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1991-06-05 第120回国会 参議院 決算委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年六月五日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         及川 一夫君     理 事                 大浜 方栄君                 後藤 正夫君                 守住 有信君                 会田 長栄君                 猪熊 重二君     委 員                 秋山  肇君                 石渡 清元君                 尾辻 秀久君                 岡野  裕君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 野村 五男君                 福田 宏一君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 喜岡  淳君                 種田  誠君                 西岡瑠璃子君                 渕上 貞雄君                 諫山  博君                 林  紀子君                 井上 哲夫君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  佐々木 満君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 堯躬君    説明員        内閣参事官    梅崎  壽君        人事院総裁    弥富啓之助君        内閣総理大臣官        房広報室長    樋口 武文君        内閣総理大臣官        房参事官     堀内 光子君        警察庁警備局外        事第一課長    漆間  巌君        総務庁長官官房        審議官      小山 弘彦君        総務庁行政管理        局長       増島 俊之君        総務庁行政監察        局長       鈴木 昭雄君        青少年対策本部        次長       杉浦  力君        北方対策本部審        議官       池ノ内祐司君        科学技術庁科学        技術政策局政策        課長       末広 恵雄君        国土庁防災局震        災対策課長    山田 俊郎君        国土庁防災局防        災業務課長    滝沢 忠徳君        法務省人権擁護        局調査課長    濱  卓雄君        外務大臣官房審        議官       竹中 繁雄君        外務省北米局北        米第一課長    田中 信明君        大蔵省主計局司        計課長      設楽 岩久君        文部大臣官房文        教施設部計画課        長        西口 千秋君        文部省初等中等        教育局小学校課        長        近藤 信司君        文部省教育助成        局地方課長    小野 元之君        文部省高等教育        局大学課長    泊  龍雄君        文部省学術国際        局研究機関課長  佐々木正峰君        厚生省援護局庶        務課長      田島 邦宏君        厚生省援護局業        務第一課長    村瀬 松雄君        食糧庁長官    浜口 義曠君        気象庁地震火山        部長       小長 俊二君        労働省労働基準        局賃金時間部労        働時間課長    鈴木 直和君        自治省行政局選        挙部管理課長   牧之内隆久君        会計検査院事務        総局第一局長   安部  彪君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計歳入歳出決算昭和六十三年度特別会計歳入歳出決算昭和六十三年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十三年度政府関係機関決算書(第百十七回国会内閣提出) ○昭和六十三年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百十七回国会内閣提出) ○昭和六十三年度国有財産無償貸付状況計算書(第百十七回国会内閣提出) ○平成年度一般会計歳入歳出決算平成年度特別会計歳入歳出決算平成年度国税収納金整理資金受払計算書平成年度政府関係機関決算書内閣提出) ○平成年度国有財産増減及び現在額総計算書内閣提出) ○平成年度国有財産無償貸付状況計算書内閣提出)     ─────────────
  2. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和六十三年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、内閣総理府本府及び総務庁決算について審査を行います。     ─────────────
  3. 及川一夫

    委員長及川一夫君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  5. 及川一夫

    委員長及川一夫君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 梶原敬義

    梶原敬義君 私は、決算事項に入る前に、当面する諸問題で三点ほど最初質問をいたします。  まず最初に、雲仙岳火山活動に対しまして、五月二十二日の本委員会におきまして質問をいたしました。その際に、国土庁やあるいは噴火予知連等を担当します気象庁、こういうところに対しまして、一体大丈夫なのか、最大の防災指導をすべきじゃないか、このように質問をいたしました。答弁はそれなりに返ってきましたが、どうも政府の見方としては甘い判断を当時されていた、このように感じておりました。最悪事態にならなければよいがと、このように思いながら答弁を聞いておりましたが、きょうのマスコミ報道によりますと、死者三十三人、行方不明三人、それからさらにたくさんの人が今病院に入院して治療している、こういうような最悪事態になりました。  非常に遺憾でありますが、政府の今回この災害に対する状況判断、どういうような状況でこういうようなことになったのか、そして現状、そういうものについてお伺いをいたしたいと思います。
  7. 山田俊郎

    説明員山田俊郎君) まずもって、お亡くなりになられた方々に対しまして心より御冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた方々に対し、心からお見舞い申し上げたいと思います。  今回の雲仙岳火山活動に対しましては、政府としても早くから火山活動観測監視の強化、情報の伝達に努め、土石流火砕流への警戒を呼びかけますとともに、つとに災害対策関係省庁連絡会議を開催して所要の対策を進めてまいったわけでございます。火山噴火現象推移を予知しますことは、専門家の間においても極めて困難であるとされている状況でございまして、今後の活動の動向も依然として予断を許さないというところでございます。  こうした中で一昨日大きな被害が生じましたことは、まことに残念でございます。政府におきましても、非常災害対策本部を昨日設置いたしまして、対策の万全を期するためになお一層の努力をしてまいりたい、このように考えております。
  8. 小長俊二

    説明員小長俊二君) ただいま国土庁の方からお答えがありましたとおりでございますが、現在の技術水準では、火砕流発生を直前に予知することは極めて困難と考えられております。前回、二十二日に答弁いたした段階では火砕流に対する警戒は我々もまだ全然しておりませんでしたが、気象庁では、異常な火山活動観測された場合、できるだけ迅速に火山情報等として防災関係連絡することとしております。  火砕流発生が始まりましたのが五月二十四日からでございますが、それから六月四日までの十二日間に火山活動情報四回、この火山活動情報と申しますのは直接都道府県知事に伝達される最重要な情報でございますが、それが四回。臨時火山情報二十四回発表をして、厳重な警戒を呼びかけてきたところでございます。  今後とも、関係機関連絡を密にして、厳重に監視を続けてまいりたいと考えております。
  9. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) このたびの火砕流によって大変な被害が生じました。亡くなられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げる次第であります。  政府といたしましては、きのうの閣議で国土庁長官本部長とする平成三年雲仙岳噴火非常災害対策本部を設置いたしまして、即日第一回本部会議を開催いたしまして、七項目に上る重点事項を決定いたしました。そして早速、国土庁長官団長として政府調査団を派遣することを決定し、本日、現地で要望を聴取する、被災状況調査をするということにしております。  今後、事態推移に応じて、この非常災害対策本部によりまして、政府を挙げて対処していく所存であります。
  10. 梶原敬義

    梶原敬義君 気象庁部長さんが率直に、火砕流発生予知は非常に、まあ不可能だと、こういうように言われました。これは一七九二年にああいうような「島原大変肥後迷惑」というような眉山崩壊があった大事故がありました。あなたのこの前からの答弁を聞いておりますと、江戸時代状況から、今日この近代科学が進んで皆さんの専門的な分野も進んでおるにもかかわらず、ほとんどこの分野については進歩がない、変わっていない、このような感じを受けてならないんですが、もう一度少しその辺についてお話をしていただきたいし、同時に、火砕流というもののメカニズムについてどのように当初から把握をされておったのか、その状況危険性問題等について、あなた方の認識をお伺いしておきたいと思います。
  11. 小長俊二

    説明員小長俊二君) お答えいたします。  一七九二年の「島原大変」の古文書等をいろいろ読みました結果、「島原大変」の折に火砕流発生したという認識は我々は持っておりませんでした。今回、火砕流発生したということで改めて読み直してみる必要があるかということは考えておりますが、それから火砕流状況が抽出できるかどうかということはまだわかりませんけれども、そういう記述があるのではないかというようなことは、これからまたもう一回読み直してみる必要があるのじゃないかという考えを持っております。  それから、技術水準について当時からというお話でございましたが、当時の古文書だけの記録で我々が判断することはちょっと僣越のところもございますが、現在、地震計とか地殻変動、それからその目視観測に関しましてもかなり科学技術も進歩しておりまして、今回でも地殻変動によって噴火あるいはそういう状況が近いということが確認されました五月十七日の段階噴火予知連幹事会を開いて会長コメントを出し、警戒を呼びかけたということがございました。それから、火砕流についての認識はその当時まだ持っておりませんでしたが、二十四日の噴火がどうも火砕流ではないかということが二十五日の状況で確認されまして、その後二十六日にその状況がかなり活発になったということで我々は火山活動情報を出したというところでございます。  火砕流と申しますのは、既に報道でも何回もやられておりますので御存じかと思いますが、火山の崩落に伴いまして非常に速い勢いで、ガスと砂とれきが一緒になったような形で、高温のまま時速百キロぐらいのスピードで流下してくるという状況でございますので、火山災害の中では一番恐ろしいものという認識を持っております。  以上です。
  12. 梶原敬義

    梶原敬義君 三日の災害の折には、よく報道されておりますが、マスコミ皆さんがたくさん被害を受けております。私の推測では、雨も降っておりましたからむしろ今回は土石流心配のところに非常に関心があり、マスコミ皆さんも、現地にそこを取材に行かれたのではないか、そんな感じを受けるんですが、その点はいかがでしょうか。
  13. 小長俊二

    説明員小長俊二君) 私ども地震火山関係者といたしましては、火砕流災害による被害がこれで安心できるというようなことを言ったつもりはございませんし、火山活動情報の第二号が出て以後も厳重な警戒を呼びかけながら情報を発表してきたつもりでございます。  ただいま先生指摘になったようなことが報道関係にあったかということは、推測の域を出ませんが、そういうことがあったんじゃないかと推測はされます。
  14. 梶原敬義

    梶原敬義君 そういう私が言ったようなことになりますと、やはり火砕流危険性について、もう少し早目専門家マスコミ皆さんにもよくわかるように警報を鳴らしておれば、ああいうようにマスコミ皆さんが被災するようなことはなかったのではないか、このように考えるんですが、国土庁どうですか。その点いかがですか。
  15. 山田俊郎

    説明員山田俊郎君) たびたびお話が出ておりますように、火砕流発生を事前に予知したり今後の推移を予測することは不可能に近いという状況でございますが、今回の被害にかんがみまして、住民等避難誘導が一層適切に行われますよう関係省庁においても指導に努めてまいっているというふうに承知しております。
  16. 梶原敬義

    梶原敬義君 火砕流であるというように最初に問題を提起されたのは、あれはどこだったんですか、通産省ですか。
  17. 小長俊二

    説明員小長俊二君) はい、そうです。
  18. 梶原敬義

    梶原敬義君 山腹が非常に膨張しているとか、あるいは火砕流じゃないかというのを通産省研究所で先にああいう見当をつけるような状況で、そういう点から見てみますと、気象庁やあるいは火山噴火予知連、こういうところはどうも、大島のときもそうなんですが、後手後手にいっている、学問が生かされていない、このように考えるんですが、その点はいかがでしょうか。
  19. 小長俊二

    説明員小長俊二君) 通産省方々火山噴火予知連に加盟しておりまして、判明した事項は直ちに予知連事務局の方に報道をいただいて、その報道に基づきまして我々も判断を下しておるというところでございます。  各機関がどうのこうのというよりは、大学気象庁国土地理院通産省それから防災科学技術研究所、これらの諸機関が一致協力して防災情報をつくるために頑張っておるというところでございます。
  20. 梶原敬義

    梶原敬義君 わかりました。  しかし、結局元締めをしておるのはあなたのところではないんですか。
  21. 小長俊二

    説明員小長俊二君) 予知連事務局を我々が持っているということと、それから活動情報等情報を出して警戒を呼びかけるというところは私どもがやっております。
  22. 梶原敬義

    梶原敬義君 だから、幾ら通産省やあっちこっちが、後から少し言いますが琉球大学木村助教授、あそこら辺が物を言ったって、あなたのところがそれをしっかり取り上げなければ何にもならないじゃないですか。いかがですか。
  23. 小長俊二

    説明員小長俊二君) この前も申しましたけれども研究段階であって非常に未知の分野の多いところでございますから、その研究に応じていろいろなコメントをなさる方もいらっしゃいますが、それを一々全部我々が直接判断するというのでなしに、この予知連絡会などで各先生方の御意見を聞いて統一見解を発表するという形になっておりまして、それに基づいて我々が情報活動をするというような形態、一応そういう形をとることになっております。
  24. 梶原敬義

    梶原敬義君 具体的に少し聞いていきますが、新聞報道によりますと、琉球大学木村政昭助教授はこういうことを言っております。「三宅島や伊豆大島での噴火の前と同じ地震の兆候があったので、私自身は雲仙は火山活動のピークに入ったと考えていた。これまでのマグマの流出量からすれば、これからも大きな山頂噴火山腹からの噴火があるかもしれない。二百年前の例をみても、これだけで終わるとは考えにくい。二百年前は最終的に中規模地震エネルギーを放出して終わったが、このときに眉山崩壊が起きた。この先しばらくすれば活動はおさまるだろうが、今回も中規模地震までは安心できない。」、このように述べておりますが、これに対してはいかに判断をされておりますか。
  25. 小長俊二

    説明員小長俊二君) 五月三十一日に開かれました予知連の中でもそういう御意見の検討はなされておりまして、気象庁といたしましても、まだ現在の段階火山活動は非常に活発な状況が続いておりますし、それから眉山崩壊等二百年前もございましたので、それにつきまして地震震源域がどういう形でこれから移動しながら推移していくかというようなことで、大きな地震が起こった場合とか東に移動していったというような場合にも厳重な警戒をしておるところでございます。
  26. 梶原敬義

    梶原敬義君 問題提起をされている中で、私も九州ですが、非常に心配になるのは、やはり噴火最後地震が来る、大きな地震が。彼は、中規模地震が来るのではないか、そこでエネルギーの放出が終わるのではないか、このように指摘をされておりますね。こういう点については関心を持っておられますか。
  27. 小長俊二

    説明員小長俊二君) 一連の火山活動につきましては、一応そういういろんな形をとるということは理解しております。
  28. 梶原敬義

    梶原敬義君 まあ江戸時代の話じゃないわけですから、あなた方ずっと専門家でやっていますから、実際にたくさん人命が失われておるような状況ですから、少し現実に合うような答弁もしていただかなきゃいけないと思うんです。  もう一つ聞きます。  九州大学の工学部の平野宗夫という水工土木学の教授のお話によりますと、この前があるんですがちょっとカットいたしますと、「今後も大規模土石流発生や、最悪の場合、眉山の横の七面山が崩れる危険性もある。二百年前と同様、地下水位の異常も起きており、何が起きるかわからない状況で、最大限の安全対策を取るべきだ。」と。ここで、前からいろいろな方々から言われておりますように、井戸の水が島原で非常にふえている、こういうようなことが指摘されているんですが、実態はいかがですか。
  29. 小長俊二

    説明員小長俊二君) 地下水位変動があるという情報も入っております。  それで、先ほど述べられましたような土石流につきましても、あれだけ火山灰がたまっておりますので、今後、集中豪雨等によります土石流心配も我々は大きくするところでございますし、それから先ほどもちょっと申しましたけれども眉山崩壊というようなことが現実に起こるかどうかは別といたしまして、その地震活動推移を注目しながらこれからも監視していきたいというふうに思っております。
  30. 梶原敬義

    梶原敬義君 地下水位の異常というのは、具体的にあなたがわからなきゃ国土庁防災局でもわかるんじゃないか。その状況を少し報告してください。
  31. 小長俊二

    説明員小長俊二君) 本日は、それに関するデータは持ってきておりませんので、後ほどお届けしたいと思います。
  32. 梶原敬義

    梶原敬義君 国土庁はわかりませんか。
  33. 山田俊郎

    説明員山田俊郎君) そのような情報があるということは承知しておりますが、実態については私の方でも承知しておりません。
  34. 梶原敬義

    梶原敬義君 テレビなんかで、やっぱり出ているんですよね。井戸を持っている人が非常に井戸水の水位が上がっておると、こういう報道もされておるんですが、しかも新聞報道されておるんですよ。これらの問題に対して最も専門的で行政の中心的な立場にある皆さんがそこら辺がわからないということになりますと——じゃ、どのくらいわかっているんですか、大体のところ。具体的にわからなくても。
  35. 山田俊郎

    説明員山田俊郎君) 地下水をはかっている者の一部で、そういう変動、変化があったというような情報はわかっておりますが、それがどういうものに起因するかどうかについてはわからない、いろいろと調べているようだということまでは私どもは承知しております。
  36. 梶原敬義

    梶原敬義君 一七九二年のあの眉山崩壊の際にも、伝えられるところによりますと、地下水の異常に気がついておる、そういう古文書が残っておるようなんですね。ですから、これらのことにつきまして、非常に残念ですが、早急に皆さんも調べて、最悪事態を今のこの科学で避けるために万全の努力をしなければならない、このように考えておりますが、その点は今答弁を聞いておりまして皆さん答弁では納得できないし、新たな災害が次々に起こってくるような気がしてなりません。  今後の災害心配になる点、一つ火砕流、あるいは山の崩壊、もう一つ土石流、恐らくこの三つではないかと思うんですが、これらに対する政府防災対策を少し整理をしてお聞きしたいと思うんです。
  37. 滝沢忠徳

    説明員滝沢忠徳君) 今後の対応についてでございますが、先ほど官房長官からも御答弁いただいておりますが、これまで関係省庁緊密な連携をとりながら対応してまいってきておるわけでございます。  先日の大規模火砕流発生によりまして大きな人的な被害が出たことを踏まえまして、それからまた、ただいま先生の方からも御指摘がございましたが、今後も火山活動は活発な状況が続くものと思われますし、また予断を許さない。さらにまた梅雨期に入りまして土石流発生危険性もあるというようなこと等いろいろ勘案いたしまして、昨日、政府非常災害対策本部をつくったところでございます。そしてまた、その本部におきまして当面重点的に取り組むべき事項を七項目ほど決定いたしております。  その中にはいろいろな項目がございますが、今後の事態推移に応じながら引き続き厳重な監視警戒を続けていくとか、そういった事柄を幾つか決定いたしておりますので、今後これ以上大きな災害発生しないよう、住民の安全というものを第一にいたしまして、関係省庁挙げまして万全の対策を講じてまいりたいというふうに考えております。
  38. 梶原敬義

    梶原敬義君 官房長官、今お聞きになってどのように判断をされているか。わからないと。確かにわからないことはたくさんあると思いますが、しかし人知を結集すれば避けられる災害も避けられないでこういうことになっておりますから、もう少し人知を結集してやるように、今いろいろお聞きしましても、政府の中心になる皆さん答弁を聞いておりましても、これはだれが聞いておりましても、おうこれならいい安心だ、こういうことにはならないわけですから、官房長官、ひとつあなたが力を入れてこの島原の問題、我々が安心できるように対応していただきたいんですが、官房長官の決意を最後にお伺いしたいと思います。
  39. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 先ほど申し上げましたように、国土庁長官団長といたしまして今視察に行っております。その視察調査状況を見て、政府を挙げて全力で対処をしていきたいと思っております。  これ以上の人的被害が出ては大変でありますから、特に避難勧告などにつきましてはもっと徹底を図らなきゃなりません。その状況判断いかんによってはもっと強い避難命令を出すということも考えられ得ることでありまして、おっしゃるようにこれ以上の被害の増大があっては大変でありますから、全力を挙げて取り組むことといたしております。
  40. 梶原敬義

    梶原敬義君 私も災害対策委員長を三年か前にやらせていただきまして、そういう経験からしても、今大臣いろいろ言われましたが、本当に神経を集中して、対応すべきときはしていただきたい、このように強くお願いをしておきたいと思います。  次に、米の市場開放問題につきましてお伺いをします。——農林省いらっしゃいますか。  きょうの日経の朝刊を見ましたら、近藤農水大臣が食糧安保論をデンマークのヘルシンゲルで開く国連世界食糧理事会の閣僚会合で展開をする、このような記事が載っております。この点について、米の市場開放問題について農水省の基本的なスタンスといいますか考え方を、最初にお伺いしたいと思います。
  41. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) ただいま先生から御質問ございました、農林水産省におきます態度ということでございますが、この点につきましては、ただいま先生指摘のように、近藤農林水産大臣は世界食糧理事会というものに出張中でございますが、五月三十日付で農林水産大臣の談話というものを発表しております。先生御案内のとおりでございますが、従来の政府の方針に変更することはない点を改めて強調しておきたいということでございます。  すなわち、農林水産省といたしましては、米は日本国民の主食であり、かつ稲作は我が国農業の基幹をなすものであります。また、水田稲作は国土や自然環境の保全、地域経済上不可欠の役割を果たしているわけでございます。このような米及び水田稲作の格別の重要性にかんがみ、国会における決議等の趣旨を体し、今後とも国内産で自給するという基本方針で対処してまいりたいということでございます。
  42. 梶原敬義

    梶原敬義君 ぜひそういう方針を堅持していただきたいと思います。  官房長官、六月一日の新聞報道によりますと、海部首相は、行き詰まっている新多角的貿易交渉を打開するために、米の部分輸入自由化を認めることを決断、この方針をブッシュ大統領に伝えるために金丸元副総理に対し首相特使としてロンドン・サミット前の七月上旬に訪米するよう要請した。これは三十一日、政府・自民党筋が明らかにしたということでございますが、この点についてはいかがでしょうか。
  43. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 金丸代議士を政府の特使としてアメリカに派遣して、米の自由化問題について米国と調整をしに行ってもらうというようなのは、それは報道にあったかもしれませんけれども、私はそういうお話は全然聞いておりません。ちょっとそういうことは考えられないんじゃないでしょうか。なるほど金丸代議士は自民党の実力者かもしれませんけれども政府特使にしてアメリカへ行ってもらってなんというのは、そういうことを金丸さんにお願いするということは筋違いだろうと思いますしね。  そして、これは二国間でやりとりをするということは私どもは全然考えておらないのでありまして、それは世界の自由貿易全体を守るということは大事なことでありますが、またこの米の問題については、今も農林省からも申し上げたとおりでありまして、国会の決議などの趣旨を尊重して国内産で自給するという方針には変わりはありません。その一環を今農林大臣がデンマークで訴えておる、私はそういうふうに思っております。そんな二国間でやりとりをするというようなことはとても考えられないわけでありまして、ウルグアイ・ラウンド全体の場ではそれは各国いろいろの立場で主張をされるでありましょう。日本も今農水大臣が食糧安保論を展開しておるということはこれは我が国の立場でありまして、世界に訴えておる、こういう感じがいたします。
  44. 梶原敬義

    梶原敬義君 それでは、官房長官にお尋ねしますが、日米貿易の量からいいますと、それは三%になるか五%になるかわからない、今伝えられている量というのはその収支の面からいうと非常にわずかなものですね。わずかなものですが、アメリカはどうしてこれまで日本の米市場開放に対して強い要求を続けているのか、この点については、官房長官はいかに判断をされておるのか。
  45. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) これは、アメリカとかそれからECもそうでしょう、食糧がもううんと過剰になりまして、そしてやはり自由貿易という大義名分で輸出をしたいということでありましょう。それはアメリカの立場はそうかもしれませんが、しかしまた今度は我が国の立場は、自給率が非常に低いのでございまして、それは立場は正反対みたいな感じであります。  そういうようなことで、各国の立場、EC、アメリカ、日本その他ケアンズ・グループ、それらがやっぱりウルグアイ・ラウンドの場で皆自分の立場を主張しながら、総体としては自由貿易という基本線を守っていきたいということで各国の交渉は今後始まっていくものであろう。アメリカの意見意見としてちょうだいしますが、我が国の意見意見として、今近藤農水大臣が盛んにウルグアイ・ラウンドの前哨戦とも言うべきことで国際会議で頑張っておる、そういうふうに私は思っております。
  46. 梶原敬義

    梶原敬義君 一つの大きな理由は、この新聞報道にもありますように、ヒルズ米通商代表が五月三十日にワシントンで外国人記者団と会見をし、日本で最近米市場開放を容認する議論が高まっていることに触れ、日本政府が七月のサミット前に米市場開放を決定すれば、ガット・ウルグアイ・ラウンドに多大の効果をもたらす、このように記者団の前でヒルズさんが表明をしておる。言いかえますと、アメリカは欧州共同体が農産物輸出補助金の削減に抵抗していることが交渉の最大の障害と判断をしており、通商代表は日本の先駆けた決断によってECを譲歩に追い込み、交渉を進めたいとの戦略を示したものである、このように伝えられておりますが、その点は異論がありますか。
  47. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) ただいま先生は、アメリカのヒルズ代表の発言の報道について御引用なさいましたので、農林水産省として考えております点について、一言申し上げたいと思います。  御指摘のように、アメリカの米を日本に輸出したいということに関連いたしましては、御案内のように、この数年来アメリカの精米業者が提起をして、主としましてカリフォルニアの米等々について日本の市場開放を要求するという動きがあります。いわゆる実態的な輸出をしたいという要求があるわけでございます。これは簡単に申し上げますと、世界の米市場というのは、生産量に比べまして極めて少ない、薄い、狭い市場なのでございますが、タイ等々の競争との関係で敗れたアメリカの輸出業者がそういうふうな動きをしていることは事実でございます。  それからさらに、先生指摘のように、この問題がいわば国際貿易交渉の戦術として使われているということも伝えられておりまして、かねがね農林水産省として申し上げてまいりましたとおり、ガット・ウルグアイ・ラウンドの農業問題の一番の大きな争点は、EC十二カ国とアメリカ、ケアンズ・グループ等々を含めての輸出国同士の対立というようなことでございますので、ただいま先生御引用になられましたヒルズ代表の言葉のようなそういうような考え方があることも事実でございます。  ただ、私どもさらにもう一度この事態認識してみますと、対立するEC十二カ国はそういったようなことでアメリカのような考え方で応じるような、対応をするような国ではないというふうにも考えられるわけでございまして、特に我が国のジャーナリズム等々におきますECとアメリカの対立、そういったものの中における米の位置づけというものについては十分慎重に考えていく必要があるというふうに考えているところでございます。
  48. 梶原敬義

    梶原敬義君 大臣、ある程度理解されたんじゃないかと思うんですが、私も四年ぐらい前でした、アメリカの国府田農場やあるいは州政府、それから精米工場、そういうところずっと見てきまして、国府田農場の鯨岡さんという支配人といろいろ議論したんですが、アメリカの米の生産者が直接我が国に米を買ってくれということを言っているのではない。RMA、全米精米業者協会の皆さんが非常に言っておる。しかし、アメリカにそんなにたくさん米が日本に供給し続けるように余っているわけではない。その鯨岡さんは、我が国に先祖代々ずっと続いた主食であるこの米というのは、よっぽどのことでないと、市場開放をしてしまうとこれは大変なことになりますよ、やっぱり日本国民が慎重に判断すべきだと、こういうことを言われました。  その後、彼は日本に帰って、福島県や東京や福岡で講演をしております。その講演にも私も出かけていきましたが、私が日系だからそう言うのではない、日本はこの米の開放については本当に慎重じゃないと、自然を守り、安全な食糧を守っていくためには将来に憂いを残すと、こう言われたんです。二時間半ほどこの鯨岡さんに、地元の大分県の農業関係者や専門家を私が案内をしていって、そういう話をじかに聞いてきました。  ただ、非常に残念なのは、海部総理は米の部分開放を既に決断をしていると、こういうようにたびたびマスコミでも伝えられておりますし、正直のところ、官房長官はすぐそばにおられるので一番よくわかっておられる方ですから、そういう状況であるということは官房長官はもう肌で感じておられると思うんですが、これはやるべきではない。総理のこの部分開放の決断をあなたが体を張って阻止をすべきだと思うんですが、いかがですか。
  49. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 新聞紙上での報道をごらんになられて、総理が部分開放を決断しておるという断定は、これは私はいただけません。さような決断をしておるなんというような話は、私は総理と毎日顔を合わせておりますけれども、そんな話はしておりません。我が国の立場は我が国の立場で食糧安保論を中心に展開をしていく。それはアメリカも言い分はありましょう。ECもありましょう。しかし、それらはウルグアイ・ラウンドで話をしていく。そして、自由貿易全体とすればこれを守っていく方向だけれども、各国の国益がおのずから違っておりますので、そこで十分日本の主張を納得させていく努力をするということでありまして、総理が部分開放の決断をしたということはございません。
  50. 梶原敬義

    梶原敬義君 大変失礼な言い方になるかもわかりませんが、言われますように、ブッシュホンと言われるような言葉が今日本ではやっておりますが、これは、そう言っていてもアメリカから言われますと海部内閣というのは次々にやはり相手の圧力に屈してきている。こういう流れを見たときに、今官房長官が言われますようなそういうことであればいいがと、大変心配をするんですが、この点については、総理大臣おりませんから、官房長官として体を張って米の市場開放はやらないと、こういう決意を一言お聞きしたいんですが。
  51. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) ただいまも申し上げましたように、我が国の国益をしっかり踏まえまして、そして自由貿易というものは、これは我が国の今日あるいは自由貿易のおかげでありますから、これを堅持しながら、しかも我が国の農業などの特殊性を踏まえまして、そして全力を挙げて頑張っていきたいということは変わりはありません。
  52. 梶原敬義

    梶原敬義君 それもちょっとひっかかるんですね。自由貿易を前提にその先をこうと言われるけれども、結局官房長官は、自由貿易がどうとかこうとかじゃなくて、我が国の立場に立って、米の市場開放については、あなたはこれは閣僚の一人として、首相側近の官房長官として、私はそれはやらない立場で頑張る、こういうことなのかどうなのか、それを聞きたいんです。
  53. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) これはもう国会の決議もありまするし、国内産で自給するというこれを基本方針として頑張るということは、これはもういささかも間違いはありません。
  54. 梶原敬義

    梶原敬義君 どうもありがとうございました。  次に、国連平和維持活動、PKOについてお尋ねしたいと思います。  最近また、これは新聞報道でございますが、自民党の有力者の発言や行動が目に余るものがあります。党の内部で発言するのはこれは自由でございますが、しかし外部で、国民に対しあたかも政府・与党の方針と言わんばかりの発言が非常に多い。これは私は問題だと思うんですが、まして外国に対する影響を考えた場合には、有力者等の発言というのはそれが日本の姿勢と受け取られてしまいます。政府のスポークスマンであります官房長官といたしまして、これらのこの傾向についてあなたはどのように考えておられるのか、最初にお尋ねをします。
  55. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 五月の上旬、幹事長・書記長会談を行いまして、昨年十一月の自公民三党合意を再確認をいたしたわけであります。  もちろん、政府としても国連の平和維持活動に対する協力を推進するために、三党合意の経過あるいはまた今後の三党間の協議も踏まえながら、我が国としても十分効果のある国際貢献もできるというようなことを考えて、今鋭意勉強を続けているというところであります。そして、三党の合意でこういう基本方針を決めたから、それでは政府としてどう考えておるか参考にするために、おまえたちも考えておることをたたき台として出しなさいと言われればいつでも出せるようにというつもりで、今勉強を続けさせておるわけであります。各党の代表がPKOの海外視察にも行かれるようでありまして、また七月に入れば各党書記長・幹事長グループも海外に出られてPKOの視察、勉強をされるということも聞いております。そういうような際に、政府としてどういうような問題点があるか、たたき台とでもいうべきものがあったら出しなさいと言われれば、私どもも準備をして御参考に供したいと思っております。
  56. 梶原敬義

    梶原敬義君 PKOに協力するその新組織の政府原案がもうまとまったと、このように伝えられておりますが、その点は今勉強段階ですか、まとまったんですか。
  57. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) まだ全部決まったというわけではありません。これはもうもともと三党合意が基本の柱でありまして、それを基本として考えれば、しかも政府としても十分な貢献ができるというようなことにいたしたいと思っておりますので、今いろいろと最終的な調整を行っておりますが、今月中でも来月中でも早く出せと言われればできるだけそれに間に合わすように努力をいたします。
  58. 梶原敬義

    梶原敬義君 では、そういう段階ですから余り突っ込んだことは聞かないようにしますが、どうも竹下元首相は、平和維持軍への参加は困難、停戦監視についても後方支援に限定すべきだと、そのような考え方を述べられておる。いや、言っているとか言っていないとかいっても、これは人前で講演会で言ったことをマスコミ皆さんが書いたんですから、もう逃げようがないと思うんですが、これに対して官房長官は、総理大臣の言われていることと竹下さんのニュアンスは少し違いますが、この点についてはいかがですか。どのように官房長官としては判断をし、受けとめておられるのか。
  59. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) ただいまも申し上げましたように、今一生懸命三党合意の柱をにらみながら勉強しておる、詰めつつあるという段階でございまして、政府として、おまえのたたき台は、三党に対して意見を申し上げるというものはまとまっておるかといえば、まだそこまではいっていないことはさっきも申し上げたとおりでございます。  まあ自由民主党でありますから、非常に、党内の議論はそれはいろいろございまして、これは切瑳琢磨して最終的には国民の期待にこたえていくというのが我が党のどうも得意わざのようでありますけれども、竹下元総理も御自分の見識でお考えになっておられることだろうと思いますが、いや維持軍に限るとか、いや停戦監視団までであろうとかなんとか、いろいろ論は今にぎやかに行われておりますけれども、それらにつきましては、今はそれらの御意見もよく考えながら勉強中というところでありまして、竹下さんの論を政府がそのまま受け取るというわけではございません。
  60. 梶原敬義

    梶原敬義君 わかりました。  官房長官、私も後藤田さんが官房長官のとき、この決算委員会でこうして何回も質問をしたんですが、やはり質問していれば、打てば返ってくるんですよ、ある程度のところまでは。あなたのはもう全然返ってこないんですよね、官房長官として。だから、まじめにあなたと議論をしても、余り、これは一体何なのかとこっちがおかしくなるような気がいたします。非常に残念です。  PKOに関する法案は、一体いつごろをめどにつくって国会に出そうとしているんですか。
  61. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) それは法案のことでございますね、法案は、これはもう三党の合意、あるいは社会党もお入りになられればなおよし、ここで合意ができて、そしていつごろまでに出せとおっしゃればできるだけ御要望にこたえたいと思います。これだけ世論が盛り上がっておりますから、次の国会などではこれは御審議をいただけるものだと思っておりますけれども、その前に、いわゆる三党合意というものがあって、そしてそこへいつごろまでに、例えば七月の書記長・幹事長グループが行く前に出せとか、帰ってきてから出せとか、そういう御要望があればそれにこたえていきたいと思っております。  私に対して、はっきり答弁しろと、こうおっしゃいますけれども、私のあれは内閣法では総合調整ということになっております。いろんな意見を、特に政府内の意見を総合的に調整をして、そして政府案として決めていくというそのまとめ役でございますから、それが私自身の意見はこうでありますということは、それはちょっと私は今の段階で申し上げられない。お許しをいただきたい。
  62. 梶原敬義

    梶原敬義君 記者会見の時間が迫っておるようですから、あと一つだけ。  政治改革の法案も、あなたはまとめ役ですから、大体いつでき上がるんですか。
  63. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) これはまあできるだけ早くと総理が今まで申し上げておるとおりでありますが、しかし常識的に考えましても、自民党の骨子がまとまって、それに沿うて政府案というものをつくって、この六日に選挙制度審議会にお諮りをするという段取りになっております。  審議会の任期が六月の二十七日ですか、そうなっておりますので、今月中にも審議会から答申がいただけると思っておりますので、その答申がいただければそう日を置かずして政府案ができる。それをまた再度自民党にも了承をいただくという作業があります。でありまするから、それはもう六月の下旬と言いますと早過ぎることになるということになれば七月早々にでも案はできるのではないかなと。そこへこれから審議会にもお願いをしたり、党の協力も得たり、それから各党の御意見も、これは党首会談などをやると思いますが、いただいたりして、できるだけ早く決めていきたい、そういうふうに考えております。
  64. 梶原敬義

    梶原敬義君 時間がなくなりましたが、総務庁長官おられますし、内閣の残っている方にぜひお尋ねをしたい。  昭和六十三年度と平成元年度における会計検査院の報告は我々いただいて今決算委員会で審査をしているんですが、もう御承知のように、大変問題があるということを指摘をされております。実地検査数というのは、六十三年が八・五%、元年度が九・三%、非常に全体から見ると少ない数字であります。その中で不当事項として指摘を受けているものが昭和六十三年度は百六十六件、金額にいたしますと四十八億四千万、元年度が百九十二件、百二億六千八百万、このようになっております。さらにまた、意見を表示し、または処置を要求した事項については、是正改善の処置を要求したものが七件、意見を表示したものが二件、これは元年度。六十三年度も是正改善の処置を要求したものが二件、意見を表示したものが三件、改善処置を要求したものが一件。元年度の方が悪くなっているわけです。そのほかに、改善の処置がとられた事項といたしまして、六十三年が二十九件、元年度が十七件。また特記事項として六十三年には一件出ております。  このように毎年毎年会計検査院から指摘をされても一向に中身が変わらない。しかも、もし会計検査院がそれを見つけなかったら、これはやみからやみの中に葬られてしまうような内容も大変たくさん含んでいるような状況でございます。  そこで私は、会計検査院はしっかりやる、同時に各省庁における内部監査、内部でもっと監査体制をしっかりして、やっぱり事前にそういう問題を食いとめる、こういうような努力内閣挙げてもっとしっかりやるべきではないか、このように思うんです。この前大蔵大臣にもそのように申しましたが、この点についていかがなものでしょうか。官房長官がいませんから、官房長官にかわる立場で偉い人に。
  65. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) 大変広い高いお立場からの御質問でございますので、私、答弁が十分できるかどうかわかりませんけれども、おっしゃいますとおり、やはり行政というものを法に基づいて、さらに国会の議決の趣旨に基づいて、そして効率的に能率的に合目的的に遂行していかなきゃならないことはこれは当然のことであります。そういう意味合いから、この行政につきまして、お話しございますとおり、各省庁が内部的に常時監査と申しますか、検査と申しますか、調査と申しますか、そういうものをしてまいらなきゃなりませんし、また、会計検査院は独自な立場からやはり検査をしていただく、これも大変重要で必要なことであると思います。  さらに、私ども行政監察というものを別な立場からやっているわけでございますけれども、これも果たして行政というものがそれぞれの趣旨、目的に即して正しく適切に行われているか、こういう立場から監察をやっているわけでございまして、こうしたものが三位一体と申しますか、みんなそれぞれの立場からお互いに助け合って監査、検査、調査をしていく、こういうことをこれからもやっぱり充実をしていかなきゃならぬのじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  66. 梶原敬義

    梶原敬義君 もう時間ですので終わりますが、長官、この予算の正しい使い方、経済的な効果的な効率的な使い方等に対しまして一層高い立場で行政指導をされますように。  行政監察の問題につきまして質問の準備をたくさんしておりましたが、時間でありますので、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  67. 喜岡淳

    喜岡淳君 総務庁、文部省、法務省の皆さんには、よろしくお願いいたします。  先ほど梶原委員の方から島原火山の爆発の問題について質問がありました。非常に残念なことですけれども、たくさんの方が亡くなられておりまして、改めて人の命、人命の尊厳といいますか、人権ということについて考えさせられたところであります。  つい先日の新聞報道によりますと、去年一年間、全国の法務局などが受理した人権侵犯事件の数が一万五千六十七件に上っておる、こういう報道が行われております。そのうちの九八・八%、一万四千八百八十八件については人権侵犯の事実が認められた、そういう報道が行われておりましたが、最近の人権侵犯事件について、法務省の方ではどういうふうに把握をされておられるのか、それについてお伺いをしたいというふうに思います。
  68. 濱卓雄

    説明員(濱卓雄君) お答えいたします。  人権侵犯事件数については、年度によって若干の増減があるわけでございますが、最近は約一万五千件前後で推移しておるわけでございます。ほぼ横ばい状態であるというふうに認識しております。  法務省の人件擁護機関としては、今後とも積極的に自由人権思想の普及のために啓発活動を行ってまいりたい、かように思っております。
  69. 喜岡淳

    喜岡淳君 今、横ばいという認識を示されましたが、私はそれには不満であります。一昨年と昨年の人権侵犯事件数を比べますと、二百五十七件明確に件数が増加いたしております。横ばいという認識は少し事実数字としても違うように受けとめますが、どうでしょうか、その点は。
  70. 濱卓雄

    説明員(濱卓雄君) 新聞等の発表したのは六十三年からの数字を発表していたと思いますが、六十二年には一万五千八十五件と平成二年よりも数値が多い事件数があるわけであります。そういうことで申し上げたわけであります。
  71. 喜岡淳

    喜岡淳君 新聞報道のように、昨年一年間の人権侵犯事件数は前年と比べて二百五十七件の増加となっておりますので、減少傾向にあるというような認識はやはり事実と違っているのではないか。私は、その増加に転じたということが非常に重要だろうというふうに思っております。  そこで、もう一つ具体的にお聞きいたしますが、この人権侵犯事件のほんの一部が数字として挙がってきておるわけで、法務局に届いていないもの、あるいは法務局の段階でとまったものは当然挙がってきておりません。これらの全体を考えてみますと、膨大な人権侵犯事件が起きておるように思われて非常に残念です。  特に私がきょうお尋ねしたいのは、この人権侵犯事件の第六位に差別待遇ということが挙げられております。この差別待遇が百二十一件というふうに書かれております。この中で、就職とか結婚にかかわったいわゆる同和問題にかかわる差別事件というのは、どういうふうに認識されておるんでしょうか。
  72. 濱卓雄

    説明員(濱卓雄君) 法務省人権擁護局が扱っています差別待遇というのは、人種、信条、性別、社会的身分、門地あるいは国籍等により、政治的、経済的または社会的関係において不平等、不利益な取り扱いを受けたものを差別待遇というふうに挙げているわけでございます。  その事件は、さっき先生がおっしゃいましたように、平成二年は百二十一件でございます。その中で、同和問題に絡む事件数は四十五件でございます。
  73. 喜岡淳

    喜岡淳君 今、四十五件ということをお聞きいたしました。この間の衆議院の予算委員会の分科会などでも、同和問題にかかわる差別案件については三十件台、二十件台ということで、非常に減少しておるというような発言がされておりましたけれども、四十五件というのは私は非常に増加をしておるというふうに受けとめております。  そこで法務省の方としても、これらの人権侵犯事件に対してどういうふうな取り組みをされておるのか。これは法務省人権擁護局からいただいた資料でありますが、この中には「同和問題については、特別法が制定され、国民的課題として差別解消への努力がなされているが、なお差別事件が後を絶たず、より一層の啓発活動が必要である。」、こういうふうに書かれておりますので、法務省としてもこれらの人権意識高揚のためにどういうふうな取り組みをされておるのか、少しお尋ねしたいと思います。
  74. 濱卓雄

    説明員(濱卓雄君) お答えします。  同和問題に絡む事件数の内訳は、結婚に関するものが七件、それから差別言辞、言動が三十五件、差別落書きが二件、その他一件でございます。  こういうふうな事件が発生しますと、我々は、当事者、相手方、特に差別発言をした、あるいは差別した相手方に同和問題に対する認識を改めさせて、その中からそういう問題を解決するように相手方を啓発しているわけであります。  ちなみに、どういう事件があるかといいますと、例えば結婚差別についてはこういうのがございまして、被害者が同和地区以外の女性と交際をしておりまして、その方が妊娠した。だから一緒になろうと思って、その女性の両親に結婚の承諾を求めたところ、被害者、男性ですけれども、同和地区出身であることを理由に、女性の両親から結婚をしないでくれというようなことを言われて、結婚に反対されたというケースもございます。  それから、近隣者による差別発言といいますか、それはごく日常的な場で発生したわけでございますが、被害者が自宅の風呂場で風呂をたいていたときに、近隣の人たちが雑談で、被害者に聞こえるような形で、被害者を賤称語を用いて同和地区出身者であると発言したというような事件もございます。  このように、いろいろなケースで部落差別というものが今なお根強く残っている。これはごく日常的な中でも解決していかなきゃならぬというふうに考えております。
  75. 喜岡淳

    喜岡淳君 けさも私は直接聞いたんですが、結婚にかかわる差別の問題であります。  息子さんとある女性の方が結婚をされた。その息子さんが同和地区の出身である。それで、結婚する際に、女性の方のお父さんとお母さんが離婚をしたような形にして、お母さんの名前に名字を変えておるわけですね。つまり、彼女の実家の方では部落の人間と結婚したことにはなっていないような形にしているわけです。もちろんその男性と女性は結婚できましたけれども、彼女の実家の方は、部落の者と結婚していないと、戸籍上はそういうふうにしておるわけですね。なぜわかったかというと、保険証の彼女の名字が違っていたからです。彼女のお母さんの旧姓になっていたからです。こういうふうに結婚はうまくできたものの、彼女の実家の方がもう既にそういうふうになっておるわけです。だから、結婚ができたからといってこれは差別事象じゃないと言うわけにはいかないわけです。これも本当は差別問題なんです。  ですから、今おっしゃったように、結婚にかかわる差別は七件というふうなお話を聞きましたけれども、これは本当に氷山の一角で、今法務省の方からお答えいただいたように、現実に根強く残っておるというふうな気がいたしました。私もけさこの件について御本人から直接お聞きをしました。こういうことがまだまだたくさん、表には上がっていないけれども、いっぱいこの日本の国じゅうに起こっておる。二十一世紀科学技術の時代などといっておりますけれども現実は全く差別が横行しておる。非常に残念でならないわけです。  そこで、総務庁長官にお尋ねをいたします。  総務庁は同和問題の解決のために関係機関連絡をとりながらその中心的なかなめの役割を果たしておられます。そういう意味で大臣にお尋ねをいたしますけれども、この同和問題に当たっては、既にその基本、スタートとなる考え方が同対審の答申で明確に述べられております。既に御承知のとおり、同対審の答申が出て四半世紀といいますか、二十五年という時間が経過いたしておりますが、私は、この同対審答申の述べておる考え方が今なお日本の同和行政の最重要の原則だろうというふうに思っております。つまり、同和問題は我が国最大の社会問題であるという位置づけ、同和問題の早急な解決は国の責任であるということ。そのためには抜本的で総合的な取り組みを進めなければならないという点であります。大臣は同和問題について中核的な非常に重要な立場にいらっしゃるわけでありますが、どういう御決意でこの同和問題に取り組んでおられるのか。非常に御苦労されておることよく承知しておりますけれども、お願いしたいと思います。
  76. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) 今お話をいただきましたとおり、私は、この同和問題と申しますのは、日本の憲法あるいは国づくりの基本にかかわる大変大事な問題である、こういう認識をいたしておるわけでございまして、お話しございましたとおり、諸先輩のいろんな御努力によりまして、現在まで全力を挙げて取り組んでまいったわけであります。  ただ私は、この同和問題の中で、環境の整備と申しますか、物的な面というのはこれは予算を投じていろいろやってまいりましたから漸次改善を見つつあると思いますけれども、それともう一つの心理的な面、こちらの方はなお今日問題点として、大変解決がおくれて残されている、こういうふうな感じを現在持っております。  いろいろ具体的な事例もございましたけれども、我々はこういう心理的な差別、いわれのない差別でございますから、こういうことのないような社会をつくらなければならないということで、知恵を出して、先輩もやってくれましたし私どもも現在やっております。しかし、なかなかこれが解決を見ない。そしてこの問題として法務省当局あるいはそういう行政機関、あるいは新聞紙上、そういうものに出てくる。  しかし、おっしゃるとおり、私は表面に出ているのはこれは全部じゃないと思うわけでありまして、その間にはまだまだ表面に出ない、そういう問題で苦しんでいる方々が少なからずおられる、私はそういうふうに認識をいたしておるわけでございまして、本当にこれは深刻な問題である。しかし、これはやっぱり一朝一夕になかなか解決する決め手がない。やはりこれはみんなで知恵を出して粘り強く啓発を中心にして努力していく以外にはない、こういうことでありますので、私は、今、地域改善対策協議会で来年度以降のことを御審議いただいておりますが、その中で特につけ加えて、心理的な差別、人権問題の解決についてもひとつ知恵を私どもにかしてもらいたいということをお願いをして御検討いただいておるわけであります。  いずれにしましても大変重要な問題でございますので、これからも関係機関と一緒になって、皆様方のお知恵も拝借しながら取り組んでまいりたい、こう思っております。
  77. 喜岡淳

    喜岡淳君 地対協のことが今少し大臣の方から出ましたけれども、やはり地対協の中では、心理面の差別を中心にして今後の対応の知恵を絞っておるというようなお話がありました。しかし、やっぱり今なお一千カ所を超える同和地区は未指定のままで取り残されておりますので、必ずしも物的な面がすべてもう終わったというようなことにはならないかと思いますが、その点についてもぜひ配慮をいただきたいというふうに思います。  そこで、総務庁の方の同和問題に係ります予算、決算ですね。本決算委員会では昭和六十三年度と平成元年度の決算審査をやっておりますが、総務庁決算状況について教えていただきたいというふうに思います。
  78. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 昭和六十三年度と平成元年度につきまして、お答えいたします。  予算、決算ほとんど同じでございまして、昭和六十三年度の当初予算額、これは五億五千二百万円でございます。それから平成元年度につきましては六億九百万円ということでございます。そのうち啓発関係予算、これは昭和六十三年度につきましては五億二千四百万円、平成元年度につきましては五億七千九百万円、さらに総務庁の地域改善対策室が所管します委託費並びに補助金、これの決算額を合計いたしますと、昭和六十三年度につきましては四億九千四百万円、平成元年度につきましては五億五千百万円でございます。
  79. 喜岡淳

    喜岡淳君 今も大臣の方からお答えがありましたように、大臣はこれは国づくりの基本にかかわる問題だというふうに考えておられるわけでありますが、それにしても、啓発予算が六十三年度五億二千四百万円、平成元年度五億七千九百万円です。そういうことになってきますと、この啓発をやっておるところ、法務省、労働省それに総務庁ですね、こういうところの啓発予算を加えても平成元年度で十億円を少し超える、十億二千六百万円ぐらいだろうというふうに思いますが、こうなりますと、三省庁加えても十億円少しです。国民一人当たりで言いますと十円に足らないわけですね、啓発の予算というものは。  私の出身の四国のことを言って悪いですが、地方自治体の場合、四国の四県だけでも平成元年度の啓発事業費は五億円を超えておるわけです。もちろん、国と地方自治体ではお金の計算の仕方といいますか根拠というものが違うだろうと思いますが、そういう意味では、国づくりの基本である、しかも同対審の答申で言うように、この同和問題の解決というのには抜本的な取り組みが必要だ、しかも早急な取り組みが必要な最も重要な社会問題という御認識でありますから、この啓発予算の増額といいますか、やはりそういうことについて私はお願いしたいというふうに思いますけれども大臣、そのあたりはどうでしょうか。
  80. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 大臣にお答えいただく前に、事務的に、ただいまの御質問に対して少しお答えさせていただきます。  総務庁は啓発をやっているわけでございます。予算もそれを中心にとっているわけでございますけれども、その額が十分だとは私どもも思っておりません。それは思っておりませんけれども、一面、啓発とか広報と申しますのは、額と比例して効果が出るというようなものでもないということもまた事実であろうとは思います。広報、啓発と申しますのは、どのような媒体を使ってどのような方々をターゲットにして、そしてどういう時期にやるか、内容はどうするか、こういうような観点を私どももいろいろ吟味しながらある限られた予算を執行しているわけでございます。  ちなみに、総務庁におきます啓発の予算の状況、これについてちょっとお話し申し上げますと、昭和六十年度、これは総務庁ができた年ということですが、三億八千六百万円ということでございます。それから六十一年度四億二千九百万円、ここの伸び率は一一・一%、こういうことでございます。その後も例年対前年比で一〇%を超える程度、あるいは一〇%程度の伸びを確保してまいったわけでございます。  御承知のように、現在国の予算というものは毎年シーリングがかかって、その中で要求をし理解をしていただいてつけていただく、こういうところでございます。したがいまして、総務庁におきましても総務庁自身のシーリングという枠があるわけでございまして、その中におきまして、地域改善対策に関する予算につきましては苦しい総務庁の事情の中から一〇%程度の伸びは確保するよう努力してまいったところでございます。
  81. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) 今までも厳しい予算の枠の中だとは思いますけれども、啓発の仕事として、手だてとしてこれは有効だと、こういうものについては予算を確保してやってきたと思います。  それで、いろいろな具体的な啓発の手法がとられてきているわけでございますけれども、これからも、今までやっていることのほかに、とにかく啓発としてはこういうやり方が有効だよということがあれば、私は予算の獲得のために全力を挙げたいと思っておるんです。ですから、地対協の方にも何か新しい啓発のための知恵を出してもらえないかと、こういうお願いも特別に申し上げているわけでございまして、知恵をおかりして、それを予算をとって実行できるように努力をしてまいりたいと思います。
  82. 喜岡淳

    喜岡淳君 今、シーリングがかかっておる中ではよく頑張って例年一〇%を超えておるんだというようなお話でありましたが、残念ながら一九九〇年、九一年の総務庁の啓発予算の伸び率は九・七%ではないですか。法務省は一二・六%の伸びで二億一千六百一万円だろうと思います。労働省は一億七千四百四十四万円で一四・八%の伸びになっているんじゃないでしょうか。こういう他の役所と比べてみますと、ほかは皆一〇%を超えています。九〇年、九一年、総務庁は九・七%です。ですから私は、ほかの役所は伸びておりますので、総務庁だけが厳しいシーリングでこれでやっておるんだというようなことにはなかなか説得力に欠けるのではないか。もちろん総務庁の方が非常に御努力をされていただいておることはよく理解をいたしておりますが、他の法務省、労働省の伸びはそれを上回っておるというのも一つの事実であります。  それから、今、啓発に金をかけたからといってそれに比例した効果が上がらないんだというようなことをおっしゃいました。そこで私はお尋ねをいたしますが、つい先般、総務庁の方は、委託事業として財団法人地域改善啓発センターに対して「翔べ 熱気球」という漫画本の作製を依頼しております。この問題についてお尋ねをいたします。  この漫画本を作製した目的ですね、それと部数、かかった費用は一体幾らだったのか、教えてください。
  83. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 「翔べ 熱気球」という漫画の冊子でございますけれども、これにつきましては、目的は小学校の高学年の児童に対しまして同和問題をわかりやすく理解してもらいたい、こういう意図のもとに、さらに広く人権という観点を理解してほしいということもございます。そういう人権尊重の感覚を身につける、これが目的でございます。  部数と費用につきましては、作製した部数は二万部、それからそれに要した費用は九百九十万円程度、こういうことでございます。
  84. 喜岡淳

    喜岡淳君 その九百九十万円というのは製作費だけでしょうか、それとも製作して全国に発送をするというところまで含めて、全部で九百九十万円かかったんですか。
  85. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 九百九十万円という額は、製作及び発送全部込みでございます。
  86. 喜岡淳

    喜岡淳君 それではお尋ねをいたしますが、この目的が、小学校の高学年を対象にしてわかりやすく同和問題や人権問題について訴えるということでありますが、先ほどの同対審答申にもう一度戻りますけれども、同対審答申で言うように、部落問題の早急な解決が国の責務であると同時に、これは我が国の国民的な問題として受けとめておられるわけですね。ですから、当然このパンフレットは日本じゅう、全国に配られたと思うんですが、そういう理解でいいですか。
  87. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) そのように御理解いただいて結構だと思います。
  88. 喜岡淳

    喜岡淳君 これは全県に必ずおりているわけですね、同和地区があるところもないところも含めて。そういう答えだったと思いますが、今のは。
  89. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) いわゆる全県的に、冊数は別といたしまして、配付はしております。ただ重点的に同和の問題を抱えている地域に量は多く配付している、こういうことでございます。
  90. 喜岡淳

    喜岡淳君 それでは、文部省の方にお尋ねをいたします。  文部省の方としては、この「翔べ 熱気球」という冊子が、全国各県で一体どういう扱いになっておるのか、把握されておりますか。
  91. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) お答えをいたします。  「翔べ 熱気球」につきましては、総務庁が財団法人地域改善啓発センターに委託して作製をされ、各部府県に送付されたということでございまして、文部省といたしましては、学校現場におきましてどのように取り扱われているかにつきましては、把握をしてないところでございます。
  92. 喜岡淳

    喜岡淳君 把握していないというお答えでありましたが、非常に残念です、私は。これは全国の小学校高学年の人たちに対して、同和問題を正しく啓発するために総務庁が出されておるわけですから、それ、どうしてわからないんですか。文部省だって同和教育の教材として活用しているんじゃないんですか。全く関係ないんですか、文部省は。把握されていないというのはちょっと納得いきませんが。
  93. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) お答えをいたします。  この資料は、総務庁が委託をして作製された小学生向けの啓発資料ということで、その内容につきましては、総務庁において責任を持って検討されたものと考えておりますし、個々の教材をどういった形で使っていくか、これは教育委員会なり各学校の判断にゆだねられている事柄でございます。そういう意味におきまして、私どもは特段の把握をしてないわけでございます。
  94. 喜岡淳

    喜岡淳君 それはおかしいですよ。それぞれが勝手にするんですか。そんなことあるんですか。勝手にするのであったら、文部省はどういう同和教育の指導をしておるんですか。教材なんでしょう、今おっしゃったように。教材を各学校や各教育委員会がどう使おうが勝手なんですか。文部省知らなくていいんですか。それで同和教育を責任を持ってやっていると言えますか。
  95. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) 学校におきます同和教育は、対象地域の有無にかかわらず全国すべての学校において基本的人権の尊重を基本としながら、児童生徒の発達段階を考慮しながら、各教科、特に社会科が中心になるわけでありますけれども、道徳でありますとか特別活動等の特質に応じて適切に行うことにしておるわけでございます。  ただ、もちろん教科書の中にもこの同和問題についての記述もあるわけでございますし、教科書は主たる教材でございますから、そういったものを使って同和教育がなされておると思いますし、また、個々の教材をどう使うか、これは所管の教育委員会と学校が相談をして判断されるべき事柄であろう、このように考えておるわけでございます。
  96. 喜岡淳

    喜岡淳君 それではお尋ねいたしますが、文部省としては、同和教育の取り組みについてどういう御認識を持っておられるんですか。それぞれでやっておられる、それぞれでなされていると思っておるなどと、そんなんでいいんですか。文部省としてはどういう姿勢なんですか。  これはさっきも言いましたように、それぞれの教育委員会や学校現場が勝手にするようなものじゃないんですよ。それじゃ、そういう趣旨で総務庁はこれをおろしたんですか。勝手に使ってくれと、使おうが使うまいがいいと、そんなつもりでおろしたんですか。むだ遣いじゃないですか、そんなことをしていたら。
  97. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) この冊子につきましては、いわゆる教材資料として活用してほしい、こういう意図のもとにお配り申し上げたわけでございますが、二万という部数は一見大きく見えますけれども、総体的に小学校をずっと数えていったときには、学校に一冊程度という格好になるわけでございます。したがいまして、教材の使い方につきましては、生徒、児童各人に回覧で見せるとか、そういうことはなかなか難しいようなものでございます。場合によっては先生がそれを理解して話すとか、やっぱりいろんな手段を講じていただかなきゃいけない。そのために、やはり共通の理解を持っていわゆる小学校の高学年にこの問題についての真の理解を得てもらう、さらに人権問題について広く理解を得てもらう、こういう意図で配付しているわけでございまして、有効に活用されることを私どもは願っていたわけでございます。
  98. 喜岡淳

    喜岡淳君 それは残念です、そういう答えは。上手にあなたは取り繕おうとしている。  各小学校に一冊ずつだとおっしゃった。各小学校に一冊ずつおろして、教材になるわけないでしょう。学校の先生がぺらぺらぺらと見たら終わりじゃないですか、そんなんだったら。だからあなた方は、各小学校に一冊ずつは無料で配付をして、それ以上教材として使う場合は有料だと言って指導しておるんでしょう。おろしたときにはそうしておるでしょう。してないんですか。各学校に一冊では、小学校高学年の指導教材としてなり得ないじゃないですか。それじゃ小学校の高学年の子供向けにつくったというのはうそじゃないですか、そんなのは。理屈合わないでしょう。大臣、理屈合いますか。  各小学校に一冊ずつおろしておいて、これは小学校高学年の教材ですと。教材にならないじゃないですか。学校の先生がぱらぱらぱらと何人か見る程度にしかないじゃないですか。教材として役に立つんですか。小学校高学年、何百万人おるか知りませんけれども。  この作製の目的は、最初聞いたように、小学校高学年の生徒に、同和問題、人権問題についてわかりやすく普及させるための啓発教材だとおっしゃった。小学校に一冊おろして、そういう教材の役割を果たすんですか。おかしいじゃないですか。大臣、説明が合わないと思うんですけれどもどうですか。
  99. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) いや、それはお話を伺っている限りは、小学校の児童全部に持ってもらって、そして先生を中心にしてこれを教材にして勉強するというような仕組みにはなっていないようですね、数からいって。ただ、私どもがつくった目的は、何回も申し上げているとおり、それは教材としてはいろいろ現場では工夫してもらわなきゃならぬでしょう、二万部ですから。そういうことでおつくりをしたわけですから、有効にひとつ活用していただきたい、こういう趣旨でつくったものだ、こう理解しております。
  100. 喜岡淳

    喜岡淳君 大臣おっしゃるように、有効に活用ということだろうと思いますが、活用しようがないですよね、学校に一冊では。  しかも、これは文部省にお尋ねしますが、さっきから何ぼ聞いたって、果たして教育現場でこの扱いがどうなっているのかわからないと言う。有効に使うこともできないじゃないですか。ちょっと文部省と総務庁のあたりで、それ全然意見がかみ合っていないですよね。総務庁の方は、さっきも言ったように、決められた額の中で有効な啓発をしたい、使った金額とその成果とは比例しないんだと。それはわかりますわ、こんなことを見ておったら。両方が全く違うことをやっておるんですからね。  ちょっと文部省、もう一遍お尋ねしますが、教育現場でこれはどういう扱いになっていますか。各学校、教育委員会、今言ったように学校に一冊ずつ、ちゃんと使われていますか。
  101. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) 学校教育現場における活用の状況については把握をしておりませんから、定かなことを申し上げるわけにはいきませんけれども、学校において同和教育に取り組む際には、各学校でいろんな教材、教科書はもちろん当然でありますけれども、さまざまな教材を活用して、しかも地域の実態なり学校の実態に応じて同和教育が展開をされておるかと思っておりますけれども、この資料につきましても、そういったさまざまある資料あるいは教材の一つとして活用されるということは当然あり得ることだろうと思っております。
  102. 喜岡淳

    喜岡淳君 非常に残念ですね。文部省の方のお答えは学校任せですよ。文部省自身が同和教育に対して、日本じゅうの部落差別をなくしていくためにそういう子供をつくっていこう、そういう姿勢がないというのが今の答えではっきりしたと思います。  それではまた最初に戻りますが、同対審答申の精神はどこへ行っているんですか。これは我が国最大の社会問題だということです。したがって、これは国民的な課題としてやらなければならない。これまでも、総務庁の設置されたとき以来、とりわけ公務員に対する啓発活動については、総務庁皆さん方一生懸命やってこられましたよ。その公務員の中で文部省の方が学校任せだなどという発言は、今までの啓発活動が何の意味があったということですか、これでは。文部省自身何にも成果が上がっていないじゃないですか、そんなことでは。何が学校任せですか。そんなんで本当になくなるんですか。あなた、なくそうという熱意は全然ないですよ。違いますか、私の言っていることが。そんな見解ですか。文部省のこれまでの見解も、学校任せだという見解ですか。
  103. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) 文部省といたしましては、この同和教育の重要性、特に同和問題の解決のために果たす教育の役割が極めて大きいというふうに考えておるところでございますし、同和教育の中心的な課題は、法のもとの平等の原則に基づき、社会の中に根強く残っている不合理な部落差別をなくして人権尊重の精神を貫いていく。同和教育におきましては、個人の尊厳を重んじ、合理的精神を尊重する教育活動が積極的かつ全国的に展開されなきゃならぬと考えておるわけでございまして、従来から例えば研究指定校でありますとか教育推進地域を指定いたしまして、すぐれた同和教育に関する研究実践の成果の普及にも努めてきているわけでありますし、全国から教育関係者の参加を得まして研究協議会を開催することによりまして、同和教育の改善、充実に努めておる、あるいは高等学校等の進学奨励事業でありますとか教員の加配措置なども通じましていわゆる対象地域の教育水準の向上に努めてきたところでございますけれども、さらに、同和教育が一層全国的にかつ積極的に展開をされていく、充実をしていくということのために努めてまいりたい、かように考えているところでございます。
  104. 喜岡淳

    喜岡淳君 やっぱり、文部省の皆さんが同和問題に腰を引いた姿勢ではなくてみずからがはまり込んでいく、そういうような積極的な姿勢がない限り、私は事態は変わらないというふうに思っておりますし、それが今までの文部省の同和教育に対する方針でもあったと思います。また、総務庁の方の啓発活動についてもそういう精神だろうと思いますので、今後も徹底ができるように、大臣にはとりわけ御尽力をお願い申し上げたいと思います。  それで、この啓発に当たっては、非常に限られた予算の中で努力をされておるというのは今よくお聞きいたしましたけれども、このパンフレットについても各県、各市町村の教育委員会では扱いに困っておるところも実際のところは多いようでありますから、この取り扱い状況ですね、これから一体これをどうするのか、また今後も出版計画はあるのかないのか、やっぱり問題になってきましょう。そういう意味では、今後総務庁と啓発センターの間で、一体この問題点をどういうふうに改善していくのか。総務庁としてはぜひ改善すべき事項について早急に整理をしていただいて、今後啓発内容が目覚ましく向上していくように、総務庁の格別の指導の改善についてお願いしたいというふうに思います。  時間の都合がございますので、次に部落の実態調査についてお尋ねをしたいというふうに思います。大臣に、せっかくの機会でございますから、訴えをさせていただきたいと思います。  私の選挙区は香川県です。香川県の状況につきましても、長い間の同和対策事業の結果、かなりの地域の改善とか、そういう成果も上がってきております。しかし、その成果も一方である反面、やはり今なお深刻な実態も残っております。住宅状況、香川県平均は持ち家が平均七一・五%です。七割以上の方が香川県の場合は持ち家であります。しかし、香川県の同和地区の平均はわずか二四・八%です。生活保護世帯の割合につきましても、香川県の平均は約八%ですが、香川県の同和地区の場合は二九・五%、三〇%近くに上がっております。年収につきましても、香川県民の平均年収は五百二十五万円という状況ですが、同和地区の香川県平均は、年収五十万円以下というのが一一・七%あるんです。五十万から百万の年収という方が二〇・七%、百万から百五十万の間の方が一八・六%。結局、香川県の同和地区の五一%の方が年収百五十万円以下という結果が出ております。香川県の平均県民所得は年収五百二十五万円です。これも一つの事実であります。  そういうことで、私どもは部落差別の現実といいますか事実ということについての認識が必要だと思います。  総務庁の方も、これからどうしていくのか、いよいよ来年三月で地対財特法は期限切れを迎えようといたしておりますけれども、その後一体どうするのか。既に地対協の御審議をされておるようで、今少し一端をお聞きいたしました。しかし、その後どうするにせよ、データの収集、具対的な実態の把握を行わない限り、正しい方策は出てこないわけであります。そういう意味で、ぜひ部落の実態調査についてお願いしたいというふうに思いますが、大臣の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  105. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) 政策を実行するに当たりましては、当然、実態というものをよく把握してやらなきゃならない、私はそう思います。本問題につきましても、昭和六十年でございますか、実態調査を行ったわけでございますが、その後、この関係の地方公共団体と私どもは一体になって仕事を進めてきておりますから、その都度具対的な状況等について把握をしながら政策を進めておるわけでありまして、現段階で、ここでまた調査をやるという計画はございません。  ただ、お話しございましたとおり、本年度でもってこの財特法が失効しますから、これからどうするかということについて地対協で御審議をいただいておりますので、そうした御意見、御答申、そういうものも踏まえて、今の問題も含めて対処を考えていかなきゃならない、私は現段階ではそう思っております。
  106. 喜岡淳

    喜岡淳君 六十年にやった、それで今後調査するつもりはないというような今のところの御意見がありましたが、やはり私は、科学的な調査ということを早急にお願いしたいと思います。今も大臣おっしゃったように、正確なデータがなければ正確な方針が出てこない、全く大臣のおっしゃるとおりだろうと思うんです。  そこで、昭和六十年に行われました実態調査の問題でありますが、この調査には幾つかの問題が各方面から指摘されたことは御承知のとおりだろうと思います。その問題点の一つとしては、調査票の抽出方法にばらつきがあったために、大規模部落の実態というものが現実よりは低く認識されているのではないか。また、ある指摘によりますと、部落差別の実態そのものに触れていないではないかという御意見も見受けられます。  例えば、結婚の問題です。結婚の問題、私も冒頭に地元の人からけさ聞いたお話を言いました。確かに、部落出身の男性と部落外の女性が結婚した、このことだけを取り上げれば、差別は非常に解消の方向に向かっておるという結論が出るでしょう。昭和六十年度の部落実態調査はそういうやり方だったですね、結婚問題について。結婚したことについて周囲や親や、反対が起きなかったのかどうか。結婚をした後も今までどおりの親子のつき合いが行われておるのかどうなのか。つまり、差別の実態についてあのときは全然触れていなかったですね。通婚が進んだから部落差別がだんだんなくなりつつあるんだなどというのは、極めて表面的です。したがって、あの六十年調査のときにも、この結婚問題については表面をなでただけではないか。その下にある差別の実態を全然さわっていないではないか。こういう批判があっただろうと思います。  それからもう一つは、小学校中退者と小学校卒業者を同一のカテゴリーで分類しておった。これについても批判的な見解が見られております。  そのほかにも幾つかの問題点が六十年度調査には存在していたために、調査したことはやはり評価しなければなりませんが、調査の仕方が科学性を欠き、妥当性を欠いて、しかも中には間違いまで含まれておる。そのために私どもにしてみるととんでもない結論が出ておったんです、これは。つまり、同和対策の事業についてはもう成果を上げてきたんだから、かなりの改善が行われたんだから、もうこれからは一般対策に移行していくというというような方向が打ち出されたのは御案内のとおりです。そういう意味では、六十年調査については幾つかの問題点、明確な間違い、そういうものが指摘されておりますので、やはりこの際、科学的な正確なデータ収集のための調査をぜひともやっていただきたいというふうに思います。  そこで、大臣にお願いであります。大臣の部落視察についてお願いをしたいというふうに思います。  これまで各大臣の部落視察状況について調べてみましたところ、自治大臣の方は三名行っておられます。昭和五十六年、六十一年、六十二年。文部大臣の方が二人。昭和五十六年と六十年です。厚生大臣の方は三名ですね。昭和五十六年、六十年、平成二年です。なお厚生省につきましては、尋ねてみますと、厚生省としてはこれからも機会があるならば行きたいと、非常に積極的なお答えでありました。労働大臣の方も三名行かれております。昭和五十六年と六十年、それから平成三年、この間六月三日だったですか、行かれております。農水大臣の方が二人です。昭和五十六年と六十年。建設大臣の方は一人。昭和五十六年。一人ではありますが、聞いてみますと、国会答弁もあることだし、その国会答弁を踏まえて今後検討したいというのが建設大臣の御意向であります。  そこで問題の、肝心かなめの総務庁の場合でありますが、かつて昭和五十九年十月二十日に当時の後藤田長官が兵庫県の同和地区を視察されております。その視察について、これは昭和六十年三月八日の衆議院予算委員会第一分科会で感想を求められて述べております。地域の中の人の気持ちもわかる、行ってみたらいいことだということをおっしゃっております。そこで大臣にぜひお願いしたいと思うわけでございますが、ぜひ大臣自身が同和地区の視察をやっていただいて、その目と足と、そして体験といいますか、体で部落の雰囲気、部落の声、現実を見てくるということが、特に来年三月に法の期限切れを迎えようとしておる今日、非常に重要なことではないかと思いますので、ぜひお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  107. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) 私もかつて四国あるいは中国地方の同和を抱えた地域に通算六年ばかり住まわせていただきまして、同和関係の予算なんかについて関係したことがございます。その際は、私は東北の人間でございますから実態がよくわからなかったのでございまして、そういうことで、そういう町に住んでおりましたころは公的にも私的にも現場を見させてもらっていろいろと勉強させてもらいました。  ただ、総務庁に参りましてからはまだ拝見はいたしておりません。ですから、この前も予算委員会のときからずっと申し上げておりますけれども、機会を得てぜひ現地を、その後ずっと情勢も変わっていますし、私のその後の記憶も薄れておりますし、何しろ東北人なものですから余り肌でもってその日常を感ずるという生活をしてきておりませんでしたので、ぜひひとつ機会を得て、なるべく早く視察をしてまいりたい、このように考えております。
  108. 喜岡淳

    喜岡淳君 では、大臣には、ぜひ近いうちに視察をしていただきますことをお願いを申し上げまして、終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  109. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時二十一分開会
  110. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十三年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題とし、内閣総理府本府及び総務庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  111. 種田誠

    ○種田誠君 私は、まずこの五月二十七日に大阪高等裁判所で、昨年の総選挙に対して定数配分規定は憲法十四条に違反し、選挙は違法である、このような判決がなされたこと、この判決に先立ちましてことしの二月八日には東京高等裁判所で同じ昨年の総選挙に対して、結論として、違憲という表現はとってはこなかったものの、この定数配分規定は放置できぬ事態に至っている、早急な是正を求める、このような内容の判決がございました。立て続けに今日の衆議院における定数配分規定に関しての裁判所の判決がなされたわけであります。裁判所が、本来国会の自由な討議によって決せられていく定数配分等についてこのような判断を示すということは、今日の定数配分がかなり重要な事態に陥っている、こういうことを私は物語っているものと確信するわけであります。  このような判決を前にして、官房長官におかれましては現在どのような御所見をお持ちか、まず冒頭お伺いしたいと思います。
  112. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 衆議院の定数是正問題はことしの二月の東京高裁判決及び五月の大阪高裁判決も出ましたが、とにかく定数是正というものを国会の決議に基づいて早くやれという趣旨においては全く私も同感でございます。とにかく、今度の選挙制度審議会の答申においても、衆議院議員の選挙区間の一票の格差を一対二未満にすることを原則にしろという選挙制度改革についての答申も出ております。これはもう政府といたしましても全くそのとおりだと思いまして、このたびの政治改革におきましても、格差の是正のために一対二未満にするというところで改革の実現を図りたい、こういう決心でございます。
  113. 種田誠

    ○種田誠君 官房長官の御決意のほどはわかったわけでありますが、まさにこの一票の価値の平等ということは民主政治を行っていく上での極めて重要な規範であります。そういう意味で、このことが崩れてしまいますと日本の民主政治そのものがその根本において崩壊するということにならざるを得ないわけでもあります。  私は、同僚議員の福田宏一先生団長にしまして、バングラデシュの民主的な選挙の発展のためにとか、過日、ネパールの選挙の民主化のために他国を駆けずり回ってきたわけでありますが、振り返ってみますと、今申し上げているような定数是正のこの改革すら、今回の二つの判決だけではなくて、もう既に一九八三年の例の最高裁判決で厳しく定数是正に関する指摘がなされているわけであります。それを受けて、かつて衆議院においても、国勢調査の人口が確定すれば直ちに抜本的な改正を行っていきたい、こういうことを取り決めてもきた過去があるわけであります。  そういう中で昨年の総選挙が残念ながら何らの抜本解決もなされず行われてしまったということは、私は日本の民主政治の根本そのものが多くの国民から不信を抱かれるということにもなりかねないということを極めて危惧するわけであります。  そういう意味でこの問題に関しては積極的に直ちに取り組んでいただきたいと思うわけでありますが、自治省におきまして、今日、果たして衆議院において最大でどのくらいの格差が生まれてしまったか、参議院においてどのくらいの格差が生じているのか、昨年あたり発表にもなっておることでありますから、もしも数字がわかりましたら述べていただきたいと思います。
  114. 牧之内隆久

    説明員牧之内隆久君) 平成二年十月一日現在の国勢調査人口をもとにいたしますと、現在の衆議院議員選挙の各選挙区の最大格差は三・三八対一が最高でございます。参議院議員につきましては手元に資料を持っておりませんので明確なことはわかりませんが、六倍前後になっていたかと存じております。
  115. 種田誠

    ○種田誠君 私の方で調べさせていただいたところ、参議院の方が六・四八倍になっておるということであります。そうしますと、昨年の総選挙後さらにこの状況は大きく開いているとも思いますし、今後ますます格差は拡大していくであろうと思うわけであります。そういう意味で、直ちにこの定数配分規定の見直しをしませんと、これは先ほど来申し上げているように大変な事態に陥ってしまう、こう思うわけでありますが、これについての自治省における今日的取り組みはいかがなものでしょうか。
  116. 牧之内隆久

    説明員牧之内隆久君) 先ほど官房長官から御答弁を申し上げたとおりでございまして、自治省におきましても、選挙制度審議会の答申を受けまして、その答申の中で新しい衆議院議員の選挙制度の各選挙区間の格差は一対二未満を基本原則とするということで答申がなされておりますので、現在、この答申の実現に向けまして鋭意取り組んでいるところでございます。
  117. 種田誠

    ○種田誠君 過日の新聞報道など、またテレビなどの報道を拝見しておりますと、自由民主党の中におきましても、政治改革の一つとして小選挙区比例代表制などの制度導入等が問題になっておる。そして、このことが定数是正に大きく寄与するというような御意見もあるようであります。しかし、この新しい選挙制度の導入ということになりますと、国会での議論はもとより、国民の多くの皆さんのコンセンサスなどもつくっていかなければならない、極めて厳しい道があろうかと思うわけであります。一朝にしてそのようなものができるものとは私は考えませんし、また、そういうものであってはならないと思うわけであります。  そうしますと、その小選挙区制の是非の点は別にしても、それと離れても直ちに現行制度の中で定数配分の是正ということを自治省みずからが先頭に立って取り組んでいかないと、政治的な全体の推移の中で国民の政治不信を招いていく、こういう結果にもつながると思います。そういう意味で、この定数是正に関しては小選挙区比例代表制の導入などの問題とは関係なく別途進めていただきたいと思うわけでありますが、官房長官におきまして、その辺に対する御所見をいただければと思います。
  118. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 政府が考えております、また選挙制度審議会の答申からも出ておりますその中には、政治改革はいろんな問題が含まれておるということは今委員がおっしゃったとおりであります。選挙制度もあれば、政治資金の問題もあれば、いろいろ問題はございますけれども、なかんずくこの一票の格差の是正というものは、これは大きな問題でございます。かつての最高裁判決で示唆された一対三未満ということも承知しておりますが、しかし、今委員のおっしゃったような御趣旨からすれば、それをはるかに超える一対二未満というところで政府も決断をし、選挙制度審議会も答申をしておるわけでありますから、これが実現に向かってこのたびの政治改革の大きな一環としてどうしても実現をしたい、そう思っておるわけであります。
  119. 種田誠

    ○種田誠君 この点については、今官房長官答弁にもありましたように、一日も早く公平な選挙ができるような体制を自治省と力を合わせてぜひつくり上げていただきたい、このようにお願いを申し上げます。  次の質問に移らせていただきたいと思います。  私も、最近いろいろな雑誌、さらには報道などによって、国立大学や国立研究所などの実態というものを知ることができるようになってきているわけなんですが、知れば知るほど大変な事態に陥っているという印象を持たざるを得ないわけであります。  昨日、きょうの質問の準備をしながら宿舎でNHKのラジオのニュースを聞いておりましたらば、大学財政懇談会、これは国立大学協会会長の東大学長の有馬さん、それから大学審議会会長の慶応義塾大学の塾長の石川さん、その他学術振興会会長、学術会議会長がおられますが、たくさんの皆さんで構成している団体においても、もはや今の大学や国立研究機関やさらには私立大学などのとりわけ技術系などの研究機関において大変な事態に陥っておって、このままこの事態推移してしまうと、日本の将来の科学技術はもとより学術の振興が大変な事態に陥ってしまう、そういう立場に立って過日記者発表をいたしまして、何としても内閣総理大臣、大蔵大臣、文部大臣に御理解を賜りたいという御要請を近々したいというようなことを聞きました。そういうわけで、私は質問しながら、本当にこの問題は今大変な事態に陥っているんだなということをさらに感慨を深めたわけであります。  昭和五十年以降、五十年代の後半になりますけれども、行財政改革が進んできたわけでありますが、そのことが今日、日本の高等教育、大学、それからさらには国立研究所などへ及ぼしておる影響がどういう形で出ているかについて、参考になるものとして、一つには科学技術庁が過日アンケート調査をなさった経過があると思うんですね。そのアンケート結果でどういうふうなことが現在事実として存在しているのか、どういうことがゆゆしき事態なのか、そのことをまず報告していただきたいと思います。
  120. 末広恵雄

    説明員(末広恵雄君) 科学技術庁では、国立試験研究機関の定員の現状に関する問題等につきまして把握するという目的で、本年三月から四月にかけまして九十三の国立試験研究機関研究者を対象といたしましてアンケート調査を行いました。これに対して約八百名の研究者の方から回答が得られたわけでございます。  そのアンケート結果の主な概要を申し上げさせていただきますと、まず、多くの研究者が要員不足を指摘しておりまして、国立試験研究機関における研究に必要な要員と実際に確保されている要員との差、これにつきまして、例えば一つ研究テーマごとに見てみますと、平均約二人の要員が不足しているという回答が得られました。また、国立試験研究機関の定員の減少に伴う影響につきましては、約七六%の研究者が研究を中止したりあるいは研究テーマを縮小する、あるいは研究期間を延長するといった研究面に対する影響を経験しております。また、内部からの応援あるいは外部からの応援といったことでいろいろ対応したり、あるいは研究チーム内で業務の負担をふやすということでやりくりするといったことを行っているという回答も約四五%に上っております。  今後の要員不足につきましては、やはり研究の中止とかあるいは縮小といった研究への影響が考えられるということが約九〇%近くの研究者から回答されております。また、技術部門のスタッフの減少という問題がございますが、この技術部門のスタッフの減少による影響につきましては、研究者みずからが技術部門の業務を行うとか、あるいは事務的な手続がふえてきているということにより実際の研究活動が圧迫されているといった回答が約三〇%程度になっております。  概略以上でございます。
  121. 種田誠

    ○種田誠君 今の報告にもありましたように、かなり深刻な事態に陥っているという結果が出ているんだろうと思うんです。六月三日の新聞に出た報道によりますと、この回答の一つの具体的な例として、例えば超電導材料研究部門で人員充足がなされなかった、そのために日本の超電導の研究研究競争の中で大きなおくれをとりつつある、こういうふうな回答もあったということであります。人員補充がなされないという結果、せっかく今まで地道な基礎研究を重ねてきたにもかかわらず、その研究が一たび中断するとどういうふうなことが起こってしまうかといいますと、科学者にとってはもう取り返しのつかない事態になってしまうということでもあります。  そういう意味で、今回の科学技術庁の調査の中に込められている研究者や関係する方々の声というのは、本当に私たちは重要視していかなければならない、そのように思うわけでありますが、この調査の結果、科学技術庁においては一体どのようにこれについては対応していこうと今お考えでしょうか。
  122. 末広恵雄

    説明員(末広恵雄君) 創造性豊かな科学技術の振興を図るという観点からしますと、やはり政府、公的部門の果たすべき役割というのは非常に大きいわけでございますが、特に国立試験研究機関がその中核となるべきものと私ども考えております。したがいまして、国立試験研究機関に必要な人員につきましては、それを確保し、それから国立試験研究機関自体を活性化していくということは非常に重要な課題であると認識しておりまして、この点につきましては科学技術会議の答申等におきましてもいろいろ指摘されているところでございます。  このような観点からしまして、科学技術庁としましては関係省庁と御相談いたしまして、今後必要な人員確保につきまして努力してまいりたいと考えております。
  123. 種田誠

    ○種田誠君 次に、同じような質問になろうかと思いますが、国立大学協会などにおいても大学研究施設の実態とか研究者の現状についてアンケート調査などをとっておると思うのですが、文部省の方からでもその点を答えられる方、おりますでしょうか。
  124. 泊龍雄

    説明員(泊龍雄君) お尋ねの件についてでございますけれども、国立大学協会におきましては、財政基盤調査研究委員会というものを設置いたしまして、当面する国立大学の財政問題等につきまして制度的、構造的な側面からの検討、あるいは各大学部局等における聞き取り調査、それから今お話が出てまいりました教官の教育研究経費の実態あるいは問題点といったようなものについて調査を進めているところでございます。そして、今お尋ねのように、今年の四月十日に国立大学の助手以上の教官全員を対象といたしますアンケート調査を行った結果を取りまとめたところでございます。  概略を申し上げますと、その調査結果によりますと、国立大学の役割と問題点ということにつきましては、これまで国立大学が全体として果たしてきた役割というものについては相当の評価を与えているというものの、現状につきましては、例えば教育研究環境というものに対する不満がかなり強く出ております。例えば民間企業等と比べました場合の建物、設備、あるいはまた処遇の面で劣っているということで、将来の研究水準の維持というものについて強い危惧を表明されているというような結果が出ているところでございます。  また、教育研究費の現状につきましても、いわゆる図書、資料等、あるいは補助研究者の賃金あるいは設備、備品といったようなものに充てる校費の現状の配分額が、みずから必要と思っている額に比べると二分の一以下になっているといったような指摘調査結果としてはあらわれてまいっているところでございます。そういった中で、積算校費といいますか、当たり校費等の増額あるいは科学研究費の増額といったようなものの要望が出ているという状況になっているわけでございます。  なお、この国大協に置かれました財政基盤調査研究委員会というところにおきましては、ただいままではアンケート調査が中心でございますので、全体としての具体の事例調査、あるいは全体としての大学の財政のあり方等につきまして、今後引き続き調査研究を進める予定であるというふうに承知をいたしております。
  125. 種田誠

    ○種田誠君 今、科学技術庁並びに文部省の方から、アンケート調査に対する実情などを報告してもらったわけでありますが、言葉で聞きますと、大したことはないのじゃないかと思う方もおられると思うんです。ところが、私もやはりそれを実像で見せてもらいますと、これは大変な事態になっているなとわかったわけであります。  雑誌の名前で、「アエラ」というのがありますが、五月二十八日号に、「頭脳の棺桶国立大学」と、こういう見出しで出ているわけですね。先ほど来の言葉を具体的なケースでもってちょっと拾ってみますと、実に情けないと思いますが、京都大学の著名な先生が、ビーカーが足りないといってワンカップ大関を飲んで、この空き瓶をためる。同じ大きさだけじゃ困るので、いろいろなカップの酒を飲んでそれをためておく。こういうふうなことで、実際研究室の棚にはワンカップの空き瓶がたくさん置いてあるわけです。  さらには、東京大学で毎年入学試験が行われる第五号館の下には、応用化学系のいろいろ研究室があるそうです。入試が行われる日はほとんど実験をしませんので水道を使わない。そうすると水圧によって漏水をしてしまう。上で受験生が受験に専念しているときに、地下で教授を初めスタッフがぼろきれを持って駆けずり回る。毎年これが繰り返されているということであります。  さらに、これまた日本の科学技術の発展がこういうことでいいんだろうかと私自身実に嘆かわしくなったのでありますが、これは広島大学でありますけれども、本来ならば国立がんセンターの関係での仕事なんですが、肝臓がんの研究をしていた。実験用にはラットを本当は使いたい、ラットを使うためには恒温恒湿の十畳ほどのスペースが必要だ、このスペースがどうしても予算の中でつくれない、敷地もない。どうしたかというと、やむを得ず、ラットを断念してカエルに限定して研究を続けている、こういう実態もあるようであります。  この雑誌のほかにも、例えば日経サイエンスという雑誌にも、最近の雑誌でありますが、大学実態がやはり載せられております。決して私はごく一部の特異な例だけを取り上げているようには思えないわけであります。そういう意味で、これらの実態について文部省の方においてはどのように現在掌握されておるか、御説明願いたいと思います。
  126. 西口千秋

    説明員(西口千秋君) ただいま先生から、雑誌を具体的に事例として挙げながらいろいろお話があったわけでございますが、私どもも、そのような国立大学状況についてはいろいろ危惧をしております。  例えば、先生御承知のように私どもいろいろ部門が違うわけですが、私は主として施設の方を担当しておるのでございますが、国立学校の施設整備につきましては、確かに昭和五十四年に千五百四十億というような大きな予算を持っておったわけでございますが、その後、国の財政状況が非常に厳しくなってきたということ、あるいは臨調の答申等もありまして予算額の縮減をしてきたわけでございます。一方、近時の教育研究の高度化あるいは多様化、そういうようなことから、あわせて社会的な要請もございまして、学科の新設であるとか改組であるとか大型の研究機器の導入というようなことが図られてきたわけでございます。  そういう中でこれらに対する施設の整備も当然必要なわけでございますが、それ以外に、現在国立学校の建物というのが全体で千九百万平方メーターほどございます。これらの膨大な施設が経年でかなり老朽化してきておる。そういうものの改築あるいは改修という需要が非常に増しておるわけでございます。そういう中で、私ども文部省としましては、そういう状況を踏まえまして、非常に厳しい財政状況の中ではございますが、教育や研究組織の見直しあるいはそれに対応した整備、また老朽建物の改築改修を計画的に進めたいというふうに考えております。  そういうようなことの中で、平成三年度予算におきましては前年度比五十一億円の増額を図りまして、教育研究環境の改善、充実に努めてまいっているところでございます。今後もいろいろ財政事情等を勘案しながら施設整備の充実に努力をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  127. 種田誠

    ○種田誠君 そうしますと、文部省の方においても私が先ほど例示したような実情というのは十二分に掌握しておる、その上で今述べられたような視点で取り組んでいこうとしているということだろうと思うわけなんですが、いずれにしろ、先ほど冒頭申し上げましたように、この施設一つとってみても、もう今日においてゆゆしき事態に至っている、これは決して極端な言い方ではなくて現実に沿った、現実認識に立った上での判断だ、このように文部省においてさらに理解を深めてほしいと思うわけであります。  実は私も、施設ばかりでなくて、研究費とか大学先生方の給料は今一体どうなっているんだろうか、そういうこともちょっと調べたわけでありますけれども、これは東大の先生でありますが、私もちょうど四十五歳ですけれども、四十五歳の先生が税込み年収九百万円。ただし、九百万は九百万でそれは一つの考え方なんですけれども先生みずからが自腹を切らなきゃならない場面が極めて多いというふうに伺いました。  とりわけ、一つ例をとってみても、これでどうするんだというような、例えば先生の出張旅費が年間七万円だということですね。七万円で、昨年この先生が海外の学会に行かざるを得なかった。学会に行って、シアトルの方でいろいろ発表をしてきたんですけれども、一週間行っておって、助手二人、学生一人と行って、いろいろなお金で二百万円ほどかかってしまった。七万円の出張旅費で二百万円かかったということになりますと、どこかで残りの百九十三万円を調達しなきゃならないわけであります。先生の自腹を切る場面も多かったということでもあります。  そして、ことしも実はアメリカとヨーロッパで国際学会で論文をぜひ発表したいんだ。フロリダで地球温暖化会議も開かれて招待状も来ている。でも旅費が、七万円も使ってしまって、ない。ある程度自腹を切るといってももうない。となれば、考えられることは、企業を回って寄附をもらうか行かないかだと。こういうふうなこともあるようでありますが、この辺のことについて文部省の方ではどのように事実を認識し、対応しているのか、まず現状を御報告していただきたいと思います。
  128. 泊龍雄

    説明員(泊龍雄君) いわゆる教育研究に要する経費等の教育条件の実情をどうとらえているかというお尋ねであろうかと思います。  先ほど来申し上げておりますように、近年の厳しい行財政事情あるいは臨調答申の指摘といったようなこともございまして、全体としてこういった教育研究経費の確保というものにつきましては、私どもも苦しい中での対応を迫られてまいっております。ただ、国立大学における教育研究水準の維持向上ということの重要性にかんがみまして、その中では最大限の努力をやってまいっておるところでございます。  そういった意味合いで申し上げますと、この平成三年度の予算におきましても、全体として基幹的な教育研究経費と言われるものが約一千七百八十七億ほどございます。これは対前年度と比較いたしますと、丸い数字で約四十五億円、二・六%の増ということでございます。この内訳は、御案内のとおり学生当たりの積算校費あるいは教官当たりの積算校費あるいは今お話に出ました教官研究旅費といったようなもの、それからまた個別のプロジェクトに対応した教育研究特別経費といったようなもので構成をされておりますけれども、学生当たり積算校費あるいは教官当たり積算校費につきましては、わずかではございますが単価改定を図って、かつ全体としてやはり新しい分野への規模拡大もやっておりますので、我々これを学年進行と申しておりますが、そういったものも含めまして、学生当たり積算校費で申し上げますと二・二%、教官当たり積算校費で申し上げますと二・九%の増額措置をしたところでございます。  全体として、そういった近年の厳しい対応の中で、国立大学における教育研究経費等が民間の研究所等に比べて立ちおくれてきているのではないかといったような点はかねてから関係者等からも指摘を受けているところでございます。私どもも、この事態を可能な限り改善するよう努力をしてまいらなきゃいけないというふうに思っておりますが、先般、私ども大学審議会からも、こういった面に着目して各大学の積極的な教育研究の展開というものをサポートする支援措置というものにとって適切な財政措置というものは非常に大事なことである、そこでこういったものの充実を図れという答申もいただいているところでございます。  今後、我々としてはいろいろな諸状況を勘案しながら、しかしやはり高等教育、特に大学院等を中心とした整備充実を図るというのが当面の大きな課題であるというふうに認識いたしておりますので、最大限の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  129. 種田誠

    ○種田誠君 研究費に関してもまた施設に関しても、文部省の皆さん方が最大限の努力をして大学の要請にこたえようとしているその姿勢や経過は私も十分に理解をしていきたいと思いますし、また、してきたつもりでありますけれども、その結果、現在例えば東大の工学部あたりでことしの博士試験に受験をして合格した方、私の伺ったところ百二十一人中実に四十三人が外国人留学生になってしまっている。率として三五・五%の方が外国人であるという、年々日本人が博士号を取る方が少なくなってきておる。  それはどういうところに原因があるかというと、やはり最近優秀な学生が博士課程になかなか進まなくなってしまったというようなことも聞いているわけでありますが、このことについて、関係者の方で調査などしてありましたらちょっと御説明願いたいと思うんです。
  130. 泊龍雄

    説明員(泊龍雄君) 今、先生からお尋ねのありました、東大の工学系研究科における博士の学位授与状況、国内とあるいは外国人留学生との対比ということでございます。最新の、この三月、平成二年度におきます学位の授与状況を申し上げますと、いわゆる大学院の博士課程を終了して博士号を取るという意味での課程博士を授与しておる者が総数で百六十四人でございます。うち、お尋ねの外国人留学生に対する学位授与が七十二名という状況でございます。そのほかに論文博士という、いわば大学院そのものに学んだわけではなくて、研究生としてあるいはそれぞれの職場等での研究業績に基づいて審査を受けて博士を授与する論文博士につきましては総数として百九十四名、うち外国人が七名、こういう状況でございます。
  131. 種田誠

    ○種田誠君 やはり昔は、まあ私も余り知りませんでしたけれども、末は博士か大臣かとか、こういうふうなことが子供の夢であった時代もあったし、ぜひ大臣の方も将来の夢になるような政治改革が行われてほしいと思いますし、やはり博士になるということが子供の夢であって、それがまさに実際教育制度の中でもフォローされていくようにしていってほしいと思うんです。  実は、こういう財政的にも施設的にもかなり厳しい中でもかなり努力をしている大学先生方もおると思うんですね。聞くところによると、東京大学の先端科学技術研究センターですか、先端技術研と言われておるようですけれども、そちらの方では自助努力をかなりしておるということですが、その辺のことについて、どういうふうな形でどういう努力をしてどういう効果を上げているか、御説明いただきたいと思います。
  132. 佐々木正峰

    説明員佐々木正峰君) 東京大学の先端科学技術研究センターでございますけれども、これは昭和六十二年に設置されたものでございまして、工学部と学内関係部局との相互協力のもとに先端科学技術及びその関連分野研究、教育を行うことを目的とした施設でございます。以来、このセンターは、研究組織を活性化する、そういう観点に立ちまして運営についていろいろな工夫を行っております。  例えば、研究の進展、社会的要請などに適切に対応できるように研究者のプロジェクト方式による研究を行うとか、外国人研究者あるいは民間企業等の研究者等も招いた共同研究を行うというふうなことも行っておりますし、また、それを支える研究者につきましても、大学の各部局や大学外の機関との交流などを積極的にやるということで、研究者の流動性を確保するなどの措置を講じているところでございます。また、大学内外の意見が適切に反映されるように、学識経験者による参与会を設けて広く社会の要請などにこたえるというふうな形での運営も行っておるわけでございます。  文部省といたしましては、このような大学みずからの運営の工夫によって活発な学際的な研究が行われるということは望ましいことである、研究組織活性化の一つの方策として注目していきたい、こういうふうに考えております。
  133. 種田誠

    ○種田誠君 まさに今おっしゃるように、大学みずからできる内部での改革を進めていくというのは極めて重要なことであると思います。しかし、実はそこにおる先生方から直接話を伺うところによると、一生懸命努力している、だけれども努力には限界がある。今までやってきたけれども、これから将来同じようにやっていけるかどうか自信がない。予算の面においても、もうこれ以上自分たちの個人でやる努力は限度なんだという、いわんや建物の新設などということは、研究施設の新設などは、これはできない問題だということで、そういう努力をしている先生方においてももう限度であるという声が実は存在しております。  そういう意味で、この大学、国立研究所、また私立大学における研究施設もそうだと思いますが、日本の科学技術とか、とりわけ基礎研究などは今大変な事態に陥っているという、冒頭申し上げたような事態だと思うんです。じゃ、一体どこからこういうふうなことになってしまったんだろうかということを私は顧みなきゃならないと思うんです。一つには、先ほど科学技術庁の方のお話にもありました、国家公務員の定員削減計画、来年五カ年計画の見直しがなされるということで、今その検討が進められている最中だということも伺っております。研究者不足、研究者へのより多くの道を開くためにも、この国家公務員定員削減計画に関して、これはもうこの時期において、新しい一つの施策として、除外例なり何らかの対応をとらないと、私が先ほど申し上げたように、待ったなしの状態に陥っているわけでありますから、大変な事態が将来発生してしまうと思われます。  そういう意味で、総務庁においてこの辺のことについてどのようなお考えを持っておられるか、総務庁長官の方で、もしくは関係者の方で、答弁をいただきたいと思います。
  134. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) 国家公務員の定員の管理につきましては御承知のとおりでございますけれども、できるだけ能率的で合理的な行政運営を行っていかなきゃならない、こういう観点からいたしましても、全体としての定数を抑制していく、こういう方針でやってまいっております。  ただ、そういう全体の中にありましても、行政需要というものは社会経済情勢の変化に応じまして常に変化をいたしておりますから、言葉が適当かどうか存じませんが、やっぱり社会の変化に応じて行政の衰退部門と申すのはどうかと思いますが、需要が比較的減退した部門、これを行政の需要の増大した部門の方へ振り向けていって、そして全体としては抑制しながらも時代の変化に定数の面でも即応したものにしていく、こういう方針で実はまいっておるわけでございまして、私は、この基本的な定数管理の手法というのは、来年度からの第八次と申しますか、そういう定員の管理計画の中でもこの手法そのものは私はやっぱりやっていかなきゃいかぬのじゃないかと、現実そう思っておるわけであります。  先ほど来お話しの研究部門につきまして、これは大変重要なものでございますから、私どももそれは理解をいたしておりまして、削減の部分、これも一律ではなくて重要な部分、まあ全部が重要なのでございましょうけれども、特に研究部門につきましては、同じ削減でもほかの部門とはまた違った配慮をして今日まできておるわけでございます。そういうやり方をしながら、関係各省の責任者と十分お話し合いをしながら、その年度年度の各省庁の定員を決めてきた、こういうことでございます。  実は昨日、私も直接国立研究機関の責任者の先生方から現在の国立研究機関における現状につきましてお話伺いました。私は率直に申し上げたんですけれども、本当に研究にいそしんでおられる先生方御自身が定員の問題だとか予算の問題などで陳情したり、あちこち歩かなきゃならぬということは、本当にこれは大変申しわけないことだ、私は率直に自分の気持ちを申し上げました。しかし、国全体としての定員管理の方針もあることも御理解願いたい、こういうふうに申し上げたのでございますけれども、いろいろ申し上げたそういう手法の中で、今後ともできるだけそういう部門については充実を図るように、関係省庁の責任者とお話し合いを十分いたしまして対応してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  135. 種田誠

    ○種田誠君 先ほど科学技術庁の方からの説明がありましたように、途中で研究計画を断念するとか縮小するとか、今まさに必要とされている超電導の材料研究部門での研究が劣ってしまっているとか、こういうことはもう総務庁においても十二分にわかっていることだと思います。このような事実の前提に立って、今までの結果がすべて悪いとは申しませんが、そういう今までの行政の進め方の中においてこのような結果が生まれてしまったということも事実だと思いますので、その辺をよく顧みられまして、第八次に関してはぜひともこの研究部門に関しての定員削減計画からの除外、人員増、こういうことをお願いしておきたいと思います。  先ほど来文部省の方にもいろいろ説明をしていただいたわけでありますが、この今日的な状況が生まれてしまっているのが、私はシーリングによる予算の一律抑制政策にあったのではないだろうかなとも思うわけであります。そういう意味で、このシーリングにおける予算の一律抑制の弊害が余り長い間続いてしまったために今日これがあらわれている、このように考えるとすれば、やはりこれらのもろもろの事実を前提にして、大蔵省においてもこの辺のところを来年度予算を考える上では十二分に御検討を願いたいと思うんですが、大蔵省の方、おりますでしょうか。
  136. 設楽岩久

    説明員(設楽岩久君) 概算要求基準は各省庁の要求の総枠を示したものでございまして、各省庁はその枠の中で施策の緊要性を考慮して優先度の選択を行いまして、効果的な要求を行っているところでございます。  また、各年度の予算編成においては、社会経済情勢等を踏まえ、財源の重点的、効率的な配分に努めてきたところでございます。  また、この概算要求基準のあり方につきましては、昨年三月の財政制度審議会報告におきまして、「時代の要請に応じて効率性の高い歳出構造としていく努力が引き続き必要であり、そのためには、今後とも概算要求基準の設定により、概算要求段階から制度改革、歳出の節減・合理化を進めるべきである。」との御指摘をいただいておるところでございます。  また、我が国の財政は平成三年度末で百六十八兆という公債残高を抱えておりまして、また国債費が歳出予算の二割を超えるというような、依然として極めて厳しい状況にあるわけでございます。引き続き、歳出を中心として財政全般を見直していく必要があるのではないかと考えております。  また、平成四年度予算で具体的に概算要求基準をどのように設けるかにつきましては、財政制度審議会の報告を踏まえつつ、依然として厳しい財政事情を勘案して今後慎重に検討していく課題であると考えております。  いずれにいたしましても、今後の予算編成に当たっても引き続き既存の制度、施策について見直しを行うなど財政改革を推進しつつ、真に必要な財政需要には財源の重点的、効率的な配分に努めてまいりたい所存でございます。
  137. 種田誠

    ○種田誠君 全般の御説明はよくわかりました。財政事情が厳しいということは私もわかっておるんですけれども、そういう中でも、先ほど来文部省の方や科学技術庁の方やそれぞれの方々から御答弁があったように、大学研究者の機関が今大変な事態に陥っておるということをぜひとも文部省においても考慮してもらいたい。  とりわけ、実は日本の高等教育、大学教育や研究機関に対する公費負担というのは先進国から比べると極めて少ない額になっておるという、GNP比で言うと日本は〇・七%ぐらいであって、諸外国は平均でも先進国は一・二%ぐらいになっておるという、多いところでは一・七%にもなっておるという、こういう事態にもあるわけでありますから、ぜひとも大蔵省におきましても、先ほど来の全般の答弁の趣旨はよくわかっておりますが、わかった上で、大蔵大臣の方にもよろしくお伝え願って、最大限のごしんしゃくをお願いしたいと思います。  時間がなくなってまいりましたので、この問題についてはこれ以上質疑はできませんで、答弁の準備をされた方がおりましたら申しわけありません。  二十一世紀まであとわずかであります。これからこそ科学技術や新たな基礎研究などがさらに推し進められなきゃならない時代に入っていくことだろうと思いますので、この点について、官房長官において今どのようにお考えを持っておられるか、一言述べていただきたいと思います。
  138. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) ただいま総務庁長官からもお答えを申し上げましたところでありまするが、やはり財政の節減合理化はそれは大切なことは言うまでもありませんけれども、しかしスクラップ・アンド・ビルドをするにしても、時代の真の要請にこたえた、そこで選択的な、やはり効率を伸ばすべきところは伸ばしていかなきゃならぬという気持ちは多くございます。ただいま委員の言われたような研究費の問題などはまさにその適例であろうと思います。  予算編成に当たりましては、そういうふうにして、やはり新しい時代に対応して何にウエートを置くかということは、これは単なる行政の問題だけでは解決できませんので、政治判断が必要であろうと思いますが、御趣旨については私も理解できるものと思い、努力をいたしたいと思います。
  139. 種田誠

    ○種田誠君 ぜひお願いしたいと思います。  最後質問ですが、冒頭私が申し上げましたように、アジアの選挙の民主化などのために駆けずり回ったわけでありますけれども、そこで私が知り得た重要なことがありますので、このことについて外務省の方などの報告を受けたり、官房長官のお考えなどを伺いたいと思います。  バングラデシュでの選挙監視、ネパールでの選挙監視、いずれもそこの地域に入ったところ、アメリカのNDIという第三セクター的なというかNGOというか、一つの大きな民間団体があるわけでありますが、ここが、金額はばらばらでありますが、政府からある程度の基金としての拠出金を出していただき、労働組合や大企業からも寄附をいただき、一般の皆さんからも寄附をいただいて、世界の民主化のために活躍をしているという、こういうふうな機関があることがわかったわけであります。  その辺のことについてまず外務省の方で、ちょっと時間がないので簡単で結構ですから、アメリカのこのような組織がどういうふうになっておるのか、御説明いただければと思います。
  140. 田中信明

    説明員(田中信明君) ただいまの御質問につきましてでございますけれども、米国には全米民主主義研究所であるとか、全米共和制研究所であるとか、あるいは国際選挙制度基金とか、そういった民間団体がございまして、世界の民主化の支援のためにいろんな活動を行っていると承知しております。  団体によりましていろいろな収入源がございます。ただいま委員御指摘の、政府からというお話がありましたが、基本的には、議会が予算を割り当てまして、議会から直接的に例えば全米民主主義研究所であるとか全米共和制研究所であるとかそういうところはお金をいただいているようです。それに加えまして民間からも、例えば十万ドルだとか五十万ドルだとか、そのくらいのオーダーでもらっているようです。米政府の方は、特定の活動、例えば選挙監視団だとかそういうものに要する経費について、言ってみればNGOと申しますが、そういうような団体の活動に支援をしております。  これらの諸団体の活動の幅は非常に広域にわたっておりまして、中南米、東欧、アジア、アフリカ、いろんな国に及んでおります。ただいま委員御指摘のアジアでは、バングラデシュとかパキスタン、フィリピン、韓国、台湾その他いろいろなところで活動を行っている模様でございます。
  141. 種田誠

    ○種田誠君 今日、国際協力の一環としてPKOなどの問題がクローズアップされているわけでありますが、私は、そのことも重要でありますけれども、もっと大切なことは、より多くの国民が国際貢献に参加できる、そういうふうな機会と組織をつくり上げていくことも極めて重要だろうと思うんです。そういう意味で、今申し上げましたアメリカの制度などは極めて有意義なものと思われるわけであります。  官房長官におきまして、今後の日本の国際貢献のあり方としてのこのような新たな組織を政府の方でも真剣に考えて検討していくとか、そういうふうなお考えがありましたら、また、そういうことに関しての官房長官のお考えを伺って私の質問を終わりにしたいと思います。
  142. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 今おっしゃったのはアメリカのNGOのお話ですが、アメリカは民主化運動とかそういう意味で国際貢献をされるというNGO団体が数多くあるようであります。しかし、NGOというのはこれは政府から言われたわけじゃないので、みずからが自分の目的に従って政府から独立してやろうという、そういう団体であります。しかし、その仕事が非常に国際貢献にも役立つし結構なことだということで、今言われたように議会や政府からも支援が出ておるものもあるようでありますけれども、まだ日本の方では、余りそういうのは聞いておりません。  しかし、そういうふうな、これは結構だなと思われるようなことがあったら、政府としても検討していきます。
  143. 種田誠

    ○種田誠君 どうもありがとうございました。
  144. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 まず、国際文化交流についてお尋ねをいたします。  先日、国際文化交流に関する行政監察結果を総務庁がまとめておられます。この概要について御説明ください。
  145. 鈴木昭雄

    説明員鈴木昭雄君) 御指摘のとおり、先日、五月二十七日でございますが、国際文化交流に関する行政監察の結果を発表いたしました。この考え方は、国際文化交流の効果的、効率的な実施を図るという観点から勧告いたしたものでございます。  その具体的な中身でございますが、非常に多岐にわたりますが、大きく言いまして二つ問題がございます。一つは実施体制の問題であり、一つは事業の効果的、効率的実施に関するものでございます。  実施体制につきましては、例えば在外公館と国際交流基金の海外事務所に分かれている文化交流の業務を原則基金へ一本化するなど海外におきます実施体制の見直し、あるいは基金内部組織の再編、あるいは関係機関の連携体制の確立、これらを言っております。  また、事業の効果的、効率的実施に関するものといたしましては、例えば各省庁で行われております日本語普及とか日本研究助成等につきまして事業の重複の見られる場合の一本化とか、あるいは関係機関の連携の強化、あるいは事業評価の徹底による効果の確保、また人的交流事業につきましてもフォローアップ、あるいはアフターケアの徹底による効果確保等々を指摘しているところでございます。
  146. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 私も、この行政監察結果、それからそれに基づく勧告、ざっとでございますけれども、一読をさせていただきました。私の目をぱっと引いたのが、海外における日本文化紹介の体制の見直しをする必要があるのではないかと指摘をしておられる点なのであります。  なぜかといいますと、私にこんな体験があるんです。昭和四十三年から四十五年ぐらいにかけてアメリカにおりました。最後はロサンゼルスにいたんです。学校の先生方の夏休みの研修か何かでありましたけれども、講師といえば少し言い過ぎで、助言者ぐらいのところで呼ばれて行ったことがあるんです。そのときに、本当に愕然としたんです。  何に愕然としたかといいますと、アメリカのカリフォルニアといいますと、当時、ちょっと不確かでありますけれども、日本人と日系人合わせて七万人ぐらいはいると言われておりました。ですから、日本を非常によく知ってくれておると思っておったんですが、そのカリフォルニアで、小学校の四年生か五年生かに日本について教えておりました。その教えておられる先生方の日本に対する知識について、愕然としたことがあるわけであります。  教科書ではなかったと思いますけれども、サブリーダーみたいなものを読ませていただくと、こんなことが書いてあるんですね。私が覚えておる範囲で言いますと、まず、日本は非常に国土が狭い。狭いからペットを飼うスペースもなかなかありません。だから日本人はキリギリスやコオロギをペットとして飼うんですとか、それから覚えておりますのは、日本人のミスとミセスを区別するのは帯の結び方でわかります。四角に帯を結んでおるとミセスで、チョウチョウの形に帯を結んでおるとミスでありますとか、私も考え込んでしまったのは、当時の話ですけれども、日本人はハッピーコートと呼ばれる会社のマーク入りのコートを着て出勤をすると。このハッピーコートがよくわからなかったんですが、一生懸命考えたあげくに、これがはっぴであることがわかったんですが、とにかくそんなものであった。そういうのに愕然としたという体験を持っておるものですから、そこにぱっと目が行ったわけであります。  そこで、この勧告の中で、まず、日本の文化を紹介するに当たって海外におけるニーズの把握が必要だと指摘しておられ、それはそのとおりだと思うんですが、それ以前に、日本の文化がどんなふうに紹介されておるか、その現状を把握するといいますか、そんなこともしてみる必要があるのではないかなと思うものですから、そんな感じはお持ちでありませんかということをお尋ねしてみたいわけでございます。
  147. 鈴木昭雄

    説明員鈴木昭雄君) 私ども行政監察は、あくまでも行政機関等に対する監察でございますので、今御指摘のような海外の事情全般について調査したものではございませんが、確かに在外公館なり基金の海外事務所等の体制、あるいは事業のあり方等につきましては、まだまだいろいろニーズの把握等を含めまして考えなきゃならぬところはあるんじゃないかなという認識は持っております。
  148. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 お立場上そうなんだと思います。  もう少し言わせていただきますと、そのころ私は盛んに外国をほっつき歩いておりまして、いわば放浪しておりまして、日本に五年間全く帰ってこなかったこともあるものですから、大体そのころの外国の人たちが日本をどんなふうに思っているかというのはよく知っておる一人だと思うんです。そんな中で、やっぱりいつも思っておりましたことは、日本が一方で先進工業国家であるという認識、そのことも知っている。だけれども、それとまた一方で俗に言うフジヤマ、ゲイシャのイメージとが実に矛盾なく一致して日本のイメージになっておるわけでありまして、しかし人間なんというのはいいかげんなものだから、それもそんなものかなと思います。  余計な例えになるかもしれませんけれども、例えば私が選挙に立つと、一方からもうあいつは破産しそうだという話と、もうすぐ豪邸を建てるんだという話が実にまさしく矛盾なくうわさで伝わるという、そんなところがあるわけでありますから、日本に対する外国人の認識というのもそんなところがあるのはやむを得ないなと思うんです。だからこそ、日本の文化を伝えるということは、これでもかこれでもかというぐらいに、そして当然知っているだろうと思うようなことまで、やっぱり丁寧に伝わるように努力する必要があるのではないかといつも思っておるものですから、こんなことをあえて言わせていただいておるわけであります。  そこで、意地悪くお尋ねするつもりもないんですが、さらにちょっと聞かせていただきたいと思うのは、この勧告というか要旨の中で、例えば日本文化を紹介する図書とかそんなものが大変不足しておるということを指摘しておられて、例えばパリではというふうにして、イギリスは日本の十・四倍持っています、ドイツは日本の八・一倍持っていますというようなことを指摘しておられます。だからこうしたものの整備拡充をしなきゃいけません、こういう勧告をしておられるわけであります。ごもっともだと思うんです。  ただ別なところで、同じパリでの比較なんですが、こうしたことに従事しておる職員数の比較で、パリには日本人は十三人しかいません。ところが、イギリスになると六倍の七十五人います。ドイツは十三倍の百七十二人いますというふうに指摘をされて、それで勧告としては、だからこうしたものに携わっておる機関を一本化することを勧告しておられるわけです。  ですけれども、足してしょせんこのぐらいであれば、やっぱり強化することを勧告なさるべきではなかったのかなと思うんですが、その辺はいかがでございましょうか。
  149. 鈴木昭雄

    説明員鈴木昭雄君) 確かに、御指摘のようなデータを私どもの監察結果の報告書に記載いたしております。  そこで、体制の問題につきましては、先生今御指摘ございました日本の文化紹介事業を含めました文化交流関係業務を基金の方へできるだけ一本化していく、日本文化センターという形で一本化していくということのほかに、要員に関する問題につきましては、在外公館における文化担当官の育成とかあるいは適正配置の問題、あるいは基金の海外事務所における要員強化を図るという意味で、現地職員の活用、特にいわゆる高級クラークというような形での活用、あるいは各省庁専門家あるいは地方公共団体等の職員を受け入れる、このようなことを言っております。  なお、増員の問題についてはストレートには申しておりませんが、政府全体といたしまして、厳しい定員削減、純減を行っているという事情は先ほど来お話が出ておりましたが、その中で、文化交流の問題を含めまして外務省の増員はかなり純増という形である程度の増員が図られている、こんなような事情も私ども理解しておりますし、また今後とも関係省庁の御努力で、そのような御努力は続けられていくんじゃないかというような認識を持ちまして、ストレートに増員の問題については申しておりませんでした。
  150. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 よろしくお願い申し上げて、この件の質問は終わりにさせていただきたいと思います。  それで、関連して青少年の国際交流について、やっぱりこの中でも述べておられますし、お尋ねをしてみたいと思うんです。  まず、この青少年の国際交流という事案が始まったときと今日では、大いに時代が変わったなと思います。この事業が始まったときのそもそもの趣旨というのは、察しますに、そのころはなかなか日本人だれでも海外には行けなかった、だから若い人たちに海外の体験をさせてやろう、そして将来の日本のリーダーとして活躍してもらおう、そんなことがねらいとするところではなかったかなと察するのでありますが、もはや今日そういう時代ではなくなったと思うわけであります。  そういう、時代が変化して、青少年の国際交流というものをどういうふうに考えておられるのか、事業の内容をどうしようとしておられるのか、お尋ねをしてみたいわけであります。
  151. 杉浦力

    説明員(杉浦力君) 私どもが行っております国際交流につきましては、現在、先生がおっしゃったような格好で昭和三十四年に青年の海外派遣を始めたというところから始まったわけでありますが、そのときの大きなねらいは、先生がおっしゃったように、国際理解を促進するとか、あるいは国際協力の精神を涵養するとか、あるいは国際的な広い視野を持った青年をつくるというような格好で始まったわけでありますが、その後、先生おっしゃるように、日本の国際的な地位というものが大きくなっておりまして、現在は、日本の青年たちが自由に海外に相当出ているわけであります。現在、約一千万を超す日本人が外国旅行をしておるわけでありますが、そのうちの相当部分が青年であるということを考えますと、派遣をするということ、これには意義があるんですが、それだけでは非常にバランスを欠くということから、外国の青年を日本に呼びまして、そして日本をよく見てもらい、そして日本の青年たちと意見を闘わせていただくという事業にだんだん変えていく必要があるということでございまして、外国の青年を初めて日本に私どもが呼びましたのは約三十年前、昭和三十七年でございます。それ以後、徐々に外国の青年の数をふやしまして、現状におきましては日本の青年が私どもの事業で年間約二百人外国に参ります。その反面、外国の青年はその約三倍、六百人ほどお招きしておるということで、考え方が少しずつ変わってまいった次第でございます。  今後ともそういう方向でやっていきたいと思っております。
  152. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 おっしゃるとおりだと思います。  そこで、具体的に二点だけお尋ねしてみたいと思うんですが、おっしゃるとおりに、国際交流といって行くことを考えた時代はもう済んだので、やっぱり招くことを考えなきゃいけない、そういう時代だと思います。そこで、招く対象国の範囲を広げなきゃいけないんじゃないかなと思いますが、まずこのことをどうお考えですかというのが一点。それからもう一点は、招いた青年たちに対するその後のフォローアップといいますか、そのことをどうお考えか。この二点お尋ねをいたします。
  153. 杉浦力

    説明員(杉浦力君) 二つの御質問のうち第一点の、今後招く国をふやしたらいかがかという御指摘でございますが、私どももそのとおりだと思っております。  先ほど申し上げましたのですが、現在年間約四十カ国の青年を招待いたしております。そのうち、東アジア、中国、大韓民国及び東南アジアのASEAN六カ国につきましては、毎年相互の交流あるいは継続的な東南アジア青年の船ということで固定いたしておりますが、そのほかの約三十カ国につきましては、飛行機でお呼びしたり、あるいは世界青年の船の中での交流を含めました事業をいたしておりますので呼んでおるわけでありますが、これにつきましては、それぞれの地域、例えば南西アジア地域あるいは中近東地域、アフリカ、ヨーロッパ、北米、中南米、オセアニア、こういったところのブロックから、なるべく新しい国あるいはバランスをとって呼んでおるつもりでございます。今後とも、国につきましてはできるだけ広げてまいりたいと思っております。  それから、もう一つつけ加えさせていただきますと、最近、東欧の改善と申しますか、開放化が進んでおりますものですから、私どもは一昨年から東欧の国の青年たちをも呼ぶことにいたしておりまして、既にハンガリーとかあるいはポーランドの青年を呼んでございますし、ことしはまたチェコスロバキアの青年も呼ぶつもりでおります。それが第一点でございます。  それから二つ目の点でございますが、そのフォローアップが大切だということは、私どもかねがねやっておるんですが、大変難しい事情がございます。  現在やっております中身を簡単に一つ申し上げますと、今までに呼びました青年が約六千五百人ほどございます。そのうち半分、三千人強が、先ほど申し上げました東南アジア青年の船でASEAN六カ国からおいでいただいている方々でございます。この事業につきましては、毎年日本を含めまして七カ国が相互に訪問いたしておりますので、日本へ参りました青年たちの団結力は大変強うございまして、各国ごとにOB会を組織しております。そして、そのOB会が日本を含めました七カ国のOBと連携をとりながらいろいろな情報交換なりをしておるということでございます。  私どもも、このOB会に対しましては情報を送ったり、あるいはまた既に乗った、既参加青年をもう一度招待をして、再度リフレッシュするとかいうような事業をさせていただいておりますが、そのほかの事業につきましては、国が継続していないとか、あるいは各国ごとの数が少ないとかいうことで、国ごとのOB会等の設置は現在のところなかなか難しい状況にございます。ただ、国の窓口になっておりますところは大変友好的に私どもと連携をとっていただいておりますので、国と国とのこの事業におきます関連につきましては大変良好になっております。  そのほか、参加されました青年たちとの連携を今後具体的にどうするか、また考えてまいりたいと思っておりますので、よろしく御指導賜りたいと思います。
  154. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 その後のことも、申し上げたいことやお尋ねしたいこともありますけれども、時間がなくなるといけませんから。せっかく日本に来てくれた青年たちが、日本にいい感じを持ってその後もずっといい感じを持ち続けてくれるような努力を私たちはしなきゃいけないんじゃないかなと思います。時に留学生などで、せっかく日本に留学してくれたのに、帰国すると反日運動の先頭に立つというような例もありますから、そんなことのないように今後よろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、北朝鮮をめぐる問題についてお尋ねをいたしたいと存じます。  北朝鮮が、ずっと反対をし続けてまいりました国連単独加盟の方向を打ち出しました。やっぱり何かが変わったなと思うわけでございますけれども政府は、北朝鮮の内政、外交の近況をどのように受けとめておられるのか、お尋ねをいたします。
  155. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 北朝鮮の情勢につきましては、我が国と北朝鮮との間で国交正常化交渉が緒についたばかりでございまして、いまだに外交関係もない状況でございます。また、北朝鮮が厳格な情報管理を行っているということで、その正確な把握には種々制約がございます。私自身も二回ほど北朝鮮に行っておるのでございますが、こういう直接行って見てくることのほかに、北朝鮮の各種の公式の発表を含むいろいろな公開情報の収集とか分析、それから北朝鮮と外交関係を有する第三国との情報意見交換等を通じて、従来から可能な限りの情報把握に努めているところでございます。  北朝鮮では、一昨年来のソ連・東欧の民主化、改革の動きを初めとする最近の国際情勢を相当厳しく受けとめておりまして、国内政治への波及を懸念して、思想引き締め等の対策を講じているように見受けられます。また、経済面でも引き続き困難な状況にあるものと推定されます。しかしながら、内政面では、今のところ基本的な変化があるかどうかということになりますと、例えば改革、開放への動きがあるとか、そういうような意味での基本的な変化は今のところ見られません。  一方、対外的な点でございますが、北朝鮮をめぐる客観情勢はこの数年来大変厳しいものがございまして、新たな国際情勢を踏まえた現実的な政策調整を図らざるを得ないという状況にございます。具体的に申しますと、昨年来行われておりますまさに我が国との関係改善の一連の動き、それから金日成主席がことしの新年の辞で対アジア外交重視の姿勢を打ち出したこと等、外交面では現実的な外交への兆しも見られます。なかんずく、今先生が御指摘になりました国連同時加盟の方針でございますが、この間北朝鮮が暫定的な措置とはしながらもこの方針を打ち出しました。我々は、これが朝鮮半島の現実を踏まえたものとして歓迎しているところでございます。  我が国といたしましては、このような北朝鮮の姿勢が北朝鮮の対外政策全般に広がっていくことを期待しつつ、今後ともその動向を見ていく所存でございます。
  156. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 そうした中でいよいよ日朝会談が始まったわけでございますが、改めまして朝鮮半島に対する政府の基本姿勢をお尋ねしたいと存じます。
  157. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 北朝鮮には、私も十年ほど前でしたか、漁業協定の調印で、国交がないものですから議員団が行って国のかわりに協定を結ぶ、日本の漁民が北朝鮮の沖合でお魚をとってもよろしいというそういう協定を結びに行ったことがあります。そのときも私は、お会いできた北朝鮮の幹部クラスの方々には、北朝鮮は世界のこの大きな流れから孤立しておると思う、だからこの北朝鮮の孤立化政策というものは、お国のためを考えてもまたアジアの平和を考えても、これは非常に心配なことだ、どうかひとつ開放政策をとってもらいたいと、歯に衣を着せず申し上げてきました。以来、そういう考えでございます。  これはもう御承知のとおり、韓国との間は、過去の歴史は歴史として深く認識をせにゃなりませんけれども、過去にとらわれないで、そして新しい未来を両国力を合わせて切り開いていこう、それがアジアの安定にもつながることであり、世界の安定にもつながることだということで、昨年五月、盧泰愚大統領が来日をいたしましたときに、新しい国と国との間、国民と国民との間であすに向かって協力しようという、そういうスタートを切ったわけであります。当時の盧泰愚大統領の国会演説はまことにすばらしいものであったと、私はそう思っております。  こういうふうに、南の方とは立派に新しい未来を開くためにスタートを切ったのですが、北の方とは国交はない、これはまことに残念である。二国間のみならず、やはり東アジアの平和と安定のためにも北側と国交を結んで、そして友好を推進していくことが大切である、そう思うて今日朝交渉をやっておるということでございます。これは本当に日本だけではなし、アジアだけではなし、韓国だけにとってではなし、中国だけにとってではないので、東アジア全体の平和と安定に資するものだ、私はそういう認識をいたしております。  ただ、現実に今交渉をやっておる最中でありますから、二国間問題もあれば多国間問題もありますから、これらの問題について粘り強く腰を据えて、友好が確立できまするように交渉をしていきたい、こういうふうに思っております。そのときにも韓国ともよく話をし合いながら、また北朝鮮との国交回復は歴史的意義があるということを向こうも御承知のように思われますので、粘り強く交渉をすることが大切だ、私はそう思っております。
  158. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 ぜひそうしていただきたいと思っております。  この日朝会談でありますけれども、国交問題の協議に入ります前に、やっぱり両国間の懸案事項についてはすべて洗い出す必要があると考えます。北朝鮮には北朝鮮の言い分があるでありましょうけれども、やっぱり我が方から言いますとどうしても避けて通れない問題がございます。  それは、先日石渡先生もお尋ねになった件でありますけれども、例の金賢姫の教育係であったとされる李恩恵という女性の身元が判明したという報道もあるわけでございますし、先日もそれに対する警察のお答えもございました。改めまして、先日もお答えいただいておりますので簡単に、その身元判明の経緯、そしてさらに、今後どういうふうに捜査をされるのか、対処されるのか、お尋ねをいたしますのでお答えを下さい。
  159. 漆間巌

    説明員(漆間巌君) お答えいたします。  いわゆる李恩恵と呼ばれる女性の身元調査につきましては、昭和六十三年二月から警察庁並びに全国の警察に調査班を設けて調査をしてきたわけでございますが、本年の三月になりまして、埼玉県警察の調査で李恩恵の特徴に酷似する女性が浮上いたしまして、これに基づきましてさらに調査を続けまして、一定の裏づけがとれましたので、本年の五月十五日に私以下警察庁係官が韓国に赴きまして金賢姫にこの女性の写真を示したところ、これが李恩恵であるという趣旨の供述を得ましたので、全体を総合いたしまして、この女性が李恩恵である可能性が極めて高いというふうに判断するに至ったものであります。  そこで、金賢姫自身は大韓航空機爆破事件の犯人でございますが、この金賢姫の供述によりますと、李恩恵は日本から船で引っ張られてきたというふうに語っておりまして、拉致された疑いが極めて強いというふうに判断されますので、本年の五月十六日に警視庁と埼玉県警に、それぞれ「ちとせ」拉致容疑事案捜査班を設置いたしまして、現在捜査を推進して真相を解明しているところであります。
  160. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 そうしますと、今のお話でも拉致された可能性が非常に高いというふうに言っておられるわけでございますが、それであればやっぱりきっちりと北朝鮮側に身柄の引き渡しを申し入れなきゃならないと思いますが、これについてはどうなさるお考えでありますか。
  161. 漆間巌

    説明員(漆間巌君) この件につきましては、既に外務省の方に通報しておりまして、今後具体的には外務省において判断されることになろうというふうに考えております。  警察といたしましては、外務省初め関係各省との協力を今後とも引き続き行っていきたいというふうに考えております。
  162. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 いろいろ報道されておるわけでありますけれども、そうした報道の中で、李恩恵と言われる女性が失踪したのが五十三年六月ごろということでありますけれども、その直後に日本海側で、それから実は私は鹿児島市池之上町というところに住んでおるんですが、鹿児島市池之上町の若い二人と、相次いで男女が行方不明になったり襲われたりするという事件が起こっております。  警察庁、これらの事件につき、捜査状況をお教えいただけますか。
  163. 漆間巌

    説明員(漆間巌君) 昭和五十三年には、七月七日に福井県で、それから七月三十一日に新潟県で、そして八月十二日に先生の地元であります鹿児島県で連続三件のアベック行方不明事件が発生しているわけでございますが、これらはいずれも家出あるいは自殺等の動機が全くありませんで、また沿岸部から突如消息不明になっているということでありまして、その後国内では手がかりが全くつかめないという現状であります。  また、同じ時期であります昭和五十三年の八月十五日に、富山県の沿岸部でアベックが四名の男たちに拉致されそうになった監禁致傷事件というのが起こっておりますが、この事件では、被害者は海岸で突然襲われまして、松林の中に引きずり込まれまして、猿ぐつわ、手錠等を用いて縛り上げられた上、寝袋のような布袋に押し込まれておりました。事件の内容から見て、これは強盗等の目的で行われたものとは考えられておりません。また、現場にゴム製猿ぐつわ、手錠、タオル等が遺留されておりまして、そのうちタオル一本が大阪府下で製造されたものであるということが判明しておりますが、その他のものはいずれも粗悪で、製造場所、販売ルートともに不明でございます。  これら一連の事件は、その状況あるいは手口等から拉致または拉致未遂事案と考えられておりまして、発生場所が沿岸部であることを考えますと、海外に拉致された、あるいは海外に拉致されそうになった事件であるということで、警察といたしましては、事態の重大性にかんがみまして公開手配するなどいたしまして、これまで鋭意捜査してきたわけでございますが、いずれも手がかりが少なくていまだに解明に至っておりません。  今回、拉致された疑いが強い李恩恵の身元が特定されたということに伴いまして、改めて捜査体制を強化いたしまして、真相を明らかにすべく関係の警察にそれぞれ対策班を設置いたしまして、これまでの情報の見直しや国民の皆様からの関連情報の提供をお願いしているというのが現状であります。
  164. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 今、いろんなことから海外へ拉致されたのではないかというふうに思うとおっしゃったわけでありますけれども、ちまたでは、いろんなことがあって、一連の事件として北朝鮮との関与をうわさするわけでございますけれども、警察はどのように見ておられるのでありますか。
  165. 漆間巌

    説明員(漆間巌君) まず、一連の事件はいずれも失踪場所、発生場所が海岸に近い場所でありまして、突然失踪し、先ほど申し上げましたように家出、自殺等の動機が全くないということがございます。  次に、その前年の昭和五十二年九月、石川県警察において検挙いたしました宇出津事件というのがございますが、この事件の北朝鮮工作員が北朝鮮から四十五歳から五十歳の日本人独身男性を北朝鮮に送り込めという指令を受けまして、東京の三鷹市役所に勤めていました警備員、これをだましまして石川県の宇出津海岸に連れ出しまして、ここから拉致して北朝鮮に送り出したと自供しております。  さらに、昭和六十年に韓国で検挙されました辛光洙事件というのがございますが、この事件で検挙されました北朝鮮工作員が、昭和五十五年に当時四十三歳の独身日本人男性を宮崎県の海岸から北朝鮮に送り出したということを自供しております。また、この工作員は、昭和五十三年に北朝鮮上部から、四十五歳から五十歳の独身日本人男性と二十歳代の未婚日本人女性を北朝鮮に連れてくるようにという指示を受けていたということを自供しております。  これらを総合的に判断しますと、一連のアベック行方不明事案は北朝鮮による拉致という疑いが強いというふうに考えております。
  166. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 そうしますと、ここにも新聞の切り抜きを持っているんですが、この李恩恵の失踪当時に佐渡沖に不審な船があったとか、それが工作母船ではなかったのかなとか、大きく見出しにあるわけでありますけれども、こうしたものというのは警察としてはつかんでおられるのでありますか。
  167. 漆間巌

    説明員(漆間巌君) 警察といたしましても沿岸関係で各種の情報を持っておりまして、その関係で北朝鮮の工作船と思われる不審船がいろいろな位置にいたという情報は持っております。ただ、この事件とそのほかの事件が関連があるかどうか、これは現在捜査中でございます。
  168. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 さらに、福井でも何か工作船が発見されたという報道もあるわけでございますが、これについてはいかがでありますか。
  169. 漆間巌

    説明員(漆間巌君) 昨年の十月二十八日でございますが、福井県下の海岸に漂着した北朝鮮工作船の小舟と、その直後に海岸で発見されました二体の男性水死体、これについて福井県警察では捜査をしてきたわけでございますが、これらの水死体は、漂着した北朝鮮工作船に乗り込んでいた工作員であるというふうに判断いたしまして、本年五月二十三日、入管法違反容疑で福井地方検察庁に送致いたしました。
  170. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 今お尋ねしてきたいろんな事件があるわけでございますが、そうした中で、先日も、鹿児島で行方不明になった方の御家族がインタビューに答えて、政府間交渉への大変大きな期待を表明しておられました。ある日突然肉親を、あえて連れ去られたと言いますけれども、そうした方々の御心痛はどんなものであっただろうかとお察しするわけでございます。また、李恩恵であると判明した女性の御家族も、肉親ではないかと思いつつ残されたお子さんのことやいろんなことを考えて名のり出られなかったといいますが、その心境の苦しさというのはそれこそ察して余りあるものがございます。  どうぞ、政府はこうしたことに対してまさに毅然とした態度で臨んでいただきたい、そのようにお願いをする次第であります。また同時に、最初官房長官が言われましたように、大切な隣国でありますから今後仲よくしていかなきゃならない。言わなきゃならぬこと、言いたいことはお互いに言い尽くして、そして本当に友好なる関係というのを結んでいただきたいとも思います。それがまた最も大切なことであると思うわけでございまして、お願いにいたしましたけれども、もし何かお答えいただくものがございましたらお答えいただきたいと存じます。
  171. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) この李恩恵の問題につきましては、ただいま警察庁の方からも報告がありましたように、日本から拉致されたという疑いは非常に強い、まことに日本国民全体にとっても非常に関心の高い、遺憾な問題であります。しかるがゆえに、日朝交渉の場におきましても、日本側からこの李恩恵についての正確な情報を北朝鮮側に要求しておるという段階であります。  今のところは、これに反発をいたしまして次回の会談は中断をしておるという状況でありますが、しかし日朝交渉そのものをやめるというようなことは北朝鮮側も言っておりません。今のお話のように、やはり言うべきことは言い、その中で友好を模索していくという日本の姿勢には変わりはありません。
  172. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 それでは次に、婦人問題企画推進本部のつくられました「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画(第一次改定)」についてお尋ねをいたします。  まず、この推進本部が設置されましたのは、国際婦人年、すなわち一九七五年、昭和五十年でありますけれども、その後ずっと活動を続けてきておられます。その活動についてざっとお述べいただけますか。
  173. 堀内光子

    説明員(堀内光子君) 先生指摘ございましたとおり、昭和五十年九月に内閣総理大臣本部長といたします婦人問題企画推進本部が設置されております。この企画推進本部は、婦人施策に関する国内行動計画をまとめておりますが、それを策定いたしまして、それに基づいて諸施策を推進するという活動をやっておる次第でございます。  具体的には、昭和五十二年に婦人施策に関します初めての国内行動計画を策定いたしました。その同じ年でございますが、婦人の政策決定参加を促進する特別要綱も策定いたしておりまして、こういったことに基づきまして諸施策を積極的に推進いたしてまいりました。昭和五十六年には、国内行動計画後期重点目標というのを策定いたしまして、この重点目標では、国連の女子差別撤廃条約の批准というものを最重点課題として進めてまいったわけでございます。その結果、昭和六十年には女子差別撤廃条約の批准をいたしましたのを初めといたしまして、男女雇用機会均等法の制定でございますとか民法、国籍法それから国民年金法の改正等、特に法律、制度面におきまして婦人の地位向上のための進展を見た次第でございます。  さらに、昭和六十年以降でございますが、昭和六十一年には国連の方でナイロビ将来戦略が策定されましたのを受けまして、婦人問題企画推進本部の設置の趣旨を発展させましてこの本部の構成省庁を全省庁に拡大して強化を図ったところでございます。  昭和六十二年には、来るべき二十一世紀に向けましての女性の地位向上を図るための長期展望に立ちまして婦人関係諸施策を推進すべく、男女共同参加型社会の形成を目指します「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」という第二回目の婦人施策に関します国内行動計画を策定いたしたところでございまして、自来、同計画に基づき婦人関係諸施策を積極的に推進してまいったところでございます。  このたび、先生質問ございましたとおり、五月三十日に、一九九〇年代前半の婦人施策の指針とも申すべきその指針の策定を中心といたします新国内行動計画の第一次改定を行ったところでございまして、この改定計画に基づきまして、今後男女共同参画型社会の形成を目指して積極的に婦人施策を推進しているところでございます。
  174. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 それでこのたびの改定になったわけでございますが、この行動計画の改定に当たっては、民間の御意見をいろいろお聞きになったと聞いております。その御意見はどんなものであったか、御説明ください。
  175. 堀内光子

    説明員(堀内光子君) 婦人に関します施策の企画とか推進に資するために、婦人問題に関してすぐれた識見を有します民間の方々に婦人問題企画推進本部長である内閣総理大臣意見の開陳をしていただく仕組みを設けております。今回、新国内行動計画の改定に当たりましても、この婦人問題企画推進有識者会議を開催しまして、女性の地位向上のために今後五カ年間に取り組むべき重点課題につきまして本部長から意見のお取りまとめをお願い申し上げたところでございます。  この婦人問題企画推進有識者会議からは、婦人施策につきまして大変幅広い分野にわたり貴重な御意見をいただいたところでございますが、その主要な御意見といたしましては、あらゆる分野での男女の共同参画の推進、それから国の審議会等での女性委員の割合を今後およそ五年間に一五%にすること、それから三点目は国際協力の中で開発と女性問題に取り組むこと、四点目は婦人問題企画推進本部の機能の充実を図るため委員会を設けて検討を行うこと、こういったことが有識者会議の方からいただいた御意見の主要なものというふうに承知いたしております。  政府といたしましては、この有意義な御意見を全面的に取り入れまして、今回新国内行動計画の第一次改定を行ったところでございます。
  176. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 改定の内容はほとんどそのものを取り入れたということでございますので内容まではお尋ねいたしませんけれども、お答えいただければというので一つだけ質問をさせてください。  このごろ、結婚後の女性の姓の問題はどうなるんだというのが盛んにこれに関連して言われておりますが、もしこの改定の中でそんなことについて触れておられるならばお答えください。
  177. 堀内光子

    説明員(堀内光子君) このたび改定いたしました新国内行動計画では、男女平等というものをさらに一層進めるということが改定の一つの主要な点となっているわけでございます。  それで、先生の御指摘の、夫婦の氏と申しますか、その点に関しましては、「地域社会及び家庭生活における男女共同参画の促進」という中で、今年五カ年間に「男女平等の見地から、夫婦の氏や待婚期間の在り方等を含めた婚姻及び離婚に関する法制の見直しを行う。」というふうに定められたところでございます。
  178. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 それでは、この問題の質問最後に、この推進本部の副本部長たる官房長官の御決意がありましたらお聞かせください。
  179. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 総理が本部長で私が副本部長でございます。責任を痛感いたしております。  しかし、私も数年前労働大臣をやりましたときに、最大の問題は男女均等法でありました。いささか問題点は心得ているつもりでございます。人間は男と女しかありませんのですから、これが協力するのは当たり前のことでありますが、やはり日本の今までの伝統というものはちと男性社会に偏ってきたということも、これもまた事実でありましょう。しかし、男女が協力して社会のためにあるいは家庭をつくるために共同で力を合わせて参画をするということは、これはもう私は当然のことであろうと思っております。  何かギリシャ神話にも、初めは男も女もなかったんだと、男女族というて手が四本、足が四本あって、顔が二つあった。余り力があり過ぎて暴れたから、神様に二つに割られた。これが再び一致協力してやるのが自然の姿であると、こういうことで、当たり前のことであろうと思うておりますが、一層力を入れてまいります。
  180. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 余り時間なくなったんですが、最後に厚生省にちょっとお尋ねをいたしたいと思います。本日は厚生省においでいただく日ではないんですけれども、これは最後官房長官にお願いをさせていただきたいと思うものですから、厚生省にお尋ねをいたします。  去る四月十八日にゴルバチョフ大統領が持参しました例のシベリア抑留者、そしてそのとき死亡なさった皆さんの名簿がございます。これをこのたび厚生省は翻訳をして公表されましたけれども、今後どのように取り扱われるのか、お尋ねをいたします。
  181. 村瀬松雄

    説明員(村瀬松雄君) お答えいたします。  厚生省は、先般四月十八日、ソ連政府から提供されました死亡者名簿すべての翻訳を終わりまして、五月二十七日に公表したところでございます。名簿は約三万八千名分ございまして、埋葬地ごとに氏名、生年、階級及び死亡年月日などが記載されておりました。今後は、これらの記載事項と当局の保管資料とを照合することによりまして、名簿記載の本人の特定を行いまして、特定された者につきましては都道府県を通じまして御遺族に対して名簿の記載内容をお知らせすることとしております。  なお、提供されました名簿には生年しか記録がございません。月日が書いてございません。また、出生地または本籍の記載もないものが大部分でございまして、また同姓同名の者もいるなどから、照合作業が大変困難でございました。でありますけれども、今後ソ連政府に対しまして、出生地など本人の特定に必要な事項の照会を行いまして、できる限り多くの死亡者の特定ができますよう努めてまいりたいと考えております。
  182. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 そうしますと、名簿の数、それと墓地の数なんかもそうなんですが、厚生省が予想しておられるといいますか、つかんでおられるといいますか、その数と今度来た数との関係というのはどうなりますか。
  183. 村瀬松雄

    説明員(村瀬松雄君) このたびのソ連政府から提供されました死亡者名簿は、既に申しましたように三万八千名でございました。それで、厚生省といたしましては、今までに生還された方からの情報を聞き取ったり、あるいは留守家族から出されました未帰還者届、こういうものを基礎にいたしまして、ソ連に抑留されておりました死亡者の数は約五万三千名と推計いたしております。それで私どもは、今回提供された数はすべてではない、こういうことで、今後もソ連政府に対しまして未提供の死亡者名簿の提供方を求めていく考えでございます。
  184. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 そのこともぜひよろしくお願いを申し上げます。  それと同時に、このたびそうしたことがわかったわけでございますから、遺骨収集だとか墓参だとか、こうしたものを速やかに行うべきでありますが、これについてどういうふうに取り組んでいかれるか、お尋ねいたします。
  185. 田島邦宏

    説明員(田島邦宏君) ソ連抑留中死亡者の遺骨収集や墓参につきましては、先般ゴルバチョフ大統領が四月十八日に来日されました際に、日ソ両国間で締結いたしました捕虜収容所に収容されていた者に関する日本国政府とソビエト社会主義共和国連邦政府との間の協定によって基本的な枠組みについては合意を見たところであります。しかしながら、この協定に基づいて遺骨収集や墓参を実際に実施するためには、その具体的な手順とか方法などにつきましてソ連政府とさらに詰める必要があろうかと思っております。このために私どもといたしましては、近くソ連邦政府とこういうことの詰めのための事前交渉を行いたい、こういうふうに考えておるところでございます。  いずれにいたしましても、ソ連邦で抑留中に死亡された方の遺骨収集や墓参という問題につきましては、ソ連邦政府という相手がございまして、その交渉の推移を見きわめながら進めていく必要等もございますけれども、遺族や抑留関係者の方方の高齢化が進んでいることでもありますし、私どもといたしましては、関係遺族の御心情というものを十分に考慮しながら早期に実施できるように努めてまいりたい、このように考えております。
  186. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 最後に、官房長官にお願いをさせていただきたいと存じます。  今のお話のとおりでありまして、もう遺族といいましてもみんな高齢化いたしております。墓参りに行けるというのももうそう長くはないわけでございます。また、遺骨収集に参りましても、私も何回も行っておりますけれども、戦後五十年が近づいておりますから、御遺骨はほとんど土に返っておるわけでありまして、拾おうとするとぽろっと崩れるというのが今日の御遺骨の状況であります。一日も早く済まさなければとても時間はないと思いますので、どうぞ政府としても全力を挙げてお取り組みいただきますようにお願い申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  187. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私は、最初に総理府に対して、政府広報事業に関してお伺いしたいと思います。今からお伺いする項目昭和六十三年度決算に関連してお伺いしますが、問題点は平成元年度も全く同様でございます。数字を二年分やりますとごちょごちょしますので、六十三年度に関してお伺いしたいと思います。  まず、前提として昭和六十三年度の政府広報歳出決算額を教えていただき、この決算額が総理府本府の全歳出中に占める割合についてお伺いしたいと思います。
  188. 樋口武文

    説明員(樋口武文君) 昭和六十三年度の総理本府の決算額は、三百二十九億五千九百万円でございまして、これに対しまして政府広報の決算額は百二十一億四千五百万円でございます。したがいまして、総理本府の決算額に対します政府広報の決算額の比率は三六・八%となっております。
  189. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 総理本府の決算額は、書類によると二百九十六億何がしというふうになっておると思いますが、三百幾らですか。間違いありませんか。
  190. 樋口武文

    説明員(樋口武文君) ただいま会計課の方で調べております。後ほど御答弁申し上げます。
  191. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 いずれにせよ、私が大蔵省からいただいた資料によって調べると、約四〇%が政府広報に関する歳出額だということになると思います。総理府の仕事の中の四割近い仕事をしているということで、この政府広報事業というのは総理府において非常に重要な業務だろうと思います。  この政府広報事業に関する質問の第一点は、昭和六十三年の総理府汚職事件の教訓がその後どのように生かされているのかということをお伺いしたいんです。総理府にとっては余り気分のいい話じゃないでしょうけれども昭和六十三年七月一日に、元総理府官房参事官橋本哲曙及び鈴木蕃という両名の方が、政府広報事業に関し業者から金品を受領し、あるいは接待を受けたということで起訴されました。  この汚職事件に関してマスコミ一般の指摘は、広報事業を実施するに当たって随意契約のところに非常に問題点があるということが一つと、担当者が長期間同じ仕事をしている、こういうところにあるというふうなことが指摘されております。  政府としては、六十三年六月三十日、石原官房副長官を長とする業務適正化委員会というものを設置して汚職事件の再発防止に努めるということになったわけですが、この業務適正化委員会が再発防止策として四項目を決定したということを言われております。この四項目項目だけをおっしやってください。
  192. 樋口武文

    説明員(樋口武文君) 御指摘の再発防止策の四項目でございますが、これは一つには政府広報取扱業者等審査委員会の設置でございます。二つには指導、監査等の充実、強化、三つには各界有識者の意見聴取等でございます。それから四点目には、人事管理の適正化でございます。  これにつきましての要点を申し上げますと、一点目の政府広報取扱業者等審査委員会の設置でございますが、これは政府広報取扱業者等審査委員会を設けますとともに、また政府広報取扱業者の適切な選定を行うということでございます。  また、二点目でございますが、これは指導、監査の充実、強化でございますけれども関係団体への指導、監査の計画的な実施、また政府広報契約事務処理体制の充実等でございます。  それから三点目の各界有識者の意見聴取等でございますが、政府広報の基本計画等についての各界有識者からの意見の聴取、外部の専門家による業務研修等の充実でございます。  四点目の人事管理の適正でございますが、規律保持のための研修の計画的実施、業者等との接触のある職員の配置がえの実施といった措置でございます。
  193. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 まず最初の、政府広報取扱業者等審査委員会を設けるということですが、この委員会は実際に設置されてどのくらい会合を開いて、どういうことを決めて、その後現在までの間にどういうふうな経過をたどったのでしょうか。
  194. 樋口武文

    説明員(樋口武文君) 政府広報取扱業者等審査委員会は、政府広報を取り扱う業者の適正な選挙等を図るために年数回開催されておりまして、新聞、雑誌等の各媒体別の年間取扱代理店の選定の基準ですとか具体的な選定などにつきまして審査を行っているところでございます。  なお、同委員会昭和六十三年七月に設けられまして以来、平成三年三月までに計九回開催されております。
  195. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 三番目の項目である有識者からの意見聴取というふうなことはどの程度やられたのでしょうか。
  196. 樋口武文

    説明員(樋口武文君) 汚職事件の発生以来、毎年度の政府広報の基本計画の策定に当たりましては、政府広報の適正かつ効果的な実施を図る観点から、学者、評論家、マスコミ関係者等の各界の有識者の方々にお集まりをいただきまして御意見を毎年伺っているところでございます。
  197. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私が何でこんなことをくどく伺うかというと、六十三年以降平成元年度も広報事業において金額も中身も方法もほとんど変化が見られない。二十年前と同じ番組を現在も同じようなスタイルで同じような内容でやっているというので、せっかくやった四項目の実施がほとんど現実の広報活動の中には生きていない、こう思うものだから申し上げるのですが、これはお互い水かけ論ですから、いずれにせよ現在も審査委員会にしろあるいは有識者の意見聴取等もやっておられるということですので、この後第二点目、第三点目の問題をお伺いしますから、そのような問題も今度は有識者に聞いてもらいたいと思います。  第二点目の問題は、政府広報事業の意義や役割についてであります。政府としては、政府広報事業というものの役割をどのようにお考えなのでしょうか。
  198. 樋口武文

    説明員(樋口武文君) 政府広報は、政府と国民の皆様との間の不断のコミュニケーションの確保と政府に対する国民の信頼の確立を目的とした活動でございまして、極めて重要な意義を持つものと考えている次第でございます。  政府広報は、各般にわたる政府の施策について、その背景、内容等につきましての情報を的確に国民にお伝えし、政府施策に関する国民の理解と協力を確保するという狭義の政府広報と、それからもう一つ、国政に関する国民の意見、要望等を的確に把握し、施策の樹立とその円滑な推進に資するという広聴活動から成っているわけでございますが、これらの意義、役割を十分踏まえた適切な広報活動実施に努めることが我々に課せられた課題であると認識している次第でございます。
  199. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今室長がおっしゃられたのはまことにそのとおりなんです。しかし、おっしゃられるとおりにやっているのかやっていないのかが問題なんです。  先ほどの収賄事件に関する平成元年三月十五日、東京地方裁判所で言い渡した判決理由中において、裁判所の政府広報事業に対する見解はこういうふうに書いてあります。「政府広報事業は、行政活動の実体を広く国民に公開し、その理解を求めるとともに、国民の声を行政施策に反映させるという民主行政の基幹を担う事業」であると、こういうふうに書いてある。ですから、今室長がおっしゃったように、政府の施策を国民に周知徹底し、理解していただいて国民の協力を求める、こういう側面はそれはそれでいいんです。  もう一つは、国民の声を行政施策に反映させる。そのためには国民の意見を、あるいは批判を受けとめるということの側面もあるわけです。今室長がおっしゃった、前の問題を広報活動と言い後ろの問題を広聴活動、これは公聴じゃなくて「広く聴く」という字を書いてやっているらしいんです。それは内閣官房内閣広報官室とそれから内閣総理大臣官房広報室で発行した業務要覧にも書いてある、二つありますよと。広報活動というのと広聴活動というのがあるというふうにこれに書いてあります。  それでお伺いしたいのは、広報活動に関する予算と広聴活動に関する予算と、どういう比率になっていますか。
  200. 樋口武文

    説明員(樋口武文君) 全体の私どもの予算額が百二十一億、先ほども答弁申し上げたような次第でございますが、そのうち広聴活動、まあ世論調査が中心でございます。そのほかにも若干はございますが、世論調査が三億二千五百万ということでございます。  それからなお、ちょっとつけ加えまして、先ほど先生から昭和六十三年度の総理本府の決算額、私が三百二十九億とお答えしたと思いますが、先生からこれは二百九十九億じゃないかと御指摘がございましたが、先生のお示しの額は昭和六十三年度の当初予算額だそうでございます。
  201. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 結局、今室長は政府広報事業というのは広報活動と広聴活動だとおっしゃるけれども、広報活動政府の施策の宣伝普及の方は百十八億円使っているんです。国民の意見を聞くという方は三億円使っているんです。パーセントにすると二・七%なんです。  そうすると、政府広報活動と広い意味でくくったこの百二十億、細かく言えば百二十一億ですけれども、この予算のうち、国民の声を聞こうという予算というか、そのための費用としては二・七%しか使っていない。そうすると、この二つの政府の仕事というものに対する重みというものを一〇〇対二・七と、そういうふうにお考えということになりますか、どうなんです。
  202. 樋口武文

    説明員(樋口武文君) やはり私どもからお知らせするということと、それから国民の皆さんからいろいろお聞きするということは性格が若干違いますので、必ずしも予算の金額ですべてをはかれるかどうかという点は疑問もあろうかと思います。  ただ、先生の御指摘の、国民の意見をできるだけ広く聞けという御趣旨は十分理解できますので、今後そうしたことについて心がけてまいりたいと考えております。
  203. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 官房長官、せっかくお見えですので、今私が申し上げたように、政府の方からこうだああだといういろんな普及活動の方は百二十億使って、国民の意見を聞くというのは三億しか使っていない。政府と言うけれども、実際にはいつも、そこにくっついているように政府・自民党ということなんです。そうすると、政府・自民党で百二十億。国民の意見は、しかもそれは批判的な意見じゃなくてこれ世論調査のためだけの金なんです。世論調査するためだけの金が三億なんです。国民の実際具体的な意見を聞くという予算は一つもない。  この辺について、今後国民の意見をもう少し聞くという意味での広聴活動、これについての大臣の所見はいかがでしょうか。
  204. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) あなたのおっしゃるのもなるほどと思って今聞いておりましたが、政府の方から国民の皆さんにお知らせをするという広報の方に圧倒的に予算のウエートが高い。それから聞く方がまことに少ない。なるほど数字を見れば私もそうかなとも思いますけれども、しかし、お聞きする方は、世論調査だけではなしにもうマスコミだとか雑誌だとかいろいろな刊行物が出ております。これはもう非常に傾聴に値するものが中には随分含まれておりますし、日本は大変言論は自由ですから、そういう声がうんと集まります。それから、世論の声を聞くその最も代表は国会でありますから、国会で皆さん方のおっしゃるようなことはよく承るということは、最大のこれは広聴になるのではないかと思いますが、あなたの御指摘もございますので、何かいい知恵があったらもっといいような広聴のシステムもひとつ考えてみたいなと思っております。
  205. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 時間がないから、広報事業に関する第三点日の問題をお伺いします。これは私にとっては非常に重要な問題だろうと思うんです。  テレビ番組の中で、制作委託番組というのがあるんです。これを広報室の方では制作委託番組と言っておりますけれども、町のマスコミ等では覆面番組だとか裏番組だとか言われている問題なんです。  どういうことかと申し上げますと、時間の関係で私の方で御説明申し上げれば、政府と企業が金を出し合って特別番組をつくってテレビで放映する。しかし、そのテレビの画面からは政府のセの字も出てこない。要するに、その企業だけがつくって企業がスポンサーで流しているような番組なんです。  昭和六十三年度におけるこのような、役所の言葉で言えば制作委託番組、もっとはっきりわかりやすく言えば覆面番組、この番組の制作本数と、それに対する支出額と、それから覆面じゃなくてちゃんと政府だよと言っている番組に対するこの制作委託番組の支出額の比率をおっしゃってください。
  206. 樋口武文

    説明員(樋口武文君) 今御指摘の制作委託番組でございますが、今先生もちょっと御説明をされておりましたが、要するに、普通の私どもの提供番組というのは、制作費もそれから電波料も払うわけでございます。大体制作費と電波料というのは一対三ぐらいの割合でございまして、電波料の方が多いわけでございます。ところが、制作委託番組の場合には、私どもが制作をいたします。あとはテレビ局の方がスポンサーを見つけまして放映される。したがって電波料は要らないという趣旨でございます。  しかし、例えば覚せい剤の問題をとりますと、私どもは覚せい剤の恐ろしさを国民の皆さんに知っていただくというためにテレビで放映するわけですが、必ずしも政府提供というのは出なくても、国民の皆様に覚せい剤の恐ろしさを知っていただければ、我々としては制作委託番組の趣旨、政府広報の趣旨は十分達せられると考えている次第でございます。  御質問の、昭和六十三年度の制作委託番組の数でございますが、二十本でございまして、これに対する総支出額は約八億四千七百万円でございます。これは総理府提供番組の支出額、いわゆる総理府提供というふうに表へ出るテレビ番組でございますね。これとの比較をしますと、約四一%が制作委託番組の比率でございます。
  207. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 細かい数字を申し上げるわけにはいきませんが、広報室からいただいた資料によって私が計算すれば、いわゆる総理府の名前の出ている番組、この特別番組が五件で一億七千四百八十一万、一本平均にすると三千五百万円です。よろしいですか。政府提供というふうな番組は特別番組、一時間番組が大体三千五百万なんです。委託番組は平均すると二千六百三十万になるんです。そうすると、政府の名前を出して三千五百万、委託番組は十六件を平均すると二千六百三十万なんです。この数字を何で申し上げているかというと、政府がつくって、政府が全部の費用を持って放映するものが一時間で約三千五百万円でできる。ところが、二千六百万金を出して影も形もない。要するに企業からもらう銭は、企業が負担する金額は八百六十六万程度なんです。これは平均です。具体的なことは私は知りませんが、今室長は四分の一はこっちが持って四分の三を企業が持つというようなことをおっしゃったけれども、そんな数字はおたくからいただいたこの資料からは出てこない。  私が言いたいのは、四分の一と四分の三なのか、あるいは私が申し上げるように逆に三千五百万と二千六百万なのか。これはいただいた資料の私の試算だけですから別ですが、いずれにせよ、四分の一であろうが四分の二であろうが国の銭を出しておきながら、なぜ国の名前を出さないで企業の名前だけの番組をつくるんですか。
  208. 樋口武文

    説明員(樋口武文君) 先生が御指摘になった数字は、恐らく特別番組のデータかと思いますが、例えば制作委託番組ですと、私どもとしては電波料の方はわからないわけでございます。局が一体幾ら民間企業から私どもが制作したテレビ番組について電波料をもらっているかというのはわからないわけですが、私どもが扱っている政府提供の直接番組と我々言いますが、これは私が先ほど御答弁申し上げたような比率でございます。要するに制作費一に対して電波料三というような比率、これは手元に今数字それぞれございます、というような比率でございます。  それから、今、政府の名前を出さないのはなぜか、好ましくないんじゃないかというお話ですが、先ほどちょっと覚せい剤をテーマに御説明いたしました。政府としては、国民の皆さんにできるだけ覚せい剤の恐ろしさを知ってほしいというような考えを持っているわけです。そこで、そういう番組を現にこれまでもつくって流しているわけですが、これに政府提供という名前が仮に出なくても、我々としては国民の皆様に覚せい剤の恐ろしさを知っていただいて、やっぱり使っちゃまずいという気持ちになっていただければ、それで十分行政の目的は達せられるんじゃないかというふうに理解しているわけでございます。
  209. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうだったら、全部覆面番組にしなさい。それじゃ、なぜ片っ方二十億は政府提供とやって十億は裏番組なんですか。こんなあなた、どっちでもいいんだったら、三十億を全部裏番組にしたらいいじゃないですか。なぜそれじゃ裏番組と表番組があるんですか。  しかも、官房長官もうじき退席しちゃうから私伺いますけれども、まあ官房長官に聞くわけじゃないんだけれども、これは企業に対する実質的な補助金と同じですよ。そうじゃありませんか。三千五百万の一回のテレビ放映のうち二千六百万、これは平均の数字ですよ、二千六百万を政府が出しておいて、一千万足らずを企業が出して、そして国民から見たら、はあ何とか会社はいいものを、まあいいか悪いか知りませんけれども、つくったと、こう見るじゃないですか。結局受け取る側の国民にしたら、まさに企業の番組じゃないですか。その三千五百万円のうち国が二千六百万円出して、一千万弱出した企業が三千五百万分のコマーシャルとしての国民に対する影響というものがあったら、国民の側から見たら、三千五百万円中政府が二千六百万円補助をしているのと同じだ。法律の規定に基づかない実質的な補助金と同じじゃないですか。どうですか。
  210. 樋口武文

    説明員(樋口武文君) まず、全部制作委託番組にしたらという話もございますが、先ほど御説明しましたように、制作委託番組というのはやはりスポンサーがついてくれなくちゃいけないわけですが、政府がいろいろ番組を考えるものについてすべてなかなか民間企業の方がスポンサーについていただけるというものではございません。したがって、おのずからそこには限界があるわけでございます。  ただ、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、我々が、先ほども覚せい剤の例をとって申し上げましたが、国民の皆さんに知っていただきたいことを知っていただければ、行政目的が達せられれば、それはそれで一つの広報のやり方、しかも安上がりでできる広報のやり方だというふうに理解しているわけであります。
  211. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 官房長官、もう時間で行かれなければなりませんが、こういうのは、私が今申し上げたように、企業に対する実質的な補助金だと思う。この辺の問題の今後の検討について、官房長官の御意見をお伺いしたい。
  212. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 私は余り詳しくはありませんけれども、今お二人の話を聞いておりまして、その感じだけを申し上げますと、それはやっぱり内容によるのではないでしょうか。だれが見てもこれはいいことだ、こう思う場合は、政府もそれは電波料を節約できて、税金をそれだけ節約できるわけですけれども、今聞いておりましたら、やっぱり麻薬の問題などは、これは政府が言おうとどなたが言おうと、悪いものは悪い。またいいものはいいで、これは国民の皆さんにおわかりいただけると思いまして、政府が企業に補助をしておるというよりも、いいことでしたら、企業が国民の皆さんにPRをして、そして喜んでいただける。これは物の考えようですからね。いいことは、これは政府の予算も節約できますし、だれが見ても、麻薬撲滅なんということを出せば、その企業も、悪いことじゃない、いいことをしている企業だなと、こう褒められるんじゃないでしょうかね。その点は、私も余り詳しいことはわかりませんけれども、どうぞよろしく。
  213. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 官房長官、結構でございます。  官房長官の今のお話を聞いたけれども、何が何だか、わかったようなわからぬような、煙に巻かれちゃったようだけれども、しかし国民はやっぱりこれはだまされたと思うと思いますよ。いい番組だと、花王石鹸はいいものをつくったなとか、ナショナル電器はいいのをつくったなと思って。ところが、そのうちの七割、八割が国の銭で出ているんだとしたら、これは国民にとったら、自分で銭出して、それで自分がつくったものを知らないで企業に感謝して、いいものをつくってくれたと。いいものをつくれば何でもいいというわけじゃないでしょう。この辺はもう根本的にまたこの次に聞きますから、考えておいてください。  総務庁の方にもちょっと伺わなきゃなりませんので、総理府の方は結構でございます。  総務庁には、まず情報公開制度の問題についてお伺いします。  総務庁において、昭和五十九年三月より六年半かけ四十六回の会合を持って、情報公開問題研究会というところが「中間的整理」という文書を平成二年九月十日に発表しました。この「中間的整理」をまとめるまでにどのくらいの出費があったんでしょうか。
  214. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 昭和五十九年三月から平成二年九月の「中間的整理」の公表まで、四十六回開催されております。それで、研究出席者に対します謝金、それから旅費等でございますが、千百七十万円支出いたしております。
  215. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ところが、それだけの金をかけて、六年半かけて出てきたこの「中間的整理」に対する各界の意見、批判は、集約するとどういうことになりますか。
  216. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 横浜国立大学の成田先生が座長になりまして、ほか六人の諸先生の御研究、そういうものを行政管理局の責任で取りまとめたものでございます。  これにつきまして、我が国の法令あるいは行政運営の実態等の関係で今後検討しなければならない課題、そういうものを整理したものでございます。そういう整理したことについての御評価というものもあります。それからまた、新聞の社説などでは、この報告書を読みまして、制度の弊害とかあるいはデメリットとか、そういうものを強調し過ぎているのではないかというような、そういう御批判もございますし、それからもともと情報公開制度の問題というのは、公務員の意識の改革、そこがやっぱりポイントであるというようないろいろな御批判、御意見がございました。
  217. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 あなたは今何か積極的評価をしたものがあるようにおっしゃるけれども、私はそういうものを見たことがない。ほとんどの評価が、今回の「中間的整理」は情報公開制度の弊害を強調するだけであって、その利点、効用には全く触れていない非常に後ろ向きのものだという評価の方が非常に多いと思います。それ以外に、立派だという評価があったらまた教えてください。  長官、今後、情報公開制度の確立あるいは情報公開法の制定についての見通しあるいは所見等お伺いしたいと思います。
  218. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) 行政情報を国民に公開して、いろいろなことをごらんいただいて御理解をいただくということは、これは行政の立場に立っても必要ですけれども、国民の皆さんにとりましても、私はこれは大変大事なことであろうと思います。そういうことで、我が方におきましても関係各省と連絡をとりまして、例えばこれまでも文書の閲覧制度、そういうものもやってまいりまして、ここ十数年間で閲覧に供する文書も三十七万件でございますか、十七倍ぐらいにふえた、あるいは閲覧いただいておる方々の数も十七倍ぐらいにふえてきておる、大変御利用いただいておるわけでございまして、こういうことで私どもはこれからも行政文書の公開、そういうものを進めていきたいと思っております。  ただ、今お話のございました、これを行政公開法としてつくるに当たりましては、今お話しの研究会からの御答申もございますけれども、中間的な御意見もございますけれども、クリアしなければならない問題が幾つかございます。その中には技術的なものもございましょうけれども、なかなか基本的な憲法にも触れるような問題等の御指摘もございますので、今そういうものを我が方でクリアすべく検討をいたしておるわけでありまして、なるべく早く結論を得て適切に対応してまいりたい、こう考えております。
  219. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ぜひ前向きに、「中間的整理」のように後ろ向きじゃなく、前向きに検討していただきたいと思います。  最後に、もう時間がありませんから一言だけ申し上げたいのは、総務庁に北方対策本部というところがあります。これは北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律という法律に基づいて、北方四島の返還及び北方地域元居住者の権利保全というふうなことについていろいろやっておられるところで、私も今回初めていろいろやっておられる中身等は伺ったんです。総理府の前に行くと、「北方の領土かえる日平和の日」なんというのがもう何年も前からかかっていますね。ただ、北方領土返還に関して、この北方領土と言われる四島における先住民たるアイヌ人の問題を射程に置いてこの施策を進めるということについてはどのようにお考えでしょうか。
  220. 池ノ内祐司

    説明員池ノ内祐司君) 北方領土問題につきましては、四島一括返還ということでございまして、これは我が国国民全体の問題であります。したがいまして、国民の悲願という場合には、これはアイヌの方々ももちろんでございますけれども、その他の方々を含めました全国民の問題であるというふうに考えております。  したがいまして、領土問題と、それからただいまお話がございましたアイヌ問題というものにつきましてはこれは別個の問題でございますので、やはりそれぞれの観点から検討されるべき問題であるというふうに考えております。
  221. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 最後に長官にお伺いします。  私はこの書面を実は知らなくて、総務庁からいただいた書面をもとにしてまた大臣にお伺いするというのは随分変な話で申しわけありませんが、一九九一年五月二十七日、千島・樺太アイヌ協議会から内閣総理大臣にあてて陳情書が出ております。この陳情書の書面をちょっと読ませていただくと、「日本政府がソ連政府と進めている四島を巡る交渉に「アイヌ民族の代表者を参加」させること」を要請する。「千島列島の一部、歯舞・色丹・国後・択捉を日本政府は「わが国固有の領土」と称し、今日なお先住者であるアイヌ民族を無視し、ソ連政府と領土交渉を進めていることに対し、当会として深い悲しみと心静かな怒りを感じる」というふうなことでの陳情というか請願というか、これが総理大臣あてに出ています。もちろん総務庁長官のところにも回ってきているだろうと思いますが、もう私の時間が一分過ぎちゃいましたので、一言だけ御意見を伺って終わりたいと思います。
  222. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) いわゆる北方領土にアイヌの皆さんがかつて住んでおられた、こういうことはいろんな文献その他からも指摘されておるわけであります。私もそれはそうだろう、こう思います。しかし、今、日ソ間の交渉では領土そのものを、四つの島そのものを早く返してもらおう、こういう交渉でありまして、総理大臣は、まさに今審議官が申しましたように、アイヌ民族のお考えも含めて、全国民を代表して交渉しておるわけでございますから、私は今のやり方で適当だろう、こう思います。  ただ、アイヌ問題についてはまた別個の問題がございましょう。これはこれとして処理されるべきものだ、このように考えております。
  223. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 終わります。
  224. 諫山博

    ○諫山博君 同和問題について質問します。  時間の関係上、まず政府委員の方に答弁していただいて、必要があれば私が長官に名指しでお願いするという運びにしたいと思います。  いわゆる同和対策事業は、同和対策事業特別措置法以来三つの法律とその延長によって二十二年間にわたって実施されました。現行の地域改善財特法は来年三月末をもって期限切れとなります。政府は、昨年十二月に発足した地域改善対策協議会において法後のあり方を検討していると聞いています。政府は、同和問題の今後のあり方について、どのような基本認識を持っておられるのかお聞きします。    〔委員長退席、理事会田長栄君着席〕  なお、その際、意見具申及び啓発推進指針との関連についても説明してください。
  225. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) ただいま御質問にありましたように、同和問題に関しましては、昭和四十四年以降、法のもとに事業を推進してまいった、こういうことでございます。そしてまた、おっしゃいますように、来年の三月末日をもちまして現行法が切れる、いわゆる通称地対財特法と申しておるわけでございますが、その後のことにつきまして、いわゆる地対協、地域改善対策協議会におきまして一般対策への円滑な移行という観点で御審議をお願いしているわけでございます。  そういうところでございまして、さらに私どもは、この地対協の意見具申というものが最近時では昭和五十九年と昭和六十一年に出ておりますけれども昭和六十一年の意見具申の線にのっとりまして現在の審議をお願いしている。また、私ども行政部門としましては、いわゆるハードの事業のほかに心の問題等がございます。この辺につきましては、国、地方公共団体一体となって、いわゆる啓発推進指針と申しますか、それによって事を運んでいるわけでございます。  この啓発推進指針につきましても、昭和五十九年の意見具申におきましてこれをつくるべきだと、こういう話がありまして、実際に昭和六十二年の三月にでき上がっておりますが、現在もその啓発推進指針というものを国及び地方公共団体のこの種の啓発に関する柱として認識しているところでございます。    〔理事会田長栄君退席、委員長着席〕
  226. 諫山博

    ○諫山博君 意見具申と啓発指針は国民の闘いと世論を反映していると思います。これまで行われてきた同和対策は、特定運動団体やそれと癒着した地方自治体によって大きくゆがめられています。この点を改めて、公正、民主、公開、国民合意の同和行政を目指す、私は今後のあり方はそういうものでなければならないと思います。  今同和地区の実態は大きく変化しています。一般地区との格差は相当程度是正されました。意見具申と啓発指針はこの基本的な認識を確立しています。心理的差別については特定運動団体の誤った運動によって新たな差別意識が生み出された、これが部落問題解決の障害になっている、このことも正しく指摘されています。この問題についての政府の現状認識はどうなのか、意見具申なり啓発指針当時と変わっているのかどうか、簡単に御説明ください。
  227. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、私どもの現在の地域改善対策に関する行政といいますのは、意見具申及び啓発推進指針、これを柱として実施しているところでございます。啓発推進指針につきましては、昭和五十九年の意見具申により提起された問題でございますが、その後学識経験者の方々等いろんな方方の専門的御意見を参考にしながら、昭和六十一年の意見具申をも踏まえまして啓発推進指針として総務庁で取りまとめたものでございます。  これにつきましては、取りまとめた後早速関係省及び地方公共団体、いわゆる都道府県や政令市でございますけれども、そういうところに送付して、十分参考にして今後の運びにしていただきたいと、こういう意図を流したところでございますし、現在もそのとおりやっております。
  228. 諫山博

    ○諫山博君 意見具申と啓発指針の基本的な立場は現在も維持されているというふうに理解いたします。  この中にはさまざまな問題が取り上げられていますけれども、次のような点についての政府の現在の認識はどうだろうかということを簡単にお伺いします。  第一、確認・糾弾行為の否定、第二、行政の主体性の確保と過度の優遇など不公正な行政の一掃、第三、利権腐敗などえせ同和行為の排除、第四、同和関係者の自立向上への努力の重要性、第五、言論による差別意識の克服と言論の自由の確保、第六、学校教育への外部の介入排除、第七、啓発活動は国民が主体である、こういうことが意見具申、啓発指針で打ち出されていますけれども、これらの問題についての現在の政府認識はいかがでしょうか。
  229. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、いわゆる地対協の意見具申及び啓発推進指針というものを柱として行政を進めているわけでございまして、その中に盛り込まれていることについては着実に成果を上げるよう努力しているところでございます。
  230. 諫山博

    ○諫山博君 今、意見具申なり啓発指針をもとに幾つかの政府の現状認識をお伺いしましたけれども、この点について長官の意見をお聞きしたいと思います。
  231. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) 私どもは、同和対策を進めるに当たりまして、これは二十数年の長い経過を経てきているわけでございますけれども、それぞれその時点における御専門の皆様方の御意見を踏まえて実施をしておるわけでございまして、現在は、先ほど来お話のございます意見具申に基づいて進めておる、またこれは進めてまいらなきゃならない、このように考えておる次第でございます。
  232. 諫山博

    ○諫山博君 同和対策に係る物的事業の進捗状況についてお聞きします。  一九八七年度以降の事業量は総額六千四百四十二億円分とされていました。一九九一年度予算が完全に執行されるとすれば六千四百六十三億円を使うことになる、こういう数字が明らかにされておりますけれども、この中身を各省ごとに御説明願えますか。
  233. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 物的事業に係る予算措置の面でございますけれども昭和六十二年度以降の事業量を現在の地対財特法を実施するに当たりまして見積もったときの額が六千四百四十二億円、こういうことでございました。昭和六十二年度から平成元年度までは実績、それから平成二年度、三年度につきましては予算額、こういう形で五年間の執行見込み事業量の額をはじき出しますと六千四百六十三億円、こういう数字になります。  これにつきまして省庁別に見ますと、建設省、昭和六十二年度以降事業量の額が四千十七億円、これに対しまして執行見込み事業量の額は三千八百九十二億円。それから厚生省、千四百三十二億円に対しまして事業見込み額は一千四百四十四億円。農林水産省、九百六十一億円に対しまして千九十五億円。文部省、十七億円に対しまして十四億円。自治省、十五億円に対しまして十八億円、こういうことになっております。
  234. 諫山博

    ○諫山博君 今後の同和行政のあり方について意見具申は、当時の地対法の漫然とした延長をとるべきでないとしています。さらに、「地域改善対策は、永続的に講じられるべき性格のものではなく、迅速な事業の実施によって、できる限り早期に目的の達成が図られ、可及的速やかに一般対策へ全面的に移行されるべき性格のものである」としています。こうした立場から現行の地域財特法は最終法として制定されたわけであります。  日本共産党は、政府のこの認識は今日的な意義を持っていると考えています。地対協での検討方向は、基本的にはこれらの方針の一層の具体化、その延長線上にあるべきだと思いますけれども、そうなっていましょうか。
  235. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 確かに昭和六十一年の地対協意見具申におきましては、「今後、法的措置を講ずるに当たっては、」ということで、「地域改善対策は、永続的に講じられるべき性格のものではなく、迅速な事業の実施によって、できる限り早期に目的の達成が図られ、可及的速やかに一般対策へ全面的に移行されるべき性格のものであることを明らかにするため、限時法とすべき」ということで提言をいただきました。これを受けまして、現在の法律が制定される段階におきましては、確かに最終の特別法ということで、国会におきましても全会一致で成立させていただいたところでございます。したがいまして、私ども国、地方公共団体一体となりまして、その精神を全うするために現在まで事業を進めているところでございますし、啓発を進めているところでございます。  確かに、来年の三月三十一日で失効するということになりまして、平成四年四月以降の方策につきましては、昭和六十一年の地対協の意見具申の基本的な認識に基づきまして現在審議を進めていただいているところであります。その地対協からの御意見をいただけば、私どもはまたそれを十分尊重しながら行政を進めていかなきゃいけない、このように認識しております。
  236. 諫山博

    ○諫山博君 ことしの二月六日付で政府は、都道府県知事などに対して「地域改善対策の実施及び適正化について」という通達を出しました。この通達の趣旨及び従来の政府方針との関係を、これも簡単に御説明ください。
  237. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) この通達でございますけれども、これ自身につきましては、平成元年の一月に地域改善対策の実施状況実態把握というものを地方公共団体を通してやっておりまして、そのまとめができたということが一つあったわけでございます。したがいまして、その把握の結果をまとめて、これに基づいて事業の見直しあるいは事業運営の適正化、こういうものを今後とも努めていただくように地方公共団体に対しまして関係省庁局長連名で通知いたしたものでございます。  そのような次第のものでございまして、一つ、それより以前に、現在の法律が執行されるとき、すなわち昭和六十二年の四月の時点におきまして、四月一日付で関係省庁の事務次官のやはり連名によりまして、今後の事業の適正化に努めるというようなことを都道府県等に通知いたしておりまして、それとのかかわりもあるということでございます。
  238. 諫山博

    ○諫山博君 多くの部落住民は、特別対策への依存をむしろ部落問題解決のための障害だととらえています。同和行政からの脱却、自立への要望を非常に強めております。政府の方針である一般対策への円滑な移行という方向は、基本的には妥当なものだと私たちは考えます。問題は、移行の条件を満たす状況をどこまで前進させたかであります。  日本共産党は、さきの一斉地方選挙政策の中で、法期限内における同和事業の基本的な完了、さらに一般行政へのスムーズな移行措置を保障することを求めました。同時に、必要な事業や対策の一方的な打ち切り策動は許せない、この立場も明らかにしました。また解同の無法な確認・糾弾や利権あさりを容認し、部落を法的に固定するような部落解放基本法の制定に反対をしました。これは今までの成果を覆し、部落問題解決に逆行するものだからであります。有力な部落解放運動団体である全解連も、法後の全解連の方針を決定して同様の立場を内外に明らかにしました。同時に、政府に対しても既にその立場から要望しているはずであります。  その特徴は、第一に、法後は特別な法律は要求しない、この立場を明確にした上で、第二に、法期限内における事業の完了、個人施策の是正、一般施策へのスムーズな移行を図ること、こういう内容であります。同時に、それを保障するものとして、一般行政水準の引き上げを求めている。つまり、必要な移行措置をとりながら同和行政からの脱却を図っていくというものであります。この内容は政府にも既に伝わっているはずですけれども総務庁としての見解をお聞かせください。
  239. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 幾つか内容があったわけでございますが、現在私たちが一番認識して努力をしているのは、まず、現在の法期限内、いわゆる三月三十一日までに予定した事業を速やかに完結できるようにいたしたい、こういうことでございます。それとのかかわりにおいてその後のいわゆる地域改善対策行政というものが考えられていくわけでございますけれども、そこにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、一般対策への円滑な移行、こういうことを目的としまして、どのように法なき後の行政をしいていくのかを検討していただいている地対協というものがございます。私どもはまたその検討の結果というものを十分尊重する、こういう建前で、現在心構えを植えております。そのようなところでございます。  さらに、法的問題につきましては、いわゆる地対財特法がなくなる、こういう認識のもとに、一般行政への円滑な移行という範疇の中で地対協の御審議をいただいているということでございますので、その状況により私どもは次のステップへ歩み出す、こういうことになろうかと思います。
  240. 諫山博

    ○諫山博君 今政府に求められているのは、意見具申や啓発指針が明確にした原則的な立場を堅持する、不公正、乱脈な同和行政や利権あさり、学校教育への介入を直ちにやめさせることであります。また、公正、民主、公開、国民合意の同和行政を確立して、同和事業の基本的完了を促進することであります。それとともに、奨学金や家賃問題など、生活に直結する限定された問題で、法以後においても特別な対応を必要とする関係住民がおられます。この人たちに対して、所得制限など資格基準を厳格にした上で、一般対策に移行できる条件を整備するための経過措置を、法のあるなしにかかわらず継続実施することであります。私は、このことを強く要望すると同時に、地対協においても右の立場を踏まえながら検討していただくことを総務庁に要望いたします。長官の御答弁をお願いします。
  241. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) 先ほども申し上げましたとおり、私どもは現在は、この意見具申それから啓発指針、そういるものに基づいて仕事を進めておるわけであります。  明年の四月以降のことにつきましては、地対協の御検討の結果をちょうだいいたしまして、それを尊重しまして実行してまいりたい、このように考えております。
  242. 諫山博

    ○諫山博君 次に、文部省に質問します。  法期限切れを前にしまして、私は、部落問題、同和行政がどういう現状に置かれているのかということを幾つかの地域で調査いたしました。さきに指摘しましたような公正、民主という観点から見て、ゆゆしい事態が残されているということに気づきました。この解決は緊急な課題です。実例を挙げて質問します。  広島県では、学校教育における地域進出が教師や父母の間で大問題になっています。正規の授業が終わった後で同和地区の児童生徒だけを対象にして教師が地域に出かけて特別の教育活動を行っています。教育の対象者は同和地区の児童生徒です。福山市を例にとると、対象者は約六百名、課外の授業を担当しているのは同和地区を抱えている小中学校の教師全員です。正規の授業が終了した後、教師が解放会館などに出かけていって同和地区の児童生徒だけに特別の課外授業を行います。  文部省に調査を求めていましたけれども、広島県において地域進出という名の課外授業がやられていることは間違いありませんか。
  243. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) お答えいたします。  広島県の教育委員会お話を伺ったわけでございますが、広島県の福山市における今委員御指摘になりましたいわゆる地域進出の問題でございますが、教職員一人一人が地域の差別の実態に深く学ぶということ……
  244. 諫山博

    ○諫山博君 いずれその問題は質問しますから。
  245. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) 地域進出ということで、人権学習でありますとか、そういった活動が行われているということは聞いております。
  246. 諫山博

    ○諫山博君 私は次々に質問しますから、聞いたことに答えてください。  福山市の昨年度の地域進出予算は一億七百万円です。五万九千回行われています。対象校が約五十。この数字を見ると、地域進出がいかに頻繁に行われているかがよくわかります。一人の教師が毎月数回の地域進出。福山市議会での我が党の世良議員の追及によりますと、一教師が一カ月二十九回も地域進出をしたという人がいることが指摘されています。先生方から見れば、家族は持っている、授業はしなければならない、大変な状況ですけれども、この地域進出が非常に広範に行われているということは御存じですか。そのことだけ答えてください。
  247. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) 何分にも先生からの調査の御依頼がございましたのは一昨日のことかと思います、それで広島県の教育委員会に問い合わせたわけでございますが、例えば人数はどれくらい行っているんだろうかと聞いてみたわけでございますが、広島県教育委員会においては、正確な人数を現時点において把握をしておらないようでございます。
  248. 諫山博

    ○諫山博君 今あなたが説明されかけた問題ですけれども、福山市の教育委員会で聞くと、地域進出は教師が自主的にやっているものだ、こういう言い方をします。これはしかし実態をごまかしているものです。地域進出は、教育委員会とか学校長の管理掌握のもとに行われております。  私は、その具体的な証拠として、福山市教育委員会が一昨年四月一日付で市内の小中高校の校長あてに出した地域進出についての通達文書を文部省にお渡ししました。その中に地域進出のやり方が詳細かつ具体的に書かれています。例えば地域進出は、学校教育計画に基づいて行う。解同の支部長、役員と連携して行う、こういう記載があります。これは市教育委員会の文書です。地域進出を実施する前も実施した後も、学校長に報告することが義務づけられています。特に実施した後は、進出記録簿に指導内容を記入して学校長に提出しなければなりません。さらに、学校はこれを教育委員会に報告する、こういうシステムがとられています。  そこで、私は二点について聞きます。一つは、こういう通達が福山市教育委員会から出されたことがあるかどうか。私が指摘したような内容が通達に書かれていたかいなかったか、この二点だけです。
  249. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) 福山市教育委員会から福山市の小学校長、中学校長、高等学校長あてに、「地域進出・家庭へのとりくみについて」と、今委員御指摘になったような文書が出されておるわけでございます。
  250. 諫山博

    ○諫山博君 教職員のいわゆる給特法というのがあります。それに基づく文部省の規定もつくられています。これは教職員に時間外勤務を命ずることができる場合を限定的に規定しているわけです。四つの場合が列挙されておりますけれども、この四つの場合に該当しない限り教職員に時間外労働を命じてはならないというのが給特法の解釈だと思いますけれども、これは間違いありませんか。
  251. 小野元之

    説明員(小野元之君) 委員御指摘の給特法、国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法でございますが、この法律の趣旨といたしまして、公立学校の場合四項目について時間外勤務を命ずる場合を限定しているわけでございます。
  252. 諫山博

    ○諫山博君 地域進出がこの四項目に該当するかどうかという問題で、広島県教育委員会が文書で回答を出しております。それによりますと、二つの内容がありますけれども、教職員に時間外勤務を命ずることができるのは、いわゆる歯どめ四項目に限定されている、これが第一。第二は、地域進出はこれに含まれない、こういう文書が広島県教育委員会管理部総務課長補佐の名前で出ておりますけれども、この内容は正しいと思いますが、いかがですか。
  253. 小野元之

    説明員(小野元之君) 私はその文書を承知しないわけでございますが、給特法の精神からいきまして、この四項目に該当しない場合にいわゆる職務命令でもって時間外勤務を命ずるということは一般的にはできないというふうに理解をいたしております。
  254. 諫山博

    ○諫山博君 そこで、労働省にお聞きします。労働時間及び時間外労働の一般論についてです。  時間外労働というのは所定労働時間以外に就業すること、これはもうわかり切ったことです。ただ、具体的に使用者が業務命令を出したかどうかに関係なく、使用者の管理掌握のもとで就労している以上は時間外労働として取り扱うというのが労働省の一貫した方針だと思います。  例を挙げますと、銀行の職員が銀行の中で働いている、勤務時間は終わったけれどもまだ金庫のかぎはあいたまま、たくさんの人が仕事をして事実上帰ろうにも帰りにくいというような状況の中で銀行員が計算事務をしている、こういう場合は、具体的に残業しなさいという命令が出ていなくても残業扱いすべきだというのが労働省の方針だと思いますが、どうですか。
  255. 鈴木直和

    説明員鈴木直和君) お答え申し上げます。  時間外労働につきましては、使用者から超過勤務の指示、命令、そういったものがあって法定時間を超えて勤務する場合に時間外労働になるものでございます。ただいま先生の方から御指摘がありましたようなケースにつきましては、具体的にその実態を見ないと判断が難しいという側面がございます。  例えば、使用者の指示した仕事が、客観的に見て正規の時間内には終えることができない、そういうことが認められるような場合のように、使用者の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合、そういった場合についてはこれは時間外労働になる、そういう性格のものでございます。
  256. 諫山博

    ○諫山博君 今、黙示の指示という言葉を使われましたけれども、これは明示的に残業命令が出ていなくても、黙っていても残業せざるを得ないような状況の中で残業をすれば、これは時間外労働ということになりますか。
  257. 鈴木直和

    説明員鈴木直和君) 今申し上げましたのは、使用者の命じた仕事が客観的に見て正規の勤務時間内にはどうしても終わらないということが明らかなような場合には、法定労働時間を超えて勤務した場合には時間外労働になる、そういうことでございます。
  258. 諫山博

    ○諫山博君 時間外労働は一切の強制をしてはならない、民間労働者であれば時間外労働を強制すれば処罰される、こういうことになりますか。
  259. 鈴木直和

    説明員鈴木直和君) 時間外労働につきましては、労働基準法で正規の労働時間を超えて労働させてはならない、そういう規定がございます。ただ、労使間で協定をしてそれに基づいて行う場合については、労働基準法三十六条で法定労働時間を超えて労働させることができる、そういう規定になっております。
  260. 諫山博

    ○諫山博君 今度は文部省です。  広島県で広範に行われている地域進出が、法律や条例で許された時間外労働に該当しない、これは広島県教委の文書を見ても明らかです。実際には二時間を単位にして千八百円の謝礼が行われております。つまり、これは法律の許さない時間外労働であるということを私はまず明らかにしなければならないと思います。県教委ぐるみで、市教委ぐるみで給特法に違反するような時間外労働が広範に押しつけられているというのが現状です。  そこで、結論的な話になりますけれども、基礎的な学力を向上するというのはすべての児童生徒、父母の共通の願いであります。同和地区の子供だけの問題ではありません。しかるに、なぜ同和地区の児童生徒だけを対象に地域進出がなされているのか。学校教育のあり方としてこれが正しいのか。これが、今教師の間でも父兄の間でも大問題になっています。生徒や父母の間からは、不公平だという声が上がっております。同和地区の子供と一般地区の子供をこのように区別して扱うのは、部落差別の解消に役立つどころかこれを顕在化するものだ、固定化するものだ、こういう批判の声も聞かれました。当然のことです。  福山民報という新聞には、私たち教師は、同和地区の子供であろうがなかろうが、分け隔てなく、学校でどの子にも確かな学力をつけていくべきですと、こういう教師の投書が載せられています。これが普通の教師の平均的な考え方だと思います。全協福山の機関紙「ほんりゅう」には、あの子たちは違うんだと特別視する結果を招かざるを得ない、部落差別をつくり出すようなものだ、こういう教師の声が載せられています。  同和教育の名でこういう誤ったやり方が行われる、これは意見具申の趣旨にも反するし、啓発推進指針の立場からも正しくないと思います。これは新しい部落差別を生み出しかねないからです。しかも、これが給特法や文部省令や県条例に違反している極めて重大な問題です。私は、文部省がこの実態調査して、是正すべき点はきっぱりと是正する、こういう措置をとっていただくことを要望いたします。  今の一連の質疑応答の中で長官はどうお考えになるのか、御答弁いただきたいと思います。
  261. 佐々木満

    国務大臣佐々木満君) 私は、御指摘のございました具体の事例は存じませんのでそれに対してコメントはできませんけれども、一般的に申しまして、あらゆる意味で差別のないようにやっていくべきものだ、このように考えております。
  262. 小野元之

    説明員(小野元之君) 委員先ほど御指摘の給特法の関係でございますが、教員が自主的に、自発的に時間外に自分の仕事を行うということは、法律の禁止しているところではございません。先ほど御答弁申し上げましたのは、職務命令でもって勤務時間外に四項目以外の仕事を命ずるということは法の精神に反するのではないかという趣旨でございますので、御理解を賜りたいと存じます。
  263. 諫山博

    ○諫山博君 最後に一言だけ。  今のは実態をごまかしているわけですよ。すべての教師が要求されているわけですよ。行かざるを得ないんですよ。そして、ちゃんと一単位について千八百円の金も払われているんですよ。この予算は福山市だけで一億円を超しているんですよ。これを自主的にというようなやり方で見逃すというのは、さっき労働省の説明にあった黙示的にも時間外労働をさせてはいけないという問題を全く無視している議論です。私はこれの正しい是正を要望して終わります。
  264. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 きょう私は、国家公務員の天下り人事と言われる民間企業への離職後の就職、あるいは特殊法人と呼ばれる政府と非常に関係の深い公団等に就職をするケースについてお尋ねをいたしたいと思います。  まず、私企業への新たな就職のケースについてお尋ねをいたします。  ことしもまた人事院からは「営利企業への就職の承認に関する年次報告書」が出されております。例年この報告書を概数的に見ますと、承認した件数もほぼ横ばいでありますし、この承認の前提には国家公務員法の百三条の規定に従って例外的に承認をされたケース、問題がないというケースということで私の方も読ませていただいておるわけでございますが、この平成二年度の承認案件全部で二百三十二件をざっと急いで目を通してみまして、率直なところ私はどうもよくわからないといいますか、あるいはこれはどうかな、そういう感想めいたところがありますので、この点を先に申し上げて、人事院の方でこの承認案件に対する見解をお伺いしたいと思います。  二百三十二件の承認案件、これは不承認になったのは載っておらないということですので、すべて承認になったものを見たわけでございますが、例えば顧問、嘱託、こういう名前で国家公務員が私企業についている場合には、もちろん離職前の役職とその私企業との直接的な契約関係等のつながりがなかったという御判断もした上ででしょうが、非役員であるからよろしかろう、こういうコメントがついているわけです。しかし、顧問、非役員だからいいというふうな、そういう考えが果たしてできるんだろうか。顧問の中にも全く名前だけの顧問もおりますが、私企業の中の顧問というのは極めて有力な影響力を行使する顧問もいるわけで、その点でまず第一に感想を持ったわけであります。  それからもう一つは、常務取締役、専務取締役あるいは副社長、中には代表取締役を兼ねると、こういういわば私企業の中枢的なところに入られる、つかれる、こういう場合には、単に在職中と新たに就職する企業との間に契約等の密接な関係がなければそれでいいのかという問題を少し感じました。これは、何といいますか、のぞき趣味というか、あるいはけなるい、我々の俗語ですか、そういうやっかみということではありませんが、例えば土木建築請負業のかなり大手のゼネコンに仮に建設省の役人の方が入った場合には、一般の国民から見ると、かなりどうかなと思うことがあるんではないか。そういう点についてどういうふうに判断をされているのか、差し支えのない範囲でお伺いをしたい。  それから第三番目は、平成二年度に特有の現象かもしれませんが、金融業界の方にかなり大蔵省の方が、専務、常務、取締役もしくは理事という形で入ってみえる。これは新聞には意地の悪い記事もありまして、全国の銀行の四分の一は天下り官僚が頭取をしている、こういう数字がはっきりしているんだというような記事もございまして、こういう場合にやはり、どういうふうに密接な関連性はないからという御判断をされたのか、お尋ねをしたい。  最後は、第四番目のケースとして、この二百三十二のケースを見ますと、一つの私企業に二人ないし三人の方が入ってみえる。これは何か事情があると思うんですが、例えば関西国際空港株式会社には、この平成二年度の年次報告で見ますと、三人の方が、役員は二人ですが、入ってみえる。あるいは伊藤萬という商社ですか、この会社にはやはり税関業務に当たられた方がお二人、これは役員ではないんですが、参与ということで入ってみえる。こういうふうに複数の方が役員に入るというのは、その点は、考えられたけれどもなお問題はないというふうに取り扱われたのかどうか。決して私はのぞき趣味でもやっかみ趣味でもありませんことを申し添えましてお尋ねをしたいと思います。
  265. 弥富啓之助

    説明員弥富啓之助君) お答えを申し上げます。  まず初めに、もう委員既に御承知のとおりでございますが、職員の営利企業への就職の制限、これを規定しております国公法の規定の趣旨というものは、職員が在職中の地位、権益を利用してその退職後に営利企業に就職しようとする弊害を防止して公務の公正な執行の確保という要請が一つこれはもちろんございます。他方、職業選択の自由と申しますか、勤労の権利と申しますか、基本的人権の尊重とのこれはまた調和を図っていかなければならないという趣旨であろうと思います。  この趣旨を我々人事院といたしましては十分に踏まえまして、百三条の三項にあります承認をいたす場合に、その審査に当たっては、これは個別的に具体的に一つ一つ、例えば今委員がおっしゃいましたように、単に役員の名前でそのままあれするというのではなくて、具体的に個別的に詳しく審査をいたしまして、例えば職員の離職前五年間に在職した官職とこれから就職しようとする営利企業との関係、つこうとする地位の職務内容等をいろいろと判断の基本として厳正に対処を行ってきているわけでございます。これは従来からそのとおり人事院もとっておりますし、これからもとっていかなければならない、かように考えておる次第でございます。  また、その省庁により、あるいはその就職している先によって数がいろいろとあるではないかという仰せもございます。これは人事院の方といたしましては、今申し上げましたように、営利企業への就職の審査に当たりましては、在職中の地位やその職権を利用して営利企業に就職しようとする弊害を防止する、職務の公正な執行の確保の要請ということと、今申しました基本的人権の確保と申しますか、それの趣旨に基づきまして、まずこれは所轄庁の長の申し出というのがございまして、これに対して人事院といたしましていろいろと今申し上げましたように個別的に具体的に審査をいたしまして厳正な審査を行っておるわけでございまして、その結果として、営利企業への就職の承認件数はその年により、あるいは省庁によりいろいろと増減することがあると思いますが、これは各省庁の所轄の長から申し出たものでございまして、その省庁のあるいは退職管理、年齢構成、民間の求人状況等の事情が反映した結果ではないかなと、そのように考えておる次第でございます。
  266. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 次に、特殊法人への再就職についてお尋ねをいたしたいと思います。  一番最近号の週刊誌にも非常にぎらぎらした記事が出たわけでありますが、「ギャンブル業界に天下った官僚たちの「役割」」とかいう題名で大変どぎついといいますか、週刊誌特有の記事がありました。あるいは新聞報道でも、特殊法人と呼ばれるところの役員の構成を調べてみると、その七割が天下り組である、そしてその三割は二カ所以上渡り鳥になっている。あるいは退職金が四年で平均千五百万円、最高は四千万円を超えるなんというふうな記事が新聞にも載っているわけでございますが、実は、この特殊法人について閣議決定が昭和五十二年、五十四年に出されて、いろいろいわば自粛といいますか、役員選考についてはなるべく広く民間からも求めて、余り誤解を招かないようにというような閣議決定がなされているわけでございます。  それで、現時点で、従来の特殊法人の役員の選考基準について閣議決定で確認をされた事項について、どのようにそれを達成と言うと語弊がありますが、現時点でどういう数字になっているか、お答えをいただきたいと思います。
  267. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) お答え申し上げます。  特殊法人への国家公務員の就職に関しましては、先生指摘のとおり、昭和五十二年十二月二十三日の閣議決定と五十四年十二月十八日の閣議了解におきまして一定の基準を設けまして、以後これに基づきまして運用をしているところでございます。  そこで、その際そこで定められました基準につきましての現在の状況でございますが、第一点は、国家公務員からの直接の就職者、就任者につきまして、あるいはこれに準ずる者、これを全体の半数以内にとどめるというのが一つの目標でございますが、それにつきましては、平成三年一月一日現在で特殊法人が九十二ございますが、常勤役員の現在員は七百七十五名でございます。そのうち、国家公務員出身者は三百八十四名でございまして四九・五%、こういうことになっておりまして、国家公務員出身者を半数以内にとどめるという目標を達成しているところでございます。  それから二番目に、たらい回し的人事につきましては真にやむを得ないものに限るということで、この場合におきましても一回限りとするということでございますが、これにつきましても、ことし平成三年一月一日現在でございますが、他の特殊法人からの転任の役員は、転任一回の者が十六名でございまして、全体に対しまして二・一%でございます。転任二回以上の者は皆無の状況でございます。  それから三点目でございますが、高齢者の起用は努めて避けるということでございます。原則といたしまして特殊法人の役員の在任は六十五歳に達するまで、ただし、総裁等または副総裁等につきましては原則として七十歳に達するまでということが基準でございます。これの状況でございますが、高齢者に該当する役員といたしましては、総裁等及び副総裁等で七十歳以上の者が九人、その他の役員すなわち理事とか監事などでありますが、これで六十五歳以上の者が八人ということでございまして、合計十七人でございまして、これも全体の二・二%という状況になっております。なお、いずれもこれは本年平成三年一月一日の数字でございます。  それから四点目といたしまして、長期留任はこれを避けるということになっております。基準といたしましては、特殊法人の役員の在職期間はおおむね六年を限度、ただし総裁等または副総裁等につきましては原則として八年を限度とするというぐあいになっております。この状況でございますけれども、これも本年一月一日現在でございますが、総裁等及び副総裁等で在職八年を超える者が七人、その他の役員、すなわち理事、監事等でございますが、これで在職六年を超える者が五人、合計十二名でございまして、全体に対しましては一・五%、こういう状況になっております。  このように、例外的な人事につきましては、私どもといたしましてはできる限りこれがないように運用しているところでございます。
  268. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 今お答えをいただいた内容と、私が先ほど冒頭申し上げた新聞報道の率とは、天と地の差がある。なぜか。これは、私が先ほど申し上げたのは新聞の記事でございまして、でたらめかといいますと、実はその記事の根拠になっているのは、政府関係法人労働組合連合の俗に言う天下り白書の資料に基づいていると思うんです。七割とか三割というのが、そうでなくて、二・何%とか極めて良好な数字になるというのは、恐らくどれだけの特殊法人全部で数字をとるかというその分母のとり方にも相違があってかもしれないと思うんですが、そこでお尋ねをしたいんですが、こういう内容について、例えば人事院の営利企業への報告書のように、こういうふうに公表する。それがどちらのデータかによって天と地の差があるような、国民から見ると極めて誤解を招くようなことを避ける、こういうお考えはいかがなものか、お尋ねをいたしたいと思います。  最後に、またその点について先ほど猪熊委員も質問されましたが、すべて公正さを担保するのは、法律を守ることと情報を国民にオープンすることの車の両輪があって初めて公正さの担保はできると思いますので、お考えをお尋ねしたいと思います。
  269. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) ただいま先生指摘の数字の違いといいますか、組合サイドから出ました数字と私が今申し上げました数字の違いにつきましては、例えば公務員出身者というものの中には、組合の方からお出しの資料には地方公務員の方が入っておられるとか等々の違いがあるようでございまして、私どもといたしましては、閣議決定あるいは閣議了解で定められました基準に従いまして管理をしておるわけでございます。  それから、御指摘の公表の問題でございますけれども、一般職の国家公務員が営利企業へ就職する場合につきましては、国家公務員法第百三条の規定に基づきまして人事院の承認を得ることになっております。人事院は毎年この承認の処分につきまして国会と内閣に対しまして報告をするということになっております。一方、私ども内閣で今やっております特殊法人に関します一定の基準と申しますのは、政府の自主的な規制といいますか、民間からの登用を積極的に推進するといったようなこととか、先ほど申し上げましたような一定の観点からの自主的な規制でございまして、人事院の場合と同様に国会に定期的に報告するというような制度をとることにつきましては必ずしもなじむものじゃないだろうというぐあいに考えております。  ただ、当然今までもやってまいりましたけれども、国会等からの資料要求がございましたら、できる範囲内で従来から御協力を申し上げているところでございます。今後とも、そういう点に関しましては適切に対応していきたい、こう考えております。
  270. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 時間が来ておるんですが、官房長官に同じ問題ですが、こういう問題について、できる限り公表、オープンにしていただきたいというふうに考えておりますので、御見解をお尋ねしたいと思うんです。
  271. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 常勤役員の候補者選考の段階では、事前に私のところへ協議をするということになっておりまして、この協議を受けたときは、今人事院総裁ども言われましたが、よく厳正に対処をしていきたいと思っております。  特殊法人の役員についての閣議決定は政府の自主規制でございまして、ただいま説明員から申し上げたように、国会に定期的に制度的に報告するということはなじまないと考えております。
  272. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 他に御発言もないようですから、内閣総理府本府及び総務庁決算の審査はこの程度といたします。  次回の委員会は六月十二日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会