○小西博行君 ちょっと余談になりますが、実は私は文教
委員会にも所属しているわけです。この間、ちょっといろんな学校を歩いてみたんですよ。例えば造船
関係です。造船専門高校とかいうのがありますね。工業高校の中の造船とか機械とかいう、昔だったら自分の子供さんをぜひそこへ行かして、それで造船に勤めさしたい、こういうのが非常に盛んで、田舎の学校でありますけれ
ども、全国からそこへ集まっていたそうです。ところが最近は、そういうようなのがだんだんだんだんなくなりまして、それは全然需要と供給の
関係でお客さんが来てくれないというんですから学生が来ないというんですね。ですから、行ってみますと、毎年七十人入る高等学校なんですけれ
ども、成績のいいのは全部機械の方へ無理やりに入れて、あと残りだけ二十人、これはもう無理やりに造船科へ入れるんですと。では、卒業した者は造船の会社へ行くかというと全然違うと。スーパーその他の方がきれいでいい、給料も何かいいということで、
産業界でも相当
努力しなきゃいけないんだけど……。
結局、物をつくる喜びというのは小学校、中学校あたりから今の教育の中では非常に弱いですよね。これはスウェーデンとかデンマークに行ったらよくわかりますように、非常に大切にしていますよね。十二、三名ぐらいの小学生を集めて、
先生が大体二人ぐらいついて、そして物をつくるいろんな
発想、これを指導します。日本は家庭科というのがあるんですが、それはもう本箱でも何でも全部標準品がありまして、かしゃっと組んだら全部同じものができます、大体。そういうことでは全然物つくりの喜びが出てこない。恐らく皆さん方の中にもひょっとしたら鉛筆を削ったことのない方も若い人ではいらっしゃるかもわからない。
省庁の人が来られて、あなたは削ったことがあるのかと言うと、全然ない、もう全部器械ですと。要するに、物つくりの喜びとか、そういう
分野が全然ない教育体制に今なっているんじゃないかというので、文部省の方では何とかそういうような方向で指導要領に何かないかと……。
ところが、
先生がもう全然だめでしたね、その造船
関係へ行ったら。
先生そのものは造船についての具体的に物をつくる、例えばエンジンの分解だとかいうのは、もうエンジンもないんですから、それで、何を実習でやっているんだと言ったら、手すりのパイプを溶接でつけると言うんですね。これは全然おもしろくないだろうと思います。船はもちろん一隻もありません。それを県の方へ何とか申請してお願いしようと思ったら、一千五百万もとはとんでもないというようなことで、これはだめになった。
それから、今度はこういうのがあります。船員の養成所です。商船専門学校、これは
国立です。そこへ行きますと女性の生徒が非常に多い。それで、私はえらい喜んで、船乗りというのは多いんですなと言ったら、違う。これは
情報工学、コンピューターの科目を設けることによって船乗りの方へ入る人を全部そっちへ持ってきている。だから、トータルとしては何とか維持している。大体こういうのが今、日本の世間一般の情勢じゃないでしょうか。
私も工学部で教えておったんですけれ
ども、その工学部の学生ですらスーパーの方がよろしい、もちろん鉄鋼とか造船というのは三Kとか四Kとかいって嫌なんだと。それで、何をやらしても非常に不器用なんですね、手先を練習しておりません。ちょっとこれは余談ですけれ
ども、そういうことがあります。ですから、物をつくったり
研究してその喜びを感じるという、そういうお金だけではない
分野というのは当然私は必要だと思うんです。
研究者は独特のわがままな面もありますし、それから非常に熱心な部分もありますから、その辺の
研究者への刺激の与え方というものを
省庁の中でも相当考えて、特に
科学技術庁の場合は考えていかないと、もう自由にやってくれということだけでは今の若い子をうまくつなぎとめて
研究に没頭させるというのは難しいんじゃないか、私は個人的にはそのように考えておるので、その点は何かアイデアはありませんか。