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1991-04-18 第120回国会 衆議院 逓信委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年四月十八日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 野中 広務君    理事 川崎 二郎君 理事 園田 博之君    理事 原田 義昭君 理事 前田 武志君    理事 松浦  昭君 理事 上田 利正君    理事 武部  文君 理事 伏屋 修治君       赤城 徳彦君    小林 興起君       佐田玄一郎君    佐藤 守良君       鈴木 恒夫君    長勢 甚遠君       萩山 教嚴君    平田辰一郎君       真鍋 光広君    森  英介君       柳本 卓治君    秋葉 忠利君       田中 昭一君    土肥 隆一君       鳥居 一雄君    菅野 悦子君       中井  洽君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君  出席政府委員         郵政省通信政策         局長      白井  太君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君  委員外出席者         逓信委員会調査         室長      辛島 一治君     ───────────── 委員の異動 四月十八日  辞任         補欠選任   古賀 一成君     平田辰一郎君   武藤 嘉文君     柳本 卓治君   山崎  拓君     萩山 教嚴君   吉岡 賢治君     土肥 隆一君 同日  辞任         補欠選任   萩山 教嚴君     山崎  拓君   平田辰一郎君     古賀 一成君   柳本 卓治君     武藤 嘉文君   土肥 隆一君     吉岡 賢治君     ───────────── 本日の会議に付した案件  電波法の一部を改正する法律案内閣提出第七九号)      ────◇─────
  2. 野中広務

    野中委員長 これより会議を開きます。  電波法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木恒夫君。
  3. 鈴木恒夫

    鈴木(恒)委員 おはようございます。  日ごろから、大臣を初め郵政省皆様方には逓信行政最先端で大変な御努力をいただいておりまして、深く敬意を表させていただきます。御苦労さまでございます。  つかぬことから始めますけれども、きのう、我々政治改革をやっております仲間で、ある市長さんの話を勉強のために聞こうというので集まりまして、山陰地方のある市長といえばすぐ御想像がつくと思いますが、非常におもしろい市長さんで、我々も非常に勉強になりましたので、ちょっとその話からさせていただきます。  この市長さんは、その市のスーパーストアの中に役所の窓口を土曜、日曜に十カ所とおっしゃっておりましたけれども、たしか十カ所と聞きましたが、つくったというアイデアで話題を呼んでいる人でありますが、何でそんなことをやるかというと、役所というものは、これは郵政省のことじゃありませんから、その市のことを言うのですけれども役所というものはどうしても暗い、冷たい、威張っている、あるいは不親切だ、怠けている、こういう五つ、いつも市民から言われる。暗い、冷たい、威張っている、不親切、怠けている、これをひっくり返してやろうと思って自分土日サービスというのを考えた。つまり、消費者あるいは国民生活者の方に、これから行政は積極的に入っていかなければだめだ、そういうアプローチが必要だと考えてやったことだというお話をされておりました。そんなこと。  それから、小さい自治体でございますから、十分な財政力もないのでしょう、職員自分はいつもこういうふうに言っている、金がなければ知恵を出せ、知恵がなければ何でも早くやれ、これを自分はしょっちゅう言っているんだなんという話もされておりました。  私この話、ちょっと我々に身にしみるところがあるものでございますから、ある感動を持って聞いたのですけれども、これから高度情報社会がどんどんさらにスピードアップして、そういう社会ができていく中で、郵政省の仕事というものも世間からますます注目をされ、評価をされていく重要な役所、お役目だ。そこで、ぜひそういう発想の転換を図って郵政行政全般に取り組んで、高度の文明社会づくりに御貢献がいただければなんて考えたわけであります。こういうのは大臣、どうでしょうか。
  4. 関谷勝嗣

    関谷国務大臣 先生の昨日のそういうお話を伺った上でのまた郵政省その他の省庁に対するお考えでございますが、確かに特に郵政省にとりましては、昨日の委員会審議等でもるるございましたが、いろいろと取り巻く環境が大きく変化をしてきておる、それに的確に対処をしていかなければならないという時期にあるわけでございますが、そのもとで郵政省などは特に愛のある郵政行政という一つの大きな目標をつくりまして現在頑張っております。  そして、私自身、大臣になりましてから、まず最初に職員に訓示をさせていただきましたその大きな柱は、郵政に対します、今日まで百年以上たちましたそのいろいろな郵便事業などに対します国民が抱いておる信頼、安心というもの、そういうものを絶対壊さないように、事故のないように、襟を正して努力をしてもらいたいということを言っておるわけでございますが、そういう中にあって、確かに私は、また郵政省などは特にそういう意味においては温かいものがあると確信を抱いておるわけでございますが、全般的に言えば、やはり官庁というのはいささかかたい、そして一般の国民の方からいいますと非常に冷たい感じがあるということは事実でございましょう。そういうようなことはぜひ是正をしていくという方向で頑張っていきたいと思っております。
  5. 鈴木恒夫

    鈴木(恒)委員 中央官庁先端の地方自治体の立場の差ももちろんあるわけでございましょうけれども、そういう御気分でぜひ前向きにお進めをいただければと思っております。  私ごとでございますが、この高度情報社会というもののスピードは大変なものでございまして、本当に私ごとでございますけれども、私、昭和三十八年に毎日新聞に入社をしました。そのころ、新聞社というものは情報産業最先端、まだ最先端のころで、東京オリンピックの前でございますから、威張っていたころでございますね。思い起こしてみますと、有楽町にありました本社の屋上にまだ伝書バトがおりまして、この伝書バトを飼う係が社員の中にいたりいたしまして、これは三 十年前のことなんですね。もう当然のことながらそんなものはありませんし、当時我々は原稿を書くときに、わら半紙を四分の一に切りましたものを束ねてございまして、これに五字六行書いて、新聞というのは一行が十五字でございますから一枚で二行になるわけですね。枚数で行数がわかる、そういう原稿の書き方をさせられました。  しかし、今やそんなばかなことをやっている新聞社はありませんで、ファックスは衛星を使いますし、大体原稿を字で書くということはほとんどなくなったようでございまして、そういう意味では我々は時代おくれの人間になりかかっておりますが、これから先、二十一世紀までもう十年足らず、これだけの、郵政省が想定をされておられた以上のハイスピード情報化というものが進んでいるように私には思えるわけですけれども、例えば二十一世紀の冒頭ぐらいの段階で、世界にもまれな情報国家日本が一体どういう姿になっているのだろう、また、大臣はどういう格好を頭に描かれて、郵政政策のベテランでいらっしゃいますから、当然ある程度の映像をお持ちで行政に携わっていらっしゃると思われますが、ちょっとその絵を教えていただければと思います。
  6. 関谷勝嗣

    関谷国務大臣 その点は鈴木先生の方がお詳しいのではないかと思いますが、いずれにいたしましても、二十一世紀の初頭では、現在ももちろん進んでおるわけでございますが、光ファイバーとか、先ほど先生おっしゃられましたような衛星通信利用によってネットワークの広帯域化が進むということは間違いないことだろうと思いまして、大容量のものを一度に速く送ることができるというようなことだろうと思います。  それから、言うまでもなく、そういう情報通信基盤に支えられた多様な情報通信メディア、私たちが今想像している以上のものがまた出現してくるのではないだろうかなと思っております。  そして、いろいろのこういうようなハードの面は、何といいましても、まず産業界に入っていきまして、それから今度私たち個々家庭に出現をしてくると思うわけでございまして、適正な通信コストでもってそれが私たち個々家庭利用できるようになれば、またすばらしいそういう社会が生まれてくるのではないだろうか、そのように思っております。  そのいわゆる明るい発展の反面、やはり影の部分もどうしてもおのずから出てくるのではないかなと思うわけでございまして、情報通信安全性信頼性の確保、それからまたプライバシーの保護なども必要性が出てくるのではないだろうかと思っております。衛星放送などにおきましても最近事故が続いておる状態でございますから、その信頼性を確保するべく、また技術の進歩にも大いに私たちもまた努力をしなければならない、そういうようなものを私たちは頭に描いております。
  7. 鈴木恒夫

    鈴木(恒)委員 資源のない我が国でございますから、今大臣が言われたような先端科学技術をもって立国をしていかなければならない、そのための努力を我々はしていかなければならないわけでありますが、ただ、これは生意気なことを申し上げますけれども、要望みたいなことを申し上げますが、私はどうも日本のこれからの文明、文化というものが頭でっかちになっていく危険性が非常に濃いと実は思っております。  例えばこういうことが、身近なことでございますから少し砕けた話をいたしますが、最近私はある小学校の卒業式に行きました。私の横浜の母校でございますが、そこの校長先生お話で、授業をしておったらたまたまウグイスが鳴いたというのですね。裏のブッシュのところでウグイスが鳴いた。担任の教師が教壇で教えていて、あら、ウグイスね、こう言った。そうしたら子供の何人かが、えっ、あれがウグイスっていうんですか、こう聞いた。そこで驚いた教師が、諸君、今鳴いたのはウグイスの声だってわかっている人は手を挙げてごらんと言ったら、手を挙げたのは半分ぐらいしかいないという話を、これはまじめな顔で私に申されました。  横浜は確かに開発が進んで、言われてみれば私どもウグイスなんていうのは余り声を聞かないのですけれども、少なくとも子供たちは、朝から晩まで偏差値に追われている子供たちは、ウグイスの鳴き声、つまりウグイスといえば日本の花鳥風月の最たるもので国鳥みたいなものでしょうけれども、それを姿と声が一致しないなんという惨たんたる状態に今、都会の子供たちはなっております。  こういう状態が、高度情報社会だけのことではありませんけれども、どうもそういう傾向に、文明が一方で圧倒的なスピード機械化技術化の方に進む、取り残された人間性がどんどん失われていくという乖離がますます目立っていくように思えてなりません。  そこで思い起こしますのは、例えば宮崎勤犯罪などというのがすぐ思い浮かぶわけであります。これは家庭教育の問題もあるし、一概に環境があるいは文明社会がと言い切るわけにはいかない犯罪だったと思いますけれども、ただ、個室にこもってVTRばっかり見ている、友達ができない、しかし情報は例えばVTR仲間同士の交換のネットなんかはうまく使うとか、そういう極めて特異な冷血犯罪がますます頻発をしてくる可能性があるように思えてならないのであります。ハッカーの問題などがあるわけですけれども、そういう程度のものではなしに、人間の命の尊厳にかかわるようなところにまで社会そのものが危機を深めてきているということを私は実は心配をしておる一人であります。  そういうことのないように、我々も文明社会、高度の文明国家をつくっていく上で重々気をつけていかなければならないわけでありますが、この辺のところも、情報産業情報政策に携わっていらっしゃる大臣でありますので、大きな目で文明という視点でぜひおとらえをいただいてお進めをいただければと思っておりますが、どういうふうにお考えになられますか。
  8. 関谷勝嗣

    関谷国務大臣 確かに今後そういう端末機家庭にどんどんあらゆるメディアとして入ってくるわけでございますから、教育また人間性をどのようにその中ではぐくんでいくかというような問題、これは大変重要なことであろうと思うわけでございます。したがいまして、これは教育ということでもありましょうが、また文部省等々ともいろいろるる話し合いもしていかなければならないと思っております。  先生指摘のように、今までのメディアで侵されなかったいわゆる人間性というものが侵される危険性はやはり大きなものになってくるであろうということでございますから、社会全体としてそういうようなことを少しでも防ぐような方策というものをまた考えていかなければならないと思っております。
  9. 鈴木恒夫

    鈴木(恒)委員 きょうの審議電波法改正に絡むものでございますから、総論的なことはこの程度にとどめまして、星を使ってできるだけ効率のよい政策を展開するという必要性は当然のことだと私は思っております。したがって、今回の星を使っての遭難に関する制度改正につきましては当然のことと受けとめておりますが、そこで、画期的なことであろう、一八四五年でございますか、モールス電信を発明して、SOSはトントントン・ツーツーツー・トントントンというのだそうですが、これがずっと続いてきた。それを今度ここで国際的な条約に基づいてGMDSS導入をしていこう、こういうことでございますが、総論的にどんな経緯でこれを導入することに相なったのか、事務当局で結構でございますが少し御説明をいただきます。
  10. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 ただいま先生指摘のように、海上において唯一の通信手段でございますモールス電信というものを頼りにして長い間いろいろな交信が行われてきたのですが、現在のようなシステムになりましたのは、御案内のようにイギリスの豪華客船タイタニック号というものが、これは一九一二年のことでございましたが遭難信号を出した、不幸にして結局は聞いた人が遠方だったということで救助できなかったというよ うなことで国際的に大変関心が集まりまして、一九一四年にこういう救難システムというのができ上がって、今日まで長い間大変大事なシステムだということで運用されてまいったわけでございます。  ただ、従来のシステムは、基本的に遭難事故があったときにそのそばに船がいないとうまく連絡がつかない、あるいは相当高度な技術モールス符号には要る、あるいはまた突発的な海難事故が起きました際には、今ここの緯度でこの経度で船が沈みつつある、船名は何だというような情報を十分的確に伝えられなかった。  こうしたうらみが、欠点があったわけでございますので、何とか最近の、先生お話しのような衛星技術だとかあるいはディジタル通信技術だとかを使ってもっと的確な救助システムというのを検討できないかということで、国際海事機関、IMOというところがございますが、ここで一九七九年から検討が始まりまして、約十年がかりの一九八八年、したがいまして三年さきなんでございますが、ようやく簡単な操作で自動的にこうした遭難信号が授受できる、その結果がどの船舶にも的確に伝わるあるいは陸上の救助機関捜索機関にもきちんと伝わる、こういうシステムをひとつ構築しよう、こういうことの条約ができ上がったわけでございます。  ただ、この条約世界的に全部の設備を共通しないと意味がないものですから、大変長い時間がかかるという経過措置は十分踏まえなければならないということで、一九九二年に発効させて、世界システムを完全に移行するにはそれから七年後の経過措置を置こう、こういうことで、これを受けての電波法改正を今回お願いしておるところでございます。
  11. 鈴木恒夫

    鈴木(恒)委員 二点確認をさせていただきますが、問題は、移行をさせる段階で、インマルサットを使ってやられるわけでしょうけれども、新しいシステム信頼性というものが十分に確保されているか、これが一点。  それから今、一九九二年から長期にわたって導入を図るというお話をされましたけれども対象船舶にこのシステム導入し切るのに大体どのくらいかかるものなのですか。同時に並行してやっていくわけですから、今までのシステムと混在するわけですね。そこに混乱が生じないか。混乱が生じれば、遭難船が出た場合にさらに惨たんたることになるわけでございますので、そこの二点をとりあえず明らかにしてください。
  12. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 このGMDSSは、船の大きさといいますか種類といいますか、あるいはどこの海域を航行するか、陸から近いところか、うんと遠洋の方かというような、いろいろな航行の実態に応じて、どうしても備えなければならないこうした新しいシステム機器をそれぞれ個別具体的に決めておるわけでございまして、その機器については、実は今申しましたように、約十年がかりでこの結論に達した。こういう航域には、こういう船舶には、こういう機械をということを決めるまでに、ITUでありますとかあるいはインマルサット、これは国際通信機関でございますので、そういう国際機関、あるいはフランスや米国等で各種の実証実験といいますか、そういうことを相当重ねてきたわけでございます。  もちろん、我が国でも海上保安庁あるいは郵政省等々でいろいろな実証実験というものを繰り返しまして、機能確認を十分行った上でこの条約について成り立った、こういう経緯でございますので、私どもとしては、設備そのものについてはそうした懸念は必要ないくらい十分な世界各国協調のもとに信頼性は構築されたものだというふうに理解をいたしておるところでございます。  この具体的スケジュールは、今大ざっぱに七年間と申しましたが、実は、例えば一九九五年までに建造された船は一九九九年までにGMDSS設備しなければならない、あるいは九五年二月以降に建造された船は建造された以降すぐGMDSSを適用する、いろいろ細かい定めがございます。  ただ、おっしゃるように、従前モールスによる無線あるいは従前無線電話モールス電信のときはトントントン・ツーツーツー・トントントンでございますが、無線電話ではもう世界共通、メーデーと御案内でございますけれども、どうやらこれはフランス語らしゅうございますが、そう言えばもうヘルプミーだということでわかる、こういうことになっておりますが、やはりこういう従前のままのものは当然あるわけでございますので、この点についてこの条約では、九九年の全面発効になるまでは、新しいGMをつけなければならないそういう船に対しても、無線電話呼び出し周波数であります二千百八十二キロヘルツあるいは百五十六・八メガヘルツの無線設備をつけなければならない、あるいは聞かなければならない、こういう義務づけもいたしております。  それから、モールスの五百キロヘルツについても、海岸局では常時聞いておれ、こういう形にいたしておりますので、従前設備しか持ってない船とGM設備を備えた船との間でも対応が可能になる、こういうことでできるだけ円滑な移行をし、この間における不測の事故に対しても十分な対応をしてまいりたいというのが、この条約考え方でございます。
  13. 鈴木恒夫

    鈴木(恒)委員 最近、農業と同じで漁業も三ちゃん漁業、本当に人手がなくなって、小さな船で御老人があるいは老夫婦が魚をとるみたいなことが非常に多いようであります。この海上人命安全条約対象としての今回の電波法改正対象になるのは比較的大型船舶と聞いておりますけれども、きょうは運輸省も何もお願いしてありませんが、そういう漁船あるいはもろもろの物資の運搬に当たる運搬船というのですか、小型船舶、これらについてもこれを対象にすると伺っておりますけれども、それはどういう範囲考えていらっしゃるのか、もしおわかりになれば……。
  14. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 御指摘のとおり、SOLAS条約条約上の対象にいたしておりますのは、全体としてやはり大型でございます。国際航海に従事するすべての旅客船、それから三百トン以上の貨物船というような形になっておるわけでございます。  この対象船舶は、我が国に約七十万隻の船があるわけでございますが、この条約自体が適用になるのは六百隻だということに相なっておるようでございます。ただ、六百くらいでは、こうした形では不十分だろうということで、実は今回の改正は、私ども電波法だけではなくて、船舶安全法という法の改正も行われておるわけでございますが、その方で国内的に、これに準じて義務船舶としての船舶をさらに範囲を拡大いたしております。これによりますと、約六千隻が日本の船、義務船舶に相なって、必要な設備を備えなければならないというようなことになっているのが現状でございます。
  15. 鈴木恒夫

    鈴木(恒)委員 概略お答えいただきましたのでわかってまいりましたが、最後に、もう時間がありませんのでお答えだけいただければと思いますが、インマルサット、ほかの星の関係ですね。つまり通信衛星放送衛星、ちょっと私、勉強不足で申しわけないのですが、「ゆり」の問題などもあるようでございまして、ちょっとそこら辺の現況、星の現況を把握できる範囲でお教えいただければと思います。
  16. 白井太

    白井政府委員 お答え申し上げます。  通信衛星等現況についてのお尋ねでございますが、専ら国内用通信衛星といたしましては、現在いわゆるCS三号と言われる衛星が二機上がっております。そのほかに民間通信会社が打ち上げております、いわゆるJC・SATと私ども呼んでおりますが、この衛星が二機、現用に供されております。御案内のように、またこれとは別の民間会社が打ち上げておりました衛星も一機稼働しておりましたが、事故がございまして、現在は使えるような状態になっておりません。  それから、国際通信につきましては、主として一般的にはインテルサット衛星というものがございまして、これが一般的な通信衛星として全世界 をカバーいたしております。  それからもう一つ、ただいまちょっとお話にも出てまいりましたけれどもインマルサット衛星は主として船舶等移動体対象にいたしましての通信利用されておるというような状況でございます。
  17. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 大変失礼いたしました。先ほど対象範囲お尋ねがございまして、私六千隻と申しましたが、従前が六千隻でございましたけれども、今回、さっき申しました船舶安全法改正によりまして、さらに、具体的な船の種類はこれから政令で、法律が通った上で決めるそうでございますが、今の見通しによりますと、義務となる船舶は約二万隻に拡大されるということだそうでございます。
  18. 鈴木恒夫

    鈴木(恒)委員 ありがとうございました。
  19. 野中広務

    野中委員長 次に、秋葉忠利君。
  20. 秋葉忠利

    秋葉委員 社会党の秋葉でございます。  今、鈴木委員の方から、概要について、あるいはその背後にある科学技術利用の態度についてといったような質問がありましたが、私の方は、そういう春風駘蕩といったぐあにはまいりませんで、少し細かな点についてお伺いしたいと思います。  主に、質問をするに当たって、実は二つの大きなことを視野に入れて考えているつもりです。  一つは、もちろん今回の電波法改正の趣旨、それが、最終的には海上における遭難あるいは緊急時の人命救助ということが最大の目標ですから、その目標に照らして考えるとどうなるか。もちろん、その視点で今回の電波法改正もなされているわけですけれども人命救助というところでそごがあってはならない、どんな小さな過失が仮に法律あるいは制度をつくる側にあっても、それが最終的に例えば一人の人間の命にかかわるような場合がある。そういったことを想定しながら、できるだけ法律面であるいは制度面でそういった人命の損失を最小限に図るということで、そういった形でできるだけ私なりの御協力をしたいという立場が一つでございます。  それからもう一つは、実はこれは今までの質問の際にも申し上げたことなんですけれども、やはり法治国としての政治で一番大切なのは、私は、やはり言葉であり、そして言葉の意味であるというふうに思います。特に、今回の法律改正の中にも出てくることなんですけれども法律と、法律にある原文と、それから現実との乖離が非常に甚だしい場合、それが非常に大きな問題を生起せしめるんではないかといったことを私は常々感じてまいりました。  例えば、憲法にもそういった問題がございます。公職選挙法にもそういった問題がございます。郵政省関係では通信放送衛星機構法、これについては何度も意見を申し上げさしていただきましたけれども、そういったこと全体が、例えば法をないがしろにする態度につながったり、あるいは、もっと将来のことを考えると、特に青少年が政治に対する不信感を非常に強いものにしたりする原因になっているんではないか、そういった危惧を持ってきております。  そういった観点から、さらに法律そのものが、やはり法律といって非常に冷たいものではあっても、その法律の中に、具体的にその法律をつくる、あるいは改正する際の、いわば何といいますか情熱であるとか、あるいは政治を具体的に行っている人たちの崇高な目的であるとか、そういったものが取り込まれるようなことまで考える必要があるんじゃないか、いわば美しい法律をつくっていく必要があるんではないか、そういった観点から幾つかの点について質問したいと思います。  まず最初のことなんですが、この今回の改正について、緊急あるいは遭難時の通信ということですが、簡単に言ってしまうと、どこかで事故が発生する、その事故を発見するのは人間ですけれども、その人間機械を使ってその危険であることを他者に、他者というのは船の場合もありますし、海岸局の場合もあると思いますが、他者に通報する。そうすると、ほかの船なりあるいは海岸局なり、そういったところにある機械がそれを受け取る。その機械に入ってきた信号を、これもまた人間が解読することによって、あるいはそれを判断することによって、最終的な責任者にそれを届ける。責任者の判断で、例えば救援を行うといったような判断を行う。それで行動を行うということになると思います。  その基本的な線というのは、モールス符号を使おうと非常に高度な技術を使おうと、今申し上げたような大筋というのは変わらないというふうに私は理解しているわけですが、今回の法律改正をその流れに沿って考えてみますと、事故が発生した場合には、それを遭難通信責任者が機械を使って、このGMDSSにある幾つかの機械を使って通報をする、あるいは、それができない場合にはEPIRBという自動的な発信機が作動をして、作動しない場合もあるということは後でちょっと申し上げたいんですが、それを使って自動的に信号を発せられるということですから、発信側は一応カバーされているというふうに思います。  それから、これも後ほど質問したいことなんですが、一応機械が正常に機能するとして、それはもう一方の受信側の機械に届く。届くところまではいいんですけれども、今回の改正を見ますと、その機械に届いてから、例えば船の運航の責任者である船長にどこかで船が遭難しているというメッセージを伝える、その機械から具体的に船長までの経路というものが保障されていないというふうに私には読めました。  これは現行法の方を読んでみますと、現行法と言うのはちょっと大変ですので旧法ということに仮に言わしていただきますと、旧法の三十三条を見ますと実はその規定がある。ところが、それに対応する改定法、新法というふうに仮に呼ばせていただきますが、その新法の対応する部分にはその項目がない。私が申し上げているのは三十三条の二項のところですね。「船舶局の通信室」通信室というところは受信機、送信機が置かれているところですけれども、それがブリッジ以外の場所にあるときには、ブリッジとの間に「送話管若しくは電話又はこれらに代わる連絡設備を備えつけなければならない。」  一応ブリッジというのは船長のいるところというふうに簡単に考えますと、船長のところまできちんと届くような設備がなくてはいけないということを旧法ではきちんと規定してある。それに対応する新法の三十三条、三十四条にはその規定がない。  つまり、新しい法律では、確かに機械は立派になるし、そしてメッセージも自動的に発信される、そしてそれが幾つかの船に届く、しかしながら、機械には届くけれども船長まで届かないという可能性が非常に大きく残ると思われるんですけれども、その点について郵政省のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  21. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 御指摘のその三十三条、旧法ということにいたしますと、これにはおっしゃるとおり、船舶局の通信室とそれからブリッジの間には「送話管若しくは電話又はこれらに代わる連絡設備を備えつけなければならない。」と書いてございます。  実は、先ほどからもお話に出ておりますが、モールス信号というのは、今日新しい技術に取ってかわられるだけあって、やはりいろいろなノイズが入るのが一つの問題でもございますから、今までの旧法の体系の中では、あるいは旧SOLASでは、必ず通信室というものを独立に設けて、それで万が一にも他からの妨害を受けないような設備をしてきちんと聴守をしろ、こういう大きな枠組みがあったわけでございまして、この通信室というものを独立に設けた以上、おっしゃるようにブリッジの間、つまり船長との間には何がしかの連絡設備というのが当然船として要るということを受けてこういう規定があったわけでございます。  確かにこういう格好で相互通信の確保というのはできておったわけでございますが、今度の新しい自動化のシステムというのは新しい技術でござ いますし、それから聞くのも機械で自動的に聞くということになっておるわけでございます。何かがあったらアラームが鳴って電文が出てくるとかそういう格好で自動的な聴守が行われるということでございまして、そういう意味でディジタル技術でもございますので、従前ほど雑音に対しての遮断という心配が要らなくなったわけでございます。同時にまた無線設備も非常に高度でございますから、この操作をブリッジで行うことにしろ、こういう規定にも相なったわけでございますので、そうなると従前のイメージであります通信室というものがこの条約では必要がなくなった、こういう構成になっておるわけでございます。  それで、全体として無線設備をこの条約に定めるところによって、例えばインマルサット船舶地球局であるとかあるいは中波の無線設備であるとかこうしたものを船橋で操作するというふうに相なったものですから、現行の法律で決めております送話管みたいな設備通信室を前提とするわけですから、その規定も必要なくなった。こういうことになったわけで、こうしたこれに関する設備は、例えば通信室に非常灯をつけなければならないとか通信室を前提にした規定は条約上も要らなくなったものでございますから、電波法の規定にもそれに類する規定は削除するということにいたしたわけでございます。  ただ、先生お話のように、いろいろな連絡というのは確かにこれは大変大事なことでございまして、幾ら船に着いてもそれが責任者に伝わらなければ困るわけでございます。これは私ども、いわば船の秩序の問題、船長の指揮権であるとか船長と通信士の指揮監督だとか、そうしたことに類する部分もあろうかと思うのでありますが、これはそれなりの秩序に従って、きちんとした指揮、命令、伝達ということが行われるものであろうというふうに考えておるところでございます。
  22. 秋葉忠利

    秋葉委員 今の御説明で、幾つか私の質問の本旨とは関係のないところがありますので、そこは除きまして、直接お答えいただいた部分にだけ焦点を合わせて、その他の部分については後ほどの質問で触れさせていただきたいと思いますが、例えば機械をブリッジで操作するという規定になったということを、そういった意味のことをおっしゃいました。それから、ブリッジで操作するということに相なった、そういったことをおっしゃいました。  そこで伺いたいのですが、改正法の中でこういったGMDSSに使用する機器、それがブリッジでそれを操作するという規定が同条の何項にあるのか、具体的に改正法の中で御指摘ください。
  23. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 先ほど申し上げておりますのは、基礎に、その電波法改正の根拠になるのは、SOLAS条約を各国ともきちんと遵守して、それを国内法で十分整備ができるようにということの改正を各国とも今取り組んでおるところでございます。  それで、今申しましたように、ブリッジ等でこうした各種の自動機器の操作を行い、遭難警報が送信できるようにという規定にSOLASではなっておるわけでございますが、具体的にそれじゃ私ども改正電波法ではどういうふうに対応するかということでございます。  まず、これはさっきも申し上げましたが、法律上の義務として、この船には所定の通信機、遭難通信のための設備を備えなければならないという義務船の定義というのは、運輸省所管の船舶安全法で行います。  それで、その義務になった部分について、その船がどういう種類無線機器を備えなければならないかというのは、これは電波法で決めておるところでございます。  この三十三条に具体的に、その航海区域に応じて、船の種類に応じてどういう設備設備すべきかは、法律三十三条において、省令の定めるところによる、こういうことになっておるわけでございます。  それから、三十四条については、その無線設備を設ける場所の一般的な条件について、例えば具体的に水にさらされてはならないとか、大事な機器でございますから、温度とかいろいろな具体的な規定が三十四条に書いてあるわけでございます。  それからもう一つ機械自体の具体的な中身、先ほどの三十三条は設備の名称でございましたが、その機器が具体的に周波数が幾らのものを発して、電力は幾らで等々のことは三十八条で、省令で定める、こういう構成に相なっておるわけでございますので、おっしゃるところの具体的な設備の備えつけ場所というのは省令でこの法律制定後別途定めさせていただく、こういう構造になっておるところでございます。
  24. 秋葉忠利

    秋葉委員 確認いたします。  この法律法律本文には設置場所についての規定はないというふうに理解いたします。三十四条がありますが、今おっしゃったようなブリッジに関して言及されてある場所はない。しかしながら、今のお答えでは、法律として規定がないにもかかわらずブリッジで操作をする規定になっているということをおっしゃいましたが、その規定は一応SOLAS条約の中の規定というふうに私は善意に解釈いたしますけれども、そのSOLAS条約の規定を生かすために国内法の改正を行ってそれがきちんと守られるようにするというのが今回の法律改正の趣旨だったというふうに思いますが、SOLAS条約で規定されていることが改正される法律の中に盛り込まれていない。しかもそれが、機械にはメッセージが伝わるけれども機械からその船の運航の最高責任者である船長に達するきちんとした道筋が明文化されていないということは、これは非常に法律として一大欠陥だというふうに思います。  しかも、改正以前の旧法においてはその規定がきちんと明文化されて載っていた。それが改正されるに当たって何ら積極的な理由がなく、しかもSOLAS条約には明示的に書かれていることが法律に入っていないということは、これはやはり法律として、先ほど申し上げました美しさ以前の問題として、論理整合性の点から、さらには最終的にはその船に乗っている人たちの生命の安全を確保するという観点からも非常に一大欠陥があるのじゃないかと思います。  このことについて、少なくとも修正を加える、あるいは一言つけ加えて、その最終的な、機械から船の最高責任者に至る伝達経路、そういった文言でなくても結構ですけれども、そういった、それが確保されるような明文化を行うべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  25. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 御指摘のように、SOLAS条約の第四章第十規則のA1、A2及びA3海域を航行する船舶に関する規定につきましては、さっき申しました、航海船橋からインマルサット船舶地球局、それから中波の無線設備等によって遭難警報を送信することができるものでなければならない、こう書いてあるわけでございます。  これを、私どもさっき申しましたように、今の法体系のところにきちんと対応しなければならないということで今回の法改正はお願いするのはそのとおりでございますが、ただ、さっきも申しましたように、その機械自体は、まだこれ具体的には名称自体も省令で定めるということになっておるわけでございます、船舶安全法の定めを受けて。それから、どういう具体的な中身かという機械自体は、やはりこれも省令で定めるところによるということにならざるを得ないわけでございます。  これは今後いろいろな技術進歩がありましょうから、法律ですべての機械を、それから具体的な機械の周波数から何から全部書くという体系にはならないわけでございますので、すべて省令でゆだねざるを得ない。ただし、置く場所については、さっき申しましたように、機械的原因、電気的原因その他の原因による妨害を受けない場所であること、あるいは水、温度その他の環境の影響を受けない場所でなきゃならぬというようなことをまず原則として定めているわけですが、そうした大枠の上で具体的なことは省令にゆだねるとい う構成になっておりますので、この操作の仕方に属することも当然省令に定めざるを得ない。  ただ、先生のおっしゃる、受けた信号をどうやって責任者に転化するかというのは、これは設備の問題ではなくて、再々申し上げているように、これは指揮命令の問題に属するのではないか。それをわざわざ従前のように送話管を設けなければならないということで担保するような、そういう前提がなくなったわけで、通信室もなくなったらば送話管も必要がないわけでございますから、あえて法律からは今回落としてある。具体的な定めは、今申し上げました全体の体系の中で省令で定めざるを得ない、こういう状況に相なっていると考えております。
  26. 秋葉忠利

    秋葉委員 今の説明ですが、SOLAS条約についての言及は別のあれといたしますけれども、省令にそれを定めるということですが、旧法との対照において今のお答えは全く満足できません。  旧法においては、具体的に送話管、今送話管とおっしゃいましたけれども、ここに書いてあるのは、送話管もしくは電話あるいはそれ以外の連絡方法となっております。送話管だけのことを言っているわけではありません。そして連絡方法に関しては、それが通信室という独立した部屋があろうとなかろうと、具体的にメッセージを受けた機械からそれが最高責任者まで何らかの連絡方法で伝わらなくてはいけないということが、旧法の三十三条の二にはっきりと書かれているわけです。  しかもその場合にも、今もおっしゃいましたけれども技術的な進歩によって通信室が必要なくなったから、したがってこの規定も必要なくなったということをおっしゃっていますけれども、二をよく読んでください。この三十三の二項では、ブリッジ以外の場所に通信室があるという仮定を置いています。ということは、この旧法においてもブリッジにおいて通信が行われていた、それがかなり通常のものであったということをうたっているわけです。それ以外の場所に通信室があるときには連絡をきちんとしなさいよということを言っているわけで、ですから、三十三条のような書き方で、これはハードウエアについての言及ですから、ハードウエア以外のことは例えば電波法に書けないというような慣例があるのであれば、例えばこういった書き方で、この場所とそれから最終的な船長に対する連絡方法ということを担保することはできると思います。  それをきちんと示しているのが私は旧法だと思いますけれども、その旧法を現在まで、郵政省として昭和二十五年以降現在まで、そういった書き方できちんとした最終段階における連絡ということをきちんと担保しておきながら、ただ単に技術の進歩ということだけですね、今新しい状況として起こってきているのは。その省令と法律の関係というのは旧法でも全く変わりありません。ですから、技術の進歩というだけでその最終段階、しかもそれは全く技術に関係のない部分ですけれども、そこにおいて旧法の精神を全く無視するということが、理由がわかりません。それに対する十分な説明も行われていないというふうに私は理解いたします。  それから、SOLAS条約との関連で申し上げますと、実は新法の三十四条に設けられている幾つかのことがございますけれども、それはSOLAS条約の第六規則、これは無線規則ですけれども、その中に一、二、三というのがあります。その二の中に五項目あるのですけれども、その一と三が三十四条の一と三という形で生きております。しかしながらその中で、この第六規則の中の第三項目、そこには、ブリッジということがはっきりと例えばそこにもうたわれているわけですけれども、それについてはあえて無視をしているという形で、SOLAS条約をそのまま引用する、それをそのまま法律として具体的に実行していくというそういう原則があったと考えても、二項の中の一、三というものだけを選択的に選んで、三という非常に大事なものを落とす。項目の立て方からいっても、二という大きな項目以上に三というのは独立した項目ですから、その二項の中の小項目を取り上げるよりは三という大項目を取り上げるべきであるというふうに考えられるわけですけれども、それも全く矛盾したやり方で選択的にそういったものを入れているということで、SOLAS条約に照らしても全く納得がいきません。
  27. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 私どもの申し上げていることは、決して先生のお考えになっていることと真っ向から対立をしているというつもりはさらさらないので、実は、条約をどう法律で具体的に書き上げるかという、そういう問題だろうと思っております。  それで、ここに、例えばその御指摘の第六規則の三に、「航行の安全のために要求されるVHF無線電話チャンネルの制御器は、操舵を指揮する場所に近い航海船橋で直ちに使用することができるものでなければならない」と、確かにそういう規定はございます。  ところが、これを受けまして三十三条で、このVHF無線電話というものの具体的な中身というのはきちんと我が国の国内法で書かなきゃならないわけですが、それはさっきも申しましたように三十三条で具体的な機器の名前を、そして三十八条で具体的な機器の性能を書こうということになっておるわけでございます。  したがいまして、その機械の置き場所の問題でございますから、置き場所の問題についても省令で書こう、こういうことでございますので、それを、条約の要求するものをすべて法律で書き上げよというのは、これは全体のこの法律の体系の中で、ある部分は政令に、ある部分は省令に、ある部分は法律でずばりと、当然一定の整理が必要である、またそのことがこの法律を生きたものにする上にも必要がある、こういうふうに考えておるところでございまして、こうした問題については、条約との関係いかんということについては、法制局との間で十分な審査をして今回の法案の提出をお願いしておる、こういう状況でございます。
  28. 秋葉忠利

    秋葉委員 まさにようやっと核心に触れていただきましたので、その点について申し上げますが、法制局と十分な打ち合わせをしているから、省令と法律の関係について我々がここで発言するのはおかしいんじゃないか、まさかそういうことをおっしゃっているわけではないと思いますが、まさにその点について我々が発言をしなくてはならないんじゃないでしょうか。  要するに、ここは立法府ですから、我々が法律をつくっているわけです。法制局というのは、そういったものについてのテクニカルな問題に関してとか、あるいはこれまでの慣習とかそういったことをある程度専門的な立場からアドバイスをいただくのは大変結構だと思いますが、法律をつくるのは立法府であって行政の担当ではございません。その点について、その法律について、省令とそれから法律の主文にきちんとしたものをどういうふうに区分けをするかといった点についてまさに私は疑義を提出しているわけで、法制局と相談をなさった結果ここに出てきた改正案のその判断がおかしいということを僕は言っているわけです。ですから、そのおかしいことがなぜおかしくないのかということを納得あるような形で説明してくだされば結構なんですが、なぜおかしいかということを申し上げました。  それは、SOLAS条約を具体的に実行するということからも、あるいはSOLAS条約の中にある重点の置き方からしても、当然この最後の伝達部分については言及があるべきだ。  それから、旧法と新法との比較においても、旧法において全く同じようなことが行われているものを、積極的な理由なしに、今回ただ何となくそれをなくしてしまうにしては余りにも重い生命にかかわりのある点ではないかということを私は申し上げているつもりでございます。  それから、もし省令でこれを規定するというのであれば、この改正案の何条からその省令が具体的に委託されてその省令の力を持つか、その何条によってその省令ができるかということを具体的にお示ししていただきたいと思います。
  29. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 法律は、さっきも申し上げ ておりますが、三十八条を受けまして、今おっしゃる船橋に置くということについては、これを受けて具体的に規定をする予定でございます。  なお、現在でも、システムで使用しているものはすべてこの法律に書いてあるというわけではございませんで、例えば警急自動受信機というのがございまして、要するに信号を受けるとアラームが鳴る機械でございますが、そうしたものを、今の旧SOLASにあるわけでございますが、この装置をどこに置くかということは、今申した形で無線設備規則ということで省令にも書いて、具体的に申しますと、装置は通信室に備えるとともに可聴の警報器を通信長室及び航海船橋に装置する、こういうふうに定めておるわけでございますので、現行のすべての条約をすべて法律に書かなければならないものではない。今申しました構造からして、機種の名前自体、法律ではこれ以上書けない仕組みになっておるものでございますから、この点はぜひ御理解を賜りたいと考えております。
  30. 秋葉忠利

    秋葉委員 そこのところですけれども、すべてのことを法律に書けと申し上げているわけではありません。機器の名前については省令で十分だと思います。その点については賛成します。  ですから、機器の名前を特定できないから場所について特定できないかというと、そういうことはありません、旧法では現にちゃんとそういうことをやっているわけですから。旧法では機器の名前を特定せずにその場所について、場所についてではありませんけれども、具体的に最終段階機械から船長に対する連絡方法はどうするかという規定が三十三条にちゃんと書いてあるわけです。ですから、私はそのことを申し上げているので、最終的な段階での連絡方法が、それは必要ない、それは機械がブリッジにあるからだというふうに説明をしてくださったので、それではブリッジに機械を置くということはどこに書いてあるんだという質問をしたわけでして、最終段階の連絡方法が担保されればそれでいいわけです。ですから、場所ではなくても結構です。  しかしながら、最終段階機械が受けたメッセージをどういうふうに船長に伝えるのか、その伝達方法について、これは法律できちんと定めなくてはいけない非常に大事な点だと私は思います。機械が受けてそれを船長が聞かなかったら、どういうふうに遭難した船を助けに行くのですか。船長が命令を下さない限り、船の方向を変えるということはできないことになっているわけですから。そこのところはやはり人命にかかわる非常に重大な点ですから、その内容からいっても当然本文に書かれなくてはいけないことだと思います。  それから、省令に何条で委託をするかというのは、これも非常に明確に何条の規定によってこれこれこういう省令をつくるという因果関係がはっきりしない限り、私は省令あるいは政令といった形で立法の委任ということをすべきではないというふうに思っております。  今のことに関して改正法を見てみますと、改正法の三十三条で触れているのは、機器についてこういったものを備えなくてはいけないという、機器種類について省令で定めてもいいということを言っています。三十四条では場所についての規定がございます。しかしながら、ここに書かれていることは、次のような場所でなくてはならない、ただしそれについての例外を省令で定めてもいいというのが三十四条です。  ですから、三十三条を見ても三十四条を見ても、機械の設置場所を省令で定めるという権限の委譲は、行政に対してはこの法律では行っていないことになるわけです。三十八条については全く機械種類についての規定ですから、これもまた当てはまりません。  ですから、そういった意味で明示的にこれを省令に委託するという規定もない。しかも、この法律の中に、最終段階機械が受けたメッセージを船長に伝えるための手段も確保されていないということであれば、これはメッセージの送りっ放し。それで最終的には救援が期待できないという一大事を生起せしめる非常に大きな可能性があるわけです。  その点について、私はやはりこれは法律の修正あるいは追加ということで、きちんとした最終段階での連絡方法というのを確保していただきたいと思います。
  31. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 お話のポイントは二つあるかと思うのでありますが、要するに新しい自動機器の置き場所という問題の提起がございましたので、これは今申しましたような形で省令で書かしていただかざるを得ない。問題は、その受けた信号が、先生の御指摘は船長にきちんと伝わるかという問題、これはやはり別の問題かなと思うのであります。  まず、機器をどこに置くかという問題と、その受けた信号を船長に伝える手だての問題と、これは二つの問題があるかと思うのでありますが、この現行の三十三条では、さっき申しましたような背景で通信室というものが生まれて、その通信室というのが通信を安全に受けるために、これは船舶安全法の方で船の一部として規定をされておるその通信室と船橋との間というのが、通信室が船橋以外にある場合はこういう連絡手段を設けなければならない。  したがって、まずその置き場所の問題については、再々申し上げておるように、現行の方でも置き場所について具体的な記述はあるわけでございますので、これに類する形でその受信機の操作制御部分というものの置き場所については別途省令で定めさせていただく。それでその受けた通信をどういう手段で船長に連絡するかということになりますと、これは設備の問題ではないというふうにさっき申し上げておるわけで、船の秩序の中でどう担保されるかという問題で、これは電波法の定めるところの領域を越えた別の世界の話になるのではないか、こう申し上げておるところでございます。
  32. 秋葉忠利

    秋葉委員 だんだん自家憧着して、さっきおっしゃったことと話が違ってきているのですけれども、それでは今の最後のお答えですけれども機械が受けたメッセージを船長に伝えるためということは、人間関係の問題であって、電波法のかかわる問題ではないということをおっしゃっていますけれども、それでは現行法の三十三条の二というのは、これは電波法の一部でありますけれども電波法のかかわることではないことが、なぜ電波法の一部になっているわけですか、現行法で。現在でも今のこの法律は生きています。行政としてはその法律に従ってきちんとした仕事をしなくてはいけない。法律がある以上はその法律の解釈に関して、これほどきちんとした法律が現存しているにもかかわらず、行政がこれは電波法のかかわる問題ではないという解釈を下すのは、僕は非常に行政の権限を逸脱している解釈だと思いますけれども
  33. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 どうも私の答弁にちょっと不穏当なところがあれば私の本意ではございませんで、今書いてあるのは、要するに通信室と船橋との間の連絡設備を備えつけなければならないということを電波法で書いてあるわけです。つまり、それはあくまでも連絡手段を書いてあるわけで、先生のおっしゃるように、受けた遭難通信が確かに十分行き渡るようにという配慮でではございますけれども、ここに書いてあるのはあくまでも連絡設備の問題だけであって、それにかかわる通信の問題にまで触れてはないということだろう、そういう意味で申し上げたので、それはこの連絡設備があっても、仮に通信士が寝ておったとか、あるいはうっかり紛れて船長に連絡がいかなかったというような問題まではこれで担保できないだろう。そうとすれば、置き場所はさっき言っているようにまた別に定めるわけですから、そこから後の問題は現行三十三条二項と同じことになるのではないか、こう申し上げておるわけでございます。
  34. 秋葉忠利

    秋葉委員 全然問題は違うのではないでしょうか。三十三条の二項があれば、私は今のような質 問はしていません。三十三条の二項を今回の法律改正では削除するということをはっきりとおっしゃっているから、今の質問をしているのです。今の質問は、それでは三十三条の二項というのは趣旨にも賛成だし、あっても全く問題はない、したがって、通信室というものはなくなるけれども、具体的に通信設備のある場所から船橋にというふうに文言を修正した上で改正法の中にそれを追加していただけますね、それでは。
  35. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 どうも何度も同じことを申し上げて恐縮でございますけれどもお話しの新しい連絡設備のあり方については、これは当然のことながら、現在は有線系あるいは無線系の連絡設備というのは今もう船には不可欠な状態になっております。が、これだけの議論がございましたので、省令の上でこうした御疑念がございますとすれば、具体的な問題点として検討してみたいと思っております。
  36. 秋葉忠利

    秋葉委員 省令では不十分だということを再々申し上げているわけであります。しかも省令に委託する条文が非常に不明確であるということも申し上げました。それに対するお答えもございません。したがって、私の申し上げた意見に賛成していただけるのだと思うのですが、そういった不明確な形で、しかも省令という立法のチェックを受けない段階で、しかも立法の議を経ないで簡単に変更ができるようなところで、通信の非常に重要な部分である、この場合の通信というのはメッセージの移動という意味で広い意味で使っていますけれども、その最終段階における非常に大事な部分について、今のような形で、省令という形でうやむやにされるということがあってはならない。やはりどうしても明文化していただきたいというのが私の希望です。これについては、ちょっと時間がございませんので後でまた返ってきますけれども、今の答弁では私は全く納得がまいりません。  ですから、一番明確な答えは、要するにこれは法律ではやらないで省令で片づける問題だというところですけれども、それについてもなぜそれが省令でなくてはならないのか。SOLAS条約との比較においても、当然それでは省令で済ましてもいい部分が省令ではなくて法律の本文に入っているところがある。それから旧法においても、これは省令で当然だと今お答えのあったことが実は三十三条の二あるいはそれ以外の部分として立派に明文化されている。そういうことを考えますと、省令でなくてはならないということは全くない。かえって法律にして明文化した方が非常にすっきりするということが私は言えるのではないかと思います。  仮にそれが、この法律をつくった方々の例えばメンツにかかわるとか手続が煩雑だとか、そういったことが理由であるならば、それと人命の尊重と一体どっちをはかりにかけて重要だというふうに考えるのか、その最終判断まで私はお聞きしなくてはならないようなことになると思います。私は、そういった形での対決的な質問は避けたいと思いますけれども、そういう事態に至らずに、やはり法律で、これほどの重きのある問題はきちんと明文化していただきたいというふうに思います。  その質問はとりあえず置いておきまして、次の質問に移りたいと思います。  この問題は、実は非常に高度な技術を使ってまいります。システム全体としても、例えば衛星を使い、それから幾つかの、今回のGMDSSシステムの中にもさまざまな機器がございます。いろいろな発信地があっていろいろな受信地があるという形で非常にふくそうしているわけですし、それから使われている技術も今までのような簡単な技術ではなくてディジタル化した信号を送るという、その間には例えばコンピューターを、途中で何らかの形でのコンピューター、チップの形でしょうけれども、そういったものも経るという非常に高度な技術が使われております。  その高度の技術にかなりの部分、人命が依存するというのが今回のシステム一つの特徴なわけですけれども、その高度なシステムをこれから採用していく、その高度な技術人命のかなりの部分を託すという選択をするに当たって、技術信頼度について郵政省としては具体的にシステムのどのようなチェックを行われたのか。どのような検査、テストを行って、どのようなデータが得られ、そのデータをどのような基準に照らして判断した結果このようなシステム導入することが適切だという最終結論に至ったのか。その点について、それほど詳しいことは必要ないと思いますけれども、具体的にお答えいただきたいと思います。
  37. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 このGMDSSで使う機器については、先ほど申し上げましたように大体十年がかりでいろいろ議論を世界各国レベルで検討しながらようやく合意ができたものでございます。その設備が御指摘のように大変人命の安全にかかわるということで、私ども自体としても、世界でやっているからそれでいいだろうというわけには当然まいりませんで、何回かの各品目についての実験を行っておるわけでございまして、例えばこのGMでポピュラーになりますディジタル選択呼び出し装置につきましては、八六年に太平洋で短波について、北米航路それから豪州航路それから海上保安庁の海岸局との間で試験を実施し、有効性を確認いたしております。  それからこれは八八年、さらに二年後でございますが、やはり短波につきまして、北米航路のあめりか丸あるいは豪州航路の昭鵬丸とKDDの海岸局との間で試験をし確認をしておる等々、直接印刷電信NBDPあるいはEPIRB等々について、これは簡単にということでございますので、ここに資料もお持ちをいたしておりますのですが説明は省略させていただきますが、何度かの確認をさせていただいておる、こういうことでございます。
  38. 秋葉忠利

    秋葉委員 その実験をした結果、実験の結果はほとんど故障がなかったというふうに考えても、そういうふうに今のお答えでは聞き取れたわけですけれども、例えばインマルサットを使った場合の現在の国際間の通信において、回線の容量の問題というようなことがございます。  例えばこれは一例ですけれども、湾岸戦争が勃発してからそれが終結するまでの間に、A4の二ページぐらいのものを八カ所に送るのに二時間かかるというような混雑状態、電波のふくそう状態が現実にあったというようなことがございます。例えばそれが緊急時の場合とは恐らく事情が違うんだと思いますけれども、しかしながら同じ衛星を使って、では一体、これからますます電波の利用そして衛星利用ということは頻度がふえるということしか考えられません。さらに、放送衛星の場合には故障があるということは、もうこれは周知の事実ですし、本委員会でも何度か取り上げられた問題ですけれども、これが通信衛星の場合でも全く同じである、あるいは特にインマルサット、コスパスにおいても同様な危険性考えなくてはいけない、こういうことがあるわけですけれども、そういったことも含めて、ふくそう状態それから衛星信頼度といったところから、そういった問題をどういうふうに具体的に一九九九年までに解決されるのか、具体策を御提示いただきたいと思います。
  39. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 インマルサット通信のふくそうの問題でございますが、確かに国際通信需要が非常に伸びておりますので、現在上がっておりますインマルサットの第二世代の衛星を、さらに九二年までには従来の衛星の三倍から四倍の容量を持つ第二世代衛星がすべての海域に配備されるという予定にしておりますので、そうした心配はなくて十分な通信回線の確保はできるのではないか。今の計画でございますと、将来さらにまたその需要が伸びるだろうということで、九四年以降には第二世代の八倍程度の容量を持つ、いわば第三世代の通信衛星の打ち上げというものも計画されておると伺っておりますので、この辺はおっしゃるような国際通信についての需要というものを見通して、政府機関でいろいろ各国との協調の 中でインマルサット衛星が十分な回線確保をしてまいるものと考えておるところでございます。
  40. 秋葉忠利

    秋葉委員 その点についてはまだ十分に納得したわけではありません。例えばその具体的な措置としては、何チャンネルふえた際に例えばGMDSS用にどのくらいの容量を確保するのかとか、回線をきちんと特別なものをつくっておくとか、あるいは緊急時における通信の交通整理の問題とか、いろいろなやり方があると思いますけれども、そういった具体的な方法についてもできたらお答えいただきたいと思いますが、時間がありませんので、それはまた別の機会に行いたいと思います。  もう一つ機械信頼性についてというところで、これは船舶の入港中に定期点検を行うということがございます。あるいは、保守を行うということがあるのですけれども、例えば定期点検の頻度それから内容はどのようなものをどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  41. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 このGMの各機器無線局でございますので、これは電波法七十三条の規定によりましてその免許をした無線局が適正に運用をされているかどうかは定期的に検査をいたしております。特に、義務船舶の定期検査というのは、それはSOLAS条約自体でも条約船が一年だということでございますので、これを受けましてSOLASあるいはGM関係の機器についても一年の定期点検を行う、こういうことにいたしております。  ただ、これはいわば無線局としての検査でございますので、このほかにこれも条約の定めるところでございますけれども、万が一のことに対してその施設者は十分な配慮をしなければならぬということがございますので、このSOLAS条約に基づき、そしてこの改正いたします電波法の三十五条で定めましたとおり、いわば保守といいますか、そういう保守についての具体的なやり方を詳細決めておるところでございます。
  42. 秋葉忠利

    秋葉委員 実は、この電波法の旧法とそれから新法とを比べてみますと、その機器の設置場所に関して、これは三十四条の一ですけれども、「機械的原因、電気的原因その他の原因による妨害を受けることがない場所であること。」それから三ですね、「水、温度その他の環境の影響を受けない場所であること。」というふうに、旧法の三十三条がほぼそのまま引き継がれています。  前に局長がお答えになった内容では、その技術が非常に進歩をしているということを言われました。ということは、技術の進歩というのはいろいろな面がありますけれども、当然信頼性も高まらなくてはいけないということが考えられるわけですが、信頼性も高まったというふうに、実はこの規定を見ますと、三十三条のその「機械的雑音」、雑音というのはなくなりましたけれども、実質的には機械的原因、電気的原因、それから温度とか水とか、そういったものを避けなくてはいけないという規定が残っているということは、複雑になった分だけその信頼性の面でもやはり心配をしなくちゃならない点も多々出てきているという、その技術の派生的な局面をこの条項が示しているというふうに思うのです。  となると、少なくとも当初の試験期間の間は、一年という点検期間ではなく、より頻繁に、その信頼度が確定されるまで、例えば半年あるいは三カ月に一遍といったような頻繁な点検が必要ではないか、そういうふうに思われますけれども、そういった点についてもう少し前向きにお考えになるつもりはおありになるのでしょうか。
  43. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 この電波法に定めておる検査というのは、これはあらゆる無線対象にその必要に応じて決めておるわけで、ましてSOLASという世界各国の共通の基準で、電波法でこれを受けて具体的に定めておりますので、やはり当面さっき申しましたようにこの点検を行って、万が一にでもこうした設備が不良であるとするならば、これは免許の取り消しということに相なる大変重大な問題でございますので、そうならないように当事者の方でさっき申し上げました具体的な保守方法、これも法律の定めるところに、三十五条にございますように三通りの方法のうち一つまたは二つの措置をどこかとらなければならないということで、まずデュアルの回線に、二重回線にしてしまう、二重設備にしてしまう、同じ設備をもう一つ船に備える、あるいは入港中の定期点検ということで陸上から検査を行う、あるいは船の上で必要な部品をそろえて保守を行う、こうしたことを具体的に義務船舶無線設備について義務づけておるわけでございますので、まずはみずからの行う保守についての十全をひとつ確保されるように私どもは期待をいたしております。  なお、定期点検については、今申しましたような事情で、当面これでスタートしたいと思いますが、もし必要とあれば実態に応じて今後いろいろ考えていかなければならぬことは当然のことだろうと思っております。
  44. 秋葉忠利

    秋葉委員 その点についてもまだ質問したいことが幾つかあるのですが、時間がなくなってまいりましたので、もう一点、別の点について質問したいと思います。  GMDSS移行するに従って船舶の方から、概略の位置に最終的にはなるかもしれませんけれども、これまで船舶の持っていた自分の位置を通報する義務というのが消滅する。ということは、例えば海岸局あるいはその他の局で船舶の位置を自動的に確定する方法がないということになるわけですけれども、それについて、例えば自動的にトランスポンダーを船舶に配置をして、どこにいても世界じゅう船の場所がわかる、位置がわかるといったような、それこそそういった技術を使うことによって、船舶の航行の安全を守るためにそういったことも当然考えられるわけですけれども、そういった方向での郵政省努力というのはどういったものを今やっていらっしゃるのでしょうか。
  45. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 御指摘のように従前モールス時代は、このモールスは単に船の遭難、いざというときの安全の確保と同時に、公衆つまり旅客船である場合は、乗っているお客様の通信がいわばこれにかかっておったわけでございます。  だから、そういう意味ではこのモールス遭難と同時に一種の国際公衆ネットワークであった、そういう側面がございましたので、従前海岸局に入りましたときには、どこにいるよということを確認をしないと通信を欲する相手方と交信ができなかった、こういう背景がございましたので従前の仕組みにはなっておりましたが、今回のケースではインマルサットとか長距離通信がどこにいても可能でございますので、七十条の義務というのは今回なくなったわけでございますが、ただ、おっしゃるようにできるだけこうした船の位置がわかっているというのは大変望ましいことではございます。政府としては、これは私どもの直接ではございませんが、海上保安庁では船位通報制度というものがございますが、これはあくまでも任意の制度だと承知をいたしております。  御指摘のように、私どもとしてはせっかくこうした新しい技術が、これは船に限りませんが、陸上でも、例えば常時動いております車両の位置が自動的にセンターでわかる、あるいは車自体が今どこにいるかということが自動的に認識できる、こういうシステムというのは大変大事だろうということで実は研究会も組織しておりますが、高度情報社会におけるALCシステム、これは高度な測位・通信システムでございますが、アメリカのGPSという測位ができる衛星がございますので、こうしたものを利用してやってまいりたいと思っておりますので、こうした研究が進みますれば今の御指摘のような海上における船の位置ということ等にも十分活用できるのではないか、なお今後検討を続けてまいりたいと思っておるところでございます。
  46. 秋葉忠利

    秋葉委員 まだちょっと時間がございますので一つだけ、先ほどのGMDSSの本体をどこに設置するかということですけれども、常識的にはブリッジの部分が多いだろうということは私も十分理解しておりますし、先ほど申し上げたのは、そ れを法律の条文としてきちんと規定する必要があるという点ですから、実態としてブリッジに多く置かれている、あるいはこれからも置かれるであろうということは十分納得できます。  その際に、ブリッジというのは、例えば特別に設けられた通信室と比べて非常に環境が悪いということがございます。悪いというのは、要するに通信用にブリッジというものがつくられていないからという理由だけによるのですけれども、その際に、やはり遭難通信というのは非常に重要な役割を担うわけですから、その遭難通信の一層の活用を図るために、例えば隔壁を設けるとか、あるいは温度や湿度の調整のための特別な空調装置を設ける、あるいは雑音を防止するためのきちんとした措置を設けるといったような規定を、これは私は省令で十分だと思いますが、省令できちんと規定されるおつもりはありますか。
  47. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 先ほどもお話が出ましたが、旧法に比べての新しい法律は、端的に言うと、もう少し設置場所について厳しい条件を付しておるつもりでございます。各種の電磁機器の影響というのもございますわけでございますから、できるだけこの辺を範囲を広げて決めておるわけでございます。したがいまして、操作に関しまして、機械的な原因だとかあるいは電気的な原因だとかあるいは水や温度の環境の影響をできるだけ受けない場所ということで、これは具体的にこの法律の趣旨を踏まえて、十分この性能が発揮でき、万が一の人命にも影響がないような具体的な設置場所について省令で定めてまいりたいと考えております。
  48. 秋葉忠利

    秋葉委員 これで質問を終わりますけれども、それはぜひやっていただきたいと思いますし、それと同時に、今お答えの中に欠けていたのは、実際に操作を行う人間、ですから船に乗っている人たちの立場を考えて、その人たちにとっても操作のしやすい、あるいは労働条件が悪くならないようなそういったことも勘案して、省令を定める際にそういった関係者の声も、これまでも十分お聞きになっているとは思いますけれども、さらにそういったインプットを、さまざまな関係者の声をぜひその省令の中に反映して、例えば今申し上げたようなことについても決めていっていただきたいというふうに思います。  それから、先ほど申し上げた設置場所あるいは最終段階の連絡方法について、私は十分な納得ある説明が伺えたと思っておりませんので、その点について私自身ちょっと態度を保留させていただきたいと思います。  これで質問を終わります。
  49. 野中広務

    野中委員長 次に、鳥居一雄君。
  50. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 御質問をいたしたいと思います。  GMDSS、ちょっとこれ省略いたしましてGMDと呼ばせていただくようにいたしますが、この海上遭難安全通信システムシステムとしてはまだ机上のものである、こういうふうに受けとめておりますが、今後どういうスケジュールで一九九二年二月、これをクリアしようとされているのか。まずスケジュールを伺いたいと思います。
  51. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 お答え申し上げます。  先生にならって私も、舌が回りませんのでGMDと申しますが、この無線設備は、船舶種類と航行区域によって具体的に細かくなっておるわけでございますので、このSOLAS条約の基本を受けまして、ちょっと申し上げますと、全体の考え方としては、一九九五年の一月三十一日までに建造された船舶は一九九九年の一月三十一日までにGMDを適用する、それから、その後一九九五年二月一日以降に建造された船舶は、当該船舶無線局を開設した日からGMDを適用する。ただし、そうは申しましても、このGMDの機器はたくさんのいろいろなものがございまして、比較的安価で同時にしかし安いけれども遭難防止とかあるいはいわば緊急通信に大変役に立つ機器もございますので、こういうものはできるだけ早く入れた方が望ましいのじゃないかということで、これは具体的に三つ私ども予定をしておるわけでございます。  一つは、ナブテックスの受信機と衛星EPIRBについては、一九九三年七月三十一日までにこれはすべての対象船舶に設置をしてもらおう。それからレーダートラポン、レーダートランスポンダーにつきましては、九二年の一月三十一日までに建造された船について九五年の一月三十一日までに設置をしてもらいたい。それからもう一つ、九二年の一月三十一日以降に建造された船は九二年の二月一日からこのレーダートラポンを備えてもらいたい等々を考えておるところでございます。
  52. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 基本的には、科学技術の恩恵をこういう遭難通信の場面で有効に活用できるという線は、これは大変結構だと思うのです。従来、船舶の安全航行、その上でモールス方式による電信が伝統的に非常に重要な役割を果たしてきたと思うのです。しかし、どんなに時代が移り変わろうとも、科学技術が進歩したとしても、A3海域のような外洋を航行する船舶が万が一遭難に遭う、こういう場合には救助に急行するのは大体半径数百キロメートル、これが基本だと思うのです。  従来は、中波の出力四百ワット、中波で四百ワットの出力といいますと大体三百キロから四百キロ届く。補助の送信機がありますが、出力七十五ワット、これで二百八十キロメートル。ですから、遭難に際しましては、かなりしけていたとしても大体二十時間ぐらいで遭難現場に急行することができる。どんな離れた遠いところで仮に遭難信号を受けたとしても、急行できないということでは全く意味がないわけですし、これはむしろ迷惑であり無意味ということになってくると思います。  これは、昨年インマルサットがアンケート調査をやりましたけれども、その中に、SOSを二十四回受信した、こういう船の例がありました。しかし、いずれも距離が遠いために関与しなかった、こういう状況だと思います。したがいまして、遭難安全、こういうシステム考える上では半径何百キロ、こういう中で勝負をなすべきであり、GMDが幾らどんな機能を果たそうが、むしろGMD過信によってこの基本がないがしろになってしまうのではないか、こういうふうにも思うわけですが、郵政省としてはどういうふうに考えているか。  それから、同じ出力で電信の場合、電話の場合、ノイズがあった場合、電信よりも電話の方が有効だ、こういうお話がありましたが、これは逆ですね。局長はどういうふうにこれを承知していらっしゃいますか。     〔委員長退席、園田委員長代理着席〕
  53. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 今回のGMDにおきましても、この発信の信号は当然のことながら陸上の救助機関には通報されるわけでございますが、この機器の中の一つでございますDSCつきの中波の無線電話では、簡単な操作で周囲の船にも連絡が同時に可能でございます。  そういう意味でそれが一つのきっかけになるわけでございますが、それでもそういうことになって万が一うまくいかなかったときには、当然陸上の捜索機関には通じておるわけでございますので、そうとすれば、捜索機関というのはまず航行している遭難船の付近におる周囲船舶救助を依頼するということには変わりはないのではないか、こういうふうに受けとめておるわけでございます。そういう意味では、救助の基本体制というのはこのGMDを導入しても先生のおっしゃるとおり本質的な姿は変わりはない、御指摘のとおりだと思っております。  さっき私が大分秋葉先生と長いこと議論をさせていただいた過程で、音声の方が安全だというふうに申し上げた、ノイズに強いということを申し上げたつもりはなくて、御答弁申し上げましたのは、従前通信室の設置が必要だったときに比べて新しいディジタル技術というのは雑音を受けにくい形になっておるので、通信室の必要性がなくなったということを申し上げておるわけでございます。
  54. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それはちょっと違うので、さっきの 御答弁の中でよくお調べいただきたいと思います。同じ出力でモールス式の電信電話、これと比較してノイズにどちらが強いのか、これはもうはるかに伝統があるわけで、ノイズには電信の方が強いわけですよ。  移行期間につきまして伺いました。九九年の二月までに移行をしていこう、それでそれまでの期間というのは従来型の通信、これとGMDとの併用ができなければならない、両立制、これはどういうふうに考えていますか。
  55. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 先ほども具体的な経過措置について、船舶の建造年月等に応じていろいろな段階を踏むということを申し上げましたが、これはまた国内だけじゃなくて世界各国ともそうした過程は皆踏まなきゃならないわけでございますが、そういう意味で、段階的に入る過程で、安全の確保のためにはやはり旧来のモールス無線電信あるいは無線電話というものはちゃんと確保される必要があるわけで、新しい制度従前システムとが併存するということに相なるわけでございます。  このことについて条約ではちゃんと手当てをいたしておる次第でございますが、九九年の二月一日までは条約の定めるGM対応船舶に対しましても、既存の無線呼び出し周波数である中波の二千百八十二キロヘルツ、それから百五十六・八メガヘルツの無線設備の設置及び聴守というものは義務になっておるわけでございますし、それからこのモールス無線電信でございます五百キロヘルツの部分につきましても、この電波法におきましては海岸局で常時聴守義務を負わせるということになっておるわけでございますので、したがいまして海岸局を経由するということになりますと、このモールス無線電信を使用する船舶GM対応船舶との間の通信が可能となる、こういうことで円滑な移行措置を全うしたいと考えておるところでございます。  なお、先ほどどうも自覚症状がなくて、先生の説に対してもし間違っておりましたらば訂正をさせていただきたいと思っております。
  56. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それじゃ両立制について具体的に伺ってまいりたいと思うのですが、無線従事者の資格、配置、それで平成元年度、電波法改正段階で主任という制度ができて、そして通信長と主任との関係は一体どうなっているのか、こういう議論がこの委員会でありました。今回はこの通信長が消えてなくなろうということになっておるわけですね。いわゆる移行期間の九九年二月、それまでの間は、今局長の答弁にあったとおり併用なんだ、どちらも生きているんだ、こう言いながら、従事者の方では通信長を消してしまう。船舶職員法では通信長という職務は厳然としてあるわけですね。兼任という新しい制度ができるそうですけれども電波法の中であえて今回通信長をなぜ削らなければならないのか。RRでは、附属無線通信規制ではこれは落ちたとしましても、少なくとも九九年二月までの間は、我が国におけるかなり高い名声を生んできた海難事故に対する我が国対応というのは世界でも指折りです。その象徴のような通信長の職務が今回消えるというのは一体どういうことなんでしょうか。
  57. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 現在の電波法に置いております通信長の規定というのは、一定の経験を積んだ方を通信長として置くということにいたしておりますが、この基本は、これも今御指摘ございましたように、RR、国際電気通信条約の附属無線通信規則が基本でございますが、これが設けられました背景は、先ほどからも議論が出ておりますが、モールス電信が唯一の頼りで、遭難あるいは旅客船の場合はこれによって公衆通信が依存される、そういう時代の背景があって定められて今日まで来たと理解をいたしております。  今度GMDに参りますと、公衆通信自体は、先ほどのお話インマルサットあるいは性能のよい無線電話というのが、しかも自動接続ができるということで、従前のようなモールス無線電信のような経験年数をたくさん積むという技術的な蓄積を前提にしました通信長というものは必ずしも必要がなくなるということで、国際的な規約でございます無線通信規則、RRでは規定をあえてしなかった。ただ、GMDの場合でも遭難通信はやはり確実に行う必要があるということで、このSOLAS条約自体に遭難通信責任者を置けという規定がございまして、電波法はこれを受けて、新たな措置でございますが、遭難通信責任者というものを置いたわけでございます。  そうとしますと、条約を受けてこれから移行があるにしたって、GMDを十分に日本に定着させるには新しい遭難通信責任者というものを置いて、これにまたいろんな資格を要求しているわけでございますので、そうとすれば、従前から確かに多くの功績を上げられ、大変立派な戦果を残してこられた通信長そのものは、名残惜しいわけではございますけれども法律上の根拠を失ったということで、今後は遭難通信責任者にひとつ挙げてゆだねて通信の安全の確保をしてまいろう、こういうことで対処をいたしておるわけでございます。  なお、御指摘船舶職員法上の通信士と通信長の話につきましては、今後こうした背景の中でどうされるのかは、これは運輸省において検討されることだと承知をいたしておるわけでございます。
  58. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ちょっとおかしいんですね。RRを受けて通信長をなくすんだ、しかしこのGMD、九九年二月、これまでの間の併用の期間、これは従来、船舶局としての重要な幾つかの役割がありました。船舶局の責任者は厳然として現在もいるわけです。そういう中にあって、今回、通信長という立場をいきなりなくす、そして従来の局がやっていた一部である、一部とはいえ非常に重要な役割ですけれども遭難通信責任者という、遭難通信に関してのみ責任を持ってもらう、こういう形の制度に切りかえようとしているわけですけれども、誘導を急ぐ余り両立制をつぶしてでも、何というか従来の郷愁みたいなもので通信長をなくすことはけしからぬなんという、そんな狭い了見じゃない。  海上における人命安全、それから教習、講習業務というのが船舶における局の重要な役割の一つです。それから、入出港に際しまして港務として、港の務め、港務としての通信、これは欠かせない通信ですね。もちろん、今はボイスでやっているわけですけれども、そういう船舶局の持ったさまざまな役割、機能、これを統括して責任を持つというのが通信長で、現在、現にあるわけです。九九年二月、両立制を言いながら、今なぜこれを削らなければならないのかと聞いているのです。RRで削ったから直ちに削る、これじゃ移行期間無視じゃないですか。  それから、遭難通信責任者、これが、GMDにおける遭難通信というのはかなり簡便になってきます、確かに。しかし、今のインマルサットを使った遭難通信方式というのはかなり弱点があります。ですから、併用の期間中は両立制、これが保障されればいいわけですけれども、今の御説明では納得できません。
  59. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 基本的にこうした配置というのは、職種とか特定の責任者だとかというのは、これは法律に書くのは、書いて、ただ書いてあるわけでなくて、現実に義務づけて、要するに国民の権利義務にかかわる事柄でございます。そういう意味で、今度の新しい体制では、この遭難通信責任者として、しかも単に指名すれば足りるのではなくて、船舶無線従事者証明というようなものも要求をいたしておるわけでございまして、その確認もまた無線局の検査の中に入ることになるわけでございますので、そうとすると、国際的にそうした規定があってそれを置かなければならないということになりますと、何をおいても新しいGMDを定着させるためには、新しい条約の定めるところをやはり法律においてぜひ定着を図っていくということはやらなければならないことだと思います。  ただ、そこでなお従前通信長として置いてあるのは基本の根拠が確かになくなって、そういう意味では二重に置いておいてもいいじゃないかと いうことの御議論かと思うのでございます、まして併用があるから。しかし、新しい遭難通信責任者自体も、これは従前モールスなり無線電信を扱わないわけではないわけで、当然緊急の通信というのはGMDから、先ほど経過措置義務づけになっているようなことの責任にもあるわけでございますので、今回の五十条における遭難通信責任者の配置で法律上体制はとれると、二重に置くことの問題の方がむしろかえって全体の混乱を起こすであろう、こういう配慮から現行のような改正案をお願いしておるところでございます。
  60. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ちょっとやはり主任制度導入のときと同じ議論になってくるわけですね。ややこしいから一方を外してしまった、こんな短絡した結論なんだろうか、こういう疑いを持たざるを得ないのです。この点については、電波法で明記されていた条項、これを今回外そうというわけなんですからね、通信長という職務を。この辺が明確ではありません。  それから、もう既にインマルサット船舶地球局というのはかなりの数になっておりますね。それで、このインマルサット船舶地球局がどんな実態になっているのか、船舶通信士労働組合が調査をいたしました。この二年間に故障発生があったとする報告が三十九隻からありました。なかったという報告、故障がなかったというのは八隻ですね。故障を一回から四十回経験した、こういうものが七十五件あったそうです。これはGMDですよ。故障ではないが障害が発生した、九十八件。うまく動かない、八十四件。だから、非常に条件の制約された海上におけるこれらの精密機械、これは非常にコンディションの悪い中にあるわけですね。  従来は通信室という非常に条件のいい中に存在をした。恐らく先ほどの議論の中から、帰結は、ブリッジに置かれるのだろうと思うのです。ブリッジのこの機器に対する諸条件を考えますと、かなり劣悪と言わざるを得ない。夜の航行というのは光を全部なくすのだそうです。全くの暗やみでブリッジに立つ。そういう中でライトを頼りにしなければならないこの通信手段、こういうものを一体どういうふうに現場を考えているのか、全く不明です。従来は、電波法上照明が明記されておりました。今回この照明、削除ですね。つまり、通信室というのを廃止してしまう、こういう考え方です。  それから、非常時に備えて補助バッテリーというのがありました。今回この電源系統でバッテリーに対する設備義務というのはなくなるのです。バッテリーはどうでもいい、こういう形ですね。こういう矛盾。  それからまた、保守につきましては、先ほども御説明がありましたが、船上保守、それから陸上保守、これは陸上のメーカー等の間に保守契約をするということなんだそうですが、陸上保守。それから二重化、機械設備をもう一つスペアを持って歩く、この三つのうち二つ選べ、こういうことになっているわけですね。  ところが、この故障であるとか事故の件数を見ていただきたいと思うのですが、我々の想像していたよりはるかに高い事故が現に起こっているわけです。このあたり、どうなんでしょうか。どういう議論があってこういうまとまり方をしたのでしょうか。併用期間中は、少なくとも安定性、信頼性、こういう上から通信室はそのまま残す、併用期間中、九九年の二月までは。こういう法体系でいいじゃないですか。なぜ今回削らなければならないのですか。
  61. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 このインマルサット船舶地球局は、これは最近の電子技術の進歩に応じて、ここ十年前の論議をしていた時分から比べれば、随分とこれは、特にGM機器に限らず、あらゆる通信機器の安定度というのは大変に向上しておる状態にあるか。したがいまして、お話のようなデータについても、これは年々全体が改善されるものということで期待をいたしておるわけでございますが、特に今回三十七条の方で、GMDにつけるべき船舶地球局等については、この三十七条で型式認定ということで、郵政大臣が行う型式検定に合格しなければならないというようなことで、まず一つの水準というものをきちんと確保いたしたい。  同時に、今お話がございましたようにA3海域のような場合には設備を二つ置くかあるいは寄港したところで保守を行うかあるいは船の上で十分な部品をそろえて保守を行うか、この辺をきちっと三十五条で遵守をしろ、こういうことになっておりますので、私どもとしては、確かにこれからスタートする制度でございますが、こうした状況に照らしてみて不安で不安で仕方がないということではなくて、各国ともこういうことでいこう、こうした基準についての設定については相当技術的なテストを重ねたあげくでございますので、もちろんスタート後の実態についての把握は行う必要があるかと思いますが、ともかくここまで来て世界各国足並みそろえていこうということでございますので、まずもってこれでスタートをして、運用については細心の注意を払いながら、事は命にかかわることでございますので、御指摘のような点については十分念頭に置いて対処いたさなければならないと考えておるところでございます。     〔園田委員長代理退席、委員長着席〕
  62. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 今、型式検定のことで安定性が保障されるというお話ですが、これはちょっと違うので、型式検定は型式検定で特徴もあり、いい面もあるし悪い面もあるわけですよ。従来の送信機につきましては、型式検定じゃなくて、少なくとも四百ワットという中波の出力を出すわけですから一局一周検査しているわけですよ。今度のものは型式検定で、つまり一つこの方式のものはこれでいいのかという形で検定をするとメーカーがつくってくるもの全部オーケーという形ですから。だから、それはいけないという意味じゃないのですよ、そういう簡便な検査の方法になってくれれば歓迎だという利用者側の声というのは非常にあるわけですから。ただ、安定性、確実性という上で船上に技術者が必要なんだ、通信長をなぜ九九年までは残さないのか、こういうことを私は主張しているわけで、十分検討していただきたいと思うのです。  時間ですから終わります。
  63. 野中広務

    野中委員長 次に、菅野悦子君。
  64. 菅野悦子

    ○菅野委員 今回の電波法改正につきましては、海上における遭難通信システムを国際的に向上、進歩させようというものですから、通信技術の進歩を人命救助に役立てるという側面については非常にいいことだというふうに思うわけです。今もいろいろやりとりがございましたけれども、同時に長年にわたって使ってきた遭難通信のあり方というのを一変させるというものだけに、それに伴う不安もあるということです。  例えば「燈光」という海上保安庁関係の雑誌の三月号に、海上保安庁の船で通信士をやっている方の文書が載っております。そこでは、東京保安とのTOR装置による昼間の通信連絡というのは伝搬状態が悪くて通信不可能になる、そんなときに唯一頼りになるのがモールス無線通信による連絡だというふうに書いているのですね。そしてこの方が言うには、目前に迫っている海上遭難安全システム改正すると、きょうの法律改正ですけれども、これに伴って衛星とかそういうものを使ったものに変わるけれども、確実な通信を確保することができるんだろうか、ふと不安に駆られるというふうに述べていらっしゃるのです。遭難救助のプロがこういうふうに不安がっているということで、それを見て私ども非常に不安になるわけです。  そういう点で、特に新しいGMDSSというシステムなんですけれども、実験はされているけれども、事実、海上遭難通信システムとして実際に使われたことはない。一般的にこうした新しいシステムというのは立ち上がりの時期にはふなれということもあっていろいろなトラブルが起こるということもありがちなんですけれども、事は人命にかかわる問題でありますので、そういうトラブルが絶対あってはならない。先ほど来、一定期間 は同時並行でモールスもやりますよというふうなお話もありましたけれども郵政省としてはこういう関係者の率直な不安というものについてどうお考えになっておられるのかなということを、まずお聞きしたいと思うのです。
  65. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 確かに百年近くこうしたモールスというのが定着をしてきたわけでございますから、当然のことながら、関係者が新しいシステムについて現実に現物を見、通信をして、みんながわかったという状態でスタートするわけじゃないわけでございますから、ある種の不安あるいは懸念というようなことは気持ちとしては十分理解できるところでございます。  ただ、先ほども繰り返して申しておりますけれども、現状ではやはり今のシステムだけでは届く範囲に限定がある、そのときたまたま居合わせなければ通信ができない、あるいはだんだんモールス技術も、昔はそうでもなかったのですが、若い人が非常に習熟しにくくなった、あるいはそうした状況だけに突発の事態にきちんとしたモールスを十分伝達できるかといった、そういうことの不安もまた一方あるわけでございまして、そこで先ほどからお話に出ておりますように、こういう時代になったんだから衛星だということになれば世界じゅう届くではないか、あるいはディジタル技術だということにすれば、しかも自動化すれば、一々難しい操作をしなくても、ボタン一つ緊急のとき押せば、今どこでどの船がどういう状態なんだということを世界じゅうに向けて発信ができる、こういうシステムをぜひひとつ人命安全のために使いたい。しかもそれを約十年かけて各国が盛んに論議をし、実証実験を重ねながら、我が国としてもそれなりのチェックをしながらようやくここまで条約になったわけでございますので、ぜひひとつ新しいシステムをむしろ上手に定着させる。  その間、御懸念のある問題については両方の、旧のシステムもそれしか設備してない船舶もございますので、そうした船についての対応法律上も十分担保してまいりたいということで考えておるところでございます。
  66. 菅野悦子

    ○菅野委員 ということで、そういう大事なシステムの改善なんだというお話でありますと、先ほど来やりとりがありました通信長の規定がなくなったということに私自身もひっかかってくるわけなんですね。  通信長というのは船舶局の責任者ということで、いろいろと遭難のときなどについても日常管理についても相当きちっと対応されていた。ところが今度それにかわって遭難通信責任者となる方は兼務でよいということになっていますね。今までずっと言われておりますように、船舶局というのは海の上を走り回るわけですから、これは海上という自然条件の中で、しけもあれば雨とか風とかいうことで通信設備がさらされる。ブリッジにそれも設定されるというふうなお話もありましたし、非常に高度なだけに微妙なという点もあります。だから陸上であれば、ちょっとぐあいが悪いよということになれば例えば専門家にすぐ来てということになりますけれども海上ではなかなかそうもいかないということがあるわけで、やはりこれはしっかりした技術を持った専門家が常時管理運用に当たるということがどうしても必要になるのじゃなかろうか。  だから、平時は兼務で遭難緊急時のみ責任者、遭難通信責任者というふうなものでいいのかなというのを極めて不安に思うのですけれども、その点はどうなんでしょうね。
  67. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 従来の遭難安全システムでは、これはもうひとえに人力にかかるといいますか、人の耳が大変大事でございまして、大きな船ですと二十四時間交代制でだれかが、発信するあるいは飛び込んでくるそういう遭難通信の聴守というものを通信士というのが一元的に必死になって行ってきたわけでございますが、先ほどから申し上げておりますような新しいシステムでは自動化技術というのはできるだけ取り入れようということに決着をいたしておるわけでございますから、例えばどこかで発した遭難通信というのは、その機械さえスイッチオンしておきますれば、一々そばにいたりあるいはレシーバーで聞く必要はなくて、例えば遭難通信が入ったといったときには、その機械が大きなアラームを鳴らす、あるいはランプを点滅させる、そして、その上で送ったメッセージが、ディジタル技術でございますので中身の通信メッセージが出てくる、こういう設備を大いに投入しようということでございます。したがいまして、その後の体制、それを受けた後、この遭難通信の責任というのは当然必要でございますので、御指摘のように、遭難通信を統括する責任者ということで新しい責任者を設けたわけでございます。  そういう自動技術でございますので、兼務ができるかというお尋ねに対しては、私どもは、今の状況であれば連絡は自動設定ができるわけでございますので、そういう意味無線従事者が他の職務を兼ねるということも可能だと思っております。  ただ、遭難通信責任者は、そういう意味では、そういう兼務をしておっても、こうした遭難通信が現実に発生するというときには直ちにその任務を遂行してもらわなければならない責任があるわけでありまして、その届けもちゃんとしていただけるわけでございますので、そういう体制がとれる限り平素の兼務ということは、御質問でございますが、それはあり得ることにはなるだろう。ただし、いざというときの体制の確保というのも、これは法の趣旨というものを体して対処をいたしてもらわなければならないことは当然だと思っておるわけでございます。
  68. 菅野悦子

    ○菅野委員 今のお答えを聞いておりまして、各同僚の委員がいろいろとその点心配をして追及している、遭難通信が入ったときとか船が直接遭難したときにどうするかというだけでなくて、こういうふうな非常に精密な機器の設定になるわけですから、やはり日常管理も含めて相当きちっとした対応が要るのではないかということを各委員も言っていたのではないかと私は認識しているのですが、そういう点では、その辺の体制の問題についてはさらによく御検討いただきたいなということを再度強調しておきたいというふうに思います。  あと電波行政についてお聞きしたいのですが、先月、近畿電気通信監理局におきまして、不法パーソナル無線対策協議会というものが全国に先駆けて設立されました。これは、いわゆる不法パーソナル無線というのが全国的に広がっているということで、とりわけ近畿で多いということのようなんですけれども、私の地元の大阪でもそういう話をよく聞きますし、中には暴力団が絡んでいるというふうな話もあるわけです。  特に、このパーソナル無線の周波数帯というのが、自動車電話とかMCAとかテレターミナルという移動データ通信、これはとりわけ新しいサービス分野ということで非常にたくさんのニーズが今ふえているわけなんですけれども、その新しいサービス分野と隣接しているということで、本来のパーソナル無線の周波数帯が混雑している場合に、割り当てられてない隣の周波数帯に違法に入ってくるというふうな状況があるわけなんですね。  それを取り締まるということで対策協議会というのがいち早くできたということなんですけれども、この協議会の中には枚方市の防災課なども入っているように、自治体の防災無線もこの近辺の周波数を使っているというふうなことがあって、そこに妨害が入るという実態があるわけなんですね。ですから、そうなると災害時の通信にも不安が生じるということで、これ自体は大変なことなわけなのですけれども、現場の話を聞きますと、最近は手口が非常に巧妙になってきている。  例えば、通常は普通のパーソナル無線機であるわけですが、暗証番号を押すと、出力も上がるし、周波数帯も違法なところにはみ出すというふうな機械とか、あるいはボタン一つでメモリーを消してしまうということで、摘発を巧妙に逃れ る、そういう機械も出ているというふうに聞いております。また、多くは自動車に積んでおりまして、常に移動しているというふうなことで捕捉も非常に手間がかかるという状況のようなんです。近畿では、こういうことで協議会なども動き出して、その直後に悪質なものを摘発するというふうな成果も上がっているようなんですけれども、これは今後の電気通信の発展にとって非常に障害にもなりかねないというふうに思うのですね。  それで、これはぜひ大臣にお伺いしたいと思うのですけれども、こういう防災無線に妨害が入るようでは安心して暮らしていけないわけで、これはぜひ厳重に対処していただきたいというふうに思いますが、その点で御認識をお伺いしたいと思います。
  69. 関谷勝嗣

    関谷国務大臣 この問題につきましても、先ほど委員先生方の御質問にもるるございましたように、高度情報社会通信社会が発展するいわゆる影の部分の問題のまた重要な一つの問題でございまして、すばらしい高度情報社会をつくっていくためには、この不法な無線局によります混信の妨害、その混信の妨害という以前に、不法なそういうようなことが行われること自体に対して、これは徹底して私たちは対処していきたいと思っておるわけでございまして、今後とも積極的にやってまいります。
  70. 菅野悦子

    ○菅野委員 その点で、電波の有料化を打ち出したということで注目を集めております電波政策懇談会の報告を見てみましても、無線局の数というのは非常に急速な上昇ですよね。この十年で二百万から六百五十万と三倍以上になっている。特に自動車電話は年率一〇〇%とか、MCA無線は五〇%というふうな大変な伸びになっているわけなんです。ところがその反面で、今もお話ししたように違法無線局も非常にふえているということで、対策協議会なども設置されているということなんです。  そこで、郵政省の電波監理の体制はどうなっているかということをお伺いしたいのですが、この十年間で、地方電気通信監理局の定員ですけれども、どうなっていますか。簡単に御報告願います。
  71. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 この不法無線の問題は近畿だけでもございませんで、特に都市部を中心に、先ほどからこのGMDの機器もよくなったと申しますが、通信機器全体の性能が上がっておりまして、しかもその上がったのが簡単に手に入る。ただ、不法パーソナルの場合でしたら、五ワットの出力でチャンネルがちゃんと所定のところにはまっている部分を改造いたしまして、そして出力を十倍くらいに五十ワットまで上げちゃうとか、十倍くらいのところに周波数帯域の幅を広げて使う、こんなことで大変遺憾なことでございます。  私ども、今全力を挙げてこの対応をいたしておるわけでございますが、ただ、人数につきましては、やはり全体の定員削減ということは避けられないことでございまして、正直申して少しずつ人数は減りぎみになっていることは否めないわけでございます。しかし、事は日本社会秩序全体に与える影響は大変でございますので、さらに新しい設備等の投入、近代的な設備、とりわけ近畿の方などは関西空港の建設等も予定もされますので、いろいろな面でこうした不法無線がはびこらない対策をさらに検討を加えて、より強固なものにする必要があると考えております。
  72. 菅野悦子

    ○菅野委員 今のお話で具体的な数字が出なかったのですけれども、実態としてはやはり減っているというのが率直に言ってあるわけで、この質問の前にお聞きしたときの御回答では、昭和五十六年千八百十一人の数が、平成二年では千六百五十二人ということで、この十年間に無線局は三倍以上になっている、にもかかわらず定員は一〇%近くも削減されている。違法の手口とか機械の巧妙化は相当なものだというのが実態だと思うんですね。特に、関東と近畿について調べてもらいましたけれども、直接この電波監理に携わっている職員というのは、関東では五年間で八十六人から八十人に減っている。今も言われている違法が非常に多いという近畿なんですけれども、四十七人から三十七人というふうに相当減っているわけなんですね。これでは、現場の職員が幾ら頑張っても、とてもじゃないけれども追いつかぬと思うんですよね。  先ほどの電波政策懇談会の報告では、電波利用はこれからも飛躍的にふえるから行政経費も増大する、だから利用者からもお金を取るというふうな論理のようなんですけれども利用者として電波料を払うということになりますと、これを直接払うのは通信事業者とか放送事業者になりますけれども、それは結局料金値上げという形で国民が負担することになるだろうというふうに思うんです。  ということになりますと、これはよく考えますと、政府は、無線局の急増とか電波利用の多様化、さらに違法無線の悪質化、これを横目で見ながら電波監理の体制をどんどん減らしてきた、そして、そうしておきながら大変だから新たな負担をしてくれというふうなことになるんではないか。これでは国民はとても納得しませんよと私は思うんですけれども、この点どうでしょうか。
  73. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 今のこの電波の基本の法律は昭和二十五年に制定されたわけでございまして、それまでは、電波は政府これを管掌すということで政府の機関以外は電波は使わなかったわけでございますが、戦後の民主化ということの中で初めて電波を広く民間にも開放しようということで、それで御案内のとおり昭和二十八年には全国にたくさんの民放が生まれました。そしてまた、電力とかガスとか、そういうライフラインに直結するような公共的な電波というものも確かにそれから次第に使われてまいりました。  しかし、昭和六十年の改革のような形で、電波をこうした通信ビジネスに使うということは電波法はまるっきり予定をしていなかったわけでございます。先行きまだまだ放送を含めた新しい電波事業というのがどんどんふえるであろう。そうした状況の中で電波政策懇談会にお願いいたしましたのは、やはり今の枠組みの中で、新しい二十一世紀を迎えるのに今の仕組みで十分だろうか、我々としても大いに考えなければならぬけれども、識者の意見をぜひひとつ御議論いただきたいということでまとめていただいたのが、先月出ました御指摘政策懇談会のレポートでございます。  その中に、いろいろなことの提言がございますが、今お話しの電波に関する利用の問題は、世界各国でもいろいろこうした制度というのはあるようだ、このまま放置をしておくと、もし十分な経費がかけられないと日本情報化社会の進展に大変重大な影響を与えないか、大いにその財源確保に努めろ、しかし、なかなか日本の構造では、急に一挙に今までの仕組みを簡単に変えるわけにもいかないだろうから、そうとすれば世界各国で行っているような受益者負担という考え方を導入するということも大いに検討課題ではないか、こういう御提言がございまして、具体的なことはこれからのことでございますが、経過はこういう事態に相なっておるということを申し上げたいと思います。
  74. 菅野悦子

    ○菅野委員 とても国民を納得させる答弁ではないと思いますが、この問題は今後も大きな問題になるだろうと思いますので、もう時間もありませんし、より立ち入った議論は今後に譲りますけれども、ぜひこの点については引き続きよくお考えいただきますようにということを申し上げて、終わりたいと思います。
  75. 野中広務

    野中委員長 次に、中井洽君。
  76. 中井洽

    ○中井委員 法案について、幾つかお尋ねをいたします。  大変な設備機械が新しい制度導入によって要るわけであります。これらの設備機械日本製の世界における水準というのはかなりレベルの高いものだと私ども考えておりますが、そのように考えて間違いありませんか。
  77. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 このGMDで予定されている機器種類は十数種類になりますが、こうした 機械の相当多数は日本のメーカーがそれなりの実績を上げている分野だと承知をしております。日本ばかりではございませんことも、もちろんであります。
  78. 中井洽

    ○中井委員 移行するのに七年の月日を置きます。それぞれの船舶等がこれらの新制度にきっちりとはまっていくのに、大変な設備投資等が要るわけであります。日本の場合には何とか法律を守ってやっていただけると思いますが、他の国々ではなかなかということもあろうかと思います。そういうことに際して、日本技術的あるいはまた資金的な援助といったことも要求されたりしていかなければならないのではないかと考えますが、いかがですか。
  79. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 お話のように確かに日本だけがこう素早く対応してみたところで、これは世界的なシステムでございますので、全世界が足並みをそろえて、先進国といえども発展途上国といえどもやってまいりません限りはせっかくの設備が生きてこない、これは御指摘のとおりでございます。ただ、各国のそれぞれの経済事情なり置かれている環境がございますから、そういう意味で、すぐに一挙にまいるというのは非常に困難だということで、まず七年設けられた。その七年も、具体的な機器の態様によってできるだけ導入しやすいような手順を考えて、条約が定められておるわけでございます。  私どもとしては、やはりこうしたものをスタートさせる以上、条約で決まりました以上、ITUという国際電気通信連合では常時顔を突き合わせていろいろな議論をいたしておるわけでございますから、そうした国際協調というのが大変大事だろう。同時に私どもの、これは日本全体でございますが、ODAという形で世界の平和に貢献するという役割もございます。あるいは、日本の持っている技術を十分移転させるということも、これまた必要なことだと存じておりますので、いろいろな場面を通じて、途上国もできるだけ早急な整備ができるようにこれからも頑張ってまいりたい、こう思っておるわけであります。
  80. 中井洽

    ○中井委員 ぜひ御努力いただきますよう、要望しておきます。  二つ、細かい点でお尋ねをいたしますが、一つは、この法律は平成四年二月一日から施行する、こうなっております。二月一日からというのは非常に変わった施行日だなと、ふっと思いました。こういう日にちになったのは何か理由がありますか。
  81. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 これはもともとSOLAS条約でございまして、その条約の発効日が九二年つまり来年の二月一日ということになってございますので、今回の電波法でもその期日から発効させていただきたい、こういうふうにお願いをいたしておるところであります。
  82. 中井洽

    ○中井委員 私、何年前でしたか忘れたのですが、この電波法改正のときにも少し申し上げたのでありますけれども日本電波法に関する法律あるいは政令、大変細こうございます。局がどんどんふえておる、そして、それを監理する役人さんは余りふえないという中で、あんな膨大な細かい政令をつくってどうするんだと申し上げたことがあります。例えば無線日報なんというのがありまして、毎日何回やったかというのを書けとか、どこへやったか書け。例えばタクシーなんか、あれだけ連日やっておって、そんなものを書くはずがないのに、毎年出さす。出させた紙をどうするんだ、膨大なものを積み上げておくだけだ、そういうのはどんどん見直せ、こういったことを申し上げたことがございます。  先ほどから他党の皆さん方の御議論を聞いておりますと、やはり国際条約の中で意外とあっさりとやっていこう、機械信頼を任してやっていこうという方向が出ておる。日本役所というのはどうも、国内で僕らが言うとちっとも言うことを聞かぬけれども、海外から言われたらすぐあっさりと変えてしまうという悪いところがございます。これを見ておりましても僕は素人ですからわかりません。例えばこの無線従事者の中で第一級海上無線通信士から第四級まである。その上にまだ政令で定める海上特殊無線技士なんというのまである。どうしてこんなに細かくやっていかなければいけないのだろう。このように考えます。  そういった意味で、大事な行政また難しい行政であることは承知をいたしておりますが、余り時代に適応しないような省令というのはどんどん改廃をしていく、そして、できるだけ簡便でしかも重要なポイントを押さえていく、そういった電波法であってほしい、このように考えておりますが、いかがですか。
  83. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 御指摘のように、ここ数年の移動体に対する、ほとんどは移動体でございます。つまりは、せんだって当委員会で私ども将来の光ケーブルを中心とする高度通信ネットワークの構築について法案をお願い申し上げましたが、これからの情報社会はこればかりではやはりひもつきの通信社会になってしまいますので、ひもの不要な電波に依存する通信というのもこれまた大きなキーポイントになるということでありますだけに、先ほどからも話が出ましたわけでございますが、今後のこうした電波需要に対応するためにはさまざまなことをやってまいらなければならない。  とりわけ無線局の数がふえますとするならば、これに対応する体制も十分整える必要があるわけでございまして、既にこれまでも免許の要らない無線局あるいは無線の従事者の資格の要らない機器、こうしたものもどんどんやってまいりました。しかしこの反面、先ほどのお話に出ておりますように、町で、秋葉原へ行って買ってくる、それを改造して予定外の秩序混乱を起こす、こんな問題もまた逆に頭を痛めるところでございますが、ともあれ全体として行政の簡素化ということはぜひ心がけていかなければならない。資格の面でも同様な形でできるだけ簡素化を図ってまいったわけでございますが、ただ、今御指摘の海技士というのは、これは実はSOLAS条約を受けて世界各国共通の規格でございますので、今どきという思いも十分ありましたが、これは世界の水準に足並みをそろえなければならない、そのかわり従前の資格をできるだけ減らそうということで、前回お願いしましたような次第でございます。
  84. 中井洽

    ○中井委員 時間がありませんので、過般から報告が出されました電波政策懇談会の問題について、大臣お尋ねをいたします。  この報告を受けられまして、大臣はどのような考えをお持ちであるか、まず最初にお尋ねいたします。
  85. 関谷勝嗣

    関谷国務大臣 電波政策懇談会の答申の中に、電波利用制度導入を内容としたものがございました。まだこのことにつきまして最終的な結論を出しているわけではございませんが、先ほどから委員先生方、るる御指摘がございましたように、この電波の利用に関します周辺の環境も大きく変わってきております。それは国内におきましてもしかりでございましょうし、国際的にもそういうようなものがあるというようなことでございまして、今、省内におきましてあらゆる角度から検討をいたしておるところでございます。
  86. 中井洽

    ○中井委員 お話がありましたように、報告の中身はいろいろとございましたけれども、最終的には電波利用料金を取るか取らないか、ここに絞られてくるんだ。私どもの党でも、その料金制度導入ということについて議論を始めているところでございます。  そういった観点から二、三お聞かせをいただきたいのでありますが、まず最初に、現行の電波行政費というのは大体一年間どのぐらい入り用であるのか、使われておるのか。細かい数字はわからないかもしれませんが、大まかにお聞かせをください。
  87. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 私ども郵政省の一般会計の予算というのは、平成二年度で申しますと二百六十五億円でございますが、そのうち電波の行政経費というのは、大ざっぱに申して約百三十億円でございます。そのうち百二十億円は大体人件費でございますので、残りました十億ばかりで電波 監視の設備だとかあるいは免許のためのコンピューターだとか、その他周波数資源の開発だとか、大変難しい状況の中で努力をいたしておる、こういう状況でございます。
  88. 中井洽

    ○中井委員 外国でこういう料金制度をとっておるのかといってお尋ねをいたしましたら、大半の先進諸国ではとっておられる、こういう御報告をいただいております。しかし、それぞれの国でどれぐらいの金額をどういう形でお取りになっておるのかとお尋ねをいたしましたところ、特別会計、一般会計、こういった区別では御報告をいただいたのでありますが、金額的な調査をされていない、こういうことでございましたが、もう既に調査はお済みになりましたか。お済みになっておるようでしたら、多いところ、少ないところ、二、三挙げて金額的にお知らせをください。
  89. 森本哲夫

    森本(哲)政府委員 日本でも同様でございますが、各国でもやはり周波数が大変逼迫してまいったということで、いろいろ電波の利用料問題以外に電波政策全体の見直しを今各国が進捗しているというように受けとめております。御指摘のように、電波利用料を、先進国でこれに類する制度をとっていないのはアメリカと日本だけのようでございますが、アメリカでもこうした構想について大統領府と議会との間でいろいろなやりとりがここ何年か行われているというふうに承知をいたしております。  それ以外の各国で、金額のお尋ねでございますが、なかなか各国の経理は若干複雑で、簡単にはわからないのですが、全貌はまだ今調査中でございますが、私ども今承知をしているところでは、ある国では百数十億、こうした利用料でやっているところもある、あるいはオークションという形で入札制で具体的な放送局とかを具体的に実施しておるという国もあると承知をいたしております。
  90. 中井洽

    ○中井委員 お尋ねしたいこともたくさんあるのですが、時間の関係もありますので、また次の機会にいたしまして質問を終わります。  いずれにいたしましても、この料金制の導入というのは大変新しい試みであり、また大事な制度導入になろうかと思います。十分な調査あるいは各界の意見を十分聴取されてお取り組みいただきますよう要望いたしまして、質問を終わります。
  91. 野中広務

    野中委員長 この際、委員長より一言申し上げます。先刻の秋葉委員指摘事項については、関係省庁間で十分協議の上、適切な措置を講ずることとされたい。  これにて質疑は終局いたしました。     ─────────────
  92. 野中広務

    野中委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  93. 野中広務

    野中委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  94. 野中広務

    野中委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、園田博之君外四名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を聴取いたします。上田利正君。
  95. 上田利正

    ○上田(利)委員 ただいま議題となりました電波法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     電波法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。  一 GMDSS海上における遭難及び安全の世界的な制度)の導入は、海上遭難・安全制度の抜本的改革をもたらすものであり、新システムの機能を確認しつつ、現行制度との併存のもとで円滑な運用が図られるよう万全を期すること。  一 GMDSS導入に加え、今後航空機、陸上移動体通信小型船舶等のインマルサットに対する利用の増加に応えるため、インマルサット信頼性の向上に積極的に協力するとともに、船舶地球局の機能が十分発揮できるよう整備、充実に努めること。  一 GMDSS導入により新たに設置される無線設備については、法の趣旨に沿って高度技術を十分使いこなすため、設置場所の環境確保や保全・保守に十分配慮すること。  一 船舶局における通信については、その機能が十分果たせるよう遭難通信責任者の任務に配慮すること。  一 法制度改正の具体的な実施基準を取り決める省令等の策定に当たっては、関係者の意見に十分配慮すること。  一 GMDSS世界各国で機能を発揮できるよう技術援助等の貢献に努めるとともに、船舶の測位・通信システム等、技術研究・開発に努めること。 以上のとおりであります。  この附帯決議案は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議日本共産党及び民社党の五派共同提案に係るものでありまして、案文は、当委員会における質疑の動向等を参酌して作成したものでありますから、各項目についての説明を省かせていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。  以上でございます。
  96. 野中広務

    野中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  97. 野中広務

    野中委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、関谷郵政大臣から発言を求められておりますので、これを許します。関谷郵政大臣
  98. 関谷勝嗣

    関谷国務大臣 ただいま、電波法の一部を改正する法律案を御可決いただき、厚く御礼を申し上げます。  本委員会の御審議を通じて賜りました貴重な御意見並びにただいまの附帯決議につきましては、今後の郵政行政を進めるに当たり、御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。     ─────────────
  99. 野中広務

    野中委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 野中広務

    野中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  101. 野中広務

    野中委員長 次回は、来る二十四日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十三分散会