○岡崎トミ子君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま
議題となりました
湾岸地域における
平和回復活動を
支援するため
平成二年度において緊急に講ずべき
財政上の
措置に必要な
財源の
確保に係る
臨時措置に関する
法律案について、
反対の
立場から
討論を行います。(
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本日、
ブッシュ大統領を初め
関係国首脳は、
中東湾岸戦争の
戦闘の
停止を表明しました。
イラクも
国連決議のすべてを受け入れました。私は、これを心から歓迎します。この
戦闘停止は、四十八時間以内に具体的取り決めが開始されますが、我が党は、これが本格的停戦に発展し、さらには
中東地域の恒久的平和の
実現に向け、
国連がイニシアチブを発揮することを期待します。
ところで、今回
議題となっております九十億ドル支出問題については、
憲法上も
政治的にも極めて大きな問題を含んでおり、私はこれを認めることはできません。
そこで、以下、私はその
反対理由を申し述べたいと思います。
第一に、先般、
アメリカ政府が
提出した
戦費に関する
補正予算案で、九十億ドルが全額
アメリカ向け
戦費として計上されたことが明らかにされました。この事実は、
海部総理が
武器弾薬等に使われないと言われたことと全く矛盾し、そのような裏づけのない口約束で
国民の不安をかき立てるばかりでした。この九十億ドルは、
日本円に換算して一兆一千七百億円に及ぶ
財政支出で、
平和回復活動に寄与するという名目ではありますが、実質的には
戦費でしかないのであります。(
拍手)
我が国は、
憲法第九条において、「
武力による威嚇又は
武力の
行使は、
国際紛争を
解決する
手段としては、永久にこれを放棄する。」と明記されており、
武力行使による
紛争解決を正当化することはできません。したがって、
武力行使に不可欠の
戦費を
拠出することは、
我が国自身が参戦国となることであって、
憲法上はもちろん、平和
国家としての
日本が
国際社会において果たす
政治的役割からも基本的に誤ったものであります。(
拍手)
第二に、
政府は、昨年八月の
湾岸危機以来、平和
解決に向けた外交
努力を一切せず、ただひたすら
アメリカ追従に終始し、今日に至るまで
世界各国から幾つかの和平提案が
提出されたにもかかわらず、その検討すら怠ってきました。このことは、悲惨な
戦争体験を持つ
我が国が、戦後四十五年間平和
国家として生きようと守り続けてきた
平和憲法の
精神をないがしろにするものです。
さらに、人間の命が失われる
戦争を直ちにやめてほしいという切実な
人々の願いに対しても、無視し続けてきました。
日本政府が今回の
戦争に対して行ってきたことは、多
国籍軍の
戦費の
拠出と自衛隊機の派遣、
戦争への確固たる支持を表明しただけでした。これは、
国際紛争の平和的
手段による
解決を
規定した
憲法の遵守
義務を課せられた内閣が、その責任を放棄したものと言わざるを得ません。(
拍手)
第三に、この法律に関する
財源措置についてです。
法律の第一条については、
歳出の
節減合理化等を講じ、なお不足する
財源確保に係る
臨時措置として
増税を行うとしています。しかし、実際には逆ではないでしょうか。
財源の六〇%近くを
増税で賄おうとする今回の
措置は、あくまでも
増税が中核であり、その不足分を経費の
節減、
予備費の減額、税外収入の追加で賄っていると見る方が素直だと思います。
しかも、防衛費の一千億円の削減という
政府の約束も、
平成三年度
予算案では実質的におよそ十億円程度の削減しかしないことが
審議の過程で明らかになっています。これは全体の一割にも満たず、また、新
中期防衛力整備計画の装備計画書から削減したわけでもなく、うやむやになっています。これでは、九十億ドルの主な
財源になるとはとても思えません。
また、なぜ九十億ドルなのか、その金額の算定
根拠が明確になっていません。
政府は、
国際社会において
我が国が積極的に果たすべき責務としか
説明していませんが、一生懸命働いて支払っている
人々の血税をこのようないいかげんな
理由で支出すべきではありません。(
拍手)
さらに加えると、
政府は
追加支援についても予定していないと言いますが、
戦争終結後の駐留、
撤退経費について
アメリカからさらなる
支援を求められた場合、どのように
対応するのでしょうか。これまでの
政府の
姿勢を考えますと、再び
アメリカの求めるままにず肩ずると使い道のはっきりしない
財政支出をしてしまうおそれがあります。第四に、停戦の見通しが開けてきた現段階においては、九十億ドルについての
政府の
根拠そのものが失われようとしているのであります。したがって、その
財政支出については根本的見直しをし、平和
目的、人道
目的のための支出を
内容とした
予算に組み直すべきだと思います。
以上の
理由から、私は、この法案に断固
反対いたします。(
拍手)
なお、自衛隊機の派遣については、
戦争が
終結した場合には、
政府が口実とした危険であるとか
日本の民間航空会社の
協力が得られないとかいった事情が完全に消滅いたします。したがって、
政府は、
日本の民間航空機等のチャーターによる避難民救援対策に専念すべきであり、自衛隊機派遣の方針を撤回し、
憲法と
国会を無視した特例政令の廃止を直ちに行うよう要求いたします。(
拍手)
私は、ここに、今後大量に流出されると思われる避難民や
被災民に対する救援対策、戦後の
中東地域の平和と安全
確保のため
国連による停戦監視活動へ
協力すること、いかなる国も
武器輸出を禁じ、この
地域における軍縮と平和保障機構の確立のためイニシアチブをとることを
国連に求めること、また、原油の流出によるいまだかつてない海洋汚染、油井火災による環境汚染に対処するため
湾岸環境
国際会議を提唱すること、戦後
復興に係る
費用として
中東復興基金の創設をすること、
中東における公正で永続的な平和の
実現のため、パレスチナ問題の
解決を初めとする
中東の平和のための
国際会議を一日も早く開催し成功させることなど、積極的に
貢献すべきであると提案いたします。一方、
湾岸戦争の影響で深刻な社会的、経済的打撃を受けているアジア・アフリカ周辺国に対する緊急
援助についても取り組み、そして、それらの
財源については思い切った防衛費の削減で
対応すべきであると考えます。(
拍手)
このような我が党の提案に比べ、
政府のとった最初に
増税ありきの今回の
措置は、平和
国家としての
日本が平和に向けてどのような役割を果たすべきかを見失った
政府の外交不在のあらわれと言わざるを得ません。
以上、本法案に対する主な
反対の
理由を申し述べましたが、
中東湾岸戦争は急速に停戦の方向に向かっています。
我が国は、今こそ避難民、
被災民に対する救援、戦後
復興、そして
中東地域の恒久平和に向けて、
世界に先駆けて、
国民合意のもとに全面的な
国際貢献を果たすべきであります。
我が党は、殺りくにつながる
戦争への
協力は
憲法上の
立場を踏まえ否定してきたところでありますが、平和の
実現と戦後
復興に向けて、今こそ貞野党が一致して全面的に
協力すべきことを訴え、私の
反対討論を終わります。(
拍手)