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中野委員 在日韓国人の権益問題について、いよいよ大詰めを迎えたなという感じがいたしまして、感慨深いものがあります。振り返りますと、この在日韓国人に関する法的地位協定が締結をされましたのが昭和四十年十二月十八日でございますから、本日をもって二十五周年、こういうことになるわけでありまして、まさにその間三世の問題がずっとひっかかってきたわけでございます。ここでいよいよ結論を出すべきときというふうに感じますし、また私がこの問題に当初関心を持ち、当
委員会等で取り上げさせていただきましてから十年
たちます。
当時、韓国居留民団の皆さんからの御依頼を受けて、日本において韓国の弁護士の相談に乗ってもらいたい、こういう御要請を受けました。しかしながら、当時はちょうど全斗煥大統領の軍事政権がスタートしたばかりでございまして、なかなか韓国人弁護士の韓国からの出国が認められませんでした。これを何とか認めていただきたいという要請をしに訪韓をいたしましたときのことを
思い起こします。
友人のつてでまず朴世直首都警備司令官にお会いをいたしました。後のソウル・オリンピック組織
委員長でございます。そしてその朴世直将軍の紹介で盧泰愚保安司令官にお会いをいたしました。後のといいますか、現在の大統領でございます。そして、在日韓国人の
人権問題の実態につきまして詳細調べましたものなどを持参いたしまして、そういう
方々の
理解を深め、最終的には大統領官邸にお伺いをし、当時約五十名の韓国の弁護士の皆さんの訪日を許可していただいた。それが今日の韓日弁護士協議会、また日本側からそれに対応して日韓弁護士協議会というのができまして、今日全国各地で定期的に相談活動をしているわけでございます。
そういう中で随分と多くの問題点が出てまいりましたし、それらにつきましてもそれぞれの
機会に本
委員会等で取り上げさせていただきました。そして、言うならば選挙権の問題はなお懸案として残りますものの、一番肝心かなめの
入管法と
外国人登録法との関係が今残っている。しかも約束の三世についての協議のタイムリミットが近づいてきている。こういうことでございますが、この
目的は一体何であるのか。私は、言うならば人道的、
人権的問題がまず第一点あると
思います。もう一つは、日本が過去犯した罪に対する償いをいかにして、そしてそれを償うことによって日本の国際
社会における責任を果たし、そしてまた信頼を取り戻し、日本の名誉を確立する、これは憲法前文の精神にもつながることであろうと
思います。そして三点目は、まさに日韓両国の友好親善を揺るぎないものにするということにこの問題が不可欠の要素であるというふうに申し上げなければならないと
思います。
ゆえに、そのことを基本に置き、そしてこの在日韓国人の権益の問題がよって生まれた歴史的
背景を
考えますときに、これはまさに日本の責任においてやらなければならないことでございます。また同時に、単なる他の
外国人との比較で申しますと、これは日本が
原因をつくったところから生まれたわけでありますから、他の
外国人と同じレベルにおいて
考えることではないことは言うまでもありません。
他の
外国人の皆さんであれば、言うならばその国との相互主義に基づいて、相手の国がなすことを我が国もその国の人々になすことが可能でありますけれども、例えば韓国にいる日本人が、指紋でいえば十本の指紋をとられるわけであります。相互主義でいえばまさにこれはおかしいということになります。しかし、在日韓国人につきましてこの指紋押捺制度を廃止しろという主張、そしてそれが当然の正論として求められているということにこの歴史的
背景があることを当然忘れてはなりません。指紋にかわる方法をいろいろ検討をされておりますけれども、これもまたその精神的、心理的、また
国民としての誇りから
考えて、その手法はおのずから、単にかわる方法であれば何でもいいというのではなくて、相手の
気持ちを傷つけない方法を
考えなければならないことは、これまた当然のことであろうと
思います。
そういう意味で、先般の日韓定期閣僚
会議における在日韓国人三世問題関係についての
法務大臣発言要旨というものを持っておりますけれども、ここで、特に指紋押捺につきましては、「指紋押なつに代わる手段をできる限り早期に開発し、これによって、一、二世についても三世以下の子孫と同様に指紋押なつを行わないこととすること。なお、指紋押なつに代わる手段については、写真と署名又は
外国人登録に戸籍的な
事項を加味するなど多様な方法について幅広く検討していること。」こういうことが書かれておるわけであります。
また、韓国側からは、今日までの経緯に対しての一つの誤解もしくは過剰な期待、そしてその過剰な期待を与えるような日本側からの
発言もしくは報道、そういうものがあったと思うのでありますけれども、「指紋押なつに代わる手段が開発されるまでの間、二世に対する指紋押なつ義務を猶予する等の暫定的
措置の要望があったが、」と、このことが大きく報道されることによって、ある意味では、それは日本側から見れば過剰な期待と言いたいところでありますけれども、それが広く韓
国民の間に広がって、そして日本がいかにも不熱心であるような、消極的であるような印象を与えることによって、冒頭申し上げました最後の、日韓関係の友好を促進しようと思ってせっかくやっていることが逆の感情論を生み出して、そして今一つの大きな危機にある、残念ながらこう申し上げざるを得ないと
思います。
なすべきことをなすと同時に、そのプロセスにおいての
発言や言動等もまた誤解を招かないように注意をし、そしてせっかくのこちらの
努力が逆効果を生むということがないようにすることが極めて大切であると思うのであります。そういう意味での高度な政治的配慮がなされなければなりませんので、
大臣の御所見をお伺いしたいわけでございます。