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國松政府委員 暴力団の
実態でございますけれ
ども、最近の傾向でございますが、先ほ
どもちょっと御説明をいたしましたけれ
ども、全国の
暴力団の勢力と申しますものは、現在おおむね三千三百
団体、それから八万八千六百人ということでございまして、こうした勢力の勢力動向というものを見ました場合に、一番大きな特色となりますものは、山口組、稲川会、住吉連合という三つの大きな広域
暴力団に対して一種の寡占化が生じておるということが大きな特色であろうというように思われます。昨年末と申しますか今年の当初の
段階におきまして、全構成員の四八%に当たる者がこの三
団体の傘下に入ってくるということであります。特に山口組につきましては、昨年の初めにおきましては二万二千人程度であったものが、わずか一年間の間に三千七百人程度ふえておるというようなことでございまして、特に山口組への勢力集中というものが大きな特色でございます。
そして、こうした寡占化状況がなぜ起こってくるのかということでございますけれ
ども、そのメカニズムの根底にあるものは、要するに寡占化する方が彼らの
資金源活動にとって大変有利である、そういう状況がますます出てきたということであろうと思います。彼らはと申しますか、
暴力団と申しますものは、伝統的にはばくちであるとか覚せい剤を密売するとか、そういったようなもので
資金源を獲得しておる。こういう賭博であるとか伝統的な
資金源活動というものだけをやっております限りにおきましては、そう大きな
組織に統合されていくという必要はある意味ではないわけで、その方が都合がいいかもしれませんが余りその必要はないということでありましょうけれ
ども、最近の彼らの
資金源活動の形態が、先ほど御
指摘もありましたように、民事介入
暴力と申しますか、さらに言えば企業の経済取引活動に介入してきて
資金源活動をしていくという新たな方向に大きくシフトをしているという
資金源活動の動態が
一つ根底にあるのではないかというように思います。
そして、民事介入
暴力であれ企業の経済取引活動に介するものであれ、そういうところに彼らが出ていくという場合に、
組織の
威力を示してそういった
資金源活動をやる場合、やはり何と申しましても、大きな一種のブランドといっていいと思いますけれ
ども、大きな看板というものがあった方がいい。相手は何といっても素人さんが多くなる。昔のやくざと申しますものは、要するに一種の倫理観といたしましてかたぎには手を出さないというような、かたぎの生活には迷惑をかけないというようなことがあったわけでありますけれ
ども、彼らはその点は最近はもう全くとんちゃくのない話でありまして、むしろかたぎの生活に土足で上がり込んできて、そこで
資金源活動を行うという方向に大きくシフトをしておるわけであります。したがいまして、彼らの相手は全く
一般の市民、
一般の企業人というものになってくるわけであります。そういう場合に、
暴力的
組織の
威力を示すという場合には大きなブランドがあった方がいい。とにかく、名刺を出した場合に、おたくさんどちらさんですかと言われるような小さな
暴力団では間尺に合わない。ちょっと名前を言っただけで相手が怖がる、何となく不安を覚えるというような大きな
組織のところに寡占化をする方が有利なわけでございます。したがいまして、最近のそういういわば
資金源活動の変化というものがあって、最近山口組がどんどん肥大化をしていくという傾向が出てくる、そういう動態があるのではないかというように理解をいたしております。
そういったように、最近の彼らの動きの一番の主なところは民事介入
暴力あるいは企業の経済取引に介入してくる
暴力というようなものが大変多くなってきておるということでありまして、私
ども暴力団対策を推進する立場からは、こうした民事介入
暴力というものが増大をしていく傾向というものに一日も早く歯どめをかけませんと、これはますますその寡占化状況が進むでありましょうし、寡占化した
暴力団によるより大きな規模の
対立抗争であるとか、そういった
国民生活への侵害も起こってくるということになるのではないかというように思います。
したがいまして、
本法の一番の眼目といたしますところは、そういった民事介入
暴力、そういう方向に進む彼らの
資金源活動というのを何とか押しとどめておきたいというのが一番の眼目であるわけでございます。
その場合に、民事介入
暴力ということで、我我、
現行法をいろいろ駆使いたしまして、それを多角的に動かしまして
取り締まりをしたいと思うわけでございますが、残念ながらいろいろな意味での
制約がある。その
制約の
一つが、やはり
犯罪というもの、我々が
犯罪の捜査という手法だけで彼らに迫ろうといたしましても、例えば
一つ恐喝事件というものをとりましても、恐喝にならなければ我々は何もできないという
実態がございます。恐喝になるためには、なるほど相手をおどかすということでありましょうけれ
ども、恐喝になるようなおどかし方をするためには、具体的に相手に対して何らかの害悪の告知をしなくちゃならないというような
一つの法上の
制約がございます。そういうことは
暴力団の方が、顧問
弁護士などを抱えて、
法律の知識も最近詳しくなっておりますから大変巧妙になってまいりまして、具体的なことは何も言わぬでもその
目的を達するような方法でやってしまうということが非常に多くなってきておる。
そういうところがありますものですから、最近はいろいろと民事介入
暴力が大変ふえておる。相談件数も二万二千八百件、十年前の二・三倍というような形でふえておるにもかかわらず、その中で相談を基準にして検挙できるのは一千件足らずというような形で、なかなか間尺に合わないような状況にある。それを何とか別の形で、恐喝にならないような巧妙なやり方につきましても、私
どもの方が何とか寄りついて
取り締まりをしていく方策はないものかということで、とつおいつ考えて成文化をいたしましたのが
暴力的要求行為の
禁止、それに対する
措置命令というような法規になるわけでございます。そういったことを考えつきました
背景につきましては、そういった民事介入
暴力の非常な増大というような動向があります。これが第一でございます。
それから第二は、今のと連動するわけでありますが、そういう寡占化の傾向をたどる
暴力団同士の間の
対立抗争が起こる確率が非常にふえてきておる。今まではローカルな形での縄張り争いというものは、例えば、
一つの市なり町なりの中で小さな
暴力団がお互いにけんかをしてそれで終わりというようなことがあったわけでありますが、寡占化をされた
暴力団同士の
対立抗争ということになりますと、片田舎で抗争が終わりましても、それがどんどん上に上がっていきまして大きな
組織同士の闘いになっていくということがありまして、これからそういう
対立抗争が大変急激に全国的に広がるという危険性はいまだかつてなく高まっておるという状況があるわけでございます。そういった
対立抗争というものにつきまして、我々は何とか手を打っていかなければならないわけでございますけれ
ども、その点につきましても
現行法は若干間尺に合わないところがあるわけであります。
したがいまして、今回はある程度限られた形ではあるかもしれませんけれ
ども、先ほど先生御
指摘になりました秋田での大変大胆な判決
理由をけさ新聞で見まして、私もある意味では大変意を強うしたわけでございますが、
一般的な
行政法規としてそこまで書くというようなことはなかなかできないのかもしれませんが、やはり
対立抗争の場合の謀議であるとか、あるいは多勢を集めて気勢を上げるとか、あるいは場合によっては凶器を保管しておくとかいったような、そういう拠点に利用される
暴力団の事務所につきましてある程度の制限をかけていくということがどうしても必要ではないかということで、この
新法におきましても、そういった
暴力団の事務所に対しましての使用制限というものをやっていこうという発想になったわけであります。
それからもう一点、これは
暴力団情勢そのものではございませんが、関連する話といたしまして、そういったように最近の
暴力団情勢を見ますと、
市民生活への影響というのが非常に高まっておるわけでありますけれ
ども、そういった場合、もちろん真っ先に
警察がやっていかなければならない、
警察の
取り締まりというのが先行すべきである、
警察が先頭に立って闘うべきである、これは論をまたないところでありますけれ
ども、やはり
一般市民の
方々、
一般の
国民の
方々が
暴力団問題というものにつきまして、もう少し意識を高めていっていただいて、お互いに団結をしていただいて、
暴力団被害に遭ったものについてはお互いに、相互に共助し合って助け合っていく、援助し合っていくというような仕組みを今まで以上につくっていくということがありませんと、最近の
暴力団情勢になかなか
対応できないのではないかという問題意識が
一つあるわけでございます。
そういったことから、現在いろいろな県におきまして自発的にと申しますか、県民の総意として、
暴力団排除のための県民
会議といったような
組織がいろいろな形でできてきておるわけでございますが、全国的に見ますとまだまだ、全国では七つぐらいしかそういった県民
会議、財団法人というような形でもないというような形で、若干全国的なばらつきがあるというようなところもあるわけでございますので、そういったものをもう少し各県で自発的な形でいろいろな
暴力団排除のための
組織をつくっていっていただく、そういう機運を高めるために、何か各県にできますそういった民間の公益法人につきまして我々が関与をしていけるような仕組みをつくるべきではないかというのがありまして、今回、
暴力団の追放に関しまする各県のセンターといったものをつくっていただいた場合には我々がそれを
指定するという仕組みをつくっていくべきではないかというようなことでございます。
大きく分けますと、
暴力団情勢に絡みまして我我の
対応を申しますと以上のようなことでございますが、それに加えまして、私
ども新法の運用の
過程で大いに期待をいたしておりますのは、少年の加入をある程度制限をしていくという
規定を盛り込むことができましたので、これを何とか有効に運用してまいりたいということでございます。
現在までのいろいろな調査によりますと、若干の数字は違いますけれ
ども、二十歳未満の
段階で
暴力団に加入をする少年というのは全加入者の大体三分の一程度になるということで、まことにゆゆしい問題でございます。何とかこういった傾向に歯どめをかけると申しますか、少年
たちが安易な形で
暴力団に加入していくようなことを阻止をするといいますか、させないようにするために、今回できました
暴力団への少年、あるいは成人も同じでございますけれ
ども、加入強制の
禁止という
規定を有効に活用いたしまして、その点のところも十分に目配りをしながら、何とか
暴力団の人的な供給源を断ってまいりたいというように考えておるところでございます。
なお、先ほど御
指摘がございました、今申しましたような
暴力団の
実態につきましての広報をもっと大いにやるべきではないかという御
指摘がございまして、まさにそのとおりでございます。お手元にございましたようなパンフレットも、先ほど申しました県民
会議といったような席におきましてはその
関係者に大いに配りましてPRに努めているところでございますけれ
ども、今後も折に触れまして、適切なパンフレットその他の広報
資料をつくりまして、
国民の皆様方に
暴力団の
実態というものをもう少しよく知らしめていくという努力を続けてまいりたいと思っております。