○藤原
委員 森林二法の審議に当たりまして、与えられた時間はわずかでございますので、数点に絞りましてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
林政審の答申の中にも
自己収入の確保ということをうたっておるわけでありますが、この審議を通じまして、また
内容を見ましても、この
自己収入確保の
努力、こういうものが余り前面にといいますか、そこらあたりのことがどうも薄いのじゃないか。要員規模の適正化とか組織機構の簡素化を声高に叫んでも、収入増の
努力というものがどうも
感じられない、こんなことを痛感いたしまして、ちょっと申し上げたいと思うのであります。
我が党の
林業政策におきましては、木材の流通のあり方について、「生産地において市場情報が的確に把握でき需要に即応した造材・加工を機動的に行うとともに、集積・配給
機能も十分発揮されるよう流通の高度化を推進する」、こういうように主張しているわけでありますが、このような
趣旨を踏まえまして、今日まで、衆参
農林水産委員会を通じまして、また
予算委員会等で昭和五十八年ごろから、私がちょっと調べただけでも七回ぐらい、農水省、要するに
林野庁に提言をいたしてきたところであります。昨年の十一月二十一日にも我が党の東
委員が当
委員会におきまして取り上げまして、いろいろ提起をいたしておりました。
林野庁の皆さんも十分に御存じのことと思うのでございますが、要約して紹介させていただきます。
東
委員は、これまでの
我が国の
林野行政は、木を育て山をつくることに熱心であっても、木材の流通、加工、販売面への取り組みは弱かった、したがって、山で生産された木を商品性の高い製品として販売する
努力が甚だ希薄であったという見地から、以下のような具体例を挙げました。その具体例というのは、「
山村のルネサンス」という愛媛大学の村尾
先生の著書を紹介して述べられておるわけであります。
その概要だけ申し上げますと、秋田には有名な天然杉があるが、その資源はもう底をつきつつある。しかし、その一方で、天然杉ほどはないにしても、造杉と呼ばれる、これまたすばらしい人工杉が豊富にある。ところが、この造杉は、従来、ぬきの原料として安く販売されており、五十八年二月から三月までの価格で立方あたり原木五万円であった。そこで、この立方あたり五万円のぬき、これを東濃檜という銘柄化に成功した。すぐれたノーハウを持つ業者の方が、ぬきではなく柱として製品化して販売した結果、同じ樹種、同じ木であるにもかかわらず、五万円のものが上小節で十万円、二面無節で二十五万円、四面無節で四十万円、実に二倍、五倍、八倍という高い値段で販売された。また、青森ヒバも、長い間土台角として広く販売されていたけれ
ども、そこで、これも同じ業者が同じ手法で柱として製品化したところ、これまで八万円であったものが十四万円、三十八万円、六十五万円で販売できた。こういう実例が紹介されているわけであります。
これは情報化の発達した今日では一般的には
考えられない現象ではないか。同じ品物がこれほど多様な価格で、しかも、大変な格差のある価格で販売されている。しかし、この一物多価という現象が今日の成熟した
我が国経済の中で厳然として存在している。
林野庁長官、この現実をどう
考えるか。
こういう提起がありましたが、私
どもの今日までの提起に対して、どうこれを受けとめて
努力してきたのか、お伺いしておきたいと思うのです。時間がございませんから、ずっと述べまして、最後にまとめて御答弁いただきたいと思います。
さらにまた、なぜこうした一物多価という前近代的な市場
状況にあるかということを、造杉を例に挙げて指摘しておきたい。
現在、大都市を中心として全国的に、柱材への消費者ニーズは三メートルとか四メートルがメジャーサイズとなっている。それにもかかわらず、造杉を原木として出荷する際の採材寸法の多くは三メートル六十五センチのままである。三メートル六十五センチでは、四メートルの柱をとるには足りないし、三メートルの柱をとるには六十五センチを切り捨てなければならない。こういうばかげた話がある。しかも、造杉は立派な柱として採材できる代物であるにもかかわらず、建物の壁の中を貫くぬきという形で出荷している。このぬきという製品のように、人目につかない
部分に使われるものを一般に羽柄材と呼んでいるが、
林野庁はこういう羽柄材には値段の安い外材をもって充当するよう指導すべきではないか。造杉のようなすぐれた国産材を充てるのはもったいないのではないか。にもかかわらず、あえて羽柄材として出荷するから価格も外材と同等の価格でしか販売されないのではないか。
では、このぬきとしての三・六五材が、例えば大消費地である関東の木材市場で歓迎されているかというと、決してそうではない。しかるに、歓迎されていないという事実を、造材し加工している生産地の人々はほとんど知っていない。ただ、ほとんどの人が昔からの採材方式を惰性で続けているにすぎない。私の手元にも、
林野庁からいただきました「東北・北海道における採材寸法の実態」という資料がございますが、これを見ますと、造杉の採材のあり方はここ数年ほとんど
改善されていないことがわかる。我々が
質問するたびに前向きに取り組むという答弁がなされておるのですが、実態は一向に変わっていないということを指摘せざるを得ないと思うのです。これは真剣なお取り組みをいただき、確かに今までの古い因襲といいますか壁があることはわかりますけれ
ども、ぜひこれを打ち破って新しい
時代に即応した形に進めていただきたいと思うわけであります。
また、青森ヒバや北海道のエゾ・トドマツについても全く同じことが指摘されている。殊に、エゾ・トドマツには何百年物というすばらしい素材が多く賦存しているにもかかわらず、これが一般的には大した素材ではなく、価格も安い素材にすぎないと思われている。しかし、これも大変な誤解である。ちなみに、このエゾ・トドマツの採材は三メートル六十五、二メートル七十三のみで、全国のメジャーサイズの三メートル、四メートルでは全然採材されていない。需要動向に完全に背を向けている。ここに問題があると言わざるを得ない。したがって、たとえ
国有林は収支
状況が厳しいとはいえ、こうした見地からの取り組みをいいかげんにしたままでいたずらに国の
一般会計の応援を求めるべきではないのではないか、こう言いたくなるような現状と思うのであります。しっかりした対応をするならば、現在の青森ヒバ、造杉、エゾ・トドマツの販売量から推計して、
国有林の収支を控え目に見積もっても年間百億円を超えるほどの
改善ができると私は
考えるものでありますけれ
ども、いかがお
考えでしょうか。
そこで、
林野庁はこうした対応に全力を挙げるべきだし、中でも青森ヒバや造杉は三・六五での出荷、あるいは北海道のエゾ・トドマツの二・七三あるいは三・六五での出荷のあり方は可及的速やかに改めるべきであり、そのためにも具体的な目標を決めて取り組むべきではないか。例えば、三年から五年の後には、とりあえず三・六五や二・七三材は全販売量の中で三、四割程度に絞る、また、できるだけ早い
機会に限りなく全廃に近づけていく、こういう目標を掲げて
努力するということが必要ではないか、こう思うのであります。
今日までも、実際に局によりましては
努力をして
成果をおさめた実例も私
どもは聞いておりますが、それが継承されない、継続性がない、こういうことも私
ども痛感をいたしておるわけでありますが、この点についてぜひひとつ御
努力いただきたい。愛媛大学の村尾
先生や我が党の指摘によって、最近は
林野庁としても多少は前向きに取り組むようになっておりますけれ
ども、まだまだ物足りないし、各営林局にはこうした販売上の諸問題を
改善するために
事業部とか利用課があるわけであります。消費者ニーズに応じた商品づくり、こういうことに欠けていると言わざるを得ない、こう思うのです。
なお、こうした改革を実行するに当たっては、関係する
国有林材の受け皿となる地元の製材業者の理解、協力がぜひとも必要であるが、こうした改革を遂行することが地域の林産業、ひいては
林業の大変な活性化に通ずると確信します。また、
政府は、こうした
成果を発揮することこそが
国有林が果たすべき大きな役割の
一つである。
国民にこたえる
事業改善のため、また使命を果たすためにも真剣な討議をいただきたいと思うのでありますが、これらのことにつきまして、何度も言っておりますから御存じのこととは思うのでありますけれ
ども、長官、
大臣から決意のほどをお伺いしておきたいと思います。