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東中委員 定数抜本是正というのは、今日においては
国会と
政府に課せられた非常に重要な
義務だと思っております。昨年十二月に
公表されました一九九〇年
国勢調査速報によれば、
衆議院の
議員定数格差は、
最大値は一対三・三八にまで拡大しています。
東京八区対
千葉四区でありますが、これを筆頭にして、
全国三十五
選挙区で
格差は二倍を超えております。これまで
政府や
最高裁が
違憲か合憲かを判断するめどとしてきた
格差三倍を超える
選挙区も、既に八
選挙区に上っています。このような
状態が、
憲法の保障する
選挙権の平等、一票の
価値の平等、法のもとの平等の
原則を著しく踏みにじるものであることは余りにも明白であります。
定数格差の
抜本是正は
憲法原則にかかわる重要問題であり、一刻の猶予も許されないというふうに考えております。
定数是正は
公職選挙法の本法、いわゆる別表第一ですが、「この
法律施行の日から五年
ごとに、直近に行われた
国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」とはっきり明記されておるわけでありますから、
国会と
政府に課せられた
法律上の
義務だというふうに考えるわけであります。
八六年、
昭和六十一年のあの
国会決議で、先ほど来言われておりますように、あのとき行われました八増・七減は
暫定措置であるということを
前提にして、そして、「
昭和六十年
国勢調査の
確定人口の
公表をまつて、速やかにその
抜本改正の
検討を行うものとする。」ということを決めました。そして、
暫定措置で済ますわけにはいかない、
抜本改正ということになったわけでありますが、それが行われないでそのまま今日に至っておるということであります。
この問題について、
国会で、当
委員会でも何回か
論議をしてきておるわけでありますが、八七年九月十六日の、当時
葉梨自治大臣のときの
衆議院公選特でもこの問題についての
議論がありました。それから続いて八八年四月十五日に
公選特で、
梶山自治大臣のもとで、いろいろ
定数是正についての
論議がやられております。ここでは私も何回か御質疑申し上げましたが、
梶山自治大臣は、「
衆議院の
定数是正、これはまさに焦眉の急、一番重要な
課題でもございます。そして、
衆議院の本
会議の
決議、六十一年五月二十一日に
決議をされたその
中身に忠実でありたい、これがまず第一の
原則であろうかと思います。」というふうに言われまして、この
中身については、六十年
国調後速やかに
抜本改正を行う問題、それから二人区・六人区の
解消を間違いなくどうやってやるのかという問題、総
定数の
見直し、
選挙区の
見直し、さらにこれに入っている
過疎・
過密等地域の
実情の
配慮、こういうことについて
国会としての意思をきっちり明確に決めなければいかぬということを非常に強く強調されておるわけであります。
そして、そのすぐ後の同年五月十八日に、
確定値が発表されてから既に一年半たっておるわけですが、
定数是正に関する小
委員会が開かれました。
ここで、何回も申し上げて非常に恐縮ですが、当時の
鹿野自民党総務局長が小
委員で、そして、
自民党としては案ができていないので、だから今お示しするわけにはまいりませんということで、鋭意
検討を進めていきたい、こういうことを言われたままで経緯をしているわけであります。こういう点でいいますと、それからさっぱり進まないわけであります。これが一九八八年の五月でありますから、その年の七月からリクルート問題が起こりまして、消費税問題がありまして、
国会はほとんど審議をしないままで、
公選特としては審議をしないままで八九年になり、
自民党の
政治改革大綱が定められ、もう明くる年になると八次審に諮問がされるということで、すっ飛んでしまった格好になっておるわけです。これは
国会決議を、その
中身に忠実にやらなきゃならぬ、しかも緊急の
課題だというふうに
梶山自治大臣が
国会で
発言をされていることからいえば、非常に違ったことを言ったということをまず申し上げておきたいわけであります。
ですから、その後出てきた問題としまして、
自民党の
政治改革基本要綱では、小
選挙区制導入をやること以外に
定数是正は非常に難しいというような趣旨の見解が示されております。例えば、
定数是正については
基本要綱によりますと、「従来の
議員の増減による
格差縮小では、いま
都道府県間、
選挙区間で生じている多くの
逆転現象を解決することはきわめて困難であり、もはやこの
方法は限界に達している。」その
方法が限界に達しているなら、ほかの
方法を考えればいいのですが、「
抜本改正を実行するならば、」「相当数の
選挙区に、大きな変動をきたさざるを得ない。」だから
定数是正は置いて、結局
選挙制度そのものを変える、その上でというところへ論理がいくわけですが、これはまさに
選挙制度と中
選挙区制における
定数是正と、全く違った性格のものにすりかえておるというふうに私は言わざるを得ないと思っています。そういう点で、
定数是正をまじめにちゃんと考えていかなきゃいかぬではないか。
選挙制度についていえば、小
選挙区制の導入というのは、これは私
たちは
選挙制度としては最悪のものだというふうに思うておりますので、これは別の機会に譲るといたしまして、
定数是正を
選挙制度の問題にすりかえることには反対であるということを申し述べておきたいと思います。
それで、
定数の
抜本是正のための具体的提案でありますが、
国会決議にもございますので、総
定数の問題について最初に申し上げておきたいと思います。
私
たちは
現行の五百十二を特に変える必要はないのではないかと考えております。五百とかあるいは五百一とかあるいは四百七十一とか、いろいろ
数字が出ておるようでありますけれども、それはただ本法にのっとる、そういっただけの根拠で、要するに問題は、
議員一議席
当たりの
人口割合がどうなっておるかということが
一つの中心だと思うわけであります。私の調べました
範囲では、世界年鑑八九年版より計算しますと、一九八七年にヨーロッパにおける主要国の
議員数は、例えば西ドイツ、西ベルリンを入れますと、五百十八議席であります。イタリアは六百三十議席です、これは下院ですが。イギリスは六百五十議席、フランスは五百七十七議席。こういう点を見ましても、
人口は別にして、総
定数は現在の日本の五百十二よりはずっと多いわけですね。だから、一議席
当たりの、
議員一人
当たりの
人口で見ますと、日本は八七年の計算で二十三万六千人になっております。西ドイツは十二万三千人です。イタリアは九万一千人、イギリスは八万八千人、フランスは九万六千人、けたが違うぐらいにヨーロッパでは一
議員当たりの
人口は少ないわけです。我が国は、
昭和二十二年、現在の中
選挙区制発足当時は
議員一人
当たり人口は十五万七千人でありました。現在は、六十年
国調で計算しますと、二十六万二千人を超しています。だから
議員一人
当たりの
人口は、日本は非常に多いわけですね。特別に多い。アメリカはなるほど大統領制で
制度も違いますし、連邦制ですから違いますけれども、それ以外は日本が特別に一
議員当たりの
人口数は多いわけですから、これを下げる必要はないのじゃないか。行政
改革なんというようなことで
議員定数を下げるというのは、これはもう行政
改革とおよそ似て非なるものでありますから。問題は、
人口が一億二千万を超して、そして
価値感が非常に多様化しているという
状態において、
国民の意思がどれだけ公平に反映されるかという点から言うならば
定数は減らす必要はない、ふやせということをあえて言うつもりはありませんけれども、そういうふうに考えております。
それから、
定数の
抜本是正のための具体的な提案として私
たちが申し上げたいのは、
基本原則を決めることが必要なんじゃないかというふうに思っております。それで、三つの点を申し上げたいわけであります。
定数是正の具体的作業の際にのっとるべき
原則として、第一に、
定数是正に当たっては各
選挙区間の
定数格差を少なくとも一対二
未満に抑えること、第二番目は、一人区、奄美ですね、それから二人区・六人区を
解消して中
選挙区制、
選挙区
定数三ないし五人を維持すること、この
二つの
原則を確認した上で、先ほど申し上げたような
定数是正は「例とする。」というふうになっている部分を
公選法そのものにはっきりと、少なくとも五年
ごとに行われる
国勢調査に基づく
定数是正の実施を
国会と
政府に厳格に
義務づける
法律規定を設けること、この三つの
原則を
公選法本文に明記することを提案したいわけであります。
そういう
原則の上に立って、現在の具体的な
定数是正の提案といたしましては、
是正の
方法ですが、まず一九九〇年
国勢調査速報をもとに総
定数五百十二を各
都道府県の
人口に比例するように
配分をします。そうしますと、各
都道府県に割り振った
議員一人
当たりの
人口の
格差、各
都道府県間の
定数格差は現在は一対二・五九になっております、鳥取県対
神奈川県は一対二・五九です、それを
人口別で比例
配分しますと一対一・三五、結局鳥取対徳島が一対一・三五になります。こういうふうに縮小になるのです。その上で、各
都道府県に
配分した
議員数に基づいて、
現行の
選挙区割りをできるだけ尊重しながら、合区、分区、それから
境界線変更による再編などの
方法で
選挙区を再構成するということで、そしてすべての
選挙区を
定数三ないし五人区にして例外は一切つくらないということで今作業を続けております。
いわゆる線引きの問題ですが、これは今具体的に一応の案は持っていますけれども、まだ発表するところまで行っておりませんけれども、そういう
方法で、あと線引きをどうするかということを詰めるべきではないかというふうに思っています。相当数の大きな変化になることはもちろんでありますけれども、この
定数是正でうんと
是正部分がふえるんだという
自民党の御主張の中には、
定数を四百七十一に減らすから、四十一議席がなくなるんだから、相当大きく変化して非常に困難になるんだというような主張を
福島定数是正小
委員長も言われておったことがありますけれども、そういう
定数是正を困難にするとみずから主張せざるを得ぬような総
定数の削減策の主張はやめればいいのじゃないかというふうに考えておる次第であります。
以上です。