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参考人(
垣田行雄君) ただいま御紹介にあずかりました
財団法人日本システム開発研究所の
垣田でございます。
私は、
エネルギー需要の中で
我が国が一番多く使っております
石油、LNG、石炭等の燃料、これはほとんど熱
エネルギーとして一度燃焼させて使っておるわけですが、そういう
観点から
エネルギーの効率的利用についてどのような
観点が必要であるかということについて述べさせていただきたいと思います。(OHP映写)
まず最初に、現在私
どもの使っております燃料を燃やしますと千五百度、千六百度という高い温度で燃えますけれ
ども、そこからここで使っております電気とか、あるいはコンピューター用の電力をとろうとするときに一体どの
程度とれるかということを示した図でございますが、これは一八二四年にフランスのカルノーが唱えましたカルノーサイクルというものでございまして、これが熱力学第二の法則ということになっておりますが、現在
日本の大気が平均十五度だといたしますと、その場合にとれる
エネルギー量というのは、一〇〇のうちたかだか八二%、これが限度でございまして、論理的にこれ以上はとれない。これは論理的でございますから熱力学の第二法則と言っておるわけでございますが、例えばおふろで必要な五十度とか、あるいはまた一般にお湯が沸くという百度という温度でありますと、論理的にも二三%
程度の
エネルギーしかとれない。
ということは、同じ
石油あるいは天然ガス、都市ガスあるいはまた
石油を燃やしまして、燃える温度は千五百度、千八百度になるんですけれ
ども、実際使うときにどれだけの
エネルギーがとれるかということは、これだけ温度によって効率が違ってまいりますし、現実にはこのカーブの約半分ぐらいでございます。現在の大規模火力発電所でも四一・二%が限度でございまして、それ以上はとれません。これが一つの原理原則だと。悲しいかな現在の社会を律しておる原則であります。
そうした
観点から
日本の使われておる
エネルギー消費を見てまいりますと、この図は
資源エネルギー庁が出しております
エネルギー統計から出してまいったわけですが、左の欄に一次
エネルギーの
供給量が入っておりますけれ
ども、
石油換算で約四億八千二百万キロリットル。お手元にすべて
資料がついておりますので、見ていただければ結構でございますが、この中の左に
石油、石炭、それから天然ガス、新エネ、
水力・
地熱、
原子力等書いておりますが、この中の新エネ等あるいは
水力・
地熱、及び最終
エネルギー消費の
産業欄のところに非
エネルギーとして9(3)と書いておりますが、先ほど申しました新エネ、
水力・
地熱それから非
エネルギー、非
エネルギーというのはプラスチック等の材料でございますけれ
ども、そういうのを引きますと、一次
エネルギー量を一〇〇といたしますと九三%はすべて一度燃やして使っておる、燃やすという手順を経ているということをまず念頭に置いていただきたいと思います。
そういたしますと、現在四億八千二百万キロリットルの一次
エネルギーを
供給いたしながら、最終的に
需要サイドに行っておりますのは三億二千五百万キロリットルということで、それが括弧に書いてありますように大体三分の二しかこちらから行っておりません。
我々
日本の社会で求められておるものは、この
消費量を下げることが重要なのか、あるいはこの消費に対してどういう
方法で
供給するかということでございまして、私が論じたいのはこの量を同じにしても、ここをもっと下げる
方法をまず追求すべきだ。それを追求した後これを下げていく。これを下げるということは節約とか、あるいは勤勉にもっと倹約しろということになろうかと思いますけれ
ども、問題は倹約の前にやることがあるのではなかろうかという
お話をしていきたいわけでございます。
この図の中で、ちょうど真ん中に電力化率と書いてあるところに百七十九という
数字がありますが、これは一次
エネルギー量のうちの百七十九が電力に変わるということでございます。この百七十九から電力に最終行っておるところのE、これ六十二という
数字になっておりますが、この百七十九という
エネルギーを投入しながら実際に電力になるのは六十二ということで、この比率が約三四・五%になりますけれ
ども、これは、先ほど申しました熱力学の法則によりまして、先ほどお見せしたこのグラフの示す、実際の論理はこうですけれ
ども現実にはこの半分
程度しかいかないということを如実に物語っておるわけでございます。
こうした現在の
状況にあるわけでございますが、さらに、もう少し細かく見てみますとどういうことが言えるかと申しますと、燃焼
エネルギーといいますのは、四ページ目にございますように、最初いろいろな種類の
エネルギーを燃やして最終的にいろいろな用途に使われていくわけでございます。ところが、最初入れた段階からいろいろな段階、発電所で電気に変わる、あるいは輸送されて
石油が家庭に行く、こういう経過をたどってまいりますが、この経過のどの時点でとっても入れた
エネルギー量は一定であるというのがこれは一つの原則でございまして、これを熱力学の第一法則と言っております。そうしますと、当初入れました
エネルギーのうち実際に有効に使われておりますのが三七という
数字がございます。これは一九七五年でございまして、一九八六年、下の方では三五という
数字になっておりますが、これはどういうことかと申しますと、ガソリンで例えば自動車をお使いになる場合に、一リッターのガソリンを食ったといっても一リッターの仕事をしたかどうかということでございます。時速三十キロとか四十キロで走った場合に、実際に距離を動いた、移動ということに使われますのはたかだか二〇%
程度でございまして、八〇%はすべて排気ガスになっております。
そういう
観点からいいますと、一〇〇の
エネルギーを入れたうち実際に有効に使われておるのは三分の一
程度でありまして、残りは全部大気に出ておる、それが結果として地球の温度を上げておるということになるわけでございますが、私は、先ほ
ども申しましたように、有用に使われる
エネルギー量、これに対してこちら側からインプットする
エネルギー量をいかに減らすかというのが今日の
日本の社会に求められている問題ではないかと思うわけでございます。
それで、これは一九七五年と八六年の
変化を示した図でございますけれ
ども、ここで問題なのは、まず、
民生用が七五年には一四であったものが八六年には一七とふえております。これは先ほど来ほかの
参考人からも
お話がありましたように、
民生用がふえておるというのはまさにこういうことを端的に示しておりますし、また一方、
産業用ではかつて四二%使っておりましたのが八六年には三五に落ちておるというのは、
産業界が非常な
努力をいたしまして
省エネを達してきたというものが結果としてあらわれておるわけでございますが、問題となりますのは、今後、こうした
産業用の
努力にもかかわりませず
民生用はふえる、また一方、老齢化とかあるいはまたアメニティー指向によりまして、同じ家庭用でも電気の
需要が
伸びてくるというようなことで、今後これがどういうように
変化していくかということが重要なわけでございます。
このような
観点から、同じ電力をとるにしてもより有効に電気がとれないかということで、五ページに参りますが、従来の発電所と申しますのは、
石油あるいは天然ガス、石炭あるいはまた
原子力を使いまして、水を蒸気にいたしまして蒸気タービンを回して発電をしておるわけでございます。そうしますと、
原子力では三三・四%、あるいは新鋭の火力発電所でも三九から四一・二%というのが限度でございます。
それはどうしてかといいますと、この蒸気タービンの入り口温度が五百六十六度という温度に規定されておるというところにあるわけですが、先ほど申しましたように、物を燃焼させますと千五、六百度に燃えるわけでございますから、そこで高い温度からはより効率的に
エネルギーがとれるわけで、まず最初にガスタービンを動かしまして、ガスタービンから出てきました排気ガスで蒸気をつくって蒸気タービンを回そうというガスタービンと蒸気タービンの組み合わせ、こういうことでコンバインドと言っておるわけですが、これはようやく大規模の発電所では、五ページの表にありますように今から五年前に東新潟の火力発電所で実現されまして、現在、東京電力さんとか今後の発電所の
計画はできるだけ高効率な発電にしようという動きになっております。こういたしますと、四三%、四四%というように従来よりも効率の高い電気がとれるというわけでございます。
こうした
努力にさらに加えまして、次に
お話しいたしたいのがコジェネレーションというものでございます。
コジェネレーションといいますのは、六ページに書いてございますように、従来の発電所が電気だけをおこして残りの六割ぐらいの
エネルギーを全部海なり大気に放出しているのに比べましてコジェネレーションは、例えば東京のホテルの下あるいはまた病院の下に発電所を置きまして、そこから出てくる電気を自分で使い、残った排熱で暖房、給湯をする。それによって効率が、一〇〇に対して七〇なり八〇の
エネルギーが使えるといることでコジェネレーションがいいという議論が行われるわけです。
私は、コジェネレーションというのはどういうものかというときにこの図が使われるということは理解しておりまして、いいことなんですが、コジェネレーションでは〇・七とか〇・八になる、ところが従来方式だといいところ〇・三五ぐらいしか実際に電気にならないんだよという話がこの図を使ってよく
説明されるわけです。これは全くもってのほかの話でございまして、六ページ目の下にありますように、じゃボイラーを使ったらどうかといいますと、ボイラーを使いますと一〇〇のうち八〇%なり九〇%が熱になるわけでございます。ですから、一〇〇のうち幾らが有効に使えるかということだけでありましたら、電気なんてやめて全部ボイラーでお湯をつくればいいわけです。ところが、お湯で電気ができますかということですね。
我々の文明社会というのは、電気という質の高い
エネルギーと熱という二つの種類の
エネルギーが必要です。電気というのは、一番最初に書きましたように、論理的に何%とれるかという法則によって律せられております。ですから私
どもが必要なのは、電気と熱をいかに有効にとれるかということを理解しなくちゃいけないわけです。
その場合に、コジェネレーションというのを使った場合にどの
程度の有効性があるかというものを八ページ目に書いてございます。これはホテルとか病院等でお使いになります電気と熱の比率、熱電比と申しますけれ
ども、分子に熱をとり分母に電気の
需要をとったものを横軸にとっております。ですから右にいけばいくほど熱の
需要が多い、左になれば電気の
需要が多いということでございます。
こうした熱
需要に対しまして従来の方式、すなわち電気は電力会社から買う、あるいは冷暖房はガス会社からガスを買って自分で暖房、冷房をするという場合を比較しておるわけでございますが、この図でわかりますように、まずエンジンの効率が高ければ高いほど
省エネになるというわけでございます。この図を二つ見比べていただいて、下の方の図をよく見ていただきたいんですが、これは
省エネルギー性はマイナス、要するに従来の電力会社から電気を買い自分で暖房、冷房をやった方がいいですよ、前の方がいいですよというわけです。コジェネレーションの方がマイナスになる。
これはどういうことかといいますと、コジェネレーションというのは、先ほど申しましたように、一度エンジンに燃料を入れましてそこから出てくる
エネルギーで発電をして、同時に出てくる排熱で暖房とか給湯あるいは冷房をしましょうというシステムなんですけれ
ども、出てきた排熱をもしそのまま捨てちゃいますと結局
省エネルギー性がない。ですから、やはり出てきた排熱は十分に使わなくちゃいけないんですが、問題は十分に使えるだけの熱
需要があるかどうかということでございます。
一般のビルでございますと、ほとんど一か一を割りますところに熱と電気の比率があります。ところが、ホテルとかですと、お客さんがおふろに毎日入りますから給湯
需要が非常に多くて、それが一・五とかあるいは二を超える場合があります。そうしますと、出てきた熱を全部お客さん用の給湯に使えますから、現在いろいろなところでコジェネレーションがふえておる中の多くはホテルとかでございます。その
状況を示しましたのが次のページでございまして、十ページに現時点までどのようにしてコジェネレーションがふえてきたかという図を書いてございます。
十ページ目は、これはホテルとか病院とかのような事務所ビルでございまして、横軸に年度をとっております。
昭和五十八、九年ごろからようやく急激にふえてまいりますが、これはエンジンが有効に動くようになってきたということでございます。
エンジンが有効に動くというのはどういう意味かと申しますと、例えば大手自動車会社が皆さん方に保証しておりますエンジンの寿命といいますのは、十万キロメーターは保証しますと。十万キロメーターというのはどういうことかといいますと、例えば平均で三十キロぐらいの時速で走っていたといたしますと三千時間。要するに三千時間保証しますということです。ところが、一年間は八千七百六十時間でございますから、三千時間ということは一年の半分以下の保証しかしていない。ところが、自分のホテルとか自分の病院でコジェネレーションを回そうとしますと、少なくとも一年、二年は事故なく回ってほしい。そうすると、一万時間とか一万五千時間回ってくれなくちゃいけない。ところが自動車のエンジンというのは三千時間とか四千時間しか保証していないわけですから、いかに技術
開発が重要であったかということでございます。
そういうことで、
昭和五十八年以降ようやくふえてまいりまして、現在といいますか、ことしの三月末で四百五十一件、それからキロワットにしまして十九万二千キロワットぐらいにふえておりまして、その多くは、先ほど申しましたようにホテルとかスポーツ施設あるいは健康ランドのように熱
需要の大きな建物でございます。
この中で事務所というのが多くなっておりますが、これは実際に超高層ビルとか、あるいはまたガス会社さん、
石油会社さん等の自社ビルでデモンストレーション的にやりたいというのが多くて事務所が多くなっております。実際、商用的にいきますと、ホテルとかスポーツ施設とか、あるいは病院とか健康ランド等の給湯
需要の多いところで多くなっております。
それはまた、
産業界といたしまして工場用ではどうなっておるかと申しますと、十一ページにございますように、これも同じように
昭和五十八、九年から急激にふえてまいりまして、現在三百五十二件、百二十五万キロワット
程度の
伸びになっております。
この工場の場合に少し誤解があるといけませんけれ
ども、六ページ目に、戻って恐縮ですが六ページの真ん中に括弧してございますが、製鉄業とか
石油精製業、製紙業等の電気
需要、熱
需要の大きなところは従来蒸気タービンを使ってこうした熱
供給をやっておりました。先ほど示しました図は、ガスエンジンとかディーゼルエンジンあるいはガスタービン等の内燃機関を使ったものでございまして、現在ようやくそうした内燃機関を使ってコジェネレーションができるという
状況になったということが一つございます。
それから、九ページに書いておきましたけれ
ども、コジェネレーションの
省エネルギー性というのは、その
需要の電気及び熱のパターンによって随分変わりますよと。それからまた設計がいい、悪いによって非常に変わるということがございまして、私はコジェネレーションというのは適材適所で使って、先ほど申しました
日本の
需要に対していかに
省エネルギーに
供給するかという場合に適材適所をよく判断できる技術力を
日本全体が持っていく必要がありますし、またそういう制度にする必要があると思います。
ただ、一つ残念な点がございまして、これだけ
省エネルギーになるということは、炭酸ガスの発生も少ないわけですからいいんですけれ
ども、窒素酸化物、NOxというのが従来の
方法に比べて非常に多く出てまいりまして、現在、東京都の
規制がその真ん中の欄に書いておりますが、これに対していかに
対応していくかというのが一つの問題点になっておりまして、現在コジェネレーションに携わる各
関係者の技術
開発のターゲットの一つになっております。これにつきましては今後とも十分な技術
開発をしていただきたいと思っております。
そうしたコジェネレーションについて、さらにNOxも出ないのは何かというのが十二ページに書いてございます燃料電池でございます。燃料電池は、皆さん御承知のように、水に電気をかけますと水素と酸素の電気分解ができるというのは中学校ぐらいにお聞きかと思いますが、それを逆にやろうということでございまして、水素と酸素を化合させれば電気が出てくるということで、これは今から約百六十年ぐらい前、イギリスのグローブ卿が発明したわけですが、実際には今から二十五年前にアポロ
計画のジェミニの五号に搭載されまして、宇宙ロケット用の燃料になった。それから、何とか商用化できないかということで鋭意技術
開発が行われまして、一九八五年につくばで行われました科学技術博覧会で実証され、あるいはまた今東京、大阪等のホテルで実証プラントが動いておりますが、こういう燃料電池ができますとNOxはほとんど出ない、それからまた非常に高効率ということでございます。
さらに、先ほどの
参考人からも
お話がありましたけれ
ども、ヒートポンプということ。皆さん方の家庭もかつては
灯油とかあるいはまた都市ガスだけで暖房なさっていた。ところが最近は電気でということが多いと思いますが、それはどういう
方法で暖房ができるかということでございます。例えば山の上でお米を炊いて御飯をつくるときに、富士山とか非常に高い山だとしんができてどうしようもないというのは、温度が低い温度、今私
どものレベルですと百度でお湯が沸きますけれ
ども、高い山になりますと九十度とか八十何度でしかお湯が沸きません。それと同じように、今度は圧力をかけますと、例えば水でありますと十気圧の圧力をかけますと百八十度ぐらいまでは水なんですけれ
ども、そういう圧力と温度というのは
関係するんです。
今皆さん方の家庭用に使われておりますエアコンディショナーに入っております物質は、例えば七気圧をかけますと十度で蒸発してしまう、あるいはまた二十気圧をかけますと五十度で蒸発するという圧力と温度の
関係がございます。そうしますと、大気の温度が十度ぐらいでも結局それを一度圧縮して凝縮する、それでまた蒸発させる。蒸発するというのは、皆さんが病院へ行って注射なさるときにアルコールで消毒しますけれ
ども、そうしますと冷えますが、そういう冷える状態。要するに蒸発させると熱を奪って冷えるわけですが、そのときに部屋を冷やす。ところが、また、冷えた蒸気が今度は液体に戻るときに凝縮するときには熱を出す。ここで、冬にはこちら側を使う、ですから部屋が暖まるわけです。夏には切りかえますと、こちらで蒸発しますから部屋が冷える。この回りぐあいを夏と冬に逆にいたしますと、同じ機械で暖房も冷房もできる。
それで、河川水を使った例が先ほどありましたが、それはどういうことかといいますと、河川水は十度とか十五度の温度がありますから、それをここで蒸発させて圧縮機で圧縮しますと、ここでは五十度とか五十五度のお湯がとれるということで、河川水からも暖房ができるということでございます。
こうした新しい技術
開発というのがどんどん進んでおりまして、これを使いますと、十四ページに書いてありますような地下鉄の排熱とか、あるいは地中送電線、下水、地下水、あるいはまた海水等が使えるわけでございますが、こうした技術
開発によりまして同じ
需要に対して
供給エネルギーをいかに少なくしていくかが今後の課題ではないかと思っております。
それで、私の結論といたしましては、
エネルギー有効利用というために技術
開発の成果をいかに社会に適応しやすいような社会制度にしていくか、あるいは町づくり等につきましても、下水あるいはごみ等あるいは地下鉄の排熱等があるところの熱を、今までは使い捨て一方であったものを、それを利用する立場で町づくりを考えているかどうかというような点につきまして問題提起をさしていただいて、私の話とさしていただきます。
どうもありがとうございました。