○
吉田(正)
委員 これは
先ほども申し上げましたように、
学位授与機構のところでさらに詳しくお聞きしたいと思うのですけれ
ども、既にこの
法律が提案され、
大学が
設置をされていくという
時点で、どういう
博士を与えるのか、今後
大学審議会の
検討にまつということでは、いわゆる泥縄式的な感を否めないわけです。これはまた後ほど触れます。
そこで、次に
お尋ねをいたしますが、この
施設設備をどのように
充実させていかれるのか、お伺いしたいと思うのです。
大学審議会の
答申、「
大学院の
整備充実について」の中で、
財政措置の
充実については、次のように述べているわけですね。
大学院に対する
財政措置は、国際的に見ても、あるいは
民間企業の
研究所等における
研究投資に比べても、十分なものとは言えない。特に、
教育研究経費、
施設設備等については、
大学院の高度な
教育研究を支える上で、また、
教育研究における
国際交流を進める上でも不十分なものとなってきており、
大学における
研究後継者の
確保、優秀な
大学院学生の
確保にも
支障を生じつつある。
このような
状況にかんがみ、広く
国公私立の
大学院全体を通じ、
大学院教育に
配慮した
教育研究経費、
施設設備費等の
充実を図るなど
我が国大学院の
基盤的整備に努める必要がある。
というふうに述べてあるのですけれ
ども、これはこの
大学審議会が
指摘するまでもなく、もう前々から耳にたこができるほど言われてきたことであります。今さらという
感じがいたすわけです。しかし、考えてみますと、実は、これは
文教行政の枠組みの中ではどうにもならない、政治の
基本姿勢、
国家財政、
予算編成の
基本的やり方に関する非常に根深い、解決困難な問題だということが言えると思うのです。それだけに、とりわけ
教育、
学術、文化に
関係する
人たちの積極的な努力が要請をされるわけです。
一例を申し上げますと、例えば、今各
学校では
環境問題と絡んでアスベストの問題が出ておるのですけれ
ども、これは
東大の場合ですけれ
ども、八八年度から
東大の吹きつけ
石綿処理が開始され、これまでに一割弱が除去された。しかし、いまだに膨大な吹きつけ
石綿、
岩綿が残されています。昨年七月、
東大の
総長補佐は、「吹きつけ
石綿撤去は
基本的には
部局の
予算で行なう、小
部局は
本部予算で撤去する」というふうに
関係者、
教職員に述べております。
石綿吹きつけが最も多い
工学部では、吹きつけ面積が約二万五千平米と言われております。
工学部の
撤去工事実績は、一昨年度二百六十三平米、昨年度が当初予定四百七十九平米、火事による
追加工事を入れて五百三十一平米。毎年約五百平米しか撤去してないわけでありまして、全体を撤去するのには五十年もかかるという
状況です。
これに対して
文部省はどういうふうに答えているかといいますと、「
小中高校の吹きつけ
石綿撤去はほぼ終わりつつあるが、
国立大学は非常に遅れている。これは
施設整備費の
予算要求にあたって、
大学当局が
石綿撤去より建物の新改築などを優先的に要求するからだ」「このままでいいとは思わない」というふうに
関係者には
文部省は答えておるわけです。しかし、
石綿撤去というのは、職員、
学生の
職場環境、
学習環境の問題でありますし、もっと抜本的な対策を講ずる必要があると思うのですが、これは一例なんですね。そういうことで、とにかく今
大学、
大学院の
施設設備費というものが非常に少ないということは、これは従来からも
指摘をされてきております。
また、これは
東大の
工学部なんですが、
先ほども
教職員定数をちょっと
お尋ねいたしましたけれ
ども、
東大工学部の場合、
講座の
定員は
教授一人、
助教授あるいは講師一人、
助手一ないし二人、技官一というのが大体の
実態になっているわけなんですね。そし
学生が八人、院生が
修士一
学年四人ずつで二
学年で八人。それから
博士が二人という大体一
講座の構成になっておるということで、財政的にはどうなっておるかといいますと、
光熱水費等そういうものを全部差し引いた一
講座に割り当てられる
研究費というのは約三百万円で、十年間ほぼ変わっていないという
実態だそうであります。したがって、卒論テーマは二人一組にして四十万円
程度しかかけられないというのが今の
東大工学部の
講座の
実態だということを私は直接
先生からお聞きをしたのです。こんな貧弱な
予算では、本当に高度のすぐれた
研究はできないし、そういう体制をつくることはほとんど不可能だろうということを言っておるのですね。
それだけに、昨年できました北陸の先端化学技術
大学院大学とか、今回の
奈良の場合には、まさに先進的な、あるいは従来の
大学院では果たせなかった大きな役割というものが比較的制約なしに建設をしていくことができるのではないか。そういう意味では非常に大きな期待をいたしておりますが、従来の
教育予算の
考え方では、結果的にまた寂しいものになっていくのじゃないかなという心配もいたしております。
そこで、
お尋ねをいたしますけれ
ども、土地がどの規模でどの
程度の経費がかかるのか。それから建物、施設等にどれだけの
予算がかかるのか。それから、特に理工系で最も重要なのは、単なる敷地だとか建物の大きさではなくて設備ですね。とりわけ先端科学技術
研究に必要な機器、これにいかに金をかけるかということにかかってくるのではないかというふうに思うわけでありまして、主要な設備、機器の
予算というものが年次
計画で進行していくと思いますけれ
ども、大体どの
程度のことを考えて
おいでになるのか。それで完成年度は大体どの
程度と予想されておるのかということ。それから
施設設備の設計等は、担当
教授が決まってから本来設計をしたり機器の選定をするというのが一番望ましいわけです。しかし、決定してからでは
開学との
関係でおくれるというふうなことで困るという場合も出てくるのではないかと思いますので、
奈良の場合、実際にはどういうやり方で
施設設備というものをこれから整備されていくのか。その点をお聞かせ願いたいと思います。
これは、私は非常に重要なことだと思いますのは、例えば、この前千葉
大学の医学部の機器購入をめぐって問題が出ました。したがって、一
教授が単独にそういう
施設設備について決めていくというのではなくて、そこの
研究室なり
教授陣の合意に基づいて合理的な
計画、そして機器購入というものを行うべきではないか。そうすれば、そこには汚職等が発生しないだろうというふうに思っておりまして、その点も含めて、現状ではどのようにお考えになっておるか、お聞かせ願いたいと思います。