○柳田稔君 私は、民社党を代表して、ただいま提案のありました
湾岸地域における
平和回復活動を
支援するた
め平成二年度において緊急に講ずべき
財政上の
措置に必要な
財源の
確保に係る
臨時措置に関する
法律案に関して、
総理及び
関係大臣に
質問いたします。
質問の第一は、
湾岸戦争が与える、国内及び
世界経済に与える影響であります。
越智
経済企画庁長官が二十二日に提出した二月の月例
経済報告は、
日本経済は引き続き拡大局面にあると判断しております。これで景気の拡大は五十一カ月目に入っています。しかし、これまで
日本経済を引っ張ってきた設備投資と個人消費に陰りが見えてきました。設備投資の先行指標である機械受注額は、
湾岸戦争前の昨年十二月に既に前月に比べてマイナス二七・九%となり、昭和五十六年一月以来ほぼ十年ぶりの大幅な落ち込みを記録しました。また、ある新聞社の調査によれば、
平成三年度の設備投資計画は、今年度の実績見込みに比べてわずか一・六%増と低いものとなっています。昭和六十三年度以降三年連続一五%以上の伸びが続いてきただけに、今後、景気が冷え込むおそれがあると思われます。また、好調な伸びが続いてきた東京地区の百貨店の売り上げが、ことしの一月は全体で前年同月に比べ五・五%増加と、昨年十二月の五・八%を下回るなど、個人消費の落ち込みも見え始めております。
戦争が仮に早く終結したとしても、
経済全体が減速しつつあること、さらに
湾岸戦争の後遺症がそれに拍車をかけるなどを考慮すれば、
政府の実質三・八%成長という
経済見通しがそのまま通用するとは
考えられません。(
拍手)この
経済見通しが
戦争開始前の昨年十二月二十二日に閣議了解されていることを
考えれば、もう一度つくり直すべきではないか。海部
総理及び越智
経済企画庁長官の答弁を求めます。
また、実質
経済成長が二・九%となった円高不況の昭和六十一年度のように
経済が著しく落ち込めば、景気浮揚のための緊急
経済対策を講じる必要性も生じてくると思われますが、その場合はどう対処するのか。
総理及び
経済企画庁長官の御所見をお伺いいたします。
さらに、
湾岸戦争の
世界経済に対する甚大な被害をも看過するわけにはいきません。とりわけ、アジア諸国の受けた打撃は想像を絶するほどに大きなものとなっています。フィリピン、バングラデシュ、インド、パキスタン、スリランカなどの途上国で、
中東地域への出稼ぎ労働者の帰国、それに伴う失業者の増大、外貨事情の悪化、観光
収入の激減、インフレなどの兆候があらわれています。
我が国政府としては、
湾岸戦争終結後の
イラクや
クウエートなど
中東及び周辺国の
経済復興はもちろんのこと、アジア諸国がどの程度の被害を受けているのか実情を的確に把握するとともに、これらの国の
経済復興にも
日本が積極的な役割を果たすべきだと
考えるものでありますが、海部
総理及び橋本
大蔵大臣の見解を求めるものであります。(
拍手)
第二に、九十億ドルの
財政支援そのものが
日本経済に与える影響についてお尋ねいたします。
今回の九十億ドルの
支援によって、
我が国経済は金利上昇、円安、デフレ
効果といったいわば三重苦に直面するとの見方がありますが、私は、
我が国経済への影響は小さいと
考えます。
まず、金利上昇については、国債の
発行が金利の上昇を招き、クラウディングアウトを心配する声がありますが、民間部門の保有する金融資産残高は、家計、法人を合わせ千八百三十兆円あり、GNPの五倍弱の
規模に達しており、九千六百八十九億円の
国債発行は、そのわずか千八百八十九分の一にすぎません。したがって、金利の上昇の
経済への影響は極めて小さいと見てよいのではないかと思いますが、
経済企画庁長官の御見解をお伺いいたします。
次に、円安を招くのではないかとの
指摘もありますが、百億ドルの外貨需要で為替レートはせいぜい一%ぐらいしか動かない現状から見て、今回の九十億ドルによる円安は心配するほどではないと
考えますが、
大蔵大臣はどのように見ておられるのでしょうか、答弁を賜りたい。
次に、デフレでありますが、法人税四千四百億円、石油税二千三百億円の増税はデフレ
効果を持ちますが、そのことが個人消費や設備投資を大幅に減速させることはなく、GNPの引き下げ
効果はせいぜい〇・一%程度と私は見ております。この点についての
経済企画庁長官の御見解をお伺いしたい。
第三に、行
財政改革についてお尋ねします。
九十億ドルの
追加支援のため、我々の主張を取り入れて、
財源確保については増税だけでなく
歳出削減等を盛り込んだことは至当であると
考えます。しかし、この
戦争が早期に終結したとしても、
中東に完全な平和をもたらすためには相当な期間と
努力が求められることは明らかであります。また、湾岸問題にかかわらず、今後
日本の
世界に対する
貢献が厳しく問われることは必至であります。
このような
事態を想定すれば、和平実現の後にも
財源が別途必要となる
可能性があることなどにかんがみ、行
財政改革は何が何でも推進しなければなりません。国鉄、電電公社、専売公社の民営化を除いては、自民党
政府の行ってきた行政改革は極めてお粗末なものと言わざるを得ません。しかも、近年ますます行革の熱意が失われていることに苦言を呈しておきたいのであります。
国家公務員の定員については、昭和六十二年度から四年連続三千人を超える純減が行われてきましたが、
平成三年度は、これが二千四百九十九人と大幅に後退する内容となっています。行政
経費の
節減、
国民負担率抑制の観点から、行政改革を計画的に推進するため、中央省庁の再編合理化、地方出先機関の
原則廃止、補助金行政の抜本的見直し等を盛り込んだ行政改革五カ年計画を策定し、その実現を図るべきだと
考えますが、海部
総理大臣の行政改革にかける決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
また、本
法案における
臨時特別公債の
発行は、償還
財源の裏づけがきちんとされていますが、これを除いても
平成三年度末は百六十八兆円という巨額の国債残高があり、依然として
財政を大きく圧迫しています。GNPに対する公債残高の割合など総合的な
財政指標の設定、隠れ借金の完全返済、消費税率の引き上げに対する歯どめ、特殊法人の民営化、
政府保有の株式及び土地等の売却、
国民負担率の抑制などを盛り込んだ新たな中長期計画を策定し、着実な
財政再建を推進すべきだと
考えます。
とりわけ国有財産の売却については、適切に進めるよう求めるものであります。民間企業や個人の土地保有に対して地価税を導入しようとする大蔵省が、みずからは千七百八十八万八千平方メートルという広大な未利用地を持って土地のむだ遣いをしており、そのことを厳しく自己批判しないことに不満を持っております。また、
政府保有の株式も早急に売却すべきであります。NTT株や
日本たばこ産業株式会社の株式を、証券市場の成り行きにも配慮しつつ適度に放出すべきだと
考えます。
政府保有の土地や株を売却し、国債償還を着実に進めるべきだと
考えますが、橋本
大蔵大臣の見解を求めます。
第四に、
石油臨時特別税の創設についてお尋ねいたします。
原油については、一リットルにつき一円二銭の増税となりますが、これが適正に転嫁されるのかどうか明らかにしていただきたい。例えば便乗値上げが行われたり、逆に業者がこれをかぶったりすることがないのか、通産大臣の見解を求めるものであります。
また、消費税論議のときに我々が強く求めてきた石油諸税と消費税の二重課税、タックス・オン・タックスの排除について改めて注文申し上げます。一体いつになったら
政府は消費税と石油諸税の単純併課をやめるのか、
大蔵大臣にその時期を明らかにしていただきたい。
最後に、新たな
追加支援についてお尋ねいたします。
一部の新聞では、
戦争が長期化して
日本がもう一段の
追加支援を迫られた場合、大蔵省は再び増税をすると報じられています。また、
戦争終了後の戦後
復興も考慮に入れる必要があります。新たな
財政支援を求められた場合、今度はすべて増税で賄うしかないのか、それとも、政策的
経費も含めて
歳出削減を行うこともあり得るのか、
総理及び
大蔵大臣の答弁を求めて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣海部俊樹君
登壇〕