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1991-03-06 第120回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月六日(水曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 牧野 隆守君    理事 新井 将敬君 理事 園田 博之君    理事 中村喜四郎君 理事 浜野  剛君    理事 原田昇左右君 理事 上原 康助君    理事 高沢 寅男君 理事 遠藤 乙彦君       麻生 太郎君    伊東 正義君       岩屋  毅君    衛藤 晟一君       奥田 敬和君    鯨岡 兵輔君       田名部匡省君    福田 康夫君       宮下 創平君    柳本 卓治君       井上 普方君    岡田 利春君       川崎 寛治君    川島  實君       松原 脩雄君    神崎 武法君       玉城 栄一君    古堅 実吉君       和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房審         議官      野村 一成君         外務大臣官房審         議官      川島  裕君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         大蔵省国際金融         局次長     江沢 雄一君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      橋本  宏君         外務大臣官房審         議官      河村 武和君         参  考  人         (日本開発銀行         副総裁)    緒方十郎君         外務委員会調査         室長      市岡 克博君     ───────────── 委員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     岩屋  毅君   石原慎太郎君     衛藤 晟一君   山口 敏夫君     柳本 卓治君 同日  辞任         補欠選任   岩屋  毅君     伊東 正義君   衛藤 晟一君     石原慎太郎君   柳本 卓治君     山口 敏夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  欧州復興開発銀行設立する協定締結について承認を求めるの件(条約第七号)  オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書改正受諾について承認を求めるの件(条約第八号)      ────◇─────
  2. 牧野隆守

    牧野委員長 これより会議を開きます。  欧州復興開発銀行設立する協定締結について承認を求めるの件及びオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書改正受諾について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  欧州復興開発銀行設立する協定締結について承認を求めるの件のため、本日、日本開発銀行総裁緒方十郎君を参考人として御出席を願い、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 牧野隆守

    牧野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  4. 牧野隆守

    牧野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎寛治君。
  5. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ソ連東欧と西側が共同参加するという意味では初めての国際金融機関ができまして、そしてそれがいよいよ発足、活動開始、こういうことでございますので、その意義は大変大きい、歴史的なものだと思います。  そこで、これは大変外務大臣に失礼ですが、少しお尋ねをしたいんです。つまり歴史的だという意味を、それは二十世紀、まああと十年で二十一世紀ですから、そういたしますとその二十世紀における政治的な三大事件は何だ、こう聞かれましたら外務大臣はどうお答えになりますか。伺いたいのであります。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 二十世紀の三大事件は何かというお尋ねでございますが、まず今世紀では第一次世界大戦、第二次世界大戦共産主義体制の崩壊、これら三つだったと思います。
  7. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 一九一七年のロシア革命というのがやはり二十世紀一つの大きな出発であったと思いますね、革命と戦争という意味では。それから、今言われたように第二次世界大戦というのは、新しい東ヨーロッパあるいは中国なりベトナムなりというのが新しくそこから出てくるわけですから。第三番目には、やはり一九八九年の東ヨーロッパ革命という、いわばフランス革命の二百年祭のときにそれが出てきたわけですから、自由と民主主義というものを求める意味での大きな下側からの、そしてドイツ統一、こういうところに来ておるわけです。  そういたしましたら、今後の欧州復興開発銀行というもののキーワードは何かといえば、市場経済への参入、こういうことでございまして、それは大変大きな、決して目指している方向に簡単に一直線には行かぬわけですから、ジグザグのコースを今それぞれたどっておると思います。そういたしますと、ゴルバチョフのペレストロイカに始まりましたこの東ヨーロッパ改革、あるいはソ連自体が今非常に苦悩しておるわけですが、そういうものの歴史的な転換をどう把握していくかということは人類にとっても非常に大きな課題だ、こういうふうに思います。  そういう意味では、これは後ほど日ソの問題についても具体的にお尋ねしますが、日本政府はそういう大きな転換、つまりペレストロイカ評価というものの見方についてはおくれておったと思います。その点は冷戦構造にしがみついておったわけでありますから、そういう意味では、日本政府はそういう大きな歴史転換――それはアジアが変わらないということの一つ日本だと思うのです。だから、日本が変わればアジアが変わってくるという大きな要素があるわけですから、その点は後ほど別の機会にじっくり議論をし合いたい、こういうふうに思います。  そこで、復興開発銀行について具体的にお尋ねをしていきたいと思いますが、この銀行融資の 方面というのは、六〇%が合弁企業設立だとか民営化などになり、あといわゆる基盤整備などの公的部門というのは四〇%、こういうことになりますが、その百億ECU、これで果たして、そういう今の大きな転換をしていくてことして十分なのかどうかという点について伺いたいと思います。
  8. 橋本宏

    橋本説明員 お答えさせていただきます。  今度設立の運びとなっておりますこの欧州復興開発銀行規模につきましてどの程度のことにするかということにつきましては、過去関係国の間でいろいろ議論があったわけでございますけれども、主要国の意向としては、既存の世銀等国際機関の存在を前提とした上でそれを補完する意味でのこの欧州復興開発銀行をつくろうということで、百億ECUというものがちょうどそれに合った規模ではないかということでこのような規模銀行として発足したというふうに承知しております。
  9. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 承知していますじゃなくて、これで十分ですかと言っているのです。いわゆる民間部門が六〇%ですが、そういうことで合弁企業設立とか民営化とかそういうことのてこをやろうというのがこの目的になっておるわけであって、そうしますと、道路とか港湾整備とかそういうものは余り十分いかぬわけですね、四〇%ということにはなっていますが。そうしますと、道路とか港湾整備とかいういわゆる基盤整備公的部門というものについては、これは要求もあると思うのですが、どういうふうに判断をし、だから、それは国際的にどうしようとしておるのか聞いておるわけです、適当だというのではなくて。
  10. 橋本宏

    橋本説明員 どうも失礼申し上げました。  この銀行設立に関する交渉過程におきまして、そもそもこの銀行目的というものについてどこを重点に置くべきかという議論が行われまして、一つの大きな考え方として民間部門育成ということがポイントとなり、もう一つの方として、民間部門育成を図るに当たって先生指摘インフラ部門もやらなきゃいけないだろうかという議論が出ました。その過程で、余りインフラ部門に力を入れるとなると、この銀行規模自身が非常に大きくならざるを得ない、しかしながら、この銀行のそもそもの目的民間部門育成にあるということから、民間部門を主としインフラ部門育成は従にしようということで、民間部門を六〇%、インフラ部門は四〇%にしようということでこの銀行規模を決めたものでございます。
  11. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 だから、そのインフラ部門公的部門はどういう支えをするんですか。それはそれぞれが頑張れ、こういうことなんですか、それともインフラ部門はどうしようという話し合いになっているんですかということです。
  12. 橋本宏

    橋本説明員 このインフラ部門といった場合には、道路だとか橋とかいうことのみならず、例えばその国の市場経済原則に従って経営できるようなマネージメントをトレーニングするというところまで含めているわけでございます。インフラ部門につきましては既に世界銀行というものもございますし、関連欧州機関もあるということで、それの補完をするということで今後は各加盟国との間で話し合っていかなければなりませんけれども、民間部門の直接の育成に裨益するようなインフラということについて加盟国銀行の間で特定事業計画をつくりまして、それで実施していこうということになっております。
  13. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは東独、つまりドイツ統一の前ですよね。そこで、東ドイツ、DDRに一・五五%、これは東ヨーロッパの方では高い方ですが、その出資枠が決められておったわけですが、これはどういうことになるのですか。つまり、統一がいつというのは、あのころ、これを議論したときにはまだなかったわけですが、しかし統一後もドイツ出資枠は一定、日本と同じ、こういうことでございましたが、この一・五五%の東独分というのはどういうふうになるんですか。
  14. 橋本宏

    橋本説明員 先生指摘のとおり、この条約協定が調印されましたときにはまだドイツ民主共和国が存在しておったわけでございます。その後、ドイツ民主共和国ドイツ連邦共和国に編入される形で統一が行われたということになり、EBRDにはドイツ連邦共和国のみが加盟することとなりました。したがいまして、旧東独に割り当てられておりました株式につきましては、未割り当て分として取り扱われることになったわけでございます。
  15. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 次に、この協定の非常にもめた点ですが、特に日本アメリカが非常に慎重というか、批判的でもあったわけですが、この協定の不可分の一部として添付されております、ソビエト社会主義共和国連邦の書簡というのがつけられておるわけですが、この協定の発生から三年間銀行への財源の利用というのは制限するということをみずから提起したわけですね。しかし、既に今もっと欲しいという言い方も別にしております。  この点で、それらに関連をして二、三お尋ねをしたいと思いますけれども、まず第一には、このEBRD設立準備に当たってアメリカ日本対ソ融資に非常に批判的であったということが随分報道されたのです。なぜ対ソ融資に批判的であったのか。これは先ほどのペレストロイカ評価とも絡む問題でもあろうかと思いますが、日米がこの問題について、非常に対ソ融資に批判的であった。ただ、広げればたくさん借りられちゃう、だから反対だということなのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  16. 橋本宏

    橋本説明員 協定の実際の交渉が始まる前、また実際の交渉が始まってしまって以降、その過程におきましてソ連の取り扱いをどういうふうにするかということにおいていろいろな意見が出たことは事実でございます。今先生が御指摘のように、対象となる中欧・東欧諸国の中でソ連というのはやはり非常に大きな国、超大国と言っていい国でございますので、ソ連とほかの中欧・東欧諸国とを同じふうに扱うということになりますといろいろ問題が出るということでございまして、したがってどのようにしてソ連受益範囲をするかということについていろいろ意見が出たわけでございます。  結局本件につきましては、ソ連も含めまして今先生指摘のように、三年間は自分が払い込んだ資本範囲内でこの銀行の諸機能の適用を受けるということになったものでございます。
  17. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 EC側日米というものの間の一番食い違った点、意見の対立した点は何ですか。
  18. 橋本宏

    橋本説明員 繰り返して恐縮でございますけれども、ソ連というのはやはり超大国ということで、そしてまたソ連みずからも他国に援助している国であるということから、果たしてソ連というものがほかの中欧・東欧諸国と同じようなステータスでもってこ銀行に参加するということが適当であろうかということ、そのことをめぐっていろいろ議論が行われ、しかしながらソ連における民主化ペレストロイカ動きを不可逆的にする意味でやはりソ連には参加してもらわなければならない、しかしながら参加していただくに当たってはその受益範囲というものを限定してもらわなければならぬということで、ソ連も含めて先ほどのような限定されたものになったわけでございます。
  19. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そこで三年間という期間を置いたわけですね。そうすると、三年後に見直し、こういうことになりますけれども、そうしましたら見直しという場合にソ連側要求といいますか、東欧諸国並み受益国とするというふうにといいますか、見直していくということのためには、しかし結局日本アメリカが反対すればこれはもう見直しができぬわけですよね。その点、見直しのためにはどういう改善が必要になりますか。
  20. 橋本宏

    橋本説明員 ソ連に対する融資制限が撤廃されるためには、協定上、総投票権数の八五%以上を代表する総務の投票を必要とするというふうにされております。この制限が、このような投票権数を得て三年後に撤廃されることとなるか否かにつ きましては、現時点で見通すことは困難でございますけれども、我が国といたしましては、その時点におけるソ連における諸般の改革進捗状況を含むソ連国内情勢ソ連を取り巻く国際情勢等を勘案しつつ、総合的に判断していくこととなろうかと思います。
  21. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この協定が成立というか協定が妥結されましたときに、大蔵省内海財務官が、これは新聞報道によりますと、マルクでもポンドでもフランでもないECUドルと円が三極を代表するものとして初めて採用されたことの意義が大きいんだ、こういう点を大変強調しておられるのですが、この点について外務大臣はどうお考えになりますか。
  22. 中山太郎

    中山国務大臣 当時のことを回想いたしますと、橋本大蔵大臣がこのEBRD設立に当たって日本の円がその中に認められるということは日本のいわゆる経済力が高い評価を受けたものだという認識を持って発言をされたことを記憶いたしております。
  23. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そこで、このことは円相場の安定につながるのだ、こういう言い方を当時大蔵省側は大変強調しておったのですが、その点いかがですか。
  24. 江沢雄一

    江沢政府委員 お答え申し上げます。  今外務大臣から御答弁がありましたように、欧州復興開発銀行払込通貨として円が認められたということは、円の国際的通貨としての地位が改めて認められたということでございまして、円の信認を高め、ひいては円の魅力を増すということは御指摘のとおりでございます。しかし、為替相場はさまざまな要因によって動くものでございまして、特定要因のみを取り上げてその相場に対する影響を申し上げることは困難であるということは御理解いただけると存じます。
  25. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 確かに円の地位が高くなったということは言えると思いますね。円通貨圏だ何だというアジアでのいろいろな議論も出てきております。しかし、一方でまたそれは警戒をされる問題でもあるわけです。しかし実際には円がなかなか使われない。円がなかなか使われないということは何が原因ですか、大蔵省
  26. 江沢雄一

    江沢政府委員 円を国際化するべく大蔵省としても環境整備に努めておりますけれども、これは基本的に実際の取引が民間でどのような通貨で行われるかということにかかっておるわけでございまして、これはいろいろな要因があろうかと思います。国際的な商慣行が依然としてドルが中心として取引されておるというふうなこと、あるいは円の魅力がまだ十分でないというふうなこと、いろいろあろうかと思います。これは当局として推進することはなかなか難しいわけでございまして、そういう円が国際的に使われる環境金融市場等自由化を通じまして促進していくというふうなことかと存じます。
  27. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 経済的な問題と同時にこれは日本政治的な評価というか、要するに信頼関係というものが大きいと私は思いますね。だから特にアジアで、これからも問題になるんでしょうけれども、日本に対する政治的な信頼関係、つまり経済的には大国だ、だからうんと投資をしてほしい、経済協力をしてほしい。しかし、一たん自衛隊を出す、そういうふうな場合にはすぐ、最も関係の深い韓国や中国や、そういうところからもそれぞれぱっと批判が出てくる。こういうことで、そういう政治的な信頼関係というのが決して十分ではない。それはつまり、世界政治の中における日本の役割の定め方というか方向づけというものが明確でないというか、そういう信頼関係というものが、私はやはり一つあると思うのですね。  それはすぐ大東亜共栄圏だなんだというものに発展してしまうところに問題があるわけです。だから、そういう政治的な信頼関係というのを本当につくるためには、第二次大戦の結末をまだつけていないというドイツヨーロッパにおける努力からしますと日本はおくれておる、こういうふうに思います。その点、外務大臣いかがですか。
  28. 中山太郎

    中山国務大臣 東ヨーロッパ国々を回ってみた率直な感想を申し上げますと、東ヨーロッパ自由化民主化を進めている国々は、やはり統一するドイツ経済力、これが新しく民主化する国々に対してどのような影響力を深めてくるかということについては、私が直接いろいろお目にかかった方々、大変な不安を持っておられる、これは事実だろうと思います。
  29. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは答えになっていないのですよ。ドイツがもう一遍ヨーロッパにおける覇権国家として大きくなっていくことは、統一とともにその点は非常にまた出てくるわけです。しかし、統一に当たってコール首相にしてもワイツゼッカー大統領にしても、我々はヒトラーの罪を背負っていく、そういうことを明確にしながら、つまりヨーロッパにおける信頼関係をつくることには、七〇年代のブラント政権東方外交以来、それを積み重ねてきているわけです。あるいは、ポーランドに行って無名戦士の墓にぬかずいてその罪を謝るとか、ポーランドドイツとの間の歴史の教科書の見直しをするとか、そういうことを続けてきているわけです。だから、経済覇権国家としてのそういうドイツへの不安というのは確かに非常に大きい。しかし一方では、日本がまた出てくるんじゃないかという、その日本への不安の仕方と質が違うのですよ。  だから私は、政治的に日本アジア信頼関係を持つためには、経済大国になり、これから冷戦後の新しい秩序という中でございますから、それだけにその点のアジアとの関係をもう一遍一つ一つきちんとしていくということについては細心の注意が必要だ。だからそのためには、この際に国際貢献として自衛隊出さにゃいかぬということに、七カ月間外務省は何をしておったか、日本は何をしておったか。自衛隊を出す、自衛隊機を出す。結局それはできなかった。そういうことで日本はこの七カ月間終始をしたわけです。私は、日本国憲法のもとにおける平和主義というものを徹底していけば、それなりにやれたと思うのですよ。そこは後ほどやろうと思っていたのですが、ここに今出ちゃったから少しここでやってもいいのですけれども、そこのところが、つまり日本の円が使われないということの背景でもある。いかがですか。
  30. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほど東ヨーロッパのお話にお触れになりましたが、私は、今回の統一に当たってドイツ首相が、ドイツのためにヨーロッパがあるのではない、ヨーロッパの中にドイツがあるのだというせりふを吐かれたことは大変印象に残っておりますが、アジアにおいても我々は経済協力でODAの七〇%近い、六五%ぐらいをアジア国々繁栄のために協力をしてきた。そういういろいろな積み重ねが今日アジア繁栄にいささか貢献ができたのではないか。また、日本からの技術移転資本移転、こういうことによってアジア経済圏というものは大きくなってきた。そういう中での日本平和国家としての一つの行き方、これに対する信頼関係も、積み重ねでできてきたと私は思います。  しかし、今委員から御指摘のように、このアジア国々自衛隊機日本が出すということについての過敏な反応があったということについては、それは第二次世界大戦において日本がこの地域の人々に大変な迷惑をかけたという、この傷跡がまだいえていないし、その思い出が一つ日本の新しい動きに対して異常な反応を示したのではないか。我々外務省としては、この日本の平和的な考え方というものを積極的に外交の面で理解していただくように今後一層の努力をしなければならないと考えております。
  31. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 戦後四十五年たってなおかつ理解されてないということの意味は大きいですよ。理解してもらうために努力するんだと言っておるのですが、では具体的にどうしようというのですか。具体的に何をしていこうというのですか。そういうのがなぜ残っておるのか。残っておるというよりも、なぜそういうのが大きくあるかということでしょう。  それは、冷戦後の経済関係というのは、これか らいよいよ国際経済というのが国際政治の大きな課題になってくるわけですよ。だから、ポスト冷戦という場合の非常に大きな課題なんです。特に地域紛争、南北問題にどう対処していくか。そういう場合、日本アジア信頼関係をつくっていくということの意味は非常に大きいわけですから、そうしましたら、今、これから努力していくんだという、その努力方向を具体的にお示しください。
  32. 中山太郎

    中山国務大臣 アジア国々からの信頼日本がさらに一層深めるという一つ考え方というものは、幾つかの国がありますけれども、いろいろなことをやる場合に二つの国として一緒にやっていく。例えば、私が外務大臣になってから志していることは、カンボジア和平会議東京で行うといった場合に、タイ政府から、そういうことを日本もひとつ一緒にやってみたらどうか、こういう話がございましたから、私は即座に、まことに結構な考え方だということで、日本政府場所を提供する、タイ政府がいろいろなアレンジで協力をする、こういうことで昨年の六月のカンボジア和平会議東京でやった。  また、九月の国連総会のときには、インドネシアのアラタス外相と私と二人が、ソ連アメリカ、カナダ、オーストラリアを含めてASEANの国々外相あるいは中国外相も入れて十五カ国の外相と初めてニューヨークで夕食を一緒にする場所をつくることに一応形をつけたわけでありまして、何といいますか、できるだけ二つの国が力を合わせていろいろなことに取り組むということが努力される中で、日本との相互信頼関係は一層深まっていくという考え方で私は今日までやっておりますけれども、今後ともそのような関係を持ちながら、各国との信頼関係共同作業の中で深めていくという努力をしたいと考えております。
  33. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 大いに努力してください。  開発銀行の副総裁、どうもお忙しいところ、しかも急に済みませんでした。これは委員長にもお願いしますが、委員会の持ち方が、急に開かれるものですから、あらかじめいろいろなことを検討し、そして準備をするということができなくて、きのう夕方になってこれはお願いしたいなということで急にお願いしたものですからあしからずお願いしますと同時に、これは外務大臣にも言い分があると思うけれども、この外務委員会の持ち方については少しきちっと開いていくようにしてほしいということを委員長に要望しておきたいと思います。答えはいいです。  開発銀行さんは、日本地域開発、一極集中の中で特に私のような鹿児島のへんぴなところがありますから、開発銀行地域開発資金というもののあり方などもよく見てきております。大変御苦労いただいておることに感謝します。きょうは何か高橋総裁は鹿児島の方だそうですからなおさら結構ですと、こういうことを申し上げたわけでございますけれども、開発銀行からごらんになって、四十年間の開発銀行としての、つまり地域開発あるいは企業の発展、そういうものについての御経験を持っておるわけですが、そして、今度は開発銀行からも人材をお出しになるというふうに聞いておりますが、ただ資金が欲しいというだけではなくて、ノーハウが欲しいのだというのが、これは欧州復興開発銀行の場合の大きな点でもございますね。  そうしますと、そういういわば知恵つきの資金というか、そういうものが要求されるのだろうと思うのですが、開銀の立場から見て、欧州復興開発銀行の運営についてどういうノーハウをあなた方は持っていって大いに役立たせようとしておられるのか、伺いたいと思います。
  34. 緒方四十郎

    緒方参考人 お答えいたします。  私どもの日本開発銀行は、今お話がございましたように、本来は日本の国内の開発をする銀行でございますが、今度の欧州開発銀行に対しては二つの面から御協力ができる面があるのではないか。一つは、今おっしゃいました知恵でございますが、知恵は二つの面があるのではないか。一つは、今既に御指摘地域開発に関することでございます。これは日本の問題と欧州の問題が似ているのではないか。  例えば、日本を見ますと、東京に首都集中ということが起こっておる。それからまた九州では博多集中、北海道では札幌集中ということが起こっておりますが、集中とは何かといえば、結局人口移動が起こっておることで、言いかえればヨーロッパにおいて東ドイツから西ドイツにその移動が非常に行われておる。このまま東ヨーロッパが十分に開発しませんとまた東ヨーロッパからも人が動くかもしれないというふうな点におきましては、日本の現在の経験が実は欧州の経験と非常に符節を合しておるところがあるということでございますので、私どもが及ばずながら地域開発ということで、地域をよくして、日本をもっと地域的格差の少ない社会にしたいと努力しておるいろいろなノーハウがひとつ活用できるのではないかというのが第一点でございます。  第二点は、最近になりまして欧州開発銀行の対象国になっておりますような、例えばチェコスロバキアであるとかポーランドであるとかルーマニアであるとかいうところから、昨年の九月ごろから、やれ大臣であるとか中央銀行総裁であるとかあるいは重要な省の次官であるという方が開発銀行に来られまして、日本の戦後の経験をひとつ教えてほしいということを言われるわけです。というのは、これらの国々政治自由化と同時に、経済改革を進めたいわけなのですけれども、どうもいきなりアメリカ市場経済にジャンプするのはちょっと行き過ぎではないか。  もちろんポーランドのように非常に過激にやっておるところもありますが、そこで、日本が戦後徐々にやってきたやり方に学ぶところはないか、そういうふうな点で、開銀が昔できましたときには、例えば電力、海運、それから石炭、鉄鋼というものに主として融資しておりましたのが、今私どもの融資残高を見ますと、エネルギー部門は相変わらず大きいのですが、都市開発地域開発というものに変わっておるというような動きを非常に興味深く眺めて学びたいと言っておりますので、あるいはこういうことで貢献ができるのではないかと思います。  それから、もう一つ蛇足ですがつけ加えますと、これは人材の供給でございまして、既に、今も御指摘がございましたように、まだ銀行は正式に成立していないわけでございますが、開銀の職員が一人ロンドンの準備委員会の中に入って働いておりまして、でき得れば正式に成立後そのまま働き続けて、開銀で身につけたノーハウを実際にその人物を通じて使ってもらいたい、こう考えております。  以上でございます。
  35. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ありがとうございました。大変お忙しいところ恐縮でした。結構です。  そこで、今副総裁からいろいろお話がございましたが、この総裁になりましたジャック・アタリ氏が、融資政策の決定に必要な情報を得るためには東ヨーロッパ諸国に小規模な事務所を開設する必要がある、今言われたように各国それぞれ条件もありますし、あれですから、そういう情報を集めるためには小規模な事務所が必要なのだということを言っております。そうしますと、ソ連のほかハンガリーとかルーマニア、ポーランド、ユーゴの四カ国からは自国内に支店を開設してほしいという要請が既に出されておるわけでありますが、日本としては、これに臨むに当たりまして、そういう基本的なことといいますか、こういう問題についてどうお考えになり、臨もうとしておるのか、日本政府考え方を伺いたいと思います。
  36. 江沢雄一

    江沢政府委員 そういう提案があることは聞いておりますが、また東欧との関係を緊密にする上でそういう事務所を設置することは望ましいと当方としても考えておりますが、具体的にどこにどういう形で設置するかはこれから協議をしていく問題だというふうに承知しております。
  37. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういうことでしたら、そういうことでぜひ進めてもらいたい、こういうふうに 思います。  次に、ソビエトの問題に少し入りたいと思います。  ペレストロイカが死んだ、こういう評価もあります。しかし、これは死なせてはならないとも思いますし、きょうの朝日等に新連邦条約の草案等も出てきて、これから連邦と共和国の間のいろいろな難しい問題が出てくると思います。しかし、基本的いろいろと協定が定めておる方向に向かってはそれぞれ進めようとしておる、所有化法案なりなんなりですね。ですから、そういうソ連経済改革というものをどういうふうに見るか。それから、ペレストロイカをなお支援するという方向に行くのかどうか、その点、基本的な今日のソビエトの改革をどう判断し、日本政府としてはどうこれから臨んでいこうとしておるのか、まず基本的な姿勢を伺いたいと思います。
  38. 牧野隆守

    牧野委員長 緒方参考人、御退席いただいて結構でございます。本日は、どうもありがとうございました。  兵藤欧亜局長
  39. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 お答え申し上げます。  ペレストロイカにつきまして今いろいろなことが言われておるわけでございますけれども、中山外務大臣が先般訪ソをいたし、ゴルバチョフ大統領と会見をいたしました際に、ゴルバチョフ大統領が中山外務大臣に強調されました一つの点は、ペレストロイカの基本的な方向、基本的な路線はいささかなりとも変化をさせない、これを堅持するということでございました。連邦条約の問題等々いろいろな困難は今あるようでございますけれども、私ども日本政府といたしましても、このゴルバチョフ大統領の堅持するという方針に沿って、例えば昨年の九月からシェワルナゼ外務大臣が参りまして中山外務大臣と会談をいたしましたときに、私ども日本政府の基本的な考え方といたしまして表明いたしましたペレストロイカに対する技術的な支援というものは、積極的に今後も進めてまいりたいというふうに考えております。
  40. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 もう一遍ちょっと東ヨーロッパに返りたいと思いますけれども、それはODAのあり方、つまりブルガリアとかルーマニアなどが資源開発をやれば外貨を稼げる、だからODAを大いにひとつ応援してくれという要求もあるわけです。そういう意味では、今後の東ヨーロッパとの関係でどういうふうにODAを検討しておるのか、伺いたいと思います。
  41. 橋本宏

    橋本説明員 お答えいたします。  中欧及び東欧に対する援助につきましては、先生御案内のOECDの開発援助委員会におきまして議論されまして、中欧・東欧向けで実質にODAの基準を満たすものについては、ODAそのものとしての統計はとらないけれども援助、aidとして分類し、そこに入るものについてはODAと同様の扱いをすることが昨年十二月に決まったわけでございます。このために、我が国の予算との関連で、中欧・東欧に出す種々の協力につきまして、この援助をODA予算として計上することとなっておるわけでございます。
  42. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 きょうはある新聞に条約草案が出ておりますけれども、新連邦条約の改定草案、これは連邦最高会議で問題になるわけです。これは大変わかりにくいというか、アメリカの合衆国の州とはまた違いますし、防衛とか外交あるいはエネルギーは連邦というふうになっておりますけれども、こういう新連邦条約の案についてどういうふうに判断をしておるのか。そして、このことは北方領土の問題とも絡んできますので、この新連邦条約草案の方向というか、それをどう見ておるか、伺いたいと思います。
  43. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 ソ連の、いわゆる連邦と共和国との関係をどうするかという問題につきましては、昨年来、大変に複雑な、しかもデリケートな国内問題になっているわけでございます。先生御承知のとおり、昨年の暮れもこの問題について激論が交わされたわけでございますけれども、なかなか結論が出ないということで一つ委員会をつくりまして、そこでさらに案をまとめていくことになり、それが一つの草案としてまとめられたというふうに私は承知いたします。それがまず連邦評議会にかかっていろいろ議論をされる。まだソ連の内部の議論も始まっていない段階でございます。  先生仰せのとおり、外交一つをとってみましても、共和国側のいろいろな主張もあるわけでございますし、天然資源の配分をどうするかということ一つとりましても、連邦の考え方あるいは十五ある共和国のそれぞれの立場からの考え方いろいろあるわけでございまして、ソ連の中の大変にデリケートな政治問題になっていると私は理解しておりますので、今この席で、一つの新聞に報じられている考え方について、いろいろ評価なりコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。
  44. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ソ連のイグナチェンコ大統領報道官が、ゴルバチョフ大統領の訪日について五日に記者会見をしておるわけであります。それと、きのうNHKがヤナーエフ副大統領とNHKの記者との会見を報道しておりました。両方絡むわけですが、イグナチェンコ報道官の記者会見の中で、五六年の共同宣言が基礎だ、これはヤナーエフ氏が政治局員のころ日本に来たときにはそういうことも言っているわけです。  そこで、これは今の新連邦条約と非常に絡むと思うのですが、宣言は当時、日ソ平和条約締結と結びついていた、今日状況は違っている、こういうふうに言っておるわけでありますが、その状況が違っているという意味はどういうふうに考えたらいいのですか。
  45. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 イグナチェンコ大統領報道官の御発言につきましての解釈を私はここで申し上げる立場にはないと存ずるわけでございますが、お尋ねの共同宣言につきましては、中山外務大臣がゴルバチョフ大統領と会談をいたしました際に、北方領土問題について長時間にわたりいろいろ意見交換を行ったわけでございます。その際にも、北方領土問題は北方四島一括返還という日本政府の立場を説明されました際に、出発点として一九五六年日ソ共同宣言に言及をいたし、その中で、歯舞群島、色丹島については平和条約締結時に日本政府に引き渡すことを、両国政府が批准をいたしました国際約束で既に決まっておるという御説明をし、したがって四つという場合の大統領の英断を求めるものは、国後、択捉両島に関する大統領の御決断であるという議論をいたしたわけでございます。そういう経緯があったことをあわせて御報告させていただきたいと思います。
  46. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 エリツィン共和国最高会議議長が今度大統領になろう、こういうことでございますから、大統領がたくさんできるわけですね。そして追放だ、こう言ったが、これは後でまた修正はされておるわけであります。そうしますと、北方領土の問題は、きのうのヤナーエフ氏のNHKのあれでは戦後の未調整の問題という表現をしておりましたね。これは田中・ブレジネフ会談のときのあれも戦後未解決の問題と言っておったわけでありますが、これは調整しなければならぬ。それは日ソ経済協力も含めての問題になってくるわけでありますけれども、エリツィン氏とゴルバチョフ──ゴルバチョフ氏は中間派のスタンスをとっているわけでして、プリマコフなどは国益派というか、そういうことで評価もできるだろうと思うのです。  そうなった場合に、国境については共和国が権限を持ってくるということになりますと、北方領土の問題は日本と連邦政府との間だけで解決しない、こういうことになろうかと思います。ただ、エリツィン氏は改革を急ぎたいという姿勢を持っておりますから、日本との経済協力については十分応援をしてもらいたいという気持ちを持っておると思うのです。ですから、連邦政府との、つまり条約草案なり、そういうものの日ソの平和条約作業グループはそういうところまでいっているのかどうか。つまり、ゴルバチョフ氏を迎えるに当たっての作業グループの今の作業の状況はどうなっているのか、それが一つ。  それから、これは今度はここで済まない政治レベルの問題になるわけでありますから、そうなりましたときに、連邦政府の方と同時にエリツィン氏の方とも、つまり共和国の方ともそういういろいろな交渉をしておるのかどうか、伺いたいと思います。
  47. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 まず、平和条約作業グループの仕事の内容でございますけれども、七回にわたりまして、当初は、昨年の暮れの第六回までの会議過程におきましては、北方領土問題の歴史的な側面、これは我が方の固有の領土論に密接に関連するわけでございますが、歴史的な側面それから法律的な側面につきましてかなり突っ込んだいろいろな議論を続けてきております。以前には考えられなかったような法律論にソ連側も深く私どもの議論に入ってきております。その議論を引き続き続けてきておる。二月十八日でございましたか、モスクワで日ソ間で平和条約作業グループが開かれたわけでございますが、その議論を続けたわけでございます。それと並行いたしまして、平和条約そのものをそろそろつくり始めようということになりまして、その平和条約の内容、構成、考え方、そういうものにつきまして既に実質的な議論に入っているということでございます。  それから第二のお尋ねの点でございますけれども、連邦と共和国とのいろいろな権限の問題の中で、先生指摘のとおり、外交権と申しますか、あるいは条約締結権とかその問題をどうするかということはまさに大変にデリケートな問題でございまして、ロシア共和国の中でも、エリツィン議長を初めいろいろな御意見があるわけでございますが、国内でいろいろな議論があるわけでございますけれども、今日までの時点におきまして日本政府交渉すべき相手はソ連政府ソ連邦の外務省であるというふうに私どもは認識いたしております。  しかしながら、一方で先生指摘のとおり、この問題はロシア共和国の中でも、あるいはさらにロシア共和国の中の、北方領土がソ連の法制によって私どもから見れば不法に編入されておりますサハリン州の中におきましても、やはり自分たちの一定の意思表示の権利があるはずだという主張もあるわけでございます。そういう立場を踏まえまして、私どもも、これは交渉ということではございませんけれども、ロシア共和国の関係者あるいはサハリン当局の関係者とのいろいろな意味での交流、相互理解の増進を図ろうという考え方は昨年からとってきているわけでございまして、そのために幾つかの具体的な措置もとってきているということでございます。  なお、前回の平和条約作業グループには、オブザーバーということでロシア共和国の外務省の参事官が一人会議出席をいたしたということがございましたことをあわせて御報告させていただきたいと思います。
  48. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 その技術援助というか、それは非常に技術援助が強いわけですね、欧州復興開発銀行もその点ではいろいろと技術援助の面は具体的な目的に入っているわけですけれども。「日ソ経済委員会(山下勇委員長)は五日、ソ連政府が同国の保有する軍事・宇宙技術など最新技術の民生部門への転用を図るため、五分野五十のハイテク技術のリストを日本の産業界に提示、共同研究を働きかけてきていることを明らかにした。」これは、十日、ソ連のニコライ・バブロビッチ・ラビョーロフ副首相が技術関係で見える、こういうことでございますが、この共同研究の問題について、民生転用、こういう民生転用促進と言えば、これは積極的に技術交流に応ずるべきだ、私はこういうふうに思います。  そこで、日ソ経済委員会の方から産業界に提示をして、そして今度副首相がやってきて中山外務大臣とも会談をすることになっておると報道があるわけでありますけれども、この問題について日本政府としてはどういうふうに対応しようとしておるのか。つまり、できることですから、そしてやはり、このハイテクの非常なおくれというものがあるわけですから、もっとも、なぜソビエトで技術革新がおくれたかということは、いろいろとソ連の共産党の社会科学アカデミーなどでも議論したこともあります。あるいはそれをDDRの社会主義統一党の社会科学アカデミーの総裁などとも議論し合ったこともございますが、それらは今はもう別に申し上げません。  しかし、いずれにしても、このハイテク技術についての要求に対し、日本政府としてはどう対応しようとするのか、あるいは経済委員会並びに産業界に対してどういう指導をされようとしておるのか、日ソ経済関係改善の一環だ、こういうふうに思いますので、政府考え方を伺いたいと思います。
  49. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先ほど先生欧州復興開発銀行の御議論の中で、ソ連の超大国の話が出ましたけれども、私は正確に申し上げれば、ソ連の場合には軍事超大国という表現が正確であると思います。その意味いたしますゆえんのところは、これまでは少なくともソ連の人的資源、物的資源の大多数をこの軍事超大国のために注いできたということがあるわけでございまして、そこがまさに欧州復興開発銀行の際にも議論一つになったわけでございます。したがいまして、ソ連がこの姿勢というものを転換していきたい、軍需部門をより民生部門に転用していきたい、ソ連のおくれておりました、いわゆるソ連経済で言いますとB部門というものを重視していきたいという姿勢そのものは私どもも歓迎いたしたいというふうに思うわけでございます。  純粋にそのための技術的な支援ということでありますれば、私どももその具体的なケースというものは山下委員長からまだ承っておりませんけれども、その具体的な内容いかんによっては私どもは十分に御協力できる余地があるというふうに考えておるわけでございます。  何分にも軍事産業の問題というのはいろいろデリケートな問題があるわけでございまして、米国を中心といたしまして今でもソ連はその産軍協同体の中で日夜近代兵器の生産には励んでおるわけでございますから、そういう面があることも念頭に置きつつ考える問題であろうかというふうに思うわけでございます。
  50. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 まあ四月にゴルバチョフ大統領がやってくる、今度十日に次官がやってくる。外務委員会でそんななめたようなことを言ってはいかぬですよ。もう少し具体的に言いなさいよ。検討してみましょうとか何とかでしょうとかそうじゃなくて、それはICBMの大陸間弾道弾の問題も米ソでお互いに監視するということで壊してきたわけですよ。軍事技術から民生用に転用しようというなら、日本ソ連に対してどういうことをやればそれが監視できるのか、実行させられるのか、それに応じて日本はどう対応するのかということを、十日にやってきてそのことも具体的に議論になるのでしょうし、ゴルバチョフ大統領が来るときの日ソ間の経済関係一つの大きなテーマだと私は思いますよ。  ですから、そういうことに対して日本政府はまだ聞いていませんというふうなことで大分のんびりしておって、民間でずっとやろうというつもりなのか。しかしそれでは済まない問題ですよね。これはココムの問題やら何やらいろいろ出てくるわけですから、そうなりますと、そういうもの全体をどう見直していくかということを背景にしながら進めなければいかぬわけですよ。だから具体的に答えてください。
  51. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 基本的に民生転用というものは私どもも積極的に支持してまいりたいということは先ほど申し上げたとおりでございます。具体的にという先生の仰せでございますけれども、実は私どもまだ実際に具体的な事例あるいは具体的なソ連側考え方あるいは具体的なそういうプロジェクトというものを承知していないわけでございます。したがいまして、これ以上に具体的な私どもの考え方というものを今申し上げる状況ではございませんけれども、いろいろな具体的なお話が出てまいりますれば私どもも一つ一つ真剣に対応してまいりたいというふうに考えております。
  52. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういうふうに進めてください。  IMFの調査報告、ちょっと僕は忘れてきちゃったので貸してください。  つまり、外務大臣、これは一つ基本的な考え方になるのですけれども、ソ連の不安というのは、これは九〇年代から二十一世紀に向けての世界の最大の不安だと思うのです。これはもう中東問題と質的な深さが違うのですね。そうしますと、つまりそういう二十一世紀を展望しての大きな不安だ、こういうふうに考えなきゃいけないと思うのです。その点はいかがですか。
  53. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連の内政が極めて不透明、不安定ということは、私は率直に申し上げて世界一つの不安定の要素として考えておかなければならない重大な要素であると考えております。
  54. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 このIMFの調査報告というのは非常に厳しく見ております。それはそれで当然だろう、私はこう思うのです。  通産省にお尋ねをしますが、ソビエトが石油大国から九三年には輸入国になる、石油の大国から輸入国になるということは、これは非常に大きな問題ですね。そして、今まではイラクから輸入をして、千三百万トンを低い価格で東欧諸国に出しておったわけです。二重価格でやっておったわけですよ。ところが、それがもうできなくなっているわけです。もう既にできなくなっている。それから、輸入国になるということになると、世界の石油のバランスが崩れていくわけですよ。  それで、この報告では、エネルギー資源の問題について、やはり非常に高く買っておるし、それを開発を進めていくことについては、進めなきゃならぬことを言っておるわけですね。ですから、IMFそれから世銀などのこういうエネルギー資源についての考え方ということを通産省としてどう考え、そしてそれに対してどう対応していこうとしているのか、その点を──私は石油部長に来てほしいと言ったのだけれども、どこかほかにあってぐあいが悪いということのようですが、これはこの報告を見ても大事なポイントだと思うのです。だから、だめだ、だめだという否定の方じゃなくて、どこをやるかという点で考えるときに、エネルギー資源の開発というものについて日本政府はどう考えるのか。これはエネ庁の企画官ですかな。やはりこれは政策問題として外務大臣に伺います。
  55. 中山太郎

    中山国務大臣 ソビエト連邦における石油の生産がダウンしておるという問題は、東ヨーロッパに対する石油の売却のカット、こういうものから見ますと、ソ連における重大なエネルギーの問題のみならず、東ヨーロッパヨーロッパにおけるエネルギー系の問題として大きなウエートを占めていると思いますが、これをどういうふうにこれからいわゆる活性化していくか、生産性を向上させるかということは、ソ連政府アメリカあるいは日本関連の西欧諸国に技術的な協力をどう求めるかという問題に大きく関連性が出てくるだろうと認識をいたしております。
  56. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 アメリカも中東依存度を減らそう、こう言うのですね。あれだけメジャーの大きな力を持って、そして今度はそのために武力行使もやったわけですけれども、アメリカも中東の依存度を減らそう、こう言っているのです。だから、長期的に見た場合に、日本もやはり依存度を減らしていくべきだ。特にこれは、イラクの内戦状況のこういう問題を考えますと、安定はなかなかですよ。そうしますと、やっぱり中東への依存度をどう減らすか。むしろ依存度はどんどんふえているのです。だからこれをどう減らしていくかということは大事なことだし、それは特に経済改革を進めておりますソビエトなり中国なりあるいはインドネシアなり、そういうところへの開発援助というのは、それはまた安全保障上の大変大事な課題でもある、こういうふうに考えますが、外務大臣、いかがですか。
  57. 中山太郎

    中山国務大臣 石油資源の全く皆無に等しい日本としては、全エネルギー量の中に占める石油依存度というのをどれだけダウンさせるかというのは国家の一つの大きな政策目標でなければならない。第一次石油ショックのときは、たしか全エネルギーの中の石油依存率は七七%でございました。現在は五七%。二〇一〇年に四五%まで下げるというのが日本政府の基本的な石油の利用の考え方であります。  そういう中で、この中東地域に依存をしておる石油の供給先というものをどのように他地方、他地域移転させていくか、これは日本の大きなエネルギー政策とは不可分の問題でございまして、インドネシアあるいは中国といったようなところ、あるいはメキシコといったところがございますが、問題は、自由経済市場の中でコストも大きな一つの問題として存在している。こういうことを考えますとともに、重質油の場合に脱硫装置を改めて日本政府としてはつける必要がある。  こういうことを考えてまいりますと、ソビエトから出てくるガス及び油の性質というものがどのようなものであるかということもソ連政府と十分協議しながらこの手当てを考えていくということが将来極めて重要な問題でございまして、サハリンあるいはシベリアにおけるエネルギー開発という問題については、日本政府としても重大な関心を持っておりますけれども、問題は、そのコストがどうなるかという問題が一番大きな問題ではないか、このように考えております。
  58. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 天然ガスはこれから大変大きな問題になりますね。液化という方向に行っておる。アメリカも既に液化の方に行っているわけですから、そうするとナホトカにそういう液化の装置というものをソビエト、日本それからアメリカが合同でやっていくということも大きな課題だ、こういうふうに思います。アメリカも既にそういう方向努力しているわけですが、この問題については百億立方キロのものを目指しておるわけですけれども、日本政府としてのこれへの協力というか考え方を伺いたいと思います。
  59. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 エネルギー資源のソ連との開発協力のお話でございますが、石油の面について申し上げますと、先生指摘のとおり、ソ連は七〇年代にサモトロール油田という巨大な油田を探し当てまして、以来大きな油田というものがまだ見つかっていない。つまり埋蔵量というものが余りふえないということが基本にあるわけでございます。それが六億トンまで達して世界一の産油量になったソ連が減産に転じたという背景の一つだろうかと思いますが、そのような中で日本政府といたしましても石油供給先の多様化ということで、かなり前からソ連側と話をいたしておりました一つの具体化がサハリン沖の石油天然ガスの探鉱でございました。  あのサハリン沖合のオドプト、チャイウォ構造の探索の結果出ました結論は、先生御承知のとおり、むしろ期待されたほどの石油資源がなくて、むしろガスの方が多くありそうだということで、これをどうするかということで、今、日ソ関係者が鋭意検討中というふうに私は承知をいたしております。それ以上の具体的な考え方というものは、いずれも構想なりアイデアなりでいろいろ打ち上げられておりますけれども、先生の今御指摘の、例えばナホトカにLNGの基地をつくるといったアイデアもその一つであろうと承知いたしておりますけれども、私どもはまず、日ソのいわゆる具体的なエネルギー協力案件として進んでおりますサハリンのプロジェクトの現地の、あるいは当局者の話し合いの成り行きを見守っていきたいというふうに具体的には考えております。
  60. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それから、これはちょっと東ヨーロッパに戻りますけれども、きょうの報道がございますが、エジプトとポーランドの公的債務の削減について、これは七月のロンドン・サミットの一つの問題にもなる、こういうふうに言われておりますが、日本政府はこれまで拒否をしてきましたが、アメリカから強く要求をされ公的債務の削減の方向に同調するということが報道されております。これは、いずれにしても七月のロンドン・サミットでの問題になるようでございますけれども、日本政府としての考え方を伺いたいと思 います。
  61. 橋本宏

    橋本説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、ポーランド、エジプトの対外債務問題が深刻な状況にございまして、右問題に対しパリ・クラブ等の場においてかねてより対応策の検討が続けられてきております。  公的債務削減につきましては、途上国の持続的な成長に必要な新規資金フローの確保というものに問題を生じさせるほか、債務国の自助努力を損なうといった問題がありますことから、我が国としましては債務削減に代替する種々の方策を含めまして、対応策を検討しているところでございます。
  62. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 じゃ次に、ちょっと中東の問題、この間やりましたが、少しお尋ねをしたいと思うのです。  今報道を見ていますと、つまり正規軍と大統領警護隊が戦車でやり合う、こういう状況になってまいりました。一番心配されていた方向に出てきたわけですね、残念ながら。そうしますと、これは簡単に片づかない、つまり内戦状態というものに等しいものになってきたということになりますと、私がこの間質問のときに、戦争に勝って政治に負けるというそういう非常に危険なことがありますよということを言いましたが、私は非常に心配される今の状況だと思います。今のそういう状況について、日本政府としてどういうふうに判断をしておるか、そしてこれは早急に解決をするというふうに見るのか、いや、相当長いものと見るのか、どうですか。
  63. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 現在のイラクの国内情勢につきましては、私どもも非常に懸念を持って見守っておるところでございます。御承知のように、イラクの場合に、宗教的に申し上げてイスラムの中のシーア派、それからスンニ派の区別がございますし、それから人種的に北部にクルド族の存在もまたあるということで、これまでの政権がその人口分布の中でいわば少数派に属しますスンニ派を基盤としておりますことから、この国内の統治というのは非常に難しい問題があり得るかと思います。  これまでのところ、私どもの見ておりますところでは相当数の都市で反乱が起こっておりますけれども、必ずしもこれがまだ組織された運動になっているという状況ではないようでございますけれども、これは当面の問題として、また中長期的なイラクの将来という観点からも大きな関心を持って見守っておるところでございます。
  64. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この間外務大臣、バース社会党がと言って国内の分析をしてくれたんですが、きょうは中近東局長にさせたので、大分複雑になったと思って後退しているな、後ろの方に、ベンチの方に引っ込んだなという感じがしております。  そこで、今の中近東局長の説明もございますが、早く解決してほしいわけですけれども、頑張っているわけですからあれですが、総理官邸にあります湾岸危機対策本部というのはいつ解散するのですか。坂本官房長官は、平和回復の確定を見届けた上で、つまりイラク国内の反政府活動などの行方を見きわめるまで存続、今の話ですとちょっと長いのかな、こういうふうに思いますが、どういうふうに外務大臣は判断しておるのですか。
  65. 中山太郎

    中山国務大臣 イラクの国内情勢、また湾岸のいわゆる和平、平和の回復状況というものを全体的に勘案をいたしまして、内閣として最も適当な時期にこの本部の解散をいたすものと考えております。
  66. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 社会党はきのう土井委員長が提唱したわけでありますが、国際緊急援助隊、これについてはまた自民党さんの中では自衛隊派遣だ、こういうことを言っておるし、さらにはPKOの問題についてもやはり自衛隊だ、いや自衛隊抜きだ、こういう議論があるようですが、この七カ月間振り返ったら、そこでやれないまま来たんですよ、正直言って。そうしますと、私たちは国際緊急援助隊で、戦災復興ということを目的と任務に追加をする、こういうことで国際緊急援助隊を派遣をするということの提唱をいたしました。ですから、自衛隊というものを出すことを議論をするのじゃなくて、直ちにそういう方向で対処すべきだ、私はこういうふうに思いますが、外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  67. 中山太郎

    中山国務大臣 国際緊急援助隊の目的というものが、あくまでも天然災害ということを目的にしてつくられた制度、法律でございますから、今回のいわゆるクウェートの戦後の復興というものにつきまして直ちに緊急援助隊が派遣できるのかどうか。  私どもがまず考えておりますことは、危険物をどう除去するかという問題が一番大きな問題ではないか。埋設された地雷、これを除去できない組織というものがこの地域に入っていくということは隊員の生命に非常に危険を及ぼす影響が考えられる、こういうことで現在クウェートにあります日本大使館の再開問題につきましてもこの爆発物の有無というものを確認することが第一の問題になっております。  相当数の爆発物がこのクウェート市内あるいは周辺に埋設されているということでございますから、緊急援助隊の隊員にその爆発物除去の能力があるかどうか、あるいは能力を持った人がこの中に参加できるかどうかということが一番大きな問題でございまして、今、日本大使館の再開問題についても危険物の有無を確認するために、イギリスの政府が、もし日本政府が要請するならばイギリスとしてこれに協力することも可能ではないかという話し合いが現在行われているところでございまして、一様に、直ちに人が要るから出せるという状態ではないわけでございます。その点はひとつ、これから現地に行かれるいろいろな方、政府関係者、民間関係者を含めて、爆発物を除去して、除去が完了したという一つの安心する状況を確保しなければ、この地域に人を出すことはなかなか現実問題として危険が伴うということを御理解いただいておきたいと思います。
  68. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 五十万個地雷原というのと都市部のそれと一緒にして何か逃げているようなことを言っていますが、都市部の再建ということについては、私は緊急援助隊の役割は担い得ると思いますよ。これはしかし、ここで議論してもあれですから、具体的な情勢の報告を受けた上で、それで国連が既に停戦の条件の中には、地雷の問題はイラク側に明確に示せ、こう言っているのですから、それはそれでやるし、多国籍軍が処理する問題だと思います。だから、そのことをごっちゃにしてはいけない、こういうふうに思います。  次に、PKOの問題ですが、あなたも政府・与党の連絡会議に出ておられるだろうと思いますけれども、与党の自民党さんの方では、外交部会と防衛部会で自衛隊参加というものをめぐっていろいろ議論がございます。公明党さん、民社党さんの方も自衛隊抜き、こういうことで自民党さんと合意をしているわけですから、その点について、外務大臣として案をつくる、つまり担当の責任者としてあなたはこのPKOの問題をどうお考えになっているか、明確な外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  69. 中山太郎

    中山国務大臣 PKOの問題につきましては、前国会において自民、公明、民社の三党の間で国際協力に関する覚書が締結されていることは御指摘のとおりであります。その中に自衛隊の別個の組織という言葉がございます。また一方、私は、その当時の話し合いの中で外務大臣としては、この中に平和維持軍が入るのかどうか、またこのPKO自身が、平和維持軍、停戦監視団それから選挙監視団、こう幾つかの種類があるわけでございますけれども、国連が各国に要請いたしますこのPKOの中で、軍人でなければならないといったようなものは一体どの範囲のものか、この点の確認を三党間で御協議をいただく中で、政府としては整理を十分いたしまして対応をしていかなければならない、このように私自身は考えております。
  70. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この間もちょっと指摘しました が、国連事務総長が、文民の活動による平和維持活動という点については案を出しているわけです。例えば医療隊などに関していえば、これまでは軍人、こう言っておった、防衛医官と言っておったけれども、むしろ文民の方がいいんだ、こういうことも言っているわけです。だから、バスの運転手だ、トラックの運転手だ、固定翼飛行機の繰縦士だとか、あるいはいろいろな井戸の問題であるとか、たくさん挙げてきているわけです。だから、文民によるそういう活動というものを改めて国連事務総長の方も提起してきているわけですから、それはこれから我々の方も具体的に詰めていきますけれども、そういうことで、また自衛隊参加ありきということで過ごさないように、ぜひひとつやってもらいたい、こういうふうに思います。  そこで、もう時間がなくなりましたので最後に、私は、やはり今本委員会というのは、冒頭に大げさなことを言いましたけれども、大変大きな、歴史の大転換期だ。その中で国会がどういう役割を果たすかということは大変大事な課題だと思います。そこで、与党の自民党さんの方にも提起したいのですが、ひとつこうして政府とやりとりするというのではなくて、前の柿澤委員長が丸テーブルの議論をしようという提案もしたそうですが、どうぞ一遍、これから冷戦後の新しい秩序に対して日本はどういう役割を担うか、そういうふうな問題について、あるいはアジアの問題、アジアの時代になるわけですから、ひとつお互いに忌憚のない意見を交換する、場合によっては、そのときは外務大臣参考人で来てもらうというふうな、そっちの方は後にしてもいいですが、まず話し合うというふうな機会をぜひ委員長、これを提案しますので、御検討を理事会でお願いしたいと思うのです。  もう一つ、カンボジアの問題というのはこれから具体的に、そして日本政府も非常に力を入れてきた問題ですから、役割を果たさなければいかぬと思うのです。アジアの問題という場合に、朝鮮半島とカンボジア問題というのが一番厄介なというか深刻な難しい問題だと思いますね。そこで、外務委員会も東京でやるだけでなくて、ひとつバンコクあたりに出ていって、外務委員会を移して各国の大使に来てもらうとかいうふうなことで、バンコクあたりで議論し合う、外務委員会を開くということも、私は今日の時代においては必要じゃないかな、こういうふうに思います。  一つ二つ提案しましたので、大変国際問題に詳しい、そして関心をお持ちの外務委員長ですから、ぜひあなたの委員長のもとで、理事会で諮ってそれを実現さしていただくように、委員長の御努力をお願いいたしたいと思います。ひとつ委員長の見解を伺って、終わります。
  71. 牧野隆守

    牧野委員長 ただいま川崎委員から、当委員会の運用について貴重な御意見を賜りました。  前の委員長のときにも、理事懇談会または理事会等で、当委員会の運用に関しましていろいろ御提言があったわけですが、ひとつ理事会で慎重審議さしていただきまして、川崎委員の御意見を中心にして検討をさしていただきたい、こう思います。
  72. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 終わります。
  73. 牧野隆守

    牧野委員長 井上普方君。
  74. 井上普方

    ○井上(普)委員 ただいまも議員同士の間で外交問題について論議しようじゃないかという提案がありました。これを突き詰めて言うならば、外交はもはや日本外務省に任してはおけぬというような気持ちもないでもないと私は思う。  そこで考えてみますというと、このごろアメリカの本で、ポール・ケネディの「大国の興亡」であるとかあるいはネイ教授の「不滅の大国アメリカ」であるとかいうような、歴史に基づく世界戦略というのが書かれておる本がたくさん出ておる。あるいはまたシュレシンジャーにしましてもキッシンジャーにしましてもあるいはブレジンスキーなんかも、回想録の中でアメリカ世界戦略というものをともかく書かれておるのが今日の実情だろうと思いますけれども、不幸にして日本においては、日本世界戦略はどうあるべきかという著書というものがないのは、甚だ私は心寂しく思っておる一人であります。中にはノーと言える時代なんといって書いた人もおりますけれども、これは大したものだね。  それはともかくといたしまして、さて私は、この日本外交の原点というものを考えてみますというと、一つ大きな失態がある。それは何かと言えば、ことしは真珠湾攻撃の五十周年に当たります。恐らくことしの十二月の八日以降には、アメリカではまたまたリメンバー・パールハーバーというような言葉が出てまいりまして、我々にとってはジャパンバッシングというのが起こってくる機運が既に出てきておるのであります。  しかし、これはなぜリメンバー・パールハーバーということを言うかというと、だまし討ちを日本はしたと言う。しかし、そのだまし討ちというのは、国家意思でだまし討ちしたんじゃない。国家意思は、ともかくアメリカ時間の、ワシントン時間の真珠湾攻撃をする少なくとも一時間前に最後通牒を出せという指令が出ておる。ところが、在ワシントン大使館でこれがおくれて、一時間十分国務長官に最後通牒を渡すことがおくれたがためにだまし討ちという言葉が言われておるのであります。  そこで、私も、これはかつて伊達君が官房長のときにこれを伺ったのでありますが、どうも明確な答弁がない。でございますが、先般の十一月でございましたか昭和天皇の独白というのが文芸春秋に出て、我々も驚くと同時に、さてこれがどうしてできたのだろうかということを実は考えたのであります。しかし、この独白を書いた本人の寺崎英成というのは、外務省の役人であって、しかも当時ワシントンの一等書記官であって、日本に帰ってきて宮内省の係官をした人が書いた。昭和天皇という方は非常に律気なお方と私は承っております。しかもまた、この最後通告が、日本が真珠湾攻撃するよりも前に渡されたかどうかというのは、当時非常に、昔の言葉で言えば宸襟を悩ませておったということもこれまた私どもが聞いておるところであります。  ところが、これがおくれた事実につきまして、恐らく昭和天皇の独白でありましたならばその部分が入っておるだろうと思って私も読んだ。ところが、このことについては一言も書かれていないのであります。でありますから、私はあの独白それ自体についての信憑性というものは非常に薄いと言わざるを得ないのです。あるいは自分に都合が悪いところは抜いてしまったのかしら、このように感じておるのであります。  そこで、ひとつこの真珠湾、このアメリカの十二月の七日、一体どんなことがあったのか、ここで私はもう一度お伺いいたしておきたいのであります。  日本政府は、アメリカ時間の六日には、最後通牒は十四部で成るけれども、十三部までは全部ともかく前日に翻訳し、整備しておくべし、最後の一部については明日後刻送るから、それまでに清書しておくべしという指令が出ておるやに承っております。ところが、その後土曜日の晩でございました。すなわち六日の晩には送別会があって、その晩はワシントンの大使館の連中はパーティーに出ていった。パーティーで大いに楽しんだ。明くる日は日曜日です。ところがその十四部の最後の一部が入ったのが朝の九時に海軍武官補佐官がポストの中に突っ込んであるのを見つけて、それを大使館に持ち込んで、そして翻訳が始まった。ところが、翻訳がおくれる。タイプライターがおくれる。これをやったのは一等書記官の岡崎勝蔵君です。こういうようなことになって、午後一時までにハル長官に渡せという指令が、翻訳がおくれ、かつまたタイプライターがおくれて午後一時に渡すことができず、二時過ぎて渡すことに相なった。既にそのときには真珠湾の攻撃が始まっておる。こういうのが事実だろうと、私は、物の本あるいはまた調べてみたらそういうことになる。これがだまし討ちの根拠であります。  日本政府は、午後一時までにこれは必ず手渡す べしという本省、政府の意思を忠実に守れなかったのは在ワシントン大使館なんであります。物の本によるというと、当時の野村大使は、それほど重要な最後通牒であるということを知らなかったというような話もございますけれども、こういうような事実はまさに日本外交官の不手際といいますか失敗によって起こった事件であり、これがなおかつ今日までもだまし討ちだ、リメンバー・パールハーバーだ、こういうことに相なっておるのであります。まさに当時の日本外交官というのは万死に値するものだと私は思うのだが、これらに対しまして外務省としてはどういうような処置をおとりになっておったのか、この点について事情を、私が申すことと違うのであればそれを御指摘になり、かつまた外務省としてはこの在ワシントン大使館の一同に対しどういうような措置をおとりになったのか、ひとつお伺いいたしたいんであります。
  75. 川島裕

    川島政府委員 当時の関係者の方の多くが既に亡くなられているものでございますから、事実関係の詳細は明らかでないこともあるんでございますけれども、極東軍事裁判記録、それから当時の東郷外務大臣の回想録等々、調査したところによりますれば、在米大使館では、問題の十二月六日、土曜日でございますが、以下ワシントン時間で申しますが、七日については、週末であるにもかかわりませず大使以下大半の館員が一体となってこの覚書の処理に当たっていたというふうに判断されます。ただ、まさに御指摘のとおり、タイプのおくれがございまして、それで結果として覚書の手交が遅延して大変遺憾な事態を招いたということでございます。まさにこういう国家の大変重大な局面にこのような遺憾な事態を生んだということについては、これは五十年前のことでございますけれども、外務省といたしましては、以来大変重大な教訓と受けとめているつもりでございまして、執務体制等の改善に心がけておるつもりでございます。遺漏なきを期しているということでございます。  事実関係についてちょっと補足させていただきますと、まさに十二月の六日の午前、本省から覚書の追電が来る。十三本まさに来ていて、右覚書をアメリカ側に手交する時期は追って訓令するが、訓令次第いつでもこれを手交できるように準備しておけと、他方、右準備にはタイピスト等は使ってはならぬと、機密の観点があるからという本省の訓令が来ていたということで、そして七日、これもワシントン時間でございますけれども、解読はすべて了していた、一時には間に合うだろうというふうにやっていたようでございますけれども、実際問題としては機密保持のためにタイピストを使わないようにという訓令から大変タイプにふなれな館員がやったこともあって、一時には間に合わなかったということでございます。  それから、一つ事実関係なのでございますけれども、ポストに電報がいっぱいたまっていたではないかというお話も、これも前からございますのですが、これは外交史講演会というところで藤山、前に駐英大使をやった先輩でございますけれども、ちょうど当時ワシントンで官補、一番下で行っておりまして、その方の記憶では、まさに官補という一番下の位の者は電信をやらされるのですけれども、日本から電報が入ると通常は、電報が入ったから届けますという電話がかかってきて、そしてそれをオートバイに乗って届けられてサインをする、そしてそれを受け取ってやるということですから、どうも郵便受けにいっぱいとなったという話というのはほかの手紙か何かの見間違いであって、自分の記憶ではそこにほっとかれるというようなことは通常のアメリカの電信局とのやりとりからするとちょっとそれは事実ではないのではなかろうかということを講演で述べたことがございます。  それからもう一つ、送別会という話でございますけれども、これも記憶でこの藤山元大使が言っておられるわけですけれども、その晩まさに中国料理屋で晩飯は食ったと、ただ電信官はまさに忙しくしていたので一人も参加しておりませんし、送別会でというのは自分の記憶では違うように思うということを述べておられます。  ただ、これも記憶に基づく話でございますので、そこはわかりませんけれども、ただ、いずれにいたしましても最初申しましたとおり、おくれたことは事実でございますし、大変な遺憾な事態を招いたことは間違いございませんので、そこは何と申しますか、大変な教訓としてやってきたつもりでございますし、やっていきたいと考えております。
  76. 井上普方

    ○井上(普)委員 今のお話を承りますと、だれそれがこう言った、後でどう言ったと言って、実際外務省としては事実調査ができていないのであります。少なくとも交換船で帰ってきたならば直ちにこの最後通牒がどういうような事情でおくれたか調べ、かつまたそれに対する処置というものがなされていないから今のようなお話になるんだろうと思うのであります。日本の戦後の外交は、こういうような大失態に対しまして外務省としてはこれに対する処置、処罰、こういうことが十分にできてない、そこに原点があるのではなかろうかと私は思います。  この七日には、寺崎マリさんの手記によるというと、一等書記官はピクニックに行っておった、こういう事実です。国家存亡の実に重大なる危機に、そのようなのんびりしたことが少なくとも外務省の幹部、大使館の幹部にそういうことが行われておったところに私どもはやるせない思いをいたすのであります。それが五十年の今日に至っても、恐らくこの十二月になったらまたまただまし討ちということでジャパンバッシングが行われるのではないだろうか。これは単に国家意思と違ったことが行われた、その責任というものを外務省は十分にとっていない、まさに不手際でしょう。 しかも当時、ワシントンにおった連中が宮内庁に入り天皇側近になり、かつまた岡崎勝蔵君は終戦連絡事務所のGHQとの重要なパイプになっていた。ここに日本外務省というのが主体性をなくしていった一つの原因があるのではなかろうかと思うのでありますが、外務大臣、私が今まで申したことに対して何か御感想があれば承りたいと存ずるのであります。
  77. 中山太郎

    中山国務大臣 委員指摘の、開戦前、駐米大使館においてアメリカ政府に対する日本政府の覚書の手交がおくれたということによってだまし討ちをやったという批判を今日まで受けるということは私はまことに残念に思っております。  この当時の真実について、今審議官から当時の官補であった藤山元駐英大使の講演の内容も紹介されましたが、私は、やはりこの五十年の真珠湾攻撃の記念の年というのは、日米双方にとって不幸な思い出を記念する年であってはならない、私は、今後の日本の対米外交を初め、外交信頼されるという、信頼関係の樹立ということに全力を挙げてやっていかなければならないと考えておりまして、私どもは過去の悲しい出来事に対する反省を謙虚にしながら、私は新しい外交関係というものの樹立を行うべき記念の年にしなければならないと考えております。
  78. 井上普方

    ○井上(普)委員 しかしながら、外務大臣、国家意思というのは間に合うようにということでともかく外務省本省の方も電報を打っているのです。ただ、出先が不手際というよりは、これはもうともかく十分な調査ができてないのだから十分な調査を一遍なさったらどうです。何とかいう官補が、藤山ですか、官補の講演の趣旨をともかく聞いておるからというようなことでは、これは余りにもざっとし過ぎている。少なくとも外務省は真剣になってこの事態というものをお調べになって、そして国家意思はそうじゃなかったんだということを堂々とアメリカに言えばいいじゃないですか。ただ、外務省の連中がサボったがために、不手際のためにこんなことになったんだ、まことに申しわけないということを今から言ってもおそくないと私は思う。  当時の物を読みますと、連合艦隊の司令官の山本五十六も一体最後通牒は間に合ったかと心配をしたという。それから東郷茂德外務大臣も間に 合ったかと言っていつも心配をしておったらしい。東條総理もそうだったでしょう。特に昭和天皇はそのことに非常に悩まれておったという話も物の本には書かれておる。にもかかわらず、外務省の出先がこのような失態をし、今五十年たってもまだだまし討ちというようなことを言われるのは、外務省としてはこれからやりますとかいうようなことじゃなくて、真実を本当にはっきりさせて、誤りましてこういう結果になったということはやはりきっちり内外にその事実を明らかにすることこそ必要であると私は思う。  同時に、私も、このことにつきまして在外公館へ参りまして、外務省の将来幹部になる連中に話をします。明治以来の日本外務省官僚で一大失態というのは何だ、こういって聞きますというと、いや、日米開戦を抑えることができなかったのがそれでしょう、何とかかんとか言うのです。ああいうような時代の流れのときに一外交官で抑えられる問題ではない、少なくとも、失態というのはこれを指すのですよ。自来、こういうような在アメリカ大使館の連中がどんどんと出世していく、私の感想です。  あるいは、シナ事変以来日本には外交権というのはだんだんと薄らいできた。大東亜省ができ、あるいは戦争になると外交官の腕を振るうところはなくなった。戦後はまた占領下だということで、外交官が不在の時期が日本にはあった。ために、外交官が二十六年以降できてきたけれども、何かともかくコンプレックスを感じた外交日本には行われてきたのではないだろうか。そして、一たび日米安保時代といえば、日米安保を最善のものとしてそれしか主張しないような外交官ばかりができてきた、それに異論を唱えるようなちょっと考え方の違ったのは外務省にはもう数少なくなっているというのが実情ではありますまいか。  日本世界戦略はどうあるべきかという大きい視野に立って物事を考える外交官というものは、もう外務省の中には少ないのではないだろうか。ただアメリカのやるとおりにやっておれば間違いないわというのが主流を占めておるのが今の日本外務省ではなかろうかと私は想像するのであります。  そのアメリカの言うとおりにしておればいいという考え方は、冷戦構造の中での発想であった。今タイにおる岡崎君のあの論文なんかを読むというと、もう米ソ対立の時代のそのままの頭で日本外交はこうあるべきだというところから進んでおるから、この協調の時代になって日本はどうしたらいいのか右往左往しておるのが今の外務省ではないかと私は思うのだが、外務大臣、いかがでございます。
  79. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、率直に申し上げて、外務省の上級幹部、中級あるいは比較的若い年次の人たちも真剣にこれからの日本外交のあり方について意見を闘わしているという実態をよく知っております。私自身も、これからの日本外交というものはどうあるべきかということについて絶えず幹部たちと意見の交換をやっております。大きな歴史転換期にあって日本がこれからどのような外交戦略を立てていくか。私は、日米関係というものを全然無視して日本の安全保障というものはなかなか難しい。しかし、日米関係を基軸にしながら、一方においては日本の独自外交というものをやはり展開していく必要が当然あることは、論をまたないところだと思っております。  私は、これからの新しい歴史というものは、恐らく緊張が次第に緩和しながら一方においては地域紛争が引き続きなかなかやまない難しい状態の中で、日本外交というものは、日米欧という先進国を一つの舞台にした新しいシステムの考え方と同時に、アジアというものを、アジア・太平洋の繁栄のために日本はこれからどのようにやっていくか、これにやはり相当な力を入れていくということが極めて大切であるというふうに認識をしております。  一方、国連の場において日本を支持する国々をいかに多く獲得するか、これはやはり日本外交にとって見落とすことのできない点でございまして、私は国連を舞台にした日本外交のあり方、また日本地域における外交のあり方、それとアジア・太平洋における安全保障の問題をどうやっていくのか、いろいろな点で外務省では激しい意見、激しい協議が行われておると申し上げるのが一番正しいかと思いますが、非常に重大な時期に到達して模索が行われつつあるということだけは明確に申し上げておきたいと思います。
  80. 井上普方

    ○井上(普)委員 日本外交というのは、将来を予測して外交をやるのが、外交ありき、先取りしてやるべきだと私は思う。  先日、上原委員の質問に対しまして外務大臣はヘルシンキ宣言、これが欧州統合の基礎になるのだということをおっしゃられた。私はそのとおりだと思う。しかし、あのヘルシンキ宣言が出されたときに日本外務省はこれをどのように評価していましたか。何ら評価してなかったではありませんか。欧州統合が進むにつれてあの基礎にはヘルシンキ宣言があるのだということを知り、最近になってヘルシンキ宣言ということが言われ始めておるのであります。私はそのときに外務委員でここにおりました、そのときにそのことを申しましたら、一笑に付すというようなおざなりの答弁であったのであります。  私は海外へ折々旅行させていただいております。そうすると、在外公館は我々国会議員に対しましては過剰な接待をいたします。過剰と言っていいほどです。それは、国会議員の中には妙なのがおりまして、飛行場へ大使以下迎えに来なかったからといって、大使館の中で一列に並ばせてお説教をしたというような人もある。それが自民党の中では偉いのだから。こういうような人もおるから、それは外務省の諸君もなかなか難しいとは思うけれども、我々に対しては過剰サービスだと私は今までも言い続けてまいった。しかし、行ってみるというとどうも我々が失望することが多い。  特に、私はポーランドのグダニスクで問題が起こったときに、実はフィンランドに入りポーランドに入ったのであります。まだ新聞記事には出てなかった。ポーランドへ入ってどんどん大きくなったのですが、そのときに、フィンランドの国会議員の情報というものは、実に正しい情報を我々に示したのです。なるほど、フィンランドという国は、西欧と大国ソ連との間に挟まってこれほど外交的に気を使い情報を集めているのだなと感心をいたしたのであります。そういう経験があるから、私はヘルシンキ宣言というものは将来重要なものになるのではないかといってここで質問した覚えがございます。  しかし、どうです。在ヘルシンキの日本の大使館は今人数は幾らおりますか。この間も、去年の八月にもブッシュ大統領はヘルシンキの大統領に頼んで、そしてゴルバチョフをヘルシンキに呼んで湾岸戦争、湾岸対策について協力を呼びかけ、あそこで会談いたしておるじゃありませんか。ところが、日本外務省というのは、あのフィンランドの大使館というのはそれほど地政的にも重要な大使館であるにもかかわらず、ブルガリアあるいはルーマニア、小国と言ったら失礼になるかもしれませんが、その国々と同じような人員配置しかできていないのが今の外務省の姿ではございますまいか。  さらに言えば、こういうようなことを考えると、一体外務省というのは何を考えているのだろうというのが私二十四年間国会に籍を置いての感想なんです。これは何とかしなければいかぬ、常々思いましたら、昨今になりまして、湾岸戦争に際して外務省の情報不足というのが余りにも明確になり、日本外務省は一体何しているんだというのがマスコミあるいはまた世論として沸き起こっている。ために、このたびも、行革審は日本外務省のあり方、外交のあり方、それについて審議を始めるということが言われ始めておるのであります。ここにおる外務省の諸君、もう少しともかく関心を持ってやっていただきたい。  だからもう外務省、外務高官には外交は任せら れぬ。交通手段あるいはまた情報の伝達が非常に速い時代になっておりますから、こういうように政治家が第一線に立って首脳会議等々が行われ、あるいはまた外務大臣同士が話し合うというようなことになってきた。それもありましょうが、ひとつ政治家同士で話し合って、日本の将来は話し合おうじゃないかという、先ほども川崎さんの提言が行われるようになるのは余りにも外交官が秘密主義で、秘密主義ということは自分が知らぬから秘密にしておるのだろうと私は思う。こういうように甚だ情報不足と言わなければならない実態を―─私は、間違ってもらっては困る。日本はこういうような国です、平和憲法を持っておる国です。しかも、経済力が豊か、強くなった国です。外交の重要さというものは重々存じておる。日本でどの省が一番大切かと言えば、私は外務省だといつでも言っている。二番目にどこだと言ったら、私は文部省だと言っているんです。ところが、この二つの役所がどうも我々から見ると何かだらしない役所になっているから、あえてこういう質問を私はいたすのであります。  この間も、湾岸戦争の情報、一体どこから出ているんだ、アメリカからもらわなければしょうがないというような姿でしょう。ほかにもあの付近には日本の大使館がたくさんある。昔は大使館と言えば、日本の大使と言えば戦前では十四、五人だ。ところが、今では百五十人も大使がおる。ところてん式にキャリアの諸君は大使になっておる。ここらあたりに気の緩みもあるんじゃないか。これがなければ、私の杞憂に終われば幸いだな、こう思っておるのです。  これはともかくといたしまして、情報一つでもアメリカからもらわなければ日本外務省は何ら知らない、少なくともこの間の湾岸戦争については。まことに残念に存じておるのであります。これらに対しまして、ただいま申し上げたことにつきまして中山外務大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
  81. 佐藤嘉恭

    ○佐藤(嘉)政府委員 大臣が御答弁になる前に私から一言だけ御報告させていただきたいと思います。  ただいままでの井上先生の御質疑の中で外交の重要性ということを御指摘いただきました。私ども事務当局といたしましても、総理あるいは大臣の御鞭撻を得ながら、また本委員会の強力な御支援を得ながらきちんとした外交を進めなければならない、かように考えているわけであります。そういう任務をきちんと果たすためには、まさに今井上先生が御指摘になりましたように、フィンランドの大使館の規模が小さいという御指摘がございましたが、私どもとしても、これからの、先ほど大臣から御報告がありました非常に幅の広い日本外交を展開していくということに当たりましては、何分にも必要な定員、組織あるいは大使館の規模といったものが必要になってくるだろうと思っております。今日までいまだにそういう規模の小さいものであるとすれば、私ども外務事務当局としても一層努力を重ね、我々の陳容の強化に邁進しなければならない、かように考えているわけであります。  先ほど井上先生から御指摘がありましたように、一つのミスも許されてはならないということは、私ども肝に銘じておるつもりでございます。また同時に、非常に大きな問題に取り組めるだけの外交官を養成しなくてはならないという点も、まさにそのとおりだと私ども感じております。そういうことを取り進めるためにも、ある程度の定員の余裕がありませんとなかなか容易なことではないということを、実は私ども悩みながら日々の職務に邁進しているところであります。  ぜひ本委員会の御支援を得ながら今後の外交実施体制等の強化ということに努力を重ねてまいりたいと思っておりますので、事務当局から一言だけ御報告させていただきます。
  82. 井上普方

    ○井上(普)委員 もっと人間をふやしてくれというのは、これは私も考えなければならぬことだとは思います。しかし、在外公館に行けば、こんな連中に金を出しておるのかと思うような者も余計おりますよ。情報収集のために外務省の在外公館にもっと金をくれという話があった。今から十年くらい前から言っている。しかし、この連中に情報収集の金を渡したらどんな金の使い方をするのかなと思うと、税金ですから、肌寒い思いがするのですよ。案の定、欧州において事件を起こしましたね。外務省の上級幹部であった人が起こしておるじゃないですか。  だから、我々はそういうようなことを考えると、もう少し外務省はきちんとすれば、今きちんとしておるかというと各省と比べてきちんとしてない。そしてまた、テンマ定員というように、他の省庁から人数を余計もらってやっておるのが実情じゃありませんか。テンマなんという、これは総定員法の枠内でやむを得ぬ措置であるかもしれませんけれども、外務省の力のなさを示しておる一つの証左だろうと私は思う。  それはともかくといたしまして、外務大臣、どうですか、先ほど来私が申したことについて何かあなたの御所見、御感想がありましたら承りたいと思うのです。
  83. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員から厳しいおしかりをいただいておりますが、私は外務省にお世話になってちょうど一年六カ月になります。その間に、私自身が外相会談のために飛び歩いてきた会合の数というものは、実際自分で計算できないくらいたくさんありますし、飛行距離も地球を十一周以上していると思います。  一番大きな問題は、まず大臣の方からいえば、大臣が余りにも国会に拘束される、これが最大の日本外交の致命的な問題だと私は思います。これがなかなか、外務省の、例えば今官房長おりますけれども、官房長は、外務大臣が国会中に出張することを国会に相談するのは物すごく気を使うわけです。それは、予算がある、関連法案がある、条約があるといったときに、外務大臣がいないで審議をしていただけるだろうかという、この不安が外務省幹部には最大に働いているということを率直にまず御理解をいただきたいと思います。  そこで、外務大臣が国会中に、よその国の外務大臣と比べて、例えばヨーロッパ外務大臣はどの程度一年間に他国との外相会談をやっておるかというデータを今調べさせております。それと一回比較してみて、日本外交がこれでいけるのかどうかということを、まず大臣レベルの問題から考えていかなければならない。御案内のように、外務省は全部カウンターパートでやっておりますから、課長が行けば課長しか相手にならない。局長が行けば相手の局長との話し合いになる。大臣が行かないと大臣同士の会合はできない。大臣同士の話し合いで初めて、本当に相手の持っている情報をお互いに交換しているというのが今日の国際外交の常識だろうと思います。  そこで、日本のように、戦前、外務省、内務省とありましたが、私は、今外務大臣外交機能を発動できるのは、国会の休会の間、それから五月の連休の間、あるいは特別な国際会議外交をやるために、国会でお許しを得て行ってこいと言われたときには、ヨーロッパへ行って一泊で帰ってこい、あるいはアメリカのワシントンへ行って一泊で帰ってこい。これじゃ、実際に、肉体的な限界をはるかに超えた努力をしなければやっていけません。こういう状況の中で、もし日本外交活動を積極的にやろうと思えば、閣外大臣をつくる必要があるのではないか、イギリスのように。これが一つ、私は大臣レベルで言えると思います。  もう一つは、政務次官も、農林、通産、大蔵と二人ずつおりますけれども、これほど外交の大事な時代に外務省の政務次官は一人しかいない。このアンバランスを何とか調整しなければならない。  それから、外務審議官のレベルになりますと、御案内のように、今小和田外務審議官、渡辺外務審議官、二人しかおりません。渡辺外務審議官もそうですが、小和田外務審議官なんかはひどい月は日本におるのがわずかに四日で、世界じゅうを回っております。しかしそれで、私は足らないと思います。これをふやそうと思えば、政府として も了承してもらって外務審議官の定員をふやしていかなければならない。こういう問題から考えていきますと、省員自身が少ないということも含めて、機能的に活動できる人間が極めて強く拘束されている。  それから、局長は全部政府委員で張りついておりますから、国会中に海外出張はなかなかできない。これで日本外交をしっかりやれというおしかりをいただくのも、私は、ぜひひとつ国会の方からは、外務委員会としてもこれではいけないという御判断をいただいて、外務委員会としてひとつ御決議ぐらいしていただかないと、なかなか日本外交機能は充実をしていかないのだろうと思います。  それはまず、大蔵省が予算の枠に縛りをかけておるところにも一つの大きな問題が存在している、こういうことを私は大臣になって痛感をしておりますし、アメリカから情報をもらわないとわからない。例えば偵察衛星の写真などというものは、日本では独自には手に入らないわけであります。軍事情報の交換もいろいろとカウンターパート同士でやっておりますけれども、私は将来の問題として考えるならば、やはり外交衛星といったような衛星を日本独自で持つというぐらいのことは、当然考えておかしいことではない。例えば、アジア地域全域の軍事、軍隊の移動がどうなっているかということは、偵察衛星で見ればすぐわかるわけでありますから、こういうことがひとつ考えられないものか。  また、私が政府側から申し上げたら大変差し出がましいことでありますが、アメリカの国会の外交委員会などは、政府専用機を借りてどんどん各地を旅行して現地調査をやっておる。こういうことを考えると、新しい歴史の変革期に当たっては、政府も国会も外交一つの新しい展開をすることが必要な時代になってきたことは、私は間違いのない事実だろうと思います。  委員長、どうぞひとつ、先生も、日本外交を御心配いただく立場で、ぜひひとつ外務省の機構、機能の一層の改革のために御支援をちょうだいいたしたい、心からお願いを申し上げておきたいと思います。
  84. 井上普方

    ○井上(普)委員 外務大臣のお話、よくわかりました。わかりましたけれども、少なくとも国会、外務委員会において、予算のときは別です。外務大臣が海外出張するといって拒否した事実はないと私は思う。ここらあたりはしっかり御記憶になっていただきたい。予算委員会のときは問題がありますから、それは足どめするということはあり得る。しかし、外務大臣が海外に参るというときに、少なくとも外務委員会において行ったらいかぬというようなことは言った覚えはない。これは、そこらのところは大臣、ちょっと思い違いじゃないかということを指摘いたしておきます。  それから、閣外大臣という考え方一つ考え方だと私も思う。しかし、ここに閣外大臣、かつてよそから来ましたときに、外務大臣にバッジのない人が来たときには、外務省の役人どももばかにして、どうも仕事ができぬように私らには思われた。ここらあたりについてはやはり考えなければいかぬ問題だと思う。  同時に、先ほども申しましたが、戦前でございましたならば、大使といえば、特命全権大使というのは十四、五人だ。ところが、今だったら百何十人もおる。キャリアの諸君はみんなところてんでどんどん上がってしまう。大使になる。それは外務省に入った以上は、末は大使になることを夢見ておるでしょう。だから安易になっておるのじゃないだろうかという気もしないでもない。私はこの間スリランカへ行った。スリランカへ行くと、えらいきびきびした大使がおる。向こうの大統領あるいは総理に会って話をするというと、どうだい皆さん、この大使はひとつスリランカに残して国会議員にしてくれんかというような冗談も出るぐらいだ。外務省にしてはえらいよくできた大使がおるなと思って聞いたところが、警察庁から出向して大使になっておると、ほうやはり違うなと言って、おたくの桜井君なんかと大笑いしたことがあるのです。  ともかく、もう少し大使を各省から採りなさい。役所の壁があるからなかなか難しいとは言うけれども、少なくとも局長クラスの人を大使にしてやるくらいのことをやらなければ、新しい血を入れなければ、外務省というものは刷新できないのじゃないか。中には民間の人をという声もある。しかし、民間の人というのはこの官庁組織というものを御存じない。その点においては大変御苦労なさると思う。だから、少なくとも各省の局長クラスの退官する人をどんどんと引き抜いて、優秀な人を外務省に入れることによって外務省の血を新しくしなければいかぬ。まことに私は言いたいほうだいというようなことを言っておりますけれども、これは決して言いたいほうだいではないのです。二十四年間籍を置いて、日本外交はどうあるべきかということを考えると、この硬直した外務省、これを直さなければならないのじゃないかということは十年前から言っているのです。あるいはまた大平さんが外務大臣のときにも言ったのです。福田さんが外務大臣のときにも、このことは議事録に残してあります。またまたここで言わなければならないような事態になっている。  そこで、もう一つお伺いいたしたいのは、与党も野党も国連中心外交ということを言っています。しかし、果たして国連中心外交ということが言えるのか。中山さんはこの間はこの場で国際新秩序という言葉をお使いになった。国際新秩序というのはアメリカの腕力主義が通用する世の中を国際新秩序というのかいなと思って、まさかそんなことはおっしゃるまいと私は思っておるけれども、そうともとれるような今の状況じゃありませんか。  というのは、国連に対してのアメリカの分担金は何年滞っていますか。去年の八月湾岸戦争が起こってようやく一年分を払ったというけれども、まだ三年か四年分たまっているのじゃないですか。そして、ともかく国連の安保理決議が有効なんて言っておるけれども、あれは金を払ってないんだから。国連は正義だというけれども、私は正義じゃないと思う。ここらあたり、国連中心外交というのなら、国連を本当に今の時代に新しいものに直さなければいかぬと私は思う。  この間中山外務大臣国連総会で、国連憲章にあるところの敵性条項を直せとおっしゃった。私はこれは十年ぐらい前から言うのです。福田元総理に対しても私はこのことを話したら、そのとおりだよ、もう日本も国連に銭を出すのは世界で二番目になっているのだから、日本ドイツが敵性条項を直せというのは当たり前の話。ところが、敵性条項は直っておらぬのに、国連の連中は我々のところへ来て、日本からもっと金をくれ、もっと金をくればかり言う。敵性条項があるのに国連中心主義で、まだ我々は国連から見たら敵国なんですよ、これはなかなかできない。ともかくPKO等々今論議しているけれども、国連の下請にあるのに敵国の協力をするというのはおかしげな話だと私は思う。速やかにここらあたりは直さなければいかぬ。  しかし、これは日本外交で言ったのは六回目なんです。過去九年間、九年目にあなたがおっしゃったんでしょう、これじゃいけません。国連外交を大事にしています、していますというけれども、今の外交官で国連で敵性条項を直さぬかと言って強力に働きかけた人がおりますか。どうなんです。少なくともここらあたりから直さなければ国連中心外交なんということはおこがましいさただと私は思うのですが、どうでございます。
  85. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、委員からの御指摘は全く賛成でございます。国連憲章にあります旧敵国条項というものを、憲章を改正して、そして日本国もドイツもイタリーもこの旧敵国条項というものが排除されることによって初めて新しい国連を中心とした時代が始まるものと信じております。国連に対する拠出金、今委員から御指摘のとおりであります。日本世界で第二番目の拠出国になっておる。こういう中で、国連、PKOというもの が、これから国会で、与野党間で真剣に御議論いただいて、もしそういう協力体制ができるということであれば、やはりこの敵国条項が存在すること自身が理解できない。  私はそういう意味で、昨年の国連総会でもこの点を強く主張したわけでありますけれども、問題は、ドイツのベルリンの旧戦勝国による占領というものが存在をしていた間、この旧敵国条項を解除するということは非常に難しかったと私は思います。昨年のドイツの統合によってこの戦勝国によるベルリンの分割統治というものがこれでなくなったという事態を迎えた今日、我々は条件は整備されてきたという認識を持っております。  御指摘のように、この問題の改正に当たっては国連加盟国の三分の二の総会での議決、また安全保障理事会の理事国を含めた三分の二の国の憲法に従った批准が必要でございますから、憲章改正委員会をまず機能させて、我々は関係国と協議しながら全力を挙げて努力をしてまいることをこの機会にお約束申し上げておきたいと思います。
  86. 井上普方

    ○井上(普)委員 国連中心主義と言いますが、日本の今後のあり方としては、国連が正義だというようなことも私は今の立場からいえば言えぬけれども、アメリカはともかく金を出していないのだから、都合のいいときだけ安保理事会の決議なんて言っておる、まことに御都合主義だなと言わなければなりません。この間も西ドイツのブラントさんとも話す機会がございまして、この敵性条項は何とかならぬかと言って、二人でけしからぬ、もう直してもらわなければということは言いました。  しかし、大臣、ベルリンの壁があったから日本の敵性条項が抜けなかったというのはおかしいですよ。日本日本なんです。これは今までの外交の怠慢じゃないかと私は思う。難しい問題はありましょう。ありましょうけれども、ここまで平和にやってきて、国連に対して金も十分出しておるんだ、金、金と言ったらしかられるけれども。十分な世界平和に尽くすという日本に対しまして、早く敵性条項を削除することを強く要求いたしまして、私は終わります。
  87. 牧野隆守

    牧野委員長 午後一時十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ────◇─────     午後一時十一分開議
  88. 牧野隆守

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  89. 玉城栄一

    ○玉城委員 私は、欧州復興開発銀行設立協定、それと国際情勢、日ソ関係、それと終わりにODAその他ちょっとお伺いしてまいりたいと思います。  きょうの議題の一つであります欧州復興開発銀行についてまずお伺いしておきたいのは、この種の世界地域開発銀行、類似の世銀もありましょうし、いろいろありますね。この類似の地域開発銀行に比較して、この銀行協定はどういうところに特徴があるのか、その内容、それをまずお伺いいたします。
  90. 橋本宏

    橋本説明員 お答えいたします。  先生御案内のとおり、類似の国際援助機関とこの欧州復興開発銀行設立、今討議をいただいておりますこの銀行につきましては大きく違っているところがございます。そこのところにつきましては前文と、それから第一条のところに非常に明確に書かれておりますので、長くなって恐縮でございますけれども、そこの御説明をさせていただきます。  前文には、「中欧及び東欧の諸国が、複数政党制民主主義を現実に実施することを推進し、民主主義的な諸制度、法の支配及び人権の尊重を強化する意図を有すること並びに市場指向型経済に向かって発展するために改革を実施する意思を有することを歓迎し、」そして「中欧及び東欧の諸国の経済的な発展を促進し、これら諸国の経済が国際的により競争力を持つように助力し、これら諸国の復興及び開発を支援し、並びに適当な場合にはこれら諸国の経済に対する融資に関する危険を減少させるため、緊密なかつ調整の図られた協力が重要であることを考慮し、」ここに欧州復興開発銀行設立することとしたというのが前文にあります。  その前文を受けまして、第一条に目的が書かれております。この目的は、「銀行は、経済的な発展及び復興に貢献するに当たり、複数政党制民主主義、多元主義及び市場経済の諸原則を誓約しかつ適用している中欧及び東欧の各国における開放された市場指向型経済への移行並びに民間及び企業家の自発的活動を促進することを目的とする。」ということになっております。これが、この銀行の大きな特徴でございます。
  91. 玉城栄一

    ○玉城委員 この協定の審議の過程の中で一番大きな問題点として議論された点、概略的にそこのところを御説明いただきたいと思います。
  92. 橋本宏

    橋本説明員 協議の過程二つの点が問題になりました。  一つは、この銀行の業務に関してでございます。これは、民間部門への融資を中心として、インフラに対する融資は厳しく限定さるべきであるとする意見一つにあり、またほかの意見としてインフラに対する融資もある程度積極的に認めるべきであるとする考えの二つがございまして、これが結果といたしまして、両方の主張の妥協によりインフラ部門に対する協力というものは全体の四〇%以下に抑えるということになったわけでございます。  また、もう一つは、ソ連受益範囲でございまして、交渉過程におきまして、ソ連の参加に対して何らかの制限を付すということについては交渉参加国の意見は一致しておったわけでございますけれども、その制限の程度につきましては、各国でいろいろと異なり、最終的には、ソ連が超大国であり、ほかの東欧及び中欧諸国とは異なるということをソ連みずから認め、ソ連に対する受益範囲というものをみずからも限定することに同意して、この協定交渉が終わったという経緯がございます。
  93. 玉城栄一

    ○玉城委員 今の御答弁の中にソ連云々ということがあるが、これは、この協定の後ろの方に出ていますね、今おっしゃったところが。こういう条約あるいは協定をこれまで審議してきましたけれども、ちょっと珍しいんですね。その辺、どういういきさつかちょっと御説明いただけますか。
  94. 橋本宏

    橋本説明員 これは、先ほどの説明と若干重複して恐縮でございますけれども、やはりソ連が超大国であるということであり、かつみずから援助している国である、そのようなソ連に対しまして、ほかの中欧及び東欧の諸国と同様にいわば限度を設けずに融資を受けるということになりますと、この協定一つの大きな目的であります中欧及び東欧に向けられるお金が少なくなってしまうということがございました。これは、中欧及び東欧諸国側からも問題提起されたところでございます。  これらの点につきまして、いろいろ話し合った結果、ソ連としても、これは異例のことでございますけれども、みずから書簡を発し、この書簡がこの協定の一体となるという形でみずから限界を設けるということに最終的に合意が得られたものでございます。
  95. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、この協定、特徴的なことで、さっき前文、目的、おっしゃいましたけれども、やはり今のところもこの協定のほかの協定にはない非常に珍しい特徴的なことじゃないかと思うわけであります。  そこで、理念といいますか哲学といいますかポリシーとでもいいますか、お話になったとおりでありますけれども、この協定に署名する四十数カ国ですね、その中で、やはり日本に対する役割というものは、それぞれ大きな期待もあろうかと思うわけでありますが、その場合に、日本はどういう理念といいますかポリシーで今後この銀行に加盟をして、出資もしてやっていくおつもりでいるのかお伺いします。
  96. 橋本宏

    橋本説明員 お答えさせていただきます。  この銀行は、東西関係冷戦の枠組みを超えまして、対立から対話と協調へと変化してきている中で、中欧及び東欧諸国政治的、経済改革の支援を一層強化するとの観点から設立されるものでございまして、新たな国際秩序の構築に向けた努力の一環として極めて有意義であると認識しております。  我が国といたしましては、設立協定交渉に積極的に参加してきたところでございますが、今後とも、この協定に加盟することによって引き続き積極的に関与させていただきたいと考えているところでございます。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 おっしゃっていること、既に配られているこれにちゃんと書いてあります。それは読んでいます。  ですから、さっき読み上げられました協定のそういう理念でいくわけでしょうが、やはり我が国の場合はどうしても平和主義というものが、憲法にうたわれたという立場から非常に際立った面を持っているわけであります。民主主義とか自由だとか、それは当然ですね、これに書いてある。そういう平和主義というものを常に協定を結ぶ場合に我が国の特徴的な面としてそれは盛っておく必要が絶対にあると思うわけであります。  そこで、さっきちょっと申し上げました、いわゆる経済大国日本ですから、どういうことをこの協定国は我が国に対して期待して署名しているのか、簡単に御説明いただけますか。
  98. 橋本宏

    橋本説明員 先生御案内のように、東欧及び中欧諸国におきまして民主化の運動というものが大きく起こりまして、我々日本国といたしましては、他の友好国と同様な考え方に立ってこ動きを不可逆的なものにしていくということが重要であるという強い認識に立っているわけでございます。これは、そういう民主化へ動こうという政治的な意思を明らかにしております諸国が、今後自立していくために市場経済原則というものを取り入れていかなければいけないということで、我々も積極的にこの銀行に参加することによって、我々のこれまで培ってきました経験というものを通じまして市場原則というものをこれら諸国に伝達していくということで、今後ともその点についての協力を積極的にやってまいりたいと思っております。
  99. 玉城栄一

    ○玉城委員 具体的にこの協定についてちょっとお伺いしてまいりたいと思います。  この六章の二十二条、いわゆる機構のところに、この銀行に総務会とか理事会とか総裁とか副総裁、その他の役員、職員の項目がありますけれども、総裁とか副総裁、このポストはどの国を予定して、そういう議論がされていると思うのですが、それが一点。  それから、この総務会に総務及び代理一名を任命することになっているわけですが、このポストは我が国のどの省庁に内定をしているのか、これが二点。  それから三点、この銀行の職員数は何名か。それと、日本人の職員数はその中に何名ぐらい予定していらっしゃるのか。  以上三点お伺いします。
  100. 橋本宏

    橋本説明員 まず第一の御質問の総裁、副総裁のポスト等についてでございますけれども、総裁につきましては、本件協定の作成のための会議の議長を務めましたフランスのジャック・アタリという元大統領特別補佐官が選出される見込みでございます。候補となっております。正式には四月十五日、十六日に予定されております創立総会におきまして、各国を代表する総務による投票というものを通じて選出されるということになっております。また、副総裁につきましては、現在アタリ総裁候補が中心となりましてアメリカ、ハンガリー、スウェーデン等から具体的な人選が進められております。副総裁は、正式には銀行発足後、総裁の勧告に基づいて理事会によって任命されるという手続になっております。この副総裁としては今現在数名ということでございまして、まだ最終的には候補者が決まってないと承知しております。  それから、日本の総務、総務代理、理事等の役員につきましては、現在政府部内で鋭意検討しているところでございます。  続きまして、先生御質問の第三の点、銀行の職員数及び日本人の職員数の点でございます。ただいま設立準備事務局というのができておりまして、職員候補の人選を進めております。設立当初は百名程度の職員数で発足して、ことしの末までに二百五十名程度となるという予定でございます。日本人職員の採用につきましても、設立準備事務局が中心となりまして、我が国政府機関民間企業等への働きかけが行われております。現在、二十名程度の日本人の応募があると承知しております。なお、先ほど来言及させていただいております設立準備委員会には既に現在二名の日本人が採用されております。
  101. 玉城栄一

    ○玉城委員 この協定附属書AのC、受益国の中にドイツ民主共和国がありますけれども、現在は、附属書AのAにはドイツ連邦共和国統一後の国家があるわけですが、Cにあります東ドイツが持つことになっている株式数、それと資本への応募額の取り扱いはこの協定上からどういうふうになっていくのか、その辺を御説明いただきたいと思います。
  102. 橋本宏

    橋本説明員 昨年、この協定の調印が行われましたときには、ドイツ民主共和国ドイツ連邦共和国双方が署名しております。しかしながら、先生御案内のようにその後ドイツ統一されたわけでございまして、より具体的には、ドイツ民主共和国というものがドイツ連邦共和国に編入される形ということで統一が行われたわけでございます。これに伴いまして、この銀行にはドイツ連邦共和国のみが加盟することになりまして、旧東独に割り当てられておりました株式については、未割り当て分として取り扱われることになります。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 東ドイツ統一後は消滅といいますか、統一されたわけですから、なくなるわけですね、この協定上も。その場合に東ドイツ側の従来のいわゆる開発については、この銀行融資対象になるのかならないのか、その辺はどう解釈すればいいのでしょうか。
  104. 橋本宏

    橋本説明員 先生指摘のように、ここに受益国というところでドイツ民主共和国が署名した時点に書いておったわけでございますけれども、これがAに書かれておりますドイツ連邦共和国に編入されたということに伴いまして、旧ドイツ国というのは受益国たる資格を失ったということでございまして、この協定によりまして協力を受けることはできなくなったわけでございます。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 できなくなったということで、その旧東ドイツ区域はもう融資の対象から排除される、このように理解しなくてはいかぬわけですね。
  106. 橋本宏

    橋本説明員 委員指摘のとおりでございます。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 我が国による東欧諸国に対する二国間経済協力とこの欧州復興開発銀行を通じる協力との間に、相互に協力関係は確立されているのかどうか、お伺いいたします。
  108. 橋本宏

    橋本説明員 ただいま先生指摘の点につきましては、協定第二条の2というところに関係が定められておりまして、この銀行協定上任務を遂行するに当たりましてすべての加盟者との間で緊密な協力を行うということにされているわけでございます。したがいまして、我が国としましても、二国間で行っている協力とこのEBRD欧州復興開発銀行を通じる協力というものについて、緊密な協力関係を持ちながらやっていく所存でございます。
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 我が国の欧州諸国に対する経済協力において国別の優先順位というのがあるのかどうか、その辺をお伺いいたします。
  110. 橋本宏

    橋本説明員 先生御案内のように、中欧・東欧に対する協力というのはまだ始まったばかりでございます。したがいまして、我が国ODAの事業の中で占める割合もまだまだ少のうございます。しかしながら、先ほど来御説明させていただいたこの銀行目的にかんがみ、我が国としてはこの 銀行を通じてできるだけの協力をやっていきたいという考えでございまして、その協力を考えるに当たりましては、特に国別優先順位を考えているわけではございません。
  111. 玉城栄一

    ○玉城委員 東ヨーロッパ民主化の一環として、御存じのとおり、ワルシャワ条約機構、こういう軍事機構の解体が決定したわけですけれども、このWTOの消滅は東欧地域に力の空白を生じさせずにはおかないという不安定な要因が心配されるわけでありますが、東欧諸国にとって最大の脅威は、現在の先行きが不透明であるというソ連の実態もあるわけですね。このための国家の安全保障が最大の関心事であるわけですね。このいわゆる東欧の安全保障の問題について、皆さんはどういうお考えを持っていらっしゃいますか。
  112. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先生御案内のとおり、劇的な東欧の激動する変化があったわけでございますが、その過程においてワルシャワ条約機構あるいはコメコン体制というものが崩壊していく。その中で、ソ連、特に東欧諸国はCSCE、欧州安保会議というものを大変に重視する姿勢を打ち出しておるわけでございます。昨年の十一月にパリで採択されましたいわゆる新しいヨーロッパに向けてのパリ憲章というものが一つの基本的な文書という認識であるであろうと私は思うわけでございます。  安全保障という面について申し上げれば、さしあたり東欧はワルシャワ条約機構の解体とともに組織的なものは失っていったわけでございますけれども、一方、西側におきましては欧州の安全保障というものは引き続きNATOという組織、NATOが中核となって担っていくのだという認識であるというふうに見ております。
  113. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、ですから、経済的にはEC、軍事機構の面ではいわゆるワルシャワ条約機構、これが解体してしまっているわけですから、従来のその地域は空白が生じる、それについて関心といいますか、それについて今後どうすればいいか。NATOとおっしゃっても、まだそこまで行ってないわけでしょう。その辺をちょっとわかりやすいように説明していただきたいのです。
  114. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 東欧諸国ということの関連でお答えさせていただきますれば、先生御案内のように、ワルシャワ条約機構の解体とともに東欧に駐留をいたしておりましたソ連軍の引き揚げの問題があるわけでございます。これは、ハンガリーあるいはチェコ等においてはかなり進んでいるわけでございますが、ポーランドはなお折衝中というふうに理解いたしております。さらに、一番大きな問題といたしまして、旧東独になお駐留を続けておりますソ連軍の引き揚げの問題があるわけでございます。  そういう過程で、NATOの閣僚理事会でもはっきりうたわれたわけでございますけれども、さしあたりのいわゆる脅威、せんじ詰めればソ連からの脅威というものは現実的にはなくなったという認識が打ち出されているわけでございます。それを踏まえて新しいヨーロッパの安全保障体制はいかにあるべきかということについてまだ明確な答えは出されていないと私は思いますけれども、先ほど申し上げましたように、欧州安全保障会議のパリ憲章というものが将来を考える場合の一つの基本的な文書というふうに東欧諸国も認識しておるというふうに考えております。
  115. 玉城栄一

    ○玉城委員 冷戦後のこの地域の安全保障の問題というのは、確かにこれから時間もかかると思うわけですけれども、非常に重要な問題になってくると思いますので、その辺、我が国としての考え方というものはきちっとしていただきたいなと思うわけであります。  それから、午前中の御質問にも、川崎先生もお話しになっておられましたけれども、いわゆる公的債務の削減の要求ですね。アメリカは、ことし一月に開かれたいわゆるG7でポーランド、エジプトに限定した公的債務の削減四割ないし五割に応ずるように我が国に対して求めているわけであります。そういう報道もあります。そのことが事実かどうかですね、事実確認。  それと、我が国はその米国の要請を受け入れるのかどうかという点。もし、これを受け入れる、その四割ないし五割の公的債務の削減というアメリカ要求を受け入れた場合、これは今後非常に問題も大きいし、またそういう削減対象国というものは、今申し上げたポーランド、エジプト以外に拡大していくおそれはもう十分にあるわけですから、これは我が国にとって大変な問題と思いますけれども、その辺をお伺いいたします。
  116. 橋本宏

    橋本説明員 先生御質問の事実関係でございますけれども、ポーランド及びエジプトの対外債務問題が深刻な状況にありまして、この問題に対しましてパリ・クラブ等の場においてかねてより対応策の検討が続けられていることは事実でございます。  第二の、その公的債務の削減に対する我が国の方針についての御質問でございます。これは、先生指摘のように、こういった債務国が自助努力をすることが必要でございまして、公的債務の削減という措置をとることによって、かかる自助努力が損なわれることは大きな問題かと考えます。また、その途上国にとりましては持続的に成長していくことが必要でございまして、そのためには新たな資金を受け取ることが必要である。しかしながら、公的債務の削減は新たな資金のフローの確保に問題を生じさせるものでございます。そのような難しい問題があることから、我が方といたしましては、債務削減に代替するいろいろな方法を含めまして今対応策を検討しているところでございます。
  117. 玉城栄一

    ○玉城委員 ポーランド、エジプト以外に、日本はいわゆる債権国ですが、日本は公的債務が世界にトータルでどれぐらいありますか。
  118. 橋本宏

    橋本説明員 お答えいたします。  途上国の累積債務状況につきましてはいろいろな数字がございます。全途上国の短期、中期、長期すべての累積残高の総額は、予測値になりますけれども、一九九〇年で一兆三千百九十億ドルに上るとされております。
  119. 玉城栄一

    ○玉城委員 一兆三千億ドル。さっき申し上げましたエジプト、ポーランドは幾らですか。公的債務の四割ないし五割を削減しなさいとアメリカ要求があるわけですけれども、額は幾らですか。
  120. 橋本宏

    橋本説明員 お答えいたします。  一九九〇年一月現在で、ポーランドが対外的に抱えている残高の合計は二百九十億ドル、エジプトが二百六十九億ドルでございます。
  121. 玉城栄一

    ○玉城委員 そのうちの五割ないし四割を棒引きしなさいということだと思うのですが、さっきの御答弁は、それはできないがそれにかわるべき何かを考えている最中であるというお話です。アメリカ日本に対してそういう要求を突きつけているわけですね。それはできない、これはまた新たな日米摩擦の一つになりませんか。
  122. 橋本宏

    橋本説明員 公的債務の削減につきましては、かなり技術的な問題もございまして、今パリ・クラブでいろいろな検討が行われております。各国間の対立ということでなくて、いろいろな国々がそれぞれ持っている事情も踏まえて、どういうことができるかといういわば建設的な形で検討が進められておりまして、我が方としましてもその枠内で適切な対応ぶりを今検討しているところでございます。
  123. 玉城栄一

    ○玉城委員 私がお伺いしているのは、アメリカに対してできませんよと拒絶しますと、日米関係の摩擦の一つの原因になって発展していく可能性もあるような感じがしますけれども、そういうことは一切ないというお考えですかとお伺いしているのです。
  124. 橋本宏

    橋本説明員 失礼申し上げました。  日米間の摩擦にならない方向で解決すべく、今いろいろ検討しているところでございます。
  125. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、これを受け入れた場合に、ほかの国もたくさんあるわけですから、どんどん削減対象が拡大していったらもう日本はえらいことになると思いますのでお伺いをしているわけであります。  それから、今度は日ソ関係についてお伺いして まいりたいのですが、そのときに、ガットそれからIMF等にソ連は参加が認められていない原因はどういうことなのか、どういうふうに外務省は見ておられるのか、その点。それから、ソ連がガットに加盟申請をしてないということもあるわけですが、その点もあわせてお伺いいたします。
  126. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 お答え申し上げます。  まずIMFでございますが、ソ連がIMFの加盟に関心を示すとしている発言が頻繁に行われているのは事実でございますが、現時点でIMFへの参加申請はソ連側からないと承知しております。  それからガットでございますが、昨年五月十六日に開催されたガット理事会におきましてソ連のガットへのオブザーバー参加がコンセンサスで認められております。ただ、これはソ連の正式なガット加盟を前提としたものではございません。  先生の第二の御質問の正式加盟でございますが、ガットと申しますのは市場経済を前提としておりまして、権利義務関係が極めて明確に規定されております。ガットへ加入するためには少なくともガット上の義務が履行可能である国内体制を有していることが必要でございまして、ソ連自体がガット加盟をしていないということは、そういうことについてまだソ連として十分用意がないということではないかと私どもは理解をしております。
  127. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、三月三日の、ソ連邦からの独立の是非をめぐるラトビア、エストニア両共和国の国民調査・投票では、いずれも七〇%を超す高い独立支持の結果が出ているわけであります。特に、ラトビア人は五四%、過半数を制しているわけですが、この投票の結果は独立の賛成率七三%。このことからしますと、共和国の連邦離脱の動きソ連の中央はどういう対応を示すと外務省は分析していらっしゃるのか、このことは三月十七日、連邦の存続を問う国民投票にどういう影響を及ぼすと考えていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  128. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 お答えをいたします。  先生お尋ねのバルト三国の動きでございますけれども、これはソ連邦の中でも大変にデリケートな、あるいは複雑な側面を持つ問題でございます。共和国の国民の意思が尊重されなければならないという側面もございますし、連邦の根幹にかかわる問題であるという側面、いろいろな側面がございます。これから三月十七日に先生指摘一つの国民投票が行われるわけでございますけれども、私どもはこの問題につきまして、今回の結果、あるいはそれに基づきました十七日の投票に向けての何らかの予測を行うことは差し控えさせていただきたいと思います。
  129. 玉城栄一

    ○玉城委員 我が国政府ソ連に対する緊急援助を一月に実施の予定であったわけですけれども、連邦政府が今のバルト諸国に対する武力弾圧を行ったということから援助を見合わせていましたが、三月二日に実施に踏み切っております。その援助の総額、内容、そして援助に踏み切った理由についてお伺いいたします。
  130. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先生御質問の緊急援助ということが、昨年の十二月に政府として決定いたしました医薬品、食糧につきましての緊急援助という御指摘でございますれば、内容は食糧、医薬品、政府から無償で緊急援助を行う総額十億円と輸銀の融資一億ドルを考えた援助というものがあったわけでございます。  先生指摘のように、バルト情勢という一つソ連の国内の問題が出てまいりました。ヨーロッパ各国、米国等もこのバルト情勢をにらみながら対応してきたわけでございますが、日本政府も援助を停止するという決定を下したことはございませんけれども、バルト情勢を眺めながら準備は進めてきたという状況でございます。この中で、少なくとも医薬品の無償供与につきまして、既にかなりの準備を進めておりまして、近々この医薬品の無償供与ということを実施いたしたいというふうに考えております。
  131. 玉城栄一

    ○玉城委員 今月の末でしたね、ソ連外務大臣来日が予定されており、来月ですね、ゴルバチョフ大統領の来日、これは一つのセットと思うわけでありますけれども、ソ連外務大臣の日程は、はっきり決まっておりますか。
  132. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 べススメルトヌイフ外務大臣の訪日時期につきましては、先般モスクワで行われました事務レベル協議におきまして、三月下旬ということが双方の話し合いで決まったわけでございますが、それでは具体的に三月下旬のいつかということにつきましては、現在先方の都合、こちらの中山外務大臣のいろいろなスケジュールをすり合わせまして、なおソ連側と協議中でございます。
  133. 玉城栄一

    ○玉城委員 それで、来月の十六、十七、十八日でしたか、ゴルバチョフ大統領の来日、実質三日間、ちょっとこれは日程的に短いのではないか、そういう意見もいろいろありまして、ゴルバチョフ大統領の滞在日程ですね、それでいい、あるいは延ばしてもらいたいという意見外務省にはあるのかないのか、その辺をお伺いいたします。
  134. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 中山外務大臣が訪ソいたしまして、ゴルバチョフ大統領と会談をいたしましたときに、ゴルバチョフ大統領から一応のスケジュールの案として出てまいりましたのが、先生仰せのとおり、四月の十六日日本着、四月の十九日日本発ということでございました。その後、まさに先生おっしゃるとおり、私ども、三泊四日というスケジュールでは、初めてソ連からお迎えする国賓として、いろいろな行事あるいは各方面から寄せられております御希望等を勘案しながらスケジュールをつくるにしては余りにも短いということで、正式にソ連側に対して、できれば二日間この日程は延ばせないかという要請をいたしました。  その後、いろいろ往復がございましたけれども、最近回答がございまして、ゴルバチョフ大統領のいろいろなスケジュールから考えてみて、この三泊四日という日程を延長するということは難しいという答えが参りました。私どもは、その回答を受けまして、現在三泊四日の日程の範囲内で、日程の具体化についてソ連側と鋭意協議を続けてまいっておる状況でございます。
  135. 玉城栄一

    ○玉城委員 今おっしゃっています実質三日というのは動かせないということでありますけれども、我が国も最大というか、最高のチャンスといいますか、懸案の領土問題への糸口だけではなくて、解決へ大きく前進をしなくてはならぬ機会でありますので、非常にこれは慎重と同時に、またそれだけの成果を外務省としては挙げていただかないと、正直に申し上げまして、国民も納得しないわけですよ。  ですから、まずゴルバチョフ大統領、ソ連外務大臣もいろいろなカードは持ちながらただぶらっと来るわけではありませんし、いらっしゃるわけですから、一体基本的にソ連側は何を我が国に要求しているのかといいますか、何を求めているのかということを外務省はどういうふうに見ていらっしゃるのですか。
  136. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 ソ連側日ソ関係を飛躍的に発展させたいという希望を繰り返し繰り返し表明をされ、私どももその必要性を強調しているわけでございますが、日本政府の基本的な考え方外務大臣からの御答弁でもるる御説明申し上げておりますとおりに、飛躍的な発展、日ソ関係の質的な飛躍というもののためには、日ソ間で安定した政治的な基礎が築かれなければならない、そのためには懸案の北方領土問題を解決して平和条約締結するということが不可欠であるという基本的な認識でございまして、この認識を中山外務大臣の訪ソの際にも、あるいはその後のいろいろな機会を通じましてソ連側に繰り返し説明をし、ゴルバチョフ大統領の訪日が、まさに先生指摘のとおりその突破口となるべきだということを強調しているわけでございます。
  137. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは非常に大事な交渉事ですから、それぞれ考えは持ちながらこれから交渉に当たるのだろうと思うのです。  けさの新聞に、ソ連のイグナチェンコ大統領報 道官は「記者会見で、「ゴルバチョフ大統領は日本を訪問する際、幾つかの考えを携えて行くが、その中には領土問題についての何らかの考えも含まれている」と語った。」と記事が出ているわけです。それで、「ソ連側が、北方領土問題について日本側に提示する案を検討している」ということを公式に発表したというのはこれが初めてであるかのようにありますけれども、そこで、一九五六年の日ソ共同宣言について、「宣言は当時、日ソ平和条約締結と結びついていた。」形で歯舞、色丹の二島引き渡しを盛り込んだということが報道されているわけですね。言うならば、これはあくまでも基本的には我が国の立場は四島一括返還ですが、この報道がそのとおりであるとするならば、歯舞、色丹というベースを考えているやにこの記事から受け取れるわけですけれども、その辺はいかがお考えになっていらっしゃいますか。
  138. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 日本政府の基本的な立場は先生御案内のとおり、四島一括返還という基本的な姿勢で今日まで一貫してまいっております。その中で一九五六年の日ソ共同宣言というものにつきましては、これもまた一貫いたしまして、これは両国の国会で批准された重い国際約束である、したがって、私どもは常に今日までこの条約の有効性について何ら疑いを差し挟んだことはございません。  先ほどちょっと午前中の御答弁で申し上げましたとおり、中山外務大臣からも、ゴルバチョフ大統領との北方領土問題の議論の中でそのことを特に指摘をいたしたわけでございます。
  139. 玉城栄一

    ○玉城委員 ソ連側は強い意気込みで日本に来日されるわけですね。ですから、ただ普通の外交的なものとは違うと思う、今のソ連国内情勢等からしまして。だから、ソ連のゴルバチョフ大統領も日本に来た以上、そして領土問題を話し合う以上、ただ手ぶらで帰ったら、今言われているところの大統領の地位そのものにも影響しかねない大きな問題があるわけです。そこで、今申し上げました歯舞・色丹というものをベースに出してきた場合に、あくまでも四島一括返還というのが我々日本側の基本的な立場ですけれども、そこを交渉ですから、どういうふうに外務省は──いや、二島、それはだめです、もう話はできませんというふうに言ってしまえば身もふたもなくなるし、また、相手の大統領も、今のソ連の国内事情からいってこれはえらいことになると思うのですね。だから、その辺で四島をどうベースにのせるかということを外務省も考えていかなければならぬ。そういうおつもりでいらっしゃるのでしょうけれども、その場合どうされるかということをお伺いしているわけです。
  140. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、日本政府の立場は四島一括返還、この基本的立場は崩すことなく、ゴルバチョフ大統領とのぎりぎりの交渉においてもこの立場から折衝に当たるということでございますが、さらに一歩進んで、先生の御指摘の、こう出てきた場合にはどうするか、ああ出てきた場合にはどうするかというような具体的な内容につきましては、まさに交渉の中身そのものでございます。今交渉が、まさに正念場を迎える段階でございますので、これ以上具体的なことを今ここで申し上げるということは御容赦をいただきたいというふうに考えます。
  141. 玉城栄一

    ○玉城委員 まさにそういう正念場の時期を来月の中旬に迎えようとしているわけで、ゴルバチョフ大統領が来月見えますが、そのときに領土問題を、向こうもそれこそ自分の立場をかけて話し合いに来るわけですから、大臣もその辺はどういうふうに受けとめられ、またどういう話し合いをされるつもりでいらっしゃるのか、お伺いいたします。
  142. 中山太郎

    中山国務大臣 日本政府といたしましては、かねて国会で御決議をいただいておりまするとおり、四島の一括返還という姿勢は堅持しております。ゴルバチョフ大統領の訪日の機会が、この領土問題の解決の突破口になるように、ソ連においても決断をお願いいたしたし、日本政府としてもできるだけの努力をいたすことを先方に申しております。
  143. 玉城栄一

    ○玉城委員 その一つに、さっきもちょっと申し上げましたが、ソ連側日本に対して一体どういうものを求めているのか、どういう援助が欲しいのか、またどういうことを日本としては役に立つようにしたいのかというお考え、ありますか。
  144. 中山太郎

    中山国務大臣 まだ具体的にソ連政府からの話は来ておりません。やがて、大統領訪日前に外交チャネルでいろいろな準備が行われると思いますが、その前にベススメルトヌイフ外相が今月の末に日本を訪問されて外相会談が行われます。その際には、大統領訪日の際のいろいろな問題についての具体的な意見も交換されるか、このように考えておりますが、まだ実務的な話はございません。
  145. 玉城栄一

    ○玉城委員 ソ連側経済面とか金融とか経営、科学、技術的なものも含めて、日本の持っているいろいろなものを欲しいといいますか求めていると思うのですね。そういうものと領土問題とを一緒にしてということも考えられるわけですが、これは局長でも結構ですが、その辺は我が国としてソ連側にどういうことを考えていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  146. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先生のせっかくのお尋ねでございますが、ソ連側が何を求めておるか、正式に私ども、先生がおっしゃったような具体的な提案等を受けているという段階ではございませんけれども、ソ連側が何を求めておるかということについての憶測をここで申し上げることは避けたいと思いますが、私どもの基本的な考え方は、先ほど申しましたように、経済面であれほかの面であれ、本当の意味日ソ関係を飛躍的に発展させるためには、日ソ間の政治的な安定した基礎がなければならない。この政治的な安定した基礎ができて初めて日ソ関係の飛躍的な発展が可能であろうという考え方でございます。そこには当然、先生のお触れになった経済面の飛躍的な発展ということも入るというふうに私どもは認識をいたしております。
  147. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題はこれで終わりますけれども、いずれにしましても、今局長さんがおっしゃったように、政治的な安定ということからしますと、ゴルバチョフさんもべススメルトヌイフ外務大臣も、自分の国の今の状況もかけて交渉しようということもうかがえるわけです。ソ連の大統領本当に来日できるのかなと危惧がある中で、きょうも、いや必ず行きますという報道からすると、強い意思が読み取れるわけでありますので、それが失敗して相手が帰っていった場合にどうなるか、この領土問題もどうなるかといういろいろなことも考えますときに、中山外務大臣もそれこそひとつ頑張っていただいて、また相応の成果のあるような交渉をぜひしていただきたいと心から念願をするわけであります。  それでは、別の質問をお願いします。  ODAのあり方の問題について、これはローカル的な問題でこの際お伺いしておきたいのです。  沖縄に国際センターというJICAの機関がございます。これは昭和五十七年に設立されてからずっと大きな成果を上げております。その研修員というのは、東南アジア、中近東、そのほかも含めてたくさんありますけれども、トータルしまして一千六百名がこの研修施設を出られて、本国に帰ってそれなりの技術を生かしながら貢献をしているわけです。これに類する研修センターというのは沖縄だけに限りません。国内にたくさんありますが、沖縄の場合、亜熱帯地域という特殊な自然条件にあるわけですから、それで石油代替エネルギーの研究も通産省を中心にして沖縄でやっているわけです。  なぜそういうことをやるかというと、それも今後の問題として、東南アジアへの技術移転もしていきたいという、いろいろな考え方でいるわけであります。大体三百名近い向こうの方々が研修をしておられるわけです。毎年、見ますと、研修員の方はどんどん数がふえていっているわけです。現在の施設は限りがあるわけですから、亜熱帯地域であるという沖縄の国際センターの特色も生か す意味で、この施設、宿泊施設も含めて拡張すべきであると考えるわけです。その場合、そういう研修施設についてODAの予算は使えるわけですか、使えないのですか。
  148. 橋本宏

    橋本説明員 ただいま先生指摘のとおり、国際協力事業団のもとで十一の研修センターがございます。沖縄センターもその一つでございまして、これはODA予算に計上されているものでございます。したがいまして、ここに要する費用というものはODAでございます。
  149. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、私がお伺いしたいのは、今後拡張をぜひしなくちゃいけないと思うのです。それで、現在の沖縄国際センターの敷地のそばには地方自治体の土地等もあるわけです。ですから、それも含めてここにまた宿泊施設あるいは研修施設なりをつくれば、それだけの研修員も研修させることができると思うわけです。そういう意見もあるわけです。中山大臣は何回も行っていらっしゃいますので、ODA予算なりを使って、あるいは地権者である地方自治体と話を進めながら、やはりそこに研修所なり宿泊施設なりを拡張するということをぜひやっていただきたいのですけれども、いかがでしょうか大臣、どうお考えになりますか。
  150. 橋本宏

    橋本説明員 大臣より御発言いただく前に事務的に御説明させていただきたいと思います。  先ほど言及させていただきましたように、十一の国際センターがある中で、平成元年度の平均の利用率、これは入館率でございますけれども、それをとってみますと沖縄国際センターが第一位でございます。事ほどさように国際センターがよく稼働しているということは日ごろから我々が高く評価するところでございます。  この十一のセンターにつきましては、これをもっと予算上ふやすべきではないかという御意見日本の各方面から寄せられていることも事実でございます。我が方としましては、この国際センターをソフトの面でももっと充実したものとするよう、今度の概算要求の中に調査費も入れまして、今後のあり方ということについて検討していく所存でございます。
  151. 中山太郎

    中山国務大臣 沖縄のセンター、実は私が沖縄開発庁長官のときにいろいろと外務省と御相談してつくらせていただきました。大変効率がよく動いていることは今御報告申し上げたとおりでございますが、ここ一カ所だけ特に拡張するということを今年度で決めるわけにいきませんが、全体的に調査費をつけて、ふやす場所、例えば大阪の茨木の周辺あるいは東北の方といったような地域の順位が既に内定しているところもございますが、できるだけ早い機会に沖縄におきましても施設の拡張を考えるように努力いたしたいと思っております。
  152. 玉城栄一

    ○玉城委員 東南アジアへのODA予算の使い方、この委員会でも議論してきましたけれども、やはりそういう意味で研修員を、そういう技術を習得させてあげるということは非常に大事なことだ、こう思うのです。ですから、大臣の方でもぜひ力を入れていただいて、拡張していただきたいのです。  それと、沖縄の問題でもう一つは、例の沖縄県恩納村にありますアメリカの米軍基地、いわゆる都市型戦闘訓練施設の件です。湾岸戦争が終わって沖縄県民も本当にほっとした。ところが、その都市型訓練施設で昨日また実弾射撃訓練をやって、みんなまたびっくりしているわけです。みんな戦争はもうテレビで見て知っていますから、あんなことがあったらと思って、またこういう実弾訓練をするのか、これも大変ショックの一つなんですけれども、ここの都市型訓練施設というのは別の場所移転するという、移転の費用まで日本政府が組んでいるわけです。そういう中で、なぜ今湾岸戦争の終わった直後にこういうことをやらなければならないのか。いわゆる県民の感情とかいうものは無視してやっていいのかどうか。物すごく反発が起こっているわけですけれども、お答えをお願いします。
  153. 川島裕

    川島政府委員 お答え申し上げます。  米軍が日米安保条約目的達成のために我が国に駐留しておりまして必要な訓練を行うということでございまして、その米軍の訓練のために提供されている施設、区域内において必要な訓練施設を建設して、かかる施設を使用して訓練を実施するということは地位協定上認められた米軍の権利なわけでございます。今般御指摘の訓練をこの時点でという点につきましては、これはまさに米側の訓練の事情かと思いますので、私どもとしてどういう理由ということは承知しておりません。  他方、先ほど先生の御指摘のこの都市型訓練施設の移転ということについては、まさに話は動いておりまして、所要の経費について三年度予算にも計上した次第でございます。したがいまして、私どもといたしましては、県それから地元と十分調整を図りながら他の場所への移転のための作業を進めていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  154. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、いわゆる地位協定上できるできないということではなくして、ああいう湾岸の悲惨な場面をテレビでみんな見ているし、新聞等でも知っているわけですね。それが終わって間もないのに、しかも今おっしゃったように、その移転はちゃんと費用まで日本政府が組んでいるという中で、そこでまたCH大型ヘリを持ち込んできて実弾の訓練をするというあり方は、それは県民感情を物すごく逆なでするわけです、そういうことはけしからぬと。ですから、沖縄では反基地、もちろん反米感情まで非常に高まるわけですね。ですから、そういうところを外務省はちゃんとちょっと待ってくれということを言えないのですか、大臣。地位協定でそうなっているからしようがないということだけじゃなくてですね。
  155. 川島裕

    川島政府委員 政府といたしましてもかねてから施設、区域の安定した、かつ円滑な運用を図っていくためには、施設、区域の存在、それから米国の活動に伴って生ずる周辺住民の方々への影響を最小限にとどめられて、可能な限りできれば地域住民の方々の理解と協力を得られることが大変重要だと考えておる次第でございます。したがいまして、政府といたしましては、日米合同委員会等いろいろな機会に米側に対しまして、例えばこの訓練施設にかかわる安全確保等については十分な配慮を要請してきた次第でございます。  安全確保という点につきましては、米側としても、例えば標的となる建物はすべて山側に設置して、施設、区域外の民間地域をむしろ背にして射撃する、山側に撃つということ、それから、当然のことでございますけれども、安全担当将校の監督のもとに射撃訓練を行う等々、米側としてもいろいろの配慮を行っているというふうに承知しております。
  156. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が来ましたので、安全というのは、我々は安全ではないという受け取り方もありますし、環境破壊もいろいろたくさんあるのですよ。しかも、湾岸戦争が終わって、テレビで見て、実弾の訓練をやるということはオーバーラップするわけです。そういうことはけしからぬ、こういうことを申し上げているわけであります。  以上で終わります。
  157. 牧野隆守

    牧野委員長 古堅実吉君。
  158. 古堅実吉

    ○古堅委員 最初に、欧州復興開発銀行設立協定についてお尋ねしたいと思います。  東欧諸国経済の現状に照らして、そこへの経済再建を目的とする支援というのは当然必要だと考えます。ただ、この支援を展開する場合に、東欧諸国に対する経済援助というのはあくまでも平等互恵、内政不干渉を基礎としなければならないということも国際の公理に照らして当然だと思います。その点から見ますというと、提案されておりますこの協定には問題がございます。それでお尋ねします。  第一条は、「銀行は、経済的な発展及び復興に貢献するに当たり、複数政党制民主主義、多元主義及び市場経済の諸原則を誓約しかつ適用している中欧及び東欧の各国における開放された市場指向型経済への移行並びに民間及び企業家の自発的活動を促進することを目的とする。」と規定して おりますが、それはいわば政治的条件をつけた、そういうものであります。IMFや国際復興開発銀行協定など、他の銀行、金融組織あるいは金融支援に当たって、こういう政治的な条件を付したものがあるかどうか、あれば示していただきたい。
  159. 橋本宏

    橋本説明員 お答えいたします。  IMF、世銀等々におきましては、この欧州復興開発銀行設立に関する協定第一条のような目的は含まれておりません。
  160. 古堅実吉

    ○古堅委員 国際復興開発銀行協定第四条第十項「政治活動の禁止」という項目であります。こう定めています。「銀行及びその役員は、加盟国政治問題に関与してはならず、また、決定を行うに当つて関係加盟国政治的性格に影響されてはならない。その決定は、経済的事項のみを考慮して行うものとし、これらの事項は、第一条に掲げる目的の達成のため公平に考慮されなければならない。」こう定めています。国際銀行のあるべき基本原則に照らして、今議題となっております欧州復興開発銀行設立協定も当然そうでなければならない、こう考えますが、いかがですか。
  161. 橋本宏

    橋本説明員 先生指摘欧州復興開発銀行設立する協定の第一条の目的につきましては、この前文とあわせて理解していただくことが適当かと思います。前文には「中欧及び東欧の諸国が、複数政党制民主主義を現実に実施することを推進し、民主主義的な諸制度、法の支配及び人権の尊重を強化する意図を有すること並びに市場指向型経済に向かって発展するために改革を実施する意思を有することを歓迎し、」というふうになっておりまして、こういう改革を実施する自発的な意思を持っている国々のことを加盟国は歓迎する。そのような国々における経済的な面、すなわち開放された市場指向型経済への移行、民間及び企業家の自発的活動を促進するという経済的な目的について促進、支援を図るというのがこの銀行の特徴であると解しております。
  162. 古堅実吉

    ○古堅委員 国際連合憲章は、第一条、その目的において二項で「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること」このように定めていまして、第二条の原則のところでは第一項で「この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。」このように定めています。  議題となっておりますこういう国際的な意味合いを持つ銀行についても、こういう国際間における大原則を定めた国際連合憲章に照らして当然のことながらこういう原則を貫くことが重要だと思いますが、どうですか。
  163. 橋本宏

    橋本説明員 お答えいたします。  今委員指摘のとおり、そのような主権を持った国がみずからの意思に基づいていろいろな改革を行っていることを歓迎した上で、経済的な諸活動について支援をするということでございますので、ここにおきましては国家の主権と平等、そういったことは確保されていると考えております。
  164. 古堅実吉

    ○古堅委員 そうおっしゃいますが、そうはなってないのですよ。複数政党制民主主義、この問題は我が党としても本来ずっと主張し続けている問題です。そのよしあしは別問題として、これも含めて開放された市場指向型経済への移行とか民間及び企業家の自発的活動の促進とか、そういうものは主権国家の政策に関する問題だと思います。民族自決権と切り離すことのできない内容です。  ところが、それらを抑えて特定の社会体制しか認めない、そういうことについての定めが明確にされ、それらに反するようなことがあればこの銀行としての支援、融資についても検討し、やらない、そういうことができるようにしますよとちゃんとこの協定には定められておるのです。そういうことを前提にしては、仮にも守られていますというふうなことは言えないという人もおりますが、いかがですか。
  165. 野村一成

    ○野村政府委員 お答えいたします。  この銀行の仕組みと申しますのは、先ほど来繰り返し答弁いたしておりますけれども、あくまでそれぞれの国の意向、希望、それを尊重しまして、そしてそういった国の明らかな意思がこういった銀行設立するということでございます。それを侵害するということは全く想定されておらない。また、先生指摘の国連憲章第二条の原則に何ら抵触するものではない、そのように考えております。
  166. 古堅実吉

    ○古堅委員 この銀行協定の条文には明確に自決権を侵すような内容の定め方がされておる。疑問の余地がないのになおそれを侵すことになってないというのは全くの詭弁ですよ。  次の質問とのかかわりもありますので、質問はその程度にとどめますが、この協定についての日本共産党の基本的な態度をここで表明させていただきたいと思います。  東欧諸国については経済再建、生活向上の緊急性と国際支援の必要性は理解できます、必要だと考えています。しかし、平等互恵、内政不干渉の原則に立ち、東欧諸国の民族自決の尊重を基礎にしているかどうか、これはないがしろにできない重大な問題であります。この協定にはこの点で基本的に問題があります。銀行東欧諸国特定政治体制を押しつける目的を持ち、その目的に反するおそれがあれば銀行の支援を停止、変更するとまで規定しています。世界銀行加盟国政治問題に関与してはならずなどと規定していることからもこの協定には問題があります。これはまた主権平等、民族自決の基礎の上につくられている国際連合の目的や原則に照らしても認めるわけにはまいりません。  以上の諸点に照らして、日本共産党としては本協定に反対であることをここで表明しておきます。  次の質問に移らしていただきます。  ついこの間、アメリカの国防報告が発表されました。湾岸戦争も終わったばかりであります。この国防報告と湾岸戦争、安保条約に基づく在日米軍基地、そういうことなどにかかわって若干質問さしていただきます。  最初の質問は、中東戦争支援は日本国憲法が戦後培ってきた平和原則にとって許されない問題でした。同時に、在日米軍基地がこの中東戦争で果たした役割もまた重大であったと考えています。大臣は、在日米軍基地がこの中東戦争で果たした役割についてどう理解しておられますか。大臣にお答えいただきたいと思います。
  167. 中山太郎

    中山国務大臣 サダム・フセイン大統領のクウェートを武力で制圧するという、湾岸の平和を回復するために多国籍軍の中でアメリカ軍がいろいろと武力を行使した、その事実は紛れもない事実でございますが、この湾岸の平和が回復する過程において在日米軍が移動した、移動しているということだけは、私は率直にこれは移動が行われたということを申し上げたいと思います。
  168. 古堅実吉

    ○古堅委員 湾岸戦争で重要な兵たん支援基地となっただけではなしに、在沖縄米軍基地の米海兵隊を初めとした戦闘部隊がこの戦争に参加をし、今外相自身が認めておられるように、我が国全土からの米軍の大きな移動がありました。在沖海兵隊は地上戦突入前、キャンプ・ハンセンに中東の模擬戦場を設定して、戦闘に備え訓練さえもしたのであります。大臣は、在日米軍基地が中東戦争の足場、拠点になったということについて、ただ単に移動したという説明によって積極的にそれを認められるおつもりですか。
  169. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、在日米軍は、日本アメリカとの間の安全保障条約の中の地位協定によって基地を提供している日本政府、そういう中で絶えず平和を守るための訓練が行われているというのは当然のことであろうと考えております。
  170. 古堅実吉

    ○古堅委員 三月一日に発表されたアメリカの一九九一会計年度国防報告はこう言っています。「東アジアに配備されている米軍は今後、域内外でより広範な役割を担うものと見られる。これはこのほど、湾岸紛争を支援するため、在日の米海兵隊および海軍戦力が展開された事実に現れている。」こう述べました。単なる移動を行ったわけではありません。中東戦争を支援するために海兵隊や海軍戦力が展開したとアメリカの国防報告自 体が言っておるのであります。中東戦争のために在日米軍基地を使用された。それでも今おっしゃるような形で是認されるのですか。
  171. 川島裕

    川島政府委員 お答えいたします。  御指摘の国防報告につきましては、東アジアに展開されている米軍はより広い地域及び他の地域における役割を担うことになっている可能性があるという記述があるわけでございます。考え方といたしましては、米国の国防戦略が欧州アジア等の地域的脅威というものへの対応が非常に重要になるということで、その一つの対応として前方展開態勢の維持が必要である、こういう考え方でございます。そういう中で米国が前方展開態勢を維持してやっていくということでございまして、一方、その中で日本の部隊云々の今のお話でございますけれども、これは先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、移動ということで、日米安保条約上は何ら問題ないと累次申し上げておるとおりでございます。
  172. 古堅実吉

    ○古堅委員 アメリカの国防報告自身が単に移動などとかいうふうなことではなしに、湾岸紛争を解決するために在日米軍基地が大きな役割を果たした、今後も一層域内外、そういうことに展開されるだろうということを前提にして強調しておるのです。だから、すれ違いの答弁をなさらずに、はっきりと質問に答えてください。  日米安保条約は、その第六条で在日米軍基地の使用目的を明記しています。すなわち「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」こう規定されています。どこに中東戦争の支援のために日本の基地を使用していいというふうに書かれていますか。米軍は安保条約のその定めを外れて日本の米軍基地を使用することは許されないはずであります。中東戦争に在日米軍、在沖米軍が展開をした、今回に見られたそういう事態、事実というのは、安保条約のかかる定めにも反しているということになりませんか。
  173. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  安保条約におきます施設、区域の使用につきましては、ただいま先生より御指摘のあった第六条というものがあるわけでございます。在日米軍はこの第六条に従いまして我が国の施設、区域を使用しているわけでございますが、この使用の態様につきましては、御案内のとおり第六条に関する事前協議の交換公文がございまして、我が国の施設、区域から行われる戦闘作戦行動につきましては、事前協議の主題となっているわけでございます。ただ、この点につきましては、先ほど大臣から御答弁ございましたように、米軍の運用上の都合等によりまして我が国から別の地域に移動するということはこの事前協議の対象にはなっておらないわけでございます。そして、そのように在日米軍の一部が別の地域に移動して別の任務につくということは、この安保条約におきまして何ら妨げられていないわけでございます。
  174. 古堅実吉

    ○古堅委員 事前協議の問題ではないですよ。事前協議以前の問題として、在日基地を使用している米軍が安保条約目的条項と関係ない湾岸戦争、中東地域に展開したことが安保条約のこの定めに従って違反ではないかということを指摘しておるのです。日本と極東の平和と安全の維持のために日本に駐留する米軍が、規定されていない地域に何を根拠にして展開することができるのですか。それを示してください。安保条約のどの条項ですか。
  175. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 米軍の我が国における施設、区域の使用の目的につきましては先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。  この点も若干重複することになるわけでございますけれども、在日米軍が我が国から移動いたしまして別の任務につくということは、安保条約上何ら妨げられていないわけでございます。このことは、我が国に駐留しております米軍を一切、ほかの任務のために移動させるあるいは配置がえをするということを妨げるということは全く合理的でないわけでございまして、安保条約もこの点に対する制約を課していないということでございます。なおつけ加えますれば、時として米軍が極東の外の地域に移動してほかの任務につくということがありましても、これがために我が国の安全及び極東の平和と安全に寄与しているという実態が損なわれるものではないというふうに考える次第でございます。
  176. 古堅実吉

    ○古堅委員 大変な論理の展開になりつつあるように思います。あなたのおっしゃるようなことであれば、中東あるいはその地域、地球の裏側にでもいいですよ、移動と称すればどこにでも在日米軍がそれなりにどんどん移動するなどとかいう形で紛争に関与し、あげくの果て戦争に参加し、そしてまた戻ってくる、そういうことは何ら支障ない、安保条約はそういうことになっておるんだということを意味するのですか。念を押してお尋ねいたします。
  177. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま申し上げましたことは、従来から政府がいろいろな機会に御答弁しているところと同じでございます。繰り返しになりますけれども、我が国の施設、区域を使用する目的は安保条約第六条にあるとおりでございますが、しかしながら米軍がその運用の都合によりまして別の地域で一部の部隊を使うということは、これはいわばアメリカの裁量によるところでございまして、そこまで安保条約が制約するということはないわけでございます。
  178. 古堅実吉

    ○古堅委員 今回の湾岸戦争に参加するために移動した一万人内外の米軍やその戦争のための補給物資の輸送活動など、在日米軍基地をこのように使ったということは極東と日本の安全に寄与する、そのためだからそれは支障ないという言い分になりますか、先ほどの説明になりますと。それが条約第六条に照らしてそうなっていくんだという御説明ですか。
  179. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 物資の移動あるいは転用という問題につきましてもこれまでいろいろな機会に御議論があったと記憶しておりますが、一般論として申し上げますれば、米軍の運用上の都合によりまして在日米軍が保有をしておる物資等を米軍内部で他に転用するためにほかの地域に移すということにつきましては、安保条約上何ら問題のないことでございます。この点も今までいろいろな機会に申し上げてきたところでございます。
  180. 古堅実吉

    ○古堅委員 問題は、現に戦争が行われたこの地域にその戦争に参加する目的を持って移動した米軍を単なる移動と言い、何ら安保条約に支障がないんだと、そういう詭弁を弄そうとしておるのです。先ほど報告された国防報告にさえも、湾岸戦争に大きな役割を果たした、今後も域内外に大きく展開されるであろうという内容のことまで言っておるのです。今のような態度をとる限り、日米安保条約第六条を前提にして、日本とか極東とか安保条約に定められたこの区域に限るなどとかいうことじゃなしに、どこまでも国防報告自身が言っているようなことを許す、域内外に展開する、そういうことが許されるということにならざるを得ないと思うのですが、それでいいのですか。
  181. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、安保条約の仕組みにつきましては先ほど来申し上げているとおりでございまして、在日米軍が他の地域に移動する、そしてそこで別な任務につくということにつきましては、安保条約は何ら制約を課しておらない次第でございます。
  182. 古堅実吉

    ○古堅委員 日米安保条約の第六条は、もちろん日本共産党はこの安保条約を容認しない立場は終始一貫明確にしておりますが、それでも明文となっているこの安保の条文を引用するわけですけれども、この定めに基づけば、在日米軍が施設、区域、その使用を許されるのは日本と極東の安全のためということにはっきりとなっておるのであって、それがただ単に移動という言葉を使えば、あるいは何らかの形で事前協議がなされればこの安保条約第六条の明文を持った定め、その内容を変えていいというふうなことにはなりません よ。そうでしょう。条約の明文をもって限定したところの使用できるこの区域というものは、事前協議がなされたから、あるいは単なる移動だからということで勝手にどうぞお使いなさいという形で使用の許されるものではない、これが第六条じゃないですか。
  183. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 第六条には「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」とあるわけでございまして、この目的のために米軍が日本国の施設、区域を使用しているわけでございます。  ただ、さればと申しまして米軍が一たん我が国に駐留すればその他の地域に絶対に動いてはいけないということは不合理なことでございまして、日米安保条約はそこまで禁じているものではございません。ただ、先ほどこの点も先生より御指摘がございましたけれども、第六条の実施に関する交換公文におきまして、我が国から行われる戦闘作戦行動につきましては事前協議にかかる、こういう制約があるわけでございます。しかしながら、我が国から移動して他の地域に赴く、そしてそこで別の任務につくということは安保条約上何ら禁じられている問題ではございません。そして我が国から単に移動していく、我が国から直接戦闘作戦行動に従事する任務、目的を持って出ていくということではなしに、単に移動するということは妨げられておらないわけでございます。この点は従来からいろいろな機会に申し上げているとおりでございます。
  184. 古堅実吉

    ○古堅委員 中東湾岸戦争のために出かけている米軍が単なる移動ですか。これだけ内外から明確にされ、アメリカ自身が国防報告で明確にされている、そういうものを単なる移動ということで日米安保条約に基づく許された範囲のものとして合理化しようということですか。絶対許せません。もう一度お答えください。
  185. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 戦闘作戦行動につきましては従来からいろいろな機会に御議論のあったところでございます。これにつきましては、政府側から一貫した答弁がなされているわけでございますが、一例を引かせていただきますれば、例えば昭和四十七年六月七日、衆議院の沖特委員会におきまして一つ統一見解が示されているわけでございます。大変長い統一見解でございますので、その核心のところだけ読ませていただきます。  事前協議の主題となる「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」にいう「戦闘作戦行動」とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであり、したがつて、米軍がわが国の施設・区域から発進する際の任務・態様がかかる行動のための施設・区域の使用に該当する場合には、米国はわが国と事前協議を行なう義務を有する。 こういう解釈でございまして、これが安保条約締結時からの確立した解釈でございます。したがいまして、単なる移動という行為はこの事前協議の対象にならないということでございます。
  186. 古堅実吉

    ○古堅委員 事前協議のそういう二国間の合意もありますけれども、そういう事前協議さえも、今回の湾岸戦争に移動した米軍補給物資活動、そういうことにかかわってそれさえもなされてない。その上で単なる移動ということで認めようとするなど言語道断な話です。  六〇年安保国会では補給活動についてもいろいろと論議が展開されております。例えば、どこかで戦闘が行われている、その戦闘の行われている前線に武器弾薬等を直送する場合は許されるものには入らぬ、そういうくだりの赤城防衛庁長官の説明がございました。岸総理は、この戦闘作戦行動といううちには少なくともこの戦闘作戦行動と密接不可分な関係に立つところの補給活動は入るということについて日米の間に意見が一致しておるように承知している、日本が一般的な補給基地として使われるということはこの観念には入らないものであると思う、同じ時期にそう述べています。  今回の在日米軍、在沖米軍から湾岸戦争に展開した補給というのは、五十数万もの米軍の激しい戦闘を支えるための補給でありました。戦闘と密接不可分の補給であると同時に、一万人内外の米軍が移動したということでもわかるように、かつてない大きな規模動きがこの湾岸戦争との関係において在日米軍基地に起こりました。  アマコスト駐日大使が沖縄で、米国政府は在日米軍が湾岸に展開していることを日本政府に通達したというふうな内容の記者会見での発表を行っておりますけれども、そういう戦闘と密接不可分な補給活動、大規模な米軍の出動、そういうことがあったからこそアマコスト駐日大使が日本政府へそういう通知をした、通告を行ったということで言わざるを得なかったのではないですか。国防報告がまた単なる政府が説明しているような移動などとかいう簡単なものではなかった、だからこそ湾岸戦争との関係で不可分なものとしてこのように今後の展開をも含めて言っておるではありませんか。もう一度そこも含めてお答えください。
  187. 川島裕

    川島政府委員 お答えいたします。  アマコスト大使の発言ということで、報道で在日米軍が湾岸に展開していることについて云々と述べたというのがあったことは承知しておりますけれども、私どもとしては大使が実際にいかなる発言を行ったかという点は実は承知しておりません。  今般の中東情勢に際しまして、米軍の艦船及び部隊の我が国からの湾岸地域への移動に関しましては、日常の米側との外交上のやりとりを通じまして一般的な形で空軍の一部あるいは沖縄の海兵隊の一部、それから横須賀に乗組員家族を居住させている艦船の一部等が米軍の運用上の都合によって湾岸地域に移動したことは承知しておるということでございます。ただ、艦船や部隊の個々の一々の具体的な動き、運用について、詳細について、米側から連絡を受けるということにはなっておりません。
  188. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が参りましたので、最後に大臣にお尋ねしたいのですが、国防報告は「集団安全保障」の項目の中で、海外基地の維持は平時の前方展開と地域紛争発生への対応能力を維持するために重要だ、こう述べています。一方、「信頼できる抑止戦力」の項目では「平和時の前方配備 脅威の変化に沿って、全般的にはレベルを縮小しても、米軍の前方配置はひきつづき米戦略の中心的要素である。」というふうにも述べています。  昨年、在アジア米軍の削減あるいは沖縄米軍の削減が問題になりかけておりましたけれども、今回の中東紛争、そういうものなどを契機にして、今後在日米軍基地、沖縄米軍基地が削減、縮小、撤去という方向ではなしに、逆に強化されるという方向に行く危険性もありはしないか。約束された沖縄基地の昨年の整理縮小、返還、その問題についてどういうかかわりがあり、外務省としてどう進めるおつもりか、そこをお聞きしたいと思います。大臣からお答えお願いいたします。
  189. 中山太郎

    中山国務大臣 在日米軍の基地の問題に関連して、委員から在日米軍の規模が縮小されるのではないかという御趣旨のお尋ねかと思います。その場合にどういうふうな認識をするかという。全くアメリカのいわゆる軍事戦略の問題でございまして、私ども日本政府といたしましては日本の国民の安全をいかに保障するか、また極東地域の平和がいかに保たれるか、こういうことにおいて、この在日米軍基地というものは有効に機能するということが日米安保条約の基本でございますから、そのような運用をされることを我々は好んでおりますし、アメリカ軍が兵力を削減するということにつきましても、それはアメリカ考え方でありますけれども、日本にとってあるいはアジアにとって、極東にとってその削減がどのように平和にかかわりを持つか、これが一番の日本政府としての関心事であると私は考えております。
  190. 古堅実吉

    ○古堅委員 終わります。
  191. 牧野隆守

    牧野委員長 和田一仁君。
  192. 和田一仁

    ○和田(一)委員 きょうは、議題になりました欧 州開銀とそれからオゾン層に関するモントリオール議定書改正と両方が提案されておりますので、私はこの二つとまた一般質問と丸めて質問させていただきたいと思います。次の質問の機会がないものですから、そういう質問をひとつお許しいただきたいと思っております。  初めに、欧州開銀の方でございますけれども、この協定についての背景というのは十分承知しておりますけれども、ベルリンの壁崩壊ということに象徴されるように、東欧諸国民主化自由化、こういうものは非常に急速に進んでおると思います。こういった政治的なステップはもう既に越えまして、今まさに経済的にいかに自由市場原理を導入して経済発展に資していくか、こういった経済改革のステップの段階である、こういうふうに理解しております。  しかしながら、そういった段階になって、一番大事な自由経済の諸制度はまだ十分整備されていないために、やはり外から見ておっても金融信用制度、あるいは投資をしてもいいなというような環境にまだないということは言えると思うのですね。そういう意味では、こういった東欧自由化民主化に支援していくということからいうと、そういう金融支援というものはやはり公的な機関というものが非常に大事だ、こう思うわけでございまして、そういう意味では、この欧州開銀の創設ということは非常に意義のあることだし、大事なことだ、こういうふうに理解しております。  それで、この開銀の設立に当たって、今度の特色は、我が国も今までのいろいろな相談の経過の中から、従来、ともすればこういったものへのシェアは少ない立場にありましたけれども、今回はEC四国並みの八・五一七五%、こういうシェアを日本も負担する、こういうことになった。このことも一つ大きいことだと思います。それからもう一つは、払込額の確定通貨というものがいわゆるヨーロッパ通貨ドルだけでなしに日本の円も指定されたことは非常に特色があることだと思うわけでございます。  それで私は、まずこの八・五一七五%というシェアを日本が初めから主張されたのか、その辺の経緯がいろいろおありのようでございますが、そういった経緯は一体どういう経緯をたどってこうなられたのか。それと、また払い込みの通貨としての日本円が認められたということはどういう意義があるか、この辺のところからお聞きしたいと思います。
  193. 橋本宏

    橋本説明員 先生御質問の日本の八・五一七五%ということについては、どのような経緯でなったのかということでございますが、この欧州復興開発銀行は、基本的には欧州地域的な金融機関であるということで、欧州の占める割合をどのようにするかということがまず最初に議論されました。それで五一%ということが決まったわけでございますけれども、その他の国で、IMFの加盟国はこの銀行の加盟の資格があるということで、我が国としましては、その他の中では米国に続きまして大きなシェアということを交渉の結果認められたものでございます。  それから先生第二の御指摘の円のことでございますけれども、本件につきましては、先ほどの外務大臣の御答弁にもありますように、円の国際通貨としての地位が国際的にも改めて認められたものであると我々は考えております。     〔委員長退席、新井委員長代理着席〕
  194. 和田一仁

    ○和田(一)委員 初めから八・五一七五というシェアを主張されたのではなくて、一〇%ぐらい、アメリカと同じようなパーセンテージを望んでいたのではないかというふうに私はいろいろ経過の中で考えておりましたけれども、結局は、英国、イタリア、フランス、そういうところと同じになったということのようでございますが、最初のころ、ドイツのあり方も相当気にされていたのではないかと思うのですが、この辺は統合されたドイツはふやさないということはもう確認されているわけですね。
  195. 橋本宏

    橋本説明員 先生指摘のとおりでございます。
  196. 和田一仁

    ○和田(一)委員 EC及びEIB、こういうところのシェア、EC諸国全体のシェアが五一%という比率でありますと、この運営についてこれは過半数、五一%の運営ということになりがちなように思いますけれども、その辺はどういうふうにとらえておられますか。
  197. 橋本宏

    橋本説明員 この銀行設立に関する協定によりますと、いろいろな事項の決定につきまして投票の仕方が定められております。総務会及び理事会におきまして、一般的事項について決定される場合には、投票した加盟者の投票権数の過半数ということになっております。しかしながら、重要事項、授権資本の増額ですとか、財源の利用の停止その制限、また受益に対する制限の緩和等こういった重要な事項につきましては、過半数ではなくそれ以上の投票権数要求する規定ぶりとなっております。したがいまして、そのような点につきまして、この銀行の運営が専らEC諸国の意向に左右されるということにはならないと考えております。
  198. 和田一仁

    ○和田(一)委員 この開銀の役割としては、やはりそういった金融支援というだけでなしに、これから民主化自由化をしていこうという国々へのいろいろなノーハウの提供ということも大事なことではないかと思うのですね。  きょう午前中に開銀の副総裁緒方さんもお話しになっておりましたけれども、もう既に日本からもそういう意味では人が出て準備の段階で協力をしているということでございましたが、これは、日本設立当初から参加したい、こういう意向できょうこれ審議しているわけですが、そう言って出ていっている方──もっとこれからも出ると思うのですが、理事等については日本の枠というのはどうなんでしょうか。日米で四人というふうにも聞いておりますけれども、これはそれぞれ二人ずつなのか、どういうふうになるのか。もうお決まりでしょうか。
  199. 橋本宏

    橋本説明員 ただいま先生が御質問の理事のことにつきましては、この協定の規定に従いまして我が国が一名選出できる形となっております。
  200. 和田一仁

    ○和田(一)委員 それから、この中でソ連の出資比率は初めはもっと高く考えていたようですが、これを六%ということに決めたというふうになっております。その経過はどういうことでしょう。
  201. 橋本宏

    橋本説明員 きょうの午前中の審議でも、ソ連の参加に当たっての問題につきまして御説明させていただいた次第でございます。  ソ連は超大国でございまして、その他の中欧・東欧諸国と同じように扱うことはできないということで、そこら辺でどのようなバランスをとるかということについて、まず受益範囲ということで、ソ連を含めまして関係国で話し合いを行いました。その結果、ソ連みずから受益範囲について制限を設けることに同意したわけでございまして、それに伴いまして払い込みの資本につきましても他の中欧・東欧諸国とよいバランスといったことで現在のものになったものでございます。
  202. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ソ連のことに言及しましたので、ちょっと一般的に大臣にもお聞きしたいのですけれども、最近のソ連経済状態、伝えるところによりますと、大変な厳しい情勢だというふうに聞いております。何か、物がないだけではなくて、経済単位そのものがブロック化しているようなことも聞くわけでございます。例えば、これはもう本当に国民生活に必要な品物も極端に手に入らなくなってきている。そういう中で、例えばモスクワなんかは、ある品物をこれはもうモスクワの市民にだけ限って売るんだ、市民証を提出しろというような販売をしている。したがって、近郊の農家の方が来ても、おまえ、モスクワの市民かと言って証明がないと売ってくれないというようなことで、反発して農産物をもう出さないというようなことにもなっているというふうにも聞きます。  また、レニングラードだとかウクライナとか特定地域ですけれども、例えばレニングラードなどでも買い物をするのに市が買い物券を発行する とかクーポン券を出すとかいうことは、もうまさに疑似通貨を独特に出しているというような感じすらするわけで、非常に経済がブロック化している。それぞれ共和国の独自性というものがすごく強調されつつあるわけですが、そういうことを考えますと、欧州開銀、これからのこういうものとの関連も大変難しいかなという感じもするのですけれども、これからだんだん、東欧問題にソ連の内情についても私お聞きしたいと思うのですが、まず経済的な実態について大臣にどのような御認識があるか、伺いたいと思います。
  203. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連におきます国内経済の実態につきましては、いろいろな情報がございますが、ペレストロイカの進行状況は決して明朗なものではない、非常に経済的に混乱が起こっているということは御指摘のとおりだと思います。また、取引のあり方につきましてもいわゆる自由世界におけるような市場原理が十分機能していない、また、コルホーズと企業との間で取引が行われているといったような非常に変則的な商業行為が行われている、こういうところにソ連経済の今日の実態があるのではないか、そのような認識を持っております。
  204. 和田一仁

    ○和田(一)委員 この間、一月の末の新聞でしたけれども、強力な統制経済体制にまた戻りつつあるのではないかという記事がございました。KGB、国家保安委員会と警察当局に企業の査察ができる権限を与えている。銀行取引の検査をするとか、広範な経済活動への介入権を与えた大統領令が発布されたという記事が新聞にございました。これは、市場経済移行への非常な障害になるというふうに私は思うのですね。今何とか世界が初めてヨーロッパ、そして日本ソ連まで入れて国際機関としてのこういう開銀をつくっていくというときに、その中の一つとしてこういう傾向が見えているということは大変残念なことなんですが、大臣、こういうことはいかがでございましょうか。     〔新井委員長代理退席、委員長着席〕
  205. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 私の方から事実認識について若干御答弁させていただきたいと思うわけでございますが、まさに先生仰せのごとく、ソ連経済の実態は、公表数字を見ましても、国民総生産に相当いたします数字、対前年比二%減とマイナス成長ということに集約されておりますとおり、大変に厳しい状況にあるというふうに考えているわけでございます。  その中で、まさに先生指摘の、いろいろな意味での引き締めを要する社会治安の乱れでございますとか引き締めを要する側面、それから市場経済の導入という、ペレストロイカをその中で進めていかなければならない側面と二つあるという気がいたすわけでございます。その境界線をどういうふうに引きながら進めていくかということにまさにゴルバチョフ大統領以下の今の指導者の方々の御苦労があると思いますけれども、先ほどちょっと御報告申し上げましたように、ゴルバチョフ大統領御自身がペレストロイカ路線そのものは堅持するという姿勢を明確にしておられますので、私どももそのゴルバチョフ大統領の線に沿って事態を注視してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  206. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ペレストロイカを捨てたのではないと言いますけれども、現象からいえば、これはもうペレストロイカではなくて逆行しているのではないかというのが共通の認識みたいになっているのですね。それを、そう言うからということだけで日本外交がその線で対応していいかどうか、これは大変大事なことだと思うのです。  私、きょうまだほかのこともいっぱい聞きたいのですけれども、もう目の前に大統領お見えになる予定ですね。これは我が国にとっても大変大事なことだろうと思うのです。そして、その来日の機会には懸案の北方四島の問題も何とか解決のめどをつけていかなければいけない、こういう感じがするのですが、交渉、来日したときのゴルバチョフ大統領の立場でこういった大事な問題に今取り組めるような状態なのかどうか。これも先ほど来何人かの方がお聞きはしておりましたけれども、局長は極めて公的な立場での発言、御答弁しかない。私は、今のソ連の実態をこういう委員会で本当に本気になって分析して、そして対応していくという、その意見を交換しないと、これはとんでもないことになってしまうのではないかという感じがするんですね。  アメリカあたりは、例えば国会下院あたりで公聴会を開いてどうなんだという意見も聞けば、あるいは国防相自身が私はこういう見通しですということを堂々と言って、それが日本へ伝わってきて、そんなすごいことかなというふうに我々が認識するぐらいなので、私はむしろこういう席でもっとしっかり分析していくんだというところをお聞かせいただきたいぐらいに思うわけでございます。  ペレストロイカは進んでいるのだからと、その線でとおっしゃいますけれども、三月二日にプラウダでゴルバチョフ大統領は、これからは共産党を軸に翼賛体制の政治的中道主義を行くんだ、こう打ち出しているんです。共産主義を軸に何をやるんだといえば、民主集中制の組織原則によって中央集権の政治構造の回復なんだ、こういうふうに言っているんですね。これは今までと全然違うんじゃないかと思うのです。やはりそういう意味ではもう少しきちっと分析する必要があるのではないか。そして、おいでになったときに、例えばこれはロシア共和国副首相が、ソ連のゴルバチョフさんとだけではだめよ、共和国がかまないとこれは解決しませんよという発言をしているんですよ。  それで、先ほど来御答弁を聞いていましたら、これは今までの北方四島を含めての作業グループの中でも共和国の外交官の方が入っておられる。共和国は外交官を持っているんですよね。外交権はおれにもあるんだ、ロシア共和国は軍隊も持ちたいと言っているぐらいなのです。そして、その可否が三月十七日には国民投票という形で問われようとしている。一方、十五ある共和国のうちの七カ国はそんなこと必要ないんだ、私どもは参加しませんよ、はっきり独立志向なんだ、独立するんだ、こう言っているし、あと八カ国は参加するかもしれないけれどもその中身はどうなるかわからない。いずれにしても、十五ある共和国が寄ってたかって三月十七日には投票する。脱落と言うとおかしいですが、行かないという国もある。これはまさに四分五裂のことを世界に示すことになってくるわけですね。  そういうことを踏まえた上で、これから日ソの大事な会談が開かれようとしている。そうなるとやはり今我々は、ここで四島返還の機運が非常に盛り上がっています。この二月七日の東京集会においても今までにない盛り上がりがあったというふうに聞いておりますし、各地方においてもそういう盛り上がりがある。そういう中で今進めていこうというときに、やはり相手の国の分析を十分しないということではいけない、私はそう思って先ほど来いろいろな答弁を伺っておるのですけれども、これは外交交渉上まずいことはまずくて結構でございますが、分析はきちっとして国民にも理解してもらわないといけないと思うのですが、その辺はいかがでございましょうか。
  207. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先生の御忠告、御意見、謹んで拝聴いたしました。私どもも、ソ連情勢の現実につきましていろいろな角度から分析を試みているつもりでございます。  なお、先ほど私、若干舌足らずであるいは誤解を与えたかもしれませんけれども、私が申し上げた趣旨は、ゴルバチョフ大統領のなさっていることを全部結構だと申し上げているわけではございませんで、例えばバルト三国につきましては中山外務大臣からソ連外務大臣、大統領に対しても、その武力行使というものは日本として同意できない、甚だ遺憾であるという申し入れはきちっと行っているわけでございます。  なお、共和国外務省あるいは州との関係につきましては先ほど御答弁をさせていただいたとおりでございますが、問題は、ソ連の共和国は、先生 御承知のとおり、外務省というものは十五共和国に長年あったわけでございますが、問題は、その外務省がどういう機能を果たしているかということに尽きるかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、ロシア共和国とソ連外務省関係というものはまだいろいろとデリケートな不透明なところがございます。私どもは、現段階ではソ連外務省外交交渉のチャネルであるという認識でやらせていただいているわけでございますけれども、もちろんロシア共和国あるいは直接北方領土がソ連の法制上所属しておりますサハリン州との相互理解の必要性ということは十分に、つとに認識をしているつもりでございます。
  208. 和田一仁

    ○和田(一)委員 大臣、いかがでございましょうか。
  209. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連における共和国の動きは容易なものではない、極めて大きな動きが起こりつつある、しかしこれはあくまでもソ連の共和国の中に住んでおられるソ連の国民の意思によって決定されるもの、そのように私は認識をいたしておりますが、先般、私がモスクワを訪問いたしました際にもロシア共和国の方が会合の席に参加をされておったようなこともございました。  そういうことで日本政府といたしましても十分な調査を、例えばバルト三国へは在ソ・モスクワ大使館の人間を調査に出してみたり、あるいは現在北海道大使をやっている都甲前欧亜局長はサハリンとかいろいろなところを旅行したりいたしまして、ソ連の方々の考え方あるいは行政機構がどうなっていくのか、そういうことについても十分な調査を現在やっておる最中でございますから、その点はひとつ御信頼をいただきたいと考えております。
  210. 和田一仁

    ○和田(一)委員 おっしゃるとおり、その国の国民の判断というのが大事だと思うのですが、そういう意味ではバルト三国のこの間の国民投票というのはもう明らかに独立の圧倒的な多数、特に、リトアニアは八〇%がリトアニアの人でしょうけれども、賛成九〇%ぐらいですか、ラトビアなどではラトビアの人は五四%、そのほかの人を含めて賛成、独立支持が七三%だったというような数字ですから、これはやはり民族自決という意味からも国民の意向というものは大事だと思うのですね。  そういう動きに対して、リトアニアに最初軍事介入をした、そのときに私は知らなかったとゴルバチョフさんは大統領としておっしゃった、外務大臣はそれに遺憾の意を表されたと思うのですが、知らなかったということでは済まない。これは政治的な責任はあるというふうにとるべきなのか、知らなかったということは、本当ならばもう実権はないというふうにとるべきなのか、大臣はどちらだとお考えでしょうか。
  211. 中山太郎

    中山国務大臣 私が、先般のモスクワ訪問において首脳会談といいますか、ゴルバチョフ大統領との会談において、今委員お示しのように、バルト三国における軍人の一般市民に対する殺傷行為が行われたということは遺憾であるということを、私は日本政府として申し入れたわけでありますけれども、そのときにゴルバチョフ大統領は、いろいろとバルト三国にも問題が存していた、きのうも実はその代表者の一人をこの席に呼んでいろいろと協議をしていた、自分としてはどうしても、武力による介入というよりも政治的に問題を解決したいということを大統領自身が直接私に説明をしておられた事態がございます。  それぞれの国に歴史がございます。このバルト三国がリッベントロップとモロトフの秘密協定によって行われたということも歴史の中で示しているところでございますけれども、それは、そこに住む人たちがそれに対抗して、どのような形でみずからの国をつくっていくかということの意思の表明が先日の投票で示されたものだと私も思います。しかし、あくまでも私は、平和的にその問題が解決されることを日本政府としては期待をいたしておる次第でございます。
  212. 和田一仁

    ○和田(一)委員 まだオゾンの質問もしなければいけないのですが、時間が少なくなりまして、一つだけ、北方領土についてもう一回お尋ねしたいのです。  四島一括返還、これは基本的な姿勢として私もよくわかっておりますし、そうあるべきだと思います。しかしながら、現実にこの交渉が始まる、その糸口になっていくときに、先ほどもいろいろ質問がございましたけれども、四島一括返還がずばりとくるということはまず考えられない。とすれば、これは、そこへ持っていく手法としていろいろある、こういうふうには思います。  と同時に、いま一つ、これは先般大臣にちょっとお尋ねしたのですが、法的な検討を内閣の中でも法務大臣がなさろうという意向があったように聞いておりますけれども、返還後の具体的なあり方というものをもう国として持っているべきではないか。一括返還一番いいのですよ。いいのですが、一括返還になったときも、こうするんだというものを持ってないと、これはお先真っ暗でならないと思うのですね。例えば東西ドイツがあれだけ簡単に統合できたのも、西側に、東側がやがて来るときには受け入れるという態勢があった。それが東の人には見えた。ほかにも見えた。だからこそ比較的そういう点がスムーズにいったと思うのですね。そういう意味では、返還後の先が全然わからないということではなくて、そういうものの青写真を持っているということは必要かどうか。全然必要でないとお考えかどうか、その辺をお聞かせいただきたい。
  213. 中山太郎

    中山国務大臣 これから重大なゴルバチョフ大統領の訪日という時期は、北方領土問題を解決する突破口にしてもらいたい、突破口であってもらいたいというのが日本政府の切なる願いでありますが、私は、外交交渉というものは、その国の指導者にとって、一国の大きな領土問題を解決するということになりますと、国内の政治問題、あるいは日本との問題、あるいはまた安全保障の問題等に絡んで、その国の政府にとっては極めて重要な決断が要るんだろうと思います。私は、日本政府としてこのように実は考えておるわけであります。  日本政府は、現在日ソ間において、人の往来も自由である、また通商関係におきましては、西側といいますか世界で、通商をやっている中では、フィンランド、西ドイツに次いで日本が第三位の貿易量を示しているわけでありますし、一方、日ソ関係においては、大した問題は実は日本側にないわけであります。一番大きな問題は、領土が不法占拠されているという問題でありまして、ソ連側にとって、この領土問題を解決することがソ連にどれだけの大きな利益が起こってくるのか、あるいはアジア・太平洋における将来の日ソ関係を調整することがいかにソ連にとって有益であるかという判断をされるときに、問題は突破口に向かっていくのだろうと考えております。  私は、政府として従来の方針を堅持しながら、ソ連政府とこの問題の解決に全力を挙げて努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておりますが、返還がされた後の領土の問題についてどのような考え方を持っているかということにつきましては、政府としては考え方はいろいろと検討いたしておりますけれども、まだこの委員会でその具体的な内容について申し上げる段階には立ち至っていない、このように私は判断をいたしております。
  214. 和田一仁

    ○和田(一)委員 まだいろいろ伺いたいのですが、これはちょっと触れておかないといけないので、オゾン層モントリオール議定書について最後に質問させていただきたいと思います。  この問題は、きょうここで私が初めてなものですから、これは改定が行われたわけですけれども、その改正点と経緯、それから何といってもこれはすべての国が守れないと何にもならないんだと思うのですね。締約国がこういった規制に対して達成が可能かどうかということを含めてお尋ねをしたいと思うのです。  私どもは先進国として、非常に大事な地球環境の破壊を進めてしまった。さあこれから何とかしなければならぬということでこういうものを決め ましたけれども、途上国においては、何だ、自分で勝手に壊しておいて、これからおれたちが使おうとしているものに対して、経済発展もしたいのに厳しい規制がかかるのかということもあろうかと思うのですね。そういう意味で、これについても基金が設けられるというのですが、余りにも少ないような気もいたします。これらのことを含めてお答えをいただきたいと思います。
  215. 河村武和

    ○河村説明員 今先生の述べられました点につきまして、簡単に御説明いたします。  まず、議定書の改正の採択経緯とその内容を述べさせていただきます。その内容の中で、述べられました開発途上国に対する援助という点についても触れたいと思います。  御存じのとおり、昭和六十二年九月に、オゾン層保護のための具体的な規制というものを決めております国際的枠組みとして、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書というものが採択されたわけでございます。この議定書自体は、今後数十年間、フロンとかハロンの大気中への放出量が増加し続けると、最終的に重大なオゾン層の破壊があり得るという科学的予想に基づいて作成されておりましたけれども、その後さらに国際的に調査研究を行いました結果、オゾン層の破壊物質の成層圏中の濃度の増加が原因と考えられるオゾン層の破壊の現象はもう既に発生しているのではないかという認識が一般的になったわけでございます。  このような認識がございましたので、現行の議定書の規制内容ではオゾン層破壊の進行を阻止することは困難である、かかる観点から、一層強化された保護措置というものを早急に実施することが必要であるということで各関係国意見が一致したわけでございます。  同時に、これはまさに先生が述べられました点でございますけれども、このようなオゾン層の保護措置を実施するための経済力でありますとか技術力というものを十分に有していない途上国がある。他方、いわゆる条約というものはこれらの開発途上国に入ってもらわないと実効的な規制というものが全世界的に行うことができないということでございますので、これらの開発途上国に対する先進国による支援というものが必要で、その支援のための枠組みをつくるべきであるという点についても合意ができたわけでございます。この二点を中心にいたしまして昨年六月に最終的にはロンドンにおいてこの本件の改正を採択したということでございます。以上が経緯でございます。  改正の内容について二点申し上げますと、一つ、まず規制強化でございますが、現行の議定書において規制の対象になっておりますのは五種類のフロンと三種類のハロンでございました。これに加えまして新たにフロン十種類、さらにメチルクロロホルム及び四塩化炭素というものを規制対象に追加することとしたわけでございます。十種類のフロンと四塩化炭素につきましては、最終的には二〇〇〇年までに全廃、さらにメチルクロロホルムについては二〇〇五年までに全廃するということが規制の内容でございます。さらに規制物質の貿易規制につきましては、原則的に申しますと議定書に入っておりません議定書非締約国からの規制物質の輸入の禁止ということに加えまして、非締約国への規制物質の輸出についてもこれを禁止するというのが原則になってございます。  さらに、第二点目の開発途上国に対する援助ということでの制度の整備でございますけれども、これは基本的には多数国間の基金というものを設立しようということになりました。同基金の基本的な活動内容といたしましては、基本的に国際機関を通じて実施されるオゾン層の保護のための各種のプロジェクト、開発途上国が関係しますプロジェクトでございますけれども、プロジェクトに対する財政支援、さらには代替技術情報等の提供、研修とかセミナーの開催ということのための活動にこの基金の費用を充てる、こういうことでございます。
  216. 和田一仁

    ○和田(一)委員 時間になりましたのでこれでやめさせていただきますが、地球というものは我々人類のみならず地球における全生物のかけがえのない財産でございまして、その保護のためのこの大事な協定ですから、我が国としては協定した以上これの実行をきちっとできるようにお願いをして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  217. 牧野隆守

    牧野委員長 ただいま議題となっております両件中、欧州復興開発銀行設立する協定締結について承認を求めるの件に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  218. 牧野隆守

    牧野委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  219. 牧野隆守

    牧野委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  220. 牧野隆守

    牧野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  221. 牧野隆守

    牧野委員長 次回は、来る八日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十四分散会