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1991-03-13 第120回国会 衆議院 文教委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月十三日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 臼井日出男君    理事 木村 義雄君 理事 北川 正恭君    理事 真鍋 光広君 理事 松田 岩夫君    理事 渡瀬 憲明君 理事 沢藤礼次郎君    理事 鍛冶  清君       逢沢 一郎君    岩屋  毅君       狩野  勝君    小泉純一郎君       小坂 憲次君    塩谷  立君       福永 信彦君    船田  元君       増田 敏男君    村田 吉隆君       柳本 卓治君    岡崎 宏美君       輿石  東君    佐藤 泰介君       佐藤 徳雄君    中西 績介君       馬場  昇君    北側 一雄君       東  順治君    矢追 秀彦君       山原健二郎君    高木 義明君  出席国務大臣         文 部 大 臣 井上  裕君  出席政府委員         文部大臣官房長 坂元 弘直君         文部省生涯学習         局長      福田 昭昌君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         文部省教育助成         局長      菴谷 利夫君         文部省高等教育         局長      前畑 安宏君         文部省高等教育         局私学部長   逸見 博昌君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君  委員外出席者         労働省職業能力         開発局企画室長 寺田 和雄君         文教委員会調査         室長      堀口 一郎君     ───────────── 委員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     高鳥  修君   岩屋  毅君     栗原 祐幸君   山原健二郎君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   栗原 祐幸君     岩屋  毅君   高鳥  修君     逢沢 一郎君   藤田 スミ君     山原健二郎君 同月八日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     細田 博之君   岩屋  毅君     衛藤征士郎君   狩野  勝君     越智 伊平君   小坂 憲次君     佐藤  隆君   佐藤 泰介君     赤松 広隆君 同日  辞任         補欠選任   衛藤征士郎君     岩屋  毅君   越智 伊平君     狩野  勝君   佐藤  隆君     小坂 憲次君   細田 博之君     逢沢 一郎君   赤松 広隆君     佐藤 泰介君 同月十一日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     嶋崎  譲君 同日  辞任         補欠選任   嶋崎  譲君     馬場  昇君 同月十二日  辞任         補欠選任   中西 績介君     松浦 利尚君   馬場  昇君     藤田 高敏君 同日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     馬場  昇君   松浦 利尚君     中西 績介君 同月十三日  辞任         補欠選任   原田 義昭君     柳本 卓治君   増田 敏男君     福永 信彦君   三塚  博君     塩谷  立君  宇都宮真由美君     岡崎 宏美君   市川 雄一君     北側 一雄君   矢追 秀彦君     東  順治君   米沢  隆君     高木 義明君 同日  辞任         補欠選任   塩谷  立君     三塚  博君   福永 信彦君     増田 敏男君   柳本 卓治君     原田 義昭君  岡崎 宏美君     宇都宮真由美君   北側 一雄君     市川 雄一君   東  順治君     矢追 秀彦君   高木 義明君     米沢  隆君     ───────────── 三月八日  学校教育法等の一部を改正する法律案内閣提出第六七号) 同月十二日  著作権法の一部を改正する法律案内閣提出第七二号) 同月七日  高等学校までの四十人学級早期実現急減期特別助成など私学助成大幅増額に関する請願大畠章宏紹介)(第一六四四号)  国立西が丘競技場一般利用施設廃止計画反対に関する請願吉田正雄紹介)(第一六四五号)  同(中西績介紹介)(第一七〇四号)  私学助成大幅増額、四十人学級実現に関する請願田中昭一紹介)(第一六六二号)  同(田中昭一紹介)(第一七五四号)  私学助成制度充実強化に関する請願渡瀬憲明紹介)(第一六八二号)  児童生徒急増市町村等公立小中学校規模適正化特別整備事業期間延長等に関する請願渡瀬憲明紹介)(第一六八三号)  高校四十人学級早期実現私学助成大幅増額に関する請願河本敏夫紹介)(第一六八四号)  私学助成大幅増額高校三十五人以下学級早期実現障害児教育充実に関する請願外六件(田口健二紹介)(第一七四一号) 同月十一日  私学助成大幅増額、四十人学級実現に関する請願東家嘉幸紹介)(第一八一七号)  同(園田博之紹介)(第一八一八号)  同(田中昭一紹介)(第一八八八号)  小・中・高三十五人学級実現及び私学助成抜本的強化に関する請願木島日出夫紹介)(第一八七七号)  高校四十人学級即時実現私学助成抜本的拡充等に関する請願小沢和秋紹介)(第一八七八号)  同(菅野悦子紹介)(第一八七九号)  同(辻第一君紹介)(第一八八〇号)  同(寺前巖紹介)(第一八八一号)  同(東中光雄紹介)(第一八八二号)  同(藤田スミ紹介)(第一八八三号)  同(古堅実吉紹介)(第一八八四号)  同(正森成二君紹介)(第一八八五号)  同(三浦久紹介)(第一八八六号)  同(吉井英勝紹介)(第一八八七号)  私学助成抜本的拡充等に関する請願金子満広紹介)(第一八八九号)  同(木島日出夫紹介)(第一八九〇号)  同(児玉健次紹介)(第一八九一号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一八九二号)  同(不破哲三紹介)(第一八九三号)  同(山原健二郎紹介)(第一八九四号) は本委員会に付託された。 三月八日  私学助成大幅増額高校三十五人以下学級早期実現障害児教育充実に関する請願外四件(第五〇五号)は、「速見魁紹介」を「田口健二紹介」に訂正された。 三月十三日  高校四十人学級実現教職員定数抜本的改善私学助成大幅増額に関する請願工藤巌紹介)(第五七〇号) は委員会の許可を得て取り下げられた。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  学校教育法等の一部を改正する法律案内閣提出第六七号)  著作権法の一部を改正する法律案内閣提出第七二号)  高校四十人学級実現教職員定数抜本的改善私学助成大幅増額に関する請願工藤巌紹介)(第五七〇号)の取下げの件      ────◇─────
  2. 臼井日出男

    臼井委員長 これより会議を開きます。  この際、請願取り下げの件についてお諮りいたします。  本委員会に付託になっております高校四十人学級実現教職員定数抜本的改善私学助成大幅増額に関する請願第五七〇号につきまして、紹介議員であります工藤巌君より取り下げの願いが提出されております。これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 臼井日出男

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  4. 臼井日出男

    臼井委員長 次に、内閣提出学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。井上文部大臣。     ─────────────  学校教育法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  5. 井上裕

    井上国務大臣 このたび、政府から提出いたしました学校教育法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、学校教育法について、医学歯学教育における教育課程区分に関する規定廃止短期大学及び高等専門学校卒業者に対する準学士称号創設並びに高等専門学校分野拡大専攻科制度創設を図るとともに、あわせて教育職員免許法改正して、小学校教諭等の二種免許状基礎資格短期大学卒業者に係る準学士称号を有することとする等について規定するものであります。  まず、学校教育法改正について御説明申し上げます。  第一は、医学歯学教育における教育課程区分に関する規定廃止についてであります。  これは、現在、医学歯学教育課程については、進学課程専門課程とに区分する場合には、進学課程は二年以上、専門課程は四年とすることを法律規定しておりますが、このような規定廃止し、医学歯学教育は、すべて六年制の課程において行うこととし、より弾力的な教育課程の編成ができるようにするものであります。  第二は、準学士称号創設についてであります。  これは、国際化の進展に対応し、また、関係者の要望にこたえ、短期大学及び高等専門学校卒業者について、新たに、準学士と称することができることとするものであります。  第三は、高等専門学校分野拡大についてであります。  これは、現在、高等専門学校については、工業商船に限って学科を設置できることとなっておりますが、これを改め、工業商船以外の分野学科をも設置できるようにするものであります。  第四は、高等専門学校専攻科制度創設についてであります。  これは、高等専門学校卒業者に対し、さらに高度の教育機会整備充実するため、高等専門学校にも、短期大学等と同様に、専攻科を置くことができることとするものであります。  次に教育職員免許法改正について御説明申し上げます。  これは、学校教育法の一部改正による準学士称号創設等に伴い、小学校教諭等の二種免許状授与基礎資格短期大学卒業者に係る準学士称号を有することとする等、所要規定整備を図るものであります。  その他、この法律におきましては、以上のことと関連して、所要規定整備を図ることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願いいたします。
  6. 臼井日出男

    臼井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  7. 臼井日出男

    臼井委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡瀬憲明君。
  8. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 ただいま提案されました学校教育法等の一部改正案の中に、短大、高専についての制度改正が含まれております。その充実発展をねらっておられる面がうかがわれるのでありますが、その延長線上には我が国高等教育整備充実への展望も含まれておるものと思われます。そこで私は、我が国における科学技術教育及び研究現状認識と、その対応について、この際、考えておりますことを申し上げ、大臣及び文部当局の御見解を承りたいと思うのでございます。  先般、私は平成二年度の経済白書説明を聞いておりまして、我が国経済実質成長への寄与率という話がありました。その中で、実に四〇%がこの技術進歩によるものであるという分析がございまして、今さらながら驚いたわけでございます。この四〇%といいますのは、設備投資設備更新とほぼ同率でございます。人件費の比率は減る一方だという説明でございます。また、例えば一九七〇年から二十年後の今日、GNPはほとんど倍増しておりますけれども、石油輸入量はむしろ微減しております。これも科学技術進歩によるものであって、経済成長石油消費量削減といういわば二律背反の問題を克服されておる、これも科学技術進歩がいかに経済成長の原動力となっておるかということのあかしであろうかと思うわけでありますが、こういうふうに見てみますと、この科学技術振興のための研究投資というのは、最も基盤的な公共投資にほかならぬという感じもするわけであります。資源のない我が国にとりまして、科学技術発展こそ文字どおり飯の種であることがわかるわけであります。  いわんや今回の湾岸問題、一つの反省といたしまして、我が国は軍事的な寄与はできない、経済的な力を大いに発揮して、経済的に貢献できるウエートが非常に大きいということがわかったわけでありますが、この際、大いに科学技術振興して、将来は食糧問題とか環境問題あるいはエネルギー問題など、日本が全世界的に、全地球的に貢献できる面を伸ばしていかなければならぬということも痛感させられたことでございます。  また、国内的にも、現在の経済成長を維持発展させ、社会資本充実して、もっと住みよい日本とすること。そして、また老齢問題等を克服して豊かな日本実現できるようにするためにも、これらの問題に大いに真剣に取り組んでいかなければならないと思っておるわけであります。このような考え方に対する大臣の御所見を承りたいと思うわけでございます。
  9. 井上裕

    井上国務大臣 先生まさにおっしゃるとおりでありまして、資源に恵まれない我が国におきまして、科学技術の果たす役割は大変大きく、御指摘のとおりであります。科学技術に関する教育研究充実を図ることは、現在極めて重要な課題である、このように認識いたしております。このため、科学技術教育におきまして、実践的、創造的な能力を備えた人材の養成、これをまず図らなければならない、独創的、先端的な学術研究をまず推進する必要があろう、このように考えております。  文部省では、従来から、社会のニーズにこたえまして、大学あるいは高等専門学校、そしてまた大学院等整備充実に努めますとともに、科学研究費拡充、さらにまた若手研究者育成等に努めているところでありますが、今後ともこれらの施策を一層推進し、科学技術に関する教育研究充実に努めてまいる所存であります。
  10. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 ただいま大臣の御所見を承りまして、非常に心強い限りに思ったわけであります。ぜひともひとつその方向で振興に全力を挙げていただきたいと思うわけでございます。  そこで、本論に入ります前に、まず私は、文部省が戦後この科学技術教育研究についてどのような政策をとってこられたか、今一端を大臣からも御開陳いただきましたけれども、これまでのことを振り返る意味でも、また将来へのステップのためにも、この辺でもう一遍その考え方と具体的な施策についてお伺いしたいと思うわけでございます。  私ごとで恐縮ですが、私、昭和二十五年から坂田道太先生手伝いをさせていただき、実は初仕事が理科教育振興法産業教育振興法議員立法のお手伝いでございました。当時はまだ戦後日浅く、理科教育とか産業教育といいますと、社会の関心も非常に薄うございまして、むしろ反対意見も非常に強かったわけであります。また戦争の準備をするんじゃないかというような、今思いますと本当に信じられないような議論も横行いたしておりました。ただいまの大臣の御所見のように、国会における議論も全く影を潜めておりまして、今昔の感がいたしております。私どもは、その後、昭和三十三年には科学技術教育振興に関する衆議院の決議にも参画させていただきましたし、それから高専制度創設にも三、四年かけて走り回った思い出がございます。この高専制度のときも反対が非常に強うございました。戦後の教育哲学を変更するんじゃないかというような反対でございました。その後、昭和三十四、五年ごろだったと思いますが、国立大学教官研究費倍増運動なんかも大いにハッスルして走り回った等々の思い出を持っております。  ここで改めて文部当局から、特にここで知っておきたいことは、理振、産振の投資額総額がどれくらいになったのか、そして、その教育成果について文部省はどういうふうに思っておられるのか等を承りたいと思います。
  11. 菱村幸彦

    ○菱村政府委員 理科教育振興法産業教育振興法は、坂田先生渡瀬先生を初めとする多くの先生方のおかげで成立して、その後ずっとこれに基づきまして理科教育産業教育振興が図られたわけでございます。これらの法律の果たしました役割は大変大きいというふうに思っているわけでございます。我が国教育が世界でいろいろな見方をされておりますが、とりわけこの理科教育産業教育につきましては相当高いレベルにあるというふうに指摘されております。そのことは、こうした理科教育振興法とか産業教育振興法による特別の財政的な措置が行われたことが大きな力があったというふうに考えているわけでございます。  理科教育振興法に基づきます今年度の予算は十一億九千万でございますが、これまでの投資総額につきましては、ちょっと今手元にございませんので、後ほどわかりましたら申し上げたいと思います。それから産業教育振興法に基づきます予算につきましては、平成三年度では九十四億九千万でございますが、これまでの投資総額は二千三百七十億円に達しております。理科教育投資総額の累計はちょっときょう持ってきておりませんので、恐れ入ります。  いずれにしましても、この理科教育産業教育の今後の振興ということは重要でございますので、今後ともその充実を図ってまいりたいと思うわけでございますが、現在新しい教育課程が告示されまして、小学校平成四年から、中学校は平成五年からということで順次実施するわけでございます。そこで、この新しい教育課程に基づきまして理科教育産業教育設備基準を変えたいと思うわけでございます。これまでも常に、教育課程が変わりますと、それに応じて基準を変えて、時代に即した基準整備を図ってきたわけでございますが、ちょうど教育課程の改訂の時期でございますので、今理科教育及び産業教育審議会を開催いたしまして、理科教育設備につきましては、既に審議に入っておりますし、産業教育につきましても、近く審議を始めたいと思います。  このように、この法律に基づきます設備基準改定を今後行いまして、なお一層これの充実に努めてまいりたい、このように考えております。
  12. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 理振法、産振法の三十周年の記念式典のときのまとめをちょっとしたことがありますが、その当時既に地方負担を合わせますと一兆円近くの投資が行われておった記憶がございます。そして、これはもう先生方もお気づきと思いますが、全国津々浦々に理振法、産振法の恩恵がしみ渡っておる。また、その我が国経済成長に与えたインパクトも非常に大きかったと実は思っておるわけでありまして、最近何かややもすると、理振、産振の予算削減傾向にあるような気がしてなりません。今の局長の御説明によりますと、基準改定等を含めてますます頑張りたいということでありますので、その点もぜひ要望いたしておきます。特に最近、これは後ほども申し上げたいと思いますが、子供の理科離れが非常に進んでいるような気もいたしますものですから、このことにつきましては、特にひとつ尽力をされますように、御要望申し上げておきます。  それから、最近新聞等あるいは他省庁からいろいろな発表をされておりまして、論議も高まっております問題に、我が国研究投資実態問題点がございます。既に御高承のとおりに、我が国研究投資が十二兆円近くになってGNPの三%近くになったということでございますが、その数字は一見すばらしい数字でもあるわけであります。アメリカの二十六兆円に次ぐ大規模研究費でございます。しかしながら一皮めくってみますと、極めて問題点が多いのに気づくわけでございます。  その中の第一は、政府負担割合が非常に低いということでございます。二〇%弱。アメリカが五〇%、ドイツが三五%、フランスが五〇%という状況の中における我が国の二〇%というのはいかにも低い。民間におんぶされておるわけでございます。  その中で、基礎研究がこれまた非常に低いわけでありまして、一三・三%。応用研究が二四%、開発研究が六二%という数字が出ておりますが、基礎研究をおろそかにして、応用研究開発研究に大きな力が注がれておること自体、国際的にアンフェアという批判が起こるもとになっておるのではなかろうかと思うわけでございます。そういう問題が一つ。  それから、一人当たり研究費も、先進諸国に比べますとおよそ三分の二見当であろうと言われております。アメリカドイツフランスが一人頭約三千万円だというデータに比べて、我が国は二千万。もっともそれから人件費を除きますと四百万程度に落ち込んでしまう。そういう数字も発表されておるわけであります。  また、国内的にも、会社研究費に比べますと国の研究費が約四分の一にしかすぎないということ。それから研究機関がいろいろありますが、その研究機関に比べても六分の一にしかすぎないということ。特にここで申し上げたいのは、大学研究費が非常に少ないということが指摘されておるわけであります。  これらの研究投資実態、実情について文部当局の率直な御意見等をひとつお聞かせ願えればと思うわけでございます。
  13. 長谷川善一

    長谷川(善)政府委員 我が国研究費現状はどうかという御質問でございます。  総務庁の統計局が毎年調査いたしておりますけれども、平成元年度の我が国全体の研究費は、ただいま委員指摘のとおりでございまして、十一兆八千百五十五億という数字が出ております。このうちの政府負担割合というのが一八・六%でございます。また、大学等研究費につきましては、このうち二兆一千二百九十四億、そのうちの政府負担割合というのは五一・三%でございます。  研究費性格別に分類いたしておりますが、基礎研究費割合というのは、大学におきましては五三・二%でございまして、会社等では六・四%が基礎研究に充てられているという数字でございます。  一人当たり研究費についても御指摘ございましたのですが、大学等は一千三十六万円が一人当たり研究費である。会社等における研究費というのは一人当たり二千六百二十八万となっております。ただ、これは統計、若干問題がありますのは、大学等の場合には、人文・社会科学系研究者も全部含んでの割合でございまして、会社等の一人当たり研究費とは、そういう意味では若干異なっております。また、研究者の中には大学院博士課程在籍者を含んでおりますので、大学の一人当たり研究費民間に比べますと相当低いという数字になっております。  先進諸国との比較というのを御指摘になったわけでございますが、欧米の主要国と比べますと、研究費全体あるいは大学等研究費双方とも、日本アメリカに次ぎまして二番目となっておるわけでございますが、政府負担割合は低くなっております。  それから、我が国研究費というのは、ただいま申し上げましたように、会社等の大変に旺盛な研究開発意欲を反映いたしまして、会社等研究費の占める割合が高くなっておるわけでございますけれども、会社等での研究というのは、応用研究あるいは開発研究が中心でございまして、基礎研究を担う大学研究費というものをさらに一層充実させないと、二十一世紀の我が国の将来という点について相当問題があるのじゃないかという御指摘もいただいております。
  14. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 科学研究費への投資実態についての認識は、私がいろいろ勉強してきたのと余り変わらぬようでありますが、問題は、やはり少なくとも諸外国並みには政府投資割合をふやしていく努力はしないと、ほっておきますと、先ほど言いましたように、どうしても開発研究応用研究の方へ流れがちでありまして、それがまた産業界において好ましい結果をもたらさないという現象が出てくるのじゃなかろうかと思います。その辺の基本的な認識をひとつしっかり持っていただいて、これから、これは我々もしっかり頑張らなければいけませんけれども、政府の出資の割合をふやす努力をひとつぜひこの際認識を新たにして取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  あと、細かいことにもわたるかもしれませんが、若干文部省への要望を申し上げてみたいと思います。  その一つは、近ごろ若者の理工離れが非常に進んでおるといる話をよく耳にします。本来子供は物に触れたり、物を動かしたり、壊したり、組み立てたり、いろいろそういうことに興味を持つはずでありますが、なぜそれがそういう理工離れが進んでおるかということでございます。よく言われますことは、理工系は勉強が非常に大変だということがございます。近ごろは楽して暮らそうという風潮が非常に強いわけでありまして、その辺のあらわれかなという気もいたします。それから、理工の勉強を終えて就職をした後も、例えば文科系の一番代表的な職業といわれる銀行マンとか証券マンとかに見られるような給与の格差とか、それから安定性の問題あるいは格好よさとか格好が悪いとか、そういう面もあろうかと思います。  一つは、私考えますことは、教育の現場に理工系出身の先生が少ないような気がしてなりません。これもいろいろ理由があろうかと思いますが、理工系出身の先生が少ないこと自体が進学指導あるいは就職指導に非常に影響を及ぼしているのじゃなかろうかという気がいたします。これは四六答申にもたしか盛られておったと思いますが、実業界、経済界で功成り名遂げた社会人、この方たちを教育界に取り込んで、そして後進の指導に当たってもらうという提案、また我が国には、由来老後は後進の教育当たりたいという風潮も非常に強いわけでありますが、免許法の問題等もあるかと思いますけれども、そういうこともこれからどんどん取り入れていった方がいいのじゃないかという気がしてなりません。  それから、これもあるセミナーで聞いてきたことでありますが、産業界にとって人材の需要の問題が非常に心配されております。我が国経済成長がこのまま続いて、十五歳から六十五歳までの生産可能年齢の一定割合この理工系の人材が要るとしますと、二十一世紀までには四十万ないし五十万の人材が足りなくなるということが言われておりまして、こういうこと等を含め、この理工系の教育研究振興策がこれから非常に大きな重要性を持ってくると思いますが、その辺のことをどう文部当局としてとらえておられるか、御意見を承りたいと思います。  なお、文部省にも理工系の専門職、テクノクラートといいますか、もっとふやして、これらの企画立案あるいは推進に当たる必要があるのではないかと思うわけでありますが、それらのことをどう思っておられるか、御説明をお願いしたいと思います。
  15. 菱村幸彦

    ○菱村政府委員 初めに私の方から、高等学校の進路指導等につきまして御答弁申し上げます。  ただいま御指摘がございましたように、高校生の理工系離れが進んでいるという御指摘がございます。科学技術庁の科学技術政策研究所で調査をしたのがございまして、「大学進学希望者の進路選択について」という調査でございますが、これを見ますと、大学入学志願者の総数がふえているにもかかわらず、御指摘のように、理工系の学部を志願する生徒が減少する傾向にある。そして、その原因としまして、最近の高校生の職業や大学生活に対する考え方の中に、例えば待遇のよい会社に就職したいとか大学生活を楽しみたいというような面があると言われておるわけでございます。  しかし、資源の乏しい我が国におきまして、科学技術により国の発展を図るということは重要なことでございますし、創造的な科学技術の推進を図るためには、理工系の人材の供給を絶やさないということが重要であると私どもも考えております。したがいまして、学校におきます進路指導におきましても、こうしましたことを踏まえまして、生徒がやすきにつくとか、それからイージーゴーイングに選択をするということではなくて、生徒が本当にみずからの生き方を考え、主体的に進路を選択する。そして教師がそれを組織的、継続的に援助していく。望ましい勤労観とか望ましい職業観の育成というものを図らなければならないと私どもも考えております。個々の生徒の志望大学の選定に当たりましては、こうしましたことを踏まえまして、十分適切な指導を行うという態勢で臨みたいというふうに考えております。
  16. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御指摘ございましたように、理工系に対する高校生の希望というのが今後停滞をし、あるいはさらに落ち込むのではなかろうか、こういう危惧も言われておるわけでありまして、私ども、前に関係の方々と今後における工学教育のあり方について御議論をいただきましたときも、関係の会社の人事部長さん等からも大変な心配の様子が出されたわけであります。逆説的に申しますと、金融、証券といったような分野で理工系の学生の需要が高いということは、理工系の教育に対する評価ということでもあるわけでございますが、一つには、先ほど先生指摘もありましたように、待遇の問題もあるということで、近年におきましては、メーカーの方でも、やはり理工系の学生をとるためには、待遇のところでも改善を図る必要があるというような状況が出ておるというふうに、私どもも聞いております。  私どもといたしましては、今後における我が国の将来を担って立つ理工系学生の養成につきましては、今後とも十分意を用いていきたい、このように考えております。
  17. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 答弁にございませんでした、産業界で功成り名遂げた先輩たちを取り込むような、これはきょうのこの法案の中にもあります免許の問題等も絡んでくると思いますけれども、そういうこと等も含めてひとつ総合的な対策を進められるようにお願いします。  それから、教育施設部には若干テクノクラートもおられるようでございますが、全体として、科学技術全体をカバーするような人材の取り込みといいますか、スタッフの整備といいますか、それらもひとつあわせてこれから取り組んでいただきますようにお願いをしておきます。  それから次の問題は、これも最近マスコミに再三取り上げられて非常に関心を集めております我が国大学の荒廃の問題でございます。  荒廃している理由の一つは、研究費が少ないということ。これは先ほど来話にあっているとおりでありますが、そのほかにも施設設備が非常に貧弱になってしまったということ。これは、実は文部省御自身が出しておられる「国立学校施設整備予算額の推移」という資料が手元にありますけれども、昭和五十五年以降急降下をいたしておりまして、こういうことが現場の荒廃につながっておるわけであります。これはもっとも予算のシーリングの問題から来る悪影響であったと思いますけれども、私も最近二、三現場を見せてもらいました。部屋が狭くてしょうがないから、棚を部屋の隅につくって、そこの上に登って研究をしている。蚕棚。外につくれないわけであります。それから、ガラスは破れ、窓枠は壊れ、ビニールを張ってあります。いろいろな買い込んだ設備が、置くところがなくてあちこちに混在しておりまして、非常に危険でもありますし、非能率でもあります。そういう現場を見るにつけ、これじゃやはり理工の先生も嫌がるし、生徒も来なくなるなという実感、現場に行きますと、本当にそういう同情をするわけでありますが、この問題はさきの日米構造協議でも取り上げられ、アメリカ側から、もっと日本はこういうところへ金を出して、そして基礎研究を盛んにしてやれと、先ほど言いましたアンフェアの批判があったやに聞いております。先般の予算編成で生活関連の予算の中に、それらの予算が十二億円余り計上されたというふうに聞いておりまして、これは非常にすばらしいことだと思います。  現場の先生方と話をしているうちに、例えば五年計画で四千億ぐらいつぎ込んでもらうと何とかやれるのですけれどもねえという要望が非常にあちこちで実は聞かされます。できればこの際、そういう五カ年計画といいますか、そういうものができないかどうか、この辺の御見解も承りたいと思います。  大学の荒廃の中には、教官の逃避、民間からの引き抜きでどんどん出ていかれるとか、外国へ行ってしまうとか、あるいは民間から誘おうとしてもなかなか乗ってこないという話も、実例を再三聞かされております。それから、先ほど来の話のように、学生自身も非常に敬遠ぎみでありまして、大学院生の数が進学率に比べて非常に少ない。しかも定員割れをしておるという話も聞くわけでありますが、その辺の実態も、この際お聞かせいただきたいと思います。  なお、大学院全体の問題も、この際若干触れておきますけれども、これは制度的にも実員的にも先進諸国に比べて非常に少ない実態が最近論議されております。手元に若干データがございますが、人口比、同一年齢の人口に比べて日本が〇・六九名、アメリカが七・〇五名、イギリスが二・二四名、フランスが二・六八名という数字が出ておりまして、もうほとんど十分の一以下であります。それから、学生総数に比べても、日本が四・四%、アメリカが一五・六%、イギリスが三三・五%、フランスが二〇・七%という統計が出ております。  なぜこうなっておるのか。大学院制度そのものに対するいろいろな歴史的な由来もあるのではないかと思うわけでありますが、この際大学院制度についての文部省の見解も承っておきたいと思うわけでございます。  それから、これも細かい話で恐縮ですが、男の子が理工学部離れを起こしているということから、この際女子学生への誘いあるいは開放策といいますか、ないものかという気がしてなりません。科学技術庁の科学技術政策研究所というところの発表によりますと、理工系学部志向が昭和五十五年から最近で約二倍に膨らんでおるという記事がございました。最近、新聞を見ておりましたら、武蔵工業大学の例が出ておりまして、男と女の比が一〇%まで高まってきたという記事であります。そこで新聞記者の皆さんが女子学生にインタビューをしておられる記事がありまして、非常におもしろいと思ったのは、男と違った感性で勝負をしてみたいという意見を言った女子学生がおりました。それから文科系と違ったキャリアが欲しいという意見を言った学生もありました。こういう女子学生への門戸開放、女子学生をもっとたくさん取り込むということ、これは時代感覚にも非常に合っておると思います。施設設備あるいは奨学金などをもっと充実をして、女子学生をもっとふやしていく、誘導するという政策がとれないものかどうか。  若干話が細かくなりましたけれども、こういう施設設備の問題あるいは大学院の問題等々を含めて、これらを総合して大学の活性化といいますか、それらについての認識と対応について御見解を承りたいと思うわけでございます。
  18. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御指摘をいただきましたように、このところいろいろな機会に、特に国立大学の施設設備現状であったりあるいは研究費の状況についての御批判、御批判を通り越して同情といったような声まで聞かれるようでございまして、私どもとしても内心じくじたるものがあるわけでございます。  御案内のとおり、全体としての政府予算の抑制という基調の中で対処をしておるわけでございますので、具体に先ほど御指摘がございましたような数千億の金を年次計画でというのは、大変難しい状況にはございますが、御案内と思いますが、ただいま御審議いただいております平成三年度の予算案におきましては、文教施設費につきまして五十一億円の増ということでお諮りをいたしておるところでございます。今後とも私どもなりに努力をさせていただきたい、このように考えております。  また、大学院現状につきましては、これも御案内のところでありますが、我が国大学院の発足の際には、いろんな状況から学部の上にいわば積み上げで大学院をつくる、そのときには教育研究上支障のない場合にはという条件つきではありましても、教員についても学部等の教員が兼ねることができる、また施設設備につきましても、教育研究上支障がなければ兼用でもいい、こういうふうな仕組みで発足いたしておりまして、必ずしも一つのスクールとしての大学院というものがいまだ定着をしていないという状況にございます。  私ども、ただいま大学審議会にこの大学院充実の問題についてはお諮りをいたしておりますが、大学院を置く場合における教員あるいは施設設備充実ということについても追って御答申をいただくという運びになっておりますので、答申をちょうだいいたしますれば、その趣旨を踏まえて努力させていただきたい、このように考えております。  なお、これも先生御案内と思いますが、我が国大学院の定員の充足状況あるいは大学院の量的規模、それ自体の問題につきましても、理工系等は別といたしまして、特に人文系、社会系につきましては、これは大学院の側の教育あるいは研究費等のあり方の問題もございますが、それとも関連をいたしまして、社会において大学院卒業者を受け入れるという基盤がいまだ必ずしも十分に成熟をしていない。おいおいそういうふうな状況が醸成されているという認識もございますので、この分野につきましても、大学院における教育研究条件の整備とともに、教育あるいは研究費等のあり方ということについても、大学審議会の答申をちょうだいいたしますれば、所要の制度の改正等も含めまして対処してまいりたい、このように思っております。  なお、女子学生の問題につきましては、現在のような男女平等ということでございますので、特に女子学生に配慮するということはなかなか難しい状況はございますが、ちょっと数字で申し上げさせていただきますと、工学系の国公私を通じましての女子学生の比率というのは、昭和五十九年度には二・九%でございましたが、御指摘のように、近年ふえておりまして、平成元年度では四・二%という状況になっております。なお、高等専門学校について見ましても、六十年度では四・四%という女子学生の割合でございましたが、平成二年度では一二・七%、こういう状況になっておりまして、このような女子の理工系への進学ということを踏まえまして、まずは生活条件の整備ということが課題になっております。関係のところとも相談をしながらトイレ等々の整備にも努めておるところでございます。
  19. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 我が国大学現状についての憂慮、大体同じ認識でありますが、これは私どもにも若干の責任がございますけれども、これから大いにひとつ力を合わせて、その振興をやっていかにゃならぬという気がしてなりません。文部当局もひとつしっかり頑張ってください。  そこで一つ、これもこの際承っておきますが、この間の日米構造協議、御案内のとおりに最終的には四百三十兆円を十年間で投資をして社会資本充実を図るということで決着を見たわけでありますが、先ほどもちょっと触れましたように、その中で、基礎研究充実のための施設設備投資が積算基礎として約十兆円ぐらい見込まれておるという話も仄聞するわけであります。これは積算基礎でありますので、表には出ない数字であろうかと思いますが、それを受けて、今度の平成三年度では、文部省として三けたは何とかしてとりたいということで、結局は七十数億円、その中で基礎研究のための施設設備に十二億三千万でしたか、ついたというふうなことを聞いておりますけれども、このことについてもう少し詳しい御説明があれば承りたいと思います。  なお、こういうことも踏まえて、これもあるいはとっぴな提案に聞こえるかもしれませんけれども、そういう基礎研究や科学教育振興のための何か基金財団というものができないかという気がしてなりません。文部省は先般来、スポーツ基金、それから芸術振興基金、実は大ヒットを打たれたわけでありまして、非常に我々も拍手喝采を送りました。あれと似た発想で、世界に貢献できるものをやるという大目的のために、民間ではサハラ砂漠を緑化しようとか第二パナマ運河をつくろうとか、非常に規模壮大な、地球規模研究財団発足のプランがあるように実は聞いておりますけれども、民間でやれて我が政府でやれぬはずはないわけであります。  例えば、これも非常にとっぴな提言かもしれませんが、野党の皆さん方の御協力も得て、一年限り消費税を一%上げると一兆五千億円のファンデーションができるわけであります。一兆五千億円ありますと、今文部省の科研費は大体五、六百億程度でありますが、その程度の事業がやれるわけでありまして、そういうこと等もできないかということであります。  アメリカでは、全米科学財団、NSFというのがありまして、年間三千億程度の事業をやっておるというふうに聞いております。諸外国では、そのほかに非常に特徴的なのは、例えばアメリカのNASA、これもどんどん研究費大学につぎ込んでおる。そういう例はほかにも非常に多いわけであります。日本では何か外からのそういう研究費が来るのを若干敬遠する傾向もあるようでありますけれども、こういった多元的な資金の導入はかえっていい競争関係を生むのではないかと思うわけであります。今の文部省の長年のやり方だけではなくて、何かそういうことも、この際考えてみる必要があるのではなかろうかという気がするわけでありまして、文部当局の御所見を承りたいと思うわけでございます。
  20. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 最初に、政府全体で今後十カ年で公共投資を四百三十兆投資するという計画でございますが、この計画を策定する過程の中で各省から経済企画庁がヒアリングをいたしました。ただ、ヒアリングはいたしましたが、最終的に四百三十兆の中で各省の分はどのぐらいであるかということは、必ずしも我々に明確にされておりません。何となく四百三十兆で決まったという感じでございます。ただ、私どもとしましては、初中高等教育、学術、社会教育、スポーツ、文化等を含めまして、十カ年間の文教関係の投資としては四十三兆円ぐらい必要であるというような数字経済企画庁の方に要望はいたしました。その中で、これはあくまで四百三十兆に積算されているということではなくて、私どもが要望した四十三兆円の中で学術、高等教育関係については九兆六千億ぐらい必要であるという見積もりを要望としてぶつけた、そういう経緯はございます。  それから、生活関連枠で本年度七十五億を文教関係で獲得することができまして、その中で国立学校施設については十二億余のお金を確保することができたわけでございます。来年度以降二千億、今年度と同じような生活関連重点化枠が設定されて、各省が本年度と同じような方法で要望し、与党の部会等を通じてこの獲得に努力するという方法がそのまま来年度も踏襲されるかどうかは明らかではございませんが、本年度を決定する場合にも、この額は前例としないというようなことになっておりますので、仮に二千億という枠が設定された場合には、本年度のトータルで七十五億でございますが、私どもとしましては、先生方の御支援も得ながらもっと本年度以上獲得するように努力をいたしたいと考えております。  それから、高等教育あるいは学術に関する基金の造成の問題でありますが、今先生いみじくも御指摘ございましたように、学術、高等教育関係の基金だとしますと、基金の果実によってあるレベルの投資をするということになりますと、どうしても基金そのものの額が一兆円あるいは一兆五千億というような数字にならないと五、六百億円というような数字が出てこないわけであります。そういたしますと、今の財政状況あるいは今のシーリング体制の中で、事務レベルで一兆円の基金を造成するのは大変難しい問題じゃないかというふうに思っております。私どもも、できることならば、ある一分野については、例えば施設設備については基金がすべて賄うんだというようなことでも結構なんですが、学術関係、基礎研究に安定的に基金から資金が来るということは、計画を立てられる上で大変ありがたいわけで、そういう意味ではぜひ創設したい、造成していただきたいという気持ちはございますけれども、今言ったような金額はとても事務的には難しいのではないか。そういう意味で、先生から御提言ございましたようなことで政治的に御尽力いただければ、私どもも大変ありがたいという気持ちは持っておりますが、現実問題として事務的には大変難しい課題ではないかと考えております。
  21. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御案内のような政府の財政状況でございますので、御指摘民間資金の活用ということは、私どもとしても大変重要な課題であると考えております。  御案内かと思いますが、先年、当委員会でも御賛成をいただき設置を見ました北陸の先端科学技術大学院大学につきましては、関係の財界等の配意、御理解をいただきまして、数十億円程度の基金財団をつくって大学院大学の諸活動を支援しよう、こういうことになっております。また、先般採決していただきました国立学校設置法によります奈良の先端科学技術大学院大学につきましても、同様に関西の方の財界でそのような財団の設立ということについてもお諮りをいただいているところであります。また、経団連の方でも、このような状況を本当に切実に考えていただいておりまして、先端技術者養成トラストというような仕組みを発足していただきました。これは、財界からそれぞれ資金を提供して信託に預けていただく。そして、その果実でもって大学設備の助成等を図っていこう。寄附をするということにはなかなか抵抗もあるようでございますが、寄附ではなくて、暫時の間資金を信託に預けてください、その果実で大学を支援していこうではないか、こういう先端技術者養成トラストというものも既に発足をしていただいております。  また、直接に御指摘の基金財団ということにはつながりませんが、外部資金の導入ということにつきましても、関係者もこのところ大変意を用いていただいておりまして、例えば昭和五十八年度で申し上げますと、外部資金の導入というのが百二十一億でございましたが、平成二年度では、これが五百億、こういう規模にまで達しております。今後ともいろいろな方面で資金の調達について私どもなりに努力をさせていただきたい、このように考えております。
  22. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 先ほど質問しました構造協議の問題、これもやはり文部省自身そういうプランを持って押していかないと、ただ大蔵省が分けてくれる分をもらっておくということではなかなか進まないのではないか、そういう考え方から出た提言でもございました。  それから、今の基金の問題も、この間この国会で一兆二千億に上る貢献について大いに議論が沸いたわけでありますが、一面においてはああいう形の貢献もありますけれども、もっと長期的に見て日本でできることは何かということの視点に立った場合に、そういう一見とっぴに見えますけれども、国民に、こういうことで世界にアピールするのだということを政治家としてもどんどん打ち出しながら、協力を仰ぐということもできないかなということで申し上げたわけであります。この間の九十億ドルは、戦費だということで、この国会でもなかなかみんなの意見が合わなかったわけでありますけれども、こういう方向ならばもっと説得力があるし、そして国民へのアピールもしやすいのではなかろうかという気がして、そういうことを申し上げたわけでございます。それにつきましても、具体的なプラン、こういうことをするのだということがなければ説得力も弱まるわけでありますので、そういう意味での勉強をひとつ始めていただきたいと思うわけでございます。  時間も参りましたので、この程度で終わりますが、私は今こそ基礎研究あるいは科学技術教育充実を声高らかに叫びたい気持ちでいっぱいでございます。子供のときからいろいろな話を聞いておりますと、明治の私どもの先輩たちは、為政者の皆さんも軍人さんも、日本の将来を担う人材を育てるために、給料を削ったりあるいは庁費も機密費も削って大学をつくったり研究費をふやすことに努めたという話も実は再三聞かされておりまして、今の大学の荒廃等を目の前にしますと、何かそういう遺産を食いつぶしておるのではなかろうかという気がしてならないわけでありまして、政治に携わる一人としても、その辺の自責の念に実は駆られる昨今でもあるわけであります。これからは、国内的にも老齢化社会を迎え、先ほど言いましたように、もっと社会資本充実して、住みよい日本にしなければなりませんし、国際的にも、再三申し上げておりますように、我が国で貢献できることは何かという観点に立ちますと、大いに科学技術発展させて、その面で貢献することが一番手っ取り早いといいますか、我が国でできることではなかろうかと思うわけであります。  そういう立場からいろいろな御意見を申し上げたわけでございますが、最後に、こういうことにつきましての大臣の御所見をもう一遍お聞かせいただければ幸いに存じます。
  23. 井上裕

    井上国務大臣 大変高度な先生の御意見を拝聴いたしまして感銘いたしております。一生懸命ひとつ努力をいたしたいと思います。
  24. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 どうもありがとうございました。
  25. 臼井日出男

    臼井委員長 次に、輿石東君。
  26. 輿石東

    ○輿石委員 ただいま渡瀬先生の方から、科学技術進歩が大変大事であり、我が国が世界に貢献をしていくという視点からも重大であるということでありますし、それにつけても財政的な保証がないと基礎研究もままならないというようなお話もあったわけでありますけれども、大学教育高等教育について大学審議会が答申を出された経過もありますので、その辺も含めて、今後我が国高等教育についてどのように考えられているか、決意も含めて文部大臣にお話をいただきたいと私は思うのであります。
  27. 井上裕

    井上国務大臣 今先生おっしゃるように、我が国が今後の一層の発展を遂げ、また国際的に貢献していく上で、高等教育充実と改革はまさに極めて重要な課題であります。今回の大学審議会の答申は、高等教育全般にわたって改革の方向と方策を幅広く提言したものでありまして、文部省としては本法案を初め所要制度改正を速やかに具体化したい、このように考えており、また同時に、高等教育の改革は各高等教育機関の自主的な改革の努力が重要であり、文部省としては、そのような努力を奨励、支援してまいりたい。今おっしゃるように、この高等教育につきましては、真剣に取り組みたい、このように考えております。
  28. 輿石東

    ○輿石委員 我が国高等教育の大切さ、そんなものが訴えられ、文部省としても、その先頭に立っていくというような決意を語られて、大変心強く思うわけです。  私は、最初に、大学審議会の答申が出された経過も含めて、特に今回の大学審議会での提言、高等教育に対する改革の中身が五つほどの柱で提起をされているわけですけれども、短期大学等現状等について文部省はどうとらえ、どのようにこれからしていこうとしているのか、その点について最初にお尋ねをしたいと思うのであります。
  29. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 今回御提案を申し上げております法律案では、短期大学につきましての卒業者称号の問題、それから高等専門学校分野拡大専攻科の設置の問題、それから医学歯学教育につきましての教育課程区分廃止の問題、こういうふうなことで御提案をさせていただいているところでありますが、これらの問題につきましては、一つには、かねてから高等専門学校関係者の間で分野拡大ということと、それから卒業生についての適切な処遇、一つには卒業生について何らかの社会的な評価というもの、実力というとちょっと語弊がありますが、実力にふさわしいような評価が欲しいという意見、あるいはさらに高度の教育を受けて、それも手近なところで高度の教育を受け、大学卒と同等のステータスを取得したい、こういうふうな要請があったわけであります。また、医学歯学教育に係る教育課程の問題は、これは大学審議会で答申をちょうだいいたしましたが、大学設置基準における一般教育と専門教育あるいは保健体育、外国語という科目区分廃止ということとも関連をしてまいったわけであります。こういうふうな関係者の要望を踏まえて大学審議会で御審議をいただいて、短期大学称号あるいは高等専門学校称号分野拡大専攻科の設置の問題については答申を得、御提案をさせていただいておるところであります。  それから、医学歯学教育の問題につきましては、これは大学設置基準を追って改正をし、設置基準における科目区分廃止ということを行います。それをいわば予定をいたしまして、法律上定めてあるところをまず廃止をしていきたい、こういうことで御提案させていただいているところでございます。
  30. 輿石東

    ○輿石委員 ただいま短期大学高等専門学校、それから大きくは設置基準の大綱化というようなお話がありまして、わけてもそのねらうところは、社会的な評価が実力によって正当に評価されるような仕組みとか身近に高度の教育を受ける機会を得たい、そういう国民や社会のニーズにこたえる意味でというお話もあったわけです。  そこで私は、この短期大学が発足をした、昭和二十五年でしょうか、そして昭和三十三年には大学という位置づけにきちんとされてきたという歴史的な経過もありますし、その間五年制の高等専門学校が設立をされる背景や、その間に技術者養成学校としての専科大学構想もあったように思うわけでありますが、その辺の経過についても御説明をいただきたいと思うのであります。
  31. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 まず、短期大学の発足の経緯でございますが、戦後の新しい学校制度によりまして、旧制の専門学校というものがいわば廃止をされる、そして、それは大学に昇格をするかあるいは廃校になるか、こういうふうなことでございまして、幾つかの、例えば女子の歯科医専の中には廃校になったものもあったやに聞いております。  そういう中で、どうしても大学に昇格するには諸般の情勢が整わないというものについて、当初は暫定的に短期大学という形で二年あるいは三年ということで発足いたしたわけでありますが、その後、これらの短期の高等教育機関がいわば順調に成長を遂げてまいったことから、当初は、二十五年当時には暫定的な制度ということで発足いたしましたものを、ただいま先生指摘ございましたように、昭和三十九年でございましたか、学校教育法改正をお願いいたしまして、現在のような恒久的な制度にさせていただいた、こういうふうなことでございます。  それから、御指摘の専科大学ということにつきましても、これもひところ文部省としても検討し、法案まで用意したこともあったかと記憶いたしておりますが、一つには、客観的な情勢が整わないということもありまして、現在の高等専門学校という形で、その設置いたします学科の範囲を、当初は工業に限って高等専門学校という形で発足いたしたところであります。この制度につきましては、発足の昭和三十七年度当時の客観的な情勢を反映いたしまして、当初は全国各地から非常に熱心なお誘いの運動もございまして、大変な評価を受けたわけでございますが、その後は量的には必ずしも順調な発展を遂げてない、こういうふうな状況にあると認識をいたしております。
  32. 輿石東

    ○輿石委員 そうしますと、その専科大学構想が成立を見なかった、これはかなりの期間をかけて三十五年に審議未了、廃案という経過をたどったというふうに思うわけでありますけれども、それにかわって三十七年には五年制の高等専門学校創設してきた。その時代背景といいますか、先ほども、科学技術発展が、我が国学術研究だけではなくて、世界の中の日本、世界に貢献できる我が国施策としてという大きな国の施策にもなるという話もありました。それとあわせて、この五年制の高等専門学校にしろ専科大学構想にしても、工業技術者養成というものに主眼が置かれてきた背景があるだろうと思いますけれども、そのように理解してよろしいですか。
  33. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 専科大学法案につきましても、今先生指摘ございましたけれども、実践的技術者養成の専門機関、こういうふうな構想であったわけでありますし、それを形を変えて受け継ぎました高等専門学校制度も、法律に明記されておりますように、「職業に必要な能力を育成」というのが基本にありまして、設置される学科も、当初の構想では「工業に関する学科を置く。」こういうことでございますから、御指摘のように、いわば専門的技術者の養成ということが構想の中にあったわけでございます。
  34. 輿石東

    ○輿石委員 短期大学の問題に入らせていただく前にこのようなことをお尋ねした一つの理由は、私はこれから四年制の大学短期大学高等専門学校、また、この法案には直接かかわってこないわけですけれども、専修学校、各種学校、専門学校、そういうものについて、それぞれ設立された歴史的経過やねらい、役割というものは違ってくるだろう。また同一のものもあるでしょう。その辺を明確にしておかないと、これから後の論議にはっきりしない面があるだろうということでお聞きしたわけです。  短期大学も、当分の間の暫定的な制度として発足をした二十五年当時の学校数というのが資料によりますと百四十九校、その後、現在では五百九十三ですか、六百にも届く数でありますけれども、約四倍になってきている、学生数もおのずからふえているわけです。しかし、この短期大学現状を見ますと、楽観を許されない大変な状況にあります。そこで、短期大学現状をどうとらえ、評価しておられるのか、また課題についてはどのように考えているのか、お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  35. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 短期大学が現在果たしております大きな役割は、女子の高等教育機関ということであるというふうに認識をいたしております。しかも、その女子の高等教育機関の中でも、とりわけ短期の教育の中でできるだけ専門的な知識、技術というものを教育したいということでございまして、大学の場合と単純な比較は難しゅうございますが、かなりカリキュラムが込み合っておりまして、短期大学の学生は、よく言われますところはアルバイトをする暇もなかなかないという状況にあるというふうに理解をいたしております。特に三年制で行っておりますが、医療技術の関係の短期大学と看護婦養成学科等は、通常の看護婦養成の専門学校と同様に三年の修業年限の中で、短期大学設置基準で求められております一般教育というものにも取り組んでいくわけでございますので、かなり過密なカリキュラムになっているということが言われております。  今後の短期大学の課題といたしましては、一つには、そのようなカリキュラムの過密をどうするかということがいろいろな機会に言われます。  また、先生先ほど御指摘ありました、いわゆる専修学校(専門課程)、専門学校という制度が一方にございまして、これは現在、学生数で申し上げますと、短期大学を超える学生を収容いたしておりますが、それは必ずしも女子に偏っていないで、広く男子の学生も受け入れているというか、逆に申し上げますれば、男子の希望者もたくさんある。そういうふうなことを考えますと、短期大学においても女子の高等教育機関ということに安住しないで、今後は広く男子の学生に対する教育という面についても目を向けて、男子の希望を受け入れるに足りるような魅力ある教育課程の編成を考えるということも課題であろうと思っております。  また、さらに申し上げますと、短期大学は、その学校に入学してくる者について見ますと、当該都道府県の出身学生というのが約六割でございます。片や四年制大学は、一般的に申し上げますと、四割弱が当該都道府県の出身者でございまして、そういう点からすると、いずれかといいますと、四年制大学に比べて地域に対する密着度が非常に高いということもございますので、そういう点を生かして、今後における生涯学習社会においては、やはり地域に密着した教育というものについても目を向ける必要があるんではなかろうか、このように考えております。
  36. 輿石東

    ○輿石委員 今のお答えで、短期大学が女子の教育に門戸を開き、大変な貢献をしてきたことや、地域に密着した大学である、一極集中の東京の大学へというそういうことからいえば、短期大学の果たす役割というのは、その点においては大変意味があると思うわけであります。だからこそ、女子だけではなくて男子にとっても魅力のある短期大学構想、そのために、今度の法案にかかわって言えば、設置基準の大綱化というようなことも行われ、準学士というような制度を創設してきたという背景もあったかに思うわけでありますけれども、先ほどお答えの中に、これからは短期大学は生涯学習への貢献、そういう面でも考えていく必要があるというふうな意味のお答えがあったわけですけれども、そこで、生涯学習とのかかわりについてここでお尋ねをしたいと思うのであります。
  37. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 中央教育審議会からの答申の中におきましても、短期大学等における生涯学習センターの開設というようなことの御指摘もございました。かなり規模は小そうはございますが、地域的にはそれぞれの地域に対する密着度が高いということを生かしまして、短期大学においても、今後はそういった生涯学習センターといったようなものの設置、これは各都道府県のそういった生涯学習関係機関とも十分協議をしながら、そういったものを設置していくということが一つの方向として考えられます。また、いわゆる公開講座という問題についても、活発に取り組んでいく必要があろうかと思っておりますが、さらに、図書館の開放であるとかあるいは社会人特別入学の制度であるとか、そういった制度を今後も私どもとして必要な弾力化を図っていきたい、このように思っておりますので、そういう点についても短期大学の方で意を用いる必要があろうかと思っております。  さらに、若干生涯学習とは直接のかかわりはないかもしれませんが、現在ございます専攻科の制度というものを活用して、一たん短期大学を卒業して社会に出、あるいは家庭にいる人たちをその専攻科に受け入れる。そして、先般御可決をいただきました国立学校設置法でございました学位授与機構という制度を活用して、さらに専攻科における学習を基礎としての学士の学位の取得というところまで進むことが可能になるわけでございますので、そういう点でも短期大学専攻科ということの存在が今後は非常に重要になろう、このように考えております。
  38. 輿石東

    ○輿石委員 いつでもどこでもだれでもが生涯にわたって学習の機会を得る。そうした生涯学習体系への移行というのが今回の臨教審でも言われている。そうした発想やそういう考え方が根底にあって、この高等教育の改革もその一環として出てきているようにも思えるわけですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  39. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 私どもの方で大学審議会にお願いいたしまして審議をいただいておりますのは、全体として高等教育の個性化、多様化、活性化ということでございます。私どもが短期大学個々について、この短期大学はこのような方向へあるいはこの短期大学はこういう方向へということはなかなか申し上げられることでもございませんし、難しいことでもございますので、まずはそれぞれの大学が今後の進む道というものを自由に設計できるようにするというのが基本的に大事なことではなかろうか、こう考えております。  そういうことで、大学審議会におきましても、多様化、個性化ということを実現するために、短期大学設置基準につきましても、大幅な大綱化を図っていくというふうなことで、そういう中におきまして、先ほどは申し落としましたが、従来の公開講座あるいは聴講生というものをさらに制度化をする、科目登録学生あるいはコース登録学生といったようなものを受け入れる道も設置基準において開いていこうということも考えておるところでございます。
  40. 輿石東

    ○輿石委員 今のお話で、短期大学の改善の施策として、一つ大学同様にカリキュラムを自由に設計できる、科目区分を廃して、授業時間数を弾力化するとか、それから科目登録制、コース登録制というようなものを導入していく、卒業生に対しては準学士称号を与えていく、こういうような形の中で短期大学の改善を図ろうというのが今回の法案の趣旨でもあるというふうに思うわけでありますけれども、今お答えいただきましたように、大学設置基準を大幅に大綱化して、各学校で自由にカリキュラムを編成をし、自由な設計ができるような高等教育体系に変えていくということでしょうけれども、それだけで短期大学がこれから生き残れるのかどうか。私は最初に申し上げましたように、暫定的な措置として行われてきた短期大学大学の中の枠づけとして位置づいてきたという経過があります。そうしますと、四年制大学短期大学とはおのずから趣旨や目的も多少違うわけでありますから、その辺で今短期大学の現場での悩みというのは、学術の研究というところへ重点を置いて四年制大学のような方向に行くのか、それとも高等専門学校のように即実践のできる、そういうものへ向かっていこうとするのか。それはこれからの短期大学自体に考えてもらう問題だ、こうもとれるわけですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。
  41. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 結論的にはただいま先生おっしゃいましたとおりでございまして、それぞれの短期大学で考えるべき問題である、このように考えております。  若干付言をさせていただきますと、一つには、短期大学における女子の進学動向、それから四年制大学における女子の進学動向というものを見ますと、このところ非常に注目すべき状況がございます。大学に対する女子の進学率というものは、これは全体の中での女子の割合ということにもなりますが、五十一年度は一七・五%でありましたが、平成二年度では一九・七%ということになっております。短期大学について見ましても、五十一年度は女子が二四・〇%でありましたものが二七・五、こういうふうに両方とも伸びておるということでありますが、近年を見ますと、短期大学に対しましては、女子は六十三年度二六・三であったものが元年度二七・〇、二年度二七・五、極めて微増であります。これに対して四大に対する女子の進学というものは、六十三年度は一八・一、元年度一八・七、二年度一九・七ということで、四大に対する女子の進学意欲といいますか、非常にそれが大きくなっております。—─ちょっと失礼いたしました。今申し上げましたのは、進学動向ということを見るために志願率という数字で申し上げたわけでございます。  このように、女子が短大にいわば満足をしないと言うと言葉が悪うございますが、四大へ行くという方向がかなり顕著になりつつある。それと同時に、これはもう御案内のことでありますが、女子の職業志向、これも職業について結婚したらやめるというのではなくて、生涯をキャリアでいこう、こういうふうな社会的な動向からいたしましても、やはり四大進学というのが今後ふえてくるのではなかろうか、このように考えられております。  こういうふうな全体的な動向を踏まえて物を考えますと、一つには大都市圏の場合、もう一つは地方の場合というふうにケースを分けて考える必要があろうかと思っております。  大都市圏におきましては、いわゆる学生の大都会志向ということもありまして、志願者を集めることには、それなりに工夫は要っても、かなり楽な面があるということはありますが、逆に申しますと、先ほども先生から御指摘ありました、専門学校との競合関係というのが一つの大きな問題になろうかと思います。そこで、当該地域にある短期大学について今非常に問題が指摘されておりますのは、専門学校との競合関係ということになると、設置基準における教育課程の大綱化とも関連をして、短期大学の専門学校化というのが起こりはしないかというのが一つの危惧として言われていることは事実でございます。他方、地方について見ますと、これは学生の大都会志向ということもあって、学生を集めること自体に大変な苦労はある。しかしながら、専門学校との競合関係というのはそれほど大きな問題ではありませんで、いわば従来パターンのきちっとした短期大学としていくのではなかろうか、このようなことも言われております。  そういうことを考えますと、大都会にあってはカリキュラムについて諸般の客観情勢をにらみながらの工夫が要るし、地方にありましては、学生の募集ということから、地方を生かした教育内容を組むとともに、今後における大学への編入学ということがさらに活発になるよう設置基準においても手当てをしたい、このように考えておりますが、四大への編入学ということを通じて、都会地にある四大とのいわば系列化といったようなこと、よく言えば連携協力ということになりますが、そういう点にも意を用いていく必要があるいは出てくるのではなかろうか、このように考えておるところでございます。
  42. 輿石東

    ○輿石委員 短大の性格上、大都市圏と地方との関係、それから学生自身が都会への志向、女子もさらに四年制大学への志向というふうに、高学歴化、またそういう学生のニーズが変わってきているわけですから、短大の大変な状況も考えられるわけであります。  そこで、人によりますと、短期大学一つの生き残りの策として生涯学習とのかかわりを深く持つことがいいのではないかという指摘もあるわけです。そこで、生涯学習の需要が高まってくる中で、今後の短期大学教育改革を、短期大学本来の使命と生涯学習体系への移行も視野に入れながらの施策というものは、文部省では考えておられるのかどうか、もしあるとしたらどのようなことを考えておられるのか、お尋ねをいたします。
  43. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 生涯学習に対する短期大学の対応ということにつきましては、言葉で申し上げるのは大変たやすいことでございますが、現実にはいろいろな障害があることは、もう先生御案内のとおりであります。部会地においては、公開講座あるいは短期の教育システムということを考えましても、学生募集ということが比較的容易でありますし、また、その講座に要する費用ということも若干の問題はありましても、かなりな人が集まるということがあります。しかし、具体に地方で考えますと、そういった公開講座であったりあるいはサマースクールということを開設しましても、具体には学生を集める、あるいはそれに対する費用負担ということについてもいろいろな問題があろうかと思います。国立の大学等について若干の公開講座を開設する場合における費用の援助ということを行ったり、あるいは私立大学がそういった公開講座を実施したりする場合において、私学助成において若干の特別補助ということは行っておることはございますが、具体的にこれを展開させていくということについては、なお私どもとしても考えなければならないこともあろうかと思いますし、さらに各短期大学においても大変な工夫、努力は要るというふうに思っております。
  44. 輿石東

    ○輿石委員 先ほども出たわけですが、生涯学習といっても短大にはそんなにゆとりがない、地方では人が集まってこない、そんな実態を語られました。例えば、先ほど話もありましたように、看護婦養成というようなことで短大の果たした役割も大きいということにも触れられたわけですけれども、そうした学科を新たにつくっていくというときには、やはり財政的な裏づけといいますか、金がかかる、それでつくれないという面もあるわけですから、先ほどから渡瀬委員の方からも御指摘がありましたが、高等教育を考える場合に、我が国の国策としてそこへ投資をしていく、金をかける、そういう発想に立たないと、こういう法律改正とかいろいろなものをやってみても、根本的な解決策にはならないというようなことがお互いに確認できるところであります。  そこで私は、四年制大学高等専門学校等の間に挟まる短期大学の性格というものから、この短期大学が生き延びていく道筋というものが大変心配なのでありますけれども、短期大学の目的、また四年制大学の目的、高等専門学校の目的というものについて、ここで整理をする意味でお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  45. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 大学につきましては、学校教育法で「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」こうございます。これに対しまして、短期大学につきましては、「大学は、第五十二条に掲げる目的に代えて、」、先ほど御紹介させていただきました大学の目的でございますが、これにかえまして、「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することをおもな目的とする」ということになっております。この両者の違いといいますのは、「学術の中心として、」という言葉の欠落と、「広く知識を授ける」ということがここでは欠けておるということと、「知的、道徳的及び応用的能力を展開される」ということにかえまして、「職業又は実際生活に必要な能力を育成する」、こういうふうなことになっております。さらに、高等専門学校につきましては、「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする。」こうございます。短期大学と比較いたしますと、「深く専門の学芸を教授し、」でとまっておりまして、「研究し、」という言葉が入っておりません。それから、「職業に必要な能力を育成」、こうございまして、短期大学の場合には、「職業又は実際生活に必要な能力」、こうございますので、高等専門学校短期大学とは、御提案申し上げております分野拡大ということを図りましても、この目的に従いまして、短期大学は、「職業又は実際生活に必要な能力」の育成と極めて幅の広い対応ができるのに対しまして、高等専門学校は、「職業に必要な能力」の育成という範囲におのずから限られる、このような相違がございます。
  46. 輿石東

    ○輿石委員 ありがとうございました。  四年制大学短期大学高等専門学校、それぞれの目的、任務等がはっきりしてきたようにも思えるわけですけれども、そこで、「広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究」をするという短期大学のねらい、そこの部分を掘り下げていくことになれば、四年制大学というものに近づいていくといいますか、そういう形に性格が変わる。また、「職業又は実際生活に必要な能力を育成する」という点を中心に、そういうところへ比重をかけた短期大学教育ということになれば、高等専門学校や専修学校とどこが違ってくるのかというふうな指摘もあるわけであります。そこの辺が、今後短期大学としてどういう道を歩むのか。  それと、生涯学習体系への移行とかかわって、生涯学習社会実現するために、そこの生涯学習としての視点からの高等教育機関という形で短期大学を位置づけていこうとする、そういうような幾つかの道も考えられるわけですけれども、それは、先ほどお話をいただきましたように、短期大学自身が自主的に、主体的に考えていく問題だというふうにもお答えをいただいたわけでありますから、これから短期大学が主体的にそこの解決策や、どう行くかということを考えていくだろうと思います。  しかし、文部省としても、我が国教育行政を預かる最高の機関でありますから、その点については傍観するというのではなくて、ただ任せるというのではなくて、その辺一緒にどのように考えていったらいいのかという姿勢もまた必要だろうと思いますが、その点についてはいかがですか。
  47. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 大学審議会の答申でちょうだいをいたしておりますところに沿って申し上げますれば、一つには、短期大学は、今後はそれぞれが特色を発揮する、特色ある個性的な教育を行うということが望まれるところでございます。したがって、それに対応するためには、御案内のとおり、私どもとしても、大学審議会にも御相談をさせていただいて、設置基準を可能な限り弾力化をしていくという対応が必要になります。  また、特色ある個性的な教育を行うといたしましても、その目標を明確化をして、そして、これを高等学校の進路指導の担当の方あるいは高等学校の生徒自身に、我が大学はこういうふうな教育をやるという目標を明確に示す、そして与えられた二年あるいは三年という修業年限の中でできるだけ質の高い教育を行って、社会に評価できる学生を送り出すということが必要になろうかと思っております。そういう中で、男子学生を対象にした教育ということも積極的に考えていく必要があろうかと思います。この点につきましては、私どもも設置基準の中で、大学と比較して小ぢんまりとした施設設備を持つわけでございますが、できるだけ高校生にとっても魅力のあるものにするために、若干の経費の支出は伴うことにもなりましょうが、図書館の充実であるとか福利厚生設施の整備といったような問題について設置基準上の配慮もする必要があろうと思っております。  さらには、質の高い教育という観点からいたしますと、専攻科というものが現在は各大学それぞれのお考えによって設けられておりますが、これを一層充実をしていく、そこで質の高い教育を行っていくということが望まれるわけでございますので、これは学位授与機構との連携ということが今後の課題になります。学位授与機構においては、質の高い充実した教育を行っている専攻科については、学士の学位につながる単位を認めるという方向で対処をさせていただきますので、それを通じて、学位授与機構との連携を通じて専攻科充実も図られるであろう、このように考えているところであります。  さらには、他の教育機関との連携と多様な教育ということでございまして、大学三年次への編入学ということが今後どのように展開をしていくか。これは、同一法人が大学短期大学を併設している場合、あるいは同一法人が東京に大学を持ち地方に短期大学を持っている場合、あるいは全く別の法人が設置している大学短期大学の場合、いろいろな態様が考えられますが、カリキュラムの多様化が大学短期大学を通じて進む中で、大学短期大学からの編入学ということが、制度としては、大学に編入学定員を設定するという道が開けることにいたしましても、具体にはカリキュラムの整合性ということで、実際上は両方の緊密な連携ということが大切になってまいります。そういうことで当該短期大学について考えますと、大学への編入学を念頭に置くということになりますと、具体には関係の大学と緊密な連携を図る必要がある、このようなことになろうかと思っております。  このようなことを私どもとしては念頭に置きながら、日本私立短期大学協会等とも十分連絡を密にして、今後のあり方については相談にもあずかり、また適切な助言もしてまいりたい、このように考えております。
  48. 輿石東

    ○輿石委員 ありがとうございました。  今お答えの中で、関係機関とも連絡を密にし、また、四年制大学への編入学の道、それから先般設置をされました学位授与機構との関連等もお話をいただきました。そのような姿勢で文部省も、ぜひ短期大学がすばらしい発展を遂げるようにお願いをしておきたいと思うわけです。  大学審議会の答申の中にも、今お答えをいただいた短期大学それぞれがみずから教育研究活動の活性化を図ったり、質の向上に努めるということが必要だ、こううたわれ、さらに、その社会的責任を果たしていくために、不断の自己点検や改善への努力が必要だということも指摘をしているわけですけれども、そこに出ている、答申の中にたびたび出てまいります、「社会的責任」を果たすという言葉がよく使われるわけですけれども、ここで言う「社会的責任」というのはどのようなことなのか。もう一つ大学自身が自己点検を行い、活性化を図るという努力を大学へも要求をしているわけですけれども、その自己点検の評価というもの、自己点検という問題について御説明をいただきたいと思うのであります。
  49. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 短期大学が文部大臣の認可を得まして設立をされ、そして国民の税金によって財源を得ております私学助成を受ける、こういうふうなことを考えますと、そういうふうにして存立をしておる短期大学が、与えられた教育の責務というものをきちんと果たしていただきたいということが、全体として流れております「社会的責任」という表現であろうというふうに理解をいたしております。  これは短期大学のみならず、大学審議会の審議の中でも、大学院大学を通じまして、このようなことが随所で指摘をされております。社会の要請であるとか社会的責務であるとかいうようなことが随所において言われておるわけであります。なかんずく、この大学審議会の答申の、そして今現在御審議いただいております大学院充実の問題につきましても、一つの大きな基調は、大学院大学短期大学における教育機能の充実ということと教育の成果に対して適切な評価を行う、こういうことが基本的な基調として随所において行われておるところであります。  専攻科につきましても、学位授与機構を通じて教育の成果が適切に評価をされるというふうに、その評価のあり方ということが大きく問題になるわけでございます。  御指摘いただきました自己評価、自己点検という問題につきましても、これもこの答申全体として、大学院についても大学についても、そして短期大学についても、さらにまた高等専門学校についても、この答申で提起をいただいておりまして、もとより具体には各学校で判断をすることではありますが、私どもとしては、答申の指摘も受けまして、関係の設置基準それぞれにおいて各学校の自己点検、自己評価の努力義務という規定も設けるという方向で大学審議会にはお諮りしたい、このように考えております。  自己点検、自己評価の具体の例として、大学審議会で提言をちょうだいいたしておりますところは、短期大学につきましては、教育理念、目標という問題、あるいはカリキュラムにどういうふうな工夫をし、特色を置いておるかという問題、あるいは教育指導においてどのような特色をそこで考えているか、編入学希望者にはどのような配慮をするか、あるいは教授方法についてもどのような具体の工夫、研究が行われており、どういう取り組みが行われておるか、さらには教員の教育活動に対する評価の工夫、これは学生による授業評価ということまで考えてみてはどうか、さらには、成績評価、単位認定につきましても、その認定、評価のあり方、評価の基準ということ等について具体に各短期大学で点検をし、評価をし、できますれば、その結果を公表をして、そして、さらにその評価に基づく工夫、改善というものを重ねていただきたい、このように考えておるところでございます。
  50. 輿石東

    ○輿石委員 各学校が自己点検並びに評価をする、その評価、点検結果は公表をするというようなお話もありました。私は、それだけでこの短期大学にしても大学にしても、本当に最初にねらった趣旨に沿って活性化をしていくとは思いませんけれども、それは一つの手段ですべてではないということでしょうけれども、その自己点検の方法等についても、今後慎重に、またかなり綿密にやらなければ大変なことだろうとも思うのであります。  先ほどもお話がありました短期大学、四年制大学との連携といいますか、そういう形の中で学位授与機構の問題も出ました。そして学位授与機構が授与する学士の学位について、短期大学でも準学士ということで与えていくということですが、その授与要件の一つに、短大の卒業、一定の単位を修得した場合に授与するとなっているわけですけれども、その際に、この当該の専攻科はあらかじめ認定されたものとしているわけですが、現在、私立短大で専攻科が設置をされているのはどのくらいあるのか、お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  51. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 短期大学専攻科の設置状況でございますが、国公私立の百五十一短大に専攻科が設置されております。先ほど先生からお話もございましたように、約六百というのが短期大学の数でございますので、それからしますと、四分の一程度の学校ということになります。
  52. 輿石東

    ○輿石委員 それで具体的に、これは予想も含めてですが、六百に近い短大の中で、現在専攻科が設置されているのが百五十一ということですけれども、今後、学位授与機構が認定すると思われるものはどのくらいあるのか。また、その場合の認定基準というものが大変大きな役割を果たすわけですけれども、その認定基準ほどのようなものになるのか、お聞かせいただきたいと思うのであります。
  53. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 現在の短期大学専攻科の設置というのは、届け出事項ということで設置されることになっております。したがいまして、端的に申しますと、医療技術系で職業資格にかかわるもの、助産婦専攻とかといったものがございますが、そういった職業資格にかかわる専攻科を除きますと、内容はかなり種々、言葉が過ぎれば雑多と言ってよろしいかと思います。そういうものについてどのような基準でこれを審査していくかというのが一つの大きなこの学位授与機構の問題でございまして、今後、学位授与機構が発足をいたしますれば、早急に準備の段階から基準等を定めまして、そして審査を行う、こういう運びになります。基準の作成、そして、それを公表し、関係の短期大学から自分のところの専攻科について審査をしてもらいたいという申し出が出てくる、そして、その専攻科に行って学位授与機構を通じて学士号を取ろうという学生が出てくる、こういった一連の日程を考えまして、特にお願いをいたしまして七月一日の設置ということもお願いいたしているところでございます。したがいまして、結論を申し上げますと、審査の基準は、今後、学位授与機構において検討されることでございます。
  54. 輿石東

    ○輿石委員 七月一日をもってこれが施行されていくという形でありますと、今後のスケジュールにもかかわるわけですけれども、来春の短大卒業生には準学士というものが与えられるということになりますか。
  55. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 準学士称号は来春の卒業生にももちろん与えられることになります。
  56. 輿石東

    ○輿石委員 そうしますと、今まで届け出制であったものが、学位授与機構の基準に見合ったものとして専攻科が設置され、準学士が授与されるという形になってきますと、これから短大が生き延びる道として、その専攻科設置についてかなりの力を入れてくるだろう、こう思うわけでありますが、その場合にもまた、財政的な裏づけというものがなく、ねらうような専攻科が設置できないという短期大学も出てくるのではないか。そうした場合に、文部省としてはどのような手だてを考えられるのか。これは短期大学のほとんどが私立ということですから、高等専門学校の国立とは違ってくるという認識ではないと思いますが、その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  57. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 若干言葉が過ぎることをお許しいただきますれば、現在でも各学校法人においては大変な拡充意欲というのがございます。私どもの設置認可の担当のところにも、多くのところから学科増をやりたい、あるいは学部増をやりたい、あるいは定員増をやりたい、こういうふうな要請が数多く出てまいっております。そのような状況を考えますと、この専攻科について各短期大学がどのような目で見るかというのが非常に大きな判断基準であろうかと思います。専攻科をつくることによって、その専攻科が学位授与機構によって適格と認定され、そのことが当該短期大学のステータスにつながる、あるいは学生募集にプラスになるという判断をするかどうかというところがやはり大きな基準になろうかと思っております。そういうふうな判断基準が当該短期大学にあれば、若干の財政的負担ということは考えながらも対処をするのではなかろうか、このように考えております。
  58. 輿石東

    ○輿石委員 その辺の問題については大変に大事なことですけれども、今後の課題として十分配慮をしていただきたいと思います。  私は、この大学教育高等教育に、今回自主的な弾力あるカリキュラムの構成ということから、再三出てきておりますように、設置基準を大綱化する、大幅に緩めていくという施策が大きな柱として打ち立てられているわけですけれども、このこと自体は大変望ましいことだというふうに考えます。しかしながら、この基準が大幅に緩められたことによって、短期大学、または大学にしても高等専門学校にしてもしかりですけれども、その教育水準の低下につながるのではないかという心配や、一般教育の軽視につながっていくのではないかという指摘もあるわけですけれども、この点についてどのようにお考えですか。
  59. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御指摘のような御心配あるいは懸念というのは大学審議会における審議の一番最初からございました。一方において、現在の一般教育のあり方というのが形骸化をしている、他方において、戦後の新制大学の理念としてきた一般教育というものが大切である、この両方のいわば矛盾の中で現在の答申の結論になったということでございます。  そこで、基本的には、各大学がいかにして自分のところの大学が考える一般教育の理念というものを実現するようカリキュラムを組むかということがもとより一番大事な問題でございますが、先生の今の御指摘のような御心配も決してないわけではありません。ただ、私どもが、例えば先ほど申し上げました看護系の短期大学の方々とお話をしましても、同じ三年制で看護教育が行われる専門学校と短期大学、学生は、自分たちは一般教育をきちんと受けておるということを大変誇りにし、重いカリキュラムの負担にも耐えているということも言われておりますし、関係の大学も、自分のところは専門学校ではないのだ、こうやってきちっと一般教育もしている、それによって充実した看護教育にも役立っているというような自負を持っているということもございます。したがって、各短期大学では、そういう自覚のもとにカリキュラムを組むと私どもは信頼をいたしておりますが、ただ、それだけでは心もとないという御意見もございます。したがいまして、この答申で御指摘いただいておるところもございますが、教育課程の編成に当たって、一般教育の理念、目標とするところ、すなわち、幅広く深い教養、総合的な判断力を身につけさせ、豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮する必要があるという趣旨規定大学設置基準及び短期大学設置基準に適切に盛り込むことはできないかという御提言がございます。今後具体の設置基準改正につきましては、大学審議会にお諮りをいたすことになりますが、私どもとしては、一般教育が大事であること、そして、それを実現するように教育課程を編成することについて何らかの御留意をいただくという趣旨規定を盛り込む方向で検討させていただいているところでございます。
  60. 輿石東

    ○輿石委員 最後のお答えにありましたが、今、戦後の大学教育の理念として大事にしてきた一般教育、それらの精神が生かされるような配慮をぜひ文部省としてお考えいただきたい、それは強く要望しておきたいと思うのであります。  前回、この文教委員会で私どもの同僚であります佐藤委員の方からも、この基準が大綱化されたことによって、司法試験合格率を高めるために予備校並みのカリキュラムをつくってしまう学校が出てきては大変だということも指摘されているところでありますし、大学にふさわしくない大学というものがこの結果出てくるという懸念も指摘されているわけですから、その辺については十分御配慮をいただきたいと思います。  一般教育の理念であります、学問を通じて広い知識を身につけ、物を見る目や自主的、総合的に考える力を養うという精神を生かしていただきたいし、みずから考え、判断のできる子供を育てていくのがこれからの教育の最も重点とするところだと文部省自身も提言をしているわけですから、そのような方向になることをお願い申し上げたいと思います。教育というものが人格の完成を目指すというところに目標を置いているわけですから、単に知識、技術だけの修得だけではなくて、どのような人間に育っていくかということが根幹になければならないと思います。  大変時間が迫ってきましたので、高等専門学校の問題について触れたかったわけですけれども、そこへ触れている時間がなかろうと思いますので、ぜひ触れておかなければならない問題として、この改革によりまして教職員の免許法も自動的に改正をされるわけですけれども、そこで、今回の教育職員免許法改正趣旨及び内容について最初にお伺いをしたいと思います。
  61. 菴谷利夫

    ○菴谷政府委員 今回学校教育法と同時に教育職員免許法関係も出させていただきました。教員養成も大学において行うという原則がございまして、今回大学審議会から答申が出されまして、大学教育一般の改善を行う。そうしますと、大学において原則として行われます教育職員免許制度に関しても、これに対応した措置を講じようとする、これが大前提でございます。  一応内容につきましては、大きく分けて三つございますが、第一点は、先ほどから御議論がありましたような短期大学に準学士称号創設される予定ですが、そうしますと、小中幼稚園などの教員免許に二種免許状というのがございます。これのレベルがそれに相当するわけでございますが、これを、基礎資格短期大学卒業者に係る準学士ということで改めるというのが第一点でございます。  それから第二点は、大学教育において設置基準を弾力化していろいろな—─従来は一般教育、専門教育等による科目の大枠区分でのそれぞれの最低修得単位がございました。それを教員養成制度でも踏襲してやっておりましたが、大学教育全体において弾力化が図られるということとあわせて、こちらでも科目の壁を払いまして、科目を整理するということでございます。  それから第三点は、同じく高等専門学校専攻科という新しい制度がつくられるということでございます。既に大学、短大には専攻科制度がございますが、この高等専門学校に新設される専攻科において、今後それができてきまして修得された単位については、いわゆる高等教育というレベルでの比較ということで、科目として一部教員養成の中の教科に関する科目の単位に、一部の限定はありますがカウントしたい。そういうことによって高等教育のあるところで修得しました単位を有効に認めていこうということが考えられておりますが、それを教員養成の分野においても、新たにできる専攻科について適用したいというものでございます。  いずれにいたしましても、全般的に、今申し上げましたように、大学教育の改善という大枠に沿った教員養成面における改善ということでございます。
  62. 輿石東

    ○輿石委員 今御説明をいただきまして、短大に準学士創設をされ、それに伴って免許法も当然変わっていかなければならないわけでありますけれども、そこで、概略お聞きをいたしましたので、大学設置基準の授業科目の区分廃止がされているわけですけれども、それを受けて、免許法においても、現行における区分であります一般教育科目、それから保健体育科目、専門教育科目という科目の区分と、それに見合う単位数を決めていますけれども、この区分や単位数はどうなるのか。
  63. 菴谷利夫

    ○菴谷政府委員 単位数の数字はちょっと省かしていただきますが、教育職員免許法において要求されてます一種免許状、二種免許状あるいは専修免許状等それぞれありますが、それに必要な総単位数、教員養成制度における単位数は変わりがございません。  それから、特に教員の場合に、専門的知識ということが必要な資質の重要な一部でございますが、それを担保していましたのは、従来、教科に関する科目、それから教職に関する科目ということで、免許法体系において定められておりますが、これについても変化がございませんということで、実質的にその科目をそれぞれの小中高等学校において担当する教科に関しまして、大学で要求する科目及びその単位というのは変化がないということでございます。
  64. 輿石東

    ○輿石委員 次に、免許法にあります免許に関する省令で定める事項についてはどうなっているのか、変えるのか変えないのかということになりますが。
  65. 菴谷利夫

    ○菴谷政府委員 ただいまちょっと抽象的に申し上げてわかりにくかったと思いますが、それぞれ小中高等学校で、小学校は全教科担任を原則といたします。それから中学校及び高等学校では、英語とか数学とか国語とかいう教科ごとに担当する。したがって、それぞれに必要な免許状を出す、こういうことになっております。それに必要な総単位数は免許法という法律規定されておりますが、それでは、その内訳をどうするかということにつきましては、文部省令にゆだねられておりまして、教育職員免許法施行規則と今先生が御指摘になった省令でございまして、そこの中身については、今回、大学教育全体の弾力化というのがございまして、免許に必要な専門の教科及び教職に関する科目の具体的な中身については変わりがない、変えるつもりはないということでございます。
  66. 輿石東

    ○輿石委員 その省令で定められている部分については何ら変わらない。専門教科、教職科目等についても、そのままという理解でよろしいですね。念のために、憲法が二単位必修というふうに現行ではなっておりますけれども、ここほどうなりますか。
  67. 菴谷利夫

    ○菴谷政府委員 今、一般的に申し上げましたが、これについても変わらないということでございます。
  68. 輿石東

    ○輿石委員 私どもは、教育を語るときに、憲法、教育基本法の理念に立ってとか理念に基づいてという言葉をよく使うわけでありますし、また、その憲法や教育基本法の理念を抜きに教育は語れない。そういう意味では、憲法二単位必修というものは、こういう時代だからこそますます重要視されなければならない。当然のこととして二単位は履修していかなければならないという原則は、今後も続けてほしいし、それは普遍なものにしていってほしいと思いますけれども、もう一度その辺についての考えをお聞かせください。
  69. 菴谷利夫

    ○菴谷政府委員 従来、今の規定では、一般教育と保健体育の科目の中で省令で定めるものは教員養成で修得する、こういうことになっておりまして、それを省令で憲法と体育ということで単位を定めております。今度法律規定の根拠が一般教育という概念がなくなりますので、文部大臣が指定した科目ということで根拠を置きまして、そして、省令では従来と同じ科目を定めるということで、先生が今挙げました憲法と体育について今後も変化がない規定でいきたい、こういうことでございます。
  70. 輿石東

    ○輿石委員 その辺は大変重大なところですので、ぜひ今のお答えのように堅持していっていただきたいと思います。  もう既にお答えの中に含まれているとは思いますけれども、確認の意味で、免許法上の単位として認められる範囲というところがあるわけですけれども、この認定課程を有する大学が認めた場合、高等専門学校専攻科などで修得した単位を新たに免許法上の単位として認めるとうたっておるわけでして、今までは課程認定大学が認めた単位、他の大学の単位というふうに位置づけ、それに今回新たに高専専攻科が設置されたから、それを変えたということが大きなところでありますけれども、その項で言う「高等専門学校専攻科等」という「等」、これは何を指すのか。
  71. 菴谷利夫

    ○菴谷政府委員 先生今御指摘になりましたように、教員免許を取るための必要な専門教科及び教職に関する科目のうち、特に今議題になっていますのは、お話しになりました専門教科に関することでございますが、現在は、まず教員養成としてふさわしいといいますか適格であるということで認定された課程、ここで勉強しないと免許状を取得するための単位にならないわけですが、その特例として、同じ大学レベルで認定は受けていないけれども、そのほかの学部学科なり他の大学で取得しましたものも、その認定を受けている大学がこれはよろしいとなりましたら免許を取る科目の一部に使える、こういうことでございます。  それについて、今先生お尋ねのお話は、高等専門学校専攻科制度ができて、その課程認定以外の、従来大学だけであったものを高専専攻科にも適用するようになるという説明だが、これはほかに何かあるかということだと思いますが、今想定していますのは、これは教育職員養成審議会という専門の審議会がございまして、そこに今回の制度改正に関しましても、大学審議会で検討されておるのと並行して御検討いただきまして、いろいろな専門的立場から見解をいただいたわけです。その審議の模様によりますと、この高等専門学校専攻科のほかに、高等専門学校のいわゆる四年、五年の本科、それから法令の規定上は既に形式上は入っておりますが、従来内容がまちまちであったということから認めておりませんでした短期大学専攻科、こういったものも入れて、そして同じ高等教育レベルのようなものでございますので、先ほど申し上げました課程認定以外の大学の学部学科で一部認めたものと同様に扱っていこうということでございます。
  72. 輿石東

    ○輿石委員 その「等」というものは、これから検討すると言われているわけですが、例えばということで高等専門学校の本科、それから専修学校とか専門学校も入りますか。
  73. 菴谷利夫

    ○菴谷政府委員 いわゆる短大レベルの年齢層に当たります専門学校につきましては議論がございましたが、まだ少し時期尚早という意見が強くて、今検討はしておりますが、これは多分まだ入らないであろうと思っております。
  74. 輿石東

    ○輿石委員 戦後の教員免許法の原則といいますか原理に開放性というものがうたわれて、その原則にのっとってこの免許法もずっと来ているというふうに思います。そういう意味からすれば、今のような「等」というのがそういう広い範囲で適用されていく、その精神は大変すばらしいことだと思うわけでありますが、今回の改正大学審議会の答申に基づいて大学教育基準の弾力化に対応する措置を教員養成上も講じなければならないということでありますけれども、今回の改正により今私が指摘したような問題も含めて教員養成の質的な低下を招くのではないのかなという心配もあるわけですが、これに対してどうお考えですか。
  75. 菴谷利夫

    ○菴谷政府委員 その点が私どもとしても一番意を用いた点でございまして、弾力化をした上で低下を招いては元も子もないということで、昭和六十三年に免許基準の引き上げ等法律改正で改善をしていただきましたこの教員養成の水準は、ぜひ維持していきたいということで、先ほども御指摘のありました専門の科目については、一般教育の一部の科目もそうですが、それについては従来と同様とする。それから一般教育について、従来のような、ある意味では硬直的な最低限のものは取り払われるわけでございますが、専門的知識とともに教員に必要な幅広い教養、この幅広い教養についても、低下しないようにという観点に基づきまして議論をいたしました。そして、大学審議会でも、先ほどからお話がありましたように、一般教育の重要性を指摘し、今後とも大学教育全体の弾力化された中での工夫によって、その効果を維持していくというような御指摘もあります。これを教員養成においても確保したいということで、細かい単位数は言いませんが、先ほどありましたような免許法施行規則において配慮すべき旨の規定を設けたいと思っているわけでございます。
  76. 輿石東

    ○輿石委員 教員の質的低下を招かないために施行規則等でかなりチェックしていくというお答えですけれども、その点については、教員の資質というのがいろいろな場面で言われ、十二万を超える高校中退者、それから四万を超える登校拒否の子供たち、これを救うのもすべて—─いろいろな、社会が悪い、政治が悪い、家庭が悪いと言っていられない状況だと思うわけでありまして、その子供と真正面に毎日立っている、教育をつかさどっている教員の資質の向上ということなくして、抜本的な解決も図れないという指摘もあるわけですから、この教員養成については相当重要でもありますし、また慎重にもとらえていただかなければならない問題だと思うわけであります。  今お答えいただきましたように、全人的な幅広い教養とかより専門的な知識が必要であるこの教員養成に対して、同時にどこの大学でも認定課程を文部大臣が認めるという形があれば修得できるという、戦後の教員養成の開放の原則、原理を先ほども言いましたけれども、堅持しながら、加えて教員の資質の低下を招かない、大変矛盾し難しい問題だとは思いますけれども、そのような施策文部省でもお願いしておきたいと思うのであります。  今回の学位授与機構を設置し、そこに専攻科設置の承認基準も出てくる、そういう意味で、教員免許もあるいは大学、短大以外の教育機関でも取得できる道が開けた、この辺は大変よろしかろうというふうに思いますけれども、このようにずっと今回の改革を見てきますと、生涯学習のところでも私自身も意見を申し上げたわけですが、現在の学校教育中心の学歴社会を是正するために生涯学習への移行というものが図られる。一方、こういう形でいくと、そうした学歴社会から資格社会というニュアンスに変わっていくのではないか。形を変えたまた新たな競争が生まれてくるのではないかという心配の向きもあるわけですけれども、これは教員の免許法とは直接かかわらないと思いますけれども、その辺について文部省としてどうお考えになっておられるか、またそれに対する手だてというものは、考えられているとしたらどのように考えられているか、お答えをいただきたいというふうに思います。
  77. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御指摘のとおり、今回の一連の御提案申し上げております法律案におきまして、例えば学位授与機構をつくって、新たに博士、修士、そして学士の学位を今まで取得できなかった人にも取得できるような道を開く、あるいは短期大学高等専門学校卒業者に対しまして準学士称号を称し得るようにするということで、いわば資格というものをそこに従来よりも広い形で持ち込んでおるわけであります。  しかしながら、今先生指摘のように、学歴社会あるいは資格社会というものについては、今後はできるだけこれを生涯学習社会、生涯学習体系ということも考えながら、これをさらに推し進めるというような施策はやはり差し控えるべきだろう、このように考えておりまして、準学士なりあるいは学士の学位といったものについて、新たにそれに特別の地位を与えるということについては、厳に抑制的に臨んでおるところでございます。
  78. 輿石東

    ○輿石委員 時間もなくなりましたから、最後に文部大臣に決意をお聞かせいただきたいと思うのであります。  先ほど渡瀬委員の方からも、世界に貢献できる日本としての人材養成というものは、資源の乏しい我が国にとっては最大の課題であるという御指摘もありました。そのための人づくりということから高等教育も考えられ、今一番私たちに求められているのは、ゆとりある充実した、生きがいのある社会を形成するということでもあろうと思います。そうした面で、生涯学習の振興と、それから高等教育にかける決意を最後にお聞かせをいただき、質問を終わりたいというふうに思います。
  79. 井上裕

    井上国務大臣 先生の今までの御経歴を生かしたお話を承りまして、私ども意を新たにして今後の高等教育に向かって一生懸命勉強いたしたい、このように考えます。
  80. 輿石東

    ○輿石委員 質問を終わります。ありがとうございました。
  81. 臼井日出男

    臼井委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ────◇─────     午後一時三十一分開議
  82. 臼井日出男

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鍛冶清君。
  83. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 私は、学校教育法等の一部を改正する法律案につきまして、順を追って御質問を申し上げたいと思います。なお、若干時間がありましたら、関連して質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  最初に、医・歯学における進学課程、それから専門課程廃止の件でございますけれども、この区分に関する規定廃止を今回行うようになるわけでありますが、現在は学校教育法の第五十五条におきまして、医学歯学を履習する課程につきましては、既に学校の判断によって進学課程専門課程区分を設けることも、また設けないこともできることにされているわけでございます。こういう規定の中で医師・歯科医師養成等に今日まで努めてきて、それなりの成果を上げてきたというふうにも思っておりますが、あえて今回このような規定廃止する趣旨について、最初にお伺いをいたしたいと思います。
  84. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 先生既に御案内のように、大学審議会におきましては、一般教育というものが新制大学発足のときの理念として極めて重要であるという認識を持ちながら、現在の多くの大学で行われております一年、二年あるいは一年、一年半、この間は教養課程として一般教育だけをやる、こういう制度がいわば形骸化しているのではないか。また、私ども具体の設置の申請におけるカリキュラムを拝見いたしましても、設置基準によって定められております三十六単位の一般教育というものをいわば機械的に当てはめて、残りの七十六単位の専門科目というところで種々の工夫をする、こういう状況にあるわけでございますので、この機械的、形式的な基準廃止して、各大学がその理念、目標とするところに従って、一般教育、専門教育を通じて弾力的、個性的なカリキュラムが組めるようにしよう、こういうのが一つの大きなねらいとしてございます。  他方、医学歯学につきましては、これまでの長い歴史的経過もございまして、ただいま先生が御指摘ございましたように、学校教育法において進学課程専門課程区分を設けることができる、これもただいま御指摘がございましたが、それは各大学が欲するところに従って設けなくてもいいし、設けることもできる、こうなっております。ただ、この法律上の規定意味といたしまして、進学課程専門課程区分する場合には、法律専門課程は四年、進学課程は二年以上、この規制が加わっておるわけであります。こういう規定がありますために、いわば従来の経緯を引きずって、現在大学におきましては、学則上進学課程を置いてありますものが四十六校ございます。  こういうふうに、法律上の規定として進学課程専門課程区分がありますことが、一つには、これをこのまま存置いたしますと、大学設置基準においてそういった科目の区分、卒業要件の規定廃止いたしましても、医学歯学については、学校教育法規定に引きずられて、依然として進学課程専門課程区分が残ることにもなりかねない。もちろん残すことは各大学の御判断でありますが、残す場合に二年以上四年という機械的なくくり方を廃止して、残す場合においても、各大学の判断にそこは自由度を与えるべきではないか、このような考え方に立ちまして、この規定廃止させていただく、このように御提案を申し上げているところでございます。
  85. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今御答弁のあった内容、確かにあると思いますし、またそれ以外にもいろいろ弊害が言われております。実態をいろいろお聞きしてみても、まじめな先生方から今回のとった措置については前向きで非常にいいという声を私は強く聞いておるわけでございますが、もう一つには、高等学校における一般教育内容我が国の場合は非常に充実しておって、大学でまた重ねてやるのかというようなお話もあちこちでよく聞いておりました。そういう意味で、今回とられた措置につきましては、私は高い評価をするものでございますけれども、先日来ないしは午前中の委員の御質問の中にもありましたように、一般教育を軽視することにつながらないかということですね。特に医師・歯科医師養成における一般教育の重要性は大変なものがあると私は思います。人の命を預かるわけでございますし、そういう意味合いを含めて、本来大学教育においては、専門的な知識を修得するだけではなくて、学生に学問を通じて広い知識を身につけさせる、物を見る目や自主的、総合的に考える力量を養う、こういう意味で一般教育というものを重要視してまいりましたし、これは御答弁の中にもあちこちでそういうふうなお話がございました。  私は、さっき申し上げましたように、医師については、特にこれは必要であろうと思うわけでございます。しかし、この規定廃止することによって医師養成にとって重要な一般教育を軽視するということにつながりやしないか、これは質問の最初に申し上げましたが、ここが一番心配されるところでございまして、この点につきましては、文部省ではどのようにお考えなのか、改めてお伺いをいたしたいと思います。
  86. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 確かに、今先生指摘ございましたようなことは、この一般教育問題についても、戦後このようにしてやってまいりましてから、早い時期からいろいろな問題が提起をされてきたわけでございますが、一般教育の軽視につながるという大きな声がありまして、今日まで実現を見ていなかったわけであります。臨教審でも指摘をされてまいりましたが、それを今回、大学審議会で関係の方々の意見をも広く承りながら、こうして大学設置基準改正をすべきであるというところまで踏み切っていただいたところでございます。その点につきまして、私ども大変敬意を表しているところでありますが、ただ、それでもなお今先生指摘いただきましたようなことはずっと関係の方々の中にも根強い意見としてございます。  そこで、この点につきましては、大学審議会の答申では、大学設置基準上科目の区分は設けないということにしても、大学設置基準において、例えば「幅広く深い教養、総合的な判断力を身に付けさせ、豊かな人間性を涵養するよう」、これがいわば一般教育の理念の集約でございますが、こういった趣旨を設置基準における教育課程の編成のくだりにきちっと規定することによって、それを根拠にして、大学設置の申請に当たってのカリキュラム審査であるとか、学則変更の届け出におけるカリキュラムの審査であるとかいうときに、文部省としても十分配慮すべきであるし、大学側においても、ただいま申し上げましたような設置基準における規定趣旨を十分配慮してカリキュラムを組む、こういうふうな対応を考えておるところでございます。
  87. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 さっきも申し上げたように、私はこれは大変高く評価しておりますし、戦後大学教育の改革がありました中での最も大きな改革の一つになるであろうというふうに思っております。  これは、法がきょう審査されて、採決という予定に一応なっておるわけでございますけれども、参議院等の審議も経て、これが通過いたしまして実施されるということになりましたときには、速やかに各大学においてきちんとした形で対応が行われる、それによってまた、二十一世紀をにらんでの我が国大学教育も大きく前進をしていく、こういうふうに私は思っているわけです。  非常に心配しておりますのは、これまで戦後ずっと一般教育、それから専門教育、さらには、それこそ今回の進学課程、それから専門課程区分、こういうものに従って行われてきたことによって、大学の中での教える体制からいろいろな教員の体制も含めて、それから設備、建物等も含めて従来のままで来ておりますから、これを急速に変えるということが難しいような気が実は私はいたしておるわけです。そういう中で、せっかくよりよい改革になるわけですから、一日も早く各大学段階で実施をするという手順にしてほしいし、それがまた次代を担う大学の皆さん、学生の皆さんに対する教育を担当する文部省としての責務でもあろう、大学当局の責務であろう、こういうふうに私は思うわけです。  今申し上げたように、これはいろいろな障害といいましょうか、今までの形が残滓が残っておって速やかには進みにくい、しかし速やかにしなければならぬ、こういうふうな思いもしているわけですが、この点についての判断を文部省はどういうふうにしていらっしゃるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  88. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御指摘のとおり、現在の具体の大学について考えてみますと、現行の設置基準に従いまして、一般教育科目を担当する教員というきちっとした位置づけの教員の方がおいでになります。他方、これまた設置基準に従いまして、専門教育科目を担当する教員という方もきちっとおいでになります。また、学校によって若干の相違はありますけれども、教養課程あるいは国立大学について申し上げますれば教養部という組織がございまして、それが専門の教育を行う学部とは違う場所にあるというのも間々ございます。  そういうふうな具体の状況を考えますと、既存の大学でこれが直ちに設置基準に従って弾力化を図られるかということになりますと、これはなかなか難しい事情はあろうかと思います。ただ、今後新たにできます大学あるいはいろいろな条件が整った中でカリキュラムの改定を行おうとする場合には、私どもとしては、ただいま先生指摘いただきましたように、大変画期的なことであり、また有効なことであると考えておりますので、積極的に取り組んでいただきたい、こう考えております。また、国立大学につきましても、必要な支援ということは考えていきたい、このように思っております。
  89. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今お答えをお聞きしておりますと、新しくできる大学では、この設置基準の緩和に伴う対応というものを考えてやるから、速やかな対応というものができやすいけれども、今までの大学、特に国立大学は、今お答えにもあったように、教養学部というのは別に設けられておる、そこにまた一般教育先生方も集まっておられる、専門教育は別のところに建物もある、そういうこともあってどうも非常に難しいようなお答えでございました。私も事実そうではないかというような気がいたしております。しかし、だからといってこれをそのまま放置していいというわけでもございませんし、新しい学校はともかくといたしまして、今まである学校の方がむしろ問題が多いわけでありますから、その方向に何とか一日も早く進められるような対応も、大学当局は当然しなければならぬでしょうが、文部省においてもやはりどうするかということをお考えになっておく必要があるのではないかなと思うわけです。それについてどういうふうなお考えを持っていらっしゃるか、お尋ねいたしたいと思います。
  90. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 今先生指摘のところは、私どものちょうだいいたしました大学審議会の答申におきましても、「各大学において、教養部の改組転換を含め、一般教育の実施組織の在り方について、再検討が行われることが望ましい。」とございまして、それは続きまして、「また、文部省においても、このような趣旨に沿った改革の具体化を積極的に支援することが望ましい。」こういう答申をちょうだいいたしておるところでございます。  具体に申し上げますと、幾つかの国立大学では教養部を改組して新しい学部をつくるといったような構想も進んでおります。財政事情等もございますし、また今までは入学者を教養部がすべて受けとめてきていたわけでありますが、教養部が学部になりますと、入学者がどういうふうに各学部に分属するのか、その分属の仕方についても検討を要する点があります。各大学の検討の状況も十分見定めつつ、また財政状況等も勘案しながら、答申に指摘されておりますように改革の具体化を積極的に支援してまいりたい、このように考えております。
  91. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 特に一般教育を担当していらっしゃる先生方ですね。従来私が現場でいろいろお聞きしておりますのは、カリキュラム等もその先生が独自のカリキュラムを組んで専門課程との結びつきのないようなものをやってきた、そういうことで,その先生がいなくなれば、またカリキュラムが変わる、学生がそこらあたりで戸惑ってしまうというようなこともあったみたいであります。そういった実情を考えてみますと、一般教育を担当していらっしゃる先生方というのは、場合によっては、私学はちょっとわかりませんけれども、国公立あたりでは、今言うような形の教員の異動、この前も私ちょっと御提案申し上げたけれども、こういったことも、専門教育というものをにらみながら、大学内容充実ということをにらみながら考えていかなければならないのではないかなという気も私はしているわけです。こういったこともむしろ積極的に、大学側で検討なされたものを文部省においてもどしどし推進していくという形で、このせっかくの改正大学の中に生かされていくという形を早くつくっていただきたいと思うのですが、この点についていかがでございましょうか。
  92. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 今先生の御指摘のところも、今回の答申でちょうだいいたしておりますところの一つの大きな眼目でございまして、答申におきましても、「一般教育等担当教員と専門教育担当教員の固定化の解消等が期待される」、こういうふうに述べております。  これまた先生御案内のところだと思いますが、現在の設置基準の仕組みによりまして、大学の中で一般教育担当教員と専門教育担当教員とある種の微妙な意識の差があるというようなことも伺っております。今後は、先ほど御紹介いたしましたように、教養部、つまり一般教育実施組織のあり方についての検討も各大学で進むことになろうと思います。そういうことを通じまして、教員の一般教育と専門教育の固定化ということも徐々に緩んでいくことを期待しておるところであります。また、私どもとしても、答申にございますように、その具体化を積極的に支援してまいりたい、このように考えております。
  93. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 一応この件についてはこれで質問を終わりますが、これが実施されましたならば、ぜひひとついい形で各大学実現できるように推進方をお願いいたしたい、強く御要望を申し上げておきます。  次に進ませていただきます。  準学士称号について若干お尋ねをしたいのですが、今回新たに短期大学卒業者及び高等専門学校卒業者に準学士称号創設するということになっているわけですけれども、初めに、その必要性、それから創設する理由、これについてお尋ねをいたします。
  94. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 高専高等専門学校卒業者につきまして、卒業者が留学をいたしますときに、今は若干の弾力化が図られておりますが、従来、私どもが担当課長をやっておりましたころには、先方の大学から、留学先の大学から高等専門学校という学校はどのような学校であるか、そして、そこの卒業生はどのようなステータスを持つのかということについて、担当課長のいわば証明書を発行するということをやっておりました。これは学校教育法に定められたきちっとした学校で、入学資格はこれこれで、修業年限はこれこれだということを証明をする。そうしなければ先方では受け入れてくれないということがございました。そういった点を考えますと、今回御提案させていただいているところによりまして、高等専門学校卒業者あるいは短期大学卒業者が準学士という称号を称することができる。これは端的に申しますと、アメリカにおけるアソシエートディグリーということに通じるわけでございますので、卒業者が自分はアソシエートディグリーの保持者であるということを申告をすれば、それによって留学についての資格の問題も解消されようか、こういうふうに考えております。  また、逆の面で、高等専門学校にも若干ではありますが、東南アジアを中心に留学生が来ております。その留学生が帰国するに際しまして、何らかの資格というものを欲しい、国に帰ってから自分はこういう資格を取得したということを申告したい、こういうこともございますし、またアソシエートディグリーということになりますと、きちっとした資格を取得したということが帰国したときにも申告できる、こういうことになろうかと思っております。  基本的には、以上申し上げましたような二点でございまして、国際化の進展に伴いまして、主として対外的な面でこういった称号を与えるということが大きな意味があろうかと思っております。
  95. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今御答弁いただいたとおりであろうとは思うのですが、日本語というのは「準」というのがついていますと、何かえらい人格が下げられたみたいな感じを受けるわけですね。学位の方は、今度は学士というのと修士、博士とこうなっているわけで、どうも「準」がついているというのが私自身はちょっと抵抗があるのです、ほかの方はわかりませんが。  それで、この名称をお考えになる上には諸外国も含めて勘案してとおっしゃっておりました。いろいろな名称を考えられたのでしょうけれども、どうして「準」というのをつけて準学士としたのかな、ほかに何かなかったのかなという気がするのですけれども、最終的にこのように名称を決められた理由、これをちょっとお尋ねしたいと思います。
  96. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御指摘のとおりでございまして、この準学士に落ちつくまでにはいろいろな議論がございました。また、大変恐縮でございますが、率直に申し上げまして、この準学士に答申として落ちついても、なお関係者の中にはただいま先生の御指摘にございましたように、ほかにいい名前はなかったかなということを漏らされる方もおいでになることは確かでございます。  ただ、いろいろな名前を考えまして、例えば審議の中で出てきた幾つかのものを申し上げさせていただきますと、学術士であるとか、あるいは特に高専の場合職業に必要になるというようなことでございますので、実学を志す者であるから実学士ではどうか、あるいはかつて戦前の専門学校のときにあったと言われておりますが、業を得る得業士、さらに高専につきましては、いっそのこと端的に高専士ということではどうかといういろいろな名前が指摘をされておりました。また、そういった名前を審議いたしますときには、現在の修士、マスターでございますが、修士についても、決めたときには何となく変な名前だと思ったけれども、今となってみれば全く違和感はなく落ちついているのだから、この際思い切って新しい名前を考えてはどうかという御意見もあったところであります。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、この称号の名前というものが主として国際的な関係で大きな意義を持つということでございます。そしてまた、大学に対して、高専短期大学からは編入学ということで、いわば学校制度の中における入学資格、修業年限から来る一つの流れがございます。そういうことを考えますと、学士に準ずるということで準学士という称号日本語としてもどうであろうかという方向が一つございます。そしてまた、これは若干異なる考え方でありますが、アメリカにおけるアソシエートというのは、我が国の英和辞典における日本語訳としては準学士、「準」という字についてはいろいろございますが、準学士という翻訳で定着をしている。こういうことを両方総合的に勘案いたしまして、準学士という名前に落ちついた次第でございます。
  97. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 私は、せっかく提案されているのですからいけないと言うわけでもありませんけれども、そういう過程があったということをお聞きすればやむを得なかったのかなという気もいたします。  この件についてただ一つ思いますのは、これは短大を卒業した人も高等専門学校を卒業した人も準学士、こういうことになっているわけですね。若干内容的に見ると、名前のっけ方というのは同じでよかったのかな、こういう気もするわけですけれども、これを同じ名称にした理由につきまして、何かございましたらお答えをいただきたいと思います。
  98. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御指摘のことはごもっともでございまして、特に高専の関係の審議のときには、高専として独自の名称が何か考えられないかということで、先ほども御紹介いたしましたが、得業士であるとか高専士であるとかいうことが過程では出たわけでありますが、最終的にはこの準学士に落ちついたということは、先ほども申し上げましたが、我が国の学校制度として考えますときには、大学への編入学ということで考えますと、短期大学高等専門学校も同じ位置づけになっております。そういった学校制度の流れを考えますときには、あえて異なる名称を付することによりまして、いわば対外的にも、それではその異なる名称をどういうふうに翻訳するか、その翻訳が対外的に定着するであろうかというような懸念もございまして、両方を同じ名前にした、こういうことでございますので、どうぞ御理解を賜りたいと思います。
  99. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 名称のことはそれでおきまして、次に、分野拡大の件でお尋ねをいたしたいと思います。  高等専門学校制度は昭和三十七年に創設されて、当初、工業に関する実践的な技術者養成ということでスタートしたわけでございますが、その後商船分野にも拡大した。そして我が国の産業の発展振興の一翼を担うという、そういう実践的な技術者を養成するということで今日まで来たと思います。  そこで、お尋ねでございますが、このような高等専門学校教育の対象を今回その他の分野にも拡大しようとする理由、趣旨、これをしっかり承りたいと思います。それから一体どういう分野を考えておられるのか。この二点をお伺いいたします。
  100. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 高等専門学校分野につきましては、制度創設のころからいろいろな議論があったわけでございます。午前中にもお尋ねがございました専科大学という法案を提出させていただいたこともありました。たしか提出まで至ったかと思いましたが、そのときには、短期大学の扱いにつきまして、現在の大学とは別に専科大学という新しい大学制度をつくる、こういうふうに考えまして、そして、そこで必要に応じて専科大学の下に三年をつけることができる、これによって全体としての技術教育というものを構想したこともございました。しかし、これも当時の短期大学関係者から必ずしも同意を得られなかった。そして、そういった経緯を踏まえまして、昭和三十七年度に御指摘ございました高等専門学校制度をつくりましたときには、短期大学の関係の方からいろいろな御意見もございまして、これは当面といいますか、工業に限るということで法律に明記をしたところでございます。その後、商船高等学校という学校がございましたものを、やはり海員養成の充実という観点から高等専門学校に昇格をするという話がありまして、そのときも法律改正させていただきまして、現在のように、工業または商船、こういうふうになってきたわけでございます。  その後、御案内と思いますが、その間短期大学制度が現在の学校教育法にきちっと位置づけられまして、いわゆる短期大学制度の恒久化ということが図られ、短期大学制度が大学制度の中であることがはっきりとそこに揺るぎのないものとして確立をされたという一つの流れがございます。  そういった流れを踏まえながら、高専分野拡大については、かねてからいろいろな機会に、例えば臨時教育審議会等でも御指摘がございまして、それを受けまして、今回も大学審議会でその分野拡大についての答申をちょうだいをいたしましたし、また、現在中央教育審議会でも、先般公表されました学校制度小委員会審議経過の概要の中にも、分野拡大については積極的に推進すべきであるという趣旨の報告がなされております。  なぜこういうふうな分野拡大を図るかということにつきましては、むしろ分野を制限しておること自体が学校制度として不自然であるというのが基本的にあろうかと思います。高等専門学校という制度が中学校卒業者を受け入れて五年間の一貫教育をやる、いわゆる現在の六・三・三・四の学校体系の中では複線型の学校制度となっておるわけでございますが、その教育のあり方はは各方面から高い評価をちょうだいいたしております。そういった評価をいただいております学校制度を、商船工業だけに限定するといういわれはないではないか、もっとそれを有効な分野拡大できるように、制度としていろいろな弾力的な対応ができるようにすべきであるというのが臨教審でも大学審議会でも、また中央教育審議会でも一致した御意向である、このように理解をいたしておるところでございます。
  101. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 分野拡大ということになると、私は高等専門学校については、高等学校からの編入学、これも一つ大きく考える必要があるというふうに思うのですが、この点についてはいかがでございましょう。
  102. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 その前に、先ほど答弁が漏れましたことをおわびして追加をさせていただきますが、具体はどういう分野が考えられるかというお尋ねがございました。審議の中では、商業であるとか農業であるとかあるいは芸術、外国語といったような例も出てまいってはおります。しかしながら、私どもがこの段階で固定的にこういう分野という考え方は持っておりません。先ほども申し上げましたように、「職業に必要な能力を育成する」という現行の高等専門学校の目的は、これは変更しないということで御提案をいたしております。その範囲内であればいろいろな対応を各方面で御検討いただいて、それに対する対応ができる構えに法律制度をしておきたい、こういうのが気持ちでございます。  それから、高等学校からの高専への編入ということにつきましては、現在もいわば散発的には行われております。今回のこの大学審議会の答申の中では、積極的にそういった制度、制度といいますか仕組みを拡大すべきであるという提言がなされております。しかしながら、現実にこれに取り組むといたしますと、高等専門学校が中学校卒業者を受け入れて五年一貫の教育を行う、こういうのが基本的な構えでありますし、そこにまた有用性を認められておるということからいたしますと、中学校から来た子供たちで編成されておるクラスの中に、高等学校からの編入学者を受け入れるというのはかなり難しい問題があろうと思っております。したがいまして、もしこれを本格的に対応するということになりますれば、編入学者によって一つのクラスを編制するというようなことも考えながら対応する必要があろうか、このように考えておるところでございます。
  103. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 子供というのは、ある日あるとき、おれはこれで来たけれども、本当はこっちに行きたいのだというようなことで方向転換をするとかいうようなことを考える子供がいるわけですね。職業高校等で、特に高校の中途退学などと言われております。理由はいろいろあるのだと思いますが、おれはこっちの道を誤ったからこっちへ行きたいという方も大分おられるようでありまして、そういう意味では、例えば普通科で私は高校へ来たけれども、職業高校はあれだけれども、高校を卒業したときに高専あたりにぜひ行ってやりたいとかいうような人も、これは当然出てくると思うのですね。だから、そういう意味でいろいろな人の個性化ということが今言われている時代ですから、いろいろな形で少々困難なことがあっても、そういう多様化への道という風穴はぜひあけておく必要があるだろう、こういうふうに私は思うわけです。  そういう意味で、高校の編入学の拡大ということを特に今申し上げたわけでございますけれども、他への分野拡大と同時に、高校よりの編入学の問題についてはひとつ真剣にまた考えていただいて、現行あるわけですけれども、できるだけそれがいい意味拡大されていくような方向にぜひ取り組みをお願いいたしたい、御要望を申し上げておきます。  次に、専攻科の問題でお尋ねをしたいと思います。  専攻科というのは、私が申し上げるまでもなく、それぞれの学校の本科を終了した者を対象として、「精深な程度において、特別の事項を教授し、その研究を指導する」制度である、こういうふうに学校教育法規定されているわけでありますが、この制度を調べてみますと、大学短期大学のほかに高等学校にも設けられておるわけですね。ところが高等専門学校にはなぜこの制度が今まで設けられてなかったのかというふうに私はちょっと疑問に思ったのでありますが、これはどういうわけで、何か立ちおくれて、今回慌ててやっているような気がするのですけれども、この点についてどういう理由があって専攻科というのが設けられてなかったのか。これについて、創設するこれが理由にもつなかると思いますが、ひとつお答えをいただきたい。それにもう一つつけ加えまして大学短期大学専攻科現状、こういったものを一緒にお答えをいただきたいと思います。     〔委員長退席、渡瀬委員長代理着席〕
  104. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 高等専門学校制度が創設されましたときには、これはいわゆる複線型の学校制度として意欲的な試みでございまして、それ自体を完成教育とするということがかなり強く意識をされておったというふうに考えております。そういうことから高等専門学校の中でさらに専攻科という制度を設けるということは、当時としては意識がなかった。もしそれから上へ行くとすれば、編入学という仕組みで大学へ行くというのが基本的な考えであったろうかと思っております。したがいまして、専攻科の制度は設けず、高専からの編入学者を受け入れる技術科学大学というのを国会の御理解もいただきまして、豊橋、長岡につくってきた、こういうふうな経緯であろうかと思っております。  しかしながら、現在、相当数の者が高等専門学校を卒業して大学へ編入学を現実にいたしておりますが、さらに制度創設以来二十数年を経過いたしますと、高等専門学校自体が教員組織においてもかなりな充実を見ているところもございます。また、高等専門学校という学校につきましては、御案内かと思いますが、経済的に必ずしも十分な余裕がない子供もかなり来ておるというのが現実でございます。そういった子供たちが卒業をいたしまして、遠く離れた地の大学へ編入学とすることについてはかなりな困難があるけれども、地元の高等専門学校においてさらに精深な程度において勉強したいという希望が非常に高まってきておる、こういうふうな情勢がございます。  そういった情勢を踏まえまして、高等専門学校の学校としての成熟、それからさらに高度な教育を受けたいという学生たちの希望、こういうものを受けとめまして、今回専攻料の設置ということについてお諮りをさせていただいているところでございます。  なお、大学短期大学専攻科現状でございますが、大学につきましては、国立、私立の八十七大学に百十四の専攻科がございまして、平成二年五月で申し上げますと、九百七十人が在学をしております。短期大学につきましては、国公私立の短期大学のうち、百五十一の専攻科がございまして、三千七十五人が在学をしている、こういう状況にございます。
  105. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、専攻科を修了した者についての評価という点でお聞きしたいのでありますが、大学を卒業した者は、今回学士の学位を授与されるということになりました。さらに、短期大学高等専門学校の本科を卒業した者は、この法案が通りますと準学士ということになるわけですけれども、短期大学の場合も同じだと思いますが、高等専門学校専攻科を卒業した者の評価、取り扱い、こういったものはどういうふうになるのか。また、学位授与機構との関係も含めてお尋ねをいたします。
  106. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 高等専門学校は、御案内のとおり、六十四校ですかありますが、そのうちの大部分、五十四校が国立、こういうことになっております。したがいまして、高等専門学校専攻科をどういうものにしていくかということは、国立の高等専門学校について私どもがどう対応するかというのが非常に大きな問題になるわけでございます。  私どもとしては、大学審議会の答申にもございますように、学位授与機構ということをお願いいたしまして、先般当委員会で可決をいただき、衆議院を通過させていただいたところでございますが、学位授与機構において、高等専門学校の卒業ということをいわば基礎資格にして、その上に体系的な学習というものを積み上げた者について学士の学位を出す、こういう制度をつくらせていただこうとしておるわけでありますが、その卒業後に積み上げる学習の成果の中に、高等専門学校専攻科における学習というものをぜひ学位授与機構において適切に評価していただきたい、このように考えております。  そういたしますと、大学相当の教育として評価をしていただくためには、やはり専攻科自体をそれなりに充実したものにする必要があろうか、このように考えておりまして、現在担当課におきまして鋭意検討を進めておりまして、どういうふうな専攻科にするか、それについてどういうふうな教員配置をするか、または施設設備をどういうものにするかということが非常に大きな課題でございます。いろいろな行財政事情もございますが、私どもとしては、学位授与機構において大学における学習と同程度に評価されるようなものにしたい、このように考えて鋭意検討を進めているところでございます。
  107. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 ひとつ内容はしっかりしたものにするようにお取り組みをいただきたいと思います。  特に、専攻科高等専門学校に設けられるについて、私は、従来高等専門学校を出た方々が、やはり今技術進歩というものが激しい時代でありますから、再教育という形で専攻科に進学するという場合もあっていいのではないかというふうに思っておるわけでございますが、こういう点についてほどのようにお考えでございましょうか。
  108. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 高等専門学校が置かれております地域というのは、現実にそのロケーションを見ますと、大学の工学部が存在している地域とは離れた場所がかなり多うございます。例えば、この近辺で申しますと、静岡でございますと沼津という場所にございますし、長崎県でございますと佐世保というところにあります。そういうロケーションを考えますと、その地域において大学の工学部とは必ずしも円滑な接触が保たれないという状況がございますが、そういう地域における高等専門学校が地域での共同研究ということに対して果たすべき役割というものは極めて大きいと思っております。現実に幾つかの高等専門学校、例えば沼津高専なども県の工業団地等とタイアップしていろいろな構想について検討を進めておりますし、また、技術者の再教育についても、地域の要望にこたえて積極的に対応すべき立場にあろうか、このように考えております。私どもといたしましても、できるだけの支援をしてまいりたいと思っております。  なお、先ほど高等専門学校の数につきまして六十四校と申し上げましたのは、六十二校でございますので、おわびをいたしまして、訂正をさせていただきます。
  109. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 そこで、短大も含めてちょっとお尋ねするわけでございますが、これは午前中にも質問をなさっていらっしゃいました。短大の今後のあり方についてお尋ねをしたいと思います。  これは午前中のやりとりの中でも、ちょっと答弁の中にあったと思いますが、短大は今だんだん何か人気が悪くなっているというのか、入学者が減ってきているような感じがいたします。その中で、特に女の方の四年制大学への志向というものの流れが強く出てきておる。さらには、専門学校等の、専門課程の急速な成長の流れの中で、短大入学者は、入学者数で言うと、専門学校等への入学者の方が多くなってきているという現状も、数字の上で見ますとあるようです。さらに、根本的には十八歳人口減少期にあるということもありまして、今後短大のあり方というものは非常に深刻な問題を抱えておる、こういうふうに思うわけでございますが、この今後のあり方についてお尋ねをいたします。
  110. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 これまでのところは十八歳人口の増加期にございましたので、実数で見まして短期大学入学者が減少しておるということはございません。  ただ、先生指摘のように、いわゆる専門学校と比較をいたしますと、ここ数年は専門学校の方が入学者の数においては短期大学入学者を上回っているという状況にあることは確かでございます。今後、十八歳人口の減少期に入るわけでございますので、短期大学のみならず大学短期大学、そしてまた専門学校についても非常に難しい状況が出ようかと思っておりますが、短期大学につきましては、とりわけ女子の高等教育機関として定着をしておるという状況がございます。     〔渡瀬委員長代理退席、真鍋委員長代理着席〕 したがって、女子の高等教育機関としての特色をさらに発揮していくということが一つの道でありますし、また、専門学校ということを考えますと、短期大学においても男子にとって有用な、俗っぽく言いますと、魅力のある教育課程を組む、魅力のある教育をやることによって、男子学生を誘引するということも一つの方向であろうと思っております。  さらには、これは難しい問題もございますが、大学への編入学ということを目指したコースを設定するというようなことも考えられる方向でございますし、さらに、十八歳人口と離れまして、社会人を迎えるということで、社会人入学であったり、あるいはパートタイム学生の受け入れといったようなことも考える必要があろうかと思っております。  さらに言えば、短期大学が非常に地域性の強い学校ということでもございますので、その特色を生かしまして、関係の自治体とも提携をしながら公開講座等々あるいは生涯学習センターとしての機能も発揮をしていくということが期待をされているところでございます。
  111. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今お答えにありました編入学の問題ですが、これも午前中の質問された委員との間で多少やりとりをされておりましたけれども、若干重複しながらお尋ねをしたいわけですが、どうも文部省の取り組みというのは、制度としては一応つくったけれども、具体的にそれが実行されているかというと実行されていないというようなことがままあるような気が私はいたしております。そういう意味で、この編入学の問題もちょうどそれに当たるのじゃないかなという気が私はしているのですが、資料でずっと、それこそざっと当たってみましたら、平成二年度での国立、公立、それから私立を含めまして.短大や高等専門学校から四年制の大学に編入学した数というものは極めて私は少ないというふうに思います。全体でいえば、国公私立合わせて平成二年度では五千六百四十七名、内訳としては、短大から四千五百二十八名、高専から千百十九名、こういうことになっているわけです。短大、高専を卒業する人の数に比して編入学した人のパーセントをちなみにちょっと計算してみますと、全体では一・〇五%です。それから短大関係では〇・九四%、高専関係から編入学されたのは二・一%、こういうふうな状況で、せっかく編入学ということが認められておりながら極めて少ない人数に終わっておる。これは需要と供給という関係もあるのかもわかりませんけれども、これからの多様化という時代を迎えるに当たって、この編入学という制度があるわけですから、生かして積極的に編入学を行っていくというふうに考えてもいいのじゃないか。場合によっては、どうも大学入学試験で通ったときのその定員でもって、それに何年か掛けまして、総枠の定員というものを決めているようでありますけれども、編入学の定員というものも三年次において設けるぐらいして、この多様化路線をつくっていく、またいろいろな要望のある方々にもこたえていく、特に四年制大学への流れが強まっているときでありますから、そういうことが必要ではないか、こういうふうに思いますが、この点についていかがでしょうか。
  112. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 編入学の実態について御指摘がございました。確かに、短期大学卒業者大学に編入学をした者の数ということを卒業者の数と比較をしてみますと、約二%強でございまして、非常に小さな数字でございます。他方、高等専門学校について同様に編入学をした者の数を卒業者の数と比較いたしますと、これは実数では千人強でございますが、全体としての卒業者が一万弱でございますので、一二%とかなりな割合になっております。これは御案内のとおり、豊橋、長岡の両技術科学大学が特に高等専門学校卒業者を受け入れるという役割を持って設立をされ、大きな編入学定員枠を持っておるということに由来するものである、このように考えております。したがいまして、現在の大学設置基準が、先ほど先生指摘ございましたように、すべてが入学定員掛ける四ということで計算をする、それに従って教員の数も施設設備も校地の面積も決まる、こういう仕組みでできておりますので、なかなか編入学の定員を設定をするというわけにはいかない状況にあります。     〔真鍋委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、答申にも指摘をされておりますが、編入学定員というものを大学側の判断で設定できるように、いわば入学定員だけではなくて、総定員というものを加味した設置基準にするという方向が出されております。私ども、それに従って大学設置基準改正ということについて対処をしていきたい、このように考えておるところでございます。
  113. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今度編入学というのに力を入れていただくにしても、これも午前中の質疑の中で局長答弁されておりましたが、特に一般教育、それから専門教育の垣根が払われるということになると、編入学というのが非常に難しくなるということは事実であろうかと思います。いろいろ協議をしながら強力に進めていくというお答えがありましたから、それはそれで了といたしますが、ひとつこういう点についてもどしどし強力に進めていくように大学サイドにも指導をしながら進めていただきたい、こういうふうに思います。  さらに、ちょっとお尋ねをいたしますけれども、高等専門学校については、そのほとんどが国立ですよね。私は全部行ったわけではありませんけれども、幾つかの高等専門学校を回らしていただきました。私の地元にもございます。参りました。いろいろお話も聞き校舎等も見せてもらったのですけれども、総体的にいってその施設と設備が非常に老朽化しておる。それから教育環境が悪化しているという現状があると私は思っております。そういう意味で早急に教室、それからまた寮もあるわけですけれども、学生寮といったものを中心に全般的な改築、改修をやらねばいけないんじゃないかというふうに思います。予算があって限られた中でやるということにもなるのでありましょうけれども、それこそこういう大学改革の機会にひとつ強力に重点的に取り組んでいただきたいというふうに思うわけでございますが、この点についてはいかがでございましょう。
  114. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御案内のとおり、高等専門学校六十二校のうち国立が五十四ということで非常に大きな割合を占めておりますが、この国立の高等専門学校は非常に急激なテンポで設置をしてまいりました。昭和三十七年度に発足をいたしたわけでありますが、三十七年度に十二校、三十八年度に十二校、三十九年度に十二校、こういうふうに一つの年度に十二の学校を設置をするということで対応してまいりましたので、当時の財政状況からいたしましても必ずしも十分なものとしてできてはなかったのではないかというような御批判もございます。いずれにいたしましても、昭和三十七年、八年、九年と、こういうことで設置をいたしてまいりまして、既に二十数年を経過をいたしまして、御指摘のように、かなり老朽化というような問題も出てまいっております。現在の国立学校の文教施設費は、かねてから御指摘をいただいておりますように、必ずしも十分なものではございませんので、なかなか高等専門学校まで十分に手が回るというような状況にはございませんが、私どもとしては、文教施設部とも協議をいたしまして、特に寄宿舎については積極的に改修をしていただくということで進めてまいっております。具体に申し上げますと、二年度には三件、元年度にも六件、また六十三年度にも三件ということで寄宿舎の居住環境の改善には努めてまいってきておるところでございます。
  115. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今お答えいただきましたので、強力にお進めをいただきたいと思います。特に宿舎の関係での御答弁もございましたが、こういうものもいい形で進めていただきたいと思うのですね。余談ですけれども、私がある高等専門学校へ行きましたときに、ちょうど改築をしておりまして、これはいいなと思ったのですが、どちらかというと高等専門学校を出た人というのは大学出なんかに比べて何となく気分的に肩身の狭い思いをしておりまして、そういう中で、ああいう施設も行って見てみますと、何となく狭苦しいような感じも私は受けたわけです。やはりそれではいかぬだろう。そういう意味を含めて改築のときにはやっていただきたい。これもそのときに学校の方に伺いましたら、今特に留学生の受け入れがだんだん進んでいるわけですけれども、寮で同室の中に一緒に入れてやったところが、日本の学生の日本話がきれいになったというのです。変な話ですが、そういう効果もあるようでございます。これからの時代というのは国際化の時代でもありますし、そういう意味合いを含めて、どうかひとつ改築に当たってはゆとりのあるいい形で強力にお進めをいただきたい、御要望を申し上げておきます。  そこで、大臣にお伺いでございますが、短期大学高等専門学校ともに、今回の改正につきましては、今後のそれぞれの教育の改善充実につながる大変重要なものだ、私はこういうふうに考えておりますけれども、大臣として、今までも御質疑の中でも申し上げましたけれども、短期大学教育高等専門学校教育等、今後どういう形に推進をしていくという御決意を持っていらっしゃるのか、ここで一くくりお尋ねをいたしたいと思います。
  116. 井上裕

    井上国務大臣 今御討議を聞いてまいりましたが、私ども、やはり短期大学におきましては、社会経済の高度化あるいは情報化、そしてまた、生涯学習社会の進展などに伴い、一層多様で充実した教育が今現在求められておるわけでありますから、各短期大学社会の要請に応じて対応し、特色ある個性的な教育研究を実施できるようにいたしたい。また、短期大学設置基準の大綱化を図るなど制度の弾力化を進めてまいりたい、このように思います。さらに、この生涯学習社会への移行に伴い、短期大学が現在地域に密着し、先ほどもお話が出ましたように、六〇%という非常に身近な存在として、今後生涯学習社会の中核としての役割を担っていくことを私どもは期待いたしておるわけであります。  また、高等専門学校におきましては、中学校卒業後の五年、一貫した専門職業教育、こういう特色ある教育によりまして、実践的な技術者の養成、さらにまた産業界から高い評価を受けております。現在、設置できる学科工業商船分野に限られておりますが、しかしながら、この中学卒業後の五年一貫した実践教育工業あるいはまた商船以外の分野にも効果的である、こう考えられることから、私どもといたしましても、本年二月、大学審議会答申を踏まえまして、そして今回高等専門学校分野拡大等に関する法案を現在提出いたしまして、御審議をいただいておるわけであります。私ども、この法案成立後は、産業界あるいは地元関係者の要望にこたえて、弾力的な発展を期待している、このように考えます。
  117. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 では、あと残されました時間を教育職員免許法の関係、もしさらに時間があれば専修学校までお伺いしたいと思いますが、なければ、その時点で切り上げさせていただきます。  免許法の改正関係でお尋ねしたいのは、今回の改正というものは、大学におきます教員養成の基準を弾力化するものと考えられるわけですけれども、教育職員免許法については、昭和六十三年の改正、いろいろあったわけですが、この改正ができました。この改正免許状を取得するために必要な単位数の引き上げなど、教員としての専門性を高めるための措置を講じたというふうにあの当時審議に参加しまして、私、そういうふうに受け取っておりました。ところが、今回の改正については、この六十三年の免許法の改正趣旨とどうもちょっと相反する内容改正ではないかというふうな疑念もあるわけでございますが、この点につきましてお尋ねをいたします。
  118. 菴谷利夫

    ○菴谷政府委員 教員養成における資質といいますか、水準の問題だと思います。昭和六十三年の十二月だったと思いますけれども、この教育職員免許法のいわゆる大改正を行っていただきました。教員養成のねらいとするところは、もとより三つありまして、まず強い使命感、それから深い専門的能力、もう一つは広い教養ですね。これは一生かけて多分獲得していく資質だと思いますが、養成、採用、それからさらに現職における研修、こういった段階で、まず第一番目に重要な養成においてどういう単位といいますか内容を要求するかということで、改善が六十三年になされたわけでございます。その改善は、先生今御指摘になりましたように、いわゆる深い専門的能力、この面で教職を中心としまして内容及び単位の改善、増が図られまして、最近におきます社会の変化とか学校の多様化に伴って必要な教育の方法、技術の高度化あるいは生徒指導、そういった面の指導の増加に対応しようとしたわけでございます。この点につきましては、今回の全体の大学教育の単位取得に関する弾力化の中で、この教員養成に関する専門的な分野の重要性には変化はございませんので、免許法の系列においては、これは従来どおりお願いしていこう、こう思っております。  もう一つは、広い教養でございますが、これはすべて一般教育だけで得るものではないと思います。ただ、一般教育も重要でございます。したがって、一応科目区分は取り払われることになりますが、教員養成の全体の教育課程の中で個々の大学がそういう広い教養も十分意図していただいて運用してもらおうというふうに思っております。その点は、先ほどもちょっと触れたかと思いますが、免許法施行規則のところでそういう姿勢を出していこう、こう思っておるわけでございます。
  119. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 ちょっといろいろ省略をいたしまして、ひとつお尋ねしますが、高等専門学校にも専攻科をつくったということで、短大も専攻科は当然あるわけですが、これは短大と高等専門学校では免許が二種ですね。これは専攻科をつくったのなら、充実に努めるということを前畑局長から先ほど御答弁あったわけですが、充実するのであるならば、これは一年の専攻科ではしようがないと思いますけれども、二年の専攻科なら一種の免許も、これを充実してもらえるようであれば、ひとつ単位としてカウントしても、与えてもいいのではないかな、またそこまで考えてあげた方が励みになるのじゃないかな、こういうふうに思うのですが、この点についてはいかがでございましょうか。
  120. 菴谷利夫

    ○菴谷政府委員 御指摘の点は、専攻科、通常は一年が多いと思いますが、もし二年の専攻科ができたら、高等専門学校の四年生、五年生、それから二年ですから計四年やるので、大学四年と同じではないかという観点に立ってと思います。年数において、もしそういう専攻料ができますと、確かに修業年限という感じでは四年になると思います。  それで、そういう御意見も関係団体ないしは個人で持つ方もおられまして、要望もあったわけでございますが、一応は議論教育職員養成審議会でもしましたが、今回はいわゆる大学における養成というのを原則としつつ、その大学における教育の弾力化、改善に関して関連することの検討をして、それから実現しようということで、この法律、関連して一括して出させていただいたわけでございます。教員養成そのものとして、また今後高等教育に関係する機関がどういうふうに免許状とかかわっていくかという問題は、また今後必要に応じて新たに議論は多分なされる必要があると思います。  高等専門学校に関して申し上げますと、要するに、先ほどからもそのそれぞれの設置目的はどうかという御議論もありましたように「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成する」ということで、短期大学を含めまして大学における教育とややそのねらいを異にしておるということから、これをおよそ免許状制度と絡めて、例えば四年出たら一種ということにするのがいいかどうかということは根本的な議論でございますので、今後の検討にはなるかもしれませんが、今回は入れなかったということでございます。
  121. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 もう時間が参りましたので、最後にいたしたいと思います。  大臣にお尋ねいたしますが、今回の教員養成制度の改善によって、時代や社会の進展に対応して各大学は教員養成のカリキュラムを工夫することができる、こういうこともあって養成段階での充実改善は図られていくということを期待しているわけであります。しかし問題は、現職の教員を含めて、そこらあたり、教員のあるべき姿として、また資質、能力を一層向上を図るというためには問題があると私は思います。  こういう点を含めて、資質向上のためにどういうふうになさっていかれるのか、大臣のその施策、それから御決意をお伺いして、最後といたしたいと思います。
  122. 井上裕

    井上国務大臣 御案内のように、教員には教育者としての使命感あるいはまた児童生徒に対する教育的愛情あるいは教科におきます専門的知識、さらに広く豊かな教養、それらを基礎とした実践的指導力、これが重要であると思います。教員の資質、能力の向上を図るための方策は、その養成、採用、さらに現職研修の各段階を通じて総合的に講ずることが必要であり、また教員養成、免許制度を改善したほか、従来から体系的な研修の充実に努めてまいったところでありますが、特に新任教員の時期における組織的かつ計画的な研修の重要性にかんがみまして、平成元年度から初任者研修制度を創設したことは御承知のとおりであります。私どもも、今局長の答弁のとおり、この資質の向上という面に一生懸命努力をいたしたい、このように考えております。
  123. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 終わります。ありがとうございました。
  124. 臼井日出男

    臼井委員長 次に、中西績介君。
  125. 中西績介

    中西(績)委員 私は、このように大学の改革というのを次々に打ち出してこられておる状況の中で、特に改革が非常におくれておる部分を指摘しながら、その面からまず質問を初めたいと思います。  それは、高等教育財政の充実が果たしてどうなっておるかという問題について質問を申し上げたいと存じます。特に、高等教育計画部会の総会への報告の中にあるように、大学の施設設備教育研究条件が極めて深刻な状況になっておるとか、先進国に比較して高等教育財政支出が不十分であるとか、幾つものこうした指摘が出ておるわけであります。  そこで、深刻な状況という判断は何を指しておるのか、お答えください。
  126. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 幾つかの観点があるわけでございますが、特に近年各方面から指摘をされておりますのは、施設の老朽化、そして設備の老朽化でございまして、特に施設費について申し上げますと、昭和五十四年度には千五百四十六億という文教施設費でございましたが、平成三年度、御審議いただいております予算案では、前年度比五十一億の増ということではありますけれども、八百九十八億、このようにかなりな減になっておるわけであります。設備費につきましても、同じような、それほど激しいことはありませんが、やはり厳しい状況がございます。さらに、基幹的な教育研究経費であります教官当たり積算校費あるいは学生当たり積算校費につきましても、その単価は昭和五十九年度から平成元年度まで据え置きにした。二年度には一%。御審議いただいております三年度予算案では〇・七%という増額を図っておりますが、このように文教施設費の減額あるいはいわゆる一人当たり校費の据え置きという状況が現在の国立大学における深刻な状況をもたらしておる、このように考えております。
  127. 中西績介

    中西(績)委員 私は、今言われました設備の問題にいたしましてもあるいは研究費の問題にいたしましても、もうこれ以上マイナスになってまいりますと、大学としての体面を保つこともできないし、内容的にもどうすることもできなくなってくるのではないかということを危惧いたしています。何としても、教育改革を急速に進めようとしておるその中におきまして、この財政問題を本格的に提案をし、具体的にどれだけのものが、例えば今の国立大学における研究費は、あるいは施設設備費は、これだけのものが不足しておるということを打ち出すぐらいにしていかないと、抽象的な文言でここに書かれておるよるなことでは反省は全くないと私は思います。ここが今一番問題ではないかということを強く感じるわけであります。  さらに、先進国に比較して高等教育財政支出が不十分だと言われておりますが、これも資料をいただいたところを見ますと、高等教育ではアメリカ、イギリス、西ドイツ等と比較いたしまして半分ですね。  ですから、こうしたことを考えてまいりますと、今手がけるところはどこが最重要課題かということを明確にこの審議会だって示すべきだと私は思うのですね。ところが審議会はそこになるとだめなのです。だから、それをいいことにして、今度は、審議会がこうして決めたからということを理由にいたしまして、行政である文部省は次々にほかの改革はやっていくわけでしょう。ここには手を触れない。こういう状況があるわけですから、これを脱却する方策をどう求めていくかとしうことが一番大事ではないかと私は思っています。したがって、そうした点についてどのようにお考えなのか、お答えください。だれでも結構ですから。
  128. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 現在大学審議会でまだ審議途中でありますが、高等教育計画部会というところの審議概要におきまして、先ほど先生指摘いただきましたように、現在大学等の施設設備研究教育条件が深刻な状況にあるといったようなこと、あるいは諸外国に比較して公財政支出が不十分であるといったような指摘が書かれております。  これは、おしかりはいただきますが、こういった具体的な財政状況について審議会が審議概要でも指摘をするというのは、私どものこれまでの審議会のいろいろな答申等見ましても、かなり異例なことでございまして、そのこと自体私どもは重大に受けとめておるところでございます。
  129. 中西績介

    中西(績)委員 大臣にぜひそうした点を御認識をいただいて、審議会がそうした結論を出さなければ、それをサボるということにならぬように、ぜひ取り組まなくてはならぬと思います。  それで、これらを充実するために基盤整備を図る必要があると言われておりますけれども、今金額的に推計をすると、一応これはどの程度になるとお思いになりますか。おわかりですか。
  130. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 申しわけございませんが、まだ具体に数字を持つところまで至っておりません。ここで基盤的整備というふうな言葉で言われておりますことは、具体には通常のいわゆる設備費であるとか、あるいは基幹的な教育研究費と言われております教官当たり積算校費あるいは学生当たり積算校費、こういうものを指しておるというふうに理解をいたしておりまして、それの増額に努力をすべきである、こういうふうな指摘と受けとめております。具体に現在の各大学を積み上げてどのぐらいの額に達するかというところの試算はいたしておりません。
  131. 中西績介

    中西(績)委員 この点ぜひ試算でもして、これを公開するということが一番大事ではないかと私は思うのですね。そうしないと、文部省と大蔵省とのやりとりだけで事を済ましていくということになりますと、密室的になってきますから、国民的な課題として、教育費をどう、あるいは高等教育費をどのように拡大をしていくかということにならないと、私はこの点の充実を図るなどということは不可能だと思っています。財政が豊かであれば、楽であればいいのだけれども、厳しい中ですから、やはり国民的課題としてどう皆さんの世論を起こしてやるかということが今極めて重要だろうと思っています。  特に、大学で教師が怠けているとかいろいろ取りざたされておりますけれども、先ほど局長が言われました、例えば学校の施設整備費、半額になっているのですから。しかもその年度というのは、二十年も前の半額ですよ。このことを考えなければいかぬと私は思うのです。二十年も前の半額ということになりますと、これはもうとてつもないでしょう。こうした基礎的なものをちゃんと国民の前に明らかにしていく中で、これが正当な要求だということを文部省が前面に出してやるぐらいにならないと、シーリング枠ということでぱっとはめられると、その中でもう埋没してしまって、今度文部省予算の中でのとり合いになるのですね。みっともないでしょう。  だから、こうしたことをどう脱却するかというところから始まらないといけない。研究費だってそうですよ。研究費だって、これを見れば見るほど私は残念でしようがないのですけれども、本当に今、例えば国立学校の特別会計概算決定額総表というのがありますけれども、見ると、その額は確かに三年度は二兆円をわずか超えました。しかし、そのうちの半額以上は、一兆一千七百九十三億円というのは人件費なのです。そうすると、その中には事業費である病院会計から全部入る、研究費も入るでしょう。  こうしたことを考えてまいりますと、これが今出てきておる一番の、私はいつも、この前も問題指摘をいたしましたけれども、問題になっておる一般会計からの支出部分が、繰り込み部分が、額が全然増額されていない。パーセントはもう下がるばかりでしょう。ここいらはやはりぴしっと私たちが整理をしてかかっていかないと、本当に研究をする、果たして大学にそうした任務を我々が強要できるかどうかということまで含んで、やらなければならぬ問題が個々にあると私は思っています。ぜひこの点をお考えいただいて、繰り入れ率はかつては七二・三%あったものが、現在では六〇・五%にまで落ち込んでしまっています。それは約二十年近く前との比較ですからね、その額も。だから、こうしたところあたりをひとつお考えいただかないと、この問題解決—─改革も確かに必要です。そのことは私は否定いたしませんけれども、まず改革すべきは財政をどうするかという、この基本的なものをまず改革をするということになっていかないとだめになるのではないかということを大変危惧をいたしています。  そこで、私は、この報告の中にいろいろ出ていますが、各大学の取り組み状況に応じて、積極的に奨励のため重点的配分を行う必要があるとか、あるいは教育機能の強化、それから世界的水準の教育研究、これを高めるための施策は重点的配分ということを言っています。さらにまた、大学院も水準の高い教育研究を積極的に展開するためには、研究活動の評価を踏まえて重点的整備が適当と考える。だから、金がないからどうしても重点的という発想になってしまうのですね。では、その基準は何なのかということ等について、私は大変危惧をするものなんです。近ごろ大学に行って聞いてみますと、研究費が不足するでしょう、もう事務局長の権限が強くなるばかりだということを言っているのですよ。そこにおべんちゃらを言わないと、なかなか研究費がとれないという、これでは大学研究なんというのはだめだと私は思うのですよ。これは私たちが戦後いろいろな、私は高等学校にいたのですけれども、理科の実験等を行う場合に、事務長にお気に入れられなければ実験の材料だとか器具をなかなか買ってくれないのです、けんかをしておったのでは。だから、しようがないから今度は予算を我々の手で組み直そうということで取り組んだことがあるのですよ。そして公平にやろう。ですから、そういうようなものが出てくると、今度ゆがんでしまうのじゃないか、またあるいは窒息してしまうのじゃないかということを私は危惧いたします。  この重点的な整備が適当と思うということは、どういうことを意味しておるのかおわかりですか。
  132. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御指摘ございましたように、現在の国の財政事情または国の財政に対する国民の見方ということからすれば、一挙に国立学校あるいは私立学校を含めまして高等教育に対する公財政支出を増大するということは、現実には至難の課題でございます。  とは申しましても、我が国が現在置かれている立場からいたしまして、既に学術研究分野においてもいわゆる対米摩擦が生じておるということが言われております。すなわち、日本の方からはアメリカ大学研究所に一方的に人が来て、そこで研究をし、成果を持ち帰る。アメリカ日本へ来て大学に行こうと考えても、日本大学は、先ほど先生も御指摘がありましたような状況でございますので、そこで研究すべき状況にはない。といって、民間研究所ということになりますと、企業の研究所にはいろいろな事情がありますので、外国からの研究者をなかなか受け入れてくれない。こういうことでは貿易摩擦と同じことが我が国研究機関にも起こってくるではないかという御指摘もございます。  そういう状況を踏まえながら考えますときには、限られた財政の中でどのようなことをできるかということになりますと、今御指摘いただきましたように、大学審議会の現在の審議概要において指摘されておりますことは、すべての大学あるいは大学院に一般的な助成というのは、これは基盤的な整備ということで考えるべきであって、それを超えて育成をし、助長をしていくということになれば、そこで重点的な配分を行うことにならざるを得ない、そして、その配分を行うに当たっては、やはり評価ということを通じて行うべきである、こういうふうなことでございます。さらに、それにつけ加えて、重点的配分をするその配分対象経費というものについては、現在の措置されております諸経費を回すんではなくて、新たな財政措置を検討することが適当である、こういうふうに指摘をされております。つまり、評価に基づく重点配分を行うについては、現在の既定の予算措置の中からではなくて、新たな予算措置を講じて、それを重点配分をする、こういうことになるというふうに理解をいたしております。具体には研究費の増額であったりあるいは設備費について特別の措置を講ずる、こういうことになるというふうに理解をいたしております。
  133. 中西績介

    中西(績)委員 今お答えいただきましたように、質的充実のための基盤整備、これらについても一般的にやるけれども、財源不足によって、新たに必要な経費というものは財源措置を講ずる、こういうことを言われましたけれども、これはまた、国立学校特別会計の充実の中にも新たに出てくるわけですね。次々にそういう言葉が出てきています。  したがって、こうした点を、私たちこれからどうこれに対応していくかということが物すごく今我々に課せられた課題ではないか、こう私は思っています。したがって、局長言われましたように、やはり少なくとも外国からけちをつけられないぐらいの基礎研究ぐらいはやはりやる。そして、日本の確かに企業秘密等がございますけれども、そうした点についてのこれから果たす役割というのもあるわけですから、枠の中にはまってしまうんでなしに、防御だけするんでなしに、やはり積極的にそれに貢献をしていくということがこれから大きな課題です。だから、ただ単に、戦争が終わったから、その後始末に貢献するとか、戦争に貢献するというんでなしに、日本がこういう点で貢献をしていきさえすれば、何も世界の孤児になる必要はないわけですから、むしろ積極的にこうした問題等についてやるべきではないかと思うのです。ぜひ今言われましたようなことを十分文部省としても皆さんが認識を新たにしていただきまして、これから後要求する態度、それから要求するときのいろんな内容、そのことが今度は国民の皆さんに理解されるように、そして、これがまた世界的に国際的にも理解をされるという、こういう大きな視点を持って創造していくということが今一番大きな文部省に課せられた課題ではないだろうか、こう私は思います。したがって、ぜひそうした点をこれから取り組んでいただければと思いますが、大臣、どうですか。
  134. 井上裕

    井上国務大臣 私ども毎年大蔵当局へいろいろなデータを挙げてお願いをしているわけでありますが、こういう財政状況の中で、もう先生御案内のように、少しでもこの平成三年度予算、今御審議をいただいている中で文部省として努力はしたわけでありますが、ひとつ一層の努力をいたしたい、このように思います。
  135. 中西績介

    中西(績)委員 だから、むしろ文部省は行政だから運動はできぬということを言うだろうと思いますけれども、しかし、直接あなたたちが運動を展開をする、やはり世論にアピールをする方策というのは、例えばこの大学審議会などのあれを読んでみましても、高専あたりがまだあれが足りないから、それをより多くの人に知ってもらうためにいろんな手だてを尽くすべきだというようなことを言っているでしょう。ですから、文部省予算面においては、やはりそうした点について世論化していくという、その方策は皆さんが先頭に立ってどんどん走れとは私言いません。行政としてやり方があるはずなんです。ですから、ここら辺をやはり明確に把握をしていただいて、大臣が言うようなことではまだ消極的過ぎますから、積極的に取り組むという姿勢をあらわにしていただきたいと思うのですね。  では次に、私学問題も全く同じなんです。今国公立をやったんですけれども、私学問題の今置かれている状況というのは、この前も私指摘をいたしましたように、これが平成元年で経常経費に占める割合は一五%になっているでしょう。そうなってまいりますと、この経費そのものがだんだん少なくなってくるということになりますと、私学の経営基盤の安定だとかあるいは教育研究の質的改善だとかいうことが指摘をされておるのです。これをやらなくちゃいかぬということを言われておりますけれども、この点は十分だろうかということ。ただ人件費は、確かに教授などの賃金ですね、給与費は割合に従前に比べると国公立を上回るくらいになってきました。これは喜ぶべきことですね。しかし今度は、対生徒とのかかわりを持ついろんな施設設備研究、こういうことがやはり私学の方々が言うように、国立の方が今指摘をするような国立であっても、それよりまだ低いということを盛んに言っていますね。この点を私はお認めになるならば、助成はこれから長期的あるいは短期的なプランをどう打ち立てていくかということが物すごく大事になってくるんですね。その点についてどうでしょう。
  136. 逸見博昌

    ○逸見政府委員 お答えいたします。  私学助成、現在大変額が大きゅうございます。その充実を図りますために最大のネックになっておりますのが概算要求時におきますシーリングの設定の問題でございます。このことは何度も申し上げているとおりでございますが、文部省といたしましては、概算要求時には、文部大臣以下与党の文教関係の先生方、毎年度この私学予算につきましてシーリソグ枠の対象外にしてほしいということで全力を挙げて頑張っておるところでございますが、遺憾ながらまだそれを果たしておりません。今年度以降につきましても、ぜひこの運動は続けなければいけないと思っております。ただ、これは、一つ費目を除外するということは、他の省庁の予算等に及ぼす影響等から大変難しいとい うふうに思っておりますが、なお全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。  ただ、先生は私立と国立との間に差があるというお話でございましたけれども、この点につきましては、幸い助成金の累積もございます。私学自体の御努力もございまして、例えば一つ二つ例を申し上げますと、例えば初年度学生納付金なども、この補助金を法律でもって始めました五十一年度と比べますと、現在では国立の一・九倍というところにまで落ち込んでおります。これが五十一年度には三・一倍であったわけでございます。それから教員組織の充実ということにつきましても、例えば教員一人当たり学生数は、昭和五十一年度には三十一人、それが現在では二十四人になっている。それから定員超過率、五十一年度には一・五二倍であった。これが平成二年度には一・二六倍であるというように、この補助の効果が徐徐にはあらわれている。これは私どもの成果だけではなくて、大学自体の御努力の成果ということも両方相まったものと思っておりますが、私どもなお一層こういった方向に向けて着実に努力を続けてまいりたいと思っております。
  137. 中西績介

    中西(績)委員 お言葉を返すようでありますけれども、今私が申し上げたのは、教職員の給与が国立を追い抜くくらいになりました、こういうことを言ったのであって、このことは喜ばしい。しかし、施設設備、それから研究費は、私学の先生方に言わせると、国立には到底及びませんということを言っておるということを申し上げたのです。そして特に、今比較をいたしましたけれども、この比較は私は余り当てにならぬと思うのです。なぜなら、国立の場合の例えば校納金だとか授業料にいたしましても何にしましても、では、その一番最初の年度が五十何年かでありましたけれども、ちょっと聞き落としましたけれども、その当時からすると、今何倍になっているかというのを計算して、それで対照をしてみないと、これは意味がないのです。ですから、国立あるいは公立の授業料を初めとする校納金がうんと高くなってきた、だから差がなくなっただけだ、そう理解をすべきだと私は思うのです。  ですから、私が今言っておるのは、学生数が減少するこの時期に向けて、四年までは相当増大をしてくるわけでありますけれども、しかし、それから以降十年もたたないうちに五十万も六十万も減るわけですから、この時期にこうした問題について、やはりこの程度はやらなくちゃならぬ、しよう、そして学生の支払っておる校納金等についてもできるだけ軽減をしていこうというぐらいのことを、これは国民に諮ったらみんな署名してくれると思う。しない人はごくわずかじゃないかと思いますよ。それくらいに皆さん今それが物すごく負担になっておるわけですから、そこを考えるならば、中長期的なこうした問題についてのプランをある程度立ててでもやらなくてはならない。計画というのは嫌うようでありますけれども、ぜひこれはすべきだ、こう思います。ぜひこれは考慮していただきたいと思います。  なぜ私がこのことを言うかといいますと、学費の負担増が中央、東京を中心とする地域だとか大阪を中心とする地域ではまだしも、地方では完全に音を上げているのです。何かといいますと、平均収入からいたしますと、やはり大都会の方が高いわけです。ですから、こうした点を何とかして払拭しないと学校にも行けない、こういうことが出てまいります。  それともう一つ、今の傾向は、この前テレビでもやっておりましたけれども、北海道のある大学あるいは本州のある地方の大学の場合は、今までは地方の高等学校から例えば五〇%なら五〇%進学できておったものが、現在では三〇%くらいに落ち込んでいっている。それは何かと言ったら、中央だとかあるいは大都会からの進出者が今地方にまで及んでおる。それは、そこに行ってもできるのは、やはり財政的にある程度地方の人よりも豊かだということを言っています。それが原因だということを言っていました。ですから、その負担にたえるということになれば何が必要かというと、先ほどのこの私学の助成を強めることによって、増額することによって経費を抑える。そのことによって今度は学費を下げることは可能だということにつながるでしょう。もう一つあるのは、日本独特の育英会方式をどのように改めるかということ。それから私学の場合には、まだ数をふやさなければならないわけですから、こうした問題をどうするかということを考えなくてはならぬわけです。この点についての御見解があれば伺いたい。
  138. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御指摘のように、学費負担の軽減ということにつきましては、私学助成の問題あるいは日本育英会による奨学金の問題、さらには国立大学について申し上げますれば、授業料、入学料の免除措置の問題、あるいは居住環境ということからいたしますれば、学生寄宿舎の整備といった問題、さらには税制上の問題といったものが考えられるところであります。私どもも、おしかりをいただいておりますが、できるだけの努力はさせていただいているつもりでございます。引き続き努力をさせていただきたいと思います。  なお、一つつけ加えさせていただきますれば、先ほど先生がおっしゃいました中央から地方へ学生が来るという問題、確かにそういう問題があろうと思います。これは一つには、大学の設置について、大都市への集中を避け、地方へ分散を図るという大きな国の政策もありまして、私どももそのように対処をしてまいりました。東京二十三区、政令指定都市、その他、この三地区に分けて、在学者がどういう状況になっているかというのを年を追って見ますと、昭和五十年度では、東京二十三区が在学者の三〇%を占めておりまして、その他の地域は四二%でございました。ところが平成二年度には、在学者の東京二十三区内の大学に占める比率は一八%、その他の地域が五七%ということで、大学の地方分散が進みますと同時に、都内の大学に入りにくくなって地方へ行く、こういう現象も一方ではその一つの要因になっておるか、このように考えております。
  139. 中西績介

    中西(績)委員 大学の数だけではいかぬのじゃないですか。学生数がどのようになっておるかということをやらないと正確なものにはならぬと私は思います。というのは、東京に集中しておる大学というのは、規模の大きい私立大学、非常に大きいわけですから、地方の大学というのは収容人員が極めて小さいわけですから、数だけでそのことを今論議すると誤るのではないか、私はこう思っています。ですから、やはりそうした学費というところをある程度重要視して配慮しないとだめではないか。これは私、意見として申し上げておきます。ぜひ参考にしていただきたいと思います。  そこで、高等教育規模と配置の問題です。今ともかかわりがあるわけです。  これは、いただきました資料等からいたしましても、あるいは先ほどの報告の中にも明らかになっておるわけでありますけれども、二年前の進学率、その推計等が大きなそごを来したということがあるわけですから、そうした点と、さらに、今度はそれぞれの大学の、特にこれから十年後の状況がどうなるかということを勘案いたしまして、新たな計画の策定というものが今緊急の課題になってくるのではないか。と申しますのは、これを早く策定しないと、どうしても右往左往する短大だとか地方の小さな大学だとか、こういう問題が出てくるわけです。廃校しなければならぬなどということになりかねないわけでありますから、早くこれを打ち出しまして、皆さんに協力をいかに求めていくかということが大変大事だろうと思うのです。これは教育改革とあわせて極めて重要な課題だろうと私は思っております。この点についての見解をお聞きしたいと思います。
  140. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 十八歳人口の動向につきましては、御案内のとおり、これまでは若干の波はありましても、一般的には増加ということでまいっております。昭和五十年、五十一年くらいから、ひのえうまの特別な事情のときを除きまして、ずっと増加をしてまいっております。そういうふうな情勢のときに高等教育計画というものを考えまして、国として今後の高等教育規模にどの程度のものを期待するかということを示し、関係の方々の御協力をいただくということが大変大事なことでありまして、そして、それによって増加する十八歳人口の、いわば入れ物の不足のために進学率が低下をするというような事態を避けるということもありまして、具体の数値を挙げながら計画を示し、御協力を関係の方々にお願いをしてきたところであります。  今後の情勢は、御指摘いただきましたように、平成四年度をピークにして十八歳人口が減少していく。浪人の状況等を考えますと、四年、五年ぐらいまでは現在のような志願状況、数字が続こうと思いますが、それ以降は絶対数も減少してくるということになろうと思います。  このようなときに、関係の私学の方々は、どれぐらいの数値を国が示すかということよりも、むしろ自分のところの大学はどう生き残り作戦を立てるかということにあります。私どもの方では、十八歳人口が減少していくときに、いたずらに具体的な固定的数値を示して、ちょっと比較が悪うございますが、各都道府県等で行われているように、公私でどれぐらいずつ入学定員を減らしていくかというような方向を示すよりは、今後は傾向的にはこれぐらいの人数しか進学しないようになりますよという警告を発する、そして、その状況、私どもの推測するところをお示しして、そして関係者がそれを前提として入学者の確保に努力をする。そのためには大学審議会の答申でお示しをし、また大学設置基準改正で具体の姿を示しますが、今後の高等教育のあり方ということを踏まえて、それぞれが努力をしていただく、こういうふうな対応が今後の十八歳人口の減少期には適切なものではなかろうか、私どもとしてはかように考えておるところでございます。
  141. 中西績介

    中西(績)委員 先ほどちょっと触れましたけれども、地方における大学でとても学生数が少ない、さらにまた授業料、校納金を高く求めることができない、こうした状況の中で四苦八苦してやられておるところあたりが今大事にしなくてはならない地方大学ではないだろうか、こう私は考えます。ですから、こういうところあたりにある程度学生が集中、というよりも進学をするようにさせるための手だてというのは、ただ単に若い学生の東京へ一極集中したいという気持ち、そういうようなものが地方にどう分散をした方が教育的にもあるいは生活的にも環境的にもすべてよろしいというようなことあたりを、ある程度やはり進路指導なりなんなりの中でやっていかないと、このまま放置して自由気ままにやらせたら、必ず私たちが危惧するような結果が出てくるのではないかということを一番恐れます。  ですから、その計画的なものとあわせて、そのような指導をいかにこれからするかということが大変重要ではないだろうかと思っております。ですから、そのことは生活指導なりあるいは進路指導なり、それをする過程の中で極めて重要です。  それともう一つは、今度は国の施策が、もう東京一極集中がどうしても改まらない、こういう傾向にあるわけでありますけれども、Uターン傾向をとったときがあるのですよ、大学紛争の後に。中央の大学がいろいろ問題があるということになれば、今度は地方に分散をするという結果になったのですね。だからあのような紛争という問題でなしに、都市あるいはその住環境、すべてのものがこうだというようなことを、そしてむしろ地方が大事なんだというようなことを、やはり政治施策の中で行政も含んでやることが、そうした地方に展開をする大きな要素になってくるのじゃないかということを私は指摘したいと思っています。  ですから、そうしたことも含みまして、先ほどのあれを聞いておりますと、学生数の減少を示して皆さん方でお考えいただきたいということであるようでありますけれども、私はもう少し、立ち入るようだけれども、この計画は、そういうやり方をしないと生き延びることはできませんよぐらいやはり出してもらわぬといかぬのじゃないかなという気がするのですけれども、この点、どうですか。
  142. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 十八歳人口の減少期に差しかかっての計画というのは、この審議会の審議経過の概要にも記してありますように、大変難しい要素があります。それと、先ほども申し上げましたように、私ども、この審議会として、現段階で平成十二年度にどういうふうな姿になるであろうかということについては、それなりに示してあるところであります。ケース一、ケース二、ケース三というふうな数字を示しまして、平成二年度との比較で入学者の数が八万九千人減りますよ、あるいは七万一千の減になりますよ、あるいは五万六千の減になりますよ、こういうふうな数字を示して、その意味ではある程度の警告ということでお願いをしておるところであります。  ただ、これが非常に難しいのは、地域間の格差というのが非常に大きゅうございます。私どもの高等教育計画でも、各地域別に定員の整備という計画、いわゆる新高等教育計画というのを策定しましたときに示して、そういう数値というものを文部省として考え、設置認可に当たっても、そのように対処をするということで臨んだところでありますが、現在におけるその数値の、これだけの増を予定するといった数値の達成状況というのを見ましても、非常にばらつきがございます。北東北では達成率が五八%であるとか、あるいは四国では七一%であるとか、これに対して近畿が一九〇%、北陸は一〇〇%というふうに非常に大きなばらつきがあります。したがって、トータルとして八万九千の減になる、あるいは五万六千の減になるといっても、それはどこで減るのかというのは非常に難しい判断がそれぞれ働こうと思っております。したがいまして、今回の計画では、さきの新高等教育計画におけるような地域別の数値を示す、どの地域で幾ら減るかという数値を示すことは、もはや断念をいたしたところでございます。各大学短期大学において全体の状況をにらみながら、全体としてあの程度減るならば自分のところにはどういう影響があるかということもありましょう。また、先ほど御指摘がありましたように、大学、短大のそれぞれのいわばステータスによってもかなりな違いがあると思います。  いずれにしても、厳しい状況になるということは警告をしておるつもりでございます。
  143. 中西績介

    中西(績)委員 いずれにしましても、大学の改革をするに当たって、もとになる大学がどうなるかという、こうした点とのかかわりになってくるわけですから、この点はぜひあらゆる情報なり、皆さんの知恵を絞っていただいて、そうした点を皆さんに公開をして、みんなで一緒につくり上げていく、こうした体制をぜひつくっていただきたいと存じます。  今度は本論の方に入りますが、そういう背景を持ちながら大学の改革を行おうとしています。そこで、私は学校教育法の五十五条及び五十六条改正についてお聞きしたいと思います。  この中で、先ほどもちょっと出ておりましたけれども、医学歯学の学部で専門課程及びそれに進学するための課程制度を今度は廃止することになっています。そこで、どういうお考えをお持ちか、お聞きします。  特に、近来の社会風潮から親の拝金主義、これが非常に強まってきています。したがって、例えば医師を志望させる、その中身ということを問いますと、人の生命をということでなしに、むしろ収入が多いということを選ぶわけです。そこからこうしたことが出てくる傾向もあるわけであります。したがって、人間形成に重要な教養面が大学教育の中で重要視されておかなくてはならないと私は思うわけです。医師としてのモラルの欠如あるいは人間の尊厳を軽視するような状況が医師の中にあるとするならば、あるいはあったといういろいろな例が挙げられておりますだけに、むしろ強化しなければならぬのじゃないかなと思うわけですけれども、その点はどうとらえておられるか。
  144. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御指摘の点は、私ども全く同様に考えておるところであります。  ただ、御理解をいただきたいのは、この学校教育法における医学歯学課程に係るいわゆる課程区分規定ということの沿革というものがございます。昭和二十四年、当時いわゆる新学制が発足いたしましたときには、医学部、歯学部の入学資格は、他の学部または他の大学に二年以上在学し、一定の課程を修了した者、こういうことになっておりまして、ほかの大学で二年間以上学ばなければ医学部、歯学部には入学資格はない、いわばアメリカにおけるメディカルスクール的な発想でありまして、一般大学で一般的な教養を修めた上に医学部へ進む、こういうふうなことでございました。それが昭和二十九年の改正によりまして、よその大学というのではなくて、自分の大学において進学課程というのを置く。現行の法律にもございますが、特別の場合には、進学課程はよそにあって、自分のところに専門課程だけがある。具体の例としては、東京医科歯科大学専門課程四年だけを持っておりまして、それへの進学課程は千葉大学にあった、こういう例もありますが、そういうふうに切ったことがございます。  そういうふうな扱いをいたしましたゆえんは、従前の例では、大学の農学部に入ったあるいは理学部に入った学生が医学部への進学ということを目指して農学部なり理学部なりの勉強がおろそかになる、あるいは専門課程の進学に際して、理学、農学というところへ進まないで学内浪人がたまる、こういう弊害があったということが指摘をされ、そういうふうな指摘を受けて、その当時は、とにかく自分のところに進学課程を設けて、そこで一般教育をやらせる、それから進学する、こういうふうな制度になったわけであります。さらに、それが四十八年でございましたか、新設医科大学、いわゆる無医大県解消で進めてまいりましたときに、果たして進学課程二年以上、専門課程四年というふうな機械的な区切りが医師の養成のために本当に最適であろうかという反省が生まれました。そこで、六年一貫の医学教育を行う、一年に入ったときから医師としての心構えをきちんと持たせながら、そこで医学の専門のことも教える、それによって心構えを持つ、その上で一般的な教養を六年の中で教育していく、こういうことを欲する大学があるならば、それを認めていいではないかということで、現行法にございますように、進学課程専門課程を分けるか分けないかは大学の自由、だけれども、分けるときには専門課程は四年、進学課程は二年以上、これは法律上そう決めるというのが現行の法律でございます。  したがいまして、そういうふうな進学課程専門課程の分け方によって、国会で御審議いただきます法律進学課程は二年以上、専門課程四年、こういうふうに法律に掲げられておることが、全体としての大学のカリキュラムの自由化、各大学が欲するところに従って一般教育、専門教育を全六年間でやろうとするときにに法律によってこうなっておるではないかということが一つの大きな制約要因になりはしないかということで、今回はこの規定は削除させていただこうというふうに御提案申し上げている次第でございます。
  145. 中西績介

    中西(績)委員 医学部、歯学部の戦後学制改革以後における内容についてはわかりました。  ただ、私が指摘をしたかったのは、これはもうこの前の論議のときにも出てきた問題、一致するわけですけれども、あるいは短大等におきましても、どこにでもこれは通用すると思いますけれども、特に高校などで歴史だとか社会科などが入試との関係で非常に—─疎外されていると言ったら語弊があるのですが、余り重要視されておらない。特に歴史の近代史などはほとんどの生徒が受講しておらない。だから今度は、例えば朝鮮の学生に会って交流したときに一番困るのは、何で言われておるかがわからぬ。国際的だということを盛んに言うけれども、隣の国のことが全然わかってないから、結局そこでの意思疎通が全くできないという疎外要因がそういうところにあるということを指摘されていますね。そういうことを聞きますと、なおさら私は、一般教養的なものが高等学校でも当然あるべきなのが、入試のためにだんだん疎外されていっている。そうすると、それが今度そのまま大学に入ってきて、そこでもまた六年間あるいは四年間で自由に選択をということになってくると、またいろいろ多くの問題を残していくのじゃないか。特に専門教科というのはやればやるほど深みがあるし、だから今度は教授、私がなってもそうだろうと思いますけれども、自分の時間はこれだけだと言ってなかなか譲らないと思うのですね。余計とろうとするわけです。そこの出身の学生は、そうした専門的なものにすぐれておるということを評価してもらおうとすればするほど、その傾向は強まってくると思っています。したがって、この点をこれからどのようにしていくかということをよほど考えていかないと、文部省の手から解放されることはいいと私は思いますけれども、そこが主体的にどうしていくかということがなければ、逆に弊害が起こってくるのではないか。私が高等学校におるときだって、各教科で時間数を取り合いしますね。そうすると、全部集めたら膨大な時間になっちゃうでしょう。しかも、それで内部で対立をするというような状況だって出てくるわけですから、その点もひとつ十分御勘案いただければと思います。だからといって、文部省がいろいろ直接手を入れてやれということを私は言っておるわけじゃありません。その点、やはりこれから後の改革の中における大きな要因—─これだけじゃありませんよ、これから全部そういうふうに解放していくわけですから。そうした点について十分認識をした上で措置をされるように要請をしたいと思います。
  146. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 大変難しい問題でございまして、一般教育の現在の形骸化の状況、そして、それを新制大学発足の理念に従って一般教育の理念の具体の実現を図る、この両方をどのように調和をさせていくかというのがこの大学審議会の答申に至るまでの大変大きな課題でございました。今先生指摘いただきますように、文部省において省令の大学設置基準で一般教育三十六単位というシェアを確保しているから一般教育が行われている、そういう主張をなさる方もおいでになりますし、一方では、制度によって保障されている授業だから形骸化しているんだ、こういうふうな主張をなさる方もありました。結局のところは、制度による保障というのはやめまして、先生も御賛同いただきましたように、一般教育をどのようにやるか、どの程度やるかというのは各大学に任せようではないか、こうなっております。  しかし、なお具体には、そうはいっても全くの白紙で各大学に任せるというのはやはり心配だという向きもございまして、この答申では、その点について、大学設置基準である程度の規定を設けたらどうかという御提案がございます。大学設置基準における教育課程の編成に関するくだりがございますが、そこに「教育課程の編成に当たっては、幅広く深い教養、総合的な判断力を身に付けさせ、豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮すること」といったような趣旨を設置基準に入れて、各大学にそれをお示しし、それを配慮してもらおうという考え方が示されておりますので、私どもとして、今後設置基準改正に対処いたしますについては、その答申の趣旨に沿って大学審議会にお諮りをしたい、このように考えております。
  147. 中西績介

    中西(績)委員 きのう大臣も文教の分科会でやっておりましたように、例えば英語の授業を中学校で、もう学校の名前は言いませんけれども、三時間から四時間になり、六時間になっていっているでしょう。それがすぐれているといってみんなそこに集中するわけです。そうなってくると、特徴はいいとしましても、本当に基礎的なものを—─中学のときからもうそうですから、大学なんかで今度いろいろそこが進んでいるというようなことになってまいりますと、物すごくそこに格差が生じてくるわけですから、そうしたことを私は非常に心配をしておるわけです。  次に、六十九条の二の第七項及び七十条の八の関係について質問を申し上げます。  準学士称号創設について先ほどちょっとありましたけれども、先ほど言われておった国際的な問題が一つと、それから日本人が外国に行った場合、そしてさらに今度は生涯学習の観点からというものが示されていますね。しかし、よく考えていきますと、ずっと突き詰めていくと、私たちが一番心配するのは、称号付与というけれども、学歴ですね、あるいは終局は資格、先ほども出ておりましたように、日本人の場合どうもそういうものに集約されるみたいな、そんな感じがするのです。そうなるとまた、これが誤った形なり学歴社会なり、そういうものを助長するということになりはしないかということを私は懸念するわけでありますけれども、どうですか。
  148. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御指摘のとおりだと思います。一定の必要性に基づいてこうして準学士称号ということを御提案させていただいておりますが、それによっていわゆる資格社会なりあるいは学歴社会を助長するようになってはいけないということは、私どもも十分心しているところでございまして、学士の学位につきましても準学士称号につきましても、それを創設することに伴って、それに特別のステータスを与えるということは厳に抑制をいたして対処いたしておるところでございます。
  149. 中西績介

    中西(績)委員 したがって、この問題は本当に難しい問題になってくると思います。今まで我々ずっと長いこと論議をしてまいりまして、学歴社会問題、随分取り上げてまいりましたけれども、これを除去するということになると大変な抵抗もあるし、困難さが伴うわけですから、だから、逆に、今度そちらの方に進むのは速いのですよ。もとに返そうとすると非常に困難があるけれども、進もうとするとみんな簡単はそれにはまってしまうという弱さがある。ですから、その点をどのようにするかについては、今度の準学士法律で決められてしまうわけですから、私は、もうしばらく待って、そうした問題について慎重に論議すべきであっただろう、こう思います。特に外国人留学生等はまだまだ短大の場合にはそう多くはありませんし、したがって、こうした点ちょっと早過ぎたのではないか、こうしたことを指摘しておきたいと思います。  そこで、短期大学の設置の問題、特に今現状がどうなっておるのか、あるいは評価と課題というのが大体整理されていますね。ところが、この中で非常に重要なものは、例えば、高度の専門教育を実施し、専門職業人養成に貢献するということで医療技術者だとかあるいは教員養成だとか、こういうのをやっておるわけでありますけれども、私は、これは果たして短大でいいだろうかという問題がありはしないかという気がしてなりません。  と申しますのは、例えば福岡では、教員養成の短大を出て登録試験をしますと、確かに四年制大学の合格率よりも短大の合格率の方がむしろいいというぐらいです。なぜかというと、これは試験のための授業をずっと専門的にやってきているのですよ。だから実際に教員になったときに学校現場で一番困っておるのは、いろいろな問題に対応できないという問題が出てきたのです、一般的な教養問題等含めまして。ですから、もう都市の名前は言いませんけれども、結局それを即刻そのまま入れるのではなしに、やはり四年制大学の方がいろいろな問題について対応できるということで数の上で制限をしたというのですよ。教員養成のための短期大学を出て、正規のあれを受けて、なお制限されたということになると、考えたら、これは非常に大変なことでしょう。しかし、そうせざるを得ない。そうせぬと小学校なんかの場合には将来どうなるだろうかということを危惧する状況が出てきたのですね。ですから、むしろ教員養成などというのは、短大などということではなしに、四年制大学なら四年制大学にもうこの際切りかえる。さらにまた、医療技術の場合には、技術進歩で、今もう普通の人では到底わからぬような高い技術を要求されるわけでしょう。そうして、やっちゃならぬのかもしれないけれども、医師にかわってやることだってあるわけですから、人命とのかかわりからいいましても大変大事だと思います。そうなってくると、こういうものはもう思い切って、短大だとかなんとかで養成するのでなしに、四年制大学に切りかえてしまった方が私はいいと思うのです。そうしたことを含んで、短大の評価並びに課題というものをお答えいただければと思うのです。
  150. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 職業資格と結びついた教育をやりますときに、今先生指摘のような問題が短期大学についてあるとすれば大変残念なことだと思います。それは、短期大学だからそうだ、四年制大学であればというようなことでは必ずしもないのではなかろうか。先ほど学歴社会という御指摘がありましたが、法律等で定められておる資格が短大でも取れるあるいは四大でも取れるあるいは高専でも取れる、こういうことになっていって、そこで取得した資格というものを適正に社会で評価をしていただくということがむしろ学歴社会打破の一端ではなかろうかと思っております。例えて申しますと、海技免状につきましては、商船高等専門学校で取得した資格も商船大学校で取得した資格も同等ということになっておりまして、同じ資格を持って働く、こういう状況になっております。ですから、短期大学だから問題があり、四大にすればということよりも、当該短期大学でどういうふうな教育をやっていただくかということに視点を置いて考えてまいりたい、このように私どもとしては考えております。
  151. 中西績介

    中西(績)委員 私は、それに格差があるとかなんとかじゃなしに、例えば医療関係、人命を扱うところだとか、あるいは子供の教育をつかさどるところの人たちは、それくらいの年限をかけて養成しないとだめだと言っているのですよ。ですから、あなたの言われていることと私は論点が違うと思うのです。ですから、そこをもう少し、我々はもう一度多くの人の意見なり何なりを聞き直してやるべきではないかということを考えておったわけであります。したがって、評価あるいは課題というものを細かくやりたいけれども、きょうは時間が来てしまっておるようですから、ここでは省きますけれども、特にそうした点についての、教養面における問題を重視するとか、いろいろな点をこれから追求していかないと、やはり多くの問題を醸し出してくるんじゃないかということを懸念をしておるから申し上げておるわけです。  いずれにしても、この点は問題提起として、ひとつ文部省としても、もう一度多くの人の意見なり何なりを聞く。現場の意見あたりがほとんど聞かれぬでしょう、こうした問題について。医療技術なんかの場合はもう相当の人が言っていますよね。ですから、この点についてもう一度お考えいただきたいと思います。  それからもう一つは、非常に多い短大の専攻科の問題ですけれども、美術だとか音楽などが中心となってだんだん多くなってきていますね。これが今届け出制で設置されておるわけですけれども、どんどんこれが広がっていくことは、私はいい悪いはここでは申し上げません。しかし、どうも裏にあるのは、学位授与機構とあわせまして設置しながら、経常費補助の上乗せをするための一つの学校経営の要求の中からこれが出てきているみたいな感じがします。したがって、教育的な見地からでなしにそうしたことが拡大をされていくということになりますと、これは大きな問題だろうと思うのですが、この点はどのように見解を持たれていますか。
  152. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 短期大学専攻科で大きな割合を占めておりますのは、御指摘いただきましたように、芸術、それから医療技術、家政といった分野であります。  医療技術につきましては、これは、国家資格との関係で、看護の短期大学の上に助産婦の専攻が乗る、こういう例が多いわけでありまして、国家資格との関係でそういう専攻科を乗せるということであろうと思っております。  それから、芸術の分野というのは、これまた御案内のとおり、○○大学へ行ったからといって評価をされるものではなくて、大学へ行こうと短大の専攻科へ行こうと、それぞれの実力が世に問われるわけでございますから、短大において専攻科をつくっても、そこで実力をきちっと身につけさせる、磨くということであれば世間に通るということで専攻科の設置が行われている、このように理解しております。  家政については、あるいは栄養士等の資格の問題も若干あろうかと思っておりますが、いずれにいたしましても、現在の私学助成における経常費助成につきましては、専攻科の学生というものは学生の積算の対象にはなっておりませんので、それを目的にして専攻科の設置が進むということではなかろうと思っております。
  153. 中西績介

    中西(績)委員 専攻科というものは、今答えられたように積算の根拠になっていませんか。—─私の認識がちょっと違っておったようですけれども、いずれにしましても、この専攻科問題というのは、今度はそこで取得した単位が学位授与の関係につながってくるわけですから、この点はよほど注意をしていただかないと、また後ほど問題を醸し出すと思われますので、こうした点についての経営者の良心を揺さぶるように絶えずしておいていただきたいと思います。  そこで、短期大学の本格的な改革を目指していかなくてはなりませんけれども、その際に、学生の減少期に向けまして、これから短期大学の果たす役割をどう位置づけをするか。短期大学に進学はしておりましても、四年制大学に進学したいという希望がありながら二年制にという人もいると思います。したがって、短期大学そのものが四年制の大学にある程度転換できるような体制にあるところがあれば、むしろ私は、短大の位置づけとその現状というものを十分分析をした上で、四年制へということを考えるべきではなかろうかという気がするのです。というのは、だんだん女子学生が多くなってきますね。そして四年制大学に進学をする女子学生が多くなってきている現状からしますと、この短期大学とのかかわりがだんだん隔たってくる、二年制の大学が少なくなってくる可能性があるわけです。ですから、そうした点等をどのように位置づけをするか。それによっては、現在どおり、いや、それは私が申し上げるように、四年制へという転換だってあり得ることになるのじゃないかと思うのですけれども、そうした点についての考えをお持ちですか。
  154. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 短期大学を設置している学校法人なり地方自治体が当該短期大学廃止をして、四年制大学へ転換をするというのは極めて異例だというふうに申し上げられるかと思います。通常の場合は、短期大学を置いたまま四年制大学をつくる、こういうふうなのが通例でございます。ただしかし、現実には六十三年度で三校が短大を廃止して大学へ転換をし、元年度には四校、二年度には三校、こういう例がございます。  私どもの立場からすれば、短期大学学校教育法にきちっと決められております学校制度でございますし、それなりにきちっとした教育を行い、研究を行って役割を果たしておる、このように考えますので、四年制へ転換をするということを積極的に推進するという立場にはございませんが、それぞれの設置者において転換をしたいということであれば、それについては積極的に対応させていただきたいと思います。  ただ、ここで一番大きな問題は、もとより設置基準において、短大の場合と四年制大学の場合には、校地、校舎の面積も違います。教員の人数も違ってまいります。また、教員の資格審査というものを大学設置・学校法人審議会でやらせていただきますが、そのときにも、現実的には短期大学の教員の方がそのままストレートに大学の教員として合格をするかという点についても問題なしとはいたしません。したがいまして、設置者の方で物的な施設設備の問題、さらには人的な組織の問題、それからもとより学部学科内容の問題等を十分勘案をして対処されるように要望いたしたいと思っております。
  155. 中西績介

    中西(績)委員 次に、七十条の三、七十条の六の関係について。高等専門学校工業または商船に関する学科以外の学科を置くことができるようになるわけですけれども、先ほどの論議を聞いておりまして、これに対してぜひ拡大をすべきだというようなお答えをしておったようでありますけれども、私がお聞きしたいのは、これに至る審議会の答申等を見ておりますと、社会の要請がそうだということを言っています。私は要求をいたしまして、では、社会の要請というのは何だということをお聞きしましたところが、国立高等専門学校協会だとか全国農業高校長協会、あるいは商業高校長協会だとか東京都の産業教育審議会の答申だとかいうものを例に挙げられておるようでありますけれども、私は、校長だとかこういう人たち、確かに学校を代表する者ではあるけれども、現場の皆さんなり国民的な課題としてこういうものが果たしてあっただろうか。社会の要請ということになりますと、一般的に私は考えたかったのですけれども、そこいらのものは何も出てないですね。関係者の要請があったということになっておるようであります。この点はどうも私は合点がいかないのですけれども。特に、例えば農業のバイオ関係を高等専門学校でということになりますが、これまた人命とのかかわりだとかいろいろ多くの問題生ずるわけでありますしね。こうしたことはもう大学ぐらいで結構なんじゃないかな、こう私は思うわけであります。  したがって、それぞれの設立の趣旨、目的というものからいたしましても、法律上の制約からいたしましても、分野拡大というものはさらに矛盾を深めてくるのではないか。四年制、それから二年制の大学、これの改革とあわせてやった場合には慎重にやるべきではないかと私は思うのだけれども、その点はどうですか。
  156. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 高等専門学校につきましては、先ほど先生からも御指摘をいただきましたが、現在六十二校で入学定員が一万人でございます。現在の十八歳人口が二百万でございますから、二百万と一万人ということでございまして、仮に四十人学級学級の中学校がありまして、そこの卒業生が二百人といたしますと、そこからわずかに一人が高等専門学校へ進む、こういうふうな規模でございます。  先ほども御指摘いただきましたように、私どもとしても、高等専門学校の意義というものについて広く社会の方々に御理解を求める努力をしなければいけないと思っておりますが、そういうふうな状況でございますので、関係の校長会等の方々の意見を私どもとしては社会の要望というふうに受けとめざるを得ない状況にあることをまず御理解をいただきたいと思います。  そういうことから考えてまいりまして、御指摘のように、高等専門学校でどういうふうな具体に学科を考えるかというときには、これも高等専門学校創設のときから課題としてございましたように、その進路が決して袋小路にならないようにするということをやはり一つの大きな課題として考えなければならないと思っております。社会の具体の職業分野における要請もさることながら、複線の学校体系でございますので、そこの卒業生の進路というものも十分見定める必要があろうかと思っております。具体にどういうふうな高専をやりたいというような要望があるかということにつきましても、あるいはお聞き及びかと思いますが、体育の高等専門学校をつくりたいというお話もかつてございました。また、今年度からの開学になりますが、札幌市立のインダストリアルデザインという学科を持った高専というものが設立の運びになっております。これらも現在の体制でございますので、工業デザインという範疇に入っておりますが、分野拡大いたしますれば、芸術の分野のデザインということにあるいはなったかもしれないということも考えられます。ただ、体育につきましては、そういう構想はございますが、これは現在の第七十条の二にございますように、「職業に必要な能力」の育成でございますので、体育と「職業に必要な能力」の育成というのがどういうぐあいに結びつくかということも、やはり見定める必要があろうかと思っております。  いずれにいたしましても、御指摘ございますように、そこの卒業生の将来の進路、なかんずく大学への編入の道ということを十分見定めて、具体の設置については慎重に対処する必要があるということは、御指摘のとおりだろうと思っております。
  157. 中西績介

    中西(績)委員 私はなぜそのことを申し上げるかといいますと、高専に今度は専攻科を設置するということになっていますね。今あなたが図らずも言われましたように、これは複線型ですから、結局袋小路になる。これはもともとわかった話なのですね。産業界の要請によりまして完成教育機関としてこれが設置をされたという経緯があるわけです。  ですから、そうしたことを考えますと、複線型であれば袋小路になることは当然でありますから、結果的には私に言わせるならば矛盾が出てきた、こう言わざるを得ないのですね。そうなってきますと、高専をここにまた設けるということになりますと、私は継ぎはぎ的な発想ではないかということを指摘したいと思うのです。これをしますと、今例えば大学なら大学、この前の技術科学大学かな、長岡と豊橋につくった。ここの編入者を相当多く入れるというのもこれを救うためにやったわけですから。それでもなお救えなくなってきたということなんですね。ですから、こうした産業界の要請があれば、こうしたことを次々とつくっていく、その結果は、今度次に継ぎ足ししていかないと、その矛盾が解消できないという結果になってしまったのじゃないか、私はこう思っております。  ですから、私たちが指摘をいたしましたように、本当に学校の体系というものを考えたときに、我々主張してきたそのことが今改めて問い直されているみたいな感じがします。これを放っておくと、今あなたが言われましたように、一万人おるわけですから、これを放置はできない。したがって、私は、少なくともやはり先ほどあなたが答弁の中で言われておりました、在学者は経済的に恵まれてない方がいらっしゃる、したがって、そういう方には地方にあるこういう高専で、そして今度は四年制大学なりに進学せずとも、そこで専攻科でと、こういうことを言われるわけでありますけれども、これがまた、先ほど私が申し上げたような育英会の組織だとか財政的な問題だとか、総合的に物を考えたときに、ここにまたいろいろ多くの問題が出てきていることを指摘しなければならないわけです。したがって、この点についても、最後は、先ほど申し上げたような資格取得あるいは学歴が究極ということになってくるような感じがしてなりません。したがって、この点はぜひ慎重にあるべきではないか、私はそう思っていますけれども、こうした意見に対する見解はどうですか。
  158. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御理解をいただきたいと思いますのは、一つの学校制度として法律でお認めいただいておりながら、その分野をしかも法律で限定されているというのは、この高等専門学校だけでございます。当時のいろいろな客観情勢からそのようにさせていただいて御提案を申し上げたわけでありますので、責めは私どもの方にございますが、今回はそういった客観情勢が解消された。むしろ高等専門学校の制度も二十数年たって定着をした。そこでいろいろな分野に展開できる可能性というものをお認めいただきたいというのが分野拡大であります。  さらに、御案内のとおり、専攻科というのは高等学校、短大、大学、それぞれに制度上はございます。高等専門学校だけにはないわけでございます。これも二十数年たって、高等専門学校一つの学校制度として定着をした、そこで制度の整備を図るということも含めて専攻科の設置の可能性を開いていただきたい、このように思いまして、御提案をさせていただいているところでございます。  具体の分野拡大に対する対処、あるいは専攻科の設置に対する対処ということにつきましては、御指摘もございますし、また、私どもとしても、諸般の情勢を見定めながら慎重に対処させていただく必要があろうか、このように考えております。
  159. 中西績介

    中西(績)委員 私は、先ほども申し上げましたように、これを設置するときの論議をもう一度振り返っていただけば、そうした点について私たちが言わざるを得ない理由もそこにあるわけですね。同時にまた、財政的な問題から、果たしてこの高専の環境がこうした専攻科を置くような環境であり得るのか、これは財政的な問題とまたかかわり合ってくるのですね。  先ほどもちょっと同僚議員との討論の中で出てきておりました施設設備、もうあらゆるものが環境整備がなされてない。もう本当に見劣りするわけですね。近ごろ新しく建っている高等学校なんというものは本当に立派でしょう。ああいうのを考えたら、高専の教授陣の体制をどう整えていくのか、あるいは今言う施設設備あるいは研究体制、そういうものなしに専攻科というのを設置したといたしましても、相当な困難性がいつまでもつきまとってくる。ですから、そこに生まれた子供がちやほやされずにほうりっ放しにされてしまって疎外される格好になるのじゃないかな、特に大学などが。例えば科の設置は認めても、建設だとか施設設備等が二年も三年も後になっていくというような状況にある中での今度は専攻科なんですよね。だから、そうしたことを考えると、本当にこれが果たして私たちが今喜んで設置を認めるかどうかということに、私は大変な疑問を感ずるものであります。したがって、先ほど出ておりましたように、途中のことはいいにいたしましても、この点についてはアフターケアをどうしていくかということまで含んで相当慎重に考えていただかなければならぬと思います。  以上で大体、時間が来ているようでありますけれども、あと課題等をずっと見てみますと、まだまだ多くの問題があるということを指摘されています。ですから、こうしたことを考え合わせていきますと、短大あるいは高専を含んでどうあるべきかを、大臣、ひとつこれから後の指針としてお答えいただければと思います。
  160. 井上裕

    井上国務大臣 今先生政府委員の御質疑、また答弁を聞いておりまして、短期大学はこれまで女子高等教育の進学の道の拡大に大きな役割を果たしてまいりました。また今後は、男子学生のニーズにも配慮した教育を実施するとともに、生涯学習社会への移行に伴い、地域に密着した身近な存在として、これから社会人の受け入れや、また公開講座の実施を図るなど生涯学習社会の中核としての役割を担っていくことが期待されていると考えております。  また、高等専門学校の問題は、先ほど申し上げましたように、中学校卒業後の五年一貫した専門職業教育は産業界からも高い評価を得られておりますし、私どもいろいろな面で独自の複線型の学校制度としてその役割を果たしていきたい、こういうことを考えております。また、今後技術の進展に的確に対応した学科の改組、転換を進めるとともに、高等専門学校教育での特色を生かして工業商船以外の分野でもすぐれた技術者を養成していくことが一層求められる、このように考えております。
  161. 中西績介

    中西(績)委員 終わりますけれども、特に高専の場合を考えますと、あそこに出ておる評価と課題というのを両方並べてみますと、評価は無理をして評価をしているような気がしてなりません。課題の方にまだまだ多くの問題が残っておるわけですから、こうした点を十分御認識いただいて、ぜひ努力していただければと思います。  終わります。
  162. 臼井日出男

    臼井委員長 次に、高木義明君。
  163. 高木義明

    高木委員 私は、準学士称号創設に関連をいたしまして、質問をいたします。  まず、今回の改正案でありますけれども、短大卒、高専卒に準学士という称号を与えるというふうになっておるわけであります。これはさきの委員会でも、四年制大学学士という称号に学位を与えるというふうな法案が出たわけでございますけれども、そのときも若干述べましたけれども、この準学士という称号が一体社会的にどういう意味を持っていくのか、私はこのような称号自体余り意味を持たないのではないかと思っておりますが、なぜこういう時期にこういうものが出てきて、そしてこの称号自体どういう意味を持っていくのか、この点につきましてお考えを明らかにしてほしいと思います。
  164. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 私どもの考えておりますところは、この準学士称号につきましては、主として国際的な関係で非常に価値があるものと考えております。現在でも高等専門学校卒業生が外国へ留学をするというときには、それが何らのデグリーも持たない、称号も持たないということで、当該留学先の大学から文部省に対して証明を求められるということがございます。担当の課長が、高等専門学校というのはこういう学校である、この卒業生はこういうふうな卒業資格で卒業した者であるという証明を出して、初めて留学が認められるということがございます。同じような例の逆といたしまして、東南アジア等から留学生が来ておりますが、それが帰りますときに、何らかの称号をもらえないか、こういうケースもございます。今回の準学士といいますのは、基本的には国際的な関係から必要性が極めて大きいといいますか、価値が極めて大きい、このように考えておる次第でございまして、社会的ということになりますと、我が国の国内制度で準学士という新しい称号が、それが特定の資格として大きな意味を持つということはなかろうと思っております。
  165. 高木義明

    高木委員 従来の学士称号も、私は先ほど申し上げましたように、余り社会的には現在意味を持たないというふうに思うわけでありますが、この準学士の「準」という言葉、この言葉の響きなんですけれども、英語で言えばアソシエートというふうになるかと思うんですが、私は準学士でありますということで好んで使う人が一体何人ぐらいおるのかというふうなことも考えるわけであります。今御答弁の中では、国際的に今後必要である、こういうことを言われておりましたが、一体短大の方あるいは高専卒の方がこういうものを望んでおるのか、また今後どういうふうに使われていくのかということに対しては甚だ疑問があるわけでございますが、現状そういう要望なりあるいはまた要請、あるいはまた、そういうものをいろいろ調査した統計資料などがあれば出していただきたいですし、その辺どういうふうにとらまえておるのか、お尋ねをしておきます。
  166. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 審議会で審議をいたしまして、こういう結論を出すに至りますまでには、高専関係者あるいは大学関係者等の関係団体からの意見も十分徴して審議をさしていただいたわけでありまして、関係団体は卒業者についてこういう称号というのを認めてもらうということを大変歓迎をいたしております。  なお、具体に、準学士という称号を付与するということについて、短期大学の在学者あるいは高等専門学校の在学者について調査をしたということはございません。
  167. 高木義明

    高木委員 準学士という呼び方が一番よかった、こういうことからの設定であると思いますが、どうも私もその響きがいまいち余りいい呼び名ではないんではないかなというふうな感じがいたしております。  また、次でありますが、これも前回の議論の中でも行ったわけでありますけれども、なぜ今回これが短大卒、高専卒に限定をされたかということであります。すなわち、いわゆる専修学校あるいは省庁の研修施設、こういったところで勉強されておる方々、こういった方々につきましても、私は何らかの意味で検討されるべきではないかなと思っております。先日の学士の学位の授与の資格の問題と全く同じで、この問題については、学位授与機構において研究していきたいというふうな御答弁があっておるわけでありますが、この点について、短大、高専卒に限定した理由について、今私がお話ししたものを含めて、なぜ限定されたのか、そういうものにも対象適用していくべきではなかったか。いかがお考えでしょうか。
  168. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 準学士につきましては、御提案さしていただいております法律案にございますように、これは「大学を卒業した者は、準学士と称することができる。」ということで、いわば現行の学士と同じように、特定の学校を卒業した者に与えられる称号、こういうことになっております。その特定の学校を卒業した者に与えられる称号ということになりますと、これは学校教育法でお決めいただくということになりますので、学校教育法の体系で横に並ぶもの以外には具体に考えることは論理的に困難であろうと思っております。したがって、御指摘の専修学校は、この学校教育法の中に決めております学校制度ではありますが、いわゆる一条学校としての短期大学高等専門学校といったように、設置基準の細かな規定があり、教員資格の定めがあり、さらには就業年限についての規定が定まっておるというものとは異なりまして、専修学校について、これを短期大学高等専門学校と制度上同じ扱いにすることは困難でありますので、専修学校は除外をいたしております。  それから、各省の訓練施設等は、これは学校教育法の対象外でありますので、学校教育法の学校の卒業者に与えられる資格というものを当該訓練施設等に与えるということは、学校教育法の対象外である、このように考えております。  なお、学士称号を学位に改めさしていただくということで、先般御可決をいただいたわけでございますが、学位にいたしますと、御案内のとおり、論文博士という制度もございますように、それは特定の学校の卒業と離れて、それを付与する道が開けるということでございますので、先般の法律案で御審議いただきましたとおり、学位授与機構というものを創設をして、それが介在をして、教育水準において同等のものに指定をし、その卒業者に学位を与える、こういう道を開いたわけであります。  なお、各省所管の訓練施設であったりあるいは専修学校、そこで受けた教育の成果というものを学校制度の中にどのように評価をしていくかということは、先ほども御指摘ありましたけれども、今後の検討課題である、このように考えております。
  169. 高木義明

    高木委員 制度の問題でなかなか難しいということはわかりますが、大切なことは、やはり教育の成果、水準、同じレベルで勉強しておられる方方でありますから、当然社会的な評価、あるいは先ほども述べましたように、国際化の中でのそういう位置づけということにつきまして、そういう制度の改善といいますか、そういうものは当然していいのではないかというふうに私は思うわけでございます。今後検討されるということでございますので、ぜひそういう立場に立って進めていただきたいものだ、これは要望しておきます。  次に、今回の法案とは直接関係はございませんけれども、日本育英会の奨学金制度についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、奨学金の貸与につきましては、日本育英会施行令で貸与対象者というのが決められております。これはもちろん学校教育法に定める学校、いわゆる高校高専、短大、大学大学院、そして昭和五十五年度に改正をされて拡大されまして専修学校、こういうところの学生生徒というのが対象であるわけであります。しかし、こういう一定のレベル、教育成果、そしてまた、学校の形態が学校教育法に定める学校とほとんど近い各省の研修施設、こういったところにも適用できないのかという、これは強い要望が実際にあるわけであります。例えば労働省関係におきましては職業訓練短期大学校、これは全国で十九校ございます。そして最近特にふえておりますが、情報処理技能者養成施設、これは全国で十五カ所となっております。これはコンピューターカレッジと言われておりまして、情報化、ソフト化時代の中では、今大きく需要もふえておるわけであります。そういう人たち、そういう中でとにかく知識を得ようと学力の向上を目指して頑張っておられるそういう方に対して、奨学金の貸与があってもいい時代になったのではないかと私は思うわけであります。  特に、こういったところで働いておる方々に聞いてみますと、次のような要望も多いのです。例えば、もちろん今私が申し上げました国の奨学金がもらえないのかということがまず一つでございます。二つ目には国民年金。これは今年度から学生に対しても適用になる、二十歳以上適用になるわけでありますが、学生の免除、この対象にしてもらえないだろうか。あるいはまた社会的に短大卒の扱いにならないか。具体的には、市役所等では高卒、そういう扱いになっておるわけでありますが、こういうものが短大卒並みに扱ってもらえないだろうか。そしてまた四つ目にはJR。これは交通費でありますが、JRの学割の適用が受けられないか。こういうふうな素朴な要望も、同じ机の上で勉強しておる学生生徒から現実にあるわけですね。  したがって、私がお尋ねしたいのは、こういった対象にも奨学金の貸与が可能にならないのか、この点についてお考えをお伺いをしておきたいと思います。
  170. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 いろいろな機会にいろいろなところで学習をされる、教育を受けるという方に対して、経済的な援助を行う必要性というのが高まっているということは、私どももいろいろな機会に承知をいたしております。ただ、日本育英会で行う奨学金制度、これは現在私ども先生指摘のように、高校以上の学校の学生を対象にしてやっておりますだけですが、まだまだ対象率にいたしましても貸与の金額にいたしましても必ずしも十分ではございません。また、特に大学院につきましては、貸与ではなくて給与にしたらどうかという御指摘も関係の方から伺っております。そういうふうに、現在私どもが日本育英会を通じて貸与をいたしておる奨学金制度を充実するということが、私どもに課せられた緊要の課題でありますので、これを各省所管の職業訓練施設等の学生まで対象にするように拡大をするということは、現在は到底考えられない課題である、このように考えております。
  171. 高木義明

    高木委員 確かにそういうことは理解できるわけでございまして、まだ後でお尋ねしますけれども、専修学校へも拡大をしたという、これは昭和五十五年になったわけでありますが、そういう意味では、基準、条件整備さえすれば可能になるのではないかというふうに私は思うわけであります。どういう条件が整備されればこれが可能になるのか、その点について改めてお伺いしておきたいと思います。
  172. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 各省所管のそういった訓練施設あるいは教育施設の学生に対してどのような処遇をするかというのは、それぞれの制度をつくられた関係各省でお考えいただくことであろう、このように考えております。
  173. 高木義明

    高木委員 そこで、きょう労働省も来ていただいておりますので、労働省にお尋ねをいたしますが、公共職業訓練施設の位置づけについてであります。先ほど私が申し上げました、いわゆるコンピューターカレッジ、ここに通う学生生徒に対する技能者育成資金、これは今職業能力開発促進法ということでこういうのがあるわけでありますが、このコンピューターカレッジというところに通う人たちにこの技能者育成資金の制度は適用できないのかどうか、お尋ねいたします。
  174. 寺田和雄

    ○寺田説明員 お答えいたします。  技能者育成資金制度といいますのは、日本育英会の学資金貸付制度を範として創設いたしました制度でありまして、現在雇用促進事業団に運営をさせております。この技能者育成資金制度は、経済的な理由によって公共職業訓練あるいは指導員訓練の受講が困難な者に対しまして、訓練機会の拡大を図るという観点から受講に必要な資金を貸し付けているものでございます。具体的にこの資金の貸し付けを受けることができる者は、職業能力開発促進法という法律に基づきまして、国あるいは都道府県が設置、運営をする公共職業訓練施設において養成訓練または能力再開発訓練を受ける者、もう一つ、国が設置、運営をする職業訓練大学校において指導員訓練を受講する者であって、その中で成績が優秀であって経済的な理由から訓練を受けることが非常に困難な者という場合に限っております。  それで、御質問の情報処理技能者養成施設、通称コンピューターカレッジという訓練施設は、第二種の情報処理技術者試験合格レベルを目指しまして、そのような技能者を養成するために国が設置をして、その運営を第三セクターである民間団体に委託をして訓練しているところでございます。このために、この施設で行われている教育訓練につきましては、職業能力開発促進法の上におきましては、民間が行う認定職業訓練、いわゆる公共職業訓練と同じ訓練内容を持っていますけれども、その運営主体が民間である、こういうような位置づけになっておりまして、技能者育成資金の対象となっている公共職業訓練や指導員の訓練ではない、こういう位置づけでございますので、現在のところその受講者については本制度の対象になっていない、こういう状況でございます。
  175. 高木義明

    高木委員 とにかく、私が今ここでこのような問題提起をするのは、生涯学習の時代だという観点からでございます。経済的に非常に厳しい方々にそういう教育、学習の場を与える、保障するという意味では大切な政治課題だと私は思っておるから、こういうことを言っておるわけでございまして、どうかひとつこの点につきましても、文部省、労働省の枠外の部分がございますけれども、とにかくそういう意味を含めてぜひ善処していただきたいと私は思っておりますが、この点についてどうでしょうか。
  176. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 私どもは制度として事柄を考えるという立場にございますので、学校教育法に定められた学校制度というものを対象にして日本育英会の奨学金を考えていく、こういうふうな立場にあることを御理解いただきたいと思います。
  177. 高木義明

    高木委員 奨学金の返還免除制度というのもございます。これにつきましてのいきさつはもう言うまでもありませんけれども、これは育英会法の施行令で、大学卒業後教育研究職に五年以上継続的に勤めた場合返還が免除される、こういう規定でございますが、この規定の適用が受けられないケースがあるわけですね。御承知のとおり専修学校の高等課程の教員でございます。普通科を担当する先生は、特にもう実質は高校先生と変わっておりませんが、専修学校に勤務するこれらの先生がなぜこの奨学金の返還免除制度が受けられないのか、お答えをいただきます。
  178. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 日本育英会の返還免除制度というのは、一定の行政目的に従って定められておるわけでありまして、現在は一条学校の教員になった場合と大学院で貸与を受けた場合には特定の研究所の研究職についた場合となっております。これは、そういった範囲の教員及び研究職について人材を確保する必要がある、こういう観点から定められているところであります。  これをどの範囲まで拡大をするかということにつきましては、当該拡大すべきという範囲に入る職の必要性ということもございますが、もう一つお考えをいただかなければいけないことは、かねてからの行財政改革の一環として、日本育英会の奨学金の返還免除の対象となる職、これについても厳しい見直しが求められております。具体に臨調答申等では免除制度自体の廃止ということまで指摘をされておるところであります。  こういうふうな客観情勢の中で、私どもでは現在の免除制度を守るということにむしろ力を注いでおるところでございまして、これを拡大をするということについては御容赦をいただきたい、このように考えております。
  179. 高木義明

    高木委員 その免除制度の問題につきましては、私たちは別の機会でまた御意見を申し上げますけれども、現制度がある以上、特に文部省は生涯学習というのを今推進をしておるさなかでございまして、そういう意味では専修学校の教職員のやる気あるいは確保、意識の向上という意味では大切な課題の一つであると私は思っております。そしてまた、今専修学校も大変社会的にも期待が高まっておりますし、またニーズもあるわけですね。これをやっていってもそう大して予算が膨れ上がるということではないと思います。だから、私はこの点強く要求をしておきたいと思いますが、どうですか。もう時間もございませんので、文部大臣の方からその辺の気持ちをお聞かせいただきたい。
  180. 井上裕

    井上国務大臣 お答えいたします。  もう先生おっしゃるとおりでありますが、御案内のように、五十六年の臨調、そしてまたこの見直しが求められているところであります。したがって、今免除枠の範囲を拡大しまして、専修学校教員を免除の対象とすることは、これは先生の御意見とは—─本当に申しわけないのですが、行政改革の一つとして臨調で強く言われておりますので、これはなかなか極めて難しい、このように私は考えております。
  181. 高木義明

    高木委員 時間がありませんので、これで終わりますけれども、行政改革も大切な課題でありますが、教育改革もまた大切な課題であります。したがって、ぜひ私が申し上げた趣旨を具現化させていただきますように努力をお願い申し上げまして、終わります。
  182. 臼井日出男

    臼井委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後四時四十六分休憩      ────◇─────     午後五後五分開議
  183. 臼井日出男

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山原健二郎君。
  184. 山原健二郎

    ○山原委員 分科会のために大変お待たせをしまして申しわけありません。また、高木議員には順序を狂わせていただいて恐縮に存じます。  学校教育法改正案につきまして質問をいたします。  これは二月八日に出された大学審議会の答申に基づいて、一般教育と専門教育区分廃止などを含む大学設置基準の大綱化を前提とした戦後大学教育の根幹にかかわる問題であり、極めて慎重な態度が求められておると思います。また高等専門学校についても、これまでの工業科あるいは商船のみに限られていたものを無制限に拡張し得る情勢をつくるわけでございまして、今日の学校制度の複線化の固定につながるものとして重要な問題を含んでいるわけでございます。  答申が出されてわずか一カ月にしてこういう法案が出るということにつきまして、私は極めて残念に思うわけでございます。法案に伴う免許法の一部改正の中で、科目の区分の整理について文部省説明資料及び文教委員会調査室の出した資料によりますと、「大学設置基準上の授業科目の区分廃止を受けて、免許法においても一般教育科目、保健体育科目、専門教育科目という科目の区分を整理する。」といたしておりますが、いつ設置基準区分廃止が行われたのか、最初に伺っておきたいのです。
  185. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 大学設置基準改正の問題についてお答えをさせていただきます。  今先生指摘の設置基準における授業科目の区分、さらには専任教員の数に係る一般教育、専門教育区分廃止につきましては、ただいま事務的に作業を進めておりまして、今後大学審議会に諮問の上、改正の運びになる、このように考えております。
  186. 山原健二郎

    ○山原委員 この説明ですと、大学設置基準改定が前提で、それに沿って法律を変えろという読み方ができるわけでございまして、ともかくそれはおきまして、大学審議会答申は、大学設置基準の開設授業料目及び卒業要件について、どのような答申を行っていますか、簡潔にお答えいただきたいのです。
  187. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 授業科目につきましては、設置基準において、大学が開設する授業料目を一般教育科目、保健体育科目、外国語科目、専門教育科目、このように区分をすることを廃止をするということにいたしておりますし、卒業要件につきましても、科目区分廃止を受けまして、現行では一般教育科目三十六単位、保健体育科目四単位、外国語科目八単位、残余の専門教育科目七十六単位を履習することを卒業の要件と定めておりますが、これを廃止をいたしまして、総単位数百二十四単位をもって卒業の要件とするように改めるべきである、このように提言をいただいているところでございます。
  188. 山原健二郎

    ○山原委員 学生が修得すべき最低の総単位数を規定することにとどめているわけですが、そうしますと、卒業総単位数百二十四単位を規定するだけで、一般教育を何単位行うか、あるいはまた専門教育を何単位にするかということは、学校独自の判断で行われることになっておると思います。そういうふうに理解してよろしいですか。
  189. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 大学が開設する個々の授業科目についてどういうふうな整理をするかということは、各大学にゆだねられていることになりますので、ただいま先生指摘のとおりの結果になろうかと思っております。
  190. 山原健二郎

    ○山原委員 前畑局長は「学園随筆」の対談の中で、「今の設置基準におけるように、とにかく一般教育を三十六単位ちゃんと開いて学生に教えなければ学生を卒業させてはいけません。しかも教員についても、一般教育先生と専門教育先生がいなければいけませんという教員の区分がある。そこがなくなるわけですから、本当に各大学がやりたいことがやれるようになるということが一番大きいんじゃないでしょうかね」と述べておりまして、しかもこのことが大改革だ、極めて大きな変革というふうにおっしゃっておられます。だとすれば、制度上は一般教育をやらなくてもよいということになり得るのではないかと思いますが、この点についてお伺いをいたします。
  191. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 授業科目について一般教育科目という区分を定めなくてもいい、こういうことになりますので、あるいはそういうふうな受けとめ方も行えるかとも思いますが、ただ答申では、先生も御理解いただいていると思いますけれども、一般教育の理念とするところは、これは大切にしなければいけない、よって大学設置基準においても、設置基準における教育課程の編成のくだりにおいて、一般教育を尊重するというような趣旨規定を設ける、このようなことで提言がなされておりますので、先ほどもお答え申し上げましたが、今後審議会にお諮りする設置基準の案につきましては、所用の規定を設けた上で対応をしたい、このように考えております。
  192. 山原健二郎

    ○山原委員 「学園随筆」はやはり少し踏み込んだ対談になっておるというふうに思うのですね。一般教育と専門教育区分廃止については、大学関係者の間で合意が得られておるだろうか。大学改革あるいは教育改革というのは、ともかく関係者の合意というものが必要なのでございまして、そういう点から見ますと、一般教育学会は、今度の措置は、大学教育関係者の大方の期待に反して極端過ぎるとして、次のように言っております。「我が国の「大学における一般教育」の制度は、新制大学の根本的性格を基礎づけるという重要な意味を担い、学生の履修を義務づける制度として、新制大学創設とともに発足した。以来四十年にわたり、大学設置基準規定による「一般教育」、「専門教育」を大学教育の基本理念とし、両者の関連を主な課題として、大学教育関係学協会を中心に関係者による大学教育論の研究協議が展開されて」きました。ともかく改善のために紆余曲折あったが、努力をしてきたわけです。最後に、「それにもかかわらず、行政的・政治的判断で法令上「一般教育」を抹消し、「一般教育」制度を廃止し、ひいては大学論の基本的な枠組みに重大な改変を強いることは、学問教養の成熟・発展の大道に逆行するものである。それは国の教養が問われる問題である。」と指摘をしておりますが、こういう意味では、まだ合意に達していないというふうに理解していいのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  193. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 大学審議会の審議におきましても、一般教育学会の関係の方の御出席もいただいておりますし、また審議経過の概要につきましても、一般教育学会の関係の方々からも御意見を伺いながら審議を進めているところでございます。  私どもは、この答申につきましては、審議概要の段階よりも、さらに一般教育の理念を重視をし、配慮をした内容になっておりますので、関係の方々の御理解を得られるもの、このように考えております。
  194. 山原健二郎

    ○山原委員 本当に静かに考えてみますと、やはり合意というものが必要だと思うのですが、こういう法律改正の仕方、しかも答申が出て一カ月でこういうふうにやられるのは、これは随分無理な提案だと思わざるを得ないわけですね。  戦後の一般教育はどのように設置されたかということで見てみますと、大学基準協会の昭和二十六年の「大学に於ける一般教育」では、次のように述べています。「我が国大学教育において、今日一般教育が必要であることについては議論の余地がないように思われる。」「我が国の新制大学における一般教育は、大学教育の本来的意義から必然的なものであり、今日の我が国社会的、政治的現実からも不可欠のものであって、これによって大学を本来の姿に復帰せしめ、」云々と書きまして、「また学生が善良なる社会人として有意義な生活を営み、かつ民主社会に有用な一員として寄与することを可能にするための教育を受け持つところのものである」こういうふうに述べておりまして、新制大学に必要不可欠な一般教育と言われてきたわけですね。それを形骸化したり廃止の道をたどるべきではないと思うのですが、この点どうお答えになりますか。
  195. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 一般教育の理念、目標が大切であるということにつきましては、この答申でも随所に述べておるところであります。そのような一般教育の理念、目標というものを求めての現在の一般教育の具体の実施について、多くの場合、それが形骸化しているのではないかという御批判は、これは各方面からちょうだいしているところであります。  そこで、その一般教育の理念、目標が大学教育全体の中で実質的、効果的に実現されるよう、各大学においてカリキュラム及び教育体制の改善が図られるように大学設置基準の大綱化を行うということに、この答申の趣旨はあるわけでございます。
  196. 山原健二郎

    ○山原委員 この一般教育学会あるいは大学関係者は大きな危惧を寄せておりますから、文部省は、例えば財政誘導などによりまして、一般教育問題で一般教育について縮小せよとかあるいは専門教育を重視して特色を出せとかいうような大学に対する介入はしないというふうに理解してよろしいですか。
  197. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 私どもの方で大学の具体のカリキュラムの編成に介入をする、こういう気持ちは持っておりません。
  198. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、高等専門学校の問題でございますが、今回、これまで工業商船に限られたものを、その他の学科にも拡大できる道を開くものでございます。大学審議会答申によりますと、「当面、例えば農業、商業、外国語、情報、芸術、体育などが考えられる」としておりますが、このように無原則に広げていくことになるのでしょうか。
  199. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 御提案申し上げております法律案におきましても、高等専門学校に関する規定のうち第七十条の二にございます「高等専門学校は、深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする。」この規定はそのまま尊重する、こういうことでお願いを申し上げているところであります。したがいまして、「職業に必要な能力を育成する」という限定の中で学科拡大を図っていく、このように考えております。
  200. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょうどこの問題は、高等専門学校の設置に当たって昭和三十六年、この国会で随分問題になりまして、私の党は衆議院にはたしか議員がいなかったと思いますが、共産党も、それから社会党、当時の民主社会党でも大問題になりまして、これは反対をしたわけですが、それは当時の荒木文相の答弁によりますと、「複線型になるはしりであることは間違いありません」と答え、「六・三・三・四が基本線、それに六・三・五とでも言うべきものが生まれた」と荒木文相は答えております。これで問題になってきたわけですね。これまで限定されて工業商船でございましたが、これを無原則に拡大するということは、これは明らかに複線型の固定につながるというふうに理解すべきではないかと思いますが、そうではありませんか。
  201. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 現在、高等専門学校の制度は、御案内のとおり創設以来二十数年をたって、一つの学校制度として定着しておるというふうに理解をいたしております。そこで、学校制度として定着しております以上は、その分野工業商船というふうに狭く考える必要はなかろうということで、「職業に必要な能力を育成する」というその目的の範囲内において、弾力的な展開が可能なように制度を改めていただきたい、このように考えておる次第であります。
  202. 山原健二郎

    ○山原委員 この高専の設置形態はどのようになるかということで、官庁速報三月十一日付のものを見ますと、新分野を設けるためには、例えば農業高専、商業高専、体育高専など、独立して新設するのが最もオーソドックスな手法だが、文部省では、既設の高専に別の分野学科をくっつけるやり方、これは高等教育局ですが、など弾力的な方法も検討中。法律では高等専門学校と書いてあるだけですから、必ずしも一つの学校を工業とか農業とか単一分野に限定する必要はない。その場合は、○○高専とか地域名を冠しただけの校名になりますかなというふうに報じられております。このように、一分野に限らずさまざまな分野を同居した高専も考えられておると思いますが、そうなりますと、また一面重要な内容が出てくるわけでございまして、高専問題については、袋小路の問題があれほど問題になり、袋小路解消のため、本委員会でも長岡、豊橋の技術科学大学創設を認めるなど努力をしてきたところです。このような設置形態にすると、また、ある者は大学編入学の道があり、ある者はない。それも、一つ高専で、工業関係は技術科学大学への道があり、他の分野は進学が困難という、またも新たな袋小路に追いやる事態とならざるを得ないと思うのでございまして、この点、私も一つの大きな危惧の念を持っております。  時間の関係で先へ進ませていただきますが、専攻科設置につきましても、国立高等専門学校専攻科設置案によりますと、専攻科を二年とし、学位授与機関から学士の学位が授与できる機関として認定される高専専攻科を設置するとしております。対象者は入学定員の一割程度としている。こうなると、五年高専の者が九割と、そして学位の授与の対象者一割と分けて、高専の中でも七年制と五年制という制度が持ち込まれることになります。こうなりますと、随分学校体系を変更する結果になりはしないかということを考えるわけでございますが、この点いかがでしょうか。
  203. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 専攻科を具体に設置いたしますときに、どのような入学定員を設定するか、あるいは修業年限をどの程度に定めるかというのは、今後の検討課題ということにいたしております。  今先生おっしゃいましたようなことは、私どもは具体に承知をいたしておりませんが、入学定員の設定については、具体の希望状況等も十分配慮しながら、また専攻科修了生の進路ということも勘案しながら対処する必要があろう、このように考えております。
  204. 山原健二郎

    ○山原委員 教育改革あるいは多様化の問題を含めまして、これは随分長い間論議になってきたところでございます。そして今、六年制中等学校、単位制高校などの多様化の道が進められてまいりまして、進路指導もますます困難になり、受験戦争も次第に激化しておるのが現実ではないかと思うのでございます。高等学校教育をゆがめる高校多様化については、慎重に審議しなければならない問題であると私は考えております。  今まで政府の出してきた法案が通りまして、次々と多様化政策がとられてきましたが、現実はどうかというと、例えば高等学校の中途退学は随分ふえて、十二万人という数字が出ておるわけでございます。学校教育の荒廃というものが制度が変わるたびに悪くなっていくということについては、文教行政を担当する文部省としても反省をすべきだと私は思うのです。そういう反省の上に立って、先ほども中西委員から話のありました、今日の教育条件の整備の問題、そういう肝心のことをやらないで、制度を変えるたびに教育が荒廃していくということになりますと、よほど冷静に今までの文教政策の歴史を検討しなければならないというふうに思うわけでございまして、そういう意味で、今度の制度改正も、例えば答申が出ましてわずか一カ月で新たな法律が出てくる、これは余りにも拙速に過ぎるわけでございます。この点が私はどうしても納得がいかないわけですが、これにどうお答えになりますか。
  205. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 高等専門学校分野拡大という問題については、これは臨時教育審議会以来の長い課題でございました。また、高等専門学校卒業者に対しまして、さらに高度の教育の機会を与えるということについても、これもかねてからの検討課題として、私ども検討を進めておったわけであります。答申をちょうだいいたしますれば、それを速やかに実施に移すというのが私どもに課せられた責務でございますので、私どもとしては、可及的速やかにそれを実施に移すということで法律案を提出させていただいたところでございます。
  206. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、大臣に一言お伺いしたいのです。  私は、今度の法案の中の準学士称号創設あるいは高専専攻科の設置など、問題は持っておりますけれども、あえて反対するつもりはございません。しかし、今申し上げましたように、一般教育と専門教育区分廃止を前提とした法律案、また大学教育の根幹である一般教育の軽視あるいは廃止の方向を認めることはできないという考えを持っております。また、高等専門学校分野拡大は、五年制高専分野を無原則に拡大することになりまして、高校教育の複線化をさらに固定するおそれがあり、それはまた、教育の荒廃につながりかねないというふうに考えますと、この法律に対して賛成することはできない見解を持っておるわけでございますが、この法律を提出されました文部大臣の見解を、最後にお伺いをいたしたいと思います。
  207. 井上裕

    井上国務大臣 今回の答申の中で指摘されたとおり、一般教育の理念、また目標は、大学教育が専門的な知識の修得だけにとどまることのないように、学生に学問を通じ広い知識を身につけさせるとともに、物を見る目や自主的、総合的に考える力を養うことであり、今後ともこのような理念、目標の実現は重要であろう、このように考えます。  このことから、同答申において、科目区分廃止いたしますが、一般教育の重要性にかんがみまして、その趣旨をカリキュラムに関する基準の中に盛り込むことも提言してあります。文部省といたしましては、大学設置基準改正において、答申を踏まえ、所要の措置を講ずる考えであります。  一方、各大学におきましても、答申の趣旨を踏まえ、それぞれの理念に基づき、多様で特色あるカリキュラムの編成のために真剣な努力を行うことを、私ども期待いたしておるわけでございます。  また、高専拡充といいますか、それは私ども全部を今やろうということではありませんし、また、この答申に出ておりますが、これは今の工業また商船のみならず、そういうものにも目を向けたらどうだということでございますので、これも配慮をいたしたい、このように考えております。
  208. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、改革は常に必要なものだと思いますけれども、それをやるにはやはり歴史的な経過を精査して、それから少なくとも関係者の合意を得るということで進めることが今後とも必要であるということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  209. 臼井日出男

    臼井委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  210. 臼井日出男

    臼井委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出はありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出学校教育法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  211. 臼井日出男

    臼井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  212. 臼井日出男

    臼井委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、木村義雄君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党の四党共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。沢藤礼次郎君。
  213. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 私は、提出者を代表いたしまして、ただいまの法律案に対する附帯決議案について御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     学校教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び関係者は、次の事項について特段に配慮すべきである。  一 高等専門学校について、対象分野拡大に当たっては、本制度が後期中等教育を含む高等教育機関であることなどその特性を考慮し、慎重に対処すること。また、卒業者大学への編入学の拡大及び高等学校卒業者の編入学受け入れの促進に努めること。  二 国立の高等専門学校については、施設、設備等の現状にかんがみ、その計画的な改善整備に努めること。    また、今回の教育職員免許法改正が教員養成の質的低下を招くことのないよう留意すること。  三 高等教育に対する新たな時代の要請に基づき、短期大学教育のより一層の振興を図るため、財政措置を含め必要な諸条件の改善充実に努めること。    なお、今後の高等教育の計画的整備の推進に当たっては、私立の短期大学について、その地域性や経営基盤等を勘案し、柔軟かつ弾力的な運用に努めること。 以上でございます。  その趣旨につきましては、本案の質疑応答を通じて明らかであると存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。  以上です。
  214. 臼井日出男

    臼井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  215. 臼井日出男

    臼井委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。井上文部大臣
  216. 井上裕

    井上国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。     ─────────────
  217. 臼井日出男

    臼井委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  218. 臼井日出男

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  219. 臼井日出男

    臼井委員長 次に、内閣提出著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。井上文部大臣。     ─────────────  著作権法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  220. 井上裕

    井上国務大臣 このたび政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概略を御説明申し上げます。  我が国の著作権制度については、これまでも逐次改正をお願いし、既に、関係条約の要求する水準を確保しているところでありますが、今後とも、国際的な動向や著作物等の利用手段の発達などを踏まえ、適時適切な改善充実を図り、我が国の国際的地位にふさわしい内容とする必要があります。  このたびの改正は、最近の国際的な動向を踏まえつつ、歌手や俳優等の実演家、レコード原盤の製作者等の役割の重要性にかんがみ、また、外国の実演やレコードに関し、我が国の国際的地位にふさわしい保護強化を図る観点から、著作隣接権制度のさらなる充実のため、所要の措置を講ずるものであり、その概要は次のとおりであります。  第一は、レコードの貸与に関する権利を、外国の実演家及びレコード製作者にも認めることであります。  レコードの貸与に関する権利については、昭和五十九年の法改正で制度化されたところでありますが、現在、作詞・作曲家などの著作権者には、国内外を問わずこの権利を認めているのに対し、実演家及びレコード製作者については、国内の権利者についてのみ認めることになっております。このたび、著作隣接権の国際的保護の充実を図る見地から、関係条約により保護を受ける外国の実演家及びレコード製作者に対しても、同様の権利を認めることとするものであります。  第二は、著作隣接権の保護期間の延長であります。  著作隣接権の保護期間については、昭和六十三年の法改正により、従前の二十年から三十年へ延長されたところでありますが、実演家等の役割の重要性や最近の国際的動向、我が国の国際的地位の向上等を考慮して、これをさらに五十年に延長するものであります。  なお、これに伴い、旧法下において保護されていた演奏歌唱及び録音物の保護期間の残存期間の上限についても、現行法施行後五十年までに延長することとしております。  第三は、レコード保護条約加入前の外国レコードの保護強化ということであります。  外国レコードについては、我が国がレコード保護条約に加入した一九七八年以後に作成されたものは、現行法による正規の保護がなされておりますが、それ以前のものについては、外国原盤をもとに国内で製造されたレコードからの無断複製及び頒布を禁止することによって、間接的に保護しております。しかし、近年、この禁止の対象外である輸入盤レコードからの無断複製等が増加し、現行制度で予定している保護の実効性が憂慮される状況となっております。このため、国際社会における我が国役割も考慮し、輸入盤レコードについても禁止対象とするとともに、実効性を確保するため、新たにこれらの複製物を頒布の目的で所持する行為についても、禁止することとしております。  なお、これらの行為を禁止する期間については、著作隣接権の保護期間の延長との均衡を考慮して、原盤作成後五十年までに延長することとしております。  最後に、施行期日等についてであります。  この法律は、平成四年一月一日から施行することとして、所要の経過措置を講ずることとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容の概略であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  221. 臼井日出男

    臼井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  222. 臼井日出男

    臼井委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま趣旨説明を聴取いたしました本案審査のため、来る十五日、参考人として岡山大学教授、著作権審議委員阿部浩二君及び社団法人日本レコード協会副会長佐藤修君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 臼井日出男

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る十五日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十一分散会