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1991-02-22 第120回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月二十二日(金曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 伊藤 公介君    理事 石川 要三君 理事 塩崎  潤君    理事 田辺 広雄君 理事 星野 行男君    理事 山口 俊一君 理事 小澤 克介君    理事 小森 龍邦君 理事 冬柴 鐵三君       赤城 徳彦君    奥野 誠亮君       武部  勤君    中島源太郎君       中村正三郎君    伊藤  茂君       岡崎 宏美君    清水  勇君       鈴木喜久子君    北側 一雄君       中村  巖君    木島日出夫君       和田 一仁君    徳田 虎雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 左藤  恵君  出席政府委員         法務政務次官  吉川 芳男君         法務大臣官房司         法法制調査部長 濱崎 恭生君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         法務省保護局長 佐藤 勲平君         法務省人権擁護         局長      篠田 省二君         法務省入国管理         局長      股野 景親君  委員外出席者         総務庁長官官房         地域改善対策室         長       萩原  昇君         外務省欧亜局ソ         ヴィエト連邦課         長       東郷 和彦君         最高裁判所事務         総局総務局長  金谷 利廣君         最高裁判所事務         総局人事局長  泉  徳治君         最高裁判所事務         総局民事局長         兼最高裁判所事         務総局行政局長 今井  功君         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         法務委員会調査         室長      小柳 泰治君     ───────────── 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   渡辺美智雄君     武部  勤君   大内 啓伍君     和田 一仁君 同日  辞任         補欠選任   武部  勤君     渡辺美智雄君   和田 一仁君     大内 啓伍君     ───────────── 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出第一五号)  罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案内閣提出第一六号)      ────◇─────
  2. 伊藤公介

    伊藤委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所金谷総務局長泉人事局長今井民事局長行政局長島田刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 伊藤公介

    伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。      ────◇─────
  4. 伊藤公介

    伊藤委員長 内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。左藤法務大臣。     ───────────── 「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案」     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  5. 左藤恵

    左藤国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所職員員数増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、裁判官員数増加であります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、判事補員数を五人増加しようとするものであります。  第二点は、裁判官以外の裁判所職員員数増加であります。これは、一方において、高等裁判所における工業所有権関係事件並びに地方裁判所における民事訴訟事件及び民事執行法基づく執行事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所職員を六十五人増員するとともに、他方において、裁判所司法行政事務を簡素化し、能率化すること等に伴い、裁判官以外の裁判所職員を三十七人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所職員員数を二十八人増加しようとするものであります。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
  6. 伊藤公介

    伊藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  7. 伊藤公介

    伊藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小森龍邦君。
  8. 小森龍邦

    小森委員 それでは、裁判所職員定員法改正をめぐりましてお尋ねをしたいと思います。  まず、形式的なことについてお尋ねをいたしますが、昨年衆議院の方の議席を持たせていただきまして初めて議論をさせていただいた法律案が、この裁判所職員定員法に関する問題でございました。そこで私が大きな疑問といたしましたことは、これほどの国家的な国の骨組みに関する裁判所定員が、どうしてこんなに毎年小出しに少しずつ少しずつしかやらないのか。もし真に必要であるというならば、これは国民権利義務に関する大変重大な問題でありまして、三権分立社会にあって、よく言われる最高裁長官、三権の長の一員であるということを考えてみても、この裁判所という仕組み近代国家において非常に大事な仕組みでございます。しかるに毎年少しずつ少しずつというのは、何か計画があってそうやられておるのか。しかし計画があるとすれば、速やかに国民権利義務をかっちりと、この司法機関というものは守るべきものを守り裁くべきものは裁くということでなければならぬわけですから、その点どうしてこう、私の見たところ小出しに見えますが、小出しになっておるのか、お尋ねをしたいと思います。
  9. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 裁判所職員増員いたす場合には、毎年裁判所職員定員法改正と いうことで国会に御審議いただいている形になっておるわけでございます。この点につきましては、本委員会でもかねてから、一般の行政機関職員定員に関するいわゆる総定員法のような形で定員の上限を定めて、そのもとで予算的措置をとりながら増員を進めていく、そういった方法をとることはできないかというようなお尋ねをいただきました。私たちも、毎年こういう形で定員法について御審議いただくことは、定員法のみならず広く裁判所の問題について御質問に答えて説明さしていただき、委員会の御理解を得るという面でありがたい面はあるのでございますが、また反面では、大変なお手数をおかけし、またそれに注ぐエネルギーも相当なものであるというところから、できればそういった形にできないかということで検討いたしておる次第でございます。  しかし、行政省庁における総定員法というのは、いわば総定員数を抑制するという趣旨のもとに、そして多数の省庁があるそういう行政機関につきまして、一方では行政需要のふえる省庁もあれば、他方では減るものもある、そのあたりのところを見て弾力的に定員が運用されるというねらいのものでございます。裁判所の場合は、これは裁判所という一つの組織についてでございますので、いわばそういった形の総定員法的なものをとることについては、別の理由趣旨からなさなければならないと思うわけでございます。しかし、委員のおっしゃる点も私どもとしましてもなるほどと思う点がございまして、かねてから法務省の方とも、ここ一年間でも、数回にわたりましてそういう形がとれないものかということを検討さしていただいているわけでございます。  しかし裁判所の場合に、一定の、例えば中期的に見まして到達可能な努力目標としての審理形態を考え、そういう審理形態事件を裁いていくにはどのぐらいの人数が要るかということが見通せれば、そういう形をとることも合理性があろうと思います。しかしそのためには、一つ事件数を一体どのぐらいと見込むのが相当であろうかという問題がございます。もう一つは、審理形態として、理想的とまではいきませんでも、到達可能な目標としてどういう審理形態がとり得るかということが確定しませんと、定員をはじき出せないわけでございまして、委員も御承知のとおり、ここのところの事件数変動は、非常にふえたかと思うと非常に減っている。経済情勢その他の社会情勢変動に応じて、事件増減の波が非常に多い時期でございます。そういったところから、事件数見通しが少し立てにくい時期だということが一つございます。  もう一つは、審理形態につきましては、かねがね国民から御批判を受けているところでございまして、裁判所としても本腰を入れまして、特に民事訴訟審理あり方を、五月雨審理のような形ではなくて、もう少し国民にわかりやすい、法廷で生き生きとした弁論が行われて、証拠調べも集中的に行われる、そういう審理形態にいたしたいということで努力いたしているわけでございますが、これまた他面では、弁護士さんを初め訴訟関係人の方の御協力がなければならない問題でございまして、そのあたり、今弁護士会等にもいろいろお願いをいたして努力しているわけでございます。そういう、審理形態が中期的に見た場合にどういう形で、例えば普通の事件を何回ぐらいの期日でどういうふうにおさめることができるかというところの現実的な見通しは、立てにくい状況でございます。  そういった問題がございますので、今すぐ総定員法的なものというのはなかなか難しいのではございますが、私たちも今後それに向かって努力さしていただきたいと思っておる次第でございます。
  10. 小森龍邦

    小森委員 これは他の省庁との関係で、国の政治予算配分バランスの問題だと思いますけれども、国の大事な三つの権力構造といいますか、その中の一つ裁判所関係が、何だか気兼ねをしながら少しずつ少しずつふやしてもらわねばならぬというような姿勢に私は感ずるわけです。  例えば一例を挙げますと、自衛隊の定員は多いけれども、なかなかそれは充足できない。充足できないことがわかっていて、ちゃんとそういうものは確保するようにしておる。片方では、一つ裁判に相当の年月がかかって、それはもちろん防御する側に時間が必要ということもありましょう。しかし、それはそれで人権の問題で大事でありますから、そのことで時間がかかるということはよしとしなければならぬわけでありますけれども、しかし、弁護士日程裁判官日程とが合わなくてまた一月延びるとか半月延びるとかいうようなことが何回か繰り返されますと、どうしてもその間、精神的にその裁判関係する関係者圧迫感感じ、苦しみながらいかねばいかぬ。よいことはよい、悪いことは悪いで早く解決がつくということは人生計画の上にとっても大事だ、こういうふうに考えますので、これは私はちょっと裁判所側押しが足りないのではないかと思います。  同時に、政府裁判所との関係で、これは単純に権力と言わしていただきたいと思いますが、権力間のやりとりでは裁判所は割合後ろの方へ簡単に下がるけれども、例えば民衆相手の場合は、一つ私の感ずることを申しますと、裁判所が外から見て大変豪華に見えて、何かおまえらが少々裁判批判をしたからといったってひっくり返るものじゃないぞという威圧的な感じを受けます。例えば高等裁判所なんかに行きましても、こんなに大きな柱があの入り口のところに必要なんだろうかという感じを持ちます。それで、例えば私が何かのことで裁判所なんかに行きましてちょっと係の方にお会いするということになりますと、本当に殺風景な控室といいますか、しばしば花の一本も飾ってないし絵の一つもかけてないという感じであります。  したがって裁判所は、やはり三権分立というのは、基本的にどちらが力があってどちらが力がないという性格のものであっては国の政治が独裁的な形態になるということを恐れて、人類が考え出した英知でありますから、国民には優しく、権力間のバランスにおいては主張すべきものは主張して、そして、少しずつ少しずつ予算をもらうということでなくて、必要なことはばしっと要求して、話し合いをしてけじめをつけるということが大事だと思います。  そこで、ある事件が一審の判決に至るまで、現在平均的にどれぐらいの月日がかかっておるか、裁判は何開廷かかっておるかということを数字的に、何か資料としてもお出しをいただいておるようでありますが、言葉でひとつお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席田辺(広)委員長代理着席
  11. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 先ほどのお尋ねに関連しまして一言だけ申し上げさしていただきますが、増員が少しずつという御趣旨のお言葉がございました。確かに見ようによっては少しずつという形になっておるわけでございますが、ただ枠だけをふやしましても、実際に埋まらなければ増員するということは意味がございませんので、充員可能性ということを見ながら裁判所の方では増員さしていただいている。例えば裁判官を一遍に百名ふやすといいましても、裁判官をふやす場合は、基本的には、修習生から判事補になる人、そこでふやす形になるわけでございます。それは一度に百人ふやせないというようなことですと、百人一遍にふやして予算をつけていただいても、結局返す予算をもらうことになるということでございます。そんなところから、裁判所は実現可能な形で毎年こういう増員をさしていただいている。しかし、そのやり方のデメリットのあることは、先生の御指摘の点もございますので、これから考えさしていただきたいということでございます。  それから、いろいろな面で毅然とやる面と、国民に対してもう少し親切な面と、それは御提言のとおりであろうと思っております。私たちもそういうことでふだんも心がけておりますし、例えばもう少しやわらかい形の、国民に開かれた感じ裁判所になるようにということでは、近年いろいろな面で、簡易裁判所の窓口の受付カウンターオープン式のものにするとか、あるいはいろいろなリーフレットとか素人の方でも書ける申し立て書の書式を置くとか、あるいは先ほどおっしゃいましたいろいろな、待合室の問題につきましても、庁によっては待っておられる方が退屈されないように本を置くとか、そういったことも試みに始めているところでございます。その方面は今後努力させていただきたいと思います。  審理期間につきましては、この法律案関係資料の二十五ページのところに審理期間が出ております。地裁民事訴訟事件、一番典型的な事件で申し上げますと十二・四月、約一年の平均審理期間という数字になっておるわけでございます。そして刑事事件で申し上げますと、ここのところでは、地裁刑事訴訟事件平均審理期間は三ヵ月半ぐらいというところでございます。刑事平均開廷回数も三回強くらいのところでございます。そういったところで、平均的な審理期間自体といたしましては、数字的にはまあまあのところにだんだんときているという感じではございます。しかし、一部に長い事件がございまして、いろいろそういう長い裁判が終わるたびに御批判を浴びているところでございまして、私ども、そういう審理期間を短縮し、しかも充実した審理をしながら審理期間を短縮するということをしなければならないということで、これからも一生懸命努力してまいりたい、こう考えておるところでございます。     〔田辺(広)委員長代理退席委員長着席
  12. 小森龍邦

    小森委員 先ほど私が申しました裁判所あり方ということで、裁判訴訟の指揮ということは、裁判官が厳密な刑事訴訟法に基づいてやっておられるわけですから、それに対するいろいろな議論があれば法律専門家同士がかなりやりとりをしていただくわけで、そこのところのもう一つ前の、私が申し上げたいのは、裁判所に用事があって行ったときに、何かもう案内されるところは非常にみすぼらしいところで、おまえらこの程度のところよというような感じですね。これは法務省の方にもお願いをしておきたいと思いますが、例えば刑務所とか拘置所をお訪ねした際に、待合人室というのは、本当に真夏でも気持ちが寒々としたような感じのする状況となっております。今日の国民の生活の実感からしてまずまずの部屋に通されるというようなことの配慮は、ぜひこの機会に御一考願っておきたい、こういうふうに思います。  そこで、この法案の問題につきまして、私も国会に出させていただきましてまだ日が浅いので、この前も大変不審に思ったのでありますが、この前はぎりぎりの年度末であったということがあったかもしれませんが、こういう法案というのは、大体これは日切れ法案的な意味を持って審議に臨まれておるのでしょうか。  私がそれを思うのは、予算との関係で、予算審議がずっと年度をまたがって暫定予算でカバーしながらいくというようなときでも、これは早うやらなければ年度に間に合わないというようなことを言われるのですが、私は地方自治体の議員の経験がございますけれども予算が通っても、地方自治体であれば条例が通らなければそれは執行できない。ところが、去年のこの問題の審議のときに、私は時間の関係で再度念押しをして聞いていませんけれども答弁は、答弁であったかレクチャーのときであったか、いやそれはできるのですというような意味のことがございました。その点、法律予算関係、それから審議で通常言われる日切れ法案的なことで急がねばならぬものなのか。もちろん、それは速やかに審議をすることはよいことなんですけれども、ぎりぎり何したって三月三十一日までにはやってもらわなければならぬというようなものなのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  13. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 日切れ法案的扱いを従来からお願いしておるわけでございますが、日切れ法案ということを非常に厳密に考えました場合に、本当にそうなのかという点について御疑問を抱かれているわけでございますが、なるほど、そういう御疑問を抱かれるのももっともな面があるわけでございます。  裁判所職員定員法、こういう日切れ法案的扱いお願いしております一番の理由は、基本的にはできるだけ早く、四月一日から、せっかく苦労して、あるいは御理解をいただいて認めていただいた増員によって、裁判所審理充実強化を図る態勢を一日も早くとりたいというのが基本にございますが、もう少し具体的な理由といたしましては、今回は判事補五人の増員を認めていただいております。この増員ということになりますと、修習生から判事補に採用する者によって増員を図るわけでございます。判事補の任命は毎年四月十日前後に行っております。あるいは裁判所書記官につきましては、書記官研修所というところで研修を施した事務官につきまして、四月一日に書記官として増員分を含めて充員を図るということをしておるわけでございます。事務官についても同様な関係がございますが、そういうところで、四月十日ごろあるいは四月一日に書記官研修所なり司法研修所を卒業した者を全員そろって裁判官にしてやり、そして書記官にしてやるということをいたしませんと、一部についてはせっかく修習終了したのにほかの人よりもおくれて裁判官になる、あるいはせっかく研修を終えたのに書記官になる時期がみんなとそろわないでおくれる者が出る、それは大変忍びない。私たちとしては、せっかく新しい人生の出発の時期ですので、全員そろって新しい職場に迎えたいということで、こういう日切れ法案的扱いお願いして御理解いただいているところでございます。
  14. 小森龍邦

    小森委員 概略うなずけるところがございます。したがって、もう一度申し上げておきますが、やはり要求すべきものは要求して、そしてこれは大変大事な国の機関でありますから、国民権利義務を守るということで物事が機能的に動くように計らっていただきたいと思います。  そこで、あらかじめ申し上げておけばよかったわけですが、概略のところでよろしいですから、我が国の裁判にかかっておる、第一審で判決に至るまでのデータを先ほどお知らせいただきましたが、ヨーロッパの先進国といいますか、国家骨組み三権分立のような仕組みでいっておる先進的な国の裁判ではどれぐらい裁判の日時がかかっておるか、おおよそのところでよろしいですから、おわかりでしたらお答えいただきたいと思います。
  15. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 手元に正確な資料がございませんので、本当にもうおおよそのところを申し上げますと、私ども聞いておりますところでは、今言われた先進諸国、例えば英国、アメリカ、そちらの方では、御承知のような陪審制度をとっておりますので、公判が始まりますとかなり早く進行し、長いものでも一週間なり十日で判決まで出る。ただし、そのかわりに、公判待ち期間といいまして、起訴されてからの時間、これはかなり長い間待たされている実情がある。これも、アメリカあたりは各州いろいろございますのでその実情はまちまちなようでございますが、長いところだと半年とか十カ月、場合によっては一年も公判待ちということで待たされ、そして公判が始まれば一週間とか十日とか、比較的早い時日で判決まで出るというような状況があるようでございます。
  16. 小森龍邦

    小森委員 これは裁判制度の大きな骨組みにかかわる問題ですから、陪審制度については、これまでの経過なり考え方というものについて後ほどまたお尋ねをしなければならぬことでございますけれども、ひとまずその筋の質問はこの辺で終わらせていただきます。  次に、昨年の続きになりますけれども、私は昨年の冒頭に、逮捕状あり方あるいは勾留状を発付するときの検察官なり裁判官なりの態度、基本的な姿勢というものについてお尋ねをしまして、去年は去年なりの局面の展開があったわけでありますが、その後、例えば勾留令状延長の請求があったときに、昨年議論になりましたような、十 日間のうちのあと三日残っておるとか四日残っておるとかというときに既に発付するというような状況については、そういうことのないようにという努力をされておるということを聞きましたが、最近の状況はどうでしょうか。これもおおよそのところでよろしいですから、お答えいただきたいと思います。
  17. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 ただいまお話のありました勾留延長の件につきましては、委員が御指摘法務委員会直後、昨年の四月二十三日に私ども全国地方裁判所長にあててまず書簡を発出しまして、御指摘のようなことがないように十分注意を喚起いたしました。またその後、裁判官会同協議会等の場を利用して、その趣旨を徹底してまいりました。また、年末年始を控えました昨年の十二月十日にも、念のため再度注意を喚起する旨の書簡全国に発出いたしました。そして、つい最近でありますが、全国簡易裁判所判事会同におきまして、出席裁判官方にその後の状況を聞いてまいったわけでございますが、勾留満了日の二日前より以前に勾留延長決定がされた例は全くなく、大多数は満了日もしくは前日に決定されておる状況でございました。
  18. 小森龍邦

    小森委員 そのことに関連して、法務省刑事局関係、つまり請求する側の状況というものを御説明いただきたいと思います。
  19. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お答えいたします。  昨年三月の委員会におきまして委員と前局長質疑応答がございました記録につきましては、本日私も読んでまいりまして、十分問題点の認識は持っておるわけでございます。それを踏まえてお答えを申すわけでございますが、ただいま最高裁島田局長が申されましたように、あの委員会の直後に最高裁におきまして全国裁判所に対して通知をされましたことを受けまして、私どもの方も刑事局課長名義事務連絡といたしまして、こういった対応がなされるようにということの通知をしてございます。  そこで、私どもの請求と裁判官勾留延長決定をする関係についてのお尋ねでございますが、法律論といたしましては、私どもがたとえ何日前に請求をいたしましても、その日に裁判官が決定をされるという必要はないわけでございまして、請求の日と決定の日はおのずから違っておってもいいわけでございます。ですから、今島田局長の御答弁にございましたように、最近におきましては決定が当日または前日ぐらいで行われておるということはそのとおりだろうと思います。私どもも、しかしながら延長いたしますには、委員も御承知のとおり、訴訟法上に定められております理由を明記してそれを疎明する必要があるわけでございますから、そういった理由が発生する時期に至りませんと延長請求ができないわけでございまして、私どもの経験によりますと、大体前日ないし前々日ぐらいに勾留延長請求をするのが通例の取り扱いであるというふうに認識をいたしております。
  20. 小森龍邦

    小森委員 かなり努力をされておる跡を感じ取らせていただいておりますが、可能な限りお互いの土俵というものをある程度、ぎりぎりのところというか定まったものにしておいて、そこで職務を一生懸命果たしていくということも相手方の人権を守る上で大事なルールだと思いますので、その辺はひとつ一層意を用いて努力をしていただくようにお願いをしておきたいと思います。  そこで、時間の関係がありまして急ぐのですが、ほかの問題に入りたいわけですが、もう一点だけ、逮捕状関係してお尋ねをしておきたいと思います。  逮捕状を請求するということは、相当の理由があって合理的な根拠がなければならぬことは法律的に明らかでございますけれども逮捕状を請求して逮捕して勾留にまで至って、なおかつ最終的には警察署の留置場から出してもらって、警察署の正門のところで、いやごめんなさい、御苦労さんでしたな、それじゃこれであなた帰んなさいというようなことでやられるのが一番つらいのであります。そうかというて、無理やりに罪を着せられたら余計いかぬのですけれども。  逮捕状を出してそれを執行してそうやった、しかしなかなかきちっと犯罪の事実を突きとめることができなかったということは、また一面では、関係ないのにつかまえられたということも理屈としては成り立つわけであります。その辺のところが数字的に、逮捕はしたけれども釈放せざるを得なかった—─去年私は一つの例を出してやりました。余り具体的な事件に立ち込むというのは幾ら国の政治の場面でも多少は自粛しなければならぬ点がありまして、後には一般論に変えてやったのですけれども、きょうは全く一般論で、要するにそういう逮捕された者が、今日はまあごめんつかあさい、御苦労でしたのうというような格好で、そこで釈放される者がどれぐらいの比率になるのか。  これは、私はどうしてこういうことを尋ねるかというと、厳密な意味において人権を守るために、将来の我が国の裁判あり方なりこういう警察、検察の捜査のあり方などについて、いろいろな考え方を私なりにまとめなければなりませんのでそういうことをお尋ねするのですが、どういった割合になっているのでしょうか。
  21. 井嶋一友

    井嶋政府委員 それでは、本日は「検察統計年報」という統計によりまして内容を御説明申し上げます。  平成元年のデータでございますが、検察も直接逮捕することがございますから、警察及び検察におきまして逮捕された被疑者の総人員は、平成元年におきましては九万四千八百十七人でございます。この人たちが最終的に検察におきまして不起訴処分となった数でございますが、それは二万九百四十二名でございまして、率にいたしますと二二・一%でございます。  委員先ほど申されましたように、これは逮捕の数でございますが、警察に逮捕されましても検察庁に送致される前に釈放される数もございますから、今度は逮捕に引き続いて検察官の請求によって勾留状が発付された被疑者の数について、これは内数になるわけでございますけれども説明いたしますと、逮捕に引き続いて勾留されました被疑者の総人員は、七万七千百八十六人でございます。  これに対し、この者のうちどういう処分になったかという内訳をお尋ねでございますから御説明いたしますと、起訴処分が五万四千三百三十三人でございます。それから不起訴処分が一万五千三人でございます。この不起訴処分の一万五千人の中は、起訴猶予が一万一千五百、嫌疑不十分が二千五百、その他一千と、大体こんな数になるわけでございまして、逮捕され勾留されて不起訴になる数が今申しましたように一九%、約二〇%近くあるわけでございますけれども、その中身は、必ず起訴するというものではなくて、起訴猶予の運用あるいは証拠が必ずしも十分でなかったといった判断で不起訴になっておるもの、そういったものもあるわけでございます。
  22. 小森龍邦

    小森委員 概略の状況はわかりました。  それでその中に、皆が皆ではないけれども、ごく少数の人が、十分に防御対策ができず、俗に言われる無実の罪に落とされるというようなものも、これは神わざでない限りにおいてはあり得ることだと思います。そういうことでお尋ねをしたいのは、我が国の裁判制度は、そういう被害というか犠牲を最小限度に食いとめるために、裁判官法律の知識と裁判官がそこに至るまでに幼少の時代から培ってきたいわば人間としての常識とか教養に基づく良心とかいうものによって判断をされるわけですけれども、私が思うには、勉強を一生懸命やられますからね、どうしても専門的なことへ集中されます。したがって、つい世間一般が知っておる常識を知らないということもあり得ることだと思います。  立場は変わって、例えば私らのような国会議員の場合、質問の準備をするとかあるいは大変大きな政治課題と取り組んでおるときには、そのことばっかり考えておるから、私よくあることなんですけれども、議員会館で自分の部屋だと思うて隣 の部屋へ入って、あれ、きょうはちょっと状況が違うなと思って、ああ済みませんと言うて出るような場合もあったりする。それはごくささいなことなんですけれども、もし裁判官が常識が足りなくて間違った判断をするような場合には、これは相手の権利とか義務に大変大きい関係を持つわけであります。そこで私は、裁判官法律的専門的知識と、その時代の一般の国民の常識的な判断をかみ合わせて一つ判決を導くという手法が、先ほどお答えがございました欧米のいわゆる陪審制度ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、我が国も一時期、陪審制度が活用された時期があったわけでありまして、その経過に照らして、どういうわけでこの陪審制度が、休止というのか中止というのか、その法律用語はよく知りませんけれども、今それが行われていないのか、この点ひとつお答えをいただきたいと思います。
  23. 井嶋一友

    井嶋政府委員 陪審制度につきましては、委員指摘のとおり、大正十二年に陪審法という法律が成立をいたしまして、一部名簿作成等の事務が昭和二年から、そして実際に陪審制度が施行されたのが昭和三年から実施されておるわけでございまして、戦前の刑事司法の重要な制度として存在したわけでございます。しかしながら、後に説明いたしますような理由によりまして、昭和十八年に陪審法ノ停止ニ関スル法律という法律によりまして陪審法はその施行を停止するということになったわけでございまして、昭和十八年以降は陪審法そのものはワークしておらないというのが現実でございます。  その十八年の停止ニ関スル法律が提案されましたときの提案理由説明がございます。私ども、もちろん戦後の教育を受けた者でございますので、身をもって陪審をやったわけでございませんから全く実感がない説明になるわけでございますけれども、提案理由説明によりまして要点を御説明申し上げますと、「陪審ノ評議ニ付セラレル事件ハ逐年逓減シ、全国ニ於テ最近数年ハ、僅カニ或ハ一件、或ハ三、四件二過ギヌ」、これは一年間でございますが、そういうような激減の傾向にございました。その上に、この陪審員資格者名簿及び陪審員候補者名簿を調製する仕事が市町村の職務になっておったわけでございますが、非常に負担がかかるということがございまして、事件の割にはそういった負担がバランスがとれておらないというようなこと、それから陪審をとります場合には陪審員の出頭が必要になるわけでございますけれども、相当多数の方々を証人として喚問するといったこともございまして、時節柄繁忙であることを考慮すると、とてもこの制度を維持することはできない、こういったような理由で提案がされておりまして、停止をされたわけでございます。その後復活されておりませんけれども、それは、やはり昭和三年から十八年まで施行いたしましたいろいろの実績を踏まえまして、現在に至るまでこの措置が停止されたままになっておるということだと考えております。
  24. 小森龍邦

    小森委員 私の調査したところというか、これに関する書物によって調べてみたところによりますと、確かにこの陪審制度が停止をされる前年とか前々年度は、本当に一件か二件程度しか活用されてなかった、こういう事実がございます。しかしながら、この制度が行われるようになりましてごく初めごろは、七十件とか六十件とか、そういう件数でもって活用されております。これは昭和五年、一九三〇年七十一件、三一年、昭和六年は六十二件というような数字が出ておるわけでありまして、まだ国民の間に十分にそういう法律知識がないときでも最初ごろそう使われたということは、その後裁判所なりあるいは捜査側なり、これは表裏一体をなして物事が進みますが、要するに我が国の国の側がこれに対して次第に冷ややかな態度をとってきたということとの関係はないでしょうか。そういう点もちょっとお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  25. 井嶋一友

    井嶋政府委員 委員ただいま御指摘のように、昭和三年から始まりまして、一番ピークのときは昭和四年百四十三件といったものが陪審に付されておりますが、五年が六十件台、八年が三十件台というふうにだんだん減ってまいりまして、最後の十四年、十五年、十六年、十七年はもう一けた、四件、一件、二件といったような状態になるわけでございます。  この陪審制度が不振に陥ったといいますか、不振になった原因は何かといったようなお尋ね、どのように認識しておるかということのお尋ねでございますが、これも、私は全く経験したわけではございませんので、書物その他によります説明を御紹介するにとどまるわけでございますけれども、陪審法自体が抱えております制度的な問題点がまずあったと言われておるわけでございます。  特に非常に大きな問題は、陪審答申、つまり陪審員が評議をいたしました評決結果、答申につきましては、まず裁判所を拘束しないという制度になっておったわけでございます。したがいまして、陪審の評決が出ましても、裁判官は何回でも再度陪審を構成して評決を求めるということが可能であったわけでございまして、裁判所に対する拘束力を有しなかった。そして今申しましたような、陪審の更新制度と申しますが、そういったものがあって何回も同じことが繰り返されたというようなことが一つあったわけでございます。それから、事実誤認を理由といたします控訴ができなかったということでございます。それから、いわゆる重要な事件、特に思想事件などが陪審の対象外とされておったといったようなこと、それから職業裁判官に対する信頼と申しますか、いわゆる国民の意識が、仲間に裁かれるというよりも、当時は天皇になったんでしょうか、天皇の名における裁判官に裁かれた方がよいというような意識といったようなものがあったといったことも指摘されておりますし、それから、非常に多くの証人を喚問いたしますので訴訟費用の負担が非常に大きくなったということも言えるわけでございます。  一番肝心な陪審制度を採用した目的は、誤判を防ぐと申しますか、そういったところにあるわけでございましょうが、そういった意味の無罪といったものが統計的に必ずしもたくさん出たわけではないといったようなこと、結局当時の時代背景といったものがあるのだろうと思いますけれども、そういったようなことが総合いたしまして、この陪審制度というものが逐年評価を下げてまいりまして不振になったということだというふうに言われております。  現在どうかということについては、また別途お尋ねがあるかもしれませんから、お答えいたします。
  26. 小森龍邦

    小森委員 御答弁を聞かせていただいておりまして、幾つかの問題点が挙げられたわけでありますが、それをもう少し要点を絞って、私が自分の頭でまとめてこうではないかという感じを持ったことを申し上げて、もう一度またそれに対するお答えをいただきたいと思うのであります。  例えば選挙違反とか治安維持法の事件、つまり人権に非常に深い関係があるなと思われるものがこの陪審制度から除外をされたということ、あるいは先ほどお話がございました、裁判官の判断と一致するまでは陪審の更新が裁判所側裁判長の方からできた、しかし一たび決まれば事実誤認で控訴できないというような時代の制約がございまして、つまり、その時代の人権感覚というものの低さが災いをして、勢い我が国の陪審制度というものは非常に水準の低いものであった。そのために、初めはぐっと国民の側から飛びついていったような格好になったわけだが、次第に、どうもこの陪審制度というのは我々の本当の権利を守るものではない、弁護する側からいっても、最終的に控訴できないことになると一か八かの勝負になるからというような気持ちで、弁護士の方もそういう指導をなさったのではないかというふうに思うわけであります。  それから、もう少し勘ぐった言い方をさせていただきますと、大正八年に原敬内閣のときにこの陪審制度計画したけれども、これが不発に終わって、そして原敬首相が暗殺をされた。その後 にこの制度というものが衆議院で法律が成立しておる。何だか、やはり日本の国に、そういう民衆の英知を吸収するというものに対して、大変な反対的な動きというものが作用しておったのではないか。したがって、勢いそういうものが作用しておれば発足する陪審制度自体が民権、民衆の方の権利というものを制約したような形で、妥協的な産物としてできたのではないか、こんなことを私は感ずるわけであります。  そして、先ほどお話がございました、昭和十八年といいますから、一九四三年三月三十一日で法律八十八号をもってこの陪審法は休止状態に決められた。しかし、そのときの法律をちょっと調べてみると、「陪審法ハ今次ノ戦争終了後再施行スルモノトシ其ノ期日ハ各条ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム」私の調べたところではこうなっておるのです。そうすると、その不完全なもので、自然に枯れ木が枯れるように枯れさせていって、だから最後は一件か二件しかなくなって、そして戦時、地方自治体の事務などそんなことを構っておることはできないというような雰囲気の中でこれを休止させ、戦争が済んだらもう一度これをやるのだと言いながらずっとその後はこれをサボり続けてきたのではないか、私はそう思うのですけれども、その点はどういうお考えでしょうか。
  27. 井嶋一友

    井嶋政府委員 ただいま委員から陪審事件の範囲についてお触れになりましたので、なお正確に御説明しておきますと、この陪審事件に付されたのはもちろん刑事事件でございますけれども、その付す事件につきましては除外規定がございまして、大審院の特別権限に属する罪、それから刑法の中の皇室に関する罪、内乱に関する罪、外患に関する罪、国交に関する罪及び騒擾に関する罪、これが全部除外、それから治安維持法の罪、軍機保護法の罪、陸海軍刑法の罪、その他軍機を犯した罪、それから選挙法違反の罪、こういったような一定の罪に当たるものは陪審不適事件として陪審の評議に付さないこととなっております。  さらに、被告人は、法定陪審事件と申しまして死刑、無期の懲役に当たる事件は必ず陪審に付す、それから長期三年を超える有期懲役に係る事件地裁の管轄に属する事件は被告人が請求した場合に陪審に付すという、請求陪審と法定陪審と二つあるわけですけれども、被告人がこれは辞退を表明いたしますれば陪審に付さない、また、公判廷におきまして公訴事実を認めた場合にはもちろんのこと陪審の評議に付さない、こういったような形で陪審事件の範囲が定められておったわけでございます。今委員が御指摘のように、極めて当時の時代の背景を引きずったような形になっておると今からは言えるかと思っておるわけでございます。  そこで、先ほど十八年の停止のときのお話がございましたが、委員指摘のとおり、停止の法律の附則三項に、今委員がお読みになりましたように「今次ノ戦争終了後再施行スルモノトシ」、こう書いてあるわけでございます。極めて理屈っぽく申し上げますと、「スルモノトシ」というのは、必ずするということではなくて、法律用語といたしましては、そういうのが建前であるけれども合理的理由があればそれに従うというような意味であるというふうに講学上言われております。それは理屈でございますからそれ以上申し上げませんけれども委員指摘のように、敗戦後新憲法が成立をし、新しい民主主義の社会が構築されておる中で、今のような時代の背景を引きずった陪審法をそのまま復活する道理もなかったのではないだろうかと思います。そして同時に、非常に混乱の時期に、市町村に非常に大きな負担をかけるといったようなこの制度を復活させるということにつきましても、当時の政府の担当者は前向きになれなかったのではないだろうかと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、委員の御指摘はいずれそういう御議論かと思いますけれども、やはり現在の社会情勢、現在のような民主的な制度における陪審といった、民間のあり方といったものが考究されるべきで、旧陪審法といったものは、私の極めて個人的な見解でございますけれども、これがそのまま復活するといったような世の中にはならぬ方がいいと思っておるわけでございます。
  28. 小森龍邦

    小森委員 名前だけで陪審制度といえば、私はもちろん陪審制度は我が国も採用されるべきものである、こういうふうに思っておるのですけれども、先ほどの答弁のように、もとと同じようなものならば弊害もかなり大きかろうと思いますので、また後ほど最高裁判所の方がどういうお考えを持っておられるかお尋ねをいたしたいと思います。  しかしその前に、私が今回のこの定員法をめぐってこういう質問に次第に中身が進んできたということは、いかにして裁判というものが事実に即した合理的な判断をするかということにお互いが知恵を絞らなければなりませんので、こういうところに論理を進めてきたわけであります。そういうこともありますから、裁判所はやはり要求すべき予算は要求しなければいかぬということを冒頭に申し上げたわけでございます。  かつて高等裁判所裁判官をされた方で、後にまた弁護人として活躍された非常に著名な方でございますが、その人の言われておることを私は聞いて感銘を深くしたことがあるのでありますが、要するに有罪か有罪でないかの判断をするのは、日常生活の経験上の常識に反することが一つでもそこに介在をしておればそれは有罪とすべきものではない。なかなかうまいことを言われておると思います。  そうなりますと、裁判官といえども人でありますから、非常に忙しくたくさんの裁判を担当しておるということになれば、つい判断が粗雑にならざるを得ない。私どもも、それは裁判ほど厳密なことはやらないけれども、いろいろな人から相談事を受ける、あるいはもめごとの相談を受けるときに、どっちがいいとか悪いとか、中へ入る者として物を言わなければならぬことがあります。忙しいのがメジロ押しに二つも三つもありますとついいいかげんな、自分の良心に反するようなことはやらないけれども、まあまあいいかげんなことになってしまうということもありますので、いかにして裁判官の判断というものを、厳密な刑事訴訟法の、法律の手続なり法律の考えておる順序に従ってやるということと、また常識にかなった判断がそこに裏打ちをされるかということが大事でありますので、実は陪審によってそれは補うべきものではないか、こういうことを私痛感しておるわけであります。  私の調べたところによりますと、外国ではよくこの陪審制度についてのいわば実験的な研究などが行われておるようでありまして、これは大分前の話でありますけれども、オックスフォード大学の研究報告書によりますと、三十ほどの事件を模擬の陪審を大学でやらせて、本当の陪審と出てきた結果を突き合わせてみたら、三十が三十ことごとく一致しておった、こういう研究成果を発表しておるのがございます。それは、おおよそ人の常識はそんなにかけ違ったものではないという意味であろうと思うのです。ほかにももっと精度の高い、うんと精度の高い研究も行われておるようであります。  そういうことを思うと、最近問題になっております、後にまた再審制度のことについてもお尋ねしますけれども、再審をして死刑から一挙に無罪、あす命を奪われるかもわからぬというようなことから無罪、しかしこれは、防御する、再審ということをやらずにあきらめたらいずれは死刑によって命を落とさねばならぬ、こういうようなこともありますので、何とか司法研修制度でいろいろやっていただくということ、法律に精通するということと、それからいわゆる裁判官の良心という言葉でまとめられると思うのでありますが、円満なる普通の人間の常識というものが裏打ちをされることが大事であろうと思うのであります。  そこで、先ほど来いろいろとお尋ねをしておるわけでありますが、最高裁の方では、この陪審制度ということについて現時点で何らかのお考えがございましょうか、お尋ねをいたします。
  29. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 最高裁判所といたしましては、専ら裁判、現在の裁判をさらに一層国民理解しやすい身近なものにして、そして国民の信頼を得ていくためにどうしたらいいか、そういうような観点から、刑事裁判の分野においても、現在の制度、現在の裁判の進め方につきまして、これを固定的に考えずに何か改善していく方向はあるのか、そういった観点から、陪審あるいは参審の制度についても目下基礎的に研究を進めておる段階でございます。
  30. 小森龍邦

    小森委員 ますますその点を考えていただきまして、さらによいものになるように、私は陪審制度だと思いますけれども陪審制度を従来のような、ああいう権力的に少し民間の力が抑えられたような中途半端な形でなくて、もう少し前進した陪審制度で、裁判官の、犯そうとして犯した過ちではないけれども、人間のなせるわざでありますから、そこにいろんな問題が生まれてくるわけでありまして、それを補う方向というものを一層追求されますことを強く要請をしておきたいと思います。  そこで、陪審制度の問題はその程度にさせていただきますが、裁判官の常識というのが、前回は同和問題について、果たして裁判官に常識はあるのかな、一般の国民が持っておるぐらいの水準の知識を持っておるのかなということで、私は非常に心配をいたしまして、昨年お尋ねをいたしました。それはしかし研修などをやるということで、どれだけ量的に広がっておるかは存じませんけれども、早速やっていただいたことは事実のようでありまして、幾らかそういうことに対して前進の兆しが見えておるというふうに私は喜んでおるところでございます。  そこで、裁判官の常識ということで、ある事件について私は痛感することがございます。それは、既に判決が確定をしておる問題でありますから事件名を出しても一向差し支えはないと思いますけれども、例の狭山事件のことでございます。  これは後ほどまた論理の発展の段階に応じていろいろ具体的なことを申し上げますが、今とりあえず一つだけ申し上げたいと思いますのは、あの狭山事件というのは、女子高校生、一年生の中田善枝ちゃんというのが、私どもからいえば何者かの手によって殺されたわけでありまして、裁判判決からいいますと、現在千葉刑務所に服役中の石川一雄さんがやった、裁判のストーリーからいえばこういうことになっておるわけであります。  そこで、彼女を殺害いたしまして、二百メートルほど離れた、芋を貯蔵する芋穴というのが田舎にありますが、芋穴に逆さづりにしたという裁判のストーリーがまたあるわけです。五十三キロか五十四キロの彼女を殺害いたしまして、雨の降る日、関東一流の、何にも荷物を持たずに歩いていても滑りこけるようなずるずるした、あれは火山灰なんですか、何かよく知りませんけれども、関東ローム層というんですか、五十四キロの女の子の死体をこういうふうに両手で抱えて二百メートルほど持っていったという自白があり、それをまことそうだと裁判官は認定しているところがあるようであります。それを、判決やそういう審理のときの状況を読んでみますと、石川君が、自分が虚偽の自白をするのをさらに裏づけるというか、もっと迫力のあるものにするために、私はセメントを二俵平気で担いで動きおった人間でありますから、そんなことは、五十四キロのものを提げて二百メートルなんか歩くのはもう平気の平左なんだという意味のことを言っているところがあるのであります。これは、やはり裁判官にわからぬところなんですね。これは、実際肉体労働をやった者でなければわからぬのですね。  私は、青年時代にいわゆる建設業、屋外の作業を十年間ほどやった経験がございます。当時、セメント袋は今日のように四十キロではなくて五十キロであります。これは、浅野セメントも徳山セメントもみんな五十キロであった。五十キロを自分で抱えて背中に、私の体力で乗せることはできます。しかし、これは六十キロになると、昔の徴兵検査前の青年が六十キロの俵を、十六貫の俵を担いで上げられるのは、十人に一人か二十人に一人ぐらいしかいなかったわけでありまして、もう五十キロと六十キロでは随分違ったことになるわけです。私は、その五十キロのセメントを一人で抱えて背中に上げることはできるのだけれども、二俵、つまり百キロをこう抱えていくことはできませんでした。人様にもう一俵五十キロを背中につけてもらって、滑らかにというか、穏やかにつけてもらったら耐える力はありますから、それは三十メートル、四十メートルそれで自分の肩にかけて運搬することはできますけれども、ここに抱えて、こういう形で五十キロを動かすということはできないのであります。それは、五十キロを自分の肌の、この腹の辺へぐっとつけて、この辺にも重量をかけて動けば動けるのでありますが、それでもこの足元がずるずるするところで二百メートルも動かすことはできないのでありますが、裁判官はそのとおり認定しておるのです。これだけでも、もう一つうそがあるわけですね。だから、私はやはり陪審制度で、これは裁判官が複数おられたってなかなかわからぬことで、弁護士が防御しなければいかぬところだと思いますけれども、それは弁護士の先生方も、青年時代に勉強に専念して、そういうことがぴっとわかるような常識というものはなかなか培われていない。というようなことでそこが素通りをしておりまして、大変なうそになっておるわけですね。私は、いろいろな体力のある青年諸君に、実際に五十四キロの人形をつくって、身長、体の体格も同じようなものをつくって、一遍抱えてみてどれくらい歩けるか歩かせてみましたけれどもね。身長一メーター八十、体重八十キロぐらいのいわば巨漢にやらしてみたけれども、やはり十五メートルか二十メートルしたら腕からずどんとそれが落ちるというようなことなんであります。そういうことを考えますと、これはやはり民衆のさまざまな人々の生活体験から出てくる常識、知恵というものが訴訟手続の、きちっとした近代的にもうまとまった訴訟手続の法律的知識に加味されることによって、捜査段階の過ちあるいは裁判段階の過ちというのがかなり克服できるんじゃないか、こういうふうに思うわけでありまして、その点も繰り返して答弁いただくのはいかがかと思いますので、陪審制度というものを近代的、合理的な仕組みで再度日本の裁判の制度の中に登場させるということは、日本の国民の権利を守る上で、人権を守る上で非常に大事だということを強調しておきたいと思います。  そこで、それとさらに今度関係してきますので再審のことについてお尋ねをいたしますが、通称白鳥決定というものが有名になっておりまして、私ら大きな関心を持っておるわけでありますが、再審に絡んでいわゆる白鳥決定なるもの、これは要約して言うとどういうものであるかということを、ひとつお聞かせをしていただきたいと思います。
  31. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 再審の開始をいたします要件といたしまして、刑事訴訟法の四百三十五条、それの六号というものがあります。有罪の言い渡しを受けた者に対して無罪等を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときというのが、再審の請求があった場合にそれに対してその請求を認容し、再審を開始するべき要件でございます。その法律上の要件である明らかな証拠、これの解釈でありますが、明らかな証拠とは、確定判決における事実認定について合理的な疑いを抱かせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠を言う、そしてまた合理的な疑いを生ぜしめるかどうかの判断は、新証拠と旧証拠とを総合的に評価してなすべきものであり、またその判断に際しても、疑わしきは被告人の利益にという刑事裁判における鉄則が適用されるという判断を示したものでございます。要約すればこの点に白鳥決定の意味があるというふうに言われておると思います。
  32. 小森龍邦

    小森委員 日本の司法の制度の中で、この白鳥決定というものは、どういう立場に立とうが、それは今御答弁をいただきました限りにおいては大変合理的な中身を持っておると思うわけでありま す。ただ問題は、そういうふうな一つの立派なことが言われてきて、みんなの知識とすればまことに立派なことを言われているなあということがかなり浸透しておるんでありますけれども、実際は、どういいますか、どっちかこっちかよくわからぬようなことについては被告人に有利に判断をするということを、その他のことと加えて実はそうはならないんだという点も、極めてそこが恣意的に、俗っぽい言い方をすればへ理屈をつけて、そしてなかなか物が進まないということも現実にはあるように私は思います。  そこで、一例を挙げますと、例えばこれはやはり同じ狭山事件を例に出させていただきますけれども、捜査上この事件関係があるとされる万年筆が、十四人、十五人の警察官が二時間も三時間も二回にわたって、わずか十坪か十二、三坪くらいの小さな家でありますが、くまなく、それこそアリのはうすき間もないほど家宅捜索をした結果、二回まで万年筆がなかった、こういうことになっていたのに、三回目に行ったらあった。その間にどういう経過があってだれが置いたかという、私らが疑っていることがあるのですが、ここは法廷の場じゃないからそのことをここでは触れないといたしまして、その三回目に見つかった万年筆というのが、その一回、二回を捜査した捜査官に尋ねたら、わしらはそこを見た、見たけれどもなかった、こういう証言がございます。そして、その万年筆があった十五センチほど横の方に、俗に言うネズミが通り交いする穴がありまして、それへぼろきれを突っ込んでおったのを、ぼろきれまで抜いて見た。ここに万年筆があった、この十五センチぐらいのところの穴のぼろを、一メーター七十センチぐらいのところですから手が届くところでありますから、それを抜いて見た。ここに万年筆があるのが、裁判所は、余りにもありふれたところだから見落としたのであろう。こういうふうな判断というものは、やはりこれは再審制度が、白鳥決定というのが文章に書いたらいかに立派なものであっても、そのとおりに行われずに、何だかんだと、今言いましたように、要するに余りにもありふれたところだから見落としたのであろう。手をそこへやっておいて、十五センチ先のものが自分の視野に入らないかといったら、そういうことは絶対ないわけなのであります。  というようなことがございまして、これは、恣意的に再審開始とか再審開始をしないとかということが行われたのでは、近代の法律の持つ合理性にそぐわない、こういうふうに思うのであります。いや、それは恣意でないという答えを出すのは、答弁は簡単だと思いますけれども、私は、そこの事実をここで議論しても、多くの国民にそれを知らせるということの方がもっと先に大事なことでありますから、そういうことは考えていますが、つまり、再審制度において白鳥決定のようなことをいかに具体的に実行に移すかということでどのような配慮がなされておるか。法律の素人で、この前は逮捕状の請求で判こを押す基準みたいなものはないかということを言いましたが、基準という言葉にもそぐわないかもしらぬけれども、再審ということに関してどのような配慮が行われ、白鳥決定のようなあの精神がどう具体化されるか、裁判官はどういう心構えでそこへ臨むかという点について、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  33. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 再審の裁判であろうとあるいはそれ以外の裁判であろうと、どのような裁判であっても、およそ裁判につきまして、裁判官が恣意によって行ってならないということはもちろんのことでございます。裁判官は、常に公正な判断者として適正な裁判の実現に向けて心がけ、裁判所に提出された証拠等を虚心に、かつ慎重に検討して良心と法律に従って判断を行う、それを旨として絶えず心がけて裁判を行っているわけでございまして、およそ裁判官の中で裁判を恣意的に行っているというようなことは、かりそめにもあってはならないし、また絶対にないと確信しておるものでございます。
  34. 小森龍邦

    小森委員 努力をしておるということは答弁として私はうなずきますけれども、およそそういうことはないということは、これまでの再審の結果から、そういうことがあったから過ちを直すということも行われたわけでありますので、裁判全般を通しては間々そういうことがあるという危惧を私は抱くのであります。  したがって、かなり良識を持って努力をされたことについての例をここでちょっと申し上げますが、例の松山事件、私はこの事件が再審決定されて無罪となったときに新聞で読みまして、ああなるほどなと思ったのです。つまり、松山事件の一番のポイントは、犯人と目された本人の掛け布団の襟当てのところに血痕が付着していたという問題、これが有罪になる決め手になっておったわけであります。しかし、再審の段階では、その掛け布団の襟当てに血痕がついておるからといって、たとえ血液型が同じであるからといって、それで直ちにそれがすぐに犯行と一〇〇%結びつくということは少し疑ってみなければならぬ、こういうふうな、新聞記事ではそう読んだのです。なるほど裁判官は深く物を考えて判断するなと思ったのであります。  その後機会がありまして、これは日弁連の出しました「続・再審」という書物の中にそこを引用しておられるわけでありますが、その血痕の問題について実に鋭いところを判断されておるのに驚きました。四、五行でありますから読みますと、 「襟当てに付着した血痕群は、その付着状況から 推認し得るはずの付着原因、機序」 機序というのは、これは法律用語かもしれません、私はよく意味はわかりませんけれども。どういうのですか、原因と肩を並べるようなものだと思いますが、 「機序を容易に説明し得ないのみならず、その付 着のし方に関しては重要な矛盾や疑問がみられ るのである。少くとも、被って寝たはずの掛布 団の襟当てに血痕が付着したとするならば、裏 側面より表側面の方に濃くまた大粒のものが多 かったり、裏側面の布地にあべこべに付着して いたことは矛盾であり、血痕が襟当てにのみ付 着して掛布団本体や敷布などに付着したとは認 められないのは何故かという疑問が生じるはず であって、これらの点は掛布団から取り外され た襟当てに血痕が付着した、という想定でもと らない限り、容易に解消されないのである。」 つまり、被告人に不利に考えなければそこが説明がつかないことを、まともに考えたらどうもそこのところは原因と結果と因果関係を結びつけることは疑われるべきところだ、こういう判断をしておるわけであります。財田川事件もその程度の厳密さをもってやっておられるわけでありまして、私は深く感銘をいたしております。  それで、昼までの時間も余りございませんから、そのことについて一段落、途中のまとめみたいなことで申し上げておきますが、例の狭山事件は、この衆議院の法務委員会の場所で私どもの先輩議員がいつか、狭山事件について、今血痕の話が出ましたから、ルミノール検査のことを尋ねたことがございます。最初尋ねました際には、多分法務省刑事局の方からの御回答であったかと思いますが、あの特定を、裁判のストーリーの中で犯行現場と特定しておる狭山の雑木林の杉の木のところで、何しろここにたくさんこんな傷を、中田善枝ちゃんは頭が割れておったわけでありますから、おおよそ牛乳瓶一本ぐらいの血はあそこで流れておるだろうと学者は言いますが、そこでルミノール検査をやりましたかと言ったら、やりました、ありますかと言ったら、あります、こういう回答であったということを私聞いております。そうしたら、その後次の段階では、あれはあったと言いましたがありませんでした、あそこでルミノール検査はしていません。普通は、犯行現場を特定するのに血痕の反応が出るかどうかということをしなければ、第一そこを犯行現場と特定することは難しいと思うのでありますけれども、その一番決め手になるものを、やったと言い、次のときはやらなかった、だからないと言い、そうい うことになっておるわけであります。厳密性ということを、事件事件によって、あるいは裁判官裁判官によって、その程度の手抜きのあるような、非常に濃密な判断をする場合とそんなことがすすっと捜査段階でも素通りをするし裁判官の判断でも素通りをするということがあるから、私は再審というものに対して、どういうふうな厳密さを持って、裁判官が心構えを持って、白鳥決定を本当に具体化するのだという考え方を持っていくかいかないかということが大事だということを申し上げておるわけであります。  委員長のお計らいをいただきますが、ちょうど十一時半過ぎですからここで一区切りにして、冒頭にまた回答をいただくということでよろしくお願いいたします。
  35. 伊藤公介

    伊藤委員長 この際、休憩いたします。     午前十一時三十一分休憩      ────◇─────     午後一時六分開議
  36. 伊藤公介

    伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小森龍邦君。
  37. 小森龍邦

    小森委員 午前中の答弁を先にひとつお願いしたいと思います。
  38. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  白鳥決定が出ました後には、先ほど申し述べましたこの決定の趣旨裁判官において十分踏まえまして、これを前提に再審請求事件処理しておるところでございます。例えば、著名事件で再審開始決定がなされたものとして、いわゆる免田事件、松山事件あるいは財田川事件、徳島ラジオ商殺し事件また梅田事件島田事件、いずれもこれらはすべて白鳥決定以後になされたものでございます。
  39. 小森龍邦

    小森委員 刑が確定をし、服役をしておるときに再審請求をしたものは、例えば死刑の判決を受けておるものは、それとは関係なく実際の刑の執行があるのか、あるいは再審の請求をしておるものについては、究極の意味においては黒白がついていないわけですから、そこは特別の配慮をするのか、その点はいかがでしょうか。
  40. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お答えいたします。  死刑の執行との関連につきましては、突然お尋ねをいただきましたので、ちょっと十分検討いたしておりませんが、法律的には、死刑の執行と再審請求手続中であるということとは、関係ないといえば関係ないわけでございます。しかしながら、やはりその再審の訴えが提起され、他方において真摯に審理が行われておるというような事実がある場合には、その状況も判断しなければなりません。と申しますのは、死刑の執行をいたします場合には記録に基づきまして詳細な検討をするわけでございますが、再審請求が継続しております間は記録が手元にないといったような事実上の問題もあるわけでございます。
  41. 小森龍邦

    小森委員 私もまだ詳細に調べておるわけではありませんけれども、書物によって読んで、意外な感じをしたことが一つございます。それはまた別な機会にお尋ねをいたしますけれども事件名は藤本事件という事件名でございまして、再審の準備をしておったと読んだか、したと読んだか、余りそこは定かではありませんが、つまりその防御を行う準備をしておったやさきというか、ほぼその手続に近づいた段階というか、あっけなく処刑をされて、その事件はついに終わったというのを読んだことがございまして、気がかりになりますから、突然のことでありますけれどもお尋ねをしたわけです。またそういう関係につきましてはいずれ機会もあろうかと思いますので、次のときにお尋ねをしたいと思います。  そこで、また再審に戻りますが、結局、白鳥決定のような、極めて文章に書くと合理的なことが出て、その事件はいろいろとそれに沿った線で行われておる大きな流れというものを私も感じ取っておるのでありますが、先ほど私が申し上げましたような事実の認定というものが、明らかにどう考えてみても納得がいかない。つまり、自分が手を伸ばしてネズミが通る穴のぼろきれを抜き取った十五センチこっちに万年筆があるというのが、延べ三十人ぐらいの警察官が二回にわたって二時間半とか三時間とか、その小さな家の中を調べたわけでしょう。それが、なかったものが三回目に突然出てくる。突然出てくるその二、三日前に、実はそういう供述をとっておる。あそこへ置いたという供述をとっておる。これは結局、供述を先にとってもしそういう事実をつくることができたとしたら、それは自白というものと自白を補強する証拠との関係で大変なことになる。そういうことで、むしろ前二回の捜査の状況というものに真実があると見なければならぬと思うのでありますが、こんなことが全く、簡単に言うと、すぐわかるところだから見落としたのだろう、気をつけて見なかったのだろうというようなことでいけるのかどうか。非常に具体的な事件ですからお答えにくいかとも思いますが、その辺はどうでしょうか。普通ならばそれは見落とすわけはないのですからね。
  42. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 委員の御質問が非常に個別、具体的なケースに触れた御質問でございますので、その点についてはお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、午前中に委員が御指摘のように、事実認定において健全なる常識、一般社会人が持っていなければならない良識というか常識というか、そういったものが裁判官にも必要である、それは大いに私どももそのように思っておりますし、そういう健全な常識を養うべく大いに努力を重ねておるつもりでございます。
  43. 小森龍邦

    小森委員 つい話が具体的な事件にかかわってまいりましたので、そのことについてのさらなる答弁を求めることは、この辺で先ほどの論理の関係は終わりますが、具体的な事件名は明かさずに申し上げますけれども、これは捜査と判決との関係でございまして、私もそれは非常に矛盾だと思っておることがございます。  これは私が傍聴して聞いておったのでありますが、死刑とか無期とかという、本人にとっては人生が全くなくなるかあるいは人生がむちゃくちゃに拘束されてどうにもならなくなるような事件において、まだ第三審、最終判決に至る前に、捜査側が証拠だと思っておるものをどの程度保存しなければならない義務があるのか。つまり、その証拠というものは途中で勝手に廃棄処分にしてもよいのか、その点お答えをいただきたいと思います。
  44. 井嶋一友

    井嶋政府委員 訴訟記録の保存の問題であろうかと思いますけれども訴訟が確定するまでの間にその書類を処分するということはあり得ないわけでございまして、確定いたしました訴訟記録は、確定訴訟記録ということで大事に保管する規定がきちっとつくられております。
  45. 小森龍邦

    小森委員 私もよく法律などを勉強して、私自身の知識としてもまとめ上げたいと思いますが、ある証拠品を次回の法廷に出せという、裁判長の検察側に対する裁判進行上における指揮といいますか、そういうものがございました。もちろん弁護側がその証拠を見たい、こういうことでございまして、次回の裁判ではそれがいかなる成り行きになるかと思って、私は大変大きな関心を持って傍聴席に入りました。すると、あの出せという命令の出た証拠品は既に廃棄をしております、こういう場面が実際ございました。しかし、まあそれはきょうここで言うと、先ほど私は具体的に立ち入らないということを言いましたから、またそれは別の機会に幾らでもそういうことについては批判もできるし、また関係行政庁にそのことを私は言えると思いますのではばかりますけれども、先ほどお答えになったことと私が事実体験したこととは大変大きな違いがあって、しかも裁判は進行しておる、こういう問題がございますので、ちょっとつけ加えて申し上げたような次第であります。  そこで、陪審とも再審ともいろいろ関係があるわけでありますが、結局、社会的な常識に基づいて、それに法律の専門知識というものが加味され て初めて正当な、公正なる裁判が行われるということになってくると思うわけでありますが、その常識というのは、陪審制度等によってやればある程度民間の生活の中に根差した常識というものが反映をされるわけであります。しかし、非常にわかりにくい問題がある。  それは、我が国社会のいろいろな問題がありまして、例えばこの間海部総理が本会議で森井議員の質問に対して引用して言った言葉に、憲法第十四条の一節がございました。憲法第十四条とは言いませんでしたけれども、つまり、人種、信条、性別、社会的身分または門地により差別は許されないので、これからも一生懸命人権の問題をやりますという総理の答弁でございました。その人種、信条、信条というのは、それぞれみんな信条が違うわけでありますから、これはかなり一般的な一つの概念としてまとめ上げられますが、人種のことになるともうかなりわかりにくい。  例えばこの間まで法務大臣をなさった梶山さん、現在自民党国対委員長をなさっておられますけれども、私は、なかなかわかりにくかったと思うのであります。人種に対してどういうふうな言動がどういうふうに相手の心境にこたえるか、あるいは差別的になるかということがなかなかわかりにくかったと思うのであります。しかし私は、非常にまじめに対応されて答弁をされたと、あのときの感触は受けておるのであります。それは要するに、この人種差別の問題についてそこまで深く今まで考えなかった、差別の意識がなかったと言われればうそになるという意味答弁がございまして、しかも厳しく指摘されて人間というものはわかるものだ、こういう意味のことを言われまして、私もここで議論したかいがあった、こう思っておるのであります。要するに、わかりにくいというのは、社会的な常識の中でも、その社会とかその国家とかの中にあるいわゆるマイノリティー、人数として非常に少数の者の立場というのは多数の者にわかりにくい、こういうことがあろうと思います。  したがって、これは捜査の場合も、あるいは裁判を行って判決を出す場合も、そのわかりにくいことを、一般的にも常識でわかりにくいことは知恵をみんなから吸収しなければいかぬのでありますが、特にマイノリティーのわかりにくい、そのマイノリティーが持っておる社会的事情なり問題点というのは、何とかしてこれをわかるように努めなければならぬと思うのであります。そのために去年私の方から指摘させていただきまして、最高裁も早速取り組みをされて、全国裁判官の幾らかの方に同和問題の学習会をしてもらった、こういうことなのでありますが、今私の言っている理屈、理論ですね、つまりわかりにくいマイノリティーの問題、そこの社会的事情などがよくわからないと、一般的に見たらそれが悪であるというふうに判断できても、その事情に立てば悪でないという場合もあるわけです。そういう点どのように留意をされておるか、その辺のところをお尋ねします。  そして特に、これはきのうお願いしておきましたが総務庁の方からも、そういった観点というものは、総務庁は同和問題など取り組んでおられるし、人権擁護局長も、これは自分の専門とするところでありますから、自分の専門と言うのは、人権擁護局の主たる任務でありますからね、そこらの考えはどうか。これは、行政府裁判所との関係で私はごちゃまぜで尋ねておりますけれども、それは、行政府の考え方というものがある程度それに対応できるような水準に到達しておれば、全体、相互刺激でそこらがうまくいくようになると私は思うからそんなことをお尋ねするのでありますが、ひとつ、その辺、お答えをいただきたいと思います。
  46. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 昨年の三月二十七日の本委員会におきまして、小森委員からマイノリティーの理解の問題、それから裁判官に対する人権教育の問題について御指摘をいただきました。その際、私どもは、憲法における基本的人権の尊重、中でも法のもとの平等、個人の尊厳というものを最も重要な裁判規範として職務に従事しているということを申し上げたわけでございます。その後私は、司法研修所等におきまして、新しく判事補になった人たち、それから判事補十年を経まして判事になる人たち、それからまた新しく裁判長になった人たちにお話をする機会がございました。その際は、必ず小森委員から御指摘のあった点を御紹介し、法のもとの平等、個人の尊厳といった基本的理念を常に忘れることなく、銘記しながら職務に従事するよう自覚を促してきたわけでございます。  そのほかにも、今委員から御指摘のありましたように、昨年の五月に司法研修所におきまして、裁判長クラスの判事を集めました研修会におきまして、法務省人権擁護局長を講師に迎えまして、人権擁護について講義をいただいたわけでございます。  そのほかにも、同和問題の手引といったものを全国裁判所に配布いたしまして、この問題を正しく理解するよう私どもの方で努めているわけでございます。
  47. 篠田省二

    ○篠田政府委員 憲法十四条の精神が極めて重大であるということは、委員指摘のとおりでございます。私ども人権擁護局の仕事をするに当たりましては、この精神を基本に据えてやってまいりたいと思っておりますし、現にやっているつもりでございます。
  48. 萩原昇

    ○萩原説明員 せっかくのお尋ねでございますので答弁させていただきますが、私ども地域改善対策室ということで、今のお尋ね、私正確に理解してないのかもしれませんが、人種問題ということとのかかわりということであったというふうに理解しております。そういう意味では、地域改善対策室は、地域改善に関することが所管でございますので、政府部内のそういう行政面に関する連絡調整を行っておるということでございます。ただ、人権に関する問題ということで、共通の認識というか、共通の心構えで行政に当たらなければいけないとは思っております。
  49. 小森龍邦

    小森委員 私の質問が余りよくなかったようで十分に伝わっていないようであります。私が申し上げておりますのは、人種、信条、社会的身分または門地により、そのことをもって差別をしてはならないという憲法の規定がありまして、裁判の方では、もしそこに予断と偏見があれば、一つの事実が、よいものが悪く見える。捜査の段階でも、もし偏見があればよいものが悪く見える。ちょうどプリズムを通して見れば、真っすぐなものがねじれて見えたり、細長いものが分厚く見えたりするのと同じであります。  そういう意味で、例えば我が国の社会的身分、この中の最も大きな課題は、これは法務大臣も十分に御承知をいただいておると思いますけれども、やはり行政用語で言えば同和問題、運動論的に言うと部落問題ということになりますが、その社会的身分というものが江戸時代どうであって、今日の歴史とどうつながっておるかということがはっきりわからなければ、例えば部落の中の子供たちが高校の中途退学率が高いということになると、ああこれは怠け者集団か。これは、偏見で見たらもう怠け者集団と見えるのであります。しかし、そこに至るいかなる社会的障壁があるのかということを考えたら、むしろその子たち人権というものをどう守り、教育権をどう保障しなければならぬか、これは全く逆の判断になるのであります。そういう意味で、要するにそれは人種であれ、社会的身分であれ、門地を問題とするのであれ、とにかくマイノリティーという立場に置かれておる者に対して一体人権の角度からどんな考えを持っておられるか。  これはまだ私の質問がなかなかおわかりにくいかと思いますので、ここに一つ引用すべきものがありますから申し上げますが、これは、以前人権擁護局長とこの本をめぐって議論したことがあるのです。しかしそのときは、私の感じでは人権擁護局長は逃げの手を打った、これは議事録を見れば。また私いつか続いてそれはやろうと思っていますけれども、大体ここに展開される物の考え方 が人々の前に推奨できないようなものを、法務省人権擁護局内人権実務研究会がそれを編さんして出すということ自体がおかしいのですからね。法務省が、この思想は正しい、ところが中に正しくないのもあるという意味のことを言われたんですけれども、こういうことを私は問題にしたいのです。  この中の京都大学教授の阿部先生という方が書かれておる文章、「人権意識について」ということで書かれておりますけれども、どういうことを書かれておるかというと、私はまことにごもっともだと思って、むしろこの文章を読んで勇気づけられたのでありますが、「人権というのは人間の権利でして、」当然ですね。「決して人間の中の一部の人の権利ではありません。」これも当然ですね。「しかし多数者、あるいは社会的・経済的な強者の人権とは、多数者であることによって、また社会的・経済的な強者であることによって守られています。」普通の常識で守られているのです、それは。「これに反して、社会的・経済的な弱者、あるいは少数者、そういった人々の人間としての権利は、とかく十分に認められにくいといった傾向を、残念ながら認めざるをえません。」そして、十行か十五行ずっと書いて、一番最後に結論的にこう書いてある。「あるいは人権のための闘争をいうときに」、これは裁判と置きかえてもいいのですが、あるいは人権のための取り組みと言ってもいいですが、「一般的に権利者を考えるのでは不十分であるということに気づきます。」権利というものを一般的に考えては不十分だと思います。その人たちが置かれている社会的な被圧迫の状況というものをちゃんと計算の中に入れて、そしてこれを解析をして、その上で事実を見なければならない。私は、京都大学の阿部先生の書かれた文章というのは、そういうことだと思うのですね。  そうすると、少しばかり離れるようですけれども、物の理解を進めていくために私は質問を申し上げるのでありますが、これはちょっと離れるからこの一問で終わりますけれども、総務庁の室長にお尋ねをします。  昨日でしたか一昨日でしたか、社会党の武藤山治先生が予算委員会で、総務庁長官に尋ねました。それは、未指定地域の一千ヵ所の問題であります。どういう答えであったかというと、ごくごく極端に言うと、今まで何もしてくれるなという意思表示だから、それを今からするということはそこに新たな差別を生む、こう言っているのです。なぜしてくれるなという、事実そういう声があることは知っていますよ。私は、広島県の四百三十部落のほとんどを掘り起こすためにかなり期間をかけて、一年も一年半もかけてほとんど掘り起こして、そういうことを行政に向けて要求できるような意識水準にまで高める努力をしてきたのです。だから、手の届かないところでたくさんあることは知っていますよ。しかし、その人たちがなぜほっておいてくれと言うか。これは要するに、その人たち、マイノリティーの立場で痛めつけられてきた者の心境じゃないですかな。私ら子供のときに現にそう思ったですよ。きょう部落問題が話題になったらどうしようか思うていらいらしましたよ。それは、自分がそれを解決する力がないし社会的にまだバックアップする力がないとき、あるいはそういうバックアップする勢力と隔絶された状態にあった場合には、触れないでくれと言いますよ。原爆被爆者でもそうです。原爆被爆者でも、原爆被爆を受けておるということで、あの親は原爆被爆を受けておるから被爆二世、万一病気が出てはいけないから言うて、結婚などのときに大きな問題になる。だから原爆のことは語らないのであります。語らないからそのままほっとけというのは人権上極めて大きな矛盾を持った論理である、こう思いますので、大臣の言われたことをあなたに変更までしてくれとは言いませんけれども、ここで私が読んだ、強者の人権というものは守られやすいけれども、少数者、弱者の人権というものは守られにくい。そこで人間はさまざまな曲折した考え方を持って、あたかも差別を受けている者の側の意向としてそうなんだから、それを政府は尊重してほっとくんだという理屈は、私は絶対成り立たないと思う。これは裁判官の常識の中にもなくならなければならぬことです。捜査官の常識の中にもなくならなければならぬことですね。これはひとつ総務庁の方からちょっと、コメント的でもいいですから答えていただきたい。
  50. 萩原昇

    ○萩原説明員 概略というか背景から御説明させていただきますが、現在の法律が、全国のいわゆる部落というところに対しまして、その環境改善等に対して特別の助成措置というものをやって改善を促進しようということででき上がっておりまして、それに対してそういう事業をやりたいというところがまず手を挙げてくるということを前提に成り立っておるわけです。こういうのを地区の指定とそこで事業を行うという仕組みでやっておるわけですが、先生がおっしゃったのは、現在の法律の前の法律の時代までにずっとやってきた事業を、現在の法律では、前のときまでに手が挙がったところを現在はやる、したがって、現在の法律のもとにおける新たに手を挙げてくるという仕組み法律上既に予定をされておらないわけですが、それでも、先生がおっしゃっているのは、そういう仕組みのもとであっても、ずっと前から手を挙げてきてなかったし、今も手を挙げない、そういうところがあるということについての総務庁長官へのお尋ねであったわけでございます。  これに対しまして、先ほどおっしゃったようなやりとりがあったわけでございます。私は大臣発言についてどう言うわけではございませんが、現在お聞きをしておって感じましたのは、いわゆる寝た子を起こすな議論ということの、これは非常にこの問題の根本にかかわる深い考え方、いろいろと対立する考え方があるわけでございますが、私どもが今考えております啓発についての考え方というのは、差別を隠すのではなくて、差別があることを認識し、かつ差別を克服していかなければいけない、そういう考え方でいるべきである、こういうふうに思っております。
  51. 小森龍邦

    小森委員 約束どおり、それはもう再びあなたにきょうの段階では尋ねませんけれども、もう少し深い次元で、問題解決は当事者がどう動くかということが決め手なんですから。要するにそこに、民主主義の深い思想、観念の中に自由とか自主とかというものを尊重しなきゃならぬ根拠があるわけなんだ。もともと人間は自主的な動物なんですから、社会的問題を解決するためには、自主的にみずからに課せられた圧迫なり差別と対決していくという姿勢がなかったら、物事は前に一歩も進まないのでありますから。しかしそこに至るまでには、さまざまな目の先の障害に対してくじけたりあるいはやや妥協したりという、さまざまな近代合理社会以前の人間像というものが現実にあるのであります。  それを手を挙げた者はと、こう言うようでは、それは行政の温かみも何もないし、同対審答申の言っていることとも違うし、これはきょうは室長がある程度きれいな言葉で言われた、きのう、おとついの大臣の発言をきれいな言葉で言われた、それはそれなりに苦心をしておられることはわかりますよ。しかし、もっと深く考えていただかないと、憲法がうとうた「社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会関係において、差別されない。」という憲法の精神は具現されないのであります。今までのいかなる政策といえども、当事者が立ち上がって要求したからできた。まだ立ち上がって要求するというところまでいかないものを、要求しないのだから彼らの自主性に任せているんだという言い方は、それは国とすれば、国の責任とか行政の責務とか民主主義の根本理念とかということになると、これは大きな問題を残したままに終わってしまう、こう思いますので、きょうは、この段階は私の言いっ放しにしておきます。  それでまたもとの質問に戻りますが、そこで今度は、再審制度の問題についても大分物が進みましたので、仮出獄の問題について簡単にお尋ねを いたします。これも具体的なものに入るとなかなか国会の場では難しいかとも思いますが、しかし、これは法務省の行政の問題でありますからある程度は答えていただけると思います。  ここに仮に無期懲役の人がおると。それは第二審とか最終審において未決勾留の期間が幾らかずつ算定されておる。無期懲役に対する未決勾留期間が算定されるという実質的意味はどういうところにあるのでしょうか。
  52. 井嶋一友

    井嶋政府委員 現実の裁判におきまして無期懲役の判決のある事件に未決勾留が通算されておるというのはあるわけでございますが、これは確かに矛盾しているように見えますけれども、例えば無期懲役が減刑されるような場合に有期懲役になりますから、その場合にそういったものが効果をあらわすといったようなことで通算されることになっておるわけでございます。
  53. 小森龍邦

    小森委員 そうすると、無期懲役の場合に未決勾留が算入されるという判決があった場合は、何かのことがあって罪の減刑の措置がとられたときにそれがぐっと生きてくるわけですね。つまりそこで初めて効果があるわけですね。例えば仮出獄の法律的な刑期三分の一とか、無期の場合は十年というふうに聞いておりますが、そういうときにはこれは全く計算に入らないのですか。
  54. 佐藤勲平

    ○佐藤(勲)政府委員 申し上げます。  仮出獄につきましては、どのような要件で仮出獄の許可をするかということが、刑法、それから犯罪者予防更生法、それからそれに基づきます法務省令で定められておるわけでございますが、仮出獄の細かい基準と申しますか要件につきましては、仮釈放及び保護観察等に関する規則というのがございまして、そこでずっと読ませていただきますと、「仮出獄は、次に掲げる事由を総合的に判断し、保護観察に付することが本人の改善更生のために相当であると認められるときに許すものとする。」といたしまして、一から四まで掲げられております。「悔悟の情が認められる」、「更生の意欲が認められる」、「再犯のおそれがないと認められる」、「社会の感情が仮出獄を是認すると認められる」、そういうような要件がございます。  そして、委員お尋ねの未決通算日数があるということにつきましては、今申し上げたような仮出獄の審理に際しまして考慮すべき事項がございます。これもさらにいろいろ細かいのが具体的な場面で生ずるわけでございますけれども、その中の一つとして考慮の対象になるものとは考えております。  以上でございます。
  55. 小森龍邦

    小森委員 わかりました。  それじゃ、続きまして、仮出獄の場合に「改悛ノ状」というのがございますが、再審を請求しておる者にとっての「改悛ノ状」とはいかなるものを意味するのでしょうか。
  56. 佐藤勲平

    ○佐藤(勲)政府委員 申し上げます。  委員今申されましたように、刑法の二十八条で仮出獄の要件が定められておりまして、「懲役又ハ禁錮ニ処セラレタル者改悛ノ状アルトキハ有期刑ニ付テハ其刑期三分ノ一無期刑ニ付テハ十年ヲ経過シタル後」、今委員仰せられたとおりでありますが、「後行政官庁ノ処分ヲ以テ仮ニ出獄ヲ許スコトヲ得」と書いてございます。その「行政官庁」は、全国に八つございます地方更生保護委員会委員の合議で決められるわけでございますが、委員仰せられました、否認しておるとか無罪を主張して再審請求をしておるというような場合にそれはどうなるのかということでございますが、具体的にはやはり今申し上げた四つの事項がございます。その判断の中で考えられることであろうというふうに考えておるところでございます。  以上でございます。
  57. 小森龍邦

    小森委員 これはちょっと私はわかりにくかったのですが、字は「改悛ノ状」でありますから、結局悪かったなという、通常はそういうことを表しておると思うのでありますが、自分は悪くないから、これはもう間違った判決なんだからひとつ無実を明らかにしたいというのでありますから、裁判判決で出した罪状とすべき事実というのか、犯罪とすべき事実を認めてない者が「改悛ノ状」を示すということは通常あり得ない。したがって、再審請求をしておる人だって仮出獄というのは今まであったと思いますから、そういう人の場合の「改悛ノ状」とはどういうことを指して言うのか、あるいはどういうところをもって行政庁は認定するのか、この点をお伺いしたい。
  58. 佐藤勲平

    ○佐藤(勲)政府委員 申し上げます。  委員仰せられた「改悛ノ状」という言葉でございます。この点は、ちょっと言葉じりのような感じになって申しわけございませんが、刑法のジョウというのは、感情の情ではなくて状況の状という字が書いてございます。それをどのように読むかということが一つ問題になろうかというふうに思っております。  ここで一つ、これはある書物に書いてあることをちょっと引用させていただきますが、この「改悛ノ状」と申します状況の状は、今申し上げた感情の情とは異なっておる、それは内心の状態だけではなくて、改善があったと認められる客観的状況があるというようなことが考えられるようなことを書いてある書物もございます。それらの点も考慮いたしまして、私ども、広くそういう条文の字句が考えられるのではないかなというふうに思っております。  それから、委員仰せられましたように、再審請求中に仮出獄を許可した例は確かに過去にございます。それだけ申し上げさせていただきたいと思います。
  59. 小森龍邦

    小森委員 大分理解に近づいておるのでありますが、内心の情だけを指すのではない、人情の情ではなくて状況の状の場合はそうだ、客観的なものを判断する、こういうわけでございますが、それでも、客観的なものといっても、あの人はやはり罪のことが頭にあって、心を入れかえてまじめにやっておるな、服役状態がまじめだなということにもなりかねないと思うわけです。したがって、もう少し客観的というところを、罪は認めていない、だからこそ再審請求しておるので、罪は認めてないけれどもどの辺が客観的に「改悛ノ状」と言われるものか、これはぜひ客観的に明らかにしておく必要があろうと思うのです。こんなことが恣意的に、彼は気に入るからよい、気に入らぬからだめだということになりますと、著しい──罪を認めておる者はそれで服役態度その他ですぐにはかれると思いますよ。しかし、ある者は十一年か十二年で仮出獄をされる、ある者は二十三年もかかっておるというようなケースがあると思いますが、それではやはりいかぬので、この客観的状況というものが客観的に物差しとしてはかられて、そして後は、例えば引受人ががっちりしておるとかあるいは社会状況が彼を何とか守ってくれるだろうとか、さまざまなことを判断するのが、それは側から見ておってなかなかわからぬことでありますけれども、本人をめぐる状況とすれば、その客観的な状況とは一体何を指すか、再度ひとつお尋ねをいたします。
  60. 佐藤勲平

    ○佐藤(勲)政府委員 申し上げます。  非常に難しい判断の問題でございますが、その点につきましては、先ほどちょっと私の方から申し上げさせていただいたその判断をするところ、地方更生保護委員会であるというふうに申し上げました。ここは一人の、単独の者で判断するのではなくして、三人の委員の合議で判断することになっております。そのような点で判断の客観性が担保されるのではないかなというふうに考えております。  それから、従来何かいろいろ差があるように仰せられましたが、現在なりその判断する時点での無期刑受刑者の場合ですが、やはりほかの無期刑受刑者との間で特に不利にも有利にもならないように、その点も考えて公平に取り扱われるものと私ども考えておるところでございます。
  61. 小森龍邦

    小森委員 もう少しわかりませんけれども、これ限りで世の中がなくなるわけではありませんから、またの機会に譲らせていただきたいと思います。  しかし、この辺でそういう行政庁の恣意が入る と民主主義というものは根底からぐらつきますから、あるいは人権という感覚がぐらつきますから、そういう点で私はしつこく尋ねておるわけですが、また機会を改めてその辺は俎上に乗せていただくようにお願いしたいと思っております。  さて、時間がもうほとんどなくなりましたので、今からもう一つの問題を提起するとあるいは決着がつかないままになるかもしれません。そこで、事柄の性質上具体的に挙げてやるということが難しいと思いますから、一つの抽象的な事例ということで話を進めさせていただきたいと思います。  法務省人権擁護局とか総務庁の地対室とか、一九八六年に私らが通常言っておる地対協路線、これは事業を打ち切るとか打ち切らぬとかという時点のところは、私は、まだそれは行政とすれば比較的単純に判断をするのもやむを得ない。深くかかわっておる者はそれに対して不満であり、それに反論は出てくる。しかし、私が一番遺憾なことはどういうことかというと、現在高まっておる民衆の動きを抑えるために、理屈をつけて正当な行為まで俗に言われるえせ同和行為の概念の中に組み入れた。その最大の証拠は、人権擁護局が各企業にえせ同和行為に対するアンケートというのをとって、そこで、研修に勧誘されたことはないか。  同和問題の研修に勧誘されたら、それはつまりえせ同和行為のアンケートに答えるべき中身なのか、こう我々は反論したいが、それとか、あるいは書物を買ってくれないか、これを材料にしてくれないかと言われたことはないかとか、民主主義の基本にかかわるところをえせ同和行為の範疇に入れて調査をしておる。しかもその調査は、私は広島の法務局で聞きましたが、広島、中国地方でどうかな言うて聞きましたら、いや、それは全部本省で開封しておるんでわかりませんというようなことなのでありまして、地域的なそれに対する感じも感覚も、データの上で地域的にも明らかにしない。私は、これは疑っているんですよ。いいかげんなこと本省はしておるなと思っているんですよ。そのデータが出てきたとおりに集計しておるかどうかということを私は疑っておるけれども、よしんばそれが正しいとして、研修に勧誘することがえせ同和行為だったらどうなりますか、これ。  そういうことである一つ裁判事件が起きました。差別されて、それを文句言っていったのです。文句言うていったら、先方が金で解決しようとしたのです。その金で解決しようとしたときの状況として、売り言葉に買い言葉というような感じで、おまえ、そのくらいの金で済むと思うとるか。そこのせりふがうまくとられて恐喝未遂となっている事件があるんです。これはもう、私はこの地域の大変な歴史的な不始末だと思いますよ。そういうときに、おまえ、そんな小銭で解決つく思うかと言うのは、その人の立っておる、つまりマイノリティーの持つ非常に苦しい心境というか怒りを爆発させたというか、私はそういうものだと思うのです。現在これは係争中ですから、問題は、そんな形に行政の方向がひん曲がっていくと、捜査とか裁判とかというものもそれに連なって変なことになる、こういうふうに私は考えておるわけであります。  したがって、くれぐれもお願いしておきますけれども、特にこれは、私は日本政府の中では法務省人権擁護局が一番かたくななところだと思います。したがって、そういう点はひとつ徹底的に自分たちの今までやってきたことを、後を振り返ってみて、民主主義の基本的な感覚に外れないようにやってもらいたいと思います。
  62. 篠田省二

    ○篠田政府委員 お答え申し上げます。  私どもがえせ同和行為と考えておりますのは、同和問題は怖い問題であり、避けた方がよいとの誤った人々の意識に乗じ、同和問題を口実にして企業や官公署などに不当な利益や義務なきことを求める行為、こういった行為をえせ同和行為というふうに考えております。それで、このような行為が横行いたしますと、これまでなされてきた啓発の効果が一挙に覆りますし、同和関係者あるいは同和問題の解決に真剣に取り組んでいる民間運動団体に対する国民のイメージを損ね、ひいては同和問題に対する誤った意識を植えつける原因となっている、そういうふうに考えているわけでございます。こういった見地に立ちまして、えせ同和行為を排除することは同和問題解決のために必要である、そういうふうに考えて、その排除を訴えているところでございます。  それから、先ほどのアンケートの問題でございますけれども、これは企業が受けた違法、不当な要求のうち代表的なものの一つについてお答えくださいという書き出しでございまして、違法、不当な要求という前提で聞いているわけでございまして、そうでない場合にはもちろん構わないわけでございます。  それから、文書を買ってくれという要求がどうかということがございますけれども、これはやはり、その目的あるいは値段とかその方法において妥当なものであればよろしいわけですけれども、不当に高い値段のものであるとかあるいは目的が自分たちの金銭目的であるというようなことであれば、これはやはりよろしくないというふうに考えております。
  63. 小森龍邦

    小森委員 ああいうふうに答弁、口の先でやるのはいいことを言われるのですけれども、実際は不当な価格で売る者に対しては何らの手だてを行政的にしない。これは幾たびか私ら通報いたしております。しかしながら、今最初の辺でそんなことを書いて、ある条件のもとにおけるというふうなことでやっておるんだと言うても、同和問題に十分なる認識のない者は予断と偏見で物を受け取る。つまり、ここが理解を求めなければならぬところなのであります。時間がありませんから、やむを得ず、また次のときにやりたいと思います。  そこで、最後に、法務大臣、これは議題とちょっとそれますけれども、閣僚の一員としてきょうは特に一言答えていただきたい。  きょう、ソ連とイラクとである程度の合意ができたようなニュースが飛んできました。そのニュースの中に、一つこういうことがあるのです。つまり、停戦とかそんなものを監視するために、敵国でないところが行って監視をやるようにしようということが一項目あるのです。日本はせっかく平和憲法を持っておる。この間も私は大臣に言いましたね。しかし、向こうから、いや、日本は最近の仕打ちがおかしいから、これはやはり敵国のうちだ、こう言われたら、私は憲法が泣くと思うのですよ。大臣の所信をちょっとお聞かせください。一言でいいです。
  64. 左藤恵

    左藤国務大臣 今のお話の件につきましては、まだこれから停戦の条件とかいろいろな問題がありますので、一つの仮定の問題としてお尋ねになったのじゃないかと思いますが、日本は平和憲法を持っておるわけでありますから、あくまでもこの憲法の精神に沿って、私は、世界の平和のために日本が役立つ場合には出ていくべきだと思いますし、その範囲はあくまで平和憲法の中で行動すべきだ、このように思います。
  65. 小森龍邦

    小森委員 終わります。
  66. 伊藤公介

  67. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 裁判所職員定員法の一部を改正する法律ということに関連して、裁判所職員の方をふやすというこの法律の中で、今、裁判の現状においてどのような能率アップを図られているか、迅速化というような問題ですが、その点について、増員ということとの関連でお聞きしていきたいと思います。  現行の裁判の場合の民訴法上の運用の中で、裁判所その他どのような御努力をなさっておられるか、教えていただきたいと思います。
  68. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  民事裁判関係について申し上げたいと思いますが、現在民事裁判につきましては、いろいろな問題点が指摘をされております。一番大きなのは、訴訟に時間がかかり過ぎるということではなかろうかと思います。最近、社会生活のテンポというのが非常に速くなりまして、民事裁判の手続 がなかなかそれに追いつかない、このような批判がございます。これに対してどのようなことを考えておるか、あるいはどのようなことが実施されておるかということでございますが、御承知のように民事裁判は、民事訴訟の場合には口頭弁論を中心にして行われるわけでございまして、その弁論の期日が充実したものでなければならないということが一番だろうと思います。そのためには、そのための事前準備といいましょうか、それが十分図られなければいけない。そのために裁判所は、今いろいろな努力をしておるわけでございます。  ちょっと具体的に申し上げますと、まず第一回の期日、このための準備でございますが、そのためには、訴状にいろいろ原告の主張をお書きになるわけでございますが、その訴状の記載事項でございますが、これについて不備な点がありますと、その期日に釈明すればそれだけ一回延びるわけでございますので、期日前に不備なところがありましたら、その点は補充していただきたいというようなことを申し上げる。あるいは、その事件ではどうしても必要な書証というのがございます。例えば、離婚事件等では戸籍謄本というのがございます。あるいは登記の関係事件では登記簿謄本というのがございます。そのようなものについては、もし出されておらなければぜひ出していただきたいというようなことを申し上げるということでございます。  それからまた、訴状が送られますと答弁書が来るわけでございますが、この答弁書につきましても、簡単に、原告の言うことは否認するというような簡単な答弁だけが記載されておるというような場合がよくあるわけでありますけれども、その場合に、それを否認するというのは、もっと具体的に言うとどの点を争われるのかというようなことを具体的に書いていただきたい、このようなことをいたしまして、できる限り第一回の口頭弁論期日から充実した審理ができるようにということであります。  それから、期日と期日の間でございますけれども、これにつきましても同じようなことでございます。例えば、次回までにこのようなことを調べてきて書面を出していただきたい、あるいは証拠を出していただきたい、このようなことを裁判官が申し上げまして、両当事者がそれで結構だということでありますが、なかなか期日前に出されない場合がございます。そのような場合には、期日の前にそのようなものを出していただくようにあらかじめ連絡をいたしまして、期日がむだにならないように、このような配慮をしているわけでございます。
  69. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 裁判が円滑にかつ迅速にいくということで、その訴訟の当事者に対しても、今おっしゃったように書類の不備等ないように、第一回の口頭弁論からしっかりやれるようにしておく、それはよくわかります。  これが高じますと、私は一つ問題があると思うのです。現在その期日と期日の間、特に証人尋問等が行われたときの尋問調書の取り扱いなんでございますけれども、調書ができてくる時間が、現在ワープロで大分やられるようになって、手書きはたしか地裁ではないと思うのですが、それでもかなりの時間がかかっております。そして、でき上がってきてから、今度裁判官が次の期日のための準備のためにその調書をお持ち帰りになる。私たちがそれを謄写したり閲覧したりする期間をちょっと逃すと、裁判官の宿舎の方にお持ち帰りになってしまう。これは困りますよ。きょう一日というとき、もうきょうは午前だけでおしまいですなんということになって、車が出てしまいますからだめですなんと言われますと、次のときまでに私たちの方で今度訴訟の準備がなかなかできない、当事者の方でできないというような状況があります。  この尋問の調書、どのくらいの期間かけてどういうスピードアップを図っておられるか、教えていただきたいと思います。
  70. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  調書でございますが、今御指摘のように、次回の期日の準備のために十分間に合うようにということで作成するというのが基本でございます。これは、裁判官がじかに見るのはもちろんでございますけれども、それを当事者双方の方々にも十分見ていただく、こういうことが基本でございまして、私どもとしては、そのようなことで調書をつくられる書記官をもちろん指導しておりますし、それから次回期日を決めるに当たりましても、そのような、いつ調書ができるかというようなことで考えた上で期日を指定しているということでございます。ただ、その期間にはいろいろな事情が生じることがございまして、場合によってはそういうことで御迷惑をおかけするということもあるかもしれませんけれども、できるだけそういうことのないようにしたいというふうに考えております。
  71. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 なるべくそういうことの支障のないようにしていただきたいと思うのですが、結局、調書が次回期日の大体何日ぐらい前までには必ずできるかというような、内々でも結構なんですが、日にちが二週間ないし三週間ぐらいなんというふうなことが、一応決まりといいますか、そういうようなものはあるのでしょうか。
  72. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 今申し上げましたとおり、次回期日の準備に間に合うようにということが基本でございます。したがいまして、具体的に例えば一週間とか何日というような、具体的な日を決めたというような決まりはございません。次回期日に間に合うようにというのが基本ということでございます。
  73. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 次回期日に間に合うようにやっていく、おしりを決めてやっていくということになると、裁判の迅速化が図られない。結局、根本のところは調書が早くできるようにしてほしいということでございます。近ごろは、速記者を使った調書というのをほとんど余り、大きな裁判でないと見かけなくなりました。書記官の方がテープをとられ、その場でやり、後で要約の場合もあるし、そうでなくても、それを後からテープを起こされるというような作業をされているのだと思いますが、速記のときに比べてかえって時間がかかるのじゃないかと思われるところもあります。きれいなワープロになって大変見やすいのはありがたいのですけれども、その点でもこれから先の御協力といいますか、調書ができてこなければ、期日をいつ入れるということも、その間がいつあくかといっても、そこから決めていくのでは迅速化ということにならないように思います。ですから、その点も御考慮いただきたいと思います。  裁判そのもの、訴訟の面ではなく、訟廷事務の面での簡素化とか効率化ということで、現在なさっているようなこともおありなんでしょうか。
  74. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 裁判所におきまして、現在もろもろの面でできるだけ事務が効率的に行えるようにということで工夫しております。一例を申し上げますと、いろいろなOA機器の導入といったことも最近積極的に取り組んでおる次第でございます。
  75. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 OA機器の導入によって、どんな部分で訟廷事務というものが簡略化したりまたは能率がアップしたりするのでしょうか。かなり予算もかかることだとは思うのですけれども、どのようなところなのか具体的にお知らせいただければと思います。
  76. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 訟廷事務に限りませんが、OA機器の導入あるいは事務処理のOA化ということで、裁判所がこれまでに行ってきました主なものを御説明させていただきます。  一つは、ワープロの導入でございます。これは、裁判官判決書の作成、あるいは書記官の調書の作成、あるいは家裁調査官の調査報告書の作成、これをワープロで行いますと随分効率化されます。その導入を随分図っておるところでございます。  その次は、やはりパソコンでございます。これは、民事の執行事件の配当計算用のパソコンを配ったり、あるいは破産事件の進行状況を的確 に早く把握できるように、そういう用途のためにパソコンを配っております。あるいは督促事件の進行状況把握用のパソコンというものもございます。  それから、民事訴訟等におきまして、当事者との連絡が迅速に確実に行われるようにということで、ファクシミリの導入も図っております。  それから、今のは事務の一部の面でございますが、そのほか一連の手続を全体的にOA化するというようなことも現在工夫してやっておりまして、簡易裁判所の統廃合に伴います大都市簡裁におきまして、今度は督促事件の受け付けから終局までを、裁判官の判断部分はもちろん除くわけでございますが、そのトータルとしてできるだけコンピューターで処理したいということで、その設計作業を現在進めておるところでございます。  そのほかにも、例えば家庭裁判所の少年事件で、非行歴を検索する前歴検索ということがございます。これは今まで手作業で、カードで繰っておりましたが、それもOA化を図りまして、現在数庁において着実な成果を上げております。  その他、不動産の執行システムとか、もろもろの面でどんどんやらなければいけないと思っておるところでございます。
  77. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 これからも進められていく。ちょっと最後に恐ろしいことを伺ったような気がするのですが、家裁の少年事件で、非行歴がみんなぽんぽんとパソコンに入っている状況というのは、非常に何か、ちょっと恐ろしい気がいたします。この問題については、要するにOA化と事務の能率化ということと、それからやはり個人のこれからの少年の教育の問題、プライバシーの問題、そのあたりのこととの兼ね合いということが非常に重要になってくるとは思います。この点はよくよくお気をつけいただきたいと、私などが申し上げなくてもされているとは思いますけれども、一言つけ加えさせていただきます。  こうしたことについてどのぐらいの裁判所としての予算というものを年々アップしてつけていっておられるのでしょうか、それとも大体同じ程度の予算をつけておられるのでしょうか。
  78. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 今手元にOA化関係予算の伸びを示す資料を持っておりませんのですが、これは数年前からそういう予算獲得をしてまいったわけでございますが、初めのうちは徐々にということでございましたが、裁判官用のワープロとかあるいは書記官用のワープロとか、その他最近のOAの進展状況に応じましてOA化のための予算というのはかなり飛躍的な割合でと申しますか、伸びております。
  79. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 私などが弁護をしていたころよりはずっとそういう意味での飛躍ができてくるんでしょうけれども、将来は、私の事務所などから押しますといろいろな構わないデータはすっと弁護士事務所に入ってくる、というような形のところまでいきますと非常にありがたいな、本当に細かい手続的なことだけで裁判所に一々伺わなくても済むようになればいいなというふうに思います。  それで、そういう非常に進んだOA化の問題がある中で、やはりまだ私たちが手作業といいますか、手でやらなければならない部分というのが残っているように思います。一つは、控訴をされたかどうかというようことを上訴裁判所の方に検索するような場合、こういうのは、私たちの便益からいいますと入っていればすぐできるなと思うんですが、そういうものはまだなされていないのでしょうか。
  80. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 今お尋ねのようなシステムはまだできていないのですが、私どもも、できれば上訴の有無もすぐ判明するようなところも含めまして、いわば訟廷事務全体のシステムOA化を図りたいと思っておりますが、これは非常に時間も要しますし、知恵も要しますし、労力も要します。いきなり一挙に大きいシステムに取り組むということになりまして、また使い勝手の悪いものになっても困りますので、手がたいといえば手がたい、なまぬるいといえばなまぬるいという批判を受けるかもしれませんが、先ほど申し上げましたようなところでまず着実に私どもの方もそういう作業になれていって、そしてできるだけ早い時期にそういう訟廷事務全体のOA化をできるようなシステムをつくっていきたい、私どももそう思ってこれからも努力したいと思っております。
  81. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、刑事裁判の方でも何かやはりそういった迅速化というようなことを図っておられますでしょうか。
  82. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 刑事裁判につきましても、やはり先ほど民事局長が御説明されたのと同様に、一件一件の事件につきましては十分な事前準備をいたしまして、そしてその事件についてはどの程度の証拠調べが必要であるからどの程度の公判開廷回数が必要であるかというようなことを十分に詰めた上で、それであれば大体一カ月に一回とか一カ月に二回公判開廷をやっていかなければいけないかなというようなことで、当事者の御協力を得まして、特に忙しい弁護人の先生方はなかなか、すぐに公判の期日を指定しようとしても詰まっておられる方が多いものでございますので、なるべく先取り先取りということで、大きな事件につきましては早い目早い目に一括して期日を指定をしたりしております。  それからまた、OA化という点では、若干観点は違いますけれども、今刑事の方では量刑検索システムというようなことで、OA化のソフトを現在開発、検討中でございます。
  83. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 量刑検索システムというものができる。裁判官のこれまでの判断の材料の一つとしてそういった形のものができてくるということは、客観的な量刑ということがはかられる上で確かにいいことであろうという面と、やはりまた、先ほども言いましたように、そこで画一的にされることが果たしてまたいいのかという面で非常に疑問も残るところでございますけれども裁判所としてはそのあたりの御研究というのはどの辺まで進んでおられますか。
  84. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 委員が御指摘のとおりでございまして、この量刑検索システムについては、利用の仕方によりましてはそのような画一的な量刑に走るおそれはございます。したがって、私どもその辺につきましては、同種類の事件についておよそ今までどのあたりが大体刑として盛られていたかということを、参考までにということで、同種同様のケースについての先例を見る。しかしながら、個々の事件につきましてはそれぞれの個性がございますし、量刑因子も全く同じというものはございません。したがって、あくまで先例としてそれらを参考までにする、こういうことでございます。  それで、さしあたり何種類かの罪種に限りまして今までの先例について打ち込んでいく、あるいは今後これから先量刑されていくものについて、それを因子を打ち込んでいく、そして今申し上げましたようなことで同種類の同じような、似通った事案についての刑を検索していくシステムを今検討中でございます。
  85. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 どうもありがとうございました。  その運用の仕方と、それから、私も修習生のときに覚えがあるのですけれども、それに近いような、大体こういう事例で、大体こういう年齢でこうやったらば何年くらいの懲役になる、執行猶予がどのくらいつくというようなことの一覧表を、私たち修習生が集まりまして一生懸命つくりまして、相場は大体どのくらいかというのを見たような覚えがあります。そういうのをつくり出して検討して勉強会をしたというような覚えがございます。そういう部面で、そのものの外部に漏れるおそれというものについても、秘密の保持といいますか、その点も御留意をお願いいたしたいというふうに思います。  民事のことにちょっと戻るんですけれども、民事の尋問、要するに裁判を簡単にというか、迅速 に簡潔にというようなことの一つの問題点として、私が日ごろ感じておりますのは、このごろの民事裁判の中では、証人または本人尋問のときに、全部調書をまず出させる。証拠能力の点でも私は一つの問題があるものだろうと思うのです、当事者はまだ出廷はもちろん可能な人たちですから。そういう人たちの尋問調書を出させて、そしてその中から問題点を先に裁判官がこう一応気持ちの中でおとりになる、そしてその重点を今度は裁判のときに、まあそこを重点的に尋問されてそれでおしまいにされる、そういうような形をおとりになるところがかなり裁判所の中にあると思うんですが、これは裁判の進行、それぞれの裁判官の胸のうちと言ってしまうことなのかもしれませんけれども、しかしそれは非常に、何というんですか、最初に心証をそういう陳述書の中からつくり上げてしまう。これが家事事件でありますとか余り公開の法廷ですることになじまないようなものであれば、民事一部でやるような事件であるならばまたそれも一つの方法であろうと私思うのですが、一般の民事事件にそれをやれば、確かに尋問は時間がかからずに済むかもしれませんけれども、その前に裁判官の心証がつくられてしまうのではないかというおそれがある、これはやはりちょっと問題があるんじゃないかなというふうに思っておりますが、その点について少しお答えいただければ幸いです。
  86. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 今おっしゃいました陳述書の問題でございますが、現在の裁判のやり方の中で、確かに今おっしゃったような陳述書を出させるという例があることは間違いございません。これが主として利用されておりますのは、例えば人事事件などのような事件でございまして、当事者間の争いの歴史というのは非常に長い歴史を持っておるというような事件がございます。そのような場合には、本当に争っておるところはどこかというとそれほど広い範囲ではありませんけれども、そのバックグラウンドといいましょうか、そのような事情が非常に多いわけでございます。そのようなときに、あらかじめ陳述書を出していただいて、そうして法廷ではその重点といいましょうか、本当の争点に絞ったところについて主尋問をし、さらにそれに対して反対尋問をする、このような取り扱いが行われておるところがございます。  それから、そのほかに陳述書が利用される例としましては、専門的あるいは技術的な事項についての証言を求める場合に、これもある程度客観的なといいましょうか、そのような説明というものがございます。それはその事案の本当の争点というところからはやや離れておる、その前提事実のようなものでございます。そのようなものにつきまして、陳述書を出していただいて、法廷における証人尋問は本当の争点に絞ってやろうか、このようなことで行われておるところでございます。  それからもう一つは、例えば労働事件等でございますけれども、当事者の経歴といいましょうか、会社にいつ入ってどういうふうになったというようなこと、これは法廷で尋問いたしますと、前提事実といいますか、争いのない事実でございます。そのような事実についてもそのバックグラウンドを理解する上において頭に入れておいた方がいい、このような事項について陳述書が利用されておるわけでございます。あくまでも主要争点については、法廷における証人尋問等を通じて心証は形成されるべきものだというふうに考えておるわけでございます。
  87. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 あくまでバックグラウンドの問題である。導入部分であるとかそういうことの論点整理のための陳述書であると思いますけれども、やはりそれが、今おっしゃいましたようなことが、非常に間々ある事案ばかりでなく、民事全体の問題となりますと、仮にバックグラウンドだといいましても、やはりこれは非常にその境目というのは明確でないし、一遍できた心証というものはなかなかぬぐい去ることができないという意味で、厳密な証拠の扱い方ということからいって、心していただきたいというふうに思います。  その次の問題に移りますけれども法務省としても、またいろいろな大変お忙しい中での事務の簡素化というか簡略化、または能率化ということを考えておられると思うのですが、そういう意味で、法務省としてもここのところでは人員の強化というものをなされたり、OA機器の導入とかいうのをなされていらっしゃるのでしょうか。ちょっと伺いたいと思います。
  88. 井嶋一友

    井嶋政府委員 検察庁に限ってお答えをいたしますが、検察庁におきましても、事件数こそ最近横ばいないしは漸減傾向でございますけれども事件の性質が非常に複雑困難化あるいは国際化、多様化といったようなことで困難な事件がふえておりますので、それに応じて人員の増加、増強、整備を図るということも当然の施策としてやっておるわけでございます。  しかし、このような御時世でもございますから、そればかりで対応するわけにもまいらないということで、委員指摘のように、事務のOA化といったことも極力進めておるわけでございまして、具体的には、例えば検務事務の電算化というのはもう十数年前から始めておるわけでもございますし、最近ではさらにもっと高度なコンピューターを使ったデータベースをつくりまして、それこそ求刑の問題でありますとか、処理の問題でありますとか、あるいは判例でありますとかといったような、いろいろなことが瞬時に出るような組織を構築すべく、鋭意強力に予算化を進めて作業を行っておるところでございます。
  89. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 よろしくお願いをしたいと思います。  法務省の事務の中で、入管手続または外国から帰化を希望される方の手続といったものについて、非常に今込んでいて、初めに申し込んでからの時間が大変かかるということをたくさん耳にしております。この点についてはどういうふうに解決を図られているでしょうか。
  90. 股野景親

    股野政府委員 ただいま委員指摘のとおり、国際交流が非常に活発化しております関係で、入国審査の事務量も著しく増加をいたしております。これについて法務省といたしましては、幾つもの努力を組み合わせて行うということにしておりますが、一つは、制度面での事態の改善ということで、昨年の六月に施行されました改正入管法におきまして、例えば在留資格認定証明書という制度を導入するとかあるいは上陸審査基準を省令として公表するといったようなことによって、事務の迅速化を図るという制度面の努力を一方において行っております。  他方、ただいま委員指摘のOA化ということも非常に大事でございますので、この点につきまして、各種記録の電算化あるいは審査に関係する情報の電算化、あるいは例えば鑑識装置についての機械化といったようなものも行っております。  さらに、職員ということになりますが、これも行財政事情大変厳しい中で、特に入国審査の第一線に当たります地方入国管理局の職員について重点的に配置をする、効率的に配置をするということに努力をしておりますが、どうしても足らないというところについても、できる限り各関係方面の御理解をいただいて増員を図ることに努めておる、こういう幾つもの措置を組み合わせて対応しておるところでございます。
  91. 清水湛

    清水(湛)政府委員 帰化事件についてお尋ねでございますので、お答え申し上げます。  委員承知のように、法務局におきましては帰化事務を処理しているわけでございますけれども、何と申しましても圧倒的多数の事務量というのは登記事件でございまして、これが年々増加をしておるというようなことから、他の帰化事務、戸籍事務等にいろいろな悪影響を与えておるというような問題がございます。そこで、登記事務の処理につきましては、既に御案内のようにコンピューター処理をしようということで、計画的にこのコンピューター化を図っているところでございます。また、登記従事職員増員につきましても、平成三年度予算におきましては三十人の純増をお認めいただいておる、こういうことになるわけでございます。  そういうような状況の中で、帰化事件につきましても、御指摘のように毎年増加いたしております。急激な増加というわけではございませんけれども、毎年かなりの増加を示しておるというような状況になっております。我が国に居住する外国の方々が日本人になりたいということで帰化を申請するというようなことでございますので、私どもといたしましては、そういう申請があった場合には、もうできるだけ速やかに結論が出るようにするということで、努力をいたしております。  そこで、具体的な方策ということになるわけでございますが、例えばこの帰化事件につきましては、御本人が直接法務局に行きまして相談をするということがございまして、書類の書き方とかあるいはどういう書類を集めたらよろしいかというようなことで、大変長時間を要するというようなことが一つの大きな問題になっておりました。そこで、例えば法務局を定年でやめたOBの職員に相談員として来ていただいて、専らそういう相談に当たっていただく、こういうようなことにつきまして予算措置をお認めいただく。あるいは各種資料作成用のワードプロセッサーを導入するとか、さらには処理手続を工夫いたしまして、できるだけポイント調査と申しますか、重要な事項について集中的な調査をするというような合理化を図るというようなことで、その早期処理に努めているところでございます。現在徐々にその成果が上がりつつあるというふうに私ども考えております。さらに、平成三年度予算におきましては、先ほど申しました相談業務が非常に時間をとり、重要なものになっておるというようなことから、説明用のビデオを作成して、それを見てもらって帰化手続を理解してもらおうというようなことで、そういうようなものに必要な予算が計上されておりますので、何とか平成三年度はそういうことを通じてさらに迅速化を図ってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  92. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 帰化の問題と入国審査の問題と両方なのですけれども、今現在、帰化の申請をしてから最終的に戸籍に載せることができるというところまで時間がどのぐらいかかるものでしょうか。入国審査手続の方も一応、今何か初めからだと二カ月ぐらいかかるようなことを聞いておりますけれども、いかがなものでしょうか。
  93. 清水湛

    清水(湛)政府委員 お答えいたします。  帰化関係でございますけれども、帰化の申請事件というのは、それぞれ事案によりまして非常にいろいろな調査をしなければならないというようなものがございます。例えば申請者の身分関係です。お父さんはだれだれ、お母さんはだれだれ、どういうきょうだいかというようなこと、これは、帰化が許されますと戸籍をつくりますので、その戸籍に記載すべき事項が正しくないといろいろまた問題が起こるというようなことで、そういうことを調査しなければならないという問題がございます。そういう意味で、事件によっていろいろ長短が生ずるということはやむを得ないところでございますけれども、現在のところ、全国的に見ますと、申請をしてからその結論が出るまでほぼ一年前後、こういう状況になっております。ただ、最近いろいろな国際諸情勢を反映いたしまして、例えば東京とかそういう大都市の局に事件が大量に集中して出るというようなことがございますので、そのような局におきましては若干の渋滞があるというような状況ではないか。私どもそういう渋滞局に対しましてもいろいろな措置を講じまして、その早期処理の促進を図っておるという状況でございます。
  94. 股野景親

    股野政府委員 入国管理局の審査事務につきましては、大きく申し上げまして、申請者が外国におられる入国審査の関係と、申請者が既に本邦に在留しておられる在留関係の審査と、二つございます。  後者の、本邦に既に在留しておられる方につきましては、情報も入りやすい、またいろいろな関係の点での審査も行いやすいということもございますので、この在留関係の審査につきましてはできる限りスピードアップする、早ければ即日でもできるというぐらいのことで現在心がけております。他方入国審査になりますと、これは申請人御本人が外国におられるという観点から、どうしてもある程度の時間がかかるということはやむを得ないところでございますが、先ほど御説明申し上げました在留資格認定証明書制度という制度は、この点をできる限り迅速化するというねらいでございまして、本邦で関係者があらかじめ申請をすることによって、在外公館でのいわゆる査証申請から始まる一連の長い手続を相当程度短縮化できるということであろうかと思いますので、私どもとしては、この新しい制度をできるだけ有効に活用するということ、それから先ほど申し上げましたような要員の重点的配置、OA化というようなことをかみ合わせまして、入国審査関係についてもできる限り審査の短縮化を図ってまいりたい、こういうふうに思っております。
  95. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 今の入国手続なんですが、その外国にいる人を今度こちらに入国のための審査をするというときに、日にちは、具体的には出ませんか。
  96. 股野景親

    股野政府委員 先生、これはなかなか難しい御質問でございまして、本当に事案によります。例えば長いものでありますと、昔であれば、それこそ在外公館に査証申請を出しましてから外務省を通じ法務本省にそれが伝達され、それがさらに地方入国管理局に行ってそこで審査が始まる、審査が終わってまた同じルートを逆に戻るということでございますので、勢い数カ月を要するということはあったわけでございまして、この辺をできる限り短縮するということで現在心がけております。平均的な数値というのはなかなか申し上げにくいところでございますが、早ければ一両月ぐらいで審査が済むこともできる。できるだけ我々日本で事前に関係の情報をいただけますとそれだけ審査が早くできるということでございますので、この点、日本におって受け入れに当たられる関係者の方の御協力をお願いしておるという次第でございます。
  97. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 今のところなんですけれども、早ければ一両カ月、遅ければ半年ぐらいかかりそうだというようなニュアンスで今おっしゃったと私受け取りました。海外からのこれからの交流というのは、非常にたくさん外国の人たちもこちらに見えるということがございますので、御苦労は重々わかっておりますけれども、なお一層の迅速化、簡易化を図っていただきたいと思います。  ちょっと話は変わりますけれども、来年度裁判官、検察官の任官者の予定の数は大体どのくらいの方がいらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  98. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 裁判官について申し上げます。  ことしの四月に司法修習を終了いたします四十三期生は、ただいま二回試験を始めるところでございますのでまだ確定的なことは申し上げられないわけでございますが、私どもの見込みといたしましては、九十名を若干超える判事補を確保できる見込みでございます。
  99. 井嶋一友

    井嶋政府委員 検察官についてお答えいたします。  今最高裁の人事局長が言われましたとおり、まだ卒業は済んでおらないわけでございます。当省におきます検事任官希望者の面接もまだ終わっておりません。そういった段階でございますので確定的には申し上げられませんけれども、司法研修所の教官等からの情報なども総合いたしますと、来年度は四十五名を超える、五十名に近い形のものが出るというふうな見込みを立てておるわけでございます。なお、昨年は二十八名という史上最低だったということでございますので、ことしはほっとしておるということでございます。
  100. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 四十三期生の数が前の四十二期に比べてそんなに多いということでもないんだろうと思います。そこも伺っておきたいと思いますけれども裁判官も検察官も、ことしは任官者の数がかなりふえておられる。これはまた後日出てくると思いますけれども、司法試験の改革の問 題、その他の問題のときにいろいろと議論になるところだと思いますが、実際にこうした任官者の方がふえてくると非常にいいことだと思います。  ちょっと今聞き落としてしまいましたが、この中で女性はどのぐらいかという割合はわかりますでしょうか。
  101. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 判事補につきましては、約二十名の任官が予想されます。
  102. 井嶋一友

    井嶋政府委員 女性の希望者につきましては、特に関心を持って情報調査をいたしましたら、現在三名がアプライする予定であるというふうに聞いております。
  103. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 裁判官の方は、九十名のうち二十名といいますと、もうかなりの比率でおられるということですけれども、やはり五十名のうちの三名とかということでは、ちょっとまだ検察の努力が足りておられない。もう少し女性にも魅力のある職場として、検察官にアタックもしていただきたいし、整備もしていただきたいというふうに思います。  これでちょっと私の方もその後のいろいろなことで考えているのですけれども裁判官と検察官、これは過去五年間ぐらいで結構なんですが、五年以内に退官する方、その方の数をちょっと教えていただきたいと思います。
  104. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 裁判官について申し上げます。  昭和六十年が一名、六十一年が一名、六十二年が二名、六十三年が三名、平成元年が二名というところでございます。
  105. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 ありがとうございました。
  106. 井嶋一友

    井嶋政府委員 検事につきましては、その任官五年以内、何年目にやめたかというデータをちょっと手元に持っておりませんので恐縮でございますが、二十九歳以下で何名か、あるいは三十歳から三十九歳まで何名かといった形で資料を持っておりますので、それを御説明申し上げます。  さかのぼって過去五年でございますと、二十九歳以下の検事で中途退職した者は、六十一年が二名、六十二年が二名、六十三年以降はございません。それから三十歳代、これは三十歳から三十九歳でございますので、恐らく五年以上経過しておる人が入っておると思いますが、六十一年が十一名、六十二年十三名、六十三年十二名、元年が十三名、ことしが本日現在で七名でございます。
  107. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 今伺いますと、やはり三十歳から三十九歳までとおっしゃいますけれども、五年以内という計算とは違いますけれども、中途退官者といいますか、裁判官に比べまして非常に多いと思うのです。初めの任官者の数が来年度の予定で見ても二分の一ということなのに、退官される数は何倍もあるというような感じがいたします。これからの検察事務その他については、お任せしなければならないことも非常にたくさんある。頼りにしなければならない検察官が、せっかくなれたころにおやめになってしまうということでは非常に心もとないことになると思います。ですから、どこにそういう点があるのか、ぜひ御研究いただきたいと思うのですが、そのあたり理由等々でお調べになったようなことはありますでしょうか、検察の方ですが。
  108. 井嶋一友

    井嶋政府委員 まず中途退官者の傾向につきまして、委員ただいま、非常に多い、そして特に若い人が多いというような御指摘もございまして、またさらに、弁護士会等を中心といたしまして、若い人たちの退職傾向が強いということをよく言われるわけでございますが、実は、若干数字でもって説明させていただきたいと思うのでございますけれども、決してそういう傾向はないのでございます。  ちょっと時間をかしていただきまして申し上げますが、先ほど申しましたように、過去五年で考えますと、六十一年が五十三、六十二年が四十六、六十三年五十五、元年が五十六というような数、ことし、平成二年度が現在約四十七名でございます。大体こんな数がいわゆる中途退職者でございます。  今度は年代別で申しますと、今申しましたように二十九歳以下、つまり平均二十七、八歳で任官をいたしますと、二、三年でやめる人というのは.最近ほとんどないという結果で、三十歳代が先ほど申したように十前後でございます。それから、四十歳代につきましては一けたでございまして、六十一年が六人、六十二年五人、以下八名、十四名、九名、こうなるわけでございます。ところが、五十歳以上になりますと、これが、六十一年が三十四名、六十二年二十六名、六十三年三十五名、元年が二十九名、二年度が三十一名、こういうことでございまして、五十歳以上の方々の退官が多いわけでございます。もう半分以上を占めるわけでございます。つまり、これはもう決して新しい最近の傾向ではございませんで、昔からこういう傾向で検察官というものが成り立っておるわけでございます。しかし、確かにここ一、二年の間に若干多い年があった、若い人たちに多い年があったということは言えるわけでございまして、そういった点を御指摘になってそういうことを言われるのだろうと思いますし、私どももそれを必ずしも否定するわけでもございません。そういった意味で、これに対する対策というものも十分考えていかなければならないということで、考えられるいろいろな原因につきましては、予算的な措置で賄えるものは最大限努力をいたしますし、あるいは法務省の行政で賄えるものにつきましては最大限改善に努力をいたしておりますし、検察庁の事務のあり方といったことで解決できるものにつきましては、検察庁において毎年のごとく各種会同を開きますとか、あるいは会議を持ちますとかしまして、研究会を持つというようなことをいたしまして、その改善、整備に努めているところでございまして、現在の若い人たちの気持ちにアピールするような検察といったものが運営されるように、日々努力をいたしておるのが現状でございます。
  109. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 こういう努力も大変だろうと思いますけれども、よろしくお願いしたいと思います。  この点について若干ちまたで話されていることで言いますと、検察官の場合には、入ったときから既に出るまでの身分の推移がもう見えてしまう。何というか、夢も希望もないといいますか、そういうふうなことが言われております。住宅を与えていただくとか、そういう意味では非常に便宜もこのごろ図っていただいているし、前に比べれば、前は大分ひどい官舎もあったけれども今はそうではなくてきれいなところだという宣伝をされているということも聞きましたけれども、例えば一番で入った人は二年留学に行く、二番で入った人は一年留学に行く、入って、任官してすぐの年からそういうふうなきちんと、何というかルートが決まっているというようなことをちまたで言っているわけでございます。こういうことは本当かどうかわかりませんけれども、それで魅力がないんだよというようなことも、私どもの耳に入ってくるところではそういうのがあるんですけれども、ぜひとも検察官に長いことやる気を起こさせる形で頑張っていただきたいというふうに思います。  時間が迫りましたので、最後の問題に行かせていただきます。  昭和三年から実施されていたことがある陪審制というものが、戦争のさなかで一時それが凍結されてしまっているという現状がございますけれども、陪審制というものについて、裁判所の方ではどういうふうにお考えになって、何らかの対策を考えておられるでしょうか。
  110. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 最高裁では、三年ほど前からこの陪審制度について基礎的な研究を始めております。その研究を始めました趣旨でございますが、裁判を一層国民に身近なものといたしまして、司法に対する国民理解と支持、信頼を得るためには、裁判制度やその運用が国民の目から見てわかりやすいものであるということが一番であります。そのような観点から見ますと、刑事裁判の分野におきましても、現在の制度や裁判 の進め方を固定的に考えたりあるいは従前の制度に安住するというのではなくて、やはり見直すべき点はないか、改善すべき点はないかという点を、問題意識を持って検討していかなければならないと思われます。その一つの見直しの方向といたしまして、これまで以上に国民に司法に参加してもらうということが考えられるわけでございますが、その可能性の問題も含めまして、将来の刑事裁判のあるべき姿を広く考えていこうという観点から、ただいま御指摘陪審制度、またそれに付加してはヨーロッパ諸国の参審制度なども研究していこうということで、今現在、基礎的な研究を進めているところでございます。
  111. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 基礎的な研究といいますと、具体的にはどのようなことを今されているんでしょうか。
  112. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 御承知のように、我が国には戦前にも旧陪審法のもとに陪審制度が行われておりましたので、それらの実情等について、今残っております文献、資料等からそれらの制度についても研究する。また、英米諸国、ヨーロッパ諸国における制度の実態などにつきましても、各種の文献を通じて研究を行う。さらに、裁判官を英国、アメリカなどに派遣いたしまして、あちらで実際にその陪審裁判がどのように行われ、またそれについてのメリット、デメリットはどの辺にあるかというようなことを現地で調査してきてもらうということで、派遣もいたしております。また、最近、近々にはドイツの方にも派遣をいたそうということで現在予定しております。
  113. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 これについて今イギリス、アメリカの方に派遣して調査された、ドイツはこれからだということですが、その研究報告といいますか、結果ですね、そういったものは出ているのでしょうか。
  114. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたうち、実はアメリカの方へは一名が二カ月という短期間で、これはもう既に帰ってきておりますけれども、もう一名は一年半という長期の派遣でございまして、本年の春に帰ってまいる予定でございます。それから、英国の方は五カ月間ということで、これは昨年の夏に帰ってきております。帰ってきた裁判官には部内において報告はさせておりますし、また一応の報告書は出ておりますけれども、これはまだ部内限りの報告書でございます。今後、それらの報告を私どもでつぶさに検討しまして、集積して、またそれらを資料としてまとめていこうというところでございます。
  115. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 その研究の成果、まとめたものについて大変興味があります。私が国会議員をずっと続けておられるならば、その間にまたお聞かせいただきたいというふうに思います。  この陪審制度または参審制度、いずれにしましても、先ほども局長おっしゃっていただいたように、確かに司法に対する国民の参加という意味では、非常に大きな部門を占めていることだと思います。これについて、これからも私たち国民が、全体が司法の中にどういう形でいろいろと参加していけるかということを一番身近にはっきりと感じられるのが陪審制度だと思います。長所も短所もたくさんあるわけでございますけれども、これから先これについて大きな議論、それから国民の中の意見というものも取り入れていただいて、いつの日かというか、なるべく早い時期に形になってその問題があらわれてくることを願っているわけです。  その中のデータなのですが、現在の刑事事件での起訴されたものについての無罪率というのは、正確なものでなくても結構ですけれども、無罪率、または有罪率ということでも結構でございますが、現在、陪審制をとっていない場合、どのくらいというふうになりますでしょうか。
  116. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 陪審制をとっていない我が国における無罪率ということでお答えいたしますと、現在地方裁判所におきまして、無罪率が平成元年で○・一七%でございます。ただし、否認事件だけでその中の無罪率を見ますと三・七二%でございます。それから簡易裁判所の方ですが、全体についての無罪率は平成元年で○・四二%、それから否認事件だけの無罪率で見ますと六・四六%でございます。
  117. 鈴木喜久子

    ○鈴木(喜)委員 どうもありがとうございました。  否認事件だけで見る方がいいのかもしれませんし、これは過去において日本がとった陪審制というのは大分事情が違っているとは思いますけれども、かなりの程度の無罪率になっているわけでございまして、二けたのパーセンテージになっていると思います。  そうしますと、無罪率がふえることが果たしていいことかどうかということは問題になりますけれども、そのデータだけを見て、今お知らせいただいた無罪率というのが本当にわずか、ほとんどが有罪であるというところから見ますと、どれをとってみましても九〇%以上であることは間違いのないところでございますので、それから見ますと、陪審評議というものの必要性というか、欲しいと思う人には与えてほしい、要らないという人はいいけれども、欲しいと思う人にだけでも与えてほしい、それは一つの行き方だと思います。この点についてもこれからの御検討ということで、既に三年前からということでございますので、三年、あと三年と言わない間に具体的なものが出てくることを期待いたしまして、私時間が参りましたので終わらしていただきます。
  118. 伊藤公介

    伊藤委員長 北側一雄君。
  119. 北側一雄

    ○北側委員 公明党の北側一雄でございます。  まず最初に、民事事件における迅速な裁判の確保についてお聞きしたいと思います。  司法に対する国民の信頼を増大させるためには、迅速な裁判の保障が非常に重要であると考えます。ところが、事民事事件に関しましては、裁判に時間がかかり過ぎると言われて非常に久しいわけでございますけれども、まずその時間のかかっている実態についてお尋ねをしたいと思います。最近ので結構でございますので、地方裁判所における民事事件で訴えが提起されてから判決が出るまで、特に欠席判決を除きまして対席判決が出るまで、第一審が終了するまでどの程度時間がかかっておるのか、これをお聞きしたいと思います。例えば審理期間について一年以上かかっている事件数がどの程度あるのか、全体の中でその割合がどの程度なのか、二年以上はどうか、また、地裁段階で一件平均何カ月程度かかっているのか、御答弁お願いしたいと思います。
  120. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  平成元年度の既済事件訴訟が終わった事件でございます。これについて申し上げたいと思います。  平成元年度地方裁判所の民事の第一審の通常訴訟について申し上げます。そのうちで、今おっしゃいました対席判決、欠席判決でない対席判決で終わった事件でございます。総数が二万九千四百五十五件ございます。そのうち一年を超えるものでございますが、これが一万五千六百六十五件でございます。割合にいたしますと五三・二%でございます。それから二年を超えるものでございますが、これは総数が八千三百七十五件でございまして、割合にいたしますと二八・四%ということでございます。それから、対席判決の全事件平均審理期間でありますが、これは二十・一カ月ということになっております。
  121. 北側一雄

    ○北側委員 二十・一カ月と申しますと、一年と八カ月余りかかっておる。地裁段階で平均一年八カ月かかるという御答弁でございます。今のは一審での話でございますので、控訴される事件も相当あるわけでございますから、例えば通常の訴訟事件で、一審からさらに控訴されて高等裁判所事件が終了するまでに、平均どの程度時間がかかっているのか、おわかりになれば御答弁お願いします。
  122. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 これも、平成元年度高等裁判所におきまして終了しました控訴審の通常訴訟事件でございます。これが全体で一万六百二十六件ございます。この事件につきまして 原審の受理、原審といいますのは地方裁判所でございますが、地方裁判所の第一審の受理から高等裁判所事件が終わるまでの平均審理期間でございますが、これはちょうど四十カ月ということになっております。
  123. 北側一雄

    ○北側委員 四十カ月と申しますと三年と四カ月でございまして、これは平均でございますから、一つ事件が一審終了し控訴されて事件が終了するまで三年と四カ月、これは今の時代の非常に早い流れのときには余りにも長過ぎるのではないか。もちろんこれはすべて裁判所の側に責任があるだけじゃなくて、弁護士の側にも大きな責任があるかとは思いますけれども、この民事事件について迅速な裁判を確保していくということが、司法に対する、裁判に対する国民の信頼をかち得ていくための非常に大切な要件ではないかというふうに考えます。  裁判所として、現在どのような対策をとっておられるのか、また今後どのような対策をとっていかれるのか、御答弁お願いします。
  124. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 民事裁判は時間がかかり過ぎるという批判があることは仰せのとおりでございまして、民事訴訟につきましては、これはもうずっと前からといいますか、民事訴訟が始まって以来、訴訟がおくれておる、民事訴訟は遅いということが言われておるわけでございます。     〔委員長退席、星野委員長代理着席〕  これは、いろいろ原因がございます。そもそも民事訴訟の対象と申しますのが私人間の紛争でございますけれども、その間で、当初は話し合いでやるわけですが、話し合いがつかない場合に決裂をして訴訟になるということが多いものでございますから、訴訟の対象自体非常に難しいということが一つあると思います。特に最近は、昔のような単純な事件だけではなくて、公害事件だとか医療過誤の事件だとかあるいは労働事件だとか、このような事件、価値観の多様化に伴いまして非常に難しいような事件がふえておるというようなことも一つの原因だと思います。また、裁判所の執務体制にも問題もございましょうし、それからまた、両当事者がおられるものですから、裁判所、原告、被告、この三者の間で訴訟が進むものですから、その三者それぞれに問題があろうかというふうに思っております。  そこで、どのような対策をとっておるかということでございます。これは、裁判所でできる対策ということでございますけれども事件につきましてはできるだけむだを省くということを考えております。むだを省くということは、必要なことは十分やらなければいけないわけですけれども、形式的な事項であるとか、あるいは当事者が十分準備をしてくれば、あるいは裁判所が十分準備をすれば二回で済むところが、準備がないために三回も四回も期日がかかるというようなことがございます。そのために、そういうことがないように事前準備ということを十分やろうということで、これはここ数年来民事訴訟の運営改善という言葉を言っておりますけれども、運営改善というのは、事前準備を十分充実をして、一回一回の口頭弁論を大事にして、そこで争点を絞り、必要な証人を調べて、早く判決をしよう、こういうことでございます。そのようなことで、事前準備の充実ということを第一に考えて対策を立てておるわけでございます。  そのほかには、最近ではOA機器の発達もございます。例えば、非常に複雑な計算関係につきましてはパソコンだとかいうようなものも使いますし、それから、当事者との間の連絡につきましてはファクシミリというようなものを、これはごく最近でございますが導入いたしまして、その当事者との間、従前郵便でやっておったというようなものの時間を省こうというような、細かなことでございますけれども、そういうことを一つ一つ積み上げて審理の促進ということを図っていきたい。今までもやってきましたし、これからもやっていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  125. 北側一雄

    ○北側委員 それでは、裁判官定員の問題についてお聞きしたいと思います。  今回の法案は、判事補につきまして六百三名の定員を五名増員改正案ということでございます。これまで判事の定員が千三百六十名、判事補がこれまでは六百三名、そして簡裁判事が七百九十四名という定員になっております。この法定の定員が実際に満たされているのかどうか、この定員に対する不足数の状況につきまして、ここ数年で結構でございますので、その状況をお聞きしたいと思います。
  126. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 定員に対します現在員の不足、いわゆる欠員問題でございますが、昨年の十二月一日現在で見ますと、判事が二十六名、判事補が二十九名という状況になっております。  この数字がここ数年の状況と比較してどうかという御指摘でございますが、例えて申しますと、昭和五十六年をとってみますと、判事が三十名の欠員、判事補が八名の欠員でございます。判事の欠員というものはそれほどふえてないわけでございますが、判事補が若干ふえぎみである、こういう状況でございます。
  127. 北側一雄

    ○北側委員 私は、裁判官というのは不足しているのではないのかというふうに思っておるのですけれども、このような定員不足が生じる理由というのは何なのか、お聞きしたいと思います。
  128. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 委員承知のとおり、判事につきましても判事補につきましても、資格要件というものが厳格に定められております。そのために、欠員ができましてもすぐそれを埋めるということはできないわけでございます。  判事につきまして申しますと、やはり毎年四月に判事補十年の経験を経まして判事に任官する者から埋めざるを得ないわけでございます。判事補につきましても、やはり大量的な採用といたしますと、毎年四月の司法修習の終了者から埋めざるを得ないわけでございます。そういうことで、四月の時点で申しますとほぼ欠員が埋まることになるわけでございますが、年度途中におきまして、定年退官でございますとかあるいは御本人の自己都合による退官が出てまいります。そういったことを、今申しました事情ですぐには埋められないという状況がございまして、次の春まで待たなければならないという状況がございます。先ほど判事につきまして二十六、判事補について二十九の欠員があると申しましたが、これなども、ことしの四月の時点におきましてはこの欠員を解消して定員どおりの人員を確保する、こういう見込みになっておる次第でございます。
  129. 北側一雄

    ○北側委員 そういうことで、結局、 例えば判事補の場合であると司法修習の終了者からしか採用できないという絶対的な要件が今あるわけなんですね。この問題については、また後で御質問させていただきたいと思うのです。  今少しお触れになりました裁判官の中途退官者の問題でございますが、この中途退官者の中途退官される理由状況、その掌握されているところを聞かせていただきたいと思います。
  130. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 中途退官の状況を申し上げます。  昭和六十年におきまして四十二名、六十一年に四十三名、六十二年に四十一名、六十三年に六十名、平成元年に四十六名という中途退官者がおります。  その内訳を見ますと、公証人に任命されたり、あるいは簡裁判事に任命される方がかなりおります。それ以外の数を申し上げますと、昭和六十年で十八名、六十一年で二十一名、六十二年で二十五名、六十三年で三十七名、平成元年が二十二名ということになるわけでございます。  そういうふうにして、約二十名ばかりの人がいわゆる本当の意味の中途退官になろうかと思いますが、この中にはもちろん定年近くで大学教授等に転身するために退官する方もおられるわけでございますが、約二十名のうちの大部分は弁護士になられるのではないかというふうに思います。  中途退官の状況は以上のような次第でございます。
  131. 北側一雄

    ○北側委員 先ほどの鈴木先生の御質問にもあったと聞いておるのですけれども裁判官の中途退官者の場合、公証人になる方、また簡裁判事になる方以外の方の年齢分布、もしくは裁判官としての経験年数による分布とか、そういうのはわかりますでしょうか。
  132. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 申しわけございませんが、そういった観点からの統計はとっておりませんので、手持ちに資料がないわけでございます。
  133. 北側一雄

    ○北側委員 迅速な裁判の確保のためにも、これは長期的な話ではございますけれども、私は、裁判官の大幅な増員ということを検討していかないといけないのではないかというふうに考えております。もちろん、迅速な裁判というのは単に裁判官の数をふやせば達成できるものではありませんけれども、非常に重要な要素ではないかと思います。  裁判官の確保、それからまたその増員のために裁判所の方がどのような対策をとり、また今後長期的にどのような展望を持っておられるのか、ぜひお聞きしたいと思います。
  134. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 裁判の迅速化のために裁判官増員すべきではないかという御指摘は、従来からいただいていたわけでございます。委員承知のように、迅速な裁判の実現のためには、ひとり裁判所努力だけでは賄えないところがあるわけでございますが、私どもの方といたしましても、迅速な裁判のために裁判官を充実させたいということで、毎年増員に努めてきたわけでございます。  昭和四十年からの数を申し上げますと、判事で百五十名、判事補で七十六名、簡易裁判所判事で七十九名、合計三百五名の増員を図ったわけでございます。その結果、他の施策とも相まちまして、訴訟平均審理期間というのは全体としては徐々に短縮しているかと思います。しかしながら、国民の諸活動のテンポがとみに今速まっておりますから、裁判所としても、先ほど民事局長から申しましたような訴訟運営の改善を図ると同時に、裁判官の負担件数を減らすということで、ことしは判事補五名の増員お願いしたわけでございます。  裁判官増員と申しますのは、どうしても我が国の法曹人口全体の数が少ないために、なかなか大幅な増員を図ることはできないわけでございますが、今後とも我々としては、裁判官を確保していくということについて最大限の努力を払っていきたいと思います。  そのための方策は何を考えているかという御指摘でございますが、裁判官の給源、やはり大量な採用といたしますと、司法修習生からの採用にまたざるを得ないわけでございます。そこで、若い司法修習生裁判所を魅力あるものと見てくれるように、我々の職場を生き生きとしたものにしなければならないということを、最大の我々の努力目標にいたしております。裁判の手続にいたしましても、生き生きとした審理で、活発な合議を行う、こういったことを目指して、先ほどから申しておりますような努力をしているわけでございます。  それから、裁判官の任官者を確保する上に最大のネックと申しますのは、やはり転勤問題でございます。全国に二百近い都市に裁判官を配置するために、転勤は避けられないのでございますが、それをできるだけその負担を軽減するという趣旨で、宿舎の整備についても近年とみに力を入れております。そのほか、裁判所の執務環境の改善、こういったことにも力を入れております。また、裁判官を魅力あるものとするために、裁判官に留学の機会をふやす、こういったことにも力を入れているわけでございます。  しかし、何といいましても、魅力ある職場づくりというのが最大の問題でございますので、それについては我々これからも大いに力を入れてやっていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。     〔星野委員長代理退席委員長着席
  135. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございました。  要するに、また後でお話ししますけれども、司法修習の終了者からしか判事補を採用しないというのがいいかどうかというところを検討しないと、大幅な裁判官増加というのは私は望めないと思います。今国会で司法試験改革の法案が出てまいりますが、ふえるといっても百名の話でございまして、そこから実際裁判官志望者がどれぐらい出てくるかというと、私はそう期待できないのじゃないかなというふうに考えるわけでございます。この問題についてはまた改めて質問させていただきます。  次に、同じく検察官の定員の問題につきまして聞かせていただきます。  検察官の定員でございますけれども、これも規定されているかと思いますが、この検察官の定員が満たされているのかどうか。もし定員に対する不足状況がありましたら、その状況がどのようになっておるのか、お答え願いたいと思います。
  136. 井嶋一友

    井嶋政府委員 裁判官と同様でございますけれども、検察官の場合も中途退官が年の全体を通じて発生をいたしますほか、定年退官というものも発生するわけでございまして、必ずしも退官者が全部年度末に集まっているという状況ではございません。そういったところから、統計的には毎年十二月末現在での数を御説明しておるわけでございますけれども、その数を申し上げますと、過去五年にさかのぼりますと、六十一年が五十七、六十二年が六十二、六十三年が七十六、元年が七十九、平成二年が約百でございました。  それで、こういった数がございまして、それがどんどんふえてまいりまして、四月に新しい給源でそれを埋めるということになるわけでございまして、新しい給源と申しますのは、検事の場合には、司法修習終了した者から検事に採用する者と、それ以外に、若干名ではございますけれども、いわゆる特任検事、副検事から特別の選考試験を受けて特任検事に任官する者、これが含まれるわけでございます。それは大きな数ではございませんけれども、最近は少しその受験者もふえてまいっておりまして、それなりの戦力を構成しつつあるわけでございますが、メーンは司法修習生でございます。  その数を五年さかのぼって申し上げますと、六十一年が三十四、六十二年が三十七、六十三年が四十一、平成元年が五十一、平成二年が二十八と、史上最低だったわけでございまして、この五年間は非常に任官者の数が少ないわけでございます。これでもって先ほど説明いたしました欠員というものは到底埋まるわけではございません。そういったことで、この傾向は何も最近五年に限ったわけではございませんで、従来ずっとこういった形で欠員があるわけでございます。そこで、結局任官者をふやすこと、中途退官者をできるだけ少なくするといったことが、給源が限られておるわけでございますので、その二要素が大事であるかなと思っておるわけでございます。
  137. 北側一雄

    ○北側委員 今の御答弁で、平成二年の末に百名不足をしておるわけですか。この不足数というのは検事の数の不足数でございますか。
  138. 井嶋一友

    井嶋政府委員 これは特任検事も含めました検事の欠員数でございます。
  139. 北側一雄

    ○北側委員 ですから、もう検事の不足の問題は非常に深刻な問題であると言わざるを得ないと私は思います。  少し話は変わりますが、検事の方で、司法修習を終わられて検事になられて、その後検察庁外で、例えば法務省の本省、または他官庁等で勤務されておられる方も非常に大勢おると思うのですが、その人数、また検事全体の中での比率といいますか、そういうもの、わかればお教え願いたいと思います。
  140. 井嶋一友

    井嶋政府委員 検事は国家行政組織法上は行政官に属するわけでございまして、それぞれ各行政機関においていわゆるロイヤーとしての仕事を行うという意味におきまして、法務省設置法により まして、検事の肩書きのままそういった行政事務に従事することが認められておるわけでございます。そういった形も含めまして、現在そういった行政機関で勤務しております検事は約百十数名でございます。現在検察庁、いわゆる我々現場と申しておりますが、検察庁で勤務をしております検事は、昨年十二月末現在で約一千四十名でございます。したがいまして、約一割程度の者がこういった行政機関等において勤務をしておるわけでございます。  本省勤務の内訳でございますけれども法務省の官房あるいは民事局、刑事局あるいは矯正局、訟務局といったように、法律事務の非常に多いセクション、その他公安調査庁といったところにおります以外に、外務省、大蔵省、内閣、衆議院、公正取引委員会といったように十三の省庁に検事が出向いたしておりまして、それぞれロイヤーとしての行政官としていろいろな法律事務に携わっておるわけでございます。また、それ以外に在外公館、現在は七カ所でございますが、いわゆるリーガルアタッシェとしてそれぞれ検事が出向いたしまして、法律情報を初めとしたいろいろな情報収集に努めておるところでございます。
  141. 北側一雄

    ○北側委員 そうしますと、現場で本来の検事の仕事をされておられるのが一千四十ですから、約一割の方が庁外でお働きになられておるということでございます。御答弁ではロイヤーというふうにおっしゃっていましたけれども、それが検事でなければいけないのか、検事というのは法曹ですから、むしろ法務省の一般職の試験を合格された中にも法学部出身の方はたくさんおられると思いますし、そういう方が行うべき職務を法曹であるべき検事が行っているのではないかというふうな批判も一部ございます。  一方では、現場の検事が不足している実態がございます。一般職の方の仕事と言っていいのかどうかわかりませんが、そうした本来の検察庁の仕事、業務以外の仕事に多くつかせるのは問題があるのではないかというふうな批判もあるわけでございます。これに対してどう御答弁されるか、お聞きしたいと思います。
  142. 井嶋一友

    井嶋政府委員 確かに一般職の中に法律を専攻しておられる方もたくさんおられるわけでございますけれども、検事の場合には司法試験を合格した法曹資格者ということでございまして、それなりにその法律的な資格、あるいはその素養を活用する場面が多いんだというふうに言われており、各省におきましても需要があるということになるわけでございます。  確かに、今委員指摘のように、現場の検事の数が少ないのに、そういった者をそういった勤務から引き揚げるべきじゃないかといった御意見があるのかもしれませんけれども、逆の意味で、法曹としての検事の働き場所としてそういった場所をもっと拡大して、それぞれ法律専門職としての活動を強化すべきであるといった意見、またそれが検察官の一つの魅力だということで任官をする方もおるといったようなことも実はあるわけでございまして、これは一概にそのことだけをもって多過ぎるというわけにもいかないだろうと思っておるわけでございます。  また、特に訟務事件などのような場合には、国の訴訟におきまして弁護士さんと対等に対応するわけでございますから、そういった意味でどうしても法律専門職としての検事が訟務事件を担当するという必要もあるわけでございます。そういったこともございます。しかし、ここで申し上げておきますが、決してこれを無制限にふやしていこうと考えておるわけではございませんで、現に法務省設置法で認められておりますそういった職につく者の総数は、実は百三十三ときめられておるわけでございますけれども、先ほど申しましたように百十という程度でございまして、満杯にはならないように常に配慮しながら運用しておるわけでございます。  また、委員は先ほど来検察庁における検事の勢力と申しますか、力の減を案じておられるわけでございますけれども、これは、そういった多くの欠員を抱えてやってまいりました検事の伝統的な社会におきましては、やはり事件の発生に応じまして、それぞれが寝食を忘れ、場合によっては日曜にも出勤をするというようなことでやってきておるという伝統、それをもって治安の維持に努めておって、それなりに正義感に燃えて頑張っておるという実態もあって、我々はそれも十分機能しておるという前提のもとに、こういった機関への派遣も他方において考えておるということなのでございます。
  143. 北側一雄

    ○北側委員 現場の検事の方が大変な事件を抱えながら頑張っておられるのは、私はよく承知をしておる次第でございます。だからこそ、この検察官の不足の問題というのは非常に深刻であるなというふうに痛感するわけでございます。  検事の中途退官の問題についてお聞きしますが、まず、この中途退官者のここ数年の状況についてお答え願いたいと思います。
  144. 井嶋一友

    井嶋政府委員 中途退官者の数、過去五年にさかのぼって申し上げます。  六十一年が五十三名、六十二年が四十六名、六十三年度が五十五名、平成元年度が五十六名、平成二年度が、現在まででございますが三十名でございます。
  145. 北側一雄

    ○北側委員 この五年の中途退官者の方々の検察官としての経験年数別の分布もしくは年齢別の分布というのはわかりますでしょうか。
  146. 井嶋一友

    井嶋政府委員 各年代別のデータを用意しております。  六十一年の場合には、二十九歳以下は二名、三十歳代が十一名、四十歳代が六名、五十歳以上が三十四名でございます。六十二年におきましては、二十九歳以下が二名、三十歳代が十三名、四十歳代が五名、五十歳以上が二十六名でございます。六十三年、二十九歳以下はゼロでございます。三十歳代が十二名、四十歳代が八名、五十歳以上が三十五名でございます。平成元年、二十九歳以下はゼロでございます。三十歳代が十三名、四十歳代が十四名、五十歳以上が二十九名でございます。平成二年度は、これは三月末を一応予測した数で申し上げますと、二十九歳以下はゼロでございますが、三十歳代が七名、四十歳代が九名、五十歳以上が三十一名という数でございます。
  147. 北側一雄

    ○北側委員 この中途退官をされる方の退官の理由なんですけれども、もちろんさまざまな理由があるかと存じます。検察庁の方で掌握されている範囲で結構でございますので、どのような理由で中途退官をされておられるのか、御答弁お願いしたいと思います。
  148. 井嶋一友

    井嶋政府委員 今統計でも説明いたしましたように、必ずしも巷間言われておりますように若い人が大勢退官しているという傾向ではなくて、従来同様、やはり五十歳以上の方が次の転身を図るということでおやめになるのが圧倒的な数、七割ないし八割を占めるわけでございまして、ただ年度によって若干違いますけれども、そういったのが一般的な傾向でございます。  ところで、中途退官者の退官される理由でございますけれども、これはもう、それぞれ個別にそれぞれの事情があっておやめになるわけでございますので、一概にここで説明するわけにもまいりませんし、また、そういうものを従来調査をしておるわけでもございませんけれども、それぞれやめる際に上司にはそれなりの理由を言われるわけでございますから、そういったものを情報として集めてみますと、やはり圧倒的に個人的な事情、家庭の事情が多うございます。特に若い人たち、三十歳代ぐらいの方々で特に多いのは、転勤の内示の際にやめるというようなことがあるわけでございますけれども、やはり検事の生活には転勤がつきものでございまして、二年ないし三年の周期で転勤をするということによる、子弟の教育の問題あるいは父母の養育の問題といった家庭上の問題と衝突をして、どうしても住所の安定が求められる弁護士になりたいという方、あるいは子供さんも大きくなって、財政上の事情からより収入の多い弁護士に転身をしたいという方、あるいは人 生の計画として最初から、例えば検事を十年やってそれから弁護士をやってといったような計画を立てておられる方もおられますし、それから、これは根本にもなるわけでございますけれども、最近検事任官者のいわゆる平均年齢が高齢化しておりますので、そういった意味から、最初の十年頑張って次は弁護士といったような人生計画を既に持って、比較的高齢であっても任官されるといった方もおられるわけでございまして、さまざまな事情があるということでございます。したがいまして、ここで調査結果といったようなものを客観的な事実としてお答えし得るだけのデータはないということを申し上げたいと思います。
  149. 北側一雄

    ○北側委員 司法修習を終了された方々の中から検事に任官される方の数と、そして今御答弁いただきました中途退官をされる方々の数と比べてみましたら、今教えていただきましたその五年間では、中途退官者の数の方が多い結果になっておるわけなんですね。今御答弁では、刑事局長の方からは、高齢の方が多いんだというお話ございましたけれども、それでも、四十代までの本当に現場の一番働き盛りの方々が年間二十人前後やはり中途退官をなされておるわけでございます、もちろん理由はさまざまであるかと思いますけれども。  そこで、昭和六十二年の七月に、東京弁護士会の法友全期会という組織があるんですけれども、当時私もこの法友全期会に所属しておったわけなんですが、この法友全期会が実施しました、検事の中途退官者に対するアンケート調査というのがございます。これについて刑事局長は御存じでしょうか。
  150. 井嶋一友

    井嶋政府委員 手元に所持しておりまして、既に通読しております。
  151. 北側一雄

    ○北側委員 このアンケート調査は、司法試験に合格し、検察官に任官し、その後中途退官して現在弁護士をしている方々のうち、東京三会で弁護士登録をしている方を対象として、そのうち五十六人の方から回答がございました。回答数は決して多くないわけで、決して十分な調査と言えるものではございませんが、以下、この調査結果をもとにしまして、御質問をさせていただきたいというふうに思います。  このアンケート調査によりますと、検事の中途退官の理由につきまして調査されておりまして、中途退官された人の声も記載されております。もちろん、全く個人的な事情で中途退官されている人も多くいるわけでございますけれども、一方では、中には検察の組織とか職務内容、また検察官の待遇等について複数の方が共通して、これは問題点ではないかと指摘しているところがございます。決してその内容が正しいとは私も思いません。必ずしも的を射ていない、また一面的であるところもあると思いますけれども、あえてその内容を引用しながら質問させていただきたい、そのことを御容赦願いたいというふうに思います。  まず一つは、検察の組織のあり方にかかわることでございますけれども、検察官、検事の人事の問題として、人事の公正、客観化に欠けるのではないかという指摘をする方が半分近くこの中におられました。ちょっと具体的に述べさせていただきますと、例えば「中途退官者の増加は人事の不公正により将来の希望を失わせることが主因である。」とか、「検察は、任官時から年令、出身校により、ある程度将来が固定されており、夢がない。」とか、さらには「検察官人事について情実人事が目に余る状況である。」、これは言い過ぎかもしれませんけれども、このような指摘をする方がおられます。こうした人事の客観化、公正の問題について指摘があるわけなんですが、これについてどのようにお考えになりますでしょうか。
  152. 井嶋一友

    井嶋政府委員 まず、このアンケートの性格と申しますか、内容に関して若干申し上げたいと思うわけでございます。  既に委員自身がお認めいただいておりますように、必ずしも客観的なものが保証されておるのかといったものもあるかと思いますし、極めて一方的だなというようなものもございます。また、現実にアンケートのやり方をこうして見てまいりますと、そういった質問が並んでおりまして、それを選択するという形でのアンケートでございますから、そういった意味で、必ずしも自発的な意思がそのまま出ておるのかなというようなことにも若干問題があるのかなという気もするわけでございますが、いずれにいたしましても、私ども先ほど説明いたしましたように、中途退官された方々、もうほとんどと言ってもいいわけでございますけれども、それぞれ退官される場合におきましては、それぞれ個人的な事情でもっておやめになっておるわけでございまして、まあ俗な言葉で言えばけんか別れをして出ていかれたという人たちではないわけでございます。そういった意味で、その後いろいろな仕事につかれ、検察を外部から見られ、そしてまたそういった状況の中でこういったアンケートを求められた場合に、どのような意見が出てくるかといったことも、それはそれなりに考えてみなければならぬのかなと思うわけでございますが、それはその程度にいたします。  そしてもう一つ、ここでお断りをしたいと思うことは、そういった御批判もこういったアンケート調査などでいろいろしていただくことは、まことにそれなりに結構だと思うわけでございますけれども他方、そういった非常に厳しい状況の中で日夜努力をしておる若手検事も含めて、検察官が一千名を超える数がおるわけでありまして、こういった人たちがこういった国会での論議といったものをどのように、あるいは私ども答弁も含めまして、どのように受け取るかなといったことも考えますと、そういった個人的な事情による退職の理由といったものを余りいろいろ議論申し上げるのは必ずしも得策でないなというのが、私は個人的な感情として持っておるわけでございます。  その二点をお断りいたしました上で、御質問にお答えいたします。  確かに委員指摘のとおり、人事に公正さを欠いている、あるいはエリート、非エリートの区別がはっきりしておる、そういった質問がたびたびございまして、「そう思う」「思わない」「どちらともいえない」ということを……
  153. 北側一雄

    ○北側委員 刑事局長、今私の述べているのは、その質問のところを述べたわけではなくて、そのページで言いますと百十四ページ以降の、回答者の方が具体的に意見を自分の文章として書いたところを今読んだわけでございます。
  154. 井嶋一友

    井嶋政府委員 そうでございますか。わかりました。   ただ、今アンケートのやり方として、そういう部分をチェックするといった形も前提としてあるわけでございまして、そういった上で今御指摘のようないわゆるその他意見ということで、御自分の意見を書いておられる方もあるかと思います。しかしながら、そういった御指摘になっておるようなことは、私どもは全くないと申し上げるわけでございまして、先ほど来申し上げましたように、法務行政の一環としてそういうことがございますれば、それは我々にとっては自殺行為であるという意識でございまして、決してそういうことはないというふうに申し上げたいと思います。
  155. 北側一雄

    ○北側委員 私、決して検察の批判をしているわけではございませんので、魅力ある検察であってもらいたいというふうに私は思っているわけでございます。そのことを刑事局長、よく御理解の上御答弁お願いしたいと思うのですけれども、あえて耳の痛い話をさせていただいているわけでございます。  次に、決裁制度について厳し過ぎるという意見も多々あるのです。決裁制度が厳し過ぎるのではないか。これもアンケートの答えではなくて、回答者の方が具体的に意見として書かれた部分を読ませていただきます。「決裁制度、上命下服、対人関係等が、検察官は裁判官と比較して厳に過ぎて、個性を自由にのばして成長する芽を摘んでいるように思われる。」とか「法曹三者の中で、真に独立した仕事が出来ることが最も少ないのが検察でしょう。いつまでも決裁がつきまとい一〇年 経っても頭を押さえ付けるような感じが否めない。」さらには「本来検察制度の一つの大きな柱であった決裁制度が、若手を育成するためには何等の機能を果たさないばかりか、かえって、若手の意欲を減殺」しているというふうな御意見がございます。これはいかがでしょうか。
  156. 井嶋一友

    井嶋政府委員 検察の事務の処理におきまして、決裁制度というのは大変重要な機能を発揮するものでございます。検察権の行使に全体としての統一性を図るという点がございます。検察権の行使に誤りなきを期すという観点からも必要でございます。しかしながら、委員指摘のとおり、検察官は職務上、独立官庁ということで、その独任性が認められているわけでございまして、そういった立場において、個々の検事が個々の検事の名前において検察行政をやっておるわけでございます。検察権の行使をやっておるわけでございます。したがいまして、決裁という場面におきましては、その独立性と統一性といったような問題から衝突する場面が間々あるということは、過去においてもいろいろあったというふうに言われておりますし、そのことがいろいろ個人的な不平につながったりすることがあることは、私自身の経験からも経験しておるわけでございます。  しかしながら、この問題は決してなおざりにすることができない、検察にとって大変重要な機能でございまして、私どもは各種の会同の都度、決裁制度のあり方、決裁のあり方につきましてもう何回も会議を重ね、その適正なあり方を探求、追求しておるわけでございます。さらに、既に新聞等にも出ておりますけれども、最高検察庁に検察問題調査会というものを設置いたしまして、この決裁制度を含めまして検察の事務のあり方あるいは人事のあり方、待遇のあり方、そういったものを、あらゆる面を四つの分科会に分けまして、ここ数年検討を続けておるわけでございまして、そういった指摘があることは十分承知の上で、より適正な決裁制度を確立するために研究調査を進めておるということでございます。
  157. 北側一雄

    ○北側委員 それでは、余り時間がないので、ちょっとまとめて質問させていただきますけれども、検察官の職務内容についても同様に意見を述べている方がおられます。その事務量が増大している、また単純労働化というのを指摘される方、捜査方法を改善すべきじゃないかという意見もございます。  例えば「検察官本来の職責は法曹志望者にとって十分な魅力たりうるものと考えます。」というふうにこの方は言われています。「ところが、実態は、厳格なタイムリミットのもと、ヤクザ者、変質者、常習盗犯等にてこずる毎日で、しかも、考課の重点が処理・未済の件数におかれているため」「全く魅力が失われてしまいます。自ら事件を発掘しうるビビッドな職場にしなければ、中途退官者の増加は不可避と考えます。」さらには「無意味な調書の作成(いわゆるウワヌリ調書)等をやめて仕事を簡易化」すべきである。さらには「検事・副検事の数が減少している為、警察送致の日常事件処理に追われ、本来の果たすべき機能を発揮しえなくなっている。それが、逆に検察官の仕事を魅力なきもの」にしているというふうな意見がございます。  さらには、検察官の待遇についての御意見もございます。頻繁な転勤、単身赴任に対する配慮に欠けるとの指摘が多うございます。これらにつきましてもちょっと具体的に御紹介申し上げますと、例えば「若い検事の待遇を改善すべきである。例えば、子供の多い若い検事が狭い官舎に」入っているじゃないか、「官舎の配分にもっと気を使うべきである。」というふうな意見とか、さらには「検察官は仕事の出来る者ほど、仕事と責任が厳しくなる傾向があり家族家庭生活をいわば当然の如く犠牲にせざるを得ない。給料も能力に関係なく同一で仕事と責任に比して低きに失し、」とか、そういった御意見がございます。こうした御意見に対してどう考えておられるのか。さらに、こうした中途退官者の方々の理由につきまして、不十分でありますけれども、実際こういうアンケート調査の結果がございます。法務省として一度その実態調査をしてみてもいいのじゃないかというふうに私は考えるのですが、いかがでしょうか。
  158. 井嶋一友

    井嶋政府委員 何点かお尋ねがございましたので、順次お答えいたします。  まずその執務体制といいますか、仕事ぶりについての批判でございます。  刑事訴訟法上、御案内のとおり、捜査の第一次捜査権は警察が持っておりまして、検察官は第二次捜査権を持っておるということでございますが、どうしても公判対策上、警察送致事件について、検事が警察の調書と似たような調査をさらにもう一度とるといったことを上塗り調書と言っておるようでございますけれども、そういった事務があるといったようなことから、何か単純労働化しているといったような御批判につながっているのだろうというふうに思うわけでございます。  実はそれも誤解に基づく部分が非常に多いわけでございますけれども、それはそれといたしまして、若い人たちの間に、あるいはやめられた方々のいろいろな御意見も含めて、外部からの御批判の中にそういったものがあることも十分承知をしておりますので、先ほど申し上げました検察問題調査会におきましては、警察との役割分担、捜査における役割分担をいかにすべきかということにつきまして真剣な検討をしております。そして、検事が行うべき仕事は何かということにつきましてもさらなる検討をしておるわけでございまして、そういった意味で、先ほどの決裁制度も含めまして、執務のあり方、検察制度の運営のあり方といったことにつきまして調査会で検討しておりますことが、現在の検察庁の検事にとりまして非常に重要な、非常に強いインパクトになって、それぞれがいろいろなことを考えながら、全国津々浦々の検察庁においてそういうことを考えながら全検事が仕事をしておるのが毎日の実情でございます。  それから、待遇面の改善の問題でございますけれども、御指摘のようにいろいろ不満をお持ちの方もおられるかと思います。決して満足すべき状況だと私どもその衝に当たる者が申すわけではございませんけれども、これには非常に長年にわたって努力を続けてきておるわけでございます。  例えば、若い検事につきましては初任給調整手当といった制度がございますけれども、これの改定につきましては、弁護士の初任給の現状にスライドするべく、数年ごとにその額の改定も行っております。さらに、官舎の整備を行いまして、より大きな官舎、より整備された官舎の整備に向けて毎年努力をしておるわけでございます。それから、あるいは転勤が非常に多いということもございますので、転勤回数をできるだけ少なくするような人事のあり方といったことにつきましても研究をしておるわけでございます。それから執務室、そういったものあるいはOA機器、それから執務資料の整備といったような問題につきましても、整備を逐年図っておるわけでございまして、最近東京に建ちました検察総合庁舎の検察官の個室は、従来よりも相当大きな立派な個室になっております。そこに入っておる若い検事は非常に満足をしておるわけでございますけれども、乏しい国家予算の中でそういったことの努力も私どもは続けておるということを、この際申し上げたいと思います。
  159. 北側一雄

    ○北側委員 いずれにしましても、検察官の不足の問題は本当に私は深刻であると思います。検察官の確保、増員というのが非常に重要である。  法務大臣にお聞きしたいと思いますが、この検察官の増員、確保のために今後どのような対策をとられていかれるのか、また、検事志望者をふやしていくためには、今のアンケートの回答からも若干推しはかれるかもしれませんが、検察制度のあり方や職務内容、待遇などについても改善すべき点が私はあると思います。もちろん人事の問題とか転勤が多いとか、そんな問題というのは、大なり小なり官庁とか民間企業でも共通する問題でございまして、そういう意味では特別な問題で はないのかもしれませんが、ただ検察官、これは裁判官でも同じでございますが、特別なのは、検察官というのはいつでも弁護士に転身できるわけなのですね。そこがほかの民間のサラリーマンや官庁の公務員と違うわけでございまして、そこが決定的に違う。その意味で、検察官また裁判官というのは、弁護士との比較に常にさらされているわけでございまして、私は特に魅力ある検察庁づくりというのを常に求めていかなければいけないのじゃないかなというふうに考えます。また、司法のさらなる充実、確立のためには、検察庁には多数の優秀な人材が絶対に不可欠なわけでございます。魅力ある検察庁づくりにどのように取り組んでいかれるのか、法務大臣よりその展望をお聞きしたいと思います。
  160. 左藤恵

    左藤国務大臣 お話のとおり、検事さんが法秩序の維持という上で果たしておられる役割というものの大きいことは、申し上げるまでもありません。今お話しのように、執務環境とかそういった点で非常に不十分な点がある、あるいはもっと何か努力しなければならない問題があるのじゃないか、検事の待遇改善とか執務環境の整備というような問題についてはもっともっと努力をしていく必要があり、またそうすることが検察権を適正に行使していただける、そして国民の信頼と期待にこたえる道である、このように考えますので、予算の面、いろいろな面で今後努力をしていかなければならない、このように考えております。
  161. 北側一雄

    ○北側委員 裁判所の方も検察庁の方も、非常に謙虚でございますので、余り予算をしっかりふやしてくれというようなことは主張なされないかもしれませんけれども、私は法務大臣にぜひ、裁判所、検察官待遇面等におきましてしっかり予算をつけていただきたいというふうにお願いする次第でございます。  時間がなくなりましたので、最後にお聞きしたいと思いますが、以上のように、私は、裁判官の場合も裁判官の不足ということがあるのではないか、特に迅速な裁判の促進という意味では、裁判官はもっとたくさんおられていいのじゃないかなというふうに考えますし、また、検察官につきましては、今るるお話ししたとおり非常に不足しているのが実態でございます。  そこで、お聞きしたいと思うのですけれども弁護士から裁判官や検察官への任官制度につきまして、まずこれまでの実績をお聞きしたいと思います。最高裁判所の方と法務省の方、続けて御答弁お願いいたします。
  162. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 裁判所からお答え申し上げます。  裁判所は、従来から弁護士の中の適任の方に多数裁判官に任官していただきたいというふうに考えていたわけでございます。特に最近は、複雑、変化の激しい時代でございますので、裁判所の中に弁護士の経験を持ち込んでいただきたい、そういった観点から、弁護士からの任官を大いに希望しているわけでございます。  そういう意味におきまして、昭和六十三年三月に「判事採用選考要領」というものをまとめまして、日本弁護士連合会に説明をいたし、全国弁護士の方々に周知方を依頼したわけでございます。そこで対象となりましたのは、経験十五年以上で年齢五十五歳未満の方を対象にしてお願いしたわけでございます。その結果、私どもの方に応募してくださいましたのが七名でございます。今のところそういう七名にとどまっておりますが、これらの方々は、弁護士としての実務経験によって培った知識とか考え方、こういったものを裁判所の実務の上にも大いに生かしていただいておりますし、また、それ以外の生え抜きの裁判官にも大きな刺激を与えているわけでございまして、私どもこの制度はさらに拡大してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  163. 井嶋一友

    井嶋政府委員 法曹三者、判・検・弁は法曹一元という形で連帯をしているわけでございます。従来から、弁護士から検事に希望される方につきましては、いつでもおいでくださいという形で門戸を開いているわけでございます。何ら制限はございません。  実績でございますが、昭和二十五年以降三十数名の方が弁護士から検事になっておられます。最近の五十年以降で申し上げますと、五名の方が弁護士から検事になっておられます。それぞれ経験年数の差はございますけれども、いずれも検事としての使命に燃えて仕事をしたいというお申し出でございまして、任官者と同様の審査をいたしました上で検事になっていただいておるというのが現状でございます。
  164. 北側一雄

    ○北側委員 最後に質問させていただきます。  これもできれば大臣に御答弁お願いしたいのですが、司法修習生、司法試験を受かりまして二年間の修習を終わります。司法修習生からの採用ルートには、しょせん人数は限られておりますので限界がございます。  先日、ある司法シンポジウムで弁護士にアンケートをとりましたら、二千四百名の回答者のうち、かつて五百八十三名の方が裁判官志望であった。ちなみに私も当時は検察官志望でございました。弁護士の中から意欲とそして人格、識見の豊かな人を選びまして、弁護士からの裁判官への、また検察官への任官制度につきまして、私は、弁護士会なんかともしっかり協議して、環境整備等も整えて、これはさらなる拡充をしていかないといけないのではないかというふうに考える次第でございます。大臣の御所見をお願いしたいと思います。
  165. 左藤恵

    左藤国務大臣 弁護士からの検察官への任官ということは、私は、弁護士さんのお仕事、そして検察官としての仕事、これは相互の職務の理解というものがやはり深い方がいいわけでありまして、そういう法律家としての御経験というものを生かすということで非常に意義のあることだと考えますし、また、そういった機会を大いに進めていく努力をしなければならない。それには先ほど申しました給与の面とかいろいろな問題点は若干あろうと思いますけれども、さらに今後は、日弁連なんかの御意見を伺って、こういった弁護士さんから検察官への任官を進めていく努力をしなければならない、このように考えております。
  166. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございました。
  167. 伊藤公介

  168. 木島日出夫

    ○木島委員 私に与えられた時間はわずか二十二分でありますので、端的にお聞きしますので、簡潔にお答え願いたいと思います。  ことしの定員法改正による裁判所職員増員の特徴が、一つは十三年ぶりの判事補増員ということのようであります。もう一つの特徴は、裁判官以外の裁判所職員増員二十八人のうち、久しぶりで裁判所調査官二名増員というふうに伺っております。そこで、この二名の増員がどういう職務に従事する調査官なのか、まずお答え願いたいと思います。
  169. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 いわゆる工業所有権関係事件を取り扱う調査官でございます。
  170. 木島日出夫

    ○木島委員 配付されております資料によりますと、裁判官以外の裁判所職員定員のうち、裁判所調査官として現在人員が最高裁判所に五人、高裁に七人、地方裁判所に十人、合計二十二人だ。今回これに二人追加するということのようでありますが、現在の人員の二十二人がどういう職務に従事しているのか、内訳をお答え願いたいと思います。
  171. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  二十二名のうち、十五名が工業所有権の関係でございます。それから、その他は七名ということになりまして、税務、それから海難審判、建築ということになっております。その内訳は、税務が五名でございます。それから海難審判、建築が各一ということでございます。
  172. 木島日出夫

    ○木島委員 工業所有権十五名、租税関係が五名ということでありますが、どういう人が配置されているのか、お答え願いたいと思います。
  173. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 これはいずれも専門的な知識、経験を有する方でございまして、工業所有権につきましては、特許庁の職員がいわゆ る出向というような形で裁判所に来ていただいておるという形でございます。それから税務の関係でございますが、これも国税庁の職員裁判所に来て、これは裁判所職員になるわけですけれども、元は国税庁の職員ということでございます。それから海難審判でございますが、これも海難審判庁の元の職員ということでございます。それから建築関係でございますが、これは裁判所の内部で建築の専門家ということでございます。
  174. 木島日出夫

    ○木島委員 特許関係と租税関係だけに絞ってお聞きしますが、いずれも出向ということで、特許庁あるいは国税庁から裁判所に入ってくるということですが、実態としては、いずれも数年やりますとまた特許庁や国税庁に戻るのでしょうか。何年ぐらい裁判所の調査官として勤務しているのでしょう。
  175. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 これも各人によっていろいろございますけれども、大体の傾向を申し上げたいと思いますが、大体三年程度裁判所調査官ということで勤務をされる、その後はそれぞれの庁に戻られる方が多いということでございます。もちろん若干の例外はございますけれども、大体の傾向はそういうことでございます。
  176. 木島日出夫

    ○木島委員 そこで、具体的な職務はどういうことをやっているのでしょうか。裁判業務はやらないわけですね。
  177. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 これは裁判所法の五十七条に規定がございますが、裁判官の命を受けて事件審理裁判に必要な調査をつかさどるということでございます。  それで、工業所有権関係について申し上げたいと思いますが、これは例えば特許発明あるいは関連技術の専門技術的な事項に関しまして調査を行うということでございます。もう少し具体的に申し上げますと、これは、裁判官の命によりまして、当事者の出しました主張あるいは証拠でありますが、これを技術的な観点から吟味する、あるいは裁判官に命じられた事項につきまして特許発明の明細書等を分析する、それからそれについての先行技術あるいは類似技術でございますが、そういう先例を調査したり、専門の図書あるいは学術論文等を調査するというようなことが主な仕事でございます。
  178. 木島日出夫

    ○木島委員 租税関係事件がどういう形で裁判所へ提起されてくるかといいますと、納税者に対して税務署から更正決定が打たれる、それが不服であれば納税者は異議申し立てを税務署にする、それが棄却されますと国税不服審判所に不服審査請求をする、それに不服な場合に初めて裁判所へ訴え提起がなされる、そういう筋道であります。被告はもちろん国、税務当局であります。一方、工業所有権の事件については、特許出願審査が個人から特許庁に出されます。特許法百二十一条に基づいて拒絶査定がなされますと、それに対して不服がある当事者から特許庁に対して不服審判申し立てがなされる、そこで審決がなされて、その審決が不服な場合にはやはり行政庁、特許庁を被告にして訴え提起が、これは第一審裁判所は東京高等裁判所だけ、そういうシステムであります。ですから、租税行政事件にしろ、工業所有権関係の行政事件にしろ、いずれも被告は行政庁であります。原告は一市民であります。  そういう事件に対して、裁判所調査官に実際税務署関係の人が三年ぐらいの出向でやってくる、特許庁から三年ぐらいの出向でやってくる、そして裁判官の背後にあってその事件を審査する、事実上専門的な知識を持って専門的な意見を裁判官に具申する、そういう構造なのです。そうしますと、被告である特許庁や税務署当局から事実上来た職員が仕事をする、将来また、三年ぐらいたつと自分の古巣へ戻る、こういう人がこういう仕事に携わるということは、公正な裁判という観点から見るとまことに遺憾ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  179. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  大体の事件については今委員仰せのとおりでございますが、若干は、例えば工業所有権の場合ですと一審地方裁判所が行います差しとめ事件あるいは損害賠償事件というのは、これは私人間の事件というのもあるわけでございます。  それで、行政事件等について申し上げますと、この裁判所調査官の職務は、先ほど申しましたように裁判官の判断の補助をするというものではございません。その判断の前提となります専門的、技術的な事項に関しまして、裁判官の知識の不足を補うための調査でございます。これはあたかも、裁判官が専門的な文献を自分で調べて、それを判決裁判に生かすということと全く同じ形態でございます。また、裁判官は、調査官の調査の結果を自分の判断の前提にするわけでございますけれども、その判断に拘束されるわけでは全くございません。裁判官はみずからの責任において必要な法律判断をするということでございまして、公正ということは裁判の生命でございますから、そのような危惧はないというふうに思っております。  また、調査官の立場から申しますと、もとは確かに特許庁の職員等であったわけでありますけれども、一たん裁判所職員ということで任命されたわけでございますから、裁判所職員の使命、これはあくまでも公正、中立ということでございまして、いささかもそれについて疑われるようなことがないというのが裁判所職員の誇りでございます。決して出身庁で、特許庁にいたからといってその特許庁に有利な判断をするというようなことはございません。専門的な、技術的な事項について裁判官の判断の前提となる補助をするということでございます。その点は十分御理解をいただきたいと思います。
  180. 木島日出夫

    ○木島委員 こういう調査官が裁判所に配置される本質的な理由は、裁判官では税務の細かいこと、特許の非常に細かい技術的なことについてなかなか知識がないから、こういう調査官が配置される。まさにその微妙な細かい知識が、原告勝訴か被告行政庁勝訴かの分かれ道になるというわけであります。ですから、裁判所で一番大事なことは公正、中立、独立ですよ。行政庁が被告になっている事件について、その被告の行政庁から配置された人間が裏にいて、一番大事な微妙な、裁判官の知識がない分野について補っている。これでは、国民から見たらこれは公正な裁判とは言えない。ぜひともこれについては、特許庁や大蔵省、税務署、国税庁から配置するのではなくて、公正な学者の方から、そういう人がいるわけですから、そっちからどんどん配置してもらいたい。増員することは反対ではありません。その中身について意見を述べたい。  お聞きしたかったのですが、時間がありませんから数字だけ言いますと、例えば租税関係の行政事件で、平成元年で二百三十九件が結審で判決になっている。そのうち原告勝訴わずか二十四。ほとんど勝てないという事件の結果になっているわけでありますから、公正さが疑われているということがこういう点からも指摘されるのではないかと思いますので、ぜひとも中立的な人から選んでいただきたいということを重ねてお願いして、次の質問に移ります。  裁判所刑事裁判における通訳の問題についてお伺いをいたします。  通訳の問題については、昭和六十二年九月十六日、六十三年三月二日の当法務委員会におきまして、自由民主党の保岡興治委員から非常に詳しい事実を述べられまして、その重要性が指摘されております。既にアメリカでは法廷通訳法なるものがあって、日本でも法廷通訳人制度をつくれという要求がその委員会最高裁に対してなされております。当時の議事録を読みますと、現在最高裁長官である草場さんが事務総長のときでありますが、「法廷の通訳が正確に行われますことは適正な裁判の実現のために非常に重要なことでございます。」そして「研究させていただきたい」と答弁があります。  そこで、私きょう、昨年九月十九日付の、私の出身地である長野県で販売されております信濃毎日新聞の記事を持ってまいりました。法務委員長 も長野県出身ということでありますが、非常に大きな見出しで、「外国人の裁判 公正か─通訳不十分」ということで、幾つかの事件について指摘がされております。「長野地裁で、通訳が必要な外国人を被告にした刑事裁判が目立っている。しかし、十分とはいえない審理で結審したり、慣れない法廷通訳による問題点も出ている。外国人犯罪者は公正に裁かれているのだろうか。現状に疑問を投げ掛ける法曹関係者も少なくない。」というのがあります。  時間が追っておりますので、端的にお聞きします。通訳人を付した刑事事件数の最近の推移を数字で報告していただきたい。これの割合が全事件に対してどのくらいの割合になっているかもお示し願いたい。
  181. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 通訳、翻訳人のついた外国人事件の有罪人員の数でございますが、平成元年で有罪人員総数が五万二千八十八人、そのうち通翻訳人のついたのは六百六十八人でございます。割合までは、ちょっと正確に出しておりません。
  182. 木島日出夫

    ○木島委員 私がいただいている、通常第一審において通訳、翻訳人のついた事件の終局人員として、通訳人のついた被告人の数が、平成元年六百八十九、これが全人員に対する割合が一・三%ですか。昭和六十三年が四百六十三人で〇・八%、昭和六十二年が三百七十五人で〇・六%。最近非常にふえているということは事実であります。それが地方にまで及んでいるということであります。  そこで、その次に、第一審、控訴審における刑事裁判で通訳人がついた事件のうち、言語別選任状況について答弁願いたい。
  183. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 先ほど私の答えましたのは有罪人員で、委員指摘のは終局人員で、若干数字が違っております。  それから今度は、国籍別有罪人員として申しますが、平成元年で総数六百八十八名中、中国が二百十七、朝鮮九十、以下フィリピン八十八、タイが七十二、パキスタン六十、アメリカ四十五、マレーシア十九、英国十四、その他少数の国としてはカナダ、スリランカ、イスラエル、インド、シンガポール、ブラジル、そしてベトナム、ドイツ、そのようなところが二、三人ずつおります。
  184. 木島日出夫

    ○木島委員 それは被告人の国籍かと思うのですが、私聞いたのは、言語別選任状況を聞いたのです。
  185. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 言語別になりますと、中国語が三百二十九、朝鮮語が百四十七、タイ語が九十二、タガログ語七十二、ウルドゥー語六十九、スペイン語十三、フランス語八。以下は五以下でございます。ベトナム語、ベンガル語、インドネシア語等がございます。
  186. 木島日出夫

    ○木島委員 時間がなくなってきましたので、それでは端的にお聞きします。  先ほど提示した信濃毎日新聞の記事の中で、「パキスタン人殺人事件公判でも、弁護人や検察官が尋ねた内容分量に比べ、ウルドウ語の通訳人が手短かに質問しているのではないかと、傍聴人が首をかしげたくなる場面もある。」今ウルドゥー語六十九という答弁がなされましたが、それではウルドゥー語についてだけ絞って聞きましょう。裁判所がどれだけウルドゥー語の通訳を配置できるのか、確保している人数について答弁願いたいと思います。
  187. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 ウルドゥー語の通訳人として私ども名簿上把握しておりますのが、全国で十名でございます。東京高裁では四人でございます。
  188. 木島日出夫

    ○木島委員 長野地裁で行われております裁判で、東京にいるウルドゥー語ができる通訳人に来ていただいて、国選弁護しているという実態のようであります。私、この新聞に記載されているいろいろな事件の弁護人からいろいろお話を聞いてまいりました。どこまで意が被告人に通じているかわからないと、率直に弁護人たち語っております。すぐれた通訳がどうしても必要だ。これは、語学の上ですぐれているだけではなくて、法律的基礎知識がある通訳人でなければならぬということを、異口同音に言っております。例えば黙秘権という概念を、その被告人、日本のことを何も知らない、日本語もわからぬ人に対して正しく伝えるのが非常に困難であるということまで伺っているわけであります。  そこで、最後に、最近、長野地裁と長野の検察庁と長野県弁護士会で法曹三者協議がなされているわけなんですが、その協議の中で弁護士会から、外国人に対し公判請求した場合に、被告人に送達する日本語の起訴状には、取り調べに用いた言語に翻訳した起訴状を添付されるように図られたい、起訴状が日本語で行きますから、全然日本語がわからぬ被告にとっては何が起訴されているのかわからない、そんな中で公判が始まっている、ぜひとも外国語に翻訳された起訴状を渡してほしいという要求が出されたのですが、裁判所からは出すという答弁がありませんでした。ぜひ出していただきたい。答弁願います。
  189. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 ただいまの、起訴状に外国語の翻訳をつけるべきであるという意見があることはよく承知しております。私ども現在検討中でございますが、起訴状自体の翻訳につきましては、何分起訴状が検察官の作成文書でありますし、その内容を一番よく承知しているのも検察官であります。また、起訴状の受理後、謄本送達までの時間も限られておりますので、裁判所において正確な翻訳をすることには難しい問題がある、困難が大きいということは御理解いただきたいと思います。  ただし、最高裁といたしましてもできる限りの手だては尽くしたいと考えておりまして、現在、起訴状謄本や弁護人選任照会書を送達する際に、被告人が起訴された事実、何の罪によって起訴されたという事実、それから弁護人選任手続や公判手続の概略などにつきましては、ぜひその母国語に翻訳したものを送付するということを考えまして、さしあたり英語から始めておる、東京地裁では既に実施していただいておる、こういうことでございます。
  190. 木島日出夫

    ○木島委員 終わりますが、刑訴法二百七十一条によりますと、起訴状の謄本の送達が二カ月以内になされなければ、その公訴の提起はさかのぼって効力を失う、起訴状が送達されなければ、もう公訴自体が失効するという極めて重要な問題であります。こういうウルドゥー語なんという言葉についても、この起訴状の翻訳は完璧にやっていただきたいということと、こういう国選弁護を受任した弁護士さんの苦労は並み大抵じゃありません。国選弁護料を完壁に支払っていただきたいということを要望いたしまして、終わらせていただきます。
  191. 伊藤公介

  192. 和田一仁

    和田(一)委員 裁判所職員定員法改正に当たりまして、大臣に提案理由の御説明をいただきましたけれども、その中に、「下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、」こういう御説明がございました。それで私は、今裁判所あり方等を見ておる中で、こういったことも非常に大事でございますけれども、もう一つ大事なことがあるのではないかなという気がいたしますので、大臣にちょっとお尋ねをしたいと思います。  昨年の十一月が我が国においての近代的な裁判制度が設けられてちょうど百年ということで、記念行事もございました。この歴史の中で、我が国の三権分立というものがだんだん確立をしてまいっておるわけでございますけれども、どうも裁判所というものは、立法や行政から比べてみますと、国民にとっていまひとつ親しみがどうも起きないということが言われております。それはどういう理由かといえば、制度的には開かれたものなんでしょうけれども、やはりなかなか接する機会がないということと、それから、たまたまかかわった人が言うのは、非常に時間がかかり、それからお金がかかり、それからもう一つは、非常に難解である、判決一つとっても非常に難解であるというような印象が強いように思うわけでございます。これが要するに、法治国家という我が国 といたしまして、用語が難しいために国民として法律裁判というものに親しみにくいというようなことでは余りいいことではない、こう思うわけでございます。もっともっと適正迅速な処理を図ることも大事でございますが、あわせて、もう少しわかりやすい、親しみのある、そういうものにこれを変えていかないといけないのではないか、こういう感じがしてなりません。  どうも、用語一つとりましても、専門用語というのはどこの分野でもなかなか一般には親しみにくいのでしょうけれども、特に法曹関係の専門用語というのは非常にわかりにくい。普通国民に使われていないような用語が多い。それからまた表現にしても、正確を期すためにいろいろな言い回しをするのかもしれませんけれども、持って回った表現が多いとか、そういうようなことやら、まあ一般社会で使われている使い方と違う別の意味の使い方の用語があるとか、非常にそういう点があろうかと思うので、私は、この定員をふやすということとあわせて、法務の行政を預かっている大臣といたしまして、こういう問題についてどういうお考えがあるか、それから裁判所自体としても、こういう問題を認識してどういう取り組みをしているか、恐らくしていると思いますけれども、あったら具体的なお取り組みを聞かせていただきたいと思います。
  193. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 まず裁判所の方から申し上げさせていただきます。  裁判所全体として最近特に力を入れております点につきまして、今先生の方から御指摘いただいたわけでございます。従来からも国民に親しまれやすい裁判所にしなければならぬということで努力してまいったわけでございますが、それでもやはり裁判所外の方々からは、まだまだ権威主義的であるとか、おかたい役所であるとか用語がわかりにくいとか、そういう御批判をいただいてまいりました。しかし、ここ数年来、特に裁判所におきましては、いろいろなことにつきまして、国民から見て理解しやすい、利用されやすいあるいは親しまれやすい裁判所にしなければいかぬとかということで、いろいろな方面で努力しております。  一つは、御指摘のとおりの判決文をわかりやすい文書にするということでございます。これは新聞等でも御案内かとも思いますが、東京、大阪の裁判所の方でそれぞれ委員会をつくられまして、民事の判決について検討なさいまして、それが全国的な広がりを見ながら現在行われておるところでありまして、従来の余り専門家にしか通じないような表現を避ける、あるいは型にはまったスタイルでやや退屈な判決の構成になることを避ける、そういったことで、できるだけ普通の方が読んでわかりやすい、争点がどこか、そして裁判所はどこを判断したかということがわかりやすい判決にしたいということで、これは着々と進んでおるところでございます。  そのほか、審理の仕方にしましても、やはり、ぽつぽつと期日が入ってそこで単に書面の交換だけが行われる、そういう五月雨審理で単に書面交換の場になっているという審理では、例えば傍聴人からごらんになっておっても何が行われているのかわからないということになります。そういう点で、できるだけ裁判所の一回一回の期日を実のあるものにしよう、口頭主義と申しまして、要するに口頭弁論を活発にして、耳で聞いてわかる法廷にしたいというような方面でも努力しておるところでございます。  あるいは証人を調べるにしても、二月か三月置いて一人ずつ調べているようでは、やはりなかなか傍聴席にいてわかりにくうございますので、できる限りよく準備をしていただいた上で、一回の法廷で必要な証人を三人なら三人調べるようにしたい、そういう方向で一生懸命努力しております。  若干観点は違いますが、例えば裁判所の窓口の問題がございます。昔は、高い所に小さい窓口があって、そこから書面を出したりしておりましたが、これも簡易裁判所の統廃合を機会に、受付窓口の雰囲気、つくりの改善をいたしました。また、そこに行きますれば、素人の方でも、定型の申し立て書の書式がございまして、問いに対して答えを書いていったら複写式で自然と訴状ができ上がるとか、あるいはその記載要領によって書けば訴状ができ上がる、そういう訴訟の種類ごとに幾つかの書式を設けたり置いたりしております。  その他一々申し上げるとあれでございますが、私ども、今委員指摘の方向でしっかりと努力しなければならぬということで、特に力を入れているところでございます。
  194. 左藤恵

    左藤国務大臣 三権分立という立場から見まして、私の方からいろいろと申し上げることではないと思います。専ら裁判所の方で主体的にいろいろ御検討いただくのを我々見守っていくべきだ、このように考えております。
  195. 和田一仁

    和田(一)委員 今御答弁の中でも、耳で聞いてわかるようなというようなお話もありましたけれども、確かに難しい言葉が多いんですね。「爾余のことは」とか「窺知」であるとか「措信」であるとか、普通我々が使わないようなそういう言葉が非常に多い。「にわかに措信しがたいものというべきである」というような表現ですね。長くて難しくてくどいというのが定説のようですけれども、ぜひこういう点は、親しめる文章、わかりやすい用語、こういうものに変えていただきたいと思うんですね。「AとBは各自百万円支払え」というのは、一般にはAさんもBさんもそれぞれ百万円払えというふうにこれはとられるんですけれども裁判判決でそう言われるときにはAとB合わせて百万円という理解だということでは、これは判決受けた人もわからないような表現なんで、もう少しわかりいいようにぜひひとつ御努力をいただきたいと思います。  私はきょう非常に少ない時間なんですが、実は先般、大会等で大臣の所信に対する一般質問等の機会がなかったので、ちょっと離れて大臣にお尋ねしたいので、お許しいただきたいと思いますけれども、二月の十九日に、今週の十九日の閣議の中で大臣の発言がございました。それは、北方四島の返還が間近だということを踏まえて、在留ソ連人の法的地位の検討を始めようという発言をされたというふうに新聞で拝見しております。私非常に大事な発言であったと思うんですが、どうもそのほかのコメントは必ずしもそれをバックアップしているような雰囲気ではないように思いますので、ちょっとお尋ねしたいと思うわけでございますけれども、まあまさに四月にはゴルバチョフ大統領訪日ということもあり、最近はこの北方領土の返還で非常にいろいろな話が行き来しております。もちろん私どもは、四島一括返還ということで、何としてもこれは一日も早く返してもらわなきゃいけないんですが、きょうも読売新聞の朝刊のトップには「ソ連の対日専門家百人調査」というのが大きく出ておりまして、北方領土返還について四三%が容認というような新しい数字が出ております。こういう傾向の中で民間でもいろいろな動きが出ておりまして、旧島民の漁業権を譲ってくれであるとかあるいは土地の売買はできないかとか、そういうような動きがあるぐらいでございまして、政府としてもそういう返還に際してのいろいろな問題について検討を始めるのは、これはもう当然だと思いますし、これから交渉していくについてもこういう問題がやがては避けて通れない非常に大事な問題だと私は思っております。  そこで、大臣にお尋ねしたいと思いますが、北方領土が日本に返還されるとなりますと、これはもう現在でももちろん日本の固有の領土でありますけれども、そうなったときには、これは現実に日本の領土として日本の国の主権がここに及ぶことになるのは当然だと思いますが、そうですか。
  196. 左藤恵

    左藤国務大臣 まず、二月十九日の閣議で私が申し上げましたのは、ちょうど総務長官から総理に対して北方領土の視察のことの御要望があった、問題の発言がございましたので、それに関連しまして、これから交渉が始まるわけでありますからまだ現在はされてないわけでありますけれど も、北方領土の返還がされた場合に解決されなければならないたくさんの問題がある、その問題の一つにこういった問題もあるという問題の指摘を私は申し上げたわけでありまして、あくまで一つの仮定といいますか、そういうものの中で申し上げたことでございまして、今お話しのような問題、これから四月にゴルバチョフ大統領が日本に来られて、そして日ソ交渉がいよいよ正念場に差しかかるわけでありますけれども、これについて今後の、今どういうことであるべきだとかいうことについては私からは申し上げる立場にもございませんけれども、今お話しのようなそういった問題点の所在だけをそのとき御指摘申し上げた、こういうことでございます。
  197. 和田一仁

    和田(一)委員 返ってくればここに主権が行使されるのは当然でありますし、そうなるとこれは当然ここにいるソ連の人たちにやはり法的な措置をとっていかなければならないということになると思うんですね。具体的には国籍の問題があります。帰化ということもあるでしょうし、永住権としての特別な何か在留資格が欲しいということもあるかもしれませんし、あるいは外国人登録というような問題もあるかもしれません。こういう問題がやっぱり交渉の過程でも非常に気になってくる問題だと思うので、これはやはりそういった意味での検討は必要ではないか、私はこう考えておるわけでございます。  そこでちょっと私は、これは法務大臣ではなくて、こういうケースとして最近ドイツの東西の統合がございましたし、日本の経験とすれば沖縄や千島の、これの返還はちょっと性格が違うと思いますけれども、かつての樺太千島交換条約、こういうものはそういった問題が含まれていたと思うので、こういったときにはどういう交渉経過だったか、そういうことも知りたいと思うのですね。それから、そのほかにも何かそういった例があったとするならば、外務省の方きょう来ていただいておりますが、これちょっとお聞きしたいと思います。
  198. 東郷和彦

    ○東郷説明員 ただいま御質問の点で、まず第一の例としまして、一八七五年の樺太千島交換条約というのがございます。これは御案内のように、一八五五年の日露通好条約以来樺太が日露混住の地となっておりまして、これと千島列島交換に樺太千島交換条約というのが結ばれたわけでありますが、この交換の対象になりました地域にそれぞれ当時のロシア人及び日本人が住んでおったわけでありまして、その人たちに対する国籍の問題等をどうするのかということが七五年の樺太千島交換条約の第五条に書いてございます。これは第一に、そのまま自国籍を保持し得ること、それから第二に、自国への転出を欲する者に転出を認めること、それから第三に、残留を望む者には残留を認めること、それから第四に、残留する者にはその管轄権に服する限り生計を営むに十分な権利及び信教の自由を自国民と同じように認めること、などが定められているわけでございます。  それからもう一つの例としまして、今ドイツの統一に関連してどうかというお尋ねがございましたけれども、ドイツの統一の問題というのは、分裂国家のドイツが統一したということでございまして、そこに、具体的には東独におりましたソ連人がどうなるかということは、外国に住んでいたソ連人がどういう扱いを受けるかということでございますので、これはちょっとケースが違うのではないかというふうに考えております。
  199. 和田一仁

    和田(一)委員 現実に戦後四十年以上もう居住している人たちにとっても、これは非常に関心のあることだし、返還と同時に退去ということではないだろう。ならば、そこであったいろいろな権利あるいは財産、こういうものの法的なものはどうなるんだということは当然出てくると思うのですね。そういう意味で私は、この間の閣議では非常に大事なことを大臣指摘されたな、こんなふうに考えておったわけですけれども、まあ今度機会があったら外務大臣にも伺いますけれども、ぜひひとつ内閣全体としても具体的なそういう準備をしていただきたいと思うんですが、大臣、引き続いてひとつ、そういうお考えを進めていく気がございますかどうか。
  200. 左藤恵

    左藤国務大臣 今そういう意味で、ゴルバチョフ大統領の訪日を前にして非常に大切なときでありますので、そういった点で、外務大臣とも十分連絡をとって努力をしていきたい、このように考えております。
  201. 和田一仁

    和田(一)委員 ありがとうございました。  それでは、法案の方でございますけれども、今回は判事補の方を五名増員ということでございますけれども、今までの増員の推移を見ておりますと、五十四年から六十二年の間は判事の増員であり、六十三年から平成二年までは簡裁判事の増員、今回は判事補、こういうことでございます。これは訴訟事件の適正、迅速な処理を図るためということでございますけれども、法曹界五年の経験を積まないと単独では訴訟事件処理できないことになっておって、審理の充実のためには、判事補ではなくて本来なら判事の増員の方が効果があるのではないかというようなことも考えられるのですが、今回の判事補増員というもののここに限ったというところはどういう意味かを、ちょっとお知らせをいただきたいと思います。
  202. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 お尋ねの点は二点を含んでおろうかと思いますが、一つは簡裁判事ではなくて判事補にした点でございますが、簡裁の方は三年続けて裁判官十五名増員させていただきました。一方では、事件数が一時から比べますと大分に減少しております。そういうところから、むしろ地裁の方の手当てをした方がいいと思ったわけでございます。  もう一つの事情といたしましては、簡易裁判所の統廃合というのを六十三年の五月にさせていただいたわけでございまして、その結果廃止した簡裁等から浮いた十一人の簡裁判事を、またこれを忙しいところで有効に活用するというような手当てもしたわけでございます。そんなところから、今回は地裁を優先して、判事補にしたいということでございます。  なぜ判事でないのかという点でございますが、確かに委員のおっしゃるとおり判事を増員する方が直截でございます。しかし、弁護士から判事への任官者というのは現実にそう多くを得られない現状のもとでは、やはり判事をふやすには判事補をふやしていかなければなりません。また、判事補をふやすことによって合議事件等において審理の促進が図られますし、また、単に合議事件以外にも、その部に配属されました判事補は、いろいろな準備的なところで仕事をいたしております。そんなところで、実際に民事訴訟の促進、充実の効果というものを期待できる、そういったところから判事補増員お願いしたわけでございます。
  203. 和田一仁

    和田(一)委員 時間がなくなりました。どうぞ、冒頭申し上げましたように、迅速適正な裁判というのとあわせまして、国民にとってわかりやすい、親しみやすい、そういう裁判の内容にぜひ改めていただくよう御努力お願いいたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  204. 伊藤公介

    伊藤委員長 御苦労さまでした。  これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  205. 伊藤公介

    伊藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  206. 伊藤公介

    伊藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 伊藤公介

    伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  208. 伊藤公介

    伊藤委員長 この際、内閣提出、罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。左藤法務大臣。     ───────────── 「罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改   正する法律案」     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  209. 左藤恵

    左藤国務大臣 罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨を御説明いたします。  刑法その他の刑罰法規に定められた罰金及び科料の額等につきましては、昭和二十三年に制定され、同四十七年に改正された罰金等臨時措置法によることとされておりますところ、同法が改正された昭和四十七年から見ましても既に約十九年が経過し、この間、消費者物価は約二・五倍に、労働者賃金は約三・五倍に上昇しております。このような状況のもとで、刑法その他の刑罰法規に定める罰金及び科料の額等を現行のままにとどめておきますことは、これら財産刑の刑罰としての機能を低下させるばかりでなく、刑事司法の適正な運営を阻害するおそれも少なくない状況に立ち至っているのであり、罰金及び科料の額等を現在の経済事情に適合したものに改定することは緊急の課題となっているものと認められるのであります。この法律案は、以上のような事情を考慮いたしまして、刑法等に定める罰金及び科料の額等を原則的にその二・五倍に改めることとし、あわせてこれに関連する手続的な整備を行おうとするものであります。  これに関する改正の要点は、次のとおりであります。  その一は、刑法を改正して、罰金の寡額を一万円に、科料の額を千円以上一万円未満に引き上げた上、刑法の罪について定める罰金の多額を原則的に現行の二・五倍に改定し、ただ多額が低い一部の罪に関しては多額の最下限を十万円まで引き上げるなどの措置をとることとしております。なお、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律についても同様の手当てをすることとしております。  その二は、刑事訴訟法改正して、同法に定める罰金及び過料の多額を十万円に引き上げることとし、あわせて勾留及び逮捕が制限される罪の基準となる罰金の額、公判期日における被告人の出頭義務及びその免除の基準となる罰金の額並びに略式命令が許される罰金の限度額等をそれぞれ二・五倍に改定するほか、未決勾留日数に関する一日の法定通算の基準となる罰金額を四千円に引き上げることとしております。  その三は、罰金等臨時措置法を改正して、刑法ほか二法の罪以外の罪で罰金多額が二万円に満たないものについては一律にこれを二万円に、罰金寡額が一万円に満たないものについては一律にこれを一万円に引き上げるほか、命令への罰金の委任の限度額についても二万円に引き上げるものとしております。  最後に、条例に罰則を設ける際、定め得る罰金の最高限度につきましては、昭和二十二年以来十万円で据え置かれてきた経緯も考慮いたしまして、これを百万円に引き上げることとし、地方自治法の関係規定を改正することとしております。  以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上がこの法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  210. 伊藤公介

    伊藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十九分散会