○小岩井議員 私は、ただいま議題となりました
日本社会党・護憲共同提案の
私的独占の
禁止及び
公正取引の
確保に関する
法律の一部を改正する
法律案について、提案者を代表いたしまして、提案の理由及び
内容の概要について御説明申し上げます。
御承知のとおり、独占
禁止法は、
私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を
禁止し、事業の支配力の過度の集中を防止して、事業
活動の不当な拘束を排除することにより、公正かつ自由な競争を
促進し、それを通じて事業
活動を盛んにし、雇用と
国民実所得の水準を高め、もって一般
消費者利益を保護し、
国民経済の民主的で健全な発達を
促進することを
目的として制定された
法律であります。このため具体的には、違反行為者に対して違反行為の排除
措置、刑事処罰の規定を置くほか、カルテル
禁止の実効性を
確保するため、昭和五十二年の法改正により、カルテルによって得た不当な
経済的利得を国が徴収する課徴金制度が導入されたのであります。
しかるに、その後の法の運用状況を見ておりますと、カルテル事件の
発生状況、とりわけ同一の
事業者が違反を繰り返す業種があることなどにあらわれておりますように、現行法の規定では、違反行為を抑止する
効果がなお不十分であると言わざるを得ないのであります。また、違反行為者に対する刑事告発については、昭和二十八年の法改正前の
事業者団体法違反事件を含めても、法制定以来今日までにわずか六件、それも昭和四十九年の石油やみカルテル事件以後は一件もないという状況であります。こうした中で国際的にも今日、
我が国の
経済社会における排他的で不透明な
流通・取引慣行というものが強く批判を受けているところであります。
かかる実情を見るとき、カルテル等の違反行為を一層徹底して抑止し、法の実効性を
確保するためには、現行独占
禁止法を積極的に見直し、改正する必要があります。これがここに独占
禁止法一部
改正案を
提出する理由であります。
次に、この
法律案の
内容について、その概要を御説明申し上げます。
第一に、課徴金の額の引き上げであります。現行課徴金は、カルテル実行期間中の対象商品の売上額に百分の三、製造業は百分の四、小売業は百分の二、卸売業は百分の一を乗じて得た額の二分の一に相当する額とされておりますが、これを当該売上額に百分の十を乗じて得た額とし、ただしその額が当該行為により当該
事業者が不当に得た利益の額を上回ると認められる場合には、当該不当利得の額とするものとしております。
第二に、原価の公表であります。昭和五十二年の法改正により、一定の高度寡占市場で同調的値上げが実施された場合に、
公正取引委員会は値上げの理由の報告を求め、これを公表することのできる制度が新設されました。しかし、その報告
内容は、値上げの当否を判断できるだけのものとは言いがたく、同調的値上げに対する十分な抑止
効果を持つに至っていないのであります。これを是正するため、
公正取引委員会は、同調的値上げが一般
消費者等の利益を不当に害していると認めるときは、当該
事業者に対し、当該商品等の原価について報告を求め、これを公表することができるものとしております。
第三に、確定審決前置の廃止であります。現行法第二十五条は、
私的独占、不当な取引制限、不公平な取引方法については、
事業者が被害者に対して無過失損害賠償責任を負うものとしております。しかし、その反面、第二十六条で、当該請求権の行使について確定審決前置主義がとられております。したがって、この制度の実効性を一層高め、
国民・一般私人の発意によって法の運用を強化するため、確定審決前置を廃止するものとしております。
第四に、前述した損害賠償請求においては、違反行為が存在すること、当該行為によって損害が生じたこと、損害を金銭に換価した額の三点について原告側による立証が必要であります。現行法では、損害額について裁判所は遅滞なく
公正取引委員会の意見を求めなければならないとされておりますが、これに加えて、
事業者につき審決が確定したときは、当該審決により認定された違反行為等があったものと推定する規定を新設しております。
第五に、確定審決前置の廃止に伴いまして、第二十五条の規定による損害賠償に係る訴訟の第一審の裁判権は東京高等裁判所に属するとする規定も削除することとしております。
第六に、不公正な取引方法に係る罰則の新設であります。不公正な取引方法を用いた者等を五百万円以下の罰金に、また不公正な取引方法に該当する事項を
内容とする国際的協定または国際的契約をした者を三百万円以下の罰金に、それぞれ処するものとしております。
第七に、告発請求制度の新設であります。審決により違反行為があると認定された場合には、何人も、法第九十六条第一項に規定する罪となるべき行為があると思料するときは、
公正取引委員会規則の定めるところにより、
公正取引委員会に対し、告発するよう請求することができるものとしております。また、この請求があった場合において
公正取引委員会が告発をしないことに決定したときは、その旨及びその理由を文書で当該請求をした者に通知しなければならないものとしております。
その他、必要な規定の
整備を行うこととしております。
また、この
法律の
施行期日は、公布の日から起算して、三月を超えない
範囲内において政令で定める日としております。
以上が、この
法律案の提案理由及び
内容の概要であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)