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1991-03-06 第120回国会 衆議院 文教委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月六日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 臼井日出男君    理事 木村 義雄君 理事 北川 正恭君    理事 真鍋 光広君 理事 松田 岩夫君    理事 渡瀬 憲明君 理事 沢藤礼次郎君    理事 吉田 正雄君 理事 鍛冶  清君       逢沢 一郎君    岩屋  毅君       狩野  勝君    梶山 静六君       小坂 憲次君    塩谷  立君       原田 義昭君    船田  元君       増田 敏男君    町村 信孝君      村田 吉隆君    宇都宮真由美君       輿石  東君    佐藤 泰介君       佐藤 徳雄君    中西 績介君       馬場  昇君    平田 米男君       矢追 秀彦君    山原健二郎君       高木 義明君    米沢  隆君  出席国務大臣         文 部 大 臣 井上  裕君  出席政府委員         文部大臣官房長 坂元 弘直君         文部省高等教育         局長      前畑 安宏君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君  委員外出席者         農林水産省農蚕         園芸局普及教育         課農業後継者対         策室長     和田 宗利君         文教委員会調査         室長      堀口 一郎君     ───────────── 委員異動 三月六日  辞任         補欠選任   梶山 静六君     町村 信孝君   三塚  博君     塩谷  立君   市川 雄一君     平田 米男君   米沢  隆君     高木 義明君 同日  辞任         補欠選任   塩谷  立君     三塚  博君   町村 信孝君     梶山 静六君   平田 米男君     市川 雄一君   高木 義明君     米沢  隆君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国立学校設置法及び学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出第二七号)      ────◇─────
  2. 臼井日出男

    臼井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国立学校設置法及び学校教育法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田正雄君。
  3. 吉田正雄

    吉田(正)委員 ただいま議題となりました法律案改正につきまして、おおよそ三点にわたって御質問を申し上げます。  一つは、奈良先端科学技術大学院大学について、二つ目は、大学院整備充実について、三つ目は、学位授与機構についてであります。  ただ、時間の関係もございますので、また同僚の沢藤委員もこの間関連質問を行いますので、大学院整備充実については、一と三の質疑と取り合わせて行うということもあり得ますので、御了承願いたいと思います。  御承知のように、従来日本人は独創性に欠けるとか基礎研究が不得意であると言われてまいりました。確かにその批判も肯定できる実情はあると思いますが、必ずしも本質を言い当てたとは言いがたいと思います。我が国は官民を問わず終身雇用制度基本に推移をしてまいりました。大学研究機関も例外でなく、一生そこで学問、研究を続けることになり、組織閉鎖性硬直性を生み、結果として若い研究者の才能を十分に生かし伸ばすことができない結果を生んできたことは御承知のとおりであります。換言すれば、独創的な研究研究組織活性化と清新さの中で保障されるものであります。そのためには、科学者技術者大学間相互、さらに産官学間での自由に交流ができるシステムをつくり上げることが必要ではないかというふうに思っております。一言で言うならば、創造的な研究を行うことのできる研究組織環境研究費が不十分だったということが言えるのではないかと思います。  八八年十二月十九日に大学審議会答申をいたしました「大学院制度弾力化について」は、「大学院充実改革基盤となる大学院制度弾力化及びこれと関連する学位制度見直しを当面の検討課題とし、」と大学院制度弾力化方策について結論を出しております。改革内容には具体性に欠ける面もありますが、おおむね妥当な方策ではないかと思っております。  そこで、奈良先端科学技術大学院大学は、今申し述べました大学審議会答申をベースに幾つかの特色ある大学として、例えば教員組織について言うならば、教員流動性多様性確保するため、国公私立大学民間の第一線の研究者など広く各界からすぐれた人材、また若手研究者を積極的に確保し、一定年限を設けて異動するなど、既設大学教員との人事交流運用上のルール確立一つ特色として構想されておるようです。  そこで、お尋ねいたしますけれども講座ごと教職員定数がどのようになっておりますか。また民間研究者任用上の身分待遇はどのようになっておるのでしょうか。また異動に際して、もと民間に戻り得る何らかの保証措置があるのかどうか。あるいは他の研究機関、これは大学を含めて交流が容易になるのではないかというふうに思いますが、その点はどうでしょうか。さらに「一定年限を設けて異動」とありますけれども一定年限というのはどの程度の年数を想定をされておるのでしょうか。例えば東大先端科学技術研究センター等では大体七、八年というふうな年限を設けておるようでありますけれども、この奈良の場合はいかがでしょうか。また教員任用については、具体的に選考中だと思いますけれども、とりわけ民間からの任用等について現在どのような状況になっておりますでしょうか。  以上についてお伺いをいたします。
  4. 前畑安宏

    前畑政府委員 お答えいたします。  まず、第一点の奈良先端科学技術大学院大学教員組織の数でございます。本大学院は、主として基礎を担当する講座につきましては、基幹講座といたしまして十七講座を一研究科について用意をすることにいたしております。この基幹講座につきましては、教授助教授、そして助手二ということで一講座専任教官が四人ということでございますので、十七講座ということになりますと、基幹講座教員が六十八人、一研究科六十八人ということになります。さらに可動的な客員講座というものを三講座用意することにいたしております。これは他の大学あるいは民間等から客員としておいでいただく定数二つ用意をいたしておりますが、そのほかに専任助手定員を一用意いたしております。客員講座三つで、客員教官が六人、専任教官が三人、両方合わせますと、一研究科専任教官が七十一人ということでございますので、二研究科を予定いたしておりますので百四十二人というのが専任教官客員教官が十二人ということになります。なお、これ以外に附属の教育研究施設につきましても、所要の教員教官定員として二十七人、客員教官四人ということを用意をいたしております。  民間あるいは他大学からおいでいただくという場合には、この基幹講座専任おいでいただくという場合と客員講座客員教授助教授としておいでいただく場合と両方が考えられるわけでございますが、専任としておいでになる場合には、もとより常勤の国家公務員文部教官として採用されるということになりますし、客員でございますれば、非常勤教員という形になります。  なお、御指摘一定年限を設けて異動するなどという場合に、その任用あり方関連をするわけでございますが、他大学から基幹講座おいでいただく場合あるいは民間から客員としておいでいただく場合等々ございますが、御指摘ございました東大先端科学技術研究センターにつきましては、工学部との交流という形で行われておりまして、大体八年程度ということが慣行的に行われておりますが、この奈良先端科学技術大学院大学につきましては、現在具体取り扱いにつきましては、創設準備委員会や、さらに開学後の大学おい検討が行われることになりますけれども具体取り扱いにつきましては、現在、準備委員会等で話題として出ておりますのが、東大先端科学技術研究センターに倣って、大体八年程度で考えたらどうだろうかというようなことが話としては出ております。  なお、具体教官選考につきましても、今後、人事交流上の、運用上のルールであるとかあるいは具体的な取り扱い方針というものは、今後創設準備委員会あるいは開学後の大学おい検討されることになる、このように考えております。
  5. 吉田正雄

    吉田(正)委員 もう一点。先ほど身分は、専任の場合とか客員の場合はお話がございましたけれども民間からの任用という場合、待遇上の格差が障害になるということが考えられますけれども、それらについては特別な配慮が払われるのかどうなのか。そうした場合に、従来の教員との間にまた逆に格差が生ずるというような点も出てくるのではないかと思いますが、この辺はどのように運営をされていくのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  6. 前畑安宏

    前畑政府委員 今先生指摘のところは大変大事な問題でございますけれども、私どもの現在の国の制度では、お迎えいたす方が民間おいでになったりあるいは国立大学おいでになったりあるいは私立大学と、そのおいでになったもと出身地によって、その客員教員としての待遇を変えるというわけにはまいりませんので、一律に非常勤教員ということになるわけでありまして、具体的にはいろいろな問題があろうかと思っております。ただ、こちらに教員として民間研究所からおいでいただくということは、当該研究所についてももとよりメリットがあるわけでございますので、具体状況からいたしますと、例えば当該研究所からは出向扱いにしていただくというような実際上の配慮はあるいは行われるのではなかろうか、このように考えております。
  7. 吉田正雄

    吉田(正)委員 次に、特色一つとして、留学生受け入れ外国人研究者との共同研究構想されておりますけれども、その概要についてお尋ねをいたします。  御承知のように、現在、我が国への留学生は年々急増いたしておりまして、文部省調査によりますと、昨年五月一日現在の総数が四万一千三百四十七人となっております。特に、大学大学院では、理科系が圧倒的に多いということを聞いておりまして、授業や研究支障を来す大学が出ておるということも聞いております。  これは、昨年八月二十五日の日本経済新聞で報道されておるのですけれども、「東大の場合、九〇年五月現在で留学生千五百五十三人のうち、研究所研究生などを含めると大学院生は千四百三十八人と九〇%を超え、しかも、このうち理科系は千人弱おり、七〇%近くに達する。東工大では、九〇年四月現在、全留学生四百七十三人のうち、学部は四十七人で残り九〇%が大学院である。同大の場合もちろん、すべてが理科系である。国公私大を通じ東大に次いで二番目に多い留学生をかかえる早稲田大学では、約半数の四百八十八人が大学院生で、うち百五十四人が理科系。」であるという数字が挙がっておるわけです。「留学生を多くかかえる大学院教授たちの共通の悩みはまず研究室が狭くなったという点。「留学生研究室にとってある意味では戦力になるから、数はさして問題ではない。むしろ、立っていても全員が部屋に入れないという事態の方が深刻だ」という声」が先生方の間から出ているということでございます。また、「わが国の大学院、特に理科系では学位授与に甘過ぎるという批判も出ている。中には学位取得にからむ面接で日本語も英語もあやしいのに、「せっかく論文を書いたのだから」と教授が書き直してパスさせるといったケースも少なくない。」これは実態はどうかわかりませんが、そういうことが書かれておるわけです。しかし、いろいろな状況があるにしろ、こういう留学生学位問題をめぐって、欧米諸国関係者の間に、日本の学位のレベルは低いという批判を招く結果になるのじゃないかということも指摘をされておるわけです。  いずれにいたしましても、国立大学特別会計制度では、学科、講座学生定員によって細かく予算教官数などが決まっております。しかし、留学生については、特に定員という考え方がない。留学生が二十人を超えれば教官一人、五十人を超えればさらに一人といった目安はあるということなんですが、この留学生の枠というのは、特に厳しく設けていないということも言われているわけでして、学生がふえることによる教官オーバー労働といいますか、目が届かないということも指摘をされておるわけです。  そこで、また奈良大学に戻りますけれども、今申し上げましたように、各大学大学院を見ますと、留学生受け入れることによって非常に多くの問題が出てきておるわけであります。奈良の場合、受け入れ留学生の対象をどういうところに絞るのか、あるいは希望者があれば他の大学のように無制限に入れるのか、枠がどうなっておるのかということが一点です。もう一点は、宿舎や経済的な支援体制というものを、これらの留学生に対してはどのように考えておいでになるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  8. 前畑安宏

    前畑政府委員 御指摘のように、大学院留学生が大変多く入ってきておる状況、それから、これまた今先生指摘がありましたが、国立大学の場合には、留学生学生定員の中に入れないで入学をさせていいという扱いになっておりますことからかなり難しい状況が出ておるわけでございます。奈良先端科学技術大学院大学の場合も、国際化に対応して人材養成に積極的に協力していきたいということで、留学生受け入れを積極的にやるということにいたしておりますが、現在の国立大学制度に倣って、特にこれを入学定員の中にきちっと入れるという扱いは現在のところまだ考えられておりません。しかしながら、ただいま先生指摘のような事情がございますので、今後におきましては、留学生入学定員との関係をどのように整理していくかということが一つの大きな検討課題になっておると承知いたしておりまして、私どもとしても、関係大学等とも協力をしながら検討させていただきたい、このように考えております。したがいまして、奈良の場合にも従来と同じような扱いで当面は考えさせていただきます。  なお、留学生の処遇につきましては、この奈良大学院大学は、学生宿舎についても計画をいたしておりますが、現時点計画では、留学生用として大体三十数戸程度のものを用意をいたしたいと考えております。  また、経済的支援につきましては、これは設立準備中でございますが、この大学院大学を支援するための財団というものを関係の方々の御尽力によってつくっていただこうと考えておりまして、その中で特に博士課程にターゲットを絞っておりますが、研究奨励金といったものを出すということも計画していただいておりますので、留学生につきましても、その中で何分かの対応ができるのではなかろうか、このように考えております。
  9. 吉田正雄

    吉田(正)委員 これは要望なのですけれども学位授与機構についてもそうなのですが、検討課題ということがちょいちょい出てくるのですね。既に法律が提案をされ、もう近く学生受け入れる、大学の建設にかかる、これは後ほどまた詳しくお聞きしますが、学位授与機構の場合でも、既にこの七月からその機構が発足するというのに、なかなか検討課題が多いのではないかという感じがいたすわけです。特に、留学生の場合には国際的な問題も含むわけでありますから、今日までの各大学大学院における留学生受け入れ実情等、把握をされていると思いますので、そういう問題を解決するということを十分配慮をされて、早急に具体的な内容というものを確立をしていただきたい、これは要望でございます。  次に、課程修了の要件と学位についてお尋ねをいたします。  これは後ほど学位授与機構について、法文との関係では詳しくそこでお聞きをいたしますので、ここでは奈良の場合に限ってどういうことを考えておいでになるのか、お聞かせ願いたいと思うのです。  もちろん国立学校設置法に定める大学でありますから、学校教育法六十八条の二を満たせば学位を与えることになるわけでありますけれども在学期間短縮等関係説明資料等には書かれておるわけですし、さらに学位については、今後検討するということも説明資料には述べてあるわけです。  そこで、この「修士論文審査及び試験合格」しということなのですが、そこでただし書きとして、論文でなく、特定課題研究成果審査にかえることができるということが説明資料の中に書かれております。「奈良先端科学技術大学院大学構想概要について」という中に書かれておるわけですね。ここにはさらに今後検討するということになっておるのですけれども、この場合、修士学位を与えるのですか与えないのですか。単に課程を修了したというだけのことなのか。  それから、後期についても、今度はこれは論文試験両方合格ということになっておるわけです。ここでも期間については、後期前期を含めて最短三年でも研究成果が上がった場合には課程を修了したものとしてみなすことができるということが書かれておるわけなのですね。  この前期後期の場合、修士学位、それから博士学位というものは、新しく改正をされる学校教育法に基づいて、きちんと学位が授与されるのかどうなのか、その辺どのようにお考えになっているのか、お聞かせ願います。
  10. 前畑安宏

    前畑政府委員 この創設準備委員会で取りまとめております「構想概要」におきまして、「検討する」といったようなことを書いておりますのは、実はこの時点では、学位あり方の改善につきまして大学審議会における検討が行われておったわけでございまして、一つ検討課題としては、こういった大学院をつくりますときには、その大学院で何という学位を出すか。例えば工学博士という学位を出すのか、あるいは理学博士という学位を出すのか、修士についても同様でございますが、そういうことをきちっと決めるというのが従来の大学院設置の場合の考え方であるわけでございますが、この学位制度見直しが行われておりますので、この奈良先端科学技術大学院大学でどういう学位を出すかというのをちょっとその様子を見ながら考えようというのがあるわけでございます。  御案内かと思いますが、現在の大学審議会答申におきましては、学位というのは、博士修士、これに基本的にとどめて、その専攻分野の表記というのは、各大学がそれぞれの大学院の判断で適切と考える専攻分野の名称を表示するという方向が示されております。したがいまして、この大学院の今後の検討の中で、例えば博士学術)とするか、あるいは分野によりましては、博士工学)とするか、あるいは博士理学)とするか、そういうふうなことが検討をされる、このようにお考えいただきたいと思います。もとよりこの大学院でも、前期課程修了者につきましては修士を、後期課程修了者につきましては博士を出す、こういうことでございます。  なお、論文にかえてのいわゆる課題研究ということでございますが、これは現在の学位規則におきましても、一般的に修士につきましては、「修士課程の目的に応じ適当と認められるときは、特定課題についての研究成果審査をもって修士論文審査に代えることができる。」このように定めておりまして、これをこの奈良大学院大学おいては活用をしていこうということであります。例えば社会人の再教育ということを考えますときには、民間企業からの学生で、実地専門的研究開発に従事をするといったような、そういう実地の経験をもとに、それを論文の形に必ずしも取りまとめなくても、特定課題についての研究成果、例えば事例研究といったようなものをもって修士論文審査にかえる、このようなことを活用していこうということでございます。
  11. 吉田正雄

    吉田(正)委員 これは先ほども申し上げましたように、学位授与機構のところでさらに詳しくお聞きしたいと思うのですけれども、既にこの法律が提案され、大学設置をされていくという時点で、どういう博士を与えるのか、今後大学審議会検討にまつということでは、いわゆる泥縄式的な感を否めないわけです。これはまた後ほど触れます。  そこで、次にお尋ねをいたしますが、この施設設備をどのように充実させていかれるのか、お伺いしたいと思うのです。  大学審議会答申、「大学院整備充実について」の中で、財政措置充実については、次のように述べているわけですね。   大学院に対する財政措置は、国際的に見ても、あるいは民間企業研究所等における研究投資に比べても、十分なものとは言えない。特に、教育研究経費施設設備等については、大学院の高度な教育研究を支える上で、また、教育研究における国際交流を進める上でも不十分なものとなってきており、大学における研究後継者確保、優秀な大学院学生確保にも支障を生じつつある。   このような状況にかんがみ、広く国公私立大学院全体を通じ、大学院教育配慮した教育研究経費施設設備費等充実を図るなど我が国大学院基盤的整備に努める必要がある。 というふうに述べてあるのですけれども、これはこの大学審議会指摘するまでもなく、もう前々から耳にたこができるほど言われてきたことであります。今さらという感じがいたすわけです。しかし、考えてみますと、実は、これは文教行政の枠組みの中ではどうにもならない、政治の基本姿勢国家財政予算編成基本的やり方に関する非常に根深い、解決困難な問題だということが言えると思うのです。それだけに、とりわけ教育学術、文化に関係する人たちの積極的な努力が要請をされるわけです。  一例を申し上げますと、例えば、今各学校では環境問題と絡んでアスベストの問題が出ておるのですけれども、これは東大の場合ですけれども、八八年度から東大の吹きつけ石綿処理が開始され、これまでに一割弱が除去された。しかし、いまだに膨大な吹きつけ石綿岩綿が残されています。昨年七月、東大総長補佐は、「吹きつけ石綿撤去基本的には部局予算で行なう、小部局本部予算で撤去する」というふうに関係者教職員に述べております。石綿吹きつけが最も多い工学部では、吹きつけ面積が約二万五千平米と言われております。工学部撤去工事実績は、一昨年度二百六十三平米、昨年度が当初予定四百七十九平米、火事による追加工事を入れて五百三十一平米。毎年約五百平米しか撤去してないわけでありまして、全体を撤去するのには五十年もかかるという状況です。  これに対して文部省はどういうふうに答えているかといいますと、「小中高校の吹きつけ石綿撤去はほぼ終わりつつあるが、国立大学は非常に遅れている。これは施設整備費予算要求にあたって、大学当局石綿撤去より建物の新改築などを優先的に要求するからだ」「このままでいいとは思わない」というふうに関係者には文部省は答えておるわけです。しかし、石綿撤去というのは、職員、学生職場環境学習環境の問題でありますし、もっと抜本的な対策を講ずる必要があると思うのですが、これは一例なんですね。そういうことで、とにかく今大学大学院施設設備費というものが非常に少ないということは、これは従来からも指摘をされてきております。  また、これは東大工学部なんですが、先ほど教職員定数をちょっとお尋ねいたしましたけれども東大工学部の場合、講座定員教授一人、助教授あるいは講師一人、助手一ないし二人、技官一というのが大体の実態になっているわけなんですね。そし学生が八人、院生が修士学年四人ずつで二学年で八人。それから博士が二人という大体一講座の構成になっておるということで、財政的にはどうなっておるかといいますと、光熱水費等そういうものを全部差し引いた一講座に割り当てられる研究費というのは約三百万円で、十年間ほぼ変わっていないという実態だそうであります。したがって、卒論テーマは二人一組にして四十万円程度しかかけられないというのが今の東大工学部講座実態だということを私は直接先生からお聞きをしたのです。こんな貧弱な予算では、本当に高度のすぐれた研究はできないし、そういう体制をつくることはほとんど不可能だろうということを言っておるのですね。  それだけに、昨年できました北陸の先端化学技術大学院大学とか、今回の奈良の場合には、まさに先進的な、あるいは従来の大学院では果たせなかった大きな役割というものが比較的制約なしに建設をしていくことができるのではないか。そういう意味では非常に大きな期待をいたしておりますが、従来の教育予算考え方では、結果的にまた寂しいものになっていくのじゃないかなという心配もいたしております。  そこで、お尋ねをいたしますけれども、土地がどの規模でどの程度の経費がかかるのか。それから建物、施設等にどれだけの予算がかかるのか。それから、特に理工系で最も重要なのは、単なる敷地だとか建物の大きさではなくて設備ですね。とりわけ先端科学技術研究に必要な機器、これにいかに金をかけるかということにかかってくるのではないかというふうに思うわけでありまして、主要な設備、機器の予算というものが年次計画で進行していくと思いますけれども、大体どの程度のことを考えておいでになるのか。それで完成年度は大体どの程度と予想されておるのかということ。それから施設設備の設計等は、担当教授が決まってから本来設計をしたり機器の選定をするというのが一番望ましいわけです。しかし、決定してからでは開学との関係でおくれるというふうなことで困るという場合も出てくるのではないかと思いますので、奈良の場合、実際にはどういうやり方で施設設備というものをこれから整備されていくのか。その点をお聞かせ願いたいと思います。  これは、私は非常に重要なことだと思いますのは、例えば、この前千葉大学の医学部の機器購入をめぐって問題が出ました。したがって、一教授が単独にそういう施設設備について決めていくというのではなくて、そこの研究室なり教授陣の合意に基づいて合理的な計画、そして機器購入というものを行うべきではないか。そうすれば、そこには汚職等が発生しないだろうというふうに思っておりまして、その点も含めて、現状ではどのようにお考えになっておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  12. 前畑安宏

    前畑政府委員 奈良先端科学技術大学院大学の施設あるいは設備の全体計画につきまして現在私どもが考えておりますのは、施設整備費に約百七十億、設備費に約百三十六億、このように考えております。設備費が通常と違いましてかなり大きな額になっておりますのは、これは御案内かと思いますが、この大学ではバイオサイエンスについての研究科というものを考えておりますので、細胞構造学等々非常に複雑な設備を要するもの等がございますので、かなり高額になっております。  また、本大学の用地につきましては、奈良県生駒市の関西文化学術研究都市内におきまして約十一ヘクタールというものを予定いたしております。  なお、御指摘のとおり、こういった施設なり設備というものは、実際にそれを使う教官が使い勝手のいいように、あるいは自分が最も必要とする設備を入れるということが必要なことでありますが、御指摘にもございましたように、とにかく建物は早く建てなければならないということもございますので、早速にもこれは着手をしていくわけでございますが、設備につきましては、これは平成四年度以降整備するということにいたしておりまして、本年の十月に設置をさせていただきましたら、その後関係の方々ともよく相談をしながら検討していく、このようになると思っております。  ただ、ただいま御指摘ございました千葉大学の例というものは、これは私どもとしても十分重く考えまして、遺漏のないよう対処させていただきたい、このように考えております。
  13. 吉田正雄

    吉田(正)委員 それでは次に、大学院整備充実お尋ねをしたいのですが、ちょっと時間の関係もありますので、学位授与機構の新設についてお尋ねをいたします。  最初に、学位授与機関創設の基本的な問題点といいましょうか、その必要性はどうなんだろうかということについて若干お尋ねをいたしますが、平成二年七月三十日に大学審議会大学教育部会及び大学院部会における学位授与機関に関する審議の概要が総会に報告されましたけれども、これに対して各大学のいろいろな団体、機関等からいろいろな意見なり批判というものが発表されております。それらも含めまして、幾つかの点にわたってお尋ねをいたします。  まず、第一点なんですけれども、「学位は、学術の中心として自律的に高度の教育研究を行う大学が授与する」ことが原則として国際的にも承認をされてきております。したがって、学位は単に知識の集積の度合いに対応して与えられるという性格のものではないと考えられます。それゆえに、大学における一定期間組織的、体系的な学習過程を経ない者に対して学位を与える措置は、一、学位制度基本あり方を否定することにならないか、そればかりでなく、二、大学教育制度あり方についての根幹を左右することにならないかという危惧がありますが、これに対してはどのようにお考えでしょうか。
  14. 前畑安宏

    前畑政府委員 第一点の知識の単なる集積といったものについて着目をして学位の授与を行うということについては、確かに御指摘のような問題があるわけでございます。関係の団体から寄せられた意見の中でも、大学教育組織性、体系性というものを重視していかなければならないということの指摘がございます。そこで、今回御提案をさせていただいております法律案につきましては、一つは短期大学、あるいは高等専門学校、あるいはそれに準ずる、例えば大学を中途で退学をしたといったこの三点を基礎資格にするというふうに考えておるところでございます。つまり、そのような組織的、体系的な教育機関で受けた教育というものを基礎にする、さらに、その上で一定の体系的な学習というものを要求をして、その当否というものを学位授与機構おいて判断をするということにいたしまして、学位基礎となる資格としての体系的、組織的な教育というものを維持していこうというふうに考えておるところでございます。  それから、第二点でございますが、国際的にも大学だけが学位を出すという原則が確立をされております。ただ、これも御案内のことでありますが、イギリスにおけるCNAAという機関が、これは勅許状によって設立をされ、大学と同じような地位を与えられたその機関が、ポリテクニク等に学位を出すという制度が既に行われて、国際的にも定着をし、評価をされておるということでございますので、御提案を申し上げておりますところは、国立学校設置法の中に、これも既に私どもとしては定着をしておると考えております大学共同利用機関という制度に倣って学位授与機構を創設をさせていただきたい、このように考えておるところであります。  この二点によりまして、私どもとしては、大学組織的、体系的な教育基礎の上に学位を出すという制度の根幹は維持される、このように考えております。
  15. 吉田正雄

    吉田(正)委員 今私の質問からちょっとずれたのではないかというふうに思っておるのです。というのは、機構によって与えることによって大学教育制度あり方の根本を左右するのではないか、そういう心配についてはどういうふうにお考えですかということで、機構が与える内容はこうこうということを今お聞きしたわけじゃないのです。その点若干ずれておったのではないかなというふうに思っておりますが、まあ、それはそれとして。  次に、答申は、「学位は、学術の中心として自律的に高度の教育研究を行う大学が授与するものとされている。この考え方は、国際的にも原則として定着しており、かつ、我が国学位の国際的通用性を考えると、大学による学位授与という原則は、基本的に維持する必要がある。」とした上で、「大学による学位授与という原則を維持しつつ」「大学と同様に自主的な判断により学位を授与する独立の機関として、学位授与機関を創設する必要がある。」というぐあいに大学審議会答申の方では論理が展開をされておるわけです。そこで、原則は維持することと例外である学位授与機関を創設することとの間に論理的飛躍はない、ということなんですね。  それで、文部省側の説明として、これを結びつけるものとして、社会的要請、すなわち(イ)「様々な履修形態による多様な学習の成果を適切に評価し、大学の修了者と同等の水準にあると認められる者に対して、高等教育修了の証明としての学士の学位を授与するという社会的な要請」ということを答申では述べておりますけれども、果たして社会的要請と言い得る状況、段階にまで来ているのかどうなのか。また授与が適切かどうか判断の分かれるところだと思うのです。つまり証明として学士の授与ということが果たして適切なのかどうなのかということがまず一つですね。  (ロ)として、また学位授与機関創設の大きな理由として、「生涯学習活動への関心、意欲の高まりと多様化、急激な社会の変化と進展に対応する知識、技術を修得する教育システムの形成など、要請にこたえるため学士、準学士の学位を授与する道を開く」と述べられておるわけですね。もし生涯学習推進策の一環として、生涯学習の成果学位授与という形で評価をするという考え方から出たものとすれば、それはかえって学歴偏重の風潮を助長し、学位が一層空洞化、形式化するのではないかという懸念に対してはどのようにお考えでしょうか。急激な社会の変化と進展に対応し、絶えず新たな知識、技術を修得する必要性と学位取得を目的とする学習とは切り離して考えるべきであり、生涯学習の推進、活性化策は他の方途に求められるべきであるという指摘に対してはどのようにお考えでしょうか。  以上、(イ)、(ロ)の二点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  16. 前畑安宏

    前畑政府委員 確かに学士を学位とする、あるいは関連をいたしまして準学士の称号というものを創設するというようなことにつきましては、今先生指摘のような御意見もあることは確かであります。  ある新聞の論説を読みましても、博士修士はともかく、学士の称号は今日の大学大衆化の時代にはほとんど無意味になっているのが現実であろう、それならむしろ廃止するのが順序ではなかろうかというような御批判も出ておりますが、この論説も同時に、しかし、これからの大学あり方という観点からすると考えなければならないことがあるということで、生涯学習の観点からいたしますと、特定大学卒ではないが学士になることができるという道が開けることが勉学の励みにもなるし、また必要なものであるというようなことで肯定的に受けとめていただいておるところであります。そういうことで、例えば短期大学関係者からも、この学位授与機構の創設には大変大きな期待が寄せられておりまして、地域社会の生涯学習を一層助長される観点からも、その実現を強く期待するというような意向が寄せられておるところであります。  ただ、これによって学位制度が空洞化するということに問題がございますが、この点につきましても、むしろこの学士、特に学士の問題でございますけれども、学士というのが具体法律上に積極的な意味を新たに持つということはないわけでございまして、従来、大学卒業としての資格を取得できなかった人たちに、新たにその資格を取得できる道を開くということでございますので、学位制度が全体として空洞化するというようなことはなかろうと思っております。  先ほどおしかりをいただきましたが、先ほど申し上げましたような仕組みで学位の授与ということを考えていきますと、これも御批判がございますが、直ちに今単位の累積加算といったようなところまで踏み込みますと、学位の空洞化といったような問題も非常に顕著になってまいりますが、当面の取り組みというところにとどめておきますと、その問題は今直ちに大きな問題となるということはなかろう、このように考えております。
  17. 吉田正雄

    吉田(正)委員 今の私の懸念とか問題点というものに対する答弁なのですけれども、何か見解の相違というのか、そういうことでずれているような感じがいたすわけです。これはまた、この後、具体的な法文の内容について聞いてまいりたいと思っておりますので、その際お考えをお聞かせ願いたいというふうに思っております。  私の質問関連をいたしまして、同僚の沢藤委員の方から質問がございますので、私の質問は一たんここで中断いたします。
  18. 臼井日出男

    臼井委員長 次に、沢藤礼次郎君。
  19. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 今のやりとりに関連して、私は専ら短大と高専の角度からこの問題について御質問申し上げて、最後に吉田先輩から全体的な締めくくりの質問をいただく、こういう順序でお願いいたしたいと思います。  予定しておりました質問に入らせていただく前に、一つ確認の意味の質問を申し上げますので、明らかにしていただきたいと思うのですが、大学審議会答申と今度の提案との関連、あるいは今後我々があの内容を討論する機会が保証されているのかどうかということについてお聞きしたいわけであります。  大学審議会答申は、大変重要な問題をたくさんはらんで国民の前にその内容を提起しました。例えば一般教育、専門教育といった区分の廃止であるとか、最低修得単位数の廃止であるとか、あるいは教員の専兼比率の制限を廃止するとか、生涯学習に対応した履修形態の柔軟化であるとか、科目登録制、コース登録制の導入等々、非常に重要な問題をはらんだ審議会の答申が出されているわけであります。その中の一つとしての学位あるいは学位の授与ということで、きょうは具体的にこの法案の審議に入っているわけですが、さて、それ以外の、この提案されている法律事項以外の全体的なたくさんある課題について、今後一体どう論議の場があるのだろうか。設置基準であるとか省令ということであれば、これはこの場に出てこないでも進めることができるわけですね。しかし、あの審議会の答申の中に重要な問題、国民的関心の課題がたくさんある。今後の法律化なり制度化なりのスケジュールと、我々が国民の代表としてこの場でいろいろな角度から審議するということの機会の保証、これについてお考えなり見通しをお聞きしたいと思います。
  20. 前畑安宏

    前畑政府委員 御指摘いただきました多くの課題は、基本的には大学設置基準に係る事項、さらには学位関連をいたしますと学位規則ということでございます。これはいずれも文部省令で定めることになっておりますが、ただ、法律上、設置基準、それから学位に関する事項につきましては、大学審議会に諮問をするということになっておりますので、事務的なことを申し上げますと、これは私ども独自でやるのではなくて、大学審議会の御意見を伺ってから、それに沿って省令の改正を行う、こういうふうな定めになっておるわけであります。したがいまして、直接に国会で御審議をいただくということは、その仕組みの手順からいえば入っていないわけでございますけれども、いろいろな機会にまた御議論をいただき、御指導を賜りたい、このように考えております。
  21. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 そういう御答弁が返ってくるとは予想しておりましたが、大学審議会答申についてはいろいろな国民規模の論議が巻き起こっております。例えば偏差値輪切りの問題を大学教育、高等教育の中でどう解消していくかということもありますし、十八歳年齢人口急減に伴う大学の再編をどうするかという問題もあります。また、実質的な面では大学イコール・レジャーランド化というような、かぎ括弧つきでありますが、批判もあります。また、生涯学習と大学関係はどうなのか、高等教育機関の大都市集中をどう見るか、学費負担が高くなっているけれども、これは今後どう解消するかというふうなたくさんの課題大学あるいは高等教育の場にあるわけです。  今のお答え聞いていますと、法律事項以外については正式に論議するということではない、その都度なり、あるいは適時適切な御提言なり討議を賜りたい、こうおっしゃっているわけです。これは大臣と委員長にお願いをして、次の質問に進みたいのですが、やはり一般質問なり、あるいは直接の法案審議とまた別途に、こういった本質的な広範な問題を十分討議する機会、時間、それを保証するように御努力を願いたい、このことを要請して、予定しております質問に入っていきたいと思います。  まず最初に、大臣にお聞きしますけれども、短大、高専、それぞれについてでありますが、この二つの制度が戦後教育の中で果たしてきた役割、これに対する評価、特徴的にお示し願いたいと思いますし、それを踏まえて、今後私たちの住む社会に果たすべき、あるいは期待されるべき使命というものをどうお考えなのか、この点についてお示しを願いたいと思います。
  22. 井上裕

    ○井上国務大臣 短期大学は、これまで女子の高等教育、進学の道の拡大に大きな役割を果たしてまいりました。今後は、男子学生のニーズにも配慮いたしました教育を実施するとともに、生涯学習社会への移行に伴い、地域に密着した身近な存在として社会人受け入れや、また公開講座の実施を図るなど、生涯学習社会の中核としての役割を担っていくことが期待されると私ども考えております。  また、高等専門学校は、御案内のように、中学卒業後の五年、一貫した専門職業教育を行うことによって実践的な技術者を養成し、産業界から高い評価を受けておるわけであります。今後は、この技術の進展に的確に私ども対応いたしまして、今あります二つの商船あるいは工専、こういうものの学科の改組転換を進めるとともに、高等専門学校教育特色を生かして、今言われた二つの分野でも、それ以外の分野でもすぐれた技術者を養成していくことが一層求められておる、このように考えます。今までの工専、そしてまた商船、こういうもの以外にも、そういうものをもっと広い分野で広げたい、このように考えております。
  23. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 今御所見をお伺いしましたとおり、短大の場合は、戦後間もなくいろいろな社会情勢の中から、当初は暫定的な措置としてスタートした。しかし、それは国民の需要の高まりによって、現在のように一つ制度として正式な学校教育制度の中に位置づけられながら発展してきたという歴史を持っている。これは大切にしていかなければならない。一方の高専制度は、ずばり言うならば、高度成長の産業界の要請というのが非常に強かったと思うのです。この二つは対照的な誕生、スタートを切ったように私は思われます。  後者についての所見は後ほど、今大臣お答えになりました高専の分野拡大というところでもう一度触れたいと思いますので、この二つながらの制度、スタート時点での誕生の仕方は違ってはいたけれども、今後の日本社会において、特に生涯学習体系ということを目指す教育制度の中では重要な役割を果たすということの認識は、共通のものとして今御確認できたと思います。  その前提に立って、次の質問に入らせていただきます。  先日、提案理由の説明を大臣からお聞きした中で、学位授与機構その他の問題につきましていろいろ触れられた中で、この提案の背景になっておりました基本的な考え方、つまり「生涯学習体系への移行及び高等教育機関の多様な発展等の観点から、」云々、こういうふうにおっしゃっていました。ここに私は、今度の提案の一つ基本基盤、そしてまた大学審議会答申のすべてにわたる基本的な考え方が集約されているような気がします。「生涯学習体系への移行」、「高等教育機関の多様な発展」、この観点に立って若干具体的なことに入ってまいります。  短大、高専から四年制大学への編入は必ずしも実績が上がっていないという批判あるいは分析がなされています。これはなぜだろうかということについて一つ。それから編入学を拡大したいという方向での答申が出ているのですけれども、これは今の問題と関連して、具体的にどのようなポイントを改善することによって四年制大学への編入の道が広がっていくのだろうか。あるいは単位の互換ということも含めて、御所見をお伺いしたいと思います。
  24. 前畑安宏

    前畑政府委員 短期大学、高等専門学校からの大学への編入学という問題につきまして、まず平成二年度の実績について御紹介をさせていただきますが、短期大学からの編入学者数が四千五百二十八人となっております。これは全卒業者二十万八千人と比較いたしますと二・一%という極めて小さな数字でございます。他方、高等専門学校につきましては、編入学者の数は千百十九人でございまして、これは全卒業者約九千人の一二・四%ということでございまして、一割を超える編入学の実績があるわけでございます。  このことは、具体に申し上げますと、高等専門学校につきましては、創設のときから、これがいわば複線型の教育制度ということから、袋小路にならないような配慮が必要であるという御指摘もちょうだいいたしまして、御案内のとおり、豊橋と長岡に専ら高等専門学校の卒業者を受け入れることを一つの大きな目的とした技術科学大学設置し、さらには幾つかの国立大学に、高等専門学校卒業者を受け入れる、編人学のための定員をセットをしたというようなことから、このような両者の違いが出てきておる、このように考えております。  したがいまして、この編入学を拡大するということにつきましては、編入学のための定員用意するということが非常に大きな役割を果たすことになろうかと考えております。この点、現在の大学設置基準におきましては、入学定員というものを一番大きな基礎にいたしまして、それに掛ける四倍で総定員が決まる。したがいまして、三年次に編入を受け入れようといたしましても、一生生から逐次学年進行で上がってまいります学生定員がいっぱいになるわけでございますので、たまたま空き定員があった場合に、何らかのそのことを承知をした学生、特に同一法人が設置をしております大学と短期大学の場合等が主要な事例だと思いますが、そういう場合にしか編入学が機能していないということが実際にあろうかと思っております。したがいまして、大学審議会答申をちょうだいいたしまして、先ほど指摘がありました大学設置基準の改正を行うわけでございますが、その際には編入学定員を各大学の希望によって用意できるような設置基準にいたしたい、このように考えております。  また、単位につきましても、短期大学から機会を得て編入学をした場合にも、短期大学で取得した単位をすべて大学の単位として換算を認めるという扱いが現実にはなかなか行われておりません。極端な場合には、三年次編入では困る、二年次に入ってくれというような扱いもされておるようでございます。こういう点につきましても、私どもとしては、関係大学の理解もいただきながら、積極的に対応させていただきたい、このように考えております。
  25. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 お答えにもありましたように、大学側にいろいろ聞いてみますと、結局は欠員補充程度というのが実態なようでございます。したがって、現実には編入学の門は非常に狭い、こういう実態があると思うので、今お答えいただきましたような方向で積極的な検討をお願いしたいということにとどめて、この質問は終わらせていただきます。  次に、いわゆる生涯学習体系の中に占める短大なり高専の役割ということに関連いたしまして、公開講座の実施、これは学外からも希望は多いと思うのです。それから一部科目だけを修得するという科目登録制の実施、これは非常に有効な、あるいは各方面から期待される制度なり分野だと思うのですが、実際それを受け入れるであろう、あるいは受け入れるべき短大、高専の方々に、この問題は一体どうなんだと聞いてみますと、非常にいいことだと思う、しかし私たちのように、というのは規模が余り大きくない短大、高専ということなんですが、考えただけでも大変だと思う、人員の問題、施設設備の問題、こういった問題について考えていただかないと、理想としては、理念としては極めて結構だけれども、実際お引き受けする段階になったら逡巡するだろうなという答えが大抵返ってくるのです。このことについても、今後のそれに対する対応についてのお考えを一言お願いしたいと思います。
  26. 前畑安宏

    前畑政府委員 御指摘ございますように、公開講座あるいは科目登録といったような制度については、経費の問題も付随してまいろうかと思います。ただ、公開講座と科目登録の場合には若干違ったところがあろうかと思っております。  まず公開講座につきましては、これは各大学教員の方が通常の教育研究とは別の新たな役割を努めるということになるわけでございますので、経費の問題もさることながら、基本的にはそれぞれの大学おいて、今先生指摘の生涯学習ということについての御理解をいただくということがやはり一番大事な問題ではなかろうかと思っております。いろいろな例も承っておりますが、ある大学におきますと、自分の大学だけで、大学の中でやっていたのではだめなので、やはり大学自体が出かけていって公開講座をやる必要があるということから、積極的に県内の各地に出ていって公開講座をやっていただいておるという事例もございます。私どもとしても、国立大学につきましては、所要の予算措置を講じたり、あるいは私立大学でも、私学助成の中で配慮をするといったような対応をさせていただいております。  また、科目登録につきましては、これはいわば現在行われておりますいわゆる聴講生の制度をきちっと制度化していって、そして、現在は聴講生には単位は出さない扱いになっておりますが、それに対して単位を出せるようにしよう、こういうことでございます。そこの点については、もちろん科目登録なりコース登録の学生が余りにもふえますと、施設やら教員の手当てという問題が生じますが、通常行われておる聴講生というような範囲内であれば格別の支障はないのではなかろうかということで、現在のところ、科目登録、コース登録につきましては、今後の帰趨を見定めながら、それが非常に大きく拡大していくということで、大学教育研究を圧迫するような事態になるということが起こりますれば、設置基準における対応あるいは予算措置ということについても検討する必要があるのではなかろうかと考えております。
  27. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 次に、これは事務的にお尋ねしますので、簡単にお答え願いたいのですが、短大で多い保母とか栄養士の養成、資格取得という問題があります。このことについて、大学審議会答申の一部分について、短大側からしてこの点がちょっと気がかりなんだがなという指摘が複数の短大から寄せられておりますので、その点について、要請を込めて質問しておきたいと思うのです。  科目区分別に定めた最低修得単位数を廃止して、卒業に必要な総単位数のみ規定するという趣旨と、厚生省側から来ている栄養士養成、保母養成等における規定の必修科目との関係、これは調整する必要があると思うのですね。このことについて一言お願いしたいと思います。
  28. 前畑安宏

    前畑政府委員 御指摘のとおりでございまして、これは大学審議会答申の中におきましても、「それぞれの資格認定の趣旨に応じた資格取得要件の柔軟かつ合理的な運用などについて関係省庁の理解を求めるとともに、将来的には、カリキュラムの研究開発との効果的な連携のシステムについて、配慮する必要がある。」という御指摘をいただいております。私どもとしても、今先生の御指摘も承りまして、関係省庁と協議に努めてまいりたい、このように考えております。
  29. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 私の質問の最後になりますが、高等専門学校制度分野の拡大ということで、冒頭大臣もお触れになりまして、その御答弁に私は心強さを感じてお聞きしておったわけですが、分野の拡大、つまり先ほどちょっと触れましたように、高専制度、工業関係ですね、高専制度の発足というのは、多分に時代の要請、高度成長、産業界からの要請という側面が非常に強かったと思います。このことは否定もしませんし、いけないことだとも申し上げません。必要だったと思います。しかし、高専制度の果たす役割というのは、また非常にうまみがございまして、これからの運用によっては一貫教育のプラス面の発揮ができるという面もあるだろうし、あるいは大学への編入学の道を開く、学位の道を開く、そういった点を踏まえますと、非常に魅力のある制度にさらに発展する可能性は大きいと思います。  そこで、一部商船、ほとんどが工業ですが、これに集中している分野について、大学審議会答申の中には、これは拡大する必要があるのじゃないか、例えばということで農業、商業あるいは体育、芸術といったものを挙げていますね。これについて、特に農業について私は申し上げたいわけです。  それは農業県におります関係上、しかも私は農業高校にも勤務しておった経験もありまして、いわゆる子供たちの価値観、昔の士農工商に該当する高等学校の格付という言葉が嫌だけれどもあるのですね。普通高校、工業高校、商業高校、そして農業高校、普工商農であります。そして、今や農は国全体の農業政策の変化、縮小再生産的な政策によって農業、林業に対する価値観というのは残念ながら極めて低落している。したがって、望んでこの道に飛び込もうという気概が総体的に薄れてきていることは否めない事実であります。したがって、私が申し上げたようなことは、工業に関しては、いわゆる時代の要請、経済発展、産業界の要請から生まれた、いわば期待されて誕生した子供ですけれども、私は逆に、日本の教育制度の中で、政策的に、育てるために、強い要請は来ていないけれども、これはこの分野で伸ばさなければならない、このままいったら日本の農業、林業はどこへ行くんだろうか、若い者に対して農業、林業、あるいはそれに関する学問に対する価値観をこの際高めてやってやろうじゃないかという一つの気概が欲しいと思うのです。  その点について、まず農水省にお聞きしたいのですが、いわゆる後継者対策ということを中心に今取り組んでおられると思うのだけれども、農業、農村の活性化に果たす農水省サイドからの教育制度じゃなくて、農民研修制度ですか、これについての特徴、今後の展望等についてなるべく簡単にひとつお願いしたいと思います。
  30. 和田宗利

    ○和田説明員 農林水産省でございますが、今の御質問に対しまして、農林水産省といたしましては、次代の農業を担う若い者を育成するということが農政の基本課題だ、こういうふうに考えております。このために、従来から改良普及員によります技術の指導でございますとか、あるいは農民研修教育施設、一般には農業大学校、こういうふうな呼び方をいたしておりますが、それの拡充強化、こういうふうなものに努めておるところでございます。  さらに、近年、先生も御指摘のように、農業分野の技術革新あるいはその情報化の進展、こういうものに対応した教育内容というものを考えなきゃいかぬということでございまして、私どもとしましても、バイテク技術あるいはパソコンを利用しました情報処理技術というものに関する研修教育内容、これの充実に努めておるところであるわけでございます。  大学審議会答申、私ども十分承知してございまして、教育内容の高度化という面でいろいろな道が開かれる、こういうことにつきましては、私どもは高く評価をしたい、かように思うわけでございますけれども、農林水産省としましては、文部省ともよく連携をとりながら、今後若い農業者をいかに育てていくかあるいは技術力を高めていくかということに努力をしてまいりたい、かように考えております。
  31. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 私の時間、二十五分までということですから締めくくりの質問になると思いますが、今お聞きしましたように、農水省サイドの農民研修制度、その中における農業短期大学校、私も二、三日前に行っていろいろ話し合いをしてきました。大変努力しておられますし、内容も高度化して時代の要求にこたえよう、こたえているということは評価いたします。ただ、入る子供、子供という言葉はしょっちゅう使うのですが、生徒たちの側からすれば、そこにはこれから展望される、例えば大学への道は開かれているのだろうか、あるいは学位の問題との関係はどうなのだろうか。それから普及員の資格にしても、前は農業短期大学校だけで与えられておったのだけれども、今はそれイコール普及員制度の資格は与えられていないですね。幾つかの条件を積み重ねなければ来ないという、そういった魅力なり資格なりということが、子供たちの側からすれば、やはり大きなファクターであるというふうに私は考えるわけです。そして、そこには一貫して、将来あるいは途中で志が変わって大学に行くと発展してくる生徒も出てくるかもしれない。そういった意味で、今度の大学答申の中のいわゆる開かれた高等教育制度というのは目指すべき方向だと私は思うのです。  そこで、農業に関してですが、さっき既に申し上げましたとおり、日本においては非常に重要な分野であるけれども教育制度としての魅力あるいは制度としての十分さということについては問題がある。そして、しからば農業の行く末は暗いかというとそうじゃないと思うのですよ。これは基本的な食糧生産という本来的な問題と、最近クローズアップされてきております環境問題ですね、水田の持つ環境機能。あるいは昨年の末に答申が出されました林政審の答申、林業、この中には今までなかったような新しい観点、視点というものが出てきております。こういった環境をどう守り育てるかという大きな課題が農業、林業にはある。それから、今までにどうしても不足しておった生産、その次の段階の流通、加工という問題に対する取り組みが不十分だし、体系的、組織的ではなかったという問題もあります。バイオテクノロジーに対する要望も非常に強い。こういったことから考えますと、農業、林業を一体化した環境産業工学というふうな側面もあるし、生命工学という名前も実は関係者にはささやかれているので、今までのような農業、林業というふうな割合に固定化した概念じゃない、非常に広い、立体的な、また重要な概念として農業、林業が見直されようとしている。それを一貫した体系の中で追求していく子供たちに対してこたえるということからすると、私は分野の拡大の中で例示されております中の農業の分野ということをまず検討していただきたい。農水省とも十分話し合いの上で、他の教育機関との関連も十分勘案しながら進めていただきたいと思うのですが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  32. 井上裕

    ○井上国務大臣 もう先ほど私申し上げましたように、高等専門学校におきまして、今まで実践的な技術者の養成、もう産業界から多大の評価を受けている、これは御存じのとおりであります。まあ中学卒業後の五年一貫した実践教育が今までこの工業、商船以外の分野にも効果的である、こういうことから本年二月八日の大学審議会におきましても、職業に必要な能力を養成するという高等専門学校制度の目的を堅持しつつ、その対象分野を拡大することが適当であるとして、その具体的の例として、この農業、商業を提言しているわけでございます。文部省といたしましても、この提言に則して農業の分野おいても学科の設置ができるような制度を、これを改善を図ることといたしまして、実は今国会に関係法案を提出する準備を現在進めている状況でございますので、どうぞひとつ御理解をお願いいたしたいと思います。
  33. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 終わります。
  34. 臼井日出男

  35. 吉田正雄

    吉田(正)委員 それでは、先ほどに引き続きまして、法文について若干お尋ねをいたします。  まず、国立学校設置法第九条の四、これは学位授与機構について述べているわけですけれども、この第二号には、学位授与機構が「学位の授与を行うために必要な学習の成果の評価に関する調査研究を行うこと。」を掲げておりますけれども具体的にはどういう内容を指しておるのでしょうか。評価方法が確立していない中では、学位を授与するということにはならないのじゃないかというふうに思うのです。したがって、これから調査研究をやるということなので、これも何かおくれている感じがするのですが、いずれにしても、その内容はどういうものなのかということと、それから評価方法はどのような組織でつくっていくのか。まず、この二点についてお聞かせ願います。
  36. 前畑安宏

    前畑政府委員 御指摘の第九条の四の第二号で「学位の授与を行うために必要な学習の成果の評価に関する調査研究」ということを掲げておりますが、これは一号で「学校教育法第六十八条の二第三項に定めるところにより、学位を授与する」ということのほかに、今後これをさらに広げていく。例えば単位の累積加算ということが言われておりますが、単位の累積加算という制度を設け、それを実施に移すということにつきましては、先ほど来御指摘があってございました大学関係者等の意見にもございますように、組織的、体系的な教育というものの上に初めて学士という学位があるという考え方もございます。どういったふうな仕組みで学習の成果というものを評価をしていくのか、どういった学習を学士の学位基礎として評価することが適当であるか、そういったことについて今後調査研究を行うということでございまして、既にこの機関が行います学位の授与につきましては、一号の方で規定をいたしておるところでございます。  この調査研究につきましては、この学位授与機構に調査研究部門というものを置きまして、その体制を整備をいたしますとともに、具体の調査研究に当たりましては、国公私立大学教員の方々に御協力をいただきまして、共同研究を推進をするということを考えておるところでございます。
  37. 吉田正雄

    吉田(正)委員 次に、現行の学校教育法第六十八条では、「大学院を置く大学は、監督庁の定めるところにより、博士修士その他の学位を授与することができる。」と定められておりますけれども改正案の六十八条の二は、「大学は、文部大臣の定めるところにより、大学を卒業した者に対し学士の学位を、大学院課程を修了した者に対し修士又は博士学位を授与するものとする。」と改められております。  そこで、お尋ねいたしますけれども、現行法では課程の修了と学位の授与は同一ではなかったわけであります。すなわち、学位を取るには課程の修了のほかに論文合格が必要であったわけです。そのためにまた多くの問題も生じておるわけでありますけれども改正案では卒業または課程の修了者には必ず学位が授与されると理解してよろしいのでしょうか。
  38. 前畑安宏

    前畑政府委員 まず、現行の学位規則について申し上げますと、大学院におきまして修了の要件というものを決めておるわけでございますが、例えば博士課程の修了の要件につきましては、単位の修得とともに、「当該大学院の行う博士論文審査及び試験合格する」ということが修了の要件になっております。その上で、学位規則におきましては、「博士学位は、大学院博士課程を修了した者に授与するものとする。」こう書いております。したがいまして、現行におきましても、博士課程に在学している学生は、論文を書きまして審査を受け、さらに試験合格をする、それによって博士課程を修了をする。修了いたしますと、学位規則によりまして、大学院おいて、それに対して、博士課程を修了した者に学位が授与される、こういうふうな仕組みに現在はなっておるわけでございます。  今回御提案申し上げております改正案によりますと、ただいま先生指摘のとおりの改正案を御審議いただいているわけでございますが、これは、いわば新たに学位授与機構というものを創設し、学位授与機構学位を授与するという制度をつくりますに伴いまして、このことは極めて重要な問題でございますので、その授与の要件等を法律できちっと決めた方がよろしいということで、このように法律学位授与機構が行います授与の要件を定める、それに関連をいたしまして、大学が授与いたします学位についても、その授与の要件を法律上明らかにしたということでございまして、いわば現在学位規則レベルで書いてありますことを法律に上げた、このようなことでございます。したがいまして、現在の学校教育法によります「授与することができる。」というのは、これはいわばその具体の授与の要件を「監督庁の定めるところにより」と下におろしておりますものを法律のレベルまで上げた、このように御理解をいただきたいと思います。
  39. 吉田正雄

    吉田(正)委員 くどいようですけれども、もうちょっとそこのところをお尋ねいたしますと、いずれにしても、新しい改正案では「修士又は博士学位を授与するものとする。」こうなっておるわけですね。むしろ義務規定的な表現になっているわけです。したがって、言いかえれば、従前と同じく課程修了の要件に論文合格を含めるのかどうなのか。そうだとすれば、改正をした意義がなくなってくる、前と同じではないかということが言えるわけですし、従前どおりのやり方と同じだとすれば、相も変わらず課程を終了できない学生が同じ状況で出てくるのじゃないかというふうに思われるわけです。それの見通しはどういうふうにお持ちなのかということと、逆に、課程修了者には論文合格を要しないことにするということになった場合には、今度は学位のレベルが落ちるのではないか、そういう懸念というか心配というものがまた出てくるのじゃないかというふうに思うので、先ほどの答弁を、もうちょっとそこのところを明確にしていただきたいと思うのです。
  40. 前畑安宏

    前畑政府委員 どうも言葉足らずで申しわけございませんでした。  現行法は「大学院を置く大学は、監督庁の定めるところにより、博士修士その他の学位を授与することができる。」こう決めておりまして、どういう者に授与するのかということは監督庁の定めにゆだねておるわけでございます。そこで監督庁の定めは、先ほど申し上げましたように、大学院設置基準及び学位規則によりまして「博士課程を修了した者」ということでございます。それで博士課程の修了の要件としては、論文を書き、審査に通り、そして試験を受けて、それに合格した者が修了者、こういうことになります。そのことを、新しく御提案いたしております第六十八条の二におきましては、「大学院課程を修了した者に対し修士又は博士学位を授与するものとする。」こういうことでございまして、いわば学位規則に書いてありましたことを法律上明らかにした、こういうことでございます。  なお、修了の要件として、論文を書き審査合格すること、さらに試験を受け試験合格することにつきましては、これを変更するという考え方大学審議会でもございませんので、私どもとしても、従前と同様に踏襲をするということで、大学審議会にお諮りをさせていただきたいと思っております。  なお、関連をいたしまして、御指摘のように、現在いわゆる博士課程中退というような方がかなりの数ございますが、これにつきましては、大学審議会答申でも、今後における大学院あり方としては、従来のように、いわば学生に対する教育研究指導ということが若干なおざりにされておるのではないかということについて強くその問題点を指摘し、今後における我が国大学院充実あり方としては、学生に対する教育研究指導の充実ということにさらに意を用いるよう各大学配慮を求めていく、こういう考え方を示しておるところでございます。
  41. 吉田正雄

    吉田(正)委員 今の答弁を聞きますというと、学位授与のやり方、方法、内容等については、従前と変わりがないというふうに受けとめられるわけですが、それでよろしいわけですか。
  42. 前畑安宏

    前畑政府委員 制度の仕組みとしては同じでございます。
  43. 吉田正雄

    吉田(正)委員 そうすると、従前と同じであるとするならば、ここのところで表現を変えなければならなかった理由というのは出てこないのじゃないか。前のとおりでいいのじゃないかと思うのですけれども、変えなければならなかった理由というのはどこにあるのでしょうか。
  44. 前畑安宏

    前畑政府委員 まず第一に、現行の学校教育法では、学位を授与する権限というのは、第六十八条で「大学院を置く大学」ということになっております。なお、現行法では学士は学位でございませんので、それはちょっと別でございますが。今回御提案申し上げておりますのは、この大学のほかに学位授与機構学位を授与する権限を与えよう、こういうことでございますので、この新しい学位授与機構がどういう要件のもと学位を与えることができるかということについては、学位を与える権限を付与するとともに、その授与の要件について法律上規定することが適当である、このように考えたところであります。したがいまして、六十八条の二の第三項で、学位授与機構学位を与える場合の要件というのをかなり詳細に規定をいたしております。それとの均衡を考慮いたしまして、大学が与える場合の要件についても規定をした、このようなことでございます。
  45. 吉田正雄

    吉田(正)委員 今の説明では、授与機構に関して、新しくできる機構ですから述べていくということは必要なんですけれども、従来の大学院における修士または博士学位を授与することは、審査内容、方法等は従前と全く変わりがないということになれば、そこのところはあえて変える必要はなくて、授与機構について新しく設けられたのですから、それをきちんと規定をしていけばいいということになると私は思うのですが、これはここでやりとりしても仕方がありませんからやめますけれども、ちょっとその辺は、法技術論的にも、内容が変わらぬのになぜ変える必要があるのかという点では問題が残るのじゃないかなというふうに思っておりまして、これは指摘だけはしておきます。  それから次に、同じく改正法案の六十八条の二の二、「大学は、文部大臣の定めるところにより、前項の規定により博士学位を授与された者と同等以上の学力があると認める者に対し、博士学位を授与することができる。」というのは、これは従来の論文博士を指すものと解してよろしゅうございますか。
  46. 前畑安宏

    前畑政府委員 そのとおりでございます。
  47. 吉田正雄

    吉田(正)委員 次に、文部省から出されました「学位授与機構構想概要について」というものがありますが、これについて若干お尋ねをいたします。  第六十八条の二の三、今度は三なのですが、第一号では、学位授与機構学位を授与する者として、「短期大学若しくは高等専門学校を卒業した者又はこれに準ずる者」とありますけれども、この「準ずる者」というのは何かということなんです。それで先ほど述べました、この「学位授与機構構想概要について」の三の「業務」の(1)の①には、「学士の学位の授与要件」というのがありまして、そこのアでは、「一 短期大学卒業者 二 高等専門学校卒業者 三 大学に二年以上在学し六十二単位以上修得した者など上記に準ずる者」こういうふうに書いてあるのです。  そこで、法文における「準ずる者」というのは、この「大学に二年以上在学し六十二単位以上修得した者」を指しておるのではないかというふうに理解しますが、そこのところで、また「六十二単位以上修得した者など」というのがついているのですね。そうすると、この「者など」というのは一体何を指すのかというのが極めて不明確なのですね。それを明らかにしなければ、今後の業務に支障を来してくるのではないかと思うのですが、この内容をお聞かせください。
  48. 前畑安宏

    前畑政府委員 御指摘学位授与機関創設調査委員会の報告におきまして、「六十二単位以上修得した者など上記に準ずる者」といたしておりますのは、その大学に二年以上在学し、六十二単位を修得した者にここできちっと限定するか、あるいは若干の幅を持たせるかという問題があるわけでございまして、そういう趣旨で「など」というものを書いたわけでございます。今具体に考えられるところは、例えば外国の短期大学を卒業した者というのがこの範疇に当たろうか、このように考えております。
  49. 吉田正雄

    吉田(正)委員 その辺がこれからの検討ということでなかなか難しいのじゃないかと思うのですけれども、同じく授与要件の今のところです。授与要件のイで「修得すべき単位数については、大学審議会で提言されている大学設置基準の大綱化の実施状況及び授与する学士の専攻分野に即して、さらに具体検討を行うこととする」とありますけれども、いつまでにだれがこの内容について決めるのかということと、また「修得すべきそれぞれの単位数のうち、本機構が定める一定単位数以上は、大学おいて修得することを要する」とありますけれども、「一定単位数以上」というのはどういう単位なのか。それから「大学おいて修得することを要する」とありますけれども、その「大学」には放送大学あるいは省庁大学などが含まれるのかどうなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  50. 前畑安宏

    前畑政府委員 まず第一点でございますが、「さらに具体検討を行うこととするが、」とございますのは、この学位授与機関創設調査委員会が引き続き平成三年度においても、現在御審議いただいております予算で継続をすることになっておりますので、その場でさらに検討を深めていく、こういうことになろうかと思っております。「本機構が定める一定単位数」ということにつきましても、その中で具体検討が行われるということになります。  なお、「大学おいて」という「大学」の中には、放送大学学校教育法一条の大学でございますので当然に含まれますが、各省所管の大学校は、これに含まれるものではございません。
  51. 吉田正雄

    吉田(正)委員 先ほど来の論議の中で各省庁大学を含まないということになりますと、今度は学位授与機構の対象学校以外の教育施設の中に含まれておるのですね。だから、そこにおける単位は当然認められなければならないのだけれども、今のここの場合には除外をするということになると、これまた矛盾が出てくるのではないかと思いますので、それは今後の検討課題ではないかなというふうに思っております。  そこで、次に進みます。  六十八条の二の三の第一号に関して、先ほどの「構想概要」には、次のように書いてあるわけですね。「一定の要件を満たす短期大学・高等専門学校の専攻科において所定の単位を修得し、大学の修了者と同等の水準にあると認められる者に対し、学士の学位を授与する。」とありますけれども審査論文で行うのかどうかがまず一点です。  それから、二点として、高専の専攻科は大学審議会の本年二月八日の答申設置が提言されているものでありますけれども、これらの専攻科が学校教育法に定める学校であり、学位授与にふさわしい課程学校と位置づけるならば、これら専攻科を有する短大、高等専門学校大学へ改編し、学位の認定を学校で認めるようにできるのではないか、またすべきではないか、あえて機構にそのことをゆだねる必要はないのではないかという疑問や指摘がありますけれども、これについてはどのようにお考えでしょうか。
  52. 前畑安宏

    前畑政府委員 まず、第一点の「本機構の定める一定の要件を満たす短期大学の専攻科」ということでございますが、これは御案内のとおり、現在短期大学の専攻科というのは、制度上いわゆる設置認可というような仕組みはございませんで、届け出によって設置をされるということになっております。したがって、極端に申し上げますと、専攻科の内容、水準というのはかなりまちまちでございます。そこで、この学位授与機構が当該機構の責任において自律的な判断を行って、どの専攻科がこの学位授与機構の認める要件に合致するかどうかということを学位授与機構おいて判断をするということになります。  それから、第二点でございますが、学士の学位を授与するにつきまして、この報告でも述べておるところでありますが、「申請者が大学修了者と同等の水準の学力を有するか否かを審査する。」ということになっておりますが、その際、「学習の達成度を確認するための適切な方法(例えば、試験、レポートの審査等)については、授与する学士の専攻分野等に応じ、引き続き検討する。」ということにいたしております。具体の話として出ておりますのは、特に工学系の場合なんかは、卒業研究というのが課されるのが一般であるというふうに言われておりますので、この学位授与機構で仮に工学分野の学士号を出すということになりますれば、そこでやはり何らかの研究についてのレポートといったようなものを考えるべきではないかというような議論も上がっております。いずれにいたしましても、今後この学位授与機構おい検討がされるということになります。  なお、この平成三年度に設置されます調査委員会、引き続き学位授与機構、こういうことになるわけでございます。
  53. 吉田正雄

    吉田(正)委員 次に、六十八条の二の第三項第二号に関してですが、学校以外の教育施設で機構大学大学院と同等の水準にあると認める課程の要件と審査のやり方、現状ではどのような施設が考えられておるのかということです。また、これらの課程で要件を満たした者には、学士、修士博士学位を授与するとありますけれども、授与の要件と審査の方法、内容はどういうものでしょうか。
  54. 前畑安宏

    前畑政府委員 この第三項第二号で「行うと認めるもの」という場合の認める基準につきましては、これは大学設置基準あるいは大学院設置基準というのが審査の基準になると考えております。  また、具体審査につきまして、この学位授与機関創設調査委員会の御議論の中では、大学設置あるいは大学院設置の場合の審査に準じて具体実地調査を行ったり、あるいは各個別の教員の資格審査を行ったり、もちろんカリキュラム審査を行った上でこれを認定する、こういうふうなことは方向としては示されておるところでございます。  また、授与の要件といたしましては、学士の学位につきましては、基本的には当該認定された学士レベルの課程を卒業した者について抱括的な授与というものが考えられていいという方向でございますが、修士博士学位につきましては、これは個別にその課程を修了した者について学位授与機構論文審査をし、さらに試験をすることが必要であるということが現在の構想の中で示されております。
  55. 吉田正雄

    吉田(正)委員 ちょっと私の尋ね方が悪かったのでしょうか。学校以外の教育施設、これはどういうものが考えられるのかということをお聞きしているのです。現にそういうものがあるのかどうなのか
  56. 前畑安宏

    前畑政府委員 御提案いたしております法律案で書いておりますことは、「学校以外の教育施設で学校教育に類する教育を行うもののうち当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定がある」教育施設ということでございまして、具体に申し上げますと、各省設置法なりあるいは個別の法律で、この当該教育を行うについて規定をしているものというものでございます。具体に申し上げますと、そういう教育施設としては、警察大学校、防衛大学校、税務大学校、社会保険大学校等々、各省庁がそれぞれ持っておるところでございます。
  57. 吉田正雄

    吉田(正)委員 防衛庁設置法の第十九条は、「防衛医科大学校卒業生は、医師法第十一条」これは医師国家試験の受験資格なのですけれども、この「医師法第十一条の規定の適用については、同条第一号」これは大学おいて医学の正規の課程を修めて卒業した者ということなのですが、「第一号に規定する者とみなす。」というふうに定めておるわけですね。したがって、大学大学院と同等の水準にあり、それに相当する組織的、体系的な教育を行っているというふうに認める学校以外の教育施設というものを今挙げられたわけなんですから、それを認めておるわけですので、学位を授与することが妥当であると認定するなら、おのおのの教育施設で学位の認定を行うようにしてもいいのではないかと考えられるわけですね。それを別途機構審査しなければならぬという理由は、これもちょっとやはりうなずけない面が出てくるのではないかということ。現に、今挙げられましたそれらの学校以外の教育施設では、昭和二十八年二月七日の文部省告示第五号で、卒業者に大学院及び大学の専攻科の入学に関し大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者の指定を行っておるのですね。つまり同等とみなしておるわけなんです。そうすると、大学大学院で学士の称号を与えたり学位を与えておるわけですから、これらの教育施設で与えられないことはない。それだけの水準がないということでの判断で除外をされたということなのでしょうか。
  58. 前畑安宏

    前畑政府委員 御指摘のところがこの学位授与機構の一番根本の問題でございまして、従前からいろいろな方面で当該大学校自体が学位を授与することについての御見解というものも提示をされておることは承知をいたしております。しかしながら、学位大学が授与するということ、これは国際的にも容認されております原則でございますので、いわゆる学問の自由、大学の自治ということが保たれております大学以外のものが学位を授与するということになりますと、これは学位制度を乱す、国際的にもそういうものは容認をされないであろうというのが、各方面からの御理解をいただきまして、このようにして大学の延長線上にある機関、大学共同利用機関と同じような性質の機関、しかも国立学校設置法おいてつくらせていただく、こういう機関において初めて学位授与ができるという制度をお願いいたしておるところでございます。したがいまして、当該学位授与機関が自律的な立場におい学位というものを授与すべきかどうかを判断する、その前提として、防衛大学校、防衛医科大学校等のお名前が出ましたが、その機関についても改めて医師法の立場とは離れて学位授与機構が当該課程大学あるいは大学院と同水準にあるかどうかを認定し、さらに当該課程の修了者について学位授与機構おい論文審査をし試験する、こういうふうなまさしく学位授与機構の判断におい学位を授与するという制度が適当である、このように考えて御提案をさせていただいている次第でございます。
  59. 吉田正雄

    吉田(正)委員 今のその説明がなかなか大学関係者等には理解ができない。というのは、今も答弁がありましたように、大学以外の教育施設では与えられないのが現行法体系だということをおっしゃっておって、そしてまた、大学以外の機構でこれを延長線上と名づけて与えるのだというのですから、非常に便法的なものではないかという批判が出てくるのは当然だろうと私も思っているのです。  時間もありませんから、最後に大臣にお伺いをいたしたいと思うのですけれども、この学位授与機構は、学校教育や生涯教育、とりわけ大学大学院など高等レベル教育の理念や今後の教育研究あり方学位授与に大きな影響を与えることが予想されます。しかるに、機構設置場所や開設時期は明確に定められておりますのに、学位授与の根幹にかかわる問題であり、学位授与機構の創設に先立って明らかにされなければならない幾つかの事項が今後の引き続く検討課題とされております。すなわち、学士の学位授与要件の修得すべき単位数については、大学審議会で提言している大学設置基準の大綱化の実施状況及び授与する学士の専攻分野に即しての具体内容。二、大学の単位として認定することにかかわる基礎的諸問題並びにいわゆる単位累積加算制度具体案。三、高等教育レベルの学習の成果の評価に関する調査研究などであります。  このように、内容が不明確なものを抱えたまま法案を提出することは、法定主義に照らしても大きな疑問が残るのではないかと思っております。昨年の生涯学習法案の場合にも、その様子が見られましたけれども、もう少し時間をかけ、内容を明確にしてから提出をしても遅くはないのではないか。本法案の場合についてもそういうことが言えるのではないかと思うわけです。したがって、今後の法案提出については、内容を明確にし、疑問の余地がない、あるいは今後の検討課題だ、一片の要綱等にゆだねるという提案の仕方は非常にまずいのではないかと思っておりまして、それらの法律案提出についての基本的な、今申し上げた点についての見解をお聞かせ願いたいと思います。
  60. 井上裕

    ○井上国務大臣 私どもは、やはりこういう状態のときに、大学、そしてまた大学校を出た、例えば職業訓練大学校あるいは農林省の水産大学校あるいは気象大学校、そういうものの方にも、大学と同じ、今のそれだけのレベルの方に、学士、そしてまた修士博士という学位号を一緒に与えてやりたい、こういうことでこの法律案をお願いをしたわけであります。  今先生のお話をいろいろ伺いまして、これは私は学位機構の中でやはりこれからいろいろ検討していただくことでありまして、これからの生涯学習の一端として、すべて今までの大学院自体、一番最初に先生が御提案ありましたが、私ども大学院、日本は〇・七%であり、またアメリカは七・一、イギリスは二・二、またフランスは二・九、そういう中での私ども大学院、そしてまた、今後お願いしている学位機構の中で、やはりそういうところでいろいろこれからも検討していただきたい、こういうことでぜひひとつこの法案はお願いをいたしたい、このように考えます。
  61. 吉田正雄

    吉田(正)委員 以上で終わります。
  62. 臼井日出男

    臼井委員長 次に、山原健二郎君。
  63. 山原健二郎

    ○山原委員 この法案、大学審議会答申に基づいて行われたものですが、学位授与機構の新設、また奈良先端技術大学院大学設置など重要な中身を持っています。学位授与機構の新設については、我が国初めてのことでございまして、今吉田委員が言われましたように、私はこの法案の提出に当たっても非常に慎重な態度をとる必要があると考えております。この機構は、大学における自治権限が付与されたものではなくて、大学に比べて文部省の管理、統制がより働きやすい仕組みとなっております。学問研究の自由、管理運営上の 自治が保障されていないと思うのです。こうした機関により学位授与が行われる場合は、学問に対する介入や統制の道を開くことになりかねません。また、こうした第三者機関が学位認定を行うことについて反対、危惧の念も寄せられております。  例えば国立大学協会の場合、ここへ資料を持ってきておりますけれども、かなり厳しい態度をとっておられまして、   学位、特に修士博士学位大学以外の機関が授与することに対しては、かなりの大学から疑問と反対が寄せられている。修士博士学位の授与の取り扱いの如何は、いうまでもなく我が国高等教育機関の根幹にかかわることである。大学審議会おいてもこの取り扱いについては、まだ十分に検討がつめられていないようであるが、この点については今後とも大学関係者の意見を十分に聴取され慎重に検討されるよう要請する。国大協の方からもこういう意見が出ておることは御承知のとおりです。したがって、まだ合意が得られていない問題であると思います。したがって、私は、日本学術会議あるいは大学関係者を参考人として呼ぶなどの慎重な審議をこういう法案については行うことが非常に大切なことであるということを最初に指摘しておきたいのです。  次に、この学位授与機構についてでありますが、今お話のありましたとおり、各省設置大学校修了者も学位授与審査の対象とする者となるわけですが、問題を絞りまして、防衛大学校、防衛医科大学校修了者も学位授与の対象となるかどうか。確認するまでもありませんが、一言確認をしておきたいのです。
  64. 前畑安宏

    前畑政府委員 どのような大学校が学位授与機構の認定を受けるかという問題は、具体大学校の申し出を待って学位授与機構おいて認定をいたしましてから定まる問題でございますので、この段階で防衛大学校、防衛医科大学校が当然に認定を受けるということは申し上げかねるところでございます。
  65. 山原健二郎

    ○山原委員 それがはっきりしないわけですね。  私は、ここで防衛大学校及び防衛医科大学校の設置目的は何かということを、もう御承知のとおりでありますけれども、防衛庁設置法第十七条二項は、「防衛大学校は、幹部自衛官(三等陸尉、三等海尉及び三等空尉以上の自衛官をいう。)となるべき者を教育訓練する機関とする。」こうなっています。それから第十八条二項で、「防衛医科大学校は、医師である幹部自衛官となるべき者を教育訓練する」となっているわけです。要するに、幹部自衛官養成の大学校でございます。この学校ではどのような教育訓練を行っておるのか、当然文部省はお調べだと思いますが、いかがでしょうか。
  66. 前畑安宏

    前畑政府委員 御案内かと思いますが、大学院及び大学の専攻科の入学に関し、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者の指定ということがございまして、今御指摘の防衛大学校、防衛医科大学校につきましても文部大臣が指定をいたしておるわけでございますが、その指定に際しまして、どういうふうなカリキュラムが組まれておるかということを私どもとしては調査をさせていただきます。そういう観点から、この大学校につきましても、カリキュラムについては承知をいたしております。  防衛大学校について申し上げますと、本科が、理工学専攻ということで電気工学科、機械工学料など十四学科、それから人文・社会学専攻ということで管理学科、国際関係学科が置かれております。修業年限は四年ということで、一般教育等五十六単位、各学科に応じた専門教育七十六単位、防衛学二十三単位、計百五十五単位、このほかに訓練課程おいて一千五時間というものが課されております。  防衛医科大学校につきましては、これは医学科は修業年限六年でございまして、医学の専門課程及びこれに進学するための進学課程というのが設けられておりまして、進学課程おいては、一般教育、外国語、保健体育及び基礎教育科目を八十六単位以上、また専門課程おいては約四千七百六十時間の医学に関する専門教育を修得することとされております。  なお、このほかに、訓練課程おいて、幹部自衛官として必要な基礎的な訓練要項について錬成することとされております。  以上のように承知をいたしています。
  67. 山原健二郎

    ○山原委員 これは私の方が昨年予算委員会の資料要求で防衛庁からいただいたものでありますが、今おっしゃったことと、例えば「部隊組織の特性を理解させるとともに部隊運営の基礎的知識を付与」するという統率論ですね。それから「陸戦の基本となる装備技術の概要に付いての基礎的知識を付与」するという陸上軍事技術。「国防の基本的事項を教育して、国防に関する諸問題を理解しえる能力を付与する国防原論」。それから「航空戦力の運用原則及び各種航空作戦の概要についての基礎知識を付与する空戦論」。これは昨年防衛庁からいただいたものですが、こういう教育が行われているということは、文部省、御承知でしょうか。
  68. 前畑安宏

    前畑政府委員 先ほど申し上げました防衛学二十三単位という中で、陸上防衛学、海上防衛学、航空防衛学というのがありまして、その中で御指摘のような内容と思われるような科目、例えば国防原論、防衛地形学、科学技術・軍事史、統率原論、防衛政策、陸上軍事技術その他学校長の定める科目といったようなものが掲げられておることは承知をいたしております。
  69. 山原健二郎

    ○山原委員 こういう内容は到底教育基本法の学校教育として認められないものではないのか。しかも、これをどういう人が教えているかということで、これも資料としていただいたわけですが、例えば航空防衛学は、これはお名前が出ておりますけれども、「関空佐、霜田空佐、金井空佐」になっております。軍人、防衛官が教えることになっているわけですね。防衛学担当は陸佐、海佐が当たることになっています。このような教育学位の授与の対象と認められないことは当たり前ではないかと思うのです。これを認めるということになりますと、大学でもこのような軍事教育を教えていいということになり得るわけでございまして、これは大変重大な問題だと思いますが、この点、この法案の提出に当たってどういうお考えを持っておりますか。
  70. 前畑安宏

    前畑政府委員 私どもは防衛大学校を大学とするということではございませんで、防衛大学校なりあるいは防衛医科大学校で学んだ学生の学習の成果というものを適正に評価をする必要がある、このような考え方でございます。
  71. 山原健二郎

    ○山原委員 学習の成果を適正に評価すると言っても、中身はこれですから。  そうしますと、学位授与に当たりましての基準ができているのでしょうか。しかも、どのような内容について学位授与の対象とするのかということについて、どういう基準ができておるのか。この法案審議に当たって当然出していただくべきものだと思いますが、その基準は出せますか。
  72. 前畑安宏

    前畑政府委員 どのような、大学校について学位授与機構大学大学院の水準にある教育を行っていると認定をするかという基準につきましては、これは学校教育法大学設置基準、大学院設置基準といった関係規定に照らして審査をするということになりますので、端的に申し上げますと、今申し上げましたように、学校教育法関係規定並びに大学設置基準、大学院設置基準というのが認定の基準になるということでございます。
  73. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっとわかりかねますけれども、端的に伺いますが、この授与の基準というのは何ですか。
  74. 前畑安宏

    前畑政府委員 学位授与の基準は、当該学位授与機構大学あるいは大学院と同じような水準にあるということが認定されました課程を修了した者につきまして、修士あるいは博士につきましては、その者が作成いたしました論文学位授与機構審査をし、そしてさらに、試験を行って通常の修士あるいは博士と同程度にあるかどうかを学位授与機構おいて判断するということでございますから、一般の修士あるいは博士の水準というものが学位授与の基準になるわけでございます。
  75. 山原健二郎

    ○山原委員 おっしゃることは、学位授与機構が決めるということでしょうかね。  そうしますと、例えば防衛学などを認める立場に立って学位授与機構がそれを基準とすれば、それを了承するという政府側の立場でしょうか。
  76. 前畑安宏

    前畑政府委員 具体にどういうふうな論文が出てくるか、その論文について審査をするわけでございますが、想定されますところは、先ほど申し上げましたように、本科に理工学専攻、人文・社会学専攻というものがございまして、ここで一般教育等五十六単位、各学科に応じた専門教育七十六単位ということで、通常の大学と同程度教育が行われておるのであれば、理工学あるいは人文・社会学についての論文が出てくる、このように考えております。
  77. 山原健二郎

    ○山原委員 要するに、基準というものはないわけですか。あるわけですか。
  78. 前畑安宏

    前畑政府委員 修士博士の基準というのは、当該大学院おいて修了を認めるということによって、その水準が決まるわけでございます。学位授与機構おいても、大学と同じ立場に立って修士として相当であるか、博士として相当であるかという判断をまさに技術的に行う、こういうことでございます。
  79. 山原健二郎

    ○山原委員 局長、大変大事な答弁をされているわけですけれども、例えば、私は防衛学のことを言いましたが、例えば専門教育につきましても、防衛大学校の場合、応用物理学はどんなのが入っているかというとウエポン、武器ですね。これのウエポン系というのがあり、また応用化学では火薬学などというものもあり、専門教育もいわゆる軍事教育と深く結びついているわけですね、これは防衛大学校の性格によるわけですから。もともと自衛隊の幹部養成学校であり、それを目的とした教育大学教育として認めることになれば、これはまた大変なことですからね。しかも、それが学位授与の対象としてなるのかならないのか、そこのところの基準もはっきりしなければ、本来この法律の審議すらここではできないぐらい重要な内容を持っているわけですよ。
  80. 前畑安宏

    前畑政府委員 防衛大学校の理工学専攻科では、御案内と思いますが、電子工学、物理工学等の専門区分について履習をすることとされております。  なお、先ほど学位の水準、基準についてお話がございましたが、学位規則におきましては、博士については、「博士学位は、専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を有する者に授与する」と書いてございまして、現在これに従って各大学院おい学位の授与が行われておるところであり、学位授与機構おいても、これに従って学位の授与が行われる、このように考えております。
  81. 山原健二郎

    ○山原委員 大変あいまいにしか私には思えないのですね。でも、時間もないですから、少し次へ進めてみたいと思いますけれども、この大学校は学校教育法第一条に定める学校の中に入っておりますか。
  82. 前畑安宏

    前畑政府委員 学校教育法第一条に定める学校には該当いたしません。
  83. 山原健二郎

    ○山原委員 入っていないわけですね。もともとこれらの大学校は教育基本法、学校教育法体系の学校とは違うわけでございまして、これらの行政目的遂行のための学校の修了者に学位を授与するということは、学校教育法の変質につながってくるのではないかという問題でございます。これは最後に大臣にも一言お伺いしたいと思っておりますが、とりわけ自衛隊幹部養成学校の修了者に学位を与えるということは、これはもう申し上げるまでもなく、教育基本法第一条の目的、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、」というこの教育基本法の第一条との関連を考えてみますと、これは非常に大きな問題があると思いますが、この点について法案提出の場合に疑問を持たなかったのでしょうか。
  84. 前畑安宏

    前畑政府委員 この学位授与機構につきまして、御意見としては、そういう難しいものをつくらないで、各省庁の大学校を一条の学校と認めて、学位授与権を与えればいいではないかという御意向のある向きがあることも承知をいたしておりますが、私どもは、先ほど来お答えいたしておりますように、各省庁所管の大学校は、それぞれの使命、目的というものが定まっておりまして、学校教育法大学とするわけにはいかないということでございまして、それを学校教育法大学とするという道はとらずに、ただ、そこで学んだ者の学習の成果は、やはり適切に評価をしてやるべきではないかということで、学位授与機構による学位授与制度ということで御提案をさせていただいているところでございます。
  85. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょうど一九七五年ですが、昭和五十年、これは問題なったことがあるのですよ。覚えておられるかもしれません。ちょうど十六年前になりますが、あれは独立大学院設置を認める学校教育法一部改正案の審議の際、これは防衛大学校修了者に学士号を授与したり、大学院設置などが実現すれば、防衛大学在校生の士気も上がり、中途退学者も少なくなろう、これは当時坂田防衛庁長官の発言ですね。実はこの問題で私がこの委員会で文部省に対して質問をいたしました。議事録を持ってきていますが、当時の佐野文一郎大学局長は、学士号を与えるということについて、「防衛大学校というのは、これは防衛庁設置法に基づく特別の学校でございますから、その卒業生が学士を称するということは学校教育法の規定に照らして好ましくない、」と答弁しておるのでございます。  学校教育法上好ましくないと述べていたのが当時の文部省の公式見解でございまして、考えてみますと、当時の答弁から比べますと、ここに大きな変更があるのではないかというふうに思いますが、この点はどう説明されるのでしょうか。
  86. 前畑安宏

    前畑政府委員 現行の学校教育法におきましては、「大学に四年以上在学し、一定試験を受け、これに合格した者は、学士と称することができる。」こうなっております。したがいまして、「大学に四年以上在学し、」という要件がございますので、大学以外の教育施設に在学しておる者については、これは学士と称する道がないということでございます。
  87. 山原健二郎

    ○山原委員 いろいろおっしゃいますけれども、これは今までの態度と違うのですよね。明らかに学校教育法上好ましくない。  それから、もう一つは、文部省というところは、教育基本法並びに学校教育法に基づいた範疇のものを所管するのが文部省ですよね。今度は、この問題によって性格が変わってくる中身も持っているわけですね。学校教育法学校でないものの学位認定をやる機関をつくる、しかもそれを所管するということになってくると、文部省の性格としても、今までと違った、変質が出てくるのではないかという心配をするのですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  88. 前畑安宏

    前畑政府委員 私どもの方で各省庁の大学校を所管するということではございませんで、各省庁の大学校の御判断によりまして、まず学位授与機構に、自分のところは学位授与機構の認定にたえられるかどうかという認定の申し出をする、それだけの関係でございまして、私どもの方で各省庁所管の大学校を新たに所管する、こういう関係ではなかろう、このように考えております。
  89. 山原健二郎

    ○山原委員 十分な時間がないものですから、煮詰めた話にならなくて私も大変残念なわけですけれども、今まで考えてきたのとは違った情勢が出てきているということも痛切に感ぜざるを得ないわけでございまして、特に、本来ならば、この学位授与機構の問題につきましても、管理運営の問題、また大学審でどのような論議がなされたかというような問題、あるいは国民的合意の問題等、当然これは論議をしなければならぬと思いますけれども、時間の関係上、これ以上質問することはできませんが、最後に、大臣、私は一定の危惧の念を持っておりますし、また、例として国大協の例を挙げましたけれども、まだ国民的合意に達していない面があるわけですね。そういう点から考えまして、特に大学の自治あるいは学問の自由というのは、戦後、大学の理念として打ち立てられ、今日までともかく守り続けてこられたものでございますが、それと今回の学位授与機構の問題とは関連がどのようになっておるのかということについて、私の危惧の念も含めまして、文部大臣の見解を伺っておきたいのです。
  90. 井上裕

    ○井上国務大臣 今局長が御答弁いたしましたように、これは前から臨教審からもこのようなことをやってやれというような答申を受けております。  さらにまた、私ども、生涯学習体系への移行、こういうことから考えましても、この際、各省庁の要請に応じて、また臨教審の要請に応じて、ぜひこういうものをいたしたい、このように考えております。
  91. 山原健二郎

    ○山原委員 私どもは、大体こういうふうな方向に動いていくから、しかもあいまいなままこの問題が発展をしていくものですから、大学審議会設置のときにも実は反対したのです。その人選についても賛成できない部分もありまして反対をしたわけでございますけれども、きょうはもう時間がないので、これで終わりますけれども、なお、これらの問題については、やはり教育基本法というこの問題をめぐっての論議はさらに深めていただく必要があるのではないかということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  92. 臼井日出男

    臼井委員長 次に、高木義明君。
  93. 高木義明

    高木委員 私は、学位授与機構の新設に関連をしてお伺いをいたします。  今回の改正は、国立学校設置法を一部改正して学位授与機構をつくり、あわせて学校教育法を一部改正をして、一つ、学士を学位とする、二つ、短大卒や高専卒の者にも、大学などの一定の単位を修得した場合に学士の学位を授与する、三つ目は、各省大学校のうち大学と同水準の学校にも水準に応じ学士、修士などの学位を授与する、こういう内容でございます。  この学校学位授与機構の創設につきましては、御案内のとおり、臨教審の第二次答申、すなわち昭和六十一年四月に出されましたこの答申の中に、単位累積加算制度の導入とあわせ学位授与機関の創設を検討する、こういった答申がなされておりますけれども、私は、まずこの答申が出された背景、あるいは文部省考え方についてお伺いをしておきたいと思います。  この答申の背景につきましては、高等教育の多様化や弾力化あるいはまた生涯教育の観点から体制整備等が必要である、こういうことが挙げられております。一方では、各省大学、とりわけ防衛大あるいは防衛医科大などの、大学と同じレベルにある教育内容大学院入学資格のある六つの大学校から要望が強くあったと聞いております。  そういう中にありますが、なぜ今学位授与機構を新設をするのか。社会的にそういう要望が強いのか。強いとするならば、どういった年齢、性別あるいは企業、こういったいろいろなところの要望についてどのように把握をしておられるのか。私はこういう感じがするわけでございます。したがって、各省の大学からは要望があるといたしましても、いわゆるそれ以外、社会的ニーズは果たしてどうなのか。あるのか。まずこの点をお伺いをしておきたいと思います。
  94. 前畑安宏

    前畑政府委員 まず、御指摘の臨時教育審議会の答申、昭和六十一年四月の答申では、御指摘のように、高等教育機関の多様化と連携という問題に関連して、こういう御提言をちょうだいをいたしておるところであります。また、今回の大学審議会における審議の過程におきましても、例えば短期大学関係団体から、短期大学卒業者にあっても、そういった学位を授与するという仕組みについて、地域社会の生涯学習を一層助長させる観点からも、その実現を強く期待するという要望が寄せられております。また、高等専門学校関係の団体からも、高等専門学校を卒業した子供たちに大学卒と同じような資格を取得させる方途がないだろうかということがかねてからの検討課題になっておったところでございます。
  95. 高木義明

    高木委員 この学位授与機構が新設された場合、短大や高専卒の人が学士の資格を取ろうという動きになるのか。世間は今大学卒ということに価値を置いておるのでありまして、学士という肩書に価値を与えているのではないと私は今日段階思うわけであります。そういう中で、この肩書を得るためにどのくらいの人がこういうものを申請していくだろうかということで、私は一抹の疑問を持っておるのであります。この学位授与機構につきましては、平成三年度予算で一億一千三百万円を計上して、常勤職員八人予定しておるようでありますが、これだけの費用を使うわけですから、それなりの効果が出なければならないのは当然でございます。学位授与という形だけつくったけれども実態はなかなか伴わない、形を整えようとして理念だけが先行する、そういうことになるのではないかと私は心配をしておるわけでございますが、この点につきまして、大臣、いかがお考えでありましょうか。
  96. 井上裕

    ○井上国務大臣 今中教審でもそう言われておりますし、皆さんの御希望もあります。また、今先生言われた学士、これは、外国は学士号とか修士号とか博士号というのに非常に重きを置くというようなこともありまして、文部省としても、こういうことも今国際社会の中で考えてやらなければならない、こういうようなことでお願いをしたわけであります。
  97. 高木義明

    高木委員 次に、私は学士を授与した場合の効果についてお伺いをいたします。  短大あるいはまた高専卒業者が大学の科目登録別やコース登録制あるいは専攻科におい一定の単位を修得した場合に、学位授与機構に申請をして、審査を経て、学士の学位が授与される、こういう仕組みになっております。そこで、学士を授与された場合に、実際その効果はどうなのか。例えば公務員の採用試験おい大学卒と認定をされるのか。人事院の規則では、人事院が認める学歴、免許等の資格ということでいろいろ書いておりますけれども、今回の学位授与機構による学士についても適用されると考えてよいのか。また採用されてから、例えば数年を経て学士の資格を得た場合は、これはどういうふうに取り扱われるのか。この点についてお答えをいただきたいと思います。
  98. 前畑安宏

    前畑政府委員 御指摘の、例えば国家公務員の採用について申し上げますと、採用の前提となります国家公務員試験の受験資格については、年齢制限があるだけでございまして、学歴については問うておりません。ただ、先生先ほど指摘がありましたように、学士の学位を取得したいというのではなくて、大学卒の資格を取得したいというのが一般ではないかということでございましたが、まさしくこの学士を称号から学位に変えまして、大学卒業者以外の者に学士という学位を出せるように制度を改めさせていただくということの一つの趣旨は、大学を出ない人たちについて、いわば大学卒業資格を付与するということにつながるわけでございます。御提案させていただいております法律案の附則におきましても、関係法律の若干の改正がございますが、従来は、例えば司法試験法におきましても、第一次試験が免除される資格として、「学士の称号を得るのに必要な」云々と書いてありましたのは、今回これが「学士の学位」というふうに改まることになります。そういたしますと、短期大学卒業あるいは高専卒業あるいは大学中退の人が学士の学位を取得することによって、司法試験法の上では大学卒と同様の資格を取得をする、こういうふうな効果を発生をするわけでございます。ほかにも関連をいたしまして、統計法における統計官、統計主事へあるいは免許法における基礎資格等々の関連がありまして、学士の学位を与えることによって、いわば大学卒の資格を認定をするという効果につながる、このように考えております。
  99. 高木義明

    高木委員 さらに、地方自治体では一体どうなってくるのか、どういう取り扱いがなされるのか。あるいはまた、民間企業おいてはどうなるのか。民間企業におきましては、この取り扱いはさまざまになると思いますけれども、そういう学士の授与が社会的に公正に評価されないとするならば、この制度というのは、その申請者も非常に少なくなってしまうのではないか、こういうふうに思うわけであります。したがいまして、そういうことについてどう考えており、民間企業等に対しましてはどういう指導を行っていくのか、お答えをいただきたいと思います。
  100. 前畑安宏

    前畑政府委員 地方自治体におきましても、それぞれ地方自治体の公務員の採用ということで試験を行っておるというふうに承知をいたしておりますが、その中でも大学卒業の資格を要求しておるものがございますれば、この学位授与機構によって学士の学位が与えられれば、それに相当するような取り扱いがなされることを期待をいたしております。  民間企業等につきましては、今先生指摘のとおり、それぞれの企業等の御判断ということになります。  いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように、従来大学卒業者が独占をいたしておりました学士の称号ということによって、関係法律が「学士の称号を有する者」について、こういう資格を付与するあるいはこういう資格の基礎資格にするというような定めが、今回御提案いたしております法律によりまして、「学士の学位を有する者」と改めることになりますので、そういたしますと、大学を卒業しないでも、学位授与機構おいて学士の学位を取得をすれば、従来の大学卒と同様の資格を取得するということで、それなりの効果があろうかと思います。  また、よく言われることでありますが、放送大学の卒業者等のお話を承りますと、現在、学士の称号でございますが、持っていない人にとっては大変なあこがれである。苦労して卒業してみれば、ああ学士というのはこういうものかということでありますけれども、持っていないときは大変なあこがれであったということであります。幾つかの新聞論調等でも、生涯学習の観点からして、こういったふうなことで、生涯学習によって学士の学位を取得する道ができるということは大変な励みになるであろう、こういうような評価もちょうだいいたしておるところであります。
  101. 高木義明

    高木委員 この学士の学位の授与につきましては、一朝一夕にそれが一つの評価となってあらわれないということは重々私も承知をいたしておりますが、こういうことがあり、しかも、それが社会的に正当に評価されてこそ初めてこの趣旨が生きるわけでございますので、とりわけ地方自治体あるいは民間企業に対しては、文部省としての趣旨を十分徹底をさせて、そしてそれを積み上げていく努力も必要ではないかと思いますけれども、その辺の努力につきましてどのようにお考えでありましょうか。
  102. 前畑安宏

    前畑政府委員 御指摘の点は大変難しい問題でございまして、学歴社会あるいは資格社会ということについての御批判もあるわけでございます。新聞の論調等でも、こういった制度をつくるのはいいけれども、それが学歴社会あるいは資格社会につながらないようにする必要があるという御指摘もいただいております。この学位授与機構における学士の学位の授与ということが適正に行われることによって社会的な定着ということを考えるべきではなかろうか、このように思っております。
  103. 高木義明

    高木委員 次に、法六十八条の二、学士の学位の授与について、今回の改正案では、その資格として、学校教育法第六十八条の二で、一、短大卒業者、二、高専卒業者、三、上記に準ずる者、こういうふうになっておりますが、この三の上記に準ずる者とは具体的にはどういう者を指すのか、こういうことについてお伺いしたいわけであります。  短大、高専レベルの学校あるいは研修施設としては、現在、御承知のとおり、専修学校や省庁の研修施設、例えば労働省におきましては職業訓練短期大学校、厚生省におきましては看護学校などがありますが、これらの学校あるいは研修施設は、この制度に該当しないか、しないとするならば、一体なぜしないのか、その理由についてもお示しいただきたいし、また将来に向かってはどうなのか、この辺の考え方をお示しいただきたいと思います。
  104. 前畑安宏

    前畑政府委員 学位授与機構が学士の学位修士博士学位を授与するという制度の創設をお願いいたしておるところでございますが、基本的に学士の学位について申し上げますと、それが適正な教育成果の評価でなければならないということがまずございます。先ほどもその学位の評価という問題がございましたが、何よりもまず、なるほどあれが学位授与機構が出す学士かという社会的な評価を定着させることが大事であろうと考えております。そこで、その要件につきましても、法律でもって御提案させていただいておりますように、短期大学もしくは高等専門学校といった組織的、体系的な教育を受けた、その基礎の上に一定のさらに体系的な教育を受けたことを要件とさせていただいております。「又はこれに準ずる者」といいますのも、現在のところ念頭にありますのは、大学を二年で中退した者あるいは外国の短期大学を卒業した者、こういうふうなことで考えさせていただいておりまして、これを発足当初からみだりに広げるということにつきましては問題があろうかと考えておるところでございます。  なお、この機構は、同時に「学位の授与を行うために必要な学習の成果の評価に関する調査研究を行うこと。」といたしておりますので、今後この機構で今先生指摘のような教育機関における学習成果の評価のあり方についても調査研究を進めていきたい、このように考えているところでございます。
  105. 高木義明

    高木委員 専修学校の件でございますが、専修学校の専門課程は在学生徒約五十六万人、新規高校卒業者の一三・四%を占めておる。これは短大の在学生約四十六万人、同進学率の一二・四%を上回っておりまして、今や高等教育機関の重要な一翼を担っておるわけであります。これは既に御承知のことでございまして、こういう専修学校の占める地位、役割というものも、今では本当に大きなものがあるわけでございます。したがいまして、専修学校も短大と同じように扱ってはどうかと私は思うわけですが、この点についてどうですか。お答えいただきたいと思います。
  106. 前畑安宏

    前畑政府委員 大学審議会の二月八日の答申の中で、大学以外の教育施設における学習成果について、それが大学教育に相当する一定水準以上のものについて、各大学教育上有益と判断した場合には、その責任においてこれを評価し、自大学の単位認定の対象とする制度を新たに導入するという御提案がございます。そして、その単位認定の対象となるプログラムにつきましては、今先生指摘の専門学校のプログラムというものも一例として掲げられております。今後、この制度を私ども大学設置基準の改正によりまして創設をさせていただきたい、こう考えておりますが、創設されましたこの制度によりまして、各大学がどのように単位認定をしていくだろうか。そういう状況も見定めながら、先ほど申し上げました学位授与機構における調査研究部門において引き続き調査研究をさせていただきたい、このように考えておるところでございます。
  107. 高木義明

    高木委員 さらに、各省庁関連研究施設、この中にも最近では大変内容充実したものもたくさんございます。したがって、私はそういうものも十分配慮をしていいのではないかと思うわけであります。  例えば、先ほども申し上げましたように、労働省管内では職業訓練短期大学校、これは全国で十九校ございます。そして、今全国各地で増加をしておりますいわゆる情報処理技能者養成施設、コンピューターカレッジという名前で今普及をしておるわけでございますが、こういったコンピューターカレッジなどにつきましても、この制度にのせていった方がいいのではないか、こういうふうに私は思いますが、その点についてもあわせて御見解を賜っておきたいと思います。
  108. 井上裕

    ○井上国務大臣 各省庁設置教育施設、特定機関の職員の研修や訓練を行うなど、学校教育と異なる個別の行政目的あるいはその使命のもと設置されているものなどあり、これに学校教育体系におい学校と同様の位置づけを与えることは、今の制度、目的に照らし極めて困難であります。しかし、その中に大学大学院と同等の水準の教育研究組織的、体系的に行っているものはございます。これらの施設の修了者について、その学習の成果が社会的に評価されることが生涯学習体系への移行の観点から、今先生おっしゃるように、望ましい、私はこのように思います。  このような考えのもとに、今回学位授与機構による学位授与制度を創設することになりました。大学また大学院に相当する教育を行う各省庁大学等の修了者、先ほど申しました農林省関係の水産大学校あるいは労働省関係の職業訓練大学校あるいはまた運輸省関係の気象大学校、その水準に応じて博士あるいは修士、学士の学位の授与の道を開く。今おっしゃいましたように、広く一般的に各省庁所管の教育施設について、学校教育法体系において、その履修の成果を評価することについては、私ども今後の課題である、このように思います。  学位授与機構おいて、それらを含む高等教育段階の学習成果の評価のあり方、これにつきましては、我々これから調査研究を進めていきたい、このように思います。また、大学審議会おいても今後検討が行われる、こういうことを期待いたしております。
  109. 高木義明

    高木委員 私が先ほど例を出しました問題につきましては、学校教育の体系の枠外でございまして、それは今日段階すごく難しい問題も多々あるかと思いますが、要は、生涯学習という観点からこの問題が論じられるべきでございまして、本当にそれと同様の評価をされるような社会風潮、そしてまた処遇、こういうこともございますので、私が先ほど申し上げました御要望につきましても、ぜひ十分配慮していただきますように御要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  110. 臼井日出男

    臼井委員長 これにて、本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  111. 臼井日出男

    臼井委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。山原健二郎君。
  112. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、日本共産党を代表して、国立学校設置法及び学校教育法の一部を改正する法律案の反対討論を行うものであります。  岐阜大学に医療技術短期大学部の併設、小樽商科大学短期大学部並びに岐阜大学工業短期大学部を廃止して学部の夜間主コースに転換を図ることは賛成であります。  しかし、学位授与機構の新設は、学校教育法上の大学ではない防衛大学校、防衛医科大学校などの修了者に学位授与の道を開くもので、教育基本法、学校教育法上問題のある中身を持っています。さらに、同機構は、学問、研究の自由、管理運営上の自治が保障されず、こうした第三者機関による学位の授与は、学問に対する介入や統制に道を開く問題も含んでおり、その新設には反対であります。  奈良先端科学技術大学院大学設置は、企業丸抱えの寄附講座を多数開設することを予定しており、大企業奉仕が顕著であり、国民のための大学院とは言いがたいと考えております。  以上の点から本法案に反対するものであります。
  113. 臼井日出男

    臼井委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  114. 臼井日出男

    臼井委員長 これより採決に入ります。  内閣提出国立学校設置法及び学校教育法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  115. 臼井日出男

    臼井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  116. 臼井日出男

    臼井委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、木村義雄君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党の四党共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。吉田正雄君。
  117. 吉田正雄

    吉田(正)委員 私は、提出者を代表いたしまして、ただいまの法律案に対する附帯決議案について御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     国立学校設置法及び学校教育法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び関係者は、次の事項について特段に配慮すべきである。  一 学位授与機構の運営に当たっては、学位認定の基準、方法を明確にし、学位の水準の維持に努めること。また、学位認定に当たる教授は常に学問研究の第一線にある者を充て、併せて実質的な学位認定ができるだけの体制の整備を行うこと。  二 大学における学位授与あり方を改善するとともに、社会人が容易に大学学位論文審査を申請できるようにすること。また、このため、論文博士の認定に当たる大学教授確保とその待遇の改善に努めること。  三 先端科学技術大学院大学については、その目的を達成するための教育研究組織及び施設・設備等の整備に努めること。また、新構想大学院の管理運営に当たっては、大学の理念を尊重し、その教育研究の目的が十分に生かされるように努めること。  四 高等教育に対する新たな時代の要請とその現状にかんがみ、大学大学院教育研究体制のより一層の充実を図るため、財政措置を含め必要な諸条件の整備に努めるとともに、研究者養成に資するための大学院における研究指導体制の充実整備に努めること。  五 大学院学生及び大学院博士課程修了者の現状にかんがみ、大学院学生について若手研究者としての処遇、位置付けについて検討を行うとともに、奨学金や日本学術振興会の特別研究制度の拡充を図り、また、学位授与の円滑化を図るための積極的な施策を講ずること。  六 大学の学部等の改組、新設に当たっては、大学の意向や地域社会の要請を勘案するとともに、現在進行しつつある大学入学者の急増とその後の急減に適切に対応するための必要な諸条件の整備に努めること。  七 大学入学者選抜のあり方については、受験生の立場に配慮しつつ、一層の改善のために最大の努力をすること。  八 国立大学附属病院の看護婦等についてその要員の確保を図るため、勤務条件の改善に努めるとともに、併せて医療機器等の整備充実に努めること。 以上でございます。  その趣旨につきましては、本案の質疑応答を通じて明らかであると存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  118. 臼井日出男

    臼井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  119. 臼井日出男

    臼井委員長 起立多数。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。井上文部大臣。
  120. 井上裕

    ○井上国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。     ─────────────
  121. 臼井日出男

    臼井委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 臼井日出男

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  123. 臼井日出男

    臼井委員長 次回は、来る十三日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三分散会