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1990-10-19 第119回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成二年十月十二日)(金曜日) (午前零時現在)における本委員は、次のとおり である。    委員長 越智 伊平君    理事 近藤 鉄雄君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 宮下 創平君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 村山 富市君    理事 神崎 武法君       粟屋 敏信君    池田 行彦君       石井  一君    稲村 利幸君      内海 英男君    小此木彦三郎君       越智 通雄君    工藤  巌君       倉成  正君    後藤田正晴君       左藤  恵君    田澤 吉郎君       戸井田三郎君    葉梨 信行君       長谷川 峻君    浜田 幸一君       林  義郎君    原田  憲君       松本 十郎君    村岡 兼造君       村田敬次郎君    村山 達雄君       井上 普方君    川崎 寛治君       串原 義直君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       松浦 利尚君    武藤 山治君       和田 静夫君    市川 雄一君       日笠 勝之君    冬柴 鐵三君       不破 哲三君    三浦  久君       中野 寛成君    楢崎弥之肋君 ────────────────────── 平成二年十月十九日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 近藤 鉄雄君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 官下 創平君 理事 加藤 万吉君    理事 松浦 利尚君 理事 村山 富市君    理事 神崎 武法君       井奥 貞雄君    池田 行彦君       石井  一君    稲村 利幸君       越智 通雄君    工藤  巌君       倉成  正君    後藤田正晴君       左藤  恵君    田澤 吉郎君       谷川 和穂君    戸井田三郎君       葉梨 信行君    長谷川 峻君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    原田 義昭君       星野 行男君    松浦  昭君       松本 十郎君    村岡 兼造君       村山 達雄君    井上 普方君       池端 清一君    沖田 正人君       川崎 寛治君    串原 義直君       小林 恒人君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       武藤 山治君    山口 鶴男君       和田 静夫君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    山田 英介君       児玉 健次君    佐藤 祐弘君       中野 寛成君    米沢  隆君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 梶山 静六君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 保利 耕輔君         厚 生 大 臣 津島 雄二君         農林水産大臣  山本 富雄君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         運 輸 大 臣 大野  明君         郵 政 大 臣 深谷 隆司君         労 働 大 臣 塚原 俊平君         建 設 大 臣 綿貫 民輔君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     奥田 敬和君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 塩崎  潤君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      木部 佳昭君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      相沢 英之君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      大島 友治君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 北川 石松君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 佐藤 守良君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         警察庁刑事局長 中門  弘君         総務庁長官官房         審議官     田中 一昭君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  富田 駿介君         青少年対策本部         次長      杉浦  力君         防衛庁参事官  内田 勝久君         同       玉木  武君         同       宝珠山 昇君         同       鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 藤井 一夫君         防衛庁教育訓練         局長      坪井 龍文君         防衛庁人事局長 村田 直昭君         防衛庁経理局長 畠山  蕃君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁施設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         経済企画庁調査         局長      田中 章介君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務大臣官房長 堀田  力君         法務省人権擁護         局長      篠田 省二君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   大塚 秀夫君         運輸省国際運         輸・観光局長  寺嶋  潔君         海上保安庁長官 丹羽  晟君         海上保安庁警備         救難監     赤澤 壽男君         郵政大臣官房長 木下 昌浩君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省労働基準         局長      佐藤 勝美君         建設大臣官房長 望月 薫雄君         建設省建設経済         局長      鈴木 政徳君         建設省住宅局長 立石  真君         自治大臣官房長 森  繁一君         自治大臣官房審         議官      遠藤 安彦君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 十月十九日  辞任         補欠選任   粟屋 敏信君     星野 行男君   内海 英男君     井奥 貞雄君  小此木彦三郎君     原田 義昭君   原田  憲君     松浦  昭君   村岡 兼造君     谷川 和穂君   井上 普方君     山口 鶴男君   川崎 寛治君     池端 清一君   佐藤 敬治君     小林 恒人君   武藤 山治君     沖田 正人君   市川 雄一君     山田 英介君   不破 哲三君     児玉 健次君   三浦  久君     佐藤 祐弘君   中野 寛成君     米沢  隆君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   谷川 和穂君     村岡 兼造君  原田 義昭君     小此木彦三郎君   星野 行男君     粟屋 敏信君   松浦  昭君     原田  憲君   池端 清一君     川崎 寛治君   沖田 正人君     武藤 山治君   小林 恒人君     佐藤 敬治君   山口 鶴男君     井上 普方君   山田 英介君     市川 雄一君   児玉 健次君     不破 哲三君   佐藤 祐弘君     三浦  久君   米沢  隆君     中野 寛成君 同日  理事佐藤敬治君同日理事辞任につき、その補欠  として松浦利尚君が理事に当選した。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国政調査承認要求に関する件  予算実施状況に関する件      ────◇─────
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事佐藤敬治君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続き、理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事補欠選任については、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事松浦利尚君を指名いたします。      ────◇─────
  5. 越智伊平

    越智委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ────◇─────
  7. 越智伊平

    越智委員長 予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷川和穂君。
  8. 谷川和穗

    谷川委員 私は、緊急問題として発生いたしましたイラク問題について御質問を申し上げたいと思います。  イランイラク紛争の当時、我が国は、紛争解決に向けて随分の外交努力を重ねてきたように記憶いたします。特に、停戦直後のイラクにおける戦後復興に向けての協力に対しましては、先方に対して、我が国としても十分これをやらしてもらうということも伝えたはずでございまするし、八年間に及んだ紛争のため停滞しておったイラクに対する経済技術協力の再開に向けても、イラクとの間で打ち合わせが行われて始まりかけておったさなかに、イラクの、クウェートの石油欲しさに紛争を引き起こしたこの行為で、我が国から人質をとって返さないというのは一体どういうことなのか。こういうようなイラク行為、これは完全に国際法違反であります。断じて許される行為ではないと私は考えますが、総理大臣はどういうふうにお考えでありましょうか。
  9. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のこの湾岸危機というものが突然起こって、世界が平和と繁栄とを求めて、対立が終わり、冷戦時代が終わりを告げようとしておる、その希望を打ち砕くような行為は、私は断じて容認することはできない。それは、考えは全く私も同じであります。  そうして今、国連の諸決議を受けて、この問題が平和的に解決されるように、国際社会が力を合わせて、イラクに対して、国際法上も人道上も許されない問題、特に力によって一国を侵略、併合するということに対する反省を求め、撤退を求めているというこの原則に従った問題の解決、自由を拘束され人質同様に置かれておる日本人を含むすべての国の人々の自由、解放を求める、そこから問題は根本的に解決していくものと考えております。  今谷川委員指摘のように、日本イラクとの間には、イランイラク戦争の前あるいはその後においても、いろいろと経済協力技術協力問題等を通じて関係があったことは御指摘のとおりであります。私は、根本的な解決をし、国連決議の線に従ったイラク態度変更があるなれば、これは国際社会に再び入ってきて日本イラク関係を再構築する用意があるということも、先般イラクラマダン首相と会談しましたときにその用意があることも申し上げておきましたが、いずれにしても、第一歩は、原則に従ったイラク決断によって現状を変えていく、わかりやすく言えば、クウェートからまず撤退をして人質を解放する、そこからすべてのことが始まっていく、このように考えておりますので、御指摘のとおり私も考えておるということであります。
  10. 谷川和穗

    谷川委員 人質以外の問題でも、このイラククウェート侵攻におきましては、例えばクウェートにおった人々あるいはイラク国内からようやくイラク外へ逃れ出た避難民、これは大変な数になっておると思います。あるいは日本以外の国々の中でも、イラクに働きに行っておった人たちが外へ出た。ようやくイラクから外へ出たのですが、残念ながら何も持ち出せない。あの暑い砂漠の中にテントを張って大変な生活をしておる。これに対して、日本国政府は今までどんな対策を講じ、どんな措置をしてきたのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  11. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、特にヨルダンに多くの避難民が集まったこと、同時にヨルダン政府が、通過者も含めて、この間皇太子と会談しておりましたときには、もう九十万人近くの人が移動した。滞留しておる人もたくさんありまして、いろいろ難民キャンプができております。私はジョルダンのアンマンで難民キャンプの視察に参りました。そのときにはちょうど社会党の調査団の人も行っておられて、団長の矢田部さん以下皆さんの御連名で状況報告のお手紙も私のところまで現地でいただきました。ぜひ難民キャンプを見ろということで、私も予定に組んでおりましたが、ラマダン首相との会談が急に入って予定が長引きましたので、それでも私は特別機の出発をおくらせて難民キャンプを現実に見にまいりました。砂漠の中にテントを張って皆さんいらっしゃる。ちょうどそのときは、日本の飛行機がそれぞれアジア出身地へ帰還をするための協力の第二便を飛ばす前日でございましたし、また、医療先遣隊調査団サウジアラビアから一部分かれて難民キャンプの方へ来て、そのキャンプへ、どのような必要があるか、どのような協力ができるか、どんなことが大切なのか、調査をして帰った同じ日でございました。そうして、国連機関世界に対して支援の要請をしておりますので、世界に対する要請の過半数の二千三百万ドルの資金協力をするとともに、いろいろ医薬品その他の物資をジョルダンに提供をいたしました。そういったことを通じて、国連機関を通じて避難民問題については全力を挙げて協力をしておるところでございます。
  12. 谷川和穗

    谷川委員 七月の中旬以降でありますが、イラククウェートの間に主として石油問題で対立が始まった。これに対してエジプトサウジアラビアが仲介の労をとろうとして、それは失敗に終わったのですが、決裂してわずか二日後、イラクは突如としてクウェート侵攻を行った。そしてこれをまさに併合をいたした。これは明らかに国際間の平和の諸原則を踏みにじった侵略行為だと私は思います。だからこそ、せんだって北京において行われましたアジアオリンピック大会において、イラク選手団はこれは出場を拒否されて、クウェート選手団が場内に入ってきましたら期せずして万雷の拍手が沸き起こった。これは世界じゅう人々が不正とか侵略を許さないという決意の表明だと私は思うんです。  海部総理は、国連における制裁措置に先駆けまして、イラクに対していち早く日本制裁措置を決定をされましたが、これは侵攻が行われたわずか三日後の制裁措置であったのですけれども、その後、こうした各種の制裁措置がとられてきていると思うのですが、どういう制裁措置をとられて、それが現在どういう効果をあらわしているのかどうか、そのあたり総理はどう考えておられるのか、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  13. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のとおりに、今の平和を求める世界秩序、これは東西対決時代は、どういう表現をしたらいいんでしょうか、東側も西側もそれぞれトップの超大国があって、その力が枠内をぴちっと平和維持秩序としてやってきた。東西対決が終わって、世界共通の、国際間において平和を守っていこうという協調と協力関係に移ったときに、力による侵攻侵略という極めて十八世紀的な弱肉強食をそのまま行うような行為が起こった。これは許してはならないことだ。これを仕方がないことだと言ってみんなが黙って手をこまねいて見ておったのでは冷戦後の新しい国際秩序というのはどうなるんだという、そういった国際社会の心が一つになって、憂い一つになって国連の諸決議が行われてきた、国連が始まって以来、四十五年ぶりに初めてと言っていい安全保障理事会決議であります。東西対立の間は、安全保障理事会が満場一致で決めるということは想定されない問題でありました、特にこういった世界紛争問題に関しては。そこで、国際秩序を守るために国連が中心として機能を果たし始めたということでありますから、日本としてはこういったことを容認できないという立場国連決議をきちっと現実的に行っていくことは正しいことだという立場に立って意思を表明すべきであるというので、経済制裁日本が積極的に加わって、それはイラクに対して反省を求め、そして現状を平和的に解決していきたいという強い願いがありましたので、その立場を示したわけであります。その後の、もし御必要でしたら何本も何本も決議案ございますから、よろしければ政府委員から説明させますが……。
  14. 谷川和穗

    谷川委員 今回のその後の状態につきまして、この状態は実はイラクアメリカ対決なんだ、こういう見方をする人がおられますが、これに対して総理はどう考えられますか。
  15. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これはイラクアメリカ関係というものではございません。いわゆる国際社会侵略者として指定をされたイラク関係である、こう見るのが正しいと思うわけでして、これはただ単に一国と一国の対立状態だという、そういうものではありません。  ラマダン首相も、私に対して、これはアラブの問題だ、アラブの中で解決する問題だ、だから、アメリカを初めその他のヨーロッパの国、いろんな国が今出てきておることは根本的な解決にならない、あるいはまた、これはパレスチナ問題とかレバノン問題とかそういう中東全体の恒久和平の一環として同時に解決しなきゃならぬ問題だといういろんなことを言いましたけれども、私は、それはアラブの中が、アラブ首脳会議も、最初谷川委員指摘されたようにこの事態を心配して、エジプト大統領なんかが積極的に工作をした。アラブ首脳会議をやろうとし、呼びかけても、アラブ内部の意見が分かれ、アラブ内部にもこのことは許されないことだといってアラブ連合軍ができたり、いろいろ今抑止のために展開されて、これ以上イラクが平和の破壊を続けてはいけないという声はアラブの中にもあり、連合軍が展開されていますから、アラブの中の問題だという矮小化されたものでもありませんし、これだけ国連決議をし、国際社会がこれだけ深刻に憂いを持ち、世界じゅうがこのことはいけないんだと言っておることが、もうアメリカイラクという二国間関係に矮小することはできませんし、それでは問題の根本的解決にはならないと私は思っております。  同時にまた、ミッテラン大統領提案とかブッシュ大統領提案とかいろいろ国連演説のことについて言われておりますが、私もニューヨークでその国連演説を聞きました。例えば、ブッシュ大統領局面を転回して、クウェートからまず撤兵をして、政府を復帰させて、人質を解放して、そういう国連決議に従った行動にイラクが踏み切ることがイラククウェート紛争とかあるいはアラブイスラエル紛争とかそういった中東恒久和平に関するさまざまな機会を提供することになろう。要するに、今こういう緊急状態をつくって抑止力をずっと張りめぐらす、クウェートに入ってきた軍隊をそのまま置いて、緊張状態の中で、長い間の歴史や経緯やいわくがある、ベーカー提案とかムバラク提案とかいろいろなことが行われてきた中東和平の問題と今現にこの緊張状態をつくった問題と一緒にまとめてといこうとはどだい無理な話であるから、まず局面を打開して、今極めてその緊張状態が不気味に安定しておるというか、不安定の中で膠着状態を持っておるというか、先行きに極めて懸念の持たれる状況が今現にあるわけですから、そういった問題の局面をまず転回して、局面を打開して話し合える状況をつくるところに本当の安定的な和平交渉が行われるではないかという提案をそれぞれされておるわけでありますから、今その局面を転回する立場にある者、局面を転回することのできる立場にあるのはイラクですから、イラク決断をして、つくった原因を取り除き、局面を転回することが一番先決な問題であるということをそれらの提案も触れておるし、私もそのことは主張してまいりましたし、日本国連の二百四十二号決議に従った中東恒久和平に対しては立場を鮮明にしておるわけでありますから、同時に、この問題でイラククウェートからの撤兵ということを決断すれば、そして原則に従った第一歩が転回されれば、さきにお話しになったように長年の経済協力の再構築もこれは考えておるわけでありますから、平和を願う世界人々の希望と期待にこたえて、この問題は地球的にまさに考えられるべき問題であると私は思っておりますから、御質問の趣旨と沿っておると思います。
  16. 谷川和穗

    谷川委員 国連ができるときに非常に明らかにされた考え方ですが、かつては古典的に戦争というものは宣言からスタートする。そういうものじゃない。要するに戦争を、これを平和のアンチテーゼと考えないで、平和の反対語は戦争じゃない、平和欠落だ。  今国連のお話が出ましたけれども、世界じゅうイラク行為に対しては一斉に非難の声が上がって、国連安保理事会では次々と、まさに全会一致です。全会一致で決議を採択してきておって、今日まで既に十回決議が成立をしておる。今までにないほどの迅速な動きでございますが、これは米ソの冷戦終結という新しい事態を迎えて、国連が平和欠落に対して新たに行為を起こそうという決意のあらわれだと私は思います。こういう全世界が新しい平和の構築へ向かおうとしているときに、まさにゲリラ的行為国際法違反を重ねたのがイラク行為だ、こう考えます。  そこで、我が国国連関係考えた場合に、これまで我が国国連に対する貢献は資金援助が主体をなしておった、私はこう考えておるのですけれども、こういう状態になってきては、資金援助だけでは国際国家日本としては不十分な状況になってきた、こういうふうに総理はお考えになって今回のこういうような法案をお出しになられたのか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  17. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のとおりに、戦後、国連の活動に対して日本はいろいろな立場から協力をしてまいりましたが、主として目立つものが資金面の協力であった。拠出金は、私の記憶に誤りなければ、日本が二番目の拠出国で、必要とする全資金の一一・何%、端数はちょっと今正確に記憶しておりませんが、その程度になっておると思うのです。このことはまた逆に言いますと、世界の平和と自由貿易という秩序の中で日本が非常に戦後の経済力を高めてきた。我々自身が気がついているといないとにかかわらず、大ざっぱに言って世界の経済規模二十兆ドルの中でアメリカが五兆ドル、日本は三兆ドル、ヨーロッパ全部合わせて五兆ドルですから、それはそれにふさわしい責任を果たさなきゃならぬという意味においても、一国としては二番目ですから、二番目の国連分担金を拠出しておるということは、それはそれで一つの責務を果たしておるわけであります。  ただ、それだけでいいかという考え方が非常にあるわけで、黙って見過ごしてしまって、既成事実ができてしまって、だめだ、だめだと言っておるだけでいいのだろうか。お互い人間が共同生活し、共同社会で暮らしているときに、みんながやはりお金だけで済ましていけないではないか、まあそういった声もいろいろなところから出ておることも事実ですし、私も、できるだけ要員参加をして汗を流した協力もしなければならぬのではないか、率直に言ってこう考えました。  きょうまでも国連のいろいろな活動に対して、全くボランティアの形で協力をしたことはございます。ところが、今度の場合のような湾岸危機国連決議を受けて皆が片つけようというときに、日本はじゃお金のほかに何があるだろうかということを考えて調べてみましたが、それに対する、対応する制度も率直に申し上げてできてございません。そうすると、今後世界の平和を守っていくために大きな責任を有する者とすれば、これは国際社会の中で、日本国際社会の中から受けてきた恩恵によって、幸運な条件によっていろいろなことを積み重ねて今日あることを思えば、相互依存関係の中でやはり許される範囲内のことはしなければならぬ、こういう気持ちが私には強くいたしました。それが今度国連平和協力法を政府が国会にお願いをしておる、それはそういう制度、仕組みをきちっとつくっていこう、そういう考えに立ってのものでございます。
  18. 谷川和穗

    谷川委員 しかし、日本のできる貢献策は、何といっても日本が一番得手とするところは資金援助ではないかという指摘もあります。そして、政府がそれをまるで振り切るような形で自衛隊まで出して人の面でも貢献しようというからには、もうちょっと国民の理解を得てからでなければ無理だ、こういう指摘もあるようですが、それに対して総理はどう考えられますか。
  19. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今いろいろな貢献案というものを考えて、物資協力とか輸送協力とかいろいろなことを考えて実は政府はやろうとしたのです。また、細々とという表現をあえてつけますけれども、物資協力や輸送の提供等もいたしました。しかし、何といっても法の制度、仕組みがないということと、民間のボランティアの人に求めるだけじゃなくて、出すなれば公務員が、しかも宣誓をしておる公務員がまずその任につくべきではないかという声もございました。  しかし、今谷川委員おっしゃるように、日本にはいろいろな制約もございます。私は、日本の憲法の枠組みの中で、例えば四十五年前の歴史の反省に立って、二度と戦争はしません、侵略戦争は絶対に、アジアに対して迷惑をかけたことに深い厳しい反省をしております、軍事大国への道は歩みませんということを誓ってきたわけでありますし、同時にまたそのことが、そういった理念に基づいた立場アジア・太平洋地域の平和と安定に役立ってきたということもこれは事実だと思い、これは大切にしていかなければならぬということを私も思っております。したがって、それは所信表明演説でも申し上げたところであります。  しかし、考えてみますと、日本の憲法の理念というのは、すべての人々の信義と公正に信頼をして生存と安全をゆだねようと決意をして、そして平和の理念を掲げてこの世界の中で名誉ある地位を占めたいと思う。いずれの国も自分の国のことだけを考えておってはいかぬわけであって、他国のことにもきちっと思いをいたせ。表現はちょっとあれですが、国際間を共通するルールというものに従って、その中で名誉ある地位を占めたいと思うと言っておるわけです。そういたしますと、お金だけ、それでは済まぬのではないだろうか。私はそういった意味で、できることとできないことの範囲はありますけれども、武力による行使とか武力の威嚇ということをするのはこれはいけませんから、そういったような問題をきちっと歯どめをかけて、そうして国連決議を受けて、今日現在でいえば、それぞれの国が行っておる湾岸の平和回復活動に対する日本としてできるだけの支援は何であろうか、あるいはもう少し幅広く国連平和維持活動に対して何が協力できるのだろうかということをいろいろ考えてまとめ上げたのが、今国会に提案をした平和協力法でございます。
  20. 谷川和穗

    谷川委員 その平和協力隊メンバーに自衛隊を使うということになると、なぜ自衛隊が必要かという問題が当然出てくるわけです。平和協力業務に専念する専門家集団を自衛隊とは別に育成する方がいいか、あるいは自衛隊を海外に派遣することは筋違いだとか、あるいはさらにアジア諸国などの懸念を招くおそれがある、こういう議論が出てくるのは当然な話なんですが、今回の法案に関連して、協力隊メンバーになぜ自衛官の参加が必要なのか、これをはっきり御説明をいただきたいと思う。さらに、これでは自衛隊の海外派兵だと言い切る方もおられるわけですが、この点についても総理のお考えを述べていただきたいと思います。
  21. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 あらゆる立場のすべての国民の皆さんに門戸を開いてお願いをするのですが、例えば輸送協力一つをとらえてみましても、船にしろ飛行機にしろ、それを有効に効果的に輸送協力に参加してもらうためにはどんなことが必要なんだろうか、それを動かす訓練も、乗員の組織的な日常の訓練も技術も、いろいろなものが現実問題としては必要になってくるということでありました。また、貢献策のときに最初四輪駆動を八百台提供しようとしたこと、御承知のとおりと思います。海員組合の皆さんの高い次元に立っての判断で第一船は動いたのですけれども、率直に申し上げて、あのとき港で長時間話し合いがありました。私は、それは外国から見ると、どうしてそういうことになるのだろうかといういろいろな議論がございました。けれども、国はそれに対して強く要請する立場も権利もありませんから、ひたすら必要を説き、お願いをしたのです。  そのとき、ある筋からは、自動車を積んだ輸送船はいけないけれども、きょう現在ペルシャ湾周辺に二十杯もの日本の船がいるではないか、これをどうするんだと言われたときに、これは、それに対してはどうすることもできない問題であるということも思いました。ですから、船はないし飛行機はないし、そこへ組織された人が、日ごろの行動の中でそういったことができるようになっておるわけでありますから、対外的に懸念を表されないように、武力行使や武力使用ではないんだという歯どめをきちっとかけるとともに、その輸送協力に必要とあるときには特に平和協力隊に参加をしてもらって対応することが、実際に効果的な運用をしようと思うときには難しいのではないか。  昨日、一昨日の本会議討議で、北欧の待機軍のようなものを考えたらどうだ、念頭に置いて調べたらどうか、全く別の常備軍的なものをつくったらどうだという御指摘もございました。私も、あれは北欧四カ国のものやカナダのものも調べさせていただきましたけれども、常に常備的な組織として訓練をし、設置をされ、やっていらっしゃる。参考になる点は確かにございますが、それを今から始めようとすると、一体どれだけかかるのか。期間もそれから人も、それからお金も、あるいはそれに必要な飛行機とか船をつくるとしても、あの政府専用機すらまだ現実に入手されておらぬという現実等を考えますと、日ごろのいろいろな問題を考え総合的に判断した結果、そこの歯どめをきちっとかけて平和協力隊に参加をして、そして平和協力隊の本部長の指揮下に置いて、業務計画をつくり、その業務計画の中で必要とされるものを必要とするときだけ使う。だから、規模とか期間とか任務というものは、そのときどき内閣が最終的には決定するわけでありますけれども、平和協力会議というものを関係閣僚において構成をしてそしてやっていこうという判断でありまして、これは自衛隊のみならず、その他のすべての公務員の皆さんに、そして民間の有志の皆さんにお願いをしておるわけで、例えば選挙監視とかそういったようなことに出ていくときには、これは地方公務員の皆さんにきょうまでもボランティアで参加していただいておった経緯等もありますから、あらゆる場面が想定されますので、そのような対応をしておるところでございます。御理解いただきたいと思います。
  22. 谷川和穗

    谷川委員 平和協力隊に、政府機関の構成員で必要な技術、能力等を持った職員を隊員として派遣することができることになる、この法律が成立した場合。平和協力隊に公務員が含まれるということは、国連が行う決議を受けて行う国連協力に対する我が国の姿勢や責任を内外に明らかにする上で、私もこれは不可欠の問題だと思っておりますし、こんなものは民間にお願いしてできるものでもないし、民間だけがやる仕事でもない、こう考えます。それから、国民の間でも、民間だけにお願いするということはどう考えてもこれは納得いかない、こういう国民感情も存在いたしております。ですけれども、その場合でもなおかつ、まだ自衛隊以外の公務員にした方がええことないのか、こういう議論があるわけです。  したがって、自衛隊をこの際平和協力隊に派遣する、その構成された平和協力隊を派遣する、派遣について二段構えになっておりますが、その辺のあり方については、特にこれから行われますでありましょう特別委員会などにおいて政府の皆さん方がはっきり、なぜ自衛隊の手を借りなければならないかということはやはり国民の皆様方に質疑の間を通じて明らかにしていただきたい、私はそう思っております。  そこで、外務大臣にお尋ねいたしますが、国連平和協力隊が行う平和協力業務についてお伺いをいたしたい。平和協力業務にはどんなものがあるとお考えになっているのですか。
  23. 中山太郎

    ○中山国務大臣 平和協力業務には、停戦監視あるいはまた選挙監視、選挙の実施、いろいろと、それからさらに地域の復興、医療活動、このようなものが一応この法案の中でその項目として掲載をいたしておるということも御理解をいただきたいと思います。
  24. 谷川和穗

    谷川委員 今外務大臣の申し述べられました平和協力業務というものの中に、これはやはり自衛隊をこの平和協力隊に参加させるときに議論しておかなきゃならぬことがあると思うのですが、平和協力業務というけれども、今回政府提案しましたこの国連平和協力法案は、実は、自衛隊を海外へ派遣するからには、これまでの憲法解釈を大きく逸脱するおそれがありはしないか、あるいは、参議院で行われた自衛隊の海外出動は行わないという決議にも反するのじゃないのかとか、あるいは、自衛隊の海外派兵は憲法九条第一項により禁じられているという従来の政府見解にも抵触するのではないか、こういった議論がありますが、これについてどうお考えでありましょうか。
  25. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 自衛隊の問題につきましては、自衛隊を自衛隊としてそのままということは考えられないわけでありますから、一たん平和協力隊の指揮下に入ってもらう、そして平和協力隊の本部長の示す業務計画に従ってそれのみで動いてもらう、そしてそのとき大切なことは、平和協力隊は武力行使を目的とするものではありませんし、武力による威嚇をするものでもありませんから、原則非武装でこれらの業務に当たるという原則をきちっと立てております。  海外派兵という問題と海外派遣という問題は、きょうまで長い間の論議の中で定着してきた定義だと思いますけれども、派兵ということは、これは武力行使の目的を持って自衛隊が自衛隊として他国の領土、領空、領海に出ていくこと、これが派兵だと思いますし、それから、きょうまでの議論の集約でいけば、海外派遣というのは、武力行使の目的を持たないで行くということでありまして、それは現に例としては、遠洋航海とか南極観測に行く自衛官は海外派兵ではなくて海外派遣として扱われておると私は受けとめております。したがって、その問題についてはそれは憲法違反ではない、こう考えますし、また、今お触れになった昭和二十九年の参議院の自衛隊の海外出動を禁止するというあの自衛隊法が発足したときの決議の問題ですけれども、これは参議院で有権的な解釈はおやりになりますし、また後で法制局長官なりだれかから理論的なお話はしていただけばいいと思いますが、私の今の御質問を聞いての率直な印象を申し上げますと、昭和二十九年にあのときの世界情勢、あのときの日本立場からいって、海外出動というのは自衛隊がそのままの姿で出ていくということを念頭に置いての決議であったと私は思うのです。それは専守防衛だから出ていってはいけないということでスタートをしたときですから、そのとき、今日までたって世界が緊張緩和の流れが出てきて、国連が機能するようになって、そして平和協力をする、武力行使は伴わない、そういった条件のもとで平和協力隊業務に参加して平和協力隊として出ていくことまでそのときの想定の中にあったのかどうかということが私は問題だと思いますから、改めて、この法案の趣旨、内容、やろうとしておりますこと、それは決して武力行使ではないし、武力による威嚇でもないし、世界の平和を、国連決議を受けた形で行われるいろいろな行動に対して、日本ができる限りの許された範囲内での協力の一環としての輸送協力とか医療協力とか、そういったことに限定をして行おうとするものでありますから、海外派兵とか憲法違反には当たらないと私は思っております。
  26. 谷川和穗

    谷川委員 国民感情という立場からお尋ねをいたしますが、二度と再び軍事出動はしないと決意し現行憲法を採択したはずなのに、それが短期間になし崩しになる日本のこの姿を見れば、かつての日本の軍国主義復活と映るのではないか、そう言う国々もあるのじゃないか、こういう心配も国民の間にはあるようでありますし、さらには、今度国内では、せっかく戦後とり続けてきた平和路線から逸脱するのじゃないか、こういう懸念の声もあるように私は感じております。  ですから、一番大事なところは、今回のこの法案は憲法に抵触するものでもなく、また憲法の解釈を超えるものではないと明確にはっきり明言できるのかどうか、ここがポイントだと思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。それでは法制局長官にお願いいたしましょうか。
  27. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、何度も申し上げましたように、憲法に抵触するものではない。同時に、そのことは憲法の法的な解釈の問題になってまいりますので、法制局長官から答弁をいたさせます。
  28. 谷川和穗

    谷川委員 結構です。大事なことですから、どうぞお願いいたします。
  29. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答え申し上げます。  まず、委員指摘の海外派兵の問題でございますが、海外派兵につきましては、従来から答弁申し上げておりますし、また質問主意書に対する答弁書という形でもお答え申し上げているところでございますが、若干繰り返しになりますが、恐縮ですが申し上げますと、海外派兵といいますものは、これはいわゆる法令上の用語という形では使われておりませんけれども、海外派兵というのは、従来問題になってまいりましたのは、憲法九条のもとにおきます自衛権の限界、こういうものとの関連で問題になってきた。そういう意味で、一応国会で定義を申し上げつつ海外派兵を言っておりますのは、いわゆる海外派兵というのは、「一般的にいえば、武力行使の目的を持つて武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣すること」、こういうふうに定義づけて申し上げているわけでございます。こういうふうな海外派兵はなぜか、それは、その考え方には、一般に自衛のための最小限度を超えるものだ、こういうことから、そういうものは憲法上許されない、かように申し上げているわけでございます。  他方、そういう武力行使の目的を持って武装した部隊というふうなことでない、いわゆる海外派遣、これにつきましては憲法上許されないものではないということでございまして、現実に、例えば南極に対する輸送でございますとか、あるいは教育訓練のための問題でございますとか、そういうふうな問題が現実にございますので、そういう意味で、海外派兵と海外派遣とは私どもは区別して従来から申し上げているところでございます。  今回の問題につきましても、そういう意味の国際連合平和協力法案におきます、この中に盛られましたものは、決して先ほど申し上げましたような海外派兵に当たるようなものではない、かように申し上げられると思います。
  30. 谷川和穗

    谷川委員 この問題につきましては、さらに特別委員会が開かれましたら恐らく審議が深まってくるのだろうと思います。どうぞひとつその審議の中で、国民に不安が起こるようなこと、あるいはどうもよくわからぬがというようなことがないように御説明いただきたいと思います。  ところで、この法案が成立した後の話なんですが、当面の支援対象はアメリカを中心とする多国籍軍ということになるのだと私は思います。これは外務大臣にお尋ねした方がいいと思いますが、武力行使もあり得る多国籍軍へ武力行使を前提としない平和協力隊を協力させるというのはどうもよくわからない、こういう指摘もあるのですが、ひとつこれは具体的な事例を挙げて説明をしていただきたいと思います。
  31. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今、委員お尋ねの多国籍軍への協力という形のものは、この平和協力隊ができました場合に、相手国、つまり多国籍軍がいる相手の国の政府と協議をしながら、その国における医療活動あるいは輸送活動に従事をするというものでございまして、多国籍軍のいずれかの軍の指揮命令系統に入るものではない、こういうことでございます。
  32. 谷川和穗

    谷川委員 少し議論を先へ進めるような形になりますが、将来の話として、国連軍ができた場合は自衛隊はこれに参加できるとお考えなんでございましょうか。これは法制局長官から御答弁いただいた方がいいかもしれませんが、お願いいたします。
  33. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答え申し上げます。  国連憲章に基づきます、いわゆる正規のと俗称言われておりますが、そういう国連軍へ我が国がどのように関与するか、その仕方あるいは参加の態様といったものにつきましては、現在まだ研究中でございまして、結果を明確に申し上げるわけにはまだ参っておらない、かような段階にございます。  ただ、そこで考えます思考過程と申しますか、研究過程と申しますか、そういうふうなものを申し上げますとこういうことになろうかと思います。  まず、従来から申し上げておりますが、自衛隊につきましては、我が国の自衛のために必要最小限度の実力組織である、したがって憲法九条に違反するものではない、かようなことが第一点でございます。  それから、そういった自衛隊の存在理由と申しますか、そういうものから出てくることといたしまして、例えば今申し上げました武力行使の目的を持ったいわゆる海外派兵でございますが、こういうものは一般に自衛のための必要最小限度を超えるから、そういう意味で憲法上許されない。あるいは集団的自衛権、これについても申し上げておりますが、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃、これに対しまして、自国が直接攻撃をされていないにもかかわらず実力をもって阻止する、こういうふうな集団的自衛権につきましても、我が国国際法上主権国家であります以上そういうものを持っているとしても、その権利を行使することは憲法九条のもとでは許されていない、すなわち我が国を防衛するため必要最小限度の範囲を超えるんだ、こういう観点から憲法上許されない、こういうことを言っているわけでございます。あるいは今までの、正規のではございません、いわゆる平和維持活動のようなものを行っておりますものにつきましても、その目的、任務が武力行使を伴うようなものであればこれは参加することが許されない。こういうふうなことを従来質問主意書等でお答えしているところでございます。  こういった憲法の九条の解釈といいますか適用といいますか、そういうものの積み重ねがございまして、そういうのから推論してまいりますと、その任務が我が国を防衛するものとは言えない、そこまでは言い切れない国連憲章上の国連軍、こういうものに自衛隊を参加させることにつきましては憲法上問題が残るのではなかろうか。  ただ一方、他方におきまして国連憲章の方を考えますと、国連憲章の七章に基づく国連軍というのはいまだ設置されたことはないわけでございます。それから、その設置につきまして、たしか国連憲章の四十三条だったと思いますが、そこにおきまして特別協定を結ぶというふうなことも規定されてございます。この特別協定がいかなる内容になるか、まだ判然としないということでございます。  それからさらに、国連憲章四十三条で挙げております兵力、援助、便宜の供与でございましょうか、そういった三つのものにつきましても、そういうのをどういうふうに組み合わせて行うか、それ全部を行う義務は必ずしもないとも解されております。さらにもっと申し上げれば、国際情勢が今急速に変化しつつあります。  こういうふうな諸点を考えてまいりますと、現段階でそれを明確に申し上げるわけにはなかなかまいらない、これが今研究中と申し上げた趣旨でございます。将来国連軍の編成が現実の問題になりますときに、そういう意味で以上申し上げたようなことを総合勘案いたしまして判断していくことになろう、かように考えております。
  34. 谷川和穗

    谷川委員 そうすると、国連軍へ対する自衛隊の参加というような問題は、これはまだこれから先の話であって、この法律そのもの、今提案されている法律そのものは、将来できるかもしれない国連軍への協力とは関係ない、国連軍に対する自衛隊の協力といいますか参加とかいうものとは関係ない法律だ、こういうふうに理解してよろしいということでございますね。
  35. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいまお答え申し上げましたのは、まさに今後のいわゆる国連憲章に基づく国連軍との関係を一般論として申し上げた、研究段階であるというその内容を申し上げたのであり、今度の法案とはおよそ関係のないことでございます。
  36. 谷川和穗

    谷川委員 大事な問題ですから重ねてお尋ねいたしますが、そうすると、国連軍への参加というような問題はかなり先の話で、それで国連平和協力法はこういう先の方の話に一々絡ませていかない方のが大事だ、そっちの方が大切なんだというふうに理解すればよろしいのか。それから、実は国連軍ができたら、この法律が終わっちゃうんでなくて、この法律も動いているかもしれないので、国連軍ができたらこの法律が動くんだ、こう思っている方々もたくさんおいでになるかもしれないけれども、実はそうじゃない、国連軍に対する協力とこの法律が目的としているところとは違う、こういうふうに理解すればよろしいのでございますか。
  37. 工藤敦夫

    工藤政府委員 国連憲章の第七章の国連軍がいまだできたことはないわけでございます。それから、それができますときに、例えば国連憲章の四十三条で特別協定のようなものが結ばれるということが書いてございます。国連憲章の、条約の内容でございますのであるいは外務省の方からお答えいただくのが適当かもしれませんが、それと今度の法案との関係でございますので私の方からお答え申し上げれば、まずそういうふうなことで特別協定が国連と各国との間で結ばれるようなときにどのような態様のものが出てくるか、判然と現段階においてはいたしません。したがいまして、この今回の国連協力法案とそれとの関係がどういう関係に立つかもまだ明言するわけにはまいりません。したがいまして、今度の武力行使を伴わない、あるいは武力の行使を行わない、あるいは武力による威嚇を行わないという基本原則は今回の法案に明確に書いてあるわけでございます。そして行い得る平和維持活動の範囲も書いてあるわけでございます。それとそういった事態になりましたときの対応をどう考えて、行い得るものは行い得るけれども、それ以上のことは現段階で申し上げることはできない、かように思っております。
  38. 谷川和穗

    谷川委員 ちょっと具体的な問題をお尋ねしますが、国連平和協力隊が今回の湾岸危機に派遣された場合、協力隊は法的には軍隊と見られると考えていいのか、また、自衛官を平和協力隊へ出すわけですが、これは軍人として取り扱われるのかどうか、この辺はどうなんでございましょう。これも法制局長官から御答弁いただいたのがいいのかな、それとも外務大臣から御答弁いただいた方が……。どなたでしょうか。それじゃ条約局長、お願いいたします。
  39. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  この国連平和協力隊はいかなる性格のものかという点についての御指摘でございますが、国連平和協力隊は、国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議を受けまして行われる国際連合平和維持活動その他の活動に対しまして、武力の行使または武力による威嚇を伴わない平和協力業務によりまして協力することを目的とする組織でございます。したがいまして、これ自体は軍隊ではございません。  他方、自衛隊は憲法上必要最小限度を超える実力を保持しない等の厳しい制約を課せられております。そういう意味におきまして通常の観念で考えられる軍隊ではないかもしれませんが、国際法上は軍隊として取り扱われる場合が多いと思います。自衛官も国際法上の軍隊の構成員として取り扱われるものと思います。この点におきましては、自衛隊の部隊等または自衛官が平和協力隊の業務に参加している場合においても変わりはないというふうに考えております。  以上を総合いたしますと、平和協力隊自体は軍隊ではございませんけれども、平和協力隊を構成する自衛隊の部隊等または自衛官があれば、これらはそれぞれ国際法上は軍隊または軍隊の構成員という地位を保持するということになろうと思います。
  40. 谷川和穗

    谷川委員 総理はどういうふうにお考えになっておるか存じませんが、私は、国際環境は大変なスピードで変化しつつある、こう考えますので、政治的な御判断をお尋ねをいたしたい。  政府見解の転換についての質問なのですけれども、武力行使の目的や任務を持つ国連軍に自衛隊が参加することは憲法上許されないという政府見解を転換される御意思はないか。実は、不正を憎むとか、平和を守るとか、平和を侵されてこれを制裁するというような場合のことを考えてみますと、東西対立が解消をして、今回のイラクの事態に見るように、安全保障理事会決議が相次いで打ち出されてくる。それこそ迅速かつ適切な対応がなされるようになった今日この時代においても、これまでの政府見解は転換する意思を持ち合わせないということなのかどうか、これはいかがか。  それから、時代が変わってきたという認識を今、さきに私申し述べましたけれども、これは、各政党それぞれ共通な認識をお待ちのような感じを私は持っておるのです。したがって、この際総理にその点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  41. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 時代が変わってきた、あるいは変わりつつあると言った方が正確かもしれませんが、その認識は各党とも皆お持ちになっておることはきのうまでの本会議の質問でも明らかでございます。それは私は、好ましい方向に向かって変わりつつあって、きょうまでは東側と西側に陣営がそれぞれ分かれて、東は東、西は西でそれぞれ首脳会談なんかをやって、その中の結束を誇って競い合ってきたけれども、もうやはり自由化、民主化の波に抗し切れなくて一つになる。一つになれば、もう東西ではなくて国連中心だということに変わってくるのは、これは歴史の大きな流れだろうと私は受けとめます。  それと、今おっしゃいましたように、そういった中において日本はどうしていったらいいか。今この湾岸危機というのは、その中に起こった横紙破りの、力でもって物を片づけようという間違った思想がイラクによって表明されておるわけでありますから、これに対しても、国連決議をして、その決議を受けていろいろな国が出ておるわけです。それが今、たしか海上封鎖まで入れると二十四カ国、アメリカ、欧州、アラブアジアの一部、いろいろ出ておりますけれども、そういった国々が、今平和維持活動といいますか、平和回復活動といいますか、国連決議に従って、それを受けての行動をしておる。それに対して、日本資金協力をしたり輸送協力をしたり医療協力をしたり、憲法の解釈を変えないで、その範囲内でできることは何かというので決めたのがあの貢献策でございます。遅過ぎる、少な過ぎるという批判は受けましたけれども、しかし、じゃどれくらいしたらいいんでしょうかということに対して、具体的にこれくらいだとおっしゃった党はございません。私はそういった意味で、できるだけのことをやって協力をしていこう、こういうことなんです。  それから、多国籍軍の中へ日本が入っていって一緒になって並んでやろうというようなことは、今の憲法ではできないわけですから、国の武力行使をそこまで行って一緒になってやろうというわけじゃありませんので、したがって、輸送協力とか医療協力とか、その他いろいろなことを十分自覚をしながら、武力の威嚇、武力の行使を伴わない協力をどうするかということを、これは日本日本として内閣で最終的にはきちっと決める、そして業務計画の決まったものを平和協力隊を使ってやるということでありますから、今考えております法案、今の行っております協力の対応そのものについては、日本国憲法の枠内で、また、その理念、精神の中で協力をしておるものであると考えております。
  42. 谷川和穗

    谷川委員 総理、私がお尋ねをいたしましたのは、今までの政府見解を転換される意思はおありにならないかとお尋ねをいたしたわけでございます。それは、時代が変わってきたという認識は各党みんな共通に持ち始めているのだ、こういうことからお尋ねをしたのです。  私、たまたまきょうここへ、友党でありまする社会党の内部の若い方にたくさんいろんな動きが出ておりまして、そのうちの一つをちょうだいしてきたのですけれども、意見書というのを持っております。これは八月の三十日に「日本社会党中央執行委員会殿」、十四名の国会議員の方々が署名されて出しておられる要望書なんですけれども、この中に、イラク問題は手をこまねいていることは許されない。「わが国も積極的に具体的行動すなわちカネ・モノ・ヒト・チエを出す責任がある。」そして憲法の問題に触れておられまして、「すべての国が共同で行う「普遍的武力行使」」を憲法は禁止していない。そして「わが党と」、これは社会党のことですね。「わが党としても政府に任せて、「してはならないこと」を列挙するだけでなく、政権政党であるならばどうしたかを念頭に、「するべきこと」を積極的に提言する必要がある。」私は、まさにそのとおりだと思うのです。これは、時代がすごい勢いで今変わりつつあるわけですから、政府としても、こういうような各党の間に考え方がどんどん台頭しつつあるんだという現状を踏まえられまして、これを念頭に置かれて、さっき法制局長官は、私の質問に対して、今検討中——検討ではない、研究という言葉を使われました。研究中という言葉をお使いになられましたが、私は、あるいはひょっとして、政治情勢ですから、国際情勢ですから、意外に早く、過去には考えられもしなかった国連軍の編成というものができ上がったときどうするのかというこの研究は、相当急いで進めていかなければいかぬと思っておるのです。したがって、これはきょうは予算委員会ですけれども、次に開かれるであろう特別委員会のさなかにおいても恐らく議論になってくる問題だと思うのですけれども、私は、政府の中における研究を進めていただきたい。なるたけ急いで結論を得ておく、しかもその結論は、今私の申し上げましたような、各党とも共通の理解が今生まれつつあるんだということを念頭に置かれて、その判断をしていただきたいと私は思います。これは要望として申し上げておきます。  そこで、外務大臣にお尋ねをいたしますが、今日までの国連というところは、これは私の判断なんですけれども、事前に事が起こるということを防ぐということには余り向いていなかった、今日までの国連というのは。むしろ事が起こった後に、紛争当事国の間に割って入って紛争解決するとか、停戦監視をするとか、公正な選挙が行われるというようなことを見るとか、そういう活動が主体であったと私は思っております。「平和協力業務」として協力隊の役目として取り上げられている業務も、こうした国連のこういう分野を担当する仕事として挙げられている、こういうふうに理解してよろしいのかどうか、これをお尋ねをいたしたいと思います。
  43. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今委員指摘のように、平和協力隊の法案が成立いたしますと、政令で定めるこのイからトに至る各種の項目の事項について協力を行うということでございます。
  44. 谷川和穗

    谷川委員 カナダや北欧四カ国では、この紛争処理部隊とでも呼ぶ国連平和維持軍を常設している。これは先ほどからも総理のお口からも出ましたが、宗教の違いだとか人種の問題やあるいは領土問題などで対立して、その結果発生してきた紛争、この後始末というのは、これはそう簡単ではない、なかなか大変な事業だということから、平素から特別な訓練を行い、こうして国連活動を支援するために常設部隊を置いているのだと思います。  そこで、この常設部隊なんですが、いずれも部隊経験を持った士官が指揮官となっておる。これはまさにこういう人たちがやるべき仕事だという形で、こういう部隊経験を持った士官が指揮官になってきているんだと思うんですが、今度つくられる平和協力隊は、イラク問題が解決した後はどうなるんだ、これは平和維持軍として残すのか、それとも参加した自衛官は一たんそれぞれ部隊へ戻るのか、この点はどうお考えになっておられるか、お尋ねいたしたいと思います。
  45. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 お答えいたします。  一般的に申しまして、国連平和維持活動へ参加します平和協力隊、あるいは多国籍軍への協力の一環といたしまして派遣されます協力隊員は、一たん任務が終了いたしましたら日本に帰りまして、派遣元、例えば自衛隊の場合は防衛庁に戻るということで、それで、その任務が終了と同時に、そのグループに限りましてはすべて平和協力隊員がいなくなるということでございます。
  46. 谷川和穗

    谷川委員 大体流れはわかったんでございますが、部隊へ戻るのかという質問をさしていただきましたから、部隊へ戻す、こういう御答弁が出たんだろうと思いますが、少なくとも、その核といいますか事務局というか、中心になるものはそのまま残っていく、私はそのように理解をいたします。それで間違いないと思いますが、それでよろしゅうございますね。
  47. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 平和協力隊本部の事務局は残っております。
  48. 谷川和穗

    谷川委員 さて総理、少し観念的な話になって恐縮なんですけれども、他人のために尽くすとか世界の平和を守るということは、私は極めて崇高な行為だ、こう思います。  ここから具体的な話なんですけれども、停戦監視団——軍ではなくて団ですね。停戦監視団の問題でも、我が国は過去に苦い経験を持ったことがございます。昭和三十三年、松平国連大使がレバノン平和監視団の提案者となったことがありますが、そのときに国連の方から、それじゃひとつ自衛隊の派遣をお願いすると要請をされましたときに、逆にこれを断るという羽目に陥ったわけでございます。  今回のこの法律が成立すれば、我が国国際社会の一員として平和維持に責任の一端を果たす用意あり、いわば天下に宣明いたすことができるわけであります。私は、その意味では、今回のこの法案、賛成でございまして、さて、その次なんですが、将来の国連軍に対しても、政府見解の問題があると先ほどから言われておりますが、政府見解の問題が仮にあるにしても、国連から要請があれば応じていいのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。  というのは、特別協定ということがあるということになれば、これは必ず国会批准という手続を踏むわけですから、そのときに当然国会に諮られ、国会で審議されるということになると私は思います。それからさらに、東南アジア諸国や近隣諸国の理解が果たして得られるかどうかということが心配だということがあるかもしれませんが、これはあくまで国会決議で動くという全く新しい行為なのであって、しかも我が国は絶対に軍事大国にならないということをしっかり伝えることができれば近隣諸国は理解をされる、私はそういうふうに判断をいたします。したがって、国連要請があった場合には、憲法の許す限り最大限これに応ずるというのが私は国連中心主義だと思うのですが、いかがでございましょうか。
  49. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今まさにそういったいろいろな事態を想定しながら、私どもの方でも、これは重要な問題でありますから慎重に研究を続けておるところであり、また今谷川委員お示しになったように、各党の中にも、有志の皆さんの研究とはいえ、そういったときには国連軍に参加していいのではないか、許されるということがいろいろな研究で行われておるわけでありますから、私はそういったことも踏まえて、いろいろな立場を想定しながら検討を、研究を続けておるところである、こう言い続けてきましたが、具体的なことに、解釈について、さらに法理的なことについては、必要ならば長官から答えさせますが、今後もいろいろ研究は続けていきたいと思っております。
  50. 谷川和穗

    谷川委員 くどいようですが、国際環境が変わってきたということについて申し述べさせていただきたいと思いますが、スイスは国連非加盟国で、つまり中立国、どちらにも属さないということを宣言をした中立国であるということで国連に加盟をしていない。このスイスが、今回はいち早く国連決議による経済封鎖に同調いたしました。つまり片方の側に立つ選択、決定を行ったわけです。さらに、昨年の六月四日以降、中国は国際的に孤立しかかっておりましたけれども、これまた今回の国連安保理事会でイラク制裁決議に同調した。ということは、何かそこに今世界が歴史的転換期に差しかかっておるということがあるからこういう行為が起こってきたんじゃないでしょうか。この点について総理はどうお考えになられますか。
  51. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これはまさに初めての経験だろうと思います。そうして、御指摘になったようにスイスのみならず、国連に加盟していない韓国も、この経済制裁には、それは加わろう。国際社会の大義というものを今みんなが、国際社会が一致結束して貫いていくことが、許されないような暴力行為は座視しないということをみんな非加盟国まで決めておるということは、まさにこれは国際的な大きな変化である、私はそう思いますし、これはぜひ成功させなければいけないわけで、そのためにいろいろな国際な努力はまさに国連を中心にさらに今後一層強化されていかなければならぬ、私もこう考えております。
  52. 谷川和穗

    谷川委員 さらにもう一つ国際環境が変わってきたという問題について私申し述べたいと思いますが、一九八九年という年は、つまり去年ですが、一九八九年というのは大変な年であった、私はこう考えております。冷戦の象徴であったベルリンの壁が崩れた年、そして次々と東欧諸国の社会主義政権が倒れていった年。しかも驚くべきことは、ここが大変大事なポイントだと思うのですけれども、第二次世界大戦後東欧を支配し続けてきたソ連がこの動きを黙認した。それどころじゃない、支援したという事実がある。そして第二次世界大戦後最大の歴史的転換が、あるいは変動と言ってもいいのかもしれませが、ヨーロッパでは既に起こってきているということだと思います。  ドイツが統一しましたけれども、これも総理が国会、本会議でも触れられましたが、ドイツ統一のかぎは実にゴルバチョフが握っておった。ゴルバチョフは東独を失ったけれども、ドイツ国民の共感は得た。もしドイツとソ連の間に友好的な関係が成立すれば欧州の安定にも役立つ大変な問題だと思いますが、これについて総理大臣はどうお考えになられますか。
  53. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は今年の一月に崩壊直後のベルリン訪問をいたしました。コール首相とそのとき話したことは、ドイツの統一というのは、条約共同体から始めて三つぐらいの段階があろう、十ぐらいの項目があろう、大体数年という目盛りで話しておったのがことしの一月のことでございました。それが、壁が崩れて、両方の行き来が自由になって、お互いに見て肌で感じたら、もっと早く一緒になった方がいい、ドイツの通貨がそのまま通用してもいい、自由経済の制度の方がすばらしいからそのまま来てもいいということで、東西ドイツの統一というのは、スピードにおいても内容においても、ことしの一月の当のドイツの首脳の考え方をはるかに乗り越えるスピードで達成されたということであります。  私はこういったことを踏まえて、それはゴルバチョフ大統領決断であった。ゴルバチョフさんすら、大統領という肩書きで呼ばれるようになろうということは、去年まで私どもは考えておりませんでしたし、そのソ連が、ガットに加盟したいと、オブザーバーでもいいから入りたいと言い出されたことも、我々は予想もできませんでした。  同時に、そのソ連からは、去年は十一月に初めて日本に経済改革調査団が来たのですが、行ってみたらなかなか勉強するところがあるから、さらに四月に、それで六月には行政調査団が来て、ことし十一月にはまた改革調査団がソ連から来るという。だんだんこういう相互依存関係が、去年の前半までは想像することもできなかったようなスピードで、内容で加わってきております。  そして、欧州は九二年のEC統合ということが、何かマラソンで言えば、追い抜かれてしまったような形でドイツの統一が実現してしまって、そこを中心に欧州共同の家という姿なんかがどんどん定着してきた。私はそういう意味で、すべての国が国家の体制まで変えながら追求しているものは何であるか。これはやはり自由と民主主義と市場経済の価値であって、そういったものの中に世界じゅうが流れていこうとするのは、その背後には平和と安定がなければならぬということでありますから、世界の大きな流れを見ながら、この安定には世界じゅうが力を合わせてこういった方向性を守り、実現に向けてそれぞれの立場協力をしていかなければならぬ。基本的な考え方は私も全く同じでございます。
  54. 谷川和穗

    谷川委員 先ほど私が、欧州の安定にも役立つと、安定という言葉を使わせていただいたのですが、実は安全保障を頭に置きながら、安定を申し上げたわけでございます。  いずれ私は、ヨーロッパには検証や仲裁や危機管理などの役割を持つ常設の欧州平和維持軍と呼ばれるようなものがつくられる日が来るんじゃないかと思っております。NATOやワルシャワ条約機構の現在の動きを見ておると、やはりそれを超えた一つの大きな、こういう何か平和を維持する実効的な機構というものが生まれてくるんじゃないか。これがもし生まれてくるということになれば、これは考え方によっては、国連平和維持軍の地方版みたいなものだと私は自分で勝手に感じておるのですが、しかし、もうこういう時代の入り口に立ち始めているということは間違いない。これを土台にして、二十一世紀に向けた新しい安全保障に対する対応にしても、それから外交の基本に対する対応にしても、すべてを考えてくる時代が来たんだと私は思っております。  さらに、EC統合の意味は、私は、これはそれぞれの国々が持っておる主権を共同で管理する、これは安全保障の面から申し上げているのですが、学者の中では、不戦共同体の構築とも呼ばれる壮大な、驚くべき実験が今進行中、こういう表現を使われる方もおられます。  こういうふうに、みんなが自分の持っている主権を少しずついわば一種の供出をして、そして、これで共同の安全保障の体制をつくろう、しかもそれは西も東も超えた共同の体制をつくろうというヨーロッパが生まれつつあるということは、私は、今ここで議論されておる我が国のこの将来の問題につきましても大変大きな問題を含んでいると思いますが、この点について総理はどういうふうにお考えになられますか。
  55. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、従来のNATOというものも、これはやはりある意味では地域的な共同の安全保障の仕組みであったと思いますが、あくまでそれは地域的な問題でありましたが、そのNATOが、対立しておったワルシャワ条約機構軍との間の接点が冷戦の解除によって、同時に、ワルシャワ条約機構というのはもう実体的になくなっていくわけでありますから、それを含めた大きな欧州全体の総合安全保障の枠組みの構築に向けて動き出していくということは、私は、御指摘のような方向であろう、こう思うのです。  それから湾岸にしても、湾岸のすべての人々が、一たんこれが終わったら湾岸地域の共同安全保障の枠組みというものを何とか真剣に考えなければならぬということを考えておるようであります。  私は、アジアもいろいろ問題は起こっておりますから、それはその地域の共同の安全保障を考えようとすれば、今御指摘のように主権を供出したりみんなできちっと守っていくということになりますと、今の考え方と質が変わった世界観といいますか国家観といいますか、いろいろなものが欧州なんかでも芽生え始めつつある。ですから、これはEC議長であるアンドレオッチ・イタリア首相が、国連の安保理事会の理事国は、国々じゃなくてECとして第四番目の席を占めるべきではないかというような発想を言われる。そういったことというのは、まさに委員指摘のような問題が動きつつあるのではないかと私は考えるのです。一つ一つの近隣諸国との間柄やあるいはこの地域にある問題を解決をして、皆が共通にそういったものを話し合うような機運をそれぞれがつくり上げながら、そしてそれが将来の世界に向かって、国連に向かって全部それが押し及ぶようなことになっていくのはまさに理想の姿ではなかろうかと私も思いますけれども、近隣諸国との関係一つ一つ解決し、安定的な方向に持っていく努力を日本アジアにおいてまずしていかなければならぬだろう、こんなことと考えております。
  56. 谷川和穗

    谷川委員 それでは最後に、日本の国の憲法の背景というような感じのもので私はお尋ね申し上げて、それで最後の質問をさせていただこうと思うのです。  さっき私は、みずから自分の国の主権を制限する、こういう言葉を使わせていただきましたが、実は昭和三年締結されましたケロッグ・ブリアン協定のことを頭に置いて申し上げたわけです。十五カ国がパリに集まって署名した、俗に言う不戦条約でございます。この中に、国際紛争解決する手段として戦争に移さない、国権の発動としての戦争はこれを認めない、こういう考え方が出てきておって、これが後に西ドイツ基本法の第二十六条あるいはイタリア国憲法十一条、さらには日本国憲法九条あるいは国際連合憲章、あるいはサンフランシスコ平和条約など、至るところへ出てくるわけです。そして私自身は、日本国憲法がこうした世界の大きな流れの中にあって、しかも、これがしっかり国民の間に定着しつつあることを誇りに思っているのです。  なぜかというならば、このケロッグ・ブリアン協定のときに、実は日本の国は、濱口雄幸総理、幣原喜重郎外務大臣のもとに、十五カ国の核になる四カ国の一国だった。残念ながら、その後テロリズムと軍国主義の台頭で、せっかくこの名誉ある地位から滑り落ちた。そして今、六十年近くなって、まるで長かったトンネルを抜け出してくるように、目前に二十一世紀を迎えて、我々は再び世界平和に貢献する非常に崇高な使命を今与えられているんだ、こう思います。  したがって、国連平和協力法がこの国会に提案されたということを契機に、国民の間に非常に大きな関心の高まりが今生まれてきている、私はそれを肌で感じます。私はそういう意味で、海部総理初め、この席へお座りの、行政、日本の国を背負っておる、そして世界の平和に責任のある皆さん方のこれから後の審議に対して、ひとつ二十一世紀を見据えて、これだけ世の中は急速に変化してきているんだ、今までの政府の答弁とか今までの解釈、これでは実は日本国際に果たす責任は十分でない、私は心底そう思っておるので、こういう問題にどういう解答を与えたら一番いいのか、しかもこの法律そのものはそういうときに、国民に対して日本の果たすべき責任というものをはっきり、しかもわかりやすく国会の審議を通じて説明をしていただく、そして日本の新しい道というものをこの法律が示すということになったんだということを国民の皆様方に説明していただきたい。  どうぞひとつ、その決意を最後に総理のお口からお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  57. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 おっしゃるように、日本の憲法にも前文において平和主義の理念を掲げ、「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」という決意を表明しております。  私は、やはり戦後、世界のこういう大きな自由経済、自由貿易の流れの中で、そして平和の中で日本がきょうまで経済成長を続け、国内の生活を高めてくることができたのも、国際的な関係との間の相互依存というものが大きく働いてきておったと思うのです。逆に言うと、世界秩序が平和でなくなったとしたら、日本のきょうの立場があったのかなかったのか。なかったと言った方が率直だと思います。  私は、昨今いろいろな面で、日本アジアに対して、あるいはほかの諸国に対しても経済協力ができるようになってきたというのも、世界が平和の中で日本がこういう繁栄をすることができたからであって、その相互依存関係というものの中で日本はいろいろ役割を果たしてきた。けれども、それが今いろいろな角度から、それだけでいいのかという角度の批判があるし、私自身も、汗を流してともにこの共同社会というもののためには努力をしていかなければならない。国際社会で名誉ある地位というのは、それは、許されること、許されないことが、今もいろいろ御議論があった中で、日本が今直ちにとることができない手段、手だてもあります。しかし、将来に向かっても、やはりそれはどのようなことで許される範囲内で行っていくのか、現段階ででき得る限りの可能性を求めて、きょうまで着手しておらなかった国連決議を受けて行われる平和維持活動その他に対して、日本も汗をかこう、かつてのように、やりなさいやりなさいと言って提案だけしながら、実際に決まったときには出ていかれなかったというようなことでは、これはいけないのだということでありますから、平和協力法の中に書いてあります指針、それから業務計画をつくるときには、これはもうシビリアンコントロールの歯どめを内閣の責任においてきちっと果たしながら協力をしていきたい、こう思っておるわけでありまして、まさにこれを通じて国際社会に貢献する、平和に協力する日本の姿というものをさらに色づけていきたいと思っております。
  58. 谷川和穗

    谷川委員 ありがとうございました。
  59. 越智伊平

    越智委員長 これにて谷川君の質疑は終了いたしました。  次に、山口鶴男君。
  60. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、若干の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず、中東問題についてお尋ねをいたします。  今回のイラククウェート侵攻は、国連憲章さらには国際法違反のまさに許しがたい行為であると認識をいたしております。ただ我々は、この問題をいかにして平和的に解決をするか、このことに全力を挙げるべきだ、かように認識をいたしております。  我が国は、これら中東の地域に対して植民地化したこともございません。また、我が国は武器輸出三原則を堅持をして、そうしてイラク等これら中東の国々に対して一切武器を輸出をいたしておりません。そういう意味では、我が国はこれらの地域の平和解決の問題に最も積極的に努力し得る資格を持つ国である、かように考えております。  この問題については午後じっくり議論をいたしたいと思いますが、とりあえず、党といたしましては、ジョルダンにおります多くの難民の皆さん方の問題、さらには平和解決の問題、そして我が国の百四十一名にも上る方々が人質としてイラクに拘束をされている、これらの問題について努力をすべく、失田部参議院議員を団長とする調査団を派遣をいたしました。その努力もございまして、昨日、竹内さん、富岡さん、小堀さん、岩瀬さん、四名の方々が解放をせられたという報に接することができました。まことにうれしい限りだと思っております。  総理としても、我が国の邦人が今なお多数イラク人質として拘束されているわけでございまして、これが解放のために、平和解決のために努力をする決意があろうと思いますが、まずそのことをお伺いをいたしておきましょう。
  61. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘になりました、イラクに今人質状態に置かれておる邦人を初めすべての外国人の自由、そういったものを一日も早く実現しなければならないということは、委員おっしゃるとおりであります。だれがこんなことをしたかといえば、やっぱりイラククウェート侵攻が、あれは許されない武力侵略であったということも委員指摘のとおりでございます。  私は、お触れになったように、邦人の一刻も早い帰国、それには問題の根本的解決をすることがすべての第一歩だ、こう考えました。たまたま、今お触れになりました社会党の矢田部議員を団長とする訪問団がいらっしゃったときに、そのとき私がたまたま一緒になりましたから、お手紙もいただきました。私はその日、予定がなかったのですが、イラクラマダン首相との会談が急にセットされましたので、その場においては、まず基本的原則に立ってこの局面を打開して、湾岸の首脳のみならず世界じゅうが、国際社会が今非常に深い懸念を持っておる湾岸危機解決するために、まずクウェートから撤退をすること、クウェート政府を復帰すること、そして、日本人を含むすべての外国人の自由を一日も早く実現してほしい、それをすることが局面を転回することによって行われるならば、局面転回の立場にあるのはまさにイラク決断ではないかということを強く求めたわけであります。  ラマダン首相は私と会ったときに、最後に別れ際に、まだまだ言いたいこともあるが、話したいこともあるが、きょうはこれで、会ってうれしかったということですから、政治的な対話は閉ざすことなく続けようではないかと提案をいたしました。そのとおりだという返事でありますから、今後もあらゆる手段を通じてこれらの問題が根本的に片つくように全力を尽くしてまいりたい、こう考えております。
  62. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この平和的解決の問題は後で改めて議論をいたしたいと思います。我が国アジアの一員です。この問題もアジアで起きた問題です。アジアの一員としての我が国がいかにこの問題に関して、和平問題に対してリーダーシップを発揮するか、重大な問題だというふうに思います。問題提起をいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  海部総理は、昨日の参議院本会議におきまして、我が国国連に加盟をいたしました際の岡崎外務大臣の文書及び宣言、この問題について答弁をされたようであります。国連に兵力を提供するとすれば、憲法九条との問題を生ずることは、当時、明らかに文書等が示していることだと思います。海部総理は、国連加盟に当たって何らの留保が付されたことはない、こう答えているわけでありますが、これは明らかに誤りではありませんか。当時のあの文書、特に憲法調査会における西村熊雄氏のこの証言等々を考えて、この問題は、海部総理の答弁は誤りだ、明らかでありますので、これは取り消していただきたい。
  63. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨日の答弁は、これは純国際法上の問題として私はお答えをしたわけでありますし、また当時、日本国連に加盟しますときに出しました宣誓書、宣言ですか、その中には、「その有するすべての手段をもつて、この義務を遵奉することを約束するものであることを声明する。」こうなっておりますから、この中には留保をしたというようなことは感じられませんので、私は留保をしたとは考えておりませんと、こう答えたのであります。これが正式な国連に出した文書なんです。また、国連事務総長に出された手紙も同じことが書いてあるわけでありますから、「その有するすべての手段をもつて、履行することを約束する」というのが総長あての手紙だというこの事実に基づいて、これはいろいろなことを加味しないで、国際法上の問題とすれば、留保してあるわけではないというのが私の受けとめ方でありましたので、そのように答弁をいたしましたが、法制局長官から、あるいは外務省から答弁させます。私は、これは取り消せと言われても、その事実ですから、国際法上の問題について申し上げたわけでありますから、専門家から答えさせます。
  64. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 文書、宣言、これに対してどういう背景があったのか、どういうやりとりがあったのかということを西村熊雄氏は、憲法調査会第三委員会第二十四回の会議において明らかにいたしております。次のように言っているではありませんか。  国連加盟申請書を作成するに当たって、「憲法第九条との問題にぶつかりました。と申しますのは、国連憲章第七章の「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」の規定をみますと、国連加盟国はいわゆる平和維持のための集団的軍事行動に参加し、これに協力しなければならないことになっております。」「したがつて黙つておれば、日本国連憲章の規定によりまして当然安保理事会の決定する集団安全保障のための軍事行動に参加し、またこれに協力をしなければならないことになります。」「これは一見憲法第九条の関係で実行できない国際的義務でございます。だから憲法第九条に基く留保をする必要があると結論したわけであります。国際連合事務総長あて加盟申請文の最後に日本政府の声明として、日本国連に加盟したあとは国際連合憲章から生ずる義務を忠実に果す決意であるということを宣言いたし、そのあとに、ただし日本政府はこの機会に戦争を放棄し、陸海空軍三軍を永久に所持しないということを明らかにしている憲法第九条に対し注意を喚起するという一項をつけ加えておいたわけです。」ところがその間、確定した文書では、直接的な表現はいかがか、間接的に言った方がいいのではないかというサゼスチョンをいただいたので、結局この宣言という文書を作成するに至った。  そして日本政府は、国連憲章から生まれる義務を遵守するが、日本のディスポーザルにない手段、すなわち日本の可能な範囲にない手段を必要とする義務は負わない。すなわち、軍事的協力、軍事的参加を必要とするような国際連合憲章の義務は負担しないことをはっきりこの表現でいたしたのでありますと、こう言っているじゃありませんか。  したがって、国連加盟に当たって、日本政府は、憲法九条があります、したがって軍事的義務というものは負うことができませんよということを、この宣言では間接的な表現、ディスポーザルというような表現だったかもしれぬが、日本政府として可能な範囲、憲法九条がありますからこれはだめですと、そうでない可能な範囲において我々は義務を履行するんだということをはっきりしたということじゃありませんか。
  65. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 最初に申し上げたように、これは国際法上の文脈の問題でございますし、昭和二十七年六月十六日付に岡崎外務大臣が責任を持って国連に出した総長あての手紙並びにその宣言文というものを、私は昭和二十七年は、そのときの事情はつまびらかでありませんから全部その本物を取り寄せて見たところが、今山口委員おっしゃるのとちょっと私の解釈は違うかもしれませんが、「その有するすべての手段をもって、この義務を遵奉することを約束するものであることを声明する。」として、そこで閉じてあるわけですよ。ただし、これがあるとか、これがあっていけないとかいうことが留保条件としてきちっとわかるように書いてあれば、私も、それはそのとき留保がありましたとこれは申し上げますけれども、この手紙やこの宣言文を国連に出した、このことだけを見て考えると、これは留保条件がついておったんだとは私は受け取られません。  ただ、これは申し上げるように、国際法上のその手続の問題でありますから、外務大臣が出した書簡に関する問題でありますから、私のこの判断や解釈が間違っておるならば、条約局長から詳しく説明してもらいたいと思います。
  66. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 外務省のことを言いましたから、私は言いましょうo  一九六一年二月十日、佐々木良作委員の質問に対して、当時の小坂国務大臣が答弁をいたしております。憲法が、「そういう憲法が」というのは憲法九条の問題です、「日本にあるということは周知されておりまして、しかもそのことを承知の上で国連加盟が許されたわけでございますから、さような立場は貫き得る、かように考えております。」このように小坂外務大臣ははっきり答えているじゃありませんか。外務省も、国連加盟に当たっては、先ほど私が申し上げたようなことが周知徹底されておる、そのことを承知の上で国連加盟が許されたんだ、外務省は正式に答えているじゃありませんか。
  67. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国際法の問題が絡みますので、私から御説明させていただきます。  まず第一に、国連憲章上、国連軍ができます場合に、それに対する加盟国の協力関係がどういうふうになるかという点について、簡単に御説明させていただきたいと思います。  国連が、国連憲章第四十二条に基づきまして軍事的強制措置を決定する場合でございますが、これに対する加盟国の協力の具体的内容は、憲章第四十三条に基づきまして、安全保障理事会が加盟国ないし……(山口(鶴)委員「私は、そんなことを聞いているわけじゃないですよ」と呼ぶ)もうすぐ終わりますから。加盟国群との間で締結される特別協定で定められることになっております。この兵力の提供を含めまして、特別協定の内容の協力が義務となっているわけで、特定の内容の協力が義務となっているわけではございません。  右を踏まえますと、そもそも我が国として国連憲章上の義務を履行し得なくなるというようなおそれはないわけでございまして、そういう意味で留保をそもそもつけるという必要はなかったわけでございます。国際法上の留保と申しますのは、多数国間条約にある当事国が一方的に申し入れをしまして、その条約のある義務を自国との関係で制限するということでございますが、この宣言書に書いてございましたことは、そのような意味での留保ではないということでございます。  また、先ほど……
  68. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は、西村熊雄氏が当時の外務省の見解を明確に憲法調査会という公の機関で述べておる。そうしてそのことを踏まえて小坂外務大臣が、先ほど述べたように、国連加盟に当たっては、そのようなことを承知の上で国連加盟が許されたんだということを外務大臣として答えているわけです。ですから、結局国連に兵力を提供するとすれば憲法九条の上で問題があるんだということを当時日本政府国連加盟に当たって明確にした、そのことを一九六一年、小坂外務大臣は外務省を代表してそのことを裏づけているということなんですから、答えるのなら、私は外務大臣に答えていただきたい。
  69. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 私から簡単に経緯について申し上げさせて……(発言する者あり)
  70. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今お尋ねの件は、条約局長からさらに説明をさせていただきます。
  71. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 御指名をいただきましたので、御説明させていただきます。  先ほど委員の御指摘のございました西村前条約局長の御発言がございました。また、同じ憲法調査会におきまして、国連に加盟をした当時の下田条約局長の御発言もございます。  長いのではしょらせていただきますが、結論の部分で下田、国連加盟当時の条約局長でございますが、おっしゃっていますのは、「この問題は私が局長をしておりましたころはすでにアカデミックな問題になつて了つておりまして、理論的には議論が行なわれましたけれども、現実問題としては憲法第九条のために国連の加盟が妨げられる、あるいは国連加盟後に義務が履行しえないことになるというような危ぐを政府当局が抱いたことはないように思つております。」こういうふうに言っておられます。  それから西村さん御自身も、同じ憲法調査会で次のようにも言っておられます。これは先ほど委員が御指摘になった御発言の後でございますが、「冒頭に申しましたように過去を振り返つてみますと、私が」というのは西村さんですが、「局長をいたしておりました五年間は結局憲法制定直後であつたということと、占領下の時代であつたということで、全く神経過敏に第九条を気にして諸般の問題を処理していたといえましよう。」というふうに申されております。
  72. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いろいろ言っていますが、とにかくその問題の最後で高柳会長が、「とすると国際会議でも第九条を留保するという明文はなくても、そのことは含まれている」のですねと、こうはっきり明確に言っているではありませんか。  ですから私は、これらの問答を通じて、小坂外務大臣も、加盟に当たってはそのようなことが承知されているんだ、その上で国連加盟が許されたんだということを明確に言っているだろうと思いますし、また一九五八年、国連レバノン監視団に対して十名の自衛隊員の派遣の要請があったが、我が国はこれはできませんというふうに断っているじゃありませんか。これらの事実を踏まえて、私は、この国連加盟の際に、兵力の提供というのは憲法九条の上からいって問題があるんです、それは日本政府のこの裁量の範囲というものを十分我々は確認した上で国連に加盟するんですよということを明確にしているということじゃありませんか。そのことを私ははっきり総理に認めていただきたい、こう思うのです。
  73. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 過去の国際法上の問題について留保をしたのかしないのかということは、やはりそのときの時点に視点を置いて、そのときに行われた外務大臣の手紙に、「その有するすべての手段をもつて、この義務を遵奉することを約束するものであることを声明する。」こう書いてありますから、これは国連加盟に当たっておっしゃるような留保をきちっとつけたとは私は受け取れない、考えられない、こう申し上げたわけで、そのこととその後のいろいろな経緯とか、それぞれの立場の人の解釈とか、いろいろな問題についてまで私は言っておるわけではありません。同時に、そのときの日本の問題というものも、私はよく承知をしております。(発言する者あり)
  74. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。
  75. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ただいまの問題については、国連憲章を受けるときには留保する制度というものがないというようなことですが、政府委員から詳しく答弁をいたさせます。
  76. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 小坂外務大臣の言っていることが違うのか、あなたの言うことが違うのか、それをはっきりしてもらいたい。
  77. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど来いろいろお引きになりました憲法調査会の報告書の中におきましても、一点だけ、もう一点だけ引かしていただきますが、この問題については、これは田畑先生という国際法の先生が参考人になっておっしゃったことでございますが、これが引いてあります。  「この問題については、国連加入が直ちに加盟国の軍隊提供を義務づけるものではなく、国連の集団的軍事行動に対して加盟国がいかなる協力義務を負うかは、安全保障理事会と加盟国との間の特別協定によつて具体的に定まるものであり、かつ、その時は「兵力」に限らず「援助または便益」の提供にても足りるのであるから、国連憲章上の義務が直ちに自衛隊の軍事的協力の義務を意味するものではない、とする解釈が、そののちにおいて広く認められているということができる。」というふうにおっしゃっています。  また、小坂大臣の御発言につきましては、これは憲法九条が日本国連加盟の妨げにならなかったという点は、それはもうそのとおりでございます。ただそれは、いわゆる国際法上の留保を国連憲章に付したからできたということではなくて、ただいま申し上げましたような、田畑先生もおっしゃっているところでございますが、そういう国連憲章の規定上特に留保を付すことなく加盟が認められたということでございます。  いずれにしましても、国連憲章には留保を認める条項はございません。
  78. 越智伊平

    越智委員長 山口鶴男君。(発言する者あり)——午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ────◇─────     午後一時七分開議
  79. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、中山外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中山外務大臣。
  80. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先般のお尋ねでございますが、論点を整理さしていただきますと、国連加盟の際に日本のように宣言文または書簡を出している国はないということは、日本には憲法の制約があるのではないかということが一点だということではないかと思います。それから、総理の読み上げた宣言は、正式に原文を翻訳すると、「その有するすべての手段をもって」というくだりがあるが、日本政府の裁量のあらゆる手段をもってと解されるもので、これは留保条件と言えるのではないか、こういうお尋ねのように思います。  それにつきまして、我が国国連加盟に当たって行いました宣言が国際法上の留保でないことは、けさの審議で御答弁申し上げたとおりでございます。御指摘の小坂大臣の答弁でも、加盟の際に留保を付したとは言っておりません。小坂大臣は、日本国憲法が周知されているとの前提で国連加盟が認められたと言われているというふうに理解をいたしております。  なお、第三点の工藤長官の安保特における発言につきましては、長官からお答えをさしていただきたいと思います。
  81. 越智伊平

    越智委員長 質疑を続行いたします。山口鶴男君。
  82. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いずれにせよ、我が国国連に加盟しました際には、私が先ほど指摘したような、この岡崎外務大臣の書簡及び宣言というものが付され、それが加盟された際には各国に配付をされているわけですね。それは他の国とは違った扱いだと思うのです。ですから、それを常識的には私どもは留保ということだろうと思うのです。しかし、国連のいわば使いますところの用語では留保ではないとおっしゃるなら、それはそうかもしれませんが、いずれにせよ、他の国とは違って憲法九条を持つ我が国が、国連加盟に当たっては他の国とは違ったこの書簡及び宣言文が提出され、それが各国に配付された、この事実は私はきちっと認める必要があると思うのです。その点はいかがですか。
  83. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今委員指摘のとおり、国連加盟に当たっての日本政府側からのそのような文書あるいは宣言が出されたことは事実でございます。  なお、これが多数の加盟国の中で日本だけかといえば、他国にあるかどうかということは、まだ日本政府はこの段階で確認をいたしておりません。
  84. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 コスタリカのような国があるでしょう。日本と同じように憲法九条と同様の憲法を持った国があることを私は承知をいたしております。  いずれにせよ、この憲法九条に基づく、日本政府としてこの裁量の範囲というものがあるんだということを明確に加盟に際して宣言で明らかにしているという事実は、この際明確にしておきたいというふうに思います。総理、その点はいいですね。
  85. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 加盟に当たって留保をしたかどうかという角度の御議論でありましたから、私も国際法上の手続の問題として御答弁をしたわけでして、そのような事情については、私もその後の経過等もよく承知をいたしております。
  86. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで、実体的にそのような事実があったかどうかということが重要でありますので、この十月の五日、衆議院の安保特別委員会におきまして工藤法制局長官がこの問題について答弁をされているようであります。国連憲章に基づく国連軍と憲法との関係、これについて答弁しているようでありますが、私が先ほど指摘をいたしましたような、国連に加盟する際に日本政府から書簡及び宣言が明確に出されているという趣旨につきまして法制局長官も確認いたしていると思いますので、念のためその点を明確にこの席上において答弁をいただきたいと存じます。
  87. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答えいたします。  私が、十月五日でございましたが、安保特におきまして御答弁申し上げております。その際、憲法調査会の調査報告書にも記載されているということで、今御指摘のようなくだりがございます。そこでは、いわば二十五年ごろといいますか、あるいはこの調査会の報告書の中に多少時間の経過を追って書いてある、そこを意識しまして御答弁申し上げたところでございます。
  88. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 だから、その趣旨をこの予算委員会において明確に答弁をいただきたいというふうに私要求しているわけです。
  89. 工藤敦夫

    工藤政府委員 その際申し上げましたのは、二十五年ごろにといいますか、たしかあのときはそこまで年を正確に申し上げなかったかもしれませんが、一たんそういうことで——失礼しました。調査会の報告書によれば、二十五年ごろに作成した申請書の原案においては一応そういう憲法九条を意識しての文章があった、しかし、申請書におきましては、そこまで明文を書く必要はなく、むしろ間接的にその趣旨を明らかにする方がよいという意見があってこういう文章がつけられた、こういうことが憲法調査会の報告書に書かれている、そういう趣旨を申し上げたものでございます。
  90. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私が、我が国国連加盟に当たってこの申請書をどのようにつくるかという経過についてこのような事実があったということを先ほど述べたわけでありますが、その趣旨はただいまの法制局長官の答弁によって明確に裏打ちされたというふうに確認いたしまして、他の問題に移りたいと存じます。  それでは、総理にお尋ねをいたしたいと思います。  内閣総理大臣の開会冒頭における所信表明、承りました。現在数々の問題が山積をしているということをお述べになっております。しかし、今国民の皆さん方が最も関心を持っているのは、今国会、この中東湾岸危機に対して政府が提出をいたしました国連平和協力法案、これが一体どうなるだろうかということを注目をいたしていると思います。そういう意味では、まさに今国会は中東国会というふうに言っても差し支えないと思います。  問題は、先ほども私指摘したのですが、イラククウェートアジアの国であることは間違いございません。こういったアジアの国、しかもサウジアラビアアジアの国であります。過般、北京で行われましたアジア・オリンピックには、イラクはあのような状態でありましたが、他の国々はいずれもあの北京のアジア大会に参加をいたしております。問題は、我が国アジアの一員であります。したがって、アジアで起きた今回の事態、アジアの一員である日本がどのようにこれに対してかかわりを持っていくか、どのような平和解決の努力をアジアの一員としてなすかということが、私は重要ではないかと思う次第であります。  そういう意味では、私は、アジアではないアメリカブッシュ大統領の意向というもののみを尊重してこの中東問題について対処するというようなもし日本政府の姿勢ありとするならば、それは私は誤りと言わざるを得ない。アジアの一員としてこの問題を一体どうするのか、私はその点について総理としての見解をまず承っておきたいと存じます。
  91. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この湾岸危機の問題をアメリカとの関係のみでとらえたり、アメリカが起こしたというような見方をするのは、私の見方ではございません。これは、イラククウェート侵攻したということ、そこが問題の根本のスタートでありまして、サウジアラビア要請に応じてアメリカ、そしてそれに続いてたしか二十一カ国でありましたか、それらの国々が、国連決議を受けて、これは平和の破壊である、見過ごしてはいかぬというのであそこに展開をしたということでありまして、私はそういった意味で、どのようにアジアの一員としてこれに取り組むのかと言われれば、国際社会のいろいろな活動に対してできる限りの協力日本もして、問題が平和的に解決していくように粘り強く協力をしていく。  ただ、問題は、原則に従った、国際社会の大義を守って国連決議の精神に従った解決がまず行われるべきであって、この緊張した局面を打開したらさらに続いていろいろな話は出てくると思います。それは、ブッシュ大統領国連演説を聞いておりましたけれども、ミッテラン大統領提案も聞いておりましたが、私自身も、日本も二百四十二号の決議に従って中東の恒久平和を達成したいということを願っておることもそのとおりでございますし、また日本イラクとの経済関係につきましても、先ほどの谷川委員の御質問のように、イランイラク戦争終了後再構築しようというのでいろいろな話が行われて、混合借款の残りをどうするかということまで話を詰めておる、そのやさきの中断でありますから、やはり大義に従った解決が根本的にできれば、国際社会イラクが復帰するとき日本としてもイラクとの間の再構築をしていきたいということは、これはラマダン首相にも私から直接言ったことでありますが、大前提になる局面転回のきっかけはあくまでクウェートからの撤兵というところから始まる、人質の釈放という問題もそこに付随して起こってくる、そのための努力をしていかなければならない、こう考えております。
  92. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 とすれば、我が調査団イラクに参りまして、イラクにおります我が国の皆さん方といろいろな意味で話をいたしました。結局、我が国が十億ドルの貢献策を決める、さらにその後三十億ドルの貢献策を二週間足らずの後に決める等々のことをいたしますと、途端にイラクにおります我が国人たちの条件というものが大変厳しくなる。そしてまた、自衛隊の派遣を含む国連平和協力法案というようなものが提案されれば、さらにまたそういう中で厳しい条件が生まれるのではないかということをこもごも懸念しておられたという報告を私はいただいているのであります。したがいまして、今国会におきまして委員長も代表質問で申されましたが、国連平和協力法案というような法案は撤回すべきである、これが我が党の基本的な態度でございます。  そこで、私はお尋ねをしたいと思うのです。  この法律を提案するその前に行われたこの所信表明です。三十分にわたる演説です。ずっと拝見をいたしました。そうしましたら、「自衛隊」という言葉は一カ所しか出てまいりません。「自衛隊など公務員を初め広く各界各層の協力と参加を得て創設されるものであり、」というところだけですね。  私は、この所信表明演説を聞きながら思い出した演説があります。それは何かといいますと、あの売上税が提案されましたときの当時の中曽根総理大臣の施政方針演説でございました。あのときは、選挙公約に違反をする売上税、これを中曽根内閣が提案されたわけでありますが、その際の施政方針演説に当たって、じっと私は耳を澄ましておったのでありますが、売上税のウの字もなかったのであります。国民の最大の関心のもと、しかも選挙公約に違反をすることをやろうというときに、当然主権者である国民に向かって、また国民の代表である国会において、なぜ公約に違反をしなければならぬのかという問題をるる説明するのは、私は議会制民主政治のイロハのイではないかというふうに思う次第であります。  ことし二月の総選挙を考えてみましても、もちろん中東というようなこの事態が起こることは、それは予想もしなかったことは事実でしょう。しかし、いずれにせよ自衛隊を海外に派遣する、派兵するというようなことは当時、総選挙の争点には全くなっていなかったのであります。したがって、主権者である国民の皆さん方に訴えることなく成立した今の国会であります。そこに選挙の争点にもならなかった問題を提起しようとするときには、当然主権者たる国民に向かって、また国会に対してその間の事情を丁寧に説明する、これは私はまさに議会制民主政治の本旨でなければならぬ、かように思うのであります。  ところが、海部総理のこの所信表明演説、「自衛隊」はわずか一カ所しか出てこない。これは一体どういうことでありますか。あなたは三木総理のまな弟子だと言われている。議会の子ということを三木元総理はいつも言っておられた。私は、議会制民主政治というものを真剣に考えるならば、今私の言いましたことは海部さんよくおわかりいただけるだろうと思うのです。いかがですか、この点。
  93. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 選挙の公約と施政方針演説の関係についてお触れになっておりますが、ことしの二月の選挙中は、私もヨーロッパ訪問から帰った直後で、ドイツは統一するだろう、冷戦時代の発想は終わりを告げるだろう、今日のイラク侵攻のようなああいった暴力行為が起こるとはゆめゆめ考えておりませんでした。もっとバラ色の、もっと明るい世界の未来を夢見て、対決対立が終わっていくということにむしろ希望を持っておりましたから、選挙の演説のときには神ならぬ身の知る由もなしで、このように世界秩序が力によって乱されるとは考えてもおりませんでしたから、確かにそのときに平和協力隊のことを選挙の公約の中には入れることはございませんでした。しかし、それは御理解を願いたい。国際情勢の急激な変化だということでございます。  それから、所信表明演説の中にも私はきちっと国連平和協力法のことも書き、自衛隊の参加を求めるということも書き、そして壇上で演説を皆さんの前でしたわけでありますから、一カ所だけとおっしゃるが、肝心なことは一カ所ぴしっと押さえてあれば、それでわかるんじゃないでしょうか。自衛隊の問題について私は触れなかったんじゃなくて、国連平和協力法をつくるときには広く国民の皆さんにお呼びかけするけれども、自衛隊を含む一般の公務員や国民の皆さんやと、きちっと触れて本会議で申し上げておるわけでありますから、これを触れてないとおっしゃるのはちょっと酷な言い方だと思います。そうして、こうしてきのうもおとといも、きょうもその問題についての議論に参加しておるわけでありますから、触れていないとか、選挙のときの公約に入っておらなかったからいけないというその主張だけはどうぞ取り消してください。お願いします。
  94. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 選挙のときに触れなかったことがけしからぬと私は一言も言っていません。そのことは取り消していただきたいと思うのです、今のことは。私が言っているのは、選挙の際に争点にならなかったような重大な問題を国会で提起をしようとするときには、主権者である国民に対して丁寧に説明する、また国会でそのことについて丁寧に説明をする責任があるのではないか、そのことを私は指摘をし、所信表明演説では極めてその点が不備だったのではないか、それでは議会の子のまな弟子としての海部さんにしては残念なことではないかと指摘をしたわけです。  そこで、私はお尋ねをしたいと思うのです。  一九五四年、参議院本会議におきまして、自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議案というものが上程をされ、圧倒的多数の賛成をもってこれが可決をせられたという事実は、海部総理もよく御存じだろうと思います。先ほど谷川さんの質問に対してお答えをしているのを聞いておりました。あのときの国際情勢とは今の国際情勢が違うのだ、だからあのときの状況と違った中で今国際情勢が動いている、したがって、当時の国会決議については有権解釈は参議院がおやりになるのでとやかくは言わないが、今の事情とは違うというようなことをお答えになりました。私は、この参議院本会議決議、これについて行政府がとやかく言うということは慎むべきだと思うのです。そうして、この国会決議と情勢が違って新しいことをやろうとするときには、私は、当然新たな国会決議をどうするのかということを各党で真剣に議論をすべき課題ではないかというふうに思うのです。  かつて宇宙の平和利用の決議というのをいたしました。これは衆議院本会議でいたしました。ところが、中曽根内閣がSDIの研究参加の問題を取り上げました。これは、この宇宙平和利用の国会決議と違うのではないかということが当時国会で大きな問題になったわけです。しかし、この有権解釈、これはこの国会がすべきことだ、行政府が勝手にその宇宙決議を解釈して、これはいいことだというのが間違いだというのが当時の国会の議論だったと私は記憶をいたしております。  したがって、私は今、一九五四年におけるこの国会決議というのが現にあるわけであります。とすれば、国権の最高機関たる国会のこの意思というものは私は行政府を拘束する、当然ではないかと思うのです。米の決議だってそうでしょう。今、米の決議があるからこそ、政府はそれに制約をされておるわけでしょう。米の自由化はできないじゃありませんか。それはすべきではない、これが国会の意思だと思います。同じことではありませんか。この参議院の国会決議、これは政府を拘束している、海部内閣を拘束している、こう考えるのが正しいと思います。いかがですか。
  95. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 行政府立場で国会決議を決してとやかく言おうとは思いませんが、お尋ねがあればお答えをしなければこれまたいけませんので、私の考え方を率直に申し述べさせていただいた次第であります。  確かに、御指摘の昭和二十九年の自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議というものがあることを私も承知しております。それは参議院において有権的に解釈されるべきものであるということもきちっと踏まえてから、お尋ねによって私の考え方を率直に申し上げたのですけれども、あのときは昭和二十九年、防衛二法で自衛隊が発足した。そのときのこの発想は、ここに「海外出動」と書いてありますように、自衛隊が自衛隊として海外に出ていくことはしない、それは武力行使を伴うようなことは憲法でいけないと決めてあるわけですから、そういったことを踏まえての決議であったろうと私は判断をしたのです。  それから随分日本の国情も変わり、世界の事情も変わり、今度国連が初めてあのような決議をすることができるようになって、まさに国際社会の大義として、平和を守るために皆がどんなことができるだろうかということをいろいろ考える。そうして、私どもは今平和協力法というものを想定し、そしてあくまで武力の行使を目的としない、武力による威嚇はしない、平和協力隊のもとで特定の業務のためにこれは協力をする。医療業務であるとかいろいろなことがございます。そのことまで昭和二十九年の決議のときにはまさか視野に置いてこの御決議がなされたものとは私は考えませんので、事情が変わり、武力行使をしないという大きな歯どめの中で行ういわゆる平和協力隊の業務というものはこれに反するものではないだろう、私はこう考えておりますから、そのことを申し上げたわけであります。
  96. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いろいろおっしゃいました。結局、今まで言われているように、武力行使を伴うものならばこれは控えるけれども、そうではないものならば派遣であるから差し支えないではないか、そういう趣旨ですか。
  97. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 武力行使を伴い、武力行使を目的として、そして自衛隊が自衛隊として海外に出動していくことは、これは許されないことであると私は今でも思っております。しかし、武力行使を目的とせず、武力行使を伴わず、参加をした平和協力隊の業務として協力するのは、これは派兵ではなくて派遣であって、これはいろいろきょうまでも御議論の積み重ねはありますけれども、憲法上許されないことではないという解釈は国会の議論の中でも時々行われたことでもある、私はこう考えておりますし、現に遠洋航海とか南極観測など、あるいは選挙の監視団とかいろいろなところに想定される今後の協力の範囲というものも出てくるのではないでしょうか。私は率直にそう考えております。
  98. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 派兵はまずいが派遣はいい、こういうことですね、一言で言えば。  それでは、あの一九五四年の参議院本会議の自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議、これは、派兵ならまずいが派遣ならいいというような趣旨でできたものというふうに海部総理はお考えになるのですか。そうじゃないじゃありませんか。そんなことはありませんよ。海外出動はいかぬということをはっきりし、しかも当時、内閣を代表した木村防衛庁長官ですか、国務大臣木村篤太郎君です。「自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することを任務とするものでありまして、海外派遣というような目的は持っていないのであります。」したがって、ただいまの海外出動をなさないというこの決議の趣旨は、十分これを尊重する、派遣はしませんよということをはっきり言っているじゃありませんか。
  99. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 海外に出動する、また昭和二十九年当時の考え方の中でいろいろいきますときには、先ほどから申し上げておりますように、世界がこれだけ変わって、国連がこれだけ機能するようになって、国際社会のためにいろいろ協力をしなければならない。あのころの復興途上国であった日本の地位と、今日、好むと好まざるとにかかわらず大きな期待をされて、そして役割を果たさなければならぬということになりますと、平和主義の理念からいって許されないのは、武力による威嚇や武力の行使をしないということであって、そのためにその後、派兵とは何か、派遣とは何かという議論が国会を通じても随分いろいろなされたんじゃないでしょうか。昭和二十九年の時点までさかのぼって、そこだけに固定して考えますと、派遣とか派兵のいわゆる議論というものはなくなるのですけれども、その後いろいろな議論を通じてなされてきたことは事実でありますから、私は、そういう国際情勢の変化に応じて、新しい時代の変化に応じて、日本がやはり積極的にでき得る限りの参加をして協力しなきゃならぬ。それは守るべき一線をきちっと守ったならば、汗を流して協力をしてよろしいというのが私は解釈ではないか、こう思いますから、派遣は派兵と違って武力行使を伴わないものでありますから、認められるものであると考えてこの法律を提案しておるわけでございます。
  100. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 派遣というのは、派兵とは違って武力を伴わないものだ、こうおっしゃいましたね。国会はそのようなことを私は認めているとは思いません。  私は、今日まで我が国衆議院がいかなる国会決議をやったか、全部調べてみました。戦後の決議も調べてみました。戦前の帝国議会当時の決議も調べてみました。当時、満州事変あるいは太平洋戦争、さまざまな不幸な戦争がありました。それらの状況を踏まえて、さまざまな国会決議をやっています。例えば第四十回議会、大正六年十二月二十五日召集の国会です。地中海派遣艦隊の勲功に関する件という決議をやっているじゃありませんか。地中海派遣ですよ。それから第六十三回議会、昭和七年、それから第六十四回議会、これも陸海派遣軍ニ対スル感謝決議案というのを決議しています。  国会では、派兵云々というような決議をやったことはないのです。ですから、当時、木村篤大郎国務大臣も派遣はいたしませんと、一九五四年国会決議の際に答えているんじゃありませんか。いかがですか。
  101. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 大正六年のお話とか昭和七年、我々の生まれたころに、陸海軍があったころの決議と今の状況とは全く違うと私は思いますので、それじゃ大正六年、昭和七年ごろにできたそのほかの考え方や法律はどうなるかというと、あれは一切だめな話で、世界の事情も国内の事情も全く変わったということも私はここで指摘をさせていただきたいと思うのです。むしろそれよりも、そんな大正時代や昭和七年じゃなくて、最近の国会の中においても派兵と派遣の違いというものは、これはいろいろな議論の中で定着してきておる議論ではないでしょうか。ですから、例えば南極観測船を出すときのあれも、これは派遣として認めたわけでありますし、遠洋航海でも練習航海でも派遣として行くべきことはある、ただし、武力行使を伴う派兵はいけませんよというのが明確な一線であったと私は記憶しております。
  102. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は政策の問題で議論しているんじゃないんです、この問題は。言葉の問題なんですよね。ですから、それは戦前であろうと戦後であろうと、これは派遣という言葉、日本語は変わらないと思うのですね。  したがって、戦前の帝国議会においても、この派遣という言葉を使っている。そして、一九五四年のこの国会でも、当時の木村国務大臣は派遣という言葉を使って、これをいたしませんと言っている。そのことを私は言っているのでありまして、そして、派遣だから、今度サウジアラビアアメリカ軍を中心とする多国籍軍が二十万、五十万と展開している、そのところの後方支援にこの国連平和協力隊を使おうというような、そういうところに行くのはこれは派遣と、派遣と派兵を使い分けてごまかすようなことはできないんじゃありませんか。南極へ行くのとそういった紛争の地域、紛争のおそれのある地域に出かけること、それを派遣と派兵というような言葉を使い分けてごまかそうとしても、それは通らぬのではありませんか、日本語の上からいっては通りませんよということを私は指摘をしたつもりです。いかがですか。
  103. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いや、今言葉の問題だとおっしゃったから、言葉の問題としてお答えをさしていただこうと思うのです、御質問がそうですから。そして、帝国陸軍、帝国海軍のころの言葉はどうか、私はそれはここで議論するにはふさわしい言葉だとは思いません。新憲法になってからのこの国会の議論の中でいろいろそういった言葉が使われて、派兵と派遣は区別されてきたものと私は考えておりますので、そのことは法制局長官からきちっと答弁をいたさせます。
  104. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいま海外派兵あるいは海外派遣といった用語につきましてのお尋ねだと思いますが、この海外派兵、海外派遣ということにつきましては、四十年代あたりあるいはもう少し前からであろうかと思いますが、しばしば議論になってきているところでございます。いわばそれを集約したような形で、昭和五十五年に稲葉委員の質問主意書に対しまして、文書で答弁書を差し上げてございます。そこの中に、「従来、「いわゆる海外派兵とは、一般的にいえば、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することである」と定義づけて説明されているが、このような海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。したがつて、このような海外派兵について将来の想定はない。これに対し、いわゆる海外派遣については、従来これを定義づけたことはないが、武力行使の目的をもたないで部隊を他国へ派遣することは、憲法上許されないわけではないと考えている。」なお、この後へつけまして「しかしながら、法律上、自衛隊の任務、権限として規定されていないものについては、その部隊を他国へ派遣することはできないと考えている。」こういうふうな文章がございます。これが経過でございます。
  105. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 だから、今度この国連平和協力法の附則で自衛隊法をこっそり改正するからいいんだというようなことだろうと思うのです。私は、それはこの参議院の国会決議を無視するものではないかと言うのです。ここでは派遣とか、本文ではですよ、派遣とか派兵とかという言葉は使っていないのです。出動という言葉を使っているのですよ。この出動というのは、私は、その後、今法制局長官が説明したような、派兵も含むし派遣も含むというふうに解するのが当然だろうと思うのです。そうじゃありませんか。だからこそ、この参議院の決議をねじ曲げようというのであるならば、これは政府の手で勝手にやることはできない。これは海部総理も先ほどお答えになったとおり。したがって、それならば、私は、改めて参議院がこれと異なる国会決議を行うまでこの問題は控えるのが行政府として当然ではないかと思うのです。  そして、私はこの際申し上げたい。海部さんとは一緒に、海部さんが議運の委員長時代、議運の理事をやりました。海部さんが議運の理事時代、私も一緒に議運の理事をやりました。そして数々の国会決議をつくってきました。国会決議には一つのルールが定着したと思います。  あの中国の核実験反対の決議、これは共産党が反対しました。しかし、九十何%の議員が賛成をしてあの決議は立派に成立をしたのであります。そして、この国会決議をつくる議運は、九割以上の政党が賛成しなければ決議はやらないという慣例が定着をしたと思います。率直に言って、我が党が反対をすれば国会決議というのはできないのだ。そのことを十分私はお考えをいただきたいと思うのです。  そして、私は申し上げます。この参議院の一九五四年の国会決議、重い決議です。今回のこの国連協力法は、この国会決議に反すると思います。そして、国会決議に反するような法律をつくろうということをお考えになるならば、まず参議院で新しい国会決議ができるのかできないのか、そのことを政治的に十分お考えになるのが当然ではないでしょうか。  いま一つ、私は、この議会制民主政治の上からいってルールがあると思います。それは、主権者である国民の皆さん方に、このことをやってもいいのか悪いのか、まさに信を問う、これしか私はないだろうと思うのです。そうでしょう。私は、議会制民主政治というものに対して、海部総理は非常なやはり識見と熱意をお持ちだろうと私は思っております。参議院の決議をそのままにしておいて、このような法律を提案をするということは許せませんよ。どうですか。
  106. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私も、山口議員と同じく議運の理事をしておりましたとき、決議の性格はよく承知しておりますが、法律というのは、両院で審議をお願いして通り、拘束力を持ち、それに反するものにはいろいろと強制力も加わるということでありますし、それから、参議院の決議というものは、参議院で意思表示があり、政府はそれを尊重しますという答弁をしておることも、これはそのとおりでございます。  けれども、申し上げたように、昭和二十九年の決議で、あのころの社会の情勢、あのころの雰囲気をいろいろ勘案するときに、それがいつまでもいつまでも衆参両院、いわんや法律の制定そのものまでも全部縛りつける拘束力があるものだろうか、私は、それは大いにお考えを願わなければならぬと思うし、同時に、あのときの想定は、恐らく自衛隊が自衛隊として武力行使の目的を持って出ていくことはいけないということを決めたのではないでしょうか。今例に引いていただいた大正六年、昭和七年の帝国陸海軍時代の派遣とまさに同じような発想であのころの方はお考えになったのではないかと私は思うのです。こんなに時代が変わって、こんなに世界が変わって、平和協力法というようなものの審議が行われるようになるということまで果たして想定して、そのことまでいけないと拘束するためにおやりになったのかどうか、私にはどうしても十分納得できない御議論でありますので、そこで法案をお出しをして、法律の中でこのようなことを考えておりますということを広く各党の議論をいただき、参議院はもちろんのこと、衆議院においてもこのことについての法律に対しての議論をいただき、法律として考え方を認めていただきたいということでお願いしておるわけでありますから、どうぞその点のところは御理解をいただきたいと思います。
  107. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 一九五四年と現在とはさまざまな状況が違うということを盛んに強調されました。変わらぬものがあるじゃありませんか。日本国憲法は変わっておりません。憲法のもとにおいてこの国会がどのような決議をするのかという意味で議論をして、そして結論を出したのがあの参議院の決議ではありませんか。それから自衛隊法も、今度は変わりましたよ。紛争のおそれある地域、二十万、三十万の軍隊が展開しているサウジアラビア、その多国籍軍の後方支援をしようという目的を持ってつくるこの国連平和協力隊、そのための自衛隊法改正、それがあるまでは、今回の提案があるまでは今自衛隊法は何ら変わっていない、提案されているだけですから、自衛隊法も変わっていないということでしょう。そのときのこの一九五四年の国会決議、これを政府が尊重しなければならぬことは当然じゃありませんか。政府を拘束するのは当然じゃありませんか。ですから、この決議の出動せずということに反する出動する法律をつくろうとするときには、参議院でこの決議を改める決議をすることができるのかどうか、その政治判断をしてから私は法案を提出すべきだと思うのです。それをしないでこの法案を出すということは、参議院の院議を無視するものじゃありませんか。そのことは、私は、議会制民主政治を十分尊重しようとする海部総理は真剣に考えていただかなければならぬ。  南極はという話がありましたが、南極は、あそこへ何十万という軍隊が展開していますか。そういうところへ後方支援といって、危険な状態というのがあるのですか。ないじゃありませんか。違うんだ、全く、状況は。
  108. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 おっしゃるとおりですから、今度の平和協力法を通していただいて、そして自衛隊の中にもその目的が加われば、これは海外派遣ということで、海外派兵ということではありませんから、それはできることだと私どもは判断をしてこの法律をお願いをしておるわけでございます。
  109. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私が言っているのは、海外出動はだめですよ、これは派遣も派兵もともにだめよ、これが参議院の意思ではないのか、これが変わらない限り今のような、総理がおっしゃるようなことは通りませんよ、こう私は言っているのです。
  110. 工藤敦夫

    工藤政府委員 従来、海外派兵、海外派遣ということについて申し上げておりますことは、先ほど御説明したとおりでございます。そこで、国会決議が二十九年にございます。それであえて申し上げれば、その後実は南極観測、先ほどもお話に出ましたが、三十九年でございますかに南極観測が自衛隊の業務として、南極地域までへの輸送その他の協力、こういうことが三十九年に実は自衛隊法の改正で出まして、これが衆参ともに通っているわけでございます。そのときに私は、いわばそういう海外派遣の話ということは、そこでは一つ議論がクリアされているのではなかろうか、かように考えております。
  111. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 南極観測に行くような事態と、今度の国連平和協力法が想定している、何度も言います、数十万人の軍隊が展開しているサウジアラビア、そこの後方支援に行くのと全く状況が違うということは当たり前じゃありませんか。そういう状況を踏まえて、この国会決議は一体どうなのか明確にしてください。それがはっきりしてなかったら質問ができないじゃありませんか。
  112. 工藤敦夫

    工藤政府委員 国会決議の効力につきましても、これまでたびたびお答え申し上げているところでございます。  国会決議につきましては、当然その趣旨を尊重して執行すべきものと考えております。ただ法律と異なりまして、そういう意味の法律と同じような意味での法的拘束力、かようなものはないわけでございますが、極力尊重して考えることでございますが、ただ、一方におきまして、先ほどのように、総理からのお話のように、そういう意味での何といいますか、その後の情勢の変化というふうなことは、いわばこれは法律的な意味といいますよりは、むしろ政治的なりなんなりの判断で行われるべきものということでございまして、法律的に国会決議というもの自身をどうこうというふうに定義づけることは難しいかと思います。
  113. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 法制局長官、今の答弁は私は納得しませんよ。この国会決議は法的拘束力はない、どうでもいいのだというような、そういう発言でしょう。国会決議というのは法律とは違いますよ。法律は過半数で衆参両院成立をします。私が先ほど強調したように、国会決議というのは九〇%以上の議員が賛成しなければ成立をしないのです。政治的にはどちらが重たいか。言えば国会決議の方が重たい、これが今、国会の長い間定着した考え方じゃありませんか。だからこそ、米の自由化反対の決議、いかに重たいか。それから非核三原則、いかに重たいか。「国是」というように今度防衛白書にもお書きになったようですね。そういう形で、国会決議というのは重たい。ですから、法制局長官、法律的の拘束力がないからどうでもいいような、そういう答弁は私は撤回してもらいたいと思うのです。それじゃなくて、政治的な拘束力はより国会決議は重たい、こう言ってもらわなきゃいかぬと思うのです。私は、法制局長官もそうだし、海部総理もそのことは明確にしていただきたいと思うのです。(発言する者あり)
  114. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。
  115. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答えいたします。  私自身、決して国会決議がどうでもいいなどということで申し上げたつもりは一切ございません。ただいま申し上げましたように、国会決議につきましても、いわゆる国会決議の趣旨を尊重してその実現に努力すべき政治的な責務は負うのだ、これは従来お答え申し上げているところでございまして、そういう意味で、どうでもいいなどということを申し上げるつもりは一切ございません。ただ、法律における法的拘束力、それから国会決議におけるそういった政治的な意味合い、これは違うものだという意味で申し上げたわけでございます。
  116. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 とにかく、南極観測の問題と今度のサウジアラビアのような事態を同じにして、あの南極観測でクリアしたのだから今度もいいのだというようなああいう発言は、私は間違いだ。この点は明確な統一見解を示していただきたい。そうでなかったら質問できませんよ。
  117. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 もう一回お答えいたします。  自衛隊の海外派兵と海外派遣と、これは今法制局長官が答えましたように武力行使を伴う目的であるかどうかによって区別をするというのが近年の解釈でありまして、昭和二十九年当時にはそのような解釈や、そのような想定や、そのような予想はなかったと思います。  武力行使の目的を持って、武力の威嚇を伴うようなことは、今日でもこれは認められない。しかし、武力行使を目的としないで行う、第一線における行動じゃなくて、国連決議に従って、受けて、それを今いろいろな国が抑止力として展開をしておる、そこへ出ていって共同作戦をやろうというのではありません。日本としてできる限りの物資提供とか輸送協力とか医療協力とかそういったことは法律の中にきちっと制限列挙してございますけれども、そういったことを武力の威嚇や武力の行使を伴わないでやろうということは、いわゆる大きく分けた海外派兵ではなくて、海外派遣の方であって、これは許されることである、こう考えて言っておるわけでありまして、南極派遣のことはその一つの例として申し上げただけで、あれと同じと言っておるわけではございません。
  118. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今いろいろ言われましたけれども、南極観測でクリアされたのだから今度の事態はいいんだと法制局長官言われた。それは私は問題だ。南極観測のような事態と今回の事態とが同じだ、それでクリアできたのだという認識は間違いです。そこをやはりきちっと私は意思統一をしていただきたい、そうでなければだめだ、こう言っておるのです。
  119. 工藤敦夫

    工藤政府委員 先ほどの答弁で、クリアしたなどという用語を使いましたことは不適切であったと私は思います。  そういう意味で、私は先ほど申し上げましたように、法律の効力と国会決議、これは従来から申し上げておりますように、その決議をされました院が有権的に解釈をされるべきもの、かように思っておりまして、従来御質問を受けましたときも、有権的解釈はその院においてなされるべきものであるけれども、これはこのように考えるというふうな御答弁は従来申し上げてきているところでございます。そういう趣旨でお答え申し上げます。
  120. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 法制局長官、取り消すというようなことを言いましたが、とにかく南極観測に自衛隊が行く、その自衛隊法改正をやった、そのことで今回のようなこの国連平和協力法、自衛隊をサウジアラビアに展開している多国籍軍の後方支援に使うような問題をクリアしたというような発言は根本から間違いであって、それは取り消していただかなければならぬ。南極観測がクリアしたんだから、したがって今度の法案を提案してもいいんだというようなことにはならない。私は繰り返し言いますが、参議院のこの国会決議は、出動はいけませんよということなんです。決して派遣とか派兵とかいうことを言っておるわけじゃない。したがって、自衛隊を今回出すというようなことを、いわば参議院の国会決議に反するようなことをやろうとするときには、参議院で国会決議をやり直すことができなければ、私は、参議院軽視になる。したがって、参議院に政府が拘束されている以上は、参議院決議をやり直すという政治的な解決がなければ、この法案を出すということは国会軽視ではないのですか。そのことをきちっとしなければ私は、立法府と行政府との関係からいって、それは我々納得することではない、けじめがつかないということを強調しているわけです。その点を明確にしてください。
  121. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何度も同じことを申し上げるようで恐縮ですが、海外のいわゆる派兵という部類に入る武装をした、武力行使を目的とした自衛隊が自衛隊として海外に出動することはいけませんよというのが昭和二十九年の参議院の御決議のときの趣旨ではないかと私は思うのです。(山口(鶴)委員「そんなこと書いてないよ」と呼ぶ)いや、それは書いてないのは、当時派兵とか派遣とかそんな議論の全くない、スタート直後の昭和二十九年でありますから、それは世界の情勢も国連の機能も社会の情勢も全く全部違うころで、また同時に、やはり一歩前進して憲法の前文にあるような平和の理念を高めていこう、そういう国連の憲章の趣旨にも沿ったようなことで世界じゅうが力を合わせて努力をしておるときに、武力の行使を伴わない、武力による威嚇はしない、その平和主義の一線はきちっと守りながら、平和協力隊法というものをつくって協力をしていこうというような事態はあの昭和二十九年には想定されなかったろうと私は思いますので、政府としてはそのようなことを十分に御説明をして理解をいただこうと思って今回の法案を提出しておるわけでありますから、国会の御審議に供しておるということにおいてこれを御理解いただきたいと思っております。
  122. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 参議院の国会決議というのは、この院の意思です。重たいものです。その参議院の決議を勝手に行政府が解釈をして、だからこの法律を出してもいいんだということは間違いだ。有権解釈は参議院がおやりになることなんです。海部さんがおやりになるのは間違いなんです。ですから、参議院があの決議とはこういう趣旨ですよという有権解釈をきちっとするか、そうでなくて参議院で決議をし直すか、そうでなければだめだということなんです。問題は、国会決議というのは九割でなきゃ、九割以上なきゃできないんですよ。我が党の賛成がなければ国会決議をし直すなんということはできない、参議院で。それだけ重たい国会決議を無視していいんですかと私は言っているわけですよ。解釈のことを言っているわけじゃないのですよ。どうなんですか。少なくとも、議運を長い間おやりになって国会決議というものはどういうものかということをよく知っている海部総理、どうなんですか、私の言っていることがわからないのですか。
  123. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 議運のベテランでいらっしゃった山口議員とこれ以上この問題でいろいろ平行線の議論を続けようとは思いませんけれども、しかし、昭和二十九年当時のあの状況のままで、今日の世界、今日の国内、今日の日本立場、そういったものをいろいろ考えたときに、私はこの法律を提案をしてお願いするということは、国際時代に相ふさわしい責任を果たしていこうと思います、これはお認めを願わなきゃならぬという思いで政府は法案を提案しておるわけでありますから、それは衆議院においても参議院においても議論をしていただいて、武力の行使を伴わないものがほかの目的を持って平和協力隊というものをつくって、その指揮監督のもとに入って二重、三重の慎重な歯どめの中から協力すべきものを決めて、輸送協力あるいは医療協力、その他のものをしようということまであの決議のときには想定される範囲あるいは将来の出来事として予想される範囲には入っておらなかったのではないかと私は判断をいたしましたので、この法律を出して、この法律を御審議いただきたい。そして、決議の趣旨を私は否定するものでも何でもありませんが、そのようなことで、世の中の事情も、またあのとき想定されておった範囲も変わってきたのではないか、このようにもう一回申し上げさせていただきます。
  124. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は、ただいまの発言は国会決議というものを尊重するという態度ではない、極めて遺憾だと思います。しかし、これ以上やりとりしましても時間が経過をするばかりですから、やむなく次の問題に移りたいと思います。  国連協力法の基本的問題についてお尋ねをしたいと思います。  国連平和協力法は、自衛隊の、先ほどいろいろ答弁しましたが、海外派遣という名において実質的な派兵をねらっているという点において、従来の政府の憲法解釈、これをねじ曲げようとする極めて不当な法律だ、こう言わざるを得ないと思うのであります。先ほど法制局長官がるる説明をいたしました。いずれにいたしましても、そういう説明をしてきましても、今国民の皆さん方は、これは海外派兵の道を開くんだというふうに重大な危惧を持っていると思うのです。そういう意味で、私どもはこの法律は基本的に認めることはできないというふうに思います。  少なくとも、こういった国論を二分する法律という以上は、私は、憲政の常道からいえば、国民に信を問う、これが当然じゃないですか。自民党の中にも、信を問う必要があるということを強調しておられる方もあるようです。総理、いかがですか。
  125. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 議会制民主主義は、国民を代表する各党各会派の皆さんが御議論をいただくこの場所である、こう考えておりますので、まず国会に提案し、議会に説明をし、同時に各党が議論を重ねていただくということが、今委員の御指摘になった国民の前での議会というものが果たすべき役割である、これが基本だと思いますので、私は、国民に信を問え信を問えとおっしゃいますけれども、その前に、代表される皆さんの御議論を賜るのが先決ではないでしょうか。私はそう考えさせていただいておりますから、提案をして、議論を進めておるわけでございます。
  126. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私のただいまの主張は、名議長と言われた保利議長が有名な保利見解の中で強調された問題です。私は、このことはやがてまた問題になると思います。この際、国論を二分し、前の選挙で争点にならなかった重要な問題が大きな問題になったときには国民に信を問うのが議会制民主主義のルールであるということは、この際強調しておきたいと思います。  次に、協力法の問題です。  この「目的」を見ると、「この法律は、国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議を受けて行われる国際連合平和維持活動その他の活動に対し迅速な協力を行う」、こうあります。私は、これでは極めて危険だと思います。国連決議を受け、そうしてPKOのごときは国連要請があって初めてできるんでしょう。ですから、国連要請を受けてということが欠落をしていることが大変問題だと思います。したがって、先ほど谷川議員が指摘をされておりましたが、我が党は、党内さまざまな議論をいたしまして平和協力機構法案を大綱として作成をいたしました。  その法案は、国連決議があり、国連から要請がありました場合、平和的な事柄に限って、自衛隊は参加させることなく我々はこれに対処していこうというのが基本的な考え方です。この点は、私ども社会党としてそういったものを提案する用意があるということをこの際明らかにしておきたいと思います。  そこでお尋ねをいたしますが、問題はこの法律の「その他の活動」とは一体何ですか。これが非常に問題だと思います。お尋ねをいたします。
  127. 中山太郎

    ○中山国務大臣 「その他の活動」につきましては、条約局長から御答弁をさせていただきます。
  128. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  この法案で対象になります活動につきましては、国連決議に基づいて行われますいわゆるPKO等の活動及び国連決議を受けまして行われる「その他の活動」がございますが、これは具体的には、例えば現在中東の平和回復のために行っております多国籍軍に対する支援、そういうものが入るわけでございます。
  129. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ですから、この法律の目的は、国連軍に対する協力というものでもないし、それからまたPKOに対する協力というのは、国連平和維持活動、こう書いてあるのですから、これはPKOに対する協力その他の活動というのは多国籍軍を意味するということですから、結局この法律は多国籍軍に対する協力を目的としてできた法律だというふうにただいまの答弁で明確になったと思います。  それでは、今中東湾岸地域に展開している多国籍軍というものは国連憲章、国際法上どのような位置づけですか、明確にしてください、外務大臣。
  130. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ただいま展開をしております多国籍軍と申しますものは、国連憲章の四十条、四十一条に関するものであると認識をいたしております。
  131. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいまの御質問につきまして、若干補足させていただきたいと思います。  御承知のとおり、国連安保理は、決議六百六十号によりまして、憲章第三十九条に基づいてイラククウェート侵攻国際の平和と安全の破壊であるというふうに認定いたしました。そして、イラク軍の八月一日の駐留地点までの無条件撤退を求めまして、さらにただいま外務大臣がお引きになりました決議六百六十一号におきまして、決議六百六十のイラクによる遵守確保、クウェートの正統政府の権威回復を目的とする経済制裁措置を憲章第四十一条に基づく非軍事的強制措置として決定したわけでございます。ただいま外務大臣がおっしゃいましたのは、この経済制裁措置の根拠が憲章第四十一条であるということでございます。  いわゆる多国籍軍は、これらの諸決議を受けまして、各国が、第一はイラクによる軍事行動の拡大の抑止及び第二に対イラク経済制裁措置の実効性確保のために兵員、艦船等を湾岸地域に展開したものでございまして、湾岸地域ひいては国際社会全体の平和と安全の維持に積極的に貢献するものであるというふうに考えております。
  132. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いろいろこっちが聞いていないことまで詳しく答えることはないです。  第三条「定義」ですね、「国際の平和及び安全の維持のための活動 国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議に基づき、又は国連決議の実効性を確保するため、国際連合その他の国際機関又は国際連合加盟国その他の国が行う活動」、これに対して協力をしようというわけです。今お答えになりました。多国籍軍が展開をしている、これに対する協力、これをやっていこうということですね。  とすれば、海部総理は最初、記者会見、八月二十九日ですか、自衛隊の派遣は考えていない、こうおっしゃったですね。八月二十二日、党首会談をいたしました。土井委員長、私、大出国対委員長が行きまして海部総理とお会いしました。その際、海部総理は、国連中心、憲法を堅持をする、自衛隊の派遣は考えていないということをおっしゃいました。そして、そのことを二十九日の記者会見でおっしゃった。ああなるほど、我々が主張したことを海部総理はきちっと踏まえているなと思いました。ところがどうですか、この法律ではそうなっていないじゃありませんか。  それから、さらにその後、危ないところには出しませんよと総理はおっしゃった。しかしどうですか。「その他の国が行う活動」、これに協力をしようということになれば、これは二十万ないしは五十万の軍隊が展開していると言われるサウジアラビア、そこの後方支援に行くということがこの法律でよろしいことになる。まさに危ないところに行くということになるのじゃありませんか。総理がおっしゃったあの記者会見の発言は一体どこへ行ったのですか。
  133. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 党首会談のときにいろいろなやりとりがあったことは、そのとおりであります。  しかし私は、自衛隊を自衛隊としてそのまま派遣するというようなことは想定しておりませんでしたし、今回も平和協力隊の枠組みの中に入ってもらって、そこで武力行使を伴わないいろいろなものを考える、政府内で慎重にいろいろ検討をしました結果、法案として最終的に取りまとめ、国会の審議をお願いをしておる、こういう次第でございます。
  134. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 危ないところはどうなんですか。
  135. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは要請を受けたときに、外務大臣から要請があるわけですけれども、そのときに閣議が最終的には実施計画をきちっと定めます。そのときに、戦闘が行われているような場所とか直接戦闘が行われておるような地域に対して、どのような医療協力やどのような輸送協力ができるかということは、実施計画の段階で慎重に判断をして十分に対処していく、そういった考え方でございます。
  136. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それでは、この国連決議があって、そしてこのようなことに対して加盟国が協力をしてほしいということになっても、これはただいまの答弁によって、日本の国ではこの第三条にある定義、この仕事は手伝います、この仕事は手伝いません、恣意的に左右することができるということなんですね。そこは重要ですから、明確にしておきましょう。
  137. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 平和協力隊の協力業務の内容というものは、あくまでこれは日本の内閣が責任を持って計画を決めるわけでありまして、そのために法案の中に用意してありますように、平和協力会議とか、最終的には閣議の決定に付するわけであります。ですから、そのときのいろいろな要請がございましょうから、さまざまな要請の中で、やはりできるものとできないものはあるということです。
  138. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それではお尋ねをしますが、平和協力隊はサウジアラビアに展開している米軍を中心とする多国籍軍、この後方支援等のためにサウジアラビアに派遣することも考えているのかどうか、この点明確にお答えになってください。
  139. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ただいまのお尋ねでございますけれども、新しく創設される国連平和協力隊、このものが発足をいたしまして、もし必要とあるならば、国連決議協力するという建前でこの地域に派遣することもあり得ると思います。
  140. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今の御答弁は、私は重要だと思います。  確かに、この国連決議六百六十一、イラク経済制裁、それからその後六百六十五号、必要な措置、あります。しかし、デクエヤル事務総長は、このサウジアラビアに展開をしている米軍というのは国連決議六百六十一号とは関係がないんだ、別だということをおっしゃったでしょう。とすれば、今のようなお答えでこの国連平和協力隊をサウジアラビアに派遣をするということは、国連決議に基づいて出すということに反するんじゃありませんか、どうなんですか。
  141. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国連決議を受けまして、日本が、この平和協力隊本部の本部長というものは内閣総理大臣でございますから、外務大臣の要請を受けて、その時点で必要とあれば周辺国と連絡をし、国連と連絡をしながら派遣することもあり得るという認識を持っております。
  142. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今のお答えではおかしいと思うのですよ。この目的、この法律は国際連合が行う決議を受けて行われる平和維持活動その他の活動に対して適切かつ迅速な協力を行うんだ、こうあるのですから、国際連合が行う決議とは無関係な行動に出かけるということになれば、この法律違反じゃありませんか。おかしいですよ。今の答弁は取り消していただきたい。
  143. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今私が答弁をいたしました国連決議その他という事項に当たるものかと考えております。今私が御答弁申し上げた中で、第一条の「目的」のところにございますけれども、「この法律は、国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議を受けて行われる国際連合平和維持活動その他の活動に対し適切かつ迅速な協力を行うため、国際連合平和協力会議の設置、国際連合平和協力隊の設置等について定めることにより国際連合平和協力隊の海外派遣の実施体制を整備するとともに、これらの活動に対する物資協力のための措置等を講じ、もって我が国国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与することを目的とする。」とここに書いてございます。
  144. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今のは何ですか、第一条を読んだだけじゃありませんか。(発言する者あり)
  145. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。
  146. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私が聞いたのは、この国際連合が行う決議を受けて行われる行動について協力をするんだ、こうおっしゃった。だから、それでは今サウジアラビアに展開しているあの米軍、多国籍軍は、この八月十三日、デクエヤル事務総長が、あれは国連決議六百六十一とは関係がない、無関係だ、こうおっしゃった。とすれば、国連決議を受けた行動とは全然違うのではありませんか、こう私は聞いているのであって、それに対して全く明確な答弁ができないじゃありませんか。それだったら何だってできるということになりますよ。何だってできるということになりますよ。そんな法律ですか、これは。
  147. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国連決議の六百六十号、六百六十一号、六百六十五号でございます。
  148. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 六百六十号決議クウェートへの侵攻非難ですよ。六百六十一は経済制裁、それから六百六十五はその必要な措置、これは経済制裁を実効あるためにとる必要な措置ですよ。ですから、サウジに展開している米軍はこれとは関係ない。関係ないんだ。何だってできるということになるじゃありませんか、それでは。そんなことでこの法律の審議ができますか。
  149. 中山太郎

    ○中山国務大臣 具体的なことでございますから、国連局長から答弁をさせます。
  150. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 委員長、おかしいですよ、重要な問題だから政府委員に答弁させるだなんて。重要な問題だから政府委員に答弁させるとは何だ。そんなことが許されますか。重大な問題は閣僚が答弁すべきですよ。何だ、今のことは取り消せ。だめだ。(発言する者あり)
  151. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。
  152. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 具体的に大事な問題だと言っているじゃないか。(発言する者あり)
  153. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。
  154. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私の申し上げた言葉で、言葉が少し足らなかったと思います。その点は取り消さしていただきますけれども、国連が行いました決議の六百六十号、六十一号、六十五号に基づいて、このいわゆる決議の実効を有効あらしめるために展開をしておりますいわゆる多国籍軍、これの支援をするための協力をするということでございます。
  155. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それでは事実をもって言いましょう。サウジアラビアアメリカ軍が軍隊を出したのは、国連決議前だったじゃありませんか。とすれば、今の答弁はだめですよ。
  156. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今、委員のお尋ねの問題は、多国籍軍の問題をお尋ねだと思います。そうですね。  国連安保理は、決議六百六十により、憲章第三十九条に基づいて、イラククウェート侵攻国際の平和と安全の破壊であると認定し、イラク軍の八月一日の駐留地点までの無条件撤退を求め、さらに決議六百六十一において、決議六百六十のイラクによる遵守の確保、クウェートの正統政府の権威の回復を目的とする経済制裁措置を憲章第四十一条に基づく非軍事的強制措置として決定をした。いわゆる多国籍軍はこれらを受け、各国がイラクによる軍事行動の拡大の抑止及び対イラク経済制裁措置の実効性確保のために兵員、艦船等を湾岸地域に展開したものであり、湾岸地域、ひいては国際社会全体の平和と安全の維持に積極的に貢献をしております。これにさらに、日本政府としては、この平和協力隊法が成立した場合には協力をするということであります。(発言する者あり)
  157. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。——お静かに願います。
  158. 中山太郎

    ○中山国務大臣 八月二日にイラク侵攻があったわけでございます。そしてそこで六百六十の決議が行われる、こういう事実がございました。そして八月八日に米軍がサウジアラビア要請を受けてサウジに進駐する、こういうことに事実はあるわけでございます。それで、先ほど言われました国連事務総長の言ったPKOとこれは関係はないということでございます。
  159. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私が聞いているのは、この国連イラク経済制裁決議をやったのは八月六日です。その前にこのアメリカ軍はサウジアラビアに展開をしている。したがって、デクエヤル事務総長は八月十三日、サウジアラビアに展開しているこの米軍は国連決議とは別の問題だ、こう明確に言ったわけです。したがって、先ほど来私が問題にしているのは、この法律の一条には、国連国際連合が行う決議を受けて行われる平和維持活動その他の活動、その他の活動も国連が行う決議を受けて行われるその他の活動でしょう。みんな受けているわけですよ。  そうすると、国連決議とは関係ない問題に出ていけるというような答弁がなされましたから、それではこの法律一条は一体何なんだ、そんなことでは、この国連平和協力隊というのは国連決議とは全然関係なくどこへでも出ていける、そんなことでいいんですかということを私は聞いているわけです。それを明らかにしてください。
  160. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国連決議の日時等につきまして具体的に国連局長から答弁をさせていただきます。(発言する者あり)
  161. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。
  162. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 国連平和協力法の目的あるいは定義の条項をいろいろと御質問でございまするが、それとあと一連の国連決議及びデクエヤル事務総長の発言との関係につきましては既に外務大臣から説明がございましたけれども、もう一度改めて一連の事項につきまして説明させていただきます。  この法律の目的は、第一条及び第三条に書いてありますとおり、国際の平和及び安全の維持のために国連が行う決議を受けて、あくまで決議があってこその平和協力隊員の派遣あるいは物質協力でございます。それが大前提でございます。決議がある場合に行われる国際平和維持活動といたしましては、第一に国連の行う平和維持活動、これはPKOと先生言われました国連平和維持活動でございます。  もう一つ、この法律で想定されておりますのは、その他の活動でございます。このその他の活動につきましては、先ほどから繰り返し御質問がございますが、その他の活動も一連の決議を受けて行われるその他の活動でございますので、それで今この湾岸情勢について申しますと、国連決議六百六十号、これは八月二日に採択されました。侵攻の直後に採択されました六百六十号という決議でございます。これはイラククウェート侵攻を非難して、無条件即時撤退を求める決議でございます。数日たって六百六十一号の全面制裁決議、そのあと六百六十五号、これは経済制裁決議をさらに実効ならしめるために、海上に海軍等を展開している国が臨検等の必要な措置をとることができるということと同時に、他の加盟国に対して、その海上で海軍を展開している国に対していろいろな援助を求めるということがうたわれております。以上が、特にこれに関連する決議でございます。  それで、この法律で想定されておりますのは、このような国連決議があります場合に、各国がこの国連決議の実効性を確保するために湾岸地域に展開している、それに対してこの法律のもとで日本といたしましてもそのような活動に協力することができるというのが基本的な問題でございます。  もう一つ国連事務総長の発言との関係でございますけれども、国連事務総長の発言の正確なテキストを今私はお持ちしておりませんけれども、私の記憶では……(山口(鶴)委員「取り寄せてください」と呼ぶ)はい、取り寄せますけれども、国連事務総長が申しましたのは、これは全く国連決議関係ないということではなく、国連平和維持活動の一環として行われているものではない、多国籍軍の展開は国連平和維持活動の一環として行われているものではない。ただ、決議を受けて行われていないということは言っていないと思います。  したがいまして、この法律におきましては、第一条及び第三条は、国連平和維持活動が行われる場合に日本が参加するのが第一点。第二のカテゴリーといたしましては、その他の活動、国連決議を受けて行われるその他の活動でございまして、日本のいわゆる湾岸地域で展開しております多国籍軍に対する協力は、このその他の活動、決議を受けて行われるその他の活動の一環として行われるものでございます。  以上でございます。(発言する者あり)
  163. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。お静かに願います。  中山外務大臣。
  164. 中山太郎

    ○中山国務大臣 改めて国連局長から答弁をいたさせます。(発言する者あり)
  165. 越智伊平

    越智委員長 外務省赤尾国際連合局長。  お静かに願います。
  166. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 法律と国連決議との関係は先ほど申しましたとおりでございます。  もう一点だけ。もう一点だけ、先生から御質問の国連決議アメリカ軍の派遣の時間的な関係について補足させていただきます。  イラククウェート侵攻が起こりましたのが二日の未明でございます。同じ日にニューヨークにおきまして、国連決議六百六十号、これはイラククウェートからの即時撤退を求める決議が成立いたしました。アメリカは、ブッシュ大統領が、八月八日ですから国連決議の六日後に発表いたしまして、サウジアラビアに一部の兵力を移動させるというふうに発表いたしました。したがいまして、アメリカサウジアラビアへの兵力の派遣といいますのは、これは決議六百六十号を受けて行われた、この決議六百六十号の実効性を確保するために行われたということでございます。  なお、ちなみに六百六十一号、全面的経済制裁決議もその前日に採択されております。
  167. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今の答弁は私はおかしいと思うのです。六百六十決議は確かに八月二日ですよ。これはイラククウェート侵攻に対する非難の決議だけなんです。非難だけなんですよ。行動をどうするというのじゃないのです。そうして、行動は六百六十一、これはイラク経済制裁をこういうことでするという決議、これは六日です。アメリカ軍はその前にサウジに展開しているじゃありませんか。これでは理屈にならぬと言うのです。
  168. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今、中近東局長からその事実を御説明申し上げます。
  169. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 多国籍軍の展開とそれから国連安保理決議との関係につきまして、事実関係を御説明申し上げます。  まず、時間的な関係といたしましては、先ほど国連局長から御説明申し上げましたとおり、安保理決議六百六十が二日に採択され、それから六百六十一、これは経済制裁を決定している決議でございますが、これが六日に採択をされまして、米軍の移動は八日以降でございます。  それで、これも従前御説明申し上げましたとおり、この多国籍軍が展開をいたしております目的は、イラクによる軍事行動の拡大の抑止及びイラクに対する経済制裁措置の実効性確保のためでございます。  この点につきましては、例えば十月一日の国連総会におきます演説におきまして、ブッシュ大統領が、米軍は制裁を実効あらしめるため、及びさらなる侵略抑止し、必要ならば防衛するために派遣されているという趣旨を明確に述べております。  それから、ほかの例を申し上げますれば、英国につきましては、サッチャー首相の下院の演説というのがございます。これは九月の六日でございますが、やはり、英軍の展開は経済制裁の効果的実施及びイラクのさらなる侵略行為抑止ということでございます。ほかにも同様の目的を表明している国がございます。  それから、先ほどのサウジアラビア要請にこたえたかどうかという点でございますが、これは、陸上兵力をサウジアラビアに展開するに当たりましては、サウジアラビア要請にこたえてやっていることでございます。艦船の展開は、これはサウジアラビア要請とは関係はございません。
  170. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 何回同じことを言わせるんですか。結局、サウジアラビア要請によってアメリカ軍がサウジアラビアへ展開したんでしょう。国連決議によって展開したんじゃない。だから、そのことをデクエヤル事務総長は別だと言ったわけです。国連決議六百六十一号とは関係がないということをおっしゃった。  ところが、今の答えでは、国連決議関係ない、サウジアラビアに展開しているアメリカの多国籍軍の後方支援のためにこの平和協力隊が出動してもいいと言うから、これでは国連決議とは関係がないじゃないか、国連決議関係ない行動に何でも行くんではこの法律は全く意味がない、こう私は言っているのであって、答えになってないじゃないですか。
  171. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国連局長から答弁させますが、私からも一言申し上げますと、先ほども説明がございましたように、サウジの要請にこたえてアメリカの陸軍が展開をした、またアラブの同盟軍がアラブの多国軍としてアラブに出動をしている、こういう現実でございまして、これがいわゆる多国籍軍と言われているものでございます。そのためのいわゆるこの多国籍軍の後方支援といいますか、医療あるいは輸送面での協力ができるためにこのような法案を御審議願っているということでございます。(発言する者あり)
  172. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います
  173. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 先生からデクエヤル国連事務総長の発言と多国籍軍及び決議との関連につきまして御指摘がございましたので、私たちのニューヨークからの報告をベースに御説明いたします。  確かに、先生が御指摘されましたとおり、一部の報道におきまして、新聞等の報道におきまして、国連事務総長は多国籍軍の展開は国連とは関係のないような発言をしたかのごとく報ぜられた事実がございます。その後、ニューヨークにおきます国連事務総長の記者会見におきまして、このような報道は自分の、すなわち国連事務総長の真意を伝えていないというふうに述べて、新聞報道を否定しております。(発言する者あり)
  174. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。(発言する者あり)静粛に願います。静粛に願います。(発言する者あり)  申し上げます。静粛にして、静かに、静かにお聞きいただきます。また、静かに質問をいただきます。答弁も正確に願います。  中山外務大臣。
  175. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国連決議の六百六十に基づいて行っておるものでございます。(発言する者あり)
  176. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。補足説明をさせますから、お静かに願います。  外務省渡辺中近東アフリカ局長
  177. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 先ほどの御説明が必ずしも十分ではございませんでしたかと思いますので、改めて申し上げます。  先ほど申し上げましたのは、安保理決議六六〇、これがイラククウェート侵攻国際の平和と安定の破壊であるという認定をして無条件撤退イラクに求めている決議でございます。これは非難もいたしておりますが、そのほかにそういうことを定めております。それから六百六十一、これが経済制裁決議でございます。それで、さらにその後六百六十五という決議がございまして、これは経済制裁を前提として、その経済制裁の実効性を確保するために、船舶の停止それからその検査等の措置をとっている船舶に対して一定の条件のもとで必要と思われる措置をとるということを規定しておりますが、このことは、多国籍軍が国連安保理決議の実効性を確保するためにそのような行動をしておるということを前提としておるわけでございます。  それから、さらにつけ加えまして、先ほど申し上げましたような、これに参加しております各国がどういう目的で参加をしているかという発言を先ほど二、三御紹介申し上げましたけれども、その中には制裁の実効性の確保ということを各国とも含めておるわけでございます。
  178. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 何回同じことをやらせるのですか。六百六十というのは、これは単なる非難決議なんですよ。どうこうしろというんじゃないんだ。そして今お話のあった六百六十一あるいは六百六十五、これは措置をとれということでしょう。  問題は、アメリカが展開したのはサウジアラビア要請に基づいて出ている。したがって、この国連決議とは関係ない形で展開をしているわけなんです。それに対して、その他の行動だからいいんだ、憲法で禁止している交戦権は持てないとか、憲法九条がある、そういった問題を、その他というような条項で行ってもいいんだ、国連決議とは関係なしにどこへ行ってもこれでいいんですよというような法律は一体何だ、言語道断だ、こう言っているんです。(発言する者あり)
  179. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。
  180. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この法案というものは、いろいろと御審議をいただくわけでありますが、成立をいたしました暁でも、国連決議がなければ一切行わないというのが基本でございます。(発言する者あり)
  181. 越智伊平

    越智委員長 静粛に願います。
  182. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先ほど私の発言中に、サウジの要請を受けてアメリカの陸軍部隊がサウジに展開した、その後方の支援をするといったような発言は、これは取り消さしていただきます。これは取り消さしていただきたいと思います。  何遍も申し上げておりますように、多国籍軍は、決議六百六十、六百六十一、六百六十五を受けて、その実効性確保のために展開しておるものでございまして、すべて安保理の決議関係があると認識をいたしております。
  183. 越智伊平

    越智委員長 山口鶴男君。——山口鶴男君、質問をお願いいたします。     〔委員長退席、近藤(鉄)委員長代理着席〕     〔近藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  184. 越智伊平

    越智委員長 外務大臣の答弁を求めます。中山外務大臣。
  185. 中山太郎

    ○中山国務大臣 多国籍軍は、国連安保理決議六百六十、六百六十一、六百六十五を受けて、その実効性確保のため活動してきております。このことは、六百六十五が、多国籍軍が六百六十一の実効性確保のために活動を行っていることが前提となっていることからも明らかであります。  なお、最初の米軍のサウジ派遣は、サウジ政府要請により、イラクのサウジ侵略を阻止するために行ったものであります。  いずれにせよ、本法は国連決議がなければ適用されないものであります。
  186. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただいまの外務大臣の答弁は、問題点もありますが、重要な点もあります。まず重要な点を確認していただきたい。  としますと、今度のこの法律に基づくこの行動というものは、すべて国連が行う決議、その範囲内の行動である、国連決議にかかわりない形で行われた行動に対する支援などは一切ない、あくまでも国連決議の範囲内においてこれは行動するというふうに明確に確認していいわけですね。その点は、総理の方から明確にしていただきましょう。
  187. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 本法で予定しておりますことは、国連決議に基づき、または国連決議の実効性を確保するために行われておるものでありまして、ここに言う国連決議及び国連決議に基づいてその実効性を確保するために各国が出しておるのがいわゆる多国籍軍でありますから、いずれも国連決議というものが前提にあり、その国連決議の実効性を確保するために参加をするというのがこの範囲であると私は受けとめております。
  188. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 先ほど外務大臣は、国連決議を受けての行動というふうに明確に言ったはずです。これは先ほど言ったやつです、これは。今言ったのじゃありません。そうすると、今の総理の答弁は、以前の外務大臣の答弁とは真っ向から違っております。統一見解を示していただきたい。
  189. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど申し上げたことをもう一回申し上げさせていただきますが、国際連合が行う決議に基づき、または国際連合決議の実効性を確保するためにそれぞれの国がこの行動をとる、それが多国籍軍になるわけであります。そして、その多国籍軍が出ていく前は、国際連合の決議そのものを受けてそれの実効性を確保するために出るわけでありますから、そのことはこの法律の第三条の「定義」にそのまま書いてあるわけでありますし、また、第一条の「目的」の中にある国際の平和及び安全の維持のために行う国連決議を受けて、そしてその下に、国連決議を受けて行われるものには「国際連合平和維持活動」、それと「その他の活動に対し」、この「その他の活動」というのは、その実効性確保のために各国が多国籍軍として出ていっておるものである、こういうことであります。先ほど申し上げたとおりでございます。
  190. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 総理、第一条をお読みになった。第一条、そのまま書いてあるとおっしゃったのですが、第一条をそのまま読めば、「国際連合が行う決議を受けて行われる国際連合平和維持活動その他の活動に対し適切かつ迅速な協力を行うため、」と書いてありまして、総理が言われたように第一条の「目的」には、実効性の確保などという言葉は書いてありません。この一条をそれではそういうふうに修正するというのですか。全く今のような答弁では私は納得することはできない。
  191. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 第三条の中に「国連決議の実効性を確保するため、」ということが書いてありまして、「その他の国際機関又は国連加盟国その他の国が行う活動をいう。」と、これは第三条のところにそのとおりの文字で書いてあるわけでありますから、これは第一条を受けて書いてあるわけです。
  192. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 先ほど外務大臣は、この活動は国連決議を受けてその範囲の行動はやるんだということを明確におっしゃった。今のお話では国連決議を受けてその効果的に行動するとかいう範囲を広げて、そうしてこの法律は対処できるということですから、私が先ほど来これではおかしいではないかと言っている、あらゆる行動にこの国連平和協力隊は出ていけるということになるではないか。それでは今までの政府の答弁と全く違うことになる、それではだめだ、こう言っているわけでありまして、いずれにせよ、この「目的」それから「定義」、重要です。目的と定義が違っているというのも私は問題だと思いますが、いずれにせよ、この目的、この法律はどういう場合に発動できるのか、この基方的な問題はきちっとした政府の統一見解というもので示していただかなければ私はいかぬと思います。そうでなければ、国民の皆さんも納得しないと思います。そのことを私は強く求めている次第です。委員長、その点についてはお諮りをいただきたいと存じます。
  193. 工藤敦夫

    工藤政府委員 私の方から、この法案の構成といいますか、それについて御説明申し上げます。  まず、第三条「定義」から御説明を申し上げてまいりたいと思うのですが、第三条の第一号におきまして、「国際の平和及び安全の維持のための活動」というのを定義してございます。この中には、先ほどからお話が出ております国連決議に基づき、あるいは国連決議の実効性を確保するために国際連合その他、ここでは「国際連合等」というふうなことでございますが、が行う活動をいう、こういうことでございます。  それで、第一条の「目的」とその用語が違うではないか、こういう御指摘が今ございました。この点につきましては、「国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議を受けて行われる国際連合平和維持活動その他の活動」、かように書いてございます。  まず先に「国際連合平和維持活動その他の活動」のところを申し上げますと、通例の法律の用語に従いまして、「その他」の上にありますのは例示でございますので、いわゆるPKOその他の活動、これが一つでございます。それはあくまでも一条で、国際連合が行う決議を受けて行われる活動なんだ、かように考えられます。  その上で、「受けて行われる」と、三条の「基づき、又は実効性を確保するため、」この差があるではないかという点につきましては、第三条できちっと定義をいたしましたが、第一条の「目的」におきましては、この法律が何を目的として行われるのか、こういうことを簡潔に述べるのが第一条の「目的」の趣旨でございますので、そういう意味で、今のような範囲を一応押さえた上で、それに対して我が国が適切かつ迅速な協力を行うためにこういう手段をもって行い、「もって我が国国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与する」、これを目的とするのだ、かように構成しているわけでございます。  なお、あわせて申し上げれば、その今の三条一号で定義しております「国際の平和及び安全の維持のための活動」、これがいわゆる国際連合等の活動でございますが、二号におきまして「平和協力業務」というのは、その「活動に係る次に掲げる業務」だということで、イからチまで掲げてあるわけでございます。そうして、さらに申し上げれば、十七条におきまして、いわゆる「実施計画」のところで、「内閣総理大臣は、」今の「国際の平和及び安全の維持のための活動」、これはさっきの三条一号で定義してございますが、それに「協力するため海外派遣その他の平和協力業務」、これは三条の二号で定義してございます、「の実施が適当と認めるとき」には閣議の決定を求めて以後それを行っていく、かような関係に、構成になっているわけでございます。
  194. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 長々と説明をいただきました。私が疑問とするのは、今のような答弁でいけば、その他の活動ということを大いに幅広く活用する、そうして「実効性を確保する」というような第三条のこの規定を幅広く適用するということによって、結局国連決議六百六十、これはイラククウェート侵攻を非難している決議ですよね。それから六百六十一号はイラク経済制裁、これを行うという決議ですから、これは措置を決定している決議と言っていいでしょう。それから先ほどお引きになりました六百六十五号決議、必要な措置、これはこの対イラク経済制裁の実効性確保のため、海上部隊派遣国に対し必要な措置をとることを要請並びにすべての国に援助提供を求める旨の決議六百六十五号を、賛成、反対あったようですが採択をしたということですから、六百六十五号は結局この経済制裁のために展開している海上部隊、これに対して必要な措置をとることを付与した決議であるということでしょう。したがって、これはサウジに展開している陸上部隊とは六百六十五号は関係がない。それから六百六十号も、結局これはクウェート侵攻を非難しているだけであって、何もそのことに対して大勢の軍隊を派遣してどうこうしろというようなことではない。したがって、今のような解釈でいくとするならば、決議のずばり決定した行動以外に大変幅広い行動に対して、しかも実効性あるとかその他の活動とかいうことで、結局先ほど来自衛隊の海外派遣、海外派兵、憲法九条との関係で議論をいたしました、まさに憲法にかかわる重要な問題が、先ほど申し上げたような極めて幅広い解釈のもとでどんどん行動ができるというような法律が果たしていいんでしょうか。国民がそういった法律を期待しているか、私はそうではないと思います。そういう意味では、ただいまの総理大臣並びに法制局長官、御答弁をいただいたことは御苦労だと思いますが、しかし、それでは極めて国民のこの懸念、憂慮というものはさらにさらに拡大することになる。このような法律は我々は撤回を要求するということです。こんな心配の法律、これ以上、こんなことで一体済むと思っているのですか。私は、もっと国民の皆さんを安心させるためのきちっとした見解を、この際、委員長のもとできちっとひとつ御相談の上で示していただくことを要求をしたいと思うのです。
  195. 越智伊平

    越智委員長 ただいま山口委員から委員長に要望がありまして、理事間で協議をいたしましたが、海部内閣総理大臣より統一見解を求めます。海部内閣総理大臣
  196. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この法律に示しておりますことは、国際の平和及び安全の維持のために国連が行う決議、この国連が行う決議を受けて行われる国連平和維持活動、そして国連が行う決議、それの実効性を確保するために行う多国籍軍、それは国連決議の実効性を確保しませんと問題の根本的な解決になっていかないという認識に立ってすべての国がするわけですから、あくまで国連決議が、その決議の実効性を確保するためにそれぞれの国が出ていく、それが多国籍軍であるということでありますから、何でもかんでも無制限というのではなくて、ここに平和の破壊がある、それを救うためには経済制裁をしなければならぬ、その目的を達成するためにその国連決議を受けて出ていく行動が国連平和維持に関する目的を達成するための協力活動である、このように理解をしております。
  197. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 先ほど外務大臣は、この法律で適用される行動というのはすべて国連決議に基づくものだという枠をはめたはずですよ。今の総理大臣の統一見解は、その枠を無限に拡大した、こう言って差し支えないのではありませんか。そういうことでは私は極めて危険である、こう言わざるを得ない。先ほどの外務大臣の答弁とただいまの答弁と、一体どういうことなんですか。
  198. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先ほど私が申し上げましたのは、すべて国連決議を受けて行う、こういうことでございます。(発言する者あり)
  199. 越智伊平

    越智委員長 中山外務大臣より答弁を求められておりますので、これを許します。
  200. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国連決議に基づき、またはその実効性を確保するために国連あるいはその他の国々が行うPKOその他の活動に対して我が国協力するものであるが、その協力の範囲は「平和協力業務」として第三条に書かれているよりむやみに拡大するとの御指摘は当たりません。ただいま総理が申し上げたとおりでございます。(発言する者あり)
  201. 越智伊平

    越智委員長 山口君の質問に対しては、統一見解を政府側に後で求めます。  これにて山口君の質疑は中断いたします。  次に、神崎武法君。
  202. 神崎武法

    神崎委員 今回のイラクによるクウェート侵攻と併合は国際法に違反する侵略行為でありまして、断じてこれを許すことはできません。世界第二位の経済大国と言われるだけになった我が国といたしましても、それにふさわしい中東への貢献、またこの中東事態に対する平和的解決、外交的解決に対して強力なリーダーシップを発揮すべきである、このように考えるものでございます。したがって、我が党は、中東貢献に当たりましても、単に金や物の支援だけではなくして、要員の派遣も含めた貢献を考えるべきであるとかねてから主張をいたしてきたところでございます。  ただ、今回の中東の事態というものは緊急、突発的な事態でございます。これに対してどう対応するのかという問題と、これから国連を中心に新しい世界秩序づくりをしていく、その中にあって我が国としてどのような国連協力をすべきか、これは私はきちんと立て分けて議論をしなければいけないと思うわけでございます。国連協力にあっては、私はPKO、紛争が終了した後でこの秩序を維持し、回復するためのこのPKO、この派遣については、これは積極的に参加する方向で議論をしなければいけないと思います。  ただ、今回の中東事態は、イラク軍と多国籍軍がにらみ合っている戦闘寸前の状態のそういう中で我が国がどのような貢献ができるのか、問われているわけでございます。その場合もあくまでも憲法の平和原則、集団的自衛権の不行使の原則、自衛隊の海外派兵の禁止の原則、これを守った上でいかなる貢献ができるのか、これを私は真剣に考えなければいけない、このように思うわけでございます。  今回提出されましたこの法案を拝見いたしますと、この今回の中東への貢献と中長期的な国連協力のあり方、これが単にPKOの問題だけではなくして国連軍への協力という形で一緒になっている法案として出てきたわけでございます。そしてまた、部隊としての自衛隊の参加が明文化され、しかも自衛隊の、自衛官の身分を持った者が参加をする、武装した艦船の参加も認められている、そういった大変問題のある法案であると私は思います。この憲法の認めております集団的自衛権不行使の原則、自衛隊の海外派兵禁止の原則からいたしまして大変問題のある法案であると言わざるを得ませんし、このように到底私は納得のできるような法案ではないというふうに申し上げたいと思います。  総理は、今回の中東への対応と将来の中長期的な国連協力のあり方についてきちんと立て分けて法案というものを考えるべきであると私どもは思いますけれども、どういう御所見をお持ちでしょうか。
  203. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のとおり、今回の湾岸危機というのは八月の二日に突如として起こったものでございました。そして、そのとき日本としてはどのような協力、貢献ができるだろうかということを政府は直ちに考えました。制度、仕組みが全く何もないという中で最初の貢献策を発表いたしましたが、輸送協力にしても医療協力にしても、極めて厳しい状況の中で、それでも民間のボランティアの人々協力要請する、あるいは一部の組織に協力要請するという形でとり行ってまいりました。今後、おっしゃるとおりに、中長期で眺めて、国連の果たす役割というものは極めて大きくなるわけでありますから、これに対して当面どのような対応をしていくべきかということを基本に置いて今回の協力法案というものをまとめたわけであります。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕  それは、当面の措置としては、ただいまも輸送協力、物資協力、医療協力、あるいは避難民アジア地区の母国への送還協力、いろいろなことを現に行っております。しかし、法的な仕組みもないし、今後を見定めていく上においては中長期に何ができるだろうか。今、委員指摘になった国連平和維持活動、いわゆるPKOというものもこれから我が国協力する場面が非常に出てくるのではないだろうか。今度の湾岸危機のみならず、このような不幸なことは二度と行ってはならないというもちろん基本的な考えを持っておりますけれども、しかし、この過渡期の問題として、もし国連決議に従っていろいろ行われることがあるとするならば、全く抽象的な仮定でありますけれども、どのような考え方で貢献したらいいか、それがこの法案の中身でありまして、ただいま御指摘になったような平和原則といいますか、派兵の禁止という問題に触れないようにしなければならない。  先ほど来、派兵とは、派遣とはという議論も随分ございましたが、武力の威嚇、武力の行使を目的とする派兵は、これはもちろんしてはいけない、また、集団的自衛権に関する議論もきょうまで随分ございました。これは、国際法上においては集団的自衛権はそれぞれの国にある。例えば日米安全保障条約においても、いろいろなところにおいて、国連憲章においても、集団的自衛権は個々の独立国としては当然の権利として認められているのですけれども、日本国憲法の平和原則の枠内において、我が国は集団的自衛権を行使できないという制約の中できょうまで歩みを続けてきたわけでありますから、この法案を作成するときにも、今御指摘の点については十分に配慮をして考えてきたものでございます。そのような発想に立って取りまとめましたのがこの協力法案でございます。
  204. 神崎武法

    神崎委員 今回の法案は、自衛隊の参加というものを明文で規定をしておりますし、先ほど申し上げましたように、自衛隊そのものが協力隊の名前で海外に派遣できるようになった法案でございます。しかも、この法案の三条を見ますとさまざまな、国連決議あるいは国連決議の実効性を確保するための活動ということが書かれているわけでございますけれども、これはむしろ、これを読みますと、国連軍というものを念頭に置いた条文の規定の仕方になっているわけでございます。  したがいまして、私は、この法案につきまして、まずこの国連軍と自衛隊の参加の問題、この憲法解釈につきまして、従来の憲法解釈に基づいてこの法案がつくられているのかどうか、あるいは新たにこの憲法解釈を変えて行われているのかどうか、その点からまずお尋ねをいたしたいと考えます。  まず最初にお尋ねいたしたいのは、この法案の三条によりますとどういう国連軍が考えられるのか。この国連軍に対して協力隊が協力ができるということになりますから、まず国連憲章第三十九条の安保理勧告に基づく国連軍、いわゆる朝鮮戦争型の国連軍、これがこの国連決議に基づく国連の活動として含まれるのかどうか、その点をまず第一点にお尋ねいたしたいと思います。
  205. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまお引きになりました国連憲章第三十九条の勧告に基づきまして何らかの国連軍が形成されるという場合も含むと解しております。その場合、この法案のもとで行います我が国協力は、三条に挙げておりますいろいろな任務でございまして、当然武力の行使を伴うようなものは入っておりません。
  206. 神崎武法

    神崎委員 正確なお答えではないと思います。私が伺っているのは、これはきのうの本会議での答弁でもあったと思います。外務大臣から御答弁がございましたよ。国連憲章三十九条の朝鮮戦争型の国連軍は、この国連決議に基づく国連が行う活動、三条に含まれるのかどうか、それだけの話ですから。
  207. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 朝鮮戦争当時の国連軍は、もとよりこれは歴史的なものでございますので、今後同じものができるかどうかはわかりませんけれども、三十九条のもとで形成されますあのような国連軍につきましても、この法案のもとでの協力の対象にはなるわけでございます。
  208. 神崎武法

    神崎委員 法制局長官、その解釈でよろしいですか。
  209. 工藤敦夫

    工藤政府委員 実は、お答えするときに、ちょっと角度といいますか視点といいますかがつかまえにくいといいますか、非常に御説明申し上げにくいのでございますが、国連憲章の三十九条に基づくという観点、従来私どもが憲法解釈としてとってまいりましたのは、何条に基づくかということを一応別にいたしまして、従来いわゆる国連軍と言われてきたもの、これに対しまして、昭和五十五年に稲葉委員に対してお答え申し上げた、そういう意味のいわば憲法解釈的な観点からの話でございまして、今の委員の御指摘は、国連憲章三十九条に基づくのかどうかとこうおっしゃられるわけでございますが、従来から、いわゆる国連軍につきまして、さまざまな形態がございますので、一概に言うわけにはいかないけれども、その国連軍がいわゆる任務、目的におきまして武力行使を伴うものであれば参加できない、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されない、それから当該国連軍の目的、任務が武力行使を伴わないものであれば自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないわけではないけれども、現行自衛隊法上は、自衛隊にそのような任務を与えていないので、これに参加することはできない、こういうお答えをしてまいりましたわけでございまして、この解釈につきまして何ら変更があるわけではございません。
  210. 神崎武法

    神崎委員 その点については後ほど議論をしたいと考えておりまして、要するに法案の三条の解釈として、憲章三十九条の国連軍が含まれるのか含まれないのか、法律解釈だけです。
  211. 工藤敦夫

    工藤政府委員 国連憲章の三十九条に基づきます国連軍が形式的にここに当たらないか、およそそこから外れるかといえば、決してそういうことはないだろうと思います。ただ、この三条の一号にもし当たりましても、以後の、例えば二条の二項で武力による威嚇または武力の行使を行うものであってはならないとか、あるいは平和協力業務の範囲とか、そういうことから当然の限定を受けるものはあろうと思います。
  212. 神崎武法

    神崎委員 結論的には、国連憲章三十九条の朝鮮戦争型国連軍もこの三条に言うところの協力隊が協力する国連軍に当たる、こういう解釈だというふうに理解いたします。  次に、国連憲章四十二条、四十三条のいわゆる正規の国連軍と言われる国連軍、これはこの第三条で言うところに当たるかどうか。
  213. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案の対象としてそのような四十二条、四十三条のもとで形成されます国連軍が当たるかどうかという点につきましては、これも入るというふうに解しております。ただし、この法案のもとで行い得る協力というものは、武力の行使または武力の威嚇に当たるようなものであってはならないということになっておりますし、また、この平和協力隊の任務も限定されておりますので、その範囲のことであれば対象になり得る。  ただ、御案内のとおり、そのような国連軍ができますときには安保理、国連と加盟国との間で特別協定を締結いたしまして、そこで協力の内容が定まってくるということでございますので、現在どのような特別協定ができるかということがわかっておりませんので的確なことは申し上げられませんが、一応そういうふうに考えられると思います。
  214. 神崎武法

    神崎委員 次に、PKO型国連軍、先ほども御答弁にはございましたけれども、国連平和維持軍あるいは選挙監視団、停戦監視団等PKOと言われる国連軍でございますが、これについてはどうですか。
  215. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 いわゆるPKO型の平和維持活動というものも対象になります。
  216. 神崎武法

    神崎委員 それから、先ほどの議論でも出てまいりましたけれども、今回の事態における多国籍軍、これは含まれるか、もう一度確認をいたしておきたいと思います。
  217. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案の三条にございますとおり、この法律においての定義がしてあるわけでございますが、その第一項で規定しておりますごとく「国際の平和及び安全の維持のための活動」の定義といたしまして、「国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議に基づき、又は国連決議の実効性を確保するため、国際連合その他の国際機関又は国際連合加盟国その他の国が行う活動をいう。」というふうになっておりまして、この国連決議の実効性を確保するための活動という意味におきまして多国籍軍も対象になります。
  218. 神崎武法

    神崎委員 その他の平和維持活動もあろうと思いますが、とりあえずこの四つに限定をして議論をいたしたいと思います。  この四つの——多国籍軍も国連軍の範疇に入れて、皆さん方のお考えですと国連軍だという考え方ですので、入れて議論いたしますと、これらの四つの国連軍、多国籍軍の中で、その任務、目的が武力行使を当然に伴っていると考えられる国連軍、これはどれとどれですか。
  219. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 将来できますところの、七章に基づく、四十二条、四十三条と言った方がいいかもしれませんが、そのような国連軍は武力の行使を任務といたしまして、侵略を鎮圧するという任務を負うわけでございます。それから、多国籍軍も、現在の湾岸危機に際しまして、その拡大を防ぎ、抑止するという任務を持っております。したがいまして、武力の行使を任務とするものであるということは言えると思います。平和維持軍と言われるものもございますが、そのようなものには、限定的に武力を行使と申しますか、休戦の確保のためにある程度の武力を持っているというものもあると思います。
  220. 神崎武法

    神崎委員 そういたしますと、この四種類の国連軍、多国籍軍のうちで武力行使をその任務、目的からして伴わないものは、いわゆるPKO、国連平和維持軍である、それ以外の三つの国連軍、多国籍軍はいずれも武力行使を伴うものである、今こういう解釈があったわけです、御答弁があったわけです。  それを前提として伺いますが、これまでのこの国連軍への自衛隊の参加、これについての政府見解。先ほども法制局長官が御答弁されましたけれども、この国連軍自体の任務、目的が武力行使を含むか含まないかで自衛隊が参加できるかできないかを分けておりました。どうでしょうか。
  221. 工藤敦夫

    工藤政府委員 先ほどもお答えしたところでございますけれども、まさに「いわゆる「国連軍」は、個々の事例によりその目的・任務が異なるので」ということを前提と置いた上で「当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されない」、かように答えているところでございます。
  222. 神崎武法

    神崎委員 この物の考え方なんですけれども、武力行使を伴う国連軍、これに自衛隊が参加をすることは、必然的に一体不可分の行動をする、したがってそれ自体が憲法で規定する集団的自衛権の行使に当たる、したがって武力行使の伴う国連軍への参加は憲法上許容されない、そういう基礎的な、基本的な考え方、これに立ってこの議論がなされているように私は思いますが、どうですか。
  223. 工藤敦夫

    工藤政府委員 先ほど委員、四分類をされました。その中で、いわゆる四十二条、四十三条の部分は、これは人によりましては集団的自衛権で必ずしも説明をされていないようにも思います。そういう意味で、いわゆる国連憲章の第七章のうちの第五十一条、ここで個別的自衛権または集団的自衛権というふうなものを引いております。そういう意味から申し上げますと、いわゆる学説として別途分類をするということもございます。それはいずれにいたしましても、やはり憲法九条に基づきまして自衛隊は我が国を防衛するために必要最小限度の実力を持つということから発しまして、我が国がそれを、限度を超えるような武力の行使というものは許されない、そこから根差してきているものだと思っております。
  224. 神崎武法

    神崎委員 それをなぜ、武力行使を任務、目的とする国連軍かどうかというところで憲法に違反するかどうか分けたのですか。それはやはり、武力行使を目的とする、任務とする、そういう国連軍であれば、それに自衛隊がいかなる形で参加しても、それは一体不可分、集団的自衛権の行使につながる、こういう頭の整理で、それが憲法上認められない、こういうことになったんじゃないですか。
  225. 工藤敦夫

    工藤政府委員 一体不可分と申しますか、我が国が武力の行使をしているともまた見られる、こういうふうな形態があると存じますし、そういうものは当然許されないこと、憲法九条からいって当然許されないこと、かような考えだと思います。
  226. 神崎武法

    神崎委員 そうしますと、今回の法案の考え方、これは従来の政府の見解でどういうふうに私は説明されるのか確認したいのですけれども、従来は、先ほど申し上げましたように、参加をする国連軍の目的、任務が武力行使を伴っているかどうか、それで憲法上参加できるかどうかを分けていたわけです。ところがこの法律を見ますと、国連軍については、いずれの国連軍、武力行使を伴う国連軍でも武力行使を伴わない国連軍でも協力隊は協力できる。確かにこれは、参加と協力は違います。これは後で議論したいと思います。参加と協力はどう違うのか、これは後で議論しますけれども。  それでは、従来の政府見解である、武力行使を伴う国連軍には憲法上自衛隊は参加できない、この考え方は変わったのですか、変わらないのですか。その点はどうですか。
  227. 工藤敦夫

    工藤政府委員 五十五年の政府の答弁を変えることではございません。
  228. 神崎武法

    神崎委員 変わらないで、どうやってこれは説明できるのか、私は納得できないのです。  それでは、法制局長官、まずお伺いいたします。  国連憲章三十九条の国連軍ですけれども、この国連軍に、武力行使を伴うというふうに分類されましたこの国連憲章三十九条に基づく朝鮮戦争型国連軍、これに我が国の自衛隊は参加できますか。憲法上ですよ、どうですか。
  229. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お断りしておかなければならないのですが、三十九条型と申されますのと、いわゆる過去に実例としてございました朝鮮戦争型と申しますか、というのが必ず一致するものかどうか、そこがまた一つの問題点だろうと思います。過去におきまして、確かに朝鮮国連軍の場合には武力行使目的であったと思います。したがいまして、これに参加することはできないだろうと思いますが、三十九条がすべてその型であるのかどうか、これはまた一つ議論はあろうかと思います。現にこの答弁においても「個々の事例によりその目的・任務が異なるので、それへの参加の可否を一律に論ずることはできないが、」という前提を置きましたのは、従来の、先ほど委員おっしゃられました何条型と言われるものがすべてまたその何条の中で同じであろうかどうか、こういう問題もあろうかと思います。そういう趣旨でございます。
  230. 神崎武法

    神崎委員 それは、従来の政府の答弁と違っていませんか。例えば昭和四十一年三月十日の高辻法制局長官の答弁、「たとえば朝鮮国連軍のように、国連の勧奨ということはあるにいたしましても、それぞれの国がそれぞれの意思と責任において武力の行使を目的とする行動をするというようなことになれば、これはやはり国連の活動と大まかには言えますけれども、やはりそれに参加することは、海外派兵に入るんではないかというようなふうに考えられます。」と明確に答弁をいたしております。  それから、昭和四十四年三月二十二日、参議院予算委員会において、同じく高辻法制局長官、「普通、たとえば朝鮮国連軍のごとき、確かに国連の意思によって、勧告に応じて各国が兵力を提供し、そうして各国の名と責任において米国の司令官がその統一的な指揮に当たるというようなことはありますけれども、また、国連の旗を持っているというようなこともありましょうけれども、各国がその名と責任において行動をするというようなものには、日本の憲法のたてまえからいって、それに兵力を提供し、あるいはみずから国連軍の一部として行動するというようなことは憲法上非常に疑義がある。むしろ率直に言えば憲法上できないのではないかというふうに考えておる次第でございます。」こういう答弁がございます。どうなんですか。
  231. 工藤敦夫

    工藤政府委員 委員の先ほどの御指摘に対しまして、私冒頭、いわゆる三十九条型というふうな型で申し上げると非常に当方としてはなかなか視点が変わるので申し上げにくいと申し上げました。当方としては、その国連軍が武力の行使、その任務、目的において武力行使を伴うものであるか否か、そこで区別しているわけでございますので、そのできます国連一つ一つについてそういう判断をしていく必要があるし、また過去におきましてもそういうものがありましたときに、これは難しいという、あるいはこれは許されないという答弁を申し上げたことはそのとおりでございます。そういう意味で、何条型であるからどうだ、こういうことではございませんで、いわばその任務、目的が武力行使を伴うか、我が国が武力行使を行っていると見られるか、むしろそういう観点からの分類でございます。そういう意味で、なかなか視点が違うのでお答えしにくいと冒頭申し上げたところでございます。
  232. 神崎武法

    神崎委員 視点は全く違っておりません。ここで書いてあるのは、要するに「各国がその名と責任において行動をする」ような場合にはということで明確に分類をして、そのような国連軍には憲法上参加できないんだ、明確に書いてあるのですね。どうですか、法制局長官はこの三十九条、外務省は、これは三十九条の国連軍も当然協力の対象になる、こういう解釈のようですが、法制局としてはそういう解釈ですか。改めて確認をいたします。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  233. 工藤敦夫

    工藤政府委員 繰り返しになりまして大変恐縮なんでございますが、実は三十九条型といいますか、それはどういうふうなものが過去にあり、どういうふうなものが今後できるか、それにつきまして私は深い知識ございません。そういう意味で、むしろそれ自身が武力行使を任務、目的として伴うものであるかどうか、やはりそこの観点から判断すべきなのであって、あるいは我が国が武力の行使をすると見られるようなものであるかどうか、その観点から判断するのであって、憲章の何条だから、こういう御指摘に対して私の方なかなかそのまま一律にとかいうふうに申し上げにくいところでございます。
  234. 神崎武法

    神崎委員 そういたしますと、憲章三十九条の国連軍でも、その任務、目的が武力行使を伴うような国連軍には我が国の自衛隊は参加できない、こういう解釈でよろしいですか。
  235. 工藤敦夫

    工藤政府委員 繰り返すようでございますが、私どもの方は、むしろ憲法の目から見れば、そういうふうな観点でございまして、実は、国連憲章上あるいは国際社会上どういうふうな形でできてくるかというのと憲法との突き合わせをそれぞれしていくのだ、こういう考え方でございますので、そういう憲法九条の考え方を基本にして考えていくべきである、かように思っております。
  236. 神崎武法

    神崎委員 今の御答弁を伺っていますと、どうも外務省は国連憲章を中心に考えておる、法制局は憲法九条を中心に考えておる、どうも意見が一致してないように思うんですよ。これは憲法九条と国連憲章をあわせて憲法解釈としてはどう考えるのか。今の問題、どうですか。
  237. 工藤敦夫

    工藤政府委員 私は決して意見が食い違っているとは思っておりません。むしろ発想が国連憲章からスタートしてくる、そこで具体的な何物かができてくる、それに対して憲法が、合憲であるのか違憲であるのか、こういう判断でございますから、そういう意味で、これまでの国連軍もさまざまなものがございますし、これからもまたあるいはさまざまなものがあるかもしれません。それを私どもは憲法九条の目で見ていくということでございまして、決してその食い違いがあるとかいうことではございません。  ただ、条文の上でこういうのが当たり得るかということであれば、当たり得るとしても、それは憲法上許されないのがあればそれは当然やらない、こういうことでございます。  先ほどちょっと参加と協力の話も出ましたが、そういうふうなこと、あるいは国連軍の性格、それによって判断されていくので、法律上当たり得るからそれじゃすべてそれはやるのか、それはやるとしても憲法九条の制約があるものはできません、こういうことになろうかと存じます。
  238. 神崎武法

    神崎委員 そうしますと、よくわからない、この第三条の国連決議に基づく国連の活動、いわゆる国連軍においても、武力行使を伴う国連軍、これには自衛隊は参加できない、この規定の解釈上もそういう意味だ、このように理解してよろしいですか。
  239. 工藤敦夫

    工藤政府委員 どうも委員のおっしゃられたことを私、的確にとらえていないのかもしれませんが、私の方としましては、まずこちらがやりますことは、武力による威嚇あるいは武力の行使あるいは憲法九条に違反するような行為、これは当然日本国としてできないわけでございますから、そういうものとでき上がります国連軍との関係、その関係というものを考えていく、こういうことでございますので、大変繰り返しになって恐縮でございますが、そういうことでございます。
  240. 神崎武法

    神崎委員 私がなぜこういう質問をしているのか、先ほど申し上げたと思うのですよね。要するに、従来の政府の統一見解からいたしますと、日本の自衛隊が参加する相手の、対象である国連軍の性格、目的で、憲法に認められるか認められないか、参加ができるかできないか、これをきちんと立て分けていたわけです。ところが、今回のこの法案は相手が、この対象ですよ、対象が武力行使を伴っていてもいなくても、国連決議があれば日本の自衛隊は協力できる、自衛隊というよりも協力隊は協力できる、こういう条文になっておるわけですね。協力する側に武力行使の目的と、武力行使に当たるものでなければ協力できるんだ、これは二条二項でそういう規定の仕方になっているんですね。明らかにこれは憲法の解釈を変えてきているのか、あるいは従来の憲法解釈に立ってできているのか、その点がはっきりしないからきちんと整理していただきたい、こういうふうに申し上げているのです。
  241. 工藤敦夫

    工藤政府委員 今の委員の御指摘からお話ししますと、私の方、まず参加と協力の話は多少分けて考えなければならないという前提はございます。要するに、まず当方の規範として働いておりますのはやはり憲法九条で、我が国は武力の行使または武力による威嚇を行ってはならない、それ以上に、九条の一項と二項とあわせまして、必要最小限度の、我が国防衛のために必要最小限度の自衛力といいますか、そういうこと等をかみ合わせますと、当然憲法違反のことはできないわけでございます。そのときに、ここでいわゆる三条の一号におきまして武力の行使を伴うものがあった場合に、その任務、目的に武力の行使を伴うものがあった場合、それに参加することができないとしても、場合によっては何らかの協力をすることができるかもしれない、そういう意味では、私は、この法律と先ほどの見解とは必ずしも食い違うものではないのじゃなかろうかと考えております。
  242. 神崎武法

    神崎委員 そうしますと、ここではっきりしてきたわけですね。要するに、武力行使を目的とする国連軍、これには自衛隊は参加はできない。これは従来の憲法解釈どおりである。しかし、協力はできることはある。ですから、参加はできないけれども、協力はできる。では、参加と協力はどう違うのか。これは議論しなければいけないと思うのですね。  それでは、この参加と協力という考え方、根本的にはどこが違うのですか。どう違うのですか。
  243. 工藤敦夫

    工藤政府委員 極めて形式的に申し上げれば、言ってみれば片方はその中に入り込むということでありますし、片方は外から協力する、こういうことであろうと思います。  ただ、その中に入り込むといいましても、入り込み方に、これはどうも従来の国連軍もいろいろな指揮系統等があるようでございまして、私必ずしもつまびらかにいたしませんが、一応そういう指揮系統の中に入っていくということになれば問題かな、かように思っております。
  244. 神崎武法

    神崎委員 そうしますと、この参加と協力を分ける一番の要因は指揮系統、これが国連軍の指揮下に入るか、入る場合は参加、入らない場合は協力、これがこの参加と協力を分ける一番のガイドラインである、こういう今法制局長官は御答弁をされたわけですね。よろしいですね。
  245. 工藤敦夫

    工藤政府委員 私は、たしか数週間前だったかと思いますが、そういうふうなことを一度御答弁申し上げたこともありますし、そういう意味で一つのメルクマールだと思っておりますが、あくまでもそれはどういう実態に我が国が立つのかということが問題なんであって、我が国が武力を行使をしていると見られるような実態になればこれはもう問題だということであって、単に形式的に、私はさっきそのいろいろな形態がありましてと申し上げたのも、具体的な案件が目の前に来たときにどういうことに我が国立場が立つんだろうか、そういうことが基本的な考え方だろうと思います。それを、いろんなメルクマールがあると思いますが、その中の一番大きなものは先ほど申し上げたようなことではなかろうか、かように思います。
  246. 神崎武法

    神崎委員 そういたしますと、これは外務大臣にお尋ねした方がよろしいと思いますが、先ほどの四種類の国連軍、多国籍軍、この指揮命令系統がどうなっておるのか、お尋ねをします。
  247. 中山太郎

    ○中山国務大臣 将来発足する国連平和協力隊はいかなる軍の指揮下にも属さないというのが原則でございます。
  248. 神崎武法

    神崎委員 私がお尋ねしたのは、先ほど四つの分類をいたしました、それぞれについてこの指揮命令系統はどうなっておるのか、いわゆる国連の指揮なのか各国の責任に基づく指揮なのか、そこの点ですね。その点を分類してほしい、そういうことを言ったのです。
  249. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国連局長から先に答弁をさしていただいて、後また私がさしていただきます。
  250. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 今、先生の御指摘のいろいろな軍、国連軍その他のうち、混合軍あるいは国連軍は国連の指揮下に入ります。多国籍軍は、これはそれぞればらばらの各国が別々に行動しております。朝鮮国連軍の場合は、これはアメリカの指揮下に入ったというふうに了解しております。
  251. 神崎武法

    神崎委員 三十九条の国連軍ですね、この場合はどうですか、指揮命令系統は。
  252. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 過去に存在いたしました朝鮮での国連軍につきましては、先ほど国連局長からお答えしたとおりだと思います。アメリカ軍の指揮官を国連軍の指揮官としたということでございますが、将来この三十九条のもとでいかなる国連軍ができるか。これは今的確にわかりませんので、その場合の指揮系統というのもその都度決まってくるというふうに考えております。
  253. 神崎武法

    神崎委員 三十九条の国連軍、朝鮮戦争型の国連軍の際には各国がそれぞれの指揮を持つ、そういう議論がされたんじゃないですか。そういうふうにして我々は参加するというところもあったんじゃないですか。
  254. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 私はその経緯はただいま承知いたしておりませんけれども、結果的にはアメリカの司令官のもとに入ったというふうに理解しております。
  255. 神崎武法

    神崎委員 そうしますと、もう一度確認しておきますけれども、三十九条の場合、過去においてはアメリカの指揮下に入ったけれども、将来においては各国が独自の立場で行動することもあり得るわけですか。その点、いろいろなバリエーションがある、こういう答弁ですか。
  256. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 三十九条に基づきます国連軍というのは余り例がございませんので、過去においてはそういう朝鮮国連軍が参考になるかと思いますけれども、将来につきましてはいろいろなまた態様、特に指揮命令系統につきまして態様があるかと存じます。
  257. 神崎武法

    神崎委員 先ほど私は参加と協力の問題で法制局長官に、どこでこの違いがあるのか、これは指揮命令系統、指揮下に入るかどうかだと。今、国連軍、四十二条、四十三条の国連軍、これは国連の指揮下に入る、それからPKO、これも国連の指揮下に入る、国連事務総長の指揮下ですね。三十九条の国連軍については場合によって分かれる、多国籍軍については各国独自の考え方に立つ、こういうふうに整理がありました。  そうしますと、これに自衛隊が派遣されるということは、今の法制局長官の分類でいきますと、どうなんですか、これは協力になるんですか。多国籍軍に対する協力は、これは参加ということになるわけですか。あるいはPKOは国連の指揮下に入るからPKOには我が国は参加できないという、こういう論理になると思うのですね。PKOについては、外から応援しないとこれはだめだ、我が国としては憲法上PKOには参加できない、こんなことになるのですか。おかしいんじゃないですか。
  258. 工藤敦夫

    工藤政府委員 どうもなかなか明確に申し上げにくいんですが、現在の私どもの方といいますか、現在の憲法解釈から申し上げて、我が国が武力の行使をする、あるいは我が国が武力の行使をすると見られる、このような観点のところを問題にしているわけでございまして、したがって、例えば、私も正確には存じませんが、朝鮮国連軍のときに各国の軍が出す、これはむしろ、もしそこに我が国が出したとしたら、それは仮に、何といいますか、参加でないとしても問題はございましょうし、もうそれはむしろ一番問題になるようなケースだろうと思います。結局のところ、我が国としての判断、我が国としての憲法から見たその国連軍に対する関与のあり方、そういうことになろうかと思うわけです。
  259. 神崎武法

    神崎委員 先ほど、国連軍の指揮下に入らなければ協力はできる、こういうふうに答弁されたのじゃないですか。じゃ、多国籍軍は各国が独自の判断で行動しているものです。これには協力はできるのだ、参加はできないけれども協力はできるのだ、そういう考え方だということを御答弁されたわけでしょう。
  260. 工藤敦夫

    工藤政府委員 その点は私先ほども、いろいろなメルクマールはあるけれどもその中の一つの判断要素かな、こういうことを申し上げましたし、それからまた、その指揮のあり方というのがまたいろいろな態様があり得るのだ、したがって、ここの過去の答弁においても申し上げておりますように、いろいろな態様があるので一概には申し上げられないがということを申し上げていますし、それは結局翻ってみれば、我が国から見てどういう関与の仕方に結果的になるのだ、そこのところであって、それがこういう名目がつけばできるとか、そういうむしろ名目よりは、実質的にそういう我が国の憲法九条の目から見てどういう形になるのだろうか、そういうことだろうと思います。
  261. 神崎武法

    神崎委員 十分私の質問にお答えになっていないのですね。ですから、こういう国連軍への参加問題、これは三条ではそれも含めて書いてあるわけですよ。そういう問題を十分な議論もしないで、従来の憲法解釈からいってどうなのか、いろいろな角度からも詰めないで、今回の中東への対処にこういうのを全部詰めて一本の法案にしている、そこに無理があるのですよ。そう思いませんか。  ですから私は、今の、もしこの三条の考え方、これが国連軍の任務、目的で自衛隊の参加、不参加が決まるという過去の、今までの政府見解と同じだというと、非常に理解しにくい。違うと。今政府で検討しているという新解釈、新解釈からいくと確かにこれはわかるんだね。これは新解釈の頭でつくったのですか、どうなんですか。
  262. 工藤敦夫

    工藤政府委員 いわゆる新解釈なるものを私は存じません。  午前中、私は憲章七章に基づく国連軍と自衛隊の参加の形態について申し上げまして、多少重複するかもしれませんがもう一度繰り返しますと、要するに、まだ我が国の憲章七章に基づく国連軍への関与の仕方、参加の態様については検討中ではあるけれども、思考の過程から見れば、まず、自衛隊はやはり憲法九条に違反するものではない、こういう前提に立った上で、海外派兵あるいは集団的自衛権の行使あるいはいわゆる従来の国連軍への参加の形態、こういうふうなものについての過去の答弁例を申し上げ、そしてこういう答弁から推論、従来の政府立場から推論していけば、いわゆるその任務が国を防衛するものとは言えない国連憲章上の国連軍に自衛隊を参加させることについては憲法上の問題が残るということを申し上げた上で、他方、国連憲章の七章、ここはまだ設けられたことはない、それからその設けられる場合の四十三条の特別協定、これの姿もわからない、さらに、四十三条で各国に求められる貢献、これについても三種類ございます。それについての選択の余地もある、あるいは、これが一番問題なのかもしれませんが、国際情勢が急速に進展しつつある、こういったところから、今後さらに検討を続けていくべき問題である、かようにお答えしたわけで、いわゆる新解釈というのは……
  263. 神崎武法

    神崎委員 法案を出しておきながら、今後十分検討する課題だなんというのは私は通らないと思うのですよ。  総理にお尋ねします。  総理は、この国連軍は、憲法で禁止されている集団的自衛権とは異なる集団的安全保障措置であるという立場から、これに対する自衛隊の参加は憲法上許されるという憲法解釈の重大な変更を研究しているということをお述べになっておりますけれども、どういう必要で研究をされておられるのか、明らかにしていただきたい。
  264. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、具体的にそこのところだけ焦点絞ってという意味ではございません。将来の国連軍の編成が現実となる場合にどうなるかということについていろいろなことを研究しておる最中だ、こういう意味でございます。ですから、武力行使をもって、今の法案で、今の考え方でそのようなことができるようにしようということは考えておりません。
  265. 神崎武法

    神崎委員 この三条の規定の仕方が国連軍への協力ができるようになっているものですから、結局、将来の問題ではなくて今の問題になってきているのですね。総理としては、近い将来、この憲法解釈の変更を予定されておられるのかどうか。
  266. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ただいま憲法解釈を変えていこうということは考えておりません。それはこの法律におきましても、委員は今第三条だけを示して御議論になりましたが、これは第二条を見ていただきますと、「海外派遣に係る平和協力業務の実施等は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」ということを明確に書いておりますし、同時に、協力業務の中にも、平和協力業務は制限列挙的にきちんと並べてありますから、この法案において憲法解釈を変更しようとかそのようなことを考えてはおりません。
  267. 神崎武法

    神崎委員 一般論として確認をしておきたいわけでございますが、こういった国の基本であります憲法の解釈を変更しようとする場合、この場合、事実上の憲法改正と同じように国会の発議による三分の二以上の賛成という手続が必要だと考えますけれども、総理の見解はいかがでしょうか。
  268. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは憲法改正を考えておるわけでも何でもありませんから、私はいろいろなことを研究しておるということでありますので、三分の二以上の発議とかなんだとか、それは憲法改正の手続でありますが、憲法改正を考えておるわけではございません。
  269. 神崎武法

    神崎委員 そういたしますと、政府として国の基本にかかわる憲法の解釈を変更する場合に、いかなる手続を必要とするとお考えになっておられますか。
  270. 工藤敦夫

    工藤政府委員 憲法の解釈なるものが、実は非常に私にとりましては虚をつかれたような質問でございまして何とお答えすべきかなんですが、やはりその一つの論理構造としてでき上がっておりますものでございますから、それをただ右から左に変えるというふうなものではないと思っております。したがいまして、それにつきましてどういう手続というふうなことは、ちょっとなじみにくいのかなということだと思います。
  271. 神崎武法

    神崎委員 なじみにくいというのは、そういう手続はとれないということですか。要するに、政府の憲法解釈が変わりました、このように変わりました、こういうような政府の意思表示だけでこれは変えることはできないわけですね。
  272. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいま申し上げましたように、まず法律の解釈、これはもう委員十分御承知のところだと思いますが、いわゆる立法者の意図あるいはその後の社会情勢といいますか、そういうふうなものがございますが、それがずっと蓄積したものが一つの憲法解釈になってきているのだ、憲法のみならず一般の法律の解釈もそうだと思います。そういう意味で、立法者の意図だけではない、しかしまたその後の情勢だけでもないというふうなことで法律の解釈というのが決まってくるとすれば、そういう一つの論理的なあるいは社会的な制約を受けた上での問題でございますので、明確に、例えば三分の二の発議であるとか、そういうふうないわゆる手続規定というものはそこにないだろうというふうには思います。
  273. 神崎武法

    神崎委員 改めて確認いたしますと、そうしますと、法制局としても先ほどの憲法解釈の変更の研究は行っていらっしゃるのですか。
  274. 工藤敦夫

    工藤政府委員 内閣法制局の任務といたしまして、絶えず法律問題、憲法問題を含みます法律問題については研究しているというか勉強しているということは申し上げられます。しかし、これはあくまでも一般論でございまして、そういう意味で、今特にこれを、今までの憲法解釈というか、それの蓄積というものがあるということは調べ直したりもしておりますけれども、そういう意味で先ほど、過去においてそういうことを言った基本は何かというようなことは従来からやっておりますが、それ自身を特に変えるための作業とか、変えるための何とかというふうなことは一切やっておりません。
  275. 神崎武法

    神崎委員 最後に、総理として、先ほど申し上げました憲法の解釈の変更について、海部内閣としては行う予定があるんですか、ないんですか。
  276. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 内閣としては、この国連平和協力基本法というものを閣議で決定をして、国会の御審議をお願いしておるのであり、この点については、先ほども申し上げましたように、明確に第二条に、武力による威嚇、武力の行使は伴わないことということを明確にいたしましたし、また、国会答弁で従来の集団的自衛権に関する解釈を変更する考えはございません。
  277. 神崎武法

    神崎委員 先ほどの国連軍に関するさまざまな議論、法制局長官あるいは外務当局と議論をいたしましたけれども、総理としては、この問題についてはどういうふうに頭を整理されておられるのですか。
  278. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これはそれぞれのケースがございますので、いろいろ専門的に三十九条とか第七章とかいろいろなことがございましたが、私としましては、目的、任務が武力行使を伴うものであればこれは憲法上許されないものである、このような基本原則を踏まえてこれを眺めております。したがいまして、国連平和維持活動を行うものとか、あるいは多国籍軍タイプのものとか、朝鮮国連軍タイプのものまでが現実のものとして想定される範囲内に入っておるわけでありますから、それらについてはすべて今申し上げましたことを、何といいましょうか、適用するというか、その考えの範囲内のものである、こういうことでございます。
  279. 神崎武法

    神崎委員 終わります。
  280. 越智伊平

    越智委員長 これにて神崎君の質疑は終了いたしました。  次に、児玉健次君。
  281. 児玉健次

    児玉委員 昨日来、日本国連に加盟した問題について多くの論議を呼んでおります。国連加盟時にどのような事実関係があったのか。総理国連加盟時にどのような事実関係があったのか。事実は頑固でして、だれによっても消すことはできません。問題は、そのときのさまざまな日本政府その他の努力を今私たちがこの時点でどうやって生かすかという問題です。  そこで、昨日来の論議は、海部首相の参議院本会議での答弁がきっかけでございますから、私は、海部首相にお聞きをしたいと思います。  国連憲章の四十二条、よく御存じです。そこに「国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、」いろいろ言っておりまして、「空軍、海軍又は陸軍による示威、」これは明白な武力による威嚇に当たるでしょう。「封鎖その他の行動」これは武力行使または無限にそれに近いものでしょう。「を含むことができる。」こう書いてあります。  一方、日本国憲法の第九条には何と書いてあるか。「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」誤解の余地なく明らかにされています。日本が保持してはならない空軍、海軍または陸軍をどうして国連に出すことができるのか。  そこで、岡崎外務大臣は一九五二年の六月十六日、デクラレーション、声明とでも訳しましょうか、その中で「その有するすべての手段をもって、」これは挿入ですが、国連憲章上の義務を遂行することを明らかにいたしました。その間の経過について、これもさまざまな議論がありましたが、一九六〇年八月の憲法調査会第三委員会における西村氏の証言の中で、「これは」、というのは四十二条と憲法九条です。「一見憲法第九条の関係で実行できない国際的義務でございます。だから憲法第九条に基く留保をする必要があると結論したわけであります。」  首相国際条約上の留保とかなんとかというそういう言葉の問題でなくて、西村さんは、日本国憲法第九条に基づく留保をする必要がある、こういうふうに述べました。そして、その経過については、午前中議論になった。出てきた下田参考人は、「実は国連加盟申請書の苦心の作は、西村前局長がお話しになった通りです」、こういうふうに述べているのですよ。  そこから私たちは今何を学ばなければならないか。当時の岡崎外務大臣、「その有するすべての手段をもって、」そこを全体的に私たちはつかむ必要がある。あなたは、「その有する」のところは消して、「すべての手段をもって、」というところだけを強調して、フリーハンドを強調されているのではないか。もしそうでないとすれば私はそれは結構だと思う。いかがですか。
  282. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 正確に申し上げさせていただきます。  参議院の本会議で、日本国連に対する加盟のときに軍事協力の義務を負わないという留保をしたのではないか、留保をしたということについてどう思うか、こういうお尋ねでございました。  そこで私は、その当時の文書その他を外務省の国連局から全部取り寄せて読んでみました。きょうも何回もここで答弁しておりますけれども、正確に私は、岡崎外務大臣が国連事務総長に出した手紙も、「宣言」と称して発表した文章も、「その有するすべての手段をもって、この義務を遵奉することを約束するものであることを声明する。」こう書いておりますということを何度もここでもお答えしておりますので、私が「その有する」というのを省いて言っておるというのはこれは全くの誤解でありますから、御認識を改めていただきたいと思うのです。  ただ、私が申し上げたのは、その政治的配慮とか政策的問題じゃなくて、国際法上の事実として、外務省に答弁させますけれども、国連加盟のときに加盟の留保をするという制度はないから留保はしてないということでありますし、何回読んでも「その有するすべての手段をもって、この義務を遵奉することを約束するものであることを声明する。」というのは、これは留保とは受け取れないと、私はそう受けとめましたので、そういった留保をしておるというふうには私は考えていないと言いました。  専門家から詳しく説明させますから、聞いてください。
  283. 児玉健次

    児玉委員 「その有するすべての手段をもって、」だからそれは、有しない、なし得ない手段をとらないということを自明の問題として含意しております。そして、当時の情勢でそのことが明らかにされて、海部首相はそれをお読みになったそうですから、そのことの持っている意味を深くおつかみになれば、私は次の問題に進みたい。
  284. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘の文言は、まさにそのとおりの文言でございます。  ただ、当時、確かに西村条約局長が憲法調査会でおっしゃったような考え方も検討の過程であったというふうに聞いておりますが、他方において、これも委員指摘のとおり、その後下田条約局長がやはり同じ憲法調査会で発言をされております。苦心の作だと言っておられますけれども、その後で朝鮮事変のことにも触れまして、結論としては「現実問題としては憲法第九条のために国連の加盟が妨げられる、あるいは国連加盟後に義務が履行しえないことになるというような危ぐを政府当局が抱いたことはないように思っております。」というふうに言っておられるわけでございます。  けさも御答弁申し上げましたので繰り返しませんけれども、御承知のとおり四十二条の決定がありました後で、四十三条のもとで国連国連加盟国の間で特別協定を締結いたしまして、そこで各加盟国がどういう協力をするかということを決めるわけでございますので、その意味で、なし得ることはなし得ますし、なし得ないことはできない、それは当然のことでございます。
  285. 児玉健次

    児玉委員 けさの報道で、国連関係者が、日本の国会で、いまだ日の目を見たこともない、そしてこの後それがどうなるかということについてだれも見当もつかないというところの国連軍について日本で議論をしていることに驚きを隠していないようです。そして、国民の世論が、意見が分かれているときにそういうことを強行するということがあるだろうかという率直な疑問も出しているようですね。  私は、このことだけ議論するわけにいきませんが、その有する手段という中で、これは憲法調査会の後の正式の報告書の中に極めて簡潔に整理もされておりますが、なし得ないことはしないのだということが日本国政府の明白な意思として表示されて、国連もそれを了として日本国連に加えた、そのことを強調して、次の質問に入ります。  総理は、海外派遣と派兵は違うとか原則非武装だとかおっしゃっております。協力隊の主な業務である輸送業務について私は質問します。  現在中東に展開している多国籍軍の中心は言うまでもなくアメリカ軍です。アメリカ軍が必要とする物資をアメリカ要請によってある地点から別の地点に協力隊が輸送する、その中にはアメリカが必要とする燃料、武器、弾薬も排除されないのでしょう。この点、いかがですか。
  286. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 輸送協力についての御指摘でございます。  国際の平和及び安全の維持のための国連決議を受けまして活動している多国籍軍のために輸送分野で協力を行いますことは、この法案で規定しております平和協力業務の一つとして想定されます。協力法、この法案上、平和協力隊がそのような協力を行うことは可能でございますが、輸送協力を行うことは可能でございますが、それが適切と認められる場合には、協力法の定める手続に従って実際にかかる協力を行うことになるわけでございます。  したがいまして、実際の具体的な協力案件が出てきました段階で、この協力法で規定しております平和協力会議の諮問を経て、さらに本部長である内閣総理大臣が閣議を招集されまして、そこで業務計画を決定して具体的な内容を決めていくということでございます。
  287. 児玉健次

    児玉委員 アメリカ軍が、中東湾岸地域で必要としない物資を運んでくれと言うはずがないのです。だから、今の答弁からも、燃料、武器、弾薬も排除されないということは明らかにされました。  次の問題です。  総理は、輸送艦、補給艦等に装備されている武器は取り外さないと本会議でも答弁されました。日本の輸送艦、補給艦等には、四十ミリ連装機関砲、二十ミリ多銃身機関砲、いわゆるバルカン砲のことです、などが搭載されていますが、総理の御答弁のままであれば、これを搭載したまま派遣されることになりますね。
  288. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それはちょっと違うわけでありまして、私が申し上げておるのは、原則非武装で行く、しかし、輸送艦が、今、日本の場合は、部屋の中に保管しておりますのは、本会議で申し上げましたのは、小銃、けん銃、機関銃、それとたしか散弾銃であったと思います。それは、現にそれらのものが置いてあるということです。私は、派遣先その他によって、例えば自衛隊の方から参加してもらう協力隊員も、その他の方から参加してもらう協力隊員も原則非武装でありますけれども、それらの人々の基本的人権や護身ということもございましょうから、それはけん銃、小銃を特に必要なときは持っていく。ですから、その業務の内容によって、その輸送船が行くときに、それが艦を守るために必要だというような判断をすればそれは特に貸与しますし、必要でないというときにはそれは貸与しませんけれども、大体小銃、けん銃というところが小型兵器の概念である、私はそう思っておりますが、具体的には、そのときどきの要請にこたえて実施計画をつくるわけでありますから、内閣でその問題を十分議論し、閣議決定する段階で慎重に判断をしていくつもりでございます。
  289. 児玉健次

    児玉委員 本会議で公明党の石田委員長に対するあなたの御答弁の中で、輸送艦、補給艦、そういったものが現に装備しているものについては外さない。そしてその夜、防衛庁のさる幹部が今海部さんがおっしゃった小型火器、小火器のことについて触れたのです。経過はそのごとくですよ。四十ミリ連装機関砲、二十ミリ多銃身機関砲、この点については防衛庁の説明もあらかじめ受けましたが、一たん装備されている機関砲その他を外すというのは輸送艦、補給艦の設計上も極めて困難なことであって、それは組織として、部隊として、例えば海上自衛隊がこの業務に参加する以上搭載したままである、このことは明らかじゃありませんか。
  290. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 自衛隊に輸送の関係でどういう船を出す御要請が来るかというのは今後の問題でございますが、先ほど総理、輸送艦と申されましたけれども、これは補給艦でございます。輸送艦といいますのは、どちらかといいますと、上陸用舟艇のような船でございまして、こういうものが恐らくこの中東関係で輸送業務に当たるということは考えられないと思います。  補給艦というのを我々持っておりまして、八千百トンばかりのものでございますが、これには武器はついておりませんで、先ほど総理が申されましたように、船倉の金庫の中に機関銃以下の小火器を持っておる、こういうものでございます。
  291. 児玉健次

    児玉委員 補給艇というのがバルカン砲を持っていますね。そして補給艦が四十ミリ連装機関砲等を持っている。そして比較的大型の八千トンもありますが、輸送艦は今のところ兵装をしていない。兵装をしていない輸送艦が積んでいる小銃やピストルや機関銃は、もしかしたら部屋の中にあるかもしれません。それにかぎをかけると首相は述べて、私が問うていることをすりかえていらっしゃる、違いますか。
  292. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そうではございません。私が申し上げておるのは、原則非武装で出すということを言っておりますが、しかし、派遣先その他によって隊員の基本的人権等も考慮しなければならない場合がありますから、そこで小型武器に限定をして、これは小銃、そしてけん銃を隊員には貸与する。それから輸送業務に当たる海上自衛隊の補給艦については、海上自衛隊を呼んで全部説明を聴取したわけでして、その中に小銃、けん銃、機関銃、散弾銃が補給艦には積んである、それは部屋の中に今は保管をしてあります、こういうことでありますから、必要なときはそれを貸与して出せばよろしいし、おっしゃるように大砲を備えつけた船を使って、その大砲を外せとか外さないとか、そんな議論をする気持ちは考えておりません。
  293. 児玉健次

    児玉委員 この点はさらに続けて議論をしましょう。  運輸大臣に伺いますが、イランイラク戦争の際に、ペルシャ湾で攻撃されて被害を受けた日本の船舶は何隻でしょうか。人的被害はどうだったでしょうか。
  294. 大野明

    ○大野国務大臣 数的なことでございますので、正確を期すために政府委員から答弁させます。
  295. 寺嶋潔

    ○寺嶋政府委員 イランイラク戦争で、日本船舶に対し何らかの攻撃を受けた場合ということでございますが、日本籍船四隻を含みます十九隻の日本関係船舶が被弾、弾を受けております。また、攻撃とは言えませんが、日本籍船一隻を含む五隻の日本関係船舶が臨検、拿捕されております。それから人的被害でございますが、これは、日本人二名を含む四名が死亡し、日本人一名を含む十九名が負傷をしております。
  296. 児玉健次

    児玉委員 輸送途上の危険性の問題ですが、輸送の安全性、危険性などについて、航路の選択ということが一昨日来議論になっておりますが、私が問題にしたいのは、それよりも目的地です。どこを経由するにしろ、結局この法案によれば、多国籍軍、その大部隊であるアメリカ軍が求める中東湾岸地域に持っていくことになる。一番危ないところに持っていく。そしてイランイラク戦争のときの被害は、今の運輸省の答弁でも明らかですよ。これで安全だと言えますか。いかがですか。
  297. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 例示的に航路のことを申し上げましたけれども、まだいずれにしても具体的に要請があるわけでなく、具体的に検討する段階でどのような協力ができるのだろうかということもまず視野に入れて考えなければなりません。それから、それは医療で行くのか、輸送で行くのかあるいはその他の協力になるのか、そこで制限列挙してある問題になります。今から予断と憶測でもって物事を限定して御答弁は差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、戦闘の行われているような地域とか、戦闘がまさに行われんとしつつあるところに、初めからそれを予想して輸送業務を協力しようということにはならないと思いますから、十分に慎重に判断をしてまいります。
  298. 児玉健次

    児玉委員 一昨日、アメリカの上院の外交委員会で、アメリカの国務長官は、軍事的行動の選択肢を失わない、こういうふうに述べていますね。世界で現在一番危険な地域が中東湾岸地域ですよ。その地域で陸上輸送に従事している協力隊の危険性はどうなんですか。航路の問題もないですよ、これは。
  299. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いずれにしても、具体的な要請のあった段階で判断いたしますが、ただいま我々がこの法律ができる以前の問題として実行しております輸送の協力は、陸上は全然想定しておりません。
  300. 児玉健次

    児玉委員 陸上は全く想定していないと。ただいまのところというのはどういう意味ですか。
  301. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今協力をしておるわけでありまして、そして、拠点輸送と申しますか、基地までの輸送はするということで、海員組合の御協力もいただいて八百台の四輪駆動車が今サウジに向かって輸送されておる、これもそうでありますし、それから、これはもう直接の問題じゃありませんが、避難民の救援のためにジョルダンへ航空機が行っておる。あるいは医療調査団ジョルダンとそしてこの間サウジ、両方先遣団が、見てきましたが、今はこの法律に基づかずして、ボランティアの人にお願いする形で、組合の協力をいただきながら行っておる、それは拠点まで協力物資を輸送するということでありますが、そのほかについては具体的な展開があったときに、その要請に応じて、そのときそのときに実施計画を決めていくべきものである、こう考えております。
  302. 児玉健次

    児玉委員 この法案が現在展開されている中東湾岸地域におけるアメリカ軍に対する協力活動を予想していないと断言されるのであれば、あなたの今のお話は私は幾らかわからないわけではないのですよ。違うでしょう。現に中東で展開されているアメリカ軍に対して、その要請があれば輸送協力をするということでしょう。万一、協力隊が業務に従事しているとき戦火が開かれたとき、そのときはどうするんですか。
  303. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、まず何よりもイラククウェートからの撤兵が早く行われれば局面が打開されてくるわけであって、そんなことする必要ありませんから、力を合わせてまずそういったことをしたいというのが強い願い。二つ目は、戦火が開かれるということを予想して今湾岸協力しておるわけじゃなくて、皆が戦火を開かないでどうして平和解決するかを願っておるところであります。もし始まったらどうするかと言われたら、その段階で判断いたします。危険なところへは出しません。
  304. 児玉健次

    児玉委員 出しませんでなくて、既に出ているんですよ。この法案が通って、日本の若者が日の丸の旗や自衛隊の艦旗を翻して——アメリカ自身が、このところ何回も報道で出てくるでしょう。例えば、アマコスト駐日大使は小沢幹事長に対して、中東に日の丸が立つような貢献を要請したというじゃありませんか。アメリカのスコウクロフト大統領補佐官は日本村田駐米大使に、日本の旗を立てた船と飛行機が現地で活躍することが重要だと伝えた由ですよ。そうやって、現地で日の丸と海上自衛隊の艦旗が翻っている、万一戦争が開かれたらどうするのか、多くの国民が当然それに心配を持ちますよ。  そこで、今首相はおっしゃったけれども、それでは聞きますけれども、首相は、アメリカが一方的に軍事制裁に出ることはないということについての何らかの保証をお持ちでしょうか。みんながそれを聞きたがっている。お聞きします。
  305. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、軍事行動に出ないように、いつも強く、粘り強い平和解決への努力を私の方からは主張しておりますし、同時にまた、この間うちの国連ブッシュ大統領の演説やあるいはミッテラン大統領の演説なんかを聞いておりまして、これはブッシュ大統領自身もイラクに対して、間違いに気づいてクウェートから撤兵をして人質を解放することが、その後のイラククウェート紛争あるいはイスラエル・アラブ紛争解決のためにいろいろな転機を提供するだろうという、そういう提案を行っておるわけであり、また、一方のイラク側も、この先自分の方から戦いをしかける仕掛け人にはもうなりたくないということはラマダン首相も言っておるわけでありますから、そういったような状況の中で私は、両方が慎重に話し合いによる平和解決をぜひしてもらいたいということを強く願っておるのです。そういったことできょうまでずっと行われておると思いますから、いたずらに、始まる、始まる、始まるということを前提に私は物事を見たり考えたりしたくございません。
  306. 児玉健次

    児玉委員 どうしても許すことのできないイラク侵略は、平和的、公正的な手段で解決させたい、私たちは熱望しておりますよ。今のお話だと、どうも首相は、アメリカが軍事制裁に出ることはないという保証をお持ちでないようですね。  今多数のアメリカ軍が展開しているサウジアラビアで、当然祖国の問題ですから、サウジアラビアの軍部はアメリカに対して、万一軍事行動に出る場合は事前協議を求めたそうですが、報道によれば、これは断られています。日本はどうですか。
  307. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 私、御質問を的確に伺ったかどうか自信ございませんが、日本からアメリカの艦船が出ていく場合ということでございましょうか——そうでございますね。日本から出ていく場合の事前協議の対象は、委員御承知のとおり、日本から直接戦闘作戦行動に発進する、そういうために日本の……(児玉委員日本の艦船ですよ。日本の艦船で、アメリカじゃない」と呼ぶ)日本の艦船の場合は、もちろん事前協議というような話は、そういう制度はございません。
  308. 児玉健次

    児玉委員 日本から出ていくときにもないし、そして特別の事前協議も与えられてない。そこで、時間もないようですから、最後の御質問をしたいと思います。  原則非武装だとか、危険なところには出さないだとか、後方支援だとか、安全だとか、さまざまなことが言われております。陸上自衛隊の将官たちが、後方だから安全という考えに対して、通信機能は航空攻撃の第一優先目標だ、輸送部隊も前線の展開した部隊よりたたかれやすい、こう言っているようですね。組織として、部隊として参加する自衛隊の艦船、航空機、車両等が攻撃された場合どうするんでしょうか、お答え願いたいと思います。
  309. 藤井一夫

    ○藤井(一)政府委員 ただいま自衛隊のそういう部隊が攻撃された場合どうなるのかという御質問でございますが、私どもは、どういう御要請が来るかということがまだわからない段階でございますので、何ともお答えのしょうがないわけでございますけれども、再三総理からお話もございましたように、我々に要請が参ります前にはいろいろな手続、国連平和協力会議の諮問あるいは閣議の決定等慎重な手続がとられまして、平和協力隊が戦闘行為に巻き込まれることがないというような十分な配慮を払った上で御要請が行われるというようなことでございますので、ただいま御質問のような事態はあり得ないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  310. 児玉健次

    児玉委員 自衛隊法でさえ防衛出動のときには国会の承認ということがありますよ。ところが、この法案によれば全くそういったものもありません。本当に今平和を愛している日本の青年を世界で一番危険なところにこの法案で送ろうとする、私はこの法案を速やかに撤回されることを要求して、質問を終わります。
  311. 越智伊平

    越智委員長 これにて児玉君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  312. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案されております国連平和協力法に関連し、政府の見解をただしたいと存じます。  御承知のとおり、米ソの対立で明け暮れた冷戦構造は崩壊をし、これから国連中心で新しい世界秩序をつくろう、そのときに日本は何ができるのか、国際的な責任はどうしたら果たせるのか、そういう観点から、協力できるものをこの根拠法に求めてやっていこうというのが今度の法案だと思います。  しかし、この法案をつくるに際しましてはえらい時間がかかりました。中東貢献策でもかなり時間がかかりましたが、そしてツーレートだと怒られましたが、この法案を作成するに至る経緯を見ましても、まあ二転、三転、四転、五転、もう一つ六転ぐらいのもたもたぶりがあったわけでございます。総理は、口を開けば国際国家としての責任云々という非常にかっこのいい演説はよくされるのでありますが、しかし、それを具体化する法案をつくる際に、何でこんなにもたもたしたんだということが非常に疑問でございます。まずその点について御見解を聞きたい。
  313. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 突然にイラクのあのようなクウェート侵略、併合という事態が起きまして、東西冷戦状態解決後の新しい希望を皆が打ち砕かれたわけであります。私は、そういったときにはそれを仕方がないことだとして黙って見過ごすのでは、これからの世界秩序は極めて暗いものになると考えます。そして、できるだけ国際社会日本も、日本の今日置かれておる地位、そして日本が今日のこの経済的な力を持つことができるようになったのは、世界の平和と世界の安定と、いろいろなところの資源やあるいはいろいろなところの市場や、そういった世界との相互依存関係の中で日本は生きてくる、成長してくることができたわけでありますから、世界全体にとって許すべきでないこういった平和の破壊に対しては、できるだけの、もちろん枠がありますけれども、協力をしていかなければならぬと考えて貢献策の作成にも努力をいたしました。遅過ぎる、少な過ぎるという御批判はいろいろなところで受けました。御批判は謙虚に承っておきますが、きょうまでこういった事態に対応して国はどうしたらいいかという法律の、あるいは制度の裏づけも全然ございませんでした。最初の貢献策を実行するために海上輸送をお願いするときでも、本当にボランティアの皆さんや海員組合の皆さんにお願いをして、説得をして出ていただいたようなことでありました。  そこで、法案をつくって効果的に、例えば医療にしても輸送協力にしても、どのようにしたらいいんだろうかということを政府内であれこれ慎重に討議もいたしました。熟慮いたしました。途中の段階のそれぞれの立場のいろいろな意見も自由に交わしながら前進してまいりましたから、ごらんになっておると、随分もたもたしたなとおしかりも出るかもしれませんが、結果として国会に提出した平和協力法案にまとめてお願いをしておるわけでありますから、どうぞその意のあるところはお酌み取りいただきたいと思います。
  314. 米沢隆

    米沢委員 私は、一言で言いますと、やはり我が日本の政治には、危機管理体制に対する認識、その政策に対する制度化への努力、そのあたりが完全に欠如していたところに今度のもたもたの原因があるだろうし、加えて言うならば、失礼だけれども、あなたのリーダーシップのなさみたいなものがやはりそこにもたもたをつくる原因になっていたのではないか、私はそう思うのでございます。まあ、ややもすると、今までの日本のあり方は、平和を金で買う小切手外交だと言われたり、あるいは金は出すけれども汗を出さないという非難が日本に与えられ、我々はそういうものを棚上げするために、今度は初めて自衛隊の皆さん、非武装でやっていただく、自衛隊の皆さんに汗もかいてもらう、まさに官民一体となった協力体制をつくっていこうではないか、こういう大事な法案を今から議論しようとしておるところでございます。  ところが、折も折といいましょうか、そのやさきといいましょうか、官邸から出てきたのは、まさに憲法の新解釈という話でございました。国連憲章四十二条、四十三条に基づくいわゆる国連の集団安全保障措置は、まさに集団自衛権というものと概念を異にし、国連軍に我が自衛隊も出動できる、参加できるというような新解釈論が飛び出しまして、それでなくても今度の法案は、戦後初めて自衛隊の皆さんに丸腰で国際的な平和維持活動に協力してもらおうという非常にセンシティブな法案を出そうとしておるときに、一歩先んじて今度は武装自衛隊を国連軍にやるんだなんという話をされますと、ただでさえびっくりする国民がこれはもう大変な混乱に陥っていることは事実でございます。ややもするとそういう話が、結局この法案は、結果的には自衛隊を、武装自衛隊を海外に派兵する目的をまず風穴をあけるためにつくられるのではないかといたずらな誤解や憶測を生み、国民にまた不安と懸念を生む。そういう意味で、今度の官邸サイドからささやかれたそういう話というものは、今議論しようとしておるのは、一体我々は国際の平和と安定のために国連にどう協力できるか、ぎりぎり憲法の範囲で何をできるかという、そんな議論をしなきゃならぬところを吹っ飛んでしまって、結局武装自衛隊を国連軍に入れるのが是なのか非なのかという議論になって、結局混乱に火に油をほうり込むようなものだと私は思うのです。  そういう意味で、今度のああいう解釈論、それは自由に議論しても結構かもしれませんが、どういう意図でそんな話になったかわかりませんが、もし総理が確固たる見識を持って、これからの国際協力についてはそこまで踏み込まないとやっていけない、そういう見識を持っておっしゃるならいざ知らず、野党に追及されると、ただ検討中でございますと逃げるようなやり方でこの議論に混乱を及ぼすことは、非常に見識を疑うと思っておるのです。どうですか。
  315. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お答えいたしますが、今回議論をしております平和協力法案というのは、法案の中にきちっと書きましたように、国連決議に基づいて、あるいはその決議の実効性を確保するために行われておる行動に対して、武力の行使、武力による威嚇を伴わないという日本の平和の理念の枠組みの中でどのような協力ができるのだろうかということをぎりぎり探り、そしてその枠の中でつくり上げた法案でございます。  もちろん、こういった国連協力でありますから、一体国連というものはどういうことがあり、どういう決議があり、ここで先ほど来もいろいろお話がございましたけれども、いわゆる平和維持活動あるいは国連軍、あるいは純粋の国連軍、理想的なもの、いろいろの議論がございました。それは法案をつくる段階でもこれは十分しっかりと踏まえて、研究はしなければなりませんから、研究した結果、現在出す法案のうちはこれだということでまとめ上げてきたのがこの法案でありまして、意識的に将来風穴をあげてどうのこうのということで議論を混乱させようというつもりは全くございません。そして、この法案に書かれてありますことを現段階の日本のなし得る精いっぱいの協力であるというふうに判断をして法案の審議をお願いをしておるわけでございます。将来の問題としていろいろな国連の姿やあり方を研究したことは、これは間違いございません。
  316. 米沢隆

    米沢委員 私が申し上げたいことは、確かにそれなりの見識を持ってやられておるのかもしれませんが、今日議論しなきゃならぬのは、本当に国連に対してどういう協力ができるのかと真摯な議論を今やろうとしておるときに、そういう将来の問題として武装自衛隊を国連軍にという発想の議論が出てまいりますと、それはそちらの方に論議や焦点は移ってしまう、本当にまじめな議論ができなくなるというところを憂えておるということを申し上げたわけでございます。  そこで、私は、やはり国民の前に明らかにしてもらわねばならぬのは、一体そういうような研究というものが、どういう背景や理由によってあなたが指示をなさったのか、一体何を検討されようとしておるのか、何のためにやろうとしておるのか、いつまでに結論を出されようとしておるのか、その点について国民に不安のないようにあなたは答える義務がある。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  317. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは私の勉強の一助として、この場合はどうだ、この場合はどうだ、この場合はどうだ、こうなるかということを、あらゆる場合を想定をして研究をしたわけでありますし、また今後も研究を続けていかなきゃならぬ問題だと思っております。  それから、それと全く切り離して考えてもらわなきゃならぬのは、現実に海部内閣がとる政策として何をやるのか、それはこの平和協力法案にまとめた問題でありまして、この平和協力法案のもとにおいて国連決議あるいはそれの実効性を確保するための行動に対してどのような形で協力ができるかということを議論をしたわけであります。したがって、武力行使や武力の威嚇を伴わない、そして制限列挙したここの平和協力業務というものを協力として行えるようにしよう、こうしたわけでありまして、いつまでに派遣できるようにするとかしないとか、そういう終点目的を置いての議論はしておりませんし、指示もいたしておりません。
  318. 米沢隆

    米沢委員 そういう政府部内での研究ならば、何も新解釈がいかにもさも理由ありげにいろいろ述べられる必要はないんです。結論から言えば、十年先、二十年先の話だなんてあなたが答弁されるならば、そんなの漏れることが大体おかしいんだ、そんなのは。それが逆に混乱を招き——私はそういう話を聞いていますと、この法案、海部さんは成立させたくないんじゃないかなと。議論さえすればいいという話が時々自民党から漏れてきますが、そういうことですか。
  319. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 議論さえすればいいなんということは毛頭考えておりません。政府としましては、この法案をまとめて、そして国会に提出いたしました以上は、各党の御審議をいただいて成立させていただいて、日本がこの法案に基づいて許される限りの協力ができるように一日も早くしていきたい、それが国際社会日本が相互依存関係をますます高めながら国家としてのお役に立っていける一つの道ではないだろうか、こう思っておりますので、この法案については、どうぞ審議、成立をさせていただきたいということをお願いを申し上げておきます。
  320. 米沢隆

    米沢委員 しかしながら、ああいう話を契機にいたしまして、単に将来の国連軍への参加や協力のあり方を勉強する、研究するという、そういうものではなくて、その名目に藉口して、ひょっとしたら新解釈を出すことによって近い将来自衛隊を派遣ではなくて派兵という形にしたい意図が政府にあるのではないかという懸念が生まれたり、あるいはまた、今日、中東湾岸に展開しております多国籍軍への支援のようなものをうまくやるためにそういう話が出てき始めたのではないか。もっと幅広くやりたい、もっと多様にやりたい、集団的自衛権行使の否定という今までの憲法解釈ではやりにくくてしょうがないという発想が自民党・政府の中にあるのではないかという懸念を広げたことは事実です。その点についてあなたはどう考えていらっしゃいますか。
  321. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 同じことを申し上げるようですが、今回提案しました法案は、お読みいただけばわかるように、そのようなことを考えてやっておるものでもありませんし、また、武力の行使や武力の威嚇を伴うことは当初から、この法案を作成する段階においてこれは考えたこともありません。平和協力活動でありますから、どうかそういった意味で御理解をいただきたいと思いますし、また、武力行使を伴うようなものに派遣をするとか、あるいは憲法の集団的自衛権を否定するような、そんな憲法解釈の変更を考えたようなことも、この法案提出に当たって、ないということをはっきり申し上げておきます。
  322. 米沢隆

    米沢委員 例えば今湾岸情勢は膠着状態にあります。しかし、この情勢が何かを契機にして急転回して、万一の場合が起こるとする。その場合、我が国の多国籍軍への支援のあり方は憲法上非常に難しい面が出てくることは御案内のとおりでございます。  例えば万一が起こった場合一体どうなるか。少なくとも軍事的協力はできない。あるいはまたその軍事行動と一体となるような、あるいは軍事行動と一体になると見られるような協力は、もしそれが平和維持活動であったにせよ、その多国籍軍の指揮権の配下にならないにせよ、これは集団的自衛権との関係ではほぼ何もやれないということになるわけですね。そういう意味で、万一の場合が起こったときに日本はどういう協力をするんだろうかという、そういう関心と同時に、やはりそういうものがひっかかってこういう新解釈論がかなりまじめな議論として出てきておるんだなということになっているのではないかということを私は大変危惧いたしております。ぜひその点を再度、しつこいようですが御見解を承りたいと思いますし、同時にまた、この中東に展開する多国籍軍に対する支援、これは今はまだ火が噴いてない。その場合には憲法の解釈上どこまで何をやれるのか。もちろん火を噴いた場合一体憲法の解釈上何がやれなくて何がやれるのか。そのあたりをはっきり、法解釈論として何がやれるかをこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
  323. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答えいたします。  従来、我が国としての武力の行使ということにつきましては、当然これはいわゆる自衛隊によります、自衛隊法に基づきます部分を除きましてはできないわけでございますが、そのときに、過去におきましての答弁におきまして、それでは補給なら何でもいいのか、こういうふうな話がございまして、そのときに、補給ならば何でも許される、その場合にちょうど補給という言葉を使っておりましたが、補給ならば何でも許されるということではない、しかし一方、補給ならすべてだめだということでもないということの答弁のやりとりがあったことがございました。そのときに考えられましたことは、武力の行使が行われている、それと、その武力の行使と一体をなすと見られるようなもの、これは許されないことだ、こういう答弁がございました。  それの考え方というのは、いわば補給という面に着目するんじゃなくて、もうまさにそれは武力行使と見られるようなものだ、そういうまさに一体となるようなもの、これについては許されないという答弁がございました。これを具体的ケースに当てはめるのは非常に私どもの分を超えるわけでございますが、一応そういう考え方に立っているということは申し上げたいと思います。
  324. 米沢隆

    米沢委員 万一の場合は、今お話がありましたように、軍の行動と一体と見られるようなものはできないという解釈が示されました。ということは、もうほとんどいわゆる我が平和協力隊はそういう仕事はできないということとほぼ同義語的なものではないか、憲法解釈ではそういう話でございますが、政治的な判断として、総理、そういうことですか。何もせぬでいいのですな。
  325. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、具体的な要請やそのときの情勢その他がございますから、具体的な要請があったときにそれぞれの場合に当てはめて判断をするということであります。
  326. 米沢隆

    米沢委員 具体的な要請があって何かをするということは、これはまさに集団的自衛権を行使する一助を担うということになるのじゃないですか。
  327. 工藤敦夫

    工藤政府委員 集団的自衛権ということを今仰せられましたが、集団的自衛権につきましては、従来からその概念といたしまして、いわゆる自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにかかわらず実力をもって阻止する、こういうふうなことだというふうに言われておりますが、それに対して、集団的自衛権といったことに対しましては、いわゆる実力の行使というのが中心の概念でございますので、まさに補給をする、それは先ほど武力と一体になるようなものはおかしい、許されないと申し上げましたが、あるいはまた先ほども、補給一般がいけないわけではない、こういうふうなことも申し上げました。そういう意味で、実力の行使と結びついた、それと一体になったようなものがいけないのだ。補給一般がいけないということでは決してないわけでございます。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  328. 米沢隆

    米沢委員 法解釈を聞いておるんではありませんで、いわゆる要請があるというのは、戦っておる人から要請があるんですよ。それを聞いて出ていくときには、まさに軍の一体となった行動と見られやしませんか。ですから、もしこの法文を厳格に言うならば、何も要請もされない、ただこちらの方が気を回してどこかへ持っていって忘れてくる、それを気づいて米軍が使う、そういうものしかできないというようなことでございますから、まあ実際何もできないということではないかということをお聞きしたわけでございます。またこれは次の機会に具体的な例をもっていろいろ御質問したいと思います。  時間もありませんので最後に移りますが、私はこの法案の内容を見て大変気がかりなことは、非常に内閣のこの法文の解釈いかんによってはかなり拡大解釈になっていく可能性もある、あるいは拡小解釈になっていく可能性もあるというところが非常に問題だと思っております。  例えばこの第三条一項に言います協力の範囲、先ほど山口書記長の意見でもいろいろと御議論がありましたが、これはかなり範囲の広いものでございますから、協力する活動の範囲は内閣がどう判断するかというところにゆだねられる部分が意外に多い。拡大解釈される可能性もある。同時にもう一つは、第三条の二項に定めます「平和協力業務」、これも限定列挙されておりますが、これに類するものは政令で定めるというように、いろいろな場合、いろいろなお願い事が来た場合に、まあ心情的には類するものとして政令で定めるという形で、意外にこれも拡大解釈される可能性が多い。  それから第二条の第二項には、「海外派遣に係る平和協力業務の実施等は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」とありますが、これは、みずからは平和協力隊は武力も行使しないし武力によって威嚇はしませんけれども、他国がやっておるものには軍と一体となった行動でない限りできますという話なんだから、これまた非常に拡大解釈になるおそれなしとしない。  そういう意味では、一部、三つほど例を挙げましたけれども、こういうことを考えますと、私は、時の内閣の判断によって憲法解釈がちょっと変わってきた、法律の解釈がちょっと変わってきたとなりますと、大変この問題は拡大解釈につながり、それがまた下手をすると派兵につながるのではないかというような危惧の念を呼ぶという意味で、何を基準にこのようなことが決定されていくんだろうか。政府はいろいろと十重二十重にシビリアンコントロールが働いておると言いますが、あんなのは全然シビリアンコントロールじゃないですね。平和協力何とか会議だって、平和協力何とか本部だって、内閣で決めるといったって、同じ顔、金太郎あめみたいなものだ。同じ人が決めるだけでございますから、内閣の憲法解釈によってはいつでもこの話は拡大解釈につながる。  私はそういう意味で、これはシビリアンコントロールが確立されておりますから結構でございますじゃなくて、ここでやはり国会のチェックポイントをつくっていかなければならぬ。チェックをする機能を持たさないと、これは問題ですね。私はそういう意味で、まだこれから具体的にどういう政令、どういうことを書かねばならぬということは今後の問題といたしまして、少なくともこれは内閣の恣意によってはどうでもなるようなところが実際ありますから、やはり一方では国会のチェックを受ける、国会の承認を受けるという部分がないと、これはそう簡単に皆さん結構でございますというわけにはいかぬと思っておるのですが、総理、どうですか。
  329. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 実施計画に当たりまして二重三重にそれぞれの立場で議論をして業務計画の基本を決めていく、こういうことにしておりますので、その都度その都度いろいろな問題を考えながら実施計画を立てていく、十分に配慮をしていきたいと思っております。
  330. 米沢隆

    米沢委員 そういうのは証拠にならぬ。信頼もできない。確かに実施計画をつくられる場合にはメンバーの皆さんは一生懸命考えてつくられるかもしれませんが、幾らこういう問題が行政の最高の専管事項だといえども、これは他とのかかわりのある非常に国際的な問題に発展するかもしれない、あるいは新しい憲法解釈に発展するかもしれないものを含んでおるわけでございますから、金太郎あめの中で幾らコントロールできるなんて言っても、だれもこれは信じません。信じません。  そういう意味で、本当に信じるに足るようなものであれば、国会の承認だって何も皆さん恐れることはないんだ。私はそういう意味で、こういうものの性質上、時間があって事前に承認を受けるというチャンスがあるかもしれない、あるいは時急を要して事後の承認を受けねばならぬということになるかもしれませんが、少なくとも国会がチェックできるというそのものがないと、シビリアンコントロールは完成されてないと思うのは当然じゃないでしょうか。総理が一生懸命やると言ったって、総理の次に総理大臣になった人がちょっとあなたと違った感覚を持てば、幾らでも読みかえることができる。そんなにべらぼうなものではないにせよ、じわじわと変えることができる。やはりそれはこの法律そのものに存在する非常に大きな不備だと言わねばなりません。再度、総理大臣、前向きの答弁をいただきたい。
  331. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは研究させていただきます。
  332. 米沢隆

    米沢委員 前向きに検討してもらいたいと思います。  今、政府のいろいろな諮問機関等の委員を決めるときだって、国会の承認を得るというのがたくさんありますよね。ましてやこういう重大な案件について、自分たちでさっさとやりますわ、任しておいてくださいなんというのは、私ははやらない、そんなのは。ぜひ、そういう意味で前向きに御検討いただきまして、会期中にそういう国会承認について何らかの形で歯どめをかけるということを、約束を履行されるように求めまして、質問を終わりたいと思います。  以上です。
  333. 越智伊平

    越智委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  334. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間が少ないですから、質問を先にさせていただいて、後御答弁をいただきたいと思います。  私は、進民連を代表して以下質問いたしますけれども、きょうの御答弁を聞いておって、もうとても見てはおれませんね。提案される本人がわからないんだから、提案される人がわかるわけはないでしょう、本人がわからぬことをほかの人が。実に見苦しいですね。そしてその中に、実はあの答弁の混乱の中にこの法案の特徴があるのですよ、総理。いろいろなものを混在させておる。現在の事態に対応しよう、あるいは中長期も入れよう、そして一方には迅速かつなんて言っておりながら、何にもできてないですね。だから、矛盾があちこちあるから、モグラたたきと同じでして、一つポンとたたくと向こうからポンとまた矛盾が出てくる。そういう法案ですよ、これは。それは、ずっと特別委員会開かれるでしょうが、だんだんそれははっきりしてくると思うのですね。私は、海部総理のために、あなたの総理のときにこういうものを出してこられるのは、まことに友人としても残念です。  それで私は、これは予算委員会ですから大蔵大臣に聞きますけれども、これは編成についてどのぐらいの金が要ると思っていらっしゃいますか。それから、どういう予算からこれが出るのか、この予算を扱うのはどの官庁なのか、あるいは年度にわたってずっと要求していくのか、今年度の場合はどの予算なのか、来年度予算はどうなるのか、それをまずお伺いしておきたいと思います。  それから海部総理にちょっとお伺いしておきますけれども、失礼ですが、総理は戦争を御存じないのじゃないですか、失礼ですが。総理がお生まれになったのは昭和六年一月ですね。橋本大蔵大臣がお生まれになったのが昭和十二年七月。西岡総務会長は昭和十一年二月。きのうえらい過激な質問をした山崎拓君は、私の選挙区ですけれども、昭和十一年十二月ですよね。つまり、私が言いたいのは、私は、九州大学の途中で学徒動員で海軍予備学生に引っ張られて、最後は特攻で生死の間をさまよっておった。だから、そのころあなた方は、今言った方々は小学生の高年か低年か幼稚園かだった。そして小沢幹事長に至っては、太平洋戦争が始まった明くる年にお生まれになって、まだ赤ちゃんであった。戦争を御存じないのもやむを得ないと思うのです。  なぜならば、言いましょうか、武力とはどうあなたは解釈しているのですか。武力とはまず人が中心なんですよ。武田信玄の武田節にあるように、「人は石垣、人は城」と言うでしょう。人間がまず中心です、武力の。そしてそれに正面装備、そして後方支援、それを総合して武力と言うんです。それが今度の場合は、まずその三分の二の人と後方支援体制が動くんですよ、実動する。このこと自体が武力の行使なんですよ。間違えちゃいけませんよ。  そして非武装ですか、これ非武装はいつでも武装されるんですよ、いいですか。どうしてかというと、自衛隊創設以来、日本の自衛隊とアメリカの軍隊は兵器の互換性、互いに交換する互換性をずっと持ち続けた。今資料が配られておると思いますけれども、これだけ互換性があるんですよ、これだけ。小火器から、大火器、航空機、いいですか、そしてこれはいつでも貸し借りできる、米軍との間で。その根拠は、MDAの第一条ですよ。そしてその訓練は、二年前に私が予算委員会でやったポンカスです。逆ポンカス、つまり二年前にやったときには、事前集積、ポンカスは。日本にあらかじめ米軍は兵器を集積しておって、一たん緩急のときに、有事のときに来援する、それがポンカスです。今度はもう中東地方に、あの地区に米軍はあらゆる兵器を持って行っているんです。言うならば、いつでも貸し借りできる仕組みになっている、その訓練もやっているんじゃありませんか、防衛庁長官。これも二年前にやりました。もう防衛白書にも出ておるけれども、日米の間にはその訓練をやっている。WHNS、ウオー・ホスト・ネーション・サポートをやっているんですね。だから、その気になればいつでも武装できるということをお知らせしておきたい。  なお、これは防衛庁の資料ですから、防衛庁としては小火器はこういう区分をしているのですよ、いいですか、あなたの小型兵器というのは一体何ですか、小型兵器とは。一つだけ聞いておきましょうか。輸送機ということを十七日、おとつい、中山外務大臣は言われましたね、持っていくように。そうしたら、いいですか、ここの互換性の中に入っている輸送ヘリコプターはどうなるんです。恐らく輸送機の方はC130ですよ、ここにもあるが。どうなるんです。  それで、海部総理、お伺いしますが、この法案は、こっちへ向けば真ん中から洋服が違うんだ。こっち向けば自衛隊、こっち向けば協力隊員なんです。じゃ、こっち向いたときに自衛隊法はかぶるでしょう、全部。絶対間違いない、かぶる。長官、かぶりますよ。そうすると、自衛隊に関する限りは自衛隊法が丸々適用されるのですよ、これでいけば。それで、私は、こういう非武装なんというのは通らないの、いいですか、いよいよというときは。  それから、もう一つあなたに注意を喚起したいのですが、あなたがアンマンにおったとき、私は夜アンマンにバグダッドから着いた。いろいろな話を聞きました。確かめたけれども、あなたはイラクの第一副首相ラマダンに会ったときに、百四十一名の人質を返してください、これはイラクの経済建設その他に携わった人じゃありませんか。これは違うんですね。あれはクウェートから出てきた人ですよ。百四十一名に百六十八名、九月三十日の段階では。だから、その辺を相手国に間違って言われるというのはちょっと恥ずかしいんじゃないですか。もしそうでなかったら、私は向こうで聞いてきたし……(発言する者あり)私はニュースソースは言わぬことにしております。いや、出先ですよ。外務省の出先です、言っておきますが。そして、その当時の、そのときの新聞を見てごらんなさい、十月五日の。ちゃんとそう書いてある。百四十一名の人はイラクの建設に協力した人じゃないか、だから解放しなさいとあなたは言っている。ちょっとそれは間違いじゃございませんか。  以上、ちょっと質問しておきます。
  335. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、予算の関連についてお尋ねがありましたけれども、まず第一に、その平和協力業務というものにつきましては、この法律が成立をいたしました後、その情勢を見、必要があった場合に実施計画が定められ、海外派遣等が行われることになるわけでありますから、現時点でどのくらいの費用がかかるかを見積もることは困難であります。  また、事務的な経費につきましては、いわば事務局的な経費につきましては、内閣官房または総理府の経費が充当されるものと心得ております。
  336. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 一つだけ私も自分の名誉のために言わしていただきますけれども、イラクラマダン首相と会って話しましたときは、長い話はやめにして、イラク行為はいけないとか、クウェートから撤退しろとかいうことは抜きにして、人質の問題だけに限定して言いますと、私も、クウェートにいて大使館から移動した人たち人質同様にホテルに閉じ込められて、それからどこかへ分散されてしまっておるということと、イラクにもともといて、イラクの開発やイラクの経済復興に協力しながら、閉じ込められてはいないが出国の自由をとめられておる人がいるということを二つに分けてきちっとお話をしましたし、日本人の方のことだけを言ったのではなくて、それも含めて、すべての外国人の解放をすることが国連決議に目指されておる根本的和平の道ではないかということを明確に申し上げましたし、また、それをすることによって次の新しいいろいろな展望も開けてくるではないか。そこで日本イラクとの関係の再構築の問題とか、あるいは日本中東に関しては二百四十二号決議の線に従って恒久平和をつくっていきたいと念願しておることや、そういったようなことも含めて政治的対話はこれからも続けようという話をしたわけでして、イラクにいた人のことだけを言ったとか、そのこととを混同して物を言ったとかいうことは決してございませんから、それくらいのことは私も勉強をして臨んでおりますから、どうぞ御理解ください。
  337. 越智伊平

    越智委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、中断しております山口君の質疑を再開いたします。  この際、内閣より発言を求められておりますので、これを許します。海部内閣総理大臣
  338. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 山口委員より御質問のありましたサウジアラビア駐留多国籍軍と国連決議との関係及び法案第一条に言う「その他の活動」の限界につきまして、政府統一見解として外務大臣に答弁をいたさせます。
  339. 中山太郎

    ○中山国務大臣 サウジアラビアに駐留するいわゆる多国籍軍は、国連安保理が決議六百六十により、憲章第三十九条に基づいてイラククウェート侵攻国際の平和と安全の破壊であると認定し、イラク軍の八月一日の駐留地点までの無条件撤退を求め、さらに決議六百六十一において、決議六百六十のイラクによる遵守確保、クウェートの正統政府の権威回復を目的とする経済制裁措置を憲章第四十一条に基づく非軍事的制裁措置として決定したのを受け、サウジアラビア政府要請に応じた各国が陸上部隊を同国の領土内に展開しているものである。  サウジアラビアに駐留する多国籍軍は、同国と協力しつつ、イラクによるサウジアラビア侵攻等の軍事行動の拡大を抑止してきているところ、イラクによる軍事行動拡大の抑止決議六百六十の求めるイラククウェートよりの無条件撤退を実現するための不可欠の前提である。これに加えて、同多国籍軍は、イラクに対しクウェートよりの無条件撤退を実現すべく不断の圧力を加えてきている。かかる意味において、サウジアラビアに駐留する多国籍軍は、決議六百六十の実効性確保のための役割を果たしている。  また、決議六百六十一の求める対イラク経済制裁措置を実効的ならしめるためには、海上であると陸上であるとを問わずイラク及びその不法占拠下にあるクウェートの交易経路を有効に規制することが肝要であるところ、イラククウェートと長い国境を有しているサウジアラビアに駐留している多国籍軍は、かかる意味において、決議六百六十一の実効性確保のための役割をも果たしてきている。  なお、決議六百六十五は、すべての国に対し、海上部隊を展開している国連加盟国により必要とされる協力国連憲章に従って行うよう要請している。海上部隊を展開せずサウジアラビア国内に陸上部隊のみを展開している国家に対する支援については、同決議において必ずしも明示的に要請されているわけではないが、他方、これら諸国によるサウジアラビアへの陸上部隊の展開は、累次の国連決議を踏まえ、湾岸における平和と安全の回復のために行われているものであり、湾岸における平和と安全の回復は、決議六百六十五が経済制裁の厳格な実施を通じまさに実現しようとしているものであるので、これらの諸国に対して支援を行うことは決議六百六十五の趣旨にも沿うものであると考えられる。次に、国連平和協力法に基づいて行われることになる我が国協力としては、同法案第三条に規定するとおり、大別して次の二種類の活動に対する協力が想定されています。  これら二種類の活動は、双方とも国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議を前提としているという意味で、同法案第一条に規定するとおり「国際連合が行う決議を受けて」行われる活動である。  第一の種類の活動は、国連決議に基づき国際連合等が行う活動であり、国際連合が行う「平和維持活動」がその典型的なものである。  第二の種類の活動は、国連決議の実効性を確保するため国際連合加盟国等が行う「その他の活動」であり、一連の安保理決議の実効性を確保するためにペルシャ湾岸に展開しているいわゆる多国籍軍の活動はこのような活動の一例である。  いずれにせよ、国連平和協力法に基づく我が国協力は、例外なく上記一のような意味で国際連合の行う決議を受けて行われる活動に対する協力に限られ、国連決議と関連のない活動に対する協力は行い得ない。  第三、「国際の平和及び安全の維持のために行う決議を受けて行われる国際連合平和維持活動その他の活動」という第一条の文言と「国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議に基づき、又は国連決議の実効性を確保するため、行う活動」という第三条一号の文言が異なることについては、第三条一号の規定が国連平和協力法に基づく我が国協力の対象となる活動を定義する規定であるため特に正確を期する必要があるのに対し、第一条は、国連平和協力法の目的を国民に理解しやすいように記述するという同条の目的にかんがみ、より単純化した表現としたまでであって、両者の間に意味の差はございません。
  340. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私も国会に長い間籍を置かせていただきました。しかし、統一見解でこのような長いものを承ったのは初めてであります。まさに法案の提案理由の説明よりも統一見解の方が長い、全く異例の私は統一見解と言わざるを得ないと思います。したがいまして、これについては文書できちっと委員会に提示をいただくことを委員長に要求をいたしておきます。  このような長い長い統一見解を出さなければならない法律というのは、そこに大変無理があるということではありませんか。  いずれにせよ、このサウジアラビアに展開している米軍を中心とする多国籍軍、これの後方支援をするためのこの法律をつくった、そのための理由をあのような長い長い統一見解で今お述べになったのだというふうに理解をいたしておきます。私どもは、このような法律についてはさらに欠陥を今後の委員会を通じて厳しく指摘をするつもりであります。  そこで海部総理、このような統一見解をお出しになるところにこの法律の無理があると思います。先ほど民社党の米沢書記長も、この法律が恣意的に対象が広げられるところに問題があるということを指摘しておられたと思います。そこで、本当にこの法律を海部内閣、成立させるつもりなんですか。私は非常に珍しいことが起きたと思いました。それは、この法律が提案された直後、与党の幹事長が、今の国会の情勢から見ればこの法律は通らなくても仕方がないんだ、ただ問題は、先ほど民社党の米沢書記長も心配されておりましたが、集団安全保障とそれから集団的自衛権、この問題について大いに憲法論議が交わされれば、そこに意義があるのだということを申されたようであります。私は、このような重要法案、しかも憲法にかかわる重要法案、これが提案された直後、与党の幹事長が通らぬでもいいねというような発言があったことをいまだかつて知りません。私は、海部内閣、そういう意味ではこの法案は早くおあきらめになった方がよろしいということをこの際申し上げておきたいと存じます。したがいまして、先ほど指摘をいたしておきましたが、こんな提案理由の説明よりも長い長いこの統一見解というものは私ども初めてであり、そんなものはいただくつもりがない、こんなものは返上いたしたいという気持ちだということを明確に申し上げておきたいと存じます。  さて、一つだけ申し上げておきたいと思います。  マンデラさんが来る二十七日来日をされます。そうして十月三十日には衆議院本会議で演説をされることになっております。マンデラさんといえば、人種差別撤廃のための活動を国際的に展開しておられる方だと承知をいたしております。このマンデラさんを海部内閣は政府の賓客としてお招きになるわけですね。まさに政府とすれば、この人種差別は許すべきではない、撤廃のために全力を尽くすという意思表示を、私はマンデラさんを賓客としてお呼びになるという中で示しておられるだろうと思うのです。そういうときに、法務大臣といえば、人権侵犯事件の調査及び情報の収集に関する事項、民間における人権擁護運動の助長に関する事項、人権擁護委員に関する事項、こういったものを所管する大臣ですよね。この重要な大臣が人権差別の発言をする、そうしてアメリカの下院の外交委員会で決議も行われるというようなことは、まことに私は残念なことだと言わざるを得ないと思います。まさに閣内不統一ではありませんか。私は、こういった閣内不統一は速やかに解消する必要があると思います。私は、法務大臣が潔く辞任されることがいいことではないかと思います。そうでなければ、マンデラさんが来日される前に閣内不統一を大臣の任命権を持っている総理大臣がきちっと整理をされることが私は必要ではないのか。そういう意味では、閣内不統一をきちっと整理をすることがこの日本の内閣として重要であるという問題をここで厳しく指摘をいたしまして、質問を終わっておきたいと思います。
  341. 越智伊平

    越智委員長 この際、梶山法務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。
  342. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 発言をお許しをいただきたいと思います。  過般の私の発言は人種差別を意図したものでは全くございませんでしたけれども、結果としてアフリカ系米国人を初めとする関係者の皆様方を傷つける結果となってしまいました。  私の発言は誤ったものであり、甚だ不適当な発言でありました。まずもってそのことを率直におわびを申し上げ、私は、今回の事件を深く反省をし、去る九月二十五日の記者会見の席で、さきの発言を全面的に取り消すとともに、関係者の皆様方に深くおわびをしたところであります。  私は、今山口委員から御指摘を受けたように、大変間違った発言をしたことに対する責任を痛感をいたしております。この場をかりまして、内外関係者の皆様方に心から陳謝を申し上げ、そして私は、深い自己反省のもとに、今針のむしろに座るような思いで啓発をされた問題を直視をいたしまして、人権尊重、マイノリティー問題に対する正しい認識を根づかせるために、懸命な努力を払って、その責任を果たしてまいりたいと思います。  御理解のほどをお願いを申し上げます。
  343. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 もう先ほど申しました。海部内閣として、特に任命権を持つ海部総理として、閣内不統一の状態を解消する、責任を持ってこの問題について処断をする、そのことを強く要求をいたしておきます。
  344. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ただいま本人がここで心からおわびの言葉を申し述べましたが、私も、法務大臣のあの発言は極めて不適切であり、まことに遺憾なことであったと受けとめます。早速発言の後の閣議のときに残っていただいて厳重に注意をいたしましたが、本人も、記者会見で発言を取り消し、陳謝をし、アマコスト・アメリカ大使を訪ねて、アメリカの皆さんに対する陳謝の気持ちも表明をしてきたところであります。  私は、今後、ここでただいま申し述べました法務大臣がその気持ちを肝に銘じて職務に励んでいくように、また、政府といたしましても、マイノリティー問題に対する正しい認識をより一層社会に啓発する先頭に立っていかなければならない、このように考えております。
  345. 越智伊平

    越智委員長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。  申し出のありました全委員の質疑はすべて終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十三分散会