○米原
参考人 ただいま御紹介にあずかりました米原でございます。私は、大阪府茨木市にある追手門学院大学に勤務いたしておりまして、
財政学、
地方財政論、租税論等の研究をいたしております。本日は、
衆議院地方行政委員会の
先生方の前で
地方交付税法等の一部を
改正する
法律案につき
意見を述べる機会を与えていただきましたことを大変光栄に存じております。もっとも、この
法律案の
内容は私
ども素人にとりましてかなり難しいもので、十分に理解しているかどうか自信はございません。もし間違っておりましたらお許しをいただきますとともに、また後で御訂正のお教えをいただきたいと思います。
そういうわけでございますけれ
ども、一応私は、今回の
改正案の骨子は次の四
項目にあると理解しております。
第一番目は、交付税の
総額を
特例措置で五千億円
減額する、また交付税特会の借り入れの元利支払いで一兆一千三百四十六億円
減額するということ、これが第一
項目であると思います。それから二番目は、
基準財政需要額の
算定方法を改めるということ、これが第二点目です。それから第三点目は、新産業
都市建設及び工業
整備特別
地域整備のための国の
財政上の特別
措置に関する法律に基づく都道府県債に対する利子補給を少し減らす、また、この法律に基づいて
市町村の行います補助事業の
補助負担率の計算において、
財政力で
調整する割合を少し多くする。それから四番目は、首都圏、近畿圏及び中部圏の近郊
整備のための国の
財政上の特別
措置に関する法律に基づく都府県に対する利子補給をまた同じように少しだけ削減する、また、これに関する
市町村に対する補助事業の補助率を前項と同じように
財政力で
調整する割
合を少しふやす。大体この四
項目が今回の法律
改正案の骨子である、このように理解しておるわけでございます。
一番目の
交付税総額を
減額するという
項目でございますが、これはまた中身が三つに分かれておりまして、第一番目は、交付税特会の
元利償還で一兆一千三百四十六億円減らすという点でございますか、これは私の理解しておるところでは、借り入れをいたします時点でこういうふうにお返ししますというルールがあって、そのルールに基づいて借金をお返しするということでございますから、当然のことではなかろうかと思っております。
それから、
交付税総額を
減額する中の二番目と三番目は、特例に基づいて以前借りておった分をこれも
返済する、そのうちの一つは、
昭和六十一
年度の
補正予算で
所得税と
法人税が
減額され、それで
交付税総額も減るというふうになったときに、減るのは困るので借り入れで賄い、その
減額はやめておこうというようなことで借り入れした分だと思います。これは国が
返済すべきものだというふうになっているのだと思いますが、今回は、
地方がちょっと肩がわりしてお返ししてあげよう、しかしその分は後で国が交付税の
増額ということでまた
地方の方へお支払いいただく、こういうものであると理解しております。したがいまして、これは国と
地方との間の資金の融通をされておるということと理解してよろしかろうと思っております。
このように国と
地方との間で資金の融通を行われるということは決して悪いことではないので、望ましいことではないだろうか。やはり国の
財政、
地方の
財政、両方一体となって協力し合い、一方で
財政資金が逼迫すれば片一方がお助けするというルールは今後も守っていただいて、協力しながら
我が国の
財政運営がスムーズにいくようにしていただくということがいいことではないだろうかと思っております。
それから三番目も同じようなことで、
昭和六十
年度の
地方交付税の
総額が減りましたときに、これも減るのをちょっと食いとめようということで借金なさった。これは
地方が
返済する分ということになっておったと思いますが、こういう借金の
返済も、資金的に少しでも余裕があるときは借金は一日でも早く返すのが人の道ではなかろうか、こういうふうに思いますので、今回お返しなさるということはそれなりに筋が通ったことだろうと私は理解しております。
それから、大きな
項目の二番目の
基準財政需要額を
改正なさる、
算定方法を
改正なさるというのは、これは毎年行われておることでございますので、物価の変動、それからまた行政の重点の置き方が変わる、また、その他いろいろな事情で毎年お変えになられるということも当然のことでございまして、
内容を拝見させていただきましてもそう問題はないように思いますので、大変結構なことではないかと思っております。
それから、三番目と四番目の都道府県に対する利子補給の割合を少し減らすとか、
市町村に対する補助率の
算定で、
財政力で変える割合を少し大きくするというお話でございますが、これは非常に細かなテクニカルな問題でございまして、これが望ましいとか望ましくないとかいうようなことを判断いたす材料を私は持っておりません。そう問題があるようにも思えない、ただそれくらいでございます。
以上のような考え方をいたしておりますので、今回御審議いただきます
法律案は特に反対すべき理由もないし、大変結構なものではないかというふうに理解しておる次第でございます。
そこで、少しばかり今後の
地方行政に関しまして私が常日ごろ思っておりますことを述べさせていただきたいと思いますが、今、日本の
地方行政で一番大きな問題は過密過疎の問題ではないかと私は思っております。
釈迦に説法で
先生方よく御存じでいらっしゃると思いますけれ
ども、現在、この東京を中心といたします一都三県に人口でいえば三千二百万人、日本の全人口の四分の一を上回る人が住んでおります。面積はたった三・六%でございます。しかもこの三・六%の
地域に毎年三十万人以上の人口増加が起こっております。この三十万人以上の人口増加というのは、日本全土の人口増加の半分を超えるほどの人口増加がこの狭い
地域だけで生じているわけでございます。
また経済的な面で申しますと、この一都三県では、法人所得の全国の半分以上、五〇%を超える割合。それから
国税収納額で見ましても約半分、六十一
年度で四六%でございます。それから
地方税収にしましても四〇%がこの一都三県だけで生じている。さらに株式の取引額であるとか手形の交換高であるとかいうことになりますと、これはもう全国の八割から九割がこの
地域だけということでございます。
他方、御案内のように過疎
地域は面積で申しますと日本全土の四六%、約半分を占めるのですけれ
ども、人口はわずか六・七%、しかも今でも減っておる。特に深刻な問題といたしましては、御案内のようにお嫁さんに来ていただく女性の方がいらっしゃらない、若い女性の方がいらっしゃらないので人口はますます減る、こういうことでございます。
国土の均衡ある利用ということから申しまして、このようなことが今後も日本全体でどんどん続いていくということが果たして望ましいのだろうか。この点はぜひ
先生方に今後の日本のあるべき姿としてお考えいただきたい点であると思っております。
この過密と過疎とを交付税の面から見ますと、交付税というのは結局は大
都市、過密の
地域で徴収しました税金を過疎の
地域に持っていって配るというのが粗筋でございます。今は特に問題にはなっておりませんけれ
ども、過去しばしば
都市住民が、自分たちが汗水流して働いて払った税金が自分たちのためには一向に使ってもらえない、全部田舎の方に持っていってしまう、けしからぬじゃないか、これは不公平じゃないかというような声を上げることもあるわけでございます。
それからまた第二の
問題点は、こうして田舎の方にたくさん交付税が行くわけでございますけれ
ども、田舎の行政効率が現在のところ残念ながらそれほどよろしくない。類似団体別
市町村財政指数表というのがつくられておりますが、最新版で六十三
年度の決算を見せていただいたのですけれ
ども、類型0―0の町村といいますか田舎の小さい過疎
地域にあるようなところでは、人口一人当たりの歳出額が七十六万六千円という数字になっておりました。これは、
都市の人口二十万ぐらいのところの代表的なものとしての類型Ⅳ─5というのがございますが、そこで見ますと一人当たり歳出額が二十四万三千円。ですから、類型0―0の町村の一人当たり歳出額は大体三倍ついているわけです。三倍ぐらいついているから非常に行政水準が高くていいかというとそんなことはないわけでございます。結局これは非常に効率が悪い。金はつぎ込むけれ
ども、その割には行政水準は上がらないというのが過疎の
状況でございます。やはり私は、こういう
状況は
先生方のお力をかりましてぜひ何とか解決していただきたい。いわゆる過疎地帯と申しますか田舎の行政効率を上げるということは今後ぜひお考えいただきたい問題であると思います。
それから過密の問題となりますと、やはり今は土地問題であり住宅問題であると思います。これを解決していただきますためには、どうしても
都市近郊に大量の住宅地をどんどんおつくりいただき、またつくっていただいた住宅地と都心とを結ぶ道路、鉄道を大々的につくっていただくということに御努力をいただきたいと思います。
土地問題につきましては、ここにいらっしゃる塩川先生等も御努力いただいて地価税という法案ができまして、今御審議いただいて、多分できることだと思っております。あれも一つの政策手段と申しますが、残念ながら私はあの税というのはそれほど効果があるとは思っておりません。一般庶民が大
都市でなるべく広い住宅を安いコストで
持つ、ないしは借りるということについてはそんなに効果があるとは思っておりません。やはり土地問題というのは、実物の、現実の宅地をたくさんつくっていただく、しかもそれを安い値段で売っていただくというふうにしていただくのが一番であると思っております。また、税で土地問題を解決していただくにしても、塩川先生等もまだ十分御議論いただいていないかと思いますが、特別土地保有税とか低未利用地税とか、さらには固定資産税、
都市計画税といった税もございまして、それをまた今後も御
検討いただくということも非常に重要なことではないかと私は思っておる次第でございます。
少したわいないことを申し上げましたけれ
ども、私は日ごろ今の
地方行政で一番大切なのは、何とか過疎過密を解決していただき、よりよい、より住みやすい日本の国土を建設するように
先生方に
お願いしたいと思っておりますので、若干つまらない
意見を申させていただいた次第でございます。お聞き苦しい点も多々あったかと存じますが、何とぞお許しをいただきたいと思います。
それでは、これで私の陳述を終わらせていただきます。