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1991-03-13 第120回国会 衆議院 大蔵委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月十三日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 平沼 赳夫君    理事 尾身 幸次君 理事 大石 正光君    理事 田中 秀征君 理事 村井  仁君    理事 村上誠一郎君 理事 中村 正男君    理事 早川  勝君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    井奥 貞雄君       石原 伸晃君    岩村卯一郎君       衛藤征士郎君    狩野  勝君       金子 一義君    河村 建夫君       久野統一郎君    戸塚 進也君       中西 啓介君    萩山 教嚴君       細田 博之君    前田  正君       柳本 卓治君    山下 元利君       大木 正吾君    北沢 清功君       佐藤 恒晴君    沢田  広君       仙谷 由人君    筒井 信隆君       富塚 三夫君    細谷 治通君       堀  昌雄君    前島 秀行君       渡辺 嘉藏君    井上 義久君       宮地 正介君    正森 成二君       中井  洽君    菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  持永 和見君         大蔵大臣官房総         務審議官    濱本 英輔君         大蔵大臣官房審         議官内閣審議         官       日高 壮平君         大蔵省主計局次         長       藤井  威君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         国税庁次長   福井 博夫君         国税庁税部長 山口 厚生君         国税庁調査査察         部長      龍宝 惟男君  委員外出席者         環境庁企画調整         局地球環境部環         境保全対策課長 柳下 正治君         外務省北米局北         米第一課長   田中 信明君         外務省経済協力         局政策課長   林   梓君         通商産業省貿易         局輸出課安全保         障貿易管理室長 上田 向祥君         通商産業省立地         公害局環境政策         課公害防止指導         室長      湯本  登君         建設省建設経済         局宅地開発課宅         地企画室長   木村 誠之君         建設省都市局都         市計画課長   林  桂一君         参  考  人         (住宅都市整         備公団理事)  安仁屋政彦君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ───────────── 委員の異動 三月十三日  辞任         補欠選任   中西 啓介君     金子 一義君   小野 信一君     北沢 清功君   渡辺 嘉藏君     前島 秀行君 同日  辞任         補欠選任   金子 一義君     中西 啓介君   北沢 清功君     小野 信一君   前島 秀行君     渡辺 嘉藏君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)      ────◇─────
  2. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより会議を開きます。  内閣提出租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。
  3. 仙谷由人

    仙谷委員 租税特別措置法の問題に入る前に、一問だけ経済見通し雇用者所得関係についてお伺いいたしたいわけでございます。  これは多分経済企画庁がお出しになった九一年度政府経済見通しの指標ということでございますが、GNP名目で五・五%、それから実質で三・八%の成長を見込んでおる、こういうことでございました。消費支出実質で四・一%、それから民間住宅伸び実質でマイナス二・七、それから民間企業設備投資、これが実質で六・八、名目では七・九ということになっておるわけであります。  ここ一カ月くらいの新聞の経済面をずっと拝見しておりますと、民間設備投資というものが落ち込んでおる。どうも前年比あるいは十一月の水準等に比べても容易に回復しないということが統計上出ておるようでございます。一方、個人消費は堅調を続けておって、特に湾岸戦争終了ということで、これはほぼ間違いなく伸びるであろう、こんなことが書かれておるようでございます。どうしても九一年度経済というものは、個人消費に引っ張らせるといいますか、そこのところに相当重点を置いていかないと、この三・八%のGNP成長というのは達成できないのではないかというふうに素人ながら考えるわけでございますが、その点いかがでございましょうか。
  4. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 別に仙谷委員見通しに対して異論を唱えるつもりはありません。ただ、私は簡単に申し上げて、政府経済見通しで想定しております実質経済成長三・八%程度というものは、十分達成可能だと考えております。同時に、今委員がお述べになりましたように、個人消費が堅調であることはそのとおりでありますが、企業における設備投資にいたしましても、確かに日本経済最盛期とでもいいましょうか、ここしばらくの非常に強い、むしろ多少過熱ぎみ投資と言いたい状況から見ると、スローダウンしていることは事実でありますけれども、なお非常に強い足取りであるということには変わりはございません。  殊に、湾岸危機というものが比較的早期に終結をし、先行きへの不透明感というものが解消されることが期待されているという状況の中で、今後におきましても日本経済としてはなお内需を中心とした自律的拡大を十分に続け得る、そして、その牽引車という言い方は必ずしも適当ではないかもしれませんが、個人消費とともに設備投資もその役割を十分に担ってもらえるもの、私はそう考えております。
  5. 仙谷由人

    仙谷委員 そこでお伺いをしたいわけでございますが、余り深くお考えにならないで、純経済的にお答えをいただければいいというふうに考えておるのです。  一方では、きょうの日経新聞を読みましても、通産大臣金利引き下げを、設備投資関係なのか運転資金関係なのかわかりませんけれども、どうも金利引き下げをしてほしいようなことを言ったということが報道されておりました。一方では、人手不足でどうしても賃金といいますか、こういうのが上がらざるを得ないという市場の原理というのもあるのかもわかりません。そういう前提を踏まえて、ことしの経済成長率を達成するといいますか、バランスよく達成するというために雇用者所得増加率はどのぐらいが望ましいのか。これはいろいろ労使の問題はございますけれども、そういうことを抜きにして、純経済的にお答えをいただきたいと考えます。
  6. 濱本英輔

    濱本政府委員 お答えを申し上げます。  政府経済見通し三・八%を達成いたしますために、先ほどからお話が出ておりますように、個人消費の堅調な伸びを期待するところでございますが、そのためには雇用者所得伸び、それから物価の安定が欠かせないと考えております。  雇用者所得伸びとしまして、平成年度政府経済見通しにおいてどの程度のものを見込んでおるかということでございますけれども、六・五%程度伸びを見込み、これを前提に三・八%の成長率を算定しておるわけでございます。
  7. 仙谷由人

    仙谷委員 それでは、租特関連ということで大蔵省の御意見を伺っていきたいわけでございます。  まず、基本認識といたしまして、やはり今ほど日本の国際的な地位あるいは役割が問われ、あるいは、私は貢献という言葉余り好きじゃないですけれども国際貢献というふうなことが言われておるときはかつてないのではないか、そういうふうには認識をしておるわけでございます。  そこで、日本の国として、日本力総体として国際的に役割を果たすということは当然のことながら重要だと思うわけでございますが、その中で実は前回といいますか、昨年のこの委員会で私が橋本大蔵大臣にした質問に対する答えといたしまして、私は余りそこまで深読みをして聞かなかったわけでございますが、ボランティアというものが外国には随分ある、私どもから見ると大変うらやましいことである、宗教上あるいは地区の住民の結合意識といいますか、そういうものがあるのだというふうな御発言をいただいておるわけでございます。  それで、今度のこの湾岸危機に際しましても、一方では、やはりボランティアといってもこれはなかなか集まらないとか、直ちに役に立たないとか、こういう議論もございました。日本ボランティア組織というものが未成熟であるといいますか、ヨーロッパ諸外国等々に比べますとそれほど強力で、かつ世界的に評価され得るようなボランティア組織がないこともまた事実だろうというふうに私は思います。  しかし、一方では、そういうボランティア組織を育てる社会的、経済的、政治的環境がほとんどないから、そうなっておるのではないかというふうにも考えるわけでございます。したがいまして、このボランティア組織の問題というのは、我々が小さいころから受ける教育の問題であったり、大蔵大臣がおっしゃるように宗教の問題であったり、そういう要素も十二分にあると思いますけれども社会的なシステムとして、そういうボランティア組織が自立して活動するという環境にないのではないかというふうに考えておるわけでございます。その点大蔵大臣はどのようにお考えなのか、御意見を承りたいと思います。
  8. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 たまたま、私事にわたって恐縮でありますけれども、私の母親が病気で倒れますまで、相当長期間にわたりまして国連のユニセフ日本の受け皿に当たります日本ユニセフ協会専務理事をずっと続けておりました。そして、その関係で私もその仕事を手伝ってまいりまして、継続的に募金活動を続けるということに対して、日本の場合に非常に成熟度が少ないということを実は実感をいたしております。  そして、私自身体験の中から二つの例を申し上げますと、一つは、中国残留孤児方々日本訪問が実現をいたしまして、その第一回には非常にたくさんの方々からの善意が寄せられました。ところが、二回目になりますとそれが相当額減少いたしまして、三回目になりますと激減という言葉が当たる状態になりました。そして、それまでに寄せられました善意というものをベースにして、第一回にいただいた方々から後の方々に差が出ないような措置をしようという仕組みをつくりますとき、継続しての民間からの善意というものが非常に集まらないという実態がございました。これはお調べいただきますと、第一回の残留孤児方々日本訪問から、回数を追うごとにマスコミの扱いも小さくなりますし、世間の関心も減少していくありさまが如実に出ております。  また、北海道あるいは新潟等、ソ連からのやけどのお子さんを受け入れた例が三例最近あったわけでありますが、第一例の場合に寄せられました募金というものは極めて巨額のものに上り、これは今善意基金として発足することが可能な状態になりました。しかし、二回目にはやはり民間からの善意というものは激減をし、三回目に至ってはほとんどなかったという報道がされております。  私は、どうも日本の場合に、こうした民間善意というものを形づくっていく上で、社会そのものがまだ未成熟な部分があるという感じがいたします。そうなりますと、私はボーイスカウトでもありますし、むしろそのボランティアというものについて、例えば税制上の特典も与えられればといった気持ちが一方にはありますけれども、同時に、ボランティアという組織をどう把握し、その団体に寄せられる善意募金というものが目的どおりに使われるかということについてのチェックの機能が非常に難しい中において、一概にボランティアというものの特別な扱いが可能であろうかとなりますと、現実には非常に問題があるという気がしてなりません。  現在、任意団体でありますボランティア団体に対しましても、例えば共同募金会を通ずる指定寄附金対象であるボランティア基金などを通じ助成の道は開かれており、税制上の配慮もなされておるわけであります。現状においてはこうした仕組みを活用していき、本当に善意であり、永続性のあるものについては育成の道を講じながら、やはり社会が習熟するそれだけの時間は必要なのではなかろうか、私は率直に自分体験を通じてそのような感じを持っております。
  9. 仙谷由人

    仙谷委員 これからお伺いしようと思っていることを大分先回りしてお答えいただいたのですが、ちょっと話題を切りかえまして、ODA予算の中からNGOに対する補助が現在行われておるというふうに聞いております。この点につきまして外務省の方から、今の実態がどうなのか、それをお聞かせいただきたいと存じます。
  10. 林梓

    ○林(梓)説明員 お答えいたします。  NGOにつきましては、開発協力を行う幾つかの財団法人につきまして、外務省としては従来より補助をしてまいりましたけれども、先生御指摘のようなNGO活動重要性、それをまた育てていくことについて国民の参加といいますか、いろいろなことから非常に望ましいということで、平成年度から任意団体に対する補助金を開始しておりまして、平成年度が一億一千万円、二年度は倍増いたしまして二億二千万円、平成年度予算では二億八千万円を計上させていただいております。
  11. 仙谷由人

    仙谷委員 そこでお伺いをするわけですが、いわゆる海外援助事業を行う主な任意団体補助金が、私が聞きましたら、平均といいますか、一事業五百万円ぐらいを限度として補助金が交付されておるというふうにお伺いをしておるわけでございます。これはあくまでもどういう活動をするのか、どういう事業をするのかということが補助対象になっておって、ボランティア団体運営費といいますか事務費といいますか、所要経費補助対象なってない、こういうお話を聞いたわけでございますが、そのことについての確認と、それと、税金が要するにボランティア団体に出ていっておるわけですから、先ほど大蔵大臣がおっしゃったチェックの体制がどうとられておるのか、どういうシステムで、でたらめに使われないということを防止しながら今実務が行われておるのか、この辺をお聞かせいただきたいと思います。
  12. 林梓

    ○林(梓)説明員 NGOに対する補助金交付実績につきましては、予算が決まりますと、それらの関係のあるNGOに対しまして政府の官報を通じて通報いたします。それで早速募集の受け付けをするわけでございますけれども、その事業で、スラムの事業であるとか、託児所であるとか、僻地の巡回であるとか、農村の復興であるとか、小規模のかんがいであるとか、非常にいい仕事をしております。そういう仕事を我々はNGOに、私どものところにセンターをつくっておりまして、そこに係官を置きまして、持ってこられる事業について検討いたします。それで、通常無償資金協力とか技術協力を担当する課もございますので、そこらの意見も徴しながら、事業がしっかりしたものであるか、いいものであるかということを検討いたします。  そういうことで金額を決めるわけでございますけれども、御指摘ありましたように、NGOというのは、本来NGO自分の力でお金を集めて国民とともにやるべきということで、政府補助をするというときにもその自主性を害さない——どこまでその補助をするべきかということについて我々もまだちゅうちょがございます。そういうことで、NGOがしっかりしたNGO事業であるということを証明するためにも、そういう事務費とか経費とか日常の人件費とか、そういうものはNGOの方で今の段階では工面してくださいという仕分けをしているわけでございます。
  13. 仙谷由人

    仙谷委員 要するに、外務省から補助金を出しておるいわゆる海外援助事業をしておるNGOと言われる中に、財団法人の資格を取っておるものもあれば社団法人もある、あるいは全く法人格のない任意団体もある、こういうことだと思うのです。いずれも外務省の方から、ODA予算のうちから今年度は二億八千万、これを補助金として出しておる、そんなことだろうと思うわけでございますが、それをお伺いしますと、どうも事業自身あるいは団体自身、それほど他目的への流用とか横領とか、でたらめなことが起こっておる、そんな懸念はほとんどなくて、事業自身発展途上国から喜ばれるような事業が現在も行われておって、有効にその補助金が生かされていると私は感じるわけであります。  もしそうだといたしますと、先ほど大臣は、目的どおりに使われるかどうかのチェックが非常に難しいんだということをおっしゃったわけでございますが、税制上もある登録をさせる、そこで一定程度チェックをする、会計検査人会計報告を受ける、それでボランティア団体としての活動実績がどのぐらいあるか、例えばそういうことを要件にしながら、ボランティア団体に対する寄附金控除というものが寄附金控除の中に入ってきてしかるべきではないか、今まさにそういう時代に入ってきたのではないか、そんなふうに考えておるわけであります。大蔵大臣、どのようにお考えになるのか、御所見をいただきたいと思います。
  14. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今外務省の方から御答弁がありましたけれども、私は、外務省としてチェックしておられる。それは当然のことながら恐らく適正に行われており、その認定を受けられた団体というものについて問題が生じているとは思いません。  ただ、今はしなくも委員のお口にも出ましたように、法人格を持っているか持っていないか、これは私は一つの大きな問題点であろうと思います。言いかえれば、仮に税制上の特例措置を適用するという考え方をとります場合には、公益性を担保するという観点から、その寄附をお受けいただく側の運営組織、経理というものがきちんと行われている、それから相当と認められた業績がある程度きちんと持続されるということ、さらに受け入れた寄附金役員等の特別の利益に結びつかない、こうしたようなことは当然のことながら必要でありまして、公益法人であるということは今も実は認定一つ対象、基本的なルールであります。  問題は、そういうチェックのできない任意団体でありまして、任意団体について果たしてその寄附金に直接税制上の措置をなし得るかといいますと、私はこれには相当な問題があろうと思います。それだけに、今委員が御指摘になりましたような法人格を持つケースというものと全く任 意のグループというものについては、やはり制度の上から考え方を整理しておく必要があるのではないだろうか、私はそう思います。
  15. 仙谷由人

    仙谷委員 今大蔵大臣がおっしゃられた点を踏まえるにしても、どうもボランティア活動、あるいは海外援助活動の中でのボランティアグループの持っておる機動性、あるいは小規模での先見性というふうなものは相当重視をしなければいけないのではないか、あるいは草の根レベルでの交流というふうなものが重視されなければならないのじゃないか。  そしてもう一つは、私、ボランティアをつくづく考えますのに、善意奉仕と犠牲だけに寄りかかっているボランティアというのは、これまたもたないのではないか。せんだって私がイラクへ行きましたときに、フランスからボランティアグループが入ってきて、人質を連れてさっさと帰ったという事例がございました。よく聞いてみますと、彼らは職業的ボランティア、こう称しておるわけでございます。職業的ボランティアというのは、金もうけをするためにボランティアをやっているのではなくて、ボランティアをやっていることに何らかの手当が出る、こういうシステムがあって、そのためにフランスあたりですと国から相当多額の補助金が出ておるというふうにも聞いておりますし、税制上の優遇措置も受ける仕組みになっておるやに聞くわけであります。  先ほど外務省の方もおっしゃいましたけれども補助金の問題はボランティアグループ自立性の問題と関係するので、余り補助金が多くなると管理監督が厳しくなるということで、また動きにくいとか、政治の介入とかいう問題が出てくると思います。  そこで、どうしてもそういういろいろな条件を勘案しますと、この際ボランティア団体、特に海外におけるいろいろな援助活動を行っておる団体についての寄附金控除を本格的に検討をお始めいただきたいと思います。せんだって日笠委員質問の中にも、その趣旨の議論があったというふうに私は記憶しております。いかがでしょうか。
  16. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、委員の御主張、全く理解できないわけではありません。しかし、例えば御承知のように企業寄附の枠が与えられておりますが、現実にはそれが相当程度使い残されているというのが実態であるように、こうした行為に非常に未成熟日本、私は率直に申し上げて未成熟という言葉が当たると思います。そうした中で、ボランティアグループという善意の名前でありましても、その内容にきちんと責任の負えるものでなければ、私は税制上の優遇措置を与えることには国民の合意はなかなか得られないと思います。  その場合に、法人格を持つもの持たざるもの、それぞれの立場はありましょう。そして、先ほど申し上げましたように、任意法人格を持たないグループでありましても税法上の道は開かれておるわけでありますし、さらにきちんと認められる活動をしておられ、それが永続性のあるものとして認定された場合には、きちんと税制上の優遇措置が受けられる道も開かれておるわけでありまして、私は、現行制度すら、例えば現実企業一般的な寄附の枠が使い残されておるような状態というものについて、まずお互い考えていくことの方が必要ではなかろうか。  言いかえれば、仕組み以前の問題として、それが地域に対してであれ、あるいは地域社会であれ、国際社会であれ、お互いこれは企業個人も含めまして、要するに、善意の拠出というものが通常の姿として受け入れられる社会的な空気をつくることの方がより先決ではないでしょうか。その辺が未成熟なままで任意ボランティア団体にまで税制上の優遇措置を広げるということについては、私は少々首をひねっております。
  17. 仙谷由人

    仙谷委員 大蔵大臣のお考えと百八十度違うわけではないわけでございます。寄附金の問題についても資料をちょうだいいたしまして、おっしゃるとおりだと思うのです。ただ、これを見ますと、やはり一般寄附金というのが圧倒的に多い。つまり、指定寄附金あるいは特定公益増進法人に対する寄附金よりも一般寄附金が多い。一般寄附金も、まだ半分ぐらい限度枠の中で使い切っていないということも確かです。一般寄附金も、私などは企業から献金を受けていませんので大きい声で言えるわけでございますが、どうも政治献金の比率が多いのじゃないかという感じもいたします。  そうなってきますと、先ほどおっしゃった話の中で、どうも企業政治資金だけは出すけれども、おっしゃるように善意奉仕、福祉という方にはほとんど出していない。この辺がいびつな精神社会構造だというふうに言っていいかと思うのですが、ひとつその辺も、政府の方からの啓蒙活動がふさわしいのかどうかわかりませんけれども、私ども自身も現在の社会構造について全く思いをいたさないこともございませんので、今後ともそういう寄附金が有効に使われるように、ボランティア団体に対する寄附も重要なんだということを政府の方からひとつ宣伝といいますか、広告をしていただきたいということをお願いしておきます。  話がちょっと横にそれるわけですが、先ほど外務省お話の中で小規模無償資金協力という話が出たと思います。予算額あるいは現在の人員でどの程度の業務量を処理されておるのか、説明をいただきたいと思うのです。
  18. 林梓

    ○林(梓)説明員 小規模無償協力は三億で、平成年度予算では五億円をお願いしております。  これを始めまして途上国から大変評判がようございまして、実は我々の予算をはるかに上回る、件数でもはるかにそれを上回る要望が寄せられております。また、現地の新聞の報道ぶり等も非常に高い。したがいまして、援助の広報効果という点から見ますと、効果が非常に高いということがあります。ただ、援助は五百万から一千万と非常に規模が小そうございます。それだけにまた緊急の事態に人道的にそういうものに合わせて迅速に処理しております。  そういうことで評価を受けているわけでございますけれども、実際に現在のシステムでは、一つの案件に大きな案件と同じぐらい事務的にもいろいろ時間がかかっております。時間がかかっておるというか、労力がかかっております。そういうことで、通常の無償協力、技術協力、円借款を担当している担当官が今現地でやっております。しかし、非常に評判がいいために、相当無理をさせてそれを実施させているという状況にございます。
  19. 仙谷由人

    仙谷委員 この小規模無償資金協力というのは、要するに発展途上国現地のNGOに資金協力する、現地のNGO活動に資金で協力する、こういうことですね。
  20. 林梓

    ○林(梓)説明員 相手は現地のNGOも入りますし、地方の公共団体も入りますし、例えば学校である場合もございます。
  21. 仙谷由人

    仙谷委員 非常に評判がいいということなんですが、これは例えば平成年度予算が五億円というふうに今予算案で審議されておるということですが、概算でざっと見積もればどのぐらいの需要があるか。つまり、発展途上国からの要求をどんどんこなして処理していくとすればどのぐらいの需要があるかということなんですが、いかがでございますか。
  22. 林梓

    ○林(梓)説明員 要望は非常に多うございまして、我々に接しておりますのをざっと計算いたしますと、八百件、三十数億円の要望が出ております。
  23. 仙谷由人

    仙谷委員 時間の関係もございますので大蔵大臣の方にも要望を申し上げたいと思うのでございますが、非常に件数も多くて、ただ、外務省としては、それをこなす業務体制の人員がまだまだ不足しておるということのようでございます。これは発展途上国から非常に喜ばれておる。日本NGOが入っていっている分も大方の評価を受けておるようでございますけれども、この小規模無償資金協力というのも大変な評価を受けておるということでございますので、来年度予算の査定等々に当たりましてはぜひ力を入れて、この分についての予算措置なり人員補充の措置をおとりいただきたいと思います。  続きまして、少々環境問題について大臣にもお伺いをしておきたいわけでございます。昨年の特に日本の林業の回復といいますか、こういうことに大蔵大臣非常に力を入れていただいたということを私も仄聞もしておりますし、環境問題に大変御関心といいますか、あるいはこれについて重要視されておるというふうに伺っておるわけであります。  一方で、来年にはブラジルで地球サミット、環境開発の国連会議でございますか、これが開かれる。ことしの一月三十一日にはOECDの環境大臣会議というのが開かれたという新聞報道もございます。この辺で、いわゆる環境に対する負荷を経済システムの中へ取り込むんだというふうな、大ざっぱに言えばそういう話が出ておるやに伺うわけでございますが、一般論として、大蔵大臣、それから環境庁から来ていらっしゃる方もどのようにお考えなのか、まずお伺いをしておきたいと思います。
  24. 柳下正治

    ○柳下説明員 お答え申し上げます。  先日、一月末にOECDの環境委員会閣僚会合がございました。この会合におきましては、議論の総括としてコミュニケを発表いたしました。その中で九〇年代の環境戦略の方向づけが打ち出されたわけでございます。その中で特に大きな項目といたしましては、経済政策と環境政策の統合を図る。特に経済的な手段の活用を進めることの必要性、新しい環境指標の開発、その普及に努めること。OECD諸国内における環境政策の改善を進める。新たにOECDにより加盟国の環境政策の実施状況の審査を開始する。東欧等の開発途上国に対する環境援助の強化を図る。地球的規模の環境問題に積極的に取り組む等々の方向づけがコミュニケの中でうたわれてございます。
  25. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、現状につきまして環境庁の方から御説明がありましたけれども、実は私は、このごろ環境問題についての御論議を聞いておりますと、本当に世の中が変わったなと、非常に年寄りのような感じがしてなりません。  昭和四十五年の秋、いわゆる公害国会として名の残っております国会がございまして、そのころちょうど厚生省の政務次官をしておりまして、当時の公害特別委員会を受け持っておりましたために、ちょうど日本環境問題の一番悪かった時期、当時としては唯一被害者サイドに立つ役所の責任者として国会の御論議に参画をいたしておりました。  そして環境庁が生まれ、さまざまな対策が次々に練られてまいります中で、当時の公害特別委員会、現在の環境委員会の母体でありますが、その当時の公害特別委員会におりました者は、党派を超えて結束しながら、それぞれの党内において他の委員会方々とぶつかり合っていたという記憶を私はどうしても忘れることができません。例えば御党において島本虎三先生とかあるいは公明党の岡本富夫先生とか、そのころの仲間の顔が今でも浮かびます。  そして、その当時公害特別委員会に集まっておりましたメンバーが一番一生懸命になり、結果的に全く受け入ていただけなかった問題に公健法、公害健康被害補償制度の問題がありました。そしてその当時、何といいましてもやはり大気汚染が非常に深刻でありましたこともあり、原燃料賦課という考え方、これは公害特に集まっておりましたメンバーは皆一斉に各党の中で提起をしたわけであります。しかし、全くこれが受け入れられずに終わってしまった大変苦い記憶を持っております。  今日、例えばオランダにおいて、昨年の二月から各種の燃料に対してそれぞれのCO2排出量に 応じた課税が行われている。あるいはスウェーデンで同様の税制が本年一月から導入されている。こうした状況考えてみますと、当時の公害特別委員会に集まったメンバーの論議というものは、いわば非常に時代を先取りしていた議論であった、改めてそんな感じがしてなりません。  そうした中において、環境対策に対する税制上の措置として、我が国においてはエネルギー環境変化対応投資促進税制、あるいは公害防止用の設備の特別償却、あるいは特定の公害防止施設等に対する固定資産税の軽減などの措置を既に講じてまいりました。  今後一体どういう対応を考えていくべきなのか、これは地球環境問題という大きな問題全体の中から考えていくべきことでありますけれども、我々としては、これまでも大蔵省として適宜各国の動き等の調査はしてまいりましたが、国際的な動向にも目を光らせながら、よりよい姿をつくり出す努力をしていかなければならない、そのように考えております。
  26. 仙谷由人

    仙谷委員 大蔵大臣お答えをいただきましたので、多少その観点から質問を続けさせていただきたいと思います。  ある試算によりますと、産業革命の前と二〇七〇年という年代をとって推計をいたしますと、CO2が二倍になるというふうに言われております。それから、そのときには海水面の高さが平均四十五センチぐらい上昇するのではないかということも言われておるわけでございます。その海水面の上昇によって被害を受ける人口は世界で五億人ぐらいになるのではないか、そんなことも言われておるわけであります。原因は、もちろん化石燃料の使用と一方では大量の森林破壊であることは、先進国間ではほぼ合意がされておるわけであります。  さあどうするかというのがこれからの問題で、大臣がおっしゃったように、痛みがどこまであるのかという半分やゆ的な批判もオランダのこの環境税制、CO2の排出税についてはあるやにも伺うのですが、オランダ、スウェーデン、それからフィンランドもでしょうか、このCO2税を導入したというふうなことも伺うわけであります。  ことしの一月八日の読売新聞でございましたか、大蔵省環境税の導入の検討を始めたという記事も出ておりました。その辺、あしたからとか来年からというわけになかなかこの問題はまいらないとも思いますけれども、この地球環境問題というのも、考えてみれば焦眉の課題であるのかもわかりません。環境税的な、何を環境税と呼ぶか、これは大問題なのでしょうが、要するに化石燃料を使うことに対する賦課をして、そこから上がってくる収入を例えば森林資源の確保に使う、あるいは省エネルギー的な技術開発や代替エネルギー資源の開発等々にそれらの資金を持っていくのだ、こんな考え方が割と強くなってきておるようでございますけれども、その点についての大蔵大臣の御所見をいただきたいと思います。
  27. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 先ほど大臣から御指摘がございましたように、従来我が国におきます環境対策に対する税制上の措置と申しますのは、例えば特別償却のようなもので公害防止施設の設置についてインセンティブを与えるというようなものでございました。しかしながら、最近におきまして、より大きな地球的な規模で、今まさに委員指摘のようなお話が税金の場での議論でも高まってきております。  私が直接みずから体験した例といたしましては、昨年の六月にOECDの租税委員会に参りましたときに、実はそのときの討議の内容は、主として東欧諸国の市場経済化に伴って、税制上どのようなことを考えていったらいいのかということがメーンテーマであったわけでございますが、主としてヨーロッパの小国を中心といたしまして、この環境税の問題をアジェンダに加えるべきだという議論がなされました。結局それはその後入ったわけでございます。  その場では東欧諸国との関係、つまり、東欧諸国で公害の問題がかなり甚しいということもございますし、御指摘のとおり、オランダとかスウェーデンとか、実際にCO2課税をやっているあるいはそのときやろうとしていたところがございますので、そういう点が重なったのだと思いますが、しかし、その場における熱のある議論というのは非常に印象的でございました。かねがね環境問題、大臣非常に御熱心でございまして、私どももいろいろ示唆を受けていたわけでございますが、なるほど世界的な規模でそういうことになっているのかなというようなことで驚いたことを覚えております。  その後、OECDの場におきましては、環境委員会だけではなくて、租税委員会の方もこの問題を検討していくということになっておりまして、今後の検討の方針を決めたという状況に現在なっております。事は何しろCO2といったような世界的、地球的規模のことでございますので、この種の問題につきましては、やはり少なくとも主要国が足並みをそろえて同じことをやるというのが大切なことではないかと存じますので、私ども、今この問題につきましては大いに関心を寄せまして、フォローしていきたいというように考えているところでございます。
  28. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 環境税というものを考えます場合に、私は果たしてCO2を中心とした対比、言いかえれば化石燃料をベースとして考えるものだけでよいのかどうか、なかなか自分考えが整理ができないでおります。  と申しますのは、確かに今主税局長からも御報告申しましたように、ヨーロッパのいわば大陸国の中の議論として、ややもすると水が抜けます。ところが、我々の立場からいたしますと、四囲を海に囲まれている国であり、しかも、国内における上水水源が既に枯渇しつつある国であります。水というものをどうしても環境として考える場合には一つの柱として立てざるを得ません。となりますと、化石燃料をベースに環境税というものを組み立てた場合、水というものが落ちてしまう。果たして水というものをどう位置づけたらいいのか。これは国内における水質の問題と同時に、海洋汚染という問題を考えなければならないということであります。  こうした点について私どもは目下海外の動向等を調査し、あわせて国際会議等におきまして、今局長からも申しましたように、先進国として足並みをそろえていかなければならない性質のものとして、常に今後も注意を怠らずにまいりたいと考えておりますが、その場合、ほとんど今まで余り議論をされていない一つの税からのポイントとして、水というものをどう位置づけるか、これに対してどんな対応がなし得るのか、これは今後検討すべき課題である、私はそのように考えております。
  29. 仙谷由人

    仙谷委員 社会党の議員で余り税を取る話をすると、後でどういうハレーションが起こるかわからないのでございますけれども、いずれにしましても、これは世代間の問題といいますか、後世代にどういう環境のつけを残すかというふうな問題とか、南北問題が絡んだ問題でありますだけに、大蔵省の方にも鋭意研究、検討していただくと同時に、大蔵委員会なり環境委員会議論が深化するようにひとつよろしくその辺をお願いしておきたいと思います。  租税特別措置法についてお伺いしないといけませんので、まず、先ほど尾崎局長からのお話で出ました租税特別措置法の十一条関連を簡単にお伺いをしておきたいと思います。  まず、通産省の方にお伺いしたいわけでございますが、今度通産省からは再生資源の利用の促進に関する法律が提案されて、既に衆議院では可決、成立をしたということでございます。これを拝見いたしますと、事業者の責務、いわば事業者が副産物であるとかあるいは製品について再生資源として使用し得るようなシステムを、どこまで拘束力があるかは別にして、持つべきだという考え方前提に入っているようであります。そうなりますと、企業といいますか事業者は、それなりの設備施設を設置しなければいけないといいますか、設備投資しなければいけない、こういうことに理の当然としてなってくると思います。この法案が国会を通って、来年の話になるのかもわかりませんが、この辺について予算措置といいますか、助成措置あるいは税制上の措置というものを通産省としてはどういうお考えでいるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  30. 湯本登

    ○湯本説明員 お答えいたします。  通産省としましては、従来から再資源化を促進するため各般の施策を講じたところでございますが、昨年末に産業構造審議会からいただきました答申にも示されたように、再資源化を一層強力に推進していくことが緊急の課題となっているものと認識しております。  今般国会に提出しました再生資源の利用の促進に関する法律は、かかる観点から、再資源化を一層推進していくために、事業者の再生資源の利用の促進の努力を最大限に引き出すため、政令で指定する業種及び製品について事業を所管する主務大臣事業者の判断基準等を定め、それに基づき指導助言を行い、必要な場合には勧告等の措置をとることを主要な内容とするものでございます。  本法におきましては、具体的に税制等の措置を明記しているわけではございませんが、同様の趣旨から、別途来年度税制改正におきまして、古紙脱墨設備等の廃棄物再生処理設備の特別償却制度の拡充等を図ることとしているところでございます。私どもとしましては、今後とも必要に応じまして、こういった税制の拡充あるいは予算の拡充等について十分勉強を重ねてまいりたいと思っております。
  31. 仙谷由人

    仙谷委員 先ほど大蔵大臣から、まさに公害問題といいますか、環境問題がさま変わりしたと実感されておるというふうにお話もございました。私もこの年末あるいは新年にかけての新聞報道を見ますと、日本は本当に経済優先、企業優先の社会から環境優先の社会に変わるのかな、そんな感じすら持ったわけでございます。  そして各省庁も、環境庁の方は循環型社会システム検討会の報告書をお出しになって、これからは環境保全のための循環型社会システムをつくろう。厚生省は廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律案をお出しになる。もちろん生活環境審議会の報告書というのも出たわけでございます。通産省からは、今御説明いただきました再生資源の利用の促進に関する法律、まさにリサイクル、環境保全という観点から政治がそちらの方向に向くのかな、向けなければいけないというふうに私も感じたわけでございます。また一方では、静脈産業というふうな、要するにリサイクルを静脈に見立てて、それを産業化しなければいけないのだという議論も相当強くなってきておるようでございます。  ところが、この租税特別措置法の一部改正案を拝見いたしますと、どうもこの十一条の別表の一号あるいは三号の規定の償却率が、三号については現状維持で百分の十四、それから公害防止施設等については百分の二十から百分の十九というふうに、いわば償却率が落ちてきた。この程度のことは企業会計上大したことないのだといえば大したことないのかもわかりませんが、もともとの出だしからいきますと三分の一から出ておる。三分の一の償却率から開始しておるというふうにお伺いいたしますので、そうだとすると、何か政治の方向性といいますか、さあこれから環境問題を中心にやろうということならば、この種の租特の整理合理化ということで少々ポイントを落とすというのはやや問題があるのではないか。むしろこういうときには新たに償却率を上げるくらいのことが考えられてもいいのじゃないか、こういうふうに私は考えるのですが、大蔵省の方はいかがでございましょうか。
  32. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変申しわけありませんが、これは私の意見と真っ向から逆さの意見であります。と申しますよりも、先ほど過去の例をちょっと申し上げましたけれども、確かに昭和四十年代の前半から後半にかけて日本各地においていわゆる公害問題というものが多発いたしました当時、これは確かに行政にもまた企業にも、環境保全という視点は欠落しておる部分が相当あったと思います。そして、その反省の上に公害国会というものが開かれ、関係十数本の法律が整備され、企業に公害防除というものを義務づける状況の中で、私は、その当時租税特別措置でできるだけの手当てをしてでも、公害防除施設というものの整備を急がせる必要は政策上確かにあったと思うのです。  しかし、今日私は、企業地域社会に存立しようとしたときに、環境というものを無視して成立できるかどうか、これは企業の責任として地域環境を保全する責任はある、それだけの空気は既に国内に醸成されておると思います。そうすれば、今何も全部特別措置を外すという極論をするつもりはございませんけれども企業設備投資をする上において、当然のことながら環境保全に対する投資というものはその計画の中に組み入れられてしかるべきもの、私はそう思います。  となれば、私はむしろ徐々にその租税特別措置の適用というものが縮小していったとしても、企業経営上それは当然設備すべきものとして環境保全のための投資というものが行われるべき、そう考えておりまして、そのためにむしろその償却率を高めるとか、そういった手法をとる時代は既に過ぎたのではなかろうか。むしろそういうことが余り過大になりますことは、かえって企業地域における環境保全の責任というものを矮小化する結果になるのではないか、そんな感じがいたしております。いかがでしょう。
  33. 仙谷由人

    仙谷委員 お言葉を返すようでございますけれども、むしろ私は、この静脈産業とか廃棄物処理あるいは再生に係る事業主体というのは、どうも下請事業とか小規模であったりとかというのが現実実態じゃないか。あるいは大企業がみずからの中に別会社をつくるのかもわかりませんし、そういう部門をつくるのかもわかりませんが、まだまだ税制上のインセンティブを与えないと、なかなかリサイクル的観点の方に事業経営は向いていかないのではないか、こういう認識なのでございます。そういうことでございますので、大臣と基本的に意見が合わないようでございますけれども、今後ともこの問題を私の方から提起させていただきたいと思います。  土地税制に関する問題を二、三お伺いいたします。  今度の地価税の導入、そして譲渡益課税を中心とする土地税制改革というものが世評ではむちとむちの税制改革、こういうふうに言われておるわけであります。しかし、土地の地価の高騰あるいはずっとこの間言われております資産としての有利性の縮減あるいは土地投機を抑え込む、こういう観点からは、私は時宜を得た改正でないかと考えるわけでございます。  その中で、土地供給にインセンティブを与えるといいますか、土地供給を促進するための税制としてというふうに私は想定をいたしておるのですが、優良住宅地の造成のための譲渡に係る軽減税率でありますとか相続税の納税猶予廃止に関する経過措置とか、そういうものがここに取り入れられておると考えるわけでございますが、その点につきまして大蔵省の方からの御説明をいただきたいと思います。
  34. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 今回の土地税制改革案におきましては、税負担の公平性の観点、それから土地の資産としての有利性の縮減ということから、一般の土地譲渡益に対しましては一律三〇%の税負担を求めることといたしているわけでございます。従来四千万円までは二〇%、四千万円を超えると二五%ということであったわけですが、三〇%というふうに負担を重くするという措置を講じているわけでございますけれども、その中におきまして、御指摘のとおり優良住宅地等のために土地を譲渡した場合の軽減税率の特例につきましては、従来一律二〇%となっておりましたのを今回一律一五%に引き下げるということにいたしております。これは優良住宅地の供給でございますとか公共用地の確保でございますとか、今最も望まれている土地の供給を促進する見地に立ちまして、このように優遇措置を一層拡充するということをいたしたわけでございます。  それから、もう一つお尋ねの相続税につきましての納税猶予、これは三大都市におきます特定市につきましての市街化地域につきまして、納税猶予制度を廃止するということにしたわけでございますけれども、そのための経過措置といたしまして次のようなことを考えております。  一定の特例の適用者、既にもうその特例を受けている人が改正法の施行日から三年以内に特例農地などを住宅都市整備公団などの賃貸住宅の建設のために貸し付ける場合、それからもう一つは、特定の一定の目的に即した民間の賃貸住宅をつくる、あるいはそこに土地を供するというような場合、それから都市公園用地として地方公共団体に貸し付ける場合、その場合につきましては、税務署長の承認を条件といたしまして、既に納税猶予を受けております相続人一代に限りまして転用してしまう、農地ではなくなるわけでございますが、転用する特例農地等につきまして引き続き納税猶予の継続を認める、また二十年たちました場合には猶予税額を免除するという措置を講じているわけでございます。  この経過措置は、特例の適用が廃止される三大都市圏の特定市の市街化区域内農地等を対象といたしまして、住宅政策に資する目的のために講ずることといたしているものでございます。
  35. 仙谷由人

    仙谷委員 土地供給に有益なということでこういう税制の改正をなさったということはよくわかるのでございますが、大蔵省の大体の見通しとしまして、これは農地、特に市街化区域内農地が住宅地として出てくるだろうという予想はお持ちでございましょうか。
  36. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 それを期待して今回の措置を講じたわけでございます。
  37. 仙谷由人

    仙谷委員 事業用資産の買いかえ特例につきまして、この問題は全般的には、特に我々給与所得者といいますか、サラリーマンの立場から見ると苦々しく思っておった。これがまた周辺の地価を押し上げたということも事実だろうと思います。この買いかえ特例について縮減、廃止ということを行ったようでございますけれども、その趣旨はどんなものであるのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  38. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 事業用資産を売りますと値上がり益が実現するわけでございますから、本来課税すべきところを、一定の買いかえにつきましては、国土利用政策あるいは土地政策の観点から特別に課税の繰り延べをしましょうという制度ができているわけでございます。しかし、こういう買いかえ特例の制度がありますために、首都圏等における地価の上昇が周辺の地域あるいは地方に波及する原因となっているという指摘を受けておりました。それからまた、大都市圏における建物とか工場などへの過大な需要をもたらしているのではないかという指摘がございました。今回そのようなことを考えまして、弊害を生むような制度については見直しを行いたいということでございます。  実はこの事業用資産の買いかえ制度につきましては、現行十五種類ほどのカテゴリーがございまして、大きく分けて移転促進のための買いかえというのがございます。例えば、大気汚染規制区域の内から外へ出ていくケースのようなものでございます。それからもう一つは、誘致促進のための買いかえというのがございます。例えば農村地域工業等導入地区の中へ買いかえていくケース、そういうようなものは国土政策上あるいは土地政策上非常に目的がはっきりしているわけでございますけれども一つは、既成市街地と申しますのは東京都の区部とか大阪市、名古屋市などの地域を言うわけでございますが、その既成市街地等の内から外への買いかえというのがございます。  これが内から外への買いかえであればどこでもいいわけでございますので、ごくごく近いところ、例えば東京都区部から調布市とか市川市、大宮市というような、いわゆる近郊整備地帯等と呼ばれるところに買いかえた場合でも適用されるということもございます。これが周辺地区への非常な地価上昇をもたらしたという指摘を受けておりましたことから、通常事業用資産の買いかえについては、旧来の圧縮割合、通常八〇%でございますのを六〇%にするということで、いわば制度の縮減をするということをいたしました。もっとも、その既成市街地等から近郊整備地帯の外への買いかえにつきましては、従来どおり八〇%ということにいたしております。  もう一つは長期保有、十年以上持っておりました土地から減価償却資産に自由に買いかえることができる制度がございましたが、これもいろいろと先ほど申しましたような問題、周辺地区への地価の上昇を振りまくということ、あるいは地価の高い地域内において建物、工場等について仮需要を生ずるというようなことがございまして、その制度を廃止するということをいたしております。  縮減、廃止、今のようなものでございますが、もう一つ新設したものがございまして、これは移転促進であり、かつ誘致の促進となっているわけでございます。工業再配置促進法の移転促進地域というのがございますけれども、その移転促進地域、なるべく早く出ていってくださいというところから誘導地域へ工場を移転した場合には、先ほど申しました買いかえの圧縮割合を通例八〇%のところを九〇%にするということにいたしております。  今回そのような改正をさせていただきましたのは、冒頭申しましたような土地政策上の目的と照らし合わせて、弊害を生じているようなものは直すという考え方に立つものでございます。
  39. 仙谷由人

    仙谷委員 もう時間が余りございませんので、あと一点だけお伺いをいたします。  企業分割を行うという方法で有価証券の圧縮額を損金算入するということになっておるようですが、法人を幾つもつくってみずからの不動産所有の税を逃れようとする、つまり相続逃れというふうなこととか、巧妙ないろいろな手段で節税あるいは脱税とおぼしきことをやろうとする点が大変な資産持ちの方について新聞で年に数回報道されるわけでございますが、このような法人格を悪用しての節税、これについては今度の法改正で何らかの措置はとられておるのでございましょうか。
  40. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 法人を分割するという形でいろいろな節税策が講じられるということがよく言われるわけでございますけれども現行制度、法人が現物出資をして新しく法人をつくりました場合には、それが実際上一つの法人がただ二つに分かれたというだけのことのために、今まで実現していなかった土地の価値が実現いたしまして、そこに課税が生ずるというのも問題ではないかということで、圧縮記帳ということでそこに利益が生じないような措置を講じているわけでございますが、その制度を利用いたしまして、いろいろ相続上の問題その他で企業分割による節税策が講じられているということが指摘を受けております。  したがいまして、今回その制度を改正することをお願いいたしておりまして、適用対象となります現物出資を、出資比率要件、これは新しくできる子会社に対して親会社が九五%以上出資をするという条件がついているわけでございますが、それを五年以上継続して維持されなくてはならないということにいたしました。これは従来でございますと、分割投資を九五%維持しておりますと、もうそれで要件は満たされているわけでございますから、分割しておいてすぐにまた新たにほかの法人と合併するとか、いろいろなことができたわけでございますが、今度は五年以上継続して維持していないといけないということでございます。  そのほか、被出資法人の行います事業が出資法人の行っております事業の全部または一部であると認められなくてはいけないというように、要件を厳しくいたしまして限定を加えました。  それから、課税の繰り延べ割合、現行制度ではすべて一〇〇%課税繰り延べできることになっているわけでございますが、これを先ほどの事業用資産の買いかえと同じように、課税繰り延べ割合は八〇%にするというような措置を講じているところでございます。
  41. 仙谷由人

    仙谷委員 いずれにしましても、今回の地価税及び土地税制改革は、今後の日本経済社会構造考える上で極めて重要な問題であると思います。私自身は速やかな成立を望むものでありますけれども、今後とも税制及び税務の行政が公平で、かつ公正な社会をつくることができるようにお願いをして、質問を終わりたいと思います。     ─────────────
  42. 平沼赳夫

    平沼委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として住宅都市整備公団理事安仁屋政彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 平沼赳夫

    平沼委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────
  44. 平沼赳夫

    平沼委員長 質疑を続行いたします。宮地正介君。
  45. 宮地正介

    ○宮地委員 最初に、租税特別措置法の審議に入る前に、当面するちょっと大事な問題につきまして確認、また御説明をいただきたいと思います。  一つは、九十億ドルの支援の問題。これが国会で成立をしたわけでございますが、昨日GCCとの交換公文についての閣議決定がされた、このように伺っております。そして、最近の円安傾向を見ておりますと、たしか九十億ドルの積算のときのレートが一ドル百三十円、これで一兆一千七百億円、こういう予算を立てたわけでございますが、最近は円安で百三十八円ぐらいに昨日あたりなってきております。八円の円安という状況になっておるわけでございまして、これは円建ての問題として一月二十五日の閣議では決定しているようでございますが、どうも円建てでいきますと、例えば百三十八円で計算いたしますと八十四・七億ドルで、現実に五億三千万ドルが実質的に減少する、こういう状況下になるわけでございまして、果たして、こうした拠出の仕方で国際的に、特に日米関係の国際公約に違反しないのかどうか、大変私は危惧をしているわけでございます。  特に、大蔵大臣はアメリカに参りまして、この九十億ドルの問題についてもいろいろ米国政府とも折衝の経緯もあるわけでございます。そういう中で、円建てによる拠出が結果として国際的な日本の不信を招かないのかどうか、この点についてまず大蔵大臣にお伺いしておきたいと思います。
  46. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 我が国といたしましては、従来からの取り扱いと同様、今回の補正予算編成時における九十億ドル相当額であります一兆一千七百億円と申しますものを円建てで湾岸平和基金に拠出するといたしております。その後の為替レートの変動に応じて拠出額を増減するという考え方は今日持っておりません。これは、さきに予備費から支出をいたしました約九億ドル、及び補正予算第一号によりまして拠出いたしました十億ドルにつきましても、それぞれ、予備費使用時のこれは一ドル百三十七円ぐらいでありました。また補正予算作成時、これは第一次補正予算、一ドル百三十円の為替レートで換算をいたしまして、円建てで湾岸平和基金に拠出をしたわけでございます。  こうした意味で、今この九十億ドル追加拠出というものは日本政府として自主的に決定をいたしまして、従来と同様、補正予算編成時における九十億ドル相当額一兆一千七百億円を円建てで湾岸平和基金に拠出するわけでありまして、これは外交当局から相手国政府関係の湾岸平和基金等に対してもきちんと伝えられておるわけでございます。この状況の中で、為替レートの変動に応じてその拠出金額を増減するという考え方はとっておりません。
  47. 宮地正介

    ○宮地委員 円建てで拠出するという閣議決定は私も承知をしております。問題は、実際に九十億ドルというこの国際的な公約が、日本のそうした一方的な円建てという拠出対応で果たして国際的に通用するのかどうか。確かに国会の予算上は一兆一千七百億円、これしか承認はとっておりません。実際に円安分、先ほど申し上げたような五億ドル強についてそのままストレートに上乗せ計上は無理だと思いますが、やはり相当する部分について何らかの今後の経済協力、こういうあり方としてフォローしていく必要性が政府にあるのではないか。そこのところのフォローは全くしないのか。しないで、一兆一千七百億という円建てでGCCに拠出して、本当にこれが通用するのかどうか。  前回の大蔵委員会で私申し上げましたが、既にアメリカの百五十億ドルの予算書の附属文書の中にも、ストレートにアメリカに九十億ドル行く行かないは別問題として、彼らは九十億ドルという数字をきちっと明記しているわけですね。これは、アメリカとしては日本から九十億ドルがGCCに拠出されるという認識を持っている証拠だと私は思うのです。その点について私は国会議員の一人として大変心配をしているわけです。そういうような日本型の一方的な円建て拠出というものの論理なり筋はわかりますけれども、それが国際的に通用するのか。ここのところなんですね。ここのところ、大蔵大臣としてどういうふうにお考えを持っているのか。  さらに、日米関係が、せっかく我々、九十億ドル、一兆一千七百億の大変な国民の血税を国会で成立させておきながら、今回の湾岸危機が停戦になった後、アメリカの国内においても世界的にも日本に対しての評価は非常に低いわけですね。さらに、こうした九十億ドル支援に対しても、せっかく国民が大変な負担をしておきながら、結果的に、国際的に日本の信用がまた失墜するのではないか、私はこういう懸念を持っているわけなので、この点について大蔵大臣としてはどう見解を持ち、これについてフォローする意思があるのかないのか、ここのところをお伺いしたいと思います。
  48. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは私がお答えするのが適切かどうかわからない部分もございますけれども、昨日GCCとの間で交換公文を締結されたところでありますが、この交換公文の内容に記載されております金額は日本円表示でありまして、一兆一千七百億円という数字を記載をいたしております。そしてこれで交換公文は円満に締結をされました。  一方、アメリカの国内におきまして、議会に提出をされました予算の附属資料の中に日本の追加支援額九十億ドルという数字が載せられておりますことは私も承知をいたしております。そして私自身御説明を申し上げた記憶がございますけれども、配分の決められておらない状況の中で、いわば枠取りの形で計上されたのではないだろうかということを申し上げてまいりました。そしてアメリカ側の関係者の発言も、この湾岸平和基金における配分というものに関して、必ずしも一様ではございません。それだけにこの一兆一千七百億円という数字を変更する意思はないということを改めて申し上げたいと思います。  一方において、今回の湾岸危機を契機に非常に日本に対する風当たりが強くなっておる。もっと積極的に言いますならば、日本に対する不信感が募っておる。欧米のそうした雰囲気というものは私ども、日常の仕事の上におきましても時々冷やりとさせられるような思いでこうした空気を感じております。これは日本として憲法のもとにおいてできることとできないことがあるという中において、人的な協力ができなかったということが、日本の憲法、そしてそれに基づく行動の制約というものが十分知られておらない状況の中において非常に強い不信感としてはね返ってきているということは我々痛いほど感じておりまして、政府全体として今後の外交努力の中において、こうした点についての欧米諸国における、殊に一般国民レベルにおける受けとめをどう回復していくことができるか、今後の我々に与えられた非常に大きな、しかも早急に対応を必要とする課題、そのように認識をいたしております。
  49. 宮地正介

    ○宮地委員 私の質問には大臣お答えしてないのですね。  きょう外務省課長来ていますが、この点についてどうですか。
  50. 田中信明

    田中説明員 先生お尋ねの点につきまして、先生の御質問の趣旨が、米国にきちっと、我が国が九十億ドル相当の一兆一千七百億円という拠出を行う旨表明しているかどうかという点にあるとしますれば、私どもといたしましてはその旨確かに伝えておりまして、先方も、私ども予算編成時における九十億ドル相当額である一兆一千七百億円を円建てで湾岸平和基金に拠出するという点については、その旨理解しております。
  51. 宮地正介

    ○宮地委員 アメリカ政府が理解している、こういうふうに受け取っていいんですか。
  52. 田中信明

    田中説明員 アメリカ政府は我が国がそのように考えているということを了知しているという趣旨で私は申し上げさせていただきました。
  53. 宮地正介

    ○宮地委員 そうすると円建てで一兆一千七百億、GCCに拠出するということで、現実に九十億ドルの目減りが先ほど申し上げたように八十四・七億ドルになっても、アメリカは了とするんですね。
  54. 田中信明

    田中説明員 我が国から湾岸平和基金に対しまして拠出された円貨が各国に対していついかなる形で支出されるかという点につきましては、湾岸平和基金運営委員会が各国と協議をした上で決定することとなっておりまして、その過程におきまして為替に対する影響については当然のことながら勘案されるわけですが、この拠出の方式は、私どもが前回の二十億ドルの拠出のときも同様のパターンをとっておりますので、為替レートの変動に伴い、各国によるドル建ての実際の受取額が増減することは、先方もそういうことであるという事実については理解しているというふうに私ども受けとめております。
  55. 宮地正介

    ○宮地委員 この点については私は大変心配をしております。  先ほど大蔵大臣お話しのように、アメリカを初め各国の日本に対する風当たりは大変シビアな状況にあるわけでございます。私は、常識的には大蔵大臣が一月二十日にニューヨークへ飛びまして、スタンホープホテルでプレイディ財務長官とお会いしたときに、それ相当の日本が支援をする、恐らくそのときの話は円建てなんていう話じゃなかったと思うのですね。金額の中身についてはいろいろ言われていますから私は申し上げませんが、少なくとも常識的にはドル建てによる交渉ではなかったかと私は思うのですね。これがアメリカ側としてはGCCを通じましてもやはりドル建てで九十億ドルのうち相当な額がアメリカに来るであろう、恐らくこういうふうにアメリカ政府も、またアメリカ国民も常識的にはそう思っているのではないか。それが我が方の一方的な円建てでございますということで、日米間あるいは今回の湾岸諸国の皆さんから見て、また日本はこそくなことをしたな、こういうことでさらに五億ドル超のこの資金によって日本の立場がまた不利になる、こういうことでは私は大変残念なことであります。  ぜひ大蔵大臣、外務大臣や総理と相談されまして、やはりここの目減り分については何らかの形で今後の日本経済協力等の中でフォローをしていく姿勢、これをやはり別の観点からでも結構ですが、やる必要があるのではないか。この点についてまず切り離しても結構ですから、復興のこれからの重要な中に、日本がいろいろ国際貢献していく中でこの九十億ドルの実質的目減りに対するフォローアップをする、こういう政府の姿勢が私は大事ではないか、こう思いますので、最後にこの点についてお伺いしておきたいと思います。
  56. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員からちょうだいをいたしました御注意は事務方からも当然伝わるでありましょうけれども、私からも外務大臣に正確にお伝えをし、外交当局としても今後の一つの示唆としてちょうだいをしておきたい、私自身もそう受けとめさせていただきたいと思います。  ただ、実はこの前の十億ドルを考えてみますと、百三十円で計算いたしましたものが、たしか現実にこれが動きましたときには百二十円台の後半に上がっていたのじゃなかったかと思いますけれども、これもその金額どおりの円でお渡しをするという構えでありまして、為替の市場の動きによってこの金額を増減させるという考え方をとっておらないということについてはどうぞ御理解をいただきたい。  今後に対する御注意は私自身もちょうだいをし、外務大臣にもきちんとお伝えをさせていただきたいと存じます。
  57. 宮地正介

    ○宮地委員 銀行局長、国際金融局長ですか、最近のこのドル高・円安傾向、これはどこに大きな要因があるのか、この流れは今後続くのかどうか、この辺ちょっと御説明いただきたいと思います。
  58. 千野忠男

    ○千野政府委員 最近ドル高の傾向が見られるわけでございますが、市場の見方を申し上げますと、やはり戦争が終わってアメリカの景気が早期に回復をするのではないかという期待を背景に、ムード的なドル高センチメントが強まっている、これが一番大きな要因ではないかと思います。  私どもは、やはりこういうようなムード的なドル高センチメントには警戒感を持っておるわけでございます。やはり相場というものは、結局は各国の経済の間の均衡を図る上でのいわば調整弁として機能している面がございますし、それからまた、為替相場が不安定になりますと、為替相場というものは、民間企業にとりましてはいろいろな取引をする上での、あるいは経営の計画をつくる上でのいわば一つの尺度でございますので、これが不安定になるということは甚だ好ましくない。それからまた、各国にとりましても、ファンダメンタルズに沿ったレートでございませんと各国間の調整がうまくいきません。例えば、ドルが米国の経済の実力以上に強くなるということになれば、これはアメリカの貿易にも悪影響を及ぼすことがございますし、そしてまた、これが日本にとって非常に円安になればこれはまた物価にも影響するというようなことでございます。やはりファンダメンタルズに沿った、ファンダメンタルズを十分反映したレートになることが必要だ、私はそういうふうに思っております。  いずれにしましても、現在の状況はやはりアメリカのムード的なセンチメントによるものであるということでございます。
  59. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵大臣、一月のG7、日、米、ヨーロッパの主要各国が集まりまして、円相場を百二十五円から百三十五円、ここに誘導する、こういう協調介入について合意があったのですか、この辺確認したい。
  60. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 そういう合意はございません。むしろ一昨年、私が就任いたしました直後の九月のG7以来、私は日本と欧州通貨とアメリカの通貨すなわちドル、この間に何らかの安定的な仕組みをつくる必要があるということを各国に呼びかけておりますけれども、少しずつそうした考え方に賛意を示す向きがふえてきたというのが一月のG7の感じでありましたが、そうした一定のバンドを設けその中に誘導していくというような具体的な話し合いにいくところまではまだ到底参っておりません。
  61. 宮地正介

    ○宮地委員 そのとき、円相場は一ドル百二十五円から百三十五円、マルクは一ドル一・四五から一・五五マルク、この範囲で誘導する、こういう話し合いは全くなかったですか。
  62. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 全くございません。そうした趣旨の記事を私も目にいたしまして、出席していた私と三重野さんが知らないことをどこからお書きになったのか、非常に不思議な気持ちで拝見をいたしました。
  63. 宮地正介

    ○宮地委員 いずれにしても、今アメリカのこのムード的なもの、こういう国際金融局長お話でございましたが、これはやはり日本経済にとっても非常に警戒しなければいけないと思うのですね。この傾向が強くいきますと、輸入インフレ、日本経済に大変な物価高、またこういうものを招く要因になってきますから、ぜひこの点については大蔵省としても、単にムード的なのか、この辺をもう少しきちっと精査して、日本経済に与える影響、早目早目にまた手を打たなければいけないと思いますので、特に私は輸入インフレのところに心配をしているわけですね。この点についてもう一度大蔵省の対応を伺っておきたいと思います。
  64. 千野忠男

    ○千野政府委員 御指摘のとおり、為替レートが不安定な状況になり、実力を反映したものでないという状況は好ましくない、いろいろな悪影響もあり得るわけでございます。  そういうことで、大蔵省といたしましても、為替相場が各国経済のファンダメンタルズを適切に反映したものになりますように、市場の動向を十分に注視しまして、この為替相場の安定のために各国と十分協調して対処をしていく所存でございます。
  65. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一点、別の問題に移りたいと思います。  きょう通産省の貿易局長の方に急遽お願いしたのですが、今回の湾岸戦争の中で今後の反省として武器の輸出問題、軍備管理の問題が非常に重要な課題になっておりまして、我が国が武器輸出禁止三原則を持っているということで、今後、軍備管理の問題を我が国がオピニオンリーダーになって各国にいろいろ発言をしていく、私は非常に大事な問題であると思うのですね。  その点についてMTCR、この会議が五月ごろ京都で行われる。こういうような軍備管理の会議ということで、私は非常にいい傾向であるというふうに考えております。この点について、まず日本政府としてどういうふうに準備をされるのか。  もう一点は、日本の場合、ミサイルなんかの汎用品、今回のハイテク戦争と言われた中において、間接的に相当ハイテク産業が、日本のレンズとか相当なハイテクが事実上武器の中に入っているわけです。こういう問題に対して、武器輸出禁止三原則には触れないにしても、そうした日本のハイテク技術というものが現実に武器の中に挿入されておるという点についても、日本としても傍観視できない重要な視点だと私は思うのです。こういう点の今後の規制措置も非常に大事な問題ではなかろうか、この点については今後どういうふうに政府として対応されるのか、この二点、私は通産省からお伺いしておきたいと思います。
  66. 上田向祥

    ○上田説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘になられましたMTCR、ミサイル関連技術輸出規制でございますが、これにつきましては一九八七年より核兵器運搬システムに寄与し得る機材、技術につきまして、核不拡散の観点から参加各国が国内法制に基づきまして規制を行う、こういった国際的な枠組みでございます。現在十六カ国参加しておりまして、来週の初めでございますが三月十八日から二十日まで、ミサイル関連技術輸出規制につきまして東京会合を開くことになっております。この会議は、年に約一回程度各国持ち回りをしまして会議を行っているわけでございまして、今回の会合におきましては、湾岸戦争の経験、すなわちミサイルの拡散の懸念が高まっているということから、前回会合に引き続きまして、規制リストの見直し等、このミサイル関連技術の規制の実効性を高めるということで各国間で意見交換、情報交換を行う予定でございます。  このミサイル関連技術でございますが、先生御指摘の汎用品につきましても、これに関連するものは規制の対象になっております。また、ミサイル関連技術のみならず、核兵器あるいは化学兵器、こういったものにつきましても、これに関連するものにつきましては、国際的な枠組みによりまして、汎用品のものであってもこれに係るものにつきましては規制を行っているということでございます。
  67. 宮地正介

    ○宮地委員 日本の場合は、今のMTCRに盛り込まれた内容のものについては輸出貿易管理令で規定をされて、原則としては禁輸である。これをしっかり踏まえて対応すべきである、こういうふうに私は考えているわけでございまして、先ほど申し上げたように、非常に平和的な技術が、実際にはある武器の中に相当日本製が盛り込まれている、これは現実の問題であろうと思うのですね。またこの点については別の機会にいろいろ質問もさせていただきたいと思いますが、ともあれ、そうした日本が武器輸出禁止三原則という、世界にも類例のないこういう大変立派な原則を持っているわけですから、これが形骸化されないように、特に通産省としても今後管理、チェックをしっかりお願いをしておきたい、このように思います。  そこで、本題に少し入らせていただきたいと思います。  特に今回の租税特別措置法の改正の中の土地税制の問題、またこれから審議される地価税の問題、既に昨日衆議院を通過しました地方税法における土地税制、この土地税制の三本柱によっていわゆる資産格差の是正、今までも政府の中では、所得、そして消費、資産、この三つのバランスのとれた税体系を今まで我々も言ってきたわけでございます。  その中で、消費については消費税、こういうことで、これはまだ不十分な点があります。特に与野党合意したところがいまだに見直しとして、経過措置、暫定措置として今回政府が提案されなかった。専門者会議等の両院合同協議会待ち、こういうことで、最後の食料品の取り扱いのところで折り合いがつかず、八割方、運用益とか逆進性緩和とかあるいは国庫に納付されたそうした税が、国民からそのままどこに消えたかわからない、こういうような問題等についてもいろいろ昨年来、半年間かけて両院合同協議会専門者会議議論して、八割方、最後の食料品をどうするかというところだけで、あとは合意は得られながら、残念ながら政府提案も出ないという形で国民も今いら立ちを持っているわけで、四月ごろからまた合同協議会で今後の消費税の議論をする、こういうようでございます。  ともあれこの消費税のところには相当手がつけられてきた。そして今回、問題は資産税、この適正化ということで、特に資産税の適正化の中で資産の格差是正、特に土地を持てる者と持たない者、この格差の是正をどうするか。こういうことで、今申し上げた三つの法律が今国会に提案をされたことは、私は多としたい、こう考えております。  さてそこで、まず当初の目標である一つは資産格差の是正、あるいはここ数年非常にバブル経済と言われるような、土地を持った者のバブルが非常に膨らんで、さらに資産の格差が拡大した、そういう中で今まで土地税制というものは地価の抑制とか地価の引き下げ、こういうものについては大蔵省は補完的立場である。本来、土地問題の解決というのは国土利用計画の問題とかそういったものであって、税制措置というのはあくまで補完的な立場である、こういう立場であったわけですが、私は、少なくとも今回の土地税制、特に地価税の創設あるいは租税特別措置法、地方税法、こういうところに踏み込んで、もろもろの土地税制の改革をする、これは大蔵省としても、地価の抑制には土地税制というものはやはり主役の一つなんだ、あくまで補完的立場ではないんだ、まずそこの認識を変更したのかどうか、ここの点から確認をしていきたいと思います。
  68. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに私は、従来から、土地政策の中において税というものは重要な役割を演ずる一人ではあるが、わき役という申し方を続けてまいりました。そして、特に土地基本法というものが生まれる前、私はそういう答弁を繰り返しております。と申しますのは、土地というものについての基本理念が確立をしない中において税に役割を求められても、おのずから限界がある、そうしたことを申し上げたい、そうした気持ちから、今委員が御指摘になりましたような申し方を私はいたしてまいりました。  そして、土地基本法というものが生まれ、土地の公共性というものが一つの柱として確立した今日、その役割はおのずから従来の基本理念のない中における役割とは変化をいたしてきております。しかし、私はまだそれでは、地価、土地問題を考える場合に、税が主役であると言えるかとい えば、主役とは言い得ない、しかし重要な役割というものはますます重要になり、土地の公共性重視という視点の中でますます大きな役割を果たす、そうした立場に立っている、そのように私は認識をいたしております。  そして今回、地価税等御審議を願うに至りましたのも、その役割を十分に果たしたいという念願からであることも申し添えます。
  69. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、地価の抑制は、やはり先ほど申し上げたような都市計画初め国土利用計画のしっかりした見直しあるいは土地税制または金融行政、こういう三本柱が機能して地価の抑制、引き下げというものができていくのではないか。そういう意味で大蔵大臣も今までの補完的立場から重要な立場ということで、土地基本法ができたという経緯を踏まえて事実上大蔵省認識を変えた、私はそういうふうに理解をしているわけでございます。  それでは、今回のこの一連の土地税制の改革で、当初の資産格差の是正、バブルの解消、こういう点に、特に私は、この土地神話を破る、ここがやはり非常に大きな国民的な期待であったと思うのですね。この点については大蔵省としてはまずどういうふうに認識をされているか。今回の土地税制の改革が土地神話を破るきっかけになったのか、また、なると考えているのか、この辺をどうぞお答えいただきたいと思います。
  70. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今御審議をいただきながら振り返ってみまして、過去二回大きな地価高騰がありましたものが、その教訓が生かし切れずに今回また同様の状態を招いたという中には、まさに委員が御指摘になりましたように土地神話の破壊というものが過去二回においては行われないままに、あるいは不徹底なままに地価が収束したという経緯があったと私は思います。今回土地基本法というものが生まれ、公共的性格を有する資産である土地というものに対する適正、公平な税負担を確保しながら土地の資産としての有用性、有利性を縮減する観点から、土地の資産価値に応じた税負担を求めるというこの地価税の柱が一つ立ったわけであります。  この地価税が創設されましたことは、固定資産税の評価の適正化などと相まって、まさに土地の保有コストを増大させる、また土地の保有コストに対する意識を高める、こうしたことから地価の低下、抑制、土地の有効利用など、土地対策に関する非常に大きな一つの前進を見ることになる、私はそう考えておりまして、これによって土地神話の打破に一歩大きく踏み出した、そう考えております。
  71. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、地価税の導入、この問題について政府税調の加藤さんも、モミの木は残った、こういう表現をされたんですね。まことにうまい表現をされた。これはまさに紆余曲折があったけれども、モミの木は残った。導入は何とかできた。苦労の姿が陰に見えるような感じがするわけです。これを今度はどういうふうに大きくこのモミの木を育てるか、これが今後の課題である、こういうような表現をされました。  今、地価税の問題についても、きょうは時間が限られておりますからまた次の地価税の審議のときにお伺いしますが、率直に言って、国民の目から見て、一つはやはり税率ですね。この税率が〇・三%、当初は〇・二%。果たしてこの〇・三%の税率で期待の土地神話が破れるのか。あるいは非常に非課税範囲が広くなっておる。個人、中小企業では十五億円、特に一平米当たり三万円、これで相当非課税範囲が広くなった。基礎控除も非常に大きい。こういうところに、地価税の導入、その意義については我々も大変に評価しておりますが、当初政府税調あるいは自民党税調で議論されたころの税率なり非課税範囲なり基礎控除から見ると、もう相当後退をしておる。ここのところが、この国会で与野党が話し合って修正が国民合意に一歩近づけるのかどうか、これもまた国民が非常に大きな関心を持って見ておるわけですね。大蔵省としては、これはもう精いっぱい頑張ってつくった地価税法案、一字一句たりとも修正をする考えはない、こういう認識を持っているのではないかと思います。しかし、国民の立場から見ると、少し期待外れだ、もう少し国民のニーズにこたえた税率なり非課税の範囲なり基礎控除について修正できないか、ここが非常に注目されているわけです。  大蔵大臣、今後この修正問題等について、まず話し合う余地があるのかないのか、もう全くオール・オア・ナッシング、一字一句たりとも修正には応じないのか、どちらなんでしょうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  72. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは大変お答えしづらい問題でありまして、私どもとすれば、現在少なくとも地価税というものを御審議を願います以上、現状認識の上に立って最善のものを国会に提案をいたしている、それだけの自信は持っております。それは、新税が、毎年評価される土地の資産価値に応じて新たに毎年負担を求める。また、新税の導入に加えて固定資産税評価の一層の均衡化、適正化が行われることになっている。こうしたことから、全体としての土地保有コストの増大というものが地価の低下、抑制、有効利用促進などに相応の効果を果たすものと考えておりますし、その限りにおいて我々としては最善のものを国会に御審議を願っているという自信は持っております。  しかし、我々は、政府として提案をいたしましたものについて全力を挙げて国会の御了承を得るように努力をすることは当然でありますが、同時に、国会の審議権を拘束する立場にはございません。そして、与野党の間における話し合いというものが行われ、その中から院としての共通の意思が導き出された場合に、それに従う責任があることも当然のことであります。
  73. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは大変含みのある答弁だったと私は思うのですね。やはり与野党で話し合うその余地というのは残っているような感じを私受けとめました。ぜひこれは、国民の期待とニーズにこたえる方向でこの問題の修正問題というものは私は当然国会で浮上してくると思いますので、大蔵省も最善の法律案である、一字一句たりとも修正には応じません、政府はそういう姿勢でなくて、より国民的合意に基づいて修正の議論に、テーブルに着いていただきたいことを特に私は要求、また要望しておきたいと思います。  もう一つの問題は、やはり三千億から四千億入ると言われる税収の使途、これをやはりどういうふうにしていくか。今回、固定資産税の評価がえの増税のところについては、住民税減税六千五百億、これで固定資産税のところの負担を少し緩和する。こういうことで地方税においてはそういう住民税減税と固定資産税の増税というのがワンパッケージで今回対応されている。これは非常に評価できるのではないか。  今回の地価税のこの税収、これはいろいろ議論もされました。所得税減税に回すべきである、あるいは地価税というものが事実上法人の保有課税に非常に強化される、法人税の税率の引き下げに使うべきではないか、こういう議論もある。あるいは、最近の住宅政策を見ておりますと、持ち家制度よりもやはり賃貸、地価の高騰によって家賃も非常に高くなってきておる、またそうした借家の建てかえにも大変な費用もかかる、住宅政策上からそうした家賃補助とかあるいは建てかえの補助とか、そういうところの財源として使うべきではないか。あるいは、今回のこの法改正の中で、これから生産緑地地区に指定する、その指定をしたときに、例えば三十年たって市町村が買い入れをする起債措置の緩和等が検討されているけれども、なかなか市町村の買い入れに対する財政負担も大きい、そういうときの起債の例えば利子補給に回すとか、いろいろ考え方はあろうかと思うのです。その辺、まだ大蔵省、固まってないようなんですね。  この地価税の税収の使途、大臣はどんな感じを持っておられるのか、まずお伺いしたいと思います。
  74. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは個人的な見解を申し述べるべきではないと存じますけれども、この地価税 の税収の使途というものにつきましては、税制調査会の土地税制のあり方の基本答申をいただきます際、土地税制の見直しは増収を目的としたものではない、それから新税を創設する際には、「所得課税の減税を合わせて検討することが適当である。なお、新税の税収について、その一部は所得課税の減税と合わせ、土地対策等に資するという観点から、歳出を通じ国民生活に還元することが適当ではないかとの意見もあった。」こうした提言もいただきました。また、平成年度税制改正に関する答申におきまして、「基本答申に示した考え方に沿って、平成年度税制改正・予算編成時までに検討すべきである。」という御提言をいただいております。  政府としては、この地価税の創設ということを国会でお認めいただきました後、税制調査会の答申を踏まえて適切に対応してまいりたいと今日考えておるということを申し上げます。
  75. 宮地正介

    ○宮地委員 いずれこの問題も少し四月の議論の中でまた詰めたいと思いますが、きょうは問題提起させておいていただきたいと思います。  そこで、ちょっと時間も迫っていますので、具体的に何点かお伺いしておきたいと思います。  まず一つは、土地の譲渡益課税の問題であります。特に、民間の特定住宅地の造成事業等にかかわる譲渡所得の特別控除制度の問題、今回、一千五百万円、これを選択制からこの控除をカットしました。二〇%から一五%に税率を引き下げた、そちらの方で対応せよ、こういうことで、この民間の一千五百万円の控除をカットした。まず、このカットした理由、ここを明快に答弁していただきたい。
  76. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 基本的には、委員指摘のとおり、土地譲渡益課税、今回一般の場合一律三〇%の税負担を求めるということで、従来より税率を高めたわけでございますが、その中にあって、優良住宅地の供給等を推進する見地に立ちまして、軽減税率の特例につきましては税率を大幅に引き下げたということがございます。  それが基本的な理由でございますけれども、またもう一つは、従来認められておりました特別控除につきましては、これは特別控除という性格上どうしても譲渡益がその特別控除の額を超えるとそこから税負担が始まるわけでございますので、その特別控除の範囲内におさめるという、いわゆる切り売りを助長するという問題点指摘されておりまして、今回のように軽減税率が特段に引き下げられた中にありましては、このような問題点を持っている特別控除については今回廃止をしたいということでございます。また、この千五百万円特別控除と申しますのは、性格上、本来収用についてこの特別控除が認められているわけでございますが、収用とまでは至らないけれどもそれに準じた公的な主体による一定の事業用地の提供というものに配慮したのが本来の考え方でございまして、民間の開発業者がみずからの事業として行う住宅地の造成事業などの用地買収にまでこのような特例を適用するのは異例なことではないかという問題意識が従来からございました。  そのようなこともありまして、今回選択適用から軽減税率一本にするという制度に改めたわけでございます。
  77. 宮地正介

    ○宮地委員 今主税局長は、切り売り云々、こういうことですが、私は逆だと思うのです。この特別控除制度ができたときは、地価が比較的安い地方都市圏において宅地開発事業あるいは住宅建設事業の推進に大きく寄与するものである。要するに虫食いの小さな土地を持っている方を一つの団地造成をするためにこの一千五百万の特別控除というのは非常に寄与をしていたわけですね。今回、今お話がありましたが、公共の場合は基礎控除二千万、据え置きなんですね。収用五千万、据え置きなんですね。民間だけ、一千五百万のところがカットなんですね。切り売りという措置よりも、むしろこの特別控除制度ができたころは、小さい虫食いのもの、そうしたものをいかに大きく集団化して宅地造成に寄与されるか、これがねらいで特別控除制度ができたわけですね。東京などはこの制度がなかなか難しいですが、恐らく委員長の岡山とかそういうところは相当この問題について苦情が来ていると思うのです。これは大蔵省の現場の認識、ちょっと把握が足りなかったのではないか。あえて選択制度の中の一千五百万をカットしなくて残しておいても問題なかったのじゃないでしょうか。どうでしょう。
  78. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 これまでの特別控除の中におさまっていた分につきましては、御指摘のとおり税負担がなかったわけでございますから、今回の措置によって新たに税負担を生ずることになるわけではございますけれども、しかし、今回軽減税率が非常に大幅に拡充されているわけでございますので、それを考えますと、委員指摘のような比較的まとまった用地の提供というような目的もこの軽減税率で果たされることになるであろう。そうであれば、他面におきまして公平性あるいはいろいろな面から特別控除というのは問題を抱えているわけでございますので、この軽減税率の大幅な拡充のもとでこちらの方はやめたいということでございます。
  79. 宮地正介

    ○宮地委員 軽減税率のところでそれが全部フォローできるという主税局長考えですが、それは東京などの地価の高騰の激しかったところについてはそちらでフォローできる。しかし、地方都市においては一千五百万の特別控除というのはまだまだ有効的に働くもの、こういうふうに私は理解しておりますので、今後地方都市の実態をぜひ調査されて、主税局長の言われたように一五%に引き下げたことで本当にすべてフォローされているのかどうか、これはぜひチェックをしていただいて、また次の機会に御報告もいただきたいというふうに思うのです。フォローされていれば問題はありません。しかし、我々は、地方都市においてはまだフォローされていない、むしろこれは残しておいた方が有効的である、こういう判断をしているので申し上げているのであります。  さらにもう一点、先ほども少しお話が出ておりましたが、長期所有土地から減価償却資産への買いかえ特例につきまして、特に最近繊維業界、機屋さんがこの問題において大変に御苦労をしているようであります。私の選挙区にも、小川町というところには大変たくさんございますが、皆さん御存じのように機屋さんというのは景気の変動によって、また最近は韓国や中国からの追い上げに遭いまして、経営的には非常に厳しい状況にあるわけでございます。そういう中で、土地を処分しながら戦後の大変な繊維業界の中を生き抜いてきた。経営手法の一つの中に土地売却というものも非常に有効的に、今日の存立の中にあったわけです。  しかし、今回のこの買いかえ特例が、特に譲渡益に課せられる法人税等の問題について、譲渡益の八〇%の圧縮ができるが、約一二%の追加課税、こういうことで、今までの一〇%が一二・四%ぐらいに引き上げられる、これは圧縮記帳ができるときであります。買いかえ特例の不適用になって、圧縮記帳ができないときになりますと、これは圧縮記帳ができないために、譲渡益の全部に通常の法人税のほかに約一二%の追加課税がかかりますから、六二%ぐらいにはね上がってしまう。現実的には一〇から六二ぐらい、六倍強ぐらいの大変な事態が発生する。  こういうことで、中小零細企業の機屋さんから何とかならぬのかという声が今非常に強く国会に要請が来ているわけでございますが、この買いかえ特例について、大蔵省はそうした繊維業界、機屋さんの実態など、現場をよく調査され、精査され、その中でこの改正に踏み切ったのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  80. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 事業用資産の買いかえは、一度事業用の土地を売るわけでございますから、そこで利益が実現するわけでございます。本来課税になりますところを、特定の事業用資産に買いかえた場合には特例として圧縮記帳を認める、課税を留保するということになっているわけでございます。  しかし、この目的は何かといいますと、国土利用政策でございますとか土地政策、そのような見地から特別に課税の繰り延べを認めているわけでございます。しかしながら、長期所有土地等から減価償却資産に買いかえするということにつきましては、これは実は区域の指定がなく認められておりますために、他の買いかえ特例が利用されなくなってしまう、これに寄りかかってしまうということ、それから将来の設備資金に充てるために余分の用地を取得し、値上がり益を期待するというような企業行動を招くといった弊害も生じているということがございまして、これを廃止することにしたわけでございます。  この買いかえ特例の廃止は、現在保有しております土地を売却して設備の近代化を図る企業者にとって酷ではないかという御指摘でございますけれども、将来の設備投資資金に充てるために土地を保有してその土地の値上がり益を期待するということ自体が土地問題を深刻化させる一因となっているわけでございまして、公平の観点からもそこは問題ではないかというように考えているわけでございます。しかし、制度が変わるわけでございますから、現在進行している事業計画に支障を来すというようなこともあろうかと存じまして、今回の廃止に際しましては所要の経過措置を講ずることといたしまして、相当の配慮を行っているところでございます。御指摘のように企業経営の問題ということではなくて、あくまで土地政策、国土政策という見地からこの問題を考えているわけでございます。
  81. 宮地正介

    ○宮地委員 決して企業経営云々で私は言っているわけではなくて、こうした法律の改正をするときにはもう少し現場の実態というものもよく精査して、国民のニーズにこたえた法改正に神経を使ってください、目配りをしてください、これを私は言いたいのです。先ほどのいわゆる一千五百万の特別控除の問題もしかり、今回の買いかえ特例の問題もしかり、皆さんがデスクワークで一生懸命御努力されていることについては私は評価しますが、やはり国民の心、ニーズがどの辺にあるのか、現場はどういうふうな対応になっているのか、ここの現場の声もしっかりつかんで法律改正というものをしっかりやってもらいたい。そういう意味では、建設省、通産省もしっかりと現場の声を大蔵省にも物を申していただきたい。どうかそういう点について国民との乖離が起きないように、今後とも法改正については十分慎重な精査の上でお願いしたい、このことを私は強く要望しておきたいと思います。  時間もございません。次に、国税職員の問題について少しお伺いします。  今回、地価税の創設に伴って国税職員二百人の増員をしております。平成年度では二百人の増員ということでございますが、全国五百十八の税務署がありますから、二百人では半分にも満たない。こんなもので実際に地価税の、特に相続税評価の名寄せの問題とか、これから評価をして公表する、こういうような実際の対応ができるのか、私は大変心配をしております。法律が通りましても、四年からということでございますが、こういう点について、国税庁としても、定員増の確保もしっかり、もう少し実態に即して対応してもらいたいと思います。定員増の問題を今後どうするのか、まずこの一点。  それから、相続税評価の問題になりますと、今回の地価税がもしこのまま原案どおり国会成立ということになりますと、これはほとんど大手の企業ですね。百貨店とか銀行とか証券会社とか、大体目抜きの一等地で商売しているような大手の企業個人においても田中角榮さんのような邸宅とか鳩山さんのところの邸宅とか、大体そういうところしか恐らく地価税はかからぬであろう。そうなりますと、大手の法人は大体不動産鑑定士の立派な方を顧問にしたり、専門家がいるわけですね。そういうところの皆さんの評価に決して負けないぐらいの国税職員の評価の精査というものも求められるわけです。いわゆる人員の量的拡大だけでなくて、今度は職員の質的な面が精査されるという、また新たな重荷というか事態が発生するわけです。量質ともにこの地価税に対する国税職員の対応が非常に大事になってくる。この点を国税庁としてどう対応をしようとされているのか。また大蔵大臣、こうした観点からどうフォローされようとしているのか。まずこの点、次長と大臣に伺っておきたいと思います。
  82. 福井博夫

    ○福井政府委員 ただいま御指摘をいただきましたとおり、この新税が導入されるということになりますと、これを円滑、適正に執行していくために私どもとしては所要の体制の整備を早急に進めていく必要があるというふうに考えておるところでございます。  ところで、この点に関連いたしまして当面大きな問題になってくることが考えられますのは、ただいま御指摘いただきましたように地価税における土地の評価の問題でございます。この地価税におきましては相続税評価を活用するということになっておるわけでございますが、現在の相続税評価の実態というものは若干手薄の面もございますので、地価税が導入され、経常的かつ常時これが適用されていくということになりますと、この評価をめぐって、評価の事務というものを充実していく必要が当面あるわけでございます。当面の準備としてこれを早急に進めていかなければならないということになっておるわけでございますが、ただいま御指摘いただきましたように、平成年度予算におきましてはこのような観点から二百人の増員措置ということをいただいておるわけでございます。これはただいまも申しましたように、当面この相続税の評価事務というものを整備充実していくということを中心としてこの増員をいただいているわけでございまして、そういう意味におきましては、繰り返しますけれども、当面必要不可欠なものにつきましては人的な措置を講じていただいたというふうに考えておるところでございます。  それから二点目の質的な問題、まさに御指摘いただいたとおりでございまして、これから私どもといたしましてもなお一層この評価の内容の充実ということに努めていく必要があろうかと思います。そのためには、いろいろな精通者の意見を求めますとかそういったことも行うわけでございますけれども、同時にやはり職員の知識経験というものを向上させていくということが必要でございまして、そのためにもちろん部内の研修もございますし、それからまた、これまで蓄積してきました経験知識といったこともございますので、そういったベテランの職員を十分登用していく、そういった観点も含めましてこれに対応してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  83. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私ども大変複雑な立場にありますのは、一方では要求官庁の立場であり、一方では査定官庁としての性格を持つということであります。そして、国民から簡素にして効率的な政府をつくれという大変強い御要請があるのと同時に、現実に業務を滞りなく執行していくためには必要な要員は確保しなければなりません。殊に国鉄改革の影響の中で国鉄からの人員受け入れに伴う特例措置というものが既になくなりました三年度以降、増員というものに対して一つの隘路が生じておることは事実であります。しかし、そうはいいながら新しい税をお認めいただく以上、それが国民に御理解をいただき、円滑に運用のできるだけの要員は確保しなければなりません。全力を挙げてそのはざまでの努力をしたいと考えております。
  84. 宮地正介

    ○宮地委員 私は最後に大蔵大臣に申し上げたいと思うのは、やはり国税職員の増員問題あるいは職場環境の改善問題、過日も一度調査のときの旅費のいろいろな実態を御報告したことがありますが、一つ、種子島というところに税務署があるわけですね。全国の離島にいろいろ署があります。私も初めて知ったのですが、この種子島に赴任をされた職員が宿舎がないんですね。民間住宅に入居している。本当にこれが実態なんです。そういう中からこういう署員からの声が出ている。  「歴史的にも、将来的にも夢と希望を与えてくれる種子島に赴任してきて驚いたことは、離島署 にありながら宿舎が完備してなく、狭あい・老朽化が酷いことでした。無料宿舎が貸与されると聞いていたのに、全国離島署に勤務する百十数名の内、民間住宅に入居しているのは我支部の二名だけということです。なぜ、我々だけ取り残されなければならないのでしょうか。」「宇宙へ羽撃くロケットの島に相応しい宿舎をと問題解決に向け奮闘しているところです。」これは一署員の声ですけれども、私は端的に今の税務職員の苦労がここにあると思うんですね。  職員というのは、調査あるいは査察等へ行かれますと一週間ぐらい平気で皆さん家に帰らない。小さな旅館に泊まって、安い旅費で、本当に日当で、献身的に頑張っておられるわけです。過日も東京管内で、山梨なんかは泊まる宿泊費が足りないで安いモーテルに泊まって、そして服装を変えて泊まって、調査に出かけられるという実態もあった。今回旅費改正で若干上がりましたが、同じようにこういう宿舎の問題で、若い職員が採用になって離島の大変なところで本当に苦労しておる。宿舎があると思って行ったらなかった、こういう大変な状況が、全国の国税職員の中にもまだ相当苦労がある。こういうものにぜひ気配りをし目配りをして、本当に職員が国税職員としての誇りと使命に燃えて活躍できるような職場環境をぜひつくってあげていただきたい、このことを要望するとともに、これについて大臣の所見を伺ってきょうの質問を終わりたいと思います。
  85. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から種子島の実例を挙げてお話がございました。私は昨年、国会の合いを利用させていただき対馬を見てまいりました。これは今たまたま委員から、税務署を例示で挙げて公務員の待遇というものについて御指摘をいただいたわけでありますが、これはひとり国税だけではありませんで、例えば税関あるいは海上保安庁、気象庁等々、本省庁から遠い組織を持つ当局共通の一つの問題ではなかろうかと思います。今の御指摘をも踏まえ、それぞれの実情に応じた改善策が今後ともとられていくように努力をしてまいりたい、そのように思います。
  86. 宮地正介

    ○宮地委員 終わります。
  87. 平沼赳夫

    平沼委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時八分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  88. 平沼赳夫

    平沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正森成二君。
  89. 正森成二

    ○正森委員 それではまず最初に、租税特別措置のうち国際課税をめぐる若干の問題について質問させていただきます。  まず最初に、先日、AIUというんですか、アメリカの企業ですが、日本支社が、本来日本で申告すべき約六十億円の所得を普通より高い再保険料の形でバーミューダを中心にしたアメリカン・インターナショナル・グループ損保会社に移したということで、約二十八億円とも言われる追徴を受けたというように報道されておりますが、そのことについて一応御報告を願います。
  90. 龍宝惟男

    龍宝政府委員 AIUの移転価格課税についての報道がありましたことについてのお尋ねでございます。私ども、御指摘のような新聞報道があったことは承知いたしておりますけれども、個別具体的な調査にかかわる事柄でございますので、一般論でお答えすることでお許しをいただきたいのでございますけれども一般的に申しまして、先生御高承のとおり、昭和六十一年の四月から開始いたします事業年度につきまして我が国におきましても移転価格税制が適用できるということになりまして、早いもので六十二年の五月からその分の申告が出てまいりました。私どもといたしましては、これに対応いたしまして六十二事務年度から、法人の一般の調査をいたします場合に移転価格課税についての実態の調査をする。例えば国外関連社があるのかどうか、あるいはどんな国外関連取引をやっているのかどうかということについてまず実態把握に努めるということから始めまして、資料の情報を収集するということでやってまいったわけでございます。もちろん実態確認が中心でございますけれども、そういう中で問題事案を積極的に発掘していこうということもやってまいりまして、その結果、そういう中で現在問題があるとして把握をいたしました問題事案につきましては、移転価格だけに的を絞りまして実地調査を実施するということで厳正に対応いたしているところでございます。
  91. 正森成二

    ○正森委員 我々が目にしております報道では、このAIUというのは保険料の八割以上を、自分が属する保険会社グループAIGのタックスヘーブン国バーミューダにある保険会社を中心に再保険に出しまして、逆に再保険は余り引き受けないというやり方をやっておった。したがって、報道によりますと、保険料収入が一千七百四十四億円あったのに多くを再保険に出した結果、正味収入保険料が元受けした約一七%しかなかった。外資系損保会社は平均でこの数字は八五%、国内損保会社は平均で六〇%という点から見ますと、所得を海外へ移転したのは間違いないというように言われているそうであります。  今国税庁の方から昭和六十二年度というように言われましたが、税制改正で三年間の時効ということになっておりますから、恐らく時効が成立寸前のものをまずやって、六十三年以降は同じような再保険による所得移転があるとすれば、これはおいおい資料を収集してさらに追徴するという姿勢であろうかと思いますが、そういうように承ってよろしいか。
  92. 龍宝惟男

    龍宝政府委員 個別具体的な問題につきましては具体的に答弁することは差し控えさせていただきたいわけでございますけれども、移転価格調査につきましては、先生御承知のとおり、海外からの資料情報の提供というのが必要でございますし、また国内でいわゆる独立企業間価格というのを決めるのに相当時間がかかるということで、大変調査に時間がかかるというのが事実でございます。したがいまして相当な日数は要しますけれども、私ども最大限の努力をいたしまして、調査の対象といたしましたそれぞれの事業年度について調査をし、それ以降の事業年度につきましても同じような問題があればその事業年度についてさらに調査をして、適正に対応していくということになると思います。
  93. 正森成二

    ○正森委員 この問題は今答弁がありましたように、移転価格の問題に絞って調査するというように言われましたが、同じようにその他の報道によりますと、利益移転の目的は、ただ単なる移転価格で課税逃れをするだけでなしにタックスヘーブンでの資金運用だったということで、もっとねらいが大きかったということを元幹部が内情を明らかにしているということも報道されております。  国際課税を考えます場合に、米国でも課税時効は三年でありますが、企業に時効の中断を求めて合意すれば無期限に延長できる。これは我が国でトヨタ、日産などが何年か前に随分過去にさかのぼって、おまけに国税だけでなしに地方税まで結局還付しなければならないというようなことが起こったのがまだ記憶に新しいところですが、さらに、私も詳しくは存じませんが、挙証責任がアメリカ側では調査対象企業にあるために内国歳入庁は極めて有利な立場に立っておるというようなことも報道されております。  さらに調査官の数が、米国では五百人に対し日本はわずか三十五人であるというような報道もされておりますが、この調査人員については国税庁はこの数字を認めるんですか、それともまた認めないんですか。また、これで十分だと思っておりますか。その点についてお答えください。
  94. 龍宝惟男

    龍宝政府委員 移転価格課税を初めといたします国際調査に当たる人員についてのお尋ねでございますけれども、私どもこれまで、資本金一億円以上の大法人、これにかかわります海外取引調査でありますとかあるいは移転価格調査等専ら国際調査に対応いたしますために、主要国税局を中心に国際調査専門官でありますとか調査情報専門官というものの拡充を図っておりまして、現在約八十名、この中で移転価格税制にかかわります者が約三十五名でございますけれども、こういう体制でやっております。  一方、アメリカにおきましては、先生御高承のとおり、既に一九六〇年代後半に移転価格課税を本格的に導入したという歴史の長さもありますので、日本みたいに日が浅いところと一概に比較することはできないと思いますけれども、私どもの聞いておりますところでは、国際調査に専門的に当たる職員が、エコノミストと称される職員も含めまして約五百名近くいるのではないかというふうに聞いております。  ただ、もちろんこれから我が国の経済の国際化がますます進展をいたしますので、これに的確に対応するために国際調査の専門家というのを育成をして拡充をしていくことが必要であると考えておりまして、そのために調査能力向上のための研修でありますとかあるいは外国税務当局との情報交換を充実強化をしますとともに、関係各方面の御理解を得まして要員の確保にも努めて国際調査に遺漏がないように私ども期してまいりたいというふうに考えております。
  95. 正森成二

    ○正森委員 それに関連して、アメリカの最近のやり方には非常に自国本位で国際的な公正な観点を無視するという点があらわれていると私もかねがね思っております。  大蔵省の、論文をお書きになったときは国際租税課長だったそうですが、黒田東彦さんが「エコノミスト」の九〇年六月五日号に「米国の外資課税強化に反論する」という論文を発表されております。この論文を読みまして、私はめったに大蔵省の役人の皆さんを褒めないで申しわけないのですが、これは非常によくできた論文で、私も二度三度読ませていただきまして参考にさせていただきました。その中で黙視できない点が指摘されておりますので、順次二、三の点について伺いますのでお答え願いたいと思います。  この論文は、冒頭に、一九八九年春に所得統計というのが米国の内国歳入庁から発表された。そのときには何とも思わなかったが、その中に「米国における外資系企業投資経済活動」という小論文があった。そこに出てくるいろいろの数字の中に、一九八五年、全企業の五六%が黒字申告をしている中で外資系企業は四三%、外国企業の支店は三一%しか黒字申告していない。米国系企業の総資産利益率が一・八八%であるのに対し、外資系企業のそれは〇・四五%にとどまっているということが指摘されていた。これは当初何を意味するのかわからなかったけれども、その後の状況は、これを根拠にして外国企業に対する課税強化、特にその中でも日本企業に対するねらい撃ちというものが行われていると書いてありまして、それに対して第一ラウンド、そして現在では第二ラウンドからさらに進んでいるようなことが書かれておりますが、この論文に示されている問題点について、これはどこの担当になりますか、大蔵省ですね、本省から御説明ください。
  96. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 最近アメリカにおきまして、外資系企業に対する課税の問題がいろいろと論議されておりまして、一九八九年、九〇年の両年にわたりまして税制改正も行われているという状況にございます。直接日本企業にも関連してくる問題でございますので、従来私どもも非常に大きな関心をこの問題について有しておりまして、またいろいろの機会にアメリカ側に対しまして意見を申し入れたり私ども考えを伝えたりしているわけでございます。  この御指摘の論文は、昨年の段階におきまして、その当時の議論、また御指摘のアメリカ側の統計の使い方などにつきましてまとめてあるものでございますが、確かに議員も御指摘のとおり、またこの論文も述べておりますように、総体的なマクロの統計と個別企業の問題、特に移転価格税制のような問題が直に結びついてくるとはなかなか考えられないわけでございまして、恐らく先ほど国税庁お話にもございましたように、やはり個別事案として具体的に一つ一つ検討していくということが必要な案件であろうと思うわけでございます。  しかしアメリカ側も、例えば法案の段階で提案されたものをその後各国の意見によりまして一部修正したり、あるいは提案されていたものを一部撤回されたりというようなことでございまして、私どもが接触している限りでは、財務省などの我々に対する対応も非常にリーゾナブルなところもございますし、また他方、議会等におきましていろいろの激しい意見をバックに控えておるという事情もございまして、これからしばらく関心を持っていかなければいけない問題だと思います。  基本的に私どもは、日米間の租税協定で無差別原則があるわけでございますので、その点を何回もリマインドしながら私ども考えを伝えてまいりたいと考えているところでございます。
  97. 正森成二

    ○正森委員 主税局長から概括的な答弁があったのですけれども、黒田さんという方は今主税局の一課長ですか。来ていますか。——あなたですか。それはあなたがお答えになれば一番いいのでしょうけれども、時間が限られておりますので私から言ってしまいますが、今主税局長が、一般論で言った場合には個別企業には当てはまらない場合がある、こういうように言われましたが、まさにそのとおりで、アメリカ側の発表した統計数字を使ってこの論文では反論しているわけです。  例えば、総資産に対する税額の比率でも、米国系は、税額控除前は〇・九で、税額控除後は〇・五である。それに対して外資系は、税額控除前が〇・八である。やはり〇・一低いということを根拠に、何か利益隠しをやっているのじゃないかという議論なのですが、同じ数字を使って、外資系のうちの日本系と日本系以外というように分けて調べますと、総資産に対して、税額控除前は日本系は一・五で、その他が〇・七、あるいは税額控除後では日本企業は一・四、その他の外国企業が〇・四ということで、日本以外の企業が低いところからこういう数字が出ている。逆に日系企業だけを見ると米国系企業よりもはるかに高いということを論証して、それで論破しているわけです。この論文では、「このような観点からみると、従来の米国における議論にはほとんど無意味なものが多い。」というきつい表現で、我が意を得たというような感じで書いておられるわけです。  それだけでなしに、今主税局長が租税条約の無差別といいますか平等といいますか、そういうものに反するものがあると言われましたが、この論文を見ますと、第一ラウンドといいますか、ロステンコウスキーという歳入委員長がおるのですが、それが随分そういう租税条約の無差別条項に明白に違反するようなものを出しておりまして、それがさらにロステンコウスキー・ゲッパート法案、ゲッパートというのは無理なことを言う有名な議員ですが、それがさらに法案を出すということで、最後にはこれは妥協の産物で、それらをあわせて修正されたものが通った。しかし、さらにそれについてもう一歩進めたものも今計画されつつあるということが書いてあります。  そこで伺いたいと思うのですが、その中で、情報提供義務を格段に外資に対しては強化する問題、あるいは非居住者が株式の一〇%強を保有する米国法人の株式を譲渡した場合の譲渡益に関する課税とかさまざまの問題点があるようですが、これらの点についてどう考えておられますか。あるいはこの問題について、租税条約の無差別条項に明確に違反しもしくはそのおそれがあるということで自主的な断固たる態度を今後ともおとりになるかどうか、伺っておきたいと思います。
  98. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 法案の場合には株式の譲渡益課税の問題があったわけでございますが、成立した法律といたしましてはそれは落ちているわけでございます。情報提供義務、情報提出それから情報保持義務のところが一九八九年に成立をいたしました。  主な点だけ申し上げますと、情報提出・保持義務の対象となるアメリカにある外資系の子会社の外資の比率を、一株主で五〇%以上となっておりましたのを二五%以上に引き下げた。それから、外国会社との取引が、親会社、子会社の間での取引が独立企業間価格で行われたかどうかを当局が決定いたしますのに適当な記録を要求に応じて迅速に提出ができないと見込まれる場合には、米国内に保持をしていろ、情報、資料を保持してくれということを義務づけるということでございます。それから、米国当局の要求に応じて情報を提出したりあるいは情報を保持したりする義務を不履行、義務を果たさなかったという場合には罰金があるわけでございますが、従来の千ドルから一万ドルに引き上げるというようなこと、また情報提出義務に応じないと三十日ごとに一万ドルずつ追加する、上限がないというような非常に厳しい規定が八九年に入りました。九〇年にさらにそれを強化するということで、そのような法律の適用の年度を遡及するということを新たに入れますとか、それから、外国企業の支店に対してこの規定が適用になるかどうかというのが明らかでなかったのですが、その支店についても適用するということを明確に定めるというようなことが九〇年になりましてさらに追加されたわけでございます。  この間、先ほど申しましたように、私どもいろいろと財務省その他に申し入れをいたしておりまして、そのために一部米側としても当初の法案を改めたというようなこともあったわけでございますが、現在、法律が成立いたしましてその規則につきまして議論が行われているところでございます。これにつきましても、私ども、また民間団体からも意見を申し入れているところでございますが、今回に限らず今後ともこのような動きに対しましては十分注意をしてまいりまして、租税協定上の平等な取り扱い、無差別の取り扱いということ等につきましてさらに米国側の注意を促していく、粘り強く努力をしてまいりたいと考えております。
  99. 正森成二

    ○正森委員 主税局長から一応の答弁がありましたが、大蔵大臣に念のために伺っておきたいと思います。  私どもも日米の平等の立場に立つ友好関係には決して反対するものではありません。けれども、これはほんの一例ですけれども、日米構造協議等で一方的に自国の利益を主張して、租税条約の国際的な無差別原則に違反するようなことを国内法で決めて、それでどんどん押してくるというようなことは許されないし、我が方も国際課税が本租税特別措置でも一定整備されておりまして、私どもはそれに対して評価しておりますが、これらの点についての大蔵大臣の御見解をごく簡単で結構ですから承って、次に進みたいと思います。
  100. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 構造協議の席上でも我々はこうした点について随分主張いたしてまいりました。また、この租税条約に関連する部分のみではなく、例えば金利の自由化等においても往々にしてアメリカは自国の制度が至上最高という信念のもとに彼らの主張を繰り返すときがあります。我々は日本として主張すべきことを主張し、その中で採用すべき意見があれば別でありますが、我々としての主張を譲れないときには譲りません。今後ともそうした姿勢でいきたいと思います。
  101. 正森成二

    ○正森委員 それでは、時間が迫ってまいりましたので、次の問題に移りたいと思います。  それは租税特別措置の中にある農地の課税の問題であります。租税特別措置では相続税の問題ですが、今国会には農地に関連して数本の法律が出ておりますので、それらにも関連させながら承りたいと思います。  今回の一連の改正では、一九九二年末までに保全すべき農地か宅地化すべき農地かのいずれかを選ぶことにして、そうしなければならないとなっておりますが、農民の中には、一九九二年末までに宅地化するかそれともずっと一生農業をやるかということを決めるのは余りにも酷である、あるいは三大都市圏の特定市の市街化区域農地だけをとってみても、すべてが宅地並み課税の対象となっているわけではないのに、改正案ではこれら対象外農地にまで区分の選択を迫っているように見えるのは酷ではないかという意見がございます。どこの省庁が答えるのかちょっとわかりませんが、事前に申しておきましたので、その点について一言お答え願います。
  102. 林桂一

    ○林(桂)説明員 御説明いたします。  近年の地価の異常な高騰によりまして、大都市圏に住む勤労者の持ち家取得が極めて困難になっておりまして、また、資産格差は拡大する等、大都市における住宅宅地供給は内政上の最重要な課題となっている、緊急に推進していくべき課題であるというふうに認識しているわけでございます。  それで、そのためには大都市におきます、例えば工場跡地等の低・未利用地の有効、高度利用といったような問題の方策もございますが、これらとあわせまして、やはり市街化区域農地の積極的な活用によります住宅宅地の供給の促進ということが急がれているわけでございます。  しかしながら、他方で市街化区域内におきます農地の実態を見ますと、最近の市街化の進行によりましてその総量はかなり減少してきておりまして、東京都の区部におきましても、これから御説明いたします生産緑地の制度の創設当時の四十九年と比べましても半分くらいに減ってきているという状況でございます。そういうことで良好な都市環境、生活環境の確保の上からも、残存する農地の計画的な保全の必要性というのも一方では高まってきているというような実態でございます。  そのために、総合土地対策要綱、昭和六十三年に定められたものでございますが、この要綱に基づきまして、市街化区域内の農地につきましては、都市計画において保全するものと宅地化するものとの区分を明確にいたしまして、宅地化するものにつきましては、地区計画や農住組合制度の活用あるいは土地区画整理事業等による基盤整備による計画的な宅地化を図ることにいたしておりますし、また、保全する農地につきましては、実効性のある計画的な保全を図り得るように、市街化調整区域への編入、逆線引きと申しておりますが、この逆線引きの基準を見直すことにより市街化調整区域への編入を弾力的に行うこととあわせまして、現行の生産緑地地区制度について必要な見直しを行い、これを積極的に指定するようにしているところでございます。  このようなことにつきましては、住宅問題の緊急性にかんがみまして早期に行うことが必要でございますけれども、実務上可能な範囲といたしまして、平成四年十二月末を一つの期限といたしまして都市計画を定めていきたいというふうに考えているところでございます。
  103. 正森成二

    ○正森委員 大分詳しい説明がありましたが、結論は一九九二年末を変えられないと受け取れる答弁でしたが、もう一点伺っておきます。  三大都市圏の特定市の市街化区域内農地の相続税の納税猶予の特例は、生産緑地法改正によって転用制限強化等の措置が講ぜられた生産緑地地区内の営農継続農地を除いて、一定の経過措置を講じた上廃止されることになっていると承知しております。引き続き特例適用を受ける者も、二十年営農による相続税免除の特例制度を廃止され、当該農地に係る農業収入等の書類提出を求められます。これは、結局、終生農業をしなければならないということの別の表現であると思いますが、農民の間で問題になっておりますのは、例えば特定市の市街化区域である大阪市の住之江区の農家というのは、その住之江区内にある生産緑地指定農地の特例を適用した場合に、その農地だけでなしに、その農民が例えば和泉市だとかあるいは隣の和歌山というようなところで持っておる農地についても、同一所有人である限りすべて二十年ではなしに終生農地を継続しなければ特例の適用が受けられないというようになるように読めるのですね。これが農民にとって大きな問題になっているのですが、それならそうとここで答えてください。農民はそれを非常に知りたがっているのです。
  104. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 委員が御指摘になりましたとおり、二十年営農による免除規定は、農地等についての相続税の納税猶予を受ける特例農地等の中に都市営農農地等がございますと、農業相続人に対しては適用されないわけでございます。なぜかということでございますけれども、このような二十年あるいは終生というような免除要件は人的な要件でございまして、その人にとってどうかということでございます。一人の人につきましてその農地がどこにあるかという場所ごとでその要件が変わってくるということはできないわけでございまして、したがいまして、一方、都市農地におきまして終生ということでございますと、すべて終生ということに考えているわけでございます。  また、生産緑地地区内の農地等を特例の対象とするかどうかというのは、それは納税者の選択の問題でございますので、もし大都市地域内にあるような農地について生産緑地地区の特例を受けることを選択しなければ、市街化区域以外の農地につきましては現行どおり二十年の免除を適用できることになります。そこは御本人の選択によって決まることでございます。
  105. 正森成二

    ○正森委員 選択によって決まると言われますけれども、ここに大阪の農民の意見書を持ってきているのですが、大阪では現実では五万戸近い、正確には四万八千ですが、農家が二万ヘクタールの農地を耕していて、野菜、果実の生産では、キクナが四千八百七トンで全国二位、フキが三千八百十九トンで全国三位、タマネギが五万五千八百トンで全国五位ということで、どっこい生きているという言葉がありますが、大阪でさえ農業はどっこい生きているわけであります。その農民がこう言っているのですね。こういう今度の法制度は、   その根底には、明らかに都市に農業はいらない、農家に農地を手放させたい、という考え感じられます。財産権や債権、さらには殺人罪にすら一定の時効がある現在、農民にたいしてだけは棺を覆うまで働けといい、この脅しによって農家に農地所有を諦めさせるという魂胆です。   相続による世代交代は通常二十五年〜三十年で行われます。親と共に、営々として働いて七十余年の生涯を終える人にたいして、あと五年、あと十年の精神的休息を与えることを拒むのは、人道にもとるものであり、農民を侮辱したものと言えるでしょう。 こう言っているのですね。  これらについても伺いたいと思いますが、時間が参りましたのでお答えはもう結構でございますので、質問を終わらせていただきます。どうもえらい済みませんでした。
  106. 平沼赳夫

    平沼委員長 中井洽君。
  107. 中井洽

    ○中井委員 かねてから今度の国会は土地国会になるのではないかと言われておったわけでありますが、湾岸問題等が勃発をいたしまして、土地の問題についても意識が少し薄れてきた国会になったなという感じを抱いておりました。しかし、いよいよこれから租特あるいは地価税、こういったものが始まりまして、私どもも本当に真剣に今の地価高騰問題を含めて幅広い視野から対応していきたい、こんな気がいたしております。  大臣に最初にお尋ねしたいのでありますが、大臣は過去この委員会でも、また私の質問に対しましても、土地高騰あるいは土地対策を税制でやるのはあくまでも補完的である、わき役的な立場だ、こういったことを言われ続けてまいりました。同時に、土地に対する哲学なき税制というのでは効果がないのだ、こういったことも言い続けてこられました。  しかし、今回、大変な勢いで地価税、また今回の租特の中に盛られておられます思い切った土地税制の改革、あるいは銀行の不動産向け総量規制の実施、あるいはまた、これは大蔵省ではありませんが、固定資産税の評価に対する引き上げ要請、こういったことをずっと見てまいりますと、土地高騰と土地対策に対してほとんど税制じゃないか、税金じゃないか、あるいはまたほとんど大蔵省マターじゃないか、こういう感じがいたします。税調があそこまで踏み込んで、税制の問題だけじゃなしに土地問題、日本の国の政策全体にまで思い切ったことを言われて、それに従って国会が法案をやらなければならないというのも少しどうだ、こういう思いもございます。  例えば税調なんかを読ませていただきますと、従来はあめとむちの部分が二つあった。しかし、今回はあめみたいなものはなしにするのだみたいな読み方ができるところもございます。そういったことで、土地対策というのは確かに大変だし、一番大事なことでありますが、どうなんだろうという思いを率直に持っております。大臣自身がここまで土地問題に大蔵省の長として踏み込まれた。それには従来からのお考えを変えられたのか、あるいは哲学というものが国民合意のもとで確立をされておるのだ、こういうふうにお考えになってここまで踏み込まれたのか、そういった点についてお考えを承ります。
  108. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 第二次大戦後、我が国で土地高騰というものが何回か現出をいたしました。そして、過去二回起こりました土地高騰というものに対して私たちが有効な手だてを講じ切れなかった大きな原因の一つは、私は、土地神話というものを壊すことなしに、そのままその時期における地価上昇にブレーキをかけるということに混迷した結果であると考えております。  そして、確かに今委員から御指摘がありましたように、私は、土地というものについての基本哲学の確立なしに税に大きく期待を寄せられても、それは余り効果を発揮しないということを過去繰り返して申し上げてまいりました。おかげさまで土地基本法というものが通過、成立をしたことにより、土地の公共性、公共優先という視点が確立をしたわけであります。これは我々にとって新たな展開の大きな足場になりました。  そうした中で、今日、現に御審議をいただいております租税特別措置、また近く御審議がいただけるであろう地価税を含め、さらには自治省の固定資産税の再評価等をあわせ、税が大きな役割を果たし得る基盤ができたと私は考えております。さらに金融における総量規制等、他の施策も相まって、今ようやく地価が少しずつおさまる方向が出てまいりました。私どもはこの機に、土地というものは持っていれば必ず値上がりがするのだという土地神話というものを何としても壊しておかなければ、問題が将来に再び起こる危険性を持つということを真剣に考えております。  それだけに今回、地価税を初めとし、本日御審議を願っております租税特別措置法の中における対応策、さらには固定資産税の再評価等、税の分野のみならず金融におきましても、我々の役所で言いますならばそのほかに国有地の利活用といったようなものも含めまして、全力を挙げて土地神話の破壊に努力をいたすつもりであります。
  109. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、大臣は、今土地に対してまず土地神話を崩すことが一番大事なこと、そして、国土全体を公共の利用優先という形で有効利用促進というものもあわせ考えていく、これら二つの基本理念が確立された。したがって、それに沿って税制を思い切って変えていく、あるいはこれからもつくっていく、こういう御決意だと聞かせていただきましたが、間違いありませんか。
  110. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 御指摘のとおりであります。
  111. 中井洽

    ○中井委員 今回、土地高騰に対して一番効果的であったと世間一般に思われているのは、何といいましても銀行に対する不動産向け総量規制であろうか、このように思います。四十八年にも一度そういう規制がとられたのを記憶いたしております。今回の銀行に対する土地融資の規制、四十八年と少し違うようなことを私ども認識をいたしておりますが、どういう形でこれは違っておるのか、その原因というのはどんなところにあるのか、お聞かせをいただきます。
  112. 土田正顕

    ○土田政府委員 昭和四十八年における土地関連融資に係る規制についてのお尋ねでございます。二段階に分けてこれを御説明申し上げたいと思います。  まず第一段階は、昭和四十八年一月でございますが、全般的に昭和四十七年から八年にかけましてのいわゆる列島改造ブームなどを背景とする地価の高騰を抑制するために発出されたものであります。一月二十六日、地価対策関係閣僚協議会が開かれ、そこで土地対策要綱が決定されました。 それを受けまして、一月三十日付で銀行局長通達を発しております。その要点は、土地取得に関連すると認められる融資については、公的な宅地開発機関等に対する貸し出し及び個人に対する住宅金融を除き、総貸し出しの伸び率以下に抑制することを目途に、各金融機関が自主的にその調整を図るということを求めているものであります。  次に、第二段階でございますが、その後物価の異常な高騰、それから昭和四十八年十月の第一次石油危機の発生を契機といたしまして、四十八年の十二月でございますが、石油、電力の節減対策とか総需要抑制策とかを柱とする「当面の緊急対策について」というものが立案、策定されたわけでございます。これを受けまして、この四十八年十二月二十五日付で銀行局長通達を出しておりまして、ここでは総需要抑制の観点から、選別融資を実施するという方針を明らかにしております。この詳細は省略いたしますが、要するに選別融資でございますので、その当時といたしましては、例えば抑制的に取り扱うべきものとか優先的に取り扱うべきものというようなことにつきまして例示をいたしまして……
  113. 中井洽

    ○中井委員 ちょっと時間がありませんので、どこが違うのか、なぜそういう違いの規制にしたのかということだけお答えいただけませんか。
  114. 土田正顕

    ○土田政府委員 失礼いたしました。  この四十八年十二月の通達は、いわばその選別融資の一環ということでございます。  今日の総量規制との違いでございますが、やはり四十八年十二月は、石油危機の発生に対処しまして、政策を総動員いたしまして総需要抑制を図るという観点でございました。それに対しまして、今度の場合は総需要抑制というような観点ではなく、専ら土地問題、地価高騰対策、そこに的を絞ったところが違うところであろうと思います。
  115. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、この総量規制をどういう状態までお続けになるお考えなのでしょうか、これが一点。  それからもう一つは、昨今この総量規制の効果があって、いわゆるバブル経済の中でぼろもうけをしておった企業等が、いろいろな形でマスコミに取り上げられるような状況になってまいりました。それを見ますと、金融機関の余りにも不動産向けのずさんといいますか、膨れ上がった融資の状況、私ども愕然とする思いで見ております。つい最近発表されました都市銀行と信用金庫の合併の裏にも、そういったところの不安感からの合併といったものが流れておるのは事実であろうかと思います。そういった形で、この総量規制でバブル経済あるいは土地高騰というものを抑えると同時に、それに浸って伸び続けてきた金融機関の経営、こういったものはどうなんだろうと思わざるを得ないのですが、その点についてどのようにお考えですか。
  116. 土田正顕

    ○土田政府委員 簡略に御説明申し上げます。  この総量規制の取り扱いにつきましては、今後何よりも地価の動向、それを初めといたしまして金融機関の融資動向、それから金融経済情勢や土地政策全般の推進状況などを総合的に勘案しながら対処してまいりたいと思っております。  次に、これが金融機関にどのような影響を及ぼすかということでございますが、これは一般論として申しますと、金利の高い時期に不動産融資に対する規制を続けますと、一部の不動産業などについて資金繰りの悪化をもたらす、ないしは金融機関の有する不動産担保価値が低下する、その他いろいろな問題が生ずる可能性がございます。しかし、それがどの程度金融機関の経営に影響を及ぼすかについては、これは金融情勢、経済情勢その他さまざまな要因によって左右されるものでありますし、殊に個別の金融機関の経営態度、それから努力の積み重ねのいかんによるところが大きいものでございます。  当局といたしましては、この金融機関の貸し出しにつきましては、かねてから各金融機関におきまして不動産関連融資を含め適切なリスク管理が行われるように指導しております。今後ともその指導に適切を期してまいりたいと存じております。
  117. 中井洽

    ○中井委員 時間がありませんので、二点に絞って質問をいたします。  最初に、特定住宅地造成事業のために土地を譲渡した場合の千五百万円特別控除というのが、今回適用対象から外されたという法改正になっております。去年あるいはおととしでも結構でありますが、一年間でこの千五百万円控除の適用を受けた住宅開発というのはどのくらいあるものでしょうか。大蔵省か建設省か、お答えいただけますか。
  118. 木村誠之

    ○木村説明員 お答えいたします。  千五百万円控除の適用を受けました具体的な件数、恐縮でございますが私どもでは把握できておりませんけれども、この千五百万円控除対象となる事業につきましては、先生御承知のとおり一ヘクタール以上の事業ということになってございます。この一ヘクタール以上の事業ということでございますと、住宅建築目的の開発許可で申しますと年間約五百件程度ございます。ただ、これはすべての開発許可でございまして、具体的にこの税の特例を受けるということになりますとこの中の限られた数、恐らく三分の一以下程度ではないかというふうに見ております。
  119. 中井洽

    ○中井委員 税を廃止したり新しくつくるというときに、それまでこの適用を受けておった数がどうであろうとか、あるいは廃止することによって影響がどう出るであろうとか、そういったことを調査なさらずに、ばさっとやめちゃうというのはどうも私どもから見るとわからない点がございます。  先ほど同僚議員からも質問がございましたけれども、この千五百万円控除をなくすかわりに、一ヘクタール以上の団地造成にかわって千平米以上の団地造成にも一五%という軽減税率を適用する、あるいはまたさかのぼってやるとか、いろいろと配慮はなされていることは承知をいたしております。しかし、地域地域の、地方地方の住宅開発というのはこれからではなかろうかと思います。地域によっては、大体土地を売買しても二、三千万という範囲であろうかと思います。  そうしますと、三千万円までは本当はこの千五百万控除の適用があった方が税金が安いというのも事実であります。地域によっては、その地区をまとめるために、本当に売りたくない土地を売るのだ、あるいは後継者が田舎にいないから手放して、先祖様に申しわけないからせめて仏壇でも新しくしようかという形で協力をされて、住宅建設というのは進んでおるのであります。  そういったことを考え、これから法案が実施された後、この三千万以下で住宅開発に土地をお売りになった人の数、こういったものを十分掌握をされて、今後何らかの時点で対応をおとりいただきたい、このように思いますが、いかがですか。
  120. 木村誠之

    ○木村説明員 今回の税制改正案におきましては、土地に関する税負担の適正公平の観点から、先ほど来御議論ございますとおり、譲渡税につきまして、長期譲渡税率の引き上げが出されておるわけでございまして、そのような中で、今先生から御指摘のとおり、軽減税率との選択適用になっておりますいわゆる民間の特定住宅地造成事業の千五百万控除を軽減税率に一本化することとされておりますが、一方で、これも先ほど来御説明ございますとおり、優良な住宅地造成事業に対する個人の長期譲渡所得に係る軽減税率が、通常の方が三〇%と引き上げられた中で、その二分の一の一五%に引き下げられておりまして、またその適用対象というのは、この際初期の用地取得を含めまして大幅に拡大されております。  こういうことを考えますと、全体といたしましては、私ども建設省といたしましても、今回の措置によりまして優良な住宅地の供給が促進されるものというふうに考えておりますが、先生御指摘の点を含めまして、今後とも事業実態等はよく勉強してまいりたいと思っております。
  121. 中井洽

    ○中井委員 では次に、譲渡税の問題について御質問をいたします。  長期所有の土地から減価償却資産への買いかえ特例というのが今回廃止されることになりまし た。この理由をお聞かせいただきます。
  122. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 事業用資産の買いかえ特例でございますが、これは一度事業用の土地を売るわけでございますから、本来でありますと実現した値上がり益に課税をするというのが原則でございますが、特定の目的に沿う買いかえにつきましては課税の繰り延べを認めるという措置でございまして、その特定の目的と申しますのは、国土利用政策でございますとか土地政策の観点から考えられてきているものでございます。  御指摘の、長期所有土地等から減価償却資産に買いかえるという規定が現在あるわけでございますけれども、これはその買いかえるべき地点、区域につきまして特段の指定もないわけでございます。望ましいところへ行くとかあるいは望ましくないところから出るとか、そういうような特段の指定もなく認められてきているものでございますので、その望ましいところへ出ていくとかあるいは望ましくないところから離れるとか、そういうほかの目的がはっきりしている買いかえ特例が利用されずに、この制度によって来ているというような弊害が見られました。  また、将来の設備投資の資金に充てるということで余分に用地を取得しておきまして、値上がり益を期待するという企業行動を招くといった弊害も生じているわけでございます。したがいまして、この規定につきましては今回廃止することといたしたわけでございます。
  123. 中井洽

    ○中井委員 それに対する経過措置がとられていると聞かせていただいておりますが、経過措置について具体的にお知らせをいただきます。
  124. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 ただいま申し上げましたようなことで、この長期所有土地等から減価償却資産への買いかえ特例を廃止したわけでございますが、制度が変わるわけでございますので、現に進行している事業計画に支障を来してはいけないということで、経過措置を配慮いたしております。  具体的に申し上げますと、平成三年十二月三十一日までに長期所有土地等を譲渡した場合には、現行どおりの規定の適用がございます。それから、平成三年十二月三十一日までに長期所有土地等につき譲渡契約をする、その譲渡契約がなされ、かつ譲渡代価の二〇%以上の受け取りがあった場合、その場合には平成四年一月一日から平成五年十二月三十一日までに譲渡、取得を行いますと買いかえが認められるということになります。  それから、今は売る方の土地の話でございますが、今度はその買いかえる資産の方からいいまして、平成三年十二月三十一日までにその買いかえる資産を先行取得した場合、それは現行どおりの規定の適用がございます。それから、平成三年十二月三十一日までに買いかえ資産となる減価償却資産の取得に係る契約の締結が行われまして、かつ購入代価の二〇%以上を支払う、あるいは建設等の着手が行われているという場合につきましては、平成四年一月一日から平成五年十二月三十一日までの間にその取得、譲渡が行われますと買いかえが認められるということになります。  以上のような経過措置を設けている次第でございます。
  125. 中井洽

    ○中井委員 この廃止につきましては、お話ありましたように、国土利用政策や土地政策の観点から廃止をする、こういったことは確かにわかります。また、いろいろな経過措置がとられておることも評価をいたします。しかし、国土利用政策や土地政策という観点から外れて、産業政策、中小企業対策という観点からごらんになっていただいたときに、私どもはこれの廃止、どうだろうと思わざるを得ません。  今日まで各地域の中小企業なんかが赤字になる。あるいはこれだけ転換の速い、スピードの速い産業変革についていく。あるいは工場を建てておるところがいつの間にか住宅街になって、隣近所の人から、悪いけれども出ていってくれないかと後から来た人たちに言われる。思い切って同じ地域内の自分で場所を選んだところを見つけてきて、そこへ工場をかえてしまう、そのときに思い切って機械を合理化をする。こういった形で、各地区の中小企業がありとあらゆる業界を超えて営々として頑張ってきたから、今日の日本経済の繁栄があると私は思います。  これからも本当に転換の激しい、また難しい中小企業の経営をやっていくために、先祖が、あるいは先代が、創設者が持っておった土地を図らずも売らざるを得ない、売って頑張らざるを得ない。そのときに過去に比べて五倍も六倍もするような税金をかけられておったのでは、もう中小企業やめだ、その土地を住宅街にして、夫婦で人も雇う苦労もせずにゆっくりと遊んだ方がいいじゃないか、こういうふうになっていくということを私どもは大変心配いたしております。もちろん中にはこの方法を悪用してマンションを買うたり、あるいは、私もここまで言うとなんでありますけれども企業経営者の方々は不況になってきたら平気で人減らしする、だけれども土地だけは守る、こんなばかなやり方はないと常々考えております。こういう悪用の仕方もあるでしょう。  しかし、現実にいろいろと政府が産業政策をおやりになった中で、図らずもこの特例が日本の中小企業が踏みこたえ、設備投資を新しくやり直すために一番役立ってきた。その制度をあのような経過措置だけで簡単に廃止して、各地区本当にやっていけるのだろうか。各中小企業、意欲を失うのじゃないか、このことを大変心配いたします。私どもは、この法案やむを得ず賛成いたしますが、そういった立場にある中小企業に、産業政策という面からお考えをいただいて何らかの対応をすべきだ、このように考えておりますが、大臣、いかがですか。
  126. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から御意見をいただきましたが、中小企業対策の観点からは、従来から税制におきまして配慮を加えてまいりましたところであります。そして今回の改正におきましても、例えば中小企業における労働力の確保のためには、労働時間の短縮や職場環境の改善に資する機械などに特別償却を認めるなどの措置を講ずることにしております。御指摘のような問題につきましては、来年度以降の税制改正におきまして、中小企業対策として具体的な御要望が出てまいりましたなら検討させていただきたいと思っております。
  127. 中井洽

    ○中井委員 大変ありがとうございました。私どもは具体的な要望を持ってまたお願いにも上がりますので、ぜひとも中小企業あるいはこれからも頑張ろうとする経営者のために、産業政策の面から大蔵省も頑張っていただきますようお願いを申し上げます。  最後に、他の同僚議員からこれも出ましたけれども、私も毎回国税職員の定数増について要望をさせていただいております。私どもも税務相談でいろいろなことで各税務署へお伺いをいたします。日本の税務署の職員さんというのは本当に世界一優秀で、まじめにおやりいただいておる。時にはやり過ぎだという声もありますけれども、これが日本のよさであります。しかし、ようやく土曜日も月のうち半分休めるぐらいになったかと思いますけれども、職務柄本当に地域でばっと騒いで息抜きをするわけにもいきません。大変過重な中で頑張っていただいております。  来年度予算で職員も十分増加をさせていただいておりますが、まだまだ足りないというのが私も含めてここにおられる大蔵委員全体の認識ではないか、このように考えます。職員増加について国税庁としてどのようにお考えか、お答えを承ります。
  128. 福井博夫

    ○福井政府委員 最近の私ども税務行政を取り巻く環境を見てまいりますと、まず第一に、課税対象が急速に増大しておるという事情がございます。それからまた、その内容にわたりましても、不正の手口と言われますものが最近著しく巧妙化しておるという情勢が一方であるわけでございます。さらに、経済取引が日々複雑化しておる、広域化しておる。それに加えまして、最近では国際化の進展というものが著しく進んでおるという状況でございまして、いわば私ども税を取り巻く環境といいますものが、その事務量、あわせてその質ともに一段と厳しいものになってきておるというふうな認識を持っておるところでございます。  このような状況にかんがみまして、国税庁といたしましては、従来から事務運営の合理化、効率化ということで、施策の講じられるところにつきましてはできるだけの施策を講ずるということを行うとともに、ただいま御指摘を賜りましたように、厳しい行財政事情であるということは十分理解はいたしているところでございますけれども、所要の定員の確保、増加につきまして努力を重ねてまいってきたところでございます。  今後とも、ただいま申しましたように一方で事務運営の合理化、効率化ということの施策を進めますけれども、他方、ただいま申しましたような税務の困難性及び歳入官庁としての特殊性ということを関係方面の方々に十分御理解をいただきたいというふうに考えているところでございまして、このような御理解が得られますよう一層の努力をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  129. 中井洽

    ○中井委員 終わります。
  130. 平沼赳夫

    平沼委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  131. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。正森成二君。
  132. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党を代表して、租税特別措置法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  まず第一の理由は、土地税制の見直しが、譲渡、特別控除、買いかえ制度等について、今日の地価高騰をもたらした元凶である大企業、大手不動産会社等に対し甘く、優遇措置が拡大すらされていることであります。  その反面、地価高騰の被害者である住宅、中小企業、農家などの居住用、生業用の土地等に対する配慮が不十分であります。特に、三大都市圏の特定市の市街化区域内農地に対する相続税の納税猶予特例の廃止、また、生産緑地内で引き続きその特例を受ける者についても、二十年営農による相続税免除の特例廃止の上、当該農地に係る農業収入等の書類提出を求められます。すなわち、終生農業に従事することが必要となるわけであります。都市にとって必要な緑と防災のためにも、都市に野菜等を供給する都市農家の経営を守るためにも、こうした営農意思を無視した宅地並み課税と相続税強化は、断じて容認できません。  第二に、大企業優遇の特別措置は縮減、廃止がわずかで、温存、拡大さえされている点であります。  電波有効利用促進設備に関する特償制度対象設備の拡大のほか、特定電気通信設備やスーパーのスプリンクラー設置への特償制度の新設、地下式または立体式駐車場建設に対する割り増し償却制度の新設などは、主として大企業向けの特別措置であり、その対策の必要はあったとしても、あえて税制優遇措置を講ずる必要がないと言わなければなりません。  このほか、大企業優遇の各種準備金、特別償却制度等は、ほとんどが軽微な見直しかそのままで延長されており、容認できません。  第三に、国鉄清算事業団の土地処分等のための対策税制の新設についてであります。  進行している清算事業団の土地処分は、国民の貴重な財産である莫大な用地を、地価を顕在化させないと称して、結局大企業に安値で売り渡すことを容認する可能性があり、加えて、この処分にかかる登録免許税の非課税措置、新幹線鉄道施設のJR本州三社への売却にかかる登録免許税免除、さらに清算事業団の行うJR各社の株式売却についての有価証券取引税の非課税などは、種々理由はあるにせよ問題であります。  本法案には、移転価格税制、タックスヘーブン課税の強化など国際課税の強化、農業、中小企業保護措置など我が党が賛成できる内容も含まれており、その点我が党も評価しますが、全体としては以上の理由により反対することを表明して、私の反対討論を終わります。
  133. 平沼赳夫

    平沼委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  134. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより採決に入ります。  租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  135. 平沼赳夫

    平沼委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  136. 平沼赳夫

    平沼委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、田中秀征君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党及び進歩民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。中井洽君。
  137. 中井洽

    ○中井委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。    租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。 一 公平・公正な税制を確立するため、引き続き税制全般について見直しを行うこととし、特に不公平税制の是正について格段の努力を行うこと。 一 土地税制については、引き続き税負担の公平及び土地政策との整合性を勘案しつつ、適時見直しを行うこと。 一 貸倒引当金、賞与引当金等のあり方については、引き続き検討するとともに、各種準備金、特別償却については、今後ともさらに徹底した整理合理化を進めること。 一 変動する納税環境、業務の一層の複雑化・国際化及び税務執行面における負担の公平確保の見地から、複雑・困難であり、かつ、高度の専門知識を要する職務に従事する国税職員について、職員の年齢構成の特殊性等従来の経緯に配慮し、今後とも処遇の改善、職場環境の充実及び定員の一層の確保等につき特段の努力を行うこと。 以上であります。  何とぞ御賛成を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  138. 平沼赳夫

    平沼委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  139. 平沼赳夫

    平沼委員長 起立総員。よって、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。橋本大蔵大臣
  140. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。(拍手)     ─────────────
  141. 平沼赳夫

    平沼委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 平沼赳夫

    平沼委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  143. 平沼赳夫

    平沼委員長 次回は、来る十五日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時十二分散会