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石橋(大)
委員 いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、民間
事業体での死亡事故件数の発生率は非常に高いわけですから、この上、さらに死亡災害事故まで請け負わせないように鋭意ひとつ一段の
努力を
お願いしたいと思います。
次に、青年労働者の確保対策、若年労働力をどういうようにして確保するか、どこの
林業地帯でも非常に深刻な問題です。このことに絞って幾つかまとめて申し上げたいと思いますので、まとめてひとつお答えをいただきたいと思います。
国民の
森林に対する多様なニーズにこたえる
森林整備を進めるためにも、
国産材時代の到来を目指して
林業の
振興を図っていくためにも、優秀な若い
人たち、青年労働者をいかにして確保していくかが、伝統ある
林業地帯でも、また山村全体の活力を維持していくためにも、最も重要かつ深刻な問題だと私は先ほども申し上げましたが、今
考えております。
農林水産省の統計によって、最近の中学校、高校新規学卒者の農林水産業への就職
状況を見ると、昭和六十三年の数字ですけれども、新規学卒就職者数六十五万五千九百二名、
農業への就職者がそのうち三千九百八十二名、
林業への就職者がたったの二百名、漁業への就職者が九百九十二名。
ついでに、
林業について男女別を見ますと、男性が百五十五名、女性が四十五名ということになっていますから、出発点で既に深刻なお嫁さん不足を示す構造がここに歴然としていると私は思っています。
いずれにいたしましても、国土の七割を占める
森林、しかも
国民全体のために、良好な生存の
条件を維持していくために、ますます重要な
役割を期待される
林業への就職者が全国でたった二百人。それも現状のままだとますます減少の一途をたどって、やがては二けた台に低下していくのも時間の問題ではないか。極めて惨たんたる
状況と言わざるを得ないと思うのであります。
学校
基本調査によりまして全国の
農業高校の卒業者の進路を見ますと、昭和六十三年の卒業者四万六千九百三十人、うち就職者が三万五千百九人、農
林業就職者が二千百三十三人、
林業就職者はこの点でも何とたったの七十一人。他の高校も含めて全高校から
林業へ就職した者が二百人、こういうことになっているわけであります。せっかく
農業高校を卒業しても、
農業、
林業に就職した者合わせてわずかに二千二百四人、卒業者全体の五%にも満たない数字になっているわけであります。
昭和三十五年の
ピーク時には、
林業への就職者かそれでも六百六十六名ありましたけれども、その後毎年減少の一途をたどって、平成元年には六七名、およそ十分の一に激減しているわけであります。しかも、この中には
森林組合や営林署に就職して事務労働に従事をしている人も含むわけですから、山に入って現場で働いている者ということになりますと、さらに少ないと見られます。
こういう今までの推移に照らしまして、また、これから特に若年労働者、青年労働者をめぐって産業間の激しい争奪戦が
展開されることを
考えますと、先ほどから申し上げておりますように、よほど思い切った青年労働者対策を、
国有林、
民有林を含めて統一的に
考えておかないと、
森林・林野
事業の次代を担う人材は消滅せざるを得ないのではないかと心配をするわけであります。
社会党は、そういう
情勢を展望しながら、別に
森林労働法という独自の立法的裏づけを持って新たな
森林労働
政策を打ち出しているわけでありますけれども、ここでは
林野庁の今後の
森林・
林業労働
政策に対する若干の提言めいたことも含めて、以下五点について
質問します。
まず第一は、最近の若い
人たちの新しい勤労観ともいうべき意識の変化にどう
対応するのかという問題であります。すなわち、「労働よりも余暇、家庭面を」「貯蓄よりも消費を」「
仕事の内容よりも体面を」「責任、
使命感、昇進よりも単にその成果配分を求める」、こういう傾向が非常に強まっている。
製造業の
技術革新を担うことが期待される
技術系大学卒業者が、単に収入の高さに引かれて銀行や保険業などのサービス産業へ就職する傾向が非常に強まっている。いわゆる三Kと称される、汚い、危険、きついと言われる
仕事を敬遠する傾向などにどう対処するか、こういう勤労観の変化に対して、今後の
林業における青年労働者を確保するために
林野庁はいかなる
対応策を用意されているのか、これがまず
一つであります。
第二は、現在から将来にかけて
我が国の
森林・
林業にかかわる基幹的な労働者は、現在までのタイプと違って新しい型の労働者を必要としているではないかと私は思っているわけであります。労働者といいますとどうしても筋肉労働者のイメージがつきまとって、狭いタイプの労働者像を思い浮かべてしまうわけですが、私は、そういう意味でいうと、これからの新しいタイプの
森林・
林業に従事する労働者、従事者と言った方があるいはふさわしいかもしれない、こう思っておりますが、具体的にどういうことを
考えているかと申し上げますと、在来型の従事者は、主として
木材生産にかかわる造林保育、伐採運搬にかかわる、まあ筋肉労働者というわけではないのですが、どちらかといえば、オペレーター的な技能労働者も含めてブルーカラー的な労働者の概念が非常に強かったと思うのであります。
しかし、
森林に対する
国民の需要が非常に多様なものになってきている、そういうことからいいますと、新型の労働者、新型の従事者は、
森林の持つ多様な公益的な
機能、水源
涵養機能や
山地災害防止
機能、生活
環境保全機能、保健・文化
機能や
木材等生産
機能、こういう多様な
仕事を担えるような新型労働者、簡単に申し上げますと、高度な技能労働者であると同時に、
森林保全のための
技術者であり、また
国民に対する
森林文化教育の教育者でもある、こういうような労働者像が求められる段階に来ているのじゃないか、こう思うのであります。
こういう新型労働者が非常に重要になってきているということを前提に、優秀な青年労働者を確保するためには、やはり安定的な身分の保障と高給与の保障が必要ではないか。そのために、画期的な発想の転換と
政策の具体化が今必要ではないか、こういうわけであります。
〔
委員長退席、東(力)
委員長代理着席〕
そうはいっても、
国有林も
民有林も、
木材など
林業生産の収入によってそういう思い切った新たな
政策を具体化をすることはできないと私は思います。
森林の公益的な
機能の
発揮という点で言えば、
国有林も
民有林も重要な
役割を果たしておるわけですから、
森林の七割を占める
民有林の
役割も正当に評価して、統一的な
森林・
林業労働者政策の中でこれを
考える必要がある。良好な
森林を
整備すること、すなわち、空気、水、緑豊かな自然、国土の
保全など
国民の生存の
基本的条件を確保するための安全保障のための
政策の具体化という観点から、
国民的な合意の形成を図って、
一般会計の負担でそういう制度を創設すべきである、こういうふうに
考えます。
具体的に申し上げますと、
一つ目に、身分は公務員または公務員に準ずる常勤職員、安定的な身分保障をする。
二つ目に、給与は、消防職員や警察官並みに一般職公務員の一割か二割か高い給与を保障する。山の中で頑張るわけですから、それに僻地手当をプラスする。誇りと喜びを持って山で頑張ってもらう、こういう制度をつくる。
三つ目に、定数については、
国有林、
民有林を含めて、山林面積何ヘクタールに一人、こういうふうな適度な数字を出してちゃんとした
財政措置をする。今の
森林労働者全部をやったって十二万人ですから、
考えようによっては、自衛隊員は二十四万人いるわけですから、できない話ではないのではないか、こういうふうに思っています。
どちらにしても、そういう
状況の中で、まず
国有林の従事者について真っ先にそういう新型の労働者を確保し、
民有林を含めて全体的な先導者とての
役割を
国有林野事業が担っていく、こういうことが必要になっているのではないかと思いますが、この点はどうか。
第三に、若い
人たちが農山村から都市へ流出していく
理由の中には、山村では文化的な機会に恵まれないということがあるのではないかと思っているわけであります。そういう意味で、休暇を利用して東京か大阪に年に何回か何日間かは出て、都会の人と同じような芸術、文化に触れられるような機会を若い
人たちのために
考えたらどうか。
四つ目に、子供の教育の問題に関連をして、山の中へ入る、子供の教育について機会に恵まれない、やはり山はやめておこう、こういう傾向もあるわけですね。そういう意味で私は、山で頑張ってもらう人々の子弟のために、せっかく
国有林も
累積債務を解消するために財産処分をして所有の土地も売ろう、こういうようなことも出ているわけですが、売るよりも前に、一部はそういうところに少し質のいい学生寮というかマンションでも建てて、山で頑張っている
人たちの子弟に優先的に利用してもらう、そういうことを
考える必要があるのではないか。
最後に、これはちょっと余談ですが、
林野庁長官に伺います。
この間私は、島根県で営林署の皆さん二、三十人といろいろ懇談する機会がありました。私は、農山村でお嬢さん不足というのは非常に深刻な問題だということは知っていましたが、れっきとした
国有林の正規の職員に非常に深刻なお嫁さん不足がある、こういうことを初めて知らされました。全国的にはどうか知りませんが、体格も立派だし、背も高い、頭もいいし、なかなか人間もできておる、そういう
国有林の若い
人たちに嫁さんがないということは、これはこれで非常にゆゆしい問題である。
林野庁長官、特にそういう意味では、長官として若い
人たちの悩みにどうこたえるか、このことをあわせて伺って、青年労働者対策について、以上お答えをいただきたいと思います。