○上原康助君 私は、
日本社会党・護憲共同を代表して、
政府が昨日
決定した、
ペルシャ湾における
機雷除去という美名のもとに
海上自衛隊の掃海部隊
派遣について、若干の質問をいたします。
まず指摘をし、たださねばならないことは、今回の
政府決定は、
憲法並びに
自衛隊法の許容範囲を著しく超えており、到底容認できるものではないということであります。(
拍手)この
政府のとらんとする
行為は、明らかに超法規的
措置であり、
我が国の国防の基本方針の転換を意味し、従来
政府が主張してきた自衛隊の専守防衛の基本任務とも矛盾し、その行動範囲を地球規模に拡大していこうとする暴挙と断ぜざるを得ません。(
拍手)
総理、
湾岸戦争が終わり、
武力行使に巻き込まれるおそれがないからとか、人的国際
貢献がたとえ必要ありとしても、十分な国会論議を経ないまま国の基本法を無視した
政府独断の越権
行為を、法治
国家である以上認めることはできません。法的、制度的に未
整備のまま自衛隊の
海外派兵に道を開く安易な手法は、将来に悔いを残し、
我が国の国際的
地位をかえって不安定なものにしかねない懸念が持たれております。この件に関する
総理の明快な答弁を求めるものであります。(
拍手)
第二の問題点は、昨年秋の
国連平和
協力法案が廃案になった教訓が生かされていないということであります。
総理、平時であろうが有事であろうが、
武力集団である自衛隊を組織的に海外に
派遣することは無理があるという答えが出たじゃありませんか。なればこそ、自衛隊によらない国際
貢献策を早急に策定するとの自公民合意に至ったものと承知をいたしております。我が党も、文民を主体とする非軍事、民生の
協力を柱とする
法律案を準備しつつあり、この原則においては、共通の基盤ができつつあるのであります。
しかるに、
政府・自民党は、この与野党の共通した
考えを反映させて、国際的危機に
我が国が対応していくため、法的、制度的裏づけの伴う施策の確立を急ごうとせず、場当たり的に特例政令で自衛隊機を飛ばそうとしたり、今度もまた確たる法的根拠もないまま、自衛隊をはるか一万二、三千キロも離れた中東地域にまで
派遣しようとすることは、
国民合意の形成よりも、まずは自衛隊の海外
派遣の既成事実をつくろうとする意図が見え見えじゃありませんか。(
拍手)
政府は、この掃海部隊の
派遣を突破口にして、現行法規の無謀な拡大解釈によって、さらには陸、空の
海外派兵を恒常化させようと
考えているのではないのか。
政府の包括的国際
貢献策と自衛隊の海外
派遣に対する法的歯どめをいかように設けるのか、明確にお答えいただきたいのであります。(
拍手)
第三点は、
掃海艇派遣が国論を二分し、国内における法的手順や手続さえも不明瞭のままの見切り発車となれば、果たして国際的評価が得られるのかどうかということであります。
特に、
アジア近隣諸国は、
我が国の自衛隊の海外
派遣について強い不快感と懸念を表明しております。米国
政府でさえ、
掃海艇派遣をもろ手を挙げて歓迎しているのではないのであります。中国や韓国を初めとする
アジア近隣諸国の懸念に対し、
政府の
見解を求めておきたいのであります。
次に、具体的な問題について二、三お尋ねしておきたいと存じます。
その
一つは、
機雷除去が国際的に共通の利益につながるとするならば、なぜ
国連または
国連安保理がこのことについて協議し、その対策を講じようとしないのか、疑問が持たれます。
政府は、
国連関係機関から
機雷の
除去作業について相談を受けたことがあるのかないのか、明らかにしていただきたい。
その二つは、周知のとおり、戦時に敷設された
機雷などは、
戦争終結後は速やかに敷設国が撤去することが国際法の原則となっているはずであります。
機雷敷設は、
イラクのほかにアメリカによる敷設や、イラン・
イラク戦争時の残留もあると言われており、複数国である可能性が強いのであります。したがって、敷設国の特定と、敷設国みずから撤去する
責任があると言わなければなりません。その点の確認はされたのか。なぜ
日本がこの任務を分担せねばならないのか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。また、
日本に対して、
国連または他の国際機関やいずれかの国から
掃海艇派遣の要請があったのかどうかも明らかにしていただきたいのであります。
その三点は、掃海部隊の
派遣決定に至るまでに、
ペルシャ湾の
機雷の敷設場所、その性能、その数、掃海水域の特定、掃海水域の諸条件、他国の掃海活動との
関係、補給問題等について、いかなる国からどのような情報提供を受けているのか、答弁を求めます。また、
機雷は遺棄物と確定されているのか、掃海
作業は公
海上に限るのか、他国の領海にも及ぶのか、掃海活動の期間、その予算等についても明らかにしていただきたいのであります。
その四点は、
ペルシャ湾海域における
我が国のタンカーを含む
船舶の重大な障害になっているので掃海部隊を
派遣するとのことであるが、これは日米両国
政府の誇張的な政治宣伝のおそれなしとしないのであります。
湾岸戦争中でさえ、
我が国への
原油輸送にさほどの
支障はなかったはずであります。現在具体的にどのような
支障があるのか、明確にしていただきたいのであります。
掃海部隊の
派遣が真に国際的要請に基づくものでなしに、特定企業の権益保護、あるいは、何が何でも自衛隊の海外
派遣の既成事実をつくろうとする政治勢力に押されたものであるとするならば、それこそ
平和国家としての
我が国の戦後史を傷つけ、今後の指針を誤らしめる結果を招きかねません。
総理の
見解を求めます。
最後に、
湾岸地域の戦後
処理や
復興について諸問題が山積していることは、我が党もよく承知をいたしております。油井火災の消火、流出
原油の回収、環境の回復、クルド人や被災民の救済対策などについては、
日本は
資金面、
物資、技術
協力や人的面において、もっと積極的かつ有効な援助をタイミングよく展開すべきであります。
総理、十分な
国民合意がないままなし崩し的に自衛隊の海外
派遣を急ぐのでなしに、包括的国際
貢献策を法的、制度的に確立することこそ、今急務であります。我が党も、そのための合意形成に積極的に参画する用意があることを表明して、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣海部俊樹君
登壇〕