます。不足しておれば既済が新受に追いつきませず、未済事件がどんどんふえていくという形になるわけでございますが、幸いなことに未済事件は年々減っております。そういう意味では、裁判官不足が主たる原因、決定的原因ではないと思います。  しかし、先ほど来申し上げておりますとおり、裁判所側の都合、事情によるものもございます。裁判官の数をふやせばよりいい形の審理、よりスピーディーな審理ができるということで、私ども毎年財政当局にもお願いし、また国会におきましても裁判所職員定員法の改正ということで裁判官、書記官等の増員を毎年毎年、大変お手数をおかけすることではございますがお願いし、実現しているところでございます。  委員から御指摘のとおり、昔と違いまして社会生活のテンポが非常に遠くなっておりますので、私ども早くいい形で裁判を終える、充実した審理を早くするということについて一層力を用いなければならないということで、増員をお願いしたり、そのほか訴訟手続の改善の面もいろいろと工夫しております。特に、民事訴訟のおくれというものが多方面から指摘されておりますので、ぜひ民事訴訟手続の進め方を改善しなければならないということで、弁護士さんの御協力も得ながら早くそれを実現したいということで、今裁判所全体として取り組んでいる状況でございます。
  37. 会田長栄

    会田長栄君 私は、これだけ事件件数が多くなっている。裁判官もふやさなければいけない。もちろん裁判官と同様に弁護士もふやさなければいけない。そうすることによってのみ私は審理が促進をして個人の権利というものが確保されるのではないだろうか、こう思うからお尋ねしているわけでありまして、その点はひとつどうぞ、一昔十年のテンポでは、今日の日本の司法は対応できないという時代でありますから、十年が一年になったような時代でありますから、それに対応できるようにして、個人の権利というものをぜひ守れるようによろしくお願いをしておきます。  次にお伺いしたいのは、最高裁の事務総局の人事の問題についてお尋ね申し上げます。  というのは、今裁判官をふやさなければいけない、弁護士をふやさなければいけない、そうすることによって訴訟事件、すべて審理促進ができるというような一面もある。そういう中にあって裁判官というのは特に現行定数の中でも容易ではないのでないか、こう思っているものですから質問するわけでありますが、最高裁の事務総局裁判官、特に判事、判事補が事務総局に出向しているという例は、何人ございますか。
  38. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者金谷利廣君) 現在、最高裁判所事務総局司法行政事務に携わっております裁判官の数は四十四名でございます。
  39. 会田長栄

    会田長栄君 これは判事とか判事補を事務総局に位置づけるというのは、何か法律の根拠ございますか。
  40. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者金谷利廣君) 法律の根拠ではございませんが、最高裁判所の規則といたしまして、司法行政上の職務に関する規則というのがございまして、これに基づきまして裁判会議裁判官に充て得る司法行政関係の職を指定しておる、そういうことが根拠でございます。
  41. 会田長栄

    会田長栄君 そうすると、その根拠は法律の上では明示されていないが、組織並びに運営の円滑化を図るために最高裁の事務総局としてはやっている、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  42. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者金谷利廣君) 憲法によって与えられました最高裁判所の規則制定権に基づきまして、司法行政事務の中でも裁判官を充てる必要のある職務があるということでそういうことをしておるということでございます。
  43. 会田長栄

    会田長栄君 例えば判事、判事補がいわゆる事務総局へ行って仕事をやっている。その仕事というのは一般の事務官が当然やるべき範疇のものだと位置づけられているんじゃないんですか。
  44. 金谷利廣

    最高裁判所長官代理者金谷利廣君) 最高裁判所事務総局でやっております仕事は司法行政事務でございますので、その意味では、裁判官の資格がなければできないというものではないわけでございます。  しかし、実質的に見ますと、事務総局の方では、例えば民事、刑事あるいは私どもが属しております総務局におきましても、一般規則というそういう規則制定に関しましてたたき台的な案をつくるという仕事がございます。こういう規則立案のような仕事につきましては法律知識を要しますし、そのほか下級裁判所裁判官ができるだけ仕事のしやすいようにというような配慮から、例えば執務に参考になる手引をつくる、あるいは執務資料をつくる、そういったもろもろの裁判官が使いやすい資料をつくるというような観点からまいりますと、やはり実地に裁判実務を経験した者、そういう者の方がよりいい資料をつくれる、あるいは少し言葉が言い過ぎになるかもしれませんが、やはり裁判官でなければなかなかつくりがたいという資料もございます。  そのほか予算にいたしましても、建物にいたしましても、それぞれ裁判事務関係しますものでございますので、全員が裁判官資格である必要はないんですが、ごく少数、やはり裁判官をもって充てなきゃならないという必要性は非常に高うございます。
  45. 会田長栄

    会田長栄君 これはぜひ私は検討してほしいなと思うのは、裁判審理に当たって裁判官の定員からいってもなかなか審理の促進が容易でないという一側面がある。しかし、判事、判事補が事務総局に位置づけられるということであれば、当然それはもう管理職。そうすると、一方で裁判所事務官など、一般職員からその管理職への当然進むべき道筋というのも閉ざされているわけではございませんから、そういう点について、今後一体どう調和を図って円滑な司法行政ができるかという点についても検討してほしいなと、こう思っているところでございますから、その点よろしくお願い申し上げます。  次の問題に移りますが、次は少年の人権問題について、これは法務大臣以下関係局長にお伺いしたい、こう思います。  第一には、法務省調査した人権侵犯調べというものがございますね。この人権侵犯調べの結果につきまして、今後一体どのように分析をして対応を図っていくのかというところについてちょっと見解を聞きたい。
  46. 篠田省二

    説明員(篠田省二君) ただいまの御質問が抽象的でございますので、ポイントがどこにあるか、少し見当違いの答えになるかもしれませんけれども、少年ということに関しましては、やはりいじめ、体罰それから不登校児、そういったことが問題になっているわけでございます。そこで私どもといたしましても、人権侵犯事件の数ということを調べまして、それを分析することによって多少なりとも実態に近づいてまいりまして、そこで将来の啓発活動に役立てたい、そういうふうに考えております。  私ども立場といたしましては、いじめ、体罰の問題は、心身ともに健全に育成されるべき児童生徒の人権にかかわる問題であるという、そういう認識のもとに全国の人権擁護委員とともにこの問題の解決に向けて積極的に取り組んでまいったところでございまして、今後とも積極的に取り組んでまいりたい、そういうふうに考えております。
  47. 会田長栄

    会田長栄君 この人権侵犯調べの中で、学校での先生の体罰というのがいわゆる公務員による侵犯事件の半数以上を占めているんですね。この点についてどう考えますか。
  48. 篠田省二

    説明員(篠田省二君) 数からいきますと、全体で人権侵犯事件、大体このところ一万五千件程度の数があるわけでございますけれども、その中で、公務員による人権侵犯事件というのは、平成年度の場合でございますと二百十四件、その中で教育職員によるものが百四十六件、そういった数字が出ております。したがいまして、人権侵犯事件の中では全般的には公務員による侵犯事件の数というのは非常に少ないわけでございます。ただ、公務員の中では、体罰事件というのが多いというのはやはり極めて遺憾なことだというふうに考えております。
  49. 会田長栄

    会田長栄君 私は、この少年の人権問題を含めまして今日の少年問題、少女問題というのは、日本の二十一世紀を決める最大の課題でないかと思うから、この問題を取り上げたんですよ。このまま捨ててはおけない。  そういう意味で文部省さん、文部省は教職員の体罰というのは禁止していますね。文部省が禁止してもなおかつこの傾向がとまらないというのはどこに一体要因がおありと思いますか、お尋ねいたします。
  50. 福島忠彦

    説明員(福島忠彦君) 委員指摘のように、学校教育法第十一条におきましては、校長、教員は学生、生徒、児童に懲戒を加えることができるが、体罰を加えることはできないと、こういうふうに書いております。  体罰につきましては、昨年度兵庫県の高塚高校事件、あるいは福岡県の壱岐中学校の砂浜の埋める事件と、いろいろ続発しましたので、私ども、教育委員会、各県指導担当の責任者あるいは生徒指導担当の責任者を集めまして、繰り返し繰り返し体罰は法違反だと指導してきたところでございます。  しかし父母の中には、子供を厳しく育ててやってくださいとか、あるいは教員の一部にも、やはり少しぐらいのことをやらないとなかなかこのごろの子供は言うことを聞かないとか、いろいろ言う人がおるわけでございますが、私どもは、体罰というのは真に教育効果を生むものではない。本当に教育効果を生もうとすれば、力でもって制裁を加える、こういうものであってはいけないということで指導してまいっておる次第でございます。
  51. 会田長栄

    会田長栄君 これはひとつ法務省にも文部省にもお願いしておきますが、少年少女の人権問題、あるいは非行その他を含めまして、今日家庭から社会、学校まで含めまして、本当にみんなでこの問題を前進できるように努力していかないと、これは二十一世紀云々なんと言ってみても、二十一世紀というのはまことに不確かな時代が到来するのではなかろうかと、気になってなりません。したがいまして、少年少女が非行に走ったり暴行に走ったり、あるいは人権被害に遭ったりする、その情勢、背景というものをもっともっとやっぱり分析してほしいということを最後にお願いしておきます。そしてまた、機会があればぜひこの問題で質問したいと、こう思っています。  最後になりますが、これはお互いに御承知のとおり、五月三日、海部首相は東南アジア歴訪の際、シンガポールにおいて国際社会における日本政治的役割の大きさを強調するとともに、アジア諸国に対する過去の日本の行為を反省すると演説をいたしました。一方で日本と朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化交渉というのは、五月下旬の北京での第三回の会談は双方の条件が折り合わないというところで今中断をしているところであります。私は残念でなりませんのは、この日朝交渉の原点というものを私どもは忘れているんじゃなかろうか、こう思う次第であります。  それは、日朝交渉の原点というのは一体何であったのかと改めて問われている。総理みずからシンガポールにおいて演説をした、帰ってくると同時に、文部省に対して、教科書を改めて見直すということについて御指示があったように聞いております。今文部省はその点で点検をしているようでありますが、私はそのことをここで問題にするのではなくて、過去の植民地支配をめぐる加害者としての日本責任というのは、こういうことについて清算をするというのは日朝交渉の原点ではないだろうかと私は見ているんです。これをきちっと整理しないで、難しい条件を出して、せっかくのアジアの近くて遠い国との正常化がおくれるということは、アジアの安定にとって、決して好ましいことではない、こういう認識を持っている一人であります。  そこでお伺いしたいのは、これは労働省にまずお尋ねいたします。  過去、すなわち日本政府による朝鮮人強制連行の問題で労働省が調査をしている。その調査の結果はどうなっているのか。そして、今後どのようにこの問題を進めようとしているのか。今後の考え方についてまず一点お聞きしたいと思います。
  52. 伊藤欣士

    説明員(伊藤欣士君) 御質問の調査は、昨年の五月二十五日に日韓の外相会談が行われました際に韓国政府から要請がありまして、日本国政府として協力するということになったことを受けまして、労働省を中心調査を行ってきたところでございます。  労働省といたしましては、労働本省、都道府県、それから各安定所、関係する部署、倉庫、図書館等できる限り広範に調査いたしますとともに、全市区町村に対しましても調査を依頼したほか、当時の事情に詳しい関係者からのヒアリングないしは当時朝鮮の徴用者等を受け入れていた可能性のある事業所など約八百カ所へ照会をいたしまして、そのほかいろいろな情報を把握した結果をまとめまして、昨年八月七日までに約八万人分の名簿の存在を確認いたしまして、その目録を韓国政府に提出したところでございます。  その後も各方面から新たな名簿が存在するとの情報に基づき調査いたしまして、八月七日時点で未整理だったもの及びその他新たに確認されたものを含めまして約一万人分の名簿の存在を確認いたしまして、そのうち韓国政府への提出について保有者の了解が得られましたものの写しを、去る三月五日、外務省を通じまして韓国政府に提出したところでございます。  本件名簿の調査につきましては、労働省が中心となって今日までできるだけ努力を重ねてきたところでございますけれども、今後とも関係省庁と協力をしながら誠意を持って対応することとしているところでございます。
  53. 会田長栄

    会田長栄君 どうぞよろしくお願いいたします。  もう一つは、これは法務省にお伺いしたいわけでありますが、朝鮮人労働者の未払い賃金問題について、実は新聞にも出ているようでありますけれども、未払い賃金供託金というのはどこの企業から何名分、金額にして幾ら今供託されて、それが時効停止、この通達を出しているんですか、その中身をちょっと聞かせてください。
  54. 清水湛

    説明員(清水湛君) 御質問の通達は、昭和三十一年十二月六日付の法務省民事局長回答、あるいはさらにそれを集約した昭和三十三年三月十二日の民事局長通達の中身を問題とするものであるというふうに理解いたしますが、御承知のように、終戦時の混乱で一部支払いができなかったというような賃金等につきまして、これは朝鮮人、台湾人、中国人等に対するものでございますけれども昭和二十一年ごろから民法四百九十四条の規定に基づく弁済供託がされた事実がございます。このような弁済供託に係る請求権というのは、供託のときから十年たちますと時効によって消滅するということになるわけでございまして、ちょうど三十一、二年ごろがその十年目ということになったわけでございます。  そこで、当時この取り扱いが問題になったわけでございますけれども法務省といたしましては、やはりこれは十年で時効消滅はすると、したがって還付請求なり取り戻しの請求があってもこれは応ずることができないけれども、しかし直ちに時効が完成したということで国庫にそのお金を納入してしまう、つまり歳入納付の手続をとるということまではする必要がない、つまり供託されたままで、そのままの状態にしておきなさいという趣旨の通達を昭和三十一年から昭和三十三年にかけて出したわけでございます。  このような通達、回答がされた理由でございますけれども、先ほど申し上げましたように、当該供託金について消滅時効が成立するということを否定したものではございませんが、当時においては、日本国及びその国民と朝鮮及びその住民との間の財産並びに請求権、これは債権を含みますけれども、そういう処理につきましては、昭和二十七年に発効いたしました平和条約四条に基づく特別取り決めの主題とされておりましたので、この特別取り決めがされることによって最終的な決着が図られるということに実はなっていたわけでございます。  十年で時効が完成するわけでございますけれども、これは民法上の時効でございますから、時効を援用するかどうかということは政府の選択として残されていたわけでございますが、そういうような状況もございますので、特別取り決めがされるまでの間はそのままにしておくということにいたしたわけでございます。  その後、御承知のように、韓国との間におきましては昭和四十年に日韓請求権協定が締結されまして、韓国民の日本国政府及び日本国民に対する請求権はすべて放棄されたわけでございまして、その関係におきましては、いわゆる朝鮮人労働者の未払い賃金の供託に係る還付請求権等は既に絶対的に消滅しておるというのが現在の法的状態でございます。  この件数、人数等についてお尋ねでございますけれども、いわゆる一般の民法の弁済供託の一態様としてされたわけでございまして、私ども正確にそのものだけを取り出した形での統計資料というものは現在のところ持っておりませんので、正確な数字をちょっとお答えすることができないということを申し上げさせていただきたいと思います。
  55. 会田長栄

    会田長栄君 もちろん法務省でも労働省でも、恐らく朝鮮人強制連行真相調査団というのがこれは結成されて、今調査に入っているということは御承知でしょう。そういう意味ではこの問題というのは非常に大事なことでありまして、それは日韓条約に基づいて韓国分については一定の整理はできているにしても、朝鮮半島は今朝鮮民主主義人民共和国というのと韓国という二つの国があるわけでありますから、半分はまだ解決されていないということでございまして、その点、誠意を持って今後当たってほしいということを申し上げて、私の質問は終わります。
  56. 種田誠

    ○種田誠君 きょうは、法務省並びに裁判所の方々に質問をいたすわけでありますが、私、実はきょうの質問に先立ちまして、昨日の午後三時半ごろ、上野公園の西郷さんの銅像の前あたりで見聞してまいりました。何週間か前の週刊誌に、イランの方々がたくさん集まっておるというようなことが載っておりましたので、外国人の問題に関してきょう質問する前、ぜひとも自分の目で確かめようと思ったわけです。  私が行った時間帯は三時半でした。実は西郷さんの周りには二人ぐらいのイランの方しかいなかったものですから、ああもうこの問題は解決したのかなと、そう思いまして、ちょうど西郷さんの前に韻松亭という食堂がございまして、暑かったものですからジュースでも飲もうということでここへちょっと入って、それで、五月の中旬ごろからたくさんの方が集まっておるということを聞いたけれどもどうなんですかと言いましたら、いや今でもおりますよと、こう言われました。でも前にいないんじゃないですかと言ったら、いやちょっと下を見てくださいと。そうしましたら、西郷さんのところから京成電鉄の駅の方へおりる階段のところに、私が見ただけでもざっと百人弱ぐらいのイランの方々が大きなバッグを持っておりました。今の時間は少ないんですけれども、朝になりますと百人から二百人、多いときには二百人近くの方がおります。そして、毎日私は朝お店の周りの段ボールの開いたのを拾って片づけております、この前はたき火をされて大変心配だった、商売になりませんと、そういうふうに言っておりました。また、その西郷さんの裏のところに彰義隊の神社がございますが、ここでも毎晩寝る前にたくさんの水をまいて寝るようにしておりますと、こういうふうなことも聞いてまいりました。  どういうことでこういう現象が起こってしまっているのか、そのことについて、そしてまた、このような現象に関して法務省としてどのような所見を持っておられるのか。このことは最近原宿の方でも同じように起こっている、形態は違うようですけれども起こっているということであります。そういう意味で、この事実について、もう既に法務大臣は聞き及んでいると思いますので、冒頭大臣の御見解を賜りたいと思います。
  57. 左藤恵

    国務大臣左藤恵君) 今御指摘のようなことにつきまして、そういう話も聞いておりますので、入国管理局においてその実態の調査をさせていただいている最中でございますが、その結果を十分踏まえまして適切な対策をしていかなければならない、このように考えておるところでございます。
  58. 種田誠

    ○種田誠君 それでは、なぜこういう現象が起こっているのかということに関して、担当の方でちょっと詳しく御説明願いたいと思います。
  59. 本間達三

    説明員本間達三君) お答えします。  ただいま大臣からお答え申し上げましたとおり、その実態につきまして今調査中でございますので、その方々がどうしてそこへ集まるのかということについては、じかに私どもとしては申し上げることはできないわけでございます。  ただ、いろいろ情報等によりますれば、同国人の言葉で会話をしたいとか、あるいは仕事のあっせんといいますか、そういうところの場とか、あるいは仕事に関する情報を得たいとか、そういったことも一つ原因となってイランという同国人の方々が集まっているのではないかということは十分私どもは推測はしておりますが、私ども自身の調査から明確な原因ということについては、ちょっと今のところ申し上げにくいところでございます。
  60. 種田誠

    ○種田誠君 ちょっと答えが消極的だと思うんですが、私がきのうたった三十分現地にいただけで、そこで彼らにちょっと話しかけてどういう答えをもらったかといったら、まず私は、あなた方はどういうビザで来ているんですかと言ったら、観光ビザで来ています。皆さんそうですかと言ったら、全部そうですよと言っていました。じゃ、なぜここにいるんですかと言ったら、仕事を待っているんです。だれから仕事が来るんですか。仲間から仕事が来るのを待っています。もう一つ日本人の方から仕事が来るのを待っています。こういう、もうたった五分ぐらいの話ですが、私自身はそこで一つの彼らの存在の理由がわかったわけです。  このことはきのう起こったことじゃなくて、もう既に、実は私は五月十六日に成田に着いたんですが、その時点では成田にたくさんイランの方がおりました。そのたくさんのイランの方がどうも上野に移動したような形態ですね。先ほど言った韻松亭の方によりますと、五月の半ばごろにはもう集まっておったということです。そして、じゃ、今でもたくさん来ているんですかと聞きましたら、毎日来ていますよと言っていました。早速私のいる目の前で電話をかけているイランの人もたくさんおりました。  このことについて、今調査中だというお話ですけれども、ちょっとそれでは――実はこのことは私がここで述べる前にとうに法務省の方ではもう事実は掌握しておって、何らかの対策を考えているのかと思ったんですが、その辺のところをもう少し、本当はまだいわゆる調査に入っていないんじゃないんですか。入っておるんですか。
  61. 本間達三

    説明員本間達三君) もう既に、そこを管轄いたします東京入国管理局におきまして、その付近の状況を写真等に撮影してあります。写真に撮ったり、あるいはどういう状態でそこに蝟集してくるのかというような状況について、継続して調査をやっている最中でございます。  先生指摘になりたい点は、恐らく不法就労を目的に入って、そこで不法活動をやっているのではないかという御疑念だろうと思いますが、確かにそういう点は十分私どもも関心を持ってその対策ということを今一生懸命考えているということでございますので、その調査結果がまとまりましたら、しかるべき関係機関等の協力も得ながら対策を立てていきたいと考えております。
  62. 種田誠

    ○種田誠君 私も、一体この問題にどういうふうに対応してどのように解決したらいいんだろうかなと、実は質問する今の時点までなかなか結論が見出せないんです。多分法務省の方でも非常に難しい問題だと思うんですね。イラン人の方が百人いようが二百人いようが、別にいること自体に関して、これはもう、あなた方はいちゃいけませんよとか、なかなか言いにくい問題だと思うし、現実にそこに犯罪が起こっているわけでもありませんので、警察の方でもなかなか動けない。先ほどの韻松亭の方じゃないですけれども、隣でたき火をされた、たき火をされたとしても別に現実に犯罪が起こったわけじゃないから、なかなか対応が難しいだろうと思うんですね。しかし、果たしてこのままでいいんだろうかということの疑問だけは、私、今でもまだ持っているわけなんです。  そういう意味で、法務省の方において、今後の対策としては具体的にどういうものが考えられるのか、一応予想される対策についてちょっと述べていただきたいと思います。
  63. 本間達三

    説明員本間達三君) 私どもの摘発活動の根拠になっておりますところの入管法をもとにして申し上げれば、まず、滞在期間が切れた方であるのかどうか、いわゆる不法滞在者であるかどうかということとか、あるいは滞在目的が観光であるにかかわらず許されない労働に従事しているか、そういったことで資格外活動をやっているか、そういうことを理由として初めて摘発活動ができるわけでございますので、そういった事実の確認ということがまず先行しなければならないわけでございます。  ただ、今先生の御指摘のとおり、そこに同じ国の人たちが大勢たむろしているということだけで、そこに私どもが摘発の何かもとがあるんじゃないかということで、個々人に当たって調査するということにつきましては、やはりもう少し慎重にせざるを得ないのではないか。いわゆる人権問題等最近非常にうるさい問題もございますので、そういう点も十分考えてみたいと思いますし、また、その付近には、必ずしもイラン人の方ばかりでなくてそれを支援する方々もいるというような情報もございます。ですから、そういうこともございますので、具体的な対策を立てるとしたら、やはりそういった状況を踏まえた上でのやり方というものを考えていかなければいけないので、なお慎重な検討をしているというところでございます。
  64. 種田誠

    ○種田誠君 そういう中で私が考えて、ひとつこういう方法はどうだろうかなと思うんですが、このことももろ刃の剣だとは思いますが、バングラデシュに対して、パキスタンもそうでしたけれども、査証免除協定に従って措置をとっておった。ところが、バングラデシュやパキスタンからの不正入国が余りにも多発したために、一昨年ですか、査免撤廃をした、こういうふうなことが行われました。その結果、もろ刃の剣と申し上げたのは、今バングラデシュから日本に来るのにはやみのビザがかなり流行しちゃっているわけです。ダッカの町の中ではビザが十万タカで売られています。十万タカというと大体日本円で四十万から五十万するわけですね。彼らの給料でいえば四、五年分の稼ぎに当たるわけですが、そういうことで、率直に申し上げて、ビザを取得して日本に入ってくる方もおるわけであります。これは私、事実自分で確認しておりますから。  そういう意味で、査免措置をとっていくということが果たしていいか悪いかは私も最終的には結論を出せませんけれども、ただ緊急の対応として、昨日の話ではイランから毎日のように来ているということですから、これからどのぐらいこういうことが続くのかわかりませんが、この辺のことについてもひとつ検討していただきたい。そして、しかるべく適切な措置をとっていただきたいと思いますが、この件に関して最後にお答えをいただいて、この件は終わりたいと思います。
  65. 本間達三

    説明員本間達三君) 御指摘の、査証免除取り決めの破棄というような形はとれないかというような御指摘でございましたけれども、査証免除の取り決めというのは、これは外交上大変重要な問題でございます。種々の要素から二国間での交渉というものを経て出てきた結論でございますので、現在のイラン人の入国状況をもって直ちにこれを破棄するというようなことについては相当慎重にならざるを得ないと思います。  外務省とのかかわりもございますのであれでございますが、私どもの考えといたしましても、そこまで考えるのはいかがかなというのが今の見解でございます。
  66. 種田誠

    ○種田誠君 それでは、次の質問に移りたいと思います。  五月二十二日の読売新聞、やはりそのころの毎日新聞、相変わらず不法就労が多発しておって平成年度では三万人近くが摘発をされたと、こういうふうなことで、入管法改正から丸一年がたったけれども減らない不法就労、こういうふうな報道が五月中下旬ごろ多方面でなされていたわけでありますが、今日の日本での外国人労働者の就労状況入管法改正以降どのように変わってきたのか、その辺に関して、数字なども織りまぜてお答えを願えればありがたいと思います。
  67. 本間達三

    説明員本間達三君) お答えいたします。  昨年六月一日に入管法改正法が施行になりました。改正の趣旨は、在留資格の整備拡充ということでございまして、従来の十八の在留資格から二十八の在留資格へというふうに拡大いたしました。実際の外国人の我が国における入国目的、活動態様というものに合わせて、できるだけ幅広く適正な目的による外国人の受け入れを図ろうという趣旨でございました。  この法施行の前と後との状況はいかがかということでございましたけれども、数的な点を申し上げますと、平成二年中に新規入国者というのは二百九十二万七千五百七十八人ございまして、施行前の一月から五月までは百十三万七千七百二十六人、法施行後の六月から十二月までは百七十八万九千八百五十二人でございます。月の数がちょっと違いますが、月平均でいきますと三万人平均上がっている、いわゆる入国者がふえているというふうな状況でございます。また、法施行後の昨年の七カ月間を前年同期に比べますと一六・一%増加しているということでございまして、全般的には法施行後入国者の数はふえているということが言えるかと思うのでございます。  さて、入管法で新たに設けた在留資格というのが幾つかございますが、そのうちの典型的なものについて、どのように活用されているかということをちょっと御紹介申し上げますと、まず一つは、人文知識・国際業務という在留資格がございました。それに見合う法改正前の資格との比較で申し上げますと、平成二年の一月から五月が五百九十三人であったのが六月から十二月に二千百六十三人と大幅にふえているということでございます。それから、もう一つ新しい在留資格として企業内転勤というのも設けましたが、これが法施行後の七カ月間で千五百二十一人でございましたが、ところが同年の一月から五月までの五カ月間でありますけれども、このときは十九人しかいなかったということで、極めてこの在留資格が活発に利用されているという状況が明らかにされているわけでございます。そのほかのいわゆる就労可能な在留資格につきましても、それぞれ増加傾向が見られるというところでございます。
  68. 種田誠

    ○種田誠君 それでは、不法就労関係の摘発とかそれに伴う措置などについてはどういうふうな影響が出ていますか。
  69. 本間達三

    説明員本間達三君) 平成二年中に退去強制された者の数でございますが、三万三千百八人でございました。このうち入管法施行前の一月から五月までの数は一万四千五十三人。それから同法施行後の六月から十二月までの数が一万九千五十五人。これを月平均にしますと三・二%低くなっております。  この原因は、いろいろ分析いたしましたが、先生も御承知かと思いますけれども、法改正によりましていわゆる不法就労助長罪という規定が新設されました関係で、雇用者側が解雇する、あるいは労働していた外国人がそれによって罰せられるのではないかという誤解から、みずから地方入国管理局に出頭して退去強制手続を求めるというようなことがございまして、したがって、そういう関係から前半の五月までの間に相当数の退去強制件数がふえたということの影響でこの減ということができた。法施行後若干、みずから出頭して退去強制を求めるというような者が少なくなったということが影響しているのではないかというふうに思っております。
  70. 種田誠

    ○種田誠君 ちょっと今の説明では理解し得ないところもあったんですけれども、五月から六月にかけての各マスコミ、雑誌などの指摘によると、不法就労の実態、さらには外国人労働者に対するとりわけ日本の中小企業等の需要、減少するどころかむしろ増加しておるという報道がなされています。神奈川県でも、三千社を対象に県としての実態調査ども行っておるようでありますが、その実態調査でも、今述べたような一つの結論が出ているということになりますと、さらには日本の今後の労働力に対する分析などからも考えまして、外国人労働者の受け入れ態勢というのはかなり重要な問題をはらみつつも、前向きに、真剣に取り組まなきゃならない課題だろうと思うわけであります。  そういう中で、最近研修とかそれから就学とか、そういう形での受け入れも増加しておると聞いております。そして、特にこの研修に関しては、今の基準では二十人の社員がいるところに一人というような形での態勢になっておる、どうしても大企業に極めて厚い配慮のもとにこれらが活用されておった、そういうふうな指摘もあった。それに対して、労働省においても、また法務省においても多少の配慮をしてきたようでありますが、この辺のことに関して、本当に人手が足りなくて困っているという中小企業の方々の需要にこたえるような体制になっているのかどうかということが一つ。  それからもう一つ。実は、アジアの諸国はいずれもやはり経済成長を遂げたい、自国の力でもって経済の自立を図りたいというところから、ここ十数年、台湾を初めタイにおいても、一つの形態として輸出加工区というものをつくりまして、そこで外国企業と合弁もしくは外国企業単独で企業立地をしていただいて現地の国民を採用してもらう、そして技術などを身につけながら、雇用の場を確保しながら生活のレベルアップを図っていく、行く行くは自国の中小企業の維持発展に努める、こういう政策をとってきていると思うんです。そのことが成功して台湾やタイや、最近においてはバングラデシュでもそういうことをやっておりますが、一つの発展傾向をつくっているんだと思うんです。  ここで私一つ疑問に思ったのは、この入管法の改正の前はタイも台湾も、かなりの方が自由に来て、研修をして技術を身につけて帰っていった、そしてEPZで働いたことがあったようです。ところが最近、この改正後、今度サイクロンで大被害を受けたバングラデシュのチッタゴンにEPZがありますので、ぜひ優秀な日本企業が現地に行って稼働させてもらいたい、そして労働者の雇用なども図ってもらいたいということで進めてきたわけでありますが、やはり日本の技術を身につけて向こうに工場をつくってそして働いてもらうためには、何としても日本で一年ぐらい研修をしないと向こうで企業立地ができないわけですね。ところが、これを行おうと思っても、今の入管法のこの規制でなかなか困難な状況になっておるわけであります。  そういう意味で、今後この外国人労働者を受け入れるという一つの形の中でのこの研修制度というものに対して、もう少し見直しをするという、そういう考えはございませんか。
  71. 本間達三

    説明員本間達三君) 研修制度の趣旨につきましては、先生大変よく御存じだと思います。諸外国の経済的発展に協力するという大きな趣旨のもとに、技術、技能、知識というものを当該外国人の方に授けるということが目的でございます。それと、労働力の補給という観点でこの研修というものを見るということは、一つは研修の趣旨をややもすると没却してしまう、専ら単純労働といったものに従事させてしまうというような弊害というものがございます。そういうことを厳に慎むべきであるという観点から、私どもは、先般入管法を改正させていただいた際も、その要件について厳しくするというふうにいたしたわけであります。  また、法に基づく省令、基準省令でございますが、この中の研修の項目の中でも相当詳細に要件を定めておりますのは、一にかかってこの研修の適正な実施ということを確保するという、その観点からの配慮でございます。研修そのものを拡大していくという大方針は私どもも持っておりますけれども、その枠をいたずらに緩めることによって研修本来の目的を逸脱するということがあってはならないというふうに考えております。  そういうことで、昨年六月施行後の研修の実施状況というものをずっと見きわめているわけでございますけれども、今後ともその状況を見、また社会の要請というものも踏まえながらこの研修制度というものを検討していかなければいけないという考えでございますが、現段階でこの現在ある制度というものを見直すという考えはございません。
  72. 種田誠

    ○種田誠君 現在はないということでありますが、実際研修という形で先ほど申し上げたような形をとろうと思っても、現実に大変苦労している。これは私自身の経験でもありますので、今後、そう申されながらも適正な形での研修の枠ということに関してはぜひ前向きに検討していただきたいと思うわけであります。  そして、この研修とも絡むわけでありますが、いわゆる外国人労働者の問題に関して、私はやはり最近の日本の国民の意識は確かに変わっている、変わってきた、こう確信しているところでもあります。そのことは、今月私たち国会議員に配られたこの総理府の広報室からの世論調査、これを拝見しましても、実に七割近くの方がこの外国人労働者の受け入れということに関しては賛意を示している、こういう実情があるということですね。そういうことから考えましても、やはり受け入れるにしても受け入れ方とか法的な問題とか幾つか重要課題はありますけれども、早急にこれは対応しなきゃならないことだろう。国民のコンセンサスということを、これまでの委員会や本会議でもこの外国人問題に関してはよく政府の方で答弁があったわけでありますが、先ほどの世論調査の統計などから見れば、そろそろ国民のコンセンサスというのはつくられてきたのではないだろうかな、こうも思うわけであります。  そして、昨年の十月でしたかの決算委員会でやはり私はこの問題を取り上げておるわけでありますが、労働省においては、昨年六月にこの外国人労働者問題に関する研究会などを発足させて、昨年じゅうに一つの結論を出す、こういうふうな答弁もございました。そういう意味で、その後ちょうど一年、昨年の六月から一年がたったわけでありますが、今日、労働省においてはこの問題に関してどのような見解を持っておるか伺いたいと思います。
  73. 伊藤欣士

    説明員(伊藤欣士君) まず、先生御質問の、昨年六月に発足いたしました外国人労働者が労働面等に及ぼす影響等に関する研究会の報告が本年の一月に提出されているわけでございます。これは、学者先生から成ります研究会でございまして、外国人労働者の受け入れ問題について、その影響を多様な角度から慎重に検討、整理していただくという趣旨で研究会を開いていただいたわけでございますが、この研究会の報告におきましては、外国人労働者問題に関する重要な事実関係について整理、検討が行われて、割合といいますか、従来の外国の経験なり外国人労働者の受け入れが及ぼす影響等について、事実関係について詳細に報告が行われているわけでございますが、その結果を踏まえて次の三つの視点が指摘されておるわけでございます。  まず第一は、外国人労働者に依存することなく、労働環境の改善等を通じた人材確保の措置が必要である。それから第二点といたしましては、社会的コストを負担してもなお外国人労働者を受け入れるべきか否かについて検討し、国民的コンセンサスを形成すること。三番目には、国際協力の観点から、開発途上国における雇用創出及び人材育成等、労働面からの貢献策を検討すること。もう少し詳細な研究報告でございますけれども、こういう報告が出ておりまして、労働省といたしましては、ただいま申し上げましたような視点を十分踏まえながら、労使、関係者等の意見を聞きつつ、この問題につきまして検討を重ねてまいりたいと考えておるところでございます。
  74. 種田誠

    ○種田誠君 せっかく今答弁いただいたような一つの大きな方針が決まったわけでありますから、と同時に、私が先ほど申し上げたように、国民の外国人労働に対する一つのコンセンサスもつくられてきたという背景もあるようでありますから、さらにこの問題を掘り下げていただいて、掘り下げるということになりますと法の整備ということが極めて重要な課題になってくると思いますので、これも二年も三年もかけて行う作業じゃなくて、この半年とか一年で仕上げていかなきゃならない一つの課題だと思うんですね。まさに国際社会の中の日本ということを誇示するならば、余り時間をかける暇はないということでありますので、ぜひこの点、鋭意努力をしていただきたいと思います。  時間が余りなくなってきてしまいましたので、申しわけないんですが、この点についてはこの辺で質問を終わらせていただきます。  次に、外国人労働に関する不法就労の状態、先ほど来かなりの数に上っておるということを申し上げました。その不法就労の実態、この辺どうなっておるのか簡単に、このことをまず最初にちょっと伺いたいと思います。
  75. 伊藤欣士

    説明員(伊藤欣士君) 先ほど法務省の方から御答弁ございましたように、資格外活動いわゆる不法就労者だと思うわけでございますけれども、摘発された不法就労者数は約三万人に上っておる。このほか潜在的な不法就労者が約十万人に上ると言われていることは承知しておるわけでございますけれども、こうした不法就労者につきましては、個別的な、事例的な調査等についてはございますけれども、その詳細な実態、全容を把握することは技術的にも非常に困難であるというのが実態だろうと思います。
  76. 種田誠

    ○種田誠君 そうしますと、この問題に関しても、なかなか難しい問題があるわけでありますが、むしろ法務省などと十分な協議をした上で適切な対策をしていただきたいわけであります。  そして問題は、不法就労であっても合法的な就労であっても、これは日本の労働基準法に国籍において差別をしてはならない、こう書いてありますから、その適否にかかわらず労基法は当然適用になりますし、もとより労働安全衛生法、多分労働災害に関する諸法令もすべて等しく適用になると思うんですね。ところが、この労基法の適用や労災の適用が果たして不法就労の場合に適切にいっているかどうか、その辺のことに関しての労働省における最近の実態調査などありますか。ありましたら述べていただきたいと思います。
  77. 坂根俊孝

    説明員(坂根俊孝君) 実態調査の前に、まず考え方でございますが、労災保険法あるいは労働基準法、そういうものは、外国人であるか、またそれが不法就労であるか否かにかかわらず、適用があるということでございます。  実態に関しましては、詳細なもの必ずしもございませんが、不法就労外国人であると思われるものにつきまして、例えば補償状況を調べたものがございます。それによりますと、六十二年度で四十人、六十三年度七十一人、元年度八十九人に対しまして労災保険による補償が行われているということでございますので、こういうことからもわかりますように、不法就労であっても労災保険の適用がなされているということでございます。
  78. 種田誠

    ○種田誠君 このことに関して少し質問をしたいんですが、私どもの仲間の弁護士がこの労災関係調査を、余り全国的な調査はできませんので東京やこの周辺の部署に限って調査をしたことがございます。その調査の結果、四十二件ほどの労災事件がありました。しかし、実際、労災の適用が直ちに雇用主の協力のもとに行われたのは四十二件のうち二件。そして十二件は労災保険の適用を受けずに事業主の負担で補償された。十九件は弁護士や支援団体の方々の指導によって労災の適用を受けるようになった。そのほかは労災の適用もなかった、こういうふうなどうも実態があるようであります。  そうしますと、先ほど労働省の方が述べた数字というのは、私はいい意味での氷山の一角じゃないかなと思うんですね。潜在的に十万人ぐらいの労働者がおるということになりますと、先ほどのような数字じゃないんじゃないかなという気もするんです。そうなりますと、じゃなぜその不法就労の場合に、また外国人の就労などの場合に労災の適用が少ないんだろうか、そのことについてはどのようにお考えを持っていますか。
  79. 坂根俊孝

    説明員(坂根俊孝君) 先ほども申し上げましたように、労災保険の適用に関しましては、外国人労働者から請求があった場合には、日本人と同様必要な保険給付を行うということにしているわけでございますし、労働災害が発生した場合には必要な調査を行って指導等を行っていくということにしているわけでございますが、なぜ現実に補償が行われない例があるのかということに関しましては、必ずしもはっきりしませんが、その事業主が、災害が発生した、あるいは労災保険の適用があるべきかどうかということについて、例えば申告しないとか、そういうことがあり得るのかもわかりません。その辺はよくわかりません。
  80. 種田誠

    ○種田誠君 今答弁にありましたように、雇用主の方でも、仮に不法な形で外国人を雇用していればこれは入管法で処罰を受けるかもわからない、外国人の方は強制退去させられるかもわからない、そういうことが多分不安として背景にあることも事実だと思うんですね。実は、その背景の前提になっておるのが、この私どもの仲間の調査によりますと、労働省の労働基準局長通達、昭和六十三年一月二十六日にあるんだと。いわゆる通知通告に関する通達ですね。  このことについては、実は公務員の通知義務でありますが、労災などとのかかわりということで極めて人権問題にもつながるということで、後日、労働省の方の課長の方から出ている監督課長通達というのが平成元年の十月三十日に出されておるわけであります。ところが、これは部内限りというふうによく言われているそうであります。となりますと、この情報提供に関して、果たして労働省労働基準監督署はこのどちらの立場をとっておるのかということがまだ一般の雇用主さんにはよくわかっておらないというようなこともこのことに対して大きな影響を与えていると、このように聞いておるんですが、今私が述べたような経過があったことは間違いありませんでしょうか。
  81. 坂根俊孝

    説明員(坂根俊孝君) 不法就労者に対する通報の問題に関しましては、労働者の保護の問題と非常に微妙な関係になるということで、いろいろ難しい問題があるということで、いろいろ通達なり事務連絡なりをしているということはございます。
  82. 種田誠

    ○種田誠君 労働災害をこうむった場合、やはり私は救済第一ということの考え方をとっていただきたい。そうしますと、通報せずということになるのかと思いますが、そういう考え方もやはりあるがゆえに、この間の労働省内部における基準局長通達、監督課長通達などという流れがあったんだと思うんですね。そういう流れの中で、私はぜひとも今申し上げた救済第一、通報せずという原則をはっきりさせていただきたい。そうすることによって労災適用の安心ということを雇用主、外国人労働者に持ってもらえるような、そういうふうな手続をとってもらいたいという、この点お願いいたしまして、この問題についても質問を終わらせていただきたいと思います。  次の質問なんですが、同じく外国人労働者に関してですが、最近刑法犯がかなり増加しておる、この十年間で七倍以上だという警察白書の報告やマスコミによる私たちに対する報道がありました。果たして外国人労働者の犯罪は急激な増加をしているのか、また増加をしているとすればどのような形態の犯罪が増加しておるのか、その辺のことについてまず述べていただきたいと思います。
  83. 小田村初男

    説明員(小田村初男君) 平成二年中におきます来日外国人による刑法犯罪の検挙でありますけれども、四千六十四件の二千九百七十八名ということであります。この総数でありますが、増加の傾向にあるところでありまして、十年前、昭和五十六年で見ますと千二百三十六件の九百六十三名ということでありますので、かなり増加をしているという状況であります。  罪種別でありますが、昨年、平成二年中の総数の中で占める割合が一番多いのは窃盗犯でございまして、検挙件数で六六・九%、検挙人員で五五・六%、いずれも過半数以上を超えております。また、増加している割合で見ますと、凶悪犯の伸びが非常に著しいということでありまして、平成二年の凶悪犯の検挙は七十七件、百十一名でありまして、五年前の昭和六十一年の十八件、二十名と比較いたしますと、件数で四・三倍、人員で五・六倍となっているというのが実情でございます。
  84. 種田誠

    ○種田誠君 そうしますと、まさに警察白書、マスコミ報道に述べられているとおりの一つの事実経過があるということだと思うんですね。  その場合に、実は犯罪の予防ということも極めて重要な課題であると同時に、犯罪を犯しても、やはり外国人であっても日本国憲法のデュープロセスの適用はあるし、日本の刑事訴訟法の適正な手続がなされなきゃならないわけであります。そういう中で、犯罪が多発してきているというその背後に、現実の捜査手続現実裁判を含めた司法手続、かなり新しい問題に関する大きな課題が今発生していると、こういうふうなこともこれまた報道されております。  そういう中で、過日、六月六日のこれは毎日新聞でありましたが、北海道の札幌で、窃盗で外国人の方が逮捕された。しかし、逮捕手続から裁判手続に関して、外国人であるがゆえに日本のシステム、捜査、裁判のシステム等が十二分に理解できないというところから、一つの問題を提起されてきているわけであります。  そういう意味で、この多発する外国人の犯罪に関して今捜査の段階における、とりわけ警察の方でどういうふうな課題を背負っておるのか。そして、それに対してどのような対応をとろうとしているのか。まずそこら辺をちょっと述べていただきたいと思います。
  85. 小田村初男

    説明員(小田村初男君) 来日外国人に係る犯罪捜査における困難性、あるいは問題点、課題、今後の対策ということでございますが、第一の問題は、日本語を理解できない外国人被疑者の取り調べ、または参考人の事情聴取における通訳の確保という問題がございます。この問題に関しましては、部内、部外の通訳可能者を把握するとともに、英語、中国語等だけでなくタガログ語、ウルドー語等の少数言語につきましても、警察大学校の附置機関でございます国際捜査研修所における語学研修を行っておりますほか、国際捜査官の海外研修、青年警察官の海外研修の拡充など、教養の充実を図って部内での通訳の養成に努めているところであります。  第二の問題といたしましては、居所を転々としたり、旅券が偽造されている場合があるなど、被疑者の所在や身元の確認が非常に困難な場合が多いということが挙げられます。  また第三の問題として、証拠収集あるいは被疑者が犯行後国外逃亡した場合など、外国捜査機関との捜査協力が必要となることが多く、相手国と法制度等が異なるために特有の知識、手法が要求されるというようなことが挙げられます。  こうした第二、第三の問題に対しましては、現在国際捜査研修所等において各種の実務研修を行い、国際捜査実務能力を備えた捜査官を養成するとともに、都道府県警察における国際捜査体制の整備を進めているところであります。また、日ごろから外国捜査機関との積極的な情報交換を行うとともに、国際捜査セミナー等、外国の捜査官を対象とする各種セミナーの実施等により、諸外国捜査機関との良好な関係の維持発展にも努めているところでございます。
  86. 種田誠

    ○種田誠君 警察の方で今述べたような実態があるということであります。  さらに、この警察での捜査を受けて、実際裁判という手続になる、その前に、勾留手続どもございます。裁判所がかかわって行うわけでありますが、このことについて、実は先ほど申し上げた札幌地裁などにおいて、被疑者の方がみずからの手続経過がよく理解できなかった。それは語学がわからないということからですね。そして、裁判手続においてもこの問題が一つ大きくクローズアップされたということでありますが、まず裁判所の方として、これらの問題に関して今取り組んでいること、札幌地裁などでもかなり積極的な取り組みを今しようとしているようでありますが、裁判所として、これらの問題に関してどのような問題認識を持ち、どのように対策をしようとしているのか、そのことについて述べていただきたいと思います。
  87. 島田仁郎

    最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) ただいま御指摘のとおり、最近の外国人を被告人とする刑事事件の増加に伴いまして、刑事司法手続全体における外国人の人権の保障ということが刑事裁判実務において重要な問題となってきておるわけでございます。最高裁判所におきましても、この問題には特に力を注いで最近さまざまな方策を講じてまいっております。  まず、ただいま委員が御指摘ございました札幌簡裁の事件でございますけれども日本の法律制度をよく知らない外国人の被疑者に対しまして、勾留質問のときに、通訳人を介し、十分その手続について説明がなされるべきであることはもちろんでございます。もちろん通常はそのようになされているところでございますが、さらに一層手厚い措置といたしまして、既に東京地裁、浦和地裁、等では勾留質問手続内容と、それから弁護人選任権や黙秘権等の権利を説明した英語、中国語、ウルドー語、ヒンズー語などの文書を作成し、外国人被疑者に閲覧させるという取り扱いを行っております。  そこで、私どもといたしましては、今回の事件を契機に、とりあえずの緊急措置といたしまして、これらの文書を全国の裁判所に参考送付いたしました。最高裁としては、今後この種の説明文につきまして本格的に順次各国語につき作成配付していくことを考えておるわけでございます。  また、公判廷における通訳の正確性ということを担保するためには、検察庁とも協議いたしまして、外国語の証人尋問、被告人質問が行われた場合にはそれを録音しまして、その録音テープは事件記録とともに保管し、確定後も検察庁に引き続き保存する扱いを導入いたしております。後日、法廷通訳の正確性が争われた場合も的確に対応できることになります。  そのほか、外国人刑事事件の適正な処理のためには、何と申しましても法廷における通訳の充実強化が重要であるという観点から、第一に、有能な通訳人確保のための方策としまして、全国八カ所にある高等裁判所に管内地方裁判所の推薦に基づき、高等裁判所管内を通ずる通訳人名簿を作成し、これを管内の全裁判所に送付し、備えつけさせることを実施いたしました。第二に、通訳人の能力を補助し向上させるための方策といたしまして、法廷通訳ハンドブックという通訳人のためのマニュアルでございますが、これを作成し配付いたしております。  また、通訳人と裁判所の相互理解を深め、通訳人の確保に資するという目的のもとに、法廷通訳研究会というものも開催いたしまして、法廷通訳経験者やその候補者と裁判官等との間で法廷通訳をめぐる実務上の諸問題についてきめ細かく忌憚のない意見交換を行い、その意見要旨を各庁に配付いたしておるところでございます。
  88. 種田誠

    ○種田誠君 外国人の人権とのかかわりで、これからますます複雑な形で裁判制度が展開されると思います。日本は、既に一九七九年九月二十一日に市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆるB規約を批准しております。そういう意味で、今答えられたようなことをより確実に実行するためにも、刑事訴訟法の改正等を含めたもろもろな取り組みに努力していただきたいと思います。  きょうは、そのほか被疑者の宗教や文化についての人権の問題についても伺おうと思ったんですが、ちょっと時間がなくなってしまいまして、答弁を用意された方には申しわけないと思いますが、これで質問を終わりにします。
  89. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  90. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十三年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題とし、法務省及び裁判所決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  91. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 午前中も同僚の委員から幾つかの質問がございましたけれども、戦後十八代目の検事総長として筧栄一検事長が就任をされまして五月で約一年を経過したわけでありますけれども、就任のときに会見で、検察のあり方について、厳正公平、不偏不党を堅持して、悪質な犯罪を徹底的に追及し、国民の負託と信頼にこたえる、これを原則にして、激動している社会に対応していく、そして改善すべきはきちっと改善をしていくというふうに述べられておりますけれども、まさにこれが検察に対する国民の姿勢であると私は思うわけであります。  しかし、昨年から今年にかけまして幾つかの事件を考えますときに、国民の負託と信頼、それに反した行動ではなかったかと思える事件が幾つかございます。それらの問題について、やはり私どもは一抹の不安を覚えるわけでありますけれども、誤判や間違った起訴をしても、裁判官は違法不当な目的で裁判をしたような場合でなければ責任を負わなくてもいい、検察官は起訴のときあるいは公判の段階で有罪と認められる合理的な疑いがあれば責任を負わないと言われています。私は、間違いは絶対にあってはならないし、間違った場合、法的責任はやはり厳しく問われなければならないと思っています。そのことが間違った裁判をなくする結果になると思うわけでありますけれども、きょうは、これらの点につきまして、どういった処置がとられたか、幾つか順次質問をしてまいりたいと考えているところであります。  まず、他人の前科を記入したと言われている宮崎地検の問題であります。  既に新聞で報道されておりますので御案内のことだと思いますが、宮崎県の延岡市に住む人が交通死亡事故を起こして、警察で調書を作成していたところ、前科があると言われたわけであります。臓物故買罪の前科があると言われた。全く身に覚えがなかった。したがって警察に抗議をして、警察で宮崎地検に照会をいたしましたところ、地検において他人の判決が間違って記入されたという事件があったわけであります。  新聞の報道によりますと、宮崎地検の次席検事は、原因を調べてできるだけ早く対応を検討したいと話したところでございますけれども、原因はわかったかどうか明確にしていただきたい。そして、どういう対応がとられたのか説明をしていただきたいと思います。
  92. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) ただいま委員指摘の過誤事件が、本年三月新聞紙上に報道されたわけでございまして、冒頭委員が申されたとおり、国民の検察に対する負託に対し、信頼に対し、これを損ねる重大な事故であったということで非常に遺憾に思っておるわけでございます。  この事件につきましては、いろんな不幸なことが重なっておるわけでございますけれども、このAさんにつけられた前科というのは、実は、昭和四十四年六月に宮崎地裁の延岡支部において言い渡しのあった臓物故買罪の判決でございます。この判決が、間違ってAさんの名前で犯歴票として作成されたわけでございます。当時、前科は犯歴票というカードによって検察庁において保管をしておったわけでございますが、支部で判決がありますと、判決の結果を通知する書面をつくりまして本庁の係へ送付する。送付されますと本庁の係官が犯歴票というものを作成する。それを刑事裁判あるいは犯罪捜査のために保管をしておく。こういうのがいわゆる前科を把握する方法でございました。  何しろ四十四年の判決でございますので今から約二十二年前でございまして、当時の事情はその当時の通知書その他がもう廃棄されておりますので、実際どちらの事務官の過誤であったかということははっきりしないのでありますが、支部から本庁へ通知するときの過誤であったのか、あるいは本庁で受けた係官が犯歴票を起こすときに間違った名前の、Aさんのところへ記入してしまったということなのか、そこは実は捜査しましたけれども、現在そういう通知書等が残っておりませんために判明をいたしませんでした。しかしながら、いずれにいたしましても担当しております事務官の過誤であることは間違いないわけでございます。  こういった形で、昭和五十六年ころまではこの犯歴票という形で保管をしておったわけでございますが、五十六年に電算化を図りまして、犯歴を電算入力してコンピューターで保管をするという形になって現在に至っておりますのですが、五十六年にその電算入力するときにも、間違った犯歴票を前提としたために電算入力されてしまったということでございます。  今回、委員今御指摘のような経過で、Aさんに間違ったものがついておったということがわかったわけでございます。そこで、直ちに地検におきましてはコンピューターの入力を削除いたしますとともに、犯歴票も削除いたしました。そして、御本人に担当の課長が謝罪をいたしまして、事後処置をきちっと御説明を申し上げたというふうに報告を受けておるところでございます。
  93. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 それでは、いずれにしてもどこでどういうふうに間違って入力されたかということについては判明をしないわけですね。  しかし、この事件で被害を受けた人が、宮崎地検と延岡支部に抹消することの証明を出してほしい、自分が間違って入力されていたわけですから、間違っていましたと、そして抹消しましたという証明を出してほしいと何度もかけ合ったそうでありますけれども、今お答えいただきましたように、本人には直接何回も謝られたようでありますけれども、やはり本当にそうなのかどうなのかというのは、本人にとってみれば、抹消しました、謝りましたでは不安は解消できないわけでありますから、その人が主張されていることも私はもっともなことではないかというふうに思うんです。  それらの問題について、本人がそういうことを納得できないと言った場合に、では具体的にどういう方法で証明をなさろうとしているのか、お伺いいたします。
  94. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) もちろん極めて希有な事例でございますから、そういった場合に証明を出すという証明書式といったものが決まっているわけでもございません。したがいまして、結局、御本人の納得ということで御理解いただければということが基本であったろうと思います。何度も謝罪をいたしまして、その経緯も御説明し削除したことも御本人に説明をし、報告によりますれば、少なくとも御本人との間では納得をいただいたということを聞いておるわけでございます。  どういった目的で証明をお使いになるのかわかりませんけれども、本来前科というのは、先ほど申しましたように刑事裁判手続あるいは捜査のために使う証明資料でございますから、そういった意味で、個人の御都合でどうしても必要だということもあろうかと思いますけれども、御納得いただけたということで現在までに至っておるというふうに聞いておりますので、その後御本人からは、今委員おっしゃったような形で重ねての御要求はないというふうに聞いておるところでございます。
  95. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 では、次に移りますが、公判中の事件で、証拠書類が焼却処分になった、その上で公訴取り消しがありました福井地検の問題であります。  福井地裁におきまして審理中の業務上横領事件を担当しておりました福井地検の検事が、ダンボール箱五箱に入れて倉庫に置いていた証拠書類を、約三百点余りでありますが、職員が焼却処分にした。したがって、その結果公判維持ができなくなったという事態が発生しておりますし、これまた検察に対する一般国民の信頼を裏切ったことになるのではないか。新聞の報道によりますと、「証拠三百点焼いちゃった」という見出しで書かれておりますが、この事件の概況と検察の対応、それから具体的に担当者の処分の有無や再発防止についてどのような処置がとられたのか、御説明願いたいと思います。
  96. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) これまた前代未聞の事件でございまして、私といたしましてもまことに遺憾であると申し上げたいと思うわけでございます。  この事件は、福井地検に係属しておりました業務上横領事件裁判を担当しておりました検察官が、結局証拠品の保管の適正を欠いたために結果的に廃棄されるという結果を招いたという事件でございます。  この検察官は、平成二年の四月に福井地検に着任をいたしまして、当時係属しておりました業務上横領事件の公判を前任者から引き継いで担当したわけでございます。そこで、新しく事件を担当いたしましたために、従来裁判所に提出しておりました証拠品を含めまして事件の再検討をするということで、裁判所から証拠品約三百三十点を借り出しまして、これを自分の執務室の手元に置きまして、この証拠品の検討とともに今後の公判対策を考える、あるいは補充捜査をするということのためにこれを使用しておったわけでございます。そういったことで、裁判所から借り出しました証拠品及び裁判所には提出されておりませんでしたが、当時この事件で検察庁が保管しておりました証拠品、合わせまして三百六十点ぐらいになりましょうか、これを手元に保管して、今言ったようなことをやっておったわけでございますが、年末、大みそかになりまして、いわゆる清掃をするというときに、執務室が狭隘であるといったこともございまして、執務室の向かい側にある刑事事務課、会計課が使用しております倉庫に段ボール箱のまま移しかえまして、ここで保管をしておったわけでございます。もちろん、この倉庫はかぎのかかる倉庫でございます。しかしながら、その際に証拠品であるという表示をし忘れた、あるいはそのことを倉庫の管理者である事務課の課長に連絡をしなかったというようなことが重なりまして、その後その倉庫の中に入っておりますいろいろな文書の廃棄処理をいたしました刑事事務課とか、あるいは会計課の職員が廃棄処分をいたしますときに、誤って積み上げてありました段ボール箱入りの証拠物を焼却処分したと、こういう経緯で証拠品の紛失に至ったわけでございます。  この証拠品、合計約三百三十九点になるわけでございますが、これにつきましては業務上横領事件の基本的な証拠物でございまして、これがなくなりますと業務上横領事件の罪体そのものの立証が全くできなくなるというようなことになりましたために、本年三月二十六日に検察庁といたしまして公訴の取り消しという刑事訴訟法に基づいた手続をいたしました。そして、翌三月二十七日に裁判所において公訴棄却決定が行われて、裁判はもともと係属しなかったという形で終わったわけでございます。  このようなことで、検察官及び検察官を補佐しております事務官及び関係事務官のそれぞれ基本にもとる行為が競合いたしました結果このようなことになったわけでございまして、私ども法務省といたしましても、直ちに係官を現地に派遣いたしまして、そういった経緯を調査いたしました。  その結果、今申しましたような事実が判明したわけでございますが、それぞれの過誤の度合いに応じまして懲戒処分に付することといたしまして、主任検察官、主任検事は減給一カ月百分の二、それから検事正、次席検事、会計課長戒告、その他関係職員五名でございますが、これが訓告ということで懲戒処分をしたわけでございます。
  97. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 その際の横領事件で、被告人から勤め先でありました農協に対して約六百万円が弁済されているわけでありますが、その際の約束で、無罪だったらという前提がついていますが、無罪だったらその金額は返してもらうと。そのために、今回のような事件が起こりまして証拠書類が焼却によって裁判が維持できなくなった場合、そして被告人から農協に対して六百万円の弁済が起きている場合に、そういう被告人と農協の間で約束があった場合に、証拠をなくした検察側に責任があるのではないか。同時に責任をとるべきではないかというふうに農協側が言っているわけでありますけれども、これらの問題につきまして、検察側でどのような対処をされているのか、お伺いしたいと思います。
  98. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 確かに報告によりますれば、委員今御指摘のような契約が被告人と農協との間で、契約と申しますか、約束でございましょうか、それが行われたということは事実のようでございます。  ただ、理屈っぽく申し上げれば、検察庁はその約束の当事者じゃありませんから、直ちにその六百万について検察官が責任を負うということにはならないんだろうと思いますけれども、しかし証拠物が紛失したということに起因して起こったことでございますから責任があるけわけでございまして、誠意を持ってこれに対処しなければならないというふうに思っておりますが、現在の時点まで農協の方からは、そういった意味での正式な法的な請求手続はとられておらないというふうな報告を受けております。
  99. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 それでは、農協の方から具体的にそういう相談がありました場合は、具体的な処置をとるということでございますか。
  100. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) どのような方法があるかも含めまして、現地で適切に対応するものと考えております。
  101. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 では次に移りたいと思います。  昨年の十一月、これは大分地検で起きた事件でありますが、「数字操作は身内の都合」という大分地検が起訴件数の水増しを行っているとの報道がありましたけれども、この水増しというのは、例えば保険会社から治療費などをだまし取った詐欺事件では、保険会社ごとにその起訴状を分けて同一人を一日八回も起訴するとか、選挙違反事件では現金の受け渡しごとに起訴するというふうなやり方をやったというふうに報道されておりますが、報道によりますと、内情に詳しい関係者が、大分地裁の幹部が支部の統廃合で裁判官が減員されると困るので、負担増を装うために起訴件数をふやしてほしいと要請したと。  これも午前中同僚委員が、そういう上司からの命令といわれることでいろいろ質問を行っておったのでありますが、同じような事件ではないかと思うんですが、地検がそれを受け入れたのかどうかの真相。この幹部から非公式に裁判官や職員にも伝えられ、地裁内部では周知の事実だったと証言されていますが、この証言の真意につきまして調査をしたのでしょうか。  法務省と最高裁、それぞれの調査の結果について御報告願いたいと思います。
  102. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 当時、事件の水増しということで報道されたわけでございますが、水増しという言葉にこだわるわけではございませんけれども、ないものをふやしたということではなくて、あった事件を一通の起訴状に書くか、三件あった場合に三通の起訴状に書くかというだけの違いでございますので、水増しという評価は必ずしも当たってないなと思うわけでございますが、それはそれといたしまして、大分地検では、六十三年の末ごろから昨年九月にこのやり方をやめますまでの間でございますが、一人の被告人、被疑者につきまして複数の犯罪事実、これを訴因と申しますが、複数の訴因があります場合に一括して起訴状一枚に記載するという方式をとらずに、それぞれ訴因ごとに一枚ずつ起訴状をつくって起訴をするという方式をとっていたわけでございます。それをとる事件は、今委員も御指摘ございましたけれども、選挙違反の買収事犯とか、あるいは多数事件のある窃盗、あるいは多数被害者のある詐欺事件といったように、一人の被疑者が多数の事件を犯している場合にとられた措置でございます。  なぜそういうことをやったかということを調査いたしましたところ、要するに将来裁判におきまして多数の事件のうち一部を争った場合、あるいは一部についてどうしても裁判手続上分離をしなきゃならないような場合に、一括起訴でいきますと、裁判の進行によってまた分離をしなきゃならない、あるいは証拠物も分けなきゃならない。そういったことが過誤のもとになるというような考え方から、起訴状一枚ごとに一訴因ということで起訴いたしますれば、そういった裁判における将来の事情の変更にも的確に対応できるだろうというような考え方で、専ら過誤防止ということを念頭に置きまして、試験的にやろうということで大分地検が六十三年末ごろからこういったやり方をとったようでございます。  一般的には、ある程度事実が固まって、十件なら十件捜査が終わりますれば、一枚の起訴状に十件記載して起訴するのが普通でございますけれども、確かに、後にその十件のうち五件について、あるいはまたそれぞれ裁判において争うのと認めるのが分かれたといったような場合に、記録を分離するとかいったことが日常起こるものですから、それを回避するためという理由はなるほどと思わせるわけではございます。しかしながら、結局、その結果裁判所へ行きます事件起訴状ごとになりますので、件数がふえたということになるわけでございまして、その辺をとらえて先ほど申しましたような水増しといったことになったんだろうと思うわけでございます。  しかし結果的に、そういう試行をいたしましたけれども、過誤防止の観点から必ずしもこの方式は有利ではなかった、従来方式でやってもそう大した違いはなかったということが判明したということで、昨年の九月から大分地検ではこの方式をやめるということにしたわけでございまして、そういった意味では現在は、いわゆる一括起訴方式という通常の方式に戻っておるわけでございます。  ただ、こうして起訴をする場合に、一括方式で起訴するか一枚一枚で起訴するかということにつきましては、実は法律は何も定めておりませんで、どういう方式をとるかということにつきましては検察官の裁量にゆだねられておりまして、法律も規定も準則もございません。したがいまして、検察官の判断で将来の公判を見越してこれは別の起訴状にしよう、これは一緒にしようといった判断をすることは我々でも間々あるわけでございますけれども、それを組織的に、庁全体としてやったというところがちょっと特異な事例であったというふうに言えるかと思います。  しかし、いずれにいたしましても、違法というそしりは当たらないというふうに考えておるわけでございます。
  103. 島田仁郎

    最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 最高裁判所といたしましても、委員指摘のようなマスコミの報道を受けまして、調査をいたしました。調査をした結果は、ただいま法務省刑事局長の方から御説明がありましたのと全く実態は同様と理解しております。  なお、その理由につきましても、ただいま法務省の方から御説明があったとおりのように私ども調査の結果理解しておりまして、先ほど委員がおっしゃったような一部の報道として報じられましたように、裁判所の方から減員対策等の関係でそのような起訴方法をとってくれるように依頼したかのごとき風評もあったようでございますが、調査した結果は、そのような事実は全く認められなかったわけでございます。
  104. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 それでは、支部の統廃合にかかわる人員の増減についてやられた事実は全くなかった、こういうふうに理解していいわけですかね。
  105. 島田仁郎

    最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) この大分地検における起訴の方法と、ただいま委員指摘の支部の適配とは、全く関係がございません。
  106. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 したがって、支部の統廃合とかかかわりなく、人員の増減についても関係なかったということになって現在の人員がいると、こういうふうなことで理解しておいてようございますか。
  107. 島田仁郎

    最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) さようでございます。
  108. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 六月十一日、昨日の朝の、私、どこのテレビかよくわかりませんでしたけれども、松山地裁宇和島支部の事件だと思うのでありますが、判決文の中で主文と中身の数字の違いというのが報道されておったようでありますが、この事件について、そのようなことがあったのかどうか、事実かどうか。事実であれば、なぜそのようなことが起きたのか。原因はどのように考えているのか。説明願いたいと思います。
  109. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) 御指摘事件は、昨日のテレビ等で報道された事件でございます。  事件のごく概要を御説明申し上げますと、これは松山地裁の宇和島支部に係属しております損害賠償請求事件でございまして、事件の中身は、交通事故の被害者が加害者に対しまして交通事故によってこうむった損害、その損害と申しますのは、けがをしたために休んだ休業損害あるいはけがをしたことによる慰謝料、後遺症による逸失利益あるいは入院雑費、そのようなものの請求をした事件でございます。請求額は九百九十九万九千七百十円、こういうことになっております。  これにつきまして松山地裁宇和島支部では、ことしの五月二十日に判決をいたしました。その原告の請求額のうち七百四十一万四千八百五十九円を認めると、こういう判決を言い渡したわけであります。その後五月の二十三日に松山地裁の宇和島支部では、この判決の主文に明白な誤謬があるということで、これは民事訴訟法の百九十四条に更正決定という規定がございます。「判決ニ違算、書損其ノ他之ニ類スル明白ナル誤謬アルトキハ裁判所ハ何時ニテモ申立ニ困り又ハ職権ヲ以テ更正決定ヲ為スコトヲ得」、こういう規定がございますが、この規定に基づきまして、職権で更正決定をしたわけでございます。  その更正決定の内容と申しますのは、判決主文の認容額、先ほど申しました七百四十一万四千八百五十九円、こうあるのを六百五十一万二千八百五十九円、こういうふうに更正をする決定をしたわけであります。  これに対しまして原告の方では五月の三十日に、この更正決定に対する不服の申し立てとしまして即時抗告ということで、高松高裁に即時抗告を申し立てております。この即時抗告につきまして、現在高松高裁で審理中と、こういうことでございます。  更正決定をすることになった原因でございますが、これは今申し上げましたように、高松高裁におきまして現在その不服申し立てが審理中ということでございますので、それについての原因についてはお答えは差し控えさせていただきたいと考えておるわけでございます。  ただ一点、申し上げますと、これは裁判でございます。これは国民の権利義務に非常に大きな影響を及ぼすものでございまして、こういう事件を担当する裁判官としましては、一件一件誤りのないように、慎重の上にも慎重な心構えで職務に当たっておるわけでございます。このような事件がございましたので、今後とも一層心を引き締めて職務に当たる必要があろうかというふうに考えておるわけでございます。
  110. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 じゃ、単なる記述のミスみたいなことを言われますけれども、私は、そういう判決文を出すときのその文章をどこかで読み合わせするとか点検するとか、そういうことをきっちりしていると思うんですが、そういうところでは裁判所はわからないんでしょうかね。どうなんでしょうか。
  111. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) まあこの事件、どのような読み合わせがされたかということまでは承知しておらないわけでありますが、一般的に、そのような判決を出すときのやり方というのを御説明いたしたいと思います。  判決は一般的にはタイピストがタイプをする。あるいは現在ではワープロというものがございまして、裁判官が直接ワープロを打つというようなことがあるわけでございますが、例えばタイプを打つ場合には、原稿がタイプできれいにでき上がってまいりますと、その部の書記官あるいは事務官が読み合わせをいたします。また、その当該裁判官ももちろん、そのでき上がった判決文を十分点検いたしまして、間違いがないかどうかということを十分審査するわけであります。また、ワープロで打ちましても、それがプリントアウトされまして紙に出てくるという段階で、もう一度一字一句間違いがないかどうかということを慎重に見まして、その上で判決をするというのが通常の手続でございます。
  112. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 この事件の間違いというのは、通常の手続をやっても間違っていたんですかね。それは裁判中でなかなか難しいから答えられないと言っていますけれども、通常の手続をきちっとやっておけばこの事件は起こらなかったように今の説明では受けるわけですが、いかがですか。
  113. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) この事件は、今御質問にもございましたように、今争われておるということで具体的にどうかということはちょっと申し上げにくいわけでございますが、確かにこの事件では、今いろんな損害額、判決を見ますと損害の項目が七つぐらいございまして、それから過失相殺だとか既に支払われた弁済額を差し引くとか、いろんな計算をしてこういう主文になったようでございます。ですから、その検算を十分やっておれば間違いがなかったんじゃないかとおっしゃられればあるいはそうかもしれませんが、具体的にどういうことで間違えたのかということはちょっと控えさせていただきたいと思います。
  114. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 本来起き得ることのないことが起きたわけですが、今言われたように、裁判中のものであればこれ以上質問は差し控えておきたいと思います。  では、次に移りまして、検察官のお目付役の制度であります検察審査会の制度に関する問題で、先ほど総理府が発表されておりますが、検察審査会に関する世論調査というもの、この中で検察審査会という名称を見たり聞いたりしたことがあると答えた人は三一・二%にとどまっていると言われています。この数字は前回の昭和五十八年の調査の二一・六%を上回ってはいますけれども、依然として七割近い人が検察審査会について見聞したことがないという状況でございますし、この検察審査会についてどういった方法で、どれくらいの予算をかけて国民にPRしているのかどうか、お尋ねいたします。
  115. 島田仁郎

    最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 検察審査会の広報活動につきまして、現在行われております主なものを若干御紹介させていただきます。  まず、裁判所の見学者に対して検察審査会制度を説明し、パンフレットやリーフレットを交付したりしております。これは平成元年度に限って数を申し上げますと、裁判所の来庁者に九万五千百十四部、自治体や選管には五十二万六千二百六十一部、学校その他の各種団体にもこのようなパンフレット等を配っておりまして、これは数にして七万七百三十二部を交付しております。そのほかに、市町村の広報紙にPRの記事を掲載していただく、これが全国でトータルいたしますと平成元年度で千四回でございます。それから、テレビやラジオ放送に広報活動でPRさせていただく、これはスポット放送なども含めますと二千八回という数に及んでおります。それからまた、市町村のしかるべきところをお借りしまして講演会、これが全国で千九百三十一回。それから広報用の映画の上映会などを行って、そのようなことで各種各様に広報活動につきましては努力をしておるところでございまして、それらに見合った予算もいただいておるところでございます。  しかし、今委員指摘のように、これの国民に対する周知度といたしましては、前回よりは一〇%程度ふえましたもののまだ約三割程度にすぎないということで、私どもとしましても、率直に申し上げていまだこの周知度では物足りない、したがって今後一層広報活動に力を入れていかなければいけないというふうに思っております。  そこで、先ほど申し上げました広報用の映画につきましても、何分相当古いものになってきておりますので、今後新しい広報用の映画も製作をしていこうというふうに、検討してまいりたいと考えております。
  116. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 かなり宣伝されておるようでありますけれども、なおかつ三一・二%程度にとどまっているというところについて、やはり私は何らかの原因があるのじゃないかと思いますので、いま少し検討していただいて、国民に理解ができるように知らせていただきたい、こういう方法をひとつ工夫していただきたいと思っておるところであります。  同じ世論調査におきまして、「検察審査会の所掌事項」につきまして質問していますけれども、その結果、検察官が犯人を裁判にかけない処分にしたことが、正しかったかどうかを審査する役割、すなわち不起訴処分の当否についての審査ですが、これを知っているというふうに答えたものは二六・〇%にすぎないということでありますし、検察庁の仕事について改善すべき点があれば、その点を指摘して改めるよう申し入れるなどの役割について、知っているというふうに答えた人はわずか一七%でありますし、検察審査会の活動そのものを八〇%の国民が知らないという現状について、どう考えておられますか。
  117. 島田仁郎

    最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 御承知のように、検察審査会制度というのは、そもそもが国民の民意を司法の制度に関与させようという観点から発足したものでございますし、やはりこの制度は国民の皆さんに十分認識、理解された上で活動を続けていくべきものであるというふうに理解しておりますので、この周知度自体いまだ不十分であり、なお今後広報活動には一層力を注いでいかなければいけないというふうに反省しておる次第でございます。
  118. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 けさほどからも取り上げられておりますし、先ほども質問申し上げましたように、他人の前科の記入や証拠の焼却や起訴件数の水増しなど、一つ一つは小さな問題でありますけれども、事が国民の権利に直接かかわる問題であるだけに、私は大変影響は大きいものがあるというふうに思います。  ですから、同じ過ちを繰り返さないということからも改善すべき点はひとつ改善していただきたいし、その際検察審査会による建議・勧告制度を利用してはと思うわけでありますけれども、これらの建議だとか勧告は過去五年間でどれぐらい、また出された建議や勧告を検察庁はどういうふうな問題意識を持って対処されておるのか御質問申し上げます。
  119. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) まず、委員前段に仰せのございましたように、先ほど来検察庁における最近の過誤事例を幾つかお取り上げいただきまして、おしかりをいただいたわけでございますが、私どもは、各種の会同を通じましてこういった事故の起こらないように周知徹底を図っておりますとともに、先般の証拠品紛失事件につきましては、最高検察庁から厳しい通達を出したところでございまして、今後ともそういった事務上の過誤のないように十分注意を喚起してまいりたいと考えておるわけでございます。  二番目にお尋ねの、検察審査会による建議・勧告の問題でございますが、過去五年間、六十二年以降で審査会から検察事務の改善に関する建議あるいは勧告をなされましたのは二件ございます。  一件は、平成三年の一月二十八日に宇和島検察審査会から出されたものでございますが、この勧告の内容は、松山地検の宇和島支部に速やかに専任検察官を常置するようにされたい、こういう勧告でございます。  実は、松山地検宇和島支部には宇和島区検察庁というものが併置されておりまして、支部と区検の事務が合体して行われておるわけでございますが、従来同支部区検には、支部長検事一名と副検事一名という二名の検事が配置されておったわけでございますが、平成元年の十二月二十八日の支部長の辞職に伴います異動が、人事上の都合で後任支部長の選任ができませんで、結局松山地検本庁の次席検事を支部長の併任に充てるということで対応してまいったわけでございます。  そういった事態を受けて、速やかに専任検察官を常置するようにという勧告がなされたものと承知をいたしておりますが、翌年の平成二年四月付の異動で引き続き支部長を配置することは困難でございましたけれども、同区検に副検事を一名増員いたしまして、検察官二名ということで運用してまいりました。そして、本年四月の人事異動の際に、同支部に支部長検事一名を配置することといたしまして、勧告の中身を実現したということになるわけでございます。  もう一つの建議は、平成三年三月二十日に行われた横浜検察審査会からのものでございます。この建議の内容は、告訴、告発事件について、事件を不受理とした場合には検察官あるいは司法警察職員はその旨を告訴人あるいは告発人に告知するように配慮してほしい、こういう内容でございます。  告訴、告発事件というのは、検察庁あるいは警察に告訴人、告発人から出されるものでございますけれども、要件を具備するものでございますれば直ちに受理をいたすわけでございますが、中にはある程度の補正をしていただかなければ受理ができないといった事例もあるわけでございます。その際に、この点を補正してくださいということを申し上げてお引き取りいただくわけでございますが、その結果、補正がないままになりますと不受理という形になるわけでございます。その場合に、告発人、告訴人に、そういったことについても不受理にしたという通知をしてほしい、こういう建議でございます。  御趣旨はよくわかりますので、この点につきましても、横浜地検はそういった建議があったという趣旨職員に徹底をさせまして、もう少し丁寧に、懇切丁寧に、補正をしてもらえば受理できますが補正しなければ受理できませんよということを説明するように通達を出したところでございますし、また神奈川県警に対しましても、そのような建議があったということを連絡申し上げて、県警で適切な対応をしてもらうという措置をとったところでございます。
  120. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 では次の問題へ移ります。  法務省にお尋ねしますけれども、現在の地方入国管理局、それから入国管理のその事務所などの職員の定員と、現在の充足状況について、どうなっておるのか御説明願いたいと思います。
  121. 本間達三

    説明員本間達三君) 地方入国管理局におきます平成年度の定員は千五百四十七名でございまして、現員はこの定員をすべて満たしております。
  122. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 午前の部で具体的な外国人入国管理の扱いの問題について議論されましたけれども、結局どういうところに問題があるのか、私はやはり少し人員が足りないのではないかというふうに認識しているわけでありますが、本院におきましても、第百二十回国会におきまして、法務局、更生保護官署、入国管理官署の大幅増員に関する請願が採択されておりますし、決算委員会におきましても、入国管理の人員増を求められて、法務省側はその増員の必要性を十分認めているわけでありますけれども、結果からしまして、予算定員では昨年よりも減らされているという事実がございますが、やはり依然としてそこで働いている職員のことを考えますと、非常に重労働になっているんじゃないか、過重になっているんじゃないかというふうに思っているわけであります。  したがいまして、職員の増員につきまして困難な状況があることについてはわかりますけれども法務省入国管理部門は我が国のいわゆる玄関でもありますし、そこがきっちりすることが大変大切なことだと私は思いますので、職員の負担の軽減のためにもそこの増員を図っていただきたいと思うわけでありますが、本院でも法務委員会の請願の採択などもございますので、これを具体的に実効あらしめる大臣の決意をひとつお伺いをしたいと思います。
  123. 左藤恵

    国務大臣左藤恵君) 今お話しのように、この増員の問題につきましては、現下の厳しい行財政事情にも配意をしなければなりませんが、今後とも所管の業務の円滑かつ適正に対応するためには、所要の人員の確保ということにつきまして最大限の努力をいたしたい。概算要求の時期も迫っておりますので、ただいまそのことについて努力をしておるところでございます。
  124. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 どうかひとつ、私どもに対しても職員の方々から増員の請願が来ていますし、大臣ひとつ、そろそろ予算のそういう時期になってまいりましたので、ひとつよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  では、次に、最高裁判所の移転の問題であります。  裁判所法の第六条は、「最高裁判所は、これを東京都に置く。」というふうに定めていますけれども、現在の東京への一極集中に伴う弊害問題を解決しようということで、政府の機関を地方に移していくべきではないかなどの議論がされておるわけでありますし、第百十九国会の中では、立法、行政については地方移転をしようという決議もしたわけでございますし、裁判所法があるにしても、ひとり司法の府のみが東京にとどまっているということはいかがなものかというふうに考えるわけでありまして、東京のごみごみしたところよりも、地方の大変環境のいいところに移っていただければ、なお一層国民の信頼は増すのではないか、そういうふうにも思うわけでありますし、どうかひとつこれらの問題につきまして、一部国民の側といいましょうか、昭和六十三年には東北経済団体の方からそういう要請もあったようでありますが、現在最高裁として地方移転の問題について具体的に調査をしたり移転をしようというふうに考えているのか、いずれか検討されておるのか、御説明を願いたいと思うわけであります。  したがって、最高裁が先行して移転しますと最高検察庁の方も一緒に移転をするのではないかというふうに思うわけでありますが、最高検察庁側が検討の状況になっておられるかどうかについて御質問申し上げます。
  125. 町田顯

    最高裁判所長官代理者(町田顯君) 最高裁判所が、民主主義の基本であります法の支配の実現を使命といたします裁判所の組織の中でも最終審の裁判所、憲法裁判所としての重要な役割を担っておりますことは委員御承知のとおりでございます。そういう役割を担っております最高裁判所の所在地をどこにするかということは、最高裁判所の役割に対します理解にもかかわることではないかと思います。  そういった意味で、広く国家的見地から、三権との関係を考慮しながら検討していくべき問題ではないかと考えるわけでございますし、そういった観点からいたしますと、極めて高度の政策的な判断に属することでもあろうかと思います。  委員指摘のとおり、最高裁判所の位置が特に法律で定められております理由の一端も、今申し上げましたようなところから来ているのではなかろうかと考えております。  現在、具体的に移転について最高裁判所は検討しているかという御質問でございますが、具体的に検討していると申し上げる段階にはございません。ただ、国会あるいは行政機関等の動向につきましてはこれまでも十分の関心を払ってまいりましたし、今後とも十分の関心を払ってまいりたいと考えているところでございます。
  126. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 今まで最高裁判所が移転するというお話は全く聞いておりませんでした。今御説明を初めて伺ったわけでございますけれども、そういった意味で今後の問題であろうかと思いますが、仮定的な問題として、もし将来最高裁判所が移られる場合に最高検察庁はどうするのかという御質問でございます。  訴訟法上は、訴訟法と申しますか、裁判所関係の法律によりますれば、最高検察庁は最高裁判所に対応して置かれるということになっておるわけでございますので、場所的な意味の対応関係が必要かどうかはわかりませんけれども、最高裁判所がそういう御検討を始められるということになれば、全く仮定の問題でありますが、何らかの検討をするだろうという程度のことしかお答えできません。
  127. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 まあ国会も移転しようということでございますので、余りそっけない返事よりも、どうか検討していただきたいというふうに思っております。  次に、登記特別会計についてでございますけれども、登記特別会計につきましては、登記の関係事務のコンピューター化を図るために昭和六十年に設置されたことはもう御存じのとおりでありまして、現在七年間経過しているわけでありますけれども、所期の目的を徐々にではありますが達成をしている。その間の経緯については私はむだではなかったと思っていますが、国民に余計な負担をかけているかどうかについてお尋ねを申し上げたいと思うわけです。  決算書を見ますと、昭和六十三年並びに平成元年とも百二十億円以上の余剰金を実は出しておるわけであります。絶対額といたしましてはそれほど大きい額ではないわけでありますけれども、比率とすればかなり大きい誤差でありますし、なぜこうした見込み違いが発生をしたのか。登記事務関係のコンピューター化の進展がおくれているのではないかというふうに思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  128. 清水湛

    説明員(清水湛君) 御指摘のように、昭和六十三年度予算においては前年度剰余金の受入額を六十億六千九百万円と見積もり、計上されましたが、決算においては百二十六億四千万円と、こういうことになっているわけでございます。  このような見込み違いがなぜ生じたかということでございますけれども昭和六十二年度は脂抄本請求等事件の増加というものが推定を大幅に上回ったというようなことが一つの原因としてあるわけでございます。それでそういう増加によって、登記手数料に係る収入が非常に増加したということに当然なるわけでございます。  それからもう一つは、この登記特別会計におきましては、剰余金が生じた場合には、その剰余金は原則としてこれを翌年度の歳入に繰り入れて他の歳入とともに翌年度の歳出の財源に充てる、つまり、余ればその次の年に使う、こういうことになっているわけでございまして、そういうようなことから予算の節約をすることによって剰余を出したということもあるわけでございます。  さらにはまた、登記特別会計の発足間もないということで、やや安定性を欠いたということも言えようかと思いますけれども、こういうような事情によって予算額と剰余金の決算額に大きな開きが出てきたわけでございます。  先ほど申しましたように、このような開差が生ずるということは必ずしも好ましいことではないと私ども思ってはおりますけれども、一方、登記事務のコンピューター化は長期間にわたり計画的に遂行している事業でございますので、ある年度に生じた剰余金は次年度あるいはその次の年に使うというような形で、コンピューター化の円滑な推進を図るということになっているわけでございまして、そういう意味では、長期的な計画のもとに合理的に使用されることになっておるというふうに私どもは考えているところでございます。  それから第二番目の、全国の法務局の不動産登記のコンピューター化がまだ余り推捗していないのではないかというお話でございます。  昭和六十年度に登記特別会計制度が創設され、またその後所要の不動産登記法、商業登記法等の改正がされたわけでございますが、ややコンピューター化の立ち上がりがおくれました。登記のコンピューターというのはこれは大変巨大なシステムでございまして、そういうシステムが国民のいわば生命の次に大事な財産である不動産の権利関係を規律する、こういうことになるわけでございますので、間違いが絶対起こらないようにということで正確を期したということ、そのために相当長期のシステムの開発期間を要したというようなことがあるわけでございます。  そういうような状況があるわけでございますが、昨年の九月には、法務局の職員団体である全法務労働組合との合意にも達するというようなことがございまして、昭和六十三年においてはわずか一庁がコンピューター化されただけにとどまったのでございますが、平成元年には五庁、昨年は十一庁、本年、平成三年は既に三庁がコンピューター化され、間もなく六庁も引き続きコンピューター化される、さらに移行作業中のものが二十庁あるというふうに、昨年の全法務労働組合との合意を契機といたしまして、急激にこのコンピューターの全国的展開が進捗しつつあるという状況になっているわけでございます。  ただ、何分にも全国に千百カ所余ある登記所をコンピューター化する、不動産の数と申しますか、土地、建物の数が日本全国で約三億個近い、三億筆個という膨大な不動産に関する登記簿をコンピューターに入力するという作業がまず前提としてあるわけでございまして、我々はこれを移行作業と呼んでおりますけれども、これに膨大な人的、物的な経費を要するというようなこと。さらには、コンピューター化するためには改めてコンピューター用の建物を建築しなければならない、いわゆるバックアップセンターと言っておりますけれども、そういうような新たな施設の整備を図らなければならないというような事情がございますので、一気にこれをコンピューター化するということは非常に難しい。ある程度の期間、私どもなるべく短い期間にこれを完成したいとは思っておりますけれども、しかしそれでも全国的な展開ということを考えますと、相当の長期間にわたる作業にならざるを得ないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  129. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 あと質問をつくっていましたけれども省略させていただきます。  人権侵犯にかかわる問題につきまして、最近の部落差別事件の特徴と傾向を明らかにしていただきたいことが一つ。もう一つは、人権侵犯事件とは何か。また人権侵犯事件とする法的根拠とは一体何か。恐らくもうおわかりのことだと思いますし、時間がございませんので、この二つについてお伺いをしたいと思います。
  130. 篠田省二

    説明員(篠田省二君) まず最初の御質問でございますが、法務省の人権擁護機関が取り扱いました同和関係に関する人権侵犯事件の数から見ますと、平成二年におきましては、前年度に比べて若干増加しておりますけれども、ここ数年間という単位で見ますと、差別事案が特に増加しているというふうには見られませんし、その内容から見ましても、結婚差別、就職差別といったような人生の重大な岐路における差別事件は減少傾向にあります。しかし、一部にはやはりいまだにいわれのない差別意識に基づく結婚差別や就職差別等の事案も見られますので、今後とも差別事件が発生した場合には積極的に対処し、啓発してまいりたいと考えております。  それから、人権侵犯事件の法的根拠ということでございますけれども、これは、法務省の人権擁護機関は発足以来法務省設置法あるいは人権擁護委員法などの関係法令によりまして人権侵犯事件調査、情報の収集に関する事項、人権思想の普及、高揚に関する事項等を所掌し、広く国民の間に人権思想を普及することを任務としている、そういうことでございます。
  131. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 最後になりますけれども、きょうも新聞報道にございました戸籍謄本の横流し事件、部落差別につながる身元調査の有力な基礎資料となります戸籍が悪用、不正利用されているわけでありますが、これらは、一つ一つそういう問題が起きたたびに地道な努力をしながら積み上げてきたわけでありますし、きょうの新聞報道にあるような事件につきましてこれまでも国会で議論をしてきましたし、国会の議論を踏まえまして、これらの事件に対する大臣の所感をお伺いしまして質問を終わります。
  132. 左藤恵

    国務大臣左藤恵君) 弁護士などの法律で認められた資格を有する方々がこのような不正な請求を行ったということは、まことに遺憾な事件である、このように思います。  法務省といたしましては、従来からこの種の事件が発生することのないように厳正に対処してまいりましたが、今回の事件一つの契機といたしまして、各団体に、例えば請求用紙に連続番号を付するとか、交付した資格者を記録するというような指導をいたしまして、不正な利用に供せられないように対策を講じたわけでございますが、今後とも関係団体をよく指導して、こうした不正請求事件の根絶を期してまいりたい、このように考えております。
  133. 守住有信

    守住有信君 質問させていただきます。  きょうは最高裁と法務省の日でございますが、決算上余り不当行為とかそういうふうな指摘事項はないようでございますが、入ります前に、左藤法務大臣、ついこの間御自宅の方で過激派と目される発煙筒がぶち込まれたというふうに新聞報道で知ったわけでございますが、一つのシンボルとしてとらえておるのかなと、宮中もシンボルでございますけれども。しかしきょうはそういう過激派集団の問題でなくて、ひとつ、麻薬問題あるいはピストル、そしてそういうものと暴力団との関係、こういうことについて、いろいろ関係する省庁は多うございますので、それぞれお尋ねしてまいります。  そして、特に法秩序を預かる法務省刑事局中心あるいは裁判所等の方々も、こういう社会的な問題、国内の秩序をむしばんでいき国民の健康をむしばんでいく大きな問題でございますので、警察初め海上保安庁、厚生省の麻薬関係、いろいろ関連が出てまいりますので、要路の方はひとつお聞き取りいただきまして、それぞれの世界でフォーマル、インフォーマルにもそういう社会的な問題意識というものをそれぞれジャッジの方々にもお伝えいただければありがたい、このような気持ちで以下質問させていただきます。  まず、薬物犯罪の方から入らせていただきます。  最近の薬物犯罪の概況といいますか、まあ戦後はヒロポン等々覚せい剤でございました。それからヘロインとか大麻とか、最近では南米のコロンビアからの暴力団とも結びつくであろうコカインとか、そういうふうなものの密輸入がどんどんふえておるということをいろんな報道等で知っておるわけでございますけれども、これらにつきましての概況というかあるいは傾向、あるいはまた、それらはどこで製造されてどのような経路をたどって我が国の国内にどのような手段で入っておるか、まず一番お詳しい警察庁の方からお願いをしたいと思います。
  134. 鎌原俊二

    説明員(鎌原俊二君) 最近の薬物犯罪の概況について御説明申し上げます。  平成二年中の覚せい剤事犯の検挙人員につきましては、一万五千三十八人でございまして、依然として高水準で推移いたしております。覚せい剤の押収量につきましても、昨年中に二百七十六キロを押収いたしておりまして、これは史上四番目の記録となっております。これに加えまして、欧米において最近蔓延いたしておりますコカイン事犯が急増いたしておりまして、昨年は九十三人検挙、押収量六八・八キログラムということで、いずれも史上最高を記録いたしております。また、大麻事犯の検挙人員につきましても、千五百十二人ということでございまして、この検挙人員も史上最高ということで、乱用されております薬物の多様化の傾向がかなり顕著になってきております。全体に情勢は大変厳しいものがあると考えております。  このため、警察といたしましては、暴力団等の供給組織、末端乱用者といったものの取り締まりを推進すると同時に、広報、啓発活動等も強力に行うとともに、外国の捜査機関等との連携を強めるなど、総合的な対策に努めているところでございます。  また、薬物の密輸入の実態等についておただしでございますので、これについてお答えさせていただきますと、我が国で乱用されております覚せい剤等薬物につきましては、そのほとんど全部が海外から不正に流入しているものでございます。  覚せい剤につきまして過去五年間の押収状況を見ますと、台湾、韓国の二カ国から参ったものが押収量の大体九割ぐらいを占めるというような状況でございます。一度に一キログラム以上覚せい剤を押収したという事例が昨年は二十件ございましたけれども、それで二百四十九キロ押収いたしておりますが、その仕出し国を見ますと、台湾が二百二十七・六キロということで、九一・四%というふうになっております。  また、昨年中にコカインを六八・八キロ、ヘロインを九・四キロ、乾燥大麻を百三十九・五キロ押収しているところでございますけれども、コカインにつきましてはコロンビアやボリビアといった南米の国、ヘロインについてはタイ、乾燥大麻につきましてはフィリピンやタイ、こういったところから不正に密輸入されている状況にございます。  この密輸の手口につきましても大変巧妙化いたしておりまして、いろいろな手口がございますけれども、航空機を利用した携帯持ち込み、あるいは輸入貨物を利用した持ち込み、外国郵便による持ち込み、それから洋上取引による持ち込みといったようなものもございます。特に、大量の覚せい剤の密輸入の場合につきましては洋上取引がかなり多うございまして、昭和六十二年二月に、一回の押収では史上最高の二百五十三キロというものを押収したことがございます。それから平成元年四月に史上第二位で一回に百五十一キロ押収したケースがございます。いずれも洋上取引によって日本に持ち込まれてきたものであると判明いたしておるところでございます。
  135. 守住有信

    守住有信君 いろいろ皆さん方の資料等も拝見させていただきましたし、今要点をずっと御答弁いただきました。水際作戦、今洋上という言葉がございましたが、そのちょっと手前のところの税関の方ではどのような取り締まり、警察との関連でやっておられるだろうか。今国際郵便物というものも出てまいりましたし、航空機、今までのオーソドックスなやり方でございますけれども、国際空港、あるいは外国航路の港湾等々まず歴史的にはそういうものだったと思いますけれども、税関の方からちょっとこの関係お願いします。
  136. 本村芳行

    説明員(本村芳行君) お答えいたします。  先ほどの答弁にもございましたように、我が国におきます不正薬物につきましては、ほとんど全部が海外から密輸入されている状況でございまして、私ども税関といたしましては、やはり水際、国境におきましてそういう流入を阻止することが極めて重要だと認識しております。  近年、覚せい剤とか大麻は商業貨物に巧妙に仮装されて大量に入ってくるようなケースがふえておりますし、またコカインにつきましては、中南米の密輸組織が西ヨーロッパとか日本を新市場としてねらっておるというような状況にございます。  ちなみに、平成二年の税関の押収量でございますが、覚せい剤は約百五十六キロ、コカインが約四十二キロ、それから大麻が約八十五キロ、それからヘロインが約九キログラムというぐあいになっております。特に最近ではコカインの押収量が急増している状況でございます。  このような状況背景といたしまして、税関におきましては昭和六十三年七月以来、こういう不正薬物の密輸入の取り締まりを「白い粉」対策ということで位置づけておりまして、情報収集の強化、それから取り締まり機器の整備充実、それから警察等の関係取り締まり機関との連携、それから国際協力等種々の施策を実施しております。現実に入ってきております薬物につきましては、御指摘のとおり空港でありますとか、あるいはコンテナの中に巧妙に隠されているとか、あるいは国際郵便物の中に入ってくるという種々の手口がございます。  さらに、このような施策のほかに、私ども税関といたしましては、やはり水際におきましてこういう不正薬物を取り締まっていく上では国民の皆様方の御理解と御支援が必要であるということで考えておりまして、政府全体として今取り組んでおります薬物乱用事犯取締強化月間、これは例年二月と十月に実施しておりますが、この強化月間に合わせまして税関では「白い粉」キャンペーンというようなキャッチフレーズのもとで、邦人の旅行者の方であるとか、あるいは全国で九つ税関がございますが、その税関の属しております地域社会に対しまして、そういう薬物の取り締まりに関しまして積極的な広報活動を実施している状況でございます。  今後におきましても、迅速かつ円滑な通関に配慮しながら、引き続き不正薬物の効果的な取り締まりに全力を挙げていきたい、かように考えております。  以上です。
  137. 守住有信

    守住有信君 それと関連しまして、よくテレビのニュースで麻薬犬が出てくるわけですが、何か二種類の麻薬犬と。ところがお聞きしたら全国で二十六頭しかいない。そしてだんだん定期航路とかそういうところでなくて、今いろいろ警察からもお話が出ておるように、洋上取引とかになりますので、漁村とかいろんなところに幅広く入ってくる。そうしたら、まあ情報は絶えずお互い連携してやっておられると思いますけれども一体この二十六頭だけでどうなんだろうなと。まず人間よりも犬、特別に訓練された犬の嗅覚ということが一番効果がまず出る。わからぬわけでございますから、いろんなものの中に隠してあるからね。ということで、その配置基準というか、そういうものに対する今後の取り組み。大蔵省の主計局も後ろで聞いておると思うんだけれども、どういうふうな取り組み意欲でおられるのか、お伺いしたいと思います。
  138. 本村芳行

    説明員(本村芳行君) お答えいたします。  委員指摘のとおり、税関の麻薬探知犬と申しますのは二つ種類がございまして、ラブラドル・レトリーバーという種類と、それからジャーマン・シェパードという、この二種類の麻薬探知犬がおりまして、麻薬、大麻等の不正薬物の取り締まりに従事している状況でございます。  御承知のとおり、先ほど申し上げましたとおり日本の不正薬物につきましては、もう大半が海外から密輸入されている状況でございますので、私どもはやはり水際でキャッチしなければいかぬというぐあいに考えている次第でございますが、水際でキャッチいたします場合には、委員指摘のとおり、犬の臭覚というのは人間の数万倍ということでございますので、麻薬探知犬の活用というものが極めて有効でございます。税関では、現在成田空港を初めといたしまして、御指摘のとおり全国で計二十六頭の麻薬探知犬を配備しておりまして、平成年度におきましては新たに麻薬探知犬を六頭配備する予定でございます。  それから、諸外国の場合には、若干調べた年次が異なりますが、例えばアメリカが二百頭、あるいはフランスが百頭、それからイギリスが三十八頭等の数字があるわけではございますけれども、私ども平成年度以降におきます麻薬探知犬の配備頭数につきましては、各税関の業務の実態であるとか、あるいは麻薬探知犬の育成可能数、これはすべての犬が鼻がきくというわけではございませんで、統計数字によりますと約百三十頭に一頭がやっと晴れて麻薬探知犬になれるという状況でございまして、そういう犬の方の適性がございます。それからもう一つ、やはり犬を扱う人をどんどん訓練していかなければならないという事情がございます。そのほか犬のすむところでございますね。私ども犬舎と呼んでおりますが、こういうものも確保していかなければいかぬという状況でございます。  そういう状況でございますので、このような事情を種々勘案いたしまして、委員指摘のとおり、麻薬探知犬につきましては計画的かつ着実にふやしていきたい、かように考えている次第でございます。
  139. 守住有信

    守住有信君 麻薬犬と関連してですけれども厚生省も麻薬取締官、こういう組織があって、それから警察はもう全面的にやっておられますけれども、この麻薬犬で見た場合、やっぱり麻薬犬は税関の役割ということになるんですか。厚生省の麻薬取締官というか、そこらあたり、あるいは警察ですね、これの麻薬犬という角度から見た場合の役割の連携分担はどうなっておるだろうか。ちょっと疑問に感じましたので、どちらからでも結構でございますから、警察としては警察犬がおりますが、その中に麻薬犬、あるいは厚生省の麻薬取締官という専門官までおられる、そこらあたりをお聞かせいただきたいと思います。
  140. 鎌原俊二

    説明員(鎌原俊二君) 麻薬犬の関係につきましては、ただいま大蔵省さんの方からお答えがあったとおりでございますけれども、私どもも十分に活用いたしたいということで、私ども自体といたしましては、麻薬犬そのものは保有していないわけでございますけれども、水際対策が非常に重要であるということで、税関等の関係機関と連携をとりながら、税関がお持ちの麻薬犬等を十分に活用させていただいて摘発に努めているという状況でございます。
  141. 守住有信

    守住有信君 ちょっと申し上げましたように、レジャー時代で、日本の国内でも最近非常に足の速い、快速艇、大型モーターボートがどんどん出現しておる。それと暴力団の関係、それから麻薬。後でピストル問題も申し上げますけれども、どうもそういうのが連携しながら、非常に幅広く今まで使われなかった漁港、寒村の港とかに、まあ税関がある場所はおのずから限定されておるので、それ以外のところへ行く。レジャー時代で快速のモーターボートがずっと東シナ海その他へ行く。そして台湾側、韓国側と。洋上取引というお話も出ましたけれども、そこらに対する関係省庁の体制整備が非常に抜けておるんじゃないか。今までのやり方、ルートの裏の裏をかいてくるわけですから、どうもそういう感じがしておりますけれども、こういうものについてそれぞれ、後で海上保安庁にはお聞きしますけれども、海上保安庁のもっと手前の、本当の水際だな、このルート変更に伴う、非常に分散化しておる、それに伴う各省庁の今後の対応策、どうお考えであろうか、お聞かせいただきたいと思います。
  142. 鎌原俊二

    説明員(鎌原俊二君) 薬物の密売等に関与しております暴力団等につきましては、いろいろと密輸入手口といったものを工夫しておりまして、いろいろな対応をしてなるべく発見されにくいようなことで努力をしておるところでございますけれども、これに対しましては、私どもの方といたしましても情報収集体制、そういったものを整備いたしまして、どういうところから持ってくるか、どういうような動きをしているかということについて、できるだけ詳しく情報を収集し、的確に対応してまいりたい、そのような手を打ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  143. 守住有信

    守住有信君 あと、関連いたしましてけん銃使用事案でございますね、こちらへ入らせていただきたいと思います。  特にこれは暴力団でございますが、けん銃使用事案が後を絶ちませんで、一般の全く関係のない市民を巻き添えにしておりましたり、現場の第一線で活躍しておられる警察官まで死傷する、そういうふうなケースがどんどん出てきつつある。まして、法治国家として、国際的にはそれは外交とか防衛とかございますが、国内の秩序の安定という問題を考えますときに、日本の国内というのは本当に、アメリカ社会と違って、けん銃は不所持で、麻薬の問題も同じでございますが、これがこのままいくとアメリカの悪い面、アメリカ社会の腐敗した悪い面が日本の国内にもだんだんだんだんというふうな、私はそういう角度で非常に憂えておるわけでございます。そして、一方では暴力団員の武装化というのがどんどん進んでおると聞いておりまして、昔、一丁が正規の暴力団の三十人に匹敵すると言われていたけれども今はそれを三人に一丁ぐらいとか、こういうことも聞くわけでございます。  今、新しい立法もできて、暴力団員の不当行為の防止に関する法律ですね、秋からもう施行されるということでその準備体制がいっておりますけれども、手段として、麻薬とピストル、今麻薬の方はお尋ねいたしましたので、特に銃砲使用の犯罪の現況、どのような傾向、現状になっておるかお聞かせいただきたいと思います。
  144. 中田好昭

    説明員(中田好昭君) お答えいたします。  けん銃使用犯罪の発生状況でございますが、平成二年中では二百五十六件で、そのうち二百五十一件、九八・六%でございますけれども、これが暴力団によるものでございます。また、暴力団によるけん銃使用犯罪の約半数が対立抗争事件に絡むものでございまして、委員指摘のとおり、最近では一般市民をも巻き添えにしているほか、対立抗争事件の警戒中の警察官を殺害するという事案もございまして、大変悪質、凶悪化しておる傾向にございます。  従来、日本の治安が比較的良好に保持されておると言われる場合に、その理由の一つとして銃の規制が厳格に行われておるというようなことも挙げられておるところでございますが、警察といたしましては、このような暴力団によるけん銃使用犯罪は日本の治安に重大な影響を及ぼすものと受けとめまして、最重要課題の一つとして、暴力団によるけん銃使用犯罪の封圧、検挙に取り組んでおるところでございます。  特に最近、違法に所持されているけん銃の大部分が外国から密輸入されたものであるという実態がございます。こういう実態を踏まえまして、国内にけん銃等が密輸入される前に早い段階でそのけん銃等を押収するという、そういうけん銃の密輸入対策を強化する必要性がございますということで、今般、銃砲刀剣類所持等取締法の一部改正を行っていただいたところでございます。  従来からげん銃の密輸入罪がございましたけれども、さらにその準備行為としての予備罪、あるいはそれが外国等で行われた場合の国外犯の規定、さらにはけん銃の銃身等、けん銃を分解して所持したり密輸入する、そういう実態もございますので、そういう部品の輸入の禁止等の規定の新設をしていただいたところでございまして、警察といたしましては、これらの規定を積極的に活用いたしましてけん銃を水際で食いとめるなどの対策を進め、けん銃使用犯罪の防圧に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  145. 守住有信

    守住有信君 今の、水際ということですけれども、その水の際のちょっと先の方が海上保安庁だ、こう思うわけでございますが、海上保安庁の方で、麻薬あるいは密輸入けん銃等の武器ですね、それは現実には水難とかなんかについてももちろん活動しておられるけれども、こちらの方はいかがでございましょうか。
  146. 大森寿明

    説明員(大森寿明君) お答えいたします。  御案内のように、海上保安庁は海の安全の確保、あるいは海上における犯罪の予防、防止、捜査といったようなことを使命の一つとして持っている役所でございますけれども、その使命を果たすために、基本的には巡視船艇、パトロールボートでございますけれども、大きさによって船と呼んだり艇と呼ぶということで巡視船艇と申し上げますけれども、この巡視船艇、これが大体三百五十隻ほどございます。それから、先ほどもお話しございましたように、スピードが速い船が対象となってきつつありますので、これに対応するために航空機も所持しております。これが約六十五ぐらいでございます。  こういう基本的な道具を使いまして海上における犯罪の予防等を行っているわけでございまして、先ほどお話しになっております麻薬の問題等につきましては、海上保安庁における最大の課題として現在取り組んでいるところでございます。残念ながら、警察庁あるいは税関の方から先ほどお話がございましたような数字はたくさんはございませんけれども、体制を強化していくということで取り締まりをしていくつもりでございます。  それで、多数の船がございますので、すべてに例えば立入検査をやるというわけにはまいらないわけでございますので、情報収集が必要だということで、海上保安庁は、過去、特別情報班というものを全国十一あります管区海上保安本部に設けておりまして、ここを中心にしまして、船員等から情報を得ることによって怪しい船をピックアップしまして、そこに必要な立入検査等を行っているというのが実情でございます。
  147. 守住有信

    守住有信君 今の情報連絡、一番大事なあれでございますけれども、この麻薬や短銃、特にコカイン問題も、最近新聞を見ておりましたら、警察庁でコカイン関連で情報センターを六カ所まずおつくりになると、これ、読みましてよくわかったわけです。お互いのそういうものの一番外側が海上保安庁だ。これは防衛論をやるわけじゃないんで海上自衛隊の話じゃありませんけれども。この手前の皆さん方ですね。税関とかあるいはプロの麻薬取締官とか、この国内的な相互の情報連絡というか、いろいろ手分けしていかにゃいかぬだろう、中核は警察庁だけれども。そこの点、あれはコロンビアを念頭に置かれての、暴力団と密接な関係が深いと言われておる最近の傾向から、それで情報センターをおつくりになりましたね。  そういうものと、今幾つかの省庁にお尋ねしましたけれども、そういう相互の情報連絡あるいはそれ以前の調査活動というか、これは本当は外務省もいるので、外務省出向者もおられると思うんだけれども、あるいは民間の調査機関とかそういうものと結んだ最前線からの情報、そこと国内的な相互間の情報連携、ここはどうなっておるだろうか。それぞれややもすれば縦割り行政が非常に多いわけですから、この問題だけは本当に連携してやらなきゃだめだということでございます。  そこらをどなたか御説明いただければ、あるいはまたそれぞれの省庁がそういう問題意識でプロジェクトを組む、この麻薬とピストル問題だけはそういう意識で今後もやっていただきたいし、今はどのような状況だろうかなということをお聞かせいただきたいと思います。
  148. 鎌原俊二

    説明員(鎌原俊二君) 関係機関との情報連絡の交換についてでございますけれども、薬物の取り締まり等につきましては警察も独自でいろいろとやっているわけでございますけれども関係機関との緊密な連携というものがこれは不可欠でございます。特に、海外から大半の薬物が入ってくるという実情にございましては、税関ですとか入管ですとか海上保安庁さんですとか、そういった関係機関とのいろいろな緊密な連携が不可欠でございますので、随時、事案に応じまして関係機関と緊密な連携のもとに捜査を進めているところでございます。
  149. 守住有信

    守住有信君 ちょっとまだ抽象的ですが、お互いの情報連絡だが、個別は個別で、定期協議ぐらいお互いやるような場をつくって、これは後でも申し上げたいけれども、内閣自体も、青少年がむしばまれていっておるわけですから、青少年対策で、広報とか、そういう場というものは当然あるだろうと思うんです。それで、これは私が知らないせいかもしらぬが、定期協議で、最近の傾向、役割分担、そして海外からの情報を、これは外務省も人ごとじゃないわけで、在外公館だって領事館だって、あるいはまたこれと密接な民間情報機関、こういうものも入れ込みながらというイメージがあるわけですけれども、そこらあたりはどうでございましょうか。
  150. 齋藤勲

    説明員(齋藤勲君) 委員指摘のとおり、関係機関の情報交換は非常に大切でございまして、政府レベルでは内閣に薬物乱用対策推進本部、官房長官を長といたします本部が置かれまして関係機関協力して進めているところでございます。また一方、現場におきましてもそれぞれの機関が協力するということが非常に大事でございまして、各ブロックごとに麻薬取り締まり協議会というものを設置いたしまして、検察、入管、税関、警察、それに都道府県と厚生省ということで会合を持ちまして、定期的な協議を進めまして円滑な取り締まりができるよう配慮しているところでございます。
  151. 守住有信

    守住有信君 私は、余り官房長官みたいに偉い人でなくて、これは現実の現場の細かい情報の集積ですからね。それを特にお並びになった皆さん方、お帰りになりましたらそれぞれ幹部の方に、ぜひともお願いを申し上げておきます。  実は、ついこの間私は後藤先生たちと御一緒に台湾に行きました。今まで私は北京の方と、北京の電気通信の無償援助研修センターとかディジタル電子交換機とか、これは円借款でございますが、そういうものを大きくやってまいりまして、台湾には一度も行かなかったわけですがね。そうしたら、台湾で、総統が、憲法の改正をする、そして中国敵対条項を廃止すると、こういうことがございましたものですから、技術などの交流の亜東関係協会ですか、科学技術の情報、知識の交流、そういう意味で台湾を訪ねました。  実は、麻薬とピストル問題を向こうの中華民国というか台湾省というか、それはそれぞれの立場で言い方は違いますでしょうけれども、それが独立の政府であれ、国家であろうとなかろうと、あの東シナ海を通っていろんな洋上での動きがある。お互いの国民を守るためには外交があろうとなかろうと事実上の連携をやるべきではないか。こういうことで、外務長官といいますかな、それから総統にも会おうと思いましたが南の方へお出かけでしたから、蒋という秘書長さん、あるいは向こうにも実質上の海上保安庁がありまして、内務省の警察系統の第七警務隊といいますか、これが日本でいうなら海上保安庁ですね、こういう方々にも会ったりしました。日本でいう海上保安庁の船の写真も見てきましたが、一つのやつなんかは漁船をチャーターしてわずか二十ノット。漁船は最高三十二ノットですね。それで台湾側の最前線の海上保安庁的役割の方も、追いかけても逃げられてしまって切歯扼腕しておるんですな。漁船の速いやつあるいはモーターボートに逃げられてしまう。そういう実態の話も聞いてまいりました。  そしていろいろ聞きましたら、例えばピストルについては前はトカレフ、ソ連製のピストルであったけれども、例えば中国の福建省に兵器工場がある、ちゃんと入門はボディーチェックがあるようですけれども、機関銃なんかは重いからそんなことはできないけれども、ピストルは軽いから塀の外に投げるらしいですな。そうすると仲間が向こうにおってそれをとる。福建省と経済交流はだんだん開いておりますから、漁船の下に、ビニール袋で五丁なら五丁包んでロープでひっかけて、福建省の方から漁船で台湾の方に来るらしいですな。それで洋上でということもあるが、台湾に揚げる。台湾でも短銃がどんどんふえておる、麻薬もでございますが。  ところが日本の暴力団はこれを非常に高く買う。何十万ですかな、いろいろ言われておりますが、そこで今度は台湾の漁船が、あるいは福建省の漁船かそれはわからぬけれども、東シナ海で洋上取引。これは日本側の暴力団等だろうと思うんですけれどもね。そしてこの日本側の船は足が長いし、どこかのわからぬような寒村の漁港にぽいと跳び上がる。あるいはまた麻薬についても、東南アジアの方の貨物船が来て洋上でかばん一個落とす。そこに日本のモーターボートが来て、かばんをとってそれでどこかの寒村に上がる。男一人、かばん一個。そういう話を実は台湾側から聞いてきたわけです。  したがって、外交があろうとなかろうと、これは本当に連携してやらなきゃいかぬ。私なんか逆に、海上保安庁と台湾の保安庁との無線連絡なんかできるのか、周波数も合っておるか、こういうことまで指摘したわけでございますけれども、ここらについて、外交はなくても、かつての韓国大使だった方が今台北事務所長として事実上はおいでになりますね。だからこういう事実行為というものを、本当に我が国を守る水際のもうちょっと先、東シナ海、すぐ先だ、ここで台湾側と連携をして、そしてお互い情報交換あるいは無線の連絡等も十分できるようにする。  それから台湾側も切歯扼腕しておりましたので、日本の海上保安庁のはもう六十ノット出る、あれは「ちくぜん」かな、我が九州は「ちくぜん」が六十ノットで走り回ってくれるから安心だなと内々は思っておるわけですけれども、それが海軍だとこれは別になりますからね。海軍じゃないんだ、海上保安庁。警察。そして麻薬の取り締まり、ピストル、こういうものを何か皆さん方も事実上、正面きって役人がまずければこれは民間のパイプを通じながらお互いにきちっと連携していく行き方が大切じゃないか、これを非常に痛感したわけでございます。まあ幾つかの点をばらばら申し上げておりますけれども。  台湾側との事実上の取り組み、何もこれは北京に遠慮するわけじゃないんだよ。北京は北京として、我々円借款とか向こうの社会開発、経済開発のために一生懸命やっていくけれども日本国民の命や健康を守っていくためには、やはりそういう台湾側と外交があろうとなかろうと、これが一つの議員外交じゃなかろうかなと私は思ったわけでございますが、取り締まってくれるのは皆さん方の方だから、これとの取り組みというか、それぞれのセクションが今後どのように受けとめておられるだろうか、ここをお願いしたいと思うわけです。  これはまとめて言うとどこになるかな。台湾だから外務省かな。よろしくどうぞ。
  152. 宮本雄二

    説明員(宮本雄二君) お答え申し上げます。  一九七二年にいわゆる日中国交正常化が実現いたしまして、台湾との関係は地域的な民間の交流としてこれを維持するということで、そういう実務関係の維持のために必要な任務を行うべく私どもとしては財団法人交流協会、これを設立したわけでございます。先ほど委員指摘の梁井台北事務所長は、しばらく前まで韓国大使をいたしておりましたが、いずれにしましてもそういうことで政府との緊密な連携のもとに財団法人交流協会が台湾との実務関係を取り仕切る。これに対しまして、昭和四十九年の十二月二十六日、財団法人交流協会を設立しました際に、当時の二階堂官房長官が政府としても我が国国内法令の範囲内でできる限りの支持と協力を与える方針であるということを表明していただいておりますので、今御指摘の麻薬なりけん銃なりの問題は我が国国民の安全のみならずいろんな面に影響を及ぼす問題でございますので、こういう基本的な枠組みの中で政府としてもできる限りのことを関係省庁と御連絡しながらやっていきたい、こういうふうに考えております。
  153. 守住有信

    守住有信君 今おっしゃったように、私は、これは協力ではなくてお互いの連携だと思う。何も台湾に経済援助とかそういう協力というか支援ではないんで、お互いの情報網であれ何であれ連携をしてそれぞれ人類が進んでおるわけですから。  そして、まして我が国の青少年問題、この青少年問題につきましても、もう一つあるのが麻薬問題と民間におけるいろんな啓蒙運動でございますね。政府の問題は幾つかお話しいただきましたが。例えば、アメリカはレーガン夫人がリーダーになってジャスト・セイ・ノーという、そしてまた日本でも杉良太郎君がリーダーになって連携しながら去年でしたか日比谷でも大きなイベント、啓蒙運動をやりましたけれども、そういう民間における、まあピストルの問題はちょっと別になるけれども、特に麻薬の啓蒙、これはいろいろ皆さん方のセンターのところで若い青少年にアンケート調査をなすったら、麻薬に対しても恐れとか違和感が全くない。そして、海外渡航ブームで海外、アメリカやヨーロッパあたりでちゃらちゃらとなめている。そして、何も音楽が悪いというわけじゃありませんけれども、そういうところでだんだんその風習が我が国内にも伝わっていって、これは勝新太郎だけの問題ではない。社会党の肥田委員が外務委員会でも御質問のようでしたけれども、勝一人だけではない。これは本当にもうアメリカの悪い面、ヨーロッパの一部の悪い面が日本の国内にひたひたと出つつある、こういう感じですね。今後五年先、十年先が本当に恐ろしい、こういうふうに感じております。  特に、警察庁はコロンビアの方とは最近そういう情報センターをつくられた。ついこの間も新しい鈴木警察庁長官が決意をおっしゃっておられることを私は新聞を通じて知ったわけですけれども、アメリカがジャスト・セイ・ノーとか、議会、政府が物すごく厳しい措置をとり出した。この流れが私は麻薬新法にも流れておる、このように思っておるわけです。したがって、日本をねらったコロンビア・ルートというふうにもなってくるし、前々からある台湾ルート、韓国ルートとか東シナ海ルート、これが今ピストルの問題とも一緒になって、そういう裏で見えないところでやっておるということで、重ねてのお願いでございますけれども、皆さん方がお互いに横の連絡、特に細かい情報でございますよ。いろんな事前の情報というか、何と言ったらいいかな、はっきり言ってスパイですな、これがやれなきゃ暴力団対策も麻薬予防もピストル予防もできぬわけですから。そういう問題意識で各省庁御連携なさってお取り組みいただくことをまず皆様方にお願い申し上げておきます。  何らかこういうやり方、考え方についてさらに積極的な、あるいは多少具体的でもそれぞれのセクションでお考えのことがあれば私どもにお知らせいただきたい。そうすると、そのことが逆に国民に向かっての啓蒙の柱にもなってくる、こう思うわけですので、どなたからでも結構ですから、ひとつ、むしろ我々に教えてやると、教えてやるというのはなんですが、我々はやっぱり国民の代表ですから、それぞれ口を持っておりますので、どこへ行っても何か講演会とかいろいろな演説会とかをやる、その中に入れ込めばいいわけですから。そういうあれで、ひとつまた我々に教えていただきたい、こういう気持ちで、何かそれぞれの省でございましたら積極的に御開陳をいただきたい。  今まで聞いておると、どちらかというと警察庁ばかりが一生懸命御説明をされておるから、なるべくほかのところからもお願い申し上げます。
  154. 齋藤勲

    説明員(齋藤勲君) 麻薬、覚せい剤等の薬物の乱用防止のためには、取り締まりにあわせましてこれらの薬物の危害についての正しい知識を普及して、薬物乱用を許さない、こういう社会環境を確立していくことが重要であると考えております。このため厚生省におきましては、毎年都道府‐県等の協力を得まして、麻薬、覚せい剤禍撲滅運動を展開しておりまして、全国の各地区において大会等を開催するとともに、各種広報媒体を利用しましてキャンペーンを行うなど、麻薬、覚せい剤追放の機運の盛り上げを図っているところでございます。また、近年の覚せい剤等の問題に対処するため、都道府県と協力して、民間のボランティアから成る覚せい剤乱用防止推進員制度を発足させまして、地域に密着した啓発活動を官民一体となって推進しているところでございます。  さらに、青少年においてシンナー等の乱用が見られることから、青少年を中心にシンナーを含めた薬物乱用の予防啓発の徹底を図るため、今年度には中学生を対象として、シンナーが心身に有害な薬物であることを十分理解させるための副読本を作成、配付することとしておりまして、また視聴覚の教育機材を搭載しました啓発用キャラバンカーを製作し、中学校等へ出向き、薬物乱用予防のためのより積極的な啓発活動を展開することとしているところでございます。
  155. 鎌原俊二

    説明員(鎌原俊二君) 広報啓発活動につきましては、警察にとりましても非常に重要な問題であると考えておりまして、ただいまの厚生省さんの方の活動とも連携をとりながらいろいろとやっているところでございます。特に、若い人の間に薬物に対する警戒心が薄まっているのではないかというような御指摘も先ほど議員の方からございましたとおりでございまして、そういった警戒心を持たないというところが欧米における薬物禍の最大の原因になったというような指摘もございまして、日本がああいった状態に陥らないためには薬物に対する警戒心というものを若いころから植えつけることが必要であるということでございまして、私どもの方もいろいろな広報の機会を通じましてそういう教育に努力してまいりたいと考えているところでございます。
  156. 本村芳行

    説明員(本村芳行君) 税関の広報対策でございますが、先ほど申し上げました「白い粉」キャンペーンというのを毎年二月と十月の薬物乱用事犯取締強化月間に合わせまして各税関等で実施しておりますが、そのほかに税関展というものを本年開催いたしまして、各地域のデパート等を借りまして、そこで税関の行政の中で麻薬等も含めまして税関行政はこういうぐあいにやっているということを御理解いただくということで実施いたしまして、地域にもよりますが、入場者が数万人というところがございました。  さらに、青少年対策という意味合いでは、現在大学の卒業時におきまして、特に二月、三月でございますが、大学を卒業して就職が決まっている人たちが海外、特にアメリカに行きまして西海岸等で麻薬をやって、帰ってきて成田空港等で検挙されるという事例が非常にふえておりますので、本年は大学にも回りまして、やはりこういう前途ある人たちが若干出来心でやってしまうこともあるかと思いますので、やはり青少年対策の一環といたしまして大学等にはアプローチしているような状況でございます。  以上です。
  157. 大森寿明

    説明員(大森寿明君) 海上保安庁の方も若干PRさせていただきたいと思います。  先ほど御説明しました、巡視船に一般の国民の方に御乗船いただく機会をつくりまして、これは観閲式と称しておるわけでございますが、つい先日、東京湾で行ったところでございまして、非常に多くの方に乗船していただき、そして海上保安庁がどんな活動をしているかということを御理解いただいているわけでございます。その中の一環で、麻薬等に取り組んでいる姿を御説明しているところでございます。  それから、先ほども申し上げましたけれども、全国にあります十一の出先管区海上保安本部、ここにおきましても随時そういう観閲式を行っているところでございます。  それから、関係機関との協力でございますけれども、これは警察、税関それから麻薬取締官というところとまさに現実の問題として密接な情報交換をやることが暴力団等が悪の手を広げていくということを防ぐ大きな手段であるということで十分認識しておりまして、その対策を毎日やっているところでございます。  なお、先ほど先生から「ちくぜん」は六十ノットのスピードが出るというお話があったのですけれども、残念ながら六十ノットは出ませんので、その三分の一ぐらいだと思うのですけれども、海上保安庁の場合は五十ノットぐらいの船、これは、余り大きい船だと相当なエネルギーを食ってしまいまして大変なものですから、非常に小さい船なんですけれども、五十ノットぐらいの船は現在日本にもありまして、これを財政当局の御理解をいただきながら鋭意整備してまいりたいというふうに考えているところでございますので、よろしくお願いしたいと思います。
  158. 守住有信

    守住有信君 どうもありがとうございました。  これで新しい麻薬の条約、それに伴って麻薬取り締まりの二法が今衆議院で御検討中で、秋を目指してと、暴力団の法の施行もあれは秋でしたか来年だったか、そんなようですが、それであれができ上がりますと今後の暴力団に対するこういう一連の関係の、特に資金ですね、資金の面の問題等はどのような影響というか期待に沿えるような仕組みがこの日本の社会にできてくるだろうか、そして警察官もより的確にやりやすくなるだろうか、裁判の方もそれに向かって厳正、公正な判断ができるだろうか、こういうことを、実は私専門ではございませんので、ポイントだけ御説明いただければ非常にありがたいと思います。お願いします。
  159. 齋藤勲

    説明員(齋藤勲君) 麻薬等の不正取引防止のために国際的にも新条約の早期批准が求められているところでございまして、厚生省といたしましても、関係省庁の協力を得まして麻薬二法をさきの国会に提出したところでございます。  この二つの法律案は、一つは麻薬及び向精神薬取締法等の一部を改正する法律案、改正法と言っておりますが、もう一つは国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律案、この二本でございまして、ともに新条約の批准に備えるものでございます。  委員指摘の資金の関係につきましては、この特例法におきまして新条約の批准に必要な規定を国内的に整備することということで規定が設けられておりまして、麻薬資金の洗浄を行うマネーロンダリングを処罰する等の罰則規定を設けるとともに、麻薬犯罪により得ました財産の没収規定やそのための保全手続を設けること等の規定を置くこととしております。  なお、この二つの法律が現在国会で審査中でございますが、新条約につきましては既にさきの国会で承認されているところでもございまして、麻薬二法が成立した後、その施行に合わせて新条約締結の手続がとられるものと承知しているところでございます。  麻薬二法の効果といたしましては、麻薬の不正取引の主要な要因である不正収益の剥奪等が図られ、麻薬等の不正取引の防止のための国際協力が一層促進されるとともに、我が国におきましても麻薬等の乱用防止の一層の強化が図られることが期待されているところでございます。
  160. 守住有信

    守住有信君 これ、取り締まりの方の皆さん方が、この新法二法できればどういうふうな、まだいろいろ御検討、準備中だろうと思いますけれども、そこらあたりの感触をちょっと聞かせていただきたいと思います。
  161. 鎌原俊二

    説明員(鎌原俊二君) 今回の法案には、齋藤課長の方からもお話しございましたけれども、マネーロンダリングの処罰あるいは不正収益の没収、コントロールドデリバリーの導入、こういったような規定が盛り込まれておりまして、私ども捜査を担当する者としましては、関係諸国からの通報に基づいて大がかりなコントロールドデリバリーを実施することができますし、あるいはマネーロンダリングというものを犯罪として捜査するということになるわけでございます。  こうした法律が成立いたしますと、私どもといたしましては、従来非常に困難な面が多かったわけでございますけれども、薬物犯罪組織の中枢部に資金という面から迫ることができるということ、あるいは国際的なコントロールドデリバリーができることによりまして我が国への密輸ルート、あるいはその密輸ルートからつながった国内の密売ルートといったものを着実に追いかけることができますので、大きな効果を発揮するものと期待しているところでございます。
  162. 本村芳行

    説明員(本村芳行君) お答えいたします。  税関といたしましては、コントロールドデリバリーについては高く評価しております。このコントロールドデリバリーと申しますのは監視つき移転ということで翻訳されておりますが、一言で申しますならば、不正薬物が入ってきましたときに、それを現場で押さえずに、十分な監視のもとに国内に入れましてもっと大魚を捕まえるというような捜査方法でございます。  この監視つき移転を導入いたしますと、国内で深刻化しつつあります不正薬物乱用問題に十分対処し得るとか、あるいは薬物犯罪が組織化されておりますので、そういう動向により適切に対処し得る、さらに関係各国と協力いたしましてこのコントロールドデリバリーを実施するということになりますので、そういう国際協力の観点からも極めて有効な捜査方法というぐあいに考えております。  以上の観点から、この監視つき移転につきましては積極的に評価している次第でございまして、今後とも警察等と連携を深めながら対処してまいりたい、かように考えております。
  163. 守住有信

    守住有信君 どうも長時間、いろいろありがとうございました。それぞれ頑張っていただきますように、よろしくお願いします。  終わります。
  164. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 きょうは最初に法務省の方にお伺いします。  刑務所の作業賞与金についてお伺いします。  御承知のとおり、刑務所においては多くの受刑者がいろんな作業に従事して罪過を清算している。それで、矯正当局としては服役者に対して作業賞与金と称する金銭を支払っております。しかし、服役者に対して支払われる作業賞与金の額は、実際の仕事の成果に対してまことに不相当なものであるというふうに私は考えます。  まず、昭和六十三年度決算金額に関連して、作業収入、支出、作業賞与金等についてお伺いしますが、数字が少々変わるだけで平成元年度においてもほとんど同じ問題を含んでおります。そこで、まず最初にお伺いしたいのは、昭和六十三年度の刑務作業収入について、年間の収入額は幾らになっておりますか。
  165. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) 百六十五億三千万円でございます。
  166. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この百六十五億三千万円の作業収入を得るために、通常の生産活動で言うと原価計算になるわけですが、どの程度の金額が作業支出額となっているか、項目と金額をおっしゃってください。
  167. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) 先ほどの作業収入額を得るためにということの解釈がまたちょっとあると思いますが、それは、人件費もあれば光熱水道費あるいは刑務所の維持費、そういうものも入れればまた別になりますけれども、とりあえず決算において刑務所作業費という項で挙げられております金額を申しますならば、約二十三億七千万円でございまして、その細かな目で言いますと、諸謝金、作業業務旅費、作業諸費、それから作業場等借料あるいは原材料費、そういうものを合わせた額が約二十三億七千万円ということでございまして、そのほかに作業をさせるための技官の経費、刑務所の維持費、あるいは被収容者に関する食糧費、被服費などというのは別にかかっております。
  168. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今おっしゃられた作業支出額二十三億円余ということですが、またもう一つ、実際に泊まって、食べて、着せてという問題もあるとおっしゃいましたが、それはまた後で申し上げます。  そうすると、結局服役者が昭和六十三年度中に稼ぎ出した金額は百六十五億円余、これに対して直接かかった経費は二十三億円余。そうすると、この服役者の作業によって、この収支の差は年間どのくらいになりますか。
  169. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) ただいまの御質問のように詰めてこられると、ちょっといかにも被収容者がつくり出した金額に比べて原価が少ないんじゃないかというふうに答えさせられるのはちょっと私どもにとっては不本意なのでございますが、御趣旨のとおりに計算いたしますと、その収支の差は百四十一億六千万円ほどになるということになります。
  170. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ところで、収支の差は百四十一億円ある。じゃ、六十三年度中に服役者に支払った作業賞与金の総額は幾らになりますか。
  171. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) 約十三億円でございます。
  172. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 先ほども申し上げましたように、泊まって、食べて、着せてという問題はちょっとまた後で私お話ししますから、それは別にして、そうすると、百四十一億円の収益を上げている服役者に対して支払っている金は一割に満たない十三億弱ということになります。どうしてこういう作業賞与金の額になるのか。作業賞与金を算定するのはどのような根拠に基づき、どのような計算方法でやっておられるのでしょうか。
  173. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) 受刑者につきまして、その作業をさせるためにはいろいろな技能がございますが、その技能の程度により見習い工から一等工まで分類いたします。そして、その作業等工ごとに基準額を定めまして、これに就業時間を乗じてまず基本月額というものを算定いたします。そしてさらに作業成績の良否などによって基本月額の最高八割までの加算減額を行っているほか、特に困難な作業についても加算を行いまして計算高を算出しております。
  174. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 もう少し具体的に、十級から一級まであるんだと、この十級から一級までの区分けとそれに対する金額、その十級から一級までに対応する要件というものを述べてください。
  175. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) 平成年度予算で申しますと、見習い工は一時間当たり四円、それから一等工が二十八円八十銭、こういうことで計算しております。
  176. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 要するに、私であろうがあなたであろうが、何らかの形で懲役刑になって刑務所に入ったときに、仕事をしろといって見習い期間中六カ月間は一時間四円だということなんです。一時間四円ですよ。そして三年経験すると一級になる。一級になって一時間二十八円八十銭だということなんです。  しかし、先ほどから何度も申し上げるけれども、寝かせて、食べさせて、着せてはいるけれども、一時間四円というのは、だれが聞いたって何で四円だろう。四円というと、一日働いて四、八、三十二円。十日働いて三百二十円。二十日働いて幾らですか、一月働いても九百円なんです。これは、私たちは刑務所に入ることはないからいいだろうと思っているけれども、いつ入るかわかりゃせぬ。何らかのことで入ったときに、一時間四円で働けという、こういう計算はどこから出てくるか。  先ほど私が申し上げましたように、六十三年度一年間で服役者が稼ぎ出した金が百四十一億円、そして十二億円だけ渡してあとの百三十億円近い金が国庫の収入になるんです。なぜこの賞与金というものを今のような、利益をもとにして服役者に還元するというふうな方策は考えられないんですか、いかがですか。
  177. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) これは、刑務作業というものをどういうふうに考えるかという考え方の問題だと思っております。刑務作業というものは、私どもといたしましては、受刑者に対する処遇の中核をなすものだと考えております。  そして、現在の刑務作業の理念と申しますか、目的というのは、受刑者の矯正及び社会復帰を図るために受刑者に規則正しい勤労生活を行わせる、そしてそれによって心身の健康を保持し、勤労精神を養成し、規律ある生活態度及び、工場で共同作業をいたしますから、共同生活における責任の自覚、それを助長するとともに、職業的知識と技能を付与してその者の社会復帰を促進する、そういうふうな理念をもってやっておるわけでございまして、一般の労働関係における雇用者と労働者、そういうふうな考えでやっているわけではございません。むしろ何と申しましょうか、受刑者のために、受刑者を改善させるためにやっておるわけで、受刑者は労働者じゃなくて処遇の対象というふうにして考えておるわけでございますから、一般の賃金という概念とは全く違った観点から、それで労働の意欲を促進するための賞与金ということで、いわば恩恵的に出すというような考え方で出しているので、御質問のようなことになっております。
  178. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 あなたが今おっしゃったことは、私が言っていることと全く無関係なことだ。なぜか。刑の目的がどうである、服役者に仕事をさせるのは勤労意欲の問題だとか更生の問題だとか、それはそれでいい。私が言っているのはそうじゃなくて、そういうふうに労働をさせるということと労働による対価をだれがどう取るかという問題は、別個の問題だ。質が違いますよ、それは。  一生懸命まじめに仕事をさせる。団体生活だとかあるいは社会に出てから仕事ができるようにするとかせぬかというような刑の目的の問題と、それによって出てきた労働生産物をどのように分配するかというのは全然別個な問題だ。あなたが言っているのは、刑の目的だとか定役を科すことの理由を言っているだけだ。  私が聞いているのは、そんなことを聞いているんじゃないんです。そうじゃなくて、そういうふうであろうがどういう目的であろうが、ともかく服役して仕事をした。そこに剰余金が出てくる。これをなぜ国家が取って服役者に還元せぬかということの根拠を聞いているんです。  じゃ、もっと伺う。あなたは今、そういうふうにいろいろ仕事をさせることは社会復帰のためだ、あるいは更生のためだとおっしゃる。一時間四円で働かせて刑務所を出るときに、六十三年でも去年でもいつでもいいけれども一人の服役者が出るときに幾ら持って出ましたか。その作業賞与金、幾ら支給しましたか。
  179. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) 約四万円ちょっとだと思います。
  180. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 どのくらいの期間か、まあ平均すると一年か二年刑務所に入って、働いて、それで四万円持って出ることが、その人間が世の中に出て更生してまじめに働いていくために非常にふさわしいとあなたは考えているのか、どうなんだ。
  181. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) ふさわしいかどうかということをおっしゃられますと、それはいろいろな条件から見て、社会復帰するのに相当だと思われるような金を持たせて出すのはそれは望ましいかもしれませんけれども、片や、おっしゃるように、刑務所における作業の賞与金を出す金額を算定するに当たり、その辺のところは、全く多ければ多いにこしたことはないというふうにも言えないわけでございます。  なぜかと申しますと、まじめに働いている一般の社会の方々の中で、報酬が高くない仕事をしておられる方もありますし、片や刑務所で服役している人たちは、犯罪を犯して刑務所に収容され、法律に従ってその作業をさせられている人たちでございますから、その人たちにまじめに作業をするためにそれを、言うなれば奨励するために出す賞与金と、それから一般の賃金とは格差があるのは当然でございます。
  182. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 あなたね、矯正局長としてそういうお考えだということが妥当かどうか。例えば国際人権規約、B規約第十条第三項には何と書いてあるか。「行刑の制度は、被拘禁者の矯正及び社会復帰を基本的な目的とする」と、処遇は。こう書いてあるじゃないか。  何も世の中で働いている人と同じ賃金を出せとかそんなことを私は言っているんじゃないんです。年間百四十一億円も収益を上げているんだったら、一割に満たない十二億じゃなくて、百四十一億そのまま全部出すか出さぬかは別にして、何という低い金額だろうと。これを十倍にしたって、一番最初の十級の人は一時間四十円。十倍にしても一時間四十円なんですよ。四十円だから八時間で四、八、三百二十円。今、世の中じゃあなた、時給七百円、八百円、千円じゃないですか。別に百四十一億円を全部支給したからといったって、何も世の中の人と同じになるなんてだれも言ってやせぬ。  しかも、あなたの考えの中の根本的な問題は、自由刑というものについてどうお考えかという点が非常に私はおかしいと思う。要するに、懲役刑というのは自由を拘束するだけであって、そして定役に服させるということであって、自由を拘束して定役に服させて、その定役に服させたことの労働成果をどうするかなんということは法律には書いていないじゃないですか。それをどのように還元するか。刑の目的として、本当に服役者の社会復帰ということを考えるんだったら、一時間四円なんというよまい言じゃおさまらぬと私は申し上げているんです。  時間がないからあれしますが、今回法務省では、あなたの方が所管で刑事施設法の改正案を出した。もう何回も出している。この刑事施設法の改正案を出すに際して、法制審議会が作業の報奨金についてどういうことを言っていますか。
  183. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) 作業賞与金につきましては、刑事施設法案では作業報奨金というふうに改めておりますけれども、やはり労働に対する対価という考えではなくて、報奨金という性質でやってよい、それに従って私どもは法案をつくっております。
  184. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 あなた、法制審議会の答申を読んでいるんですか。法制審議会の答申にはこう書いてあるんです。私が言っているわけではない。法務省が学者先生や皆さんにいろいろ諮問して、この作業の報酬はどうしたらいいかということについて法制審議会で答申している。この答申は、私が言っていることとそんなに違っているわけじゃない。あなたが言っていることとは大違いだけれどもね。読みますよ。   報奨金の額は、作業の種類及び内容により同種作業に対する一般社会における賃金額等を考慮して定める金額を基準とし、本人の作業成績、就業態度その他作業に関する事情を参酌して定めること。 こう書いてあるじゃないですか。これは私が言っていることとほとんど同じじゃないか、法制審議会が言っていることは。そして、法制審議会に諮問してそういうふうにしなさいという答申が出ているにもかかわらず、今回出してきた刑事施設法の改正案では、まあ権利性とかいろいろ言っているけれども、銭の決め方は今と全く同じ、法務大臣が定める命令で、一時間四円でいいということを決めればそれでもいいというだけのことにしかなっていないじゃないか、今回の改正案は。改正案をここで審議しているわけじゃないけれどもね。  要するにあなたが先ほど言ったのは、法制審議会の答申とも全くかけ離れていると思います。いかがですか。
  185. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) 確かに法制審議会における答申は今御質問にあったとおりでございますが、それを読みますと、「一般社会における賃金等を考慮して定める金額」と、こういうわけでございまして、一般社会における賃金が非常に上がってくればそれは上げなさいよと、そういう趣旨に理解していいのじゃないかと思っております。  私どもとすれば、受刑者に対する報奨金をずっと全く同じ額に抑えているわけではございませんで、毎年毎年それなりの努力をして、それで金額を上げていくことに努力しておりますし、現に少しずつではありますけれども、報奨金の金額は上がっているのでございます。そういうところは御理解をいただきたいと思います。
  186. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それじゃ聞くけれども、時給四円というのが一般社会の賃金等を考慮して、相当な額なんですかどうなんですか、言ってください。
  187. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) 確かに、必ずしも相当だとは言い切れませんから、私どもは増額のための努力をしているわけでございますけれども、しかし片や、賃金と全く同じだというふうに考えるのは問題があるということも御理解いただきたいと思うのでございます。
  188. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 あなたと押し問答していてもしようがない。  法務大臣、私が言いたいのは、一時間四円というような計算方法でなく、もう少し抜本的に賞与金の――名前なんかどっちでもいいんです、賞与金であろうが報奨金であろうが何でもいい、賃金でも何でもいいけれども、そうじゃなくて、服役者が世の中に出るときに、せめて二十万でも五十万でも持って出れば、うちも借りられる、職を探す期間もある。四万円ぐらい持って出たんじゃ、三日も食っていたらなくなっちゃうじゃないですか。こんなことでは、刑務所に一年、二年いて、四万円もらって出てきて、あした行くところもないという出所者が、再犯に陥るに決まっているじゃないですか。行刑の目的からも考えても、一時間四円なんというこういう発想方法を根本的に転換すべきだと思いますが、大臣の所見を伺いたい。
  189. 左藤恵

    国務大臣左藤恵君) 今までの考え方というのがけしからぬというふうな先生のお考えだと思いますが、確かに今までの考え方は、やっぱり作業賞与金というのは、作業の奨励の点を若干考慮して、作業についた受刑者に支給するものであって、ほんのわずかしか更生復帰のための資金には役立たない、こういうお考えだと思います。  この問題の考え方もいろいろあろうと思いますが、現在のこの金額というのは、やはり少し少ないのではないかというふうに私は考えますが、どこが一体妥当な金額かということにつきましてはまた検討を要する問題でもありますが、社会事情といいますか、そういったものも十分考慮してひとつ適切に対処してまいりたい、このように考えております。
  190. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私は、これと同じ問題を昭和六十三年三月二十八日、法務委員会で質問したんです。そうしたら当時の林田法務大臣は、「十分研究をしてまいりたいと存じます。」という御答弁があったけれども、それから三年たつけれども、十分どころか全然研究しておられないと思う。  これはなぜかというと、よろしいですか、法務大臣よく聞いておいてください。ことし四円と決めて、来年大蔵省に予算要求するときに、四円十銭ぐらいにしましょう、大蔵省が四円五銭にしろとか、こんなことをやっているから何年たったって、四円がようやく十年たって五円になったとか、そういうことにしかならないんです。要するに、従前と同じ考え方でずっと予算にのっける限りは、マイナスシーリングだとかゼロシーリングだとか、じゃ四円だ、今回は景気がいから場合によって五%アップだ、四円に四、五の二十銭上げて四円二十銭だ、こういう発想でずっと来ているんです。この発想を変えなきゃだめだと私は思うんです。  要するに、何もそれが労働の対価として――国がそんなところからもうけなくてもよろしいでしょう。服役者に働かせて百三十億国が国家財政に持ってこなくてもいいじゃないか。服役者だって好きで犯罪人になったわけじゃないんだし、それで刑務所に三年、五年いて、仕事させられて、その上がりのうちのほんのちょぼっとをもらって、出てきてまた悪いことをして行くというふうなことだったら、刑の本質を何と考えているのか。  私、こんなことをしゃべっていると時間がなくなっちゃうんだけれども、矯正局長、あなた懲役刑なり禁錮刑というものの本質をもう少し考えてみたらどうですか。悪いやつだから働かせてもけ飛ばしてもいいというふうなことだったら、刑の本質というものをあなた全く間違っていると思う、私は。そうじゃなくて、懲役刑であれ禁錮刑であれ、これは自由刑なんです。自由を拘束するだけの刑であって、禁錮刑の場合なんか仕事させないじゃないですか。労役場留置の場合だったら一日二千円にも換算しているじゃないですか。ともかく一時間四円というふうなこと、しかもそれが当然である、悪いことした連中は刑務所の中に入って朝から晩まで――八時間労働なんです、これは。八時間労働して、それで一時間四円でいい、悪いことをしたんだからと。悪いことをしたから何してもいいというんだったら、悪いことしたらみんな殺してもいいことになってしまって、憲法なんてどこへ行ってしまうんだ、あなた。少し考えなさいよ。  以上で法務省に対する質問は終わります。  あと裁判所に対して、時間がなくなってしまいましたが、少しお伺いします。  九十億ドルの差しとめ訴訟に関して、その手数料に関し裁判所がいろんな意見を言って、これが新聞等でも大きく報道されました。要するに、湾岸協力会議に対する九十億ドル支出は憲法に違反するから差しとめるという裁判を起こしておる。五百七十一人の人が原告になって起こしたんです。これに対して東京地方裁判所は、その訴額の算定について概略どういうふうなことを原告団に通告しましたか。
  191. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) この問題につきましては、現在係属中でございますので、外形的事実に限り御説明をさせていただきたいと思います。  この事件は、今委員指摘のような事件でございます。それにつきまして訴状がことしの三月四日に提出されました。原告らの代理人から訴額算定についての上申という書面が裁判所に提出されたわけでございます。その書面によりますと、本件の訴額について原告らの見解を述べまして、裁判所がこれと異なる見解を有するならば詳細な意見書を提出する用意があるというものでございました。これを受けまして裁判所は、三月の二十八日に訴額の算定についてと題する書面を送ったわけでございます。これが御指摘の書面でございます。この内容は、原告らの主張する訴額算定についての問題点を指摘しまして、これについて意見があれば書面で提出されたいというものでございます。  具体的な内容のお尋ねでございますが、二つございます。第一点は、一般に一定額の金銭の支払い差しとめを求める場合にはその訴額はその金銭の額となるとの考えを前提とすると、本件支出差しとめ請求の訴額の算定は九十億ドルを基準とすべきこととなるのではないかと考えられるというものであります。第二点は、本件各差しとめ請求は、いずれも各原告に固有の人格権またはこれに類する権利に基づく請求であることからすれば、各請求に係る訴えの利益は原告ら各人ごとに個別に存するものと解すべきであるから、その訴額を全原告を一括して算出することには問題があるように考えるという内容のものでございます。
  192. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 時間がないから結論的に申し上げれば、東京地裁が今言われたような内容で計算すると、一人当たり九十億ドルで、人数だと五百七十一人になるから五兆一千三百九十億ドルが訴訟物の価額になる。この五兆一千三百九十億ドルに対する印紙は三兆四千億円になる。こういう見解が裁判所から、こういうふうに考えるがどうかと、こういう意見が原告団に通知されたわけです。  こういうふうな東京地裁裁判官の考え方に対し、マスコミ等ではどのように評価しているように最高裁としては把握していますか。
  193. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) 今御指摘の点でございますが、まずその前段でございますが、東京地裁の見解といいましょうか、今私が御説明申しましたように、これを読みますと、原告らの点にはこのような疑問があるということを申し上げたのだろうと思います。  それから後段でございますが、これにつきましては、いろいろな新聞によりまして、これは市民を裁判から遠ざけるものではないかというような批判が述べられておることは承知しております。
  194. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 本年五月九日付の朝日新聞の社説に書いてあることをちょっと読ませていただきます。私はまことにこのとおりだと思う。  だれがみても支払いが不可能な巨額の手数料納付を求めるような解釈にこだわること自体、世間の一般常識からみれば理解できないことだ。「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」(三二条)といったより重要な憲法原則を忘れ、法技術や論理ばかりを追求したものだと批判されても仕方があるまい。と、こう書いてある。まことに私もこのとおりだと思う。国民全体がそう考える。  そうすると、三兆円どころか三万円、三十万円払うのだって大変なのに、三兆円なんて見たことも聞いたこともない金を払わなかったら裁判所へ書類持ってきたって受け付けぬというふうな裁判官の感覚というものが本当に不思議な気がする。そして、ほとんどこれと同一のような類型の訴訟について、もしこれが国でなくて地方団体だった場合に、地方団体に対し地方住民がこれとほとんど同じ裁判を起こすときに、裁判所はそれの訴額を、あるいは貼用印紙額について幾らというふうに言っていますか。
  195. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) 今御指摘の点は、住民訴訟の訴額ということであろうかと思います。  これにつきましては、御承知のように最高裁の判決がございます。昭和五十三年の三月三十日の判決でございます。  これを若干紹介いたしますと、この判決は、住民訴訟というものについては、   地方公共団体の構成員である住民全体の利益を保障するために法律によって特別に認められた参政権の一種であり、その訴訟の原告は、自己の個人的利益のためや地方公共団体そのものの利益のためにではなく、専ら原告を含む住民全体の利益のために、いわば公益の代表者として地方財務行政の適正化を主張するものであるということができる。 というふうに言いまして、その上で、そのような訴訟の目的、性格にかんがみれば、その訴額算定の基礎となる訴えをもって主張する利益については、これを実質的に理解し、地方公共団体の損害が回復されることによってその訴えの原告を含む住民全体の受けるべき利益がこれに当たると見るべきである。そして、このような住民全体の受けるべき利益は、その性質上、勝訴判決によって地方公共団体が直接受ける利益すなわち請求に係る賠償額と同一ではあり得ず、他にその価額を算定する客観的、合理的基準を見出すことも極めて困難であるから、結局、費用法四条二項に準じて、その価額は三十五万円とすることが相当である。また、右訴訟は、前述のように、住民が法律の特別の規定に基づき地方公共団体の構成員としての資格において住民全体の利益のためにこれを追行するものであることからすれば、複数の住民が共同して出訴した場合でも、各自の訴えをもって主張する利益は同一であると認められるので、その訴額は、民訴法二十三条一項により合算すべきではなく、一括して三十五万円とすべきものである。そういうことでございます。  なお、この三十五万というのは当時の金額でございまして、今にすれば九十五万ということになろうかと思います。
  196. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 その最高裁の判決は、今申し上げた訴訟と、住民と地方団体、国民と国というその区分けはあるけれども訴訟構造としては全く同じなんです。それに対して最高裁は、何億を請求金額として書かれていようが三十五万円だと。何十人来ようが、何百人来ようが住民の数がどうであろうと一人分でいいんだと、こうやっているんです。だから、三十五万円を一人分でいいと、こう言っているんです。本件の問題だったら、九十億ドルなんということじゃなくて、今の訴訟法の解釈によると三十五万円が九十五万円に上がりましたから、九十五万円で、五百七十一人いるけれども一人分、九十五万でいいということと同じなんです。  ただ、地方自治法の方は、特別の法律の規定に基づく訴訟だから、それを直ちにこのまま国の方のものに類推するわけにはいかぬという理屈も私はわかりますけれども、そういうふうなところからいいところだけもう少し考えてくれば、今回だって、こんな三兆円印紙張らなきゃだめだなんという考え方は出てこないはずなんです。  時間が余りありませんので、この裁判で張る印紙の、要するに手数料について、諸外国がどうなっているか、物すごく簡単でよろしいですけれども、説明してください。
  197. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) その前に、最終的に裁判所が九十億ドルについて印紙を張れということを命じたのではないということだけ一言申し上げたいと思います。  これにつきましては、五月二十七日に、裁判所は原告らに対しまして、訴え提起の手数料で合計二百六十七万九千円の納付を命じたわけでございます。これにつきましては、各原告の訴訟の目的の価額は九十五万円である、ただ、これによって原告らの得ることとなる利益が各原告ごとに別個独立に存するので、原告ごとの訴訟の目的物の価額を合算すべきである、要するに、九十五万に原告数を掛けたものが訴額である、このようなことを言いましてやったわけでございます。その点は十分御理解をいただきたいと思います。
  198. 濱崎恭生

    説明員(濱崎恭生君) 諸外国の提訴手数料の実情という御質問ございまして、訴訟費用に関する法制度面は私ども法務省の所管でございますので、私の方から答えさせていただきます。  各国の民事訴訟制度は、これは歴史的な沿革等の相違を反映いたしましてさまざまでございまして、したがって、提訴の手数料の制度もいろいろな態様のものがございます。一概に我が国の制度と比較するということは困難な面がございます。また、提訴手数料制度に関する文献等も乏しいという実情がございますので、現段階において、必ずしも詳細にわたっては承知しておりませんけれども、これまでの調査の結果、あるいは文献等によって知っている限度で簡単に申し上げさせていただきます。  まず、アメリカでございますが、これは連邦裁判所の場合は提訴の手数料額は訴額にかかわらず一律百二十ドルということになっておるようであります。州の裁判所につきましても、州ごとに異なりますけれども、多くは連邦裁判所と同様に一定額をもって手数料としているというふうに承知しております。  ドイツにおきましては、これは日本の制度と大変似通っておりまして、訴額が高くなるに従って提訴手数料の額が加算されるという制度をとっております。承知しているところでは、我が国の制度はこのドイツの制度に倣って設けられたものであるということでございます。  次に、イギリスにおきましては、イギリスの裁判所の構成あるいは提訴の仕方、これは非常に複雑だというふうに聞いておりまして、したがって大変掌握しにくいんですけれども、例えばカウンティーコート、県裁判所と訳しておりますが、この場合は、一般的な提訴方法の場合におきましては、訴額に応じてスライドするという制度で運用されておる。ハイコート、高等法院と訳しておりますが、ここでは訴額の多寡にかかわらず一定額とされておりまして、一般的な提訴方法による場合には七十ポンドということになっているというふうに聞いております。  フランスにおきましては、現段階で承知しておりますところでは、提訴手数料の額を具体的に定める制定法がないということから、実際上、裁判所に対して支払うべき手数料はないということになっているように承知しております。  このように、我が国と同じように訴額に応じてスライドする制度と一定額という制度、あるいはフランスのように無料であるという制度が混在しているというふうに承知しております。
  199. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ありがとうございました。  要するに、アメリカの場合、一ドル百四十円とすると、一万六千八百円払えばどんな裁判でも起こせるということ。日本の場合は、今のように計算して、だんだん高くなっていくということ。フランスの場合にはただでいいということ。この辺の問題を踏まえて、日米構造協議でも日本裁判手数料は高過ぎるというふうな問題もあるので、またマスコミ論調においても、これでは実質的な裁判を受ける権利の否定だというふうなことも言っておられます。  法務大臣、この民事訴訟における手数料の今後の問題について、何がしの御意見があれば簡単にお願いして、終わりたいと思います。――大臣の意見をちょっと聞いておきたい。それだけでいい。
  200. 濱崎恭生

    説明員(濱崎恭生君) まず、事務当局から答えさせていただきます。  御指摘のとおり、日米構造協議におきまして、これは独禁法違反に基づく損害賠償の面で、その訴訟を促進するために提訴手数料を引き下げるべきであるという主張がされているということを承知しております。  また、経済社会の複雑化、多様化に伴いまして、最近では次第に、極めて高額な訴訟というものが提起される可能性が高まってきている。これから将来にわたってそういう訴訟がふえるということが考えられるということを踏まえまして、現在のように訴額が三百万円を超えると一定の割合で提訴手数料を増加させるという制度がそのままでいいのかどうか、今のような掛け率で手数料を算定するということでいいかどうかということについては法務省として関心を持っておりまして、この問題について研究を開始したところでございます。これから鋭意検討してまいりたいと考えているところであります。
  201. 左藤恵

    国務大臣左藤恵君) 今部長の方から御説明申し上げたように、この問題は、日米構造協議のことがあるということだけでなくて、経済情勢の変化に伴いまして、将来は請求額が高額な訴訟になってくる、それがふえてくる、こういうような問題もありますので、今御説明申しましたいろんな基礎的な研究というものを既にやっておりますが、その研究がまとまり次第、ひとつ必要な措置を考えていきたい、このように考えております。
  202. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 終わります。ありがとうございました。
  203. 諫山博

    ○諫山博君 最近、衝撃的な冤罪事件が目立っております。四月二十五日付の夕刊フジが、ことし三月中の無罪判決の十五件を紹介しています。ほとんどすべて被告人は自白をしていた。ところが、その自白が信用できない、あるいは証拠能力がない、こういうことで無罪になったわけです。罪を犯していない人が自白をする、考えてみれば恐るべきことです。  私は、ことしの四月二十三日、東京高裁が言い渡したいわゆるOL殺人事件についての判決を問題にしたいと思います。  まず、千葉地裁松戸支部が、被告人小野悦男氏に無期懲役の判決を言い渡した。これが東京高等裁判所で破棄されて、強姦、殺人、死体遺棄が無罪、ほかの事件で懲役六年、こういう判決があったことは間違いありませんか。
  204. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 今御指摘のような経緯でもって、東京高裁で破棄判決があったことは承知しております。
  205. 諫山博

    ○諫山博君 まず、この事件で被告人がどういう自白をしていたか。一審の裁判所がどういう認定をしたのか。  簡単に言いますと、マンションの三階で十九歳の女性を強姦した。その後で首を締めて窒息死させた。死体を裸にして造成地まで運搬した。スコップで穴を掘って死体を埋め、土をかけた。被告はこういう自白をし、この事実が一審裁判所で認定されていたことは間違いないでしょうか。
  206. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 間違いございません。
  207. 諫山博

    ○諫山博君 自白の経過です。この事件について被告人が最初に自白をしたのは、窃盗事件で逮捕されて七十日余を過ぎた時期だった。自白調書が作成されたのは、身柄拘束後三カ月近くたった後であった。そしてこの間、起訴されるまで、いわゆる代用監獄に身柄を留置されていた。この事実は間違いありませんか。
  208. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 今御指摘のような事実が行われた日時というのは正確には必ずしもつまびらかではございませんが、そういった経緯で捜査が進行したということは間違いないと思います。
  209. 諫山博

    ○諫山博君 東京高等裁判所判決では、被告人の自白が次々に変わっているということが取り上げられています。  その一つは、どの場所で強姦をしたかということです。被告の最初の自白では、モミの木の畑で強姦をした、こうなっていました。ところが、ずっと後になって、山口マンションの三階で強姦をした、こういうふうに自白が変わりました。自分が強姦をした場所が畑の中であったのか、マンションの三階であったのか、これは思い違いをするはずはありません。  どうしてこういうふうに自白が変わったのか。それは、警察が後で気象庁に天気の問い合わせをしたところが、強姦の行われた日に雨が降った。土がぬれていて畑の中で強姦できるような状況ではなかった。このことが警察、検察庁にわかりました。  判決はどう言っているかというと、強姦場所についての自白変更は気象回答に合わせたものだ、こう認定しているはずですけれども、間違いありませんか。
  210. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) お尋ねの犯行場所につきまして、控訴審判決がそのような事実を認定していることは、そのとおりでございます。
  211. 諫山博

    ○諫山博君 強姦に続いて殺人が行われたということになっております。  被告人はどういう自白をしたかといいますと、初めは手で首を絞めて殺した、扼殺だというふうに説明をしていました。ところが途中で、手で絞めたのではなくてひもで絞めて殺した、こういうふうに変わりました。  なぜ変わったのか。警察官が死体を解剖した医者に説明を受けたところが、ひもかバンドで絞めた可能性が強いというふうに医師は説明しました。そこで、初めは手で絞めていたと自白をしていたのに、後でひもで絞めたと自白の内容が変わった。  この経過は間違いありませんか。
  212. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 控訴審判決において、そのような事実を認定していることは間違いございません。
  213. 諫山博

    ○諫山博君 事実があったかなかったかは別として、高等裁判所がそういう認定をして、この判決は確定している、このことを明らかにしたいと思います。  問題は、いつ、どういう経過で自白が変わったかです。  警察が医師を訪問したのは十二月二十一日、その翌日、十二月二十二日に警察は千葉地検の次席検事に報告をしました。ところが、その翌日の二十三日に、ひもで絞めたと被告人の供述は変わりました。  この日時も裁判所で認定されているはずですけれども、どうですか。
  214. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) そのような事実が認定されております。
  215. 諫山博

    ○諫山博君 もう一つ。強姦をして、殺して、死体を埋めて、それから自宅に帰るわけですけれども、どういう方法で自宅に帰ったかが問題になりました。被告人の最初の自白では、犯行後電車で帰った、こうなっております。ところが、電車で帰ったのではなくてタクシーで帰ったに変更されました。裁判所判決によれば、唐突に帰宅の方法が変わったという表現を使っております。どうして電車で帰ったと言っていたのにタクシーで帰ったと自白が変更されたのか。これも裁判所が認定しました。  警察が、犯行に要する時間あるいは犯行後の帰り始めるまでの時間を計算したようです。ところが、もう終電車もなくなってしまう時間になってしまったということがわかって、タクシーで帰ったと自白が変更された。裁判所の認定によりますと、タクシーの突然の登場は取り調べ官の心証に対応する、こういう認定がされているはずですけれども、間違いありませんか。
  216. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 自白の変遷の経緯につきまして、逐一裁判所がそのような事実を認定していることは間違いございません。
  217. 諫山博

    ○諫山博君 これ以外にもまだ被告人の自白の内容がくるくる変わったということを指摘しまして、なぜ自白が変わったのかという問題で裁判所は総合的な結論を下しています。  被告人が殊さらうそを言ったというよりも、取り調べ官から強く示唆を受け誘導された結果うそを言ったものだという認定がありますか。
  218. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 判決にそのような記載がございます。
  219. 諫山博

    ○諫山博君 法務大臣にお聞きします。  被告は強姦もしていない、殺してもいないのに自分が強姦し、自分が殺したと自白をしたわけですよ。ところが、この自白は間違いだったと裁判所は言っている。なぜうその自白をしたかというと、それは警察なり検察官から誘導された結果だと、これが裁判所の結論です。どう思われますか。自分が自白をすればどれほど大変なことになるかということはだれでも知っているんです。ところが、それでもうその自白をした。法務大臣、この事実をどうお考えか、御説明ください。
  220. 左藤恵

    国務大臣左藤恵君) 今の本件の過程の問題につきましては、また事務当局の方からもお答えすると思いますが、一般的に、検察官の捜査というような問題につきまして、公訴権の所在主宰者である検察官として、刑事事件の捜査の処理に当たりまして、常に実体的な真実の発見と適正手続の確保というものに努力すべきなのは当然でありまして、特に犯罪と犯人との結びつけというものが問題となる事件では、自白以外の証拠をできるだけ収集しなければならないのは当然でありますし、自白がある場合でも、その自白を得るに至った過程というものにおきまして、任意性あるいは信用性というものに疑いを抱かせるような事実があるのかどうか、その自白にいわゆる秘密の暴露と言えるものが存在するかどうか、自白を裏づける客観的な証拠の収集が十分であるかどうかということについて、そういう自白の任意性、信用性を確保するという観点から、やっぱり慎重かつ十分な検討は行われるべきであり、警察に対して的確な指揮、指導を行うとともに、必要に応じ警察の捜査に対して検察としては適切なチェック機能を果たし得るような努力をすることが肝要であると、このように考えるところでございます。
  221. 諫山博

    ○諫山博君 自白に至る過程ということが言われましたけれども、どういう経過で自白するに至ったか、裁判所は詳細に認定しています。  例えば、第一期間、第二期間といろいろ区切っておりますけれども、第四期間について四十二日間のうち取り調べのなかったのは三日間のみ、第五期間六十七日間のうち休んだのは一日のみ、こういう認定がされていますか。
  222. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) そのように認定されております。
  223. 諫山博

    ○諫山博君 取り調べの方法として、さまざまな事実が判決で列挙されています。  例えば、印西警察署の代用監獄で一人だけ留置した。留置場で運動させず、被告人は房内で体操をしたり動き回るなど自分で運動不足を解消する工夫をしていた。いらいらした様子が見られた。自暴自棄的な気分に陥っていた。奇声を発したり常軌を逸する言動があった。自殺をほのめかす言動があった。自殺を図って看守が制止したことがあった。常に空腹を訴え、頻繁にパンの購入をせがんだ。寒さを訴えた。人恋しさから看守者に次第に話しかけるようになった。取り調べ室に被害者の写真や位牌を持ち込み、線香をたいて取り調べた。  こういう認定がありますか。
  224. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) そのような認定をいたしております。
  225. 諫山博

    ○諫山博君 警察に質問しますけれども、これは全部代用監獄での出来事です。代用監獄で被疑者をこういう状態に追い込むことは許されるんですか。どう思いますか。
  226. 泉幸伸

    説明員(泉幸伸君) 取り調べを初め犯罪捜査におきましては、法に従い、適正な手続をもって行うということが当然であろうかと思います。
  227. 諫山博

    ○諫山博君 あなたは一般論を述べられましたけれども、東京高等裁判所が認定したようなことはあってはならないことだという認識は持っているんですか。
  228. 泉幸伸

    説明員(泉幸伸君) 先ほどお答え申し上げましたとおり、適正に行われるべきものと承知しております。
  229. 諫山博

    ○諫山博君 あなたは悪いと思っているんですか。反省していますか、こういう取り調べを。どうですか。
  230. 泉幸伸

    説明員(泉幸伸君) 再三お答え申し上げますが、取り調べはもとより、犯罪捜査全般においては、法に従って適正に行われるべきものだというふうに考えており、また、そのように指導しておるところでございます。
  231. 諫山博

    ○諫山博君 法に従って適正に行われるべきだというのはわかり切っております。裁判所が認定したようなやり方に反省をしているのかという繰り返しの質問に対して、あなたは答弁を拒否されました。  続いて質問します。  法務省に答弁を求めますけれども、看守者は被告人の言動を監視していた。分刻みで一挙手一投足を記録していた。ひとり言まで記録した。そして、その記録は取り調べ班に提供した。看守者は歯磨き粉の購入、頭を洗うこと、頭髪を刈ることまで取り調べ班と緊密な連携をしていた。  こういう認定がされていますか。
  232. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 判決書にそのような記載がございます。
  233. 諫山博

    ○諫山博君 今度は警察庁のほかの担当の方に聞きます。  代用監獄でこういう取り扱いをしていいんですか。
  234. 小西哲

    説明員(小西哲君) 警察の留置場におきましても、被留置者の適正な処遇ということをもとに、そういった考え方に基づきまして適正な処遇に努めているところでございます。
  235. 諫山博

    ○諫山博君 あなたたちは、きょうは警察庁を代表して来ているんですよ。日本全体の警察の代表として答弁するんですよ。裁判所からこれほど厳しく指摘されているのに、これは悪いことだ、こういうことは将来やってはいけないという認識はお二人とも持たないんですか。
  236. 泉幸伸

    説明員(泉幸伸君) 先ほど御答弁しましたように、もとより犯罪捜査は適正、妥当な方法で行われるべきものだと認識しており、そのように指導しております。  ただいま御指摘のいろいろな状況判決において指摘されておるというのは御指摘のとおりでございますが、本件の取り調べ過程におきまして、時として被害者の写真と位牌を取り調べ室内に持ち込んで、これを被告人と言われている人と相対する場所に飾ったり、被害者の遺影等に線香を上げたという事実も指摘されております。これにつきましても、当時、被疑者の善性をよみがえらせ、改悛の情を呼び起こす目的でなされたというふうに聞いており、脅迫などというものでなかったというふうに報告を受けておりますが、取り調べに当たっては被疑者に無用の圧迫感を与えることのないよう、今後ともさらに指導を徹底してまいりたいというふうに考えております。
  237. 諫山博

    ○諫山博君 この事件は確定したんですよ。検察庁は上告しなかったんですよ。裁判所はそういう取り調べはいけないといって批判したんですよ。ところが、結局警察庁はこの事件について反省も自己批判もしない、こういう結論に聞いていいですか。
  238. 泉幸伸

    説明員(泉幸伸君) この松戸のOL殺人事件につきましては、非常に物証の乏しい事件で、当時できる限りの捜査を尽くしたものというふうに報告を受けております。  また、第一審においては有罪判決が下されていたものでございますが、警察としましては、この控訴審判決において指摘された点につきましては謙虚に受けとめ、十分に検討を加え、自白の任意性の確保を含め、今後の捜査に生かしてまいりたいというふうに考えております。
  239. 諫山博

    ○諫山博君 反省しているのかしていないのか、自己批判しているのかしていないのか、結論はどうですか。
  240. 泉幸伸

    説明員(泉幸伸君) 謙虚に受けとめて、十分に検討を加え、今後の捜査に生かしてまいりたいというふうに考えておるということでございます。
  241. 諫山博

    ○諫山博君 あなたたちは、反省しているという言葉は絶対に言ってはいけないことになっているんですか。謙虚に受けとめているという言い方はしますけれども、申しわけなかったとも言わないし、反省しますとも言わないんですね。私は、警察庁が最後までそういう態度で押し通したということを確認して、次の問題に移ります。  法務省にもう一遍質問します。  この被告人が拘置所に移されたのは、強姦、殺人、死体遺棄事件起訴された当日だったはずですけれども、間違いありませんか。
  242. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 昭和五十年三月十二日に本件強姦、殺人事件で公判請求をしておりますが、その際、いわゆる求令状起訴をいたしておりまして、その発付された勾留状の留置場所は松戸拘置所でございます。
  243. 諫山博

    ○諫山博君 松戸拘置所に移されたのは起訴された日ではないんですか。
  244. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 今、そのような趣旨でお答え申し上げたわけでございます。
  245. 諫山博

    ○諫山博君 求令状という専門的な言葉を使いましたけれども、要するに、起訴されるまでは代用監獄に置いていたということですか。
  246. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 起訴いたしました五十年三月十二日まで代用監獄におりまして、起訴した三月十二日に令状が出ましたので松戸拘置所に移した、こういうことでございます。
  247. 諫山博

    ○諫山博君 非常に長期間被告人は代用監獄に置かれていましたけれども、勾留請求をする場所は代用監獄としたんですか。それとも拘置所に留置するという手続をとったんですか。
  248. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 本件における勾留状は、都合三本出ておるわけでございます。  まず、最初の窃盗罪についての勾留でございますが、これは四十九年九月十四日に警察から送致を受けまして、検察庁におきまして勾留請求をいたしております。
  249. 諫山博

    ○諫山博君 私が聞きたいのは勾留の場所です。
  250. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) そのときの勾留場所は松戸警察署でございます。  それからさらに、四十九年九月三十日に、今度は別の強姦事件で通常逮捕されておりまして、これの送致を受けました十月二日、検察庁におきまして勾留状を請求いたしました。この場所も松戸警察署でございます。  それから、この二つの事件は、いずれも十月二日及び十月二十一日にそれぞれ勾留のまま、常習累犯窃盗及び住居侵入、強姦の罪で起訴いたしまして、そのまま被告人勾留は続いております。そして四十九年十二月九日、本件の強姦、殺人、死体遺棄事件で逮捕状が発付されておりまして、十二月十一日に警察から、松戸支部が受理いたしておりますが、この事件についての勾留場所は印西警察署になっております。
  251. 諫山博

    ○諫山博君 なぜ勾留請求するときに勾留の場所を拘置所にしなかったんですか。
  252. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 今私が御説明しましたところで一つ間違えました。二度目のいわゆる住居侵入、強姦事件の勾留場所は、印西警察署でございます。  それから勾留場所をどうするかという問題は、一般的に申し上げれば、そのときそのときの捜査の状況といったものが総合的に判断をされまして、裁判所によって令状を発付されるときに定まるものでございますけれども、捜査の都合というのもございますが、他方被疑者の防御の都合といったようなことも総合的に判断いたしますし、拘置所の収容状況、あるいは拘置所との遠近関係、いろいろなことも総合的に判断をいたしまして、一般的な捜査を進めます場合にどこに拘置するのが一番効率的に捜査が進むかということを考慮しまして勾留請求をするわけでございますので、そのときそのときにおいて判断をされる事項でございます。  当時、なぜ松戸警察署あるいは印西警察署を勾留場所としたかということにつきましては、具体的事件でございますから今になって私には判断ができませんけれども、一般的にはその辺の選択は検察官の勾留請求、それを受けた裁判官の令状発付という場面で検討され決まるものでございます。
  253. 諫山博

    ○諫山博君 高等裁判所判決は、代用監獄そのものについて批判をしています。引用しますと、代用監獄は自白強要の行われる危険性の多い制度である、これは高等裁判所の認定です。そして、このことはもう論じ尽くされたと思いますよ。日弁連も問題を提起したし、日本じゅうでこれは大問題になっていることです。そして、代用監獄に留置していなかったとすればこんなとんでもない誤った自白は避けられたのではないかというのが恐らく裁判官の結論だし、私も判決をそう読みました。  今刑事局長の説明では、例えば効率的な捜査というようなことも言われましたけれども、一番大事なことは、間違った自白を強要するようなところには留置をしない、基本的な人権を尊重する、これがすべてに優先しなければならないはずです。原則として留置場所は代用監獄ではなくて拘置所にすべきだと、こう思いますけれども、今後そういう方針をとりませんか。これほど代用監獄が批判されたわけです。
  254. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 東京高裁の判決が、一般抽象的に代用監獄制度についてそのような批判をしたということは関係書に書いてございますから、そのとおりでございます。しかし、代用監獄そのものが、任意性を欠く自白の獲得につながるという認定自体については、私どもは異論がございます。代用監獄であるがゆえに自白が強要されるというのではありません。やはりどの場所におきましても、調べ方法いかんによって信用性を害したり、あるいは任意性を害したりする自白が行われるということでございまして、どの場所におきましても、要するに、取り調べ官が取り調べをする姿勢あるいは物の考え方といったものが影響をするわけでございますから、代用監獄であるがゆえに自白を強要するものであるという一般的な認定は、私どもはとるところではありません。  私どもは、国民から負託されております捜査を貫徹するためにも、しかも限られた日時で捜査を貫徹しなきゃならないという義務を負っております以上、やはりできるだけ効果的、効率的に捜査も進めなければなりません。また、被疑者に面会に来られる弁護人あるいは家族の方の便益も考えなきゃいけません。そういったことも考えまして、場所的なことも含めて、総合的に考えて、それぞれの勾留場所を考えるわけでございますから、あと、どういう場所で自白を求められるかということは、そのときそのときの取り調べ官の物の考え方、対応だというふうに思います。
  255. 諫山博

    ○諫山博君 これほど世間で代用監獄が問題になっているのに、法務省の刑事局長が、人権の擁護ということを本気で考えていないということは非常に遺憾です。  観点を変えます。  最高検察庁は、免田事件、財田川事件、松山事件、三つの再審無罪判決を内部で検討したことがあるようです。その報告書の全文を見せてくれと言いましたけれども、見せてもらえませんでした。しかし、これは法律時報に要点が紹介されております。  これを見ると、最高検察庁は三つの冤罪事件を総括して、勾留場所と弁護士の接見に問題があったというふうに結論づけているそうです。そして、括弧つきで引用しますと、被疑者を警察の代用監獄に勾留したままにしておくことには問題が残るように思われる、これが三つの冤罪事件での最高検察庁の結論だったと言われておりますけれども、そういう検討がなされ、代用監獄について今指摘しているような反省が最高検察庁の中でされましたか。
  256. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 今委員指摘になりました報告書というのは、最高検察庁におきまして検討いたしました再審無罪事件の検討結果報告書のことだと思います。これはあくまで事件の捜査、公判等の問題点をあらゆる観点から検討いたしまして、将来の執務の資料として、反省点の出発点として考えようということで内部資料としてつくったものでございまして、関係者の実名も含め、供述内容も含め、すべて、内部資料であるというがゆえにあらゆることがすべてそのまま実名として登場してまいります。したがいまして、プライバシーの問題もございますし、あくまで今後の捜査の内部資料であるという観点から、これは外部に公表することはできないということで、委員からも再三公開要求がございますけれどもお断りしておるわけでございます。  ところで、これが今委員指摘のように、どういうわけか法律時報にその一部が出ておることは事実でございますが、どういう経緯でこの報告書の一部がマスコミの手に移ったのかということについては、私どもは関知いたしておりません。私どもは、あくまで内部資料でございますから、内部の検討資料、今後の捜査の手法としての検討資料ということで慎重に取り扱っておるものでございます。  したがいまして、御指摘のような点が幾つかあるわけでございますけれども一つ一つにつきましてお答えをするわけにはまいりません。なぜかと申しますれば、そういった反省に立って今後の捜査の手法について研究検討を重ねたものであるからでございます。
  257. 諫山博

    ○諫山博君 法律時報というのは随分古くからある、法学雑誌としては権威のあるものとされていますよね。それにどういう経過で載ったかは、私は関心はありません。ただ、ここで代用監獄が問題だということを最高検察庁が指摘したということに私は興味を持つわけです。  そこで裁判所に質問しますけれども、なぜ裁判所はこれほど問題のある代用監獄に留置場所を決めたんでしょうか。こういう場合には、検察庁がどこに要求しようとも、危険性のある代用監獄に留置すべきではないと思いますが、そういう方針はとっていませんか。
  258. 島田仁郎

    最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) その当該具体的な事件においてなぜ勾留場所を代用監獄にしたのか、またそれが妥当であったか否か、その辺のところは具体的な事件のことに関することでございまして、私どもここで立場上答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、勾留の場所を拘置所にするかあるいは代用監獄にするかといった問題につきましては、私ども裁判所裁判官といたしましては、必ずしも請求者の意見にとらわれることなく、請求者の意見も参考にはするものの、個々具体的な事案に即しまして、事件の性質やあるいは被疑者本人の心身の状況とか、面会、差し入れ等被疑者の利益や面通し、引き当たり等の捜査の必要性その他いろいろな事情を十分に勘案した上で個々に判断するわけでございます。  この点は、先ほど法務省刑事局長からの答弁にもございましたとおりでありまして、個々具体的な事案のそれぞれにおいてどのような事情がどの程度まで重視され、その結果どういう判断が下るかということは非常にケース・バイ・ケースでございますので一概に言えないわけでございますが、強いて一般的に申し上げますならば、例えば被疑者が病人で病監に入れる必要がある場合とか、あるいはまた警察官が被疑者であるような事件の場合、そういったような事情がありますと、勾留場所を拘置所とする方向に働く要素であると思われます。また逆に、引き当たり捜査とか実況見分が非常に必要であり、他方、被疑者がもうその事件については自白していて争っていないというような事情がある場合には、勾留場所を代用監獄とする方向に働く要素であろうというようなことは一般的には言えるかと思います。
  259. 諫山博

    ○諫山博君 私は、法務省裁判所に要望いたします。  勾留場所は監獄だ、これは法律の原則です。だからこそ留置場には代用という名前がつけられるわけですよ、代用監獄。何となく代用監獄が一般化してしまった。勾留場所の九十何%は代用監獄でやられている。これが日本の現状で、これが冤罪の基本的な温床になっているわけです。だからこの点は、この事件一つの契機にして代用監獄を乱用しないということを要望します。  そこで、こういう間違った裁判がどれほど基本的な人権を侵害するかということです。この被告に対して、事件当時、殺人鬼という言葉が新聞で使われました。うその天才という証言も使われました。史上最劣の殺人鬼、こういう表現を使った新聞もあります。ところが、無罪判決が確定して、マスコミは一斉に反省をしました。朝日新聞は遺憾の意を表明しております。毎日新聞は、「捜査官の意見に耳を傾け過ぎた」、こう言っております。「判決を痛みとともに受け止め、今後も事件報道のあるべき姿を追求していきたい。」、これは毎日新聞の反省の言葉です。マスコミが誤って犯人扱いしたことをおくればせながら反省した。これは私はマスコミの一定の良識を示していると思います。  問題は、警察と検察庁と裁判所です。私は、きょうの委員会が始まる前に、きょうは警察庁長官が出てこられないようだから、警察庁長官に被告に対して謝罪をすべきだということを求めるから、長官と相談してきてくれと、こう言いました。警察としては、被告人に謝罪しませんか。
  260. 泉幸伸

    説明員(泉幸伸君) 先ほどもお答えしましたが、本件は非常に難しい事件で、当時できる限りの捜査を尽くしたものでございますが……
  261. 諫山博

    ○諫山博君 弁解は結構です。
  262. 泉幸伸

    説明員(泉幸伸君) そういう一審で有罪判決がなされた後、二審で無罪判決が確定したものでございますが、御指摘のような対応をすべき事情があるというふうには考えておりません。
  263. 諫山博

    ○諫山博君 回りくどいことを言いましたけれども、新聞は謝罪したけれども警察は謝罪をしない。わかりました、これで。  検察庁はどうですか。
  264. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 本件につきましては、一審で有罪の判決があったわけでありますが、控訴審におきまして無罪判決があり、これは確定するに至りました。この事実はやはり我々としては厳粛に受けとめなければならないと思います。そして、反省すべき点は反省して、今後の反省点にしなきゃならないということは再三申し上げておるとおりでございますが、本件を、その当時の状況下において起訴をした検察官、公判を遂行した検察官、これは当時有罪の確信を持ってやっておったというふうに考えるわけでございまして、これは我々が負託されております公判の遂行という任務を尽くしたことでございまして、結果的に無罪になったということはございますけれども、それは今後の反省といたします。しかし、謝罪するということは行えないと思います。
  265. 諫山博

    ○諫山博君 法務省は検察官を擁護しますけれども、検察官はその事件に初めから疑問を持っていたんですよ。  判決文を引用します。検察官は逮捕の際に警察に再考を求めた、一たんは起訴を見送って釈放した、こういうことを認定しております。つまり、検察官はどうもおかしい事件だと思いながらも警察に引きずられていった。警察の行き過ぎをチェックできなかった。これを裁判所は批判していますよ。ところが、検察庁は謝罪をしないということです。  もう一つ問題は裁判官です。大体この種の蚕罪事件が起きますと、裁判官は我関せずというような顔をするのが普通です。しかし私は、間違った判決をした裁判官はもっと厳しく責任を痛感しなければならないと思います。  この事件の特徴を紹介しますと、これは第二審で新しい証拠が出て無罪になったのではありません。高等裁判所審理不尽の違法はないと言っております。そして、証拠としては自白以外にほとんどない。これが高等裁判所の認定です。ところが、第一審の裁判官は、合議の結果、被告人に間違った判決をした。そして、被告人は殺人鬼扱いまでされた。これは紹介したとおりですけれども、こういう間違いが続発しているわけですよ。再審無罪事件というのはその典型です。  私は、警察や検察庁がこの種の事件を深刻に受けとめるのは当然ですけれども裁判官も我関せずでは済まないと思います。裁判官は、こういう間違った判決が起きないようにどういう措置を講じているのか、これを聞かせてください。
  266. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 前段に検察官の対応についてお触れになりましたので、まず私の方からお答えいたします。  今委員指摘のとおり、この事件につきましては、最初の勾留満期の際に、証拠が必ずしもまだ十分でないという判断から一たん釈放いたしております。しかし、その後、本人の自供に基づく着衣の発見、あるいは着衣に付着しておりました毛髪の鑑定結果、被告人のものに類似しておるという鑑定結果、こういったものがさらにつけ加わりましたので、改めて、心証といたしまして有罪の確信を持ち、起訴したわけでございます。  そういう経緯でございますから、検察官としては法規に基づき慎重に検討して、一たん釈放するといったことまでやりながらも、さらに捜査を進めてもらって、結果的には有罪の確信を持って起訴をしたという経緯を示しておるわけでございます。  その点につきましてひとつ御理解をいただきたいと思います。
  267. 島田仁郎

    最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) ただいま委員からは、裁判官が我関せずというような顔をしているという甚だ厳しい御批判がございましたけれども、私ども裁判官は、やはり私どもが下す判決の大きな結果、影響ということを身にしみて感じながら、万に一つも誤りなきを期して、常に良心と法律に従って万全の努力を重ねて職責を全うし、裁判を行っているつもりでございます。  それでも三審制度の中で審級ごとに結論を異にするということはあり得ることでございまして、本件のように、非常に事実認定において微妙な難しい問題でございますと、やはりそのようなこともないわけではない。そのようなことから直ちに、上級審で誤りであるという判断をされた下級審の裁判官について、刑事上とかあるいは司法行政上の責任が問題となるわけではないと思います。もっとも、上級審で指摘された誤りがケアレスミスのような明白な誤りである場合はもちろんでありますが、その他の場合、例えば本件のように証拠の評価等に基づく事実認定上の誤り、そのような場合でありましても、下級審の裁判官といたし・ましては、上級審の指摘は謙虚に受けとめまして、その後の裁判を行うに当たりましてはより一層適正な判断をするための反省の糧にするべきでございますし、また現に、すべての裁判官はそうしているものと思います。  いずれにいたしましても、いやしくも無事を罰するようなことがあってはならないというのは刑事裁判の鉄則でございます。この鉄則を常に心に銘記しまして、今後とも一層適正な事実認定を目指して努力を重ねていかなければならないというふうに考えております。  具体的に申しますと、最高裁といたしまして裁判の適正を期する見地から、裁判官の会同、研修等あらゆる機会をとらえまして、お互いに切瑳琢磨し研さんに努めるなど、適正な裁判の実現を目指して不断の努力を続けてまいっておるわけですが、今後とも十分その点で配慮してまいり、一層の努力を払っていきたいと思っております。
  268. 諫山博

    ○諫山博君 委員長、ちょっと。質問に対して誤解があると思いますから。
  269. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 最後にしてください。
  270. 諫山博

    ○諫山博君 私は、間違った判決をした裁判官に刑事上、行政上の処分を求めたつもりはありません。  以上です。
  271. 高井和伸

    高井和伸君 労働省の関係から先にやらせていただきます。  前回の委員会で同僚の井上議員が、日東あられの社内預金の保全につきましてお尋ねしました。御答弁では、届けがきちっとしているからその上では問題ない、このような御回答だったようでございますが、その後どのような事実がわかり、どのような対応を労働省サイドでなさったのか、お尋ねします。
  272. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 私ども、基本的にこの日東あられ株式会社の社内預金問題について、私どもとして非常に事態を重視いたしまして、具体的には保全管理人が選任されました五月二十九日には、岐阜労働基準局長より保全管理人に対し、社内預金について労働者からの返還請求がなされた場合は速やかに返還することなどについて文書をもって要請してまいっております。  さらに五月三十一日には、今後予想される局面において、労働基準法などの関係法令の違反の発生を防止するために、保全管理人に対し局長名をもって、再度、社内預金について労働者から返還請求があった場合、遅滞なく返還することなどについて、文書をもって要請をしてまいったところでございます。
  273. 高井和伸

    高井和伸君 社内預金の現在高はどれぐらいだか、わかっておるのでしょうか。
  274. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 現在までの私ども調査によりますと、預金総額は六億七千百二十七万三千円となっております。預金労働者数は九百四十六名ということになっております。    〔委員長退席、理事会田長栄君着席〕
  275. 高井和伸

    高井和伸君 私も、そのような数字と同じものをつかまえております。  そこで、この社内預金の保全という問題につきましては、賃金の支払の確保等に関する法律、通称賃確法と言われているようでございますが、この法律がございます。これによりますと、社内預金については三月三十一日現在の残高を一年間をもって拘束して保全措置をとれと、その方法には四つあるのだけれども、一、二、三というのはかなり頑丈なきちっとした法制度の上に乗っかった手続だと思いますが、この日東あられにおける方式は、支払い準備金制度、もう少し言うと預金保全委員会方式の中の支払い準備金制度だと、このようなことになっているということでございます。 前回の答弁ではそれによって保全はされているという報告だったということでございますけれども、その後、その報告どおり、今の日東あられの現状からいきましたら従業員にちゃんと保全されるのでしょうね。
  276. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 先生指摘のように、その賃金の支払の確保等に関する法律に基づきまして、四つの保全措置を講ずるよう義務づけております。  それで、具体的に、私ども日東あられ株式会社から預金管理状況報告、先生が御指摘なさった報告書によりますと、保全措置としては、労使のこれは半数が労働者で構成される保全委員会を設置するとともに、同委員会は年四回開催すること、それから社内預金の全額に相当する額について銀行預金等を保有する措置を講ずるという報告書が私どもの方に参っております。  現在判明しているところでは、これらの保全措置が実際講ぜられていないのではないかというような新聞等の報道がありますし、私ども、その疑いがあるのではないかということで、現在鋭意調査中でございます。
  277. 高井和伸

    高井和伸君 六月八日付の中日新聞というのには、社内預金の保全措置なしということできちっと出ております。  実は、おととい労使の団交がありまして、その中で保全管理人は、保全されていないということを言明されたそうでございます。こういった状況が真実だとすれば、この届けとの間の隔離はどのように埋められるんでしょうか。    〔理事会田長栄君退席、委員長着席〕
  278. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 先生指摘のように、その預金管理状況報告、私どもになされている報告がそのとおり適正に行われていないとすれば、非常に私ども問題であるというふうに思っております。  本件につきましては、私ども先ほど申し上げましたように現在調査中でありますので、調査結果を待ってしかるべき措置を検討していきたいというふうに考えております。
  279. 高井和伸

    高井和伸君 今、裁判手続におきまして会社更生手続の開始決定をしてくれという申し立てがある段階でございます。まだ何も破産したわけでもない、会社更生手続になったわけでもありません。至急に保全していただきたいんですが、こういった保全がされていないという事実を前提にした場合、どういったことを労働省としてはお考えでしょうか。
  280. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 私ども現在調査中でありますので、これについて、まだとかくの見解は差し控えさせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、二度にわたりまして保全管理人に対して要請を行ってきておりますし、現在、先生が御指摘のとおり、会社更生法に基づきまして保全命令により同社の労働債権を含む債権債務関係が保全管理人の管理下に置かれていること、あるいは現在その再建に向けて努力が続けられておりますので、そのような状況を勘案しつつ、この社内預金が適正に処理されるよう、今後とも私ども適切な指導に努めてまいりたいというふうに思っております。
  281. 高井和伸

    高井和伸君 今の御回答を聞いておりますと、これは会社更生手続とおたくの所管されています賃確法と、どっちが優先するんですか。
  282. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 両方とも法律でありますので、法律がしかるべき調整をする、こういうことになろうかと思います。
  283. 高井和伸

    高井和伸君 そうしますと、賃確法の第四条というところに保全命令というものが出せるということになっています。まさに今、保全命令を出すべき状況にあるというふうに私は確信しておるわけですけれども、保全措置がしていないというならば、直ちに保全命令を出されるつもりでございますか。
  284. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 今、この保全措置が実際に講ぜられているかどうかについて、先ほど答弁申し上げましように調査中でございますので、とかくの見解は差し控えさせていただきたいというふうに思います。  ただ、私どもとしては、日東あられの社内預金が円滑に返還されることを最優先すべきだというふうに考えておりまして、この保全管理人の管理下に置かれている状況から見て、果たしてそれが適当かどうか。むしろ、実際上適切な処理がなされるよう、私どもとしては指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
  285. 高井和伸

    高井和伸君 今のお話ですと、第四条は発動しないという意味ですか。
  286. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 現時点では、まだ実際上私ども、保全措置が実際に講ぜられているかどうか調査中でございますので、どうこうするという見解は差し控えさせていただきたいというふうに思います。  ただ、私どもとしては、この保全措置命令、先生がおっしゃる四条に基づきます発動が、現時点では果たして実効があるのかということについては非常に疑問を持っております。
  287. 高井和伸

    高井和伸君 実効がなければ出さないんですか。
  288. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 実効があるかどうかという点をも含めて、私ども検討の対象になります。
  289. 高井和伸

    高井和伸君 なぜに今の要素を考慮されるんですか。
  290. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) この保全管理人の管理下に置かれている中で、保全措置命令を私ども出したとしても、果たして、それが実効あるものであるというのがまさに望ましいわけでございますので、そういう点も私ども当然考慮の中に入ります。
  291. 高井和伸

    高井和伸君 今の話をちょっと、考慮するけれども、実効があるように期待しながら考慮するのかどうかわかりませんけれども、要するに法律の運用の仕方としては、労働省サイドとしては、法律の四条にあれば保全命令は直ちに出すべきじゃないんでしょうか。そんないろんな要素を考慮していたんじゃ、労働省が所管しているこの賃確法の精神は生きるんですか。
  292. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) この賃確法第四条では、「労働基準監督署長は、」「貯蓄金の保全措置を講じていないときは、労働省令で定めるところにより、」「その是正を命ずることができる。」という権限になっております。  それで、私ども今現在これが、具体的に社内預金が円滑に返還されることを最優先に考えておりまして、この管理下に置かれている状況等を勘案しながら、これが適切に処理されるように指導を行っていくという方向で今対応しておりますので、これが直ちに発動するかどうか、まだ事実関係しっかりと、私ども調査中でありますので、そういう点も踏まえて判断をいたしたいというふうに思っております。
  293. 高井和伸

    高井和伸君 労働省としましては調査中だということはわかりますけれども、もうほとんど公然の事実です、保全していないということは。私もそれは団交で確認した。保全管理人が、保全していないと。支払い請求に対しても、金がないんだと、このようなことを言っておられるわけです。そんなときに今ごろそんなことを言っていて、賃確法の精神が生きるんですか。そんな会社更生法の更生ができるかどうかなんということはもうわかりませんよ、そんなこと。先にならないと。調査しないと。労働省が漫然と手をこまぬいて何もせずにいるということになると、大変な、労働者の社内預金、これはもういろんな法律解釈ありますけれども、六億七千万ですよ。これが吹っ飛んじゃう可能性があるという現状において、まだ調査中なんと言うのは、五月二十三日に事実上の倒産をして、そしていろんな文書を出しておられますけれども、そんなことより事実関係を早く――前回の答弁をしてから何日たっていますか。
  294. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 私どもとしてはしっかりと調査をして、まさにこの労働基準法は罰則をも科すことができるという法律体系になっておりますので、私ども十分調査をしてこれに対応いたしたいというふうに考えております。
  295. 高井和伸

    高井和伸君 調査した結果、まず先ほど私の言った言葉を前提にした場合どうしますか。
  296. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) また繰り返しになりますけれども、現在のところ、私どもとかくの見解は差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  297. 高井和伸

    高井和伸君 前回の答弁から何日、何をやっておられたかというと、先ほどの文書を二通出した。一通のときはなるべく希望に沿うようにしてくれというような文書の趣旨らしいんですけれども、その後、調査はどうやってやっているんですか。それを答弁してください。
  298. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 前回の答弁が六月四日であります。それからきょうが十二日ということでございますが、いずれにいたしましても、私ども、大垣労働基準監督署も、あるいは岐阜労働基準局からしかるべき人を出して調査しております。
  299. 高井和伸

    高井和伸君 事は、時間との競争の手続の中にあるように私は認識しております。一番大事なことは、労働省は労働者サイドで敢然と法律を適用していただくことが優先されるべきだろうと私は思っております。その調整はまた別の法律あるいは裁判所、いろんなところでなされるはずです。それを裁判所のような立場になりまして、あらかじめ労働者の立場じゃない立場の考慮をするということは、これは間違いじゃないかと私は思っています。  それで、いろんな措置をとるとおっしゃっていますが、どんな措置があるんですか、ほかに。
  300. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 私ども労働基準監督官は、事業所に行き、そこでいろんな帳簿等を調査する権限を持っております。それに基づきまして現在今調査を続行中でありますので、そういう結果を見て私どもどういう措置をとるか判断すべき問題ではないかというふうに思っております。
  301. 高井和伸

    高井和伸君 どういう条件が確認されたときこの四条の発動をなさるんですか。
  302. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) まだこれについて具体的に、先ほどから申し上げておりますように、どうこうするということは、この場では見解を差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  303. 高井和伸

    高井和伸君 十四条における「労働者の申告」というのがございます。これが出た場合どうなるわけですか。
  304. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 労働者の方から申告があれば、それに対してその事実関係調査をいたすのは当然であります。
  305. 高井和伸

    高井和伸君 社内預金というものについてお尋ねしますけれども、現在、先ほど言った預金保全委員会方式でつかんでいる数字、全国に何件でどのぐらいの金額が今の預金保全委員会という方式で掌握されているんでしょうか。
  306. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 平成二年三月末現在で私ども調査した数字を持っております。全国で四万四百四十五事業所が社内預金をやっていると、こういう状態になっております。  そのうち、今先生が御指摘になりました預金保全委員会方式をとっておる事業所が三万三千百六十一件でございます。率にして八二%ということになっております。  それから、先ほど先生が御指摘になったように、金融機関等による保証、一番目の金融機関等による保証の方法でやっているのが二千四百四十六……
  307. 高井和伸

    高井和伸君 もういいです。それはいいから八二%の分の預金残高は。
  308. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 預金残高はこれは――ちょっと預金残高については調査いたしておりません。
  309. 高井和伸

    高井和伸君 質問通告しておいたんですけれども、なぜ調査してないんですか。
  310. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 預金総額についてはわかりますが、これについて……
  311. 高井和伸

    高井和伸君 じゃ言ってください、総額を。
  312. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 預金総額は全国で三兆二千二十七億円であります。
  313. 高井和伸

    高井和伸君 最後に言っておきますけれども、三兆何千億という数字の社内預金があります。今のような非常に危うくなっているときに、四条の保全命令が労働省から出せないということになりますと、この三兆何千億の八〇%、単純計算しますと二兆何千億という社内預金というものは非常に、風前のともしびの保全状態であるようにうかがえる、これはいろんな偏見もありますけれども。今労働省のおやりになろうとしていることは、大変時間と競争する、保全しなきゃいかぬときに、調査してから調査してからということでは保全がされない結果になる。この保全委員会方式の保全という問題については、ほかの抵当権を設定するだとか、それから銀行の支払い保証を得るだとか、信託契約を得るだとかいう手続等を見ますと、画然たる、非常にやわな保全方法なんですよ。保全命令をこんなときこそ出さなきゃいつ出すのかというような問題ですよ。もう社内預金のこの預金が全部の従業員から引き出されたら、これは社会問題になりますよ。まさに保全命令を今やらなきゃいかぬときじゃないですか。そう思われませんか。
  314. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) また先ほどの答弁の繰り返しになりますが、現在具体的なことを申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに思います。  いずれにしても、この社内預金が円滑に保全管理下にある中で適切に処理がなされるよう、私どもとしてはいろんな形で指導なりを行ってまいりたいというふうに思っております。
  315. 高井和伸

    高井和伸君 それでは保全委員会方式で、こういった支払い準備金制度方式で会社が倒産した場合、どのように保全されるんですか。まともに保全されていたときはどのような手続になるわけですか、この支払い準備金制度というのは。例えば破産になっちゃった場合どのように保全されるんですか。まともにやられていた場合です。
  316. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) ちょっと私、質問の趣旨がよくわからないんですが、いずれにしても、保全委員会方式でこれが現実にしっかりとやられておれば、私は問題ないというふうに思っております。破産状態になった場合は、それは各種の法律措置に従って適切に処理されるものだというふうに思っております。
  317. 高井和伸

    高井和伸君 だから、その各種の法律によって処理されたときもびくともしないという制度的担保は何ですかと質問しているんです。
  318. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 私ども、賃確法に基づきまして、この四つの保全方式で処理されるものだというふうに考えております。
  319. 高井和伸

    高井和伸君 具体的にと聞いているんですよ。破産したとき、その預金状況はどうなっているんですか、支払い準備金制度のときは。
  320. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 一応会社更正法上は、社内預金というのは一般債権だということは先生御承知のとおりかと思います。更正法で決定……
  321. 高井和伸

    高井和伸君 そんなこと聞いていませんよ。普通どおりいったときですよ。そんなことにかかわらずに保全されるはずでしょう。
  322. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 保全されると申しますと……。
  323. 高井和伸

    高井和伸君 法律の所管庁の課長がこのような答弁をなさったんじゃ、大変不安に思います。  要するに、どんな場面にあっても従業員に、預金者に返ってくるということがかっちり保証されていなかったら、そういった保全措置をとっていると言っちゃいけないはずですよ。それは保全されているから保全されているということになるはずですよ。それが会社更正手続であろうが何であろうが、すべての場面において一般債権なんという概念が出てくるはずないんですよ、あなたの言っている今までの答弁からいえば。それこそ保全命令を出さなきゃどうしようもない状況になっているはずですよ。どうですか。
  324. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 先ほどから申し上げておりますように、私どもとしては、これが適切に処理されるよういろんな形でやっているわけですが……
  325. 高井和伸

    高井和伸君 そんな質問していませんよ。答弁になっていませんよ。
  326. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 先ほどから答弁申し上げておりますように、この保全措置がこの日東あられの株式会社について実際に講ぜられているかどうかという点について現在鋭意調査中でありますので……
  327. 高井和伸

    高井和伸君 そんなことは聞いてないですよ。私の質問に全然答えていない。  出す以外ないでしょう、保全命令を。ほかにないんだから。答えられないんだから。
  328. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) いや、保全命令を出すかどうかというのは、まだ私ども完全にこれやる必要があるかどうかということについては……
  329. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 委員長を通して発言してください。
  330. 高井和伸

    高井和伸君 私の言っているのは、支払い準備金制度でどのように保全されているのか具体的に、どんな場面でも保全されているはずでしょうと言っているのに、よう答弁なさらぬ以上は、保全命令というものを出す以外にほかに残されていないでしょうと言っているんですよ。
  331. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 支払い準備金制度をつくってこの日東あられは処理しておるわけですが、これが現在実際にそうなっているかどうかということについて調査中でありますので、それに従って対応したいというふうに思っております。
  332. 高井和伸

    高井和伸君 調査中であるということは非常に遺憾であります。そんな時間的な問題じゃありませんし、ほとんど公然の事実です。そうした状況でいまだもって調査中で、保全命令を出すか出さぬかまだわかっていないなんという状況の労働省の立場たるものは、本当にこれは法律の運用者、担当省庁としては非常に欠陥省庁になりますよ。  今の答弁を、今後の推移に基づいて引き続き質問することを留保しまして終わります。
  333. 三治重信

    ○三治重信君 法務省入国管理業務について、同僚委員からいろいろ質問があって、できるだけ重複を避けたいと思うんですけれども、きょうの質問でもあったように、法の改正の前と後とで実際の入国管理の数は、入国管理の受け付けの事務ですね、扱う事務がどの程度人数が少なくなったか、その点御説明願いたい。
  334. 本間達三

    説明員本間達三君) 昨年六月一日に施行されました改正入管法、その施行前後の入国者の推移をお尋ねいただいていると認識しまして、概略を申し上げます。  平成二年中に新規で入国いたしました者は二百九十二万七千五百七十八人でございます。端的にこの法施行前の平成二年中、すなわち一月から五月までと法施行後、すなわち六月から十二月までのそれぞれの新規入国者を月平均いたしますと、平均して三万人ほど上がっております。そういう状況でございまして、法施行後に大幅増加を見ているということは指摘できるかと思います。  また、法施行後の平成二年の七カ月間を前年同期に比較いたしますと一六・一%の増加、こういう状況になっております。  在留資格別その他の推移もございますが、一つだけ申し上げますと、在留活動の範囲が拡充された在留資格として、例えば技術それから技能というものがございます。これについて見ますと、技術につきましては平成二年の一月から七月までが千百八十三人でございまして、前年同期に比べまして約六・五倍となっております。また技能は、同期間でございますが、平成二年中千百七人でございましたけれども、これは前年同期に比して約三・五倍となっているところでございます。  このように、改正入管法によりまして新たに設けられた在留資格ももちろん増加しておりますが、在留資格の範囲の拡充された在留資格についても、十分外国人の方々に利用されているという状況が見受けられるところでございます。
  335. 三治重信

    ○三治重信君 ちょっと細かい数字を御説明になったんだが、どうもはっきり理解できない。  法の改正前と後とでは、やはり法を改正しても入国管理事務、扱った人間はふえているんですね。
  336. 本間達三

    説明員本間達三君) 御質問のとおりでございます。
  337. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、やはり法改正は、入国管理業務を簡素化というんですか、不正に日本国内で働くためにいわゆる観光ビザとかなんとかで入ってくるのを、法の改正によって、そういう不正の労働のために入ってくる人を少なくしようということからこの法改正をやったんじゃないんですか。
  338. 本間達三

    説明員本間達三君) 二つの観点があるかと思いますが、一つは、在留活動の多様化ということをねらって、できるだけ外国人の方を受け入れようという考え方でございます。それとともに、不法滞在、不法就労という形の不法な外国人の滞在というものに歯どめをかけようという観点からの法的整備、例えば罰則の新設というようなこともいたしたわけでございます。  その両面ございますので、不法入国者の推移そのものが必ずしも法改正の意図したところとマッチしないといいますか、というところはないのではないかというふうに考えております。
  339. 三治重信

    ○三治重信君 ちょっと御説明がよくわからぬのですが、やはり法務省入国管理業務の改正について何を意図されたかということにおいて、どうもはっきりしない。そのために実際の入国希望者が非常に多くなる。その上さらにいわゆる不法就労、観光ビザで入ってきたのがだんだん蓄積されている。それを排除するために改正したかというふうに言うとそうでもなさそうだと、こういうことなんだけれども、私はやはり当時一般の国民が、無技能者の観光ビザで入ってきて就労するというやつを阻止できる、法務省は阻止しようということで法改正したということでみんな賛成して入れたんだろうと思うんだけれども、実際やってみて、法改正してそういうことを入国管理業務で、入り口で阻止しようと思ったけれども実際は効果がなかった、そういう不法就労についての効果は、入国管理業務から見ては余り効果がなかったんだと、こういうふうに認めざるを得ないと思うんですが、その点はどうですか。
  340. 本間達三

    説明員本間達三君) 不法就労を目的とする不法な外国人というものをいわゆる入り口でチェックするというのは審査業務の中心でございます。この審査というもののやり方は、従来から厳格にやるんだという線で変わってございません。  ただ、不法就労者の大多数は、今委員指摘になりましたとおり短期滞在で、例えば観光という目的で入ってきながら不法に就労する、資格外活動をする、こういう事例が最も多いわけでございます。さらに不法滞在という、期限を超えてまた働く、こういう態様が最も多いわけでございまして、現在不法就労者のほとんど全部がそういった形態ではなかろうかと私どもは見ているわけでございます。  どうしてそういうふうになったかということは、必ずしもこれは法の整備がそのとおりうまくいかなかったというよりは、むしろ我が国の例えば一部の産業界の労働力不足の問題、あるいは海外における経済情勢の変動といいますか、そういったことから、海外から我が国の労働市場をねらって入国してくる、そういう人たちが多くなったということでございます。
  341. 三治重信

    ○三治重信君 今おっしゃったことが、入管当局で認められていることと世間の常識と合っていると思うんですよね。だから、入国管理の法改正によって不法就労を阻止できるという法改正の説明というのは、実際やってみたけれども入管の窓口をますます混雑させてきたというだけに終わっているんじゃないか、こう思うわけです。  それで、私は名古屋だけれども、名古屋の入国管理事務を見ても、大臣ちょっとここよく聞いてもらいたいんだけれども、それはもう第一線の業務は朝から晩まで大変な人が押し寄せてきて、本当に僕は大変な業務だと思うんです。したがって、入国管理の実際の事務に当たっている人は、これは今のまま放置しておくと僕はその人たちはみんな病気になったりノイローゼになったりしてしまうんじゃないかと思うんです。実際は何の効果もない。そんなことをやってみてもそんなに効果がない。  それはなぜかというと、基本的に東南アジア各国と日本の経済状態が全然違って、もうある国においては賃金が十倍も二十倍も違うというところに根本的な問題があるわけです。どんなに制限してみてもその間を縫って来る、こういうことだろうと思うわけなんで、私は、入国管理業務というものをもう一遍再検討して、入国管理の第一線の人たちがあんなにめちゃくちゃに苦労してノイローゼになるみたいな、またここは調査を厳しくすれば厳しくするほど、一人当たりの時間をかけてだんだん現場で待たせておく。だけれどもそれは実際効果は全然ないということですから、やはりこれは基本的に政府として考えてもらって、不法就労なりそういうことについての政府としての対応を考えてもらわぬと、これは入国管理業務に実際携わっている人は、少々人をふやしても、それは人をふやさなきゃいかぬと思っているんでぜひそれはやってもらいたいと思うんですが、しかしこれは入管の担当者は本当に気の毒だと思って見ているんです。  これはやはり法務省として入国管理業務を正常化するためには、その背後の、経済の背景が全然違うから、手続だけで抑えようといったってどうしようもならぬから、そういう日本に対するいわゆる就学だとか技術だとか観光のやつについても、やはり基本的に政府対政府で事前の調査なり人数を協定なりそういう政策をやらぬと、これは単に入管業務担当者だけが苦労して何の効果もないということになりはせぬかと思うんですが、その点どうですか。
  342. 本間達三

    説明員本間達三君) 今御指摘になられました点は、いわゆる外国人の単純労働者の受け入れに関しての御質問ではないかと思うわけでございますが、政府としては、従来から労働者につきましては専門的な知識、技術、技能を有する者はなるべく幅広く受け入れる、しかしながら、いわゆる単純労働者につきましては、受け入れに伴うさまざまな問題があり、まだ国民のコンセンサスという面でも十分それが得られない現状におきまして、これを直ちに受け入れるというわけにはまいりません。したがいまして、今後もその受け入れに伴う影響その他を分析する等多様な角度から慎重に検討を進めるという立場でございまして、その考え方は今も変わってございません。
  343. 三治重信

    ○三治重信君 大臣に要望だけしておきますが、本当に入国管理業務は今手続だけでやっていて、労働政策ということから見ると、僕は労働省にも注文しているんですが、非常に貧弱になっていると思うんですが、ひとつその点再検討してもらいたいと思います。  次に、もう時間がなくなってきたので、公安調査庁の関係でお尋ねします。  皇室の皇位継承のときの問題においても、それから最近のゴルバチョフ大統領の訪日についての警備なんかの状況を見てみても、実際において警察官だけが苦労して過剰警備をやっておるんじゃないか。その背景になっている社会の革命的な暴力行動というものは、少数の団体がやっているんで、それで、やられるといけないということで警察官ばかり動員して、いろいろ市民の交通規制ばかりやっているということは、これは基本的に公安調査庁が、こういうような革命的暴力集団についての法的な対処の仕方というものが、何だかんだと法的に難しいと言いながら、しかし実際社会的に効力ある行動をしてないからじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  344. 左藤恵

    国務大臣左藤恵君) 先生のおっしゃるのは、過激派に対します破防法の適用の問題とか、そういったことについてのお考えだと、このように思いますが、昨年来公安調査庁におきまして、証拠関係、それから団体規制処分、こういったものを行った場合の効果、影響など、総合的な検討を続けておるという報告は受けております。  この問題につきまして、団体の活動として暴力主義的破壊活動を行ったことや、当該団体に将来の危険性があるということなどに関します公安調査庁における証拠の収集、それから調査の進展状況、そういったものを今検討いたしてまして、この結果に基づいて今後治安情勢の推移、団体規制処分の効果なども総合的に検討した上で判断すべきものだと。そして積極的に、今先生がおっしゃったような線に持っていけるかどうか、そういった意味のことを検討している段階でありますけれども、そういう姿勢で私は努力していくべきであると、このように考えておるところでございます。
  345. 三治重信

    ○三治重信君 警察の方にも僕はよく注文つけているんですけれども、やはり基本となっている警察の一般警備にはとても及ばぬようなところで破壊活動を企画し、そして計画的にやっている。警察がその予防措置で何万人と動員してやっている。これは非常に僕は非効率的であり、国民に対する大変な迷惑をかける基本だと思うんです。  そういう意味において、公安調査庁はもっと大胆に、やはり破壊的、暴力的な団体という疑いがあるやつについてはどんどん調査命令なり、そういう団体を指名して弁明なり何かをさせて、公安調査庁が積極的に社会的に行動をとることが、警察なりその他の治安の予防をもっと小さく、数の範囲を狭めてやれるもとだと思うんですが、そういうことについて御意見はいかがですか。
  346. 関場大資

    説明員(関場大資君) 委員指摘のとおり、この規制処分につきましては一定の効果は私ども期待しております。ただ、万全の効果といいますか、完全にこれが抑止できるということは少し問題がございますし、それから現下の治安情勢その他、今大臣から御答弁申し上げましたような情勢を勘案いたしまして、影響も勘案いたしまして、私どもとしては、今大臣から御答弁がありましたように積極的な姿勢は持っておりますが、いつも検討を続けているというところでございます。
  347. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 他に御発言もないようですから、法務省及び裁判所決算審査はこの程度といたします。  次回の委員会は六月十九日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十五分散会