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1991-05-16 第120回国会 衆議院 決算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年五月十六日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 渡辺 省一君    理事 魚住 汎英君 理事 北川 石松君    理事 藤井 裕久君 理事 森  英介君    理事 後藤  茂君 理事 時崎 雄司君    理事 北側 一雄君       伊藤宗一郎君    長谷川 峻君       渡辺 栄一君    阿部未喜男君       上田 卓三君    長谷百合子君       東  祥三君    寺前  巖君  出席国務大臣         文 部 大 臣 井上  裕君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君  委員外出席者         警察庁長官官房         会計課長    田中 節夫君         警察庁刑事局長 國松 孝次君         科学技術庁科学         技術振興局研究         振興課長    金子  詔君         科学技術庁研究         開発局長    井田 勝久君         法務省刑事局刑         事課長     但木 敬一君         大蔵大臣官房審         議官      小川  是君         大蔵省主計局次         長       藤井  威君         大蔵省主計局司         計課長     設楽 岩久君         大蔵省銀行局保         険部長     竹内 克伸君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         文部大臣官房会         計課長     遠山 耕平君         文部省生涯学習         局長      福田 昭昌君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         文部省高等教育         局長      前畑 安宏君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君         郵政大臣官房長 木下 昌浩君         郵政大臣官房人         事部長     渡邉 民部君         郵政大臣官房経         理部長     吉高 廣邦君         郵政省貯金局長 松野 春樹君         郵政省簡易保険         局長      西井  烈君         郵政省通信政策         局長      白井  太君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         郵政省放送行政         局長      桑野扶美雄君         自治大臣官房長 森  繁一君         自治大臣官房会         計課長     鈴木 正明君         自治省行政局長 浅野大三郎君         自治省財政局長 小林  実君         自治省税務局長 湯浅 利夫君         会計検査院事務         総局第一局長  安部  彪君         会計検査院事務         総局第二局長  澤井  泰君         会計検査院事務         総局第五局長  山本  正君         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         公営企業金融公         庫理事     井下登喜男君         参  考  人         (宇宙開発事業         団理事)    立野  敏君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     竹中  康君         参  考  人         (日本電信電話         株式会社代表取         締役社長)  神林 留雄君         決算委員会調査         室長      小島  敞君     ───────────── 五月十六日  理事今井勇君同月十五日委員辞任につき、その  補欠として森英介君が理事に当選した。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  昭和六十二年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十二年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十二年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十二年度政府関係機関決算書  昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和六十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十三年度政府関係機関決算書  昭和六十三年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十三年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管警察庁)、文部省所管郵政省  所管自治省所管公営企業金融公庫〕      ────◇─────
  2. 渡辺省一

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。これよりその補欠選任を行いたいと存じますが、これは、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 渡辺省一

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。  それでは、森英介君を理事に指名いたします。      ────◇─────
  4. 渡辺省一

    渡辺委員長 次に、昭和六十二年度決算外二件及び昭和六十三年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管警察庁文部省所管郵政省所管自治省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として宇宙開発事業団理事立野敏君、日本放送協会理事竹中康君、日本電信電話株式会社代表取締役社長神林留雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 渡辺省一

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     ─────────────
  6. 渡辺省一

    渡辺委員長 次に、井上文部大臣関谷郵政大臣吹田自治大臣国家公安委員長及び公営企業金融公庫当局概要説明並び会計検査院検査概要説明につきましては、これを省略し、本日の委員会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 渡辺省一

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     ─────────────    昭和六十二年度決算説明                 警 察 庁  昭和六十二年度警察庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和六十二年度歳出予算現額は、一、八八八億五、四一二万円余でありまして、支出済歳出額は、一、八五九億二、三六五万円余であります。  この差額二九億三、〇四六万円余のうち、翌年度へ繰り越した額は、六億六、四五七万円余であります。これは、設計に関する諸条件により工事等が遅延したため、年度内支出を完了することができなかったものであります。  また、不用となった額は、二二億六、五八八万円余であります。これは、退職者が少なかったので、退職手当を要することが少なかったこと等のためであります。  次に、支出済歳出額の主な費途について、その大略を御説明申し上げます。  第一に、警察庁経費として一、二八四億三、七五九万円余を支出いたしました。これは、警察庁自体経費及び都道府県警察に要する経費のうち警察法規定に基づき国庫が支弁する経費として支出したものであります。  第二に、千葉県警察東京国際空港警備隊経費として七〇億三、八七〇万円余を支出いたしました。これは、千葉県警察東京国際空港警備隊が新東京国際空港に係る警備活動を実施するために要する経費として支出したものであります。  第三に、船舶建造費として七億四、四三六万円余を支出いたしました。これは、警察活動に必要な警察用船舶建造に要する経費として支出したものであります。  第四に、科学警察研究所経費として一六億五、九八三万円余を支出いたしました。これは、科学捜査、防犯及び交通についての研究調査等のための経費として支出したものであります。  第五に、皇宮警察本部経費として五八億五、九三九万円余を支出いたしました。これは、皇宮警察の職員の給与、皇居の警備行幸啓護衛等のための経費として支出したものであります。  第六に、警察庁施設費として二三億一、八七四万円余を支出いたしました。これは、警察庁関係施設整備するための経費として支出したものであります。  第七に、都道府県警察費補助経費として三九八億二七六万円余を支出いたしました。これは、警察法に定めるところにより、都道府県警察に要する経費の一部を補助する経費として支出したものであります。  第八に、他省庁からの予算移替えを受けた経費は、科学技術庁からの科学技術振興調整費として一、六九八万円余、同じく、国立機関原子力試験研究費として一、一九三万円余、環境庁からの環境保全総合調査研究促進調整費として六〇四万円余、同じく、国立機関公害防止等試験研究費として一、九六六万円余、国土庁からの災害対策総合推進調整費として七六〇万円余をそれぞれ支出したものであります。  以上、警察庁関係歳出決算について御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。    昭和六十三年度決算説明                 警 察 庁  昭和六十三年度警察庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和六十三年度歳出予算現額は、一、八八六億三、七四五万円余でありまして、支出済歳出額は、一、八五一億二、三一四万円余であります。  この差額三五億一、四三一万円余のうち、翌年度へ繰り越した額は、四億二、一四四万円余であります。これは、設計に関する諸条件により工事等が遅延したため、年度内支出を完了することができなかったものであります。  また、不用となった額は、三〇億九、二八六万円余であります。これは、退職者が少なかったので、退職手当を要することが少なかったこと等のためであります。  次に、支出済歳出額の主な費途について、その大略を御説明申し上げます。  第一に、警察庁経費として一、三〇八億八、九六六万円余を支出いたしました。これは、警察庁自体経費及び都道府県警察に要する経費のうち警察法規定に基づき国庫が支弁する経費として支出したものであります。  第二に、千葉県警察東京国際空港警備隊経費として七四億九、五九六万円余を支出いたしました。これは、千葉県警察東京国際空港警備隊が新東京国際空港に係る警備活動を実施するために要する経費として支出したものであります。  第三に、船舶建造費として二億九、六六三万円余を支出いたしました。これは、警察活動に必要な警察用船舶建造に要する経費として支出したものであります。  第四に、科学警察研究所経費として九億七、五二四万円余を支出いたしました。これは、科学捜査、防犯及び交通についての研究調査等のための経費として支出したものであります。  第五に、皇宮警察本部経費として五九億七五万円余を支出いたしました。これは、皇宮警察の職員の給与、皇居の警備行幸啓護衛等のための経費として支出したものであります。  第六に、警察庁施設費として一八億八、六五三万円余を支出いたしました。これは、警察庁関係施設整備するための経費として支出したものであります。  第七に、都道府県警察費補助経費として三七六億二、三〇九万円余を支出いたしました。これは、警察法に定めるところにより、都道府県警察に要する経費の一部を補助する経費として支出したものであります。  第八に、他省庁からの予算移替えを受けた経費は、総理府本府からの生活基盤充実事業推進費として三〇六万円余、科学技術庁からの科学技術振興調整費として一、二〇四万円余、同じく、国立機関原子力試験研究費として一、一三〇万円余、環境庁からの環境保全総合調査研究促進調整費として六一六万円余、同じく、国立機関公害防止等試験研究費として一、二三七万円余、国土庁からの災害対策総合推進調整費として一、〇三〇万円余をそれぞれ支出したものであります。  以上、警察庁関係歳出決算について御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    昭和六十二年度決算警察庁についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十二年度警察庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。    昭和六十三年度決算警察庁についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十三年度警察庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────    昭和六十二年度文部省所管決算概要説明  昭和六十二年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十二億四千八百九十四万円余に対しまして、収納済歳入額は二十二億八千二百九十五万円余であり、差引き三千四百一万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額四兆七千二百五十六億八千八百四十三万円余、前年度からの繰越額三十五億五千三百三十五万円余、予備費使用額四億八千七百四十七万円余を合わせた歳出予算現額四兆七千二百九十七億二千九百二十七万円余に対しまして、支出済歳出額は四兆七千七十九億九千八百八十九万円余であり、その差額は二百十七億三千三十八万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は八十四億八千百八十二万円余で、不用額は百三十二億四千八百五十五万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、義務教育費国庫負担金国立学校特別会計へ繰入、科学技術振興費文教施設費教育振興助成費及び育英事業費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、義務教育費国庫負担金支出済歳出額は二兆三千九百十億二千百万円であり、これは、公立義務教育学校教職員給与費等の二分の一を国が負担するために要した経費であります。  第二に、国立学校特別会計へ繰入の支出済歳出額は一兆一千八百一億三千七百七十三万円であり、これは、国立学校大学附属病院及び研究所管理運営等に必要な経費に充てるため、その財源の一部を一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れるために要した経費であります。  第三に、科学技術振興費支出済歳出額は五百七十七億四千七十二万円余であり、これは、科学研究費補助金日本学術振興会補助金文部本省所轄研究所及び文化庁研究所等に要した経費であります。  第四に、文教施設費支出済歳出額は三千四百四十四億六千百五十三万円余であり、これは、公立小学校中学校特殊教育学校高等学校及び幼稚園校舎等整備並びに公立学校施設等災害復旧に必要な経費の一部を国が負担又は補助するために要した経費であります。  第五に、教育振興助成費支出済歳出額は五千七百六十二億七千六百九十八万円余であり、これは、義務教育教科書費養護学校教育費国庫負担金学校教育振興費私立学校助成費社会教育助成費及び体育振興費に要した経費であります。  第六に、育英事業費支出済歳出額は八百十六億七千三百七十四万円余であり、これは、日本育英会に対する奨学資金の原資の貸付け、財政投融資資金の利子の補給及び事務費の一部補助のために要した経費であります。  次に、翌年度繰越額八十四億八千百八十二万円余についてでありますが、その主なものは、文教施設費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額百三十二億四千八百五十五万円余についてでありますが、その主なものは、文教施設費で、公立文教施設整備費等を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  次に、文部省におきまして、一般会計予備費として使用いたしました四億八千七百四十七万円余についてでありますが、これは、公立文教施設災害復旧費に要した経費であります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済歳入額は一兆八千八百九十六億六千七百三十九万円余、支出済歳出額は一兆八千五十二億五千三百二十三万円余であり、差引き八百四十四億一千四百十六万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により五十一億六千三百十八万円余を積立金として積み立て、残額七百九十二億五千九十七万円余を翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額一兆八千四百四億三千三百七十七万円余に対しまして、収納済歳入額は一兆八千八百九十六億六千七百三十九万円余であり、差引き四百九十二億三千三百六十二万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額一兆八千四百四億三千三百七十七万円余、前年度からの繰越額五十一億九千九百七十四万円余を合わせた歳出予算現額一兆八千四百五十六億三千三百五十一万円余に対しまして、支出済歳出額は一兆八千五十二億五千三百二十三万円余であり、その差額は四百三億八千二十八万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は八十八億三千五百四十万円余で、不用額は三百十五億四千四百八十七万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、国立学校大学附属病院研究所施設整備費及び船舶建造費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、国立学校支出済歳出額は一兆二百三十七億一千四百五十六万円余であり、これは、国立学校管理運営研究教育等に要した経費であります。  第二に、大学附属病院支出済歳出額は四千百五十億三千二百四十八万円余であり、これは、大学附属病院管理運営研究教育診療等に要した経費であります。  第三に、研究所支出済歳出額は一千百八十七億七千八百十五万円余であり、これは、研究所管理運営学術研究等に要した経費であります。  第四に、施設整備費支出済歳出額は一千九百六十九億八千九百十八万円余であり、これは、国立学校大学附属病院及び研究所施設整備に要した経費であります。  第五に、船舶建造費支出済歳出額は四十億八千二百六十六万円余であり、これは、国立学校における実習船及び大学附置研究所における研究船代替建造に要した経費であります。  次に、翌年度繰越額八十八億三千五百四十万円余についてでありますが、その主なものは、施設整備費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額三百十五億四千四百八十七万円余についてでありますが、その主なものは、国立学校で、国家公務員等共済組合負担金を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  なお、昭和六十二年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したのでありますが、会計検査院から不当事項十三件の御指摘を受けましたことは、誠に遺憾に存じます。  指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図る所存であります。  以上、昭和六十二年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。    昭和六十三年度文部省所管決算概要説明  昭和六十三年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十四億四千百七十二万円余に対しまして、収納済歳入額は二十四億二千四百十万円余であり、差引き一千七百六十二万円余の減少となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額四兆六千九百六十二億一千百三十六万円余、前年度からの繰越額八十四億八千百八十二万円余を合わせた歳出予算現額四兆七千四十六億九千三百十八万円余に対しまして、支出済歳出額は四兆六千九百十四億三千四百十四万円余であり、その差額は百三十二億五千九百三万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は五十四億三百二十二万円余で、不用額は七十八億五千五百八十万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、義務教育費国庫負担金国立学校特別会計へ繰入、科学技術振興費文教施設費教育振興助成費及び育英事業費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、義務教育費国庫負担金支出済歳出額は二兆四千六百二十九億五千八百万円であり、これは、公立義務教育語学校教職員給与費等の二分の一を国が負担するために要した経費であります。  第二に、国立学校特別会計へ繰入の支出済歳出額は一兆一千二百四十三億八千七百四十七万円余であり、これは、国立学校大学附属病院及び研究所管理運営等に必要な経費に充てるため、その財源の一部を一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れるために要した経費であります。  第三に、科学技術振興費支出済歳出額は六百億九百八十三万円余であり、これは、科学研究費補助金日本学術振興会補助金文部本省所轄研究所及び文化庁研究所等に要した経費であります。  第四に、文教施設費支出済歳出額は二千八百六十億四千四百六十五万円余であり、これは、公立小学校中学校特殊教育学校高等学校及び幼稚園校舎等整備並びに公立学校施設等災害復旧に必要な経費の一部を国が負担又は補助するために要した経費であります。  第五に、教育振興助成費支出済歳出額は五千九百五十五億六千二百七十万円余であり、これは、義務教育教科書費養護学校教育費国庫負担金学校教育振興費私立学校助成費社会教育助成費及び体育振興費に要した経費であります。  第六に、育英事業費支出済歳出額は八百三十一億三千五百五十八万円余であり、これは、日本育英会に対する奨学資金の原資の貸付け、財政投融資資金の利子の補給及び事務費の一部補助のために要した経費であります。  次に、翌年度繰越額五十四億三百二十二万円余についてでありますが、その主なものは、文教施設費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額七十八億五千五百八十万円余についてでありますが、その主なものは、教育振興助成費で、学校教育振興費等を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済歳入額は一兆八千六百九十一億一千五百八十二万円余、支出済歳出額は一兆八千百七十六億二千九百八十一万円余であり、差引き五百十四億八千六百万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額一兆八千四百億四千七十一万円に対しまして、収納済歳入額は一兆八千六百九十一億一千五百八十二万円余であり、差引き二百九十億七千五百十一万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額一兆八千四百億四千七十一万円、前年度からの繰越額八十八億三千五百四十万円余を合わせた歳出予算現額一兆八千四百八十八億七千六百十一万円余に対しまして、支出済歳出額は一兆八千百七十六億二千九百八十一万円余であり、その差額は三百十二億四千六百二十九万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は六十三億七千八百七十三万円余で、不用額は二百四十八億六千七百五十六万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、国立学校大学附属病院研究所施設整備費及び船舶建造費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、国立学校支出済歳出額は一兆七百十七億五千九百三十万円余であり、これは、国立学校管理運営研究教育等に要した経費であります。  第二に、大学附属病院支出済歳出額は四千二百九十三億二千六百八十九万円余であり、これは、大学附属病院管理運営研究教育診療等に要した経費であります。  第三に、研究所支出済歳出額は一千二百九十一億八千八百一万円余であり、これは、研究所管理運営学術研究等に要した経費であります。  第四に、施設整備費支出済歳出額は一千三百二十八億九千七百五十九万円余であり、これは、国立学校大学附属病院及び研究所施設整備に要した経費であります。  第五に、船舶建造費支出済歳出額は五十一億六千六百六十八万円余であり、これは、大学附置研究所における研究船代替建造に要した経費であります。  次に、翌年度繰越額六十三億七千八百七十三万円余についてでありますが、これは、施設整備費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額二百四十八億六千七百五十六万円余についてでありますが、その主なものは、国立学校で、職員基本給を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  なお、昭和六十三年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したのでありますが、会計検査院から不当事項十四件の御指摘を受けましたことは、誠に遺憾に存じます。  指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図る所存であります。  以上、昭和六十三年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。     …………………………………    昭和六十二年度決算文部省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十二年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項十三件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号八号は、核磁気共鳴断層撮影システムの購入に当たり、受領検査が適切でなかったため、その一部が購入の目的を達していないものであります。  このシステムは、核磁気共鳴現象を利用し身体の断層像を撮影して診断の用に供するためのもので、断層像を撮影する核磁気共鳴断層撮影装置、断層像をフィルムに記録するマルチフォーマットカメラ及び平面画像を三次元画像に再構成する独立画像解析装置の三装置により構成されております。  新潟大学では、このシステムの購入に当たり、独立画像解析装置に心臓画像のコンピュータ解析を可能にすることを目的とし特別仕様により機器等を付加することとしておりましたが、納入状況について調査いたしましたところ、特別仕様により付加することとしておりました機器等の大部分が納入されていないのに、受領検査が適切でなく、これを見過ごしたために、特別仕様を付して意図した機能を全く発揮させることができない状況となっていたものであります。  また、検査報告番号九号から一五号までの七件は、義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもので、事実と相違する過大な児童数に基づいて教職員の標準定数を算定していたり、国庫負担の対象とはならない教職員を含めて教職員定数を算定していたりなどしていたため、国庫負担金が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号一六号から二〇号までの五件は、補助事業の実施及び経理が不当と認められるもので、公立文教施設整備事業等において、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたり、補助事業の目的を一部達していなかったりなどしていたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、国立大学医学部附属病院等における患者給食の委託料の算定に関するものであります。  国立大学医学部附属病院等では、入院患者に対して給食を行っておりますが、東北大学ほか十二大学の二十三大学病院では、給食材料の調達・保存、調理等の業務を財団法人等に委託しております。  この委託料の算定の適否について調査いたしましたところ、東北大学ほか十一大学の二〇大学病院では、一人一日当たりの単価をもって契約を締結し、この単価に給食を提供した患者の延べ人日数を乗じることとし、この延べ人日数には、患者が入退院、外出、手術、検査等の理由により一日三食のうち一食又は二食しかとらない場合も一人日として算入し、委託料を算定しておりました。このため委託料が約一億七千八百万円過大となっており、委託料の算定を給食の提供の実態に即した適切なものに改める要があると認められました。  この点について当局の見解をただしましたところ、文部省では、委託料の算定について、大学病院を置く各国立大学に通知を発し、一人一日当たりの単価を朝・昼・夕の各食ごとに分割してこれにそれぞれの提供食数を乗ずるなど、給食の提供の実態に即して適切に行わせる処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、昭和六十年度決算検査報告に掲記いたしましたように、義務教育費国庫負担金の算定の基礎となるへき地手当等に係る級別等の指定の見直し並びに昭和六十一年度決算検査報告に掲記いたしましたように、義務教育費国庫負担金の算定の基礎となる産休等補助教職員に係る共済費に対する国庫負担の適正化及び医学部附属病院等に係る電気税及びガス税の納付について、それぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する文部省、大阪大学及び神戸大学の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。    昭和六十三年度決算文部省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十三年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項十四件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号二号から一〇号までの九件は、義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもので、教職員の毎月の実数を過小に算定していたなどのため国庫負担金が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号一一号から一四号までの四件は、補助事業の実施及び経理が不当と認められるもので、公立文教施設整備事業において、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたもの及び補助種目の適用を誤っていたものであります。  また、検査報告番号一五号は、核医学診断に係る診療報酬の請求が不足していたものであります。  神戸大学医学部附属病院では、肝臓・心臓疾患等の患者の病状を検査するため、その患者に放射性医薬品を投与して体内から放出される微量の放射線を測定し、その患者の臓器の形態・機能及び病巣の有無等を判断する核医学診断を行っており、これに係る診療報酬請求額の算定に当たりましては、診療部門の作成した検査伝票により、料金算定部門が厚生省の告示に基づく核医学診断料を社会保険診療報酬支払基金等に請求しておりました。  この算定について調査いたしましたところ、診療部門において、この診断に用いる放射性医薬品の標準の使用量を変更して増量していたのに、これを料金算定部門に連絡していなかったりしたなどのため、放射性医薬品の薬剤料を低額に算定しておりました。その結果、核医学診断に係る診療報酬請求額が不足していたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、国立大学におけるガス料金の支払に関するものであります。  名古屋、鹿児島両大学では、実験研究用バーナー、暖房用ボイラー等の燃料には都市ガスを使用しておりますが、その供給はガス会社との間にガス需給契約を締結することにより行われております。  この契約に基づくガス料金の支払について調査いたしましたところ、両大学では、ガス会社が大学敷地内のガスメーターごとの使用量に応じて算定した請求額をガス料金として支払っておりました。  しかし、ガス料金は、同一構内に設置された複数のガスメーターについては、ガス使用者からの申込みにより、ガス供給者と使用者との間において協議のうえ、それぞれの使用量を合計した量をガスメーター一個の使用量として料金を算定することが可能であるのに、ガスメーターごとに算定されたガス料金を支払っていたことは適切とは認められません。  この点について当局の見解をただしましたところ、両大学では、ガス会社に申込みを行って、協議を行い、ガス料金の支払を適切なものとする処置を講じたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。     ─────────────    昭和六十二年度郵政省所管一般会計及び特別会計の決算に関する郵政大臣説明  一般会計、郵政事業特別会計、郵便貯金特別会計及び簡易生命保険及郵便年金特別会計の昭和六十二年度決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  一般会計歳出予算現額は三百二十億一千二百七十万余円でありまして、これに対する決算額は三百八億三百六十八万余円となっております。  郵政事業特別会計の歳入予算額は五兆九百七十三億六千四百六十二万余円、歳出予算現額は五兆一千三百二十億七千八百八十六万余円でありまして、これに対する決算額は、歳入では五兆一千二百二十五億六千四十四万余円、歳出では五兆九百十五億三千二百三十七万余円となっております。  この中には、収入印紙等の売りさばきによる収入及びこれらの収入を関係法令に基づき他の会計へ繰り入れる等のため必要とする支出や借入金、局舎其他施設費等の資本的収入支出が含まれていますので、これらを除きました事業の運営による歳入歳出は、歳入では二兆六千百五十三億六千七百四十九万余円、歳出では二兆五千三百三十八億七千二百八十四万余円となっております。  郵便事業の損益につきましては、収益の総額は一兆四千六百五十億二千三百四十七万余円、費用の総額は一兆四千三百八十一億四千九百十六万余円でありまして、差し引き二百六十八億七千四百三十一万余円の利益を生じました。  この結果、郵便事業の累積利益金は、二百五十三億六千八百六万余円となっております。  郵便貯金特別会計一般勘定の歳入予算額は八兆六千六百四十億三千九百二万余円、歳出予算現額は八兆三十七億二千八百七十一万余円でありまして、これに対する決算額は、歳入では八兆六千八十五億千九百二十二万余円、歳出では八兆三十七億二千八百七十一万余円となっており、差額六千四十七億九千五十万余円は、法律の定めるところに従い翌年度歳入に繰り入れることといたしました。  一方、昭和六十二年度に創設されました金融自由化対策特別勘定の歳入予算額は二兆四百七十八億五千八百五十七万余円、歳出予算現額は二兆四百七十八億五千八百五十七万余円でありまして、これに対する決算額は、歳入では二兆三百九十四億九千四百八十八万余円、歳出では二兆三百九十一億四千三百九万余円となっており、差額三億五千百七十九万余円は、法律の定めるところに従い翌年度歳入に繰り入れることといたしました。  簡易生命保険及郵便年金特別会計につきましては、保険勘定の歳入予算額は七兆五千三十億三千七百八十二万余円、歳出予算現額は四兆九千九百二十八億三千七百九万余円でありまして、これに対する決算額は、歳入では八兆五千九百四十億七百六十七万余円、歳出では四兆五千四百八十一億六百四十二万余円となっており、差額四兆四百五十九億百二十四万余円は、法律の定めるところに従い積立金として積み立てることといたしました。  年金勘定の歳入予算額は二千百九十七億九千九百三十九万余円、歳出予算現額は四百五億六千九百二十六万円でありまして、これに対する決算額は、歳入では二千四百三十三億五千六百二十八万余円、歳出では二百九十七億五千五百七十四万余円となっており、差額二千百三十六億五十三万余円は、法律の定めるところに従い積立金として積み立てることといたしました。  次に、会計検査院昭和六十二年度決算検査報告において不当事項等として指摘を受けたものがありましたことは、誠に遺憾に存じます。今後、この種事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図る所存であります。  以上をもちまして、昭和六十二年度決算概要についての説明を終わります。    昭和六十三年度郵政省所管一般会計及び特別会計の決算に関する郵政大臣説明  一般会計、郵政事業特別会計、郵便貯金特別会計及び簡易生命保険及郵便年金特別会計の昭和六十三年度決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  一般会計歳出予算現額は二百五十八億千百六十三万円でありまして、これに対する決算額は二百五十四億九千二百五十九万余円となっております。  郵政事業特別会計の歳入予算額は五兆五千百七十一億七千二十五万余円、歳出予算現額は五兆五千四百九十八億四千五百六十八万余円でありまして、これに対する決算額は、歳入では五兆四千百二十九億七千五百九十七万余円、歳出では五兆三千七百四十三億九千八百五十二万余円となっております。  この中には、収入印紙等の売りさばきによる収入及びこれらの収入を関係法令に基づき他の会計へ繰り入れる等のため必要とする支出や借入金、局舎其他施設費等の資本的収入支出が含まれていますので、これらを除きました事業の運営による歳入歳出は、歳入では二兆七千三百八十億八千七十七万余円、歳出では二兆六千四百八十五億五百四十七万余円となっております。  郵便事業の損益につきましては、収益の総額は一兆五千二百七十一億四千二百九十一万余円、費用の総額は一兆五千百三十二億五千四百四十五万余円でありまして、差し引き百三十八億八千八百四十五万余円の利益を生じました。  この結果、郵便事業の累積利益金は、三百九十二億五千六百五十一万余円となっております。  郵便貯金特別会計一般勘定の歳入予算額は八兆七千七百十九億四千四百六十九万余円、歳出予算現額は七兆六千七百三十三億五千四百十四万円でありまして、これに対する決算額は、歳入では八兆五千五百八十五億千八百十四万余円、歳出では七兆六千七百三十三億五千四百十三万余円となっており、差額八千八百五十一億六千四百万余円は、法律の定めるところに従い翌年度歳入に繰り入れることといたしました。  金融自由化対策特別勘定の歳入予算額は二兆六千九百五十五億二千百九十一万円、歳出予算現額は二兆六千九百五十五億二千百九十一万円でありまして、これに対する決算額は、歳入では二兆六千九百三十六億千二百七十八万余円、歳出では二兆六千八百十二億五千六百八十万余円となっており、差額百二十三億五千五百九十八万余円は、法律の定めるところに従い金融自由化対策資金に組み入れることといたしました。  簡易生命保険及郵便年金特別会計につきましては、保険勘定の歳入予算額は八兆四千七百六十五億三千五百十八万余円、歳出予算現額は五兆四千九百四十九億八千八百万余円でありまして、これに対する決算額は、歳入では九兆三千九百九十六億四千百十五万余円、歳出では五兆五百八十四億五千百四十三万余円となっており、差額四兆三千四百十一億八千九百七十一万余円は、法律の定めるところに従い積立金として積み立てることといたしました。  年金勘定の歳入予算額は二千九百五十六億四千六百三十八万余円、歳出予算現額は五百一億四千八百十六万余円でありまして、これに対する決算額は、歳入では三千六百五十八億六千四百二十五万余円、歳出では四百三十九億六千七百一万余円となっており、差額三千二百十八億九千七百二十三万余円は、法律の定めるところに従い積立金として積み立てることといたしました。  次に、会計検査院昭和六十三年度決算検査報告において不当事項等として指摘を受けたものがありましたことは、誠に遺憾に存じます。今後、この種事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図る所存であります。  以上をもちまして、昭和六十三年度決算概要についての説明を終わります。     …………………………………    昭和六十二年度決算郵政省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十二年度郵政省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項三十五件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号一〇二号から一三六号までの三十五件は、職員の不正行為による損害を生じたものであります。  これは、世田谷郵便局ほか三十四郵便局等で、簡易生命保険又は郵便貯金等の事務に従事している職員が、契約者から受領した保険料や預金者から受領した積立郵便貯金の預入金等を領得していたものであります。  なお、このうち一一一号から一三六号までの二十六件については、六十三年十月末日までに損害額のすべてが補てん済みとなっております。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、ファクシミリの借料に関するものであります。  郵政省東京郵政局ほか十一郵政品等では、業務連絡用に使用するため、ファクシミリを借り入れて普通郵便局等に配備しておりますが、その借入れに当たって、郵政省が機器の基本的な仕様を定め、借料月額の予算単価を設定してこれに基づく必要経費予算を地方郵政局等に示達し、これを受けて各地方郵政局等では、一般市販品の中から仕様を満足する製品を選定し借り入れております。  しかしながら、郵政省が設定いたしました借料月額の予算単価が高額に過ぎたこと及び地方郵政局等におきましても市場の実態についての調査、検討が十分でなかったため、郵便局等におけるファクシミリの使用目的及び必要とされる仕様はいずれも同一でありますのに、借り入れた機器の借料月額は地方郵政局等の間において著しい開差が生じており、このうち、借入数量が少ないなどの事情があります沖縄郵政管理事務所を除きまして、東京ほか三郵政局のファクシミリの借料月額は、他の七地方郵政局の比較的近似した借料月額に比べ著しく高額なものとなっておりまして、これら四地方郵政局の六十二年度の借料支払額と六十三年度の借料年額は計約五千百万円割高であるので、経済的な借入契約を締結し、もって借料の節減を図る要があると認められました。  この点について当局の見解をただしましたところ、郵政省では、地方郵政局等に対し、市場の実態に即した借料の月額単価で算定した予算を示達するとともに、通達等を発し、地方郵政局等において市場の動向を把握するなどして適正な予定価格を設定するように指示するなどの処置を講じたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。    昭和六十三年度決算郵政省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十三年度郵政省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲証いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項三十七件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号一〇一号から一三七号までの三十七件は、職員の不正行為による損害を生じたものであります。  これは、甲府中央郵便局ほか三十七郵便局で、簡易生命保険又は郵便貯金等の事務に従事している職員が、契約者から受領した保険料や預金者から受領した積立郵便貯金の預入金等を領得していたものであります。  なお、このうち一〇八号から一三七号までの三十件については、平成元年十月末日までに損害額のすべてが補てん済みとなっております。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、防犯通報装置を構成する各機器の購入及び取付けに関するものであります。  郵政省では、特定郵便局の防犯対策として新型の防犯通報装置を開発し、順次設置することとしております。この防犯通報装置は、制御器、防犯カメラ、熱線探知器等の機器によって構成されるもので、郵政省では、これらの機器の設置基準を定めた通達を発し、これを受けて東京郵政局ほか十一郵政局等が防犯通報装置を購入し、特定郵便局に設置しております。  しかしながら、通達では、機器の取付目的、取付箇所、個数等について具体的指針を明示していなかったため、地方郵政局等では、局舎の多様な構造等に適合した効果的な設置局別仕様書を作成することが困難となっており、このため、購入した機器のうち、三千五百二十六個購入価額約一千八百七十万円については、機器が不要な箇所に取付けられているなどしていて購入が過大であったと認められ、また、四百二十三個購入価額約五百四十万円については、取付箇所が適切でないため機器の機能が効果的に発現されていないと認められました。  この点について当局の見解をただしましたところ、郵政省では、通達の一部を改正し、地方郵政局等に対し防犯通報装置を適切かつ経済的に設置するために必要な機器の取付けについての具体的指針を示し、局舎の構造等に適合した設置局別仕様書の作成を行うよう指示するなどの処置を講じたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。     ─────────────    昭和六十二年度自治省所管決算概要説明  昭和六十二年度における自治省所管決算につきまして、概要を御説明申し上げます。  一般会計歳出決算につきましては、歳出予算現額は、当初予算額十兆二千五百八十五億八千四百九十三万円余、予算補正追加額九千二十三億六千百三万円余、予算補正修正減少額六億二千五百四十一万円余、総理府所管から移替を受けた額三千三百六十九万円余、予備費使用額三十九億二千五百八十二万円余、合計十一兆千六百四十二億八千十一万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は十一兆千六百三十九億八千三百二十八万円余で、差額二億九千六百八十三万円余を生じましたが、この差額のうち翌年度繰越額は二億千九百六十万円、不用額は七千七百二十三万円余であります。  以下、支出済歳出額の主なものにつきまして、御説明を申し上げます。  まず、地方交付税交付金でありますが、歳出予算現額は十一兆八百六十一億七千三百二十七万円余、支出済歳出額は十一兆八百六十一億七千三百二十七万円余でありまして、全額支出済であります。この経費は、「交付税及び譲与税配付金特別会計法」に基づき、昭和六十二年度の所得税、法人税及び酒税の収入見込額のそれぞれ百分の三十二に相当する金額の合算額から昭和六十年度の地方交付税に相当する金額を超えて繰り入れられた額を控除した額に昭和六十二年度の地方交付税交付金の特例措置による額を加算した額を、交付税及び譲与税配付金特別会計の交付税及び譲与税配付金勘定へ繰り入れたものであります。  次に、地方債元利助成費でありますが、歳出予算現額は九十二億七千百六十万円余、支出済歳出額は九十二億七千百六十万円余であります。この経費は、新産業都市の建設及び工業整備特別地域等の整備に係る地方債の特別調整分に対する利子補給金として、道府県に対し、交付したもの等であります。  次に、地方公営企業助成費でありますが、歳出予算現額は百八十六億千九百八十一万円余、支出済歳出額は百八十六億千九百七十九万円余、不用額は一万円余となっておりまして、この経費は、公営企業金融公庫の上水道事業等に係る貸付利率の引下げのための補給金として、同公庫に対し、交付したもの等であります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金でありますが、歳出予算現額は百九十九億五千万円、支出済歳出額は百九十九億五千万円でありまして、全額支出済であります。  次に、施設等所在市町村調整交付金でありますが、歳出予算現額は五十二億円、支出済歳出額は五十二億円でありまして、全額支出済であります。前述の経費及びこの経費は、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する都及び市町村に対し、交付したものであります。  次に、衆議院議員及参議院議員補欠等選挙費でありますが、歳出予算現額は三十八億四千四百七十二万円、支出済歳出額は三十八億四千百八十二万円余、不用額は二百八十九万円余となっておりまして、この経費は、参議院議員補欠選挙の執行に要したもので予備費を使用したものであります。  次に、消防施設整備補助でありますが、歳出予算現額は百一億五千九百五十二万円余、支出済歳出額は九十九億三千六百四十万円余、翌年度繰越額は二億十九日六十万円、不用額は三百五十二万円余となっておりまして、この経費は、消防施設等の整備に要する経費の一部を関係地方公共団体に対し、補助するために要したものであります。  以上が一般会計歳出決算概要であります。  次に、特別会計決算につきまして、御説明を申し上げます。  自治省関係の特別会計といたしましては、交付税及び譲与税配付金特別会計がありますが、この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。  まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、歳入予算額は十七兆六千三百二億五千五百三十九万円余でありまして、これに対し、収納済歳入額は十七兆六千七百八十四億七千三十五万円余となっております。  また、歳出予算現額は十七兆五千六百七十億二千四百四十五万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は十七兆四千九百六十四億六千六百九十五万円余、不用額は七百五億五千七百四十九万円余であります。  不用額を生じましたのは、一時借入金の利子の支払いが少なかったこと等によるものであります。  支出済歳出額の主なものは、第一に、地方交付税交付金十兆五千六百九億九千九百八十九万円余でありまして、これは、地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を超える場合にその財源不足額に応じて必要な財源を、また災害その他特別な財政需要等に対し必要な財源を、それぞれ地方団体に交付したものであります。  第二に、地方譲与税譲与金五千百二十二億六千五百五十五万円余でありますが、これは、地方道路譲与税譲与金、石油ガス譲与税譲与金、航空機燃料譲与税譲与金、自動車重量譲与税譲与金及び特別とん譲与税譲与金として、関係地方公共団体に譲与したものであります。  次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、歳入予算額は千百一億九十九万円でありまして、これに対し、収納済歳入額は千九十億六千四十万円余となっております。  また、歳出予算現額は千十七億九千五百六十万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は千八億六千三百六十六万円余、不用額は九億三千百九十四万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、交通安全対策特別交付金九百五十一億九千六百八十四万円余でありまして、これは道路交通安全施設の設置等の財源として、都道府県及び市町村に対し交付したものであります。  以上、昭和六十二年度自治省所管決算概要を御説明申し上げました。  なにとぞ、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。    昭和六十三年度自治省所管決算概要説明  昭和六十三年度における自治省所管決算につきまして、概要を御説明申し上げます。  一般会計歳出決算につきましては、歳出予算現額は、当初予算額十兆九千七百七十一億四千四百八十万円余、予算補正追加額二兆千二百五十七億七千八百五十一万円余、予算補正修正減少額六億九千九百三十一万円余、総理府所管から移替を受けた額三千五百六十三万円余、前年度繰越額二億千九百六十万円、予備費使用額十三億九千九百九十二万円余、合計十三兆千三十八億七千九百十七万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は十三兆千三十七億四千六百九十万円余で、差額一億三千二百二十六万円余を生じましたが、この差額は全額不用額であります。  以下、支出済歳出額の主なものにつきまして、御説明を申し上げます。  まず、地方交付税交付金でありますが、歳出予算現額は十三兆三百十一億八千六百八十五万円余、支出済歳出額は十三兆三百十一億八千六百八十五万円余でありまして、全額支出済であります。この経費は、「交付税及び譲与税配付金特別会計法」に基づき、昭和六十三年度の所得税、法人税及び酒税の収入見込額のそれぞれ百分の三十二に相当する金額の合算額から昭和六十年度の地方交付税に相当する金額を超えて繰り入れられた額を控除した額に昭和六十三年度の地方交付税交付金の特例措置による額を加算した額を、交付税及び譲与税配付金特別会計の交付税及び譲与税配付金勘定へ繰り入れたものであります。  次に、地方債元利助成費でありますが、歳出予算現額は七十六億六千七百六十四万円余、支出済歳出額は七十六億六千七百六十二万円余、不用額は一万円余となっておりまして、この経費は、新産業都市の建設及び工業整備特別地域等の整備に係る地方債の特別調整分に対する利子補給金として、道府県に対し、交付したもの等であります。  次に、地方公営企業助成費でありますが、歳出予算現額は百七十四億二千四百六十八万円余、支出済歳出額は百七十四億二千四百六十七万円余であります。この経費は、公営企業金融公庫の上水道事業等に係る貸付利率の引下げのための補給金として、同公庫に対し、交付したもの等であります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金でありますが、歳出予算現額は百九十九億五千万円、支出済歳出額は百九十九億五千万円でありまして、全額支出済であります。  次に、施設等所在市町村調整交付金でありますが、歳出予算現額は五十二億円、支出済歳出額は五十二億円でありまして、全額支出済であります。前述の経費及びこの経費は、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する都及び市町村に対し、交付したものであります。  次に、衆議院議員及参議院議員補欠等選挙費でありますが、歳出予算現額は十三億九千九百九十二万円余、支出済歳出額は十三億九千六百六十六万円余、不用額は三百二十六万円余となっておりまして、この経費は、参議院議員補欠選挙の執行に要したもので予備費を使用したものであります。  次に、消防施設整備補助でありますが、歳出予算現額は百億七千七百六十九万円余、支出済歳出額は百億七千三百五十一万円余、不用額は四百十八万円余となっておりまして、この経費は、消防施設等の整備に要する経費の一部を関係地方公共団体に対し、補助するために要したものであります。  以上が一般会計歳出決算概要であります。  次に、特別会計決算につきまして、御説明を申し上げます。  自治省関係の特別会計といたしましては、交付税及び譲与税配付金特別会計がありますが、この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。  まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、歳入予算額は十八兆三千八百六十五億八千二百九十九万円余でありまして、これに対し、収納済歳入額は十八兆五千十七億千七百八十六万円余となっております。  また、歳出予算現額は十八兆二千九百二十一億九千十六万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は十七兆九千百二十九億千四十五万円余、不用額は百九十二億三千五十三万円余であります。  不用額を生じましたのは、一時借入金の利子の支払いが少なかったこと等によるものであります。  支出済歳出額の主なものは、第一に、地方交付税交付金十一兆二千百四億六百六十三万円でありまして、これは、地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を超える場合にその財源不足額に応じて必要な財源を、また災害その他特別な財政需要等に対し必要な財源を、それぞれ地方団体に交付したものであります。  第二に、地方譲与税譲与金五千二百六十四億三百七十五万円余でありますが、これは、地方道路譲与税譲与金、石油ガス譲与税譲与金、航空機燃料譲与税譲与金、自動車重量譲与税譲与金及び特別とん譲与税譲与金として、関係地方公共団体に譲与したものであります。  次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、歳入予算額は千百三十三億七千五百六万円余でありまして、これに対し、収納済歳入額は八百九十三億二千八百十万円余となっております。  また、歳出予算現額は千五十一億四千四百八十八万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は八百三十七億九千二百十三万円余、不用額は二百十三億五千二百七十五万円余であります。  不用額を生じましたのは、交通反則者納金の収入が少なかったため、交通安全対策特別交付金が少なくなったこと等によるものであります。  支出済歳出額の主なものは、交通安全対策特別交付金七百八十二億六千六百三十万円余でありまして、これは道路交通安全施設の設置等の財源として、都道府県及び市町村に対し交付したものであります。  以上、昭和六十三年度自治省所管決算概要を御説明申し上げました。  なにとぞ、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     …………………………………    昭和六十二年度決算自治省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十二年度自治省の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。    昭和六十三年度決算自治省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十三年度自治省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。  これは、交通安全対策特別交付金の使途に関するものであります。  自治省では、交通安全対策の一環として、交通安全対策特別交付金を昭和六十一、六十二両年度に、それぞれ五百六十八億二千二百八十六万余円及び九百五十一億九千六百八十四万余円都道府県等に交付しております。そして、自治省では、その交付した交付金額以上の事業が執行されていることを確認するため、毎年、「交通安全対策施設整備事業施行実績調」に、当該都道府県及び管内市町村等が、交付金、特定財源(地方債など充当する事業が指定されている財源)及び一般財源を充当して実施した交付金対象事業を記載させ、報告させております。  この交付金対象事業の実施状況を青森県ほか二十四都府県及び各管内の百二市町村三特別区において調査いたしましたところ、交付金の充当対象の事業としているもののなかに、国庫補助の対象となった事業、交通安全対策特別交付金等に関する政令第一条で定める交通安全施設とは認められないものの設置又は管理に係る事業など交付金の充当対象とは認められない事業が多数見受けられました。この結果、青森県の道路管理者分ほか一県四市一特別区におきましては、自治省に報告した交通安全施設整備事業費から特定財源の額及び充当対象とは認められない額を控除すると、交付した交付金の額が、実施した充当対象事業事業費を上回っていて、六十一、六十二両年度合計約三千九百三十万円の交付金が充当されていないことになっておりました。  この点について当局の見解をただしましたところ、自治省では、平成元年十一月に事業費が交付金を下回っていた青森県ほか一県及び四市一特別区につきましては、速やかに追加事業を実施するよう指示するなどの措置を講じ、また、都道府県に対し昭和四十九年の「交通安全対策特別交付金制度の運用について」の通達を全面的に改正した通達を発し、交付金を充当したと判断した事業のみを記載するよう実績調べの様式を改正し、これに基づき交付金の充当状況の適否を判断することとしたほか、交付金の充当対象事業の範囲の明確化を図り、また、都道府県の市町村等に対する指導の強化を徹底させるなどの交付金制度の適正な運用を図る処置を講じたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。     ─────────────    昭和六十二年度公営企業金融公庫業務概況説明  公営企業金融公庫昭和六十二年度の業務概況について御説明申し上げます。  昭和六十二年度における貸付計画額は当初一兆三百七十八億円でありました。  これに対し貸付実行額は一兆六百六十五億七千四百七十万円であり、前年度と比較して七パーセントの増になっております。  一方、この原資としては、産業投資特別会計からの出資金十億円、公営企業債券の発行による収入等一兆六百五十五億七千四百七十万円を充てたのでございます。  なお、当年度における元利金の回収額は一兆九百七十一億九千七百四十三万円余でありまして延滞となっているものはございません。  貸付実行額の内訳は、地方公共団体の営む上水道事業、下水道事業等に対するもの七千五百四十四億七千百二十万円、公営住宅事業及び臨時地方道整備事業等に対するもの二千九百八十六億三千八百七十万円、地方道路公社及び土地開発公社に対するもの百三十四億六千四百八十万円となっております。  以上により、当年度末における貸付残高は十一兆千百七十五億七千八百十万円余になり、前年度末残高と比較して七パーセントの増になったのでございます。  また、農林漁業金融公庫から委託を受けて公有林整備事業及び草地開発事業に対し二百七億五千百七十万円の貸付けを実行しました。  このため、受託貸付の当年度末における貸付残高は三千三百三十一億三千三百五十九万円余になっております。  次に、当年度における公営企業債券の発行額は一兆四千四百七十五億六千九百五十六万円余でありまして、このうち公募債が一兆五百四十八億千九百五十六万円余、縁故債が三千九百二十七億五千万円であります。  次に、公営企業健全化基金について申し上げますと、当年度における公営競技納付金の収入額三百七十二億七千四十二万円余を基金に充てました。一方、当年度における地方債の利子の軽減に要する費用を基金の運用益によって補てんし、なお不足する額二百九十三億八千三百八十四万円余に相当する基金を取りくずしました。  この結果、当年度末における基金総額は二千六百二十九億三千百十四万円余になりました。  次に、収入・支出の状況について申し上げますと、収入済額は収入予算額七千九百三十二億六千五百三十三万円余に対し七千八百二十七億五千八百五十四万円余、支出済額は支出予算額七千八百二十六億六千二百七十五万円余に対し七千六百八十五億六千五百八十九万円余でありました。  また、損益の状況でございますが、貸付金利息等の利益金総額八千百二十九億七千九百九十四万円余に対し、債券利息及び事務費等の損失金総額七千五百五十三億二千二百七十九万円余でありまして、差し引き五百七十六億五千七百十五万円余を債券発行差金等の償却に充当いたしましたので、利益金は生じておりません。  以上、昭和六十二年度公営企業金融公庫の業務の概況について御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議の程をお願いいたします。    昭和六十三年度公営企業金融公庫業務概況説明  公営企業金融公庫昭和六十三年度の業務概況について御説明申し上げます。  昭和六十三年度における貸付計画額は当初一兆七百五十九億円でありました。  これに対し貸付実行額は一兆六百四十六億二千五百四十万円であり、前年度と比較して〇・二パーセントの減になっております。  一方、この原資としては、産業投資特別会計からの出資金十億円、公営企業債券の発行による収入等一兆六百三十六億二千五百四十万円を充てたのでございます。  なお、当年度における元利金の回収額は一兆二千六十億六千四百四十八万円余でありまして延滞となっているものはございません。  貸付実行額の内訳は、地方公共団体の営む上水道事業、下水道事業等に対するもの七千八百二十六億七千八百万円、公営住宅事業及び臨時地方道整備事業等に対するもの二千六百九十五億五千三百十万円、地方道路公社及び土地開発公社に対するもの百二十三億九千四百三十万円となっております。  以上により、当年度末における貸付残高は十一兆七千六百一億六千六百七十万円余になり、前年度末残高と比較して六パーセントの増になったのでございます。  また、農林漁業金融公庫から委託を受けて公有林整備事業及び草地開発事業に対し百八十八億八千三百七十万円の貸付けを実行しました。  このため、受託貸付の当年度末における貸付残高は三千四百九十七億六千百五十五万円余になっております。  次に、当年度における公営企業債券の発行額は一兆六千三百八十四億二千八百六十一万円余でありまして、このうち公募債が一兆二千四百六十九億五千八百六十一万円余、縁故債が三千九百十四億七千万円であります。  次に、公営企業健全化基金について申し上げますと、当年度における公営競技納付金の収入額四百億二千十七万円余を基金に充てました。一方、基金の運用益二百七億五千四百五十九万円余を当年度における地方債の利子の軽減に要する費用に充てました。  この結果、当年度末における基金総額は三千二十九億五千百三十一万円余になりました。  次に、収入・支出の状況について申し上げますと、収入済額は収入予算額八千九十億三百六万円余に対し八千百二十四億六百三十六万円余、支出済額は支出予算額七千九百十億千五百四十九万円余に対し七千八百八十六億二千三百七万円余でありました。  また、損益の状況でございますが、貸付金利息等の利益金総額八千百三十億六千九百六万円余に対し、債券利息及び事務費等の損失金総額七千七百十六億三百八十三万円余でありまして、差し引き四百十四億六千五百二十三万円余を債券発行差金等の償却に充当いたしましたので、利益金は生じておりません。  以上、昭和六十三年度公営企業金融公庫の業務の概況について御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議の程をお願いいたします。     …………………………………    昭和六十二年度決算公営企業金融公庫についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十二年度公営企業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令苦しくは予算に違反し又は不当と認めた事項二件であります。  検査報告番号一五二号及び一五三号の二件は、公営企業金融公庫資金の貸付額が過大になっているものであります。  これらは、貸付先の県市において、貸付けの対象とならない事業費を貸付対象事業費に含めていたり、貸付対象事業の財源として受け入れた負担金を貸付対象事業費の財源に算入していなかったりしていたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。    昭和六十三年度決算公営企業金融公庫についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十三年度公営企業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────
  8. 渡辺省一

    渡辺委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部未喜男君。
  9. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 質疑に先立ちまして、急ぐ閣僚は帰ってください。用事のない人は。――ほかの人は帰りましたが、郵政大臣、閣僚の一人としてまず冒頭にお伺いしておきたいのですけれども、本日、この郵政省所管決算審査に当たりまして、他の省庁に関係する部分もありますから他の国務大臣の出席を求めたのですが、何か対応する省庁以外は大臣は出ないのだという申し合わせがあるのでございますか。
  10. 関谷勝嗣

    関谷国務大臣 その件につきましては、私も的確な答弁ができません。そういうことがあるのかどうか、一度調べてまた御報告させていただきます。
  11. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それでは参考までに、大臣、私から申し上げておきます。  正確を期するために憲法を読み上げますが、憲法の第六十六条に内閣の規定があります。「内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。」内閣は、国務大臣、内閣総理大臣によって組織されておるのですね。そしてもう一つ、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」だから、国務大臣全体が連帯して国会に責任を負う。  念のために、私はそういうお話を耳にしたから、宮澤さんが官房長官のときに、私のこの解釈に間違いがないかどうかを確かめたら、そのとおりでございます。連帯して責任を負う。なお大臣で細かな点についてはわからないところがあるから、これについては御承知のように政府委員というものを国会が承認をする。こういう形をとられておるから、第一義的には各大臣、国務大臣は国会に出席を要請されれば出てこなければならない義務がある、このことをしっかりひとつ各省庁もよく考えておいてくださいよ。いいですか。  さて、そこで次に質問に移りますが、まず郵政事業から。郵政の三事業、まだこれは決算はできていないと思いますけれども、平成二年度決算の見通しはおおむねどういう状況であるか、知らせてもらいたいと思います。
  12. 吉高廣邦

    ○吉高説明員 平成二年度郵政三事業決算見通しにつきましては、現在、御指摘のとおり計数の取りまとめ段階にございまして、確たることは申し上げられないのでございますけれども、あえて現在までの状況をもとに推定をいたしますと、三事業ともおおむね順調に推移しております。  郵便事業でございますが、その基本となります郵便業務収入が経済の好況を背景に前年度に対して七%強の増加を確保しておりまして、好調に推移しております。一方、支出につきましては、郵便物数の増加に伴いまして業務運営上必要な経費増加のほか、仲裁裁定の実施による経費増加などがございまして、大幅な支出増の見込みもございます。これらを総合いたしますと、なお不確定要素はございますけれども、平成二年度決算は、損益上、前年度の金額は下回るとは思われますけれども、黒字が維持できる見込みでございます。  また郵便貯金事業でございますが、平成二年四月以降、十年前に預けられました高金利の定額貯金の集中満期のために一時的には郵便貯金が純減となりましたけれども、平成三年一月末には平成元年度末の残高を回復いたしまして、現在順調な増加傾向にございます。また、集中満期に伴いまして支払い利子が相当減少したこと等もございまして、一般勘定の決算見込みとしては前年度を上回る黒字を確保できる見込みでございます。なお、金融自由化対策特別勘定につきましても黒字を確保できる見込みでございます。  簡易保険・郵便年金事業の関係でございますが、いずれも新契約の販売が堅調でございますことから保有契約が着実に増加しておりまして、これに伴いまして保険料・掛金収入はおおむね順調な伸びを示して安定的な経営を維持しているところでございます。こうしたことから、平成二年度決算では両事業とも前年度を上回る剰余金を発生する見込みでございます。
  13. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 まだ見通しの段階ですけれども、大体三事業とも順調な運行が図られておるというふうに理解をいたしました。  さて、そこで大臣、このように三事業が順調に進んでおる、かつては郵便事業も赤字、貯金も赤字、非常に厳しい郵政の特別会計の状況でありましたが、今は非常によくなっておる。この順調に進んでおる要因といいますか、どこに原因があるというふうに大臣は把握をしておられますか。
  14. 関谷勝嗣

    関谷国務大臣 先ほど部長から御報告をさせていただいたわけでございますが、順調に推移をしているということでございます。基本的には、経済が非常に好況であったというそのもとで各種のサービスの改善、向上を行ってまいりましたし、職員がまた特に積極的な営業活動や効率化への取り組みに大変現業の皆さんが努力をしておる、それからまた、資金の運用の範囲も先生御指摘のように大きく門戸が開かれたわけでございまして、非常に効率的な経営もできるようになった、そういうような好結果によっての今回の決算の見通しである、そのように考えております。
  15. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 全く私も大臣と同感でございます。特に、第二点目に大臣が述べられました、職員が真剣に事業に取り組んでいわゆる業績が上がっておるという点、かつて、中国の言葉をかりれば非常に不幸な時代が郵政の労使関係に存在をして、正月になっても年賀郵便が配られない、こういう時期もあったのですけれども、今は労使非常に一体になって頑張っておる、もう涙ぐましいほどの努力をしておることも私も承知をいたしております。  そこで、ちょっと問題がありまして、これはもう該当の部長さんで結構ですが、私の地元の大分の郵便局で職員に対して処分が行われておるのですけれども、その処分の理由が、不穏当な発言があったということで処分を受けておるのです。不穏当な発言とは、何が穏当で何が不穏当なのか私も非常に理解に苦しみますが、郵政省の解釈ではどういうことが穏当でどういうことが不穏当なのか、ちょっと聞かせてもらいたいと思います。
  16. 渡邉民部

    ○渡邉説明員 今先生からお尋ねの大分中央郵便局の件について御説明をさせていただきたいと思います。  平成三年の一月二十三日に、業務運行状況等把握のために大分中央郵便局に臨局しました九州郵政局郵務部の係官を、当該郵便局の郵便課長が郵便課の事務室におきまして勤務中の職員に紹介したわけであります。その際に、郵便課の某主任の職員が郵政局係官に対しまして約十五分にわたりまして不穏当な発言を行ったために、平成三年四月二十六日、大分中央郵便局長が同人に対しまして指導矯正措置としての注意を行ったところでございます。この措置につきましては、大分中央郵便局長が九州郵政局と相談の上に、発言内容が不穏当であると判断をいたしまして今回の措置をとりたものであります。  今先生から、どういう発言かというようなお話があったわけでありますが、例えば、ここで申し上げるのはなにかと思いますが、おまえの裏切り方は普通の裏切り方とは違う、おまえの両親はたしか病弱だったな、帰ってきて面倒を見る必要があるときには泣きつくなよなんというようなことを十五分にわたりまして発言があったために、この職場の秩序維持というような観点から注意の措置をとった次第でございます。  以上でございます。
  17. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 論争するつもりはありませんが、大臣にも郵政の皆さんにもよく聞いておってもらいたいのですけれども、なぜそういう発言が出たかという原因についてどのような調査をされたかでございます。いきなり、来た人間に、それをつかまえて、おまえの裏切り方は普通の裏切り方やないなどと食うてかかるばかな人間はいないのですよ。食うてかかるには、その経緯があったはずなんです。  その経緯とは一体何かといいますと、この注意を受けた人は郵政局から派遣をされた職員よりも古参です。年が十三上で、郵便局の地位も主任という役付の人です。一方、郵政局から派遣されていった職員は、後輩であり、かつて大分県内で仕事をしておった。たまたま注意をした方は全逓の大分地区の副委員長であった。したがって、郵政局から派遣された職員が臨局したときに、おまえはかつて大分におったときに中等部の試験に合格して行くことになった、全逓の組合の仲間が送別会を開いて送り出してやったではないか、しかるに中等部を卒業したら第二組合に行ってしまった、けしからぬじゃないか。ここが事の起こりなんですよね。したがって、こういう言葉が出てきた。  けれども、これが穏当か不穏当か。もしそのために業務の阻害があった、業務が妨害されたというならば私はその処分を不満とは思いません。しかし、業務の妨害はなかったと聞いておりますし、その処分の内容にも業務妨害があったとはされておりません。そうすると、先輩と後輩の間で後輩にいわば注意を与えた、その注意の言葉が少し行き過ぎであったかどうかはわかりませんが、それをもって処分するといったら、日常、上司は後輩に、あるいは組合の役員は組合員に職場では物が言えないという状況になってきてしまう。  私が一番恐れるのは、これは恐らく労労問題という以上に、郵政局が処分を強制した理由は、郵政局というのは普通の出先の郵便局よりも高い地位にある、その高い地位にある郵政局の職員に対して出先の職員が横着なことを言った、けしからぬ、これでは郵政局の威信が保たれない、よって処分をせよ。どうもこういういきさつだったようで、当該任命権者である大分の郵便局長が進んで処分をしたものでないと私は聞いてます。郵政局の方からやれ、やれと言われてよんどころなく処分をした。  しかし、この内容を見る限り、不穏当とは一体何が不穏当で何が穏当なのか、物も言えない状態になってくる、これは明らかな私はやり過ぎだと思いますけれども、今振り返ってどうこうするつもりはありませんけれども、少なくとも、上局、郵政局とか貯金センターとか保険センターというようなところは現場に対してもっと深い理解を持ち、協力を求め、一体となって事業の運行に当たらなければならない、ささいなことで処分をすればそれで統制がとれるとか押さえつけがきくというふうな誤った考えだけはこれは私はやめてもらいたいと思っております。  特に、私があちこちよく出席をして聞くのですけれども、現場の職員が死に物狂いで営業活動をやっておるのに対して、郵政局とか貯金センターとか、こういういわゆる上局と呼ばれるところの諸君は営業に対する感覚がまるで薄い、そこから権力をもって押さえつければ何でもできるというふうなこういう措置がとられてきておる。これ以上私は論争するつもりはありませんが、どうしても言いたいことがあるなら答えてください。――ありませんか。
  18. 渡邉民部

    ○渡邉説明員 私どもは先ほどから、郵政事業の順調な発展というものは、日本経済の好況の背景の中で職員が一生懸命営業努力をしている、あるいは労使関係が安定をして努力をしているというようなことの中で発展をしているんだというように考えておりまして、そういう意味で、労使関係の安定、職員の育成に今後とも努めて、郵政事業の発展に努力してまいりたいというように考えております。
  19. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それではその件は終わりまして、次にお伺いしたいのですけれども、郵政省としては画期的な国際ボランティア貯金なるものをつくり出しまして、非常にこれは新聞等でも好評を博しておるようでございますけれども、ボランティア貯金の現況といいますか現状は、どのくらい金が集まってどういう計画が立てられておるか簡単に説明を。
  20. 松野春樹

    ○松野説明員 お答え申し上げます。  申込件数でありますけれども、一月から三月までで一区切りの数字でございますが、約二百十二万九千件御協力いただいております。金額で申し上げますと、寄附金額が約十一億九百万円でございます。税金額が約二億七千万円ということでありまして、寄附金総額ということで申し上げますと約十三億八千万円であります。  そこで、三月一日から四月十五日までいわゆるNGO諸団体からの公募を受け付けまして、四月十五日に締め切りましたわけでありますが、この申請状況は百三団体から申請が参っております。申請金額は、今審査中でありますが、総額で約十八億円に達しておりますので、今一生懸命内部の事務局で検討を進めておるところでございます。申請ジャンルも食糧援助から医療・衛生、教育その他多岐にわたっておりますし、対象地域も約五十二カ国に及んでおりまして、一番多いのはやはりアジア関係であります。そのあとアフリカ、中南米、中近東というふうに対象の国につきましてもバラエティーに富んでおるように把握しております。
  21. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 今日の国際情勢の中で、こういう制度で特に発展途上国等に対してできるだけのボランティア活動をやろうということは私、非常に結構なことだと思うんですけれども、今貯金局長のお話の中で税金というのが出てきました。これは当然利子課税に相当するもの、利子に対して二〇%の税金が取られるということであったと思うんでございますけれども、これについてはこの制度をつくるとき、それからその後、この国会においてたしか我が党の秋葉委員等から大蔵省等に対して、善意を持って自分の貯金の中の利息を寄附をするのに、そこからまた税金を引き去ればそれだけボランティアに使うお金は少なくなるから、これはもう国の方でも税金を取らなくていいんではないかという議論がずっと闘わされてきておるように思いますが、その議論の経過は私も承知しておりますからもう申し上げません。  そのときに、こういういきさつがあったと私は記憶するんですが、自民党の方の総務会長、政調会長、税制調査会長、財政部会長、通信部会長、大蔵の事務次官、郵政の事務次官が立ち会いで話し合いをした。これは平成二年の四月十七日。まずその三項に「平成五年の利子所得課税の見直しに際し、ボランティア貯金の利子に対してはより最良の方法について再検討するものとする。」これは平成五年が目途になっております。  もう一つあります。「政府は、ボランティア貯金の趣旨に基づき、ボランティア貯金の寄付に係る税相当額を勘案し、一般会計歳出面において、大蔵、郵政両省間で協議し、適切な措置を講ずることとする。」この「適切な措置」はどういうふうに具体的に講じられておるか、お示しをいただきたい。
  22. 吉高廣邦

    ○吉高説明員 今先生の御指摘の件につきましては、平成三年度予算におきまして、平成三年度の期待される税額というのが一億数千万程度あるだろうという想定のもとに、郵政省所管一般会計におきましてODAといいますか、途上国援助といいますか、それにかかわる意味で、放送番組につきまして途上国へ何かその吹きかえをするとか、そういった関係での経費に若干増額を見ておるという実態でございます。
  23. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大蔵省、お見えですか。――はい。  今お話がありましたように、私はもう議論を蒸し返すつもりはありませんけれども、もう既に実際の問題としては郵政省との間で、利子相当とは言わないが、ある程度のものを一般会計で補てんをするという形で処理をされておる。非常に結構なことだと思いますが、それならば明確にこの平成五年の見直しに当たってどういうふうな措置をおとりになるお考えか、聞かしておいてもらいたいと思います。
  24. 小川是

    ○小川説明員 ただいまお話のありました国際ボランティア貯金の利子非課税の御要望につきましては、先ほどお話がありましたように、昨年の国会でもいろいろ御議論があり、私ども主税局の立場からこの御要望に対する問題点を御説明したところでございます。  先ほどお話がありましたように、御承知だということですのでくどく申し上げるつもりはございませんが、二つの基本的な問題がございまして、一つは、現行の利子課税制度が、昭和六十二年の秋の見直しに伴いまして、源泉段階で課税を終える、そこには特別の政策的措置を、例えば老人に対する措置を除きましてとっていないということが一つでございます。利子課税のあり方。  いま一つは、寄附金税制と申しますのは、これは所得に対する課税の問題ではございませんで、先ほどもこの寄附金で十一億というお話がございましたが、寄附金をされるという私どもの日常活動は、税金を納めた残りのいわゆる可処分所得から寄附金が行われているわけでございます。そこで税制上は、ある種の公益的な寄附金を奨励するために、一年間の所得の中から、そうして行われた寄附金を課税所得の計算上控除をするというのが現行の寄附金控除の制度でございます。また、一万円を超える分についてだけ控除をするという制度になっているわけでございます。  そうした基本的な考え方からいたしますと、今おっしゃったように、例えば十一億円の寄附が行われている、その見合いの税を何とかできないかというのは税制上なかなか対応しがたい。寄附というのはあくまでも十一億円というのが寄附金として拠出されているという点を御理解いただきたいと思います。  なお、五年見直しの点につきましては、確かにそのようなことになっておりますので、これまでの議論も踏まえながら、また課税上の原則との調和がとれるのかとれないのか、できることできないところ、私どもの立場も十分御説明しながら、その見直しの段階で検討をしてまいりたいというふうに思っております。
  25. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 いろいろおっしゃいますが、もうこれで議論をするつもりはないんですけれども、現に利子課税に対する非課税制度というものはあるわけでしょう。御老人の方々等の場合に郵便貯金の非課税制度があり、あるいは民間の貯金の場合にも税金を取らないという控除の制度がある。現にあるのですから、所得になる前に税金を取るんだから、だからだめだということは、所得になる前に明らかに今非課税の制度は存在しておるし、一万円以上という制度もあるわけですね。  ですから、これは絶対にだめなんだという理屈は、現行法制上手続として非常に煩雑であるとかということはあり得ても、だから所得の前に取る税金だからだめなんだということはなくて、それはあなた、現行でも非課税制度はあるじゃないですか。あるいは所得になる前に非課税になっちゃうじゃないですか。だから、そういう制度をとれないということはどこにもないでしょう。  したがって、これは検討課題ですから、五年先に見直すということ、これは与党の自民党のお偉方がみんなで一緒に決めておるんですから、さっき申し上げましたが、責任者は大蔵大臣であって皆さんが責任者じゃないわけですから、そこのところを間違えぬようにちゃんとこう決めておる。大蔵事務次官が決めておるわけですから、したがって、現行でさえそういう配慮をしておるわけだから、五年先の見直しには十分考えてやってくださいよ、こう申し上げておるわけです。いいですね。
  26. 小川是

    ○小川説明員 ただいまございます老人のいわゆる貯蓄に対する非課税制度との違いだけは御理解をいただきたいと思いますが、この非課税制度というのは、利子の所得に対して本来なら税金がかかって税引き後で利子所得が入るところを老人等に対する所得稼得上の特別の配慮として非課税にしているというものでございます。  今問題になっております寄附金の問題につきましては、所得の稼得の問題ではなくて、人々がある公益的な目的のためにお金を支出する、つまり支出活動の中においていいことをした場合には、その人の全体の所得の中からその分については控除をしてはどうかという話でございます。したがいまして、支出と結びついた非課税というのが寄附金の問題でございますし、老人の非課税の問題というのは手取りの所得をふやすという制度でございます。その制度の違いのところだけはひとつ十分御認識をいただきたいと思うわけでございます。(阿部(未)委員「五年後のことも聞いておるんだよ」と呼ぶ)  五年後のことにつきましては、先ほど申し上げましたように、所得税法等の一部を改正する法律の附則におきまして、施行後五年を経過した場合において見直しを行うものとされております。したがいまして、御指摘の問題につきましては、この利子課税の見直しに際し取り扱いが議論の対象になるというふうに思いますが、その場合には、繰り返しになりますが、先ほど申し上げたような問題を十分検討する必要があると考えております。
  27. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 議論をすれば長くなりますが、今でも一万円以上の寄附については税控除というのが別に設けられておるはずですよね。だから、できぬというのはおかしいのであって、国民の皆さんの善意に対して何らかの配慮をすべきであるというのが私はあなた方の立場じゃなければならぬと思うのですよ。  自分のもらえる利子を国際的な協力のために寄附をするというのに、そこからまた税金を取るというのはいかがなものか。だれが考えてもそうだからこういう申し合わせができておるわけですから、現行法制上こういう解釈だということを聞いておるのじゃないのですよ。できるように措置をしてください、こう言っておるのですよ。もう議論はしませんが、わかりましたね。  もう一つ伺っておきます。  かねて郵政省は、高齢化社会に対応するために老後の生活設計等を考えて、退職金等を対象にしてシルバー貯金というような名前を仮につけておったようですけれども、限度額を一千万ぐらいまで引き上げて、老後の生活設計に資するために現行のお年寄りの三百万を一千万ぐらいに引き上げたいという、いわゆるシルバー貯金制度なるものについて、その後どう進めておるか、これに対応する大蔵省はどういうお考えか、両方のお考えを聞きたいと思います。
  28. 松野春樹

    ○松野説明員 先生も十分シルバープラン貯金の中身につきましては御了知いただいているところでございますが、私どもの考えとしては、やはり郵便貯金といたしましても国民の自助努力による老後の生活資金の準備を積極的に支援したいということで、かねてからこの要望を出してきております。昭和五十六年度予算編成時以来もう十年間になるわけでありますが、平成三年度予算要求時におきましてもこのシルバープラン貯金の創設を要求したところであります。残念ながら実現を見ておらないわけであります。  その議論はいろいろ実は行われておるわけでありますが、要約しますと、やはり二つの点がなかなか対立が解けない。一つは、先ほども先生お触れになりましたが、預入限度額を一般の貯金の預入限度額と別枠で一千万円という内容が一点と、それから利子課税につきまして軽減税率一〇%を適用するという内容をこの要求の中に盛り込んでございます。ここらが、そのほかにもいろいろ議論はあるわけでありますが、主として対立する点であります。  ただ、今日的にこう見てまいりますと、私ども国営の金融機関でございますが、先ほど申し上げました老後の生活資金の準備を積極的に支援したいということはむしろますますその意味合いが強くなってきておると考えておりまして、これは私どもの要求の仕方につきましても、いろいろ反省もし、さらに検討を加えた上で、この貯蓄商品の実現に向けまして引き続き一生懸命努力してまいるつもりでございます。
  29. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大蔵省はどうですか。
  30. 小川是

    ○小川説明員 シルバー貯金の利子の非課税限度額の引き上げという問題でございますが、現在老人等の預貯金等につきましては、利子非課税制度がございます。郵便貯金の非課税制度で三百万円、このほかにいわゆる少額貯蓄非課税制度として三百万円、さらに少額公債非課税制度として三百万円ということでございますから、老人の方々が御利用いただける利子非課税制度としましては合計で九百万円ということになっているわけでございます。この限度額を引き上げるということにはいささか問題があるというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、先ほどの問題も同様でございますが、利子課税のあり方につきましては先ほど申し上げたようなことで、先般の改正後五年をもちまして見直しを行うことになっております。その意味におきましては、ただいまの問題も見直しの中の一つの検討課題とはなり得るものであろうかと思います。その際の問題点は、繰り返しになりますが、先ほど申し上げたようなことでございます。
  31. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大蔵省のお考えはわかりました。  希望としてもう一遍申し上げておきますが、いわゆる高齢化社会に対応して、お年寄りの皆さんの生活プランを組む上で、ある程度普通の人とは違う預金に対する非課税というものを額、枠をふやす必要がある、私はこう思っておりますので、せっかくひとつ次の改正に向けて、現行の制度にとらわれることなく新しい発想で取り組んでもらいたいと思っております。  次に、保険の方のことをちょっとお伺いいたします。  トータルプランしあわせというのを最近販売をされることになったようでございますが、これは保険と年金をあわせてやる内容のようでございますけれども、最近の状況はどういう運行の状況になっていますか。
  32. 西井烈

    ○西井説明員 お答えいたします。  先生御指摘いただきましたトータルプランしあわせ、これは保険と年金の統合した商品でございますが、本年の四月一日から販売をいたしておるところでございます。一カ月、四月中の販売の状況でございますけれども、件数にいたしまして約一万一千件、新規契約に対する全体の割合としては一・四%、保険料額、金額にいたしますと新規契約の大体三%ちょっと超えている、こういう状況でございまして、時代のニーズにマッチした商品ということで好評に迎えられるというふうに認識をいたしております。
  33. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 この加入の額は、たしか五百万円以上じゃないのですか、そこをちょっと……。
  34. 西井烈

    ○西井説明員 先ほど申し上げましたような商品の趣旨を勘案いたしまして、最低の保険の加入金額は五百万円ということにいたしております。
  35. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで、ちょっと大蔵省の方も問題があるのですが、今簡易生命保険の加入総額制限はたしか千三百万円ぐらいだったと思うのですけれども、この五百万円というのは、その総額制限千三百万の枠の外ですか、内ですか。
  36. 竹内克伸

    ○竹内説明員 ただいまお話がございました簡易保険の限度額、昭和六十年末に議論がまとまりまして、六十一年九月から、いわゆる通計制度を使った場合におきましては千三百万ということになっているわけでございます。お話しの点もその中に含まれているということだと思います。
  37. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そうしますと、今一千万の保険契約をしておるお方がいわゆるトータルプランしあわせなるものに加入しようとすれば、保険契約の総額は千三百万を超えてしまう。したがって、契約できなくなってしまう。せっかく立派な制度ができたのに、別枠でないために、総額制限で抑えられて加入したい人もできなくなる、そういう心配はありませんか。
  38. 西井烈

    ○西井説明員 お答えいたします。  ただいま先生が例示でおっしゃられた件について申し上げますと、いずれにしましても現在の制度では、通計制度含めまして最高千三百万円でございますので、一千万円入っておられますと、確かに最低五百万円のトータルプランでございますので入れないということになろうかと思いますが、私どもといたしましては、契約の増額変更制度というものも設けておりまして、既に御加入の分も合わせまして千三百万円の範囲内で、契約の変更を含めましてトータルプランしあわせに入るという制度的な道も開いてございますので、御理解をいただきたいと思います。
  39. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 問題は二つ。一つは、今日の経済情勢の中で総額千三百万という制限がいいのか悪いのか、これを引き上げる意思があるのかどうか、これは郵政と大蔵両方に聞きます。  それから、せっかく新しい制度ができたけれども古いものと組み合わせなければ、五百万という限度があるものだから、逆に千三百万という限度があるものだからどうにもならない。これは別枠で扱うかどっちかの方法をとらなければせっかくできた新しい制度が十分に生かされない心配があるという点と、もう一つは、全体的に保険の千三百万という総枠は今日の社会情勢の中で妥当であるかどうか、この点についてお考えを聞きたいと思います。
  40. 西井烈

    ○西井説明員 お答えいたします。  保険の限度額の見直しにつきましては、平成三年度予算の重要施策といたしまして、年金とあわせまして私どもといたしましては見直しということで引き上げの要求を出したところでございますけれども、年金につきましては御案内のとおり十年ぶりに引き上げが認められましたが、保険についてはいろいろ論議がございましたけれども、残念ながら成案を得るに至らなかったというのが現状でございます。  ただ、私どもといたしましては、保険の限度額につきましても社会経済環境の変化あるいは保険としての保障機能を十分果たすために必要な額というようなものも念頭に置きながら適宜見直していくということが必要ではなかろうかというふうに考えておりまして、今後とも関係機関と十分話し合いをいたしまして一層理解を深めて努力してまいりたい、こんなふうに思っておるところでございます。
  41. 竹内克伸

    ○竹内説明員 今郵政省の方から御答弁がございましたように、今年度予算編成過程でいろいろ議論があったわけでございます。六十一年の九月に今の額になっておりますが、その後の物価の動き等々経済の動き、あるいは平均的な加入者の方の保険金額の状況、制度の趣旨等々いろいろな角度から、今直ちにこの総枠を見直す必要性は乏しいのではなかろうかというような議論を私どもとしてはしてきたわけでございます。
  42. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 かなり前向きのようでございますから、せっかく今後も努力をお願いしておきたいと思います。  次に、NTT、お見えになっていただいておりますか。それでは一つだけ聞きたいのですが、日本電信電話株式会社法附則第二条に基づき講ずる措置の推進状況というのを私いただいておるのですけれども、郵政省の方にも伺いたいのですが、ざっと眺めてみて、たくさんの項目がありますけれども、今NTTにとって最も大きな取り組みとなるのは、一つは事業部制を徹底させるというこの内容の問題。もう一つは、これは大体進んでおるようですが、移動体通信業務を分けるという問題ですね。それと単位料金区域の問題が出て、この三つぐらいが特にNTTとしては大きい問題かなと思っておるのですが、その中で事業部制の導入が非常に急がれておるようでございまして、もう直ちに来年の四月までには何とかしたいとなっておるようですね。  そうすると、これのねらいは当然公正、有効な競争であるけれども、しかしその中に含まれておるのはいわゆる長距離通信事業と地域の通信事業を可能な限り区別をして、その収支についても明確に分けた経理をするとまで言いませんが分けてみたい、これが趣旨のようでございます。  ところが、もう既にこれは新聞等で広域加入区域に変わるんだとか、単位料金制と一緒になっていろいろなうわさが流れておるようですが、これは要するにすぐ取り組む、来年の四月までやる、こうなっているのです。単位料金区域の問題については今からの検討課題でまだ率なんかわからない状況ですね。問題になるのは、いわゆる公正な競争をするためには、NTTの場合、長距離電話の収入と今まで言われた市内通話、単位料金制度の収入で、単位料金制度の方の収入は低いけれども長距離電話の収入でこれを賄ってきた、だから長距離電話が比較的高い、こういう経過になっておったと私は思うのです。  ところが、そこに新規参入が出てきて公正な競争をしなければならぬとなれば、長距離電話の料金についても当然NTTは検討しなければならぬ状況になっておる。それならば、むしろ単位料金制の問題を先に考えて、その上に立って事業部制の徹底というものがある方が順序としては正しいのではないか。とりあえず今の市内料金はそのままの形で、問題のある長距離と単位料金の問題をそのままにしたまま事業部制を徹底してみても、数字は出てくるかもわかりません。数字は出てきても変わるところはない。変わるとするならば、むしろ単位料金制度の方を先にやって、その上に立って長距離通話料がいかにあるべきかということを公正な競争に持ち込むべきではないか。順序が逆ではないかという気がするのですが、そこだけひとつ答えてください。
  43. 神林留雄

    神林参考人 お答え申し上げます。  今の件については、あるいは郵政御当局さんの方のお話が先かと思いますが、私に特に御指名がございましたので、一応私どもなりの考え方を申し述べさせていただきます。  先生の御指摘はまことにごもっともでございまして、事業部制の導入、これはたくさんございますけれども、基本的には先生御指摘のとおり電話事業を中心としたものについて市内外、この内外というのは今のMAを変えるという、単位料金区域を変えるという意味ではちょっと言葉が適切じゃないので、もう少し適切に言いますと、長距離事業と地域事業、この辺をどう分けていくかというのが問題の中心でございます。  今まで私どももそれなりに分けておりましたけれども、はっきり言うと、もう少し厳密に、それからさらには長距離というのはどこの部分か、あるいは地域というのはどこの部分か、こういったものを区分けしまして、これはもう結果的には、先生お聞き及びかと思いますが、県内を地域にしようじゃないか、それ以外を、県間を長距離にしようじゃないか、こんなような整備が図られておるわけですが、こういった区分に従ってあらゆる財務関係、収支区分等を明確にしていこう、こういうことでございます。  これはもう先生御指摘の単位料金区域のあり方と非常に密接に関係しております。どっちが因でどっちが果か、お互いが因果関係という関係にあるかと思いますが、事業部制の区分けというものはどちらかというといわば事業者サイドのいろいろな取り決めでできるといいますか、対処できる問題でございます。どういった格好で資産を区分しようか、どういった格好で事業部制の区切りを切ろうか、こういうことでございます。  そういうことで、昨年、大体基本的に郵政御当局と区分けの考え方がまとまりまして、今細部やっておるわけでございますけれども、この単位料金区域をどうするかという問題はずばり料金のあり方と関係しておりまして、ということはユーザーの皆様方とずばりかかわるものですから、端的に言うとなかなかフレームを、形をつくるというのは難しゅうございます。やってないというわけじゃございませんで、私どもは私どもなりにこんなようなことでやっていきたいという案を厳密に言うと今策定中でございますが、そのプロセスでは幾つかの考え方を御当局の方にもいわば非公式な形でお話ししております。仄聞いたしますと、御当局の方でもいろいろこの問題について御検討するようなフレームをおつくりになって近くお進めになるということでございます。  そういうことで、一方はお客様の利用条件、料金とずばり大変絡むものですから、若干跛行的に進んでおるというのが実態でございまして、その辺を御理解いただきたいと思います。私どもとしても一生懸命これを詰めていきたいと思います。  以上、お答え申し上げました。
  44. 森本哲夫

    ○森本説明員 郵政省の考え方を申し上げさせていただきたいと思うのでございますが、御案内のとおりこの電気通信改革、昭和六十年に行いましたのは、従前の独占であった電話というものに競争原理を入れて、その競争の中からできるだけ利用者に安い料金でそして多彩なサービスを受けてもらおう、こういうことでございましたが、当時、臨調答申というものを背景にいたしまして、必ずしもその臨調答申どおりの改革ではなかったということもございますし、その改革を五年たってどういう競争状態になっているかということも見なければならぬ、こういうことで附則が生まれて、お示しのように去年の三月にその結論を出したわけでございますが、お話しのようにたくさんの項目が政府措置に盛られておりまして、二十数項目になります。ただいまNTT等の方からもございましたように、この二十数項目のねらいはただ一つ、できるだけ安い料金をどう提供するかということでは手段、方法はたくさんあるわけでございますが、目的は一つでございます。  そこで、一つ問題になりましたのは、今の競争の実態が非常に変わった市場構造になっている。つまり、NTTの市内電話には法律上競争を許したのですが、事実上ほとんど入ってない。そういう独占状態にあるにかかわらず、そこにもってたくさんの長距離事業者あるいは自動車電話事業者が生まれて、それに接続をしてもらっておる、そういう問題でございます。  しかも一方、NTTは、その独占部分と競争部分とあわせ持っている。この辺をひとつ整理をする必要があるということで、長距離事業部ないし移動体事業部についてはいわば市場構造のあり方をぜひ構築する必要がある、その中から正しい競争が生まれるであろう。ただし、これは大変年月のかかる問題でもあるということで、先ほどお話しのように、まず基本の枠組みを大変一生懸命急いで、おおむね合意点に達して、具体的にこれからその筋道に向けての最後の整理をいたそう、こういうことになっておるわけでございます。  料金の問題、これもねらいの一つでございますが、具体的には、遠距離料金は競争の結果だんだん下がってまいりましたが、近距離の方はなかなか必ずしも現実にはそう急激な変化を見ていない。これには現在のMAという三分十円でかけられるあり方が昭和三十七年以来そのままになっておるという問題がございまして、これは大変難しい問題でありますが、できるだけ今日の通勤とかあるいは産業、経済の交流の実態に合わせてぜひ見直す必要がある、その中で近距離通話全体の問題を考える必要がある、こういうことでございます。  ただ、このMAについていろいろな考え方があって、今NTTからも御議論がございました。私どもも基本的にひとつ抜本的な勉強をしたいと思うのですが、この問題、若干ほかの問題と跛行をいたしております一つの理由は、もしMAをいじるとなると交換機の大幅な改修という問題が出てまいる。これは政府の措置の中でもディジタル化の前進ということで、これについても大変NTTに御努力をいただきまして、平成六年にはアナログ交換機を全滅させるという計画でございますので、そうしたことになりますと、ある意味でソフトをいじるということでMAの問題の解決ができる余地が生まれるのではないか、こんなにらみもございますので、関連する部分が非常に多いこと、そして今も言いました交換機の問題等々にらみまして、今から本格的に、精力的に近距離通信の問題についての勉強を始めたい、こんな状況に相なっておることを申し上げます。
  45. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 非常によくわかりました。  ただ、一般のユーザーから見れば、公正な競争で目に見えるのは、一つはサービスがどうなのかということ、もう一つは料金が高いか安いかということ、これが一般のユーザーから見た場合の電信電話事業に対する要望になると思うのですね。  その意味からするならば、事業部制の徹底というのは、おっしゃるように機構をひとつ変えていこうという内容になっておって、料金そのものにはほとんど影響がない。ただ、区分けはできるでしょう。市内料金はこの程度になるとか、長距離電話の料金はこのくらいというのはわかるでしょうけれども、事業部制の問題は、料金そのものにさわろうという趣旨ではないですね。  しかし、こっちの単位料金制度の問題は、これは長距離電話の通話料、区域をどう決めるかは別にして、この区域の決め方によって非常にいろいろな問題は出てくるが、これは急がなければならない問題ではないか。どうも料金の方は急いだ方がいいのじゃないかという気がしたのですけれども、おっしゃるように、交換機の問題等技術的な問題もありましょう。しかし、少なくともユーザーは二つのことを期待しておる。一つは、サービスがよくなるかどうか、もう一つは、料金が安くなるかどうか、そのことを念頭に置きながらせっかく協議を続けてもらいたいと思っております。  最後になりますが、NHKお見えになっておりますね。  NHKにお伺いしますが、きょう実は私はぜひ会長さんに御出席をいただいて、会長さんの抱負なりいろいろお伺いしたいと思っておったのですけれども、幾ら理事さんでも会長さんのお考えをそのままここで述べることは困難だと思いますから、したがって細かい点はあれしますが、まず、NHKの財政の方は、平成二年度予算で大幅な受信料の値上げを行いましたが、いわゆる五年計画ですか、中期的な見通しで今どういう状況ですか。
  46. 竹中康

    竹中参考人 お答えいたします。  先生御存じのように、平成二年度に六年ぶりに料金を改定していただきまして、ただいまは一年過ぎ三年度、二年目にかかっているところでございます。この経営計画の初めの部分、非常に大切なところでございますので、初めから引き締めてまいっておりまして、業務の徹底的な見直しを行うとともに効率経営を進めまして、健全な財政運営に努めているところでございます。  今から最終年度の見通しを述べることはやや難しいのではありますが、私どもとしましては、経営の中心に、低い受信料で視聴者の方々になるべく負担をかけないということ、しかも一方で、時代の変化に相応した放送を出していくということを置きまして懸命に努力しているところでございます。  以上でございます。
  47. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで、実は去年、いわゆる平成二年度のNHK予算が国会で審査をされたときに、料金の値上げについては各党の中にかなり反対の強い意見がございました。私ども社会党も承認することについては反対の態度をとったわけでございますけれども、なぜあの値上げについて強い反対の意見があったのか、どういうふうにNHKは受けとめておられますか。
  48. 竹中康

    竹中参考人 お答えいたします。  昨年、料金改定に際しまして、衆議院の逓信委員会で御議論をいただきまして、受信料改定の必要性とか改定の幅、それから今先生御指摘の、どうして提出がおくれたのかということも非常に議論されました。それから、視聴者の理解あるいは納得を得る努力、そういうシステムをさらに強める必要があるという御指摘もいただきまして、さらに附帯決議といたしまして、経営の方針とか経営の内容を国民の皆様にわかるように積極的に理解を求める行為が必要だという点、あるいは新しい受信料額の定着、それから受信料制度全体への理解を得る、そういう努力をしなさいという附帯決議をいただいております。  この料金改定に当たりましては、有識者から構成しましたNHKの長期展望に関する審議会の審議あるいは提言を踏まえまして、慎重に我々としては、先ほども申し上げましたように、受信料は安ければ安いほどいいわけですから、低ければ低いほどいいわけですから、ぎりぎり詰めまして、これだけはどうしてもというところの作業を徹底的にやりました。そういうこともありまして提出はおくれたわけでありますが、この受信料改定につきましては、その後の経営広報番組あるいは広報の日常活動の中で視聴者の方々に御理解をいただく努力をいたしてまいったところでございます。
  49. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 郵政省の、このNHKの平成二年度予算は、いつ国会に提案をされて、何日に衆議院の逓信委員会で採決されておりますか。
  50. 桑野扶美雄

    ○桑野説明員 平成二年度のNHKの予算につきましては、国会提出は三月二十日であり、衆議院逓信委員会での質疑が三月二十七、二十八日に行われ、採決は三月二十八日に行われたところでございます。
  51. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 これは大臣、あなたおいでにならなくて、就任される前でしたから、経過は余りよく御存じないと思うのですけれども、公共放送NHKの料金が、経営が成り立たないならば料金の値上げもやむを得ぬと我々は思うておるのですよ。しかし、少なくとも、十分な時間をかけて国会で議論をして、国会でこれほど議論をした結果、全党一致でやむを得ないと認められるような、そういう審査の仕方が欲しい。ところが一週間ですよ。国会に提出して一週間の間にこれを通せというのです。それはむちゃだ。  国の予算だって暫定予算を組んで慎重に審査をする世の中に、NHKの予算だからといって、一週間の間に通してしまえ、そんなむちゃな話があるか。もう少し時間をかけて議論をし、国民の了解を得た上で採決する、その場合、我々も賛成したいと思っておりましたから。そういう意向であったにもかかわらず、わずか一週間で、率直に言ってかなり強引に、予算さえ通ってしまえばそれでいいんだ、こういう姿勢が許されないということを、これは特に私は会長に申し上げておきたかったのですよ。だから会長に出てくださいと言ったのですが。  ちなみに、公共放送NHKは、視聴者の間に問題のある料金値上げについて、例えば放送法四十四条の第二項のところにありますが、「協会は、公衆の要望を知るため、定期的に、科学的な世論調査を行い、且つ、その結果を公表しなければならない。」例えば放送討論会もありますね。いろいろな世論調査もおやりになっております。NHKの料金の改定がいいか悪いかという世論調査をなぜおやりにならないのですか。それが一番民主的な方法であり、世論調査はこうなっております、それは国会の審査に当たっての非常に大きい参考になると私は思うのです。  自分のところに都合の悪いことはNHKはやらぬじゃないですか。ただ通せばいい。あなたに言うのは酷なんですね、本当は。あなたに言うのは酷は酷だが、だから、島会長、きょう絶対出てくれと僕が強く要望したのはそこにあるのですけれども、今申し上げましたように、十分な時間をとって議論して、公共放送であることを理解してもらい、料金値上げもまたやむを得ないんだという国民の同意を得てやるべきことを、何にもやらずに国会さえ押し通せばいいというこのNHKのやり方は、どうしても私は納得ができない。一体NHKはどう受けとめておるのだろうか、そのことを実は聞きたかったのですけれども、あなたにもうこれ以上言ってもそれは酷でございますから、これ以上は言いませんけれども、会長にそれをよく伝えておいてください。  それから、続いてお伺いいたしますけれども、時間がないから衛星だけ一つ聞いておきましょう。  大臣、私はかねてから、衛星放送に当たって、国の機関としては科学技術庁があり、そこが宇宙開発事業団にいろいろな宇宙開発の仕事をやらせる、これが大体開発の仕事である、NHKとか放送事業者というのは、これは放送事業者であって、開発を行う機関ではない、こう考えておったのですけれども、当時、たしか小野会長だったと思うんですが、難視聴地域がたくさんある、まだ五万世帯ぐらい残っておる、これを救済するために衛星放送を始めたい、ついては放送衛星を打ち上げる。これに宇宙開発事業団と一体になって、当時六百何十億の六〇%を負担して打ち上げをやった。これは危険ですよ、しかもこれは難視聴解消だけではペイしませんよと随分私は当時申し上げて、したがって、できるならば開発は宇宙事業団に任せる、宇宙事業団が開発した星をユーザーとしてNHKは金を払って使う、他の放送事業者も金を払って使う、そういう方法が考えられないかということで、検討課題としていろいろ御議論をいただいておったようですが、どうも最近の情勢では、アメリカが三〇一条を適用してどうだこうだというような難しいことになっておるようですから、言ってみてもしようがないのですが。  ただ、私は、NHKは開発をやる機関ではない、あくまでも放送事業者であるという基本的な姿勢は忘れてもらいたくないと思っておるわけです。きょうは事業団の方にも来ていただいておるのですが、時間が来たようでございますから、大臣、これらの点について。  もう一つ、郵政省とそれからNHKに言っておきますが、私は、これは二十年来の国会における主張でございます。放送法によって、国はNHKに国際放送を命令することができる、その費用は国が負担する、こうなっております。ところが、もう一つNHKは自前で、いわゆるNHKの放送として国際放送をやる。どこからどこまでが命令された部分か、どこからどこがNHKのいわゆる自前の放送なのかということが区別ができない。したがって、国から費用を負担してもらう国の費用の算定が非常に困難で、年々折衝していかなければならぬ。  そういう状況にあるので、これは、明らかに国の命令部分は、例えば国際放送総予算の四割は国の負担とする、六割はNHKの自前の負担とする、そういう枠をつくって、自今、総枠さえ、国際放送全体の予算さえ決まれば、その四割は国ですよ、その六割はNHKの自前ですよ、こういうふうにやったらどうですかということをもうずっと提言をしてきて、いろいろ検討していただいているんですが、実に百年河清を待つで、まだ今日何にも結論が出ていないようです。この問題をどう考えておられるか、あわせて答弁を願いたいと思います。
  52. 竹中康

    竹中参考人 お答えします。  今日の日本の国際社会での役割はますます強まっていると存じます。こうした中で国際放送の充実が求められているわけでありまして、NHKとしてもこれに努力をしてきたわけでございますが、この八俣の送信所のさらに拡充整備、それから中継基地を海外にさらにふやすというような点につきましては、膨大な経費がかかります。これを受信料で賄うのは大変無理がある、現状でも事業支出の一・六%を国際放送に充てておりますが、そろそろ限界かなというような感じがいたします。したがいまして、政府に対して、この交付金の増額を求めている次第でございます。  先生の御指摘の役割の明確化という点につきましては、私どもも、現状においては直ちに実行できるとは申し上げることはできませんが、今後のあり方としてさらに検討させていただきたいと存じます。  お答え申し上げました。
  53. 関谷勝嗣

    関谷国務大臣 先生御指摘の問題、るるございます。  まず衛星放送の開発の問題でございますが、これは先生御指摘のように、BS2とかあるいはBS3にいたしましても、資金の有効利用を図るという観点から、実用と開発を相乗りでやっておるということが現状でございます。そこに、先生御指摘のように、開発は開発できちっと分離すべきではないかというような御指摘でございますが、最近のいろいろな打ち上げの結果を見ましても、いささか私も、そういうようなこともまた今後考えていかなければならないのではないだろうかというような考えも持っておるというのが正直のところでございます。  それから、衛星放送は、先生御指摘のように、当初は難視聴を解消するということからスタートをしたわけでございますが、それにあわせまして、総合、教育番組としてのこれも行えることと現在いたしておるところでございます。  それから、国際放送の充実、そしてまた費用負担等々につきましては、これはもう先生が今日まで委員会で何度となく御指摘をしていただいておる問題でございまして、先般の湾岸紛争のときの問題も含めまして、あのときは特別に追加予算を出したわけでございますが、十分なものとは思っておりません。こういうような、ますます真の日本の姿を諸外国に理解をしていただくというその目的から考えましても、ぜひ私はもっと予算を十分に出す、NHKの負担だけではなく、予算の方を大きなものにするよう今後努力をしていきたい、そのように考えております。
  54. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それでは、もう時間が来ましたから終わりますが、実は放送衛星についても非常に問題があるわけですよ。例えば、今放送衛星のBS3aを使ってやっておるのが、何か電波が一つだめになって二つしか使えない。そこでバックアップでHを上げたらHは失敗した。しょうがないから、もう寿命の尽きた2bを使う、こういう何かいろいろあって、しかも電波が夏の間故障が多くて、視聴者に相当な迷惑がかかってくるのじゃないか。この辺の衛星の使い方、特にNHKと民放のチャンネルの分け方、いろいろ聞きたかったのですが、約束の時間ですから、これを守らぬとまたしかられますから終わりますが、これはひとつ、衛星の問題については監督官庁である郵政省も十分意を用いて、この間、桑野さんの何か文章があったから見たら、桑野さんは立ち会いかと思ったら立ち会いじゃなくて、あれはこういうことがあったというのを知らせただけだったのですね、放送衛星の使い方については。僕はあなたが立ち会ったのかと思ったが、郵政省が立ち会うくらいの姿勢で、これからの衛星の利用については視聴者に迷惑がかからないように骨を折ってもらいたい。  そして、せっかく御出席を願ったけれども、科学技術庁、それから宇宙開発事業団に質問をさせてもらう時間がございませんでしたので、これはもうおわびを申し上げて、質問を終わります。  以上です。
  55. 渡辺省一

    渡辺委員長 上田卓三君。
  56. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 まず、安倍晋太郎先生が御逝去されまして、心よりお悔やみ申し上げたい、このように思います。また、大変御関係のとりわけ深い吹田自治大臣に今後ともひとつ大いに御健闘を御期待申し上げたい、このように思います。  さて、私の質問時間は一時間でございますので、部落問題にかかわる質問を集中してお尋ね申し上げたい、このように思うわけでございまして、三大臣には何かと公私とも御多用のところ御出席を賜りまして、大変感謝申し上げておる次第でございます。  さて、多くの人は、一人は万民のために、あるいは万民は一人のために、こういう言葉も言ってまいりましたし、また人の命は地球よりも重いという言葉もあります。それだけ人間の命のとうとさ、人権の大切さというものを表現した言葉であろう、こういうように考えるわけでございます。  とりわけ、一昨年から起こっておりますソ連・東欧での自由化の嵐、こういうものを一つ見ましても、やはりいかに主義主張はあろうとも、いわゆる人権というのですか、人権のその中心的な、いろいろあるのですけれども、その中の言論、出版の自由、そういうものの言論統制というのですか、あるいは民主主義、そういうものがおろそかにされるとああいうような状況にもなり、ひいては経済の抑圧にもなってくる、こういうことではなかろうかと思うわけでございます。  さりとて、欧米なり日本がどうだ、こういうふうに喜んでばかりはいられないわけでございまして、欧米なり日本においても人権問題というものは大変いろいろ問題を抱えておるわけでございまして、ややもすれば人権外交という言葉で政治に利用される向きもなきにしもあらずでございますけれども、やはりこういう問題については超党派で、だれが言っているからどうだというのじゃなしに、前向きに取り組んでいく必要があるのではなかろうか、こういうふうに思っております。  湾岸戦争一つ見ましても、人間を人間とも思わない、そういう差別思想がああいうような無謀な侵略という行動にも走らせ、またそれを抑制するための戦争が、新たな紛争が拡大してくる。クルド人のそういう難民の問題あるいはクウェートにおけるパレスチナ人の虐殺というような問題までにも発展しておるわけでございまして、そういう意味で、最終的には戦争という手段をとらずに平和的な解決ということがいかに大事か、こういうように思うわけでございます。  しかし、やはり平和の大切さというものを考えたときに、そこに基本的人権、人は生まれながらにして自由であり、平等で、生きる権利がある、この原点を明らかにしなければならぬだろう、こういうように思っておるわけでございます。特に我が国の場合は、貿易の黒字国でございますけれども、諸外国からあるいは国内のいろいろな団体からも日本は人権赤字国であるという不名誉な批判もあることも事実であるわけでございます。  日本が島国で大陸から海で隔たっているというような問題もありましょうが、やはり国際化時代でございますので、地球上に住むものはみんな兄弟、こういうような立場で、国連を中心としたところでそういう仲間の一員として連帯をしていくことも大事かと思うわけでございます。いわんや人間だけの問題じゃなしに、地球上に生存する一切の生きとし生けるものを大事にしていく、そういう思想にまで、地球を守ろうという運動まで今起こっておるわけでございますが、そう言いましても、やはり一つ一つの小さな問題からであっても、全体を眺めていくということが大事ではないか、こういうように思います。  さて、郵政大臣にまず最初にちょっと御質問申し上げたいわけで、あと関連して他の大臣にもお願いを申し上げたいと思うのですが、御存じのように十五、六年前に部落地名総鑑という、全国に散在する未解放部落の地名とかあるいはその部落の歴史とかあるいは現在使われておる地名の町名とかあるいは職業とか、そういうものが明らかにされた図書が興信所とか探偵社とか大手の企業の人事部あたりにひそかに売られておる、高価に売られておる、そういうようなことが買うた方からも、また我々の調査によって明らかになって、国会でもいろいろ議論をされて、ついに買うた方も反省するし、また売った方についても反省するということで、それらしさものがいろいろ全国に出回っておったわけでございますけれども、その後、二年前に法務省が、この部落地名総鑑については一応終わった、こう終息宣言をした経過があるわけでございます。  しかし、その終息宣言が出された前後に、全国のいわゆるアマチュア無線を通じて、パケット通信なるものを通じてひそかに地名総鑑の一部あるいは多くの部分を全国的に陰湿な形でまき散らされて、それらの利用がなされておる、関係者だけでも百件にわたる大小のそういう通信が送られてきたということで、我々のもとに届いておるわけでございまして、それらについては同僚議員からも既に国会で質問があったというように思うわけでございます。  手元にあるこれは大阪の一例でございますけれども、ちょっと読み上げますので、大臣、聞いていただきたい、このように思います。  「この総鑑は、現代の時代の流れに逆行し、企業の人事採用の参考資料として利用していただく為に作成したものです。最近では人事採用にあたり、面接後すぐに採用の是非をしなければ身元調査等の調査をしているのではないかと質疑される時代です。しかし長年培われた会社の方針を即変えるわけにはいかず、信用を重視する会社では特にそのことがいえます。現在の興信所の調査依頼でも九八%がその手の調査です。」こういうふうに述べておるわけです。  「また結婚を控えたお子さんをお持ちの方にも十分利用出来るように編集してあります。地名は旧町名・新町名共に掲載しました。ですから、相手方の本籍を調べれば旧町名であってもすぐ判別出来ます。」  「今日では「一般人でも被差別部落に住んでいる。」と言われる方もいますが、本籍までそこに移すことはまず考えられません。仮にそのような人がいたとしても、もとの本籍地は戸籍に記載されています。」  「結婚は「本人同士の合意のもとに成立する。」と言われますが、本来、家と家の繋がりであるわけです。結婚前に十分に調査をせずに後に親戚等に縁を切られ不幸な人生を送っている人が現にいるのです。戸籍に付票を何枚も付けているような人であれば一考の価値があります。」これは戸籍を幾度も移すと付票がつくという意味でございます。「本籍地は自分の先祖の地です。なのに実際、本籍・出生地を隠すために何十回と本籍地を変えた人がいました。それほどに部落差別は根強いものです。」そういうふうに同情しているわけですね。にもかかわらず、こういうものを出しているところに問題があるわけでございます。  「本書は、このような部落出身に関する悩みを、一挙に」――「悩み」というのは部落側の悩みじゃなしに差別する側の悩みがある、その悩みを「解決することを目的としています。また地名も明治時代からの歴史、現在の町名への移り変わりについて詳しく解説してあります。本書を十分活用し下積み調査をした後、興信所などの調査機関に依頼すれば確信が得られると思います。」  こういうことで、特に「大阪府では全国に先駆け「身元調査お断わり運動」を行なっており、今後このような調査は難しくなっていくのが現状です。大阪府でも被差別部落の町名は秘に属するものであることは言うまでもありません。したがって、この総鑑の取り扱い保管には十分注意し、いやしくも部外者に貸与又は閲覧させることのないよう注意して下さい。」  こういうことで無差別にパケット通信を通じて知らしめているということでございまして、なかなか発信元がわからないということで大変郵政省においても御苦労いただいておることも事実でありますが、やはりこれの防止策というものを考えていかないと、今多くのクレジットカードを通じて云々とかダイレクトメールなどで個々人の秘密に関する個々のデータが売り買いされておる。入学とか進学とか就職とか成人式の日とか誕生日などに何かある日突然デパートから送ってくる。何でこんなデータがあるのだと送られた方がびっくりするというようなこともあるわけでございまして、多くの場合はいい面に利用されるよりも悪用される場合が多いわけでありまして、このパケット通信による今回のことについては全国的に相当な量が出回っておるということでございます。  このように我が国における部落問題は、徳川、それから明治以後に引き続いて、戦後、今なお現実に存在しておる。特にこの問題は、戦前については国においては融和事業十カ年計画ということで抜本的に解決されようと昭和十年ごろから始まったのですけれども、第二次世界大戦の戦費調達というようなこともあり、本当に実施されずに不十分なままで打ち切られたという苦い経験があるわけでございますが、戦後は特に一九六五年、昭和四十年の同対審答申を受けて一九六九年、昭和四十四年に同和対策事業特別措置法という十カ年計画の法律ができたわけで、十年間でこの部落問題を日本の社会から解決する、こういう意気込みはよかったのですが、実際に裏づけになる予算がわずかであるとか国民に対する啓蒙、啓発が行き渡らなかったということで、なぜ同和地区だけそういうような施設が建つのか、改善されるのかということで、逆に逆差別的な、同和だけいい目をしているのじゃないかというような宣伝にもなっている嫌いがあるわけでございます。  その後、その法律が三年延長、その三年延長でも解決がつかないということで、その後、地対法というのが五年でできたわけですが、そのとき吹田自治大臣にも大変お世話になったわけでございます。それでもなお問題が残っておるということで現行の地対財特法というのがまた五年で新法ができたわけでございますが、来年三月三十一日をもってこの法律が切れるということでございまして、本来ならば、もう同和対策の特別対策は要らないような状況になっておれば一番いいわけでございますが、現状は決してそうではない。今のパケット通信による差別事件のような悪質なものが非常に枚挙にいとまがない。  それから、特に郵政省にかかわって申し上げますが、全国の郵便局に大変差別事件が惹起しておるわけでございまして、出身の職員がおるところでは出勤簿に差別用語であるえたという――例えばここに本がありますが、これはAさんの出勤簿です。本当に目がくらんだ、もう出勤簿を見るのが嫌だというような青年の告発が出ておるわけでございますが、あるいは長崎ですか、一重郵便局ですか、特定郵便局ですが、これも二年ほど前のことでございますけれども、この特定郵便局は局長が隣の局を兼務する、局長が一人で職員が一人というような小さなところでございますが、その局長が一重の人間はばかばかりだ。その係の職員が何を言うんですか、訂正しなさい。そうしたら一重の人間はばかばかりだ、えった部落だ、こういうような暴言を吐いておるわけです。一重はそんな部落ではありません。おれはこんなところには来たくなかったんだ、来てやったんだ、こういうようなことで暴言を吐いて、これは過去いろいろ事件になって、それなりの一定の手当てをされておるところでございます。  そのほか、出身の職員のバイクのねじを緩めたり、あるいは局から部落の者は出ていけ、死んでしまえとか、見るにたえない落書き事件なども起こっておるわけでございます。  そういうことで、近畿郵政局だけじゃございませんが、ひとつ郵政省としての、事務次官の通達も過去出ておるわけでございますが、実際その通達はいいのですけれども、その後、非常にそれに反した、何か路線転換とも見られるような現象が出ておりますので、ちょっと今申し上げた点についての大臣の御意見をお聞かせいただきたい、このように思います。
  57. 関谷勝嗣

    関谷国務大臣 先生るる御指摘をいただきましたので、答弁の方も少し長くなるかもしれませんが、上田先生とは当選回数も同期でございますし、生年月日も同じ昭和十三年、地域も同じ関西ということで、私は、きょう先生のいろいろなこの問題に本当に生命をかけて対策を講じていらっしゃる、そのことはふだんから私的な会合でも先生とはるるお話しをしておるわけでございまして、私の地元でもこの問題につきましては県政を挙げて努力をいたしております。  もう私はこんなことを述べるまでもないのでございますが、この解決のためには特別法、それからまたソフトとハードの面からがあるわけでございまして、私は何といいましてもこのソフトの面、きょう井上文部大臣も御出席をされていらっしゃいますが、学校教育でこれをきちっとやっていくということを私の地元などでもやっておりまして、非常にいい効果が出てきておる、私は自負をいたしておるわけでございます。  したがいまして、今基本法をつくろうという御陳情もいただいておるわけでございまして、私はそのときにお答えするわけでございますが、本当に特段ソフトの面においてはこれは基本的にやっていかなければならないと思うわけでございまして、郵政省でも啓発施策は積極的にこれを推進をいたしておるわけでございますが、ただ、近畿地方においてそういうような事故がまだ続いておるというようなことでございまして、私たちも努力をいたしておるわけでございますが、なお一層この問題については徹底して私も指導をしていきたいと考えておるわけでございます。  それからパケット通信でございますが、これも原会長に何度となく注意をいたしまして、こういうようなことが続く限りアマチュア無線の社会での認め方というものがだんだん低下をしていってしまう、大変なことだよということでございまして、JARLの原会長もそういうようなことでこれも特段の努力をいたしておるところでございます。  本当に心ない一部の人たちによってこのような事件が発生をしたということは、本当に私たちの考えでは考えられないことなんでございます。本当に憤りを覚えるわけでございますが、なお一層この問題については努力をしていきたいと思います。  それから、先生御指摘のそういう事件の個々につきましては、官房長の方から報告をさせていただき、その後どのように対処したかを報告させていただきたいと思います。
  58. 木下昌浩

    ○木下説明員 先生御指摘の具体的な事例が出されましたけれども、まとめて申し上げますと、近畿郵政局管内が中心になって発生しておりますが、発生件数といたしましては平成元年五十八件近畿でありまして、全国で六十二件でございますが、平成二年が全国二十五件で、十三件ございます。こういったように近畿管内が非常に多いわけでございますが、事例といたしましては、先生の御指摘の内容のものも含めまして落書きが最も多うございます。それから、はがきでありますとか手紙でありますとかあるいは発言の内容のものもございますが、大変落書きが多うございます。  それが落書きの場合には隠れてこそこそやるものですから、非常に行為者が判明をしないということがございまして、大変私どもこれに対処するのに苦慮いたしておりますが、そういう意味で的確な分析もなかなか困難なわけでございます。しかしながら、推測いたしますと、やはりほとんどが部内の職員が関係をしているのではないかというふうに十分推定できるわけでございます。  したがいまして、私どもの今後の同和対策、同和問題への取り組みといたしまして、やはり大臣も申し上げましたように、正しいこの問題についての理解と認識を職員に十分深めていただくように研修、啓発の充実、これに今までも長年努力してまいったのでございますが、今後さらに一層努力していきたい。こう長年努力してきたにもかかわらずそういった事象が多発するということは、まことに私どもとしては残念に思っておる次第でございます。  今後一層この事案の真相究明に努めるということはもちろんでございますが、地道に研修、啓発の効果が上がるように努力してまいりたいというふうに考えております。
  59. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 この問題は、関係地域が大阪を中心、関西が多いとはいえ、今はもう大阪の人が北海道で住んだり東京で住んだり、東京の人が大阪で住んだり、もう全国がいろいろ交流があるわけですから、だから、多い少ないに関係なく、いつ中央官庁の人などであれば地方に出向というんですか、そういう配転ということもあるわけですから、やはり特に郵政省に関しては、近畿では熱心にやっておるということだけではなしに、全国的にひとつ研修等を強化してもらいたい。そうでないと近畿だけが突出しておかしいじゃないかということになるんじゃなかろうか。  今現実にそういう意味で努力しておられると言うんですが、そういう我々から見ると当然のことをやっておるにもかかわらず、ちょっとブレーキがかかっているようなことで、現場で職員とのトラブルが起こっておるようでございまして、これまた後日、大臣、大阪へよく来られるんですから、関係地区を見ていただくとか、愛媛県は選挙区ですからよく御存じだと思うのですけれども、また近畿郵政局に来ていただいて管理職の皆さん方の意見も当然聞いてもらわなければいかぬし、また関係職員の意見も聞いていただいて、どの辺にそういう問題があるのかということをひとつ究明していただきたい、こういうふうに思うのです。  卑近な例でございますけれども、やはり何をいいましても、今金融の自由化で郵便局も預貯金の勧誘、こういうことで地域に密着した、本当にそういう意味では大企業もありましょうけれども、やはりそういう地元に密着した、何ですか愛のある郵便事業と言うんですか、そういうような形で今キャンペーンをしておるようでございます。そういう点、愛のある郵政事業を局内外で徹底せよ、こういうことのようでございます。  ところが、市民啓発という形で特に熱心な、すべてじゃございませんけれども、一部の局で例えばこういう郵便局のニューMMC三〇〇という通信ですけれども、この中に「思いやる心で明るい社会」、これは何も同和問題に限ってないのですね。「思いやる心で明るい社会」、それが今まで載っておったのが去年の十一月から載ってないのですよ。載ってなかったというのを載せるようになったのならわかるんですけれども、何かおかしいなと。それから、書留郵便などで局へ来てくださいという書類ですね、ここに「地域で語り、家庭で語り、守ろう人権、許すな差別」。何も部落差別に固定してないのですね、一般的な人権、啓発としてやっているわけです。そのことがひいては部落問題の解決にもつながるという、そういう観点だろうと思うのですけれども、それが今発行していただいているものに載ってないのですよ。  それが、事務次官通達は守ると言いながら、実際、近畿郵政局長の、地対室というんですか同対室のあれで所掌事務でないからそういう計画はやめいというような形で、人権週間などにはアドバルーンを揚げて、それはめったにないと思うのですけれどもね、よそではやってないんじゃないかと思うのですけれども、そういう積極的にやっているところについて足を引っ張るというようなことが起こっておるのですが、そういうこと、大臣、聞いていますか。
  60. 木下昌浩

    ○木下説明員 委員指摘の内容に直接お答えになるかどうかわかりませんが、近畿郵政局におきましては、御承知のとおり大変一生懸命この問題に取り組んできた経緯があるわけでございますが、ただいまの例えば市民啓発施策的なものにつきましても、いろいろな場面で取り組んできたように私ども承知いたしております。  しかしながら、例えば郵便局の実態を見ますと、中には自局の業務連行との調和が図られないままに啓発ビラあるいは啓発物品の街頭配布とか、いろいろ聞きますと行き過ぎた事例もあったというような報告もございまして、郵便局として事業運営上ある程度整理する必要があるというふうなことで考えられた措置ではなかろうかというふうに考えておるわけでありますが、今おっしゃいましたように、例えばそういった垂れ幕の問題だとかいろいろあると思いますが、自治体の行う市民啓発活動には今までも局舎の一部を使用していただいて十分協力させていただいておるというふうに報告を聞いておるところでございます。
  61. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 要するに、いいことは奨励するということでないと、やっているところの足を引っ張るということになれば、やっておることが間違っておるのか、こういうことになるわけですから、その点ひとつ。  それと同時に、今までの経過がありますので、急に路線転換、それも十分に職員の皆さん方に説明なしに、あるいは関係団体の皆さん方に説明もなしに一方的にやるということは何か事を起こすような感じがしておるわけでございますので、その点、ひとつ整理をしていただいて、今までうまくいっておったわけですから、そういう点でひとつ大臣の方で十分に配慮していただきたいし、いずれ人事異動の時期でございますが、まだ大臣当分されるようでございますから、ひとつ一度在任中には近畿郵政局に来ていただいて関係地域も見ていただいて、また先ほど申し上げたような形で調整していただいたら非常にありがたい、こういうように思っております。心優しい大臣ですから、余りいじめてもどうかと思いますので、ひとつ十分に意のあるところを御理解いただきたい、このように思います。  それから文部大臣、いろいろ郵政大臣からも今話がありましたように、やはり同和教育ということが非常に大事ではないか。学校教育もあるし、社会教育もあります。しかし、そういう教育もありますが、現実にこの地区のいわゆる教育水準というのですか、そういう教育環境の問題もあるわけですけれども、特に、小中もありますが、高校、大学の進学率の問題等も含めて非常に格差が縮まったと言われておりますが、その中身が相当問題があるわけでございまして、一応大臣としてはこういうような教育格差の問題について、今どのような状況にあって、今後どのぐらいの期間が要るのか、特にそういう心の問題、教育の問題にかかわる問題については私は一朝一夕に解決できる問題ではなかろうと思っているわけですけれども、その点について、先ほどのパケット通信の問題も含めて、部落問題全般についての感想も含めて、ひとつお答えいただきたい、このように思います。
  62. 井上裕

    井上国務大臣 お答えをいたす前に、私も安倍晋太郎先生に御指導をいただいた一人でありまして、お悔やみに対しまして心からお礼を申し上げたい、このように思います。  もう先生がこの問題につきまして各委員会、また私も議事録を拝見させていただきました。この同和問題は憲法で保障されました基本的な人権に係る重要な問題でありまして、また、この問題の解決のために果たす教育の役割というものは極めて大きいという考えを私も持っております。  このために、今まで文部省といたしましては、基本的人権尊重の教育あるいはまた全国的な推進、また地域の実態を配慮した教育の推進、あるいは教育の中立性が守れるよう留意との方針のもとに同和教育を進めているところでありまして、今後ともこの問題につきましてありとあらゆる方法をお願いをいたしたい、また自分なりに勉強していきたい、このように考えております。
  63. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 事務方からもうちょっと答えてほしかったのですけれども、関連して質問しますので、またまとめてお答えいただけたらありがたい、このように思います。  大臣、そういう部落の歴史的なあるいは経済的な置かれた環境から、やはり子供に人一倍教育をつけて実社会に送りたいという気持ちは、人の親ですから、それ以上に持っておるわけですね。ところが、なかなかそれが実現しないということで、行政といいますか、国、自治体も含めていろいろ御協力をいただいておる、国の責務ということもございますが、やっていただいておるわけでございますが、格差の実態、高校、大学進学率一つ見てもまだまだ相当あるんじゃないかと思うので、その実態についてお答えいただきたい。  それから、普通であれば、進学はできなかったけれども、一浪、二浪してまた結局進学する人もおるのですね。ところが、未解放部落の場合は、せっかく高校に進学しても――まずする人が少ない、経済的な理由で働かなければならないということもありますが。せっかくいろいろ御協力いただいて進学しても、中途退学が多いのですね。ところが文部省がこれを掌握してないのですね。だから、入り口ではちゃんと把握しているのだけれども、出口よりもその途中で退学している実態が、悲惨なものがあるということで、やはりそういう中身に大きな問題がある。  それから進学でも、普通の進学というよりも、簿記の学校とかそういう各種学校がいろいろありますが、ああいう部分に行っている場合が多いのですね。すぐ収入に結びつくというような形。だから、そういう意味では、進学率だけで大分縮まっているというように安易に考えることは間違っておるのではないか。あるいはせっかく卒業してもなかなか就職できない。先ほど申し上げたような事情もある。こういうことでございますので、その点についてどの程度わかっておられますか。
  64. 井上裕

    井上国務大臣 高等学校の進学率は平成二年で全国平均九五・一%、対象地域八九・六%でありまして、その差は五・五%となっております。また大学進学率は平成二年で全国平均三〇・五%に対しまして対象地域は一九・七%で、その差は一〇・八%となっております。  しかし、私どもは、文部省といたしましても、この対象地域の教育水準向上のために、高等学校等進学奨励事業の充実を図るとともに、研究指定校の指定、あるいはまた教員の加配等の措置を通じまして学力の向上を図りたい。さらにまた、今先生のお話にございました小学校中学校の登校拒否四万七千、また高等学校全体としては約十二万の中途退学が出ている。詳しい点につきましては初等中等教育局長からお話をいたしたいと思います。
  65. 菱村幸彦

    ○菱村説明員 高校の進学率、大学の進学率等についてはただいま大臣から御答弁をいたしましたとおりで、まだ格差がある。その格差を埋めなければならないというつもりで私どもやっております。  なお、高等学校の中退率につきまして御質問がございました。これは全国平均でいいますと二・二%で、その数は今大臣がお答えいたしましたトータルで十二万に及ぶ、これは大変な問題だと思っております。しかもこれは全国平均でございますが、同和地区に限ってみますとそれが三・九%でなお高いわけでございます。これも先生の御指摘のとおりでございます。  私どもは、この進学率の格差の是正ないしは中退率、これは全国的にも、また同和地区が特に高いことも考えまして、何とかこれをなくしていきたいということでいろいろ努力をしているところでございます。
  66. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 進学率を上げるあるいは部落の基礎学力を上げる、こういうようなことから、文部省においていわゆる奨学金が出されておったわけですね。ところが、国の財政再建とか行革絡みでそれが貸与化されるということになってまいったわけでございます。我々、貸与化したときのいろいろな問題点はその当時説明したのですけれども、何せ、形は貸した形になっても実際はいろいろな形で返さなくてもいいような措置も考えようじゃないか、国、自治体を通じてというようなこともあったわけですけれども、やはり借りたものは返さなければならないというような状況にあるわけでございます。  そういう点で、やはり貸し付けでは耐えられないということで進学を思いとどまるというような状況が起こっておりますし、それから、給付の場合はその都度一回きりになるのですね。ところが貸与化すると卒業して返せばいいと、結婚してからも返さなければならぬという問題があるのですね。だから、ちょいちょい学校へ調べに来るとか、せっかく結婚しているのに来て、やはり中には奥さんは知らないという場合もあるわけですよね、どっちかが知らないと。だからこれは秘密事項になるわけですね。あなたは同和の育英資金を受けておったのか、こういうことになってしまって、それが離婚になったり破談になったり、いろいろ問題が起きているのですね。  銀行を通じて支払いをされるでしょう、それは学校を通じてするよりも秘密が守られるということであったのだけれども、必ずしもそれが保証されない。それから、そういう延滞者に対する事務経費の問題とか、結局貸与の方が高くついているというか、問題点が多過ぎるというようなこと。  それから、日本育英会のものにある程度移行するといっても、これは学力の問題があるわけですよね。それから指定校というような枠があって有名大学に絞られるわけで、そういう意味で、学力アップという意味からのやはり給付制度のよさというものが本来あるわけですから、そういうものについて十分留意をしてもらわなければならぬと思うので、今すぐどうするということはなしにしても、その点について大臣、わかっていただけますでしょうか。
  67. 菱村幸彦

    ○菱村説明員 ただいま御質問のございました同和関係者の子弟の高校、高専、大学等への進学につきまして進学奨励事業実施しているわけでございますが、御指摘のとおり、昭和四十一年以来給付制でやってまいりましたのを、昭和六十二年から貸与制にいたしております。  これにつきましては、ただいま先生からいろいろ御指摘がございましたように御意見があることは私どもも十分承知しております。ただ、この昭和六十二年から特に進学奨励事業が貸与制になりましたのは、これも先生御案内のとおりでございますが、昭和六十一年に地域改善対策協議会の意見具申に沿って行われたことでございます。その地域改善対策協議会の意見具申におきましては、個人給付的施策について原則として廃止する、そして同和関係者の自立、向上に真に役立つものにするということから、この事業も貸与制にしたという経緯があるわけでございます。  私どもとしましては、引き続きこの制度で行ってまいりたいと思うわけでございますが、ただ、いろいろ問題がございまして、その間、返還免除制度も導入いたしておりますし、それの手続が複雑であるというようなことから、手続の緩和等の措置も私どもとしてはとっているわけでございまして、真に経済的に就学が困難な人の高等学校等への進学を阻害することのないように今後とも配慮をしてまいりたい、このように考えております。
  68. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 一層の努力をひとつお願い申し上げたい、このように思います。  それから去年は国際識字年でしたね。そういうことで、識字学級の問題、特に日本だけじゃなしに世界的な規模で識字というものが大きく取り上げられたわけでございますが、被差別部落のそういう識字学級というのですか、識字運動というものも非常に歴史があるわけでございます。  地域の皆さん方、非常に頑張っていただいているわけですけれども、大阪府の統計で、これは昨年ですね、大阪の同和地区の七万人を対象に、これは十五歳以上の成人でございますが、この中で、読む能力が全くできないのが千七百三十七人、二・五%、それから書く能力、書けない人ですね、これが二千五百三十八人で三・六%。これは全国的に平均でどの程度になるのかということは、高いことは事実でしょうけれども、そういう統計は恐らく文部省ではないのではないかと思います。  識字の程度という問題もありますからなかなか難しいだろうと思うのですが、いずれにしても現実に大阪でもそれだけ未解放部落にあるということですから、全国的には相当なものでしょうし、また、同和地区だけじゃなしに一般社会においてもいろいろな事情でやはり読み書きのできない人たちもおられるわけですし、また、とりわけ発展途上国からの留学生とか、あるいは就労者ですね、そういう問題で日本で勉強したい、日本語を習いたい、字を書きたいというような人々に対する施策というのは、やはり文部省として、社会教育も含めて私は非常に大事ではないかなというように思っておりますので、ぜひともまた大臣、どこでも結構ですけれども、東京でもやっておりますが、大阪等でも識字学級の実態というものをひとつ十分に目を通していただきたい、こういうように思っておりますし、また、夜間中学の問題等も、全国的にはまだ少ないようですけれども、いろいろな形態で実施されようとしているわけですから、そういうものも非常に大事かな、私はこのように思います。  それから、時間もございませんので、さらに、直接は関連いたしませんけれども、特に全国の国公立、それから私学の大学の学生に対する同和教育講座ですか、こういうものを見ますと、やはりどうしても一部に偏っている。関西を中心に、関西でもやってないところがあるのですけれども、特に東京から北が少ない、こういうような実態があるわけでございます。  特にその中でも、例えば大阪大学、京都大学では同和教育講座があるのですけれども、東大がないのですね。政治家とか官僚とか大企業に就職する人が多い、その人たちが学生時代にこの問題についてちらっと文字ぐらい見た程度でこの問題について特別に勉強したことはないということは、まあ公務員等の採用については若干、採用試験で同和問題がちょろっと一、二問出るというようなことも最近起こっておるわけでございますけれども、これは大学の自治というような関係で、押しつけると言うとおかしいですが、なかなか徹底しがたいという問題があると思いますけれども、文部省というのはやりたいことは自治があろうとなかろうとちゃんとやっている場合があるわけですけれども、事この問題になると自治というようなことで、まあ自治自身は確かに守っていかなければならないと思いますけれども、やはりこういうような基本的人権に係るゆゆしき問題については、やはりこういうものを知っているということは大事ではないか。  特にそういうエリート社員などは海外へ行きますと、海外でのそういう人種、民族問題とかいろいろマイノリティーの問題を議論するときに、日本にも同和問題があるじゃないか、知ってますかと言うと、私、知りませんと胸を張って言うらしいのですね。知らないことが自慢のようにしているらしいのです。これほど恥ずかしいことはないと私は思うので、その点についてどうなっているのか。あるいは学習院大学、天皇、皇族の皆さん方が通う学習院大学ではこれをやっていないのですね。  そういうようなことも含めて――それは北海道であろうとどこであろうと、卒業すればどこへ行くやらわからないわけですよね。世界各国の地の果てへ行ってもこの問題とはやはりどこかで結びついてくるわけですから、そういう意味でやはりそういう大学での同和研修というものについての徹底をぜひともお願い申し上げたい、このように思いますので、その点についてちょっと御感想をいただきたい、このように思います。
  69. 前畑安宏

    ○前畑説明員 御指摘の大学におきます同和教育関係授業科目の開設状況につきまして、平成元年度におきまして、四年制大学では百六十校でございますので、約三分の一でございます。短期大学では百三十七校でございますので、約四分の一でございますが、これは逐年改善をされておりまして、先生も御案内と思いますが、五十五年度には大学ではわずかに一五%程度でございましたが、これが先ほど申し上げましたように三分の一、三二%程度まで開設をされるようになった、こういうふうな状況でございます。  御指摘のように、東京大学であったりあるいは学習院大学というところではまだ開設されてないようでございますが、私どもといたしましては今後とも同和教育に対する各大学の留意というものを機会のあるごとに喚起をしてまいりたいと思っております。しかし、これも先生御理解いただいておりますように、どのような授業科目を開設するかということは各大学の自主的な判断でございますので、限界もございますが、私どもとしては今後とも努力をしてまいりたい、このように考えております。
  70. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 時間が迫ってまいりましたので、自治大臣に御質問申し上げますが、特に戦前はこの種の事業は直接全額国が支出するというようなことであったのですけれども、戦後は地方自治ということで自治の権限というものも入ってまいりまして、特に自治体がこの問題で率先して先に取り上げる、そして自治体が財政的にしんどいということで国に対していろいろ要望もあり、全国的なそういう取り組みの中で国として一定の方針を出して法制化して今日に至っておる、こういうことになるわけでございまして、私としては、一九六九年以後、来年三月でちょうど二十三年になりますので、この際、決算じゃございませんけれども、ちゃんとその間どれだけの予算がつぎ込まれて必要な対策がどこまで進んだのか、やはり現状把握も大事ではないかというように思っておるのです。  特に、大蔵省に対して予算要求するときには、割と地元の要望も強いですから相当要求額が出るのですけれども、結局は積み残しというのですか、用地買収とかいろいろ事情があって、計画はいいのだけれども計画倒れになってしまって、繰り越し繰り越しで、五年間だったら五年間、毎年これだけ使ったようになっているのだけれども、実際決算で見たら半分以下、実際は三倍も四倍も膨れ上がって、一部の人はそれだけ見て同和予算の使い過ぎやというようなこともあるわけです。  今、途中で補正予算を組んで決算ではそういうことにならないようなことになっていると思うのですけれども、どうしても当初予算で見るわけで、そうすると、大蔵省からいうと予算要求のときにいつも減額修正をやっているじゃないかというようなことで、同和事業はそれで終わりになってきているのじゃないか、こういうような間違った考え方も出てきかねないような状況。文部省奨学資金についてもそうですよね。実際余りぎみですよね、ずばり言ったら。  しかし、やはり予算要求しなければならない、こういうことでございまして、アクセスというのですか、そういう環境整備をしないで予算だけ組んだって、実際これは使えないということになりかねないわけですから、その点、特に地方自治体の場合はそういう部分が多く残っておるわけで、特に、今の法律によりますと、全国の約一千カ所の未解放部落が未指定地になっていますよね。今まで同和対策で法律があったけれども、申し込みができなかったから、市町村から申し入れがなかったから、もうそれは除外する、終わりだということで、それはもう受け付けないということになっているのですよね、現在の法律は。ところが、その後目覚めて、やってほしいと言っても、いやもう審議会は認めませんというような形で、まず一千カ所が排除されておるという問題、これをどうするのかという問題。  それから、例えば建設省などでもありますように、改良住宅というのをやっていますよね。五カ年計画で改良住宅をするのだけれども、一棟か二棟は建つ、ところが四年後、五年後の事業が進まない、一部未買収がある。そうすると、前のものが何十年たって、三十年ぐらい経過して建てかえなければいかぬという状況になっても、その計画全体が完了しない限り建てかえられないという問題が起こってくるわけです。そういうような状況。  それから、国の査定というものがありますね。そういう意味で非常に地元の超過負担が多いという問題があるわけでございまして、大都市の場合は、財政力のあるところはそれなりにやれるのです。しかし、それがまた大阪市などは補助金なしで起債ばかりというような形で借金が残っていく。衛星都市などは、財政力がないのに同和地区が多いためになかなかそれがはかどらないというような問題も起こっておるわけでありまして、そういう意味で今までの累積の同和債務を見たってすごいですね、実際。そういう意味で、ちまたでは、同和問題についてはハードの面では大体解決した、あと残務的なことについては一般の措置へ移行するのだ、ソフトの面についてはまだまだ残っておる、こういう点については重点的にやっていかなければならぬ、こういうことを言っておるわけでございます。  こういう法律があってもなおかつ忌まわしい差別事件が起こっているということですから、法律がなかったらもう差別していいのだ、今までは法律があって禁止されておったけれども、もういいのだというような不心得者もあらわれるような状況も危惧するし、自治体がまだまだ課題を抱えておるにもかかわらず国の方で一方的に打ち切るということになりますと、大変な状況になるのではないか。そういう意味では自治大臣に大いに期待するところでございまして、岸先生、安倍先生、本当にこの問題について御理解のある先生方の協力もあり今日に至っておるわけでございますが、全国の各地方自治体を代表するという立場で、この問題について総務庁長官とも十分に腹を割って来年以降どうするかというようなこと、それから、そういうソフトの面につきましても、今なお非常に厳しい差別の現実があるわけですから、文部省も自分の問題として、これは総務庁の問題だということではなしに、その点についての取り組みをお願い申し上げたいというように思っておるわけです。  最後になりましたが、自治大臣、それから文部大臣、そして最後に郵政大臣という形で一言ずつお言葉をいただきまして質問を終わりたい、このように思います。
  71. 吹田愰

    吹田国務大臣 先ほど上田先生から、安倍元幹事長の逝去に対しまして御丁重なお言葉をちょうだいいたしましたことにつきましては、衷心からお礼を申し上げる次第でありますとともに、今日まで長い国会生活の中でお世話になりましたことにつきましても、私からかわってお礼を申し上げる次第であります。ありがとうございました。  ただいま同和問題につきましてお話がありましたが、これは上田先生も私も一緒に同和問題を長年やってきた間柄であります。特に、佐藤内閣の昭和四十四年に、私ども地方議員としまして、この同和問題をどうしても取り上げて新しい法律をつくって、ゆえのない、全く理由のない差別の問題を我が国から払拭しなければならぬということで立ち上がったわけであります。  特に私は昭和二十年代から村長、町長を務めてまいりましたものですから、私の町にもそういう指定を受けるような地域もあったわけであります。そのために歴代の市町村長はずっと戦後も苦労する、戦前も苦労したという事実もあります。そういった関係から、私は極力自分で部落へ寝食をともにするというような形で乗り込みまして、人間関係を結ぶことが大事である、お互いに理解と協力し合って、そして差別のない社会をつくっていこうということでその地域改善に取り組んでまいりましたが、幸いにも昭和四十四年に佐藤内閣でできました。  そしてその後も、十年、さらにまた三年、そして五年というふうに切りかえをし、そして上田先生とお出会いしていよいよ進める時代は地域改善対策特別措置法に切りかえるときでありました。こういったこと等を踏まえて今日に至っておりまして、総額にしまして、当時の佐藤内閣でつくりました同和対策事業費が国庫の計算でまいりますと二兆六千億であります。  それから、その後に参りました問題におきましては、昭和六十二年以降でありますからいわば地対財特法ですか、これになりましてから今日、この三年末をもちましておおむね六千四百億ということになりますと、合計三兆二千億ということになります。  それでは、それで全部終わったかといいますと、実は私も現地は、上田先生の地元等もたびたびお伺いいたしておりますし、あるいは奈良や和歌山にも参りまして調査しておりますが、非常に進んでおる地域、私の県あたりは非常に進んでおる県でありますけれども、進んでおる地域とおくれておる地域があるのですね。これはいろいろな事情がありますから一概に言えませんけれども、そのおくれておる地域の進捗率というものをどんどんと進めなければならぬというふうに思っております。三年度末で今日の法律は一応終了するということになっておりますが、これをこれからどうするかにつきましては、またこれは国会におきまして御協議をしていく問題であろうというふうに思っております。  いずれにいたしましても、先ほどからお話がありましたように、地方公共団体が非常な財政的な負担をしておるということは事実であります。私も経験者でありますから、これはもうよくわかるわけであります。貸し付けたお金を今度は返してもらえない、そうなりますと自治体は、自治体を通して出しておりますものですから公共団体としてこれを国の方へ、自治省へお返ししなければならぬということになりますと、そこに大きな自己負担がすべて公共団体に移っていくということで、これをかわってお支払いするというようなこと等も起きております。  これは、先ほどからのお話でいろいろな事情がありますから一律にどうだというわけではありませんが、しかし、それに対して自治省も今日までケース・バイ・ケースで、時に特別交付金等をもって十分関係団体が困らないように、財政的なことによって、特に同和地域の財政問題から来る負担の問題で困ってしまうというようなことにならないような対策は立ててきておるわけであります。  また、お話がありましたハードの仕事は各部落において非常にたくさんできてきた、よくなったということはお認めいただきましたが、これに対する維持管理の問題等が出ております。これは、公共団体の所有物であれば維持管理は公共団体で出しますけれども、町内会でその財産を持つというような問題につきましては町内会でこれを持たなければならぬ。あるいはその一部を公共的に使うということで町村が負担するということもありますが、そういう問題につきましては、私どもの方でできるだけ、関係町村から提示されました問題につきましては、公共団体が負担すべき問題として変わったものについては特別交付税で面倒を見ていくというその姿勢は今後も続けてまいりたいと思っております。  不良住宅等の問題も出ましたが、これはまた建設省との関係でありまして、十分話し合いながら不良住宅についての改善も図っていかなければならぬ、こういうふうに思いますけれども、その際の負担の問題等もケース・バイ・ケースでこれから検討されるし、さらに来年度の問題からどうするかということとの関連性が出てまいりますから、その点は御理解を願いたい、このように思っておるわけであります。  もう一点、一千カ所の未指定地域があるというお話がありましたが、本来からいえばそういうものはあってはならないわけだし、ないはずなのであります。それがだんだんと未指定地域として新しく出てくるということは、当時の調査が若干正確性を欠いたというところもあるかもわかりません。あるいはまたその後にまたそういうことで手をお挙げになったということがあるかもわかりません。そういう意味で一千カ所という未指定地域が出たのだと思いますが、これはまたそれなりにさらに調査をする必要があると私は思う。実際問題、私、これは党で取り組んできた男の一人でありますから、内容的には相当調査をしておりますので、これまた上田先生あたりともよく協議をして、こういう問題について正確性を把握していかなければならぬ、こう思っております。  答弁としては非常に雑な答弁になりましたが、お許しをいただきたいと存じます。
  72. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 もう時間が来ましたから、あとは結構です。ありがとうございました。
  73. 渡辺省一

    渡辺委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩します。     午後零時十六分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  74. 渡辺省一

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。時崎雄司君。
  75. 時崎雄司

    ○時崎委員 文部大臣に、私が持ち時間五十分でございますが、すべて文部大臣と討論させていただきたいと思います。国会議員一年生でございますので、不勉強ですが、ひとつお教えいただきたい、このように思います。  さきに総理大臣が東南アジア五カ国を訪問されて、去る四月二十七日マレーシアで首脳会談の中で、日本が過去において特にアジア地域に対し耐えがたい苦痛を与えた、深い自覚の念と反省の念を持っている、こういうことで首脳会談で発言をされた。その後、五月三日にシンガポールで政策演説を行って、相当突っ込んだ歴史の反省をいたし、なおかつ正しい歴史認識を持つことが不可欠だ、そのために次代を担う若者たちが学校教育や社会教育、そこを通じて我が国の近代、現代の歴史を正確に理解するように一層の努力をしていく、こういうことをこの三日の政策演説で表明をされて、そして帰国後、七日に閣議でその報告並びに文部大臣に対して指示をなさったという報道が出ておるわけでございます。  その報道の中に、首相の指示に対してそのとおりにすると文部大臣が答えた、こう報道されておりますが、このことはお間違いないのかどうか、まず、冒頭お聞かせいただきたいと思います。
  76. 井上裕

    井上国務大臣 お答えいたします。  ただいま先生が、四月二十七日また五月三日、私は報道で知ったわけであります。その後、五月七日の閣議終了後、総理から私、呼ばれまして、そして今お話しのように総理から言われたことは、我が国の次代を担う若者たちが我が国の近現代にわたる歴史を正確に理解するよう学校教育においても努めてもらいたい旨の御指示がございました。私は、そのとおり、総理にそのようにいたします、こういうことでお話をいたしました。
  77. 時崎雄司

    ○時崎委員 海部総理大臣が七日の閣議後の記者団とのお話の中で、教科書検定や学習指導要領などの歴史的教育に対する取り組み、経過はわかっているが、もう少し歴史への反省を生かせるようカリキュラムを考えてくれるよう指示した、このようにも新聞報道されております。  文部大臣に対して、カリキュラムを考えてくれるようということは、変更ということも含めてだろう、こう思いますが、このような指示がなされたのかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  78. 井上裕

    井上国務大臣 実は、私が帰るうちに記者団の方が参りましたので、これは官房長官から発表があるでありましょう、私は文部省におきまして文部省担当の記者団に総理に言われたとおり会見をいたしました。まさに私に言われたことはそのことでございまして、学校教育におきます近現代史の取り扱いにつきましては、現在、我が国と近隣のアジア諸国の過去におきます不幸な関係にかんがみまして、昭和五十七年の官房長官談話あるいは文部大臣談話におきましても示されているとおりでありまして、国際理解と国際協調の見地に立って、その友好親善を一層進めるよう指導しておるわけでありますから、私につきましては、今先生がおっしゃいましたことはございませんでした。  学校教育におきまして、現在、従来から国際理解と国際協調の見地に立ってその友好親善を一層進めるよう私どもは今指導しているところでございまして、また、今回の学習指導要領改訂におきましても、国際社会に生きる日本人の育成という観点から歴史学習の改善を図り、その趣旨について指導書等において示しておるわけでありますから、総理は私に言われたことは、今先生おっしゃるのには、総理がいわゆるぶら下がりといいますか、正式の記者会見ではありませんが、そういう発言をしたということでありますが、私が聞いていることは、現場で徹底して教育をしていただきたい、こういうことを総理に言われたわけであります。
  79. 時崎雄司

    ○時崎委員 同じ日に坂本官房長官は、指導要領を見直す考えということではない、第二次世界大戦やそれよりさかのぼった期間について反省は必要という一般的な趣旨で言ったものだ、このように記者に対しては言われているのですね。総理大臣が言うカリキュラムを含めて考えてもらうように文部大臣に指示をした、こう発言をされていることと考え合わせますと、どうも総理大臣の意向が、官房長官なり、また、今言われるように文部大臣との間に若干ずれがあるというのか、私どもの印象としては後退したような印象を受けているわけでございます。  そこで、総理大臣、五カ国でこのように国際公約と私は考えておりますが、このことが、帰国されて担当大臣がその意を受けて十分にその後の対応策を考えていかないと、果たして諸外国で行った公約というのが守られるんだろうか、そういう危惧を抱いているわけでございます。  したがって、総理大臣が特に三日シンガポールで行った演説、その主要な部分を若干読ませていただきますが、多くのアジア・太平洋地域の人たちに耐えがたい苦しみと悲しみをもたらした我が国の行為を厳しく反省する。我が国民はそのような悲劇をもたらした行動を二度と繰り返してはならないと固く決意し、戦後四十数年にわたって平和国家の理念と決意を政策に反映する努力をしてきた。日本の国際的貢献への期待が高まっている今日、日本国民すべてが過去の我が国の行動についての深い反省に立って、正しい歴史認識を持つことが不可欠と信じる。次代を担う若者たちが学校教育や社会教育を通じて我が国の近現代史を正確に理解することを重視して、その面での一層の努力を強める。こう演説をされているのですね。  私はこの中から二つのことを文部大臣にお尋ねをしたい、こう思うのです。  一つは、正しい認識を持たせるということですから、今の学校教育の教科書並びに教科書検定、さらにはまた指導要領、そういうことで内容をこれまで以上に変えていく、すなわち戦争の責任と、多くの近隣諸国に与えた耐えがたい苦しみや悲しみというものを我が学校教育でもっと教えていく。要するに、正しい認識をさせるために現状よりも内容を強めていく、こういうふうに私は理解をした。そして、その手段として、帰国後の記者発表の中でカリキュラムを変更することにも言及している、内容と手段と二つ触れているのではないか、私はこう思うのですね。  それに対して、文部大臣、今日までどういう内容の変更と、またその内容を正しく子供たちに教育するための手段をお考えになっているのか、お尋ねをいたします。
  80. 井上裕

    井上国務大臣 先ほど申し上げましたように、私どもは、新学習指導要領の趣旨に沿って児童生徒が我が国とアジアの近隣諸国の特に近現代史、これを正しく理解し、これらの諸国との友好親善を深めるように一層適切な指導が行われる必要があろうと私は思います。そのために、本年五月末から実施する教育課程講習会等におきまして、関係者に対して一層の指導を努めてまいりたい、このように考えております。  また、今先生のお話で、私も総理の発言をメモしたものを全部読んでおりますが、これはあくまでも、私どもは今まで我が国にかかわる第二次世界大戦につきまして指導するに当たっては、文部省が教師用に作成した指導書、これはこれらの戦争において中国を初めとする諸国に我が国が大きな損害を与えたことについても触れております。ぜひこれは触れろということでありますから。しかし、学校におきます歴史学習において我が国のこの近現代史の学習まで進まない場合もあるといった指摘も聞いております。こういう面について、今後新学習指導要領の趣旨に沿って、我が国と近隣アジア諸国との近現代史につきまして一層適切な指導を行ってまいりたい、このように考えております。
  81. 時崎雄司

    ○時崎委員 私もここへ中学校指導書の「社会編」というのを持っているのですが、この中の中学校学習指導要領「第二章第二節 社会」というところ、そしてその後にあります歴史というところも見ているのですが、中国を初め近隣諸国に御迷惑をかけたというようなことがどこを探しても出てこないのですね、この指導要領の中では。  教科書は何種類もありますから、必ずしも私が見た教科書だけでは判断できないと思いますが、これは私の友人の子供が中学校三年だということで教科書を借りられなくてコピーをとらせていただいて持っているのです。これは何種類あるのかよくわかりませんが、これは中学校の歴史の教科書のコピーですけれども、どうもこれを読む限りでは、今文部大臣が言われるような指導要領にもなっておらないし、教科書にもなっておらない、私はこう思うのですね。  教科書は全国で今何種類利用されておるかわかりませんから、これは一部だけ見てそう断定はできませんが、残念ながらここにある新指導要領には、中学校の「社会」の部にはそういうのは載ってないのですね。それほど今言ったように、中国に対するそういう御迷惑をかけたこと等について記載されるようになっておるというならば、中学校ではそういうことは教えないのですか。
  82. 菱村幸彦

    ○菱村説明員 先ほど来出ております用語の問題としまして、一つはカリキュラムという言葉が出ておりますが、このカリキュラムというのは各学校が編成する授業の指導計画のことでございます。文部省が決めておりますのは、その指導計画を作成する際の基準ということでこの学習指導要領があるわけでございますので、総理がカリキュラムとおっしゃいました真意は、各学校で行う具体的な指導計画、それを頭に浮かべられまして、そういうものを各現場で十分やらなければいけないという御趣旨でおっしゃったものと私どもは受けとめているわけでございます。  それからもう一つ、学習指導要領で、中学で出ていないというお話がございました。それは事実、学習指導要領すなわちカリキュラムの編成の基準でございますが、国の基準にはそこまでは書いておりません。と申しますのは、全体をごらんいただくとおわかりになりますように、その薄い冊子は全教科の基準でございます。国語も算数も社会も理科も家庭科も、全部ございます。学校で具体的に作成されますカリキュラムの大綱的な基準、大まかな基準になっておりますので、個別具体的な指示的なことは実はそこには入らないわけでございます。  そこにございますのは、御指摘になりましたように第二次世界大戦を教えるとか日華事変について教えるとか、そういうようなごく大まかなことが書いてあるわけでございまして、実はそれをもう少し細かく解説した文部省の指導書というのがございます。  そこで、先ほど大臣が申し上げましたように、例えば小学校の六年の中では、この文部省が出しております学習指導要領の解説書である指導書で、「これらの戦争において、中国を初めとする諸国に我が国が大きな損害を与えたことについても触れることが大切である。」という指摘をしているわけでございます。ちなみに中学校でございますと、同じく指導書の中で、第二次「大戦が人類全体に多くの惨禍を及ぼしたことを踏まえ、世界平和の実現に努めることが大切であることを理解させる」ということも触れているわけでございます。  いずれにしましても、このように今回新しく学習指導要領を改めまして、従来以上に、先ほど来大臣がお答え申し上げておりますように、この近現代史の扱いについては改善を図っているところでございます。  また、教科書の検定におきましても、昭和五十七年の教科書問題、中国、韓国を中心とします教科書問題が起きました際に官房長官談話とか文部大臣談話を出しまして、そのときに検定基準も改めまして、アジアにつきます近現代史の記述にあっては国際理解と国際協調の見地に立って友好親善を深めるという観点から検定を行うということになっておりまして、その後、教科書はいろいろ改善を見ているわけでございます。  しかし、この教科書も、実は御案内のように長い歴史の過程を非常に薄い教科書に記述しているわけでございますので、人類の始まりから古代、中世、近世、現代に至りますこの多くの歴史叙述をどのようにその中に盛るかということは、著者、執筆者の執筆方針によるわけでございますが、全体の歴史をバランスをとって書くとなると、ここの戦争のところだけ特筆大書するということはなかなか難しいわけでございます。  現在あります教科書では、先生御指摘のコピーがどの部分か存じませんが、多くの教科書では、例えば中学校でございますと、「東南アジア侵略」というような記述がございまして、「日本軍は、短期間のうちに、香港・シンガポール・ビルマ・インドネシア・フィリピンを占領しました。そして占領地域では、戦争に必要な資源や米などを強制的にとりあげて、住民の生活を苦しめ、また、軍の方針に反した多くの人々をきびしく処罰するなど、強圧的な支配を行いました。」というようなことが書かれている教科書もございます。  こういうわけでございまして、いろいろ多くの教科をやるということとか、それから長い歴史を一冊の薄い教科書にまとめて書くというようなこととか、さらには歴史叙述をどのようにするか、基本的には執筆者――検定制度でございまして、これは文部省が書いているわけではなくて、民間の執筆者が書くわけでございますので、その執筆方針によるとか、いろいろな制約ないしは課題があるわけでございます。
  83. 時崎雄司

    ○時崎委員 私が持っているのは一般的な指導要領というのではなくて、この一冊は、中学校の社会科について文部省が元年の七月に発行した中学校指導書というのを私は持っているのです。要領というのは後ろにこれだけしか書いてないですね。それを見て私はお尋ねしているのですよ。  確かに今言われたように、第二次世界大戦、要するに大戦が多くの惨禍をもたらすということは書いてある、指導書にもそういうふうになっておりますから。しかし、中国を初め近隣諸国に大きな損害を与えたという記述は指導要領にもないし、またこの指導書にもないですね。大戦というのは世界の人々にいろいろな惨禍をもたらすのだということは一般論として、私がお尋ねしているのは、そうではなくて、中国やその近隣諸国に大きな損害を与えた、こういうことを総理大臣が反省をしているわけですから、そういう点の指導というのはこの指導要領の上で直す考えはないのか、特に中学校の教育で直す考えはないか、こうお尋ねをしているわけです。
  84. 菱村幸彦

    ○菱村説明員 この歴史教育につきましては、昭和五十七年の中国、韓国を中心にします歴史教科書問題が起きましたときに、「わが国の行為が韓国・中国を含むアジアの国々の国民に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って」いる、そして、具体的には日韓共同コミュニケ、日中共同声明等に基づいて行うのだ。当然、学校教育におきましても、こうしました日中共同コミュニケとか日韓共同声明ないしは先ほどの官房長官談話の決意というものを踏まえて行われるわけでございまして、そのことは当時の官房長官談話、さらには、それからしばらくして出ました文部大臣談話等にも述べられているところでございます。  したがいまして、その後の学校教育におきましては、こうしました反省も踏まえて教科書も書かれる、それから学校教育においてもその点が行われるということになっているわけでございます。
  85. 時崎雄司

    ○時崎委員 文部大臣に答弁をお願いしたいのですが、少なくともこれまでの教育上で十分だということであれば、わざわざ総理大臣が今回東南アジア五カ国を歩いて、改めて正しい歴史認識を持たせるために、学校教育と銘を打ってなお一層努力する、こういうことは言う必要はないわけですね、当然今までやってきているのですから。内容としても不十分だと、私はこういうふうに理解するのです。  その一つの例として再三申し上げているのがこの中学校の指導要領及び指導書、今度は文部省で出している指導書、どちらを見てもここに記載されているのは「大戦が人類全体に多くの惨禍を及ぼしたことを踏まえ、世界平和の実現に努めることが大切である」、こういう指導要領と指導書になっているということなのです。これは一般論で教えるということですね。  私が言っているのは、中国及びその他の近隣諸国に対して多大の損害を与えたということに着目をした教育というのが指導要領の中では抜けているのではないか、または指導書の中では抜けているのではないか、こう指摘しているのです。大臣、答弁してください。
  86. 井上裕

    井上国務大臣 ただいま政府委員から答弁がありましたが、私ども、やはり近隣諸国の人々に大きな損害を与えたことは事実であり、そしてまた、我が国として反省すべきところは反省し、その上に立ってこれからの国際社会に貢献できる日本人の育成を図りたい、そういう中で、いわゆる近現代史の中で、教育の中で、ややもいたしますと、現場で徹底していなかった点もある、こういうことを総理はシンガポールにおいて私は発言をしたということでございますので、これを現場の教育の場で二度とこういう歴史を繰り返してはいけない、こういうことを徹底して教育をしてくれ、こういうことを依頼されたわけでありますから、そのように私もいたしたい、このように考えております。
  87. 時崎雄司

    ○時崎委員 教育の場で十分ではない、したがって、徹底を図る、こういう大臣の答弁でございました。これは絶対に必要なことですから、その部分はその部分としてお願いをしたいのですが、何を徹底するかということが問題なのですね。  教育の場で不十分だと、だから徹底をする、徹底する前提の問題なのです。残念ながら今大臣が言われるような、中国及び近隣諸国に対して多大の損害を与えた、これを二度と繰り返さないということで反省をするということが、実は中学校の社会科の歴史の指導要領にも、そしてまた、それに基づく文部省の指導書の中にも抜けておるのではないか、私はこう言っているのです。  これは、私は局長とやるとかどうとかじゃないのです。先ほど冒頭から言うように、大臣と教育論争をしてみたいのですよ。それで、確かにここにそれらしきものが触れられているところも一部あるということですね。それは、先ほど言いましたように、「大戦が人類全体に多くの惨禍を及ぼしたことを踏まえ、」云々というのはあるのです。これはしかし、一般論としてこういうことが書かれておって指導されているということですから、総理大臣が言われたようなこととはちょっとニュアンスが違うのではないか、こういうふうに思いますので、この内容について指導要領に不十分な点があれば直す、今大臣が言われたように、多大の損害を与え、反省をしているというところが欠けているとすればそれは直す、こういうことで理解していいのかどうか、御答弁いただきたいと思います。
  88. 井上裕

    井上国務大臣 これは、昭和五十七年十一月二十四日、歴史教科書についての文部大臣談話といたしまして、「文部省としては、今後とも、日韓共同コミュニケ及び日中共同声明の精神を尊重し、近隣諸国との相互理解の促進と友好協力関係の発展に努めることが極めて重要であると考えている。学校教育の場においても、以上の趣旨を踏まえ、今後一層近隣のアジア諸国をはじめ諸外国との国際理解と国際協調の精神を培うことに配意されるよう期待する。」こういうことを大臣として言っておりますので、私どももこれを体して、何回も申し上げますが、今まで不幸なことがあった、これを絶対、二度とこのような歴史を繰り返してはいけない、こういうことを現場で徹底して教育をいたしたい、こういうことでございます。
  89. 時崎雄司

    ○時崎委員 どうも私の言わんとしているところと違うような感じがするのです。今言われたその文部大臣談話というのは昭和五十七年ですか、そうであるとしたら新教育指導要領の中でなぜそこまで踏み込んだ要領にしないのですか。ここに私、文部省が出している指導書もあるし、指導要領も持っておるのですよ。その中には五十七年の文部大臣の談話とか井上文部大臣の今の、先ほどまでの発言とか、そういう趣旨のものが不十分だ、書かれていない。だから言っておるのですよ。  だから、五十七年のときの談話にのっとって、中国を初め近隣諸国に対して多大な損害を与えたことと反省というものをきちっと要領の中でひとつ指摘をすべきではないかというのが私の考えなんです。もう一度お願いをいたします。大臣とやっているのですから、大臣にお尋ねします。
  90. 菱村幸彦

    ○菱村説明員 ちょっと事実関係だけを申し上げさせていただきたいと思うのですが、先ほど大臣から御答弁ございましたように、昭和五十七年に文部大臣談話を出して、これは全国の教育委員会、学校等に通知をいたしております。  そこで、そこの中に出てまいります日韓共同コミュニケ、日中共同声明の精神といいますのは、改めて繰り返すまでもございませんが、過去の関係は遺憾であって深く反省しているという日韓共同コミュニケ、さらには過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことの責任を痛感し深く反省するという日中共同声明、これらの精神を尊重して近現代史、アジア諸国を初め諸外国との国際理解、国際協調の精神を培うことを学校教育の場において求めているわけでございます。そして、これは今日もなおずっと有効なわけでございまして、文部省がいろいろ出しておりますこうしたものを一体としてごらんおきをいただきますれば、先ほど来答弁しておりますように、十分先生の御指摘の点は学校教育において生かせることになっているというふうに思うわけでございます。  それから、学習指導要領自体になぜ入れないのかという御質問でございますが、学習指導要領は、先ほど来申し上げておりますように、先生もごらんおきいただきますように大変薄い、指導のごく大綱、大まかな大要を記述するのみでございます。そこで、個別具体的な指導方法にわたる、要するに損害をかけたことを十分反省するとか、そのたぐいのことは指導要領には入らない性質のものでございます。そこはあくまでも指導目標と指導内容の項目が掲げられている、それが学習指導要領の基本的な性格なのでございます。  そこで、あと指導書の問題でございますが、それを解説しますと、指導書におきましては、小学校では、先ほど来御答弁申し上げておりますように、中国を初めとする諸国に我が国が大きな損害を与えたことを触れるということをはっきり書いておりますし、その小学校教育を踏まえて中学校教育があるわけでございますので、中学校においてもそれが当然の前提になっているというふうに御理解をいただき、さらに、先ほど来大臣からも御答弁しております昭和五十七年の文部大臣談話というものが今日もなお有効であって、その上に立って学校教育が展開されている。そうしたことを総合的に御勘案いただければ、これから実際の学校の場においてその精神が十分実現されることを我々として期待しているのだということは御了解いただけるのではなかろうかと推察するわけでございます。
  91. 時崎雄司

    ○時崎委員 私はきょうはもう初めから大臣と教育問題で議論しよう、こう言っていますから、専門的なことについて、記述が載っている、載っていないということについては局長に聞くこともありますから、あと十五分程度しかありませんから、以降、邪魔とは言わないですが、要請した人に答えていただきたい、こう思うのです。  大臣、今局長からも幾つか言われておるのですが、「一九八九年検定 高等学校社会科(現代社会・政治経済)の検定」の中に、文部省から検定のときの意見が出ているのがあるのです。読んでみますか。――「外国との関係では、東南アジア諸国や太平洋諸島への戦争責任は「賠償金を払っているので終わっている」と書き足せ」と指示している。そこで、その教科書はどう書き足したかというのまでここに出ておるのですね。賠償金をすべての国に払ったわけではないようですから、これは特定の国のことを指しておるようですけれども。  私が心配するのは、今からちょうど十年前に教科書問題が大きな国際問題になりました。これは中国との関係でもそうでした。最近では靖国神社の公式参拝の問題もあるし、幾つか問題はあるのですが、どうも歴史を歪曲するような指導を文部省はしているのではないか、私はここ十年の間、そういう意を強くしているのですね。そして、最近では君が代とか日の丸をどうしてこんなに強制しようとするのかという気もしているのです。それから何で教科書の中に、東郷平八郎が新学習指導要領の中に取り上げるべき人物として載ってくるのか。これらもどうもよくわからない。そういう過去の一連の文部省の対応というものを危惧するから、今回私は厳しく中学校の指導要領というものを指摘しているのです。  局長が言われるように、本当にこれまでの外交問題で文部大臣の談話その他を教育に反映されるとするならば、当然中学校の歴史の教科書にだってそういう諸国に与えた大きな損害やら犠牲やら謝罪やらというものを率直に指導要領の中にも記載し、またスペースが少ないとすれば指導書の中でもその辺は指導すべきではないか、こう思うわけです。  どうも小学校のときにやっているから今度はいいというような今の局長の発言ですけれども、総理大臣が改めて今回の東南アジア訪問で正しい歴史認識を持たせるために一層の努力をする、こういうことですから、指導要領の中でもその部分をきちっとして、そして手段として文部大臣が先般の記者会見で言われるような、例えば教育課程講習会などで徹底を図っていくのだ、こういうことであるならばいいのですが、どうも聞いていると、カリキュラムの変更をする気はないという官房長官の発言があってみたり、そういう点では、諸外国に対して約束をしてきた、十日もたたないうちにどうもそれが後退するような印象を受ける発言が閣僚の中から出る。こういうことでは私は東南アジアを含めた諸外国との信頼関係を損ねてしまうのではないか、こう危惧するわけでございます。  したがって、もう一度大臣から、内容はどういうものを教えるんだ、これが一つ。手段は何を使って、教科書検定制度を使うのか、学習指導要領でいくのか、特別な何か指示を出すのか。少なくともああいう国際公約をしてきた以上、そして、文部大臣は総理大臣の指示を受けてそのとおりにしますと言っておるわけですから、きちっとしていただきたい、こう思うわけです。
  92. 井上裕

    井上国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、決して総理の発言が退歩したという考えは私はございません。今先生御指摘でございますが、例えば小学校におきましても、我が国にかかわる第二次世界大戦について指導するに当たっては、これらの戦争において中国を初めとする諸国に我が国が大きな損害を与えたことについても触れておりますし、また中学につきましては、第二次世界大戦について指導するに当たって、アジア諸国との関係に着目させて、大戦が人類全体に多くの惨禍を及ぼした、これを踏まえて世界平和の実現に努めることが大切である、このように示しているわけであります。  また、さらに高等学校におきましては、第二次世界大戦について指導するに当たっては、この戦争が世界の諸国家あるいは諸民族に未曽有の惨禍をもたらし、人類の文化と生活を破壊した、こういうことまで言っておるわけでありまして、平和な国際社会の実現に努めることが重要である、最もこれは重要であるということを自覚しているわけでありますから、これは現場の教育において、確かに歩んできた日本の道は二度と繰り返さないような教育をいたしたい、こういうことを私は今考えているわけであります。今後この新学習指導要領の趣旨に沿って、児童生徒が我が国とアジアの近隣諸国の近現代史を正しく理解してもらい、そしてまた、これらの諸国との友好親善を深めるように一層適切な指導が行われるよう、私はやはりこれが必要である、このように考えております。  さらにまた、先生の国旗・国歌の問題でありますが、これは、私ども基本的な考え方としては、大変お怒りをいただくかもしれませんが、やはり国旗・国歌の意識を理解してそれを尊重する態度を育てるとともに、すべての国の国旗・国歌に対してひとしく敬意を表することは私は極めて重要であろう。この資質はこれからの国際社会におきましても、これから生きていく国民としてこれは必要とされる基礎的な問題である、このように考えております。
  93. 時崎雄司

    ○時崎委員 ここで国歌や国旗のことを議論するつもりはございませんが、少なくとも総理大臣が国際公約をしたことでございますから、そのことが指導要領や教科書の記述にきちっと反映をされるようでなかったらば、先般のあの総理大臣の政策演説は何であったのか、うそをついたのか、私はこう諸外国から思われるのではないかと心配するのです。そうだとすれば、外国へ行っていろいろなことをお話ししてきても、日本というのは信用できない、信頼できない、こういうことで、行かないよりも行った方が悪くなってしまう、こう心配するから再三申し上げているわけです。  きちっとやはり目に見える形で指導要領とか教科書の記述に反映していただきたい。局長の話では、教科書は別の人がつくるんだというけれども、どれほど今まで検定制度で直させてきたか、これは実態としてわかっているわけですから、それを抽象論で言うつもりはございませんから、ぜひとも反映させていただきたい、このように思います。  そういう観点で、私は総理大臣のこの演説を、第二次世界大戦までの間に私ども日本がアジアの近隣諸国は対して犯した過ちというものを率直に侵略として認める、ここから私は出発すべきではないのか、こう思うのですね。そのように理解したから、総理大臣は、歴代の総理大臣の中で一番突っ込んだ反省を行ってきたのではないか、こう思うわけです。  そのことを今後の我が国のアジアの外交の出発点にすべきではないかと思うのです。そのことをまず明確にして国民に意識をきちっと持っていただく、そのためにも学校教育や社会教育を通じて我が国の歴史を正しく教えていく、これを今回海部総理大臣が内外に表明したのだ、私はそう思うのですね。  文部大臣はどのようにお考えなのか、総理大臣の発言についての評価をお聞かせをいただきたい、こう思います。
  94. 井上裕

    井上国務大臣 再三繰り返すようでございますが、今先生が言われました、戦争を通じて近隣諸国の国民に対して重大な損害を与えたのは事実であり、かかる国の過去の行為につきまして、私どもはその侵略的な事実を否定することはできないわけでありますから、それで、総理自体が二回にわたって演説し、また記者会見で申し述べた。これはやはり私どもはそれを守る。  ただ、総理が言われていることは、こういうことを約束してきた、これをひとつ学校教育の現場において、そして学校計画の中で子供たちに二度とこういうことを繰り返してはいけない、今までのことを反省すべきことは反省する、そういうことをよく徹底して教育の場で、現場で教えるということを私は言われたわけですから、そういうようにひとつ今後とも今総理が言われたとおりに、過去の厳正な――我々は人間として世界平和のために貢献するようにいたしたい、こういう教育をいたしたい、このように考えております。
  95. 時崎雄司

    ○時崎委員 今の文部大臣の答弁、大変私自身も納得をいたしました。ぜひとも今回の、総理大臣が東南アジアで言われたことが学校教育、さらには社会教育に目に見えるようにきちっと反映されることを、井上文部大臣の御努力をお願いをして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。     ─────────────
  96. 渡辺省一

    渡辺委員長 この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所島田刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 渡辺省一

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     ─────────────
  98. 渡辺省一

    渡辺委員長 北側一雄君。
  99. 北側一雄

    ○北側委員 公明党の北側一雄でございます。  私の方からは、まず最初に便宜的に郵政省の方からお聞きをさせていただきたいと思っております。  従来からよく言われておりますけれども、近距離の電話料金の中で特に市内通話区域が利用者の立場から見まして非常に区域が狭過ぎるのではないか。昔からよく言われております。非常に交通手段も発達をしてまいりましたし、経済も進展をしている中で、経済圏また居住圏とも今飛躍的に拡大をしております。例えば、東京であれば、三多摩―東京が市外電話になる、大阪であれば私の住んでおります堺と大和川一本離れました大阪市内が市外電話である、こうした問題がございます。また、市町村の合併がされまして、行政区域と一致しない市内通話区域もたくさんあるとも聞いております。  そこで、三十年前に設定されましたこの市内通話区域について、私は利用者の立場に立って見直すべき時期が来ているのではないかというふうに痛感をしております。聞きますと、近距離の電話料金体系について郵政省の方でも見直しを検討されておられるということも聞いております。どのような見直しを考えておられるのか、その内容についてまずお聞きしたいと思います。大臣、ぜひお願いします。
  100. 関谷勝嗣

    関谷国務大臣 関連の事務的なことは局長の方からまた答弁をさせたいと思いますが、先生御指摘のこの市内通話料の問題、いわゆるMAと言われておりますが、これに対して今後どうすべきかというようなことを今るる郵政省でも検討いたしておるわけでございまして、そのMAの設定のあり方などにつきまして、幅広く学者の方々から成る調査研究会、近距離通話の在り方に関する調査研究会というものを今月末に開催することといたしておるわけでございます。  確かに、遠距離の料金などは、経営努力によりまして、大変、四年間続けて値下げが行われておるような状態であるわけでございますが、御指摘のように、この近距離の問題が今残っておるわけでございます。御指摘のように、川一つを隔てただけで料金が二倍になるというようなところもございますし、範囲というのは大変いろいろ広くなってきておるわけでございますから、それに合わせてこのMAをまたどうするかというようなことを今後検討していただくようになっておるわけでございます。  ただ、そういうようなことでも、実施時期につきましては、NTTの交換機を全国的に一度に改修するといいますとこれもまた大変なことになるわけでございますので、現在、NTTにおきまして交換機の電子化のスケジュールを、平成六年末完成予定でございますが、そういうようなこともございますから、それに合わせて、財政的にもこの負担ということも考えて進めていけばいいのではないかなというようなことを今考えております。  事務的なことは局長から報告をいたします。
  101. 森本哲夫

    ○森本説明員 今お話の出ましたMAというのはメッセージエリアということで、いわば最低の課金単位でございます。確かに、先生おっしゃるように昭和三十七年にできておりまして、それからこれまでの間ほとんど変わらない状態で、全国五百六十七のメッセージエリアで構成されて、隣に行くと二十円、後は距離の関係でその次は四十円になるという形でだんだん距離に応じて遠距離まで行っておるわけでございますが、このメッセージエリアは、かつては端的に電電公社の営業区域みたいなものだったのですが、今日、競争事業者が出てまいりましたので、これに接続をするという競争条件の問題にも絡んでまいるわけでございます。  非常に限定的に小さいと、今日の通勤実態から考えますともっと広くたっていいじゃないかという議論は確かにあるのでございますが、ただ、MAの実態は、全国平均いたしますと、大体、百回の通話をいたしますと七十回までは自分の三分十円のMAに落ちてしまう、つまり非常に近距離、自分のMA内の通信が非常に多いわけでございます。しかし、一方別に、大都市の付近を今お話しのように、堺―大阪みたいなことになりますと、あるいはこの東京近辺になりますと、自分のMAがせいぜい三〇%しかなくて、あと四割近くが例えば東京に行く、大阪へ行く、こんな状態もあるわけでございますので、確かに常識的に考えるとMAがなるたけ広ければ広いだけ便利は便利になる。  しかし、一つは、それで料金が従前の形ではまいらないという問題が新たに出てくるし、仮に県内一円にというような議論もあるわけでございますが、そうすると、今申しました大都市近辺の行政区域の兼ね合いでかけなければならぬところが俄然高くなってまいる、こんな問題も生じまして、いろいろ難しい問題が生じますので、この際、ひとつ基本的な立場でじっくり勉強を開始いたそう。これについては、大臣が申しましたように、交換機の問題が、大宗がまだアナログ方式のクロスバーという交換機でございますので、こうした問題を解決するにはディジタル化が前提になるということで、いろいろ複雑な問題も絡んでおりますので、設備面あるいはソフト面、両方含めて本当に利用者のためになる近距離通信のあり方を研究してまいりたい、今こういう状態でございます。
  102. 北側一雄

    ○北側委員 今のお話では、このMA区域の改革、見直しも含めて近距離電話料金体系について検討をなされていこうというお話であるというふうにお聞きをいたしました。  今の大臣のお話では、クロスバー方式からプログラム方式ですかへの電子交換機の交換が平成六年度に終わるようなお話をされておられました。ですから、この平成六年度を過ぎた平成七年度ぐらいからこのMA区域の見直しも含めた近距離電話料金体系の大きな見直しがなされるというふうにお聞きしてよろしいでしょうか。
  103. 森本哲夫

    ○森本説明員 実は、今の電話のMAは、三分十円の問題のほかに、毎月々の基本料というのもMAの大きさによって違っております。あるいは電話加入時の設備負担金という問題も出てまいっております。  いずれにしても、いろいろな問題の絡み合わせということになりますので、今お話しのような形で具体的にスケジュールを確定するというのは今の時点ではなかなか難しゅうございますが、一つの交換機の交代時期だということも十分念頭に置きながら、それから、今日の現実の通話実態、経済交流実態というものもにらみ合わせて、できるだけ早いうちに利用者の皆さんの大方の納得が得られるような改革というものをぜひ、これは本来は当事者のやることでございますけれども、ただいま申しました意味合いで国民的な一つの基盤ということにもなっておりますので、政府としてもそうした側面を十分認識してこの問題の対処に当たりたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  104. 北側一雄

    ○北側委員 それでは、自動車電話、携帯電話の問題に触れさせていただきたいと思うのです。  今、携帯電話、自動車電話が非常に急速に普及をしております。この自動車電話の料金体系がどのようになっておるのか、簡単にまず御答弁いただけますでしょうか。
  105. 森本哲夫

    ○森本説明員 自動車電話あるいは携帯電話は若干料金がそれぞれ違っておりますが、基本的には大体同じようなシステムで運用されておるということでお聞きいただきたいのであります。  現在の競争では、どの地域へ行ってもNTTがまず一つサービスを提供する、それから周波数の関係でもう一つライバルの、民間ニューカマーが出現している、こういう状態になっております。  それで、例えば自動車についている料金で申しますと、基本料といいますか、月額取られる料金でございますが、現在一万三千円、NTTの場合でございます。それから関東エリアでは、ニューカマーの日本移動通信というところが一万一千円の月額で提供、これは関西地区等ほかの地域でも大体ニューカマーのあれが一万一千円という横並びの料金に相なっております。  それから、入るにつきましては新規加入料というのがございますが、NTTの方はかって七万二千円だったのですが、この三月に値下げをいたしまして、現在、新規に加入するのには四万五千八百円、ニューカマーの方は、これも二年前にスタートしたときは六万二千円だったのですが、対抗して値下げをいたしまして、現在、日本移動通信は四万四千三百円、関西地区等に参りますと四万三千八百円というような形で出しております。  なお、通話料金については、これまでのところNTTの民営化以降百六十キロまでは三分二百八十円、百六十キロ超、遠距離の方ですが、これは三分四百円、民間の新しい移動通信の例でも百六十キロ超のところは今三百六十円でやっておる、こんなおおむねの概況でございます。
  106. 北側一雄

    ○北側委員 高いのですよね、この携帯電話、自動車電話の料金が。  そこでちょっとお聞きしたいのですけれども、この自動車電話、携帯電話の加入数の推移が恐らく急速に伸びているのではないかというふうに私は思うのですが、この点、いかがでしょうか。
  107. 森本哲夫

    ○森本説明員 自動車電話というものが日本で生まれましたのは昭和五十四年、当時電電公社でスタートしたのでございますが、その後、六十年に民営の改革ということに相なりまして、その時点ではもちろんNTTの電話だけでございます。それで六万二千台ございましたが、昭和六十三年に、さっき申しましたニューカマーが参入をいたしまして、その年は、六十三年度では二十四万台、平成元年度には四十九万台、平成二年度、つまりことしの三月三十一日で八十七万台という伸びに相なっております。
  108. 北側一雄

    ○北側委員 今のお話でも、昭和六十年と比べてみましたら、昭和六十年が六万台ちょっとでしたね。それが平成二年度末では八十七万台ということで、十五倍近くになっているのですか、非常に需要が拡大をしているわけでございまして、この自動車電話、携帯電話の特に通話料なんですが、これの引き下げをぜひ検討をしていただきたいというふうに私はお願いするものでございます。  先ほどのお話ですと、百六十キロまでが三分二百八十円、これは普通の電話、一般の電話の東京―大阪間の三分二百四十円より高いですね、すぐ近くで携帯電話を使っていても三分二百八十円。携帯電話が普及しているだけに、利用者の立場に立ってこの携帯電話、自動車電話の特に通話料金の引き下げをぜひNTTとも相談していただいて、御検討を速やかにお願いしたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  109. 森本哲夫

    ○森本説明員 確かに、今御指摘のように相当急激な伸びになっております。私どもとしては、かねてから、これだけ伸びているにかかわらず、料金が依然として下がっていないのは、利用者の立場に立つと大変遺憾な事態だ、できるだけ早く値下げをしてほしい。これはもともと当事者が決めることでございますので、そういう要請をかねてからいたしておるわけでございます。  とりあえず、今申しましたように基本料金とか新規の加入料は相当下がってはまいったわけで、例えばNTTの月額は、さっき申し上げましたが新規加入のときは七万二千円払って月々一万八千円を民営化当時は払っておったのですが、今四万五千八百円なり一万三千円に月額がなったということでは大分低下はいたしてきておりますが、肝心の通話料、これがおっしゃるとおりここ数年動いていないわけでございますので、私どもとしても、おっしゃるような立場で、これだけ需要がふえたわけで、むしろまた料金低下をさせることによってさらに需要も伸びることであろうということで、自動車電話料金全体の値下げを期待いたしておるわけでございます。  近々、私どもとしても非公式にいろいろ聞いていますと、その検討に入っているというふうに聞いておりますので、できるだけ早い時期に申請が出てくるように期待をいたしておるところでございます。
  110. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございました。今私が申し上げましたMA、市内通話区域の範囲の拡大とか、それから自動車電話、携帯電話の料金体系の見直しとか、ぜひこれはお願いしたいと思います。  では郵政省の方、結構でございます。  それでは次に、きょうの私の質問の最大のテーマでございます来日外国人被疑者の捜査と、それから通訳の問題についてお聞きをさせていただきたいと思います。この来日外国人被疑者の捜査と通訳の問題につきまして、私は去年の四月にも別の委員会で質問をさせていただきました。このときも種々御答弁いただいたわけなんですが、その御答弁を踏まえましてきょうは質問をさせていただきたいと思っております。  御存じのように、来日します、日本に入国します外国人の数が近年非常にふえております。この増加傾向というのはこれからますます強まっていくと思われます。これに伴いまして、本当はあってはいけないことではありますが、来日外国人が犯罪の被害者である場合や事件関係者になってくる場合や、さらには来日外国人の犯罪もふえているというふうに思います。  私、これから来日外国人という言葉を何度も使いますけれども、この来日外国人というのは短期在留資格の外国人という意味で使わせていただきます。この短期在留資格の外国人、来日外国人の昨年の刑法犯の検挙状況がどうなっているのか、まず最初にこれをお聞きしたいと思います。
  111. 國松孝次

    國松説明員 お答えをいたします。  平成二年中における来日外国人の刑法犯罪の検挙は、件数にいたしまして四千六十四件、人員にいたしまして二千九百七十八人でございます。前年に比べまして件数では四百九十二件、一三・八%の増加となっておりまして、これは過去最高の記録でございます。人員では、昨年と比べますと十一名減と若干減少をしております。過去十年間を見てみますとほぼ一貫して増加傾向にございまして、十年前の昭和五十五年と比較をいたしますと、件数で四・七倍、人員では三・八倍に至っております。
  112. 北側一雄

    ○北側委員 今御答弁いただきましたこの検挙状況なんですが、大体どの地域の人が多いのか、もう少し具体的に御答弁をいただきたいと思います。
  113. 國松孝次

    國松説明員 平成二年中に刑法犯罪で検挙した被疑者の国籍別の状況でございますけれども、一番多いのは中国でございまして、人員でいたしますと全体の大体四三%くらいでございます。その次が韓国・朝鮮ということで一七・四%、フィリピンがちょっとぐっと落ちまして五・一%ということでございますけれども、結局アジア地域の者が検挙人員の全体の大体八三・八%、約八四%を占めておるというのが状況でございます。
  114. 北側一雄

    ○北側委員 当然これは短期在留資格の外国人でございますので、日本語が不自由な外国人であることが大半ではないかというふうに思うわけなんですが、以下ちょっと来日外国人被疑者の捜査手続と通訳の確保という視点から聞いてまいりたいと思います。  これは昨年も聞いておるのですけれども、改めて聞かせていただきます。来日外国人の逮捕手続についてどのような運用をなされておりますか。
  115. 國松孝次

    國松説明員 来日外国人でございましても、その者の身柄を逮捕するというような場合に日本人と特に差があるというようなことではございません。通常のとおりでございます。  ただ、来日の外国人でございますので、その場合は、逮捕、身柄を確保された場合には、その国の領事などにあなたの身柄が今確保されているということを通報するということが義務づけられておりますので、そういう保障手続が一つ乗ってくるということでございます。ほかは変わらないということでございます。
  116. 北側一雄

    ○北側委員 いや、私が聞いておるのは、きょうこれから聞くことは全部通訳の問題です。ほかのことを日本人と同じようにするのは当たり前の話でありまして、そうじゃなくて、日本語が不自由である、そういう方を逮捕しないといけないような場合に、その逮捕手続、逮捕状を示しますね、示すわけです。その内容について、当然日本語で書いてあるわけですから、それをどうやって本人に伝えているんだということを聞いているわけです。
  117. 國松孝次

    國松説明員 大変失礼いたしました。  まず、そういういろいろな逮捕状その他の令状を執行する場合のやり方でございますけれども、私ども犯罪捜査をやります場合の基準になりますものに、犯罪捜査規範というのがございます。それによりますと、外国人に対しまして逮捕状その他の令状により処分を行う場合には、なるべく訳文をつけて相手のわかるようにしなさいというような規定がございますので、そういうやり方をまずやるということでございます。  ただ、それ以外にも、最近は訳文といいましてもなかなか英語だけでは通じないことになってきておりますので、難しいというような場合につきましては、例えば逮捕する場合におきましては可能な限り通訳人を同行いたしまして、その通訳に基づいて相手に、本人がどういう形で逮捕状を執行され、あるいは捜索令状を執行されるのかということがわかるような手続をとっておるということでございます。  ただ、緊急逮捕というような場合、非常に現場的に難しいような場合には、まず身柄の確保をいたしまして、警察署におきましてなるべく早い段階でその緊急逮捕に至った事情を告知をするというような手続をとっておるところでございます。その場合にももちろん通訳人を通じて可能な限りやってまいるというようなことをやっておるわけでございます。
  118. 北側一雄

    ○北側委員 その可能な限りというのがどういう趣旨でおっしゃっているのか。特に、英語とか中国語、朝鮮語はまだいいのかもしれませんが、そうでない言葉、たくさんあるわけなんですけれども、タガログ語とかウルドゥー語とかタイ語とかベンガル語とかあるわけですね。これは少数言語というふうに言うと表現がよくないのかもしれませんが、こういう言葉のときに本当に通訳人を同道して逮捕手続がなされているのかどうか。
  119. 國松孝次

    國松説明員 これは事案の内容その他によって区々があるわけでございますけれども、大変重要な、例えば殺人であるとかそういうような犯罪を犯す来日外国人もふえているわけでございます。そういったように、ある程度私どもが犯罪の捜査を順次遂げましてそれについてこれからある面で計画的な逮捕を行うというような場合につきましては、タガログ語であれあるいはベンガル語であれ、その国の通訳人を連れて逮捕に向かうというようないとまがある場合には、先ほど申しましたような意味で可能な限り令状の執行には同道するというようなことであろうと思います。  ただ、通訳人と申しますものも、英語とかあるいは中国語、中国語の中でも北京語といったようなものでございます。そういうものであれば私ども部内に警察官としてかなりおりますのでいいのでございますが、先ほど委員指摘のような少数言語と申しますかそういったものにつきましては、なかなか現実の問題として確保が難しいというようなこともございまして、その辺は苦慮をしておるところでございますが、文字どおり時間的な余裕があって可能であればそういう少数言語であれ連れていくということでございまして、私どもとしても、そういう言語の少しでも話せる警察官を養成しようということで、昭和六十三年ぐらいからタガログ語であるとか少数言語につきましても大体年間十人ぐらい養成をいたしまして、各府県に配置をするというような努力をしておるところでございます。
  120. 北側一雄

    ○北側委員 ですから、もう少しまとめて言いますと、逮捕状を執行する場合には通訳人をできるだけ精いっぱい同道する、仮にそれができなければ、できるだけそれに近い時点で通訳人から言わせる、逮捕事実はこうですよ、罰条はこうですよというふうに言うわけですね。そういう運用をされておると。  それで、これからはちょっと提案なんですけれども、来日外国人が仮に逮捕される、逮捕された後に身柄拘束を受けるわけなんですけれども、その時点でさまざまな被疑者の権利が憲法上も刑事訴訟法上も認められております。それで、これから申し上げることは通訳人を通して口頭で言っているのだというふうに言われるかと思うのですけれども、私、こういうものについては翻訳文をつくってそれを本人に示すようなこともぜひやったらどうかなと。  例えば「あなたは、あなたの身柄拘束の理由である嫌疑事実を伝えてもらえますよ」という被疑事実の告知をされる権利がございますね。これがまず一つ、被疑事実の告知をされる権利。二番目に「あなたには弁護人を選任する権利がありますよ」、弁護人選任権の告知ですね。それから三番目に「あなたは、何か言いたいことがあったら、言う機会がありますよ」という弁解の機会を与えられる権利。四番目に「あなたは、必要があれば、自分の国の領事館、大使館に連絡ができますよ」という大使館、領事館への通信をする権利。さらに五番目に、「日本の刑事手続というのは、このような流れになっているんですよ」という、できれば日本の刑事手続の簡単な概略を示したものを本人に伝える。ついでに言っておきますと、これは六番目ですけれども、取り調べの際には、これに先立って、「あなたは、話したくないことは話さなくてもいいんですよ」、こういう黙秘権を告知される権利、ほかにもあるかもしれませんけれども、こうした権利の告知はどんな事件でもしなければいけないわけでございまして、一方、一般的、類型的な表現ができることでございます。  通訳人によって通訳して、本人にそういう権利がありますよというふうに口頭で理解させるのはもちろん必要でございますけれども、それとともに、被疑者の権利をより理解させるために、被疑者が理解できる言語で書かれた書面を本人に交付するなり、また見せるなり、そうしたことをぜひ制度化をされたらどうかなというふうに提案をさせていただきたいと思います。各種の言語で翻訳された、こうした書面をぜひつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  121. 國松孝次

    國松説明員 ごもっともな御趣旨でございまして、私どももそういう方向で、これから来日外国人の被疑者がふえていく状況に対応していかなければならないというように考えております。現在、既に一部の府県では、今おっしゃったようなことにつきまして現場なりに工夫を凝らしましてやっておるところもございます。  ただ、私どもこれは警察庁といたしまして、御質問のような一種のマニュアルのようなものをつくりまして、今のところとりあえず英語版、英訳にしたものを全国都道府県に、チャートと申しますかマニュアルな形で配ってみたいと思います。  その内容は、今委員指摘のように、日本の刑事手続の一種のフローチャート、それから供述拒否権があるというその供述拒否権のこと、それから弁護人選任権の告知、それから領事機関への通報の告知というようなものを一つのパネルのような形にいたしましてやっていく。それで、これを今後、順次中国語であるとか韓国語あるいはタガログ語、タイ語といったようなアジア系の言語で書いたものを全部備えておくということがやはり手続的に非常に親切になるのではないかということでございますので、御提案の御趣旨を踏まえまして、今後そういう方向でやってまいりたいと思います。  ただ、被疑事実の告知という点につきましては、これはそれぞれその場その場で少しずつ違いますので、これは余りパターン化をしてやりますとかえってまた誤解をするということがありますものですから、この点につきましては、その現場の同じ窃盗につきましても、必ずしも同じような言い方がなかなかできにくいというところがございますから、これについてはやはり通訳人、あるいは警察官からの告知という方がよろしいかと思いまして、定型化、パターン化できるものにつきましてマニュアル化をしてまいりたいというように考えております。
  122. 北側一雄

    ○北側委員 私、被疑事実の内容について言っているわけじゃないのですね。  要するに、来日外国人の方が身柄拘束されると、何でおれは、自分は拘束されているんだ、それをちゃんと説明しないといかないわけですね。そのために被疑事実の告知をされる権利というのが設定されておるわけなんですから、要するに、抽象的に、あなたは自分が身柄拘束されている理由であるところの嫌疑事実を伝えてもらう権利がありますよということを書いたらいいんだということを言っておるわけなんです。要するに、その内容はもちろん通訳の方から後で言われるのでしょうけれども、そういうことを本人は知る権利がありますよということを記載したらどうかということを言っておるわけでございます。そういう趣旨で私は申し上げているのですけれども、今のお答えは非常に前向きな御答弁をいただきまして、ぜひこれは進めていただきたいとお願いをいたします。  さらに進みますが、身柄拘束されて、当然、警察の方では取り調べをされる。取り調べをされて供述調書をつくられる。この取り調べの際の通訳人の使用状況なんですけれども、この辺、詳細わかりましたら教えていただきたいと思います。
  123. 國松孝次

    國松説明員 これは私どもが昭和六十二年に、その年に検挙されました、刑法犯及び特別法犯の両方で検挙されました来日外国人、これは三千七百四十五名おったわけでございますが、その捜査過程における通訳利用の有無について調査をしたものがございます。これによりますと、全体の四〇%、四〇・六%に当たる千五百二十一件につきましてはすべて日本語で捜査をしたというデータが残っております。かなりの皆さん、日本語はある程度はおわかりになるということでございましょう。残る二千二百二十四件につきまして、捜査の過程において何らかの形で外国語が使用されておるということでございます。  外国語を用いた二千二百二十四件について調べますと、通訳を使用せずに捜査官自身が当該外国語によりまして取り調べを行った場合を含めまして、警察部内だけで処理した件数が千六百六十六件、七四・九%でございます。また、民間に通訳を委託した事件が五百五十八件、二五・一%というのが実態でございました。さらに、使用いたしました外国語の内訳を見ますと、英語が当然のことながら最も多く千五百一件、六七・五%でございますが、続いて北京語が二百五十四件、一一・四%、朝鮮語が百四十二件、六・四%、タイ語百三件、四・六%といったような順序になっております。
  124. 北側一雄

    ○北側委員 この数値、六十二年の数字なんですけれども、日本語のみを使用したのが四〇%程度ある。私、この数字がちょっと多いなという感じをするのですね。  先ほど申しましたように、短期滞在の来日外国人、日本語の不自由な方が私は非常に多いのじゃないか。そういう方で日本語のみを使用して取り調べをされ供述調書をつくられている。これが果たして実態だとしたら、もう少し実態をよく調べてみる必要があるのじゃないか。本当に日本語ができる人であればいいのですけれども。  私は、ぜひ警察庁の方に御提案申し上げたいと思うのですが、これは六十三年四月に調査された六十二年分の通訳人の使用状況でございます。今もうどんどんふえているわけですから、もう一度この実態調査をぜひしていただきたいというふうに思いますが。
  125. 國松孝次

    國松説明員 私どもといたしましても、状況は刻々と変わるわけでございますので、今後必要があると判断した時点で調査を実施してまいりたいと考えております。
  126. 北側一雄

    ○北側委員 必要があればじゃなくて、ぜひもう一度実態調査、そんなにこれ手間暇かかることじゃないと思いますので、もう一度実態調査をぜひやっていただきたい。お願いをいたします。  検察庁の方、同じ質問でございます。取り調べの際の通訳人の使用状況、もし了解されているならば教えていただけますか。
  127. 但木敬一

    ○但木説明員 全国の検察庁における通訳人を必要とした事件の割合等については残念ながら資料はございません。しかし、平成二年中に東京地検刑事部外事係が扱りた韓国人、朝鮮人を除く外国人の受理人員は一千五百七人でありまして、その通訳のため通訳人を依頼した延べ回数は一千二百十九回となっております。  通訳の依頼回数を言語別に分類いたしますと、北京語が四百五十三回で三七・二%、英語が二百七十一回で二二・二%、タイ語が百四十二回で一一・六%、広東語が七十五回で六・二%、スペイン語が六十八回で五・六%、パンジャブ語が六十七回で五・五%、その他の言語が百四十三回で一一・七%となっております。
  128. 北側一雄

    ○北側委員 先ほどの警察庁での六十二年の調査なんですけれども、タガログ語とか、それからウルドゥー語とかタイ語とかベンガル語、こうした言葉については大半が民間委託でなされている。もちろん庁内でいればいいのですけれども、庁内でそういうタガログ語やウルドゥー語やタイ語やベンガル語やベトナム語やマレー語なんかしゃべれる人はなかなかいない。民間委託せざるを得ない。民間でも余りいないと思います。そして、取り調べをされて供述調書をつくられている、こういう実態でございます。  次に、この取り調べ供述調書の作成に当たって、この通訳の保障という意味でどのような運用がなされているのか、お聞きをしたいと思います。まず警察の方から。
  129. 國松孝次

    國松説明員 供述調書をとるに当たりましては、これは原則として日本語で調書は作成をする。その状況につきまして、通訳人がおりましてそれを通訳をいたしまして被疑者に読み聞かせをする、その旨、通訳人がそのように読み聞かせをしたということについて通訳人が署名押印をいたしまして、その上でその供述人の署名押印ももらっておくというやり方が一般的なやり方でございます。  ただ、必要がある場合には、ちょっと母国語と申しますか、本人の直接のステートメントをとった方がいいという場合にはその者の供述書を書いてもらうというような手続でやっておるのが実務の運用でございます。
  130. 北側一雄

    ○北側委員 検察庁の方は、同じ質問、いかがでしょうか。
  131. 但木敬一

    ○但木説明員 外国人の被疑者の供述調書を作成するに当たりましては、検察官が個々の具体的事案に即しまして、その事案の性質であるとかあるいは供述内容、証拠関係、供述者の心情あるいは態度等いろいろなことを総合判断いたしまして、外国語による供述調書を作成したり、あるいは被疑者本人が外国語による供述書を作成してくれる場合にはそれを作成してもらったり、あるいは先ほど警察庁の答弁にあったような方法で供述調書を作成したり、その事案に応じて適切な形で被疑者の真意をあらわす供述調書を作成するということにしております。
  132. 北側一雄

    ○北側委員 私は去年も申し上げたんですが、その一定のルールをきちんとつくって、こういう場合には供述調書の訳文をつくりましょうとか、それから、こういう場合には本人の供述書を書いてもらいましょうとか、そういうルールづくりをぜひやったらどうかということを去年提案をさせていただいたんですね。  もう一度ここで改めて提案をさせてもらいますけれども、重要な事件については、被疑事実にかかわる部分についてその供述調書を、全部の供述調書とは言いませんけれども、その被疑事実にかかわる部分について翻訳文をつくる、これが第一ルールですね。第二ルールとして、本人の供述書は原則的に一通はとる。警察庁で一通もしくは検察庁で一通とか、一通はとる。本人の意思に反するような場合は別にしまして、そうでない場合は、本人の供述書は本人に書いてもらえばいいわけですから、それを原則的に一通はとる、そういうことをぜひしていただきたい。  私はなぜそう申すかといいますと、通訳の正確性というものを担保し、後でその通訳が、日本語の供述調書で書かれているものが本当に正しいのかどうか、それを担保していくためにも、通訳の正確性を担保するためにも、またその供述調書の記載の正確性を客観的に担保するためにも、こうした取り扱いがぜひなされていいんじゃないかというふうに思いますけれども、警察庁の方はいかがでしょうか。
  133. 國松孝次

    國松説明員 貴重な御提案でございますので、検討はさせていただきますけれども、事案の内容と申しますものはもう千差万別でございまして、このルールづくりといいましてもなかなか難しゅうございます。  それから翻訳文の添付ということにつきましても、これはもちろん全部できればそれにこしたことはないのかもしれませんけれども、ただ、私ども警察捜査に与えられた時間などというのは非常に限られたものがございます。通訳体制と申しましても、まだまだこれから充実をしていかなければならないという状況でございます。そういったものができますのも、結局、その通訳体制というのが相当充実をしておるということが前提でございませんと、時間だけかかってしまってとても事務的に追っついていかないというようなことでございますので、それは大変難しいことであろう。  しかし要は、その外国人の供述が正確であるといいますか、正確に通訳をなされていて、それがきちんと裁判の上でも反映されるということが必要でございますので、そういうことができるような方策というものにつきまして、私どもとしては、通訳人の資質の向上、量的な拡大というようなものを図りながら、少しでもそういう日本の国際化に対応してまいる措置をしていこうということでございまして、なかなかできることとできないことがございますが、今後引き続きいろいろな形で検討させてもらいたいと思います。
  134. 北側一雄

    ○北側委員 私はそんなむちゃくちゃなことを言うているつもりじゃないのですね。全部に翻訳文をつけろなんてそれは無理です。そうじゃなくて、例えば重要な事件について、被疑事実にかかわる部分のその部分だけでも翻訳文をつけるとか言っているわけですよ。供述書は本人が書くわけですから、別に通訳の手を煩わすわけではないわけですね。それだったらできるでしょう。
  135. 國松孝次

    國松説明員 したがいまして、大変重要な部分というようなものにつきましては本人から供述書をとるというようなことは、今までもやっておりますし、今後もやってまいるつもりでございます。  ただ、その重要な部分につきましての翻訳文の添付ということにつきましても、引き続き検討させていただきますが、時間あるいは通訳の問題ということでなかなか難しい、しかし検討はさせていただくといることでございます。
  136. 北側一雄

    ○北側委員 本人の供述書は重要な事件についてはとりますよというお話ですよね、運用をしていますよと。  本人の供述書というのは、何度も申しますように、本人に書いてもらうだけですから、それをあえて訳す必要はないのです。将来公判廷で何かあったときに、本人の供述調書の内容と本人の公判廷の供述が食い違うときに、じゃ一体どうなんだということでその供述書を調べるためにつくっておけばいいのであって、そのときあえて翻訳する必要はないのですから、本人の供述書は書いてもらうだけでいいわけですから、これはぜひ原則的にやっていただいたらいいんじゃないかな、そんなに負担がかかることじゃないんじゃないかなというふうに私は思います。  同じ質問、検察庁の方はいかがでしょうか。
  137. 但木敬一

    ○但木説明員 委員指摘のとおり、外国人の被疑者が述べたことを正確に供述調書に反映するということは極めて重要であります。そのために、委員指摘のようなルールづくりができないかということも決して間違っているということではないのですけれども、また、重要事件、あるいは事件自体が重要でなくても、被疑者が非常に特異な供述をしている場合あるいは将来公判廷で争いとなることが予想されるような場合、そういう場合は、現在でも委員指摘のようないろいろな方策を講じて、将来の裁判所の事実認定に資するようにしております。  しかし、そのルールづくりということになりますと、こうした案件は一律こういうふうにしろということになると思うのですが、通訳人の能力、それから通訳人が協力できる時間、これは地域によっても異なりますし、また、その事案がどの程度の緊急性をもって通訳人を付さなければならないかというような問題もございまして、なかなか一律にルールづくりということは難しいのではないかと思います。  また供述書でございますが、これは原則的には黙秘権もございますので、供述書をつくれという命令はもちろんできないわけでありまして、本人が承諾する場合につくるということでございますが、もちろん事案によっては供述書を作成してもらうというようなことは現在でも行っております。しかし、その供述書をある一定の枠をはめて、必ずこれは供述書をつくれというと、本人が嫌である場合、あるいは本人が非常に正確に文書を書けない場合、これはいわゆる書く能力に非常に乏しい場合というのも相当数ございます。  それから、その内容はその場で訳す必要はない、それもそのとおりなんですけれども、それでは何にもそこに書いてある意味がわからなくていいのかというと、そうもまいりません。それは具体的事案と具体的な状況に応じまして、先生御指摘のように、できるだけ外国人の被疑者の供述を正確に裁判所に反映できるような手段を講じてまいることに一層の努力をしていきたいと考えております。
  138. 北側一雄

    ○北側委員 時間がございませんので次にいきますけれども、大臣、要するに通訳人が非常にもう不足をしておるのですね。来日外国人が今たくさんふえてきている。あってはいけないことですけれども、実際、犯罪というのがふえてきている。また、被害者である場合も多いわけなんですね。関係者である場合も多い。そういう場合に通訳が絶対必要なわけです。適正な捜査を進めていくためにも、またその来日外国人の人権を保障していくためにも、通訳というのは絶対必要なわけなんです。  まあ英語とか中国語とか朝鮮語とか、庁内で十分養成でき、また、いる場合はいいのですけれども、先ほど申し上げた少数言語のような言葉の場合、私は今いろいろ御答弁いただきましたけれども、実際、現場で実務に携わっておられる方々は、探すのに非常に苦労をされておられるのじゃないか、そういう通訳人の確保、育成に非常に苦労をされておられるのじゃないかなというふうに思います。根本的には、この通訳人の確保、育成にしっかり取り組んでいかなければいけない、私はそう思います。  この通訳人の確保、育成に具体的にどのように取り組んでいるのか。そしてあと、民間にその通訳人を委託するような場合に、そういうリストができ上がっていると思います。例えばそういうリストで、何語については何人ぐらいの民間の方に頼めるような体制に今なっていますよというふうな現状掌握ができているならば、それについても御答弁をいただきたいと思います。これは警察庁と検察庁、そして裁判所と順次御答弁をお願いいたします。
  139. 國松孝次

    國松説明員 御指摘のとおり、非常に有能な通訳人の確保というのが今や必須になってきておりまして、現在の体制が十分であると私ども全然思っておりません。これを何とか確保していかなければならぬと思っております。  二つの方法があるわけでございますが、部内の警察官になるべくやらせるというのもございますが、民間人の活用というのもどうしても必要でございます。各府県それぞれ工夫をいたしまして、御協力をお願いして、何とかそのリフトアップをさせていただいて、ネットワークで必要なときにはお願いをするというようなのを私どもも確かにつくっております。  これをなるべく今後も拡充をいたしまして、いろいろな形で、特にそうしたちょっとした少数言語と申しますか、余り私どもになじみのない言語につきましては、何とかそういう方々の御努力で通訳を賄うとともに、私どもとしても、タガログ語であれベンガル語であれ、全部民間にお願いすればいいんだということではなくて、少しでも部内の者で取り調べができるような者を養成してまいりたいというように、その両面から通訳の質的、量的な増強を図ってまいりたいというふうに考えております。
  140. 北側一雄

    ○北側委員 リストの内訳はわかりませんか、出ませんか。
  141. 國松孝次

    國松説明員 今ちょっと手元にございませんが、韓国語あるいは北京語というものを除くいわゆるアジア系の少数言語につきましては、全国で約六百人ぐらいの部外の方をリストアップといいますか、リストにつけております。  地域ごとのブレークダウンは、今のところ、ちょっと細かいのを持っておりませんが、約半数の三百五十名ぐらいの方は需要の多い関東地区で確保しておるというような状況でございます。
  142. 但木敬一

    ○但木説明員 委員指摘のとおり、外国人による犯罪につきまして適正な捜査をいたしますためには、まず第一に優秀な通訳人を確保、育成するということが極めて肝要でございます。  そのための方策として、無論警察庁に御協力願う場合も多いのでございますが、この種事件の取り扱い件数の多い東京地検等におきましては、外国語大学に依頼して独自の通訳人を確保するような道もとっておりまして、また、法務省としても、我が国刑事手続の概要や、通訳を行う際に具体的に生じると思われます事柄につきまして、通訳人に対しマニュアルを作成いたしましてこれを渡しましたり、あるいは通訳人と検察官との協議会を開催して、通訳のときに生じる種々の困難について両者で話し合うとか、あるいは謝金の額等についても改善を図るというようなことも協議をしておりまして、また供述拒否権の法律用語の通訳に資するためなどに対訳集というのをつくりまして、これは英語と韓国語が現在できておりますが、そういうものを通訳人に交付するなどしております。  法務省としては、今後とも必要に応じて通訳人と検察官との協議会を開催し、他の外国語についても対訳書を作成するなどしまして優秀な通訳人の確保、育成に努めてまいりたいと思っております。  なお、名簿について御質問がございましたが、これは各高検単位でそれまでに通訳人として選任させていただいたことがあります人々についての一応の名簿をつくっておりますが、これはさまざまな理由で、例えば移転とか転勤とかいろいろな理由で極めて変動性の激しいものになっております。今、数はどの程度かというお尋ねがありましたが、今私の手元にはその資料はございません。
  143. 島田仁郎

    ○島田最高裁判所長官代理者 裁判所の方でございますが、従前は各地方裁判所単位で通訳人名簿というものを作成しておりました。これを改めまして、平成元年十一月から各高裁単位でこの通訳人名簿を作成しまして、管内の地方裁判所が近隣の地方裁判所の情報をも得て通訳人を活用できるようにいたしました。この通訳人名簿は、いろいろな機会をとらえて新たな通訳人の発掘に努めまして、毎年四月にはこれを更新して一層の充実を図っております。  具体的には、個々の法廷通訳人からの情報のほか、各大学における外国語の講座の把握、また華僑総会とか日泰貿易協会、フィリピンの日本友好協会等の団体あるいは各国の大使館、そういったものを通じるなどしまして、有能な通訳人の発見、確保に努めております。  このようにして発掘されました新しい通訳人に対しまして、裁判所におきましては個々の事件について、先ほど委員から御指摘ございましたような通訳人用のハンドブック、これを既にかなりの言語につき作成済みでございますが、そういうハンドブックを利用しまして、裁判手続の概要や通訳人の注意すべき事項などを十分レクチャーいたします。  また、各裁判所においては、法廷通訳研究会というのを開催いたしまして、法廷通訳をめぐる実務上の諸問題について通訳人の方々にこれに参加していただき、裁判官との間できめ細かく忌憚のない意見交換を行うなどして通訳の能力の向上に努めておるところでございます。  それから、先ほどおっしゃった員数の関係でございますが、とりあえず東京高裁の管内で、少数言語につきまして本年の四月一日現在で把握しておりますところでは、少数言語ですから数はそうはないのですが、例えばウルドゥ語七名、タガログ語五人、ベトナムが四人、その他インドネシア、ペルシャ、カンボジア、ベンガル、ビルマ、そのほかタミールとかマライ、ヘブライ、その辺に至るまで我々としては情報を収集して確保しておることでございます。
  144. 北側一雄

    ○北側委員 最後に、大臣に御質問をさせていただきます。  きょうずっと、るる質問させていただいたのですが、要するに通訳人の絶対量が不足しているのですね。通訳人の確保、育成にしっかりと取り組んでいかなければいけない。来日外国人の人権保障という意味からも、適正な捜査の遂行というためにも、今来日外国人が急増している状況のもとでは通訳人の養成は急務でございます。私は、特に警察庁の方では一番の現場にいるわけですので急務じゃないかなというふうに思います。  もちろん各庁内で、警察庁内で通訳人の確保、育成にもっと予算をかけていただいて、その確保、育成に努めていくとともに、通訳というのは性格上これは中立性というのを要求されるのですね。また、ある程度の日本の刑事手続についての基本的な知識も持ってないと実際通訳が円滑にできないわけなんです。普通の日常用語を話せるだけではだめで、こういう専門用語がある程度わかるような人でないと通訳できないわけなんですね。  というふうに、通訳にはそういう特殊性がございまして、捜査から公判に至るまでの刑事司法における通訳人を積極的に養成していかなければいけないし、そのような公的なセンターをぜひつくっていただきたいと私は思います。警察庁警察庁、法務省は法務省、裁判所は裁判所、それはそれで大事なんですけれども、それとともに、今絶対量がともかく不足をしているわけですから、そういう刑事司法全体における通訳人を養成するための公的なセンターを、ぜひ法務大臣なんかとも相談していただきましてつくっていただけないものか、ぜひお願いを申し上げる次第でございます。大臣、いかがでしょうか。
  145. 吹田愰

    吹田国務大臣 ただいま北側先生と政府委員との通訳、公正な裁判ということに向けての被疑者問題につきましての御論議を伺っておりまして、極めて大事な問題である、特に先生は専門家でもありますし、私は全くの素人でありますから、このことについての言及は避けますが、いずれにしましても、少数言語の関係が特に通訳の不足ということが非常に大きく浮かび上がっておるということを伺いまして、これは大事なことであるなというふうに感じ取っておるわけであります。  したがいまして、今後の犯罪の国際化という問題が非常に大きくなってまいりました現在におきまして、我が国においてもこの通訳体制というものは非常に必要であろうと思っておりますが、司法関係、関係の閣僚ともまた協議をしまして、今お話がありましたようなことは具体的に、そのセンター設置の問題等はきょうここで伺ったのは初めてでありますので、直ちに答弁ということが十分できませんが、できるだけこういった点について前向きに話し合いができればなというふうな希望を持ちながらお答えにするということは遺憾でありますが、きょうの場合はお許しをいただいて、ぜひひとつ積極的なそういう体制づくりにこの際乗り出せるべく、北側先生の御意見を大事にひとつ持ち帰っていきたい、こう存じております。これから御期待に沿うべくできるだけの協議をすることをここでお約束をいたします。
  146. 北側一雄

    ○北側委員 大変ありがとうございました。きょうは本当は時間がございましたら自治省の方にも御質問させていただきたかったのですが、できなくて申しわけございません。ありがとうございました。  以上でございます。
  147. 渡辺省一

    渡辺委員長 寺前巖君。
  148. 寺前巖

    ○寺前委員 きょうは、先日、国立大学協会が、国立大学財政基盤調査研究委員会中間報告「教官の直面する教育研究費の現状」という文書を公表されましたので、これをめぐって、わずか三十分の時間でございますが、大臣並びに文部省の当局の御見解を承りたい、こういうふうに思ってやらしていただきます。  先日、私は京都大学の理学部植物学教室に、日曜日の日でした、寄せていただきました。ちょうど雨の降っている日でしたが、わざわざ主任教授がおいでをくださいまして、いろいろ御案内をくださいました。  一体この植物学教室に収蔵されている標本というのはどのぐらいあるのですか、百二十万点ある、東京大学は百五十万点ぐらいだ、国内二位の量になっているし、内容的にも一九二一年の植物分類学の開講以来、フランス宣教師で世界的コレクターであるホーリエのコレクション、コケ、シダなど六万二千点、それから小泉源一博士のコレクション、サハリンとか朝鮮半島などの採集植物約五万点を初め海外学術調査での採集標本、世界各地との交換資料など極めて重要な標本、また分類学上貴重な資料がそこには収蔵されておりました。  ところが、この保存の仕方を見て、私はちょっと唖然としたわけです。先生のお部屋にもございましたし、廊下へ出ますと廊下にロッカーがある。ぱっとあげてみたら、それが標本の分類ですよ。百二十万点てどこにありますのやと言うたら、つぶす予定になっているところの建物の二階です。二階へ上がってみたら、何と天井が穴があいておる。雨が漏る。最近やっと雨漏りを防いでいただきましたとおっしゃっていましたが、壁を見たら、それこそコケの標本じゃありませんが、コケが部屋の中にできておる。カビが生えておる。これはえらいこっちゃな。ダンボール箱に入ったままになっておる。これは整理しようがないなというような感じを受けました。  奥には古い建物がありまして、一階の建物を中間でぱあんと切って二階建てにしてあって、支えが入れてあって、そこに収蔵してある。あるいは中庭の中にプレハブの部屋をつくって、そこに収蔵する。これが天下の京都大学の植物学の教室の標本の整理のあり方なんだろうか、えらいこっちゃなと私は思うた。こんな方法で管理さしておっていいんだろうか。これは火事が起こる、ほやが出る。どんなことになるのだろうか。  最寄りの消防署に聞いてみた。おまえのところ知っているか、京都大学の大事なものがどういう管理状況になっているか、おまえ所管じゃないから関係ないか知らぬけどなと、こう聞いたら、毎年京都大学に消防署としてちゃんと調査に入ってます。去年も二週間やらしていただきました。その結果、廊下に置いてあるああいう道具については、ちょっと取ってもらわな困るんと違いますかとちゃんと御注意申し上げていますし、京都大学からもちゃんと文書で、撤去するように予定しております、予定が毎年毎年返ってくるだけですわとこういうわけや。正直言って、私、あれどういうふうにされるんでしょうかねえと、消防署の担当者も言うぐらいなんです。  これ、一番所管をする文部省は一体どんなふうにこういう事態をお考えになっているのだろうか。雑誌にもそれ、ちゃんと公然と書かれている。テレビでも報道もされている。京都大学だけじゃない。東京大学だってそうなんだ。日本の世界的な権威のあるところでこんな管理の仕方がやられているということについて、文部省は知っているのか知らないのか。どういうことになっていますか。
  149. 前畑安宏

    ○前畑説明員 今先生御紹介いただきました京都大学理学部植物学教室の件、御指摘ございましたように、先般の「科学朝日」で紹介をされております。また、東京大学等々につきましても昨年暮れ「日経ビジネス」という雑誌で紹介をされまして、私どもとしては、内心じくじたるものがあるところでございます。  京都大学の植物学教室につきましては、もう先生おいでいただきまして、ごらんをいただきましたので、多くを申し上げることはないかと思います。  ただいまも御紹介いただきましたように、平成二年度に、雨漏りに対する応急対策として修理工事を実施いたしたところでございます。御案内のように、国立大学特別会計のみならず、全体として財政状況が逼迫している折からでございますので、私どもとしてもなかなか対応が難しい状況にありますことをひとつ御理解を賜りたいと思います。
  150. 寺前巖

    ○寺前委員 私に御理解いただきたいと言ったって、言うところが違うんじゃないだろうか。大臣、御理解いただいたのでしょうか、今の話で。聞かしてもらうのは、大臣の方が聞いてもらわないかぬと思うのやけどな。  それで私、そこで先生に聞いたんだ。なるほど、私の知識はないけれども、学校というところは、そうやなあ、図書室というのがあるわな。図書室には、司書という人がおって、専門的に整理もするわな。大体、標本というのはどんな管理をやりますのや、私はそういう知識がないので、ちょっと教えておくれやすな、こう言うたら、いや私が整理しますのや、こういうわけや。ほほう、こういう標本資料の整理の方が、図書も大変だろうけど、整理の仕方が難しいと私思うのやわ。特別に何かやらなあかんのと違うか、素人目にもそう感じますわな。  そこで、標本維持費のためにおたくの方ではどれだけの予算がありますのやと聞いてみた。年間二十万円、職員三人御協力いただいて整理してますのやというわけや。ははあ、これではいかぬわなと私は思うた。二十万円というのは一体どれだけのことができますのやと聞いてみたら、腐らさぬようにするためにナフタリン買うてきますねんというわけや。ああ、それやったらわしでも買いに行ったるでと思うわ。それで何ぼぐらいかかる。大体それでしまいですわとこう言うのやわ。ナフタリンですわ。  何でナフタリンで処理しますのや。もうちょっと部屋全体を管理するようなものにしなあきませんなとはいうけれども、あなた、あんなガラス窓が割れているようなところで管理は無理ですわ、雨漏りもするようなところで。屋根をなぶったぐらいではあきませんわ、これは。基本的にそういうものを収蔵する施設をつくらなあかんわ。ナフタリン以外のやり方はありませんのかと聞いたら、近所、人家もありますから使えませんわ。それはそうやな。  二十万円で、金がない時代でございますからとは言えますかなあ、大臣。ひどい話やな。一体、学術研究というのをどう考えているんだろう。基礎研究をどう考えているのだろうか。私、言わんならぬというふうに思うのですが、今の答弁でほ、金のないときだから御理解いただきたいと。これ、理解してよろしいのでしょうか。日本の科学技術、日本の学問の将来のために、あれで了解いたしましたと言って下がっていいんでしょうか。大臣はどうお考えになります。
  151. 井上裕

    井上国務大臣 事実関係は後で申し上げますが、先生御案内のように、厳しい予算の中でありますが、私どもの文部省予算五兆五百五十九億四千四百万、その中で二兆七千三百六十一億という五四・一%の義務負担、そういう中で、私ども、特別会計へ一般会計から一兆二千億程度入れているわけであります。  そういう中で今回、文部省予算といたしましては五・四%、一般歳出が四・七%であるところ、実に昭和五十五年から十一年ぶりの予算の、少しではありますが向上を図った。財政厳しい折でありますが、私ども、特に今の問題につきましてはやはり努力をいたしたいと思いますが、一般的な財政厳しい折でございます。文部省予算が六兆円でも七兆円でもありますれば特別会計の方へ一般会計からまた幾ばくの援助をするわけでございますが、そういう中での文部省としてのやりくり、特別会計でのやりくりであります。  また、国立大学のこの間の皆さんの、相当の数、六〇%以上の方々の回答率を得た、そのことも私は見せていただきました。確かに先生言われるとおりでありますが、私どもは非常に財政厳しいという中でやりくりして、少しでもいい大学あるいは研究機関にいたしたい、このように私自身は考えております。
  152. 寺前巖

    ○寺前委員 財政厳しい、厳しいって、それは臨調行革でいじめるから文部省に対しては厳しいのであって、なにあなた、軍事費なんかは二倍近くに膨れ上がっていっているんで、ODA予算も膨れ上がっていっているんで、特別に枠を設けてずっと計画的にやっているんだ。必要とあれば計画的にそうやって伸ばしていっているんだ。これ、必要と閣議で見るのか見ないのかや。そういう問題でしょう、厳しい言うたって。  だから二年前に学術会議で勧告出ているのでしょう。将来をおもんぱかる必要があると、ね。専門的な研究家が国立大学におらぬようになって、民間へ行くのと違うか。よそへ行ってしまうで。こんな事態は憂慮すべき事態だから特別な予算の枠をつくってでもやりなさい、こう言っているじゃありませんか。これ二年前ですよ、学術会議から勧告出ているの。私は、そのことを必要とするのかしないのか、この姿勢が問われていると思う。  一九七四年の調査によると、英国立エジンバラ植物園の場合に、標本室は京大の二・五倍だ。標本の仕分け、収納スタッフが十二名、標本作成五名、消耗品係など三名、司書二名、タイピスト一名、図書の移動補修係二名、事務部十一名、計三十八名。書いてあるのをもらってきた。米国ハーバード大学、標本作成者六名、収納者十九名、計二十五人。北京科学院、資料整理要員だけでも七十名近くおりました。耳をふさぎたくなるわな。本当にそのことは大事なことだと位置づけるのかどうか。  新しくつくられたマレーシアの収蔵庫なんかでも、こういうものに収蔵したらいいというものはメード・イン・ジャパン、日本でつくったものを向こうの大学に持っていって置いてある。日本の大学にはそういう収蔵整理するようなものを置く部屋がないものだから買わない、外国へ買うてもらっているだけだ、本当に嫌になってきますよ、話を聞いておって。しかも、聞いてみたら北海道大学では千島やサハリンなどの貴重な資料が詰められたままだという。ソビエトにもあんな資料ありませんよと言うのです。世界に冠たる日本の資料としてあそこにあるが、あれがもうほうり込まれたままです。私は、本当に憂慮すべき段階だとおっしゃるのは無理もないと思う。  それで、おたくらはどうしていますと言ったら、やおら資料くれました。京都大学理学部・農学部・教養部合同調査委員会というのがあって、どこどこがどうなっているかというのは教室別のものの調査した結果がだあっと書いてある。おたくの部屋だけと違いますのやなといって見ておった。だから、せめて自然史博物館というものをつくって、総合的にそこへそういうものを整理するようなものをつくって、そして世界の人にも日本の研究者にも一般の方々にも御利用できるようなそういう研究施設をつくり上げたいものだ、そういうふうにして構えていただけないのでしょうか、日本の政治は、こういう話なんだ。最後は私の方に責められました。  それはそうだ、政治家がこういう話を聞いて黙って見過ごすというわけにはいかぬと思う。それは、所管の大臣は見過ごすわけにはいかぬ。せっかくのこういう御提言があったことに対して、私は直接これは文部省に言っているのかと言ったら、いやまだそこまでは私らおよそ出せませんという。今、医学部のところをちょっと新しい施設をつくってもらっていますから、私ら物を言えません、こういう話だ。もう大学の先生方が予算を知った上で、しかも日本の未来について御心配になっているわけでしょう。  大臣、積極的なこういう提起に対して学術会議も勧告が出た、国大協もああいう中間報告を発表された。現に、例えば一つ、京都大学ではそういうような提起がなされている、こういう提起に対して積極的に耳を傾け、提起された問題について調査をさして積極的に打って出る、そういう対応策にこの際に立たれるのか立たれないのか。それはもう金がありませんからいかんともしがたいで、この話は全部オジャンにさせられるのか、そこの態度をどういうふうにされるつもりなのか、大臣の見解を聞きたいと思います。
  153. 井上裕

    井上国務大臣 国大協のこの調査によります、いろいろ私もよく承知しております。近時、やはり企業あるいは私立大学などで大型の資本投下によります新しい施設づくり、これが進められている。国立学校におきましても、近時年間約二十六から三十万平方メートルの施設の建設を実施しております。これは教育研究環境の整備に現在努めているところであります。しかし、御案内のように国立学校全体が保有する建物面積は千九百二十三万平方メートル、こういうことを考えますと、現在二十年以上の建物がその中で八百二十六万平方メートル、こういうものもやらなければならない。  文部省としては、厳しい財政状況でありますが、社会的要請等を踏まえ、教育研究組織の設置あるいは見直しに対応した整備や、あるいはまた保有する建物、いわゆる何年たっているというような改築、改修、こういうことを計画的に進めておるわけであります。平成三年度予算におきましては、対前年度五十一億円増額を図ったところでありますが、何せ数多くあり、厳しい財政状況、今この状況でありますので、心ははやっても、なかなかこの財政が乏しい財政でありますが、文部省としては積極的に現在取り組んでおるところであります。
  154. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣、一つずつ丁寧に一回研究してほしいと思う。  例えば、国立学校施設整備費というのは、昭和五十四年のときには千五百四十六億円出していた。それが昭和六十一年になると半分に減ってしまっている。何ぼ厳しいとかなんとか言うておったって、半分に減ってしまっておる。今若干ふえて、八百九十八億円に平成三年でなっている。要するに、半分になっておる。建物が古くなっていくのは減っていくのか。もうふえていく一方だ、今の二十年の話じゃないけれども。十年たったらそれだけ、今まで二十年に入っていなかったものがだあっと入ってくるさかい、うわあっとふえていくんだ。厳しいというような話で済ませへんですよ。これは特別に考えなければあかん。  ですから、大臣、この際に、せっかくのこういう時期の大臣なんです。もう一度、学術会議が特別枠をつくってでもやりなさいと言ったことに対して、大臣はどういうふうに思うのか。  それから、今言いました、半分近くに整備費が減ったんだ。そんなもので古い建物の改善ができないのは当たり前だから全面的に見直すとおっしゃるのか。  三番目。もう大臣に聞きます。三番目に、私は具体的に京都大学の自然史博物館という構想を、なるほどそういうものは必要だな、先生方、御心配かけました、金の都合もあるだろうけれども、具体的に検討させてみます、こういうふうにおっしゃるのか。  とりあえずその三つの点について大臣の御意見、御回答をいただきたいと思うのです。  もう一回言いましょうか。特別枠で考えなければあかんのと違うかと学術会議から言われた。それから古い建物の問題について、半分にだあんと落ちてしまった。これでは勝負にならない、考え直さなければあかんというふうに御指示なさるのかどうか。もう一つ、もう現場の先生方は、文部大臣にはよう言わぬけれども、しかし、日本の未来を考えたときにはそういうものを何かやらなければいかぬ、例えば自然史博物館のようなものをやらなければいかぬ。せっかくの構想、そういうものに耳を傾けて、大臣として研究させるとおっしゃるのかどうか、この三点について大臣に改めて私は聞きたいと思う。  これは事務の話じゃないよ、私の聞いているのは。事務的に処理するさかいあかんのだ、こういう話を。大臣、いかがですか。
  155. 坂元弘直

    ○坂元説明員 予算の仕組み等の問題でございますので、私から答えさせていただきますが、最初に特別枠の問題でございますが、これは私も長年会計課長等を経験しまして、文教予算の厳しさ、苦しさというのは十分わかっているつもりでございますが、できたら、その学術関係のビッグプロジェクトくらいは特別枠というような気持ちも長年持っているわけでございますけれども、ただ現実問題として、予算を編成する場合にはどうしても横並びと申しますか、各省共通の概算要求基準を設定しなければならないという財政当局の立場もそれなりにわかるわけでありますが、私どもとしましては、とにかく文教予算を何とかしたいという気持ちで概算要求基準あるいは予算編成には従来も取り組んでまいりましたが、これからも取り組んでまいりたいと思っております。  それから、施設費が半減したというのは全くそのとおりでございます。厳しいマイナスシーリングという枠の中で結局やりくりをするということになりますと、施設費をある程度節減してほかのいわゆる研究費等の節減を免れる。例えば、これは国立文教だけではございません。公立文教で申し上げますと、小中学校の校舎の建築費について申しますと、幸いに小中学校の生徒が減ってきておったということもございましたけれども、一番ピークでは五千数百億ございましたが、現時点では二千億ちょっとでございます。  それから、社会教育施設にしても、施設関係につきましては文教予算では軒並み縮減せざるを得なかったという事情を御理解いただきたいと思いますが、国立学校施設の状況は、先生御指摘のとおり、それから国大協で御指摘しておりますとおりに、まさに私どもも危機的な状況にあるというふうに認識いたしております。そういう意味で、苦しい財政状況ではありますが、少しでも施設をふやすという方向で今後努力してまいりたいというふうに考えております。  それから、第三点の問題でございますが、京都大学の理学部の標本室につきましては、全面的に、単に標本室だけではございませんで、理学部の動植物教室等を含めまして現在五千平米ぐらいありまして、その中で五百六十平米標本室で使っているわけでありますが、この動植物関係の建物全体を、大体八千平米というふうに聞いておりますが、改築するという計画を京都大学で持っておりまして、その計画が練り上がって私どもの方に相談があれば、私どもとしましては前向きに対応してまいりたい。その中で、標本室を取り込んで整備するという計画のようでございます。
  156. 寺前巖

    ○寺前委員 腹立ってばかりおっても話は進みませんので。もう時間もあらへんので、せっかく科学技術庁からも来てもろうてるのに、いはるかいな。――ああ、科学技術庁、来ておられますか。これは文部省と横並びなんでちょっと聞いておきますけれども、せっかく来ておられるのだから。  国立試験研究機関で基礎研究の中心が経常研究、この経常研究に必要な経費が、研究員当たり積算庁費が、いわゆる人当研究費ですね、これが八年間ですか十年間ですかずっと据え置いてきて、九〇年に一万円、九一年に一万円引き上げた。これはほんまですか。ずっと横並びやったんですか。
  157. 金子詔

    ○金子説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、五十七年度以降、積算庁費につきましては据え置かれてきたわけでございますけれども、平成二年度、平成三年度と連続して、代表的な職種でございますけれども一万円のアップがなされたところでございます。
  158. 寺前巖

    ○寺前委員 それは、文部省とはどうなんですか、差があるのですか。文部省と大学関係と大体横並びですか、考え方は。
  159. 金子詔

    ○金子説明員 私ども、文部省の大学の業務内容等と直接比較できるものじゃないとは思っておりますが、研究実施に必要な経常研究推進のための経費として、現在いろいろな区分により異なるわけでございますが、実験系Ⅰというところでは一人当たり百五十万円ほどの経費を計上させていただいているところでございます。
  160. 寺前巖

    ○寺前委員 私、文部省の過去十年の積算校費を見たら、非実験が昭和五十五年が百八十七万一千円やわね。その次の年が百九十四万五千円で、あとずっと逆に下がっていきよるねん。五十八年度から下がっていきよって、結局、元年度百九十万三千円、二年度で百九十二万二千円。ことしはちょっとふやしました、こう言ったって、昭和五十六年と比べたら減っておるのやわね。そうすると、この十年間に物価が上がっている事態を考えたら研究費が下がっていっておる。文部省もそうだと。今、科学技術庁に聞いてみたら、科学技術庁も一万円上げましたというようなことを言っておるけれども、そんなもの十年前と今と考えてみたときに、何を上げたことになっているんだ。研究費に対する金の使い方というのはこんなもんでええんじゃろうか。  それからもう一つ、旅費について聞きたいと私は思う。  これまた私、聞いてみてびっくりしたのですよ。科学技術庁、二年に一回学会に行くような予算しか組んでへん、こう言うのか。そういうことになっているの、大体考えが。どうです。
  161. 金子詔

    ○金子説明員 学会の出席旅費ということで各省庁と連携をとりまして統一的に要求させていただいている部分がございます。これにつきましては、積算上、各省庁の単価につきまして二分の一の係数がかかっているということは事実でございます。
  162. 寺前巖

    ○寺前委員 そんなものあなた、一年に一回ぐらい学会に出してあげへんかったら研究者としての値打ちがなくなるのと違うか。国立の研究機関で予算、それで一体何ぼかかります、毎年一回ということにしたら。
  163. 金子詔

    ○金子説明員 各省庁で現在計上されております学会出席旅費、これは積算の内訳でございますけれども、約一億四千万円ほどになっております。(寺前委員「そんなもので済むの」と呼ぶ)はい。
  164. 寺前巖

    ○寺前委員 一億何ぼで済むって、あなた、例えばこの間、原子力発電所が事故を起こした。あの安全や安全やと言って宣伝に使うたお金は何ぼですねん。一年間に六十億から使うとんやが。金ないという話とそれとはどんな関係になりますのや。その宣伝費をちょっと抑えただけで、そっちへばっといってみないの。日本の学術水準をどれだけ前進させる保証になるのか。私、何も科学技術庁だけを責めているわけじゃない。それで、文部省予算で旅費は一体どうなっているんじゃろうかと言ってみたら、何のことあらへん、これも昭和五十五年時分には十一万一千三百二十円で積算してますわな。今何ぼやと言ったら十一万九千六百四十円。十年たっても同じ金額やったら余計行けぬようになるというだけのことじゃ。この間に交通費がどれだけ上がってますねん。全く現実的に研究機関にふさわしいような研究費の予算の組み方でなければ、この研究者に対する旅費の組み方も、極めて現実的じゃないですよ。うんと後退していますよ。だから、国大協でこういう結論を出してきて、このままでは危機的段階だと文部省も認められた、担当の方も危機的段階だと言われたのです。  危機的段階だったら危機的段階らしく、私、この際に大臣に、さっき三点要求したのですが、お答えなかったので新しい問題を提起しますけれども、もうこれで最後です。大臣、本当に国大協のしかるべき人たちと懇談をされて、もう一回この点調査されるとか、現に問題になっている大学に出かけていかれて直接その目で見てもらう、私、それをひとつ、率直に、百聞一見にしかずという言葉があるんだから、これは大臣、大胆に乗り出してほしい、これが一つ。それからもう一つは、この研究費の組み方、この旅費の組み方、先ほど言いましたこの研究機関のあり方に対して、直ちに概算要求をことし組むに当たって検討し直すという態度をおとりになるのかどうか、率直に大臣の見解を聞いて終わりたいと思います。
  165. 井上裕

    井上国務大臣 先ほど三点答えないということでありますが、事実関係でございますので、私はできることとできないことをはっきり申し上げますが、これは特別枠設定は現実問題としてはこれはもう非常に困難であります。ただし、この施設費につきましては、今後とも施設整備の充実に努力をいたしたい。京都大学につきましては、官房長答えたとおりであります。  さらに、基幹的な教育研究費、あるいは学生当たりの積算校費、あるいはまた教官当たりの積算校費につきましては、単価改定を含めて増額を現在図っておるところであります。私どもとしましては、教育研究費及び旅費の確保につきまして今後とも努力をいたしたい、このように考えております。  さらにまた、各大学、国立大学につきましても、私も今やっと国会が終わりましたので、その合間にも養護学校であるとかあるいはいろいろな施設も見てまいりまして、時間があれば国立大学もぜひ見たいということでいっぱいであります。
  166. 寺前巖

    ○寺前委員 終わります。
  167. 渡辺省一

    渡辺委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十二分散会