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1991-03-07 第120回国会 衆議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月七日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君      内海 英男君    小此木彦三郎君       越智 伊平君    狩野  勝君       倉成  正君    後藤田正晴君       志賀  節君    田邉 國男君       津島 雄二君    戸井田三郎君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    松永  光君       松本 十郎君    村田敬次郎君       村山 達雄君    綿貫 民輔君       赤松 広隆君    五十嵐広三君       貴志 八郎君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    辻  一彦君       戸田 菊雄君    野坂 浩賢君       藤田 高敏君    武藤 山治君       和田 静夫君    井上 義久君       石田 祝稔君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    木島日出夫君       佐藤 祐弘君    藤田 スミ君       山原健二郎君    菅原喜重郎君       中野 寛成君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       米山 市郎君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       矢部丈太郎君         公正取引委員会         事務局経済部長 糸田 省吾君         警察庁長官官房         長       井上 幸彦君         警察庁刑事局長 國松 孝次君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  小山 弘彦君         総務庁行政管理         局長      増島 俊之君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  宝珠山 昇君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁土地局長 藤原 良一君         国土庁大都市圏         整備局長    斎藤  衛君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         法務省人権擁護         局長      篠田 省二君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局次         長       田中  寿君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         文部省高等教育         局長      前畑 安宏君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君         文化庁次長   遠山 敦子君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         厚生省生活衛生         局水道環境部長 小林 康彦君         厚生省児童家庭         局長      土井  豊君         厚生省保険局長 黒木 武弘君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    安橋 隆雄君         食糧庁長官   浜口 義曠君         林野庁長官   小澤 普照君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       向 準一郎君         中小企業庁次長 西川 禎一君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   大塚 秀夫君         運輸省航空局長 宮本 春樹君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働大臣官房審         議官      七瀬 時雄君         労働省労政局長 清水 傳雄君         労働省労働基準         局長      佐藤 勝美君         労働省婦人局長 高橋柵太郎君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君         労働省職業安定         局次長     伊藤 欣士君         建設大臣官房長 望月 薫雄君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省建設経済         局長      鈴木 政徳君         建設省河川局長 近藤  徹君         建設省住宅局長 立石  真君         自治大臣官房審         議官      遠藤 安彦君         自治大臣官房審         議官      二橋 正弘君         自治大臣官房審         議官         兼内閣審議官  谷口 恒夫君         自治省行政局長 浅野大三郎君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君         自治省財政局長 小林  実君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         参  考  人         (関西国際空港         株式会社代表取         締役社長)   竹内 良夫君         参  考  人        (日本銀行理事) 福井 俊彦君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   日笠 勝之君     市川 雄一君 同日  辞任         補欠選任   市川 雄一君     日笠 勝之君 同月六日  辞任         補欠選任   石田 祝稔君     市川 雄一君 同日  辞任         補欠選任   市川 雄一君     石田 祝稔君 同月七日  辞任         補欠選任   内海 英男君     井奥 貞雄君   浜田 幸一君     狩野  勝君   武藤 山治君     赤松 広隆君   日笠 勝之君     井上 義久君   木島日出夫君     藤田 スミ君   中野 寛成君     菅原喜重郎君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   狩野  勝君     浜田 幸一君   赤松 広隆君     貴志 八郎君   井上 義久君     日笠 勝之君   藤田 スミ君     山原健二郎君   菅原喜重郎君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   貴志 八郎君     武藤 山治君     ───────────── 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算平成三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田スミ君。
  3. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、まず最初に、米の問題からお伺いをしていきたいと思います。  私は昨年十二月に、我が党の林参議院議員と御一緒に党の国会議員団代表として、ウルグアイ・ラウンドが開催されましたブリュッセルに参りました。そして、ウルグアイ・ラウンドの動向を見守るとともに、あのとき山本農林水産大臣にもお会いをし、そしてまたEC農業団体連合会、COPAといいますが、イバノウ会長エルリッカ書記長、フランスの農業経営者組合全国連盟リュック・ギュイオ書記長らと懇談をいたしまして、世界各国農民とも交流をしてまいりました。その中で明らかになったことは、世界孤立をしているのは日本の米ではなく、農産物完全自由化要求しているアメリカ政府であるという事実でありました。EC農民代表孤立論ほどばかげた攻撃はないんだ、こういうことを訴えられたとき、正直私は、ECにも孤立論攻撃があるのかと大変驚きました。世界各国農民農産物自由化で深刻な打撃を受けようとしており、現在行われているガット農業交渉に一致して強い反対の声を上げているわけであります。  そこで、ガット農業交渉に関する世界農業農民団体集会宣言をここで御紹介をしながら大臣の、それをどう受けとめていらっしゃるのかということをお伺いをしたいわけでありますが、この宣言は、「農業が、したがってまた農業政策が、通商上の利益のみに従属させられるべきではないと主張する。さらに、全てのガット加盟国にとって死活的に重要な次の諸点が考慮されなければならない。」「様々な貿易相手国の政治的、経済的な現実に即応した安定的な価格での食糧供給安全保障環境保全所得生活労働条件についての農民の正当な要求と同時に、農村地域成長力活力維持による政治的社会的な安定」さらには「農業団体代表は、農業農民が多くのかけがえのない役割を今後とも果たすことができるよう、農民だけでなく社会全体にとって基本的に重要なこれらの諸原則が最終合意で尊重されるようガット加盟国に緊急に求める。」としているものであります。農林水産大臣の地元である新潟の代表もこの宣言採択に参加をしていらっしゃいました。私は、今度のウルグアイ・ラウンドでもこの世界生産者の声を反映させるとともに、今この場で大臣がこの声をどう受けとめられるか、お伺いをしたいわけであります。
  4. 近藤元次

    近藤国務大臣 お答えいたします。  昨年十二月のブラッセル閣僚会議の折に、各国農業団体ブラッセルに参集をして農業交渉に関する決起集会を開いて宣言を行ったと聞いておるわけであります。この決起集会における宣言内容は、食糧供給安全保障環境保全農村地域活力維持農業交渉に配慮されなければならないというようなことも宣言されておりますし、またその宣言によってガット加盟国におけるバランスのとれた公正なルールの確立と各国の抱える困難な農業問題に対する配慮が必要であること等を内容としておるわけであります。  我が国は、従来から、農業生産の持つ特殊性農業の果たしている多様な役割食糧安全保障を含む非貿易的関心事項等について配慮されるべきと主張しておるわけでありますから、今回の各国農業者団体皆さん方宣言文というのは私どもと相通ずるところがある、そう考えておるわけであります。
  5. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 いよいよウルグアイ・ラウンドが再開されました。こういうときに米の基本問題を再度明らかにすることは大変重要なことであると思いますので、以下、問題点についてお伺いをしておきたいと思います。  まず、私は外務大臣にお伺いいたします。  昨年のブリュッセルで開かれました最終ガットウルグアイ・ラウンド閣僚会議においてヘルストローム議長が出したいわゆるノンペーパー、これには五%のミニマムアクセスが明記されていたわけでありますが、これに対してECやあるいは韓国反対態度をとりました。しかし日本は、内容上の問題を指摘されておることは承知しておりますけれども、個別の協議には応ずるとの態度でありました。五%のミニマムアクセスは明確に米の部分自由化につながるものであり、こんなものを含んでいるノンペーパーはとても受け入れられないと明確に反対するべきものだと考えます。それが三度にわたる国会決議に基づく政府態度ではなかったのでしょうか。その点を明らかにしていただきたいわけです。     〔委員長退席増岡委員長代理着席
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 ブラッセルにおきますガットウルグアイ・ラウンド交渉におきましては、ノンペーパーの中に食糧安全保障という事項が一言も含まれていなかった、また事前に、ノンペーパーをつくる前に日本政府の意向も十分聞く手続が踏まれていなかったということで、我々は協議に入る前に、我々の主張というものが全然入っていないこのノンペーパーについては慎重に対応する必要がある。拒絶するものではないけれども日本側意思というものを十分踏まえるべきだ。政府としては、米及び稲作等食糧自給については、国会決議も踏まえて今後とも対応していく考え方であります。
  7. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私はそのとき、やっぱりEC韓国と同じようにもっときっぱりとした態度をとるべきだというふうに考えるわけです。  そこで、三度にわたる国会決議の中で第百一国会参議院会議決議は、「国内生産による完全自給方針を堅持すること。」としております。これは部分自由化も認めない内容になっていることは十分御承知していただいていると思いますが、この点が一点です。  それから第百十三回国会の九月二十日に米の自由化反対に関する決議が提出され、これも全会一致で採択されました。その背景には、RMAが八八年九月十四日に、米を四年以内に国内需給の一〇%分につき部分自由化を求めてきた三〇一条提訴をしたのに対して、それは認めることはできないということで行われたものでありまして、決議内容もしたがって、「今般伝えられる米国内我が国に対する自由化要求の動きは、極めて遺憾であり、認められない。よって政府は、二度にわたる本院の決議趣旨を体し、断固たる態度で臨むべきである。」というふうにしております。RMAの米の部分自由化を断固受け入れてはならないんだ、拒否をさっぱりと求めているわけでありますが、これが本院の明確な意思であって、この点について政府はどう受けとめておられるのか、お答えをいただきたいわけです。
  8. 中山太郎

    中山国務大臣 食糧輸出国であるケアンズ・グループの考え方、またEC考え方、いろいろございましたが、我が国農産物の極めて大きな輸入国でございまして、輸入国考え方というものがノンペーパーに全然盛られていないということについて、日本政府としては、あのノンペーパーをそのまま受け入れて協議に入るということは非常に困難を伴ったわけでございます。
  9. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 同じ質問を農林水産大臣にお願いしたいのです。国会決議の受けとめの問題です。
  10. 近藤元次

    近藤国務大臣 昨年のノンペーパーのときの話が出ましたけれども、前大臣も、個別的には討議に応ずるけれども、イエスもあればノーもあるということをつけ加えて発言をしておるわけであります。国会決議は尊重をして、そして国内産で対応していくということは、総理大臣もたびたび御答弁を申し上げておるわけでありますし、私もそのように今後対処していく方針であります。
  11. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、部分自由化要求を拒否したこの二つの決議を挙げました。そういうふうに受けとめていらっしゃるかどうか、もう一度確認をしておきたいと思います。農林水産大臣
  12. 近藤元次

    近藤国務大臣 当然国会決議国内産で完全自給をするということでありますから、その趣旨だと理解をいたしております。
  13. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 それではそれを確認して次に移りますが、農林水産省は、三〇%米生産が削減する場合として、その影響調査の結果を昨年発表いたしました。その内容はここで詳細には指摘しませんが、国内生産減少額は四兆八千九百九十億円、総生産が一〇%以上減少する市町村全国で二百八十六市町村に上るとして、雇用は全国で百二十三万人減少するとしております。これは経済面だけでありますけれども、当然、現在の高齢化している農業者後継者難の中で日本農業に対して壊滅的な打撃を与えることは明らかであります。  私はここで農水省見解を求めたいわけでありますが、経済面調査報告は出ておりますので、その詳細の御報告は結構です。日本農業に壊滅的な打撃を与える、その問題について、農水省見解をお伺いしたいわけです。
  14. 鶴岡俊彦

    鶴岡政府委員 ウルグアイ・ラウンド交渉と関連しまして、昨年来新聞あるいは雑誌等でいろんな論議がされたわけでございますが、その米の問題の影響は、農業部門だけに限られて論議されておりましたので、その当時開かれました農政審議会から要求がございまして、私どもとしまして国内生産減少地域経済国民経済に及ぼす影響を一般的な傾向として把握するという観点から取り上げたものでございます。個々の産業についてどうとかということではございませんけれども米自身水田農業我が国農業の基幹的な部門でありますし、また、米の総産出額農業部門の中で最大のものでございます。今御指摘のように、農業はもちろんのこと、地域経済にも極めて大きな影響を与えるのではないかというような報告がなされております。
  15. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 極めて深刻な影響が与えられる、このことは部分自由化による日本農業に与える影響についても当てはまると私は思うのです。たとえ五%のミニマムアクセスであっても、現在八十六万ヘクタールの生産調整が行われています。既に水田の三分の一は米が生産できなくなっているのです。農村では、一体何をつくればいいんだ、そういう悲痛な声が上がっています。しかも、湿田地帯が非常に多い。そこでは転作もままなりません。そこで青田刈り、そういうことまで涙をのんで行っているわけです。これに五%ミニマムアクセスで五十万トンの輸入、そのために十万ヘクタールもの生産調整が上乗せされたら、農家所得に深刻な影響を及ぼすだけではなく、第一農業の展望を農民が失ってしまうでしょう。それは離農に追い込んでいくだけではなく、既にもう二千百人にしかなっていない新規学卒就農予定者後継者を一層激減させ、日本農業を揺るがすことになる、そういうふうに考えるわけです。この点についてどうお考えでしょう。  それからもう一つ、この五十万トンの輸入食糧月給率に与える影響も深刻なものがあると思います。私どもが試算をいたしましたら、五%のミニマムアクセスカロリーベース食糧自給率は四六・六%にも下がってしまいます。  この二点について、私は大臣の御見解をお伺いしたいわけであります。
  16. 鶴岡俊彦

    鶴岡政府委員 ただいまの数字、どういう影響があるかというようなことでございますけれども、私ども、先ほど来御論議がありますように、米につきましては今後とも国内自給するというような方針交渉に臨んでおりまして、お尋ねのような数字を前提としました計算というのはやっておりません。あくまで国会決議を体して対処していきたいというふうに考えております。
  17. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私も国会決議を体して米は完全自給でやるべきだ、そういうことを強く主張しておりますし、そうでなければならないと思っています。しかし、今の農水省のそういう態度は逆さまではないでしょうか。今は部分自由化であってもどういう深刻な影響を与えるのか、それを明らかにすることが非常に大事なんです。相変わらず少しぐらいなら大したことはないだろう、そういう論調が出ている中で、今一番農水省がそのことを実態として積極的に答えるべきじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。大臣にお答え願います。
  18. 近藤元次

    近藤国務大臣 もう先生御案内のように、八十三万ヘクタールでも大変先行き米農政に対する不安を持っておられる農家が多いわけでありますから、そして一方では米の消費が減退をしておるものを、どうやって歯どめをかけて消費拡大に結びつけて、八十三万ヘクタールの転作面積をどのように減らすかという苦慮をしておるのが実は毎日の農林水産省の仕事でございますから、そういう意味からいっても、少しでも米を輸入していいではないかという考え方農林水産省としては全く持っていないわけであります。
  19. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 持っていないから一層のこと、それと逆行する意見が出てきているときには農水省としてはそれはできないということを、やはりその農民に対する影響などを農水省の方から積極的に打ち出して、できないじゃないかということを示すのが、これが政府のあるべき態度だ、農水省のとるべき態度だというふうに考えるわけです。
  20. 近藤元次

    近藤国務大臣 そういうことを仮定にして省内でまた検討するとすると、そのことがマスコミにのるとどういう表現で伝わるかといえば、農林水産省もまた米を多少でも入れることを検討を始めたというようなことを農民に与える方がもっと私は悪い影響を与えるのではないだろうか、そう考えておるわけであります。  それから、そのことは検討しなくても、三%になったら、五%になったら、一〇%になったらということは単純な計算でも出てくるわけでありますけれども、そのようなことを検討するようなことは私から事務当局には指示をいたしておりません。
  21. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 国民の世論の形成ということが非常に大事です。そういう点でははっきりとした取り組み、こういうのも一つの取り組みとして立場を明確にすれば、マスコミが逆さまにとって宣伝するというようなことはないわけですから、だから私は要求をしているわけであります。これはさらに要求をしておきたいと思います。  ところで、このように米の部分自由化は、国会決議の点からも日本農業に与える影響の点からも受け入れることができない。一度部分自由化を受け入れれば、今大臣がおっしゃったとおり、五%、一〇%、二〇%に広がっていくことはもう明らかです。だから、どんなことがあっても譲ることはできません。  そこで、お伺いいたしますが、二月の七日の全米精米業者協会、RMAの記者会見でRMAは、米国では日本輸入米の用途を加工米に限定するのを条件に米部分開放を受け入れるとの観測が流れており、それは絶対に容認できないとして、提案を拒否するよう求める書簡をUSTRとアメリカ農務省に送ったことを明らかにしたと報道しています。火のないところに煙は立たないと言いますが、政府アメリカ政府に対して、輸入米の用途を加工米に限定するのを条件に米の部分開放を受け入れるとの提案をされたのかどうか、明らかにしてください。
  22. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生から、そういう提案があったのかという御質問でございますが、ございません。
  23. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、アメリカ国内日本が米の部分自由化を受け入れるとのこういう観測が流れていくのは、当然のことじゃないかなと思うのです。昨年の夏には、自民党の山口経済調整に関する特別委員長が米の五%を部分自由化を主張され、ことしに入っても、これは私も参りましたけれども、朝日新聞社主催の米自由化問題シンポジウムで、羽田孜元農林水産大臣が、一つの国の一つの産品だけを特別扱いにすることは残念ながらできる話ではない、こういうふうに言われて、米のミニマムアクセスについて、歯どめがある場合とない場合では違うけれども、開放枠が低率で、その枠を相当な年数維持するなどの条件がつけられればこれはある程度考えられると、部分自由化受け入れの方向を明らかにしました。さらに、米調製品、米加工品の取り扱いで処理できる、こういうこともおっしゃったわけです。  そこで、お伺いいたしますが、昨日の一般新聞報道を見ますと、一月二十五日と二月六日の二回、自民党の農林関係議員の幹部と農林水産省の幹部が秘密会議を開き、ラウンドへの対応を協議し、その中でウルグアイ・ラウンドでの従来の食糧安保を見直しを要請し、それを受けて農林水産省は、具体的には、一、期限付きで自由化の例外品目を認める新ウェーバー条項の制定、二、非自由化の代償として関係国で拠出、農産物貿易の拡大に役立てる代償基金の創設の提案を検討している、こういうことが明らかにされています。  農林水産省にお伺いいたしますが、このような秘密会議があったのかどうかです。自民党から食糧安保の見直しの要請を受けたのかどうか。また、このような提案を検討しているのかどうか。この三点をお伺いしたいわけです。
  24. 川合淳二

    ○川合政府委員 お答え申し上げます。  昨日の新聞のことは承知しておりますが、結論的に申しまして、私どもそういう事実はございません。また、提案を行った事実もございません。従来から、関係の議員の方には適宜経過報告などを行っております。特に、この時期は、一月末から二月初めにかけまして、ダンケル事務局長がいわゆるプラットホームづくりに各国との協議を行った時期でございますので、そういう意味では私ども、経過報告あるいは情勢の分析等で関係議員の方々とお会いしていることはございます。
  25. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そうすると、そういう秘密会議という事実は否定されるけれども、与党の議員の幹部の皆さんと情報交換をされたということは否定されないわけですね。これは質問ではありません。  続けて、大臣にお伺いしたいんです。  私は、この報道を見たときに、大臣が二月十二日の閣議後の記者会見で、米だけが唯一、世界の貿易の対象にならないということは非常に厳しい、各国が抱えているものと一緒に相談しようとしている、こういうふうに述べられたあの記事を思い出しました。そして、この提案と符合するんじゃないかな。特に新ウェーバー条項を提案する理由として、アメリカのピーナツ、ECの酪農製品など主要工業国はほぼ共通して国内特定農産物の保護問題を抱えている、そういう考えに基づいて共通の枠組みの中に米問題を取り込む、こういうふうにしているわけですが、これはあなたが各国が抱えているものと一緒に相談しようとしていると述べたものと、そのお言葉と全く同じ趣旨ではないか、こういうふうは考えるわけです。  大臣、この会合には出ていらっしゃらないし、今のではそういう秘密会議そのものはない、しかし情報交換は行っている、こういうことですが、こういう提案あるいはそういう協議、そういうものがあったんじゃないですか。だから私は、こういう御発言がずっと日程的に追っていくと出てきたんじゃないかというふうに考えるわけです。また、昨日言われたこの内容ですね、これについて大臣はどういう御感想をお持ちか、お聞かせをいただきたいわけです。
  26. 近藤元次

    近藤国務大臣 自民党の農林幹部と秘密会議があったようなことでお話がございましたけれども、秘密会議というようなものではなくて、さまざまな、今日事務当局で、ジュネーブでの打ち合わせ会合等があったことを農林幹部に報告をする会議があったわけでありまして、情報交換というようなものではなかったと承知をいたしておるわけであります。  私が記者会見で話をしたことについてお触れになりましたけれども、それは相手の新聞記者から質問があったことに私がお答えをしたわけでありまして、米一つだけが、貿易対象から外して一つだけ残ったときはという前提がありましたので、世界の貿易対象品目から米一つ残ると厳しい交渉になるな、私は当然厳しい交渉になると思ったので率直にお話を申し上げたわけであります。昨日の新聞報道の中にも、政府方針を変えたようなことを書かれておりますけれども、私の出てない会議政府方針が変わるはずはない、そう御理解をしていただきたいと思います。
  27. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 それはそうですよ。大臣を無視してそういうふうな相談がなされているとしたらとんでもないことです。  しかし私は、だからこそもう一度ここで食糧安保の問題について考えてみたいと思うんですけれども、私たちは、我が国食糧安保ということを強く主張されているということそのものに非常に危惧を持っています。なぜならば、ウルグアイ・ラウンドの中間報告政府食糧安保という言葉を入れさせましたが、しかしそれが最終合意の段階でのノンペーパーでは全く無視され、また、中間合意で食糧安保の言葉が入ったあのときです、それに水をかけたのはアメリカ政府です。食糧安保は特定の農産物を例外扱いにするものではないという見解を表明しました。諸外国は、日本食糧安保を訓示規定のようなもの、一般原則を述べたものにすぎない、こういうふうにとらえているんじゃないでしょうか。だからノンペーパーでは無視され、中間合意をしているにもかかわらずアメリカの方からは米の自由化要求が相変わらず出されてくる。私は、これは日本政府の方に問題がある、こう考えるんです。米の自由化阻止を食糧安保論だけでやろうとしているからそこに解釈問題が入り、大変あいまいな決着の余地を残すわけです。さっき大臣が言われたように、米だけが残ると厳しいな、こういうことになってくるわけです。  その点では我が党は、ガット協議から米を外すべきだということを主張してきました。政府も、ガット裁定でクロが出たあのでん粉や乳製品の自由化は、そのときには応じなかった。私は、このことは、少なくともそのときの態度は非常に積極的な意義を持っている、だから米の自由化問題でもそういうふうな意義を発揮するべきだというふうに考えます。  ガットは裁判所ではありません。アメリカは包括的な輸入制限ができるウェーバー条項を持ちながら、他国に対しては関税化による農産物自由化要求し、つい先日も輸出補助金の増額を決めたばかりです。こんな国を相手にしているんですから、私はもっと骨太に、ガットにかかわらず米の自由化はしないという構えが求められていると思うわけであります。いかがですか、大臣
  28. 近藤元次

    近藤国務大臣 食糧安全保障については、一九八六年のこのガットが今日に至るまでの間、我が国政府として主張を続けてきた、国会決議を尊重して米を守るという立場で努力をしてきた表現の一つで実はございます。そしてRMAが提訴をしたとき、それを却下をする努力をしたときにも、ガットウルグアイ・ラウンドですべての農産物交渉する機会にやるべきだということが日米間の合意の中で決められて、提訴を却下をいたしたという経過が実はございます。その経過に基づけば、米をこのウルグアイ・ラウンドのところから外すということはなかなか困難だろうと思います。  しかし、その中で我が国としては、当然のことながら国会決議を尊重し、とりわけ米の重要性というものは世界のどの農産物よりもまさるものだ、そう確信をして交渉に当たっているわけであります。
  29. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、そこで外務大臣にお伺いをしたいわけです。  政府は、湾岸戦争問題で盛んに国際的孤立論を強調して、その名のもとに、憲法違反の自衛隊機派遣や九十億ドルもの戦争負担を強行しようとしています。とんでもないことですが、私は非常に危険なものを感ずるんです。国際的孤立を避けるためには、憲法はもとより米の国会決議さえも無視していく、そういうおそれを感ずるからであります。しかし、日本食糧自給率は、先進国だけでなく、世界の例を見ても例を見つけることができないほど非常に低い。四八%という水準です。一たび事が起こったらどうなるか。そのことはあの湾岸戦争でも明らかになっているではありませんか。  また、憲法の前文においても、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」としているように、自給率を向上させ米の自由化反対することは、決して自国のことのみに専念することではありません。しかしあなた方は、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という言葉をこのごろ大変よく使われる。これは、戦前の日本の侵略戦争の反省の上に立って入れられたものでありますけれども、それにもかかわらず第三次行革審は、日本の外交の縛りとして、国際社会において名誉ある地位を占めたい、海部総理とそっくりのことを言っているんです。自国のことのみ専念して他国を無視してはならない、この二つを記述することが重要だというふうに外交理念の策定をするとの方針が打ち出されました。米の自由化反対のような自国の主権にかかわる問題を、このような日本国憲法の都合のよい解釈で規制することは決して認めることはできないわけでありますが、外務大臣はいかがお考えでしょうか。
  30. 中山太郎

    中山国務大臣 日本政府が自国のことのみ専念して他国を無視してはならないという考え方を持っておりますことは、憲法の基本的な考え方でございまして、我々は、小さな国土に一億二千万の国民が住みながら、三十兆円の原料を輸入して四十一兆円で商品を海外に売って、その差額を国家が国内でそれぞれの職域によって配分をして生きているという民族国家であります。  そのような中で、自国のことのみに専念してはなかなかこの国民は豊かな生活を確保することは難しい、こういうことを一般的に外務大臣としては絶えず認識をしながら外交をやっておりますけれども食糧に関しては、国会決議を踏まえて食糧安全保障ということを確認いたしませんと、我々の民族がこの国際的な環境の変化によって、あるいはまた、一回農作物というものは作付を怠りますと、続いての新規の需要については数年の日数がかかりますから、我々としては、米と稲作の重要性にかんがみてこの食糧自給論というものを主張しておりまして、その点は誤解のないようにお願いをしたいと思います。
  31. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そうしたらもう一度念を押しますが、米は国家の主権にかかわる問題であり、そして国会三度の決議が重ねられており、こういうふうに国際社会における名誉ある地位を占めたいとか自国のことのみ専念して他国を無視してはならないとか、そういう憲法解釈をして、そうしてこの米の問題を譲歩していく、たとえ部分自由化であっても譲歩をしていくということは、外務大臣としても断固考えていないということをもう一度明確にお答えください。
  32. 中山太郎

    中山国務大臣 政府といたしましては、米及び稲作等の重要性にかんがみまして、これを国内産で自給するという国会決議の御意思を十分踏まえてこれからもまいるつもりでございます。
  33. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 それでは次の問題に参ります。防衛庁にお伺いをしていきたいと思います。  一九七六年に防衛庁の海上幕僚監部防衛課の分析班が部内参考用に分析した「国民生活に基づく所要輸入量に関する研究」というペーパーを出していらっしゃるはずであります。確認をしたいと思います。
  34. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいま御指摘の資料は一九七六年、今から十五年前でございますけれども、海幕の一セクションというよりも一つの研究グループが部内の参考のためということでやったものでございます。したがいまして、防衛庁の見積もりとか見解といったものでございません。それは、有事の際に国民生活を最低限の水準に守るためには一体どういうことになるだろうか、そういうことでエネルギーだとか資源だとかそしてまた食糧などをどの程度輸入しなくちゃいかぬか、そのためにはどの程度の海上交通が必要だろうか、そういう観点からあくまで部内の参考資料として作成したものでございます。  そういった性格でございますし、また時点も相当ずれておりますので、現在において妥当性がどうかということがありますけれども、もしその内容について若干御説明が必要でございましたら事務当局から説明させます。
  35. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 どうもありがとうございます。私は、時間がかかりますので、自分でその報告書を見せていただいておりますので確認をしておきたいと思いますけれども我が国に一たび事が起きたとき、こういう状況は、七六年当時ですから確かにおっしゃるように随分時間のずれがありますけれども、だからこそ一層深刻になってしまうんじゃないかな、こういうふうに思いました。  ここでは、原油も輸入食糧も、輸入が五〇%になってしまう。そして遠洋漁業が非常に困難になってしまう。そういうときには国民平均一人当たりの栄養状況はカロリーにおいて、熱量において千百九十九カロリー、たんぱく質は三十三から三十七グラムで、昭和二十一年の千四百八十八カロリー、たんぱく質三十五・八グラムよりもさらに低い厳しい状態になる。それで、男子の身長は百二十九・五センチ相当水準になって、その当時でも十一・六センチ低くなる、こういうことを言っているわけです。私は昭和八年生まれで、ちょうど小学校六年生を挟んで終戦を迎えておりますので、私の年代は残念ながら一番背が低いんです。これはもう統計的にそうなっているのですね。つまり、栄養が物すごく足らなかったわけです。この防衛庁の調査は確かに七二年をベースにしていますが、この当時のカロリーの自給率というのは六〇%近くありました。今は四八%です。事態はもっと深刻になることは明確だというふうに思うわけです。今まさに自給できるのは米だけなんです。それさえも輸入に依存するということになったら大変だということで、世論もそれを反映しています。  二月の二十四日に発表されました総理府の食生活農村役割に関する世論調査、お答えいただきたいと思いますが、時間が限られておりますので私が言いますと、米などの自給を望む人が七三・二%にも達しているわけであります。したがって、私はしつこいようですが、しかしこれはもう本当に私たちの生きる、生存にかかわる問題であり、主権にかかわる問題ですから、もう一度大臣に、部分自由化を含めて米の自由化はしないという断固たる決意をお聞かせをいただきたいわけであります。  大臣が行ってしまわれますので、配慮してもう一つお伺いをいたしますが、農水省は我が党が予算資料要求をいたしました中で、過去三年間、米の輸入に関して食管法違反の事例があるかどうかということを質問しましたら、そういうものはないという御回答を出されました。しかし昨年三月に、USライスカウンシルが食管法違反のためアメリカ米の出展試食会を撤去したということの事実があります。なぜこれを記載されなかったのか。そしてことしも、農水省が後援団体になって三月十三日から幕張メッセで開かれる九一年度国際食品飲料展に、USライスカウンシルが昨年に引き続いて食糧管理法違反のアメリカ米の出展試食会を行うと伝えられています。私は大臣に、断固たる措置をとるべきだと考えておりますが、いかがですか。
  36. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生、昨年の幕張メッセの点についてお話がございました。これにつきましては、市場開発や商業活動を目的とした展示のための米の輸入は、米の商業的輸入を認めていない現状のもとでは認められないということで、先ほど先生御質問ございましたけれども食糧庁といたしましてこの点について十分対応していきたい、こういう考えに立っております。  なお、つけ加えさせていただきますと、今御質問ございましたけれども、現実にそういう事実はございませんけれども、私ども考え方というものをこの主催者団体に対して明確に話をし、主催者団体もこれを関係国、出展をしようとするところに対しましてきちっとした文書で伝えているようでございます。そういうことでございますので、私どもは今申し上げた考え方に立ちまして対応していきたいというふうに考えるところでございます。
  37. 近藤元次

    近藤国務大臣 今出展問題は事務当局から御説明を申し上げたとおりであります。  米の自由化については、かねがね申し上げておりますように、三度にわたる国会の御決議を尊重しながら、また我が国の農政を考えた立場でも、農林水産大臣としては米の自由化については従来どおりの方針で対処してまいるつもりであります。
  38. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 次に移っていきます。米問題はこれで終わりまして、次は関西国際空港の問題についてお伺いをしたいと思います。  関西国際空港の建設は、現在、第一期工事として泉州沖五キロの海域に五百十一ヘクタールの空港島をつくっております。長さ三千五百メートルの滑走路一本、年間離着陸回数十六万回の能力を持った空港をつくるんだということで工事が進められているわけです。  ここで昨年十二月、地盤沈下対策及び空港機能拡充のためだということで九三年三月予定の開港時期を九四年夏というふうに延期されました。事業費も一兆七百億円から、これは厳密に言えば一兆六百七十六億円ですが、そこから一兆四千三百億円に見直しがされました。開港延期の措置自体は、安全性を優先させるという立場から見ても当然の措置だと私どもは考えています。しかし航空法にも、開港予定までに工事を完了させよとわざわざ書いてあるぐらいですし、延期によって工事費や金利負担がかさむことはもちろん、周辺自治体の関連事業や税収見込みがこれで大きく狂っていくことが予想され、地元経済にも大変混乱を招いています。  そこで、運輸大臣にお伺いをいたしますが、政府がこの関西国際空港の開港時期、事業費を決めたのは八四年二月の関係閣僚会議の決定であったというふうに見ています。それは、開港は九二年度末を目途、工事費は八千二百億円、護岸、埋め立ては四千五百億円と記載されていて、これで決められたわけでありますけれども、その後できた関西国際空港株式会社はこの決定に従っていわばレールの上を走ってきたようなわけでありますので、大枠はまず政府決定で決められた、このことを確認したいわけです。
  39. 宮本春樹

    ○宮本政府委員 お答えいたします。  関西国際空港の計画の概要につきましては、ただいま先生からお話のありましたとおり、昭和五十九年二月の関西国際空港関係閣僚会議で了承されているところでございます。
  40. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 関西国際空港は、高度な安全性を要求される、そういう国でもともと責任を持ってつくるべき第一種空港であります。民活を実行した当時の中曽根総理でさえも、第一義的には国がやるべきものであるということを言っていらっしゃるわけです。それを、民活方式で地元負担までさせ、採算性を最優先させて、そしてまず空港ありき、これでどんどん進めてきた。私は、今日提起されている問題は、この政府の決めた枠組み、そこにすべての背景があるというふうに考えるわけであります。  空港島の建設の特徴というのは、大水深、軟弱地盤、大量急速施工という言葉を使われますが、要するに、十八メートル下のところに沖積層という二十メートルに及ぶ非常にやわらかい粘土層があって、その下にまだ四百メートルから五百メートルと言われるような洪積層が横たわっている。したがって非常に難工事、これは世界で初めての難工事だと言われています。それを異常なスピードでやる。異常なスピードというのは、これは神戸のポートアイランド、あそこで埋め立てで使った土が八千万立米であったと思います。この空港島は一億六千六百万立米ですね。物すごい土をここへ持ってきて島をつくるわけです。神戸の方は半分の土ですが、十五年から二十年ぐらいかかっていますね。ところが、運輸省の方は七年で大丈夫だ、七年でできるよ、こう繰り返して、そして八六年の空港設置許可から考えると建物も入れて六年でやれ、こういうことになっていったわけです。早く安く、そして開港期は確実に、このことを強調してきました。今回の開港延期の事態は、まずこういう計画、枠組みを決定した政府、運輸省の責任が問われている、私はそういうふうに考えますが、運輸大臣はどうお考えでしょうか。
  41. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 関西国際空港の開港時期につきましては、昨年の十二月十四日に関西空港株式会社の社長から、建設工程の見直しを行った結果、これまで目標としてきた平成四年度末開港が不可能となり、新たな開港目標時期を平成六年夏ごろにしたいとの報告を受けたところであります。  開港延期によりまして関係各方面に対して多大な御迷惑をおかけすることになり、運輸省といたしましてもまことに遺憾であると考えておりますが、しかしながら今回の開港の延期は、まず第一に漁業補償交渉等による着工のおくれもございます。先生指摘のとおり、世界で初めての海を埋め立てる、水深十八メートルというような工事でございまして、当初予測を上回る地盤沈下の対応等やむを得ない理由によるものと認識いたしておりまして、運輸省といたしましては、新しい開港目標時期に向かって一刻も早く開港できるように努力してまいりたい、こう思っております。
  42. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 今回はやむを得ない措置だ、それはそのとおりなんです。沈下をしているからそれだけ工事を延期しなければならないという、そのこと自身はやむを得ないわけです。しかし、これだけばんばん開港の時期を決め、そういう計画の中で遂行するようにというふうに進められてきた政府のこれまでの発言から見たら、今回はやむを得ない措置だということで済まされるのかなというふうに願うわけです。  そういう点で、私は沈下問題もそういうことが言えるというふうに考えます。  九〇年の四月二十三日に会社は、開港後五十年で八メートル沈むというふうに予測をしていたところが、それが昨年の四月の時点で七・七メートルも沈下をしてしまって、暮れには八・四メートル沈下をしてしまった、そういう中で十一・五メートルに修正しました。しかし、この問題はもう当初から最大のテーマでした。民間株式会社の方に空港の事業を引き渡すその以前から、これが最大のテーマであったわけです。  運輸省の委託を受けた土質や沈下問題の検討をした土質工学会関西支部の関西国際空港土質問題検討委員会の委員長赤井浩一先生は、八〇年当時の講演の中で、空港島の沈下は沖積粘土層で埋め立て工事中に五メートルから七メートル沈下する、深層の洪積層は埋め立て期間中に二メートルから四メートル、さらに埋め立て後三・五メートルから五メートルの沈下が残り、合計十・八メートル、沖合の補助滑走路の一番端のあたりでは十五・三メートルと見られる、こういうふうに明確に言っていらっしゃるわけです。これは、そのまま運輸省の航空審議会の第二次答申の際にもこの数字を使っていらっしゃいます。八メートルという沈下予測ではなく、今最も現実にふさわしいこの数字が沈下予測ではなかったのでしょうか。
  43. 竹内良夫

    ○竹内参考人 関西空港の竹内でございます。  先生おっしゃるように、あの地域におきましては大変深いところに、地盤に沖積層、洪積層がございまして、その上に巨大な空港をつくっていく。大変重いものでございますので、沈下が予測されるわけでございます。その上に工事をしていかなくてはいけない、こういう状況でございまして、昭和五十五年度に運輸省におきましてはこの地盤沈下予測等の研究につきまして土質工学会関西支部にこの建設地盤の評価と沈下特性の検討を委託したわけでございます。我が国の土質問題に関する権威、先生先ほど赤井先生とおっしゃいましたけれども、赤井先生等の権威者に諮りながら検討が進められてまいりました。その検討調査の結果が昭和五十八年度末に報告されているわけでございます。  報告によりますと、この建設地の地盤の地層の構成、砂とか泥とか、その地層の構成とか土質の特性ですね、その土の特性は明らかになったとされております。ただ沈下特性、すなわち沈下の量、どのくらいの量になるか、あるいはその沈下のスピードが時間的にどういうふうに変わっていくかという沈下特性の検討については、先ほどおっしゃいました洪積層の間に存在する砂層、砂の層の排水効果、これに関係するわけでありますが、どの層が排水層として期待できるかというようなことについては不確実な面がたくさんあったわけでございます。そのためにぴしっと計算するということはできなかったわけでありまして、どのような計算方法でどのようにやっていくかという勉強はいたしまして、いろいろな仮定を加えまして、いろいろなケースに対応してこのような形になるよということを示しておられるわけであります。したがいまして、この調査はいわゆる沈下が幾らになるということを決めたものではございませんで、むしろ考え方を検討したものでありまして、沈下量は、それを受けまして今度は会社の方で決めていった、こういう状況がございます。  なお、この際の報告には、実際のその時代のボーリングであるとか、あるいは施工方法がはっきり決まっておりませんので、施工方法の決まった段階において検討するということ、それから、実際に埋めてみないと本当のところよくデータがわからない、したがって、その実施の最中においてよく調査をいたしまして、その調査の結果をフィードバックすべきであるというようなものと運輸省に報告されているわけであります。私ども会社は、昭和五十九年十月に発足いたしまして、この考え方を引き継ぎまして実施したわけであります。沈下量も計算したわけでありますが、その基本的な考え方はこの委員会の、運輸省の考え方をもとにして実施いたしました。  それからまた、具体的な施工条件を、すなわち、ただ二十メートルなら二十メートルの厚さのところにぱかっと土を捨てるのではなくて、まず六メートル捨てて、それをしばらく様子を見ながらまたその上に何メートル捨てるという順序等がありまして、その施工のスピードと沈下の量が変わってくるわけでありますから、その施工の条件等を決めましてこれにアプライしたわけであります。そして、その中で最も妥当と思われる、前委員会においていろいろやった計算のいろいろな中で最も妥当と思われるような排水層を抜き出しまして、その上で前の計算方法等を使いましてでき上がったのが、沈下予測は開港後五十年における沈下量といたしまして沖積層で六・五メートル、洪積層で一・五メートル、合計沈下量を八メートルと予測したわけでございます。  そのときにあわせまして、土質工学会の委員会で言われましたように、埋め立てを行いながら沈下予測を実施しなければいけないということでございますので、まず全体の埋め立てを行うのに先行いたしまして一部調査区域というものをつくりまして、その調査区域に、実際の高さですね、それと同じような形での模型を、模型といいますか調査区域をつくって、その挙動を詳細に検討することにしたものでございます。
  44. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 大変長い御答弁、ありがとうございます。ただ、社長さんがおっしゃりにくいことを省いていらっしゃる。だから、そこのところを私の方から御紹介をしたいというふうに思うのです。  それは、運輸省の方の基本的な考え方を引き継いでやってきた、そういうことがるるお話の中にもありました。そもそも運輸省はこの当時どういうふうな物の考え方をしていたのかということですが、これは政府の空港計画の策定に実態として一番深くかかわった方が、運輸省第三港湾局の関西空港調査室長の古土井さんでございました。この方は、空港会社ができると今度は第一工務部長として就任をしていらっしゃいます。うなずいていらっしゃいますので間違いがないと思いますが、八二年の十月の「新空港レビュー」の中の講演を読んで、なるほどそういうことかと驚きましたけれども、ちょうど八二年というのは、翌年八三年にもう空港建設に向け概算要求をしていかなければならない、そういう時期でございました。もちろんそのときは国がこの空港島をつくるんだという前提で作業をしていらっしゃるわけですが、にもかかわらず、やはり事業費のことをとても気にしていらっしゃる。それで、ボーリング調査の結果は工費の関係で非常に気になる、こういうことをおっしゃって、今回の調査では、つまりボーリング調査のことですが、最初に二十五本、あと三十本とやられたそのボーリング調査では、洪積層については沈下があっても上部で終わり、これまで言われた八メートルじゃなくて二メートルしか沈まない、六メートル助かるんじゃないか、これはつまりお金が助かるんじゃないかということで大変期待を持っている。この物の考え方ですね。この洪積層の沈下予測というのは、いみじくも当初予測された洪積層は一・五メートルという数字に合致してくるわけです。  それからもう一つ、社長さん御自身が、これは「グラフ関西新空港」の二号、昨年の十二月号で、洪積層の沈下の各種ケースを考える際に経済的であることを考えた、私は御苦労されたんだなとそのとき思いました。それから一般報道でも、一兆円の工事費が決まったところで金に合わせて沈下が決められた、何しろ一メートルの埋め立て土砂を盛ると五十億かかる、あるいは開港時期が九三年三月と決められたところでそれに合わせて沈下カーブが選択された、こういうふうに指摘をしているわけです。昨年延期が決められたときの朝日新聞でしたか、皆さんの会社の最高幹部というふうに書かれておりましたが、ずばり、大きな予測値をとればそれだけ金が必要になる、事業費の削減を国から言われていた状況下で事業を進めるための選択であった、こういうふうにおっしゃっているわけであります。  だから私は、調査は科学的でも政策的選択は経済優先、そのことを運輸省そのものが考えていたという点で、私は運輸省にその責任を問うてみたいと思うわけであります。いかがですか。
  45. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 いろいろ今先生の御意見をお聞きもいたしました。そして、空港の社長からのお話もございました。何しろこういう世界で初めての大事業でもございますし、今お聞きをいたしますと、工事にかかってそして調査をすると、そういうような状況でございまして、もちろん経済の問題も考えたでございましょう。しかしまた、騒音その他の関係で海の中、こういうようなことも考えて、したがいまして、先ほど話しましたとおり、いろいろ漁業交渉のおくれあるいはまた予測できない地盤沈下、こういうことでありましたので、私といたしましてはやむを得ないことであった、こういうふうに考え、今後開港に向けて一層の努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  46. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 やむを得ないということを繰り返されるのは、まことにもうこれ延期を決められたので幾らか開き直っていらっしゃる。少し前の議事録読んでごらんなさい、そんなことは少しもおっしゃっていらっしゃいませんよ。  私はここで確認をしたいのですが、関空が沈下予測の基礎にしたのは運輸省の関西国際空港の土質に関する技術課題の検討、これであった。これは沈下部分のところだけ運輸省からいただきました。確認をしたいわけです。それから「内部資料」とありますが、この報告書は非公開ですか。
  47. 宮本春樹

    ○宮本政府委員 お答えいたします。  お尋ねの報告書は、運輸省の第三港湾建設局が昭和五十五年度から五十八年度にかけて社団法人土質工学会関西支部に委託して行った調査の報告書のことと存じますが、当該調査は土質工学の権威の方々に専門的立場から純粋に技術的な調査をお願いしたものでありまして、私どものところでは内部資料として一部保存しておりますが、従来から公表しておりません。先生のお手元に概要を作成してお届けいたしておりますので、当該報告書そのものを提出することはお許しをいただきたい、そのように思います。
  48. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、この調査を公開するべきだ、そのことをまず最初に申し上げておきます。  これを読ませていただきました。沈下計算については「空港島の埋立は埋立厚さが厚く、沈下の対象層厚も百メートルを越えることより、現段階で圧密沈下量を正確に予測することは困難である。」そういうふうに書き出しをいたしまして、そして、その締めくくりのところにはこういうふうに言っているのです。「洪積粘土の圧密条件や排水層のとり方など必ずしも正確に予測できないこともあり、予測沈下量の精度上の問題がある。このことにより、本工事に際しては沈下観測やその他の現地観測を実施するのが望ましい。」こういうふうに言っていらっしゃいます。  今、社長さんの御発言の中にも随分、観測をしながら、実際に埋め立てながら見ているのだということを言われました。そうすると、不確定で沈下観測やその他の現地観測が望ましい、こういうふうに言っている。そして八メートルの問題も、これはこの中でも幅を持たせよということを言っているのですが、こういう文章の言葉からしたら、これは沈下の数値もそれから開港時期も固定的に考えてはならない。ところが、それを固定的に考えて、すべてをそれに合わせてやっていくというようなこれまでの運輸省の、あるいは関空のやり方は、この文章からとても考えられない。もしここの文章で言っている立場に立ったら、八メートルというのはあくまでも暫定的なものであり、かつ開港時期も暫定的なものであるというふうに考えるのが妥当ではないでしょうか。
  49. 竹内良夫

    ○竹内参考人 流れといたしましては先生のおっしゃるとおりでございまして、よく調査をして、先行的に実際の調査をし、それをアプライしてまたフィードバックしていくという考え方を会社としてはとっているわけでありまして、その結果実際のデータがわかりましたから、昨年の四月に今までの沈下量の八メートルを十メートルというように直しました。また、過去の台風等の安全に備えるためにプラス四メートルに地面を保つ。そうするためには三・五メートルの厚さをプラスしなくてはいけない。すなわち、八メートルの沈下予定を十一・五メートルにしたわけでございます。それでそのときの厚さは三十三メートルになります。委員会の考え方によりますと幅があるじゃないか、我々の決定も幅があるではないかということは、理論的には私はそのとおりだと思いますけれども、幅といいましても、私は、やはり一つの仕事を進めていくときには、その時点において最も妥当だと思われる期限がちゃんとあると思います。その期限に合わせまして、その目的の日にちに合わせましてすべての段取りといいましょうか、何も埋め立てだけではございません、いろいろなことがございます。また、土をとるということにつきましても関係の地方公共団体あるいは建設業、いろいろなところがございまして、そういうものの全体のシステム的なものを図っていくためにも、目標の日にちを決めまして、それに応じての体制を進めていくというのが当然であると思います。また、それに応じてあらゆる努力をするというのが私どもの任務であるというふうに考えているものであります。
  50. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そうすると、今回は結果がわかったから直した、今後もその結果がわかったらまた直される、そういうことですね。つまり延期され、またその延期をしてもなお……。
  51. 竹内良夫

    ○竹内参考人 当初の委員会で言われましたように、実施に当たってよくその現地のデータをフィードバックしろということが言われておりますが、私どもはそれを一つの工程の中のルールといたしまして、先行的に、全体の島ができる前に現実の模型、模型といいますと小さく――その点からの結果に基づいて今回の結論を出したわけでございますので、今回は前回に比べますとはるかに精度の高いものでございます。自信のある性質のものでございます。
  52. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そうすると、あなたがこれまでおっしゃってきたことと随分矛盾しますよ。関西空港の社長として、この空港を機能的、効率的なものとして低廉しかも予定どおり期間内に完成させることを任務としている、それが運輸大臣からの御指示だ、こういうふうにおっしゃったわけです。普通、未知数の多い工事は実験しながらやっていく、ただし常に見直しを前提に取り組んでいく、これは常識ですよ。その常識を適用するなら、今後も結果がわかったということになったら見直しをするということで、暫定的だというふうにとらえたらいいのかどうか、そこだけはっきり言ってください。それだけでいいんです。そこだけでいいです。
  53. 竹内良夫

    ○竹内参考人 その後の沈下状況は今回の予想に一致しております。したがいまして、私は責任を持って進めていくとお答えいたします。
  54. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、これは非常に矛盾をよくあらわしていると思うのです。片方では、不確定だ、観測しながら進めなさい、片方では、事業費を削減せよ、九三年の三月に開港せよ、そういうことで、早く安く、確実に、この二つは決定的に矛盾していますよ。そうは思われませんか。そして、その矛盾をつくり出したのは、国がこの空港島の建設までも民間株式会社に任せたそのときからボタンのかけ違いが起こってきた。だから、私は政府に責任を求めているわけです。そしてこの問題は、結局、事業の進め方にも関する基本的な問題じゃありませんか。  私たちは、国際空港の公共性、安全性から見て、利潤追求の株式会社で運営することは問題がある、こういうふうにこの会社法の制定のときから指摘をしてきました。今回は、残念ながらその指摘がずばりと当たった、その正しさを証明したというふうに言わざるを得ません。しかも、これからどれだけ沈むのか、そのことについても、先ほどの赤井先生は、陸地がまだ半分だけれども、全部陸地になったら全体の重さでさらに深い層が沈下を始めるかもしれない、これは学位論文が書けるほどの新しい壮大な実験だ、こういうふうに言っていらっしゃるのです。九四年夏の開港、今度は社長さんはそういうふうにおっしゃるけれども、しかし、その時期であれば、安全、確実に開港ができるという、そういう科学的な根拠はこれまた何ら示されていません。だから私は、安全を第一にし、これまでの総括をきちっとやって拙速を慎むようにということを求めておきたいと思いますが、この沈下調査やその判断、工事の点検結果などの資料は、これもまた関西国際空港の土質に関する技術課題の検討調査、運輸省のつくったそれとあわせて公開をするべきだということを求めておきたいと思うのです。  時間が限られておりますので、一言だけお答えください。運輸省にお願いします。
  55. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 先ほど航空局長がお答え申し上げましたように、報告書を提出することはできない、こう考えております。
  56. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そんなことはとても承知できません。それほどにあなた方はその資料が公開してみんなに知られるのが怖いのか、公開するのが怖いのかというふうに言わざるを得ないわけであります。  そこで、大蔵大臣にお伺いいたしますが、いずれにしても、これは関空は無収入のまま十五カ月、一日一億一千五百万円とも二千五百万円とも言われておりますが、金利利子を負担しながら、しかも、事業費をふやしまして、三千六百億円の事業費がふえました。これは厳密に言えば、繰り返しますが、一種空港として本来国がつくるべきもの、当時の運輸大臣もそう答えていらっしゃった。しかし、今日、こういう結果になりました。事業費の負担増は国が負担するのが当然である、私はそういうふうに考えるわけです。  もう一点は、既にもう全体構想の調査費がついています。しかし、これもまた第一期計画そのものの検証に立って、公害対策、安全性、住民本位の周辺整備など空港建設の原点に照らして検討することが必要だと思います。そして何よりも、第一種空港は国が責任を持つという基本に立ち返って、事業主体と財源を再検討することだと思いますが、これは大蔵大臣が運輸大臣も務めていらっしゃいましたので、あえて御答弁をお願いいたします。
  57. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 随分意地が悪いですね。  ちょうど今御質問を伺いながら、この着工前後の経緯を私自身が振り返っておったところでありますが、私は基本的に、この建設を民間活力導入という臨時行政調査会の御意見を受けて進めてきた方式が間違っておるとは考えておりません。そして、むしろこの方式においてよりよいものがつくられることを心から願っております。  ただ、今、関空の竹内社長がるる説明をされましたように、当初の予測の中でいろいろな数字があった中の一番厳しいものが現実の姿になった、これについて委員が追及されたその中には、我々が今後の計画を進めていく国の立場として、これをサポートしていく中においても考えていくべきものが多くあるということは私は否定をいたしません。  ただ、もう一つの問題は、委員が期間について、また変わるのではないか、暫定的なものとしておくべきじゃないかという御指摘がありましたけれども、私は、国際空港というものの性格から見て、やはり開港時期というものがある程度きちんと設定をされないという状態は国際航空路線設定の上で非常に大きな影響を及ぼすと考えますから、開港時期等につきましては、できるだけきちんと技術的なめどの立った上で設定をされることが望ましいことだと考えておりますし、先ほど竹内社長から、六年夏ごろというものについては今までのデータから考えて十分な自信を持っておりますという御答弁がありました。私は、そういう方向になっていくことを心から願います。  一方では、その全体計画のお話が出ました。私は運輸大臣のときにも、まず一期の事業を着実に推進することが必要だということを現地でも申し上げた記憶がございます。そして、基本的にやはり私は、この一期工事というものをできる限り早期に完成をさせ、実用に供するということにまず重点を置いていただきたいものと考えております。  一方では、世界の航空路線の発展の中で、問題が将来にかかるものでありますから、全体構想というものはやはり関西国際空港そのものの収支採算の長期的な見通しだけではなく、近畿圏における航空輸送需要の長期的見通し、さらには、世界の航空路線の中に関西国際空港というものがどのような役割を果たすことが期待されるか、こうした視点から十分検討される必要があると思います。  今後の課題として、私どもは今、第一期工事の推進の状況を注意深く見守らせていただいております。
  58. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 時間がもう残されておりませんので、私は誤解があったらいけませんから言いますが、その開港期はやはりある程度決めておかないとだめだということはそのとおりだということは承知しています。だからこそ、こういうふうな未知の部分がある工事についてはもっとゆとりを持って最初からやるべきところを、国が九三年とゴールを決めたところの責任を求めたわけです。  自治大臣に来ていただきました。大変遅くなって申しわけありません。  自治大臣にお伺いをしたいのは、運輸省と自治省の間で八七年の着工に際して覚書が交わされているということを聞いています。つまり、事業費が一兆七百億円を超える分については原則として地元自治体に負担を求めないという約束をしておられると聞いています。この点についてと、それからもう一点は、地元の周辺自治体がこの開港延期のために関連事業などで非常に困難を来しております。それは借金の返済の時期も迫っておりまして、したがって私は、国としてぜひ地方自治体が今度のことで混乱することのないように借換債の適用など適切な措置をとられるように求めておきたいわけであります。自治大臣
  59. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 お答えいたします。  今地方行政委員会やっておるものですから、かけ持ちなものですから失礼いたしましたが、今の覚書の問題でありますが、これは事務的な問題でありまして私も承知いたしております。  それと、今二番目に出ました関係町村、いわゆる自治体でありますね、周辺町村、こういったところに対する非常な御迷惑がかかっておるという問題でありますが、そういった点があるとすれば、これから我々の方も地方自治体に対する財政的な援助、いわゆるこれに対する公共事業が推進できるような、あるいは主体的な事業が進められるようなそうした財政的な援助につきましては最大限の努力をいたしたい、こう思っております。  ただ、この空港自体の問題につきましてのことにつきましては、主管庁が運輸省でございますから、まだ運輸省から何ら話は伺っておりませんので、伺った場合にはその際十分協議して措置をとっていきたい、こう思っております。
  60. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 時間が参りました。きょうは厚生大臣にお願いをして、そして私は動物用医薬品等に関する行政監察報告書に対する厚生省のお取り組みについてお伺いをしておきたかったわけでありますが、時間が参りまして、最初から座っていただきましたのに失礼のほどを本当にお許しいただきたいと思います。時間配分を少し、どうも済みません。  ありがとうございました。
  61. 増岡博之

    増岡委員長代理 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  次に、松浦利尚君。
  62. 松浦利尚

    松浦(利)委員 一時間半ですから、政府答弁は簡潔に、私の質問も簡単にさせていただきたいと思います。  きのう、我々は反対をしたのですが、長い討論の末九十億ドル、参議院も通過成立をしたわけでありますが、時を同じゅうして、実は湾岸戦費の問題でアメリカの予算局長が米下院歳入委員会で証言をしておられるわけです。これは今までも再三本委員会で議論され、政府の言うこととアメリカの上院、下院における財政局長あるいは政府要人等の証言発言が食い違ったことが取り上げられてきたのです。もう議論は打ち切りたいと思うのですが、やはりこういうのが報道されますと、はっきりさせておかなきゃいかぬと思いますので、くどいようですが再度お尋ねをしておきたいと思うのです。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕  それは、五日、米下院歳入委員会でダーマン米行政管理予算局長が「湾岸戦争の費用は外国からの支援額とほぼ同じ程度になる」、こういう証言をいたしまして、外国が表明した支援額は五百四十五億ドルに上る、米国の負担は百五十億ドル未満になるだろう、こう言っておるわけです。しかもその中で、今度の九十億ドル、これはすべて米国の戦費に向けられるものだ、日本の九十億ドルも間違いなく米国向けのものであるということの議会証言を行っておるのですね。ところが政府は本委員会等を通じて、いや、これはGCCに出すんだ、GCCで配分を決定をするんだ、しかも、まあ言葉のやりとりでありますが、この九十億ドルは戦費ではない、こういう議論をされてきておるのですが、依然としてこの関係が埋まらない、これが一つ。これはどういうふうに解釈をすればいいのかが一つ。  それからもう一つは、日本の九十億ドルはこれから支払われるわけですから当然アメリカには未払になっておるのは、これは当然のことだと思うのです。それに不満を述べておられるのも事実ですが、しかし仮に、アメリカ側は、九十億ドル全部アメリカに入るんだと、こういうふうに証言をしています。そしてその九十億ドルが、仮に日本政府が言うように九十億ドルアメリカに行かなかった、八十億ドルしか行かなかった、十億ドルはほかのところに行った、こういう形が結果的に出てきたときに、日米間にこの九十億ドルの、出した、受け取るの問題でまた大きなトラブル、摩擦というのが起こってくる懸念があるのではないか。そういうことを避ける意味からすれば、アメリカ側が主張しておるこの発想というのは明らかに間違っておるのか、あるいは一方的な解釈なのか、そういう点についてもう一遍正確にひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  63. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 繰り返し申し上げておりますように、昨日参議院において通過成立をいたしました平成二年度補正予算(第2号)に基づき支出をさせていただくことができる状態になりましたいわゆる九十億ドル、これは日本政府は湾岸平和基金に拠出をいたすのであります。そして、その湾岸平和基金の理事会において配分が決定をされ、それぞれ各国がそれを受け取るという形になります。現時点においてその配分までは到底進んでおる状況ではございませんけれども、既に今まで拠出をいたしました二十億ドルを例に申し上げますならば、十三国にわたる配分がなされております。  そして、私は日本政府であり、日本国会に対して責任を負うておりますから、そして拠出をするのは日本でありますから、アメリカでどういう御議論が行われているかとはかかわりなく、我我は国会で御答弁申し上げましたとおり作業を進めてまいります。アメリカ側においてそれが期待にたがうかたがわないか、これは外交当局の方からお答えをいただくのが筋であると思いますけれども、我々は日本国会にお答えをしたとおりに行動をいたします。
  64. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵大臣、くどいようですが、仮に、GCCに送りまして、それでそれがGCCに米軍からの要求が出て九十億ドル全額アメリカの方に行く場合もあるということですな。それは日本政府意思とは無関係だけれども、GCCの理事会、二人ですけれども理事会の決定で米軍側に九十億ドル全部行ったという場合もある、こういうことですな。
  65. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは本当は外交当局からお答えをいただく方がよいことだと思いますが、理論的にそういうことが全く考えられないと申し上げるわけにもまいりますまい。しかし、現実に私はそういう事態は起こり得ないと思います。
  66. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、私たちの理解は、この九十億ドルというのはあくまでも全額米軍に行くべきものではない、アメリカに行くべきものではないというふうに理解をせよということですか。
  67. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、湾岸の平和回復努力の中で最大の貢献をされたという意味においてその大宗がアメリカに向けられるであろうとは思います。しかし、日本のGCCに対して拠出をいたします、湾岸平和基金に拠出をいたします全額がアメリカに送られるとは思えません。しかし、もし必要でありましたなら、実際の実務に当たる外務省の事務当局からも補足の答弁をお許しいただきたいと思います。
  68. 松浦利尚

    松浦(利)委員 結構です。大臣がそれほど責任持って言っておられるのですから、私は日本の大蔵大臣が言われたことを信じます。  もう一つお尋ねをしますが、さらに局長はこういうふうに言っていますね。「日本を筆頭に依然未払いの国が多く当面の費用をまかなうのに百五十億ドルの補正予算は必要で、」こういうふうに言つておりますね。ですから、日本の分が今度は払われていきます。すると、残った分は、百五十億ドルが余ったらそれは全部アメリカの国庫に戻ってくるんだ、戻すんだ、こういう発言も下院歳入委員会で行っておるのです。ですから、アメリカ側は百五十億ドルを一応補正予算に、予算教書に計上はしたけれども日本から九十億ドル、援助国から金が来れば、その浮いた分は百五十億ドルを返すんだ、こう言っておるのです。  そこで、今までの議論と、参議院の議論がどうなったのかは新聞等で定かではありませんが、戦争が終わった、終わったからこの九十億ドルが平和解決、戦後復興等に使われることを期待するというような海部総理の発言があったのですね、戦争が終わったという時点を踏まえて。ところが、アメリカの局長の発言によると、全額要するにアメリカに来る、来た分は戦費として、残った分はアメリカの百五十億ドルを戻すんだ、こういうふうに言っておられるのですから、これはあくまでも今まで湾岸において行われた戦費に充当される九十億ドルだ、戦争が終わろうがどうしようが、あくまでも九十億ドルはそういうものに使われる金だ、こういうふうに我々は理解すべきだと思うのですが、その点についても正確にお答えいただきたいと思います。
  69. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私はアメリカの予算の仕組みを十分に承知をしておるわけではありませんので、アメリカにおける会計処理がどのようになされるかについてお答えをする立場にはないと思います。  しかし、現実の問題として、繰り返し申し上げておりますように、九十億ドルという日本の資金協力というものは、湾岸の平和と安定の回復のために関係諸国が活動する経費の一部として、国際的にも日本がそれぐらいの責任を負うにふさわしいと判断をし、日本が拠出を決定したものであります。そして、それは湾岸平和基金に日本は拠出をいたすわけでありますから、その九十億ドルそのものがアメリカに全額入るという事態は、私としては想定できません。  その使途につきましても、総理がたびたび御答弁を申し上げてきたとおりでありまして、そうした要請、状況を踏まえて理事会で配分が決定をされました後、それがアメリカの会計処理の上でどう処理されるかということは、私は日本政府が論評すべき部分ではないと思います。日本が拠出する資金というものは、総理が本委員会におきましても繰り返し御答弁を申し上げてまいりましたような内容を前提に資金協力として行われるもの、私はそう承知をしております。
  70. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私たちが九十億ドル問題を含めて、今まで総括、そして一般質問で議論をしてきて、現実に予算は通ったわけでありますけれども、依然としてその関係が埋まらない。疑問が晴れない。ですから、結果というのは、九十億ドルが支出をされて、そしてアメリカが言っておるとおりに仮に処理されたとすれば、仮にですよ、GCCに対しても、日本影響力を持った上でGCCに日本が、逆に言うとひもをつけて九十億ドルを渡すわけですから、日本意思が必ず通るということを前提に、私は先ほど大蔵大臣を信用すると、こう申し上げたのです。  しかし、いずれにしても、結果的にアメリカの予算局長がアメリカの下院歳入委員会で証言をしておるとおりの仮に結果になったとすれば、私たち議会は大変な間違いを犯したということが、後から国民から批判をされる原因をつくるのですね。ですから、私は逆に言うと、このアメリカのことだから、やる側ともらう側が全然違うことを言っておるのですね。しかし、もう問題は、九十億ドルは通った、ですから、あとは結果を待つ以外にないということだけになるのだろうと思いますけれどもね。  私は、先ほど言ったように、大蔵大臣が、日本の大蔵大臣ですから、言われることを信じると冒頭申し上げたのです。しかし、結果がそうでなかったときにはそれ相応のやはり政治責任というのはとられてしかるべきだ、海部内閣の責任を私は国民から問われてしかるべきだというふうに思います。その点について、海部総理がおられないから、大蔵大臣からお答えをいただきたいと思います。
  71. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 本院で繰り返し海部総理が述べてこられましたものは、日本の今回の九十億ドルの使途と言われますもの、これについて、前の二十億ドルは物資協力と資金協力との二つがあった。今回は資金協力一本にしたい。そしてその使われ道として、輸送関連でありますとか医療関連でありますとか事務関連あるいは食糧等に使っていただきたい。この意思日本として湾岸平和基金の理事会に対して正式に申し述べる。そして、その日本の希望する使途にこれが充当される。そうお答えをしてこられたと思います。  ですから、それとアメリカの会計処理がどうなるかということは、どうぞ分けてお考えをいただきたい。私はアメリカの会計処理の方法まで実は責任を負う立場にはございません。
  72. 松浦利尚

    松浦(利)委員 あなたにアメリカのことまで責任をとってくれと言っているのじゃないのです。私が言うのは、九十億ドルの使途について、それから支出について、この本委員会における内容とアメリカの違いが出ておりますので、ですからその結果について、仮に本院で答弁された内容と違う結果が結果的に出た場合、海部内閣としての責任をとっていただきたい、それが政治家の道だというふうなことを申し上げておるのです。  ただ、総理がここにおられませんから、そのことを大蔵大臣に問うのも酷だと思いますが、私は当然、これほど九十億ドルの問題について議論があり、しかも通ったその日に米歳入委員会における財政局長の証言というのが明らかに日本側と違っておるということに対して、結果が起こったときには、それ相応国民に対して政治家として海部内閣は責任をとるのが当然だと思うのです。それは私は結果が出たときに改めて議論させていただきたいということを申し上げて、これは一応終わらせていただきます。  次の問題に入ります。それで、次の問題に入る前に、実は外務大臣にお尋ねをしたいと思います。  それは、第四十四国連総会におきまして事務総長が提案を行っております。第四十四回、一九八九年の総会で提案を行っておられるわけでありますが、その中に、各国政府派遣の民間要員について提起がされておるわけです。その提起の中に、こういう平和維持活動について民間要員の派遣についてそれぞれの政府から文書でこういう問題について回答をしてもらえぬだろうか、報告をしてもらえぬだろうか、こういう提案が、四十四回国連総会で事務総長が提案をしておるのです。そのことは外務大臣、知っておられますか。
  73. 丹波實

    ○丹波政府委員 事実関係の問題でございますので、私の方から答弁させていただきたいと思います。  おっしゃるとおり、第四十四回国運総会に事務総長が「文民派遣の枠組み」と恐らく訳される報告書を提出しております。  その中で、PKOの問題につきまして、要員、資材等で貢献の用意がある国は国連に、英語でインベントリーズとなっていますけれども、インベントリーズは在庫というのが普通の言葉ですけれども、ここでは恐らく目録ということだと思います、国連に目録を提供することができるという書き方でございます。そういうものが存在していることは外務大臣も承知しております。
  74. 松浦利尚

    松浦(利)委員 外務大臣、事務総長がわざわざ、次のような領域において、継続的にあるいは特定のプロジェクトを遂行するために、平和維持活動を主要な任務とする専門家や編成部隊を各国政府が派遣をする準備をしてくれぬだろうか、文書で送ってくれぬだろうか。その内容は、新たな活動計画の策定。医療、病院、診療所。トラックやバスの輸送活動。乗り物の維持・管理。食事配給活動。キャンプ等の基礎設備の建設あるいは維持・管理。情報伝達システムの設置や補助。あるいは工事・建設。給水施設、貯蔵システム、下水処理施設、発電所、配電システム、キャンプの建設、飛行場・ヘリポートの建設、道路・鉄道の建設、堅固な舗装。あるいは非軍事の航空機・ヘリコプター用の搭乗要員及び維持・管理。こういったものについて、我が国政府に対して準備ができるかどうかという報告を文書で求めておるのですが、これについて報告を出されましたか。
  75. 中山太郎

    中山国務大臣 国連事務総長からの文書による要請に対しまして、PKOに対して要員、機材等の貢献の用意のある国は目録を提供するとなっておりますが、現在日本政府は、どのような貢献ができるか検討中でございます。
  76. 松浦利尚

    松浦(利)委員 検討中だ、こう言われるのですが、このPKO問題というのは、既に、昭和何年ですか、昭和五十八年ですか、昭和五十八年に国連の平和維持機能強化に関する研究会の提言というのが出されまして、そして、これがどういうわけか一番最後の、我が国のとるべき役割というところだけ削除して、そして国連に報告されておるのですよ。これも間違いない事実なんです。昭和五十八年度から既にPKOについて、文官の、民間の派遣についてどうあるべきかということの検討に入り、そしていろいろ各総理大臣が答弁をしてきておられるにかかわらず、四十四回総会の国連事務総長の提案にも、我が国は検討中と言って報告をしなかった。  ところが、改めて第四十五回国連総会におきまして、今度は逆に事務総長は、四十四回の国連総会は報告でしたけれども、四十五回の国連総会では事務総長報告をしております。提案じゃなくて、今度は報告に変わっているのですね。  その報告内容を見ますと、日本政府は何か自衛隊を派遣することばかり頭に置いておるようですが、この報告を見ますと、「軍人の代わりに文官によって遂行される任務とサービス」という条項までわざわざ設けて、こういう点を積極的にやれと提案をしているのです、これは。先ほど言ったように、医療サービス、病院と診療を含む。固定翼の航空機とヘリコプターの運航とメンテナンス。トラックとバスの輸送の運航とメンテナンス。配膳業務と炊事サービス。さっき言ったように、キャンプの下部構造の建設。通信システム。水道、下水処理、発電所、飛行場・ヘリポート、道路・鉄道、舗装。土木工事、電気工事、建築などの専門官。無線技師、無線操作者、それから電気技術者、発電技術者、車両修理工、暖冷房技術者など高度な専門職サービス等。PKOで民間がしなければならない文官としての任務を羅列して、こういう任務が非常にこれから国連のPKO活動に重要だと報告している、今度は。  何でこれに対応しようとしないのですか。国連協力法案が昨年秋出ました。どこに問題があったか。何で制服の自衛官を派遣しなければならぬのか、そのことが問題であれは廃案になったはずなんです。ところが、国連の方で求めておるのは、何も自衛隊じゃないんだ。民間の人たちをこれほど今緊急に募集しているんですよ。何でこれを中心にして、外務省が中心になってこれを組織化しようとする努力をしないのですか。どうですか。
  77. 丹波實

    ○丹波政府委員 事実関係の点につきましてのみ私の方からお答えさしていただきたいと思います。  確かに、昭和五十八年にそういう研究会が一定の意見を出されたことは先生のおっしゃるとおりです。これは当時有識者に、日本の国連協力、平和維持活動への協力のあり方について研究していただくということで、必ずしも外務省の意見ということではございませんで、一定の意見を出していただいたことは生生のおっしゃるとおりですが、当時の報道はやはり、まだ問題だという報道が非常にあったことは、生生もこの問題に大変お詳しいので御記憶だと思うのですが、まさに外務省と申しますか、政府全体として日本国民のこういう協力についてのコンセンサスができてくるのを、まあ待っていたという言葉が正しいかどうか、そういうことで今日まで来たというのも事実の一つの側面であるということは御理解いただけると思います。  それから二つ目の、昨年の総長報告、これは、全体として先生が今おっしゃったとおりでございますが、一つだけコメントさせていただきますと、今後のこういう平和維持活動への日本の協力のあり方につきましては、現在内閣官房が中心となって取りまとめを行っておりますので方向はまだ出ておりませんが、事実の問題として、この総長報告は、平和維持軍あるいは停戦監視団の本体そのものを文民で置きかえていくということは言っておりませんで、ロジ的な、先生がまさに今読み上げられたところのロジ的な側面で、軍人がやっているところを今後文民でも実行し得る任務は次のとおりということで挙げておるわけでございます。
  78. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今言われたとおりでしょう。何も自衛隊が行かなくても、文民であるべき範囲というのが非常に大きいということを国連局長が認められたんだ、外務大臣。なぜ日本は、憲法がある以上その分野に積極的に取り組もうとしないのですか。そこに問題があるのですよ。我々も、このPKOの問題について何も反対をしておるわけじゃない。我が国として参加できる分野について積極的にやろうじゃないか。しかも国連の提案の中に、具体的に文民が行うべき内容が羅列されておる。まさにこれは日本が戦後復興の中で中心的な役割を果たしてきた分野ですよ。世界に向かって一番得意な分野ですよりこの分野でなぜ積極的に世界に貢献をしようという努力をしないのか。その点が非常に疑問です。私は、その疑問点が解けません。  それから次に、あと一つ、もう一つお尋ねをしておきますが、この四十五回国連総会の中で「軍人の代わりに文官によって遂行される任務」、こういうふうにちゃんと書いてある。ですから、軍人でない、文官がするところなんだ。そして、その中に、そのほかに、「国連の語法では、「文官」という呼び方は、制服の警察も含む。」と言うのですよ。日本の警察官は文民なんですよ。日本の機動隊は文民なんですよ。ですから、この中で、これは翻訳はうちの党でしましたから、翻訳の正確さという問題はちょっと違うかもしれませんけれども、この中で、「遂行すべき任務次第で、諸活動が従来のように完全に軍事的であることが少なくなってきた」、こう言うのです。軍事的である分野は少なくなったと言うんだ。これからはだからそういった意味では、「将来には市民警察職員への必要が生じてくる」「伝統的に軍人によって遂行されてきたいくつかの任務は、国連の市民警察によって遂行される場合もある。」こう言っているんです。  だから国連事務総長の言っておられる四十五回報告内容の中で、日本の優秀な警察、機動隊、そういったものを国連がまさに言う市民警察として、これは組織された、立派な、訓練もできておるし、組織集団ですから、まさにぴったりじゃないですか。しかもこれは軍人にかわり得る組織なんです。しかも軍隊ではない、市民警察なんです。私は、こういった意味からすれば、自衛隊の予備役自衛官がどうのこうのとかあるいは自衛隊を参加させるとかどうかということは抜きにして、早急にこうした国連事務総長の提案、報告に従ってPKO、非軍事、民生にかかわる分野についての組織化を早急に行うべきだ。やろうと思えばできると思うのですが、外務大臣のお答えをいただきたいと思うのです。
  79. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま国連局長がお答え申し上げましたとおり、現在内閣官房を中心に、どのようなことが日本政府としてできるか検討中でございまして、いましばらく時間をちょうだいいたしたいと考えております。
  80. 松浦利尚

    松浦(利)委員 外務大臣、これはこの国連の事務総長の報告、四十四回、四十五回の提案と報告はもうお認めになった上での御発言ですね。どうですか。
  81. 中山太郎

    中山国務大臣 そのとおりでございます。
  82. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、日本政府がすべきPKOの役割というのは、国連の事務総長が示唆しておると思うのですよ。しかも、この前も私は取り上げましたけれども、外務省は当初は平和協力人材センター構想を持たれて、自衛隊などは参加しない、あくまでも国連事務総長提案、報告のような方向でまとめようと努力をしたんですこれは、外務省は一生懸命。これに自衛隊を参加させようとするからややこしくなって、いつまでたったってできぬのですよ。私は、国連中心の政府であるとするなら、国連の事務総長が提案したように、我が国の憲法に従ってやれる範囲、しかも提案をされておる文民としてやれる範囲、警察官を含めた組織づくりというのを検討すべきだ、そのことを主張をしておきます。  それと第二番目の問題は、それじゃこれを常設するかどうかという問題になってくると思いますね。ところが、実質的に常設をすることについては莫大な経費が伴うと思うのですが、大蔵大臣、その点どうでしょう。
  83. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 現在政府は、国連の平和維持活動に対する協力というものを推進すべく、公明、民社、自民党の合意を尊重して、新たな国際協力のあり方について鋭意検討をいたしておるところでございます。その過程において、財政当局としても、厳しい財源事情等にもかんがみ、慎重に検討することになりましょうが、現在進行中の状況でありますので、私は今御指摘の平和維持協力機構といった構想に、財政当局として意見を申し述べる段階には来ておらないと思います。  ただ、一般論として私が感じますのは、こうした機構を常設いたし、その要員を固定しました場合、その技術の保持という意味において果たして常設がなじむかということはあろうかと思います。例えば医療一つをとりましても、その機構に所属する医師あるいは医療技術者というものは現実にめったに患者に触れる機会がないといったことになりますと、必ずしも常設の方が望ましいのかどうか、その技術の保持という点からも問題が生ずるのではないか、そういう感じは私はいたします。
  84. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これは外務大臣、今政府が検討中だということですから、私は一つの提案を申し上げておきますけれども、常設というのは確かに金がかかるんです。口では簡単ですけれども、二千人、三千人というものを常設させるというのは非常に難しいです。ですから、例えば国連が求めているように、医療チームということになれば、この前せっかく行かれたけれども、現地で何もできずに苦労して帰ってこられたという医療団の御報告もありますけれども、この際、国立の医科大学というのが全国にありますね。私は、文部省と話をして、医科大学の医者の人数を二人ぐらいふやして、そしてその定員の二人は、いざというときには国連の医療チームの編成に参加をしてもらうというような対応をする。あるいは警察官については、機動隊の一部分について、これは緊急のときには直ちに国連平和機構に参加をしてもらう。あるいは消防署のレスキュー隊等についてもそういう対応をする。それぞれ各省庁に定員の枠を与えまして、そして一年に一遍ぐらい集まって、それで訓練をした上で、それぞれ平常の任務は行う、緊急のときにはまた直ちにはせ参じてそれが派遣されていくというような、そういう各省庁間が協力し合うという形で、私は停戦後の国連事務総長が求めておる平和協力機構というのは組織することは可能だというふうに思うのです。だから、そういうこともぜひこの際政府の検討議題の中に入れていただきたい、私はそう思うのです。これは総理大臣がおられませんから、それでは外務大臣
  85. 中山太郎

    中山国務大臣 この常設の部隊をつくるということは大変なコストがかかる、そして、例えば医療サービスにいたしましても、それだけの人員を抱えておくということも現実の問題として非常に難しいと思います。そこで、本部機構だけを常設にして、この参加できる人たちを事前に登録をするといったようなことも一つのやり方として考えられるんではないか。それと、今回の例えば国連のボランティアに応募された方も千名おられました。しかし、国連がこの人で結構だといって認定をしたのは三名しかいない。非常に、国連中心の活動をやる場合には、言語の問題とか過去の海外における活動の経験とかいろいろとございますから、私も実際その三人の方にお目にかかってみたら、全員が海外青年協力隊の経験の持ち主でございました。  そういうことから考えますと、政府は現在内閣官房を中心にいろいろなことを検討いたしておりまして、先生のきょうの御意見も私十分頭に入れて政府考え方を調整してまいりたい、このように考えております。
  86. 松浦利尚

    松浦(利)委員 平成二年三月の外務省の委託されたこの報告内容を見ますと、一番我が国で問題になるのは語学だと書いてあるのですよ。ですから、そういった意味では語学の研修ということも非常にこの平和協力機構の中では重要になってくると思うのです。自衛隊なんか行ったって、英語を知る人はおらぬですからね。――いや、中には知る人がおるかもしれませんよ。いや、中には知る人がおるかもしれませんね。だからそれと同じように、お医者さんだっておるんだ。――今訂正します。自衛官を侮辱したようであれば、今の失言は訂正します。英語に堪能な方もたくさんおられます、そういうふうに訂正をしておきます。  いずれにしても、語学の問題が非常に重要な問題だと。ですから、そのことを含めて語学を研修される努力をしていくべきではないか、こう思うのですね。それで私たち社会党も、自衛隊を除く平和機構のあり方については、今提案を申し上げましたように、国連の事務総長提案、報告等を踏まえて積極的に協力する対応をしていくつもりです。ぜひそういうことを御理解をいただきたいと思っておるところです。よろしくお願いをしておきます。  それから次に、これは外務省の国連局長にお尋ねをいたしますが、国連中心国連中心と言いながら、国連にお金を、分担金を滞納しておるところがあるのですよね、日本はまじめに納めていますけれども。それをひとつ、どういうところかを報告してください。
  87. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生の御質問は国連分担金の滞納国ということと理解いたしますが、昨年末の国連文書によりますと、一番滞納しておりますのがアメリカでございまして約三億ドル弱、次が南アでございまして四千百万ドル、ブラジルが三番目、アルゼンチンが四番、イラン、ユーゴスラビア、リビア、イスラエル、ソ連、トルコ、これが十カ国になります。
  88. 松浦利尚

    松浦(利)委員 その順番ですね。
  89. 丹波實

    ○丹波政府委員 はい。
  90. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ありがとうございました。  それから、これは事務的なことですが、分担金の高額の順位を言ってくれませんか、分担金の高額の順位を。
  91. 丹波實

    ○丹波政府委員 国の名前だけ申し上げます。順番に申し上げますと、アメリカ、日本、ソ連、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、中国、そういう順番でございます。
  92. 松浦利尚

    松浦(利)委員 外務大臣、今お聞きになったように、アメリカは、国連を中心だと、今度も多国籍軍の中心で、国連決議を中心にしてやられた。ところが、一番積極的に国連の中でリードしておるはずのアメリカが、今言われたように大変な滞納をしておるわけですよね。これは国連の運営に重大な影響を与えると思うのですよ。しかも金額は非常に大きい。ところが、日本は九千万ドルです。アメリカは二億三千四百万ドル、日本はその次、二番目の九千万ドルですけれども、まじめに、滞納せずに納めてきておる。  ところが、どうも金だけ出すところは、一生懸命まじめに金を納めるところは軽んぜられて、何か事があったときに構えて、わあっとたくさん、五十万近くの軍隊を派遣しておるところは尊重される、これは私は国連の運営としては非常にまずいと思いますね。我々日本国民としても非常に不愉快ですよ。金というのは、これはやはり日本国民の血であり汗である。苦労して苦労して納めておる汗の結晶が国連に届いておるのですよ。確かに、血を流さない、汗を流さない、そういう批判もあるでしょう。しかし金そのものも、ただで出てくる打ち出の小づちじゃなくて、働いて働いて納める金なんです。それが軽んぜられておるのが最近の僕は国連の姿じゃないかと思うのですよ。  私は、国連のそういう最大の理由はどこにあるかといえば、やはり憲章の中の敵国条項だと思いますね。私はこの敵国条項は胸を張ってやめさせるべきだと思う。イギリス、ドイツ等と話して、敵国条項は直ちにやめてくれ、そうしなければおれの方は分担金でも考えるぞぐらいの開き直りがあってしかるべきだと思う。これは脅迫じゃありませんけれども、それぐらいの強い姿勢でやってもらいたい、これが一つです。  それから二番目に、イタリアのデミケリス外相というのですか、この方がいみじくも提案をしましたけれども、今の安保常任理事国というのは戦勝国、アメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国という五つの五大強国と言われた国々がリードしておる、すべて。これが拒否権を発動すればだめ。たまたま米ソのデタントがあるから、今度の湾岸問題については常任理事会の意思が一つになった。一つでも拒否権を発動しておったらイスラエルと同じ状態になるのですよ。ところが実質的にはきちっと一致するようになった。すると、日本は安保理事国でもない。これだけ二番目のたくさん金を納めておきながら、常任理事国にもなれないが、もちろん安保理事国にもなれない。イタリアの外務大臣は、この際、安保理事国の十五カ国を各ブロックごとの選出をふやして二十一カ国にせい、常任理事国を五カ国から十一カ国にせい、そして日本、ドイツ、イタリーも常任理事国に含めたらどうか、こういう提案をイタリーの外務大臣がしたのですね。私はこれは勇気ある発言だと思うのです。日本もこれくらいの努力はなさっていいのではないか、これほど貢献をしておるのですから、お金を出して。私は胸を張って主張すべきところは主張してもらいたい。この点について外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  93. 中山太郎

    中山国務大臣 委員御指摘のとおり、日本は相当な拠出をしておりますけれども、旧敵国条項というものの削除をするべきだ、私は昨年の国連総会で、日本政府意思としてそれを国連で各国出席者に訴えたわけであります。御案内のように、この旧敵国条項というものはまだ去年の十月までは機能しておった面がございます。それはベルリンを共同管理していた旧戦勝国、これが結局この旧敵国条項の対象になっておったわけでありまして、東西ドイツの統一によってこの旧敵国条項の適用対象は現実に国際政治の舞台から消えていったわけでありますから、そういう点も踏まえて、日本政府は昨年の国連総会で改めて旧敵国条項の廃止、憲章の改正を要請しているということを御理解をいただきたいと思います。もちろん、イタリー、ドイツ、日本、旧敵国条項に当てはまる国がまだ幾つかほかにございますけれども、その国々とも連絡をし合いながら、日本政府としてはそのような意思を実現するように努力をしていくということを明確に申し上げておきたいと思います。  もう一つ、イタリーのデミケリス外務大臣、この発言を引用されておりますが、デミケリス外相はイタリー政府意思として言っておるわけではございません。彼の個人的な考えとしてそういうことを言っておるわけであります。それで、ほかにも日本に対して常任理事国になるべきだという意見を吐いている国がございます。例えばポルトガルの外務大臣などはそのような意見を出しております。そういう中で、今、日本はまだこの安保の理事国になったことはないじゃないかというおしかりでございますが、実は既に六回理事国に当選をしておりまして、明年の改選に当たりましても日本は立候補して、多数の国の支持を現在得られております。  そういう状況でございますから、我々はできれば憲章の改正に、これは委員御存じのように大変な、国連の加盟国の三分の二の総会の議決、それから安保理の常任理事国五カ国を含めた三分の二の国の憲法に従った批准がなければこれは実現できないわけでありますから、私は全力を挙げて努力しなければならないと考えております。
  94. 松浦利尚

    松浦(利)委員 安保理事国になられたことはそのとおりだと思いますが、常任理事国にもぜひなっていただきたい。  それで最後に、武藤委員も指摘しましたけれども、やはり外務大臣国会の審議で拘束されてこういう事態に対応することができないというのは、やはり経済大国の日本の外交としてあるべき姿じゃないと思いますね。ですから、これは僕は内閣の所管にかかわることだと思いますけれども、この際やはり外務大臣は、事務当局だけに任せるのではなくて、議会の方に積極的に出張の許可をとられて、大いに外交努力をしてもらいたい。そうしなければ世界の趨勢におくれてしまいますですよ。だから、日本の平和憲法というものがあるんだということも、この際、外務大臣が積極的に行動して、胸を張って日本はこういう憲法があるんだということを徹底的にやはり世界各国に周知してもらいたい。そのことも私は外交努力の中心でなければならぬと思いますね。だから、そういう意味では我が党も武藤委員からの発言どおり積極的に外務大臣の外遊は承認をするつもりですから、ほかの野党も全部そうだと思うんですよ。ですからぜひ――それは外務大臣。予算審議のときに大蔵大臣が抜けたら大変ですからね。それは外務大臣、ぜひひとつそういうことで努力をしてもらいたいというふうに思います。  大蔵大臣、何か用があるそうですからいいです。どうぞ。  それから次に、外務大臣にちょっとお尋ねをしておきたいんですが、これは私の邪推かもしれません、間違いがあるかもしれませんが、そういうときには積極的に訂正をしてもらって結構ですが、実は日本の防衛白書の中に、これは前からも議論があったんですが、「日米防衛協力のための指針」というのがありますね。それで、指針の中の「第三項に基づく研究」、これは日本以外の極東地域で日本の安全に重要な影響が起こった場合の米軍との便宜供与に関する研究、これが常時行われておるんです。ところが、この白書を見ましても、この三項についてだけは極めて簡単に五行でぱっととめてあるんです。内容がさっぱりわからない。それで防衛庁にお尋ねをしたら、いやこれは外務省の所管です、こう言われるんですが、外務省の方で、どういう状況になっておるのか、どういう研究なのかお答えをいただいて、外務大臣、食事であればどうぞ。
  95. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生まさに御指摘のように、この日米防衛協力に関するガイドラインの第三項は、日本以外の極東における事態で、日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力に関する研究ということでございます。これはいわゆる日米安保条約の六条事態についての研究でございますけれども、昭和五十七年の一月に審議官クラスで第一回の研究グループの会合が開催されておりますが、その後二回ほどその研究グループが会議をしておりますけれども、現在までのところ必ずしも大きな進展が見られていない状況でございます。これは、本件研究作業は関係各省に広くまたがる複雑な問題を抱えておりますので、なかなか進展が見られていないというのが現状でございます。
  96. 松浦利尚

    松浦(利)委員 自治大臣、済みません、もう議論が終わったんですけれども、自治大臣が来られたときにお尋ねをするということにしてありますから、今の質問と違うことをちょっとお尋ねしますが、もう既に事前に政府委員室を通じて私の質問内容は御通知申し上げておるんです。  国連総会四十五回事務総長報告の中に、警察官は文官である、国際市民警察隊としてPKOで活躍する分野についての報告がなされておるわけですが、仮に、これから平和協力機構というものがどういう名称になるかわかりませんが、できるという段階で、国家公安委員長として我が国の警察官、機動隊、こういった人たちについて参加させるというお気持ちがあるかどうか、その点だけお尋ねをして、お引き取りいただきたいと思います。
  97. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 遅くなりましてまことに委員に御迷惑かけました。ちょうどきょうは地行をやっておるものですから、申しわけありません。  ただいまの御質問でありますが、警察官につきましては、確かに今お話しのとおりでありますけれども、今日我が国における治安と生命財産を守るという立場から全員全力投球で頑張っておるわけでありますが、したがいまして、今のようなことでの御要請があるとすれば、警察官にふさわしい任務として考えられる問題であるとすれば、これに派遣することにいささかもちゅうちょするものではありません。ただ、ある一定の期間そしてそれに現在の我が国の警察力からいたしましてのふさわしい人数というものをお考えいただかないと、国内の問題もこれあり、御理解願いたいと思っておりますが、協力することにはいささかもやぶさかではありません。
  98. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ありがとうございました。どうぞお引き取りいただいて結構です。  外務大臣、お尋ねしますけれども、ウオータイム・ホスト・ネーション・サポート、WHNSですか、これの指針第三項に基づく研究、こういう中で、米軍との間に、これは事務当局で結構ですが、輸送、補給、基地などの兵たん支援、核、生物、化学汚染の除去、戦闘被害修復、基地防空、後方地域防護、俘虜取り扱い、死傷者護送といったようなことが議論のテーマとして柱とされておりますか。
  99. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 受け入れ国支援の問題でございますが、一般に平時受け入れ国支援と有事受け入れ国支援とに区分されておりまして、戦時受け入れ国支援といいますのは、有事の際のより広範囲の活動、すなわち汚染の除去、基地防空、捕虜収容、被害復旧あるいは基地支援等も指すものと理解しております。それでよろしゅうございますか。
  100. 松浦利尚

    松浦(利)委員 防衛庁で、これは三矢研究等で大分問題になった経過もあるわけですが、やっぱりこういう研究を続けていきますと、この前、総括のときに幹部学校で使われておる「陸戦」という中の論文等で申し上げたように、自衛隊自身はやっぱり海外に行こう、こういった研究に従って動こうとする、そういったものが出てくるわけですよね。ですから、今お話し申し上げた内容等について、現在目下研究中だということですから、この問題について、研究過程でも結構ですから、どういう状況になっておるのか、指針第三項に基づく研究内容について本委員会にぜひ御提出をいただきたい。防衛庁長官、外務省どちらでも結構ですが、よろしいですか。
  101. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 防衛協力の指針に関します第三項は外務省の所管でございますので、第三項に関しまして私から御答弁したいと思うのですが、この第三項に関します研究は、先ほども申し上げましたように、五十七年に第一回の会合を開いておりますが、実はその後二回と申し上げましたけれども、五十七年と五十九年でございまして、その後、日米の共同研究は進んでおりませんが、しかしながら、その内容に関しまして先生から今御質問ございましたけれども、これは米軍の行動にかかわる面が少なくございませんで、この内容について公表いたしますことは、この米軍の行動にかかわりますいろいろ機微な側面を明らかにすることになりますので、日本の安全にとりまして重要な影響もあり得ることもございますし、したがいまして、この対米便宜供与の分野におきます日米間の協力体制に関しましては、申しわけございませんけれども、明らかにすることができない、日米間でもこれは公表しないということでやっておりますのをぜひ御理解を賜りたいと思います。
  102. 松浦利尚

    松浦(利)委員 日米間で公表しないからということで、そのことは理解をしますけれども、アメリカ側から漏れてくる内容というのは非常に、我々が知らない間にどんどんどんどん進行していく。しかも、その方針に従って自衛隊の行動が行われていくような、そういう状況になるものですから、出せないものを無理して出せとは申し上げることは差し控えますけれども、やはりそういう不安がある。例えばアメリカの「共同防衛への同盟国の貢献度」、こういったところを見ましても、第三項についての便宜供与の二分野にわたって研究しておるということを報告していますし、そして我が国の思いやり予算などについても、ホスト・ネーション・サポートでは最高の国だといって国防総省が歓迎をしておるわけですね。だから、そういったことを考えればある程度、国政調査権という知る権利というものもあるわけですから、すべてではなくて、ある程度のものはぜひお知らせをいただきたい、これは希望として申し上げておきたいというふうに思います。  それで、防衛庁長官、あなたに少しくお尋ねをしたいと思うのです。  それは、新中期防との問題に関連をして、大綱と国際情勢の関係なんですが、そういったことを申し上げておったら、もうあと三十分しか時間がないので、具体的なことについてちょっとお尋ねをしておきたいと思うんです。  それは、防衛庁に事前に文書で実は回答を求めたんです。その内容の一つは、実は防衛庁が今度AWACSを購入しようとしておられるわけですね。このAWACSは一体、導入の理由、目的は何か、こういうことを質問いたしましたら、文書で「新中期防においては、警戒飛行部隊が保有する低空侵入に対する早期警戒監視機能について、諸外国の技術的水準の動向に対応してその充実を図るため、早期警戒管制機を整備すること」にいたしました、こういう回答なんです。ところが、前、E2Cですね、この前の飛行機を購入しようとしたときにやはり防衛庁は文書で「本来、戦術統合作戦の指揮統制用のものであり、作戦司令部戦闘指揮所等の代替機能を含むものであるため、低空侵入への対処という限定された運用要求をはるかに上回るものだ」、だから購入するのは見送ります、必要ではありません、こういう答弁をしておられる。ところが、世界が軍縮の方向に進み、米ソのデタントが進み、国連も的確に機能を始めようというそういう状況の中で、かつて否定をしておったAWACSをなぜ新中期防で四機も購入する必要があるのか、どうしても理解できませんね。
  103. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  我が国の防衛のあり方というのは、言うまでもなく憲法のもとで専守防衛でやっていくわけでございます。そしてまた、今回中期防を策定するに当たりましても、現在の世界の情勢というものは十分勘案しながらやってまいりました。  さて、今松浦委員御指摘のように、かつてE2Cを導入する段階におきまして、今回考えられておりますAWACSにつきまして、あの時点では日本の防衛のために必ずしも導入する必要はないという趣旨政府答弁があったことも事実でございます。しかし、専守防衛である、また効率的で節度のある防衛力を整備するといたしましても、それはやはり諸外国の技術水準の動向等を勘案しながら整備しなくちゃならないのは当然でございます。  例えは悪いかもしれませんけれども、矛で戦う時代でございましたら盾で十分防御はできたんだと思うのでございます。しかし、大砲が出てくればやはりトーチカというものも構築しなくちゃいかぬだろうということもあります。そういったことで、やはりそういった節度のある専守防衛の体制といいましても、やはり技術水準というものをよく見なくちゃいけません。そして、かつてE2Cを導入するときと現在の技術水準を比べますと、その後例えば航空機だとかあるいはミサイルの技術水準が随分上がってまいりまして、非常に航続距離が延びたとかあるいは低空で侵入してくる機能がふえたとか、そういった点がございまして、少しでも早くそういった侵入を察知してそれに対応しなくちゃいけない、早期の警戒という機能が非常に重要になってきた、こういうことがございます。  それからいま一つ、警戒管制組織の関係でございますけれども、確かにAWACSというのは、そういった早期警戒監視する機能と同時に、ある程度の管制といいましょうか、指揮機能を代替する面があるのはそのとおりでございます。E2C導入の時点におきましては、諸外国の軍事水準から見まして地上のレーダーサイトとか指揮所なんというものは十分抗堪性があると申しましょうか、そういったことであったわけでございますが、最近の航空機やミサイルの発達によりましてそういった地上の指揮所とかレーダーサイトなんかがある程度脆弱になってきた、こういうことがございまして、そこが何か問題が起きましたときにAWACSでそれを代替するという機能も、現在の諸外国の技術の水準、その動向というものから考えますとどうしても現時点では必要なものである、とりわけ専守防衛の我が国にとってふさわしい装備である、このように考えて中期防で整備することにした次第でございます。
  104. 松浦利尚

    松浦(利)委員 専守防衛という枠組みの中で必要とした、こう言われるんだけれども、これはもう御承知のように作戦指揮所なんですよね、この飛行機というのは。それで、対空、対地、対艦、あらゆる作戦をここでコントロールする、指揮する、そういう機能を持っておるんです。ですから、サウジアラビアがアメリカから五機導入をしたけれども、その広域監視能力がイスラエルに及ぶということでイスラエルから大変なクレームがつきまして、そしてまた搭載機器に対する機密保持があるということで米議会からも反対があって、搭載装置とか運用方法に大変な規制を加えられたんですよ、サウジアラビア自身がアメリカから。それほどこのAWACSというのは性能の高いものなんです。専守防衛という枠組みから一歩飛び出していくんです、我々の判断によると。ところが防衛庁長官は、首をひねっておられるけれども、金額の多寡を言うつもりはありませんが、前のE2Cは約八十六億円、今度のAWACSは現在のところ一機当たりの価格については未定であります、こう言っておられるけれども、我が党の串原委員が指摘をしたように、一機が二百九十六億円ぐらいするんですね。一機が約三百億するんです、アメリカ側の発表によりますと。大変な高価なものであることも事実です。しかも枠を超えておる。ところが、防衛庁長官だけはいやそうじゃありません、そうじゃありませんと言うけれども、一体本当にAWACSが我が国の専守防衛にとって必要なのかどうかということについては全然議論ができないんですよ。  その最大の理由はどこにあるかというと、陸上自衛隊の長期防衛見積もり、統合長期防衛見積もり、中期能力見積もり、こういったなぜAWACSを必要とするかという、我が国の専守防衛なら専守防衛という枠組みの中で、こういう状況になってくるからこういう新兵器が必要である、こういうものが必要であるということから実は正面装備というものの積み重ねができて、予算要求がされておる。ところが、今まで繰り返し繰り返しそういう積算根拠、見積もってきた、どういうところにAWACSを必要とする世界情勢があるのか、どうなのかということを我々が議論をしようとしても、現実的には今言ったように、それは我が国の防衛に属することだから発表できませんと言われれば、国会議員といえども日本の防衛に影響するようなことを質問して出してもらいたくないから黙っていますがね、そのとおりですかと言わざるを得ない。  ですから、そういった意味では、ただ単に専守防衛の枠は出ておりません、あるいは国際情勢としては従来どおりですと言いながら、大綱は一向に改めようとしない。しかも、これからの新中期防で二十二兆七千五百億、これを計上する。結局ミリタリー・バランスで見ましても、もう時間がないから一方的に言いますが、八八年度で日本は二百八十八・五億ドル、インドが九十一・二億ドル、中国が五十八・五億ドル。インド、中国が関脇なら日本はもう大関なんですな、アジアにおいて。ですから、これほど専守防衛と言いながら他国を凌駕するような金をかけて今言ったような正面装備をしている。  ですから、日本を近隣諸国がどういうふうに見るかというと、力が強大になっていく日本の方を見て、必ず力の強いものは弱い相手を見つけて侵略戦争を起こしていくんですよね。過去の日本はそうだったんです。残念ながら私もその一人だった。それは亡くなった戦友に申しわけないけれども、私は生き長らえている、今ここにこうして。しかし実際に、あのときを考え起こしてみれば、日本の国が強大な軍事力を持って弱いところをねらい撃ちしていった。今度のイラクも、軍事強大化して、弱いところのクウェートをねらっていった。アメリカをねらおうとしない。読み違ったのは、アメリカという強大な国が攻めてくるとは思いもせぬかった。大変な問題、多国籍軍、アメリカを含む多国籍軍だ。そういうのが出てくるということは考えておらなかった。ですから、私たちはアジアの国が、そういうことにならないように、そんなことに将来に向かってもならないようにシビリアンコントロールという枠組みをしなきゃならぬ。  ところが、シビリアンコントロールをする、徹底したシビリアンコントロールを、歯どめをかけていかなきゃならないその国会、それが、私たちは残念ながら防衛庁長官なり安全保障会議という枠組みの中でしかコントロールすることができない、予算についてのみ発言をすることができる、こういう行き方は、やはりアメリカ式にオープンにするべきところはオープンにして議論できるような議会にしてもらわなければならない、私はそういう気がしてならないのですね。だから防衛庁長官、あなたはその中心に立つ人ですが、どう思いますか。あなただけが知っておればいいというふうに思われますか、あるいは安全保障会議だけが知っておればいい、あとの者は知らなくてもいいと思われますか。どうですか。
  105. 池田行彦

    ○池田国務大臣 私どもも、シビリアンコントロールというのが非常に大切であるということは十分承知しております。そして、そういった中におきましても国会におきまして、予算だけとおっしゃいましたが、予算あるいは法律の形でいろいろ御審議いただく、これもシビリアンコントロールの非常に大切な、一番大切な部分であるというふうに心得ておりまして、そういった御審議に必要な情報あるいは資料等につきましては極力国会の御審議に協力していくという姿勢でまいっている次第でございます。しかしながら、国の防衛という仕事の性質上、どうしても明らかにすることを控えさせていただかなくちゃならぬ、こういう点があるところはひとつ御理解をちょうだいしたいと存じます。  それから、先ほどAWACSの点で攻撃用のものだというような趣旨のお話ございましたけれども、私どもは、先ほども申しましたようにあくまで防御のために考えるわけでございます。もとよりある程度の警戒管制機能、見方によれば作戦機能というものがあることは先ほども申しましたけれども、作戦と申しましても、あくまで外からの侵略に対して我が国を防衛する、そういった場合の作戦の機能というものをある程度このAWACSが代替し得る、こういうことであろうかと存じます。  それから、統長、続中の関係についてのお話がございましたけれども、私どもといたしましてはそういったもので内部でいろいろ検討いたしまして、これは長官であるそしてシビリアンである私もその中をちゃんと見ておるわけでございます。また、具体的に大綱とか中期防をつくります場合には、安全保障会議におきまして私どもからもいろいろ御説明を申し上げますし、また関係各省からも、例えば国際情勢等につきましては外務省、外務大臣もメンバーであられますから、十分その辺の御意見も御認識もお聞きした上で内閣全体として決定していくわけでございますので、そのあたりはどうか御理解をちょうだいいたしたいと存じます。
  106. 松浦利尚

    松浦(利)委員 理解をせよといって、出せないということは理解をしますけれども、やはりこれほど強大な軍備、正面装備を持つようになってくれば、AWACSなんというのは世界の一級品ですからね。ですから、そういう状況になってくれば、私はやはり国会の場でなぜ必要かということについて徹底的な議論ができるように、しかもその資料、根拠としては、なぜ防衛庁がそれを購入するのか、しかも四機なぜ買うのか、そういったことについて議論をしなければならぬと思うんですね。  ですから大蔵大臣、どうですか、こんなAWACSというのはまだ予算に頭を出しておらぬので、あなたは予算をコントロールする立場におられるので、こういうのは少し大蔵省でチェックされたらどうでしょうか。これはまだ頭を出しておらぬのです、これからなんです。ですからどうでしょう、こういうのは削ったら、チェックされたらどうでしょうか。大蔵大臣もそれくらいのことをぱっとやられたらすばらしいと思うのですがね。どうでしょう。
  107. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 昨年新中期防の内容を確定いたします前には、各党の委員の方々から、現在の中期防の規模と比べて正面装備がふえるか減るかといったような御趣旨の御意見をたくさんちょうだいをいたしました。そして、その伸び率にしても例えば三・七五を超えるか超えないか、それがいわば平和の時代に向けての世界の動きの中での日本のあるべき姿を判断する材料だといったような御指摘もいただきました。そして、そうした御要望はすべてこたえた新中期防になっております。そして、正面装備にいたしましても切り込んでおることは御承知のとおりであります。次から次へと余り御注文をふやされますと、私もとてもついていき切れません。
  108. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵大臣、先ほど申し上げましたようにE2Cを採用するときに、政府の方は、採用しません、こう言っておられるんですよ。そのときにAWACSというのはあったわけです。しかしAWACSはもう、E2Cで結構です、採用いたしません、こう言っておって、しかも世界の情勢というのはデタントの方向に進んでおる。アジアの国もそういった方向に進みよる。そういう状況が、逆に前のあの冷戦構造のときにAWACSを購入するといったら話はわかるんですよ。しかし、ぬくもりのある世界に変わってきておるときに、なぜ冷戦時代に否定をしたAWACSを購入するのか。しかも、内容的には大変に高度なものに内装等も変わってきておる。そういう点が非常に矛盾してわからないのです、我々に。わかっておるのは池田防衛庁長官、海部総理ぐらいのことで、あとの人たちは、大蔵大臣は金額でやかましく言われるかもしれぬけれども内容的に立ち入ってまでは恐らく御存じないと思うのです、安全保障会議が二日も三日もかかったという話を寡聞にして聞きませんのでね。  だから、そういったことを考えていくと、私はどうしてもこの際皆さん方にお願いをしなければならぬのが情報公開なんです、行政情報公開という仕組みなんですね。これは御承知のように、総理府でもう早くからプロジェクトチームをつくって行政情報公開についてどうあるべきかという議論をしておられるのです。国民も広く行政情報の公開は求めておられると思うのですが、総理大臣おられぬですが、総務庁長官、必要だと思っておられるから一生懸命まとめに努力されておるのですが、どうですか。
  109. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 この情報の公開は、これは松浦さん御指摘のとおり行政に対する信頼を確保する等の意味合いもございまして大変重要な課題でございまして、私ども積極的に取り組んでまいりましたし、現在も取り組んでおります。  例えば、その一環といたしまして文書の閲覧の窓口を設けまして、現在七百七十カ所を超えておりますが、閲覧をいただく文書として登録をされておりますのが約三十七万件、最近の一年間で申し込みをいただきまして閲覧をいただいた件数が五万四千件を超えておりまして、十年前と比べますとこれらの数字は十七、八倍、二十倍近くにまで拡大をいたしておるわけでございます。  今後におきましても、大変重要な課題でございますので、ますます充実をして情報公開に資してまいりたい、こう考えております。
  110. 松浦利尚

    松浦(利)委員 簡潔で結構ですが、長官、法律としてはいつごろから姿を見せるのでしょうか。
  111. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 法制化となりますと、これは御案内のとおり大変難しい課題がございます。法制化するためにクリアしなければならない問題がたくさんございます。  これまた御案内のとおり、そうなればこそ専門家の先生にお願いして研究会をつくっていただきまして、昨年御報告をちょうだいいたしたわけでございますが、例えば何を開示すべきか、開示すべきでないものは何か。国家安全保障、防衛の機密等もございますし、個人、企業の秘密もございますので、開示と非開示の基準をどう決めるか、これがまず一つであります。  もう一つの問題として救済制度をどう仕組むかという問題がございます。結局、開示すべき文書であるか不開示の文書であるかの判定は、最終的には裁判所で行ってもらわなければならないわけでありますが、そうなりますと、非公開の場でその文書を裁判官に見ていただくことがぜひこれは必要になるわけでありますが、我が日本国憲法における公開裁判制度のもとでそういうことができるかどうか、こういう重要な問題があろうかと思います。フランスなんかでは、例えばこういう問題について行政裁判所でやってもらっておるようでありますが、日本の憲法ではそういうことはもちろん許されません。そういう問題等もクリアしなければなりません。等々、たくさんございますが、そういうものを早くクリアしてそれから法制化に進むべきだ、こう思っておりまして、なかなか今簡単にすぐ法制化というふうにはまいらないことを御了承いただきます。一生懸命研究します。
  112. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今長官は正直に言われたと思うのですね。法制化ということで非常に難しい。難しいというのは、公開をしないものをどうするかということが先に立つのですよ。原則公開。全部公開するのですよ。しかし、公開はするけれども、その中で公開できないものはこれこれなんですよという議論の組み立て方と、初めからこれは公開できないのだということで取り組むのとでは全然違った発想になってくるのです。  そこで、私は通産大臣に、たったこの一問で引きとめて、勘弁してください、申しわけないと思うのですが、実は国会で議論をしてもなかなか資料をいただけないのです。満場一致で国政調査権が発動したことはないですからね、ほとんど。だから、そういった意味では、国政調査権、国政調査権と口で簡単に言いますけれども、なかなか国会の審議の場にも資料が出てこない。例えばODAのいろいろな問題があるからこれを出してくれと言うけれども、これは個々の民間の行った契約だから出せない。そういったことでなかなか国会の調査権すらも情報公開のない、非公開の壁で前に進まない場合があるのです。  そこで、各大臣にお尋ねをしたいのですが、通産関係でいろいろ調べてみたら、やはり原子力情報ですね。例えば事故データとかそういったものについて、この前も大変な事故がありましたが、そういうデー夕というものがなかなか出されない。本委員会でもこの前、辻委員が大分議論しましたけれども、データが出されてこない。これについて通産の方は、情報公開法制定についてどういうお考えなのか、原則的なお考えをお聞きします。  それから次に、建設大臣、申しわけありませんが、建設関係もなかなか個々の契約にわたるものがありますし、基礎調査データ、例えば何でここにこういう道路が必要なのか、何でここにこういうものが必要かという基礎データというのがなかなか出てこない。それから、なぜそこにそういうものをつくるのかという事業計画策定の経過等はなかなか建設省としては出し渋られる。そういうことがネックになってきておるのです。  それから、防衛庁長官はもう先ほどから申し上げるように、ほとんどと言っていいほど、数字的な、金額的なものは出てきますけれども、防衛にかかわることは――わかりますよ、国の防衛に関することだから。しかし、アメリカの方はわりかたオープンに出るのですね。だから、すべてが出せないのではなくて、やはり出し得る一定の限度というのは、私たちが議論をすべき内容として提供してもいいのではないか。特に核問題とか、核があるのかないのかとか、あるいは基地がどうなっておるのかということについてはなかなか防衛庁は出しにくい、気持ちはわかりますけれども、この情報公開についてどうお考えになるのか。  それから外務大臣外務大臣は御承知のように――おられない。では外務大臣は結構です。それぞれの大臣からひとつお答えをいただきたいというふうに思います。
  113. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 松浦委員にお答えさせていただきます。時間のなにもございますから、二点に分けて簡単に申し上げます。  まず第一点。最近起こりました不祥事でございますが、これはまことに遺憾にたえないわけでございますけれども、この点につきましては、原子力の推進に当たりまして安全の確保に万全を期すとともに、国民の理解と協力を得ることはもう必定である、これは当たり前のことだと思います。このような観点から、この間起こった問題そのものをとらえてみますると、まだこの問題について現実に詰まったという報告は私のところにも来ておりません。これは必ず調査した結果を私のところにまず来ることにいち早くさせておりますので、現段階でもまだ鋭意これを検討中である、同時にまた調査をさらに進めてやっております。いかにせん、具体的に言いますと、三千本の何といいますかああいうバブルの中における機械のことでございますから、それだけに調査においても確実を期するためにも現在鋭意やっておる、こうとらえていただきたいと思います。  原子力に関する情報公開につきましては、総体的に申しますと第二点の問題になりますが、通産省としましては、従来から原子炉の設置許可申請書そのものの公表に加えまして、故障、トラブルあるいはまたその情報については広く公開していくことが原則でございますが、今後とも、核物質の防護あるいは財産権の保護あるいはまた個人のプライバシーの保護の観点から問題のない限り、広く、わかりやすい形でこれらの情報については公開していく所存であることを明快にしておきたいと思います。
  114. 大塚雄司

    大塚国務大臣 お答えいたします。  建設省には法令上公開を位置づけられているものも数多くあるわけでありますが、法令上位置づけられてはおりませんけれども公開している情報というのもかなり多くございます。しかし、今御指摘のような意思の形成過程でこれを公開するということにつきましては、行政事務を進める上で支障がありましたり、あるいはまた特に大きなプロジェクトをつくるというようなことをまだ形成過程で発表することによって地価に大きな影響を与えたりというようなこともあるわけでございまして、しかし、可能な限り情報は提供するという方向で全力を挙げてまいりたいと思っております。
  115. 松浦利尚

    松浦(利)委員 防衛庁長官、さっきから出ておりますから、もういいです。  総務庁長官、大変だと思うのです。今お聞きしましても、各省庁はなかなか、比較的はっきり通産大臣は言っていただいたのですけれども、いずれにしてもいろいろな状況で非公開部分が非常に多いのですね。ですから、法律をつくる作業というのは大変だと思うのですが、やはり国民に広く知らしめるということは、私は、行政上政府がとらなければならない道だと思うのです。やはり外国あるいは地方公共団体等も進んで情報公開は行うという姿勢になってきておるわけですから、政府においてもぜひ情報公開について積極的に対応していただきたい、改めて申し上げておきたいと思います。  なお最後に、もう時間が来ましたけれども、労働大臣、まことに申しわけなかったのですが、労働時間短縮問題についてぜひお願いをしたかったのですが、最後に一点だけ。  私は、今度労働基準局賃金時間部労働時間課、労働省発表三年二月、「労働時間短縮で生産性大幅アップ」という思い切った提案をなされて、拝見をいたしましたが、まさに書いてあるこれは事実だと思います。今、二十一世紀に向かって千八百時間という対応で積極的に海部内閣も労働省を中心に、経済企画庁を中心に取り組んでいただいておるのですが、生産性の向上と従業員の士気向上を挙げて、企業のイメージアップ、定着率のアップ、出勤率のアップなどの効果を上げたという報告なんです。  改めてまた労働大臣に質問する機会があると思うのですが、ぜひ労働時間短縮について積極的な法制上からの取り組み等も含めてお願いいたしたいと思いますが、最後に承って終わらせていただきます。
  116. 渡部恒三

    渡部委員長 小里労働大臣質疑時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。
  117. 小里貞利

    ○小里国務大臣 時間がないようでございますから端的に申し上げたいと思います。  概して申し上げまして、労働時間の短縮の流れは、決して満足はいたしておりませんけれども、おかげさまで順調に手がたく推進いたしておると考えております。御案内のとおり四月から週法定労働時間四十六時間を四十四時間に置きかえました。あるいはまた中小企業等の協力をいただきまして御案内のとおり年次休暇の拡大も六日を八日に引き上げていこう、あるいはそのほか労使の各方面の協力をいただきまして法定外時間短縮等も手がたく進んでいるという状況でございまして、私どもはこれで満足はいたしておりませんが、ただいま御指摘いただきました方向でさらに努力を続けてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  118. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ありがとうございました。  終わります。
  119. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて松浦君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三分休憩      ────◇─────     午後二時二十一分開議
  120. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上義久君。
  121. 井上義久

    井上(義)委員 湾岸戦争終結をいたしまして、戦後復興の問題あるいは環境汚染の問題あるいは難民の問題等々、残された課題たくさんあるわけでございますけれども、私たちが今忘れてならないことはやはり政治改革の問題であろう、こう思うわけでございます。海部総理、政治改革に内閣の命運をかける、このようなことをおっしゃってきたわけでございますけれども、内閣としてもその決意が変わってないのかどうか、自治大臣にお伺いをしたい。  その際、政治改革に内閣の命運をかける、また、不退転の決意で取り組む、このようにおっしゃってきたわけでございまして、であるならば、その具体的なこの法案の内容並びにこの提出の時期、これを明確にすべきじゃないか。政府案というものがいつごろ提出をされるのか明確にしていただきたい。  また、その場合に、政治資金法の改正、公的助成法それから衆議院の選挙制度の改革、参議院の選挙制度の改革、一括して提出されるおつもりなのかどうか、このことをまず自治大臣にお伺いしておきたいと思います。
  122. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 井上委員にお答えをいたしたいと思いますが、この政治改革問題というのは、まさに、総理も言っておられますように極めて大事な問題でありますし、内閣の命運をかけるとおっしゃっておられましたが、私も昨年十二月二十九日に拝命をいたしまして、その際も、この政治改革というものに対して全力を投球するようにという御指示もいただいております。したがいまして、自治大臣としましても、これにつきましては全力投球で政治改革を進めていかなきゃならぬ。  政治改革の中にはもちろん政治倫理というものがその哲学の基本でありますし、さらに加えて、その選挙制度の改革あるいはまた選挙関係を通してでもありますか、総体的に政治家の政治資金規正法の問題もあります。さらにもう一点は国会の改革がありますが、これは別な問題としまして、今の二本は一体性のものである、いわゆる選挙制度の問題と選挙資金、政治資金、この問題は一体として考えていかなければならないのではないか、かように考えておるわけであります。  できるだけ早く成案をまとめていきたいものだと思っておりますが、何分、御承知のように、これは民主政治の根幹にかかわる問題であります。したがいまして、特に選挙の制度の問題につきましては、これは各党各会派の皆さん方の御意見が速やかにまとまるように御協力を賜りたい、かように考えておるわけであります。  さらに、お尋ねありました参議院選挙、参議院改革の問題と衆議院の問題は一体かというお話でありましたが、私もできれば、願わくばそのように一体としてこの問題を解決していくのは適当であろうか、こう思っております。
  123. 井上義久

    井上(義)委員 第八次選挙制度審議会の答申が、選挙制度については比例代表並立制、自民党の案もそのようでございますけれども、いわゆる内閣の命運をかける政治改革の具体的な中身が、どこまでも小選挙区比例代表並立制だということになりますと、今の国会の構成からいきまして、野党がこぞって反対をしている、成立しない可能性が非常に強いわけでありますけれども、この並立制の導入にこだわっている限り、今一体というふうにおっしゃいましたけれども、政治資金の改革の問題だとか公的助成の問題、これは全く進まないということになってしまうわけでございまして、私はやはりこの政治改革の緊急課題というのは、政治倫理、これは基本でございますが、政治資金の規制強化の問題、これは選挙制度の改革と切り離してきちっと議論をすべきではないか。選挙制度とリンクさせることによってこれらの問題が一向に進まない、実現可能な諸改革も進まないということでは、これは責任がとれないんじゃないか、こう思うわけでございます。     〔委員長退席増岡委員長代理着席
  124. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 お尋ねでありますが、私はやはりこの問題につきましては、政治資金の問題と選挙制度の問題、こういったものは一体のものとして考えていかなければいけないのではないか。これを切り離すということになりますと、そこには極めて困難な問題が出、これは政治改革そのものに合致しないものになってくる、こう思いますので、やはり金のかからない選挙というものを前提にした、いわゆる国民から信頼をしていただける政治というものを前提として考えた場合には、選挙の問題、日常政治活動の問題、これを含めての政治資金の問題と選挙制度というものとは極めて密接不可分の関係にある、こういうふうに考えております。
  125. 井上義久

    井上(義)委員 制度と一体ということであれば、現実的にはすぐに取り組まなければいけない課題、これはできることはたくさんあるわけでございまして、できるものからやはりきちっとやっていくことが政治の信頼を回復することになる、このように思うわけでございまして、ぜひとも御配慮をお願いしたい、こう思います。  先般、国調の速報値が発表されまして、定数の格差が三倍を超えるという選挙区が八つになりまして、現行の定数是正待ったなしの状態にあるわけでございます。第八次審の答申等を見ますと、定数是正を選挙制度の改革によって行うということでございますけれども、私はこの選挙制度、かなり国民の間にも議論がございますし、中長期的な課題であるというふうに思うわけでございまして、次の選挙に間に合わせるということになると、かなり厳しいというふうに見ているわけでございます。したがって、まずこの現行の定数不均衡、これをまず抜本是正すべきではないかというふうに思います。定数是正を行わずにこのままいきますと、いわゆる解散権も制約される、このように考えるわけでございますけれども、この点も含めて、政府としてどのように認識されているのか伺っておきたいと思います。
  126. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 選挙制度審議会の答申というものからいたしますと、私どもは今の定数是正の問題あるいは配分の問題というものを考えてまいりますと、少なくとも高裁判決等を考え、いろいろな面からの配慮をして答申が一対二という割合の方法が適当であろうというふうに出ておりますし、それを踏まえてまいりますと、今の中選挙区においての区域の問題あるいは定数の問題等も半数程度を、あるいはそれ以上を修正しなければならないというようなことにもなってまいりますから、そういったことから考えますと、せっかくの昭和六十一年の五月に衆議院で決定されておりますこの決議につきまして、少なくとも中選挙区で定数是正という問題で抜本的にやろうではないかということが決められておりますが、それが今日もまだそのままになっておりますけれども、この中選挙区の制度でやるとしますと、今申しましたようにほとんどの、半分の関係区域を手を入れなきゃならぬ、こういうことになってまいります。そういったことを考えますと、この際思い切って、やはりせっかくの審議会から答申されました案を取り入れて抜本的にここで切りかえていくということの方が適当ではないかというふうに考えておるわけでありますし、そんなことを考えていくと、非常に時間がかかってまたできなくなるんではないかというようなことの御心配の御意見でありますが、私はこれに対しまして、ぜひともひとつ各党各会派におきまして真剣にこの問題に取り組んでいただき、御協議を願いたい。それで一日も早く提案ができるような形をつくっていただきたい、こう思っておるわけであります。  さらに、解散権の問題にお触れになりましたが、これはさきに総理からも御答弁もありましたが、これは内閣に与えられました重要な権能でありまして、いかなる場合でも衆議院の解散ということにつきましては内閣の政治責任で決することでありまして、このこととその今の改正にかかわる日時を要するということから来る諸問題は、おのずと別途であるというふうに考えなきゃならぬと思っております。  いずれにしましても、議員の御意見どおりこの問題は非常に難しいということにつきましては、私もよく承知しておりますが、それだけに私も各党各会派をお訪ねをして、いろいろの御意見も伺いながらこの問題をまとめていきたいものである、このように考えておるわけであります。
  127. 井上義久

    井上(義)委員 先ほど大臣も政治倫理がまず基本であるというふうにおっしゃっておりまして、総理の施政方針演説でも、政治改革実現のためには、まず何よりも政治倫理の確立が重要である、このようにおっしゃっておるわけでございます。リクルート事件のけじめとしてこの政治改革の問題が出てきているわけでございますけれども、選挙制度にすべて解消されているというのは非常に遺憾であると思うわけでございます。その意味で、先ほどから申し上げておりますけれども、この政治改革、まず具体的にできるところからやるということがぜひ必要だと思います。具体的には、政治倫理法の制定でありますとかあるいは国会議員の資産公開、あるいはまた政治家の株取引の問題、それからまた連座制強化、こういった問題、ぜひやらなければいけない、こう思っております。  特に、この株取引の問題、これは先般以来大きな問題になっているわけでございますけれども、やはり政治家というのはその気になれば株売買で多額の利益を得やすい立場にあるわけでございます。政策決定に密着して、加えて事業者、企業情報が入手しやすい立場にあるわけでございますし、庶民から見ますと、言うなれば株の世界のインサイダーであると言っても過言じゃないと思うわけでございます。そういう意味から、やはり株取引の規制、特に政治資金を使った株取引、これはやはり禁止にすべきじゃないかということ、それから個人の資金だとしても、これは届け出制にするとか内容を詳細に公開するというような措置をぜひともとらなければいけないと思うわけでございまして、この点につきましても、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  128. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 先生おっしゃいますように、政治に対しまして一番大事なことは、国民に対しての信頼ということが基本でありますから、信頼性を欠くということになりますと、政治にはなりません。したがいまして、政治の基本はやはり国民から信頼されているということから始まると思うのであります。そういった意味からは、我々政治家は常にその点の姿勢を正していくということは大事なことでありますし、この国会におきましても常にずっとこのことはお互いに確認し合っております。  特に、政治倫理というものも国会でできておることでもありますし、そういった哲学に基づいてこれからも活動を始めていかなきゃならぬと思っておりますが、特に今切り離したらどうかということについての御意見は、私はいささかいかがであろうかと思います。それだけを取り上げての政治資金の問題から来る株取引等の問題ということになれば、それはお話にありましたとおり、政治資金で株の取引をするなどということは、これはもう厳に慎まなきゃならない問題であります。  ただ、政治家自身が自分のお金で株を買ったということにつきましては、私は必ずしもこれをノーというものではありませんが、おのずとそこには政治家としての倫理と申しましょうか節度と申しましょうか、そういった良識というものを前提として考えるべきものであって、自治大臣である私がとやかく申し上げるという立場でもないと思いますが、およそそれは一人一人の独立しておる政治家自身が良識的に判断していくべきである。特に閣僚になりますともうこれはきちっと決まっておりますので、その方向で財産公開を初めとしましてきちっといたしておりますが、国会議員全体に対してそれを少なくともいたしたらどうだ、財産公開等をやったらどうだという御意見も今ありましたが、この点につきましては今後ひとつ各党各会派で十分お話し合いしていただいて、国民から信頼がいただけるような体制をおつくり願うことを希望いたしておきたいと思います。
  129. 井上義久

    井上(義)委員 自治大臣、結構でございます。どうぞ。  続きまして住宅の問題をお伺いしたいと思います。  最近の土地高騰によりまして、サラリーマンは一生働いても家が持てないというような絶望的な状況になっておりまして、特に都市部のサラリーマンにとりましては、賃貸住宅も大変に値上がりがしているわけでございます。公共住宅ということで公団住宅があるわけでございますけれども、最近の公団住宅、例えば先般話題になりましたコラム南青山、ここは二LDKで家賃が二十八万三千四十四円、広さも六十二・九平米しかないわけでございます。これは傾斜家賃で、平成四年には三十万六千十三円というふうになるわけでございますし、それから千代田区のリバーシティー21イーストタワーズ、これは家賃が月額やはり二十六万五百九十円でございまして、これも傾斜家賃で、平成六年には三十一万五百六十六円。平均的なサラリーマン、年収六百三十九万六千円でございますから、この方たちが入るといたしますと、年収の半分以上を家賃につぎ込まなければ入れない。一体全体こういう公団住宅をつくって本当に意味があるのかということでございますけれども、これの原因というのは、家賃の算定基準の中に地代相当分というのが入っておるわけでございまして、家賃の算定基準にこの地代相当分というのを大幅減額するなり、またこれを除外するということが考えられないのか、それによって少しでも家賃の軽減を図ることはできないのかということをまず建設省にお伺いしたいと思います。
  130. 大塚雄司

    大塚国務大臣 お答えいたします。  公団の賃貸住宅につきましては、従来から家賃を引き下げるために、一般会計から利子補給、傾斜家賃制度の採用などの措置を講じてきたところでございます。地価高騰に伴いまして、今御指摘のように、大変に苦労をいたしておるところでありますが、この平成三年度の予算案におきましては、大都市における近年の地価高騰をにらみながら、新たに土地を取得して行う賃貸住宅建設におきましては、国から三十億円を出資し、用地費の縮減を行うことによりまして地代相当額の軽減を図ることといたしておるわけであります。これによりまして家賃の高額化を抑制するとともに、今後の賃貸住宅の価格の引き下げに全力を挙げてまいりたいと思っております。
  131. 井上義久

    井上(義)委員 現状ではそれではなかなか下がらないわけでございまして、もっとやはり大幅な減額もしくは除外ということも含めて考えていただければと、こう思います。  我が党は、こういう賃貸住宅の皆さんの家賃の負担の軽減を図るために、家賃補助制度というものをずっと主張してきたわけでございます。今回平成三年度から、家賃激変緩和補助制度あるいは借り上げ公共賃貸住宅補助制度、間接的ではありますけれども家賃補助制度が一部制度化されることになりまして、率直に評価しておるわけでございます。こういう制度を、諸外国、イギリスとかアメリカあるいはフランス、ドイツ等本格的な家賃補助制度があるわけでございますけれども、そういう本格的な家賃補助制度にしていくという、そういう具体的な展望がおありなのかどうかということと、当面の措置として今回の措置、例えば家賃激変緩和補助制度、この国の負担率を大幅に引き上げる、あるいは借り上げ公共賃貸住宅、これは初年度五千戸ということなんですけれども、これは五千戸では到底焼け石に水という状況でございまして、これを倍増するとか、こういう措置が考えられないのかどうか、建設省、どうでしょうか。
  132. 大塚雄司

    大塚国務大臣 ただいまお話しのように、木賃地区の建てかえに伴う従前居住者の家賃の激変緩和補助制度の創設とかあるいは民間住宅の公的主体が借り上げ、中堅勤労者等にその家賃の住宅を供給する借り上げ公共賃貸住宅の供給は、お話しのとおりスタートをするわけであります。制度の拡充は、これらの制度が予算案に新たに盛り込まれたことでありますから、今後具体的な運用の状況を踏まえながら、さらに検討を加えてまいりたいと思っておるところでございます。  また、一般的な家賃補助制度は、欧米諸国において実施されておりますけれども我が国におきましては、制度の実施に当たって必要となる家賃の評価あるいは家賃の支出能力の把握、管理運営のための組織、費用などの基礎的な事項についてまだ検討課題があるものと存じます。  これらの家賃負担を軽減するためという御趣旨につきましては、融資、税制等の活用や賃貸住宅供給コストの低減を図るとともに、特に低額所得者等自力では一定の居住水準を確保できない世帯につきましては、公営住宅等公共賃貸住宅の的確な供給を進めまして充実をしていきたい、こう思っております。
  133. 井上義久

    井上(義)委員 大蔵大臣、この家賃補助制度、なかなか国の方針を待ち切れずに、地方自治体で相当今実施されつつあるわけでございます。例えば、江戸川区では高齢者住みかえ家賃補助制度、あるいは台東区では、新聞でも話題になりましたけれども、新婚家庭家賃補助制度、江東、新宿それから兵庫の神戸等々、内容はまちまちですけれども大都市圏中心に相当な広がりを見せているわけでございます。これはやはりやむにやまれぬ措置として地方自治体が自主的に始めたということでございますけれども、本来、安定したゆとりのある住宅を供給するということは、私は国の責任として行うべきである、こう思うわけでございますけれども、地方自治体がこういうふうに独自に実施をしている制度に対して国が当面の措置として助成をするというようなことはぜひ考えるべきじゃないか、こう思うわけでございますけれども、大蔵大臣、どうでしょうか。
  134. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 御党から御提起のある御意見の中で、一番毎回食い違っておしかりを受けるのがこの問題についてであります。  私は、地方公共団体がそれぞれの地域の実態の中で、例えば、若年人口の減少を防止するといったような視点から行われる政策というものと国が全国的に実施すべき政策との間には、おのずから観点の違いというものはあってしかるべきだと思います。そして、その一般的な家賃補助制度というものについて、今までも私は繰り返し申し上げてまいりましたが、その一つは、家賃の把握とか評価が実務的に大変困難であることもあります。また、良質なストック形成に直接結びつかないという意味では、国の資金の使途として決して効率的なものだとは言えないということ、さらに、実際上の問題として、今委員がお述べになりましたように、こうした施策に走り出しているのは皆大都市です。その大都市居住者に対する補助が現実に多くなってしまう、それは人口の多極分散というものに逆行する結果になる、こうした問題点があると私は考えております。  むしろ、やはり国として行うべきは、それこそ公共賃貸住宅の供給の促進でありますとかあるいはその融資とか税制を活用しながら良質な賃貸住宅の供給コストの低減などに努めてきているこの方向を一層努力を続けることではなかろうか、私はそう考えておりまして、こうした視点で今後とも施策の充実に努力したいと考えております。
  135. 井上義久

    井上(義)委員 一極集中の原因、これは家賃補助制度を整備すれば一極集中がさらに進むという議論は、私はそこは非常に違うのですね。一極集中というのは、根本的にはやはり中央集権にあるわけでございまして、ここは抜本的にやらなければ多極分散というのはできないわけでございますから、やはりこの問題をそれにリンクさせてやるということは、また都で見ますと、各区でやっておることは国の施策にもある意味で反するということになるわけでございまして、この問題についてさらにぜひとも前向きで検討していただきたいというふうに思っている次第でございます。  今、良質な公共住宅あるいは賃貸住宅の供給ということがございましたけれども、一つこれは御提案でございますけれども、国公有地を活用するということが大事だろうと思うわけでございます。先般、汐留の国鉄の清算事業団の用地の問題がございまして、これを競争入札でやりますと一坪七千万とか一億とか言われているわけでございまして、これをやりますと、また地価高騰に拍車をかけてしまう。ドイツなんかの例を見ますと、同じようにドイツのケルン市でゲレオン国鉄貨物駅跡地の再開発計画というのがありまして、これなんかを見ますと、要するに土地の取得価格が利用形態によって決められている。例えばオフィス用地でしたら、これは三年ほど前ですけれども、坪が四万、住宅地でしたら坪が二万、公園でしたら四百円で払い下げる、こういう形になっておりまして、そのかわり都市計画や土地利用計画に基づいて払い下げ価格が決まるわけですから、計画どおりに厳格に実施をさせる、転売なんということは生じないようにする、こういう考え方というのは私は非常に大事じゃないかと思うわけでございますけれども、これについての、これは国土庁の立場で、いらっしゃっていればお願いします。
  136. 西田司

    ○西田国務大臣 お答えをいたします。  大都市の中での今御指摘になりました国公有地をどのように有効利用していくかということは、これから特に住宅宅地の供給面から非常に重要なことだ、このように認識をいたしておるわけでございます。委員も御存じのとおり、国土利用計画法の二十七条の六でございましたか、これらの利用問題について、国が土地売買等の契約を行うに当たっては適正な地価の形成が図られるよう配慮する旨のことが設けられておるわけでございます。国土庁といたしましては、国公有地の処分につきましては、処分を行うところがこの趣旨にのっとって適切に実施されるようにこれから指導をしていきたい、このように思っております。  なお、特にこの国公有地の問題につきましては、大蔵省あるいは関係省庁、そういうところと密接に協議、調整をしながら御指摘のようなことに対応をしていきたい、このように考えております。
  137. 井上義久

    井上(義)委員 大蔵大臣、所轄でございますので、こういう考え方についてどのようにお考えでございましょう。
  138. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 国有地というものは、これはもう今さら申し上げるまでもなく、国民共有の貴重な財産でありますから、公的部門において活用することを基本といたしております。将来ともに国の利用が見込まれない国有地を処分いたしますに当たっても、公用、公共用優先という原則のもとに地方公共団体などに優先的に処分をする、こうした措置をとってきました。この場合に、適正な地価形成が図られるよう配慮する旨の国土利用計画法の規定に基づいて関係行政機関とも緊密に情報交換を行いながら適正に実施をいたしております。同時に、民間に対する処分の場合、原則として一般競争入札による、これは問題が発生しないようにということからとり続けてきた考え方でありますが、地価高騰の地域においてはこれを見合わせるなど、従来から地価動向に十分配慮しながら慎重に対応してまいりました。  私は、先ほど委員が触れられましたドイツの場合と日本の場合に一つ差異があると思いますのは、確かに委員が御指摘になりましたようにドイツの場合、都市計画というものは極めて詳細でありかつこれが拘束力を持っております。そして、その土地利用の詳細を決定すると同時に、投機的な買い占めなどに対してもこれが非常に有効に機能する仕組みになっております。こうした状態の中でありますと、私は委員が先ほど述べられた一つの具体例のようなことは比較的容易に成立し得ると思います。しかし、残念ながら、我が国の場合仕組みの違いがありますので、私どもとしては、やはり国民共有の財産としての国有地の処分あるいは利用というものに当たりましては、地価対策にも配慮しながら適正な対価によることが必要であるという考え方をとっておるところであります。
  139. 井上義久

    井上(義)委員 地価の問題、ちょっと今大臣お触れになりましたけれども、やはり都市計画とそれから税というのは車の両輪で、そういう意味では都市計画、土地利用計画、これもやはり抜本的な見直しをしなければいけないというふうに思っておりますけれども、これはまた別な機会にぜひ触れたいと思います。  それからもう一つ、最近感ずることでございますけれども、東京都内に、東京二十三区内に国立大学相当あるわけでございまして、東大が一番大きくて百二十九ヘクタール、都心にあるわけでございます。その他東京医科歯科大学でありますとか東京外語大学、学芸大学あるいは商船大学とか水産大学等々大学があるのですけれども、これをいろいろ調べますと、敷地が大体二百六十九・八ヘクタールあるんだそうでございます。これは先般出雲の市長もおっしゃっておりましたけれども、要するに学生が全部東京へ出ていく、人だけでなくて費用もかかるわけですから、お金も地方から東京へ行く、これは逆じゃないかというお話をされておりました。確かに大学が全部東京にある必要はないわけでございまして、地方移転ということはやはり十分考えなきゃいけないんじゃないかということを思うわけでございます。そういたしますと、やはり相当な跡地が出てくるわけでございまして、そういうところがまた新たな公共住宅の供給を可能にするんじゃないかということで、国土利用という観点から例えば国立大学の移転についてどのようにお考えになっておるか、国土庁長官
  140. 西田司

    ○西田国務大臣 今東京二十三区内の大学の問題についてお触れになったわけでございますけれども、これは私は、多極分散型の国土を形成していく、それから東京都内の超過密状態を解消していくという観点からいたしますと、そのことは非常に大事なポイントである、このような認識をいたしておるわけでございます。  昭和六十三年七月の閣議決定におきまして、東京二十三区内の国立大学の移転の扱いについて取り決められておるところでございます。もちろん研究とかあるいは教育のあり方とか、そういうあらゆる観点からの検討を加えていかなければいけないわけでございますが、これらの問題については現在文部省でいろいろと検討に入っていただいておるもの、このように承知をいたしておるわけでございます。  なお、これらが移転をいたしました場合、その跡地をどう利用していくか、このことも非常に大事なことだと考えております。私の考え方といたしましては、極力公共あるいは公益的な土地利用を考えていかなければいけない、そして適切な利用計画を立てていかなければいけない、このように認識をいたしておる次第でございます。
  141. 井上義久

    井上(義)委員 建設大臣国土庁長官、御苦労さまでした。  それでは次に、大学の問題についてお伺いしたいと思います。  私ごとで恐縮でございますが、私は東北大学の工学部の金属を出まして実はちょうど二十年になりますが、先般大学に行ってまいりました。ちょうど私が学生だったころに東北大学の青葉山キャンパスというのが完成したわけでございまして、環境は緑もふえて当時より非常によくなっておるのですけれども、建物に行って非常に驚いたわけでございます。二十年しかたってないのですけれども、もう中は惨たんたる状況でございまして、同級生にもう教授になっている者が何人かいますからどうしたんだというふうに聞きますと、要するに建物は建ててもらうんだけれども後のメンテナンスの費用というのは一銭も出ないんだということで、荒れる一方だ、そのほか研究費も足りないし満足な研究もできない、それから最近ドクターコースに人が集まらない、後継者も非常に厳しいというような話をしておりまして、これは大変だな、こう思ったわけです。先般、理工系出身の国会議員の皆さん何人か集まりまして、東工大の末松学長をお呼びいたしまして理工系の大学の現状についてお伺いしたわけですけれども、現状は非常に厳しい、このままでいくと大学が崩壊をして技術立国も危機に瀕する、やがて産業の空洞化に通じていくんじゃないかというようなことで大変強い危機感を持ったわけでございます。  いろいろ調べてみますと、やはり建物、設備が非常に老朽化している。国立大学で二十年以上の建物が六〇%、四十年以上が四〇%もあるそうでございまして、ほとんど施設費が抑えられているために、予算の大半は新設、移転大学に回って、メンテナンスの費用はほとんどゼロに近いということで荒れほうだいだということでございました。  先般、日本鉄鋼協会の機関誌を見ておりましたら、日本鉄鋼協会の大会に出席したあるカナダ人がこういうふうに言っているんですね。これは東京大学であったのですけれども、「最初のショックは、この大会が開かれた東京大学の講義室と建物の状態が貧弱なことであった。モントリオールの同じくらい年数のたった建物で仕事をしている私は、大学当局または政府がこれらの立派な古い建物を壊れるに任せているとしか思えない状況を見て驚かされた。北米の大学の状態は、建った時代、年数、場所に応じて若干の違いはあるが、東京大学の建物に匹敵するようなものはほとんどない。日本の最も著名な大学としても、修復工事が必要と思う。」こういうふうに随想で書いているんですね。  そういう施設の状況でありますとかあるいは研究費ということを見ますと、大学の研究費というのは基本的には校費によって成り立っているわけでございますけれども、例えば私の同級の、四十三歳でございますけれども教授、校費が大体四百万、これで教授、助教授あるいは学部学生、院生、全部で約二十人研究室にいるわけですけれども、一人二十万で、要するに事務費、旅費で精いっぱい、とても研究費用にはお金が回らない、その他科研費あるいは企業からの寄附金ということで何とかしのいでいるんですけれども、実験装置を買うお金もないということで非常に厳しい。それからまた、最近、先ほど言いましたようにドクターコースが非常に定員割れしている、状況はどうなんだと聞きましたら、例えば東北大学の工学部金属系、定数三十五なんだそうですけれども、ことしの希望者は日本人が七人で外国人が十六人だ、こういう状況がずっと続いていて、要するにこのままいくとだんだん助手のなり手もいなくなる、最近助教授も欠員が生じてきている、本当に将来大変なことになってしまう、こういうことを言っておりまして、これはちょっと大変だなというふうに思ったわけでございますけれども、こういう大学の現状について、文部省、どのように認識をされているか、簡単に。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 井上裕

    井上国務大臣 お答えいたします。  ただいま先生言われた国立大学が確かに非常に老朽化している、これは全体的に見まして二十年以上たっているのが四三%ということでございます。今おっしゃったように二十年が六〇%、四十年が四〇%、平均いたしますと全体の四三%。こういうものをいろいろ私ども、確かに老朽しておりますが、財産状況を勘案の上、これから新設の、いわゆる学科等の新増設に伴う施設整備を優先的に行う、そういう点でこの老朽建物の改築、改修についても鋭意努力をいたしたい、このように考えております。  さらに、今、若手研究者の大学院離れあるいはまた研究員制度、そういうお話もございましたが、これまた学術研究の推進にとって最も重要なことでございますので、我々としても一生懸命やりたい。  さらにまた、今一番最後に先生が申されました現場の声、研究費が足りないということにつきまして、大学における学術研究も極めて重要であり、また科学研究費補助金の拡充等、学術振興のため、いわゆる関係予算の充実に私ども努めているわけでございます。  大学研究費の今後のあり方につきましては、現在学術審議会においてちょうど昨年の十二月に一応出まして、二十一世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について審議を今いただいておるところであります。今後とも独創的な研究を一層増進いたしまして、世界の学術の発展に貢献するために努力をいたしたい、そういう気持ちでいっぱいでございますので、財政面におきまして一段の努力をいたすつもりであります。
  143. 井上義久

    井上(義)委員 その程度の認識では非常に困るわけでございまして、要するに国立大学の崩壊、これは長年優秀な人材を産業界に供給してきたわけでございまして、これが本当に崩壊をいたしますと、基礎研究の水準が低下し、教育レベルが低下して日本の将来、私は大変厳しいものになるのじゃないか。もちろん大学自体に問題がいろいろ山積しておりますし、財政的にも厳しいということはよくわかっているわけですけれども、これは何か抜本的な対策を講じないと本当に大変なことになるな、こう思います。日本の場合は短期間で急速に発展をしてきたということがあって、蓄積がないということも一つの原因だろうと思うのですけれども、例えば高等教育機関に対する公財政支出の国民所得の比率で見ますと、日本は〇・八%でございまして、アメリカ、イギリス、ドイツの大体半分しかないのですね。それから、例えば研究開発費、これは欧米諸国に遜色ないようにGNP比でもなっているのですけれども、要するに民間が八割を占めて国は二割だ。これも大体欧米諸国の半分ないし三分の一という状況でございまして、一人当たりの研究費なんかを見ても民間が二千四百五十六万で大学が九百五十六万、非常に厳しい環境の中で大学の皆さん非常に頑張っているというのが私は実情だと思うわけです。そういう意味で、このままほっておきますと、施設の面、研究費の面、人材確保という面、非常に厳しい。私は抜本的な思い切った投資というものが今必要なんじゃないかというふうに思うわけでございますけれども、大蔵大臣、実情をお聞きになってどのようにお感じでございますか。
  144. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員が御指摘になりました問題点を私は知らないわけではございません。そして私は、問題の原因は幾つかあると思います。一つは、極めて不幸な問題でありましたが、昭和四十年代の前半から半ばにかけて続きました大学紛争というものが国立大学に極めて大きな影響を与えたということであります。そしてこの後遺症というものは、殊に特定の学部においては今日もまだ完全に解消したとは申せない状況にある、委員御承知のとおりであります。  もう一つは、児童数の増加に伴って、これは大変言いにくいことでありますけれども、入学志望者がふえていくにつれて大学の受け入れ定数が非常にふえ続けてまいりました。その間に大学教育、大学というものが持つ教育機能と研究機能の中で、私はここしばらくの間文部省としては教育機能を拡大することに重点を置いてこられたのではないかという印象を持っております。今後児童数が減少する中において、文部当局としては高等教育における定員問題を今後どう扱っていかれるのか、こうした点についても我々は方針を一度お聞かせをいただかなければなりません。  さらに、その教育機能に非常に偏在してきた中で、研究機能のウエートが大学院に、大学院教育というものに移ってきていると私は思いますけれども、その移り変わりというものも非常に中途半端な形態にあると私は思います。そうなりますと、学部教育と大学院の研究というものとの間にどのような関係をお持たせになるのか、さらには人材養成としての一貫性を持たせていかれるのか、こうしたことについては私は根本的な論議を既に必要とする時期は相当過ぎておるという感じがいたします。  これは国民からお預かりした税金を充てていくことでありますから、安易にばらまきといった状態をつくることは決して望ましいことではございません。新設学部、新設大学等々施設整備費の配分がということを先ほど委員は言われましたけれども、確かにそうした面もありましょう。しかし同時に、既設国立大学におきましては、やはり学園紛争の傷跡というものが残っておるということと、教育と研究とにどうバランスを持たせるべきかということに対して大学当局者自身にも真剣に御検討いただく必要がある。その御結論を得ながら、我々は大学における研究活動というものをいかに助長していく、国として伸ばしていく施策を考えるか、そうしたことを真剣に考えてまいるところであります。
  145. 井上義久

    井上(義)委員 時間がありませんので、具体的な提案を幾つかしたかったわけでありますけれども、この問題は産業立国、技術立国としての日本の将来の方向にかかわってくる重要な問題でありますし、今大蔵大臣おっしゃったような認識を私も持っておるわけでございますけれども、事は急を要する、結論を待ってというようなことを言っていられるような状態じゃないわけでございまして、ぜひとも政府部内においてもこの問題、抜本的な検討をしていただいて、私たちもまたこの問題について議論をしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  以上です。
  146. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、冬柴鐵三君から関連質疑の申し出があります。井上君の持ち時間の範囲内でこれを許します。冬柴鐵三君。
  147. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党・国民会議冬柴鐵三でございます。  我が国は今、人類がかつて経験したことのないスピードで高齢化社会に向かって進んでいます。海部内閣では我が公明党の提言等も入れられまして高齢者福祉十カ年ゴールドプランを策定し、今後十カ年間に実に六兆円をこれに投ずるという政策を決定されました。私は国民とともにこれを高く評価しているものであります。  しかしながら、高齢化会社の到来よりもある意味ではもっと重大な事態が進行していると考えます。それは少子社会への急激な傾斜という問題であります。一人当たり女性が生涯に平均して何人の子供を産むかを示す合計特殊出生率、これは特殊でありますので以後平均出産数と呼びたいと思いますが、これが二・一人を割り込むと将来その国の人口の減少が始まると言われております。我が国では戦後第一次ベビーブームにこれが四・五四人を記録いたしましたけれども、以来ほぼ低下を続けまして、一九七六年、昭和五十一年に二人を割り込みました。自来低下の一途をたどりまして、八九年、平成元年にはこれが実にこれまで最低の一・五七人を記録してしまいました。平たく考えれば夫婦二人で一人半の子供しか産まないということになるのではないかと思いますが、人口は若年層から急激に減じていくのではないかと心配するわけであります。  ある人口問題の研究所が平均出産率を一・五七人、そして死亡率を現在と一緒、一定という条件のもとに我が国の将来人口の推計を行いましたところ、百年後には人口が半減し六千六百万人になります。そしてまた、遠い先ですが、五百年先にはこれが百三十万人になるというシミュレーション結果が出ていることは広く知られているところでございます。これはあくまで机上の試算にすぎず、こんなことが起こるとは思われませんけれども、今画期的な手を打っておかなければ、二十一世紀を生きる我々の子孫に活力あふれる社会を残すことはできないのではないかと案ずるわけであります。これが高齢化社会への移行と同時進行することにより、近未来において所々に取り返しのつかない困難な問題を惹起するのではないかと心配をいたします。  私はかかる観点から、海部内閣において高齢化社会に対する対策を講じられたと同機の少子社会へ向かっての思い切った総合施策を今策定されるべきではないか、このような提言をいたしたいと思うわけであります。  このような観点から、以下順次問題点を指摘しつつ、質問を進めたいと思います。  まず労働省にお尋ねいたしますが、高齢化社会の進行とともに、労働力需給ギャップは拡大基調にあると思います。これを一九九〇年の性別、年齢別の労働力率を横ばいと仮定したときに、二〇〇〇年、二〇〇五年及び二〇一〇年のそれぞれにおいて、需給ギャップは、その人数はそれぞれどれぐらいになると試算していられるのかをお示しをいただきたいと思います。
  148. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 御指摘の一九九〇年の性別、年齢別の労働力率が今後も変わらないということを前提にいたしまして計算いたしますと、労働力人口、現在一九九〇年で六千三百八十四万人でございますが、これが二〇〇〇年には六千六百九十四万人、二〇一〇年には六千五百五十六万人、こういうことになります。  労働力の需給ギャップにつきましては、経済の動向ですとかあるいは労働力供給の動向という両方の面に左右されるわけでございまして、現在の労働力率に基づきます労働力供給を前提にいたしました労働力需給ギャップというものは、推計は行っておりませんが、この一月に職業安定局長の私的懇談会で計算をしていただきました数字がございますが、それも労働力供給につきまして、最近におきます女子労働力率の上昇傾向を前提にしまして労働力率を計算をしまして、経済動向につきましても四%程度の成長が続く、こういうことを前提にいたしますと、完全失業率、二〇〇〇年から二〇一〇年にかけては一・八%程度で推移するのではないか。現在が二から二・二%の水準でございますので、そういう意味におきましては非常に低下することが予想される、こういうことでございます。
  149. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっと私のお尋ねをいたしたのは、需給ギャップの人数をそれぞれその三つの期限を切りましてお示しいただきたいということを問いたわけですが、いずれにいたしましても、高齢化社会へ向かいますと、いわゆる十五歳から六十四歳までに属する生産年齢人口というものが従属人口に比して減少していくということは事実だと思うのです。  そういうふうにした場合に、今ちょっと触れられましたけれども、女性の就業というものに大きく期待せざるを得ないと思うわけでありますが、その実態について、どの程度の女性の就業というものを期待していられるのか、お示しをいただきたいと思います。
  150. 齋藤邦彦

    ○齋藤(邦)政府委員 今後の女子労働力率というのがどういうことになるかということでございますが、今までの、最近の変化の基調をそのまま伸ばしてまいりますと、各年齢層におきましてそれぞれ上昇していくということが予想されます。生産年齢人口、十五から六十四歳でございますが、現在この年齢層の女子の労働力率は一九九七年で五七・一%でございます。これが二〇〇〇年には五九・六%、二〇一〇年には六一・八%ということになることが見込まれております。
  151. 冬柴鐵三

    冬柴委員 さて、この出生率の低下要因として女性の晩婚化、それから結婚、育児に対する若い人々の負担感というものが挙げられると思うわけでありますが、女性の晩婚化の実態とその原因について厚生省から説明をいただきたいと思います。
  152. 熊代昭彦

    熊代政府委員 お答えいたします。  昭和四十年代後半以降、晩婚化によりまして二十歳代、三十歳代前半の女性の未婚率というのが急に著しい上昇が見られております。昭和五十年から平成元年、十四年間でございますけれども、女性の未婚率は二十歳代前半六九・二%から八五・七%へ、それから二十歳代後半では二〇・九%から三七・三%へ、三十歳代前半を見ますと七・七%から一二・〇%というようなことで、著しく上昇いたしております。それで、その結果、平均初婚年齢を見ますと、昭和五十年の二十四・七歳から平成元年の二十五・八歳ということで上昇いたしております。  こうした晩婚化の要因でございますけれども、御案内のように女性の高学歴化が職業キャリア志向を促すというようなことで、女性の職場進出が大変増加しているところでございますけれども、反面、女性の就業と家事、育児の両立支援体制が依然として不十分であるということ、それから独身生活が経済的自由とか行動の自由というようなことで魅力が増大したということの反面、職場中心主義によります男性の側での家庭への軽視とか男女の役割意識がかなり固定的であるというようなことで、結婚、家庭生活の魅力を相対的に低下させているのではないか。あるいは結婚適齢期意識でございますけれども、それが希薄化している。いつが適齢期かというような意識が希薄化しているということでございます。それから、極めて具体的なことでございますが、社会慣行としての見合いが統計的に見ますと非常に減少している、そのようなことかと存じます。
  153. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それに加えて、結婚しても子供を産む数が少ないということについて、結婚や育児に対する若い人たちの、特に女性は責任を持っているわけですが、負担感というものが増大しているのじゃないかと思うわけでありますが、それについても、簡単で結構ですが、説明をいただきたいと思います。
  154. 熊代昭彦

    熊代政府委員 女性の結婚、育児に対する負担感についてお尋ねでございますが、それを直接に示す調査というのは見当たらないわけでございますけれども、夫婦が予定する子供の数とそれから理想の子供の数、理想の子供の数は多いのですけれども、実際に予定する子供の数は少ないというようなことで、その理由等から推測いたしますと、次のようなことではないかというふうに考えております。  先ほどの申し上げましたことと重複する面もございますが、就業と家事、育児との両立が非常に困難な状況にあるということが第一点でございます。それから養育費とか教育費などの経済的負担が大きいということが第二点でございます。それから核家族化や都市化を背景にいたしまして、育児をしている場合の孤立感が非常にあるということで、育児に対する不安感がある、これが第三点でございます。それから第四点といたしましては、大都市におきます住環境が狭いというようなことで、それが不十分である。それから第五点といたしましては、家事、育児以外の時間を楽しむゆとりというものがないのではないかというふうに考えているというようなことでございます。  つまり総体的に申し上げますと、先ほど申し上げましたように、若い女性にとりまして行動や生き方の自由が保障される独身生活の魅力に反しまして、結婚というのが非常に何か負担に感じるのではないか、そういう状況が非常に強いというふうに考えております。
  155. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これまでの質疑のやりとりの結果で明らかとなった事実は、女性の社会進出ということが我が国の労働力不足解消の面でも今後ますます大きく期待されている、ところが反面、これが出生率の低下に拍車をかける結果となりかねないという二律背反の可能性がそこにあるのではないかと私は考えるわけであります。これを解決するためには、子供は両親にとって宝であるということはもう当然でありますけれども、国家にとってもこれは宝なんだ、そして未来の国家の活力と繁栄の源泉である、このような視点と自覚に立ってこの問題に取り組まないと正当な解決策は到底得られないというふうに思うわけであります。また、女性を求める職場、企業にとっても、女性に優しくない企業は生き残れないという、そのような時代の到来の予兆を感じるわけであります。  そこで、健やかに子供を産み育てる環境づくりは、国と社会とりわけ企業と働く両親、この三者の連帯によって整備されていかなければならないのではないかと思います。その方向はいろいろありましょうけれども代表的なものを挙げてみますと、やはり育児休業制度の導入、保育施設のきめ細かな拡充、あるいは児童手当拡充による子育てに伴う両親の経済負担の軽減、このような三点を中心とする支援ということを早急に考えていかなければならないんじゃないかというふうに考えるわけであります。  特にこの育児休業法制定につきましては、我が公明党、議員立法等も過去には行ってきた経過もありますけれども、現在、幸い立法段階に入っていると聞いております。その現況について労働省から、簡単で結構ですが、説明をいただきたいと思います。
  156. 高橋柵太郎

    ○高橋(柵)政府委員 育児休業制度の確立に向けましての法的整備のあり方につきまして、昨年十二月に婦人少年問題審議会に検討を依頼していたところでございますが、今月五日、育児休業制度を今後一層広くかつ迅速に普及させるために法制化を図る必要があるとの御建議をいただいたところでございます。この御建議は審議会委員各位の大変精力的な検討の結果でございまして、育児休業制度の法制化について要望が高まっている中で大変時宜を得たものであるというふうに私ども考え、労働省としてはこの建議を踏まえましてでき得る限り早く法案を取りまとめ、審議会にお諮りした上、国会に提出したいというふうに考えております。
  157. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その立法化に大きく期待するわけでありますが、伝えられるところによるその育児休業法の問題点について、たくさんありますが、その中で特に育児休業中の婦人に対する手当の問題であります。ノーワークだからノーペイでいいんだ、要するに休んでいる間は支払いはできないという、そういう考え方があるようでありますが、先ほど来私が述べてきましたこの出生率を上げるという観点から見ますと、若い夫婦にとって、特に住宅ローン等の負担を抱える若い夫婦は、共働きで得た所得というもの、それで生計を賄うという実態があります。したがいまして、子供を産み育てるその期間、会社を休ませていただくのはいいんだけれども所得を失うということになりますと、やはり子供を産むことにちゅうちょするのではないか、このようにも考えるわけであります。  それで私は、この費用は国からだけ出すべきという考えには立ちません。国、それから社会を代表しての企業、それから夫婦が属する労働者、このような方々が、三者が一体となってこういうものを解決していくべきではないだろうか。今立法化に入っていらっしゃいますので、私は、一定の手当をまずここに支払うという、ぜひこの芽をここで育てていただきたい、こんなふうに考えるわけでありますが、労働大臣と、それからこれはお金の問題に大きくかかわると思いますので大蔵大臣のお考えを伺っておきたい、このように思います。
  158. 小里貞利

    ○小里国務大臣 育児休業法制定の問題につきましては、早くから深い関心をお寄せいただいております。それらを背景にいたしまして、先ほど局長御説明申し上げましたような状況の段階まで進展をいたしておるところでございます。  先生のお尋ねの問題でございますが、ただいま休業中の保障問題、賃金問題についてのお話でございますが、実はこの機会に若干幅を広げて申し上げさせていただきますと、御指摘の問題のみならず、本案件は、要求をする立場あるいはまたついては希望をする立場、またそれに対応いたしまして負担を伴う立場、あるいは義務を義務づけられる立場、それぞれの立場が相錯綜いたしておりまして、大変さまざまな論拠のもとにこれを整理していかなければならない一つの特異性を持った問題であること、御承知のとおりでございます。対象にしても、目的にいたしましても、あるいは申請の要件にしても、あるいは先生ただいまお尋ねの休業中の保障の問題にいたしましても、担保の問題にしても、罰則の問題にいたしましても、中小企業等に対する配慮の問題等々、あるいは先刻お話が出ました原職復帰の問題等もたくさんございますが、それらのすべての要件につきましてまだ今日の段階におきまして私ども労働省としてきちんと固めておる状況でないことも御理解いただくところでございますが、せっかくお尋ねでございますからその休業中の保障問題について取り入って申し上げますと、これも衆参両院の国会の審議の過程も御承知のとおり、特に参議院の社労委員会等におきましては過日相当集中的な論議がとり行われまして、野党四党共同提案等も再三にわたって出てまいっておりますことも御承知のとおりでございます。  これらを通してただいま先生がお尋ねになっておりまする問題を律して申し上げますと、非常に意見が相対立する象徴的な問題であることも御承知のとおりでございます。したがいまして、去る五日に答申、建議をいただきました婦人少年問題審議会の中身におきましても、この問題についてはさまざま意見がありました、したがって一定の結論を得ることはできなかったのでと、こういうような状況で出てまいっておるところでございます。私どもは、まだこれからかなり期間もございますので、関係各方面の論議がこの問題につきましても高まってくることを期待をいたしておるところでございまして、それまでの間にまた先生方の御意見等もお伺いする機会もあろうかと思います。  それからまた、この機会に申し添えさせていただきますが、もう過般のいきさつ、背景は御承知のとおりであります。私は、国民的な、より多くの皆さんの本法律の制定を本当に期待をしておられる国民的課題は御承知のとおりでございますので、この機会に、千載一遇じゃないか、そういうような一つの悲願も持っておる次第でございまして、各位それぞれ立場は違いましても譲歩するところは譲歩し、胸を痛めるところは痛め合いまして、この際一定の成功を見たいものだ、そういうふうに考えておりますので、よろしく御理解を願いたいと思います。  以上であります。
  159. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今労働大臣が御答弁がありましたように、育児休業中の労働者への経済的援助そのものについての論議がいまだ固まっていない、そうした状況の中で予算措置云々は、まだそこまで至っていないと思います。ただ、各党と御相談をいたしまして、十数年前に教育現場と医療の現場、そして福祉の現場の三つに対する育児休業制度の、私は提案者をいたしました。そのときにも実はこのノーワーク・ノーペイの原則というものが一番論議の中心になりまして、このために制度化が一年おくれました。私はそうした記憶を持っておりますだけに、この点に余り固執をされ、時間がかかることは全体の育児休業制度の普及にむしろブレーキになりはしないかと、個人的にはかつての記憶の中からそのような思いをいたしております。
  160. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それぞれの立場で大変御苦労なさっていることがにじむような答弁であったと私は思います。ただ私は、今この育児休業法制定を間近にいたしまして、ぜひその目的、やはり健やかな我々の子孫がたくさん生まれるような素地をつくっていこうという観点があることも十分考えていただき、それは親任せにするものじゃなしに、国も大きな利害関係を持っているということの観点に立ってお考えいただきたいというふうに思いますし、ぜひ労働大臣、大蔵大臣、御努力をお願いしたい点であります。特に、答弁で労働大臣お触れになりましたけれども、休業期間中の不利益取り扱いの禁止や原職復帰の原則というもの、これについても立場の相違によって大きな対立があることはよく承知いたしておりますけれども、法律制定の際にはこの原則はやはり法律の中で明定をされるべきであろうというふうに考えますので、その点につきましてもよろしく努力されることを要望しておきたいと思います。  その次に、保育所の問題であります。  一年間休業させていただいて子供を育てましても、一歳の子供を家に置いて職場へ復帰するということになると、この子供を預けるところが必要になるのは必定であります。私も選挙区の多くのお母さん方から要望等も聞いてまいりましたけれども、それは二つの方面があるように思われます。  一つは、保育所をもう少しきめ細かくいろいろなメニューをつくってほしいという、例えばゼロ歳児保育あるいは一時保育、あるいは延長保育、あるいは夜間保育、こういうような方向であります。  それからもう一つは保育料、これも応能負担でなってはおりますけれども、働いた所得がほとんど保育料に行ってしまいかねないという負担増を訴えるお母さん方もいらっしゃいます。そういうことからこの点につきましても、まだ固まっていないのに大蔵大臣大変だと思うのですけれども、厚生省のお考え、それから負担軽減の問題での大蔵省のお考えと、との二点についてお伺いしておきたいと思います。
  161. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 委員にお答えいたします。  子供は宝であるという先ほどの委員のお話、私も全く同感でございます。そういう観点から保育制度についても充実を図ること、これはもう非常に大事なことだと思っております。  現在保育サービスにつきましては、ゼロ歳保育、乳児保育でございます。また一時的保育などの特別保育対策の推進に努めてまいりましたけれども、今度の平成三年度からは、今お話が出ました、大体夜十時ごろまで時間を延長するという保育サービスの拡大やその他新しい保育サービスを実施することにいたしております。  具体的にちょっと触れますと、例えば乳児保育を実施する保育所の数も、これは今まで五千一カ所でありましたのが五千六百六十二カ所にふえるということで相当大幅にふやしておりますし、さらにきめ細かくというお話、二、三の例を申し上げますと、長時間保育サービスはこれは当初、一番新しい、今度やるわけでございますが、これも二百カ所ということで、大体夜十時までということで、働いて帰って十分間に合うようなという時間の制度が新たに設けられることになりますし、それから企業が委託をする、そこで保育の事業をやっていただくということで、その実施箇所も、初めてでございますけれども八十二カ所からスタートをするということで、かなり意を払いながら充実を図ってまいるということにしております。それからまた、今後いろいろな需要が出てまいりますので、そういうものに即応して、きめ細かな保育サービスの充実はこれからも努めてまいりたいと思っております。  また、第二点としてお尋ねございました保育料の件でございますが、これは児童福祉法に基づきまして、保護者の負担能力に応じて御負担を願っているということで、段階がいろいろありまして、そういうことで平成三年度予算案におきましても保育所に三人以上通っていらっしゃる、そういう御家庭の保育料の軽減などを図る等今後とも適正な徴収基準を設けて努力してまいりたいと思っております。
  162. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 この問題、実は主計局長が一番私に答弁させたがらない話なんです。ただ、厚生大臣経験者として、今委員の御指摘を聞きながら、私は二点感じたことがございます。  具体的に今その父母の御要望というものの変化に対応し、さまざまなサービスを既に厚生大臣が述べられたように実行に移しております。ただ、ややもすると肝心のそのお子さんを預かっていただく保育所の保母さんたちの労働というものについて世間が無関心になりがちであります。そうした点にどうぞお預けになる親御さん方も御理解をいただきたいものだという思いが一点であります。  もう一つは、零歳児保育のお話がありました。私は実は、本来零歳児保育というものは厚生大臣当時も好きではありませんでした。むしろ育児休業制度が普及することによって、一歳の誕生日を迎えるまでは母親のそばに子供はあるべきだというのが私自身の考え方でありました。零歳児保育というものは決して私は望ましいものだとは思っておりません。こうしたことをも考えながら今後ともに努力をしてまいりたいと思います。
  163. 冬柴鐵三

    冬柴委員 厚生省、大蔵省、ひとつお母さん方のニーズをくみ上げながら、きめ細かくきめ細かくお願いをしたい。私も大蔵大臣がおっしゃったとおりで、私も子供がおりますけれども、子供が小さいときは母親のもとに、これがもう一番大事なんですけれども、残念なるかなこの育児休業法、まだ今できておりません。そういうところから、母親としても手元に置きたい、子供と引き裂かれるような気持ちで会社勤めをしていられる方もいられるわけであって、そういう育児休業法がきちっとできるまでの間はゼロ歳児保育についても、大変これは競争率が激しいようです。この乳幼児についての預かる部分についてはなかなか預かるところがない、そういう点も育児休業法が全部できて、そのサービスができれば私はこんなゼロ歳児保育はそれはもうやるべきじゃない。しかし、そういう過渡的な面では考えていただぎたい課題だと思います。  それからもう一つ、児童手当についても伺っておきたいと思うのですが、今まで第二子からということで六歳までというものが第一子に繰り上げられ、しかも金額が増額されるということは私も高く評価しますし、時代の流れに即応したものだと思うのですけれども、ただこれを三歳で打ち切ってしまうということになりますと、児童手当という名前が乳幼児手当になってしまうのじゃないか。児童手当というからには少なくとも六歳、欧米では十六歳までですね。先進国では児童手当を給付している国が多いと承知いたしておりますし、金額も非常に多いというふうに思います。もちろんそれに対しては直ちに大蔵大臣あたりから抗弁が出てくることもよくわかっております。我が国ではいわゆる扶養控除を大きくしているとかいうことがあるわけでありまして、その児童手当だけ取り上げて私、言うわけではありませんけれども、今まで六歳まで給付していたものを三歳に引き下げるという、そういう発想には私は納得できない面があるわけです。簡単で結構ですが、御答弁をいただきたいというふうに思います。
  164. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 ただいまの児童手当の改正問題、これはやはり全般的な姿を見ながら御判断いただくということでなければならないと思うのですが、今児童を取り巻く環境を整備していくということは大変大事なことでございまして、委員のるる御説明なさった諸条件はやはり充実していかなければならないと思いますが、その中で、児童手当は御承知のように今まで二子、三子以降、こういう形でございましたけれども、お母様の一番負担な時期はいつかというと、先ほどお話出ておりましたように第一子を育てられるときに負担が大きい、それからまた、その場合育児の負担が大きいばかりでなく、その時期にはまた就職もなかなかしにくいというようなこと、その他のいろいろな条件を勘案いたしまして、二児、三児のものを今度は一児、二児に重点的に制度を改正していく、しかも内容を、支給額を倍にするということで処理してまいるということに改正をしておりまして、さらに今おっしゃいましたように諸外国の例は、これはそれだけでは単純比較はできませんで、日本のこういう育児制度、それから税制上の問題あるいは給与制度、今各企業の約七割が既に何らかの形での家族手当という形で支給しております。それらを総合いたしまして、ほどよき姿にまとめるということで結論を出しておるわけでございます。よろしく御理解のほどお願いいたします。
  165. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私、時間も迫ってきましたが、来るべき二十一世紀、我が国全土が活力に満ち、すべての家庭の夕げの食卓からたくさんの子供たちの元気な声と家族の笑い声が外に漏れてくるような、そのような明るい活力に満ちた日本をつくっていかなければならない。このような観点から私は海部内閣に、子育て支援十カ年計画、子宝ダイヤモンドプランというようなものを、いわば高齢化社会に向かってのゴールドプランを立てられたこの内閣ですから、竿頭一歩を進めてそのようなものをぜひ策定していただきたい。総理おられませんので、所管の、厚生大臣ですか、厚生大臣、内閣を代表してひとつ決意をお聞かせいただきたい、このように思います。
  166. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 老齢化社会に対しましてゴールドプランがある、これに対しまして冬柴先生の方からさらにその上を行くダイヤモンドプランの御発言、大変に感銘深く、またそれだけに重要な問題だと受けとめて拝聴いたしました。  政府といたしましても、こういう問題についての環境づくりを大事にいたしまして、関係官庁で一体となって中長期的な視野で積極的に施策を講ずるということになっておりまして、このために内閣としては昨年の八月に関係十四省庁から成る連絡会議を設置したことは御承知のとおりでございます。その検討を踏まえまして、去る一月二十三日に総合的な対策の取りまとめを行ったところでございます。  今後は、それに基づきまして関係官庁一体となりまして子育て環境づくり、中長期的な観点から総合的かつ積極的な施策を講じるように努めてまいりたいと思っております。
  167. 冬柴鐵三

    冬柴委員 大蔵大臣にも、高齢化社会には六兆円出されたわけですから、少子社会へ挑戦する応分の、いろいろまとめていられますけれども、行政の最優先課題としてぜひお考えいただきたいと思いますので、決意を一言。
  168. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は今率直に委員の問題提起に敬意を表します。ただし、子育てだけを独立させた十カ年戦略と言われる考え方は必ずしも私は同意できません。むしろこれから日本が考えていかなければならない一つの大きなテーマは、日本の今までの家族構成と将来の家族構成は果たして同じか変化をするのかということでありましょう。言いかえれば、世代間同居の形態がどれだけ今後日本の中に残っていくかということであります。  そうなりますと、むしろ世代間同居というものがいいのか悪いのか。私は、実は世代間同居論者でありますけれども、そうした家族構成全体のバランスの中でむしろ子供の問題というものも位置づけていかなければならない。私は、実は厚生大臣当時から同じようなことを言い続けてまいりまして、なかなか、高齢化社会と言いまして、お年寄りの話ばかりが先行いたして、実はやきもきしておりましたが、数少なくしか生まれなくなればなるほど、その子供たちを心も体も健やかに育てるというのは非常に大事なことでありますから、子供だけを切り離したプランをつくるということよりも、むしろ将来の我が国の世帯構成のあり方を含め、私は全体的に考えていくべきものだと考えております。  指摘には、非常に私は敬意を表します。
  169. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それじゃ、内閣法制局長官に来ていただいておりますので、もう残りわずかしかありません。  自衛隊法に百条というのがあります。ずっとやってきたのは、百条の五というやつばかりでした。百条というのがあります。そして、これには同法施行令百二十一条の二項というのがありまして、これをあわせ、時間がありませんので読んでみますと、防衛庁長官は、自衛隊の訓練の目的に適合する場合には、国等から輸送事業の施行の委託を受け、及びこれを実施することができる、こういうふうに読めると思うのですが、今回の湾岸危機で避難民を輸送するという業務を考えたときに、政府は百条の五第一項を選ばれまして、そして特例政令を定められた。この百条の五じゃなしに、私が今読んだ百条というのは大きな制限があります。すなわち、「自衛隊の訓練の目的に適合する場合」、こういう大きな制限がありますけれども、これは、輸送手段は飛行機に限っておりません。いわゆる艦船も、自動車も、あらゆる輸送手段を含みますし、また、運ぶものも「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」、こういうふうに限定いたしておりません。人も物も運べます。また地理的にも、私は、この条文は我が領域内と考えるのが正当だと思いますけれども、そうでもないというふうにも読む可能性があります。  法制局長官は今回の湾岸問題に関し、この百条をお使いにならなかったことは私は高く評価しているのです。百条の五ということで、非常に難しいところを選ばれたことは評価するわけですが、なぜ百条を使われなかったのか、その理由を、もう時間がありませんので、簡潔に御説明をいただきたいと思います。
  170. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  ただいま委員御指摘の百条でございますが、土木工事等の受託ということでまず百条があり、それを受けまして、「土木工事、通信工事その他政令で定める事業」、この中に輸送事業が入っている、これは御指摘のとおりでございます。  今の御質問に対しまして私の方からはこういうふうにお答えすることが適当かと思うのですが、まず今回提起されました事案といいますか、対象といいますか、それがこのたびの湾岸危機に伴いまして生じた避難民を航空機によって輸送する、こういうことでございますので、防衛庁の方からも自衛隊の航空機によって人を輸送する、こういうことを規定しております百条の五、これを根拠として、具体的には百条の五の「政令で定める者」として暫定措置政令をつくる、こういうことで避難民を政令で規定することとした、かような経緯でございます。
  171. 冬柴鐵三

    冬柴委員 じゃ、百条でもいいというお考えなんですか。百条は飛行機を含んでいますよ。その点、どうですか。
  172. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 今のお尋ねでございますが、百条で、先ほど御指摘のように「自衛隊の訓練の目的に適合する場合には、国、地方公共団体その他政令で定めるものの」これこれの「事業の施行の委託を受け、」というふうなことがございますが、先ほどのような経緯でございますので、百条の規定によって行うということについて詰めた検討は行っておりません。
  173. 冬柴鐵三

    冬柴委員 先ほど敬意を表するということを言いましたけれども、検討すらしておられないということになれば、その発言、私の敬意を表するという点は撤回をいたしておきます。  これは非常に大きな問題だと思います。私は、内閣法制局はさすが百条をお使いにならなかった、見識だというふうに思っていたわけですが、検討されないということになりますと、それ以上質問を続けることはできませんけれども、私は、非常にこれは大きな問題を含んでいるということを御指摘申し上げて、時間が参りましたので私の質疑は終わります。
  174. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて井上君、冬柴君の質疑は終了いたしました。  次に、和田静夫君。
  175. 和田静夫

    ○和田(静)委員 まず、大臣の皆さんの都合もありますから、金融問題を若干触れておきたいと思いますが、九〇年の六月二十八日から九一年の一月二十六日まで約半年間をとってみましても、報道に載った金融機関に絡む不祥事が非常に多いのであります。それを一々申し述べませんが、そこで、大蔵省は九〇年の十二月十二日に、社会的不祥事を起こしたり、放置しておくといずれ経営危機に見舞われるおそれのある金融機関、これに対して行政指導を行われた。業務改善命令、銀行法二十六条を改正して法的根拠を与える。そして合併再編をやりやすくしようという、そういう方針を明らかにしたと伝えられるのですが、実はこれは一九八一年の銀行法改正時、私は当時参議院の大蔵委員でもありましたし予算の委員でもありましたが、深くかかわりましたけれども、大蔵省が持ち出して、業界等の強い反対もあって撤回した経過がある代物でありますが、これはどういうふうに今お考えになっているのでしょう。
  176. 土田正顕

    ○土田政府委員 御説明を申し上げます。  ただいま委員がお述べになりました十二月十二日に方針を明らかにしたという話は、私どもは心当たりがないのでございます。  それから、銀行法を改正したときのお話がございました。これにつきましては、当時法案提出に至るまでにいろいろと各方面と折衝をいたしまして、金融制度調査会の答申作成時におけるいろいろな案につきまして、数カ所について修正が加えられたということはあったかと存じますが、いずれにいたしましても、そのときの法案は提出いたしまして、院の方でそのまま可決をいただいたわけでございます。現在その法案につきまして、さらに具体的に改正案を考えているということはございません。
  177. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この予算委員会の途中にも、かなり大きな報道がここの部分ではあったのでありますが、大蔵大臣は、個人的には今用意をしてない、そういうことを述べられていました。この大蔵省の検査であるとか、あるいは日銀の考査があっても、これは長く問題にしてきたことでありますが、その結果がどうも公にされない。私は、こういう状態というのが結果的には実効性の伴わないものにしてしまっているのではないだろうか。住友銀行やその他の銀行の問題を後ほど若干触れたいと思うのでありますが、顧客による企業選択の資料を与えて、金融機関の自己責任の確立を図るとでもいいますか、そういうことが今日金融の自由化等ディスクロージャーが非常に求められている、そういう状態の中で、私は大変必要なんじゃないかと思っていますが、いかがでしょう。
  178. 土田正顕

    ○土田政府委員 金融機関に対しましては、法令の定めるところにより金融検査を行っております。ただ、その内容につきましては、従来から、個別金融機関に関する問題でございますので、この検査結果について外部に御説明をすることは差し控えさせていただいているところでございます。  ただいま委員御指摘の、金融機関の内容を世間に示して選択の機会を与えるべきではないかというお話でございますが、これにつきましては、例えば証券取引法系統におきまして、上場されている銀行が非常に多いわけでございますが、かなり精密な有価証券報告書などが公開されているわけでございますし、また別途これは銀行法の中に関連する規定もございますが、いわゆるディスクロージャー関係につきまして銀行の前向きな工夫を促す旨の条文があり、これを受けまして、各銀行は自主的に経営内容の公示に努めているところでございます。
  179. 和田静夫

    ○和田(静)委員 日銀の考え方は。
  180. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答え申し上げます。  私どもの方でも、考査と申しまして、個々の金融機関を実地に訪問いたしまして、経営内容を拝察し、また必要ないろいろな助言を行っているところでございますが、その考査の結果の公表という点につきましては、ただいま大蔵省銀行局長からお答えがございましたとおり、私どもの立場から見ましても、やはり法令の根拠に基づき、あるいはディスクロージャーの一般的なルールに基づいてデータを世間に公表されている以外に、私どもが個別に知り得た個別銀行の事情をディスクローズすることは適当でないという方針をとっております。
  181. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は意見を述べましたから、それ以上は触れません。  そこで、先ほど述べましたように、不祥事が非常に続く。巨額になると、金融機関の倒産にもつながりかねないような大きな不祥事が最近幾つか出ておりますね。私は、金融機関の社会性にかんがみて、金融機関行動倫理法のような法律を今日必要とするのではなかろうかというふうに一つ考えますし、さらにあわせて、インサイダーに対する罰則のような制度を強化する必要があるのではないだろうかというふうに思いますが、いかがでしょう。
  182. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 インサイダー取引の罰則の問題でございますが、御存じのように、インサイダー取引に対する規制を証取法を改正して入れていただいたわけでございまして、そのときに、ほかの証取法の各違反行為とのバランスをとって、適正なバランスのとれた罰則規定を設けていただいたわけでございます。その後、我々現在その法律を施行しているわけでございますし、また現在、実は店頭市場につきましてもインサイダー取引の規制を適用しようということで議論を証券取引審議会でしていただいているところでございます。
  183. 和田静夫

    ○和田(静)委員 大臣、この金融機関の行動倫理法的なものを、そういうものを今必要としませんか。
  184. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 委員がイメージしておられますその倫理法というものが必ずしも明確ではないものですから、大変意見が申しにくいのでありますが、仮に具体的な内容を持たない訓示規定的な形でその一般的な倫理規定を定めるということでありますならば、私は必ずしもこれは効果のあるものかどうかという点に疑問を持ちます。  同時に、その具体法としてこれに罰則等を担保する、そうした形態をお考えになるのであるといたしますと、これは銀行法あるいは証取法その他関係法令の中に既に定められておりますさまざまなルールとのダブりといいますか重複といいますか、こうした問題を生ずるのではなかろうかと思います。必ずしも私は法的に新たなものを構成する必要があるという認識は持っておりません。
  185. 和田静夫

    ○和田(静)委員 大蔵省、現在、九三年中の定期預金の金利完全自由化を目指して最終調整に入っているわけですが、これは大蔵省及び日銀両方に答えてもらいたいんですが、金融機関への影響をどのようにお考えになっていますか。
  186. 土田正顕

    ○土田政府委員 御説明申し上げます。  ただいま委員からお尋ねがございましたのは、定期性預金の中の小口の定期性の預金、端的に申しますると、一千万円未満の定期性預金につきまして逐次預金金利の自由化を進めていく、そういうステップをとっておるところにつきましてのお尋ねであろうかと存じますが、これの金融機関に与えます影響と申しますのは、金利の自由化ということに伴いまして、どちらかといいますと、預金金利は規制金利時代よりも高くなりがちでございます。したがいまして、預金金利が高くなりますことは、金融機関の資金コストの上昇につながるわけでございます。それに対しまして、貸出金利を上昇させてさやを確保するということは、現実になかなか容易にできることではございませんので、利ざやの圧縮という現象を生じがちでございます。そのようなところから、金融機関に対しましては、一層の経営の効率化、合理化努力というものが要求されるというところになるかと存じます。  その際に特に問題になりますのは、中小金融機関に対しましてどのような影響があるかということでございますが、中小金融機関は、どちらかと申しますと小口の預金の構成比が大きいわけでございますので、小口の定期預金の金利が高くなりますとそれだけ、相対的な問題でありますが、大手の金融機関よりもやはり経営がこうむる影響は大きいということがあろうかと思われます。そこのところにつきましては、私どもも財務局その他を通じまして金融機関にこの金利自由化のスケジュールを説明し、それからこれによってその個々の金融機関がこうむることあるべき影響を測定して、それに対して自主的に対応策を立てていただくようにいろいろ指導を申し上げているところでございますが、なお今後それぞれの金融機関の経営動向につきましての状況把握、モニタリングと申しますか、そのような状況把握に一層努めまして、混乱を起こすことのないように努めてまいりたいと思っております。
  187. 福井俊彦

    ○福井参考人 ただいまの銀行局長の御答弁と重複を避けますためにごく簡潔にお答え申し上げますが、預金金利の自由化が進むということは、言い方をかえますれば、固定的に利ざやが保証されている部分がだんだん減るということでございますので、金融機関の経営にとりましては、一層自己責任に基づく経営を徹底しなければならないということでございます。前向きには創意工夫を一層凝らした経営でございますし、後ろ向きといいますと言葉が悪うございますが、経営の基盤を固めるという意味では、自己資本の充実とリスク管理の徹底ということに尽きるわけでございます。  金利の自由化は、日本におきましてはかなりのスピードではございますけれども、段階を経て行われてきております。したがいまして、これまでのところは大きな金融機関にそうした意味での影響が強く及んできておりますが、この先の段階におきましては、中小の金融機関にそうした影響が及んでくるということでございます。  日本銀行といたしましても、本支店通じてそれらの金融機関との接触がございます。経営上の適切なアドバイスが一層必要になってきたというふうに考えているところでございます。
  188. 和田静夫

    ○和田(静)委員 九〇年の四月に三井銀行と太陽神戸、十一月に協和と埼玉銀行の合併を認められましたね。  そこで大蔵省、今後もこの体力増強策として合併を積極的に認めていかれるという方針でしょうか、あるいは現在予定されているものが何かございますか。
  189. 土田正顕

    ○土田政府委員 金融機関の合併につきましての考え方を申し上げますと、やはり合併というのは金融機関がおのおのの経営判断によって自主的に判断すべき問題でございます。したがいまして、合併を一概に頭から促すとか、そのようなことを申すことはいたしておりません。  ただ、合併を決意いたします動機その他の点につきまして経営者のお話を伺ったりいたしますと、やはり今後の金融自由化の進展、それから機械化の巨大な投資、そのようなものに対応するために合併などによって経営基盤の強化や競争力の確保を図る、これが有効な手段の一つとなるというふうに考えて合併を決断された例が普通であるようでございます。  なお、現在手続として進行中の案件といたしましては、埼玉銀行と協和銀行が合併の準備を進めております。また、山陰地方にございますが、山陰合同銀行とふそう銀行が合併の準備を進めております。それ以外に具体的な例は関知しておりません。
  190. 和田静夫

    ○和田(静)委員 その山陰合同銀行とふそう銀行の合併ですが、それによって島根県、鳥取県における預金量のシェア、店舗数、これはどういうふうになりましょう。
  191. 土田正顕

    ○土田政府委員 ただいまちょっとそのシェアについての正確なパーセントは持っておりませんわけでございますが、この山陰合同銀行は、主として島根県、鳥取県両県に地盤を持っております。それから、ふそう銀行は鳥取県に地盤を持っております。島根県でのシェアはわずかでございます。  なお、両方の大きさでございますが、山陰合同銀行の資金量は、去年の三月末現在で一兆九千八百九十六億円、ふそう銀行は四千三百八十九億円。山陰合同銀行は地方銀行六十四行中第二十九位ということでございまして、これに、この資金量が二兆円対四千億円でございますから、五分の一程度ふえるということになります。  それにつきましての、いわばシェアが高過ぎるというようなことはないかというような観点は、これは公正取引委員会で主として検討されることでありましょうけれども、私どもの方の銀行合併を審査するその審査要件といたしましても、適正な競争という観点から照らして適当と言えるかどうかというような観点で審査を進めるということが法定されておりますので、当然、例えばそのシェアが高くなり過ぎて地域寡占となるというような弊害が予想されるような場合には、その合併にいろいろな条件をつけたり、ないしはいろいろと御相談に応じるということになろうかと思います。  現在、この両行の合併について、最終的にいろいろ調整中でございます。
  192. 和田静夫

    ○和田(静)委員 答弁で先に言っちゃったんですが、どうも寡占状態が生まれるのではないだろうか。したがって、公取はここのところ、法律との関係はどうでしょう。
  193. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今御質問がございました具体的な合併の案件につきましては、現在私どもの方で審査中でございますので、本日の段階では具体的な御答弁はお許し願いたいと思うのでありますが、一般的な考え方といたしまして、独占禁止法では競争の実質的制限をもたらす合併は禁止されておるわけであります。これは銀行といえども例外ではございません。  その場合の合併の審査の基本的な観点でございますけれども、これは個々の具体的な事案に応じてもちろん判断をいたすわけでございますけれども、一つは、当該市場の状況、特にやはり先ほど来御指摘になっておりますシェアというのが大きな判断要素の一つになると思います。  それからもう一つは、合併が行われる状況というものがございまして、これは過去にも幾つも例があるわけでございますけれども、例えば経営が非常に困難になった会社がある、それはいずれ合併をしないと存続できないというふうな事案があった場合に、それを引き取る会社がかなり大きい会社であって、しかもそれしか引き取り手がないといったような場合、それを地域なり国全体の経済状況とか雇用状況を見てどう考えるのか。  それからもう一つは、その合併が行われた場合、利用者に果たしてどういう影響が起こるのか。例えば銀行等でいいますれば、合併後の店舗の配置等が一体どうなるのか。  そういった状況を見まして、総合的に競争条件に甚大なる影響を与えないのかどうか、そういう条件が果たしてあるかどうかということを具体的に判断して、最終的に決断をするということになると思います。
  194. 和田静夫

    ○和田(静)委員 住友銀行ですが、後でさらに若干聞きますが、銀行法十三条で、同一人に対する信用供与の制限がありますね。都市銀行では、資本金や準備金の額が巨額で、銀行の資本金プラス準備金の二〇%、そういう範囲内で、例えばイトマンに対するところの住銀の融資額というのは、昨年十二月時点で五千百億というような膨大なものですね。一体、銀行の健全な経営運営がこういうことで担保できるのでしょうか。
  195. 土田正顕

    ○土田政府委員 貸し出しその他資金の運用は、原則は当然それぞれの金融機関の自主的な経営判断によるべきところでございます。しかし、委員の御指摘のような、体力に相応する以上の大口の信用供与を特定の貸出先に集中いたしますことは、やはりリスク管理上問題がございますので、一定の枠を設けて、その枠を超えないように指導をしておるわけでございます。  住友銀行という具体的な銀行につきましての数字を申し上げることはちょっと御遠慮させていただきたいのでございますが、現在までのところ、いわゆる大口信用供与の制限を超えておるというような状況ではございません。その点は銀行自体も気をつけておると思いますが、私どもも気をつけて見てまいりたいと思っております。
  196. 和田静夫

    ○和田(静)委員 そこで、問題になっています中堅商社イトマンとの関係ですが、検察はどういう対応をされていますか。
  197. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お答えいたします。  御指摘のイトマン疑惑に関しましては、マスコミ等が種々報道いたしております。そういったことを受けまして、大阪地検におきまして現在情報収集中であるというふうに報告を受けております。
  198. 和田静夫

    ○和田(静)委員 イトマンがアメリカ、ヨーロッパでコマーシャルペーパー、これは一種の約束手形ですが、を乱発している。アメリカ市場で二億三千万ドル、ヨーロッパ市場で一億ドルに上るようですが、これは大蔵省には届け出があったはずですが、いかがですか。
  199. 土田正顕

    ○土田政府委員 そのような届け出が必要であるかどうかについて直ちにちょっとお答え申し上げるだけの知識を有しておりませんが、いずれにいたしましても、住友銀行に対しましては先般来検査を続行し、その住友銀行の大口与信先としましてのただいま御指摘のイトマン、それからイトマン・グループ、それの状況につきましてもかなり手をかけて調査をいたしましたので、大体の状況は検査官の方で把握しているかと存じます。
  200. 和田静夫

    ○和田(静)委員 このCPの発行は、大蔵省、アメリカ証券取引委員会で上限を決めるようですね。これはどういうふうに設定されましたか。
  201. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 コマーシャルペーパー国内での発行につきましては、銀行と証券と両方やっておりまして、それは私どもの方で一応のルールをつくりまして、発行適格企業あるいは発行の要件といいますか、例えばどういう格付が要るとかいうような、あるいはバックアップラインとかいろいろございますけれども、そういうようなことでいろいろルールをつくっております。ただ、その発行の上限額というのは特に設けておりません。  それから、海外での発行につきましては、これは私どもは全く関与をしておりません。
  202. 和田静夫

    ○和田(静)委員 では、アメリカの証券取引所が設けた上限額というのもおわかりにならないということでしょうか。  実は私が非常に不思議に思ったのは、昨年五月にアメリカ市場でのCPの枠を一億ドル増額しているんですよ、私の調査によれば。昨年五月というと、既にイトマンの問題は専門家はほとんど知っていた、我々だって幾つかの情報を持っていた、報道陣も動き始めていた、そういう時期なんですね。  そこで、大蔵省というのはこういうときには全然対応しないのですか。
  203. 土田正顕

    ○土田政府委員 ただいま手元で詳細な事実を承知しておるわけではございませんが、委員御指摘のコマーシャルペーパーの発行は、海外におきましてこのイトマンの子会社というか関係の会社が発行しておるものではないかと存じます。そのようなものにつきまして日本の法令上の届け出その他が必要であるというふうにはちょっと私ども認識しておらないわけでございます。  それから、いずれにいたしましても、銀行局の立場として申しますならば、私どもの監督の対象は住友銀行なら住友銀行という金融機関でございまして、その金融機関の取引先の一般企業の行動にまで金融機関を通じていろいろ介入をするということはいたしておりません。
  204. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これはもう時間がありませんからあれですが、ヨーロッパ市場のコマーシャルペーパーは、返済期限が来て今いわゆるジャンプ続きなんですね。アメリカも返済期限が迫っているというような状態にあるときです。イトマンのコマーシャルペーパーが格付でA1、これは最高のランクの信用を得ていた。もちろんこれは東京銀行のバックアップがあってのことであります。そうしますと、こうしたコマーシャルペーパーがジャンプ続きであったり、日本の格付機構では格付を取り下げたりということが起こっているというふうに素人目に見るのですが、大蔵省というのは額を設けて届け出を受理したというようなことはないわけですか。先ほど来、国外でのものはない、こうなるのですが、ないのですかこれは、本当に。
  205. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先ほど御説明いたしましたように、国内市場におきましてコマーシャルペーパーを発行する場合には、私どもルールをつくっております。銀行、証券両方が扱っているわけで、大半が銀行でございますが、したがいまして、発行実績の報告は事後受けております。でも、事前に発行する際に私ども報告を受けるということはございません。
  206. 和田静夫

    ○和田(静)委員 事後に受けている。  私は、こうした海外調達資金がイトマンの海外不動産やら絵画の投資に使われたように思われて仕方がないのですよ。イトマン・ハワイがパンパシフィック社の持っていた物件を高値で買い取っていますね。それから、現地の不動産業組合の資料を見てみましたが、少なくとも二十四億の利ざやが生まれていることになっています。半年でそんなに上がるはずのない物件だろうと思うのですね。このパンパシフィックという会社は、イトマンの非常勤取締役であるバーナード・スウェーニーという人が社長であります。ところが、この方はイトマンの前常務の伊藤寿永光の義兄なわけですね、姉さんの夫か何かでずね。そして、イトマン・ハワイもこのバーナード・スウェーニーさんが社長です。そうすると、資金は恐らくアメリカで発行したコマーシャルペーパーだろう、こういうような事実関係について、法務省はどの程度御存じでしょう。
  207. 井嶋一友

    井嶋政府委員 今お尋ねの件も含めましていろいろ報道されておることがございますけれども、私どもはその一々につきましてここで御説明するだけの報告は得ておりません。
  208. 和田静夫

    ○和田(静)委員 二千万ドルの利ざやというのは、ハワイの半年間の土地の動きとしては大き過ぎるのですよ。この中にオプション料が含まれるという話もあるのでありますが、その額も私は情報としては知らされていますが、相当な利ざやがあったと推定できるわけですが、法務省はそれ以上に答えられないのでしょうが、見解はございますか。
  209. 井嶋一友

    井嶋政府委員 同じことを申し上げて恐縮でございますが、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  210. 和田静夫

    ○和田(静)委員 実は、いろいろ取り上げてきたのは、このハワイのプロジェクトを扱っているのは伊藤寿永光前常務で、イトマングループ・ニュースレターというのがありますが、伊藤さんがこの企画監理本部長であると書いている。としますと、今私がずっとあげつらってきたことは、どうも商法の特別背任の疑いが出てくる、こう思ったがゆえに取り上げたのです。この辺も法務省は見解を述べられませんか。
  211. 井嶋一友

    井嶋政府委員 委員既に御承知のとおり、犯罪捜査あるいは情報収集といったようなものの段階における御答弁というのは、従来差し控えさせていただいておるわけでございまして、御理解いただきたいと思います。
  212. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それでは外れまして、今私が申し上げたような形のものであったならば、一般論としては特別背任の疑いに当たるケースである、これはどうでしょう。
  213. 井嶋一友

    井嶋政府委員 一般論というお尋ねでございますけれども、結局事実を当てはめた上での適条関係を申し上げるわけでございますから、お許しをいただきたいと思うわけでございます。
  214. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それでは、検察がかなりの関心をお持ちになって調査をされている、こういうふうにとっておいてよろしいですか、冒頭のお答えは。
  215. 井嶋一友

    井嶋政府委員 冒頭に情報収集中であると申し上げましたが、かなりの程度かどうかということも含めまして、御答弁は差し控えさせていただきます。
  216. 和田静夫

    ○和田(静)委員 少し私一方的に最後のところを述べておきますが、イトマンの河村前社長が記者会見で、絵画の購入は住友銀行の磯田前会長に繰り返し依頼をされた、磯田さんの長女のためにやったと言っていらっしゃいますね。私は、河村さんのこの発言は極めて具体的で信憑性が高いと思われます。これは、一つは銀行のトップの態度としては私は疑問がある。一方では巨額の融資をし、イトマンに決定的なまでの影響力を持っている。他方では、経営危機の原因となった絵画購入を持ちかける。こうした住友の姿勢について、大蔵省は住友銀行にどういう注意、指導、あるいは調査は既に四カ月間、これはもう終わったんですね、されたんですから。どういう指導をされたわけですか、されるんですか。
  217. 土田正顕

    ○土田政府委員 この経営の地位にあった方々の個別の行動につきまして、私ども特に新聞以外には具体的な話を伺っているわけではございませんので、これにつきまして推測を交えて申し上げることは差し控えたいと存じます。  それから、住友銀行に対する検査でございますが、これは昨年の九月末以来検査に入り、それから最近一応この検査を終了し、主任検査官から講評を行った段階でございますが、さらに今後検査の内容を整理いたしまして、指導事項を盛り込んだ示達を発することになろうかと思います。ただいま検査の結果につきまして整理中の段階でございます。
  218. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この磯田さんの依頼というのは、自分の長女のためのもの、こうなってきますと、自己を利するのと同様の行為で、繰り返せば、銀行のお金と圧力でもってイトマンに絵画を購入させて、そして損害を与えた、長女の利益のためにそうされた。これは明確に商法上の特別背任の条項にそっくり当てはまる、私はこう思うのですが、法務省の見解を承りたいところですが、答えは見えていますから。  イトマンと住友銀行との関係、それから磯田前会長の役割にも及ぶという、そういう理解をどうしてもこれはせざるを得ませんが、それはそういう理解の仕方というのは常識的である、こういうふうに法務省は思いますか。
  219. 井嶋一友

    井嶋政府委員 私の立場で先生の御理解をどの程度かということを申し上げるのはいささかいかがかと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げておりますとおり、具体的な事件の話でございますから、御容赦いただきたいと思います。  いずれにいたしましても、大阪地検において、種々の報道されておることを念頭に置いて情報収集をやっておるということであるということを申し上げておきます。
  220. 和田静夫

    ○和田(静)委員 大蔵省の側も住友銀行に対するところの指導の姿勢などで反省すべき点がやはり私はあるんだろうと思いますので、しっかり調査結果に基づくところの指導の方針を出していただきたいと意見を述べておきます。  そこで、光進グループの事件なんですが、蛇の目ミシン工業が光進におどし取られたとされる二百九十六億円のうち二百六十億円を用立てたのが埼玉銀行だと報ぜられているわけですね。蛇の目首脳からすべての事情を聞いて、そして光進にお金が渡ることを承知した上で融資に応じていたというふうにされています。また、この融資に当たって、銀行は金の使途を知らなかったことにするとの合意の上において諸作業が行われたとも言われていますね。そうすると、こういうような融資のやり方というのが焦げつきますと、これは商法四百八十六条の特別背任罪になる可能性が私は出てくるのではないかと思っているんですけれども、この辺は銀行局の立場でどうです。
  221. 土田正顕

    ○土田政府委員 御説明を申し上げます。  ただいまの御指摘の点は、銀行の個別融資にかかわる事柄でありますし、また現在既に司法当局が捜査中の事件に関連するものでございますので、個別の立ち入ったコメントは差し控えたいと存じます。  一般論として申し上げますならば、それは、金融機関の融資は、先ほども申し上げましたけれども、銀行みずからの経営判断において決定するのが基本でございます。それにつきまして、銀行の公共性にかんがみて、経営の健全性に問題が生じたり、社会的批判を受けるようなことがあってはならないことは当然でございます。  ただ、先ほど御指摘のお話につきましては、私どもは、新聞に載ったような記事以外に銀行から直接聞いておりますところをやや総合して申し上げますと、この融資は関係の会社を通じて間接的にでございますが別会社ナナトミという、別の会社のリゾート開発資金として申し込みがあり、それに対して融資をした、その資金が使用されたようであるという報告を受けております。
  222. 和田静夫

    ○和田(静)委員 銀行法二十七条の発動というようなものは、今それじゃ調査をされているあるいは報告を受けている段階では、大蔵の頭の中にはないということでしょうか。
  223. 土田正顕

    ○土田政府委員 ただいま委員のお述べになりました銀行法第二十七条という規定は、「銀行が法令、定款若しくは法令に基づく大蔵大臣の処分に違反したとき又は公益を害する行為をしたときは、」大蔵大臣から銀行の「業務の全部若しくは一部の停止若しくは取締役若しくは監査役の解任を命じ、又は」「免許を取り消すことができる。」という非常な強権を規定したものでございます。しかしながら、このような強制的な権限は、これは一般論でございますけれども、申すまでもなく預金者保護と信用秩序の維持の観点から、真に必要な場合だけ発動すべきものであり、慎重に対応すべきものであると考えておるわけでございます。  このような運用をしてまいっておりまして、これまでのところ、少なくとも戦後でございますが、銀行に対してこの規定を発動したことはなかったように記憶するのでございますが、いずれにいたしましても、ただいま御指摘の件と結びつけて御説明を申し上げるというような筋合いのものではないように存じます。
  224. 和田静夫

    ○和田(静)委員 最後にいたしますが、最近銀行に絡む事件をずっと見てみますと、直接銀行本体が表面に出てくることは少ないんですね。グループ内のファイナンス会社等を通して金のやりとりが行われる場合が多いわけであります。そして金をスクリーニングにかけて出所をわかりにくくする手法と言ったらよいでしょうか、そういうふうにどうも感じられる。今や大手銀行はその本体のみで見ていくわけにはどうもいかぬ。グループ、もう端的に言ってノンバンクからの融資、そういうグループ内のものを全体としてとらえていく必要がある。そういうようなグループを形成している金融機関に対して、その本体ばかりに目を向けていたのでは、私は実態はどうもとらえられないんじゃないだろうか。これらに対して大蔵は何か方針をお持ちですか。
  225. 土田正顕

    ○土田政府委員 再三申し上げておりますように、銀行の融資活動をどのように行うかということは、根本的にはその銀行の自主的な経営判断でございます。そのようなときに、実際の資金需要者との間に間接的に一つまたは二つというような中間介在者を置くというそういうスキームを考えることはあり得るわけでございますが、これは必ずしもわかりにくくするという動機に出るものというふうにも言えないわけでございまして、やはり実際のその資金需要を把握している会社のノーハウを借りたり、ないしはその債権の保全上必要な措置を講じやすいというようなこともあって、それでこの間に他の企業を通すというような判断に出るものも多かろうと存じます。  そこで、これは確かに銀行と、五%程度の出資があるものもあり、ないしは出資がないものもあり、密接な関係のある取引先と、さらにその先のいわば資金の最終的な需要者との間の活動を一連のものとしてとらえて一体として把握できるかという問題でございますが、これは、制度論としてこれを組み立てますことは、やはり銀行が資本的に支配している会社であるというようなことでもなければ実際問題としては難しゅうございます。  それで、これにつきましての関連する制度を一、二申し上げますと、銀行法の場合には、銀行が一〇〇%の資本を持っております子会社に対しまして報告検査権が及ぶという規定を設けておりますけれども、普通、一〇〇%子会社ではないような、五%程度の小さな出資しか持っていないところまでを報告検査権の対象にするということはいささか無理ではなかろうかと思われます。  それからもう一つは、これは銀行局の所管ではございませんが、いわゆる連結財務諸表というものの連結基準に該当するものであれば、その連結財務諸表を見まする範囲内で、その銀行とそれと密接に関連する企業とを総合的に把握する財務諸表が作成され、それは公表されている場合もあると存じます。
  226. 和田静夫

    ○和田(静)委員 日興証券の疑惑の問題で、ちょっと時間がなくなってまいりましたからまとめて述べますが、まず一つは、一任勘定の取引の実態でありますけれども、これはどうもノルマ達成に利用できるために比較的安易に、禁じられている一任勘定が行われている状態にあると思うんですが、一任勘定の実態、その規制の実効性は一体どうなっているのか。実は参考人に見識の高い東証の理事長をお願いしておったんだが、どうもだめだということで、大蔵省の側から説明できるだけのことをやってもらいたいと思うんです。  それからもう一つは、架空口座の利用ですが、これはもう目に余るものがありますね。本店から支店に向かって監査に入るよと言ったら、まあつくってあった印鑑は捨てるわ焼くわなどというようなことが歴然と行われているにもかかわらず、相変わらず架空口座がずうっと利用される。これは一体どういうふうに証券会社側の内容というものを把握され、指導されているのですか。内部のチェック体制を考えてみますと、この日興証券の問題の営業課長代理の取引の元帳を見れば、素人だってどうもわかりそうな、何種類もの株の売買が一日のうちに異常な取引でもって繰り返されていることがわかるわけですね。どうしてああいうような手抜かりが起こって、十億になんなんとするような不正が行われるということになったのだろうか、非常に疑問であります。  そういう意味で私は、こういうような実態というものを日本の証券業界の協会の中で把握をする機関があるのだろうか、直接的には大蔵省はどういうふうな形でもってこういうものを把握をするのだろうか、どういうような対策をお持ちなんだろうか、そして、この日興証券については、会社側として証券法上の問題があったわけでありますから、どういうような処分、指導を行われるのか、あわせて答弁願います。
  227. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 幾つかのお尋ねでございます。まず最初に取引一任勘定の件について御説明いたします。  いわゆる取引一任勘定と申しますのは、有価証券の売買につきまして例えば銘柄の選択あるいは売買の別それから数量、価格などの要素の全部あるいは一部についてお客から証券会社が一任を受けて取引を行うという性質の口座でございます。これにつきましては現在、法令上、一定の要件に該当するものだけを認めるということになっておりまして、それ以外は禁止をするという形になっております。また通達では、より広く一般的にそういう形の取引一任勘定については自粛をするようにという通達を出して指導をしているところでございます。  しかしながら、御指摘のように、私どもでいろいろトラブルの報告を受けます中に、その取引一任勘定に基づくトラブルがかなり見られるわけでございます。そういうものは今申し上げました法令で厳格な要件で認められているものではなくて、いわば営業員とお客との間で行われて会社が必ずしも把握してないというようなものがかなりあるわけでございまして、私どもそういう現状を踏まえまして、この取引一任勘定についての取り扱いをもう少し考え直す必要があるのではないかというふうに思っているわけでございます。たまたま証券取引委員会におきましても、証券会社の行為規範といいますかモラルといいますか、そういったものについての国際的な基準のようなものができまして、それを受けて証券取引審議会でいろいろ議論をしていただきました結果、取引一任勘定についてはもう少しはっきりと法令上で明らかに禁止できないかというような御意見をいただいているわけでございまして、法律改正の要否も含めまして検討をしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。  それから、架空取引、仮名口座の問題でございますが、これにつきましても私ども通達を出しまして、証券会社に対して明らかに本人名義でない取引は注文を受託しないようにという指導をしてまいっているわけでございます。しかし、御指摘のように架空口座が証券事故などの際には散見されるわけでございまして、私どもさらに証券検査等を通じて一層厳しく通達の趣旨を守るように指導してまいりたいというふうに考えております。  それから、やや個別の問題になるわけでございますが、御指摘の日興証券の件でございますけれども、確かに私どもまだ事実の詳細については現在調査中でございますけれども、現在までに調査の報告を受けた限りでは、日興証券の営業員に対する内部管理、チェック体制がやや問題があったということが感じられるわけでございますし、全体の調査の詳細が出てまいりますと、私どもとしてはまず、当該証券外務員の行為が適正な行為だったかどうか、これが適正でないあるいは法令に触れる行為だということになりますと、私どもは通常会社に対してその証券外務員の職務を一定期間停止するとか、あるいはさらに外務員としての登録を取り消すというような行政処分を従来からやっておりますし、そういった点も含めて事実関係の詳細が明らかになった時点で対応してまいりたいと思いますし、また証券会社の内部管理体制の不十分な点についても十分改善を求めていきたいというふうに考えているわけでございます。  それから、協会の役割について御指摘がございました。協会もいろいろなルールをつくっておりまして、証券外務員について、例えば、当然のことですけれども、お客の資力などに適合した勧誘をすることとか、あるいは一任勘定を受けてはならないとかいうようないろいろなルールをつくっております。そういったものを、我々行政としても当然検査の際には協会のルールについてもあわせて見ておりますし、一層検査を通じて、あるいは協会自体も検査を行っているわけでございまして、そういったことを通じて証券会社の営業姿勢の適正化、これは証券会社の経営の健全性を維持するためにも必要なことでございますので、一層の指導をしてまいりたいというふうに思っています。
  228. 和田静夫

    ○和田(静)委員 昨日来報道されている高額医療機器をめぐる事件でありますが、千葉大から横浜市大に及んでいったわけですが、国公立大学附属病院を舞台とする構造的汚職の色彩が濃くなったと言われていますが、この辺をまず検察にお聞きをいたします。  時間がありませんので続けますが、さらに、これらの事件を踏まえて厚生省は医療機器販売に絡むサービスに公正競争規約を設けることで公正取引委員会協議するとの方針を固められているようでありますが、これは厚生省と公取と両方からお聞きをいたしたいと思います。  文部省はこれらの事件を踏まえて検討委員会を既に昨日発足させたようでありますけれども、私は全国的な調査というものが今日行われる必要があるのではないだろうかと思うのですが、文部省の見解を承っておきます。  自治省も同様でありまして、公立病院に対する同様の対応というようなものを行うべきだと思うのですが、自治省の対応についてお答えを願いたいと思います。  さらに私は、昨今生産ベースで五兆円余と言われる医薬品市場と大学病院などのいわゆる治験、何といいますか研究助成費とでもいいますか、研究費の助成というような関係が疑いを持ってたくさん伝えられています。実は私のところにも投書がありました。したがって関係省庁に既に意見を聴取いたしましたし、調査を今開始いたしていますけれども、一般論としては難しい難しいと言われてきた薬の問題でありますが、薬といえども立証できれば収賄は成り立つと考えられると思うのですけれども、検警察の理解を承っておきたいと思います。
  229. 井嶋一友

    井嶋政府委員 東京地検特捜部におきましては本年二月十四日、千葉大学医学部教授外二名による医学部附属病院への医療機器導入をめぐる贈収賄事件について捜査を開始いたしまして、昨日三月六日、この三名につきまして東京地裁に贈収賄で公判請求をいたしました。  さらに昨日、元横浜市立大学医学部教授外三名を同大学の医学部附属病院への医療機器導入をめぐる贈収賄事件によって逮捕いたしまして、現在所要の捜査を続行しておるところでございます。
  230. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答えいたします。  厚生省におきましては、国民に有効で安全な医療機器が提供されるよう医療機器の研究開発の支援から品質チェックに至るまでさまざまな措置を講じているところでございます。  ところで、医療機器の価格に関しましては、自由かつ公正な競争を通じた適正な価格設定が行われるべきものであります。しかしながら、今回伝えられるような不正な、不正常な取引は国民の医療機器、医療機器産業に対する信頼感をゆがめるとともに、ひいては医療機器産業の健全な発展をも阻害することと存じます。そこで厚生省といたしましても、日本放射線機器工業会の代表を呼びまして業界全体として取引及び流通慣行等についての適正化に取り組むよう指示を行ったところであります。今後とも、医療機器についての公正な取引が行われるよう関係業界の適正な指導監督に努めてまいりたいと存じます。
  231. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 委員が御案内のように、景品表示法という法律がございまして、その中に、景品つき販売を適正にするために公正競争規約を設定するというシステムがございます。これは、業界が設定いたしまして、それを公正取引委員会が認定するというものでございますが、したがって、もし仮に業界の方でそういった動きがあるとすればいずれ御相談があろうかと思っておりますけれども、今のところそういったものは一切ございません。
  232. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 委員から御指摘があるような事件が国立大学に起きまして、私どもとしても大変恐縮に思っております。  あの事件の後、文部省の中に国立大学における大型設備の調達に係る仕様策定のあり方等に関する検討委員会というものを設置いたしまして、大型機器は最近は単に医療機器だけではなくて、理工系関係でも何億とする、数億する大型機器を調達しておりますので、それらを含めまして大型設備の調達につきまして、まず全国立大学に実態調査を行いまして、それをもとに有識者の意見も聞きまして、適正な調達のあり方を総合的に検討したいということで作業に入りました。なるたけ早く作業を終了いたしまして、来年度の概算要求時期になります七月、八月まで、その前に結論を出したいというふうに思っております。
  233. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 自治体病院におきます医療機器の購入の手続等につきましては、これまでも一般的には機種選定委員会等のような合議制の委員会をつくって機種の選定を行っているということを聞いておりますけれども、今般のような件にかんがみまして、病院の設立者でございますそれぞれの地方団体において、購入の意思決定の方法、手続等につきまして改めて点検するように私どもとしても指導してまいりたいというふうに考えております。  自治省といたしましても、その購入手続の実態等につきまして必要な調査をしながら、住民の不信を招くことのないようにさらに徹底をしていきたいと考えております。
  234. 和田静夫

    ○和田(静)委員 警察は答えませんか。――薬の考え方はこの間知らされましたから、いいか。  じや、次に入ります。時間がありませんので、まとめて総務庁長官。  海部総理が本予算委員会で、我が党の野坂議員の質問に答えまして、地対協の意見を幅広く聞きながらぴしゃっとやっていきたいと思うという気持ちを披瀝されました。そして、精神的姿勢というのを強調されました。  そこで、長官にお尋ねしたいのは、この被差別部落が受けてきた長らくの社会的、歴史的差別というものは、例えば人間の寿命、日本の国民の平均に比べまして、広島県の庄原市の実例をもらいましたが、六歳から七歳、それから大阪の例でいえば大体十歳ぐらい低いんですね。この辺のところは御存じでしょうか。もし御存じであったとするなら、これまでの法施行によってどういうことが一体行われてきたんだろう。被差別部落の出身者が今後寿命の面においても差別の結果からくる不利益を受けないための施策、方向、そういうものについて長官考え方をひとつお聞きをいたします。  さらに、啓発の基本的な認識の問題で論議がありまして、参議院で総理は、心理的差別の解消につきましては今後とも努力を続ける必要があり、啓発事業を粘り強く推進したい、そういうふうに言われました。  そこで、啓発、啓発といっても、人間の心のひだにまつわりついた差別観念はそう容易にぬぐい去ることができるものではありません。それだけに国は、同対審の言う心理的差別を解消するために具体的にどのように踏み込んだ施策を実施しようとされるのか、ここのところをお聞きをいたしたいと思います。
  235. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 この問題は、私から申し上げるまでもございませんが、基本的な人権という憲法の根幹にかかわる大事な問題であるという基本的な認識のもとに私ども取り組んでございます。また、そうした認識のもとに、過去三回にわたります特別措置法のもとでできるだけの対策を講じてまいりまして、私は現在、現状認識としては、相当の成果をおさめているのではないか、こう認識をいたしております。しかし、いろいろな問題もあることも事実でございまして、特に心理的な差別の解消というのは、これはもうこれからも粘り強く進めていかなければならない大事な問題であると思って、今後も取り組んでまいりたいと思います。  特別措置法失効後の対策につきましては、今お話ございましたが、現在地域改善対策協議会のもとで精力的な御審議、御協議をいただいておりますので、その結論を踏まえて誠実に対処してまいります。  具体的な問題につきましては、ひとつ政府委員からお答えをさせていただきます。
  236. 和田静夫

    ○和田(静)委員 差別のこの現実とそれに対応する行政のあり方、それから民間運動団体のこれらに対する取り組み、そういう関係でちょっとお尋ねをしておきたいのですが、この長い歴史的な経過で、例えば河川の増水時にはんらんしやすい場所に被差別部落が位置づけられている。そういうようなことについて政府が熟知をされているのだろうか。例えば群馬県桐生市を流れる桐生川で、ごく最近まで被差別部落を遊水地帯のごとくに扱っていた、そこにだけ堤防がなかった。あるいは高知県の鏡川にもそういうようなことがあったという事実。広島県の芦田川もそうであった。  いずれも、民間運動団体の指摘によってそれらは一つ一つ解決されてきたのでありますが、やはり政府みずからが地方自治体などとしっかり協力をして、主体的に行政としてこれらに対応し、類似するものの解決を図るべきだろう。このようなことを私はこの機会に強く求めておきたいし、そのための綿密な調査を行われることを提案をしておきたいのですが、いかがでしょう。
  237. 小山弘彦

    ○小山政府委員 委員ただいまおっしゃいましたような個別の事例につきましては、毎年度、関係省庁、当該省庁が地方公共団体の意見を十分お聞きしまして、そしてその中で事業を組み立てていく、こういうような仕組みになっておりますので、私ども国、地方公共団体としましては一体となって、むしろ事実の認識、これを第一に置いているところでございます。それを当該省庁確認しましてやっている、このような次第でございます。
  238. 和田静夫

    ○和田(静)委員 運輸大臣。――済みません、通産大臣、その他の大臣の方々、もう入る時間がなくなりましたので。外務大臣はありますよ、それは当然。法制局長官、もちろんあるのですが。  清算事業団の長期債務が昭和六十二年四月の引き継ぎ額より一・五兆円ふえて、二十七・一兆円に増大していますね。国鉄改革は、まさにこの増大する赤字を解消するために行われたはずなんですが、今日なお赤字が増大し続けているということは、国鉄改革の成否を問うものであると私は考えています。言いかえれば、長期債務の処理が終わるまで国鉄改革は終わらないという認識ですね。  これはお互い確認をしてきているところでありますが、運輸大臣、この認識はよろしいですね。
  239. 大塚秀夫

    大塚(秀)政府委員 長期債務の処理は国鉄改革の残された課題の中でも最大の課題であり、清算事業団の二十七兆円に上る債務につきましては、平成二年度で一兆円近い土地の処分を行い、また営団の出資持ち分を政府に一括譲渡する等、初めて債務が減少し、平成三年度首には二十六・二兆円に下がります。今後さらに土地の処分あるいはJR株式の処分によってこの債務を減少させ、極力国民負担をなくすというのが私どもの目標でございます。
  240. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それで、国鉄改革の成果がまだ見えない段階で、新幹線保有機構を鉄道整備基金に改組するという計画のようですね。私は実はここで、昨年の予算委員会でも申し上げましたが、中曽根内閣と私が参議院最後の段階で国鉄改革問題で約束をされたことがどうも進捗をしないのであえて取り上げるのですが、ここのところ理由がどうしてもわからないのです。国鉄改革全体が行き詰まったためならば改革するのもわかりますよ。が、政府はそういう認識を表明をしていない。清算事業団が行き詰まって改組するというのならまだしもでありますけれども、新幹線保有機構が行き詰まったわけでもどうもない。そうすると、新幹線保有機構を改革する根拠と理由というのはどうも私にはわからないのであります。国鉄改革の当時、新幹線保有機構をつくるに当たって政府の説明に、新幹線保有機構が新幹線などを整備するという役割を持ってはいませんでしたよね。この新幹線保有機構法の目的にもそれは入っていませんよね。国鉄改革の使命、すなわちこの長期債務の返還の見通しが立ったのならまだわかるが、一人当たり十四万円というこの国民負担が迫っている段階で、国鉄改革の目玉であった保有機構を改革するというのですね。その役割がなかったものに変えるというのですね。これはどんなことがあっても運輸大臣、ここのところは理解できないところです。きょうは時間がなくなってきましたから、後でまとめてこれは答弁をもらいますがね。  そこで、JR各社の株式上場の見通しですね、ここは大臣、明らかにできますか。
  241. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 JRの株式につきましては、清算事業団の債務等の償還及びJRの完全民営化という国鉄改革の趣旨に沿って、できる限り早期に、かつ効果的な処分を行う必要があり、平成三年度に処分する場合にも備え、検討準備を進めておるところでありますが、実際の売却につきましてはJR株式基本問題検討懇談会にも相談し、株式市場の動向を十分見きわめつつ慎重に対応していくことが必要であると考えております。
  242. 和田静夫

    ○和田(静)委員 新幹線を買い取ることにした場合に、この自己資本の比率が一挙に下がって、これは私の計算でありますが、東日本は五・三%それから東海は三・七%というふうになります。ちなみに私鉄十三社の平均は一八・一%ですよ。これはもう破産寸前の状態だと書いているマスコミもありますよね。あるいは評論家もいますよ。言ってみれば隠れた負債九兆円ということになるんだろうと思うのですが、この問題を上場審査の上ではどういうふうに大蔵は見ますか。
  243. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 証券取引所におきましては、一定の上場基準を設けております。これは、取引所に上場されますと一般投資家が投資対象として売買をするわけでございますので、そういった観点から、一般投資家の投資対象としてふさわしいような株式を上場するという趣旨に基づくものでございます。  具体的にお尋ねのJRの株式についてでございますが、これはJR各社から具体的な申請が出た段階で、証券取引所において現在持っております上場基準に従って審査を行うということになるわけでございます。
  244. 和田静夫

    ○和田(静)委員 現在のJR東日本、東海の決算というのは好調であるとはいっても、変動要因が非常に大きいと私は思うのです。東京証券取引所では、これも理事長はきょうお見え願えなかったものだからあれですが、このJR三社の経常利益は高運賃に支えられている、二つ目は、整備新幹線は赤字が予想をされる、将来JRの経営を圧迫するおそれがある、三番目は、経営自主権を私鉄並みに保障すべきである、四番目に、既存新幹線の買い取り問題、これらの点で慎重論を東証では打ち出していますね。  上場審査基準には、さらに労務の状況も判断するということになっていますよ。労使関係の状況も判断するということなんですね。そうするとJRの労使関係というのは、地方労働委員会への救済申し立てがJR発足以来二百十一件あって、そして救済命令が五十四件出て、すべてJR側が敗訴となっているわけです。これは労使の紛争として空前のものだろうと私は思うのでありますが、上場審査基準として、この辺は大蔵省、どういうふうに判断されますか。
  245. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 上場審査といいますか上場基準の中には、例えば株式の分布状況とかあるいは株主の数あるいは企業の収益状況などと並びまして、投資家保護の観点から、その上場申請企業の経営成績の実績あるいは見通し、さらには経営管理あるいは会社の内部問題というようなすべての点にわたって審査が行われるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、具体的に審査をいたしますのはあくまでも上場申請が出てからということになりますので、その時点において、そういったものについて証券取引所において上場審査基準に照らしながら審査を行っていくということになると思います。
  246. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、大蔵省からはそれぐらいの答弁しか期待ができなかったがゆえに、委員長、大変不満なのは、日本証券業協会の専務理事に来てもらおう、そして客観的にこういうものについての判断を述べてもらおうと、ところが民間人は呼べないと、私は非常に不満であります。全国団体の長たる者、しかも社団法人である、そういうような方々は一人は、例えば参議院予算委員会ではお招きすることができるということで運営をしてきました。ところが、民間人だからだめだだめだと言われて先ほどまでがたがたしたのですが、今のように、結果的には大蔵省では答弁ができないような重要な国民的な課題の問題がある。こういう参考人の取り扱いの問題は理事会で一遍考え直してもらいたい、協議をし直してもらいたい、そういうふうに考えております。特に今の労使関係などの審査基準の問題というのは、解決をしなければ上場に当たっての審査基準に適合しないというのはもう客観的に明らかでありますから、ここらのところは重視をしてやっていっていただきたい、そういうふうに申し述べておきます。  最後に、十一分残っただけでありますが、先ほどお手元に届きましたように、私のところにも、九十億ドル問題をめぐっての日本国憲法第九条との関連についての政府側の統一見解が再び提出をされました。私はこの見解は、この前も申し上げましたが、大変に不満でありますし、これを容認するわけにはまいりません。  政府見解では、単に費用を支出することは実力の行使には当たらないから、集団的自衛権の行使には当たらないというのであります。政府の言うところの集団的自衛権の行使に当たる実力の行使は、狭い意味で武力の行使のみを指すものであるとするものになっています。ここのところは私は、もう全然違っているんだと思うのです。前回の質問の際に、私は既存の条約の幾つかを挙げながら申し述べました。判断する限り、集団的自衛権の行使に当たるところの実力の行使というのは、必要に応じてみずからのとり得る手段を行使することである、武力の行使のみに限らずに、費用の拠出もまたその能力を有する国が行い得る集団的自衛権の行使の一部を今日形成するものである、そうとられるのは私は自然の姿だと思うのです。政府の言うように、費用の支出が実力の行使に当たらないというような、こういう見解というものは私は間違っている。いつかの機会に明確な根拠というものを私は示してもらいたいと実は思います。  今回の多国籍軍は、申し上げるまでもないのでありますが、国連安保理の関連諸決議は従って活動していると政府が言われるように考えてみても、それが国連憲章で定められた機関でないことであることは、これは明確であります。目的が、イラクによって侵略されたクウェートの解放またはサウジアラビアの防衛という、それぞれの当事国の自衛権の行使を支援することである以上、多国籍軍の行為というのは集団的自衛権の行使の一形態であると見ざるを得ません。その活動を支援するために今回の資金拠出が行われたこと、海部総理が常々この場でも言われましたように、この支援は日本の応分の責任の負担であるとしていることから、これは政府の言うような単なる費用の拠出などというものでは決してないはずであります。日本の国際的地位の確保のために、日本の負い得る責任を果たすという、言ってみれば日本政府の今後の立場を少しでも有利にするために、日本の持つ資金力という武器、いわゆる実力を行使した戦略であると見るのが妥当であろうと思うし、世界はそう見ていると思うのであります。それをあくまでも単なる費用の支出であって実力の行使ではないというのであれば、この資金拠出はただお金がないから出してくれという要請があったので、断る理由もないから出したというものであって、それによって国際社会への責任を果たしたわけでもなく、またそのつもりもなかったということになってしまうのではないだろうかと考えられるのであります。  そうでないとおっしゃるのであったならば、一体多国籍軍支援のような場合に、どこまでが単なる費用の支出で済まされるもので、どこまでが国家の実力の行使となり集団的自衛権の行使に当たるものとなるのか。武力の行使だけがだめだというような集団的自衛権の行使という概念を著しく逸脱した区分ではなくて、また武力の行使との一体化といったような明確な定義もないような、法制局長官がここで答弁をされた、あるいは一部の閣僚の方々がそういうふうに理解をされて答弁をされた。しかし、そのことは、私は国民がどこから考えてみても理解ができるものではないだろうと思うのであります。私は、わかりやすい事例をお挙げになって、そして明確な答弁を法制局長官、お願いをいたしたいと思いますが、いかがでしょう。
  247. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  国際法上の集団的自衛権の概念というものにつきまして、これはまず武力の行使を中心とした概念である、こういうふうには言えるだろうと思います。それで、学説の中には武力の行使以外のものも含めて集団的自衛権として解釈する考え方もあろうということも、またそのとおりだろうと思います。現に、過去におきまして、そういう学説としてというふうなことでお答えした例もあろうかと思います。  我が国の立場からとってみますと、我が国の憲法九条、これは「武力による威嚇又は武力の行使」、これを禁じているものでございます。この武力の行使、こういった概念は国家による実力の行使の概念であろうと思います。したがいまして、国際法上武力の行使あるいは武力による威嚇以外のものを集団的自衛権の行使に含めて学説によっては解する、そういう考え方があるといたしましても、我が国の憲法の九条との関係、これにおきましては、いわゆる武力の行使、これが禁ぜられているわけでございます。その広い概念のようなところまで、これは学説を、そういう学説をとったといたしましても、そこまで禁止しているものではないというふうに考えております。
  248. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ここのところは意見の分かれるところでありまして、少し長い論議を別の機会にやらせていただきます。この政府統一見解を了承するわけにはまいらないということだけを明らかにしておきます。  そこで外務大臣、ちょっとお聞きしたいのですが、湾岸地域に国際緊急援助隊の派遣を考えていらっしゃるようであります。我が党も一定の提案をさせていただきました。しかし問題は、今回は災害に伴うものとは言えませんから、これは法律の改正が必要となります。したがって、法改正をしてそういう派遣ということを今お考えになっているということでしょうか。
  249. 中山太郎

    中山国務大臣 現行法のもとでやり得ることは、天然災害に限られるというふうな法律の目的が規定されております。問題は、戦争による被害を受けた場合にそれを救済するということは国際緊急援助隊法の目的にかなうものではない、こういう理解をいたしております。ただし、それが戦火が既にもう終了をいたしておりまして、戦争自体はもうないといった中で、いわゆる自然発生的に発生した伝染病等の防疫活動のためには国際緊急援助隊の医療協力ができないものかどうか。外務省としては、二次、三次の自然発生的ないわゆる伝染病の発生等に対する防疫活動は現行法のもとでもできるという判断をいたしております。
  250. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、そこのところは赤十字、国際赤十字と日本赤十字の関係などという提案をこの前総括のときに申し上げておきましたが、この国際緊急援助隊に自衛隊を参加させるというような雰囲気が、どうも報道によると自由民主党の幹部の皆さん方の中にあるような報道がなされるのでありますが、政府は今そういうようなお考えをお持ちなんですか。
  251. 中山太郎

    中山国務大臣 現在のところ待っておりません。
  252. 和田静夫

    ○和田(静)委員 湾岸からのアジア系の避難民のほとんどは出稼ぎに行っていた。そして、彼らの稼ぎが東南アジアの国々の重要な外貨を獲得する手段であった、こういうことは事実でありますね。そうすると、今後中東地域になお混乱が続いていく場合に、それらの国々から日本への労働力輸出を望む声も大きくなる可能性も私はあると思うのですね。また、日本国内でも人手不足の影響で、きょう中小企業問題をやる時間を失ってしまったのですが、中小企業の皆さんが大変お困りになりながら、不法就労ではないかなどと思いながらも必要に駆られて外国人労働者を雇って働いてもらっているという、そういう実情がございますね。政府としては、今後この外国人労働者への要請が国の内外で大きくなっていった場合にはどういうように対応をされますか。
  253. 中山太郎

    中山国務大臣 この湾岸戦争が起こる前から、いわゆる日本における外国人労働者の問題はいろいろな問題を社会に提起していたと思います。つまり、危険それからきついあるいは汚いといったような仕事の場所には外国人労働者が集まっていた。そういう中で、政府といたしましても、この事態を重大に考えまして、官房長官を座長とする外国人労働者問題関係閣僚懇談会が設置されておりまして、ここでいろいろと協議がなされ、各省とも国内における外国人労働者の対策に腐心をいたしておりますが、今回のような湾岸の事態の後で、この地域に、各国に引き揚げてきた出稼ぎ労働者の人たちを日本国内の労働市場に受け入れるかどうかという問題につきましては、極めて重大な問題でございますので、引き続き関係閣僚懇談会で協議をしなければならないと考えております。
  254. 和田静夫

    ○和田(静)委員 あと一分ぐらいですが、総務長官、この間の北方領土の日に少年たちの弁論大会が行われた。その審査員に対して、皆さん方の方は政府方針に沿ったような演説内容の人たちを基準として順位をつけていってもらいたいという、そういう審査基準的なものを配られたと言われていますね。これは大変言論の自由に対しても問題だし、弁論大会などというものはおよそ自由な立場に立ってこそ論議をすべきだし、例えば海部さんがよく言われますように、早稲田の学生のときにおれは売春防止法に反対の立場でもって立たされたといったように、そういった立場は当然あるわけでありまして、そういう自由を抑圧するような形でもって弁論大会をあなたの賞品を出す形でもっておやりになったということだと、これは大変問題でありますが、いかがですか。
  255. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私も新聞紙上で承知したわけでございますけれども、あの問題につきまして、総務庁から審査基準等をお示ししたことはございません。総務庁は主催者ではございませんで、協賛団体でございましたが、主催者の方でどういうふうになされたか詳細は存じませんけれども、そういうようなことを申し上げたことはございませんし、また申し上げる筋合いでもないと思います。
  256. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ありがとうございました。終わります。
  257. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。  次に、菅原喜重郎君。
  258. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 湾岸戦争も国連決議十二項目をイラクが承認、受諾したことによって地上戦を終結させました。この戦争の経過、政府の対応、国内の世論などを振り返りますと、いまだ議論は続いていますが、多くの問題を露出させました。  昨年八月二日、突然イラクがクウェートを武力侵略した直後の日本大使は不在だったというが、邦人保護、救助の緊急対策の問題にしても、また人質問題を絡まされた政府が国際法じゅうりんの侵略者に最後どう対処するのか、究極的理念を示し得ないまま数カ月対策をもたつかせたことにしても、さらに政財界、言論界、学者、有識者、挙げて平和解決を標榜してそれを信じ、多国籍軍が開戦に踏み切ることへの予測ができなかったという国際情勢判断への誤認とも言える甘さの問題にしても、その他あまたの事象、また、被災国民が略奪、暴行、虐殺を受けているというのに、朝鮮動乱、ベトナム戦争のときのように、イラクも悪いがアメリカも悪い式で、その矛先を米帝国主義の侵略戦争図式に持っていこうとする批判、論争の中で総合的にとらえてみるとき、それは日本が危機に面したとき、独立主権国家でありながら国家安全保障の面で機能がばらつくこと、すなわち体制の不備、外交における独自性の乏しさ、すなわち欠点にあることを表面化いたしました。  世論調査で、多国籍軍が空爆に踏み切ったとき、国民の七〇%がやむを得ない処置と賛成したことに一縷の救いを見ますが、日本が非常時に遭遇したとき、有効適切に機能する総合調整の場の国家危機管理体制の整備を急ぐべきだと考えますが、政府は具体策を持っているかどうか。さらに、昭和六十一年に新設された内閣安全保障室が今回の湾岸戦争でどのように機能されたか、まずお伺いいたします。
  259. 米山市郎

    ○米山政府委員 国家危機管理体制についてのお尋ねでございます。  重大な突発事案に対しましては、政府が一体となってこれに対処することといたしております。政府の危機管理体制につきましては、昭和六十年に臨時行政改革推進審議会から出されました行政改革の推進方策に関する答申の中で、安全保障会議の設置、さらに内閣官房の体制強化などを内容とする緊急事態の対処体制の確立が提言をされたわけでございます。この答申を受けまして、昭和六十一年に国防会議を改組し、安全保障会議を設置し、また内閣審議室を改組いたしまして内閣内政審議室、外政審議室、安全保障室を設置するなど、体制の整備を図ってきたところでございます。なお、安全保障会議の事務は内閣安全保障室において処理をいたしております。  今回の湾岸危機に際して、昨年八月以来のイラクのクウェート侵攻以降、安全保障室が何をしたかというようなお尋ねでございますが、八月以降、安全保障会議、総合安全保障関係閣僚会議等におきまして、外務省を初めとする関係省庁からイラクの侵攻をめぐる各種の情勢について数次にわたり報告を聴取するとともに、意見交換、協議等を行ってまいりました。また、本年一月十七日の国連安保理決議に基づく関係諸国の対イラク武力行使開始後は、直ちに安全保障会議を開催いたしまして、重大緊急事態への対処措置を決定をいたしました。これに引き続いて臨時閣議を開催し、内閣に湾岸危機対策本部を設置して、内閣総理大臣の指揮のもとで内閣官房を中心に外務省及び関係省庁の機能を十分活用して、政府が一体となって総合的かつ効果的な緊急対策を強力に推進してまいったところでございます。内閣安全保障室は、これらの安全保障会議、また湾岸危機対策本部の事務局として連絡調整等の機能を適切に果たしてきたつもりでございます。  いずれにいたしましても、この危機管理は予測のつかない事態への適切な対応が求められるものでございまして、常日ごろから万全の体制をしき、いかなる事態にも対応できる心構えをもって取り組む必要がございますが、私どもそのような対応で臨んでいるつもりでございます。今回の湾岸危機に当たる経験を踏まえまして、今後とも一層努力をしてまいりたいと思っております。
  260. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 どうも今の説明を聞きますと、この内閣安全保障室が単なる連絡機構的な機能しか果たさなかったのではないかと思われますが、当初の総理大臣外務大臣なんかの食い違いやなんかを聞いておりますと、どうも国家危機管理体制、私が質問しておりますそういう体制をまだ政府がつくり得ないでいるとしか思えませんので、ひとつこのことに対しまして十全の検討をお願いしたいと思う次第でございます。  次に、長いこと世界核全面戦争の恐怖になっていた米ソの冷戦も共産圏の一方的敗退で終結した結果、国連活動も湾岸戦争ではソ連の拒否権から解放され、国連本来の機能を発揮することができました。このため、世界平和への新しい秩序づくりは、今後国連を抜きに考えられません。しかし、現実の国際状況からして、いつまた局地紛争や戦争が勃発するか予断を許しません。平和ぼけ、世界の孤児日本と言われても、現憲法下では金しか出し得なかった日本であります。しかし、金は国際平和への貴重な貢献力を持つものでありますから、この際、経済大国日本として金の力を世界の総合安全保障政策の有力な武器として拠出できるよう国家方針策を鮮明にしておくべきだ、また、その具体化を図るべきだと思います。難民救済、救貧活動、医療や保健援助、識字運動、公害防止、環境保全、災害救助、戦災復興等々、当然のことではありますが、武力による国際紛争解決を放棄した日本として、軍縮促進と国連中心を援助の基本としながら、要員派遣に自衛隊の国際的平和利用を含め、このことも検討すべきだと思います。  ついては、これらのことと、また、国連平和活動への人的派遣について、自公民の合意事項が取り交わされておりますが、政府はそれに基づいて立法化の作業を行っているとは承知いたしますが、現在の状況と今後の法案提出の見通しを開陳していただきたいと思います。
  261. 中山太郎

    中山国務大臣 先般の臨時国会におきます国連平和協力法案の審議や各界各層における議論を通じて、我が国が平和のために、資金、物資面のみならず、人的側面においても貢献すべきであるという各党の共通の理解が私はでき上がってきたと思っております。政府といたしましては、国連の平和維持活動に対する協力を推進すべく、自民、公明、民社各党間の合意を尊重して、新たな国際協力のあり方につき、現在、内閣官房を中心に検討を進めている最中でございまして、一日も早く成案を得たいと考えております。
  262. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 日本は、お金を出すことにおいてかえって第三国から軽べつされるという懸念もある、そういう経験を私たちは持っているわけでございますので、この際、やはり日本で援助として出すお金を明確に、世界の総合安全保障も実現していくのだというそういう方針、そのことのためには、重武装されているところの国々に対する援助に対しましては、その武器を買い上げてやるかわりの代価として復興援助は積極的にやるのだという、そういう方針を打ち出すのも一案かと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、私たちは、民主、文民国家として経済大国を実現した、世界に例のない実験をなし遂げた日本でございますから、こういう原則主張のできる権利も持っているものだと思いますので、ぜひこのことにつきましては、政府大臣も今後検討していっていただきたい、こう思う次第でございます。  次に、日朝問題についてお伺いいたします。  我が国と朝鮮民主主義人民共和国との間で両国の正常化のための政府交渉が始まりましたことは、積極的にこれを進めるに意義のあるものだとは承知いたしておりますが、日朝両国関係の改善には、我が国といたしましても、あくまでも国際ルールにのっとり、朝鮮半島の平和と安定に寄与するものでなければならないと思います。  第一に、日韓とのこれまでの友好関係を損なわず、朝鮮半島に信頼と平和を取り戻すものでなければならないわけであります。  海部総理は、本年一月訪韓されましたが、日朝関係についてどのような話し合いをされたのか、また、戦後四十五年の償いの問題では、我が党は、戦後の南北朝鮮の分断や朝鮮戦争、北朝鮮の共産化といった事態にも日本が責任を負うことになるので、戦後の償い要求には応ずるべきでないと考えるわけでありますが、政府見解をあわせてお伺いいたします。
  263. 中山太郎

    中山国務大臣 先般の海部総理の訪韓の際には、盧泰愚大統領との会談におきまして、日朝正常化は南北対話の進展にプラスになるように進めてもらいたい、また、北朝鮮がIAEAとの保障措置協定を締結しないことを憂慮している、また北朝鮮の主張する戦後四十五年の補償は合理的ではないという大統領の発言がございまして、これに対し海部総理からは、日朝正常化交渉は朝鮮半島情勢全体を視野に入れて半島の緊張緩和と平和と安定に資する形で進めてまいる、盧泰愚大統領が金丸副総理に提示されました五項目については十分念頭に置いて交渉を進める、またIAEAの保障措置協定締結問題については日朝交渉においてぜひ取り上げたい旨、海部総理から述べられたわけでございます。  また、御指摘の戦後の償い云々の問題につきましては、自民党、社会党、朝鮮労働党、三党の共同宣言で触れられたものでございまして、政府に法的な義務を課すものとは考えておりません。  いずれにいたしましても、政府としては、植民地時代の三十六年間につきまして日朝間に財産請求権の問題が未解決のまま残っていると認識しており、今後、日朝間で話し合いを進める過程でも誠意を持ってこの交渉に当たっていきたいと考えております。
  264. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、アジアの平和のためばかりではなく、人類の秩序安寧のためにも危惧される、北朝鮮に対して国際核査察の受け入れ要請も国交正常化に当たってなすべきだと思いますが、これはどうなるのか、さらに、朝鮮半島の緊張緩和のためには、日、米、中、ソと韓国、北朝鮮の六カ国の合意、協力が不可欠でありますので、その会議を実現すべきであります。この具体化を目指し、どのような外交努力を重ねていくのか、お伺いいたしたいと思います。
  265. 中山太郎

    中山国務大臣 朝鮮半島の平和と安定は、原則的には南北両当事者間の直接対話で解決することが極めて大切でございます。しかし一方におきましては、従来ソ連と北朝鮮、中国と北朝鮮の関係も非常に濃厚な時代がございましたが、現在は北朝鮮が日朝間の国交を開くために話し合いをするという事態が生まれておりますし、韓国とソ連との間に国交が再開をされるという事態が出てまいりました。今お示しのように、アメリカ、ソ連あるいは中国、日本それから半島の二つの政府が関係をした会議を開くというような御指摘は私は極めて重要な御指摘であるという認識をしておりまして、そのようなことが調えば問題の解決には大きな貢献がされるものと考えております。
  266. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 北朝鮮の日本人妻里帰り問題についてお伺いいたします。  このことは朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮との間の長年にわたり未解決となっている人道の問題であります。昭和三十四年、日朝両赤十字社間に締結された在日朝鮮人の帰還協定に基づき、同年十二月十四日、第一次船が北朝鮮に出航して以来今日までに三十一年が経過しております。この間、九万三千人余りの在日朝鮮の方々が帰還し、その中に日本国籍を有するいわゆる日本人妻が一千八百三十一名含まれております。これらの日本人妻のうち、日本へ里帰りした人は一人もありません。そればかりか音信不通、消息不明で生死の別さえわからない人も多数であります。日本の留守家族の心痛ははかり知れないものがあります。  そこで、それら関係家族の心境と北朝鮮の日本人妻の心境はただいま差し上げました資料一、二で御理解いただきたいと思いますが、ここで、資料一の請願書が手元に届いておりますので読まさせていただきます。  私の妹は朝鮮人の夫李と幼い子供四人と共に昭和三十六年春まだ浅い三月朝鮮人民共和国の帰国船にのるべく言葉も生活も習慣も違ふ未知の国へ夫を信じ子供の幸福を信じて生れ育った南国の地から零下何十度と言ふ酷寒の地へと高知駅から汽車にのり旅立ちました  あれから三十一年妹も六十三才になります  永い間便りも無く手紙も出せない暮しをしているのか案じられてなりません  若くして亡くなった母にかわり男手一つで育ててくれた父親に三年したら帰へる 帰へって来るから心配しないでと妹は言ったそうです  その言葉を信じて帰へらぬ娘の身の上を心配し世情の噂に胸をいため乍ら待ちつづけた父親も二十年前永遠に会ふ事の出来ない人になりました  それから弟も亡くなり今では妹の帰へりを待つのは私一人になりました  年月の流れは早いもので老境に入った私もいつまで待っていられるか 又異国の地で望郷の念にどれだけの涙を流したか知れない妹が果して元気なうちに里帰へりする日が来るだろうか  無力な姉は何もしてやる事ができません  日本人妻自由往来実現運動の会の池田文子先生におすがりするだけです  国会議員の先生のお力で不幸な日本人妻が一日も早く里帰へり出来ますようお骨折り下さる事を心中よりお願ひ申し上げます これは一九九一年の二月二十一日に出されたものでございます。  来る三月十一日から東京で開始される第二回日朝政府交渉でこの日本人妻問題が取り上げられるのではないかと報道されました。その際、日本人妻の里帰りについては最優先事項の一つとして交渉の中に入れていただきたいと思います。そして、いつ、何人ぐらい、どのような方法で一時帰国させるのかをはっきりと相手方に聞いていただきたいと存じますが、外務大臣のお考えはいかがでしょうか。
  267. 中山太郎

    中山国務大臣 北朝鮮に行かれた日本人妻の方方の問題につきましては、かねて国会で与野党の先生方からもいろいろとお話が出ております。先般日本を訪問されました北朝鮮の労働党の代表の方とお目にかかりました際にも、私から日本人妻の自由往来、日本への訪問をぜひひとつ認めてもらいたいということを強く要請をいたし、先方からは、日朝間の国交の交渉の過程においてこの問題は解決されていく問題ではないかというお話がございましたが、日本政府としては誠意を持って人道的な立場から、日本人妻の故国への往来というものができますように今後とも一層日朝間の交渉を通じて粘り強く主張してまいりたい、このように考えております。
  268. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣、この日本人妻問題はあくまでも人道問題であって、国交云々といった政治問題では決してないということを心に刻んで相手に交渉してもらいたいのであります。  そもそも帰還事業開始の昭和三十四年当時、大臣も知るとおり、日本は南の韓国とも北朝鮮とも国交のない時代でした。しかるに、国連憲章第四章十三条の居住地選択の自由という共通認識のもと日本政府は、まことに人道的立場から閣議了承し、帰還協定締結に努力したわけであります。しかしながら、北朝鮮との国交関係がないため、実際の業務を日赤に委託し、昭和三十四年十二月十四日より帰還が開始されたわけであります。  ここで申し上げたいことは、このように人道主義の名のもとに日本は行ったわけですから、相手にも人道主義で解決させるべきではないかということであります。それなのに、先日来日した北朝鮮労働党の金容淳代表は、この日本人妻問題解決に対し、日朝国交交渉が着実に進めば落着するだろうと語ったということが、今大臣も申されましたように、また新聞でも報道されております。しかし、この日本人妻問題は国交回復云々の政治問題ではなく純粋な人道問題であると考えているわけでありますが、大臣見解はいかがでしょうか。また、このことが北朝鮮という相手国にどう外交されるものであるか、お伺いいたします。
  269. 中山太郎

    中山国務大臣 今お話しのように、この問題は全く純粋な人道的な立場で問題が解決されなければならないと私は考えております。そういう立場で北朝鮮側も対応されることを私どもは強く要請をいたしてまいります。
  270. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 ひとつ大臣にはくれぐれも人道問題の観点で相手に要請いただくようお願いいたしまして、また質問を続けます。  在日朝鮮の方の再入国許可の問題についてでありますが、このことにつきましては、今までにも幾度か質問もされ、指摘もされているわけでありますが、お手元の差し上げました資料をごらんいただきたいわけであります。  一九九〇年度、一九九一年度、また今年一月末日までの再入国許可数、北朝鮮からの来日数、日本人の北朝鮮渡航数がどうなっているのか、この統計ではわかりませんので、まず最初にお答えいただきたいと思います。
  271. 股野景親

    股野政府委員 ただいまお尋ねの統計につきましては、入管局で現在統計をとっておりますのは一九九〇年の一月から十一月までの間の期間でございまして、同年の十二月以降の分はまだ未集計でございます。  そこで、一九九〇年の一月から十一月までの間について申し上げますと、まず、在日朝鮮人の北朝鮮向けの再入国の許可件数、これは六千二百四十五件、こうなっております。他方、同期間における北朝鮮からの日本への新規入国者数は、四百十九人となっております。また、同期間における北朝鮮向けの日本人の出国者数は千八百九十六人、こういう統計になっております。
  272. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 ありがとうございました。  答弁の数字を見ましても、一年間のトータルが七千人に近いわけでございますが、これは十一月でありますので、既に九〇年度は七千人を超えると思います。なぜなら、前年の八九年には七千七百三十三人、八八年には六千四百四十人という数字が出ているわけでございますから、このような日朝間の往来がなされているわけでございます。  先ほど申し上げました帰還事業開始に対する日本政府の動機等考え合わせましても、北朝鮮の方方や在日朝鮮の方々に対する再入国許可についてのこの数字日本政府の超法規的、人道的配慮以外の何物でもないわけでございます。ですから、日本政府は今度の日朝交渉に当たるに際し、まずこの国交云々の以前の人道問題として、場合によっては日本からの渡航業務も一切中止させるというような強い決意で、具体的また明確な里帰りや安否調査が実現できる回答を引き出してもらいたいと思います。このことを強く要望いたしますが、大臣の所信はいかがでございましょうか。
  273. 中山太郎

    中山国務大臣 近く第二回の日朝本交渉が東京で開かれるわけでございまして、私どもといたしましては、委員の御趣旨を十分体して、北朝鮮側に強く自由往来を要請し続ける、できるだけ一日も早い実現を期してまいりたいと考えております。
  274. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、日朝間の確実な交信につきましてお伺いいたします。  この問題を申し上げるに当たり、次の三つのケースを紹介して、手紙、小包等が確実には交信していない事実を指摘し、実情が改善されるような日本政府の対応をお伺いしたいのでございます。  第一のケースについて、資料四をごらんいただきたいのでございます。  これは、金丸元副総理と田邊誠議員が昨年訪朝された、いわゆる日朝交渉の風穴をあけたと言われる訪朝団のとき、金丸議員に関係家族四人が北朝鮮の日本人妻への手紙を四通頼んでやったわけでございました。金丸議員は帰国後、この四通の手紙は北朝鮮政府関係者を通して日本人妻たちに渡されたという報告が留守家族に伝えられたわけであります。ところが、最近、その日本人妻から手紙が来たのですが、文面には先日の手紙の件は一切触れておらず、それどころか、日本からの交信がなく病気にでもなったのではないかと涙ながらの心配の手紙であります。これは一例ですが、他の三人につきましても届いたという返事はありません。  第二のケースでありますが、資料五をごらんいただきたいわけでございます。  日本の関係家族の会、日本人妻自由往来実現運動の会では、北朝鮮の日本人妻へ救援物資を送っていますが、日本人妻からの礼状により、北朝鮮から出した手紙が日本に届いていないことが、また日本から引き続き送った荷物や手紙も北朝鮮の家族には届いていないことが判明したケースです。日本から荷物を三回にわたって送り、やっと礼状が一通届いたその文面には、北朝鮮からこの間に四回も便りを出したと書かれてもいるわけであります。実際には一回しか届いていないのであります。これはあくまでも一例であり、他の人たも同様に交信が思うに任せないものと思います。このような家族の会より救援物資の送付は一九八八年から一九九一年と継続して送られていますが、それに対する日本人妻からの礼状は一九八八年が七〇%、八九年が五〇%、九〇年が〇%、このようになっているわけでございます。  これは、表面では対話路線を標榜しながら、国内的には大変厳しい情報の締めつけがなされているからではないかと思われますが、政府として実情をどのように把握されているのか、お伺いいたします。
  275. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 大変残念なことでありますけれども、お話のような件も含めましてそのようなことが北朝鮮との間でこれまで発生しておるということを私どももいろいろな筋から聞いておるところでございまして、先般、労働党の幹部の方が見えましたときも、例えば自民党の外交調査会の席におきまして自民党の方から強くこの点につきましての善処を求めておられました。  先ほど大臣からも御答弁いたしましたように、来週の月曜日、火曜日、東京で第二回目の北朝鮮側との政府レベルの交渉をすることになっておりますので、ただいま先生るる仰せのように人道的な見地からこれ以上放置できない問題でございますので、私どもといたしましては真剣に、粘り強く取り組みたいと思っております。これは、来るべき日朝の交渉におきまして私どもは非常に大きなテーマの一つと思っております。
  276. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に第三のケースとして、議員連盟からの救援物資に関して申し上げます。  国会日本人妻自由往来促進議員連盟が結成されていますが、この議連主催による救援物資送呈を、約百二十名の日本人妻あてに議員名にてお送りいたしました。一九八九年と一九九〇年の二回でありますが、一九八九年度のものに対しては、既に一年余りが経過いたしておりますが、日本人妻からの礼状は皆無であります。そこで議連といたしましては、北朝鮮が万国郵便連合に加盟しておりますので、その条約に基づき、東京国際郵便局から小包郵便物の調査請求書を出していただいたわけであります。その回答が北朝鮮から送られてまいりましたが、一九八九年度分につきましては受取人に正当に配達されたという返書があります。本人からの直接の手紙が、こちらからの百二十名に対して一人もないということも理解に苦しむところであります。  このような実情でありますので、くれぐれも日朝交渉では、日本人妻に対して安否調査、里帰り、確実な交信ができる具体かつ的確な回答をぜひ引き出していただきたいと思います。重ねて言うようでございますが、人道問題を政治問題に利用されることのないよう、また、過去はもう過去でございますから、どうか正々堂々、強い態度で解決に当たっていただきたいと思います。まずこのことを要望いたしまして、質問を次に移りたいと思います。  国家公務員の定数管理と特定部門の増員問題についてお伺いいたします。  国家公務員の定数については、総定員がここ数年、総枠としては安定的に推移しているわけでありますが、平成三年度における国家公務員の定数管理についてはどのような方針を立てておられるのか、また特定部門、例えば法務省の法務局や入国管理局等についてはどのような配慮をなされているのか、お伺いいたします。
  277. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 国家公務員の定員管理の方針についてでございますが、私どもはまず第一に、行政改革の実を上げますためにも総数の膨張を抑制をする、それから第二に、そうした中にありましても、社会経済情勢の変化に伴いまして行政需要が変化をしてまいりますから、その変化に定数の面でも適切に配慮をしていく、こういう方針のもとに仕事を進めておるわけでございます。  平成三年度につきましても、その方針で関係各省と十分御相談をさしていただきまして、その結果、総数につきましては約二千五百名弱の純減、一方行政需要の変化にも適切に対応してまいりますわけでありますが、その中で、お尋ねの分野につきましては定数の面で相当な配慮をいたすということにいたしてございます。  具体的な数字が必要でございますれば、政府委員から説明させますのでお聞き取りを願いたいと思います。
  278. 増島俊之

    ○増島政府委員 定員管理の方針につきましては、ただいま総務庁長官が申し上げました大変厳しい方針のもとで措置をいたしておるわけでございます。全体的には、増員につきましては六千五百十二人、それから一方削減九千十一人ということで、二千四百九十九人の純減でございます。  具体的な法務省につきましての増員につきましては、先ほどの厳しい方針のもとでございますけれども、御要求を十分踏まえて措置をしたところでございます。
  279. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 この国家公務員の総数、定員枠の中に、やはり入国管理、法務局、入国管理等も入っているわけでございますか。
  280. 増島俊之

    ○増島政府委員 入っているわけでございます。入国管理の関係ですと、増員数は、平成三年度の、今の予算案でございますけれども、四十八人でございます。
  281. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 法務局の登記件数は、昭和四十六年度は約二億二千万件であったものが平成元年は約五億七千万件と、二・五倍以上ふえているのに対して、職員数では約千五百人の増加となっているようであります。それでも出先機関では、人材派遣業者から臨時職員を採用したり自治体の公務員に応援を頼むなどの対策を講じているというように聞いております。  問題がさらに深刻なのは、入国管理局の要員問題であります。近年、政治経済部門はもとより、社会、文化、スポーツなどあらゆる分野において国際交流が活発化していることは承知のとおりであります。これに伴って、外国人、日本人の出入国者数が大変な勢いで増大しているのであります。これに伴う業務量も、昭和四十年の日本人の出国者二十九万人だったのが平成元年には約九百六十万人、昨年は一千万を超えているわけでございます。また、外国人の入国者も約十六万人から約二百万人と、天文学的な増加を見ているわけであります。この間、担当職員の規模は約千五百人台にとどまっております。近い将来、成田二期工事の完成、関西新空港の完成、地方都市空港の国際線開港によりまして、入国審査に当たる職員は現在よりもさらに分散配置を余儀なくされ、一層職員不足に拍車をかけるものと考えます。  御承知のとおりこの入国管理業務は、人と人との接触業務としてなし得る特別の関係を持った仕事でございます。業務の機械化が図られたといたしましても、最終的には人的要素がすべてを決定する内容でございます。これからは諸外国の方が我が国に長期滞在を希望する者もふえ、さらに増大すると予想されます。そういう方はいずれそれぞれの国に帰り、それなりの地位にあって我が国との友好を図る方になるものと確信いたします。それゆえに、入国審査に当たる職員の接遇に阻害があってはならぬものと推察いたします。しかるに、我が国を訪れる空港等におきましても、飛行機等の乗り入れ時間帯がさまざまな特殊要素が絡み合い一時的に集中することもしょっちゅうでありますし、職場の性格上大変な混雑であります。入国管理局の窓口も同様であります。特に留学生や興行を取り扱う在留資格審査部門、企業研修、日本人配偶者在留資格審査部門等も連日残業を重ねる混乱が続いているのが現状であります。一昨年も長崎で中国人偽装難民事件で入国審査、取り調べに当たった職員二名の過労死を出したことなどは記憶に新しいところであります。このままでは第二、第三の事件が起きないかと心配もされるわけであります。また在留資格審査を受ける諸外国の人たちも、朝早くから数時間も順番待ちをするということが毎日各入国管理局で行われているわけであります。諸外国の人たちに対する行政サービスの観点からも一日も早い改善が図られるよう、ここに大蔵大臣もおられますので強く要望したいと思います。ついては、このことにどう考えているのか、お伺いいたします。
  282. 股野景親

    股野政府委員 ただいま出入国管理行政に関連する各種の問題点、また各種の困難、今後の業務の推進についての考えるべき問題等、幅広く御指摘をいただきまして、私ども御指摘の点を十分踏まえながら今後の行政に取り組んでまいりたいと思っております。  特に、御指摘のように業務量が非常にふえておるということがございますが、これについては事務手続の簡素合理化や事務処理の機械化、そして職員の機動的配置、こういったような方策をいろいろ重ねておりますが、さらに職員の足らざるところは、これは関係方面の御了解、御理解をいただきながら職員の増員ということに努めておるわけでございまして、今後ともそのように同じ努力をさらに続け、事務効率改善と職員の適正配置にあわせまして、人員の適正な確保というようなことあるいはコンピューターの導入を拡大することによる機械化、こういった面の各般の努力を組み合わせて対処してまいりたい、こう考えております。
  283. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 本当に国際化に伴うところのこの管理業務が急激なふえ方でございますので、ひとつ国家公務員の総数、定員枠にもこの点をぜひ配慮して緊急な対応をお願いする次第でございます。  また、現在法務省入国管理局に勤務する職員数は本省関係百六十六名、地方入国管理管内において入国者収容所二カ所、百三十七名、地方入国管理局が八局、同支局が四局、出張所が九十八カ所、実際実務に携わる職員総数が一千五百十三名。これの実務組織形態からして各局の人事構成、すなわち直接窓口に携わる審査官は何名か。また、各部門ではどのような構成になっているか。また、各地方局ごとに年間の事務取り扱い件数。またさらに、一日に積み残すことによって生ずるところの在留許可予定者、すなわち当日許認可を得られないゆえに潜在的不法滞在者然となる件数はどのくらいか。あわせて、これらの件数と、これらを適切に処理するにはどの程度の職員配置が必要かもお尋ねしておきます。
  284. 股野景親

    股野政府委員 ただいま委員御指摘の各種の業務の第一線に当たっておりますのが地方入国管理局でございまして、その職員数が千五百十三名であるということは御指摘のとおりでございますが、この平成二年度における千五百十三名の内訳は、各種の審査業務に当たる者としての入国審査官、これが七百七十七名でございまして、他方、退去強制事務等に従事いたします入国警備官という数は五百八十五名、こういう内訳になっております。  また、業務の内容についての御質問をいただきましたのですが、業務につきましては、各空港等での出入国関係の審査もございますが、同時に、各地方局におきまして、その出入国関係についてまず入国の事前の審査等の業務もございます。他方、委員御指摘の既に日本にいる外国人の方々の業務、関連する業務もございまして、その点についての統計を申し上げますと、平成二年一年間でこういう既に日本におられる外国人の方々の在留関係の申請受理という件数が平成二年の一年間で八十三万九千件余りとなっております。  ただいま御指摘のように、この審査業務は非常に量的に多いのでございますが、しかし入国管理局としては、ただいま申し上げましたこの本邦に既にいる外国人の在留関係等につきましては、できる限り即日処理という原則で臨んでおりまして、もし問題がある場合でもできる限り短期に処理をする。また、もしこういう方々についていろいろ問題がある場合には、それは不法残留というような形にならないような形式できちんと対応するということに心がけております。  以上のような業務の実態を踏まえまして、冒頭申し上げましたように、私どもとしては一方における事務効率の改善を図りながら、どうしても足りないところ、特に業務量の伸びでどうしても足りないところは、これは定員をさらに増員を各方面の御理解をいただきながら確保したい、こう考えておるところでございます。
  285. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、この業務の事務合理化対策をどう推進しているか。電算システムのオンライン化が完成するのはいつごろの予定であるか。あわせてMRP、いわゆるパスポート自動読み取り装置等の導入の計画、その他現在お持ちの合理化計画によって対象になる業務の範囲などをお知らせいただきたいと思います。  また、入国管理行政上避けて通れない問題として、単に書類のみによる審査というわけにはまいらないと思います。いかに合理化を図ったとしても、最後には担当審査官の判断によるものと推察いたします。そこで、今後の情勢いかんではますます人員不足が進行すると考えます。現状では一部、特に東京入国管理局の庁舎も飽和状態にあると聞いております。職員の労働環境問題もそうですが、行政サービスを受ける諸外国の利用者の便を考慮に入れて、さらに経済文化大国日本にふさわしく新しい施設を建設すべきではないかとも思いますが、このことの計画についてもどうなっているのか、お伺いいたします。
  286. 股野景親

    股野政府委員 最初に、御指摘のございました電算化等による機械化の促進につきまして現在行っておる主な点をかいつまんで申し上げますと、まず、各地方局、現在八局ございますが、そのうちの五局とさらにその二支局につきましては、在留資格審査及び出入国審査等につきましてのオンライン化を既に完成をしております。さらに平成三年度におきまして残り三局についてのオンライン化も導入させていただくよう予算を計上させていただいておりまして、これを御承認いただきますと、平成三年度において八局、全国全部のオンライン化というネットワークが完成するということで、これは大変重要な進展になると思います。  また空港におきましても、空港における入国審査のための情報検索のオンライン化も、成田、大阪、羽田等主要空港で既にでき上がっております。  また機械読み取りの旅券につきまして、近年これが非常に有効なものと考えられておりますので、これも平成三年度予算におきまして成田空港の一部でこの関係の装置を導入するという予算を計上させていただいておりますので、この御承認がいただけますと、これも大幅な進展が得られるものと思います。  また先ほど申し上げましたように、増員についての考え方は既に申し上げたとおりでございますが、施設面につきましても、御指摘のとおりでございますが、これも関係方面の御了解、御理解をいただきまして、東京局、これは最も業務が多いところでございますが、昨年の十二月にその東京局の第二庁舎というものを新しく設けさせていただきまして、そこにかなりの部門、審判と警備の部門を移転させる、それによりまして本局の方の審査関係の窓口混雑の緩和が大幅に進んだということもございますので、こういうような各種の努力ということを引き続き続けてまいりたいと思いますので、何とぞよろしく御了解を願いたいと存じます。
  287. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにいたしましてもこの業務は、我が国政府代表して常に外国人と接し、我が国との友好関係を図るという責務を職制のうちに有しているものでありますので、そのためにも一日も早い万全なる入国管理体制を確立されまするように要望いたしまして、次の質問に移ります。  平泉・柳の御所の遺跡の保存についてでございますが、若手県平泉町柳之御所にある遺跡は奥州藤原氏の居館としてこれまでも注目されてきておりましたが、今日までその遺跡の性格を知ることが、十分な調査が行われませんでした。ところが、国道バイパス工事着工に先立つ発掘調査の結果、遺跡の周囲を画する深くて大規模な堀跡、多くの建物群、井戸、塀、さらには池跡などの多数の遺構が発見され、また輸入磁器類のほか、たくさんのかわらけや金銅製品、木製品などの歴史的考証学上重要な遺物が次々と発掘されてきております。  京都や、十二世紀日本世界への窓口であった博多と共通するという輸入磁器の発見、都人のあこがれの対象でさえあった産金地奥州のありさまをほうふつとさせる金塊の出土、当時の生活の一端をかいま見せる木製品、漆器物、墨書、版木等等、こうした発掘の成果は、その遺跡が多分単なる居館の一つというにとどまらず、まさに吾妻鏡に記された平泉のやかた、すなわち平安時代後期の北日本に君臨した奥州藤原氏の政庁そのものであろうという考えを裏づけるに十分なものとなってきているのであります。  平泉には既に中尊寺、毛越寺や無量光院などの重要な史跡があり、それらが国の特別史跡に指定されて保護されていることは周知のとおりでありますが、貴重な史跡や国宝の密集ぶりは、その一つ一つが保護されるだけでなく、この平泉が全体として周囲の景観とともに古都保存法のような法律で保護されるにふさわしい地域ではないかと思われるわけであります。  ただ残念なことに、これまでそれら寺院によって代表される以外、平泉のすぐれた文化を築いた藤原氏自身の政治や日ごろの生活を具体的にうかがうことのできる史跡の存在は紹介されなかったわけでありました。この点で、今回の柳の御所遺跡の発掘は、現在までに公表されている成果だけでも、既に今までの平泉についての知識を大きく書きかえ、また前進させるものとなっていることは疑いありません。そして、日本史の中における平泉の持つ意味の重要性からすれば、そのことが日本の古代、中世史の書きかえに直結することもまた疑いないところであります。  ところで、この柳の御所遺跡は、今の計画では、数年の発掘調査の後北上川遊水地工事及びそれと結びついたバイパス工事によって永久に消滅してしまうことになっております。地元におきましても開発か文化財保護かで世論を二分させておりますが、日本考古学協会や日本歴史学協会及び地元からも遺跡の重要性から保存を求める要望が相次いでおります。具体的には、柳の御所遺跡の保存のため堤防及びバイパス工事の計画を見直すこと、柳の御所の国の史跡指定などに必要な手続を早急に進めること、柳の御所周辺を初め平泉に残る遺跡群の保護のため公的な調査研究機関を常設し、その成果を公開することなどとなっております。文化庁、建設省の所見をお伺いいたします。
  288. 近藤徹

    近藤(徹)政府委員 まず今話題になりました箇所は北上川の一関遊水地に関連するところでございますが、この事業計画は、北上川沿線の水害を防除するための基幹施設として昭和四十七年度以来事業を進めてきた箇所でございます。大変連年大きな災害をこうむったために地元からも強い要望があって進めてきたわけでございます。これに接続する平泉町内の堤防設置予定箇所は、従来から柳の御所とも呼ばれておりまして、奥州藤原氏のやかたであるとの言い伝えのあった箇所でございますが、その後平泉町等で実施した遺跡調査では、柳の御所に遺跡に結びつけるような遺構等の発見は従来されなかったわけでございます。  建設省では、この堤防設置に先立ちまして、昭和六十三年度より財団法人岩手県文化振興事業団、平泉町教育委員会に文化財発掘調査を委託して現在実施を進めているところでございます。この調査の進展によりまして、平成二年から現在までに各種遺構等が出土している状況でございます。この調査は平成五年度まで実施し、平成六年度に調査結果を取りまとめる予定としているところでございます。  遺構等の保存の必要性あるいはその程度等の判断につきましては、この調査結果を受けて県、町あるいは関係機関等において協議され判断されることと思われますが、建設省としては、その時点においてその判断を踏まえ、また関係機関とも協議し、事後の処置については慎重に対応してまいりたいと考えております。  なお、この区間は、また今お話のありましたように、一般国道四号線の平泉町内が大変交通混雑をしておるところから、これを解消するため平泉バイパスが堤防に並行して計画されておるわけでございますが、このルートについても昭和五十六年に都市計画決定がなされたところでございます。現在一部用地買収等を実施しているところでございますが、河川事業、道路事業、あわせて同様に現在実施されております文化財発掘調査の結果を踏まえて十分慎重に対応してまいりたいと考えております。
  289. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 建設省としては、今後それでは十分に慎重に対応できる、そういう姿勢でいる、このように受けとめてよろしゅうございますか。
  290. 近藤徹

    近藤(徹)政府委員 調査結果を踏まえまして、そのように対応してまいりたいと考えております。
  291. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 どうもありがとうございました。  それでは次に、自治大臣にシティーマネージャー制度についてお伺いいたします。  私は、この件につきましては前々回国会に登院してまいりました際も二度にわたって自治大臣に質問してきているところでございます。また昨年も質問いたしまして、奥田自治大臣からも答弁を得ているところでございます。  御承知のように、このシティーマネージャーシステムというのは、一九二〇年代アメリカにおいて地方財政の積年の赤字あるいは汚職に悩んだとき、調べてみますと請負行政的発想でなされたんじゃないかと思いますが、このシステムが導入されて以来財政の再建と行政の浄化がなされた、現在ではこれが半数以上の自治体に施行されている、そういうものでございます。幸い、このマネージャー制につきましては、地方制度調査会が平成元年十二月六日に提出した「小規模町村のあり方についての答申」の中にも、支配人制の導入等の基本的な組織形態のあり方も今後検討するに値するということが記入されているわけでございます。私は、公平公正を正義とする行政がやはり制度の上からも対応されていなければならない、長い地方自治行政の体験者といたしまして、ぜひこのことについては一万以下の自治体に日本で実験してもらいたい、こう考えているわけでございます。  そこで、奥田自治大臣も私のこの質問に対しましてこのように言われております。「確かに先生の言われるように、行政の効率化、簡素化という観点から見ますと、この制度も検討に値する制度だと思いますが、何せ市町村の行政制度の根幹にかかわる問題でもありますので、さらに今後とも検討を重ねてまいりたいということにしております。」このように検討を重ねるという答弁を受けているわけでございますが、吹田自治大臣はどのようにこのことを考えておられますか、御所見をお伺いいたします。
  292. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 このシティーマネージャー制度の問題につきましては、今先生おっしゃいますように、昨年の四月二十五日の御質問に対しまして前自治大臣でありました奥田大臣から、検討に値する、今後ともさらに検討を重ねてまいりたいという答弁をされたということが記録に残っております。その後、自治省におきましても学識者等からの意見の聴取をいたし、あるいは内部でもいろいろ論議を重ねてきておるようであります。公選による長と議会の制度は憲法に規定されておりますし、地方制度の根幹に関する事柄でありますので、いろいろ私も、事前に御連絡がありましたものですから内部で協議をいたしましたが、なおまだ検討の余地があるのではないかということも言われておりますものですから、これからも検討をしていきたいものだと思っております。決して一蹴するというような意味で申し上げておるのではありませんので、十分傾聴に値するものであるという気持ちは持っております。  ただ、小規模な町村にあってはというお話がございますが、小規模といえども大規模といえども、これはやはり地方制度の問題でありますし、地方自治法に基づいておるわけでございますものですから、やはり同様な取り扱いをしなければならぬということから考えますと、市町村行政の根幹にかかわる問題であるというようなことからの問題点があるわけでございますが、考え方といたしましては、私も決して全面的にこれを否定したり、全面的にこれを取り上げようということのいずれかに決定しておるというわけではないのでありますが、十分傾聴に値するということだけは申し上げておきます。
  293. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 地方行政の制度の根幹にかかわるという答弁を聞きますと、何か違法的な制度のように聞き取られるのですが、アメリカでこれがなされているわけでございますから、根幹といいましても、これはもう解釈の問題でございます。  選挙によって選出される首長に対する権限、それはやはり公約が実行できる権限を与えているわけでございますが、この権限はアメリカにおきましても企画立案権、いわゆる議会の提案権で十分に済むという、いわゆるそういう趣旨をとっております。ですから、これは何を目的としているかというと、市町村長、県知事から現金の取り扱いだけを分離した制度でございます。現在でもいわゆる金の、公金の保管権は出納責任者が持っているわけでございまして、首長から離れているわけでございます。このことを考えますと、何も根幹根幹というようなそういう不勉強では本当は困るわけなんです。もうこれをやったら、私は、一年に三兆円いわゆるお金が浮いてくるんじゃないか、そして本当に政治もきれいになるし、かえって三兆円という事業費が増大してくるので業者も喜ぶはずだ、こう思っております。本当に公平な入札もできるわけですから。現在の制度ですと、市町村長はいつも良心との闘いですよ。自分が企画立案したものを議会の承認をとると、密室に担当者を呼んでの執行もできる権限でしょう。  だから、私が昭和四十八年にアメリカのモンタナ州のある市長に招待されて昼食したとき、日本の制度と比べたとき、向こうの市長は、メイヤー菅原、アメリカではこういう権限を日本のメイヤーが持っているとは考えられないと言うわけです。君が企画立案して承認さえとると君が自由に現金の執行まで持てる権限か、こう言われたわけでございますので、ひとつこれは大臣、これは大臣の矜持となりますので、ひとつこれは頑張ってみてください。  時間もなくなってきましたので、固定資産税については、また自治大臣には後の分科会にでも質問させていただきまして、それでは今度、農林大臣に質問を移していきたいと思います。  地球環境は、地球の温暖化、熱帯林の減少、酸性雨による大規模な森林被害等によって年々悪化の一途をたどっている状態でございます。かつて古代文明が栄えたメソポタミアやエジプトでも、豊かな森林が伐採されたことによって土地が砂漠化し、やがて文明が滅びたように、国の礎であるべき森林が崩壊したために滅亡した例が歴史に深く刻み込まれております。しかしながら、森林が人間にとってどんなにかかわりが深いものであるかについては、まだまだ国民的コンセンサスが十分に普遍的に得られていないのではないかとも思われます。  我が国の森林・林業は、国有林、民有林を問わず木材価格の低迷、林業労働力の減少及び高齢化、林業経営費の増高等によって深刻な事態に直面しているわけであります。中でも、国有林野事業における平成二年度末における財投資金からの長期借入金残高は、実に二兆二千五百億円にも達しているわけでありまして、金利六・二%で計算いたしますと、一日三・八億円の利息がかかっていることになります。また、今後の改善期間における累積債務の利息増加分を推計いたしますと、何と約一兆円を超えてくるのであります。  国有林野事業の使命は、林産物の計画的、持続的供給を初め、国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全形成、保健休養の場の提供等の森林の有する公益的機能の発揮、国有林野の活用、国有林野事業の諸活動とこれに関連する地域の産業活動等を通じた農山村地域振興への寄与等の使命を果たしていくことが強く要請されていると、基本方針に明記されております。森林は地球を守る公共財であり、森林の機能は木材供給のほか水資源涵義、土砂流出の防止あるいは酸素の供給、野生生物、野生鳥獣の保護、自然休養等といった公益的機能を備えているわけでありまして、森林の環境に与えている効果は社会的コストに換算いたしますと、日本だけでも四十兆円を超えるだろうという学者の試算もあります。  昨年十二月十七日、林政審議会は、国有林野事業の経営改善についての答申を行いましたが、累積債務対策及び財源措置の示唆を見る限り、三兆円を超える負債の解消に確固たる結論を見出すことは極めて難しいと思います。私に言わせますと、企業経営的には国有林野事業はもはや倒産状態と言うべきであります。民間企業の倒産の場合は、所有資産の処分は債権者の措置にゆだねるわけですから、国有林野の場合も処分可能資産を一切債権者、この際は大蔵省でございます、ここに大蔵大臣も出席しておられますので聞いていただきたいわけでございますが、大蔵省に提供して、全債務の処理を図るべきだと思います。一刻もゆるがせにできない国土保全、森林保全の重要性にかんがみ、国が総がかりで財源措置をとることがこの際における有効な手段だと考えるわけでございます。  私は、国有林野事業の債務問題について、昨年六月五日の本会議で海部総理に質問した際、総理から、目下林政審議会に具体策の検討を願っていると答弁を受けましたが、林政審議会の答申が出された現段階において、政府はこの債務処理について本当に再建が可能と考えてこの処理に当たろうとしているのか。私は、これはやはり一切まず一時的に帳消しする方向の対策を考えない限りだめではないかと思いますので、また、きょうの委員会の質問で約一兆三千億円ぐらいの財産処分のリストが出ているようでございますから、この際、一兆三千億円をそっくり大蔵省に渡しまして二兆二千五百億円の債務を帳消しにする、そういう大胆なことでもとらない限り、今の日本の林野行政はもう崩壊してしまうことを心配しております。ひとつこういう点から大臣の所信をお伺いいたします。
  294. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生時間も余りないようでありますから、先ほども農林水産委員会で御質問もございましたので、簡潔に御答弁をさせていただきたいと思います。  長年にわたって国有林野事業、大変な関係者の努力によって改善をし、法律改正等やってまいりましたけれども、なお厳しい環境から脱出することができなくて、今回また現場で働いておる皆さん方からの御協力もいただきながら、財政当局から一般財源からの御支援をいただく、そういうための法律を今御提案をさせていただいておるわけであります。累積債務部分と経常事業部門と、ようやく多年の懸案が区分をされたという、そういう今回の法律の提案の趣旨でもございまして、先生からは一切今までの累積債務は大蔵省にいただいてもらったらどうかという御提案でありますけれども、我々もこの累積債務の解消は、一般国民の税金を使わせていただく以上、経常事業部門についても改善をしながらその努力もまたしていかなければならない責任もあるわけでありますし、あわせてまた累積債務は余りにも膨大でございますので、私どもの財産も処分をし、一般財源の繰り入れもあわせて、三本柱でぜひ今後この累積債務の解消と今後の経常事業の改善のために努力をさせていただきたい、御理解をいただいて、また、法律の成立について御協力をいただきたいと思うわけであります。
  295. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにいたしましても、林野庁の借金も国の借金であり、国の借金は、これは国民の借金でございます、民主主義制度におきまして。どのように私が試算してみましても、きょうは委員会で大臣にも質問したところでございますが、やはり二兆円を超える累積債務は、今後の伐採量、材価見通しからして、このままでは毎年また二千億円という累積債務がふえていくものと推測されるのであります。それに、ことし七百二十億円からのまた財産を処分するようでございますが、こんな切り売りの処分をしていったら、本当に十年後にどうなりますかね。これは大蔵大臣も聞いてくださいよ。それよりも今持っている資産、もう一兆三千億円ぐらいのリストが出そうでございますから、これをそっくり大蔵省が取って、二兆二千億円を肩がわりする。そうじゃないと、もう一刻もゆるがせにできないいわゆる森林事業手当て、保全対策、これは本当に今や日本の林相が崩壊しておりますので考えていただきたい。また土地の処分は、これも本当に慎重にしていただきたい、そういうこと。  私は、この際、国土保全、平和的国土防衛基金としてのこういう立場から、本当に一挙にこれがいわゆる解消させられる方法を考え出していただきたいことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  296. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて菅原君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  297. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。  平成三年度総予算審査のため、八個の分科会を設置することとし、分科会の区分は  第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府(ただし経済企画庁、環境庁、国土庁を除く)並びに他の分科会の所管以外の事項  第二分科会は、法務省、外務省、大蔵省所管  第三分科会は、文部省、自治省所管  第四分科会は、厚生省、労働省所管  第五分科会は、総理府(環境庁)、農林水産省所管  第六分科会は、総理府(経済企画庁)、通商産業省所管  第七分科会は、運輸省、郵政省所管  第八分科会は、総理府(国土庁)、建設省所管 以上のとおりといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  298. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  299. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次いで、お諮りいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席発言の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、明八日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十三分散会