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1991-04-18 第120回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年四月十八日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 浜田卓二郎君    理事 粟屋 敏信君 理事 石破  茂君    理事 加藤 卓二君 理事 丹羽 雄哉君    理事 野呂 昭彦君 理事 池端 清一君    理事 永井 孝信君 理事 遠藤 和良君       岩屋  毅君    小沢 辰男君       岡田 克也君    片岡 武司君       古賀  誠君    坂井 隆憲君       鈴木 俊一君    住  博司君       野呂田芳成君    畑 英次郎君       平田辰一郎君    三原 朝彦君       山口 俊一君    伊東 秀子君       岩田 順介君    岡崎 宏美君       川俣健二郎君    小松 定男君       五島 正規君    土肥 隆一君       石田 祝稔君    大野由利子君       児玉 健次君    柳田  稔君       菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 下条進一郎君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      越智 正英君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省健康政策         局長      長谷川慧重君         厚生省保健医療         局長      寺松  尚君         厚生省社会局長 末次  彬君         厚生省保険局長 黒木 武弘君         社会保険庁運営         部長      大西 孝夫君  委員外出席者         大蔵大臣官房企         画官      神原  寧君         大蔵省主計局主         計官      渡辺 裕泰君         社会労働委員会         調査室長    高峯 一世君     ───────────── 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   柳田  稔君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   川端 達夫君     柳田  稔君     ───────────── 四月十八日  山西省残留犠牲者救済措置に関する請願(辻第一君紹介)(第二六六九号)  乳幼児から学童期までの保育充実に関する請願古堅実吉紹介)(第二六八六号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願池端清一紹介)(第二六八七号)  同(岡崎トミ子紹介)(第二六八八号)  同(川崎寛治紹介)(第二六八九号)  同(沢田広紹介)(第二六九〇号)  同(松原脩雄紹介)(第二六九一号)  同(水田稔紹介)(第二六九二号)  同(石破茂紹介)(第二七九八号)  同(今枝敬雄紹介)(第二七九九号)  同(大野明紹介)(第二八〇〇号)  同(沢田広紹介)(第二八〇一号)  同(戸井田三郎紹介)(第二八〇二号)  同(野呂昭彦紹介)(第二八〇三号)  同(日笠勝之紹介)(第二八〇四号)  同(増子輝彦紹介)(第二八〇五号)  同(増岡博之紹介)(第二八〇六号)  同(松田岩夫紹介)(第二八〇七号)  同(村上誠一郎紹介)(第二八〇八号)  同(山村新治郎君紹介)(第二八〇九号)  同(網岡雄紹介)(第二八四六号)  同(石橋一弥紹介)(第二八四七号)  同(遠藤登紹介)(第二八四八号)  同(児玉健次紹介)(第二八四九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第二八五〇号)  同(柳沢伯夫君紹介)(第二八五一号)  国立医療機関に働く全職種の大幅増員に関する請願秋葉忠利紹介)(第二七五一号)  同(有川清次紹介)(第二七五二号)  同(五十嵐広三紹介)(第二七五三号)  同(井上普方紹介)(第二七五四号)  同(池田元久紹介)(第二七五五号)  同(石橋大吉紹介)(第二七五六号)  同(上原康助紹介)(第二七五七号)  同外二件(小川信紹介)(第二七五八号)  同(小沢和秋紹介)(第二七五九号)  同(小野信一紹介)(第二七六〇号)  同外一件(緒方克陽紹介)(第二七六一号)  同(大出俊紹介)(第二七六二号)  同(大畠章宏紹介)(第二七六三号)  同外一件(岡崎トミ子紹介)(第二七六四号)  同(岡崎宏美紹介)(第二七六五号)  同外一件(加藤繁秋紹介)(第二七六六号)  同(木間章紹介)(第二七六七号)  同(北川昌典紹介)(第二七六八号)  同(五島正規紹介)(第二七六九号)  同(志賀一夫紹介)(第二七七〇号)  同外一件(嶋崎譲紹介)(第二七七一号)  同外一件(新盛辰雄紹介)(第二七七二号)  同(仙谷由人紹介)(第二七七三号)  同(竹内猛紹介)(第二七七四号)  同(武部文紹介)(第二七七五号)  同(辻第一君紹介)(第二七七六号)  同(戸田菊雄紹介)(第二七七七号)  同(土肥隆一紹介)(第二七七八号)  同(藤田スミ紹介)(第二七七九号)  同(藤田高敏紹介)(第二七八〇号)  同(古堅実吉紹介)(第二七八一号)  同(細谷治通紹介)(第二七八二号)  同(堀昌雄紹介)(第二七八三号)  同(前島秀行紹介)(第二七八四号)  同(松浦利尚君紹介)(第二七八五号)  同(松本龍紹介)(第二七八六号)  同(三浦久紹介)(第二七八七号)  同(三野優美紹介)(第二七八八号)  同(水田稔紹介)(第二七八九号)  同外一件(武藤山治紹介)(第二七九〇号)  同(村山富市紹介)(第二七九一号)  同(元信堯君紹介)(第二七九二号)  同(安田範紹介)(第二七九三号)  同(山内弘紹介)(第二七九四号)  同(山元勉紹介)(第二七九五号)  同(渡辺嘉藏紹介)(第二七九六号)  同外一件(網岡雄紹介)(第二八七一号)  同(岡崎トミ子紹介)(第二八七二号)  同(貝沼次郎紹介)(第二八七三号)  同外二件(川崎寛治紹介)(第二八七四号)  同(児玉健次紹介)(第二八七五号)  同(佐々木秀典紹介)(第二八七六号)  同(佐藤敬治紹介)(第二八七七号)  同(外口玉子紹介)(第二八七八号)  同(中沢健次紹介)(第二八七九号)  同(西中清紹介)(第二八八〇号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第二八八一号)  同外一件(早川勝紹介)(第二八八二号)  同(藤田高敏紹介)(第二八八三号)  保育所制度充実に関する請願太田誠一紹介)(第二七九七号)  同(石橋一弥紹介)(第二八四四号)  公的骨髄バンク早期実現に関する請願平田辰一郎紹介)(第二八一〇号)  公的骨髄バンク早期実現に関する請願村田敬次郎紹介)(第二八一一号)  あん摩マッサージ指圧師の業務と異名同質のカイロプラクティック及び整体術等免許療術行為取り締まりに関する請願石井一紹介)(第二八一二号)  同(中村正三郎紹介)(第二八一三号)  同(浜田幸一紹介)(第二八一四号)  同(水野清紹介)(第二八一五号)  同(石橋一弥紹介)(第二八五二号)  同(二田孝治紹介)(第二八五三号)  療術制度化促進に関する請願外三件(小林興起紹介)(第二八一六号)  骨髄バンク早期実現に関する請願外六件(網岡雄紹介)(第二八四五号)  肝炎患者救済と予防・治療対策拡充に関する請願野呂田芳成君紹介)(第二八五四号)  保健衛生施策充実に関する請願小沢和秋紹介)(第二八五五号)  同(金子満広紹介)(第二八五六号)  同(木島日出夫紹介)(第二八五七号)  同(児玉健次紹介)(第二八五八号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二八五九号)  同(菅野悦子紹介)(第二八六〇号)  同(辻第一君紹介)(第二八六一号)  同(寺前巖紹介)(第二八六二号)  同(東中光雄紹介)(第二八六三号)  同(不破哲三紹介)(第二八六四号)  同(藤田スミ紹介)(第二八六五号)  同(古堅実吉紹介)(第二八六六号)  同(正森成二君紹介)(第二八六七号)  同(三浦久紹介)(第二八六八号)  同(山原健二郎紹介)(第二八六九号)  同(吉井英勝紹介)(第二八七〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  老人保健法等の一部を改正する法律案内閣提出第二八号)      ────◇─────
  2. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出老人保健法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五島正規君。
  3. 五島正規

    五島委員 厚生省にまずお伺いしたいと思うわけですが、厚生省都道府県医療計画及び第二次医療圏ごと地域医療計画策定推進の中で、医療機関の適正な配置を進めていくというふうに言っていたわけでございますが、無医地区医療過密地区の存在などの問題が改善してきているのでございましょうか。むしろ駆け込み増床などにより、現在、地域格差は拡大してきているのではないかというふうに思われるわけでございますが、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  4. 長谷川慧重

    長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘のございました六十年の医療法改正によりまして、各都道府県におきまして医療計画というのを定めまして、病床のコントロールあるいは医療施設相互機能連携等を図ってまいっているところでございます。  御存じのとおり、医療計画平成元年三月までに全都道府県作成されたところでございまして、その目的を達成するためには、いわゆる病床過剰医療圏におきましては、病院開設等につきましては中止等を勧告する、あるいは病床過剰医療圏におきましては、各種補助制度社会福祉医療事業団によります政策金融などによりまして医療供給体制整備に努めるというような形になっているわけでございます。この結果、病床過剰医療圏における病床は近年減少する傾向にございます。一方、病床の非過剰医療圏におきましては、病床が若干、二ないし三%増加している傾向にございます。このように病院病床地域偏在は是正されつつあるというぐあいに認識いたしております。  それから、無医地区につきましても、昭和五十九年の千二百七十六地区から平成元年には千八十八地区というぐあいに減少しているところでございまして、そういう面で先生の御心配のようなことは漸次是正されつつあるというぐあいに認識いたしているところでございます。
  5. 五島正規

    五島委員 今日、情報社会と言われる社会に入ってきたわけでございます。情報社会における国民的な保健医療上の課題というのは常々指摘されているところでございますが、高齢者医療福祉の問題、それから精神疾患の問題であるというふうに指摘されてきているところでございます。かつて経済成長政策時代におきまして、精神病が非常にふえてくるという状況の中で、医療保健というものが限りなく一体として進めなければならないという状況がございまして、今日新しいこの情報社会の中におきまして、こうした疾患あるいは課題疾病構造変化してきているということを考えますと、今日の時代保健医療上の対策は、医療保健、それに福祉が限りなく一体となって対応しなければいけない、そういう時代になっていることは言うまでもないというふうに考えるわけでございます。  ところで、昨年の八月、福祉関連八法の改正によりまして、厚生省は一九九三年から地方自治体に老人保健福祉計画策定を義務づけたのでございますけれども、この地方保健福祉計画と、それまで先行している都道府県あるいは第二次医療圏ごと保健医療計画というものとの関係をどのようにお考えになっておられるのか。本来ならば、保健医療福祉サービス供給体制を、それを利用する市民、住民の積極的な参加を求めて、総合的な地域保健福祉総合計画といったような形として推進すべきではなかったかというふうに考えるわけでございますが、その点について今後どのように対処していかれるお考えか、お伺いしたいと思います。
  6. 下条進一郎

    下条国務大臣 専門家委員からのお尋ねでございますが、今お尋ねのありました地方保健福祉計画、これは御承知のように平成五年の四月から市町村でこれに取り組むという計画になっております。そしてまた、今までありました都道府県または二次医療圏ごと保健医療計画、これも確かにございますが、これは、オーバーラップしたところと、それからまたそうでない、それぞれの目的によって対象を異にしてやっておるわけでございます。その調整は十分に図りながらいかなければならないと考えております。  老人保健福祉計画の方は、御承知のように、市町村の提供するサービス実施量目標及び広域的な老人保健福祉サービス提供体制確保について定めたものでございます。また一方、医療計画につきましては、医療サービスが医師の医学的判断に基づき医療機関患者との契約によって提供されるものであることから、サービス実施量という形で目標を設定することはいたしておりませんで、また、医療供給体制整備については、高齢者以外のいろいろの御要望に配慮いたしまして検討する必要があることから、高齢者のみを対象とはしていないものでございます。したがいまして、両計画については、それぞれ別のものといたしまして策定することといたしておりまして、高齢者に対しましては保健医療福祉サービスを総合的に提供することは重要でありまして、老人保健福祉計画作成に当たって医療計画との調和を図るとともに、医療計画作成に当たっても福祉施設との調和を図ることといたしておるわけでございます。  なお、老人保健福祉計画は、地域保健福祉サービスに対するいろいろな需要を十分に把握いたしまして、これに適切に対応することが求められていることから、計画策定推進に当たりましては、地域住民の御意向を十分反映されるように配慮してまいる、このような取り組み方でございます。
  7. 五島正規

    五島委員 保健医療計画老人のみを対象としていないというのは、これは当然でございますが、しかし、今日の疾病構造変化、これは今日の時点にとどまるわけじゃなくて、今後も高齢社会はますます進んでいくという状況の中におきましては、やはり疾病構造変化というものを考えた場合に、保健医療計画そのものがすべての疾患あるいは健康というものを対象にしながらも、なお総合的に計画をつくっていくということが必要だというふうに考えます。  この質問と関連するわけでございますが、高齢者のための地域における保健医療福祉サービス連携、すなわち地域における高齢者に対する各種ケアシステム化、こうしたことが現在実施されておらずにばらばらの状態にあるわけでございます。今回提案されております地域看護ステーションからの看護婦さんを中心とする訪問看護という問題につきましても、従来から行われております保健所あるいは市町村保健婦さんを中心とする老人保健事業家庭訪問による保健指導でございますが、あるいは昨年出されました在宅介護支援センター及びこれまでも実施されてまいりました市町村のヘルパーさんによる在宅介護サービス、さらには医療機関が実施しております訪問看護、こうしたものとの関係をどう有機的に関連づけあるいは整理していくのか。少なくとも、これらのサービスばらばらに実施されてそして提供される、その結果、こうしたサービスを必要とする高齢者の間に不平等が生じたり、あるいはあるサービスが他方のこれまでの活動を形骸していくということがあったのでは意味がないというふうに考えるわけでございます。これらのサービスをどのように連携し、統合していくつもりであるか、厚生省のお考えをお伺いしたいと思います。  また、そのためには、たびたび指摘されていますように、行政機構縦割り弊害対人サービスの中においては、この弊害を克服するということは非常に重要な問題であるというふうに常々思っているわけでございますが、これについては、国のレベルだけでなくて都道府県あるいは市町村レベルにおいても、具体的にどのような手続でこうした処理をしていくかということを明確にする必要があると思うわけでございますが、厚生省の御見解を承りたいと思います。
  8. 岡光序治

    岡光政府委員 先生指摘のように、保健福祉医療の各施策が総合的に推進されるという、そういうシステムをつくらなければいけないというふうに考えております。  今回、制度化をお願いしようとしております老人訪問看護制度も、在宅ケアの一環でございますので、従来のホームヘルパーの福祉サービスとか、それから先ほどお話がありました、いわゆるヘルス事業でやっております訪問指導であるとか、医療機関との連携のもとにサービスが提供される必要があるというふうに認識をしております。具体的なやり方としましては、県レベルでは高齢者サービス総合調整推進会議がございますので、ここで調整をする。それから市町村レベルでは高齢者サービス調整チームがございますので、そこで各種サービス担当者に入っていただきまして、具体的なケースに最も適するような格好サービスが提供されるような調整をお願いしたいと思っております。  それから、先生からお話がありました在宅介護支援センターというのは、これはサービスを受けるサイドからの問題でございまして、そこについてはまさに保健の問題、福祉の問題、医療の問題全部を相談する格好になっておりますから、そういう意味ではサービスを受ける体制の方としては、この在宅介護支援センターをキーポイントにしていただいて、そのような格好にいたしたいと思っております。  いずれにしましても、そういう発想で今度制度化をお願いする老人訪問看護運営基準につきましては、そういった発想をもとに関係審議会の御意見を聞いて、十分各種サービスとの連携が図られるような格好で展開をいたしたいと考えております。
  9. 五島正規

    五島委員 今の岡光福祉部長お話、言葉としては納得できる御回答なんでございますが、しかし、現実問題として、そういうふうな厚生省のお考えというものがサービスを実施する市町村の段階において実現するということが非常に大事でございます。とりわけ、その問題を進めていく上においては、市町村がどのように関与していくか、あるいはその上に立って、そういう介護センターなんかの中において、各種サービスをどのような形でコーディネートしていくメンバーが必要であるというところまでが丁寧に実施されない限りは、なかなかそういうふうに進んでいかないというふうに思われるわけでございますので、一層の御努力をお願いしたいというふうに思います。  あわせまして、この問題でございますが、過疎地における高齢化というのは非常に進んでいるわけでございます。私は高知県でございますが、池川町という地域におきましては、一つの町全体の高齢化率というのはもう三〇%を超えているということで、非常に過疎地高齢化というのは進んでいるわけでございます。それだけに、今回出されておりますような地域看護ステーションからの看護婦さんによる訪問看護というものを期待する方々というのは多うございます。しかし、同時にそうした地域においては看護マンパワーというものが極端に不足している、そういうふうな地域でもあるわけでございまして、非常に期待度の高い、高齢化の進んでいるそういう過疎地域において、最も必要度の高いところに果たしてこの看護ステーションを設置することが可能なのだろうか。サービス格差、結果として最も必要が高く望まれているところに提供されずに、格差が拡大するという結果になるのではないかという心配があるわけでございますが、その点について厚生省見解をお伺いしたいと思います。
  10. 岡光序治

    岡光政府委員 御指摘のように、過疎地域においてはそういう必要なマンパワーというものの確保が大変だと思っております。そういう意味では、既に市町村保健婦さんがいらっしゃいますので、先生、先ほど御指摘ありましたコーディネーターの役割を果たしてもらうというのが一つのアイデアではなかろうかと思っております。  それから、在宅介護支援センターもお願いしたいと思っておりますので、そういったものと訪問看護ステーション一体的に設置をし運営をするというふうな、それぞれの地域における社会資源がございますので、そういう社会資源を上手に活用していって対応するということを考えざるを得ないのではないかと思っております。  なお、そういう訪問看護を行ってくださる方の実際の看護婦さんの確保につきましては、潜在看護婦さんの開発というのをまず主眼に考えたいと思っております。  いずれにしましても、過疎地は通例の地域とはそういうことで少し条件が違いますので、この訪問看護制度につきまして、制度化に当たりましては、人的な基準であるとか運営基準につきまして、過疎地にふさわしいような配慮が必要なんじゃないか、その辺もあわせて関係審議会で御検討をお願いしたいと考えております。
  11. 五島正規

    五島委員 厚生省ももう既によく御認識のように、高齢者保健医療福祉サービス体系的整備にとりましては、最も考慮されなければいけないのがマンパワー問題でございます。特に人手不足の激しい看護職あるいは介護職については、どうしても人材を確保するという決意という意味を持ってでも特別立法が必要ではないかというふうにも考えるわけでございますが、その点どうでございましょうか。  また、現行法上の諸制度あるいは労働条件、そういうふうなもの、例えば医療従事者賃金体系診療報酬体系あるいはお年寄り等措置費体系、また看護労働者労働時間や夜勤回数などのような労働条件などの基礎的な部分、そういうふうなものを具体的に改善させていくための措置が必要ではないかというふうに考えるわけでございます。  今日、看護労働を三K労働などという、極めて医療従事者からいえば許しがたいような、職業的誇りをないがしろにしたような表現すらマスコミの上に出されてくるわけでございますが、実態としてそういうふうにやゆされるというふうな条件を解消していくためにも、これらについて整備していくということも、このマンパワー確保の上で非常に大事であるというふうに考えるわけでございますが、その点についての厚生省考えをお伺いしたいと思います。
  12. 下条進一郎

    下条国務大臣 委員指摘のように、これからの高齢社会に向かっていろいろな制度充実し、また、その目的を十分に達成するためには、マンパワー確保、これはもう非常に重要な問題でございます。ただ、このために直ちに法制化する必要ありや否や、これは今後の検討課題ではなかろうかと思っております。  人口の高齢化等に伴いまして、保健医療福祉サービスに対する需要は急速に増大しておりまして、その担い手であります看護職員介護職員等保健医療福祉マンパワー役割はますます重要となっております。このために平成三年度におきましては、当面緊急に講ずべき対策といたしまして、一つは処遇の改善、次に就業の促進、また養成力拡充強化マンパワーのすそ野の拡大、さらには、そこに勤められる方々イメージアップ等の諸施策を総合的に行うことといたしておるところでございます。  マンパワー確保を図るためには、もちろんさまざまな工夫が必要であることは御指摘のとおりでございますが、その場合には法制化が必要かどうか、これはまだ今後十分検討していくべき問題ではないかと思っております。  また、給与の改善状況等に十分配慮いたした診療報酬の設定や、施設経営努力を反映した措置費制度改善とかあるいは労働条件改善等につきましては、御承知のように、去る三月十八日に公表いたしました保健医療福祉マンパワー対策本部中間報告におきましても触れているところでございまして、これらに関する具体的な施策につきましては、さらに引き続き検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  13. 五島正規

    五島委員 今回の老人保健法改定の中心課題でございます老人保健制度の費用負担のあり方についてお伺いしたいというふうに思うわけでございますが、高齢者のための医療というのは本来国が保障する基礎的な福祉の領域に属するものであると考えるべきだと私は考えるわけでございます。もちろん今日の国民生活の向上の中で個々の人々の習慣あるいは嗜好といったようなものも随分変わってきております。いわゆるアメニティーと言われる部分、そういうふうな部分が非常に大きな部分を占めてきております。こうした部分は別としても、最低お年寄りの医療、看護、介護といった、そういうふうなべーシックな部分については、こうした本来基礎的な福祉の領域に属する、国が責任を持つ部分であるという認識なくしては、老人保健制度の長期的な安定というものは困難と考えるわけでございますが、その点についてはどのようにお考えになるか。  また、今回の改正案では、老人保健施設の療養費のほかに、看護、介護職員が多数配置されている老人病院の入院医療費について公費負担を五〇%に上げるというふうにしておられるわけですが、この対象は何施設、お年寄りの入所患者に直しまして何人ぐらいおられるのか、それがお年寄りの入院患者の何%に相当するのか。さらに、それは将来どのように変わっていくのかということについてお伺いしたいと思います。  同時に、あわせまして、今回の改正措置によりまして公費の負担というのが当面どれぐらいになってくるのか。さらに、この改正が実施されて、ゴールドプランが終わる二〇〇〇年の段階におきまして公費の負担がどのように変化していくというふうに推定しておられるのか。その数字についてお示しいただきたいと思います。
  14. 岡光序治

    岡光政府委員 まず基本認識でございますが、私どもは、老人保健制度老人医療費を国民の間で公平に負担をするという方法としまして、現行の医療保険制度のいわば共同事業として組み立てられているというふうに認識をしておりまして、その基本的な性格は、社会保険的なものではないだろうかというふうに考えております。  しかし、先生指摘のように、これからの老人問題の推移を考えますと、身体機能が低下をして、自分の力では日常生活が送られない、そういうふうな状況になるお年寄りの数が多くなっていくというふうに推測されますので、そういった人々については、他からの支援、いわゆる介護が必要だというふうに考えておりまして、この介護を押し上げるというのでしょうか、推進する、そういう発想がぜひとも要るのではないか。その部分には手厚い対応が必要である、そういうふうな認識をしておりまして、今回の改正では、介護的要素に着目をして、その部分の公費負担を三割から五割に引き上げておる、こういうふうなことをしておるわけでございます。しかし、そういうふうないろいろな手を使いながら、結果としてお年寄り自身と現役の人たちの拠出金、それから公費負担と、この三者で費用負担をしておるわけでございますので、そういったおのおのが適切な負担をすることによって、この老人保健制度の長期的な安定を図っていかなければならないのじゃないだろうか、こういう認識をしておるところでございます。  それから、数字でございますが、公費負担の五割対象施設、それから病床の現状でございますが、まず一つのパターンは、老人保健施設の療養費でございまして、これは平成三年一月末で四百三施設、三万二千四百床でございます。それから、もう一つのタイプであります看護職員であるとか介護職員を加配をしておるいわゆる老人病院でございますが、平成三年二月末現在で合計三百二十五病院、五万六千二百床でございます。そういう三万床なり五万床余りのところに入っておる人々の数でございますが、全体に対しましては約一五%程度というふうに把握をしております。  こういった人たちが将来どのように推移をするのか、こういう御質問でございますが、これにつきましては、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」に基づきまして、老人保健施設平成十一年に二十八万床に整備をしたい、こう考えておりますのと、介護体制の整った老人病院につきましては、承認促進を含め、普及を図っていきたいと考えております。これは、最近のデータでは毎月二千床程度ふえておりますので、今のような勢いでふやしていきたい、こう考えておりますが、いずれにしましても、そういった不確定要素がございますので、どのような数字になるのかというのはちょっと私ども具体的に申し上げられないという状況でございます。  それから、公費負担の関係でございますが、今回、公費負担の増額は平成三年度満年度ベースで七百五十億円というふうに見込んでおります。これが二〇〇〇年時点においてどのようになるのかということでございますが、七百五十億を、現在の老人医療費全体が六兆円でございますので、六兆円で割りますと、一・二五%でございますが、こういった対象老人保健施設なり対象になっておる老人病院がどのようにふえていくかでございますけれども、私どもは、今の勢いで、相当の勢いでふやしていくということであれば、かなりの公費負担割合になるのではないだろうかというふうに認識をしているところでございます。
  15. 五島正規

    五島委員 幾つか疑問点があるわけでございますが、まず、現在、月に二千床も伸びる月も含め、重介護、介護の整った老人病院がふえてきているということは非常に喜ばしいことだということで、後ほどにまた触れさしていただきますが、そのための努力は引き続きやっていただくということをお願いした上で、この数字の問題でございますが、今回、費用負担のあり方について変更を求めるわけでございます。そうする場合に、現在、例えば老健施設にしても重介護の病院にしても増加をさせていこうという時期にある、そういうふうな時期の出発点として一・二五%の増加である。これは余り論議しても意味のないことだろうというふうに思うわけですが、到達点が推測できない、具体的な到達目標値も出てこないということでは、これはやはり極めて問題があるんじゃないか。そういう意味では、再度、具体的な予測値としてもどれぐらいになるのかということを重ねてお伺いしたいと思うわけですが、いかがでございましょうか。
  16. 岡光序治

    岡光政府委員 かなり大胆な仮定を置いて考えさせていただきますと、現在の六兆円の老人医療費のうちで入院医療費が約六割を占めております。現在、先ほども申し上げましたが、対象になっておる介護力を強化した老人病院とか老人保健施設に入っている人たちが一五%程度ございますが、これがどんどんふえていくと考えまして、人によっては、将来の老人医療費の部分は介護の要素が七割にも達するのではないかと言う方もいらっしゃいますが、現在の推計からいたしまして、仮に五割程度、こういうふうな整備がされたとしますと、入院医療費の割合が六割でございます。その半分がこういう対象になるとしますと三〇%、三割が対象になるわけでございます。その部分について三割から五割にふやすということでございますから二ポイント上がるということで、三〇%に対する二ポイントと考えますと、非常にこれは大胆な仮定でございますが、六%ぐらいにはなる。したがいまして三五、六%には将来到達するのではないだろうかというふうに、これは本当に仮定を置いたラフな計算でございますが、そういう計算はやってみようと思えばできるわけでございます。
  17. 五島正規

    五島委員 私は、今回のこの措置について、看護、介護力に着目して、整備された病院の公費負担を五〇%に増額するということは、現在の老人医療の現状から考えて一定の合理性があるというふうに考えているわけでございます。しかし、そのためには、基本的に医療機関あるいは老人病院において看護、介護力が整備されていくためにどのように努力していくか、将来それをどのようにふやしていくかということが非常に大事である。今、岡光部長の方から、極めて大胆に言って五〇%ということなので、大胆に言って五〇%では困る、七〇%ぐらいまでは何としてもぜひやっていただきたい。そのためにはもう少し厚生省がお年寄りの看護、介護力を整備した病院をふやしていくための具体的な努力が必要なんではないかというふうに考えるわけでございます。  これは後ほどにもまた触れさせてもらいたいと思うわけですが、例えば老人病院だけをとりましても、看護、介護力が整っている病院あるいは整っていない病院を見た場合に、例えば特例許可外病院のように看護、介護力が整っていない病院の方がむしろ保険外負担の比率が高いとか、差額料が多いとか、室料の差額の徴収の比率が高いとか、それから実費に直しましても、そうした病院の方が高いとか、結果的には、看護、介護力が整っていないがゆえにお年寄りへの保険外の負担が非常に過重であるという問題もございます。そういう意味では、これをもう少しふやしていくための努力というものを具体的にしていただきたい。これは先ほども岡光さんの方から五〇%という数字を出しておられるわけでございますので、この数字というものをもっと上げていくような努力をお願いしておきたいというふうに思います。  あわせまして、今回の改定趣旨の中で看護、介護力に着目したという表現がされておるわけでございますが、看護、介護力に着目したと言いながら、その対象老人病院に限定されているわけでございます。例えば、基準看護が承認されております一般病院対象にはされていない。お年寄りの入院の数というものを見てみますと、現在たしか一般病院が約五十一万七千人、老人病院が九万五千人という、いずれも昭和六十二年の数字がございます。一般病院へ入院しておられるお年寄りが多いわけでございますが、一般病院の中でも基準看護の整備されている、いわゆる完全看護というものが原則となっている基準看護承認病院、この基準看護承認の一般病院対象から外れているというのはどういう理由なのか、それをまずお伺いしたいと思います。
  18. 岡光序治

    岡光政府委員 先生御存じのとおり、一般病院は本来的な性格なり機能から見ますと、急性期の患者対象にしておるわけでございまして、そういう具体的な疾病がありまして、それに対する治療ということがメーンになっておるというふうに認識をしております。そういう意味では、今回の公費負担を拡大したいと考えておりますのは介護の要素の部分でございますので、一般病院というのは対象外にしているわけでございます。  もう一点、一般病院の中でも基準看護承認病院について、また、特にお年寄りのウエートが高いところについてはどうなのだという、こういうお話でございますが、それも基本認識としましては、一般病院というのは、そういった具体的な疾病治療ということでございまして、そこに重点が置かれておるんだというふうに考えておりまして、確かに一般病院でも老人の入院患者の比率が高くなっておるところもございますが、御存じのように、七割くらいになりますと、老人病院になってくださいというふうな、そういう仕組みにもしておりまして、かなりこれはばらつきがあるんだと思います。そういう意味では私ども、実務上も一般病院のうちで老人の比率が高いものというふうに区分けするのはどうも難しいんじゃないか。むしろ承認制なり指定制というものにかかわったものを対象にするという、そういう整理区分をさせていただきたいと考えておるわけでございます。
  19. 五島正規

    五島委員 この問題は余り深く聞くつもりはなかったわけですが、ちょっと今の御答弁でお伺いしたいんですが、たしか一般病院の中で基準看護の承認病院は、お年寄りの入院比率が七〇%を超えても老人病院への指定がなかったんではないでしょうか。
  20. 岡光序治

    岡光政府委員 先生の御指摘のとおりでございまして、私どもは、そういう意味では基本的な考え方としまして、一般病院というのは機能上、なかなかそういう対象にしにくいというのが基本でございます。
  21. 五島正規

    五島委員 基準看護の認定、一般病院全体として考えた場合に、一般病院が急性期だけを対象にするというのは、現行の医療法の建前からいっても、また現在の実態からいっても極めて無理な問題でございます。これは現在かなり変わってはきておりますし、一般病院の平均在院日数はもっと短くなってきていると思いますが、ここの手元に、昭和六十二年の患者調査によりますと、一般病院でも平均在院日数が八十・四日と、三カ月近く長くなっているわけでございますね。長期療養患者というのは結構一般病院にも多い。その一般病院に入院している患者の中で、看護、介護力が整備されている、建前としては基準看護というのは完全看護のはずでございますが、中でも特二類の基準看護ということになりますと、五十床のベッドに対して、ちょうど二十名の看護婦、准看護婦あるいは補助看さんが必要になってきます。この二十名の数というのは、看護婦、准看護婦あるいは看護補助者を合計した数として見ましても、今回の介護力強化病院として指定されております入院医療管理料が算定できる特例許可老人病院、例えば五十床に対して十九名という数からいっても、その介護力は整っているということになります。したがって、介護力に着目してということになりますと、こうした一般病院の中におけるお年寄りの医療費の公費負担が外されているというその根拠はないというふうに考えるわけでございますが、その点について重ねてお伺いしたいと思います。  さらにもう一つ、この問題を見ていきますと、私は医者でございますが、その立場からこれを見ていきますと、書かれている内容としては、公費負担を介護力、看護力というふうに書いているわけですが、今回公費負担を増加する医療機関というのは、いずれも老人保健施設、あるいは看護、介護力強化の特例許可病院など、現行の診療報酬体系、すなわち出来高制を原則とする診療報酬体系と異って、いわゆるマルメ方式を中心とする診療体制が実施されている医療機関であるというふうに見られるわけでございます。言いかえれば、診療体系、診療費の支払い体系別に公費負担に差をつけようとしているんだというふうにも考えられるわけでございます。私はそれがいい悪いという論議をここでするつもりはございませんが、もし、そのようなことが配慮の中にあるとするならば、従来の出来高制診療報酬体系というものを含めて、診療報酬体系全体についてやはり十分な検討を行っていく必要があるんではないか、そういうふうに考えるわけですが、その点を含めて厚生省考えを伺いたいと思います。
  22. 岡光序治

    岡光政府委員 繰り返しになって恐縮でございますが、一般病院というのは主として老人のみを対象にするものではなくて、まさに一般的な人を対象にしておりますので、私どもは、今回の公費を増額するその対象病院にはしていないわけでございます。  長期入院の点の御指摘でございますが、基本認識としましては、私どもはやはり一般的な病院というのは疾病の治療というところにあるんではないか、そこで生活が展開されるというのはふさわしくないのではないか。むしろ長期入院というのは、そういう意味で問題なんで、患者の生活の質ということを考えた場合には、その生活の質が保たれるような格好で、例えば老人保健施設であるとかあるいは特別養護老人ホームであるとか、あるいは条件が整えば在宅での療養生活であるとか、そういったそれぞれの身体の特性に応じた格好でふさわしい場所に移っていただくというのが必要なんではないだろうかという認識を持っておりまして、またそのような考え方のもとに、そういう受け入れ態勢の整備を図りつつあるところでございます。  それから、公費負担の対象は、いわゆる診療報酬の点で包括化したところのみを対象にしているんじゃないかということでございますが、私ども、決してそういった診療報酬体系の点からこのような公費負担の対象病院あるいは対象施設を選んだわけではございませんで、あくまでも介護、日常生活を支援をするというところを主にしておるところということを念頭に置いたつもりでございます。  その関係で、今後老人診療報酬制度につきまして、出来高払い制についてどうするんだということでございますが、私どもは、基本的には老人診療報酬というのは、老人の心身の特性に応じた適切な医療が行われるようにということで診療報酬考えていかなきゃならないというふうに考えているわけでございまして、今回の改正法案の中におきましても、医療に要する費用の額の包括的な算定等、当該費用の額の算定のあり方について検討を行うというふうにぜひともしたいということでこの規定を入れておりますのですが、そういう観点から、基本的には老人の心身の特性にふさわしい医療確保する、そして生活の質を高めるんだという発想から、診療報酬の面からも、そのようなアプローチが必要だというふうに考えております。
  23. 五島正規

    五島委員 時間がございませんので、次の問題に行きたいと思います。  今、老人性痴呆患者の増加というのは非常に問題になっているわけでございまして、厚生省の研究班の報告を見ましても、平成二年度の段階におきまして、現在老人性痴呆で施設に入っておられる患者さんというのが、精神病院が三万三千人ぐらい、一般病院が六万人、老人病院が五万四千、あと老人保健施設が一万二千人、特養、養護老人というのをあわせて約十万ぐらいということで、合計二十五万五千人ぐらいの痴呆老人というのが施設あるいは病院の中におられるわけでございます。そして、トータル的には現在約百万近い痴呆老人がおいでになる。この数は今後十年間の間に五割ぐらい増加していくというふうに推定されている。推計値は学者によっていろいろ違うわけでございますが、この厚生省の研究班の推定値によりますと、平成三十二年には二百七十四万人と推定しておられます。学者によっては三百五十万にも達するのではないかというふうに推定している方がおられるわけでございます。  こうした痴呆老人に対する治療あるいは介護あるいはリハビリといったような技術というのは非常に特殊な対応が必要でございます。御承知のように、養護老人施設であるとかあるいは老人保健施設はもちろんのこと、老人病院においてもこうした痴呆老人に対するこれらの技術というのは極めて不十分なところが多いという実態があることはもう御承知のとおりだと思います。厚生省もこの精神科の病院に補助金をつけて現在老人性痴呆疾患の専門病棟、治療病棟と療養病棟ですが、これを建設させようというふうに進めておられるわけでございます。このことは精神科病院の開放性という一面の附属的な部分も含め、何といっても老人痴呆の初期の患者に対する対応という意味においてはノーハウを持っておりますし、技術を持っていますので、私は非常にいいやり方だ、それは積極的に推進しなければいけないというふうに考えるわけでございますが、この老人性痴呆専門病棟というものができ上がってまいりますと、そこに送られてくるのは、どこから送られてくるかといいますと、一般の老人病院あるいは一般病院あるいは老健施設や特養といった施設あるいは病院の中で対応に困っておられる患者さん、そういう患者さんがまずそこへ入ってくるというのはもう目に見えている。  そうした状況の中で、今回の措置の中では、老人性痴呆疾患の専門病棟に入ったお年寄りの医療費について、公費負担の五〇%の適用から外されているわけでございます。もちろん介護力の面で比較いたしましても、介護力強化病院の比率と決して劣ってはいないという状況があるわけでございますから、こうしたこれからの痴呆老人の増加という状況の中で、それをいかに治療し、リハビリし、あるいは社会復帰させていくか、あるいは極めて進行して困難になった人については、そうした専門の技術を持った中において療養させていくというふうな課題が重要な時期に、これがなぜ外されているのか。この疾患の特殊性からはより福祉サイドでの対応が要請されている疾患であるというふうに考えるわけでございますが、そういう意味からいっても、この痴呆専門病棟、治療病棟あるいは療養病棟、これらにかかわる医療費についても当面公費の負担を五〇%にすべきである、そういうふうに変えるべきであるというふうに考えるわけでございますが、その点についてはどのようにお考えでございましょうか。
  24. 岡光序治

    岡光政府委員 精神科病院、病棟の、その老人性痴呆疾患患者の専門病棟の整備は今後とも進めていかなければならないというふうに考えております。この整備促進ということと、それから、こういった病棟に入っている人たちの特に老人医療費について公費負担を五割対象にすべきであるというお話でございますが、これにつきましては、先生も今お話がありましたように、例えば老人保健施設であるとか特別養護老人ホームであるとかに入っておる痴呆性の御老人がいわば問題行動を起こすとか、あるいは精神症状であるとか、そのほかの疾病的な症状があらわれて、どうしてもその専門的な治療というものとあわせて痴呆の対策が必要だというケースについて、精神科の病院なり病棟に移っていく対象になっていくんだというふうに考えておりまして、そのようなことを考えますと、かなり治療的な色彩が強いのではないだろうか。そういうことを考えますと、今回の改正対象にしておりますのは、あくまでも日常生活の支援、介護的な要素に着目をしておるものですから、その治療的な色彩の強いところはどうしてもその対象にするのは適切ではないんじゃないだろうか、このような考え方の整理をしたところでございます。
  25. 五島正規

    五島委員 老人疾患患者さんに対する対応としては、治療的対応とリハビリ的対応、これは現実問題としては分けることが困難な疾患であるはずでございます。同時にそれは療養とも分けることができない。ごく初期の痴呆症状の発症者に対して、より専門的治療という意味でもって治療病棟というものが整備される。もう一方において、ごく初期の、そういう治療が主体というよりも、療養あるいはリハビリというものを主体とした療養病棟という、この二つの種類のものが専門病棟としてつくられるわけでございまして、そういう意味では、今、岡光部長のおっしゃった、これらがすべて治療が主体である病院の、医療機関のはずであるということは当たらないんじゃないか。むしろ老人病院なり老健施設、特養というところの中において、痴呆症状が進んでくる中において、そこで介護していく専門的技術がない。だからそれを介護していく専門的技術のある施設として精神病院の中に療養病棟をつくろうということではなかったかというふうに私は考えているわけでございますが、その辺はどうなんでしょう。
  26. 岡光序治

    岡光政府委員 先生おっしゃいますように、確かに専門病棟のうちでも、いわゆる治療的な病棟と長期療養病棟と二つのタイプを今後考えようということのようでございますから、後者の方の療養病棟は、おっしゃいますように、日常生活的な介護の要素がかなり強いとは認識しておりますが、あくまでも治療が主で、そういう日常生活の介護は従であるというふうに認識しておりまして、先ほども申し上げましたような考え方の整理をしたわけでございます。
  27. 五島正規

    五島委員 公費負担五〇%ができない、恐らく財政当局からなかなか了承をもらえないとかいろいろな理由があるのかもわかりませんが、仮に、そういう理由があってできないからということで言われるにしても、この痴呆老人に対する専門病棟について、現在のように、これは治療を主体とするところなんだというふうに医療機関の性格を分けてしまうということになりますと、これは何も専門病棟をつくる必要はないわけでございまして、それなら精神病院の中で精神障害がある患者として治療していけばいい。そうではなくて、進行性の老人性の痴呆という症状に対していかにリハビリをやっていくか、あるいはそれが困難な患者に対しても、人としての尊厳性を維持させるためには、一定の技術の合った介護が必要だという立場からこれはつくられているはずだというふうに考えるわけでございまして、この医療機関の性格分けについて、それすべてが基本的に治療を主体とする施設なんだというふうな考えというのは、これは私どもが理解していたものと非常に大きく違うわけでございますが、その点について重ねて、公費負担五〇%への増額という問題はだめだという御意見はわかりましたが、了承したという意味じゃございませんよ、しかし言い分はわかりましたが、この施設の性格づけについての御答弁について、それで本当に厚生省いいのかどうか、重ねてお伺いしたいと思います。
  28. 岡光序治

    岡光政府委員 先生に申し上げたいのは、老人保健施設であるとか特別養護老人ホームと対比して考えた場合の性格区分でございまして、精神科病院なり病棟において、そういう専門的な老人性痴呆疾患に対する治療をしていこうという、そのことを否定するものでもございませんし、それからその治療の中身におきましては、かなり日常生活的な介護にわたる部分も大きくウエートを占めているだろうということは認識をしているつもりでございます。あくまでも老人ケアをしていく全体の施設体系の中の位置づけとしまして、その性格区分をあえてしたということでございまして、そのように御理解をいただければありがたいと思います。
  29. 五島正規

    五島委員 今日非常に問題になっております痴呆老人、しかも、この数は年々ふえていくだろうというふうに推定されます。しかも今日の社会的な環境、お年寄りにとってますます社会に参加していくことが困難な都市の環境という状況の中においては、この老人性痴呆というものが高齢者の中にふえていく可能性というのは否定できない。そういうふうな状況の中において、もう既に特別養護老人ホームあるいは老健施設あるいは老人病院の中において極めて専門的な介護を受けられずに、人としての尊厳性すら失ったような状態で、いわゆる縛りつけ老人であるとかさまざまな問題が起こっておること、御承知のとおりでございます。そういうふうなお年寄りに対するせっかくつくられようとしている専門病棟、この専門病棟の位置づけとして、これはやはり介護者の数も整備されるわけでございますから、重介護病院と同じように、当然公費の負担を五〇%とすべきであるというふうに申し上げまして、次の質問に移らせていただきます。  今回の公費負担の増額が入院医療に限定されているのでございますが、在宅の看護というものは、これからも介護の問題というのは非常に重要な課題となってまいります。医療機関が行う在宅訪問看護あるいはデイサービスや本法による看護ステーションによる老人訪問看護といったような訪問看護につきましても、私は、その費用を五〇%にしていくということが必要ではないかと考えるわけですが、その点につきましても、厚生省の御見解をお伺いしたいと思います。
  30. 岡光序治

    岡光政府委員 今回公費の拡大対象にしておりますのは、実質的にもまた制度的にも主として老人対象としている施設、それから看護なり介護職員が十分配置をされて介護体制が整った施設におけるサービスのうちで、特に生活全般にわたるケアを行うという介護の性格にかんがみまして、その部分をとらまえておるということでございます。そういう意味からしますと、私どもあくまでも入院ということあるいは施設収容ということを考えておりまして、確かに老人訪問看護なりデイケアにつきまして先生のお考え方、その通院というサイドからわからないわけではございませんが、あくまでも私どもそういう施設収容なり入院ということを考えて、この公費負担の拡大対象にしたわけでございます。あくまでもデイケアにしましても老人訪問看護にしましても、訪問をして生活指導をするということなりが中心でございまして、そういう意味で私どももその介護的な部分という色彩というのが少し弱いのではないだろうか、こんな認識をしたわけでございます。
  31. 五島正規

    五島委員 この訪問看護あるいはデイサービスという問題も、お年寄りを在宅の状態の中において看護していこう、介護していこうという一つの基本的な厚生省の方針、まあその方針は私ども支持するわけでございますが、そういうふうな方針に基づき、しかも在宅でのお年寄りが非常にふえてきて、そして介護の必要なお年寄りがふえてくる、そういう社会状況の中で実施されるものでございます。したがいまして、これらにつきましても極めて福祉的色彩が強いということを考えるならば、まあわからないでもないという御返事でございますが、当然公費の負担を五〇%にしていくべきであるということを申し上げておきたいと思います。  続きまして、患者の負担の問題でございますが、厚生省は今回の引き上げによりまして老人保健患者の自己負担の割合が約五%になっているというふうにおっしゃっておられるわけでございますが、その算定の根拠というものをお伺いしたいというふうに考えるわけでございます。  昭和六十三年度の老人医療事業年報によりますと、老人入院患者の入院費は昭和六十三年度で平均一日が一万三千四百九十五円、外来の診療費は一カ月平均が一万八千百九十三円というふうになっております。これはもし五%ということになりますと、今回厚生省が出してこられておる数字と大きく食い違うわけでございます。  さらに、具体的内容を見てまいりますと、医師会などではお年寄りの一月の入院医療費は二十六万円ぐらいであるというふうなお話もなさっておられます。この点につきまして平成元年度の社会医療調査を見てみますと、一般病院でのお年寄りの人院費は一月当たり約四十六万円である。しかし三カ月以上のお年寄りの一般病院での医療費というのは約三十六万円、こう出ております。また老人病院の場合をとってみますと、老人病院の一月当たりの医療費というのは、平成元年度の調査で月額平均三十一万円、そして三カ月以上のお年寄りということをとってみますと、特例許可老人病院において二十五万円、そして特例許可外の老人病院に至っては二十一万円という数字が出ているわけでございます。  さらに、僻地等におきましては、有床診療所が老人施設老人病院のかわりの機能を果たしているというところが非常に多いのでございますが、そういうところを見てみますと、一月当たりの医療費は二十六万円、三カ月超えると二十一万円という数字が出ております。医師会の言っているこの数字というのは、どうも有床診療所の数字を理由にしておられると思うわけでございますが、このように医療費の中身というものを検討してみますと、五%と簡単に言われるけれども随分と違うんじゃないかというふうに思われるわけでございまして、その辺の算定の根拠というものをお伺いしたいというふうに思います。  つけ加えまして、いま一つお伺いしたいのは、昭和六十三年度の一日当たりの老人診療費では、これを都道府県別で見てみますと、京都が一番高うございまして、平均が一万八千百五十一円、逆に宮崎の場合は一番低くて一万四百九十七円、同じ一日当たりの診療費が一・七三倍という非常に大きな格差がございます。その理由は一体どういうところにあるのか、その点についてもあわせて御答弁いただきたいと思います。
  32. 岡光序治

    岡光政府委員 まず、一部負担の引き上げの算定根拠でございますが、御指摘がありましたように、まず外来で申し上げますと、老人の外来一件当たりの診療費が昭和六十三年度の実績で約一万八千二百円でございますので、その伸び率を勘案いたしまして平成三年度の推計をしておるわけでございます。その推計によりますと二万円強になりますので、その五%相当で千円というのを算出しております。  それから、入院につきましては、御指摘のように、病院の種類によりまして確かに実際にかかっている医療費が違っておるわけでございますが、七十歳以上の入院患者の七割近くが一般病院に入っている、そういう状況を把握しておりまして、そういうことを前提に、一般病院における老人医療費の一日当たりの入院医療費をベースに考えまして、先ほどもお話がありましたが、入院一日当たりで計算いたしますと一万五千三百円余りになりますので、二年度、三年度の伸び率を計算いたしまして一万六千円弱になります。その五%相当ということで八百円という数字を算出しておるところでございます。  それから、地域差の問題についての原因はどうだということでございますが、これは端的に申し上げまして、人口の年齢構成の差というのが一つ言えると思います。それから、供給側の問題といたしましては、例えば人口十万対の病床整備率、この差というのが影響しておるというふうに考えております。それからまた、医療機関側の診療のパターンにつきましても差があると思います。ある地域では単価は安いけれども入院期間が長い、別の地域では非常に単価は高くて入院期間は短いというふうな医療機関側の診療パターンというか結果としてあらわれておるパターンの違いというのが考えられると思います。それから、受ける方のサイドとしましては、生活習慣であるとか健康に対する意識であるとかいったものが影響しているのも否定できないと思っておりますのと、保健事業がどの程度展開されておるのかということもやはりそういう受診行動に影響を与えているというふうに認識をしております。
  33. 五島正規

    五島委員 伸び率を推定して計算されたのだということでございますが、その点についてもう少し具体的にお伺いしたいと思います。  その前に、今、お年寄り一人一日一件当たりというのは、保険加入者あるいは対象者全員を対象にしたものでなくて、同じお年寄り、保健対象者ですから、年齢構成においてそれほど差があるとは思われません。同じようなお年寄りの疾患が、例えば京都であれば非常に重症者が多い、宮崎はお年寄りは軽症者が多いというふうなことを言っておられるのかどうか、どうもそういうふうにも受け取れるわけですが、ちょっとそういうことも考えられません。そうしますと、一件当たりの医療費の差がこれほど大きいということには、何らかそうした別の要因があるのではないかというふうに考えるわけでございます。その点につきましてもぜひ御検討いただきたいと思います。  それから、一部病院での入院患者が多いということで、それによる医療費が高うつくんだというお話でございます。確かに急性期の患者に対する治療というのは相当高くついてくるというのはやむを得ない。しかし、問題は、長期療養患者というものをとってみますと、一般病院へ入院しているお年寄りの数はそれほど多くないというのは言えるわけでございます。例えば、一般病院の平均在院日数は、先ほど申しましたが、六十二年度の患者調査で八十・四ということでございますから、現在はそれよりもかなり少なくなって六十一ぐらいになっているのではないかというように思われます。そうしますと、三カ月を超え、しかも老人保健対象者というのはそれほど大きな比率ではない。一方、老人病院では平均在院日数が同じく六十二年の患者調査で二百四十八日と非常に長いわけでございまして、老人病院は非常に長いということになってまいります。  そういうふうな状況から考えますと、例えば三カ月以上のお年寄りということを対象にしていきますと、今回の改定の措置というのは、それら長期に療養されるお年寄りにとっての負担が、厚生省が言っている五%ということじゃなくて非常に大きくなってくるということでございます。仮にそういうふうな面から見てみますと、有床診療所に入院しているお年寄りとか老人病院に三カ月を超えて入院しているお年寄りという方々にとってみますと、現在の四百円という金額そのものが既に五%を超えているわけでございまして、仮に一日八百円、一月二万四千円というふうに計算しますと、負担額の比率というのは一〇%を超えてくるということにもなりかねないということでございます。そういう意味からいいますと、一律にいいやというふうな形で八百円という数字を出されてきているということは、お年寄りの療養の実態を無視したものでないかというふうに考えられるわけでございまして、現状のそういう医療費の実態から見るならば、三カ月以上の長期入院患者についての自己負担の増額というものは必要ないし、すべきでないというふうに考えるわけでございますが、その辺についてどうでございましょうか。
  34. 岡光序治

    岡光政府委員 先生もよくおわかりのとおりだと思いますが、一部負担につきましては定額制をとったわけでございます。定額制ということは定率制とは違うわけでございまして、どこかを標準にして何かのメルクマールをつけた上で定額をはじき出さなければいけない。それは、やはり若い人とのバランス、在宅で療養している人とのバランスあるいは他の施設に入っている人とのバランスということを定額を算出する場合の基本として考えなければいけないというふうに認識したわけでございます。そういう意味で、最も多数を占めておる一般病院一つのモデルにしまして、それに対する若い人とのバランスという意味で、若い人が現役の被保険者の場合には一〇%の定率一部負担になっているわけでございますので、その半分程度ということでおおむね五%程度というのを一つ基準として考えて、それらをもとに定額の額をはじいたわけでございます。そういう意味では個々のお年寄りの病院の差あるいは受診の程度の差によりまして医療費が違ってまいりますが、そこのところはこの定額制をとったということで、どうしても乗り越えられない壁があるわけでございます。どうしても受益の程度に対応して一部負担をしてもらうという発想でございますが、そのことを切り詰めて考えますと、定率一部負担というのが理論的には非常にわかりやすい仕組みなわけでございますが、他方ではお年寄りの生活実態あるいは生活感情を考えた場合には、定額の一部負担制をとるべきだというこの最終判断が関係審議会あるいは過去の老人保健制度についての審議においても出されておるわけでございまして、そういう意味で定額制をもとに算出をしてみた、こういうことでございますので、先生がおっしゃいますようないろいろなそういった個々のケースにおける不都合な事態が生ずる部分はお許しをいただきたい。  それで、お許しをいただきたいというだけでは全くナンセンスでありまして、それでは要するに若い人とのバランスはどうなっているんだ、あるいは在宅の人とのバランスはどうなっているんだ、あるいは他の施設に入っている人とのバランスはどうなっているんだ、そういう観点からもう一つ検証しなければいけない。その検証の結果は、私ども決して無理な御負担を願っている程度にはなっていないのではないかというふうに認識をしているわけでございます。
  35. 五島正規

    五島委員 定額制になったからといって一律でなければならないということにはならないわけでございまして、現実に低所得者に対しては入院二カ月までは一日三百円、それ以上はゼロというふうな処置もとられているわけでございます。そういう意味では、定額制でやるからすべてを平均してやっていくんだ。もし、そういうふうな処置をしますと、先ほど申しましたように、有床診療所に入院しておられる三カ月以上のお年寄りあるいは特例許可外に入っておられる三カ月以上のお年寄りにつきましては、若い人たちが負担しておられます一〇%を超えての負担ということになってまいりますし、それから一般的に特例許可の老人病院におきましても若い人たちと同じ約一〇%の負担ということになってしまうわけでございます。そういう意味では、他の若い層との格差という問題につきましても、そういう逆転現象が出てくるという問題を考えた場合に、やはり実態的に長期の療養になっているお年寄りに対する公費の負担というものは、これは増額すべきではないかというふうに私は考えます。また振り返って考えまして、大きな手術をなさったとか、あるいは短期間、救急的な治療あるいは急性期の治療を短期間お受けになったという場合の負担と、それから現在老人施設が非常に不足している中において、老人病院の中で療養しておられるお年寄りの長期間の負担というのとは負担の実感が異なるわけでございまして、そういう意味からの配慮は必要であるというふうに考えます。  時間がございませんので、次の質問に進ませていただくわけでございますが、今回の処置によりまして公費の負担七百五十億円、自己負担が千百八十億円と言われているわけでございますが、この自己負担の増によるはね返り分として公費の負担が三百六十億円くらい減額される。実際の負担増というのは三百九十億円、国費は二百六十億円というものにしかならないということになってくるわけでございます。保険財政の上から公費負担と自己負担というのは逆相関するのは当然でございまして、今回の処置では患者の負担が国庫負担の四・六五倍という比率になってしまう、これも到底容認できないという理由になるわけでございます。  さらに、それに加えて今定額制というお話でございますが、現実にはそれにスライド制を導入するというお話しでございます。スライド制を導入するということは、これは本当の定額制ではなくて、変形した定率制であるというふうに考えるわけでございますが、これについてはどのようにお考えでございましょうか。
  36. 岡光序治

    岡光政府委員 今回の改正は、御指摘のように公費負担は国、地方を合わせまして七百五十億増という計算になるわけでございますが、内訳は国が五百億、地方分が二百五十億でございます。確かに一部負担の効果としましては、全体として千百八十億の効果がございますが、千百八十億に対しまして国庫負担のはね返りは二百四十億でございまして、二百四十億対五百億ということでお考えいただきたいので、先ほど先生四・六五倍とおっしゃいましたのは、恐らく五百億から二百四十億を引いた二百六十億と千百八十億を比較をされているのだと思いますが、私ども少し計算の分母が違っているのじゃないかなという感じがいたします。  これは別の問題としまして、私どもこれ以外に被用者保険の被保険者の負担を軽減しなければいけない。いわゆる老人医療費の拠出金に当たりましては、各保険者が均質的にお年寄りを抱えていく、支えていくというふうな仕組みにしたいということでございますが、結果としましては、被用者保険のグループにはお年寄りの数が少なくて、国保のグループにはお年寄りの数が多いわけでございますので、被用者保険の方が負担増になるわけでございまして、この部分を特別保健福祉事業ということで一千億助成措置を講じて軽減もしておるわけでございます。そういったこともあわせて公費の問題はお考えをいただきたいと考えているところでございます。  それから、スライドの問題でございますが、変形した定率制ではないかということでございます。スライド制を導入したいと考えておりますゆえんは、定額制でそのまま据え置かれますと、医療費の方がふえてまいります。これまでの実績ですと、過去五年間七%か九%医療費は前年対比で伸びておりますので、そのまま定額で置いておくということになりますと、結果としましては、その伸び率の差というのでしょうか、そういったものが拠出金の負担の方に及んでいくわけでございます。そういう意味では、老人医療費については、お年寄り御自身と若い人たちの拠出金、それから公費負担ということの三つの要素で適切な負担を分かち合うという考え方でございますので、その適切な負担を分かち合うという発想からは、医療費の伸びというものを勘案しながら、もちろんこは一日当たりの単価でございますが、単価の伸びを勘案しながら一部負担を動かしていく、こういう仕組みにしていただかなければ、結果としては現役の人たちの不満を招いてしまうのではないか。その不満を招けば老人保健制度そのものが崩壊していくことにつながっていくのではないか、こういう危惧を持っているわけでございまして、その辺を制度として解消したいということを考えているわけでございます。
  37. 五島正規

    五島委員 各保険に対して拠出されます一千億の財政援助につきましては、これは保険制度を守っていく上において国として当然やられなければならない処置でございまして、そのことは必要な処置だと考えています。  ただ問題は、患者の立場に立った場合、先ほど計算のあれが違うとおっしゃいましたが、年間に千百八十億円自己負担がふえることは間違いございません。一方、国庫の負担が二百六十億円の増加になるということも間違いない。この辺を考えてみますと、懐からお金を出す国民の立場に立って見た場合に、国が出す費用の四・六倍ぐらいになるということに対して不満を持つというのは当然だと考えているわけでございます。この点は、時間がございませんので、次に進めさせていただきたいと思います。  今、定額制という問題、そしてその定額制が将来の医療費の伸びの中で云々という話があったわけでございますが、お年寄りが自己負担をする費用というのは保険診療における自己負担分だけではございません。例えばよく老健施設あるいは特養の自己負担との比較において、老人病院に入っているお年寄りの費用負担あるいはお年寄りの入院患者さんの費用負担が少ないという説もあるわけでございます。確かに養護老人ホームにおきましては平均二万七千円程度の自己負担あるいは老人保健施設では平均五万円ぐらいの自己負担があるわけでございます。それに対して老人病院に入っている人の老人保健における自己負担の負担額は、これまで一万二千円でございました。しかし、そのほかに全国平均いたしまして、厚生省の出されました資料においても二万二千五百円の保険外負担というものがある。これは付添料とかあるいは差額ベッド料というものを含んでいない内容でございます。しかも、この保険外負担というものにつきまして見てみますと、非常に地域的なばらつきもございまして、例えば高いところを見てみますと、東京を中心とする関東地区では、老人病院に入っておられるお年寄りの自己負担が一月平均四万四千六百円、一番少ないところが四国地方の八千五百円という数字でございます。このように地域的に非常にばらつきがありながらも全国平均で二万二千五百円の保険外負担がある。さらに加えて付添料の負担あるいはせめて老健施設並みの療養環境を確保しようとするならば、差額ベッド料が月々に三万とか六万とか払わないといけないという実態がございます。そうした保険外負担の問題を含めて考えますと、老人病院における本人の自己負担というものが他の施設に比べて過大ではないというのは全くでたらめでございまして、実は老人病院における負担というのはかなりきついものになってきている。そこへもって今回の医療費の改定で負担を増加させようということになってきますと、逆に老人保健施設等に比べて老人病院における負担というのは極めて厳しいものになってくるというふうに考えるわけでございます。  そこで、定額制ということでお話しになるとするならば、最初にも申しましたように、アメニティー部分におけるそういう療養関係における費用というものは別といたしまして、純粋に治療や療養生活に必要な費用、介護品費といったようなものを中心として基準を設け、そして保険における自己負担と保険外負担の総額は他の施設と比較してみて格差がないというふうな配慮、それがまずされていく。お年寄りが財布から出すお金は、これは保険用、これは保険外負担用、それによって苦しみが変わるわけじゃない、総額でございます。したがいまして、この総額を問題にしてどうなのかということでやっていかないといけない。その辺の視点が定額制といいながら全然ないわけでございまして、そうした問題を一体どうしていくかということについて、ぜひ老健審あるいは中医協を開いて検討させるということが必要かと思うわけでございますが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  38. 岡光序治

    岡光政府委員 確かに保険給付と重複をする治療行為あるいはそれに密接に関連したサービスあるいは物につきましては、名目のいかんを問わず患者から費用徴収をしてはならないという指導をしておりますし、また日常生活の利便として必要な治療とは直接関係のないサービスなり物についての実費徴収につきましても、社会常識的に見て妥当適正な額にしなさいという指導を行っているところでございます。それからまた徴収に当たりましても、あらかじめ患者に対しまして費用の内容とか金額について説明をして承諾を得てください、あいまいな名目での徴収を行わないようにしてください、こういう指導をしておるところでございますが、御指摘がありましたように、この保険外負担の問題は従来から難しい問題としてありますが、今回の法律におきましては、この保険外負担につきましてひとつ検討をしていこうではないか、そういう検討規定を設けさせていただきたいと考えておりまして、おっしゃいますように、保険外負担のあり方について、私どもは関係の審議会で十分御審議をいただきたい。そのことと診療報酬との絡みというのはどうしても否定できないと思いますので、診療報酬の議論の際にもあわせてこの問題を御議論いただくというのはぜひとも必要ではないだろうか、そんなふうに考えておるところでございます。
  39. 五島正規

    五島委員 その中身として保険診療部分と重複するような部分については取らないようにというふうな話がございまして、これはたしか大臣に対する一般質問の中でも私お伺いしたわけでございますけれども、実態的には確かに名目は変わってきているわけですよね。お世話料という部分がおしめ料というふうなものに変わっているとかいうのがあるわけでございます。ところが、おむつ料というものの中身をとってみますと、少ないところでは一日百円ぐらいのところから高いところではおむつ料として一日千円、そんなばかなことはないじゃないかというようなところまで、名目さえ変えてしまえば野放しだという実態。そして、それについて本人の了承と言われますけれども、岡光部長承知のように、現実にお年寄りが寝たきりあるいは介護に非常に手のかかる状態の中で老人病院に入っている、介護施設が足りない。そういう状況の中で、私の知っている患者さんの場合に一年前に比べて保険外負担が一月に一万五千円ふえているわけですね。一万五千円ふえたからといって、それが嫌ならお年寄りを連れて帰ってくれと言われても連れて帰れないという実態があるわけです。そういうふうなことをきちっとガイドラインなりなんなりでやっていくということをせずに、一方で医療費が今後伸びていくだろうからスライド制をやるのだ、あるいはスライド制をやりながら定額制なんだといっても、現実に出す患者の側からいえば、保険外負担を含む自己負担がどんどんふえていっているというのが実感なんです。  そういう意味では、自己負担という問題につきましては、保険外負担を含めた総額を何らかの形で基準値を設け、もちろんその中における保険の負担分と保険外負担分とについてどのようにしていくかということを含め、先ほど申しましたように、老健審なり中医協において検討するとともに、そうしたお年寄りの負担総額について、それの変更の指標として所得あるいは物価というものにスライドさせていくということが必要ではないかと考えるわけでございますが、いかがでございましょうか。  いずれにしても、十円刻みの負担額の引き上げといったスライド制をぶら下げた定額制というのは定率制の変形であって、明らかに老健審の論議、建議にも反するものであると考えるわけでごさいまして、この部分を早急に何らかの形で総額的に規制し、別の指標を持ってくるということについてやり直す気がないかどうか、お伺いしたいと思います。
  40. 岡光序治

    岡光政府委員 保険外負担の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、不適正な負担の是正には努めておるところでございまして、今後ともさらに一層努力をしたいと思います。  それから、先生おっしゃいましたように、保険外負担と老人保健制度で取るところの自己負担、一部負担との総体を考えて何か基準みたいなものをつくるべきだという御指摘でございますが、それらを含めて関係審議会で御審議をお願い申し上げたい、このように考えております。  それから、それとの関連でスライドの指標の問題でございますが、私どもはあくまでも受益の増大ということを念頭に置いて考えておりますが、具体的に考えております指標は、医療費で申し上げますと、例えば医療費は、先ほど申し上げましたように対前年度比で実績では七%から九%伸びておりますが、スライドの指標として使おうとしておりますのは一人頭の単価の伸びの部分でございまして、実績で申し上げますと二%から三%というような具体的な数字になっておるわけでございます。そういったものを考えましたときには、お年寄りの消費の実態であるとかあるいは年金の改定の状況等も勘案しますと、それらと考えてもバランスはそう外れていないのではないだろうか、結果としてはそのようにも考えておりまして、ぜひとも御理解の上でこのスライド制を認めさせていただきたいと考えておるわけでございます。
  41. 五島正規

    五島委員 もう時間が終わりましたのでこれでやめますが、いずれにいたしましても、お年寄りの負担というのは、財布から出る費用総額、その費用については収入なり所得なりにスライドさせていくということが必要でございまして、単価に対するスライドというのはどう考えても変形性の定率制であるというふうに指摘せざるを得ません。  また、時間がございませんので御答弁は要りませんが、療養環境の格差というのは、各施設間、例えば老健施設、養護老人ホーム、老人病院で非常に大きゅうございます。しかも、急性期と慢性期におきましても、そういう療養環境の格差というのは当然必要でございます。そうした点についても、厚生省の方、もう言わなくてもおわかりだと思いますが、どのように整備していくのか。それがない限りは結果的にはその格差の部分がお年寄りへの負担になってくるということを御指摘申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  42. 浜田卓二郎

  43. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 五島議員の質問に続いてお尋ねをしたいと思いますが、私は、今回の制度改正に当たって、公費の負担あるいは御本人の一部の負担の問題について考えていく場合にも、結局最後は国民一人一人の負担の問題であるというふうに思いますので、億の単位あるいは兆の単位の財政も、そのもとは一生懸命働いて支えてきた一人一人の家庭の、あるいは働く人の問題である、ぜひそこら辺の立場に立って現実そのものを見ていただいて論議が深まるようにという立場から質問をさせていただきたいと思います。  今度の改正案の中で、公費の負担も含めまして負担の問題を出されるときに、これは大臣が今回の改正案の提案理由の説明でもおっしゃっていることなんですけれども、「介護の重要性にかんがみ、介護に着目して公費負担を拡充すること」とした、こういうふうにおっしゃっておいでです。さっきから五島議員の方からも、介護に着目をするということ自体は決して問題ではないけれども、それならなぜ公費の割合が五〇%になる部分とそうでない部分とが出てくるのかということについて質問されておいででした。私もそれを聞いていたのですが、どうもなかなか納得がいきません。  もう一度お尋ねいたしますけれども、老人保健施設の療養費及び特例許可老人病院のうち政令で定める看護、介護体制の整った病院に係る入院医療費に限って公費負担率を五〇%にしたそのわけをお示しください。     〔委員長退席、石破委員長代理着席〕
  44. 岡光序治

    岡光政府委員 今後の老人医療課題は介護だというふうに認識をしておりまして、その介護の重要性にかんがみまして、老人医療費の中でも介護的な要素というものをピックアップいたしまして、そこに重点的に公費を投入するという発想にしたわけでございます。老人保健施設は介護を必要とする状態にある老人対象にして看護、介護サービスを提供する施設でございます。それから、特例許可老人病院の中でも特に介護体制の整った病院がございまして、それは日常生活の介護ということを重点に置いてその体制を整えているわけでございますから、いわば老人保健施設と似通ったタイプのものだというふうに認識をいたしまして、この二つのものを公費の拡大対象にしたわけでございます。
  45. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 ある一人のお年寄りが入院する、あるいは在宅ででもこれからは暮らされる、その中で、どこまでが看護が重要で、どこからが介護が重要な部分なのかということは分けることができますか。
  46. 岡光序治

    岡光政府委員 先生もよく御承知のとおり、これはいろいろ議論のあるところでございまして、ある人に言わせれば、病院における看護というのは介護も含めた概念だ、こういう御指摘をされる方もおります。しかし私どもは、病院における実態を拝見しておりまして、いわゆる病気の治療ということのほかに、そこで具体的な日常生活が展開されている。食事をするとかトイレに行くとかおふろに入る、そういうまさに日常生活的な部分があるわけでございまして、それを一人で送れない、身体機能の低下というふうなことが原因になって送れない、その人たちに対して日常生活のお世話をする、そういう部分を介護というふうに認識しているところでございます。
  47. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 であれば、どこの施設だから介護が主で、どこの病院だから看護が主で、この人の場合は介護が重点的だというのは、そんなに机の上で分けられるものではないのじゃないでしょうか。
  48. 岡光序治

    岡光政府委員 いろいろな施設体系化していく、それぞれの連携を図っていくというときには、それぞれの施設が果たすべき機能というものを特定しなければならないと思っております。  そういう意味では、先ほど五島先生にもお答え申し上げましたが、治療的な色彩の強いところと日常的な生活の介護の色彩の強いところというのはそれぞれ分けなければならないと認識しておりまして、そういう意味で私どもは、介護を主に考えておる老人保健施設、それから、それに非常に近い介護体制の整った老人病院というものをその対象として考えたわけでございます。
  49. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 繰り返しお尋ねして恐縮なんすけれども、でも、ある病院に入ったあるお年寄り、この病院は、さっきの岡光部長五島議員へのお答えの中でもおっしゃっておいででしたが、一般的な病院というのは一般的な急性的な疾患に対しての治療なんだからというふうにおっしゃっておいででした。しかし実際には、そこにお年寄りが入って、入院中の内容を見ると、介護の部分が非常に多いということも現実にはいっぱいあるのですが、それでもあえて線を引かなければならないとされている理由というのを私はお尋ねしているのです。なぜそこで看護、介護というものにこだわられるか、しかし、こだわる割には、看護、介護というのはいろいろな意見があるようになかなか区別できないものである、こういうふうにもおっしゃっておいでなわけですが、あえて分けなければならない理由はどこにありますか。
  50. 岡光序治

    岡光政府委員 私どもは、公費負担を拡大する対象考える場合には、やはり施設としてその対象をとらまえなければならない、こう発想したわけでございます。そこで、病院とか老人保健施設とか、そういう施設としてそれぞれの施設一体何を期待されているのか、そういうことで、施設体系の中でどの部分が介護的な要素として介護的な役割を担っておるのかという認識のもとに公費負担の拡大対象施設を選んだわけでございます。おっしゃいますように、確かに一般病院の中でも長期入院化すれば、そこでの投薬であるとか具体的な治療の部分が実際は非常に少なくなって、日常生活の支援、介護というところが多くなるというのは私どもも実態認識をしているわけでございますが、それは一般病院というその中での個々の実態でございまして、あくまでも、施設体系ということを考えた場合の施設ごとの機能分担という発想からは議論として少し違った議論じゃないだろうか。あくまでも私どもは、拡大対象としては施設としてとらまえて整理をしたいという発想にしたわけでございます。
  51. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 施設としてというのを発想にしたというのは、先ほど御答弁の中でたしかあったと思うのですが、実務上分けるのが困難だからということが最大の理由ですか、それとも財政上の理由であるからというのが大きな原因ですか。
  52. 岡光序治

    岡光政府委員 端的に申し上げまして、実務上の理由でございますのと、それから、これからいろいろな施設間の連携ということを考えていかなければならないといった場合には、その機能というものをやはり明確にしていかなければならないという認識がベースにあるのは事実でございます。財政的な理由ではございません。
  53. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 それでは、今回老健審の中でもいろいろな議論がございますし、またその他の審議会でもこの老人保健制度についてたくさん意見があるわけですが、しかし、その中でも言われておりますし、また厚生省自体もおっしゃっておいでの中で、老人がだれでも、どこでも、いつでもそのサービスを受けていけるようでないといけない、そのための財政基盤の確立でないといけないということが発想だと思うんですよね。そうであるならば、極めて実務的な問題で今回は区別せざるを得なかったけれども、財政上の問題でないとするならば、やはり公費負担の拡充については、これは老健審の中でもいろいろな意見はあるにしても、しかし拡充は目指せというふうに言われているわけでして、将来的にといいますか、実務上の問題がクリアされていけばこれは公費負担の割合に段階があるということはなくなっていく、そういう方向を目指しているというふうに考えてよろしいですね。
  54. 岡光序治

    岡光政府委員 先生も冒頭お話をなさいましたが、公費負担といっても国民の税金でございますので、それをどこにどのように配分をするのかというのは、やはり基本的な考え方が必要だと思っております。そういう意味では、実務上の理由というのはこれは要するに補助的な考え方でございまして、あくまでも、税金をより多く投入するのは一体何にすべきかという基本的な発想が必要だと思っております。そういう意味では、今後の老人医療の展開を考えました場合には、その介護の部分というのが非常に重要なものを占めてくるであろう、しかも施設におけるそういう介護体制の強化というのを考えていかなければいかぬ、そういう発想から、日常生活の介護を重点的に機能として果たそうという施設を拡大対象考えたということでございます。先ほども五島先生に申し上げましたが、老人保健制度は、各医療保険制度のいわば老人医療費の部分についての共同事業というふうに基本認識しておりまして、いわば社会保険でございますから、その社会保険という制度の中にどれだけ、どの部分に公費を投入していくというのは、これはやはり基本的な考え方の整理が要るのだろう、こう思っているわけでございます。
  55. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 きれいな言葉は要らないのですけれども、先ほどおっしゃったことと今おっしゃったことと私は違うと思うんです。どうしても介護、看護一貫の中でそれでもなおかつ分けざるを得なかった最大の理由は何ですかとお尋ねをしたら、極めて実務上の問題ですと、端的にそうですとおっしゃった。だけれども今、再度お尋ねをすれば、それは補助的な理由であると、こういうふうに返ってくる。私はそれは納得がいきません。もう一度御説明ください。
  56. 岡光序治

    岡光政府委員 御説明が下手だったかとも思いますが、あくまでもそういう思想が根っこにありまして公費の拡大対象考えたわけでございまして、かつ、それは実務的にも乗っていかなければならない、こういう発想でございます。
  57. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 答えが下手だったかどうかじゃないんです。違うことをおっしゃったということについて私はお考えを求めているのです。
  58. 岡光序治

    岡光政府委員 繰り返しで恐縮でございますが、やはり公費を投入するに当たりましては基本的な考え方が必要で、その基本的な考え方は、介護という点に着目をしておるということでございます。
  59. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 公費をどういうふうに投入していくか、その割合については意見がいろいろあるということは、これは私も承知をしております。だから、そこをお尋ねをしているのではなくて、しかし、そのいろいろなやり方はあるでしょうけれども、区別せざるを得なかった、今回段階にせざるを得なかった理由の一番大きな原因は実務上の問題ですとおっしゃったことは、これは間違いだったということなんですか。
  60. 岡光序治

    岡光政府委員 実務上の制約があるというのは事実でございますが、やはり公費を投入するというのは基本の思想が必要でございますので、基本の思想に基づいた発想でございます。
  61. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 最大の理由は実務上の問題であったということについて私もう一度お尋ねをいたします。それは、あなたがおっしゃったことは間違いだった、こういうふうにおっしゃるわけですか。
  62. 岡光序治

    岡光政府委員 最大の理由か、こういうお尋ねであれば、それは最大の理由ではありません。それで、もし私が先ほどそのようにお答えしたとしたら、間違いでございます。
  63. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 私はお尋ねには本当に誠実にお答えをいただきたいと思います。さっきおっしゃったこと間違いですというふうに言われましたら、本当に多くの人は公費の負担、一人一人の財布から私が出した部分について公費が幾らかということはお年寄りの皆さんはその時点でわかりませんけれども、しかし、公費の負担の割合がこうこうであり、そして自分たちが一部の負担、今何を求められているかということを検討しなければいけないときに、その公費の負担割合を分けた理由として大きな問題は何ですかとお尋ねしたら、最大の理由は端的に申し上げて実務上の問題ですと、これは私だけじゃありません、さっきの五島議員にもそうお答えになりました。それをそのすぐ後であれは間違いでしたと言われたら、私は次の質問なかなかできません。
  64. 岡光序治

    岡光政府委員 やはり基本の考え方は介護の部分を強化したいということでございますので、そのような思想に基づいているわけでございます。しかし、それを実際的に何億枚もあるレセプトの中からどの部分を対象にしていくのかということになりますと、そのレセプトをピックアップしていかなければいかぬわけでございますから、そこは実務的に乗らなければならない、そういうシステムが必要だ、こう申し上げたつもりでございます。
  65. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 実務の問題というのは、基本的な考えがあれば、ではそれをどういうふうに越えていくかというのは、これは内部で十分相談してやっていけることなんです。だから、今回どうしても分けざるを得なかったのは、とりあえずこの実務面がクリアできなかったことであるとすれば、私たちは、この公費負担に今仮に段階があるとしても、これはこの間福祉計画を立てる際に、厚生省が十カ年戦略というふうに立てているように、例えばこの問題についてある程度の年次計画を立てて、実務の問題も解消しつつ、公費の負担についてはこうあるべきだというものを出していくことができると思うのですけれども、今のお答えの中から私は、どうもまず分けるということが、とにかくそれがあって、つじつま合わせに実務上の問題というふうにお答えになったのか、それとも、実務上の問題として非常に大変だったので、公費負担の割合についてこれからまだ審議会で話をしていくにしても、しかし、みんなが同じような、一体どこへ入院をしてもどこで治療を受けても同じような状態で公的なサービスというものがそこにある、公的な負担が同じようにあるという状態を目指して実際進んでいっているのかどうなのかというのは、これは大きな違いですから、そこだけははっきりさせてください。
  66. 下条進一郎

    下条国務大臣 大変大事なポイントでございますので、私の方からお答えさせていただきます。  今回の改正のねらいは、御承知のように、高齢化が進みまして、この老人保健制度をどのように安定的に運営してまいったらよろしいかという全般的な制度の見直しの観点からも考慮されたわけでございます。したがいまして、また、その負担をどの方がどういうように負担していくか、若い方が負担している部分についても、あるいは公費の負担の部分についても全体的な安定の制度を維持していくためにいろいろと検討をしてまいったわけでございます。現在の老人保健制度では社会保険方式を基本としながらも、老人医療に対する公費負担割合は、我々の考えといたしましては、実質的には相当の水準にもう既に達しておるという観点から、また税財源から充当されます公費割合をそのために一律に全部引き上げてしまうということは必ずしも適当ではないんではないかという一つ考えがございます。  今回の老人保健制度改正では、老人医療の中で今後の重要課題であります介護要素に着目いたしまして、その部分の公費負担割合を三割から五割に引き上げる、こういう整理をしたわけでございます。またこれとともに、老人保健基盤安定化のための国庫助成措置拡充いたしまして総額一千億、前年に比べまして百億をふやしまして継続することとしたところでありまして、これらの措置によりまして、現役世代の拠出金負担軽減のお一人年間六千六百円の軽減を通じまして、老人保健制度の将来にわたる運営の安定化が図られるものと考えてこのような改正をお願いしておるわけでございます。
  67. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 負担の割合をどれぐらいにしていくかということについては、これはいろいろな意見があるということを私たちも聞いております。ただ私たちとしては、負担の割合がいかにあろうとも、今度はその決まった割合を実際に使っていくときに、この施設なら何割で、この施設なら何割で、こういう段階があるということはおかしいのではないかと思っておりますから、これは、これからまたいろいろな論議をする場面があると思いますので、また言わせていただくということにしたいと思いますが、ただ、本当に繰り返して申し上げますけれども、老健審の中でも公費負担の拡充ということははっきりと言われているということ、そして、それを実際どういうふうに使っていくかというときに、実際いろいろな病院でどんなことが行われているかということ、あるいはそれに対してどんなことを考えているかということをきちんと受けとめていただきたいと思いますし、先ほどのような理由づけで、その理由がころころ変わるような形で私たちは改正を求められてもなかなか納得がしがたいということを申し上げておきたいと思います。  患者の一部負担の問題です。厚生省からもこの間いろんな宣伝物が出ております。つい最近は、漫画で見るような形でのパンフレットもいただきました。それを見ておりますと、老人保健施設に入ったら一月五万円だ、特別養護老人ホームだったら二万七千円だ、でもごく普通入院したら一日四百円で一月一万二千円だ、安いわね、家にいたって御飯も食べないといけないからこんな安くつかないわよ、こういうふうな言い方で宣伝がされております。  しかし、先ほどから保険外負担も話題になっていましたけれども、老人保健施設や特養ホームというのはいわゆる保険外負担というのはほとんどないはずなんですね。でも一般の病院に入院をいたしますとこの保険外負担というのは大変大きいものになっています。これは厚生省が宣伝していらっしゃる、本当に一万二千円、まあよく商売で言うなら一万二千円ぽっきりで済んでしまう、一見こういうふうな内容の宣伝は現実を無視をしているものじゃないかと私は思うのですが、これはどうでしょうか。
  68. 岡光序治

    岡光政府委員 保険外負担の状況でございますが、付添看護をつけておるのは一般病院のうちも約一〇%、それから特例許可老人病院の場合には約一九%でございます。それから室料差額を取っているのが全病床の約一〇%でございます。そういう意味では、これは全体でそういう保険外負担をしておるわけではありませんので、そのような実態があるということはひとつ御認識をいただきたい、このように思うわけでございます。あくまでも私どもは、若い人とのバランス、それから、お年寄りの中でも施設に入っている方、あるいは在宅で生活をなさっている方とのバランス、こういったものを考えた上で、しかも無理のない範囲で御負担を願うということが必要だというふうに認識したわけでございます。  なお、日常生活の経費で見てみましても、その消費実態調査から考えまして、在宅の高齢の方の消費支出は単身の世帯でも月額で十一万円から十三万円程度になっておるわけでございまして、その中の食費であるとか光熱水費であるとか、そのほかのもろもろの経費はかなりのウエートがあるわけでございまして、そういうこととのバランスを考えても無理のない範囲ではないだろうかと認識をしておるわけであります。
  69. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 どういう調査をされて付添料だとかいう保険外負担を支払わないといけないのは体の一割くらいだ、こういうふうにおっしゃっているのか、ぜひその調査の中身もお尋ねをしてみたいと思いますが、しかし、これは本当に岡光さん外に出て、大きな負担を強いられているのはほんの一割ぐらいの人だから問題はないです、ほとんどの人は一万二千円で一カ月入院できますというふうにこうやっておっしゃってみてください、うそだと言われますから。そういう現実があるということを本当に御存じないのでしょうか。たった一割だというふうに、間違いないと確信をしてこういうふうに宣伝をしていらっしゃるのでしょうか。
  70. 岡光序治

    岡光政府委員 宣伝をしているわけではありませんで、そういう横並びの議論として典型的な例をとればこういうことになっておりますというのをお示しをして、御理解をいただきたいということを考えておるわけでございます。もちろん、お年寄りを抱えておる世帯であるとか、あるいは入院をされて御苦労なさっている方の負担というのは今おっしゃいますようにいろいろあるのは事実でございますので、そういう意味では保険外負担のあり方についてその是正方を、先ほども五島先生に申し上げましたが、是正方をいろいろ図っておるところでございます。     〔石破委員長代理退席、委員長着席〕
  71. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 それでもいろんなところで見る宣伝物というのは、まあ一万二千円で済む、家にいても食べるものは要るし、それに比べると安いわね、こういうふうに書いてあること自体が私は、本当に横並びでこういう例があるというふうにおっしゃるのだったらこの宣伝の仕方は間違っていると思います。実は本当に、入院をする際にたくさんの費用負担が要ります。私も神戸に帰ったときに言われたのですね。ある人の、これは聞いた金額なんで知っていただきたいと思うのですけれども、一人の付添婦さんが一人の患者さんに丸々二十四時間一日ついたとする、そうするとその費用が九千五百十円、それプラス手数料一〇・一%九百六十円をつけて一万四百七十円一日に支払わないといけないのです。一カ月仮に付き添いさんが必要だとしたら三十一万円超えるのです。もちろん後から共済だとかいろいろなところからその一部を返してもらえる、こういうこともありますけれども、それは、あなたのところは付き添いさんをつけてもらった方がいいです、つけてもらってください、こういうふうに言われたときに、あらかじめ届けをして、じゃ、あなたのところはどうしても必要だからそれを認めて後で幾ら幾ら返してあげよう、それを許可してもらって初めて後で返してもらえるわけで、それをしなかったら戻ってこない。実際そのとき私たちが三十万というお金を工面できなければ付き添いさんをお願いすることはできないのですよね。それで、どうしようもなければ家族が交代で行くか、交代で行く手だてがなければ、私なんかも職場で親の介護をするためにやめていった仲間もいますけれども、やめて付き添いをする、こういうことも出てくる。ところが、やめるということは、確かに付添料という三十万はそのとき支払わない態勢になったかもしれない、一万二千円で済むのかもしれないけれども、後のことを考えたら、職をやめた人間が家庭に一人できるということは大変な経済的な打撃なんです。こういうことを本当に御存じないのだろうか。もし御存じだとすれば、こういう事例は本当に極端な、虫眼鏡かなんかで探してこなければないような例だとして、一万二千円で済んで、ああ安いわという、そこまで言わせる宣伝をして、今皆さんに今回の改正案はどうですかというふうにお諮りをしたのかどうか、お聞きしたいと思います。
  72. 岡光序治

    岡光政府委員 付添看護をつけた場合の慣行料金と保険の方で支払われる看護料との問題でございますが、一日で泊まり込みの場合、しかも一人で一人の患者の面倒を見るといういわゆる一人づきの場合は、慣行料金で、おっしゃいますように月額で三十万円近い金額になっておるというのは私どもも把握をしております。それから、保険の方から支払われる看護料が、一人づきの場合も月額で十四万五千円程度だというのも、その数字を我々は把握をしておるわけでございますが、一部負担の問題と保険外負担の問題とは整理をして、区分をして考えていく必要があるのではないだろうか、こう考えておりまして、そういう意味で、一部負担というのは実際に公的な負担をしている者とのバランスをまず考えてみるということで、負担のバランスという発想から整理をしたいと考えておるわけでございます。それで、保険外負担は現実には存在するわけでございますから、そのあり方についてはやはりきちっとした整理、是正の方向を示すべきだと思いますし、特に付き添いの問題につきましてはまずこれをなくするような方向で、こういった付き添いを必要としない体制を整える病院をできるだけ広げていく。  それからもう一つの重要課題としましては、幾ら広げていっても足りませんので、付き添いという形によらない、病院の責任のもとに看護をする体制というのをどのように整えていったらいいのかという基本問題を、もう少しそこは掘り下げて検討していかなければならない、そんなふうに考えているわけでございます。
  73. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 一部負担と保険外負担と整理して考えないといけないし、保険外負担をなくしていくといいますか、そこら辺を整理していくというのは、それはそのとおりです。だけれども、そのとおりであれば、そのように今国民の皆さんに納得をいただくというなら、そういう手だてで出してほしいと私は思うのです。受ける側からすれば、入院しようとする人は、自分のお財布の中に一万二千円あれば本当に何とかやっていけるのか、本当はそれだけではだめなのか、これが今二倍の二万四千円になろうとしたらあとどうなるのかということが、これは一人一人の人にとっては大きな問題なわけでして、出てきた宣伝物が、中へ入ったら一万二千円で、これだけでやっていけるというふうなことだけを出すような宣伝の仕方は間違いだから、私はやめてほしいと思っています。  それで、保険外負担の問題について、先ほど実際それが必要とされているような病院は一〇%くらいだとたしかおっしゃったと思うのですが、それはどういう形でお調べになりましたか。
  74. 岡光序治

    岡光政府委員 老人保健福祉部が行いました調査で、平成二年十一月に行ったものでございまして、病院を四分の一ほど抽出をして、病院側から回答をいただいたものでございます。
  75. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 病院から回答を受けたものですね。それでは実際に利用された方々の回答というものはその中には含まれておりませんね。
  76. 岡光序治

    岡光政府委員 おっしゃいますように、病院に対して調査票を送ってそのお答えをいただくという方式をとったものでございます。
  77. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 それでは実際の姿というのは余り見えてきていないのではないかと私は思うのです。該当する病院からすれば言いにくいということもあるだろうと思うのです。基準看護の病院でさえ実際にはさりげなく、付き添いさんを置かれた方がいいんじゃないでしょうかという場面も実はいっぱいある。だけれども、今度の調査では恐らくそういうものは出てこないというか、見えてこないんじゃないかと思うのです。  ただ、その調査をもう少し詳しく私はお尋ねをしてみたいと思うのですけれども、基準看護病院でさえお世話料なんかを取っている。何か幾らかの県で残っているようにお聞きしているのですが、その辺少し詳しく教えていただけませんか。
  78. 岡光序治

    岡光政府委員 基準看護をとっておる病院でも、患者の病状等によりまして、お医者さんの指示を受けて、だれか家族が付き添うということは行われているところでございます。
  79. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 家族がということですか。しかし、それは病院からの答えだけで、本当に納得していらっしゃる部分でしょうか。
  80. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 基準看護病院の付き添いの問題でございますし、一般的な制度論として私の方からお答えさせていただきます。  基準看護病院で付き添いをつけて患者負担にするということはあってならないことでございます。私どもは、基準看護の承認に当たりましては、患者負担による付添看護が行われてないということを一つチェックいたしまして、重要な要件の一つとして基準看護の承認を与えているわけでございますから、私どもの方の認識といたしましては、基準看護病院で付き添いをつけさせ、そして患者負担を求めているということはあってならないことでございます。  なお、先ほど岡光部長がお答えしました家族の問題でございますけれども、家族につきましては、患者の病状等によって医師の許可を得て家族が付き添うということは差し支えないということではっきり全国に通達で指示いたしておるわけでございます。その趣旨は、これも丁寧に書いてございますけれども、病状あるいは家族としての心情からどうしても付き添いたいということが事実あるわけでございます。そこまで否定することはいかがなものか。しかし、これも詳しく指示いたしておりますように、「家族による附添であっても、それらが当該保険医療機関看護婦等による看護を代替し、又は当該保険医療機関看護婦等の看護力を補充するようなことがあってはならない趣旨であること。」ということで、はっきり基準看護病院につきましては患者の負担あるいは病院側が看護力の肩がわりをさせるということはあってはならない、してはならないということで、承認に当たりまして、あるいは自後も厳しくチェックをし指導の徹底に努めているところでございます。
  81. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 あってはならない、してはならないということと現実にある問題と、それから家族がつく場合にその内容について非常に線引きをするのは微妙な問題がたくさんあると思うのですが、後のチェックも含めて非常に厳しくやっていらっしゃるというその中身について、じゃ、どういうふうにチェックされているんでしょうか。それと、まだお答えいただいていないのですが、先般行われた調査で基準看護病院でさえお世話料を徴収している例があったかどうか。あったというふうに私思っているのですけれども、具体的な報告結果をお示しください。
  82. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 前段お尋ねのチェックでございますけれども、私どもは、まず基準看護病院として承認するに当たりまして書面による要件審査それから実地調査を行いまして、先ほど言いました要件の一つである付添看護をつけさせてないということを確認いたします。それから、基準看護承認後の要件の遵守の状況でございますけれども、これも報告あるいは実地に参りましてチェックをいたしておるわけでございます。仮にそういうことがあるとしますれば、ルール違反ということで私どもは基準看護の加算料金の返還を求めることに相なるわけでございまして、ここはルールの問題として私どもは厳しく対応しているところでございます。
  83. 岡光序治

    岡光政府委員 基準看護病院でお世話料を取っておるのかという話でありますが、そういうあいまいな名目で取るのはおやめいただきたいという指導を行っておるわけでございまして、そういうことから、いわゆるおむつ代という格好で取られておるのが七三%、それから電気代とかというふうな、そういうものとかあるいは諸雑費が一六%というふうな実態を把握しております。
  84. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 そういう病院が実際にありましたかありませんでしたか、ちょっと端的に教えてください。
  85. 岡光序治

    岡光政府委員 お世話料というあいまいな形で取っちゃいけないということでありまして、あくまでもそれはおむつ代であるとか雑費ということで負担を願っておるということでございまして、そのような負担をしてもらっておるものは基準看護をとっておる病院の中にもあるということでございます。
  86. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 あるということですね。  それで、これはぜひなくする方向で整備をしいっていただかないと困るのですが、その際に、結局あってはならないことだとか、してはならないことだとかいう本来の姿、それから調べるときに、それをいろいろな形で実際を調査していくときに、利用者側からの調査というものが現在ないのじゃないかと思うのです。これはどうしても私は、実際保険外負担の実情を調べる上でも、あるいは付き添いというか、そういうお世話を、結局看護婦さんの本来やらなければいけない部分を肩がわりしているかどうかということのチェックも、実際にそこに入院している人あるいはその家族の人たちからぜひ聞き取って、その利用者の側の声というものを調査をしていただきたいと思っているのですけれども、これはどうでしょうか。
  87. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 基準看護病院における付き添い等の問題につきましては、先ほども答えましたように、あってはならないルール違反のことでございますから、私どもは厚生省から実態を調査するということはほとんど不可能だと思っております。したがいまして、各県の担当課に命じまして個々の医療機関に立ち入りないしは指導監査の形においてチェックをし、それなりの形で処理をするという形で個々に対応いたしておるということでございます。
  88. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 それなりのというのは極めて便利な言葉だと思いますけれども、何で利用サイドの人たち、実際財布から出さないといけない人たちの声を聞くということは難しいからできないという形になるんでしょうか。私はここは本当に、これからのよりよい形というものを追求していくときには抜きにしては考えられないと思うのですけれども。
  89. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 確かに先生おっしゃいますように、患者さんの方々の声を私どもは十分聞きながら制度運用を心がけていく必要があるわけでございます。各県におきましても、いろいろなそういう市民あるいは県民の方あるいは利用者の声を聞きながら、そこでの情報をもとに医療機関に対する監査指導の形でそういうものをチェックいたしておるということでございますから、今後ともそういういろいろな意見を踏まえながら監査指導の徹底に努めてまいりたいというふうに思っております。
  90. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 これは健康保険組合連合会が調査結果として出されている報告書なんです。「健康づくりと医療」に関する調査結果報告書というのがありまして、その調査の中で、この一年間にあなたが医療機関に支払った医療費は大体どのくらいでしたかという設問がありまして答えていらっしゃるのです。ただ、この調査自体は面接聞き取り調査なんです。面接聞き取り調査というのは非常に時間がかかると思いますから対象者が極めて少ないということが難点だと思うのですけれども、しかし私は、本当に長期的に見ていくときに、私は最初にも申し上げましたけれども、計画を立てるときに、そして国がそれに対してどういう措置をしてどういうお金を使っていくかというときに、やはり今の現実の姿をきちんとつかまずしては出てこないと思いますし、そのときに一人一人の人が今どういう生活の中で負担をしているかということは抜きに考えられないことだと思いますので、この調査は聞き取りでされているようなんですが、厚生省としてもこういう聞き取りの調査というもの、しかも保険外負担の現実はどうかというふうなこともきちんと目的に置いてやってみてはどうでしょうか。例えば一週間の間で答えを求めるとか、そんな乱暴な調査をする必要はないわけですから、やってみたらどうでしょうか。郵送だとかいろいろな方法もあるんじゃないでしょうかね。これちょっと検討していただけませんか。
  91. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 基準看護病院におきます付き添いをつける問題は、先ほどから申し上げておりますようにルール違反の問題でございます。したがいまして、違反なり不正をどういう形で皆さん方に情報として提供しているかということはあろうかと思いますけれども、現に私どもの現場における指導監査の実例等を見ますと、患者からの投書あるいは要請その他もろもろを受けてそういう医療機関に対する指導監査を展開いたしておるわけでございますから、先生の意を体しまして、できるだけ幅広に保険者団体あるいは県民の方々患者さんの声を聞きながら、なおさらに一層そういった病院に対する指導監査の徹底に努めさせていただきたい、かように思うわけでございます。
  92. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 患者さんの、あるいはその家族の声を具体的に聞くという手だてを検討してくだいますか。
  93. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 今後の制度論なり、あるいは私どもの政策なり運営をどういうふうに考えるかという問題につきましては、おっしゃるとおりでございましょう。しかし、個々の医療機関に対する不正の問題あるいはルール違反の問題については、私どもは県当局にその衝に当たらせているわけでございますから、それぞれの県当局がどのように情報なりあるいは声を聞きながら行政を運営するかということでございます。おっしゃっている点は、そういう実態がいろいろな人に聞いてもいろいろあるぞという御指摘かと思います。私どもはそういう点では、いろいろな方の御意見を聞きながら、さらにこういった運営の適正化を図らなければならぬということの意見というものは聞くわけでございますけれども、くどいようでございますが、個々の医療機関運営あるいは指導監査の問題につきましては、そういった形での一般的な意見を聞くつもりはございません。個々の、個別個別の具体的な対処の問題だというふうに考えているわけでございます。
  94. 岡光序治

    岡光政府委員 調査という観点から申し上げますと、先ほど私がお答えしましたのは、いわゆるおむつ代等の問題でございます。この保険外負担は大きく分けますと三つございまして、一つは付き添い問題、それからもう一つは室料差額の問題、それからもう一つが、そういうおむつ代等のいわゆるお世話料と言われたりしておるものでございます。その第一点の付添看護につきましては、先ほどから保険局長が答弁しておるところでございますし、室料差額につきましても、これは実態を制度として把握しているわけでございます。病院がどの程度おむつ代であるとか諸雑費をいただいておるかというのは、これは私どもが調査しておるわけでございまして、先ほどお答え申し上げましたように各病院に対するアンケートでございます。  それは、先生指摘のように、患者とか家族からもう少し意見を聞いてみろ、こういうことのように私は受けとめております。これはあくまでも、必要な品物があってそれの給付をしてその対価として実費を取っておるという仕組みでございますが、そこのところは、まさにアンケート調査ということになりますと物すごく難しいわけでございますけれども、先生おっしゃいましたように、単に病院から聞いておるだけでは不十分だぞという御指摘もわかるわけでございまして、もう少し信憑性のあるようなものに内容を改めていくべく努力をいたしたいと思います。
  95. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 今はもう方法についてあれこれ言いませんけれども、本当の姿がもっと見えてくるような形でぜひ検討していただきたいと思います。  自己負担のあり方といいますか、これも公的負担の問題とあわせて、それこそ非常にいろいろな意見があるということを承知するのですが、ただ、この負担の程度というものを、実際出す人たち、財布から出す人たちの納得がいくように説明というか、宣伝をしていっていただきたいということがまず一番にあるわけです。  その納得ができるように説明をしてほしいという私の思いの中で、これはよく皆さんからも聞かれるのですが、大臣の提案理由の説明の中でも、老人と若い人たちとのバランスの問題があります、ほかの施設や在宅のお年寄りとのバランスの問題があります、そして最後に、高齢者の生活実態等を勘案すると、こういうように理由づけが出てくるわけなんですが、この三つの理由をもう少し具体的に、ああそうかと思えればいいわけなんですが、もう少し具体的に説明をしていただきたいと思うのです。この二つのバランスの問題、それから高齢者の生活実態勘案ということは具体的にはどういうことを指しているんだろうかということをお示しいただきたいと思います。
  96. 岡光序治

    岡光政府委員 若い人とのバランスというふうに言っておりますのは、若い人たちは被用者保険、被保険者本人の場合は一〇%の負担、それから家族の場合には入院が二〇%、外来は三〇%の負担になっているわけでございます。老人医療の場合には定額でございますから、率としてなかなか比較ができないのでありますが、現在の外来一月八百円、入院一日四百円という定額の一部負担金の総額を総医療費六兆円で割ってみてどのくらいのパーセンテージになっているかという割合を出しているわけでございまして、それが約三%強になっているわけです。そういう意味で三%というものを念頭に置きまして、被用者保険の本人の一〇%とか家族の二〇%ないしは三〇%と言っているそれとの比較ということ、そこで負担のバランスということをお考えいただきたい。それでは具体的にはどの程度なんだということになりますが、御本人が一〇%ですから、その半分の五%程度ということを考えて若い人とのバランス論を論じているわけでございます。  それから、老人保健施設とか特別養護老人ホームに入っているお年寄りとの比較、バランス論でございますが、これは先ほどもお話がありましたが、老人保健施設は平均で月額五万円程度の負担をしていただいておりますのと、それから特別養護老人ホームは所得能力の段階別にいわゆる費用徴収をする格好にしておりまして、能力に応じて取っておるわけでございますが、平均では二万七千円程度の費用徴収をしているということでございますので、それらとのバランス論、横並びの議論をしているわけであります。  もう一つは、お年寄りの生活実態ということを考えてどの程度の消費支出の状況になっているんだろうか。そのような日常生活を送る場合には食費を初めとしたいろいろな経費が必要になりますので、そういった消費支出の実態からしまして、入院をすればそういった経費が不必要になってくる、病院側から現物で給付されるわけでありますから不必要になってまいりますので、そういったものとの比較をしている、こういう仕組みにしたわけでございます。
  97. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 何か何度も同じことを繰り返ざないといけないような気がしてくるのです。  私自身は今はまだ若い方の部類です、働いて支えている側ですから。我が家でいえば、私の父親も母親も老人の部類に入る口です。ただ私は、私と親を単純に比較するのはどだい無理だと思っています。私の父親は、四十何年間働いてきまして、それまでを支えてきました。今は働くことができませんから年金で暮らしております。年金だけが支えの生活をしております。その老人であるところの親の負担と、今働いている私あるいはほかの兄弟の負担、そういう世代を単純に比較すること自体、年いった人だけの問題じゃなくて、私たちがこれからずっと生きていくことを考えた上で負担を考えていくときに、妙な比較をすること自体間違っているんじゃないかと私は思っております。  ほかの施設とのバランスの問題というのも、これも繰り返すのが嫌になってきますけれども、入院すれば幾ら幾らで済むじゃないか、これは高齢者の生活実態等を勘案ということの中でも、入院していればその間ほかに何にも使うことはないのだからというふうなことをおっしゃいましたけれども、それだって実際には違いますよということをさっきから私は繰り返し申し上げているわけですから、これは到底納得できないなと思うのです。  これは最近厚生省なんかから出ているいろいろな出版物の中でも、年金が改善されてきているし、外来八百円が千円になっても、入院四百円が八百円になっても何とかいけるのじゃないか、こういうことも書かれております。でも、私はこれは自分の家のことを申し上げて恐縮ですけれども、今の一般の、一生懸命これまで働いてきて定年になって老人としての生活をしている人間にとっては非常に腹が立って仕万がない評価ではないかと思うのです。  私の父親は実は退職金に手をつけずにため込んでおります、持っております。何でだと言ったら、いざというときに、自分はもう働いていくことができないから定期的な所得というものがない。年金だけが頼りだけれども、年金の額そのものは、一月にならしてみれば悠々と暮らせるという年金額ではありません。これは厚生省の皆さんも、もしも自分が本当に年金だけでやっていけと言われたら、うっと思われるのは同じだと思います。足らないのです。  私も職場で年金の仕事をしていましたから一月当たりにしたら幾らかというのはわかります。とてもそれだけではやっていけません。だから私の両親は年金だけを一月の支えにしていますが、あとは今までの蓄えの取り崩しなんです。だから退職金、ある程度まとまったものをもらったとしても、手をつけないように生活設計を立てていかなければ、突然どちらかが入院ということになると生活設計がその時点でがたがたと崩れていくわけですから、つけるにつけられない。ところが一方では、最近のお年寄りは貯蓄もいっぱい持っているし、年金も楽になっているから、これくらいの負担は大したことないのじゃないかというふうに言われていること自体については非常に腹が立ってしようがない。我々の生活はどうなるのだというのが正直な気持ちです。実際、裕福になったと言われる中でも、老人の、特に六十五歳以上の方の自殺率がどの年代よりもずば抜けて高い。その理由はというと、大方八割近くが病気を苦にしている。ただ病気になって痛いとかどうとかが原因ではなくて、これが長く続いていくことによって経済的な負担もあるということも入っての原因だということも一方にはあるということを知っておいていただきたいと思います。  これは今度具体的な一部負担の額が示されたときに、神戸のある診療所、私たちの仲間がやっているわけですが、そこに通ってくる学生さんが患者さんにずっと聞いているものがあるわけですね。その中でこんな声がありますので、ぜひこれは聞いてください。  月の終わりごろに風邪を引いても次の月の初めまで行くのを手控える、一月八百円というのを節約したいから、とにかくお医者さんに行くのを控えているのです、こういうふうに言う人がいる。だから、本当はすぐ行けば早い治療ですぐ治るものを、ずっと悪くなるまで病院に行かないとか、思わず手控えることが後のそういう結果を生んでくる。それから、同じ世帯で一人のカルテで家族の分までついでに薬をもらっちゃおうか、風邪薬とか湿布薬なんかだったらほかの家族も使っても差し支えないだろうというので一人でもらってきて、分け合って、その薬を使って八百円を節約しているんですよとか、そういう声を聞いてきているわけなんですね。何てみみっちいことをとお思いになる方もいらっしゃるかもしれないけれども、本当に、一日十円、二十円を節約して暮らしている人たちにとっては、八百円が千円、四百円が八百円というのは非常に大きな負担感を与えていく。このことによって診療から遠ざかっていく、足が遠のいていくというふうな結果も全くないということは言えないのですね。ぜひそれは知っていただきたいと思うのです。  そういうことを考えると、今回の引き上げ、これくらいというおっしゃり方をなさるかもしれませんけれども、ぜひ圧縮していくべきではないかと私は思っております。これはいかがでしょうか、こういう人たちにもこたえていただきたいと思いますが。
  98. 岡光序治

    岡光政府委員 老人医療費は年々増大をしておりまして、これをどうやって負担し合っていくのかというのはお年寄りにも若い者にも共通の課題だと認識しております。そういう意味で、お年寄りにも適切な一部負担をお願い申し上げたい。そのかわり、若い人も拠出金という格好で、全体の医療費の七割程度になりますが、拠出金をいただいておる。それから、もちろん税金の方からも公費負担という形で三割相当を投入をしておる。こういう制度の仕組みになっておるわけでございまして、この制度の仕組みを維持をして、将来ともに安定的な制度運営ができるように持っていきたいというのが私どもの願いでございます。  そういう意味では、若い人と年寄りとが支え合うという、いわば連帯の思想のもとでこの制度運営をしていっていただきたいし、国民全体の御理解もいただきたいなという考え方でございまして、確かに負担の問題で厳しい問題があろうかと思いますが、先生承知のとおり、制度としては低所得者に対する配慮も入れておるわけでございまして、その辺も含めて総合的に御理解をいただきたいと思っております。
  99. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 その低所得者に対する配慮の問題なんですけれども、私はこれはぜひ数も一度教えていただきたいなと思っているのです。低所得者の規定ですけれども、老齢福祉年金の受給権者であって、その上に所得の制限だと私は理解しているのですけれども、私は老齢福祉年金の仕事を十何年やってきていたものですから、老齢福祉年金は年々その対象者が減少の一途をたどっている。兵庫県というか神戸市という単位で見ても、拠出制の年金の受給権者が仮に十万としたら、老齢福祉年金の対象者は今一万少しだと思います。それは受給権者であって、所得がなおかつその上にかぶさってくるということになりますと、低所得者には配慮していると言うけれども、その対象となる人は極めて少ないのじゃないかと危惧しているのです。どれくらいの数になりましょうか。
  100. 岡光序治

    岡光政府委員 入院の一部負担の軽減対象者でございますが、先生おっしゃいましたように、老人御本人が老齢福祉年金の受給権者であって、かつそのお年寄りの所属している世帯の主たる生計維持者が市町村民税非課税であるというのを対象にしているわけでございまして、御指摘がありましたように、老齢福祉年金の受給権者が平成元年末で百十二万六千人でございますが、この上に市町村民税非課税という条件が加わっておるわけでございまして、平成二年三月末現在で市町村長に申請をして認定を受けていらっしゃる方は四万八千二百人程度でございます。
  101. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 そうしますと、低所得者という範囲で配慮をしているからとは言われるものの、その数は極めて限定されたものになっているということですね。私、仕事していて思いましたけれども、受給権者の人たちが、年金そのものが所得で出るか出ないかというのは決まっていくわけですが、所得制限の線上で泣く人が本当にたくさんいるのです。これは逆に言うと低所得者で切られていく、くくられていく人たちと、すれすれのところにいる人たちが本当にたくさんいるということなんですが、この人たちはそれこそ私がさっきから何度も申し上げていますように、一日十円の節約を、一円、二円の節約も本当に必死でやって暮らしている人たちなんです。このことをどこかに忘れて、総額受給権者百万だけれども、ずっと絞っていったらその対象になる人が四万幾らとおっしゃいましたが、そのくらいになるということを考えれば、もうほとんど配慮がないのも同じじゃないかと私は言わざるを得ません。  ですから、これはもう何度もこれから要求し続けますが、やはりこの一部負担の問題については圧縮をお願いしたいと思いますし、なおかつ、もうこれは時間が来たそうで、私もっとお聞きしたいことはあったのですけれども、スライドの導入ということは、こういう泣かなければいけない人たちの声も届かない、そういう危険性が非常に高いと思いますから、ぜひこのスライド制については私は削減をしてほしい。今回の改正案の中からは外してほしいということを強く要求をして、それに対するお考えをお聞きをして終わりたいと思います。
  102. 岡光序治

    岡光政府委員 スライド制を削除しろということでございますが、老人保健においての一部負担は定額の負担制度でございまして、老人医療費の増加が一方ではあるわけでございまして、その増加に伴いまして一部負担の占める比率、全体に占める比率が逐年低下をしていくわけでございます。そういう意味では全体としての受益と負担のバランスが保たれない仕組みになっておりまして、その部分が現役世代に拠出金という格好で自動的にふえていく、こういう結果になるわけでございます。そういう意味では若い人とのバランス論という考え方からいたしますと、受益に応じた負担という一部負担の趣旨に沿いまして、受益の程度である医療費の伸び率に応じましてその一部負担をしていってもらう、このシステムはぜひともお認めをいただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  103. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 また続けてほかの我が党の議員からも追及があろうと思いますから、私はこれで終わりますが、本当に繰り返し言わせていただきましたように、現実の姿というものをきちんと見てもらいたい。その上で誇大といいますか、そんな宣伝というものがない中できちんと論議をしていただきたいということをもう一度お願いを申し上げまして、終わりにいたします。
  104. 浜田卓二郎

    浜田委員長 小松定男君。
  105. 小松定男

    ○小松委員 日本社会党の小松定男です。  今回提案されております老健法の改正案の問題点について、先ほどから我が党の議員からもいろいろ質問されておりますが、私はこれを大体問題点だけを要約してみましたら、まず第一は、公費負担の改善が全くされていない、不十分であるということですね。これまで労働団体や経営者団体、そして健保連からも強く公費負担の五〇%の問題に対する要求が出ておりました。これに対してほとんどそれが受け入れられていない、これが第一点。  それから第二点は、患者の一部負担の引き上げ幅が大きい。特に二倍になっているようなことで、今も指摘があったとおり、これは高齢者にとっては非常に負担が重いということ。  それから第三は、スライド制の導入によって一部負担の法定主義が崩される、そういう危険性が非常に高い。この問題については後で内閣法制局からいろいろと質問をしてただしてまいりたいと思います。  第四については、保険外負担の解消の軽減の措置がほとんど図られていないことですね。  それから第五は、訪問看護ということになりますが、これがいろいろな面で一元化されていないということも問題だと思います。  それから第六は、この老健施設の見直しですね。これには触れられていない。  この六つが今度私が感じた問題点ではないかと思います。その中で、限られた五十分の時間ですから、私は第三のスライド制の導入の問題と、それから老健施設に関する問題を特に伺ってみたいと思います。  そこで、内閣法制局にまず一部負担の法定主義について伺いたいと思うのですが、この一部負担スライド制は、財政法の三条で規定されているところの「国が国権に基いて収納する課徴金」と理解されるべきだと思うわけですが、まず、この点どういうふうに解釈をしているのか、伺いたいと思います。
  106. 越智正英

    ○越智政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御質問にお答えする前に、まず財政法第三条の趣旨につきまして申し述べたいと思いますが、その趣旨は、国が国権に基づいて収納する課徴金及び法律上または事実上国の独占となる事業の価格、料金等、結果として国民に課される強制負担たる性格を持つ面があるわけでございまして、そのために、租税に準じて何らかの形で国民の代表である国会の意思に基づいて決定されるべきであるということが趣旨であると考えられます。  一方、老人保健法による一部負担金と申しますのは、老人医療を取り扱う保険医療機関等と市町村医療を行うものとした老人の間の任意の受診契約によりなされる具体的な医療サービスに対する対価の一部であると考えられますので、これは国民に対して課される強制負担とは言えないと思います。したがいまして、老人保健法によります一部負担金は、財政法第三条に言う課徴金等ではないというふうに考えております。
  107. 小松定男

    ○小松委員 それではお伺いいたしますが、社会保険料ですね、これは、ここで言う課徴金という解釈になりますか、どうですか。
  108. 越智正英

    ○越智政府委員 社会保険料も同じくここに言う課徴金等に当たらないということでございます。
  109. 小松定男

    ○小松委員 そうしますと、同じ政府でも解釈の違いが出ているような気がするのです。これはやはり統一してもらわないと困ると思うのですが、実は、「財政法解説と現状」というのが大蔵省主計局法規課の石田久和さんから出ております。これによりますと、財政総則の中で、課徴金等の法定主義、第三条ですけれども、これの概念として、国が国権に基づいて収納する課徴金とは、罰金だとか過料だとか特許料だとかいろいろありますが、社会保険などの保険料がこれに該当することが出ているのですが、これと今の答弁はかなり矛盾すると思うのですが、その点いかがですか。
  110. 越智正英

    ○越智政府委員 ただいま先生お示しになられました大蔵省法規課の書かれたものというのは、私、実は見ておりませんので、ちょっとここでコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  111. 小松定男

    ○小松委員 そういうことでは困るのですよ。同じ政府でそんなに解釈が違うということでは困りますよ。これは後ではっきりしてください。  もう一つ伺いますが、この社会保険料、今度の一部負担もそうですけれども、これは今のお話ですと、国が直接徴収するものではないということが一つ言われているのと、それからもう一つは、それに対する、いわば収納しない場合について、国との関係については関係がないという二つのことが、要するにこの法定主義には入らないというような説明ですね。しかし、今度の一部負担にしてもそれから大蔵省で言っております社会保険料、これも究極的には国が市町村に委任事務をし、市町村はさらに保険組合とかいろいろなところに委任事務をしているわけですね。したがって、そういうところから見ますると、大蔵省主計局法規課で言っている方が私は正しいのじゃないかと思うのです。それらも含めてもう一度答弁していただきたいと思います。
  112. 越智正英

    ○越智政府委員 お答え申し上げます。  一部負担金の議論といわゆる保険料というもの、これは性格が違いますものですから、これを同一に論ずるわけにはまいらないだろうと思います。  それから、これはちょっと蛇足でございますが、先生承知のとおり、財政法三条というのは、財政法第三条の特例に関する法律ということで、事実上郵便料金等以外は一切かからないということになっておりますので、念のために申し添えさせていただきます。
  113. 小松定男

    ○小松委員 これは財政法の三条だけではなしに、憲法の八十三条にも関連してくるのですけれども、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」と八十三条にうたわれておりまして、それに基づいて財政法の三条がきていると思うのです。そうなりますと、例えばこの種のスライド制でやられてきた場合に、先ほどの憲法の八十三条に言う議決を今度は確かに要しますから、額で出されてきておりますね、四百円から八百円、それから八百円を千円と出されておりまして、これの議決について今審議をしているわけですが、来年度、平成四年度から、要するにこのスライド制については国会の議決というものが必要なくなるわけですよ。そうしますと、今私が言う憲法八十三条並びに財政法三条から見ると、国会の議決を経ないでやるということに対してはそうできないのじゃないかということで、いろいろと調べてみたところが、政府でいう大蔵省からも、社会保険料というのは第三条に該当しますということをきちっと言っているわけですよ、同じ内閣で。だから、それをはっきりしてくださいということを言っているわけです。とんでもない話ですよ、同じ内閣で。あなた方見ていないなんて、そんなことないでしょう。  これはスライド制の額の問題がいいとか悪いとか以前の問題なんですよ。これは下手すると国会軽視じゃないですか。大蔵省の主計局はちゃんとそういうふうに言っているじゃないですか、社会険は財政法の第三条に入りますよということを。それにどういうふうに答えるのですか。それとも大蔵省と打ち合わせて後で答えますか。そんないいかげんな答えはだめですよ
  114. 越智正英

    ○越智政府委員 先ほど来申し上げておりますが、老人保健法の一部負担金というのはまさに老人医療費の一部負担、一部分でございまして、老人医療費そのものというのは、まさに当該老人が保険医療機関等におきます受診の対価として支払うものだということでございまして、その一部分について今回改正案に盛られているようなやり方で変わっていくという制度を導入したからといって、それが強制負担たる性格があるがゆえに国会の議決を経ないということになってしまう、そういう御指摘だろうと思いますけれども、それは、繰り返しになりますが、まさに一部負担金というのは保険料ともちろん違うわけでございまして、課徴金には当たらないというふうに考えております。
  115. 小松定男

    ○小松委員 本当はこの問題に余り時間をとりたくなかったのです、五十分しかないものですから。ただ、そう言われると、それでは、これは払わなかったとき、支払いができなかったときはどういうふうになるのですか。払わなくてもいいのですか。どこでこれを処理するのですか。
  116. 越智正英

    ○越智政府委員 お答え申し上げます。  保険医療機関等に一部負担金が支払われない場合には、市町村が国税徴収の例により徴収することになっておりますが、これは保険医療機関等にかわって徴収して保険医療機関等に渡すという趣旨のものでございまして、老人保健法にはそのような規定で担保してございます。
  117. 小松定男

    ○小松委員 ここに、当該保険医療機関等により支払わなければならないという老人保健法第十六ですか、あるのですよ。これとの関連で、もし例えば保険機関が徴収できなかったときには市町村長がそれを代行するということで今お話があっこのですけれども、それを受けて市町村長というは、本来この制度というのは、国がやっているものを市町村を通じて、そして当該保険医療機関が扱っているわけですね。ですから、そういう意味から言うと、国の方の関係というのが非常に強いということを受けて、この社会保険というものに対しては大蔵省も、これは財政法の三条に該当する、ところが、今の法制局の説明では、あくまでも一部負担というのは社会保険ということよりも別の問題だというようなことを言っておるのですが、これもしかし、一部負担といえども社会保険のことであるわけでしょう。別の意味でこれが提案されているわけじゃないのですから、老健法の中で要するにこの問題が提起をされているわけですから、そういう意味から言うと、社会保険料という解釈にはならないのでしょうかね。大蔵省が言っているようなそういう解釈はとれないのですか、法制局は。何か法制局としてはそこのところを無理やりに曲げて説明しているように聞こえてならないのですが、そこらはどうなんでしょう。
  118. 越智正英

    ○越智政府委員 先ほど来の答弁と重複するかもしれませんが、老人医療、それに対する一部負担金というのは、要するに国が国権に基づいて収納する課徴金あるいは法律上また事実上国独占となっている事業の料金ではありませんということを申し上げているわけでございまして、社会保険と申しますか、そういった制度全般について私はここで述べる立場にございませんが、その老人保健法に言う一部負担金というものに限って申しますならば、それは財政法三条に言う課徴金等ではないということが法制局の見解でございます。
  119. 小松定男

    ○小松委員 これはちょっとはっきりしてもらいたいのです。大蔵省の方の「財政法解説と現状」の「課徴金の概念」という中に、今言ったような徴収の内容も、もちろん罰金だとか特許料だとか日本銀行に対する納付金のことだとか、それから裁判所における訴訟手数料、それと社会保険などの保険料、要するに「国がその司法権又は行政権に基づいて一方的に賦課するものである。」これは一方的に賦課するのでしょう。違うのですか。自由でいいのですか。そうじゃないのでしょう。ここのところをちゃんと大蔵省の方では言っているわけですよ。国が一方的に賦課するものであるものは、これは課徴金だということで、ちゃんと明確にしてあるのじゃないですか。これはそこのところから見るとどうなのですか。
  120. 越智正英

    ○越智政府委員 今先生お示しになられました社会保険料が課徴金に当たるという説があるかと思いますけれども、この一部負担金は課徴金等に当たらないということにつきましては、私ども、大蔵省とも打ち合わせてここで答弁を申し上げているわけでございます。
  121. 小松定男

    ○小松委員 これは、私の方としては、同じ政府間の解釈が違うということで、これまた後、引き続いて問題があればやりたいと思いますが、進まなくなってしまうので、進めさせていただきたいと思います。  そこで次に、老人保健施設に関する問題ですが、まず一つは、今度の政府の老人保健法の改正、これは老人保健施設等のあり方の見直しの点については避けているように感じているのですが、この点についてはどういう理由なのでしょうか、伺いたいと思います。     〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
  122. 岡光序治

    岡光政府委員 先生承知のとおり、老人保健施設というのは昭和六十三年四月から発足をしたものでございまして、いわゆる中間施設として位置づけたものでございます。  そういう意味で、その実情がどういうふうに展開をしていくのか、中間施設という性格づけをずっと維持するのかどうか、いろいろな施設体系の中でその機能がどうあればいいのか、こういう問題意識を持ちまして、御指摘がありましたように昭和六十一年の老人保健法の一部改正の附則の十六条で、老人保健施設に関する状況を勘案をして、そのあり方について検討を加えるように、こういう趣旨の附則の規定が入ったわけでございます。  私ども、こういったことを踏まえまして、かつまた、平成元年の十二月にも老人保健審議会の意見の中で、施設体系の中での位置づけを含めて、今後、本審議会老人保健施設部会で検討していくというふうにされておりまして、現在もこの施設部会でこの老人保健施設のあり方を御検討していただいている、まだ進行中のものでございます。  そういう意味で私ども、今回の改正法には、結論が出ておらないということからして盛り込まなかったわけでございまして、引き続き、この老人保健審議会の検討結果を踏まえて、その結論が出たところで必要な措置を講じてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  123. 小松定男

    ○小松委員 この老人保健施設は、特別養護老人ホームがあって、それから今までの老人病院があって、それでその中間にと言っていいのかどうかわからぬけれども、今度の老人施設がある、こういうふうに理解していいのか。それと同時に、そのことはすなわち、これまでの社会的入院の受け皿、それを減らす受け皿として今度の老人施設というものを理解したらいいのか、その辺はどういう理解の仕方でいいのですか。
  124. 岡光序治

    岡光政府委員 老人保健施設は、いわゆる中間施設と言われておりますが、病院と家庭との間にある中間施設である、そしてやはり家庭に帰るということを念頭に置いた通過型の施設だというふうに整理をされております。あくまでも家庭復帰ということを前提にして、それがためのいろいろな諸準備、リハビリテーションであるとか、自分の家で日常生活が送れるような、そういうトレーニングをした上で家庭に帰っていく、その中間の段階にある施設であるというふうに認識をしております。  社会的入院との関係はどうかということでございますが、社会的入院という実態をどのように認識するかというところは非常に問題のあるところでございますが、端的に言いまして、具体的な病丸の治療はほとんど必要がなくて、いわば帰るところがなくて病院にずっといなければならない結になっておる、そういうふうな人を指すということでありましたら、その病状、身体の機能状況いかんでございますが、そういった人は、病院というのは基本的には病気の治療ということを主眼にする施設でございますので、病院から出て、しかるべき施設、例えばその中には老人保健施設も入ると思いますし、そういう治療がほとんど必要ないということであれば特別養護老人ホームというものもあると思いますし、また家庭での受け皿が整っておれば家庭に帰っていただく、そういうことが必要だというふうに考えております。
  125. 小松定男

    ○小松委員 そこで、老人保健施設の点について、今この案の計画でいきますと、この老健の施設が十カ年で計画では三千五百カ所、二十八万床をゴールドプランとして打ち出しているわけですけれども、実際に今のテンポでこの二十八万床設置は可能と踏んでいるのですか。いかがですか、その点は。
  126. 岡光序治

    岡光政府委員 ただいまも申し上げましたように、受け皿の整備ということで、十カ年計画の中では老人保健施設二十八万床というのを整備目標にしているわけでございます。先生おっしゃいますように、現時点では四百三施設、三万二千床余りでございますが、これは急速に整備をしていきたい、また、その整備ができるようないろいろな施策をあわせ講じたいということで目標達成をぜひとも図りたいと考えております。
  127. 小松定男

    ○小松委員 ことし、平成三年度は二百七十五カ所、どうもこれでいくとこれはプランに終わっちゃうんじゃないかという気がしないわけじゃないのですけれども、その点で、これは先へいけばはっきりすることですが、私が見た目では、平成三年度予算措置が二百七十五カ所でいきますと、このテンポだとどうも難しいのかなという気がしております。  そこで、これの設置計画、各県別については資料としては出せないのですか。その点はいかがでしよう。
  128. 岡光序治

    岡光政府委員 基本的な計画といたしましては、昨年老人福祉法等の改正をいただきまして、平成五年度から市町村及び都道府県老人保健福祉計画をつくっていただく、こういうことになっておりまして、その計画の中には老人保健施設整備目標も定めまして、具体的な計画として進めたいと思っております。現在は五年度からの計画づくりに向けまして県なり市町村といろいろとお話し合いをしているところでございます。そこまでの、三年度なり四年度の対応としましては、先生がおっしゃいましたように二百七十五カ所という箇所数を予算上組みまして、その具体的な張りつけにつきましては現在都道府県と御協議をしておるという段階でございます。
  129. 小松定男

    ○小松委員 本年度の予算、百億組んでありますね。これで二百七十五カ所やるというのですが、これは定額補助でやるわけですから、これを単純に割ると一カ所三千六百万円くらいに計算上はなりますよね。大体そういう理解でいいんですか。この百億の予算で二百七十五カ所、大体平均するとそのくらいになりますが、そういう理解でよろしいんですか。
  130. 岡光序治

    岡光政府委員 おっしゃいますように二百七十 五カ所を考えておりまして、国庫補助金としましては百億を確保しております。これにつきましては、一施設当たりの基本額を定めまして、そのほかに既存病床を転換する場合にはその上にプラスアルファをする、あるいは痴呆性の老人を集団的に対応するという場合にはそれにオンする、あるいは大都市型ではいろいろと経費もかさみますので、大都市型の施設にはその加算をするというような仕組みにしているわけでございまして、おっしゃいますように、平均的には三千万円とか四千万円とかその程度の補助額になるということでございます。  補助金はそういうことでございますが、そのほかに融資の制度も講じまして、必要な経費については補助金と融資と両方でもって確保するという仕組みにしているわけでございます。
  131. 小松定男

    ○小松委員 今度の改正案を見ますと、大都市四千万、過疎地三千万、定額補助、出ているんですよ。これはどういう区分を引くんでしょうか。中小都市というのもそういう言葉でいうと出てくるんだけれども、過疎地と大都市と二つの区分しかないのですが、そのあたりの区分はどういうふうに理解しているんですか。
  132. 岡光序治

    岡光政府委員 大都市と申しておりますのは、東京都及び政令指定都市でございまして、やはりそこでは諸経費が非常にかかっておりますので加算が必要だというふうに考えております。  それから、過疎地域とは、離島振興法とか山村振興法とか、こういう過疎関係の法律で把握をしておる地域でございまして、その地域に設置をする老人保健施設にはしかるべきそういう応援が必要だというので、いわばその地域では設置希望が少ないものですから、促進という考え方から加算をしておるということでございます。
  133. 小松定男

    ○小松委員 今言ったように東京とそれから指定都市ですか、そうすると例えば埼玉だとか千葉だとかというのは過疎地になっちゃうんですか。ちょっとその辺、はっきりしてください。
  134. 岡光序治

    岡光政府委員 その地域では過疎地ではありませんで、要するに大都市というのは大都市加算をつける対象地域でございまして、東京都と政令指定都市。それから、それ以外の過疎地以外の普通のところは、一般的な補助額で計算をするということでございます。
  135. 小松定男

    ○小松委員 そうしますと、この区分というのはあれですか、大都市とそれから過疎地という二つしかこれを見るとないんですよね。ないでしょう。それで質問しているんですよ。
  136. 岡光序治

    岡光政府委員 大都市型と過疎型とその他という区分にしているわけでございまして、今おっしゃいました千葉とか埼玉ですとその他に入るわけでございます。
  137. 小松定男

    ○小松委員 わかりました。  そこで、ちょっとこれは意見なんですが、今確かに東京は特別地価も高いし、そういうことで建物も、三階建ても東京は認める、他の地区は三階ては認めないということもいろいろな面でありますが、ただ、こういう定額補助などについては、東京と首都圏という立場からいいますと、そんなに大きな差はないと思いますね。したがって、そういった点では、今後の検討としてはぜひひとつそこに加えるように検討していただきたいと思うのですね。それはお願いしておきたいと思います。  そこで、余り時間もなくなっちゃうようなんですが、最後に特養の問題でちょっとお聞きしたい。  大臣見えたので、ちょっと大臣に先ほどに関連して伺いたいのですが、先ほど法制局と議論したのですけれども、こういうスライド制になりますと、来年度からは国会での審議並びに議決というものが必要なくなってしまうので、その点について。その立場からすると、大臣は、これは法律とかそういうものは別にして、どういうふうに考えているかということが一つ。それから二つ目は、この今度の一部負担の問題を含めて国民的な合意というのはほとんどなされていないと思うのです、このスライド制の問題については。唐突に出されてきた感がして、これは広く国民的な合意形成にはなっていないような気がするのですけれども、このあたりについてどういうふうに感じているか、ひとつ大臣の考え方を聞いておきたいと思うのです。
  138. 下条進一郎

    下条国務大臣 これは基本的な問題でございますので、非常に重要なところだと思います。このことにつきましては、そもそもこの老健法の趣旨から申しまして、既に申し上げておるわけでございますけれども、この長寿社会の中にあって老健施設が長期的に安定した形で運営ができるようにするにはどうしたらいいかということを検討いたしまして、その中でそれぞれの観点の適正化を図っていくという見地から、先ほど来お話が出ておりますように、公費負担の方はもうかなり限度に来ている、それからまた、若い方がどんどんふえるお年寄りのために拠出する負担というものもかなり重い、これは軽減しなければならないんじゃないかとか、そういう問題がございます。したがいまして、老人の方の御負担につきまして、今回提案いたしておるような毎月の通院費を二百円上げますことと、それから入院の場合の費用を四百円から八百円に一日当たり上げていただく、こういうことを基本にしたわけでございますが、それに関連いたしまして、今お尋ねのスライド制の導入も御考慮いただきたい、こういうことでございます。  これは、ただ恣意にスライド制が導入されるわけではございませんで、スライドする方式を法定化していただく、こういうことで御審議をいただいているわけでございますし、比較をする例としては必ずしも適切ではないかもしれませんけれども、年金においてもスライド制が導入されておるというようなことなど考えまして、医療費の場合には別な算出方法、すなわち単位当たりの実績をもととして、それぞれのスライドの率を法定化いたしまして、その率によって今後の負担を確定していただく、このような制度を導入いたしたい。それがまた、先ほど御説明いたしましたように、制度の長期的な安定につながっていくんではなかろうかという見地でお願いしているわけでございます。
  139. 小松定男

    ○小松委員 物価にスライドするとかなんとかという、年金や何かで支給する立場でスライド制というのはあるのですけれども、こういう取る側のスライド制というのは、特に社会保険の関係では今回初めてのケースだと思いますので、それに基づいてこういうことがだんだんいろいろな他の方にも波及したんじゃ困るという考え方もあるものですから、その点も含めてお聞きしたのです。  それはそれとして、大臣にもう一つ。今度のこの全体の老健法の改正なんですけれども、この間ある新聞に「数字は怖い。表現の方法、分析の仕方によって、印象がまるで違ってしまう。」ということが出ていたので、私もなるほどなあと思って共鳴して見ていたんですけれども。確かに医療費というのはどんどん上がっていくし、老人もふえているし、それなりに上がっているのですけれども、国民所得の伸びとの関係では厚生省の方では余り言ってないのですね。したがって、片一方で医療費がどんどん伸びたり、老人が大変だ大変だといって、厚生省だけじゃなくて、消費税をやったときも老人医療が大変だから大変だからと政府は盛んに言ってやったんです。しかし、実際やってみたらこういうところにまたどんどんしわ寄せがされているので、数字のとり方、宣伝の仕方で随分違うのですが、ここでも指摘されておりましたけれども、国民所得との関係も大事じゃないかなというふうに思うのです。  厚生省でも調べておると思うのですが、実際には日本の医療費というのは世界の先進国の中ではまだまだ低い方なんですね。ですから、そういった点もあわせて、この老健法の改正ということを一つの契機にして、私はもっと多くの国民的な論議の中でこの医療費の問題等を含めたやり方というものを、全体像というのですか、先ほど五島議員も質問しておりましたけれども、その全体像というのが二〇〇〇年なり二〇二〇年になってきても、つかみでは何かやっているようですけれども、トータルとしてのデータは全然ないのですね。ですから、そうではなくて、一方では国民所得との関係もあわせてこの医療費問題というものを全体的に議論しなければいけないんじゃないかという気がしているので、そのあたりについて総体的に、大臣に、どうでしょうか。
  140. 岡光序治

    岡光政府委員 大臣から御答弁いただく前に事実関係だけ私の方から申し上げさせていただきたいと思います。  まず、スライド制についての合意がないのではないかという御指摘でございましたが、平成二年十二月の老人保健審議会における「老人保健制度の見直しに関する意見」の中で「一定水準の実質負担が維持されるような見直しの仕組みを検討すべきである。」こういう御意見をいただいておるところでございまして、審議会においては、このスライド問題についてはいろいろ御審議をしていただいて、このような意見をいただいているところでございます。  それからもう一点、このようなものの仕組みにつきましては、これは今回が初めてではないかという御指摘でございますが、平成元年改正法の附則で、国民年金の保険料については、年金が物価にスライドして改定される場合には、そのスライドの指標として用いられた物価指数を用いて保険料についてもスライド改定をするという、似たような前例があるという事実を申し上げさせていただきたいと思います。
  141. 下条進一郎

    下条国務大臣 この新しい改正につきましていろいろな御意見があり、また今のような問題点の提起もございますけれども、先ほど来御説明いたしましたように、各般の検討の結果今回の改正案をお願いしているわけでございます。この改正案の主眼点は、くどいようでございますけれども、社会的な環境、それからまた長寿社会の実情等を勘案いたしまして、制度が安定的に運営できるようにということを念願としてこの改正をやっておるわけでございます。  また、お尋ねの負担の問題の関係でございますけれども、一応政府の公式の見通しでは二〇〇〇年の当初に税と社会保険の負担が合わせまして大体四〇%の中ごろということをめどにしておるわけでございまして、その中における社会保険の関係の負担がそれらの線の上にあって、急激に突出することのないように我々も配慮しながらこの制の運営を図ってまいりたい、このように考えておるわけでございます。     〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 小松定男

    ○小松委員 最後に、特養の問題で質問をしておきたいと思うのです。  実は私も特別養護老人ホームに関係をしておるのですが、現在、国の基準が本体工事とか設備整備費を合わせましても二億九千万、一カ所五十人定員なんですけれども、三億弱なんです。ところが、実際には今これの建設ということになりますとこれの倍ぐらい、七億以上この首都圏ではかかると思うのです。そうなりますと、とてもじゃないけれども、今、国の基準では特養をつくるのには施設者の負担というのが相当重いということなのですが、このあたりについて補助単価を見直す考えはないかどうか、その点を一つ伺っておきたいと思うのです。  それからもう一つは、用地はおまえら勝手にやれということなのでしょうけれども、今、用地も大変取得するのに要るのです。政府、厚生省で言うように、どんどん特養もふやすということになれば用地確保も実際大変重要な課題なのです。ですから、そういう面に対する補助といいますか、そういうことも検討はされないかどうか、この二つだけ伺って終わりにしたいと思うのです。
  143. 末次彬

    ○末次政府委員 社会福祉施設整備関係でございますので、私の方からお答えいたします。  社会福祉施設におきます建築実勢単価を見ますと、全国的には大体最低限必要な建設費をカバーし得る状況になっているというふうに見ておりますが、しかしながら、一部の地域におきまして人手不足等伝えられまして、建設費が高騰しているということも聞いておるわけでございます。  この国庫補助単価につきましては、従来から文部省の公立文教施設の改定率に倣って随時引き上げを行ってきておりまして、平成三年度におきましても、労務費、資材の上昇等反映させまして公立文教施設の改定率に倣った引き上げを行ったところでございまして、今後ともこういう状況について適切に反映するように努力していきたいというふうに考えております。  それから、土地の問題でございます。  土地の取得に補助することにつきましては、一般的に言いまして、土地が恒久的な資産であるということからなかなか困難でございますが、厚生省としては従来から、この社会福祉施設の用地の確保につきまして、一つは、社会福祉施設の用地につきましては原則として自己所有ということにしておりますが、それが困難な大都市につきましては特例的に地上権の設定で足りるということをやっております。それから、社会福祉法人の用地取得費につきましては、その全額を社会福祉医療事業団の低利融資、四・六%でございますが、低利融資の対象にしておりますし、また、従来から関係省庁にお願いいたしまして国公有地の優先利用ということもお願いしておるわけでございます。  なお、平成三年度につきましては、こういった要求を勘案しまして、用地確保の困難な都市部におきまして三階以上の高層建物として設置する場合には、補助基準におきまして八%の面積加算を行うということを一つやっております。それからさらに、既存の社会福祉施設整備する、需要の高い施設と複合化して改築する場合には、経過年数を緩和いたしまして老朽度にかかわらず改築を認める、さらに、これに高層化する場合には八%の面積の割り増しを行う、また、エレベーターの設備を認めるというふうにしております。特にこれにつきましては社会福祉医療事業団の融資におきまして無利子の融資、さらに、その償還につきまして部償還免除を図るといったような優遇措置を行っておりまして、こういった都市部におきます社会福祉施設整備促進を図るということを目指してまいりたいというふうに考えております。
  144. 小松定男

    ○小松委員 終わります。どうもありがとうございました。
  145. 浜田卓二郎

  146. 大野由利子

    ○大野(由)委員 私は、先日四月十一日に本会議場で老人保健法の一部改正案についての代表質問をさせていただいたものですから、きょうはそのときとダブらないように努力をしながら質問をさせていただきたいと思っております。  初めに、国民医療費が二十兆円を突破、しかも毎年一兆円ずつふえているということで、さあ大変ということで大変騒がれているわけですが、日本の医療費は高いのか低いのか、医療費の伸び率はどの程度が適当なのか、どの範囲にとどめようと思っていらっしゃるのか、厚生大臣の御見解を伺いたいと思います。
  147. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 我が国の国民医療費が世界に比べて高いのか低いのかというまず第一点のお尋ねでございます。  確かに、国民所得比で申しますと六%程度でございまして、アメリカなりヨーロッパが一〇%台ということで、国民所得対比では低いというふうに言われている面もございます。しかし、御案内のように、私どもの社会保険制度あるいは医療給付制度は非常に効率的な制度運営を心がけておりまして、どこでもだれでもいつでもいい医療が受けられるという意味で立派な制度ができているのではなかろうかというふうに考えております。したがって、外国と医療費を比較する場合には、医療レベル、水準等も考え合わせなきゃいけないというのが一点でございますし、国民医療の範囲の中に外国では建設費が入っているとか、その他いろいろな面で出入りがございますので、単純な比較はできないわけでございます。  伸びでございますけれども、御案内のように、五十年代、二けた以上ずっと国民医療費が伸びてきたわけでございますが、ここのところ減速をいたしております。国民所得の伸び率の範囲を政策目標として、医療費の伸びを国民所得の伸び程度あるいは範囲内におさめるということを政策目標として私ども行政運営をいたしておるわけでありますけれども、国民医療費の伸びということから申しますと、国民所得の範囲内に現時点ではおさまっているということでございます。
  148. 大野由利子

    ○大野(由)委員 国民医療費の伸び率を国民所得の伸び率の範囲内に抑えるということを一応目標にしていらっしゃるということを今伺いましたが、その目標から人口増と高齢化分、それは当然増でございますので除くのが妥当じゃないか、そのように思います。例えば平成二年の推計でございますが、人口増が〇・四%、高齢化分が一・三%、医療費の改定分が一・〇%、それから医療機器の高度化分が三・三%ございます。全体を合わすと六%になるわけですが、この中から高齢化、人口増一・七%はもう当然増というふうにみなすべきじゃないか。我が国は経済至上主義、生産第一主義を貫いてまいりましたが、生活関連への配分が非常に少ないということが今本当にいろいろな面で指摘をされております。こうした意味で、生活関連に配分をし、また、生活者の重視といった面から、当然こうした高齢化分と、そして人口増の分を目標から省くべきではないかと思いますが、これに対して御答弁をお願いしたいと思います。
  149. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 私どもは、お答えいたしましたように、国民医療費を国民所得の伸びの範囲内にとどめるという政策目標をいたしておるわけであります。その中には、当然人口増なり高齢化による影響分も含めてそうしたいと申し上げているわけでございます。これは、まさしくこれから高齢化が進みますと、国民医療費の増大は避けられないわけでございます。そして、その国民医療費は国民の負担、社会保険料だとか税の負担によって大部分が賄われるということでございますので、これからも社会保険制度が有効に高齢化社会の中で機能していくように、そして国民の負担が過大にならないためにということで政策目標を立てているわけでございます。せっかくの御提案でございますけれども、高齢化分あるいは人口増を含めた中で私どもは見ていきたい。そして、それにとどまるように国民の健康づくり対策、疾病の予防から保険者の経営努力、それから診療報酬の合理化、薬価の適正化あるいは医療供給体制の合理化なり効率的なシステムづくりというようなものを目指しながら、これから医療費の増大が避けられない中で、そういう政策目標というのは維持しながら、私どもは懸命な努力をしていく必要があるのではないか、かように考えているわけでございます。
  150. 大野由利子

    ○大野(由)委員 国民医療費の対国民総生産比が日本は非常に低うございまして、欧米は八%から一一%ですが、日本は今五%台、そういう状況でございます。三十年後、高齢化が最も高くなって四人に一人が六十五歳以上になりました、そういうピークどきを迎えましても、国民総生産比は七%弱じゃないか、そういう試算がございますが、その点について厚生省のお考えをお伺いしたいと思います。
  151. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 将来の試算でございますけれども、GNP比幾らになるかという試算は、私の承知する限りでは出していないと思うわけでございます。ただ、予算委員会等に、これから社会保障給付費がどの程度になるかというような試算は示したことはございます。
  152. 大野由利子

    ○大野(由)委員 では、その辺もぜひお願いしたいと思います。  それから、国民負担率でございますが、租税及び社会保険料の合計が将来どれくらいの負担をすることになるか、どの程度がぎりぎり限界の負担率と思っていらっしゃるか。
  153. 下条進一郎

    下条国務大臣 先ほど来の論議の続きでございますけれども、この負担率というのは、これで単純にすべてを推しはかることは極めて困難だと思いますけれども、一つのめどとしての意義はあると思います。そういう意味において、第二次行革審の答申の中では、先ほど委員指摘のように二〇二〇年がちょうど一番の高齢化のピークを迎えるときでございますが、そのときの負担率といたしまして五〇%を超えない、それを目途とするというようなことが計画として一応出ておるわけでございます。いわば努力目標でございますので、そういう線を一応想定しながらいろいろな計画充実するようにしておるわけでございます。
  154. 大野由利子

    ○大野(由)委員 社会保障給付費でございますが、これは国民に還元されるものでございますので、国民負担率から差し引いて純負担率、実質負担率という考え方をとるべきである、そういう意見がございます。例えばスウェーデンが国民負担率が大変高くて七〇%を超えているということがよく問題になりますが、こういう純負担率ということで考えますと、スウェーデンは三〇%、イギリスが二七%、西ドイツが二二%、日本が二四%ということで、高いと言われますスウェーデンと日本もそう大差がない。しかも、老後に備えて貯金や保険というものが日本では必要なわけですが、そういうものを差し引きまして自由に使えるお金となると、日本とスウェーデンは全くもう同じになる、そういうふうに言われております。こうした純負担率ということに対する考え方、今の国民負担率から純負担率という考え方をぜひとるべきじゃないか、発想の転換を図るべきじゃないか、そのように思いますが、厚生省の御見解を伺いたいと思います。
  155. 熊代昭彦

    熊代政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘の数字はそのとおりだと思いますが、国民負担率は、大臣からも御説明申し上げましたとおり、社会保障負担及び税負担の国民所得に対する比率ということでございます。社会保障負担につきましては、これも御承知のとおりでございますが、社会連帯の考え方に基づきまして社会保険料等で広く国民に負担をお願いしているところでございます。  御指摘のお考えは大変示唆に富むお考えであると思いますけれども、ただ、社会保障給付費は、低所得者等特に給付を必要とする方々に重点的に充てられる、そればかりではございませんが、所得再配分効果をねらっているということでございますので、重点といたしましてはそういうことでございます。一方、国民から広く負担を求める社会保障負担の方でございますが、それは国民各層から広く負担を求めるということでございますので、それを差し引いて考えるということは、負担をいたします国民の側でございますけれども、負担は負担ではないか、それから給付は給付ではないかというふうな考えがあろうかと思われます。ということで、負担する側の国民の方々から広い支持を得られるかどうかということについていささか問題があるのではないかと感じております。  以上でございます。
  156. 大野由利子

    ○大野(由)委員 我が国で特にまたおくれていますのは福祉の分野だと思いますが、我が国の福祉の水準と他の先進諸国との比較について教えていただきたいと思います。
  157. 岡光序治

    岡光政府委員 福祉社会のあり方をどのように比較をするかということでございますが、欧米諸国といいましても、社会保険のシステムでやっているところと、それから公租公課を中心にやっているところと、それからアメリカのように民間の力でやっているところといろいろ差がございまして、そこのところは単純に比較をするのは難しいのじゃないかと思っておりますが、我が国においては、いわば社会保険が中心、基本にあるような国でございまして、年金なり医療というものにつきましては、国民皆保険であるとか国民皆年金体制をとっておりまして、そういう意味では欧米諸国と比較をしても遜色がない水準に達しているのではないだろうか、そう考えております。
  158. 大野由利子

    ○大野(由)委員 確かに福祉の分野の比較は大変難しい状況だと思いますが、対国民所得比、社会保障全体の給付費が日本は一四・五%、アメリカが一六・二%、イギリスが二五・五%、西ドイツは二九・一%、フランス三六・二%、スウェーデン四〇・七%、これは社会保障給付費全体の国民所得比でございます。それから、この社会保障給付費の中には医療と年金が大きな比重を占めているわけですが、それを除きましたその他、いわゆる生活補助とか扶助、児童手当、また社会福祉サービス、失業給付、そうしたその他の分野になりますと、日本は対国民所得比が一・六%、アメリカ二・六、イギリス九・三、西ドイツ七・三、フランス一二・六、スウェーデン一六・一、そういうデータが出ております。これは日本は一九八八年で、他の国は一九八六年のデータでございますが、いずれにいたしましても、日本の福祉の水準が諸外国に比べて非常に低い、極めて低水準だということがこの社会保障給付費全体から見ましても言えますし、医療と年金を差し引いたその他の分野についても言えるのではないか、そのように思います。  私は、どうして福祉のことをここでこのように取り上げたかと申しますと、日本の医療は入院期間が非常に長いということが特徴になっておりまして、世界一の入院期間、アメリカの五倍以上、イギリスや西ドイツの二倍以上、そのように言われております。本来ならある程度回復をして病院を退院して施設に入所するとか家庭に帰るとかというふうになるところを、そのまま病院にとどまっている、そういうケースも多々あるように伺っております。老人ホームとか老人保健施設等の絶対数も圧倒的に不足しているわけですが、こうした病院福祉の肩がわりをしている。福祉の水準が非常に低い、福祉がお粗末なために病院福祉の肩がわりをして、そして医療費を押し上げている、そういう事実があるのじゃないか、その辺のこと。また、さっき申しました、本来は回復しているにもかかわらず入院を続けていると言われている老人社会的入院と言われる長期入院がどの程度いらっしゃる、社会的入院によってどの程度の医療費がかかっている、そのように認識していらっしゃるかについて教えていただきたいと思います。
  159. 下条進一郎

    下条国務大臣 今の、いろいろ数字を挙げての御説明でございますが、統計のとり方、私はこれは各国皆違うと思うのです。したがいまして、フラットに御比較をされますと、必ずしも実情を反映していない面も中には出てくるのではないかと思います。もちろん今御指摘の点で、例えば施設の面がおくれておる、したがって、そちらに入っていただくなりあるいは介護をやっていただく手だてが十分でないということは事実だと思いますけれども、これは今度の予算でも重点的にその方の力を入れてやるということに相なっておるわけでございます。  また一つの例で、私アメリカに勤務したことがございますので、その経験から申し上げますと、向こうは、日本と比べますと、例えば年金は非常によろしいわけですけれども、医療の保障制度は大変悪いのです。向こうはもう病気になったら大変なんです。そういう意味で、今おっしゃったように、入院日が向こうが短くて日本が長いという面もありますし、一概に比較できない面もあるわけでありますが、一つの比較の基準として参考としながら我々も充実を図っていくように努力してまいりたいと思います。
  160. 岡光序治

    岡光政府委員 いわゆる社会的入院がどの程度かということでございますが、なかなかこれははっきりとつかまえ切れないのでありますが、私どもで昭和六十年に全国の老人病院に対しまして照会調査をしたことがございます。それによりますと、老人病院に入院している老人患者のうち、家庭条件等が整えば在宅療養が望ましい、こういうふうに病院側が判断をしている患者は約一割だというふうに御返事をいただいておりまして、こういったものが一つの例証になるのかなと考えております。そういう意味で、こういったいわゆる社会的入院というのを解消すべく、大臣がただいま申し上げましたが、体制整備したり、また、在宅ケア体制の強化も図りたいということで諸計画を進めているところでございます。
  161. 大野由利子

    ○大野(由)委員 こうした福祉充実させることでもって医療のむだ遣いというものは防げるのじゃないか、そのように思います。これは医療福祉の総合的な施策というのが非常に大事ではないかと思いますので、こうした福祉の面もぜひ充実をお願いしたい、そのように思います。  それから寝たきり老人、これも我が国特有の現象ということで、これは人為的につくられたものであって、寝たきり老人というのは寝かせきり老人というべきだ、そういうふうなことが言われております。海外では非常に少なくて、日本特有の寝かせきり老人でございますが、我が国の寝たきり老人の数、在宅と施設に分けての数と今後の予測、それからその原因をどのように考えていらっしゃるか、また、その対策をどのように考えていらっしゃるかについて教えていただきたいと思います。
  162. 岡光序治

    岡光政府委員 まず数でございますが、昭和六十年現在の推計数では在宅で約二十二万人、特別養護老人ホームで約十二万人、それから長期入院をしておる患者で寝たきり状態になっている人が約二十五万人というふうに把握をしております。これで平成十二年でございますが、もちろんこれは六十五歳以上人口もふえてまいりますが、私どもとしましては、長期入院という格好病院に入っている人をできるだけ少なくしていきたい。目標としましては、長期入院患者は十万から十四万人に持っていきたい。そのかわり特別養護老人ホームであるとか老人保健施設はその受け皿を設けるということで、これは十カ年計画で定めている数字でございますが、老人保健施設は二十八万床、特別養護老人ホームは二十四万床の整備をしていきたい、こういう格好で対応したいと思っております。したがいまして、在宅の数字は三十万人強になるのではないかというふうに推測をしております。したがいまして、この在宅対策も一方で考えなければいけないということでございます。  それから、その理由は何かということでございますが、病院施設の実態をつぶさに見る限りは、介護なり看護が不十分なために寝かせたままになっておるということがどうも大きな理由ではないかなというふうに考えております。  例えば、車いすの生活にする、あるいは車いすの生活をして、それから自分で一歩でも動けるというふうに具体的な手助けなり指導をしている病院もございますが、そういったところでは寝たきり老人というのは非常に数が少なくなってきておる。あるいは老人保健施設におきましては、そういった介護の体制が整っておりますから、老人保健施設では寝たきりの状態になっている人が非常に少ない、こういう事実があるのがその理由じゃないかなと思っております。
  163. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今介護や看護が不十分なために結果的に寝かせきりに老人がつくられている、そういう現状がある、そういうお話がございました。私も、やはりこの寝かせきりをなくしていく最大のものはマンパワー確保マンパワー不足が寝たきり老人をつくっている、そのように思うわけです。マンパワー確保をいろいろ、これはもちろん努力はしていらっしゃるわけですけれども、私は、この努力というのがまだまだ不十分じゃないかなというふうに思うわけです。  看護婦さんも今、若い人でありますが、一日の仕事が終わると、ともかくもうくたくたになっちゃって、どたっと疲れて寝てしまう、そういう毎日だ、そのように私の知り合いの看護婦は言っております。ともかく月に十日以上、夜勤と準夜を加えると、ひどい病院は十三日以上夜勤、深夜と準夜がある、そういう状況でございまして、人事院勧告の二・八体制が全く守られている状況ではございません。日本看護協会のアンケートによりましても、改善すべき事項のトップは、やはり看護職員の増員だというのが七〇・七%、そう出ております。それから、週休二日制や労働時間の短縮が四六・五%、夜勤回数の軽減が三六・五%ということで、まさに看護職の皆さんが非常に過酷な労働でいらっしゃるということが言われているわけですが、もっともっとそういった意味では看護に対する診療報酬も高めるべきではないか、いろいろなことを感じるわけでございます。  それで、看護料等の診療報酬看護婦不足のためにはもっと思い切った改善が必要なんじゃないか。今外来の看護料も認めるべきじゃないか、そのように思うのですが、現在外来三十人に一人の看護婦の配置が義務づけられているにもかかわらず実際には評価されていないとか、そういった看護料の診療報酬の引き上げについてはぜひやっていただきたいと思うわけですが、この辺についてお尋ねしたいと思います。
  164. 下条進一郎

    下条国務大臣 マンパワー確保は、これはもう医療制度充実、あるいはまた、既に御承知のようなゴールドプランの達成というためにも非常に大事なポイントでございます。今いろいろな面でその不足に直面しておりますので、その充実のためにはいろいろな手だてを講じながら充実を図るように、また目標レベルに到達できるように努力いたしておりまして、今度の平成三年度の予算におきましても、各項目におきましてかなりの配慮をいただいておるわけでございます。  今、特に具体的な問題として提起されました看護職員の問題でございますけれども、看護職員の需給関係の資料が実は手元に新しいものがございませんので、国会の皆様からの御質問のときにお答え申し上げましたように、三月末でありますけれども、新しいデータを求めて、そのデータによってさらに具体的な計画を立てたいということで、各都道府県に通知を出したばかりでございます。今の見通しでは大体六月ごろにその現状の報告がありますので、それを前提としながら今後施策を進めてまいりたいと思っております。  なお、現実の問題として、当面はやはり看護職方々確保、このためには今お話のございましたように、待遇の改善とかあるいは勤務状況改善等々がございますが、この問題につきましては、国立病院の方につきましては、既に平成三年度の予算におきまして夜勤の手当をふやすことにいたしております。また、一般の看護婦さんの民間の場合におきましては、これは昨年の診療報酬の改定のときに、その改定の中にほかの項目より高い率の引き上げを前提とした計算もいたして織り込んでございますので、その中で一応解決を図った次第でございます。  なお、全体的な数が少ないということによって勤務の状況、例えば今御指摘のような夜勤の問題でございますが、これはもう人事院の勧告からかなりの時間がたっております。二・八体制をぜひやれということでございますけれども、国立病院の方は、場所によってはいろいろ差はございますけれども、今二対九というところを割り込んだぐらいのところが平均値でございまして、我々といたしましては、少なくとも二・八体制に近づけて夜勤の負担の軽減を図ってまいりたい、このように考えておるわけでございます。  また、週休二日制の導入問題につきましては、いろいろ当たってみましたところ、国立病院の方では、一応国家公務員一般並みの隔週ごとの週休二日制の導入はほとんど行き届いておるようでございます。  また、新しく看護婦さんになられる方々の養成、これも今度の予算におきましてかなり重点的な配慮をいたしておりまして、新しい方々が喜んで看護職に入ってこられる、そして優秀な看護婦さんとして各配置についていただくというような制度もさらに充実するようにいたしております。  また、既に退職された方の中には極めて優秀な方々もたくさんあるわけでございますので、御家庭の状況で再び勤務につくことができる方については、各県にありますナースバンクを通じまして情報をとりまして、再就職の道をさらに広げるようにいたしておりますし、また、そういう方の中には夜勤は困るという方がございますので,そういう方々には、またいろいろの介護あるいはその他の派遣の形でのサービスに当たっていただくというようなことも考えておるわけでございます。  なおまた、いろいろとつらい立場で御不自由あるいは御不満も多々あるということも聞いておりますので、間もなく到来いたします五月十二日の「看護の日」に、イメージアップと、また多くの方々の理解を看護職に賜らんことをお願いするような機会として、この日を設けまして、ひとつ大々的に、多くの方々に御理解と、それからまた、働く方々の意気の上がるような形での一つの記念の行事をやるように計画いたしております。  今、そういうことでいろいろな施策を講じながら、この看護職充実、また需要にこたえる体制を整えるように努力しているわけでございます。
  165. 大野由利子

    ○大野(由)委員 医療経営が現在非常に厳しいという現状がございますが、診療報酬も一九八〇年代の十年間に引き上げ幅は、薬価基準の引き下げを差し引きますと、わずか二・六五%という状況でございまして、消費者物価や賃金の上昇に比べて非常に低過ぎる、そういう現状がございます。今まで薬価差益等に頼って経営が成り立っていたという状況がありますが、こういう不健全なことをとらなくてもいいように、診療報酬、看護料等も含めてきちっと引き上げるところは引き上げる、そして公費の負担もきちっと五割の負担を行う、そして今厚生大臣からマンパワー確保のためのいろいろなお話を伺いましたけれども、やはり根本的な待遇改善というものがもっとなされなければいけない、私はそのように思いますので、ぜひその辺の御努力をお願いしたいと思います。  それから、一部の老人病院でたらい回しという現象があるのを御存じだと思いますが、なぜこのようなことが行われているか、どのように認識していらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。
  166. 岡光序治

    岡光政府委員 入退院の適否であるとか他の病院へ移っていただくことの是非であるとか、これは主治医の医学的判断に係っている問題でございまして、先生おっしゃいますように、患者のたらい回しということでその実態を把握しろということでございますが、これは極めて難しいことでございます。こういったことは救急の場合には随分と指摘をされたわけでございますが、こういった問題が生じないように、医療機関に対する重点的な指導であるとか、場合によっては、支払基金でレセプトの審査をしておりますけれども、このチェックの際にそういったものをピックアップして指導の際に対象にするとか、そういったことで対応していきたいと考えております。
  167. 大野由利子

    ○大野(由)委員 実際にはこういうことが行われているという現状を厚生省はもっと知っていただきたい、そのように思います。それは患者のための治療上の目的のために行われているということであれば当然でございますが、単にそういうことじゃなくて、特例許可老人病院におきます入院時の医学管理料、診療報酬でございますが、これは期間によって変わるという現状があると思いますけれども、期間によってどう変わるか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  168. 岡光序治

    岡光政府委員 入院時医学管理料の点数でございますが、特例許可老人病院病棟で申し上げますと、六カ月以内の場合には二百三十五点から百三十三点でございますけれども、六カ月を超え一年以内の場合には百十三点、一年以上になった場合には八十二点というふうに区分をしているところでございます。これは、入院が長期化をしますと、いわゆる慢性化するわけでございまして、治療内容が定型化をして、必要な医療ケアに要する費用が減少するということに着目して、こういった逓減制を設けているところでございます。
  169. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今、大まかな御答弁をいただいたわけですが、実際には、入院一カ月未満、一カ月から三カ月、三カ月から六カ月というふうに細かく分かれていまして、入院時の医学管理料がだんだん下がってくる、一年を超えますと一カ月未満の三分の一ぐらいになってしまう、そういう現状がございます。そういう意味で、現実に、わずか五、六年の入院期間の間に三回も四回も病院を回されている、そういうお年寄りの人権に非常にかかわる問題が行われている。これはもちろんすべての病院ではない、一部かもしれませんが、現実にそういうことが行われているということは大変ゆゆしき問題ではないか、私はそのように思います。入院直後は検査とか治療等でいろいろ大変で、三カ月を超えたらある程度一定というのもわかるわけですが、入院が長くなれば、反面、リハビリに力を入れなければいけないわけですから、そういった意味では別な面での医療機関の大変な努力が必要なわけでございまして、それが入院一カ月と一年以上では、その患者さんの入院時の医学管理料が三分の一になってしまう、そういう現状で、実際には一年以上たったら一つ病院を半ば強制的に退院させられて違う病院、B病院に行く、B病院に行くと、そのB病院では、最初からの入院ということで、また最初の一カ月未満で三倍の入院管理料になるという現状があるわけです。私は、この入院時の医学管理料というのは、そういうふうに細かく期間によってだんだん下がってくるということはやめるべきじゃないか、一定のあれを確保するということをすべきじゃないか、そのように思いますが、御意見を伺いたいと思います。
  170. 岡光序治

    岡光政府委員 今おっしゃいましたように、医学的に見て継続して入院が必要な患者に対しまして、医療機関の経営上の理由から、出ていってくれと転院を強要するようなことはあってはならないと考えております。  私どもの基本的な考え方といたしましては、病院それから関係施設も含めまして機能分担をして体系的な整備を図るべきだ。そして、具体的に申し上げますと、急性的な治療が必要なところは急性的な治療をして、そこで病状が落ちついたら、その病状が落ちついたところで治療行為をするようなところに移っていく、それからもう少し落ちついて、在宅でも生活が可能であるということになりましたら在宅に戻るというふうに、それぞれが機能分担をしていくべきじゃないかと考えて、そのような体系整備したいと思っております。そういう意味では、いわゆる長期入院については是正方をしていかなければならないというふうに考えておりますが、繰り返しになりますけれども、入院時医学管理料を逓減化しておりますのは、長くなりますと慢性化して、治療内容が定型化する、必要な医療的なケアに要する費用が減少するというところに着目しているわけでございまして、これはそういう費用が少なくて済むという状態に着目して、そういう診療報酬の点数を設定しているという仕組みでございますので、そこのところは御理解いただきたいと思います。
  171. 大野由利子

    ○大野(由)委員 実際にはどのような現状があるか、患者さんの立場に立ってどうあるべきかという観点から、先ほど岡崎委員からも基準看護の病院で実際には付添料が取られているという現状のお話がありましたが、もっと患者の立場に立って、こういうことが改善されるということについて前向きに真剣に取り組んでいただきたいと思います。  次に、一部患者負担の引き上げについてお伺いいたします。  外来が一カ月八百円から千円、入院が一日四百円から八百円というこの引き上げは、翌月から一挙に二倍に引き上げるということは世間ではとても考えられないことでございます。最近、大変な土地の高騰等もありましたが、それでも翌月から家賃が二倍になったなんということはあり得ないわけでございます。それも、非常に低所得の方、老人の方、弱い方々にこのように一挙に翌月から入院が四百円から八百円なんということは余りにもひどいのじゃないかと思います。先ほどもこの質問は出ておりましたけれども、また、若い方と老人の負担のバランスをとるためだという答弁が先ほどもございましたが、しかし実際には、入院されている老人の場合は、約半数近くは子供が、子供の世帯が入院費を払っているわけでありますから、そういう意味では、結局は若い世代の負担軽減につながらない、負担増になる、そういうこともございます。そういった意味で、この入院を一挙に四百円から八百円ということは、私は本当にとても認めがたいことでございます。これは何としても考え直していただきたいと思います。  それから、先ほど一部負担の保険外負担の話もございましたが、これも先ほどいろいろ話がございましたので、私も具体的な細かいことは省略いたしますが、実際には十万前後のお金がかかっている、そういう実情がございます。  それから、今保険外負担として認められているのは何と何があるのか、それをもう一度お尋ねしたいと思います。
  172. 岡光序治

    岡光政府委員 一つは、いわゆる部屋代の差額でございまして、一人部屋とか二人部屋の場合には室料差額を取ってよろしいということになっております。  それからもう一つは、付添看護でございまして、どうしても病気の療養の必要性があるということで、一人で一人を面倒見る場合と、それから付き添いさん一人で二人の患者を見るという二つのタイプに分けておりますが、そのような付き添いを認めるというケースがございます。これにつきましては、差額の問題が出てまいりますのは、保険で支払う看護料と、それから実際に付き添いさんに払う慣行料金との間に差があるものですから、そこから付添看護の負担が出ておるということでございます。  それからもう一点は、実際に病院での生活で、おむつであるとか諸雑費であるとか電気製品を使うとか、そういう実費がかかりますので、その実費に着目をして、実費負担をしていただく、これをお世話料と称していたところもあるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、そういうはっきりしない名目で取るのはやめていただきたいということで、そういった実費に対応する負担をしていただくというのはやむを得ないのじゃないか、この三つのタイプを私ども保険外負担として認識をしているわけでございます。     〔委員長退席、石破委員長代理着席〕
  173. 大野由利子

    ○大野(由)委員 おむつ代でございますが、これは、実質おむつというのはどれぐらいかかるものか。老人保健施設等ではどれぐらいかけていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。
  174. 岡光序治

    岡光政府委員 いろいろどうもケースがあるようでございまして、取りかえる回数で大分、もちろん費用負担がかかるわけでございますが、平成元年老人保健施設におけるそういうおむつ料の調査では、一日当たりのおむつ料の額は四百六十五円、したがいまして、一カ月当たりのおむつ代としましては一万三千九百五十円という調査を私ども持っております。
  175. 大野由利子

    ○大野(由)委員 老人保健施設では、今おっしゃった程度のおむつ代で済んでいるようでございますが、これが病院になると、とてもこれだけでは済まない、一日千円、二千円、おむつ代だけの費用であってもそういう費用が徴収されているという現状がございますので、こういった保険外負担のことにつきましても、もっと詳細に調べていただきまして、そしてこの保険外負担がどう解消するか。おむつ代は認められているわけですが、おむつ代と称して実際にかかっているおむつ代以上のものが徴収されている、そういう現状があるわけです。この辺の実態を把握していただいて、そして、それ以外の余分な負担をどうなくするか、具体的な方策を指し示していただいた上で、一部負担の引き上げの論議が始まるというふうに、順序としてはそうしていただきたい。そうでなければ、ただでさえお年寄りの負担は大変なものがあるわけでございますので、早期発見、早期治療という医療の原則から老人を排除するものとしか言いようがない。そういう意味で、この一部負担の引き下げを今後どう図っていかれるかについてお尋ねしたいと思います。
  176. 岡光序治

    岡光政府委員 先ほどは老人保健施設のことを申し上げましたが、平成二年の十一月で、特例許可老人病院で調べました結果では、おむつ使用者が大体毎日五回から六回ぐらい交換しているのじゃないか。それで大人用のおむつの小売価格というのは、これは国民生活センターの調査結果でございますが、六十円から百八十円程度だそうでございまして、仮に百円としてみますと、五回交換するということで考えますと、一月当たり一万五千円というふうな計算ができるわけでございます。  いずれにしましても、こういった負担の実態につきましては、私ども定期的に医療機関に対しまして調査を行っておるところでございますし、先ほども岡崎先生から御指摘をいただきましたが、患者や家族サイドからの情報も把握するように、プラスをして正確な実態把握をしなければいけないというふうに考えております。  また、私ども医療機関老人保健施設には監査指導で入っておりますので、その際には領収書をチェックするとかして、名目のはっきりしないような経費を負担させておるということのないように特っていきたいと考えているところでございます。
  177. 大野由利子

    ○大野(由)委員 スライド制の導入についてお尋ねをいたしますが、老人の一人当たり、一日当たりの上昇に比例をして、そういうお話でございますが、それが約どれぐらいになるのか。それから、これから大変医療機器の高度化等によって、老人の生活実態からかけ離れた非常に過度の負担を強いることが起こり得るのじゃないかということを非常に心配をいたします。  そういった意味では、単に老人の一日当たりの医療費に比例するというのじゃなくて、生活実態からかけ離れないという意味では、物価ないし基礎年金の変動率を上限にするとか、そういう歯どめが必要なのではないか、そのように思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  178. 岡光序治

    岡光政府委員 まずスライドの結果、将来どうなるかということでございますが、過去五年間の平均伸び率を用いて試算をしてみますと、老人医療費全体では約九%伸びておりますが、単価の要素でございますので、外来では三%程度、それから入院では二・五%程度の伸びになっております。この伸び率で十年後に幾らになるかということでございますが、そのような伸び率を用いることにしております。それによって外来の一部負担金では千三百四十円程度、それから入院の一部負担金は千二十円程度というふうに、これは試算ができるわけでございます。あくまでもそれぞれの単価に応じて伸ばしていくわけでございますので、こういう数字になるわけでございます。  それから、年金とか物価の上昇率に配慮をして考えるべきではないかということでございますが、私どもは、一部負担というのは、実際に受けている受益に応じて負担をしてもらうということが一部負担の基本的な考え方だというふうに考えておりますので、やはり実際に受ける単価の伸びというものを念頭に置きまして、それでスライドをさせていくという、この仕組みをぜひともお認めをいただきたいと考えているわけでございます。
  179. 大野由利子

    ○大野(由)委員 実際には老人方々、七十歳以上の方の生活はほとんど年金を頼りに生活していらっしゃるわけでございますので、今のところ伸び率はそれほど大きくかけ離れるものではないという予想をしていらっしゃるようでございますが、そういった観点からも、ぜひそうした歯どめをきちっとするということが、お年寄りの方の生活を守るという意味では必要である、そのように思いますので、ぜひこれは再度御検討をお願いをしたいと思います。  それから、もう一度お尋ねしたいと思いますが、今回の患者負担の引き上げが行われますと、負担増が約千二百億円と聞いておりますが、この積算根拠を教えていただきたいと思います。
  180. 岡光序治

    岡光政府委員 外来分につきましては、老人の外来の総件数、これは一億三千九百万件でございますが、この総件数に一部負担の引き上げ幅が二百円でございますので、それを乗じまして二百八十億円、それから入院につきましては、老人の入院の総入院数、これは入院日数でございますが、二億二千七百万日というふうに見込んでおりまして、これを四百円の上げ幅でございますから、四百円を乗じまして九百億円、合わせまして一千百八十億円というふうに推計をしておるわけでございます。
  181. 大野由利子

    ○大野(由)委員 外来はお年寄りの方平均約二・七かかっていらっしゃるということでございますが、外来の一人当たりの年間の負担増はどの程度になりますでしょうか。
  182. 岡光序治

    岡光政府委員 今御指摘のありましたような試算をちょっとしておりませんのですが、大体私どもが把握しておるところでは一月に平均四・五回程度外来受診をされるというふうに把握をしておりますが、月単位でこれは考えておりますので、年間を通じて一人の方がどの程度の、何月くらい通院をされるかというのは、ちょっと今手元に持っておりませんので、お時間をいただきたいと思います。
  183. 大野由利子

    ○大野(由)委員 済みません、きょうは大蔵省から来ていただいておりますのでちょっとお尋ねをしたいと思いますが、実は平成元年から消費税が導入されましたけれども、平成元年から平成三年度までの各年度の消費税の収入はお幾らになるか、合計して教えていただきたいと思います。
  184. 神原寧

    ○神原説明員 お答え申し上げます。  一般会計分及び特別会計分合わせた額で申し上げますと、平成元年度決算分で六兆八百七十四億円、二年度補正後で六兆八百七十五億円、三年度が予算ベースで六兆一千八百億円となっております。
  185. 大野由利子

    ○大野(由)委員 国民一人当たりにいたしますと、三年分の消費税、お幾らになるでしょうか。
  186. 神原寧

    ○神原説明員 この間の総人口が、平成元年度の実績で一億二千三百十八万人、二年度の実績見込みが一億二千三百五十五万人、三年度の見通しが一億二千三百九十万人となっておりまして、消費税収を単純に総人口で除して各年度の一人当たりの消費税負担額を求めますと、元年度は三万三千円程度、二年度は四万九千円程度、三年度は五万円程度と見込まれます。
  187. 大野由利子

    ○大野(由)委員 消費税の導入に当たりまして高齢化社会における財源確保といううたい文句で強行採決されたというか、消費税が導入されたわけでございますが、所得の多い少ないに関係なく一律三%という消費税がかかっている。低所得者層には、今特に高齢者には大変この消費税の負担が大きいわけでございます。今大蔵省から御答弁いただきましたように、大変、一人当たりの消費税の負担額が年間三万、四万、五万等の負担をしているわけでございます。  そういう意味で、高齢者の方がこの大変な一人当たりの消費税の負担をしながら、なおかつ今回患者の一部負担を大きく倍増するということは一体どういうことなのか。老人福祉法の第二条に、「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障される」、このように出ているわけですが、これとの整合性をどう説明されるのか、お聞きしたいと思います。
  188. 岡光序治

    岡光政府委員 まさに将来の高齢化に備えるという要素、意味合いを持っておるわけでございますので、そういう意味で私ども、具体的には「高齢者保健福祉推進十か年戦略」をつくって、この二十世紀の間にそういった高齢社会が到来したときに十分対応できるような諸体制を整えたいというふうなことも一つの例でございまして、そういう意味で、広く高齢化社会に備えるような体制を組んでおるというふうに承知をしておるところでございます。
  189. 大野由利子

    ○大野(由)委員 消費税の採決に関しまして税制改正六法案を同時に成立されたわけでございますが、その中に、同居の特別障害者の世帯、寝たきり老人を抱える家庭に対して所得控除、八十万から百二十万に引き上げられた、そういう実情がございます。いわゆる課税世帯については寝たきり老人介護減税というものを行われたわけでございますが、しかし、これは消費税導入によって税負担が増大するいわゆる非課税世帯には、所得税を納めていない低所得層への対応策にはなっていないということで、在宅の寝たきり老人、痴呆性老人などを抱えている家庭に対して、非課税世帯に介護の一時金として五万円を支給された、そういうことがございます。これは間違いないと思いますが、大蔵省に確認したいと思います。     〔石破委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 渡辺裕泰

    渡辺説明員 お答えをさせていただきます。  六十三年度の補正予算におきまして、消費税導入に伴う臨時特例の措置として臨時福祉特別給付金を支給することといたしました。その中の一つとして、御指摘の在宅の寝たきり老人、痴呆性老人を抱えておられる低所得者世帯には五万円の臨時介護福祉金、これを一時金として支給いたしました。先生の御指摘のとおり、間違いはございません。
  191. 大野由利子

    ○大野(由)委員 我が国では介護手当という社会保障制度がまだ行われていませんで、地方自治体で一部、要介護老人を抱えている世帯に少しでも手当が支給されている、そういう現状がございます。国においては、この要介護者を持つ家庭への支援に着目した社会保障制度はとられていなくて、税制上の所得控除によって実施されていらっしゃるわけでございます。八九年一月一日の改正で、同居の特別障害者で七十歳以上の老親を扶養しているところは八十万の控除額が百二十万に拡大されました。同じく配偶者がそういう状況であるときには八十万が百十万に改正されたわけですが、これは間違いないかどうか、大蔵省にお尋ねしたいと思います。
  192. 神原寧

    ○神原説明員 基本的に先生の御指摘になったとおりでございます。  ただ、後半の同居の配偶者が特別障害者である場合の控除額につきましては、先生おっしゃった数字は配偶者特別控除がない場合の数字だと思いますが、これは配偶者特別控除を含めますと、九六・五万円から百四十五万円になっておりますが、基本的に先生指摘のとおりでございます。
  193. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今、基本的に間違いがないという大蔵省のお話を伺いましたが、この控除は収入によって非常な差があるわけでございます。所得が低い層というか非課税世帯は、この恩恵を受けないわけでございます。そして、課税されていても、低所得者層の人たちは課税率が低いわけですから、受ける控除額が少ないわけですが、高額所得者の方は非課税枠の拡大によって受ける非課税額が非常に大きい。これは非常に不公平があるわけです。  ある学者の方の試算によりますと、寝たきり老人を抱えている所得控除の実例でございますが、普通の一般的な平均給与所得者の方ですと十八・二万円、一般給与所得者三百九十五万円の平均の半分の人ですと六・四万円にすぎない。そしてまた、反対に一般給与所得者の四倍の収入のある方ですと五十七・三万円の控除額になる。そういう状況でございますが、これは所得が二分の一の家庭と所得が四倍ある家庭ではこれほど大きな差があるわけでございます。要するに六万四千円と五十七万三千円の差、月額に直しますと毎月五千円の介護手当しかいただけないところと四万八千円の介護手当をもらえるのと同じというふうな差が出てくるわけですけれども、これについて大蔵省の御見解を伺いたいと思います。
  194. 神原寧

    ○神原説明員 お尋ねの同居特別障害控除の減税効果の具体的な金額につきましては、その前提となる内容を詳細には承知しておりませんが、先生おっしゃいますように、所得控除の場合、所得の多い方の方が軽減額が多くなるという御指摘であれば、それはそのとおりでございます。  ただ、人的控除を所得控除方式で行っておりますのは、負担能力に応じた公平な課税を実現するという観点から、所得の大きい方も小さい方も、すべての納税者についてその所得の一部をまず基礎的非課税部分として控除して、その残額を課税所得として、これに累進税率を適用することにより累進的な負担を求めるのが合理的であろう、こう考えているからでございます。基礎的非課税部分は、所得から生活に必要な費用を外したりするものですが、こういうような費用は所得の大きい人も小さい人も差をなく控除していくわけでございますので、そういったことで特に高額所得者が有利になっているというふうには考えておりません。これは所得控除方式の制度から来ることかと思います。  なお、帰結として当然のことにはなりますが、所得税を納めていただく方を対象とする所得課税という観点から考えますと、所得税を納めてない非納税者の方々にまで配慮するということは、制度上無理であるということも御理解いただければと思います。
  195. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今いろいろと税控除の計算をるる申し上げまして、大蔵省の方からも御答弁をいただきましたが、実際に同じ百二十万の非課税枠でございましても、高額所得者の方と高額じゃない方とこれほど大きな差が出ている、そういう現状がございます。また、非課税世帯ですと、消費税が導入されたときに、一回ぽっきりの介護手当が出されたきりで、消費税は毎年毎年行われているにもかかわらず、一回ぽっきりの一時金であって、その後は何の恩恵も受けていない。そういう非常に大きな矛盾があるわけでございます。痴呆性老人だとか寝たきり老人を介護している家庭の御苦労というものは変わらないわけでございまして、非課税世帯だと全然苦労がないかというと、そんなことはございません。むしろそういう家庭の方が苦労が大きいわけでございます。ところが、こういう税控除による介護の手当のやり方というものは、私は、そういった意味では非常な不公平を生むのじゃないか。税控除のやり方でやるというのじゃなくて、それよりもきちっと税金はお払いして、そのかわりに介護手当を全部同じように支給するというような方法をとるべきじゃないか、そのように思うわけでございます。  これは税体制と絡んでくるわけでございますので、非常に難しい問題だとは思いますが、このように大変な矛盾があるということについては厚生大臣の御見解を伺いたいと思います。
  196. 下条進一郎

    下条国務大臣 矛盾と見るかどうか、これは一つの問題があるかと思います。  ただいま大蔵省の方から説明がございましたけれども、やはり負担をしておる方のその中から減税をしていくということであれば、その負担額が大きければ同じ比率でも減税の金額が多くなるということでございますから、これを一概に不公平だと言い切ることはなかなか難しいのじゃないかと思いますけれども、ただ、委員の御指摘は、要は所得の低い方に対しての行き届いた配慮はどうかという点からいえば、この問題はやはり全体的な問題として我々も配慮していかなければならない、このように考えております。
  197. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今、所得が低い方への何らかの配慮というふうに厚生大臣はおっしゃいましたけれども、ぜひ非課税世帯とか所得が少ない方への配慮を何かきちっと介護手当みたいなもので、非課税世帯に対しては、先ほど申し上げました消費税導入のときの一回ぽっきりになっていますけれども、少なくとも非課税世帯に対しては介護手当を考えるということについてぜひ前向きに検討していただきたいと思いますが、重ねて厚生大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  198. 下条進一郎

    下条国務大臣 全体的な問題の中で、今御指摘のような問題も今後検討をさせていただきたいと思っております。
  199. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ぜひよろしくお願いいたします。大変ありがとうございました。
  200. 浜田卓二郎

  201. 児玉健次

    児玉委員 一九八八年度国民所得の対前年度伸び率が六・三%。一方、国民医療費の伸び率は三・八%。国民医療費の伸び率が国民所得の伸び率を下回るという状態が生まれました。今日までそれが続いています。これは政府が進めている医療供給の抑制、医療費抑制策の結果である、こういうふうに見る以外にありません。医療供給が全体的に抑制される中で、国の負担はどうなっているか、老人医療費の分野でこれを見てみたいと思う。  老人保健法が昭和五十八年から始まった。老人医療が有料になって八年間たちました。国の負担が老人医療費に占める割合は、皆さんからいただいた資料によれば、一九八三年度、制度発足のときに四四・九%でした。前回の改正でそれが四〇%を割って、昨年度三四・九%です。ちょうど一〇%、この分野でも少なくなっています。昨年の老人医療費でいえば、一〇%といえば五千九百九十八億一千万円ですから、これは少なくない金額だと言わなければなりません。  そこで、今回の提案で国庫負担はさらに減少していくのではないか。皆さんからいただいた資料で試算してみました。国の負担がふえる分野は、例の介護に着目した老人病院等七百五十億のうち、国が五百億です。それから、原爆や結核や精神病にかかわる医療費の中で、もちろん高齢者ですが、国の負担増が二十億というふうになっています。  一方、負担が減る方は、高齢者の一部負担増に伴う国庫負担の減が二百四十億。それから同様のことで国保の負担が五百六十億減りますが、これは国が半分出していますから、その二分の一で減が二百八十億。同様にして政管健保、今回の措置で四百九十億支出が減りますから、それの一六・四%で八十億。総計、差し引くと八十億円国の負担がこの際この改正によって減少されるというふうに私たちは見ていますが、どうですか。
  202. 岡光序治

    岡光政府委員 まず、先生おっしゃいましたように、今回の改正で公費負担が増するのは国、地方合わせまして七百五十億、それに対しまして国庫は五百億でございますが、おっしゃいますように、拠出金が減るということによって、国民健康保険なり政府管掌健康保険の拠出金部分が減りますので、全体で八十億の負担減になるということは、全体では事実でございますが、あわせて全体で御議論いただくのであれば、老人保健の基盤安定化のための特別保健福祉事業、これは百億円増いたしまして一千億の助成措置を講じておるわけでございますので、こういったものともあわせてお考えをいただく必要があるのじゃないかと思っております。
  203. 児玉健次

    児玉委員 八十億についてはお認めになった。今、岡光さんが言われた最後の点だけれども、これは去年から始まっているものです。しかも、当面の措置とわざわざ銘打っているので、それを差し引き勘定に入れるのは不適切ですね。  そこで、この点は下条大臣に伺いたいのですが、昨年十二月十九日の読売新聞、高齢者の一部負担増が報道された直後です。東京都国分寺市の六十九歳の方がこういう投書を出しています。  厚生省は介護充実を口実に、老人医療費の自己負担金などの値上げを検討し、党社会部会に報告するとのこと。   いったい、消費税は何だったのか。高齢者の多くは、消費税さえ軌道に乗れば、問題の介護費用も老人医療費も福祉対策も、うまく運ばれるものと固く信じたればこそ、弱者負担の声にも、シワ寄せにも我慢しているのだ。 この声は消費税を容認した方からの声でもありますね。大臣、この声に対してあなたはどのようにお答えになりますか。
  204. 下条進一郎

    下条国務大臣 消費税という税の体系からいいますと、これはフラットの税金がかかりますので、逆進性というものは避けられないと思います。ただ、それがそのまま逆進性の姿になるかどうかは、その方が買われる量と所得との比較とかいろいろな問題がありますので、一概に端的には言えないのですけれども、全体的に言えば逆進性ある税金であるということになります。しかし、導入のときに今賛成された方は、恐らく全体の財政需要、それからまた、それぞれの妥当な国民の負担というようなものなどを考慮されまして、これを容認されたのではなかろうか、これは私が個人的に想像するわけでございます。  さて、そこで、そういう背景の方が、今回の問題についての御指摘でございますけれども、これは私たちは、この財政の中で公費負担というものがかなりのウエートを占めておるわけでありますので、その公費負担の中に、消費税は目的税でございませんので、その負担が回り回って公費負担の方に寄与しているということを御理解していただき、また、あわせて具体的な今の医療の問題あるいは介護の制度、その他のきめ細かな対策も御考慮いただいて、ひとつ御理解をしていただきたい、このようにお願いする次第でございます。
  205. 児玉健次

    児玉委員 消費税はお年寄りの幸せのためだ、福祉のためだと耳にたこができるほど宣伝されまして、その後どうかというと、結局この老人保健の一部負担の引き上げ、そして厚生省予算自身が当然増を除けば実質的には年々目減りしている。そういう中で怒りが今蓄積されているので、この方も最後のところで、老人パワーがやがて爆発するだろう、こういうふうに述べていますよ。このことには大臣、しっかり目を向けて、この後の論議に応じていただきたい、こう思います。  そこで、昭和四十八年に老人福祉法が改正されて、老人医療費の自己負担分が公費で負担されることになりました。当時政府は、この年を福祉元年と呼んでみずからたたえました。わずか十年間ではあったけれども、老人医療費が無料であった時期がこの日本において厳然と存在しています。国民はその事実を忘れません。現在多くの国民は、今回提出されている老人保健法の再改悪反対、このことを強く訴えながら、高齢者の負担分の値下げの圧縮ではなく、老人医療費の無料化復活を求めています。  私たちが承知しているだけでも、岩手県沢内村、前回のこの委員会老人保健法をめぐってかなりの議論がありました。沢内村もそのとき議論の対象になった。岩手県沢内村はもちろん今日も六十歳以上の医療費無料制度を守っています。沢内村以外にも七つの町村があります。それから、入院見舞い金制度について言えば、全国で十二市四町、東京の中野区はことしの十月から入院見舞い金制度を実施します。値上げするのでなく、もう一度昭和四十八年の段階に戻してほしい、この声に厚生省は真剣にこたえるべきだと思うのですが、いかがですか。
  206. 岡光序治

    岡光政府委員 老人医療における一部負担につきましては、そういう無料化の時代があったわけでございますが、当時のことを反省してみますと、老人の受療を容易にしたという反面がございますが、老人の健康への自覚を弱めていった、それから行き過ぎた受診を招いているというふうな弊害指摘をされたわけでございます。そういう観点に立ちまして、健康についての自己責任の観点に立ってお年寄りの方々に健康に対する自覚を高めていただきたい。そして、適切な受診をお願いしたいというのが一面でございます。  それから、老人医療につきましては、国民がみんなで負担をし合っているわけでございますので、それで制度の長期的安定を図るという意味では適切な負担の配分をしたいという趣旨で設けられたものでございます。  それから、地方単独事業につきまして一部負担を肩がわりしているという措置がございますが、これは適当でないというふうに考えておりまして、従来から地方公共団体に対しましては、国の施策との整合性を配慮して対応するようにという指導をしてきているところでございます。
  207. 児玉健次

    児玉委員 今のお答えは全く説得力もないし、これまでの議論の中で乱診乱療だとか病院をサロンと心得ているとか、そういったものは国民的に完全に克服されていますね。そして、最後にあなたが言われた厚生省がやっている指導というのは、国民の願いに背を向ける極めて不当なものですね。そういう指導は撤回すべきですよ。私は率直に言いますけれども、この後、老人入院についての見舞い金制度、そして無料制度は、ふえることはあっても決して減ることはありません。  今回の法案について二、三聞きたいと思います。  入院の負担が一日四百円から八百円に、現在年金受給者、その多くの部分が月額三万円前後という劣悪な状況です。そして、けさ相当の時間をかけて議論になりました岡崎委員の主に提起された問題ですが、東京のある病院、あえてある病院と申しますが、そこでは、ことしの、つい最近の出版物の中で明らかにされていますが、おむつ代が一日二千三百円、お世話料が一日七百円、これだけで一カ月九万円です。ちょっと古いが、中野区が八五年に行った調査では、高齢者に限定してですが、一カ月十万円以上の保険外負担を徴収している病院が中野区で五〇・四%、五万円以上が七〇%以上です。そういう状況の中で入院負担を二倍にする、余りに酷だと思います。皆さん方が出されている資料は非常に人為的に操作されていて、何年か前と、そして、あなたたちの資料の平成元年の資料はある金額減っていますね。ここのところは、項目のスライドによってそのような数字を出していると私たちは見ています。この点はひとつ厳しく指摘しておきたい。  次に、外来の問題ですが、月千円、それに加えてスライド制を導入する。一つ聞きたいのですが、高齢者の受診は、一カ月を一つの期間とした場合に、診療科目平均何科受けていますか。
  208. 岡光序治

    岡光政府委員 昭和六十一年四月の調査でございますが、お年寄りが、一カ月に通っている医療機関の数は平均をして一・四八軒ということになっております。
  209. 児玉健次

    児玉委員 その一カ月後、前回の老健法の問題のときに、この委員会で公聴会をやっています。日本医師会の吉田さんが御意見をお述べになっているけれども、尼崎市で外来六千五百七名、入院五百八十一名について調査をなさった。会議録に載っていますから後でごらんください。医療機関という言葉を使っていらっしゃるから、それが診療科目なのか異なる病院なのかちょっと定かではありませんが、吉田さんのお話では、一医療機関のみに通っている方が二八・一%、二つの医療機関にまたがっている方が四二・九%、三つの医療機関にまたがっている方が一八・七%です。試みに加重平均を出してみたら明らかに二・一を超しています。だから八百円が千円になるというのは、一つの診療科目を受ける場合のみであって、決してそういう一・四八なんという数字ではないと私たちは思っています。  それでこの際、ひとつ私は大臣に申したいのですが、老人医療全体についての国の負担が、さっき言ったように四四・九から三四・九に落ちている。公費負担を五割にしたらどうか。そしてとりあえず今回の値上げ分については撤回すべきではないか。いかがですか。
  210. 岡光序治

    岡光政府委員 先生が今お使いになりました国庫負担の割合三六%というこの計算でまいりますと、老人医療費に対する公費負担割合は既に四六%から七%になっているわけでございまして、それは要するにすべてにかかわっておる公費負担分を全部足し合わせたらそのような数字に既になっているわけでございます。
  211. 児玉健次

    児玉委員 あなたは質問に答えなさい。五割に引き上げるのかどうか、それから値上げ分を撤回するのかどうか、大臣に聞いているのに、別の答えをするとは何ですか。
  212. 岡光序治

    岡光政府委員 公費負担は、今後の老人医療費の展開を見てまいりますと、介護が非常に重要であるということで、この介護部分を重視をするということで拡大をお願いしたいということでございますし、一部負担につきましては、現在の老人医療費は本人の一部負担と、それから現役世代の拠出金と、それから公費負担との三つで適切に負担を分かち合っているわけでございますので、そのような適切な負担の分かち合いという観点から一部負担の改定をお願いしているところでございます。
  213. 児玉健次

    児玉委員 その点については続けてまた議論しましょう。  今度の法案の中で提起されている訪問看護事業についてですが、利用料のほかに別途車馬賃という、これは診療報酬の中で医師の往診料、それとは別途車馬賃として申し受ける。医師の往診のときの車馬賃というのは平均どのくらいの金額でしょうか。
  214. 岡光序治

    岡光政府委員 往診における車馬賃の実態は把握しておりません。ただし、老人訪問事業につきましては、モデル事業をやっておりますので、そういったモデル事業の交通費の実績は、百十六人という対象がありますが、そのうち二百円未満というのが九十三人というモデル事業での実績を私どもとりあえず持っております。
  215. 児玉健次

    児玉委員 この訪問看護事業なるものが発足したとすれば、この車馬賃はそれぞれの事業の開設者が定めるということになりますか。
  216. 岡光序治

    岡光政府委員 車馬賃につきましては実費ということでございますので、そのような発想からしますと、実際にかかった経費を御負担いただくというのが論理的な結論になると思いますが、今度創設をしたいと考えております老人訪問看護の利用料そのものをどのように持っていくのかというのは関係審議会でいろいろ御議論いただきたいと思っておりまして、そういった中でこの車馬賃の問題もあわせて議論していただくつもりでおります。
  217. 児玉健次

    児玉委員 福祉事業として行われる訪問看護、きょうの御質疑の中でも在宅介護センターの問題もありましたが、福祉事業の場合は所得に応じて費用を徴収するというのが一つの原則になっています。この訪問看護事業における利用料等に減免制度があるのかないのか、あるのかないのかだけ聞かしてください。
  218. 岡光序治

    岡光政府委員 現在行われております訪問看護は、医療の一環でございますので、一部負担の格好で負担をしていただいておるものでございます。そういう意味では低所得者の軽減という措置はございません。
  219. 児玉健次

    児玉委員 では、考えていないということを確認しておきましょう。  さて、医療法においては、第七条で、営利を目的として病院、診療所または助産所を開設しようとしている者に対しては、それを認めないことができるという項目が明記されています。そして、現行の老人保健法においても、老人保健施設の開設者で営利を目的として老人保健施設を開設しようとする者は、許可を与えないことができる、このようになっております。訪問看護事業者についてこの規定がないのはなぜですか。
  220. 岡光序治

    岡光政府委員 訪問看護サービスを行うという意味で、そのサービスの主体としてはいろいろなタイプのものがあってよろしいのではないか、そのように考えて、今おっしゃいましたような民間の営利法人が入ってくることの禁止をしていないわけでございますが、私どもといたしましては、この制度老人医療の担い手としてふさわしいものであるという必要性がありますので、そういう意味でこの事業を行う人たちの運営基準であるとか人員基準につきましては、老人医療の担い手にふさわしいものであるべきだということで対処を考えていきたいというふうに考えております。
  221. 児玉健次

    児玉委員 これは後ほど大臣に見ていただきたいと思うのだけれども、東京で、「いつも安心、笑顔で療養「ホームケアの会」ご案内」、それからこちらは「在宅介護出張サービス会費並びに内規」、こっちは「ヘルシーライフの会料金表」、入会金三万円、預かり金七万円、会費として、正会員、看護婦が月二回訪問し実施し助言指導を行う、一万円などとなっています。こういうシルバー産業は参入を許すべきでない。あくまで、今日の医療法やそして老健法もその点では堅持している、営利を目的とした諸団体については参入を認めないということを厳しく貫いていただきたい、この点は強く求めておきます。  最後に、もう一つ御質問します。  附則第二条において、「政府は、老人の心身の特性に応じた適切な医療が行われるよう、」云々と述べて、「評価」の問題だとか「医療に要する費用の額の包括的な算定等当該費用の額の算定の在り方について検討」する、そして必要な「措置を講ずる」といったふうなことが書かれております。  現在、特掲老人診療報酬自体が老人に対する差別医療の根源になっています。この点は部長といつだったかここで大いに議論したことがありました。これに今度新しく加えられることになる。もしかしてこれが、「医療に要する費用の額の包括的な算定」と称しつつ、症状をあらかじめ決めておいて、決められた症状の中で、患者に対して医師がどのような治療をしても、あらかじめ定められた一定の金額しか払われない方式、大臣から午前中アメリカの医療についてお話がありましたが、米国のメディケアにおける入院医療費支払い、そのことで一九八三年に導入された方式、俗にDRGと言っていますね。診断群別定額払い方式、例えばこれに類するようなものの導入を厚生省考えているのではないか。そして、評価方法の研究についていえば、これまたアメリカでDRGとあわせて制度化されているPRO、同僚審査機関、このようなものを考えているのではないか。お答えをいただきます。
  222. 岡光序治

    岡光政府委員 結論的に申し上げますと、アメリカの制度をそのままここへ持ってこようなんてことを考えているわけではございません。  老人医療老人の心身の特性にふさわしいものでないといけない。そして、そのことが提供されるというためには、経済保障の面での診療報酬のあり方をどうするか。それから実際に行われている医療がそのように老人の心身の特性にふさわしいものかどうかという評価がどうしても必要でございます。そういう意味からこの検討規定をお願いしたいとしておりますので、何か特別の目標を想定してそこに向かおうという趣旨ではございませんので、そこはもう少し率直に、老人医療のあり方そのものを検討したいのだということで御理解をいただきたいと思います。
  223. 児玉健次

    児玉委員 私も、DRGやPROをそのまま持ってこようとしているかと言っているのではないですよ。何々のようなものを、そしてその一つの、私がちょっと考えているのは、症状をあらかじめ決めて医師の診療行為について枠をはめて、そして、その定額しか払わないということを考えているのかいないのか。お答えいただきます。
  224. 浜田卓二郎

    浜田委員長 児玉君に申し上げます。  所定の時間を経過していますから、早急に質疑を終了してください。
  225. 岡光序治

    岡光政府委員 そのような特定の枠組みのもとで、この検討を開始するということではございません。
  226. 児玉健次

    児玉委員 じゃ、引き続いて次回やりましょう。
  227. 浜田卓二郎

    浜田委員長 柳田稔君。
  228. 柳田稔

    柳田委員 まず、この老人医療費を支えております患者負担、被用者保険による拠出金、公費負担、この三者のバランスについてお伺いをしたいと思います。  御存じのとおりに高齢化が急ピッチで進んでおりまして、老人医療費も相当増大をいたしております。このまま二十一世紀に入ってしまって本当に大丈夫なのかなというぐらいの心配もしておるわけでありますが、これは政府も同じ気持ちであろうというふうに思います。先ほど申しましたこの三者、私はこのバランスをとって老人医療費を賄うべきだという立場に立っておるわけでありますけれども、その中の特に被用者保険サイド、これに大分大きく偏っているのではないかなという気がいたしております。  そこで、まずお尋ねしたいのは、今回この法の改正を提出いたしましたが、そのときに、この際に厚生省は、この三者のバランスをどのように考えたのか、御説明をお願いします。
  229. 岡光序治

    岡光政府委員 お年寄りの一部負担、それから現役世代の拠出金、それから公費負担という三つの要素でこの老人医療費の費用分担をしているわけでありまして、そういう意味ではその三者間の適切な負担をお願いしたいという発想でございます。  そういう意味で、お年寄りにも無理のない範囲の負担をお願いしたいということと、それから公費負担につきましても、今後問題になります介護的な要素部分に充当したいということを考えておりますが、今御指摘がありました現役世代の問題で、特にいわゆる按分率一〇〇%になっておりまして、どの保険集団においても同じ程度のお年寄りがいると仮定して、それを支え合う格好にしておるわけでありますが、現実には被用者保険グループの方がお年寄りの数が少ないわけで、その分多くかぶさっているわけでございます。それについては負担の軽減を別途図る必要がある、そういう意味で特別保健福祉事業というものを講じまして、これをかつ百億増いたしまして一千億の別途の措置をしておるというような仕組みをいたしておりまして、関係の皆さん方が無理のない範囲で、それぞれ納得した上でこの老人医療費を支えるんだ、こういう発想で今回の改正をお願いしたいと考えておるところでございます。
  230. 柳田稔

    柳田委員 それでは、今回の公費負担、一部五割にふえております。それで三一・二%になるという本会議での答弁でありました。これが今最適、一番適切なバランスだとお考えだということでしょうか。
  231. 岡光序治

    岡光政府委員 いわゆる老人医療制度は各医療保険制度の上に立って共同事業的に行っているものでございますから、性格的には社会保険の性格だと思っております。社会保険にどれだけどのような発想で公費を投入するのかというのは非常に議論のあるところでございます。これは、昭和五十八年、この制度ができましたときにいろいろ御議論の結果、お年寄りは非常に病気が慢性化をしておるではないか、それから所得も若い人と比べれば低い人たちも多いではないか、いろいろな要素を考えまして、現在の公費三割という制度を導入したわけでございまして、そういったものは基本に置かなければならないと考えておりますが、これからの老人医療の展開を考えましたら、どうしてもいわゆる後期高齢人口がふえて、そのことによりまして介護を必要とするような年齢グループが多くなるわけでございまして、その部分には公費の面からの応援をしなければいけない、こういう発想で、公費負担につきましては、そういう介護の部分に重点を置いて持っていこうということでございます。この介護の部分につきましては、将来もっとウエートが高くなってまいりますので、結果としては、現在の公費負担割合が次第次第にふえていくというぐあいに考えているわけでございますが、構造としては、冒頭申し上げましたように、この老人保健制度ができたときの考え方を基本的には踏襲をしているつもりでございます。
  232. 柳田稔

    柳田委員 今の御答弁でありますと、介護の部分については、これからも相当ふえるだろうから公費負担の率も上がるというお答えだったかと思うのですが、ということになれば、今のバランスが一番適切であり、今後もこのバランスを維持していくような状況がベストだというふうに私は理解してよろしいのでしょうか。
  233. 岡光序治

    岡光政府委員 基本的にはそうではないかと思っておりますが、これからの喫緊の課題にもあわせこたえる、そういう側面も必要だと思っております。
  234. 柳田稔

    柳田委員 被用者保険の拠出をしております健保組合、昨年までですか、大分財政状況はよかったということもあったという理由で、大分健保の財政はいいんだなという御判断があったというふうに聞いておるわけなんですけれども、私は、これは一過性のものであり、近い将来すべての健保組合が赤字に転じてしまうのではないかなと思っております。現に今千八百十八ある健保組合の中で、三分の一以上の六百五十四の組合が既に赤字になっている。その主な要因は老人保健への拠出金にあるということであります。この拠出金はすべて働く人たちが納めている。今回、先ほど申しましたように、介護の部分に公費負担を三割から五割へ引き上げる措置を講じますということなんですが、将来、この老人医療も含めて健康を維持していくということを考えていくと、健保の財政の安定に相当力を入れなければならないというふうに考えるわけであります。そうすると、介護部分だけではなくて、すべてにおいて公費負担を五割に引き上げるべきではないか。これから医療費はどんどんふえていく。その中でも特に老人医療費はふえていく。昭和六十年から平成一年の五年間でGNP、国民所得は二二・六%伸びた。しかし、老人医療費は三六・六%伸びた。これもこれからどんどん続いていく。そのほとんどを健保組合にお任せしますということになると、これは働く人たちも非常に厳しいことになってくるのではないかなというのが私の感じなんですが、公費負担を五割に引き上げる、フィフティー・フィフティーにするということについてはいかがでございましょうか。
  235. 岡光序治

    岡光政府委員 公費負担も基本的には税財源でございまして、税財源の相当部分は現役世代の負担に帰するわけでございます。そういう意味では、公費負担につきまして、その意義なり目的を十分吟味するという必要があると考えられますので、先生おっしゃいましたように、一律に公費負担割合を引き上げるというのはどうかなというふうに考えておりまして、私どもは改正法でお示しをいたしましたように、今後の重要課題である介護というものに着目をして公費負担を引き上げたらどうだろうかと考えておるわけでございます。しかし、一方では拠出金負担が健康保険組合を中心とする被用者保険に対して相当な圧迫になっておるのは事実でございますので、その負担軽減をあわせて考える必要がある。そのためには、特別保健福祉事業で、先ほども申し上げましたが、平成三年度一千億の負担緩和措置を講ずるという合わせわざで考えていくべきではないかというふうに考えております。
  236. 柳田稔

    柳田委員 合わせわざというのは将来ずっと続くわけですか。
  237. 岡光序治

    岡光政府委員 それは、そもそもこの拠出金の制度をどうするのかという基本の問題に立ち返るときにどうなるのかということだろうと思いますが、当分の間はこの制度は続いていくものというふうに承知をしております。
  238. 柳田稔

    柳田委員 毎年一兆円もふえ続けている医療費ですけれども、じゃ、二十年後になったらば二十兆、まあ、その何割かになるのでしょうけれども、そのときも続けていくというおつもりなんですか。
  239. 岡光序治

    岡光政府委員 どうもそういう先の将来まで約束をするのは、私ども何ともはっきり申し上げられませんが、心は、このような形でみんなが老人医療費を支え合っているわけでございますから、そこでの全体を通じた負担の公平というものは追求しなきやいけないというふうに考えております。
  240. 柳田稔

    柳田委員 先ほど公費負担というのは税負担だというお話がありましたけれども、先ほど来各党から指摘されているかと思うのですが、消費税が導入されたときにおっしゃったことは先ほど来かあるようで、その事実だと、消費税を導入するに当たっては、高齢化社会への対応、高齢化社会が来るから、厳しい状況が来るから消費税を導入させてくれとおっしゃいました。今消費税が施行されているわけでありますけれども、果たしてこの高齢者対策に財源が積極的におっしゃったぐらい充てられているのかと考えますと、非常に頭をかしげざるを得ません。筋が通らない話だと私は認識いたしております。このことは厚生省に言うというのは違うかもしれませんけれども、中心の大蔵省に対して、お約束は守ってくださいと強い姿勢で厚生省の方から言ってほしいと思っております。私も、今回の法改正についても含めてでありますが、これからのことを考えますと、公費負担をふやしていく道以外にはないのではないか、それが一番言いたいことであります。  次に、一部負担ですけれども、八百円を千円、そして入院は四百円を八百円ということですけれども、この積算根拠並びに値上げをした場合の老人の受診に与える影響についてどうお考えなのか、お願いします。
  241. 岡光序治

    岡光政府委員 積算根拠でございますが、若い人と老人とのバランスをとるという発想で、定額でございますけれども、全体の医療費に占める定額一部負担の割合を出しまして、それが約三%強でございますが、それを前提にして、現役世代、被保険者本人は一〇%の一部負担になっておりますから、その半分程度をという、そのバランス論が一つでございます。それから関係老人保健施設であるとか特別養護老人ホームとかそういう施設における負担のバランス、それから在宅における負担のバランス、こういったものを考えて、適切な無理のない範囲の負担をお願いするということを考えているわけでございます。  いずれにしても、定額制ということを維持することにしているわけでございますが、この見直しによりまして必要な受診が抑制されるということはないであろうというふうに考えております。これは、お年寄りの消費生活の実態、それから貯蓄状況、そういったお年寄りの生活実態で得られておる私ども持っておりますデータからしましても、必要な受診は抑制されることがないのではないかというふうに理解しているところでございます。
  242. 柳田稔

    柳田委員 余り影響はされないということであますが、調査を見ておりますと、老人の中、また働いている人の中でも、自分の老後に非常に不安を持っているという人は多うございます。その不安をなくすためには、政府が場当たり的な改正をするのではなくて、もう既に二〇二〇年には二・五人で一人の老人を見るというのは一応はっりした数字でもありますので、そのときはこういう医療体制保健体制をします、それに向かってこのように進みますという指針を示していただければ、我々もある程度納得をすると思うのですけれども、そういう将来のビジョンというのがないもので、我々としては将来に不安を持たざるを得ない。また、こういうふうな改正についても、ただ単にその場しのぎで取られるだけだったならば納得がいかないという気がしているわけであります。  もう大分時間もなくなりまして、質問をはしょりますけれども、入りの部と出の部があるかと思うのですけれども、医療費の適正化についてお伺いしたいと思います。とりわけ薬価差について、一兆数千億円という数字も出ておりまして、批判が多く出ているわけでありますけれども、この医療費の適正化、これからの是正策、また今後どういうふうに適正化していくのか、具体的な取り組みを教えていただきたいと思います。
  243. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 これからの高齢化社会医療費の増大が避けられないときに、まさしく御指摘のように、医療費の適正化をどう進めるか、非常に重要な課題だと承知をいたしておるわけでございます。  私どもは、先ほども答弁いたしましたけれども、国民所得の伸び程度に医療費をどう適正化すかということで苦心をいたしておるわけでございますけれども、国民の総参加によります健康づくり対策あるいは保険者の努力によりますレセプト点検等の実施、あるいは私どもの課題でございますけれども、診療報酬をどう合理化、適正なものにするか、検査をどうするか、それから薬をどうするかということで、御指摘のように薬価差という問題があるわけでございます。現在中医協で薬価の算定方式をこれからどうするかという検討をいたしておりますけれども、私ども従来から薬価基準の適正化ということで毎年毎年市場価格を調査し、その上で引き下げ改定を行ってきているところでございます。そのほか、医療供給システムをどうするか、総合的な、厚生省挙げての医療費適正化対策によりまして、国民に医療負担が過大にならないように努力してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  244. 柳田稔

    柳田委員 お年寄りになりますと病気を持っていない人はいないと思うわけであります。病気があるから病院に行くんだろうというふうに思うのですけれども、病院を憩いの場所として利用されている人も数多いんではないかと思うわけなんです。家庭があって病院がある。その憩いの場所として病院に行く人たちが楽しめる場所をどこかにつくってあげれば、中間施設と言った方がいいのかわかりませんけれども、医療費も大分抑えられるでしょうし、三時間待って三分診療という言葉も少なくなるかと思うのです。要するに医療という面ともう一つは健康づくりプラスお年寄りの憩いの場所というふうなものを組み合わせていったらば、支出の方も大分変わってくるし、お年寄りの生活も変わってくるんではないかと思うのですが、この点については何かお考えがあれば教えていただきたいと思うのです。
  245. 岡光序治

    岡光政府委員 先生の御指摘は非常にもっともでございまして、やはり生きがいを感ずる日常生活が必要でございますし、そのためには仲間づくりも必要でございますし、そういう意味では老人福祉センターを初めとする地域の拠点づくりをしていかなければいけない。そしてまた、その拠点においていろいろとリードするリーダーであるとか、あるいはいろいろなところと結びつけるコーディネーターもセットをしまして、そのような意味老人の生活を豊かにしていかなければならない、そのような政策もあわせて講じていく、そういうことが必要であると考えております。
  246. 柳田稔

    柳田委員 大臣に質問させていただきます。  時間が短かったわけで、いろいろな質問ができなかったわけでありますけれども、高齢化社会が来る、高齢者になったらだれでも安心して医療を受ける権利もあります、そういう体制をつくっていかなければならない、これが国の重要な責務であろうと思います。大変な高齢化社会が来るということで、問題もこれからいろいろと出てくると思いますし、この委員会でもいろいろと疑問点が指摘されたかと思うわけですけれども、私もこれを見まして、まだまだ問題があるな、改善していかなければならないなという気がするわけであります。今後のいろいろな制度施策に向けて、大臣の御決意を最後に承りまして、質問を終わらさしていただきます。
  247. 下条進一郎

    下条国務大臣 先ほど来お話がありましたように、非常に早いテンポで高齢化の波が進んでおるわけでございます。しかも二〇二〇年になれば計算上は六十五歳以上の方がもう四分の一になるということで、その意味で非常に社会的な人口構成というものが一つの大きな問題点になってくる。一方、出生率が非常に低いということで、これがどこまで続くか。これに対しては当然また問題点として別な角度の対策が必要だと思いますが、そういう中で長生きをされるということは非常にとうといことでございますし、人間がだれしもこいねがうわけでありますが、その長生きを健康で長生きをされるような条件を整えるということがやはり大きな政策の課題であろう、このように考えるわけであります。そんな観点から老人保健法の制度の安定的な運用ができるようにして、お年寄りの方々に十分な医療なり、今お話がございましたように、医療から老健施設に、そしてまた特養の制度、これらの充実を図りながら、老後を安心して過ごしていただけるような制度医療面から考えなければなりませんし、また同時に、年金制度充実も図らなければならない、こういうことであると思います。  ただ問題は、どこがどのような形でその実際の費用の負担をするかという問題でございまして、だれしも負担が少ない方が望ましいわけでございますけれども、だれかが負担をしなければならないということもまた事実でございます。その意味において、公費負担が年々増加するような傾向をたどったならば、これはそのまま即国民の負担増にかかわるわけでございますので、長期的な視野に立ちましては、第二行革審で答えておりますように、二〇二〇年のときには租税並びに社会保障負担は合計いたしまして五〇%以下に抑えようと、一つの目途がございます。その目途の中でまた二十一世紀の当初は、四〇%の中ごろといえば四四、五%、五、六%、そのような負担にとどめることによって国民が勤労の意欲も維持できるわけでありますから、そういう中でどのようなそれぞれの負担をしていくかという問題もまたあるわけでございます。  その意味において公費負担の問題については、今のあたりで抑えていただきたいというのが私たちのお願いでございますし、一方、若い方々がこのまま数が減り、そしてふえなくて、そしてまた、その負担がふえるということでは、これまた大きな問題でございますので、今回の改正では各被保険者の方々の負担を軽減するようにという措置も講じ、一方、そういう方々のバランスを考えながら、一方の老人方々の自己負担の改定もあわせてやっていただきたい、こういうことで総合的な機構の安定化を図りながら進めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。  したがいまして、私たちの考えは既に御承知のように、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」、これを長期的な一つの目途といたしまして、その線に沿いながら、ただいまのような老人保健制度の安定的運営が図られますように、そして、しかも老人方々に対するいろいろな諸施策が遺憾なきを期してまいりたい、このように努力しているわけでございまして、どうぞよろしく今回の改正をお願いする次第でございます。
  248. 柳田稔

    柳田委員 終わります。     ─────────────
  249. 浜田卓二郎

    浜田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 浜田卓二郎

    浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  251. 浜田卓二郎

    浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る二十三日火曜日正午理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十一分散会