○高沢寅男君 私は、
日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました
国連平和協力法案、この
法案は、名前は平和
協力法案でありますが、中身は
戦争協力法案であります。(
拍手)この
法案の撤回を求める
立場に立って、以下、
総理並びに関係大臣に
質問いたします。
まず、私が問題としたいことは、この
法案がなぜ今この臨時国会へ
提案されてきたかということであります。その答えを私から言いましょう。
総理、あなたは、今起きている
中東動乱の中でアメリカが計画しているアラビア半島の作戦
行動に対し、
日本は金も出せ、人も出せと
ブッシュ大統領に要求され、それにこたえるために、何が何でもこの国会で
自衛隊海外派兵の道を切り開こうとしているのであります。(
拍手)もう
一つは、一九五五年の保守合同で自由民主党が誕生して以来、その綱領として掲げながら今日まで実現できなかった平和と民主主義の
日本国
憲法の改悪を、あなたは
中東危機に便乗してこの際一挙に実現し、もって
憲法第九条を空文化させようとしているのであります。(
拍手)
海部総理、あなたが
内閣総理大臣となられたとき、その政権の基盤が極めてもろく弱いものであることを知りつつも、
国民の中には、あなたに対するある種の期待感がありました。それは、あなたが、
日本国
憲法の平和と民主主義の
原則を守ることをその生涯の政治信条として貫かれた亡き三木武夫氏のまな弟子であったということから、あなたならば平和と民主主義を守ってくれるであろうという期待感であったのであります。それが海部
内閣の支持率の高さの主なる
理由であったのではないでしょうか。ところが、どうですか。
国民の期待を裏切って、あなたは、この
国連平和協力法案、
戦争協力法案をこの国会に提出し、もはや恥も外聞もなく、ただひたすらに
自衛隊海外派兵の扉をこじあけようとしているのであります。(
拍手)
八月二十九日の記者会見で、あなたは、
自衛隊を
海外に
派遣することは
考えていないと断言されました。あれからまだ二カ月しかたっていません。一体、八月二十九日の
海部俊樹ときょうここにいる
海部俊樹は、果たして同一の人物でありましょうか。(
拍手)あのジェキル博士とハイド氏の二重人格の物語がありますが、
日本の
総理大臣はジェキルとハイドであってはならないのであります。
海部総理、失礼ながら、あなたの姿を見ていると余りにも哀れと言わざるを得ません。(
拍手)今あなたの耳元には、
憲法を破れ、
自衛隊を出動させろ、こうささやいている悪魔がいます。それは、アメリカの一部の人たちであり、あるいは自民党タカ派の一部の人たちであります。この人たちに強要されて、今までのあなたの政治信念と全く正反対の
方向へ駆り立てられていく主体性を失ったあなたの姿を、私は哀れと言うのであります。
総理、今ならば間に合います。ここで最大の
勇気を持って踏みとどまり、
国連平和協力法案、
戦争協力法案を潔く撤回すべきであります。(
拍手)三木武夫氏の遺志を継いで
憲法を守る
政治家としての節操を貫くのか、それとも
憲法破壊の下手人としての汚名を末代の
歴史に残すのか、私は腹の底からのあなたのお
考えをお聞きしたいのであります。(
拍手)
以下、私は、具体的な問題点について、順次
お尋ねいたします。
第一に、現在の
事態において
国連への
協力とは何かということであります。
イラクの
クウェート占領という暴挙に対し、
国連安保理事会は、第六百六十号から第六百七十号に至る
決議を採択いたしましたが、その主たる内容は、
国連憲章第四十一条に基づく
経済制裁の
措置であります。我が
日本も、現にこの
経済制裁の
行動に参加しております。この
経済制裁を実効あらしめるため、ペルシャ湾を航行して
イラク、
クウェートへ出入りする船舶を点検、捜査するため、アメリカその他の国の艦船がペルシャ湾に今出動しています。これは
国連決議に
協力する
行動であります。だが、サウジアラビアに展開している二十万のアメリカ軍を
中心とする多
国籍軍は、これは
国連決議とは全く異質の軍隊であります。この多
国籍軍に
協力することは、
国連協力では全くない。逆に、
中東の
戦争の一方の当事者に加担することになるのであります。(
拍手)これは、集団自衛権を否定した
憲法を持つ
日本が断じてやってはならないことであります。
国連協力という看板を使って、
国連決議とは無縁な多
国籍軍に
協力することは明らかに政治的な詐欺であります。(
拍手)この点についての
総理の御
所見を求めます。
第二に、私は、現代の
戦争において前線と後方を区別することができるのかどうか、これを
お尋ねいたします。
政府は、
我が国の
自衛隊が
協力するのは
後方支援活動だとか、戦闘の行われるところへは近づかないなどと言っていますが、果たしてそれができるでしょうか。こちらが幾ら後方支援だと言っても、前線と後方は
状況によって絶えず入れかわります。戦いの相手が、
日本の
自衛隊の
行動を自分に対する敵対
行為だと認定すれば、その相手は
日本の
自衛隊に対して攻撃をしてくるでしょう。そういう心配はないと一体だれが保証するでしょうか。さらにまた、
戦争の論理として、もし相手から攻撃されれば、
日本の
自衛隊もまた反撃することになるのではないでしょうか。そのときには、小火器に限定するなどということはできるはずがありません。ミサイルなどの大型の兵器が使われることになるでしょう。こうなれば、これはもう正真正銘の
戦争であります。
総理、あなたは、
我が国の
自衛隊をペルシャ湾、アラビア半島へ出動させて、
戦争をやらせるお
考えですか。
戦争に巻き込まれるところへは行かないとか、やられたら逃げればいいとか、そんな子供だましは国会では通用いたしません。(
拍手)
自衛隊に
戦争をやらせるつもりかどうか、私は
総理の責任あるお答えを求めます。
第三に、
総理、あのベトナム
戦争の
歴史について思い出していただきたいのであります。
あの
戦争は、ベトナムに
軍事介入したアメリカが、首まで泥沼にはまり込んで抜き差しならなくなり、結局一九七五年、完全にベトナムから追い出されて終了した
戦争であります。アメリカは、おぼれる者はわらをもつかむの例えのとおり、アジアの諸国に対してベトナム
戦争への参戦を要求しました。この要求にこたえて、豪州、ニュージーランド、韓国などの諸国がベトナムへ軍隊を
派遣し、ベトナム軍と戦いました。
しかし、我が
日本は、ベトナム戦線へ
自衛隊を
派遣はしなかったのであります。それは、ベトナム
戦争への介入に反対した
日本社会党を初めとする平和運動勢力の運動の成果であります。また、何よりも、集団自衛権の
行使を禁止している
日本国
憲法がこれを許さなかったからであります。(
拍手)さらにまた、あなた方自民党も車守
防衛の方針を堅持された、これも大きな力であったと私は認めましょう。
さて、
海部総理、そこで
お尋ねをしたい。
ベトナム
戦争に
我が国が
自衛隊を
派遣しなかったことにより、その後のカンボジア
紛争をめぐるベトナムとASEAN諸国の
対立の中で、
日本は、その双方から信頼される
立場を確保することができました。本年六月、東京において、
日本政府の招待によりカンボジア和平のための
会議が開かれました。この
会議に出席したプノンペン政権のフン・セン首相とシアヌーク殿下を
中心とする三派代表の会談で、カンボジア暫定政権の基礎となる最高
国民評議会を両派同数で構成することが合意され、いわゆる東京声明が発表されました。この東京声明は、カンボジア和平の障害となっていた壁を破り、和平会談を前進させる道を切り開いたものであり、
日本のアジア
外交の大きな成果となりました。こうした成果は、あのベトナム
戦争に
日本が
自衛隊を
派遣しなかった、そのことから生まれてきた成果であります。(
拍手)
海部総理、このベトナム
戦争にかかわる
歴史の教訓を今こそ
中東危機の中であなたは発揮すべきであります。あなたの御
所見をお伺いいたします。
第四に、私は、
中山外務大臣に
お尋ねいたします。
本年七月二十八日のASEAN拡大外相
会議において、ASEAN側から、
日本の
軍事力の脅威に対する懸念が表明されました。
中山外務大臣は、これに対し、
日本は平和
憲法第九条により交戦権を放棄した国家である。また、
防衛費をGNPの一%以下にとどめて専守
防衛に徹している、
日本は二度と再びアジアに迷惑をかけるような
考えは持っていない、こういう答えをされたのであります。あなたのお答えでASEAN諸国が納得をしたかどうか、私は知りません。だが、その後、海部
内閣が
自衛隊海外派兵の
法案をこの国会に提出したのを見て、ASEANの諸国はどう
考えているでしょうか。
彼らは今、
日本の外務大臣のあのときの
説明はその場限りのうそであった、やっぱり
日本の
行動は自分たちが心配したとおりになってきた、いつの日か
日本は再び我々の国へ攻めてくるに違いない、今アジアの諸国はこのとおり
考えているのであります。(
拍手)ASEANだけではありません。中国や韓国からも鋭い警戒と批判の声が起こっているではありませんか。
中山外務大臣、こういうアジア諸国に対して、あなたがASEAN外相
会議でやられた
説明をもう一度されても、もはやアジア諸国は聞く耳を持たないでしょう。あなたは、今、改めてアジア諸国の心配を解きほぐすためにどのように
説明をされるのか、この場所でひとつお聞かせをいただきたい、こう思います。(
拍手)
第五に、私は、石川
防衛庁長官に
お尋ねいたします。
もし万一、この
法案が成立して、
自衛隊が
海外出動していく場合、
自衛隊は日の丸の旗を立てて行くのでしょうか。もしそうだとすれば、第二次大戦で
日本の
侵略を受けた、その苦しみと怒りを今でも忘れていないアジアの諸国はどういう印象を抱くでしょうか、あなたの率直なお
考えをお聞かせいただきたいと思います。
もう
一つあります。
防衛庁長官、今までの
政府の方針は、
日本は専守
防衛に徹し、
自衛隊の
海外派兵は行わないということにありました。したがいまして、現在
自衛隊の
隊員として身を置いている人たちはすべて、
海外へ
派遣されることは絶対にないという前提で入隊したはずであります。(
拍手)ところが、この
法案が成立すれば、どうでしょう、
自衛隊員は有無を言わさず
海外への出動を命令されることになるのであります。
海外出動となれば、
状況によっては……