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井嶋政府委員 大変厳しい、また本質をついた御質問でございまして、恐縮をいたすわけでございますが、御
指摘のとおり、この罪と罰とのバランスといったものが
刑罰の本質である、これを間違えれば過酷な刑になり、あるいは寛刑になるということでございますので、これを間違えてはならないということは、刑政を預かる者としてはまず基本であることは間違いございません。
そこで、それはどういう形で日本においてつくり上げられているかということでございますが、
刑法に関して申し上げれば、
明治四十年に
刑法が
制定されましたときに現在のバランスがつくられたわけでございます、その後ずっと
運用されてまいりまして、戦後に至りましたが、ここでもちろん
価値観の変遷その他もございましたけれ
ども、そういった罪と罰とのねじれといったものもあったかもしれませんが、その段階では結局そういった体系的なものはいじらないままに、同じバランスの中で、ただ
貨幣価値の
変動に伴う
罰金額の改定をしようということで、
罰金等臨時措置法といったものができたわけでございます。
その後、ずっと戦後を経過するわけでございますけれ
ども、四十七年の段階におきましては、その当時の社会情勢等を踏まえ、
刑法全面
改正作業というものをやっておったわけでございまして、今おっしゃるような罪と罰とのバランスといったような本質も踏まえた、現代にもっとあるべき
刑法の姿といったものを、全面
改正という作業の中で行っていたわけでございます。
そういった作業が行われておりました段階において、
経済変動が著しくなって、
罰金刑がもうとても
実務に耐えられなくなったということで、これも四十七年に
臨時の
措置として、
罰臨法の
改正ということで
改正をさせていただきまして、それで当面の
措置としてやはり倍率計算で適用するという形をとってきたわけでございます。そういうことでございますので、御
指摘のような罪と罰との本質をついた
改正、つまり
刑法全面
改正という作業が必要であることは御
指摘のとおりでございます。
その点につきましては、四十七年当時、非常に精力的にやっておりましたが、御案内のとおり、私
どもがまとめました
改正草案につきましては、例の保安処分問題といったような問題がございまして、結局現在中断をしておりますが、これは決してあきらめたわけではございません。むしろその後に
改正されました精神衛生法の
運用状況を見ながら、保安処分制度をどうするかということを見きわめた上で全面
改正に取りかかろうということを考えておるわけでございますけれ
ども、また同じような形でそういうことをやっております中で十何年たちますと、また
罰金刑が追いつかなくなってきたということで、今回また同じようなことで
改正をさせていただくということになるわけでございます。
そこで、そういった
改正をするにつきましては、やはり
罰則の基本的なバランスは、体系は崩さないということを
前提に、金額だけ、つまり
刑罰としての痛みを結局現在の
法律の姿のままスライドさせようということでございますので、
経済事情の
変動の指標というものが、結局は皆さんのその全体の
経済観念の上昇につながっておるわけでありますから、同じスライドを持ってくれば痛みも同じような形で上がるだろう、こういうことで
お願いしておるわけでございまして、安易に
経済指標を持ってきて当座をしのぐといったような御
指摘でございましたけれ
ども、もう少し真剣に考えてやっておるわけでございます。
そういったことで今回この
法律を
お願いしておるわけでございますけれ
ども、それはそれといたしまして、御
指摘の基本問題につきましては、いろいろ問題がございます。特に、けさほど来いろいろ問題がございましたように、現在の社会情勢を考えますと、現在の財産刑のあり方、また、もっと広く言えば
刑法全体のあり方といったようなものに、
相当な手を加えなければならない
実態があることは間違いございません。そのための作業を我々も引き続きやってまいりますが、特に財産刑につきましては、緊急の課題でもございますので、小
委員会をつくりまして精力的に問題を検討し、整理をいたしまして、その出された指針に基づいて
改正を行っていきたいというふうに考えておるわけでございまして、御
指摘のような方向も踏まえながらやっておるということをお答え申し上げたいと思います。