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1990-11-22 第119回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年十一月二十二日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     理 事                 青木 幹雄君                 北  修二君                 細谷 昭雄君                 村沢  牧君                 井上 哲夫君     委 員                 大浜 方栄君                 鎌田 要人君                 鈴木 貞敏君                 初村滝一郎君                 星野 朋市君                 本村 和喜君                 上野 雄文君                 大渕 絹子君                 菅野 久光君                 谷本  巍君                 三上 隆雄君                 猪熊 重二君                 林  紀子君    国務大臣        農林水産大臣   山本 富雄君    事務局側        常任委員会専門        員        片岡  光君    説明員        内閣法制局第一        部長       大森 政輔君        厚生省生活衛生        局乳肉衛生課長  難波  江君        農林水産省経済        局長       川合 淳二君        農林水産省農蚕        園芸局長     安橋 隆雄君        農林水産省食品        流通局長     馬場久萬男君        食糧庁長官    浜口 義曠君        林野庁長官    小澤 普照君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (当面の農林水産行政に関する件)     ─────────────    〔理事北修二委員長席に着く〕
  2. 北修二

    理事北修二君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 谷本巍

    谷本巍君 初めに十一月九日の毎日新聞が書いております「乳製品 でんぷん 関税化受け入れ検討」という記事について伺います。  当日の毎日新聞を見てみますというと、「大詰めを迎えている関税貿易一般協定・新多角的貿易交渉農業交渉で、政府が脱脂粉乳などの乳製品でんぷんの二品目について、関税化受け入れを検討していることが八日、明らかになった。」というふうに書いてあります。そういう事実があったのかどうか端的に伺いたいと存じます。
  4. 川合淳二

    説明員川合淳二君) そういう報道があったことは承知しておりますが、そういう事実はございません。
  5. 谷本巍

    谷本巍君 乳製品でん粉受け入れて米を助けていくという記事になっておるわけであります、端的に申し上げますと。これは毎日新聞だけじゃなくて、北海道新聞も同じようなことを書いております。ガットの場というのはそういう政治的な取引の場というのとは違うわけでありまして、常識的にもこういう記事が出るのはおかしいのではないかと私は思うのですが、ところが事実はまことしやかにそれが書かれておる。またさらに最近のマスコミ報道は、ガットウルグアイ・ラウンド、特に農業関係のことについて見てみますというと公正さを欠くような報道が残念ながら非常に多くなってきておるわけであります。  昨年の農業経済学会で、東海大学の山地教授が「牛肉オレンジ交渉にみるマスコミ報道の特色と背景」というのを報告しておりますが、それを見てみますというと、中央五大紙報道分析をしながら、アメリカ要求は細かに報道するが国内生産団体反対をほとんど紹介しなかった、米国などの輸入規制についてもほとんど紹介されておらぬ、結果としてアメリカ側応援団的役割を果たしておるという分析をされております。また山地教授は、なぜそうなったかについて、マスコミが巨大産業化する中で国民より産業界立場に立つようになってしまったのではないかということを指摘すると同時に、何が真実かということよりも何が実現されるか、報道あり方がそういうところに焦点が絞られるようになってきておるということを紹介しておるのであります。  ウルグアイ・ラウンド、今度の問題に向けましても基本的には同じパターンで来ておるわけであります。また、そうしたことと関連して見てみますと、御承知のようにことしの八月にヤイター農務長官が来たのでありますが、ヤイターさんの言い分は事細かに紹介をしておる。日本に来てヤイターさんが会った皆さんヤイターさんにどういう意見を言ったか、山本大臣を初めとしましてその記事はほとんど紹介されていない、あるいはほんのちょっぴりでしかないというような状況が見られました。  さらにまた、アメリカ政府ガットに臨む態度にしましても、アメリカ国内ではかなりの反対運動があります。御承知のように、アメリカ内の家族農業団体環境団体などがアメリカ政府提案についてかなり強い反対運動をやっております。さらにまた、今回の特徴は、全世界家族農家それから環境団体が一緒になってアメリカ政府提案に対する反対キャンペーンを展開する。また、十二月三日から始まる閣僚会議に向けては、そうした関係団体皆さんがブリュッセルに集結をするというような状況があるわけであります。こういう事態は今までにはなかったことであります。にもかかわらずそうしたことが日本新聞ではほとんど紹介されておらぬのであります。こうして見ますというと、今の報道あり方というのは公正さを欠くものだと言ってよかろうと存じます。それだけに農林水産省が節度ある対応をしていただかなきゃ困るのであります。  先ほど申し上げた毎日新聞記事のごときは事実無根であるということであるとするならば皆さんがどういう対応をされたのか、そのことを初めに伺っておきたいのです。
  6. 川合淳二

    説明員川合淳二君) ただいまお話がございました報道につきましては、直後の記者会見の席でそのような事実はないということを明確に申し上げてございます。この点についてはそういうことでございますが、マスコミに関するお話につきましては私どもコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、私どももやはりバランスのとれた報道をしていただきたいということを考えておりまして、あらゆる機会をとらえ、またあらゆる機会をつくりまして対応しているつもりでございます。
  7. 谷本巍

    谷本巍君 取り消し要求はなされたんですか。
  8. 川合淳二

    説明員川合淳二君) この件につきましては、今申し上げましたように、当該社だけではなくてすべての社がいる場で明確にそういう事実はないということを申しまして対応したところでございます。こうした報道に対する対応の仕方はいろいろあろうかと思いますが、この場合においてはそういう対応をとったわけでございます。
  9. 谷本巍

    谷本巍君 解釈上の違いと違って事実がなかったことが述べられておるわけでありますから、当然取り消し要求をしていいんじゃないですか。そういう厳しい対応をしていきませんとこれから先どんなふうになっていくかわからぬから、それを案ずるがゆえに私は申し上げているんです。
  10. 川合淳二

    説明員川合淳二君) こういう報道に接したときにどういう対応をするかというのは、そのときによりましていろいろあろうかと思います。この場合はこういうやり方が一番明快ではないかというふうにとったわけでございますが、今のお話も私ども今後のこうした報道に対して十分参考にさせていただきたいと思います。
  11. 谷本巍

    谷本巍君 その点は強くお願いをしておきます。  また、こうした新聞報道との絡みでもう一つ申し上げておきたいと思いますのは、どうも行政当局がもっと積極的に資料を提供する、キャンペーンをしていく、その点に欠ける点が多いのではないかと思われる節が感ぜられることが多々ございます。  例えば、八月の二十四日、朝日新聞社説で、ヤイター提案を考えようというテーマだったと思いますが、社説が書かれております。八月にヤイターさんが日本に来られて、アメリカ政府提案についていろいろ説明をされている。ところが、何もそれは新提案ではなくて、昨年の九月にアメリカ政府提案したものを繰り返し述べただけにすぎないんですね。事もあろうに朝日新聞たるものがそれを新提案と思い込んで社説の中でまで書いておる、こういう間違った報道もあったわけであります。これは朝日の側の不勉強ということもさることながら、この例を見てみてもやはり行政当局がもう少し懇切丁寧に説明をしておれば恐らくこういう事態が起こらなかったのではないのかという気がしてならないのであります。もっと行政当局は積極的に情報を公開していく、そして解説をしていく、そして政府態度をきちんと説明していく、そういう努力に欠けていたのではないかと思われていたし方ないのであります。その辺のところはいかがでありましょうか。
  12. 川合淳二

    説明員川合淳二君) マスコミ報道につきましては、先ほども申し上げましたように、私ども立場といたしましてはコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、私どもも、先ほども申しましたように、バランスのとれた報道をしていただきたいという願望は強く持っております。  そこで、最近におきましては、今お話が出ましたようなこともございまして、論説あるいは解説委員、それから経済関係部長あるいはデスクといったところの方々にお集まりいただきまして、その都度、かなり頻度も多く私ども立場、それから例えばウルグアイ・ラウンド状況などにつきまして詳細に説明をしてきているところでございます。そのほか、いわゆるオピニオンリーダーというような方々につきましても、大臣以下幹部が回りまして、それぞれ今の状況それから対応状況考え方などについて説明をしているところでございます。最近においてはかなり精力的にやっているつもりでございます。
  13. 谷本巍

    谷本巍君 この点はまた後の論議の中で具体的に幾つかの事実も指摘していきたいと思いますので、先に進ませていただきます。  さて、乳製品でん粉関税化問題が記事になって出たということの絡みで、この際篤と大臣お願いを申し上げておきたいのであります。  先般、農林水産省は、米の自由化問題で、三〇%生産が減るとどんな地域経済への影響が出るかということを発表されました。これは米だけでありましたが、畜産で見ましてもでん粉で見ましても、当該産地については同じような状況が生まれてまいります。  でん粉で見てみますというと、主産地北海道バレイショ生産、これはまさしく畑作基幹作物そのものであります。寒冷地に強い畑作物ということになってまいりますというと、バレイショ、てん菜というようなことになってくるわけであります。北海道農業の場合には、これに小麦、豆をかみ合わせまして四つの作物でうまく輪作体系を組んでいくというようなことでやってきておるわけであります。バレイショアウトになるとどういうことになってくるか。早掘りで、後作の小麦もやれないというようなことになってくる地域が多いのであります。ということは、輪作体系が崩れて、病害発生防止も困難になっていくということでありまして、言うなれば北海道畑作農業の命がかかっていると申し上げて過言ではなかろうと存じます。  それならでん粉原料づくりをやめて食用生産をやったらどうなんだというようなことになりますというと、これをやっていきますと価格の暴落ということになってまいります。内地畑作生産にも全般的な影響が出てくるのではないでしょうか。加工用原料乳アウトになってきた場合にどういうことになってくるのか。結局、内地の酪農が南北戦争で立ち行かなくなってくるというのと同じ意味を持つわけであります。後のない日本農業、米とともに畜産を守る、そのために乳製品市場開放を阻止していくということと、畑作物を守るためにでん粉自由化を阻止していかなければなりません。この際、大臣の御決意を伺いたいのであります。
  14. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 先生御指摘のとおりでございまして、北海道中心にして畑作農業の基幹的な作物であるという認識は強く持っております。ウルグアイ・ラウンド交渉につきましても、先般のオファーを含めまして私どもの方針を明らかにしているところでございまして、米同様しっかり頑張ってまいりたい、こう考えております。
  15. 谷本巍

    谷本巍君 続いて、十二月三日から始まります閣僚会議に向けての政府見解を伺いたいと存じます。  まず初めに、先進国としての国際的責務論、このことに関連いたしまして幾つかの点を伺いたいと思うのであります。  先進国としての国際的責務論一つとしまして、日本米市場開放など農産物市場開放を積極的にやるべきだというような見解があります。十月十九日、日本貿易振興会が発表しました昨年の農林水産物輸入額で見てみますと、農産物が三百億ドル弱、これに林産物と水産物を加えますというと五百十億ドルを超えるというような状況であり、そしてそのうち四百八十五億ドルが輸入超過という結果が出ております。また、FAOの八八年統計を見てみますというと、日本農産物輸入額は二百六十八億ドルになっておりまして、食糧の純輸入額日本はトップということでありました。昨年の農産物輸入額は過去五年間で実に七七%の増加というような状況になっております。こうした事実を見てみますと、日本世界最大の超輸入大国であって、十分な国際的責務は果たしておると思うがどうなのかということがまず第一点であります。  伺いたい第二の点は、ウルグアイ・ラウンド開始以来、日本牛肉かんきつなど一連の自由化、そして枠拡大を決定し、実施してまいりました。このような市場開放措置ウルグアイ・ラウンド農業交渉の実質的な成果への前倒し貢献として評価されるべきものと思うが、どうかということについて伺います。
  16. 川合淳二

    説明員川合淳二君) ウルグアイ・ラウンドが始まりましてからだけをとりましても、我が国は今お話がございましたように、牛肉かんきつのように市場開放にとりかかっているものがあるわけでございます。また、実際的に見ましても、今お話しのような輸入額増大、それから純輸入国としての立場が非常に強くなってきているというようなことも含めまして、私どもはこの交渉におきましても既に前倒し貢献をしているということを前提会議に臨んでおりまして、九月末に出しましたオファーにおきましてもその点を前提としたオファーを提出しているという状況でございまして、この点につきましては私どもも強く交渉の場で主張しているところでございます。
  17. 谷本巍

    谷本巍君 それから、国際的責務論の二番目の問題として、貿易上の責務とは違うもう一つの重要な責務があるのではないかと私は思うんです。それは世界食糧問題から見た先進国責務ということであります。  二十一世紀に向けての世界食糧需給状況というのはどんなふうになっていくのでありましょうか。地球環境問題の解決とともに、もう一つ人類共通の課題となってくるのが食糧問題ということなのではないでしょうか。発展途上国人口がどんどんふえていく、それは避けることができない状況とされています。二十一世紀にはこの地球上に住む人間の半数が都市に住むようになるとされている。そして、それが都市環境悪化とともに地球全体の環境悪化につながるといわれている。  ところで、一方で人口がどんどんふえる中で、緑をこれ以上減らして畑をつくるということ、田んぼをつくるということが限界だとされてきている。そういう状況の中で、一方では中進国畜産消費伸び始めています。昭和四十八年、九年の世界的食糧危機、あの背景にあったものは東ヨーロッパ畜産消費伸びでありました。現在伸びつつある畜産消費伸びというのは、東ヨーロッパ人口の何倍かの人口であります。そういう状況に加えて、異常気象の問題等々を加味してみるならば、これから先の世界トータルで見た食糧需給逼迫に転じていくのではないか、不安定な時代に入っていくのではないか、そういう見通しではないかと思うのであるが、その点政府はどう見ているか御所見を伺いたい。
  18. 川合淳二

    説明員川合淳二君) 世界食糧事情につきましては、御承知のように一九八〇年代に入りまして主要国生産がかなり伸びましたこともございまして、大幅な過剰基調で推移したわけでございます。今回のウルグアイ・ラウンドが始まりました背景にもこの過剰基調に基づきます輸出競争激化ということがあるわけでございますが、こうしたところから八〇年代は始まったわけでございますが、八八年に北米地域での干ばつというようなことがございまして大幅な生産減がございました。この時点で一転引き締まりの方向に転じたことは御承知のとおりでございます。  その後、再び生産が順調に増加しておりまして、今の段階では穀物需給はおおむね緩和ということでございます。要すれば、やはり穀物あるいは食糧生産はサイクルを描いて過剰、逼迫ということを繰り返していると思っております。中長期的には、今お話がございましたような人口増加あるいは異常気象、それから畜産物消費など食生活の改善に伴います飼料穀物増大、さらに砂漠化の進行などに言われます環境問題などから不透明な状況、非常に不安定な状況というようなことも言えるかと思っております。
  19. 谷本巍

    谷本巍君 アメリカ政府提案は、過剰論ということを前提にして提起してきているわけであります。そしてその中身は私から紹介申し上げるまでもなく輸入制限の全廃と国内農業支持廃止に近い中身になっておるわけであります。これがまかり通っていったらどういうことになってくるか。優勝劣敗で貿易市場での過剰抑制は一定点されるかもしれません。  それじゃ、それで発展途上国食糧不足解決されるかというと、そうでは決してありますまい。こういう状況の中から生まれてくるのは一体何なのかといえば、世界家族農業がつぶされていくということになりはしないでしょうか。アメリカ政府提案についてアメリカ農業団体で賛成しているのは私の知る限りでは一つもありません。ほとんどが反対であります。まして、日本発展途上国基礎的食糧生産は、アメリカ政府提案が通りますというと、生産が破壊されていくということになっていくのではないだろうか。  こうして見てみますと、アメリカ政府提案というのは世界食糧問題解決という視点がなくて、世界食糧問題解決に逆行するような提案になっているのではないかと思うがどうなのか、いかがでしょう。
  20. 川合淳二

    説明員川合淳二君) 米国提案につきましては、御承知のように、国内支持につきまして十年間で七五%の削減、それから国境措置にすべての非関税措置を適用する、これを十年間で七五%削減していく。さらに輸出競争につきまして九〇%の補助金削減ということを言っているわけでございます。米国提案オファーはプロポーザルという言葉を使っておりますように、中身は先般出されましたドゼウ議長テキスト案加除修正を加えたというような形でございまして、言うなれば総論の域を出ない、具体的な各品目についてどうするかということの内容を含んでいない提案になっております。この提案につきましては、私どもは、そういうことで具体性に欠けるということとともに、非常に非現実的、特に七五%とか九〇%というようなことで大きな削減幅を持っておりますので、自国内でも果たしてそういうことができるかどうかということについては疑問を持つということを感じているところでございます。
  21. 谷本巍

    谷本巍君 私が申し上げているのは、アメリカ政府提案というのには世界食糧問題解決という視点があるのかないのか、日本政府アメリカ提案についてその点についてどう対応していくのかということについて伺いたいのです。  昭和四十年代の末の世界的な食糧危機の後を受けまして、御承知のように国連食糧農業機構国際農業調整ガイドラインとその目標というのを発表されました。これを読んでみますというと、そのうち特に注目されるのは、発展途上国基礎的食糧生産の自立をどう高めていくか、ここに基本を置いておるということであります。そして、そのために先進国は何をなすべきか、先進国国内農業政策の策定、実施に当たっては発展途上国に不利な効果をもたらすことがないようにすべきだといったことがこの中でうたわれておるのであります。アメリカ政府提案というのはFAOの趣旨に百八十度全く背を向けたものだと断定してよろしい。そういう点について日本政府ガットの場でアメリカ側とどういう話し合いをしてきたのか、そのことを伺いたいのです。これからどうしていくかということを伺いたいのです。  御存じのようにガット加盟国というのは先進国中心でありますが、FAOの場合は国連加盟のすべての国が入っておるわけであります。こうしたFAO考え方を無視した農産物貿易交渉というのはどだいあってはならないものだと私は考えるのです。それで、日本政府提案の問題とあわせて、どういう論議をしてきたか、これからどういう論議をしていくのか、そこを伺いたいのです。
  22. 川合淳二

    説明員川合淳二君) アメリカ提案先ほど申しましたような内容でございますが、これは一つ先ほど来申しておりますように、八〇年代の過剰生産に基づきます輸出競争激化ということを背景にした提案になっているというふうに考えております。一方、ただアメリカ提案の中でも、純輸入発展途上国といいますか、農産物を輸入している発展途上国への配慮はすべきである、このための食糧援助等については十分やるべきだという点も入っていることは御紹介しておくべきだと思っております。  ただ、私どもウルグアイ・ラウンドで主張しておりますのは、我が国基礎的食糧考え方などの背景となっている考え方の中には、やはり国民の生存を維持するのに必要な食糧の供給を行うのは、最終的には主権国の総合的な安全保障の中で行われなければならない、その場合における各国が果たさなければいけない最も基本的な政治的責任であるということを十分述べてこの基礎的食糧論を展開しているところでございまして、発展途上国における自給体制への配慮ということは当然図られなければいけないし、そうしたことを基礎としてこの農産物貿易の問題は考えるべきであるというふうに私ども主張しているところでございます。
  23. 谷本巍

    谷本巍君 そうしますと、FAOが提起してきた問題、これらの問題を基礎とした論議というのはほとんどやっていないということですか。
  24. 川合淳二

    説明員川合淳二君) やはりガットの場では貿易問題ということがどうしても中心になりますので、確かに今御紹介いたしましたような純輸入発展途上国というような存在についての配慮議論はございますが、どうしてもそういう貿易論に引きずられがちだということは御指摘のとおりだと思います。
  25. 谷本巍

    谷本巍君 それではこれからはどうなさいますか。
  26. 川合淳二

    説明員川合淳二君) 我が国オファーを九月の下旬に出したわけでございますが、このオファー考え方前提となります議論の中には当然農業の持つ各国特殊性に根差す各種機能、それから先ほど申しましたような食糧安全保障というものをまず踏まえて議論すべきだということを提案の中にも書き込んで提出しておりますので、そうした立場を十分主張していかなければいけないと思っております。
  27. 谷本巍

    谷本巍君 それからもう一つは、環境問題との絡みの論議がどんなふうになっているかということについて伺いたいのであります。  アメリカ政府提案が押し通されるような状況になってきますと、先ほど申し上げましたように世界家族農業が立ち行かなくなっていくであろうと思われます。これがどういう結果をもたらすかということは言うまでもなかろうと存じます。資源収奪型、環境破壊型の企業農業の時代になっていく、端的に申し上げますとそういう方向になっていくのではないか。現にアメリカ国内でも、御存じのように、家族農家だけじゃなくて環境保護団体からも家族農家をつぶしてしまうというのはいかがなものかといったような運動が起きておることは御承知のとおりでありましょう。  さらに見落としてならないのは、多国籍企業の農業生産への参入の事態が広がっていくであろうということであります。環境破壊でやり玉に上がっているのが例えばアメリカの資本がブラジルで企業牛肉生産の開発をやっておる。あるいはまた、日本向けのエビの養殖にしましても、マングローブ破壊というようなことでこれまた世界環境保護団体からやり玉に上げられてきているというような状況があります。アメリカ政府提案が通っていきますと、こういう状況というのはかなり全般的になっていくであろうということが予測されます。  一昨年、二年前に牛肉輸入の自由化を行った後に日本の大手企業などがオーストラリアの牛肉の開発輸入に乗り出しておる。米の市場開放がやられたら今度はどういう事態が起こってくるか。米もまた同じような状況が起こってくる。発展途上国の言うなれば環境破壊というのが著しくなり、そしてまた輸出国、輸入国ともそれぞれ環境破壊の状況というのが生まれてくるというふうに言っていかなきゃなりません。  日本政府提案しております基礎的食糧食糧安保論、これはやはり家族農業を守っていくという前提がその含みにあるわけでありまして、環境食糧問題解決視点、これはやっぱり日本政府としてもっと強くガット論議の中でやっていく必要があると思うのだが、今までの論議でどうなっているか、これからどうしていくのか、その点を承りたいと思います。
  28. 川合淳二

    説明員川合淳二君) いわゆるノントレードコンサーンという言葉で言われております非貿易的関心事項という項目が各種のサミットあるいはそのほかの主要の宣言事項の中に入っているわけでございますが、これに対する考え方は、先ほど申しましたように各国農業の置かれた立場、例えば気候風土、それから立地条件、あるいはそれぞれの国民の食生活の内容などによってそのとらえ方がいろいろあるわけでございます。その中の一つとしてこの環境問題を強く主張される国もあることは当然でございます。このノントレードコンサーンという問題としてこの環境問題が議論されることが一つございます。  それからもう一つ、最近になっての議論といたしまして国内支持国内補助金の問題として、どういう予算といいますか、どういう補助金削減するかという議論の過程で、この環境問題に関する補助金については当然青にすべきだという議論が一部出ております。アメリカなどからもこの議論は出ておりまして、そういう場面での環境問題の取り上げ方が一つ出ております。  今後、私どもといたしましてはその二つの面で対応していくことが必要だし、そこでの主張というものが特にノントレードコンサーンの問題としては各国との協調、特に輸入国との協調のときの一つのキーワードと申しますか、中心的課題というふうに考えていくべきではないかと思っております。
  29. 谷本巍

    谷本巍君 続いて、日本政府提案オファーについて伺いたいことがあります。  九月の二十八日、日本政府ガットに提出したオファーは、従来から主張してきた基礎的食糧論ガット十一条二項の改正を踏まえたものであります。農産物輸入国農業が生き残れるようにしていくためには、これを通していかなければならないということは言うまでもなかろうと存じます。  ここでまた再びマスコミの話を出させていただきますが、日本政府提出のオファーについてのマスコミのとらえ方というのは、総じて米を守るためのオファーというようなとらえ方が実は多いのであります。日本政府提案は、日本農業だけではない、世界食糧輸入国農業を守るためという積極的な意義を持っていると思うのです。ところが、その普遍性が全く理解されていないという点に問題があるのではないでしょうか。そうであるから、米は一部開放してもよろしいのではないか、あるいは保護削減率が低いといったような議論などがひとり歩きするような状況すら生まれているのであります。  そこで伺いたいと思いますのは、政府提案の真意ですね。食糧安保論、基礎的食糧論、それからガット十一条二項の改正問題、これをわかりやすく丁寧に積極的に国民の中に示していく、これは大変重要なことではないかと思うのです。その点をやっていただきたいと思うが、政府は一体どう考えるかということが第一であります。  それから第二に伺いたいのは、そのことと関連いたしまして、日本政府提案、保護削減ガットルール改定、これは一体的なものである。なぜ一体的なのかということについて必ずしも国民の間に理解がされていないという状況があります。保護削減は保護削減、ルール改定はルール改定というぐあいにばらばらにされて、保護削減のみが先に走っていきますと提案の全体が崩れていくというようなことになっていくわけであります。でありますので、政府提案の基本的な点、肝心な点ですね、国民的な理解がほとんどされていないわけでありますから、その点の努力をお願いしたいということと同時に、ガットでも十分留意してやっていただきたいということをこの際申し上げ、お答えをいただきたく存じます。
  30. 川合淳二

    説明員川合淳二君) 私ども各国に先駆けて九月の二十八日にオファーを提出したわけでございます。それにつきましては、先ほども申し上げましたように、マスコミ関係それからいわゆるオピニオンリーダーと言われる人々を含めましてかなり積極的に、それから地方農政局の段階でもこの提案考え方、その背景等について説明をし、そういう機会を持っているわけでございますが、なお努力をしていかなければいけないと思っております。  今もお話がございましたように、オファーそのものは我が国立場ということはもちろん踏まえて出しているわけでございますが、ルールづくりという交渉の中で、やはり世界のルールにすべきであるという気構えで出している提案でございまして、そのルールの中の一環として保護の削減という話があるわけでございますから、お話しのように一体としての問題、それも普遍的なルールの提案ということで出しているわけでございますので、そうした点についてもよく理解を求めていかなければいけないということはお話しのとおりだと思います。
  31. 谷本巍

    谷本巍君 その点は特にお願いを申し上げておきたいと存じます。  次に、輸入国立場と主張を明確に貫いていく上での大臣の御所見をいただきたいわけです。  ガット農業交渉の現実はどんなふうはなっているか、結局アメリカとECの二大輸出国当事者の議論中心になっておりまして、農産物貿易市場の奪い合いの場の感じすらいたしてならぬのであります。それだけに日本が果たすべき役割は大きいのではないでしょうか。輸入国とりわけ穀物輸入国を代表する立場で堂々と大臣が主張していくことが極めて重要であります。ガットは設立以来輸出国本位でありました。ところが日本政府提案というのは、これに対して言うなれば不平等的条項を改定していくんだということも含めて国際的にそれを平等なものにしていく、そしてそれが世界食糧問題悪化に対する歯どめ的な役割も果たしていくという意味合いを持っておるのでありますから、したがって、日本政府提案を踏まえたガットでの大臣論議は全世界が注目するものだ、こんなふうに言ってよかろうと存じます。そうした意味での大臣の御決意を承りたいということが一つ。  また二つ目の問題としましては、それとの関連で、日本政府オファーが言う保護率削減については輸入割合を考慮するという提案がされておるわけでありますが、これは極めて重い部分として受けとめてよかろうと存じます。この点はあくまでも正当な主張として大臣に貫いていただきたいと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  32. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 二点目から申し上げたいと思いますが、先生御承知だと思いますけれどもオファーの中で、国内支持につきましては一九八六年を基準として十年間で三〇%削減するということを基本にうたっておるわけであります。これまでの削減実績を控除した上で生産調整の割合または輸入の割合を勘案して修正する、こういう提案を行っておるわけであります。先ほど来経済局長からもるる申し上げておりますが、これを基本にして食糧輸入国立場というものがより明確に反映されるように、これが第一の問題になるわけであります。  アイルランドの五カ国農相会議でも私が強く主張いたしましたのは、輸出国の論理だけで農業問題が推し進められてはならない、従来ややもするとそういう向きを私どもは感じておる、輸入国があるんだ、我が国もその大きな一つなんですと。我が国の例というのは輸入国全体の例なんですということを前提にしながら、今回のガット交渉においても輸入国の論理がより明確に反映されるような交渉結果が得られるようにということをひたすら念願をしてやってまいりたい、こう考えております。
  33. 谷本巍

    谷本巍君 そうしますと大臣、保護率削減については輸入割合を考慮するというこの点はあくまでも正当な主張として貫いていくという所信ですね。
  34. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) そうです。
  35. 谷本巍

    谷本巍君 では次に、動植物検疫の国際的標準化問題について伺いたいのであります。  ガット交渉では専門家レベルでの議論は相当進んでいるというふうに話を聞くことがあるのでありますが、実際はどうなのでありましょうか。私どもからしますというと情報が全く公開されておらぬ。でありますから、私どもの知り合いの消費者団体などからも相当不満が出ておる。そして消費者団体、市民運動グループの皆さんアメリカ政府提案についての反対運動が強い。アメリカの市民運動団体から英文のものの情報を入れて、それを翻訳しながらああなんじゃないかこうなんじゃないかという議論を今し始めているというような状況なのであります。  この国際的標準化問題というのは、日本世界最大輸入国でありますから、それだけにそのあり方いかんによって受ける影響は大きいのであります。しかも欧米と日本の食生活は大きく違う。でありますから、極めてこの問題は国民の食生活にとって重要な意味合いを持っているのでありますが、政府は今までどのような主張をしてきたのか。それからまた、情報公開がどうして行われないのか。その点について初めに承りたいのです。
  36. 川合淳二

    説明員川合淳二君) 動植物検疫の問題は農林水産省、それから衛生問題につきましては厚生省にまたがる問題でございますので、厚生省の方からもお話があろうかと思いますが、この問題についての経緯を御説明させていただきますと、昨年四月の中間見直し合意におきまして国際基準を基礎として各国の検疫・衛生措置の調和を図ることということに合意しています。これはでこぼこをなくする、俗な言葉で恐縮でございますが、ということだろうと思っております。この調和の方法に関しまして議論が行われているわけでございます。ただその場合に、やはり各国によって違いがあるわけでございます。衛生的条件または食生活の違いによりまして国際基準よりも厳しい措置を採用せざるを得ない場合もあることが認められるべきであるということにつきまして、これは我が方から提案を行っております。これを非常に強く主張しておりまして、おおむねこの方向で合意が得られるのではないかというようなところまで来ております。  ただ文章にどういうふうに書くかというようなことにつきましてなお折衝が行われているわけでございますが、この問題につきましてはこういう考え方につきまして議論が行われている段階でございまして、具体的な問題について議論されているわけではございません。したがいまして、具体的な基準の数値そのものについていろいろと取りざたされる場面がございますが、ウルグアイ・ラウンド議論はそういう段階で議論が行われております。  私ども特にこうした動きを隠していると申しますか、特に外に流してないということではないんでございますが、どうしても農業交渉の本体の方がかなりいろいろな形で大きな問題を持っておりますものですから、この問題がその陰に隠れがちではございますが、決してそういう態度で接しているわけではございませんので、その辺の情報と申しますか、については私どもも心がけていきたいと思っております。
  37. 谷本巍

    谷本巍君 情報公開の問題いかがでしょうか。厚生省は来ておりますか。
  38. 難波江

    説明員(難波江君) ただいま農林水産管からも御答弁がございましたが、私どもの食品衛生の問題につきましても現在農業交渉グループの中の作業部会において調和の方法等について議論がされているところでございます。厚生省といたしましては、あくまで科学的根拠に基づき食品の安全性の確保を大前提とするという観点で、国際基準等に基づく調和につきましてもその必要性は十分承知をしているわけでございますが、先生御指摘のように各国により食生活のパターンや衛生状態が異なるというようなこともございますので、必要に応じて国際基準等と異なる措置をとることも認められるべき等食品の安全性確保の観点から積極的に主張を続けてまいっているところでございます。
  39. 谷本巍

    谷本巍君 この点についてはたくさん伺いたいことがあるのでありますが、時間がもうなくなってきておりますので、まだ伺いたい重要なことが幾つかありますので先に進みます。  続いて二国間交渉問題について大臣の御所見を伺いたいのであります。  ガット交渉が失敗しますというと米問題は二国間交渉になるであろう、したがって多国間交渉の湯で譲るべきは譲って、しかるべくやっていくべきではないかといったような意見等もあります。これは米市場開放前提とした主張であります。この点について政府はきちっと反論をしていただきたい。これがまずお願いしたい第一点であります。  それから二つ目の問題は、アメリカの通商法スーパー三〇一条はガットに反するものではないのか、私にはそう思われてなりません。その見解を承りたいのであります。またさらに、スーパー三〇一条で圧力をかけられても米は二国間協議にものせないという基本姿勢をこの際大臣に内外に示していただきたいのであります。いかがでありましょうか。
  40. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) 先生第一の点でお話がございましたが、米の問題につきましてはウルグアイ・ラウンドの場で議論するという基本的な態度でこれまで主張をしてきたところでございます。御案内のように昨年の十一月に基礎的食糧の問題につきましての概括の提案を行っております。さらに、ことしの七月の段階におきましての日本側の考え方も述べてまいりましたし、八月の末においては条文の形でこのことを主張してきたところでございます。ウルグアイ・ラウンド交渉において、我が国の米のような基礎的食糧については所要の国内生産水準を維持するために必要な国境調整措置を講じ得るような提案を行ってきているところでございます。
  41. 川合淳二

    説明員川合淳二君) 三〇一条につきまして御答弁申し上げます。  いわゆるスーパー三〇一条に基づきます優先国、それから優先慣行の認定ということは、一九八九年、九〇年の二年で終了しているわけでございますけれども、依然として米国通商法は米国側の判断に基づきまして一方的に対抗措置がとれるということになっているわけでございます。このような一方的な対抗措置はやはりガット違反になるおそれが十分あるのではないかと私ども考えております。  なお、この問題につきましては、ウルグアイ・ラウンド交渉分野の一つであります紛争処理の交渉グループにおきまして議論されておりまして、米国のこうした三〇一条のような一方的措置の禁止を確保するということについての議論がなされております。
  42. 谷本巍

    谷本巍君 どうなんですか、スーパー三〇一条、圧力をかけられても米は二国間協議にはのせないという基本姿勢は、大臣、示していただくことはできないんですか。
  43. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) これは先生、二国間なんて話は出ていないんですよ。ウルグアイ・ラウンド交渉でこれから多国間交渉をやろうというやさきなんです。我が国もそれでやりましょう、アメリカもそれでまいりましょう、そう言っているわけですから、ウルグアイ・ラウンド交渉であくまでもやるということは当然の筋合いだと私考えております。
  44. 谷本巍

    谷本巍君 どうもますます時間がなくなってきているんで、ここのところももう一度伺いたいことはあるのでありますが、先に進まざるを得ない。残念であります。  次に、国会決議について伺いたいのであります。  昭和六十三年九月の二十一日に「米の自由化反対に関する決議」を行っております。時間がありませんので端的に伺いますが、この「米の自由化反対」の「米」という部分ですね、これについては加工用米は含まれていないという解釈をする向きがジャーナリズムの間に出始めてきております。つまり、加工用米の一部輸入をやってみても国会決議とは抵触しないんだという考え方であります。この国会決議の「米」というのは加工用米を含んでいると政府は考えているのかいないのか、その点いかがでしょうか。端的に、結論だけで結構ですから。
  45. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) 先生御指摘の国会決議の議論でございますので、これはあくまでも国会の御判断というのが一つあります。かつまた、今までの御議論というものを、数度にわたっての御議論、歴史的な意味を持っているわけでございますが、そういう問題があるということをまず前提にいたしまして、我が国におきましては主食用、加工用を含めまして一体となった生産体系のもとにあります。加工用米といえども輸入を認めることは米生産流通全体に重大な影響を及ぼすものと考えております。米については主食用はもとより加工用についても国内産で自給するとの基本的な方針で対処していくものと考えております。
  46. 谷本巍

    谷本巍君 参議院での決議は、当時の決議の文書を読んでみますと、「米国内の我が国に対する自由化要求の動きは、極めて遺憾であり、認められない。よって政府は、二度にわたる本院の決議の趣旨を体し、断固たる態度で臨むべきである。」、こう言っているんですね。二度にわたる決議というのは、昭和五十五年の「食糧自給力強化に関する決議」と昭和五十九年の「米の需給安定に関する決議」なんです。五十九年の場合は、お隣の韓国から加工用米を入れたときの決議なのであります。これを踏まえてやっていけというのでありますから、明らかに加工用米というのも米市場開放問題については対象になっておるというそういう決議であるということをきちっと私の側からこの際申し上げておきたいのであります。  時間がなくなってしまいました。最後に大臣に要望しておきたいことがございます。二つほど要望しておきたいと思うのでありますが、一つは、ガット交渉でぜひひとつ大臣持ち前のしたたかさを発揮してやっていただきたいということであります。  アメリカ政府提出のオファーを見てみましても、まともなオファーと果たして言えるのかどうなのか。国内でのコンセンサスができていないからああいうオファーになったのではないかと思われます。つまり、アメリカ自身実行可能な提案をしていない、こう申し上げてよかろうと存じます。  じゃ、何のための提案なのか。ECや日本をたたいていく材料としての提案でしかないのではないか。あれを武器にして譲歩を迫っていくというような駆け引きの手段としての提案でしかないというふうに思われてなりません。アメリカ対ECの輸出補助金問題にしても同じなのじゃないでしょうか。アメリカ自身が九〇%削減論を出しておきながら小麦の輸出補助金を二倍にもしているといったような状況がそれであります。こうした精神分裂症的なアメリカ政府のやり方、あるいはまたECについても似たようなことがあるのでありますけれども、しかし、その中にやはり私は学ぶべきものがあると思うのです。なりふり構わずやっていくというがめつさであります。その背景にはそれぞれの国の農業問題にかかわる事項もあってのことでありますが、まして日本においてをやというふうに申し上げてよいのであります。ECとアメリカとの谷間の中に日本が沈んでしまうということがないようにひとつ積極的に大臣やってきていただきたいということをお願い申し上げたいのであります。  二つ目の問題としては、日本政府提案というのは世界の中で孤立するという性質のものではないということであります。これは先ほど来申し上げてきておりますように、日本政府提案を通していくことは地球環境を守っていくということと食糧安保を確保していくということであって、二十一世紀に向けての人類の共通課題に見合ったものだというふうに私は思うのです。そのために家族農業を守り、農村社会を守っていく。それが地球環境を守っていく大事なことなのでありまして、各国はそれぞれの農業政策の決定権をきちっと持つことができるような条件を整備させるためにも大臣に頑張ってきていただきたいというふうに思うのであります。  さらにまた、自由化問題というのは発展途上国農業生産を換金作目に特化させていって飢餓の状態を広げるというようなことになっていくでありましょうし、そしてまた、熱帯雨林等を犠牲にした農地の拡大というようなことにもなっていくのではないかと思います。  最近私たちは、アメリカ家族農業の団体からガットに一緒に押しかけていって闘いをやろうじゃないかといったような提案等々も受けております。日本からも大臣よりも一歩先にガットに詰めかけておる農業団体の代表、あるいはまた市民運動の代表なども行っておるということであります。  今回のガット交渉というのは、日本農業が生き残ることができるのかどうなのかというようなことがかかっており、日本農業の将来というのがかかっておるのでありまして、そのことは一に大臣の奮闘いかんによって決まると言っても過言ではないのであります。そうした点を踏まえてぜひひとつ大臣頑張ってきてほしいということを最後に要望申し上げ、大臣の簡単な御所見を伺っておきたいと思います。
  47. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 一時間にわたりまして大変示唆に富む御質疑を賜りました。また、大変温かく激励もしていただきまして本当に感激をしております。先生のお話のように、私はしたたかさもございませんし、ひたむきさもございませんし、まことに不敏でございますけれども、今の状況日本にとってもあるいは日本農業にとっても、あるいは大きく言えば二十一世紀地球を守るためにも非常に重要なときに来ている、そのときのウルグアイ・ラウンド交渉、こういうふうに心得ております。  もちろん、日本の主張は正当であった、また正当であったからこそ今日まで堂々と主張し続けてきた、この主張をオファーという形で先般出したわけでありますけれども、これを貫きたいというふうに考えておりますので、ぜひひとつ今後とも御支援を賜りたい、こう思っております。
  48. 谷本巍

    谷本巍君 以上でウルグアイ・ラウンド問題を終わりまして、最後に、短い時間でありますけれども、林政審の最終答申が間近に来ておりますので、大臣の決意を伺いたいのであります。  地球環境を保全する上で森林が果たす役割がどれほど大きいかということは私から申し上げるまでもなかろうと存じます。国際的にも森林を守るといういろいろな動きが生まれてきております。翻って我が国の場合を見てみますというと、高度経済成長以来、外材輸入の増大と相まって森林、林業は衰退の一途をたどってまいりました。他方、過大な外材依存、これが国際的な機関あるいはまた諸外国からの批判の対象にもされ始めたというような状況が生まれているわけであります。  こうした中で八月二十四日、林政審の中間報告が出されました。そして、その中で新たな林政の展開が提起されてきております。とりわけ国有林野事業は日本林業のリーディングセクターとして新たな林政においても重要な役割を果たさなければならぬと思うのであります。林政審の最終答申に向けての大臣の決意を承りたいと思います。
  49. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 林野庁長官もおりまして、具体的な問題なら長官からと思っておりましたが、今のお話でございますから私から率直に申し上げたいと思います。  今の林業の状態についてはもうちょうちょうを要さないと思います。山は守らなくちゃならない、また守るためにも財政再建もしなければならない、こういうことでございます。それらについて大変いい中間答申をいただいたこと、それからさらに最終答申に向けて今精力的にやっていただいておるということでございまして、これらを受けまして本当に実効の上がる施策は一体何か。過去に二回ほど繰り返してやってまいりましたので三度目の失敗は許されないぞと、こういうふうに私は関係者のみんなに言っているわけでございます。その腹構えで、外のウルグアイ・ラウンドも大変でございますけれども、これまた内なる林業問題も非常に重要なところに来ておりますので、林政審の答申をしっかり受けながら、やるのは我々でございますから、やらせていただきたい、こう思っております。
  50. 谷本巍

    谷本巍君 これで本当の最後にいたしますが、流域ごとの計画に合わせた新しい林政をやっていくという方向になってきておるわけでありますけれども、国有林野事業がしっかりとした役割を果たすことができるようにひとつ考えていただきたいのであります。  最後に、大臣に二点ほどまた要望しておきたいのであります。  国有林野事業の財政再建は昭和五十三年以来三回にわたる合理化計画が実施されてきました。この間、機構の簡素化、要員の削減が行われてきております。要員の削減で言うならば、五十三年に六万五千人おったものが三万三千人、ちょうど半分というような状況になってきております。相当厳しい合理化が行われてきたにもかかわらず、財政再建の方向が見出し得ないような状況であるのは一体何なのか、大臣も御承知のとおり、累積債務の重圧、言ってみるならこの一言に尽きるのではないかというふうに私には思われます。この間、国有林野事業の合理化は地域経済の落ち込みにつながる、山村社会崩壊をもたらすといったようなことから多くの山村、そして市町村から国有林再建についての陳情などが相次ぎました。  というようなことなどを踏まえて、大臣にまずひとつお願いを申し上げたい第一点は、国有林は多くの非経済林を抱えた公共性の高い事業であります。その機能を発揮することができるようにするのほは何としても累積債務の対策、これをしっかりとやっていただかなければなりません。それと同時は、事業運営が今後うまくいくようにしていくためには事業運営費に対する国の助成、これが必要不可欠であります。この点を踏まえてひとつやっていただきたいということが一つであります。  それからもう一つは、これまでも国会で総理大臣そしてまた大臣自身も答えておられるのでありますが、再建問題については与野党協議でやっていきましょう、そして関係者の協議を尊重していきますというお話でありました。そういう立場を今後も踏まえて貫いてやっていただきたいということをこの際要望申し上げておきたいのであります。
  51. 小澤普照

    説明員(小澤普照君) 事業運営経費等に対するお尋ねでございましたので、私の方からこの点に関しましてお答え申し上げます。  先生がおっしゃいますように、国有林の役割は林産物の安定供給あるいは農山村地域の振興でございますとか、これとあわせましてまた国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全等々の役割を果たしてきておるわけでございます。しかし、その中で、今累積債務のお話も出ましたけれども、材価の低迷等もございます。いろいろな要因が重なっておりまして、経営の内容というものが非常に厳しい状況になっていることは確かでございまして、事業運営経費等につきましては私どもとしても鋭意努力もさせていただきたいと思います。  事業経費についてのお話を申し上げますと、まず治山事業でございますけれども、これにつきましては昭和五十八年度以降すべて一般会計の負担になっております。それから、保安林内の造林等に関する経費でございます。あるいはまた、公益的機能の高い国有の森林の保全管理に要する経費の一部についても一般会計の繰り入れを行っておるわけでございます。それからさらには、退職手当あるいは借入金の償還に充てる財源につきまして、不足する資金につきましては借りかえの措置をとりましたり、また同時にこれらの利子の一部につきましても一般会計の繰り入れ等の措置を講じてきたところでございまして、そのような一般会計繰り入れ措置等を通じまして財政措置の拡充を図ってきたところでもございます。  今回の林政審の中間報告もございますが、これらにおいても「従来の財政措置を踏まえつつ、造林、林道の開設等は要する費用と森林の保全管理等の行政的費用について、適切な費用負担を検討する必要がある。」ということが盛り込まれておりますが、これらに即しまして私どもも公益的機能の発揮を図るための費用負担のあり方なり、あるいはさらに累積債務対策も含めました総括的対応策につきまして現在具体的な検討を進めているところでございます。
  52. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 先生、多く申し上げませんけれども、まず後の方の野党側ともよく相談するかと、相談いたします。相談しなければこれだけのことは成就できない。現実に現場の方々や組織の方々とも精力的に今やっておりまして、さらに、与党自民党だけでできることではない、政府だけでできることではない、野党の皆さんの総協力が必要だ、これは私ずっと言い続けておるわけでございまして、これからも相談いたします。  それから、今の状況は、いろいろやってみたんです、林野の体を助けたいというので。ところが脱水状態になってしまいまして、もうとても自分の周辺の水だけでは足りない、ここのところに一般会計という水がある、この水をちょうだいしないといかぬというんですけれども、この水を持ってくる環境づくりが大事なんです。その環境づくりができないとなかなか水は来そうもないなということなので、大変例え話で恐縮でございますが、そういう心境でひとつ今ぶつかっておる。  これ繰り返すようですけれどもウルグアイ・ラウンドも一生懸命やっておりますけれども、それから国内農業の問題もやっていますけれども、林業問題は最大の急務なんです。もう血が出ているわけですから出血をまずとめる、輸血もいただきたい、そして何としても体をしっかりさせて、農業、林業一体ですから、林が守れなくて畑や田んぼが守れるかというのが私の主張ですからそれでいきたい、こう考えております。
  53. 谷本巍

    谷本巍君 ありがとうございました。  では大臣、関係者の協議の尊重ということもお願いしておいたはずですが、そのとおりですね。
  54. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) いたします。
  55. 谷本巍

    谷本巍君 終わります。
  56. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 それでは私からは、本委員会は、大臣が来月早々ウルグアイ・ラウンドに向けての最終交渉に当たるわけでありますから、それに向けての委員会でありますから、主としてそれについての質問ということでありましたけれども谷本同僚委員の質問でほとんど御答弁をいただきましたということで、あえて大臣から一言、私も尊敬する大臣として、そしてまた野党という立場でありますけれども、お互い日本農業を守るという立場で質問をし、大臣を御支援申し上げたい。その意味から、大臣が今交渉に当たって一番問題になる諸点を二、三挙げていただきたい。対外的なものそれから国内的なもの、それぞれ箇条の状態でいいですから、大臣の考える二、三を挙げていただきたい。それから私の具体的な質問に入りたいと思います。
  57. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) お答えいたしますが、先生これ灘しく考えますと外にも内にも問題山積なんです。ウルグアイ・ラウンド問題、その中身について今まで私九カ月やらせていただきましたけれども、連日がウルグアイ・ラウンド問題だったと言ってもオーバーでないくらいお米の問題を中心にやってきたということです。外側も、なぜこれほどお米なのかと毎日お米の夢を見るほどアメリカさんその他に言われましたけれども、しかし大体先が見えてきた、問題は整理されてきた、整理された状態がこの間のお互いの出し合ったオファー内容オファーの時期で診察をすれば明らかだと思う。日本は九月の末には、十月一日と十五日というふうに約束したものを、両者含めましてきちんと今までの主義主張に基づいてオファーを提出した、アメリカは少しおくれまして提出をした。今それに対して批評をしようと思いませんけれども日本に比べればそのオファー内容については先ほど谷本先生がおっしゃったようなオファーの出し方だというふうに私どもも受けとめております。  それから、ECはいろんな事情があったし、国も十二カ国という数が多いですから無理もないとは思いますけれどもオファーの時期はおくれにおくれた、ついこの間出したばかりである。出したものを見ますと苦心の跡が見えます。見えますけれども、これは輸出補助金問題などについては中身に書かれておらないというふうな、肝心かなめのところは白地同様になっているわけであります。そういうことなどを考えますと、このオファーの三つの例とでもいいましょうか、それを見ただけでもこれから先の交渉といいますかお互いの言い分というものは見通しが私は出てきたなというふうに考えております。非常に厳しい交渉をしなければなりません。  一方国内は、これは国会がこういう格好で決議をしていただいておりますし、まさに与野党なしに激励をされておりますので、こんなことは私は異例だと思っております。与党の先生も一生懸命ですけれども、野党の先生がそれに輪をかけて毎日のごとく激励を兼ねて来ておられるというふうなことでございまして、非常にありがたいと思って、これは非常に大変なことだというふうに受けとめております。しかし、これは交渉事でございまして、外への交渉もなかなか大変なんですけれども、内側の固めもまだまだ不十分な点がございまして、その内側のところをしっかり固めて向こうへ参りたいと、こういうふうに今考えております。
  58. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 ただいま大臣から、いろいろ厳しい国内外の条件があるけれども、それぞれめどがついた、それに向けて全精力を傾注すると。  そこで、先ほども問題になりましたけれども、やはり国民の理解を得るようなその努力が、本気で農水省がやるとすればその努力が足りないと、こう思うわけであります。その一つ先ほど指摘いたしましたマスコミ対策だと思うんです。それから、私ども生産者自体もそれなりの努力はしますけれども、その限界があるわけであります。  そこで、具体的にマスコミ対策について私はあえてもう一押ししておきたいと思いますけれども、そのような事実無根の報道をされた場合、敢然とそれに抵抗する手だてをしなきゃならぬと思うわけであります。今まで何度も質問いたしましたけれども、一般商業紙に比べて政府広報がこれは弱いということは当然でありますけれども、そういう場合には敢然とやることが予算を伴わないPRになるわけでありますから、それについての決意をもう一度いただきたいと思います。
  59. 川合淳二

    説明員川合淳二君) マスコミ対策につきまして、私どもといたしましては、ここのところ相当に力を入れてやっているつもりでございます。具体的には先ほど申しましたマスコミ関係の論説あるいは解説委員経済関係部長、デスク段階、それからお目にとまったかと存じますけれども十一月八日などの毎日新聞には企画室長名で農業、特に稲作経営の考え方、それから同じく毎日新聞の座談会に私どもの担当が出まして毎日新聞でやるというようなことをいたしておりますほか、先ほども申しましたように地方農政局におきます広報活動もかなり積極的にやっておりまして、いろんなシンポジウム、フォーラム、フェスティバルというようなところにも積極的に参加するようにいたしております。もちろんこれで十分とは思っておりませんので、なお力を入れていきたいと思っております。
  60. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 そこで、国内向けとして実際日本農業生産をする場合に、そしてまたアメリカ、ECと比較してどういう状況にあるかということを数字を示しながらお尋ねしたいと思います。これは米の関係でございますけれども日本で十アールの生産費が十四万三千三百七十四円、アメリカは一万三千八百十九円で大体十・四倍の生産費が日本生産した場合にはかかるわけであります。これは品質は別にしてですよ、量的なものでは。タイに対しては日本では十四・六倍の生産費がかかっているのです。その内容を具体的に見ますと、ガソリンは二・五倍なんです。そして仕入れ費は十八・四倍、土地改良あるいは農機具等の費用を見た場合にはこれは驚くなかれ十七倍、そして人件費にあっては三十八・五倍も日本の置かれた条件の中で一定生産量を生産する場合にはこれほどかかるわけであります。  我々もこの限られた条件の中で合理化したとしても、これはおのずから限界があるわけですからその点を、そしてまたあわせて日本の国土と食糧安保等いろんな多面的なことを国民に訴えればそのことは御理解いただけると思うのです。そしてまた、現実に国民の多くがそれを理解しているわけであります。それをあえてなぜこれほど執拗に、アメリカ交渉するときに国内的な問題があるのか。それは大臣、何だと思いますか。国民はこれほど理解を示しているのに国民の合意を得られないというその論理はどこから来ているんですか。
  61. 川合淳二

    説明員川合淳二君) 非常に難しい御質問だと思います。  私ども農業立場あるいは農政の立場から今申しましたようにいろんな形で御理解を求めるべく努力をしているわけでございますが、やはり一つの原因は、生活あるいは社会、経済の構造が非常に多様化いたしまして、いろいろな世界観とか人生観と言うとちょっと大げさでございますが、そういうのが従来に比べて非常に広がったということが一つあろうかと思います。それから、残念ながら農村での生活の経験者などが非常に少なくなっているといいますか減ってきているということもあろうかと思います。  したがいまして、私どもといたしましては、農業の持つ意義というものが一つに食料品の安定供給ということだけではなくて、もう少し広い多面的な機能を持っているということはついて十分理解を求めていくということ。それから、農村と都市との結びつきというようなものもいろんな機会に持つことによって理解を広げていかなければいけないということがあろうかと思います。やはりいろいろな考え方を持つ人がふえてきたということに一番大きな理由があるんではないかというふうに思います。
  62. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 そこで、また若干の例を申し上げたいと思いますけれども生産者価格と消費者価格の比較でございますが、統計上野菜は大体四倍になっているんです。そして果物については三倍であります。幸いにして米については、もちろん高い米を買おうとすれば、特殊な米を買おうとすれば別ですけれども、一般的な米を買おうとすればせいぜい一・二、三倍の単価で買えるわけであります。それは食管制度があるからであります。そしてまた、国民一人当たりの年間の食料費を一労働時間で比較した場合は、アメリカでは一人の食料費を、外食費を含めて二百三十一時間必要だとするんだそうです。日本の場合は二百四十八時間だそうです。西ドイツの場合は二百三十九時間、イギリスの場合は三百六時間、イタリアの場合は三百二十五時間。そうしてみると日本の置かれた条件の中でやっているというのは、日本の食料は高くないということを意味しているわけでしょう。そのことを国民も理解していると思うんです。また、もっとそれは理解させなきゃならぬと思うわけであります。  そこで私考えるに、やはり日本の農村がこれほど疲弊する、地域経済が疲弊する、そして農家の就労者がないという実態を見れば、第一次産品の価格そのものの評価が安過ぎるんじゃないか、こう思うんですよ。少なくとも農水省はその立場で、いろんな場所でいろんな方法をとってそれをPRしていかなきゃならぬと思うんです。  平成二年度の農産物価格の交渉と結果をここで披露しながら、大臣、腹を据えてこれから対処していただきたいわけですけれども、米価は御承知のように一・五%下げられました。乳価は二・六%下げられました。麦については三・九%下げられましたね。我々から見ると、これはあくまでも流通業者を潤すための手だて以外の何でもない、私はそう思うんですよ。そのとき農業団体が据え置きを主張したことは、やはり国際的に比較して日本の農家が努力しなきゃならぬということで据え置き要求をした。一・五%下げられた。  それで、さっき言ったようにすべてが下げられたけれども、それを原料にしてつくったものが消費現場で下がっていますか。逆から見れば、その流通、加工の者のもうけを多くするためは生産者米価を下げたというにすぎないじゃないですか。それに対する手だてと新年度予算に向けてその下げた分の扱いをどういう扱いをするのか、大臣の御見解をいただきたいと思います。
  63. 北修二

    理事北修二君) なるべく簡潔にお願いいたします。
  64. 馬場久萬男

    説明員馬場久萬男君) 今先生のお話の政策価格として生産者価格を定めたものの流通段階あるいは消費者に提供される価格というのはこれはまた政策的に決めていくかと思いますが、一般の食品流通の合理化のための対策というようなことにつきましては、私どもかねがね食料品につきましては生産と消費を結びつける流通段階の合理化、効率化ということば必要だというふうに考えておりまして、御案内のように産地におきます集出荷施設なり貯蔵施設等出荷体制の整備、これがまず第一でございます。  それから、流通の大宗を占めます卸売市場の施設整備あるいは中小食料品商業の構造改善、さらに効率的な流通、物流システムの開発というようなことをやってきているわけでございます。来年度におきましても、最近の非常に変化の激しい流通の世界でございまして問題多々ございますが、全体として食品流通の構造改善をしていきたいというふうに思っておりまして、今の卸売市場あるいは小売の関係の構造改善を進めるというための施策を予算要求及びできますれば法律をつくりたいということで現在やっておるところでございます。
  65. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 最後に、今お答えをいただきましたように、何年来、何十年来流通の経費節減ということを言ってきているんですよ。しかし一向に下がらないんですよ。これ下がる可能性があるんですか。下がる可能性がなかったとすると日本のこういう置かれた条件の中で生産をし、流通をするとするならばこれが限界なんだという立場に立って日本で、さっき言ったように国民一人当たりの食料費というものを労働時間で比較したでしょう。日本がそれだけ無理な状況じゃないんだということを国民にしかと、皆さんが確信を持って、少なくとも閣内で統一見解を持って指導していかなきゃならぬと思うんですよ。そのことを主張して私は終わります。
  66. 村沢牧

    ○村沢牧君 関連質問いたしますが、時間が短いので簡潔に核心に触れて答弁をお願いいたしたいと思います。  ウルグアイ・ラウンドの本番に向けて全国の農民、労働者、市民の組織する労農市民会議が百名は及ぶガット要請団を編成して、第一次代表団は既に出発をしておりますが、交渉日程に合わせてブリュッセルへ集結することにいたしております。私はその団長として十二月一日から八日まで現地に滞在いたします。きょうの農業新聞を見ると、世界の農民が総決起、ブリュッセルで二万人デモというふうに出されています。私たち代表団はこうした世界の人と連絡、協調するとともに、交渉に当たる大臣政府関係者を激励し、ある面では監視の役割を果たそうとするものであります。この代表団のほかに勝手連と称する農民や農民組織の代表の人たちが百数十名ブリュッセルに行きます。全中やあるいは農協の代表者も行くということであります。交渉はもちろん政府が行うことでありますが、このように多数の人が交渉の現地へ押しかけることはかってなかったことであります。それだけに農業交渉の結果の重要性を認識しているからであります。大臣はこうした切実な願い、行動を率直に受けとめるべきだというふうに思いますが、どうですか。  それから、私たちの要請団はは社会党の国会議員も数名参加いたします。したがって現地での交渉状況について我々に報告すること、必要に応じて我々も政府の代表団に要求いたしますので対応してもらいたい。大臣見解を聞きたい。
  67. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) まず村沢先生みずから団長でお出かけいただけるということでございまして、心から敬意を表し、また、ぜひいろんな面で御支援を願いたい、御指導願いたい、こういうふうに思っております。  それからブラッセルからの情報をいろいろ私聞いておりますが、各国、ECを中心にして生産者の方々、農民の方々が非常に関心を持ってお集まりになる、何万人も一つ会議に集まる。しかも地元だけでなくて世界各地からお集まりになるというふうなことはかってないことだそうでございまして、それだけに、今度のブラッセルでの会議というものが、ウルグアイ・ラウンド交渉というものが世界じゅうの皆さんの関心の的である、特に農業関係者は農業交渉が難しいということをもうそれぞれの立場で知っておりますから、これはもう大変な関心を持っておいでになるだろうと思っております。ですから、日本からも今のお話でたくさんおいでいただけるようでございまして、このこと自体かつてないことでございますから十分心にとめて交渉に臨みたい。  それから、連絡、報告の問題でございますが、できるだけ心がけるようにいたします。ただ、私は国際会議は余りしばしばの経験はございませんけれども、この間の五カ国の農相会議、五カ国だけでもなかなか時間的な、物理的な余裕がございませんで、同行した記者団の方にもなかなかタイムリーに連絡ができないような状況もあったということ等からしますと、今度は舞台も大きいですし、それから参加する国も多い、また交渉事もかなり連日連夜にわたってやるということになろうと思いますので、十二分な報告や連絡ができるかどうかわかりませんけれども、その心がけで参りたい、こういうふうに考えております。
  68. 村沢牧

    ○村沢牧君 去る二十日、十三省庁の責任者が集まってウルグアイ・ラウンドに関する関係閣僚懇談会が開催されましたが、現地に出張する外務、通産、農水の三閣僚はそれぞれ所管する分野の対応について全権を委任されて交渉するんですか。
  69. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 三閣僚に多分なるだろうということでございまして、まだ決まっておりません。  それから、今の全権委任でございますが、そういうことはございませんで、この間の会議状況についてお互いが説明し合ったと、私の説明時間が一番長かったんですけれども、そもそもウルグアイ・ラウンドとはから始まってかなり長きにわたって内容説明をいたしました。私どもの方針もその中に織り込んで申し上げたわけでございます。全権委任などというところまで話がいっておりません。
  70. 村沢牧

    ○村沢牧君 いずれガットに行く直前にまた閣僚会議が開かれるというふうに思いますけれども、その際に今までの閣僚会議における発言、これは新聞やその他で知る限りでありますが、米の市場開放について、国会決議があっても、内閣の統一見解があっても、外務省や通産省の考え方と農水省の方針についてはニュアンスの相違がある。ある新聞は、「微妙な「温度差」がある。」というふうに報道しているんです。このことは今までの中山外務大臣や武藤通産大臣の発言を見ても、国会決議を無視するようなことが飛び出している。最終段階を迎えて政府部内は本当に統一されているのか。一枚岩になって交渉に当たるということなんですか。
  71. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) これは、内閣は一体でございますし、総理大臣の統裁のもとで各閣僚はつかさつかさで仕事をしていくということだと思います。今度のウルグアイ・ラウンドにいたしましても、仮に三人行くということになった場合に、全体の会合もございましょうし、またグループ別でそれぞれの分野でやるということなどもあるのではないか、まだ決められておりません。おりませんが、そういうこともあろうと思いますし、農業関係農林水産大臣が行くとすれば、私がやらせていただくということになるだろうと思います。そういうことも踏まえて、この間、閣僚懇談会でずっと説明もし、お話もいたしました。私の説明やあるいは考え方について他の閣僚から特段の質疑があったり御指摘があったり、そういうことは一切ございませんで、山本説明というものは了承されたと。もともと総理大臣がさきの臨時国会の所信でも示しているようなことでございますので、内閣の方針というものは私は一致しておるというふうに考えております。
  72. 村沢牧

    ○村沢牧君 内閣の方針が表面的には一致している、そのように見えますけれどもガットに臨むについて最終の閣僚会議においては農水大臣、しっかりそのことを踏まえてやってもらいたい。  そこで、十一月二十日の毎日の夕刊を見ると、   コメ市場開放へ動くと報道   二十日付の英経済専門紙フィナンシャル・タイムズは「日本、ひそかにコメ市場開放へ動く」「舞台裏で政治家が工作」などの見出しで、日本政府部内にはガットウルグアイ・ラウンドの合意事項の一環としてコメの市場開放に踏み切るとのコンセンサスがひそかに形成されていると報じた。   同紙は、日本政府は短期的輸入目標として全消費量の三%を掲げ、その後の数量増に関してはあいまいな約束をして乗り切るだろう、としている。   同紙によると、日本政府当局者は対外関係、特に対米関係改善のために少量の輸入は必要だと農業団体を説得、その代わりに補償を支払う考えを内密に示唆しているという。   コメは日本の抱える最も難しい分野なので、事を荒立てない「沈黙の戦略」が採用されており、日本政府農業保護削減をめぐって対立している米国とECが妥協に達すると、再び日本が焦点になるとの認識から、このような戦略で臨んでいる。 こういうふうに外紙は報道しているんですよ。こんな動きがあるんですか、大臣
  73. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 私の承知している限り、そういうことはございません。
  74. 村沢牧

    ○村沢牧君 こんなことを報道されているから内閣は一枚岩じゃないんですよ。ですから、大臣がこの米の問題は海部内閣、特に農業問題の当事者である大臣の双肩にかかっている。私はこれまで大臣のとってきた政治的姿勢を評価しているんですよ。米市場の開放を阻止することは国益を守ることだ、ぜひ頑張ってもらいたいと思うんですね。もし政府が従来の方針を覆すことがあったとすれば、我々はブリュッセルの現地においても行動を起こす決意がありますし、今後重大な行動あるいは政治姿勢を示す決意がある。そのことを申し上げて、大臣、行く前に閣内を統一してください。頑張ってください。答弁は要らないです。
  75. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 本当にもうたびたびの御激励でございますけれども、身にしみております。心して頑張りたいと思っております。
  76. 村沢牧

    ○村沢牧君 以上です。
  77. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今般の農水大臣ガット交渉出発に際して、委員各位から米輸入絶対阻止というふうな観点から種々の意見が出され、また大臣に激励がなされたところであります。私は少々違った観点から、やはりこのガット交渉に行かれる農水大臣を激励したいと思います。ただし、私の今から申し上げることが大臣にとって激励となるか足かせとなるか、それは大臣の御判断であります。ただ、私の気持ちとしては、大臣交渉に際してのある程度のゆとりというものを持って行ってもらいたいという観点からの激励でありますので、私の趣旨はそういうところにあるということだけは御了解いただきたいと思います。  私はこの米の輸入問題に関する法規範的な側面からの全般的な検討を短い時間ですが、やらせていただきたい。ただ、私が今から質問することは、決して米の輸入自由化がいいとか、絶対輸入禁止がしかるべきであるとか、あるいは現在我が党が検討中の米の部分輸入自由化がよろしいとか、こういう政策判断とは全く別個に、純粋に法規範的にお伺いしたいと思います。  まず、内閣法制局にお伺いしたい。憲法二十二条はいわゆる職業選択の自由という規定であります。条文は「何人も、公共の福祉に反しない限り、」「職業選択の自由を有する。」ということが規定されております。この条項の中には、選択した職業を任意に営むことの自由、すなわち営業の自由というものが含まれるとお考えですか。
  78. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) お尋ねのとおりであると考えます。
  79. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この営業の自由の中には外国貿易の自由、すなわち商品の輸出、輸入の自由も当然に含まれると思いますが、いかがですか。
  80. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) お尋ねの事柄につきましても、公共の福祉に反しない限り営業の自由の保障が及ぶと解されます。
  81. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 営業の自由、すなわち輸出入貿易に携わる国民の自由というのは憲法上の基本的人権の一つなんです。ですから、例えば特定の商品、米という商品の輸出、輸入を制限もしくは禁止する場合にはどのような方法によって制限しなければならないか、どのような方法による制限が憲法上許容されるのかお伺いします。
  82. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) まず、一般論として申し上げますと、一般に営業の自由も絶対無制限なものではない。ただいま申し上げましたように、公共の福祉は反しない限りで保障されるものであることは、ただいま御指摘になりました憲法第二十二条第一項の明文で規定しているところでございまして、公共の福祉の確保のために必要かつ合理的な範囲内にある限りは、法律をもってこれを行うことは憲法上許されるところであるというふうに解されるところでございます。したがいまして、米の輸入規制につきましても、このような見地から必要かつ合理的な範囲内で行われる限り憲法上問題がないと言えようかと思います。
  83. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今の御答弁の中で私は、このような米の輸入自由を制限することは法規範的には法律によってなされなければならないというところに留意しておきたいと思います。  さらに日本国憲法における条約遵守義務についてお伺いします。  日本国憲法は九十八条二項において、「日本国が締結した条約」は「これを誠実に遵守することを必要とする。」、このように規定しております。この憲法における条約遵守義務の中の「条約」という用語の中にはどの程度の法規範が含まれるとお考えですか。
  84. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) お尋ねの九十八条第二項にいう「条約」は、その名称いかんにかかわりませず、国家間または国家と国際機関との間の合意をすべて言うものと解されるわけでございます。したがいまして、今述べましたような合意に該当する限りは、その名称が条約という名称でなくとも、現に憲章あるいは協定、議定書等という名称であっても同条に言う「条約」に該当するということでございます。
  85. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 現在問題になっている関税及び貿易に関する一般協定は、何か一般協定というとどっらでもいいような雰囲気にとられたら困るんですが、これも憲法が言っている条約遵守義務の対象であるいわゆる「条約」の中に含まれるということを確認しておきたい。  次に、食糧管理法十一条についてお伺いします。  食糧管理法十一条一項は「米穀」の「輸出又ハ輸入ハ政令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ」という規定になっております。まずこの規定は、米の輸入自由という問題あるいは米の輸入に対する許可という問題、このような観点から見たときに、法的には要するに原則自由のものを制限する規定なのか、それとも原則禁止しているものを特に許可する規定であるのか、いずれとお読みになりますか。
  86. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) まず、行政法学上許可と申しますのは、一般的禁止を具体的な場合に解除する行政処分であるというふうに解されているわけでございますが、この食糧管理法第十一条第一項が規定しております許可も今申しましたような性質のものであらうかと解するわけでございます。  そこで、ただいま御指摘になりましたように食管法十一条第一項が規定しております米穀及び麦の輸出入についての政府の許可制、これは同法の目的であります「国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル為食糧ヲ管理シ其ノ需給及価格ノ調整並二流通ノ親制ヲ行フ」という目的を達成するための手段として規定されたものであると理解されるわけでございまして、この憲法二十二条一項の保障との関係を申し上げますと、この食管法十一条による輸出入の許可制は、右に述べました法律の目的を達成するという公共の福祉の確保のために必要かつ合理的な範囲内の制約に一般的には該当する、したがいまして、憲法上許容されるべきものというふうに解する次第でございます。
  87. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 政府がこの食管法十一条一項に基づいて有する輸出入に関する許可権というのは、どのようにして政府が保有するに至ったんですか。
  88. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) これは申し上げるまでもなく、この米の輸出入についての政府の許可権限と申しますのは、国会で制定されました食糧管理法第十一条第一項の規定により政府に与えられた権限であるということはもう当然でございます。
  89. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 非常に重要なことなんです。食糧管理法十一条一項によって法律という形式によって輸出入許可権が政府に与えられている、今内閣法制局御答弁のとおりなんです。ですから、この政府の有する食管法十一条による輸出入の許可権を制限し消滅させるようなことはどういうことによって可能であるか、どういう法手続によって可能であるか、お伺いしたい。
  90. 大森政輔

    説明員(大森政輔君) これはもう一般論としてお答えすれば十分かと思いますが、法律により政府に与えられました権限につきまして一般的に法的拘束力を持つものとしてこれに変更を加える、制限なり消滅なりさせると、そのためには法律をもって措置することが必要であるということでございます。
  91. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 要するに食管法がある限り、食管法十一条によって政府に与えられた輸出入許可権は法律によってしか制限されない、この点は非常に重要なことであるから大臣にもよく御承知しておいていただきたいと思います。  次に、先ほどから問題になっております参議院の決議について申し上げます。衆参両院の決議を国会決議というか、国会決議というものが何であるのか、院の決議と国会決議がどういう関係にあるか種々問題がありますので、私としては院の決議を申し上げたい。  まず、いわゆる五十五年四月になされた参議院の決議、農産物輸入もしくは自給に関する決議、これは農水省としてもちろん百も御承知のわけですが、その決議がなされたいきさつはどういうところにあると認識していますか。
  92. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) 国会の決議の御質問のようでございますが、あくまでも国会決議の問題でございます。私ども政府として受けとめている点についての御答弁という御理解をしていただければと思います。また、冒頭、先ほど先生お話しのように法的なというお話がございますが、国会決議の問題でもございますので、いわゆる法的規範的な考え方を含めたこれからいろいろなことについてのお答えになるかもしれませんが御了解いただきたいと思います。  昭和五十五年の四月の決議については、第一に第二次石油危機によるエネルギー情勢の逼迫、それからソ連のアフガニスタン侵攻を契機に米国が対ソ穀物の禁輸に踏み切ったことに端を発した国際的な食糧事情の緊迫感の高まりという情勢のもとで米の生産調整が強化され、また、食糧自給率が年々低下するといった問題を受けまして、将来の我が国食糧事情を懸念する声の高まりにこたえて本院において全会一致で行われたものと承知をしております。
  93. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この決議で結局政府に対する要望は、「よって政府は、国民生活の安全保障体制として食糧自給力の強化を図り、わが国農業・漁業の発展と生産力の増強に万全の施策を講ずるべきである。」、こういうふうに要望事項が記載されています。第一回の参議院決議は農産物畜産物、水産物を含めて全般的な食糧の自給力強化を図るということの趣旨で政府に要望がなされているというふうに私としては理解いたしております。  第二回の参議院決議、昭和五十九年七月、時間の関係で農水省の決議のなされたいきさつとか、あるいは内容についての理解は省略いたしますが、ここで政府に対するどのような要望がなされているか、決議文の中から要望の趣旨をお読みください。
  94. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) 今先生のお話は、五十九年の七月の二十日、参議院本会議におきます「米の需給安定に関する決議」の要望事項、それを読めというお話でございますので、四項目ございますのを読ませていただきます。  一、五十三年産米について臭素による汚染が問題となつたが、今後、米の安全性については、基準を定めるなど万全の措置を講ずること。  一、国民の主食であり、かつ、わが国農業の基幹作物である米については、その供給を外国からの輸入に依存するというような事態が今後生じることのないよう、国内生産による完全自給の方針を堅持すること。  一、国民の主食である米の安定供給を確保するため、食管制度を堅持し、自主流通制度の定着を図り、ゆとりある需給計画のもとに、不測の事態に備え適正な在庫の積増しを行い、備蓄体制の確立に努めること。  一、米の需給事情のひつ迫にかんがみ、今後の需給操作の万全を期するとともに、米の需給事情に的確に対応しつつ、需給計画について必要な見直しを行い水田利用再編第三期対策の転作面積の緩和については弾力的に対処すること。 以上でございます。
  95. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今お読みになった中で、結局米の輸出入の自由化の問題に関するところとしては、極端に要約して申し上げれば、米の供給を外国からの輸入に依存するような事態を避けて国内生産による自給方針を堅持しろ、こういう趣旨の決議だと思います。要するに第一回の趣旨と同機に、食糧国内自給力を高めろという第一回の決議、それに引き続いて第二回では、特に韓国からの米の輸入という状況を目の前にして米について輸入に依存するようなことなしにもっと国内自給力を高めろ、こういう趣旨の決議と思います。  第三回目の六十三年九月の決議についてお伺いします。  この決議において最終的に政府に要望された決議の内容はどういうことでしたか。
  96. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) 六十三年九月の米の自由化反対に関する本院の決議につきましては、米及び水田稲作の重要性にかんがみ国民全体の関心事項であるとして、厳しい生産調整や内外価格差の縮小のための合理化政策に向け進められているという状況のもとで、米国からの輸入自由化要求を認められないとして、過去二度にわたる決議の趣旨を体し、断固たる態度で臨むことを政府に対して求めたものであるというふうに理解しております。
  97. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 おっしゃるとおりなんです。要するに米を完全自由化しろというふうなアメリカ要求に応ずるわけにはいかない、そして前二度にわたる本院の決議の趣旨を体して努力しろということ、米の完全自給ということと米の輸入禁止ということとは概念的には別個なことであると私は思います。ただ、ここで今それを論じている時間がありませんので申し上げませんが、要するに三度にわたる参議院の決議の中において強調されていることは二つの点がある。一つは、国内自給力を強化しろということ、二つ目は、アメリカからの米の全面輸入自由化要求は拒否しろ、ころいうことだけなんです。要するに私が申し上げたいのは、どの程度の米の自由化を認めたらいいかとかよくないかとかいうこととこの三回にわたる参議院の決議は直接的には無関係であるというふうに私は考える。米の自給力強化という問題、完全自給ということと米の輸入絶対禁止ということとは別個な概念であるというふうに考えます。  ところで、現在、農水省としては米あるいは米の加工品をどの程度輸入していますか。
  98. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) 農林水産省におきまして米そのものの輸入あるいは米に関連するものの許可といいますか、そういうものでない実態も含めまして現実の数字を申し上げてみますと、米の輸入につきましては泡盛等に向けましてのタイ米の輸入につきまして元年のベースで一万二千トンでございます。続きまして米の加工品の輸入、これは既に自由化されております部分等々も米の部分に換算をしてみました場合に約三万五千トン程度のものがございます。その具体的な品目については米粉、それから米菓、米粉調製品、肉、魚等の調製品そういったものをできる限り玄米換算をして表示をしてみますと、今申し上げたような数字になるわけでございます。
  99. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、農水省としては現に米そのものを一万二千トン輸入しているということですから、この事実は参議院の三回にわたる決議を仮に米の輸入全面禁止の決議なんだとすれば決議に違反することになる。現に米の輸入を許可しているという農水省の立場と三度にわたる参議院決議とはどのような関係にあるというふうに農水省としては考えているわけですか。
  100. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) ただいま先生の法制局に対する御質問等々からるるお話がございますように、食管法におきます十一条の問題と国会の決議ということの言葉の使い方というのは違っているわけでございます。先生はそれについてディメンションが違うというようなお話をされましたが、片一方の国会決議においては完全自給という言葉も含めまして積極的な意味での自給態度というものを考えているわけでございます。一方、食管法におきます十一条というのはこれは食管制度、国民に安定的に供給するという目的のもとに置かれた法律の規定でございまして、一つの制度、ルールであるわけでございます。  そういうものをどういうふうに運用するかという問題は、これはいみじくも先生おっしゃったように輸入という問題と自給という問題は概念が違うわけでございまして、あえて語弊をいとわないで申し上げますと、片っ方の自給ということは、積極的に米の政策議論、法律議論から離れるのかもしれませんが、食糧政策としての御決議というものを出されたというふうに我々は理解してもいいと思っております。  他方、もう一つ時期的に申し上げますと、既にこの決議の時期は、先生御指摘のように三度なされておりますけれども、一番早いときが五十五年でございます。米の具体的な泡盛の問題、これは昭和四十七年の復帰以前から行われたものでございまして、当然この決議、私は本会議のところで具体的な場面で立ち会っておりませんけれども、これと同趣旨の御議論のとき、例えば本委員会においての昨年の秋の議論のときも当然にそのことを前提にしての完全自給というお話もあったように思います。そういったようなトータルの議論というようなことを考えていくべきではないかと思っておりまして、そういう意味で決議の問題と具体的な農林水産省が許可をしております部分は矛盾していないというふうに考えるところでございます。
  101. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今食糧庁長官がおっしゃったように私もそう思う。そう思うというのは、自給ということと輸入許可という問題は別個の問題ですから。現に農水省がやっている泡盛用タイ米の一・二万トンの輸入許可は参議院の決議に反するものではない。また参議院の決議を米の輸入絶対禁止の決議だということであるとすればそれは法規範的効力は全くない単なる政治的な参議院の意思表明にすぎない。このことに関して法制局の見解を求めようとしましたけれども先ほどの御意見でもう十分ですから結構でございます。  時間ですので大臣に、私の今申し上げたことが大臣にとっては激励になったか足かせになったか存じませんが、一言ごあいさついただきたいと思います。
  102. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 大変ありがとうございました。  決して足かせにもなっておりませんし、激励を含めた大変有力な意見だというふうにお聞きをしております。  いずれにいたしましても、本院で三回にわたって行われました決議というものは国権の最高機関で行われた決議だというふうに私考えておりまして、その重要性は厳粛に受けとめなければならない、そのことを受けとめながら今後ともやっていきたい、こう考えております。
  103. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 冒頭にも申し上げましたが、これは私の法律的な見地を述べただけであって、米の完全輸入自由化、部分輸入自由化あるいは全面輸入禁止という問題とは無関係なことであることを申し上げておきます。  以上です。
  104. 林紀子

    ○林紀子君 私はまず緊急な問題ですので、転作大豆の被害について質問させていただきます。  富山、石川など北陸地方を中心に転作作物として奨励されている大豆は、高温障害、台風そして長雨で収穫が皆無に近いなどかつてなく大きな被害となっています。私は十九日、二十日の両日、金沢、富山で被災農家や農協の方々などから話を聞きまして、選別場なども見てまいりました。  そしてまず一つは、北陸で栽培しているエンレイ種について既に農協などでは種子の確保に対して助成措置を講じたり、無料配付することを決めているところもありますが、来年も転作作物として生産できるよう種子の確保に全力を挙げていただきたいということです。  また二つ目には、交付金の対象とならない四等以下の規格外大豆について、くず豆は一キロ十円で袋代にもならないことから、農協などでは乾燥選別料を無料にしたり、お見舞い金の支給を決めているところもありますけれども、交付金が交付されていない下位等級の大豆について、何とか特別な措置などがとれないか、十分な対策をどうしても講じていただきたいと思うわけです。例えば平成二年産のサトウキビ価格の決定では、台風被害があったということで二年産に限りまして臨時特例措置をトン当たり二百円ということで行っております。こうした特例措置ができないかどうかお聞きしたいと思います。
  105. 安橋隆雄

    説明員安橋隆雄君) 先生御指摘のように、平成二年産の大豆の作柄でございますけれども、北陸地方を中心にいたしまして台風、長雨によりましてかなりの被害が出たわけでございます。北陸四県からの報告では、被害面積は一万三千ヘクタール、被害見込み金額四十九億円というふうな報告を受けておるわけでございます。  このような被害に対しまして、基本的には農業災害補償法に基づきます畑作物共済というようなところである程度てん補されるべきものであるというふうには考えているわけでございますが、残念ながら共済の加入率というのが、富山県は高うございますけれども、その他の県では必ずしもそれほど高くないというような状況でございますので、私どもといたしましてはやはり水田農業確立対策の重要な転作作物である大豆ということで、この大豆作農家の経営安定というようなことにも配慮いたしまして、以下に述べますような対策を講じていきたいというふうに思っているわけでございます。  まず一つは種子の確保でございますけれども、できる限り自県内で来年産以降の種子の確保が行われるように指導しているところでございますが、自県内でその種子の確保の不足が出ますような場合につきましては、他県産の種子の円滑な供給が図られるように、これは既に通達を出しているところでございます。それから、被害の状況に応じまして円滑な出荷ができますように選別調整方法について特例を設けたいというふうに考えているところでございます。  ただ、先生今お話しになりました価格で何とかできないかというような点につきましては、サトウキビの例を挙げられましたわけでございますが、サトウキビの本年の台風被害というのはサトウキビが生産されました沖縄県、鹿児島県の南西諸島というようなところすべて台風の被害をこうむったということでございますが、大豆につきましては、これは北は北海道畑作地帯から南は九州に至りますまで全国的に栽培されているわけでございまして、一北陸地方の限られた地域の被害に対しまして全国的な価格である大豆価格で処置するということは非常に困難でございますので、それにつきましては、ただいま申しましたような選別調整方法の特例ということでできる限り救済していきたいというふうに考えているところでございます。  さらに、先ほども申しましたように、水田農業確立対策の重要な転作作物である大豆ということでございますので、来年産の北陸地方におきます転作が円滑に行われる必要があるということで、技術指導でございますとか啓蒙普及等の特別指導に対しまして特例的に助成をしたいというふうにも考えているわけでございます。
  106. 林紀子

    ○林紀子君 ここにあります大豆は、金沢市の大豆選別場でいただいたものです。形では選別できましても、ここにかなり黒いものが見られますけれども、しわや色までは選別できないということなんです。今、調整で特例をということのお話ありましたけれども、私も現地でその調整見本品というのを見せていただきました。確かに何とかそこを救いたいという御努力があるというのはわかるんですけれども、その調整見本品とその選別場で一番いいとされているものとこうやって実際に比べてみましても、三等には到底入らない、四等にもどうなるかというような状況なわけなんです。そういうことでは大変な状況だということを改めて感じてきたわけです。  そして、収穫がないからということでそれをほうりっ放しにしておくとどうなるかといいますと、これは転作ですから来年はそこで米をつくらなくちゃいけない、窒素過多になるということですき込むというような形でも解決できない、手間がかかっても何でもそれを刈り取らなくちゃいけない、ますます赤字がふえる、そういうお話も聞いてまいりました。やればやるほど赤字になるということで、富山の立山町の釜ケ淵農協では、国は大豆を本当につくってほしいのか要らないのか、本当にとってほしいのなら、農家が意欲を持って働けるように対策を講じてほしいということを訴えていらしたわけです。大臣は、こうした転作大豆を生産している農家にどうおこたえになるかということを一言お聞きしたいと思います。
  107. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 今先生からも御指摘がございましたり、また現場へいらっしゃって現物も持っていらっしゃっていますが、局長から御答弁のとおり、北陸地域、富山、石川などを中心にしまして大変な被害があった、これは何とかしなくちゃいかぬ。特に大豆の場合には、今お話がございました水田農業確立対策、これの転作の重要な作物なんです。そういうこと等もございます。  そこで問題は、ことしの問題からさらに来年の問題、来年もうつくるの嫌だと今お話がございましたけれども、そういう農協などの切実な声もあるようでございますから、営農の意欲がなくなってしまっては大変だということなのでさまざま考えております。ただ、なかなかずばりとした妙案がないという苦しみもございますが、しかし、繰り返すようですが大事な転作の作物でございますし、しかもこれからも水田の裏作としてやってもらわなくちゃならぬということでございますから、それなりに総合的に施策を講じてみたい、こう考えております。
  108. 林紀子

    ○林紀子君 大事な転作作物だというお話があったわけですけれども、今回特に伺って感じたことは、被害を一番大きく受けているのは、やはり中核農家だ、専業農家だ、また集団転作組合などで本当にこの転作を一生懸命やっている人たちだということを感じたわけです。こういうところが大きな被害を受けていますと、今大臣の御答弁にもありましたけれども、本当にもう来年はこれやめてしまうと、農地を荒らしっ放しにした方がいいんだ、さもなければ米をもう一度つくらせてほしい、こういう声が非常に上がっているわけですね。  ですから、この交付金の性格についてお伺いいたしましたら、交付金というのは優良な国内産の大豆を奨励するという目的で今一等から三等まで払われているということですけれども、北陸地方につきましては一、二等はほとんどない、三等が少々あるというような状況ですから、この交付金の原資というものはあると思うわけなんです。確かに北海道から九州まで大豆をつくっていると思いますけれども、一部にこの被害があったということは確かですけれども、一部であるからこそ、交付金という名目で渡すことはできないといたしましても、その原資も使いながら、特にこういう中核農家、専業農家、一番一生懸命転作大豆もつくっている農家に対しまして何らかの形で救済の措置をしてほしい、今お二人から御答弁があったわけですけれども、重ねてお願いをいたしまして次の質問に移らせていただきたいと思います。  ウルグアイ・ラウンドの閣僚理事会に向けて大臣の御決意を聞きたいと思うわけですけれども、私は昨年の七月に国会に送っていただいてから一年四カ月ばかりこの農水委員会に所属しまして、初めての質問で米の輸入自由化の問題を取り上げてまいりましたし、事あるごとに農水大臣に農政の基本にかかわる問題としてこの米の問題をお聞きしてまいりました。そして私は、今回この間の大臣の答弁にすべて目を通しました。  大臣は、命がけで対応したい、私個人が命を捨てたくらいで済むことじゃない、こうおっしゃっておりましたし、また、我々がおかしな態度をとれば、そのことだけで一方では国益に反するが、一方では若い人たちが、ああやっぱり農業はだめなんだ、特に日本農業はだめなんだ、こういうことをその場で決めてしまうのではないかと。さらに、日本の国益なり日本の農民なりを守るのは、これはアメリカに頼ってもECに頼ってもだめなんでありまして、日本の我々が、そして日本の農政の当事者である我々が頑張る以外に、ほか様に期待をしてもこれは無理だ、私は農林水産省皆さんに、淡々としてやろうや、そして相手をひっかけるような、あるいは漁夫の利を得るようなやり方をやるべきではない、日本のかねての主張を正々堂々とやろう、こう言っている、こういうふうにも御答弁していらっしゃいます。大変力強い答弁だということで、もう一度改めて私もこの力強さというのを感じたわけです。  しかし一方では、先日アメリカのクエール副大統領が海部首相にブッシュ大統領の親書を渡しまして、農業交渉で譲歩するようにという要請があったと言われております。また、十二月三日から始まるウルグアイ・ラウンドでの閣僚理事会が進められているとき、タイミングを見てブッシュ大統領が海部総理に直接電話で譲歩を求めることもあり得る、いわゆるブッシュホンもあり得る、こういうことを新聞報道しております。  そこで、大臣の決意は今までの御答弁の中でよくわかるわけですけれどもウルグアイ・ラウンドを成功させるというヒューストン・サミットでの合意を踏まえてより高いレベルでの政治決着がされるのではないか、この心配はぬぐえないわけですけれども、そうした場合大臣はどうなさるのかお聞きしたいと思います。
  109. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 海部・クエール会談のことを先生ちょっとお触れになりましたが、これは一部報道、放映がありました。私も親書を直接見たわけじゃありません。が、私が仄聞したところと全く違いまして、親書の中に、これはウルグアイ・ラウンドを成功させようという趣旨のことはありましたけれども、しかし、具体的な個別的な問題には一切触れておらないというふうに私聞いております。  それから、その親書を渡された後、若干の時間会談があったようですけれども、その会談の中でクエールさんからウルグアイ・ラウンドを成功させようという御主張はあったようです。  それから、特に農業問題は各国さまざま困難な問題を抱えておる、これは従来ずっとそういうふうに言われておるわけですから。アメリカの例なども出したりして、日本にも米という問題があることはよく承知をしておりますというふうに例示的にお話しになった。米を自由化せよとか開放せよとか、そういうお話の迫り方は一切なかった。それに対して海部総理からは、これはウルグアイ・ラウンドはぜひ成功させたいと一般的にお答えになった、こういうふうに承知をしております。これが私が承知をしておるところで、多分間違いのないところではないかと思っております。  それからブッシュホンの話も出ましたけれども、政治決着ということをよく言われますね、政治家が決断するとか、政治決着するとか。政治家が決める場合に政治決着という言葉が使われるわけですけれども、ただ何の材料も持たずに、ある日ある時突然何か決めてしまう、そういう政治決着では困るのでありまして、やはり今までの積み上げというものがあるわけだと。農業交渉の積み上げ、あるいはその前に血のにじむような日本の開放努力というものがあるわけです。しかもことしに入ってからも、夏の五カ国の農相会議、これはもうかなりみっちりやってきた。それからこの間の国別表とオファーリストということですから、そういうものが全部積み上がってきて、しかもアメリカアメリカ、ECはECでそれなりの積み上げをしてきているということですから、その積み上げたものを全く無視して、ある一人の政治家がある日突然物を決めるなどということはあってはならない、私はそういう気持ちをいつも持っておるということを申し上げたいと思います。
  110. 林紀子

    ○林紀子君 今の御発言を聞きまして、ブリュッセルへ行く前に内閣不一致というようなことにならないように海部総理にも改めてきちんと話をしていっていただきたいと思いますし、私もぜひブリュッセルは行きたいと思っておりますので、ぜひ禍根の残らないような精いっぱいの御努力をお願いしたいということを述べまして終わらせていただきます。
  111. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 最後になりましたが、私から、与えられた時間御質問をしたいと思います。  通告書の順序が逆さまになりますが、まず大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  きょうの委員会でウルグアイ・ラウンドをめぐってのいろんな角度からの御質問がありました。谷本委員の御質問にも出ましたが、今回の交渉がうまくいかなかった場合にアメリカの方は、例えば全米精米業者協会の役職の人の新聞報道による発言によれば、通商法の三〇一条に訴える、そして二国間交渉に持っていきたいというようなことが出ております。それに対して、厳しいというか、あるいは正当な反駁をこれまでしていないんじゃないかというような、もっとしっかり反駁をすべきじゃないかという意見があったと思うんです。  つまりアメリカのそういう発言を見ると、ガットにそもそも違反するんじゃないかということで、どうしてもう少し反駁をきちっとしないだろうかという今質問もあったわけですが、私も十分調べたわけではありませんが、ガット条項の本来の制度に違反するなら、例えば国際司法裁判所ほ日本も訴えるぞとか、何か国際法上支えになる方法による反駁といいますか、こういうことも考えなければいけないのではないか。今回の交渉が、今大臣がおっしゃるように何とか日本立場が理解されておさまるというか円満に妥結すればいいわけでありますが、大変難しい見通しの中で、むしろ決裂をしたり年越しをしたりするんではないかという見方も出ているわけでありまして、この点についてお尋ねをしたいと思います。
  112. 山本富雄

    国務大臣山本富雄君) 先生のお言葉でございますけれどもウルグアイ・ラウンド交渉はこれから始まるわけです。これは何とか成功させようと各国言っているわけなんです。我が国も言っているんです。私もそう言っているわけなんです。成功を前提にしてこれから交渉に入ろうというときに、余りそうでないことを考える必要はないのではないか、御心配の向きもわからないではありませんけれども、そういうふうにまず思います。  それから、二国間交渉についての話ですけれども、いろんな不規則発言はありますよ。ありますけれども、正式な機関から、例えばヤイターさんから私に向かってウルグアイ・ラウンドがもし成功しなければ二国間でやりますよなどということを一回も言われたことはありません。多国間交渉で成功させましょう、これは向こう様も言っていることなんで、私どもも言っていることなんです。多国間交渉でやりましょう、しかも成功させましょうと皆さんがおっしゃっている、アメリカもおっしゃっている、我々もそう言ってきたんですから。それを何も二国間ということをこちらから言う必要はないじゃないか、言挙げする必要はないじゃないかと。  事柄は違いますけれども、かなり前に一部自由化論議などというものがございました。私はテレビで会見したときにそういうお尋ねがマスコミの方からありましたから、そういうことをだれも正式に正規の機関でその職にある人が言ったことはない、不規則な発言はあるでしょう、それはいついかなる場合でもそれぞれ発言は御自由なんで、あると思いますけれども、そういうことを言われもしないのに一部自由化について議論するなどということは正当なやり方ではないし、あるいは戦術的に言っても余りいいやり方ではないというふうにお答えをした覚えがございまして、二国間交渉の問題は私は今は全く考えておらない、ウルグアイ・ラウンドでやるというふうに考えておることを申し上げたいと思います。
  113. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 ありがとうございました。  次に、米の生産費のコスト低減という問題についてお尋ねをいたします。  今いろんな外圧の中で、日本の米の生産環境になるわけでありますが、少しでも安くうまい米をつくれないか、これは至上命令であることは明らかだと思うんです。今まで私がコスト削減でお尋ねをしてきたのは、ほとんど大規模農場にするために、例えば受委託の方法だとか、あるいは米の植えつけといいますか、最初の生産の過程について省力化ができないかという観点からお尋ねをしたわけですが、今回は圃場整備といいますか、土地区画の改良の際に、例えば集落営農で共同でコスト削減ができないか、こういう観点のコスト削減策についてお尋ねをいたします。  と申しますのは、私の地元の方では、あえて地区名は申し上げませんが、まさに中山間地域、つまり平場でないということでしょうか、なかなか集約農業が現実に難しいところで、たまたま圃場整備の際に地域のみんなで協議をして、そして集落全部で共同農業の受委託作業も含めましてやる、そういうことに今着手しているところがありまして、その現場を見てまいったわけでありますが、そこで一番強く感じたことは、こういう圃場整備と一緒に集落営農の方式をとるというのは極めて二重の意味でコスト削減になることは明らかだと思うんですが、その場合でも、やはり現実問題になるとダブった農機具をどのようにしていくか。いい方法がないというと、結局一生懸命コスト削減をして上がってくる利益を村の農家に配るのをやめて、みんな農機具のいわば減価償却といいますか、償却の方に、マイナスの方に回してしまわざるを得ない。そうすると、何年たっても効果がないということで意欲がそがれるだろうし、作業を主にやっている委託を受けた作業農家にとってはつらい思いをしていかなければならない。こういうふうなことで、ダブった農機具をどのように、そういう新しい思惑と共同作業で乗り越えようとしているところに負担をかけなくても済むような方法でできないか。この観点から、今農水省の方で検討していることをお教えいただきたいと思います。
  114. 安橋隆雄

    説明員安橋隆雄君) 御指摘のように、集団化を行うことによりまして余剰となる農業機械がどのようになるかということが費用の面でも重要なポイントになってくると思うわけでございます。余剰となりました農業機械でございましても、減価償却分が残っているいわば中古農業機械につきましては、他の地域でも有効利用が図られるということでございまして、そういうことでございますと、有償で中古市場で売却することができるというような機械につきまして、その売却費そのものを助成することは非常に難しいと思いますが、ただ、その売却に伴い必要となりますような費用、例えば中古農機の査定費でございますとか整備、運搬、保管費、あるいは販売促進のためのいろいろ相談をしなければならない合意形成等の会議費といったようなものにつきましては、現在、集落営農特別推進事業でございますとか農業機械利用再編整備実験事業、あるいは中古農業機械広域流通促進事業、中古農業機械整備・評価研修というようなところに対しまして助成するということで、今先生御指摘のような集団営農をうまくやっていただく。その場合のポイントとなります余剰機械の処分について円滑にいくように助成をしていくということでございますので、こういった制度をうまく活用していただきますればいいのではないかと思っているところでございます。
  115. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 今のお答えの中でもう少し質問をしたいのは、いろんな助成の制度で各地区あるいは各農家の集まり、協同組合等は中古農機具の活用について知恵を絞っておるとは思うんですが、問題は、センターといいますか中央のしっかりした組織といいますか、そういうものがあって、一種の基準とモデルの作成によって活用と円滑な助成が効果的に組み込まれる、こういうふうなことは考えられないんでしょうか。  私が思うのには、例えばそういう中古農機具の活用のために基金をつくって、その基金というのは今おっしゃったいろんな助成金の中からひねり出されるのかもしれませんが、いわばコントロールセンターのようなものをつくりまして思い切った効果的な助成ができないだろうか。それによってますます集約農業の、特に中山間地域の場合には、私が見てきたところでも圃場整備で三反が限度だと言うわけですね、田んぼの大きさとしては。それ以上になると落差が激しくてとても難しいと。いわば環境の悪いところでも効果が及ぶのではないかなという、素人判断でございますがそういう気がいたしますので、その点さらにいかがでしょうか。
  116. 安橋隆雄

    説明員安橋隆雄君) 中古の農業機械の市場でございますが、例えば東京に一つというようなことでやるのではなくて、大体一般的には県単位あるいは県のうちの主要な農業地帯ごとにというような範囲でやるのが売り手と買い手の中の仲介がうまくいくのではないかというふうにも考えているわけでございます。  その場合に、おっしゃいますような情報でございますが、売り手がどういう機械をどれぐらいの値段でというような情報のシステム化も進めてまいりたいと思っておりますし、ただいま申しましたようないろいろな中古機械の販売に必要な諸費用については種々の事業で助成することにいたしておりますので、そういったものを活用していただいてローカルな意味での広域流通にもしていきたいというふうに考えているところでございます。ただ、ちょっと中央で、東京で一括してやるというのはやや需要者あるいは供給者との関係が疎遠になるのではないかなというふうには思っておるわけでございますが、村単位、町単位というのじゃなくてローカルな意味での広域流通というのは必要ではないかというふうに考えているわけでございます。
  117. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 ありがとうございました。
  118. 北修二

    理事北修二君) 本調査に関する質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十七分散会