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小笠原貞子君 私は、日本共産党を代表して、
新幹線鉄道に係る
鉄道施設の
譲渡等に関する
法律案、
鉄道整備基金法案、
全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する
法律案の三
法案に対して反対の討論を行います。
まず、
新幹線鉄道に係る
鉄道施設の
譲渡等に関する
法律案について反対の理由を述べます。
第一は、
国民の共有財産である
新幹線を
JRに安値で譲り渡し、営利優先を保障する仕組みとなっていることです。
新幹線保有機構の存在そのものが
JRグループ内の収益を調整するもので、
分割・
民営の矛盾を象徴していたものですが、
譲渡については
新幹線保有機構法で三十年のリース期間後に
譲渡し、売却価額はその時点の
国民の判断で決めると国会で明確に
答弁していたものです。売却理由の、上場を行うためとか減価償却費が計上できないなど、それらをすべて前提とした上でわざわざ
新幹線保有機構を設立したものです。
にもかかわらず、四年目にして売却する事態に至ったことは
分割・
民営の矛盾を示しているものであると同時に、内部蓄積の増大を求める
JRの言い分を認め、
JRの利潤を一層拡大、保障する措置をとったものであるからです。
反対理由の第二は、
JRの株式上場を図るため、
JR各社の経営基盤を強化することを目的にし、
JRの完全
民営化を促進するための売却であり、容認できないものです。
反対理由の第三は、同
法案は、
整備新幹線建設財源を捻出するためにわざわざ
新幹線を売却するものであり、
整備新幹線建設に対する政府の極めて無責任な姿勢を示したものです。
整備新幹線建設の
財源は、
JR負担五〇%、国三五%、自治体一五%の配分となっています。しかし、
JR五〇%負担分のうち三〇%分の余剰金を確保できなくなったこと、また、国の負担分をこの
譲渡金で一部補わざるを得なくなったことにより、売却するものです。
日本共産党は、余剰金などの金利差を利用した財テクで
新幹線はつくれないこと、現在の運輸省の公共事業の枠内での
財源対応では住民が望む
新幹線づくりにならないことを厳しく
指摘し、必ず破綻すると追及しましたが、その
指摘どおりになったものです。その補充の窮余の策として売却が考えられたものであり、国が責任を持った
新幹線建設とは全く無縁のものと言えます。
反対理由の第四は、売却価額についても実質的に一兆円の安値で
JRに譲り渡すことになることです。運輸省は売却価額を九・一兆円と述べています。しかし、実際は
JRにとって支払い義務があるリース残高は八・一兆円あり、それに一兆円を上乗せしただけにすぎないのであって、実質的に一兆円で売却したということになります。リース期間の終了したその時点で所有する
土地や駅舎などの
鉄道施設の価額を考えると、余りにも安値であります。ここにも
分割・
民営の矛盾が露呈していると言わなければなりません。
次に、
鉄道整備基金法案についてであります。
反対理由の第一は、
鉄道整備基金設立の最大の位置づけは、
新幹線の売却を受け、その収入の一部を活用し、
整備新幹線建設の
財源を生み出し、その
建設等の実行のために発足されるもので、
新幹線売却が大前提とされる
法案であり、反対であります。
反対理由の第二は、
鉄道整備基金の事業として
整備新幹線の
財源対策以外に、
新幹線保有機構が
国鉄から承継した長期債務の償還業務も引き継ぐことになりますが、その長期債務の
財源に充てるべきものの一部を他に活用することになっていることであります。しかし、長期債務は毎年
増加し、既に二十七兆円に達しています。
国民負担となる債務を解消することは急務であるにもかかわらず、他に流用することに同意することはできません。
反対理由の第三は、
整備新幹線建設財源対策や長期債務償還業務のためにわざわざ特殊法人をつくる必要は認められないことです。運輸省の従来の施設である地下鉄の補助、幹線活性化補助事業な
ども基金を通じて行われることになりますが、二重行政となり、行政改革上も問題であります。
もちろん、
鉄道業務全般を総合的に把握することは否定すべきことではありませんが、そのことは運輸省が責任を持って行うべきことであります。
最後に、
全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する
法律案について反対理由を述べます。
第一に、日本共産党は、
新幹線など交通手段の近代化は
技術革新の成果であり、
国民の足の利便の増進からも、
新幹線建設そのものについて賛成の立場を明らかにしております。しかし、同
法案は、本来の
新幹線とは言えないスーパー特急やミニ
新幹線の「高速
鉄道」を法的に
新幹線と同等の扱いをさせることにより、自治体に
建設のための費用負担を出させることにあります。
全国新幹線鉄道整備法は、自治体の補助金を求める規定を持った唯一の法律であります。ところが、今年度着工する東北、北陸、九州
新幹線は、時速二百キロメートル以上の規定を持つ
新幹線鉄道とは言えず、このままでは自治体に負担を強要することができません。そこで、
新幹線と同等の扱いをさせ、自治体、住民の負担を求める仕組みをつくることであり、容認することはできません。
反対理由の第二は、同
新幹線建設の着工に伴い在来線を廃止することが前提となっており、絶対容認できません。
九〇年十二月二十四日の
整備新幹線着工等についての「政府・与党申合せ」は、「並行在来線は、開業時に
JRの経営から分離することを認可前に確認すること。」となっており、在来線廃止が着工の条件となっています。しかも、廃止後は第三セクターで運営することになりますが、ローカル線廃止法と異なり、転換交付金や欠損補助金などの対策もないなど、自治体や地域住民の負担は膨大とならざるを得ません。
地元自治体、住民にとって、
建設費負担はさせられ、その上在来線廃止では、二重三重に不当と言わなければなりません。
第三は、この
法案の前提となっている整備新幹
線
建設計画は、スーパー特急やミニ
新幹線や在来線などをつなぎ合わせたものであり、到底
整備新幹線とは言いがたいものであります。このことは、関係自治体、住民の意思や合意とは無縁の方式でなし崩し的に進められ、民主的手続など全く無視し、住民の望む真の
新幹線づくりとなっていません。
以上を
指摘して反対討論を終わります。