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簗瀬委員 簗瀬進でございます。大変重要な法案について
質問をする機会を与えられまして、非常に先輩、同僚に対して感謝を申し上げたいと思います。
さて、
通産大臣の
中尾先生におかれましては、かつて
芦田首相に大変熱血的な手紙を送って、それが
政界入りのきっかけになったということでございます。今日の通産問題にいたしましても、あるいは
地球環境の問題にいたしても、これはある
意味では大いなるロマンというかあるいは
感激というようなものを持って取り組まなければならない大変重要な問題でございますので、まずいわゆる
通産行政と
地球環境の問題の
整合性といいますか、その辺について
大臣の
哲学について私は迫ってみたいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
最近、
地球環境問題が
大変世間の
注目を集めております。なぜそういうふうな傾向にあるのだろうということを分析をすると、例えば口の悪い人は、
米ソの
冷戦構造が終了した、それで
先進国が
国際政治の中でおもちゃになるようなものがないから、特に
地球環境問題をこれだけ熱心に取り上げているのだ、そんな
評価をする方もいらっしゃるようであります。しかし、私はこういう見方は大いに間違っていると思います。むしろなぜ今
地球環境問題がこれほど
世界の
注目を集めているのか、まさに現在は
文明史的な
転換点に我々は立たされているのではないか、このように
認識をしていかなければだめだ、私はこのように考えております。
ニュートンという
物理学者がおりました。非常に機械的な
世界観というようなものを彼は打ち立てたわけであります。どういうことかといいますと、
生産は是である、
発展はプラスである、能率がいいことは本当にいいことだ、こういうふうな前提の中で我々は
産業あるいは
経済というようなものの
振興に邁進してまいったわけであります。しかし、どうもこのような
思想を貫いていくことが不可能になりつつあるのではないかということを我々は
感じつつあるわけであります。そこで、私は今
大変影響を受けております
エントロピーという
考え方を皆さんに御
紹介をすると同時に、
大臣の
考え方を聞いてみたいと思います。
これは、ジェレミー・リフキンという人が書きまして、竹内さんという東大の
名誉教授が訳しておる「
エントロピーの
法則」という本でありますけれ
ども、
大変示唆に富む本であります。この中でいろいろなことが言われておりますけれ
ども、若干御
紹介をさせていただきますと、まず、
熱力
学の第一
法則と第二
法則というようなものが冒頭に出てまいりまして、
エネルギー保存の
法則というのが一番大切だ、まずこうくるわけです。これはどういうことかというと、宇宙における
物質と
エネルギーの総和は一定である、決してふえることはないということなのですね。でありますから、浪費をしたり変化をしたりすると、もう
もとには戻らなくなってしまう、これが
エネルギー保存の
法則の、我々
産業に対して示している指針であるわけであります。
そして、この第二
法則として、そこで
エントロピーというのが出てまいるわけでありますけれ
ども、
エントロピーというのは難しい
言葉でありますが、簡単に言えば、使い切ってしまって形を変えてしまった
エネルギー、これが
エントロピーという
考え方なんですね。これはどういうことかといいますと、
物質と
エネルギーというのは
一つの
方向のみに変化していくのだ。すなわち、使用可能なものから使用不可能なものへどんどん移っていく。そして、
エネルギーを一たん浪費してしまった後、どんなに
科学力を使ってもこれをもう
もとに戻すことはできない、これが
エントロピーの
法則の我々に
意味している内容であるわけであります。
こういうことから考えてみますと、今まで我々は永遠に
物質的な
成長が可能だと思って
産業振興に邁進してまいったわけでありますけれ
ども、このような
世界観は、これからはかなり変更やむなしという
状況になるのではないか。例えば最近は
リサイクルという問題が出てまいりますけれ
ども、これも単なる
リサイクルという、物を
もとに戻すのだという
次元での
考え方ではなくて、有限な
資源を保存するという、これは
エントロピーの
法則から出てくる、我々が長く生きていくために当然やらなければならない、このような
考え方に結びつくわけであります。
こういう中で大変私の好きな
言葉がございまして、
ガンジーというインドの大
政治家がおるわけであります。この方がこんなことを言っております。
文明の
本質というのは
欲望の
拡大にあるのではないのだ、むしろ
文明とは
欲望を意図的に、かつ
自分から捨て去ることにあるのだ。
大変示唆に富む
言葉であります。
まさに今
オゾンの
保護、
フロンに対する
規制という問題をこれから我々は検討していこうというわけでありますけれ
ども、我々の
科学力を大変駆使してつくったすばらしい
物質であったはずの
フロンが、有害な
紫外線を
地上に、我々に振りかぶせる、そういう形で
皮膚がん等の、生命、健康に対して非常な危険を我々にもたらすような、言うならば
科学文明が
発展した結果、我々が
自分で
自分の首を絞めている、こういう
状況がこの
法律の背後にあるわけであります。でありますから、私はそういう
意味では、これからの
産業施策というようなものは、このような
エントロピーというかやはり常に
リサイクルを考えながら、そして
地球環境は有限なんだ、使い切ったら絶対にどんな
科学力を駆使しても
もとに戻らないのだ、このような発想が根底になければ、これからの二十一世紀の本当の
意味での豊かな、幸せに満ちた生活はあり得ないのではないか、このように考えております。
この辺について、
商工行政と大変密着した
部分でありますので、
通産大臣の
哲学を聞かせていただきたい、このように思います。