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1991-02-14 第120回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月十四日(木曜日)     午前九時四十分開議  出席委員    委員長 大原 一三君    理事 金子徳之介君 理事 東   力君    理事 二田 孝治君 理事 穂積 良行君    理事 宮里 松正君 理事 石橋 大吉君    理事 日野 市朗君 理事 藤原 房雄君       石破  茂君    岩村卯一郎君       上草 義輝君    内海 英男君       北川 正恭君    久間 章生君       久野統一郎君    田澤 吉郎君       保利 耕輔君    星野 行男君      松岡 利勝君    三ツ林弥太郎君       御法川英文君    簗瀬  進君       柳沢 伯夫君    有川 清次君       志賀 一夫君    田中 恒利君       鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君       前島 秀行君    目黒吉之助君       元信  堯君    倉田 栄喜君       西中  清君    藤田 スミ君       小平 忠正君    阿部 昭吾君       亀井 久興君  出席国務大臣         農林水産大臣  近藤 元次君  出席政府委員         農林水産政務次         官       杉浦 正健君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         農林水産省農蚕         園芸局長    安橋 隆雄君         農林水産省畜産         局長      岩崎 充利君         農林水産省食品         流通局長    馬場久萬男君         農林水産技術会         議事務局長   海野 研一君         食糧庁長官   浜口 義曠君         林野庁長官   小澤 普照君         水産庁長官   京谷 昭夫君  委員外出席者         環境庁自然保護         局野生生物課鳥         獣保護業務室長 小川 康夫君         文部省学術国際         局研究機関課長 佐々木正峰君         農林水産委員会         調査室長    西島  勝君     ───────────── 委員の異動 二月七日  辞任         補欠選任   堀込 征雄君     串原 義直君 同日  辞任         補欠選任   串原 義直君     堀込 征雄君 同月十四日  辞任         補欠選任   今津  寛君     簗瀬  進君 同日  辞任         補欠選任   簗瀬  進君     今津  寛君     ───────────── 二月十四日  米の市場開放阻止に関する請願(木島日出夫君紹介)(第一〇二〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農林水産業基本施策)      ────◇─────
  2. 大原一三

    大原委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、近藤農林水産大臣から、農林水産業基本施策について発言を求められておりますので、これを許します。近藤農林水産大臣
  3. 近藤元次

    近藤国務大臣 農林水産委員会の開催に当たりまして、私の所信一端を申し上げます。  農林水産業及び食品産業などの関連産業は、国民生活にとって最も大切な食糧等安定供給のほか、地域社会の活力の維持、国土自然環境保全など、我が国経済社会発展国民生活の安定を図る上で、不可欠な役割を果たしております。また、農山漁村は、農林水産業展開される場であるほか、個性豊かな地域文化をはぐくみ、国民が健康的な余暇を楽しむ空間として、重要かつ多面的な機能を担っております。  したがって、我が国経済社会の調和ある発展と豊かでゆとりある国民生活実現していくためには、農林水産業関連産業の健全な発展と、農山漁村活性化を図ることがぜひとも必要であると考えております。  我が国は、国土が狭いという制約はあるものの、温暖多雨な気候に恵まれ、南北に長く変化に富んだ自然条件にあります。また、消費水準の高い大きな国内市場、すぐれた農林漁業者農林水産技術など、農林水産業関連産業発展を図る上で有利な条件を備えていると考えております。  私は、このような特性を生かし、持てる力を遺憾なく発揮すれば、我が国農林水産業関連産業発展させていくことは十分可能と確信をしております。  このため、昨年一月閣議決定した「農産物需要生産長期見通し」などを指針とし、より一層の生産性向上を進め、国内での基本的な食糧供給力確保を図りつつ、良質かつ安全な食糧安定供給に努めるとともに、活力ある農山漁村実現を図ることを基本として、各般施策を講じてまいります。  以下、平成三年度における主要な農林水産施策につきまして申し上げます。  まず、農業振興についてであります。  第一は、構造政策推進であります。  将来に向かって展望の持てる、活力ある農村、足腰の強い農業確立するため、新規就農者を含め、若く意欲にあふれ、経営感覚技術にすぐれた農業後継者担い手育成確保に努めます。また、土地利用型農業経営規模拡大生産性向上を図るため、農地貸し借り等による農地流動化生産組織育成促進します。  農業農村整備につきましては、生産基盤整備とともに、農村生活環境整備等にも重点を置いて推進してまいります。  第二は、需要動向に応じた農業生産展開することであります。  国際化高齢化の進展、国民ニーズ多様化など、今後の農業生産を取り巻く環境変化に的確に対応できるよう、先進的な取り組み推進してまいります。  また、米の需給均衡を図りつつ水田農業体質強化促進するため、引き続き、水田農業確立対策を実施します。  畜産につきましては、本年四月からの牛肉輸入自由化に対処するため、新たに肉用子牛等対策を実施するなど、総合的な対策推進してまいります。  第三は、農山漁村活性化であります。  近年、首都圏への一極集中が進む中で、緑と水に恵まれた農山漁村を、国民共通のふるさととして位置づけ、ゆとりと潤いのある生活空間として整備することが必要となっております。  このため、地域特性を生かした農林水産業振興を図るとともに、集落排水道路などの生活環境整備推進します。また、豊かな地域資源を活用し、すぐれた景観を有する農山漁村環境整備を進めるとともに、都市農山漁村との交流を進め、新たな共生関係を築いてまいります。  第四は、技術開発普及推進であります。  農林水産業食品産業における生産性飛躍的向上農林水産物食品の高付加価値化実現するため、バイオテクノロジーなど基礎的、先導的研究や、消費ニーズに対応した研究等開発普及推進します。  第五は、健康的で豊かな食生活の保障と、食品産業などの振興についてであります。  高品質で安全な食品に対する志向の高まりなど、多様化かつ高度化する消費者ニーズに対応できるよう、新たな食文化創造日本型食生活定着に努めるなど、消費者対策充実を図ってまいります。  また、食品産業などの関連産業につきましては、その体質強化を図るため、経営基盤充実技術開発推進等を総合的に進めます。さらに、食品流通の総合的な構造改善対策推進してまいります。  食糧管理制度につきましては、平成元年六月の農政審報告方向に沿って、国民の主食である米の需給及び価格の安定を図るという制度基本的役割を維持しつつ、その運営市場原理をより導入する等の施策を逐次推進していきたいと考えております。  このため、自主流通米については、その適正かつ円滑な価格形成が図られるよう、先般取引が開始された自主流通米価格形成の場の充実に向けて、最大限支援を行ってまいります。  このほか、以上申し上げた各般施策に則して各種制度資金内容充実させるとともに、農業災害補償制度の円滑な運営を図ります。  次に、林業振興についてであります。  林業につきましては、森林、緑に対する国民の要請にこたえ、緑と水の源泉である多様な森林整備と、来るべき国産材時代実現へ向けての条件整備を図ることが必要となっております。  このため、森林法制を見直しつつ、民有林国有林を通じ流域単位森林整備等計画的に推進する流域管理システム確立を図るとともに、森林整備五カ年計画策定推進します。また、このような考え方のもとに、林業生産基盤整備林業担い手育成確保国産材安定供給体制整備等各般施策を総合的に推進してまいります。  国有林野事業につきましては、国有林野事業経営改善大綱に則して、新たな経営改善対策全力を挙げて取り組んでまいります。  次に、水産業振興についてであります。  我が国水産業の健全な発展国民ニーズに対応した水産物安定的供給を図るため、漁業生産基盤整備資源管理型漁業推進や「つくり育てる漁業」の推進などにより、我が国周辺水域漁業振興に努めてまいります。また、沿岸漁業推進の中核となる漁業協同組合経営基盤強化と、水産物需給安定等に努めてまいります。  さらに、海外漁業協力の積極的な推進等による海外漁場確保に努めてまいります。  このほか、国産農林水産物の販路を拡大し、農山漁村活性化にも資するため、輸出促進を図ります。また、自然環境に大きく依存している農林水産業と密接な関連のある地球環境問題に対処するため、調査研究充実国際協力強化を進めるとともに、開発途上国東欧諸国への農林水産業協力を多角的に推進し、積極的に世界に貢献してまいります。  以上のような農林水産施策推進するため、平成三年度の農林水産予算編成に際しましては、今後の農林水産政策の基礎を築くものとして意を尽くしたところであります。  また、施策展開に伴って必要となる法制整備につきましては、今後、当委員会の場におきまして、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。  最後に、農産物貿易問題について申し上げます。  ガット・ウルグアイ・ラウンドにおける農業交渉につきましては、昨年十二月に行われた交渉終結のためのブラッセルにおける閣僚会議が、EC米国等の激しい対立により、個別事項検討に入ることなく延期されたところであります。  今後も引き続き、ジュネーブで交渉が続けられることとなっておりますが、私は、従来からの基本方針を踏まえ、世界最大農産物輸入国としての我が国立揚交渉結果に適切に反映されるように努め、我が国農業の健全な発展を図る上で遺憾なきよう、最大限の努力を傾注してまいります。  また、米国ECがそれぞれウエーバーや輸入課徴金輸出補助金を維持する中にあって、我が国は、ウルグアイ・ラウンド開始以降も種々の市場開放を進めるなど農業保護の削減に実績を上げてきたという事実について、諸外国に正しく認識されるよう、粘り強く訴えていきたいと考えております。  米につきましては、我が国における米及び水田稲作の格別の重要性について、諸外国の理解が得られるよう強く働きかけ、国会における御決議などの趣旨を体し、今後とも国内産で自給するとの基本的な方針で対処してまいります。  以上、所信一端を申し述べた次第でありますが、我が国農林水産業は、今、内外の社会情勢の著しい変化の中にあって、二十一世紀に向け新たな展望を切り開くための大きな転換点に差しかかっております。私は、次代を担う若い人々が、将来を見通しつつ、希望と誇りを持って農林水産業を営めるよう、「夢のある農林水産業確立と活力ある町づくり村づくり」を目指して、農林水産行政の総合的な展開全力を尽くしてまいります。  今後とも、農林漁業者を初め広く関係各方面の声に十分耳を傾けながら政策推進していきたいと考えておりますので、委員各位の一層の御支援、御協力を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)
  4. 大原一三

    大原委員長 次に、平成三年度農林水産関係予算について説明を聴取いたします。杉浦農林水産政務次官
  5. 杉浦正健

    杉浦(正)政府委員 平成三年度農林水産予算について、その概要を御説明申し上げます。  平成三年度一般会計予算における農林水産予算総額は、総理府など他省庁所管分を含めて、三兆二千六百五十八億円であり、その内訳は、公共事業費が一兆六千九百六億円、非公共事業費のうちの一般事業費が一兆二千二十億円、食糧管理費が三千七百三十二億円となっております。  予算編成に当たりましては、財政及び行政の改革の推進方向に則し、予算重点的かつ効率的な配分により各種施策充実を図り、農林水産行政を着実かつ的確に展開できるよう努めたところであります。  以下、予算重点事項について御説明いたします。  まず、農業施策に関する予算について申し上げます。  第一は、農業生産体質強化を目指した構造政策を積極的に推進することであります。  まず、若い意欲ある農業後継者担い手確保するため、方針策定研修交流組織づくり推進するとともに、農地の貸借、農作業の受委託等による経営規模拡大を図ります。また、農業農村活性化を目的とする農業構造改善事業を引き続き推進します。  さらに、農業生産基盤整備については、圃場の面的集積を図る等生産性向上を一層推進します。  なお、従来の農業基盤整備事業については、名称を農業農村整備事業に改め、農業生産基盤である農地条件整備と並んで最近重要性を増している農村生活環境整備国土防災保全にも重点を置いて事業充実を図ることとし、一兆六百九十一億円を計上しております。  第二は、需要動向に応じた高生産性・高品質農業育成することであります。  二十一世紀に向けて、新しい農業技術機械施設の積極的な導入等により生産性飛躍的向上高品質化を図り、今後の農業生産を取り巻く環境変化に的確に対応できる先進的な取り組み推進するなど、総合的な生産対策を実施するとともに、水田農業確立後期対策を着実に推進します。  また、農業が本来持つ環境保全機能のより一層の向上農業生産効率化のための技術確立を目指します。  一方、平成三年度からの牛肉輸入自由化に対処するため、新たに牛肉等関税収入特定財源とした肉用子牛等対策を発足させるなど、畜産についての総合的な対策を講じます。  第三は、農山漁村生活質的向上活性化を図ることであります。  このため、集落排水道路等都市に比べて立ちおくれている生活基盤整備推進します。  また、都市住民にも開かれた豊かな農村空間の創出を推進するとともに、水、緑、土地等豊かな地域資源を活用し、すぐれた景観を有する農村環境整備を図ります。  さらに、研究開発情報・通信、教育研修などの農業支援機能集積により、先進的な農業を核とした地域振興を図るため、アグロポリス構想推進します。  第四に、技術開発普及情報化推進であります。  イネ・ゲノムの解析研究を初め基礎的、先導的研究強化とあわせて、消費ニーズに対応した研究開発研究交流民間研究支援を実施するとともに、先端的農業技術実用化及びその普及推進します。  また、農林水産業農村地域等における情報化推進するとともに、農林水産行政推進に資するため、各種統計情報整備を図ります。  第五に、国民に健康的で豊かな食生活を保障する観点から、新たな食文化創造、規格・表示の適正化等各般消費者対策推進するとともに、食糧管理制度の適切な運用等により、農産物需給価格の安定に努めます。  第六に、食品関連産業振興輸出促進対策について申し上げます。  まず、地域食品産業活性化を図るため、人材の育成確保、新製品の開発等に努めるとともに、食品消費生産事情変化、大店法の規制緩和等に対処するため、食品流通の総合的な構造改善対策推進します。  また、海外におけるテストマーケティングの実施、アンテナショップの増設、国産統一ブランド創設検討等により、品質的にすぐれた国産農林水産物輸出促進を図ります。  第七に、地球環境保全対策国際協力推進であります。  熱帯林の減少、砂漠化の進行、地球温暖化等の問題に対処するため、地球環境保全対策を拡充するとともに、多様化、高度化するニーズに対応した農林水産分野国際協力推進します。  以上申し上げましたほか、農林漁業金融充実を図るとともに、農業信用保証保険制度農業者年金制度農業災害補償制度等の適切な運営に努めることとしております。  次に、森林林業施策に関する予算について申し上げます。  国民ニーズにこたえる多様な森林整備国産材時代実現に向けた条件整備を図るため、森林法制を見直し、森林整備五カ年計画策定推進します。また、造林事業及び林道事業を総合的かつ計画的に推進することとし、治山事業とあわせて三千四百七十七億円を計上しております。さらに、林業、山村の活性化を図る林業構造改善事業を引き続き推進します。  また、森林計画制度を改善し、「流域」を単位として、民有林国有林を通じた生産基盤整備林業担い手育成確保機械化促進等森林施業合理化を図ります。  このほか、国産材流通体制整備木材産業体質強化に努めます。  一方、厳しい経営状況にある国有林野事業については、閣議了解された国有林野事業経営改善大綱に則し、累積債務対策を含め、新たな経営改善対策に着手します。  続いて、水産業施策に関する予算について申し上げます。  二百海里時代定着等に即応した漁業生産基盤整備漁村生活環境向上を図るため、漁港、沿岸漁場計画的な整備推進することとし、二千二百四十三億円を計上しております。  また、我が国周辺水域資源の増大及び安定した漁獲を実現するため、資源管理型漁業推進定着化のための総合的な対策を実施するとともに、栽培漁業等「つくり育てる漁業」の推進を図ります。  さらに、資源開発国際漁業協力推進するとともに、水産物需給安定、流通消費加工対策を実施します。  また、漁協信用事業統合等による漁協水産業経営基盤強化を図ります。  次に、特別会計予算について御説明いたします。  まず、食糧管理特別会計につきましては、管理経費節減等に努め、一般会計から調整勘定への操入額を二千百億円とすることとしております。  農業共済保険国有林野事業特別会計等の各特別会計につきましても、それぞれ所要の予算を計上しております。  最後に、財政投融資計画につきましては、農林漁業金融公庫による資金運用部資金等の借り入れ、生物系特定産業技術研究推進機構への産業投資特別会計からの出融資等総額八千四百七十二億円を予定しております。  これをもちまして、平成三年度農林水産予算概要説明を終わります。
  6. 大原一三

    大原委員長 以上で説明は終わりました。     ─────────────
  7. 大原一三

    大原委員長 農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。東力君。
  8. 東力

    ○東(力)委員 本日は、大臣の包括的で非常に意欲的な所信を承り、大変頼もしく思っております。自民党きっての農政通であります大臣を迎えまして、大きな期待を抱いておりますので、よろしくお願いいたします。  さて、農林水産業は国の基本であり、日本人の生活産業を根底から支えると同時に、日本の隅々に至るまで広がって存在しておりますし、そのため地方開発地域住民生活にも大きな役割を占めております。しかも、規模や種類も多岐にわたり、複雑な構造を持っているほか、天候や地形等自然環境の影響も強く受けておりますし、さらに、今日のような地球的規模経済社会におきまして非常に激しい変化があるわけでありますが、それにもさらされて根本的な新しい対応、戦略というものを求められているように思うわけでございます。  大臣が先ほど所信で言われましたように、私たちが求めるもの、理想とするところは「我が国経済社会の調和ある発展と豊かでゆとりある国民生活実現していくためには、農林水産業関連産業の健全な発展と、農山漁村活性化を図ることがぜひとも必要である」と言われたわけでありますが、もうそれに尽きるのではないかと思うのですが、実際にはなかなかそれが果たされていないように思いますので、大いにやってもらいたいという観点から、次のような点につきまして大臣の御意見、そして姿勢というものを伺いたいと思います。  まず、国際的には、ウルグアイ・ラウンド等に見られますように、国際的に大きな問題があるわけでありますけれども、これに対してどのような姿勢で臨んでいるかというようなこと。  次に、熱帯雨林等保護、これは地球環境問題等に非常に密接にかかわってまいりますが、日本主導的役割を果たすべきだと私は思いますが、この点につきましても、GLOBE等のメンバーとして長年大いに活躍しておられる大臣意欲というものを示していただきたいと思うわけであります。  さらに、国際的な問題につけ加えますと、バイテク等所信の中でも言われましたが、技術開発につきまして日本はどのようなことをやっており、そしてどのようなことが期待されるのか、また、外国との関係はどうかというようなことを伺いたいと思います。  国内的には、農業農山村の地方開発発展との関係、つまり農業、あるいは農林水産省地方開発発展には非常に大きな役割を占めておるわけでありますが、この点につきまして新しい戦略措置というものが導入されたと思いますが、これらにつきまして抱負を語っていただきたい。  さらには過疎化高齢化、そして構造改善事業がございますが、これも国際社会の中では日米構造協議等にも出てまいりますので、そういうことを踏まえてどのようにやっていくのか。  そしてさらに、時間があれば林業。そして、時間をぜひともとりたいのですが、水産業、これは大変大きな問題に直面しておりますので、こんな点につきましても意欲的な大臣の所見を伺いたいと思います。  それで、まず最初に、ウルグアイ・ラウンドの話でありますが、大臣も述べられたわけでありますが、昨年十二月にブリュッセルで行われた閣僚会議が不調に終わった後、ダンケル事務局長を中心に、この二月いっぱいにも事務的な折衝あるいはプラットホームのようなたたき台をつくるために、精力的に事務レベルで動いていると伺っておりますが、私がきょう聞きたいと思いますのは、まず、米国ECとの関係というものがなかなか妥協できなくて延びたと思うのですが、この点につきまして、どんな状態なのだろうか。そして、どのようなところで決着がつきそうなのか、その点についてまず伺いたいと思います。
  9. 近藤元次

    近藤国務大臣 今先生御指摘のように、結論から申し上げると、アメリカとECの間で輸出補助金についての問題が議論をされまして、それが非常に対立が激しくて延会になって、今日まで至っておるというのが実は結論でございます。ただ、そのときにもノンペーパーも出ましたけれども、何かしら日本がかたくなに反対を続けて、その十二月のブラッセル会議延会になったようなことを報道されている部分もありますけれども、そのノンペーパーも議題にならなければ、個別的な内容にも入らないまま輸出補助金分野対立をしておるということでございまして、改めてノンペーパー議論もいたしませんが、今ダンケル事務局長が新たなプラットホームづくりに精力的に各国と話し合いを進めておるというのが今日の現状であります。
  10. 東力

    ○東(力)委員 その作業の中に、日本の立場は食糧の安全保障ということできていると思うのですが、私も政務次官当時に、去年の七月でありますが、アメリカに行き、九月にはヨーロッパに行っていろんな人と会ったのですが、非常に理解を示す人と、例えばドゼウなんという人は、日本の場合は大変特殊だろう、あるいはスイスの場合のように、日本と組んで頑張ってくれ、もっと頑張ってほしいというようなところもあると同時に、フランスのように、日本がやらないというのなら私らもやりたくないと。やはり交渉というのはバランスと公平さということが大事なんで、やってもらわなければ困るというところがあったのですが、今日の情勢ではどの程度EC全体として、あるいはオフィシャルに理解を示してくれると期待していいのか、この辺を伺いたいと思います。
  11. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生も政務次官をお務めいただいたわけですから、むしろ私より先輩に当たるわけでございますから、おわかりいただいておりますように、中間合意の中でも、あるいはサミットの中でも、食糧の安全保障の基礎的食糧というものは明記されておったわけでありますから、今回、ノンペーパーに出されたものにそれが記載されていないということで、ダンケル事務局長のたたき台というものにはぜひそこは明記をしてほしいということで、事務当局を含めて積極的に今その努力をいたしておるところであります。ここは我が国にとって最も大事な分野でありますし、あわせて十一条二項の(c)の分野についても明確にしていきたい。そして、いつを基準にするかという年度の分野、この三点が、今我が国がプラットホームにぜひ明記をするようにという努力をしておる分野でございます。
  12. 東力

    ○東(力)委員 今の基本的な問題からちょっと勉強させていただきたいのですが、自民党の中にも、米を少しぐらい輸入したっていいじゃないか、それで米農家が困るわけでもなければ、米農業が疲弊することにもならないだろうという意見、つまり輸入をして非常に安いものを消費者に供給できれば、国全体としては、あるいは世界的な立場から見てプラスになるのじゃないかというような意見もあると思うのですが、その点、米は違うという御意見ももちろんあるわけでありまして、しかし、さらに一歩突っ込んで考えると、石油等はどうせ一〇〇%輸入しないとやっていけないから、もともと日本というのは、ある程度世界貿易、しかも自由主義の、自由貿易を大事にする世界経済システムの中でしか生存できないんじゃないか。その中でもやはり米は絶対に違うんだ、絶対大事なんだということの御意見、お立場をぜひ勉強させていただきたいと思うわけでございます。
  13. 近藤元次

    近藤国務大臣 国の内外を問わずいろんな意見があることは承知をしておるわけでありますけれども、それぞれの意見をお持ちの方でも、いろんな背景が実はあっての発言だ、こう思うわけでありまして、自由貿易体制というものは我が国にとって他国より以上に必要であるということは皆理解をいたしておるわけでありますし、この分野でまた他の分野に影響を及ぼしてはいかぬのではないかというような考え方をお持ちの方もおられるし、総体的に私は、国の内外を問わずして何となく、農産物については非常に我が国が閉鎖的だという認識をされておる人が意外に多いのではないかなという感じを実は持っておるわけでありまして、それはそうではないんだという、いわば理解の努力が足りないのか、あるいはどういう関係かということは私も注意しなきゃならぬことだと思いますけれども、いずれにしても、今、米の分野について先生からお話がありましたけれども、国内を一つ見ても、今、通称水田再編とは言っておりますけれども、減反をされておる、生産調整をしておるという事実、そしてまた、これだけの輸入国で、自給率の低い国でありながらも、主食の米が一〇〇%自給されておるということによって、国民がある程度食糧に対する安心感があるというようなこと、そういうことを考えてみて、特にアメリカとの関係を見れば、アメリカの農産物輸出の二〇%は日本に来ておるし、日本の輸入の三〇%以上がアメリカから来ておるという状況からも考えてみても、こういう総体的な輸入国であるという理解を国の内外の人にやはり積極的に理解をしてもらうという努力はさらに強めていかなきゃならぬ、こう思っておるわけであります。  国際的に強い東先生なんかからまた特段の御協力をいただきたいところでありますけれども、そういう観点からして、国際的に見ても米の分野については、世界の総生産の三%程度しかマーケットに存在をしないというものを、我が国の主食としてそこに開放するというようなことは、私はできることではない、こういう立場で実は今度のガット・ウルグアイ・ラウンドにも米の分野について対処していきたい、こう考えておるわけであります。
  14. 東力

    ○東(力)委員 大臣の言われました米の安全保障、米は違うんだ、非常に大切だということもよくわかります。また同時に、世界最大輸入国だということももっともっと知らしめる必要があると思いますし、私も基本的に米をしっかり守っていかなければいけないという立場でありますが、この問題につきまして、最後に、アメリカなんかへ行きますと聞かれるような問題がありまして、それに対してどのように大臣はお答えになられるか、世界にもまた答えていかなければいけない問題にもなると思いますので、三点くらいちょっと最後に伺いたいと思います。  一つは、アメリカの国会議員等に会いますと、五十州のうちで米をつくっている州というのは大体四つ、カリフォルニア、テキサス、ルイジアナ、それからアーカンソーでありますが、十人ぐらいの国会議員に会ってみましても、基本的に同じことを言う。それは、選挙区の米農家が日本製の車を運転して、そして日本製の農機具を使う、家に帰って台所に行きますと電子レンジとか冷蔵庫というのも日本製である、また居間に行ってもテレビもビデオも日本製である、しかし自分たちのつくった米は一粒も輸入してくれないのか、これはアンフェアじゃないかということをよく聞かれるのですが、私、そうやって聞かれると、アンフェアなような気がするのですが、大臣はいかが考えられますか。
  15. 近藤元次

    近藤国務大臣 今、テレビ、自動車と比較をされましたけれども、この比較自体が少し問題なのではないのかな。自動車でもテレビでも、世界でいいものがあれば、大体これは共通して輸入もできるしお使いをすることもできると思うのですけれども、食糧というのは、米がなくなったから麦にしようかな、麦がないから米にしようかなといってそう簡単に変更できるような性質のものではまずはないということだと思うのです。  世界で、大体主食と我々が認識できるものは米であるとか麦という穀物に値するわけでありますから、穀物全体を考えてみれば日本というのは大変な輸入国ということになるわけでありますから、やはり農業というのは、アメリカもECもそれぞれの国の食生活にかんがみて重要な農産物というものをそれなりの保護を今日までしてきておるわけですから、日本生産調整をしながら今日来ておるわけでもありますし、相手はやはり輸出をするために生産をされておるというものも、おのずから性質の、一つは違うものだ、こう理解を実はいたしておるわけでありますから、米の話が出たら、麦はどうなんだと言って麦と米と一緒にしていただければかなり理解をしていただけるのではないかな、こう思いますので、よろしくお願いします。
  16. 東力

    ○東(力)委員 その米を三〇%ですか、生産削減しているんだという話は比較的知らない人も多いと思いますので、これからも言ってやったら、ああそうかと言う感じは大分違うと思いますので、大事なポイントになるのではないかと思います。  続きまして、私、去年の七月十六日にカーラ・ヒルズと会い、それから十九日にはクレイトン・ヤイターと会ったのですが、その他の人も大体同じことを言うのです。日本というのは世界の経済大国、第二位の経済大国、しかも貿易立国で、いわゆる自由な貿易から最も利益を得ている国である、だから日本の利益のためにも自由貿易システムを守っていく、つまりウルグアイ・ラウンドのように、貿易障壁をできるだけ少なくして貿易を拡大して相互に発展していこうという趣旨には、もっと積極的に役割を果たしていただければありがたい。同時に、百カ国の中で五十カ国近くが低開発国であるけれども、その中には、農産物輸出以外には、工業製品というのはない、ないというか、あっても国際的な競争力がない場合に農産物ぐらいしか輸出できない、そういう人の気持ちを、気持ちというか立場を十二分に考えて積極的な役割を果たしてもらえないかどうかということもよく言われるのですが、この点につきまして、大臣はいかがお考えでしょうか。
  17. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生御案内のように、自給率が低いということは輸入国だということになるわけでありますから、そういう意味では、開発途上国といえども、技術的にも資金的にも農業分野でもかなりの分野、援助、協力をいたしておるわけでありますから、その分野については積極的でもあります。  そしてまた、米を象徴的に言われますけれども、農産物全体からいえば世界主要国の最大の輸入国でありますから、米を除く農産物を考えれば、私は、世界から批判をされるような立場ではない、こう理解をいたしておるわけであります。相手の理解不足ではないかと思うので、それを理解をしていただく努力というのはこちら側から積極的にしていかなければならない、そう考えております。
  18. 東力

    ○東(力)委員 また、アメリカ等がよく日米貿易問題等で言うのは、生産者に着目するのはなるほどそうかもしれないが、もっと消費者に安いものを提供してやれないのかという話もあるわけですね。この点につきましてはいかがでございますか。
  19. 近藤元次

    近藤国務大臣 必ずしも我が国の現状の中で、安ければいいという価格だけの比較で論ずることはできなくなってきた経済事情ではないのかな、こう思います。殊に、安全性を第一に考え、そして品質を考え、価格を考えていくというのが現実の我が国食生活ではないか、こう考えておるわけでありますし、そういう面からいっても、我が国価格が高いといっても、ある程度価格というのは国民所得にも反映をしていくわけでありますから、そういう意味では私は、品質、安全性を踏まえての価格という分野につきましては、単純に比較をできない分野であるだけに、内外価格の差というものは縮めていく努力はしなければならないけれども、国民所得から見て異常なほど高過ぎるという状況ではない、こういうふうに認識をしておるわけでありますから、この点はひとつ、品質、安全性ということもあわせて価格が形成されておることを理解をしていただきたい、こう思います。
  20. 東力

    ○東(力)委員 日本が大体一千万トン米を生産消費しているのですが、アメリカでは六百万トン。そのうち三百万トンは自国で消費をして、あとの三百万トンは輸出をするというそうですが、米は小麦等と違ってまだ国際的な商品ではなくて、どの一国をとっても百万トンを超えた貿易というのはない。その中で一番大きいのは大体七十万トンぐらい。その一番大きい一つは、アメリカがイラクに輸出していた米七十万トン。これは明らかにこれからは輸出できないでしょうから、そういうものを買い取ってそのままODAでどこかへ、足りないところへ上げたらいいじゃないか、そうしたら、ある程度輸入しても日本国内には打撃というか衝撃を与えない、こういう意見もございますが、この点につきましてはいかがでございますか。
  21. 近藤元次

    近藤国務大臣 従来、食糧援助、米の援助は、我が国も今は主としてタイから買って開発途上国へ援助しておることは御案内のとおりであります。従来から食糧援助というのは、開発途上国から求められるものを求めて援助をしていくというやり方でありまして、アメリカから買って開発途上国に援助をするというやり方は従来やられてなかったわけでありますし、ただ、援助するときに一番気をつけなければならないことは、そこをマーケットにして輸出をしておる国との問題というものに留意をしていかないといけないことだ、こう考えておるわけでありまして、そういう面は、今先生の意見は、一つの考え方として我が国が将来に向かって十分考えていかなければならない分野だ、こう思っておりますけれども、今までの援助というのはそういうやり方で大体やられてこられたというふうに承知をいたしておるわけであります。
  22. 東力

    ○東(力)委員 ウルグアイ・ラウンドにつきまして最後の質問をさせていただきたいと思います。  それは日米関係ということなんですが、ヨーロッパへ行きましたときに、EC大使のトラン大使だと思いますが、その人と話をしましたときに、なるほどヨーロッパというのはアメリカに対しては非常に強硬であり、なおかつ、決裂しても平気だというような腰が据わった感じがして、なるほど国際会議というのはヨーロッパが手を引いてしまえば何のアグリーメントもできないから強いんだなということをつくづく思ったのですが、その大使でさえも、ウルグアイ・ラウンドがうまく成功しなかった場合に日米で、あるいはEC対アメリカで戦争するというか話し合い、交渉をするのは非常に嫌だ、なるべく避けたい、したがって規模の小さい、双方が受け入れられるようなところで妥結していく、つまりアメリカのように大きく攻めてくる、あるいは頑張っておるような野心的なものはできないかもしれないが、小ぢんまりしたものをまとめていきたいということを言っておりました。その一つの根拠に、貿易法の三〇一条で制裁をしてくる、あるいは報復をしてくるというようなことが気になっているようでありましたが、我が国も、これは何らかの形でうまくいかないなり、あるいは少々うまくいった場合でも後で日米間でこの米問題についても扱うということは出てくるかもしれない。そのときに、三〇一条でどこが犠牲になってもらってどうぞというふうにやるのか、ある程度というか非常に気にして何か対策を考えているのか、堂々と突破していくのか、この点につきましても大臣の所見を伺いたいと思います。
  23. 近藤元次

    近藤国務大臣 我が国方針は、ウルグアイ・ラウンドはぜひ成功させなければならないという態度であることはもう御案内のとおりでありますから、四年前、二国間でやろうという体制ができたときにも、ガット・ウルグアイ・ラウンドでこの問題は話をしようということまでで今日来ておるわけでありますから、アメリカも今のところガット・ウルグアイ・ラウンドでやる方針でございますし、我が国も同じ方針でありますから、二国間を好むわけでもございませんし、ウルグアイ・ラウンドでぜひ我々の主張を貫いて成功させていきたい、そういう気持ちで努力をいたしております。
  24. 東力

    ○東(力)委員 大臣も、ぜひ二月、三月と必要なときには出席されて、ぜひともウルグアイ・ラウンドを成功させていく、日本も十二分に満足できるような形で成功裏に終わっていただけるようにお願いいたしたいと思います。  続きまして、国際的な問題をもう一つ伺いたいと思いますが、牛肉とかミカンにつきましては、三年の経過措置が終わってこの四月から自由化ということになると思うのですが、大変騒ぎをされた割には、私自身も一生懸命に、アメリカへ行かしてもらったり、大蔵省に行って予算とか税制でお手伝いさせていただきましたが、国内的な保護措置というか支援というものを十二分に、しかも非常に機動的にタイムリーにやったために、不満というものを一切聞いてないような気がするのですが、特に私は和歌山県の出身でありますから、ミカンということに非常に大きなかかわりがあるわけでありますが、牛肉につきましても、日本全体を見まして、農水省から、この輸入自由化、それに対する経過措置、そして今後どのような形で当該農産業が行けそうかどうかというようなところをお聞かせいただきたいと思うのです。
  25. 近藤元次

    近藤国務大臣 牛肉・かんきつの自由化、いよいよやってまいりました。かねがね先生からも大変な御協力をいただいてまいりましたし、ことしの状況を見ておりましても、ミカンは裏作という年でもありますけれども、ミカン農家につきましては、それぞれ厳しい中でも廃園対策等の御協力をいただいてまいりましたし、価格もことしは非常に、高値安定と言えるかどうかわかりませんけれども、いい価格で実は推移をいたしてきておるわけであります。私は、来年以降もそう心配がないのではないかな、落ちつきを徐々に取り戻してきておるのではないか、こういうふうに理解をいたしておるわけであります。  牛肉についても、なお今後とも、このところ若干の変化がありますけれども、十分な対策を講じていくべく平成三年度の予算も用意をさせていただいておりますので、自由化の年を迎えて混乱のしないようにやっていきたい、こう思います。
  26. 東力

    ○東(力)委員 私の理解でも、例えばミカン農家一つをとっても、不満だとか困っているところは一軒もない、つまり非常にうまくいっていると思うのですが、それでも自民党はおととしの選挙でえらい負けたわけですが、そのときにも農家の多くから、自民党はけしからぬ、輸入自由化しないと言っておってしたから、裏切った、うそつきだ、信用ができないということをたくさん聞きました。しかも、ミカン農家じゃない、関係ない東北とか北海道とかあるいは長野県とか、そんなところで選挙に負けている。まるで関係ないんじゃないかと思ったのですが、つまりコミュニケーションですね、国民に対するコミュニケーションがちゃんとできていないというところに問題があったのじゃないか。そういう意味では、非常にうまくいっている、そして、農家のために最もしっかり頑張っている政策でさえも理解されていないところに非常に問題があるのじゃないかと思うのです。  それともう一つは、幾ら対策をしてやっても、その当事者はそれで助かっているからわかるのですが、全体としてはそういうマクロ的な、こう言っていたけれどもいろいろ変化があって違って、さらにそれには適切な対処をしているときでも伝わっていない。だから、信用ができないと。  これに対してこたえていくために何が一番重要かというと、農家の人たちとよく話し合っていると、ビジョンというものが見えないと言う。つまり、農業をいろいろやっているのだけれども、私どもが農村に行って青年と話をしても、何をつくったらいいかということをよく聞かれるのですが、私は農業をやっていないのでわからない、自分で考えてくれという話をするのです。そこは自分で考えなければいけない面と、やはり国等が世界的な経済情勢、さらにはいろいろな競争力、それから新しいニーズ、こういったことを考えながら、現場と、そして農林水産省のようなところと話し合ってビジョンというものをつくっていかないと、私、政務次官をしておるときもいろいろな予算等を見ていまして、担い手対策とかいろいろな対策があって、これが全部実現されたらすばらしい、バラ色になると思うのですが、現実には一万五千あった人口がこの二、三十年で五千になったりとか、過疎化高齢化、これは相互に影響がある、お互いに影響し合いながら過疎化、それから衰退、人口の減少、こういうことに対して、個々にいろいろなことを対症療法的に言っているんじゃなくて、ビジョンというものを確立しなければいけないんじゃないか。非常に難しいし、一般的だし、非常にあいまいもことした質問で恐縮でありますが、大臣はこれに対して、基本的にどういうビジョンを中山間地域とかあるいは農業地域に示そうとされるか、フィロソフィーをひとつ伺いたいと思うのです。
  27. 近藤元次

    近藤国務大臣 大変難しい御質問で、みんなうまくいくとこういう状況にはならないという結果が今出ておるわけですから、大変難しい御質問でありますけれども、一つは、どういうお仕事をされておっても、将来がわからない仕事というのにはやはり意欲は出てこないし、一番いけないことだ、こう理解をいたしております。  そして、今ビジョンの話が出ましたけれども、もう一つは、その前段にある信頼関係というものを今どう回復をしていくかというぐらいのところまで来ておるのではないのかなという感じさえする状況であります。農家の皆さん方も農業団体も行政を預かる我々も、その段階に一つの信頼関係というものを構築をしていかなければならないという気持ちで私は今いるわけであります。それだけに、できるだけ不透明なことをわかりやすくしていきたいし、先の見えるような形に一つはしていきたい。こういうことで、どうすればいいかという問題を、今自分ながら実は悩んでおるわけであります。  その代表的なものがやはり減反問題、生産調整の問題が一体いつになったら終わるのかな、ここらあたりもわかりにくい一つの問題点ではないのかな。そのこともまた一つ考えなければならない重要な問題だ、こう自分で今思いつつ、大臣に就任してからまだ日が浅いので結論は自分なりに出ておりませんけれども、何とか努力してみたい、こう思っておるわけであります。  先生、広範にわたって今御質問がございましたので、若干私の考えていることに触れさせていただきたいと思うのです。  生産性を上げる、コストを安くする、所得を上げていく、そういうパターンだけで果たして農村で後継者が育つかというと、それだけではもう若い人たちがなかなか農村定着をしてくれないのではないだろうか。そのことが一極集中、多極分散になり、ふるさと創生という政策を自民党からも出されておられるのだろうと思うわけであります。  考えてみれば、通称人口集中地域というのは、実は日本国土の面積の三%程度でございますから、残された九〇%以上の面積が地方農山漁村、こういう形に面積上は位置づけられるのだろう、こう思うのです。この地域をどうやって活性化させて、住みやすくしていくかということを総体的に考えていかなければなりませんし、中山間地で農林水産業を営んでおる人たちは、地理的に当然のことながら面積が非常に狭い、規模拡大ができない、地形が悪い、基盤整備をすれば負担がかかる、こういうことに必然的になってくるわけでありますから、先生、政務次官のときに中山間地の活性化対策という事業を進めていただいたわけでありますから、これは新しい制度の中に、基盤整備をするときに、これは農業基盤を中心にしながらも生活基盤そのものも総合的にやれるような制度で、負担の軽減を実は大幅に図ってきて、これは全国から大変人気のある施策だ、こう思っているわけであります。  そして、ヨーロッパの農村のように、景観から見ても環境から見ても、大変きれいな町や村をつくっていくというようなこと、所得だけではなしに、豊かさだけではなしに、楽しさやおもしろさというようなものがなければ、今若い人たちに地方に、農山漁村に住んでいただけないのではないのかなというふうに実は私は理解をいたしておるわけであります。  そういうためにどういう村づくり町づくりをするかということを一つは考えていかなきゃなりません。当然のことながら所得は中心になるし、地形に合った農産物を選択をしてもらうということで、どこの地域に何をつくれという指導はなかなかできにくい状況でありますから、昨年、これまた先生、政務次官当時に需給の見通しというのを立てていただいて、日本消費者のニーズ需要に応じた生産態勢を判断をして選択をしてもらうというようなことになるわけでありますし、政策も、やはり北海道から沖縄まで少し幅のある政策でないと、地形が違ったり地理的条件が違ったり、それぞれ環境が違うわけでありますから、そういう幅のある中から選択をしながら、その地域その地域に合ったところの村づくり町づくり、あるいは農産物の選択をしてもらって、都市の人たちがやはり地方に出かけたいなという気持ちになってもらうところに、これからの若い人たちがそこに住んでいる一つの自信がついてくるのではないのかな、そこで交流が始まっていくのではないのかな。先生の今の御質問がそういうことでないかと思って自分の考えの一端を申し上げながら、それについてどういう支援をしていくかということを今積極的に考えていかなきゃならない、そういう時期だ、こう思っております。
  28. 東力

    ○東(力)委員 今の点、大臣が本当に長い間かかって研究され、しかもヨーロッパ、アメリカ等の農村地帯に至るまで、隅々まで見聞をされて、そしてクリエーティブに、創造的に考えてこられた、そういうアイデアとか、したいことというのはたくさん持っておられるのじゃないかと思います。そういう意味で非常にありがたい方に大臣になっていただいたわけでありますが、ぜひその考え方を実現していただきたい。所信にもありましたように「豊かな地域資源を活用し、優れた景観を有する農山漁村環境整備を進めるとともに、都市農山漁村との交流を進め、新たな共生関係を築いてまいります。」ということを実現していただきたいのですが、その実現する手段の主なものとして、私なりの理解では、中山間地域に対する農林漁業金融公庫の法の改正とか、農山漁村振興基金等を設置していただくとか、そういった流れと、それからもう一つ、従来からの構造改善事業を新たにどういうふうにやっていくのか。この点につきましても、日米構造協議等で、いわゆる国内的な支援、インターナルサポートはするなと、世界的なそういう傾向もありますが、これとの関連等にも着目しつつ、しかし、今大臣が言われましたように、私も思うのですが、本当に成熟した先進国というのは農山村に至るまで非常にきれいである。生活環境がきれいである。集落排水とか、例えばトイレあるいは下水等をとっても、きれいな水洗になっている。日本はまだまだということを考えると、経済成長はしてきたけれどもまだまだ環境整備が不十分だ、あるいはリゾートとかレクリエーションとか、そういったことも含めて、まだこれからやるべきところがたくさん残されているんじゃないかという気がするのですが、この二つを実現していく手段につきましてそれぞれ所見を伺いたいと思うのです。  最初の中山間地域、これは、私も大臣のお考えをいろいろ部会等でもお聞きしてまいりまして、改めて今大臣として責任ある立場で伺いたいのですが、農山漁村振興基金というのは一体幾らぐらいあるのか。それから、中山間地域活性化資金を創設されて、今までよりも幅広い資金援助ができるということ、この中身は、農業者以外にも、その地域に着目して、中山間地域開発発展ならば貸してもいいよ、しかも農産業だけじゃなくて生活環境にも入ってくるのか、あるいは農産業だけじゃなくてその関連のリゾートとか文化とか教育とか、場合によっては工業にでも貸していくというふうに聞いているわけでありますが、どの規模でどの程度のことをもう既に実行して、あるいは今後実行していけるのか、その期待される効果は、細かい数字は事務当局の方で結構でありますので、その点伺いたい。  それから、中山間地域とやったのですが、漁業というものも非常に大切でありますし、漁業についても、例えば漁業協同組合が遊漁をやってもいいなんという改正は去年やったのですが、これも、今のような地域生活環境整備、そして農林水産業が非常に大事であって核であるけれども、それだけをやっているだけでは人口の過疎化に歯どめがかからない、したがって、関連のものを含めて融資の対象にする、支援の対象にする、このところをもう少し、今できたもの、具体的な実績、今後の計画ということで述べていただきたいと思います。
  29. 川合淳二

    ○川合政府委員 具体的な数字にわたりますので私から御答弁させていただきます。  今お話がございました中山間の地域活性化資金はことしから始まったものでございます。その趣旨等は先生御承知のとおりでございますが、今のところ、平成二年度、これも十二月末の貸付実績でございますが、八十三件で九十七億円ということになっております。このうち、今まさに先生お触れになりました農家とか農業関係以外で、農林水産物の加工の増進とか流通の合理化というような観点から貸しているものが七十四件九十二億ということでございますので、非常に大きなシェアを占めてございます。  それで、その中身は、まだそういうことで緒についたばかりでございますが、例えば中山間地域首都圏にある種のフードセンターを設置するというようなことについての支援とか、あるいは、これは先生の方が御承知かと思いますが、低塩、滅塩の梅干し製造施設みたいなものとか、それから米菓、米のお菓子でございますが、こういうものについての新しい技術を取り入れた製造施設というようなものが対象になっております。私ども、この資金を本年度四百億程度を計画額として考えておりますが、まだ緒についたばかりでございますのでそこまでは行っておりませんが、かなり希望も出てきておりますので、さらに推進していきたいと思っております。  それから、水産関係にお触れでございますが、この資金は、先生が先ほどもお触れになりましたように、条件不利な地域に対する支援ということでつくられておりますので、こうした条件に合致した地域でございます場合には、水産物あるいは漁業振興ということについても、これは林業も同じでございますが、総合的に推進することになっておりますので、こういう形では活用できるというふうに考えております。  それから、これも先生御承知の点でございますが、水産独自の問題といたしまして、水産加工資金などもございます。  それから、先ほどちょっとお触れになっております農山漁村振興基金による利子補給の対象には、そのほか構造改善資金とか施設資金というようなものが入っておるのは御承知のとおりでございます。
  30. 東力

    ○東(力)委員 大臣もそれでよろしいですか。  そういうふうにぜひ新しい観点から力強くやっていただいて、しかも、こう並べて制度があるだけではなくて、本当にモデル的なものができて、それをまたいろいろと勉強する、農政局その他を通じて、あるいは農林公庫等を通じて勉強してもらって、競い合いながら、まねもし合いながら、学びながら、活性化につながっていけるようにぜひお願いしたいと思うのです。  これに関連しまして、実はこの前、選挙区に帰ったときにもある県会議員の候補が、保安林の解除というものがなかなか難しくて、和歌山県のようなところではリゾートその他を中心とする新しい計画がなかなか実現していけない、非常に障害になっているので、ひとつ機会があったらぜひ聞いてくれという話がありまして、機会があったからお聞きをしたいと思うのですが、この際、農地をどのように活用していくか、近代経済社会の要請に沿ってどのように活用していくか。都会と田舎じゃ違っていると思いますし、都会では住宅地なんかに使用するときは比較的楽だということを聞いているのですが、農用地の転用許可あるいは農振地域制度、さらに保安林制度というものがあるように承っているのですが、この点につきまして、基本的なことで結構ですから、また詳しいのは大変勉強しないととてもわからないそうでありますから、基本的に、開発農業の問題、そして農業を主軸にしながら今のように中山間地域を総合的に開発させていこう、こういう中で、農地あるいは保安林がどのようなネックになるのか、なっていないのか、この辺のところをちょっと伺いたい。あるいは姿勢でも結構です。
  31. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 中山間地域農山村における活性化の問題と土地利用の調整の問題についてのお尋ねだというふうに思いましたけれども、まず農山村における活性化ということでは、私どもといたしましては、やはり基幹産業である農業振興ということに重点を置いていきたいというふうに考えております。そのためのいろいろな、基盤整備であるとか施設の整備とか新しい農産物生産であるとか、そういうものに大いに取り組んでいただきたいというふうにも考えているわけでございます。  それからまた、農業だけでなく農業外のいろいろな、工業導入であるとか都市農村交流とか農村リゾートとか、そういうような農業外の所得機会、就業機会をふやすようないろいろな施設整備とか土地利用にもいろいろ意を用いてまいりたいというふうにも考えております。  私どもといたしましては、農振地域の農用地区域制度とか農地転用、そういう制度を預かっておるわけでございますけれども、市町村長が農村活性化観点から、いろんなそういう土地利用の転換計画というものを市町村段階できちっと合意をつくっていただいた場合には、その市町村の合意に基づきまして農振地域の農用地区域からの除外とか農地転用というものも弾力的に対応する、こういう考え方でおるわけでございます。
  32. 小澤普照

    ○小澤政府委員 保安林についてお答えします。  保安林制度につきましては、水源の涵養でございますとか災害の防止というような森林の公益的な機能の発揮を図るという観点から指定されているわけでございます。そしてまた、この指定目的ということを考えまして、解除という事案が発生は確かにいたすわけでございますが、この際には、指定の理由が消滅した場合と公益上必要な場合に限って解除できるということになっておるわけです。  具体的にどうするかということになりますけれども、そのときにはこの指定の目的、あるいは地形、地質の条件がどうなっているかというようなこと、あるいは保全対象との関連がどうかというようなこと、その他のことを踏まえまして適切な対応をするということでやってきております。  一方、地域振興あるいは活性化に絡みまして解除案件が発生するということは確かにあるわけでございまして、このような場合につきましては、解除事務の取り扱いに適正な方向をとってまいろうということで、現在考えておりますのは、これは他法令と絡むケースも多いわけでございますから、このような場合には審査は並行的に実施していく、あるいはさらに事前相談を受け付けまして、ある程度そこで振り分け、方向性を出すというようなこととか、その他添付書類の簡素化等に努めまして、迅速に行うべきものは迅速にやる、簡素化できるものは簡素化していく、このように考えて対応しておるわけでございます。
  33. 東力

    ○東(力)委員 大臣、何か御意見ございますか。
  34. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生のような御意見を時々耳にするわけでありますけれども、全体を考えてみれば、農林水産省の所管は農地であり、林野であり、大きくまとめれば、ほとんど土地という分野を所管させていただいておるわけであります。  農地が虫食いにならないように、どうしたら整然として宅地を供給したり、あるいは他の目的のために提供できるかというようなことを、農地を守りながら、保全をしながら、どのように提供できるかというようなことを真剣に今考えているわけであります。  保安林の分野についても、私は、保安林を解除するというようなことが直ちにいいことかどうかということを、また時折そういう問題にぶつかったとき、今までも考えさせられてきた一人でありますので、保安林を解除をしないで双方の目的が達成できるようにできぬのかな。解除してしまうと、目的以外のところへ使われたり、あるいは他に影響を及ぼすようなことがありますので、そういうものを保安林の中で、お互いの地域の調和のとれた、双方の目的が達成できるようなことを考えていってみたらどうかなという感じを今持っておるわけであります。
  35. 東力

    ○東(力)委員 農業構造改善の方でありますけれども、去年、農業基盤整備事業農業農村整備事業というふうに名前を変えたりもしておりますし、さらに、財団法人の二十一世紀村づくり塾というのも発足したりしておりますが、さっきの中山間地域と相互に関連し合いながらやっていただきたいということはお願いしておきます。  私が今大臣の所見を伺いたいと思いますのは、構造改善事業につきまして農業のインターナルサポートじゃないかとか、もういいじゃないかという議論がある中で、私も自分がエコノミストという立場から、日本農業にむしろ一番必要なのは農業構造改善事業だと私は強く信じるのです。例えば国際金融とかあるいは先端産業というのは、自分で勝手にやっていて世界でも一番強いのですから、日本に一番欠けているのは、多くの地方、そしてそこの住民の生活環境、そういったものが先進国の恩恵をまだまだ受けていない。それを知らない人の議論が多いのじゃないかと思いますので、私は、むしろこれから大いに頑張って、農道をつくるとか、集落排水をやるとか、こういったことを世間に訴えて、正面突破で堂々と議論をして、国の最も重要なプライオリティーの一つにしていただけるようにお願いしたいのですが、大臣、いかがですか。
  36. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生、今お話しのとおりのことでございまして、農業における基盤整備というものが最も欠くことのできない事業でございます。それに、今生活関連を含めて集落排水、農道といっても今農業用だけに使われないような、一つの交通網の中に組み入れられているという現状もあります。そしてコストを下げていくには、基盤整備の中で面的な集約をしていく、そして可能な限り規模拡大しながら、あるいは規模拡大が不可能なところは共同作業をしながら、機械負担を軽減しながらコストを下げていくということが何よりも大切なことだと思っておるわけであります。  そういう意味合いでは、農業農産物の供給生産だけではなしに、環境の問題にも今大切な役割を果たしておるわけであります。空気がきれい、水がきれい、緑が保存されるというようなことが今地球的な規模で話題になっておる今日でありますから、そういう社会政策上に必要な役割も果たしておるというようなことを考えているときに、総体的には基盤整備構造改善というものが必要不可欠なものだと認識をいたしております。
  37. 東力

    ○東(力)委員 時間が迫ってまいりましたので、あと三つ聞きたかったのですが、最後の二つはちょっと御要望だけ言わせていただきたいと思います。  一つは森林林業、もう一つは水産業、いずれも日本にとって非常に大切であるし、そして同時に、非常に厳しい環境に置かれているのですが、これにつきましては、今度の国会で森林二法案が出されると思いますので、その機会に改めてお願いしたり、大臣の所見を承りたいと思います。また、水産業につきましても、御存じのように、私は近藤委員会、水産委員会で大変勉強してまいりましたが、この点につきましてもぜひ機会をいただきたいと思います。つまり、思った以上に悪い状態が続いておりますから、ぜひ国としても非常に厚い支援を、甘やかすばかりでもいけないと思いますが、もっと配慮していただけるようにお願いいたしたいと思うのです。  最後の御質問ですが、熱帯林保護というのは地球環境問題として世界的に非常に大きな課題になってきておると思うのですが、日本は経済大国として世界的にリーダーシップをいろいろなところでとるべきだと思いますが、現実にはまだまだとれていない。湾岸危機にいたしましても、戦争として理解するのではなくて、自由と民主主義を守る、平和と安定をそこに確保する、そういうことにはどういう貢献をするか、調停も含めて停戦に早く持っていくようにもっと積極的にやるべきだと思いますが、日本が最も今すぐに、世界的意味もあって、非常に重要であって、リーダーシップをとれるというのが地球環境問題、熱帯林の話じゃないかと思うのです。  去年、私は七月にインドネシアとフィリピンとタイに行きまして、日本技術者の人たち、林野庁、さらにODAの形を通して事業団、そういうところが非常に大きな役割を果たしているけれども、一方で、例えば欧米での新聞等には、日本は何だ、熱帯雨林を乱伐して一番おかしくしていると言われていますが、実際あれは、フィリピンあるいはインドネシアでも丸太を一本も輸出させていませんから、非常に不当な立場だと思うのです、直接的には少なくとも。そして間接的でも、日本だけ悪いという話じゃなくて、むしろ日本が熱帯雨林の植生を再生するために非常な努力を、人材、資金、ノーハウ、さらには技術、そういうものを提供して頑張っている。この際、これを大いに発揮して、国際緑化推進センターもできたわけでありますから、二国間のODAだけではなくて、欧米とも連携する。さらには、世界銀行やアジア開発銀行というようなところとも連携して、むしろ日本が中心になって、地球環境を守るように先頭に立って貢献していただきたい。そうすれば国際的なイメージも非常に変わってくるのではないかと思うのですが、大臣、ひとつ頑張っていただくと同時に、ぜひ所見をお願いいたしたいと思います。
  38. 近藤元次

    近藤国務大臣 熱帯雨林問題は、今世界的に地球環境が問題になっておるときに、実は環境問題の一つの大きな議題になっておるわけであります。  日本が熱帯雨林の破壊原因者のように言われているところは若干の誤解があると思うわけでありますが、いずれにしても、世界森林の中の四三%が熱帯林の面積でもシェアでもありますから、これを放置をするわけにはまいりません。また、木材の輸入国としてもそういう意味合いでは、伐採をしたら植林をするという、そういうことを絶えず考えていくのが日本の国の、今の熱帯林に対する役割でありますが、今お話しのように、技術の提供をしたり資金的な提供はいたしておりますけれども、現実、現場へ行けば、これだけ経済回転の遅い木材でありますから、技術だけを教えても、事実上そこで、現場で働いてくれておる人たちの給与を一体どうするのかというところまで突っ込んだ形で検討してやらないと、技術だけを覚えても、現実には植林をしても何十年か後でなければ返らないということを、今熱帯林を所有しておる国々でそういうことに取り組めるかという、非常に難しい問題だろうと思うわけであります。今後熱帯林問題については、筑波にも一つのチームをつくって今研究を進めさせておりますから、具体的に積極的に進めてまいりたい、そう思っております。
  39. 東力

    ○東(力)委員 終わります。
  40. 大原一三

    大原委員長 日野市朗君。
  41. 日野市朗

    ○日野委員 私から、きょうは所信に対するいろいろな質疑をさせていただきたい、このように思っております。  まず大臣大臣に御就任おめでとうございます。農林水産に関する政治問題、これは非常に厳しい点を数多く含んでおりますので、ひとつ頑張ってやっていただきたいというふうに思います。何しろ大臣は農林水産畑では非常に造詣が深いわけでございますから、非常に期待をしております。  それで、きょう所信を伺いました。それで私、所信を伺いながら、昨年の農水大臣所信といろいろ対比をしておりまして、若干残念なのです。これは質問の主題から外れることでありますが、ちょっと御指摘申し上げておきたいのです。  比較をしてみますと、これは官僚がおつくりになった作文だというのはよくわかります。しかし、言うなれば去年のワープロのものを呼び出して、その中の字を幾つか変えたという体のものでありまして、大臣は非常に農水については造詣の深い方でありますから、もっと大臣の個性がこの所信の中に色濃くにじむような、そのようなものであってほしかったなと思うのでありますが、これからひとつ、所信表明の文章をつくる際にも、これはちょっとワープロをいじる連中から見れば、何だこれは、ちょっとワープロでこことここを変えたなぐらいすぐわかってしまうようなものでないものをおつくりいただけたら、こう思っております。それにしても、ちょっと気になる部分がございますので、その文章を総論の部分について若干伺っておきたいのですが、一点だけ伺うことにいたしましょう。  昨年の所信の中には、価格政策に配慮をした部分がございます。「国民の納得できる価格での食糧安定供給に努めることを基本として、」ということで、価格政策基本がこう記述してあるわけですが、ことしはどういうわけかそれがすぽっと抜けてしまったのですね。他意があるのかないのか、それから価格政策に当たっての基本的な姿勢はどう構えておられるのか、そこらをちょっと伺っておきたいと思います。     〔委員長退席、東(力)委員長代理着席〕
  42. 近藤元次

    近藤国務大臣 激励をいただいて、ありがとうございます。  価格分野が抜けたということは、全く他意はございません。ただ、私が考えておりますことは、価格は、もちろん生産者、消費者それぞれ国民の納得のいく価格で適正に決められていかなければならぬことは当然のことでもございますし、内外価格差というものも一つはございますし、価格を決めるときには、所得という問題も考えていかなければならない点でもあります。そこには全く他意はございませんけれども、より安全性、より品質というものを、今はどちらかというと消費者ニーズとして求められておるのではないだろうか。そういう考え方もあってそういう表現をさせていただいたことでありまして、特別に他意はございません。
  43. 日野市朗

    ○日野委員 これは所信の中の一文章の問題でありますが、これは強い拘束力を今後の農政の展開に当たって持つと思いますので、昨年の所信の中に表明されていた「国民の納得できる価格での食糧安定供給に努めることを基本」とする、これは私は非常に重大なポイントであると思いますから、このことはゆめゆめひとつお忘れにならないでお願いをしたい、こういうふうに思います。  それで私、各論に入ってまいりますが、ことしも農業振興について、まず第一に、構造政策推進ということを挙げておられます。私は、これは非常に重要な観点であろうというふうに思います。何しろ構造政策をどのように進めていくかということについては、農水省は長い間苦労されてこられたものでありますから、これは重要なポイントとして私も受けとめたいと思うのでありますが、もうそろそろ過去を振り返ってみて、この構造政策に対する反省点というものも考えてみなければならないのだろうし、これからの構造政策の進む方向について、今までとは方向を切りかえていく必要も出てきているのではないかという感想を私、実は強く持っております。  そこで、まず、この所信の中で記述されている幾つかのポイントについて伺っておきたいと思います。  活力のある農村をつくる、足腰の強い農業確立する、これは非常に結構なことでありまして、ここでそのための努力が進められなくてはいけないのでありますが、そのためにはやはり新規就農者を含めて、経営感覚技術にすぐれた農業後継者担い手育成確保、これが必須のことであることは言うまでもございません。毎年これについてはそういう努力をいたしております、こう書いてございますし、これからも努力をするのでございます、こう書いてあるのですが、では、具体的に新規の農業担い手、後継者、これがどれだけ獲得されているものか、これをひとつお示しいただきたいというふうに思います。
  44. 近藤元次

    近藤国務大臣 新規の農業従事者というものは二千百人であります。
  45. 安橋隆雄

    安橋政府委員 農家子弟で学業を終えて農業に就職した方は、平成元年には、大臣がお答えになりましたように二千百人でございますが、それ以外にいわゆる他の産業についておりまして農業に戻ってこられる、いわゆるUターンの青年が、平成元年には二千六百人いらっしゃるわけでございます。  それから、先ほど申し上げました新規学卒者のうち、他産業にもついているけれども自家農業にもついている、いわゆる兼業の形で学卒者で農業につかれているという方が、やはり平成元年には二万四千人いらっしゃるわけでございます。  それから、数は少ないわけでございますが、非農家出身の方で新たに農業を始められるという方は、毎年百人弱でございます。具体的に申し上げますと、昭和六十三年には八十人の方がついていらっしゃるというような数字になっておるわけでございます。
  46. 日野市朗

    ○日野委員 これは毎年その数字というものは聞かれるはずでありますし、今までも聞いてまいったわけですが、どうもはかばかしく伸びていないということは、これはもうだれしもが知っているわけでございますね。ことしは新規学卒者ばかりではなくて、Uターンした方の数も挙げられた。それから、新規学卒で他産業に就職はしたが、うちで農業も手伝っておりますよという数字までことしは挙げられておりますね。これはかなり員数合わせで、苦しいところもおありなのではないかと思います。しかし、これはトータルに見て決して数多いものではないというふうに思います。新しい、若い、すぐれた担い手を獲得したいということは、農業関係者のずっと長い間の願望である。しかしそれは必ずしも思ったようには進んでいない、こういうふうなトータルな見方をせざるを得ないと思うのですが、いかがでしょうか。大臣、いかがですか。
  47. 近藤元次

    近藤国務大臣 おっしゃるとおり、二千百人が新規学卒者、農業に帰ってUターンをしてきた人が二千六百人、農業をうちでやっている、お手伝いをするというのが二万四千四百人というような数字でございます。決して、農業に新規学卒者、Uターンを含めて後継者が増大をしておる状況ではございません。それだけに、農業担い手という分野だけで考えていても、なかなか農村農業をやってくれないのではないだろうか。生活環境も含めて、やはり農村定着をしてくれることを改めて考えてみる必要がある、そういう認識で私はおります。
  48. 日野市朗

    ○日野委員 こうやって若い人が農村にとどまって、そして農業に従事をしてくれないということは、やはりこれはいろんな原因があると思うのですね。最近は三Kなどということも言われて、それからすると、恐らく農業もその三Kの中に入るのかななどとも思いますが、さらに、先ほど大臣も述べておられましたが、やはり所得ですね。農業をやって満足のできるような所得が得られるのかということになりますと、依然として農業者の所得というものは低いというふうに言わざるを得ないと思いますね。  これは白書であります。平成元年度の白書の中にもその点についての記述がありまして、農業と製造業の就業者の所得格差について書いてあります。これによると、大体製造業者の三四%という数字になっております。これは農業者の中にいろいろの階層がある、よくわかります。だから、三四%というのを押しなべて全部に当てはめることは到底できないことは私もよく知っております。しかし、製造業賃金に対する割合を見ると、この白書の数字をそのまま信用して、一番農家でいいところで八二・三%という数字が白書によって報告をされているわけですが、やはり所得の低いところ、相対的に低いところには行きたがらない。より高いところを求めていくというのは、これは人間のならわしでありまして、これはやむを得ないところなんですが、これがこのような段階までにとどまっている。悪いところになりますと、今いいところで八二・三%というふうに言いましたが、第一種兼業農家、それから専業農家でも、専業農家なんか見てみると、悪いところは三六・四%なんというのもあるし、これを見てみますと、やはり農家の所得というのは相対的にかなり低いと言わざるを得ないですね。この低いという現実、これはお認めにならざるを得ないところなんでしょうね。どうですか。
  49. 安橋隆雄

    安橋政府委員 御指摘のように、農業所得と他産業所得を比べまして、平均的に見ますと、全農家平均では平成元年度で約三八程度ということでございます。ただ、経営形態によりまして、あるいは基幹男子農業者がいるかいないかというようなことで見ますと、かなりその比較の数字が高くなってまいりまして、先生御指摘のように、酪農経営でございますとか、あるいは稲作単一経営でも基幹男子農業者がいるような世帯では一〇〇に近づいているというような数字もございますが、平均的に見ると、おっしゃるようなことでございます。全農家を一律に見るというようなことではなくて、私どもといたしましては、若い農業者が今後農業についていくというようなことになります場合には、やはり所得問題も含めまして、農業が魅力ある産業として映るような形で施策推進を進めていく必要があるというふうに考えております。  ただいま申し上げましたような、基幹男子専業者がいて、しかも所得が十分保障されるような仕組みを考えていきたい。基本的には、先生御指摘のように、規模拡大によります生産性向上でございますとかコストの削減でございますとか、そのための生産基盤整備でございますとか、付加価値の高い農産物生産するような生産体制、それから、それだけではだめでございまして、やはり都市に比べて何かとおくれがちな生活環境整備といったものを通じまして農業所得の向上、あるいは農村地域活性化というような方向に力を注いでいきたいと考えているわけでございます。  このような一般的な施策のほかに、特に若い農業者を育成確保する政策といたしまして、具体的には改良普及員によります技術、経営の指導でございますとか、あるいは先進的な農家への留学研修、あるいは農業後継者資金等の無利子資金の貸し付けというような対策を講じているところでございます。  いずれにいたしましても、地域によりましてかなり後継者の確保の状況が違いますので、その地域の実態に応じました後継者確保対策を、平成三年度からは市町村段階で取り組んでいただきますことに対しまして国も支援をしていきたいということで、農業後継者、若い農業育成確保特別対策というものも平成三年度に新規に講じていきたいというふうに考えておるところでございます。
  50. 日野市朗

    ○日野委員 局長、今あなたに聞いたことにぴしっと答えていただけばいいんですよ。その後ずっとお話しになりましたけれども、それは今当面聞く質問の焦点じゃありませんから。できるだけ簡単に答えてください。  それで、どっちにしたって所得を上げるということが必要なんですね。これが一番のポイントだと思います。それで、規模拡大生産性向上ということはずっと構造政策の中心的な課題としてとらえてきたわけでありますね。ただ、ずっと毎年議論を聞いているのですが、じゃ規模拡大をどの程度までやるのか、どの程度までを目標として規模拡大をするのか、生産性向上をどの程度までやっていくのかということについてのぴちっとした明確な目標というものがなかなか示されていないのですね。これをちょっと示してみていただけませんか。
  51. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 日本の場合、農業生産地域によって、地形その他の条件からさまざまに営まれているわけでございます。それを概括して申し上げることはなかなか容易ではないわけでございますけれども、昨年一月に閣議決定されました「農産物需要生産長期見通し」に関連しまして、農政審議会でいろいろ論議されました農業構造につきましての展望を参考資料として提出されたわけでございますけれども、それの中では、最近におきます農業労働力の高齢化でありますとか最近の農業構造変化の趨勢を踏まえ、さらにまた、それを規模拡大、中核農家や中核農家を中心とする生産組織育成という点に積極的に構造政策を背景に進めていくということを前提にしまして、中核農家では平均的に四ヘクタール程度、それから例の土地利用型農業であります稲作主業経営につきましては、都府県で八ヘクタール程度、作業受託を含めまして十ヘクタール程度への拡大というものを展望されているわけでございまして、そういうことを念頭に置きまして政策を進めていきたいというふうに考えております。  それからまた、生産性向上につきましても、現在利用されております技術水準、中型機械化体系のもとでそういう構造展望を念頭に置きながら、生産性を上げていくための生産単位を形成していくということによりまして、その指針では、平均的に現状に比べ、水稲については三—五割程度の低減が可能ではないか。また、これは生産者団体が六十三年暮れに「二十一世紀展望する農協の基本戦略」ということを出したわけでございますけれども、その中にも同程度のコスト低減を見込んでいるということでございますので、そういう規模拡大が可能な地域につきましては、そういうことを念頭に置いて対応していきたいというように考えております。     〔東(力)委員長代理退席、委員長着席〕
  52. 日野市朗

    ○日野委員 農業生産性を上げるということは、やはり施設園芸の場合は今ちょっとよそに置いておきましょう、ここで土地利用型農業、こうしてありますからね。それで見てみますと、やはり生産が上がる、所得が上がる、これは土地の規模拡大農地経営規模拡大、これと分かちがたく結びついている、これは農業の宿命であろうというふうに私は考えているわけなのであります。  それで、私、少し構造政策の今までの総括といいますか、構造政策を振り返っての反省点というものを探ってみるために幾つかの例を調べてみたわけであります。  まず調べてみたのは、山形県の酒田市であります。ここを見ますと、大体、農家四千三百五十三戸であります。百アール以下三五、百から二百アールまでが一九・六、それから二百から三百まで一七・六、三百から五百までが二四、五百アール以上が三・五、これはパーセンテージで示してあるわけですが、そういう配分になります。この酒田市周辺というのはいわゆる庄内米地帯でありまして、ここではかなり大規模な、比較的大規模な経営が多いということが言えるわけですね。  そこで調べた資料によりますと、一九七〇年以後、規模拡大をやって経営を軌道に乗せたという農家は十戸しかないというのですね、十戸。これはもう随分規模拡大規模拡大と農水省も言ってきた、そして農家も規模拡大をしようということで努力をしてきた割には、余りにも悪過ぎる数字ではなかろうかというような感じがいたします。  その中で非常によくやっている農家もございますね。ここで農業を営んでおります農家を見ますと、生産組織というふうには余り進まないで、むしろ個別、家族、一戸一戸の農家がそれぞれ規模拡大に努力して農業を営んでいるという例が多いようです。それを類型的に見ますと、いわゆるワンマンファームといいますか働き手一人、働き手一人ですよ、一人で何でもかんでもやってしまう。奥さんを勤めに出す。ここは酒田に近いですから比較的兼業機会なんかは多い、こう思われますが、奥さんなんかを働きに出して自分でどんどんやってしまうという農家の形。それからあとは、家族みんなでそろって農業を営む形というふうに大体大別をされていっているようです。これは、あくまでも念を押しておきますが、規模拡大をしてきちんと安定的に経営をやっていける農家を仕分けしているわけですが、大体そんなふうに分かれていくようですね。  それで、ワンマンファーム形態で成功している例を見ますと、ある一軒の農家を挙げましょう。水田自作地二百六十三アール、それから借入地三百アール、畑は三アール持っている。そして、奥さんはある企業に常勤で勤めている、父は自営業を営む、そして母親は仕出し屋さんに行って働いている、こういう形で、本当に一人だけ、その若い後継者、後継者というか現在の経営者が一人で経営をやっているわけですね。この方は非常に機械の技術を持っておられる方で、機械に明るい方で、いろいろな機械を導入して、または中古のものを買ってきて、それに自分で手を加えて、これを使ったりしてやっているようでありますが、大体二千万円ぐらいの売り上げを上げている、こういう例が一つ、これは一つの例として挙げておきましょう。  それから、もう一つの家族型、家族みんなで働いている型ですね。これは水田八百八十五アール、それから二百四十坪のガラス温室を持って、キュウリだとかメロンだとかホウレンソウなんかをやっている。それから転作の八十アールには牧草を植えて和牛を飼っている。これも大体二千万円ぐらいの売り上げを上げている、こういう例が報告されている。これは最もよくやっている形なんですね。  しかし、こうやって見てみますと、こうやって成功できた、これはすばらしい例だと思います。私は、この人たちの農業経営に対して賛辞を惜しまない。まさに、農水省あたりから見れば、これは非常にすばらしい成果であって、このような人たちにどんどん出てきていただきたいと思っておられるだろうし、私もそう思うのです。しかし、農家戸数四千三百五十三戸のうち大体十戸から、まあその後少し数を伸ばしているかもしれませんが、その程度がこうやっていくことができているだけなんですね。そのほかの残りについてはどうなるということが私の念頭を離れないのです。  今、二つの農家の例、それも酒田という日本全体から見れば非常に小さなところでの例を申し上げました。しかし、ここでそうやってやっておられる方は非常に限られた数であって、そのほかの方々が規模拡大についていけていないという現実がある。私は、今酒田だけを取り上げたが、これは日本における各農村においてずっと普遍的に見られる現象ではないかというふうに思っているのですが、いかがでしょうか。
  53. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生今御指摘のように、大体全国的に、まあ北海道とか特殊な地域を除いては大体そういう傾向で推移をしてきておるように私も理解をいたしております。  規模拡大をし、あるいは家族でやる、いろいろなケースが実はございます。規模拡大というのはなかなか、これは話としてはわかるのですけれども、農村の農家の人たちというのは長い歴史の中に、自分の農地を他に放すということがなかなかやりにくいという、計算上、経済性以外の問題も多分に実はあるわけでありまして、大変思うように進んでいないわけであります。  しかし、そうはいっても、ワンパターンで、そのことだけで進めていくというわけにはまいりませんので、いろいろな地域によっていろいろなケースが実は選択をできるように私ども進めていかなければ、所得の向上にもなりませんし、コスト低減にもなりませんし、今まさに機械化農業でもございますから、一定の規模がなければ機械の稼働率に、負担に耐えていけないという現状でありますから、そういう意味では、共同作業を選択して作業上でコストを下げていくというやり方もあるでしょうし、作業そのものを委託をすることもあるでしょうし、集落によって作業全体を共同でやろうという選択のやり方もあるでしょうし、いろいろなケースによって、少なくともコストを下げて所得の安定を図るということを中心にして、理想は理想としても、現実に合わせた支援体制をつくっていくというのが大事なことだ、そう認識をいたしております。
  54. 日野市朗

    ○日野委員 私が今目を向けた地域、そこでもこのような状態、恐らく全国も似たようなことなんだろう。そうしてみますと、私は、新しい優秀な感覚を持った、そして技術にもすぐれた農業後継者担い手、これをどんどんつくっていこうという、これは願望は願望として、農水省がこれを言い始めてから今までもう随分たっています。随分長い期間このことを言い続けてきた。そして、経営規模拡大もしていきましょう、こうずっと言い続けてきた。しかしそれが、今ここで振り返ってみれば、思ったような成果が上がっていないというふうに考えざるを得ない。この点については率直な感想を伺いたいのですが、今まで歩んできた道は間違いなかったのか、それとももっと別の方向に進まなければならないのではないか、いかがですか。
  55. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 先ほど先生が御質問される前に、施設野菜等は別にして、施設園芸と別にしてという話があったわけでございますけれども、やはり所得を上げて農家の生活向上を図っていくということを基本にする限り、土地利用型農業については規模拡大を進めていくし、それ以外のものは質的な向上といいますか付加価値を高めていく、どちらかによって農政を展開していく必要があるのではないか。確かに規模拡大は進んでいませんけれども、最も進んでいないのが今御質問に挙がっているような稲作ではないか。稲作自身の作業が簡便化されてきた、それからまた、他に転換する場合に、そこに職場があるかないかとかいうようなこと、いろいろなことがあって、率直に言いまして規模拡大は稲作の場合に進んでいないのは事実ですけれども、今御指摘にありますように、地域によって各地でそれぞれそういう芽なり点はあるわけでございますし、私どもやはりそういう政策を、進んでいないからやめるというのではなくて、そういう芽を、点を掘り起こして、どういうふうに持っていったらいいのか、今大臣から答弁もありましたように、個別経営でいけないという場合にはそれ以外の作業の共同化、酒田の場合も、私どもが聞いておりますところによると、共同化を上から進めた場合にいろいろな問題点が出て批判があるというようなことも承知しておるわけでございますけれども、また、他方、農作業の受委託は進んでいるというようなことも聞いているわけですから、やはり地方地方、そこの実情に合わせた対応を進めていく、決してあきらめずに地道な努力を追求していくというふうに考えていきたいと考えております。
  56. 日野市朗

    ○日野委員 今度は私は、別の形態の、経営形態についての話をちょっとしてみたいと思います。  今度もちょっと例にとりますが、これはあの有名な高棚営農組合、これは安城市でございますか、安城市の高棚営農組合をちょっと例にとってみたいと思います。  ここの生産組織というのは非常な成果を上げていることはもう既に御承知でありまして、これは現在の農業の経営形態としては最優等生ではなかろうか、こう言われている非常に著名なところでありますから、ここでどんなことが行われているかということを、余り多くは申し上げませんが、その中での幾つかの成功に至ったポイントのようなものを若干指摘してみたいと思うのです。  まず一つは、地域地域でございますから、非常に兼業機会が多いという安心感が、一つはまずこの生産組織に加入する際に農家の人たちにあったのではないかという点が挙げられるのではないかというふうに思います。それからもう一つは、ここの組織に加盟するときというのは、大体一人一人の加入者が五十アール以上の土地をそれぞれ提供したということで一つの協同意識というものを育てていったのではないかというふうにも考えられるわけですね。それから、ここでは一農家当たり一人だけしか生産組織に入れていない。そのために、父親の方が年をとってくると次の後継者に組合員がかわっちゃうわけですね。そういうことで、比較的若い人が確保できる。それから、ここの組合の経理なんかを見てみますと、いろいろな準備金やなんかというものは積み立てないんですね。そして、剰余金が出たらそれはもう労働時間に応じて配分していくということをやる。それからもう一つ、非常にこれは重大なポイントになるのですが、農地集積するについて、ばらばらではなくて一カ所に集めることに成功した、そのために機械化ということも非常に進んだということ、こういう点が一応特徴点、成功に至ったポイントとして読み取れるのではないかというような感じがいたします。  ところで、私、この成功を見て一つ考えるのは、これは確かに構造政策として農水省が指導していた農地拡大規模拡大、それから、できるだけ一カ所に集めて機械化になじむようにという点でいろいろなポイントはあったろうが、しかし、そのほかにリーダーにすぐれた人がいたことも大事なポイントですね。それから、うまく連帯感をつくり上げていったというところにポイントがあるのではないかというふうに思うわけですが、この高棚営農組合の営農というのは非常に成功した例として見ていいかどうかという点について、まず、これから話を進める上で、総括的な評価をちょっと伺っておきましょう。
  57. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 先生御指摘の安城市の高棚営農組合につきましては、私どももいろいろ勉強させていただいているところでございますけれども、先生御指摘のように、この組合の場合には非常に面的な農地集積といいますか、そういうことに成功いたしまして非常に能率を上げているということで、大変に成功している例であるというふうに私どもは評価している次第でございます。
  58. 日野市朗

    ○日野委員 私、幾つかの点でこの組合がうまくいった理由のようなものをずっと考えてみたのですが、さらにそれから一歩突っ込んで考えてみますと、農地の面的な集積だとか金の配分がどうのとかいろいろなこともありますが、その中にあったのは、みんなで助け合っていこう、今のままでばらばらでやっていったらどうしようもないよ、みんなで助け合ってやっていかないと自分たちのこの地域における農業をやっていく基盤ができないよという、そこにおける助け合いの精神とでもいうべきものが一番根底にあったというふうに私は考えているのですが、この点については、農水省としていかがお考えになりますか。
  59. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 先生御指摘のように、安城市の場合には非常に兼業機会に恵まれているということで、農業に対する労働力が極端に不足しているというような状況で、やはり地域の人がみんなで共同して省力化を図らなければいけないという地域の必要性といいますか、そういうものを踏まえましてこういう経営が成立したというふうに考えております。ですから、そういういろいろな地域の実態に応じて、それぞれの地域に合ったような生産組織といいますか、そういうものが生まれていくものである。その場合の、この高棚営農組合の場合には、そういう安城市というような地域の実態に応じた非常に優秀なケースではなかろうか。先生御指摘のように、みんなが協力し合って、地域として協力し合っているという点では大変に優秀なケースではないかというふうに思っております。
  60. 日野市朗

    ○日野委員 今は、人手が足りないというところで、自分たちの農業を生かしていこうということで助け合って努力をした例として、この高棚営農組合が挙げられると思うのですが、その点では私もそれから農水省側も、意見としてはほぼ一致を見ているところですね。  もう一つ、今度は、兼業機会といいますか、よそに働きに出てというようなことがちょっと難しいと思われる、全く山の中の村のお話をいたします。  これは、岩手県の山形村というところがあるのですが、ここは短角和牛を肥育をいたしまして、そして短角和牛の肥育に一応の、一応のと言った方がいいかと思いますが、成功を見ているところがございます。この山形村というのは御承知でございますね。いかがですか。
  61. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 先生御指摘の岩手県山形村の荷軽部肉牛生産組合の事例につきましては、私どももいろいろ勉強さしていただいております。
  62. 日野市朗

    ○日野委員 ここは全くよそに働きになんか行けないところでございまして、これは、じゃ牛を飼うか、短角和牛という、粗飼料で肥育のできる金のかからない牛がいる、これで何とかしようということで、ここでの特徴は、ここで生産した牛を「大地を守る会」という消費者組織と産直形態をとっている、これが特徴でございます。そしてお互いに、消費者組織と、それからその組合との間の協同関係に基づいてここは成り立っているのではないかと思います。これは流通から消費に向けての話でありますが、大体農産物の場合だと、三分の一が生産者の手取りで三分の一が流通にかかって三分の一は消費者、こういう割合になるわけでございますが、これを、消費者と生産者の間で産直形態というような形をとることによってうまくコストを浮かす、牛そのものを安くできるということがあるが、コストを浮かすことによって生産者としてはちゃんと牛でやっていけるという見通しを立てたところでございますが、ここにあったものも、やはり私は、お互いに協同してやっていきましょうという協同の精神があって初めてうまくやれた生産組織ではないかと思っています。キョウドウというと、日本語にはいろいろなキョウドウがありますから、私は語学力に乏しいものだから余り英語は使いたくないのですが、この場合わかりやすいように一応コオペレーションという言葉を使いますが、コオペレーションがあって、それでうまくできたというふうに私は思っておりますが、どのようにお考えですか。
  63. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 この肉牛生産組合の場合には、肉牛の肥育とか繁殖とか、そういう経営そのものは個別経営でやっているわけでございますけれども、例えば放牧でありますとか、それからまたその販売等の面では、関係者が非常によく協力して共同化で進めている、それで成功しているというケースではないかというふうに思っております。
  64. 日野市朗

    ○日野委員 コオペレーションという言葉を今ここで出したわけなんですが、実は私、いろいろな各地の農業の経営のあり方を見ておりまして、農業をこれから振興していく、それから各地の、地域におけるそれぞれの地域にふさわしいあり方を探っていく、そのためには協同の精神、コオペレーションの精神がないとこれはうまくいかぬのではないかというような感想を非常に強く持っているところです。  さっき私、酒田市の例を言いましたが、あの酒田市の営農の成功者のあり方を見ても、先ほど売り上げが二千万円ぐらいというふうに言いましたが、大体そこで頭を打つわけですね。それは限界があります。それはワンマンファームでやっても、これは一人でやることとなれば限界は必ず出てきます。これを機械化をしていく、もっと人的な設備をしていく、物的な設備をしていくということになりますと、そこに新しい投資が必要になってくるわけですね。しかし、日本の農家には残念ながらそれだけの投資をやるだけの力がないのではないか。いろいろな制度資金やなんかは、随分農水省もそこで苦労しておられるのはよくわかりますよ。それが用意されて、苦労しておられるのはわかるが、そこから融資を得る、資金を得るとしても、今までの例をずっと見てみると、そうやって資金を用意したところが必ずしもうまくいっているものではないわけでありますね。家族農業にしたって、これは家族の労働力ということで限界が出てきてしまう。そうすると、先ほど私、数字を申し上げましたが、四千三百五十三戸のうち成功していっているのはごくわずかということになってくる、そのほかはどうするんだと言いましたですね。そういう農家で、営農の意欲があり、農業をやっていこうという人たちにとって、これから何を与えていくのかということになりますと、単に「土地利用型農業経営規模拡大生産性向上」と毎年のように言って、そして新しい就農者を獲得していくと毎年のように言ってそれがうまくいっていないというところには、そういううまくいっていないという現実を見た場合、もっと新しい要素、つまりコオペレーションの精神というものをもっともっと強く農水省の政策の中に入れていっていいのではないかと私は思うのです。これから特に地域農業を重視しなければならないというのは、これは農業関係者だれしもが考えておるところです。そこでうまくやっていくためには、お互いの協同、コオペレーション、これがなければ日本農業は伸びていけないというふうに思うのですが、大臣いかがお考えになりますか。
  65. 近藤元次

    近藤国務大臣 規模拡大、個別経営でも、先ほど先生から成功した例が示されて、それがごく限られた、限定されておるというお話でありましたが、おっしゃるとおりだと思うのです。でも成功していることは間違いないわけですから、それが間違っておるとは申し上げるわけではございませんが。  しかし、今お話しのように地理的条件が違い、気象環境が違い、いろいろなことで——まあ私どもの地域を含めて、元来昔から、仲間仕事はうまくいかぬというような感覚というものがまだ依然と残っておるという部分もあるので、そういう面は、しかし具体的に言えばできるだけ、今米を中心に話をさせてもらえば、これだけ労働時間が短縮をするということは、機械化であろうといろいろな条件を含めて短縮をされてきておるものですから、収益以前に、他の仕事に兼業するために、朝昼晩、土曜、日曜というようなことで、それでは農業だけに投資した時間とコストを考えてみると決してプラスの状態にはならないけれどもまだ続けておるというようなところをよく徹底していかなければなりませんし、それから協同の問題が出てきたり、協同の中にも作業受委託が出てきたり、今先生がおっしゃるような御提言というのは、私もかねてから考えてきておったことでありますし、地域の実情に合わせて、理想もさることながら現実的に対応していかなければいけないというふうに考えておるわけであります。  いずれにいたしましても、コストを下げるために、農家所得を安定させるために、規模拡大も、いわば協同化も助け合いもすべて同じ目的のためにやる手段でしかございませんから、もう少し幅広く地域の実情に合わせて選択ができるようにしながらそれを支援をしていきたい、そう考えております。
  66. 日野市朗

    ○日野委員 私、あえてコオペレーションということを言ったのは、まあ日本というのは競争社会でございますね。まさに競争社会であって、国際的に見れば、アメリカから国際的競争力の強い米なんか輸入しろ、こういう圧力もかかってくる。農業者の間でも、お互いの競争意識でいろいろなものをやる。例えば経営規模拡大競争だとかそういうことなんかもところによってはあるやにも聞きますし、それからお互いに競争力の強い農産物をつくろうということでいろいろやり合っているというような例も、これは枚挙にいとまがないわけでありますが、私は、農業の原理というのは競争原理だけでいってはいかぬというふうに思うものですから、あえて私はここでコオペレーションの精神ということを申し上げておいたわけです。  仄聞するところによりますと、そのようなコオペレーションを推進していくということについては、いろいろな農業関係者の間で最近見直しがされているというようなことも聞くわけであります。この「構造政策推進」のところに確かにいろいろなポイントが書いてある。しかし、さらに一歩進んだフィロソフィーとして協同精神というようなものが必要ではないかということを私はあえてここで申し上げるのですが、今、何ですか協同作業はうまくいかないみたいな話を大臣されたわけだが、それを乗り越えていく協同こそが日本農業を生かしていくということではなかろうかと私は考えるんですね。農民が生きるということも大事、そしてそれに支えられて農業が生きる、そして究極には農業を生かしていくということを考えることが必要だと思いますのでね。どうですか、その協同精神に対する評価というのは。今の大臣のおっしゃったこと、実は私、よくわからなかった、聞いていて。
  67. 近藤元次

    近藤国務大臣 仲間仕事がうまくいかないというので焦点がぼけたかもわかりませんけれども、そういうことが言われておるけれども、今の時代、それを乗り越えていかなければ、受委託もできなければ協同作業もできないわけでありますから、そういうことを理解を求めながら、地域の実情に合わせて協同で生産をしていくことが一番コストが安くなる一つの方法であるということでありますから、そういう方向でもう少し、規模拡大だけに焦点を合わせないで、作業上の問題からコスト低減というのはかなりの部分徹底ができることでもありますので、そういう方向で進めたい、そう思っております。
  68. 日野市朗

    ○日野委員 じゃ、ちょっと別の質問を一つやります。  いわゆるJAS法に基づいて政令が定められて、その政令に基づいて農水省として品質の表示基準をつくっておられるわけですね。その中に今、賞味期間を表示せよ、こうなっているわけですが、この賞味期間を表示することによって、加工食品が賞味期間が過ぎたということでどんどん廃棄される。また場合によっては、この賞味期間が過ぎないにもかかわらず、新しい物を好むという消費者の嗜好によって、それがスーパーなんかの販売戦略と結びついてしまって、まだ食べられる、賞味に値する加工食品がどんどん捨てられるという現実があるわけですが、これを何とかしないといけないのではないかというふうに私は思います。これはやがては価格にもはね返るわけでありますからね。この点について農水省、JASの規格、そして賞味期間をつけなさいという指導をしておられるわけですから、これを解決するための方法を何か考えておられますか。これはマスコミでも取り上げられた問題で、やがて大きい問題になろうと思いますが……。
  69. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 私どもの方で、おっしゃるようにJAS法で加工食品を主としまして、製造年月日であるとか賞味期間を表示させるということをやっておりますが、これは御案内のように、JAS法に基づきます農林物資規格調査会という一種の審議会におきまして議論をして、現在大体二十六品目つけております。  ただ、先生の御指摘の問題のは、むしろそういう制度にのらないものでございまして、最近の消費者の鮮度志向の高まりというのを背景にいたしまして、小売店が商品の販売戦略の一環としてそれぞれの店で独自に基準を決めて、これを納入業者に守らせようというような動きがあるわけでございます。これは、おっしゃるようにそのためにかえって多頻度、小口の定時配送というようなことを強いたりしまして、流通あるいは生産の効率を低下させる、あるいは一定の期限を過ぎたものを返品させることによって、いわばむだが生ずるということで、その負担は最終的に消費者の負担になるという点で、我々としても大変問題があろうと思っております。  この点につきまして、実は昨年私どもの方でまとめました食品流通問題研究会報告書においてもその改善方が必要だということを言っておりまして、我々としましても、業界において一定のルールをつくるように、そしてメーカー、卸、小売、それぞれが機能分担を明確にいたしまして、消費者が本当に求めているもの、それを生産に反映させるというふうに努力すべきということを言っております。それによりまして初めて効率的な流通システムができて、その利益が消費者にも及ぶということでありますので、御指摘のような行き過ぎた日付管理と私ども言っておりますが、そういうものについては、今後とも適正なものにするように業界を指導していきたいと思っております。
  70. 日野市朗

    ○日野委員 では、終わります。
  71. 大原一三

    大原委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  72. 大原一三

    大原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。有川清次君。
  73. 有川清次

    ○有川委員 けさほどからガット・ウルグアイ・ラウンドの問題が論議もされ、質問もあったところでありますが、私も重ねて若干御質問をまず申し上げたいと思います。  日本世界最大の穀物輸入国であるという立場から、これまで基礎的食糧食糧の安全保障ないしは環境保全の立場から強く米の輸入阻止の立場で頑張ってまいりました。私もアメリカのいろいろなガット事務局と折衝もした経験がありますが、お話を聞いておりますと、けさほどの話題のように、何か農産物を一般の商品と同一視した観点からの御意見がたくさんあったところでございます。今後、どうしてもこれらの問題に対処していかなければならないと思いますが、十二月のブラッセルでの閣僚会議では、継続して、今年の早い時期になるべく適当なレベルで再開をする、こういうことになって、その後、ダンケル・ガット事務局長に判断がゆだねられております。調整作業に入っていると聞きますが、これもかなり難航しておるように伺っております。  そこで、まず、どのように推移しつつあって、今後の見通しはどうなのか、EC各国のその後の動きを含めてお聞かせを願いたいと思います。
  74. 近藤元次

    近藤国務大臣 お答えいたします。  先生今御指摘のように、ブラッセル会議が中断をされて延会になってから以後、ダンケル事務局長の方からプラットホームづくりに鋭意努力をいたしておるわけであります。御案内のような、アメリカとEC輸出補助金に伴う意見が闘わされて延会になったままでありますけれども、今回そのまとめをしようとする事務局長のプラットホームづくりに、今主要国を初めとする関係国の意見調整を事務局長がされておるわけであります。  ECにおきましても、国内措置、国境措置あるいは輸出補助金等については話し合いに応ずる姿勢は示しておりますけれども、基本的な農業政策についてはなお隔たりのあるような感じを受けておるわけであります。これに難航いたしておりますし、三月一日はもうアメリカにおけるファーストトラックの手続の期限も来ておりますので、この先どのような時点で話し合いが始まるかということは予想つきがたい状況でありますけれども、我が国としては従来の方針どおり、まずプラットホームに対しての食糧安保、基礎的食糧を中心にして十一条二項(c)を明確にする、あるいはいつの年度を基準にするかという三点の部分についてたたき台に盛り込んでいただく努力をしておるところであります。
  75. 有川清次

    ○有川委員 我が国は、食糧安全保障を柱にいたしまして十一条二項(c)、これが重要であるというふうに主張してきておるわけですが、この主張が基本的に変わらないのか。また、十一条二項(c)にはミニマムアクセスが残るわけでありますが、この部分に対する大臣の見解と今後の努力状況、努力の方針、各国の反応について若干お聞かせ願います。
  76. 近藤元次

    近藤国務大臣 ミニマムアクセスと十一条二項(c)というのは、生産調整を実効あらしめるためのことについての明確化を我が国は主張しておるわけであります。これは先生御案内のように乳製品、でん粉にかかわる問題であります。食糧安保、基礎的食糧というのはまた別の問題でございますので、そのような対応について努力をしていきたい、こう思っております。
  77. 有川清次

    ○有川委員 これから大きな山場を迎えるわけでありますが、国会決議等よく踏まえて、新大臣としてきちんと頑張っていただきたい、このように思います。私も昨年末ジュネーブに伺いまして、各国ガット参事官等と交渉もしてまいったわけでありますが、また、日本政府代表が精力的に頑張っていらっしゃる姿を見まして、ぜひ続けて努力をしていただきたいと期待をするわけであります。  また、一月二十八日からIPUの会議、アジア・太平洋地域会議に出席したわけですが、タイ国もありますし、私、この場でガットの問題、日本の米の問題について特に提言をしてまいりました。結果といたしまして、タイの方から、特に環境保全に対して日本の考え方に非常に賛成をされまして、極めて長い時間を割いて激励をいただきました。また、議長の方からも日本の米の文化について、やはり地域の文化を大事にするという立場で御意見などを賜ったところであります。意を強くして帰ってきたところでありますが、今後ともともに頑張らなければならないというふうに思っておる次第でございます。  そこで、私は、でん粉、乳製品の問題につきまして、ことしの三月で日米政府間合意の期限が切れるということになっておりますので、この問題についてお伺いをしたいと思います。  これまで我が国は、二国間交渉になれば不利という立場で、ガット・ウルグアイ・ラウンドの場で解決する方針で対処してきたというふうに理解をしておりますが、このガットの交渉がおくれそうな状況の中で、報道によりますと、政府は二国間協議に応ずる方針を表明したとなっております。また、原則的な立場は変えない、当面は輸入枠の拡大で対処するというふうになっておりますが、見通しは、二国間協議の場合どうなんでしょうか。この作物は、一応はクロの判定が出た作物であります。ガット・ウルグアイ・ラウンドの中でも米と並行しながら政府の方でも意見を述べてこられたと思いますが、その辺の感触について、まずお伺いをいたしたいと思います。
  78. 近藤元次

    近藤国務大臣 今先生のお話のございましたように、二年前に残念な結果が出て、以来我が国はガット・ウルグアイ・ラウンドの場で生産調整をしておるところのでん粉についても十一条二項(c)を明確化をしていくということが大変重要なことだ、こういう認識に立って今日まで努力をいたしてきておるわけであります。  残念ながらガット・ウルグアイ・ラウンドが延びて、結局でん粉の期限が先になったという現状でありますけれども、我が国は少なくともウルグアイ・ラウンドででん粉を念頭に置いて十一条二の関係を明確にするべく努力をいたしておるわけでありますから、その精神にのっとって二国間の話し合いを進めていくということでございます。
  79. 有川清次

    ○有川委員 特にでん粉について今御意見を述べられたわけでありますが、私は、この品目は北海道、南九州、とりわけ私のいる鹿児島県の農業にとってその根幹をなすものでありまして、自由化が行われますと壊滅的な打撃を受ける、そういう立場から絶対にこれを認めてはならないということを考えておるわけであります。  大臣も既に情勢は御案内のところでございますけれども、鹿児島県は台風の常襲地帯、特に台風に強い、耐えられる、そういう作物であることもあり、また、畑地帯ではサツマイモ文化が育ってきておるわけでございます。鹿児島県ではサツマイモを唐芋と言いますけれども、東南アジア諸国との間で、今唐芋交流というのが民間の間で非常に大きく、長年にわたって定着しておるのもそうした実情からだと認識しております。さらにまた、現地では高齢化の進行や婦人労働力など、経営管理上もサツマイモは最適でありまして、関連産業も非常に多くて、地域経済に及ぼす影響が非常に甚大であるというふうに思います。  現在では生産調整なども行いながら、一方で生産性を高める努力もしておるところでございますが、あえて実情を申し上げ、またさらに実態を若干御報告申し上げますと、鹿児島県の農家戸数十五万戸のうち四一・八%、六万二千六百戸がこのカンショ生産を行っております。作付面積が二万ヘクタールの畑のうち二一・二%であり、さらにでん粉用原料は六五%という高い比率になっておるわけでございます。よって、でん粉の自由化いかんが農家の死活問題になりますし、町の経済全体に影響を及ぼすというふうに思っておるわけでありますが、従来の態度を堅持されまして頑張っていただくように強く要請をしておきたいと思います。  そこで、そのために二国間協議ではなくて、あくまでもガット・ウルグアイ・ラウンドの場で協議をしながら日本の立場を鮮明にしていく、そうした押しやっていくことが大事なのではないかと思いますが、その辺のことについてのお考えをお伺いします。
  80. 近藤元次

    近藤国務大臣 今のお話しのございましたように、でん粉は、農業だけではなくて地域の経済に与える影響というのは極めて大きなものがあるということの認識はいたしております。  したがって、二国間交渉という話になっても、ガット・ウルグアイ・ラウンドで主張してきておることを基本にしながら、現行の輸入枠、そういうものを守っていくという状況の中で自由化は阻止していきたい、そういう強い決意で交渉に当たっていく考えでおります。
  81. 有川清次

    ○有川委員 きょうも地元の農協あるいは農家、各団体から陳情が来ておるわけであります。今必死の状況にありますが、大臣交渉に臨む決意を聞きまして、非常に安堵するわけでありますが、しかし、状況は極めて厳しいという認識に立っておりますので、なお一層の御努力をお願い申し上げたいと思います。  以上でガットの方を終わりまして、次に、猿の害について質問を申し上げたいと思います。  昨年の第百十八特別国会でも質問をいたしまして、それぞれ回答をいただきましたけれども、従来の有害鳥獣駆除というそうした立場だけでは極めて不十分であり、抜本的な対策を講ずる必要があるのではないか、このように考えまして、余りよいことではありませんが、猿害の被害の先進地域といたしまして、再度質問を申し上げたいと思います。  一般に有害鳥獣に対する対策は、種類なり被害の状況によってそれぞれ対策が違うわけでありますが、特に猿の場合、他の有害鳥獣と違いまして環境に順応し、知恵がついて進化するために駆除対策を相手がマスターいたしまして、学習して、次は同じ方法をとっても通用しなくなるという特徴があろうかと思います。猿の知恵が勝つのか、人間が勝つのかということでありまして、相手が学習をしないうちに先手必勝で対応しなければならないと、経験から感じておるところでございます。  猿害が出た当初は、ざっと考えて軽視しながら追い払う程度にしておりましても、次第に学習が募りまして除去できなくなり、有害鳥獣としてこれを射殺しなければならない、こういうところまでなるわけであります。極めて困難な猿害だと思いますが、最近ではますます全国的な広がりを見せておるところであります。  鹿児島県の場合も、昭和六十三年度の農作物の被害が三千三百五十万七千円であったものが、平成元年度には六千五百八十七万三千円と、約倍増しておるのが現状でございます。鹿児島県で、鹿児島大学と文明農機株式会社が開発されました光電のセンサーで爆発音を出す器具を使いまして、千葉県や滋賀県でもこれを導入し、対処されておるように聞きます。猿害は今や全国的な広がりを見せておると思いますが、実態はどうなっておるのでしょうか。全国的な広がりがある以上、もはや局地的な対処ではなくて、自治体のみに頼る、あるいは任せるのではなくて、国として研究、対応する必要があろうかというふうに思います。  まず、全国的な被害の推移とあわせまして、駆除数等の実態を環境庁にお伺いをしたいと思います。
  82. 小川康夫

    ○小川説明員 私の方からお答え申し上げたいと思います。  先生おっしゃられますように、猿は非常に賢い動物でございまして、その分布は日本では、南は先生の地元の鹿児島県の屋久島から北は青森県の下北半島、下北半島が世界で北限の猿の生息地でございますが、広く分布いたしております。その中で屋久島の猿はニホンザルの亜種ということで、屋久ザルということで屋久島だけにしか生息していない、ニホンザルのちょっと変わったものということで位置づけされております。これは農林水産省の方の所管でございますので、私の方からは細かくは申しませんが、全国的に猿の被害が発生しておるということでございます。各都道府県、市町村は、猿の被害につきまして、その防除対策について大変困っておるという現状でございます。  昭和六十三年度におきますニホンザルの全国における捕獲数でございますが、ニホンザルは狩猟鳥獣でございませんで保護鳥獣でございますので、これはすべて農林水産業に被害を与えるということで捕獲した数でございますが、三十九都道府県におきまして約四千八百頭捕獲されております。ちなみに、鹿児島県ではその一割の約四百七十頭が捕獲されておるという状況でございます。
  83. 有川清次

    ○有川委員 ここに猿の写真を持ってきましたけれども、大臣、ちょっと見ていただきたいと思います。なかなか撮れない写真で、猿は喜んで大胆に、汗水垂らして農家の方がつくり、いよいよ収穫しようとする直前のポンカンを食べておる写真です。そして、木に登っておるもの。さらには、網があるところがありますが、その上に猿が乗りまして、まず綱を押し下げるわけです。押し下げますと、次の猿が全部中に入って誘導されていく、そういうことになっておりまして、大変厄介な状況になっておるところでございます。  そこで、また次の点を申し上げたいと思いますが、猿害は農作物や林産物などにとどまりませず、今や屋根、煙突、雨戸、アンテナなど家屋の破損や婦女子に危害を加えるなど、人間の生活の場も脅かすようになっております。特に、弱い立場にある子供さんや老婦人等に対しましては見分けをいたしましてこれをおどすなど、軽視ができないところにまできておるわけでありますが、猿は昔からお山の大将と言われまして、山奥深くすみ、山の人としてあがめられてまいりましたが、その猿がなぜ、近年急に里におりて農作物を荒らすのか、あるいは人間に危害まで加えるようになったのか、その分析を正確に把握するところからこの対策は入らなければならないというふうに思います。  捕獲や銃殺による防除が進むにつれまして、これでも四千八百頭の捕獲がされておるようでありますが、一方で、自然や野生動物の保護を唱える人たち、この間に不幸な対立関係が出ておるのも原因であります。  こうした状況になった要因を考えてみますと、まず、猿のすむべき森、食糧のある広葉樹林が縮小されてきたこと。二つ目には、耕地が山ろくの方まで拡大をいたしまして、野猿のえさをとる場所に接近をしたこと。三つ目は、観光目的のえさづけ。四つ目は、栄養が足りまして個体数が増大したこと。五つ目は、過疎の進行で、農山村の高齢化等により農業が後退をいたしまして、荒れ地が拡大をした。人間の生活圏の縮小ということが考えられると思います。若い担い手が帰ってきた地域でイノシシや猿が近寄らなくなって、被害が非常に減少したという報告も婦人から聞きました。しかし、高齢化して農村が後退するとこうした現象が強まってくるわけであります。まさに、こうした現象は近代化と並行して拡大しておりまして、人間がなせるわざの結果だというふうに思います。  また、農家も近代化の犠牲になっていろいろな面で追い詰められている現状を考えますが、こうした根本的な原因に対しますこれからの対応がまず重要だと思いますけれども、農蚕園芸局並びに林野庁等の見解を、これからの対応を含めてお聞かせ願いたいと思います。
  84. 安橋隆雄

    安橋政府委員 平成元年度の都道府県からの報告によりますと、元年度一年間で全国的に農作物の猿によります被害は、面積にいたしまして三千七百ヘクタール、被害量で五千八百トンということになっております。作物別では、果樹が一番多うございまして、その次に野菜というような順になっておるわけでございます。  これの駆除対策でございますが、植物防疫法で、いわゆる栽培している植物に対します有害動物という中に猿というものも当然含み得るわけでございまして、植物防疫法での対応ということになるわけでございますけれども、全国的なベースで国が直轄で行うというような防除の対策というような要件になりますと、急激に蔓延して国内農産物に重要な影響を与えるというような点で若干要件が満たされませんので、私どもといたしましては、第六章の「都道府県の防疫」というようなことで、まず県で御対応いただくのが第一ではないかと思っておるわけでございます。  今先生お話しのとおり、鹿児島県でも去年の十月に猿害対策協議会というようなものを設けられまして、どのような対策がいいのか、人間が考えるいろいろな対策に対しまして裏をかくようなことで逃れるというようなこともあって、あらゆる角度からいろいろな対策を御検討いただいて、この三月にも県としてどのような対策が効果的であるかというようなことで御結論を得られるというふうにも聞いておりますので、私ども国といたしましては、その御結論を受けまして、国として支援するところがありますれば支援してまいりたい、かように考えておるところでございます。  なお、猿の害に関しまして、国の方でも環境庁、文部省、農林省それから林野庁、いろいろ多岐にわたっておりますので、十分連絡をとり合って効果的な対策が図られるようにしてまいりたいと思っておるところでございます。     〔委員長退席、宮里委員長代理着席〕
  85. 小澤普照

    ○小澤政府委員 林野庁としての対応の方向につきましてお答えを申し上げたいと思います。  猿害の原因につきましては、個体群の増加でございますとか、えづけによる猿の食性の変化などが影響していると言われておりますし、それから広葉樹林の伐採との関係でございます。これは必ずしも明確でないということもございますけれども、しかしながら、広葉樹林の伐採が影響を及ぼしているのではないかという指摘も承知しておるところでございます。  そこで、このような森林の有する多面的な機能ございますけれども、林野庁としましては、森林整備に当たりまして、野生鳥獣の保護あるいはまた自然環境保全に十分配慮いたしまして、広葉樹林の育成など天然林施業の積極的な推進に努めてまいりたいと考えております。  なお、国有林が相当賦存しておりますので、国有林の施業につきましては保護林などの指定を行いまして、そのほか自然環境保全地域等もございますけれども、生態系の保護を図りますとともに、全体的に天然林施業を積極的に推進していくというようなことで、野生動植物を含む自然環境保全形成に努めながら、自然との調和がとれた森林施業を実施しているところでございますし、今後もこれをさらに積極的に実施してまいりたいと思うわけでございます。  なお、鹿児島県におきまして猿害対策協議会が設置されておりますけれども、林野庁といたしましてもこの協議会に積極的に参画いたしまして、必要な措置を講じてまいる所存でございます。
  86. 有川清次

    ○有川委員 今それぞれ御答弁をいただきました。鹿児島県の場合に協議会ができまして、県の農政部、林務部、環境課、それに営林署、地元の自治体、鹿児島大学の先生方、こういうので、今屋久島をモデルとしながら努力をされておる現実がございます。平成三年度から猿の生態調査や、あるいはこれから山に追い上げていく、そういう方策について一定の方向は出しておるようでありますが、努力をなしておるところでありまして、なかなかしかし、県独自でモデル的に鹿児島県がやったとしても、全国的なレベルで発生しておるわけでありますから、そういう意味では、ここをモデルにしながら全国にどう広げていくかということを考える必要があるというふうに思っておるところでございます。  林野庁の方からちょっと御答弁がございました。広葉樹林の問題でありますが、特に民有林ですね、国有林は荒れておるので対処をするというお話がありました。民有林の場合に、最近パルプ材とかそういう問題もあるのでしょうけれども、ほとんど保安的なものも残さずに丸ごとこれを伐採していく。結果は、猿がすめなくなる、えさがなくなる、そして台風や集中豪雨で災害が起こるという状況がございます。私は、災害対策委員会でも現地の写真を提示しながらいろいろしたわけでありますが、また最近における現地の写真も持ってきておりますから、これは小さな丘でありますが、人家のすぐ近くの山を全部丸ごと裸にする、大きな石が露出しておる、こういう状況にあるわけであります。  さきに弘中説明員から対応の仕方についても説明があったわけでありますが、広葉樹林の保護育成、このように言われましても現実にはかなりの部分が今も切られておるという状況があるわけでありまして、災害も起こるわけでありますので、その辺の林野庁の指導、対策、もっときめ細かな具体的なものが欲しい、このように思います。特に答弁の中では、普通林については森林計画制度、保安林については保安林制度、これに基づいて適切な施業をやるように指導しております、こういうふうに言われておるわけですね。民有林の場合は山主の財産との関係、財産処分との問題、こういうことがあるわけでありまして、この辺の指導を具体的にはどのようにされておるのか、その辺を十分お聞かせを願いたいと思います。
  87. 小澤普照

    ○小澤政府委員 民有林につきましても国有林と同様、その森林に対する要請というのは、最近は環境保全面でございますとかその他公益的な面の要請が大変強くなっているということでございますので、先生御指摘のような実態もあるいはあるかとは思いますけれども、一つの森林の扱い方の方法といたしましては、広葉樹林の整備も含めまして積極的に展開してまいりたいと思っておるところでございまして、そういう意味で現在、平成三年度の政策方向につきましても、種々環境面に配慮した森林整備を行いたいと思っておりますし、さらにまた、森林整備全体を森林に対する要請を受けとめていくという方向で今後ともしっかりとやってまいりたいということで、現在法制度の改正等も含めまして、新しい整備方向を出そうとしております。そしてこの猿害につきましても、我々としては、先ほどもお答えいたしましたように、民有林国有林を問わず森林の扱いあるいは伐採等につきましても適正な方向となるようまた指導してまいりたい、このように思っております。
  88. 有川清次

    ○有川委員 鹿児島県の協議会の中で、猿の中には訓練がいった猿、全く人間に寄りつかない自然の猿ですね、そして学習が行き過ぎてどうにもならない猿というふうに仕分けをしながら対処をしよう、それを山に追い上げても、そこで食べるものがなければまたおりざるを得ないわけでありますから、そういうところには実のなる広葉樹林を植栽をしよう、こういうところまで今論議をされておるわけですね。やはり全国的な立場でその辺を実のあるものにぜひ努力をお願いを申し上げたいと思います。  先ほど御回答の中で、各省庁連携をとって頑張っていきたい、指導していきたい、こういうお話があったわけですが、植物防疫法上は農蚕園芸局ですね。駆除と環境保全環境庁、現地では林野庁がやっておりますが、学術的猿の生態研究は文部省、こういうふうに今なっておるわけでございます。  昨年の質問の際に、今委員であります東政務次官から、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の規定に従って適正に実施していく、これが重要だ、そのためには環境庁と関係省庁との連絡を密にしながら地域農業発展に支障が生じないように努力をしたい、こういう答弁があったわけです。今もありましたけれども、では、昨年の五月以降、具体的に各省庁間でどのような連絡をとり合って、どのような対応がされてきたのか、その辺を具体的に、県に行って県に指導したという縦割りのものではなくて国のレベルにおいて、政府のレベルにおいてその辺の協議がどのようになされてきたのか。私は、きょうこの質問をするに当たりまして、レクチャーの際にもあったのですが、どこがどう答弁をするかという問題でなかなか所管が明らかにならないという問題があって、それじゃ中心的な課題はだれにといえば、それはどこが受けるべきかという悩みがあるわけですね。それは連絡がスムーズにいってないということを意味すると思いますが、その辺をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  89. 安橋隆雄

    安橋政府委員 ただいま先生お話しのように、学術的な意味での猿の保護ということになりますと文部省の方になりますし、環境の面からといいますと環境庁になりますし、被害を受けるという立場でございますと、受ける被害が農作物であるか林産物であるかによりましてそれぞれ違うわけでございますが、私どもといたしましては、そのあたり十分そごがないように調整をする必要があるということで、昨年の御審議の際の御指摘もありまして連絡協議会を以上申しました四つのところで開いているわけでございます。  それで、具体的に開いたのはいつかということでございますが、これは昨年の十一月に開いております。それから、近く鹿児島県でただいまお話が出ましたように対策協議会の方の御結論も出るということでございますので、それに合わせまして国の方の対応を検討するためにまた連絡協議会も持ちたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、縦割り行政の弊害ができるだけ出ないように万全を期してまいりたい、このように考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  90. 有川清次

    ○有川委員 昨年の十一月に協議をしたとおっしゃいますが、そのときはどこが音頭をとったのですか。そして今後連絡など音頭をとる省庁はどこなんですか。できれば、十一月に協議をされた内容について、今ここじゃなくて結構ですから、後でその協議の資料をいただきたいと思いますが、どうです。
  91. 安橋隆雄

    安橋政府委員 協議の呼びかけは環境庁の方でやっていただきまして、十一月に会議を持ったわけでございます。そのときの検討内容につきましては、後刻先生の方に御報告申し上げたいと思っております。
  92. 有川清次

    ○有川委員 昨年の質問の際に、今委員になっていらっしゃいます政務次官の方から、別席でありましたけれども、個人的にはぜひ行って現地調査をしながら積極的にやりたい、こういう御意見もあったわけでありますが、農民の皆さんは怒りあるいはもうあきらめ、そういうものも強く出ておるところでありますので、どうか今後の対応をきちっと、環境庁が中心であれば環境庁中心にやっていただきたいと思います。  それから次に、ヤクシマザルの生態、社会学的な研究をしているのは京都大学霊長類研究所なんですが、観測所を設置をされて今日まで対応されております。文部省の佐々木説明員の答弁によりますと、「猿害の原因というものをきちんと究明するためには、猿の生態の研究をさらに積極的に進めていく必要があるわけで」、「例えば、地域個体群の動態と個体数の変動だとか、垂直分布に伴う猿の生態、こういった面での研究を今後とも十二分に進めてまいりたい」、このように答えていらっしゃいます。これまでは京都大学ではこうした被害に対する研究はなされていなかったわけでありますけれども、これから実施する必要がある、十二分にやりたい、こういうふうにおっしゃっておるわけでありますが、具体的にどのような方法で、どの程度の陣容で、どのようにやられるのか。あるいは早い時期に研究結果も出てこなければならないわけでありますけれども、そうした対策などがいつごろ結果が明らかになるのか、文部省の見解をお聞きしたいと思います。
  93. 佐々木正峰

    ○佐々木説明員 京都大学霊長類研究所におきましては、霊長類に関する総合的な研究をやっておるわけでございますけれども、その研究の一環といたしまして、ニホンザルの種形成史、それと温帯林への適応のあり方、これを明らかにするために、屋久島に観測所を設置して、野外観察を通してニホンザルの社会生態学研究を行っておるわけでございます。そういった意味では、研究林の中における猿の動態研究といったことが中心となるわけでございまして、したがいまして、その意味におきまして、例えば猿と人間との共存のあり方、こういったものをどういう形で進めていくかといったことの究明というのは、なかなか直接的な研究目的にはならないものがあろうかと思うわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、大学における学術研究というものは、昭和五十九年の学術審議会の答申にもございますように、研究者の自主性にまつべきものでございますので、そういった面での研究の必要性ということが強く御指摘をいただきました。こういったことを十二分に的確にお伝えをしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  94. 有川清次

    ○有川委員 今の答弁、昨年の五月の答弁とすれば全然違うんですよ。そのときには、十二分にそうした被害の問題を含めて対応してまいります、議事録を持ってきておりますが、そう言われておるわけでありまして、そういう意味では、きちんとした責任ある答弁とその後の対応がなければならない、私はこのように思うわけであります。いいです、それはもう。次の提案も含めてしてまいりたいと思いますので。  また、この間の質問の際に、小川説明員から、野生鳥獣による被害が発生した場合には、まず最初に追い払い、つまり猟銃を最初から使うのではなくて、追っ払ってください、それから防護ネットとか電気さくとかを設けまして被害に遭わないようにしてくださいということで各都道府県にお願いをしておるところです、こういう答弁がありました。こんな認識だから、先ほど申しますように猿の問題が解決しない。そうしたことをしっかり踏まえてもらうために、またくどくなるようだけれども、私はきょうはこうした質問をしておるわけであります。  そこで、提言もしながら申し上げたいと思いますけれども、鹿児島大学の万田正治教授が地元新聞に「猿害を考える」と題しまして、屋久島の国際シンポジウムの成果について述べられております。  その第一は、被害者と保護者側が同じテーブルに初めて着いたこと。二つ目は、人間と猿の共存が否定されずに、今後総合的な防除対策についてのアピール文が採択されたこと。三つ目は、国としての行政責任と対策が明確にされたこと。第四に、猿害を真に解決することこそが、野猿を保護する基本的な解決の道に通ずる。第五に、こうしたことに対して地元役場でも非常に関心を強く示して具体的に対応され始めた。このように言われております。  そして、そうした状況からこのような意見が述べられておるわけであります。   しかし、以上のような評価をしたからといって、長年、猿害問題に取り組んできた研究者の一人として、私は決して楽観視はしていない。なぜなら、このような猿害をはじめとする鳥獣害問題に対する一般国民の理解度は必ずしも高いものでないからだ。ましてや鳥獣害が自然と人間の調和をめぐる諸問題の具体的事例として、われわれ人間の目の前に、今まさに投げかけられていることに、まだ多くの人々が気がついていないからである。その意味で国民的合意の道はまだまだ険しく、国家が本腰を入れて財政的投資を図るまでには、かなりの時間を要することと思われる。   自然への働きかけの中でもたらした人間の仕業は、人間自らの知恵で後始末をしなければならないし、まさに野猿がそのことを人間に鋭く警告しているとみるべきであろう。   シンポの席上「猿の勝ち、人間の負け」と叫んだ農家に対して「いやまだ勝負はこれからだ。人間にも知恵があるなら、何としても英知を傾けて、一緒に頑張ろうではないか」と、こたえた私の発言を、私自身肝に銘じている。  今、各省庁努力の方向は見えてまいりましたが、先生が言われるように、まだまだ国が本腰入れて頑張るという態勢にはないのではないか、私はこのように思います。  そこで、私は次のことを提案をしたいと思います。  各省庁との関係調整、自治体からの相談の窓口、さらには、有害獣として対応するのか、高崎山にあるように観光用として活用するかなど、地域ごとの意見や課題に対しての適切なアドバイスをすること、または猿の分布状況と被害状況、こうした調査、被害地での具体的対策指導等を行う機関とされまして、国に総合的研究調査、指導機関を設置すべきではないかということを提案申し上げたいと思います。そこが母体となりまして、全国の被害箇所の対策が後手にならないように、人間と猿が共存できるようにすることはどうなんでしょう。捕殺は許可制、生息に対する問題は自然保護、究極は政府に求められるわけでありまして、これを局地的にやっても終息はできないと思うわけでありますが、私の提案に対しまして御見解をお聞かせ願いたいと思います。できれば大臣、御見解をお聞かせください。
  95. 近藤元次

    近藤国務大臣 正直、私は、今初めてお話を聞かせていただいて、昨年以来の当委員会での御質疑の経過も聞かせていただきました。今先生の御提案になりました件について、私がお答えをする立場じゃございませんけれども、省庁間の協議をさせていただきたいと思います。  あわせて、生息その他は、専門家であります環境庁なり文部省のお知恵をかりなければなりませんけれども、農林水産省としては、現実に農作物に被害が出ておる、さらに拡大をする可能性があるとすれば、その分野にわたっては私どもの責任において農作物の被害の予防なり、あるいは被害に対する対策なりはやらなければならないことでありますから、そこはきちっと対応していきたいと思うわけでありますが、せっかく今鹿児島県の方で、もう三月という時点で結論が出てくるというようなことを聞かせていただいておりますので、それをお聞かせをいただいて、国としてやるべきことに対応してまいりたい、こう考えております。
  96. 有川清次

    ○有川委員 前向きな答弁であるわけですが、初めてのことだということでございますので、ぜひ肝に銘じて、大体猿の害が起こるところは過疎なんですね。問題になっている中山間地域なんです。そして、婦女子が残って難儀をしながら農業をしている、所得も少ない、そこに持ち出しがふえてきて頭にくる、こういう状況の繰り返しなんですから、これが進行すればするほど問題は深刻化するわけでありまして、ぜひ大臣の御努力をお願い申し上げたいと思います。  文部省からもちょっとありましたけれども、鹿児島県の場合は、必要に迫られて、長年にわたって鹿児島大学を中心にして研究開発が進められてきた。ただ、保護という立場で研究される皆さんの状況とは違って、いろいろな段階の学習をしてきて、人がもう殺さなければならぬというところまで至る猿の生態系あるいは防護策、努力をされてきたわけですね。そういうところはほかにないでしょう。恐らく鹿児島県だけだと思う。世界でもなかなかこういう研究をしたところはないと私は思うのですが、鹿児島県の場合も特別に専門の学部があるのではなくて、農学部の畜産管理学講座の先生お二人が中心になって努力をされておる、そういうことであります。そして、屋久島のシンポジウムには海外からも見えているのです。動物の保護となれば、鯨やイルカ、いろいろな問題がありますように、騒ぎ立てられて、対応がでなくなるような状況じゃ困る。その以前に国としての十分な対応を私はお願いをしたいと思います。  たまたま大臣の方から、鹿児島県を参考にしながらという問題がありました。私はさらに加えて、屋久島をモデルにしてやったらどうか。屋久島は四面海に囲まれた島ですから、そして国有林もあれば民有林もある、そして土地の狭いところで農作業をされておる、そうした果樹が主にやられているという問題であり、猿も高さによって、垂直分布によっていろいろな形態があるわけです。学習をしたものがあり、さまざまでありますから、ぜひここをモデルにしながら立派な方針をつくり、国の施策としてもらいたいと思います。  そこで、もう一点要請なんですが、大学教授と文明農機株式会社というところが共同で開発いたしましたアニマルセンサーという防除装置がございます。初期の学習が進んでいない猿には大きな効果を発揮しておるわけであります。これは、普通は鉄砲で撃つような音を立てて逃がすわけですけれども、それになれてきますと、音が鳴った後に行けば大丈夫という猿になってくるわけですね。それをいろいろ研究されまして、綱の間に二つ出どころをつくりまして、入りますとセンサーが働いて、入って間もなく真ん中でドンとやる。慌てて出ますと、出た瞬間にまたセンサーが働きまして、若干の時間を置いてドンと鳴る。これがかなり効果を生んでおるわけであります。これが残念ながら装置が一基二十万円という状況になっておりまして、過疎の農村ではとても負担に耐えられない、こういう問題があるわけですね。そこで、金がないということで放置しておくとまた学習が進んでいくという問題もありますので、この辺について、地域農業集団、そういうものに対する補助金を出すような検討をしていただきたい、このように思うわけですが、既にほかの県でもこれを取り入れておりますから、まだ学習がいっていないところは効果を出しておるわけでありまして、ぜひその辺の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  97. 安橋隆雄

    安橋政府委員 アニマルセンサーで猿をおどすという今先生のお話しのものにつきましては、私ども、鹿児島県からもいろいろ話を聞いているところでございます。鹿児島大学において改良が行われまして、一定の効果が上がっているというふうに伺っているところでございます。ただ、雨風に対しても鋭敏に反応するというようなところもありまして、若干まだ技術的な改良を要する点もあるやに聞いておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、既にネット、網の方につきましては助成対象にしているところでございますので、そういった点も念頭に置きまして、また鹿児島県なりでも県単事業として既に助成をしていらっしゃるというふうにも聞いております。そのあたりを十分勘案いたしまして、先ほどから申し上げておりますように、鹿児島県全体として猿害対策のおまとめを得まして国の方に一定の御要望がありますれば、その中で私どもとしては対応できるものは対応していくというような形で今後の検討課題にさせていただきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  98. 有川清次

    ○有川委員 猿の問題についていろいろ質問をいたしまして、かなり前向きな御意見もいただいたのですが、今のセンサーですね。既にほかの県もやっておるわけでありまして、早い時期にやらないと、検討検討で先に追いやられていって、農家は手が出ない、こういうことになっていきますと、今度はもう射殺とか捕獲とかということになってくるわけでありますから、ぜひ真剣な協議をしていただいて、農家の皆さんが本当に生産性が上がって楽しく収穫ができるような状態をつくっていただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。  以上で猿の問題を終わりますが、時間もなくなりましたけれども、一点だけ要望をしておきたいと思います。  けさほど来、土地改良基盤整備事業の問題が出てまいりまして、非常に重要な課題だと思ってこれをいろいろ一緒に御審議したいと思っておったわけでありますが、この問題の中で実は国営総合農地開発事業、肝属南部地区という、鹿児島県の大隅半島にあるわけですけれども、大型の開発がされておる、整備がされておる。畑かんをする予定なのです。ところが、三分の二ぐらいは山地を切り開いて農地にしておるわけです。働き手はいない。しかし、そういうふうにされた。それはそれで結構だと思いますが、ただしかし、今、山を守ろうという状況の中で、猿が一番多い地域ですね、広葉樹林を切って農地にされた。ところが、今、私は写真を持ってきていますが、これは届けませんけれども、ほとんど昨年から作物がつくられていない。でも、できておるのです。ところが、水が平成七年度ごろに来るのだそうです。平成七年度も、事業がだんだんおくれてきてまだずれるだろうと言われるわけですが、そうした中山間地域を山まで取り壊して圃場整備をして、基盤整備をしたけれども、水が来なければ離島で非常にコストが高くつくわけですね、輸送コストを含めて。展望がない。何をつくればいいか、通常的なものではだめだという問題もありまして、農作業が進んでいない。草山になっております。これは最初から、畑を開いたときにはまずかんがいができるような、そういう方針が必要だということの審議会の答申もあるわけであります。ぜひ現地の問題を調査されまして、早急な事業促進、営農指導、そうしたものをされますように要望申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  99. 宮里松正

    ○宮里委員長代理 有川清次君の質疑は終了いたしました。  次に、堀込征雄君。
  100. 堀込征雄

    堀込委員 それでは、大臣から所信表明がございましたが、席を外されるようでございますので、どうぞ。  最初に林業問題から質問をさせていただきます。  特に今回の所信表明、林業振興について強調されたわけであります。私は、特に国有林問題についてまず質問をさせていただきます。  御存じのように、国有林、累積債務が二兆円を超える大変な困難な事態に立ち至っているわけであります。しかし、今回この大切な国有林を何とかしようということで林政審答申がありましたし、その後閣議了解もされた。国を挙げて関係者みんなで努力をしていこうということになったわけであります。とにかくそれぞれ関係する者が力を合わせて、心を合わせてこの国有林の再建に取り組んでいこうではないかということが了解をされた、意見一致がされた、こういうふうに思うわけであります。政府としても、今国会にそういう視点から法案を提出して真剣に対処をしようということになっているわけでありますが、そこで二、三お伺いをいたします。  平成三年度予算案で一般会計から繰り入れを拡充する、また繰入額も現に増額をさせている。大変な努力の跡が見られるわけでありますけれども、改めて今国会に提出しようとしている国有林野事業改善特別措置法、一部改正をするわけでありますけれども、この中で累積債務と経常事業部門をどのように具体的に区分をしながら対応しようとしているのか。つまり、累積債務の利子なり償還金の負担を経常事業部門の財務に影響させない、こういう措置を具体的にとっていくことが必要だというふうに思いますが、この辺の具体策について、まず一点お伺いをしたい。  さらに、経常事業部門の経営の健全化対策なり、累積債務対策に充てる平成三年度予算における具体的な措置についてもあわせてまずお伺いをしたいというふうに思います。
  101. 小澤普照

    ○小澤政府委員 お答えします。  昨年の十二月に閣議了解がなされまして、国有林野事業の経営の改善を図ってまいる方向が示されたわけでございますが、国有林野事業の経営の健全性を確保していくためには、経営の改善合理化などの自主的改善努力の徹底を図ると同時に、累積債務につきまして、経常事業部門と区分して適切な累積債務対策を講ずることとするわけでございます。  このために、本通常国会に提出を予定しております国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案の中におきまして、まず累積債務として処理すべき債務の範囲を明確化するということと同時に、累積債務の処理に関することを経営改善計画の項目に追加することとしております。  それから、平成二十二年度までに収支均衡の回復など経営の健全性を確立することを目標といたしまして、平成十二年度までに経常事業部門の財政の健全化などを完了することを旨として、平成三年度以降十年間を改善期間とすることとしております。  また、資産処分収入を累積債務処理に充当するとともに、退職手当及び借りかえの借入金についての償還金を一般会計繰り入れの対象とすることとしております。  さらにまた、公益的機能発揮等のための一般会計繰り入れ対象を拡大するということ等につきまして、規定を整備することとしているところでございます。  それから、区分を明確にするために、予算書上も累積債務と経常事業部門の区分につきまして明確にしますとともに、平成三年度予算案におきまして、厳しい財政事情のもとではございますが、累積債務対策として一般会計からの繰り入れを拡充することとしておりまして、この点は百億円という金額を計上しております。  それから、先生お尋ねの経常事業に支障がないか、及ぼさないようにという点につきましては、その旨を踏まえて運営してまいりたい、このように考えております。
  102. 堀込征雄

    堀込委員 ただいま説明ありましたとおり、大変な決意で進まれるということになるわけであります。いずれにしても国有林野事業の再建という大変な課題を背負って、これから関係者が総力を挙げて取り組みを進める、こういうことになるわけでありますが、その際幾つかの点について留意をしなければならないというふうに思うんですが、私はまず当事者である農水大臣林野庁長官を初め林野庁が挙げて情熱を持って、心を合わせてやるんだというこの決意が、あるいはそういう姿がやっぱり関係各方面に見えていくということが極めて大切なことなんではないか、それがなければやっぱり不可能ではないかというふうに思うんです。特に、林野庁に労働組合もございますし、労働組合などと十分協議をしながら、労使が相和してこの問題に取り組むという体制づくりはぜひ留意をして進めていただきたいというふうに思いますし、極めて大切なところだというふうに思います。特に、国鉄の分割・民営化の再建のときに非常に労使の対話が不足をして、やや混乱を来したという経過もございまして、ああいうことを見ても、やっぱり話し合いをして林野庁総体の熱意が伝わってくるという体制をつくってもらうことが極めて大切だというふうに思います。  また、営林局署の問題、統廃合などという問題も話題に上っているわけでありますが、全国の町村の中には、御存じのようにもう営林署そのものがその町の基幹の存在であって、それがなければ、そこを中心とした経済活動がなければ町や村が成り立たないという町村も幾つかございます。そういう地域の生命線になっているようなところもございますので、いずれにしても労働組合とかそういう関係自治体などの意見を十分にくみ上げながら、この国有林野事業再建に当たっての諸施策を実施すべきだ、こう思いますが、その辺の林野庁の決意について御説明をいただきたいと思います。
  103. 小澤普照

    ○小澤政府委員 先生おっしゃいますように、この国有林の経営改善、大変厳しい道もございますし、また大きな事業でございます。  そこで、決意ということでございますので申し上げたいと思いますけれども、労使一体となって取り組む体制をつくっていくために、林野庁内に現在、国有林の経営改善のための推進本部も設置いたしまして、私自身が本部長という形でやらせていただく、またこれは同時に各営林局、支局におきましても同じような体制をとっていくということにいたしておるわけでございます。そして、そういう体制のもとで労働組合とも十分対話をし、話を深めながら推進してまいりたいと考えておりまして、そのようなことを全国に浸透させるために、つい先日でございますけれども、全国の営林署長にも全員集合していただきまして、林野庁の方針をよく伝えたところでございます。  なお、同時に関係自治体等との関係でございますけれども、この点につきましても、関係諸団体の意見、要望というものを十分に尊重してまいりたい、このように考えております。
  104. 堀込征雄

    堀込委員 ぜひそういう方向で、話し合いを基調としながら林野庁一体の姿をつくってもらうように努力をいただきたいと思います。  先ほど大臣所信表明の中で、農業については、担い手なり後継者対策育成確保について大変強調された決意表明があったわけであります。林業もまたそういう意味では、山村の過疎化なり担い手が減少あるいは高齢化をしているという実情がございまして、この面の対策が大変急がれているという実情がございます。私は、林政審答申なりあるいはそれに基づく国有林野事業の再建対策につきましては、単に経営を規模縮小するとか経費を削減していくという方向だけではなくして、やはり来るべき国産化時代を目指す、そして日本林業が洋々たる未来を切り開きながら発展をしていく、そういう基礎づくりというふうに位置づけて、希望を持って取り組んでいきたいというふうに思うのであります。  そういう意味で、どうしても林業を担う人々あるいは担い手育成確保などが図られなければならない。そのためにも少なくとも、この林政審答申にもちょっと触れておりますけれども、月給制だとか社会保険整備だとかいろいろな具体的な問題があるわけでありますけれども、そうしたやはり担い手に対する具体的な対処方針が今求められているのではないか、こう思いますけれども、林野庁の所見を伺います。
  105. 小澤普照

    ○小澤政府委員 現実は山村の過疎化あるいは林業担い手が減少、高齢化しておるわけでございますけれども、先生おっしゃいますように、我々も来るべき国産材時代というものに対応するために、また同時に国民森林に対して持っております多様な要請、これを受けとめていかなければならないわけでございますので、このためには森林整備推進する必要がございますし、さらにまた林業担い手育成確保ということが最重要課題であると考えておるわけでございます。  林政審議会の答申は昨年の十二月にいただいておるわけでございますけれども、この中で林業事業体の体質強化それから高性能機械の開発導入、こういうものを推進する一方で、他産業と同程度の労働条件確保するために、林業労働力対策を緊急かつ効果的に講じるように提言されたところでございます。  これを受けまして、林野庁といたしましては今後、流域単位といたしまして緑と水の確保あるいはまた国産材安定供給に向けまして、民有林国有林一体となりまして森林整備に取り組む中で、月給制及び社会保険加入の促進林業労働者の就労条件の改善や若年労働者等の技術向上、これらについての対策を講じてまいりたいと考えております。  また同時に、高性能機械の導入、事業の共同化、これらの推進によります林業事業体の体質強化など、地域林業担い手育成確保を図るための総合的な対策を今後講じてまいりたいと考えております。
  106. 堀込征雄

    堀込委員 まあそういうことで、大変な事態になっていますが、ひとつぜひ精いっぱい頑張ってほしいと思いますし、また法案が出た段階でこの問題についてはいろいろ質疑をさせていただきたいというふうに思います。  それでは次に、米の問題について質問をさせていただきます。  一つは、平成二年産の政府米の集荷量でございますが、今日に至るも昨年実績並みの百六十万トン台にとどまっておる、大変なことでございまして、これは昭和六十一年四百万トンを超えていましたから、実に大変な減少になっているわけであります。政府米と自主流通米の均衡ある集荷となっていないという実情がございます。このまま行きますと、私は、政府米が安定供給という面あるいは米価全体の価格の下支えをしていくという機能に支障を来すのではないかという面で大変心配をするわけであります。この辺食糧庁どうお考えになっているか、お伺いをしたい。  特にことしの集荷、去年産の集荷につきましては、食糧庁の方では各県別にあるいは銘柄別に細かくこの配分計画を示しながら集荷に全力を挙げたという経過がございますけれども、しかし、こういう結果、百六十万トンにとどまったという実情になっているわけでありまして、この原因なり今後の対処方針についてまずお伺いをいたします。
  107. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま堀込先生御指摘のとおり、現在の食管制度におきまして、政府管掌米は片や政府米、片や自主流通米という二本立てで動いているわけでございます。かつまた、安定的な供給の問題は、両方相まって供給するということではございますけれども、最終のとりでと言葉を選ばないで申し上げますれば、政府米が担わなければいけない問題でございますので、この政府米と自主流通米のバランスある集荷あるいは供給といったことが一番重要な食管制度のかなめだというふうに思っているところでございます。     〔宮里委員長代理退席、委員長着席〕  また、先生御指摘のように、この数年間を見てみました場合に、もちろん発足のときは政府米が一〇〇%であったわけでございますが、その後いろいろな多様化時代あるいは良質米志向の時代ということもございまして、政府米がもう大きな勢いで減ってきております。確かに先生御指摘のとおり、昭和六十二年では三百十六万トンが昭和六十三年は二百八万トンということでございまして百万トン以上減ったわけでございます。そういったことから、これまた先生御指摘のとおりでございますが、昨年は特に都道府県の方々も入っていただきまして、政府米のバランスある集荷ということをやってまいったわけでございます。  それで、その結果ということではございませんけれども、関係者の方々の御理解を賜りまして、一番新しい数字ではございますけれども、二月の十日現在、二月の上旬現在で、速報値ではございますけれども、百六十四万トンという数字でございます。先生これまた御指摘のとおり、昨年の数字は百六十三万八千トンでございますので、やっと歯どめがかかったかなという感じでございまして、もちろん主力は年内であったわけでございますが、二月、三月ということも残っておりますので、食管制度の健全な維持というようなことから、この両者の間のバランスをとるべく今後も努力をしていきたいと思っております。  なお、先生御指摘のように、じゃ、なぜそういう問題が出てきたのかということでございますが、一言で言いましてやはり消費者の方々の良質米志向ということが根底にあろうかと思います。それからもう一つは、価格の面で政府米と自主流通米、例えば同じ一類一等といったようなものにつきます値幅がだんだん開いてきているという事実は否めないことだというふうに思います。
  108. 堀込征雄

    堀込委員 今歯どめがかかっているのではないかというふうな答弁がございました。いずれにしても政府米の集荷は極めてピンチの状態に立たされているというふうに思うのです。このまま推移しますと、私は適正在庫と言われる百万トンという数字が極めてあやしくなるのではないか、下回る危険性があるのではないかという気が一つはいたします。また、仮にそうした事態になりますと政府米の売却を抑えなければならないという事態になるわけですね。そうしますと、売却を抑えると、値段の安い米は自主米市場に頼らざるを得ない、そっちへ供給が行く、こういうことになるわけであります。そうしますと、自主米市場で政府米価格を下回るというような、そういう事態がやはり発生するのではないかということで私は大変危惧をするわけであります。  例えば今度の自主流通米価格形成機構で年間値幅制限一〇%、ことしの場合は七%、こういうふうになっていますが、仮に七%で行った場合でも下回るおそれがある銘柄もぼつぼつ出ているという実情がございまして、この自主流通米機構ができて産地間競争が激しくなる状況で、来年度以降本当に集荷に自信が持てるかどうかという問題が一つございますし、もう一つは、自主流通米機構との関係で、こういう政府米の供給状態が自主流通米価格以下のそういう取引が行われるような事態が発生するのではないか、こういう点で大変恐れるわけでありますが、この辺について食糧庁の見解をお伺いをしたいと思います。
  109. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御指摘のように、価格の場合は、食糧庁の方針といたしまして、食管制度の趣旨に基づきまして量的な調整の問題はもちろんでございますけれども、価格の安定的な供給というのが一番重要だと思っております。自主米機構の発足に関連いたしまして、本委員会においても特にその点諸先生からの強い御指摘がございまして、私どもそういう先生の御指摘に従いまして、十分その値幅の問題であるとかそういった点、現実的にやっていかなければならないし、もちろん投機、そういったことを行わないようにしていかなければいけないというふうに申し上げてまいったところでございます。もちろんこういったものにつきましては、私どもの行政といったようなこととは別に、現実におきます業務と商売といいましょうか、そういう実態があるわけでございます。私どもは自主流通米といったようなものをも含めまして政府管理米ということでございますので、トータル、現実的な実態を十分見きわめながら、かつまたその蓄積を積み上げてまいらなければいけないというふうに思っているわけでございます。  なお、先生今御指摘のところは、一つは政府の買い入れ価格はもちろんいいわけでございますが、例えば売り渡し価格と比べまして、自主流通米価格の中で一部下回るところが出てきているのではないかという御指摘でございます。これまで二回実施いたしまして、確かに一部の銘柄、数は少のうございますけれども、最低落札価格の中に、一部のものにつきまして政府の売り渡し価格より下回ったものがございます。その点は、量的にもといいますか、銘柄の数からいきますと、第一回目と第二回目を比べてみますと、第二回目の方がかなり少なくはなってきておりますが、先生の御指摘のところを十分勘案をしながら、値幅制限というものを十分運用よろしきを得て、していかなければいけないというふうに思っております。  なお、一つのこれは簡単なる経済的な問題でございますが、全体八十三万ヘクタールという形で、供給ベースをきちっと押さえているわけでございます。農家の方々も実際のところ、歯を食いしばってこの生産調整というのを実施していただいておりますので、全体の供給量というものはかなり限定されております。したがいまして、基本的には政府米が買い入れる量をふやしていく、かつまたそういったものの売り方というものを勘案することによりまして、あと残された全体のものから政府米を引いたものの自主流通米価格というのは、量が限定されてくるような結果になりますので、もちろん買い手と売り手との問題ということがございますけれども、値段は上方指向的になる面もあるわけでございます。  なお、先生御指摘の点については、十分慎重に今後運用を心得ていかなければいけないというふうに考えているところでございます。
  110. 堀込征雄

    堀込委員 そういう答弁で、しかし私はこの自主流通米価格形成機構がひとり歩きすることによって、実は食管制度の枠内で発足をしたこの価格形成機構、今申し上げましたような価格の上下によって食管法の枠を超えてしまうような事態が発生するのではないかという点を大変危惧するわけであります。あるいは、この食管の運営そのものが自主流通米市場、市場そのものの動向によって枠をはめられてしまうというか、それにとらわれて運営せざるを得ないというような事態になってくるのではないかというふうに思うのであります。  そういう意味で、この米の需給操作なり売却価格、そういうものもこれから、あるいは生産者米価の決定だとか消費者米価の決定、こういうものもこの自主流通米価格形成機構の動向によって左右をされていく、あるいはそれによって決定されていくということになっていくのではないかと思います。  御存じのように、もう二重米価制度というのが食管制度基本の一つでありますし、これが覆されるような事態になりますと、極めて大変な事態だ。仮に食管制度が崩れますと、例えば自主流通米価格形成機構で人気のある銘柄、人気のない銘柄、こういろいろあるわけでありますけれども、そうして食管制度の足元が揺らぎますと、生産調整が崩れておかしくなってくるということになりますし、米の国境措置そのものも根拠を失っていくというようなことになっていくわけであります。私は、この自主流通米市場の動向がどうもこの食管の根幹を揺るがしつつある、運用を誤らないようにしないと大変なことになるのではないかというふうに見ているのですが、いかがでしょうか。
  111. 杉浦正健

    杉浦(正)政府委員 大臣予算委員会でございますので、私から御答弁させていただきます。  御承知のとおり、この自主米機構というのは、食管制度基本的役割は維持する、根幹を揺るがさないという前提のもとで設立されたものでございます。私も就任早々東京市場の第二回目、実は去年の秋第一回で、東京、大阪でもう一回あったわけですが、第二回目の入札があるというのでそれに視察といいますか見学をしてまいったのですが、委員御心配のような点、例えば過度の値動きが生じないように上限、下限を設けるとか、あるいは量的に全農を二五%にするとか、あるいは買い入れの方も量を制限するとかいうような歯どめを設けまして運営されておりまして、入札所には百人近い買い主が集まっておりましたが、ともかくいい銘柄の米をできるだけたくさん確保したい、目の色が違っておりましたですね。その落札価格が次の取引までの指標価格になるということでございますので、六十キロ当たり千円違っても、買い入れ側からすれば大変な仕入れ価格の違いになりますから必死のようでありまして、中には入札のときの手が震えておるような業者もいるような状態で、非常に緊張した風景でございました。  要するに、産地銘柄ごとの需給動向や、それから消費者の品質評価、この米はおいしい、おいしい米は高く買ってもいい、こういうことを米の価格に的確に反映していこうという趣旨で設けられたわけですが、そういう意味ではまだ試行の段階でございますけれども、いい方向に向かっておるかなという印象を受けた次第でございます。  各都道府県農業関係者のあれを見ても、例えば高値落札価格の品種を積極的に奨励しようとか、新しい品種改良をしようとかいう意欲も各地で出てきておる。要するに、高く売れる米をつくろうという意欲が各地で出てきているようなことも聞いておりますので、大変いいことかなという個人的な印象を受けた次第でございます。  御指摘の点がございますが、現行のあれで状況を見ますと、食管制度の根幹を揺るがすものではないというふうに見ておる次第でございます。
  112. 堀込征雄

    堀込委員 今答弁ございましたが、そうは申しましても、その自主米市場の動向が、これからだんだん生産農家はそのことを配慮をしながら生産をしなければならない。良質米志向あるいは売れる米をつくっていく、こういうことになるわけでありまして、だんだんこの市場の動向生産段階まで縛ってくるといいますか、そういうことにならざるを得ない、こういうふうに思うのですね。  それで、もう一つは全国に二百五十ほどの卸があるわけでありますけれども、この入札の結果、非常に資金力とか情報力とか、いわば卸の中の大手の皆さんが非常にこれから力をつけてくるのではないか、あるいはその大手の皆さんによって業界の再編が進むのではないかということも言われておるわけであります。  それはまたある意味で仕方のないことかもしれませんが、さらにその卸や小売という垣根も超えた米業界の再編が行われるなんてことも予想されるわけであります。これは消費者の要求にマッチしてそういうことが進む限りは、私は問題はないと思うのですけれども、しかし将来行き過ぎて、仮に寡占化が進むということになれば非常に問題じゃないかと恐れるわけであります。今でも年間六万トン以上の業者なんというのは十五、六ですか、そういうふうに数えられるくらいしかないわけでありますけれども、これから寡占化が進む、そうするとその意向が生産農家の方、生産者団体の方も規制をする、その意向に沿ったものでなければ物が売れていかない、こういうことになるわけでありまして、これは現場で生産調整をしたり、生産段階のやっているいろいろな苦労と、こちらの市場における寡占化が進んだ場合、非常に問題が出ることも予想されるわけですね。その辺はやはりきっちりした見通しを立てながら、対策を今から立てておくことが必要じゃないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  113. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生の御指摘の流通の部面については、その点が一番肝要な点だというふうに私ども考えております。食管制度におきます一つの運営のあり方として、政府米であれ自主流通米であれ、そのルートを特定するということが一つの大きなかぎになっておりまして、これが食管制度の特色でございます。  今おっしゃったように、卸におきます大小の関係から寡占化の道というのは、率直に申し上げまして今の食管制度にそぐわない問題でございます。もちろん現実の経済の動きからおのずと扱い数量の中でいろいろ出てくることはあることではございますけれども、この根幹を揺るがすようなことになることについては厳に戒めなければならないというふうに思っております。したがいまして、この自主流通米機構におきます取引の申し込みの数量におきましても、既に具体的な回数におきます申し込みに限度をはめております。そういった、先生御指摘の点も十分注意しながら、食管制度の健全な運営というものに今後とも意を用いていかなければいけないと考えているところでございます。
  114. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、もう一つ問題があるわけであります。  この自主流通米市場の開設に当たって政府がしきりに強調されたのは、米の流通の透明感を出すんだということを何度も言われました。確かに、入札の実施によってある程度卸の段階での透明度が出てきたというふうに表現できるかもしれません。しかし、この制度発足に当たってしきりに強調されていた、国民に透明感のある米流通になっているかどうかという点については、私はまだ疑問を持たざるを得ないというふうに思うのです。 それは、必ずしも市場流通の結果が消費者の手に届くところまで反映されているかどうかという問題に行き着くのではないかと思うのです。入札結果が消費価格に反映をされないと意味がないわけでありますから、国民から見れば、何か不思議な制度をつくって東京と大阪で何かやっているわ、こういう話になってしまうわけでありまして、どうしても小売段階を明確にする必要があると思うのです。  例えば、二回の入札で東北ササとか関東コシヒカリとか、非常に値を下げた銘柄もあるわけであます。多少小売段階でも値を下げているようでありますけれども、しかし、本当にそういうことが反映されているのかどうか、食糧庁、調査結果がありましたら、その辺の傾向をお示しいただきたいというふうに思います。  いずれにしても、自主流通米機構をつくった、それによって市場価格が形成され、ことしの場合全体的に値を下げて、上がった銘柄もございますが、値を下げている。その場合に消費価格が下がらなかった、つまり自主流通米機構は、そういう事態になりますと、何だか途中の流通経費をふやすだけだったということにならないように、適切な対応が必要だというふうに考えます。その初について具体的な対処方針、ございましたら、二回の入札結果を踏まえてお示しをいただきたいというふうに思います。
  115. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 これも先生御指摘のように、自主流通米機構の一つの大きなねらいというのは透明感というようなことであったということを申し上げてまいったわけでございます。そういう意味で、具体的に、卸と第二次集荷業者の間の透明感というのは回数、一回、二回というようなことから明確になってまいっていることは事実でございます。具体的な数字も、前年に比べて上がったもの、下がったものちょうど半分というような、今のところ、一回、二回というようなのはそういうふうになっておるところでございます。  次に、消費者の方々にも透明感、よく見える形でということを申してきたのですが、具体的な数字でそれに応じた数字はまだ今の時点ではっきりしたものはございません。それは一つは、言いわけのように見えますけれども、第一回目の入札の取引が十二月分の売り渡し価格から出てくるということで、卸売段階においても一月の末にデータが出てくるということがございます。それからもう一つ、これがまた小売に行くという段階で少しタイムラグがあるということがございます。それから、最近におきます銘柄で、コシヒカリ、ササニシキはもちろんでございますけれども、例えば北海道のきららということで、消費者の方々は銘柄中心に単一の銘柄でやってきておられるという点はだんだんそういう時代になってまいりましたが、まだ依然としていわゆるブレンド米というのでしょうか、そういうようなのが小売の段階の実態でございますので、数字的にもはっきりはしておりません。  ただ、事態の先取りをするというようなことで、小売業者から消費者への販売価格につきまして、自主流通米が主として使用されます特及び上の品位の格付をされるものについては、昨年の十二月と十一月の対比で見ますと、全国平均で、これは食糧庁の数字でございますが、精米十キログラム当たり特で六円、上で十八円の値下げということはあるわけでございます。この数字等につきましては、もう一度一月以降の段階で、先ほど申し上げましたように第一回の取引の反映が出てくるものと思いますので、私ども、改めてまた御報告申し上げていかなければいけないと思います。  いずれにいたしましても、透明感ということを言ってまいりましたし、食糧庁といたしましても、末端のと申しますか、消費者の方々の手の届くところにこういったものが反映されることができるように、各段階の指導を強めていかなければならないと思っておるところでございます。
  116. 堀込征雄

    堀込委員 それでは、これまた事態の推移を見ながら、対応方法について改めてまた議論をさせていただきたいと思います。  続いて、土地税制の問題に入らせていただきます。昨年十一月の委員会で私も質問をしたわけでありますが、市街化区域内農地の問題でございます。  御存じのように、この市街化区域内農地都市への軟弱野菜の供給だとか食糧供給の面、あるいは都市への潤いのある緑地供給だとか、あらゆる面で非常にさまざまな大切な役割を果たしているとは言うまでもないわけであります。また、そこにまじめに営農をしている、生産に励んでいる農家の皆さんがいらっしゃることも周知の事実でございます。今回の土地税制の見直しで長期営農制度を廃止する、あるいは相続税の猶予制度を廃止する、後は建設省所管の生産緑地制度で対応する、そこのところで保全すべき農地と転用すべき、宅地化すべき農地を区分することになった、大筋こういうことであります。  私は、日本都市政策が非常に貧困なために今日の土地騰貴を招いている、これは決して、サラリーマンがマイホームを持てなくなったのは都市農地が存在したためではないと思うのですね。やはり地上げ行為だとか、あるいは法人による土地の売り惜しみとか買い占めとかいろんなことがあった、そうしたことが原因をしているというふうに思います。今回税制を強化して農地を吐き出させても、果たしてそれがまた勤労国民の住宅になっていくのかどうか、そういう保証は全くないわけでありまして、どうも本質的な問題の立て方が違うんではないかという点を私は感ずるわけであります。むしろこれから農業のある、潤いのある町づくりというようなことが求められていくのではないか、積極的に都市計画の中に位置づけられていくべきではないか、こう思うわけであります。  そういうふうに考えた場合、三大都市圏の場合は建設省所管の方に移ったわけでありますけれども、これからやはり地方都市都市づくりを含め、都市計画町づくり農業というようなものをきちんと位置づけて、そういう町づくりを、農業都市勤労者が混住をしていくというような都市づくり政策が必要だというふうに思うのですね。そういう意味では、やはり都市計画町づくりに農水省がこれから積極的に発言をしながらやっていくということが大切なのではないか、こういうふうに私思いますが、農水省、見解いかがでしょうか。
  117. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 私ども、町づくり村づくりに当たりまして、やはりその地域農業振興といいますか、農業保全という観点からもいろいろ努力してまいりたいというふうに考えております。  ただ、一方ではやはり農業以外の土地需要といいますか、住宅地とか公園とか、そういう農業外の土地需要にもある程度こたえていくということも必要なわけでございまして、そういう土地利用の調整を図りながら、農業振興、それからまた緑のある町づくりといいますか、そういう点にもいろいろ努力してまいりたいというふうに考えております。
  118. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、生産緑地法が今回建設省の方から提案をされて法改正がされる、こういうことになっているわけであります。建設省所管だからといって農水省に手を引かれてしまっては困ると思います。どうしても農家を守るという立場で、この法案についても積極的な応援をしてもらわなければいけない、こういうふうに思います。仮にこの法案が通っても、都市農業が健全な発展をするために、具体的にこの法の適用を受ける農家あるいは農業団体に混乱が生じないよう、ぜひ精いっぱい働きかけをしてもらう、あるいは今後の運用について積極的な交渉や相談をしてもらう、こういう姿勢でやってもらいたいというふうに思いますが、その辺はいかがでしょうか。
  119. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 現在建設省の方で生産緑地制度の改正をいろいろ検討しているわけでございますけれども、この制度は、都市における農地機能を活用して良好な都市環境の形成を図りたい、こういうのがこの制度の目的でございますので、やはりこの制度の目的を達成するためには、農地行政を担当する部局とそれからまた都市計画を担当する部局の連携がぜひ必要である、こういう観点から、現在建設省といろいろ調整をしているとこでございます。  特に、この制度の実際の運用に当たる市町村段階におきましては、都市計画担当部局と農林部局、特に農地行政を担当しております農業委員会との密接な連絡調整がぜひ必要であるというような観点で、その具体的な運用について建設省とこれからも調整をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  120. 堀込征雄

    堀込委員 そこでお伺いいたします。あらかじめ建設省の方へ積極的に働きかけておいてほしい、こういう立場からお伺いをするわけであります。  建設省の今度の生産緑地法に対する考え方は、従来の第一種生産緑地、第二種生産緑地の面積要件、それぞれ一ヘクタール以上、〇・二ヘクタール以上、こういうものがあるわけであります。こういうものを一本にして面積要件を五百平米にするという考え方が出されているわけでありますね。それから、買い取り期間を、現行の一種が十年、二種が五年ですか、これを三十年に延長するということが出されているわけであります。  まず、私心配するのは、この五百平米という面積が適切かどうかという点について非常に危惧をするわけであります。都市農業者の中には、自分の農地は二千平米とか三千平米でやっているんだ、しかし自分の近所には千平米あって、あと四百平米のものが何筆かあって、それをまとめて一つの営農をやっている農家というのはかなりたくさんあると思うのです。私が調査をしてもそういう農家がかなりあるというふうにお聞きをしております。これが、仮に五百平米以下が宅地並み課税だとかなんだとかということになってきますと、たちまち営農が立ち行かなくなる農家というのが東京都内でもかなり出るのではないかという点を心配するわけであります。  そういう意味で、今度出されようとしている生産緑地法の改正は、農水省に大変頑張ってもらって、都市計画法上に農業なり農地を位置づけるという意味で私は大変前進だというふうに評価をしております。評価をしておりますけれども、今申し上げましたように、現にまじめに営業している農家の皆さんが現実に面積要件について一定の工夫を凝らしてもらわないとできなくなる事態が発生するというふうに思うのです。この辺、先ほどの答弁で、地方自治体のところで都市計画農業関係者で相談をするというようなことを言われましたけれども、そういうような方法を通じて何とか具体的な対策ができるような、地方自治体に自主性を持たせるような形で対策ができないものかどうか。法律ですから今ここでぴしゃっとは言えないと思いますが、考え方ありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  121. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 先生御指摘の生産緑地の面積要件、この件につきましても現在政府部内で調整中であるわけでございますけれども、建設省の方からは、この生産緑地の機能といいますのは、公害とか災害防止機能とか、それからまた緑地機能というものに着目して都市計画として指定をする、こういうような考え方でございますので、やはりある程度のまとまった団地の面積といいますか、そういう要件を法律で定める必要がある、こういう説明を受けておりまして、私ども基本的にはやはりその機能という面から見てある程度の団地的なまとまりというものを法定するということはやむを得ないのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  ただ、実際の運営に当たりまして、一団地の認定というのがございますけれども、一つの区画としては五百平米未満であっても幾つかの農地がある程度まとまって五百平米以上になるというような場合には認定し得るのではなかろうかということで、その辺の運用についてもいろいろこれから相談してまいりたいというふうに考えております。  それからまた、こういう一定の面積要件を定められることによりましてどうしても生産緑地の認定が受けられないという農家が出てくることが予想されますけれども、そういう農家の場合には、ぜひ農業を継続したいという場合には市街化区域外の農地を取得するためのあっせんに努めるというようなことで、また、これについては税制上の特例もありますので、そういう形で営農の継続が図られるようにいろいろ努力してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  122. 堀込征雄

    堀込委員 今の最後の点は、私は納得できない点でございまして、今現にやっている農家があるわけですから、追い出して、どこかに行って農業やれというやり方はいかがかと思うのですよ。これはぜひ検討してほしいと思います。  もう一つ、この法律の施行に当たってぜひ農水省に努力していただきたい点で、しゃくし定規にこの法律の適用をすることは避けてほしいという点があるわけでございます。あくまで都市計画なり都市づくりの主体は市町村でございまして、市町村の主体的な町づくり意欲というものをそがないように配慮をいただきたいという点であります。  一つは農業委員会。今現に農地法上の権利調整だとかあるいは農地の売買、交換等に際してさまざまな業務をやっておるわけでございまして、大きな役割を果たしております。現在、三大都市圏の特定市の市街化区域内農地は六万三千ヘクタールとか言われております。筆数にしますと数十万筆だというふうに言われておりますので、農業委員会などの協力がなければとてもできない、あるいは生産緑地の指定だとか運用について協力をしてもらわなければできない、こういうことだろうというふうに思うのです。また、地方自治体もそういう役割を果たしておるわけでありまして、農水省においては、こうした市町村や自治体の自主性を重んじ、あるいは、現に果たしている農業委員会役割なども、恐らくこの政省令もいろいろやるのでしょうけれども、そういう役割を明確に位置づける努力をぜひしてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
  123. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 この生産緑地の認定に係る仕事、それからまた生産緑地に指定された後のいろいろな農地の利用関係の調整、こういう問題につきましてはやはり農林部局特に農業委員会の仕事に密接に関係があるということで、私ども、都市計画部局と農業委員会が密接に連絡調整を図っていくというようなことで、この法律の中に、また実際の指導に当たりましても密接な連絡をとるようにということで、建設省ともいろいろ調整をしてまいりたいというふうに考えております。
  124. 堀込征雄

    堀込委員 予算委員会が延びていまして大臣がおいでになりませんが、次官がいらっしゃるのでガット問題について質問させていただきます。  けさ以来、新ラウンドの交渉経過、見通しなどについてそれぞれ説明がございました。私は、いろいろな議論がありますけれども、どうもアメリカの態度について理解できない点がたくさんございます。十二月の交渉がまとまらなかったのは、やはり主としてアメリカとECの妥協が成立しなかったことが原因であることは明らかでございまして、どうも理解できない。  そこへ来まして、ブッシュ大統領がこの十二日に、報道によりますと大統領経済報告あるいは大統領経済諮問委員会年次報告を議会に行った、こう言われています。この報告の中で大統領は、ガットが成功すればアメリカのGNPを二〇〇〇年には三%引き上げる効果がある、こういうふうに指摘をして、ガットを難航させている犯人はEC日本、韓国であると名指しで批判をしたというふうに伝えられています。これは極めて一方的な見方であることは言うまでもありません。  私は、アメリカ経済がガットとかなんとかではなくして、もはやどうしようもない状態になっているということを率直に言うべきではないか。御存じのように、ドル高のもとでアメリカ経済の産業空洞化が進んだ、あるいは軍事的な性格が強い経済が極めて歳出削減を困難にしている、あるいは福祉、農業予算の削減も難しいというアメリカの経済の事情がございます。この産業の空洞化によって輸出も低下をしている、減税によって税収が減少している。財政赤字と貿易赤字をそれぞれ拡大する結果を八〇年代の経済政策は招いてきたわけでありまして、こうしたアメリカ経済の立て直しに、本来的に国際競争力の回復だとか産業空洞化の改善だとか、あるいはアメリカ経済そのものの過剰消費の是正だとか、そういうことをやらないと直っていかないと思うのですね。これは今世界じゅうの経済学者の定説でもあるわけであります。こうしたことを米の輸出だとか貿易手続の簡素化なんかによって解決できるというアメリカ経済の実態にないのではないかというふうに思うのです。  そういう意味で私は、そうはいっても日米関係は極めて大切だというふうに思います。だから、本当の意味の友好関係を深めなければならない、これからもお互いのパートナーシップが前進していくようにしなければならない、こう思うわけであります。  そういう意味で私は、本当に日本とアメリカがこれからも友好国として率直にお互いの問題を話し合うという雰囲気をつくっていくことが大切だ。このまま推移をしますと、お互いに反日感情だとか反米感情だとかそういうものが国民に広がっていくおそれを感ずるわけであります。そうしたグローバルな日米関係の視点で、ガット交渉はどうしてもアメリカにわかってもらわなければしようがない、理解をしてもらわなければどうしようもないというふうに考えるわけであります。そういう視点から私は、グローバルな日米関係という視点でアメリカに、具体的にお互いに日米関係の将来のために、米問題のごり押しをやめて協調な日米関係をつくっていくんだ、こういうふうな説得がどうしても必要だというふうに思います。  そういう意味で、今、日米農相会談をやりますと二国間交渉とかなんとかになってぐあいが悪いわけでありますけれども、本当にそういう真摯な話し合いが必要だと思いますが、いかがでしょうか、見解をお願いしたいと思います。
  125. 川合淳二

    ○川合政府委員 今先生が大統領経済報告についてお触れになりましたので、私事前にそれについてちょっと説明させていただきたいと思います。  大統領経済報告でございますが、報道で書かれております点がやや誤解を生ずるような書き方がされておりますので、その点に触れさせていただきたいと思います。  この報告では、その一節でウルグアイ・ラウンドを成功させることの重要性は強調しておりますが、日本については言及しておりません。ただ、これとあわせて議会に提出されました経済諮問委員会の年次報告で各国の農業政策農業交渉の現状について説明を行っております。  その中では、各国とも農業部門に政策的な介入を行っているということ。それからECにつきまして、輸入障壁と輸出補助金によりまして域内で高い食料品価格を維持するとともに、八百万農民を国際市場の影響から切り離しているという表現をしております。それから日本と韓国につきましては、日本と韓国は輸入に対しさらに高い障壁を維持している。それから自国につきましても、米国、カナダ等もさまざまの方法である程度の農業保護を行っているということを言っておりまして、米国の立場から各国の農業について述べておりますけれども、とりたてて日本を取り上げて非難するというような報告にはなっておりません。その点を報告させていただきたいと思います。
  126. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、もう一点ガットの問題について質問させていただきます。  私ども非常に不安に思うのは、仮にアメリカ、ECの妥協が成立をする、お互いの輸出補助金が何とかなるというような事態になってくる、あるいはアメリカのウエーバー条項も一定の結論が出てくるという事態になった場合に、果たして米は日本の主食だから何としても守らなければいけないという論理が、これは通さなければいけないけれども、国際交渉の場でどうなっていくかという心配をするわけであります。主食である米だけは、という論理は私ども日本人としては当然でありますけれども、例えばアメリカやECにおいてはそういう論理が、麦だか乳製品だか何かあるかというと、どうもそうでもないような気がしますし、諸外国にとっては具体的に通りにくい議論ではないかという感じもするわけであります。あるいは、私ども日本食糧世界最大輸入国だ、一生懸命今までも努力してきた、このことをわかってもらわなければいけないという論理に対しては相手側は、自由貿易で一番恩恵を受けているのは日本じゃないか、こういうことを言っているわけであります。したがって、ミニマムアクセスぐらいはつき合え、これが日本の任務ではないか、こういう論法できているのではないかと思います。  つまり私が言いたいのは、世界各国それぞれ自分の国のどうしようもないさまざまな問題を抱えている。日本はどうしても米は守らなければいけないという問題がある。アメリカもECも、あるいは韓国やその他の国もそれぞれ譲れない問題を持っていると思うのです。そうはいっても、私はどうしてもガットはまとめてもらわなければ困る、これは大変なことになるわけであります。そういう意味では私は、生産調整をやってミニマムアクセスがついていく、十一条二項(c)というような問題ではなくして、何か食糧安保論を含めた、国際的な各国の抱えている問題をくくれるようなガット全体のまとめ方というものが今求められているような気もするわけです。  ちょっと踏み込んだ質問でございますけれども、日本の米をしっかり守っていくためにはそういう論法もこれから組み立てていく必要があるのではないかという気がするわけですが、いかがでしょうか。
  127. 近藤元次

    近藤国務大臣 いずれにしても交渉事でありますから、何か仮定を設定したり予想を立てて私がこの場で発言をするという状況でないことはひとつ御理解いただきたい、そう思います。  先生の御心配されるようなことが起きてはならないという状況も踏まえて、ガット・ウルグアイ・ラウンド四年目を迎えるまでの間に、我が国としては米を念頭に置きながら、少なくとも食糧安保を、基礎的食糧という扱い方というものをきちんと明記するべきだということで中間合意にも明記をしていただきました。その後におけるサミットにも、そのことを確認していただいたわけであります。  今それぞれウエーバー条項なり課徴金なり輸出補助金なりということで、それぞれの国が今日まで主要農産物というものについて取り扱いをしてきたわけであります。そのことにアメリカもECも具体的にどうするかという議論にはまだまだ至ってないで、議論をされたといえば輸出補助金分野議論をされた段階でございますので、あとアメリカ、ECと違うことは、先生御案内のように最大の輸入国でもありますし、私たちは、日本の米という、主食という位置づけというものは世界のどの国の主要農産物よりももっともっと文化的にも社会生活的にもあらゆる分野で、もう重要なものはそれぞれ持ってはおりますけれども、その中でもこれぐらい重要なものがない、こう信じて、そしてこの段階で今プラットホームに盛り込んでほしいという努力をいたしておるわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  128. 堀込征雄

    堀込委員 そういうことで、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  時間が来たのですけれども、私、一つだけどうしてもきょうの大臣所信表明について議論をし、質問をしておきたい事項がございますので、お許しをいただきたいと思います。  午前中、日野委員から構造政策問題に触れました。土地利用型農業経営規模拡大生産性向上を図るということで、農地の流動化や生産組織育成を進める、これを戦略目標でずっとやってきたわけでありますが、これは、八六年の農政審報告以来絶えず農水省が政策目標として掲げてきたことであります。しかし、現実に農地流動化規模拡大あるいは生産性向上の期待は、期待どおりには進まなかったことは事実であります。それは、やはり農家の土地の資産的保有志向であり、兼業農家の飯米の自給生産志向などが働いていたというふうに思うわけであります。つまり農家は、農産物価格の低迷や農業では食っていけない現実に、規模拡大とか、規模をどうするかという選択ではなくして兼業化の道を選択したのだ。現実問題として、農外収入確保の道を選んだわけです。これはやはり、企業がほかの新事業部門を開拓するのと同じでございまして、そういう意味で農家総所得をずっと上げてきたという経過があったと思うのです。  私が強調したいのは、見解を伺いたいのは、日本農業のこれからの道として、きょうも、土地利用型農業経営規模拡大生産性向上、こういうふうに言われました。私は、この方向だけではなくして、やはり兼業農家の存在を正しく位置づけて、必要な対策を講ずるということを一つ柱に据えるべきではないかという気がするのであります。農政審報告以来、規模拡大生産性向上、その担い手日本農家の中の少数の選ばれた選手といいますか、少数の選ばれた農家でやらせていこうというのが農政の流れであったと思うのです。私は、日本農業規模拡大して欧米並みの土地利用型農業にするのは、しょせん夢物語だというふうに思います。きょう大臣所信表明にもありました地域社会の活力の維持だとか国土だとか自然環境保全だとか農山漁村活性化を図るためにも、選ばれた農家だけで日本農業を進めるという路線ではだめなのではないか、こういうふうに思うのです。  私は、そういう意味で、どうしても規模拡大生産性向上の農政審路線はやはりここら辺で修正転換をして、兼業農家を含めた地域農業地域共同体、生産の協同化による生産性向上だとか、農村地域社会環境保全を含めたそういう方向を目指すべきではないか、そのことを農政の柱に据えるべきではないか、こういうふうに思いますが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  129. 近藤元次

    近藤国務大臣 規模拡大をしていくという方向については決して間違った方向ではない、こう思います。しかし、地理的条件やあらゆる環境の中で農業をやられておる人たちに、それだけですべて解決できるかというと、必ずしもそれで解決はできないことだと思います。協業化という問題があったり、あるいは中山間地で規模拡大をしようと思っても面積のない地域もございますし、そういう面では、やはり専業農家を育成すると同時に、ある面では協業化ということも育てていくという方向ではおおむね先生の御意見とはほぼ同じような考え方ではないかと思います。ただ、専業農家として規模拡大をしていくことが可能な地域について兼業を育てていくということになるとそこに整合性が生まれてきにくいという問題を一つ抱えておるものですから、そういう面では地理的な、地域的な環境というものを考えながらあらゆる方策を考えていくということは大事なことだ、そう思っております。
  130. 堀込征雄

    堀込委員 終わります。
  131. 大原一三

    大原委員長 倉田栄喜君。
  132. 倉田栄喜

    ○倉田委員 まず、大臣は百二十四代の農林水産大臣でございますが、大変おめでとうございます。難問が山積みしている中で大変だとは思いますけれども、農政通として農家の方々からは大変に期待をされておられると思いますので、どうぞしっかりと頑張っていただきたいと思います。なかんずく二十一世紀を迎えて、一九九一年この一年間をどのように乗り切っていくかということは、また二十一世紀農業をどのように描いていくのか、そういうことにも通ずると私は思っております。  午前中大臣の御答弁の中で、農業というものを、農業のビジョンというものをどういうふうに描くかということに関しまして、将来がわからない仕事は一番よくない、それから信頼関係、いわゆる農政不信というものをどう回復をしていくのか、また先がきちんと、きちんとはありませんでしたけれども、先が見えるような形にしなくてはならない、こういう御答弁がございました。  先ほど大臣所信をお伺いさせていただきましたけれども、私は、農政通として今度の百二十四代の大臣はどういう農業のビジョンというのを描いておられるのだろうか、そういう御期待もあるだろうし、大臣のお言葉として具体的なイメージとしてお聞きしたい、こういうふうに思います。  例えば、二十一世紀農業というものは、所得であるとか労働時間であるとか余暇と生活スタイルについて、わかりやすくいわゆる所信というか、そういうきちんとした言葉でなくて結構でございますので、大臣が持っておられるイメージ、そういうもので全国の農家の方々に呼びかけるつもりでお話をいただければうれしいと思いますが、いかがでございましょうか。
  133. 近藤元次

    近藤国務大臣 実は大変大きな問題でございまして、いろいろな問題が実は山積をしておるわけでございますので、踏み込んで話をすると大変長時間になるという危険性が実は出てくるわけで、先生の質問時間にも御迷惑がかかるかと思います。そして、農業でもいろいろな分野があるものですから、一つは米をとらえて考えてみても、昭和四十六年から休んでお金を払う、そして自給率が低いから転作を進める、水田再編というようなことで、看板は変わってまいりましたけれども、いずれも生産調整、減反という受けとめ方を農家からされてきて、もう今日を迎えておるわけであります。今の時期、これから将来いつそれでは生産調整が終わるのかなといっても、まだ明確になかなかなりにくい事情でありますから、米がおおむね中心になって農業経営をやっておられる人が多いわけですから、そういう面でも先の不透明をどういう方策で、どうやって見えていくような形にできるのかなという、そういうことがやはり不安がひいては不満につながったり、不信につながったりしておる分野の一つだろうと思うのです。別の分野にもございますけれども、大きな問題としてはそういう問題だろうと思うのです。  もう一面は、やはり食生活も変わり、環境も変わり、価格品質か安全かというようなことが消費者から問い直されておるような時期でもございますし、幸いにも、これだけ厳しい情勢の中で農家が勤労所得との格差がありながらも怠らずして一生懸命に品質のいいものをつくってきていただいておるということが青果物にも象徴される、こう思うのです。ここは私は、農家の皆さん方は大変御苦労されたな、こういう気持ちで今受けとめておるわけであります。  そういう中で足腰の強い、国際化の中で競争力が出てくるとすると、どうしても規模拡大だ、機械化だというようなことで価格を上昇するよりも、コストを下げるということで農家所得を安定をしていかなければならない、そういう局面が出てまいりました。しかし、そうはいっても国土の面積の少ないところに農業を営んで自給率を上げていくとすれば、土地利用型農業としてはどうしても中山間地、傾斜地で農業を営んでおるいわゆる農村の皆さん方というのは物理的にできない面が一つは出てくる、こういう問題を抱えているわけであります。そのことは、今お話のございましたように、社会政策国土保全であるとか水源涵養であるとか緑地保全であるとか、今流に言えば地球環境の中できれいな空気だとかきれいな水だとかの価値が見直されてきた今日の実情でもあります。食生活の段階を考えてみれば、外食産業と加工産業というのが急成長して伸びてまいりました。もう七〇%を超えておるのではないかなと思うのであります。  そういう状況の中で、今私ども考えてみて、そして先ほどもお話がございましたように、三Kなどという問題が今は出てまいりました。これも一つは片づけていかなければ後継者が、なかなか若い諸君が農業に従事をしてもらえないという条件にもなってまいりました。そして農村生活環境というのが、いわばお年寄りだけふえてきて若い人たちが住みにくいという状況になってまいりました。  まだたくさんのいろいろな変化は実はございますけれども、そういうものをトータル的に考えていくときに、所得の問題は、かねがね先生方からの御意見などを承りながら今日まで努力をしてきたことでございますが、なお引き続きこの努力はしていかなければならないわけでありますけれども、一つ所得の面で新たにまた積極的に考えていかなければならぬのは、農家はやはり食糧生産はしておりますけれども、実際問題の食糧というのは消費者の手に渡るまでの付加価値と流通問題というのが、どのようにして付加価値を農家の手取りとして考えていけるか、それをどうやって支援をしていけるか、ここの問題はやはり、必ずしも農産物生産をしておる段階で付加価値をつけておるということにはならない地域が多いわけでありますから、この付加価値を農家の所得としてどのように考えていくことができるだろうかということは非常に大事なことだと思うのです。農産物生産しておることと、食糧ということになれば消費者の手に渡るときが食糧だ、こう理解をしておいていいのではないかな。そういう面の新たな所得の問題をどうやって考えてやれるかということを考えていかなければならない、こう思っております。  農村環境というのは、やはり今まさに新たに水や緑や空気というものが見直されている時期でありますから、そうすると生活環境の中で道路とか集落排水というようなことに力点を置いて、やはり都会の人たちがあこがれるようなきれいな農村をつくっていくというようなこと、それが都市農村との交流にもつながっていくことでありますし、決して夢物語ではなくて、ヨーロッパの農村に行ってごらんになられておわかりのとおりに、大変きれいな環境の中で緑や花、そういうものをミックスしながら、生活面での環境を合わせながら農村というものがつくり上げられておるのだろうと私は思うのです。そういう環境の中で、もう一面は青果の部分からすれば、また三Kの一部である汚い部分について機械開発もやはり積極的にやってあげないと、なかなか三Kの一つである汚い分野という、そういうものに土いじりという部分と機械との組み合わせをどうやってやっていったらいいのかな。  もう話をすると盛りだくさんになるので御迷惑でございますから、そういうものをトータルをして、中山間地の政策の中でかなりの部分というものを、地理的条件の不利な状態の中におられる部分について当面もう少し枝ぶりをよくして、そして大変な久方ぶりに圧倒的な人気を地方から受けておる政策ではないかな、こう思っておるものですから、これの予算と枝ぶりをよくしながら、農村環境整備等を含めて不利な地理的条件のところの農業に対しても考えてやる、そして平場とあわせてやはり政策を出していかなければならない、そういうふうに今考えておるわけであります。
  134. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私は、今でも一番最初に農家の若手の方々からお話を聞いたときのそのお声が残っているのです。我々は農業に対して自信と誇りを持っているのだけれども、将来に対して希望が持てない、不安だらけだ。これをどう解決していくか、これも一つの私の課題というふうに考えております。今大臣からお話を承りましたけれども、いわゆる抽象的な理念の問題も大切だろうと思いますけれども、ぜひ具体的な目標として、二〇〇一年にはこういう農業になるんですよと具体的な数字として、先ほど大臣の御答弁の中で枝ぶりというお話がありましたけれども、ぜひ明確な目標を設定していただけるようにお願いを申し上げておきたいと思います。  そこでまた、今のお話の中にもありましたけれども、いわゆる農業としての役割国土保全とか緑地保全自然環境保護というお話がありました。大臣は、もしかしたら今もミックスという言葉でお答えがあったのかもしれませんけれども、産業としての農業、それから国土自然環境保全などの公益機能としての農業、これをどのように位置づけて考えておられるのか。また、米輸入自由化問題に関して水田の重要性というものはさまざまな形で言われております。しかし、言われておるだけであっては農家の方々には実は、得になるところがないという言葉で言っていいかどうかわかりませんけれども、余り何にもならないわけであって、公益機能としての農業、そういうものに予算措置をつけることが考えられるかどうか、また、将来的にデカップリング等、所得補償制度というものを検討していくことができるかどうか、この辺について大臣の御所信をお伺いしたいと思います。
  135. 近藤元次

    近藤国務大臣 所得補償の問題は、これも一つのウルグアイのルールの中で議論をされる分野に入ってくるだろう、こう思っております。私ども常々話をしている段階で、環境問題、社会政策上の今お話のありましたような問題については別に考えるべきだという意見も実は中にございます。しかし私ども、そこで農業を営む人たちがそういう地理的条件の悪い状態の中で農業をやっていただくということは社会政策上からも重要な問題であるという認識をしておるわけでありますから、今直ちに所得方式ということができなくても、少なくともその条件整備をするための負担の軽減ということは積極的に進めていきたい。そして複合経営の中で品質のいい、特産的なようなものに努力を傾けていってほしい、そして、そこに対する支援を積極的に進めていきたい、こう考えております。
  136. 倉田栄喜

    ○倉田委員 続きまして、後継者の問題ということについても、午前中もこれはお話があった点でございますけれども、改めてお伺いをしたいと思います。  大臣は、将来に向かって展望のある、活力のある農村、足腰の強い農業確立するため、新規就農者を含め、若く意欲にあふれ、経営感覚技術にすぐれた農業後継者担い手育成確保に努める、こういうふうな御所信でございました。農業後継者の問題は、農業全体の問題であると同時にまた個別的な問題でもあろうか、こういうふうに考えます。  先ほど午前中の質疑の中で、平成元年学卒者は二千百人、Uターンの方が二千六百人、それから兼業者として二千四百人ですか、こういう数字の御答弁がございました。全体として農業の後継者の方々が減っていっているのは間違いない事実であって、非常に危機感を持って農家の方々が心配をされております。大臣は、新規の就農者がこれほど少なくなってきたこの原因をどのように理解をしておられますでしょうか。
  137. 近藤元次

    近藤国務大臣 数字や具体的な後継者対策については政府委員から答弁をしていただきます。  やはり問題が一つ二つということだけではなしに、先ほどもお話がございましたように、三Kの問題があり、所得の差というものが一つは大きな問題としてあります。あわせてまた、生活面での所得、三Kだけでなしに、やはり都市的な機能というものを若い諸君が求めるという分野にも実はございます。そういう分野を総合的にいろいろ考えてみて、その部分をやはり一つ一つ丁寧に片づけながら、農業そのものが先の見通しがないということについては、不安を持って農業、仕事に携わってもらうということは何の職業でもやはり全力を挙げていけないという、そういうものが、幾つかの条件の中でそういう不安というものを解消してやるということがまた非常に大事なことだ、こう思っております。
  138. 安橋隆雄

    安橋政府委員 今大臣がお答えになったとおりでございますが、若干補足させていただきますと、就業者が少なくなっている原因といたしまして、他産業が非常につい最近まで活況を呈していたというようなこともございますし、あるいは農業で自立経営をする場合には相当な規模が必要になってくるわけでございますが、若い方が一挙にそのような規模農業経営にまで到達するというのは現実にはなかなか農地の取得、集積の問題があって難しいというような問題もあわせてあるのではないかなというふうに考えているところでございます。
  139. 倉田栄喜

    ○倉田委員 本年度の予算の中には後継者の問題についての予算措置の手当てがしてありますけれども、農業後継者担い手育成確保にどんなことが必要なのか。また、今回の具体的な施策としてどのようなものをお考えになっているのか。そして、この後継者問題については、農水省としては大体いつごろから危機感を持って対応されてきておられたのか。今まではその効果は余り上がっていないというふうに私は考えますけれども、今回の対策というものは、きちんとそのような過去の事実というものを踏まえたものになっているのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  140. 安橋隆雄

    安橋政府委員 農業の後継者対策でございますが、既に農業基本法が出ました当時から、他産業が高度経済成長を遂げているというような時代農業の将来は果たしてどのようになってくるだろうかというような意味での後継者問題という認識を持って農林水産省としても対応してきたところでございます。しかし、遺憾ながら現在の、例えば平成元年農業の就業者と申しますのは、先生お話しのとおり、農家子弟の学卒では二千百名、それから主として他産業にもついているが農業にもついているという方が二万四千人、Uターンの方々が二千六百人、それからニューカマーと申しますか新しく農業に入ってこられる方が百名弱、大体六十三年では八十名でございますが、そのような状況になっているということでございます。  私どもといたしましては、やはり基本的に農業が魅力ある産業として農業青年に認識され、また農村が住みよい農村になるように環境整備を図っていくという基本的なところが一つの問題でございますが、具体的に農業につこうとしていらっしゃる方々に対しましては、けさほども御答弁申し上げたところでございますけれども、改良普及員によります技術指導でございますとか、あるいは資金の援助でございますとか、あるいは先進農家への留学でございますとか、そういったことに対します援助をしているところでございます。  現実に農業をやろうという方々に対しましては、このような援助は一定の効果を持って実効があるのではないかというふうに思っておりますが、絶対水準を確保するというまでには遺憾ながら至っていないというようなところでございます。ただ、これが将来の経営規模拡大のきっかけになってもらえばというふうに私どもは考えているところでございます。
  141. 倉田栄喜

    ○倉田委員 具体的な施策も用意をされているんだと思いますけれども、施策があったとしてもそれを利用する人がその施策というものをどのように考えるのか。また、利用しやすいような温かい、血の通ったような工夫がなされているのかどうか。その辺もきちっと、ある意味では農水省も積極的に説明をしてほしいし、訴えていっていただきたい、このように思います。  また、この問題そのものについても、全国画一的、同じようなものではだめなんではないか、やはり地域に応じ、農業の種類に応じ、さらには農業の後継者という側面のみならず地域の後継者という側面もあわせ含めてきちんとした対策が必要である、こういうふうに私は考えております。  そういう意味で、ひとつぜひとももっと詳しい、きめ細かな実態の調査をなされて、把握をされて、きめ細かな後継者対策というのを要望しておきたい、このように思います。  次に、後継者問題というのは、裏返していけば高齢者の問題にも密接にかかわると思います。昭和一けた世代と言われる方々がこれから五年、十年という単位でどんどん離農をされていかれる、この問題については、離農されていかれる高齢者の方々に対してどのような対応をしていくのかという側面、農協の中ではいろいろな対策を各地域によっては考え始めているところもあるようでございますけれども、農水省としてはどうなのか、この辺について、まずお伺いをしたいと思います。
  142. 安橋隆雄

    安橋政府委員 今先生がお話しになりました昭和一けた世代の方々、今年齢で申しますと、五十五歳から六十五歳ぐらいまでの方でございますが、この高齢者が農業就業人口に占めます割合が三〇%でございまして、そのような意味では非常に重要な部分を占めていらっしゃるというふうに考えているところでございます。  高齢者に対します農林施策でございますが、これはもう御案内のように、農業者年金という制度がございまして、就業構造の改善とともに老齢者に老後の安定をというようなことで制度が仕組まれているわけでございます。私どもといたしましては、それ以外にもこの高齢者の現在までに培われました農業に対する御経験なり能力なりを地域社会の方に生かしていただくというような意味での提言をしていただく、あるいは相談に乗っていただくというような形で、組織的にそれをやっていただくような事業に対しまして支援をしているところでございます。また、高齢者自身が自主的に地域特産物などをつくられますような場合につきまして、その生産施設なり流通施設に対します助成をしているというようなこともやっておるわけでございます。  私どもといたしましては、平成二年でございますが、高齢者の対策を一元的にやるというような組織といたしまして農蚕園芸局に婦人・生活課というようなものも新たに設けまして、現在ここでは農山漁村の高齢者の能力発揮のための中長期ビジョンをつくりたいということで鋭意検討を進めているわけでございます。また、平成三年度からは高齢者が意見を発表し、あるいは交換し、優秀な活動家のためには表彰を行うというような集会もやりたいというようなことで今準備を進めているような次第でございます。
  143. 倉田栄喜

    ○倉田委員 高齢者の方々の問題については、その方々の老後の生活をどのように考えていくのかという問題と同時に、今お話ございましたようにその方々が持っておられる貴重な技術、技能、そういうものをどんなふうに後世に伝えていくか、この二つの側面があると思いますので、ぜひとも今御答弁のように力を入れていただきたい、このように思っております。  そこで、これらの方々が、昭和一けた世代の方が多数離農されていく。この後に残るものは、この方々が今まで耕作をしておられた田であり畑であり、これは一体どうなっていくのか。それに見合うだけの新規農業後継者があればいいわけですけれども、実際にはそこまで望むべくもないし、また農水省の計画としてそこまで見通しはされてないだろう、こういうふうに考えます。そうしますと、どうしても今まで耕作をされてきた水田というものが荒れ地になってしまう、こういうふうに思うわけですけれども、これは農水省としては昭和一けた世代が全部リタイアされたような状況になったときに、大体どれくらいの荒れ地というのか未耕地というものが出てくるのか、これはどのように考えておられますか。
  144. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 まず、不作付地といいますか遊休化している農地または耕作放棄地といいますか、そういうものについての統計の方から御紹介したいと思います。  平成二年の統計でございますけれども、不作付地が全国で十六万ヘクタールぐらいという統計になっております。それからまた、耕作放棄地につきましては二十一万六千ヘクタールということで、かなりの面積がこういう形になっておるという状況でございます。  私ども、こういう離農された後の農地につきまして、やはりできるだけこれを有効に活用したいということで、いろいろな政策的努力をしているわけでございます。特に農業委員会が中心になりまして、こういう離農の跡地につきまして貸し借りとか、それからまた農作業の受委託についていろいろあっせんをいたしまして営農意欲のある農家の規模拡大に役立てるとか、それからまた生産組織による有効利用を進めるというようなことも誘導している次第でございます。  それからまた、先生御指摘のような耕作放棄というような現象もかなり起こっておりますし、特にこういう現象は中山間地域、地理的条件が悪いようなところで起こっておるわけでございますけれども、こういう農地につきましても、できるだけこれを有効に活用するという観点から、県の農業公社がこれを買い入れたり借り受けたりして、それで担い手農家をいろいろ努力をして見つける。特にこれは当該市町村の中で担い手がいないというような場合には、広域のシステムといいますか、市町村の区域を超えて担い手を見つけるとか、それからまた新規の就農者を見つける、そういういろいろな努力をして、県農業公社が買い入れたり借り入れた農地をそういう農家の規模拡大に役立てていくというようなこともいろいろ努力をしている次第でございます。
  145. 倉田栄喜

    ○倉田委員 大臣所信の中にも、いわゆる中山間地域国民が健康的な余暇を楽しむ空間として意義づけていきたい、こういうふうなことでもございました。そういう意味合いからも、今御答弁の中に借り上げ、あるいは何とかして利用していきたいというお話がございましたけれども、それだけで十分なのかどうか。国としてこの未耕地の対策、荒れ地をどうするかということを十分検討していただきたいと思いますし、場合によったら国、地方自治体で買い上げる等々の施策がとれないものかどうかということも考えてみるわけでございますが、その辺はいかがでございましょうか。
  146. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 私どもといたしましては、先ほど説明いたしましたように県の農業公社、これは農地法上は農地保有合理化法人というような形で農地規模拡大にいろいろ働いていただく法人として位置づけているわけでございますけれども、この県の農業公社に国からいろいろ助成をしながら、こういう農地の有効活用にいろいろ活躍していただくということで考えている次第でございまして、こういう農地を国が直接買い上げるというようなことについてはいろいろ問題が多いということで、現在そういうことは考えておらない次第でございます。
  147. 倉田栄喜

    ○倉田委員 いずれの問題も非常に重要な問題でございますので、ぜひとも真剣に検討をお願いしたい、こういうふうに思います。  続きまして、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉について二、三お尋ねをしたいと思います。  米輸入自由化問題についてはさまざまな発言もありますし、もう御答弁もいただいておるところもございますので、もう一つの方の国内支持政策についてお伺いをしたいと思います。  昨年、農業交渉グループ議長テキスト案が交渉強化するための手段として使用されることで合意をいたしております。いわば支持の総合的計量手段、AMSですか、これにより市場価格の支持、不足払い、それから投入費補助等の国内支持政策について相当程度の漸進的な削減を行う、こういうふうになっております。これには一般補助金、利子補給、農業共済、土地改良、研究普及等の項目が入っていると思いますし、また、政府直接移転の問題としては不足払いとか転作奨励金、そういうものも含まれているというふうに理解をしております。これら基盤整備あるいは融資制度までが削減の対象になっているというふうに思うわけですけれども、これは日本農業のあり方について非常に重大な問題を含むものであるというふうに認識をしているわけでございますが、これらの交渉の状況と、そしてこれらに対応していく基本姿勢並びに今後の見通しについてお伺いいたします。
  148. 川合淳二

    ○川合政府委員 国内支持政策につきます御質問でございますけれども、今もお触れいただきましたけれども、ウルグアイ・ラウンドの中間見直し合意、一九八九年四月でございますが、ここでは農業の支持、保護の相当程度の漸進的削減ということが合意されております。我が国はこの方向に従いまして、今お話のありましたAMSによる削減を提案しております。  それから、昨年の九月にいわゆるオファーとして、八六年を基準年といたしまして基本的には十年間で三〇%削減するという内容等をオファーとして出しているわけでございます。  その後、アメリカは期限ぎりぎりにオファーを出した、それから、御承知のようにECは期限を大きくおくれまして提出したというようなことがございまして、これにつきましては、具体的な議論がまだ深められないままにブラッセル閣僚会議に入っているというのが実情でございます。  私どもといたしましては、例えばこのAMSにつきましては、何と申しましても今回の農業交渉の中心的な問題というのは、いわゆる貿易歪曲的な輸出補助金輸出競争をめぐる問題でございますから、本来的にやはりこういう歪曲的な効果をもたらすものに限って国内の支持の削減ということをすべきであるという基本的な態度で臨んでいるわけでございますので、特に輸入国の立場である我が国といたしましては、こうしたことを中心に今後の議論を闘わせていきたいというふうに考えているところでございます。
  149. 倉田栄喜

    ○倉田委員 昨年九月二十八日だと思いますけれども、ガット事務局に提出をされた国別表及びオファーで、今お話にありましたように削減率三〇%、これは今後十年間ということでございますが、日本の提案としてこのようになされていると思います。そうしますと、そういう提案があるわけでございますので、こういう三〇%の削減を目標に掲げていった場合、具体的な現在ある諸制度にどのような形で影響してくるのかお伺いしたいと思います。
  150. 川合淳二

    ○川合政府委員 先ほど申しましたように、このAMSによる削減は、私ども一九八六年から適用すべきであるということを一つ言っております。と申しますのは、御承知のように我が国といたしましては、これまでにもこういう国内支持の保護を削減するという基本的な方針価格の引き下げとか、そういうことを続けてきているわけでございますので、こういうものを実績としてまず考えるべきだということを言っております。  それから、輸入国としての立場、例えば輸入率の問題、あるいは米につきましては生産調整というようなことをやっているわけでございます。そういうものを勘案すべきであるということを、同時にオファーの中に提案として提出しているわけでございます。そういうことを入れることによって、我が国の過去の努力、それから輸入国の立場というものを守っていきたいというふうに思っておりますので、こうした点を中心に、ということは、従来の私どものとっていた基本的な政策にのっとったそういう提案であるというふうに考えておりますので、こうした点を今後とも主張していきたいということで対応しているところでございます。
  151. 倉田栄喜

    ○倉田委員 対応はわかりましたけれども、その三〇%の削減を十年間で目標にした場合、その具体的な諸制度ですね、どのような形で影響してくるのか。これはちゃんとあるのだと思うのですけれども、これは御説明いただけるのでしょうか、あるいはまた何か御報告をいただければそれでも結構でございますけれども。
  152. 近藤元次

    近藤国務大臣 ノンペーパーが出されてまだ具体的な各論を全くしておりません。諸外国の対応についてもまだ明確にはなっておりません。  もう一つは、対応いかんと言われても、何年度を基準にするかということを、我が国は八六年を主張しておるわけですし、その辺の基準年度が明確にならないと、事実上十年間三〇%といってもこれから十年間三〇%なんといったらえらいことになるわけでありますので、既に我が国はもう八六年以来相当の努力をしておるわけでありますから、これを八六年を基準にするということをまず主張しながらこの問題を議論していきたい、こう思っておるわけであります。
  153. 倉田栄喜

    ○倉田委員 了解いたしました。  それからもう一点、昨年の十二月三日から行われた交渉で、ヘルストローム議長のノンペーパーというのがございます。これは、国内支持については一九九一年一月から五カ年で品目ごとに三〇%削減する、基準年は一九九〇年または最近年、それから削減対象は主として貿易歪曲効果が最も大きい政策、こういうふうなノンペーパーが提出をされておるわけですけれども、このペーパーについては農水省としてはどのように対応される方針でございましょうか。
  154. 近藤元次

    近藤国務大臣 このペーパーの中に、まず食糧安全保障、基礎的食糧というのが明記をされていないことで、前大臣ブラッセルで発言をしたことであります。  ただ、それを中心にして我が国が主張しておる三点の問題について明確になっていないわけでありますから、内容議論について話をすることはできても、その中間合意まで書かれておったものがここで書かれなかったということで明確にならなかったわけですから、議長の提案から今度は事務局長がプラットホームをつくるときに新たな提案をしようという努力を今しておるところで、中間合意までの我が国の努力を明記をしてもらうことを考えておるわけでありまして、この問題は一応各論の対象になっていない、こういう段階であります。
  155. 倉田栄喜

    ○倉田委員 午前中からの答弁で、一方では二国間交渉ではなくて何としてもこのガット・ウルグアイ・ラウンドを成功させなければいけないんだ、こういう御発言もございました。いろいろな意味で、ECあるいはアメリカから出されております各提案をまとめていく中で、日本農業基本政策までもあるいは根本的に見直していかなければいけないような事態も当然想定をされなければいけないのであろう、こういうふうに思います。ぜひともそういう想定をされる中で、お互いに農業、農家の方々の御意見をしっかりと拝聴させていただきながら議論をさせていただきたいと思いますし、政策等々にしっかりと前向きに取り組ませていただきたい、このように思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  続きまして、私熊本でございますけれども、水俣病の件についてお伺いをしたいと思います。  非常に昨年未来新聞紙上等々でも全国的な話題になっているというのか、国民的な関心になっているのか、マスコミにも相当取り上げられております。農水省も、現在裁判があるわけですけれども、被告の一つであります。  そこで、この水俣病について農水省は基本的にどのような考え方でおられるのか、まずその見解をお聞きしたいというふうに思います。
  156. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 水俣病の訴訟案件についてのお尋ねでございますが、この訴訟内容は、御承知のとおり、水俣病の発生をめぐりまして国が負っております法律上の義務の不履行を根拠にいたしまして国に賠償請求をする、こういう訴訟であるわけであります。  その一環といたしまして、まさに国の法律上の義務の問題としまして、私どもの所管をしております漁業法、それから水産資源保護法、及びそれに基づきます熊本県の漁業調整規則によりまして、水俣病の発生阻止のために漁業権の取り消しあるいは工場の排水規制といった措置、これらは機関委任事務として熊本県知事に委任されておるわけでございますが、これを実行することについて国が適切な指導監督を行わなかった、こういうことを理由にいたしまして国家賠償法による賠償責任を問うておる、こういう状況、これが原告側の主張になっておるわけでございます。  これに対しまして、私ども、漁業法に基づく漁業権の取り消しでありますとか、あるいは水産資源保護法及びそれに基づく県の規則による排水規制といったような措置は、法律上、漁業調整上の必要あるいは水産資源の維持培養という限定的な目的のもとで発動されるものでございまして、健康障害の防止のためにこれを発動するという範囲までは権限を与えられていない、こういう見解を持っておるわけでございます。  したがいまして、原告側の主張する意味での国の賠償責任はないという考え方でございまして、こういった問題は法律に基づいて執行される行政の根幹にかかわる問題であるという理解のもとで、ぜひとも判決という形で裁判所の判断を得たいものだというふうに考えておる次第でございます。
  157. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私も、今御答弁をいただきました農水省としての御主張というのもよく理解できておるつもりでございますけれども、その御主張というものと、それからその御主張から、当然判決で得たい、それもそうかなという気もしないわけではないわけですけれども、とりあえず和解のテーブルに着くということがなぜできないのか。国の御主張がどうしても原告の主張とかけ離れて相入れないということと和解のテーブルに着くということが論理的には必然性があるんだろうか、こういうふうに思うわけですけれども、この点は直截にお聞きしますが、なぜ和解のテーブルに着けないのかということに関しては、農水省としてはいかがなんでしょうか。ほかの省庁と同じように考えられては困るということなんでしょうか。
  158. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま私申し上げましたのは、今回の訴訟に、私どもとして関与している漁業法及び水産資源保護法に係る問題についての私どもの見解でございます。  御承知のとおり、訴訟内容については他の法律上の義務にかかわる問題、さらにまた水俣病であるか否かの判断基準をめぐる問題を含んだ全体の訴訟になっておりまして、私この場で申し上げることは、私どもの関与する部分についての見解でございます。  その他の面につきましては、それぞれ関係各省それぞれの立場でいろいろな御主張が、考え方があるというふうに承知をしておりまして、私どもの関与する部分については先ほど申し上げたとおりでございます。
  159. 倉田栄喜

    ○倉田委員 なぜ和解のテーブルに着けないのかということについてお答えいただいたのかどうかちょっと疑問ですが、大臣としては、この水俣病の問題はどのように御認識をなさっておられますか、また、どのようなお考えでございましょうか。
  160. 近藤元次

    近藤国務大臣 熊本に限らず、新潟も水俣病の問題の地元でもございますので、大変長い間これは係争になっておる問題でもございます。  ただ、和解のテーブルに着くということになると、これは環境庁を中心にして政府関係省庁があるわけでございますので、その点に農林水産省が直ちにコメントするという立場ではございませんけれども、法的責任ということで係争しておるわけでありますので、法的責任ということになれば裁判所の判断を仰ぎたいというのが今の政府のとられておる立場でございます。  しかし、現状は、長期にわたっておりますので種々の救済措置というものは行われておるわけでもございますので、長期にわたる係争ができるだけ早いその結審が出てくるようにしてやることが一番大事なことだ、こう思っておるわけです。
  161. 倉田栄喜

    ○倉田委員 生きているうちに救済をというのが、これは原告の方々もあるいは水俣病、これに関係する方々の本当に切実な願いであり、叫びであろうというふうに思いますので、主張、立場というのはわかりますけれども、どうしたら解決をできるのか、こういう側面からもぜひ真剣に御検討をお願いをしたい、こういうふうに思います。  最後でございますけれども、午前中の質問にもちょっとございましたけれども、いわゆるODAに対する食糧援助、これは大臣の御答弁で、そこをマーケットにしている開発途上国のことも考えなければいけないんだ、こういうふうなお話でございました。私は、もう一度他の視点から、今湾岸戦争がどういう形になるかわからないわけですけれども、現実に行われているわけでございます。難民の方々も、これからさらに発生をしてくることが非常に高い確率で予想される。こういう難民救済という視点から、難民、避難民の方々に対する食糧援助というものがまず第一段として法的に可能なのかどうか、この点をお伺いをしたいと思います。
  162. 川合淳二

    ○川合政府委員 湾岸地域におきます避難民に対します援助につきましては、既に我が国政府から国連災害救済調整官事務所などに対します資金拠出が行われておりますけれども、この中で食糧の供与につきましても行われております。
  163. 倉田栄喜

    ○倉田委員 食糧の援助が行われているということは、それはいわゆる資金の面でございますか、それとも現物でございますか。
  164. 川合淳二

    ○川合政府委員 現在のところ、主体は資金でございます。
  165. 倉田栄喜

    ○倉田委員 お尋ねをしているのは、例えば現物で援助をするということがまず法的に可能なのかどうか、その点いかがでございますか。
  166. 川合淳二

    ○川合政府委員 ちょっと、こちらから御質問するのは非常にあれなんですが、それはあれでございましょうか、海外食糧日本の資金で買ってという意味でございましょうか、国内食糧を送るという意味でございましょうか。
  167. 倉田栄喜

    ○倉田委員 済みません。国内食糧を例えば送る……。
  168. 川合淳二

    ○川合政府委員 食糧の種類にもよりますけれども、法的に可能であると思います。
  169. 倉田栄喜

    ○倉田委員 法的に可能ということですけれども、実際、農水省として、食糧庁として、例えば資金ではなくて日本の現物を送るような事態を検討あるいは研究はされておられないのでしょうか。
  170. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生のお尋ねは米ということなんですか。今局長からの答弁は、物によってはという表現は、日本の食管制度上、米を海外国内産を援助するということはできないわけでありまして、ODAで結局海外から求めて援助するということは可能なことになるわけでありますので、そういうことであります。
  171. 倉田栄喜

    ○倉田委員 わかりました。はっきりすればよかったのですが、米は、そうするとできないということですか。
  172. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま大臣からお話しいたしましたように、基本的にはできないということでございます。というのは、先生お尋ねの点はいわゆる食管制度の米というお話でございます。食管制度基本的に国内需給ということをやっておるわけでございまして、大臣も申し上げましたように、ODAとかそういった、いわゆるディメンションを異にするわけでございます。あくまでも国内国民の皆様に供給をするという意味で、食糧管理制度というと何でも広い意味のように見えますけれども、言葉を選んで申し上げますと、そういうことでございます。
  173. 倉田栄喜

    ○倉田委員 なかなか国際貢献という形で、資金面だけだと顔が見えないとか形が見えないとか、こういうこともあるのだろうと思うのですね。そういうわけで、人の貢献であり、あるいは現実的な形としての物の貢献であったり、そういうことも論議されているのだろうと思います。いろんな問題があるのだろうと思いますけれども、湾岸戦争の進展いかんによっては今後どのような事態が想定されるかわからない。ぜひとも、物という形あるいは米という形で結構ですけれども、いざというときにきちんと素早く対応できるように検討をしておいていただきたい、このように御要望申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  174. 大原一三

    大原委員長 藤田スミ君。
  175. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 まず私は、食糧自給率の問題についてお伺いをいたします。  昨年十二月に出されました食料需給表によりますと、カロリーベース食糧自給率は、八七年、八八年の四九%から八九年には四八%、一ポイント下がったことが明らかになっています。この四八%という数字は、先進国の食糧自給率の水準からも大きく下回っておりますし、日本と同じような食糧自給率の国は世界で探しても本当に例がないほどであります。まさに世界的に異例の国になっています。そして、多くの国民がこの食糧自給率の向上を願っている中でダウンしました。この問題はなおざりにすることができないと考えますが、まず大臣の御認識をお伺いしたい。
  176. 近藤元次

    近藤国務大臣 御指摘のような経過をたどってまいりました。大変、食糧自給率を上げたいという努力をしておる反面、一%結果的に下がった状況でありますので、実は深刻に受けとめております。  いずれにいたしましても、主な原因は米の消費が減少していくということが一つあります。また、畜産物の消費の増加に伴って飼料穀物が輸入をされておるということでまた自給率が下がるという、まあその他にも原因がありますけれども、主な原因としてはそういう原因が認識をされるわけでありますが、この問題は「農産物需要生産長期見通し」を出しておる立場では、さてこれにどうやって歯どめをかけて具体的に振興させていくかということが大きな一つの私たちの課題だ、こう受けとめております。
  177. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 今大臣は、米の消費が減った、畜産物の需要が伸びてそれで飼料の穀物の増加、これが一つの原因にもなっている、こういうことでございますが、米は幾ら減ったのでしょうか。そして、その米が減ったことによる食糧自給率の低下との関係、これはカロリーの中での米の位置づけの話になると思いますが、御説明ください。
  178. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 昭和六十三年度の米の国内消費仕向け量は千五十八万トンでございます。それが平成元年度では千五十万トンということで、八万トンの減ということになっております。
  179. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私たちが米から摂取しているカロリーは全カロリーの二六%、それよりも少し多いかもしれませんが、それだけのウエートを米は持っているわけです。だから米は最大のカロリー源であって、米が八万トン減ったということがこれだけの大きな自給率の低下という影響を持ち込んできているというふうに認識していいですね。
  180. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 米の減少のほかに、先ほど大臣が申し上げましたように、畜産物の消費がふえている。これはカロリー自給率で見ますと、供給するえさの穀物等の換算をいたしますので、それによる減、それからまた油脂でありますとかでん粉等の消費の増大というのも逆に自給率を減らす要因になっております。
  181. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 いずれにしても、これからいよいよ見通しは暗くなるのではないでしょうか。大体、先ほどの大臣の御答弁にもありましたが、五〇%のところまで九年後の二〇〇〇年には持っていきたい、これが政府の政策ですよね。それと比べてももう二ポイント逆に下がったわけです。一九七〇年には六八%の自給率がありましたが、それが八九年までに四八%というふうにずっと下がり続けてきて、そして九〇年には農産物の十二品目の中でその他の糖類糖水、フルーツピューレ・ペーストの缶詰、かんきつのパルプ、それからリンゴ、ブドウ及びパイナップルの果汁、ストレート果汁等々、輸入自由化が進められてきました。本年四月からはいよいよ牛肉・オレンジの輸入自由化ということになっていくわけであります。こういう自由化措置が食糧の自給率を引き下げる方向に働いていくことはもう確実であって、そして見通しは全く暗いとしか思えないわけでありますが、その点について政府の責任と対策を明らかにしてください。
  182. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 基本的には、食糧消費の構成といいますか、消費構造が急激に変わっている。最近の日本の、今自給率が変わっている要因であります米を中心としますでん粉質食料の減少と、それに対応します食肉、乳製品でありますとかあるいは油脂類等の脂質類の増大というのが、ここ急激に外国に例を見ないような変化を示しております。それに対して、国内生産が対応できないところにあるというふうに考えておるわけでございます。  この自給率問題につきましては、一昨年の秋の予算委員会あるいは農水委員会で大変な議論をいただいたわけでございますけれども、その際にもそういう食構造変化国内生産の対応というのが直ちにできないということをるる申し上げましたけれども、やはり長い目で見て、できるだけ国内での供給力を維持していくというのは農政の根幹ではないかということで、長期見通し作成の際にはできるだけ自給率の低下に歯どめをかけて、少しでもそれを持ち上げたいというようなことで申し上げたわけでございますけれども、長い目でこの問題を考えていく必要があろうかと思います。  一つには、やはり食糧消費問題というのを考える必要があるのではないか。昨今の急激な変化が、今まで日本型食生活ということででん粉、脂質、それからたんぱく、バランスがとれたわけでございますけれども、昨今の状況を見ますと、若干脂質の増加が赤信号ではなくても黄信号のような気配がうかがわれるわけでございます。そういう点からしますと、やはり日本型食生活のよさというようなことで、米の消費の減退にできるだけ歯どめをかけていくとか、それからまた麦、大豆につきましては、加工用が消費の主体でございますので、加工適性品質のもの、品質のいいものをつくっていく。残念ながら日本めんでも現在はオーストラリアの方が使いやすいとか言われておるような状況を改善していくということで、加工食品に適したものにやっていく。  それから、一番難しいわけでございますけれども、畜産物につきましても、大家畜につきまして粗飼料基盤をできるだけ維持し拡充をしていくというような政策、それからもう一つは、やはり昨今の食糧消費は原料でそのまま食べるより加工食品の形、外食その他から見ますと加工食品の形で消費される量が多いわけでございますので、加工適性のものをつくっていくというようないろいろな分野での積み上げによって何とかそれを維持、また上昇に転じたいということで、加工食品につきましては、今後の技術開発等にまつところが多いわけでございますけれども、そういう視点に基軸を置いて地道な努力を進めていきたいというふうに考えております。
  183. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 随分たくさんおっしゃいましたけれども、私は日本型食生活をもっと広げていかなければならないということや、あるいは加工食品品質を改善したり、粗飼料をもっとふやして自給できるようにしていくということを否定しているのではないのです。それはとても大事なことだというふうに思っています。  しかし、一方ではどんどん輸入自由化で門戸があけられていけば、自給率というのはいや応なくそこから低下させられていくわけです。  米だけではないというお言葉でしたから、私はあえて、一ポイント下がったのが、ストレートに米の消費減退八万トンがそのまま一%下がった、一ポイント下がった理由だというふうには言いませんが、しかし、それも大きな要因であったことは事実であります。そういうふうに考えると、この食糧自給率を引き上げる、政府の大変な仕事ですね。言ってみれば二〇〇〇年、これから九年かかるわけです。イギリスなんかは一九七五年から十年かけて二五%、同じ期間に西ドイツは二二%も引き上げていますから、そういう点から考えたら、これから二〇〇〇年までに一ポイント上げるということはそんなに自慢にもならない話ですが、しかし、現実には非常に困難がある。  まして大臣食糧自給率を引き上げるというこの方針とそれから米の輸入自由化、たとえ米の部分自由化であっても、部分輸入であったとしても、この問題とは到底相入れない問題だということになってくると思いますが、その点での大臣の御意見を伺います。
  184. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生御指摘のとおり、米の自由化というものと自給率というものは大変大きな関係が出てくるわけであります。それゆえに自由化はできないという主張を貫いておるわけでありますし、また、ガット・ウルグアイ・ラウンドでも輸入国というものの意見を反映させることが、そのウルグアイ・ラウンドの結果をまた成功させることにもつながるものだ、こう理解を実はいたしておるわけであります。
  185. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 この問題はこの質問の後の方でもう一度引き続いてしていきたいと思います。  今回の消費減退、これに歯どめをかけ、食糧の自給率の向上のためにも極めて大きな役割を果たしているのは、やはり学校給食の米飯給食だというふうに考えるわけです。現在、全国平均で週二・五回になっています。それを早急に引き上げることは大変重要なことだ。とにかく対象児童数は千二百五十一万人あります。週一回米飯給食をふやすと、それで五万トンの消費拡大になっていくわけです。  それから、先ほど御説明があったように、日本型食生活というものを私たちの代だけではなしに次の代に確実に引き継がせていくためにも、この日本型食生活というものの定着という点では、これまた学校給食は非常に大事なものになっています。私はこれはもうこの委員会でも何度も取り上げておりますが、ことし農水省はどういう意欲を持ってこの米飯給食の拡大のために取り組もうとしていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたい。
  186. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御指摘のように、次代を担う人に日本型食生活のよさを小さいときから理解していただくためには、学校給食というのが実に重大なものであることは言を待たないわけでございます。  この学校給食の問題につきましては、関係省庁といいますか、特に文部省との連携の上で、今先生御指摘のように週五回あるうちに始めてまいりましてやっと二・五まで参りました。文部省におきましては、六十年にこれを三回に上げようという方針を立てまして、私どもできる限りこのスピードアップをしていこう、こういう心づもりでございますが、今のところの実績は毎年〇・一回ずつ上がっているわけでございます。  そういう意味でよく分析をいたしてみますと、例えば大都市の問題とかそういった問題、あるいはそこでいかない問題とかあるいはパン食との連携の問題、それから実際に従事しておられる方の清掃の問題とか洗う問題とかいろいろ多々あるわけでございます。  それからもう一つ、根本的には先ほど来議論がありますように米食、米がやはり健康にいいということも重要な促進材料だと思います。この一月の二十四日に医師会館新装なりまして、医師会館に近藤大臣みずから御出席になられまして、お医者さんの力をかりて日本の学校給食といいますか米食、米が健康にいいということをキャンペーンを始めてきたわけでございますが、今ちょっと外れるようでございますけれども、若い人たちの中に、逆説的ですけれども成人病、コレステロールがふえているという状況が出ております。そういった普及も含めまして、総力を挙げてこの学校給食の回数をふやしていく方向で頑張らなきゃいけないというふうに思っております。
  187. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 米飯給食の必要性というのは私も全く同じ考えです。しかしながら、毎年〇・一回ずつしかふえないというのではこれはもうまことに心細いわけです。来年度の国の予算案を見ましても、その米飯給食を促進させていくための予算というのは、これは金額的にざっと二億円近く減ってしまっているわけです。これは理由は生徒が減ったんだ、それから政府米の価格が、消費者米価が少し下がったんだ、こういうふうにおっしゃると思うのですが、それでは計画数量はどうかと思ったら計画数量も全く一緒なんですね。これじゃちょっと、やはり〇・一回しかふえていかない、自然に任せるということにならざるを得ないわけでありますよ。だからやはりもっと本当に文部省が言っているような週三回というものを農水省も取り組んでいくんだということになれば、これはやはりそういうものをきちんと予算にも計画数量にも反映させて熱意のほどを示してもらわなければいけないわけであります。  大臣、米の、米飯給食をふやさなければならないという御意義は十分御承知だと思いますが、これからもっとそれを意欲的にふやすために今からもう、もっとてこ入れをして、そして来年度の予算も足りなければ足すぞ、計画数量もオーバーしたらもっと出しますよ、そうして週三回、これを当面文部省が目指している週三回だけでも早く達成せよというふうに、もっとそれこそお医者さんとのキャンペーンのようなものをこの学校の方に向けて働きかけをしてもらいたいのです。もちろん、私は大阪ですから、大阪は学校給食で中学校の方がなされていないところが多いし、それから小学校でも米飯給食の全国平均よりも少ないところがまだたくさんあることを知っていますが、この大都市というのはしかし、取り組んでくれれば非常に多くはけていきますので、その辺は大臣、特段の力を入れていただきたいのです。大臣の御決意を聞かせていただきたいと思います。
  188. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 今先生、予算がありましたので、大臣がお答えになる前に簡単ですが一言言わせていただきますと、今おっしゃるように二億円減っているわけでございます。  その理由は、まず政府米の売り渡し価格が一%減ったことによるわけでございます。それからもう一つは計画数量ですが、先生おっしゃるようにまあ大体一回五万トンというお話でございますが、現実の数字でいきますと、実際で全体で約十万一千トンぐらいの数字になっております。今回の予算、政府案の積算は去年と同じでございますけれども、十五万トンということで、そういう意味では余裕があるわけでございます。
  189. 近藤元次

    近藤国務大臣 学校給食、米飯給食の拡大ということは、私もかつてこの委員に籍を置いたときかつての大臣に質問した一人でございますので、中期的に見ても長期的に見ても世界から日本型食生活が見直されておるということは皆御承知のとおりでありますし、今安全性、健康ということが消費者ニーズであることも十分承知をいたしておるわけでございます。少なくとも私も常日ごろ、まあ大阪とか東京とかいうところは別にしても、農村でなぜ学校給食が米飯でできないのかということに対して積極的に努力をしてきた一人でございます。関係者だけに理解を求めていくことは大事なことでありますが、それにとどまらずして、今回医師会館で医師会長を中心にしてまた健康のためのフォーラムをやっていただきましたし、テレビ等も御協力をいただいて、今後引き続き広く健康の面、安全の面、日本型食生活というものをPRをしていきたいと思うわけであります。予算やその他で米飯給食が障害になるようなことのないように全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。
  190. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 学校給食問題のついでにといったら悪いですが、この学校給食用の牛乳供給事業交付金の問題でもう一つ聞いておきたいのです。  これはことしの予算は五十五億三千七百万円。だから九〇年度予算よりも二千八百万円減っています。また畜産振興事業団からの良質牛乳供給促進事業も七千二百万円削減されているわけです。こういうような予算削減だけではなしに、今回、従来基準日数百八十日まではとにかく日数にかかわりなく一本当たり二円二十銭ずつ助成しましょう、こうなっていたのを、今度は学校単位に変えて、そして交付開始日数を九十日というふうに決めて、それまでしかやらないところはもう助成をしませんよ、それを超えたら超えた時点でその学校に一校当たり、これは四百三十人弱の学校規模で計算したお金ですが、とにかく一日千八百八十三円ずつその学校に助成します、こういうようなことを決められたわけです。こういうふうに助成制度を変えた理由、時間が非常に限られていますので、簡単に理由を教えてください。     〔委員長退席、宮里委員長代理着席〕
  191. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 学乳事業につきましては、かねてから財政審等で少額一律補助だという御指摘があったところでございます。私どもは、今回の見直しにつきましては、この少額一律補助であり非効率であるということの財政審からの指摘というものに配慮しながら、この学乳事業役割、学校給食を通じまして飲用牛乳の消費拡大と酪農乳業の安定的発展という役割確保するという両方の観点に立ちまして今回見直しを行った。具体的に申しますと、先ほど先生がおっしゃいましたように、牛乳一本当たりの単価助成ということにかえまして一学校当たりの助成ということにすることとともに、学校給食における牛乳の消費拡大努力というものに応じまして、これは供給日数の拡大に応じて助成するということにしたということでございます。
  192. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 しかし、こういうやり方をとっていったらどうなるでしょうか。私は、土日を外して月から金まで一本ずつ牛乳を子供に飲ます学校で九十日目に達するのはいつかというのを見てみましたら、九月の末なんです。一週間に四本飲ます、五本ではなしに四本飲ましますというところは十一月の末ぐらいなんですね。そこまでは助成はないのです。そうでしょう。そこまでは助成がなくてそれが超えた時点でその学校に助成をする。そうしたら、その学校はその牛乳メーカーにお金払わぬと持ってきてくれませんからね。その間その差額をどうするのですかね。それは、それまでは助成が来ませんので父母に負担してくださいというのでしょうか。それとも、その学校の給食費でプールして、そして年間で回してくださいよ。まあ大方その後者の方をおっしゃるというふうに私は思いますが、しかし学校の給食のお金なんというのは毎月細かく積算して父兄から集めたものを毎月毎月消化して過ぎていくような形になっていますから、そんなに大きくずれた形でなかなかプールできないのです。私は、このやり方というのは本当に検討し直してもらいたい。消費拡大が目的だとおっしゃるんでしょう。文句があるなら、九十日で切っているから九十一日までやれ、こういうような御意見を出されるかもしれませんが、いずれにしても、現場はとても混乱していますよ。これはぜひ現場の声を聞いて、こういうやり方は本当に円滑に行われるように検討していただきたいわけです。  それからもう一つは、今度のこの助成措置が変わって、学校給食牛乳を納めている中小メーカー、これに影響がないでしょうか。私は、学校給食というのはいろいろな意味でいい面がいっぱいある。いい面がいっぱいあるが、もう一つのいい面は、乳業メーカー、中小の乳業メーカーがこの学校給食のおかげで非常に育てられてきたというのですか、発展してきたというのですか、そういう役割を学校給食牛乳は果たしてくれたということで大変喜んでいるのですが、ここには全く影響がありませんか。
  193. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 二点あるかと思いますが、最初の問題につきましては、年度当初に年間の給食費総額なり総助成額の見込みということも可能なものですから、月ごとの給食費を一定にできるような調整というのはでき得るというふうに考えております。ただ、私どもよく指導はしてまいりたいというふうに思っております。  それから、二点目の中小乳業の問題でございますが、このたびの学乳事業の見直しにつきましては、助成方法について見直しまして、従来の一律単価助成方式というものを廃止いたしまして、各学校ごとの供給日数に応じた助成方式を導入するということについての改正、見直しということでございまして、例えば特に五者協議会の仕組みというような形で、事業運営上の仕組みについては私ども実は従来どおり維持したいというふうに考えている次第でございます。
  194. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そうすると、月ごとに調整できると考えているというのは、学校や教育委員会がそうできるだろうということですか、そちらの方で検討していただくということですか、ちょっとそこのところがよくわからない。それはもうそんな心配することないよ、そういう意味ですか。
  195. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 学校なり教育委員会なり県等々で十分そこのところはやっていただければよろしいのじゃないかというふうに思っております。それがうまくいくように私どもとしてもできる限り指導してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  196. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 他力本願いうたらそういうことをいうのじゃないですか。自分たちの方でやりにくい仕組みに変えて、現場は混乱しているのに、おまえたちの方でうまく調整できるというふうに考えております、それはちょっとないですよ。とにかく九十日過ぎないとだめなんでしょう。そこからオーケーのサインを出して助成額を給付する、こういうのでしょう。しかも学校単位ですから、それはとても困ることなんですよ、来るものが来ないわけですから。
  197. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 学校単位で年度当初に何日程度の供給をする、学乳をするというのは年度当初にわかるわけでございますので、それをもとにしまして総額を決めていく、また、このぐらいの総助成額があるということで、それを頭に置きながら月ごとの父兄負担というのか、給食費を決めていけばよろしいのではないか。現実に、現状でも、例えば年間を通じて野菜等の食材費というものを、例えばです、そういうものについてはかなり変動するということでございますので、今そういう形でもやっていることでございますので、可能ではないかというふうに思っております。
  198. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 これはもう一度要求しておきます。現場の声をよく聞いてください。そして、それに対応できるように、農水省の助成の措置が変わったのでだからやりにくくなったということで後退されたらたまりませんから、だから現場が混乱しないように、かつ、そのために農水省も今回のやり方でできるだけ応援できるところはやはり応援して、もう制度が変わったんだから自分たち農水省は知らない、しかしおまえたちはあんじょうやれ、こういうことではなしに、そんなことを言っていたら指導になりませんから、これは現場の声をよく聞いていただきたい。そして、農水省の方もそれに見合った形で、少し形が実質的に変わってもそういうことでやっていくというふうにしていただきたいわけです。  四月から牛肉輸入自由化のために牛肉等輸入関税が特定財源化されまして、乳製品の関連指定助成対象事業はその財源がなくなってしまいます。これで指定事業である学校給食の牛乳のこの事業が見通しがなくなるのじゃないかという点も大変心配されているわけです。そういうことはないように手を打ってもらわなければなりませんが、どうしようとされていらっしゃるのでしょう。
  199. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 今回、牛肉輸入自由化に伴いまして平成三年度から牛肉等関税収入というものを特定財源といたしました関係上、牛肉の輸入の特定財源につきましてはこれは食肉関係での指定助成事業ということになりますが、その他の例えば酪農等々につきましては、例えば輸入乳製品の差益等により実施できるということになるわけでございます。財源がはっきりしてくるということでございますが、そういうことになるわけでございまして、今回、良質牛乳供給促進事業につきましても、三年度において従来同様の助成をしたいというふうに考えておる次第でございます。
  200. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 この問題は引き続いて見守っていきたいし、追及もしていきたいと思います。  いよいよ牛肉・オレンジの輸入自由化の、私はあえて強行の年というふうに言いたいわけですが、そういうことになります。もう既に和牛短角の子牛の価格が下落しまして、この二月から肉用子牛生産者補給金制度が発動されたばかりです。酪農家にとっては貴重な収入源であるぬれ子や乳廃牛の価格が大きく下落をしまして、深刻な危機に直面をしています。特に酪農家は肉用子牛生産安定等特別措置法の対象になっておりませんから何の保証もありません。強いて言えば、加工原料乳の生産者補給金でどれだけカバーできるか、これがいわば命綱です。  この加工原料乳の生産者補給金はこの三月じゅうに決定されるわけですが、私どもが聞いておりますところでは、補給金の算定基礎として八九年七月から九〇年六月までの生産調査を基礎にし、それに九〇年十一月から九一年一月までの農村物価賃金統計の価格指数を掛けて補正した数字を使う、こういうふうに聞いているのです。しかし、実際問題は自由化はもうことしの四月から行われるのです。だから、そこからまだ一気に下がっていく可能性というのは高いわけです。そういうふうに下がった副生物収入の中で、それも加工原料乳生産者補給金で補てんされないということになれば、私は酪農家は一年間持ちこたえられないだろうというふうに大変心配をしています。どうでしょうか。
  201. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 御指摘のように、ぬれ子あるいは老廃牛の価格低下ということがございます。ぬれ子にいたしましても老廃牛にいたしましても、これは酪農から生じますいわゆる副産物的なものというようなことでございますので、今回の子牛の補給金制度ということにはなじみがたいということでございます。ただ、酪農経営等々考えました場合に、例えばぬれ子につきましても、乳肉複合経営というような形での飼育なりなんなりというような形の中でやっていく、また老廃牛につきましても、例えば老廃牛をそのまま出しますと、C1というような形で最下等のいわば格付という形になりますが、これを肥育いたしますとC2クラスに相当程度なるというようなこともございまして、そういういろいろな形の中で乳肉複合経営的なものをやっていくことによってそれなりの対応ができていくというふうに考えている次第でございます。
  202. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 えらい冷たいものですね。原因はだれがつくったのですか。酪農家じゃないですよ、皆さんですよ。あれだけ反対していたのに強行して四月から実施される、それが皆さんの答えですか。酪農家の中には自殺をされた人もいましたよね。そしてあれだけやらないと言っていたことを皆さんやったのですよ。酪農家がそれぐらいの努力をすることは私だってよく知っていますよ。そんなもので対応できないでしょう。だから、まさにここに命綱がかかっている。それは十分参酌して価格を決めなければいけない。切実な願いなのです。どういうふうに考えていらっしゃるのですか。
  203. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 先生御指摘のぬれ子、老廃牛につきます原料乳の保証乳価との関連につきましては、これは先ほども先生が御指摘ありましたような生産調査等々をもとにして三月末までに決定する、それでその際に当然ぬれ子につきましては副産物収入、また老廃牛につきましては乳牛償却費等の中で見ていく、こういう形になるわけでございます。
  204. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それを見ていくということはよく知っているのです。だけれども、こういう情勢の中でこれまでのようなやり方だけではとても酪農家はもたないということから、私は何遍もくどく申し上げているのです。もう老廃牛は種つけても持っていってくれる人ないと言いましたよ。何か、牛の気持ちになったらとてもつらいですよね。  だから、私たちは、本当は牛肉・オレンジの自由化は撤回すべきだと今も主張しています。しかし、それをもちろん受け入れる気がないわけですから、ことしの乳価算定は、相当大幅に引き下げられることが、下がっていくことが予想されるぬれ子や乳廃牛の価格を相当参酌した価格配置にするべきであります。大臣、どうぞ御答弁ください。
  205. 近藤元次

    近藤国務大臣 牛肉・かんきつの自由化問題がいよいよことしということでございますから、初年度、混乱をしないような、諸条件を勘案しながら決定をさせていただきたいと思います。
  206. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 諸条件を勘案しながらというところに私は期待をつないでおきます。  酪農家にとってこの乳価とともに大変な問題は、乳製品、でん粉の自由化問題であります。まるで泣き面にハチというような表現をしたらいいのか、本当にその立場にある農家の皆さんのことを思うといたたまれない思いがいたしますが、政府は三月末までに日米協議に応ずるということで先ほども御答弁がありました。アメリカの方は必ず自由化を要求してくるであろう、そのことは確実だというふうに思います。しかし、先ほどのお話にも、枠の拡大には応ずるけれども、自由化についてはウルグアイ・ラウンド交渉結果を見なければ応じられないというふうなお立場であるというふうに理解いたしましたが、この枠の拡大ということもまた今日置かれている酪農家の姿を見るときに、それがどういうことにつながっていくかということはもう皆さんこそよく御存じだというふうに思うわけです。だから、私は枠の拡大も認められないものだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  207. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 乳製品につきましては、これはもう御存じのとおりで、ガット・ウルグアイ・ラウンドにおきまして、これにつきましては輸入制限数量の基礎となっております十一条二項(c)の明確化ということで交渉をしているというところでございます。ただ、日米再協議ということになるものでありますから、この点につきましてもこれを踏まえながら対応していくということになりますが、ただ十一条二項(c)そのものにつきましてはやはりミニマムアクセスというものが当然あるという形の中での対応というような形になるということでございます。
  208. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そうすると枠の拡大、この協議は、乳製品も日米協議の中で行うということでしょう。その枠の拡大には応ぜざるを得ない、こういうふうに聞けばいいんですか。
  209. 近藤元次

    近藤国務大臣 枠の拡大というお話はしておりませんので、従来の枠の中で、少なくとも今ウルグアイ・ラウンドで十一条二項の(c)について、このことが私ども二年前にクロの判定を受けておるわけでありますけれども、生産調整をされたものが十一条二項の量的制限がクロになったということは理解できない、このことについて今後ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉を続けておる立場でありますから、現状の中で交渉していきたい、そういう考え方を持っております。
  210. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 現状の中で検討していきたい、協議をしていきたいということは、現在一定量のものが入っておりますが、このものは動かさないで、この量もふやさないで、その問題について引き続き一定量を輸入するということだけで協議をする、こういうことですか。
  211. 近藤元次

    近藤国務大臣 これからの交渉事でありますけれども、私たちの交渉基本的な姿勢として、十一条二項の(c)を今生産調整をしておるものとリンクして明確にしたいということが、ガットの二年前の交渉結果に対しての私たちが今とっておる基本的な姿勢であります。今まで、今日までの一定の枠があるわけでありますから、その範囲内で継続をしていきたい、そういう姿勢交渉に当たりたい、こう思っております。
  212. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りましたので、お米の問題は別の機会がございますので、そのときに譲りたいと思います。
  213. 宮里松正

    ○宮里委員長代理 小平忠正君。
  214. 小平忠正

    ○小平委員 大臣御就任おめでとうございます。大臣は新潟県が選挙区で、非常に農業に造詣の深い、御理解のある、まさに適任の御就任と思います。本当におめでとうございます。私も北海道の石狩川水系を選挙区とします。私自身も農業に非常に関心を持っております一人でございますが、現下の厳しい農業情勢、大臣のこれからの御活躍を御期待申し上げます。  私からも何点か質問さしていただきますが、まず第一点目に、先日大臣から非常に興味ある御発言がございまして、そのことからお聞きしていきたいと思うのであります。  去る二月五日だと思うのですが、閣議後の記者会見において、大臣個人としてのお考えであること、そういうふうにお断りしながら、農業基本法についての御発言がございました。いわゆる見直しを含めた検討をしたい旨の御発言をされた、このように新聞報道で私も聞いております。大臣がいかなる意図を持ってこうした発言をされたのかは報道されておりませんでしたけれども、いずれにせよ、歴代大臣農業基本法の見直しについてはタブー視する傾向が非常に強い、そういう中で今回の大臣の発言は、勇気あるものとして私は敬意を表するものでございます。私もかつては一農業者でございます。そんな意味で、私も農業基本法の見直しについてはかねてから非常に強い関心を持ってきたわけでありますが、この質問を通して私の考えをまず最初に申し上げておきたいと思います。  まず第一点は、この農業基本法、内容の是非は別としても、昭和三十四年ですか、制定以来既に三十年という年数を経過した今日、これが風化しているということは言えると思います。今日の農業に就業する新規学卒者は全国で二千人余りでありますか、非常に減少の一途をたどっている。若い優秀な後継者の獲得が喫緊な課題でございます。これら後継者のうちどの程度の人たちが農業基本法の存在や内容を承知しているのか、仮に知っておられるとしても、果たして十分な理解が得られているかどうかは大いに疑問であります。若者が夢と希望を託せる農業とは何か、また、これを実現するための農政はいかなる方策を有しているのか、今日の農業の実態を的確に分析し、かつ、将来を的確に見通した農業基本法の再構築が、この際必要ではなかろうかと私は思うのであります。  もう一点は、この農業基本法の構成についてのいわゆる見直しの問題であります。現行法を一言で言えば、農業について余りにも経済合理主義で律し過ぎていないか、そう思える次第であります。農業は工業と異なって、食糧の安全保障を初め、国土自然環境保全あるいは地域社会の維持発展に深くかかわりを持つ産業であって、まさにこうした農業の持つ多様な役割が、現在進行中のウルグアイ・ラウンド、ここにおける我が国の大きな論拠となっていると私は思うのであります。しかしながら、現行の農業基本法においては、こうした農業の持つ役割等の規定が大いに欠如しているところであって、交渉に臨んでの我が国の主張を弱めるものになっているのではないか、このように私は懸念いたしております。  後からの質問とも関連いたしますけれども、今我が国農業にとって最も大切なことは、国民的なコンセンサスを得られる、そういう農業政策確立を図ることである。そのためには、農業の持つ非経済的効果を法律に明確に明示して、広く国民全体の理解をいただく必要があるのではないか、こう思います。  以上、二点にわたって、まず農業基本法に対する私の考えを申し上げましたが、私の考えが大臣のお考えと合うのか違うのか、さらに、大臣はどのようなことを検討事項としてお考えなのか、まずここのところから、御就任の抱負をあわせてお聞かせ願いたいと思います。     〔宮里委員長代理退席、委員長着席〕
  215. 近藤元次

    近藤国務大臣 今私の記者会見に伴った御質問、それから先生の御意見が御開陳になったわけでありますけれども、私自身、これだけの社会的な環境が変わり、経済的環境が変わり、そしてまた食生活が変わってきておるような時代に、今国際的な農業関係というようなものもまた、当時から見れば大変な変化が出てきたわけであります。農業基本法を自分自身で一度見直してみたい、記者会見のときにはそういう気持ちでお話を申し上げたわけであります。  もう先生から内容にわたってのいろいろな御意見の御開陳がございました。私が今農業基本法のどの部分をどう改正するかということまで、自分がまだ現状の農業基本法を反復して勉強していないわけであります。できるだけ早く農業基本法について自分なりの勉強を終えて、今後の新しい時代に向かう、二十一世紀展望を開いた農業の中で今後生きていけるような、そういうものがあれば、私の勉強が終わった時点で役所にもお願いを申し上げたい、こう思っておるわけであります。  現段階は、今自分がもう一度農業基本法をこれだけの環境変化の中で勉強してみたいと考えておるわけでありますので、それぞれまたこの委員会においても諸先生方から御意見を承る時期が来るだろうと思っておりますので、よろしくお願いします。
  216. 小平忠正

    ○小平委員 大臣、今ここでそういう御答弁であることは私も理解いたしますが、いずれにしても、昨今非常に後継者が少ない。わずか二千人余りの新規就農者。私も若い農業青年と接していますと、農業は厳しくてもいいんだ、でも、将来に向かって展望が見られればやっていきたい、そういう意欲のある若い者もたくさんおります。そういう中で、農業というものは生産性が低い、そして非効率的である、このことを明確に明示して、そしてこのことを国民が理解をする、そういうようなことを強く出していくことがこれからにとって大事である、そんなふうに私は現場の中に入っていくと特に感じる次第でありますが、大臣ひとつ、せっかく勇気ある発言をされました、この農業基本法をこれから御検討されて進んでいかれることを私からも期待するものであります。  次に、ウルグアイ・ラウンド関係、けさから当委員会委員の皆さんからもいろいろと質問があったと思いますが、私からも何点かについてお伺いしたいと思います。  まず、私は思うのでありますが、我が国は、昭和三十年代以降急速な経済成長を遂げて、今日においては米国に次いで世界第二位の経済大国になっております。その発展の原動力は、日本国民の勤勉と創意工夫にあることはもちろんでありますけれども、加工貿易立国として、ガット体制の恩恵にあずかってきたことも大きな要因であることはもう歴然たる事実であります。そういう意味においては、今後とも自由貿易の一層の促進を標接するガット体制の維持強化を図ることは我が国の国是にかなうものである、そう言えると思います。  しかしながらこういう中で、ともすれば正しい認識がされていないと思われるのが我が国農産物の輸入の実態についてであると思うのです。ということは、この点我が国農産物市場は一部から閉鎖的である、こんなふうに言う意見もあるようであります。これは全くの誤解というか認識不足であって、我が国ほど世界に開かれた農産物市場の国はほかにはないと言い切ってもいいと思います、大臣。言いかえれば、農産物の輸入についてもガット規則を忠実に実行しているのが我が日本である、そう声を大にして言ってもいいと思うのであります。  現在、我が国世界最大食糧輸入国であって、この結果、いわゆる食糧自給率はカロリーベースにして五〇%を切る、四八、四九%ですか、そういう状況で、先進国の中では最低水準の状況にあるわけです。これ以上の食糧海外依存というものは、健全な我が国の国家体制の維持にも今後大きな不安が持たれるという、もうこれ以上開けないという限界的な状況にきていると言い切ってもいいと思います。このため、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉に当たっては、各国が交渉に臨んでいる意図等がどこにあるのか、またこれが我が国農業にとってどのようなかかわりを持つのか、これらについて十二分に見きわめる必要があり、さらにこのことを国民各位に十分に理解してもらっていくことが特に肝要である、こう私は思うのであります。  そこで、このウルグアイ・ラウンド交渉再開に向けて、これから臨んでいく我が国のいわゆる戦略、戦術といいますか、これについて少しくお伺いいたします。  昨年末の最終閣僚会議において、これはたしか十二月六日でありましたけれども、ヘルストローム農業分科会議長は、農業交渉の打開を図るために農業保護削減に関する議長メモ、いわゆるノンペーパーなるものを提示いたしました。その内容は、一言で言えば、アメリカやケアンズ・グループなどの輸出国側の主張を体したものであって、この中で我が国に大きなショックを与えたのは、市場アクセスとして輸入量の少ない農産物の場合は九一穀物年度から国内消費量の最低五%を輸入する、この項目であったと思います。これに反して、我が国最大の主張であった食糧の安全保障、さらには基礎的食糧に関する事項、あるいはガット十一条二項(c)にかかわる規定の存続と明確化に関する事項は全く盛り込まれていない、そのことだと思います。  政府は、この議長メモに対しては我が国の主張が全く考慮されていないことを強く抗議するとともに、このメモは今後の交渉には何らの拘束力を持たない、そのように主張したと私は伺っております。  しかしながら、その後の動向について見れば、ことしに入って一月十四日ですか、中山外相とブッシュ大統領、ベーカー国務長官、ヒルズ通商代表等々の会談において、アメリカ側がこの今申し上げた議長メモを今後の交渉の枠組みとして日本が受け入れるよう強く迫ってきた、そう伝えられております。  また、同じく先月一月末にはアメリカとECとの間で会議が行われ、これはアメリカ側はヤイター、ヒルズ両氏、EC側はアンドリーセン副委員長会議が行われて、双方が妥協の方向で動き出した、そんなふうにも私は聞いておるのですが、その動きの一つとして、ECにおける共通農業政策の抜本的見直しがあるのではないか。すなわち、価格による所得補償から農家に対する直接所得補償への転換といういわゆる抜本的見直しがそこで話し合われたのではないか。  こういう中でダンケル・ガット事務局長は、今月末の大枠合意へ向けてのたたき台を今作成中であるわけですけれども、その意味において、報道されるところによれば依然として輸出国の論理がまかり通っており、我が国の主張が十二分に反映されるかどうかについては大きな懸念がされておる。問題は、今後のダンケル事務局長のたたき台作成が日本の頭越しにアメリカとECとの主導型で行われていくのではないか、そういう心配であります。  こういう状況の中で、我が国は、食糧の安全保障いわゆる非貿易的関心事項についての主張を貫徹するためにいかなる行動をして、またいかなる戦略、戦術で臨もうとしているのか、ここのところをひとつ大臣、明確にお答えいただきたいと思います。
  217. 近藤元次

    近藤国務大臣 今、いろいろな角度からの先生の御意見、御質問でございましたので、十分お答えできるかどうかわかりませんけれども、経過については先生のお話がございましたような形で、アメリカ、EC輸出補助金で大変距離がありまして、延会ということになってことしへ繰り延べになってまいりました。しかもそのときにノンペーパーなるものが出てまいりまして、ノンペーパーの中には、御指摘のように食糧安保も基礎的食糧も十一条二項(c)の部分についても実は明記をされないノンペーパーでございました。前大臣を初めとして外務大臣もそれについて指摘をいたしたわけでありますけれども、それが議題になるあるいは各論を議論するということに至らずして本年を迎えることになったわけであります。  中山外相訪米の際のブッシュ大統領等のことについては、私はまだそのようなことで聞いてはいないわけでありますけれども、その後、お話のございましたダンケル事務局長がプラットホームをつくりたいというようなことで主要国を招集してそれぞれ意見を聞いたわけでありますが、我が国の主張というのは、先生御指摘のような食糧安保なり十一条二項(c)を明確化するということが従来からの主張でもございますし、私も、出席をした塩飽審議官にも外務省にも、少なくとも長年我が国が努力をしてきた食糧安保というものが、中間合意で記載をされサミットでも確認をされたものが入らないというのは極めて遺憾だ、そのことは十分事務局長にも伝えるようにということで、積極的に事務局長のプラットホームに入れるように働きかけてまいりました。  基準年度につきましては、それぞれ何年度にするかということは出てくるわけですから、その後の交渉によって年度を決めることになるわけでありますけれども、そういう主張をずっと貫いてきたわけであります。  冒頭先生からお話しのありましたように、何か閉鎖的なような印象をお持ちの方が国の内外で意外に多いということを私も承知いたしておるわけでありまして、そのような中からいろいろな発言が出てくるということもまた私も承知をいたしておるわけでありまして、積極的に、我が国は最大の輸入国であると同時に、この話が始まって四年を経過する間にも自由貿易体制というものに厳しい中で取り組んできたというようなことも、もっと国内も、あるいは諸外国に対しても幅広い理解を求めていくということが大事なのだろう。関係者はそれなりに理解をしておっても、やはり幅広い国民的な理解を求めていくというものが必要だ、こう思っておるわけであります。  ただ、交渉がどれだけの時間があるかということは予測を許さないような状態でありますので、時間がありさえすればあらゆる手段を講じて積極的に、日本が閉鎖的な国だということだけは解消していかなければいけないということは私もそう理解をいたしておるわけであります。  したがって、今後のことにつきましては、プラットホームをつくるダンケル事務局長の中にかねがね申し上げておるような三点の部分が明確に盛り込まれていくように最大の努力をしていく決意であります。
  218. 小平忠正

    ○小平委員 現在は輸出国側の論理といいますか、そういうものがまかり通っている状況でありますので、非常に我が国としては厳しい状況下にある、そういう中でのことですから、大変なことは私もよくわかります。  昨年、私も超党派でECの方にも行ってまいりました。そういう経緯もあったのですが、特に今湾岸戦争が勃発しておりますけれども、これは御承知のように、石油事情に端を発したのが、もちろん宗教、民族問題もありますけれども、石油ということに端を発したのがいわゆる今回の湾岸戦争であるわけですけれども、こういうことを見るにつけても、この食糧問題というのはこれからはある意味においては石油以上に将来大きな国際紛争の主たることになってくる、そういう危険性もあると思います。そんな意味においては、この一億二千万、我が国の国家と国民を守るためにこのことは本当に腰を据えて頑張っていってもらわなければならない、こんなふうに、今大臣のお話をお聞きしていて私なりに感じた次第であります。  質問を用意してありますので先に進ませてもらいますが、前に質問したこととも関連してくると思うのでありますけれども、我が国は今後の交渉に臨むに当たって実現しなければならない二つの大きな命題があるのではないかと思うのです。  その一つは、今お話ししましたように、食糧の安全保障の観点に立った基礎的食糧国内自給と輸入規制措置を新たにガット規定に盛り込むということである。これが第一点。もう一つは、輸入制限措置に係るガット十一条二項(c)、この規定の存続とその明確化を図ることである。我が国は、さきの最終閣僚会議がありましたときにECやカナダ等七カ国と共同して、ガット十一条二項(c)の規定の存続と明確化にかかわる提案の準備を進めてきたわけですね。これは我が国の従来からの主張にも沿うものとして私は評価されるべきものであると思います。  ただし問題は、米などを対象とする食糧の安全保障に係る規定が何ら整備されないままにこの十一条第二項(c)の規定の整備のみが先行するということがまずいのではないかと思うのです。この点、ECにおいてはミニマムアクセスとして三%を受け入れる用意があることを表明している。またカナダは一%以上のミニマムアクセスをオファーしている。こういう状況の中でこれら両国等と協調するに当たっては、我が国の主張、すなわち今ほど述べました二つの命題ですね、これとの整合性が保たれるように慎重の上にも慎重にそういう対応と行動が私は必要である、こう思う次第であります。  我が国の一部のマスコミなどにおいては、我が国は米についても十一条二項(c)で輸入を規制することとして、そして一部市場開放を認めるのが現実的な解決方法である、また政府においても、最悪の事態においては厳格な歯どめをかけた上でミニマムアクセスを認めるという、そういう結論をするのではないか、そんなことを報道されているような嫌いもあると思うのです。私もそのことを非常に心配しております、どこかで譲歩するのではないかと。決して、断じてそんなことがあってはならない、私はそう主張したいと思います。大臣、こういうことについて大臣から明快に強い決意のお話をお伺いしたいと思うのです。
  219. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生からいろいろな角度から御指摘がございましたけれども、私たちは、食糧安保の問題、基礎的食糧分野についてもダンケル事務局長のたたき台には記載をされるだろう、こういう感じで今受けとめておるわけであります。 それから、政府も一定の歯どめをかけて輸入を認めるのではないか、こういう御指摘が今ございましたけれども、政府は、総理からも御発言がございましたように、国会決議を尊重して、我が国は米は自給していく、この方針を貫く、こういう決意表明も実はございましたので、一貫をしてその姿勢でガット・ウルグアイ・ラウンド交渉に当たるということで方針は決まっておるわけでございます。  先ほど先生から、輸出国の考え方が強く出ておると、おっしゃるとおりだと思うのです。我が国はとりわけ、ただ単に主食であるということではなくて、現状三〇%の転作をしておるわけでありますし、これだけの輸入国であって、米が一〇〇%自給できておることで食糧国民がおおむね安心感を持たれておるという現状でありますから、アメリカやEC輸出国という立場で言うことと意見の対立は当然出てくるだろうと思うわけでありますけれども、そこは従来の方針どおり私ども強い決意で交渉に当たっていくという考え方でおります。
  220. 小平忠正

    ○小平委員 大臣最後までそういうお気持ちで貫徹をしていただきたいと思います。  次に、でん粉、乳製品の市場開放問題についてお伺いしたいのでありますが、これは去る二月六日、ジュネーブで行われたガット定例理事会において、我が国はでん粉、乳製品等についての日米間の協議に応ずることを表明した、そのように伝えられておりますが、それはそうですね。  ただ、ちょっと私の理解と違うことは、我が国は従来からでん粉、乳製品の日米間等の協議は、ガット・ウルグアイ・ラウンド結論を見て、それから対処したい、こう表明してきたのではないか、私はそう伺っております。しかし今回協議に応ずることを表明した理由を説明していただきたいと思うのであります。  さらにちょっと、また、その協議が行われたとすれば、米国は、アメリカは我が国に対して、これら品目の自由化を強く迫ってくることが、これは当然予想されます。一方、我が国は先ほど申し上げましたように、ウルグアイ・ラウンドの場において、ガット十一条二項(c)の規定の継続と明確化を主張しているところでありまして、こういう二つの交渉に当たって、どのように整合性を持たせていくのか、そこのところの御説明と、またこれからに向かっての方針等をお聞かせ願いたいと思います。
  221. 川合淳二

    ○川合政府委員 経緯につきまして、私から御説明させていただきます。  でん粉、乳製品の問題につきましては、昭和六十三年のガット理事会において、ガット違反というふうにされたわけでございます。その後、日米で協議がございまして、その合意によりまして、これらにつきましては、平成二年度中に再協議するということになっております。  一方、今お話がございましたように、ウルグアイ・ラウンドでは、私どもはガット十一条二項(c)の見直し、明確化を実現すべきであるということで主張し、提案をしているわけでございますが、そうした中で、今回の理事会はこの合意、六十三年の合意につきまして話題になったということでございまして、これは米国から、現行日米合意期限が切れた後に、我が国はガット規則と整合する措置をとるべきだというアメリカの立場から再協議の提案がなされたということでございます。したがいまして、その合意に基づきまして、我が国とすればこの再協議に応ずるということをガットの理事会で申し上げたということでございます。  それからこの再協議に臨む態度につきましては、先生もお触れいただきましたように、現在、ウルグアイ・ラウンド我が国は十一条二項(c)の規定の明確化ということを主張しておりますので、そうした主張を踏まえて、この再協議に臨むという方針でいるわけでございます。
  222. 小平忠正

    ○小平委員 いずれにしましても、でん粉や乳製品は我が国にとって、特に私どもの北海道においては、米と同様の基幹作物であります。自由化の阻止はもちろんのこと、これ以上の輸入枠の枠拡大は絶対阻止をしたい、断固阻止をしていただきたい、このことを私からも強く要請をしておきたいと思います。  次に、林業問題についてお伺いをしたいと思うのであります。  現在、森林の多様な公益的機能の高度発揮を求める国民的要請は非常に大きなものがある、私はこう思います。また、この問題については、この後林業二法案がございまして、そこで集中的に審議がされると思うのでありますが、この席で私は簡単に概略お聞きしたいことをお聞きいたします。  森林の造成、保全を担う林業、林産業の経営は長期不振を余儀なくされており、特に国有林野事業の経営は非常に厳しいものがある。国有林野事業財政事情が悪化した原因としては、今までの財投資金借り入れの高い利率と木材価格の低下等、これらによる影響が大きいと思われますが、こういうことについて今後具体的にどのような対策を行っていかれるのか。概略で結構でございます。それと、この国有林野事業の再建のためには基本的に債務処理をどのようにするのか、これも重要なポイントだと思うのですが、この債務処理の方法と再建の見通しはいかがなのか。ここはひとつ大臣から、林業についてのお考えをぜひお聞かせください。
  223. 近藤元次

    近藤国務大臣 林野事業というのは、事業なんと言われないほど厳しい状況に立たされてきておるわけであります。全体を申し上げるにしても、もう時間の制約もあるわけでありますから、またやがて国有林問題を含めてお諮りを申し上げたいこともありますので、細かいことはそちらにお譲りをさせていただきたいと思うのですけれども、国有林野の債務だけでも二兆円を超えて、一日の利息が三億を超えるという状況に立ち至っておることは、実は御案内のとおりでございます。  今回まさに抜本的に債務と通常経営というものを分離して、まず債務については努力すべきところを努力しながらも、やはり債務の返済について、元利とも一般会計なりあるいは保有財産の処分なりというようなことで、およそ二十年ぐらいをめどにしながら経営健全化を債務については図っていきたい。一方、通常経営につきましては、いろいろな努力をしながら、大体通常の経営ができるまでに十年ぐらいのめどの中で、この問題を通常経営ができるような目途で、今回それぞれ法律的な手続、予算上の措置等をこの国会にお諮りをいたしたい、こう考えておるわけであります。
  224. 小平忠正

    ○小平委員 現在のこの状況の中において、このような処置はいわゆる焼け石に水ではないか、本当にもう抜本的にしていかないと、にっちもさっちもどころか、我が国の山野は本当にもうなくなってしまう、これはある意味においては国を守るための大きな主要な問題ではないかと私は思うのです。そんな意味では、このことについても真剣に取り組んでやっていただきたいと強くお願いする次第でございます。  時間も来ましたので、最後に確認の意味でお伺いしたいのでありますが、国会決議についてのことでございます。  昨日も当委員会大原委員長、ある会合で、非核三原則は一回しか国会に出されていない、でも、米を守るということ、国内自給、市場開放阻止については三回もされたから絶対できるんだ、そういう頼もしい御発言がございました。  大臣、国会においては本当に、今申し上げましたように、過去三度にわたって衆参両院で決議を行って、米の国内自給と自由化反対を政府に立法府として求めております。政府も決議のたびに、この決議を尊重する旨の発言を行ってきております。このことは現在の海部政権、海部総理の施政方針演説の中でも明確にされております。しかしながら、この改造前の前内閣においてはその閣僚の中に、国会決議を軽んずるがごとき発言をされている、そういう大臣も実際におられた。まことに遺憾なことであります。このことはさらに内閣の不一致を内外に示すものであって、我が国の対外交渉の立場を非常に弱くしている、さらには国に対する、政府に対する不信感を増長させてしまう、こう断言できると思います。  今次の海部内閣においては、大臣各位、皆さんの中には、近藤農水大臣はもちろんのこと、国会決議の軽視に結びつくような発言ないしは行動をする人はよもや一人もいない、そう私は信じたいのでありますが、大臣、国会決議の遵守と内閣の責任ということについていかようにお考えになっておられるのか、最後にこれについて大臣からひとつ明快に御答弁をいただきたいと思います。
  225. 近藤元次

    近藤国務大臣 米の問題を中心にしてガット・ウルグアイ・ラウンドに対応する政府としての方針は、海部総理から所信表明でも述べられておるところであります。ただ、今一般的に国会決議ということのお話もございましたので、お答えをさせていただきたいと思います。  憲法第四十一条は、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」ということを規定をいたしておるわけであります。憲法第六十六条においても、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と規定をしております。国会は、国権の最高機関でありますから、政府が国会を構成する各議員の意思としての示された決議の趣旨を尊重して行政を遂行すべきことは当然のことである、そう思っております。
  226. 小平忠正

    ○小平委員 どうもありがとうございました。終わります。
  227. 大原一三

    大原委員長 次回は、明十五日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会