○有川清次君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま
議題となりました
地価税法案について、私の選挙区は
税制の神様と言われる人もいらっしゃいますが、きょうは
賛成の立場から討論を行います。(
拍手)
近年の地価の異常な高騰は、我が国の社会経済に深刻な問題を生じさせており、
土地問題の解決は、我が国にとって最大かつ緊急の課題の一つとなっております。
我が国のこれまでの地価動向と
土地政策の経緯を見ましても、昭和三十年代の高度成長期に、工場用地の需要拡大や産業、人口の大
都市集中に伴う住宅需要の急増などから、大
都市圏及び工業地を中心に高騰したため、昭和四十三年に市街化
区域、市街化調整
区域の区分など
都市計画の
整備がなされているところであります。また、昭和四十年代後半においては、田中
内閣による列島改造による投機的な
土地投機があり、特別
土地保有税の導入、特定市街化
区域内農地の宅地並み
課税の導入が行われております。
そして、今回の地価高騰は、都心部の商業地需要の急激な増大、中曽根
内閣による民活路線の
規制緩和、金融緩和政策による過剰
資金の
土地への投入などにより、都心商業用地の地価の著しい上昇が周辺商業地そして住宅地に波及し、その後地方の
都市へも波及をいたしております。
このように、我が国の地価対策は、地価上昇の著しい時期において何らかの施策を講じてはきているものの、有効的な機能が発揮できず、結果として地価は、消費者物価の上昇や国民経済の成長を上回る伸びとなってきておるのであります。
例えば、我が国の地価を先進諸国と比べてみますと、我が国と米国との差は、我が国は国土面積においては米国の約二十五分の一で、人口や国民総生産でも米国の半分しかありません。それが、
土地資産額では米国の四倍にも達するとも試算されております。特にここ四、五年の
土地資産の名目的増加額は、著しい増加があり、
土地本来の
利用価値をかなり上回る異常な水準で形成されております。
本来、居住や業務のためあるいは公共基盤
整備のため有効に
利用されるべき
土地が資産保有の手段として
利用され、そして投機の
対象となっていることが、合理的な地価の形成を妨げている一番の要因であります。そして、この背景にあるのが、
土地ほど有利な資産はないという
土地神話があるからであります。
一昨年の十二月に制定された
土地基本法においても、
土地についての理念が定められており、その趣旨からも、資産としての
土地に対する
課税の適正化を行うことが求められ、
土地神話の打破が焦眉の急となっております。
近年の大
都市を中心とする地価高騰は、
土地を保有する者と保有しない者との間の資産格差を極めて大きなものとし、
土地を保有しない者にとっては、この格差を縮小することは不可能な
状況となっております用地価が勤労者の
所得の伸びを大きく上回って上昇したため、
土地や住宅を取得しようとする者にとっては、絶望的な価格となってしまっているのであります。
こうした
土地保有に関する資産格差は、地価高騰という各個人の努力を超えたものであり、以前から
土地を保有していたかどうかにより決定的な資産格差が生じたものであります。そして、
土地という国民の最も基礎的な要素にかかわるものだけに、この問題に対する社会的な不公平感が極めて強いことは当然であります。
我が国は、高い勤労意欲を基礎とする長期的な経済発展のもとで、公平で平等な社会を築くことを追求してきております。しかし、近年の
土地高騰に伴う勤労の価値の相対的な低下、
土地を持っておれば必ずもうかるという
土地神話の存在は、これまで追求してきた公平や公正に対する基本的な信頼を動揺させ、勤労意欲や
事業意欲の減退を招いております。
今後ともゆとりある経済発展を維持していくには、このような
土地をめぐるさまざまなゆがみを放置することはできません。すなわち、
土地問題は現在及び将来において解決しなければならない最重要課題であり、一時的またはその場しのぎの地価対策や
土地供給対策ではなく、中長期的視点に立った地価の異常な高騰の抑制、そして地価の引き下げをし得る抜本的な政策体系を確立する必要があります。そのための諸施策として、総合的な国土
利用政策の推進、
都市計画上の
土地利用規制の見直し、投機抑制のための
土地取引
規制及び
土地関連融資
規制、
土地に関する情報の
整備などが整合性を持って実施されなければなりません。
同時に、今までは、
土地政策に対する補完的な役割でしかなかった
税制面について、
土地政策にとって有効な政策として位置づけた今回提案されておる地価税法は、
土地神話の打破という政策目標に一歩近づけるものと評価できます。
確かに、税率が〇・三%、初年度においては〇・二%と低いことに加え、基礎控除の額が十億円と高く、予定されていなかった一平米当たり三万円の基礎控除は、著しくこの
税制の効果を後退させるものであります。しかも、非
課税の
範囲も拡大されており、特に、社宅に対する
課税が行われていないことは、現在論議されている
所得以外の
所得に対する
課税、すなわちフリンジベネフィット
課税論議を後退させるものであります。
しかしながら、地価税の創設の趣旨に照らし、今後の地価の動向を勘案し、機動的、弾力的に見直しを行い、再び地価の高騰のうかがえる事態が生ずれば果断に税率、基礎控除等を見直し、地価税に期待されている
土地神話の打破の役割を合うさせるとの答弁もあり、地価税に
賛成することとしたものであります。
我が党は引き続き地価を引き下げる強い意思があることを表明いたしまして、私の
賛成討論を終わります。(
拍手)