○大内啓伍君 私は、民社党を代表いたしまして、
総理の
所信演説並びに当面の
重要課題について、
政府に
質問いたします。
八月二日の
イラクによる
クウェート侵攻という暴挙を契機にいたしまして、今、
世界も
日本も重大な岐路に立たされておると存じます。古来、天は人に
試練を与えてそのものの心底を見きわめると言われますが、まさに私たちはそのような
事態に直面していると思います。
戦後四十五年、
米ソの
冷戦終結という新しい
事態を迎え、
国連は今初めて
大国の拒否権から解放されて、新しい
世界秩序構築の
中心的
役割を担おうとしております。
イラク問題で
米ソが初めて共同
行動をとりつつあることは、まさにその象徴であります。これを定着させ、
国連を
世界の平和維持の
中心的機構たらしめるために、
日本は、その協力者になるのか、それともその破壊者、逃避者になるのか、今厳しく問われております。(
拍手)
経済大国、国際
国家、
国連中心主義、さらにはその
国連の
安保常任理事国の地位まで求めている
日本は、今こそ
国連を強化する重大な
責任を負っていると思うのであります。(
拍手)
イギリスの雑誌エコノミストのビル・エモット氏は、大
国日本は、今や日が沈む
時代に入り、平和に安住する快楽追求者の国になったと述べております。また、昨年、
世界十一カ国で行われた青年の意識調査で、道に迷っている人を助けたり、社会のために役立とうという気持ちが、
世界の中で
日本が最低だという結果も出ております。
総理、こうした自分のことだけしか
考えないという風潮は、青年だけではなくて、今の
日本じゅうに蔓延しているのではありますまいか。まさに憂うべきことと言わなければなりません。
イラク問題は、
日本にとってその試金石と言えましょう。
かつて
日本は、日英同盟の解消をスタートとして孤立化の道を歩み、やがて国際連盟から脱退し、同連盟破壊の一翼を担いました。そして、第二次大戦へと
国際秩序の破壊者としての
役割を演じた苦い経験を持っております。今、
国連を
中心に平和を求める国際的な共同
行動がとられているときに、
日本はみずからの理屈の中に閉じこもり、平和を金で買うという小切手
外交で再び国際的孤立化の道を歩むのか、それとも
国連中心主義の国際
国家としてそれにふさわしい
行動をとるのかが問われていると思うのであります。(
拍手)いずれの道を歩むのか、今こそ
国民にしっかり問い直し、
日本としての
進路を決断せずして、どんな貢献策や小手先の政策を進めてもだめであります。
総理、あなたは
日本をどの道へ進めようとされるのか、この際、明快なる
答弁を求めます。(
拍手)
日本は
憲法の前文で「
国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」とうたい、また第九十八条で、締結した条約、確立された
国際法規は誠実に遵守すると述べております。名誉ある地位とは、他国から信頼され、尊敬され、必要な
国家だと思われる地位を確保することではありますまいか。(
拍手)それは何よりも
国際法規を誠実に守る
国家でなければならないと存じます。
日本は、昭和三十一年
国連加盟を実現し、何の留保条件もつけずに
国連憲章を受け入れました。そして、同憲章のその七章で、
国連がとるべき
平和維持活動を列記しております。
日本は
憲法上、そうした
国連の
平和維持活動に対してどのような
行動をとることができるのか、また何ができないのか、この際、
憲法上の限界を
国民に明確に示すべきであります。(
拍手)
具体的には、
国連憲章第四十二条、四十三条に基づく
国連の平和強制活動たる
国連軍に
日本は
参加できるのか。それは
集団的自衛権の
行使に当たるのか当たらないのか。また、
武力行使を目的としない
国連の
平和維持活動と言われる停戦監視、選挙監視、医療、通信、資材の提供などについては
憲法の枠内で可能なのか。
政府はそれらについてこの際、明確な
憲法解釈を
国民に示すよう要求いたします。(
拍手)
ところで、
政府は、今回、
国連軍への
参加問題について、これまでの
国連軍の目的、
任務が
武力行使を伴うものであれば
自衛隊の
参加は認められないと言ってきた
憲法解釈を一転させ、
国連軍への
自衛隊派遣は、
国連憲章の集団的
安全保障への
参加であって、
集団的自衛権の
行使とは異なるという新たな
憲法解釈を打ち立て、
武力行使を伴う
自衛隊の
国連軍参加に道を開こうとしています。
しかし、
国連憲章第四十三条で、加盟国がその兵力、
援助、便益の提供を約束するときは特別協定を結ぶことになっており、
安保理事会からの要請に自動的に従う義務を負っているわけではありません。特別協定は、まさに
各国の実情を個別に勘案することを予定したものであります。
日本は、
国連加盟国として、将来
国連軍に協力するとしても、その協力のあり方は
武力の
行使を伴わない
ものというこれまでの大
原則を踏まえ、特別協定を結ぶ段階ではっきり
日本としてできること、できないことを明らかにし、
日本の特徴を生かした協力を
考えることが
日本のとるべき
姿勢ではありますまいか。(
拍手)
海部総理の明快な
答弁を求めます。
今、
日本の
政治に要求されているものはスピードと決断であります。
日本政府が
イラク問題でとった措置は、残念ながらその双方において欠けるものがありました。最近、
日本の新聞社が行った
中東問題に関する
日米世論調査によれば、米
国民の七七%がなお
日本は貢献不十分と回答しております。
米国のワシントン・ポストは、危険な砂漠で命をかけて平和を守るのは、なぜ
米国の若者であって
日本の若者ではないのかと
日本を批判しています。
総理はこれにどう答えるのか、お尋ねいたします。
政府は、遅まきながら、今
国連平和協力隊の
創設を
検討し、その中に
自衛官をも含めて、
武力行使を伴わない
国連の
平和維持活動の
分野で
日本としての人的協力態勢を整えようとしていることは、妥当な措置としてこれを評価いたします。また、
派遣自衛官並びに部隊
参加については、これをすべて
協力隊の構成員とし、
防衛庁の独自
行動を排し
総理の
指揮権下に一元化したことも妥当な措置だと
考えます。
しかし、この
自衛官の
派遣や
自衛隊の部隊
参加が
自衛隊の
海外派兵に道を開くという
懸念が提起されていることは、
国民の素朴な心配でもあり、決して軽視してはならないと存じます。派兵に対する明確な歯どめは、
自衛隊の独走をチェックする
指揮権のあり方とともに、その
派遣に当たっては戦闘用兵器は携帯しないという非
武装の
原則を貫徹することが何よりも重要であると
考えます。この点は今後の立法に当たって十分手を尽くすべきであると思うが、
総理の所見をお伺いをいたします。
同時に、私たちは
海外派兵のいたずらな扇動にも乗ぜられてはならないと存じます。かつて一部の議論に、
日米安保条約を結べば
日本はあすにも
米国の戦争に巻き込まれ、
日本は再び戦場になるとまことしやかに論じられたものでした。しかし、これが
国民をいたずらに惑わすオオカミ論であったことは、今日の
日本の
現実が証明するところであります。(
拍手)その論法をほうふつさせる
国連平和協力隊をめぐる一部の
海外派兵論は、第一に、
日本が
国連中心主義に立つ
国家であることの自覚を欠いているとともに、第二に、この国会を初め
海外派兵をチェックし得る今日の広範な
国民的機構の存在と
国民の英知を信用しない議論と申さなければなりません。(
拍手)
平和協力隊に
政府機関の構成員である
自衛官や公務員を含めることは、
国家としての
姿勢と
責任を示す上で不可欠であり、民間だけに依存してできることではありません。
自衛隊は危ない地域には
派遣できない、民間のボランティアの人々によろしく頼むと言って、
民間人や民間団体がどうして納得して引き受けてくれるでしょうか。(
拍手)私は、
国連平和協力隊は、
自衛隊とはっきり区別する意味からも、今後北欧四国やカナダ、オーストリア等でとられている
国連待機部隊的な性格を持たせるべきだと
考えますが、いかがでしょうか。この辺について
海部総理の
答弁を求めます。
私は、貢献策もさることながら、より
日本にとって重要な
課題は、今回の
イラク問題を一刻も早く終息させるために、
日本は和平へのイニシアチブを
行動をもって示すべきだと
考えます。
イラク問題が軍事的対立の中にこのまま年を越すようなことになれば、
世界的インフレと石油不足は深刻な
事態を迎えることになりましょう。
日本としても、これを何とか回避するための
行動をとるべきであります。
日本が国際的にいわゆる
政治大国としての真価を示すためにも、
日本は、
米国のいたずらな追随者ではなく、現在の
米国の
行動に対しても自制を求め、
イラク、
米国の双方に対して明確な提言を行うべきときが来つつあると
考えます。
また、
イラクにおける
日本人の人質と抑留者は、今や生活資金、食糧、医療等の面で深刻な
事態に直面しているばかりでなく、それ以上にいつ解放されるか見通しが立たない精神面の不安は大変なものであろうと推察いたします。それは他国の方々も同様でありましょう。
政府は、自国の
国民の自由と人権を守る大きな
責任を負っていることを厳しく自覚し、すべての人質の一刻も早い解放実現のためにこの際有効な手段を講ずべきであると
考えます。
以上の見地から、今こそ
海部総理は、
イラク和平工作並びに人質解放に全力を挙げ、そのために直接
イラクのフセイン大統領とも会談する
決意を固めるべきであろうと思うが、
総理の
決意を伺いたいのであります。(
拍手)
次に、
日ソ関係について
質問いたします。
来年春の
ゴルバチョフ大統領来日が確定し、北方四島
返還を含む日ソの新
時代を築き得るか否か、今重大な局面を迎えようとしております。しかし、この時期に、北方領土の
返還はまず三島からでいいとの声が
与党の首脳から漏れてくるというのは、まことに憂慮すべきことであります。また、
ソ連は、さきに
安倍元
幹事長へのメッセージを通じて、まず一九五六年の日ソ共同宣言の
原則を確認して
基本原則協定を結ぶことを提案してきていると聞いておりますが、
日本として日ソ共同宣言を基礎として正常化交渉に入ることに賛成か否か。
周知のように、共同宣言は、その後一九六〇年一月の対日覚書で宣言に盛られた領土問題の約束の実行を拒否された経緯があるが、領土問題については、
日本が当時要求した四島で決着できなかったために平和条約に至らなかったことを
考えるとき、今後の日ソ国交正常化は四島
返還が不可欠であると思うが、
総理の明確な
決意を伺いたい。(
拍手)また、四島
返還と対ソ
経済協力の問題は、いずれかが先行するのではなく、一括
解決すべきだと思うが、
総理の
見解をあわせてお伺いいたします。
次に、日朝
関係について
質問いたします。
今回、日朝
関係改善への
動きが見られたことはまことに歓迎すべきであります。北朝鮮は十一月中にも
政府間交渉の開始を求めてきておりますが、
政府はこれに応ずるのか、また、応ずるとすれば、
韓国が求めている事前協議は行うのか、特に
韓国の盧泰愚大統領が最近示した五項目についてどう対処するのか、その基本的方針をまず明らかにしていただきたい。
先般、
与党の首脳を初め
我が国の
政治家が北朝鮮に赴き、話し合いをされましたが、その中で、過去の賠償とは別に、戦後四十五年間の謝罪と償いを取り決め、また過去の賠償についても国交正常
化以前にそれを支払う中間賠償を約束してきたようでありますが、これは到底容認しがたい遺憾なことであります。戦後の南北朝鮮の分断、朝鮮戦争、さらには北朝鮮の共産化といった
事態に
日本がどうして
責任を負わなければならないのでありましょうか。(
拍手)こうした要求に
我が国がもしこたえるならば、国際ルールに違反するだけではなくて、
韓国はもとより、フィリピン、インドネシアなどの賠償再交渉にもこたえなければならなくなります。そしてそれには、何兆円もの
国民の血税が使われることになるのであります。
総理、日朝の
関係改善に努めることは今日の重要な
課題ではあるが、このような
国民の立場をないがしろにした無
原則なことは断じてやらないと断言していただきたいと思うのであります。(
拍手)
韓国の有力新聞は、
日本の政界の実力者が平壌とソウルを行き交いながら、秋波を送ったり釈明したりする姿は、旧大韓帝国末期の
時代を連想させる、
日本の
政治家は言動に一貫性がないと厳しく非難をいたしております。
総理、公党たる
自民党の名において行われた共同宣言について、あなたは
与党の総裁としてどう
責任をとろうとされるのか、承りたい。
また、今回、二人の船員が釈放されたことはまことに喜ぶべきことではありますが、これまで
日本が一貫して不当な抑留と非難してきたことに対し、手のひらを返したように、寛大な措置に深い感謝の意を表するとは一体どういうことなのでありましょうか。ましてや、二人の船員の帰国後の言動を拘束するかのような約束をするということは、言論の自由を定めた
憲法の根幹を揺るがすものと言わなければなりません。(
拍手)これに対する
総理の明快な
答弁を求めます。
次に、消費税問題について
質問いたします。
我々は、この国会を消費税処理国会にしなければならないと
考えております。野党の廃止
法案と
政府の見直し
法案が相打ちになった今、現行の欠陥消費税が続くという最悪の
事態を回避することは、
国民に対する
政治の重大な
責任だと
考えるからであります。
政府税制調査会に提出された
政府資料でも明らかなように、簡易課税制度によって、消費者の払った膨大な税金が業者の懐に残ってしまうという重大な欠陥を放置することはできません。また、高い免税点や限界控除制度も同様、税金がきちんと国庫に入らないことについて、
国民は強い怒りを示しております。さらに、お米にも宝石にも一律課税する逆進的な消費税は、年金生活者、低所得者など社会的弱者の生活を大きく圧迫していることは
周知のとおりであります。
将来的には高齢化、国際化社会にふさわしいよりよい間接税をつくり上げていく
努力を傾注しなければなりませんが、少なくとも現行の消費税が持つ重大な矛盾、すなわち消費者の払った税金が国庫に入らないこと、逆進性が放置されていることなどの欠陥を早急に解消することが国会の
責任、政党の
責任であると確信いたします。今国会での消費税問題決着に対する
総理の
決意のほどをお伺いをいたします。
次に、ウルグアイ・ラウンドについて
質問いたします。
米国は、ウルグアイ・ラウンドを成功させるために
日本の米の自由化が絶対必要だと強調し、みずからの国内では、上下両院でこの夏に九〇年農業法を可決し、徹底した農業保護政策を実行に移しながら、
日本には米の自由化を迫るという全く矛盾した
姿勢をとっております。そして、さきに訪米した武藤通産大臣に対しても、
日本がガットに提出した農業保護
削減計画の再提出を厳しく求めたと伝えられております。
その際、武藤通産大臣は、ベーカー国務長官に対して、年内にも
政治決断し、米について何らかの譲歩をすることを約束したと報ぜられていますが、それは本当でしょうか。もし本当であれば、それは
海部総理が再三にわたって
日本の農民や
国民に約束してきたことと全く相反するものであり、まさに農民をだますものと言わなければなりません。
海部総理並びに武藤通産大臣の本音の
答弁を求めます。
米の自給体制を確保することは、
日本を支えている重要な農業を守る死活的問題であるだけでなく、
国土保全や
日本の文化を継承していく上でも重要な
課題であります。それは
経済的な損得勘定だけでは論じられない重要な
課題を含んでおります。この段階で
政府がとるべき政策は、
米国の外圧に屈して
日本の農業を破壊の方向に追い込むことではなく、農業を希望ある産業とするために、農業の将来ビジョンをまず
国民に示すことが基本だと思いますが、いかがでしょうか。農業保護
削減計画は再
検討するのか、ウルグアイ・ラウンドの成功を願う
日本として、しからばどのような決着を望んでいるのか、
海部総理の所見を求めます。
次に、土地問題について
質問いたします。
土地問題は、今や諸悪の根源になっております。一生まじめに働いても自分の家が持てない、そんな例が先進国に
一つでもあるでしょうか。それはまさに
政治の貧困の証明と言わなければなりません。この現状を打開するため、早急に
政治のエネルギーを総結集する必要があると
考えます。
そこで伺います。
第一に、土地高騰の大きな原因をつくり出した土地金融を今こそ厳しく規制すること。第二に、庶民の住宅や中小企業の事業用地を除き保有課税を厳正に行い、土地神話を崩すこと。