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1991-03-13 第120回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月十三日(水曜日)     午前九時三十二分開議  出席委員    委員長 牧野 隆守君    理事 新井 将敬君 理事 園田 博之君    理事 中村喜四郎君 理事 浜野  剛君    理事 原田昇左右君 理事 上原 康助君    理事 高沢 寅男君 理事 遠藤 乙彦君       井奥 貞雄君    伊東 正義君       小渕 恵三君    田名部匡省君       福田 康夫君    宮下 創平君       井上 一成君    井上 普方君       川崎 寛治君    川島  實君       松原 脩雄君    古堅 実吉君       永末 英一君    和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君  出席政府委員         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁長官 児玉 良雄君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務大臣官房審         議官      野村 一成君         外務大臣官房文         化交流部長   小倉 和夫君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      市岡 克博君     ───────────── 委員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   和田 一仁君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     和田 一仁君 同月十三日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     井奥 貞雄君   和田 一仁君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     麻生 太郎君   永末 英一君     和田 一仁君     ───────────── 三月十一日  日本の多国籍軍への戦争協力反対、速やかに和平に向けての最大限の努力に関する請願土肥隆一紹介)(第一八〇八号)  同外一件(外口玉子紹介)(第一八四〇号)  同(土井たか子紹介)(第一八四一号)  同(長谷百合子紹介)(第一八四二号)  湾岸戦争即時停戦に関する請願外一件(上田利正紹介)(第一八〇九号)  同(輿石東紹介)(第一八一〇号)  同(輿石東紹介)(第一八四六号)  同(輿石東紹介)(第一八七四号)  戦争協力支援金反対等に関する請願岡崎トミ子紹介)(第一八三五号)  同(外口玉子紹介)(第一八三六号)  同(長谷百合子紹介)(第一八三七号)  同(鈴木喜久子紹介)(第一八七六号)  湾岸戦争即時停止等に関する請願外口玉子紹介)(第一八三八号)  多国籍軍への支援反対湾岸戦争即時停戦中東和平会議開催等平和的解決に関する請願外口玉子紹介)(第一八三九号)  多国籍軍イラク軍戦闘行動即時停止を求める決議等に関する請願岡崎トミ子紹介)(第一八四三号)  同(外口玉子紹介)(第一八四四号)  同(長谷百合子紹介)(第一八四五号)  同(宇都宮真由美紹介)(第一八七三号)  同(宇都宮真由美紹介)(第一九一七号)  湾岸戦争反対米軍への戦争協力中止に関する請願大出俊紹介)(第一八七五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件(条約第六号)      ────◇─────
  2. 牧野隆守

    牧野委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 大臣、きょうは非常に長い時間の委員会になりますが、御苦労さまでございます。  私は初めに、明治以来の日本外交歴史を振り返って、これからの日本外交のあり方というふうなことをまず大臣お尋ねをしてみたいと思います。  明治以来の日本外交道筋を振り返ってみますと、日本が初めて外国と結んだ同盟条約日英同盟条約であったわけです。これは、一九〇二年、明治三十五年に締結をされておりますが、当時の情勢から、旧満州とかあるいは朝鮮半島へ進出しようとしていたロシアを相手に戦う、そのためには当時世界で最大、最強の国であったイギリスのバックアップを受けたいということからこの条約が結ばれて、実際にまた一九〇四年、五年、明治三十七年、八年に日露戦争を行ったわけですね。そしてこの戦争日本の勝利で終わった、こういう歴史があります。  後、その日英同盟は、大正時代に入りまして、大正十年、一九二一年に終了したわけでありますが、もうこ大正の末ごろになりますと、アジア太平洋地域日本アメリカイギリスとの権益が衝突する、その対立が非常に表面化してくるという時代になりまして、さらに昭和に入ると、なおさらその関係が激化するということで、結局日本は、今度はドイツと同盟条約を結ぶ、そして、アメリカイギリス戦争をするというような事態になって、これが第二次世界大戦であったわけです。そこで日本は、今度は敗戦の結果で終わったわけであります。  そしてその後、戦った相手であったそのアメリカ日本との日米同盟条約時代に入ったということでありまして、第二次大戦が終わってからことしまでといえば四十六年間、この四十六年間をずっと日本日米同盟という枠組みの中でやってきたわけでありますが、この日米同盟というのは要するに、共通の敵としてソ連というものを想定して、それに対して日米が相協力するというふうな関係同盟条約でもあったわけであります。  こういうふうに振り返ると、結局、明治以来絶えず日本はだれかを敵と見て、それに対してだれかと組む、だれかと同盟を結ぶというような関係で来たのが今までの日本外交道筋であったのではないか、こう思います。しかし、その関係が今根本的に変わろうとしている。いわゆる冷戦体制は終わった、こう言われ、そしてアメリカも、もはやソ連は敵ではない、もちろん日本にとってももうソ連は敵ではないというような時代に入ったと思うのでありますが、そうすると、今までのようなだれかを敵にしてだれかと組むという時代は終わった、こう見るとすれば、これからの日本外交基本的戦略、あるいは外交哲学、最近そういう言葉が随分言われますが、そういうものとして、これからの日本外交はどうあるべきかということを初めに総論的に大臣から、過去の歴史も振り返りながら、これからの道はこうだというお考えをひとつお聞きしたい、こう思うわけであります。
  4. 中山太郎

    中山国務大臣 これからの日本外交というものがどういうふうな考え方で対応すべきかというお尋ねでございますけれども、今も委員から御指摘のように、米ソが対立していたという時代が、一応マルタの首脳会談によって冷戦が終わるという一つの区切りができて、米ソの間には話し合いが行われる、協力が行われる、国連安全保障理事会では拒否権を使わない時代がやってきた、これから先どうなるか、まだわかりませんけれども、一応現状は拒否権は使われないという常任理事国協力体制というものができてきた。  私は、日米安保条約最初締結されたときには、あの条約を見てみますと、結局十年間で廃止、十年間を一応期限としていたと思います。その日米安保条約の項目の中には国連憲章というものが随所に登場してくるわけでありまして、国連理想としていた一つ国際平和を求める姿、当時は理想像であったと思いますけれども、その理想像が十年ぐらいでできるのじゃないかという一つの判断が当初あったのではないかと思います。  しかし、現実問題としては、米ソ冷戦時代が来て、日米安保は改定になり、そして、対等の立場になって条約を執行していくという状況になってまいりましたが、私はこれが、現在の国連安保常任理事国考え方あるいは外交姿勢というものは国連最初につくられたときの一つ理想像に近づいてきた、こういうふうに考えております。私は、非常に好ましい国際環境が出てきたんではないかと思いますが、一方においては、地域紛争というものがまだ起こるという危険性が相当あるということは、避けて通れない事実だろうと思います。  そういう中で、米ソ関係緊張状態が緩み、一方では地域紛争可能性というものが現存をしている中で、我々は、我が国の安全あるいは極東の安全というもののために、平和を維持するための安全保障というものをどのように考えていったらいいのか。私は、国連憲章理想とした一つ国際社会の姿というものが、完全に明るい見通しが確保されるまでは、当面の間、この日米安保条約というものを堅持しながら、日本国際社会の平和をつくるためにその外交努力をしていかなければならない、このように考えております。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 今、大臣お答えの中で、国連憲章の本来の精神に一歩近づく時代が来た、こういうお話がございました。  ただ、私の考えとしては、確かに国連というのは普遍的な世界平和を保障する機構であり、その理念が憲章にあらわれていると思いますが、しかし、前提はあくまで各主権国家、これが国連加盟国であって、主権国家前提とする以上は、いわゆる個別の自衛権とか集団自衛権とかいうふうなものも認める立場国連憲章になっております。そこに何か紛争が起きてくる、その紛争に対して、今言った個別あるいは集団的な自衛権が発動される、これは戦争というふうな形になってくる可能性がまだまだあることは確かに認めます。したがって、この全世界的な、米ソが相戦うという時代はもはやない、こう思いますが、地域的な紛争可能性があるという今のあなたの御認識は、今度中東の湾岸問題でも確かにそうなったというふうに見ると、そのことは私は確かに否定できないと思う。  ただ、問題は我々の周辺であるアジア太平洋地域でそういうふうな地域紛争可能性が、かつてはそれが朝鮮半島だと言われ、あるいはそれは台湾海峡だと言われ、あるいはそれはインドシナ半島だと言われましたけれども、今やそういう具体的なところをアジア太平洋地域でとってみれば、そういう地域紛争というものの可能性危険性はもうよほど後退したというふうに私は見ていいんじゃないかと思いますが、大臣アジア太平洋ではその点はどういうふうにこれからの見通しをお持ちになりますか。いかがでしょうか。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 アジア太平洋におきましては、おっしゃるとおり、私はかつてのような緊張状態は相当緩和してきた。例えば朝鮮半島における緊張も、現実には南北首脳交流、あるいはまた日朝間話し合いが現在行われておりますし、韓ソ国交も再開される、あるいは韓中の貿易も非常に活発化してくる、こういう一つアジアの新しい時代の姿というものが出始めてきたと私は思います。  しかし一方においては、カンボジアでは日本政府もいろいろと苦労してやっておりますけれども、まだ和平一つの確たる見通しは立っておらない。こういう状況の中で、私はアジア太平洋における安全保障というものが、どういう形でこれから関係国の間でいろいろと構図が立てられていくのか、こういうことは日本政府としても絶えず頭の中に入れながら、アジア緊張緩和のために一層努力をしていかなければならない。  また現実に、朝鮮半島の平和のためにも、安定のためにも現在努力している最中でございますし、日ソの間も領土問題がございますが、大統領を迎えての歴史的な日ソ首脳会談が行われようとしておりまして、私はアジア環境も相当よくなってきたという認識を持っております。
  7. 高沢寅男

    高沢委員 そういうアジアの集団的な平和保障といいますか安全保障といいますか、というふうな体制をつくるのにこれから関係国話し合いながら、当然の大臣お答えではありますが、私の気持ちとしては、もうこ段階では、ちょうどヨーロッパが既にそういう状態になったわけですけれどもアジアでそういう状態をつくるのに、やはりまず日本がひとつこういうアジア平和保障集団保障体制をつくろうじゃないかということを提唱され、提起されて、それを例えばアメリカに対し、あるいはソビエトや中国朝鮮に対し、またインドシナ諸国ASEAN諸国に呼びかけて、その日本の呼びかけが口火となって、そのための話し合いが始まるというふうなことをもう今やまさにやるべき段階に来ているのじゃないのか、こんなふうに私は思います。  何か、四月に大臣カンボジア和平問題というふうなことに関連して中国へ行かれる、ベトナムへ行かれるというふうなこともお聞きをしておりますが、そのこと自体もまた、行って大臣からどういうふうな働きかけをなさるお考えか、それはお尋ねしたいと思いますが、そういう働きかけをどんどん日本が展開して、そしてアジア平和保障安全保障体制に、主導権と言っては言葉が悪いが、少なくともイニシアチブを日本がとるというまさに絶好の時代が、よい時代が来ておる、私はこう思います。  そのことが一方では、日米同盟関係をこのままいっていいのか、これはこれで当然見直しをしなければならない。一方では、ソ連中国や、その他アジア国々とも、これは今度は日本同盟ではなくて、その協力関係というものをまた複合的につくっていくという中でできていくんじゃないかと思いますが、前からこのことはもう既に何度もこの委員会でも論議されてきておりますが、私は、この段階でもう一度大臣の御所見をお聞きしたい、こう思います。
  8. 中山太郎

    中山国務大臣 ヨーロッパCSCE一つの形を整えた。パリ宣言が行われて、ヨーロッパに新しい時代が構築されたことは御存じのとおりでありますが、ヨーロッパと同じようにこのアジア太平洋安全保障の取り組みができるかという問題で、今まで当委員会でもいろいろ御議論がございました。私も外務大臣として、ヨーロッパと地政的にも違うし、あるいは民族的にも違うし、宗教的にも違うし、いろいろと一つの地政的な、あるいは文化的な、宗教的ないろんな民族的な違いが、ヨーロッパと違うということを下敷きにしながら、アジアには巨大な太陽があるということで、この地域安全保障ヨーロッパと同一視するわけにはいかないけれども、この地域での平和をどのように構築していくかということは、この地域に存在する国家として当然考えなければならない一つの問題であろうと思います。  そういう中で、ASEANはZOPFANという安全保障考え方を持っている。また、アジアは二国間の安全保障条約が多うございますけれども、全体的な考え方というものがいろんな国の外務大臣から発想を示されております。カナダクラーク外務大臣等は、北太平洋安全保障というものを相談してみたらどうか。あるいはオーストラリアエバンス外相は、太平洋アジア地域CSCEのような構想ができないものか。  また、私は従来当委員会で申し上げているように、アジアカンボジア問題、朝鮮半島問題、日ソ間には領土問題というものがあって、まだまだこの地域各国経済水準ヨーロッパと比べて非常に低い。この地域安全保障を確立するためには、まず各国国民生活水準を上げながら地域紛争を解決して、そして全体的な安全保障構図に取り組んでいくべきだという考え方で、今日まで日本政府努力をしてまいりましたが、私は、この地域外務大臣がとにかく会合をすることが大事であるということで、去年の国連総会で十五カ国の外務大臣が集まるということに努力をしたわけであります。  幸い、インドネシアのアラタス外相が私の気持ち理解してくれて、共同主催でやろうということでソ連アメリカカナダオーストラリアASEAN韓国中国、こういったような国々が初めて集まって夕食会をともにする。その中にはベトナムグエン・コ・タク外務大臣アメリカベーカー国務長官と、国交はありませんけれども座席を隣にして語り合う、あるいはそこではシェワルナゼ外務大臣韓国崔外務大臣が話し合って、明くる日には韓ソ国交を直ちに開くというような一つの場をつくることができたことを私はそれなりによかったと思っておりますし、今後ともそういう場をつくりながら、我々はアジア太平洋安全保障というものの考え方整合性を求めていくことが極めて緊要である、このように実は考えながら、今日もカンボジア和平問題あるいは朝鮮半島の安定問題、アジア太平洋極東日本海を含めた安全保障というものをどうするか、いろいろな関係各国外務大臣と協議をやっているということを申し上げておきたいと思います。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 私は、そういうアジアの新しい外交的な動きを前へ進める、きっかけが物事には必要ですから、そのきっかけとして今目の前にあるのはカンボジア和平がまとまる、これが大きなきっかけになってアジア全体の安全保障話し合い枠組みが進む。  それからもう一つは、やはり朝鮮であります。今、アジア局長もおられますが、日本北朝鮮との国交話し合いをしていますが、いろいろ問題もあるし、もちろん相手があることですから、いつまでにまとまるということは私は断言はできないと思います。しかし、いずれこれはまとめなければならぬし、まとまるだろうと思います。そういうとき、日本北朝鮮国交関係がまとまったというときも、これもまた一つアジア安全保障枠組みをぐっと一歩前へ進める大きな私はきっかけになる。  こんなことで、日本は非常に大事なその二つきっかけというものに実際上かかわっておるということでありますから、その二つきっかけをうまく成功させて、そして今大臣の話されたアジア太平洋関係国が、みんなでこれを契機にこういうふうな集団安全保障体制をつくろうというふうなことを前進させる契機にしていただきたいと思います。その意味で、今度四月にカンボジア問題の、中国ベトナムへいらっしゃるそのことについての、まだここで公式に話せない問題もいろいろあろうかと思いますが、大臣の御所見をひとつお聞きしたい、こう思います。
  10. 中山太郎

    中山国務大臣 中国を訪問するということは、かねて中国側からも何遍かお招きをいただいておりましたし、私も中国国際社会における孤立を何としても防ぐことが重要だということで、第三次円借款の開始に欧米諸国理解を求めてまいった、日本政府立場としては理解を得られたということで、円借款の再開に踏み切ったわけでありますけれども、昨年の六月に行われました東京カンボジア和平会議におきましても、在京の中国大使館は大使以下大変苦労をしてキュー・サムファン氏の協力を求めたわけでございますし、タイ国政府大変努力をしてくれたわけであります。先般東京を訪れましたベトナムグエン・コ・タク外務大臣いろいろ話をいたしましたが、このグエン・コ・タク外相にいたしましても、やはりカンボジア和平というものに大変大きな関心を持っておられます。ベトナムをぜひひとつ訪問されたらというお話もございましたし、私もベトナムの占めている地位の重さというものも十分認識しておりますので、国会のお許しが得られれば私は四月に中国ベトナムを訪問をいたして、カンボジア和平問題についてもいろいろと意見の交換をいたし、そしてアジアの平和にいささか貢献ができるような努力をしなければならないと考えております。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 それと同じ意味で、アジア局長おいでですが、日本北朝鮮の今現に交渉が行われているさなかでありますが、ひとつ交渉成功を確保するための心組みといいますか、あるいは見通しといいますか、交渉のさなかですから言えない問題もあるいはあろうかと思いますが、差し支えない範囲でその展望をひとつアジア局長からお聞きしたいと思います。
  12. 谷野作太郎

    谷野政府委員 おとといそれから昨日と二日間にわたりまして、第二回目の朝鮮民主主義人民共和国との正常化に向けての話し合いをいたしました。まだ総論やりとりに終わっておりまして、今の段階で確たる見通しを得るところまで至っておりません。かつ、それぞれの論点において残念ながら大変双方主張考え方に隔たりが多いものでございますから、まずは私どもは誠実に日本側のそれぞれの論点についての考え方を何とかわかっていただく努力をしておるわけでございます。  具体的に申し上げる時間がありませんけれども、例えば先生も御案内のように、核査察の問題 あるいは賠償か請求権かというやりとりの問題。それから、私どもはやはり南北対話が、今残念ながらとまっておりますけれども、これが再開されることがやはり日朝関係話し合いを進める望ましい雰囲気をつくるということも先方に申し上げておりますが、いずれにいたしましてもまだ総論やりとりをさせていただいておるわけでございまして、交渉雰囲気は非常にいいのでございますけれども他方主張は激しく対立しておるという状況でございまして、誠実にかつ忍耐強く引き続きやっていきたいと思いますが、さて何年かかるか、何カ月で終わるのか、その辺の見通しは確たるものを持っておりません。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 我が国北朝鮮との話し合いは、一方では対韓国日韓関係を、これを大事にしながら北朝鮮との話し合いを進めるという大前提に立っているわけですから、私はこのことがまとまるときには恐らく朝鮮南北関係もそれに連動して非常によくなるというふうに見ておいても間違いない、こんなふうに思います。日韓条約も始まってからまとまるまでに随分年月がかかったわけでありますが、今度の対北朝鮮関係もいつまでにということは大変困難だと思いますが、そういう考え方でぜひひとつ成功に向けて進めていただきたい、こう御要望しておきます。  次に、また大臣お尋ねをしたいと思うのですが、一月二十五日、衆議院の本会議大臣外交演説がありました。その外交演説の中でこのように述べられたわけですね。「今回の湾岸危機によって改めて明らかになったことは、国際の平和と安全を守る上で中心的な役割を果たし得る国は米国をおいてほかにないということであります。」こういうことを大臣外交演説の中で述べられたわけです。それが一月二十五日でした。それから、そのすぐ後の一月二十九日のアメリカの議会でブッシュ大統領の一般教書の演説がありましたが、その中でブッシュ大統領はこういうことを言っておられるわけですね。   「世界はこの機会をつかみ、久しく願われて  きた新世界秩序の約束を果たすことができる。  暴虐はむくわれることなく消え失せ、侵略は集  団的抵抗でくじかれる、そういう秩序だ。そう  だ、合衆国はこの努力の主要なリーダーシップ  をになっている。世界諸国家の中で、アメリ  カ合衆国だけが道徳上の立脚点と、それを支え  る手段を兼ね備えている。我々は平和の諸勢力  を糾合できる世界唯一の国民である」 こういうふうな言葉がブッシュ大統領の一般教書の演説の中で述べられているわけです。  私はこれは、そういうことができるのはアメリカにおいてほかにないと外務大臣外交演説で述べられた演説とこのブッシュ大統領の演説は事実上重なり合っているというようなことではないかと思うわけでありますが、これは要するに、これからの世界の秩序を維持しあるいは守っていく、その際に当たって主導的な役割ができるのはもうアメリカだけである。今までは米ソという枠組みでそういうことを一応やってきたわけですが、そのソ連は既に超大国という立場から事実上滑り落ちた関係になっていますから、これからはアメリカだけがそういうことができるという御認識ではないかと思いますが、大臣、そういう御認識をお持ちかどうか、それをまずお尋ねしたいと思います。
  14. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、今回の湾岸の紛争を見まして、これを収拾する一つのリーダーはアメリカ合衆国の存在というものが大きいということで評価をいたしておりますけれどもアメリカ合衆国といえどもアメリカ一国ですべてができるわけではない。やはり自由と民主主義を基盤とする国々協力しながら国連という舞台で国際の平和と安全を維持していく。その中でやはりアメリカの力というものはこれを無視、否定してかかるわけにはいかない、私はそういうふうな考え方で申しておるわけであります。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、よく言われる、アメリカの一極主導という言葉がありますけれども、私は、確かに湾岸戦争をやっている過程でのアメリカの軍事力の大変な指導性があったということはもう間違いありません。戦争が終わった。さて、ではこれから中東・アラブ地域にどういう戦後の平和体制をつくるのか、あるいはイスラエル・パレスチナ問題をどういうふうに解決していくのかということになれば、とてもアメリカ一極主導ではいかない。それこそアラブの関係国とかあるいは西欧のいろいろな関係国とかあるいは我々日本とか、いろいろな国々の相互の協力体制の中で初めてそういうものができていくということになろうかと思いますが、そうであるとすれば、この湾岸の戦後平和体制の中に、では日本はどういうふうにその中に入っていって発言していくのか、役割を果たしていくのかということが当然出てくると思いますが、この点についての大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  16. 中山太郎

    中山国務大臣 湾岸のこの戦争が終わりました後の中長期の平和と安定のための構想に日本がどのようなかかわり方をやっていくのかというお尋ねであろうかと思います。  私は、この地域日本との関係というものは、やはりイギリスとかあるいはアメリカとアラブ地域との関係歴史と比較すると、日本は極めて浅い。第二次世界大戦後は、初めて日本の石炭から石油へかわったエネルギーサイクルの変わり方の中での関係がこの地域との連帯を強化していった、こういう歴史がございますが、我々の国はこの地域に植民地を持ったこともございません、侵略をしたこともない、こういうことで、この地域から見ると日本は手の汚れていない国の一つになると思います。  しかし、この地域日本との関係において我々がそれじゃこの地域の平和と安定のために何がなし得るか、このことをまず確認するのは、相手国が日本に一体何を求めるのかということの確認が第一に行われるべきであるということで、小和田外務審議官と渡辺外務審議官各国訪問させて、この両審議官の報告を十分下敷きにしながら、この地域の求めるもの、それから日本ができること、ここのすり合わせを十分やって、我々は関係国とともにこの地域の平和と安定に貢献をしていくような考え方を固めなければならない、このように考えております。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 私も、我が国が今まで中近東の関係では手が汚れていないというそのお言葉、そのとおりだと思いますが、逆に言えば、手が汚れていないということは実は余り関係が密接でなかったということのまた裏返しの表現にもなるわけであって、したがってこの中東の戦後の体制日本がかかわっていく、いかなければならぬわけです。幾らこちらがいくと言っても、なかなかこれは相手のあることですから、押し売りで入っていくわけにはいきませんから、そういう点において非常に困難性があるということはよくわかります。  そういう意味において、例えばその復興過程に今度はお金が必要になる。日本はまた金を出せというようなことが出てくるのではないかと予想されるわけでありますが、そういう金を出せということが本当にアラブ諸国からの要望として出てくるという場合には、ただアメリカから言われたから出すというのと、同じお金を出すにもアラブ諸国の要望によってそれにこたえていくという場合とはこれは性格が違うと私は思います。そういうものがあったときには、それにまともにこたえていくということの中で、今まで湾岸地域日本関係が薄かったという関係を、今度はいい意味のもっと濃い関係をつくるということにこれを結びつけていくという行き方がこの際必要ではないのか、こんなふうに思いますが、その点は、これからの見通し、特にお金の問題、どんな見通しをお持ちか、お尋ねしたいと思います。
  18. 中山太郎

    中山国務大臣 御案内のように、この地域には私は昨年ジョルダンを訪問した当時の金額で約千七百億ドルぐらいの国際債務があるというお話でございました。これをどういうふうに石油のコストを調整することによって産油国はその国際的な債務を返済することができるか、こういう問題が一つ下敷きにあるのだろうと思います。もう一つは、油の出ないアラブの国をどうするのか。  こういうことを考えますときに、私は、この地域の経済の再建、それから軍事力を中心にした安全保障の問題、この問題はやはりこの当事国のイニシアチブによってまずこの原図が引かれるということから、これらの国にかかわる国々の中での日本の役割は、資金的な協力の問題もありましょうし、技術的な協力の問題もあるでございましょう。そういう問題から考えますと、日本は一体どのような局面で資金的にどの程度の協力ができるかということは、これからのこの各種の協議を通じて具体的に額が出てくるのではなかろうか、このように考えております。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 私は、今度の湾岸戦争国連との関係で、実はこんなことも感じているわけです。  非常に多くの安保理事会の決議がなされた。その決議の最後のものは一月十五日という期限を切って、それまでにクウェートからイラクが撤退しなければ、要するに武力行使も含めたそういう手段もとるのはやむを得ないというような決議までなされた。これはまさに国連としてのそういう働きであったと思いますけれども、さて、それが実際にアメリカ軍によるイラクとの戦争になったという過程の中では、今度は国連というものは、そしてその戦争が終結するまでの間、国連は一体何をしたのだというふうに考えてみると、国連の事務総長を初めとして、結局はその戦争の成り行きをただただ見ているしかなかったというような状況現実にあったと思います。  そういう国連のあり方が、非常に大事な機関ではあるが、そして決議はする、しかしそのことが実際の行動になったときはもう国連はそれに口の出しようがない、手の出しようがないというのが今の国連の実態ではないのか。そういう今度の経験を経て、これからの国連をもっと生きた機能ができるというふうなものにさせていくということがまさに世界国連加盟国全体の任務、役割ではないのか、私はこんなふうに思いますけれども、この辺、大臣国連強化というようなことで何か構想をお持ちかどうかお尋ねしたいと思います。
  20. 中山太郎

    中山国務大臣 国連の今回の役割は、それは委員がいみじくも御指摘のように、いわゆる戦争を防止する機能というものを果たすことはできなかったわけであります。安保理の決議に従って多国籍軍が行動を起こす、そして戦争が行われている間は国連は何もしなかったという御指摘でございました。それで、そういうものを踏まえて国連に対する考え方を私に、どのようにこれから将来考えるかという難しいお尋ねでございます。  国連の目指すもの、それは一つは集団安全保障であろうと思います。その集団安全保障の中で、やはり第七章でうたわれている各条項によって、あるいは三十九条から始まる各種の条項によって、四十二条、四十三条、こういったところで国連軍が創設をされる可能性憲章上は明文化されているわけでありまして、まだ国連設立以来この四十二条、三条の条項を適用した国連軍はできておりません。加盟国の共通の利益を阻害する以外は武力の行使を行わないということが国連憲章の前文に書かれておりますけれども、私は、国連の目指しているものはそういうものであろう。それに果たしてどのような形がこれからつくられていくのか、また、日本はその中でどのような立ち居振る舞いをして協力をしていくのか、これはこれから我々日本の国自身が考え方を整理していかなければならない重要な課題であろうと認識をいたしております。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 これは私なりの考えですけれども、先ほど申し上げた今の国連は各主権国家の加入国の総体として成り立っている。その主権国家は、主権国家である以上は、個別的自衛権や集団的自衛権というものは国連憲章でも認められている。それらの自衛権の裏づけとして各国それぞれに軍隊を持っておる。武力を持っておる。こういう現状で、その総体として国連が成り立っているということですから、私は、国連の各主権国家の枠を超えた国連自体の安全保障の力、平和を守る力を強めるには、各主権国家の持っている武力、要するにこれを減らしていく。ほかの言葉で言えば軍縮ですね、それを進めていくということが逆に国連自体の平和維持の力を強化させるということに私はつながっていく、こういうことじゃないのか。  その安保理事会の常任理事国のあり方がどうだとかこれももちろんあります。あるいは国連の安保理事会と国連総会との関係をどうする、これももちろんあります。そしてまたその安保理事会の中に世界の各地域の代表というものを反映させるべきだということもあるし、それももちろんあるけれども、そういうふうなことは、要するに国連憲章改正というようなものにどうしてもつながってくる。それから、日本、ドイツに対する旧敵国条項、これをやめろという議論も憲章改正につながるわけですが、そういうことは一方でどんどん提案し、進めつつ、一方また各主権国家の武力、軍事力というものを縮減していく、このことが私は国連憲章に触れなくともできる、そういう国連強化の方策ではないのか、こう思いますが、そうなってくると、我が国の平和憲法というものの意味づけが、今まであった意味づけも非常に大事であったが、これからますますその意味づけが非常に大事になる、こんなふうに思います。  そうすると、我が国が展開する外交我が国の平和憲法の関係というものを私は改めて位置づけて、それで日本外交の基礎はこの平和憲法である、平和の原則であるということをどんどん外国に向かってアピールしていくということが、私は非常に今や必要な、またそのことができる段階へ来ているのじゃないのか、こんなふうに思います。  これは私のひが目かもしれませんが、政府・与党の方では我が国憲法の平和条項、言うならばちょっと邪魔である、できればああいう非武装とかあるいはまた交戦権の放棄であるとかああいう枠を外してしまいたいというような気持ちが一方にありながら、それで世界外交を展開するとなれば、この平和原則というものは世界各国から見ても、これは日本の本当のあれじゃないのじゃないかというような見方もされる。  したがって、我が国外交哲学の基本はこの平和憲法、憲法の平和条項というものは、非常に積極的に我が国外交の基本であるということを位置づけて、そしてそれを諸外国にアピールして、そしてそのもとに軍縮をやろう、軍縮をやるべきだということに進めていく。もちろんそのときは日本自体も軍縮をやらなければなりません。当然やるべきだということになりますが、そういう考え方大臣、いかがですか。日本外交のこれからのあり方の一つの哲学じゃないか、こう思いますが。
  22. 中山太郎

    中山国務大臣 国連でも軍縮の会議がございまして、日本政府代表は絶えず軍縮を叫んでおりますし、また私も国連総会において、核、生物、化学兵器の廃絶と通常兵器の透明性を明らかにしろということを主張しているのが日本政府立場でございますが、日本政府は平和憲法を堅持して、この第九条によって武力の威嚇または武力の行使ということをやらないということを宣言しているわけでありますから、我々は我々の国という立場で憲法の考え方というものは、私は明確に示しているものだと思います。  ただ、世界日本の憲法と同じものを持った国家一つもないというところに問題が私は存在している。我々よく話に言われるのに、国際的な常識が通らない一つ考え方じゃないか、国際社会はもっと厳しい、こういうこともよく外務大臣の会合なんかで言われますけれども、私は、前の第二次世界大戦で戦った三つの国、このドイツとイタリーと日本の戦後四十五年経た今回の湾岸戦争に対応するそれぞれの国の違いというものを、私はまざまざと今回体験をしているわけでございます。  日本は、平和憲法のもとでこの国連の平和協力というものには、人的協力ができない状態のままで今日を経過して資金的な協力に終わった。ドイツはNATOの範囲内で四十万の常備軍を持ち徴兵制度を持って、アメリカとの関係においても、アメリカが攻撃されたらドイツの青年は血を流すという一つの双務条約を持っている。イタリーは今回参戦をした。こういう三つの敗戦国が四十五年を経て、一つ国連決議のもとでの対応が随分変わったわけであります。それによって、一方では、この湾岸戦争国連安保理決議に従って行動した国家から見ると、大きな差を実は感じていると私は思っております。  しかし、日本外交を預かる者として、この平和憲法のもとで日本がどのように国際協力をやっていけるかということについては、憲法を堅持しながらやれる限度ぎりぎりまで日本協力をしていかなければ、いわゆる日本自身が一つの疎外を受ける立場に立つ可能性がある。しかし、それを恐れておっては今日できませんから、全力を挙げてこの憲法のもとで国際的な平和のための協力を行うために努力をしなければならない。それについても国内で今回は大変激しい議論が行われたわけでありまして、私はそういう意味で、日本の憲法とそれから国際社会における平和の確保のための貢献について、私は日本にとっては大変いい試練を得たものだというふうに認識をいたしております。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 今、日本、ドイツ、イタリアの三つの国のそれぞれの今度の湾岸危機に対する対応の仕方について御説明がありました。私は、日本が、金は出したけれども人は出さなかったというようなことから国際的に孤立している、批判を受けているという見方、あるいはそういう御議論もありますが、私はむしろ逆に、我が国こそそういう憲法があるから我々の国際的な協力はこのやり方でやるんだということを積極的に対アメリカあるいは対西欧諸国、あるいはまた湾岸諸国に対して打ち出していくのがいいのじゃないのか、こんなふうに思います。  これは結局、アジアに返ってまいりますと、アジア国々日本のそういう軍事的な役割に対する非常に大きなまだ危惧の念がある。昨年、拡大ASEAN外相会議ですか、そこで外務大臣は、日本の軍事力強化に対する懸念が表明されたのに対してお答えになった。我が国は絶対に軍事大国になりません、平和憲法があります、あるいはまた、専守防衛という立場でやっています、いろいろそういう御説明をされた。私は、それは当然その御説明でよかった、こう思いますが、ただ、平和憲法がありますと説明をしながら、実際はしかし、日本の国では年々自衛隊の強化が進められているということであるとか、あるいは政権与党である自民党は、この憲法を変えるんだ、こういう政策綱領を持っておられるというようなこととか、これはみんな外交家は知っているわけです。  ですから、我が国がそういう国際的な場で、外交の場で、我が国は平和憲法があります、こう言っても、そんなこと言ったって実は変えようとしているじゃないのかというふうに裏を見られては、この発言の権威が落ちてしまうというふうに私は考えますが、そういう点において、もはやここまで来れば、私は、政府・与党も、もう憲法を変えるというような政綱はきっぱりとやめるという時期に来ているのじゃないかと思いますが、与党の大臣である立場というよりは自由民主党の国会議員である大臣、この点は、憲法について御所見はどうですか。私はもうそういうものは変える必要ない、こういう御発言がこの委員会であれば私は大変画期的である、こう思いますが、いかがですか。
  24. 中山太郎

    中山国務大臣 憲法九十九条の規定によりまして、国務大臣は現在の憲法を遵守する義務を負っておりますから、私はその条項を守っていく義務があると思っております。
  25. 高沢寅男

    高沢委員 次に、日米安保条約関係についてお尋ねをしたいと思います。  私は、日米安保条約歴史的に性格が変化してきているというふうに見るべきだと思います。これはもう恐らく大臣も同じ御意見じゃないかと思います。  初めに、一九五一年、あの吉田内閣の時代に結ばれた旧安保、それから一九六〇年の岸内閣のときに改定された今の安保。私は、この旧安保及び今の安保というのは、これを五〇年代、六〇年代というふうに見れば、これはもうはっきりとした極東における戦争危険性、それは相手ソ連である、あるいは中国であるというふうな認定のもとに極東におけるそういう戦争危険性に備える、そして日本の平和、安全、極東における国際的な平和、安全を守るということを一応目的にした安保である、極東安保、こういうふうに呼んでもいいんじゃないのか、こう思います。  それが今度は七〇年代になってきますと、もう極東のそういう緊張というものは、さっき言った台湾海峡の問題にせよあるいは朝鮮半島の問題にせよ、一方まだカンボジアはありましたけれども、そういう意味においては極東のそういう戦争危険性というものはぐっと後退してきている。逆にそのころはいわゆるオイルショック等々の関連で中東で、ペルシャ湾でいろんな問題が起きました。そうすると、在日アメリカ軍は日本を出て、中東へ出ていったということが非常に七〇年代以降は多くなっているわけですが、これは極東と別だということでもってアメリカ軍が出動していくのに、いわゆる安保第六条の事前協議というものは一切ない。  それからまた、日本政府自体も、これは戦争のための出動じゃなくて、要するに移動にすぎないんだというふうな説明をされる。移動していった先ですぐ戦争行動に今度なんか入っていますね。移動していってすぐ戦争行動というのは、これはまさに戦争のための出動だ、こう見るべきだが、しかし、いや、これは移動です、米軍の兵力運用上の必要からの移動だから事前協議の対象じゃないというふうなことがずっとこの委員会でも政府側の見解として説明されてきました。しかし、ともあれ、日本からの米軍の出動の行く先は皆中東であるというのが七〇年代、八〇年代の特徴である。そうなってくると、もうこれは中東安保、極東安保から中東安保に日米安保条約の性格は変わってきているというふうに言っても差し支えない、こう私は思います。  それからさらには、今度は情報とか通信とか機動力がうんと発達してきたというふうになると、仮に地中海で何か起きた、大西洋で何か起きたというときも、在日米軍はぱあっと出ていくという時代がこれから来るんじゃないのか。もし何かあれば在日米軍は直ちに日本の基地を発して地中海へ飛んでいく、大西洋へ飛んでいくというふうなこともあり得る、そういう時代に入るんじゃないのか。本当にこの日米安保条約はグローバル安保に変わってくるというふうなことではないかと思いますが、そういう時代的、段階的な性格の変化というものを私はそう見ていますが、この点は、大臣、御所見はいかがでしょうか。
  26. 中山太郎

    中山国務大臣 米国のいわゆる駐留軍というのは、日本だけでなしに、世界のいろんな地域協定のもとで駐留をいたしておりますから、日本の駐留米軍が大西洋のどこかに事故が起こったからここから出撃をしていくということは考える必要はないのではないか、移動はもちろんあろうと思いますけれども日本から直ちに大西洋の地球の裏まで飛んでいくというようなことは、私はそう簡単に起こり得べき問題ではないというふうに考えております。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 やはり出動を移動という言葉で説明される、そういう大臣の今までのお立場が変わっていないということは大変残念であります。しかし、私はこのことが日米安保というものの持っている本質である、こう実は思います。というのは、安保第六条は、日本の安全を守るあるいは極東地域国際的な平和と安全を守る、安保第六条ははっきりそのことを出しております。ところが、今言った極東は問題にならぬ、どこへでも出ていくというふうになったときに、この日米安保条約というものの日本にとっての存在価値は一体何なんだ、結局日本を守ってくれるという建前はもはやない。ただ単に日本の基地からアメリカはどこへでも出ていける、そういう基地としてアメリカにとっては有用である、日本にとっては全く有用でないという時代に安保というのは来たんじゃないのか、私はこんなふうに思いますが、大臣、いかがですか。率直なところを答えてくださいよ。
  28. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私から御答弁させていただきますけれども、先ほど来中山大臣が申し上げておりますように、アジア太平洋におきましては、確かに国際情勢が大きく動いてきたと私ども認識しております。しかしながら、同時に、大臣がこれまた御指摘されましたように、アジア太平洋地域におきまして引き続き不安定な要素、不確定な要素というものが存在しております。したがいまして、今先生から日米安保条約の本来持っております日本及び極東の平和と安全のためという目的がもうなくなったんではないかという御指摘がございましたけれども、私どもは引き続き日米安保体制というのは、我が国の安全、それから極東の平和と安全のために必要である、こういう認識を持っておりまして、またそのためにしっかり機能していると考えている次第でございます。  先生御指摘のようにこの第六条、これに基づきまして日本米軍に対しまして施設区域を提供しているわけでございますけれども、これが形骸化したという認識は持っておりませんで、先生が先ほど来アメリカ日本施設区域を拠点にして中東その他に移動しているという事実を御指摘でございますけれども、私は、より重要なことは、日本におきます施設区域は引き続き日本とそれから極東におきます平和と安全のために重要な役割を果たしているという実態があるのであるということを改めて強調させていただきたいと思います。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 必要がなくなりましたということが外務大臣や外務省から出たらそれは大変な、本当はそうあるべきだ。そうあるべきなんだが、そういうお答えがあなた方はできないという立場にあることはそういうこととして一応受けとめましょうが、しかし私は、今言った日米安保というものはもう日本のために何らの有用性はない、こんなふうに実は考えるわけであります。  そういうときに、その在日米軍のために、その基地のためにさらに日本はお金を出そうということにこの協定がなってきているわけで、私は大変このことは時代に逆行しておるということではないかと実は思うのですがね。その審議、これからまた私なり私の同僚議員皆それぞれ審議をさせていただきますが、その大前提として、もはや日本のために有用性のない在日米軍なり基地であるとすれば、これはだんだん減らしていく。アメリカ自体今既に予算の赤字と財政赤字ということから、そういう湾岸戦争も終わったということで、アメリカ自体がそういう軍隊を減らす、基地を減らす、そして予算を削減するという時代に現に入っているわけであって、これはアメリカもそのことは受け入れることができるということだと思いますが、そういう前提に立ったときに、在日の米軍の数も減らすあるいは基地も減らすということをしていって、次第に減らしていった到達点として、私は実は日米安保が必要だというあなた方の立場に立っても、在日米軍はいない、駐留の米軍はいないという、駐留のない安保というふうな時代もこれからあっていいんじゃないのか、私はこんなふうに思います。  ここに上原委員おいでですが、社会党の安保、自衛隊、軍縮問題を討議する特別委員会委員長として、上原委員はそういう社会党としての安全保障政策をずっと検討する責任者の立場でやってこられた。私も上原委員と一緒にやっています。そういう中で、日米安保というものを、あり方として駐留軍のいない安保というものがあっていいんじゃないのか。また、今の情勢なら、それは仮に政府・与党の立場前提に踏まえても、そういうあり方が日本のためにも、またアジアの平和のためにも非常に好ましいし、相手アメリカのためにも、それは非常に余計な軍事予算を節約できるということで、相手のためにもいい。だれにとっても三方一両得というようないいあり方じゃないのか、こんなふうに思いますが、駐留なき安保という考え方は、大臣、いかがお考えですか。
  30. 中山太郎

    中山国務大臣 現在の国際情勢のもとにおきましては、米ソ間の対話等も話が進展をいたしておりますけれども、まだまだ依然として国際情勢は不安定、不透明といったのが現実だろうと思います。ソ連の国内における情勢を見ましても、極めて不透明な情勢もございますし、アジア地域もまだまだ不安定である。こういう状況の中で、駐留なき安保という先生のお考えについては、政府としてはいましばらく現状の維持が極めて必要であると考えております。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 今は一九九一年ですよ。これから十年たてばもう二十一世紀に入る。だから、今すぐ、来年、私もそうは言いませんが、少なくも一九九一年から十年たって二十一世紀に入る。例えばその十年なら十年という間には、そういう日米安保のあり方は考えられる、また、そういうふうなことが望ましいというふうな見方を、私は、政府としてお出しになっても決して間違いじゃないし、そのことはアメリカに対して日本のむしろ主体性、自主性というものを出していく。今まで日米同盟関係だから何でもアメリカの言うことを聞かなければいかぬということで、この湾岸戦争の九十億ドルにせよその他すべてアメリカのおっしゃることは御無理ごもっともということで来たこの姿勢を変えていくためにも、この駐留なき安保という提案は、私は、日本の自主性を非常に大きく、対アメリカの友好関係を持ちながら自主性を確保できるという点において、自画自賛で恐縮ですが、大変すばらしい案じゃないのか、こう思いますが、大臣、もう一度御所見いかがですか。それじゃ今度は局長でいい。
  32. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 それでは私から御答弁させていただきたいと思いますけれども、先生御指摘の、まさにそれでは今後十年間を展望して、まずアメリカがどういう考えを持っているかということを最初に申し上げたいと思いますが、先生は、アメリカも国防費の増大から財政赤字に悩んでいるという御指摘がございますが、それはまさにそのとおりでございまして、御承知のように、昨年ブッシュ大統領は議会との間で、今後五年間で五千億ドルの財政赤字の削減を行うというパッケージを合意しておりまして、その中で国防費に関しましては今後五年間で千八百億ドルの削減を行うということを合意しております。  しかしながら、同時にアメリカといたしましては、今度も三月の初めに国防報告が出されておりますけれども、この国防報告を見ますと、二点を非常に強調しております。第一点は、従来からの各国との安全保障面でのコミットメントをしっかり守っていくということでございます。それから第二点は、引き続き核抑止力とそれから前方展開態勢を維持していくということでございまして、ここで言いますまさに前方展開態勢を維持していくということは、日本の場合で申し上げれば、日本におきます在日米軍をしっかり維持していくということになるわけでございます。  同時に先生御記憶かと思いますが、昨年の四月になりますけれども、まさにアジア太平洋地域の戦略的枠組み、二十一世紀に向けてということで、今後十年間のアジア太平洋、特に東アジアにおきますアメリカの戦略態勢の展望を行った報告書を出しておりますが、この中でまさにちょっと私が今申し上げました二点、つまり片方において財政赤字に悩むアメリカ、そしてそのために国防予算を減らさなければならないアメリカ、しかし他方において、やはりアメリカとしては各国との安全保障面のコミットメントをしっかり守っていく、そしてそのコミットメントのもとで前方展開戦力をしっかり維持していくという、この二つの要請をどうやって満たしていくかということを正直に書いております。  したがいまして、片方ではコミットメントを守り前方展開戦力はしっかりやっていくけれども、やはり財政赤字削減のために十年間かけて東アジアにおきます、東アジアに展開しております米軍 の規模もだんだん縮小していきますということを打ち出しているわけで、第一段階として今後三年間で東アジアにおきまして約一割削減する。それは日本も入っておりますけれども、そういう方向を打ち出しておりますが、繰り返しになりますけれどもアメリカとしてしっかりコミットメントを守っていくということはその中でも非常に強調しているということを申し上げたいと思います。  それから、以上がアメリカの基本的な考えでございますけれども日本は先ほど来大臣が申し上げておりますように、日本もこれだけ国際情勢が動いてまいりまして、引き続き不安定、不確定の要素が多い情勢の中で、やはりしっかりした日米安保体制のもとで、アメリカが前方展開戦力をしていくということは、日本のさらには極東の平和と安全のために必要であると私ども認識しておることを改めて申し上げたいと思います。
  33. 高沢寅男

    高沢委員 今の局長お答えでありますが、しかし局長もおわかりのとおり、アメリカの国内だっていろいろな意見があるのでしょうね。つまり、こういう時代に入ったら軍隊をもっと減らしてよろしい、軍事予算をもっと削ってよろしいという意見の人と、しかし一方では、またその立場上、いやいややはり軍隊は必要だ、減らすわけにはいかぬぞという勢力もある。いろいろな力関係アメリカの中でも拮抗している。その結論が今言われたいろいろな白書とか方針のあれには出てきているということじゃないかと思いますが、私は、歴史の流れからすれば、そのアメリカの中でも、要するに軍隊は減らしてよろしい、あるいは減らすべきだというふうな勢力というものはこれからまだ強まってくる。  今一時湾岸戦争という中で、また、いやそうはいかぬぞ、やっぱり前方展開が必要だ、軍事的プレゼンスは世界じゅうに置かなければいかぬというような意見が湾岸戦争の影響で強まることはあったかもしれないが、しかし、これはもう終わったということの中で、これからのまた五年、十年という時間の流れの中で、アメリカの中でもそういう軍隊はもっと減らしてよろしいという考えは私はまた出てくると見ておいていいのじゃないか。そういうことを、しかしアメリカがどうなるかただ待っているのじゃなくて、日本としてはむしろ逆にこちら側からアメリカに対して、こういうあり方をしたらどうだ、在日米軍をもっと減らしたらどうだ、予算が節約できるじゃないかということを言うのが日本のいわゆる主体的な外交ということになるのじゃないか。そしてアメリカに対して言うべきことは言う。言うことの中で、しかし日米の、その意味において対等なイコールパートナーとしてのそういう友好関係はつくっていく。  ただアメリカから言われることだけをイエス、イエスでは、これはとてもイコールパートナーじゃない。そういう外交時代日米関係でもこれからつくることが必要じゃないか、こんなふうに思いますが、これは私の意見として申し上げておいて、まあしかし、必ずそのうちに駐留なき安保の時代が来るということは、これは独断的に過ぎるかもしれませんが、一応私は予言しておきましょう。  そこで、今度のこの特別協定で、在日米軍の費用負担の問題に関連しますが、その大前提として、在日のアメリカ軍の数は現在どのくらいあるのか、これをひとつ聞かせていただきたいと思います。
  34. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 在日米軍の数でございますけれども、昨年の九月末の数字でございますが、これはアメリカの国防省が発表した数字でございますけれども、四万六千五百九十三名でございます。
  35. 高沢寅男

    高沢委員 それが九月末だとすると、その後で湾岸戦争が起きて、そして日本にいた米軍もまた湾岸戦争に出ていった。出動と言いたいが移動していった、こういうふうに見るならば、その移動していった数がどのくらいあったのか。これはいかがですか。
  36. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生御指摘のように、まさに湾岸情勢の展開に伴いまして、在日米軍それから横須賀に乗組員家族を居住させております空母ミッドウェー以下の艦船が湾岸に移動してまいりましたけれども、全体としてどのくらいの規模かという点でございますが、私どもは通常の外交的な接触を通じてそれなりには承知しておりますけれども、正確な規模は承知しておりません。  ちなみに、先生に申し上げますけれども、この四万六千五百九十三名というのは在日米軍でございまして、私が今ちょっと触れました横須賀に乗組員家族を居住させておりますのはこの中に含めておりません。
  37. 高沢寅男

    高沢委員 今の説明、ちょっと何か歯切れが悪いので、出ていったアメリカ軍のあれは何々何々で一応承知はしておりますとかなんとか、しかし、何か言えないと。そんなことであなた、この在日米軍の経費負担の協定の審議が一体できるのですか。どのくらい出ていった、それを引き算すれば、じゃ今このくらいいるな、こうなりますね。それから今度は、この湾岸戦争が終わった、その在日米軍、また日本へ帰ってくる、一体どのくらい帰ってくるのだ、これは今後のことでしょうがね。そういうことでもって、結局在日米軍はこれだけの数があるということから、じゃその費用の負担をどうするということの議論が初めて成り立つわけであって、どのくらい出ていったか何か言えません、どうもわかっているらしいが言えませんということじゃ、ちょっと審議できないんじゃないですか。どうですか。
  38. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私が申し上げたことがあいまいであったら申しわけないと思います。私が申し上げましたのは、私どもは承知していないということで、知っているけれども申し上げられないということではございません。それは念のため申し上げますと、現在の安保体制のもとで、米軍が運用の都合上日本施設区域から他の地域へ移動する際には米軍が一々日本側に通報する、連絡する義務を負っていないということから生じる結果でございます。  ただ私どもは、御承知のように湾岸地域に今回全体として約五十万の米軍が展開したわけでございますけれども、この米軍がいろいろなところから移動してきたということは承知しております。その中に先ほど申し上げました横須賀に乗組員家族を居住させております空母ミッドウェー以下が行ったことも承知しております。それから沖縄の海兵隊の一部が行ったことも承知しておりますが、ただ、先生が数字でどのくらいになるかということを御質問でございましたので、その数字は承知してないということを申し上げたわけでございます。  ただ、先生が、それと今御審議いただいております在日米軍経費に関します特別協定と結びつけて御指摘ございましたけれども、この特別協定はまさに先生方に今からいろいろ御審議いただくわけでございますけれども、今回対象にしておりますのは、あくまでも在日米軍で働いております従業員の給与、それから在日米軍等が公用のため調達する電気、ガス、水道及び暖房用等の燃料の料金または代金ということで、まさにそこはしっかりとらえる体制になっておりまして、数を知らなくて在日米軍の経費の協定を云々するのはおかしいのではないかという御指摘でございますけれども、私どもは、これは必要に応じ順次きちんと御説明したいと思いますけれども、メカニズムをしっかり考えて、その上で協定を御審議賜りたい、こうお願いしている次第でございます。
  39. 高沢寅男

    高沢委員 これはおかしいですね。在日米軍の数がうんと減ったというときに、そこの基地で働く日本人従業員の数は関係ありません、こう言えるのですか。その日本人従業員の数というものから、今度は基本給も含めて日本が負担するということになってきたんだ。しかし、その日本人従業員の数というのは、在日米軍がどれだけいて、どれだけの基地、施設があってということから当然出てくるわけであって、在日米軍が、極端に言えば半分に減ったというような事態になっても、日本人従業員のあれは変わりありませんということにはならぬと私は思う。まして米軍基地における電気とかガスとか上下水道とかいうようなものを持つとなれば、まさに在日米軍の数に応じて、たくさんいればそういうものはたくさんかかるし、少なくなれば少なくて済むということになるのであって、そういうことを関係ないんだと言う松浦局長、あなたの説明は大体おかしいよ。  それからもう一つ。そういう日本からのアメリカ軍の移動、出ていった、入ってきたということをあなた方はアメリカから言われなければ何もわからぬということなのか、これは去年の秋の臨時国会でも私はこのことを質問したのですが、当然こちらからアメリカに一体どのくらい出ていったんですか、どのくらい入ってきたんですかということぐらいは、第四条の随時協議で幾らでも聞けるんじゃないですか。事前協議ではできないと盛んに言うけれども日米はそれほど緊密な仲なんだから随時協議で気軽に聞いたらいい。どうですか。アメリカはノーコメントと言うのですか。答えるんじゃないですか。  そういう意味において、先ほど井上さんから怠慢だという発言もありましたけれども、あなた方がそういう在日アメリカ軍の移動を掌握していない、わかりませんということは、私は外務当局としての最大の怠慢だ、こう言わざるを得ません。そのことについてのあなたの見解と、そして今言った在日米軍の数が動けば、どうしたってそこで働く日本人従業員の数にも響くであろうし、あるいは電気、ガス、水道等の費用には当然それは響く、こういうことじゃないのですか。いかがですか。
  40. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど私は在日米軍の規模がどうなろうと従業員の基本給の点で関係がないということを申し上げたつもりではなくて、在日米軍で働いております従業員の基本給等を今回見るということに関してはしっかりしたメカニズムがあります、それから、同じことが光熱水料等にも当てはまりますということを申し上げたつもりでございます。  今の先生の御質問との関連では、最初に申し上げたいと思いますことは、今回、先生まさに御指摘のように、かなりの規模の在日米軍、これは横須賀の先ほど申し上げました空母ミッドウェー以下を別といたしましても、かなりの規模の移動が行われたということだと思いますけれども、先ほど来申し上げておりますように、私どもは正確な数字は承知しておりませんが、いずれ今回の湾岸におきます平和回復活動の終了とともに、約五十万にわたります米軍ももとの配置に戻っていくものと私ども考えておりますので、在日米軍に関しましても、沖縄の海兵隊を含めまして遠からず戻ってくるものと考えているわけです。  いずれにいたしましても、先生御指摘の在日米軍の構成員の数と従業員の数が関係あるのではないかという御指摘はまさにそのとおりでございまして、今回もまさにその点を私ども念頭に置いてサイドレターもつくっているわけで、在日米軍の構成員の数と従業員の数の間に非常に正確な相関関係を築くということは難しいと思っておりますけれども、当然のことながら在日米軍の構成員の数の変動は、今申し上げました従業員の数に影響を与えるものと私ども考えて、その旨、まさにサイドレターにも盛ってそのことは十分念頭に置いて対応したい、こう考えている次第で、在日米軍の数は関係ないということは申し上げていないということを改めて申し上げたいと思います。
  41. 高沢寅男

    高沢委員 大臣、今松浦局長やりとりしましたけれども、要するに在日米軍の数はと聞いたら、先ほどは、昨年九月の段階で四万六千何がし、こうあって、その後湾岸戦争で出ていった、いずれ戦争が終わったらまた帰ってくるという、出ていった、帰ってくる、そういうことの数はどう掌握しているかと言ったら、わからぬと言うのです。これで私は日本の外務省の役割を一体果たせるのかということで今やりとりしましたが、どうしても松浦局長じゃらちが明かぬ。私は、安保の事前協議の対象になるアメリカの軍隊の日本における一個師団以上の新たな配備、これは事前協議の対象なんです。だけれども、入ってくるのも出ていくのもわかりませんというのじゃ、事前協議の対象になるかどうか、何の判定もできない、しり抜け、こういうことで一体いいのか。  私は、安保六条の事前協議でなくたって安保四条の随時協議でそういうことはアメリカに聞けばいいじゃないか、アメリカは答えるでしょうということを言っているわけで、大臣、そのことをちゃんとやります、できますということかどうかを、局長じゃらちが明かぬ、ここで大臣の御所見を聞きたいと思います。
  42. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私の担当でございますので御答弁させていただきます。  先生から事前協議との関係で先般も御質問がございましたけれども、改めて御質問がございましたので御説明したいと思います。  先生は事前協議を、戦闘作戦行動との関連ではなくて配置との関係において御提起でございますけれども、確かに先生が念頭に置いておられますように、配置における重要な変更というのはまさにこの事前協議の対象になっているわけでございますけれども、今回のことについて申し上げれば、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、これは米軍の都合により日本から他の地域に移動するということでございまして、まさに安保六条の実施に関します交換公文に言っております「合衆国軍隊日本国への配置における重要な変更、」というのは、先生に申し上げるまでもございませんが、しっかりした定義があるわけでございまして、ここで言う「日本国への配置における重要な変更、」ということには当たらないわけでございまして、したがって事前協議の対象にならないということを改めて申し上げたいと思います。
  43. 高沢寅男

    高沢委員 今のはすりかえなんですよ。私は、今湾岸へ出ていったり、また入ってくるのが事前協議の対象になる重大な配備の変更と言っているのじゃない。しかし、とにかく出るもの、入るものがわかりませんというのでは、重要な配備の変更がわからぬじゃないか、わからなければ事前協議のやりようがないじゃないかということを私は聞いているわけです。だから、そういう米軍日本の基地からの出入りというものは、外務省は責任を持ってアメリカ当局に聞いて、そしてそれを掌握しておくということをやるべきだ、こう言っているわけで、この点はもう局長答弁じゃだめ、大臣、それをやるべきだと思いますが、いかがですか、大臣お答えをお願いします。
  44. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま北米局長お答え申し上げましたことは原則論、我々は日米間で緊密な意見の交換もやっておりますし、情報の交換もやっておりますが、安全保障上の問題もありまして詳しいことを申し上げるようなことは局長立場ではやりにくい、私はそのように理解をいたしておりますが、いずれにいたしましても日米間の安全保障条約を結んでいることでございますから、日米間では十分情報の交換をやっていくべきであるというふうに私は考えております。
  45. 高沢寅男

    高沢委員 だから、今大臣の言われた情報交換の中で、湾岸へ出ていったのはこれだけです、今度また日本へ戻ってくるのはこれだけです、そういう米軍の存在があるから、じゃ基地の電気、ガス、水道はこれだけ必要ですということになってくるんじゃないか。それが全然説明されなくて、ただこれから金を出すという協定をひとつ決めてくれ、私はそれでは成り立たぬということをさっきから非常にくどいけれども言っているわけで、委員長、私のくどいのは私が悪いんじゃないね、局長の答弁がちっとも私の言っていることに答えないからくどく聞かざるを得ない。委員長、そうでしょう。ちゃんと答えろと促してください。
  46. 牧野隆守

    牧野委員長 北米局長、しっかりわかるように答弁してください。
  47. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 はい。先生が今回の協定について御質問でございますので、この協定のメカニズムについて改めて申し上げたいと思います。  詳細はともかくといたしまして、今回の協定は在日米軍の従業員に対する給与、それから在日米軍が公用のため調達する電気、ガス、水道等、それから暖房用等の燃料、この二つを対象にしておりますけれども、これに関しましてはしっかりした枠組みというのがつくられておりまして、その枠組みをしっかり踏まえて日本側としても対応するということでございます。先生が意味しておられるように何か適当な方法であいまいに対応するということではございませんで、これはしっかりしたメカニズムをつくってしっかり対応することになっている。今までも特別協定のもとで、これは在日米軍の従業員の手当についてでございますけれども、まさにそういうことで対応してきたつもりでございます。今後も対応するメカニズムはできているということを改めて申し上げたいと思います。  それから、先生が繰り返し提起しておられます在日米軍が湾岸に移動した正確な規模についてでございますけれども、私が先ほど来在日米軍とそれから横須賀に従業員家族を住まわせております空母ミッドウェーと区別して申し上げておりますけれども、前者の在日米軍について申し上げれば、沖縄の海兵隊等が移動しているということは私どもも承知しておりますし、それが相当の規模に上るということも承知しておりますが、先生がまさに御指摘のように、それが正確な数字でどのくらいになるかということを私どもは承知しておりませんが、それをまた承知するようなメカニズムが安保体制のもとではできていないということを申し上げているわけで、それがそれでは先生がまさに意味しておられるように今回の在日米軍の経費を先ほど来申し上げているような項目を対象に新たな負担増を図るということに支障を来すかという点でございますけれども、その点に関しましては、これも繰り返し申し上げておりますけれども、私どもは支障を来すようになっていないということを強調したいと思います。
  48. 高沢寅男

    高沢委員 何と表現していいかな。──それじゃこういうふうに聞きましょう。今度の協定に伴う日米間の外務大臣と国務長官の書簡がありますね。あの書簡の中では、基地における日本人従業員の数は過去三つの会計年度の数というものを出して、その上限を超えないようにという一つのあれがありますよ。それから米軍の基地の電気、ガス、上下水道等の費用は、これも前会計年度のその前三年ですか、何かもう一つ前三年にさかのぼって、そしてどのくらい今までその金を払ったかを出して、そしてその上限を超えないようにというふうな一つの枠が両外務大臣の書簡でできていますが、それじゃ過去三年間のアメリカのガス、上下水道、電気等々を出した金額は出るわけですね。これは後でひとつ出してください。その金額が出るということは、そのときは在日米軍はこれだけいたということが前提になって出るわけです。今度、これから出すというときに、在日米軍が何人いるかわからぬけれどもとにかく出す、これは成り立たぬじゃないですか。  そこで私は、ここでは過去三年間の日本人の従業員の数がどうだったか、この状況説明をお願いしたい。それから同じく過去三年間の米軍基地の電気、ガス、上下水道の費用がどうだったか、これをひとつ御説明願いたいと思います。
  49. 竹下昭

    ○竹下政府委員 お答えします。  まず従業員について申し上げます。御質問の上限従業員につきましては、米側の労務の需要の見通し等を踏まえまして、我が国における負担の開始年度に先立つ三会計年度における各月末の従業員数のうち最多のものを基準として採用するということにいたしております。その具体的な数値につきましては、昭和六十三年度から平成二年度における各月末の従業員数の最多のものとなるわけでございますが、現時点では平成元年十一月末の従業員数である二万二千六百三十七人が最高のものでございます。  以上でございます。
  50. 箭内慶次郎

    ○箭内政府委員 光熱水料につきまして御答弁申し上げます。  まず、光熱水料等の上限調達量ということでございますが、これは先生ただいまおっしゃいましたように負担開始年度の前年度に先立つ三会計年度、この年間調達量のうち最大のものを基準として採用したものでございまして、協定期間中の各年度の年間調達量はこれを上回ることはないというふうな見通し日米双方で共有しているというものでございます。  その具体的な数値につきまして現在データの検討を行っているところでございますので、現在の時点で確定的なことを申し上げることは差し控えたいと存じますけれども、御参考までに現在得ておりますデータの最大値ということで御紹介申し上げますと、まず電気でございますが平成元年度十億七千万キロワット時、それからガスにつきましては昭和六十三年度でございますが三十四万七千立方メートル、それから水道につきましては昭和六十二年度でございますが二千万立方メートル、下水道につきましては昭和六十二年度でございますが千二百七十万立方メートルというふうになっております。それから暖房用等燃料につきましてはまだ所要のデータを入手しておらない状況でございます。  以上でございます。
  51. 高沢寅男

    高沢委員 これは委員長、御要望ですが、今お二人の答えられた数字、それをまた別途資料でいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。
  52. 牧野隆守

    牧野委員長 わかりました。
  53. 高沢寅男

    高沢委員 時間がありませんから、最後にこれだけお尋ねします。  日本人の従業員の福利厚生費とか諸手当を持ちます、最初は二分の一、それが今度は全部、こうなってきた、今度は基本給も持ちますというふうになってきたこの特別協定の経過がありますね。私は、こういうふうになってきた経過から見ると、将来、今度は米軍の例えば飛行機とか軍艦の燃料費も持ちますなんということになりはしないか、あるいはアメリカの艦船修理費、港湾修理費、これも持ちますなんということになりはしないか、あるいは日本にいるアメリカ軍の兵隊さんの給与も持ちますというようなことになりはしないか、将来そんなことが次々出てくるんじゃないのかという大変心配がありますが、そういうものは断じてありません、絶対にありませんというお答えができますかどうか聞かせてください。
  54. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 今回の措置は、日米両国を取り巻いております諸情勢の変化に留意いたしまして、在日米軍の効果的な活動を確保するためにとる措置でございまして、これは地位協定の二十四条についての特別の措置として、協定上期限及び負担の対象項目を明確にしております暫定的、限定的、特例的な措置でございます。それからまた、手続的に申し上げましてまさに国会に提出させていただいて、国会の御承認を得て行おうとしているものでございます。  今先生がいろいろな新しい経費の項目を御指摘でございます。これがそれぞれが何を意味しているか、正直申し上げましてちょっとわからない点もございますけれども、私どもは現在この協定に定められている措置以外の措置をとることは考えておりません。  ただ、ちょっと念のため申し上げたいと思うのですが、先生今、港湾修理費ということを申されましたけれども、現在行っております提供施設整備の中に、港湾施設の桟橋あるいは岸壁整備等の実績がございますので、こういう形の港湾整備は今までもやってきておりますし、今後もやっていくことになると思います。
  55. 高沢寅男

    高沢委員 今までも福利厚生費などの二分の一を持つと言ったら、もうこれだけです、こう言っておいて、そのうちに今度は全額持ちますとなって、これだけですと言って、今度は基本給持ちますと、こうなってきた経過から、私はこれからまたそういうことが来はしないかと心配して尋ねたわけですが、この点はもうこれが最後だと、さっき言ったように私はもっと減らしていけという立場ですから、これ以上アメリカの要求によって何でも出しますということはもう政府の方針として当然ないと、これはひとつ大臣からそういう決意をお聞きをしたいと思います。それで終わりたいと思います。
  56. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の措置はあくまでも、ただいま局長が申し上げましたように、暫定的で限定的で特例的なものでございまして、地位協定そのものにかかわるようなものではないということが原則でございます。私は、現在のところこれ以上のことをやる考えは持っておりません。
  57. 高沢寅男

    高沢委員 これで私、時間終わりましたから終わります。井上委員に交代いたします。
  58. 牧野隆守

  59. 井上一成

    井上(一)委員 カンボジア国民会議のシアヌーク殿下が、半月の成功だと言って東京会談を評し、我が国カンボジア和平に向けての東京会談に大いなる評価をされたわけです。私は、外務大臣東京会談に向けられたその労を多とするものでありますし、アジアのリーダー国である日本カンボジア和平に向けて努力を積み上げてこられたことにも一定の評価をしたい。  それで、東京会談以後今日までの重立った我が国外交努力、経緯を説明をし、そしてあすに向けての対応を聞いてまいりたい、こう思います。  とりあえず、東京会談後、何を、いつ、どこで、だれと、どのような話をなされたのか、担当の局長からお伺いをしたいと思います。
  60. 谷野作太郎

    谷野政府委員 これは個々の御説明をすると大変長い話になりますので、いずれにいたしましても、大臣のレベル、私のレベルでカンボジア和平に関心を向ける外務大臣その他の方々とお会いするときには、必ずカンボジアの問題を取り上げて私ども考えを申し上げ、先方の考えを聞いて、ともにこの和平に向かって努力しようということを言っておるわけでございますが、最近のことを具体的なこととして一つだけ申し上げたいと思います。  それは、ただいま東京会議につきまして御評価をいただきましたが、そのときにプノンペン政府とも特定のチャネルができました。他方、カンボジアのシアヌーク殿下とはかねてからの連絡のチャネルがあるわけでございまして、そういうことを踏まえまして、去る二月、バンコクにおります池田、今川両公使をそれぞれシアヌークさんのおられます北京あるいはプノンペンに派遣しまして、現在もう一つ見通しが得られないでおります、具体的に申し上げればカンボジアの停戦のやり方あるいはジェノサイドの復活の問題についてどういうふうに考えていくか、そういった問題について我が方の考え方を示しまして、先方からの意見も聞きました。  シアヌーク殿下は大変我が方の考え方に興味を示されまして、せっかく明日北京でシアヌークさん側の三派の会合をするからぜひもう一回日本側考え方を聞かせてくれということで、再度今バンコクより池田公使を北京に派遣中でございます。  いずれにいたしましても、まだ若干の時間はかかると思いますけれども、それなりの努力をしてきておるつもりでございます。
  61. 井上一成

    井上(一)委員 この問題については、タイのチャチャイ首相が非常にイニシアチブをとって、むしろ我が国以上に働きかけが強かったわけです。今日ああいう状況で政界を引退された。チャチャイ首相との間に何らかの具体的な話し合いがあったのかないのか、そのことはだれがどう引き継ぐのか、こういうことを、なかったらないでいいですよ。あったとすれば、それはどうするのか。
  62. 谷野作太郎

    谷野政府委員 先生も御案内のように、東京会議に至りました経緯の背景には、チャチャイ首相と緊密な連絡のもとにこれが実現されたわけでございます。その後も意見交換は随時してきておりましたが、その後先方から、これをやってくれ、どうしてほしいという具体的な御要請は承っておりません。  いずれにいたしましても、こういう状況カンボジア和平にそれなりに御熱心だったチャチャイ首相がああいう形で政界から退かれたということは、私どもカンボジア和平との関係では非常に残念なことだと思っております。
  63. 井上一成

    井上(一)委員 じゃ、東京会談以後は、チャチャイ首相との折衝はこの問題についてはなかった、そういうことですね。
  64. 谷野作太郎

    谷野政府委員 私の記憶する限り、その後中山大臣がパリに訪問されたときにチャチャイ首相にもお目にかかる機会がございましたけれども、もちろんそのときにもカンボジア和平についていろいろな意見交換はございました。
  65. 井上一成

    井上(一)委員 カンボジア和平問題での特別な話し合いというのはなかったんでしょう。今回初めて具体的な提案をするという段階に入ったんでしょう。今まではなかったという、まああったら、それは問題の一環として話はしますけれども、具体的に和平会談、カンボジア問題では話し合いは持たなかった、こういう認識でいいのでしょう。
  66. 谷野作太郎

    谷野政府委員 今回、池田公使が特定の考え方を持っていっております。その背景には、もちろんチャチャイ首相と例えば中山外務大臣、そのほかの閣僚方との意見交換を踏まえてやっておるわけでございますけれども、それ以上にそのレベルで具体的に問題を煮詰めて、それを今川公使なり池田公使が持っていっておるということではございません。ただ、緊密な連絡はいたしております。
  67. 井上一成

    井上(一)委員 タイの政権がああいう形でかわったわけなんです。だから、かわった政権とも持続した話し合いを持っているのか、あるいはそういうことは了解済みなのか、まずここをやはりしっかりただしておきたい、見きわめておきたいという、このことについてはどうなんですか。
  68. 谷野作太郎

    谷野政府委員 ただいまタイの状況は暫定政権下にあるわけでございますけれども、両公使を北京なりあるいはプノンペンに先般派遣したその背景にある考え方につきましては、事務レベルでございますけれども、バンコクにおいて今の政府側に説明してございます。
  69. 井上一成

    井上(一)委員 我が国アジアのリーダー国としてリーダーシップをとるということは非常によいことだと思うし、独自案を提示するということについても、私はよいことだと思います。しかし、まあ中身の問題にかかわるわけであって、それじゃ今回、もう既に北京へ持っていっているわけですけれども、独自案というのは、中身は具体的にどういう案なんですか。それを説明していただきたい。
  70. 谷野作太郎

    谷野政府委員 現在の状況を先生恐らく御存じのところだと思いますが、そこからまずお話をさせていただきたいと思います。  現状は、パリの和平については御案内の国連の五常任理事国で、これが中心になって作成しました和平案というのがございます。ところが、この和平案の中の特に第一点は、国連の暫定行政機関、プノンペン側における暫定行政の機関というのがあるわけですが、それに国連がどういう形でどの程度関与するかということが第一点。それから停戦というのがあり得ますが、停戦あるいは武装解除を一体どういう段取りでやっていくかということが第二点。そして例のジェノサイド復活の防止。この三点をめぐりまして各派の意見が合わないという状況が続いております。  したがいまして、それらの点につきまして、日本側が何とか国連の五常任理事国がつくった和平案を補足する形でこれを前に進め得ないかということを考えまして、例えば武装解除のいろいろな段階について国連がどういうふうに関与していくか、あるいは国連の検証の仕方をどうしたらいいというような、若干細かい話になりますから内容を省略いたしますが、武装解除の各段階における国連の関与の仕方について日本側考え方を持っていっております。  それからジェノサイドの再来の防止ということを当然プノンペン側は強く要請しておるわけでございますけれども、これについても日本側の、この問題について将来どういうことが例えば国連の場で考えられるかというようなことについて、日本側考え方を持っていっております。
  71. 井上一成

    井上(一)委員 パリ会談だとか今までの経過のそういう問題点というか、提示案ということは説明を必要としない。それにのっとって今回我が国が提示したのは何らかの役割分担を明確化したのか、そういうことを聞いているのですよ。今の説明は、そんなもの早うにパリ会談で決まっておることだ。だから、その幾つかの中で停戦について我が国が何らかの役割を分担していくのだとか、そういうような具体的な和平に向けての取り組みを今回の独自案の中に盛り込まれているのかどうかを聞いている。
  72. 谷野作太郎

    谷野政府委員 ただいま二点申し上げました武装解除の問題とジェノサイドの問題、独自というよりはむしろ先ほど御説明いたしました、既にあります和平構想、これを補足する、これをより前進させるために、こういうところがもう少し抜けておるではないかというような、いわばこれを前に進めるための補助活動といいますか、補足的な役割と私ども思っております。しかしながら、もちろんこれをいたしますにおいても、関係各国はそれぞれ非常に意見があるわけでございまして、アメリカ、ただいまのタイ、インドネシア等々とは事前に緊密な協議をしながら両公使がこの案を持っていっておるわけでございます。
  73. 井上一成

    井上(一)委員 いや、持っていったその案は、さっきから何回も説明を聞いているし、私もわかっているわけなんだ。その案の中に独自の日本の役割分担というものをある程度明確化したのですか、そういうように聞いておる。
  74. 谷野作太郎

    谷野政府委員 例えばジェノサイドの再来の防止のために、ちょっと具体的に申し上げれば、和平後、例えば国連の人権委員会というのがありますけれども、そういった機関を活用してこの防止のためのいろいろな施策を検討してみてはどうかというようなことも私どもなりに考えて持っていっておるわけでございます。これは独自とおっしゃれば確かに今までどこからも示されなかった新しい案でございます。そうしてしかも、それがシアヌーク殿下におかれては、この点を非常に新しい斬新な考え方だというふうに受けとめられて、再度日本側から話を聞きたいということで、明日会談が予定されておるわけでございます。
  75. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃこちらの方から、我が国の独自案の中には停戦という形の中で軍事部門にかかわるような分担とかあるいは役割ということは明記をしてないわけでございますね。
  76. 谷野作太郎

    谷野政府委員 お答えいたします。  その軍事面、とりあえずは停戦、武装解除ということ、その間にあって日本として独自にどういう役割を果たしたい、あるいは果たせるか、そういうところまでは話としてはいっておりません。そういうものは内容には盛られておりません。
  77. 井上一成

    井上(一)委員 今後もそういうことには我が国としてはかかわりを持たない、こういうことですね。
  78. 谷野作太郎

    谷野政府委員 これはカンボジア和平、その後の復興と、いろいろなプロセスがあるわけですが、その段階日本として、ただいまの点も含めましてどういう役割が果たせるかというのは、いま少し状況が具体的な段階になった状況下において検討したいと思いますが、とりあえずは、例えば総選挙というのがございます。そういうところで恐らく求められる、諸外国に求められるのは、その選挙の監視ということでございますが、そういった面では日本は十分な役割を果たし得るものと思います。
  79. 井上一成

    井上(一)委員 いや、選挙管理だとかそういうことでなく、私は特に軍事部門でのかかわりというものに懸念を持つから、事前に話を詰めておきたい。  さらには、独自案を出す以上、やはりそこまで、今後の話し合いの進行にまってさらに検討ということでは、私は、少し独自案のその中身が乏しいのじゃないか。むしろもっと具体的には、PKOの問題がここに絡んでくるわけなんですね、私から言えば。予測されるのですよ。  それで、そういうことをあなた方は事前にちゃんとのみ込んだ上での具体案を提示したのだと私は思うのですよ。それものみ込まずに提示案を示したというのだったら、私は、全文を一回出してくださいと言いたい。全文を出しなさいと。三派に、あるいはヘン・サムリン政権にも出そうとする、まあどうなるかは、両方に渡しているんだから。  そういう意味で、これはPKOとの関連もこれあるので、特に再度ここで、軍事部門でのかかわりには我が国は関与しないんだということを明確にしておく必要があろう、こう思うのですが。
  80. 谷野作太郎

    谷野政府委員 同じお答えになって恐縮でございますけれども、私が個人的に考えておりますのは、もちろん軍事的なそういった役割ではございませんで、先ほど申し上げたような選挙の監視とか、軍事に及ばないそういう面での貢献は十分あり得ようと思っております。  いずれにいたしましても、カンボジア和平自体がどういうふうな仕上がりになるのか、それを確保するためにどういうそれぞれの分野での役割が期待されるのかということがいま少しはっきりしませんものですから、今後検討させていただきたいと思いますが、お言葉を返すようでございますけれども、私なりに考えておりますのは、例えば選挙に対する監視ということでございます。
  81. 井上一成

    井上(一)委員 この独自案はいつごろから検討に入ったのですか。
  82. 谷野作太郎

    谷野政府委員 明確に何日からと申し上げられませんけれども、ほぼ一カ月間私どもの中で検討を重ねまして私どもなりの考え方として同公使に持たせたものでございます。
  83. 井上一成

    井上(一)委員 もちろん中国にもフランスにもアメリカにも、この問題については緊密な連絡をとったでしょうね。
  84. 谷野作太郎

    谷野政府委員 先ほど申し上げましたように、私どものやろうとしておりますのは、国連の五常任理事国がつくった和平案をより前に進める、もちろんそれをつくる過程におきましても、私どもそれぞれの過程で十分相談も受け、私ども考え方も示しながらこれをつくったわけですけれども、それをさらに前に進めるためにどういうふうなことがあり得るかということでございます。したがって、ただいまの中国なりイギリスなりアメリカはもとよりタイ、インドネシア、それからフランスはパリ会議の共同議長国でございますから、十分に私ども考え方を説明しております。きょうたまたまアメリカの国務省からソロモン国務次官補が来ておりまして、きょうまた機会を見つけてこの問題について意見交換をするという段取りにはなっております。ただ、いずれにせよ事前に十分協議を尽くしております。
  85. 井上一成

    井上(一)委員 P5が大枠を決めているのですよ。それを補足するために独自案を出そう、私はそれはよいことだと思うのですよ。しかし、当然P5には事前にそういう連絡をして、何らかの向こうからの意思表明があったのでしょう。そういうことを関係なく、いや事後報告でいいのですということで北京に持っていったのですか、あるいはプノンペンにそれを届けたのですか。どっちなのですか。一カ月前ということにも私は疑問があるのですが、まずP5に対する対応、どうなのですか。
  86. 谷野作太郎

    谷野政府委員 それぞれの国で若干の考え方といいますか気持ちの違いがあるわけでございます。しかしながら、いずれの国についても共通しておりますのは、せっかくこのテーブルの上にある和平構想というものを日本努力でさらに前へ進めるということであれば、それは結構だということでございます。ただ、例えば中国などの反応は、今テーブルの上にあります和平案、包括的和平案、これはぜひそのまま維持した上でこれを前に進める努力をしてくれということでございまして、私ども、あそこに書かれた考え方なり字句についてこれを修正する、大きく変えるということではございませんで、あれを維持しながらそれを前に進めるために何が必要かという立場で仕事をしておるわけでございます。
  87. 井上一成

    井上(一)委員 先ほどから何回も繰り返しているように、安保理の常任理事国、P5が一定の意見をまとめないと、我が国が補足的な見解、独自案だと言ったところでこれは前に進まないのですよ。外交というものは、あなた方はプロなんだからもっともっと、一月前に思いついたのですと言うよりも、これは一年前からですよ。特にカンボジア和平問題については何をおいても最優先すべき我が国の取り組むべき課題だということは、私は当委員会で何回となく指摘をしているわけです。何なんですか。一カ月前に出した、中身も言えない。そして、私が懸念すべき軍事部門への介入はあり得ないでしょうね。そういうことをP5のそれぞれの国が大枠において賛意を表してくれたのかどうか。PKOだってこれは国連の中の一つの機関なのですから、なまじっかにこういうものを議論してその場だけで逃げる、そんなことじゃだめだよ、局長。  だから、私は湾岸戦争のときにあるいは湾岸にPKO云々の議論があるけれども、そういうところへの芽は現実論としてもうない。カンボジア和平こそ具体性のある、しかも早急に取り組まなければいけない問題だ。一カ月前に──そして大臣が来月にでも中国へ行きましょうと言う。私は、日本外務省、日本政府の中身がしっかりしない限り、国際的に他の国からの信頼を得るにはまだまだ十分でない。このことばかりには時間はとれませんけれども、私はカンボジア和平をだれよりも願っているし、だれよりも取り組みに真剣になっているつもりなのです。今の議論を聞いて大臣大臣というのは下がしっかりしておれば本当はいいわけなのだけれども、今の話を聞いても独自案も言えないと言う。これは私は、日本が出した独自案を成文化してぜひ後で届けてもらいたい、これは委員長にお願いをしておこうと思うのです。  さらに、大臣がそのことにおいて中国へ行く、先ほど同僚の高沢委員からの質問にも、ベトナムも訪問する。何をもって、どの目的で訪問されるのか。再度ここで、カンボジア問題についての大臣の取り組みを聞かせていただきたいと思います。
  88. 中山太郎

    中山国務大臣 中国訪問につきましては、カンボジア問題も当然日中間の話し合い一つの大きな課題ではございますけれども、基本的に、中国日本外務大臣が訪問して日中の外相協議を開き、そこでアジアあるいは国際情勢全体にわたって忌憚ない意見を交換するということがアジアの平和のために極めて重要であるという認識に立って中国訪問の決意をいたしたわけでございます。  そういう中で、日中間ではカンボジア問題というものも一つの大きな課題でございますから、従来の双方のかかわり合いを踏まえながら、どのような形でカンボジア和平を一日も早く構築するように協力できるかということで意見の交換をいたしたいと考えております。  また、ベトナムにつきましても、かねてベトナムグエン・コ・タク外相とはカンボジア問題についても意見の交換を何遍かいたしておりますが、国会のお許しが得られれば、カンボジア和平についてもベトナムを訪問して、日本ベトナムとの間のいろいろな問題もございますが、カンボジア問題も大きな課題でございますから、そのカンボジア和平のために意見の交換を十分やって、双方の国が協力できるところはどこかということについて一層の努力をいたしたい、委員の御指摘のようにカンボジア和平実現に日本政府は今後とも真摯な努力をしなければならないと考えております。
  89. 井上一成

    井上(一)委員 日程的な決まりまではまだ固めていらっしゃらないわけですか。
  90. 中山太郎

    中山国務大臣 日程的な問題はまだ外交チャネルを通じて交渉している最中でございますが、外交的なチャネルで日程が詰まりますれば一番先に国会の御承認を得るべくお話をさせていただきたいと考えております。
  91. 井上一成

    井上(一)委員 私は、この問題は外務大臣にぜひ率先して、最優先して取り組んでほしいという強い期待を持っています。  さて、中東の問題について二、三意見を聞いておきたいと思うのですけれども国際的な貢献度ということがしきりと今言われているというか、そういう問題が問われているのですが、もう一点、国際的な責任度というものを考える場合に、中東戦争における責任というもの、これは大臣いかがに受けとめられていますか。イラクを軍事大国にした、中東での油に依存する国際経済、いろいろあるでしょうけれども、貢献と責任、この責任という度合いが余りにも遠ざかっているように思うのですね。そういう意味で、国際的に日本政府湾岸戦争についての責任度というものをどういう物差しでとらえていらっしゃるのか、この点について聞いておきたいと思います。
  92. 中山太郎

    中山国務大臣 国際社会におきます経済大国としての日本が、この地域が持つ原油の埋蔵量というものが国際経済に大きな影響を与えている、また大きな貢献もしているということで、この地域の平和の確保また安定というものが国際社会全体に大きな一つのかかわりを持っている、この地域の平和が乱れればそれだけ国際経済に原油価格の変動を初めいろいろな影響を与えてくるという観点から、日本国際経済に大きなかかわりを持つ国としてやはり日本のできるだけの責任を果たしていくというその責任の果たし方につきましては、憲法の枠内で経済的な面あるいは物質的な面で貢献ができるかということについての日本が責任を持っているものと思っております。  またこの地域は、御案内のように、イラン・イラク戦争当時から日本はイラクに経済協力もいたしてまいりましたし、また一般の民間等の投資も含めて、金融機関等の融資も含めて七千億円ぐらいの債権を持っておったわけでございますから、日本にいたしましては、やはりイラクの軍事大国化によるこの地域の混乱というものは日本の経済に、原油の輸出国であるイラクと日本との関係において日本はやはり一つの大きな被害を受けているというふうに認識をいたしております。
  93. 井上一成

    井上(一)委員 私は、我が国の責任あるいは我が国の貢献、さらには西側諸国というか世界各国それぞれの国の貢献あるいは責任というものも問われていくべきときだと思います。多くを申し上げませんけれども、そういうことを十分とらえた中で日本外交は進めていかなければいけない、こう思います。  そういう意味で、原油依存という今の状況から、いわゆる今度の戦争でもたらされた環境破壊、これは言葉に言いあらわせないほどの大きな地球環境の破壊、汚染につながったわけです。むしろこの折に環境外交というものを一つの大きな柱に日本政府は立てるべきではないか。国連中心、日米安保基軸、開発途上国援助、幾つかの基軸があるわけなんですけれども、今二十一世紀を間近に控えて環境外交をやるんだ、こういうことを大臣考えになって、ひとつ新しい──海部さんが五月に軍縮東京会談を持つということも発表されていますけれども大臣カンボジア和平に向けてあるいは中国との友好のために訪問する等いろいろな企画がおありでしょうけれども環境外交日本外交一つの大きな柱にするという決意を、今度の湾岸戦争の終結を機会に、平和外交という中で具体的な柱を立てられることを私は強く進言をしたいし、望むわけですけれども中山大臣いかがですか。
  94. 中山太郎

    中山国務大臣 委員が今お示しになりました環境外交というものを日本にとって一つの大きな外交政策の柱にしたらどうかということ、貴重な御意見だと私は全く賛成をいたしたいと思います。  日本は、地球環境の保全のために三年間に三千億円、一九八九年から世界に拠出をするということにいたしておりますし、地球環境センターも日本に誘致をするということで、過去の公害問題に悩んだ日本が、それを技術的に乗り越えたその貴重な経験と経済力を生かして環境外交をこれから推進していくことは日本には極めて適した課題であると考えております。
  95. 井上一成

    井上(一)委員 ぜひ推進をしてほしい。  そこで具体的に、中東への原油依存というのがずっとここのところ変わりがないわけなんですね。代替エネルギーにもう少し強く外務省もかかわっていくべきではないか。むしろ原油に依存しないエネルギー開発に外務省はかかわる。どういう形でかかわっていくのか。ODAの予算等がそういう中に使われていくということが非常に前向きな、そして一つの明確な外交の姿勢として打ち出されていく。今言われたそういうフォーラムも大変結構ですし、施設も設備も結構ですけれども、政策的にはODA政策を環境外交の一番象徴したものに置きかえていくべきではないか、私はこういうふうに思うわけです。そのことについての考え方。  さらには、とりわけ太陽エネルギーの開発ということをここで特に提起をしておきたいわけです。太陽エネルギーの開発というのは国際協力をやらなければいけないし、特に開発途上国においてそういう国際協力が生まれてくるわけでありますから、そういうことはどうなっているのか。外務省としてはそういうことについて真剣に現実の問題として俎上に上げているのかどうか、そこらもひとつ聞かしていただきたい。  環境問題を論ずるときにエネルギー政策を外してはあり得ないのです。事象、いわゆる起こった問題だけで、原油がたれ流しをされた、そこに大変な大海汚染、あるいは油田が燃えた、それによる大気汚染、そういうことだけで環境を論ずるのじゃなく、そのことももちわん必要かもわかりませんけれども、根本的な問題として私はやはり基本的な政策をしっかりと打ち立てることだ。環境問題には基本的にエネルギー政策をその大きな一本の柱に置かなければ環境問題は論じられないというくらいに私自身は思っているのです。  そういうみずからの考えも含めて、ひとつ外務省の、これは環境庁の問題ではないのです、外務省の基本的な姿勢、これは大臣から大まかな方針を聞かしていただいて、アジア局長をこのことについて特に指名をして考えを聞かしてください。
  96. 中山太郎

    中山国務大臣 地球のエネルギー利用、自然エネルギーを利用する問題、これは委員が大変高い考え方お話しになりましたが、石炭あるいは石油、重油と申しますか、あるいは天然ガスあるいは太陽光発電あるいは風力発電、潮流発電、地熱発電、幾つかのエネルギーを獲得する方法が開発をされておりますが、日本がこれからのODAをやっていく場合に、その土地、その地域地域の天然自然条件というものを十分考えながら、相手国政府とも協議をしながら、この自然エネルギーというものをどのように我々の技術によって生かしていくかということが極めて重要な要素であろうと私は思っております。  その中で、経済性がどうかということになりますと、潮流発電なんかはまだまだ十分なコストが計算されていない、あるいは風力発電はカリフォルニアとかアメリカには随分ございましょうし、亜熱帯、熱帯地域には太陽発電が非常に大きなメリットを有するものだと私は考えておりますけれども、いずれにいたしましても、これから自然エネルギーをどのように公害のないエネルギーに転換していくかということは極めて重要な、科学技術を柱とする日本外交政策の中では、これによって貢献する部門も極めて大きいと私は考えております。
  97. 谷野作太郎

    谷野政府委員 なぜ私が御指名を受けたのかよくわかりませんが、この分野では大変知識もございませんが、確かに大臣も今仰せのように、石油だけに頼らずに、その他の分野での代替エネルギー源の開発も含めてソースを多様化していくということについては、日本も含めてそれがあるべき方向だと思いますし、アジアだけをとってみましても、例えば原発も含めて日本より進んだ国もございます。  他方、しかしながら、例えば中国をとってみますと、やはり国柄どうしても石炭、石油に依存して発電するというような国もございまして、そういう国に対しましては、それはそれでゆゆしい環境問題を生んでいるわけでございます。そういうことで、環境保全のために、日本政府としてどういう政府ベースの技術協力、資金協力ができるかということで、中国の例を申し上げますれば、そのための研究所の開設も含めまして、日本政府協力をこれから開始しようというところでございます。
  98. 中山太郎

    中山国務大臣 ちょっと補足さしていただきたいと思います。  委員が最も関心を持っておられるフランスの場合における原子力発電、これは七〇%くらい稼働率を持っております。日本が今、EC、ソ連アメリカと一緒にドイツとやっております核融合の計算センターこういうものを考えますと、将来の人類の夢としては核融合をどのようにつくり上げるかということも、極めて大きな課題であろうと考えております。
  99. 井上一成

    井上(一)委員 アジア局長、私が強いてあなたにというのは、ODAとの絡みがあるものだから、大変失礼だったかもわかりませんけれども、ぜひODAを環境外交の柱に据えるべきであるという、特にODAの関係先はアジアに多い、そして国際協力というのはアフリカにもこれは大いに関係があるわけですけれども。  そういう意味で、それじゃせっかくですからODAの話にして、アジア局長、今、海部さんが軍縮会議東京でやろうと。核兵器はもとより生物・化学兵器も世界のすべての国からなくすべきである、核と差別をなくすべきだ、そのことが平和と人権を守ることになるのだという強い政治理念を、毎回毎回当委員会も含めて、私はいつも申し上げてきたわけなんです。  それで、先ほど責任度という話をしました。私たちがあえてアジア局長に、アジア地域にODAで、日本の資金で一定のプロジェクトがつくられるわけなのですけれども、肥料工場だとか化学工場だとか、いわゆる生物・化学兵器を製造することに可能性を持ったプロジェクト、あるいはそういうことがその国の意思によって可能になるような場合がある。そのことは今回の戦争を通して、アメリカは過去五年間にわたってイラクに対する輸出の総額なり品目なりを明確にしたわけです。私はこれは、我が国もイラクだけではない、ほかの国も含めてそういう危険性のあるプロジェクトは公表すべきだ、こういう認識に立っているわけなのです。大まかに言って、アジア国々にそのようなODAのプロジェクトは何カ所ぐらいあるのでしょうか。
  100. 谷野作太郎

    谷野政府委員 あるいは具体的に、例えばバングラデシュにおける肥料工場等のことを御念頭に置きながらのお尋ねかと思います。その点も含めまして、ODAは仕事の分担として外務省では経済協力局長が主管しておりますので、より詳しく御説明したいと思います。
  101. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の肥料工場等の案件でございますけれども、今手元に総括的な資料がございませんが、今アジア局長も申し上げましたバングラデシュの案件、さらにはタイの案件、インド、インドネシア等々、尿素工場、肥料工場といった案件はアジアにおいて多数存在するわけでございます。
  102. 井上一成

    井上(一)委員 いや、多数というのは少なくとも何件。多数では回答にならぬ。
  103. 川上隆朗

    ○川上政府委員 恐縮でございますが、ただいま手元に肥料ということでまとめた資料がございませんので、後ほど詳細調べまして御説明に上がりたいと思います。
  104. 井上一成

    井上(一)委員 去る七日の報道で、バングラデシュ政府が、ODAの日本企業を汚職対策局が告発をした、こういう報道がなされているわけです。このことについてアジア局長、これは当然アジア局だから何らかの報告は受けたでしょうね、あるいは経協局長、どちらからでも結構です。
  105. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  一部の報道におきまして、我が国円借款によるバングラデシュにおいて実施されましたゴラサール肥料工場の改修事業に関しまして公金横領等の不正があったということで、バングラデシュ政府関係者、本邦企業が告発されたというふうに報じられているということは我々も承知いたしております。  本件報道内容につきましては、現在、在バングラデシュ大使館を通じまして調査中でございますが、これまでのところ、本件告発を行ったと報道されております汚職摘発委員会という組織のアリ局長に照会いたしました結果、とりあえず次の点を確認いたしております。  目下告発されている対象者はバングラデシュ政府高官三名のみでありまして、日本企業関係者は含まれておりません。それから、アリ局長は、新聞に報道されております多額の謝礼が日本企業より高官三名に支払われた事実があるというふうに発言したことはないと言っておるわけでございます。
  106. 井上一成

    井上(一)委員 肥料工場というのは、その容器だとかあるいはその製造方法、処理方法によっては化学兵器が製造できるわけなんです。そういうプロジェクトを我が国はこれからもODAの範疇の中で加えていくのかどうか、それが一点。さらには、該当企業はどこなんですか。東洋エンジニアリングと報道されているのです。これは間違いないですか。だから東洋エンジニアリング関係者から話を聞いたのかどうか、あるいは東洋エンジニアリングはこれ以外にもこのようなプロジェクトを手がけたことがあるのかないのか。
  107. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  まず、先生御指摘の第一点の基本的な問題でございますが、肥料工場で尿素、それから中間生産物としてのアンモニア、こういったものが生産される場合に、それが何かに転用されるおそれがないかという観点からの御質問と存じますけれども我が国の経済協力は、御案内のとおり、基本的に経済開発の目的ということで、その国の民生の向上、福祉の向上というものに資するために供与されるということでございます。そこで交換公文上も明確に、御案内のとおり、これはそういう目的に供与されるのだ、それ以外のものには使わないということが規定されておりますし、これは国際約束でございますので先方もそれを遵守する義務があるということで、我々はあくまで経済社会開発の目的のために経済協力を行っているという立場を従来とも貫いておりますし、今後ともさような基本的な立場で貫き通してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  それから、第二点目の本件の企業名ということでございますが、これは東洋エンジニアリングでございます。東洋エンジニアリングという名前は、企業名はもちろんこれは公表するカテゴリーの中に入っておりますものですから申し上げられるわけですが、この疑惑自体は今バングラデシュ政府の部内の意思決定の過程において起こった疑惑でございますので、バングラデシュ側の調査結果を我々としても注視し、大使館を通じてこれを照会するというふうな方針をとっておる次第でございます。     〔委員長退席、浜野委員長代理着席〕
  108. 井上一成

    井上(一)委員 最初の答弁は、そんな交換公文でこうこうですというのはわかり切ったことなんだ。そんなわかり切ったことを別に答弁してもらわなくたって、東洋エンジニアリングはバングラデシュ以外には肥料工場等にかかわっていませんか。
  109. 川上隆朗

    ○川上政府委員 網羅的に調査いたしたわけではございませんが、我々の承知いたしております限りにおきましては、バングラデシュにおきましてゴラサール以外にも東洋エンジニアリングが関与した案件はございます。それから、そのほかにつきましては、我々今のところ承知いたしておりません。
  110. 井上一成

    井上(一)委員 では、ここで念のために、イラクに対して肥料工場、そういうプロジェクトにODAまたは輸銀も含めて、我が国の企業がかかわったことはありますか、ありませんか。
  111. 川上隆朗

    ○川上政府委員 イラクに対しましては、従来より七四年と七七年に供与いたしました混合借款に基づきまして、これは銀行は輸銀でございますが、輸出信用及び円借款をまぜて供与するということをやっておりまして、プロジェクトの数でいきますと総計五件、そのうち肥料工場につきましては二件我が国の企業がかかわって供与した案件がございます。
  112. 井上一成

    井上(一)委員 私は、イラクが生物化学兵器を使用するとかあるいは保有しているという、実際には今回の戦争では今日までは使われてなかったわけだけれども、そういうものはどこで製造するのか。基本的には肥料工場等が懸念される、疑われる一つの拠点でもあろうと思うのです。ODAあるいはその他の形で我が国が、これはイラクはもとよりバングラデシュも当然だし、あらゆるアジア、中近東の諸国に対して、すべての国に対して今後そういうものは十分な気遣いをしなきゃいけないし、私は、むしろそういう援助はこの際取りやめるべきだ、この湾岸戦争契機にODAのあり方を根本的に見直すべきだ、こういうふうに思うわけです。  私は、ODAを中心とした援助でつくられた化学工場、肥料工場については、査察という言葉はよくないかもわからぬけれども、現状の実態をやはり資金提供国としては当然正確につかむべきだと思う。そういう準備をする用意があるかどうか。向こうへ渡したら、それでしまいなんだという、それは無責任なんです。今度の湾岸戦争で教えてくれたものは何か。さらには軍縮の方向に、核はもとより生物化学兵器をこの世から廃絶するという基本姿勢が外務省にあれば、それぐらいのことはやってもいいのじゃないか、やる決意を一回聞かしてください。
  113. 川上隆朗

    ○川上政府委員 化学肥料工場等にまつわる議論といたしまして、先生が今おっしゃったことは非常によくわかるわけでございますが、我々といたしましては、事後の評価というものを一般的に今後充実させていきたい、前から鋭意充実に努めているわけでございますが、さらにこれを充実させて、当初の本来の目的にそれぞれのプロジェクトが使われているのか、本来の目的に合致した形で効果を上げているのかどうかというようなことに関しまして、今後従来にも増して目を光らせてまいりたいというふうに考えております。したがいまして、評価を充実させることによりまして経済協力の実を上げるということは決意として申し上げたいと思いますし、このイラクの肥料工場等につきましても、戦争が終わり安定し、事態が収束いたしました段階では、できる限り早くその評価の一環としてできればこれをやってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  114. 井上一成

    井上(一)委員 評価の一環とか、そんなことは今までだってやっておる。今度の湾岸戦争で、あるいは今日あなた方が何を一つのベースに考え外交に取り組んでいくのか、援助をしていくのかということを考えたら、世界の平和だとか、あるいは安定だとか言ってもそんな言葉ではないのですよ。実際にやらなければいかぬわけです。  では、さっき言った、我が国が援助したあるいは世銀での融資で建設されたイラクのプロジェクトは、今回多国籍軍の空爆を受けたのですか、受けていないのですか。それを答えられますか。そんなこと答えられないでしょう。
  115. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  今回の多国籍軍の空爆の対象につきましては、軍事施設等に限定をしてやってきたということは承知しておりますが、具体的に一つ一つの爆撃の対象が何であったかということは、実は私どもとしては把握をいたしておりません。
  116. 井上一成

    井上(一)委員 私は、中近東アフリカ局長に答弁を求めたのではないのです。経協の局長に、あなたはそういうことはわかっていますかと。そしてあなたは、評価に今後さらに力を入れますなんて言っているけれども、そんな問題じゃない。この際そういうプロジェクトについてはODAからあるいは資金援助から外すという、それぐらいまで検討をしたいというぐらい、見直すというぐらいのことは答えてしかりなのですよ。バングラデシュだって在外公館から報告を受けたというだけでしょう、今。なぜ担当局が現地へ行かないのですか。なぜ現地へ行かないのですか。実態はどうなのですか。そんなことで本当に国民の税金を、いや効率的に、効果よくなんて言っているけれども、あなたらの言っていることは、全く口とやっていることでは逆さまだよ。逆さまだけならいいけれども、決して国益にはならぬ、あるいは世界の平和のためにもならない。非常に危倶されるべき幾多の点があるから、あえて私はここで指摘をしているわけです。局長、どうですか。
  117. 川上隆朗

    ○川上政府委員 若干繰り返しになって恐縮でございますが、基本的な我々の経済協力の姿勢と申しますか、これは先生既に十分御案内のとおりでございまして、我々はあくまで貧困の除去と福祉の向上といった視点から、例えば肥料につきましては食糧の増産といったような方向に目的を当てて、視点を当てて経済協力をやるという経済協力の本旨の点がございますので、その点を十分踏まえながら、先生の御指摘のような点も今後頭に入れながら、十分考慮しながら我々の今後の政策を考えていくということではなかろうかと思います。  それから、後半の部分でございますが、先ほどちょっと申しましたように、これはバングラデシュの政府の意思決定の過程において生じた疑惑でございますので、そのバングラデシュの汚職摘発委員会というものの捜査の進捗状況を今後十分見守りながら判断してまいりたい、大使館を通じてその辺の情報を鋭意収集したいと考えておる次第でございます。
  118. 井上一成

    井上(一)委員 局長、時間がないから、このODAの問題についてはまだまだあるわけなんだけれども、あなたが言っているように民生の安定だとかそんなことはわかり切ったことなんだ。そんなことを答えてくれとは言っていないわけだ。問題が起こったところあるいは問題が起こる可能性を懸念される、心配が持たれるようなところを私が指摘してもいいのですよ。だから、そういうところをやはり担当の局として、大使館に報告を聞いていますということじゃなく、現地へ行って関係者とも十分話をし、あるいは実態がどうであるかということは見きわめる必要があるんじゃないの。そんなことができないのですか。
  119. 川上隆朗

    ○川上政府委員 先ほどもお答えいたしましたが、今後の推移を十分見きわめながら、必要に応じまして、先生御指摘のように当方からも係官を派遣する等も含めまして検討してまいりたいと思います。
  120. 井上一成

    井上(一)委員 あなたはこれはここで何ぼ議論しても仕方がないと思われるかもわからぬが、推移を見てからとか、そんな問題じゃないんだね。大変申しわけないけれども、この際、報道された企業の取り組んだプロジェクトはすべて洗うべきである。タイにもあるでしょう。どうなんですか、やるのですか、やらないのですか。私はとりあえずバングラデシュに行きなさいと言っているのです。どうするのですか。
  121. 川上隆朗

    ○川上政府委員 恐縮でございますが、先ほど冒頭申し上げましたように、TECが本件の当事者であるということはそのとおりでございますが、我々が少なくともバングラデシュ側から聞いている限りにおきましては、TECが今回の汚職摘発委員会で告発された事実はないと先方は申しているわけでございます。  捜査の段階は今のようなことでございますので、今後の推移を見ながらと申しましたのはそういうことも踏まえての話でございますが、慎重に見つつ、必要に応じて、先ほど先生が御指摘になりましたような係官の派遣等も含めて検討してまいりたいということをお答え申し上げた次第でございます。
  122. 井上一成

    井上(一)委員 この問題は再度強く、現地の実態調査を速やかにやるべきである。タイ国にもありますから、方々にあるのだから、それをやって、ODAの本当の実態がどうであるかということを、次回の委員会で私の質問の折にぜひ明らかにしてほしい。私の方も、ではODAの実態について部分的に明らかにしたい、こういうふうに言っておきます。  きょうは時間がありませんから、次に進みます。  アジア局長、日朝国交正常化のために大変忙しい毎日で努力していただいているということでは御苦労さまということを申し上げて、この日朝間国交正常化に向けて誠意を持って速やかに取り組んでいかれることを希望したいと思います。  そこで私は、前回被爆者の問題について当委員会質疑をし、早速、中山大臣は、広島の平和公園の外にある慰霊碑を中に入れ、死んでからも差別をつくってはいけないという反省の念を持ってきちんと整理をしていただいた。一昨年、私が韓国へ行ったときに、被爆者の代表の方々といろいろな話をしました。そして、自分たちはもとより、二世、三世、自分たちの子供や孫にも被爆の影響が何らかの形で出ている、あるいは出てくる可能性がある。そういう場合に高度な医療機関というものが当然必要になってくる、これは大韓民国がお金があるとかないとかの問題でなく、日本国の責任として日本政府が誠意を持ってこの問題に私は対応していくべきだ。  具体的には、例えば被爆者が中心になって治療を受けられる、あるいはまた健康診断をしてもらえるような病院あるいはそれに類したもの。聞くところによると、福祉センターということで、政府は一定の前進を示そうとしていらっしゃるわけですけれども、さらに、そのこととは別に、被爆者の方々に対して誠意ある我が国の責任を示していくべきではないだろうか。数の問題ではない、あるいは金額の問題ではない、我が国の誠意をどのように韓国の人たちに示すかということは、まず、被爆した人たちに具体的にそういうことを示すことが必要であると私は思うのです。政府の見解を聞きたいと思います。
  123. 谷野作太郎

    谷野政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からの仰せのように、この韓国におられる被爆者の方々に対する対応というのは、まさに人道的な観点からどういうことをしてさしあげられるかということであろうかと思います。たしか当委員会でも先生と御議論をしたことを覚えておりますが、その後の発展状況を御説明いたしたいと思います。  御記憶のように、昨年、廬泰愚大統領が訪日されました。そのときに、まさに人道的な観点、それから福祉の向上といった観点から、この問題を何とか日韓間で決着したいという両首脳のお気持ちのもとに、韓国側の被爆者に対しまして、今後医療の面で総額四十億円程度の支援を行うということを総理からお話しになりました。そして、これを踏まえまして、ただいま御審議いただいております平成三年度予算案にそのうちの十七億円を計上させていただいております。  この総額四十億円をどういうふうに使うかということにつきましては、韓国政府と協議をいたしてきておりますけれども、とりあえず現在のところ、在韓被爆者の方々の治療費、それから健康診断のための経費の支援ということ、それから、それに加えてといいますか、これが一番大きゅうございますが、ただいまお話しの健康福祉センターの建設、これは複数の箇所に建設することになっておりますけれども、これの支援に充てたいと考えております。病院というお話がございましたけれども、恐らく、お医者様、看護婦さん等も含めてそういうことをしなければだめだというお話だと思いますが、私どもの健康福祉センターといいますのは、その中に医者、看護婦の配置も含めて、そういった方向で検討しております。ただいまの先生のお話を踏まえて、さらに内容の拡充に努めたいと思っております。
  124. 井上一成

    井上(一)委員 そういう福祉センターの設置も私はいいことだと思います。いいことだと思う。しかし私は、それだけで十分というわけにも決していかぬ、さらに高度な近代医学技術がちゃんと備わった病院をつくるべきだという意見なんです。これは、それじゃアジア局長に今ここで、はいわかりましたなんということにも、あなたも大変だろうから、それは私が初めて問題を提起するわけで、問題を提起するということは、省内あるいは関係省庁等で今後この問題について話し合いをしてほしい、その話し合いの結果は、どういう進捗状況になったか、あるいはどういう話し合いになったかということはまたいずれかの機会に聞きますけれども、この問題は関係省庁でひとつ話し合うという、それくらいの熱意、誠意は当然持っていらっしゃると思いますが、念のために聞いておきたいと思います。
  125. 谷野作太郎

    谷野政府委員 被爆者の方々に対する対応につきましては、とりあえず先ほどのようなことと思っておりますが、せっかくの御意見でございます。私、まさに先生仰せのように、私の一存で右と左と御答弁できかねる問題でございます。お話のあったことを大臣にも報告いたしまして、とりあえずは、外務省の中で先生の御意見、お考えに対してどういうふうに対応できるか考えてみたいと思います。
  126. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、それを強く期待したいと思います。  それから、谷野局長、さっきアラブの、いわゆるイラクの問題のときに中近東アフリカ局長ということで、私はあなたの所管でアジア局だと思ったのです。いや、実際は中近東アフリカ局、これは間違いだと思うのです。アジアは一体どこまでをアジアの領域だとあなたの認識では思っていらっしゃるのですか。
  127. 谷野作太郎

    谷野政府委員 私の認識を申し上げても御参考にならないと思いますが、これは先生御案内のとおりでございますけれども日本では、アジア局というのはパキスタン以東を所管させていただいております。ただ、国によりましては、インド、パキスタンあるいはバングラデシュ、あの辺をむしろアジアと観念しないで別の局で所管しておりますけれども日本はパキスタン以東をアジアと、少なくとも外務省あるいは政府としてはとらえてアジア局で所管させていただいておりますし、それが日本としては一番自然な素直なとらえ方だと私は思います。したがって、お尋ねお答えすれば、私どもはパキスタン以東をアジアと観念しておるということでございます。
  128. 井上一成

    井上(一)委員 これは余りこんな議論をするのはどうかと思うのですが、社会のときにはどういう教え方をしておるか。中近東というのはどこを視点にとらえて中近東と言うのですか。日本を視点にとらえて中近東と言うのですか、それはどうなんです。アジア局長、どうなんですか。
  129. 谷野作太郎

    谷野政府委員 中近東局長からお答えすると思いますが、要するにどこを中心に置いて特定の地域を言うかというのは、いろいろな御意見があることは御存じのとおりでございまして、例えばなぜ極東地域と言うのか、あれは何も日本から見て極東ではないのではないかというような言い方もございまして、どこを視点に置いて特定の地域を呼ぶかということについてはいろいろ議論がございます。なぜ中近東かというのは中近東局長から御説明したいと思います。     〔浜野委員長代理退席、委員長着席〕
  130. 井上一成

    井上(一)委員 そんな議論はもうやめますが、アジア局長、あなたが妥当だから……。  私は外務省に、発想の転換、パラダイムの転換、そういうことを特に申し上げたいわけなんです。それはヨーロッパから見て中近東なんです。もう地球的規模で物事をとらえていこうという、片っ方ではそういう答弁をしきりとやられている。それで何か質問をすると、いやそれは私の所管じゃございませんなんというようなことで、縄張りが非常にある。スエズ以東というか、スエズ運河まではもうアジアだ、そのくらいの大きな認識の中で、アジアの肉にアラブの骨がある、アラブの骨にアジアの肉をつけよう。こんなことを言ったら何ですが、イラクのサダム・フセインにもそういう意見を私は言っておるわけです。  そのアジアのリーダー国は日本なんですよ。そういう意味では、アジア局長というと外務省では何もかもぱっと全部引き受けてやっていらっしゃる、こういうふうに私は思っておるので、いや、ここは私の領域じゃありませんなんというのは、そんなことをお考えにならずにどんどんとこれからひとつすべての問題にかかわりを持っていただきたいな、こういうふうに思うのです。  そこで今度は、今回のイラクの湾岸戦争というものはどんな戦争であったか。先ほどは環境の問題で、環境外交を基本にしなさいよ、こういうことを話ししたのですが、やはりイラクの戦争というのはハイテク兵器によって、何というか無人操作、そういう戦争でもあったと言われるわけなんです。このことは、外務省はどういうふうに認識をしていらっしゃいますか、そしてそのことについて今後反省も含めてどうあるべきかというふうに御認識になっていらっしゃるのか、これもアジア局長、いかがでしょうか。
  131. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  大変難しい御質問と思いますけれども、私どもは、やはり今回の湾岸で起こりました事態と申しますのは、ある国の他国に対する国際法違反の侵略が起こりまして、それによっていわゆる平和と安全が破壊をされて、それを回復するためにほかのあらゆる手段を尽くした上でやむを得ず行われた武力の行使というふうに考えております。
  132. 井上一成

    井上(一)委員 局長、では、もう少し具体的に。  スカッドミサイルが撃たれた、パトリオットでそれをちゃんと迎撃して撃ち落とす、これが今回の湾岸戦争一つのいわば象徴的な戦争の、地上戦もありましたけれども、こういう報道なりそれを見たり聞いたりして、外務省の局長としてどう思いましたか、それを聞いているのです。どう思いましたか。
  133. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 問題は、やはりそういう非常な高性能の武器、兵器が大量に存在するというところにあるということが、一つ少なくとも私の感じるところでございます。
  134. 井上一成

    井上(一)委員 これは中近東アフリカ局長に質問をするのは、私はいかがなものかと、むしろ、外務省の局長クラスがどう受けとめていらっしゃるか、そしてそれが大臣にどう進言をしていくか、あるいはそういうことが政府部内でどう反映していくかというようなことで質問しているのです。  何と正確に、まさにコンピューターというハイテクを使ったこの戦争というのは、恐ろしいというか正確というか、もう人なんというのは表に出て戦争する時期でもないというぐらいに。反面、我が国はパトリオットというのも持っているのですけれども、ああいう精巧なパトリオットを、日本は、防衛庁は持っていると外務省は思っていますか。どなたでも結構です。
  135. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 日本がパトリオットを持っているのは承知をしております。この数年間導入しておりますが、しかしまさに先生が、恐らくそういうことを意味されたと思いますけれども、今回中東アメリカが使用いたしましたような性能のものではない。つまり、日本で持っておりますパトリオットはあくまでも対航空機で、今回中東アメリカが使いましたああいう対ミサイルのようなものではないのじゃないかと私は思っております。
  136. 井上一成

    井上(一)委員 いやあ、さすが北米局長日本はあんな高度な性能ではない、そのとおりなのです。そんなつまらぬものを防衛庁は持っておるわけだ。必要ないんだ。ここなのですよ。あれほど正確なものですら五十分の一とか百分の一のミスがある。我が国の防衛庁が持っているのは、念のためにどれほど持っていると思われますか。
  137. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 現在、対空網といたしましてはナイキというものを持ってございますが、これをペトリオットというものに換装する途上にございます。今の時点で言いますと、オンハンドされておりますペトリオットは一個群というものでございます。これがペトリオットに換装されております。なお、平成二年度末を迎えますと二個群目が入手される形になります。それから予算的措置、これは四年間かかる国庫債務負担行為で調達するものですから、国庫債務負担行為としての予算措置は、平成三年度予算でお願いをしておりますのが最後の六個群目でございまして、これで六個群すべてがペトリオットに換装されるということでございます。
  138. 井上一成

    井上(一)委員 ファイアユニット、それにはどういう装置があるのですか。
  139. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 一個群について、御承知だと思いますが、四ファイアユニットございますが、ファイアユニットの機材といたしましては、レーダー装置、射撃管制装置、発射機、電源車、アンテナマスト、その他レッカー車、ミサイル運搬車等々でございます。
  140. 井上一成

    井上(一)委員 何発の装置が……。
  141. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 基本高射群で、このファイアユニット単位で言いますと、ミサイルを一応二十発ということでございまして、四ファイアユニットをもって一高射群を形成いたしますから、八十発というのが定数でございます。
  142. 井上一成

    井上(一)委員 今保持しているのは、もう一度念のために伺いますが、どれほどですか、防衛庁が今持っている、六年までじゃなく。
  143. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 ペトリオットを今この時点で持っておりますのは一個群、つまり四ファイアユニット分でございます。
  144. 井上一成

    井上(一)委員 外務省、よくおわかりになったでしょう。そして、イラクのあの戦争に使ったよりも性能が悪い。私は防衛庁に聞くのではなく、今度は外務省に。  そんな性能の悪いのを持って我が国の防衛、あるいはそれはただ持っているということには自己満足があるかもわからないけれども、日々技術開発が進んでいるので、本来は平成六年までに装備されるそういうものも含めてもう古い兵器になってしまった。そういう意味ではむしろこの際、そういうハイテク兵器というものは開発をしない方がいい、軍縮の会議を持とうという海部さんのそういう話もあることだし、そういう兵器は開発しないんだ、そういうことを日本世界に提案をしていく、提起していく。そんなことは外務省、いかがですか、考えたことがありますか。
  145. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 ちょっと私、先生の御質問に的確にお答えできるかどうか自信がありませんけれども、現在は、先ほど防衛局長から御説明ございましたように、ナイキにかえてだんだんパトリオットを導入しつつあるわけですけれども、これは先生に申し上げるまでもございませんけれども、いわゆる基盤的防衛力の一環をなすものと私ども認識しているわけですが、先生が御提議のこういうものは時代おくれだから云々という点に関しましては、非常に正直に申し上げて、ちょっと私、今の段階で、日本としては必要としておると思いますけれども、それが世界的な規模でどういう意味を持って、それに関して日本としてどういうふうに判断して、どういう国際的な動きをするかということについて、申しわけございません、ちょっと私自信を持って御答弁できません。
  146. 井上一成

    井上(一)委員 いや、これは北米局長の所管でもないとは思うのだけれども、私は、今言うように、ハイテク兵器なんていうのは順次開発されていくから──むしろ日本の技術は優秀なんです。アメリカが使っているものも、日本の技術が導入されているかもわからない。そういう意味で、もうそういう兵器は生産をしないんだ、そういうことが武器を捨てるというか平和への、軍縮への近道である、そういうことで、これは哲学の問題だと思うんだね。だから、あなたが答えて、私もそうありたいですと言ったからというて責任を問われることはないと思う。  私は何を指摘しているかというと、そんなおくれたパトリオットを持って、日本は、これ、こうこうなんです、いや専守防衛の一つだ、それは範疇に入るのかどうかも疑問なんですよ。疑問だけれども、そんな間に合わぬようなものを持って、そういう防衛予算はみんな削れ、全部削れと私は言うわけです。そういうものは必要ない。それは外務省がそれくらいの姿勢を打ち出さぬと、おくれた兵器を持って、あなた方、まともに当たりませんよ。スカッドミサイル──固有名詞は避けますけれども、航空機専用のパトリオットですなんて言っておって、航空機が飛んでこないでミサイルが飛んできたらどうするんですか。全部それはだめでしたという。今までかけた銭は何ぼやねん、そんな金は、予算は全くむだになるわけだ。これは防衛庁とまた議論はしますが、だから私は外務省に、そんな予算は必要ない、今軍縮の方向に、そしてハイテク兵器を生産することはもう日本外務省としては反対です、そういうことを取りやめましょうと広く世界に呼びかけられるような外交を軍縮外交と言い、それが平和外交と言うんだ。そういう決意を示さなければだめだということを申し上げておきたい。答えられなければいいですよ。これは北米局長に無理して答えてもらわぬでもよろしいわ。私なりの見解を申し上げて、質問は終わります。
  147. 牧野隆守

    牧野委員長 井上普方君。     〔委員長退席、園田委員長代理着席〕
  148. 井上普方

    井上(普)委員 私は、国際新秩序ということについて少しくお尋ねいたしたいと思います。しかし、国際新秩序は、東西関係の変化という大きなことがございましたので、それを中心に考えるべきかとも考えておったのですが、特に湾岸戦争が起こりまして、これまた世界の秩序それ自体も大きく考え方が変わってくるのではないか、このように考えられるのであります。  そこで、湾岸戦争というのはなぜ起こったか、これは先ほどもだれか外務省の役人さん、局長さんがおっしゃったけれども、他国の主権を侵略したので、これを回復するために起こった戦争である、こう言われる。まさに、表面から見たらそのとおり。しかしながら、過去において主権を侵害しながら起こった戦争というものはたくさんある、そしてまた国連もこれを取り上げたものはたくさんあるけれども、例えて言うならば、ベトナム戦争しかり、あるいはまたアメリカのグレナダあるいはパナマ侵攻、あるいはまたイスラエルは中東戦争の結果占領地を持っている、こういうのを国連が非難をしながらも、何らこれに対して対応策は出てこなかった、しかしこのたびだけなぜ戦争が起こったんだ。  これについて考えるならば、一面、これは石油戦略の結果、アメリカは武力介入をしたとしか思えないのであります。あるいはまた、オイルダラーの今後の行方、これについての考え方から戦争が起こったと私は思う。これは、後世の史家が、なぜあの戦争が起こったかということを実証するでございましょう。今まで外務大臣の、あるいは外務省が言っておる、他国の侵略を阻止するために平和的回復を行ったのがあの戦争だというのは、これはあくまでも公式的な考え方であって、戦争の裏に何をねらったものであるかを少しく私は外務大臣にお伺いいたしたいのであります。  石油は、御承知のように第一次オイルショック、第二次オイルショックというのがございました。第一次オイルショックの後、非OPEC国が生産をふやしてまいった、あるいは第二次オイルショックが起こってから途端にOPECの生産量はぐっと減って、そして現在では非OPECの産油量というものがふえておるのであります。そしてことしになりますというと、九三年にOPECの生産量というものが非OPECの生産量を上回ってくることに数字的に相なっておるのであります。そして、九五年以降においてはOPECの生産量は世界の生産量の六〇%以上になるのではないかと推定されるのが大体実情であります。  しかし、そのOPEC国において、イラクがクウェートを侵攻することによって一体どれくらいの量をイラクが左右するかというと、これまた九五年でございますと、今現在、OPEC国の大体四〇%近くをサダム・フセイン大統領が左右することになる。そうするならば、世界の石油価格というのは、これはフセインの自由になるのではないかという危倶があったのではないか。ここに大きな問題がある。しかも、アメリカという国は、第一次オイルショック、第二次オイルショックの経験を経たけれども、省エネ対策というものはまことに遅々としてはかどっていない。依然として消費量というのは膨大なものである。こういうところから、イラクが侵攻をやれば石油資源というものが大変なことになるというのでこのたびの戦争というのは直接的に起こったのではないかと思われるのですが、外務大臣いかがでございますか。
  149. 中山太郎

    中山国務大臣 委員から石油をめぐる国際戦略の動きについていろいろとお触れになりましたが、私は中東を回りましたときに、ジョルダンの皇太子から、石油価格をめぐる動きについても一応いろいろと説明を受けてまいりました。そのときの話では、イラクのサダム・フセイン、この政治家が考えておった戦略というもの、その中で、結局クウェートを初め他の産油国が石油を増産するために、石油価格を上げようというイラクの努力に対してマイナスの作用をしているということが一つの不平、不満であったということを私直接聞かされたわけでありますけれども、いずれにいたしましても、イラン・イラク戦争によってイラクが受けた利益は石油価格の上昇であったと思います。それで国庫の歳入がふえてきた。  そういう中で、イラン・イラク戦争が終結を告げた後で、とにかくイラクの国庫収入である最大の輸出品としての石油価格というものが、国際的な市場においてどのような位置を占めないとうまくいかないのかというようなところにも大きな一つの含みがあったことは事実であろうと私は思います。委員のおっしゃる考え方というのは、私は一つの的を射たお考えだと思います。
  150. 井上普方

    井上(普)委員 そういう考え方からするならば、このたびの戦争国連という名のもとに行ったアメリカの石油資源をめぐる、昔の言葉で言えば帝国主義戦争であるということが規定せられる、将来の史家はそういう規定をすると私は思う。といいますのは、今後の埋蔵量を見てみますというと、これは大変なことになるという考え方から起こってきたと思います。  これは八九年末に発表されておる石油の可採埋蔵量、すなわち採掘埋蔵量でありますが、それを見るというと、今のところイギリス、すなわち北海油田というのは一・五%という数字も出てくるし、かつまたイラクは九・九%、クウェートは九・三%、サウジアラビアは二五%というようなことになるのですが、八九年末の産油量のパーセンテージは。しかし、可採年数、すなわちあと何年間石油が掘れるかという年数を比べてみるというと、これは大変なことになる。すなわち、ノルウェーは、北海油田はあと二十年しかない。イギリスは五・五カ年で大体終わってしまう。さらにアメリカは十年すれば底を打つ。カナダは十三年すれば底を打つ。ソ連は十三年だ。しかし片方、ドバイ及び首長国連邦なんかを見てみると、これは三十四年だ。イランは八十九年いける。イラクは九十七年いける。クウェートは百年以上採掘可能である。サウジアラビアは百年以上採掘が可能である。  こういうようにずっと見てまいりますと、採掘可能年数は、合計いたしますと世界全体の採掘可能量はあと四十四年というのが相場なんです。しかしOPECも含めると、OPECはあと九十二年採掘が可能なんであります。しかもそのOPECは、九十二年のところでサウジ、クウェートあるいはまたイラクの占める割合が約四〇%を占めてくる。こんなことをやられたのではかなわぬということで、このたびアメリカが武力行使に出ていったと言っても過言ではないのであります。  その点が日本のあるいはジャーナリズム、マスコミには余り出てない。ただサダム・フセインが残虐的なことをやっている、不届きだ、不届きだということで日本政府は声を高くしておるけれども、そういう戦略的な裏側というものは国民の目に余り出ていないのであります。外務省もこういうことはおっしゃったことはない。資源戦争なんだという視点に立って日本外交というものは展開する必要があると思うのでございますが、外務大臣、いかがでございますか。
  151. 中山太郎

    中山国務大臣 原油の値段を安定的にして供給体制を安定化するということは国際経済に極めて大きな影響のあることでありますから、今回の戦争というものはアメリカも資源戦争という立場で今委員から御指摘がありましたけれども、それより前に、サダム・フセインがこの中東原油というものを自分の支配下に置きたいという野望があったのではないか、私はそのように見ているわけであります。  そういう動きに対して、アメリカを中心とする国連加盟国の主要なところがやはり一つの大きな不安を感じたということで、クウェートからサウジアラビアへイラク軍が入っていくことを何としてもとめたいということは即、今おっしゃったいわゆる石油資源に対する大きな脅威、こういうものを感じておったということも事実であろうと私は思います。
  152. 井上普方

    井上(普)委員 ある雑誌によりますとこういうことが書いてあるのです。「アメリカ戦争を望んでいた」んだ。だから去年の七月、イラクはクウェートに対して厳しい外交を展開した。そして七月の下旬に至ってクウェート国境にイラクの軍隊を配置した。そのときに、サダム・フセインは七月二十五日にアメリカ大使と会見をして、これからアラブ社会においてひとつ紛争が起こるが、アメリカは手を出すのかと言ったら、それに対してその大使は、そんなことはありませんよと。グラスパイ・アメリカ大使は、アメリカ側の意向として「アメリカ大統領はイラクとの関係を深めたいと願っている。アラブ間の意見の違いについてアメリカは別にこれといって関与しない。貴殿が」イラクが「争いを手取り早く速やかに解決されるよう我々は望んでいる」という返答をした。ところがそこでフセインは、これはアメリカは手を出さぬのだという考え方で侵攻したと言われております。そしてまた、スパイ衛星を走らせておるのですから、アメリカはもうイラクの動きというものは逐一わかってきておった。それでCIAも大統領に対して、このような準備が進んでおるぞということを再三にわたって七月下旬に報告いたしておる。そして、こういうようなアメリカ大使の返答であったからイラクはともかく侵攻に踏み切ったんだということが言われている。  ところがアメリカは、そんなことは言った覚えはない、グラスパイ大使はフセインに対してそういう返答はしたことはない、一外交官の私語だったんだろう、こういうのが正式の文書であったけれども、返答であったけれども、この録音が共同通信から世界に流されておるのであります。戦争が終わって、いかにもグラスパイ大使はそういうことを言ったということをアメリカは初めて、戦争が終わってしまってから、戦勝に沸いておるときからこのことを、あれは本当であったということを発表しておるという事実があるそうでございますが、北米局長は知っておりますか。
  153. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生が今お触れになりましたグラスパイ大使とサダム・フセイン大統領の七月下旬の会話はアメリカでも大変話題になりまして、私が記憶しておりますところでは、九月に議会が再開されまして、まさにその議会におきましても相当話題になったテーマでございます。まさにアメリカで論争になりましたのは、先生今御指摘でございましたけれども、グラスバイ大使が間違ったシグナルをサダム・フセインに送ったのではないかという点であったわけでございますけれども、むしろアメリカの議会で話題になりましたのは、そういうシグナルをきちんとアメリカ政府としての考えでやったのか、グラスバイ大使の個人の発意でやったのかというようなことで議論があったように記憶しております。  いずれにいたしましても、その問題はともかくとして、繰り返してでございますけれども、サダム・フセインが八月二日にアメリカの意図を読み違えてああいう形でクウェートを侵略したのであり、それに対してはまさに国際社会全体として対応しなければいけないというのが議会でだんだん出てきたコンセンサスであったと記憶しております。
  154. 井上普方

    井上(普)委員 一時はアメリカの国務省は、あの発言というものは外交官の私語である、こう言っておったのだけれども、今日においては国務省は、グラスパイ・アメリカ大使の通達、すなわちフセインに対する回答は公式なものであってアメリカ大統領自身の指導による通達であった、こういうことをアメリカ政府は認めておるといいますが、それは本当でございますか、どうでございますか。
  155. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 その発言自体についてアメリカ政府が正式に認めておるかどうか必ずしも確認いたしておりませんが、米国といたしましても最後の段階までイラクとの関係を何とか改善しよう、継続しようとしておったことはそのとおりだというふうに考えます。     〔園田委員長代理退席、委員長着席〕
  156. 井上普方

    井上(普)委員 そのグラスパイ大使の合図、アメリカは中近東に進攻しないぞということを合図だとして受け取ってフセインは侵攻したと片方は言っておる、しかしこれが今になれば訂正文として国務省から発表せられておるということ、これは中近東課長じゃない、北米局長、あなた知らぬのですか。
  157. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど申し上げましたように、そのやりとりに関しましてアメリカの議会でも大変話題になり、当初イラク側がそれを発表してアメリカ側がそれを必ずしも認めていなかったというのは承知しておりますけれども、今先生御指摘のように最後の段階になって、現段階になってそれをアメリカ政府が大統領の意向も反映したものであるとして認めておるかどうか、私は現時点では承知しておりません。
  158. 井上普方

    井上(普)委員 これは非常に重大なところだ。これはもう雑誌にさえも載るような事態になってきている。とするならば、すき間をつくってそこに侵攻さしたという感じもなきにしもあらずであります。こういうことを十分に外務省は知らない。少なくとも一流の月刊雑誌に出ておることが本当だったかどうかというのを、我々は不思議に思うんだ。グラスパイ大使のことについては、私は前々から聞いておった。けれども訂正文が出たというのは私これを見て初めてだったから、出たか出ないかどうかなと思って今聞いたんだけれども、これについてはお知りじゃない。これが日米協調の一番仲のいい日本に対する、日本はパートナーシップ、パートナーシップと言っているけれども、そんなことすら日本にわからないのでは困りますな、外務省。まあそれは後ほどひとつここで御答弁願いたいと思う。  さて、こういうようなことについて考えてくるなら、今アメリカの国内では一体どう言っているか。賠償金を出させなきゃいかぬ、賠償金を取り立てるんだということは国連決議で決めている。アメリカでは、これからイラクが石油採掘可能になったならばアメリカ側は一日賠償金として百万バレル持ってこいというようなことも堂々と論議せられるやに承っておるのだが、このことについては御存じありませんか。
  159. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 国連安保理の決議におきましては、イラクがクウェートその他第三国に与えた損害について原則としてその責任を有するということが規定をされております。ただ、それを一体どうするかということについては、まだ戦闘行為も終了したばかりでありますし、具体的に話が行われているとは承知しておりません。
  160. 井上普方

    井上(普)委員 国連の内部において論議せられているということじゃないんだ。アメリカの中でそういう世論が起こってきて堂々と論議せられておるということは、北米局長御存じございませんか。
  161. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 現在の状況は先ほど申し上げたとおりでございまして、これはアメリカの中も含んでおると思います。したがいまして、アメリカの中でいろいろな議論をしておる向きはあるかとは思いますけれども、そういう考え方が特に例えば米国政府の考え方になっているとか、そういうことはないというふうに承知しております。
  162. 井上普方

    井上(普)委員 アメリカ政府はそういう考え方はないということは、ここで断言できますか。
  163. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、現在その賠償の問題について具体的にどうするかということにつきましては、アメリカ政府も含めまして正式にどういう考え方をとるということをまだ決める段階ではないというふうに私は承知しておりますし、そういうふうにお答え申し上げたつもりでございます。
  164. 井上普方

    井上(普)委員 いや違うよ、あなたが言ったのは。まだわかりませんというのであれば話はわかる。アメリカ政府がそんな考え方を持っていないというのであれば、それは間違いだ。  それで、こういうことになった場合、日本の対応はどうします、お伺いいたしたい。この賠償問題について、先ほど申しましたようにイラクが産油するようになった場合にアメリカは賠償金として一日百万バレル取るんだという事態が起こってきた場合に、日本としてはどうしますか。仮定の想定だからお答えできぬと言うのはわかり切っておるけれども考え方としてどうあるべきかということぐらいは言えるだろうと思うので、ひとつお伺いしたい。
  165. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 ただいまの、賠償と申しますか、損害に対する責任の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、そういう原則がまだ安保理決議で決められただけでございます。それで、今回の事態によって損害を受けておりますのは日本、米国だけではございません。そのほかにもいろいろな国がございますので、これが具体的な問題になりました場合には、私どもとしても関係国とも十分協議をしながら対応していくことになると考えております。
  166. 井上普方

    井上(普)委員 アメリカは、このたびの戦争を将来の世界戦略の一環として、しかも資源である石油戦略の一環として頑として行動してきたし、戦後処理もそういうような考え方で行ってくるだろうと私どもには考えられる。そういうときに日本は一体どうするかということをお伺いしたんだが、まあ外務省はまだそこまでの考え方も検討もされていないようだから、日本の外務省ならそれくらいだろうと思いますので、注意を喚起しながら、ひとつこの程度にして、次の問題に移ってまいります。中山外務大臣、必ず起こってきますよ、これは。  そこで、先般、海部総理大臣は、今後の世界新秩序について本会議で五つのことを述べられました。我々の求める新しい国際秩序は、第一に、平和と安全が保障せられる、第二に、自由と民主主義が尊重せられる、第三に、開放的な市場経済体制における世界の繁栄が保障せられる、人間らしい生活ができる環境が確保せられる、対話と協調を基調とする安定的な国際関係が確立されることを目指すものでなければなりませんと、この五つを出した。具体的にどういう新秩序を考えるのかということについては何らお述べになっておらないのであります。  外務大臣、この五つの目標に向かってこれからどういう新秩序が望ましいと日本考えておられるのか、この点をお伺いいたしたいのです。
  167. 中山太郎

    中山国務大臣 日本政府といたしましては、国連を中心にこれから外交を展開していくことが一番基盤にあるのだと私は思います。国連中心、このような外交の軸、日本政府の基本的な外交方針とすれば、国連の機能を強化することがその目的を達成するために必要なことである。  その機能を強化するためにはどうすればいいのかといえば、一九四五年につくられた国連のその当時のシステムをこれから新しい時代に通したものに変えていく努力をしなければならない。そういうふうな考え方でこの日本外交をやっていく場合に、新しい時代にどう対応していくか。五つの新しい秩序ということを総理はおっしゃっておりますけれども、私は、外務大臣としてはそういう基本的なところをきっちりやっていかなければならない、そう考えております。
  168. 井上普方

    井上(普)委員 国連を中心とするならば、今の国連の機能というものを強化しなきゃならぬあるいは変えなきゃならぬ、おっしゃるとおりだろうと思います。私はそう思う。しかし、それに対して具体的にどういう考え方を外務省は一体お持ちなのか、お伺いいたしたいのです。
  169. 中山太郎

    中山国務大臣 これだけの四十五年間という歴史の流れの中で、世界米ソの対決が終わり、新しい国連の安保理の機能というものが当初の国連創設時のような理想に近い形で初めて機能し始めたのではないか。しかし、戦後につくられた国連の機能というものは戦勝国が中心になってつくられた機構でございますから、四十五年間に起こった世界的な国のそれぞれの変化の状況に応じて新しい国際秩序というものをつくるために、新しいあり方というものを国連で見直していかなければならない。その一つの大きな点が旧敵国条項の廃止であります。
  170. 井上普方

    井上(普)委員 私は、中山外務大臣のおっしゃる意見とある程度一致いたします。ある程度です。  私は、五月に出されました外交フォーラムという雑誌に栗山外務次官の論文が載っている。「激動の九〇年代と日本外交の新展開」という表題で、「新しい国際秩序構築への積極的貢献のために」という副題がついて出されている。これを拝見いたしました。中山外務大臣の今の御答弁、すなわち国連中心主義でいくべきである、国連は直すべきであるというのはここには全然載っていないのです。外務大臣、いかがお考えですか。
  171. 中山太郎

    中山国務大臣 この外交フォーラムに栗山次官が書かれた論文といいますか、そのようなものは栗山氏の考え方をあらわした、外交官としての考え方を記したものだと思いますが、私は外務大臣として、日本外交を預かる者としては、基本的にそのような考え方で対応しております。
  172. 井上普方

    井上(普)委員 少なくとも外務大臣考え方がこれだけの膨大な論文の中に一行も出てきていない、これはちょっとおかしいんじゃありませんか。国連中心外交でいくんだなんということ、ここに全然出ていない。中心でいかなければならないということが全然出ていない。一外交官の論文としておっしゃるのとはわけが違う。少なくとも事務当局の元締めにある外務次官だ。大臣考え方というのは、この中に全然出ていない。外務大臣との意見の相違を私は指摘し、外務事務次官に反省を強く求めておきたいと思います。  それは別にいたしまして、この論文の中に、今までの外交というのは力の外交であったというようなことが述べられております。しかしながら、私はこの米ソ超大国は—─ソ連も、軍備競争に敗れて、経済的に生活難に陥った、これがペレストロイカを引き出してきた原因だと私は思う。しかも、ペレストロイカの結果どういう現象が起こったか。とかく経済面だけが見られがちだけれども、民族問題に火がついてきた。民族問題に火がついてきたから、ウクライナ共和国が一体どうなるかということを私は興味深く見ておったのでありますが、しかし、ウクライナ共和国だけじゃない。近ごろになりますと、白ロシアの国においても民族問題が起こってきた、バルト三国は申すに及ばず。こういうように、レーニンが建国したときから民族問題というものが、マルクスの論文なんかを読んで、ここに高沢さんおられるけれども、非常に大きな弱点だなということを私は実は感じておったのです。とうとう起こったかというのが私の実感であります。  そしてせんだって、まだ東ドイツの、政治経済研究所のシュミットという所長にお目にかかってお話しいたしましたときにも、彼らもまた民族問題ということを忘れておったようです。だからあのベルリンの壁崩壊の後がたがたになったのです。民族が統一しなければならぬという悲願というものを軽くしておったのじゃないだろうかという気がいたしたので、あなた方はそうだといって私も指摘するし、またソ連の民族主義は一体どうなるというようなことも承った。  結局東ドイツの諸君は、当時やはりまだ独立国ですから、聞けば民族問題は大変なんだというような話を実は承ったが、その後ずっと見てみると、民族問題が非常に出てきた。したがって、ソ連という国は、レーニズムの中で一番弱いところであったこの民族問題が火を噴いた以上は、少なくともゴルバチョフ以前のように一つの力にはなり得ないのじゃないだろうか、ここ十年、二十年の間には一つの力に結集することはできなくなってきている、私はこういう見方をいたしておるのであります。そういう見方からいたすならば、栗山君がここに言っておるような、ソ連はまだまだ力を持っておるというような考え方にはくみすることができないのであります。  さらにいろいろ書いてあるが、要するに、今後日本というものは、今世界はGNPからいってアメリカが五、それからECが五、日本は三というようになった、ちょうどワシントン海軍条約のように五、五、三になっているのだ。だからこれを静かに守るべきだ、こう言われておるのであります。  しかし、ここに問題がある。問題があるというのは、だから今までは物を言わなかった日本は、すなわち、これは栗山さんはっきり書いてある。今までは世界に対して日本は物を言わなかったということをはっきり書いてあるのです。アメリカ追随外交をやってきたのだいうことをここではしなくも告白しておるのであります。しかし、これから物を言うのだ、物を言うのだけれども、五、五、三のこの比率のもとで物を言うのだ、こう言っている。どんなことを言うのですか、どんなことを主体にして物を言おうとするのですか。世界の大国になったのだから日本も物を言わなければいかぬ、五、五、三の三の力で物を言わなければいかぬ、栗山君はここでこう書いておる。どういうことを言おうとするのですか。  外務省、これは官房長、このくらいの論文には、フォーラムに出すには一応目を通したのだろうと思うのだが、ここらあたりはどうです。
  173. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 ただいま先生から御指摘のありました栗山論文についてでございますが、私、手元に今持ち合わせておりませんので一言一言ということを記憶しているわけではございませんが、栗山論文の趣旨は、日本の責任ということが問われている時代になり、したがって、我々日本としてもこの責任にふさわしい発言をし、行動をし、世界の新しい秩序をつくり上げていくために努力していかなければならない、そういう趣旨のことを述べておるものと理解いたしております。
  174. 井上普方

    井上(普)委員 これはそのくらいのご認識なんですか。五、五、三の比率の日本だ、だから日本はそういうところで先進主要国に対して発言しなければならない、こう言っておるのであります。貢献しなければならないということも書いてある。しかし、どういう貢献をするのだということについては今までどおりじゃありませんか。新しい発想なんというのは全然ない。それはにわかに変えろと言ったって無理だろう。行を変えて「受身の外交から、能動的な外交に転換する上で次に心懸けなくてはならないのは、日本の特殊事情を対外的に訴えるのをできるだけ控えることである。」と書いてある。  ここで私は外務省に聞くのだが、対外的に日本の特殊事情というのはどういうことなんです。これを訴えるのをできるだけ控えなければならぬというのはどういうことなんです。ひとつ具体的にお伺いしたい。
  175. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 日本の特殊性という言及でございました。  私ども、いろいろな角度から日本について論じられておること、これは先生既に御案内のとおりでございます。アメリカにおけるのみならず、あるいはヨーロッパ諸国におけるのみならず、あるいはアジア諸国中国韓国、いろいろな国で日本のことについて論評が加えられているわけであります。その際、私ども日本が経済的に豊かな国になったということが一つございましょう。また同時に、日本の経済協力といったような形で日本と当該国との関係が大変深まってきているということもございましょう。あるいは多数国間条約の中で日本が平和国家としての主張を展開する、そういう議論に対して耳を傾けてくれる国々もあるといったような事情もあろうかと思います。  いずれにいたしましても、そこで栗山次官が述べておられる趣旨は、日本の国力、あるいは日本の持っている豊かな経済力、あるいは日本の持っている知的水準というものが世界の平和に役立たなければならないという、まず大前提の議論を展開されているわけです。そして、往々にして日本は特別な国、すなわち島国であるとかあるいは語学について十分な深みがないとかいうもろもろのことがあるいはあるのかもしれません。そういうことから、日本理解するためにはこういうことを考えてもらわないと困るという、いわば受け身になって日本の消極的な要素というのを強調するのではなくて、我々日本国あるいは日本人というものも世界の人権の問題あるいは世界の貧困に対する我々の物の考え方、それから国際秩序は法によって支配されなければならない、こういう共通の概念というものを我々も持っているのだ。そういうことで、日本が諸外国と歩みをともにして平和を構築し、国際社会に貢献していける、こういうことを強調していくのがこれからの私どもの生きざまではなかろうか、一般論で恐縮でございますけれども、手元に論文がないものですから、ただいまお伺いをした範囲でお答え申し上げれば、私はそのように感じている次第でございます。
  176. 井上普方

    井上(普)委員 この栗山君が言っていることに私は非常に不満を持っている。こう書いているのですよ。「受身の外交から、能動的な外交に転換する上で次に心懸けなくてはならないのは、日本の特殊事情を対外的に訴えるのをできるだけ控えることである。」日本の特殊事情というのは何なのです。一番大きい問題は、何といっても平和憲法を持っておるということなのです。これをできるだけ控えなければならない。後に「国際秩序とは、国と国との付き合いについてのルールである。」こういうことが書いてある。しかし、日本の特殊事情というのは何だといえば、世界に冠たる平和憲法を持っていることだ。これをできるだけ控えることだ。憲法のことはここに全然書いてない。書いてないということは、言いたいのだけれどもそれは控えなければならぬというためにこの論文には書いてないのであります。私はそう思う。外務大臣、いかがでございますか。
  177. 中山太郎

    中山国務大臣 憲法というものは、国家が存立していく中での基本的な理念でありますから、これは我々が外国の憲法はどうなっておるかと見るように、外国は日本の憲法がどうなっているかということに当然関心を持っておりますから、我々は平和憲法というものを今日遵守して国際社会の中で生きているということではないかと私は思います。
  178. 井上普方

    井上(普)委員 日本の特殊事情といえば平和憲法を持っていることだ。これは大いに世界に誇っていいと私は思う。しかし、ここにも平和憲法というのは書いてないのですね、ずっと読みましたけれども。だから、そういう外交をやられておったのでは困るのではないだろうかと私は思います。  国際ルールを守らなければならぬということは書いてあるが、私もちょっと調べたことがありますが、明治以来、日本ほど国際ルールといいますか国際法を守ろうとけなげなまでに努力した国は少なかったと私は思う。すなわち、明治において先進国に追いつくには国際法を守らなければいかぬというのが金科玉条のようになって治外法権を撤廃させた。その後もずっとこの国際法というものを非常に重んじてきた国であります。  しかし、侵略戦争が起こってから、すなわち名分のない戦争を始めてから、すなわち昭和初年から国際法、国際ルールというものに余り重きを置かなくなった思い上がった政治が行われてきた。いろいろその間には問題がございましょう。だから、私もあるとき調べたのでありますが、日清戦争日露戦争あるいは第一次世界大戦の宣戦の詔勅には、実は国際法を守れということがあの開戦の詔勅にはあるのであります。大東亜戦争のあの詔勅にはこれがないのであります。ここに当時の軍部といいますか、日本政府の思い上がりがあったと私は実は思うのです。  外務大臣、戦前のことを申してまことに恐縮なのですが、宣戦の詔勅を出すのは、外務省も詔勅には手を加えたと思うのですよ。一応それに目を通して入れたと思うのですが、実は第二次大戦日本の詔勅には国際法を守れというのがないのです。それほどまでに日本の外務省というのは力が弱かったのかということを私も感ずる。だから、敗戦後日本という国は、営々として働く、その中で国際ルールというのを守るべく懸命な努力をして今日に至ったと私は思う。けなげなまでに守ってきた。しかし次から次へと、私らから言わせると、アメリカは理不尽なる要求を突きつけてまいっておる。  私は、かつてアメリカの上院の外交委員会委員長あるいは幹部と会ったときに、こんな理不尽なことを言っておると、今親米的な日本の国民は変わってしまいますよということを申したことがございます。それには、日本の事情というものをアメリカに知らさなければならない。アメリカ日本の事情を知らずにいまだ敗戦国、日本はまだ占領国というような機運がアメリカの中にあるのではないのだろうか、私はそう思うのですよ。向こうに行ってそう感ずるのです。だから、日本の事情というもの、しかも特殊事情というものを十分に述べなければならないと私は思う。そして、言うべきことは言わなければならない。今まで栗山さんの言うように、言うべきことを控えてきたのだという外交が展開せられておったら今後は大変だ。  しかも、栗山さんはこう言われている。最後に、日本を大国として主張すれば、そのような大国として持つべき普遍性を失い、他国の日本異質論に力をかすだけだ、こうおっしゃっておるのです。恐らく日本異質論というのは盛んに出てくる、今出てきています。そしてまた、先日も質問いたしましたが、真珠湾攻撃の五十周年に当たる、ことしは。日本異質論の標本にされておるのが実はあの真珠湾のだまし討ちなのです。  だから、私はこの間も申したように、少なくとも異質論の根底にある国家意思はだまし討ちではなかったのだということを明確にする必要がある。しかし、外務官僚の不手際によって、不手際というか何というかによって、ともかくだまし討ちということになっているのだから、ここらの事情というものはもっと調べ、するべきことは日本は行い、外務省としては外務官僚の不手際であったことを天下に公表して、そして措置しなければならぬ。そうでなければ、それを異質論だというところに持っていかれたのではたまったものではないと私は思うので先日も質問したのであります。  こういうふうに考えてまいりますと、我々は決して国際的孤立主義を歩もうとするものでも私はないと思うのです。ただ、国連中心主義でいかなければならない。しかし、国連中心主義でいくことが、この間の海部総理の国際新秩序をつくる五つの目標にある程度沿うものではないか、私はこのように思うのであります。したがって、さらなる御努力外務大臣──国連中心主義を行うにはどこを直せばいいか、ここら、お考え方がありますか。外務省はこの点について、国連機能を強化させる、改変させる、それにはどこどこを直せばいいというお考え方を持っておられますか、どうでございますか。
  179. 丹波實

    ○丹波政府委員 外務大臣も先生も国連中心主義でいくべきだ、私も主管局長として全くそう思います。  それで、今後国連がどうあるべきか、かつそのために日本がどういう分野で貢献できるかということでございますが、先生も御指摘になりましたけれども国連はいわば冷戦の、何と申しますか、孤児のような存在の時代が非常に長かったわけでございますが、世界米ソ関係を中心といたしまして東西関係が非常に変わったということもございまして、まさにこの孤児であった国連が活動し始めたというのが昨今の状況ではないかと思います。  そこで、いわゆる軍事面における活動ということになりますと、先ほどの憲法の問題その他からして日本としては非常に苦手な分野でございますけれども国連の平和的な側面における活動ということになりますと、日本はやはり堂々と大手を振って貢献できる分野だと思います。  そういう意味で以下の分野を考えますと、例えば外交努力における分野、日本はこれまでイラン・イラク紛争とかカンボジア問題におきますところのいろいろな努力をしてきておりますし、それから国連の平和維持活動におきます分野、これは財政的支援を非常に拡大してきておりますし、それから要員の派遣の分野でも今まで四回ぐらい派遣をいたしております。それから、この間緒方先生が参りましたけれども、難民の分野とか、先ほども御議論のありました軍備管理の分野におきましては、やはり日本は今後イニシアチブをとっていける分野ではないかというふうに思います。
  180. 井上普方

    井上(普)委員 国連中心主義というのが、そんなことが国連中心主義と考えているところに、丹波君、君の間違いがあるんだ。国連の機能というものをどういうように高めていくか、しかも国連というものをどういうように権威づけるか、これが中心でなければならない。それには今の組織それ自体をどういうように変えるか、こういうことを勉強しておるかと思ったら勉強していない。少なくともアメリカのように、ソ連のように国連の分担金をおくらせているような国は今一体どういうことになっているのですか。これに対して日本は文句を言ったことがありますか。アメリカのごときは、湾岸戦争が始まって、この八月の終わりにようやく分担金を出したというのが実情じゃないですか。ここらあたり、日本アメリカとは違った行き方をしなければならないと私は思う、国連中心主義でいくならば。またいくべきであると思う。  国連の今の正義がそのまま正義として私は通用しないと思うけれども、しかし、数が多いのだからしようがないや。しかし、本当の正義が行われるように国連の機能それ自体を変えていかなきゃいかぬ、組織それ自体を変えていかなきゃいかぬ。その努力をしなければ、国連中心主義といってもこれは大国に利用せられる国連になってしまう、今日の国連のごとくだ。この点について日本の外務省は国連をどのように変えていくのか、いこうとするのか、その考え方があればひとつお示し願いたい。外務大臣、いかがでございますか。
  181. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほども申し上げましたように、この国連の機能を強化するということの中には、日本がどの程度の発言権を持つかということが、国連中心にこれから外交を進める中で一番のキーポイントになっていくのだろうと思います。  それでは、しからば発言権は一体どこにあるのかといえば、この安全保障理事会常任理事国にいかにしたらなれるかという問題が一つ大きくあると私は思います。しかしその前にやるべきことは、旧敵国条項の廃止、これをやらなければ、日本は平和愛好国として、国連のメンバー国として拠出金だけたくさん払うという意味は薄れていくと私は思うのです。これは世界じゅうどこにも通る論理でありますから、それをしっかりと進めていかなきゃならない、私はそのように思っております。  もう一つ、やはり国連職員の中に、高級職員の中に日本人の職員を、優秀な人たちをどんどん送り込むことの努力をしなければならない。幸い今度は緒方貞子先生が国連難民高等弁務官になられましたから、WHOの中嶋事務局長と並んで私はこれを大変喜んでおりますけれども、もっともっと日本の立派な人たちが国連のスタッフとして活躍できる日を一日も早くつくらなければならないと私は考えております。
  182. 井上普方

    井上(普)委員 敵国条項を直せというのは私は、これは私だというより社会党としてはもう十年ぐらい前から叫び続けておることなんです。もっと前から言っておるかもしらぬ。しかし中山さん、外務大臣が去年国連で演説したんで、あれで六遍目ですよ。その前七、八年の間はそういうことは日本主張しなかったのでしょう。ここらあたりにちょっと、今までは国連中心主義国連中心主義と言いながら、いや、どうもアメリカが言うことを聞かぬのですわ、ソ連が言うことを聞かぬのですわなんと言って、正しいことを正しいこととして主張してないところに原因があったと私は思う。  それはともかくといたしまして、敵国条項を直すこと、先日ドイツのブラントがテレビでも言っておりましたし、また直接会う機会があり、お話しした。これだけ経済大国になったんだから日本とドイツの敵国条項は直すし、それから安保理事国に我々がなるのは当然じゃな、しかしなあと、しかしが入るんですよ。日本とドイツが一緒になって安保理事国にせよと言ったらまた反応がきつ過ぎる、弱ったものじゃなというような話はいたしたことがございます。かつて、あれはだれでしたか、西村という防衛庁長官が、国連というのは農協の組織みたいなものでというようなことをおっしゃってとうとう防衛庁長官を棒に振ったことがあります。  しかしながら、ふさわしいような国連に、本当に理想的な国連に直していく、組織それ自体を直していく、この努力をやらなければ、今丹波君が言ったようにPKOであんなことばかりやっておったって、根本的な世界の新秩序というものは生まれてこないと私は思う。どうも外務省は、今承ったところ、国連をどういうように改組すべきか、どういうようにあるべきかということについて御勉強になっていないようだ。しておるんですか、外務大臣。しておるのならひとつ、敵国条項、それと人を送ること、それと安保理事国に日本がなるべきだというぐらいのことでは国連を直すわけにはいかぬから、ここらあたりの日本考え方というもの、国連をどういうように強化していくかということのお考えがあればあるで聞かしていただきたいし、なければこれから勉強すると正直におっしゃってやっていただきたいと思います。どうです。
  183. 中山太郎

    中山国務大臣 今私は、国連総会に二回出さしていただきましたが、外務省の国連関係者というのはそれなりに努力をしているということを率直に申し上げておきたいと思います。といいますのは、昨年の秋も、子供サミットも続いてあったものですから十日間ニューヨークにおりましたけれども、私が会った各国外務大臣の数は七十カ国くらいに及んでいると思います。私自身、十日間に自分の個人的な自由になる時間というのは二、三時間しかなかった。  それは、例えばアフリカの外務大臣のグループを一括して昼飯に呼ぶ、あるいは次の日は今度は南米のリオ・グループの外務大臣を呼ぶとか、あらゆる機会を使って各国日本との関係を強化するためにやっておりますし、また日本がODAで協力をした国々日本に対して大変親近感と期待感を持っておりますから、そういう意味で、先ほど申し上げましたようなあるべき国連外交の姿というものをこれから打ち立てていくためには、各国との外相間の協議あるいは大使間の協議というものをできるだけ多く持っていくということが国連における日本地位を高めていく一つの大きな道である、自分はそういうふうに信じております。
  184. 井上普方

    井上(普)委員 聞いておることとはちょっと違う。国連をいかにして世界新秩序の中心に置くかということを考えなければいかぬでしょう。それには国連を一体どういうように改組するか、強化するか、これを考えなければいかぬ。今の外務大臣の話だと、口の悪い人は、国連というところは外務大臣、大使のサロンかいなとしか思いませんよ。何十人と会ったとかサロンで飯を食わしたとか言ったって、それはサロン外交にしかすぎない。そうじゃないんだ。ひとつ国連をこのようにしてやっていくんだと。そして、もう一つ国連の一番重要なことは、何といいましても国連主導権を握って、強化した国連が軍縮の方向に世界を導いていくことです。こういう目的を持たなければいかぬ。  私は、かつて人口問題でインドへ行って、ドイツのシュミットがレクをやりました。インドの国会議員が百五、六十人出席して世界人口会議を開いたのであります。その際に、シュミットさんは 歯にきぬ着せずに、経済援助をもらっている国が軍備増強するとは何事だ、これを直さなければいかぬという正しい発言をしました。そうすると、インドの国会議員の連中からブーイングが起こったんです。ブーイングは起こったけれども、シュミットは敢然として、そうでなかったら出すわけにはまいらないということを申した。ああこれくらいの主張を他国において堂々と言える人は日本には少ないなと思って私は聞いた記憶があります。  どうかひとつ日本も正しいことは正しいこととして、国連中心外交でいくならば、国連を一体どういうように強化するか、まだどうも外務省は国連を強くする構図を描いていないようだ。今までのように、アメリカについておったらいいわという外交をやってきておるから、物言わぬ外交であったから、ともかく発想が起こってこないのかもしらぬ。しかし、これからは物を言うそうですから、国連を強化するためにひとつ格段の御努力を願いたいと思うわけであります。そして、その軍縮の中から、少なくともこんな日米地位協定日本に銭出せというようなことはもうやめなさいということに相なると思う。  議事録を調べてみると、駐留軍の経費を出すときも、岩垂君の質問に対して、これが最後でございますと五年前には言っておる。一年たったらまた違った。狂う。三年たったらまた今度は光熱費。そのときに岩垂君にここで言われているのですよ。光熱水費だの基本給などは絶対に出しませんねなんて国会で念を押されているのですよ。議事録を見てごらんなさい。そうすると、そういうことは当面考えておりません、五年間はこのまま行きますと言っておるのに、今日ではこのざまだ。日米安保条約それ自体はとにかく改変する時期に来る。あるいはまた、アメリカ世界戦略の中からもし日本の駐留軍をなくすると言ったら、それは日本の外務省はうろちょろして何をやったらいいかわからぬような状況になるんじゃなかろうかという気がしてなりません。  私がきょう申し上げるのは、どうか日本外交の基軸を霞が関にきっちりと打ち立てなさい、そして日本外交を展開していただきたい。日本の特殊外交、特殊事情を言ったらいかぬというあほな外務次官がおるもんだからこんなことになるんだということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  185. 牧野隆守

    牧野委員長 松原脩雄君。
  186. 松原脩雄

    ○松原委員 私は、今度の地位協定をどう見るかということのために、今、井上委員が聞いたことも踏まえまして、少し基本的なところを最初にお聞きをしておきたいと思うのです。  今度の地位協定の前文にも書いてありますけれども日米「両国を取り巻く諸情勢の変化に留意し、合衆国軍隊の効果的な活動を確保するため、」この協定を結ぶのだ、こうなっております。今度の協定の根っこになるのは六〇年安保であります。今、それから既に三十年を経過いたしました。したがって、いわゆる六〇年代の日米安保と九〇年代、現在の日米安保については、国際情勢の変化、その他経済状態の変化等いろいろあると思うのですが、その大きな変化による違いのメルクマールですね、そこを最初にお聞きをしておきたいと思います。
  187. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生が今言及されました今回の特別協定の前文に書いてございます最近の諸情勢の変化という点に関しまして、私どもは三点、念頭に置いております。  第一点は、先生御承知のようにアメリカは膨大な貿易赤字を引き続き抱えておるわけでございますが、他方、日本の方は、先生が御指摘の、三十一年前の一九六〇年と比べますと大変な経済力をつけてきておるわけでございます。このような日米間の経済力の相対的な関係の変化といった経済情勢、これは例えばGNPの数字で申し上げますと、先ほども井上先生が現在のGNPについて五、五、三ということを言及されましたけれども、大ざっぱに申し上げれば、アメリカが五兆ドル、日本が三兆ドルでございます。それに引きかえまして、三十一年前の一九六〇年にさかのぼりますと、日本を一にいたしますとアメリカのGNPは一一・六、つまりアメリカのGNPが日本の十二倍近くあったということで、この三十一年間のこのような経済力の相対的変化というのがそういうGNPの差にもあらわれておりますが、特に最近におきましても今申し上げたようなことで経済情勢が変化してきているということが第一の点でございます。  それから第二の点は、アメリカが膨大な財政赤字を抱えながらも国際の平和、安全の維持のためにグローバルな役割を果たそうとしている、その中で国防費それから在日米軍経費の面におきましても非常に苦しい状況に置かれているということでございます。先ほど私、アメリカは今後五年間で財政赤字を五千億ドル削減するということを申し上げましたが、その中で国防費は千八百億ドルの削減を目標としておりますが、そういう中で在日米軍経費の比重がどんどん高まってきているというのが実情でございます。  それから三番目に私どもが念頭に置いておりますのは、日本がこれだけの経済力をつけました状況において、その国力にふさわしい役割を積極的に果たしていくということがますます求められてきている。この三点でございます。
  188. 松原脩雄

    ○松原委員 それではちょっと欠けたところがあると私は思うのです。六〇年安保のときは米ソ冷戦という厳然たる対峙関係があったと思うのです。その中での日米安保だったと思います。しかし、九〇年代は、先ほどから出ているじゃありませんか、国連中心主義と言われるものですね。国連による安全保障世界の平和と安全の維持というふうな国連が発足した当初の理想が、いわば希望を持ってもう一度期待できるのじゃないかという時代に入った、こういう説明だったと思うのです、さっきの外務大臣の説明では。そういうポスト冷戦の特徴という点も踏まえたら、その辺の国連との関係はどうなるのかな。
  189. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど来外務大臣が強調しておられますように、私どもも、国連が本来目的としておりました世界の平和と安全の維持のために積極的な役割をこれからぜひ果たしてほしいと思っておるわけでございますけれども、しかし同時にまだまだ限界があるということは、先生方も御指摘でございますし、外務大臣も御指摘になったとおりでございます。他方で、国際情勢は大きく動いて、まさに先生が御指摘のようにポスト冷戦ということで動いてはおりますけれども、まだまだ不安定、不確定な要素がある。そういう中で日本としては引き続き日米安保条約を必要としているというのが私ども認識でございます。  先生御案内と思いますけれども日米安保条約、三十一年前につくりましたときもまさに国連憲章について言及がございまして、例えば第一条にまさに明記しているところでございますけれども、まず、締約国、これは日本アメリカでございますが、締約国は、国連憲章の定めるところに従い、国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しということをはっきり明記しているわけでございます。それからまた、国連の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。そしてさらに続きまして、こういう国際の平和及び安全の維持のための国連の任務が一層効果的に遂行されるように国連を強化することに努力する。私は今、第一条をほとんど読み上げているわけでございますけれども、まさに安保条約の第一条に国連強化ということは日米両国の共同の目標として掲げているわけでございます。  それから先生、ぜひ第十条もごらんいただきたいのでございますが、第十条におきましても、安保条約は、日本におきます国際の平和及び安全の維持のために十分な定めをする国連措置が効力を生じたと日本アメリカの政府が認めるときまで効力を有する。裏返して言えば、まさに国連がそういう国際の平和と安全の維持をきちんと機能するということを念願してこの条約もつくられて、まさにそういう日が来たらこの安保条約にかわって国連がそういう安全保障の維持機能を果たしてほしいという日米両国の願望がこの条約にも盛られているということを改めて申し上げたいと思います。
  190. 松原脩雄

    ○松原委員 まさに枠組みといいますか、それはおっしゃるとおりだと思うのです。国際連合がたしか一九四五年の十月に効力が発生をしている。そしてその上に、日本国憲法も翌年の四六年にできておるということですし、その国際連合のでき方と日本国憲法のでき方というのは深く運動しておるというふうに私は理解をしますし、憲法の制定経過を調べれば調べるほどそうなっておるということだと思うのです。  そうしますと、今おっしゃった国際連合、これの基本的な枠組みについて確認をしておきたいと思うのです。国連憲章を読んでおりますと、憲章の第七章に、いわゆる国連による一般的な集団安全保障措置と言われるものが書かれてある。例えば経済制裁もあれば、四十二条以下にはいわゆる国連軍に関する規定、武力制裁規定も書いてあるわけです。そして、その国連のこれらを指して、恐らく国際法的にはもう常識として、国連のいわゆる一般的あるいは普遍的集団的安全保障というふうな講学上の概念でくくっておると思うのです。  では、そういう国連によって世界の平和と安定が完全に処理ができるという時代だけを想定しているかというとそうじゃない。国連憲章の五十一条には、いわゆる個別的自衛権と集団的自衛権、これを排除するものではないという規定があります。ただし、憲章の五十一条の個別的自衛権も集団的自衛権も、それぞれの国が持ついわば安全保障上の権利だということになっているけれども国連憲章の上からいうと、これらは極力抑制をすべきものであるという考え方に立っているはずであります。  ですから、そういう枠組みの中で、先ほどの説明のとおり日米安保もこれは片務的だと言われる集団的自衛権の行使条約の二国間条約だというふうに私理解しますけれども、そういうものであっても、やはり国連憲章枠組みの中からいえばこのような二国間条約国連が十全に機能する段階では極力消滅させていくのだ、だから、先ほど言った安保条約の第十条もまさにそのことを明記をしておるというふうに理解をすべきだと思うのです。そういう大体の理解の方向でよろしいでしょうか、ちょっとお願いします。
  191. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま先生から大変詳しく国連憲章枠組み考え方について御説明あったわけでございます。私も基本的にただいま分析されたとおりであると思います。したがいまして、私は手短に答弁させていただきますが、おっしゃいましたとおり、国連憲章枠組みといたしましては第六章で国際紛争の平和的解決について詳しく規定しているところでございます。ただ現実の問題といたしましては、先般のイラクの侵略のようなことが起こり得るということで、第七章でいわゆる集団安全保障国際社会による侵略の抑止、排除、平和の回復、維持ということについて規定をしているわけでございます。したがいまして、この基本的な考え方は、侵略が起こった場合に国際社会協力してこれに対し、必要があれば実力をもって平和を回復するということでございますけれども、これも御指摘のとおり、五十一条におきまして個別的、集団的自衛権について規定があるわけでございます。  この点につきましては二つあると思います。  一つは、現実の問題といたしまして、この国連憲章考えておりますいわば理想のと申しますかあるいは究極的な姿の国連というものが、残念ながら今まだできていない。したがいまして、この集団安全保障あるいは国際社会全体による軍事的なものを含めての制裁というものが、いまだこの国連憲章が想定したとおりには機能していないという点が一つあると思います。したがいまして、この五十一条に規定しておりますような、急迫な侵害があった場合の個々の加盟国による自衛の働く余地があるということは一つあると思います。  いま一つは、この点は先生大変お詳しい分野でございますので私から言うのも恐縮でございますけれども各国の国内社会をとってみます場合にも、これは国際社会に比べまして、特に法的に見ましてずっと高度に発達した社会であると思います。そういう社会におきましても、国家が警察力を持って国内の秩序を維持する、しかし急迫な場合には個人に正当防衛、緊急避難の権利を認めるという点があると思います。国連憲章につきましても、この現実の問題を離れて理想的な姿になった場合においても、やはり急迫な場合があり得るということでこのような構造になっているというふうに考えております。
  192. 松原脩雄

    ○松原委員 そういう国連憲章の基本的枠組みからいきますと、確かに極めて緊急避難的な国連による安全保障措置ができるまでの間に、例えば急激な侵略が行われた、それに対してその国が個別的自衛権を行使して反撃をするとかあるいは集団的自衛権を行使してやるとかいうのは、その後に国連がしかるべき安全保障措置をとったときは、ある意味では停止をする、それに取ってかわられてしまう、こうなるだろうと思うのですね。したがって、それは例外的である、こう考えるべきだと思うのですよ。  ところが、まさに冷戦時代というのは、そういう国連の機能が停止をしてしまっておった。世界米ソ超大国のもとに大体二つに割れておったということで、それぞれの間で敵を選定した集団的自衛権という二国間条約が基本となってできていたと思うのです。しかしながら、先ほどから外務大臣が認定をされましたように、そういう国連による平和と安全の時代にポスト冷戦は基本的に踏み込み始めた。そうしますと、それはその相関関係で集団的自衛権と言われる二国間による安全保障考え方、そういったものは、その機能は直ちには消滅しないが、少なくとも縮減をされる、小さくなるというふうに考えていいのではないかと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  193. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 基本的に先生の仰せのとおりだと思います。  先ほども申し上げましたとおり、国連憲章理想として描いた姿と現実の姿と二つあるわけでございますが、先ほどもお触れになりましたように、冷戦構造の時代には残念ながら国連があるときには全く麻痺していた、平和回復機能というものは麻痺していたということが言えると思います。幸い冷戦というものがだんだん消えていって、国連安全保障理事会も、今般の例に見られるごとく動き始めたということでございますので、望ましい方向に少しずつ進みつつあるというふうに考える次第でございます。したがいまして、これは予想の問題になりますのでなかなか難しいと思いますけれども、将来国連憲章が本来想定していたような平和回復維持機能というものが発揮されれば、個別の国家による個別的または集団的自衛権の発動の余地は少なくなるであろうということは一般的に言えると思います。  ただ、完全な国連ができた場合においても、やはり国内社会と同じように正当防衛、緊急避難的なものが必要な余地というものは完全にはなくならない。そこは余地は残るであろうというふうに考えております。
  194. 松原脩雄

    ○松原委員 そこで、次にこの九〇年代の安全保障の問題を考える場合に、もう一つどうしても注目していかなければならないのは地域安全保障だと思います。ついこの間も全欧安保会議CSCEというものができたわけですね。ヨーロッパにおいては、いわゆるヨーロッパの城内においてはその加盟国、締約国といいますか、加盟国同士の手で自分の域内の安全の問題を確保していこうという動きが既に始まったわけです。これをちょっと国連憲章との関係で見ておきたいと思うのです。  国連憲章の第八章に「地域的取極」というのがあります。憲章の五十三条以下に始まるわけですね。ここでは、各地域国々地域間のそういう安全保障に関する取り決めをすることができるというふうになっているし、国連もそれを排除するものではないということになっております。そこで、こういう地域的な安全保障と言われるもの、とりわけCSCEはこの国連憲章の規定からいうとどのようなものなのか。ずばりそのものなのか、それともそこに至るプロセスを歩み始めたと見るべきなのか、その点についてはいかがでしょうか。
  195. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 必要に応じまして、また担当の者から補足していただきたいと思います。  ただいま御指摘がございました国連憲章第五十三条はまさしく地域的機関に関する……(松原委員「五十二条以下」と呼ぶ)第五十二条でございますね。それから五十三条も関連あると思いますけれども、これらの規定、第八章とおっしゃいましたのでその方が正確かと思いますが、地域的な協力あるいは取り決めについての規定でございます。  私承知しているところでは、例えばラテンアメリカのOASのような機構がこれに当たると思いますが、CSCEのような現在の協力関係というものはまだそのような、ここで言っておりますような地域的な安全保障という観念に入る段階にはいっていないのではないかというふうに考えております。
  196. 松原脩雄

    ○松原委員 この間の本会議でもちょっとお聞きしたのですが、そういう地域安全保障が今ヨーロッパに生まれつつある。そして、アジアにおいてもそういう地域的な安全保障というふうな方向性に行くべきではないかという意見がもう既に各国から出始めている、提案をされている。それに対して日本の外務省の方は、何か非常に消極的な答えをしているということだったと思うのですね。確かにアジアの領域とヨーロッパの領域ではちょっと違いますから、条件が異なっておるから、直ちに事柄が始まるというわけではないかもしれませんけれどもヨーロッパだって最初は物すごい東西対決の中で、ドイツが分割されている中で、まずいわゆる信頼醸成措置のようなものから始まっていったという経過があります。  ですから、今アジアの情勢が仮に困難だとしても、私は困難だという認識は外務省もしていないと思います。もう少し前向きの好転したアジア情勢になりつつあるという認識の方に変わってきつつあると私は見ております。だとすれば、なおさらいわゆる地域的な安全保障アジア版のようなものもまた頭の中に入る。国連を十全なものとして機能させていかなければならぬとするならば、当然地域的な安全保障の問題もそういう視野の中に位置づけていく必要があるだろうと思いますし、もしそれがそうだとするならば、その地域的な安全保障は私が指摘した国連憲章による第八章的なもの、そういうものへ向かって最終は、究極的には行くものだと考えていいのじゃないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  197. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 アジアの情勢につきましては必要に応じましてアジア局長の方から答弁していただきたいと思いますが、信頼醸成措置というものからどういうものが出てくるかということは、地域によりましても、また時間的な経過と申しますか、ヨーロッパの経過を見ますと現在の状況に至るまで大変長い時間がかかっていると思います。そしてまた、ヨーロッパ国々の置かれた背景と申しますものは、いろいろな多様性がある中にも、やはり宗教的あるいは文化的な共通性というものが大変多かったというふうに考えております。  アジアの場合には御承知のとおり、文化的にも伝統的にもあるいは歴史的、政治的に多様性が非常に大きい中で、最近幸いにも緊張の緩和がなされてきているということでございまして、その中からいろいろな信頼醸成の努力が行われることと思いますけれども、最終的にこの国連憲章考えておりますような地域的な安全保障体制というものが生まれてくるかどうかということにつきましては、ヨーロッパの場合もそうでございましたが、非常に時間のかかる問題であろうというふうに考えます。
  198. 松原脩雄

    ○松原委員 国連中心主義と言われるものを強化していくべきだというのはもう既に政府の答弁があった。そうしたら、国連憲章が想定する地域安全保障という理想の姿も、これは必ず頭に置けというわけではないですけれども、しかしやはりアジアの現状やヨーロッパの実績等を見ておりましたら、そういう交渉や想定といったものは、これからの安全保障考える場合に、当然外務省なり政府なりが頭に置いて想定をしておかなければ私はいかぬものじゃないかなという点、この点だけちょっと指摘をしておきたいと思います。  そうしますと、国連中心主義それから地域安全保障をつくって強化をしていく、そうしたら、そういうものがだんだんでき上がっていったら、その相関関係としては、集団的自衛権である二国間の日米安保条約だって、国連が強化されるに従って当然これの地位は下がっていくのが私は一般的な成り行きであろうというふうに思います。そこをまず一つ指摘をしておきたいと思うのです。  ところで、この日米安保条約ですが、六〇年につくったときと九〇年代の今とは違ってきている。とりわけアメリカがどう動いているかというのは物すごく大事なことだと思う。大体アメリカに引っ張られてきた日本でありますから、これからもアメリカがどういう考え方安全保障の問題を考えているのかというのは大事だと私は思うのです。特にポスト冷戦の中で、先ほどちょっと出ましたアジア太平洋の戦略的枠組み、あるいは九二会計年度アメリカ大統領の予算教書、そういうものを総合して、一体アメリカは今後ポスト冷戦の、これはアメリカの新しい防衛政策と言っていいと思うのですが、新防衛政策の基本的特徴をどのように押さえておられるか、お聞きしたいと思います。
  199. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 今先生が言及されました新しいアメリカの国防政策でございますが、これは三月の一日に発表されました九二年度のアメリカの国防報告に一番よくあらわれていると思います。これはブッシュ大統領になりまして二度目の国防報告でございますけれども、その中で四点指摘をしています。  第一点は、この二年間ソ連、東欧におきまして劇的な変化が起こりまして、その結果、西欧に対します侵略の可能性はほぼなくなりましたけれども、最近の湾岸情勢やソ連の国内情勢から見まして、今後とも安全保障面での不確実性、危険性はなくなっていないという点でございます。  それから第二点は、ソ連についてですけれどもソ連の武力行使能力は減少しつつあるが、引き続きソ連は強大な軍事力を保持し、そしてそれを近代化しているという点でございます。  それから三番目は、アメリカの国防戦略の重点がグローバルなソ連の脅威から欧州、アジア等の地域的な脅威へと移行し、そのような脅威にどう対処するかということを考える必要があるので、引き続き核抑止力と前方展開態勢の維持が必要であるということでございます。  それから第四番目は、アメリカの国防予算が求めております米軍の兵力のレベルは現時点で削減し得る最低限のものであるけれども、今後状況が悪化すればこの削減のテンポはおくらせるか、あるいは場合によっては中止する可能性もあるということを指摘しております。  重要な点は、最初御披露いたしました第一、第二、第三の点でございます。
  200. 松原脩雄

    ○松原委員 九二年度の大統領の予算教書で、国防予算の編成方針として言っておることとそう大きく変わりは、ちょっとトーンが三月になったら変わったのかもしれませんが、大きくは変わらないと思います。いわゆる海洋戦力を中心とした対ソ戦略のための前方展開というものをやはり維持する、そのほかにグローバルな地域紛争、そういった紛争にいわば的確に対処するための対応措置が必要であるというふうな見方に基づいて、それに必要な兵力の配備あるいは軍事システムあるいは戦略的利害を有する地域への軍事力の投入能力、それから即応能力の堅持といったようなことも予算教書には指摘をされておるわけです。したがって、やはりポスト冷戦の中でとりわけ特徴的に出てきたのが、要するにグローバルな地域紛争が多発をするであろう、その地域紛争が生じた場合にはアメリカ軍はグローバルにそれに対処をしようというふうになっておるのだろうと思うのですね。  それからもう一つは、そういう考え方の中で、いわゆるアメリカの戦力を四分類して対処しよう、グローバルな危機に対処しようという方向に出ているという指摘もされているようですが、その辺のところはどうなっておりますでしょうか。
  201. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、アメリカソ連との関係において、ソ連が引き続き膨大な軍事力を維持し近代化を進めているということを念頭に置いて、グローバルな脅威の対応というものを考えておりますけれどもアメリカがより重点を置こうとしておりますのは地域的な脅威ということでございまして、それを受けまして、今先生が言及されました新戦力構想というものを打ち出しております。全体の規模は、ベトナム戦争以来初めて二百万人を割ることを想定しておりますけれども、部隊を四つに再編するとしております。第一は戦略核部隊、その次に太平洋部隊、それから大西洋部隊、それから緊急即応部隊でございます。
  202. 松原脩雄

    ○松原委員 そのように、アメリカの九〇年代戦略は地域紛争対処のために戦力を大体四分類する。その中を地域的に分けると、太平洋と大西洋に分けて、そしてアメリカ本土には緊急展開戦力を置いておく。それ以外に、戦略核戦力というのですか、そういうふうな四分類にしているわけなんですね。したがって、例えば太平洋戦力というものを考えた場合には、恐らく太平洋地域あるいはアジア地域といいますか、全般といいますか、そういう地域紛争対処のために一つの戦力の固まりを持つというふうに大ざっぱにはとらえることができるだろうと思います。そういうアメリカの、いわば新しい防衛戦略の中で現に発動されたのが今度の湾岸戦争でなかったかなと私は思います。  ですから、今度、五万人おる日本の駐留米軍の一万人を超える者がどっと湾岸に出て行ったわけです。これを単純に、単なる兵力の移動だという位置づけだけで説明をなすっているけれども、しかしアメリカ自身の考え方からいったらもう実態的にはそうはなっていない。まさに、地域紛争中東で起きた、それに対して日本にいる駐留米軍をその戦闘のために実質上入れていく、戦闘に参加させていくんだということがアメリカの戦略からするとごく当たり前のことであって、日本は単純に、それは移動であると政府の方は説明しているけれども、もう実態に合わなくなった。アメリカの目から見たら、また日本の政府はごまかしを言うておるなというふうになると思うのですが、アメリカの新しい戦略からいって、今度の、日本から中東へ出て行った駐留米軍の動き方ですね、やはり従来の答弁どおり、単純な移動だということでよろしいのでしょうか、もう一度お聞きをしたいと思います。
  203. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生御指摘の点に関しましては私ども累次御説明してきておりますけれども、一方におきましては、まさに先生御指摘のように、アメリカはグローバルな安全保障面での役割を引き続き果たしていくという大前提がございまして、その中身は先ほど来御説明しておりますように、グローバルな脅威から地域的な脅威にまできめ細かく対応していくということが一方においてはございます。  それから一方におきまして、日米安保体制日米安保条約との関係で申し上げますと、日米安保条約は、これは申し上げるまでもなくきちんとした枠組みできちんと運用されているわけで、第五条、第六条、特に在日米軍の問題に関しましては第六条に、日本及び極東の平和と安全のために駐留する、正確には、日本がそのために施設区域を提供するという表現でございますが、そういうことになっております。それから、先生が先ほど冒頭に引用されました今回の在日米軍の特別協定の前文にも、安保条約及び地位協定日本及び極東の平和と安全のために役に立ってきているということが繰り返しまた言及がされていることは、まさに日米両国政府がそういう認識を共有しておることを示しているわけでございます。  ただ、先生御指摘のように、アメリカはグローバルな安全保障面での機能を果たしていく関係上、在日米軍あるいは横須賀に乗組員の家族を居留させております空母ミッドウェー以下の艦船が移動のために湾岸その他の地域に移っていくことは、従来もございましたし、今回もございましたし、将来もあると私ども考えておりますが、あくまでも、これらの在日米軍及び横須賀に乗組員家族を置いております米軍艦船が、日本及び極東の平和と安全のために機能しているんだという実態がそこにあると私どもは思っております。そういうしっかりした実態があるということは、まさに安保条約の目的に沿っているということでございますので、その点はぜひ強調させていただきたいと思います。
  204. 松原脩雄

    ○松原委員 そうしたら、あなたの言う安保条約の前文と六条にある極東条項ですけれども極東の範囲、どこまでですか。
  205. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  極東の範囲につきましては、安保条約締結当時から繰り返し政府側が御答弁申し上げているところでございますが、当時の統一見解でも明らかにされているところでございます。極東と申しますのは、御承知のとおり、安保条約自身にはきちっとした定義はないわけでございますが、当時からの解釈といたしましては、日米両国が平和、安全の維持に共通の関心を有している区域であって、かかる区域は大体においてフィリピン以北並びに日本国及びその周辺の地域であるというふうに解釈されておりまして、これが確立した解釈でございます。ただ、このような性格の概念でございますから、地理学上、正確に固定されたものではないということも従来から言われているところでございます。(発言する者あり)
  206. 松原脩雄

    ○松原委員 まさにいい御指摘だと思うのですが、六〇年の、安保ができたときの極東条項はフィリピン以北及び我が国周辺だ、こうなっているようなんですけれども、今言ったアメリカの九〇年代のグローバルな地域紛争対処戦略からいきますと、このフィリピンよりももうちょっと南とかあるいはアジア全般、そういったところにも紛争が起こってきたら、どうも紛争が起こりそうな要素が幾らか見えるように思うのですね、その地域には。そういうものに対しては、その新防衛戦略からいうと、アメリカはどんどん出ていく。しかも、アジアにあるいわゆる前方展開をしているところをチェックしますと、韓国にしてもちょっと兵を削減する方向にあるし、フィリピンもどうやらアメリカの基地を縮小してくれという動きに出ていますよ。  そうすると、そういうふうに削減されていった中で、日本における在日米軍の地位というのは、アジア地域においては量的にも非常に重要な地位を持つようになるのじゃないかと思う。そしてそこヘアメリカの前方展開で部隊がいてグローバルな地域対処で、フィリピン以南あるいは西、いろいろな地域地域紛争が多発するであろうとも認定している、それに対して、アメリカは必要があれば介入していきますというのが防衛戦略なわけですよ。それを総合して考えますと、いよいよ極東条項の範囲内、もうそんなものは無視をする、その範囲を超えて在日米軍をどんどん使っていくんだというのが、また使わざるを得ないというのが現実の実態なんじゃないでしょうか。  こういう点を考えますと、この極東条項についての今の御説明、今後ともさような事態はない、仮に極東条項を超えるような形でアメリカが戦闘出撃を始めるときには、我が日本は、日米安保条約をしっかり守っていただいて、それはだめですというふうな立場をおとりになれるわけでしょうか。その辺をちょっと聞いておきたいと思います。
  207. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生、今、東アジアに展開しております米軍の中でも日本施設区域の重要性が今後ますます高まるであろうという御指摘がございましたが、現在、東アジアに展開しております米軍は、先生御指摘のように、日本韓国、フィリピンに加えまして洋上展開がございまして、合わせて約十二万でございますけれども、その中で、従来からも日本が重要な地位を占めていることは申し上げるまでもございません。  その関連で、今先生が御指摘の第六条の点でございますけれども、これは先生申し上げるまでもございませんけれども、第六条はきちんとした法的なメカニズムができておりまして、アメリカもそれに沿って従来から対応しておりますし、私どももきちんとそれを運用してきているわけでございまして、繰り返しでございますけれども、在日米軍が運用上の都合から極東を離れまして湾岸その他に移動するということは、まさに移動でございまして、そういうものを当初から安保条約が想定していなかったとはとても考えられないわけでございます。  重要なことは、この第六条に従って在日米軍が日本及び極東の平和と安全のために日本に駐留しているという実態があるということでございまして、こういう実態があるということは改めて強調をさしていただきます。したがいまして、この安保条約の第六条はきちんと運営されているということを改めて申し上げたいと思います。
  208. 松原脩雄

    ○松原委員 私、今言ったように、地域紛争がポスト冷戦では多発をするだろうという想定をされている。そして、いわゆる安保条約の領域外にされておるような地域ですね、東南アジアであるとか南アジアであるとかそういったところで地域紛争、民族とかあるいは国境線の問題であるとかいろいろな形で地域紛争が起きるだろう。その地域紛争が起きたときに、いわばアメリカは自国の国益に基づいて出ていくときは出ていくのです。恐らく、日本のところを中心にして出ていくだろうと思う。  しかし、私たち日本は、これからはとりわけアジアの人々とのいわばアジア政策といいますか、そういうものに私たち日本独自の国益というようなものが深くかかわってくるだろうと私は思います。先ほどの地域安全保障考え方もそういう考え方だと思う。そうすると、アメリカは自己の国益判断で地域紛争が起きたときに日本から出撃をする。しかし、その地域紛争の解決の仕方において、そういう軍事的な介入をしてもらっちゃ困るのだというところが日本の独自の利益として私は出てき得るだろうと思うのです。  そういうことを考えますと、いやもう地域紛争が起こっても移動であると言うならばすべて移動で説明をしてしまう。だから何のチェックもしない。事前協議の問題だって恐らくそれでもう知らぬふりするだろう。そうですよね。ベトナムのときもそうだった。けれども、そんなことばかり続けていたのでは、恐らく日本アメリカがその地域紛争にどう対処するかでは違いが出てくるはずだ。そういうふうなことを想定したら、あなたの今の説明のようなことで済ましておったのではもう間に合わない、あるいは大変な過ちを犯すという事態に入っておると私は思う。これが六〇年安保と今九〇年代の安保を見る目の違いじゃないかなと思うのですが、もう一度ちょっとお聞きをします。
  209. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生ただいま事前協議に言及をされましたので事前協議についても一言申し上げたいと思いますけれども、事前協議の対象になりますのは、日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設区域の使用でございまして、この戦闘作戦行動というのは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動で、日本施設区域から出ていく際にまさにそのような態様をとっているということでございまして、先生が御心配されました日本施設区域の利用に関しましてはまさにこの事前協議という制度がございまして、この戦闘作戦行動との関係ではきちんとしたメカニズムができているという点を改めて御指摘申し上げたいと思います。  それから、一般論で先生が先ほど来御指摘になっていらっしゃる点は、繰り返しになりますけれども、重要なことは、日本に展開しております米軍日本及び極東の平和と安全のためというしっかりした実態が従来からあるわけでございまして、もしそういう実態がないという先生のお考えでしたら別でございますけれども、そういう実態があるということはまさに安保条約の第六条に則して米軍日本に展開しているということになるわけで、その米軍の行動が時に極東地域を離れるということがあってはならないということまで安保条約は規定しているのではないということを改めて申し上げたいと思います。
  210. 松原脩雄

    ○松原委員 今のお話ですけれども、そうしたら、安保条約極東の範囲を超えて日本から戦闘出撃をしていくことは許しているのですか。
  211. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいまのお尋ねの点、私正確に把握したかどうかちょっと自信がないので、あるいは後ほどまた補足させていただきたいと思いますが、極東の範囲外における武力紛争の事態に対処するために米軍我が国施設区域を使用して戦闘作戦行動に出動する、こういうことができるかというお尋ねかと思います。  もしその意味でございましたら、そのようなことは安保条約の六条、先ほど極東の範囲について申し上げましたけれども、その規定からいたしまして安保条約の予想するところではないというふうに考えております。すなわち、第六条におきまして、米軍我が国施設区域を使用することを許されるのは、これは日本国の安全並びに極東における国際の平和と安全のためということでございますので、極東とかかわりない地域において武力紛争があってそこに戦闘作戦行動のために出かける、そしてその基地のために我が国施設区域を使うということは安保条約の予想するところではないというふうに申し上げられると思います。  戦闘作戦行動がいかなる意味であるか、また事前協議に係る戦闘作戦行動というのはどういうものであるかということにつきましては、先ほど北米局長が答弁したとおりでございますので、この点は省略させていただきたいと思います。
  212. 松原脩雄

    ○松原委員 そうしたら、今のように極東外に戦闘作戦に出るということになったときは、まさに日米安保が禁じているものだと思うのです。そのために基地を使うなんというのは許さないというのは日米安保に書いてあることだと思うのです。そういう実態が判明したときは、政府はどういう手続と方法でこれに対処するわけなんですか。
  213. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、先ほど北米局長から御答弁いたしましたとおり、これは例えば昭和四十七年の統一見解というものがございますが、戦闘作戦行動、いわゆる「事前協議の主題となる「日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」」、ここで言う戦闘作戦行動でございますが、これは「直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであり、したがって、米軍がわが国の施設区域から発進する際の任務・態様がかかる行動のための施設区域の使用に該当する場合には、米国はわが国と事前協議を行う義務を有する。」その他の点はちょっと省かせていただきますが、そういう考え方でございます。  したがいまして、非常に離れた地域、例えば端的に申しまして湾岸の地域での紛争に対処するために米軍我が国施設区域から直接戦闘行動に発進するというようなことは、ちょっと実態的に考えられないことでございまして、そのような事態はちょっと予想されないということは言えると思います。
  214. 松原脩雄

    ○松原委員 今回、ずっとそういう説明をされてきたから、だから事前協議の対象にもならなかったし、何か聞いていると海兵隊が出ていったとか空母とか戦闘艦が出ていったということさえ、実際知らぬわ、聞いておらぬわというふうな国会答弁であるように思うのです。  けれども、問題はやはり実態である。先ほど北米局長が引用された「米国防報告の要旨」、その「日本関係の要旨」というところを見ますと、「極東に駐留する米軍は今後、より広い地域的な、さらには地域を超えた役割を負うことになるだろう。それは今回のペルシャ湾岸戦争日本を基地とする海兵隊、海軍部隊を派遣させたことで明らかだ。」こういうふうにアメリカの国防報告では書いてあるわけです。ですからもう既に、まさにアメリカの戦略に沿って、実態としていわば戦闘作戦行動に向けて湾岸に在日米軍を派遣させた。実態観点からいうと、まさに戦闘に参加させていったということはアメリカ自身が言っていることではありませんか。この実態に着目した対処をするべきではありませんか。
  215. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生がただいま引用されましたのは、まさに私が先ほど来申し上げていることの延長線のことでございます。  私が先ほど来申し上げておりますことは、第一にアメリカは引き続き安全保障面でグローバルな役割を果たしていく。地域的な脅威に対応していくということ。それから二番目に、日本におきまして在日米軍等を移動のために極東の外に移すということがあり得るし、今回、湾岸の事態においてはそれが行われたということを申し上げたわけで、まさにそれは私が先ほど来申し上げていることで、私はそれと異なることを申し上げているわけではございません。  ただ、私が常に申し上げていることは、この安保条約六条に従って日本に展開しております米軍は、日本及び極東における平和と安全の維持のために展開しているという実態が基本的にあるということでございます。これはアメリカ側も基本的にそういう認識を持っているわけで、これは先ほども引用いたしましたけれども、今御審議いただいております特別協定の前文のまず最初のところに「日本国に維持されている合衆国軍隊は、日本国の安全並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与していることを確認し、」ということがきちんと日米両国の政府の認識として書いてあるわけでございます。  さらに、私が今申し上げていることを裏づけるためにもう一つ引用させていただきたいと思います。  これは、中山大臣が今回の協定に一月十四日、ワシントンで署名しておられます。ベーカー長官との間で署名されたわけでございますけれども、その際にプレスリリースを出しております。このプレスリリースは、まさに日米両国政府の認識を表現しているものですが、その中で日米安保条約は、「東アジア太平洋の平和と安定にとって不可欠なものとして寄与してきており、今後とも寄与していくであろう。」ということを中山大臣とベーカー長官との間で認識として述べているということでございます。  繰り返しになりますけれどもアメリカは先生が御指摘のような指摘もあるし、私もそれは先ほど来申し上げておりますが、基本的にこの日米安保条約日本及び極東の平和と安全のためにあるのだ、そしてそのために米軍日本に展開するのだということを繰り返し述べているということをあわせて申し上げたいと思います。
  216. 牧野隆守

    牧野委員長 松原君に関連いたしまして、上原康助君。
  217. 上原康助

    ○上原委員 松原委員の御質問に関連して、問題を提起しながら一問だけお尋ねさせていただきたいのです。  松原委員は六〇年代の安保条約締結過程あるいは今日の国際情勢、在日米軍基地の形態、使用等のあり方に重大な変化があるのではないのか、どういう認識を持っておられるかということを先ほどから大臣関係局長、政府委員に聞いているわけですね。その中から、もう何回、何十回、何百回と極東条項なり事前協議の問題を我々は国会で政府の見解をただしてきた。だが、その都度今のような答弁で、移動なのだと。外務大臣が地下鉄に乗って外務省へ行こうが官邸へ行こうが、車で行こうが、行ったことは同じなのですよ、官邸に着いたら。松浦さん、あなたが地下鉄に乗っていこうが歩いていこうが外務省に行ったのは行ったのだよ、結果は。  ですから、在日米軍基地から、米海軍も海兵隊も空軍も、一万数千人とも言われている、少なくとも沖縄からも一万二、三千人行っている。横須賀、佐世保、沖縄、岩国、青森も行っているかもしらぬ、これが実態なのですよ。そういう実態論から、私たちは現在の安保体制下における在日米軍基地の使用のあり方については、極東の範囲をはるかに超えているから実態に合わせてどうなのかという解釈を聞いたら、旧態依然とした解釈でごまかそうとする。そういう答弁では通りませんよ、国民感情として。  しかも、今松原先生も引用したように、これはアメリカの国防報告、ついこの間発表されたものなのだ。九一年三月二日に発表されたものだ。どう皆さん弁解なさるの。「極東に駐留する米軍は今後、より広い地域的な、さらには地域を超えた役割を負うことになるだろう。それは今回のペルシャ湾岸戦争日本を基地とする海兵隊、海軍部隊を派遣させたことで明らかだ。」こう書いてある。だから、在日米軍基地から出動していって湾岸戦争に戦闘行為をやったわけなのだよ、米軍は、まさにあなたが言うように。これは、従来から政府が言ってきた極東条項や事前協議のあり方というのがいかに虚構であり偽りであるかということを私たちは問題にしているわけなのですね。そういうことでいつまでもごまかすわけにはいかないのですよ。  松原さんはそういう経緯を十分ただして、今日の安保体制下における基地のあり方、条約解釈というのはおかしいのではないかということをただしているのに、そうごまかされては困るので、これは外務大臣なりがはっきりした統一見解を示さない限り我々は審議に応じられない。
  218. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 お言葉ですけれども、私ごまかした答弁をしているつもりではございませんで、先ほど来松原先生、それからただいま上原先生御指摘がございました国防報告に書いてあることは、それはきちんと御説明しているつもりでございまして、それは先ほど来申し上げているように、アメリカがグローバルな安全保障面の機能を果たしていくということを引き続き強調しているわけで、そのために先ほど来先生方御引用されているような、東アジアに展開されている米軍も活用していくというのが出ているわけですけれども、私が同時に申し上げておりますことは、このアメリカ側の基本的な認識は、日本に展開している米軍というのは引き続き日本及び極東の平和と安全の維持のために展開していくということを繰り返し強調して、そして私どもから見てもそういう実態があります。  これは先ほど来松原先生が御質問の、この三十一年間どういう変化があったかということで、私が最近の情勢の変化ということで三点申し上げてきておりますけれども、私どもはこのいろいろな変化にもかかわらず、日米安保条約日本安全保障政策にとりまして引き続き重要であるというふうに認識しているわけでございまして、そういう認識のもとで、繰り返しですけれども、まさに日本に展開しております米軍は、この安保条約のもとで与えられた任務を果たしているというのが私ども認識でございます。  それと同時に、アメリカがグローバルな安全保障の機能を果たすという見地から、極東を超えまして湾岸その他の地域に、従来もございましたけれども、他の地域に移動させるということはある、今回も湾岸の状態においてはあったということを申し上げているわけでございます。
  219. 上原康助

    ○上原委員 もう関連ですから、ちょっと松原先生に余り失礼になってもいけません。そういう解釈は私は納得できませんね。第六条に何と書いてある。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」なのですよ。我々が問題にしているのは、 憲法とか条約とか、そういうのは厳格に解釈して運用し、適用しなければいかぬということなんですよ。政府の恣意で幾らでも拡大解釈して、なし崩しにされて、今日の事態になっているのじゃないですか。それを問題にしているのだ、実際。だから、そういうごまかし答弁ではならない。グローバルでいくというと、どこへ行ったっていいのじゃないですか。  そうしますと、在日米軍基地から移動していったと皆さんは言うのだが、出動していったその米兵が、米軍湾岸戦争に参加したことは認めるの、認めないの。これははっきりさしてください。
  220. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私ども湾岸戦争という言葉は使っておりませんけれども、安保理決議六七八に基づきます平和回復活動に、移動してまいりました在日米軍が新しい任務を現地で与えられて従事したというふうに考えております。
  221. 上原康助

    ○上原委員 湾岸戦争ということさえも認めないなんていうのは、これはもうもってのほか。委員長、これは後刻理事会で協議いたしますので、今の御答弁には絶対納得できない。
  222. 牧野隆守

    牧野委員長 本件については、後ほど理事会で協議させていただきます。
  223. 松原脩雄

    ○松原委員 今後のことを考えますと、極東条項を越えていく紛争対処の事態はもう実態においてアメリカ兵の派遣である、それはもう国民的にわかっているし、アメリカ自身だって言っていることですよ。にもかかわらず、すべて極東条項を越えていくものについては移動でございますというふうな言葉で片づけてしまいますと、結局どういう目的でアメリカ軍がその紛争地域へ出ていくのかという、要するに情報も集まらなければ、それに日本が事前協議を通じて的確にチェックをするということすらもうできない、こうなるのですよ。それは、今後の多発する地域紛争でそれを勝手にやらせていたら、いずれアメリカは自分の国益で——いつでも国益で動いているのですから、その国益と私たち日本が選択すべきものとが異なるときが出てきましょう。それにチェックをするシステムをやっておかなければいかぬだろう、私はこう思うのです。  そこで一点。今度の湾岸戦争で多国籍軍が作戦をしましたが、砂漠の盾作戦と砂漠のあらし作戦、この全体について政府はアメリカより事前に説明を受けていたでしょうか。事前にですよ。これはいかがでしょうか。
  224. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生のお話との関連で重要なことは、湾岸におきます平和回復活動が全体としてどういう方向で行われていくのか、その中で、アメリカが中核をなしていたわけで約五十万の軍隊を展開した、全体で七十万を超えますから、そのうちのまさに五十万を米軍が占めていたわけですから、アメリカがどういう意図を持って行動しようとしていたのかということをしっかりアメリカと連絡して、日本としてもそれを踏まえた上で対応するということであったと思います。  その点に関して申し上げれば、私どもは過去半年を顧みまして、その都度、正直申し上げましていろいろ機微な点もございましたので全部公表するわけにはまいりませんでしたけれども、基本的なアメリカ側の考えというものはきちんと説明を受け、私どもは基本的な方向に関してはきちんとした認識を持って対応してきたつもりでございます。ただ、具体的な、例えば一月十七日の武力行使の開始につきましては、具体的な事前通報がございましたのは実際の三十分前ではございましたけれども、基本的な流れに関しましては、いろいろなレベルで米側とよく連絡をとっていたつもりでございます。
  225. 松原脩雄

    ○松原委員 今申し上げた二つの作戦の目的とか概要といったものを政府は事前に十分掌握をしていたという御答弁と伺ってよろしいのですか。
  226. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生が言及されました砂漠の盾作戦と米側が呼んでおりましたのはまさに準備の段階でございまして、砂漠のあらし作戦というのはまさに戦闘行動を起こしてからの作戦でございますけれども、私が申し上げましたのは、全体の基本的な方向に関しては承知をしていたということでございます。
  227. 松原脩雄

    ○松原委員 では、次の質問に移ります。  今度の特別協定にかかわる問題なんですが、もともとは地位協定の二十四条がありますよね。地位協定の二十四条を見ておりましたら、本則からいいますと、まさに第一項にありますように、日本アメリカ軍が使っておる、合衆国軍隊を維持する費用、それはアメリカがすべて負担をする。二項以下に、非常に限定的に土地の提供、借り上げとか、そういったものについては日本の負担だというのが本則だったと思うのです。  ところが、五十四年ぐらいからですか、いわゆる施設費という名目で思いやり予算が入っていった。それからさらに、八七年から労務費について日本が負担をする、八八年には今度はもう労務費の全額を負担するとなって、今回さらに水光熱費等を含めたものがまたどっとふくらんできた、こういうふうになっているわけなんですね。こういう特別協定、今回の特別協定を含めましょう、この特別協定と本則たる日米地位協定の二十四条との関係、これはどういうふうにとらえたらいいんでしょうかね。
  228. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 地位協定二十四条に定めます経費負担の原則は、まさに今先生が言及されたとおりでございますけれども、それ自体を変更しようとするものではなく、この原則は原則としつつ、一定の期間を限り、特定の経費に限って、これを特例的に負担しようとする、これが今回の特別協定でございます。したがいまして私どもは、暫定的、限定的、特例的な性格のものであるという言葉を使っておりますが、まさにそういうものでございます。
  229. 松原脩雄

    ○松原委員 そういう暫定的、特例的、限定的だというのは、八七年に労務費の二分の一ですか、その特別協定ができたときに受けた説明ですよ。ところが、暫定的だと思っていたのが、既に翌年にはまたふえた。さらに今度はまたふえるということで、すべてこれは暫定的、特例的、限定的なんですか。
  230. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 今回御審議をお願いしております特別協定もまさに五年間を期間としております。したがいまして、私どもは暫定的な措置だと考えております。まさにこれを特例的に導入するということでございます。  それから対象が、先生も言及されましたけれども、在日米軍の従業員の基本給と光熱水料等ということでございますので、まさにこういうものを限定的に対象にしているということで、したがいまして、この暫定的、限定的、特例的という言葉を使わきせていただいているわけでございます。
  231. 松原脩雄

    ○松原委員 維持費はすべて米国が負担をするというふうに本則はなっているんですよね。ですから、例えば労務費の負担にしても水光熱費の負担にしても、それは本来維持費なんです。前はアメリカ軍が払ってきたわけですから、維持費である。それをいわば特別協定によって日本が負担をすることになる。こうなりますと、これは二十四条の維持費であれば絶対アメリカが払わなければあかんものを、日本が逆に負担をすることになるというのをどんどん積み重ねてきているわけでしょう。しかも暫定と言うのですが、これで三回目になったわけですね。そうだとすると、地位協定二十四条をいわば一般法としますと、特別法は当然一般法には優先しますし、あるいは後法は前法よりも優先しますから、そういう法の原則からいうと、もう既にこれでは本則の二十四条を今度の特別協定は改定をしてしまっているものだ、こういうふうに言うべきなんじゃないですか。
  232. 野村一成

    ○野村政府委員 先ほど来答弁いたしておりますように、期間を五年に限っているという意味におきまして暫定的でございますし、また、特定の項目に限って日本側が経費を負担するという意味におきまして非常に限定的でございます。そういったことを踏まえまして、地位協定の二十四条のいわば特則という形で、原則は原則として維持しながら、その特則を定めておるのが今回の措置でございます。したがいまして、通常言われている意味の改正には当たらない。また、条約の実務の意味からしましても、これを改正というふうにはとらえることはできない、そういうふうに考えている次第でございます。
  233. 松原脩雄

    ○松原委員 それも本当にへ理屈だよ。これはさっきの移動の問題と同じで、理屈に合わない。余りに人をばかにした話だ。  では逆に質問するけれども、この特別協定五年の期限が切れて、さらに特別協定を結ばなくなったらどうなるのですか。
  234. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生御承知のように、今回の特別協定の有効期間は一九九六年三月三十一日まででございまして、その時点において協定は終了いたします。今、先生、その後どうするかという御質問でございますけれども、現時点で申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  235. 松原脩雄

    ○松原委員 だから、もしその時点で期限後の手を打たなければ、二十四条の本則は、あなた方の説明によれば生きてきてしまうわけですか。生きてきたら、今まで労務費なり特別協定日本が負担してきたものは、今度はまたアメリカが全部負担をし直す、こういうふうになるわけですか。
  236. 野村一成

    ○野村政府委員 今回の措置は、有効期間が一九九六年三月三十一日まででございまして、したがいまして、その後につきましては、これは新たな措置を講じない限りにおきましては、御指摘のとおりでございます。
  237. 松原脩雄

    ○松原委員 じゃ聞きますよ。そうしたら、もう更新をしない、これ以上暫定的な特例的なものはしないということで特別協定を結ばなければ二十四条の本則に戻るというわけですが、次のときに、そんな措置とるの。
  238. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 今、野村審議官が申し上げましたのは、先生から理論的な可能性として問題提起がございましたので、理論的な可能性として申し上げたまででございまして、具体的にどうするかということは、先ほど私が申し上げましたように、現時点で予断することは避けさせていただきたいと思います。
  239. 松原脩雄

    ○松原委員 だれが考えたって、そのまま本則の二十四条にどんと戻してしまって、今まで日本が負担していた分はもとのとおりアメリカが払ってくださいというふうな状態にはならないでしょう、そんな革命的なことには。ならないと思います。だからそのときにはまた、この特別協定はどうしましょうかということになると思うのですよ。五年たたないうちまたやろうということも、それはあり得るでしょう。そうしますと、あくまで地位協定の二十四条の本則は生きているというところに固執するだけのことであって、実態からいうと特別協定でもう変わっているではありませんか。この事態を素直に率直に認めてもし対処するならば、本則の見直しというやり方で日米安保の全般的な見直しの方向性も含めてやらないといかぬはずですよ。  しかし恐らく、私の推測ですが、こういう特別協定を結んでいくというのは、日米安保でおかしなところはさっきからいっぱい出てきている、そういう根本的全般的な見直し措置をもうやりたくない、そういう声を抑えたいということでこの特別協定という方式をやっているものだと私は思います。しかし、そういうこそくな方法は、我々がまともに安全保障を議論するときにはもう通用しないやり方だと私は思います。  そこでもう一点。日本側の負担がどんどんふえてまいりました。その負担は、アメリカの要求が出て、それに対して、はいそうですかと言って恐らくその要求をのんできたものだと私は思うのですが、そういう実態でしょうか、交渉の実態は。
  240. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 そういうことではございませんで、これは昨年も国会の場で、いろいろな委員会で繰り返し御質問がございましたときに私どもからもお答え申し上げてきたことでございますけれども日米安保条約日本安全保障にとりまして引き続き不可欠であるというふうに私ども認識しておりますが、その日米安保条約の効果的な運用を確保するという見地から、在日米軍経費の負担問題についても自主的にできる限りの努力を払っていきたいということを申し上げてまいりました。  その結果といたしまして、まさに今回基本的な考えを打ち出したわけでございまして、これは具体的には今回、昨年の新中期防の中に新たな措置を盛り込むことで打ち出したわけでございます。その日本側の自主的な決定を踏まえましてこの枠組みをつくるということで特別協定を結んだわけでございまして、特別協定はあくまでも経費の全部または一部を負担することができるという枠組みをつくるわけでございまして、具体的に日本がどういう形で経費を負担していくかということは日本が自主的に決めていくという基本的な方針にのっとって対応していくつもりでございます。
  241. 松原脩雄

    ○松原委員 自主的努力をしているというのが政府の答弁だと思うのですけれども、しかし、果たしてどうなのか。私はアメリカの要求が極めて強いと思うのです。現実に昨年の秋ですか、アメリカの下院は、日本のいわゆる負担部分だけじゃない、もう全駐留軍経費は日本が負担をすべきであるという決議をしましたね。それから、上院もまた同じような決議をしましたよ。今米軍の負担分はたしか四十五億ドルぐらいだったと思うのですが、それを全部日本が負担せよ。ですから、結局アメリカの軍人の給料とか、戦闘作戦行動に出るあるいは訓練に出る、そういう維持費ですね、そういったものも含めて全部日本が負担せよという決議をアメリカの上下両院がやっておるわけですね、去年の秋。  こういうアメリカの動きに対しまして、日本政府としてはしかるべく反論等の措置をおとりになったのでしょうか。
  242. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生が言及されましたのはボニア決議それからコンラッド決議だと思いますけれども、この決議はいずれも最終的には上下両院で調整が行われまして、昨年秋、九一年度の国防予算授権法それから国防予算歳出法にそれぞれ取り入れられております。国防予算授権法の場合は千四百五十五条、それから歳出法の場合は八千九十五条ということでございますが、それぞれの決議案にございました実質的な諸点はそこに吸収されております。こういうことが示しておりますように、先生がまさに御指摘のように、アメリカの議会におきましては在日米軍経費の日本側の負担の増大につきまして強い関心を従来から示してきております。  その背景には、先ほど来申し上げております、アメリカが膨大な財政赤字を抱えつつグローバルな安全保障面の役割を引き続き果たしていくという状況があるわけでございますが、しかしながら、それでは行政府がどう対応したかということでございますけれども、そういう議会の圧力を受けながら行政府は……(松原委員「違うよ、日本政府はどうだったかと言ったのだ」と呼ぶ)その前にちょっと行政府を御披露させていただきたいのですけれども、ブッシュ大統領は今の国防予算授権法それから国防予算歳出法に署名するに当たってステーメントを出しております。これは、規定の一部については憲法に基づく大統領の権限を侵害するということを声明いたしまして、したがって一部については留保すると言っております。  その留保の対象になっておりますのが先ほど私がちょっと申し上げました国防予算授権法の千四百五十五条でございますが、いずれにしましても、こういう議会のプレッシャーを受けながらも行政府はこの議会の要求をそのまま日本にぶつけるということはしてきておりませんで、行政府は全体として、日本側が在日米軍経費の負担を増大してもらいたいという期待は非常に持っております。しかしながら、その具体的な中身、それから具体的にそれをどうやっていくかということに関しましては、まさに日本が自主的に決めていくということでございまして、私どももいろいろ非公式にも話し合いをしておりますけれども、そこはアメリカ政府としてきちんとラインを守って私どもと非公式に話し合いをしてまいりました。
  243. 松原脩雄

    ○松原委員 答えになってないのだよ。下院のそういうアメリカの軍人の人件費も日本が払いなさいという決議が出たわけですよ。それに対してそのときの、前の石川防衛庁長官は、在日米軍は頼んでいてもらっているのじゃないのだからそういうことならお帰りくださいと言いたいという発言を思わずされたわけです。民社党の大内委員長なんかも、そういう軍人経費も全額負担なら在日駐留米軍というのは日本の雇い兵同然だという発言すらされておられますよ。これは実態はそうなると思う。軍人の経費まで日本が銭払っていたら実態からいうと雇い兵だよ。そういうことをアメリカの上下両院がまず最初に決議をした。その後にアメリカの大統領がいわば調整をした。それはあなたの説明のとおりだ。  では、私は、上院、下院のそういう動きについて一体どう思うのかを大臣にちょっとお聞きしたいと思います。
  244. 中山太郎

    中山国務大臣 アメリカ議会はアメリカ国民の利益を代表しているわけでありますから、アメリカの膨大な対外債務あるいは財政赤字あるいは貿易赤字、経常収支の赤字等を見て、日本及び極東の平和を守るために米軍が展開しているそのコストについて応分のコストシェアリングを考えるということは、アメリカの議会としてはアメリカの国民の利益を守るためにそういう発言をする可能性はありますけれども日本政府としては、日米安保条約を円滑に運用していくことが日米外交の基軸でありますから、自主的にすべてのことを判断していきますけれども同盟国であるアメリカがそのような財政赤字あるいは膨大な貿易赤字の中でグローバルな平和を守るために努力しているという観点から、日本政府としては応分の負担をすることが適当であると判断をいたした次第でございます。
  245. 松原脩雄

    ○松原委員 今度水光熱費も認めていきますよね。そうすると、あと在日米軍経費で残ってくるのは軍人軍属等の人件費ですね、それが一つ。それからあとは艦船の修理であるとかいわゆる作戦行動費というのかな、そういうものしかもう残ってこないだろうと思うのです。  では将来の成り行きとして、これらの費目についてまで日本は将来負担をすることもあり得ると考えておいていいんでしょうか。それとも、そういう項目まではもうだめだよ、上はもうここでおしまいですよというふうに今言えるのか、そこをちょっと聞いておきたいと思います。
  246. 中山太郎

    中山国務大臣 米軍の正面装備及び軍人の人件費等につきまして、これを日本政府が負担をするということは、現在考えておりません。  率直に申し上げて、現在のところバランスは五〇対五〇ぐらいのところまでいっておりませんが、今回の特別協定によりまして、いわゆる駐留米軍経費の日米の負担割合は最終年度においては約五二%が日本の負担になるということで、私は大体バランスがとれてきたというふうに考えております。
  247. 松原脩雄

    ○松原委員 アメリカがこのようにどんどんその経費を押しつけてきているというふうに私には見えます。そういうときには、恐らく、日本は安保にただ乗りしているじゃないかというふうないわゆる風潮とか議論がきっと背景にあると思うのです。安保ただ乗り論については外務大臣はいつもどういう対応をされておられますか。
  248. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、安保ただ乗り論というアメリカの意見、そういうものについてただ乗りをしているという考えは持っておりません。日本は、日米安全保障条約に基づいて米軍に、極東の平和、安全のためにも効果がある日本の基地を地位協定によって提供しているわけでございますから、双務的な協定である、このように考えて、ただ乗り論という考えには同意をいたしかねます。
  249. 松原脩雄

    ○松原委員 大づかみに言って五千億円で在日米軍が五万人ですから、米兵一人当たりに一年間に一千万ずつ日本は負担をしているわけです。そうですね。およそそうだと思う。  では、アメリカ世界のいろいろなところにそういう米軍を駐留させていますが、米兵一人当たりに対する駐留させている国の負担分、それは世界の中で比べてみて、日本はどの辺の地位にありますか。
  250. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私どもは在日米軍経費と呼んでおりますけれども、一般的に申し上げますと接受国支援、ホスト・ネーション・サポートということになりますが、この接受国支援につきましては各国の形態がばらばらでございます。それからさらに申し上げれば、その前提になります集団安全保障体制もばらばらでございますので、具体的な経費をどれだけ負担しているかという点だけを比較するのは正確には比較しにくいと思っておりますけれども、あえて申し上げますと、ドイツにつきましては、NATO駐留経費としてでございますけれども八九年で十四億ドルということでございますが、ただこれはNATO駐留経費でございまして、今、先生御質問のこれを米軍一人当たりどのくらいかというふうにちょっと計算しにくいと思っております。米軍について申し上げれば、約二十三万がドイツに駐留しているということがございます。  それから韓国でございますけれども韓国は八八年度に二十二億ドル負担しておりますが、韓国に駐留しておりますのが四万強でございますけれども、これは計算はできるとは思いますけれども、この辺も最初申し上げましたように単純に比較することがいいかどうか、私どもは疑問に思っております。
  251. 松原脩雄

    ○松原委員 これは八八年の五月ですが、カールーチ米国防長官が記者会見で言ったそうですね。アメリカ兵一人当たりのホスト・ネーション・サポート、駐留受け入れ国支援は、日本が八八年四万五千ドル、仮に一ドル百五十円で評価してもおよそ七百万円ということで、これは最高だという評価をしておりますから、一人当たりの考え方でいうと、今だったら大体一千万だから大変大きな、まさに世界で最高の負担を米軍にサポートしておる、負担をしておる実態にあるというところ、それがまた上増しになっていくのだというところを指摘しておきたいと思います。  そこで、私はどうも従来政府の対応はアメリカとの間で経済力に違いができてきたということを一つの根拠にして、いわばどんどん際限なく、米兵一人当たり一千万円の負担をするところまで来ているわけです。今回またそれが膨らんでいるという状態である。先ほどの話では、軍人の人件費については現在考えてないとおっしゃったけれども、また将来はひょっとしたらこれまたいくのかなというふうな危惧さえ持ちます。それは、今までの日本政府アメリカに対して対応していた基本的な政治姿勢というものが、全くこれこそ追随だと思うのだけれども、そういう政治姿勢にあるからこそこんなふうな状態が出てきているのではないのでしょうか。その点で、先ほどから松浦さんが言っておられる「アジア太平洋の戦略的枠組み」の中で、こういう経費分担についてどういう指摘をされているか、御紹介を願えますか。
  252. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生言及されましたのは昨年四月に出ました「アジア太平洋地域の戦略的枠組み」という報告書だと思いますが、その十九ページにこういう表現がございます。「一九九二年二月のチェイニー国防長官の訪日の際、日本政府は、接受国支援に向け更に多くの努力を行うことの必要性を認めた。但し、その方法と日程を予測することは困難である。」。
  253. 松原脩雄

    ○松原委員 それでいいのです。それだけですか。  それでは、私、「戦略的枠組み」から国防総省の考え方をちょっと引用してみたいと思うのですね。こう言っています。「GNPの一定レベルとか他の個別の指標が防衛分担の公正な負担であるという命令の誘惑に打ち勝たなければならない。巨大な貿易不均衡がある、あるいは単に同盟国は金をもっているからもっと分担すべきだとの前提に全面的に依存した分担増大の数学的公式は、国家主権への挑戦とみなされ、厳しい抵抗にあうことになる。必要性を明示し、同盟諸国国家的責 任の感情に訴えるほうがより生産的である。」という指摘をしているのですね。  ですから、先ほどから私はずっとこの問題を見ていたら、まさにこれだ。そういう全く歯どめをなくしてどんどん上へ行く、こういうふうな状態に対して、余りにも日米関係重要の余り、いわば追随型の外交をやっておることについて、本当にそれは危険でもあれば、要するに日本の国費の大きなむだ遣いというふうにも私は思う。だから、特別協定の今回のこのようなありようについては賛成ができない。国防総省自身がこういう指摘をしていることについて政府の見解を一回聞いておきます。
  254. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生まさに御指摘のような表現が昨年四月の報告には出ております。ただ、先生に念のため申し上げたいと思うのですけれども、先生も繰り返し引用しておられる昨年の議会の決議、それから国防予算の授権法、歳出法になったということは先ほど申し上げました。この中では、直接経費を日本に要求すべきであるということが書いてございますけれども、この直接経費は米軍人軍属の人件費及び手当を除くということでございまして、アメリカの議会ですらも米軍人の給与や手当は日本に要求すべきでないというのははっきりさせているということを改めて申し上げたいと思います。
  255. 松原脩雄

    ○松原委員 もう時間がありませんから、ちょっと質問を変えます。  防衛施設庁にお願いしたいのですが、いわゆる思いやり予算と言われているものが推移をしてまいりました。施設費の項目だけを見ておきますと、昭和五十四年から始まって、このときがちょうど百四十億円ほど負担をしております。それが年々著増いたしまして、本年度が九百五十七億円という施設費の負担になっております。  そこで、この施設費と言われるものが一体どういう費目、項目に使われているのだろうかということを資料要求いたしました。昭和六十三年度と平成元年度の分が出てきたのですよ。その中の施設の項目を見ておりますと、例えば平成元年度でしたら、施設費の総額が八百九十億円、そういう数字になっています。それで大きく分けて、隊舎九棟の整備、住宅七百十四戸の整備、環境関連施設の整備、その他の施設の整備、NLP関係、本当にそれだけの項目があって各費目が具体的にどういうふうに使われているのかというのはちっともわからない。この総額が八百九十億円となっているのですよ。もうちょっと詳しい中身は資料として出せないのですか。
  256. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、私の方でカテゴリーとして分類させていただいておりますのは、隊舎、家族住宅、環境関連施設、その他の施設ということでございまして、その他の施設を私どもの役所で割りますと、これはいろいろな割り方があろうかと思いますが、生活関連施設、管理施設、それから例えば消火施設等の安全対策施設、後方支援施設及びその他、こういう分類をいたしております。
  257. 松原脩雄

    ○松原委員 私、持ち時間がもうありませんので一点だけ。  出されたその中身についてもっと詳しくお聞きしないことには、本当によくわからないから一点だけ聞いておきますが、あなた方は私に出したこのような資料につきまして、この程度のものを持って大蔵省に予算要求をして通っているのでしょうか。それとももっと詳しい資料を提供しているのでしょうか。そこだけ教えてください。
  258. 大原重信

    ○大原政府委員 お答え申し上げます。  委員の方にお届けいたしております資料、例えば隊舎とか住宅、環境関連施設でございますが、環境関連施設と申しましても汚水排水施設とか消音装置とかいろいろございます。それで、後ほど委員のお求めがございますれば、そこのところを御相談させていただきながら資料を提出いたしたいと思います。
  259. 松原脩雄

    ○松原委員 それでは、今お答えございましたので、後ほどもっと詳しい資料等と金額等をいただきたいと思います。  これは、昭和六十三年の予算委員会でこの中身の細目について議論をされたことがあります。見てみますと、エアロビクスの教室、米軍婦人の美容体操のためのスタジオ、米軍人のアルコール中毒患者の訓練施設、私がいただいた資料では全く想像もつかないような非常に広範囲なものにお金が使われているわけですね。そういう実態をやはりきちっとチェックをしないことにはちゃんとした審議ができないということを指摘をしておきまして、時間ですので私はこれで終わります。  今の答弁どおり詳しい資料を出すことを、委員長からも指示を出しておいてください。
  260. 牧野隆守

    牧野委員長 先ほど施設部長の答弁で、詳細にわたって松原委員に説明する、こう言っておりますので、説明を聴取してください。
  261. 松原脩雄

    ○松原委員 はい。
  262. 牧野隆守

    牧野委員長 遠藤乙彦君。
  263. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今回の特別協定の問題、大変重要な今国会中のトピックであると考えております。特にポスト冷戦時代安全保障をどう考えていくか、あるいはその中で日米のバードンシェアリングをどうするか、非常に基本的な問題にかかわるものでございます。したがいまして、幅広い角度から質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、総論的な話ですが、ポスト冷戦時代の新秩序、どうあるべきなのか、あるいはそこで日本がどういう役割を果たすべきなのかということにつきまして、まず所見をお伺いしたいと思います。
  264. 中山太郎

    中山国務大臣 ポスト冷戦国際秩序をどういうふうに維持するかというお尋ねだと思いますが、公正で安定した国際秩序構築のために国連地域紛争の予防的な力を蓄えるということと、それから解決のための機能の強化が必要であると考えております。また、日本国際的な責任を果たすために国連平和維持活動へ協力を積極的にやらなければならない。この二点でございます。
  265. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今の基本的な問題と関連しまして湾岸戦争の総括ということでお聞きをしたいのですが、世界全体が心の準備がないままに突然八月二日、イラクの侵略が行われて大変厳しい対応に迫られたわけで、これが世界に持つ意味、それから中東地域に持つ意味あるいは日本にとっての意味、いろいろな角度から総括ができると思いますけれども、まずその点についてお伺いをしたいと思います。     〔委員長退席、新井委員長代理着席〕
  266. 中山太郎

    中山国務大臣 武力によるクウェートの侵略、併合という国際秩序を乱したイラクの行動というものが、私ども日本にも大きな一つの教訓を与えたのではないか。これは、国際法による秩序を乱さない国際社会というもののシステムを維持管理することが、日本国のような専守防衛の国家にとっては極めて必要であるということでございます。それから、侵略を絶対認めないという強固な国際社会の連帯と協調、これのあり方というものが重要であったということではなかろうか。  それから、日本は資金的な面だけでなしに人の面でもやはり国際社会の平和を維持するために貢献をしなければならない。このようなことを教訓として受けたと思っております。
  267. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今回の多国籍軍によるイラクの侵略の排除、クウェートの解放という問題、これはこの湾岸戦争の本質をどう見るかという問題があるわけで、これについては、一つは本質的には集団的自衛権の発動であって、それにたまたま国連決議のお墨つきがついただけという見方がある一方、他方、今回のことは非常に不完全であるけれども国連憲章に定める集団的安全保障体制の発動であるという見方もあるわけでございまして、まずそこら辺につきまして政府側の認識をお聞きしたいと思います。
  268. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、国連憲章が定めますところの集団安全保障制度といいますのは、連盟が必ずしも国際の平和と安定の維持というものに実効性を発揮できなかったという反省に立脚して、憲 章の第七章で、四十二条及び四十三条に基づき創設されることになっていた常設的な国連軍ということを実は考えたわけですが、現実にはまだこれができる世界ではない。そういう中で、今般の事態に対しましては安保理が御承知のとおり十二本の決議を出し、特に決議六七八というものが出されまして、それのもとで平和回復活動というものが多国籍軍によって行われたわけで、これは御承知のとおりでございます。  これを国連の集団安全保障制度というものの観点からどう評価するかというのは意見の分かれるところなのかもしれませんけれども、少なくとも国連の集団安全保障制度のよって立つ基本的な考え方に沿った活動が行われたのではないかというふうに言い得るものと考えております。
  269. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 参考までに国際的な各国の見方、もしわからないなら結構ですが、今の政府の見解はわかりましたけれども国際的にはどういう見方がされているか、可能な範囲でもしお答えをいただければと思います。
  270. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点につきましては、憲章四十三条に基づく国連軍による行動であったというふうな考え方はどの国もしていないわけですが、しかしながら、戦後国連ができてからある意味紛争の解決に国連が最も積極的といいますか、非常に深くかかわった紛争の処理であったという見方は、国際社会で一般的なものではないかと思います。
  271. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 法的な側面はそれくらいにしまして、いずれにしましても、今回国連決議をもとにして国連の平和回復活動として行われた面が非常に強いことは私たちも理解をしておるわけですが、これは今回やむを得ない措置であったし、また結果的にはこの目的は達成して、イラクの侵略を排除し、あるいはクウェート解放に成功したわけですけれども、いろいろな傷跡を残したことも事実であって、特に人命の犠牲が非常に多大なものに上ったこと、環境破壊が予想外に大きなものであったこと、あるいは軍事的な制圧をしたとしても政治的には非常に深い亀裂を残したとか、いろいろな問題点もあるわけでございます。  そういったことも踏まえて、今回の国連を軸とした平和維持システム、今回の湾岸戦争に関する評価、今後の課題、日本として今後どう取り組んでいくべきか、そこらにつきましてお答えをいただきたいと思います。
  272. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 今回の事態のもたらしました影響につきましては、ただいま先生御指摘のような幾つかの点もあったかと思います。ただ、先生御自身も御指摘になりましたように、本来の目的は、与えられた現実のもとでは、最もあるべき姿で解決をしたというふうには考えております。  今後の問題といたしましては、やはり中東地域におきましてイラク自体の不安定性の問題、それから依然としてパレスチナ問題を中心とするいわゆる中東和平の問題について、この数日、米国の国務長官の中東歴訪等を見ましても、今次事態以前に比べまして各当事者の立場というものがそう大きく変わっているとも必ずしも思えませんし、この問題もまた非常に難しい問題として今後残っていくだろうと思います。  それからさらにはイラク、クウェートの復興の問題、それから今回の事態で経済的な影響を受けた地域国々の問題等もございますし、これら非常に大きな複雑な課題が中東地域には依然として残ると思いますので、これに対しましては日本といたしましてもできるだけの協力、貢献はしていくべきだと思いますが、そのためにはやはりその地域国々がこれからどうしようとしていくのか、それからその他その域外の主要な関係国がどうしていくのか、その辺と十分な協議、連絡を保ちながら行動していくべきだというふうに考えております。
  273. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて国連改革という角度から。  今回の湾岸戦争を踏まえて国連の機能強化をどうすべきかあるいは中長期的に国連改革をどうすべきかという角度から政府はどういう課題を認識しておられるか、その点をお伺いしたいと思います。
  274. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点は先ほど関連の議論も行われておりましたけれども、例えば安保理の改革につきましてイタリアの外務大臣が、私見とはいえ安保常任理事国を十一ヵ国にふやすべきであるとか、いろんな角度からの議論が行われていることは御承知のとおりでございます。  具体的に最近の国連におきます国連の機能強化の一つの提案といたしまして、紛争の予防ということで、各国が御承知のとおり憲章特別委員会の中で議論を行ってきておりまして、宣言というものを二年か三年前の一九八八年の国連総会で採択いたしております。具体的な内容は、紛争の予防分野におきます国連の役割を従来の平和維持の面から和平達成の面に拡大するということ、それから二つ目として、事務総長の平和維持機能を強化し、紛争の未然防止のため直接関係国にアプローチするということ。この紛争予防宣言に盛られました国連の事実調査機能の強化につきまして具体案につき現在国連憲章特別委員会で審議が行われておりまして、日本も積極的に加わってございます。  それから、国連関係諸機関の改革の問題も日程に上っておりまして、例えばユネスコなんかはその一つだと思いますけれども、それから軍縮面におきましても、通常兵器の移転の面でいかに透明性、公開性を高めるかというような問題の解決のために専門家グループが設けられて、ことしの夏に結論が一応一つ出る、そういう動きを御紹介しておきたいと思います。
  275. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ポスト冷戦になってグローバルなレベルでの核戦争の恐怖は非常に低下したわけですけれども、それにかわって今後、イラクの侵略でもわかるように地域紛争可能性が非常に高まっているという面があろうと思います。特にこれから危倶されるのはこの地域紛争が核の拡散あるいは生物・化学兵器あるいはハイテク兵器の拡散と絡んだ形で出てくるということが最も現実的に危倶されるわけでございますけれども、こういったタイプの地域紛争の防止の方策のあり方、それから具体的に日本が特にどういう分野で貢献をし得るか、この点につきましてお考えをお聞きしたいと思います。
  276. 丹波實

    ○丹波政府委員 これは、ただいま御説明申し上げました紛争の事前の予防のために国連がいかなる機能を果たし得るかという研究が現在進んでおりますので、そういう分野における研究、検討ということを今後とも進めること、それからもう一つは、私の分野を若干離れるかもしれませんけれども地域紛争の種といいますのは国境の問題ですとか南北問題的な問題あるいは民族の問題、宗教の問題、いろんなそういう伝統的なファクターが絡んで起きるわけでございますので、各地域にそういう問題を処理する枠組みをつくっていくとかあるいはそういうものを通じて国家間の相互信頼を高めていくというような、そういう努力国連努力というものが合わさっていかなければいかないんじゃないかと考えます。
  277. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 地域紛争防止において日本の役割ということを考える場合に、これはやっぱり我が国の場合は対症療法はほとんどやれることがない。特に軍事力を使えないわけですから、紛争が起こってしまってからそれに取り組むことは非常に日本の役割は限られているわけですけれども、むしろ予防の次元でいろんなことができるんだろうと思っています。その点特に紛争地域への武器移転の規制ということは、日本がこれは先導的な役割を果たし得ると思うわけで、これは臨時国会あるいは予算委員会等でも当方等も強く主張をし、総理や大臣からも非常に前向きの答弁をいただいておりまして、既に政府でもいろいろな角度から検討が進められていると理解をしております。  そこで、もう少し具体的な点として一つ核不拡散とODAの関連についてお伺いをしたいと思います。  現在このODAの見直し、特に軍事大国を目指す国あるいは核の疑惑のあるような国に対してODAのあり方を今見直すということが政府でも作業が進んでおると聞いておりますけれども、特に一つ核の不拡散、この問題ですね、我が国も非常に積極的に取り組んでいるわけでございますけれども、今後特にこの湾岸戦争の教訓を踏まえまして、かつまた九五年の核拡散防止条約の延長問題ということもありまして、最も積極的に取り組むべき点ではないかと思います。  その点で、例えば今後、核不拡散条約に参加していない国とかあるいは核疑惑を持つ国に対してODAを供与する場合に、直接リンクして援助をしないとか援助を凍結するというのは非常に問題があると思いますけれども、もう少し柔軟な形で、かつ筋の通った形でこの援助のあり方というものを考慮していく、それを通じてそういった国々がこの核の不拡散について強い問題意識を持ってもらうということは十分可能だと思いますし、そういった形で、柔軟な形で、筋の通った形でこのODAの問題とそれから核不拡散をリンクしていくという考え方は今後ぜひ検討し、実行すべきだと思いますけれども、この点につきましていかがでございましょうか。
  278. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいまの委員の御見解は私は貴重な御意見だと思っております。  核不拡散条約は、核拡散防止と原子力平和利用とを両立させる国際的な枠組みの基本でございます。このように核不拡散条約を基礎とする核不拡散体制の強化は国際の平和と安全に大きく貢献して不可欠のものでございまして、我が国としても未締約国に対して同条約締結を訴えるなど同体制の拡充強化にかねて努めてまいりました。一方、この湾岸戦争契機にして核不拡散の一層の徹底が必要であるという認識国際社会に高まってきたと考えております。  また、ODAにつきましては、開発途上国の経済発展と飢餓と貧困の救済、それから国民生活の向上への貢献を本旨としておりますが、委員から御指摘の核不拡散の問題につきまして十分これから念頭に置きながら、日本もこのODAの実施をやっていかなければならないと考えております。
  279. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それからもう一つ。武器移転一般に関連しまして、最近ココム型のメカニズムを導入して、こういう軍事大国への武器移転の規制を図るという考え方も出てきております。こういった問題に対して我が国としてはどういう態度をとっているか、この点につきましてもお考えをお聞きしたいと思います。
  280. 丹波實

    ○丹波政府委員 今回のイラクのクウェート侵攻の背景の一つには、先生御自身おっしゃいましたとおり、イラクに対するソ連中国、フランス等の一部の国の大量の武器輸出があったことは、おっしゃるとおり否めない事実だと思います。  政府といたしましては、湾岸危機後のグローバルな軍備管理・軍縮に関しまして、武器の国際移転問題への取り組みは非常に重要だと考えてございます。このうち特に核それから化学・生物兵器といいますような大量破壊兵器及びミサイルに関しましては、既に拡散防止のための一定の国際的な枠組みが存在しております。日本としては今般の危機の経験を踏まえまして、このような既存の枠組みの強化などにぜひ取り組んでまいりたいというふうに考えております。  他方、ココム型のメカニズムによる武器移転規制ということをおっしゃられたわけでございますが、通常兵器の移転の問題につきましては、実は通常兵器はある意味では各国での生産も含めまして既に拡散し切った状態にあるということ、それから通常兵器につきましては各国が自衛のために必要な範囲内で行う調達というものも、軍事バランスということを考えればある程度までは認める必要がある、非同盟諸国を初めとして多くの国が自国の安全保障上そういうことが必要だということを言っておる。いろいろな複雑な状況がありますので、ココム型の通常兵器移転の多国間規制といいますのは現実にはなかなか難しい面が相当たくさんあるのではないかと考えております。  したがいまして、日本も含めて現在国連におきますところのコンセンサスは、とりあえず通常兵器輸出の透明性、公開性というものの増大、それから各国による適切な管理の強化というところから始めて歩みを積み上げていこうという考え方で動いておるというのが現実だと思います。
  281. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 確かにこの武器移転の規制を現実に厳しくやることは非常に問題があり得るし、今政府委員の御説明のとおり難しい点があるのだと思うのですが、ただ、やはり現状から一歩でも二歩でも進めるということが大事だと思っております。  そこで今のような御説明に加えまして、厳密な法的なやり方ではないけれども、例えばコンサルテーションみたいなやり方ですね。OECDが例えば輸入制限をやっている国に対して行っているようなコンサルテーションメカニズム、そういった国を呼んで中立的な立場委員会がいろいろな角度から質問をして疑惑の程度をある程度認定をし、必要ならば拘束力のない勧告も出す、こういった形の緩やかなコンサルテーションメカニズムみたいなものは今後導入は考えられていいんじゃないかと思うのですけれども、この点についてはいかがでしょう。
  282. 丹波實

    ○丹波政府委員 今先生御指摘のメカニズム、一つのお考えとして今後私たちこの問題に取り組むに当たりまして参考にさせていただきたいと思います。  同時に、実は私たちが今待っておりますのは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、一九八八年の国連総会におきまして通常兵器移転の公開性と透明性を高めるためにいかなることができるかという、そのためにワーキンググループというものが設置されておりまして、ずっと研究を続けておりましてことしの夏に一応の結論を事務総長に提出することになっております。このワーキンググループの作業の結果というものもあわせて参考にし、今先生がおっしゃったようなメカニズムとこのワーキンググループの結論がどう組み合わせられるのか、そういうことを見ながら研究してまいりたいと思います。
  283. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 当然勉強のためには時間が必要だと思いますし、まず大いに研究をしていただきまして日本がその主導的な役割を果たしていただくよう期待をしたいと思っております。  続いてイラクの将来という問題なんですが、現在イラクが御承知のような事態で、イラクの将来はどうなるのか。フセイン体制がこのまま残ってもらっては困る、他方レバノン化してもらうとまた非常に湾岸地域の不安定性が増す、かといって今のフセイン体制にかわるような組織された反政府勢力も存在しないというような形で、非常に不透明性、不確定性が高まっているわけでございます。まずここら辺につきまして、イラクは今後どうなっていくのだろうか、そういった客観的な見通しの問題と、どういう姿が望ましいのかという希望的な視点、両方について政府の見解をお聞きしたいと思います。
  284. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 イラクという国を見ました場合に、従来からこの国は産油国でもあり、農業その他経済的には非常に豊かな可能性を持った国でございますけれども、同時に、宗教的にイスラムのシーア派、スンニ派の間の問題があり、また民族的なクルド族等の問題もあるというふうなことで、本来的にそういう宗教的、民族的な不安定性を持った国である、歴史的に見ましても非常に激しいクーデター等が繰り返されて現在に至っておるということではないかと思います。  今までのところ国の南部及び北部で、それぞれ先ほど申し上げたような宗派的あるいは民族的、あるいはそれを根底にいたしまして今までのサダム・フセイン政権の姿勢に対する反抗というふうな形で運動が起こっておりますが、これもそれぞれ必ずしも十分に組織化されたものでもなく、それからまた国外に反政府グループがおりますけれども、これも国内とどの程度の連絡があるかはっきりしないというふうなことで、正直申し上げてその将来を的確に見通すのは今若干難しい状況にあると思います。  将来どういう姿が望ましいかということでございますが、建前を申し上げれば、当然これはまさにイラク国民が国民多数の意思として決めてもらいたいということでございますし、その政権の政策があの地域の安定につながるようになることを日本としては希望するということが現在申し上げられることだろうと思います。
  285. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 イラクに対してもいずれは復興支援、協力をしなくちゃいかぬ時代が来るのだろうと思うのですが、現時点ではごく限定的に食糧や医療品等の人道的な援助、これはもうぜひやるべきだと思います。ただ、将来的にイラクへの援助、復興協力をしていく場合に、イラクがどういう状況になればどういう基準でどういう援助をしていくかという点につきまして、ちょっと答えにくいかもしれませんが、お答えをいただければと思います。
  286. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 イラクに対する援助という観点から申しますと、御指摘のとおり現在国連の調査団がイラク、クウェートに入っておるようでございますし、当面のいわゆる人道的な観点からの緊急援助というものはこの国連の調査団の報告等も見た上でまた検討をしなければならないと思っております。そこから先の復興援助という問題は、これはまだしばらくイラクの国内情勢それから政権の方向性等を見きわめた上で慎重に検討するというのが現在の考え方でございます。
  287. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、パレスチナ問題についてお聞きしたいと思うのです。  パレスチナ問題、アラブ・イスラエル問題の解決なくして中東に恒久平和はないということは自明の理だと思いますけれども、このサダム・フセインが提起した問題、リンケージということはもちろん認められませんけれども、他方のダブルスタンダードという問題はかなり説得力のある問題だと思いまして、要するにイラクには非常に厳しく出るのにイスラエルには甘いじゃないかというこのダブルスタンダードという議論があるんだと思いますけれども、この点につきましてはどうお考えになりますか。
  288. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 御承知のように、パレスチナ問題につきましてはパレスチナ問題に関する安保理決議、一番中心になりますものが二四二、三三八がございまして、これに従った解決の努力というものが国際的になされてきたということは言えると思います。イラクのクウェート侵攻という今回の事態とパレスチナ問題との間にはやはり問題の性質においても差があるとは思いますし、そういう意味でいわゆるダブルスタンダードという言葉を使うのはいかがかと思いますけれども、ただ、このパレスチナ問題を中心とした中東和平の問題につきまして、安保理の決議の諸原則に従って解決がなされるように、恐らく従来以上にこれは努力する必要があるということは私どももそのように考えております。
  289. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 現在ベーカー長官が中東を歴訪していろいろこのパレスチナ問題の促進に当たっていると思いますが、中東和平国際会議を開催するという考え方、イスラエルは非常に反対をしておりますけれども我が国考え方はいかがでございましょうか。
  290. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 中東和平問題を解決するに当たりましては、やはり当事者が非常に多いわけでございます。地域の周辺諸国だけ数えましても何ヵ国かございますし、それから地域外の関係国も非常に多いわけでございます。さらには、その当事者としてのPLOというものもございます。我が国は従来からこの問題を交渉するための枠組みとして、その国際会議を支持するという立場をずっととってきておりますし、この立場は現在でも変わっておりません。
  291. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 あともう一点、このPLOの扱いなんですけれども、今回、アラファト議長があからさまなイラク寄りの姿勢をとったことで非常に国際的な信頼を失っているという面があるわけです。そういった意味で、我が国は従来PLOはもう認めてきておるわけですけれども、今後どういう姿勢をとるのか、この点につきましてお聞きしたいと思います。
  292. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 これはなかなか難しい問題であろうかと思います。最近の情勢を見ておりましても、ベーカー国務長官と会見をした占領地におりますパレスチナ人の代表の人たちは、やはりPLOが自分たちの代表だという立場を公にいたしておりますし、それからほかのアラブ諸国の間でも、これはPLOという組織の問題かあるいはアラファト議長という個人の問題か、今回PLOがとった立場についての見方というのは分かれておるように思います。  そういう意味で、これからPLOがどういう立場に立ち、どういう役割を果たしていくのかということにつきましては、やはりこれからの情勢を見きわめる必要があると考えておりますけれども我が国といたしましては、今までもPLOがパレスチナ人を代表する政治的な団体であるというふうに認めてきておりますし、現段階でそれを変える理由はないのではないかと考えております。
  293. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 もう一点、イスラエルへの態度なんですけれども我が国は従来イスラエルとの関係は比較的薄い状態にあるわけですが、今回はスカッドミサイルの攻撃に対する反撃を自制したということで非常に国際的な評価が高まっておりますし、またいろいろ中東の中でもイスラエルとの対話の動きがかなり出てきておるやにうかがわれるわけです。我が国として今後イスラエルとの関係をどうしていくのか、この点につきましてもお聞きしたいと思います。
  294. 中山太郎

    中山国務大臣 イスラエルとの関係は、先般小和田外務審議官をイスラエルに派遣いたしましていろいろと政務局長レベルの話し合いもいたしましたが、今回のイラクのスカッドミサイル撃ち込みに対するイスラエル政府の自制、国民の耐乏というものは私は高く評価すべきものと考えております。これを契機中東の新しい和平への大きな展開が図られる可能性が出てきた、こういう意味で、日本政府としては今後ともイスラエル政府との交流、また私も機会を見て訪問をいたしたい、外相会談を持ちたい、このように考えております。
  295. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、議論をアジア太平洋日米安保の方に移したいと思います。  冷戦終えん、これはまずヨーロッパで起こったわけですけれども、当然これがアジア太平洋に時差を置いて影響してくるだろうということは自明の理だと思いますが、そういう冷戦終えんのアジア太平洋への影響をどう考えるか、まずこの点につきましてお聞きしたいと思います。
  296. 谷野作太郎

    谷野政府委員 それでは、私の方からとりあえず御答弁させていただきます。  冷戦終えんということを、米ソ関係がかっての対立からいわば対話、協調の新しい関係に移ったというふうにとらえますと、確かにそれがアジア地域においても一定の好ましい影響をもたらしていると思います。例えば午前中も御討議がありましたカンボジアの問題、今や米ソが共同してこのカンボジア和平枠組みをさぐっておるという状況でございますし、かつてのように、例えば朝鮮半島におきましても米ソ南北のそれぞれの背後におりまして角を突き合わせるというような状況ではなくなってまいりました。韓国ソ連はむしろ外交関係に至るという状況でございます。それが第一点でございます。  他方、しかしながらカンボジアに見ましてもあるいは朝鮮半島におきましても、やはりアジアにはアジアの独自のいわば力学がございまして、米ソ関係が新しいところに行ったとはいえ、それで朝鮮半島の情勢が非常にさま変わりする、あるいはカンボジアの問題が一挙に片づくというところにまで行かないのが非常にアジアアジアらしいところでございまして、そこはまさに朝鮮半島でいえば南北の当事者の努力が一段と必要でございましょうし、カンボジアについていいますれば、かくなる上はカンボジア人同士の当事者の長年の紛争を政治的に解決するという覚悟、決意、これが今一番必要な状況になっていると思います。     〔新井委員長代理退席、委員長着席〕
  297. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 そういった冷戦終えんのアジア太平洋への影響を踏まえて、日米安保条約意味の変化ということですね、これは大変大きな要件の変化があったわけですから、安保条約自体は引き続きその重要性を失わないと思いますけれども、その持つ意味というものはいろいろ変わってきている面があるのだと思います。そこら辺についてどう認識をされているか、お伺いしたいと思います。
  298. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど来話題になっておりますように、東西関係を初めといたしまして国際情勢は大きく動いておりますし、アジア太平洋でもいろいろな動きがございますけれども、私どもはやはり日米関係は引き続き日本外交の基軸であるというふうに考えております。日米が協調し協力していくことは、単に日米両国にとって重要であるということのみならず、世界全体にとりまして大きな重要性を持っておると考えておりますが、このような日米関係の基軸にございますのが日米安保条約でございます。  国際情勢は先ほど来御指摘ございますように大きく動いておりますが、まだまだ不透明、不安定な要素を抱えております。したがいまして、抑止と対話によりまして引き続き平和の追求を続ける必要がございますけれども、それを可能にするのはまさにこの日米安保条約であると考えております。したがいまして、日米安保条約我が国を含みますアジア太平洋の平和と安定にとりまして不可欠な枠組みとして今後も機能していく、こういうふうに私ども考えております。したがいまして、私どもといたしましては今後とも日米安保体制を堅持し、その円滑な運用のために努力してまいりたいと考えております。
  299. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 日米安保条約は、従来はソ連の脅威への対処ということがいずれにしても最大の焦点であったわけですけれども、それがソ連の脅威の大幅な低下、能力の点ではまだ近代化等も若干進んでおり相当時差があるのでしょうけれども、意図の点で大幅に変わったわけで、そういった意味ではソ連の脅威というのは大幅に低下をしたわけです。そういったことに伴いまして、今後この日米安保体制はどういったタイプの脅威への対処を想定していくのか。やはり安保体制である以上具体的ないろいろな脅威のタイプというものは認識した上で対処していく必要があるわけでして、そういった意味で、ここら辺の認識はどうなっているのかにつきましてお聞きしたいと思います。
  300. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 国際情勢につきましては改めて先生に申し上げるまでもございませんけれども、今回の湾岸危機にも見られますように地域紛争等の不安定要因というのは依然として内包しておるわけでございまして、したがいまして先ほど来私どもが、国際情勢は不安定性、不確実性を依然として内包しているということを申し上げてきているわけでございます。  したがいまして、これらの国際情勢の今後の動きは引き続き注視していく必要があると考えておりますけれども、一般的に申し上げまして、核相互抑止を含みます軍事均衡や、各般の国際関係安定化の努力によりまして、東西間の全面的な軍事衝突等の可能性はさらに小さくなっていると私ども認識しております。しかしながら、こういうような情勢を踏まえまして、日米安保体制を堅持するとともに、みずから適切な規模の防衛力を保有するという従来からの日本安全保障政策の基本は引き続き必要である、こういうふうに考えております。
  301. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この日米安保体制、それから幅広く日米関係において、日米間でバードンシェアリングの問題は長年議論されてきているわけですけれどもアメリカ日本に対する期待、要求というのは、正確に言うとどういうことなのか、何を望んでいるのか、それに対して日本はどう対応しているのか、ここら辺につきまして御紹介していただきたいと思います。
  302. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 日本国際社会でこれだけ大きな国力を持った国になったことに伴いまして、日本が国力にふさわしい責任を果たしていくということが国際社会全体から期待されているわけでございますけれどもアメリカとの関係におきましても、今先生バードンシェアリングという言葉を使われましたけれども、特に議会におきましては、まさにバードンシェアリングという言葉を使いまして、日本が国力にふさわしい責任を果たしていくことを求める声が近年強くなってきております。  具体的にそれは何を指しているかということでございますが、これを分類させていただきますと、第一は、先ほど来申し上げております基本的な考えに基づいてでございますけれども日本が防衛力の整備を引き続き進めるということ、それから二番目に、在日米軍経費に関しまして日本が応分の負担をしていくこと、それから三番目に、これは次元が違いますけれども、開発途上国に対する援助を拡大していくということ、この三点が一番アメリカでは話題になっております。
  303. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この米側の要求ですけれども、ただ日本が防衛力を整備していくことは、場合によっては軍事大国化にもつながるということもあるわけでして、そこら辺に対して、他方アメリカとしては日本が軍事大国化してほしくないということも当然あるのだと思いますが、そこら辺の上限といいますか、どこら辺の限界までの防衛力整備なのか、そこら辺につきまして、米側の要求の中身につきまして御説明いただければと思います。
  304. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど来引用させていただいております今回発表されましたアメリカの国防報告におきましても、一般的な考えが出ております。  そこには、アメリカ政府は引き続き日本及び韓国韓国と並べて書いてございますけれども、の政府に対し、防衛予算の支出の点においてのみならず、信頼できる防衛力の整備という点においても相互防衛努力のより大きなシェアを負担することを求める、こういう一般的な表現になっておりますが、より具体的に申し上げますと、今回の新中期防についてアメリカ側は、これは評価できる、評価すべきものであるというふうに考えております。
  305. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 最近の日米間の、政府間だけではなくて、議会とか一般も含めて、防衛問題プロパーだけではなくて、経済、貿易とリンケージするということが非常に強くなってきているやに思います。その背景にあるのは、一つは例えばポール・ケネディなんかの書いている「大国の興亡」という本、あるいはいろいろな学者が長期的な国際システムの変化について議論をしておりますけれども、共通にある認識として、軍事力と経済力が長期的には非常に相関関係にある、余り軍事力に資源を使い過ぎると、経済、産業が破綻していく、あるいは経済、技術が強くなければ軍事力も維持できない、こういった基本的な軍事と経済、産業、技術のリンケージというものが認識にあるのだと思います。ソ連が今どんどん低下しているのも、またアメリカのこういった相対的ないわば力の低下も、基本的にはそういう議論がある、そこに日本だけが防衛費一%しか使わなくてどんどんその他の資源を競争力の強化に使っていく、これはアンフェアではないかといった議論が当然あるのだと思います。  こういった議論に対して、我が国政府としてどういう認識をしておられるか、また、どういう対応をしておるか、この点につきましてお答えをいただきたいと思います。
  306. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生まさに御指摘のようなリンケージ論、つまり、防衛問題と経済、貿易問題を結びつける議論は、アメリカ、特に議会の一部にはございます。それに対しまして、私どもはそういうリンケージ論があるということは念頭に置いておく必要はございますけれども、私どもといたしましては、この安全保障の問題は安全保障の問題として、経済、貿易の問題は経済、貿易の問題として適切に対処していくという姿勢で臨んでいくことが必要であると考えております。
  307. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ただ、防衛は防衛、経済は経済と分けるのは、なかなか国際的には通用しにくい議論であるという感じもいたしております。  この議論はそれぐらいにしまして、最近非常に危倶されるのは、米国の対日観の変化ということではないかと思います。特にポスト冷戦ということになって、従来の米国人にとって最大の脅威がソ連の軍事力だったのが低下して、今度は逆に日本の経済力がアメリカにとって最大の脅威である、七割以上の国民がそう感じているという問題。それからまた、米国の、行政府は別としまして、議会とかあるいは一般の国民にしてみれば、豊かな日本をなぜアメリカのコストで守らなければいけないのかという基本的な疑問もあるのだと思います。  例えば一人当たりGNPではもう既に日本アメリカを抜いている。それからまた、日本世界最大の債権国、アメリカは最大の債務国に転落している。また、アメリカは大幅な対日貿易赤字を抱えておる、あるいは日本が最大の経済的脅威として登場しておる。こういったことを考えると、当然アメリカの議会人とか一般の国民からすれば、こういう日本をなぜアメリカのコストのもとに守ってやらなければならぬのか、タックスペイヤーとしてそれはおかしいじゃないかという議論は当然出てくるのだと思います。  こういった問題を踏まえて、恐らく米国の行政府といえども、やはり民主主義の国ですから、当然そういう議会あるいは国民の世論の圧力というのはだんだん受け入れざるを得ないわけでして、こういったことを考えると、逆にアメリカの側から安保体制の空洞化という動きも出てきているのではないか、あるいはこれから強くなっていくのではないかという認識もあるわけでして、ここら辺について政府としてはどう判断しておられるのか、この点につきましてお伺いしたいと思います。
  308. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生御指摘のような対日観、つまり、日本アメリカにとりまして経済的脅威になっているという感じがアメリカ国民の間にかなり出ているということは、いろいろな世論調査から裏づけられている次第でございます。私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、世界のGNPの四割を占める日米が協調、協力していくということは日米両国にとって重要なことであるのみならず、世界全体にとって重要であるということをアメリカ国民もぜひ認識していただきたいと思っているわけでございます。  ただ同時に、こういう一連の世論調査に惑わされてはならないと私ども考えておりますのは、やはり日米関係というのは近年非常にパイプが太くなっておりまして、相互理解も相互交流も進んでおりまして、私どもは、そういう対日警戒論というのは確かに台頭はしてきておりますけれども日米関係の基調が崩れる、日米関係の基調が基本的に悪くなったというふうには認識しておりません。  例えば今先生がお触れになりました安保条約でございますが、先ほど来申し上げておりますように、安保条約に関しましては、日本が在日米軍の経費をもっと負担すべきであるという声は、アメリカの議会、世論にかなりございますけれども、それ以上に出まして、そういう経費を日本が見ないのであれば安保条約を空洞化さすべきである、あるいは安保条約は何のためにそもそもあるのだというように、安保条約に疑問を投げかける声が出ているかというと、決してそうではございません。幸いにして、先ほど来御指摘のあるように、日本に対する警戒論は出ていますけれども、やはりアメリカ国民にとって日本は重要な同盟国であるという認識は浸透しておりまして、この安保条約そのものに対する疑念は生じていないわけでございますので、私どもはそういうことが将来起こらないように、まさに日米の信頼関係を今後とも育成していくために日米双方でさらに努力していく必要がある、こういうふうに考えております。
  309. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いてCSCA構想ということでお伺いしたいのですが、欧州がCSCE構想のもとに今非常に目覚ましいデタントが進んでいる、統一欧州の方に動いているということはあるわけですけれどもアジアにおいても当然こういった安全保障、平和の問題について長期的に対話の場を設けるといういろいろな構想が出ております。先ほど大臣もいろいろ御説明をされておりました。  もちろんヨーロッパアジア太平洋では状況が非常に違いますから、一概に同じようなものをそのまま押しつけることはできないと思いますけれども、他方、類似点もあるわけであって、やはりアジア太平洋地域の未来への共通の願望を共有していくという中で、そういう場を設けるということは非常に自然なことではないかと考えるわけでございます。CSCE安全保障枠組みというよりは、むしろプロセスあるいはフォーラム、場であって、自由闊達にいろいろな意見を言い合う、体制の違う国が議題を決めて意見を言い合う、そういった中で全体的な平和の環境がつくられてくるわけであって、そういった意味では、これをヨーロッパアジア太平洋状況が違うからということで、これに余り否定的な態度をとることは非常に好ましくないのだろうと思っております。  むしろこういう日米安保条約とか二国間の安全保障体制を補完していくものとして、長期的なビジョンとしてCSCA構想みたいなものを積極的にとらえていくべきではないかと思っておりまして、そういった角度から、こういうCSCA構想的なものに対して我が国として今後どういう態度をとるべきなのか。その点につきまして、お考えをお聞きしたいと思います。
  310. 中山太郎

    中山国務大臣 委員御指摘のように、この問題はアジア太平洋国々にとっては非常に重大な問題であると私は考えております。それで、今委員から御指摘のように、けさも高沢委員にもちょっとお話をいたしましたけれども、地政学的に違うあるいは宗教的にも向こうはキリスト教の影響の強いところで、こちらは仏教とかヒンズーとかラマ教とかいろいろございますから、イスラムもございますし、そういう点で、心の中にある神の問題がこの地域は違うという問題が一つあると思います。  もう一つは、海洋がヨーロッパと比べて非常に大きい、こういう問題で、従来の米ソ冷戦時代の対決構造から米ソ間の話し合いが進む時世になってまいりましたので、私はそういう意味で、これからこの問題について日本政府としては真剣に取り組んでいきたいというふうに考えております。  その第一期的準備作業は、去年の国連総会の九月二十七日のアジア太平洋の外相会合というもの、日本がインドネシア等に呼びかけて共同で主催した会合を持つことができて、参加された各国の外相はこの会合を大変評価していただいておりまして、特にベトナムグエン・コ・タク外相なんかは、これにさらに事務局をつくったらどうかというようなお話まで私にされておられました。私は、今年日本政府としても、やはり日本外交一つの方向としてアジア太平洋一つの大きな安全保障構図をつくる触媒的な機能を果たしていかなければならない、このように考えております。
  311. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ぜひそういう方向で御検討をいただきたいと思っております。どうしても日本人の性格として、いろいろ問題点を詰めて、いろいろな問題点を列記していかなければなかなかできないという体質が強いのですけれども、やはりこういった平和の問題にしても、まずネーミングがありコンセプトがあって、今おっしゃった触媒的な政治的な性格が非常に強いものでもありまして、余り中身を詰めないで、ファジーな、アバウトなものであっても、そういう一つの求心力を持った概念というものがだんだん現実をまた動かしていくという面もあるわけですので、ぜひともそういう角度からこういった構想を前向きに検討、推進をしていただければと思っております。  続いて、もう時間がありませんので、米軍駐留経費の問題を何点か御質問したいのです。  まず端的に、在日米軍の適正規模をどう考えるのか。現在五万人体制と言われておりますけれども、多過ぎるのか少な過ぎるのか、そこら辺について、今のアジア太平洋地域のそういう長期的なデタントということも踏まえて、この適正規模の問題というものをどう考えるか、お答えをいただきたいと思います。
  312. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 端的に申し上げまして、適正規模というのを数字で申し上げるのは難しいわけでございますけれども、従来のレベルを見ておりますと、沖縄が返りました一九七二年が六万五千でございまして、その後は最低は四万五千を切ったことがございますが、四万五千から五万の間を推移してきたというのが現状でございまして、現時点におきまして約四万六千であるということは先ほど御報告をしたとおりでございます。  これからアメリカ側は、財政的な理由から段階的に米軍を再編していくということにしておりまして、日本につきましても一九九二年末までに約四千八百名を削減するとしておりますので、これから約四千八百名削減され、これが第一段階でございますから、第二段階、第三段階と進むにつれましてさらに削減される可能性がございますが、アメリカ側は前方展開態勢は引き続き維持していくということを繰り返し言っておりますので、財政的な理由により段階的に削減されますけれども、基本的に前方展開戦略を維持するに必要なレベルの米軍は維持していくものと見ております。
  313. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 日米間でこの経費の分担をめぐって、日米間の経済力の格差の変化ということも踏まえて、一定の原則のもとにこの負担分担をしていくことはやむを得ないと考えるわけですけれども、他方なし崩し的にこれが無原則にされるのはやはり好ましくないわけで、どういう原則、歯どめでこの負担分担を進めていくのか、端的にお伺いをしたいと思います。
  314. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生まさに御指摘のように、私どもも無原則に負担を拡大していくということは考えておりませんで、先ほど来御説明しておりますように、今回は御審議をお願いしております特別協定におきましては、在日米軍の従業員の基本給とそれから光熱水料等に限って、暫定的、特例的、限定的に五年間お願いするというものでございます。
  315. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 まず今回の特別協定日本人従業員の雇用の安定化が図られるという側面にも着目をしておりますが、具体的にどういう形で雇用の安定化が図られるのか、この点について御説明をお願いします。
  316. 竹下昭

    ○竹下政府委員 お答えします。  在日米軍基地で働く従業員の皆さんが雇用の面において日々不安なく勤務できる状態を確保していくことは、雇用主としての日本政府の当然のことでございまして、また米軍の駐留の円滑な実施の面からも重要なことと考えております。したがいまして、かかる観点から、防衛施設庁としては、従来から雇用の安定を図るため、労務費の一部負担のほか、雇用にかかわる情報の早期把握に努め、必要に応じ人事措置、例えば配置転換等の措置を講ずるなど各種の施策を講じてきているところでございます。  なお、これは今後とも従業員の雇用をより安定した基盤の上に置くために一層努めてまいりたい、このように考えております。
  317. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それじゃ、もう時間がありませんので、最後の質問にいきたいと思います。  日米グローバル・パートナーシップの構築という問題なんですが、これは極めて重要な我が国外交課題、最重要の課題であると私は考えておりますけれども、確かに最近、グローバル・パートナーシップという言葉があり、これは非常にいい言葉だと私は思っております。しかし実体はほとんどないという認識も私は持っておりまして、今後この中身をどうつくるか、これこそが非常に重要な課題であると感じておるわけです。日米関係を今後十年、十五年という時間軸で考えてみますと、どういうパターンをとり得るか。大まかに言って三つぐらいあるのだと思います。  一つは、現状維持型、すなわちアメリカが要求、圧力を強く出して、日本側は渋々小出しの譲歩を重ねていく、両者間に非常に強いフラストレーションがたまっていくというような、そういった現状維持型ですね。  それからもう一つ、対立型とでもいいますか、アメリカの圧力要求に対して日本側で反米ナショナリズムが非常に強まってきて、日米が離反、対立していくコース、これも非常にあり得る。特に、最近政治家あるいは官僚、その中にもこういったナショナリズム的な要素が強まっている点も感じられると思います。  それから三つ目に、統合型とでもいいますか摩擦や問題は抱えながらも日米間で相互依存、ボーダーレス化が進んで、また両国の政治的な成熟化によって本来の意味でのグローバル・パートナーシップの形成に向かう、こういったパターンが考えられると思います。  また、これを具体的な、現実的なシナリオプロセスとして考えますと、これは三つぐらいやはりあるのだろう。一つはソフト・ランディング・シナリオということで、今の現状維持型から徐々に統合化へ向かっていく、グローバル・パートナーシップヘスムーズに移行していくというのが一つ。  それから二つ目にハード・ランディング・シナリオで、現状維持から対立型に一回移行して、非常に双方厳しい局面を迎える。しかしながら、破局は回避しなければいけないということで、最終的には統合型に向かっていくというやり方。  三つ目は、破局型でこの現状維持から対立へ、さらに破局というシナリオですね。これは、実際第二次大戦までの日米関係はまさにこのパターンをたどったわけであって、非常にこの可能性もなきにしもあらずということだと思います。  こういった非常に大ざっぱなシナリオを考えた上で、今後の日米関係はどういうシナリオをたどっていくのが最も現実性が高いのか、あるいは本来の目標であるべきグローバル・パートナーシップの構築に向けて何をしなければいけないのか、この点につきまして、これは大臣にお伺いをしたいと思います。
  318. 中山太郎

    中山国務大臣 日米関係が長期的に友好的であり、安定的であるというためには、私は貿易のインバランスが早急に解決されることが大変必要であるということがまず第一点だと思います。  もう一点は、SIIを通じてアメリカの財政赤字あるいは対外債務あるいは経常収支の赤字、いろいろな点で日本は率直にアメリカに問題点を指摘してきました。そのような関係日米関係が恒常的に維持できればハードランディングということにはならないのではないか。そういう中で経済がさらに拡大均衡していくという方向を我々はとるべきである、そして、この日本の国がいかに国際化するかという努力を払うことによって、何といいますか摩擦の熱はそんなに高くならない、その努力が極めて必要ではないか。そして、大きな視点から、日本国際社会のためにアメリカ一つの共通のテーマ、例えば地球環境の維持あるいはまた麻薬問題、国際テロの問題、こういったような問題を両国が協力して取り組んでいくという中で、この両国の関係は非常にソフトなランディングをする可能性が残されている、そういう方向に向かってやっていくべきだという考えを私は持っております。
  319. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 基本的に私も大臣の御意見に非常に賛成なんですが、あともう一つぜひ、相互理解とか文化交流、人的交流、これが非常に大事だと私は痛感をしております。特に、日米の将来の役割分担、将来のビジョンについて、総合的、長期的、またいろいろなレベルでの対話のチャネルというものを強力につくっていくことによって、こういったプロセスが可能になると思うわけでして、ぜひともそういった面での施策も強力に進めていただきたいとお願いをいたしまして私の質問を終わらせていただきます。  以上です。
  320. 牧野隆守

    牧野委員長 古堅実吉君。
  321. 古堅実吉

    ○古堅委員 一九八七年に発効した現行の特別協定は、一九九二年三月三十一日までの期限となっています。その特別協定が成立した翌年の一九八八年に改正されましたが、その議定書の審議の折に、当時の宇野外務大臣は、協定の五年間に基地従業員の本給に手をつけることはしないかという質問に対して、この期間にそうしたことは考えてない、そう約束をいたしました。今回の措置は一年の前倒しということを強行しようとするものであります。政府の国会に対する約束を政府みずから破るということになります。これは、国会をだまし討ちにしたということが言えるのじゃないかと考えますが、審議の前提にかかわる問題です。大臣のお約束にかかわる問題ですから、大臣から御見解を表明していただきたいと思います。
  322. 中山太郎

    中山国務大臣 最近の国際情勢の変化の中にありまして、日米安保条約は、引き続き日米関係の基礎をなす強固なきずなであります。また、我が国がみずからの平和と安全を確保し、広くアジア太平洋地域の発展を図っていくための不可欠な枠組みとして機能をいたしております。我が国は、従来からこのような意義と重要性を有する日米安保体制の効果的な運用を確保していくことが極めて重要との観点から、在日米軍経費負担問題について自主的にできる限りの努力を払ってまいりました。  他方、日米両国を取り巻く最近の諸情勢には、米国の抱える膨大な貿易赤字と日米間の経済力の相対的関係の変化といった経済情勢の変化、米国が膨大な財政赤字を抱えながらも国際の平和と安全の維持のためグローバルな役割を果たしており、国防費、在日米軍経費の著しい逼迫に直面をしていること、さらに我が国が国力にふさわしい役割をみずから積極的に果たしていくことがますます求められているといった環境の変化が生じております。  このような状況を踏まえまして、我が国としては現行特別協定の終了を待たず、在日米軍経費の我が国負担増加に関する措置をとることが必要であるとの判断に至ったわけでございます。
  323. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣、質問に答えられないですね。私が質問をしておりますのは、政府の約束にかかわる問題なんです。一九八八年五月十日、参議院の外務委員会の審議で矢田部委員が、この五年の期間中にまたまた再改定をして本給に手をつけるようなことは考えていないなという念を押した。その上に、「念のために確認しますが、」という前置きで、「少なくとも今後五年間は、円高になろうといろんな動きがあろうと、本給に手をつけて再びお願いしますなどということはしないと、この約束はできますね。」と追及されて、宇野外務大臣が、その期間にそうしたことは考えておりません、繰り返し考えておりませんということを約束をされたんです。約束を踏みにじるものであることを認めますか。
  324. 中山太郎

    中山国務大臣 御指摘の答弁は、特別協定の改正が審議された時点、昭和六十三年五月、今委員が御指摘のことでございますが、その当時、宇野外務大臣は、審議をお願いした以外のことは現在考えていないとの趣旨を述べたものであり、現行特別協定の有効期間中に新たな措置をとらないということを国会に対して約束したものではなく、新規措置をとることにつき今般改めて国会にお諮りすることまで妨げているものではないと認識をいたしております。
  325. 古堅実吉

    ○古堅委員 どんな社会でもうそをついたり人をだましたり、そういうことは最低のことだというふうに言われています。まして、いわんや国権の最高機関たる国会におけるその意思決定のために必要な審議において政府が約束しましたと、このように表明した問題について、それを踏みにじることがいかに許せないものであるかはこれは言うまでもありません。そういうことにかかわる問題です。外相は、今あたかもそういう約束をしなかったかのごとく、この時点ではというふうに言ったかのごとく思わせるようなところを引用されました。私は、その会議録を全体を通じて見ていますよ。そのように言おうとした、しかしそういうことは許さぬぞということで食い下がったのが当時の審議における矢田部委員です。矢田部委員に追及されて念を押されて、現時点にとかいうことじゃないよ、約束をできるかと念を押されて「そうしたことは考えておりません。」ということを約束したのですよ。約束を踏みにじったことを認めますか。
  326. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私も、先生が言及されました八八年五月十日の参議院の外務委員会の議事録を丁寧に繰り返し読んでおりますけれども、私ども認識は先ほど中山大臣が申されましたように、その時点での宇野外務大臣考えを述べられたものであると考えております。つまり、審議をお願いした以外のことはその時点では考えていないということでございまして、これは先ほど来申し上げておりますし、また、外務大臣が今繰り返しお述べになりましたけれども、その後の国際情勢の変化にかんがみまして、私どもはこういう形で、新しい形で在日米軍経費の負担の枠組みをつくる必要があると考えている次第で、したがいまして、まさに国会に対しまして新しい特別協定を提出させていただいて御審議をお願いしているわけでございます。
  327. 古堅実吉

    ○古堅委員 違うのですよ。その時点ではということじゃない。この現行の特別協定締結されて五年間の期間があるということを前提にして、五年間はしませんなということが念を押されて、やりませんと約束しておるのですよ。それがその時点においては、あるいは来年もやるかもしらぬというふうな解釈がどこから生まれるのですか。
  328. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私も今手元に議事録を持っておりますけれども、宇野大臣は繰り返し「現時点では考えておらないというのが私の答えであります。」それから、「やはり現時点ということは非常に大切なことでございますから、」云々、それから最後に、まさに先生のおっしゃっておるのは最後でございますけれども、「私たちといたしましては今おっしゃるようなことは考えておりませんと、こういうふうに御理解賜りたいと思います。」「今」という言葉が入っておりますので、その時点でまさに宇野外務大臣がそういうふうに考えておられないということを今申し上げておるわけでございます。  その後の情勢の変化に基づきまして、まさに私どもはこういう新しい枠組みが必要であると考えまして協定を結びまして、まさに国会に審議をお願いしているわけでございます。
  329. 古堅実吉

    ○古堅委員 この会議録のコピー、私も持っていますよ。都合のいいところだけ読み上げよう、それは本当にこういう国会における審議の場で、重ねてうそ偽りをもってこの場を逃げようとする、こういうたぐいのものです。断じて許せません。  日本共産党は、現行協定とその改正が、米軍地位協定ばかりでなく日米安保条約にさえ違反するものだという立場を踏まえて、強く反対してまいりました。国会をだまし討ちにしようという手口というものを許さないと同時に、そういう根本となっているいろいろな取り決め、そういうものに基づいても許しがたい、二重三重の立場からそういうものに反対をしなくてはいけません。  現行の協定が一年も残っておるというのに、約束を踏みにじってまでもさらに負担を強行しようというからにはそれなりの理由がなければならないはずであります。この約束がなされた、それにたがうことは許されないということを仮にとっておくにしても、それなりの納得のいく理由は示すべきです。協定前文に、「両国を取り巻く諸情勢の変化に留意し、」とありますけれども、これにはイラクによるクウェート侵略、併合、それに対して米軍中東へ大規模に展開した、そういう情勢の変化を踏まえたものだというふうに考えますが、そのとおりですか。
  330. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 今先生が言及されました前文に書いてございます最近の「諸情勢の変化」という中には、今回の湾岸危機発生以降の問題は含めておりません。全体として申し上げれば、今回の措置湾岸危機とは直接関係がございませんで、私ども認識は、先ほど来申し上げておりますけれども、まだまだ国際情勢が不安定、不確定の要素を抱えている中で、日米安保体制を堅持していくということが基本的に必要であるという認識を持っておりまして、そのためには、在日米軍経費の負担増を自主的に図っていく必要があるという判断に基づいております。  先生が言及されました最近の「諸情勢の変化」、それでは何を考えているかという点でございますけれども、これも先ほど来御説明しておりますが、三点ございまして、第一は、アメリカの貿易赤字の継続、そして、その逆でございますけれども日本の貿易黒字あるいは経済力の全般的な上昇、こういうような日米相互間の経済力の変化、それから二番目に、アメリカが大きな財政赤字を抱えながらグローバルな平和維持機能を果たそうとしていること、それから三番目には、日本が国力にふさわしい役割を果たしていくことがますます求められている、こういう点を念頭に置いております。
  331. 古堅実吉

    ○古堅委員 現行の特別協定が成立した翌年に、先ほど申し上げたように改定がなされたんですよ。今おっしゃっているようなことなどはその時点でもう既に始まっておった、米国側の事情を見れば恒常的なものです。それを前提にして一九八八年にも改定された。そして、改定に当たっての審議の中で、それ以上は手をつけないという約束をしたんです。一年もまだ期間があるというのに新たな負担に踏み切るということについての理由としては全く納得のできない話です。隠されているものがあれば話はまた別です。  アメリカ同盟国の援助なしには今回の湾岸戦争はできませんでした。米国の財政事情というのは、今回の湾岸戦争によって一層悪化の一路をたどりました。ですから、米軍中東展開もこの協定前文に言う「情勢の変化」という意味に含ませてアメリカの負担を軽くしようということになったのではないかというふうに思うのです。本当に湾岸戦争とのかかわりにおける情勢の変化というものは、その中に入ってないのですか。
  332. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 繰り返しでございますが、入っておりません。
  333. 古堅実吉

    ○古堅委員 昨年十一月十三日までに日本に在日米軍の軍人の給与を除く直接経費の全額負担を求める条項が盛り込まれた国防支出権限法と国防歳出法の両法案が成立いたしました。これは、九月以来日本やドイツに一層のペルシャ湾支援を求める動きの具体的なあらわれでもありました。本協定についての日米交渉は、昨年十二月以来そういう情勢がずっと流れて後の話です。署名が行われたのは、ことし一月十四日です。まさに湾岸戦争に突入しようとする直前でした。米軍駐留経費の新たな負担問題が湾岸支援問題と何のかかわりもないなどということは言えないんじゃないですか。
  334. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 在日米軍経費の負担増を求める声は、アメリカの議会で湾岸危機が起こる前から根強くございました。  先生御承知と思いますけれども、今先生が言及されました国防予算の授権法、それから歳出法はこれはまさに昨年十一月五日に成立したわけでございますけれども、一昨年も同様な決議、それが最終的には国防予算の授権法等に吸収されるわけでございますけれども、まさに同様な要求が議会で出され法案の一部となって成立しているわけでございまして、何も湾岸危機が起こったので今先生が言及されましたような形で米議会で対日要求が起こったということではございません。  したがいまして、これは先ほど触れました最近の諸情勢の変化を受けまして日本に対してより一層のバードンシェアリングを求めるという一環として議会では議論をしてきたわけでございます。そういうものを念頭に置きまして私どもは、日本が国力にふさわしい役割を一層果たしていく、そして安保条約の運用をさらにしっかり定着させていくという見地から、昨年十二月の新中期防におきまして新たな措置をとるということを自主的に決め、それを、先生が今言及されました一月十四日でございますけれども、今御審議いただいている特別協定という形で基本的な枠組みをつくったということでございます。
  335. 古堅実吉

    ○古堅委員 こういう説明では納得できませんよ。既に一九八八年の審議の段階でも、米国の一般的な情勢というのはそういう流れにあったのですよ。その時点でもうこれ以上は五年間手をつけませんというふうなことがあったわけですから、そういうことを前提にして、それまで既にあった理由を理由にしてなされた約束まで踏みにじろうということであれば一層言語道断の話です。  細かい質問を幾つか進めます。  在日米軍駐留経費は、一つ、軍人軍属等関係人件費、二、運用維持費、三、軍事建設費、燃料油脂費、大方いってそういう四つのカテゴリーから構成されているというふうに思います。日本は一九八五年以降九一年度まで各年ごとにそれぞれどのくらい負担しているか、それを明らかにしてほしい。
  336. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生御指摘のように、アメリカ側の在日米軍維持の経費は四つの分類で行われておりますが、この日本側の負担は日本側がまた日本側の分類に従って行っておりますので、残念ながら必ずしも米側の四つの分類に対応する形で出ておりません。  最初に総額を申し上げますと、平成二年度は四千四百五億円、それから平成元年度は三千九百七十億円、それから昭和六十三年度は三千五百三十六億円ということで、ちょっと逆にさかのぼらせていただいて総額を申し上げました。  それでそれぞれ具体的な品目の金額でございますけれどもアメリカ最初の分類の軍人軍属関係の経費は、在日米軍の従業員の労務の負担ということに一応対応しようかと思いますが、それについて申し上げますと、平成二年度は六百七十九億円、それから平成元年度は五百三十九億円、それから昭和六十三年度は四百十一億円。ちなみに来年度はどのくらいか申し上げますと、七百九十一億円を計上して……(古堅委員「九一年ですか」と呼ぶ)はい、平成三年度でございます。  それから次に、運用維持費というのは、これまでは日本側の負担はございませんが、平成三年度から光熱水料等が今回の特別協定が国会で御承認いただければ日本側が負担するということになりますので、予算上平成三年度に二十七億円計上しております。  それから三番目の軍事建設費というのが米側の負担の中にございますけれども、これが具体的に何かよくわかりませんが、日本側で従来提供施設等の建設、補修関係の経費を負担しておりますのでそこの項目を指すということであれば、平成二年度が一千一億円、平成元年度が八百九十億円、昭和六十三年度が七百九十二億円、それから平成三年度は九百五十七億円ということが予算案に計上されております。  それから四番目の燃料油脂費でございますけれども、これに相応する日本側の負担はございません。     〔委員長退席、新井委員長代理着席〕
  337. 古堅実吉

    ○古堅委員 燃料油脂費、九一年度もございませんか。
  338. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 ございません。
  339. 古堅実吉

    ○古堅委員 米軍人の給与を除いた在日米軍駐留経費における日本側負担の割合、現在は幾らか。また新しい協定負担分を加えた場合の割合は幾らか、それを示してください。
  340. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 アメリカ側の最新のデータがございますのが一九八九年度でございます。日本の会計年度で申し上げれば平成元年度でございますので平成元年度で比較させていただきますと、今先生米軍人等の給与を除いてと言われましたけれども、含めますと日本側が約四割、アメリカ側が六割でございますけれども、除きますとちょうど逆転いたしまして、非常に大ざっぱな数字で申し上げれば日本側が六割弱、米側が四割強ということになります。  それから、今後どうなるかということでございますが、今回の特別協定が国会で御承認いただきまして、それに基づきまして日本側が負担増を図ってまいりますと、五年後に従業員の給与等全額それから光熱水料等全額日本側で負担することを私ども目標にしておりますけれども、それでは五年後に負担がどうなるかということでございますが、米軍人の給与等を含めますとおおむね半々ということになりますが、給与を除きますと日本側の負担が今申し上げました六割弱から七割ぐらいに上がりまして、アメリカの負担が四割強から三割に減るということになります。
  341. 古堅実吉

    ○古堅委員 今回の措置をとってもなおアメリカ側は日本への負担強化を求めてまいります。既にそういう動きというのがいろいろな形で見られます。一九九二会計年度米国防報告は、一九九一年に始まる次期防衛計画で米軍に対する支援を大幅にふやすだろうというふうに述べています。次期防でも駐留経費負担が明記されているわけですけれども、上限というのがあるのですか、ないのですか、はっきりさせてください。
  342. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 繰り返しになりますけれども、今回お願いしておりますのは暫定的、限定的、特例的な措置としてお願いしているわけでございます。そしてこれは、繰り返し申し上げておりますけれども、現時点でこの協定に定める措置以外の措置をとることは考えていないということをさらに申し上げたいと思います。
  343. 古堅実吉

    ○古堅委員 昨年来日した米国務省のホームズ防衛分担担当大使は、防衛庁の依田事務次官に対して、円建て経費のすべてを負担することを期待したい、このように述べました。円建てといえば軍人軍属や米本土での調達など、限られたものを除けば、ほとんどの経費が入ります。今回光熱水料などの負担に踏み切ったということは、今後艦船の修理の問題や艦艇、航空機燃料、訓練用燃料、そういうこともあり得るのかどうかということにもかかわります。説明を求めます。
  344. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほども申し上げましたけれども、私どもは現時点におきまして、今回協定で定めております措置以外の措置をとることは考えていないということを改めて申し上げたいと思います。
  345. 古堅実吉

    ○古堅委員 考えてないということなんですが、それじゃ念を押しておきたいのですけれども、今挙げた二つについては、法律上は負担が不可能ということですか。
  346. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 仮定の御質問についてお答えしにくいわけでございますけれども、繰り返しですが、現時点においては、今回お願いしております措置以外の措置をとることは考えていないということを改めて申し上げたいと思います。     〔新井委員長代理退席、委員長着席〕
  347. 古堅実吉

    ○古堅委員 私がお聞きしているのは、考えている考えてないということではなしに、法律上負担は不可能ということか、法律上は可能だが現在は考えてないということなのか、そういう趣旨ですよ。
  348. 野村一成

    ○野村政府委員 今回の措置はあくまで地位協定の特則に当たるわけでございまして、原則は原則として維持しつつ、特則として今回の措置をとっているわけでございまして、そのときの特則の内容につきましては、それは私どもが、政府の方で自主的に判断して決めていく、そういう関係でございます。
  349. 古堅実吉

    ○古堅委員 そのときの日米間の相談が成り立てば、法律制度上は可能だということを前提にしての説明ですか、今のは。
  350. 野村一成

    ○野村政府委員 私の方は、今一般的に御説明申し上げたわけでございまして、将来のことにつきまして、仮定の問題に、先ほど北米局長が答弁申し上げましたように、答えるのを差し控えさせていただきたいと思います。
  351. 古堅実吉

    ○古堅委員 答えなくちゃいけないものについても答えようともされないということは、現在は考えていませんということが、前回の場合を踏みにじって今回の前倒し改定という形にあらわれているのと同じように、あしたでもあさってでも一年後でもすぐ変わるかもしらぬ、そういうことに通じる問題だというふうにも考えます。こういう態度というのは本当に許せないものがあると思います。  この問題については、たくさん質問を展開しなくちゃいかぬ問題が残されておりますけれども、割り当ての三十分が参りました。その余の質問については次回にさせていただいて、終わらせていただきます。
  352. 牧野隆守

  353. 永末英一

    永末委員 今回の特別協定は、在日米軍に働いておられる労務者の方々の基本給を全部持とう、光熱水費等を新しく持とうということもございますが、昭和六十二年に地位協定に対する特別協定として八項目の手当について二分の一を限度として持とうという提案が行われました。そのときに外務委員でございまして、時の政府の考え方をただしました。時の外務大臣は倉成さんでございましたが、これは臨時特例措置でございます、こういう話でございました。ところが、その期限が来ておりませんのに、六十三年には宇野外務大臣になりまして再び、今度は手当を全額持とう、そういう協定がまた出てまいりました。  ちょうどそのときはペルシャ湾でイランとイラクが戦争しておりまして、ペルシャ湾におきます船舶の安全について日本は何ほどかの貢献をすべきではないかということで、どういう貢献をすべきかを政府は検討しておりましたが、いわばその結論として今のような、二分の一手当を持つということを全額に直したことがございましたが、宇野外務大臣は、それが理由ではない。つまり六十二年の手当を持ったのはプラザ合意で円高になってアメリカ軍が支払いかねておるのでそれを手助けするんだ、そのことは労務関係者のいわば給与を安定的に支給するんだというようなことでございました。政治的理由を逃れようと一生懸命でございましたが、そういうことも原因だということを認めております。  さて、今度は残されておる基本給与まで全部持とうということでございまして、しかも御説明によりますと、暫定、限定、特例といいますが、これで地位協定の二十四条に関しまして、施設区域日本側の費用で提供する、そこへ来ておる米軍の運用に関する費用はアメリカが持つという、そういうことが二十四条の趣旨でございましたが、今までは、だからこそ臨時特例なんだ、何かもとに戻るような、二十四条の趣旨はそのまま生きているような御説明が続いてまいりました。  外務大臣、今でもそう思っているのですか。その二十四条の趣旨はそのまま続いておるんだという意味で特例の条約を結ぼう、こういうことなんですか。
  354. 中山太郎

    中山国務大臣 地位協定二十四条はさわらずに、暫定的、限定的、特例的な特別協定締結するということでございます。
  355. 永末英一

    永末委員 六十二年の場合には円高だという、何か円高であれば円が安くなることもある、だから臨時かもしれぬ、特例かもしれぬと言うなら聞いている者にも少しは理由がありそうでございました。ところが、全額持ったというときには、本来なら政治的意味でそうしたんであります、ところが、そう言うとおかしいものだから、いやいや円高はまだ続いておりますということを理由にした。今はそういう理由はありませんね。どこが一体暫定なんですか。暫定とか限定とか言われますけれども、どこが一体暫定であり、限定なんですか。給与を全部持ってしまうのです。そこを聞かしてください。
  356. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私どもが暫定的と申しておりますのは、今回の協定の期間が五年であるということを踏まえてでございます。それから、限定的と申しておりますのは、在日米軍の従業員の基本給等、それから光熱水料等という、こういうふうに対象を限定しているということでございます。それから、何で特例的と言うかと申しますと、まさに今大臣が御答弁されましたけれども、二十四条の原則は原則として維持しつつ、まさに二十四条の特則として特例的に今回の措置をとりたい、こういうことでございます。
  357. 永末英一

    永末委員 逆にいきますと、特例というのは二十四条の趣旨を曲げるんですね。曲げるけれども、特例ということで二十四条の趣旨を殺しておる。これが特例の意味である、限定というのは基本給だけ、そんなことはないですよ。これは結局全部人件費持つのでしょう。今までは思いやりで変な費用を持って、それから最初は手当、調整手当等手当を選び出して、その後も残ったものをこれで全部持とうというのではありませんか。限定というのは基本給に限定してではなくて、基本給に手を触れたら二十四条に関係あるから特例でやります、特別協定でやりますというのがこれが今までの政府側の答弁でございました。その基本給に手をつけておって一体どこが限定なのですか。暫定というのは五年間と書いてあります。それはもとに戻るなら暫定です。続けるのでしょう。五年たって、この期限が来たらこのまま、全部給与を持っている方法、やり方は続けていくのでしょう、どうですか。
  358. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 最初に基本給の関係でございますが、私は基本給等と申し上げまして、手当について全部一々申し上げませんでしたけれども、これはまさに協定の第一条に日本側が負担いたします基本給、諸手当が書いてございます。ただ、これはこの中に漏れる手当等も、それから旅費などもございまして、在日米軍の従業員に係る諸経費をすべてということではございません。基本給、諸手当等一条に明示してあるものに、まさに限定するということでございます。それから同じことが二条に書いてございます光熱水料等にも当てはまるわけでございます。  それから先生御指摘のもう一つの暫定という点でございますけれども、まさに今回の特別協定は五年ということでお願いをしているわけで、その後については、私どもは現時点でこれをその後どうするかということを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。今回の協定に関しては、五年後に終了するということが協定にもはっきり書いてあるということを申し上げたいと思います。
  359. 永末英一

    永末委員 限定というのは、例えば百あるとしますと、百の分量のうちに五十以下なら限定でしょうね。旅費なんてものは手当や基本給とは違いますよ。あるときにはある旅費を使わなければならぬから出てくるのであって、そんなものちびっと残っているといったってそれは性質が違うから残してあるのであって、限定というのは、もうこれで大部分でしょう。ここに書いてある、第一条に書いてあるのは全部やりますと、駐留軍に勤めておる人、日本人労働者のほとんどのお金をこれで払っておるわけだ。これを限定なんていうような日本語は当たらないのではないですか。  それから暫定というのは、なるほど五年と書いてあるけれども、一体五年たったら払わないつもりなのか、ずっと払うのか、そこを答えてください。
  360. 野村一成

    ○野村政府委員 先ほど来先生の御指摘の点、どうも日本人従業員の給与の枠の中で議論されているように私、理解しておるわけでございますけれども、限定的と申しますのは、本来地位協定二十四条に基づきまして米側が負担すべき経費というのがございます。その経費の中で、特に光熱水料、日本人従業員の基本給等、それから米軍が公用に調達する光熱水料等に限定いたしまして、それについて今回の特別協定日本側が負担する、そういうことでございます。  五年後のことにつきましては、ちょっと先ほど来累次答弁いたしておりますように、今の段階で特に考えているわけではございません。
  361. 永末英一

    永末委員 そういうのは詭弁というのですな。労務費に関する歴史を申し述べつつ、なら労務費についてはこれはほとんど大部分ではないか。あなたの方はそうでなくて、二十四条を引っ張り出して、そのうちの日本側が労務費だけを限定しているのだ、そんなことを限定という言葉は、これは通らぬでしょうね。洋食食べに行ったら和食が出てくるような話だから。  さて、暫定というのは、これは外務大臣に聞きたいのですが、米ソがある意味ではデタントになった。ヨーロッパでは、NATOも変わってきますが、ワルシャワ条約機構はもう壊れてしまった。したがって、アメリカでは湾岸戦争の始まる前には軍縮をやろうというので、ことしの初め以来アジア太平洋においても軍縮を、すなわち基地を撤去し、部隊を減らすということを明らかにしておるわけですね。アメリカの軍事予算を削る、こういうことで、アメリカ自体では軍需工場を少なくしたり部隊をまさに減らしたりで大騒ぎをしておったわけであります。それに見合って財政負担を日本に求めようという機運が強かった。そのいわば財政負担の一つに労務費があったわけですね。したがって、アメリカ湾岸戦争が終わりまして新しい軍事配備をやっていくわけですが、この傾向は変わらない。そうしますと、今労務費を全部持てば、五年でもとに戻るのではなくて、続いていくと見ていくのが本当でしょう。いかがですか。
  362. 中山太郎

    中山国務大臣 現在のこの特別協定日本が自主的に判断をして結ぶという考え方に至りました背景には、私は、このアメリカ国際戦略というものも含めて、やはり日本アメリカの間の経済力の問題が一つあったと思います。恒常的な貿易赤字、それから経済力は日本が非常に強くなってくるという中で、正面装備と米国軍人の給与を引いたものを見てみますと、大体今までの協定では七対三ぐらいの負担率であったと思います。それで、やはりイコールパートナーシップという形でこれから日米対等でいろいろと協議をするという日本考え方というものからまいりますと、経済力にふさわしい応分の分担を行うことは、日米関係の有効性あるいはまたこの安全保障条約を有効に機能させるという一つの大きな目的を堅持していくための必要な措置ではないか、このような判断をして自主的に決定をさせていただいたということを御理解いただきたいと思っております。
  363. 永末英一

    永末委員 外務大臣、あなたは、そのイコールパートナーシップでやるのだから、それで日本の国は経済力を非常に大きく持っている国だから、フィフティー・フィフティーでも持てるだろう、最後のフィフティー・フィフティーはございませんが、そういう意味だったと思うのです。  ところで、その在日米軍基地というのは、最初の安保条約に基づく基地、それをまた今回の一九六〇年の安保で引き継いで、地位協定をつくって施設区域を貸しておる。それは米ソ関係が変わったので意味が変わっておると私は思うんだな。つまり、アメリカ米ソのいわば合戦と言えば角が立ちます、争いがアジア太平洋で起こるために前進基地として日本の領土内、沖縄を含めましてそれを持っているときと、これからアメリカがこの日本における基地を使おうとするのは意味が違ってきておる。私は、経済力だけではなくて、一体そのアメリカの戦略の変化に対してもフィフティー・フィフティー、イコールパートナーシップとしてつき合うかどうか。アメリカ日本側に労務費を持てと言ってきておるのは、まさしく日本の方針もまた今のようにアメリカ日本列島線に前進展開基地を持っておるその方針と一緒にやってくれるのかと言うていると私は思うのです。現に言うておりますよ。あなたはその点についてはイコールパートナーシップですか。
  364. 中山太郎

    中山国務大臣 日米安全保障条約の効率的な運用を図るために、かねて日米間の安保協議会というものがございました。委員もよく御存じのとおりであります。しかし、考えてみますといかにも偏っている。アメリカは駐日大使、それから在日米軍司令官、日本外務大臣と防衛庁長官、こういう協議体制ではイコールパートナーシップはならない、私はそういう意味で昨年アメリカ側に対して、アメリカの国務長官と国防長官、日本は防衛庁長官と外務大臣、このツー・プラス・ツーの姿勢を堅持してもらわないとこれからの日米関係というものは対等に協議ができないのじゃないか、こういうことでアメリカ側がのんだわけであります。私はそのような考え方で、今後とも友好関係を堅持しながら日本安全保障も維持していかなければならない、このように考えております。
  365. 永末英一

    永末委員 今の外務大臣のおっしゃったことは本筋の話ですね。つまり、在日アメリカの大使と在日米軍の司令官がこっちの大臣とやっておるというのは占領の継続ですね。したがって、イコールパートナーでやろうというのだったらお互いの政府の責任者が出て相談すべきである。その一環として労務費を持つのだったら暫定的ではありませんね。これでいくんだぞ、だから労務費は全部持ちます、こういう話じゃないですか。
  366. 中山太郎

    中山国務大臣 これが継続的に、永続的にやっていくかどうか、永続的じゃないかという委員からのお尋ねでございますけれども、一応国際情勢の変化、また日本自身のこれからの経済力の問題、まあ私は五年後にどのような状況になっているかということを今日の時点で決定的に申し上げるべきではないと思っておりまして、現在の日本状況が続けばこの条件のもとで日米安保条約を効率的に運用していける、しかし五年後は、またその時点を前にして政府としてはよく検討の上で国会にもいろいろと御相談をしなければならない、私はこのように考えております。
  367. 永末英一

    永末委員 私は永続的にと言ったことは、永続的とお受け取りになったようだが、今は何も日本におる軍事基地を五年以上ももっと持っておれ、そんなことを言っているのじゃ一つもございません。それは、我々から減らせという要求は何ぼでもしていけるわけでございます。ただ、最初地位協定でもってこの米軍基地に勤務している我が日本側の労働者については米軍が払っておったものをだんだんと我々が払うようになった、そして今や全額払おうとしておる。旅費が残っております、そんなものはだめだよ、それは別の話だ。したがって、それは外務大臣が言ったようにイコールパートナーシップ、五分五分でやるのですよ、そこまでいけばお互いの政治の責任者が出てくるわけだから、アメリカの戦略そのものについても我々は言い分があってしかるべきだと思う。  さて、この間シドニーへ行きまして社会主義インターナショナルの首脳会議でいろいろ彼らの考え方も聞きましたが、ソ連をどうとらえるかで非常に困っているのですね。ソ連状態が非常に、ペレストロイカを振りかざしてゴルバチョフが民主化をやっておったときと、シェワルナゼ外相がやめて、そしてバルト三国が独立を目指してどんどん国民投票のような世論調査もやっておる、そして三月十七日に一斉に連邦の形を問う投票を行いながら、実はゴルバチョフ政権の評価がこれは問われるわけでございます。  さて、我々が太平洋を見たときに、日本安全保障を見たときに全く解せないのは、アメリカはINF、すなわち中距離核戦力の全廃をソ連と相談してやめました。太平洋における戦略核兵器を中心とした海の軍縮を一体どうしようとしておるのか、それを触れるところがない。しかし我々は、自衛隊を三兆五千億、四兆円も金をかけてやろうとしておるという、その分量の、海と空の問題は、今まさしく海の戦力に関係する。私は、戦略核兵器について日本はもっと強く減らせという主張をすべきである。あなたはどう思いますか。
  368. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、戦略核兵器を一定限度削減していくという方向は一つの大きな流れではないか、またそのような考え方が正しいもの、このように理解しております。
  369. 永末英一

    永末委員 我々は核兵器の被害を受けまして、それだけに核兵器の何たるかを肌身にしみて日本国民はわかっておるのでございます。それをつくって投下した方もだんだんとわかってきたと思いますが、これは先ほどのようにアメリカと五分五分でやるのだったら、まずアメリカを決心せしめてソ連交渉せしめねばなりません。私は、今ソ連はバルト三国から核兵器を、存在しておったものをこちら側へ引き揚げている情勢から考えて、核兵器、殊に戦略核兵器というのはソ連邦の統一のためにあれらは必要としているのではないかとすら今疑っておるのです。それが通っていくならばアメリカもまた戦略核兵器を持とうとする。それは日本の予算の配分に非常な影響を及ぼす問題ですね。  日本の一番大きなアジア太平洋の平和に関する目標は、まず人類を殺りくするような戦略核兵器、アメリカソ連とが敵意がないと言うならばそのあかしとして戦略核兵器を減らし続ける、これを日本外務大臣は声を大きくして二つの国に迫って実行させるべきだと思いますが、どう思いますか。
  370. 中山太郎

    中山国務大臣 被爆国である我々日本といたしましては、核の廃絶ということが一つの大きな国家理想である、核爆弾の廃絶ということが国家理想である。また、国連総会等におきましても日本は唯一の被爆国としてこの点を強く主張をいたしておりまして、私どもは今後米ソ両国に対しましてもできるだけ核の削減、これを強く要請していくということが必要であると考えております。
  371. 永末英一

    永末委員 私は、今の戦略核兵器に対する日本側主張を強くすることは、もう一度日米安保体制意味を反省させる出発点になると思うのですね。我々が一体なぜアメリカに今のような形での軍事基地の貸与を認めておるのか、これがどれだけ必要なのかということは、アメリカ自体が戦略が変われば変わってくるわけであります。しかし、我々もまた強大なソ連の圧力があるからアメリカの力を必要としていた時代は、私は過ぎ去りつつあると思う。その辺の判定はなかなかのことでしょうけれども、その見通しをきちんとするならば、日本におけるアメリカの軍事基地対策、そしてそれにまつわる我々の防衛政策もまた違った意味合いを持ってくる。その意味合いで、この労務費を持つということは私はもっと違った形で光を当てるべきだと思うのです。  アメリカから言うと、そのうちに、先ほど話が出ましたが油代も払えとか修理費も払えと言うかもしれませんが、五分五分なら、戦略について同一ならばどんどんその金を払って持つべきものは持っていけばよろしい。しかしそれは、日本の安全とアジア太平洋の安全、世界の安全のために我々の言い分をのませていって初めて成立することですね。そんなこと何も言わないで金ばかり払うというようなことをやりましたら、あれは小切手外交やっておると言われますね。その辺どう思われますか。
  372. 中山太郎

    中山国務大臣 まず、安全保障というものは我々の日本のために、これが大前提であります。その後に、日本が、海洋国家として貿易国家としてこの国が生存するために、やはり海洋の安全という意味から日米安全保障条約という条約によって、アメリカの海軍によってアジア太平洋の海の安全を確保することが、この国にとっては絶対必要な条件であったと私は思います。また、これからソ連極東における海軍戦力をどれだけ削減をしてくるのか、これも十分見定めていかないと我が国の安全の問題は確保することは非常に難しい。私は、そういう意味で、ペレストロイカの先行きの不透明、ソ連の軍部のどのようなこれからの動きが出てくるのか、そういうものも十分見きわめながら、我々は自国の安全保障というものを当分の間、自分の専守防衛の自衛隊と日米安全保障条約によって補完をしながら抑止力の効果を上げていく、こういうことの政策を堅持しなければならない、このように考えております。
  373. 永末英一

    永末委員 外務大臣、今海のことを口にされましたが、海洋戦力というのは一朝一夕にしてできない。よく日本の側の、ソ連の海軍の勢力判定をやる場合にどんどんふえておるという。それは五年ほど前に考えたやつを実施しますから、きのうときょうとどうだといえばふえておりますよ。しかし、継続的にその海軍が持てるかどうか。陸軍は持てないですね、ソ連はもう。徴兵忌避があちこちに広がっておる。しかし海軍は違う形で持っておるから、まだ続くかもしれない。しかしソ連の経済をしっかり見きわめれば、艦船の補修能力、維持能力、いわんやこれから新しいものをつくっていく能力、例えば新しいものをつくったって、それの戦闘能力等を考えれば、ここで日本もまた、戦略核兵器については彼らだけが持っておるのだから減らせという要求だけれども、海のことについては別途の角度から、海の軍縮会議やろうではないかという申し入れをし、それを実現されるおつもりはございませんか。
  374. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、海の軍縮というよりも、むしろアジア太平洋安全保障という問題をこれからどう考えるか、これを米ソも含めて考えていかなければならない、そういう状況がまずつくられることが必要ではないか、このように考えております。
  375. 永末英一

    永末委員 北東アジア一つの問題は朝鮮半島だと私は思います。したがって、今北朝鮮から日本の国に国交正常化への動きが始まっておる。また北と南との首脳級会談もある、まあチームスピリットあるからやめろとかいろいろなことをやっておりますが、それは大勢だと思います。しかし、それは経済的に言うならば、一つの自由経済の中へ北朝鮮もまた入ってこなければ成立しない。朝鮮半島が融和状態になれば、日本の防衛構想は一変するわけですね。  したがって、我々は今北朝鮮との国交正常化に臨んでおりますが、同時に北朝鮮と南との交渉日本北朝鮮との交渉だけではなくて朝鮮半島二つの国、そして、その周辺諸国である日本朝鮮に軍隊を送っておるアメリカと、なお北朝鮮同盟関係にあるソ連とこちら側におります中国、この六カ国で朝鮮半島における緊張緩和への方向を相談してみるおつもりはございませんか。
  376. 中山太郎

    中山国務大臣 貴重な御意見として十分検討させていただきたいと思います。
  377. 永末英一

    永末委員 これはだれかがやはり発想せなければいかぬのですね。アメリカ北朝鮮なんというと真っ先に核施設をつくっているのじゃないかというようなことを言っておりますが、そこにこだわりを持つのではなくて、北朝鮮もいろいろなことを今考えておると思います。我々の方も似たようなことをいろいろやってきたわけでございますけれども、意見として考えているのではなくて、大体時期が来ておる。中国ソ連との国境におきます兵力縮減や兵力引き離し、まだ結論がついていない、それはソ連に事情があると私は思いますよ。しかしながら、ソ連もそれだけの事情を持っておるのだから、四月にゴルバチョフ大統領が来れば──来ればですよ、そういう問題も提起されたらどうですか。
  378. 中山太郎

    中山国務大臣 この北東アジア安全保障朝鮮半島の安定の問題に関連するものはもちろん中国であり、ソ連であり、アメリカであり、日本であるというようなことを考えてまいりますと、今委員お話しのように、ゴルバチョフ大統領もソ連外交政策の一つとしてウラジオストク演説等で、いろいろな意見がかねて出されておりますけれども、我々はアジア太平洋安全保障のために、日本としては触媒の機能を果たすべきだという考えを持っております。
  379. 永末英一

    永末委員 しっかりやってください。終わります。
  380. 牧野隆守

    牧野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十五分散会