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橋本国務大臣 これは先ほど千野
局長から御答弁を申し上げました
内容にも関連をするわけでありますが、今御指摘をいただきました問題、日本はそれぞれ独自の主張を持ち、今日国際的な
論議の中に参画し日本としての主張を続けております。そして、その意味におきまして、先ほど
委員の引用されました論文、必ずしも正確ではないという千野
局長の見解に私も同意をするものであります。
そこで、まず第一点に御指摘のありましたIDBにおけるアメリカの中南米支援の構想について日本がとった対応と同時にヨーロッパの対応の違いということでありますが、現在、欧州諸国の関心が中・東欧の
経済改革とその延長線上に視点を据えた対ソ
経済支援というものにある
程度固定してきておるという
状況は、
委員がよく御承知のとおりであります。もっと露骨に申しますならば、ヨーロッパ勢は中・東欧の
経済改革とソ連というものに手いっぱいであり、他の
地域に対しての関心をある
程度薄めている、率直に申し上げるならそういう見解が言えると私は思っております。
しかし、中南米という
地域を考えますと、日本の多くの方々が既に百年以上前から移民として渡航しそれぞれの
地域において温かく受け入れられ、そしてそれぞれの
地域社会において
それなりの地歩を占めて活躍をしている
地域として、地縁という意味からも、また歴史的なかかわりからも、日本にとってアジアに次いで関連の深い
地域の
一つであります。そして、我々として域
外国としてはIDBにおきましても第一位の出資国であります。そうして今日、例えば麻薬問題
一つをとりましても、世界的な麻薬問題を考えます場合に、中南米の諸国における麻薬生産というものをたたきつぶさなければ麻薬問題の解決はございません。そして、
我が国自身がその汚染に目下非常に神経をとがらせております。そうしたことを考えますとき、我々は中南米に対してやはりできる限りの支援は考えていくべきであると思いますし、先般の日米首脳会談におきまして総理もそうした意図表明をされました。私も先日の総務演説としてそうした意図を表明し、この
内容は今後詰めてまいりたいと思います。
私は、ヨーロッパの諸国も最終的には協力をしてくれると考えておりますが、この問題につきましては、どちらかといいますと日米が共同して欧州を説得するという構図になるでありましょう。
しかし、二点目に指摘をされました公的債務の問題につきましては、私
どもは残念ながら今日までアメリカ及びヨーロッパ勢とその見解を異にいたしてまいりました。
この問題が
提起をされましたのは、昨年のヒューストンにおけるサミットの際、蔵相レベル会合、さらに首脳レベル会合において
提起をされた問題であります。そうして、その時点におきましては、大陸諸国という言い方を使わせていただきたいと思いますけれ
ども、大陸諸国の主張と、日本の主張をサポートするアメリカとの間に意見の差異がございました。そして、東欧の改革というものをまとめ上げるために公的債務の削減あるいは放棄が必要であるとする大陸諸国に対し、公的債務の削減あるいは放棄をした場合、日本のシステムの中でいくならばニューマネーの供与はできなくなる。放棄をいたすお金は
国民からお預かりをしたお金でありますから、その放棄を強要されるような場合、そこに新たな
国民からのお金を投入することはできません。しかし、そういう国は、よく考えてみれば、
民間からのニューマネーの供与が難しいからこそ実は公的
資金によるニューマネーの供与が行われてきたのが実態でありまして、果たして、公的債務の放棄あるいは削減という事態になり公的なニューマネーがストップいたしました場合、
民間からニューマネーが入るでしょうか。私
どもは、それぞれの国の一時的な債務の増加がその場合生じるにしても、ニューマネーが供与され続けることによりその国の
経済復興、
経済改革は順調に進展し得る、すなわちそれだけの誇りを持って今日までニューマネーの供与をいたしてきたつもりであります。これが真っ向から否定されるような主張は我々としてはとれません。そしてその
考え方は今日も一歩も変わっておりません。
ただ、たまたま今
委員が例示に挙げられましたポーランド及びエジプトにつきましては、パリ・クラブの
論議におきまして、元本の放棄あるいは削減という手法ではなく、例えば利払いの
軽減等といった他のオプションが加わりましたので、私
どもはその五〇%を限度としてこの二国に限り行おうとするパリ・クラブの意見に同調はいたしました。しかし、これにいたしましても、例えばアメリカは七〇%以上の、あるいはフランスも同様のことを言っておりますが、公的債務削減を行うと現在発表いたしておりますけれ
ども、我々は五〇%以上の放棄はできません。これは米欧と私
どもが真っ向から対立をいたしております。
また、対ソ
経済支援は、ヒューストン・サミットの際にも、首脳レベルでも、また蔵相レベルでも激しい議論が行われた最大のテーマでありましたけれ
ども、そのヒューストン・サミットの
結論として、首脳間におきましては、IMF、世銀、OECD、そしてEBRDの国際四
金融機関によりソ連
経済の分析を行い、その分析の結果において今後の対応を考えるという
合意になりました。そうして、その結果出ました四機関の年末における報告におきましては、例えば連邦と共和国の関係等さまざまな
部分について
改善が加えられない限り
資金協力は効果がないということでありまして、その他の面における協力をこそ行うべきである、すなわち、
経済協力については極めて消極的なリポートでありました。そして、それを受けて本来なら一月の二十日の夜からG7においてこの問題が
論議をされるはずでありましたところ、バルト三国における二国目の武力行使という事態が発生をし、各国がこの問題を先送りにするということで
論議が停止をいたしております。恐らく、このEBRDの創設を控えた今週末から来週初めにかけての時期において、仮にもし
国会の御了承が得られ私も参加をいたすことになりました場合には、G7の大蔵
大臣間におきましてこうした問題について
論議の場はあろうかと存じます。
しかし、この四機関リポートに書かれております問題点は今日なお解消しておらないわけでありますし、加えて、日本は北方領土の問題という固有のソ連との間における障害を抱えております。日本の
立場といたしましては、この問題が解決しない限り
経済支援はあり得ないということが従来からの主張でありましたし、基本的にはその条件は変わっておらないと考えており、その上に国際的な対ソ
金融支援というものに対して、昨年非常に積極的な
論議が行われていた時点と雰囲気が変わっておる中で、各国と相談をしながら
努力をしていかなければならない、そのように考えておるところであります。
それぞれの問題について、我々の主張は各国のうち
特定国と合致し他の国と相反する場面がしばしばございます。それはまさに日本が日本としての主張をしておるという証左として受けとめていただきたい、私はそのように思います。