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1991-02-07 第120回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月七日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       井奥 貞雄君    内海 英男君      小此木彦三郎君    越智 伊平君       加藤 紘一君    狩野  勝君       金子 一義君    金子徳之介君       倉成  正君    小坂 憲次君       後藤田正晴君    佐藤  隆君       志賀  節君    田邊 國男君       津島 雄二君    戸井田三郎君       萩山 教嚴君    林  義郎君       原田  憲君    穂積 良行君       松永  光君    松本 十郎君       村田敬次郎君    村山 達雄君       綿貫 民輔君    五十嵐広三君       串原 義直君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       辻  一彦君    戸田 菊雄君       野坂 浩賢君    藤田 高敏君       堀込 征雄君    武藤 山治君       和田 静夫君    石田 祝稔君       日笠 勝之君    二見 伸明君       冬柴 鐵三君    小沢 和秋君       佐藤 祐弘君    山原健二郎君       神田  厚君    中野 寛成君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       公文  宏君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       米山 市郎君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         内閣総理大臣官         房審議官    文田 久雄君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       矢部丈太郎君         警察庁警備局長 吉野  準君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  小山 弘彦君         総務庁恩給局長 高島  弘君         青少年対策本部         次長      杉浦  力君         北海道開発庁計         画監理官    平工 剛郎君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  宝珠山 昇君         防衛庁参事官  上原 祥雄君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         経済企画庁総合         計画局審議官  高橋銑十郎君         環境庁企画調整         局長      渡辺  修君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         環境庁自然保護         局長      伊藤 卓雄君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵大臣官房総         務審議官    濱本 英輔君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         文化庁次長   遠山 敦子君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         厚生省生活衛生         局水道環境部長 小林 康彦君         厚生省年金局長 末次  彬君         厚生省援護局長 岸本 正裕君         社会保険庁運営         部長         兼内閣審議官  大西 孝夫君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省農蚕         園芸局長    安橋 隆雄君         農林水産省食品         流通局長    馬場久萬男君         水産庁長官   京谷 昭夫君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       坂本 吉弘君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         通商産業省立地         公害局長    岡松壯三郎君         通商産業省基礎         産業局長    内藤 正久君         通商産業省機械         情報産業局長  山本 幸助君         通商産業省生活         産業局長    南学 政明君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         運輸省国際運         輸・観光局長  寺嶋  潔君         運輸省海上技術         安全局船員部長 小和田 統君         運輸省航空局長 宮本 春樹君         海上保安庁次長 豊田  実君         郵政大臣官房経         理部長     吉高 廣邦君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省労政局長 清水 傳雄君         労働省婦人局長 高橋柵太郎君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君         自治省財政局長 小林  実君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 二月七日  辞任         補欠選任   粟屋 敏信君     金子徳之介君   内海 英男君     井奥 貞雄君  小此木彦三郎君     萩山 教嚴君   越智 伊平君     小坂 憲次君   加藤 紘一君     金子 一義君   志賀  節君     穂積 良行君   浜田 幸一君     狩野  勝君   串原 義直君     堀込 征雄君   日笠 勝之君     二見 伸明君   辻  第一君     小沢 和秋君   中野 寛成君     神田  厚君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   狩野  勝君     浜田 幸一君   金子 一義君     加藤 紘一君   金子徳之介君     粟屋 敏信君   小坂 憲次君     越智 伊平君  萩山 教嚴君     小此木彦三郎君   穂積 良行君     志賀  節君   堀込 征雄君     串原 義直君   二見 伸明君     日笠 勝之君   小沢 和秋君     山原健二郎君   神田  厚君     中野 寛成君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算平成三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦利尚君。
  3. 松浦利尚

    松浦(利)委員 まず、委員長にお願いをいたします。  実はきょうの朝刊に、きのうの共産党の不破委員長質問に対して、国会違憲決議をしても首相は撤回しないという見出しが出ておりました。これは、もし事実であるとすれば一国の総理として極めて重要な発言ですから、きのうの会議録を早急に委員長、取り寄せていただきまして、本委員会に御提示をいただきたい。
  4. 渡部恒三

    渡部委員長 わかりました。早速そのように取り計らわせていただきます。
  5. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は法律についてはずぶの素人で、余り詳しいことはわからないのですが、この総括質問に入りましてから、どうもやっぱりわからないことが余りにも多過ぎるのです。ですから、国民が考えておるレベルで一遍質問をさせていただきたいと思うのです。  それは、この特例政令を決める前に、政府の動きについて新聞にいろいろな報道がされたのです。しかし、歴代内閣法制局長官は常に、自衛隊海外派兵というのはできないんだということを一貫してずっととり続けてこられたのです。今度の場合も一生懸命、まじめな局長ですが、必死になってやっぱり法を守る立場で、今回の訓練根拠した場合であっても慎重でなければならぬ。今度の場合でも、有事の際だ、緊急だ、何とかかんとかと言ってみても、自衛隊機海外に出すことは無理なんだ、終始一貫そういう態度を法制局は貫いてきたけれども、その法制局長官に政治的な圧力がかかってきまして、本来ならこの立法府である国会に、自衛隊法の大幅なこれは見直しでありますから、自衛隊法改正を提案することが筋だけれども、緊急だ、人権だ、何だかんだということが優先的に取り上げられて、政治的に法制局長官が追い込まれて無理な解釈をした。これは新聞記事ですから、安全保障会議でいろいろ閣僚の議論があったことを書いてあるのですが、その中に、これは橋本大蔵大臣というふうになっておるからあえてここを申し上げるのですが、橋本龍太郎蔵相が、髪の毛一本のすきでもいい、何とか工夫せよ、こう言ったとなっているのです。  ですから、私たち国民立場で見る場合、私も政治家ですから一応国民立場から見た場合に、今度の問題は法律的には非常に厳しい。従来の自衛隊海外派兵することは難しい、自衛隊機を送ることも難しい、そういう法体系の中でありながら、政治的にそれを押し切ってしまったという背景があるのではないか。だから、後でつじつまを合わせて法制局長官がややこしい、日本語にならぬ日本語で無理をしておるのではないか、こういうふうに受けとめておるのです。総理、その点どうですか。
  6. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな報道がなされておることを引用しての委員の御質問でございますけれども、今回の場合、当初に考えましたのは、あのような湾岸危機原因としてクウェートやその周辺から避難民が出る、非常に気の毒だ、人道的な立場で移送をしなければならぬ、どうしたらできるか、その角度に立って議論をして、当初IOMから示唆のありましたルート、要するにカイロそれから本国までの間は民間機でも引き受けてもらうことができる。これは民間会社と話をいたしました。その先のことについては、これは御協力できる状況にならない。どうなるかわからぬけれども、いろいろな場合があったときに、協力できないからだめだでほっておいたのでは、日本の国際社会においてできる限りの協力をしますと言っておる姿勢が問題になるわけでありますから、自衛隊法の第百条の五を私は素直に読んで、「内閣総理大臣その他政令で定める者」を飛行機で輸送することができる、こう書いてあるわけですから、だから、素朴に素直な議論をとおっしゃるから、私も非常に率直に申し上げているのですけれども、法律にこの根拠がなければ別であります。「政令で定める者」をということがなければ別ですが、きちっと書いてあるわけでありますから、その範囲に従って政府の責任において政令をつくり、今回の場合のこういうときにということを極めてきちっと限定的に書いて、そしてこれを国会の御質問にも答えて申し上げておるわけでございます。  ただ、内閣法制局長官に、その考え方について、政府はこれでできると思うがどうかということ、これは聞きますけれども、政治的に圧力を加えて強引にどうのこうのということは、ちょっとこれは違います。
  7. 松浦利尚

    松浦(利)委員 圧力という言葉が使われておったら、それは訂正いたしましょう。御一緒ですから、内閣は。  それじゃ、あなたは素直に素朴にと言われましたから、私も素直に素朴にこの法律を読ませていただこうと思うのです。――そうしてくださいということですから読み上げますね。「国賓等輸送」第百条の五、一、「長官は、国の機関から依頼があった場合には、自衛隊任務遂行に支障を生じない限度において、航空機による国賓内閣総理大臣その他政令で定める者(次項において「国賓等」という。)の輸送を行うことができる。」ですから、「政令で定める者」も含めて次項からは「国賓等」、こう言っているのです。わかりますか。  日本語解釈しますと、「内閣総理大臣その他政令で定める者(次項において「国賓等」」という言葉を使うのを避けたのだ、省略したという意味で「次項において「国賓等」」というふうに、これを「定める者」を置きかえておるわけですよ。いいですか、これが日本語の読み方ですよ。  それで、あなたがいろいろ言われるから、「等」という言葉の、広辞苑から僕はちょっと調べてみたのですよ。そうしたら「ひとしいこと。おなじ。」こと、「なかま。」「複数を表わし、または他を省略するのに用いる」言葉なんです。どっちが素朴でしょうか。どっちが素直でしょうか。私の方が――委員長文学者です、文学部出身だから。あなたも私と同じだと思いますよ。どう法律を読み返してみてもこの条文はそうですよ。  そして、これを受けて百二十六条の十六で「法第百条の五〔国賓等輸送〕第一項に規定する政令で定める者」、この「定める者」というのは「国賓」なんですよ、「等」なんです。それが法律解釈ですよ。だから次に列記しておるわけですよ。その六項に列記することができますか。その六項にできるというなら、その根拠を教えてください。なぜできますか。法律解釈というのは素直に読むものですよ。これを拡大解釈するから犯罪が起こるのですよ、これは犯罪とは別ですけれども。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いや、犯罪じゃありません。  申し上げておきますけれども、委員素直に読めとおっしゃいますが、もう一回言いますと、「国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」と、いつもいつも「国賓内閣総理大臣」「政令で定める者」というのを、括弧において次からは「国賓等」、こう三つの字に短縮して、「国賓等」ということは、すなわち、百条の五に書いてある「国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」ということを意味するというのが、これが素直な解釈だと思いますし、私はこういう解釈をすることを犯罪だとは思っておりません。これが素直な受けとめ方じゃないでしょうか。
  9. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それは、そんなことを言ったら、そんな拡大解釈したら「その他」は際限なく広がっていくでしょう。すべてのものが全部できるのですよ。時の権力者が自由に判断をして、自衛隊機を自由に使わせるということができるのですよ。海部内閣のときは別にして、次の内閣ができたらまたふやす、またふやす。だから、そういうことができないように、これは限定をしてあるのです。  だから、これを提案したときの提案理由がどうなっていますか、法制局長官。このときの提案理由は、このときに言われておることは、サミットに使用したヘリコプター自衛隊が運用すること等に伴い必要だから改正をさせてくださいという提案理由の説明ですよ。これは限定してあるのです。それは政府が出したのですよ。海部内閣一貫性がありますから、自民党内閣ずっと続いてきておるのですから、だからそういうところからいえば、この法案が提案されたときは、間違いなくサミットで使用したヘリコプター自衛隊が運用すること等に伴い必要だ、こう言っているのですよ。あなたはそれ以上のことをしようとしているのですよ。それなら、なぜ法を改正してこの中に条文を入れようとせぬのですか。それが当然でしょう。それじゃ、なぜここでこんなことをする必要がありますか。どうですか、それは。  私たちは、このことを再三再四各党の党首が立って質問しておるけれども、かみ合わない理由はそこなんですよ。何で政令で今回に限ってこれをやったのかというのがわからない。あなた方が立法府を信用しておらぬというなら別だ。立法府というのは与野党で成り立っておりますよ、こっちからこっちは自民党。しかし、全体は与野党によって立法府は成り立っているのだから、その立法府を信用しないからこうやったというなら、それはあなた方の判断でしょう。しかし、立法府に対して、当然自衛隊法の根幹にかかわる重要な部分については、こういう理由を付して改正案を提起すべきです。判断を仰ぐべきです。それを怠った理由は何ですか。
  10. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨日来何回もお答えしておりますけれども、この立法のときに国会の御意思が、きのうも議論があったように、制限列挙であるなれば、要するに国賓内閣総理大臣以外はだめだということなれば、そのような表現をされることが法治国家としてはなすべきことであって、立法府意思はそこにきちっと出るはずなんです。ところが、これにはそう書いてない。例示列挙であります。「その他政令で定める者」ときちっと書いてあるじゃありませんか。それは、拡大だとか拡小とかおっしゃいますけれども、その基準は、文字に明らかに書いてあることによって政府としては受けとめる以外、受けとめる方法がありません。  それぞれの視点、それぞれの立場、それぞれの状況に立って、何でもできるというものではありません。だから「政令で定める者」という基準がきちっと書いてあって、それは類型、きのうの御議論では範囲類型に従うものだということだとおっしゃるなれば、なぜこのとき、立法のときにこの範囲類型のものに限るとか、あるいは制限列挙でこれをきちっと決めなかったのかということが解釈上は問題になるわけで、私は「政令で定める者」というのを素直に読んで、政令はこういうものでございますということをお示ししておるわけでありますから、これは、私の意見はそういうことでございます。
  11. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今の議論はもう全くナンセンスだと思いますね。――いや、あなたがわかっただけですよ。国民はわからないよ。文句があったら、あなたも立って質問せいよ、時間やるから。  それで、いいですか。それなら、あなたは緊急とか人権とか、そういうことを盛んに言われますね。ところが、国際緊急援助隊派遣法案議論されたときに、昭和六十二年八月十九日ですね。衆議院の外務委員会等会議録を私はここに持っていますけれども、このときは要するに災害等による緊急出動ですね。そのときには自衛隊は省かれたのです。災害被災者、これは自衛隊派遣から除外戦争による被害者罹災者罹災者は同じ、しかし、起こった原因が違う。片一方災害で起こった罹災者片一方湾岸戦争で起こった罹災者。しかし、受けた国民は、何ら被害を受けておる形は変わらない。そっちの緊急措置には自衛隊派遣は、これは出動は見合わせる。法律的に適用除外だ、できない。今度の場合はできる。これはまさに法律権力を握った者の自由裁量じゃないですか。こんなことができますか。  法律が、同じ法律権力を握った者の自由判断によってこういうふうに改正されていく。たまたまこれは一自衛隊機派遣するかどうかの問題。しかし、将来こういったことがどんどん慣行として行われるようになったら、議会制民主主義というのは一体どうなるのですか。三権分立そのものが破壊されていくのじゃないですか。だから、三権分立が成り立ち、私たちがその問題について正確に議論をして、政府に委任するのでしょう。そういう手続があるのでしょう。今度の場合は無理していますよ。あなた方は日の丸の飛行機が中東、アジアへ飛んだからよかった、よかったと思うかもしれぬけれども、後でこのことがあしき前例となって、どういう事態が起こったときに――あなたは政権ずっとおるなら別ですよ。私は戦前の経験者だよ。一つの法律が時の権力者によって自由裁量で使われて、そのときの政府が適当に拡大解釈しないようにまさに歯どめをかけるのが立法府でしょう。今度はその努力を怠っておるのです。その努力をなぜしないのですか。なぜ立法府にゆだねるという努力をしようとしないのですか。海部さんは三木総理のまな弟子でしょう。橋本さんだって一生懸命そのとおり努力しておられるでしょう。なぜ今回に限ってこういうことをするのですか。答弁してください。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 三権分立の御議論、それから行政と立法府と司法府と分かれておるという御議論、私はそれはよく承知いたしております。したがって、立法府が唯一の立法機関として法律をつくられる、その法律の授権の範囲内で行政が行われる、それはそのとおりなんです。ですから、私申し上げるように、立法府意思でそれらのこと以外はいけないというときは、やっぱり制限列挙できちっと意思を表明していただくことが、これが望ましいわけであって、この百条の五は自衛隊法審議のときに立法府の御意思を十分反映してできておるわけであって、それを私が、先ほど来委員がおっしゃるように、国民立場に立って素直に考えますと、「国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」を飛行機で輸送することができる、こう書いてあるわけです。きのう来の御議論でも、これは例示列挙であって制限列挙ではないということも言われておりますし、もし制限列挙でいけないというならば、「その他政令で定める者」という大幅な表現の仕方で政令にゆだねるということになっておりますと、これは全く法律議論になりますから法制局長官が後ほど答えてもらいたいと思うけれども、これは、立法府が決めたことに行政府は従わなければならない、それは法律その他においてお決めになったことには従わなければなりません。けれども、その法律に「政令で定める者」、行政府はそのほかこういうことができるという規定があるわけですから、この法律をつくるときにそれがいかぬというなれば、制限列挙なりあるいはこれとこういうものはだめだとか書くべきだと思います。へ理屈じゃなくて、これは避難民輸送したいという人道的な立場に立っての問題とともに、これらのことについては、私はこれはあしき前例とおっしゃいますが、国際的にこれだけ困って、この平和をみんなが希求しているときに、武力による侵略、侵攻があって、そのために避難民の人が出てきて困っておるところを助けようということで、人道的な立場に立って行動するのですから、これはあしき前例になるとは私は考えません。
  13. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、全然今の話には納得いたしません。  それでは総理、何で二院制があるのですか。緊急時、国会が解散中であっても、政府は緊急事態が発生したときには参議院を召集してやれるでしょう。憲法は緊急事態に備えてそこまで用意してあるのです、日本の憲法というのは。国会解散中といえども、参議院を召集して審議できるようにしているのですよ。だから、さっきから言うように緊急事態、人道的人道的とこう言われてみても、なぜあなた方は正々堂々とこの立法府に提案をして、従来どおり審議を求めようとしないのですか。この前の緊急、正式――だめだと言っているじゃないか。  先ほど申し上げましたように、国際緊急援助隊派遣法審議のときには自衛隊を外してあるわけですよ、自衛隊が外してあるわけですよ。今度も同じような状態の中で、何で政令に委任しなければなりませんか。私たち国会から言わせれば、提案理由があったのは、サミットに使用したヘリコプター自衛隊が運用する等に伴い必要だからといって、改正を認めたのですよ。これは私たちがあなたに政令を委任した範囲なんです、あなたの授権の範囲はここまでなんです。それを政令が一方的に拡大解釈するという形では、私たちは納得できません。私たちを信用しないのですか、信用しなければいいですよ。あなたが立法府を信用しないからこういうことをしたんですと言われるならそれはそれ、あなたの考え方でしょう。
  14. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 立法府を信用し、立法府意思を尊重するというのは行政の基本的な立場であることは申し上げるまでもないことと思います。ただ、そうおっしゃいますが、おまえに委任したのはここまでだと立法府立場で行政府におっしゃいますが、素直にこれを読んでみますと、「その他政令で定める者」と明らかに明記してあるのですから、立法府の御意思はここにあると受け取るのは当然のことではないでしょうか。いけなければそれ以上のことはいけないと読めるような明確な法律をつくってもらうのが、これが立法府の考えではないでしょうか。  だから、解釈の幅がそのときそのときによって変わるとおっしゃいますが、これから将来この法律を読む人々は、ここでやはり「内閣総理大臣その他政令で定める者」ということが書いてあれば、内閣の責任において、そのときどきの情勢に応じて政令で定めることができるというふうに解釈するのが素直な読み方ではないでしょうか。それをこちらが類推して、こうは書いてあるけれども何もしてはいけないんだというようなことにはならないようにしておくことが大切だと、私はそう判断をいたしております。
  15. 松浦利尚

    松浦(利)委員 百二十六条の十六を読んでみてくださいよ、そういう解釈になるかどうか。「国賓等範囲」第百二十六条の十六は、  法第百条の五第一項に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。  一 天皇及び皇族  二 国賓に準ずる賓客  三 衆議院議長及び参議院議長  四 最高裁判所長官  五 内閣総理大臣又は前二号に掲げる者    に準ずる者 これだけですよ。これだけ、その範囲内で、そのことを第一項でくくっているのです。法制局長官、どうですか。
  16. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  まず、委員御指摘の百条の五、一項と政令の関係でございますが、自衛隊法百条の五第一項、これは委員先ほど読み上げられましたけれども、航空機による輸送の対象というのは、「国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」、かようになっております。その政令におきまして、今国賓内閣総理大臣、こういうふうに代表列挙されておりますそういうものとかけ離れたものを規定する、これは予定されない、これはこれまでも繰り返し御答弁申し上げているところでございます。  ただ、かけ離れているかどうかというのは、いわゆる高位高官、これも繰り返し御答弁申し上げていますが、いわゆる社会的地位、こういうことで申し上げているわけで、そういう点に着眼して判断すべきものではなくて、むしろ国としてそういうある範囲の人を輸送する必要性、そういった状況判断して評価すべきである、かように申し上げているところでございます。  そこで、今回のような湾岸危機という場合に、人道的あるいは臨時応急に、こういうふうなことを申し上げていますが、それはそういう国として輸送する必要があるかどうかという判断基準、これに照らして該当するであろう、航空機を用いてそういう意味で輸送する必要性、これは先ほど申し上げました百条の五のいわばかけ離れているかどうかというときの判断基準の中にそれは含まれるであろうということが一点でございます。  それから、そういった場合に、それでは今委員御指摘の百二十六条の十六の一号から五号まで、ここの後ろに並べられるかということでございますが、これにつきましては、確かにここに並べることと、それから今回のように暫定政令を出すこと、二つの話がございますが、今回のは何といいましても、湾岸危機に伴った当分の間の措置である、そういう意味では一般的な、失礼ですが、いわばここに一号から五号まで掲げてある方は、言ってみればいつでもといいますか、そういうふうな意味では恒久的に運べる方として、輸送できる方として掲げてあるのであって、今回の「当分の間、」というのは、まさに今回の湾岸危機に伴って生じたその間の、しかも国際機関から要請を受けた避難民、こういうことで非常に時間的に、言ってみれば恒久的でない、どこでもいつでもということではない、こういう意味で別の政令にしたわけでございます。
  17. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いや、だから総理、今言ったようなことだから国会へ出してもらいたいのですよ。今言ったような、湾岸戦争に伴って難民を輸送しなければならない重要な案件であるがゆえに国会に出してもらいたいのですよ。それを避けようとした理由がわからない。やれるからやれるからと盛んに言うだけだけれども、なぜ立法府に重要なこの問題についてかけて議論をしようとしないのですか。それが私はわからない。私たちは難民を輸送するななんて言わぬですよ。輸送する手段が違うだけでね。ただ、あなた方は自衛隊機が飛ばしたいんでしょう、ただそれだけのことでしょう。自衛隊機に難民を乗せたいという思いが強いばかりにこうなるのじゃないんですか。要するに、自衛隊を使って難民を運びたいというところに目的があるのでしょう、だから出さないんでしょう。これは私は類推して物を言っているかもしれませんよ。しかし、国民から見たら、どうもそういう考え方にしかならぬ。立法技術論から考えてみても法律解釈から考えてみても、それは与党は多数だからあなた方と同じかもしれぬけれども、我々とはかみ合わない。かみ合わない。ですから、そういったことを考えてみると私は、自衛隊機派遣することに目的があるというふうに思うのです。どうですか。
  18. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 物を見るいろいろな視点がございますけれども、議員のおっしゃる視点と私の願う視点とまるっきり違うということをこれほど感じたことはありませんでした。避難民の皆さんが移送されるようにしたいというのがこちらの願いで、避難民の移送に限る。そこへなぜ、おまえは自衛隊機を飛ばしたいと思っているんだろう、自衛隊機避難民を乗せたいと思っているんだろう、それは憶測というものでございます。  私どもは、避難民が移送できればそれがすべてでありますから、だから頼んで最初に民間航空の人も今回いろいろな条件を乗り越えてカイロまでの往復なら引き受けましょうと言われたから、まず第一陣四機行ってもらったわけです。参議院の御質問のときも社会党の代表の方が、人も物もお金もうんと出して、避難民輸送もうんとやろう、やろうと。だから私はそのときには、民間航空に我々が頼んだりいろいろしておる、どうか協力してくださいということも、私は壇上からお願いをしたはずです。してやろうとおっしゃいました。だから、それができる限り既に民間航空の皆さんも運んでおってくださるんです。いろいろな場合を想定して、どうしても難しい場合、例えば最初の示唆のあったときに、ではどうしてカイロまではいいけれども、その先のアンマンまではいいとは言っていただけないのでしょうか、それに対して説得の御協力もしてくださいとお願いしておるじゃありませんか。  法律には書いてある、なければ出しますが書いてあるんだから、「政令で定める者」と、素直に読めとおっしゃるから素直に読んだら書いてあるわけでありますから、ですからそういう意味で、避難民の人を運びたい、頼まれたときには、国際機関から要請があったときにそんな理屈をこねておる時間はありません、人の命をどのようにしてやるかということでありますから、それに対応する準備と心構えをしなければならぬと思って、私は最初の閣議のときにそのようなことを話し、民間機にお願いをする、やってもらえるだけはやってもらう。二十一日の具体的な要請は既にそれでおさめておりますが、その後不可能だという返答が来る場合、あるいは保険その他のいろいろな問題があってどうしても行けないときは、それは日本としては自衛隊輸送機によって拠点輸送をするということは、これは憲法違反ではありませんし、武装部隊を出すわけじゃありませんから、議論になっておる海外派兵ではありませんから、それはできることならばしてあげることが避難民のためになる、こう思っておるのですから、どうぞその点は、もしそのようなお考えであるとしたら、何が何でも乗せたいなんというものではありません、要請があったときにこたえて、その方法しかないときはそれができるような準備と対応を政府側できちっととっておるのだ、こういうことであります。
  19. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、私が緊急的に行うことを提案をいたします。  私は、前から国立ヨルダン航空の東京支店に電話を入れて確認をいたしました。政府からヨルダン航空に対して何の要請も現在行っておりません。ヨルダン航空は四、五日前に、日本政府から要請があればチャーター便のボーイング727を配置いたします、そして、きのう楢崎委員も言っておられましたが、アンマン―カイロ間、百三十五人乗り、六百七十五万円、七回利用して四千七百二十五万円、一人大体邦貨に直して五万円で輸送できるそうです。そしてそれに対して、自衛隊機は一機九十人乗るか乗らない程度です。しかも、国際法上は軍用機は難民を乗せておったとしても、あそこは戦争地域ですから標的対象になります。非常に危険です。赤十字のマークか何か入れるなら別ですよ。日の丸の旗であれば、イラク大使が言っておるように、日本は多国籍軍に参加をした敵国だから、いつ地対空ミサイル発射されるかわからない。撃墜された難民に日本政府がどうやって責任を負うのか。  一番安全な方法は、民間機を利用することが一番安全なんです。しかも、ヨルダンに集まっておる避難民を抱え込んでおるヨルダン政府なんです。そのヨルダンの国立航空会社が引き受けましょうと言っておるのですよ、日本政府が要求したら。私たちは大賛成です。直ちにやってください。そうすれば自衛隊機派遣しなくて済みます。これほど国論を二分しなくて済みます。世界に向かって、日本国民の世論が一致して難民救済するために必死になって努力しておる姿が、アメリカにも映るでしょう、多国籍軍にも映るでしょう。その金なら私たちは惜しみません、どんどん出します。しかも今、市中ではボランティア活動がどんどん深まってきて多くの金がIOMに送られておる。日本政府も、そういう状況です、金は出そうじゃないですか。難民も輸送しようじゃありませんか。きょうでも、IOMから自衛隊機を出してくださいという要請がなくても、難民は続々と集まっているのです、日本の意思で今からでもヨルダン航空に契約をして出したらどうですか。どうですか、私はそのことを提案します。
  20. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連から委託を受けたIOMが国際機関として難民輸送を、それぞれの国に要請をしながら、最も安全で、最も効率的で、最もいい方法でやろうとして、そのために動いておる組織であり、国連のUNDROから要請された、そのために必要な初動の費用三千八百万ドル、日本は全額それを拠出いたしました。そのお金を使ってIOMは具体的な必要が起こればそれぞれの国に要請をしてやるわけです。具体の要請を受けた日本は、第一回、ベトナムへの送還をきちっととり行いました。IOMという国際機関がその立場に立って、安全を確保したり、必要に応じたり、いろいろやる責務を国連から委託受けておるのですから、そこと日本政府も十分協力して、あくまでねらいは避難民の安全な輸送である、このことはもう百も確立されておる原則でありますから、今後ともIOMと十分連絡をとりながらそういった方針で努力をしていく、積極的に協力をしていくつもりであります。
  21. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いや、私が言っておることは、IOMが要請する前にもう既に難民がどんどん来ておるのですよ。あなたは今直ちにと言われたから、今直ちにやる方法はあるじゃないですかと言っているのですよ。だから――勝手なこと勝手なこととあそこで盛んに言うけれども、勝手なことじゃないでしょう。難民輸送というのは緊急的なことなんでしょう、だから立法府議論を抜きにして政令でやったのでしょう。緊急性があるからやったのでしょう。その緊急性なんですよ、今。もうどんどん集まりよるのですよ。機関から言ってこないからやりませんでこうしていますか。難民はどんどんふえよるのですよ。今言った私たちの提案を生かしてどんどんどんどん輸送したらいいじゃないですか、なぜやらぬですか。その方がおかしいですよ。立法府の私たちに審議権を与えずに政令を緊急、人権的に急ぐからといってやっておいて、片一方では、準備だけはするけれどもIOMからの要請がないから飛行機は飛ばしません、どこにつじつまが合いますか。それじゃ、このままずっといってしまったらどうしますか。ヨルダンから、受け入れないということになったらどうなりますか、自衛隊機を受け入れないと難色を示しておるのだから。山口さんが行って一生懸命頭を下げて――勝手にできますよ。日本政府がやればできるのですよ。なぜできませんか。やってください。日本政府がやるんじゃないか。
  22. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 きょうまでいろいろな議論の中で、国際機関から正式に頼まれたのかということが大前提の御質問が随分あって、勝手な幅広いことをするなということもございました。だから、国際機関にも拠金は支出いたしますし、必要なものは。それから要請されれば、既に日本もこたえて第一陣はカイロからベトナムまでの輸送をきちっとなし遂げておりますし、避難民がたまったかどうか、送り返す必要があるかどうかということは、まさに国連の機関が現地で判断をして具体の要請をされるわけで、相手国とか国連機関の要請がないけれども、必要だろう、あるだろうというので勝手に日本の飛行機がいろいろなところへ飛んでいっても、いつどこでどれぐらい難民がいらっしゃって必要かという情勢、情報等を国際機関を通じて聞くのが一番筋が通っておることじゃないでしょうか。――いや、まじめに答弁しておるのです。
  23. 松浦利尚

    松浦(利)委員 まじめに答弁されたと受けとめます。いや、まじめに答弁しておられると思います。いいです。  総理の気持ちもわかりますよ。しかし、私の言っておることもわかってもらわぬと困るのです。緊急だから私たちは今提案をしたのです。ですから、私たちがやったことがやれるのかどうか。はっきり、やれないならやれない、そんなことはだめだ、むだならむだだ、おれたちの言っていることだけが今回の難民輸送で唯一のものだと、そのことについての御返事を下さい。そうすれば私もこの質問をやめます。
  24. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この難民輸送というものは、今総理からもお話ございましたように、国際社会で起こってくる難民問題を解決するために国連の要請を受けたIOMというものが、どこの地域にどのような難民が出てくるのか、またどこに集まってきた難民をどこの国へ移動させるか、そういうことを基本計画を立てて、それで、各国からあらかじめ報告を受けている提供されるべき航空機の情報をもとに、その最も有効とされる国に対してその移送を依頼するというシステムができておりまして、それに対して、その初動経費を三千八百万ドル日本政府は出したわけでございますから、要請があった場合にどこの国がどこへ運ぶかということは、その当時の状況に応じてIOMが判断をして各国に要請するというシステムでございます。  日本でもボランタリーの方々がこの要請をされないうちに予約された飛行便もあると私は報告を聞いておりますが、それは実際は動いていないという状況に相なっているわけでございますから、あくまでも我々政府は、このUNDROの、いわゆる国連の要請を受けたIOMの連絡の上で動くことを考えることを検討するという仕組みになっておることを御理解いただきたいと思います。
  25. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今ここに来たのは、余り松浦君、やじにこたえるなといって注意してくれたのです。もうやじにはこたえないですから。  それで、言われたことはよくわかりますよ、そういうルールがあることは。しかし、何でうちの方から提案できないのですか。我が国はヨルダン航空と契約をしてこれこれの飛行機を派遣をしたい、おたくの機関でひとつ検討してくれぬですかと何で上げないですか。そのことは可能でしょう。それもできないんですか。そういうことを積極的にやらなければ緊急と言えないでしょう。緊急でも、自衛隊機が飛ばずにそこにじっと待機しておったらこれは緊急じゃないのですよ。準備は緊急だけれども飛ぶのは後おくれと、こうなるでしょう。緊急なら、こういう状況があるから早急に移住機構として検討を加えてくれぬかとなぜ提案せぬですか。私はそのことも、総理大臣じゃなくて外務大臣にお尋ねしますよ。そして、いろいろなことはいいですから、私が提案したことはだめならだめ、それを言ってください。
  26. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御指摘の点はまことに結構な御意見だと私は思います。  ただ、これからの難民が、まだ現在激しい地上戦闘が行われておりませんから、どこへ難民が出てくるかということもIOMはわかっていないと思います。例えばシリアに出てくるのか、あるいはトルコに出てくるのか、ジョルダンに出てくるのか、どこの国の人がどこに出てくるのかということも現在ではまだはっきりと把握はされていない。こういう状況の中で我々はIOMからの連絡を待っているわけでございまして、日本に航空機の派遣が要請された場合にはまず民間航空を使って運ぶということを原則として政府は考えているわけでございますから、その点は御理解を願いたいと思います。
  27. 松浦利尚

    松浦(利)委員 難民の出てくるところは、前からこの本委員会議論になっております事務局長書簡ですね、IOMの。難民が予想される地点はイラン、ジョルダン、シリア及びトルコになると予想される、避難民の移送開始地点は。わかっているのですよ。しかも毎日各テレビは、どこに難民がどれくらいおるというやつは私たちの目に入ってきますね、報道で。ですから、私たち日本政府国民挙げてそういう措置をすることについて、やられたらどうですか。私たちももちろん一生懸命ボランティアでやりますよ。政府としてやられたらどうですか。政府としてIOMに対して、日本政府はヨルダン航空を借り上げて、貴機関が指示するところからカイロまで移送します、その後は日本航空等によって国内航空で行うというようなことを報告すればいいじゃないですか、そういう要請だから、どういうことで、軍用機か民間機か、その民間機の場合には日本の飛行機でなくてもいいのです、チャーター便でもいいのです。そういうことでやりましょうと報告すればいいのです。それを外務大臣やってください。
  28. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この難民の輸送問題というものは各国がそれぞれ協力することは委員御案内のとおりであります。だから私ども政府も、要請があれば民間航空機を出す。そして、どうしても民間航空で運べないといったような場合には、今回の自衛隊の航空機を、輸送機を、その場合に難民に限って輸送に使うということを考える手続をとろうと言っているのですから、これはあくまでもやはり日本人が国際社会のために汗をかくということが国際社会に貢献する日本の大きな考え方でなければならない、私はそのように考えております。
  29. 松浦利尚

    松浦(利)委員 外務大臣は――これは日の目を見なかった外務省の、おたくの、これはここへ出すつもりじゃなかったけれども、これは日の目を見なかったのです、国連協力法案、昨年廃案になったときに外務省で内部的に使用された内容なんですよ。その中には、人的派遣の分野について、最近の米ソ関係の対話の定着について地域紛争解決への大きな弾みがついてきたけれども、国連の地域紛争解決その他のために同時に平和維持活動が重要になってきておる。そういうことから考えて、文民の派遣の需要が大きくなってきておる。文民の分野の広がりに伴って質量ともにこれから我が国も努力をしていかなければならない、人材派遣について。そういうことを自衛隊とは無関係に、文民を中心にした平和協力人材センターという構想を議論されたわけです、ずっと。昨年の三月答申を受けて以来。でしょう。だから、外務省自身も何も自衛隊機にこだわる必要はないのです。平和的な方向でやれるものを私たちは検討すればいい。汗をかく方法は、自衛隊派遣をするから汗をかくということにはならない。一生懸命難民を輸送することにのみ汗をかくんだ、自衛隊機民間機輸送する手段なんだ、これは。だから、その手段については我が国の平和憲法、また私たちが持っておる憲法における範囲内においてやれること、それは民間機を借り上げて、しかも安全であり、国際法上も最も安全と言われておる民間航空を派遣をすること。その金に向かって私たちが集中的に、それは税金を上げてもいいでしょう、そういうことを私たちに諮るならば。そういう努力をするということを外務大臣は思い切ってやるべきです。あなたはそういう構想を既に提起しておる、これはデクエヤル事務総長の命を受けてこういう努力をされたんだから。多くを読もうとは思いませんよ。どうですか。
  30. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今の外務省の資料は外務省の民間に対する調査の報告書でございますから、それは内部での資料だということは御理解いただいていると思います。  それで、先ほどから民間がボランタリーで民間航空機を提供するということについても、私どもは決して反対するどころか、政府としてもまことにありがたいことだというふうに考えておりますが、私どもとしては民間航空機が飛べない状態というものを一応考えているわけです。例えば日本航空にしても全日空にしても、一定のところまで以上は行かない、こう言っているわけですから、そこにヨルダン航空も、これは保険も何も掛からないという事態が起こってくる可能性もあるわけでございます。私どもはいろんな問題を検討しながら、まず第一に、民間航空を使える範囲では民間航空を使いましょう、どうしてもできないときに、人道的な観点で難民の人たちを一刻も早くその危険な地帯から自分の国へ帰すために、輸送の手段としてこの輸送機を使えないかということで考えてきているということでございます。
  31. 松浦利尚

    松浦(利)委員 言われることはもっともだと思いますよ、言っていることは。しかし、問題はそれ以外の発想になぜ立たぬかということなんですよ。何か画一的に一つの流れに乗ったら、その流れから全然もう離れようとしない。日本独自の発想というのが出てこないのですよ。一つ決めたら全部それに集中するのです。  今この問題、避難民の問題については非常に重要な問題だし、私たちの言うことはどんどんやってくださいということだけれども、私は、政府がヨルダン航空と交渉してください。ヨルダン航空に事前に、四日ないし五日前にヨルダン東京支社に連絡をしてくれればチャーター便の準備はできます、こう言っている、ヨルダン航空の東京支店が。直ちにそれと打ち合わせしてください。そういう方法があるでしょう。それをやってくれますか。いや、それをやるかやらぬかだから、総理大臣言わぬ方がいいですよ、具体的なことですから。
  32. 中山太郎

    ○中山国務大臣 難民輸送はすべてIOMが統一的に全責任を持って各国に協力を依頼するということでございますから、日本政府はIOMの委託を受けてやるということでございます。
  33. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、どう考えてみても、今の議論をしてみても、今自衛隊機は、民間航空機が行けないところは自衛隊機で行かなければならぬから、今IOMから要請があるのを、いつあってもいいように準備をさせておる。しかし一方では、民間航空機についてヨルダン等の航空会社についての話し合いをしようとはしない。それは、私どもはIOMという移住機構にすべてを任せておるから、その指示待ちだ。結局、どう私たちが、これは社会党だけの理解かもしれないが、何か自衛隊にこの際参加をさせなければならない理由があるんじゃないか、こういう気がしてならぬのです。  それで、これは防衛庁にお尋ねをしますが、私はここに「陸戦研究」という本を、去年の一月号と六月号を持っています。これは、私自身「陸戦研究」というのがあるということをわかりまして調べてみました。この「陸戦研究」というのは、十年前は「幹部学校記事」、こう言われておるのです。それが「陸戦研究」というのに変わったんですね。それが、かつては市ケ谷の本部にありまして、そしてその市ケ谷の本部で制服自衛官が二、三人、女性の方が一人おってこの編集に当たってきた。これがどういう形で配付されているかということを調べてみました。防衛庁も知っておられるかどうかわかりません。これは防衛庁外の組織になっていますからね、陸戦学会というのは。文京区の大塚の九段社というところに電話してみましたら、ここは電話一本です。編集執務するところはありません。私が今から申し上げますから、事実かどうか確認してください。  この「陸戦研究」を主宰をしておる人は、かつて陸上自衛隊幹部学校陸将だった中俣壯一さん、そして、この配付ルートというのは限定されています。自衛隊の郵便配送ルートを通じて特定の人にしか送られていません。この人の、編集員はだれかは全く不明です。この幹部学校というのは、防大を卒業して現役の統幕を育成する学校です。昔で言えば陸大。その陸大の研究論文等を含めたのがこれなんです。  それで防衛庁長官、大変御存じないことだと、恐らく就任間際ですから御存じないと思うのですが、ここにこの前、昨年暮れ廃案に追い込んだ、結果的に自衛隊派遣するかどうかでもめて廃案になったそういうものと類似する論文がこの「陸戦研究」の一月号に、「平和維持活動の軍事的意義に関する考察」ということで、磯部という一尉、この人が論文を発表しているのです。それから、今自衛隊等の派遣をする問題について「自衛隊の国際緊急援助活動についての一考察」、これは昨年の六月、これに佐藤、二尉ですね、この人は。二尉が、今私たち議論しておるような内容について自衛隊の意義を論文として書いているのです。これと今政府がやろうとしていることは極めて類似していますね。ですから、私が今、中身は後から申し上げますが、先ほど申し上げたこの「陸戦研究」、もう一遍申し上げておきますが、この「陸戦研究」は、国立国会図書館法によりまして、発行した雑誌、書籍等はすべて図書館に納めるか、納めない人は有償で出さなければならぬ仕組みになっているのです。図書館の外交防衛課に聞いてみましたら、幾らこの学会にお願いしてもいただけない、防衛庁にお願いしてもいただけない、たまたま神田の古本屋であったのでそれを館員の人が買ってきて、非常に古いものですけれども製本してある程度です。国立国会図書館法に規定されておる二十五条の手続もせずに、現実には送られておらない。ごく限られた自衛隊の幹部にしか配られておらぬこの学会の本なんです。そういう点を含めて、防衛庁長官どうですか。
  34. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございました印刷物がどういう性格のものであり、また自衛隊とどういうふうにかかわっておるか、私詳細は存じませんけれども、いずれにいたしましても昨年の国連平和協力法案、あるいは今回の人道的見地からの避難民輸送自衛隊がどのようにかかわっていくかという問題につきましては、我々防衛庁といたしましては、政府内部でいろいろ御相談いたしまして、さきの国会において、あるいは今国会において政府から繰り返し答弁申し上げておりましたような姿勢で、またそういったスタンスでやってまいったところでございます。
  35. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私はこれは想像で申し上げますけれども、ここに、先ほど言ったけれども、これは内部資料で表に出ておらぬものですから、これは外務省が平和人材センターとして学者の答申を受けて、平和維持活動についてどう我が国がかかわるべきかという議論をしている。これは制服抜きなんです。自衛隊抜きなんです。文民なんです。これは、私たち社会党の平和協力構想と全く一致するのです。私たちも平和維持については賛成なんです。その賛成の根拠は、この外務省の人材センター構想と全く一致するのです。  しかし、制服組の皆さん方はそうじゃない。平和維持活動にどう防衛庁がかかわり合いを持つかという論文なんです。いいですか、これの一月号には、自衛隊の任務のところをこう書いてあるのです。ここに書いてある内容は、要するに米ソのデタントが進んで、平和時に自衛隊の諸君の緊張状態を持続することは非常に難しい。だから、今国連の平和協力というものが世界的に議論されておる、その平和協力について自衛隊がどうかかわるべきかということを現在の教育訓練の中に含めてもらいたい。あのイラン・イラク戦争に仮に日本の自衛隊が参加をしておったら、国益というものがはっきりする。本来、軍隊というのは一定の目的を与えなければ集団としての行動は成り立たぬ。従来の自衛隊の発想と国連平和協力というものとの発想は全く相違うものだ。ですから、なおさらこれに参加をするための国家的目標というのは何なのか、そのことを明確にしておく必要がある。それは  一九八八年のイラン・イラク停戦に伴い、同年八月二十日、国連軍事監視団が派遣された。この際、もし日本が自衛隊を監視団に参加させていれば、自衛隊の平和維持任務は、自国の国家戦略の一つである「中東情勢の安定化」ひいては「石油資源の安定供給」に密接に関連し、国家戦略目標の達成に貢献していることが理解できよう。 だから、イラン・イラク戦争に行かなかったのは不満だと述べている。平和維持活動に参加するのには、こういうふうに国家戦略目標、石油資源の安定供給というようなそういう目標のために行くのだ、そういうことをはっきりしてもらいたかった、そういうことがはっきりして行くのだ、そういうふうに、しかも多国籍軍にかかわることまで書いてある。  平和維持活動が国際性を有するといえる観点の二番目である平和維持軍が多国籍の軍隊によって構成されている点について も考察している。この前の国連平和協力法案と全く同じ状態なんです、これは。しかも、これは一月に出されておるのですね。外務省は三月。結果的に出てきたのは、自衛隊をかかわらせる内容が出てきたために廃案になったのです、自衛隊が介入したから。  ところが、この六月号では、この佐藤二尉というのは何と言っておるか。国際緊急援助活動に自衛隊がかかわっていこう、こう書いてある。  「足」については、輸送支援があげられる。現に欧米では軍用機をもって百人、二百人単位の人や膨大な量の物資を送っている。現地で活躍するヘリも、現在は輸送手段がないために数次に分解して空輸しているが、C―1またはC―130Hクラスの固定翼機にとりあえず、OHクラスの回転翼機を物資と同時に搭載して運び、 海上輸送でやればいいと、海上輸送にまでも言及している。その中には、的確な被害状況の把握とか、相手国との適切な協議と信頼性の確保とか、救助活動を支えるための資材の確保、派遣部隊の輸送体制、後方支援体制。後方支援体制で二百人行く、輸送体制で五機行く、資材もそのために運ぶ、これが法律で出されてきたら、去年のようにまた廃案になる。これを生かすためには、この際政令でいく以外にない。結局、我が国の自衛隊をどう国連平和協力という名にかかわり合いをさせるか。今度の湾岸問題だけじゃないんだ。国連の要望に従って、国連のPKOその他の平和維持活動の中に自衛隊を何としても持ち込みたい、これが制服の願いですよ。そういうことがこの「陸戦研究」に書いてある。  しかし私は、政府がこれを意識してやっておるというようなことを言うつもりはありませんよ。結果的にそういう方向に走っているんです。若い方もおられるのです、ここにやじっておる人も。しかし、私はかつて戦争に行かされた。当時の政府は、必死になって戦争の拡大を防止するために努力をしたんですよ。それは間違いない事実ですよ、政治家だから。ところが、どうにもならなくなったんだ。それは、制服軍人がどんどんどんどんと政治にくちばしを入れてくるからですよ。現にそういうことが研究されておるでしょう。あのときの上級将校が若い青年将校を抑えることができなかった。参謀肩章をつけた大尉、少佐参謀というのが突き上げる。とうとう不拡大方針と逆の方向に走って第二次大戦、惨めですよ。同じことが今まさにここに出てこようとしておるじゃないですか。この人たちはやじって笑う。私たちは真剣なんだ。ただ単に、この輸送機を難民を輸送するためには送ってもいい、送ってやりたい、自衛隊機も飛んでいいじゃないか。しかし、なぜそれを、困るんだ、困るんだ、できるなら民間を使ってくれ、ヨルダン航空を使ってくれというような叫びは、こういうことがおろそかになったら必ず将来、我が国が予想しない方向に政治が引っ張られていくんです。だれも将来を約束する人はここにおりませんよ。長生きする人がおるかもしれないが百歳が限度。海部内閣だっていつまで続くかわからない。だから、私たち今ここに生きておる、バッジをつけておる政治家がやる任務というのは、こういったことが起こったときにどう与野党で話をして、できるだけそういうことがないように防ぎとめるか、そのことだけなんだ、僕たちが今言っているのは。それ以外の何物でもないんですよ。ぜひひとつ思いとどまってください。C130の派遣だけは思いとどまってください。
  36. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  松浦委員からいろいろ御指摘ございましたけれども、私ども自衛隊のあり方というものは、当然日本国憲法に規定されておるところでございます。専守防衛でございます。そういうものを踏まえまして、またその後、我が国の「国防の基本方針」につきましては昭和三十二年に決められておりますけれども、まず我が国の国内の民生をしっかり安定していく、そうしてまた外交面でいろいろな努力をしていく、そういうものを基礎にいたしまして、そして安全保障につきましては日米安全保障体制、そしてみずからも必要最小限の、国を守るための最小限の組織でまいる、力でまいる、こういう仕組みになっているわけでございまして、我々自衛隊はそういった枠組みの中で課されました我が国を防衛していくという、そういう任務に専念しているところでございます。したがいまして、今御指摘のございましたような、将来に向かって、何か現在の目的とは違ったような目的あるいは任務につくなんということは毛頭考えていないところでございます。  また、今回の避難民輸送の問題につきましても、御承知のとおり今回のような緊急事態を踏まえまして避難民輸送というものの必要性が出てくる、そして民間で対応できる分はそれでやるのであるけれども、どうしても民間で対応できない場合に自衛隊輸送機を使ったらどうだろうか。このことは安全保障会議で決定されまして、それを閣議を経まして私ども防衛庁の方に話があり、それからいろいろその準備をやってまいっているところでございまして、我々といたしまして、御指摘のその印刷物にありますような考え方でどうこうということではございません。それはひとつ御理解いただきたいと思います。  そしてまた、シビリアンコントロールの確保というものは、これは民主主義国家にとりまして、政治の軍事に対する優先ということはどうしても守らなければならない大原則でございますので、私どももそのあたりにつきましては今後ともこれを守っていくために全力を尽くしてまいりますし、現に守られておる、このように信じておる次第でございます。
  37. 松浦利尚

    松浦(利)委員 総理、あなたは決断をするときに涙を流されたといって新聞に出ておりましたね。私は、それはあなたの気持ちが出ておって、それはそうだと思いましたよ。真剣だというふうに思いますよ。  それで、私もあなたに真剣にお願いをするのです。今、自衛隊機派遣をするように準備をしておられる。しかし、IOMから要請がなければこの自衛隊機は飛ばないんだ、まだ要請がないんだから準備している。幾らこれに金がかかるかも把握しておられない。それはなぜかと言えば、自衛隊側の機がどこを寄港していくのか、それに使用するガソリンがどれくらいかかるのか、後方支援に対して幾ら金がかかるのか、それに対する付随する人員に対してどうするのか、すべてはまだ今準備中だと思う。ですから、私がさっきから提案したように、私が申し上げたことの一つでも理解していただけるなら、何も嫌がらせで言っておるわけではないんだから、だから大前提としてはもう手続が終わっておる。今残されておるのは、そうではあってもできるだけ飛ばさないように努力をする。そのためには、より民間航空機、ヨルダンであろうと何であろうと、よりチャーター便を飛ばしてそのIOMの要請に対応する、ぎりぎりの段階になるまではC130の離陸は認めない、そういうことだけでも確認をしてください。
  38. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 松浦議員のいろいろな御指摘や御質問を聞いておって、私は率直にそのお気持ちを理解するものであります。というのは、我々政府も、委員に言われたように、何が何でも、要請もないのに、頼まれてもいないところへどんなことがあっても自衛隊の飛行機を持っていって乗せるんだというような、そんなことを考えてこれは取り組んだものでは決してございません。  同時に、この御議論を通じて、私が率直に前進してきたなと思ってひそかに喜んでおりますことは、避難民を安全に輸送するためにはどうするかという議論を始めたとき、本会議与野党のやりとりを通じても、あるいは野党の党首のテレビの御意見や各党の幹部の意見を聞いても、出ておった意見は、飛行機は危ないからバスでやれというのが社会党の御意見でございました。バスをチャーターして、バスを送って、バスを上げて、バスをやればより安全じゃないか、そんな立場でありました。けれども、それを判断するのは現地のIOMであり、現地の国だということを私たちも言いました。安全に移動するためにはどうしたらいいかというのは、IOMが飛行機の輸送を提案してきたのです。  今、委員はいろいろな、まだ我々との考えの違いはありますが、飛行機で運ぶ努力をしようということと、そのために民間からお金を出してチャーターもするから、それを使って輸送したらどうだという具体的な提案をいただきました。私は、そういったことは、政府としては国際機関からの要請を受けて政府ができる限りのことをするという基本的な立場に立って、でき得る限り民間でやってもらおうと思い、まず民間の輸送をお願いしております。いろいろな場合を想定しております。けれども、IOMというものがあって、その地元にある民間航空に対して日本国のいろいろなところからその費用をまた別に出そう。政府は三千八百万ドル出しましたが、民間からも出して、さらにそれで安全に避難民を航空輸送してカイロまで持っていこう、持っていったら、また頼まれたら日本もやれよという、何か議論の輪が私は同じ土俵にだんだん乗りつつあることに、率直に申し上げて、この委員質問を聞きながら、これをさらに政府としても反復して研究して、避難民輸送に対しては安全を期してやるべきであるということを、私は率直に考えます。  したがって、IOMに対して日本国の皆さんがいろいろな立場で、政府の基金協力プラスアルファで国を挙げて難民輸送に対しては取り組んでおっていただくんだということには、その点に関して率直に敬意を表します。同時に政府は、そういう動きがあり、きょう具体にその御意見もあったということをIOMに政府として伝えます。そして、IOMが難民輸送を安全にやるための判断の選択材料の一つとして提供できるように、私はいたします。
  39. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それで私は申し上げたことは、飛行機に限定して民間航空のことを申し上げましたけれども、バスの問題、バス輸送もヨルダンはやるというわけですから、そういった面も含めてぜひ政府で検討していただきたい。もしやれるなら検討して、あらゆる手段を通じて難民の輸送に当たっていただきたい。ただ、自衛隊輸送機だけは、プロペラを回すまでで離陸させないようにしてください。絶対させないようにしてください。あらゆる手を尽くしてください。そのことだけ申し上げておきたいと思います。  それから次に、シビリアンコントロールについて、こういうものを含めて長官にお尋ねをいたします。  内容に立ち入ってお聞きをいたしますが、私はずぶの素人ですから余り詳しいことはわかりませんけれども、実は今度自衛隊の従来の方針が変わった、こう言われているんです、表には出ておりませんけれどもね。従来の陸上防衛戦略が、次期防から大幅に変更してきておるというふうに理解しているんです。今までは、まず沿岸防衛、それから機動打撃、内陸持久という形で陸上自衛隊の装備その他が行われてきたやに聞いておるんです。ところがこれからは、緒戦重視、前方対処、早期撃破、火力打撃という方向に戦略目標が変わったと理解をしているんですが、防衛庁長官、間違いありませんか。
  40. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 お答え申し上げます。  基本的には、陸上自衛隊の防衛力整備の方針ないしは有事を想定しての作戦というものが変わっているわけではございません。ただ、なるべく水際撃破と申しましょうか、陸上に着上陸される前に相手に打撃を与えるということと、それからそれでも全部を阻止できない場合に陸上に上がってきたときにそれをいかに縦深性をもってたたくかということをどう表現したかということの差であろうかと思います。
  41. 松浦利尚

    松浦(利)委員 局長、今言ったやつはそれじゃ違うんですね。私が申し上げた四つに変更したという、こういうあれはないんですね。こういう名称もないんですね。
  42. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 そういう今お挙げになりましたいろいろな表現があることは事実でございます。いろいろな場面でいろいろな表現を使っております。ですから、ただ御指摘のように今度の新中期防からそういう表現のもとに変えて、しかもそれが実体的に大きな変化を伴ったことであるかということではございませんで、徐々に、先ほど申し上げましたように、既に水際撃破と申しましょうか、そういう方向での対応を考えてきていることは事実でございますけれども、そういう急激な、この新中期防からの大きな変化ということではございません。
  43. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、これも局長にお尋ねしなければ長官おわかりいただけないと思いますので。  今度航空自衛隊が、次期防の新装備として空中警戒管制機、従来は我が国の防衛にはなじまないと言っておったE3A、要するに統合指揮所を持った進攻作戦用の自衛隊機を輸入するということが一つ。それからFSX、この飛行機の航続距離、これにプラス改良、これを私の方から申し上げますが、FSXは支援戦闘機とされておるけれども、この行動半径は八百三十キロ、従来のF1は三百七十キロ、それから空対艦ミサイルASM1改ミサイルというのは百五十キロ。ですから、FSXで改良ミサイルを搭載をすると行動半径が九百八十キロの目標を攻撃することができる。これはソ連太平洋艦隊の基地であるウラジオストクの、あるいはソビエツカヤ、これを三沢から攻撃することができる、こういうふうに極めて広範囲にわたっての攻撃兵器というものがこれから購入されようとしておるわけですよね。それはどこに根拠があるかというと、緒戦重視、前方対処、早期撃破、火力打撃という方向に自衛隊の目標が変わったからなんです。従来は沿岸防衛、機動打撃、内陸持久という条件の中では、今私が申し上げた行動半径の広いFSXとかいうものは必要でなかった。そしてまた、先ほど申し上げましたE3Aというのは必要なかった。これは防衛庁がそう言っている。防衛庁が必要ないと。しかし、今度、必要なかったはずのE3Aが統合指揮所として購入される。これは、今言ったように戦略の変化がこういう状況になってきたからなんです。  それで防衛庁長官、シビリアンコントロールでお尋ねをしますが、私たちは、出てきた兵器、こういうものを購入します、価格は幾らです、その積み上げで防衛予算はこれだけです、これだけ私たちは審議するのです。しかし、なぜこれが必要だかという議論はできないのですよ、ここで。そのなぜ必要かというそのものは制服組によってつくられておるからです。  陸長という言葉がありますね。ところが、調べてみますと、この陸長という言葉は訓令にないのですね。訓令の中に陸長という言葉はありません。しかし、現実には陸長、陸長という言葉が制服組の中で使われておることは事実です。これは陸上自衛隊長期防衛見積もりというのです。  それから統長。統合長期防衛見積もり。これは三年ごとに作成をして、最近は八九年度に作成しておりますから一九九七年に見直して二〇〇六年までつくられております。一九九七年につくられたものが二〇〇六年まで。これは三年ごとに見直す。  それから中能。中期能力見積もり。こういったものがずっと積み上げられてきて、最終的に来年度の統幕長が作成した統合中期防衛見積もりというものが出されて、実は予算審議の場に出てくるのです。  だから、防衛庁長官も何でこういうものが必要だということはわからぬはずですよ。私が今言ったことは、どうですか、防衛庁長官、どうですか。
  44. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  詳細にわたりましては政府委員から答弁させますけれども、例えば先ほど御指摘のございました早期警戒管制機であるとか、あるいはFSXの問題につきましていろいろ御指摘がございました。これは戦略が変わったのだろうというお話がございましたけれども、その前にやはり世界の航空軍事技術の変化というものがあるのだ、このように考えます。  例えば早期警戒管制機なんかについて申しますと、最近は航空機の航続距難が非常に増大する、こういうことがございまして、我が国の国土からかなり離れた洋上から低空に進出してまいりまして、我が国の重要地域を正確に爆撃する、そういった可能性も出てくるわけでございます、これは軍事技術の進歩に伴ってですね。あるいはミサイルにいたしましても、射程だとか弾頭の性能だとか、あるいは誘導の方式とか、いろいろな変化がございます。こういった変化がございますと、かつての軍事技術の状態の中では必要ではなかったのだけれども、現在の軍事技術の中では早く見つけて早くそれに対応するという、こういうことも必要でございますので、同じような早期警戒管制機にいたしましても、前の時点においては我が国の自衛のため、防衛のために必ずしもこれは必要がない、あるいは少しオーバーな機能を持っているかなと言われたものが現時点においては最も適切な機能を備えている、こういうふうな観点もございます。そういうことでございますけれども、詳細については政府委員から答弁させます。  いずれにいたしましても、私どももとより、いろいろな装備その他の詳細の細かな性能その他についてまでは掌握できないのはそのとおりでございますけれども、しかしながら、そういったものが一体どういう役割を持っているのか、そしてまたそれが我が国の国防との関連でどういうふうに進められるのか、そういうところは十分勉強いたしまして政府といたしましての方針も決めるわけでございますし、またそういったことで、国会におきましても御議論をちょうだいしているところでございます。
  45. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、政府の方に答弁を求める前に、ぜひ陸上自衛隊長期防衛見積もり、統合長期防衛見積もり、中期能力見積もり、本委員会に提出をしていただきたい。そうしなければ、中期防衛計画についての議論ができません。ぜひ出してください。
  46. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 御指摘の陸上自衛隊の長期防衛見積もりということでございますけれども、これは御案内のように、先ほどお話しの中にもございましたが、陸上自衛隊の前に、いわゆる統合長期防衛見積もりというのが統幕議長が作成するものとしてございます。それを実施するために、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊それぞれがまた下におりてつくるわけでございますが、それの陸上自衛隊版ということでございまして、これはその意味では最後の統合長期見積もりをつくる場合の一つのプロセスともいいましょうか、内部資料になるわけでございます。これにつきましては、これ自体は、先ほど御指摘もございましたが、それ自体については長官の目に触れることはございません、内部資料でございますから。それの結果、統合中期見積もりというものができまして、それは長官の承認を得るという形になっておるわけでございます。  今資料を出せというお話がございましたが、これは過去何回も国会においてそういう御指摘がございましたけれども、事柄の性格上これは差し控えさせていただくということで御理解を得ているというふうに理解をいたしております。
  47. 松浦利尚

    松浦(利)委員 長官も見ておられないんですよ。長官も見ておられないんでしょう、最終的なものしか。いいですか、私は、今まではそれでよかったかもしれぬのです。ただ問題は、大綱を見直さないままいろいろな情勢分析だけされて、次年度の防衛計画がつくられておる。矛盾を感ずるんですよ。むしろ逆に言うと、従来よりもより軍縮の方向に進む流れです、状況は。にもかかわらずそういう高度なものが、しかも非常に半径の広いものが使われる。専守防衛の枠を超えて、遠く三沢からウラジオとかそういったところまで、場合によっては九州の築城から持っていけば朝鮮半島全体が入り得るような兵器というものが購入される。その目的は一体何だろうか、どうしてもわからない。  ですから、そういうものが具体的に下の方で、陸長なら陸長でこういうようなものが議論されてつくられていって、積み上がっていっておるはずですよ。今まではそうだった。しかし、緊張緩和と軍縮が世界の大勢、そして政府及び安全保障会議がその責任を持っておる。だから、情勢判断と防衛構想というのは国防に関する重要な問題点、しかもこのような激動期です。政府安全保障会議意思を決定するようなそういう重要な案件について、それが中央に見せられない。  私は逆に言うと、上の方で決めて、そしてこれから下に下げていく、そういう発想の転換を図らなければいかぬと思うのです。制服組が積み上げてきたものを持ち込んできて、それでそれを国のシビリアンの中心である安全保障会議に上げる。そうじゃなくて、逆に今度は上の方で決めて下の方に下げていく、そういう時代に来ておるのだと思うのです。だから、今までの内容はそうだと思いますよ。しかし、状況の変化が来ておるのですから、そういうものについてはこの国会に出していただいて、そして我々にもやはり議論させてもらいたい、そのことを申し上げます。それを出していただいたら、次の質問にすうっと行けますから。たくさんあるのです、質問は。
  48. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど防衛局長からも申し上げましたが、委員御指摘のいわゆる陸長というものは、これは内部資料でございまして、それ自体がいろいろ計画といった性格のものではございません。そういったいろいろ内部で検討いたしました上でできますいわゆる統合長期防衛見通しというものは、防衛庁長官である私のところへちゃんとその報告もあり、ということになっておる次第でございます。その辺ひとつ御理解をいただきたいと思います。  それからもう一点、下でやってしまってそれがずっと上へ上がっていくのじゃないかというお話でございましたけれども、御承知のとおり、国の中期的な防衛計画につきましては、中期防衛計画でその政府計画としてつくっておるわけでございますが、これは下から積み上げてくると申しますよりも、内閣にございます安全保障室が安全保障会議の事務局となっていろいろやっていく。それでそれを踏まえて安全保障会議で決定するものでございます。我々防衛庁が単独でつくっていくという性格のものではございません。我々防衛庁のそれへの絡み方というのは、安全保障会議がある、防衛庁長官はそれのメンバーでございます。そして幹事会がある、それのメンバーには事務次官が入っております。そして、事務事項といたしましては、内閣の安全保障室がございまして、我々防衛庁の事務方というのはいわば安全保障室の手足となって外務省、大蔵省あるいは経済企画庁と同様な立場でそれに御相談に応じていろいろ資料等も出していく、こういう立場でございます。
  49. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それを出してください。
  50. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほど申しましたように、陸長というものは冒頭に申しましたような性格でございますので、あくまで内部での検討の過程の資料でございますので、先ほど防衛局長からも申し上げましたように、従来も国会の場に御提出申し上げるのは控えさせていただくということで御了解いただいておりました。  現在、国際情勢その他が大きく変化しているのは御指摘のとおりでございますけれども、その点につきましては、今回策定いたしました新しい中期防の中におきまして、十分安保会議等の議を経まして組み込んでおるところでございますし、この新中期防につきましては近くまた国会の方にも御報告させていただくことになっておりますので、どうかその政府計画というものは中期防であるということで御理解をちょうだいし、御審議を賜ればと思う次第でございます。
  51. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう一遍、先ほど言いましたように、戦略目標が変わって軍縮という世界の流れと違って、我が国の防衛計画はさらに強度なものに変わるわけですね、新しいものに。それがどういう根拠になっておるかというのは、たたき台を見なければわからぬ。それをいつも今までは伏せられておった、出てこなかった。しかし、こういう時代になって、それをやはり私たちに見せていただいて――それは見せられないものもあるでしょう、そういうものを出していただいて議論させてもらわないと、中身に立ち入って、いやそれは絶対必要ですからと言われれば買わぬといかぬかなと思うだろうし、そういう判断の基礎として、やはり我々にも立法府として審議する審議権というのはあるわけだから、それを出してください、こう申し上げておるのです。資料、下さい。
  52. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  繰り返しになりますけれども、陸長のいかなるものであるかという性格は、御理解ちょうだいできたのだろうと存じます。そして先ほども申しましたけれども、昨今の国際情勢の変化等も踏まえながらどのように防衛計画を進めていくかということは、政府といたしましては中期防に反映さしているところでございますので、どうかそれで御審議をいただきたい。  そして、その基礎になるものがわからなければという御指摘がございました。その点につきましては、中期防をごらんいただきまして御審議いただく中で、例えばこの点はどういうふうになっているのだろうかというような御質問があれば、それに対してお答えを申し上げていくということで御了解をちょうだいできないかと存じます。  陸長と申しますものは、先ほど申しましたように、内部の検討過程の資料でございますので、個々に必要に応じて私どもも十分御説明申し上げ、御理解をちょうだいしたい、こう存じております。
  53. 渡部恒三

    渡部委員長 ただいまの松浦委員質問内容を精査し、理事会で協議しますので、質問を続行してください。
  54. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それじゃ、防衛関係の新中期防についての質問は、それが理事会で資料として出されたときにまた改めて質問をさせていただきますから、留保して次の問題に入らせていただきます。  今度は、ODAの問題についてお尋ねをいたします。  実は、社会党の国際経済政策委員会として、昨年、最も援助額の大きい東南アジア、マレーシア、それからインドネシア、スリランカ等々回ってきたんです。  我が国も、考えてみますと、昨年の七月、借款終わりまして、東名高速道路とか新幹線とかそういうものをつくったときに金を借り入れておって、世銀からですな、そしてそれを去年の七月返し終わって、完全に援助大国になってきたわけです。考えてみると、我が国の今日の繁栄は、そういった意味で諸外国の援助があったからだと言ってもいいんですよね、過言ではありません。逆に言うと、今度は援助大国として、日本の国が恩返しの意味でまさしく世界各国に援助の手を差し伸べていく、それは大切なことだと思うんです。ですから、来年度予算の中にもODA予算が大幅に増額されたということについて私たちは賛成です。JICAとかあるいは基金の専門官たちが必死になって現地パートと一緒に現地の復興に努力しておる、技術発展に努力している。そういう姿をジャングルの中その他に見まして、ああ本当にこの人たちが日本の国の信用を保つために必死になって頑張っているという姿を直接見て、本当に触れるものがあったのです。四名行きましたけれども、四名とも、かつて国会議員が行かなかったジャングルの中とか入りまくって、本当に涙を流して喜んでくれた。ですから、そういった意味では、この我が国の開発援助というのが非常に大きく貢献しておるということに感銘を受けたことは事実です。これはODAの光の部分なんです。  ところが、影の部分というのがある。マルコス疑惑以来、どうも日本のODAというのは何か疑惑がつきまとっておるという目で見られがち。国民の間にも、ODAという言葉の内容は別にして、ODAというのはもう一般化した言葉になっている。ODAというと何かおかしいというふうに、こう見られておるのが今日の姿だと思うのですね。そこで、私はそういった実態を見るために回ってきまして、そうじゃないんだ、本当にこういう部分もあるんだということを身をもって経験した。だから、そのことをまず私はこの場を通じて国民の皆さんにわかっていただきたい。それが一つです。  もう一つの部分は、影の部分。これは大変水産庁の管轄が例になって悪いんだけれども、僕は水産庁を攻撃するつもりで言っておるんじゃない。二十億円の無償援助をスリランカのキリンダという漁港で行った。そうしたら、私たちが行ったら、きれいな揚げ場ですね、市場、揚げ場、漁獲類を揚げる場所、それから管理棟、それから冷凍室、完備しているんです。ところが、港には一隻も漁船がおらない。なぜおらないかといって見てみたら、港の入り口が完全に、鳥取砂丘じゃありませんけれども、ざあっとインド洋の漂砂の砂丘ができ上がって、漁船の出入りができない。地元では大問題になった。依然として昨年の八月現在、そのまま放置されていますね。二十億円、調べてみたら二十億円。  それで私は帰ってきたときに、どこが工事をしたかということがわかっているので、ですからその会社に電話をした。あなたのところは一体こういうことでいいんですか。すると何と言って返事をしたか。いや、私のところは設計どおり工事をいたしました、そういうことを言われるならコンサルタント会社に伝えてください。コンサルタント会社に、どうなっているんだ、こう言って電話をしたら、答えが返ってきた。先生、そんなことを国会で取り上げたらスリランカと二国間の問題に発展をいたしますよ。私が脅迫されたんです。国会議論をしたら何でスリランカと日本との友好に傷が入るのでしょうか。平気でそういうことを言う。だからあえて私はここで質問させてもらうのです。――スリランカがすりかえたというやじかあるけれども、そうじゃない。スリランカの漁業担当の人は、私たちが調査に行ったら黙して語らず、黙って私たちを見詰めていました。スリランカです。  そうしたら、これをよくよく調べてみたら、こういうことなんですね。非常に調査期間が短い。たった一年。インド洋の漂砂を調べるには五カ年かかるというのです。一年間で調査した。そして、当初計画したところは宗教上の問題があるからといって、当初のところから別のところに持っていった。当初やっておるところでやっておったらそういうことはなかったんだ。ところが、宗教上の問題があるからといって場所を計画変更した。ところが、計画変更したが今のような状況。そしてその後、ダンプカーとかあるいはしゅんせつ船とかをやったけれども役に立たない。なぜ役に立たぬかというと、それがスリランカのすべての漁港に使われている。このキリンダ漁港だけのものに使われておらない。ですから、キリンダ漁港は、もう鳥取砂丘のようになったまま放置されているのです。これは税金のむだ遣いじゃないですか。確かにスリランカの皆さん方は応援はしてもらったけれども、何の役にも立たぬ。私たち国民は税金のむだ遣い。もうかったのはだれか。それを計画したコンサルタント会社、それを請け負った建設会社。間違いなくもうかっている。こういう状況がたくさんあるんじゃないですか、あちこちに。どこかにODAの問題点があるのです。今の日本の、我が国のやり方の問題点、盲点があるのです。今言われたことについて確認をしてください。
  55. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま御指摘のございましたスリランカのキリンダ漁港についての無償資金協力事業の案件でございますが、御承知のとおり、これは外務省に計上されております経済協力費でスリランカに対して援助された事業でございます。  事実関係、概要については、先生からただいまお話がありましたように、昭和六十年の四月から施設が利用され始めまして一年余で砂がたまり出しまして、現在では使用不能の状況になっておるという実態、御指摘のとおりでございます。  この仕事は、御承知のとおり、相手国との相談の上でJICAが所要の調査を行い、その後一定の手続を経て無償協力事業として実行されておるわけでございますが、この調査の過程でJICAからの要請に基づきまして水産庁の関係職員も派遣をしております。そういった意味で私どもこの実情を知っておるわけでございますけれども、事後の調査から見て私ども、このような事態が生じたのは、事前の調査では掌握し得なかった季節風による漂砂現象の影響、これが基本的な要因になっておるということで、その後いろいろな対策、調査も行っております。  その結果なりあるいはまたスリランカ政府の要請等も踏まえて、現在外務省を中心にして今後の方策について検討していると承知をしておりまして、これに関与した私どもの関係職員もこの検討に参加をさせまして、適切な対応がとられるように協力をしてまいりたいという対処をしておるところでございます。
  56. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今言われたことはよく理解しますが、あのまま放置しておってはせっかくの二十億がむだ遣いになるのですから、ですからできるだけ努力をして、スリランカの皆さんに喜んでいただけるように配慮していただきたい。それは率直に私ここで申し上げておきたいと思うのです。これは一つの影の部分として申し上げたのです。  ですから、もうあと時間がありませんから一括申し上げたいと思うのですが、私たちは諸外国に比べて、どうも日本の場合は余りにも広がり過ぎている、行政が。私は、どうかやってやっぱり法律で一つのものをつくり上げにゃいかぬ。だんだんだんだんとODAがこれだけ世界各国から関心を持たれ、恐らく今度湾岸戦争が終結した後の湾岸援助等に対してもODAというものが期待されるでしょう。だから、そういったものにはどんどん使われていいわけなんです。しかし、それへ使われていいけれども、本当にそれが被援助国に対して、国民に対して利益を与えるようにシステムを変えていかにゃいかぬと思うのです。私たちは今、国会にODA基本法、こういう法律を野党結束して提出予定中です。参議院に出すつもりです。ですから、政府も一遍ODAのおさらいをしていただきたい。  それで、私が一つ一つ申し上げますが、援助の理念、これを一体どういうふうにするのか。確かに外務省から立派なこんな厚い本をいただきました。開発援助にかかわる報告書、それは一生懸命御苦労なさった形が出ています。しかしいずれにしても、新しい時代に即応したODAの援助理念というものを確立していただきたい。もう時間がありませんから、これが一つです。  それからもう一つは、援助体制を整備してもらいたい。今、四省庁体制といいまして、資金協力の場合は外務、大蔵、通産、経企の四省庁で決められる。技術協力では十六省庁がかかわっている。実施機関としてはJICA、国際協力事業団が外務省、海外経済協力基金が、OECFが大蔵省。それじゃいかぬ、援助の整合性を図ろうということで、官房長官を中心として対外経済閣僚会議なるものをつくっておられる。それは構成メンバーは十四閣僚と党四役、計二十人、こういったたくさんの人で、機関議論するのですね。ですから、こういったものをどうかやって一つのところにまとめたい。それは別に開発庁というものをつくれといえば、また行政改革という問題が出てくるでしょうから、外務省なら外務省にすべてを集める、そういう努力をしてもらいたい。これが二番目。  それから、経済協力基本法的なものをつくってもらいたい。政府としてつくる判断はあるのかないのか。  それから、被援助国に対して援助を与えた結果が本当にその国民の皆さん方の心に触れたものであるのか、被援助国の発展に寄与したものであるのかどうか、そういうもののチェック体制というものを何らかの形で強化をしてもらいたい。ここに来たときにいつも出てくるのは、これは契約は私契約であるから、相手側の内政にかかわる問題であるから、こう言って、今まではこのチェック体制ができなかったのです。ところが、こういう状況があるとすれば、税金のむだ遣いということが行われておるかどうかということをチェックしなければならぬ。もらった被援助国の内政のこともあるでしょうが、与えた私たち国民の税金であるという立場に立てば、何らかの形でそのチェック機能というものをつくってもらいたい。  それから次の問題は、今のこのプロジェクトを見てまいりますと、先ほど私が言ったように、業者の方が強いのですよ。した方が強いのですよ。私は衆議院議員の松浦利尚でございますと言って電話かけたんだから。そうしたら、担当者がおりますから担当者とかわります、いわく、先ほど言ったように、先生、そんなことを国会で取り上げられたら二国間の国際問題になりますよ。そういうことを平気で言う。これが現実に今問題になっておる業者主導、要請主義の最大の欠点。この問題を明確にしてもらいたい。  それから、この前の国会でも再三議論になりましたが、インドネシアの大変なダム開発、これは世銀が行う開発でありますが、我が国はそのうち発電の部分だけを円借款として供与しておるのですけれども、ここが一つの民族が大移動しなければならぬようなダム建設が行われる。公害問題、生態系に大変な影響を与えるということが無視されてきている。そういった意味で、こうした問題について、内政干渉とか二国間の問題だからということではなくて、やっぱり積極的に援助する側がそういった問題についてある程度チェックする、相手国のこともあるでしょうが、相手側と協議をする、そういうことについて明確な方針を立ててもらいたい。  それから次の問題は、納める側の私たち国民。先ほど言ったように、日本も援助によって今日のこの繁栄をいただいておるわけですから、我々がそういった皆さん方に援助しなければならぬということはみんなわかっている。国民も理解してくれる。あなた方の税金はこういう形で使われておるんですよと、ぜひこうしてもらいたい。ぜひそういう点について皆さん方の回答をいただきたい。  一括ばあっと申し上げましたから、それに対する御返答はここで難しいかもしれません。私の申し上げた点について政府の御回答を文書でいただけるなら、この際文書でいただいた上で、次、機会がありましたら、その機会に議論をさしていただきたい、そう思うのですが、どうですか。
  57. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今御指摘になりましたODAの問題につきましては、私も所管大臣として重大な関心を就任以来持ち続けて、各部局につきましては、このODAが国民の貴重な税金で発展途上国の民生向上のために効果を上げるべくやっていかなければならないという考え方で、厳しくその事前調査あるいは事後の評価のシステムを強化するように鋭意努めているところでございます。  しかし、委員御指摘のとおり、効果を上げているところもたくさんございます。しかし、影の部分も事実ございます。影の部分の御指摘の点は、私も自分でいろいろと聞いておりますし、調べたりしておりますが、相手国の要請主義というところに一つの問題点があることも事実であります。また、途上国ほど一つのプロジェクトを組むための技術的なノーハウを持ち合わせていない。どうしてもコンサルタント会社に委託をする傾向が非常に強いということも事実でございます。さらに、こちらが援助をする場合に、援助する実体が相手国に移った場合に、主権の関係で事後の会計検査がなかなかできない、この問題が一つ国際法上の問題として存在することも事実でございます。  私は、委員から御指摘のあった点は、我々日本がODAの、金額的には世界で一番になりました。これから内容の充実をやり、発展途上国のために努力をしていかなければならない立場でございますから、御指摘の点を十分心にとめて、私は大臣としてもさらに経済協力局を中心に、関係各省庁にも御趣旨が十分生かされて、国民が納得のできるようなODAが確立されるように努力をしてまいる決意でございますから、御理解をいただきたいと思っております。
  58. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、先ほど申し上げた点について文書でいただけるかどうか、改めてまた理事会で検討していただきたいと思います。今言われた総括的なことは結構です。先ほど箇条書きに申し上げた点について御回答をいただければと思うのですが。
  59. 渡部恒三

    渡部委員長 理事会で協議いたします。  これにて松浦君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  60. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新盛辰雄君。
  61. 新盛辰雄

    ○新盛委員 総理に伺いますが、政治家として、今回の湾岸戦争に対処する平和貢献策と、みずからの判断、決断、先見性に大きなぶれがあると思われるのでございますが、この一貫性がないと見られる総理の深層心理、言うならぱあなたの基本的な姿勢をまずお聞かせをいただきたい。
  62. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の湾岸問題に対応して、私は当初から、日本が国際社会にどのような形で協力をしていくべきか、また国連が決めました、イラクのクウェートに対する侵略と併合は許してはならぬものである、新しい世界の平和秩序の枠組みづくりを今世界じゅうが模索しておるときでありますから、そこで守られるべき第一の大原則は、武力でもって他国を侵略してはならぬという原則を打ち立てなきゃならぬ。私は、そのために累次の決議が行われたことに、日本もその立場を明確にして、そして国連の原則に従った公正な平和が回復することを初めから一貫して強く求めておるところでありまして、このことは、日本国憲法にも書いてあるように、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する」という立場に立って日本としてできる限りの支援をすべきである。そして、一日も早くこの問題が片ついたならば、さらに続いて中東の恒久和平、それに対しても積極的に日本は努力をしていく、この考え方に立って、一貫して私は毎日毎日を大切にしておるつもりでございます。
  63. 新盛辰雄

    ○新盛委員 総理はちまたで人間トマホークであると言われているのを御存じですか。ジョークを飛ばすわけじゃありませんが、これまでトマホークというのは、御存じのように大変なハイテクの、まさしく新近代戦器だと言われています。これはレーダーに発見されにくい地形・標高照合方式によって、地形の変化に応じて上昇したり下降したり、あるいはまた障害物があればそれを避けてコースを自分で修正することができる。  この意味は、あなたがこれまで障害物、ある意味では国会というこうした機関の中で、今度の自衛隊派遣の問題も追加支援策についてもそれに全然相談もしないでお決めになる。その場その場の状況に応じて上昇したり下降したり、障害物を発見すればさっと避ける。これは、避難民国賓並みに扱えるという海部内閣ならではできない芸当、離れわざだということからそういうことが言われているんじゃないかと思うのですが、あなた自身はどうお考えになっていますか。
  64. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 人間トマホークというのは、今先生が解説されたようなことで、また世間でそう言われているとするなれば、私はそう言われておるということを今承りましたので、記憶にとどめておきたいと思います。  ただ、私が決めておりますのは、これは、国連の平和回復活動というものは支持しなければならない、その目的を達成しなきゃならぬ。トマホークというものが、飛んでくるスカッドミサイルに対してこれを地上に落として、ペトリオットというのはそういった目的を持って飛んでいくものです。それから、トマホークというのは、目的を決めたらそこへ飛んでいくものであります。  だから、私に対してはどういう評価があるかは、それは冒頭申し上げましたように記憶にとどめておきますが、私は、とにかく国連の決議に従ったあの地域の平和回復活動というものに焦点を当てて、一日も早く平和回復活動に終点が来るように努力をしていくんだという意味で世間の方がそうおっしゃってくださるなれば、それはその意味で私も率直に認めます。平和回復をしたい、そのためにやるべきことはやりたい。  ただ、かちっと枠がありますから、その範囲内においてこのようなことをいたしますということを、この国会を通じても、九十億ドルの問題も、あるいは政令の問題も、いろいろ何度も繰り返して答えてまいりました。きょうもある新聞で、同じことを繰り返して答えておるという御批判がありましたが、同じことを答えなければ平和回復ができないわけですから、平和回復をするというためには、今後とも一貫してそういった考え方は何度でもここでお答えをさしていただきたいと、こう心得ております。
  65. 新盛辰雄

    ○新盛委員 自主性のある、一貫性のある、これまで強調してこられたことは、それはそれなりとしてあなたが思っていらっしゃるだけでございまして、この超法規的な措置をとられたということに対して、国民の反応はさまざまでございます。  最近とられた世論調査によりますと、「湾岸戦争避難民を運ぶため、政府自衛隊輸送機を派遣することを決めました。あなたは、この自衛隊機派遣に賛成ですか。反対ですか。」「賛成」が三三、「反対」が五五であります。過半数を超える人たちが反対。そして、「政府は、自衛隊機派遣を、国会での法律改正ではなく、内閣だけで決められる政令で決めました。政府のこうした決定の仕方は問題があると思いますか。問題はないと思いますか。」「問題がある」というのは七六。手続が大変まずいというよりは、問題だ、こういう指摘でございます。また、「「今回の自衛隊機派遣は、将来の海外派兵につながる恐れがある」という意見があります。あなたはそう思いますか。それとも、その心配はないと思いますか。」「そう思う」というのが五八、まさに過半数を超える方々がこれだけ関心を持っておられるし、あなたが一貫しておっしゃっている筋道からすれば、よほど国会の機能、また海部内閣が進めていることに対する問題を明らかにしていると思うのですが、この件についてはどうお考えですか。
  66. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今お示しになりました世論調査のことについては、私も拝見をいたしております。私はより多くの国民の皆さんに御理解と御協力をいただかなきゃならぬと常に思っております。そういった結果を踏まえてもなお私が申し上げたいことは、だからといって日本が今手をこまねいて、一国だけで、自分の国のことだけで、他国のそういった苦しみ、あるいは国連の決議に従った平和回復の努力、そういったものに協力をしていかない、そういう姿勢は政府としてはとるわけにはいけないというのが私の考えでありますから、国民の皆さんには、今日日本の置かれている立場、世界の平和を大前提にして、信義と公正ある世界の秩序の中で、いろいろな相互依存関係の中で大きくなってきた日本であります。豊かに平和に暮らすことができる環境であります。それを、力によって他国を侵略、併合、そういったことがいいのか悪いのかということももう一回原点に立ち返って、そして日本としてなすべきことをしたい。  その中にも出てきましたが、海外派兵につながるとか海外派兵がどうだとかいうことは、これは全く心配のない話でありまして、海外派兵というのは、武力行使の目的を持って武装部隊を海外に出すということが海外派兵で、それは絶対にいたしませんということと、そこには一線がきちっと引かれているということもどうか御理解をいただいて、避難民のために人道的な立場に立ってしていくということ。あるいは資金を提供するというのも、国連の平和回復活動のために資金を出すということについては、たしかその世論調査の中でも今度は過半数を超える人がそれはよろしいという肯定的な返事をしてくださっておると私も受けとめております。  ですから、それらのことをやらなければ、きょうまでの日本の歩み、これから先日本が国際社会で何をしていこうとしても、新しい平和と安定の枠組みづくりの中で、日本はさあというときに何も出てきて役に立とうとしないではないか、欧米の新聞論調なんか見ておりますと、起きなきゃならぬときに昼寝しているではないかという見出しまで躍っておったことを私は記憶をしておるわけでありまして、できる限りの努力をしたい、許される枠はありますけれども、できるだけの努力はしていきたいというのが今の願いでありますから、国民の皆さん方にも御理解と御支持がいただけるようにさらに努力を続けてまいりたいと思っております。
  67. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今あなたは世論の背景というのをお考えなさらないでそのままずばり自分のお考えを言っておられるよるですが、我々の政治というのはやはり世論が原点でしょう。民主主義です。だからそういう原点に立って事を処していかなければ過ちを犯す、二度と再び繰り返してはならない道をまた行くのじゃないかというおそれを国民は持っているわけです。それで、そういう中における判断を的確にしなければいけない。我々が繰り返し繰り返し指摘しているのもそこなんです。だから、今のこの世論調査の結果というのは、明らかに海部内閣に対して反省を求めている一面もあると、こう思っておるわけですが、どう受け取っておられるのですか。
  68. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 世論調査が示されるその数の見方というのは、委員のおっしゃるとおりの面があることを私は率直に認めます。しかし、しっかりやれという、そういった意味でこれを支持しようという数字のあることもこれは事実だと思います。  同時に、いろいろな情報が提供されておりますけれども、私はこの間もあるテレビの番組を見ておって、今度の平和回復の基金協力についてある著名な方が、日本は増税で頼もうとしておるが、ドイツは増税ではないんだ、ドイツは憲法の範囲内でできるだけのことをやっておるんだということをおっしゃいました。けれども、ドイツのコール首相は国会の演説において、増税の物の考え方についての協力も述べておることも事実であります。  また、ある方が、最近イラクへ行った報道機関の、イラク国内の民間人が苦しんでおる、撃たれておる、けがしておるという報道を見て、だから一日も早くやめさせなさいということを同じ番組で言われたときに、その番組に出ておった外人のゲストが、それじゃ、イラクではそうだけれども、クウェートでは八月二日からどうなったんですか、クウェートのこともここでやっぱりお見せするのがという提案をしました。そうしたらそこで司会者は終わりになって引き取って、場面はコマーシャルに急に変わりました。  もうちょっとやっぱり、物事の根本というものがどこにあって、そして国連の決議をされた背景がどこにあって、あっちも悪いがこっちも悪い、現象面だけをぱっととらえてこれで悪いというのじゃなくて、根本に従った解決のために努力をしておるんだ、それに対して日本はその立場を支持するんだという、原則といいますか基本といいますか、日本の憲法だって「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する」と書いてあるのですから、正義も秩序も基調にないような平和を日本の憲法は希求しておるのではないということは憲法の文言にも明らかですから、私は、新しい時代の幕あけに当たって新しい世界の秩序というものはそういうものであるために国連が決議をして行っておる問題でありますから、それに沿った解決への努力ですから、どうぞわかっていただきたいということを繰り返し申し上げさせていただくわけです。
  69. 新盛辰雄

    ○新盛委員 けさの松浦議員の回答にも見られるように、今回の自衛隊政令派遣、これはもう何回繰り返しても、同じところをまたあなたは全然解釈をそれから一つも変えないで、きのう、おとついからこう答えていらっしゃいます。授権の範囲という、この範囲を私どもは逸脱をしていると言っているわけです。逸脱をしていると言っている理由は、臨時応急の措置であるという認識をお立てになっていらっしゃいます。しかし、現実の問題として政令でこれをつくって、憲法四十一条の規定はもう無視をする。そういう、無視をしているとかまでは言いませんが、いわゆる国権のこの機関に、政令改正とかそうしたいわゆるこれからの自衛隊などをもし出すとすればそういう手続をやらなければならないのに、やり方がだめですよと、国民の反応もでかく七六%を超えているわけでしょう。だから、手続がまずいのならばお直しになる気はないのですか。これはどうですか。
  70. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何度も同じことを答えて申しわけありませんけれども、国民の皆さんにもよくおわかりいただきたいと思いますが、自衛隊法の第百条の五を国民の皆さんもどうか一回見ていただきたいと思うんです。そこには「支障を生じない限度において、」「内閣総理大臣その他政令で定める者」とこう書いてありますから、私はこれを素直に受け取って、政令で定めればそれで、法律にこの授権の範囲内で基礎が置いてあるわけですからできるという考え方を繰り返し繰り返し申し上げさせていただいておるところでございます。
  71. 新盛辰雄

    ○新盛委員 臨時応急のとなれば、今このような、今日の湾岸戦争に伴って海外自衛隊機派遣をする、それを定められる。また、このほかに、地域紛争等またどういうことになるかわかりませんが、将来こうした問題が発生したら、またこういう政令手続で特例を設けて緊急措置として避難措置をつくるんだ、こういうふうにお考えになっているんじゃないか、そう勘ぐりたくなるわけですよ。それはどうですか。
  72. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  今、委員、臨時特例である、臨時応急である、こういうふうな御指摘でございました。私の方で申し上げておりますのは、自衛隊法の百条の五で書かれております「国賓内閣総理大臣その他政令で定める」、こういうことで、その政令で定めるという授権の範囲内、この点が問題なんでございまして、政令で定めると言ったときに、それはかつて繰り返して申し上げておりますけれども、いわゆる高位高官、そういったVIPといった社会的な地位のみに、そういうものだけに着眼して判断すべきではないので、国としての輸送の必要性、こういったような観点からこの百条の五をまず考えるべきであろう、こういうことがまず第一点でございます。  そうなった場合に、今回の湾岸危機に伴って生じた避難民、これは国際機関から要請があり、かつ民間では対応できない、こういうものにつきまして、緊急性、公共性といったような見地からこれを政令で定めるのは、そういう自衛隊法百条の五というものの授権の範囲内である。先ほど申し上げました国による輸送の必要性といった見地からその範囲内である、かように申し上げているわけでございます。  そういう観点から言えば、ただ単純に緊急であるとか、そういうことだけで常に百条の五が行われるということではございませんで、そういう今申し上げたような判断基準、それに照らしまして、しかもそういう者を航空機によって輸送する、しかも自衛隊の任務に支障がない、こういった観点から今後とも判断されるべきもの、かように考えております。
  73. 新盛辰雄

    ○新盛委員 もう嶋崎委員の有権解釈論、そして市川委員の整合性に対する政府統一見解、こうした問題について二つとも預けられておるようですから、その結論によってまた自後議論をしたいと思っております。  それで、日本の主体性というのはどこにあるんだろう、日米安全協議によっていろいろとこれまで進められた日本の今日の過程はそれなりに理解をして、またそれなりにいろいろな手だてもし、あるいは支援もする、世界の警察官と任じておられるアメリカですから、それに日本がどういうふうにこれまで援助しあるいは相互信頼を得てきたかという面も、わからぬわけではありません。  ここに、「「無理」と「道理」」、元中国大使中江要介さんの文章があります。これは、個人がお書きになったわけですから、また大使をお務めになった方ですから、今、野にあるのですから自由に物が言えるのは当然ですが、本当にうがった言い方をしておられます。「「ヒト」を出せと言い出した者は、一体どういう「ヒト」を出せといったのか。」アマコスト駐日米大使、「「米兵が苦労しているのだから日本兵もこれに加われ」などという大国の大使にあるまじきことを平然と口にしている。このようなことを許してはならない。」「「汗」をかけ、というが、日本の提供する「モノやカネ」は、日本人の「汗」の結晶であって、「あぶくぜに」ではない。国民の税金の重みを忘れては」いけない。「「無理」が通れば「道理」が引っ込む、といっても、これでは「道理」は引っ込む訳には」いくまい。いわゆる昨年の国連平和協力法が廃案になりました。当然である、そういう言い方をしておられるわけですが、事ほどさように、日本は何のために、この中東湾岸のいわゆる貢献策としていかなる手だてがあるのだろうかということに真剣に突き詰めて考えていく必要がある。  ただ自衛隊海外に送ること、そのことを政令改正無理やりにして、押し曲げてやって、その既成事実をつくろうとされている。またこれ、午前中の松浦委員質問で、いわゆるこれからの民間機輸送体系についても相談をしてもらう、あるいはどういう手続をするかということについて皆さんの方でも検討されるようでありますが、こういう面で、初めに自衛隊海外派遣、やがては派兵となるのでしょうが、それがもう見え隠れしているというのが国民の不安なんです。だから、今度こうして無理やりに政令緊急措置をされた、超法規に出られた。これについて、やはり日本の貢献策を我々がどうするかということに真剣に考える必要があるんではないか。後ほど類例をもって申し上げますが、そのことについて冒頭お答えいただきたい。
  74. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな御意見があることは私も新聞、雑誌、テレビ等をいろいろ見ながらいろいろな角度の御意見を聞いております。  しかし私は、国際社会が平和な状況のもとで繁栄をしていきたい、冷戦時代の発想を乗り越えたときに、世界は今後はもう東西の対立やイデオロギーの対立ではなくて、自由と民主主義の価値観をみんなで共有しながら平和と繁栄を続けよう、その秩序をつくっていく枠組みの根本は国連だということを決めたんですから、みんながそこで助け合っていこう。また憲法のことを言うようですが、いずれの国家も自国のことのみに専念してはならない、他国のことを考えるというのが国際協調主義の日本の憲法が主張しておるのに、日本だけは何もしなくてもいいとか汗もかかなくてもいいとか――ちょっと、答弁中です。汗もかかなくてもいいとか、やはりそれは通らない理屈だと思うのです。ただ、守ろうとしておるのは、アメリカが兵を出して血を流しておるから日本もそこへ一緒に並んで戦えということまでは、いろいろな意味で日本はお役に立てないんだというこの現実もきちっと踏まえた対応、対策をしなければならぬわけであります。このことの中で、お金だけを幾ら出しても、これはお金を出す、お金で片つけようという考え方に対して心が通っておらない、もっと一緒になって連帯感を持ってできることとできないことがあるなればそれはわかるから、できることをやってくれという声が非常に強いことも事実でございます。  ですから私は、そのような意味で、きょうまでの日本の戦後の歩みの中で、しかも日本の安全保障は、日米安保条約のもとでアメリカの抑止力、安保条約の円滑な運営によってアメリカの抑止力で平和も保ち続けてきたんだというこの事実の背景もございます。そういう中にあって日本は今日になっているわけでありますから、ふさわしい協力をしたい、すべきである、こう思っておるわけでございます。
  75. 新盛辰雄

    ○新盛委員 すべきであるというその仕方に問題があるわけですよ。私どもはこれまで、自衛隊海外派遣につながる、いわゆる憲法違反である、そして何よりも日本が今やらなければならない他の貢献策は何かということについて真剣に考えているわけですから。  そこで、少しこの自衛隊の皆さんのことで申し上げますが、これは全国自衛隊父兄会宮崎県支部の皆さんが、今回、過日自衛隊員の皆さんにアンケートをとられたそうです。ところが、この「海外派遣ならば我が子を一時帰省させる」とか「自衛隊は我が国の独立と平和を守るため、専守防衛が任務で戦場には絶対に行かないと募集をして来た、嘘をついた事になる、責任が重い、募集協力はせぬ。」あるいは「自衛官は日本の平和独立を守ると宣誓をした 海外派遣は採用条件になく契約違反である」等々のいろいろ意見が出ています。そういう中で今回こうした派兵に反対ですか、どうですかというと、「派兵には反対九〇%、行ってはならぬ九〇%、命令でも同意せぬ八五%、自衛隊だからやむを得ぬ七%、よくわからない三%」、これは全国自衛隊員の本当の、また家族が思っておられる気持ちだろうと私は思います。それを無理やりになぜ海外派遣をするのか。  小松基地でも、ある三人の航空自衛官、今度派遣が決まったらしい。これは外部に漏らす話ではないのですからここで言っちゃったのですがね。この方々の中に新婚家庭を持っておられる人がおる。まさしく死ぬか生きるかというそれほどの緊迫感を持って、家庭的には大変である。そういう面で、これは新聞記者も追っかけていたらしいのですが名前を出すわけにはいきませんから、そういう面ではその心情まことに我々もわからぬわけでもないし、また現実、こういう事態が各地で起こっていると思われるのです。それをしも国権のためにと、あるいはこの湾岸戦争へ行きなさいと、その道を開くのは、この国会海部総理はそういうことはいたしませんとおっしゃいますが、そういう結果的なことになっている、末端ではそうなっている。日本は参戦をしたと認識をしておられるのですか、そうではないと思っていらっしゃるのですか。
  76. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連決議の六七八号の中で加盟国は適切な支援を求められました。でき得る限りの支援をして、国連の決議の目的が達成されるようにしたい、その立場は明確にいたしました。しかし、それは参戦とか参戦でないとかいう問題とは次元の違うことでございます。
  77. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次元が違うとおっしゃいますが、みんなが不安に思っているのはそういうところにあるわけですよ。もう現実参戦はしないよ、それは常識よ、そんなこと言ったって、といっても、ちまたでは、もう日本の自衛隊機が飛ぶということは、日本の軍機が外で、いわゆる海外でそうした難民救済という輸送分担をする、いわゆる戦争に加担をする、そういう認識なんですよ。だからこの問題は、あなたは首を振っておられますけれども、それは現実そういうふうにエスカレートしている認識がちまたに広がっているんですよ。だからこの自衛隊機輸送するというのはおやめなさい、まだほかに打つ手があるんじゃないですか、こう言っているのが私どもなんです。  それでこの政令の問題も、公布したのですから、一月二十九日からもういつでも飛び出されるようになっているわけですね。しかし、今民間機はきょうも、広島の方ですね、個人でエア・ヨルダンの航空と契約されて、一機自費で難民救済のために既に飛ばした、こういう報道がされていますね。こんな現実があるんですから、あり得る限りの民間輸送、そういう手続を踏む必要があるではないか、これを強調しているわけです。だから、一たんこういう政令でお決めになった法律解釈は、これからまだずっと延々と続くでしょうが、平行線かもしれません。しかし、そのことについての決着をつける前に、民間で輸送体制を確立する必要があるのではないか、このことを強調しておるわけです。それはどうですか。
  78. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほども松浦委員にお答え申し上げましたように、私どもはその考え方、それを否定しませんし、むしろ、民間の方も政府と一緒になってともにそういったものの募金運動、拠金運動に協力をしていただいておるということに対しては率直に感謝をすると私も申し上げました。政府政府立場で、その国連の機関のUNDROからの呼びかけに応じて当面の費用の三千八百万ドルを拠出しておるわけであります。IOMは、国連から委託を受けて、具体的に必要があれば、あらゆる国のあらゆる飛行機の状況を見ながら具体的な要請をするわけであります。日本へも具体的な要請が既に来ましたので、ベトナムに対しては民間航空にお願いをして協力が得られましたから、民間航空で既に実施をしたということも御報告のとおりであります。  ほかに、松浦委員も御指摘になったように、また今委員も申されるように、そのようなことを次々におやりいただけるということは、避難民輸送をしたいという私どもの目標にとって極めてプラスすることでありますし、また、IOMが、それらの要請を視野に置きながら、移送するときの必要性をとらえて解決をしていくわけでありますから、その努力に対しては、私はこれは評価をしておるところでございます。今後もどうぞよろしく御理解と御協力をお願いしたいと思います。
  79. 新盛辰雄

    ○新盛委員 具体的な問題で、じゃIOMに民間機利用の相談を、IOMの方に民間機を利用したい、いわゆるアンマンからカイロ経由ですから、カイロの方にもちゃんとこうした相談をしなければいけないわけですし、それを日本の政府としてそういうことについて相談をされた機会があるのかどうか、外務省御存じですか。
  80. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  先般の、総理が言及しておられますベトナム人の移送の例を例といたしまして御説明いたしますと、先般も当委員会でちょっと御説明申し上げましたが、日本側といたしましては、一月の十九日にIOMに対して民間機を活用して何とか避難民の移送に協力する用意があるということを申し入れておいたわけですが、一月の二十一日に至りましてIOMの方から、ジョルダンに今約千七百人の難民が滞留している、そのうちベトナム人が九百六十二人おります、これをカイロまで陸海路輸送するので、そこから本国まで送ってくれないだろうかという要請がございました。これを受けまして政府といたしましては、その日に政府部内で検討いたしまして、日本の民間会社に運輸省、外務省を通じてお願いして、大体いけるという確証を得ましたので、二十一日のうちに返答いたしました。  その後、IOMは実はカイロにも事務所を持っていますから、IOMの本部はジュネーブにあります、ですから我が方の出先の代表部とジュネーブの本部と連絡をとり、かつカイロにおきましてもカイロのIOMの事務所と調整をし、かつカイロにおる日本の大使がエジプト側に、今度そういう移送活動をIOMの要請により行うのでよろしくという趣旨のやりとりをしております。  そういう意味では、IOM及び関係国と打ち合わせをして移送活動に従事したということでございます。
  81. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この国際移住機構のジェームズ・N・パーセルさんから来ている内容で、民間機または軍用機の潜在的な供給源の詳細な調査を進めてきた、我々はまた、エジプトやスーダン国籍者の大規模な避難が必要になった場合、シリアからこれらの国まで航海するための船舶を各国政府が利用可能にすることができるかどうかに関して指摘を受ければ非常に感謝したい、こういう内容があります。  そういう意味で、今、国連難民高等弁務官事務所、いわゆるこの国における湾岸関係の避難民の流入状況をもう政府は把握しておられるとは思いますが、約二万人ですね。ほとんどヨルダン、イラン、シリア、トルコ、四カ国で累計されたものであります。この輸送手配、それをどういう航路でやるかに問題がかかってくるわけです。あなた方の方は自衛隊輸送機をすぐアンマンからカイロへ、こういう手続が、ヨルダンの方では、その内容については民用機であろうと軍用機であろうと構わないけれども、しかし民用機の方がいい。それはそうでしょう、標的になるわけですから、イラクの駐日大使が言っているのですから。そういう標的になる危険性を冒してまでヨルダン側の方で問題を起こしたくはないという気持ちが潜在しているわけですね。だから、そういう民間機を利用したり船を利用したりするいわゆるルート、このルートを私どもはやはり明確に、外務省としても事前にIOM等に対して、海路、陸路、こうしたものを通して難民の救済ができないかどうか、そのことについて積極的な働きかけがないではありませんか。午前中の話では全くなかったという話もあります。楢崎さんのお話でもそういうことを聞いた。だから、そういう面で、いわゆる初めに自衛隊輸送機ありという考え方が間違いであって、そういう民間機を主体にした積極的な努力をする必要がある、その認識から申し上げているわけです。どうですか。
  82. 丹波實

    ○丹波政府委員 事実関係の問題と絡みますので御答弁させていただきますけれども、総理御自身何度も御説明しておられますとおり、IOMは、UNDROとかそれからUNHCRとかいろいろな避難民あるいは難民を扱う機関の中で、UNDROという国連機関からその移送について委託を受けて活動している人道的な機関でございますが、移送問題を一手にいわば引き受けて交通整理をしている機関でございます。  そういう意味で、その避難民をどこからどこへ運ぶ、何をどういう手段を使って運ぶかということを最も知っている機関でございまして、それが、この国にはここからここまで頼もう、何人頼もう、この国にはあそこからここへ頼もうということで交通整理をしている機関でございまして、日本政府といたしましては、そのIOMから具体的な要請があれば、まさに汗をかくという観点から対応するということを申し上げておるわけでございまして、そのIOMのいろいろな手配につきましては、これはIOMが実は一番知っている問題というふうに考えております。
  83. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ここで御紹介しておきますが、これは全日本海員組合組合長、中西昭士郎からの政府に対する提言、そう受けとめていただきたいと思うのです。  この危機的な状況の中で、難民救済に船舶の利用を図ってほしい、積極的な展開であります。これは、百人程度の輸送力しかない自衛隊機派遣をしても、現在の難民の数を考えればないに等しい輸送力、それを考慮するなら、船舶による輸送は決してむだじゃない。だから、客船、大型のフェリーなどを政府がお出しなさい、積極的姿勢をやれるなら、受けて可能だ。そして、それには一つ条件があります。国連決議を尊重するという基本的な立場は変わらない、しかし憲法を守って、軍事行動への加担の拒否、二つは軍事物資輸送の拒否、三つは航海の安全の確保、四つは個人の意思の尊重などを前提とした、いわゆる船主あるいは当該労働者の協定交換をして協力をする。  そして、船舶は物資の輸送にこれまでも従事してきた。イ・イ戦争のときには約八年間、オイルロードを必死に守るために、あのペルシャ湾で大変な苦労をされたこの日本商船隊の皆さんは、ついに二名犠牲者が出たわけです。被弾を受けたわけです。それにもかかわらず、日本の油を守らなきゃならないという必死の、いわゆる船乗り根性、海の男、海に平和を戻せというその熱望のもとにこれを敢行されてきた。そして、今回の場合も、危険であれば東径五十二度に下がる、あるいは、よし、もう命を張って出ていこう、北緯の二十七度三十分まで出た。それは、どんどんどんどん今油が流れているところですね。そういうところまで進出をして、オイルロードを守ろうという決意がみなぎっているわけです。  そういう中で、スエズ、ベイルート、ベトナム、カリブ海などの紛争のたびにこれまでずっと犠牲を払ってきたわけですが、それだけに今回の場合はなおさらに大変なことである。そういうことから、一日も早く平和を取り戻すために、この切実な船員の願いとして基本的にその諸条件を酌み入れて、これからこうした航路を通じて難民の輸送を図りたい、こういう決意を示していただいておることに非常に敬意を表するわけでありますが、こうしたことについて、今まで、ではこの湾岸戦争における日本船員の対応について、一体政府はどういう対処をされたか。  これまでいろいろなエネルギーの業界の強い要請もありましたし、安全確保の条件整備もございましたけれども、もう既に今日二十七度三十分のところまで拡大をした戦域の中に船が行くわけでありますから、そういう中における、政府は全然これらにどうするこうするということも言わないで、自主的に、企業サイドにこれはお任せでございます。これはこれまでこういう諸条件について、昨年は国連平和協力法の論議の際も、海員組合などが反対するから自衛隊機を使わなきゃならぬのだとかいう暴言なども一部あったと聞いております。全くけしからぬことでありまして、こういうことの事態に対して政府が一々情報を明確に手に入れて、そしてそれにかわる、今度は安全を保ちながらこういう方々に対する輸送体系を確立をする。何かこう、日本の船は全然あの中に入っていませんよ、何にもやっとらぬじゃないかという指摘を受けて、非常に心外だと怒り心頭に発しておられるこの船員の方々です。だから、こういう方々を、業界も今一生懸命やっているわけでしょうが、それに対応する組合の方も一生懸命やっておるわけですから、だからこの点について、まず第一に海運労使の安全を確認をして、あるときはこの就航海域でゴーだ、アンド・ストップだ、こういうことの判断、あるいは的確な政府のそうしたことに対する要請、こうしたことについてこれからどう対処されるのか。  それから二つ目、努力が足りないんだ、あるいはある意味では、これまでもイ・イ戦争の例に倣ってよくやってくれている、高く評価している、こういうことになっているのか。そうであればこれまでの海運対策はお粗末に過ぎる。毎年毎年日本商船隊は減っている、昨年のこの予算総括のときにも取り上げておるわけですが、そういう中で日本船員を確保することすら難しくなっている、このことに対する政策的なこれからの対応も必要になってくるのではないかと思います。お答えいただきたい。
  84. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 先生御指摘のとおり、全日本海員組合が船舶による避難民輸送への協力を申し出ていることについては、人道的見地から私ども高く評価をいたしております。  戦争が勃発いたしましてから、私どももペルシャ湾及び紅海の日本籍の船あるいは日本でチャーターした外国船、これは毎日調べております。一月十七日ペルシャ湾十隻、あるいはずっと参りまして十六隻、十八隻、あるいは昨日はペルシャ湾で、タンカー、貨物船合わせまして二十一隻でございます。また、紅海の方は、一月十七日十四隻それから十五、十六、十七、十九と、昨日は十七隻でありまして、運輸省の方でもこれらについては毎日やっております。  緊迫した状況のもと、湾岸危機の中、我が国経済を支える中東からの原油の輸送に従事している船員を初め海運関係者に大変敬意を表しております。政府といたしましても、航行船舶の安全を確保するため、海運労使及び関係省庁により構成されるペルシャ湾安全対策官民連絡会を開催するなどして、安全にかかわる情報の提供を行うほか、常時日本関係船舶の動静の把握に努めております。緊急を要する事項については、海上保安庁から二時間ごとに航行警報を発しているところでもあります。今後とも、政府としてはできるだけ航行の安全対策に対処していくつもりであります。  なお、こうした船舶に乗り込んでいる日本人船員に対する手当等の措置については、労使間の話し合いに基づいて特別慰労金が支給されると承知いたしております。  以上でございます。
  85. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大臣、それはあなたが努力されたんじゃないんでしょうが。労使の間でせっかくこれを積み上げて、何としても人道的にこの民間の、いわゆるオイルロードも守らにゃならぬし、これから難民の輸送も受けましょう、そういう場合に政府が積極的に政策の面としてこれから対応してほしい、それを願っているわけですよ。先ほど申し上げましたように減少しつつあります船員の諸条件の中では、船員の育成とかあるいは保全の対策を身を入れてやってほしい、それも加わっているんですよ。それをしながら、これから政府が恐らくこの避難対策の中でこれらの海域に進める場合に、積極的に労使の方にもそういう話をかけて、そして人道的立場から協力をする、身を削ってでもやる、犠牲になってでもやるとおっしゃっているんですから、そういう面の対応を政府として真剣に考えてほしい、そのことを言っているのですが、どうですか。
  86. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 今先生の御指摘も十分にこれから検討していかなきゃならぬ、こう思っております。
  87. 新盛辰雄

    ○新盛委員 総理総理のお考えを。
  88. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現在も船による輸送に御協力を願っておることは私も報告を受けてよく承知いたしておりますが、今、委員から、労使間で話し合って人道的に船を出して避難民の移送のことも引き受けてやろう、身を削って、犠牲をもってもやってやろうと決めてくれたんだ、こういうお話を承りました。私は感激しております。どうかその問題に、避難民の移送のために、できるように、労使の皆さんにも政府から積極的に御理解と御協力をいただいていくように、さらに懸命のお願いを続けていく決意でございます。
  89. 新盛辰雄

    ○新盛委員 お願いするんじゃなくて、政府としてこれに対する対応を積極的にやってほしい、そういう面ではいろいろな問題がございます。内容について一々は申し上げませんが、これからの政府がすべてこうした問題に、この労使の問題だけではなくて、視野を広げて、この海運対策、政策の面も踏まえて、私はよく積極的なナショナルミニマム問題をこれまで長い間提起しました、日本商船隊を守るために。そういうような問題も踏まえてこれからぜひひとつ御努力をいただきたいと思うんです。  さて、この難民輸送がどういう経路でなされるかという、ここでアカバ経由コース、アカバ経由コースの二、ダマスカスからベイルート経由コース、いろいろ案があります。まず、アンマン―アカバ―スエズ―カイロ、これはアンマンから陸路でアカバまで四時間から五時間、アカバからフェリーで二十時間、スエズから陸で四時間、このコースが一番いいんではないかと。このコース選定等については、外務省はこんな検討しておられるのかどうか。そして、もう絶えず民間機だ、絶えず軍用機だ、まあ飛行機ももちろん大事ですが、多量に運べるのはバス、自動車あるいは船なんですね。そういうことについての認識をどう持っておられるか、まずお聞かせください。
  90. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生、何度も同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、今先生が御質問になられた幾つかの点について最も正確な知識を持ち得る立場にあるのはIOMでございまして、IOMが諸般の状況を勘案しながら、こことここは日本に頼むという具体的な要請を持ってくる、それを日本政府としてはどういう方法で対応するかを検討する、全体の考え方はそういうぐあいになってますので、ぜひ御理解いただきたいと思います。
  91. 新盛辰雄

    ○新盛委員 では、演説は抜きにしまして一問一答でいきましょう。  IOMから我が国政府への正式な依頼内容があったのかどうかというのは、これはどうなんですか、簡単に。
  92. 丹波實

    ○丹波政府委員 これも何度もあれして恐縮でございますけれども、先生の正式な依頼というお言葉の意味にもよりますけれども、一月の十一日に避難民を扱う国際機関が集まりまして、一月の十一日に行動計画というものを発表しておりますけれども、そういう議論を通じて避難民の移送についてはこのIOMが担当するんだ、国連が委任するんだということが決まりまして、それを受けて一月の十七日に、御説明申し上げておりますとおりパーセル事務局長の書簡が三十三カ国に送られておる。その中でパーセル事務局長は、現段階ではいざというときの事態に備えるための情報を求めておるということで、各国に対しまして、民間機または軍用機の輸送能力を検討してほしい、その検討した結果、もし可能であれば、どのぐらいの準備期間でどのぐらいのものを出せるか要請したいという、そういう要請が来ておるわけでございます。
  93. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この依頼内容から、IOMが我が国に自衛隊機派遣を要請をされているんですか、ないんですか。簡単に答えてください。
  94. 丹波實

    ○丹波政府委員 簡単に御説明を申し上げます。  今申し上げましたとおり、この書簡の最後の方に、民間機または軍用機の輸送力を提供する可能性を検討してほしい、回答してほしい、こういう要請が来ておるわけでございます。
  95. 新盛辰雄

    ○新盛委員 国内でヨルダン航空の飛行機のチャーター問題、募金活動、そういうのが行われているのは先刻から紹介されておりますが、こうしたことに対して、再度繰り返しますが、政府はどのように考えて、またどうするか。これは外務大臣でないと答えができないでしょう。
  96. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先ほど午前中の御質問にもございましたが、総理からお答えをいただきましたように、民間団体の貴重な御協力の御希望というものは、政府からもIOMに対しまして直ちに連絡をいたすように、先ほども局長に命令を下したところでございます。  なお、今日までの経過を申し上げますと、一月三十一日、日本カトリック司教協議会より、協議会の経費負担によるヨルダン航空のチャーター便を政府に提供するとの申し出がございまして、政府としては、このようなチャーター便の提供を、IOMに対し外交ルートを通じ本件チャーター便オファーがあったことを伝えおく旨回答をいたしております。  なお、二月九日にアンマン発カイロ行きのRJ五〇三便を同協会がとりあえず予定をいたしておりますものの、契約には至っていないものというふうに承知をいたしております。本件申し出につきまして、二月一日、伊集院ジュネーブ代表部公使よりパーセルIOM事務局長に既に伝達済みでございまして、先方より日本の民間のオファーを極めて多とするが、タイミングやルートについてはIOMに任せてもらいたい、こういう回答がございました。
  97. 新盛辰雄

    ○新盛委員 防衛庁長官にお聞きしますが、自衛隊輸送機C130は、通常自衛隊小牧基地に随分これはおるんだそうですが、どういう使われ方をしておりますか。
  98. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  C130は御指摘のとおり小牧基地に通常おります。そういたしまして、通常の任務といたしましては陸上自衛隊、そうして輸送任務につきましては海上自衛隊、それから航空自衛隊の隊員の輸送についてもこのC130は当たっておるところでございます。
  99. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この輸送機の整備、メンテナンスはどういうことになっていますか。
  100. 関收

    ○関政府委員 C130の整備について申し上げたいと思います。  通常、飛行いたします場合の飛行前点検あるいは飛行の後の飛行後点検というのをこれは恒常的に行っております。そのほかに、航空機の品質を維持いたしますために一定時間の飛行時間ごとに各部位の点検等を行っております。さらに、おおむね三十六カ月ごとにかなり大幅な見直し、修理、点検等を行っておるというのが状況でございます。なお、実際に使っております過程でいろいろふぐあい等がございました場合にはその都度直しておるということでございます。
  101. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ヨルダン航空が避難民輸送のために用意できるチャーター便、これはもうほとんどボーイング727ですね。百三十九名の定員です。このチャーター便は砂漠の気象状況をよく熟知しておりますし、自衛隊のパイロットが未知の気象状況の中で飛行機を操縦する、あるいはこれは難民を輸送するとおっしゃるのですが、人道上の措置といっても、航続距離は短く、しかも整備の方でも今お話あったような状況ですし、あるいは砂漠の砂じんの中を飛ぶ、これは大変なことになりやしないか。しかも標的になる、いつ撃ち落とされるかわからぬ、こういうことなんですが、そういう状況の中で自衛隊機を飛ばすということで、防衛庁としてこういう危険な場所、あるいは輸送の任務に従事するとはいえ、どういう対処をされているのか。
  102. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、C130というのは本来自衛隊においては、我が国の国内における自衛隊の任務に従事しているわけでございます。そうしてまた民間航空機と性能の面でいろいろ御指摘がございましたが、そういった面は確かにあると思います。しかし、私どもは性能に着眼してこちらがいいあるいはいけないといったことを言っているのではございませんで、先ほど来お話ございますように、具体的に避難民輸送というニーズが出てくる。それを、国連の委託を、委任を受けておりますIOMがそれを十分判断いたしまして、そのまた具体的な要請があるならあるんでございましょう、そのときに出ていくかどうかということを考えていくわけでございます。  いずれにしても、仮にそういうことで自衛隊輸送機がこの任務に当たることになりました場合に、それに従事いたします隊員の方々の安全なりあるいは処遇の面で不安があってはならないと思います。そういった意味で手当であるとか補償とかいうものも含めまして今政府部内でいろいろその検討を進めて、隊員の方々がその任務に当たるときには十分な誇りとそうして安心感を持って当たっていただくように考えておりますし、また安全の面については、隊員はもとよりでございますけれども、避難民輸送に当たるわけでございますから、避難民の方々を安全に輸送するということがどうしても必要でございますので、これらにつきましては十分な配慮をしてまいりたい、こう考えております。
  103. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この経費はどれぐらい積算されているのですか。
  104. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答えいたします。  先ほど来お話し申し上げますように、これは具体的な要請があって、それからまた政府の中でも一連の手続を経まして、それから実行するわけでございます。今具体的なその要請もない段階でございますので、一体どういうふうな態様でどのような規模でこういった任務、あるいはどのくらいの期間この任務に当たるかわかりませんので、今その経費につきましてお答えできる段階じゃございませんけれども、いずれにいたしましても、この任務に当たるといたしますと、その燃料の経費であるとかあるいはその任務に当たる隊員の食糧あるいは宿泊といった経費がかかるわけでございますけれども、今のところこれといった確たる経費を申し上げられる段階にはございません。
  105. 新盛辰雄

    ○新盛委員 警察官それから海上保安庁、これは派遣があり得るのか。また武器を所持するのか、所持をしないのか。するとすれば、その法的な根拠
  106. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 海上保安庁の所有する巡視船、先日私も横浜に行って視察をしてまいりました。五千三百トンクラス二隻、三千二百総トン八隻ございますが、御承知のとおり巡視船は海難救助等海上保安業務の遂行に適するような構造になっておりまして、大量の人員輸送には向いていないと考えております。もしどうしても入れるとしても、行くまでには一カ月半ないし二カ月ぐらいかかるし、また構造がそういう状況でございますので、せいぜい入れましても百人程度でございます。  しかし例はございまして、六十一年の十一月に三原山噴火で巡視船で大島―東京約四時間程度でございますが六百名、これは船上へ全部出すのでございまして、沿岸であり、また短時間ということで、巡視船の避難民移送、こういうことになりますとアカバからエジプトあるいはシリアからスーダン、それぞれ二十時間あるいは七十時間かかると見ておりまして、私どもとしてはこういう状況のもとで難民輸送に使用することは考えておりません。したがって、武器のお話等もありましたが、出すことは考えておりません。
  107. 新盛辰雄

    ○新盛委員 自衛隊機は武器を所持をするのですか、しないのですか。
  108. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど来繰り返し申し上げておりますように、IOMからの具体的な要請があって、そうしてまた政府で一連の手続を経た上で自衛隊機がその任務に従事するかどうかというのが決まるわけでございますので、現在の段階でまだそういった任務に当たるといたしましても、どういう状況下でそれを遂行するのか定かじゃございません。  しかし、いずれにいたしましてもこの任務を安全に遂行しなくちゃいけない、それは当然でございます。先ほども申し上げましたが、その隊員の安全もございますけれども、何よりも避難民の方々の輸送を安全にしなくちゃいけない、こう考えておりますので、安全面には十二分な配慮をしてまいりたいと存じております。  しかし、安全対策というのはいろいろな側面がございまして、これはやはり基本的には、本当に危険が極めて高く、その安全度がどの観点から見ても非常に危険であるという状況のもとではそもそも運航というものはできないんだ、こう思いますし、それから、そういった状況でなくてもやはりまず事前にいろいろなチェックをしていく。今回安全対策の面で特に注意しなくちゃいけないのはテロとかゲリラとかいわゆるハイジャックとか、そういった可能性だと思いますので、そういった人間が例えば避難民の中に紛れ込むという可能性もこれは否定できない場合もあると思いますので、そういったところは国際機関あるいはその所在国と申しましょうかその国、あるいは大使館等とも協力し、またこの任に当たります自衛隊も十分にそういったところはチェックしていくということも必要だと思います。  そういったあらゆる面から安全面に十二分に配慮していくということでございまして、そういった安全対策の中に今委員御指摘のような面を含める必要があるのかどうなのか、あるいはどの程度のものなのかという点は、今の段階では何とも申し上げられない。やはり具体的に事を運ぶ段階で状況をよく考えまして判断してまいりたい、こう考えております。
  109. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今、戦争はどう拡大するかわからないという不安な未確定の状況ですが、イラク側がひょっとしたら化学兵器を使用する、毒ガスを使用する、こういうことも風聞されています。それで、ガスマスクを配備する、これは民間機の場合もそうですし、民間の今度は船であるいはバスでという場合もガスマスクは当然問題になってくるわけですが、我が国は武器輸出三原則によってガスマスクは武器、こうなっているやに我々は理解をしております。もうすぐ飛び立たなきゃならぬという、IOMの要請があれば飛んでいくときにガスマスクを着用するあるいは準備をしていく、こういうことになるのですか、どうなんですか。
  110. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答えいたします。  ただいま御指摘の防毒のためのマスクを携帯するかどうかという点でございますが、それも先ほど御答弁申し上げましたように安全対策をあらゆる面から考えていく、その中で考えてまいりたいと思います。そうしてその検討の結果、もし現実にそれを携行するということになりますと、これは委員御指摘のとおり我が国の武器三原則の対象になっていると思いますので、その関係において必要な手続というものは、その担当官庁であります通産省の方とも十分相談しながらやらなくちゃならぬと考えております。しかしながら、もし仮にそういうものを携行するといたしましても、これは今回の避難民輸送に当たるというその任務の性格、人道的な性格なり任務の遂行の態様から申し上げましても、武器三原則の趣旨から考えて、これは携行することに問題があるとは考えておりません。  しかし、いずれにいたしましても、それは具体的に任務を遂行することになり、しかも携行する必要があると判断した場合の話でございます。
  111. 新盛辰雄

    ○新盛委員 だから、自衛隊機海外に出すのには手続上内部のいろいろな問題があるわけです。そういう面で、これから海外派兵につながろうとしておりますこの自衛隊機輸送はおやめなさいというのが我々の趣旨なんです。  それで、民間機の場合は、あるいは船を利用する場合においてもですが、この使われようとしている化学兵器、これはマスタードガス、びらん剤、タブンというのはタブン神経剤、これはタブン神経剤じゃなくて、タブンという名の兵器であります。ころいう毒ガスは非常に致死量が高い。だからガスマスクぐらいじゃとてもじゃない対応できないですね。皮膚についただけでも死に至らしめる。マスク、スーツ、手袋、こういうものも必要になってくる。堅固な密封の避難場所も必要だ。汗をかかないようにしなきゃいけない。汗をかかないで仕事はできないわけですから、そんなことを考えれば、こんなことでやはりどう安全を守るかということになるわけでして、そういうような面でこれから民間の皆さん方にも対応する場合にどうするかという面で、これは通産省、民間にガスマスクはどうするんですか。
  112. 堤富男

    ○堤政府委員 具体的、実務的案件でございますので、私の方からお答えさせていただきます。  今、先生お話しのガスマスクというのは、通常使われております産業用のガスマスクとは違いまして、化学兵器に耐えるガスマスクということでございますので、これは武器に該当いたします。累次この予算委員会を初め国会等でも議論をされておりますが、武器三原則というのを従来どおり厳守をしていくという立場ではございますが、現在の状況報道機関ですとかあるいは医療機関ですとか、あるいは油の輸送の問題等で湾岸に実際に出かける人がいらっしゃる、それから現に化学兵器を使われるおそれがある、それからガスマスク自体が殺傷能力を持つわけではないというような特殊状況をすべて勘案いたしまして、例外的な措置といたしまして、海外で転売するとかそういうことのないような条件を十分つけまして、万全な管理をするという前提で既に民間にも許可をいたしております。具体的には三件やっております。
  113. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、環境破壊と海洋水産資源の保護という問題で少し御意見を伺いたいと思うのです。  今回の湾岸戦争によってもう既に御案内のように大変な石油の放出がなされて、ペルシャ湾は今死の海に変わろうとしているわけであります。戦争は最大の環境破壊である、これは一九七二年のストックホルムで第一回の人間環境宣言、国連の人間環境会議、いわゆる環境開発会議というのがあったのですが、ここで宣言をしたというのは、まさに今日を指摘をしている。これはベトナム戦争の直後ですからね。だからこれは、これからも地球は破壊されますよという警告を発したわけです。  こういう中で、既に油田の原油が流出をしていて、ジュベイルの二十キロ近くまで来ているという。それでサウジの最大の淡水化施設プラント、ここにも近寄ってきて、もう大変なことになっている。また船が出入りをするラスタヌラあるいはダンマン、こんなところへ石油を運ぶ船も、石油が下にこびりついて、いわゆるスラッジですね、チョコレートムースと言うんだそうですが、廃油ボール、いわゆる炭素と水素の混合物、これが沈殿をして三十メートルくらいに沈むんです、ボールになって。それで当然海洋性植物は全滅するというのは大変なことでありますが、もう航行も不能になっているというふうに伝わっています。  この面で、一体報道はいろいろな面で不規則に流されていますし、ただイラクにこんなふうに大量原油が流されているという、数百万バレルとかあるいは中には一千万バレルとか、それこそさきに起こりましたバルディーズ号の沈没をして石油が海岸線を二千キロにわたって汚染をしたなどという話に匹敵する、数倍、何十倍の石油流出なんですね。もう環境が侵されている。そういう状況で、一体今現在どの程度の油が流出をされているのか。そして、オイルフェンス等どんどんどんどん日本からも運び出しておりますが、それに対する貢献策として今絶好のチャンスを迎えていると思うのです。そういうところにどんどん金を使って貢献すべきではないか。  まずその視点に立って、どれだけの数量、どういうふうな今現状になっているか、ちょっと、情報が非常に不足をしておりますのでお知らせを願いたい。
  114. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  まず、この原油の流出量についてでございますが、これについてはいろいろな報道がなされておりますが、私どもが一番のいわば被害を受けようとしておりますサウジアラビアの当局者等と接触をしております限りにおきましては、およそ八百万バレルから一千百万バレル程度の流出があったものということでサウジアラビアの政府は対応をしようとしておるというふうに承知をいたしております。  それから、日本政府としての協力でございますけれども、私どもといたしましても、今般の石油流出によって被害をこうむっている国々に対しまして可能な限りの協力を行うという意図の表明をいたしまして、具体的には、まず、この原油の流出によって一番強い影響を受けておりますサウジアラビア等に対しまして、先方政府の要請を踏まえまして、いわゆるオイルフェンスを緊急に送付するということにいたしました。それで、通産省、海上保安庁、外務省、協力いたしまして、全体で約三十キロメートル分のオイルフェンスをサウジアラビアに供給するということで、今週の初めにまずその第一便が出発をいたしまして、今週中に第二便、その後、飛行機の手当てがつくに従ってこれを緊急に送付するということを考えております。  またそのほかにも、関係の国際機関、関係諸国等とも連絡をとりながら、この海水淡水化装置に関する技術の情報とか資機材の提供、あるいはこの環境汚染に関します調査協力その他について何ができるかということを政府部内でずっと検討を鋭意進めておるところでございます。  それから、特にこの中で海水淡水化装置の保護に関します資機材の提供につきまして、現在外交ルートを通じてサウジアラビア政府の意向等を照会しておるという段階でございます。
  115. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これに関連をしまして、来年六月にブラジルで国連環境開発会議が開催をされます。これは非常に大事な会議でございまして、今度のこの湾岸戦争による油田、この汚染の問題も中心になるでしょうし、生態系を痛めつけ、地球が破壊されるというこうした状況の環境で議論がされるわけですが、そこで、この環境と開発の問題に関して、いわゆるこれから先水資源問題を中心にした問題で取り上げますが、一方では汚染、そして垂れ流し、あるいはまた沿岸における廃棄物、カドミウムあるいはその他PCBですね、あるいは酸性化、こうしたことで、地球汚染、フロンガスまでというに至って、海の中はもう全く魚がすめなくなっている。そういう環境にありますから、海洋水産資源の保護、合理的利用及び開発の議題がワーキンググループで論議されるそうであります。  そういう中で、我が国も、これまで外洋の面における遠洋漁業というのは衰退の一途をたどっているのは御案内のとおり。トロール船の規制あるいはベーリング海における完全なる締め出し、そしてあげくの果ては鯨をとってはいかぬ、いわゆる捕鯨禁止。これも今調査捕鯨やっておりますが、一九九二年のモラトリアム、期待をするけれども、ことしもだめでしたから、継続、強行して調査をやっています。ベトナム戦争が終わったときに、この国連会議で、環境開発会議で、いわゆる地球が破壊されるんじゃないかという心配がされたのに、どこでどう間違えたのか、鯨をとっちゃいけない、こう来たんですね。ここから始まって十年間、これはもうモラトリアムで大変なことになる。今度はまたこの会議で、まさしく二十年ぶりにあるわけでありますが、ここでまた今度は海洋食物の、いわゆる我々の動物性たんぱく質源になるそのもとをとっちゃいかぬ、こんなことになりましたら大変なことです。何か戦争の起こる段階ごとに、海の底を清浄化し、魚のすみづらくなるのをきちっときれいな海にしなきゃならぬのに、逆にとるなと言う。そして、一面では汚す。生態系の面ではピラミッド食類連鎖と言われているんだそうですが、こういう環境の中で一体これから日本はどういうリーダーシップを持って対処しようとしているのか。これは、国際的にもう危機的状況だから、みんなが知恵を絞ろうじゃないか、生きる側と自然を保護する側と、そして地球を破壊しないようにするために、こういう問題の平面図を明確にしなきゃいけないんじゃないかと思うので、この点についての見解をまず承りたいと思うのです。総理はどうですか。
  116. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員御指摘のように、地球環境問題、特に海洋汚染防止問題というものは、人類にとりましては共通の解決しなければならない重大問題だと私ども認識をいたしております。  九二年六月にブラジルで開かれます環境と開発に関する国連会議、これは地球環境問題に関する国際的な取り組みを集大成するものとして非常に重大な要素を持っておると思っておりまして、日本は準備委員会の副議長を務める等、準備段階から積極的に参加をいたしております。また、政府は地球環境担当大使を新たにこの一月既に任命をいたしました。これら種々の国際会議の開催を含む日本の環境外交の推進体制をこれから進めてまいるということ、強化をしてまいるということでございます。  また、途上国支援の重要性を踏まえて、八九年から三年間で環境分野に関する二国間、多国間援助を三千億円程度をめどに強化拡充することに努めますとともに、UNEPの地球環境保全技術センターを日本に誘致するための努力をただいま推進をいたしております。また、同国連会議に向けたアジア・太平洋地域の組織強化を促進するためにESCAPを中心の環境地域戦略の策定に対して積極的に支援を行っていくほか、本年の七月には同地域の環境大臣等を集めてアジア・太平洋環境会議を開催することといたしております。
  117. 近藤元次

    近藤国務大臣 お答えいたします。  水産資源の有効利用ということは、今まさに緊急の課題として重大な関心を持って仕事を進めておるわけであります。  先生から御指摘のございましたように、この十年間の水産を取り巻く状況というのは、かつての水産王国であった日本の国にとっては、まさに一変をして、二百海里以来後退の一途をたどり、厳しい環境で実はございます。  資源問題でも頭を痛めておるこのような状況の中で、また環境問題でさらに厳しいまさに環境になろうとしておるわけでありまして、食糧事情から申し上げても、あるいは産業政策から申し上げても大変重要な課題で、正直今頭を痛めておるところでありますけれども、いずれにしても、環境と産業との調和をとるという面では、我々水産を所管する人間としてどのような理論武装をしていくかということで、科学的にデータの分析をしたり、新しいルールをつくりながら、来年、今お話のございましたように二十年ぶりの世界的な大きな環境会議までにぜひ間に合わせたい、こう思っておるわけであります。  私も、大臣就任前には、この会議に出席をする予定でございますので農林水産業の面とあるいは環境問題の調和のできるようなことに努力をしてみたいと考えておった一人でありますので、今後精力的にこの問題に対処していきたい、そう考えております。
  118. 新盛辰雄

    ○新盛委員 誤った環境保護論によって漁業、水産業が理不尽な仕打ちを受けないようにぜひとも努力をしていただきたい。そしてまた、特に日本の食糧、食習慣、文化、こういうことが異なる世界とのつき合いですから大変ではありましょうけれども、ぜひリーダーシップをとっていただいて、漁業の重要性及び魚食文化を十分に引き起こすことのできる、二十年ぶりの国連の環境開発会議でございますから、堂々と、憶することなく、ひるまずにひとつやっていただくようにお願いします。  次に、時間があと、大変な問題を抱えて、戦後処理を私は今から申し上げます。  まさに、湾岸の戦争もやがて終われば戦後処理もしなければならないわけでありますが、日本は四十六年、いまだに戦後処理を暗い影を引きずってやっております。そのことについて、以下、ぜひこの問題を真剣に受けとめていただいて御答弁いただきたい。  まず第一に、我が社会党は昨年七月に、恩給欠格者問題で、九一年度予算措置について海部総理あてに申し入れをいたしました。その条項は、党利党略を排して超党派の立場からこの救済を図るためにあらゆる手だてをしてきたつもりでおります。しかし、なかなかその処置が、結果的には戦後四十六年の暗い影を引きずっていまだに解決をされていない。老兵は消えていくという有名な言葉がありますが、今まさしく、この戦域にあった方々は七十歳を超え平均七十三歳、もはや余命幾ばくもないので、ぜひ生きているときに何とか処置してくれ、この軍人恩給欠格者の血の叫びが聞こえます。官民格差の是正、通算、あるいはまた平和祈念事業基金の取り扱い等をめぐって今から申し上げます。  まず第一に、既に申し入れました社会党の内容について、一、二、三ございますが、四つまで申し入れてございますけれども、各一つずつ明確に、端的にお答えをいただきたいと思います。
  119. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答え申し上げます。  先生御案内のとおり、恩給欠格者問題、戦後強制抑留者問題及び引揚者問題を中心といたしまする戦後処理問題につきましては、昭和六十三年七月、平和祈念事業特別基金等に関する法律に基づきまして基金が設置されまして、その基金におきまして各般の事業を実施しているところでございます。  お申し越しのことは、一つは、遺族を含めまして、その書状及び銀杯の贈呈事業に関しまして、内地、外地、軍人、軍属を問わず一年以上の方に当該措置を講じなさい、こういうお示しであったと存じます。  私どもといたしましては、本件につきましては、基金の運営事項に関する重要事項を審議します基金の運営委員会におきまして大変慎重な御審議を賜りまして、他の戦争犠牲者との均衡も考慮して、事業の実施がこの果実によって賄われるものであるということをも考慮して当該基準を設置しているところでございます。これも含めまして、平成二年、昨年の十月からは、現に書状及び銀杯を贈呈されている方につきましては重ねて慰労の品を給付する、交付する、それから書状と銀杯に関しましては、何しろ対象者が百八万人に上る対象者でございますが、これらの方々が申請ありました場合には、これが一日も早く給付できるようにということが何よりも先決、かように考えておりまして、その方向で努力している次第でございます。  したがいまして、ただいま先生お示しのところは、この基金の事業の現状、他の戦争犠牲者との均衡を考慮いたしますれば、なお困難であるというふうに考えているところであります。
  120. 新盛辰雄

    ○新盛委員 答えになっていないわけですよ。従来どおりのパターンを繰り返しているだけでしょう。  じゃ、一つ一つ詰めていきましょう。  まず第一に、申し入れの答えをしてくれと言ったのに全然お答えにならないで、いや、事情がこうだああだとおっしゃいましても、我々が新しくこれまでつくられましたような経緯を踏まえてもそうですけれども、特に、この外地勤務者で加算を含めて三年以上の者を有資格者とする、こういうようなこと等についての設定もいろいろありますね。関係者の「戦争犠牲による労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰藉の念を示す」などといういろいろな理屈はつけてありますよ。書状、銀杯、こうしたこともございます。しかし要は、こういうことに対する、結果的にはまだ多くの方々に行き渡っていない、二百五十万人の外地引揚者がおるし、実際に対象者も百八万とか聞いておるわけで、この数字は後で確かめたいと思いますが、こんな面で今一つも前進をしていない。こういうことから、附帯決議が内閣委員会では特につけられた経緯があるわけでしょう。  だから、この処置について、まず第一に、シベリア抑留関係者以外の恩給欠格者にも慰労金を支給すること、恩欠者の遺族も対象とすること、これは今できませんとおっしゃいましたね。そのとおりですか。
  121. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えを申し上げます。  先生御案内のとおり、当該資格要件等につきましては、先ほど申し上げましたとおり、平成元年の一月の十七日に基金の運営委員会から御提言を賜ったわけでございます。それの申し述べるところは、国のために家族を残し、危険な戦務に従事したにもかかわらず、軍歴期間が短いために年金恩給を受給できない恩給欠格者が国に対して何らかの措置を希望する心は理解できるところである、ただ、これを施行するに際しましても国民の理解が得られるものであることが肝要である、そういうことで、一定の資格要件を満たす者、つまり外地勤務者で加算を含めて三年以上の者に書状を、このうち七十歳以上の方には、高齢者から順に記念品をあわせて贈呈する措置を講ずることが適当である、かような御提言を賜りまして、私どもは、先ほど申し上げましたように、大変多数に上る方々から御申請をいただいておりますので、これらの方々を一日も早くその申請がありましたらば措置をするということでございますので、先生お示しの在職年以上に資格要件を緩和しなさい、あわせて内地の方についても同様措置を講じなさい、あるいはその慰労金を給付しなさいという点につきましては、この基金の実情にかんがみますれば非常に困難であります、かようにお答え申し上げているところであります。
  122. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そのところだけにとどまっておるわけにはいきませんが、軍歴期間の年金通算の有無ですね、いわゆる官民格差問題でございますが、これについてはその後どう検討をしておられるのですか。特に、これは自民党とも深い友好関係にあります軍人軍属恩欠者全国連盟なども含めて各種団体がございます。年金通算についての官民格差是正問題では、まさに一刻も早く取り組むべきである。また、もちろん内閣委員会では、平和祈念事業特別基金法の制定を行った以降も、恩給法の改正、公務員には軍歴期間が共済年金に通算されているにかかわらず旧令の共済組合加入者以外の厚生年金とか国民年金の被保険者に通算されないということから不満が出て、一昨年、昨年、第百十八国会もそうでしたが、「恩給欠格者等の処遇について検討の上、」特に今度は「適切な措置を講ずるよう努めること。」と、「適切な措置を」という附帯決議までつけたわけですから、これを一体政府はどう受けとめておられるのか。是正をする気があるのかないのか。もし方法がほかにあるのならば、共済の年金通算という措置ができなければ、では一体何ができるのか。そういう一時金的な話も、准看護婦の例等も取り上げられた例がございますけれども、今ここでどういうふうなことを検討されているのかを、ひとつ責任者がお答えいただきたい。これはどこですか。そんな、担当を考えていたってしようがないじゃないですか。
  123. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今先生いろいろ問題点を列挙されましたが、いろいろ各党の御意見もお聞きしながら、政府として鋭意検討をしてまいりましたけれども、結果としては現在のこの制度で一日も早くこの事業を進めていきたい、こういうところが最後の結論でございまして、恩給欠格者に対しては関係者の強い御要望を踏まえて、基金の運営委員会の報告に基づいて、平成元年から一定の資格要件に該当する恩給欠格者に書状、銀杯の贈呈を行っておる。さらに今年度から、書状、銀杯に加え慰労の品を贈呈する事業を開始する、逐年その充実を図っていきたい、こういうことであります。  ただいまも政府委員が説明いたしましたが、恩欠者というのは二百五十三万人もおる、しかしとてもこれではなかなか対処し切れないということになりまして、外地経験や在職三年以上の百八万人に絞った。そこで平成元年と二年度で五万五千人にお手当てをした。三年度は七万人が手当てできる見通しである。といいましても、まだ残りは算術計算からいきますると九十六万人も残っておる。これを一日も早くひとつ対処したいということが先決だと思って努力をしていきたいというのが結論であります。
  124. 新盛辰雄

    ○新盛委員 官民格差の是正についてはもう何も検討してないということですね、もうだめですと。それじゃあれも今議員立法でもやはりつくって出さなければいかぬと。ところが、これは各種団体が、自民党の何か団体か後援会か知りませんが、いろいろな話を聞いているのですよ。シベリア抑留の基金の五億円がどうだった、ああだったという話もありますから、まあきょうはここでは割愛しまして別途の機会に譲りますが、じゃ今百歩譲って、現在の平和祈念事業に関して一刻も早く取り組まなければならぬ。今九十数万人も残っている、これを早く何とかしなければいけないということなのですが、具体的にこういうことを実行に移される場合、恩欠者の皆さんが本当に心に響くように、ストレートにそれが可能になるように措置をしてもらうためにはどうするか。今のところではまあ政府の言う百八万人の処遇というようなことも言っておられるわけですが、事務作業は遅々として進まない。  ここでひとつ明確に答弁をしていただきたいのは、申請者において、遺族の方でもそうですが、銀杯や新規の事業を受けられる権利発生の時期を書状などの申請時、例えばこれは新規事業についても九〇年の十月二十五日以前に亡くなられた方も救済ができるような手配、これは慰労金の支給をやるということの概念によって、我々は恩給欠格者に対する慰労の個別的措置について速やかに実施する、こういう状況をきちっと確認してこれまで進めてこられていると思いますので、これはぜひひとつ頭に入れていただいて措置をしていただきたい、どうですか。答えができますか。もうイエスかノーかでいいですから。
  125. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま先生百八万、お示しいたしましたとおりでございますが、これからの申請の状況にもよるわけでございますけれども、百八万中、この昭和五十三年恩給法の断続一時金の場合、これの申請率が約四割というのを例にとりますと、この百万のうち四割としますと四十万、それで平成元年度、二年度で五万五千処理を了しております。平成三年度におきましては大変苦しい財政事情の中であったわけでございますが、書状、銀杯合わせて七万人の処理を可能にする予算措置が、ただいま予算案で措置されておりますので、そうしますと、申請が四割としますれば、三十五万除すことの七万で、この七万ベースでいきますと五年ということでほぼ見込まれるのではないか。いずれにいたしましても、この申請の状況でございますけれども、私どもといたしましては、申請がありましたならば速やかに処理をいたしたいということで努力をしております。
  126. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この以前の、新規事業について、九〇年十月二十五日以前は入れますか、九〇年十月二十五日以前に亡くなられた人。
  127. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えをいたします。  これは、あくまでも本件措置というのは本人が原則でございます。それで、申請をされまして私どもが交付できる前にお亡くなりになりました方につきましては、これは遺族の方にもこれを交付するということにいたしております。
  128. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この基金の慰藉事業がはかどらない要因の一つには、恩欠者の自治体の認定業務が遅滞をしている、申請しても一向に進めてくれない、だから政府はこれらのおくれをなぜ生じているかを十分に調査をしていただいて、そして認定事務の自治体への指導をしていただきたい。指導していただくとともに、厚生事務ではあるけれども、自治体の方は自治体の方で、自治大臣がやはりこれは管轄をするわけですから、そういう面で両者からどうなっているかをお答えいただきたいと思うのです。
  129. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 お答えいたしますが、この問題、確かにさっき先生おっしゃるように相当の高齢者にもなっておりますし、一日も早く処理をしていくということは非常に大事なことであると私も思っております。そういった意味で、これから自治省といたしましても、特に平和祈念事業特別基金の方から委託を受けております関係都道府県に対しまして、自治体に対しまして、できるだけ早く処理が進むように私どももさらに督促をいたしまして趣旨に沿いたい、こう思っております。
  130. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 ただいまの平和祈念事業特別基金の運営に当たりましての事務の促進方につきましては、厚生省といたしましては、保管しております留守名簿あるいはまた履歴原票等の確認の作業を促進するように側面的に御協力する予定でございます。
  131. 新盛辰雄

    ○新盛委員 私も昔、兵役で指揮班におったことがありまして、兵籍簿、功績名簿等を作製したことがございますが、この兵籍簿、復員者の名簿、これのない恩欠者の方々の認定業務の取り扱いが非常に不十分なんですね。これはなかなか難しいのです。厚生省には昔復員局があって、そこではちゃんと名簿が用意されていたのですが、今どうなっているかわかりませんけれどもね。恩給受給の資格要件と同時に、この人証ですね、もう書類がないのですから。つまり証明者がいれば認定すべきのはずなんですね。ところが、もう七十三歳、平均年齢。だから、だれも証明してくれる人がいない、戦友は死んだ、老兵はいかにあるべきかという悩みなんですね。こういう非常に厳しい条件下にあるのですから、政府においても、この名簿のない恩欠者の認定業務を担当する自治体にその旨もやはり周知徹底をして、余りお役所仕事で厳しくああだこうだ書類のたらい回しをしないようにして、このもう消え去ろうとされる方々、この方々は言うのですよ。今度の湾岸戦争でもう我が息子を兵隊にとられるようなことがあっちゃならぬし、またやっちゃならぬ、何にも国は面倒見てくれないんだ、血の叫びをこの間聞きましたよ、全国津々浦々。皆さんがお年の方々であるだけに身につまされました。  一体どうするのか。戦後処理は終わっていない。戦争の影をこれほど長く引きずっていることは耐えられない。だから、政府は身を入れてこれをやっていただかなきゃなりませんが、総理、最後に一つ、あなたは湾岸戦争への九十億ドルの支援策を一生懸命になっておられますけれども、今日ただいまこんなにまで戦後の影を引きずっている我が国の、戦争におけるある意味では犠牲、いわゆる体を張って軍務に従事した人たちに何らの御礼もしてない。ある人は公務員だからといって通算され、ある人はそうじゃない。同じ期間同じ場所で働いて、死ぬ思いでやってきたのにそういう差別を受けている。それがなぜそうなるのかということに、お役所でやっている厚生年金が、国民年金が、それはそのときのつくり方がどうであったこうであったということはもう度外視して、何とかしなきゃいけないという、その気持ちにあることは間違いないですよ。だから、今お年寄りの皆さんは、兵隊に行かれた方たちは、この戦争では絶対協力しない、それはそういう気持ちになるのは当たり前でしょう。  そこで総理、こういうことの平和の対価として、これまでの湾岸戦争にこうして一生懸命になっておられますけれども、年金通算の是正とか格差の是正とか、そしてこれまで救済されなかった欠格者のこの救済についてどうするんだという、もう終わったというあなたは認識かもしれませんが、終わっていないのですから、ぜひひとつ最後に見解をいただきたい。
  132. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 だんだんの御議論を承っておりましたし、私も今政府が行おうとしておることについてさらに官房長官に指示をして、いろいろ検討を続けさせます。
  133. 新盛辰雄

    ○新盛委員 本問題は、逐条的にやはり詰めなきゃならない問題もございますから、また一般質問等でもやらさしていただきます。いずれにしても、私どもは申し入れて、公党として申し入れてあるのですから、通り一遍の政府回答では済まされない。ひとつ明確に各条項に当たって、官房長官の方で整理をしていただいて御回答いただきたい。よろしいですね。――はい。  じゃ、最後に労働大臣にお伺いします。  今、女性の社会進出は非常に目覚ましいものがございます。もう既に十五歳以上の女性は四九・五%仕事についておられるわけでありますが、女性の地位を高めていくという意味で、私どももこれまで何としても育児休業法というのをつくって、いわゆる社会に貢献しておられるこういう人たちに、家庭に休業させる機会も与えてやりたい、こういう願いでこれまで四野党で合議して、参議院では三回休業法案を出しました。だけれども、三回とも成立をしません。今度はもう機は熟している。労働時間の短縮も言われました。そして労働環境のゆとり、豊かさについても言われました。これから先、こうした問題で育児休業法はまさに国民的な要請である。だとするなら、これに対応する労働大臣の決意と、また現在我々はこの法案の提出の準備を進めておりますが、その内容には幾つかの問題があるとは思います。しかし、整合性を立てれば、もう早く成立をさせるということが課題でありますから、そうしたことについて政府のお考え、労働大臣のお考えをお聞かせいただきたい。また、外国の例もあろうかと思いますが、お聞かせをいただきたいと思います。
  134. 小里貞利

    ○小里国務大臣 子供を育てながら家庭におきまして大きな主役を果たしておりまする、女性に限らず両親と申し上げた方がいいと思うのでございます。同時にまた、先生お話しのとおり、社会に進出をいたしまして職業生活を営んでおられる、この両面を円滑な調和を図りながら、そして本来の経験、能力を十分生かしていただける環境整備、このことを今強く期待をかけながらお話をいただいたわけでございます。  外国の例等もというお話でございますが、私も詳しいことは承知いたしておりませんけれども、西欧等におきましては比較的立法あるいは制度上はレベルの高い施行が行われておる、そういうふうに注目をいたしておるところでございます。殊にスウェーデン、ドイツ、フランス、イタリア等あるいはデンマーク、ギリシャ等におきましては、相当この問題につきまして経験もありますし、そして制度としても進んでおる。しかしながら、その中身におきましては、いろいろ基本的な項目、先生御承知のとおりあるわけでございますが、さまざまでございまして、私どもも参考と申し上げますか、注目をいたしながら進めてまいっておるところでございます。  なおまた、国内におきましては、先生御承知のとおり、参議院におきまして社会労働委員会等でかなりの期間をかけまして、社会労働委員会育児休業制度小委員会等を軸にいたしまして相当論議が進められておりますことも承知をいたしておりますし、さらにまた先生お話しのとおり、野党四党等でしばしば育児休業法案の提出も相なっておりまして、現在継続審議中でございます。  もちろん、率直に申し上げまして、野党のみならず自民党を加えまして、参議院の同制度小委員会におきまして、昨年の十二月、これが制度の確立に向けて法案の整備を急ぐべきではないかという意見を集約をいただきまして、私どももそれを注目をいたしておるところでございます。  なおまた、現在におきましては、婦人少年問題審議会、一つの私ども労働省のこれらの方面の諮問機関でございますが、この場におきましても集中的な討議をいただいておるところでございまして、近々答申を得まして、いわば第一次的には建議でございますが、その建議を得まして、これは制度確立のために立法整備を急ぐべしという答えが必ず出てくるだろう、多分私はそういうふうに期待をいたしておるところでございます。その建議を得ましたなれば、即座に関係法案の整備を急ぎまして、でき得る限り今国会中に提出をいたしまして、各位の御協力をいただきまして、一定の作品を得たい、法律、そして制度化を図りたい、かように念願をいたしておるところでございます。
  135. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最後に大変目の覚めるような御回答をいただきました。敬愛する労働大臣ですから、しっかりひとつよろしくお願いいたします。  ODAの問題もありますけれども、時間がなくてできませんでしたけれども、次回、この種問題についてまた再度質問さしていただきます。  終わります。ありがとうございました。
  136. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて新盛君の質疑は終了いたしました。  次に、二見伸明君。
  137. 二見伸明

    二見委員 私も、最初は湾岸戦争に関連した質疑を若干いたしたいと思います。  この国会でも、市川書記長あるいはきのうは米沢書記長から歳出削減に対する議論が出ましたし、マスコミ各紙論調を見ましても、増税一本やりはけしからぬという厳しい論調も総理はお読みになっていると思います。これはマスコミあるいは国会議論だけではなくて、例えば連合会長の山岸さんは、「財源は歳出削減で」と某新聞のインタビューで答えております。総理はこうした、増税一本やりはもうまかりならぬ、歳出削減でやるべきだという発言に対して、国民の理解を得るためにはこうした発言をどう認識しているのか、国民の御理解を得るためには歳出削減に対する強い要求をどの程度認識されているのか、まず冒頭にお尋ねをしたいと思います。
  138. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この委員会が始まりましてからその種の御意見を私も重々承ってまいりましたが、改めて二見委員から申されるまでもなく、その点は極めて重要な御指摘であると認識をいたしております。  同時に、政府としては、きょうまでももちろん歳出削減に努力をしてきたり、また、海部内閣としても新たに行政改革の重要性を認めて行革審をスタートさせて、むだ遣いをしないようにしていくという基本は踏まえておりますけれども、具体的に国民の皆さんの御理解と御協力をいただくためにも、今後ともそのような考え方を持ってより進めてまいらなければならないと考えております。
  139. 二見伸明

    二見委員 これは、言葉ではなくて、具体的に国民がわかるようにしなければ、私は結果的には御理解は得られないんだろうと思います。  突然の質問で、大蔵大臣、申しわけないんだけれども、実は連合会長の山岸さんがこういう発言をされておられる。「どうする九十億ドル」ということでもって、「増税策はとるべきではない。法人税の増税なら一般サラリーマンに関係ないとの発想には立たない。労使で分配するパイを小さくするわけで、経営側は増税を口実に賃上げの抑制や人員の削減などをしてくると思います」。ここに政府の増税案が出ているわけじゃありませんから、その議論をするわけではありませんけれども、既に連合会長からこういう厳しい批判が出ている。このことは、大蔵大臣としてはどういうふうに受けとめておられますか。
  140. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今回の、湾岸における平和回復のため多国籍軍が活動をする、そのために日本として湾岸平和基金に拠出をいたします九十億ドルについて、その負担につきましてさまざまな御意見がある、それぞれに私は注意深くその御意見を承っております。そしてその中で、連合の山岸会長が、いわば連合という労働組織の代表のお立場として、法人税というものの臨時的な増徴といえども、それは結果的にサラリーマンの家計に響く可能性があると言われたことを私は真っ向から否定するつもりはありません。しかし同時に、法人税というものが特定の業種をねらい撃ちにする税でないことも、これはもうよく御承知のとおりであります。また、そういうお立場とは異にした経営側の中からは、すべての歳出について一%なりなんなりをカットすればそれぐらいの財源は簡単に出るというような御発言もあります。しかし、例えば老人医療費でありますとか生活保護費までその方々は全部削れと言われるんでしょうか。果たしてそういうことが本当に国民を思うことなんでしょうか。  そのように考えてまいりますと、私どもはこの負担をどうしていくかについて本当に苦しみました。そしてその中において、税目を決定していく段階ではそれぞれの税についていろいろな観点からの考えをめぐらしてまいりました。私のように野方図な者でも、本当に眠れない幾晩かを過ごしました。そしてその中で、やはり国民に御理解のいただきやすいという一つの視点はとったつもりでありますし、また、国民生活への影響というものも十分考えたつもりであります。そうした視点の中から、私どもとしては石油に対し、また法人に対し、そしてたばこに対し臨時の税負担をお願いをせざるを得ないという、まさに苦しい中で苦渋に満ちた選択と言われればそのとおりでありますけれども、こうした選択をいたしました。
  141. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣、厳しいことを申し上げるようで申しわけないんだけれども、やはり大臣の答弁から聞こえるのは、増税一本やりというそういう感じしか私は受け取れないわけです。  ところで、山岸会長はさらに続けてこう言っています。「次期防衛力整備計画や来年度予算を見直し、その中から歳出を削減して財源を確保する。これに加え、」ここからです。「消費税を見直し、(簡易課税制度などによって国庫に入らず、事業者の手元に残る)益税分を充てればよい」。この消費税については、去年、与野党税制協議でもって一致できる点、一致できない点は既に明らかになっております。そうしたことを考えて、山岸会長のこの発言というのは注目すべき発言だと私は思っておりますけれども、大蔵省はこういうことについてはどういうふうにお考えですか。
  142. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、連合山岸会長を個人的にも尊敬をいたしておりますし、また、その御意見に対して傾聴すべきものが多々あることはよく承知をいたしております。ただし、今回の問題につきまして、私は、山岸会長の御意見のみを注目するのではなく、マスコミの上に報道されますいろいろな方々の御意見に対して注目を払ってまいりました。今さら私は、もう一度ここで、委員が既によく御承知のことでありますから、新しい中期防というものが前の中期防とどう変わっているか、あるいは平成三年度の防衛予算そのものの内容において実質的に前年度よりどのような減が立てられているか、そうした御説明を申し上げようとは思いません。ただ、委員が昨年、本委員会において、新しい防衛計画というもの、あるいは防衛予算というものについて少なくともこうしろという強い御指摘をいただきましたより努力をいたした防衛予算であることはお認めがいただけると思います。私どもはそれなりに防衛費というものを聖域にせず予算編成をしてまいったつもりであります。  また、消費税について今御指摘がございました。これも今さら経緯をくだくだ申し上げるつもりはありませんが、政府として見直しの案を国会に提出をいたしました後の推移の中から、今消費税についていかなる回答をおつくりいただけるかは、衆参両院の合同協議の場にそのボールが移っております。私どもは、院が意思を決定されるまでの間、その消費税についてその結論をいわば息をひそめて待っておるような状況でありまして、もちろん、その御結論が出ましたならば、それを誠実かつ迅速に実施をいたすことは当然のことでありますが、今回の財源を模索するに当たりまして、院にお預けをいたしております消費税の御論議の先取りというようなことは考えておりませんでした。
  143. 二見伸明

    二見委員 総理は、経費削減について、本委員会でもいろいろな議論の中で、各省庁に勉強させるという御発言もあったわけですけれども、私は、政府が経費削減したという努力なら努力のあかしというのが幾つかあると思うのです。一つは、この政府が考えておる補正予算というのは平成二年度の補正予算でしょう。平成二年度というのはまだ三月三十一日まである。三月三十一日まで現在執行中の平成二年度予算の中で、例えば三百億円節約する。そうすれば一兆一千六百億円の公債発行でいいわけですね。一千億円削減すれば一兆九百億円の公債発行でいいわけですね。補正予算が出てきたときに、補正予算の歳出歳入、公債発行額が幾らであるか、これが政府がどういう努力をしたかということが明らかになる一つの目印だと私は思う。私は今まで平成三年度以降の経費削減の話をしてきたけれども、まず足元の平成二年度から手をつけるべきではないか。どこまでこの二年度の予算の中で削減するか。それだけではない。税外収入だってあるわけでしょう。税外収入を充てれば、さらに公債発行額はもっと低くなる。そうした努力の跡が見られなければ、国民は九十億ドルの支援についてはノーという判定を下さざるを得なくなるんではないかと私は思うのです。この平成二年度中に政府がどんな努力をするのか、どの程度の努力ができるのか、経費削減、税外収入を充てる、かき集めてくる、そうした努力をどのぐらいするのか私は注目をしたいと思っているのです。  例年の決算から見ると、既定経費、予備費を削減して、なお毎年不用額がここ三、四年の間は二千億とか三千億とかという数字が出ている。ことしは既に二千四百億円節減したと今まで答弁されてきたけれども、しかしまだまだ努力する必要があるんじゃないか。そこまでの努力をしなくてだれが納得できますか。これは具体的に、大蔵大臣の分野だろうと思いますので、改めてお尋ねをしたいと思います。
  144. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員から御指摘を受けましたように、確かに現在平成二年度の予算が進行中でありますし、また今回この九十億ドルの支出に関連してお願いをいたします内容も平成二年度補正予算(第2号)ということになろうかと思います。そして、執行過程における節約などのぎりぎりの努力を払うべきであるという御指摘は、私はそのまま素直にちょうだいをいたしたいと思います。  ただ同時に、委員にぜひ御理解をいただきたいと思いますことは、例年、例えば昭和六十三年度あるいは元年度、補正予算編成時における節減額というものは毎年一千二百億円余りのものでありました。六十三年は一千二百六十二億円、元年度は一千二百二十八億円であります。平成二年度の第一次の補正予算、今から考えますと第一次になります昨年の御審議をいただきました補正予算編成時におきまして、私どもは既に湾岸の平和維持のための追加の十億ドルの拠出に、その財源を捻出することに非常に苦しみながら補正予算を編成いたしました。そして、各省庁に対し例年以上の節減をお額いを申し上げ、千九百九億円、例年に比べればおおむね五割近い各省の御協力をいただいて補正予算をつくりました。  なお努力せよという御指示でありますから、私なりに全力は尽くしてみます。しかし、ここまでも政府が全く努力をしないでこうした結論を出してきたのではないということだけはどうぞ御理解をいただきたい。節約をかけると申す予算そのものがそれぞれ国民生活に非常に関連の深い予算でありますから、それは、節約をかけるということもまたその予算の執行上国民生活に影響を持つことであることだけはどうぞ御理解をいただきたいと思います。
  145. 二見伸明

    二見委員 この第二次補正予算でいわゆる臨時特別公債を発行するわけですけれども、それが一兆一千九百億円、こういう数字で出てきたときに、国民はかなり厳しい目で見るということを私はあえてもう一度大蔵大臣に申し上げておきたいと思います。同時に、やはり平成三年度でもっても歳出削減を本気になってやらなければならない。  それで、政府の考えているのは、臨時特別公債を発行する。その額に見合って政府は今増税を考えていますね。その増税した分、石油だとか法人税だとかの増税分は国債整理基金に入れて、一般会計に入れない。国債整理基金に入れて、これは発行した公債とリンクさせる、こういう方針ですね。筋論から言いますと、平成三年度で経費の削減、歳出削減を本気になってやるべきだ。やった歳出削減は目に見えるようにしなければいけない。そうなれば、当然これは国債整理基金にその分は繰り入れるのが当たり前。一般会計の中に泳がしておくのじゃなくて、一般会計歳出予算を修正して、その分は国債整理基金に入れて、歳出カットした分はこのように公債の償還財源に充てます、このくらいめり張りのきいたやり方をしないと国民はなかなか政府が身を削ったということを理解しないのじゃないか。それは、まだ平成三年度予算真っ最中で、これから本格的な審議が始まろうというときにこう言われたのじゃたまらない、大蔵大臣はそういう顔をされているようでありますけれども、私はそうした厳しい姿勢がやはり要求されてくるのではないかというふうに思いますけれども、大蔵大臣、この点はいかがですか。
  146. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 とっさの御提案と申し上げては失礼でありますが、とっさの御提案として今拝聴をいたしました。ただ、率直に申しまして、例えば節減合理化をいたしたといたします。そしてその結果節約あるいは不用が立ったといたします。これは国債整理基金に入れるというのは少々筋違いではなかろうか。むしろそれは、補正予算を編成する必要が出るかどうかわかりませんけれども、その時点において歳出削減を立てるべき項目ではなかろうか。これはちょっと私も予算作成上の技術的なことになりますと、国債整理基金に一般会計の不用額をそのまま投入する、しかも、それを間仕切りをして、これが節減分であるとわかるような仕組みをつくり得るかどうかについても十分な知識はありませんが、むしろその場合においてより素直な形は、今御審議をいただいている平成三年度予算を成立させていただいたとして、その成立させていただいた予算を政府として節減合理化の努力をし財源を生み出すとするならば、それは補正予算の時点においての財源として取り扱うべきものではなかろうか、そのように思いますし、それで、そういう形がとられればそれもまた国民の目に御理解がいただけるものではなかろうかととっさに思います。
  147. 二見伸明

    二見委員 突然の質問なので大蔵大臣も答弁を十分に考えてこられなかったのではないかと思いますけれども、私は今申し上げたことを――私の時間は四時十五分までしかないものですから、この議論をこれから重ねようと思いません。まだこの議論はこれからも本委員会の中で各委員からいろんな形で議論されるはずでありますから、一つの問題提起としてきょうは申し上げておきたいと思います。  それから、やはり湾岸に関してですけれども、外務大臣、イランのラフサンジャニ大統領が湾岸戦争停戦のための和平案というのを発表したというふうに報道があります。内容はもう御存じでしょうけれども、フセイン大統領はクウェート撤退に積極姿勢を示す。二つ、ラフサンジャニ大統領または最高指導者ハメネイ師がバグダッドを訪問、イスラム諸国による会議開催の道を開く。三つ、イランは米国などに対してイラクのクウェート撤退との同時撤兵を説得、かわってイスラム諸国軍が展開する等々七項目にわたっている提案のようでありますけれども、これは政府としてはこうした点、私はなぜこのことをお聞きするかというと、この戦争を長期化しちゃいけない、拡大化させちゃいけない。直接の当事者であるアメリカやなんかは、なかなかそう思っていてもできないんだろうと思う。だから我々は、もちろんイラクのクウェート撤兵ということが大前提になるんだけれども、あらゆる提案、あらゆるきっかけを大事にしなきゃならぬ。また、日本政府もそうしたちょっとしたきっかけ、これを大事にしてもらいたい。そういう意味合いから、この提案をどういうふうに受けとめておられるのか、外務省の、外務大臣の見解を承りたいのです。
  148. 中山太郎

    ○中山国務大臣 まず、この提案の考えを申し上げる前に、今委員から御指摘のありましたように、日本政府もこの戦争が、早い段階で、極めて規模の小さい間にこの戦いが終わるというような契機が早く出てくることを我々もまた心から望んでいます。委員と同じ気持ちでございます。  ラフサンジャニ・イラン大統領の提案につきまして、これがサダム・フセイン大統領に親書が送られたということも、私どもはその情報についてはただいま情報の内容の収集について努めております。イラン政府がイランとして停戦のための努力を行うけれども、イラクのクウェートからの撤退が第一条件であるということを強く主張して、これに基づいたものということで説明をいたしております。  なお、細部の情報について、私どもはこのイランの提案について現在十分な情報の収集に努めておりますけれども、いずれにいたしましても、日本外務省といたしましても、イランの持っている立場、これはこの中東和平についての一つの大きな意味のある立場でありますから、このイラン政府の動きにつきましては最近特に重大な関心を払って情報の収集に努めているということをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  149. 二見伸明

    二見委員 評価できますか。この和平提案についてはどう評価しているか。
  150. 中山太郎

    ○中山国務大臣 停戦に対する努力に対して私どもは評価をいたしております。
  151. 二見伸明

    二見委員 実は政府は九十億ドルをGCCに支出しようとしている。ともかく国内にいろんな議論があるけれども、例えば政府が九十億ドルを支出するとするならば、これは国民のまさに血税でしょう。だれもこの戦争なんか喜んでない。もう一日も早く終わりたいと思っている。そうしたならば、総理はブッシュ大統領とこの戦争の見通しについて率直に意見を交換すべきだと思うし、また停戦の可能性についても、どんどん話し合っていくべきではないか。アメリカの中には既に戦争後のいろんなプランも考えているやの報道もなされている。日本はただ金を出すだけじゃない。この戦争をどうやっておさめようか、戦争の見通しはどうなんだ、そうしたことを日本政府が、総理がブッシュさんと電話で話せるんだから、あるいはワシントンへ行ってもいいんだから、そうした日本が積極的に停戦に向かってありとあらゆる努力をしていく、それがなかったら私は到底納得できるものじゃありませんよ。それで、そうしたことを私は国会に随時報告すべきだと思う。そして我々に情報を提供し、国民がみんなこの状況を知り、そして判断していく、そうしたことも私は必要だと思う。その点について、総理大臣どう思いますか。外務大臣に聞くか。
  152. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この事態の収拾につきましては、まず戦火がこれ以上広がらないということが極めて重大である。先般のモスクワにおけるゴルバチョフ大統領との会談におきましても、私は率直に大統領に対して、まずソ連政府として、イスラエルがこれに対して反発をしないように全力を挙げて外交努力をやってもらいたいということを強く要請をいたしました。また、ソ連政府がアメリカ政府と十分連絡をとって、この事態の収拾に対処をしてもらうようにぜひお願いをしたいということを日本政府として申し上げました。  大統領から率直に次のような話がありました。ソ連の外務大臣は毎日アメリカの国務長官と電話で連絡をしながら、問題の解決をどうするかということについて話をやっている、今後も引き続き努力をする、こういうお話でございまして、日本政府といたしましては、ソ連政府ともこの問題についても十分連絡をし、アメリカ政府とも連絡をいたしておるということをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  153. 二見伸明

    二見委員 質問を全く別の質問に変えます。湾岸戦争については以上で打ち切って、またどうせこの後、あした我が党の草川委員もこの問題に触れるだろうし、各委員も触れると思いますので、別のテーマにしたいと思います。今度のテーマは大変平和なテーマであります。  世界遺産条約というのがあります。これは正式名称は世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約といいまして、一九七二年のユネスコ総会で採択されて、七五年に発効いたしております。昨年末までの加盟国は米ソを初め欧州、開発途上国などの百十五カ国に上っておりますが、日本はまだこれを批准をしておりません。  この条約の特徴は、これまで別々に語られることが多かった文化遺産と自然遺産をひっくるめたことと、しかもこれらの文化遺産や自然遺産がいずれも開発の危機にさらされていることから、これを世界遺産として指定して、国際的な監視や国際協力でともに保護しようという内容の条約であります。  これまでどんなものが世界遺産リストに上っているかといいますと、例えばエベレストを含むサガルマータ国立公園、ネパールです。グレート・バリア・リーフ、オーストラリアです。それからアメリカのヨセミテ国立公園。ペルーのマチュ・ピチュ遺跡。それからローマの旧市街ですね。それから万里の長城。ガラパゴス諸島、これはエクアドルです。モヘンジョ・ダロ遺跡、パキスタン。アンコール・ワット、カンボジア。ボロブドール、インドネシア。あるいはエジプトのピラミッド。こうしたものが世界遺産条約のもとに世界遺産として指定をされております。  なぜ十五年間も我が国はこれを批准してこなかったのか、大変不思議に思えてならないのでありますけれども、この世界遺産条約について、環境庁か文部省かな、文部省ですか、これはどういうような認識を持っているのか、まず認識を承りたいと思います。
  154. 井上裕

    ○井上国務大臣 お答えいたします。  世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約につきましては、その趣旨は私ども望ましいものと考えております。また、文部省としては、文化財保護法との関連では内容的問題は特段ございません。ただ、批准に関しましては、今後各省庁とも緊密な連携をとりまして対応いたしたい、このように考えております。
  155. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。  私ども環境庁といたしましても、この条約に日本が加盟を、締結をすることはぜひ必要だ、このように考えておりまして、条約の締結は外務省がおやりになるわけでございますが、私としましても、ついせんだって直接外務大臣に、ぜひ促進方をお願いをした次第でございます。
  156. 二見伸明

    二見委員 外務大臣、発効されてからきょうまで十五年間、なぜこれはたなざらしになってきたのですかね。これは大変私は異常なことだと思っている。我が国には沖縄県石垣島のサンゴ礁やイリオモテヤマネコやヤンバルクイナが生息する南西諸島があるし、あるいは世界最大級のブナ原生林が広がる白神山地、その他多くの自然遺産があります。先日来日したB・ドロステ・ユネスコ生態科学部長を初め、多数の内外の専門家が日本の遅々として進まない対応に不満を抱いております。地球環境問題の視点からもこの問題に本気になって外務省は取り組むべきだと私は思います。今までどうしてたなざらしにしてきたのか、今後これをどうするのか、はっきり御答弁いただきたいと思います。
  157. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員御指摘のとおり、本件は極めて重要な条約案でありまして、普遍的な価値を有する自然遺産及び文化遺産の保護等に関しまして規定しており、この趣旨につきましては基本的に賛同し得るものと考えておりますが、日本の締結につきまして現在関係省庁を交えて必要な検討作業を鋭意進めている最中でございます。いましばらく御猶予を願いたいと思います。
  158. 二見伸明

    二見委員 重ねてお尋ねしますけれども、批准に向けて今作業を進めているということで、これから何年も何年もたなざらしになるということはないというふうに理解してよろしいですか。  私は、これは、日本にある文化遺産、自然遺産というのはやはり国際的な監視の中でなければ守れないんだと思うのです。やはり開発と保護というのは相反する概念だから、国内法だけで保護するといっても無理なんです。むしろ国際環境の中で、国際的な監視の中でこそ守られるものがたくさんあるんだ。私は、これは前向きということではなくて、早急に批准すべきだと思っておりますけれども、外務大臣のさらなる御見解を承りたいと思います。
  159. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員御指摘のとおり、この条約の締結、極めて急ぐべき問題である。私自身ももう時期が来ていると考えておりまして、できるだけ速やかにこの問題を解決いたしたいと考えております。
  160. 二見伸明

    二見委員 北海道の釧路湿原も大変重要な自然遺産だと私は思います。そういうことも念頭に置いて、どれをどう指定するかは私の方の役割じゃございませんけれども、まず条約の批准を一刻も早く進めることをお願いし、日本の自然遺産、文化遺産を本腰に守って、実りある二十一世紀を迎えたいというふうに考えておりますので、外務省のより一層の御努力と、恐らく中には開発の好きなところからは、余りそう厳しくやるななんて意見も出てくるだろうと私当然思っておる、余計なこと言うようですけれども。まず守ることが大事だという前提に立って、早急な批准をお願いしたいと思います。  もう一つ、今まで環境問題のパートワンですけれども、今度は環境問題のパートツーであります。大変世俗というか、我々の日常の生活に密着した話になって、わかりやすいといえばわかりやすいのだけれども、ごみ、廃棄物であります。私は、これを考えれば考えるほど、わかりやすいために大変な問題だなというふうに思います。  我が国のごみ処理行政というのは、増大するごみ量に対してただ焼却をして燃やして量を減らすか、あるいはそのまま埋め立てるしかの、この二つの方法しか講じてこなかった。ところがごみというのは、最近のごみは質の悪いごみが多く出るようになった。とりわけ有害物質を含んだ使用済みの乾電池のようなものもあるし、あるいはダイオキシン等、ごみ処理の過程で新たに生成される有害物質の問題もある。あるいは医療廃棄物、ハイテク産業から排出される未規制の有害産業廃棄物など、言うなればまだ規制がほとんど行われていないようなものもありまして、こうしたものに対する処理というのは欧米諸国に比べると著しくおくれていると言っても過言ではないと私は思います。  私は、このような現状をもたらしたのは何かというと、やはり一つには、物をつくるだけつくって処理は知らんぷり、生産のためには多額の費用をかけるが処理には何のコストもかけないという企業の姿勢にもあるし、それを許容してきた行政の態度にもあったと思うし、また何でもいいから全部これは捨てればいいんだという国民の側一人一人にもやはり全く責任がないわけではないと思います。ただ、ごみの問題というのは、いろいろなごみがあるので、それをどれを取り上げ、一遍に取り上げると話がごちゃごちゃしてわからなくなるから、私は、一般廃棄物の中でも特に多いいわゆる紙ですね、紙ごみ、これにちょっと焦点を絞って、的を絞って議論してみたいと思うのです。  ちなみに、一般廃棄物はどのぐらいあるかといいますと、昭和六十三年で四千八百三十九万トンです。そのうちの三割ないし四割は紙です。ですから、紙について私は二、三問題点を提起しながら議論を進めたいと思います。  一つは、一番わかりやすいのは過剰包装紙、過剰包装、これは何とかしなければならぬと思います。デパートでも何でも包装するでしょう。あれはまさに再生利用しませんね。うちへ持って帰って、真っ先に破いてぐじゃぐじゃっとやって、ぱっ、それはそのまま真っすぐ焼却炉です。過剰包装紙はどのぐらいあるかといいますと、昭和六十年には千二百四十万五千トン、これは包装資材ですね。六十一年が千二百六十九万トン、六十二年が千三百三十一万四千トン、六十三年が千四百六万一千トン、平成元年は千四百五十四万四千トンであります。一人当たりはどうかといいますと、昭和六十年は百二・六キロだった。六十一年は百四・四キロ、六十二年は百九・〇、六十三年は百十四・六キロ、一人当たり包装資材は着実にふえている。これを野放しにしておいてごみ問題というのはあり得ないんだろうと私は思います。  これは恐らく行政指導にならざるを得ないんではないかと思うんだけれども、これは通産省ですか、厚生省ですか、関係のところで私ぜひともやっていただきたいんだけれども、例えば商品メーカーだとか流通業者、デパート、商店ですね、そういうところに対してまずなるたけ包装紙を使うなとか、そういう減量化をぜひとも進めてもらいたいと思うのです。例えばデパート等からのごみ処理料の引き上げを図る、これは全部自治体が処理するんだから。過剰包装ですから、包装紙を使っているデパートやなんかからは処理料を余分にもらいますよと、むしろコストを高くする。そうしなければ、なかなかこれは減らないと思う。使うなといったって、消費者の方でも、どこどこデパートのこのマークの包装紙がいいとか、消費者のニーズにもあるわけだ。これでプレゼントすれば格好いいとかというのがあるわけだ。消費者のニーズも変えなければならぬ、ライフスタイルも変えなければならぬけれども、一方ではそうしたコスト負担をかけることによって包装紙を極力抑制するということが私は考えられてもいいんじゃないかと思うし、あるいは簡易包装への切りかえや再生包装紙を利用する。きれいなのではなくて、再生紙の包装紙を利用する。そうしたことも促進してもいいんではないかと思いますけれども、関係官庁は、これはどこになりますか。
  161. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答え申し上げます。  文化的で気持ちのよい生活をする、そういうことにつきまして、その背後にごみが出てきて、そのごみが的確に処理される、こういうことは非常に重要なことでございます。ただいま先生がおっしゃったとおりでございます。私もごみ処理場を見まして、その量の大きさ、そして今お話がありましたように、そのごみの中で占める紙の量のいかに多いことかと、それがまた焼却炉を傷めておるというようなことを見てまいりまして、事の重大さに驚いた次第でございます。  そこで、こういうような問題を総合的に処理するために、今一つの提言とされて包装紙の問題が出ておりますけれども、確かにおっしゃるとおりでございまして、今おっしゃった点は、要するにむだな包装をしない、むだな紙を使わない、こういうことでございますので、これは当然我々はやはり消費者あるいはメーカーの方々にそういう点の御協力をお願いしてむだな紙が余計出ないようにするということも必要なことと存じ、目下このごみ処理の関係の法案改正の中でまたどういうようにするか、今関係官庁と協議をしながらその取り扱いを検討しているさなかでございます。
  162. 南学政明

    南学政府委員 先生御指摘のように、最近個人消費の増大とかライフスタイルの変化に伴いまして包装資材の出荷というのが非常にふえてきております。こうした動向をいろいろ考えますと、やはり都市ごみにおける処理の問題の深刻化、省資源、省エネルギーの促進等の観点からほうっておけない重要な、かつ緊急な課題であると私どもは認識をいたしております。  このため、通産省では、昨年八月に社団法人日本包装技術協会に対しまして包装適正化のための方策について検討を依頼しまして、昨年十二月に報告書をいただきました。この報告書を受け取りまして、我々省内でいろいろ検討を重ねた結果、本年一月に包装材メーカー、商品メーカー、流通業者、さらには消費者等の関係団体、六十五団体ございますが、これらに対しまして包装適正化のための協力要請を行ったところでございます。  特に百貨店等の流通業者に対しましては、簡易包装等の推進、すなわち包装の減量化をやってほしい、あるいは先生御指摘の再生包装紙の利用を促進してほしい、さらにまた再資源化が容易な包装材の利用を促進してほしい、こういう問題に積極的に取り組んでほしいという要請を行ってきたところでございます。今この要請を受けまして、百貨店協会あるいはチェーンストア協会など関係団体におきましては検討委員会を早速設けまして、この包装適正化のための実施計画を作成中でございます。我々といたしましては、その実施計画を把握しながら必要に応じさらにその実施の促進を促し、包装適正化を推進してまいる考えでございます。
  163. 近藤元次

    近藤国務大臣 お答えをいたします。  食品の包装についてもかなりの量が出てまいりますので、当省、農林水産省としては、昭和四十七年、上げ底というので消費者を惑わすような問題が出てまいりまして、それぞれ業界からいろいろ検討していただいて、今まさに御指摘のようなごみによって、また過剰包装によって過当競争を招いたりして、そのことがまたごみを増大するというような傾向が強くなってまいりましたので、まず自主的に基準を設けていただくということで、日本百貨店協会、日本チェーンストア協会、日本セルフサービス協会、チョコレート公正取引協議会、全国ビスケット公正取引協議会では自主的な実は基準を設けていただいて指導しておるわけでありますけれども、なお一層今日ごみの問題が大変環境問題とともに世論も強くなってまいりましたので、食品容器環境対策研究会というのを、農林水産省として研究を始めさせていただきました。五回開催をする予定が今三回まで来ておりますので、近々にこの取りまとめをしていただいて、その専門家の意見を聞きながらなお一層指導を強めていきたい、そう考えております。
  164. 二見伸明

    二見委員 紙の問題は、やはり自治体で分別回収をきちんとしなければ私はだめなんだろうと思う。平成元年度に一年間でどのぐらい紙が消費されたかといいますと、二千七百十八万トンです。紙、板紙ですね。そのうちに、回収されて再生紙になる、これは四八・七%、約半分ですね。千三百十万トンです。未回収のものは二つに分かれて、トイレットペーパーなどのように水に流れて回収できないものもあるけれども、一九%は回収可能だけれどもそれはそのまま焼却場へ行っちゃっている。これは、家庭から出る紙というのは、いわゆるちり紙交換とかあるいは買い出し人とかそういう人たちが、あるいはPTAの廃品回収とかという形でもって集められるのです。だから、残り一九%をどうやって回収するか、これは結局地方自治体でごみの分別回収をする以外にないのです。ところが、現実にこうしたことをやっている自治体というのは非常に数が限られている。  ちょっとこれは厚生省か自治省かわからぬけれどもお尋ねしますけれども、古紙だけを、分別して古紙を回収している市町村の数というのはわかっていますか。
  165. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 ただいまごみ処理のための基本的な物の考え方として区分回収の必要性、これは御説のとおりでございます。今、市町村の方でお願いいたしまして区分回収をやっておりますけれども、この中で必ずしも古紙が別になっているということを確認することが十分できません。区分をやっているというだけで六百八十三市町村、こういうことになっております。
  166. 二見伸明

    二見委員 この六百八十三市町村というのは空き缶と空き瓶も含めて、空き瓶、空き缶、古紙を含めて六百八十三なんであって、空き缶、空き瓶と古紙は別なんです。同じ資源ごみであっても用途は違う。だから紙は紙で集めなければいかぬ。しかしそれは把握されてないし、私、把握してもかなり微々たるものだろうと思う。ということになりますと、この問題というのはこのままでは私は解決しないんだろうと思う。  じゃ厚生大臣お尋ねしますけれども、生活環境審議会の答申では、分別回収を義務づけるべきであるという答申が出ているはずなんです。今厚生省では廃棄物処理に関する法律をいろいろと手直ししようとしているのだけれども、私は、このごみの問題に本気になって取り組むならば分別回収というものを自治体に義務づける以外にはないと思う。紙は紙、缶は缶、瓶は瓶、そうした分別回収をきちんとしなければ、幾ら回収率を高くしましょう、今五〇%近いのを五五%に上げましょうと号令をかけたって進むものじゃないと私は思うのですけれども、そこまでの決意は厚生省にはありますか。
  167. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答え申し上げます。  昨年の十二月の生活環境審議会ではそのような趣旨のお話が出ました。しかし、具体的にどこまで徹底して一般の方々の御協力を得られるか、いろいろな問題がございますので、目下検討しているさなかでございます。
  168. 二見伸明

    二見委員 いや、検討中は検討中でしょうけれども、この問題、分別回収というものをきちんと義務づけなければ事態は進展しませんよ。どうなんですか。
  169. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 義務化ということはそれに伴ういろいろな後の手当てが必要になってまいりますので、そういう問題を含め、またどこまで、どういう品物が協力できるかということを検討した上で、できるだけそういうことの可能性を探りながらこれから対処してまいりたいと思っております。
  170. 二見伸明

    二見委員 当然自治体に対する手当て等々も必要になることはそのとおりだろうと私は思います。  それと、紙にこだわって申しわけないのだけれども、やはりこれは再生紙というのかな、古紙を使って再生紙を供給する、需要をふやすという、これは需要がないからつくらないのだということになるわけだ、ある面ではね。だから、再生紙をもっと使いましょうというような体制も私は必要になってくるんではないかというふうに思うわけでありますけれども、この再生紙をつくろう、使おうということについては、都道府県は大分やっているらしいんだけれども、その下の地方自治体に聞くと、なかなか再生紙を事務用の紙に使おうというところは少ないようですね。  じゃ、まず中央官庁も果たしてどうなのかということになると、まず隗より始めよじゃないけれども、中央官庁、まず我々から再生紙を使おう、都道府県も再生紙を使おう、市町村も再生紙を使おう、そうした需要をふやすことによって紙の回収率もよくなるんじゃないかという、私はそういう需給の問題があると思うのです。その点については政府はどういうふうにお考えですか、この点は。
  171. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 ただいまのところ中央官庁で再生紙の点に取り組んでおりますのは二十三でございます。そして、厚生省といたしましては、本省で使っております紙の相当な部分が再生紙ということになっております。  ただ、問題は、そのコストの面が十分にクリアされないということで、そう急激に促進を図ることは困難かと思います。ただ、今おっしゃったように、この問題非常に大事なことでございますので、その普及が進みますように、いろいろな措置を講じてまいりたいと思っております。
  172. 南学政明

    南学政府委員 我が国の古紙の利用率、世界的に見て最高の水準にあるわけでございますが、現状に満足することなく、さらに利用の促進を図っていくというのが私どもの考えでございまして、政府といたしましては、昨年三月に省エネルギー・省資源対策推進会議というのを開きまして、中央官庁が率先して再生紙の利用、それからまた古紙の分別回収を行っていこう、さらにまた、そうした考え方を政府関係機関あるいは地方公共団体、民間企業にも普及していこうということで積極的に今働きかけを行っているところでございます。
  173. 近藤元次

    近藤国務大臣 ごみの問題も大切でありますが、森林資源を担当しておる農林水産省といたしましては、古紙につきましては、農業白書、林業白書、漁業白書、農林水産省報、農林水産統計速報、コピーの用紙並びに一般起案用紙についても今逐次検討をいたしておるところであります。若干コストが高くなるのですけれども、量を余計使うことによってまたコストも下がるのではないかと思って、一生懸命努力いたしております。
  174. 二見伸明

    二見委員 確かに、森林資源という点からいってもこれは大変大事な問題だと思うのです。一トンの古紙を再生すると八百五十キログラムの再生紙になる。一トンの古紙は直径十四センチ、高さ八メートルの立木二十本に相当する。現在回収率が約五割だけれども、それを六〇%に上げることによって約八百六十八万八千立米の材木を使用しなくても済むという環境庁の試算も私のところに来ております。だから、古紙再生というのは、焼却炉の問題だけではなくて森林資源の点からも非常に大事な問題であるというふうに思います。  ただ、厚生大臣の御答弁によると二十三省だそうですね。二十八省あるのですね。五省やってない。五省は全く古紙を使ってないところもあるわけですね。どこの省か聞いてもいいのだけれども、時間がないからやめておきますけれども。二十三省以外の五省は、これは本気になって再生紙を使うように私は努力していただきたいと思います。私のところでは――やめておきましょう。武士の情けというものであります。  また、コピー用紙やコンピューター用紙分野へもやはり再生紙をこれはふやしていただきたいというふうに思っております。  さらにもう一つ、これはまた面倒くさいことなんです。これは今度は古紙じゃないのですね。実は、廃棄物処理法第三条にこういう文章があるのです。廃棄物処理法三条二項には「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物の再生利用等を行なうことによりその減量に努めるとともに、物の製造、加工、販売等に際して、「その製造、加工、販売等に係る製品、容器等が廃棄物となつた場合においてその適正な処理が困難になることのないようにしなければならない。」こうなっている、大変難しい法律用語でございますけれども。そうすると、いいですか、売ったものが廃棄物になった場合には、その処理が余り難しくなく処理できるようにしなければならぬ、こう書いてある。  それで、それの条文に照らして現実を見てみましょうか。これからどういう――今、古紙の話を、紙の話をしましたけれども、紙と並んでやはり家庭で本当に困るのは、難しい言葉で言いますと適正処理困難物というのです。どんなのかといいますと、大型テレビ、冷蔵庫、カメラ、オーディオ、オートバイ、乾電池、プラスチック、いわば市町村ではもう悲鳴を上げるようなものがある。いわゆる粗大ごみというやつ。だれも引き取ってくれません、こんな大きな冷蔵庫は。これは財団法人家電製品協会の調べによりますと、平成五年にはカラーテレビが五百三十万台前後、電気冷蔵庫は三百四十万台前後廃棄されるというのです。これはどうする気ですか、これは。どうします。厚生大臣、通産大臣、どちらでもいいですよ。
  175. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 これは規定にはございますけれども、実際問題として、これはメーカーとそれから市町村とそれから消費者の各段階での御協力を得なければなかなかできない問題でございます。そして、このような問題が大きくなってまいりましたので、これを具体的にどのように処理し、また効果を上げるかということで目下検討しておるさなかでございます。
  176. 二見伸明

    二見委員 これはだれかに、だれに負担させるのですか、この処理の費用は。最終的にはこの処理のコストはだれが持つかということなんです。市町村に持たせるのか、あるいはつくったメーカーに持たせるのか、買った消費者に持たせるのか。だれかがこのコストは負担しなければならぬ。こんなもの市町村に負担させられたら、たまったものじゃない。
  177. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 ただいまのお話のございました適正処理困難物が捨てられた場合の費用をだれが負担するかという御質問でございますが、現在の廃掃法、先生御存じのようにあくまでも排出者が責任を持つという体系ででき上がっておるところでございます。すなわち、一般廃棄物につきましては、市民にかわって市町村がその税金によって、預かっている金で処理をする。それから、事業から出てきたものにつきましては、先ほどお話のございました三条に従いまして、事業者が最後まで責任を持つということであるわけでございます。  そこで、例示のございましたテレビ等をどうするかということでございますが、現在のところあくまでも排出者の責任ということで市町村が処理しているわけでございますが、通常の家庭のごみに比べますと費用がかかるというところから、市町村によっては一定の費用負担を排出者に求めている例もございます。東京都は、この七月から冷蔵庫についてはたしか千円の賦課金を取るということを決めているというのも一つの例でございますが、このような処理になるわけでございます。  ただ、もう一つ考えなければいけませんのは、実際に所有者がだれかわからない捨て去られたものもあるわけでございまして、これについてはそのようなことのないように実はメーカーを指導いたしまして、その生産から流通、消費にわたるネットワークを使って回収をするということを考えまして、この一月から業界を指導いたしまして、とりあえず東京都におきまして、どのメーカーのものというのではなしに、家庭がテレビを捨てる場合には近くの販売店に持っていけばそれを預かるというシステムづくりをいたしたところでございまして、預かった販売店には、破砕車というつぶす車がございますが、これが回りながらそれを回収し、資源として使っていくというシステムをとりあえず東京で一月からスタートしたところでございまして、おいおい全国に普及させていこうということで指導いたしております。
  178. 二見伸明

    二見委員 あと二年後には、カラーテレビで五百三十万台、電気冷蔵庫で三百四十万台、そのほかエアコンだ何だとたくさん出てくるんです。私は、これは排出者に責任を持たせるというんじゃなくて、またそこで市町村に押しつけられても市町村も困るわけだ、こんなものは。これはやはり第一義的にはメーカーがそれを引き取るというシステムをつくるなり、あるいはメーカーが市町村に金を払って処理してもらうとか、そこら辺のルートをきちんとしておかなければこれは無理ですよ。  その点もう一度、これは通産ですか。
  179. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 先ほど来ずっと各省の意見を承ってもおりました。きょう何か私どもの属する政党でも、相当商工関係で論議が交わされたようでございます。全く今の先生の御指摘のようなこともるる出されたようでございます。  そこで、先ほど紙の問題を含めまして、適正処理困難物、すなわち自動車であるとか電気冷蔵庫の大きなやつとか、これは確かにメーカーあたりとも相談しながら、かというて省にわたりましても、先ほど申し上げた厚生省もありますれば、通産省、農林省、あるいは場合によっては自治省、これに至るまでも、これはお互いに十分に相談し合って結論を出していかなければならぬ問題かなと思っておりますので、これは真剣に取り組んでみたい、こう思っておる次第でございます。
  180. 二見伸明

    二見委員 これは例えばヨーロッパの例ですけれども、フランスには「一九七五年「廃棄物の除去及び資材の回収に関する一九七九年七月十五日法」」というのがあるんですな。「処理困難な製品の製造・販売の規制。資源化製品の使用義務づけ。」あるいはイタリアでは「プラスチック規制法」というのがあって、「一九九一年一月十五日より生分解性のある材質以外で作られた容器、あるいは包装、梱包材料の使用を禁止する。」等々いろんな厳しい規制があるわけですね。  私は、日本もこうした諸外国の例に倣いながら、廃棄物に対してはきちんとした姿勢を示していかなければならぬだろうと思います。  先ほどプラスチックの話がちょっと出ましたけれども、プラスチックだって、例えばスーパーはプラスチック容器を使用して人件費を下げて、価格競争に勝つことができる。消費者はそれを買って、持って帰って、食べ終わった後これを捨ててしまう。それがそのままごみ焼却場へ行って、結局税金でコスト負担。そうすると、プラスチック容器を使っている者の責任というのはどこにあるんだ。片っ方は価格競争や販売競争で勝つかもしれないけれども、その負担は結局消費者の市民税とかなんとかという税金となって負担されているのじゃないか。こんなシステムをそのままにしておいていいのかということにも私はなると思います。そうしたこともぜひとも検討していただぎたいことを申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、事業系一般廃棄物をどうするか。特に事業系の廃棄物、これは近年特に物すごい勢いでふえていますね。OA化が進んだので紙の量は減るかと思ったら逆にふえちゃったと。これは今事業系の一般廃棄物というのは七百二十万トンだそうですね。特に大都市がもう圧倒的にふえてまいりまして、東京では昭和六十三年には百二十八万六千トンで、この五年間で八〇%ふえた。これはそのまま市町村の負担ですね。この事業系一般廃棄物を今後どういうふうにしていくか、負担をどういうふうにさせていくか。結局負担の問題だと私は思う。ごみ焼却場だってもう三年か四年の寿命でしょう。特に東京近郊なんかもうありゃしませんよ。そうなると、事業系一般廃棄物を減らすことも大事だし、またそれに対する応分の費用を負担してもらってということも私は当然考えていいと思うのですけれども、その点についてはどういうふうにお考えですか。これはどこになるのかな。
  181. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 今おっしゃいましたように、事業系の廃棄物が非常にふえてきております。この問題は、今のところは市町村の負担で処理されておりますけれども、このようにふえてきておる傾向から見ますと、とても負担し切れない、市町村の重荷になっておるということでありますので、その負担は将来やはり排出事業者負担ということを考慮に入れながら対策を考えていかざるを得ないのじゃないか。目下検討中でございます。
  182. 二見伸明

    二見委員 いや、いわゆる事業系廃棄物を一般廃棄物という範疇に入れていいのか、むしろ産業廃棄物の範疇に入れた方がいいんではないかという意見も我が党内にあるわけです。これは一般廃棄物の範疇に今後とも入れておいた方がいいのか、むしろこれは産業廃棄物として別の分野で処理した方がいいのか、そういうことについては厚生省は何か特別のお考えはございますか。
  183. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、その処理をするに当たりましては、市町村ではとても処理する能力が限界を超えつつあるということでありますので、排出の立場でこれの負担も考えざるを得ないんじゃないかということで検討しておるわけでございます。
  184. 二見伸明

    二見委員 もう時間がありませんので、私は四百三十兆円のいわゆる公共投資計画について議論をしたかったわけでありますけれども、これらについては厳しいきちんとした議論はできないと思います、時間が五分しかありませんから。  ただ一つ、私はこれについて申し上げておきたいことがある。これはどういうことかというと、基本計画の別表には「生活環境・文化機能」というのがありまして、どう分類しているかというと、「「生活環境・文化機能」に分類される公共投資には、例えば上下水道、公園、廃棄物処理施設、公共賃貸住宅、住宅・宅地関連公共施設、域内の道路、地下鉄、農山漁村の集落排水施設、河川・港湾・漁港等における緑地整備、厚生福祉施設、文教施設等に係る公共投資が含まれる。」と例示されているだけで、生活環境・文化機能とはこういうものだというきちんとした線引きはされておりません。  一方、政府は、いわゆる生活環境・文化機能に予算をふやさなければいけない、公共投資をその方に振り向けなければいけないということで、いろいろ悩んだんでしょうけれども、平成三年度予算のときには二千億円というのを別枠にして、これは生活関連枠ですというふうに決めた。ではどれが生活関連枠か決められなくて、最終的には自民党の中でこれを決めたんだというふうに見ておりますけれども、二千億円の生活関連枠に対する各省庁の要求が出てきた。幾らだと思います。一兆一千五百億円。例えば運輸省は整備新幹線着工調査費が生活関連枠だと。できれば、乗りおりするのは普通の人だから生活関連枠だと。郵政省では移動式電話、移動電話普及事業費だと。自動車電話を普及させることは生活の関連。こうなっていったら何でも全部生活関連だ、これは。それは高速道路だって何だって、生活に関係ないものは何一つとしてない。今後ともこの生活関連枠とは何ぞやというきちんとしたものを決めなければ、概算要求でもって一兆一千五百億も出てくるばかなことになる。これは枠はきちんと決めなければ私はいけないと思うのです。枠を決める。  もう一つは、こういうふうに枠を決めないと、何でも生活関連になってしまうと、四百三十兆円というのは一体何だったのだとなる。これはきちんと枠を決めてもらいたい。その点、これは大蔵省が査定するわけですから、大蔵大臣の方からきちんとした枠を決めるように答弁をしていただきたいと思います。
  185. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今御指摘にもありましたように、生活関連重点化枠というものを平成三年度予算概算要求の中で作成し、一定のルールは示しながら各省に作業をお願いをいたしましたところ、本当に私自身が卒倒するような項目が多数出てまいりましたことは事実であります。しかし、結果的に生活関連重点化枠の中で公共事業関係に振りました千七百五十億という中を見ていただきますと、例えば下水道の二一・四%、あるいは住宅対策の二〇・二%、公園などで四・三%、生活環境衛生の関係で四・二%、この四つの項目だけで五〇%を超える重点志向の投資をいたしております。今回私どもとしてもこの考え方を初めてとってみました。その中からいろいろな反省もありますし、委員が御指摘になりましたような問題点があることも我々自身が嫌というほど勉強いたしました。  平成三年度予算を通過、成立をさせていただきました後、四年度に向けまして概算要求基準をどうつくっていくか、その中においてこの生活関連重点化枠の扱いをどうするか、その場合のルールをどのようにつくるか、今後ともに十分勉強してまいりたいと思います。
  186. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣、確かに二千億のシェアの中では生活関連というのはかなり高い。しかし、これが全体の予算の中で見ると余り変わっておらぬ。それはわずか二千億をあちこちに分けるわけだから、こんな大きな公共事業予算の中から見れば、多少ついたからって部門別のシェアが変わるわけはない。例えば、治山治水事業は一七・四で、去年は一七・五、大体同じだ。下水道にしても大体一五・四とか三で、ことしは一五・七。ほとんど配分比率は変わっておりません。私は、これから政府が、公共投資はまず生活関連枠とは何ぞやという範囲をきちんと明確にした上で、これを大きくふやそうというならば、私は考え方は二つあると思う。  一つは、配分の比率を勇断を持って変えてしまうということです。十年後の目標値に向かって変えてしまう。それは今までついていた予算を削るということはできないと思う、これは。だけれどもことしは、これからこの方面の予算は十年間余り伸びませんよと、こちらの方に伸ばしますよという、そういう重点配分というのかな、ふえた分でいいからふやしていくというやり方が一つある。  もう一つは、ことしみたいに二千億とか三千億とかといういわば別枠をつくって、生活関連枠というものをきちんと決めた上で、その二千億、三千億という枠をこれからもずっと続けていきながら、そして結果として十年後には投資配分がこのように変わった、住宅だとかあるいは下水道だとかあるいは公園だとかというところにこんなにふえたという手法もあると思う。私は、そうしたことについて、大蔵大臣としてはどういう手法を用いて生活関連枠、純粋の意味での生活関連枠への予算を配分していくのか、私が今二つ例示的に申し上げましたこと、そうしたことを念頭に置いてどうお考えになっているのか御答弁をいただいて、この質問を終わりたいと思います。
  187. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは事務方の答えではなく私自身の答えを申し上げたいと思いますが、昨年度の予算編成の後、赤字公債依存体質脱却の後、さらに日米構造問題協議の結果出てまいりました内容を踏まえて、私どもなりにどう次年度予算に対応すべきかを考えたあげくに生活関連重点化枠という設定をいたしました。その中にまだ未熟な部分がありましたことは今委員からも御指摘を受けたとおりでありますし、私ども自身が作業の上におきましてその未熟な部分については痛感をいたしております。  しかし同時に、公共投資十カ年の総枠の問題と年度年度におきます公共事業費の配分は、その時期その時期における経済情勢、社会情勢、さらに財政の状況等も踏まえながら年々勘案していかなければなりません。その場合に統一したルールで毎年を突き抜けていくということは恐らく無理でありましょう。そうした中、私どもなりに今回の予算編成の結果というものを踏まえながら、次年度の概算要求基準の設定時までに十分検討してまいりたいと思いますし、これにつきましての御意見は、なお細部にわたってちょうだいできますならば、その作業の上に生かしてまいりたいと思います。
  188. 二見伸明

    二見委員 以上、終わります。
  189. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次に、五十嵐広三君。
  190. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 最初に湾岸戦争の問題でお聞きしたいのでありますが、その前に、国連憲章に旧敵国条項というのがあるのですね。まだ、日本、ドイツ、イタリア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドですか、旧敵国として記載されている。これはどんなふうにお考えですか。
  191. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる国連憲章に言いますところの旧敵国条項と言われる場合、国連憲章の第五十三条、それから憲章の百七条の問題、非常に簡単に申し上げて先生が今言及された日本以下の国を別途扱っておるという条項でございますが、まず国連憲章の第二条一項は、「この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。」ということで、加盟国は主権平等であるということを言っております。それから、憲章の第四条は、加盟国は平和愛好国であるということも言っております。そういう観点からいたしますと、私たちは、日本もその他の旧敵国も、国連の加盟国になった段階で、このような条項が適用されるというのはおかしいというふうに考えております。そういう意味で、既にこのような規定が憲章に残されているということ自体は好ましいことではないというふうに考えております。
  192. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 好ましいことではないとおっしゃるけれども、戦争が終わってやや半世紀ですね。しかし、いまだそういう条項は憲章に残っている。外務大臣、これを消す努力をおやりになるお気持ちはありますか。
  193. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この旧敵国条項の問題につきましては、日本にとりましても重大な関心事項でございますが、今局長がお話し申し上げましたように、我々は国連加盟時に、以来平和国家として加盟をしておるわけでございますが、旧敵国条項の解除、いわゆる廃止につきましては、昨年九月の国連総会におきまして、日本政府として、この国連の旧敵国条項を廃止すべきであるという政府意思を明確に主張いたしておることをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  194. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しかし、改めて思わなければいけないのは、やっぱり戦争が終わってから半世紀もたって、まだ国連憲章に我が国は旧敵国として記載されたまま残っている、こういう国際的な我が国の一つの面、こういうものも私は忘れてならないような気がするのであります。湾岸問題における、今、自衛隊機派遣の問題等が議論されているわけでありますが、そんな場合にでもそういうことをひとつ念頭に置いておかなければならないような気がするのであります。  報道によりますと、稲盛行革審部会長が、六日の記者会見で自衛隊機派遣を批判するコメントを出しておられるようであります。「日本には平和憲法があり、国是として決まっているのだから自衛隊機派遣はやめた方がよい」、まことに歯切れのいい部会長の発言でありますが、総理、御所見ございますか。
  195. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな御意見があることは私は率直に認めなければならぬことであると思っておりますし、またしかし、それは海外派兵とかそういったものでは全くありませんし、極めて人道的な問題だということを、私は時間があったら稲盛さん自身にも十分説得をして御理解をいただきたいと思うのです。あれほど広く世界の国々との相互依存関係の中で経営をしておる方でありますから、世界の平和がいかに大切かということを、それは、ほっておいては平和は成り立たないということを、日本は演説とビラだけでは平和は来ないんだからいろいろ努力をしなきゃならぬということを稲盛さんにも私は十分申し上げて理解を得たい、こう思います。
  196. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しかし、もちろんそれは今日まで諸般の状況は百も承知で、しかも総理の諮問機関であるこの行革審の部会長の稲盛さんが、いろんなことはちゃんと計算しながら、計算といいますか、それはまあこういう発言をしたらどうだかということはお考えなわけでありますから、そういう中で明快に自衛隊派遣に対する批判をなされているということは、これはやはりきちんと私は受けとめておいていただかなくてはならぬ、こういうぐあいに思います。  さて、C130が、今諸般の準備をしておられるわけでありましょうが、湾岸に至る間の中継空港利用についてのそれぞれの了承は得られたものかどうか。あるいはヨルダンのアンマン空港の利用について、いろいろこの間来報道されているわけでありますが、これに正式要請は政府としては、あるいは照会等をしているのかどうか、これについてお聞き申し上げたいと思います。
  197. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  先日来繰り返し申し上げておりますように、自衛隊機派遣というのは、あくまで国連から委任を受けたIOMからの具体的な要請を受けまして、そしてまた政府で一定の手順を踏んだ上で行われるわけでございます。現在そのような具体的な要請が来ておるわけでもございませんので、我々が進めております検討といいますのはやはり内々のものでございます。  そういった前提を置かしていただきまして、具体的に御質問の、まず避難民輸送が想定される場所まで行くルートでございますけれども、御承知のとおりC130という飛行機、それほど足の長い飛行機じゃございませんから、何カ所か途中にとまりまして給油等をする必要がございます。しかし、それは具体的にどういうルートを通るかもまた今日の段階で決めようもございませんので、可能性のある地域につきましていろいろな関係機関等を通じまして、技術的な面での可能性あるいはそのほかの行政面での可能性なんかについていろいろ調査しておりますが、そういった事情でございますので、今まだ具体的にあれこれ申し上げるわけにはまいりませんけれども、申し上げられる段階ではございませんけれども、感触といたしましては、技術的にもその他の面から見ましても、もしそういう必要が出てくるならば、給油をしながらその目的地まで行くことはできるのではないかといった感触を得ている段階でございます。  それからいま一つの御質問でございますアンマンの話でございますが、これも今可能性としてアンマンということが言われておるわけでございますが、具体的にどうなるかわからぬ段階でございますので、正式の要請とか申し入れとかいうものはまだ行われておる段階ではございません。
  198. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 実際にC130が飛んでいってアンマン空港あるいはカイロ間をピストン輸送するという場合で、今五機予定していて、実際に行くのは二機ですわな。一日に何人ぐらいの人を実際に運ぶということになりますか。
  199. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  五機あるいは二機という話でございますが、これは私も先日の委員会でちょっとそういった感じの御答弁を申し上げましたが、正確に申しますと、そのときも申し上げたのでございますけれども、我が方の態勢としてどの程度出せるか、つまりC130も通常の任務を持っておるわけでございますので、それも完全におろそかにするわけにはまいりません。そういったことを考えながら、当方として要請があったときにどの程度割けるかという観点から申しまして、実際に稼働するのは、輸送に充てられるのは二機ないし四機というところじゃないのかな、整備なんかのために機体を交代したりすることがございます。そういうことを申し上げたわけでございますので、具体的にどういうふうになるかはまだ今の段階では申せません。ただ、先ほど御質問のございましたアンマン、そうしてカイロという想定で申しますと、その飛ぶルートがどうなるかにもよるわけでございますけれども、C130の速度等を考えますと、片道で二時間程度ではないかなということでございます。それからC130の積載、搭載能力等の観点から申しますと、人員だけでいいますと九十人、こういうことになっております。
  200. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しかし、避難民ですから荷物は持っておるわけですね。大体平均的な荷物を持って実際に乗るということになるとそれは何十人乗れるかということになりますね。そこで、いろいろ聞くところでは、通常は整備やら何やらもあるわけですから二往復ぐらいかなということが我々はお聞きしているところなのですが、そういうことかどうか。  そうしますと、大体一日に、準備するのは大体五機で実際に稼働しているのは二機という状況の中で、実際に一日何人運べるのか。
  201. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど申しましたように、人間だけ乗る場合に九十人でございます。そして、今お話しのように、避難民の方でございますから余り多くの荷物はお持ちになっておらぬと思いますけれども、やはり荷物はお持ちでございましょう。そういうことを勘案いたしますと、やはりそこのところ若干の異動があるのは事実でございます。この積載能力をトン数で申しますと二十トン、こういうことになっておるわけでございます。  それから、今、さて一日に何往復できるかというお話でございますが、これは先ほど申しましたように、ルートによりますけれども、一応想定されるルートでいうと片道二時間ぐらいかなということが言えますけれども、これは何といいましょうか、現地の積みおろしにどの程度の時間がかかるかということもございましょう。あるいは、そのときの状況によりますけれども、その空域が自由に往来できるような姿になっているのか、あるいはそこである程度制約があるのか、そういう点もいろいろございますから、現在の段階では、一日に何人輸送できるということはちょっと申し上げるのは難しい状態でございます。
  202. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 余り時間をとるから、そんなものはあなた、当然今の段階ですから、行ったときには何往復ぐらいでどうだなんというのはもちろん計算をしておられるに違いない。そんなことの段取りさえできないようでは、初めから行く気がないのかということになるわけで、できれば率直に御返事いただきたいと思いますね。  仮に、九十人乗る、人間だけの場合。しかし、荷物を持っている。したがって、五十人なのか六十人なのか。仮に六十人と考えても、二回ということになると百二十人になる。その程度の輸送能力ということになるわけですね。  C130が実際に湾岸に行って仕事をするというためには、必要な要員だとかあるいはさまざまな資材、こういうものを持っていかなければいかぬ。それを持っていくのに、その輸送用に民間機をチャーターしなければいかぬという議論なようでありますが、どうですか。
  203. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  現実に今想定されておりますカイロとかあるいはアンマン、そういった間を輸送するということになりました場合に、カイロあたりに輸送の拠点を置くなんということが一つ想定されるわけでございますが、そういった場合に現地で必要なある程度の整備をやるとか、いろいろ支援をするその体制も要るわけでございます。そういった点でどの程度の人数を要するか、あるいは機材を要するかという点も、まだ今の段階では本当に予備的な調査をしている段階ですから何とも申せません。これは現地の、例えばエジプトの民間の航空機なりあるいは政府機関なりの支援が得られるか得られないかというところにもかかわってくるわけでございますから、そういったことでございますので、現在の段階でそういったサポートのための人員なり機材などの輸送にどういう対応で進めていくかということも詰め切っている段階ではございません。
  204. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大体我々がお聞きしているのは、また皆さんの方も言っているところでありますが、自衛隊機派遣には要員約二百人、それからエンジンだとかプロペラといった予備部品を含む資材が重さにして約百トンぐらい、これを持っていかなければいかぬらしいですね。これは民間機をチャーターしなければ運びようがないのじゃないですか。
  205. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいまいろいろ具体的なお話もございましたけれども、C130という飛行機はかなり広く使われておる飛行機でございまして、あの地域にも相当ございます。そういったところからある程度の補給部品なども場合により調達可能じゃないかという、こういうこともございますので、そういうところをこれからまだ詰めてまいらなくては先ほどの御質問には的確にお答え申し上げられないという状態でございます。
  206. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そんなあなた、防衛庁長官が、これだけ自衛隊を動かすことについて大騒ぎをしている国会で、まだ調べてみなければわからぬとかなんだとかという、こういう返事をしなければいかぬというのは全く納得がいかないですね。もっと率直にお話をいただかなければいかぬと思うのですよ。  貨物では、C130の場合は輸送能力は二十トンぐらいでしょう。そうでしょう。実際に百トンぐらい持っていかなければいかぬわけでしょう。それは、現に民間機チャーターということで自衛隊では検討なさっているようでありますから、運ぶといったって、今お話をしているように、一日に、六十人一回に運んだって、二便とすれば百二十人ぐらいのものだ。しかも、行くのにやっぱり別に民間機のチャーターをして行かなければならない程度のものだ。しかも、現地の航空管制事情や気象条件に詳しい民間パイロットからいろいろアドバイスを受けなければいかぬ。アドバイザーとして搭乗してもらうというお考えのようでありますが、そんなことはないですか。
  207. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  今いろいろ御指摘のありました点、そのとおりと申し上げる面もあるわけでございますけれども、御承知のとおり今回自衛隊機を場合によって使用するというのは、この自衛隊機C130の性能なりあるいはそれを運航いたします自衛隊の要員なりが今回の任務に最も適当であるから、こういうことで考えているのではございませんで、それはIOMがいろいろ考えるわけでございますが、その中で、世界にございますいろいろな民間機であるとか軍用機とか、あるいはその他の陸上あるいは海上の輸送手段も含めましていろいろ考えていかれるわけでございます。  そういった中でIOMの方から日本の自衛隊機にという具体的な御要請がある、このときは性能だけじゃなくてその地域の状況など考えて民間機等で対応できない、そういうケースになるのだと思いますので、必ずしも性能その他の面だけでこれははかるべき話ではないのではなかろうか、こう考えます。
  208. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今防衛庁長官からC130は必ずしもこの仕事に適当な、向いた飛行機じゃないのだ、そういうようなお話があったのはまさにそのとおりだろうと私はそう思うのですね。しかも、二、三日前ですか、新聞に出ていましたが、多国籍軍の使用しているC130が撃墜された。十四名か、乗っていた人が行方不明ということになったようでありますが、これはそういう記事なんか見ても、いや、なかなか大変だなというふうに思うわけです。仮にC130に避難民を乗せてそして運航しているときに撃墜された、こういうときの補償であるとか、こういうようなものはどういうことになるのですか。
  209. 池田行彦

    ○池田国務大臣 私どもも安全な輸送という点には万全の配慮を払ってまいりたいと存じます。任務は、何と申しましても避難民の方々を安全に、より安全な地域へお運びするという任務でございますから、ただいま御指摘のような可能性が非常に高いといった状態の中では、そもそも我々が運航をするということにならないのじゃないか、こう思います。
  210. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 民間航空機をチャーターして、しかし民間航空機では危ないようなところがある、そこでそういうようなところはC130をやらなければだめだ、こう言っておるわけでしょう。民間航空機で危ないようなところはC130でやらなければいかぬ。しかし、それは危ないようなところにはやらないのだ。それなら民間航空機でいいじゃないですか。どうもお話を聞いて、いずれの面から見ても納得がいかないですね。したがって、お話しのように補償は考えていない、考えてないといったってですよ、もしそういうことがあったらどうしますか。保険は掛けられるのですか。
  211. 池田行彦

    ○池田国務大臣 具体的にIOMの要請があってから、我々と申しましょうか自衛隊輸送機がその任務につくかどうかということがわかりますので、今の段階ではどうしてもそういう仮定のお話にならざるを得ないわけでございます。しかし、自衛隊機がどのような場合に運航されるかというのは、民間機によることができない場合でございますけれども、それはその民間機が物理的に危ないということだけではなくて、その他のいろいろな事情で民間機が使えない、活用できないというケースがあり得ると思うのでございます。例えば、保険料が非常に高くなって民間機ができない、そういうケースもあるわけでございまして、そういう危険度と申しましてもいろいろ程度があるわけでございますから、民間機が活用できないけれども自衛隊機は運航できるという状態の中で飛ぶわけでございます。     〔委員長退席、鹿野委員長代理着席〕
  212. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 保険料が高い安いということと、保険が掛けられないということと、どっちがどうだと思いますか。これは保険掛けられるのですか。長官、どうですか。
  213. 池田行彦

    ○池田国務大臣 保険料と申しましてもいろいろなものがあると思いますけれども、民間航空機の場合には機材なんかの保険というものもあるわけでございます。そういったことも考えながら対応できるかどうかというケースもあり得るかと思います。  そういった保険料につきましては、我々自衛隊機の場合にはこれは考慮する必要はないわけでございますが、いずれにいたしましても安全の面でそういった不安が非常に大きいというときには、IOMとしましてもそのような輸送手段を要請してくるということはないと思いますし、我々といたしましても、何と申しましても避難民の安全な輸送というのが最大の務めでございますので、その点には万全の考慮を払いながらやってまいるということでございます。
  214. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これもまあはっきりしてきたのは、要するに民間航空機のところが不安がある、危険で心配だというようなところを自衛隊機がやるというんじゃなくて、自衛隊機も、それは最も安全なところだけやるんだ、こういうことですわな、今のお話では。したがって、まあ事故だとか保険を要するなんということは余り考えてないと。それは実際、長官、飛行機ですからね、しかもああいう区域に行くわけですからね、事故の可能性はある。だからこそ保険が二百倍だとかなんだとか言われているわけですね。今あなたがおっしゃったように、保険料が高い。保険料が高いということは危険性があるということですよ、一定の。九十人、まああのうち六十人なら六十人乗ったとするか。六十人を乗せながら、しかし撃墜した、墜落をした、こういうときの一体我が国の責任はどうなりますか。今のお話なんか聞くと、全然そんなことは想定してない。それは避難民といえども一人一人の大事な命ですよ。それは乗員も大事ですよ。もちろん乗員も大事だ。そういうことを考えないで、まるで物でも運ぶような気持ちで自衛隊機のことをお考えいただくと大変僕は残念だというふうに思うんですね。  今いろいろちょっとお聞きいたしましても、いずれの面からしたってこれは僕は、やっぱり現地のロイヤル・ヨルダンだとか、さまざまな民間航空機を借りるということが一番適当なことだというふうに、これはだれが考えたってそう思いますね。そういうのを無理してC130を出すというのは、この間、これは先月の三十日ですか、渡辺美智雄先生が都内で講演なされて、九十人を運ぶ自衛隊が五機ぐらい行っても役立つ話ではないかもしれないが、参加することに意義がある、こうおっしゃっていたと新聞は伝えていました。まあそんなことぐらいしか余り考えられないですね。参加することに意義があるというか派遣することに意義があるというか、非常にそういう感じが痛感するわけです。  一方、民間航空機を民間団体の人たちが借りて、現にこれも報道でありますが、一号機が六日の日、アンマンからカイロに飛んだ。これはある日本の弁護士二人がチャーターいたしまして、そうして百三十九人を乗せて第一便が既に飛んだそうであります。それから、八日には二号機がさらに飛ぶ。今、大体そういう申し込みが来ておりますのが、日本カトリック司教協議会やあるいは土井たか子を支える会なんかで大体十機分ぐらいの申し込みがある、こういうようなお話を聞いているんでありますが、これは私は、やはりそういうぐあいに、今長官が言っているように、C130どうだとかこうだとか、しかも何のことやらさっぱりわからないというような状況の中で、しかしボランティアでは積極的にこういう努力をしているということは非常に我々評価をいたしたい、こういうぐあいに思うわけですが、しかしこういう民間団体の皆さんに負けないで、やっぱり政府も一日も早くこれはもう民間機を借り上げてどんどんどんどん私は運ぶべきでないかというふうに思うのです。これは、総理どうですか。だれが考えたってそういうことでないですか。
  215. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回のこの要請は、避難民輸送に当たってほしいというIOMからの要請であり、また避難民の移送には日本としても積極的にできる限りの協力をすべきだということで、国際機関が世界に要請をしました最初の移送のための所要資金三千八百万ドル、これは日本が既に拠出をいたしまして、IOMが世界じゅうのいろいろな航空会社あるいは世界の政府から調達をしてもらって輸送するときのその資金に充ててもらうように既に処置をいたしました。そして民間の航空会社にも依頼をして、ベトナムに対する移送は、カイロまで四機民間航空の協力を得て飛んで、運び、そして感謝をされたという実績もございます。  また、今御指摘のように、民間の方がいろいろお金を出して、それの飛行機をチャーターして協力をする、これはIOMとすればそれだけ選択の幅が広くなるわけでございますし、また被災民の移送ということがスムーズにできることが一番大切でありますから、私は、午前中の御質疑にもございましたように、民間のそういう拠金については、それは国を挙げて日本も取り組んでいくんですよ、汗も流すしお金も出すし努力もしますということを、政府が言い続けておることを一緒になって御協力願うことは、これは非常にありがたいことだと申し上げました。
  216. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 まあぜひひとつそこに重点を置いてほしい。そのことに異論を挟むところは全くないんですから。C130ということになるから問題になるわけですね。それは民間航空機で一生懸命避難民輸送に当たるということになったら、日本じゅうの人はみんな、いやあおれもひとつ協力しようじゃないか、私も手伝おうじゃないか、みんなそういう気持ちですよ。これはぜひ、しかもそれは、C130は一体どうかといえば、さっきから言うように、防衛庁長官からお聞きしましてもさまざまな問題があるわけでありますから、賢明な総理はもちろんその辺は全体的にお考えになっておられると思いますが、そのことを心から期待をしたいというふうに思うのです。  そこで、今この議論の中で、よく諸先輩なんかも話が出てくるのでありますが、昭和二十九年参議院で「自衛隊海外出動を為さざることに関する決議」というのが、当時鶴見祐輔議員の趣旨説明で成立を見ているわけであります。私はこれを改めて読まさせていただいて大変感銘をいたしまして、勉強になったというふうに思うんです。  ちょっと大事なところだけかいつまんで言いますので、改めて、まあもちろん総理はごらんになっていると思いますけれども、お聞きいただきたいと思うのです。    自衛隊海外出動を為さざることに関する決議   本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。   右決議する。 こういう決議文になっているわけでありますが、そこで、趣旨説明の中で感銘している部分だけちょっと申し上げますと、   その第一は、自衛隊を飽くまでも厳重なる憲法の枠の中に置くことであります。即ち世界に特異なる憲法を有する日本の自衛権は、世界の他の国々と異なる自衛力しか持てないということであります。 あるいは、「七年前」、当時ですから、  七年前我々は、平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼して、みずから進んで戦争を放棄したのであります。故に今日創設せられんとする自衛隊は、飽くまでも日本の国内秩序を守るためのものであつて、日本の平和を守ることによつて東洋の平和維持に貢献し、かくしてより高度なる人類的大社会的組織の完成を期待しつつ一つの過渡的役割を果さんとするものであります。それは決して国際戦争に使用さるべき性質のものではありません。 あるいは、  如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。それは窮窟であつても、不便であつても、憲法第九条の存する限り、この制限は破つてはならないのであります。 そしてまた、  条約並びに憲法の明文が拡張解釈されることは、誠に危険なことであります。故にその危険を一掃する上からいつても、海外出動せずということを、国民の総意として表明しておくことは、日本国民を守り、日本の民主主義を守るゆえんであると思うのであります。 こうおっしゃっているわけですね。  しかし、今度の国会の審議なんかの中にあって私は、この趣旨説明というのはまさに我々のとるべき方向を示しているというふうに思うわけであって、こういう点について総理、どういうぐあいにお考えですか。
  217. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昭和二十九年の決議に関して申し述べられました。まさに自衛隊が発足し、日本が国際社会に復帰をするそのときの社会の背景の中で議論がなされたものでございまして、私は、そのときの精神の中でも今日もなお引き続いて厳然と守っていかなきゃならぬのは、武力による威嚇または武力の行使を伴うことをしないということは、これは憲法九条の原則であります。武力行使を伴い、戦闘部隊を自国以外の他国の領海、領土、領空に派遣は絶対にしないということはおっしゃるとおりだと思います。けれども、その同じ第九条にも「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」するんだ、日本は国際平和というものを「正義と秩序を基調とする国際平和」だときちっと言っております。同時に、そのときいずれの国も自国のことのみに専念してはいけない、他国のことも考えなければいけない、国際協調主義というものもきちっと宣言しております。そしてこの憲法の精神を掲げて、世界で「名誉ある地位を占めたいと思ふ。」というのも日本国民の同じときの憲法に宣言した理念でございます。だから、こういう平和主義と国際協調主義というものを考えますと、世界じゅう恒久の平和をつくらなければならぬというのが願いではないでしょうか。  そういう角度から考えてまいりますと、冒頭に先生も引用されたように、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」をしたんですが、これは国際連合の前文とも非常に似通ったものであります。みんながそういう善良な隣人として平和を守っていこう、努力をしていこうと決めておるんでありますから、特に米ソの超大国の力による平和、恐怖の均衡とまで言われたような力を背景とした平和ではなくて、話し合いによって正義に基づいた世界の平和をつくっていかなければならぬ。目の前でイラクがクウェートを侵略、併合したというこの事実を放置すれば、憲法の理念にも国際連合憲章の理念にも、我々がきょうまで生存していこうとしておった大前提とも全く狂ったことが出てきておるわけですから、見て見ぬふりをしないで、皆が決議をして、これを排除して平和を回復しよう、そういう努力が今行われておるわけでありまして、二十八に及ぶ国がそれに多国籍軍として参加をして平和回復のための努力をしておる、こういう状況の中でございます。  そこで、避難民輸送を国連から委嘱されたIOMが依頼をしてきた。用意がある国は用意があるということを言え、こう言われますと、日本としてもそれは協力をします、非軍事的な面で、人道的な面ですからこれは協力をします。協力しますと言う以上は、さあ、できるようにしたらどうしなければならぬかという心構えと準備だけはしなければなりません。具体的に要請が来ました。具体的な要請には、おっしゃるとおり民間航空の方がジャンボ機は乗員の数も多いわけですし、足も長いから一挙に飛んでいくこともできます。いろいろな条件がありましたが、それを乗り越えて引き受けようということでしたから、それでまずやってもらいました。  そういうふうに日本としてはできると言ったことはやらなきゃならぬし、また、具体的に要請があった場合には、それはいろいろな場合が想定されますから日本としての対応と準備の心構えをきちっとして、政府の責任であのような措置をしておるということでございますから、武力部隊を出そうとか多国籍軍と一緒になって戦争に参加しようとか、そういう発想、視点では全くございませんので、それは御理解を賜りたいと重ねてお願いを申し上げます。     〔鹿野委員長代理退席、委員長着席〕
  218. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 平和を希求するというそういう目的に異存のあろう者はない。それは同じですよ。しかし問題は手段ですよ。ここのところをきちっとやはり我々は、過去の歴史というものを踏まえながら、踏み越えてならないものをみずから決めてきているんだろうと思うんですね。みんなが心配しているのはそこなわけですよ。ぜひ私は、実態からいったってC130に非常に効果的な期待を持てるというような実態はさっきのお話聞いても全くないわけで、どうぞ、みんな気持ちよく国民がやってくれというような形で活動していただくように重ねてお願い申し上げておきたいと思います。  そこで九十億ドルの問題でありますが、私はどうもいろいろお聞きしていて、きのう来特に使途制限についていろいろお話がある。五つの部門以外には使わないというような総理のお話もあったわけでありますが、どうもしかし使途制限論といいますか、そのこと自身が余り納得いかないですね、正直言って。アメリカ国務省のタトワイラー報道官が、これは総理の御見解に沿うような、もちろんそれは言い合わせたという意味じゃないですよ、しかし出てきたものは沿うようなお話が出てきた。全額を後方支援に充てるとの方針を表明した。記事によれば、後方支援に必要な資金は日本が提供する追加支援額を超えるものであり、その使途制限が実質的問題になるとは考えない、こう述べているわけですね。今度のアメリカの予算教書等で言われていて、あるいはけさの新聞かにも出ておりましたが、ブッシュ大統領の記者会見でも述べているわけでありますが、総額でアメリカは六百六十億ドルに上る戦費を準備をしたということなようでありますが、この六百六十億ドルのうち、アメリカ側で言う後方支援、日本側で言う輸送、食糧、医療、生活、事務関連ですか、これは総理の言う、そういうものが九十億ドル以上であればいいと、こういう意味ですか、簡単に言えば。
  219. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 その計算の基礎とか九十億ドル以下とか以上ということは、ここで私は確信を持って申し上げる資料や根拠を持ち合わせておりません。それは先生も御引用になった二月四日の大統領の教書の中にも、当のアメリカの大統領自身が信頼できる試算は存在していないということを明確に言っておるわけでありますし、また正直に三百億ドルと仮置きをしたのも、これは米国会計検査院が戦闘が開始されないという前提のもとで仮に試算したものを仮置きをしたんだと、これは予算教書の中でも言っておるわけでありますから、全体はわかりません。ただ、日本としては、これはこの間うちからよく議論になることでありますけれども、私の方は平和回復活動を支援するため所要経費の一部を協力するわけでありますから、日本としては自主的にいろいろな日本の立場とかあるいは日本が持っておる経済力とか世界に対する影響力とか、いろんなことを考えながら決めて出すんですけれども、国民感情あるいは我々が戦闘の平和的回復目的を願って協力をする、しかも必要なものを全部出すなんてそんな大それたことはとてもできません。日本の能力でできるものを、一部それを提供するというんでありますから、そのときには提供する日本の意思として輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連などその経費に充当する方針である。この方針は最終的には湾岸平和基金の運営委員会で決められることですけれども、我が国の意思に反した使途に充当せられないように確保されるような仕組みを持っておりますから、そこでこの意思に従った充当がされるように言うということを繰り返して申し上げてきたわけであります。
  220. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いや、僕の言うのは、とにかく各国から皆金を出す、それからアメリカは百四十億ドルですか、しかしこのうち今年の分は八十二億ドルとかというんですね。そういうものは皆同じかばんの中に入る。そのかばんのトータルは六百六十億ドルだというのですよ。その六百六十億ドルの中に日本の九十億ドルというのも入るわけですね。ですから、その後方支援に充てるものであればいいということであれば、そのトータル六百六十億ドル、まあそのうち武器や弾薬を買うのもあるだろうし何に使うものもある こういうぐあいにいったときに、九十億ドル以上のものが後方支援であれば、我が国の出した九十億ドルというのは後方支援に使われるものだ。つまり紙幣に印はないわけですからね、それはそういう一つのプールにみんなお金は入るわけだから。そういうことになるんじゃないですか。
  221. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先日来御説明申し上げてございますが、今総理が申されましたように、GCCに設けられました湾岸平和基金に国会で御承認を得られて、それから交換公文を結びまして九十億ドルが払い込まれます。交換公文上は資金協力ということになりますけれども、先ほど総理が述べられました具体的な分野にこれを充てるということを運営委員会でぜひ日本政府としては決めていただきたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、その運営委員会で協議をいたしまして決めまして、それを踏まえまして各国からの具体的な要請をいただきまして、そしてその要請を審査して運営委員会で決めて、そしてお金を払う、その後で、そのお金を当初予定いたしました具体的な分野に使ったという報告を運営委員会が関係国から得るということでございます。したがいまして、総理が今申されましたように、私どもが考えておりますこの具体的分野に私どもが出しましたそのお金が充てられるように確保されるメカニズムができております。
  222. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 局長、GCCから配分される、それはアメリカ側では財務省の国防協力基金に入るわけでしょう。どうですか。
  223. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 今、私が申し上げましたように、日本政府としては平和協力基金に払い込みまして、そこから関係国政府の指定する口座に払われることになっておりますが、アメリカにつきましては、財務省の口座でございます。(五十嵐委員「口座って何さ。局長、国防協力基金に入るのかどうかということですよ」と呼ぶ)
  224. 渡部恒三

    渡部委員長 五十嵐委員、発言の場合、委員長の許可を求めてください。五十嵐委員、どうぞ。
  225. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今の質問にちょっと正確にもう一遍答えてください。口座だけではわからないですから。
  226. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 今申し上げました財務省の口座に払われることになっておりますが、その口座の名称は先生がおっしゃられたとおりでございます。
  227. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうでしょう。その基金に、つまり戦費に充てるそういう基金があって、そこに各国からのお金だとかそういうのが皆入るわけだ。そういう一つの基金というプールの中で使われるのですから、それは僕はその使途についてどうこうというのはよくわからないのですよ。  そこで、六百六十億なら六百六十億ドルというものが入る。それで、そのうち適当に使われていくわけですからね。ただ、トータルの中で後方支援あるいはさっき言う五分野といいますか、そういうことを言っているのだから、そういうものが九十億ドルより多ければ、九十億ドルというのはそこに入っているからそう言えるじゃないかと、こういうことになるというだけの話じゃないですか。それはだれか考えたってそうでしょう、その分だけそれは武器や弾薬の方に金が流れていくというだけの話で。どうもあのお話の内容というのは、私もおとつい、きのうずっとお聞きしていて、およそどうも納得がいかない。これは町の中でも言っています。この間タクシーに乗っても、五十嵐さん、非軍事に使う、何億ドルとかって言っているけれども、結局はしかし何も同じことなんじゃないですか、その分だけがアメリカのお金が戦費の方に余計回るというだけの話で、別にお札に印はないですものねというような話を運転手さんなんかはやっぱり話しているですよ。町の中ではやっぱりみんなそんな感じですよ。それは私はどうもよく納得がいかないですね、きのう来の御説明というのは。  武藤山治委員質問に対する総理の答弁で、湾岸戦争が早く終結したら、九十億ドルをペルシャ湾の流出原油対策や湾岸周辺救済など、戦後処理にも振り向けると言っておられましたですね。そうですね。同じようなことはきのうも、不破委員への御答弁でしたか、お話しになっておられた。しかし、GCCを通じてアメリカに行く、アメリカでさっき言うような財務省の国際協力基金に入る。しかし、割合に戦争が早く終わった、あの九十億ドル、これはそっちの方に使わないでペルシャ湾の流出原油対策の方に向けるのだ、あるいは湾岸の周辺国の救済に向けるのだ、その基金から吸い上げて。そういうことは本当にできるのですか、総理
  228. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生今御提起の問題に関連しまして、現在の九十億ドルに関しまして、これが特にアメリカとの関係でどう使われてきたかということを御説明したいと思います。  これは、昨日も中山大臣が申し上げましたけれども、今まで湾岸の平和基金に出されましたそのお金のうち約七割が支出ないし契約済みですけれども、その九一%の千五百八十・六億円がアメリカ向けでございますけれども、そのうち千百三十三億円が資金協力。具体的には、今までは輸送関連経費ということでございまして、この輸送関連経費というのは、船舶及び航空機の借り上げ経費その他の輸送関連経費でございまして、これに関しましては運営委員会でこれを決めまして、そしてアメリカとの関係におきましてアメリカから具体的な要請があるのを審査して、アメリカに輸送関連経費ということで、先ほど申し上げましたように湾岸平和基金から財務省の口座に払い込んでおりますが、その経過に関しましても、まさにこれこれしかじかの輸送関連経費に使ったということを運営委員会の方にアメリカ政府から報告をしてきております。その報告を私ども受けておりまして、それが全体として千百三十三億円になるということでございまして、それ以外は物資協力ということで四百四十七・六億円を水関連機材等々に使っておりますけれども、これはまさに物資として提供するということで、したがいまして今の十九億ドルに関しまして、私ども国会の場で繰り返し申し上げましたメカニズムに従いましてきちんと処理してきているということを最初に申し上げたいと思います。  それから、今後の問題でございますけれども、今先生がお話しになりました戦争が、戦闘行為が早期に終結した場合でございますけれども、これは総理が繰り返しおっしゃっておられますように、私どもも一日も早く戦闘行為が終結してほしいと思っておりますが、そうなりましたら、まさに戦争終結後の平和維持活動その他に使いたいと思っております。  それから、先生今御指摘のペルシャ湾の原油流出への対応でございますが、これは先般来これに対しますオイルフェンスの提供等、日本政府として真剣に検討しておりますが、これに関しましても、財源といたしましては、ぜひ私どもは湾岸の平和基金にお願いをしたいと思いまして、これは運営委員会で、そういうことでまさに湾岸平和基金の、今私が申し上げました物資協力という形でオイルフェンスを提供しております。このことをつけ加えさせていただきたいと思います。
  229. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 どうも聞いていることにちっとも答えていただけないですね。やっぱり総理、お答えください。  これは総理の答弁なわけですね。九十億ドル今出す、それはGCCを通じて、さっきも局長からお話がございましたように、アメリカ財務省の国防協力基金に入るわけだ。それで、しかし思ったより戦争が早目に終わった。これは総理の言うように、その九十億ドルの一部、残っているものをさまざまな公害対策や周辺国の救済などに使うというときには、それはアメリカ側から戻してもらうわけですね。あるいは、一応こっちの方のポケットに、GCCの方に押さえていて、小出しに出していくということですか。どういうことなんですか。
  230. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 たしか、武藤議員とのやりとりのときには、武藤議員が突然、もし戦争が早く終わって九十億ドル使ってしまわない余ったお金があったら、そこへ行って返してくれと取り戻してくるか、こういう角度の御質問はあったと私は記憶しております。  そのとき私の答えは、平和と安定の確保のために使ってくださいと言って協力をするお金でありますから、そして我々が願っておるのは、あの地域の恒久の平和、安定を願ってそのさらに先なるステージも展開していかなければならぬと思うし、現に重油の流出という想像しなかった人類の将来にも、生態系がどうなるかという深刻な問題があそこにも現に起こっておるのだから、もしおっしゃるように、百歩譲って早く撃ち合い、戦闘、武力行使が終わりを告げたとすれば、あの地域の経済の再建とか、あるいは原油による環境破壊に対してどのように協力するとか、いろいろな問題が視野に入ってくるはずです、ですから、そういったものにそのお金が充当されるならばこれは積極的に充当していったらいいと私は考えておるということを政治家の考え方として答えたわけですから、それを湾岸基金から一遍取り戻してきてそっちへ出すのか、あるいは湾岸の議論をして湾岸地域の安定のために使うのか、そこまで理詰めに相談して、ちょっと待ってください、相談してから返事しますとは言いませんでしたから、そういう考え方をここで申し上げましたし、私は、そのように使われていって、いいお金になるようにしたい、今もそう思っております。
  231. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 湾岸基金の場合は、つまりGCCですよ。しかし、そこからアメリカの財務省の基金の口座に入るわけだ。その一遍入ったものを公害対策や周辺国の整備のために引き出せるのですか、それは。これはアメリカとの関係がありますから、それはいいかげんなことを言わないではっきりしておいてくださいよ。
  232. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほども申し上げたように、政治家として思ったことをそのまま申し上げたわけでありまして、事務的にどうしていくかということは、どこから引いてきてどこから出すかということは、担当局長から御説明をいたさせます。
  233. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生の御質問に直接お答えする前に、今までの十九億ドルのお金の払い方を申し上げれば、それなりに参考にしていただけると思いますけれども、先ほどちょっと私が申し上げましたようにアメリカには今まで千五百八十・六億円払っておりますし、そのうちの資金協力輸送関連経費が千百三十三億円でございますけれども、これは何も先生、ぽんと一気にこの全額を払ったわけではございませんで、先ほど来ちょっと私が申し上げておりますように、アメリカからこれこれしかじかの輸送関連経費を出してほしいという要請があって、それを受けて出しているということでございます。  九十億ドルに関しまして、これはまさに先般来も出ておりますように、アメリカ向けに大宗を向けるということになると考えてはおりますけれども、最終的にはまさにこの湾岸平和基金の運営委員会で決めていくわけでございますので、運営委員会で検討してまいりましたので、具体的なお金の払い方を現段階で私から申し上げるわけにはまいりませんけれども、これは総理が今言われましたいろいろな形で、戦闘行為が早く終わって余裕ができればいろいろな形で私どもは活用できる、その活用の仕方はいろいろな形があり得ると思います。例えば、この湾岸の平和基金そのものから支出するというのも一つの可能性であると思っておりますけれども、それはその時点においてさらに検討したい、こう考えております。
  234. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 余り納得いかないですね。殊に前段の使途を格別、これは何に使うと言ったって、別にお金に印があるわけじゃないのですから、同じ箱の中へ入ってしまえば、基金の口座の中でそれはどこにどうなんということを言えるはずのものではない。この間来のいわゆる使途論に関しては、私は非常にやはり疑問があるというふうに思います。  それから、今のGCCからアメリカの基金口座に入る、入ってしまえばそいつをこっちの方でさあ引き出してどうなんということには私はなかなかなるものではないのではないかというふうに思います。  そこは納得のいかないまま、さらに進んでまいりたいというふうに思いますが、これを税で賄う、全部であるかあるいは相当部分であるかは別にして。これもきのうの新聞ですかで、アメリカの大統領が戦時増税は必要ない、五日の記者会見で、あの厳しい財政の実態の中にあるアメリカでありますが、戦時増税はしない、友好諸国からの貢献を加えた資金で戦争が十分に遂行される、こういう見解を示しているようであります。あるいはドイツも増税しないのですね。ドイツにいたしましても東西の統一で大変な財政難であろうというふうに思うのでありますが、しかし、そういう中で当面三カ月分の資金協力として、これはもう明確に三カ月分というぐあいに言い切っているわけでありますが、五十五億ドルの追加拠出を決めた。しかしその財源としては増税は見込まない、こういうことも明らかにしているわけです。アメリカも増税しない、ドイツも増税しない。戦費増税をするのは、あとどこどこありますか。
  235. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一に、ドイツはアメリカに対して直接五十五億ドル、またイギリスに対して五億四千万ドル、そのほかトルコに対して一月二十五日に特別軍事援助として十億一千万ドル、これは日本のようなGCCを通すのではなく、直接相手国に対して供与をいたしております。  また、コール首相は一月三十日の施政方針演説におきまして、湾岸戦争支援のために増税を提案する方針であることを明らかにしておられる。まだその税目等が確定をしないために増税案はそのまま提出をされていないわけでありますが、既に一月三十日の施政方針演説において湾岸戦争支援のために増税を提案する方針、明確に述べておられます。事実問題としてまず第一点であります。  また、今委員がお述べになりましたように、現時点における増税を確かにアメリカにおいては否定をいたしております。なぜなら既にアメリカは昨年十二月からガソリン税の引き上げを実施いたしましたほか、一月から所得税の引き上げ、たばこ税の引き上げ、アルコール飲料税の引き上げ、奢侈品への課税等を既に実施をいたしております。大統領などの発言は、既にもう十二月から実施をしあるいは一月から実施をしている上に追加的な増税をする意思はない、そのような意味であります。  なお例示で申し上げますならば、ガソリン税は一リッター当たり、従来日本円にいたしますと三・一円でありましたものをアメリカにおいては四・八円に、たばこ税では二十本当たり二十六円でありましたものを二十八円六十銭に引き上げております。既にアメリカは増税を実施済みであります。
  236. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大蔵大臣は、この間来そのアメリカの増税に関してはそういう御答弁をなさっているわけですが、しかしアメリカのあの増税というのは、去年の春以来アメリカではいわゆる財政赤字削減策をめぐって大論争が続いた。それが秋に決着を見て、そしてさまざまな政策が、これは防衛費の大幅な削減であるとかそういうものとあわせて増税も一応決まった。赤字幅を合計四千九百二十億ドルですか、削減をしていこう、こういうものであった。それはしかし、いわゆる湾岸戦争の戦費調達のための増税ではないでしょう。違いますか。
  237. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先ほど来委員は、お札に印がついておらないと言われました。増税にも印はついておらないと存じます。
  238. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それならどうですか、日本の消費税もそうでないですか。消費税、この間来やっているのですね。もういいんじゃないですか、これ。あなたの論法ならですよ。――いや、だから、それに対するあなたのお話だから、お返ししますよ。もう消費税で始まっているんじゃないですか、あなたの論法であれば。それは私は、ブッシュ大統領も戦費増税はしない、こう明確に言っているわけでありますが、もちろんそれは選挙等もあるからなんでしょうが、ちょっとそれは私はその大蔵大臣の認識と違うような気がしますね。
  239. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 たまたま昨年九月の下旬G7が、またIMF・世銀総会がワシントンで行われまして、私はしばらくの期間ワシントンに滞在をいたしておりました。そしてその時期はちょうど議会と行政府の間における財政再建策の大詰めの段階でありました。そしてその時点において論議をされておりました内容と、少なくとも私が承知をいたします限り、今年の一月一日から実施をされております増税の内容、さらにガソリン税が十二月一日において引き上げられております状況、私の知る限りにおいては差異があると存じております。
  240. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ちょっとおしまいのところよく聞こえなかったのです。
  241. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 要するに、九月時点におきましてちょうどG7あるいはIMF・世銀総会がありまして、私がワシントンにおりました期間は、アメリカにおきましては財務長官にとって大変多忙な過酷な労働を強いられる時期でありまして、議会と行政府の間における財政再建策のぎりぎりの交渉が行われていたときでありました。そしてその状況というものはいろいろな形で私どももそれを見聞きいたしておりました。そしてその時期においてその内容は決着を見たわけでありますが、その時点において論議をされ、決着を見ておりました財政再建策の中における増税措置と、実質昨年の十二月一日から動きましたガソリン税を含め一月一日から実施をされております増税策の間には明らかに違いがあると承知をいたします。
  242. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 つまり、それは当時アメリカで、例えば国防費の大幅削減など千八百億ドルですか、こういうものも含めて、そして増税措置もあわせて、そしてこれは、増税額は予算調整法に基づいて盛り込まれた総額千三百七十億ドル、向こう五年間で赤字幅を合計四千九百二十億ドル削減しよう、こういうものですね。こういうものの計画の中における増税ではないと、こう言うのですか、その質が違うという意味は。
  243. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は他国の財政政策の説明をするほど知識があるわけではございませんけれども、今委員が増税で述べられました数字は、千三百何億ドルと言われましたですか。(五十嵐委員「総額千三百七十億ドル」と呼ぶ)はい、千三百七十億ドルと言われました。今回の歳入増加策として決定をいたしました歳入増加等、この内容は、増税が千六百四十六億ドル、減税が二百七十四億ドル、五年間におきまして増税は差し引き千四百六十六億ドルになっており、今委員がお述べになりました当時、私どもも聞いておりました数字と明らかに違っておるという事実を申し上げたわけであります。増税額がふえておるということを申し上げました。
  244. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これはもちろん、計画時点と実際にその年度年度で予算を組む場合には、方針は同じでも額が変わることは当然出てくるわけですよね。ですから、しかし今大蔵大臣の言うのは、私も詳細にはわかりませんから今はそのとおり受けとめておきますが、つまりそれは戦費増税をアメリカはしたと、こういうふうに受け取っていいんですね。
  245. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、他国が戦時増税をしたかどうかは存じません。しかし、少なくとも今委員がお述べになりましたような数字を九月の時点において私も議会との決着の中で耳にいたしておりましたが、この湾岸戦争の危機がだんだん迫ってくる中において、実際に決定をされました増税額は、私どもがその当時聞いておりましたよりもふえておりますという事実問題を申し上げたわけであります。
  246. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 極めてあいまいなお話で、増税したというなら増税したで、やはり我が国の大蔵大臣ですもの、しかもアメリカとの関係ですもの、今我々は増税を含めてどうしようかという議論をしているわけですから、何だかわけのわからないお答えでは困ると思いますね。  さっきC130に関していろいろお話をお伺いした。その折にも私どもは、この前松浦議員もそうでありますが、申し上げておりますように、避難民輸送等に関しては、我々はやはりとにかく全力を挙げて協力をしていこう、あるいは輸送だけでなくて諸般の避難民の救済等については一生懸命ひとつ支援していこう、こういう方針であることは改めてよく申し上げておきたいというふうに思うのです。  改めて言うまでもありませんが、今の計画では、二十億ドル、それから今度の九十億ドルですね、これらに関しては難民支援に回るという計画のものではありませんな。
  247. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生が御指摘の二十億ドルと、それから今回の九十億ドルは、いずれも湾岸の平和回復活動に従事しております多国籍軍への支援でございます。難民関係は難民関係として別途ODA予算で対応しております。
  248. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 難民救済活動のためにいろいろ各国際機関が一生懸命努力をしているわけでありますが、その中でそれぞれの機関が一生懸命やっているわけですが、私どもお話を聞いたりしておりまして、もう少しいろいろな面でお手伝いしなければいかぬなという感じを深く持たされるものも少なくないのであります。  国際赤十字委員会、ICRCですか、この活動なんかも、我々は伝え聞くところでは大変積極的に立派な活動をしておられるようであります。一月の十七日に緊急アピールを出しているわけですね。時間の関係がありますから内容を読むのは省略をいたしますが、そうして同日付で一億四千百万スイスフラン、日本円で百五十億円の協力を呼びかけているわけであります。それで、各国の政府でそのうちの九〇%、それから赤十字は一〇%、各国の赤十字で一〇%持つ、こういう割り振りになっていて、日赤は〇・三三%、五千万円ほどの補助をしているようであります。それで政府の方はどうかということでちょっとお聞きしたのでありますが、UNDROの三千八百万ドル、先ほどからお話が出ていたところでありますが、三千八百万ドルのうち三百万ドルをここに回しているのですね。したがって三億九千万ほどのものであります。しかし総理、どうですか、せめてやはり一〇%ぐらい、国連に今我が国で出しているのはそのぐらいのものですか、一〇%ちょっと超えていますな。そのぐらいの、つまり額でいうと百五十億のものでありますから、十五億円やそこぐらいの負担があっていいのではないかという感じがするのですね。多国籍軍の戦費の割合は、これはしかし、総理はそういう割合のものでないと、こうおっしゃるが、一応表に出た数字で言えば二〇%ということのわけでありますが、どうも百五十億のうち九〇%を各国政府が持つ、我が国はそのうちのわずかに三百万ドル、三億九千万円ということではちょっとかわいそうだ。赤十字の活動内容を僕はずっと調べさせていただいたのですが、日赤を初めとして現地で大変な苦労をなさっているようであります。例えば難民キャンプの状況等を見ましても、今ヨルダンのイラクとの国境で、ルウェイシェドというところでフル回転をしているようですね。これはもう前線に近いところで、通過キャンプになるわけですが、そこら辺でも一生懸命やっている。あるいは、日赤は今準備をどんどんしているようでありますが、シリアとイラクの国境のところで、これは日赤が担当ということで一生懸命やっているのですね。そのほか今稼働しているのでは、ヨルダンのアズラクというところで、これも二千人ぐらいの収容でありますが、ここでも大変な御苦労をなさっている。全体でどのぐらいの難民が出るかわかりませんが、そういう中での諸機関の活動の中で、特に赤十字の活動というのは、僕はさすがに見上げたものだというふうに思うわけであります。もう少しこういう機関の活動に積極的に応援をしていいんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  249. 中山太郎

    ○中山国務大臣 昨年の暮れに日本政府は二百万ドル拠出をし、今回さらに三百万ドル出しておるわけでございまして、政府としては、このような緊急事態の場合は、改めてそういう拠出を行うということでございます。
  250. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひ外務大臣、ひとつ、本当に涙の出るような努力をしているようでありますから、御協力をお願い申し上げたいというふうに思います。  しかし、これまた避難民輸送だけでもいかぬわけだが、その前に、大体その避難民の現状、それからこれからの避難民の発生の大体の見通し、これの把握されている面があったらちょっとお知らせください。
  251. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  まず、先ほどからいろいろ名前の出ておりますUNDRO、IOMその他の関係国際機関がイラク、クウェートにどのぐらいの第三国人がいると推定しているかと申し上げますと、UNDROの推定では、約百二十万の第三国人がいるんじゃないか、IOMによりますと七十四万ぐらいという推定をしております。  そこで、先ほども申し上げた一月十一日の行動計画というものがあるわけですが、それによりますと、このイラク、クウェートから、戦端が起これば約四十万人の難民が出てくるのじゃないかとかいう推計に基づいていろいろな行動計画を立てておるわけです。しかしながら、どうも現実にはこれらの国際機関の四十万という推定は相当当たっていなかったというのが現実、今日までの事態ではそうだったと思います。いろんな理由があると思いますけれども、一つはまず地上戦というものが行われていないとか、あるいは多国籍軍の攻撃が軍事施設中心に行われているとか、そういういろんな理由があろうかと思います。  以上申し上げた上で現状はどうかということですが、UNDROから私たちが二月六日の時点で得ている情報では、ジョルダンに二千二百八十三人の避難民が滞留しておる。大どころで申し上げますと、スーダン人が八百三十一、ソマリア人が三百九十三、イエメン人が二百九十四、ベトナム人が二百五十六、インド人が百四十三云々で、二千二百八十三ということです。イランへの流出は約三千人ということでございます。これもUNDROによります。トルコについては出てないんじゃないかという推定、シリアについては四、五百人じゃないかという数字になっております。
  252. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 つまり、大したことないのですね。大したことないのですよ、総理。しかしこれから、例えばあってはならないことだけれども地上戦になんか入ってくるとまた大変なことになるという可能性もありますが、しかし現状は、これは今も御報告がありましたが、トータルでそうしますとどうですか、三、四千人ぐらいですか、まあいいですが、今の数字を聞いた範囲では。僕が聞いていたのはもうちょっと多かったのですが、しかし私の手元にあるのは二月四日現在。何日も違わないのだけれども、ちょっと減ったなという感じですね。それにしてみても、そう大したことない。  そこで、前の議論のところにちょっと戻るのですけれども、C130の問題に。この程度の数ですと、民間機を、これは大した数でなくても当面のものは対応できるという感じですね。それはやはり各国が力を合わして本当にどんどんやれば、相当効果のある救援はできるような気がいたしますね。しかし一方、もちろんこれから発生するかもしれない避難民の対策に万全を期していく態勢をとるというのは言うまでもないことであろうというふうに思います。  何か大蔵大臣、さっきの数字でちょっとあるらしいですな。
  253. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変申しわけありませんが、先ほど数字を正確に申し上げておりませんでしたので、今資料が手元に参りましたので、改めて申し上げたいと思います。  委員が御引用になりました数字と私が申し上げました数字は、実は本質的には同じものでありました。と申しますよりも、私自身がその九月におりましたときの時点の数字、千三百億ドル台ということで同じ数字と取り違えたところはおわびをいたさなければなりませんが、その時点においてアメリカにおいて合意をされました歳入増、すなわち増税策、この金額は千三百三十八億ドルでありました。しかし、十一月五日大統領の署名を得て成立をいたしました増税、歳入増、これは、私の申し上げました数字と委員がお述べになりました数字は実は同じ数字でありました。委員は千三百七十二という数字をお使いになりましたが、これは歳入増そのものとしてはそのとおりであります。私が申しました数字、千四百六十六億ドルという数字、その差の九十四億ドルというものは、わざわざ実は徴税強化という項目がありまして、その徴税強化によりまして税収の増を賄うもの、九十四億ドルがつけ加わっております。その結果、委員が御引用になりました数字と私が述べました数字は同じものでありましたが、いずれにしても、九月の時点、アメリカにおいて論議をされておりました数字、千三百三十八億ドルというものから見ればこれがふえておる、その事実関係には変わりはございません。数字の点で正確を期して訂正させていただきます。
  254. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 わかればよろしいのでございまして、要するに戦費増税というのはないということなんであります。  そこで、今避難民の問題に戻りますが、一つは現状大した数じゃない。それの対応については、しかし全力を挙げてゼロになるように、滞留しないようにしていかなければいかぬというように思いますが、どうかひとつ、そんな意味では余りC130でどうこうなんということなしに、民間輸送機で頑張ってほしい、こういうぐあいに思います。  さて、避難民輸送はそういうことでありますが、例えば赤十字なんかでも、輸送に当たる、それから空港に着く、空港に着いた避難民を自宅までちゃんと送るというようなこともやっているのですね。僕は本当によくやっているなと思うのですが、しかし避難民がそれぞれ、ほとんどの人が出稼ぎに行っていた、その出稼ぎに行っていた人たちが戻ってくる、その母国に行きましても、母国がまたなかなか大変なんです、さあ生活だとか住宅だとか雇用だとか。失業者も多いわけですし、その失業者がさらにその分だけかさむということであって、大変な実態になっていることは、これは外務大臣等はよく御存じでないかというふうに思います。今これからどのぐらいふえてくるか見当もつかないことでありますが、しかし、そういうことを考えると、例えばODAと組み合わせて体系的な、総合的な支援体制というものを、輸送だけではなくて、そういうことまで含めて考えていくというようなことがあっていいのではないかというふうに僕なんかは思うわけなんであります。この点はどうですか、外務大臣。
  255. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ODAと組み合わせてやったらどうかというお考えをお述べでございましたが、実はODAもいろいろな国からの要請も来ておりまして、既にフィージビリティースタディーを始めているケースがわんさとあるわけで、ぎりぎりいっぱい、アフリカのいろいろな国あるいは南米の国、中米の国あるいは東ヨーロッパとか、いろいろなところから、既に東南アジアも含めてみんな要望がございまして、特にこの湾岸戦争以来、各国が大変難民問題も含めて経済が混乱しておりまして、日本に対する要望はもう膨大にふえております。そういう意味で、今ODAと組み合わせるということは、事実上、現在の日本のODAの予算の中でこれをカットしてそっちへ切っていくということは非常に難しい状態にある。私どもは、この国々における帰国避難民の職業訓練とか雇用の創出の問題とか当然ございますけれども、その膨大な需要に対するこちらの手当てというものについては、外務省としては、筒いっぱいの努力をしているというのが現状でございます。
  256. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しかし、戦争が早目に終わって、休戦になって、さあ戦後の復興だ、出稼ぎに出た人がまた戻ってくるということは、一番雇用の面からいってもいいことはいいんですね。ですから、そのことが最も望ましいことだが、しかし、そういう間は現実に母国に戻った状況というのは非常に厳しいことになっているわけでありますから、どうかそういう点についての御配慮というものもまた考えておいてほしい、こういう気がいたします。  しかし、そういうことの中でも一番悲惨なのは、僕はやはりイラクだとかクウェートの戦災の中にある人々だと思うのですね。これは、フセインは悪い、こんなことは言うまでもない話だ。とんでもないやつだ。しかし、戦災の中であえいでいる庶民は、私はそれはフセインと同一視すべきものでないと思うのです。これは新聞報道だけれども、テレビにはなかなかこのごろはそういう状況は出てこないのでありますけれども、新聞報道なんかで見ても、それはもう、病院は壊されている、あるいは薬といったってない、そういう中で負傷した人たちが本当にどうするすべもなくうろついている。もう水もない、たまった水を飲んでいるというようなことも報道されていますが、これは私は、そういう実態なんか考えますと、さあ戦争が終わったという状況でのこれらの人々に対する、それはもうどっちの陣営だとかどうとかこうとかということでない、やはり一人一人の人間をどうするかということでの努力というものは大変に必要なことでないかと思うのですね。こういう点についてはいかがですか。
  257. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私は、もう解決の方法は極めて簡単であると思います。それは、サダム・フセインが国連のイラクの大使を通じて、この国連安保理決議を受諾をする、そして無辜の市民をこれ以上苦しめるわけにいかない、これで撤退も完全履行する、この一言があればすべて問題は片づいてくるわけでありまして、そのようにサダム・フセインが決断することこそこの罪のない国民が救われる唯一の方法である、私はそのように考えております。
  258. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しかし、それを黙って待っていてもしようがないわけでありますから。しかし最近の状況というのは、例えばこの前アメリカとソビエトの外相会談における共同声明等を見ても、私はやはり新しい展望が出てきたかなと、あの後少しごたごた、それは大統領が知っていたとか知ってないとかということを言っていたけれども、やはりそれぞれに動きが出てきているという感じがするのですよ。イランだって最近そうですね。フランスも新しい動きが出ている。国防相はこの間責任をとってやめたようでありますが、いろいろな動きも出ている。それぞれの国々で和平を目指して、とにかく地上戦に入ったら地獄絵だ、そんなことをさせちゃいけないということでの動きがあるわけですね。我が国も、それは今こう言っているように、フセインがつぶれるのが第一だということだけではなくて、やはりそれぞれの国々と力を合わせて、そうして一日も早いそういう休戦への方向というものを実現するために、私はやはり外務大臣も、それは国会中だからちょっと行けないのかもしれないが、しかしあらゆる方策を使って御努力をいただきたい。一日も早くひとつ休戦を実現してもらいたい。休戦で頭を冷やしておいて、そこでしっかり中東の和平の方向というものを実現するように、それこそが我が国の国是に沿った外交活動でないかというふうに私は思うのですよ。どうかひとつそういう意味での積極的な御尽力を心から要請したいと思いますが、御意見があれば伺いたいと思います。
  259. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私は、今委員お触れになった米ソの両外相会談の共同コミットメントの文書を読んでも非常にはっきりしていると思うのです。「イラクがクウェイトから撤退する旨明白なコミットメントを行えば、戦闘行為の停止が可能であると引き続き信じる。両国外相はまた、かかるコミットメントは安保理諸決議の完全履行につながる即時かつ具体的な行動によって裏付けられねばならないと信じる。」と言っておりますし、もうこの問題解決は絞られてきているわけです。私は、イラクの中にもこの戦争をやめさせたいと考えておられた方もおられると思いますが、それは私が見たわけでもありませんけれども、なかなかこの独裁者というものの強い意思というものは、そう簡単にこの考え方に反抗する者を妥協して許すわけにはいかないという姿勢を今日までとってこられたと聞いております。  こういう中で、本当にこの戦火にあえいでいる国民、これを救う方法というのは、この指導者みずからの決断以外に方法はない。しかし一方多国籍軍の方も、一般市民に被害が及ばないように戦術目標に絞って攻撃をしているということも、最大限の努力を払っているようでありますし、私は、このクウェートからの撤退ということがいつできるか、それは周辺の国々はみんなそれを望んでいると思います。このみんなの、世界の叫びをどうしてわからないのか。私は、サダム・フセイン大統領も恐らく世界じゅうの情報を集めていると思いますから、この人たちがどういう決断をするか、いつするか、このことこそすべて問題の解決点である。我々の政府も各国と協力をして、そのような決断ができそうな国際環境がさらに一層増大していくように努力をいたしておる所存でございます。
  260. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 私は、もう時間もありませんから、まだ大分質問残しちゃってあれなんですが、やはり機を失しないで、とにかく平和の状況というものを何とかつくり上げていかなきゃならない、それはおっしゃるとおりですよ。おっしゃるとおりだけれども、何といったって、それはやはりフセインにさまざまな角度から影響を与えるような状況というものを世界的につくっていく外交的な努力というものを、我が国はしていっていいのではないかと思う。ぜひ私はそんな意味では一層の御努力をお願い申し上げたいと思います。  さて、大分質問は残りそうでありますが、きょうはせっかく北方領土の日でありますし、日ソの問題はなかなか、四月のゴルバチョフ来日も目の前にして、しかもペレストロイカは非常な危機的状況にある、なかなか大変なわけでありますが、この機会に、余り長い時間でお答えいただけないのでありますが、手短で結構でありますが、今日のペレストロイカの状況認識というものと、私はやはりペレストロイカが崩壊するということは世界にとっても大変なことだという気持ちがするのですよ。そういう意味でのペレストロイカを支える方策、しかし、一方ではバルト三国の問題等もあるわけですから、そういう問題に対する厳しい批判は批判として、ペレストロイカを成功させるような我が国のまた支援も大変大事なことであるというふうに思うわけなんですね。これの基本認識のところをひとつお話しをいただきたい。  あわせて、時間がありませんので、この前もゴルバチョフともお会いになってきたようでありますが、けさある新聞では、やはり北方領土を必ず提案しようということの大統領補佐官の表明がなされているようでありますが、この辺についてのお見通しやあるいは決意や、そういうものをお伺い申し上げたいと思います。北方領土に関しましては総理からも、北方領土の日でありますから、総理みずからのまた御決意もいただきたいと思います。
  261. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ゴルバチョフ大統領とお目にかかった際に私は日本政府としてはっきり申し上げたことは、一昨年の十二月三日に行われたマルタの米ソ首脳会談以来、世界の人々はこれで平和が来るとみんなが拍手をしていた。しかし、今日のバルトにおける軍人たちによる一般市民の殺傷というこの情報は、テレビで世界じゅうに見られているのだ。みんなが今かたずをのんで、ゴルバチョフ大統領が進めてきたペレストロイカはどうなっていくのかという、一つの大きな不信を今抱いているのは事実だと私は認識している。そういう中でぜひこのペレストロイカを推進して、そして世界の平和のために努力をしてもらいたいという日本の気持ち、そのようなペレストロイカの正しい方向性が進んでいくことを日本は支持をするということを申してまいりました。  我々の日ソの間の問題につきましては、明確にこの新しい日ソの関係を改善していくためには、長い四十五年間の問題である北方四島の返還問題を解決して、北方領土の問題を解決して、それを日ソの新しい時代をつくる一つの突破口にしていかなければならない、こういうことで、私は率直に日本政府の考え方、議会の決議の意思、こういうものを明確に伝えてまいりましたが、きょうは委員御指摘のように北方領土の日でございまして、この日こそこの四島が、日本とロシア帝国との間で円満なうちにこの四島が日本の領土であり、これを両国が承認した記念すべき一八五五年の記念日でありますから、ぜひその歴史的事実に基づいて、ゴルバチョフ大統領が訪日された際に、この領土問題の解決の突破口になるような訪日にぜひしていただきたいということを外務大臣としては祈念をいたしておるわけであります。
  262. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 北方四島返還の問題は国民的な悲願である。同時に、隣国であるソ連と日本が真に安定的な友好関係を築き上げていくためには、この問題は避けて通れないという基本的な認識を持っております。  昨年、ヒューストン・サミットのときも、各国の前で私は、欧州におけるベルリンの壁崩壊に伴った東西関係の終えんというものを、その方向性というものを非常に高く評価すると同時に、ペレストロイカが成功するように強く期待するということを申し上げながら、それはアジア・太平洋にも及んでこなければならない、アジア・太平洋地域の東西対立関係の残滓はこれは北方四島問題に象徴的にあらわれておる、これは東西関係を完全に対立から協調に世界歴史の流れの中で片つけるためには、日本の抱える北方領土問題というのは、単に日本の問題だけでなくてアジア・太平洋の、ひいては世界の平和と安定のために大切であるということをサミット参加国首脳は皆理解をしてほしいということも訴えまして、最後のベーカー国務長官の発言の中にも、また宣言の中にもこれは重要な問題だということが国際的に位置づけられたことも御承知のとおりであります。  それに従って、ペレストロイカの成功のためにでき得る限りきょうまでも知的協力もいたしました。また、経済調査団とかいろいろな調査団、私の代になってからでももう四回もソ連からいらっしゃる。そのたびに迎え入れて、いろいろな質問にも答え、協力もしてまいりました。この間は、宇宙船に日本の報道の代表の人と乗り込んで空の共同作業があった。また、札幌や新潟ではやけどした坊やの治療まで日本の医学界が立派に果たしてくださった。幅広くいろいろな面で日ソ関係というものは進みつつあります。肝心なことをどうぞ忘れないでください、それは北方領土の問題を解決して平和条約を結ぶということだというこの気持ちも、私は時々ソ連の方には伝えております。ゴルバチョフ大統領の日本訪問四月、これは決まっておるわけでありますが、そのときには勇気ある決断を大統領がされるように、私もできる限りの努力をしながら、皆さんにも、国民の皆さんにも挙げて御理解と御協力をいただきながら、抜本的に関係を改善していく突破口にしたい、こう考えて一日一日大切にしていきたいと考えております。
  263. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今の総理の御決意、よくわかりましたが、やはり日ソ関係は領土問題を中心にして、あるいはそのほかのさまざまな経済交流関係も含めて、非常に大きな決断と勇気をお互いに必要な時点だというふうに思います。ですから、そういう意味では、こういう長い歴史の中で、こういう時点というのはいろいろな意味で私はちょっとないと思うのですよ。ですから、ここを、これを生かしていくということのために全力を挙げてひとつ頑張ってほしい、こういうぐあいに思います。  そこで、あとちょっとしかありませんが、日ソ関係でいうと、去年の暮れ、例えば十億円の食糧、医薬品の協力であるとか、あるいは輸銀を通じての一億ドルでありましたかの食糧支援であるとか、さまざまなことがあって、準備をそれぞれ進めておられるんじゃないかというふうに思いますが、外務大臣、この点はどうですか。
  264. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 お答えいたします。  昨年来、我が国政府といたしましてソ連に対する人道的な支援を決定いたしましたことは委員の仰せのとおりでございますが、その後、チェルノブイル原発事故への医療機材供与のための二十六億円、拠出先でございますWHO、あるいは医薬品、食糧供与のための十億円の拠出先でございます赤十字社連盟、あるいはソ連側の受け入れ機関、ボローニン委員会と言われております受け入れ機関、ソ連の赤十字社等と連絡をとりつつ品目の選定作業等の事務的準備を行っているところでございます。  バルトのことに言及されましたけれども、大臣から申し上げましたとおり、私どもは事態の民主的、平和的な解決を求めている、それも含めまして、ソ連の国内事情等を勘案しつつ、引き続き検討を続けてまいりたいと思っております。
  265. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 まあ大変な状況があるわけでありますから、ちょっとおしまいの方はごもごもっと言っていてよく聞こえませんでしたけれども、いろいろな諸準備をなさっているんでしょう。しかし、そういう緊迫した現地の状況というようなことも、さまざまなことはありますが、ぜひひとつ御努力いただきたいと思います。  これはしかし、日本側の支援というのは、僕は思うのだけれども、どうもヨーロッパ側のモスクワだとかあるいはレニングラードだとかという方向というよりは、やはり日本側で支援するものは極東だとかサハリンだとか、我々の隣のところを中心に支援する、お互いにその持ち場を考えていくということが適当ではないかと思うが、この点は外務大臣、どうですか。
  266. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 この点はまさに先生の仰せのお考え、私どもも基本的に同感でございます。それから、ソ連側の受け入れ機関たるボローニン委員会の方も先生のお考えと基本的に認識を一にしておりますので、この大きな部分をまさに私どもに近い極東部分に充てるという基本的な考え方で検討を進めさせていただきます。
  267. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ついでにもう一つ日ソ関係で言うと、お互いに領事部を増設するという意向がソ連側にも日本側にもあるのですね。例えば日本側でいうと、地名を言っていいのか悪いかどうかわからないけれども、例えば新潟あたりですね。領事部を設置したいというような地域の動きがあるようですね。あるいは向こう側でいうとサハリンだとか、あるいはサハリンに限らないけれども、ハバロフスクだとかそういうところでもそういう意向がある。やはり拡大的な、まあ拡大均衡というのはよく言いますが、そういう一つの展望の中から、この辺も一遍にというわけにもいかないのだろうが、前向きに取り組んでいくべき課題ではないかというふうに思いますが、大臣、どうですか。
  268. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 ただいま提起されました総領事館相互設置の問題は、これでもし設置されますと三番目の総領事館になるわけでございますが、今ゴルバチョフ大統領訪日のいろいろな実務的な積み上げあるいは実務的に前進させる話をソ連側とやっております。その中の一つとしてこの問題もソ連側と話し合っております。その全体の中のいろいろな状況を考えながら、引き続きソ連側と話し合ってまいりたいと思います。
  269. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひひとつ頑張っていただきたいと思います。もうこの後質問してもまた出てくるような感じがいたしますですね。いずれにいたしましても、ぜひ大事な時期でありますから、日ソ関係についても全力を挙げていただきたい。  それから、もとに戻りますがC130、私はこの数日の流れを見て、総理、私はやはり国民的な合意というようなものの方向が出てきているような感じがするのですよ、C130に関して。C130に関するというよりは、難民の救済に関してですね。ですから、ぜひひとつそういう意味で全国民が気持ちよく難民のために全力を尽くしていこう、そういう平和やあるいは人権のために努力することこそ日本の諸外国から本当に尊敬されるような国になっていく道であろうというふうに思うので、どうかひとつ全体で気持ちよく力を合わせていける方向を探っていかれますように心から期待して、御質問を終わりたいと思います。
  270. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて五十嵐君の質疑は終了いたしました。  次回は、明八日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十四分散会