運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1991-02-19 第120回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月十九日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    内海 英男君      小此木彦三郎君    越智 伊平君       河村 建夫君    後藤田正晴君       志賀  節君    田邉 國男君       津島 雄二君    戸井田三郎君       林  義郎君    原田  憲君       松永  光君    松本 十郎君       村田敬次郎君    村山 達雄君       綿貫 民輔君    五十嵐広三君       串原 義直君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       辻  一彦君    戸田 菊雄君       野坂 浩賢君    藤田 高敏君       武藤 山治君    和田 静夫君       石田 祝稔君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    佐藤 祐弘君       辻  第一君    川端 達夫君       中野 寛成君    楢崎弥之肋君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       米山 市郎君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  小山 弘彦君         総務庁人事局長 石川 雅嗣君         青少年対策本部         次長      杉浦  力君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  宝珠山 昇君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁長官 児玉 良雄君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         経済企画庁調査         局長      田中 章介君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁計画・調         整局長     長瀬 要石君         国土庁土地局長 藤原 良一君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省中南米局         長       瀬木 博基君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生省生活衛生         局水道環境部長 小林 康彦君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         運輸大臣官房長 松尾 道彦君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         運輸省国際運輸         ・観光局長   寺嶋  潔君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省労政局勤         労者福祉部長  廣見 和夫君         自治大臣官房総         務審議官    紀内 隆宏君         自治大臣官房審         議官      二橋 正弘君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君         自治省財政局長 小林  実君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   倉成  正君     河村 建夫君   浜田 幸一君     狩野  勝君   三浦  久君     辻  第一君   中野 寛成君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   狩野  勝君     浜田 幸一君   河村 健夫君     倉成  正君   川端 達夫君     中野 寛成君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算平成三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  この際、佐藤敬治君の残余の質疑を許します。佐藤敬治君。
  3. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 十二日の当予算委員会におきます私の質問に対しまして、工藤法制局長官は次のように答えております。少し日にちがたちましたのでもう一遍、思い出すためにちょっと読ませていただきます。  ○工藤政府委員 まず、二月八日の件について申し上げますと、実はこのペーパーは、経緯から申し上げますと、さき市川委員の御要望に応じまして、そういうことで取りまとめたもので、八日のちょうど草川委員のときの御質問の際に私の方から読まさせていただいたわけでございます。そういう意味から申しますと、実は市川委員あるいは草川委員の方からの御質問といいますか、そういう御質問に対しましてこのペーパーに即して申し上げるのが適当かなというふうに判断いたしまして、そういう意味和田委員に対しまして、このペーパーから離れるわけにもいかず、また、全くそのとおりというわけにもいかずというふうなことで御答弁申し上げた経緯があるわけでございます。 こういう御答弁がございまして、どうも不穏当な答弁である、こういうのでこの前審議が中断しておるわけであります。  大体、委員会に提出されたペーパーというものは、委員会に提出されたものでありまして、個人に向かって提出されたものではないのでございます。さき臨時国会において、我が党の山口書記長要望によって提出されたペーパーが各党によって十分に利用された例もあります。その他いろいろな例があるわけであります。その点で、法制局長官答弁というものはまことに私は当を得ない、私どもから見ますと、何か大変な差別あるいは偏見を感じるわけでございます。  統一見解、いわゆる法制局長官の言う市川委員草川委員に対する統一見解というものでは、在外邦人救出は法を改正しなければできない、はっきりこう言っております。ところが、和田委員に対しては、政令だけでできると、こういうような答弁をしている。なぜこんな異なった違う答弁をするかとお尋ねしますと、これは市川委員からの要望に応じて取りまとめたものだから異なった答弁になった、こういうふうな答弁を、今申し上げましたようにしております。  法律国会の制度に熟達している法制局長官が、だれの要望によろうが、委員会に提出されたものは委員会全員に提出されたペーパーであることは、十分これは御承知のことだ、こういうふうに考えております。あえてこのような答弁をするということは、人を見て法を説けということもありますけれども、人を見て言うことが異なる、人によって法の解釈が異なった解釈を解説する、こういうことは、法を守る法制局長官としてまことにあり得べからざる所業である、こういうふうに思います。政党によって差別し、偏見を持っていると、こういうふうに私は言わざるを得ないと思いますけれども、もう一度長官の御所見をお伺いいたします。
  4. 工藤敦夫

    工藤政府委員 二月十二日の佐藤委員に対しましての私の答弁の中で、政府統一見解と言われますペーパーにつきまして解釈幾つかあるような不適切な発言がございました。この点は、おわびし、取り消させていただきます。
  5. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 ただいま、おわびして取り消す、こういう言葉がございました。取り消すというお言葉でありますが、その前に総理にも同じ御質問をいたしたいと思います。  法制局長官がこういうようなことで大変混乱を招いておりますが、こういうようなことでいいのか悪いのか、総理の御答弁をお願いいたします。
  6. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今ここで御質疑になりました「自衛隊法第百条の五の授権の範囲と今回の政令制定との関係について」に書かれてあります見解政府統一見解でございます。見解がいろいろあるがごとき誤解を与えましたことは、まことに遺憾であり、厳重に注意をいたします。
  7. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 長官にまたお伺いしますけれども、今、取り消すという言葉がありました。どこを取り消すのですか。
  8. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答えいたします。  先ほど委員読みになりました議事録に基づきまして、そういう誤解を生じました部分についてでございます。
  9. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 その部分はどこでありますか。
  10. 工藤敦夫

    工藤政府委員 二月十二日におきます答弁の中の「まず、二月八日の件について申し上げますと、」というところから、これが経緯を申し上げております。そういうことで、それから「実はこのペーパーは、」というところから始まりまして、先ほど委員読みになりました最後のところの「全くそのとおりというわけにもいかずというふうなことで御答弁申し上げた経緯があるわけでございます。」ここまでの部分でございます。
  11. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それはそれでいいんですけれども、この問題になった原因は、和田委員に対する答弁なんですね。和田委員に対する答弁がふらふらした、どうも偏見のあるような答弁である、そこから問題が出てきたのです。あなたは私に対する答弁よりも和田委員に対してこういうような、こう書いてありますね、「そういう意味和田委員に対しまして、このペーパーから離れるわけにもいかず、また、全くそのとおりというわけにもいかずというふうなことで御答弁申し上げた」、このふらふらしているのは私に対してしているのじゃなくて、和田委員に対してふらふらしたのですね、あなたは。そうすると、取り消すということは、和田委員答弁も取り消すのですか。
  12. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいま申し上げましたように、和田委員に対する答弁、それに端を発しまして、佐藤委員に対してのお答えもそのような経緯を踏まえた形になっております。そういう一連のことに関して申し上げた次第でございます。
  13. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 よくわからぬのでありますけれども、今申し上げましたように、和田委員に対してこういう当を得ない答弁をあなたがしたわけです。それを取り消すということは、和田委員に対する答弁が一番おかしいのですから、その和田委員に対するあなたの答弁を取り消すということでありますかと私は聞いているのです。
  14. 工藤敦夫

    工藤政府委員 委員ただいまおっしゃられましたように、和田委員に対しましての答弁が非常に、何といいますか不適切であったということで、先ほどの冒頭申し上げましたことも、和田委員に対して解釈が幾通りかあるような、そんな不適切な発言があった、こういうことで和田委員に対してもそういう意味でおわびし、取り消させていただきます。
  15. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 和田委員に対する答弁も今取り消すということです。そうしますと、今度はこういう問題が起きてくるんですよ。統一見解、この中でははっきりと、自衛隊在外邦人救出自衛隊機を出すには法の改正が必要だ、こう書いてあるのですね、この統一見解には。ところが、和田委員答弁には政令だけでもできるとも言っているのです。和田委員のやつを全部取り消すと、政令だけではできないという解釈になりますけれども、それでいいんですか。
  16. 工藤敦夫

    工藤政府委員 多少敷衍して申し上げますと、私の答弁が先ほど申し上げましたように幾つかあるような不適切な発言がございました。ただいま総理からも御発言いただきましたけれども、私といたしまして、この統一見解に従いましたように、かつての過去の国会答弁、これと今回のものとが違う、こういう意味で、過去の答弁は、自衛隊に自国民保護としての在外邦人救出を一般的な任務として恒常的に行わせるためには、法律任務を付与する明確な規定が必要であろう、こういう趣旨のことを述べたものであり他方、今回行おうとしている航空機による避難民輸送、これは湾岸危機という我が国にとって重大な緊急事態に伴って生じた避難民につきまして、国際機関要請を受けて人道的見地から臨時応急措置として行うものである、こういうことで御答弁申し上げるということでございます。
  17. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そうすると、この在外邦人救出については、一般的には法改正が必要だし、緊急のときは政令だけでできる、この答弁が正しければ、あなた何も和田さんに対する答弁を取り消すと言わなくたっていいじゃないですか。取り消しておいてこういう答弁はおかしいですよ。取り消さなければあれですが、取り消したらどっちが、そうすると、どこを取り消すのですか、和田さんの答弁の。今、あなた和田さんの答弁を取り消すと言ったのですよ。どこを取り消すのですか。
  18. 工藤敦夫

    工藤政府委員 先ほど申し上げましたように、和田委員に対しての答弁がいかにも統一見解に対して幾つかの見解があるようなそういう誤解を生じた、こういうことで申し上げた次第でございます。
  19. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 いやいや、どうも紛らわしい答弁をしたということは、参りました、謝ります、それはわかるのですよ。だけれども、あなた和田さんの答弁に対しても取り消すと言ったから、どこを取り消すかと聞いているのですよ、私は。
  20. 工藤敦夫

    工藤政府委員 和田委員の御質問に対しまして、二月八日でございますか、ここで言いましたのは、「やはりそういう百条の五で考えております国による輸送必要性、」こういうことでその後ずっと続きまして、「緊要性公共性といったようなものを判断して、個別に判断していくべきことであろう、かように考えられます。」というところまでがいかにも統一見解から離れたような表現になります。その部分を取り消させていただくわけでございます。
  21. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そうすると、私がさっき言ったとおり、ぴしゃりなんですよ。緊急のときはやらないということでしょう、これ。やるということを取り消せば、やらないということじゃないですか。
  22. 工藤敦夫

    工藤政府委員 決してそういう意味で申し上げているわけではございません。ここの答弁の中でも、「いわばこの大きな二の方では述べているわけでございまして、そういう意味では緊要性公共性といったようなものを判断して、個別に判断していくべきことであろう、かように考えられます。」ここの部分は、統一見解の中に正確にこういう言葉が出てまいりますわけではございません。そういう意味解釈が二様にとられる、あるいはそういうことで紛らわしさがある、こういう意味でございます。
  23. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 ますますわからないのですがね。そうすると、これを全部取り消すことになりますと、「緊要性公共性といったようなものを判断して、個別に判断していくべきことであろう」これを取り消せば、緊急性公共性、こういうものを個別に判断してはいけないということになるのですよ、あなた。これを取り消しているのですから。おかしいじゃないですか。これは緊急性公共性も取り消しておいて、そして緊急だからできるという、こういう、自家撞着じゃないですか。おかしいじゃないですか。全く論理に合っていない。ちょっと統一さしてくれよ、これは。
  24. 工藤敦夫

    工藤政府委員 私が申し上げておりますのは、そういう統一見解に書かれました字句を離れまして、いかにも解釈が二様にもとられるようなことを申し上げた、それを取り消させていただきます、かように申し上げているわけでございまして、ここの統一見解に即してむしろお答えすべきであった、かように考えているわけでございます。
  25. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 これはちょっと何ぼやっても同じだから、これを離れないと言って取り消しておいてこれをやろうという。ちゃんと書いてあるのだもの、ここには。緊急性公共性でやれるというやつを、これを取り消して、やられなくなっちゃうじゃないか。おかしいんだよ。無理なことを言っているんじゃないんだよ。
  26. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいま問題になっております和田委員に対しましてのお答えでございますが、そこの部分は不適当である、不適切である、こういうことでございます。私の方から再度この点に即しましてもう一度統一見解にも基づきましてお答えを申し上げます。  さきペーパーにございますように、「過去の国会答弁との関係について」のところでございますが、過去に、在外邦人救出自衛隊任務として行うことと法改正必要性との関係についての答弁政府によりなされているが、これらの答弁は、自衛隊法自衛隊機による国賓等輸送規定を加えるための同法改正案を御審議願う際等に、自衛隊に、自国民保護としての在外邦人救出を一般的な任務として恒常的に行わせるためには、法律任務を付与する明確な規定が必要であろうという趣旨のことを述べたものでございます。  他方、今回行おうとしております航空機による避難民輸送、これは湾岸危機という我が国にとっても重大な緊急事態に伴って生じた避難民について、国連の委任を受けた国際機関要請を受けて、人道的見地から臨時応急措置として行うものであり、このような個別具体的な事態に対する臨時応急措置としての輸送は、自衛隊法第百条の五の規定が予定する範囲のものである、こういうことでございます。
  27. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それとさっきのあなたの答弁と何の関係があるのですか。何も関係ないのですよ。今言ったのは、あなたの言った統一見解で言っているのは、「自衛隊に、自国民保護としての在外邦人救出を一般的な任務として恒常的に行わせるためには、法律任務を付与する明確な規定が必要」である。これはこれなのですよ。「他方」と書いてある、今度は。「他方、」今回の「航空機による避難民輸送は、」云々、こう書いてあるのですよ。これ、全然別のものにして説明しているでしょう。  ところがあなたは、和田委員に対する答弁はこうなっているのですよ。今まであなたは、自衛隊在外邦人救出というものはできませんと言って、何人も同じ質問したのに対して絶対できませんと言ってあなたはやってきた。そして最後の、とどのつまりが、統一見解として出したものの中にも絶対に在外邦人救出はできません、こうやっている。ところが、和田委員に対してはできますと言っているのですよ。もうがらっと変わっているのです。  あなたは朝令暮改という言葉は知っているでしょう。どういう意味ですか。
  28. 工藤敦夫

    工藤政府委員 朝令暮改と申しますと、私は国語学的な意味あるいはその他について正確には申し上げることはございませんが、要するに、あしたに令を出し、夕べにはそれを改める、こういうことだと思います。
  29. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 これ、八日の日の朝出しているのですよ。そして、我が和田委員は晩の四時から質問しているのです。そして、あなたはこういう答弁をしているのです。まさにあなたが今言った朝に令を出し、夕べにこれを改めるという朝令暮改、おかしいのですよ、こんな。だからこういう問題が起きてくるのです。だから、あなたの言うことを聞くと、一体自衛隊の、在外邦人救出ができるかできないかわからないですよ。片っ方でできないと言って片っ方でできると言っている。また裂きですよ、これ。おかしいのですね。だからあいまいだと言っている。あなたは取り消すと言った、これ、今度は。取り消せばこっちの方は正しくなるのでしょう、この統一見解の方が。どうですか、これ。さっぱり要領を得ない。わからない。しゃべればしゃべるほどどっちだかわからなくなるから、もう一遍してくださいよ。
  30. 工藤敦夫

    工藤政府委員 どうも私の申し上げていることを御理解いただけないようでございますが、実はもう少し申し上げれば、邦人救出という問題につきまして一般的な任務として恒常的に行う、こういうことにつきましては統一見解のとおりでございます。  それで、「他方」といいますのは、統一見解に書かれておりますのは、避難民輸送のことを述べております。その点をあるいは佐藤委員、全然違うことを述べているのではないか、こういう御指摘かとも思いますが、結局、避難民輸送、今回の問題になっております避難民輸送と申しますのは、そういうここの統一見解に書かれておりますように、航空機によって避難民輸送を行う、そういう場合に、国際機関要請を受けて、重大な緊急事態に伴って生じた避難民として、そういうものについて輸送を行うのだ、そういうことなので、自衛隊法百条の五の規定が予定する範囲のものである、かように申し上げているところでございます。
  31. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 もうやめようと思ったけれども、まだおかしなことを言うからまた聞きますが、こっちは、在外邦人救出はできませんと言っているのですよ、一般的な任務だから。こっちの方の難民の輸送は緊急、人道的だからできますとあなたは言っているわけですよ。それをごっちゃにして、今度はあなたは自衛隊の方もできますと言っている。そして今度は、それを取り消すと言っているのですよ。一体どっちだかわからない。取り消すのですか、取り消さないのですか、これは。取り消せばできませんよ、政令では。取り消せば政令でできませんよ。あなた、これ、できるというものを取り消したのだから。おかしいじゃないですか。  これは、もうちょっと申し上げますが、これはあなた方には一つの意図がある。余り在外邦人救出をできない、できないと言えば、難民の方のあれも同じじゃないか、できないじゃないかといって我々に突っ込まれるから、難民の方を上に上げないで邦人の方を下に下げたんだから、ちゃんと意図があるんですよ、だから私は言っているんですよ。できるのかできないのか。あなたはこれを、和田委員に対する答弁を取り消すと言った、はっきり。取り消せばできないのです、政令では。できると言った。できると言った答弁を取り消したらできなくなるでしょう、そんな理屈わからないのかな。
  32. 工藤敦夫

    工藤政府委員 先ほどお答え申し上げましたのは、和田委員に対してのお答えがいかにも統一見解から離れた、あるいはそれと違う見解を示しているというふうに誤解を生じました、そこは大変申しわけないと思い、取り消したい、かように申し上げたわけでございます。そういう意味で、もう一度統一見解との関係を申し上げたのが先ほどの御答弁でございます。  そういう意味におきまして、「自国民保護としての在外邦人救出を一般的な任務として恒常的に行わせるためには、法律任務を付与する明確な規定が必要であろう」、こういうことで、これは過去の答弁でございますし、現在もそのように考えております。そういう意味で、「一般的な任務として恒常的に行わせるためには、」というところにつきまして、ぜひ御理解をいただきたいと存じます。
  33. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 この問題はまだ疑義がありますけれども、こればかりやっていてもしようがありませんから質問を留保させておいていただきます。それで前に進みます。  今までの審議の中にもたびたび出てきましたが、いろいろな問題がこの中であらわれてきたわけですね。例えば、行政府と立法府の間で意見の相違が出てきたとき、それをどう解決するか、委員長さん、盛んに頭を悩まされた問題等がありますので、この際、一言申し上げておきたい、こう思います。  従来の国会審議の中では、法的な問題が、法律の問題が起きてきますと、法制局長官がその見解を述べれば、法制局長官が言うんだから間違いなかろう、そのとおりだろうというので、内閣法制局長官という職務に対する信頼感がありました。政府と我々の間でいろいろなやりとりがあっても、最後には法制局長官が来てこれはこうだという裁断を下せば大抵それにみんな納得しておったのです。しかし、今回の法制局長官の、何というか対応というものは、この前の臨時国会等のあれから見て非常に何となくうさん臭い、厳然たるところがない、こういうような感じがします。強弁すればするほど何となく不信感が募ってくる。だから質問者は、何ぼ長官が答えてもどうもおかしいというので、繰り返し繰り返し執拗に質問を繰り返しているのです。新聞には、その長官の、政府の姿勢を、従来の慎重姿勢が消えて政治的になったのじゃないか、こういうふうな新聞の批評さえあるぐらいなんです。法制局長官に求められているのは、法律解釈については厳正な政治的な中立性であります。これを失えば法律に対する信頼が失われるからであります。それなのに、十二日の委員会における私の質問に対する答弁はまさに政治的偏向そのものである、こう私は言わざるを得ません。  嶋崎質問等で明らかになりましたけれども、憲法の問題で国会と、今言いましたように内閣とが見解が分かれたとき、我が国の制度では最高裁でしかこれをけりをつけられない。しかし、最高裁で出すには手続から審議から大変な時間がかかる。その間にどんどん事態は進行してしまって、最高裁がどんな判決を下そうが何の価値もない、こういうようなことになりかねないのです。こういう中にあって、わずかにこの法制局長官というものは、法の趣旨を厳正に守って、ある意味では審判の役目をしておった。私はこれは大変大事な役目であった、こういうふうに思います。さき臨時国会で、閣僚の発言にさえ工藤長官は厳然として懸念を表明してこれを取り消さしたり、いろいろなことがありました。私どもは、大変尊敬をしておりました。  このことからも、法制局長官というものの職務は大変大事な職務で、常に政治的偏向がなくて厳正中立でなければならない、こういうふうに考えております。いかなる理由からかわかりませんが、今回の長官のさま変わりの態度というものは、単に長官個人に対する信頼感を失わした、こういうことだけではなくて、内閣法制局長官という名誉ある職務に対する信頼感を失墜させたものだ、こういうふうに思います。  そこで、総理にお伺いします。  あなたは、余り時間がないからあれですが、今私が申し述べましたように、行政府と立法府の間で見解の相違があった、これはしばしばいろいろ問題になりました。これのいい悪いは別にしまして、やはりこの前に私どもの嶋崎委員が提案しましたように、これに対するやはり何かしら判断するものが、早急に判断するものがないと議論がかみ合わない。今のこういう議論でも、何かそういう即断する、すぐ判断してくれるものがあればこれによってまた黒白がついて審議がどんどん進行していくんじゃないか、こういうふうに思われます。こういうものに対して何かしらの機関をつくるとか措置を講ずる、そういうことに対する関心はございませんか。
  34. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 司法、行政、立法という三権分立の日本国憲法でありますから、またそこへ機関をつくるとかまたどうかいうことではなくて、まさに立法府の中で各党各会派の皆さんと政府とこうして議論をさせていただくことによって結論を見出していくようにするのが一番望ましいことだ、こう考えております。
  35. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私もそう考えておりましたところが、あなたは、ある同僚委員質問に対してこういうふうに言っているのですね。国会政令を無効とする措置をとったとしても絶対に撤回しない、政令を、決めたことは撤回しない、こういうふうに言い放っているのです。  あなたは、国会でお互いに話をすればと言うけれども、やるのは、この憲法問題なりこういうものでそれを審判するのは最高裁しかない、こういうふうに言っているのですね。最高裁はなかなか決まらない。ここの中で決めるのが一番いいけれども、それがなかなかできない。そうすると、この国会の中で話ししなきゃいかぬ。しかし国会の中で話ししても、あなたは国会がだめだと言っても撤回しないと言っているのですよ。だから私は、何かここでお互いに話をする場、ただこうしてやっていると、ただだめだ、いいとやっているだけだから、何かそういう話し合いをする場をつくってそこで一つの結論を出すようなことができないか、こう言っているのです。
  36. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 どういう言い方をしたか、速記録を手に持っておりませんから正確には再現できないかもしれませんが、要するに私が言いたかったのは、政令は内閣に与えられた一つの責任、権限でありますから、内閣は法に基づいて政令をつくった、これは内閣の責任でやりました、こう申し上げました。そして、四十一条は国会が最高機関である、国の唯一の、排他的唯一の立法機関だ、こういう趣旨の御発言でありましたから、そのことも十分承知もしておりますし、尊重もいたしておりますと、ただ、三権分立ですから、憲法の八十一条というのがあって、違憲立法審査権というのがありますと、学生時代のことですからちょっと記憶は定かでないが、私があることの議論の中で、それは憲法違反だ、こう言ったときに、おまえがその立場で憲法違反だと言うこと自体が憲法違反なんだ、憲法違反かどうかを決めるのは憲法八十一条の最高裁判所だということを言われて、なるほどそういうものだなと思って改めて条文を読み直した記憶などをここで思い出してお答えに申し上げたことは、それはそのとおりでございます。したがいまして、極端なことを言うと、国会が決めた法律でも最高裁判所が憲法違反だ、こう決めれば国会はそれに従って、また国会の努力で、違憲でないような法律につくり直す努力をしなければならない、たしかこうなっておると思います。尊属殺のときにはそのようなことを国会もみずからの意思でおやりになったと思っております。司法、行政、立法というのはおのずとそういう建前の中にあるものであって、政府はそれをきちっとわきまえて対応していかなきゃならぬという考え方を述べたつもりでございました。
  37. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 時間が一時間というので限られておりますので、これで論争するつもりはございませんけれども、最高裁にやるということは大変時間がかかる、結論が出るのも大変時間がかかる、その間にこっちのあれは、どんどん既成事実は進行してしまう、これではお互いに不信感が募るから何かそこに話し合いをする場をつくるようなことは必要ではないか、こう問いかけているのです。  次に移ります。  今回のこの自衛隊機を飛ばす、こういう問題について政令でできるのかできないのかということが大問題になってきます。私は、これはやはりただ飛行機を、自衛隊機を飛ばす飛ばさないの問題じゃなくて、非常に大きな問題だと思うのです、これから。次から次とこういう問題ができてくる。  そこで、ちょっとお伺いしますけれども、法制局長官にお伺いします。恒久的ならば法改正が必要で、臨時応急ならば法改正が必要でない、こういうふうな根拠はどこにありますか。これはどこに書いてあるのですか。
  38. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいまの委員のお尋ねでございますけれども、恒久的ならばできる、緊急ならできないという単純な比較ではございませんで、一般的な任務として恒久的にという場合にはそういうおのずから当然仕組み、手続等が必要でございましょうし、そういう意味でのいわゆる明確な規定が必要であろう、かように考えているわけでございます。  一方、今回の措置につきましては、百条の五という枠組みがございまして、まず第一に国の機関からの依願、これは決して私的なあるいは地方公共団体等からの依頼を受けるという意味ではございません、国の機関からの依頼を受ける、あるいは自衛隊任務の遂行に支障を生じない範囲内でというふうな限定、しかも航空機による輸送という限定、こういうふうなものがつきました上での百条の五の政令でございますので、その範囲内で政令委任が行われる、そしてその範囲内で政令として定める、かようなことでございます。
  39. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 その、こういうようなことで決めるという、それはだれが決めるのですか。あなたは百条の五だと言うけれども、百条の五ではそういうことで決めていいって一つも書いていませんよ。だれが決めるのですか、それは。
  40. 工藤敦夫

    工藤政府委員 百条の五におきましては、ただいま申し上げましたような枠組みの中で「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」、これを輸送することができる、こういうことになっております。したがいまして、その「政令で定める者」ということは授権の範囲内で政府が決める、政令政府が決める、かような趣旨でございます。
  41. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 いや、私が聞いているのは、恒久的ならば法の改正が必要だし、臨時応急ならば法の改正必要でない、この根拠が、決めるのはやはり、時間がないから進みますけれども、結局政府が恣意的に自分の主観的判断で決めるだけでしょう。  まだ言いますけれども、それではこの統一見解に、かけ離れているか否かは高位高官であるか否かという社会的地位のみに着眼して判断すべきではない、このすべきではないという根拠は何ですか。だれが一体これを決めるのですか。どこに書いてあるのですか、それは。
  42. 工藤敦夫

    工藤政府委員 統一見解の一の(二)と(三)でございますが、ここにおきまして、(一)から申し上げた方が適当かと思いますが、(一)でまず自衛隊法の百条の五の第一項の文言を整理いたしまして、その上で(二)でいわゆる「かけ離れたものを規定することは予定されていない」、かように書いてございます。その上で(三)で、そういうものとしていわゆる「社会的地位にのみ着眼して判断すべきものではなく、」こういうことで、そのかけ離れていない理由を(三)で書いているわけでございます。それは言ってみれば、今申し上げましたような第百条の五、これの枠組み、先ほど申し上げましたように、国の機関からの依頼を受けて、自衛隊任務遂行に支障を生じない限度において、あるいは航空機によってこういうものを輸送する、こういうところから出てくる解釈でございます。
  43. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それも結局、何も百条の五に書いてあるわけじゃない。それを判断するのは政府なんですよ、これは。政府の主観的な判断でもってかけ離れているとかかけ離れていないとかなんとかかんとかとそういうことを皆決めていく。皆すべてそうなんですよ。いいですか。  じゃ、もう一つ申し上げますけれども、国による輸送必要性その他諸般の事情を総合的に評価する、だれが一体これを総合的に評価するのですか。
  44. 工藤敦夫

    工藤政府委員 法律の、自衛隊法の第百条の五のただいま申し上げましたような仕組みから考えますと、これは当然なこととして、いわゆるVIP、社会的地位にのみ着目して判断すべきものではなかろう、かようなことで解釈しているわけでございます。
  45. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今お聞きのとおりで、どこにもそういう判断をしていいというのは書いてない。結局は、政府が主観的、一方的な判断で、これはいい、これは悪いと決めるだけだ。その一つの例として、さっきから私が問題にしました、朝にはだめだと書いて晩にはいいと言っている、まさに朝令暮改そのものでしょう。勝手な判断で何でもできるということなんですね。私は、その、簡単に一方的な主観的な判断で法をどんどん変えていく、この典型的な例が今回のあれにあらわれた、これがどんどん進んでいったら法律も何も皆無視されて困るじゃないか、こういうふうなことで、これを政令で軽々にやるべきじゃない、こういうふうなことを言いたいので言っているのです。その一環としてあなたはこの間からいろいろなことを言っているけれども、どうも私どもとしては納得できないから執拗にお聞きいたしました。  それからもう一つ。じゃ、時間がないからところどころ聞きますけれども、この間から総理とそれから防衛庁長官のお話を聞いていて非常におかしいと思っているのですね。飛行機を中東に飛ばす、自衛隊機を飛ばすというのです。なぜ自衛隊機を飛ばす、そうすると、民間機では危ないから飛べないところに飛ばす、じゃ自衛隊機は危なくてもいいのかと言うと、いや、自衛隊機も安全なときでなきゃ飛ばしませんと言う。どうもこの話がおかしいのは、安全ならば民間機でいいと思うし、民間機を飛ばせと言うと、危険だから自衛隊機を飛ばす、こう言う。どうもこの話が何ぼ考えてもわからないのですね。安全ならば民間機でいいじゃないか。自衛隊機を飛ばすというのだけれども、危険なところには行きませんと言うのです。危ないところには行きませんと言っている。ここのところはどうも私は納得できない。  結局、これは最終的になると、自衛隊機を飛ばす、難民を救うと言っているけれども、難民を救うところが目的でなくて、この間から言われているように、日の丸をつけた飛行機を砂漠の上を飛ばして、日本もこうやっているぞということを見せるためにやろうというのでしょう、結局は。いかがですか、総理でも防衛庁長官でも。
  46. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の湾岸におけるイラクの行為が周辺国に避難民を輩出することが予想される、そういったときにはそれの輸送をする。国連から委託を受けたIOMという国際機関がその責任を負うわけでありますから、日本にもそのときに受けて立つ可能性があるかという問い合わせが来た。この要請を受けて、日本は武装部隊は出せないけれども、できる限りの協力はしたいという強い気持ちを持っておりますから、それに対しては、民間機そして自衛隊機を問わないという要請でありますから、まず具体的要請があったときに民間機にお願いをして、困難な状況も乗り越えて日本航空と全日空でベトナムへの民間人の輸送をしてもらったことは委員も御承知のとおりであります。  しかし、民間機はカイロまでは行くけれども、その先についてはといういろいろな御意見がございました。IOMの方は、当面のところはIOMとしてあの周辺諸国の民間機等もお願いをしながら移送をしておると私は思っておりますが、移送にはお金が要る。その費用の分担も、最初の分は全額日本が拠出をいたしました。今のところは避難民の数が少ないから、それ以上具体的な要請は来ておりません。けれども、避難民が多くなったときには、民間機をそれに十分対応させるだけの契約ができるかどうかということについても、IOMの当初の要請状では、その困難な見通しに立って各国にお願いをする、こういうことでありますから、そういうときにはやはり非軍事面で、人道的な立場でこれに対して協力するには、いろいろな方法があるけれども、日本としては既に民間機でやるべきことはやっておりますから、何が何でも最初に自衛隊という御発言は、これはそうではありませんということをここで答えさしていただきます。事実でもってそれは回答を出しております。  それから、具体的に要請があって、民間機の手が及ばぬところも出てくるかもしれません。そういうときには自衛隊輸送機で避難民の方の人道的な輸送ということに対応しよう、対応できる方策を政府としては政府の責任でとった、こういうことであります。
  47. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 時間がないからあれですが、私の知る限りでは、新聞、テレビあるいは論説、どれを見ても、だれに聞いても、ほとんど政令でいいと言う人はいないのです。たとえ、自衛隊機を飛ばすべきだ、こう主張している人であっても、法を改正してやるべきだ、ほとんどこう言っているのです。自民党の中の人でさえもそういうことを唱えている人も少なくはありません。また、新聞の投書でもほとんどの投書した人が、横紙破りの政府のやり方は不安を覚える、こういうような傾向であります。  ここに某新聞の世論調査の結果があります。あなたも既に御存じでしょう。政府のやり方については、自衛隊機を飛ばすことについてはどうかという項を見ますと、自衛隊機を派遣するのに賛成の人が三三%、反対の人が五五%。その中で、政令で飛ばすのはどうかという項になりますとがらっと変わってくるのですね。問題がある、政令で飛ばすべきでないという人が七六%なんです。飛ばしてもいい、問題がないという人が一四%なんです。その他、回答がない、わからないという人が一〇%なんです。だから、政令で飛ばしてもいいという人はたった一四%、少なくとも政令で飛ばすべきでない、あるいは政令で飛ばしていいかどうかわからないという人、本当に賛成でない人が一〇%いますから、合わせて八六%の人が政令で飛ばすべきではない、こう言っているのです。これはもう世論がはっきりと裏づけておりますし、今までの議論をいろいろ見ましても、ほとんどの国民がそう思っている。  さらに、この問題に関しましては、全野党が、こういう政令というやり方では反対の意を強く表明しております。したがって、今回この問題について、政府自衛隊機政令によって飛ばす、こういうことを断念すべきじゃないか。そうして、もっと民間機なり陸路なりあるいは使えるヨルダン航空なり、いろいろなものを使ってやる方が国民のコンセンサスを得られるのではないか。最近これほどはっきりと国民の意思があらわれたことはない、私はこういうふうに感じております。  今、湾岸戦争は転機を迎えております。しかし我々は、まだこういうような問題で国会でもって議論しておる。私自身も大変残念なことであると思います。この問題は、問題は小さいかもしれないけれども、政令で何でもできるということについて大変大きな問題をはらんでいる。今後もっともっと議論していかなければいけないけれども、今度の国会の一つのとげみたいなものですね、これを早くやめて、そしてこの新しい湾岸の事態に対処するようなことをする、そのためにぜひひとつこの政令で飛行機を飛ばすということを断念して撤回していただきたいと私は思いますが、いかがですか。
  48. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 世論調査についてはいろいろあることを私も報道を通じてよく知っておりますが、佐藤委員今お示しになった世論調査も、賛成とそれから反対の間に、仕方がないあるいはやむを得ないという数値もあったんじゃないでしょうか。  そしてまた、一般の国民の皆さんにもぜひ御理解いただきたいことは、政令でやっちゃいけないことと明らかに書いてあること、例えば自衛隊法の百条の五は、国の機関から依頼があった場合という条件と本来の任務に支障を生じない限度においてと、この二つの前提条件は書いてありますが、その他は「その他政令で定める者」と書いてあるわけであって、ここでもよく議論になりましたが、それが例示列挙なのか制限列挙なのか、私もこんな法律用語を使ってお答えするのはいかぬかもしれませんが、制限列挙であるなればいたしません、例示列挙であるからこれはできると素直に読むわけです。そして、それがいけないからやめろ、もし書いてないことを強引にやったというならばそういうことにもなるでしょうけれども、これは政令でできることになっておるわけでありますから、ですから、法律の根拠に従って素直に読んでやったということで、やることも非軍事面の民生的なことでございますから、人間の尊厳性を考え、あの地域でイラクの侵略によって出てきたかわいそうな避難民の人たちの立場に立って、よし、できるだけのことをしようと決めてかかって政府がこういう対応をした。ただ、それは国際機関からの要請があったときに今でも民間機で既にやっておりますよ、いろいろな状況等ももう一回冷静に御判断をいただいて、政府が対応しておりますことについては、これは御理解とお認めをいただきたい、私はこう思うわけでございます。
  49. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 その問題を私はやろうと思って実はメモをつくってきたのですが、時間がないのでやめたけれども、たまたま総理から出ましたのでちょっと言わせていただきます。  あなたの発言をこの前から聞いておりました。たびたび、この法律を素直に読めば、何々に限ると制限をつけてないから難民の輸送もできるんだというふうにあなたは答弁しております。──じゃ、もう一回。
  50. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 その本文の中で何々に限ると書いてなくて、「内閣総理大臣その他政令で定める者」、こう書いてあるわけですよ。ですから、むしろこの百条の五が国賓、内閣総理大臣に限るとかいうふうに制限列挙になっておれば、それはそれでもなおかつやると、おまえは越権だ、政令法律を振るとは何だとおしかりを受けてもいいんですが、そうではないということを私は申し上げておるのです。
  51. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 まさに私が言ったとおりで、何々に限ると言ってないからできると今あなたは言ったのです。いいですか。今あなたはそう言った。私はそれをちゃんと聞いた。私もここに、何何に限ると言って、今あなたは何々に限ると書いてないからできると言ったんだ。それで、私は前から、そう言ったからちゃんと書いてあるのです。つまり、難民の輸送をしてはいけないと書いてないから難民の輸送ができるということなんですよ、あなたの言うことは。(海部内閣総理大臣「「政令で定める者」と書いてあるんです」と呼ぶ)だから、政令にそれをやっちゃいけないと書いてないからできるということでしょう、あなた。そんなことだと、書いてないからできるんだ、こういうことになると、書いてないものは何でも乗せることができると思うのですよ。そうなりませんか。書いてないからできるというんなら、書いてないものは皆できることになる。
  52. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そんなこと言っていません。  それは大切なところですから明確に申し上げますけれども、現実にイラクの侵攻によって避難民が周辺国に出てきた。これに対して日本は輸送に応じてほしいという国際機関からの要請を受けて、その要請の中で、日本国憲法の枠組みの中で武力の威嚇、武力の行使を伴わないものという大前提を置いて、そして具体的な国際機関からの要請があったんですから、それができるかどうかを検討して政令をきちっと決めたんです。それは「政令で定める者」と書いてありますから、そういう前提をいろいろ置いてきちっと政令をつくっておるわけでありますから、野放し、手放しに何でもできるんだというようなことは一度も申し上げておりません、こういうことでございます。
  53. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 まだ議論はたくさんありますけれども、時間になったからこれで終わります。
  54. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。  次に、新村勝雄君。
  55. 新村勝雄

    ○新村委員 最初に、手続の問題についてお伺いしたいと思いますけれども、三年度予算が本会議で提案理由の説明があって、当委員会に付託をされ、今日まで審議が進んできたわけでありますけれども、十五日になって、三年度予算を変更する、これは二年度の補正とあわせてでありますけれども、変更するという政府の修正の概要が説明されました。しかもなお、この段階においても「以上の計数は概数であり精査の結果、異動を生ずることがある。」あるいはまた「国債整理基金特別会計について、所要の修正を行う。」こういうことになっておるわけであります。  そういたしますと、政府が提案をされた三年度予算は不確定要因を含んでおり、計数も確定されたものではないということになるわけですね。そういう状況のもとで今日まで委員会審議が行われてきたわけでありますけれども、そうしますと、政府案が確定をしていない、計数も確定をしていないという状況のもとにおける委員会審議であったわけですね。これはまことに委員会とすれば、我々とすれば心外でありますし、不満であるわけです。予算というのは政府に提案権が専属をしておるものでありまして、これは政府は確信を持って、これは言うまでもないことでありますけれども、確信を持って提案をするというのがこれは当然の責任でありますけれども、それが全く内容が不確定のまま提案をされ、審議をされているという状況は、これはどういうことでございましょうか。
  56. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 委員が御指摘になりましたように、私どもは平成三年度予算につきまして、精査をいたしました上、各省の概算要求の内容を固め、その上で平成三年度予算の編成をいたしました。しかし、その後におきまして、イラクのクウェートに対する侵略の結果、国際世論にもかかわらずイラクがクウェートから立ち退かない状況の中で、国連の安全保障理事会の数々の決議を背景にし、多国籍軍がクウェートからイラクを排除するという行動に出ました。そして、それに関連をいたしまして、湾岸における平和と安定の回復のために日本政府としても多国籍軍に対する資金協力を行うという意思の決定を行いました。これは確かに平成三年度予算の編成時において懸念をいたしておる材料ではありましたが、その時点に起こっていた状況ではございませんでした。その結果、私どもとしては、平成二年度補正予算(第2号)をもってこの九十億ドルの支援についての御審議をお願いしたいという意思を表明し、本院にもその旨御説明をしてきた次第であります。  しかし、再開国会におきます衆参両院の本会議における御議論、また本委員会における各党の委員の御意見を承りながら、私どもも、この九十億ドルの財源措置というものを、平成三年度予算に全く触れず、また平成二年度のわずかな残っております金額の中ではありますが、政府自身の努力をせず、そのままの形で審議をお願いをすることは考え直すべきではないかという判断をいたしました。これは本院におきまして繰り返し私は申し上げておることでありますけれども、よく政府が汗をかけと言われます。その政府が汗をかくと申しますことは、言いかえれば、国民からお預かりをした税金を使わせていただき、国民に対する行政サービスを行うための予算でありますから、一方においてその行政サービスの低下という問題を生ずることでありまして、それは避けなければならないと当初考えておりましたけれども、本委員会における御議論等を踏まえ、私どもは、この九十億ドルの支援協力の資金というものをすべて増税措置によって国民にお願いをするのではなく、政府自身としても従来に増して歳出の節減合理化を図ることによりぎりぎりの努力を行うという決断をしたわけでございます。  具体的には、平成二年度予算の既定経費の節減、予備費の減額及び税外収入の追加、並びに平成三年度予算におきまして予備費の減額及び国庫債務負担行為に係る平成四年度以降の支出予定額を含む防衛関係費の減額を行うことといたしました。これに伴いまして、税制上の措置につきましては、たばこ税の増税を行わないとすると同時に、石油税及び法人税の増税措置につきまして所要の調整を行うこととした次第でございます。  従来から私どもは行財政改革というものを初めとし、歳出の節減合理化について一生懸命努力をしてきたつもりでありますが、今回予算修正まで行いましてさらに歳出節減の努力をいたしますことは、財政当局といたしましては容易ならざるものでありますけれども、何よりも今般の支援というものの重要性にかんがみ、また、従来から申し上げてまいりましたように、単純な赤字公債の発行を行わないため財源的な裏打ちを適切に確保することも考え合わせ、ぎりぎりの決断を行ったものであります。  今委員から御指摘がございましたけれども、私は国会における御議論というものを政府としてそのまま素直にちょうだいをし、政府自身が努力を払った結果と御評価をむしろいただきたいと考えております。
  57. 新村勝雄

    ○新村委員 政府の意図を、あるいは政策の選択の可否についてはこれは別の議論がありますが、国会がその予算を審議をする形として、これは当然政府の構想が最終的な確定されたものとして示されて、それに基づいて審議をするというのがこれは原則であるし、そうでなければ審議が実はできないわけですね。予算案の提案の当初において不確定の要因がその中にあったとすればこれは全体を審議をすることができない、これは当然であります。そうしますと、十五日付でこういう新しい方針が示された。これを織り込んだ政府の最終的な計数の確定した予算はいつ提示をされますか。
  58. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今一刻も早く御提出ができますように努力をいたしておりますが、私どもとしては二十五、六日というものを一つのめどに置きながら、一刻も早くこれができるように、国会へ提出できますように努力をいたしております。
  59. 新村勝雄

    ○新村委員 そうすると、そこで改めて政府の最終的な案を提案をされる、こういうことになると思います。そうしますと、国会法の五十九条に基づいて政府は改めて修正をした議案を提案をする、こういうことになりますか。
  60. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私はそういう正確なその国会法の条文等につきまして十分な知識を待っておりませんけれども、もしその部分が必要でありましたら政府委員から答弁をさせますが、いずれにいたしましても、院における御論議というものを踏まえ我々としてでき得る限りの努力をし、本日までの院の御論議というものにおこたえすべく努力をしたということでございます。
  61. 新村勝雄

    ○新村委員 やっぱりいわゆる民主主義、特に議会制民主主義は手続が重要だと思うんですね。そういう点からして、今までの予算審議というのは、政府案の中に不確定な要因を持ったまま審議をしてきた。最終的な計数はどうなっているのか、どうなるのか、これがわからないままの審議であったわけですよ。ですから、そういう点からすると、今までの審議は何であったのかということが我々としては言えるわけです。そういう点からして、これからの手続はどうなるかということを一応お伺いしたいと思います。
  62. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 委員のおしかりに対してお言葉を返すような結果になるかもしれませんけれども、政府といたしまして院における御論議というものを踏まえ、政府自身がその内容を改めるということが私は民主主義にもとるものだとは思いません。むしろ私どもとして確かに最善を尽くしたつもりで予算編成をいたしました。そして、その後に起こりましたこのクウェートからのイラクを排除するための国際的な協力の枠組みの中で日本も資金協力を行うべきであるという決断をし、それに対して補正予算を提出させていただくということで御説明を申し上げてまいりました。しかし、それに対して衆参両院の本会議におきます各党の代表質問、また本院におけるこの予算委員会の御論議、その中において私どもの考え方を必ずしもそのとおりに受けとめていただける御意見ばかりではなかったことは委員がよく御承知のとおりであります。そうした中において、政府として院の御論議というものに誠実に耳を傾け、それに対しおこたえをしたことが私は民主主義にもとるとは思いません。  同時に、手続という点で御指摘を受けましたが、こうした政府自身がみずからのその予算を、提出をいたしました予算案をみずからの意思によりまして予算修正という手法をとりましたことは、恐らく例として余り今までにはなかったのではなかろうかと思います。そうなりますと、先例として一体委員がどのようなものをお考えか私には十分にわかりませんけれども、私どもとしてのその意思の、院の御意思というもの、御議論というものを受けて予算の、予算案の内容について政府の最終的な考え方を確定をいたしました段階において、私はその場にはおりませんから存じませんけれども、細かいことは存じませんけれども、党首会談をお願いをし、各党の党首の方々に我が党の総裁であり、同時に内閣の最高責任者として海部総理からその状況を御説明を申し上げ、御理解を求めたと存じておりまして、我々としてはでき得る限りの手順を尽くしたと考えております。
  63. 新村勝雄

    ○新村委員 ですから、政策の問題あるいは政策選択の問題を申し上げているのではないんですよ。これは、今回の修正のそもそものもとは、やはりこれは政府の問題提起によって修正されるわけですね。九十億の拠出をどうするかという政府の政策、その政策提起に基づいて修正が行われるわけでありますから、その考え方に基づいてこれからどういう手続をおとりになるかということを、手続の問題をさっきからお伺いしているわけですよ。
  64. 保田博

    ○保田政府委員 今回の九十億ドルの拠出に伴います財源をいかに調達をするかということにつきましては、先ほど大蔵大臣からるる御説明があったとおりのような手続を経まして大筋が決定されたわけでございます。今それをもとに予算書その他関係法案の作成に鋭意努力中でございます。  まず、平成二年度の補正第二号及びそれに関連することに伴いまして修正を要します平成三年度の修正書というものは、先ほど大臣が御説明申し上げましたとおり、来週の早々にも御提出できるかと思います。ただその前の段階といたしまして、これらについて政府として、内閣において概算決定という手続を行います。この予定、まだ確定しておりませんが、今明日中に概算の数字は確定できるのではないかと思っております。  それから、関連する法案につきましては、今法制局を中心といたしましてこれも鋭意作業を急いでおるわけではございますが、多分、今週の二十二日ぐらいには何とか御提出できるのではないかというふうに考えております。
  65. 新村勝雄

    ○新村委員 委員長にこれは御質問あるいはお願いですけれども、今の政府答弁のとおり、これは政府の政策の提起によって予算が変更されるわけですよね。経過はあったにしても、政府の政策の提起、九十億を拠出をするという政府の政策、これに基づいて予算が変更されるわけでしょう。そうしますと、今までの予算というのは、政府の構想とは、最終的な構想とは違うもので提起をされ、審議をしてきたということですよね。そうでしょう。そうなりますと、これは当然単純な、極めて単純な理屈からしても、新しい最終的な政府の構想を、計数も整理をして、ここではまだ計数が整理をされていない、異動もあるということをおっしゃっていますね。国債整理基金特別会計についても所要の修正をするということですから、これはまだ政府の最終的な構想でもないわけですよ。こういうことでやりたいということの概要でありますからね。そうなりますと、予算委員会としては政府の最終的な構想なり計数まできちっとしたものを、これをお出しをいただいて、そこで審議をするということでなければ理屈が合わないでしょう。今までの審議というのは、これは失礼ながら、政府は努力をされておりますよ、おりますけれども、政府の最終的な構想は固まっていない段階で今までやっていたわけですよ。政策の選択の可否は言っていませんよ。ですから、そういう点からすれば、今政府から御説明をいただきましたけれども、まだ確定的に最終的な案がいつ出てくるかもわからないという状況のもとで予算委員会を継続することができるかどうか、継続してどれほどの意味があるのかということを疑うわけなんですよ。  そういう点で委員長にお願いですけれども、これは正式に最終的な、構想の固まった最終案ですね、計数の完全に整理をされた、これをお出しをいただくことがいつできるのか。そうしてまた、そのお出しをいただいた段階からこの委員会のその案に対する審議を始めなければこれは理屈に合わないのじゃないでしょうか。こういうことは、私は極めて経験は浅いんですけれども、今までも国会には例がなかったんではないか。政府の方の提起によって政府がみずから最初提案したものを修正をする、こういう事態は今までなかったのではないかというふうに考えておりますが、その点で委員長のしかるべき賢明な御判断と、それから委員会の運営をお願いしたいと思います。
  66. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 委員長の御答弁の前に私からもう一言言わせていただきたいと思いますのは、今委員委員としての御見解をお述べになりました。しかし、平成三年度予算案として私どもが御審議をお願いを申し上げ、同時に、あわせまして平成二年度補正予算(第2号)として九十億ドルの資金協力についてすべてを国民の新たな増税という形で御負担をお願いを申し上げたいということは、その時点において政府として確定した意思を申し上げてまいりました。不確定なものでは決してございません。しかし、その後の御論議を踏まえ、我々自身が院の御意見に耳を傾けて誠実に努力をしました結果を党首会談の場において御報告を申し上げ、そして今少なくとも二十五、六日をめどにその予算修正書等一連の書類というものを提出させていただく、これは私どもは不確定なものを御審議をいただいたのでは決してございません。我々として意思の確定の上に立って提出をいたしました平成三年度予算案というものにつき、院の御意見というものに耳を傾け誠実にこたえた努力の結果として、政府自身が変更をしようと決意をしたということであります。その点だけはどうぞ正確に御理解をいただきたいと存じます。
  67. 渡部恒三

    渡部委員長 今大蔵大臣から答弁いただきますから。大蔵大臣。
  68. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、国会法上の御注意をいただきまして、私の答弁が正確さを欠いたようでありますので、この点はおわびを申し上げます。  政府としてそういう準備をしているという状況にあるということを申し上げたわけでありまして、確かに委員御指摘のように、政府として概算閣議を開いておる状況でもございません。ただ、私の立場からいたしますならば、党首会談というその重い席に向けて、総理の御指示により、院のその時点までの御論議を踏まえ、最大限の努力を命ぜられ、努力をした結果を総理から総裁としてのお立場で各党の党首にお伝えをした、これは極めて重い行為と受けとめ、それを素直に申し上げました。そうした努力を継続いたしておりますと言いかえさせていただきます。
  69. 渡部恒三

    渡部委員長 御理解いただいたでしょう。  じゃ、新村君。
  70. 新村勝雄

    ○新村委員 大蔵大臣に申し上げますが、大臣の御努力については、これは御努力をしたということについては評価をしましょう。その内容については、これは別の論議がありますよ。それから、党首会談等を経てこういう状況になったということについても、これはもちろん了解をしております。  ただ、予算委員会としては、政府の最終的な構想、これは計数の整理までも含めた最終的な構想を提示をいただいて、そこで審議をしなければできないだろうということを申し上げたわけですよ。それで、それに対してどういう今後の見通しなり日程をお持ちであるのかということを申し上げたわけであって、大臣の御答弁は必ずしも質問に対してお答えになっていないわけです。ですけれども、今そういう状況であるとすれば、それは了解しましょう。  そこで、委員長、こういう状況の中で政府が当初に提案をした予算案を、政府の発意というか、政府の政策というか、それによって修正をする、こういう事態は今まで余りなかったわけです。そういう状況の中で、政府から最終的な案が出た場合に、委員会としてしかるべき審議のチャンスを、時間を与えていただくべきではないかということなんですよ。今までの委員会審議は何であったのかということでありますけれどもね。しかし、それは過ぎ去ったことでありますから、今は申しません。これからそういうことをお願いしたいと委員長にお願いをいたしておきます。
  71. 渡部恒三

    渡部委員長 理事会で協議させていただきます。  じゃ、審議をお続け願います。新村君。
  72. 新村勝雄

    ○新村委員 それでは、理事会で十分御検討をいただきたいと思います。そうして新しい最終的な案に対するこの場における討論も、ぜひその時間を確保をしていただきたいということを特にお願いしておきます。  次に、総理にお願いというか質問でありますけれども、総理はこの委員会でたびたび憲法は遵守をする、そうして自衛隊機の問題あるいは九十億の問題等についても、これは所要の手続を経て合法的に行うものである、あるいは行った、こういう御答弁でありますけれども、繰り返すようでありますけれども、やはり総理あるいは政府の、あるいは法制局長官の御判断というものが、政策論とそれから法の運用とを混同していると言わざるを得ないわけですよ。総理のおっしゃることは、これは一面からすればそれは真理でありましょうし、あるいは正当性を持つということがあるいは言えたにしても、その目的が正当性を持つがゆえに、法の命ずる、あるいは憲法体制を乱すというか無視をするというか、してもいいということではないのですよね、政策の選択とそれから法の運用とは全く別の次元でありますから。そこのところを混同されているのではないかということを深く疑うわけなのであります。  それで、昨日及びその前、二日間にわたって公述人の御意見等もお伺いしましたけれども、その公述人の御意見を参考にしても、ほとんど全部の人たちが、これは明らかに法の運用の間違いであるという意見、あるいはまず法改正をすべきであった、しかしこの状況のもとではやむを得ないという人もおりました。無条件で、これは認められてしかるべきだ、ナショナルインタレストを優先すべきであるという意見の人も例外的に一人いらっしゃいました。しかしほかの人たちは全部、これは法の運用の間違いである、あるいは法律を改めてからやるべきであったという意見で一致をいたしました。共通をした意見でございました。  そういうことから考えて、これはこれからの問題もありますので、法制局長官にもお伺いしたいのでありますけれども、この特例政令の運用が果たして法が許容するものであるのかどうか。これは同じ答弁しか返ってこないと思いますけれども、もう一回伺いたいと思います。
  73. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、今回の内閣のとりました措置というものは、あくまで大前提に、今世界の注目を集めておる湾岸の一連の出来事を通じて、イラクのクウェートの侵攻によって周辺に出てくる避難民を国連の委嘱を受けた国際機関から移送を依頼されるという、まことに人道的な、そして全く非軍事面の行為でございますから、これをすることが憲法に違反するとは考えておりません。むしろ、自衛隊法の根拠に従って、「その他政令で定める者」という項目があり、政令の中に今回のこの問題をきちっと固定的に書きまして、このようなことを行いたい、そういう準備をしたわけでありますから、これが憲法違反だとは私どもは受けとめておりません。
  74. 新村勝雄

    ○新村委員 総理は、憲法九条の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、」このくだりはよく引用されますけれども、この九条というのは、それが前の半分で、後の半分は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」この後の部分があるわけですよね。この先の部分と後の部分とが一つになって、統一されて、一つの九条の思想を形成しているわけですから、前の半分だけの引用ではこれは九条の精神を全く説明していないわけですよ。  それで、さらに二項に行って、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」ということでありますから、自衛隊機の派遣は、飛行機そのものは、これは兵器そのものであります。それから、一緒に行く人たちも、自衛隊という、これは法的には軍隊、軍隊の構成員でありますから、武器、構成員、それからまたその一緒に行く構成員の方々の兵装、武装についても何ら制約もなければ規定もないということでありまして、国際的にはこれは軍隊の一部。軍隊の一部が外国へ行くんだということは、これは疑いのない事実ですね。  それからもう一つは、九十億にしても、九条の規定には「陸海空軍その他の戦力」とありますけれども、この「戦力」というのは、武力行使を支える、一切のそれを支える要素、こういうふうに考えられますから、これは武力行使を支える力、「戦力」というのは。ですから、この九十億というのはこの「戦力」に当たるわけですよ、明らかに。それを拠出をし、派遣をするというわけでありますから、これはどう考えても九条違反だと思いますけれども、総理のお考えはいかがでしょうか。
  75. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘でございましたが、私は何も九条の前半だけを言ったわけではなくて、後半に書いてあります「武力による威嚇又は武力の行使は」行わないということについても、前国会以来再三申し上げ続けてきたつもりでございまして、むしろ、前半のことを余り言わなかったのではないかというみずからの反省にも立って、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」するという九条の前半も盛んに皆様にお答えの中で申し上げておる。ということは、正義と秩序を基調とする国際平和を希求しておるのであって、正義と秩序の基調になっていない平和を希求しておるのではないという視点も確かにあるわけです。  そのために、国連の決議というものは、正義と秩序に基づいた平和であらねばならぬということから、イラク、その行いは侵略であり、クウェートに対する併合はこれは正義と秩序を基調としていない、だからすぐ撤退すべきである、こういう累次の国連決議がなされておることも御承知のとおりであって、私は、そういう国連決議が望むものが正義と秩序を基調とする国際平和である。また、我々日本が、新しい世界の平和の枠組みというものは力ではなくて国連の中の公正な原理に従った平和だという点から、その決議を支持する政治的な立場をとっておるわけでありますから、そういった意味でこの九条のことも引用をし、申し上げ続けてきたわけでありまして、今後半の議論で、九十億ドルの拠出についても、それは戦費であって、憲法違反ではないかという角度の御指摘でございましたが、私どもはそうではなくて、国連の決議に従った平和回復のための活動である。そして、二十八の国々が力を合わせて最後の武力行使に入ったのも、国連決議の精神を踏まえて、まさに日本国憲法が目指しておるような正義と秩序を基調とした国際平和を確立するために、侵略と規定されたものを排除して平和と安定をつくるための武力の行使である、こう考えておりますから、憲法に従って、武力の威嚇、武力の行使のためのお役に立ちましょうという多国籍軍への直接参加はこれは禁ずるところであってできない、けれども、国連決議に従った平和回復活動にはできる限りの支援をしていきたい、これが九十億ドルを決定したときの考え方の根底でございまして、憲法に違反しないものと私は考えております。
  76. 新村勝雄

    ○新村委員 これも繰り返しになりますけれども、従来、政府の公式見解としては、自衛隊は海外に出動あるいは派遣はしないというのが公式見解であったと思いますね。ですから、今回のこの行動は、少なくとも政府の公式見解、憲法解釈を変えるものである。そしてまた、その特例政令によってそれを行うことによって、より重大なことは、特例政令法律を超えたというふうに我々は考えておりますけれども、法律を超えただけではなくて、同時に憲法をも超えたのではないかというふうに考えるわけであります。その点はいかがでしょうか。
  77. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  まず、自衛隊の存在でございますが、現在の憲法九条の一項、二項、あるいは前文も含めまして、我が国に自衛権、とりわけ個別的自衛権が存在することはこれは認められております。そういった中で自衛隊も憲法上認められておる存在であるということは政府が一貫して申しておりますし、また、既にその点は国民の中に定着しておるもの、このように考えております。  そうして次に、自衛隊が海外へ出ていくことでございますが、これにつきましては、これまで政府統一見解として出し、また繰り返し申し上げておるところは、憲法上認められないいわゆる海外派兵というのは、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に出していく、これがいわゆる海外派兵でございまして、このようなことは憲法上認められない、このように考えております。それに対しまして、武力行使の目的を持たない自衛隊の海外へのいわゆる派遣でございますね、海外派兵と区別された意味での派遣というものは憲法上は認められないものではない、このように言っております。  ただし、そういった派遣をするためには法律上の根拠がある、こう言われておるわけでございます。法律上の根拠と申しますものは、自衛隊法上のどこにはっきりした根拠があるというんじゃなくて、法律体系全体の中で根拠があれば出ていけるわけでございます。例えば、自衛隊員が教育訓練のために海外へ出ていくということはこれまでもたびたび事例があるわけでございますけれども、これは、教育訓練のために海外へ出ていくことができるという明文の規定があるわけではございません。しかしながら、防衛庁設置法の六条十二号でございましたか、だと思いますけれども、そういった法文の解釈論から申しまして、これは当然にそういった海外における教育訓練もできるんだというその解釈が確立しておりまして、そういったことでこれまでも行っておるわけでございます。  さて、今回のケースにつきましては、私どもは、自衛隊法百条の五、この条文に基づいて自衛隊機による輸送ができる、このように考えたことは繰り返し申し上げておるところでございますし、またこの百条の五に海外へという文言はございませんけれども、この百条の五に基づいても海外へ派遣ができるということは、これは百条の五を制定いたしました過程においても政府側から御答弁申し上げておったところでございますし、私ども現在でもそう考えております。  いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、今回の問題が憲法上は全く問題がないということは、もうこれは国民の中でも定着したことであろうと思いますし、そしてその法律上の問題につきましては、これは国会から百条の五の中で授権をいただいたその範囲内で政令を定めたものである、この点につきましては政府から統一見解で詳しく御答弁申し上げておるところでございます。
  78. 新村勝雄

    ○新村委員 海外に派遣をしていいという明文はない。明文はないのを特例政令で道を開こうということですから、この点が極めて重要ではないかと思うのですね。  そこで法制局長官にお伺いしますが、この行為は今までの政府見解を明らかに変更するものであると思うんですが、それはどうですか。
  79. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答えいたします。  今委員の御指摘、二点あろうかと思います。一つはいわゆる九十億ドルの支出の問題であり、もう一点は自衛隊輸送機のいわゆる派遣の問題であろうと思います。  まず第一点の九十億ドルの支出の問題でございますが、いわゆる憲法九条が禁止しております武力の行使、これはこれまでもたびたび申し上げておりますように、実力組織によって行われる実力の行使、これに係る概念であるというふうに申し上げております。そういう意味で、我が国が単に経費を支出することは武力の行使には当たらない、そういう意味で憲法九条に違反するものではない、かようなことはこれまでも申し上げているところでございます。  また一方、いわゆる自衛隊輸送機の派遣といったような海外派遣、今防衛庁長官からも御答弁ございましたが、従来憲法上許されないと言われております海外派兵、これは、いわゆる海外派兵というのは武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣すること、かように一応定義されております。そういう海外派兵は、自衛のための最小限度を超えるものだ、必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されない、かように申し上げておりますが、今回の自衛隊輸送機の派遣、これは今申し上げたような海外派兵に当たるようなものではございません。武力行使の目的を持っておりませんし、そういう意味で、憲法九条に違反するものではない、かように考えております。
  80. 新村勝雄

    ○新村委員 了解はできませんけれども、次の問題をお伺いしたいと思います。  それは、総理はしばしばこの自衛隊派遣あるいは九十億ドルの問題についてその必要性を強調されておりますけれども、その大義名分というか、それについては必ずしも明らかではないというふうな印象を受けます。これは、湾岸戦争、総理は平和回復活動と言われておりますけれども、その多国籍軍の行動を支持し、援助をするという行為は、世界の平和を維持するという日本としての責任だとか、あるいは西側の一員としての貢献であるとか、あるいは国連の一員としての責任であるとか、あるいはあそこに油があるからだとかというようないろいろのお話がありました。しかし、これを要約して、最終的に国民の皆さんに対して訴えられる、この行動を理由づける、哲学と言うと大げさですけれども、そういうものをもっと明確に示していただかないと我々としても甚だ迷うわけですよ。そういう点でもう一回明確に、どういう理由でこれを行うのかということについてお伺いしたいと思います。
  81. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど来御議論で引用された憲法の条文に従って言えば、我々は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求しておるのであります。私どもが今後生存をしていかなきゃならぬ世界は、正義と秩序がやはり基調になった平和でなければなりません。その意味で、イラクが力によってクウェートを侵略、併合したという行為は、これは日本の立場からいっても、国際社会の大義の立場からいっても、これを認めるわけにはいきません。したがって、国連の決議は、今まではイデオロギーが後ろについていますから、冷戦時代には拒否権の発動なんかがあってどうしても平和を守るその機能というものが十分生かされておらなかった。それが、国連のたび重なる決議は、世界の人々も国連を通じて世界の平和を維持していきたいと思っておる、日本は国連加盟国でありますし……。  ただ、何回も御議論があるように、憲法の九条の後半に入ると、日本の国はそこへ力でもって応援に行くわけにはまいりませんから、でき得る限りの支援をするという立場に立って九十億ドルのことも決めたわけでありますけれども、あくまで正義と秩序を基調とした国際平和を日本は目指しておるのだということ、そして、簡単に、明確にはっきり言えとおっしゃれば、世界は力の強い者が力の弱い国を侵略し併合してはいけないんだよというこの一点をきちっと守る、これが大切なことだと私は思っておるのです。そのために日本としてできる限りの支援をしていこうと考えております。
  82. 新村勝雄

    ○新村委員 総理の御説明は、論理的というよりはむしろエモーショナルなあるいは一般的な道義的な点に重点を置いておられる。それから、国連の一員としての責任ということもありますけれども、その辺の点がどうもはっきりしないわけですね。──はっきりしないです、それは。ですから、理論的に。感情論が先に立っておるような気がするわけですよ。国連の一員ということであれば、これはまた別にお伺いしますけれども、国連がどういう手続でどういう要請を加盟国にしているかというようなことについても、これまた必ずしも明らかでないわけですから、そういう点で、イラクの侵略は人道上許せない、あるいは国際社会における行為としては許せない、だから応援するんだ、こういうことであったとすると、それはその間の関係が弱いような気がするわけですよ。論理必然性がそこにあるのかどうかということが疑われるわけですけれどもね。その点はいかがでしょう。
  83. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 冒頭にもはっきり申し上げましたように、日本国憲法は第九条に「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」すると書いてあります。私が求めたい平和は正義と秩序を基調とする国際平和であって、それに向かってでき得る限りの努力をしていくというのが憲法前文の宣言にも合致することであり、日本国憲法の平和主義、国際協調主義、これにも適合するものであると私は考えております。
  84. 渡部恒三

    渡部委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  85. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新村勝雄君。
  86. 新村勝雄

    ○新村委員 総理に対してお伺いいたしますが、まず、総理の憲法に対する考え方をお伺いしたいと思います。
  87. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 憲法に対する考え方、憲法を大切にして、憲法の中に書いてある平和主義、国際協調主義、基本的人権尊重主義、私はそういったものの趣旨を踏まえていきたいと考えております。
  88. 新村勝雄

    ○新村委員 戦後政治、これは自民党さんが一貫して担当されてまいりましたけれども、この一貫しての自民党さんの政治を拝見をいたしますと、一つは、憲法体制というものがありますね、憲法体制というものがありますけれども、それとは違った路線を追求をされ、政治を進めてこられたのではないかというような感じがするわけです。  そこで具体的にお伺いいたしますが、総理は自民党の総裁でいらっしゃるわけですね。自民党さんは、去る一月二十四日の党大会で大会決議をなさいました。その一項目に「立党以来の党是である自主憲法の制定について、引き続き広く国民の理解を深めるようつとめる。」と、こういうくだりがあるわけでありますけれども、ここに言われる自主憲法というのはどういう内容のものであり、どういう位置づけをされるものであるのか、伺いたいと思います。
  89. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、私は、日本国憲法の掲げております精神とか主張というものを守りながら、総理大臣としての職務を行っていきたいと考えております。  また、今お触れになりました党の問題につきましては、これは、憲法そのものの中にも憲法改正の手続が明記してあるわけでありますから、私の立場でここでこのことについて憶測でもって物を言うのは差し控えさせていただきますが、いろいろな立場に立って憲法のことについて研究し、検討をしておるという党の姿勢も、それはそれなりのものである、こう考えますが、どこをどう変えようとか、どこをどうするんだとか、そんなような具体的なことを言って決めておるわけではないと私は受けとめております。
  90. 新村勝雄

    ○新村委員 他党のお考えなり政策なりを云々ということではなくて、自由民主党は一貫して日本の政治を担当しておられますし、現在も政権党でいらっしゃるわけであります。その自由民主党の総裁である海部総理が、国民のというか、国会の信託を得て政治を担当しておられるということですから、そういう脈絡からすれば、自民党さんの政策は、これは当然総理の念頭に常にあるわけでありましょうし、その政策に従って政治をなさるわけであります。そういう関係からして、この自民党さんの構想しておられる憲法はどういうものであるかというようなことについて我々が関心を持つのは、これは当然であろうと思います。そういう意味でのお伺いであるわけでありますけれども、少なくとも、自民党総裁でいらっしゃる総理でありますから、「立党以来の党是」というふうにおっしゃっていますから、その自主憲法なるものの目指すもの、あるいはその構想なりというものは、これは総理は知っていらっしゃるはずでありますし、知っていなければおかしいわけでありますから、その点からお伺いしたいと思います。  それからまた、現在日本には日本国憲法がございますが、日本国憲法と自主憲法というのはどういう関係にあるのか、あるいはどういう位置づけをなさろうとしているのか、こういうことについてお伺いしたいと思います。
  91. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 最初から申し上げましたように、私は、日本国憲法の今掲げております平和主義とか基本的人権主義とか国際協調主義とか、そういったものを大切に考えていきたい。同時に、内閣総理大臣としては、この憲法を擁護する義務も持っておるわけでありますから、この憲法のもとででき得る限りのことをしていきたい、こう考えておるわけでございます。  また、自由民主党は自由民主党という政党でありますから、自由民主党の中でいろいろこの問題についての考え方を検討し議論することは、これはお互い政党人同士の立場に立って言いますと、例えば社会党の皆さんは、一体自衛隊を憲法違反とされるのか、日米安保条約を認められるのかどうか、党の大会でいつも御議論をなさっておることを承知しておりますが、それについてとやかく申し上げる気持ちはございません。同じように、自由民主党の中でも、いろいろな立場に立って議論をしておる、そういった場面はあろうと思いますけれども、それはやはり憲法の許しておるいろいろな範囲の中での政党の行動であろう、こう思っております。
  92. 新村勝雄

    ○新村委員 総理のおっしゃる、そのとおりでありますけれども、そしてまた、憲法を守るということと憲法そのものを研究あるいは検討することとは、これは別物であるということもよく存じておりますが、少なくとも、政権を担当しておる大政党が、立党以来の党是としてこういうものを考えていくんだ、あるいは追求するんだというふうにおっしゃっているわけでありますから、それについての一定の御見解が総裁としておありになるのではないか。それからまた、その自主憲法なるものと現在の日本国憲法との関係はどうであるのかということはいかがでしょう。
  93. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何回も繰り返しますが、私は、今の日本国憲法の掲げておる平和主義、国際協調主義、基本的人権尊重主義、そういったものなどをとらえますと、今海部内閣としてこの憲法を改正しなければならぬというようなことを、具体的な日程として考えておるわけでは決してございません。また、総理大臣として、憲法擁護義務も憲法の中に書かれておる、それはそのとおりでございます。守ってやってまいります。  ただ、自由民主党は、日本社会党でもそうでしょうけれども、政党ですから、政党の皆さんがこの憲法を絶えず読み返しながら、自分たちのものとして守っていこうという立場に立って、いろいろ視点が変われば解釈も変わってくることもあるかもしれません。けれども、どこをどう変えようかということまで自由民主党がそれを党で決めて発表しておるわけでもありません。ですから、そのことについては今のお尋ねに答えるのは、ここは総理大臣として答えろということになれば、毎回申し上げておりますように、私はこの憲法の主義や精神を大切に考えてやっております。そんなことでございます。
  94. 新村勝雄

    ○新村委員 それは憲法にも、公務員は憲法を守らなければいけないという明文がございます。そういう点で、総理が現行憲法を守らなければいけないということは、これは当然でありますし、これは公務員としても義務でありますから当然でありますけれども、やはり政党の総裁という一面は持っておりますし、政治家としての性格も持っていらっしゃる。自由民主党総裁としての総理大臣でありますから、その党の政策について一切関知しないということはないと思いますね。そういうことで、党の政策としてこういうことがある以上は、これに対して総裁としては、総理としてではなくて、総裁としてどういうお考えであるのかということは、これは表明されてしかるべきではないか。  一方、総理としては、これは当然護憲の立場、憲法を守るという立場、これは微動だもしてはいけないわけでありますけれども、そういう点ではいかがですか。
  95. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 また先ほどの答弁の繰り返しになりますが、ここは内閣総理大臣としてお呼び出しをいただき、行政府の長として御質問に答えておるわけであります。また、私が持っておりますもう一つの自由民主党総裁という立場で、党の政策に我関せずかとおっしゃれば、そうではございません。けれども、その自由民主党も、現実の具体的な日程としてここをこう変えるとかこれをこうするということを議論しておるわけでもありませんし、決めたわけでもございません。総裁としての考えを言えと言われれば、私のところはまだそういったことを具体的に議論しておりませんから、研究を進めたり議論を党内ですることは、これは憲法そのものにも極端なことを言えば法律的には憲法改正手続というものが書いてあるわけでありますから、国民的世論が沸騰してきて、いろんなことが起こって、そしてここは変えた方がいいではないかと国民全体の声が高まってきたと思ったときは、政府・与党はそれは責任を持ってそれを吸い上げて、国会の皆さんとまた御議論をすることになろうと思いますけれども、そこまでとても到達しておらない段階でございますから、私は総理大臣としてそのようなことを今全く考えておらぬということを申し上げた次第でございます。
  96. 新村勝雄

    ○新村委員 自由民主党として、立党以来の党是というふうにおっしゃっているわけです。そうしますと、政権党としての自民党さんにお伺いするわけでありますが、立党以来の党是として改憲を志向されておるわけですよね。この点はどうでしょうか、改憲を志向されているということは。
  97. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 改憲を志向しておるわけではございません。憲法についていろいろ調査研究、勉強しておることはそうでございますけれども。改憲を志向するとおっしゃいますが、どこをどのように変えようかというようなことを自民党で決めたわけでもないし、そういったことは政府の立場では申し上げるべきことでもございません。政府としてはそのような考えは持っておらぬということでございます。
  98. 新村勝雄

    ○新村委員 総理御自身も、社会党の中の議論をしばしば引用なさっておりますよね。これは、政党間の政策なり、あるいは政党の基本理念なりを論議をすることは無意義ではないと思います。  そういう点で、自主憲法という言葉をお使いになっていますよね、自主憲法。ですから、現在の日本国憲法は自主憲法ではないのかどうかということについての御認識はいかがですか。
  99. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現在の日本国憲法は、国会の定める正式の手続に従ってでき上がった日本国憲法でございます。憲法と言われるものは日本国においてはこれ一つである、私はこう考えております。
  100. 新村勝雄

    ○新村委員 そうすると、現在の現行の日本国憲法、これも自主憲法であるというふうに考えてよろしいですか。
  101. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 突然の御質問で、しかも言葉の持つ定義の意味がどのようなことになるのかは、後ほど必要ならば専門家に答えさせますが、自主憲法の自主というもの、自主的というもの、日本国憲法も憲法の手続に従って、そして新しい憲法をつくるということで国会の議を経てでき上がっておるわけでありますから、だから、自主的に国会がこのものを審議して決めたものであるという角度に視点を当てれば、これも自主的に決めた憲法でございますけれども、一々自主的に決めた憲法と言わずに、日本国憲法、こう言えば、日本国民を代表する議会で決まったものだというふうにごく自然に受け取られるのではないでしょうか。
  102. 新村勝雄

    ○新村委員 自主憲法という言葉は、これは法律用語であるのか、あるいは何用語であるかはわかりません。しかし、自民党さんは自主憲法という言葉を使っていらっしゃるわけですよね。自主憲法という言葉を使っていらっしゃるからには、現在の憲法に対置するものとしての自主憲法というふうに考えざるを得ないんですがね。その点はいかがですか。
  103. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、必ずしもそうではないんじゃないか、重ね絵のように合わせてみたら一緒のところが多い、ほとんど一緒だということではないでしょうか。これは国会の手続で決めた日本国憲法でありますし、それから今後どんなことを考えるにしても、このきちっとした国会の手続を通じていかなければならぬわけでありますから、自主憲法とかあるいは日本国憲法とか言いますけれども、それはやはりみんな国会で議論して決めるものというのはそういうことになると思います。それ以外のことはちょっと私のあれでは考えられませんけれども。
  104. 新村勝雄

    ○新村委員 自主憲法という言葉を使っていらっしゃるわけですね。ですから、その自主憲法という概念は、何かの概念に対置をするものでなければいけないわけですよ。ですから、日本国憲法に対置をするものとしての自主憲法であるのかどうかと。現行憲法も自主憲法であるということであれば、殊さら自主憲法という言葉をお使いになる必要はないわけですよね。そういう点で、やはりこの自主憲法という言葉をお使いになるからには、現行憲法とは違った構想あるいは違った概念としての位置づけではないかというふうに考えますけれども、いかがですか。
  105. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本国憲法も、私の判断からお答えすれば、日本の国会でまさに自主的に御議論をされて成立をしておるものでありますから、あえて自主憲法と言わないから日本国憲法というのと違う憲法か何かまたあるのかというような角度からのお尋ねであるとするなれば、私はそうではないと思います。日本の自主的な意思で、そして自主的な討議を通じて決められたものが日本国憲法であります。これに対置をしてかわるものがどうのこうのという具体的なものまでは想定いたしておりませんし、もう一回申し上げますが、海部内閣においてはこの憲法を、平和主義も国際協調主義も基本的人権尊重主義も、これは大切にしていこうということで対処しておりますし、憲法を擁護する義務を、九十九条でしたか、我々は受けておるわけでありますから、憲法の中においても、この精神、この考え方を貫いてまいります。
  106. 新村勝雄

    ○新村委員 自民党さんの四十年の政治を拝見をしますと、そしてまたその間の党の論議なんかを拝聴しますと、何かこの現行憲法に飽き足らない部分がある、それを改めて、いわゆる自主的な憲法をつくるのが自民党さんの党是であり大方針であるというふうに受けとめられておりますがね、実際に。  それで、現行憲法のどういうところが不十分なのか、あるいは不満なのか、こういうことについては既にもう論議を深められて、一定の御見解を持っていらっしゃるのではないかというふうに我我は考えるわけです。そういう点ではいかがでしょうか。
  107. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 自由民主党の中に憲法調査会というのがございまして、そこでいろいろな研究をしたり新憲法発足当時の議論に振り返って御議論があったということはございますけれども、何度も申し上げますように、ただいまのところ、一定の目的意識を持って具体的な代案を用意して、これが自主憲法だと言っておるような動きはないものと、このように御理解をいただいておけばよろしかろうと思います。     〔委員長退席、近藤(鉄)委員長代理着席〕
  108. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、総裁たる総理にお伺いしますけれども、総理御自身としても、それから同時にまた自由民主党としても、現行憲法に不十分な点、不満な点は認められない、現行憲法がすなわち自主憲法である、自民党が言っておられる自主憲法イコール日本国憲法であるという御認識ですか。
  109. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本国憲法というものが我我の守るべき、そして持っておる憲法であります。同時に、その憲法の中にはいろいろな立場、いろいろな事態、そういったものに対するいろいろな問題が掲げてあるわけでありますから、絶えずそれを読み、それを検討し研究していくことは、これは当然のことだろうと私も思っておりますし、率直に申し上げて、何回もこの委員会でも言っておりますように、日本国憲法には「恒久の平和を念願し、」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と宣言がありますし、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、」こういった国際協調主義の法則というのは、私はもっともっと、世界に向かって宣言した理念であるなれば、我々政治の場においてこれを推し進めていかなきゃならぬということも考えておりますし、日本国民は国家の名誉にかけてこの崇高な理念と目的を達成することを誓うと、こう書いてあるわけです。  私は、この平和主義とか国際協調主義というものは大切にしていきたいと先ほど来何度も申し上げてまいりました。したがいまして、この憲法に掲げてあることあるいは今申し上げた前文の理念、こういったものはさらに前進させていくべきものであると固く信じておりますし、同時に内閣としては、これらの問題について、この憲法を、国会でこれは決めてもらった憲法でありますから、その中には内閣はこれを擁護していこう、また、ただ擁護せよと書いてあるから擁護するというのではなくて、今申し上げたように、いろいろ我々が大切にしたい崇高な理念だ、合意しておる精神がたくさん出ておりますから、これを守り、そしてこのもとで政治を進めていく、こういう決意に変わりございません。
  110. 新村勝雄

    ○新村委員 今総理がおっしゃったくだり、これはまさに人類普遍の原理だと思います。ただし、そこはそこで評価をするけれども、ほかの点において不十分な点があるという響きがあるようでありますけれども、それはどうでしょうか。     〔近藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  111. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 憲法を改正しようということを具体的に考えてもおりませんし、それを提案しようなんという気持ちも毛頭ございません。
  112. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、これは改めて、他党のことを申し上げては失礼かもしれませんけれども、これは国政に重要な関係があるから申し上げるんですけれども、改めてこの明文をもって決議をされているわけですね。そうなりますと、やはりこれは自民党さんは改憲志向ではないか、自主憲法というのは現行憲法に対置をする一つの構想として、あるいは政治思想としてそこにあるんではないか、あるいはそれを追求していらっしゃるのではないかという考えを持たざるを得ないわけですがね。そういう点で、正直なところをお伺いしたいと思います。
  113. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 自民党と社会党の政策が非常にすれ違う点があるということはこれは事実でございますけれども、政府がそのことについて一々云々するのはいかがかという感じがいたします。  ただ、最初に申し上げましたように、憲法そのものにも憲法が改正されるときの手続もきちっと載っておるわけでありますから、憲法は絶対改正してはいけないものなんだということを言い切ってしまうのも、これは憲法に書いてある改正の手続と、これは純法理論的な理屈になりますけれども、まさに今お尋ねがありますから、理屈になりますけれども、そういった意味でいろいろな面の問題について研究、勉強、調査することは、これは憲法の禁止しているところではないと私は思うのです。ただ、どのようなところをどうするかというお尋ねになれば、そのような準備やそのような考え方を具体的に持っておりませんということをお答えをしておるわけでございます。
  114. 新村勝雄

    ○新村委員 それはそのとおりだと思いますよね。例えば明治憲法は不磨の大典と言われましたね。不磨の大典というのは、未来永劫にあの憲法を守っていくんだという思想だと思いますけれども、その不磨の大典が五十五年で崩れたという事実もあります。それはこの世に未来永劫というものはあり得ないと思いますよ。だから、少なくとも自主憲法ということを改めて軸にして、しかもそれを党是にしていらっしゃるというところに、やはり現行憲法に対する批判なりあるいは問題点なりを指摘をし、そして時期が来たら改憲をしていこう、自主憲法をつくっていこうという志向、そういう追求の姿勢は、これはなけりゃおかしいわけですよね。そうおっしゃっているわけですから。しかし、総理にこれ以上お伺いしても今のところでは前進がないようでありますからこれでやめますけれども、やはり自民党さんは自主憲法を志向していらっしゃる、現行憲法にかわる構想を今追求していらっしゃるという事実は、これはそれなりに認めざるを得ないし、考えざるを得ないと思います。  次の問題でありますが、今問題になっております湾岸の問題でありますが、安保理決議六七八に基づいて多国籍軍が武力の行使を今進めているわけでありますが、決議六七八に基づくこの各国の行動、これは今のところでは各国の主権の発動、その各国間の連帯、気持ちの上での連帯はあるでしょうけれども、国際法上あるいは法的にあるいは国際連合憲章、チャーターの上での、これを一つに束ねる一体性、そういった理論的な根拠があるのでしょうか。
  115. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  多国籍軍の性格につきましてはこれまでいろいろ御答弁申し上げる機会がございましたけれども、また、昨年の秋に多国籍軍の性格につきまして政府統一見解をお示しした経緯もございます。  長くなるといけませんので手短に御答弁申し上げたいと思いますが、御承知のとおり多国籍軍は、イラクのクウェート侵略を踏まえまして国連安保理で六百六十号決議以来一連の決議が採択されたわけでございます。そして、国連加盟国の一部でございますが、これらの一連の安保理決議、イラクの撤退要求を含むものでございますが、これに実効性を与えるために湾岸地域に展開したというものでございまして、言いかえれば、国連憲章四十二条、四十三条に基づく、憲章が当初予定していたような国連軍ではございませんけれども、しかしながら加盟国が協力してイラクの侵略を排除するというための共同努力の一環といたしまして展開されているものでございます。そしてこの多国籍軍の行動は、湾岸地域の平和と安全の回復に積極的に貢献するものでございまして、国際の平和と安全を確保するという国連の目的に合致したものというふうに考えております。
  116. 新村勝雄

    ○新村委員 六七八を読んでみますと、クウェート及びそれに協力している諸国に対してあらゆる手段を認めるあるいは許すというようなことを言っておりますが、武力行使を含むあらゆる手段、それが及ぶ地域なり手段なりについては必ずしも明らかでないと思いますが、そういう点ではいかがでしょうか。
  117. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生より御指摘のとおり、六七八号におきましては、武力行使を含むいわゆる必要な手段、必要な措置というものが及ぶ地理的な範囲でございますとかあるいは武力行使の態様でございますとかそういうものにつきまして、決議そのものにおいての限定と申しますか具体的な規定はないわけでございます。  ただ、これも御案内のとおりでございますけれども、この六七八号が採択された目的というものは、第二項に示されているとおり、イラクがことしの一月十五日以前にこれまでの諸決議を完全に実施しない限り、クウェート政府に協力している加盟国に対しまして、安保理決議六百六十及びすべての累次の関連諸決議を堅持かつ実施し、同地域における国際の平和と安全を回復するために、あらゆる必要な手段をとる権限を与えるということでございますので、この目的による一つの限定というものがあると思います。  また、武力行使の手段という点につきましては、ここには何ら限定はございませんけれども、ただ、その大前提といたしまして、当然にこれは国際法上許された手段に限られるということであろうと考えます。具体的に一例を挙げますれば、例えば国際法上禁ぜられておりますところの化学兵器を使うというようなことは許されない。したがいまして、大前提に国際法があるというふうに申し上げて差し支えないと思います。
  118. 新村勝雄

    ○新村委員 安保理の決議、それからそれに基づいて行動している多国籍軍があるわけですが、その間における、安保理は多国籍軍に対してそれを認めたわけですから、その点では多国籍軍は満場一致で認められたということで正当性を持っているということは言えると思いますが、一方、安保理とそれから多国籍軍との関係ですね、武力行使というかあらゆる手段を認めただけであって、あとは、指揮権なりあるいは武力行使の過程において指示をするとかあるいは停戦を命令するとか、こういう権限があるのかないのかはどうでしょうか。
  119. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま先生から御指摘ございましたように、安保理六七八号は、加盟諸国に対しまして武力行使を含むあらゆる必要な手段をとる権限を与えたものでございます。その意味で、安保理の権威のもとで多国籍軍が行動しているということでございます。  しからば、その他の側面におきまして、安保理と現在展開して行動しております多国籍軍との関係についての御指摘でございますけれども、この点につきましては、まず安保理決議六七八号の四項におきまして、「関係する国家に対し、この決議の主文二及び主文三に従って取られた行動の進捗状況について定期的に安保理に報告するよう要請する。」ということを述べております。また、第五項におきましては「この問題を引き続き審議することを決定する。」というふうに述べておりまして、したがいまして、個々の多国籍軍の軍事的な行動について一々指示をするというものではないかもしれませんが、安保理としては引き続きこの問題を取り上げていく、そして進捗状況について報告を受けるという関係になっておるわけでございます。
  120. 新村勝雄

    ○新村委員 その間の関係が今のところあいまいというと適当でないかもしれませんが、必ずしも確立されていないような気がするわけです。いわゆるチャーターの中に規定しておる軍事参謀委員会ができればこれは事情が違ってくるわけでしょうが、そうでない限りは、安保理としてはいろいろなすべての手段を行使することを許すということだけであって、あとは、参加している各国の軍隊はその国の主権に基づいて、その国の参謀本部あるいは統参本部の指示に従って動く、こういうことになるわけだと思うのですが、そうした場合に、安保理の意思とそれから武力行使に従事をしている各軍の行動との関係、これは全く無統制、無統制というか、これをコントロールするシステムにはなっていないということがちょっと不安になるわけですけれども、そういった点についてはこれからどういう合理的な対処の仕方があるのかですが、その点はいかがでしょうか。
  121. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この点につきましても、ただいま先生より御指摘ございましたように、国連憲章第四十七条に規定された軍事参謀委員会がこの指揮の責任をとるということにはなっておらない次第でございます。先ほどもちょっと触れましたけれども、多国籍軍は、憲章で当初考えられていたようないわゆる国連軍ではございませんので、この軍事参謀委員会の指揮に服するというような体制にはなっていないのは事実でございます。したがいまして、多国籍軍を構成する個々の国家の部隊は、それぞれの本国の指揮下にあるわけでございます。恐らくはその各国の間の連絡調整ということはあると思いますけれども、国際連合の指揮下にあるという関係ではないわけでございます。  ただ、先ほどもちょっと触れましたように、この安保理決議六百七十八号におきましては、武力行使を含む必要な措置をとる権限を各国に与えたのみならず、この進捗状況についての定期的な報告を受けるという体制になっておりますし、また安保理は、国際の平和と安全の維持につきまして主要な責任を有する国連の機関でございますから、いつにてもこの問題をまた必要があれば取り上げることができるという形になっているわけでございます。
  122. 新村勝雄

    ○新村委員 続いてですが、昨夜ですかきのうですか、ゴルバチョフ・アジズ会談があったようでありますけれども、この問題、この会談について外務省は何らかの情報をお持ちですか。また、この会談がどういうことを意味するかということについての外務省としての評価なり見通しなりはお持ちですか。
  123. 中山太郎

    ○中山国務大臣 昨日行われましたアジズ・イラク外相とゴルバチョフ大統領の会談につきまして、ゴルバチョフ大統領からアジズ外相に提議された政治的解決のための広範な計画案というものは、アジズ外相がこれを本国に持ち帰っている最中でございまして、内容については一切公表をされておりません。
  124. 新村勝雄

    ○新村委員 この委員会でも今までたび重なって、日本政府の主体的な外交活動、特に停戦、イラクの撤退、完全撤退を目指しての日本政府の役割、行動を期待する声が強かったわけですけれども、そういう可能性は今のところお持ちですか。
  125. 中山太郎

    ○中山国務大臣 日本政府といたしましては、数度にわたる安保理の決議に基づきまして、これの完全実施をイラク政府に強く要請をしてきたという経過がございます。八月二日以来、海部首相は、アンマンにおきましてラマダン副首相にも直接日本政府の意思をお告げになっておりますし、また最近におきましては、国連事務総長を通じて、たしかこの一月の十三日でございましたか、イラクを訪問するデクエヤル事務総長に親書を託されておられます。  そういうことで、遂に残念ながら一月十五日の日限が切れまして、十七日から戦が始まるということになったわけでありますけれども、この平和回復活動も、日本政府としては、一日も早くイラクがこの安保理の決議六百七十八を完全実施してやっていただきたいということを期待をいたしておりますが、今回のイラク政府の、イラク革命評議会の声明文によりますと、初めて安保理決議六百六十に触れてこられたということでございまして、私どもは新しい事態の進展を注目しているところでございます。
  126. 新村勝雄

    ○新村委員 外務大臣にお願い、あるいは期待を申し上げたいのですが、ただ傍観とは言いませんけれども、事態をただ眺めているだけとは言いませんけれども、日本政府として何かアクションを起こす余地あるいは可能性がないのかどうかということなんですね。  それで、確かに安保理に基づいて多国籍軍が行動を起こす、安保理の決定を受けて起こすというその時点までは、確かにこれは多国籍軍に正当性があった。ないとは言えないと思います、あったと思いますけれども、その正当性なるものは、やはりこの戦闘が続き、その戦闘が悲惨なものになるに従って、その正当性が色あせていくということも、これは事実だと思います。そういったことを考えた場合に、何とかして休戦ができないのか。それはイラクの横暴さを認めることではなくて、やはりイラクを撤退させるための、そのための休戦を含んだあらゆる手段、これが追求できないのかどうかということを我々は考えるわけでありますが、それと同時に、外務省あるいは日本政府が、イラクを完全撤退をさせるということを前提とした休戦なりあるいは終戦なりに持っていく、そのアクションを主体的に起こせないか、あるいはその可能性はないかということについてはいかがでしょう。
  127. 中山太郎

    ○中山国務大臣 日本政府は、この十六日、二月の十六日午前中に開催されました安全保障理事会で、安保理事国ではございませんが、発言を求めて、次のように発言をいたしております。  日本政府は、クウェートからの撤退の用意があるというイラク声明に接したが、これにはさまざまな条件が付されており、イラクの真意を慎重に見きわめる必要があると考えている。我が国は、地域の正義と平和を回復するために、イラクのクウェートからの撤退をイラク指導者に働きかけてきました。十三日には、中山外務大臣より在京イラク大使にこの旨を強く要請をしておる。我が国は、安保理決議六百七十八に基づいてとられた国連加盟国の武力行使に対し、確固たる支持を表明。二十億米ドルの援助のほか、多国籍軍に対し、昨年二十億ドルの拠出を行い、本年一月、九十億ドルの追加支援を拠出することとした。  同安保理会合において、我が国も含め大多数の国が、現在の武力衝突を早期に終結させるために、安保理決議に沿ったイラクのクウェートからの早期撤退を求めるものであるということを、日本政府として安保理で各国の前で演説をしたわけでございます。  私どもは、今回のゴルバチョフ大統領の政治的解決に向けての提案というもの、しかしこの基礎をなすものがございます。それは、委員も御存じのように、先日行われました米ソの外相会談におきまして、「両国外相は、イラクがクウェイトから撤退する旨明白なコミットメントを行えば、戦闘行為の停止が可能であると引き続き信じる。両国外相はまた、かかるコミットメントは安保理諸決議の完全履行につながる即時かつ具体的な行動によって裏付けられねばならないと信じる。」ということを米ソ両国の外務大臣が共同コミュニケを出してアピールしているわけでございますから、ゴルバチョフ大統領の政治的解決へ向けての提案というもの、しかしその中にあるもの、この基礎、基本には、ここにある両国外相の共同コミットメントというものがあるわけでございますから、私どもは、イラク政府がこの両国の共同声明を踏まえ、また安保理の決議も踏まえて、この撤退ということを即時実現、実行するということによって事態は急転回をするものと期待をいたしております。
  128. 新村勝雄

    ○新村委員 総理、先日プリマコフ氏と会談をされたというふうに聞いておりますけれども、その会談の内容は、もちろんそれは公表はできないでしょうが、その印象としてはどういうことですか。
  129. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 プリマコフ特使が私に言われたことは、原則に従って一日も早く武力行使が終わるようにしたい、というのは、今これ以上進んでいくと新しい場面が出てきて、たくさんの犠牲者がこの上出ることは耐えられないからということを冒頭言われましたので、私からも、それについては全く同じ考えでありますし、同時にまた、化学兵器だとか大量破壊兵器、核兵器、そういったものが使われることになると戦争の質が変わってくる、こういったことも非常に私は懸念している、同時に、イラクに対して、なぜイスラエルにあのような無差別なミサイル攻撃をするのか、今はイスラエルがじっと自制しておるから、私はそれは高く評価しているのだ、ここも早くやめなければ戦争の質が変わってくるようなことになるのは決して望ましいことではないので、きょうまで三回もイラクにも直接行き、そして影響力を持っているプリマコフさん、あなたにさらに特にお願いしたいことは、国連決議の前提を踏まえた平和の一刻も早い到来だから、フセイン大統領を説得してほしい、またその努力は私は多とするというようなことを私から申し上げました。そしてプリマコフさんも、そういう角度、そういう形でお話をしてきたということでございました。
  130. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、今ソ連の仲介の動き等もありますね。そういった中で、日本政府として何かやる気はないのかということなんですね。外務大臣の御説明で、確かに国連で発言をしたというようなこともおっしゃっておりますが、日本政府としてのアクションを起こす予定なり、可能性なり、その余地がないのかどうかということなんですけれども、いかがでしょうか。
  131. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな積み重ねもきょうまで努力をしてまいりましたし、またそれぞれのルートを使って日本のそういった停戦への希望、一刻も早い平和回復への願いというものは、これは伝え続けておりますし、それから外交のことでありますから、今後何月何日にどこへだれを出してということまではちょっと御勘弁いただきますけれども、きょうまでもいろいろなつながりでやって、例えば私とラマダン副首相との政治的対話の継続を、私とラマダンさんが直接会えないけれども、継続のためにこういうことをしようとか、あるいは私自身が手紙を書いてサダム・フセイン大統領に直接出すとか、いろいろなこともやってまいりましたし、また、そのほかの段階でも、出先の大使館を使ったりあるいは人脈を使ったりして、我々の考え方は十分過ぎるほど届くように努力をいたしております。
  132. 新村勝雄

    ○新村委員 次に、別の問題でありますが、厚生省にお伺いしますが、時間がありませんから続けてやりますので、御答弁をいただきたいと思っております。  湾岸戦争によって発生した原油の流出、あるいは爆撃等によって発生した大規模な火災により深刻な環境問題が起きています。また、今回の石油地帯における戦争の発生は、第三の石油危機の懸念を世界的に巻き起こしました。これらのことを考えますと、我が国は環境保全や資源エネルギーの有効利用などのさまざまな分野で世界に貢献していくとともに、国内におきましても、資源エネルギーの循環利用を図り、その産業構造を資源循環型、環境保全型に転換するとともに、石油資源に過度に頼らない社会をつくっていかなければなりません。そのためには、使い捨てをしない、資源エネルギーの有効利用を図る、各種原料や資源の再生利用を図る、廃棄物の発生を抑制するなどの施策を具体的に実行していかなければなりません。場合によっては、経済の原則を超えても環境保全型の生活と産業の仕組みをつくり、地球にやさしい社会を建設をしていかなければならないと考えます。  このような社会の建設に当たっては、以上のような環境保全の理念に基づきまして、新たな環境行政を構築して、総合的な施策が行われる必要があるかと思われます。  そこで、総理に、このような環境保全、環境型の社会に対する所信をお聞かせいただきたいと思います。  問い二。次に、このような環境保全型の社会の実現に当たっては、特にいわゆる適正処理困難物、危険有害廃棄物につきましては、公的な、かつ一貫した管理と処理が行われるべきであり、経済ベースで物事が行われるべきではないと考えます。去る二月十七日に、新聞報道によりますと、生活環境審議会の答申の中で提言されていた適正処理困難物の事業者による引き取り及び回収の義務づけが業界等の反対により廃棄物処理法の改正案から削除され、厚生大臣からの協力要請というレベルにとどまったとされております。  さて、このような状況で、例えば自動車、家電製品、建設廃材等につきまして、国民や地方自治体が本当に安心できる処理やリサイクルが行われるのでしょうか。私は甚だ疑問であると言わざるを得ません。厚生大臣のお考えをお聞きしたいと思います。  以上のような廃棄物問題は、湾岸戦争とともに国民の最大関心事であります。しかも、廃棄物の再資源化、ひいては環境型社会の形成のためには、事業者のみならず一般市民の参加と協力が必要不可欠であります。したがって、今国会における廃棄物及び資源の再利用関連の立法に当たっては、参考人、公述人を多数招くとともに、現地調査などを実施し、国民に開かれた審議を積極的に積み重ねるべきであると考えます。以上のような審議の方法について総理のお考えをお伺いをしたいと思います。短にお願いします。
  133. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答え申し上げます。  委員は地方行政の専門家でもいらっしゃるわけで、こういう廃棄物の処理問題につきましては、いろいろと御苦労されておられたこともよく承知しております。  最近は、環境汚染の問題、さらにまた廃棄物が非常に量的にもふえてまいりまして、もう三億六千万トン、それから家庭の廃棄物が四千八百三十九万トンというような数字になってまいりまして、これはとても放置できないということで、何とかしなきゃならないということで我々も関係官庁と協議をいたしておりまして、そのためにいろいろ考えられますことは、やはり廃棄物が出る段階でこれを少なくしていく努力が必要であろうということが一つでございますし、また次に、出てまいりますものを分別収集するということで分けていかなきゃならない、その中でまた使えるものはこれはリサイクルに持っていくということ。それからさらに、今おっしゃいましたように、処理が困難なもの、あるいは危険なもの、こういったものをどういうように扱うかということにつきまして特別の規制が現在ございませんので、これらの問題につきましてどういうような形で規制を加え、そしてまた適正な処理を行うのがよろしいかということは、今寄り寄り関係官庁と相談しているところでございます。まとまりましたら、これは法案といたしまして御審議賜りたいと思っております。  以上でございます。
  134. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろお述べになりました環境の問題に関しましては、私どもやはり経済成長一辺倒で来なければならなかった戦後の一時期と比べて、今日は人間生活というものを大切にしていかなきゃならぬ、先生のお言葉をかりると地球にやさしい環境というのですか、そういうように環境問題というものは人間生活というものを大切にしていくという面からも考えていかなきゃならぬ重要な問題であって、出てまいりますごみの種類もこのごろだんだん変わってきておるわけでございます。そういったものについては、厚生大臣も答弁しておりますように、必要ならば法的な問題も加え、行政指導等にも一層心を寄せて、人間の生活に対して環境との間にどのようなことをしていったらいいか、特に廃棄物処理の問題等については十全の心配りをして政策努力をしていかなければならぬ、こう考えております。
  135. 新村勝雄

    ○新村委員 終わります。
  136. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、和田静夫君から関連質疑の申し出があります。新村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。和田静夫君。
  137. 和田静夫

    和田(静)委員 きょうは、統一見解をいただきました。そこで、この統一見解に基づいて若干の質問をいたします。  まず、政府専用機を自衛隊が運航管理することを決めたようでありますが、これは百条の五に基づいて運用されるのですか。それとも自衛隊法改正を行うのですか。
  138. 池田行彦

    ○池田国務大臣 自衛隊輸送機による避難民輸送は、自衛隊法百条の五に基づきまして今般定めました政令、それに基づいて行う予定でございます。つまり、百条の五に基づいて実施する予定でございます。
  139. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 政府専用機、十一月に入ってくる予定であります。この政府専用機の使途、目的、管理、運用その他の面については広範な検討が要しますので、今のところはまだ何も決まっておりません。これは検討委員会をつくりまして、そこでこれから検討を進めていく、こういうことです。
  140. 和田静夫

    和田(静)委員 防衛庁長官のは大変越権的な答弁であったと、そこだけ問題にすればまたこの委員会問題になるぐらいですが、後へ進めます。  二つ目はこの九十億ドルの支援で、総理、いろいろお話があるのですが、戦後の復興にも用いるという理由で、仮にイラクがクウェートから撤退した場合にも拠出するというふうに言われていますけれども、復興の対象というのは、イラクを含む湾岸危機によるまたは湾岸戦争による影響をこうむった国すべてということに理解をしておいてよろしいですか。
  141. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 あくまで平和回復活動のためにと私は言い続けてきておりますが、平和が回復し、あの地域の平和が安定的に推移するためには、やはり経済の復興というか、あるいは再生といいますか、そういったものに充当しなければならぬわけでありますので、先般の武藤委員の御質疑のときにも、そういったものに充当するつもりでありますと、一日も早く終わることを願っておりますと、こう申し上げました。  それから、周辺国はどこかとおっしゃいますと、今まで最初の周辺国対応では三つの国にいたしたことは御承知のとおりでありますけれども、さらに私は、この影響を直接受けるアジアの国々からもそういった希望や声が上がってきておるということも耳にいたしております。それから、そういったことを考えますと、この湾岸の問題において影響を受ける周辺国というのは今までのところは三つでございました。今後のことについては、それはきちっともう一回いろいろ検討をしなきゃならぬことになる、こう思っております。
  142. 和田静夫

    和田(静)委員 この八日の質問の際にも私触れましたが、政府は今度の戦争を国際社会の問題ととらえられていますね。そうであれば、もはや多国籍軍の支援を湾岸平和基金を経由して行う必要性というのは私は全くないんだろうというふうに主張をずっとしているわけですが、日本が独自にそれぞれの国を支援するか、もしくは国連に基金を設けるべきであると。また政府も当初はそういう方針をお持ちになった時期があるわけでありますから、十分に私たちの意見というのはこの機会に取り入れてお考えを願いたいなと思っているところです。また、戦後を考えれば、日本としては今後も相当の資金援助が必要となってくるでしょう。そういう場合に、GCCのような一方の当事国に資金を拠出した場合には、この戦争が終わった、その残りの分をこの復興用に充てるというふうに言ってみたところで、イラク寄りであった国には支出されないというようなことになりかねないわけです。また、今後多額な拠出が必要となった場合に、国民の理解を得るためには、その使途をはっきりさせておくことはこれは必要なことだと私は思うのですね。このことも主張いたしました。  そういうことをずっと考えてみますと、この日本の拠出というのは、湾岸平和基金でなくて、日本独自の判断で今後の要請に対して支出をしていくべきだというふうに私は今も思っておりますけれども、総理、いかがでしょう。
  143. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 イラクのああいった突然の侵略行為が起こるまでは全部、ほとんどと言ってもいいほどまず二国間で経済協力や援助はしてまいりました。その相手にイラクも含まれておったことは委員も御承知のとおりであります。今日大体七千億円程度の債権債務関係が残っておるわけでありますから。ところが、そういう二国間の関係でやってきたのと、それは普通の経済協力でありましたけれども、ああいった突然の侵略行為があって、国連決議があって、あの地域の平和を回復するというために拠出するわけでありましたので、その目的に一番ふさわしく使ってくれるような機構、合目的的に出したといいますか、それがGCCというものに出して、そこでいろいろと日本の意向も反映して使われるようにしてきたわけであります。  これは、このことが一たん片ついてしまいますと、その先のことについては、どれぐらいの資金がどこから要請があって、どうなるかということもまだ不透明な点もあるわけでありますから、とにかく今回の九十億ドルはそういった意味であの地域の平和回復とその後の安定と経済の立て直し、復興という言葉でも結構です、のために出したのですから、それはGCCで使ってもらうように政府としては考えておるところでございます。  先のことはまたいろいろと検討をさせていただきます。
  144. 和田静夫

    和田(静)委員 きょうは実は、これはどこの手違いか知りませんけれども、政府が出した私に対する統一見解の表の部分だけしか配られていませんから、これは論議をするのにわかりにくい点があるかもしれませんが、実はこの後段の部分がかなり重要なんですよ。「この趣旨は、昭和五六年五月二九日付け政府答弁書をはじめ」云々というところですね。この答弁書というのは大変問題、私は当時参議院にいましたから、これは参議院議員が受け取った答弁書ですからよくこのことは知っています。  私は今の湾岸で多国籍軍が、安保理決議に基づいて行動しているのかもしれませんが、その指揮を軍事参謀委員会がとっているわけでもありませんし、安全保障理事会の監視のもとで行われているわけでもない、国連事務総長の全くあずかり知らぬところでアメリカ軍が中心となって作戦が行われている、これは周知の事実でありますが、こういうような国連としての歯どめのきかない軍隊はおよそ国連軍と呼ぶことができないということは、これは明らかになっているところです。そこで、このことは戦争開始が安保理によって決定されたわけではなくて、ここ一ヵ月の間に戦争をめぐっての安保理事会がほとんど開かれない状態であることもこれも明らかであります。そうすると、多国籍軍が国連軍ではなく、参加する各国の主権のもとに活動している軍隊である以上、これに対する資金援助は、たとえ後方支援であっても戦争協力であって憲法上重大な問題があるとして、私は政府統一見解を求めてきたわけです。ところが、この出てきた統一見解というのは、これは過去の政府答弁書の、それも費用分担を仮定の問題とした、そして一般論で述べた、それを出ていないのですね。それを引っ張ってきただけなんですよ。そこで述べていることは、単に費用を支出することは国家による実力の行使ではない云々などという、常識では考えられない論理であります。  私は、もうきょうは時間がありませんからたくさんの論議をいたしませんが、一般質問に譲るとしても、例えば北大西洋条約の第五条を見てみても、「北大西洋地域の安全を回復し及び維持するためにその必要と認める行動」わざわざ括弧して「(兵力の使用を含む。)」こうなっているわけであります。それから一方のワルシャワ条約の第四条を見てみましたが、「その必要と認めるすべての手段」これも括弧して「(武力の行使を含む。)により即時の援助を与えなければならない。」こうなっているわけですね。この二つの条約からもわかりますように、集団的自衛権の行使というのは、武力の行使に限らず、必要と認められる行動を行うことはすべてその範疇に入る、これはもう明確であります。ということは、政府といたしましては多国籍軍への資金援助が必要であるということで九十億ドルを拠出するのでしょうから、これは立派な集団的自衛権の行使ということになるわけであります。  これだけでもこの統一見解がいかに粗略なものであるかということがわかるのでありますが、もう一つ、私は日本という国がどういう国かという重大な点があるのじゃないかと思っているのです。確かに、単に費用を支出することは武力の行使とは違うから云々と言えば何か何となく説得力があるように思われるのでありますが、この統一見解にはそうは書いていないのですね。単に費用を支出するということは実力の行使には当たらないから云々と書いているわけであります。確かに昭和五十六年、今から十年前にはこういう論理が通ったかもしれません。答弁書のような論理がある意味じゃ通ったかもしれません。が、現在の日本の立場を考えますと、こんな論理は成り立ちません。  いいですか。今の日本は軍事大国ではない。これはもう明確に政府が公式見解として述べられていることであります。しかし、今の日本は、国民の生活水準はそれほど高くはありませんが、他の国から見れば世界に名立たる経済大国であります。そうすると、経済大国といえば、その実力となるのは兵器や政治力だけではありません。その資金力、つまり兵器や政治力ではなくて、日本の実力といえばお金の力ということになるわけであります。その日本が単に費用を支出することは実力の行使ではないなどとは、これは私は言えないと思う。お金以外に行使するだけの力を、例えば軍事力を持っていないということは総理がたびたびここでも答弁をされたとおりでありまして、これはもう日本の建前なのでありますから、お金を出すことは実力行使ではないなどという、そういう現実を無視した見解というのは、もう到底、法制局長官あるいは総理、受け入れることができません。いかがですか。
  145. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本国の憲法で禁止されております実力の行使というのは、武力の威嚇または武力の行使を目的として武装部隊が海外に出ていく、いわゆる海外派兵としてここで議論をされてきたものがそれに該当する、私はこう考えます。
  146. 和田静夫

    和田(静)委員 最後にしますが、大変納得することはできません。  そこで、私はこの答弁書に基づいて申し上げるのですが、現在の日本の状況及び湾岸戦争という具体的な実態に即した判断、これは政府答弁書でもそういうふうに書いてあるのであります。具体的な実態に即して判断すべき問題である、したがって、そういう問題提起があればそれにはお答えをしますというのが答弁書なんです、五十六年答弁書なんですよ。私は具体的な問題提起をしたのでありますから、その具体的問題提起に基づいて、答弁書で約束をされているように、具体的に判断してどうなのか、私の一般質問の前日までに再度統一見解を提出していただけるように、委員長に求めます。
  147. 渡部恒三

    渡部委員長 理事会で協議いたします。  これにて新村君、和田君の質疑は終了いたしました。  次に、加藤万吉君。
  148. 加藤万吉

    加藤(万)委員 湾岸情勢が新たな状況、展開をしつつあります。私はこの際、我が国の基地の使用あるいは湾岸に出動しつつある在日米軍の行動などについて一連の質問を行いたいと思います。  最初に、防衛庁長官、御質問をいたしますが、今湾岸で例えばトマホーク、パトリオットあるいは横須賀から第七艦隊ですか、出動していますね。そしてあそこで戦争が起きたわけですが、こういうことを称して、一般的には戦闘作戦行動、こう見てよろしいでしょうか。
  149. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  安保条約にかかわる問題でございますので、まず私の方からお答えさせていただきます。  御承知のとおり、安保条約におきましては事前協議の主題として戦闘作戦行動というものが一つ挙げられているわけでございます。この関連におきましては、この事前協議の主題となりますのは、「日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」に言う「戦闘作戦行動」と申しますのは、「直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動」を言うということが、従来から統一見解その他で政府より示された解釈でございます。  それで、現在我が国の基地から米軍の艦船等が出ておりますのはこのようなものではございませんで、単なる移動ということでございまして、この事前協議の主題となるような意味での戦闘作戦行動というものではないというふうに考えております。
  150. 加藤万吉

    加藤(万)委員 湾岸で展開されている多国籍軍の軍事的な行動は、これは何と称するのですか。我が国から出ていくという状態を指して言っているんじゃないのです。今展開されているそのことは何と言うのですか。
  151. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 これは私から御答弁申し上げるのが適当かどうか存じませんけれども、現在、湾岸地域でいわゆる多国籍軍が行っておりますのは、御案内のとおり安保理決議六百七十八号で権限を与えられた措置ということで、その目的はイラクによるクウェートの侵略の排除ということでございまして、そのためのいろいろな軍事行動を行っている。その中にはもちろん、いわゆる武力の行使でございますから、実態的には戦闘作戦行動というようなものも含まれると思います。  ただ、繰り返しになりますけれども、これは安保条約との関連での、安保条約上の観念の戦闘作戦行動というものではないということでございます。
  152. 加藤万吉

    加藤(万)委員 湾岸で展開をされておる事態そのものは軍事作戦行動である、しかし我が国から出動している在日米軍は、これは軍事作戦行動ではない、すなわちそれは単なる移動である、こういうお話です。  第七艦隊の司令官がアメリカの中東部隊の司令官になっていることは御案内でしょうか。さらに、私ども神奈川県、基地が非常に多いので、神奈川県ではしばしば、中東地域に派遣をされている軍隊あるいは物資輸送などがふえているわけであります。せんだっても、これは神奈川新聞が在日米軍司令部に文書でもって、この物資輸送はどこに行くんですか、こう尋ねましたところ、それは砂漠の盾作戦、すなわち開戦前の作戦名だということでありますが、ここに送られる、こういうことが在日米軍から文書で通知があったと報道をしております。  私は、在日米軍が中東に派遣されている総員数、今一万五千とも言われているわけでありますが、そしてこうして物資が直接日本の基地から湾岸地域、すなわちそこは戦闘作戦地域、ここに輸送される以上、それは全体の作戦行動の一環と見るのが常識的な見方ではないか、こう思うのですが、それでもなお移動でございましょうか。
  153. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 ただいま先生が在日米軍が保有している物資の移動について言及されましたので、この物資の移動の点に関しまして私からお答えしたいと思いますけれども、米軍の運用上の都合により在日米軍が保有しております物資を米軍内部で他に転用するためにほかの地域に移すということは、安保条約上何ら問題のないことでございます。
  154. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私は一例を挙げたわけですね。例えば、ミッドウェーを中心として駆逐艦その他、巡洋艦を含めて移動していますね、政府言葉をかりて言えば移動ですが、直接湾岸地域に出兵をし、同時にそこには中東の部隊司令官になる第七艦隊司令官がいる、こういうことになってまいりますと、それは、例えばフィリピンを経由して行くから単なる移動だという言葉では済まされないんじゃないですか。先ほど条約局長からも答弁がございましたが、直接戦闘作戦行動のため我が国の施設、区域から出ていく目的、態様、そして出ていくときの状況がそういう形である場合にはこれは事前協議の対象になる、これは政府統一見解です。今のやりとりでおわかりのように、我が国の施設、区域から、目的、明らかに湾岸戦争に対する国連の要請に基づくかあるいは国連決議に基づくか、さらにその態様は軍事的な態様、そしてその出ていくときの状況は戦争作戦行動として出ていく状況などを見れば、明らかに事前協議の対象じゃございませんか。
  155. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生が御指摘のように、横須賀に家族居住をしておりますブルーリッジ以下六隻が湾岸に派遣されるということを私どもも承知しております。これは改めて申し上げるまでもございませんが、まさに米軍の移動でございまして、先生が先ほど来御指摘の、戦闘作戦行動という事前協議の対象になっておりますのは、先ほど条約局長も御説明いたしましたけれども、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動でございまして、これらの艦船が日本の施設、区域から発進する際の任務、態様が、まさにこのような行動のための施設、区域の使用に該当する場合にのみ当てはまるわけでございまして、先ほど来私どもが申し上げておりますように、日本の施設、区域から出ていく際は単なる米軍の移動ということでございますので、事前協議の対象とは考えておりません。
  156. 加藤万吉

    加藤(万)委員 我が党の土井委員長が本会議質問した際に、移動であるからこれは事前協議の対象にはならない。ところが、そのときにはまだ戦争という状態が起きていないときでありました。明らかに今日は戦争という状況が起きているときであります。しかも、我が国から出ていくときにはと言いますが、第七艦隊はそのまま中東に行っているわけですね。まさに戦争地域に入っているわけですよ。まあこの議論をしたら切りがありませんから、恐らくそれ以上は、作戦行動として日本の基地が使用され、あるいは基地から出動していることはお認めにならないでしょう。  それでは、いま一つ観点を変えて御質問をしますが、今、在日米軍は一体どのくらい中東に行っているんでしょうか。員数で結構です。
  157. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 私、先ほど第七艦隊のブルーリッジ以下六隻が中東に派遣されておるということを申し上げましたけれども、先ほど来申し上げておりますように、米軍のこのような移動に関しまして安保条約上何ら問題がないわけでございまして、私どもはその都度通報を受ける体制になっておりませんので、全体像に関しましては私ども承知しておりません。今申し上げました艦船のほかに海兵隊の一部等が中東地域に派遣されているということは、通常の米側との外交ルートを通じる接触を通じまして私ども承知はしておりますが、全体像に関しましては承知しておりません。
  158. 加藤万吉

    加藤(万)委員 ミッドウェー以下艦船六隻ですね。配備における重要な変更があった場合、その重要な変更とは何か。これまた日米交換公文で、あるわけですが、陸上でいえば一個師団約一万五千、海上でいえば一機動部隊、すなわち、ちょうど今ミッドウェーが六隻の艦船を率いていく部隊が一機動部隊でしょう。一機動部隊の重要な我が国の配備における変更があった場合には、事前の協議の対象じゃございませんか。
  159. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生御指摘のように、安保条約第六条にかかわる交換公文に言っております事前協議の対象の一つに、合衆国軍隊の配置における重要な変更というのがございます。それで、これに関しましては、海軍につきまして典型的な場合といたしましては、第七艦隊の空母打撃部隊の場合は、一機動部隊は二ないし三のタスクグループから成っておりまして、各タスクグループは空母一隻ないし三ないし四隻の駆逐艦により構成されているということを承知しております。  以上私が申し上げましたのは一般論でございますけれども、今先生が具体的に御指摘のミッドウェー、ブルーリッジ以下についてでございますけれども、これは、事前協議の対象となります艦船の日本国への配置とは、専ら我が国の港を活動上の根拠地として使うものでございまして、今私どもがこのミッドウェー、ブルーリッジについて言っておりますことは、先ほども私、乗組員家族を横須賀に居住させているという言葉を使わさせていただいておりますけれども、乗組員家族をまさに横須賀に居住させているわけでございますけれども、これはいわゆる日本国への配置には該当しない、こういうふうに考えております。
  160. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いわゆる我が国の基地、施設が今日事前協議の対象にはならないということをいろいろ理屈をつけておっしゃっているわけですが、前段の作戦行動に参加をしているという事実、さらには今申し上げましたように重大な配備における変更、これまた事実あるわけですから、当然私は事前協議の対象になってしかるべきものであると思いますよ。私は仮に百歩譲って、第六条による事前協議の対象にはならなくても、第四条の随時協議に当たるべき課題ではないでしょうか。いかがでしょう。
  161. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますいわゆる事前協議の対象事項は、交換公文上はっきり定められておるわけでございますが、それ以外の安保条約上の運用にかかわる事項につきましては、先ほど御指摘がございました第四条の随時協議というもので取り上げ得るわけでございます。この第四条は、念のため読み上げますと、「締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いづれか一方の締約国の要請により協議する。」というふうに定められているわけでございますので、この規定に該当するような事項につきましては、この随時協議で取り上げることができる。ただ、事前協議にかかわるものは当然事前協議の方で取り上げるということでございます。
  162. 加藤万吉

    加藤(万)委員 日本を基地として出動しているこれらの行動あるいは基地使用、これは随時協議の対象として今まで行ったのですか。それとも、かつて、昨年ですか、沖縄でアメリカ大使が日本にもその旨通告をしている、こういう談話が発表されておりましたが、あれをもって随時協議の一つの対象として我々は見てよろしいのでしょうか。
  163. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 私は、先ほど米側との日常の外交上のやりとりを通じてそれなりに承知しているということを申し上げましたが、これは、私どもは今条約局長が申し上げました四条による随時協議とは考えておりませんで、むしろそういう通常の外交上のやりとりを通じてそれなりに、全体像は承知しておりませんけれども、個別に幾つか承知していることがあるということを先ほど申し上げた次第でございます。
  164. 加藤万吉

    加藤(万)委員 これから二十四条問題を少しく議論をさせていただきますが、総理、私は最近日米安保条約そのものが質的な大きな変化を持ってきたのではないかと実は思っているわけです。言うまでもありませんが、日米安保条約は、極東及びアジアにおける軍事的な脅威ないしはその周辺における平和への脅威、これがあった場合に事前協議、今言ったような六条に基づき、ないしは四条に基づき事前協議を行う、こういうことになっているわけであります。最近、これはもう米ソの新たな雪解けもありましょうが、アメリカの国際的な軍事戦略から見まして、安保が日米間の安保よりも一段と国際的な、世界的な状況の中における日米関係、こういう面は、これはもう今まで審議されましたさまざまな、例えば国連という舞台を通しての米軍の行動に対する我が国の協力の体制などを見ても、相当広範に集団的な安全保障という面に大きくかかわり合いを持つようになってきた。したがって、日米安保条約は、単に極東という地域的集団安全保障の枠を超えて日米間に協議がなされ、ないしはそれらさまざまな行動に対する事前の協議あるいは随時協議がなされてしかるべきではないか、こういうように思うのですが、総理はどうお考えでしょうか。
  165. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日米安全保障条約というのは、これは日本とアメリカ合衆国との間の相互協力と安全保障の条約でございますから、この日米安保の枠組みというものはここにまさに書いてあるとおりであろうと思います。  それからもう一つは、日本とアメリカの両国が世界の経済とか世界の平和安定に果たしていかなければならない役割、あるいは地球の環境問題に対して対処していかなければならない役割、それはそれでまた新しい時代とともに幅が広くなり、広がってくることも当然予想されていかなければならないと、こう考えます。
  166. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今度、日米安保条約地位協定二十四条が、新しく協定を結びまして、従来よく言われております思いやり予算二千二百億、これを我が国は経費負担をする、こういうことになっていくようであります。  地位協定が思いやり予算を拡大してまいりましたのは、設置されてまいりましたのが昭和五十三年、五十四年、そして六十二年、いわば基地における一部労務費の負担あるいは格納庫、住宅などなどの一部、日本が経費負担をする、いわゆる思いやり予算としてこれを行う、こういうことで今日まで参りました。  六十二年のときに、調整手当や扶養手当、季節手当を二分の一我が国が負担する際に、当時の政府見解は、五年間ということで限定的、暫定的、地位協定二十四条の原則に触れない意味で特例的に今回の措置を行う、こういうことが当時のこの経費負担の拡大に対する政府見解でございました。さて六十三年には、この二分の一は全額負担になりました。それ以前に我が国が負担したのは、円高になってアメリカの財政が苦しいだろうという台所事情も考え、先ほど申し上げましたような政府見解として支出を行ったわけであります。  今度二十四条の改定によりまして、二千二百億円は、これ以外に、本来二十四条で規定されている基地の提供は日本が行い、同時にそこにある在日米軍はその施設費その他を含めて米側の負担を行うというその原則からやや逸脱をしているのではないか、こう私は思うのです。なぜならば、在日米軍が施設の使用をするためのほとんど九割方の費用は我が国が持つということにこれはなるわけであります。どうでしょうか、今度のこの協定の変更は、従来の政府統一見解とは違った意味を持って在日米軍の地位協定による負担を拡大をする、こういうことになったんでしょうか。
  167. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 今回、在日米軍経費に関します特別協定を国会に提出させていただきまして御審議をお願いしておりますが、これにつきましては、基本的には私ども、国会の場で外務大臣、総理が繰り返しおっしゃっておられますように、この日米安保体制というものがしっかり根をおろしてきておりますけれども、引き続き日米安保体制の効果的な運用を確保していくということが我が国の安全保障にとり極めて重要であるという認識を踏まえてのことでございます。  先生御指摘のように、現行の特別協定がまだあと一年効力を有しておりますが、何で今回それを繰り上げて新しい特別協定を結んだのかという点でございますけれども、この点に関しましては最近の諸情勢の変化を踏まえたものでございまして、これは具体的に何かと申し上げますと、一つはアメリカの貿易赤字、それから日米間の経済力の相対的関係の変化といったこういう経済情勢の変化、それから二つ目には、アメリカが大きな財政赤字を抱えながらも国際の平和、安全の維持のためグローバルな役割を果たしてきており、その結果、国防費、在日米軍経費の面で著しい逼迫状態に直面しているということ、それから三番目に、我が国が国力に相ふさわしい役割をみずから積極的に果たしていくということが国際的にますます求められている、こういう三点を踏まえたものでございます。  先生が御指摘の具体的な点に関してでございますけれども、今回も引き続き特別協定という形で、先生が今御指摘ございました在日米軍従業員の基本給、それから光熱水料等につきまして暫定的、特例的かつ限定的にこれらの経費の全部または一部を負担する制度を導入をさせていただきたいということで、条約を、新しい特別協定を結びまして国会審議をお願いしている次第でございます。
  168. 加藤万吉

    加藤(万)委員 六十二年の政府見解とは違うのですか。前段述べられたことはまるっきり違いますよ、それは。地位協定二十四条の原則に触れない範囲、すなわち施設費その他については米軍側の負担にする、こうなっているわけでしょう、二十四条は、基地の提供は日本が行う、それに伴う借地権だとかあるいはいろいろな買い上げ権だとか、そういうものは日本が負担しましょう、しかし今まであった見解は、とは言いながら、アメリカの円高によるさまざまな状況があるから暫定的に、まあどこかで聞いたような言葉ですけれども、暫定的に、しかも時限的にこういうものを負担をします、そして六十二年、さらにそれを拡大したわけです。今度の場合は、我が国の国力に応じ、アメリカが持つ国際的な平和への脅威に対する行動の問題、さらにアメリカの経済の問題などなどを踏んまえていくということになれば、二十四条の原則に触れているじゃありませんか。原則の変更をするのですか。
  169. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先ほど私から、現時点におきます安保条約の日本の安全保障にとっての重要性、それから最近の日米を取り巻く国際情勢の変化について三点申し上げましたが、そういうものを踏まえまして現在の特別協定は結ばれたものでございまして、先生が御指摘の光熱水料につきましては、具体的に申し上げますと、地位協定の第二十四条に定めます経費負担の原則それ自体を変更しようというものではなく、原則は原則としつつも、一定の期間を限り、特定の経費に限ってこれを特例的に負担するということを指すものでございまして、通常の意味での改正とは異なるものでございますので、その点ぜひ御理解賜りたいと思います。
  170. 加藤万吉

    加藤(万)委員 九〇%以上在日米軍にかかわる費用を負担をしておって、特例的に、限定的に、時限的にという言葉が通用するはずがないじゃありませんか。いわゆる二十四条は変わったのでしょう、解釈が。といいますのは、先ほど総理に御答弁を求めましたように、日米安保条約そのもの、そして日本の基地の態様そのものが、国際的なグローバルな体制に対応するために必要な措置として我が国がその一部を負担をする、こうなったんでしょう。
  171. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 全般的な情勢の変化に関しましては、総理も御答弁されましたし、それから私も今申し上げたわけでございますけれども、法律的な意味でこの二十四条の負担の原則がどうなるのかという先生の御指摘でございますので、先ほど申し上げましたように、二十四条に定めます経費負担の原則それ自体は変更しようとするのではなくて、原則は原則としつつも、一定の期間を限って、特定の経費に限り、特例的に負担するということでございます。  それから、先生が御指摘の、在日米軍経費の九〇%云々という御指摘がございましたけれども、念のために申し上げますが、これは日本側が円建て、アメリカ側がドル建て、かつ会計年度もずれておりますので正確に比較をするのが無理なところがございますけれども、大ざっぱに申し上げれば、平成元年度におきまして大体日本側の負担が四〇%、アメリカ側の負担が六〇%でございまして、今回の特別協定が国会で御承認いただきましてこれを実施するということになりますと、五年後の時点をとりまして大体日米の負担が半々になると私どもは見ております。
  172. 加藤万吉

    加藤(万)委員 日米の負担が半々になるというのは、米軍の給与を含めてでしょう。給与を除いたその他の部分で言ったらどうなるのですか。
  173. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、先生がまさに御指摘のように在日米軍の軍関係者の給料は入っております。しかしながら、逆に米側が負担しております正面装備、これは入っていない数字でございます。  それから、先生御指摘の在日米軍の給料を除けば日米の負担がどのようになるかという点でございますけれども、先ほど私、平成元年度の数字を申し上げまして、大体日本が四、アメリカが六と申し上げましたけれども、給料が大体全体の三割でございますので、それを除きますと五年後の負担が、先ほど私は五、五と申しましたけれども、大体日本側の負担は七割ぐらいになるものと思います。
  174. 加藤万吉

    加藤(万)委員 給与を除いて七割が日本側の負担。ということは二十四条の、経費については米側の負担にするという、その本来取り決められた二十四条の交換公文に基づく原則をまさに踏み出しているのじゃありませんか。米国側の、在日米軍の給与を除くと三対七ですよね。給与を入れて五対五ですよ。最近アメリカの側では、日本における在日米軍を五千人ずつ毎年減らしたい、こういう意見が出ていました。これは上下両院の決議でそういう方向性を日本に求めよう、さらに、もしそれが日本側としてなかなかできないというならば、日本における、例えば正面装備の修繕費その他も日本の負担にすべきではないか、こういう意見が出ているわけですね。  今、私の計算が間違いなければ、平成七年度における我が国の負担額は二千二百億円を加えて三千八百億円ですね、これはいわゆる思いやり予算。平成二年度で千六百八十億円ですから、それに二千二百億円を加えると三千八百億円。アメリカがさらにこれに正面装備の修繕費を加えていくということになりますと、アメリカは、在日米軍というのは装備と体だけ、いわゆる兵隊さんだけが来て、あとはすべて日本が賄うということになるのじゃありませんか。日本が丸抱えで日本の安全保障のために、極東・アジア周辺における平和への脅威のために在日米軍を、言葉として適切かどうかわかりませんが、雇うという形になる。形の上ではそうなるのじゃありませんか。まさに日米安保条約の変質ですよ。そう見るのが至当な見方ではないでしょうか。
  175. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先ほど、最近の諸情勢の変化ということで、米側が抱えております貿易赤字、財政赤字、それにもかかわらず米側がグローバルな安全保障面での役割を果たしているということを申し上げましたけれども、その関連におきまして、日本が大きな経済力を背景に日本としてそれ相当の、ふさわしい応分の負担をするというのが期待されているわけでございます。それを踏まえまして、先ほど申し上げましたように、今回の特別協定が御承認いただければ、五年後に在日米軍経費の日米の負担が正面装備を除きまして大体半々になるというのは、現下の情勢に照らして妥当なレベルではないか、こういうふうに私どもは判断している次第でございます。
  176. 加藤万吉

    加藤(万)委員 平成七年度までのこれは時限的なものですか。それとも先ほど言いましたように、基地機能やグローバルな国際的な平和に対する脅威に対して日本の基地がどう提供されるかという側面を把握をいたしますと、今の日本における在日米軍の経費は、さらに修繕費まで含めて拡大をするという可能性があるものでしょう。そうじゃありませんか。あなたは時限的なものとおっしゃいますが、時限的なものですか、これは。
  177. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先ほども申し上げましたように、今回の特別協定はまさに暫定的、特例的かつ限定的なものと私どもは考えておりまして、この特別協定によりまして、繰り返しになりますけれども、在日米軍の日本人従業員の基本給、それから光熱水料等の経費を日本側で全部または一部を負担する制度をつくらせていただきたいということでございますが、先生御指摘のそれ以外の経費はどうかという点でございますけれども、現時点におきましては、今私が申し上げました経費以外の経費を対象としてさらなる措置をとることは検討しておりません。
  178. 加藤万吉

    加藤(万)委員 最初思いやり予算が出たときには、給与の中のまさに一部、そしてその給与がだんだん膨らんできて二分の一、さらにこれが今度は全額になる。私はそこまでの段階でしたならば、対アメリカの経済状況、懐ぐあいなどを考えて、日本が負担すべき思いやり予算としてそこまでが限界だろう、そういうことがあったのだろう、ここまでの理解はできますよ。しかし、その後、今度の場合の光熱水、さらにはさまざまな施設の日本側の負担、さらに米国から聞こえてくる修繕費の日本側の負担ということになってまいりますと、これはそんなことを考えておりませんとはいえ、この予算は膨らむことはあってもへこむことはない。  すなわち、私が言いたいのは、ますます拡大をするその費用、経費とともに、日本における基地の機能というもの、あるいは在日米軍の置かれておる国際的なグローバルな戦略的な配置というものから見て、二十四条に言うところの経費と基地提供の分担をしてやるというかつての交換公文からはみ出ているから、この際、二十四条を改正すべきではないかという意見なんです。そして、まともにここで議論をしたらどうでしょうか。そういう位置として、日本は国際的な役割として、日米の軍事的な行動やあるいはさまざまな行為が必要なんだということを明確におっしゃることが必要だと思うのです。  これは先ほど頭のときにちょっと申し上げましたが、なぜ在日米軍が艦隊を組んで中東へ行くのか、これは国連の決議を中東のあの場所で忠実に実行する、平和の攪乱者に対して国連の決議を誠実に実行する、そのために日本から出ているということなんですが、そのことと連動するのですよ。そういう国際情勢ならばそういう国際情勢に見合った日米間の地位協定というものが新たにつくられて国会で議論をされて、そこを覆い隠すのではなくして議論をして、その一部負担はかくかくであります、このように拡大をしていきます、そして、アメリカの財政事情から見て、我が国は、給与費以外にさまざまな修理費まで含めてやがて日本が負担をし、それは国際的な平和を維持するために我が国の経済力が持つ、そういう意味での責務である、こう私は明言されるべきであると思うのです。  このことは、自衛隊出動問題についてもさまざまな議論が今までありました。日本が国際的にどういう役割を果たすのか。経済的な面もありましょう、九十億ドルの問題も。同時にいま一つは、人的な面では、自衛隊の出動という問題を含めて議論がここであったのです。あったことは私は決してむだな議論ではなかったと思いますよ。そういう位置にあるならあるらしい地位協定の改定もなして、そして日本の基地はこういう形になっていくのですよ。そういうことをみんなが知った上で、さてそれではこの経費の一部負担をどうするか、こういう問題の提起がなされないで、そこは時限的です、暫定的です、そしてアメリカの今の経済事情が苦しいから日本が負担をするというだけで覆い隠してはいけない、こう私は思うのです。いかがでしょうか。これは大臣だね。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  179. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員お尋ねの今回の地位協定の問題でございますが、国会の論議を通じなくてやるというものではございませんで、両国の変化に留意をし、在日米軍の効率的な、効果的な活動を確保するためにとっておる措置でございまして、協定上期限及び負担の対象項目が明確にされておりますし、暫定的であり、特例的であり、限定的な措置となっております。また、手続的にも本件措置は必要な国会の御承認を得て行うこととしているものでございまして、本件措置をもって我が国の経費負担の無原則な拡大につながるといったようなことはないと私どもは考えております。
  180. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣、私の言っているのは、無原則に広がるとかなんとかということを言っているのじゃないのです。暫定的とか期限的とかいうのじゃなくて、二十四条の解釈が、もうその解釈じゃ済まぬのじゃないですか。二十四条を日米間でいま一遍協議をし直して、そこ自身を変えませんと、その解釈のもとにおける経費支出はもう限界が来ていますよ、ここを言っているのですよ。日米間の新たな交渉課題として、日米地位協定の二十四条の改定についてはこの際行うべきではないかというのが私の意見なんです。いかがでしょうか。
  181. 中山太郎

    ○中山国務大臣 現在のところ、地位協定二十四条の改定を行う意思は持っておりません。
  182. 加藤万吉

    加藤(万)委員 安保条約の先ほど事前協議の問題も含めまして、日米間における地域集団的安全保障体制として組まれてきた安保条約は、基本が相当変わってきた。特に、米ソ間が冷戦構造に入りまして、各地における紛争に対して日本の基地が、先ほど申し上げましたように、物資の輸送を含めてそういうところまで手を伸ばさなければならぬということになれば、日米間の地域的な集団安保としての日米安全保障条約は基本的に見直す時期に来ている。この是非はいろいろありますよ。我が党にとっては是非の問題はあります。しかし、政府のスタンスとしてはそういう姿勢で臨みませんと、あらゆる面に無理がある。無理があるということは、国民に理解ができない面まで手が伸びていってしまう。そこに日米安保条約からくる基地被害を持つ国民にとっては大変な心配と政府に対する疑問の念がたくさん生まれてくるから、そこは明確にすべきだ、こう思っているんです。これはひつと、今直ちにということは考えておりませんということですから、やがて来るでありましょう日米間の新たな国際的な集団安全保障体制に臨む対応として御検討いただきたい、こう思います。  中東問題に入らしていただきます。  実は中東問題を質問するに当たって、私は大変戸惑いを感じました。なぜかといえば、それは、最近の動きといいましょうか、動きが極めて流動的かつ変革、変動が激しいからであります。先ほど私どもの新村議員の質問幾つお答えをいただきましたが、どうでしょうか、今日、ソビエト・ゴルバチョフさんとアジズ外相との会談の結果を受けて、今国際的な中東問題への停戦、休戦という機運が急速に高まるという私は気がしてならないのです。これは恐らく政府側にとってみても期待される外交の方向だろう、私はそう思うのですが、今直ちにその見通しをお聞きしても答えは出てこない。  しかし、私が去年質問した際には、ちょうど戦争が始まるか否かのときでございました。それだけに、戦争を抑止するために我が国の外交を強力に展開してほしいという提言を行いました。残念ながら、一月の十七日ですかを期して戦争という事態に立ち至ってしまったわけです。今この第二の、私は、この中東戦争の新たな外交的な局面が急速に突出的に出てきている、このチャンスを逃がすべきではないという見解は、恐らく国際的なひとしく認識を一つにするところではないかと思うんです。どうでしょう、今度のこの外相、ゴルバチョフ大統領との会談を契機にして、停戦ないしは休戦という機運が高まるというふうに外務大臣は理解されますか、いかがでしょう。
  183. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この一月十七日以降の事態が相当深刻な影響を与えているということは、私は委員と共通の考え方を持っております。ここでソビエトのゴルバチョフ大統領の特使プリマコフさんがバグダッドを訪問され、そしてその後一回モスクワへ帰られて、また日本へ来られて、海部総理と私もお目にかかりましたが、いろいろとこの新しい一つの時期、こういうものが現在生まれつつある。しかし、国際社会の平和と安全につながる安全保障理事会の決議の原則を無視してこの問題の解決ができるものではないというところに難しさがあるんだろうと思うし、ゴルバチョフ大統領も大変御苦労いただいているんだろうと思いますが、一つの大きな変革の兆候があらわれているということは、委員と全く考え方を一にいたしております。
  184. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いろいろな国際的な報道が私たちの耳に入ってまいります。その報道の大きな流れといいましょうか、それは停戦後、休戦後における中東における米ソの主導権争い、まあ言葉として適切かどうかわかりませんが、覇権的な要素を含めた主導的な争いがこの中に含まれている。事によると戦争の事態というのが地上戦への突入という方向もあり得るという、そういう報道も流れているわけです。私は大変懸念をしています。いわゆる中東戦争の停戦なり休戦という問題は、もはや米ソのそういう思惑を超えたところに今日存在している、こう見ていいと私は思うのです。  なかんずく日本の場合には、アジアにおける外交ということを考える場合に、イスラム教国の存在というのも無視できないですね。イスラム教徒、一般的には十億と言われていますが、そのうちの四億五千万がアジア、しかも我が国と大変経済的にも、文化的にも、人的にもつながっている国々でありますから、したがって、米ソの思惑の中でもし停戦、休戦というものが失敗するという方向になりますと、我が国にとっては極めて遺憾な事態を招くようになるわけであります。したがって、米ソの枠を超えた意味で、これは極めて良心的な発言ですけれども、もちろん私は各国がみずからの権益というものをその中に、外交的な視座の中にないとは言いません。言いませんが、それを超えたところで我が国はこの停戦や休戦の芽というものに対してみずからの方からも働きかけていくという外交が必要ではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  185. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員も御指摘のように、アジアの国の日本としては、やはりこのアジアの中でモスレムの国といえば、マレーシアあるいはインドネシアあるいはフィリピンの一部といった地域に、このイスラムの人たちが随分おられることも私もよく存じております。私は、アジア局を中心に、アジアでどのような変化がこの湾岸との連動で起こるのかということについては特に注意を払うように局長以下に訓示をいたしております。そして、この新しい中東地域の戦乱が収拾される過程で、例えばイラクが破壊されないということはアメリカもイギリスも言っておりますけれども、イラクの力が低下してきたところで、この次のアラブ地域においての力を求める国がないかといえば、私は決してそうではない。あのアラブ地方の長い歴史の中では、かつてのエジプト、シリアあるいはイランといったような国々が、それぞれの覇権を争ってきた歴史がございますし、このような中で米ソがこの調停をするということが果たしてうまく機能するかどうか。  私は、やはりこの停戦の話というもの、これは即安全保障理事会の決議を完全実施するということでございますから、国連が中心になった一つの話し合いの舞台というものがここで必ず登場してくることは間違いないと考えております。一月十五日、この最終のデッドラインの日にデクエヤル事務総長とお目にかかったときも、日本政府として申し上げたことは、もし不幸にして戦火が交わることになっても、必ず国連事務総長の出てこられる御苦労の舞台が出てくる。日本政府としては絶えず国連事務総長と連絡をとりながら、この地域の平和の回復と安定のために協力をいたしたいということを申しておるということをこの機会に表明させておいていただきたいと思います。
  186. 加藤万吉

    加藤(万)委員 アラブの国々の中に、次のイラクに匹敵するような力を持った国が出る。私は、それを抑える方法は一つだけある。それは先進国が武器輸出をしないことだと思うのです。ほかには何もないですよ。かつて石器時代と言われたイラクが今日あれほどまでに強力になったのは、何といってもソビエト、中国、フランス初めそれぞれの国が武器輸出した結果としてそういう状況が生まれているわけですね。でありますから、停戦後、もしアラブにおける新たなそういう力の均衡と言っては失礼かもしれませんが、そういう状況をつくらせないためには、武器輸出をどう国連の舞台で先進国が、もっと極端に言えば常任理事国がどう決めるかということだろうと思うのです。これは私は、日本が国連に提案すべき一つの提言だろう、こういうふうに思いますね。それから、国連が中心になってこの事態の収拾に向かっていく、収拾に向かわせる、これは賛成です。当然そこにはアメリカやソビエトの恣意的なものが排除されているという前提がなければならぬわけですから、そういう意味でも、私は、国連が中心になって事態の収拾にさらに拍車をかけていくということは極めて重要なことだろう、こう思います。  そこで問題になりますのは、ソビエトは今日、仲裁に一定の役割を果たそう、こうしているわけですね。アメリカの存在ですよ、いわゆるアメリカの社会正義の倫理といいましょうか、あるいは理念といいましょうか。私は自由主義経済と自由というものを中心とするアメリカの国際的な外交、それ自身は否定はいたしません。しかし、えてしてアメリカは恣意的な、いわゆるアメリカ側から見た正邪の判断の上に立って展開する外交というのがしばしば見受けられたわけですね。残念ながら今日までの間、小国が大国といいましょうか、クウェートがイラクに侵略されたと同じような状況がなかったかといえば、私はあったと思うのですね。  例えば、パナマにおけるアメリカの軍事的進攻――侵略という言葉は使いません、この際は進攻という言葉を使っておきますが、この場合に、国連はどういう決議をしたのでしょうか。言うまでもありませんが、この場合には、前文は省略をいたしますが、一、二、三、四、五項目とありまして、「合州国の武装侵略軍の干渉の即時中止及びパナマからの撤退を強く要求する。」さらに、「全ての諸国にパナマの主権、独立及び領土的統一を支持し、かつ尊重するよう要請する。」これが国連総会における二百四十号決議の内容ですね。この言葉、そのまま今のイラクに向かって国連が決めたことと内容的には同じですよ。  私は、国連を中心とするならば、パナマに対するこの言葉が、訳がそのままだとすれば、合衆国の武装侵略軍の干渉に対して排除をする、このことも同一線上で扱われていかなければならない外交姿勢ではなったかと思うのですよ。外務大臣は今、日本が国連中心、こう言われました。このときに日本の政府はどういう態度をとったのですか。
  187. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 先生御指摘の国連の決議に対して、我が国はこれに反対をいたしました。この反対の理由でございますが、日本政府といたしましては、この決議案というのは全体としてバランスがとれてないという判断でございます。すなわち、この決議の中では、武力行使が行われた背景ということについて全くの言及がないということ、また、パナマ政府というものが自由と民主主義に基づいた、そういう政府が樹立されるべきである、そういうことについても一切の言及がないということでありまして、この事態についての把握、分析において、この出されました決議案というものはバランスがとれてないというのが日本政府の判断でございました。
  188. 加藤万吉

    加藤(万)委員 恐らくそういう背景があったんでしょう。しかし、国連でこれが七十対二十対保留四十ということで決まったことは、これは間違いないのです。そうしますと、国連中心である以上は、この決議に沿って我が国もアメリカに対して、ないしは日本の外交上のスタンスも変えていかなくちゃならなかったわけですね。  私は、日本の外交姿勢がそういう側面を持ちながら、今度の場合に、内容、趣旨的には全く同じような六百六十号決議ですよね。これに対しては確かに常任理事国が全部賛成だから、中国の保留がありますけれども、二国ですか、ありましたけれども、いずれにしても国連としてはほとんど満場一致に近い形で決めたことであるから、したがって今度のは正であり、前のは邪であるというその論理は成り立っていかないと思うのです。そういう論理を組み立てていきますがゆえに、国民の中に、いやあのときはどうだったのだ、日本は反対したじゃないかと。今度はアメリカの主導型で国連が決議をし、あるいは常任理事国もそれに賛同した、だから今度は賛成だという、そういう一貫性のない外交のスタンスに問題が出てくるのではないか、そういう批判が国民の中に生まれてくるのではないか。そこに国民政府との間に乖離があるのですよ。このことは厳しく私は戒めていかなければならない我が国の外交姿勢だろうと思うのですよ。  さてそこで、そういうことを前提に置きながら、今度のイラクの侵略に対する我が国の対応はどうすべきか。先ほど申し上げましたように、外務大臣からもお触れになりましたように、私は、中東のせっかく起きつつある停戦、休戦という状況の中で我が国はどういうスタンスをとるかというのは、ひとりアラブだけじゃないですね。おっしゃられましたように、アジアにおける極めて重要な影響がある。それだけに私は、アジアの各国が日本の一挙手一投足を見守っている、こう見なければいかぬと思うのです。  この場合に、対アメリカのいわゆる正邪の倫理観の問題が出てくると思うのです。アメリカにしてみれば、正はおれだ、常に正はおれだ。そして、言葉を少しえげつなく言わしてもらえば、国連というスタンプをもらって、そして正義の御旗を乗せて、今、今日、各国に対して、多国籍軍に対してもあるいは対国際的にも行動をとりつつある。  今国連の決議の限界は、クウェートからの撤退ですよね。同時に主権の回復でしょう。今一番心配をするのは、それ以上出やしないかということでしょう。いわゆるアメリカの恣意的な、いわゆるアメリカの正義感からくる、あるいは倫理観からくる、先ほどのパナマの例じゃございませんけれども、そういう面からくるアメリカの行動が、今国際的に起きている休戦、停戦という状況をはみ出して、停戦や休戦という芽をつまんでしまうのではないか。ここの危惧を皆さんが持っているんじゃないかと思うのです。これは私、ひとり日本だけじゃない、他の国々もその方向性を極めて危惧しているんじゃないでしょうか。とすれば、最も近い日本がアメリカに対して言うべき言葉は当然定まってまいりますね。いわゆるアメリカのやることがすべて正しいという、あるいはアメリカの今日まで国連を中心にして展開してきた外交がすべて正であるから、それに我が国が九十億ドルの軍事的な支援を行う、あるいは自衛隊機を飛ばすとか飛ばさないとかというそういう視点より違った視点で外交関係を日本がアメリカに対して展開をする、この姿勢が必要じゃないでしょうか。いかがでしょう、外務大臣。
  189. 中山太郎

    ○中山国務大臣 冷戦後の一つの地域における大紛争が起こったわけでございますが、米ソだけでこの問題が解決されるということではない、私はそう思います。ただ、米ソがそれぞればらばらになってこの問題が解決するかというと、私はそうではないと考えております。と申しますのは、先般行われましたアメリカのベーカー国務長官とソビエトのべススメルトヌイフ外務大臣との間の外相会談の共同コミュニケでも、この安保理の決議の完全実施というものを確認をいたしておりますから、私はその点は米ソ間に考え方の相違はない、私はそのように考えております。  なお、日本の場合、きょうの時間帯でございましょうが、外務省の小和田務審議官が現在モスクワにおいてべススメルトヌイフ外相との会談をやり、ソビエトのゴルバチョフ大統領とアジズ外相との話し合いといったようなことにも恐らく触れて、いろいろと意見の交換を行っているものと考えておりますが、またそういう方の情報が入りましたら、政府としてもいろいろと検討しなければならないと考えております。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私は、サダム・フセインの発言が極めて挑発的、あるいはいわゆる多国籍軍は血まみれになって云々というこの言葉は、極めて独裁者らしい言葉だということで否定はしますね。  同時に私は、アメリカ大統領の発言についても大変気になるのです。例えば、侵略者には報酬を与えない、こう言っていますね。この国連の決議はクウェートからの撤兵、主権の回復というところですね。侵略者には報酬を与えないという言葉は、極端に言えばフセインを何とかしろ、フセインを何とかしなければだめだ、結果的には、フセインというのは一人の独裁者という固有名詞ではありますけれども、同時にそれはイラクに対して同じような言葉を置きかえてみたらどうなんだろうか。イラクという国の侵略者には報酬を与えないということになりますと、イラクまで、イラクの分断といいましょうか、そういう問題まで発展する可能性があるわけですね。結果的に今日の停戦、休戦という条件が仮に整ったという、私ども期待はいたしますけれども、それが、いやそうじゃない、イラクという侵略者には報酬を与えないんだということになれば、地上戦の展開と同時に、それはイラクの国家の分断といいましょうか、あるいは国家、軍事力の壊滅といいましょうか、そこまでいかなければアメリカの意図するもの、アメリカの大統領の意図する最終目的には到達をしないということになり得る可能性があるわけです。ここが大変心配なんですね。したがって、そこまでいかない状況を、特に日本とはパートナーシップとして米国があるわけですから、その立場から日本の政府はきちっと物を言うべきではないかと私は思うのです。もちろん、今モスクワに審議官がおいでになって今の状況をしっかりと、状況を正確に判断していただく、同時にその正確な判断のもとに、アメリカからも当然言ってくるでしょう。国際情報が正確だとすれば、アメリカにしてみれば極めて不愉快な、と言っては言葉が度が過ぎるかもしれませんが、ソビエトのしゃしゃり出だ、こういう意図も潜在的にはあるかもしれません。そこを停戦、休戦という課題に結びつける日本の外交の姿勢がこの際極めて重要になる。このことだけは一つ御認識をいただきたいと思うのです。  総理、イラン・イラク戦争が終わりましてどのくらい経済復興、その後戦後の復興はお金が必要か、大体想像でいいですが、当時、戦費としては、これはクイズではございませんがヒントを与えますと、大体当時の破壊されたものは七百億ドルないしは一千億ドル、こう言われておるわけです。一九八五年までです。これを潜在的な復興計画までを含めてどのくらいの財源が必要かということをはじき出した人がいるのです。大体どのくらいだと想像されますか。――わからなきゃ、わからぬでいいです。
  191. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御質問を聞いておりましたら、今、イラン・イラク戦争が終わった後でとおっしゃいました。イラン・イラク戦争が終わった後でのことについては僕はちょっと今準備しておりませんので、わかる者がもしおりましたら答えてください。
  192. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いや、いいです。わからなきゃいい。  中東研究会というのがございまして、いろいろなデータを総合しましてコンピューターに入れまして、はじき出したのは四千百七十億ドルだそうです。膨大なお金ですね。  そこで、今こういう国際情勢でありますから、当然戦後復興という問題が議論にならなきゃならぬわけですね。先ほどアジアに対する日本が、今度の立ち居振る舞いが、一挙手一投足が極めてアジアの状況にも敏感に反応しますよと申し上げました。言うまでもありませんが、難民救済の問題も、我が国は、フィリピンとかインドネシアとかそういう国々、将来の潜在的な何といいましょうか彼らが持つであろう被害に対する我が国の救済の一環として私はやったものだと理解するわけです。そうしますと、今度の湾岸戦争によって起きて、仮に停戦が起きたという前提の上に立って我が国が経済復興の協力をするとなれば、この地域まで含めた経済復興計画というものを用意しなきゃならぬわけですね。  これは当面、私は二つに分けていいと思うのです。一つは、緊急に必要とするものですね。難民の救済であるとか医療であるとか、あるいはこの湾岸周辺の環境汚染に対する当面の我が国の対応、それからPKOですかを含む休戦後の監視活動、停止活動、こういうものも当面用意しなきゃならぬでしょう。恐らくどのくらいかかるかわかりませんが、当面緊急に必要な財源としては、私は今度、今政府が用意している、例えば平成二年度の二千億円の財源をこれに振り当てたらいいと思うのです。九十億ドルを今GCCを通しましてアメリカの国防基金に入れるという話がここで大変話題になりました。私どもこれは戦費と見ていますから、これを提供することには反対であります。しかし、総理もどこかの婦人部の会合でおっしゃっているように、戦争が早期に終結して残ったお金があれば、それは平和や経済復興基金にも回してもよろしいということをおっしゃっているわけですが、総理、ちょっとお聞きしますが、九十億ドル、GCCを通しましてアメリカの方へ配分されたものが、総理がおっしゃっているように、いま一遍日本の意図に基づいて平和的な経済復興基金に回ると思いますか、いかがでしょうか。
  193. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本は拠出国としてあの地域の平和回復活動、それを支援するために出した、こう言いますが、平和が回復したら今度は平和が安定しなきゃなりませんし、平和が安定するためにはその地域のいろいろな経済が復興していかなければならない、私はそれを広く一連のものとして考えておりますから、平和維持そして経済の復興、そういったものに使われるように、これは湾岸地域の平和安定のためにぜひとも必要なものだと思いますから、拠出国の意思として我が方の意向を表明するつもりでございます。
  194. 加藤万吉

    加藤(万)委員 しかし、一遍出したお金はななか戻りませんね。アメリカの国防基金に入ったお金は、いや、戦争が早期に終結したので、仮にまあ三ヵ月だと予定されておった、感じとして九十億ドルを我が国が用意をした、しかし、幸いにして休戦、停戦が行われて二ヵ月で済んだ、したがって、三分の一残額があるからそれは戦後復興の、ないしは平和回復のためにと言っても、一遍出したお金は私は戻らないと思うのですね。したがって、私は出す段階からこの九十億ドルをどうするかということを考える必要がある、こう思うのですよ。  私は緊急に必要な財源として、今我が国が、先ほど申し上げました例えば難民救済、あるいはこの湾岸の汚染に対する措置、あるいは生活環境関連、そういう資金を緊急に用意をする。財源を、今度平成二年度予算、これはまだ提出はされてないわけですが、補正予算は。そのうちの二千億をこれに充当する、こういう方法はいかがでしょうか。私は九十億ドルの財源として平成二年度、平成三年度の三千億、さらに国債を発行して、その他残余の金もありますけれども、これをもって九十億ドルを出すというよりも、そういう方向性というのはとられないでしょうか。いかがでしょう。
  195. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 問題はあの地域の平和回復、そして安定すること、経済が復興すること、それを強く望んで拠出も決めたわけでありますし、また、拠出するときには湾岸平和基金の運営委員会理事会で拠出国の意向というものが確保されるように、そしてそれぞれのケースによって出すわけでありますから、まず第一には、一番早く必要なことはサダム・フセインが決断をしてあの地域の紛争が終わること、それを強く願っておるわけでありますから、こちらの意向として平和協力基金にはそういったことを絶えず反映することができるように対応してまいりたいと思います。
  196. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今度GCCに出す九十億ドル、これはいろいろ見解の相違は議論の過程でありました。私どもはあくまでもこれは戦費だというふうに思っておりますし、憲法上の疑義も提起をしながら今日まで来たわけであります。しかし、いよいよ停戦、休戦という方向が、私はこの予算委員会をやっている間に一つの方向性が出る可能性というのは秘めていると思っているのです。それだけに、今直ちにこの問題を即決をすることについては、政府側が少しく慎重を要さなければならぬのではないか。GCCを通しましてアメリカに、国防基金に振り込む計画を、この際一時停止をするというお考えはございませんでしょうか。
  197. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連決議に基づいてあの地域に、平和回復活動をしておるところへ、日本としては許される範囲の協力をしたわけでありますし、また、それを政府もいろいろなことを背景にして総合的に考えて、我が国の今日の立場にふさわしい額として九十億ドルを決定をし、そしてこれを国会に、皆さん方にも御議論をこうして熱心にいただいておるわけでございます。これは平和回復活動、それがいつ終わるか、終わったら返せというものじゃありませんから、平和になり、安定をし、あの地域の経済の復興のためにも使われていくということは、これは望ましいことであると思いますから、私はこれは撤回する考えはございません。
  198. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私どもと政府側との間の今までのさまざまやりとりがございました。私は、共通点が一つあると思う。その共通点は、戦後復興に対してはお互いに我が国の経済力に見合い、国際的な平和を維持するという意味においても、あるいは我が国がアラブの石油や、あるいは先ほど東南アジアの課題も申し上げましたが、東南アジアの課題も含めて日本が持つ外交的な影響、これからの経済協力関係を含めて、これに対して積極的に協力していこうじゃないか、この面では全く軌を一にするのですね。そのために必要な、例えば今政府が考えていらっしゃるような財源の措置を提供されるとするならば、私ども喜んで協議に参加したいと思っているのです。  先ほど一体イラン・イラク戦争でどのぐらいお金がかかったのだろうかという例を引き合いに出しました。これは別にその数字が今度の場合当てはまるという意味で申し上げているのではないのです。戦争をやるとそのくらいの潜在的な、戦費として使ったものは、消耗したものは七百から八百億ドルだろう、しかし経済復興にはそれの五倍から六倍の金がかかるということを実は申し上げたわけです。その例として挙げたわけでございます。  今度の場合、一体戦後復興に対してどのくらいのお金が必要なのか。そのために我が国が積極的に協力するならば、それは九十億ドルとは言わず、与野党間でしっかりと話をして、仮にそれが百億という数字になろうとも、私どもは協議に応じてそれを今の財源の中からどう生み出すかという真剣な真摯な討論をしてみたい、こう思っているのですよ。それだけに、今九十億ドル出すというお金は、仮に総理が何回かもうおっしゃってはいますけれども、国民的なコンセンサスのないまま出されるとするならば、それは逆効果を結果的に生むことになると思う。  そこで、どうでしょう、総理。この際、停戦後のことを言うと、いやそれは今そんな時期じゃございませんよというお言葉が返ってくる可能性がありますが、しかし、相当急速な動きで動いていることは間違いない。だとするならば、戦後の中東復興に対して我が国はどうするかということをこの際真剣に取り上げる段階に来ているのではないでしょうか。この際どうでしょう。与野党を通しまして中東に戦後復興のための調査団を出す、そのくらいの用意はどうでしょうか。
  199. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 委員が今私に与野党で一つだけ一致しておることは戦後の復興に金を使うということだ、私と委員の一つだけ違うところ、たくさんあるかもしれませんが、今の御議論の中で違うところは、戦後ということは、私の表現をかりると多国籍軍の平和回復活動が功を奏して平和的に解決するということなのですけれども、それが済むまで何もしないでじっと見ておってほっておけというように私には聞こえますし、私は、それは早く片つけて、これ以上の侵略を許しちゃいかぬ、破壊を許しちゃいかぬというので九十億ドルも国連に協力して出そうということを言っておるわけでありますから、何かほっておきますと、何か無法者におどかされたらおどかされている間は黙って泣き寝入りしておる、終わったら助けてやるからな、これではいけないと思います。  そして、イラン・イラク戦争などのことも四千百七十億ドルの試算があるということも私は知りませんでしたことをお教えいただいたけれども、それなれば与野党で議論しようというときには、我々が出そうという九十億ドルに十億ドル足して百億ドルでも何でもとおっしゃいますが、こんなにたくさんかかるものならばけたの違う大変な議論になりますので、破壊が行われて大きくなるとこういうことになるので、破壊が大きくならないようにとどめるための努力もしてやろうともう一歩前へ来て御議論いただけると、私にとっては大変ありがたいことで、さすが日ごろの加藤先生だということになるだろうと私はこう思うのですけれども、黙って政府と同じことは、終わっちゃってからのお助けは一緒にやろう、そこは一緒だから九十だろうが百だろうが議論してやろう、真剣にやってやろうとおっしゃいますが、その状況を一日も早くつくるために国連の行動を成功させるために日本としても役割を果たそうということをお認めをいただかなければならぬと思うと、その点が私にとっては非常に残念なところでございます。  したがいまして、中東の平和回復が一日も早くなることを願っておりますし、それなりのいろいろな努力も今政府は続けておるわけでございます。ともにどれくらい出すかということについて、また御議論がいただけるような雰囲気に一日も早く転換することを私は強く期待をし、またそのための努力を続けていこうと考えております。
  200. 加藤万吉

    加藤(万)委員 極端な議論を余りしますといけません。今まで、この間何をすべきかということは同僚議員がたくさんやりましたから私はそこをはしょっているわけです。はしょった上で、今日こういう状況になってきたが、対アメリカの外交姿勢についてはこういう転換が必要じゃないですかということを外務大臣に申し上げたわけです。そして、こういう状況になってくれば、いずれ停戦後、休戦後の経済復興にどういう手が今から差し伸べられているかということが、アジアのイスラム教国を含めて、中東湾岸諸国はもろちんでありますけれども、含めて、日本の一挙手一投足が問われる課題になりますから、今からその用意をすべきではないか、こう申し上げているのです。  私は、戦争の長引く一つの原因に、これはどこかの論文に書いてあったのですが、ツケの戦争というのは世界で初めてだ、こういうのですね。いわゆる戦費に対してツケが、日本なりあるいはサウジなり、ドイツなりさまざまな国から提供している。それによって多国籍軍、その中心であるアメリカが財政的に援助といいますか資金協力を受ける、そのツケの戦争が結果的に戦争を長引かせはしないかという疑念を持っている評論家がございました。  私はツケを、九十億ドルがまあ仮に戦争が長引いた場合に我が国がどのくらいまた負担が加算されてくるかということは、これはまた別の問題にしておくとしても、ツケの戦争をさらに容認して続けさせることは決して我が国の外交にとって得策ではない、こう思うのです。それでありますがゆえに、ツケの戦争の部面は、我が国は憲法の上からいっても、あるいは今までの同僚議員からの発言にもありましたように、他の面で戦争の終結に至る協力態勢をとる、そのために必要な財源として九十億ドルを使ってはどうか、こういう提言をしているわけですね。  どうでしょうね、戦後の復興資金、宮澤さんも復興基金計画というのを何か提案をされていらっしゃいますが、復興基金のようなものを設立をする。そのために必要な財源を、例えば今の防衛費は今年度一千億円減額をするという案が次に出そうでありますけれども、思い切って前の中期防衛計画、すなわち十八兆四千億ですか、今度出ているのが二十二兆七千五百億ですね、その差約四兆円ぐらいあるわけですね。私はどのくらいの財源が必要かということは率直に言ってわかりません。これからさまざまな復興に対する財源需要というものを言ってくるでしょう。緊急に必要な財源としては、先ほど申し上げましたように二千億円を平成二年度予算から出すことは可能だという政府の案が出ているわけですから、その金を充当する。さらに、平成三年度の三千億円も含めまして、もし足りない部面があるならば、例えば今ジュネーブから要請されているさまざまな救援活動の財源をそこでさらに用意をする。さらに、今言いました次の中期防衛計画の、米ソの冷戦時代における我が国の防衛費の削減という形を含めて、毎年、五年間で四兆円程度の財政削減をする。こういう中で復興基金のようなものを提起をしていくということは不可能ではないと思うのですが、いかがでしょうか。
  201. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お話の結論の部分については、私もその方向性については同感することができますけれども、何かそこに至るまでの過程で、また先ほどの答弁を繰り返すようですが、おまえもいけないけれどもおまえもいけない、こちらも悪いのはもちろんだがこちらにもこういうところがあると、もう何か日本は世界とともに生きておるんじゃなくて、日本は世界と一歩距離を置いて見ておって、いいとか悪いとかのことは言うけれども、実際そこへ出すのはお金だけで、出ていってさあというときに一緒になって努力しないじゃないかという、そういう非常に大きな強い不満、批判が国際社会にあるんだということもよく自覚をしますと同時に、きょうまでのいろいろなイデオロギー対立の時代は終わったわけですから、そのころ言われた言葉を引用するのは間違いかもしれませんが、このような自由と民主主義とそして人間の道義というものに基づいた一つの方向、理念というものを立てて、世界の国が集まって、イデオロギーを超えてこれは新しい世界の秩序のためにも許せないことだといって、力による一国の侵略、併合を許さないという決議をしてイラクに迫ったときでありますから、これが片つくまでの間は一切それはだめだ、これも悪いがこれも悪い、しかし片ついたら出ていっておれが金出してやってやるぞ、さあ世界集まってこいと言ったって、それが通用するのでしょうか。  私は、国際社会とか国際秩序というものをきょうまで親身になって皆が努力しておるときに、日本もそこに協力をして一緒になって汗を流して将来の世界をつくっていこう、将来の世界の秩序は、暴力で国を侵略することは許しませんよという大前提を認め、それを認めた国が一緒になって努力していってこそ、戦後、さあこれは立て直しましょう、こうしましょうとなるのではないでしょうか。私はそんな気がしてならぬわけでありますから、世界とともにあるんだ、世界と一緒に悩み、苦しみ、努力していくんだという、そういったもう一歩前へ出た、もうちょっと早い時期からの議論や協力が必要であって、そういう政治的立場、そういう協力もしっかりとしていかなきゃならぬのがこれからの日本の国際国家として問われるべき姿勢ではないか、私はこう信じております。
  202. 加藤万吉

    加藤(万)委員 何回もその面については繰り返して申し上げる必要はないと思うのです。確かに今日、イラクの侵略に対する私どもの対応といいましょうか、それは財政的な面、そしてそれから起きた湾岸周辺に対する救援対策も含めて我々は考えていかなくちゃならぬ。同時に一方では、外交努力というものが配置をされて、両々相まって、イラクの経済封鎖という問題もありますよ、それも含めて、イラクの国際的な孤立といいましょうか、あるいはフセインの持つ無謀さ、そういうことがなくされていかなくちゃならない、こう思います。したがって、そういう上に立ってさらに今後の日本の外交のあり方、中東における湾岸戦争後における経済復興のあり方を我が国が展開をする、これは当然必要な措置ではないでしょうか。  いま一つ、私はこの経済的な支援、いわゆる復興の支援活動と同時に、中東における新しい枠組みの問題について議論をする必要があると思うのです。  これは、私は牟田口さんが当委員会で公述をされたことに非常に感銘を実は受けました。それはパレスチナ問題であります。パレスチナ問題に対して牟田口さんはこうおっしゃったのですね。私もこの前の、去年の当委員会発言をいたしましたが、フセインはアラブの大義を何かみずからがやっているという姿勢の中でアラブの共感を得ようとしている、これは間違いである、彼の外交のこうかつな手段としてしかそれは見受けることはできない、こう私は申し上げました。牟田口さんも同じ意見なんです。そこはそのとおりです。だがしかし、日本が中東における新しい秩序をつくるために必要な条件は、かつて三木内閣のとっていた日本の中東政策、なかんずく二百四十二号でしょうか、例のパレスチナ問題に対する日本の対応の仕方、当時の三木内閣の外交姿勢、これが今日ほど強力に新しい中東における枠組みとして提起をされなければならない時期はないのではなかろうかという提案でございました。それは、フセインが持っているアラブの大義としてパレスチナとリンケージするというものとは全然別個のものです、別の次元として日本はそのことを今提起をしなければ、新たな中東における平和の枠組みはできません、こう言っているわけですね。  このことは、いま一つ、今日大変厳しい状況の中でも、アラブの国々が多国籍軍の一部に加わってやっている、これに私は一つの限界があるような気がするのです、この加わっている内容の限界が。先ほどアメリカの外交について、大変私は危惧の念があるということを表明しました。同じことが今参加している多国籍軍の中のアラブの国々の中にもあるんではないでしょうか。いわゆるアラブの国々が多国籍軍に参加をしている条件は、アラブの国々の中で兄弟げんかをしている、しかも、乱暴者のフセインというのがいた、こいつはやっつけなければアラブの国々の平和がない、そこがぎりぎりの中で私は参加をしているような気がしてならない。したがって、リンケージする問題とは別に、このパレスチナ問題を日本が、ないしは次の停戦に至るために、アラブの国々がぎりぎりのところで多国籍軍に参加をしている人々の立場をきちっと守るためにも、西側から問題を提起をする必要があるんではないか。特に、日本の側から提起をする必要があるんではないか。  パレスチナ問題、イスラエル問題を含めましてアメリカが今日までとってきた外交姿勢については、外務大臣御案内のとおりであります。したがって、パレスチナ問題をリンケージするということになると、フセインの言ったことを、それみろ、侵略者に報酬を与えないというが、報酬を与えたことになってしまうではないか、こういう議論ですが、それとは違う意味で、西側の責任として展開をしなければならない新しい中東における秩序として問題の提起をしていく、このことも必要ではないか、こう思うのですが、外務大臣、どういう所見をお持ちでしょうか。
  203. 中山太郎

    ○中山国務大臣 中東地域におきますパレスチナ問題、パレスチナ人の分布の問題、私もいろいろとそういう関連については専門家ではございませんけれども、随分長い歴史の中でパレスチナの人たちは各地、国に分散をしている。そして、ユダヤの人はユダヤで、ソ連を初めアメリカやらいろんな国に長い歴史の中で点在をして、そしてある国では弾圧を受けて、シオニズムが発達して、ユダヤの国をつくろうという動きがあって、一九四七年にイスラエルが国連から分割されるということになって、四八年に誕生してきたわけでございます。そういう中で、そのイスラエルの独立をめぐってエジプト、シリア等がまたあそこで第一次中東戦争を起こす。  そういう長い歴史の中に我々日本というものがどの程度関与し得たかといえば、歴史の記録によれば、このパレスチナ地域はすべてかつてはイギリスの第一次大戦後の委任統治領であった、あるいはシリア、レバノンはフランスの委任統治領であった、こういったような長い過去の歴史の中で、それぞれの地域と人間と民族、この関係が、宗教を含めて交錯している。しかも、このモスレムの世界は、アフリカでいえばアフリカ大陸の北の方、マグレブ経済連合の地域をずっと覆っている。  こういった中で、我々はこの全体のアラブの問題をどうするのか、それからパレスチナのこの問題はどういうふうに解決したらいいのか、イスラエルとの対決はどうするか、ここいらに私は、戦後のいわゆる、戦後といいますか、安保理の決議が受諾された後のこの話し合い、中東和平会議というものが国連を舞台にまたそこで展開を始めるのだろうと思います。  日本はこの地域に今申し上げたように植民地を持ったこともございませんし、特殊な利権を持ったこともございませんでしたから、経済大国となった日本は、この地域の戦後復興についても、我我は自分たちの経済力あるいは技術力、そういうようなものを提供できる立場にあると思いますけれども、いずれにいたしましても、この地域の安定が世界の全体の安定につながっていくことは否定できない事実でございますので、委員の御指摘のように、日本政府としても十分この地域の特性を考えながら善処を尽くしていきたいと考えております。
  204. 加藤万吉

    加藤(万)委員 外務大臣、牟田口さんがこういうことをおっしゃったのですよ。今外務大臣がおっしゃった、あそこについては日本は手を汚していない、したがって、日本の立場は物が言いやすい立場にある。この手を汚してないということは、何にもしなかったことを意味しているというのですよ。やはり、三木内閣が中東問題を本格的に取り上げたというのは、その反省の上に立っているのですね。手を汚してないということは、何にもしてなかったことを実は意味していたんだ、したがって、手を汚すか汚さないかは別にしまして、中東に対するこれだけの石油の供給を、原油の供給を受け経済的にも関係の深い日本が、なぜ今まで中東に対して外交がなかったのかということを反省した。したがって、手を汚さなかったことが今生きているんだというのじゃなくて、本来いい意味で手をかさなきゃならなかった日本の外交がその手をかさなかったんだ、したがって、このパレスチナ問題が出たときに我が国は率先してそれを支持をし、同時にそういう外交を展開したんだ。このことを私ども政治家、日本の国民は考えるべきだと思うのですね。  今日、停戦という状況の中、まあ停戦になることを期待するわけですが、停戦のそういう萌芽が出ているときに、今我が国が、総理がずっとおっしゃっているように、とにかくクウェートからの撤退だ、それは確かにそうです。第一前提条件はそうでしょう。同時にいま一つは、手を汚さないという意味ではなくて、手をかさなきゃならない状況があるにもかかわらず手をかさなかったことを過去の日本の政治が反省をしたとするならば、この時期に手をかすという状況を私はつくり上げるべきだと思うのです。これはまたアメリカとの外交問題になってくるわけですが、アメリカがイスラエル問題を含めてなかなかこの問題に踏み切れないというならば、停戦の可能性のある条件の一つとして、西側がそういう外交を展開するために日本がアクションを起こすというのも一つの方法ではないでしょうか。私はそう考えるのですが、どうでしょう。
  205. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、この地域の歴史の中における干渉した国々は、残念ながら日本がその中に名を連ねていない、こういう一つの歴史の上に立って我々がこの地域と特別な関係を強化するに至ったものは、第一次石油戦争のときであったと思います。  しかし、戦後の日本の復興期において燃料として使われてきたものはほとんど石炭でございましたけれども、この石油価格が意外と低いバレル当たり八ドルぐらいのころから、やはりこの石油を利用して日本の化学工業を発展させよう、こういう日本の政府の大きな政策の中に日本の工業化が進んできた。こういう中で巨大タンカーをつくり、巨大なオイルの基地をつくって、我々は安い原油を手に入れるために商社を初め政府も大変な配慮をしてきた。その中に、外務省の中にもアラビストが育ってきたことは事実でございます。  そういう意味では、中東と日本との外交関係というものは深いようで実は日が浅い。こういう中で、我々は謙虚な反省に立ちながらこれからの地域の繁栄のために我々のかち得た技術力と経済力をどのようにこの地域に提供していくか、こういうことに我々は期待されるのではなかろうか、このように認識をいたしております。
  206. 加藤万吉

    加藤(万)委員 時間が参りましたから、締めくくり的な御意見を申し上げておきたいと思うのです。  私は、中東問題に対して同僚議員となるべくダブらないところで提言を一つ一つ試みてみました。私の第一に申し上げたかったことは、今アメリカが外交的に展開しつつある方向性というものは、今国民が思っている対アメリカ観から見ると少しく乖離があるのではなかろうか。その乖離の上にのっとって日本が外交を展開してまいりますと、何かアメリカのしり馬に乗ったような形の外交しか目に映ってこない。したがって、そこには日本独自の外交路線というのがあってよろしいのではないか。その外交の路線の一つには、アジアにおける日本の対応が問われる課題が内包されておりますよ。したがって、アジアというものを見ながら、対アメリカ、対ソビエトの外交の位置というものを、スタンスをしっかり置いて展開をしてほしいというのが第一に申し上げたかったことであります。  第二の問題は、今九十億ドルなり自衛隊の飛行機の派遣問題がいろいろ議論されていました。この違法性とか合法性とかさまざまな議論があって、我々の立場はもう明確に示してまいりました。そういう貢献策というものも一つの考え方でしょう、政府側に立てば。しかし同時に、いま一つは、湾岸に対してどういうような経済的な援助というものを、緊急にしようとする経済援助をどうするのか。同時に、戦後復興という課題をとらえて、我が国はどういう経済的な援助をすべきか。これは、我が国が持っておる経済力あるいは今日まで中東から受けてきた石油の、原油を中心とする恩恵など含めて、新たな視点で考えるべきではないか。そのために必要ならば、今の平成二年度予算あるいは平成三年度予算の中で始末できる緊急的な財源、同時に、将来にわたってやるとするならば、防衛費の削減を含めて考えてみてはどうか、これが第二点のところ。  第三点のところは、今議論がありました、単に、パレスチナ問題はリンケージをするという立場からこれを拒否するとかあるいは対停戦の条件にしないというような、そういう視野でとらえるのではなくして、日本が手をつけなかったことは、かつて日本が反省したと同じ立場に立って、今日の停戦なりあるいは休戦という状況の中で新たな次の中東の和平の枠組みとして考えていく課題として提起をすべきではなかろうか。  そして、私は最終的に申し上げたいのは、かかる条件を生み出したのは、実は先進国の武器輸出に大きなその原因があったことを我々は再び反省をしていかなければならぬのではないか。したがって、国連におけるこれからの行動は、この武器輸出の問題をめぐっても、再びかかる事態が起きないような、事態を招来しないためにも、国連の中で決議をするという方向性というものを外交として展開してほしい。  さまざまな課題を申し上げましたが、以上のような論点できょうは中東問題をとらえさせていただきました。どうぞ私どもの意のあるところをお酌み取りいただいて、それぞれの施策に生かしていただくことをお願いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  207. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑は終了いたしました。  次回は、明二十日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四分散会