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1990-10-29 第119回国会 衆議院 国際連合平和協力に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年十月二十九日(月曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 加藤 紘一君    理事 高村 正彦君 理事 西田  司君    理事 浜田卓二郎君 理事 宮下 創平君    理事 山崎  拓君 理事 池端 清一君    理事 高沢 寅男君 理事 日笠 勝之君       愛知 和男君    井出 正一君       植竹 繁雄君    奥田 幹生君       木村 義雄君    古賀  誠君       自見庄三郎君    鈴木 宗男君       園田 博之君    中川 昭一君       中村正三郎君    中山 正暉君       鳩山 邦夫君    浜田 幸一君       林  大幹君    牧野 隆守君       町村 信孝君    三原 朝彦君       渡辺 省一君    石橋 大吉君      宇都宮真由美君    上田 利正君       小澤 克介君    大木 正吾君       岡田 利春君    川崎 寛治君       左近 正男君    水田  稔君       和田 静夫君    井上 義久君       遠藤 乙彦君    冬柴 鐵三君       山口那津男君    児玉 健次君       東中 光雄君    伊藤 英成君       和田 一仁君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 梶山 静六君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 保利 耕輔君         厚 生 大 臣 津島 雄二君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         運 輸 大 臣 大野  明君         郵 政 大 臣 深谷 隆司君         労 働 大 臣 塚原 俊平君         建 設 大 臣 綿貫 民輔君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     奥田 敬和君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君  出席政府委員         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         内閣法制局第三         部長      津野  修君         人事院総裁   弥富啓之助君         人事院事務総局         給与局長    森園 幸男君         人事院事務総局         職員局長    大城 二郎君         内閣総理大臣官         房参事官         兼内閣審議官  小倉 和夫君         警察庁長官官房         長       浅野信二郎君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  富田 駿介君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  宝珠山 昇君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 藤井 一夫君         防衛庁教育訓練         局長      坪井 龍文君         防衛庁人事局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         法務大臣官房長 堀田  力君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         法務省人権擁護         局長      篠田 省二君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         大蔵省主計局次         長       藤井  威君         大蔵省銀行局保         険部長     竹内 克伸君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         文部省高等教育         局長      前畑 安宏君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生省保健医療         局長      寺松  尚君         厚生省年金局長 末次  彬君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         運輸省国際運輸         ・観光局長   寺嶋  潔君         海上保安庁長官 丹羽  晟君         海上保安庁警備         救難監     赤澤 壽男君         郵政大臣官房長 木下 昌浩君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働省労働基準         局長      佐藤 勝美君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君         建設省建設経済         局長      鈴木 政徳君         建設省住宅局長 立石  真君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         消防庁長官   木村  仁君  委員外出席者         国際連合平和協         力に関する特別         委員会調査室長 石田 俊昭君     ───────────── 委員の異動 十月二十九日  辞任         補欠選任   牧野 隆守君     木村 義雄君   和田 一仁君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   木村 義雄君     牧野 隆守君   伊藤 英成君     和田 一仁君     ───────────── 十月二十九日  国際連合平和協力法案の撤回に関する請願(小沢和秋紹介)(第一〇二号)  同(金子満広紹介)(第一〇三号)  同(木島日出夫紹介)(第一〇四号)  同(児玉健次紹介)(第一〇五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一〇六号)  同(菅野悦子紹介)(第一〇七号)  同(辻第一君紹介)(第一〇八号)  同(寺前巖紹介)(第一〇九号)  同(東中光雄紹介)(第一一〇号)  同(不破哲三紹介)(第一一一号)  同(藤田スミ紹介)(第一一二号)  同(古堅実吉紹介)(第一一三号)  同(正森成二君紹介)(第一一四号)  同(三浦久紹介)(第一一五号)  同(山原健二郎紹介)(第一一六号)  同(吉井英勝紹介)(第一一七号)  同(児玉健次紹介)(第一九三号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一九四号)  同(東中光雄紹介)(第一九五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国際連合平和協力法案内閣提出第一号)      ────◇─────
  2. 加藤紘一

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国際連合平和協力法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。愛知和男君。
  3. 愛知和男

    愛知委員 総理を初め大臣皆様方、連日大変御苦労さまでございます。  先週までの質疑でかなり問題点もはっきりいたしてまいりましたし、また、私ども同僚議員からもいろいろ質問をさせていただきましてかなりの問題点が出ておりますが、多少重複をするかもしれませんけれども、私なりに総理を初め大臣皆様方質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  初めに、内容に入る前に、私は、この国会質疑を通じて感じておりますのは、どうも議論が細かい法律論議にばかり終始をしているような気がしてならないのでございます。確かに法律議論をすることも大事ではございますが、国会の本来の使命というのは法律の前提になる政策議論することにあると思うのでございまして、政策議論がどうもおろそかにされているのじゃないかという気がしてなりません。特に今回のようなこういう法案、これに関しましては、大変大事なのは、この際私どもとして議論をしておかなきゃならないのは、国際社会の中でこれから我が国がとるべき世界戦略はどうあるべきかとか、あるいは我が国安全保障戦略はどうあるべきかとか、そういう議論が非常に大事でございまして、そのことを議論をするというのが本来の国会使命ではなかろうかと感じてなりません。  どうもそういう点からいいますと、例えば憲法の問題にいたしましても、私は率直に申し上げまして、国会議論の中でまず憲法ありきということから始めますと、本当に政策論議がどうも先へ進まないという気がしてなりません。私は憲法を改正すべしということを言っているわけじゃありませんけれども、まず政策論議をして、そしてこれからの世界戦略の中で今の憲法をどうするのか、必要とあらば変える、あるいは変えない方がいいのか、とにかく、まず憲法ありきでは、私は国会の本来の果たすべき、やるべき議論にならないと思えてなりません。日本はこれから何をするべきかという議論をすべきである、何ができるかということではないんだと私は思うのでございますが、率直に私この議論をいろいろ聞いておりまして感じておりますことでございますが、総理、この辺についてはどのようにお感じでございましょうか、冒頭にお伺いしたいと思います。
  4. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 愛知委員の御指摘のように、私どもは今、戦後初めてという大きな変化に直面をいたしまして、国際連合というものが平和を維持、回復していくために具体的に役割を果たすことができるようになってきた、同時に、冷戦時代が終わりを遂げつつあるという認識は皆持っておるわけでありますが、終わった後、どういうような新しい枠組み世界安全保障世界の新しい秩序というものができていくかという点については、まだ不確かな点が非常に多うございますが、日本としては、また政府としては、国連中心でいかなければならぬ、国際社会の大義というものをきちっと守っていかなければならぬ。  いわんや平和と繁栄を求めていこうという我が国外交基本からいいますと、武力でもって強い国が弱い国を侵略して併合するというような行為は、これは認容してはならない、同時に、新しい世界秩序づくり最初に当面したこの問題について、まあ仕方がないと言ってみんなが何もしないで見逃してしまったのではこれはいけないという、こういう基本的な考えでございますから、国連平和維持の行動に対して日本もできる限りの協力をしていかなければならぬ。こういう原点に立ってこの平和協力法案というものを政府はつくってお願いをしておるわけであります。  そして、そういう意思決定をしまして、さあどのような法案にするかというときには、やはり日本には憲法枠組みがあるわけでありますから、またその憲法枠組みというのは戦後国内国民皆さんの共通の認識も得てきた、そういったことから考えますと、この法案もその一番大事な一点はきちっと守って、武力でもって解決しようとか、武力による威嚇は伴わない、それ以外のできることを全部やろうという政策決定をしてこの法案を準備したところでございます。
  5. 愛知和男

    愛知委員 さて、私はきょういただきました時間の中で、細かい法律論議ではなくて、できるだけ政策的な点での観点に立っての議論をさせていただきたいと思っておりますが、最初に、外務大臣、御就任以来大変世界を駆けめぐっておられまして、歴代の外務大臣の中でも最も多くの国々を訪問され、あるいは多くの国の指導者とお会いになった大臣のお一人ではないかと思いますが、何カ国ぐらいの国を訪問され、あるいは首脳と会談されたでしょうか。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 突然の御質問で、あらかじめ数を正確に数えてはおりませんけれども、お目にかかった元首、大統領の数は恐らく三十人を超えているのじゃないか、あるいはまた、お話し合いをした外務大臣は百カ国を超えているのではないか、こういうふうな印象を持っておりまして、極めて、昨年の海部内閣発足以来、国際社会が激動し、新しい時代へ向かうときでございましたから、絶えず関係各国外相会議をするという、本当に想像を絶するようなことが続いておりまして、そういうことから、数を正確に計算するというようなことはやっておりませんが、極めて多数の外相たち話し合いをいたしたということでございます。
  7. 愛知和男

    愛知委員 外務大臣のまことは超人的とも言えるような御活躍で、本当に敬意を表する次第でございますが、おっしゃいましたような大勢の首脳との接触の中で、外務大臣感じておられます、こういった国々日本に対してどういう感じを持っているか、あるいは日本に対してどういう役割を求めているか、大臣なりにそういう接触の中でお感じになっていらっしゃることがあるんではないかと思うのであります。その辺のことをお聞かせいただければと思います。
  8. 中山太郎

    中山国務大臣 お目にかかりました各国外交責任者あるいは元首たちの考えている感じを率直に申し上げますと、一様に、日本が第二次世界大戦で廃墟と化した、その中から、資源のないこの小さな国が、一億数千万の、一億二千万近い国民を抱えて、本当に自助努力国際社会の中で経済大国として信頼される立場を確立したということに対する称賛といいますか、あるいはあこがれというものを、率直に、共産圏であった国も含めてそのような印象を持たれていると思います。  なお、彼らが日本に何を求めているのかといえば、私は率直に申し上げると、日本最大債権国になったわけでございまして、そういう意味国際社会に対する貢献も、ODAでは世界第一位になった、国連に対する拠出金世界第二位である、こういうふうな資金の面での国際的なランクでは極めて上位にありますけれども国際社会に人とかそういったような人的協力、そのようなことではまだまだ日本はもっと大きな貢献ができるのではないか、また、政治的にもっと日本はしっかり国際社会のために努力をするべきではないか、このようなことを率直にお話しになる外相は極めて多いということでございます。
  9. 愛知和男

    愛知委員 そのような国際社会の中で日本が求められていることにこたえていくということが今日の日本最大役割ではなかろうか、それにどうやってこたえていくかという議論であるわけでございます。  私は、この法案が上程されてから国会での質疑、特に野党皆さん質疑を聞いておりますと、どうやって国際社会日本貢献をするか、どうやったら貢献ができるかという積極的な姿勢での議論ではなくて、どうやって貢献しないで済むか、その言いわけはどこにあるかというような、非常に消極的な姿勢感じてなりません。特に外国から見たらそういう印象なのではなかろうか。日本は積極的に貢献しようとしているのか、そうじゃなくて、一生懸命貢献をしないで済む言いわけを探しているのじゃないか、こういう印象を受けるのじゃないかという気が率直にしてならないのでございますが、大臣はいかがお感じでございましょうか。
  10. 中山太郎

    中山国務大臣 野党の方々に対する私は意見を申し上げる立場に今ないと思います。  率直に申し上げて、私どもはこの国際社会で何が日本がやらなければならないことか。率直に申し上げると、我が国国家国民のために頭の中を集中的に考えると、それは、この国家貿易をする国である、そして原料を世界じゅうから輸入して、そして世界に商品を売ってその利益を国民が分かち合っている、ここによって国家が成り立っている。その成り立つためには、平和がなければこの貿易国というものは成り立たない。こういう中で、私どもはやはり国際社会孤立をしてはならないということが今日政治家に課せられている国民への大きな責任であろうと思います。  それでは、どうしたら孤立を避けることができるか。それは、やはり新しい米ソの対決が終わった、この国連中心になって新しい時代をつくろうという大きな流れの中で日本がなし得ること、それは経済大国のみならず、政治的な面でも人的協力の面でも積極的にやることによって、この国際社会からつまはじきをされないような日本の信頼される立場というものが確立をされることが求められている、私はこのように自分に言い聞かせております。
  11. 愛知和男

    愛知委員 世界日本に求めているその貢献、これは世界がその貢献策日本が考える貢献策をどう評価するかというところに問題があるわけです。日本がこれは日本貢献策だと思っても、世界貢献策と思わなかったら、これはつまはじきにされますね。ですからそういう視点が大事なんだと思うのです。自分が勝手に考えてこれが貢献策だと言って満足していたって、世界がそれを評価しなかったら何の意味もない。その視点が非常に欠けているような気がするのでありますが、その点いかがでしょうか。
  12. 中山太郎

    中山国務大臣 やはり国際的な指導者たちの考え方というものを日本理解をし、それに協力をしていくということがこれにこたえる道であろうと思いますが、極めて残念なことでございますけれども国連というようなこの組織、これについて国連憲章というものがあって、この憲章の中に難しいいろいろな、安全保障の仕組みとかいろいろなことが記載されておりますけれども、この国連憲章というものに対する国民認識の時間というものがまだ熟していない。そういう中でこの国連中心としたこれからの国際協力というものが国民の十分な御理解をいただくためには、それだけの努力と時間が私は必要ではないか、このように認識をいたしております。
  13. 愛知和男

    愛知委員 具体的に、今回中東紛争が起こったわけでありますが、この中東での紛争というのは、例えば南米とかあるいはアフリカ大陸のどこかで起きたようなこととは違いまして、こういうところですと我が国とは直接深い関係はない、ところが中東は、あの地域からの多くの石油が日本に来ているわけでありますから、世界では、この中東から最も恩恵を受けているのは日本ではないか。その地域での紛争に対して、その解決のためには日本各国の先頭に立ってでも貢献をしなければいけないじゃないか、こういう素朴な議論があります。これに対してはどうお答えになりますか。
  14. 中山太郎

    中山国務大臣 お説のとおりだと思います。
  15. 愛知和男

    愛知委員 日本貢献策がいろいろ検討される中でよく出る話は、日本には憲法制約があるのでその範囲でしか貢献ができない、こういうのが我が国の対応であります。一方しかし、世界国国からいいますと、まずその貢献をするというのが優先なんで、そのために日本がしなければならないことがあるはずだ、そのために憲法制約があるのならその憲法を変えたらいいじゃないか、こういう素朴な意見というのは出てくるわけです。今回、御承知のとおりドイツでも基本法を変える、これも国際環境の中で、憲法を変えていかないと国際社会で十分な役割を果たしていけないというドイツ国民の判断だと思うのであります。物事を考える手順としてはその方が正しいのではないか。ここで変えるべきだと言っているわけではありませんけれども順序としてはそういう順序であるべきだと思うのですね。外国からの、憲法云々と言うけれども憲法を変えたらどうなんだという意見に関してはどうお答えになりますか。総理大臣お答えいただきましょうか。
  16. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この法律を考えますときに、最初の答弁に戻りますが、国連憲章の目指しておるものも、善良な隣人として互いに平和に生活をしていきたいと平和の理念を書いておる。それは、二度にわたる世界大戦の惨害というものを戦勝国側立場から見て身をもって体験し、これを将来の世代に受け継いではいけない、何とかして平和をつくり上げていこうという努力でまとめ上げたのがこの憲章前文の趣旨であります。  日本国憲法前文にも、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して生きる、いずれの国も自分のことのみに専念してはならない、他国のこともきちっと、無視してはならない、そして自分の国の主権を維持していこうとしたら他国との協調も大切にして、その中で名誉ある地位を占めたいと思う、こう書いてあるわけです。ですから、国連憲章が目指しておる精神も、日本憲法が目指しておる大きな理念も、私は、平和と繁栄を確保していこう、そのために努力をしようというところに集約されておることは間違いないと思います。  そして、これは所信表明でも申し上げたことでありますが、国連に対していろいろ協力をしよう、それは戦争協力でなくて平和政策として協力をしていこう、平和を推進していこうということでありますから、我々がこの法案で考えたこと、今御審議をお願いしているこの法案に入っていることは、顧みて日本憲法に反するものではありませんので、特にこの法案審議をお願いし、この法案に盛られておる協力をし、具体的に今世界の中で国連の果たしておる役割を、日本立場としてこの法案枠組みの中で全力を挙げて協力をしていこうということと矛盾するものではないと考えておりますので、私はその理念のもとで行っていってしかるべきものであるし、またそれで矛盾するものでもない、こう考えております。
  17. 愛知和男

    愛知委員 世界に対しまして憲法制約があるからここまでしかできないという言い方ではなくて、憲法があることが世界貢献をする道なんだというような言い方世界に訴えていかないと世界国々は納得をしないのではないか、このように思うのでございまして、ひとつ総理のお口から、日本国民に向かってより、むしろこの際大事なのは世界に向かってですから、世界に向かってそういうメッセージを送る努力をしていただきたい、このように思うわけでございます。  さて、貢献策のうちの資金協力につきまして、大蔵大臣にお伺いをさせていただきます。  世界に対する貢献策、この新しい法案日本貢献策を一歩新しい分野に踏み入れていこうということではございますが、今後とも日本世界に対する貢献策の柱が資金協力であることは変わりがないと思うのであります。資金協力はやめて人並びに物、こういった新しい面でこれからはやっていくのだということではないと思うのです。したがって、資金協力のあり方についても議論をしておく必要があるのではないかと思います。  このたびの貢献策で、日本は大変な努力をして資金協力を決定したわけでございますが、大変残念なことながら、その資金協力をするに至りました経緯が、例えば一回じゃなくて二回に分かれちゃったとか、そういうようなことがありました。そこで、あの資金協力日本が決定するに至りました経過を簡単に御説明いただけるとありがたいのですが、いかがでしょう。
  18. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から経過というお話でありますが、経過そのものはむしろ私どもよりあるいは外務大臣の方にお答えをいただいた方がよいのかもしれません。  ただ、御承知のように、イラクのクウェートに対する侵略が始まりまして、我が国として最初にとりました手段は、クウェート日本国内にあります資産の凍結という措置でありました。そしてその後、国連安全保障理事会決議というものを受けまして、順次の貢献策というものに対しての骨格が決まっていったわけであります。  ただその中で、御承知のようにエアリフトあるいはシーリフトに代表されます物あるいは人の協力の問題、多国籍軍に対する資金協力と二つの問題があったわけでありますが、当初におきましては、周辺国に対する支援の問題というものは論議の対象に出ておりませんでした。そして、その中におきまして多国籍軍に対する資金協力というものが浮上し、外交当局とも御相談をしながら外交的な国際的な受け皿というものが用意をされることを前提にし、当時、想定されました中で十億ドルの資金協力というものを私どもとしては決断をしたわけであります。  ところが、その直後に私は欧州各国を回り、各国の財政当局の責任者の方々と、この中東の激変する情勢の中で今後の世界経済についての論議を重ねてまいりました。その中においていわゆる周辺国と言われる部分、もう一つは、原油を産出せず、しかも中低所得国である国々の経済影響の問題、この二つの問題が次第に大きな問題となり、これらに対する対応というものがもう一つのテーマとして浮かび上がってきたわけであります。そして、ちょうど私が帰国をいたしますその日に、ブレイディ財務長官を特使として派遣をされましたアメリカの特使一行が訪日をされ、総理外務大臣の会談に続き私もその一行とお目にかかり、相談をすることになりました。  しかし、その時点において二つの問題がありました。一つは、多国籍軍に対する資金協力と申しましても、兵力の展開が続いております中において、その最終的な資金量というものが見通しが確たるものがなかったこと、これが一点であります。  また、周辺国支援として、御承知のようにトルコ、ジョルダン、そしてエジプトというものにある意味での国際的な合意に基づいて今援助が行われておりますけれども、そのほかの原油を産出しない中低所得国における経済問題ということになりますと、どこまでが対象であるのか、国際機関がどこまで関与するのか、また、そのための周辺国に対する資金援助というものにおいて想定される金額というものはどの程度であるのか、こうしたことについての具体的な数字というものは、実は全くなかったわけであります。  こうした問題点の中でさまざまな議論を重ねながら、日本としては、中東の情勢の変化というものを踏まえながら、追加的に十億ドルを限度とする多国籍軍に対する資金協力の用意があるという意思を表明すると同時に、周辺国支援というものにつきまして二十億ドルの協力を行う用意ありということを国際的に宣言をしたという経緯でございまして、その後の経緯は、御承知のように、総理中東に赴かれ、既にその一部は動き始めておるという状況であります。
  19. 愛知和男

    愛知委員 大蔵省の役割というのは、申し上げるまでもなく国民からの税金をいかにむだなく使うか、こういうことでありまして、ふだんの予算の編成などでもさまざまな要求を細かく精査をし、そしてそれに対して予算をつけていく、こういうやり方であるわけでありますが、今、図らずも大臣からお話しのとおり、この今回のような話ですと、中身はよくわからないけれども出さなきゃならない、こういうことで、日ごろの大蔵省の対応とはちょっとなじまない部分があるのではないかと思うのです。そのために、私は率直に言って対応が少しおくれてしまったというところもあったのではないかと思いますが、まあ過去のことはともかくとして、今後こういうようなことが起きて臨機応変に日本が応じなきゃならないというケースもあり得るのだと思うのでありますが、これからのこういう事態に対してどう対応していくか、その対応策、お持ちでしょうか。
  20. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず第一点で申し上げたいことは、対応のおくれという言葉を使われましたが、私どもは、確かに世上そのような言葉を浴びておりますけれども、何に比べて対応がおくれたのかを、逆に私はお尋ねをいたしたいと思います。追加の部分までを含めまして、日本政府がこの湾岸の情勢に対応して資金協力の決断をいたしましたのは、各国に比べてむしろ早かったのではなかろうか、時系列的に考えれば、私はそう感じております。  しかし、日本の対応がおくれたとよく批判を受けますのは、いわばエアリフトとかシーリフトとか、目に見える形の日本の措置というものがなかったために、資金協力という目に見えない形でありましたためにそうした御批判を受けた部分が多いのではないでしょうか。むしろ、第二回目の決断を私どもが下しました後にヨーロッパの国々の例えば資金協力といったものは打ち出されたわけでありまして、私は、何に比べて遅いと言われるのか、むしろお尋ねをしたい気持ちも胸の中にはございます。  また、今、委員から御指摘を受けましたように、こうした事態は当然事前から想定をされるものではございません。そして、国際的な動きの中において、我々とすれば外交当局の御判断というものを尊重しながら、同時に国会において使用を許されておりますその時期における予算の範囲内において対応していくということにならざるを得ない。今後とも、そうした意味では、緊急突発のこうした事態について同じような対応を必要とする場面が出てくるでありましょう。しかし、そのために別財源を用意しておくというわけにもいかないわけでありまして、その時点その時点における許された範囲内における予算の運用によって対応していくということになるであろうと思います。
  21. 愛知和男

    愛知委員 おくれたということに関してはそういうことを言われるのは不本意だ、こういうことでございました。しかし、そういうことを感じている国々もあるということはひとつ御認識をいただいて、これからの問題としまして、やはり日本資金協力というものが臨機応変に機敏に間髪を入れずこういうときには行われるんだというイメージづくり、世界に対してのイメージづくりをひとつ財政当局としても心がけていただく必要があるのではないかということでお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、いわゆる国連中心主義ということについて若干触れていきたいと思いますが、我が国国連中心主義を外交の柱の一つと据えておりますが、これはいつごろからこういうことになったのでしょうか。
  22. 中山太郎

    中山国務大臣 私の記憶に間違いがなければ、日本が講和条約を結んだときから始まっているという認識を持っております。  ただし、その前に、まだ独立をしない場合におきましても、いわゆる衆議院に設置されておりました海外同胞引揚特別委員会といって、当時シベリア抑留者あるいは満州、いろいろなところに敗戦後に苦しんだ日本の邦人たちがたくさんおりまして、この人たちを戻すために国連に非公式なオブザーバーとして国会からあるいは日本赤十字からあるいは外務省から人が出たということは記録に残されております。
  23. 愛知和男

    愛知委員 国連中心主義を掲げてもう随分長くなる、こういうことでございますが、その間、この国連中心主義でどのような外交的な実績を上げてきたかということをお尋ねしたいと思います。
  24. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 国連におきます日本の——国連の活動分野は、国際の平和及び安全の維持から始まりまして、経済開発、社会開発あるいは人権分野等いろいろと多岐にわたっております。それで、特に日本は、今大臣から言われましたとおり、国連加盟前から、特に国連に五六年に加盟しまして以来、国連の掲げる理想を尊重して国連中心にやっていくということがうたわれておりますし、外交青書にもそのような表現がございます。  ただ、従来の日本立場から、特に国連におきましては、国連中心になって行っております社会、経済開発におきまして、非常に国連のUNDPあるいはユニセフ等を中心にいろいろと貢献してきております。また、国連におきます分担率におきましても、日本の経済的地位の高まりとともに分担率が非常にふえてきまして、ただいまはアメリカに次いで第二の国連分担金を負担しております。今一一・三八%でございます。  と同時に、日本のそういう経済的な地位の向上とともに、国際の平和及び安全の分野でも徐々に日本役割に対する期待が高まってまいりまして、特にここ数年来、国際の平和及び安全の維持面における日本資金協力と並びまして、人の派遣の面におきましても徐々に参加をしてきております。例えばイラン・イラク紛争に当たりまして、あるいはアフガニスタンの休戦に当たりまして国連に政務官を派遣いたしましたし、最近ではナミビアの選挙ですとかあるいはニカラグアの選挙等に当たりまして日本から選挙監視要員を派遣しております。
  25. 愛知和男

    愛知委員 このたびのこの法案は、従来からの国連中心主義をさらに徹底し、新しい分野での役割を、外交中心国連中心に据えていこう、こういうことだと思うのでありますが、ここでお伺いいたしたいのは、この国連中心主義、特に安全保障関係での国連中心主義ということとなりますと、従来の日本安全保障政策との関係はどうなるのか。日本は、日本安全保障は日米安全保障条約に基づく日米安保体制というのに基軸を置いてきたわけでございますが、それを変更しようとするものなのか。日米安保体制と国連中心主義との関係は、どういうふうに考えたらよろしいのでしょう。
  26. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 お答えいたします。  先生御承知と思いますが、日米安保条約自身も、国連の目的及び活動に積極的な支持を与えるという基本的な観点を踏まえておりまして、これは安保条約の前文、第一、条、六条、七条等にも言及があるところでございまして、先生御指摘のように、日米安保体制は日本安全保障政策基本をなしますけれども、その安保体制自身も、国連の目的及び活動に積極的に支持を与えるという点を踏まえておりますので、基本的にこの国連中心主義と日米安保体制の間には矛盾はございません。矛盾がないどころか両立するものであると考えております。
  27. 愛知和男

    愛知委員 ぜひ、その辺をはっきりと踏まえてこれからもやっていただきたい。つまり、日米関係がやはり基本でございますから、そういう点で、ついでながら、総理は日米関係の現状及び今後についてどのような認識をお持ちでございましょう。
  28. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 基本的なことを申し上げますと、日本外交の座標軸というのは、第一は、日米関係が基調でございます。そして、それは日本が戦後多数講和か全面講和かで独立国家の道を選ぶときに、自由と民主主義の陣営に属してやっていこう、それから、我が国安全保障は日米安全保障条約のもとで維持し、確保していこう、こういう決断をいたしました。以来、貿易、経済の面では、自由経済、自由貿易の中で日本は対処をしてきました。いろいろな意味で、平和と繁栄を守り抜いてくるために、日米関係というものはその基軸にあって大きな役割を果たすとともに、これが非常に大切な両国間の、安全保障の面でも、経済発展の面でも、あるいはそのほかのアメリカの生活スタイルを日本国民生活スタイルの中に取り込んでくるという日常の生活面でも、非常に密接な関係があり、パートナーとしての地位が今日高まるまでになってきた、私は基本的にはこう認識をしております。  ただ、現状を申し上げますと、率直に言って、日本のそういった経済面での大きさというものが、よく言われますように粗っぽい計算でアメリカが五兆ドル、日本が三兆ドル、両方合わせると世界の四〇%近く、二国間の経済行動とか二国間の世界経済に与える役割というものが、好むと好まざるとにかかわらず非常に大きな影響を与えます。  同時に、最近は日本とアメリカの間の貿易インバランスの問題も、一年五百億ドルというライン、最近は四百九十以下にちょっと落ちておりますけれども、依然として高いレベルにある。そこで、日米両国間では、もう少し経済構造を改善していくような努力が必要だというので、昨年SIIの交渉が行われ、今年まで引き続いて最終文書をまとめ上げることができたところでありますけれども、この文書に盛られた問題を今後お互いに誠意を持って話し合いをしながら、お互いに指摘し合った問題は解決、改善して、やはり共通の認識を得るように努力をしていかなければならないという問題点もありますけれども、依然として一番重要な二国間関係であることは間違いありませんし、同時に、世界でいろいろな問題が起きますときに、やはり自由陣営と共産主義陣営とに分かれて対決しておったころ果たしてきたアメリカの役割と、今日、世界が一つの共通の価値を求めて民主化、自由化で行こう、東西の対決よりもむしろ国連中心にして世界の平和とか世界安全保障とか、世界繁栄枠組みをつくっていこうという時代になりますと、さらにアメリカの負わなきゃならぬ責任は大きいと思うし、同時に、それなりに経済的にも大きくなってきた日本が地球的規模で協力をしていかなきゃならぬ役割も大きいと思っております。  過日のサミットとか日米首脳会談等において、やはり地球環境の問題とか途上国の累積債務の問題とか、麻薬の問題とかいろいろなことについても、日本もアメリカ、ヨーロッパとともにアジアの代表としての責任と自覚と協力とを強く求められ、強く話し合いをし、将来はそれらについて責任を負っていかなければならないという世界の目があるということ、これも事実だと思います。  そういったことを全部とらえますと、今後とも日米間はさらに世界の平和と繁栄に、そして環境問題やその他の問題にも地球的な規模で責任を負っていかなければならぬ、パートナーとしての役割を分担していかなければならぬ、そういう立場に立っておると私は自覚をしております。
  29. 愛知和男

    愛知委員 世界がいろいろと混沌としておる状況の中でございまして、これから新しい秩序を求めていろんな動きがあろうかと思いますが、そうであればあるほど、その中での日米関係の重要性というのは今までにも増して大きなものになると考えます。ひとつ日米関係についてはこれからも最大の重点を置いて取り組んでいっていただきたい、このように思います。  国連中心主義、ちょっと戻りますが、国連中心主義という以上、国連のいろんな決定に日本の意思が反映されなければ何の意味もない、こう思うわけでありまして、国連の決議に基づいてということですが、それに日本の意思が反映されなければ言いなりになるだけの話だという言い方もできるのではないかと思います。  そういう点で、国連での最も大事な安全保障理事会、これに現在日本理事国になっていないわけでございますが、そうしますと、安保理事会の意思決定日本は参画できていないということであります。それではだめなんでありまして、やはりどうしても国連の安保理事会の理事国、常任理事国になる必要がある。特にこういう法案を出し、今後もさらに国連中心主義でいこうという以上は、どうしてもならなければいけないんじゃないか、こう思うのでありますが、その辺の客観情勢は現在どうでしょうか。
  30. 中山太郎

    中山国務大臣 今まで日本は、国連の安保理事国として六回その席を占めてまいりました。明後年の安保理の理事国に明年立候補することで、ニューヨーク等におきます外相会談におきましても日本への支持を要請しているというような現状でございますが、お目にかかる外務大臣の中には、日本は常任理事国になるべきではないかというようなお話をいただく国もございます。しかし、安保理の常任理事国ということになれば、この安全保障理事会、これが持ちます権能の中に、例えば軍事参謀委員会とかいろんなものがございますから、それらのいわゆる常任理事国として、どのような日本憲法の枠内で行動することができるのかというようなこともやはり十分研究をし、議論をしながら、新しい国連憲章の改正ということもまず必要な条件でございましょう、そういうことで、私どもは将来、日本国連の中で常任理事国になる場合のことについて、国民とともに考えなければならない大きな問題であると私は考えております。
  31. 愛知和男

    愛知委員 せんだって、八日の末に私はニューヨークへ参りまして、国連本部でいろいろと我が国の代表部の方々と懇談をしたりいたしました際に、非常に苦労しておられました。とにかく安保理事会の理事国になっていないので情報すら十分ではない。また、常任理事国の五カ国でいろいろなことを決められてしまう。非常に苦労し、その出先の人たちの意見としては、どうしても早く常任理事国にならなければならないという非常に切実な願いを抱いておられました。  そういう点で、今度のこの法案が万が一通らないなんということになりましたら、私は常任理事国になる道というのはまた遠のいてしまうのではないか、こんなふうに思いますが、いかがでしょう。
  32. 中山太郎

    中山国務大臣 国連という場所は、日本の今日までの国連に対する協力の面で、資金的には大変評価を高くしていただいておりますけれども、いろいろな人的協力、そのようなものについてはまだまだ不十分な点が多い。例えば国連平和維持軍の問題をどうするのかとか、あるいは停戦監視の問題とかいろいろな問題がございますが、そのようなことを日本がどこまで憲法の中でできるかということについては、この法案の成立の過程におきましていろいろ御議論をいただき、この法案が成立いたしますとそれなりの評価というものはまた高まってまいる、このように信じております。
  33. 愛知和男

    愛知委員 時間が余りなくなりましたので、ちょっと駆け足になりますが、残りの幾つかを質問させていただきます。  今回の法案の一つの重要な柱としていわゆるPKOがございます。PKOというものの実態はどうかということについて、PKO、既にこれに参加をしている国々があるわけですが、その参加をしている国々の実態等について教えていただきたいと思います。
  34. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 国連のPKO活動につきましては、戦後国連が始まりまして、これまで十九の平和維持活動が安保理決議または総会決議に基づいて発足しております。それにつきまして特に今正確な人数を私は覚えておりませんけれども、特にカナダでありますとか北欧諸国、あるいは多くの途上国からも各種のPKO活動に参加しております。  中でも目立ちますのは北欧諸国でございまして、特に北欧四カ国はいわゆる国連待機軍という制度を設けておりまして、それぞれ千名から四千名ぐらいの待機軍制度を設けておりまして、新しいPKOが発足する場合はもちろんのこと、毎年毎年の交代に当たりましても、順番に次々と自国から要員を派遣するというような体制が整えられております。
  35. 愛知和男

    愛知委員 そういう人たちのステータスはどうなんですか。そういう人たちは軍人ですか、軍人が参加しているのですか。
  36. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 PKOにはいろいろな分野がございます。平和維持軍でありますとかあるいは停戦監視団あるいは選挙監視団、この三つが一番主な分野だと存じます。そのうち選挙監視団につきましては文民が主体でございますが、平和維持軍と停戦監視団につきましては軍人が主体になっております。
  37. 愛知和男

    愛知委員 そうだとしますと、日本も本格的にPKO、平和維持活動に参加をするとなると、これに自衛隊が参加して初めて本当に積極的に参加をした、こういうことになるという理解でよろしいですか。
  38. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 選挙監視等の文民が参加するPKO活動というのは最近の新しい傾向でございますが、やはり伝統的なPKO活動といいますのは平和維持軍あるいは停戦監視、特に今まだ世界にたくさんあります地域紛争絡みで、引き続き停戦監視、あるいは兵力引き離し等の役割は重要だと思います。そのようなところに日本が参加する、あるいは側面協力するに当たりましては、やはりこの新しい法律のもとで自衛隊の派遣が可能になるということは非常に重要なことだと思っております。
  39. 愛知和男

    愛知委員 こういうPKOの活動に自衛隊の諸君が参加をするということで、私は自衛隊の皆様が国内で、例えば災害派遣のときなどは大変献身的に努力をしておられまして、住民はひとしく感謝をしているわけでございますが、こういった若い自衛隊の諸君がこのPKOに参加をして大いに活躍をするということは、日本のイメージダウンどころか日本の評価を高めることにつながる、むしろそのように思うわけでありまして、ぜひ自衛隊の皆様方にもそういうことで頑張ってほしい、このように思います。  少々細かい話になりますが、二十六日のこの委員会東中委員が指摘をされました法案第三条二号の「防疫活動」について、その中で毒ガスの処理ができるのかできないのかということについて多少あいまいのままになっていると思いますが、この点について政府の見解をただしておきたいと思います。
  40. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  この法案第三条二号ホにおきまして「平和協力業務」の一つとして掲げられております「防疫活動」も、紛争による混乱等によりまして衛生状態が悪化して伝染病の発生するおそれがある場合、または伝染病が発生した場合等におきまして、伝染病の発生やその感染の拡大を予防するために行う活動を想定したものでございます。  したがいまして、二十六日に東中委員から御指摘のあったような毒ガスの処理のような活動は、本法案第三条第二号ホに定められている「防疫活動」にも含まれておりませんし、またいわゆるこれに類する活動として政令に定めるような活動にも含まれておらないわけでございます。したがいまして、政府としては国連協力法のもとでこのような活動を行うことは全く考えていないということをこの際明らかにしておきたいと思います。
  41. 愛知和男

    愛知委員 もう一つお尋ねしておきたいことは、制服の件についてでございます。  平和協力隊員は協力隊の制服を着用することになっておりますが、他方自衛隊員は、自衛隊法五十八条により自衛隊の制服を着用することとされております。先週の、これも当委員会での御答弁の中で、自衛隊員が作業服を着用する場合があると述べられておりますが、作業服も制服の一つであるとされております。外務大臣、このような理解でよろしゅうございますか。
  42. 中山太郎

    中山国務大臣 御趣旨のとおりでございます。
  43. 愛知和男

    愛知委員 時間がそろそろなくなりましたので、最後に、この法案をめぐっていろいろ外国からの反応があります。その中で、我が国が、またこれで、これを一歩としてかつてのような過った道を歩むんではないかというような議論などがいっぱいなされておりますが、私は戦前に我が国が過ちを犯したというのは幾つか理由があると思いますが、その一つは国際社会から孤立したということがあると思うのであります。  そういう点からいいますと、今回の法案の趣旨は、国際社会から孤立しないために考えている法案でございまして、むしろこれを通すことによってそういう道をふさぐ、こういうことになるんだと思うのです。全然趣旨が逆の方にいっている議論があると思うのでございますが、その辺はどうお考えでしょうか。
  44. 中山太郎

    中山国務大臣 一部各国にこの法案審議をめぐっていろいろと意見が出ておることは私もよく認識をいたしております。  実は一昨日、土曜日の午前中にグエン・コ・タク・ベトナムの外務大臣との外相会談におきましても、私はこの法案の内容につきまして約四十分間説明を各条について主なところをいたしました。そして十分この日本法律案の内容について私の意見をお聞きいただいたということでございます。なお、これからやはりこの国連決議を受けて行うということ、それから武力による威嚇または武力の行使によるものではないという我が国憲法の原則に従って行動するということ、その際、一昨日では憲法の改正をするのかというお尋ねもございましたが、そのようなことは日本政府はいたさないということも改めて申しております。  このように、私はやはり、この法案が成立をすることに関しましても、この法案がどのような形で成立するか、野党の御意見どもいろいろ出ておりますけれども、この法案ができましたら各国にこの内容について十分御理解をいただくように外交ルートを通じて積極的に努力をして、我々の国の考え方というものが平和憲法に根差して国連の決議に基づいて行われるものであるということの認識を求めていくということが必要であると私は考えております。
  45. 愛知和男

    愛知委員 我が国がかつて過った道を歩んだ理由、もう一つ大きく挙げなきゃならないのは、民主主義が正しく機能していなかった、こういうことだと思うのであります。今日我が国の民主主義、戦後の民主主義ですが、かなり成熟をしてきた、大いに自信を持ってよろしいのではないか、こう思いますが、なおこの民主主義をさらに成熟させるための努力というものを引き続き続けていくということによりまして、諸国に対してあらぬ不安を与えないということになるのではないか、このように思うのであります。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━私は、日本の民主主義をもっともっと成熟させるためにあらゆる努力を続けていかなきゃいけない、このように思うのでありますが、そういう点で、一つは、総理が大きく掲げられておられます政治改革、選挙制度の改革、これなども実は大変意味のある話で、日本の民主主義制度を成熟させるものだ、この大きな一つだと思います。  そしてまた同時に、この際最後に指摘しておきたいのは、野党の、社会党のこの新聞広告などを見ますと、こういうものの中から社会党が我が国の政権を担っていこうという意欲も全然感じられない、ただなるアジテーションだと思うのでありまして、これではやはり日本の民主主義は成熟いたしません。野党の諸君にも本当に政権をとっていくだけの意欲と能力を持ってもらうということが日本の民主主義を成熟させる道であって、それがあらぬ脅威を外国に与えないという道だ、このように思いますが、最後に、総理の政治改革等に取り組む意欲、民主主義成熟にかける総理の御意欲を聞かせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  46. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 世界の大きな流れが次第に変わりつつある、そしてそれは冷戦時代が終わってみんなで力を合わせて平和と繁栄を求めていこうという時代になりつつある、国連が戦後初めて安全保障理事会で全会一致の決議をして、平和を守るための努力をいろいろできるようになってきた、こういう状況の中で、日本もそれに対してできる限りの協力をし平和を守るための責任を分担していかなきゃならぬという立場に立っておることは、先ほど来再三申し上げたとおりでございます。そうして、日本がこの戦後四十五年の歩みを顧みまして、二度と侵略戦争はしない、二度と軍事大国にならないということはこれは国民全体の間で確立した理念でもありますし、またそれがアジア・太平洋地域の平和と安定のために大きく役立つてきたという立場もこれは明らかだと思います。  しかし、今の国連でいろいろ決議をされる問題の中には、中国も理事国として入っていらっしゃるわけだし、世界国々の代表がそこに集まって決める問題ですから、恣意的に日本日本独自の判断であれをしよう、これをしようという戦前の発想とは全く違った角度から、国連に対する協力ということで、国連の決議で国際社会がここに正義に反するものがあると決めたことに対してそれを日本立場協力をするということでありますから、私は、この法案の内容は、内容をきちっと御説明することによって御理解いただきたいと思っておりますし、また、私のところへ先週だけでもおいでになったいろいろな立場のお方、例えば新華社通信の社長さんとか北京日報の社長さんとか編集の方々とか、みんなそういうことはきちっとお話をするのです。  そのような努力を今後もさらに一層続けていきたいと思いますし、戦前と違って、今はこのようにいろいろ国民の前で御議論を願うという日本の民主主義も定着しておりますが、おっしゃるように政治改革、政策中心の論議ができたり、政治と政治資金の問題についてのいろいろな御批判や御指摘にこたえて今各党各会派でいろいろ御議論努力を願っておる問題もございます。政府もそれらの御議論に十分注目をいたしまして、政治改革にはさらに一層の努力を重ねていかなきゃならぬことも、この法案審議とともに御指摘のとおりに大切なことだと心得ております。  ありがとうございました。
  47. 愛知和男

    愛知委員 どうもありがとうございました。終わります。
  48. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて愛知和男君の質疑は終了いたしました。  次に、高沢寅男君。
  49. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、まず初めに、今の世界の動き、現在も動いていると思いますが、中東問題の平和的解決、これに向かってソビエトのゴルバチョフ大統領の特使のプリマコフ氏がイラクのフセイン大統領と会談をした。あるいはまた、ゴルバチョフ大統領はスペインから今度はフランスへ回ってミッテラン大統領と平和解決のための話し合いをされているというような動きがあり、さらには、新聞の報道ではアメリカのブッシュ大統領も平和解決の可能性というものを示唆するそういう記者会見をホノルルでやっておられる。これらを全体的に見ますと、私は、非常に今平和解決の方向へ向かって事態が動きつつある、相手のイラクのフセイン大統領もその気持ちが十分あるんじゃないのか、こういう感じが実はいたすわけでありますが、この辺の平和解決の見通しといいますか、これらについて我が国政府はどういう展望を持っておられるか、最初にまずその展望をお尋ねをしたい、こう思うわけです。
  50. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 湾岸危機が起こりましたその直後から、これは平和的に解決することが最も望ましい解決方法であるということは私どもの一貫した考えであります。ですから、湾岸各国を回った首脳との会議でも、そのことについてさらに粘り強く平和的解決の努力をお互いにしようということは強く言ってまいりました。  同時に、ラマダン副首相と先月お話をしましたときも、日本のこの希望的な要求、同時に湾岸諸国の国々がこの状態が続いていくことの先に対して非常に深い懸念を持っているということ、それを局面を打開していろいろ話し合わなきゃならぬ問題があるでしょう、向こうのイラク側の立場に立っても、中東の恒久和平の問題はどうしてくれるんだとか、イラクと日本とのきょうまでの関係なんかについてもどうなんだというようなことについては、私は、局面が打開されてこの危機が、膠着状態が変わっていったならば、それらのことについても日本としても十分立場も説明をし、関係を再構築する用意があるということも申し上げてきました。そして、それはあくまで平和解決を願うということを再三言いました。  今、人質の皆さんの問題等も私どもの心を痛めておりますが、それらも全部が、根本的な原則に従って解決されれば皆片づくわけでありますから、今世界のそれぞれの国の首脳がそれぞれの立場で言っておることも、皆この平和解決を求めての動きであり、発言であると私も信じます。  イラクのフセイン大統領がこういった世界の大義の指さす方向にしっかりと目を向けて、決断のあることを、そして局面をまず打開して国連決議の趣旨に沿った行為が始められることを、それが平和解決への根本的な第一歩でありますから、そのように動いておるものと、私も希望を含めてそう信じております。
  51. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういう平和解決の事態が出てきたとき、もうまことにすばらしい好ましい結果であるわけですが、そのときに世界国々が、この平和解決の中で日本はこういう役割を果たした、日本がこうやってくれたから平和解決ができたというふうな評価をする何かがあるでしょうか。いかがお考えですか。
  52. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本は初めから平和解決をしなければならぬという政治的立場を明確にしておりますし、同時に経済制裁にも積極的に参加をして、これは反省を求めるための、平和解決をするための国連の決議に従って行っておるわけであります。またアメリカを初めとして、戦火があれ以上広がらないように、侵略があれ以上広がらないように、抑止のために展開された、そういった行動に対してはこれを評価して、そしてここで局面を打開するようにすべきであるというので、周辺国の援助とか、それによって出た難民に対する援助なんかは、国連の機関が要請する半額以上のところを日本は自主的に、積極的に提供もしてきたわけであります。  また、日本立場で湾岸諸国の首脳とも会い、イラクの副首相とも会い、これは大統領に直接伝えてもらいたいというので、日本立場日本の考え方、伝えてあるわけでありますから、日本は、日本がすべてとは言いませんけれども日本日本立場で平和解決のための努力を重ね続けてきておるということは世界が認めておるわけであります。世界首脳日本貢献策日本の態度に対しては、これは評価をし、歓迎をすると言ってくれておるわけでありますから、十分そこはわかっておってもらうことであると私は信じております。
  53. 高沢寅男

    ○高沢委員 けさの朝日新聞でありますが、その投書欄にこういう投書が出ているわけであります。ちょっと長いけれども読ましていただきたいと思います。   イラクがクウェートに侵攻したのは認めがたい。しかしこれは基本的にはアラブの問題であり、他民族が介入すべきではない。にもかかわらず、それが世界を揺るがしているのは、そこに石油が出るからであり、石油がなければアメリカも大軍を派遣することはなかった。つまりアメリカはアラブを守るという大義名分を掲げてはいるが、その実、アメリカの権益を守っているにすぎない。そのようなアメリカも、そのしり馬に乗っている日本にも正義はない。   もう一つは、東西冷戦を創り出したソ連や仏、米などの軍事国家が、イラクや周辺諸国に武器を売りつけた結果が今回の事件だということ。   以上のことから、日本が行うべきことは明らかで、軍隊をいったん撤収するようアメリカを説き、イラクが話し合いのテーブルにつけるような条件をつくり出すことである。そして武器を輸出せず、軍隊をもたず、また派兵しないことで世界平和に貢献してきた日本と、日本姿勢をつくりあげてきた憲法を、世界に向かって今こそ誇りをもってアピールすることである。それが政治大国として世界から認められるようになる一つの手段である。   あいまいな自衛隊派遣の検討や、思いつきの国連軍の提唱は、世界の笑いものになるだけである。 こういう投書です。  私は、この投書は今の日本国民の一番多くの人の気持ちを代表している、こういう投書ではないかと思います。この見解に対して、総理、あなたはどういうお気持ちをお持ちか、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  54. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お言葉を返すようですが、私は大切な視点が欠落をしておると思うのです。それは、一体その世界の平和とか国際社会の正義という角度からとらえたときに、イラクのクウェート侵略、侵攻という事実をどのように評価されておるのでしょうか。今回は、冷戦後の世界秩序の中で、また昔のように強い者が弱い国を滅ぼすのは当たり前だ、仕方がないという弱肉強食のその事実を認めよということになるのですか。だったら、そこに言う、責めるのはアメリカを責めるのではなくてイラクを責めなければならぬのじゃないでしょうか。  これは世界の大義、世界の平和に対する正面からの力による侵略、侵攻ですから、国連憲章でも日本国憲法でもそういったことは全然認めておらない、容認してはならないという基準でありますから、この世界の正義に対する視点を全く抜きにして、アメリカが撤兵することだ、アメリカ帰れというのは、お芝居の第三幕だけを見て物を言うような話で、やっぱり一幕、二幕から来て、だれが原因をつくって、だれがこうしたのか、だれがいけないのか。私、さっきも申し上げたように、この局面を転回することのできるのはイラクである、この膠着状態を転回していくのはイラクである、これはもう世界じゅうが認めていることでありますから、その朝日新聞の投書されたお方も、どうかこの第一幕、一番最初に力でもって国連加盟国でありアラブ連合の一国であり主権を持った国であるクウェートを問答無用でたたきつぶした行為が許されるのですかどうですかということを、やっぱりイラクの行為を反省をしてもらわなければならぬというところに問題の根本があると私は思いますので、その角度の御意見に賛成するわけにはまいりません。  また同時に、アラブのことはアラブとおっしゃいましたよね。アラブで片づけると書いてあるとおっしゃった。それは、ラマダン副首相も私にそれと同じようなことを言われたので、アラブの中でアラブのことが片づくなれば、それはそれで一つの大きな方法だと思いますが、しかし、現実にアラブの中ではアラブの首脳会議もできなくなった。エジプト、サウジが努力をして、侵攻直前に会議をやって、侵攻しない、絶対しない、平和的に片づけろよ、絶対的に片づけるというやりとりがアラブ首脳会議の中で行われたということは、私は当時の当事者であるサウジのあるいはエジプトの首脳からそれぞれ聞いてきたことなんであります。  けれども、それができなかったから、その約束を破って武力の侵攻が始まったので、これはいけない、イラクは許すべきでないというので、アラブ内の意見も大きく分かれて、アラブ連合軍ができて、それが多国籍軍になって、これ以上侵入してはいけないよといってアメリカ軍とともにサウジに展開したわけでありますから、そういったようなことを考えると、アラブのことはアラブでと言ったって、片づく能力が今のところなくなったから国際社会が出てそれを片づけようとし、国連の決議が行われ、各国がそれに同調をしたという、こういう背景があるのですから、どうかその全体をとらえていただいて、ただアメリカが悪いんだ、アメリカが引けば問題が片づく、アラブに任せておけばいいんだとおっしゃるのはいかがなものかという気が私にはしますから、同調するわけにはまいりません。視点を変えて問題を議論していただきたい、私はそう思います。
  55. 高沢寅男

    ○高沢委員 総理は、何といいますか、得たりや応と大変長い答弁をされましたが、私が最初に平和解決の動きがある、平和解決についての展望はいかがとお聞きしたのは、その平和解決は、イラクがクウェートを抑えた状態のままでの平和解決、私はこれは当然あり得ないと思う。つまり、クウェートからイラクを撤退をさせるということを含めての平和解決ということに、あのミッテランの提案もそこにあるのです。あるいはゴルバチョフ大統領が盛んにイラクを今説得しておるというのも、そのことを含めて、クウェートをとったままで解決ということはないよということはソ連も繰り返しイラクのフセイン大統領に言いながら、その上での平和解決、こう言っておるわけですね。ですから、この投書の方も、これはイラクのクウェート侵攻は認めがたいと言っているわけですから、この人も同じ前提であるわけですね。  したがって、そういうイラクと対立しておる、今や一戦交えるかと言われておるサウジアラビアの首脳が、実はイラクのフセイン大統領と水面下の話し合いもしておるということも伝えられておる、私は、そういうことの結果として、平和解決というときは恐らくフセイン大統領がクウェートから撤退する。しかし、そこには一定の、名誉ある撤退という、名誉を与えるでしょう。そして、そのときに米軍はこのアラビア半島から撤退するというような形の平和解決というものがここに出てくると私は思うのであります。そういう見通しを私はさっきお尋ねしたわけであって、この投書者の人も決してそのことを無視して言っているわけではないということを私は投書者のためにひとつ弁護しておきたい、こう思うわけであります。  さて、そうなってまいりますと、私は、今問題のこの国連平和協力法案政府はこの際潔く撤回されるべきであるということをこの場でひとつ要求したいと思うのです。  あなたは、野党も対案を出してくれと、こうおっしゃる。あるいは小沢幹事長は、いろいろの意見を受け入れて手直しもいいですよと言っておられますが、私たちはこの今の案をもとにしての手直しということはあり得ない、こう思います。これは潔く撤回をしてもらって、その上で、真の国連に対する平和協力というものをどうするかということは、我々もちゃんとした積極的な案を持っております。そういうものはまた十分話し合う用意がありますが、その大前提は、この国会で無理やりに成立させる、会期延長しても成立させるというふうなことは潔く断念して、この国会ではこの法案をまず潔く撤回するということをしてもらいたいと思いますが、総理の御所存はいかがですか。
  56. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 必要性を感じて提案をいたしました法案で、ただいま御審議をいただいておる最中でありますから、御理解を願いたいと思って、審議を続けていただきたい、成立をさせていただきたいというのが政府の率直な考えであります。野党も同じように平和協力機構をつくるという発表をされましたし、平和協力法案というものを用意しておるともおっしゃいましたし、これは報道によれば、その大綱を読んでみますと、やろうとしていらっしゃることは、国連に対する協力は大事だ、輸送とかあるいは医療とか通信とか機械器具の修理とか、大体平和協力法案に書いてあることと非常に交わるところが多い面もあるなあと思いながら私は率直に拝見しましたので、どうか法案をお出しいただいて、対案を出していただくといろいろなところでわかる、議論も詰まるようになってまいりますので、そういったことを心からお願いをし、期待をしておるわけでございます。
  57. 高沢寅男

    ○高沢委員 今の問題に関連しますが、国連の安保理事会でこのイラクに対するさらに踏み込んだ決議をしようということでずうっと論議がなされていて、その中でソビエトの代表が、ちょっと待ってくれ、我が国のプリマコフ特使がイラクのフセイン大統領とも話している、ちょっと待ってくれということでその決議は延期された、この経過は御存じですね。我が国として、外務省としてはその国連安保理事会のこういう延期された経過あるいはまたソビエトの代表のちょっと待ってくれというその経過、この辺をどう掌握されているか、お尋ねしたいと思います。
  58. 中山太郎

    中山国務大臣 その経過は私も報告を受けておりますので、具体的に国連局長から答弁をさしていただきます。
  59. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 安全保障理事会の非公式会合は、二十七日土曜日に開催されまして、ほぼ安保理で採択することになっている決議案がまとまっております。その後同じく、同じ日に公式会合が開かれましたけれども、この決議案の討議及び表決については月曜日、本日の現地時間で十一時まで延ばそうということになっております。その際ソ連が申しましたことは、ソ連より要人が来ること等のためにソ連より——ソ連が安保理で発言しました要点を申し上げます。  国際社会はイラクに対し一致して当たっているが、イラクはこれまで何らかかる国際社会の要求にこたえる姿勢を見せていない。イラクは、クウェートにおいて無法行為を行っている。イラクにとどめられているソ連人の安全につき、ソ連政府は大きな懸念を有している。ソ連は、戦争による解決には反対する。政治解決の望みが少しでもある限り、その道を追求すべきである。プリマコフ代表は現在バグダッドにおり、解決の努力を行っている。その他の国々も解決努力を続けている。イラクは、早期無条件撤退をまず行い、問題解決の話し合いに応ずるべきであるというふうに、ソ連代表は土曜日の国連安保理会合におきまして発言しております。  なお、非公式会合等を通じまして今まとまっております決議案のポイントだけ申し上げます。  決議案におきましては、これはイラクに対する要請でございますが、第三国人の人質解放、ジュネーブ第四条約等の遵守、外国人の出国、食糧等の提供、外交官等の保護、クウェート及び第三国に与えた損害に対する責任の追及並びに平和的解決のための事務総長の仲介及び外交努力に対する信頼、加盟国に対する同様の外交努力の要請、これらの諸点が土曜日に一応非公式協議等を通じましてまとめられた決議案の内容になっております。
  60. 高沢寅男

    ○高沢委員 今のその御説明は、つまり今現在進行中の、そういう過程でもあるということで、その結果もまた時間の経過の中で見きわめてまいりたい、こう思います。  それはそれとしておいて、次へ具体的に進めたいと思います。  中東危機が起きてからペルシャ湾あるいはアラビア半島に展開しているアメリカ軍、この中には日本の基地から出動していった部隊があるはずでありますが、どういう部隊がどういう数量でというふうなことをひとつ示していただきたいと思います。
  61. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 私どもは全貌については承知しておりませんが、八月には第七艦隊の旗艦でございますブルーリッジが中東に派遣されております。それから、十一月には空母ミッドウェー、ミサイル巡洋艦バンカーヒル、駆逐艦オルデンドルフ、ファイフ、ミサイルフリゲート艦カークが中東に派遣される予定である旨発表されております。
  62. 高沢寅男

    ○高沢委員 沖縄にいた米海兵隊が出動していることは新聞の報道にも出ております。新聞の報道にも出ていることを北米局長は掌握していないのですか。沖縄からの海兵隊の出動とか、そういうふうなものは一体どういう実態であるか説明してもらいたいと思います。
  63. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生が御指摘のように、沖縄からの部隊の移動につきましていろいろ新聞報道がございますが、私ども詳細なことについては承知しておりません。
  64. 高沢寅男

    ○高沢委員 あなた、詳細な報道は承知していませんというのは、私は詳しく新聞を見ていませんと、こういう意味だ。新聞を見るんじゃないのです。北米局長、あなたはアメリカに対して、沖縄から一体どういう部隊が行っているのか、日本の基地からはどういう部隊が行ったのか、これを尋ねる立場じゃないですか。  外務大臣、いかがですか、私は新聞を詳しく見てません、こんな答弁で一体通りますか。
  65. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 念のために私が申し上げたことをもう一度繰り返させていただきます。  私は、先生が御指摘の沖縄からの部隊の移動等について新聞で報道されているのは承知していますけれども、詳細については存じませんということを申し上げたわけでございます。  これは先生、改めて申し上げる必要はないかと思いますけれども、米軍の日本の施設、区域からの他地域への移動というのはいろいろな形で従来からございまして、それは私どもが逐次連絡を受けることになっておりません。これは裏返して申し上げれば、安保条約及び地位協定上、米軍がそのような移動に関しまして逐次日本側に通報する義務を負っていないわけでございまして、私がそれを承知しないのは何だという御質問でございますけれども、残念ながら、従来から私どもは通報を受けない体制になっております。
  66. 高沢寅男

    ○高沢委員 通報を受けない、こういう体制になっています、これでは、この在日米軍は一体どういう行動をするのか、何かの事件が起きてやっとわかってくるというようなことになるんじゃないでしょうか。条約上そうなってないということを今北米局長言ったけれども、むしろこちらから、今のこの中東の情勢で日本にいる米軍は中東へどういうふうに出ていくのか、これを尋ねるのが私は外務省の立場じゃないのか、こう思うのであります。尋ねていけないということは条約上ないでしょう。尋ねたら北米局長、処罰されるということはないでしょう。尋ねるのが当然のその地位としての任務ではないのか、私はこう思うのでありますが、外務大臣、これはひとつ大臣から、こういう場合の日米安保の運用の問題として、アメリカから言われなきゃ何もわからぬということではなくて、こちらからこれはどうなんだということをアメリカに問い合わせる、当然の日本立場じゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。
  67. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 中東におきます米軍の展開の状況に関しますその詳細なことは別といたしまして、基本的な流れに関しましては、これは安保条約の運用ということを離れまして、米側から逐次説明を受けておりますけれども、あくまでもこれは基本的な流れについてでございます。先生が先ほど来繰り返し御質問の具体的な、その部隊が日本からどのような形で他の地域に移動していくかということは、繰り返しでございますけれども、これは米軍の運用にかかわる問題でございまして、従来から日本側が逐次通報を受ける体制になっていないわけでございまして、私どもはこのことが安保条約上基本的に問題があると考えておりません。
  68. 中山太郎

    中山国務大臣 この今回の米軍の移動につきましては、今北米局長申しましたように、米軍の運用上の問題でございますけれども基本的に考えまして、これが事前協議の対象になるかどうかということが問題点だろうと思います。今回の場合は、直接戦闘行動への発進または参加ということには当たっておりません。そういうことで、私どもが事前協議の対象として米国側にその条約上の義務を強制することはあり得ないと考えております。
  69. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、安保六条に基づく事前協議をこれで求めろと本当は言いたいところだ。言いたいところだが、あなた方はそれをやる気がないという前提に立って、しかし、それにしても日本から米軍がどういうふうに出ていったかということを尋ねて必要な情報は掌握しておく、そうでなければ、あなた、中東へこれだけアメリカ軍を出したんだ、日本は金を出せ、こう言われているわけでしょう。それで二十億ドル出すんでしょう。金は出す、しかしだれがどう行ったかわけがわからぬ、聞きもしない、こんなことは一体国民に対して通りますか。条約論じゃない、今日本国民の感情としてそんなことは許されない、通らない、こう思います。  大臣、今からでも遅くない。あなたは在日米軍に対して、今度の中東危機でアラビア半島へ展開したあるいはペルシャ湾へ展開したアメリカ軍の部隊は日本の基地からどういうものが出ていった、どれだけ出ていったということを尋ねるべきであります。尋ねますか。答えてください。
  70. 中山太郎

    中山国務大臣 今申し上げましたように、これは事前協議の対象でございませんから、私は外務大臣としてそのようなことを逐一協議をするということではございませんけれども、今、日本国民はこれで大変失望しているんじゃないかという委員御指摘でございますが、私は、むしろこの湾岸の危機が起こって一番被害を受けるのは日本だということを日本国民は十分知っており、そのいわゆるクウェート侵略を、国連決議に基づいてクウェート側から侵略はやめて引き揚げていくということのために、この国連の決議を受けた各国が、自分の国の考え方によってこの実効的な効果をねらって行動していることについては評価をしていると信じております。
  71. 高沢寅男

    ○高沢委員 余り人をばかにしちゃいかぬと私は思うのですよ。第六条の事前協議はやりません、やる気はない、だから聞きません、こう言われますが、安保第四条には随時協議があるじゃないですか。随時協議でなぜ聞かないのですか。これならば幾らでも聞けるんだ。事前協議までいかなくても、四条の随時協議で幾らでも聞ける。なぜ聞かないのですか。聞くべきです。今からでも遅くない。聞きますか、聞きませんか、どうですか。
  72. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 事前協議の点に関しましては、大臣が先ほど御答弁されたとおりでございまして、これはもう先生重々御承知なので私からあえて申し上げる必要はないと思いますけれども、念のため申し上げますと、六条の交換公文にかかわります事前協議の対象になっておりますのは戦闘作戦行動ということでございまして、これは直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動でございまして、今回のような一般的な部隊の移動は当然のことながら対象になっておりません。  次に、今先生御指摘の四条の随時協議についてでございますけれども、これは先ほど来私が申し上げておりますように、個々の部隊の日本からの移動に関しまして、これは従来からもいろいろな形で行われていることでございまして、一々米側に照会し、それを掌握している必要はないと私どもは考えております。
  73. 高沢寅男

    ○高沢委員 掌握している必要がない、この言葉。この言葉ですよ。掌握していないために一体何が起きるか。何か事態が起きたときに、いやあ掌握しておりませんでしたということで一体通るのかということです。私は、日米安保条約、盛んに政府はイコールパートナーだ、日米はイコールパートナーだ、対等でございます、こう言われるのですが、在日米軍ほどこへ行くか、何をしているか聞くこともしない、聞くこともできない、向こうから何か言ってきたら、承りました、これで一体どこがイコールですか、どこが対等ですか。こんな安保条約というもので、まあ今までやってきたんで、えらいことをしてきたものだと思いますが、この中東危機に際してこういう安保条約のあり方ではいかぬということはますます明らかになってきた、こう私は思います。  従来、核については事前協議は我が方からも事前協議を提起すべきだということを繰り返し言ってまいりました。過去において愛知外務大臣とか大平外務大臣などはこちらからも事前協議の提起はできると言ったこともあるのですが、一向していない。つまり、それは全く自主性がない、やる気がないということのあらわれじゃないですか。事前協議でも、こちらから必要があれば事前協議をやろうよということをアメリカに言うべきです。まして四条の随時協議があるんですから、日米安保条約の運用についてはいつでも随時協議できる、こういうことになっているんだ。それでもってかけて、そして中東へどの部隊が行きましたかということぐらいは尋ねて掌握しておくというのが、日本政府国民の平和と安全を預かる責任じゃないですか。その責任を全くやっていない。やる気もない。  委員長、これでいいんですか。これで、これ以上私は質問を続けていいんですか。どうでしょう。はっきりとした答えしてくださいよ。——大臣大臣から答えてください。今のはもう極度には政治判断の問題ですよ。この局長じゃとても話にならぬ。
  74. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先ほど来繰り返し申し上げておりますけれども、この安保条約には安保条約としてのきちんとした枠組みがございまして、先生が先ほど来御指摘の四条の随時協議も六条にかかわる交換公文に基づきます事前協議もしかりでございまして、まさにこの事前協議というのは米軍の行動に一定の制約を加えることを目的として設けられたきちんとしたものでございますので、これはきちんと私ども運用してまいりましたし、これからもしていきたいと思います。これに関しましては、昭和六十三年二月二日に斉藤条約局長から全般的なことを御答弁しておりますので、ここでは繰り返しません。  今回の中東危機との関係で申し上げれば、安保条約の運用ということを離れまして、重要なことは、まさに先生も先ほど来御指摘でございますけれども中東の情勢が今後どう動いていくのかということでございまして、その関連で多国籍軍がどういう展開をしているかということでございまして、この基本的な流れに関しましては、先ほど来私が申し上げましたように、この安保条約の運用ということを離れまして、私どもは米側からきちんとブリーフを受けておりまして、その限りにおいて私どもは、中東情勢のことに関します国民のまさに一番大きな関心の対象でございます中東情勢に関する軍事問題に関しましては、きちんと米側からも情報の提供を受け、フォローしてきておるつもりでございます。  それから繰り返しですが、安保条約は安保条約としての基本的な枠組みがございますので、それは基本的な枠組みに従って運用していくということが重要であると考えます。
  75. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣に、今から米軍のその動きを聞くかどうか答えてもらいたい。
  76. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほど委員から、こんな安保条約なんというものは要らないというような御趣旨の御発言ございましたが、私は大変……(高沢委員「そんなことは言いません」と呼ぶ)いや、先ほどおっしゃいました、私聞いておりました。私は、政党のお立場としてそういうお立場をお持ちのことはよく存じておりますけれども、もしこの日本が、この安全保障条約がなかった場合に、他国から侵略された場合には一体どうなるのかということを、やはりこの機会に国民というものはもう一度考えてみる必要があるんじゃないか。クウェートに侵略したこのイラク軍の状況を考えると、いわゆる国連決議が出るまでにどのようなことが一体処置できるのか、私どもはやはりこのようなことを真剣にここで改めて考えておく必要があろうかと考えております。  私は、このような中で、私どももそれは米国とは意見を十分交換しておりますけれども、一々一々私自身がその部隊がどうなるというようなことをこの条約上の規定に基づいて突っ込んで聞くというような事態、また戦争状態に入っておりません。そこにこの問題の基本があることを御理解いただきたいと思います。
  77. 高沢寅男

    ○高沢委員 安保条約に対する政府・自民党と我々との立場の違いはもう言う必要がない。ただ、仮に私が自民党の外務大臣で、あなたの立場に仮に私がいれば、私は、この安保条約を前提としながら、米軍に対して、この中東危機に日本から、基地から出ていったアメリカの部隊はどういう部隊ですか、どういう軍艦ですか、どのぐらいの部隊が出ましたか、そのことは、日本における駐留米軍のとにかく金を持てと今アメリカは言ってきているんだから、日本における駐留米軍のその数にどういうふうな増減がありましたかと、私が外務大臣なら尋ねますよ。それこそアマコスト大使でもいい、アメリカの国防長官でもいい、尋ねますよ。  あなたは、しかし今、尋ねる必要はない、尋ねる考えはないというお答えで、これでは日本国民の負託にこたえる政府外務大臣とはとても言えないということを私はさっきから言っているのです。今からでも聞きますか、それだけ答えてください。安保がどうこうの議論はもういいよ。私も、安保があって、自民党政府外務大臣で私があれば私は聞くと、こう言っておるのです。あなたは聞きますか。
  78. 中山太郎

    中山国務大臣 これからの中東情勢の変動がどうなっていくのか、そういう過程において、米国とは密接に連絡をすることは当然のことであります。
  79. 高沢寅男

    ○高沢委員 まあとにかく、はぐらかしで逃げようという、そういう魂胆がありありですが、歴代自民党政府で米軍との関係でそういう運営がなされているということはきょうはしなくも明らかになりました。私は、これは将来にわたって大きな禍根を残すということになるんじゃないかと思いますが、総理大臣、この一方通行、向こうから言ってきたらお聞きします、こちらからお聞きすることはしません、この運営、総理大臣、あなたどうお考えですか、これでいいと思いますか、大臣のお考えを聞きます。
  80. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、基本的な問題については常に連絡をしながら、話し合いをしながらしておるわけでありますけれども、事は信頼関係の上に立って、その必要も認めて、安保条約の枠組みの中でこれが円滑に運用できるように外務省は適切に対応しておると私は思っております。
  81. 高沢寅男

    ○高沢委員 まあ、どうやらのれんに腕押しの状況になってきました。また少し前へ進まぬと、事柄、あれしませんから、次へ進みます。これは私の見解として申し上げておきます。  日米安保条約第六条、極東の平和と安全と書いてありますが、しかし、ここ十数年極東の問題で安保条約のあれが浮かび上がったことはないです。中東危機、前回、このときもアメリカ軍はスイングと称している。スイングというのは時計の振り子がこう揺れることでしょうね。そしてアジア・太平洋にある第七艦隊を初めとする米軍を、主力を中東へ移しました。そのときに何と言ったか。アジア・太平洋、空っぽになった、空っぽになったところは日本が埋めろという話が出てきて、例の一千海里シーレーン防衛ということを日本は出したんじゃないでしょうか。私は、このときに日本の軍事大国化というものは一つの段階を越した、こう思います。  今度の中東危機では自衛隊を出せというのでしょう。そしてまた、こっちも出しましょう。これはもう一千海里シーレーンなんてものじゃない。自衛隊を、インド洋を通ってペルシャ湾、アラビア半島まで出すという段階になってくれば、日本の軍事大国化はもう一つまた大きな段階を越えるということになるわけで、今アジア諸国がこの平和協力法案の成り行きに非常に強い警戒心と批判を持っておることはそのことから来ていると私は思うわけです。  今まで、総理大臣外務大臣、アジアへ行って、事あるごとに、軍事大国になりません、専守防衛でいきます、御安心ください、さんざんそう言ってきた。しかし、今や完全にその話は二枚舌になった。いよいよ自衛隊は出ていきます、専守防衛をもう乗り越えます、こうなってきているということを、私は、総理外務大臣から、そういう今の我が国の軍事大国化のこの段階を、あなた方みずからどう考えているかということをひとつ、評価をお聞きしたいと思います。いかがですか。
  82. 中山太郎

    中山国務大臣 先生も私も同じような世代に生きてきた人間でございます。そして、あの戦争で大変激しい苦難の生活を強いられてきた私どもが、今日政治の責任のある立場に立って、この国民のこれからのあり方、また東南アジア、この地域国々の方々の不安、こういうものをどのように解消し、我々がアジアの一国として協力をしながらやっていくかということは、私は今まで機会あるごとに主張してきましたが、今回の国連平和協力法案なるものの中に、私ども憲法の原則である武力の威嚇または武力の行使は行わないという原則と、国連決議というものがなければ絶対に動かさない、さらにまた国連平和協力会議、また閣議というものの歯どめをきちっとかけてあるということさえ御理解いただければ、軍事大国化になるという不安は私は解消されるものと信じております。
  83. 高沢寅男

    ○高沢委員 少し具体論でいきましょう。  平和協力隊の輸送業務、ありますね。具体論になります。この輸送業務で、武器、弾薬、燃料など、直接戦争にかかわる場合以外は運ぶ、こうなっているわけです。  さて、今、中東情勢は直接撃ち合いをしている状態じゃないですから、したがって今の状態で運ぶということは、直接戦闘にかかわるということにはならぬわけです。だから、運ぶとした場合、そのアメリカの武器弾薬を日本の船で輸送する、補給艦ですね、その積み込んでいく場所はどこですか。沖縄ですか、ハワイですか、横須賀ですか、佐世保ですか、これはどこから積み込むのでしょう。
  84. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 これは、繰り返しになりますけれども、現在のところまだ法案も成立してない状況でございますが、法案上は、十七条の実施計画を作成する際に、必要あるいは要請を勘案いたしまして、どこからどこへ何を積んでいくかということを検討する、そして適当と認める場合には平和協力会議の諮問を経て閣議決定して実施するということになるわけでございますが、現在のところどこからどこへというような具体的な案件はございません。
  85. 高沢寅男

    ○高沢委員 終始一貫この答弁ですね。そして、いよいよ法案成立の暁は、今度は実施計画で、どこからでもやります、どこへでも行きますということになるんじゃないかと思わざるを得ないです。  そこで、じゃ具体論で聞きましょう。  あの八百台の四輪駆動車を運びましたね。これは、今アラビア半島のアメリカ軍が使っています。この四輪駆動車はどこから出ましたか、それでどこへ到着しましたか、それを聞かせてください。
  86. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ただいま先生御指摘の四輪駆動車につきましては、名古屋港を出まして、サウジアラビアのダンマム港に陸揚げをされております。
  87. 高沢寅男

    ○高沢委員 ちゃんと実体があらわれているじゃないですか。名古屋港から出ました、サウジアラビアのダンマム港へ入りました。恐らくこの法案が成立した後の米軍の武器の輸送もそういうルートを通ることは間違いない。ただ、それは名古屋港が佐世保になるかもしれない、名古屋港が沖縄になるかもしれない、こういう程度でしょう。新聞報道によれば、政府高官はこう言っておる、バーレーンへ入るんだということも言っています。そういうことも想定されているのかどうか。いかがですか。
  88. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほどの繰り返しになりますけれども、この法案上は特に特定の場所を想定しておるものではございません。政府高官がそのような発言をしたという新聞報道は私も拝見いたしましたけれども、そのような具体的なことを何らか想定したということはございません。
  89. 高沢寅男

    ○高沢委員 先週の委員会外務大臣はこう答弁されている。これははっきりしておる。つまり、武器、弾薬、燃料などを日本の自衛隊の補給艦で運ぶと言われた。どこへ運ぶと言ったら、あのときはペルシャ湾の、アメリカやイギリスやフランスの軍艦がいる、そこへ届ける、これは外務大臣はっきり言われたので、そのことは大臣、間違いありませんね。
  90. 中山太郎

    中山国務大臣 この法案が成立をいたしまして実施計画が検討され、その中の計画の一つとしてそのようなことが議論をされる、あるいは決められるというような場合の例を想定して挙げたわけであります。
  91. 高沢寅男

    ○高沢委員 やはりちゃんと、語るに落ちるというやつで、そういうことでもって、この法案ができれば運んでいく先はペルシャ湾になる、アラビア半島になるということをちゃんと示しているものだと私は理解します。
  92. 中山太郎

    中山国務大臣 私は今も申し上げましたように一つのケースとして申し上げておるのでございまして、そのほかには、この法案の中に、例えば考えられることは、カンボジアの和平成立後の問題とか、いろいろな地域紛争についてこれからこの法案に基づいて平和協力会議あるいは閣議で議論をした上で方針が決められて動かされるわけでございまして、限定したことを申し上げているわけでは決してございません。
  93. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は何もカンボジアで聞いているんじゃないのであって、カンボジアのときは今度はカンボジアで、それこそコンポンスプへ入るとかいろいろ入り方がある。今言っているのは中東の問題を前提にして聞いているのであって、そうするとペルシャ湾とか今言ったサウジアラビアのダンマム、それからバーレーン等々へ結局入るようになるだろう。中東を前提にすれば当然そうなる。それ以外に行き場がないでしょう。日本から運んでいって、じゃそういうところへ行かないといったらインド洋の途中で捨ててくるんですか。積んでいったのをどこへおろすんですか。  私は、こう考えたらもう明らかにアラビア半島でありペルシャ湾であるということになろうと思いますが、そう理解して、さて、そのペルシャ湾には、これはイラクに対する経済制裁、そこであそこを通る船をこれは臨検しなければいかぬということで、アメリカの軍艦もイギリスもフランスも、私の承知する限りソ連の軍艦もいますね。すると、このソ連から要請を受けたら、我が平和協力隊はそういう運んでいった物資をソ連の軍艦にも出すんですか、補給するんですか。いかがですか。
  94. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 どの国にそういう補給をするかあるいは輸送を行うかということは、結局はその実施計画で決定するということでございますので、今あらかじめどこに出すということはございません。ただ、この法案上、どこの国というような限定があるわけではございません。また、要請がありました場合に必ずこれに応ずるということではございませんで、この法案上の定められた手続に従って、我が国が自主的に決めて協力を行うという関係でございます。
  95. 高沢寅男

    ○高沢委員 要するに実施計画というのは、これはもう盾で、国会審議の過程はすべてこれでしのいでおいて、さっきも言いました、いざ成立したらこっちのやりたいほうだいということになる。そうじゃないですか。大臣はそうじゃないと言っておられるけれども、しかしその実施計画は平和協力会議で決めるのでしょう。その平和協力会議で決めて実施するというときに、じゃその決めた結果を国会承認求めますか。いかがですか。その平和協力会議で決めたらもう後はどんどんやるんだ、国会の承認などは求める必要はない。私は、国会承認を求めるかどうか、これはまさに日本の議会制民主主義の根幹の問題です。これはいかがでしょうか。
  96. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案上の手続といたしましては、平和協力会議に諮問をいたしまして閣議決定を行うということでございます。また、御承知のとおりこの法案は、武力の行使をしない、武力による威嚇を行わないという基本原則のもとで、この三条二号に掲げられております平和協力業務を行うことになっているわけでございます。このようなことで私どもといたしましては十分な手続であると考えておりまして、この法案上、国会の承認をいただくということは考えておらない次第でございます。
  97. 高沢寅男

    ○高沢委員 これほど重大な問題を国会承認をいただくことは考えておりません、これ、一官僚の言葉ですよ。私は、ああいう外務省なんかの役人の人を官僚などという呼び方は余り好きじゃない。好きじゃないけれども、この場所ではそう言わなければいかぬな。一官僚が国会承認を求める考えはありません、必要ありません、こういうことがこの開会で、そういう答弁がまかり通る。一体これをどう私たちは考えたらいいんでしょう。それはもう議会制民主主義のあり方の問題ですよ。皆さんはそんなことはないと言うけれども、我々は、また国民の多くは、この平和協力会議で実施計画が決められて、そして自衛隊を含む平和協力隊が出ていく、戦争になるんじゃないか、多くの人はそこに重大な危惧を抱いている。その計画を、国会承認を求めません、求める考えもありません、閣議で決めればそれでやります。しかも、この会議に参加する各閣僚は守秘義務があるというのですから、ますます国会に対してこれを秘密にしてやってしまう。こういうあり方でいいと思いますか。これは三木総理大臣の弟子である、三木さんの弟子である海部総理、あなたから答えてください、これでいいのか。
  98. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何度も申し上げるようですが、これはいわゆる自衛隊を自衛隊として、戦闘部隊として治安出動さしたり防衛出動させるという考え方とまるっきり違うわけでありますから、防衛出動するときなんかはこれは国会承認を求めることに自衛隊法でなっておるわけですけれども、自衛隊の一部を平和協力隊の業務に参加させて、それで平和協力隊の業務の適当だと思ったものに対して参加するわけでありますから、武力行使もしませんし、戦闘兵器も持っておらないし、全然違うわけでありますので、それでもその地域の状況とかそのときの国際情勢とか、あるいはこれができるにふさわしいかふさわしくないか、二重三重によく判断をして、慎重にそのときには対処をする、こう申しておりますので、それは質が違う問題だということもどうぞおわかりをいただきたい、こう思います。
  99. 高沢寅男

    ○高沢委員 もう午前中の時間も余りありませんので、ここで一つお尋ねしておきたい。  アメリカから要請された武器弾薬を運ぶというときに、その武器弾薬の中に核兵器があるのかないのか。先週の御質問では、日本が自主的にチェックします。これは岡田さんの質問に対して、自主的にチェックします、こう言われた。核兵器のあるなしは、あるいは化学兵器のあるなしはチェックします。どういうチェックをしますか。
  100. 中山太郎

    中山国務大臣 御案内のように、核物質には特殊なデザインのマークが必ずついております。そういうことで、私どもはこの核物質というものについては、非核三原則を原則にしている国家でございますから、そのようなことを考えることもありませんし、そういうことはいたしません。
  101. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、その印がついているなんということは信頼しない。アメリカは核兵器があるかないかは言わないという大原則を持っているのですよ。あるかないか言わない。あるかないか言わないアメリカが、日本に運んでもらうあの中に印をつけておくと言ったって、私は、むしろ放射能測定器でこうやってちゃんと調べるとかいうようなやり方で初めて放射能はない、こうなったとき日本が自主的にチェックしてその心配はないということが確認される、こういうことをやって初めて自主的なチェックですよ、やりますか。
  102. 中山太郎

    中山国務大臣 委員もよく御存じだと思います。私は、放射能を出すようないわゆる貨物というものは、その積む船も危険でございますけれども、そこへ運んでくる人たちがさらに危険だと思います。そういうことで、私ども先ほどから申し上げておりますように、そのようなものは一切運ばないということをこの委員会で私が責任を持って申し上げているわけでございます。
  103. 高沢寅男

    ○高沢委員 あなたが責任持ってと言ったって、ちっともそんなことは信頼できない。大体、アメリカの軍隊はしょっちゅう、軍艦は核兵器を積んでいつでも航行しているのですよ。核兵器と一緒に軍艦の中で寝て暮らしているのですよ。彼らはそんな危険性なんてちっとも考えないということですよ。そういう考えで、さあ日本もこれを運んでくれということになる可能性は私は大いにある、こう思うのですよ。そういう心配はないと言われるけれども、心配のない保証は全くないです。そのときにどうやってチェックするのですか。もう一度言います。あなたが心配ないという答えじゃ答えにならない。どうやってチェックするかということを聞いているのですよ。
  104. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生の御質問の前提に、関係国が日本に核兵器の輸送を依頼してくるはずであるという前提がおありかと思いますけれども、まず、非核三原則を国是としておりまして、核に関しまして日本国民が特殊な感情を有しているということはアメリカを初め各国が非常によく承知しておりまして、アメリカを初め各国日本に対しまして核兵器の輸送を依頼してくるということは、私は全く考えられないと考えております。
  105. 高沢寅男

    ○高沢委員 北米局長は考えられないなんて言ったって、そんなことは信頼できません。だって、現にアメリカ側には、日本への寄港はもういいという話がついているんだということがアメリカ側の前提にあって、現実に、横須賀や佐世保へ出入りするアメリカの潜水艦などは持って入ってきて、また持って出ていくということが現にあるということは、政府はそれを公式には認めないけれども、これはもうほとんど日本国民は皆そういうことが実態だろうと見ているわけですよ。したがって、日本が非核三原則を持っていることを知っているからそういうものはアメリカは日本に輸送を頼むはずがない、そんなはずがないなんてことは私はとてもいただくことはできない。やはりきちんと日本が自主的にチェックするということがあって初めて、ない、それなら運びましょうと言うことができるわけであって、そのチェックのやり方をさっきから聞いているんです。チェックをするかどうかを聞いているんです。はずがないを聞いているんじゃないのですよ。どうしますか。
  106. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生の御質問の前提に事前協議の対象でございます核の持ち込みの中に寄港が入っているということは、先生重々御承知だと思いますけれども、必ずしもそこの点に関しまして、もし万が一誤解もあるといけませんので念のために申し上げておきたいと思いますけれども、核の持ち込みの中に寄港が入っているということは従来から日米間に了解の違いはございません。したがいまして、先生が疑いの念を持っておられるような事態は私どもはないと確信しておりまして、具体的に申し上げれば、核の持ち込みの事前協議が行われない以上、米国による核の持ち込みがないことにつきまして私どもは寸毫の疑いも持っておりません。  こういうことを前提にいたしまして、私先ほど申し上げましたように、アメリカが日本に対しましてこのような核兵器の輸送を依頼してくるということはまず考えられないというふうに思っておりますので、繰り返しではございますけれども、改めて申し上げたいと思います。
  107. 高沢寅男

    ○高沢委員 それではもう少し具体的に。その米軍の武器弾薬をグアム島の基地から積む、あるいはフィリピンのスビック湾、あそこの基地から積む、そして中東へ持っていく、この中に核がある、アメリカに言わせれば、それは日本を通らないから持ち込みじゃございません。それは、アメリカは日本に対して持ち込みじゃございませんと言う立場にありますね。そのときに、そういう持ち込みでないということでもって、米軍の核兵器をグアム島から中東へ運ぶ、日本の補給船がやる、こういうことがあっていいかといったら、それはいかぬでしょう。いかぬから、ではどうやってそうでないことをチェックするかということを聞いているのです。どうやってチェックする、それを答えてくださいよ。はずがない、はずがないじゃ答えにならぬ。大臣、いかがですか。
  108. 中山太郎

    中山国務大臣 この法案が成立しまして、いろいろとこの実施計画等がいろいろな事態に対処して考えられるわけでございますが、私が先ほどからも申し上げておりますように、日本国はそのようなことはやらないということを申し上げておるわけであります。
  109. 高沢寅男

    ○高沢委員 まあ何といいますか、ある人が、私は泥棒はやりません、こう言っておいて、しかし、後で見たらやっていたというケースもあるんですよね。そうでしょう。だからこの世の中には犯罪者、おれは泥棒をやると堂々と言ってやる人は余りいない。やらないと言ってやるのが犯罪者の一つの姿じゃないか。今あなたの言われた、日本はやらない、これでは私は答えにならぬと思う。検証は、ではできないのですか。やる気になってもできないということですか。正直に答えてください。
  110. 中山太郎

    中山国務大臣 私はやらないということを明確に申し上げておりますが、議員が社会党を代表してのこうして御質問をいただいているわけでございまして、ガイガーカウンターで調べる気はないのかと。それぐらいのことならいつでもできることでございます。
  111. 高沢寅男

    ○高沢委員 いつでもできることというお答えですから、それは、ではやってもらいたい。やりますね。いかがですか。ただ笑ってうなずくのじゃなくて、やってもらいたい。言ってください。言葉として言ってください。
  112. 中山太郎

    中山国務大臣 その必要があればガイガーカウンターで検査もすることができます。
  113. 高沢寅男

    ○高沢委員 質問持ち時間が終了したという紙が来ましたので、じゃ午前中はこれで終わりまして、また午後続いて質問したいと思います。
  114. 加藤紘一

    加藤委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時八分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  115. 西田司

    ○西田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。高沢寅男君。
  116. 高沢寅男

    ○高沢委員 午前中に引き続きましてまた幾つかの点でお尋ねしたいと思いますが、今度は大蔵大臣あるいは外務大臣にひとつお願いしたいと思います。  大蔵大臣、問題の多国籍軍協力の十億ドルですけれども、先日のお答えではそれは今年度の予備費で支出する、こういうふうなお話があったと理解しておりますが、その次のまた十億ドルがありますね。この次の十億ドルというのは、支出の場合は来年度予算で出されるのか、その辺のところはどういう扱いになるか、お尋ねしたいと思います。
  117. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員が御指摘になりました八月三十日に発表いたしました十億ドルの協力につきましては、若干部分を既定予算から支出をいたしておりますが、その大半は九月二十一日の閣議におきまして予備費使用の決定を行ったわけであります。そして、九月二十五日にこの十億ドルの中から所要の金額が湾岸平和基金に拠出済みであります。  また、九月十四日、さきの十億ドルに加えまして、今後の中東情勢の推移等を見守りながら、新たに十億ドルを上限として追加的に協力を行う用意がある旨を公表をいたしました。しかし、この財源につきましては、直ちに追加の協力を行うというだけの予備費には余裕はもちろんないわけでありますし、これから先の中東情勢の推移を見ながら、財源事情を見きわめた上で対応していきたいということにいたしております。
  118. 高沢寅男

    ○高沢委員 今お話しの最初の十億ドルですね。これもそういうふうな、これは予備費から支出するということは決められたけれども、まだ十億ドル全額の支出をしたわけじゃないので、まだこれからもそれぞれの状況に応じて支出していく、こういうことでよろしいですか。     〔西田委員長代理退席、委員長着席〕
  119. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 この予備費の内容は、輸送協力といたしまして政府が民間航空機や船舶を借り上げて輸送協力を行うための経費として百十八億円、また百名を目途に医療団を緊急に派遣する態勢を整備するための経費として九億円、物資協力及び資金協力、これが今委員御指摘になりました湾岸平和基金に対する拠出金に当たるものでありまして、これが千二百二十九億円になっております。さらにこのほか医療団の人件費などとして既定予算から支出をいたしますものが十四億円、計一千三百七十億円、十億ドルということでございます。  この中で、これは後、外務省の方からお答えをいただく方が正確かと思いますけれども、湾岸平和基金への拠出金は既に拠出をされておるはずでありますし、外務省の手元に残されて外務省として使用される部分についての詳細は外務省の方からお答えをいただきたいと思います。
  120. 高沢寅男

    ○高沢委員 例の四輪駆動車八百台、ああいうふうなものの費用もこの中から落としている、こういうふうに理解してよろしいですか。
  121. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの四輪駆動車でございますが、これはただいま大蔵大臣から御答弁のございましたもののうち、いわゆる物資協力に当たるものでございますので、この湾岸平和基金に拠出いたしました千二百二十九億円のうちからこれを調達をするということでございます。
  122. 高沢寅男

    ○高沢委員 この湾岸平和基金に出した場合、湾岸平和基金と我が国との間に何らかの協定がきっとあったと思いますが、そういう協定があったのかどうか、あったとすればどういう内容の協定を結ばれているか、それをお尋ねしたいと思います。
  123. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 この湾岸平和基金に関しましては、我が国と湾岸アラブ諸国協力理事会、いわゆるGCCとの間で交換公文を締結いたしております。  この交換公文の主たる内容を申し上げますと、第一に、湾岸の平和と安定の回復のため国連安全保障理事会の関連諸決議に従って活動している各国を支援するため、理事会に湾岸平和基金という名称の特別基金を設けるということ。第二に、日本政府日本国の関係法令に従ってこの基金に対し千二百二十八億八千万円の資金を拠出するということ。この資金がいわゆる資金協力及び資機材の調達、輸送及び据えつけに係る協力に使用されるということ。それから第三に、基金の運用に責任を有する機関として運営委員会が設置され、これは日本政府及び理事会のそれぞれの代表から構成されるということ。それで委員会日本政府拠出金が先ほど申し上げた使途に使用されるように確保するということ。最後に、日本政府がこの拠出金の使用につき委員会の決定する適当な経路で通報を受けるということを規定いたしております。
  124. 高沢寅男

    ○高沢委員 一つは、今の御説明の交換公文ですね、これは私も資料でいただきたいので、そのことはひとつ委員長、お取り計らいをお願いしたいと思います。今の交換公文、資料でいただきたいと思います。
  125. 加藤紘一

    加藤委員長 はい、その取り計らいをいたします。
  126. 高沢寅男

    ○高沢委員 それで、あと運営委員会ですね、その運営委員会を構成している国あるいは人というふうなものをここで聞かしてもらえますか。
  127. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 運営委員会は、先ほど申し上げましたように日本政府及び理事会のそれぞれの代表から構成されております。日本側代表は在サウジアラビア王国日本国大使、理事会側代表は理事会の事務局長でございます。理事会は御承知のように湾岸六カ国で構成されておるわけでございますが、この事務局長がその六カ国を代表する形でこの運営委員会のメンバーとなっておるということでございます。
  128. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうすると、その理事会を通じて各国へ配分されますね。その配分された、どの国へは幾ら、どの国へは幾ら、こうなると思いますが、その中で医療関係ではこうだとか、物資の協力ではこうだとかというふうなことがだんだん実際の使途の中で決まっていくわけですか。それはさっき報告を受ける、こう言われましたけれども、やはり一定の時間の区切りで我が国に対してその使途の内訳については報告がある、こう理解してよろしいですね。
  129. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 一つ、事実関係でございますが、ただいまの御質問の中で医療協力とおっしゃったかと思いますけれども、医療協力、それからいわゆる日本政府が民間の船舶、航空機を借り上げて行います輸送協力、この二つは湾岸平和基金とは全く別の話でございまして、日本政府自身がその資金の執行をいたしておるわけでございます。  それから、この湾岸平和基金に対する日本拠出金につきましては、これの使途について報告があるかという御質問かと思いますが、まず最初に申し上げますことは、運営委員会がこの基金の運用に責任を持っております。この運営委員会には、日本政府代表として先ほど申し上げた在サウジアラビア王国日本国大使が参加をいたしております。したがいまして、この日本政府代表を通じまして日本政府の意向というものがこの資金の使途に反映されるということがまずございます。  それから、その資金の使途についての報告、あるいはこの交換公文で申しますと通報でございますけれども、これは資金協力と物資協力両方ございますが、資金協力については、この資金各国に供与された後に我が方に通報がございまして、それからその後資金各国により使用された後にまた我が方に通報が行われることになっております。  それから、いわゆる物資協力につきましては、これは物資の調達等をいたすわけでございますが、その契約が結ばれた後、それからその後拠出金がその契約に従って使用された後に我が方に対して通報が行われることになっております。
  130. 高沢寅男

    ○高沢委員 今の御説明で大体この仕組みはわかりましたが、最初の十億ドルで今御説明がありましたが、次の十億ドルを出す場合、あるいはまた湾岸紛争周辺諸国には別に二十億ドルというのもありますが、そういうものも皆大体同じ仕組みで同じように平和基金へ行って、そこでこういう使い道が決められる、こういうふうに理解していいですか。
  131. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 追加の十億ドルを負担をいたします段階におきまして、この多国籍軍に対する資金協力の使途はおおむね当初の十億ドルと同等のものとお考えいただいてよろしいかと思います。  しかし、その二十億ドルの経済援助の方は全く違った話でありまして、これは、経済困難に直面しております周辺諸国の緊急のニーズにこたえるという目的から、各国の事情に応じ、また国際協調のもとで円借款、無償資金協力、技術協力などを組み合わせて実施をすることとしておるわけであります。この二十億ドル程度の経済協力の大半を占めますのは円借款でありまして、これは本年度及び来年度以降の海外経済協力基金の事業予算の中から捻出をしていくことになります。そのほかの無償資金協力などにつきましては、一般会計の既定の予算などにより対応していくことになるものと考えております。
  132. 高沢寅男

    ○高沢委員 すると、最初の十億ドル、次の十億ドル、つまりそれは多国籍軍に対する協力、これはもう上げてしまう金、やってしまう金、こう理解していいですね。それで別途の、周辺の国に対する経済的援助等の二十億ドルは、これは上げる金もあれば貸し付けて返済してもらう、円借款というお言葉ありましたがそういう金額も含む、こう理解していいわけですか。
  133. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 上げてしまうという言い方が適切なのかどうか、日本政府の代表者も加わる湾岸平和基金へ拠出をいたす、これは資金協力の部分としてそのとおりであります。またその場合に、その十億ドルのうち外務本省として手持ちをされるものがあるのかどうか、これは今後の情勢の推移によって決まることでありましょう。資金協力の方は、要するに足の速いお金が必要だという実態もありまして、今回、緊急商品借款を中心にしてこうした問題に対応しておることは事実であります。
  134. 高沢寅男

    ○高沢委員 これは今度は全く政治論になりますが、きょう冒頭でお尋ねしたように、平和的解決の道が実際に軌道に乗って、平和的解決がこの年内なりあるいは来年の一、二月ごろにはできた、こういう前提に立ったら、次の十億ドルは出さなくて済むようになるのか、キャンセルになるのかどうか、この辺はいかがですか。
  135. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 こうした性格の予算、言いかえれば、地球上のどこかに平和状態が破壊をされた状態が存在し、その平和を回復するために必要とする経費といった種類のものは、本来なら全くなくて済む状態が一番望ましいわけであります。その限りにおきまして、今委員がお述べになりましたように、今後極めて短期間の間に湾岸における平和が回復され、問題がなくなったという時点になりましたならば、この多国籍軍支援のための協力というものは、それは必要性がなくなるかもしれません。しかし、その間におきます原油価格の高騰といった事態で、原油を産出しない中低所得国の中には相当な経済影響を既にこうむっておる国はあるわけであります。こうしたことを考えますと、周辺国支援を中心とする日本政府協力というものは、そうした場合におきましてもなお必要性が大きくなる可能性はございますけれども、これが必要にならなくなるという事態は残念ながら私としては想定できません。
  136. 高沢寅男

    ○高沢委員 今大蔵大臣の言われることは理解できます。しかし、そのことは要するに、多国籍軍へ出すはずであった十億ドルは、そういう場合には今度は湾岸諸国の経済的な復興とか経済的な危機回復のためにいわば振り向けられる、こういうふうに今の御説明は私理解しましたが、そういうことでしょうか。
  137. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 お金に色がついておらないという意味からいえば、今委員が御指摘になりましたような言い方もあるいはできるのかもしれません。しかし、やはりおのずから、その資金の使途というものは全く態様を異にするものでありまして、その目的に応じた予算の使い方がされるもの、私はそう思います。
  138. 高沢寅男

    ○高沢委員 つまり、この十億ドルの支出の中には多国籍軍のために出す、そういうものも当然あるわけですね。そういうものが、いよいよ停戦になった、平和が回復したとなればこれは必要がなくなる。そのときはその支出はなくなるが、しかし、そういうふうな予定した金は今度は経済復興の方へ回るということだと私は理解したわけですが、もう一度、そういうふうに理解していいですか。
  139. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは率直に申し上げまして、今御議論をいただきまして私が的確なお答えのできる状況ではございません。と申しますのは、九月に行われましたIMF・世銀総会の直前のG7におきましても、この中東情勢の激変の中で、周辺国を含めた中低所得国に対する原油価格の高騰が抱える経済的な影響というものにつきましては、的確な数字を組み立てることができなかったわけであります。そして、その後におきましても、各国お互いに非常に苦労をしながらその見通しをつけるべく努力をいたしておりますが、相当な幅のある見通ししか今日立っておりません。そうなりますと、この湾岸の情勢が平常に復する復しないにかかわらず、この原油価格の高騰による世界的な経済影響というものは現に存在し、またその影響は平和が回復した後にもしばらく残る可能性を持っておるわけでありまして、この金額が現時点においては定かではないわけであります。  この二十億ドルというものが、非常に下賤な言い方でありますけれども、使い残りが出るような状態になればこれは非常にありがたいことでありますけれども、仮に、その状況によりましては、この十億ドルの多国籍軍に対する資金協力というものを、委員のお言葉をそのままにかりれば、振りかえたとして、それでなおかつ足りないというような状態も想定できないわけではありません。そうなりますと、この部分について、多国籍軍に対する資金協力の拠出の部分、また周辺国を含む中低所得国に対する経済支援の部分、これは全く別の問題としてお考えをいただく方がより正確ではなかろうかと思います。
  140. 高沢寅男

    ○高沢委員 今のその多国籍軍への協力ということに関連するわけですが、この法律案で言えば三条二号のイ、ロ、ハ、ニとあるニの「物資協力」、ここのところはまあいわばそれに該当する、こう見ていいわけですね。  それから、これに関連して三十一条。三十条にも「物資協力」はありますね。それから、三十一条の「民間の協力等」というところで、「又は物資協力を実施するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長の協力を得て、物品の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供について国以外の者に協力を求めることができる。」ここの三十一条は要するに民間に対してそういう物資を言うならば売ってもらうというふうなことで、その売ってもらった物資を多国籍軍に対する協力物資に充てていく、こういうことではないかと思うのですが、そういうふうに理解してよろしいですか。
  141. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま行っております中東貢献策はもとよりこの法律のできる前でございますが、この法案で考えておりますいわゆる物資協力と申しますのは、物資の形で政府が提供する協力であるということでございます。この法案では、資金協力の形での協力は対象外としております。
  142. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうすると、じゃ、このことを一つ聞きたいと思います。  アメリカから頼まれて武器弾薬を日本の補給船で運ぶ。この運ぶこと自体は一つのサービスですね。これは便宜供与ということになろうかと思いますが、そういうふうな活動を我が国がする場合、これは今言った十億ドルだとか二十億ドルと言っている、そういう協力の内訳に入るのか、それは全然別枠だということになるのか、その関係はどうなんですか。
  143. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案におきましては、いわゆる輸送の協力は輸送そのものを行うということでございまして、資金協力で拠出した資金を輸送に使うというのはここでは考えておりません。この法案では、直接政府政府の船あるいは民間の船をチャーターして輸送するということを対象にしているわけでございます。
  144. 高沢寅男

    ○高沢委員 そこで、もう一度この三十一条に戻りますが、この三十一条の、民間から譲渡してもらう、それは当然民間に金を払うでしょう、日本政府としては。そして、譲渡してもらったその物を今度は例えばアメリカにあるいは湾岸諸国へ提供するというふうに考えれば、その民間から買い上げるために日本政府が払う金、この金はこの十億ドルとかいう援助の中にカウントされるのかされないのかということなんですよ。これはどうですか。
  145. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 ちょっと全体像について一言御説明の上、今先生御指摘の点について御説明したいと思いますが、冒頭橋本大臣が御説明になりました中東の今回の多国籍軍に対します貢献は四本柱から成っておりまして、今回の法案が成立しましたときその対象になりますのは輸送協力とそれから医療協力でございます。ここに「物資協力」と書いてございますのは、用語が同じでございまして、若干ミスリーディングで申しわけございませんが、今回の十億ドルの柱になっておりますのは、そのほか物資協力とそれから資金協力がございますけれども、そこで言っております「物資協力」は、この法案の三十条、それから先生が今引用されましたこの三十一条で言っております物品の譲渡または貸し付け等ではございませんで、広い意味での資金協力でございまして、したがって、今回の十億ドルの中に言っております「物資協力」と「資金協力」は、今回の法案の対象外でございます。したがいまして、今回の法案を成立さしていただきまして、これに基づいて物資協力をやるということになりますと、それは新しい形態の協力になるということで、今回の十億ドルが想定している中には入ってきておりません。
  146. 高沢寅男

    ○高沢委員 それじゃ、やっとわかりました。その十億ドルの今やる協力と別途、これが成立すれば今度はこの物資の協力というようなことで、別途の今度は金の支出になるという関係だということはわかりました。  そういたしますと、これもいわゆる実施計画の中でどのくらいそれが組まれるかということはそのときになってみないとわからぬというようなことに結局なるのだろうと思いますが、私はそこでもう一つの問題として、自衛隊とこの平和協力隊の関係についてひとつお尋ねをいたしたいと思います。  自衛隊の隊員がこの平和協力隊に参加するように、そして海外に出動するようにということを、これは命令で受けたときに、それを拒否するという人があれば、それは懲戒処分の対象であるということが先週のこの委員会審議で明らかになったわけですが、その場合の懲戒処分というのは具体的にどういう処分をされるのか。これは防衛庁長官、いかがですか。
  147. 石川要三

    ○石川国務大臣 内容等につきましては政府委員から答弁させます。
  148. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答えいたします。  先般も委員会で申しましたが、自衛隊法の第四十六条にありまして、「隊員が次の各号の一に該当する場合には、これに対し懲戒処分として、免職、降任、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。」として、一号として「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」、「隊員たるにふさわしくない行為のあった場合」、「その他この法律又はこの法律に基く命令に違反した場合」というのがございまして、今回、派遣される業務が自衛隊の業務として新たに付与された場合には、この業務を遂行するための派遣命令に従っていく必要が出てくる、こういうことでございます。
  149. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういたしますと、こういうケースはどうですか。その出動の命令を受けた隊員が、それを拒否するというふうなことより、じゃ私やめます、こういう事態になったときに、このやめますというのは、これは依願退職になるのですか。いかがですか。
  150. 村田直昭

    ○村田政府委員 今先生がお述べになられたようなケースで、命令が出てからやめたいということだとかは、ちょっとそこら辺がはっきりしなかったのですが……(高沢委員「命令が出てから」と呼ぶ)命令が出てからでございますか。命令が出てからやめたいと言った場合には、よくその事情を聞いてみなければなりませんけれども、命令を拒否してそれを避けるというようなことであれば懲戒の対象になろうと思いますけれども、一方、第四十条で特別の事情がない場合には退職することが可能になっておりますので、その間の事情をよく十分調査の上行うことになろうかと思います。
  151. 高沢寅男

    ○高沢委員 ここは非常に大事なことだから、あいまいでない確定的な答えをいただきたいと思いますね。  命令が出てからならば、私やめますと言ったのも、これは拒否あるいは命令に対する抵抗というふうに扱うのか、本人がやめたいと言ったら、それは素直に依願退職で認めてやるということになるのか、この辺の限界は、私、大変デリケートではあるが、今自衛隊に身を置く人から見れば大変な問題だと思います。  そもそも、今自衛隊に入っている人は、政府が長い間専守防衛でいきます、こう言ってきたのだから、自衛隊に入った人は、海外へ出動を命ぜられるなんということはあり得ないという前提で皆自衛隊へ入っておるのです。そうしたら今度法律ができました、今度は海外へ行けという命令がある、命令に対して私やめますと言っても懲罰を受けるというふうなことであっては、これは私は、今自衛隊の隊員としている人たちは、大変それは話が違う、ある意味においては政府は契約違反だということにもなると思いますが、その辺のところはきちんと、そのときは依願退職を認めるのか、やめたいという人まで懲罰するのか、これはしっかり私は確定してもらいたいと思います。
  152. 村田直昭

    ○村田政府委員 最初にお尋ねの、入隊時に今のような法律の条項がなかったではないか、こういうお話ですが、そもそも自衛隊員のうち自衛官につきましては、命を受け自衛隊の隊務を行うということとされておるわけでございます。  それから、その自衛隊の隊務とかいうものは何で決まっておるかといいますと、自衛隊法その他の法令の規定によって決められているわけでございまして、自衛隊員の職務内容もこれらの法令によって定められるわけでございますが、今回、自衛隊法の百条の六ということで新たに規定が付与されました場合には、隊員は、自衛隊法第五十六条に求められておりますように、法令に従い、誠実にその職務を執行しなければならないということになっているわけであります。  それで、新たに任務が成立したときには、当然、その任務が従来の法の枠内で認められるものであれば、隊員は整々としてその職務に従事すべきである。これは何も自衛隊員に限ったことではなくて、およそ国家公務員たるものは、そのように新たな任務付与に対して従っていくものと考えられるわけでございます。
  153. 高沢寅男

    ○高沢委員 私はこれは法制局長官にお尋ねしたいと思いますが、今まで国の政策として、日本が集団自衛権に参加することはない、国の方針として専守防衛でいく、これほど繰り返し繰り返し確認されてきた。その状態で自衛隊へ志願して入る人は、当然そのことを前提にしていると私は思います。ところが、今この国会でこういう法律ができた、今度はその前提条件が変わったよ、こう言われて、そして命令に従わなければ懲戒だというふうにくるということは、幾ら公務員は当然だ、こういう説明をされても、それは私は通る話じゃない、こう思いますが、法制局長官ごらんになって、この専守防衛という今までの国の方針の重さ、集団自衛権に参加することはないというこの方針の重さから考えて、今のこの新たな事態で自衛隊員が置かれる、新しい義務を受けざるを得ないというこのことは、法律上これですらっと通るのでしょうか。いかがでしょうか。
  154. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員お尋ねでございますが、その点につきましてはただいま防衛庁の人事局長からお答えしましたようなことであろうと思います。やはり国家公務員として雇用関係に入っているということが第一の前提だと思います。  それから、今専守防衛等というお話がございました。自衛隊員は当然のこととして隊務を行うわけでございます。そういう形の日本国憲法あるいは自衛隊法その他の法令、これに従うという前提に立ってそういう関係に入っているということでございます。特に今の人事局長の答弁、私はそのとおりだと思っております。
  155. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは私は政治的な処置として、これは防衛庁長官、あなたにお尋ねします。  今のような前提で入った自衛隊員が、その前提条件が大きく変わった、重大な変更があったというときに、あなたは自衛隊の隊員に向かって、これからはそうなるが、君たちはそれでいいか、それで困る者は申し出なさいというような、一つの自衛隊員に対して意見を徴するというふうな措置は少なくもなさるべきではないかと思いますが、長官、これはいかがですか。
  156. 石川要三

    ○石川国務大臣 防衛庁長官という立場から政治的な一つの見解として申し上げたいと思いますが、今委員が、専守防衛の我が自衛隊、そしてそのもとに入隊した隊員、今回の仮にこの法案のための御質問だと思いますが、そういうことから考えても、専守防衛というその基本国策といいますか、そういう我が国の自衛隊の根本理念、性格というものは変わるものではないと、まず私は見解を持っております。  さらに、これは、私は法律家ではありませんから法的なことは抜きにいたしまして、常識論として、自衛隊員が、今回の場合、これはやはり隊務に服する、そういう立場からすれば、自衛隊法の、法律のもとに、これに従わざるを得ないと思うのです。ただし、どうしてもそれが嫌だという自分の内面的な一つの意思があって、そして自衛隊をやめたいというのは、これはまた一つの基本的人権でありますから、これはやめられることについては何ら差し支えないし、仮にそのためにやめたのだろうと想定されても罰則を科するというようなことは不可能であろう、これは私の常識的な一つの考えでございますから、法的な立場とは別でありますから、御理解をいただきたいと思います。
  157. 高沢寅男

    ○高沢委員 今法律上の立場と長官の常識的な立場との二つのお答えがありましたが、実際に直面した場合に、常識の線でやってくれるのか、法律の解釈で処罰を受けるということになるのか、ここがあいまいであっては困ると私は思うのですね。今長官は常識の立場からお答えになった、そういう場合には懲罰の対象にはならぬ、しないというお答えと、先ほどの局長の答弁のこの関係をここで私はきちんと整理してほしいと思いますが、これは総理、いかがでしょうか。常識の立場、法令の立場、実際にその場に置かれた人にとっては、これは生きるか死ぬかの問題です。
  158. 加藤紘一

    加藤委員長 局長、もうちょっとゆっくり話していただけますか。
  159. 村田直昭

    ○村田政府委員 お尋ねの点でございますけれども、まず、いろいろ平和協力本部の方から依頼がある、要するに本部長から依頼があった場合に、自衛隊員をまず参加の要請に基づいて派遣をするわけでございますから、参加の要請があるという時点、それからそれに基づいて派遣をするという時点までの間にいろいろタイムラグはあるわけでございます。その間において、だれを派遣するか、どのような体制でもって派遣するかというようなことについて検討をするわけでございますが、その間においてはやはりそれぞれの個人の事情というものがあろうかと思いますので、そういうものは当然人事当局として参酌する。それは個人の意見を聞くということじゃなくて、そういうことを参酌しつつ、どういうメンバーで、どういう規模で派遣するかということを決めるということが実態的には行われるであろうと思われております。  一方、先ほど言いましたように、一回命令を受けてしまって、受けた後で私はそれに従いませんというようなケースについては、やはり命令に従っていかないということで、これは命令に対する義務違反ということが出てくるでしょうし、その事前の段階で、先ほど大臣から言われましたように、一定の雇用関係から離脱したいというような御意向があれば、それは先ほど言いましたように、第四十条でございますか、そういうような規定に従って、やむを得ない場合を除いては退職の承認が行われるということになろうかと思います。
  160. 高沢寅男

    ○高沢委員 予備自衛官がこの平和協力隊の関係で参加を命じられるということも出てくることはあるわけですね。これはいかがですか。  それから、予備自衛官が、それは私は困りますと言った場合には一体どういう処置を受けるのか。これはいかがですか。
  161. 村田直昭

    ○村田政府委員 予備自衛官については、予備自衛官の招集命令あるいは防衛出動命令に伴う招集命令ということによって招集された際にいろいろ自衛隊の業務を行うということでございまして、通常の場合にはそれぞれの企業において職業に従事しているわけでございますので、これを派遣するということは考えられません。
  162. 高沢寅男

    ○高沢委員 それじゃあれですね、最後の言葉が何かちょっと消えたようになったけれども、要するに予備自衛官をこの平和協力隊に招集というか、そして海外出動を命ずることはない、こういうことですな。
  163. 加藤紘一

    加藤委員長 村田人事局長、最後の語尾のところをはっきり言ってください。
  164. 村田直昭

    ○村田政府委員 ございません。ございませんが、予備自衛官の人が、ボランティアといいますか、みずから志願してなることは一向に差し支えないことでございます。
  165. 高沢寅男

    ○高沢委員 それから、今の懲戒と実は自衛隊法に基づく罰則の関係ですね。この自衛隊法では、例えば防衛出動命令とかあるいは治安出動命令とかいうようなことに対して反抗した場合は、ただ懲戒を受けるというだけではなくて、今度は罰則を受ける。これには、懲役または禁錮というようなことが自衛隊法では決められているわけですが、今度のこの平和協力隊で出動を命ぜられた、そういう自衛隊の隊員が、私は行きたくないと言っただけでなくて、おい、行くのをやめようや、こんなことでは行かないぞというようなことを仲間同士で話し合う、これはこの命令に対する反抗ということになって、そして今言った懲役、禁錮のこういう刑を受ける対象になるのかどうか、この辺はいかがですか。
  166. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答えいたします。  たしか先ほど私申し上げましたように、本件命令についてはあくまで職務命令でございますから、これに対する違反に対して行うのは懲戒処分でございまして、刑罰をもってこれに対処するというようなことは法令上規定がございません。
  167. 高沢寅男

    ○高沢委員 若干私、例示的に言いましたけれども、私は行きたくないと言うだけでなくて、その命令を受ける同じ隊の中の自衛隊の仲間同士で、これはおれもやめるからおまえも行くな、やめておこうやというふうなことになったときに、刑罰の対象にそれを扱うのかどうかということですよ。それはいかがですか。
  168. 村田直昭

    ○村田政府委員 今私がお答えしましたのは、本人が命令に従わなかった場合ということでお答えしたわけですが、今先生のお尋ねの趣旨は、多数が相談して行くのをやめようじゃないか、こういうようなことの事例かと思いますけれども、この辺につきましてはその状況をよく精査しないといたずらに混乱を招くことになりますので、自衛隊法にも百十八条ですか、それ以降にいろいろな刑罰の規定等もございますので、この点についてはもうちょっと事情をよく踏まえて検討しないと、いたずらに仮定の質問お答えすることは逆に混乱を招くおそれもありますので、事情を踏まえて検討するということで御理解願いたいと思います。
  169. 高沢寅男

    ○高沢委員 事情を踏まえてということですが、私は実際にそういうケースが十分あり得ると思うのであります。あり得ると思うのですね。そのときに、もしそれが刑罰の対象になるとすれば、今の自衛隊法では、防衛出動に対して反抗したための刑罰、治安出動に対して反抗したための刑罰ということが自衛隊法にあります。しかし、今度の平和協力隊に行くのに反抗して同じ刑罰を受けるということになるとすれば、この平和協力隊の法案の中にそういう刑罰の規定は当然設けなければいけないということになると思いますね。この中にはそういう規定の設けはない。しかし、現実にその場になったら自衛隊法の刑罰でばちんとくる、五年以下の懲役、七年以下の懲役というようなことでくるということになったら、これは重大な問題ですね。その辺のこの法案と自衛隊法との関係は一体どうなるか、これをひとつはっきり答えてください。
  170. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答えいたします。  この法案では、今先生がお尋ねになったようなことについては特に明記されておりません。ところが、この法案では、いわゆる派遣されます自衛隊員につきましては、自衛隊員の身分と平和協力隊員の身分をあわせ有するということになっておりますので、いずれにしましても、国家公務員法並びに自衛隊法の規定が適用されるということになろうかと思います。  そこで、先ほども申しましたように、百十八条以下に罰則の規定がございますが、その辺のところは、個々にどの条項がどうこうということは、具体的な事情に即して判断すべきで、いたずらに罰則があるとかないとかということを架空として申し上げると混乱を招きますので差し控えますけれども、現在はその規定はないということでございます。
  171. 高沢寅男

    ○高沢委員 懲戒はありますと言っておいて、罰則があるかないかそのときにならなければわからぬ、私は、そういう答えでは問題のあれにならぬと思いますよ、答えに。  私は練馬区に住んでおります。練馬区には自衛隊の駐屯地があります。また自衛隊の職員の宿舎がありますね。率直に言って、私はそういう人から、今度この法案ができて命令をされて断ったらどうなるのだろう、実際そういうお尋ねを受けております。そういう点、非常に多くの自衛隊の隊員やその家族が今同じ不安を持っておるのです。その不安に対して答えるものがない。この平和協力法案にはその場合の罰則の定めはない、ないと思っていたら、いざその場になったら今度は自衛隊法の罰則でくるというふうなことになれば、これは一種のだまし討ちじゃないですか。私は、もしそうするならば、この平和協力隊の法案の中にそういうケースの罰則はこうだということを出すか、そうでなければ、今度は自衛隊法の中に平和協力隊に反抗した者はこうだということを規定するか、いずれにせよ、人が処罰を受けるときは法律に基づいてされるのが当然ですから、日本は法治国家ですから、そういうことが規定してなくてそのときになったらやられるというような運営は断じて私は承知できない、こう思うのです。いかがですか。
  172. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答えいたします。  今先生の御指摘の、いろいろ罰則の適用等について不分明ではないかということでございますが、両方の身分をあわせ有するということで法令で規定されておるわけでございますから、その両方の関係の法令が適用になるということでございまして、その適用の状況は一にそのときの状態によるということを今申し上げておるわけでございまして、決して明定されていないというようなことを私は返事しているわけではございません。
  173. 高沢寅男

    ○高沢委員 この答弁ではどうしても私納得できませんね。併任でしょう、この前提は。自衛隊員の身分も持つ、平和協力隊員の身分も持つ、両方持つのでしょう。その自衛隊員の身分で、それでは、防衛出動や治安出動に反抗すればこういう罰則、確かに書いてある。だけれども、平和協力隊の出動に反抗したらこういう罰則というのは自衛隊法に書いてない。一方、今度は平和協力法案の中にも、そういうことの出動に反抗したときはこういう刑罰があるということはこちらの法案にも書いてない。併任であって、その両方に書いてないが、現実は、そうなったらやられる、可能性がある、そのときの状況によるということでは私は日本法律が支配する国とは言えない、こう思うのですが、いかがでしょうか。(発言する者あり)君、行くかね。真っ先に行くかね。では国会議員やめて鉄砲持って行けよ。
  174. 村田直昭

    ○村田政府委員 ちょっと私の説明が御理解いただけないかと思うのですが、いずれにしても、法令に罰則の規定がされてないようなことを罰則を適用するなどということはこの法治国家においてできるわけじゃございませんで、あわせ身分を持つということによって両方の法律が適用になるわけでございまして、そしてその適用になるケースについて申し上げれば、そのときの事情をよくしんしゃくして判断すべきであるということを今申し上げておるわけでございまして、全く何の規定もないというようなことを申し上げているわけではございません。
  175. 高沢寅男

    ○高沢委員 だって、いいですか、総理、現実に規定ないでしょう。平和協力隊員として出動を拒否したらこういう罰則というのは、この法案にはない。それから、平和協力隊の出動に違反したら、反抗したらこういう罰則というのは、自衛隊法にもない。——これも実施計画ですか。  それでは、委員長。では、こういうふうに、横からのアドバイスがありますからちょっとお尋ねします。  罰則の百十九条の一項の七、八ですね。「上官の職務上の命令に対し多数共同して反抗した者」、それから八として、「正当な権限がなくて又は上官の職務上の命令に違反して自衛隊の部隊を指揮した者」、今この二つのケースですね。これはこの平和協力隊で出動を拒否するときに罰則が適用になるのですか。
  176. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答え申し上げますが、先ほどから私申し上げましたように、百十八条以下に罰則の規定があり、百十九条に今先生が読み上げられた一項の七号、八号というような規定もございます。しかし、これらの規定の適用については、そのときの事情を十分考えた上で判断すべきで、いたずらにこのような規定で罰則があるとかないとかということを仮定の問題としてお答えすることはいかがなものかと先ほどから申し上げているわけでございます。
  177. 高沢寅男

    ○高沢委員 ちょっとあなた、そのままそこにいてよ。そのままいてよ。  要するに今私の聞いた百十九条の七と八の適用があるのかないのか、どっちですか。あるのかないのか。
  178. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答えいたします。  百十九条の第一項の第七号は「上官の職務上の命令に対し多数共同して反抗した者」、こういうことで、本文では「次の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は禁こに処する。」こういうふうに規定されておるわけでございます。したがいまして、この「上官の職務上の命令に対し」というところでございますが、そういう事態がどのような状況で発生したのかということを見て、事実認定の問題として、そのような上で適用するということでございまして、いたずらに架空の問題として、あるとかないとかということは差し控えたい、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  179. 高沢寅男

    ○高沢委員 私はきょうはもう一つお聞きしたい大事な問題があるのですよ。でも時間がこうなってまいりまして、したがって、今の点は私は到底納得できませんので、この自衛隊員の、出動命令、これを拒否した場合とか、あるいは反抗した場合とか、どういう罰則を受ける、罰則の根拠は一体どの法律だというふうな点はさらにまた次のあれでもってひとつ究明していかなければいかぬ、こう思っております。  じゃ、これはこれ以上やっておりますと私時間がなくなりますので、そういう保留をいたしましょう、この点は。委員長、いかがですか。
  180. 加藤紘一

    加藤委員長 局長、まず答弁してください。
  181. 村田直昭

    ○村田政府委員 私再三、ちょっと答え方が逆になっておるかと思いますが、第百十九条の規定はもちろん自衛隊員である平和協力隊員についても適用があるということでございます。ありますが、それはいかにも事実認定の話で、どういう場合こういう法文に当たるかどうかということについてはその時点において検討する、詳細検討した上で判断する、こういうことでございます。
  182. 高沢寅男

    ○高沢委員 あなたが、局長が事実認定と言うけれども、この事実認定は現実の問題では司法当局がやるというようなことになってくるわけでして、その司法当局がやる認定の前提にきちんと法律上確定しておかなければいかぬということで私は先ほどから言っているわけで、自衛隊法を持ってきてやる場合と平和協力隊法を持ってきてやる場合と、どちらにもこの場合の明確な定めがないもの、これを使うかもしれない、あれを使うかもしれないというような状態では私は納得できません。この点は後にまたさらに質問するということで、ひとつ留保したいと思います。  最後に一つだけお尋ねしたいことがあります。これはまた総理に対する御質問になりますが、全く仮定の問題ですが、しかしあり得ないことじゃない。  イラクのフセイン大統領が、今彼はいわば追い詰められた状態にありますね。その追い詰められた状態を突破しようという考えから——あのイスラエルのパレスチナの占領地から撤退せよという二四二の国連の決議があります。これはもうどなたも御承知の決議だ。その決議はまだ一向実行されていないという現状にありますね。そのときに、イラク・フセイン大統領がおれはあの国連の二四二の決議の実行を求めるということでもって、イスラエルに向かってもし軍事的な攻撃を開始した、こういうふうな事態が出た場合に、今度の中東情勢ではかなり中東通の人からそういうことはあるぞと盛んに言われたことですが、そういうときには、このイラクのフセイン大統領の行動は国連決議の実効性を確保する、こういう行動になるわけですね。国連決議の実効性を確保するとなれば、我が国はその場合には協力するんだというような大前提がこの法案では嫌というほど言われておりますが、その場合には、イラクのフセイン大統領がイスラエルへ進撃したということに日本のこの平和協力隊は協力するのか、後方支援をやるのか、これはいかがでしょうか。総理の明快なお答えを私はお聞きしたいと思います。
  183. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 先に私の方から決議二四二の性格を御説明させていただきます。  二四二の主として目的としておりますことは、憲章の諸原則の履行のために次の両原則の適用を含むべき中東の公正かつ永続的平和の確立を必要とすることを確認するということがまずうたわれておりまして、その両原則といたしまして、最近の紛争において占領された領土からのイスラエル軍隊の撤退、その次に、この地域のすべての国の主権、領土保全及び政治的独立、及び武力による威嚇または武力の行使を受けることなく安全なかつ承認された境界の中で平和に生存する権利の尊重と確認、これはイスラエル等の生存権の確認その他が盛り込まれております。これは、ですから、一方におきましてイスラエルの占領地からの撤退と、他方におきましてこれら関係国とイスラエルの生存権の確認という両方が盛り込まれているわけでございます。
  184. 高沢寅男

    ○高沢委員 本当に答弁になってない。「最近の紛争はおいて占領された地域からのイスラエル軍隊の撤退」、はっきり書いてあります。それから一方、その中における生存権の確保というのは恐らく、これはPLOのアラファト議長も、イスラエルの国としての生存権は認める、はっきり出しておるのですよ。そして、その両者のあのパレスチナにおける共存というものも、既にPLOの方からその方針も出されている。PLOの方は既にこの国連の決議の精神を受けている。しかし、イスラエルは依然として不法占領地から撤退しないでどんどん入植をしてやっておるというようなことに対して、イラクのフセイン大統領が、それは許せない、私は国連の決議を実行する、こう言って攻撃をかけたときに、これは私は、日本政府としては、その国連決議の実効性を確保するためにこれに協力する、こういうふうになるべきだと思いますが、いかがですか、総理。これは総理
  185. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連決議の二四二に従ってイスラエルが占領地域から兵を引くこと、そのかわりパレスチナも、アラブもイスラエルという国の生存を認めることというのが二四二号の決議の趣旨でありまして、それをさらに飛躍して、そのために出兵していってもいい、攻撃をしかけてもいいという決議にはなっておりませんので、イラクの大統領がそれを盾に武力侵攻を始めるということは国連決議とは関係ない、こう私は判断します。
  186. 高沢寅男

    ○高沢委員 それを言ったら同じですよ。今度のイラクに対する決議も経済制裁ですよ、国連のやっている決議は。経済制裁であるのに、それを踏み越えて二十一万の軍隊をサウジアラビアに展開しているのがアメリカでしょう。そして、いざとなったらやるぞという、そういう圧力を加えているのがアメリカじゃないですか。これに日本協力しておる。  じゃ今度は、イラクのフセイン大統領が二四二の決議を実行するためにもしイスラエルにやるというときに、これも全く同じ国連決議の実効性確保じゃないですか。こっちはやります、こっちはやりません、ここに日本政府の、既に今日の国際情勢の中における位置づけ、アメリカの言うことなら何でも聞くというようなことがあらわれていると私は思いますが、それではこの平和協力隊の法案の公正な前提条件が崩れる、私はこう言わなきゃならぬと思いますが、いかがですか、総理大臣
  187. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 決議二四二の性格につきましては先ほど国連局長から答弁したとおりでございますし、また基本的な点は総理から御答弁あったとおりでございますが、イラクがクウェートに侵略をした、この侵略の認定が安保理でなされまして、圧倒的多数の国がこのような侵略の認定、あるいはそれに続くいろいろな一連の安保理決議を支持しているわけでございます。そしてこれを担保するために、あるいは実効性を確保するために多数の国が軍事力を展開しているわけでございますが、これに対しても国際社会の非常に多くの国がこれを支持しているわけでございます。  他方、先ほど仮定の問題としてお挙げになったような事態というのは、これはまさに仮定の問題でございますから大変お答えしにくいわけでございますが、もしイラクがその独自の判断で、独自の主張を持ってそのようなことを行うというようなことになった場合には、これは到底その国際社会の一致した支持あるいは大多数の国の支持という、国際社会としての、あるいは国連の目的に合致した行動であるということはなかなか言えないのではないかというふうに思います。したがいまして、非常に前提が違うのではないかというふうに考える次第でございます。
  188. 高沢寅男

    ○高沢委員 ちっとも前提は違ってないと私は思うのですよね。フランスのミッテラン大統領がこの中東問題の平和解決の提案をした、その四段階提案の中にイスラエルの占領地からの撤退ということも挙げているでしょう。これはもうアラブ諸国は挙げてその立場であるし、アラブの国以外の他の世界国々の多くもあのイスラエルの不法占領はこれは許せないという立場に立っていることは、私は明らかだと思う。今度のイラクのクウェート占領がけしからぬという立場世界の国は持っているのと同じように、イスラエルの不法占領はけしからぬという立場も私は世界の大多数の国は持っておると思う。今までイスラエルの決議にいつも反対したのはアメリカですけれども、まあアメリカを除けば西欧諸国の多くもその立場を前提にしておる、私はこう思います。したがって、同じその国連の決議の、こちらはその効力を発揮させるために我々は協力する、こちらはしませんというようなそういう半端なやり方ではこの法案自体の公正な前提が既にそこで破れておる、私はこう思います。  質問時間を終了したという通知がありましたので、そのことを私の見解として強く申し述べて、私の質問を終わりたいと思います。
  189. 加藤紘一

    加藤委員長 次に、和田静夫君。
  190. 和田静夫

    和田(静)委員 まず労働大臣、端的に聞きますが、平和協力隊員には団結権はありますね。
  191. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 平和協力隊員の場合は国家公務員になりますものでございますから、民間の一つ一つの法規の適用というものはございません。
  192. 若林之矩

    ○若林政府委員 平和協力隊員は、それが平和協力隊員として採用されました場合には公務員、国家公務員ということになるわけでございますので、国家公務員に関します労使関係制度というものが適用されることになるわけでございます。
  193. 和田静夫

    和田(静)委員 正確に今の答弁、受けとめておきます。総理大臣、よろしいね。
  194. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 もう一回政府委員の方からきっちりした答弁をさせますので、ちょっとお待ちください。
  195. 若林之矩

    ○若林政府委員 ただいま申し上げましたように、協力隊員が採用されました場合には国家公務員としての身分を持つことになるわけでございますから、国家公務員に関します労使関係制度というものが適用になるわけでございまして、いわゆる職員団体としての、そういうような職員団体に参加されているということは可能でございます。
  196. 村田直昭

    ○村田政府委員 自衛隊員で平和協力隊員になる者について申し上げますれば、自衛隊法も適用になっておりますので、その限りにおいて団結権は、職員団体の結成は認められておりません。
  197. 和田静夫

    和田(静)委員 これはちょっと労働大臣の答弁も違っていますし、それから総理に確認したが、総理お立ちになりませんが、労働省側の見解はもう明確でした。今防衛庁側からの答弁があったですから、一遍整理して明確に答弁してください。後の問題にあれしますから、ちょっと整理して。
  198. 加藤紘一

    加藤委員長 政府側の答弁、ちょっと調整してください。——それじゃ、再開します。和田委員質疑を。——それじゃ、政府側、答弁をお願いします。国連局長
  199. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 各省にまたがりますので、私の方からまとめてお答えいたします。  先ほど労働大臣からもお話がありましたように、一般職の国家公務員一般につきましては、これは国家公務員法の適用の対象となりますので団結権はございます。  ただし、その中でも、警察から来られる方で、警察官として来られる方の場合はございません。警察の方で、十九条の選考に基づいて入ってこられる方の場合は、これは一般職の国家公務員に倣いますので団結権はございますが、警察官として入ってこられる方はございません。それで、海上保安庁の方の場合もございません。  もう一つ、先ほど御質問のありました自衛隊員につきましては、これは自衛隊法の適用がございまして同じく団結権はございません。
  200. 和田静夫

    和田(静)委員 この法律で、二十二条で同じ業務をやるということになっておるわけであります。そういう同じ業務をやる人たちが同機の団結権を持たない。私は、さっき労働省が答弁をした方が正しいと思っておったのですが、だんだん変わるものですから、非常に単純な問題だと思うのですが、非常に疑問が残ります、今の答弁では。
  201. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 職員の採用あるいは派遣、参加の仕方につきましては、この法案の第十九条、二十条、二十一条、二十二条にそれぞれ規定されております。  それで、十九条の場合は選考でございますから、完全に平和協力隊員だけになられるわけでございます、もとの職を退職するとしてなられるわけでございますけれども、二十条の場合には、これは一般職国家公務員でございますが、親元、派遣元の身分と派遣先の身分、平和協力隊の身分とをいわゆる併任、「官職を兼ねる」と書いてありますが、これは併任でございますので、その扱いが、兼職でございますけれどもこの場合はもともと国家公務員法の適用がございますので、平和協力隊に来られましても同じでございます。  他方、海上保安庁及び自衛隊の参加につきましては、参加の要請を受けて平和協力隊の方に派遣されるというのが二十一条、二十二条の規定でございます。同時に、派遣されるけれども、平和協力隊員の身分ともとの身分、例えば海上保安庁の場合は海上保安庁の身分、自衛隊の場合は自衛隊員の身分とをあわせ有するということになっておりまして、その親元の方の法律がこの場合に適用されるということでございます。
  202. 和田静夫

    和田(静)委員 今私が主張をしましたように、同じ業務に従事するということは二十二条の四項でも明確になっているのでありまして、先ほど私が投げた疑問はそのまま残ります。したがって、その疑問点はそのまま残しながら次の問題に入ります。これは、後刻もう一遍論議をし直します。  二つ目の問題は、日米安保条約との関連なんですが、極東周辺地域での問題です。昭和五十五年の時点で政府側は、ペルシャ湾の事態が極東の平和及び安全を脅かすようなことにはならないので極東の周辺とは考えられない、こういうふうに答弁をされてきて、それが有権的な解釈にずっとなってきたのですが、それでは現時点において、このペルシャ湾は極東の平和及び安全を脅かすようなことにはならない、いわゆる極東の周辺とは考えられない、こういうふうになおお考えですか。
  203. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 お答えいたします。  安保条約の第六条に言いますのは、極東の範囲に関しましては従来からの政府の統一見解のラインで御説明しております。その基本的な考えは変わっておりません。先生が今言及されました中東との関係におきましては、私どもは、中東がここで申します極東の範囲に入ってこない、こういうふうに現時点でも考えております。
  204. 和田静夫

    和田(静)委員 極東の範囲には入らないことは私もわかって言っているわけです。今正確に読み上げましたように、いわゆる極東の周辺にも入らない、今の答弁はそういう答弁ですか。そうしますと、ずっと先日来の論議の中で総理がお述べになったことと随分変わってくるから、私はここのところを大変大切に思っているのですよ。これは防衛庁長官
  205. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 念のために極東の周辺地域という概念につきましてちょっと補足させていただきたいと思います。  極東の周辺地域という概念につきましては、安保条約自体かかる概念を用いているわけではございませんが、昭和三十五年二月二十六日の政府統一見解は、極東の区域に対して武力攻撃が行われ、あるいはこの区域の安全が、周辺地域に起こった事情のため脅威されるような場合に、米軍がこれに対処するためとることのある行動の範囲は必ずしも極東の区域に局限されないということを述べているわけでございます。このような周辺地域がどこかということにつきましては、極東の区域に対する攻撃または脅威の性質いかんにかかるものでございまして、あらかじめ特定しておくことはできない次第でございます。  しかしながら、それでは世界じゅうの、そのすべての地域が極東の周辺地域となるということを安保条約が予想しているかといえば、もちろんそのようなわけではないわけでございます。むしろ実際の問題といたしましては、この極東の安全に脅威を与え、したがいまして、米軍の行動の範囲との関連で問題となるような極東の周辺地域にはおのずから限界があろうということは、従来から御答弁申し上げておるとおりでございます。
  206. 和田静夫

    和田(静)委員 したがって、限界があろう、で、昭和五十五年の一月三十一日の社会党の多賀谷眞稔委員の「ペルシャ湾は周辺地域ですか、極東の。」これに対して「極東の安全、平和が脅かされるというときには、米軍の行動というものはその極東の範囲に限定されるものではないということでございまして、論理的な帰結といたしましては、」「極東の周辺というものからの脅威というのが行われた場合、その周辺がどこまでであるかということは、これはどこであろうと、いずれにいたしましても、極東の平和及び安全に脅威であるという事態が生じましたところが極東の周辺という観念になるわけでございます。」そして、先ほど私が言ったように云々となっているわけですね。結論が出ているわけです。その結論に変わりはありませんかと問うているわけですよ。
  207. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 極東の周辺に関しましての考え方につきましては先ほど私が申し上げたとおりでございます。そして、これは先ほども申し上げましたように、この極東の区域に対する攻撃または性質のいかんによりましてこの周辺地域がどこかということが問題になってくるわけですが、ただ、このような脅威または攻撃がございましたときに、米軍がこれに対処するためにとることのある行動の範囲は、必ずしも極東の区域に局限されないということが基本的な当時からの考え方でございまして、この三十五年以来の考え方に変更はございません。
  208. 和田静夫

    和田(静)委員 もう一遍くどいようですが、ここは大変重要だからもう一遍だけ念を押させてもらいますが、そうすると、ペルシャ湾岸の事態は極東の平和及び安全を脅かすようなことにはならないので、極東の周辺とは考えません。これでよろしいですか。
  209. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この極東そのものの概念もそうでございますけれども、地理的に非常に決まった概念ではございません。この点御案内のとおりでございます。極東の周辺という概念につきましては先ほども申し上げたとおりでございまして、結局極東に対して脅威があるかないかということに着目して判断すべきことだろうと思います。  そこで、この場合、極東に対して脅威になるか否かという場合の脅威と申しますのは、安保条約上の問題を論じているわけでございますので、いわば直接の軍事的脅威のことを念頭に置いているというふうに考えております。したがいまして、もちろん現在の中東の事態というのは大変重大な問題でございます。しかしながら、その結果、例えば石油の供給がとまるというような事態、こういう事態はあり得るわけでございますが、このような事態というのは、いわゆる極東に対する軍事的な脅威というものではないというふうに考えます。その意味で、現在の事態が極東に対して軍事的な脅威があるかといえば、そのようなことではないというふうに考えます。
  210. 和田静夫

    和田(静)委員 余り長い説明は要らないのです。私は端的に、したがって結論だけを申し上げたのですが、極東の周辺だとペルシャ湾は考えないんですね。そこだけ、ないのならないとはっきりしてくださいよ。
  211. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 答弁が長くなって恐縮でございますが、端的に申しまして、現在のような事態が極東に対して軍事的な脅威になっているかといえば、そのようなことはないというふうに申し上げられると思います。
  212. 和田静夫

    和田(静)委員 まだ私の質問の趣旨に答えてませんが、余り時間をとられてもあれですから。  この問題をちょっと取り上げたのは、例えばアメリカには、中東の石油に一番依存しているのは日本なのに、なぜアメリカの、あるいはアメリカの青年だけがというような意見があるなどというようなことがずっと言われる。そういうので、現時点で極東の周辺であるのかないのかというのは、大変な重要な問題だと私は思ったからであります。  同時に、今言われるような形でもって、もっと事態がどういうふうに変化するかわかりません。しかし、我々が予測するよりも悪い方向に例えば事態が変更した場合に、ここが極東の周辺だというようなことを言われ出しますと、協力隊として派遣された自衛隊に、いろいろ外務大臣、けさから高沢質問に対して否定をされましたが、日米安全保障条約に基づいて何らかの対応が求められるというようなことは十分に予測しておいてよいことだと私は思っております。そういう意味で、たとえアメリカから要求があっても、併任をされているところの協力隊員としての自衛隊員が戦闘に参加することは決してありませんね。
  213. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案におきましては、武力の行使あるいは武力による威嚇に当たるようなことは行わないということを明定しております。また、この法案の三条二号に列記してありますような平和協力隊の任務というものには、この武力の行使に当たるようなものはございません。いずれにいたしましても、この平和協力隊が戦闘行動に参加する、戦闘行動を行うというようなことは毛頭考えておりませんし、そのような任務はこの法案によって全く与えられていないわけでございます。  他方、戦闘行動にそれ自体としては当たらないような活動、これは三条二号にいろいろ掲げてございますが、このようなものでございましても、武力行使と一体となるような場合には、これは行えないということをこれまでも御答弁申し上げているとおりでございまして、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  214. 和田静夫

    和田(静)委員 多国籍軍に参加したアメリカ軍のうちに、この日本の基地から出動したものがどういう状態であったかということについて、けさほど来の質問のやりとりを聞いていますと外務省は正確に把握をされていない、こういうことであります。しかし、私は、その正確に把握をされていないということについては外務省の非常な怠慢だと思います。これはやはり正確に把握をしておかなければならない問題だろうと思う。外務大臣と私はけさ来の論議を聞いていて見解を異にいたしますけれども、私は、日米安全保障条約第六条の実施に関する交換公文によって、今度の横須賀からのアメリカ海軍の発進、いわゆる行動、あるいは沖縄の動きなどというのは、これは当然事前協議の対象になると思いますよ。で、端的に、いや事前協議の対象にならないのだからやっていないんだという、そういう答弁では少なくとも私は納得するわけにはまいりません。ここのところは外務大臣、もう一遍どうですか、見解を述べてください。これはもう大臣
  215. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 今の点に関しましては、今朝も御説明申し上げたことでございますけれども、先生御指摘の安保条約の第六条に基づきます事前協議の対象は戦闘作戦行動ということになっておりまして、これは従来から御説明している点でございますけれども、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動ということでございまして、具体的な米軍の行動がこの戦闘作戦行動に当たるかどうかにつきましては、それぞれの行動の任務、態様の具体的内容をよく考慮した上で判断すべきと考えております。  先生が先ほど来御指摘の米軍の部隊の、あるいは艦船の日本から中東地域への移動は、これは私どもは単なる移動と考えております。ここで言っております戦闘作戦行動ではございません。したがいまして事前協議の対象にならないということを今朝るる申し上げた次第でございます。
  216. 中山太郎

    中山国務大臣 今局長からも答弁いたしましたが、けさ高沢委員の御質問にもお答え申しましたとおり、事前協議の対象になるケースではない、かように考えております。
  217. 和田静夫

    和田(静)委員 政府側の態度がそれだとして、私はそれは容認はいたしませんが、そうすると、第五条に基づいてこれは出動していった、そういう行動であるというふうに考えますと、米軍から自衛隊に共同行動を求めてくるという必然性というのは当然存在をしていますね、内包されていますね、今日。
  218. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  御承知のとおり、ただいま五条をお挙げになりましたが、五条と申しますのは、「各締約国は、」すなわち日米は、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」という、後の方は省略いたしますが、そういう規定でございます。したがいまして、これは、我が国に対する、日本の施政のもとにある領域に対する武力攻撃が行われた場合に日米が共同で対処するという趣旨の規定でございますので、今回のような事態は関係ないということは言えます。
  219. 和田静夫

    和田(静)委員 戦闘作戦行動の範疇に入らない、したがって云々というような答弁になっているのですが、私は明確に、作戦行動の中には入っているわけでしょう、作戦行動の中に入っている米軍の移動である、そういう意味では事前協議の対象になるのだということを主張しているんですがね。この作戦行動というのは何ですか、長官。——これはちょっと私、長官に求めたいのですよ。ここでは何も発言をされませんが、例えば昨日の朝の八時からかな、10チャンネルではお二人の女性を相手にしてにこにこ大変なことを言っていらっしゃいました。後からその一つ一つをやらしてもらいますが、ここであなた、しっかり答弁してくださいよ。
  220. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 長官の御答弁の前に、私の方から規定上の法律的な問題について簡潔に御答弁申し上げたいと思います。  御承知のとおり、いわゆる事前協議は条約第六条の実施に関する交換公文に規定されているわけでございます。その事前協議の主題になりますことは三つあるわけでございますが、その三つ目といたしまして「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本政府との事前の協議の主題とする。」というふうに規定されているわけでございます。そして、しからばこの戦闘作戦行動のための基地としての使用とは何かということでございますが、これは先ほど北米局長から御答弁申し上げましたように、日本から発進される戦闘作戦行動、これは直接戦闘を目的とした作戦行動をいうというふうに解されておりますが、このような戦闘作戦行動の基地として施設及び区域を使用するということでございます。したがいまして、例えば日本にある米軍の軍艦がこの施設、区域を出ていくときの航行自体が既に戦闘作戦行動の一部として認められるような場合はこの戦闘作戦行動に当たる、しかし、単なる移動として別な区域に出ていくというものはこの事前協議の対象にならない、こういうのが条約上の仕組みでございます。
  221. 石川要三

    ○石川国務大臣 私も、今条約局長法律的に非常に詳しく答弁されましたが、そのような見解に立っております。
  222. 和田静夫

    和田(静)委員 作戦行動なんですが、例えば極東並びにその周辺地域でもないのにアメリカ軍が日本から出動している事態、これはどういうふうに認識したらいいんでしょうね。うちの高沢理事もあるいは宮下理事奥田自治大臣も、これは職業軍人の卵の卵だから仕方がないとして、職業軍人であった法務大臣どうお考えになります、今度のことを。
  223. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 若干さっき申し上げたことと重複いたしますけれども、安保条約上、戦闘作戦行動の基地としての施設、区域の使用ということにつきましては、先ほど申し上げたとおり、直接戦闘作戦行動のために我が国の施設、区域から出ていく、目的、態様が、その出ていくときの状況がそういう形であるという場合に事前協議にかかるということでございます。  他方、我が国に駐留しております米軍は、世界的にいろいろな艦船その他の運用をやっているわけでございますが、その観点から、この艦船なり航空機なりの一部を我が国からよその地域に移動させて、そこでまた運用するということは安保条約上容認されているところでございまして、この点何ら問題がないというふうに考えております。
  224. 和田静夫

    和田(静)委員 作戦行動に基づいて米軍の移動があったわけでしょう。そして、それが実戦的にどういうふうになっているかといえば、例えば臨検で八月の何日かに既に発砲していますね。そういう状態がペルシャ湾周辺で起こっている。こういう状態というのは、もともと沖縄から移動をしていく、横須賀から出ていく、そのときにはもはや作戦行動に入っているわけでしょう。
  225. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 これは先ほど条約局長も触れましたけれども日本の施設、区域から出る時点において既にその戦闘作戦行動が起こっていなければいけないわけでございまして、先生が先ほどから具体的にどういう例があるかということでございますけれども、これは昭和四十七年に既に御説明したことでございますけれども、典型的な例として申し上げますと、航空部隊による爆撃、空挺隊の戦場への降下、地上部隊の上陸作戦等を指しておりまして、これは既に昭和四十七年の時点で御説明したわけでございます。そういう例が具体的な例として考えられますが、今回の例にそれを当てはめてみますと、全くそういう事態ではございませんで、まさに米軍の部隊なり艦船が通常の移動として日本から出ていったというふうに私どもは観念しております。
  226. 和田静夫

    和田(静)委員 そこのところは合意をするわけにはまいりません。私の主張は主張として申し上げておきます。  そういう上に立って、ちょっと危惧ている点を一、二だけまず詰めておきたいんですが、日本から米軍が出動したわけですから、そうすると日本にある米軍基地については、これは国際法上やはり交戦区域になりますよね、交戦区域になりますよ。ということは、イラクの戦闘能力は今別としまして、日本にある米軍基地が相手からの攻撃対象になるということは、これはなり得る条件を備えている、そういうふうに認識していいですか。これは防衛庁長官外務大臣どうですか。
  227. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほどから何度か御答弁申し上げましたけれども、この在日米軍の一部である米軍の艦船等が日本から別な地域に単に移動していくということでございまして、そのようなことがあったとしましても、我が国が交戦区域になるというふうには考えられない次第でございます。
  228. 和田静夫

    和田(静)委員 私は論理的にはなると思います。  そこで、安保条約では、将来、例えば日本の経済権益の確保は日本の平和及び安全の確保のために必要である、そういう理由で自衛隊が出動の要請をされる、あるいはアメリカが他国援助のために行った軍事行動のために日本にある米軍基地が攻撃を受ける、またはそのおそれがある、そういうときに自衛隊法七十六条に基づくところの防衛出動につながっていくということはありませんか。
  229. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 安保条約の関係につきまして私の方から再度御説明させていただきます。  先ほど第五条の関係については既に触れました。我が国が攻撃された場合でございます。それから、安保条約は御承知のとおり第六条におきまして「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」ということでございまして、この条約は日本国の安全そして極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するということを目的としているわけでございます。そして、当然のことながらこの条約は純粋に防衛的な条約でございまして、先ほどちょっとお挙げになりましたような日本国の権益を保護するためにどこかに出ていくというようなことを目的とする条約ではございません。
  230. 和田静夫

    和田(静)委員 先ほどあなたの答弁の中にもあったのですが——アメリカには日米安全保障条約は全世界的なものであるという、そういう見方に基づいている向きが非常に強いわけですね。そうすると、自衛隊はどんなときでも米軍の後方支援をするべきだという意見にこのアメリカの意見はつながっていますよね。ここのところは、全世界的なものではないのだと日本側の見解を先ほど述べられましたよ。しかしアメリカ側は今私が申し上げたようなことを認識をされている。この関係はどうなりますか。
  231. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この点、誤解があるといけませんのでもう一度答弁させていただきますが、先ほど私が申し上げましたのは、アメリカ軍としては艦船その他の装備を世界的に運用しているという点を申し上げたわけでございます。ただ、アメリカ軍が日本に駐留しておりますのは、日本の施設、区域を使用しておりますのはこの安保条約に基づくわけでございまして、安保条約の目的は我が国の安全に寄与し、そして極東の平和と安全に寄与するという目的で縛られているわけでございます。したがいまして、この安保条約によりまして、我が国の自衛隊が世界的なアメリカの行動あるいは戦略に協力するということは毛頭ないわけでございまして、この安保条約の目的、すなわち日本国の安全そして極東の平和と安全の維持という点につきましては、日米間にいささかも理解の相違はないというふうに考えております。
  232. 和田静夫

    和田(静)委員 我が方が理解に相違がないと言われましたところで、アメリカ側に理解の相違がどうもある。私は、言いたかったことは、日米安全保障条約第一条において、それぞれの国際関係において、武力による威嚇または武力の行使をいかなる国の領土保全に対しても慎むことをこれは約束していますね。そうしますと、日本政府は米軍の行き過ぎた行動というものを戒める義務を外務大臣、私は持っていると思うのですよ。そういう意味から、ぜひ強い主張をなされるべきだろうというふうに考えていますが、総括的に外務大臣の答弁。
  233. 中山太郎

    中山国務大臣 日米間は、極めて緊密な連絡をし、相互の信頼の上に構築されておりますので、私どもは、この安全保障条約の運用上両国の意見の相違がないということを全力を挙げて堅持していかなければならないと考えております。
  234. 和田静夫

    和田(静)委員 きょうまでの議論をずっと突き詰めてみまして、やはり、なぜ自衛隊をこの機会に海外に出すのかというのが最大の焦点として残る。私は、法律的な面と現実的な面でこれから若干の質問を展開いたしたいのです。  まず国際情勢からいってですが、なぜ自衛隊を出さなければならないのか、その理由ですね。アジア諸国では自衛隊を海外に出すことにやはり非常に懸念がありますよ。いろいろなことを言われても懸念がある。アメリカは賛成かもしれませんが、国際的には反対の意見がどうも私の知る限りでは強いと思うのですね。とすると、日本政府は、国際世論、特にかつて日本の侵略によって甚大な被害をこうむった国々の反対を押し切って自衛隊を海外に出すのか、また反対があるにもかかわらず自衛隊を海外に出すことのできる法律をなぜ押し通そうとされるのか、ここのところはどうしても理解ができないところです。ここで総理に答弁を求めますとまた初日来の答弁の繰り返しになろうと思いますから、総理の答弁は答弁として承ったことにしておきまして、国際世論の理解を得る努力をするとすれば、私は、今せっかちに法律を押し通すよりも、まず国際世論、特にアジア諸国の意見を聞いて意見を見きわめるということが我が国としては大変大切なことだと思うのです。  政府の論理によりますと国連の決議に基づき自衛隊を派遣すると言うのですが、それでは、国連日本にどういう要請をしてきましたか、外務大臣
  235. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国連からの要請いかんということでございますけれども、御承知のように、今回の国連に対する協力というものは二つのこと、二種類のことを念頭に置いているわけでございます。一つは国連決議に基づく平和維持活動でございます。これは国連によるものでございます。もう一つは国連決議の実効性を確保するために加盟諸国がとる活動に対して協力を行うということでございます。  この後者の方は、基本には国連のイラクに対するあるいはイラクに関する諸決議があるわけでございますが、この実効性確保の活動自体は国連加盟諸国が行っているわけでございまして、これらにつきましては、例えば決議六百六十五号の三項で、中東の海域に海軍部隊を展開している諸国に国連加盟国が協力をするようにという要請がございます。また、それ以外の、例えば陸上部隊のみ展開しているような場合につきましては特に国連決議での直接の要請はございませんけれども、先ほど述べましたような国連決議に対する実効性の付与という観点から我が国としてこれに協力するということでございます。なお、この実効性確保のための国連加盟諸国の行動につきましては、国連加盟国の非常に多くの国がこれを支持しているという関係でございます。
  236. 和田静夫

    和田(静)委員 まあ、要約して言えば、どこからも要請がないけれどもということなんでしょう。国連というのは国際世論をまとめていく機関ですね。そうすると国際世論、特に日本の近隣諸国の反対を押し切ってまで自衛隊を海外に出すというのは、これは論理的に矛盾していますよ。これは逆効果になるおそれの方が強い。国連の要請に基づいて人員を海外派遣する必要があっても、結局アメリカの圧力でその人員の中に自衛隊を出すということになってきてしまったんだとアジア諸国が理解をしている状態がありますよね。ここのところはやはりアジアの諸国が納得をし得ないところだろうと思うのです。  私はそういうことを念頭に置きながら、四月二十四日の本院の予算委員会で、この委員会でも若干問題になりましたが、指摘をされましたが、国連の中ではまだ敵国条項、日本が敵国であるという敵国条項が残っている、これに対する取り扱いはどうだということを予算委員会で詰めさせていただきました。外務大臣から答弁をいただきましたし、その後の外務大臣の行動も私はわかっています。そこで、国連決議に基づいて海外派遣するのなら、まずこの敵国条項というのを解除してもらうという、解除するということが私は先決的に一つあるんだろうと思っているのですよ。今日を予測して予算委員会で問題にしたわけじゃありませんけれども国連中心主義ということを問題にしながら、そのことを予算委員会でも私はしっかり述べさせていただきました。  今度仮に中東に派遣して、イラクに日本何を言っているんだと、国連の敵国ではないかというような論理というのは逆の意味で出てくる可能性は十分にあるわけですから。敵国条項を適用されているということは、国連及びかつての連合国、ュナイテッドネーションズですね、これを国連日本人はうまくどこかで意訳したわけですけれども、こういう状態なんですが、連合国にとって日本は敵国であって、将来にわたって軍事的に敵国と言わなくても要注意国なんですね、また。憲章の上から要注意国である。ということですので、国連の要注意国がなぜ国連決議に基づくという理由で国連の要請もなしに自衛隊を海外に出すのか。ここのところはちょっと、やはりいろいろ論議は聞いていましたがはっきりしません。総理、いかがでしょう。
  237. 中山太郎

    中山国務大臣 旧敵国条項が日本にまだ適用されている条件下にあるというふうに今委員御指摘でございましたが、私は、日本が平和国家になって正式に国連に加盟を認められ、今日までこの日本国連の中で安保理の理事国にも六回もなることができたというようなことを考えてまいりますと、旧敵国条項が日本にいわゆる適用されているという条件はなくなっておる、むしろ先日、この十月三日に統合された、分割されたドイツ、このいわゆるベルリン問題を含めて、やはりこの地域の問題がいわゆる旧敵国条項の対象であったという理解を持っております。
  238. 和田静夫

    和田(静)委員 いや、そこのところはちょっと納得できないのですよ。敵国条項と海外派遣の関係、いわゆるかつての連合国やアジアの諸国の見解、ここのところはやはり十分に確かめる必要があると私は思う、各国政府の見解を。どうでしょう、この委員会にそれぞれ文書でまとめて出してくれませんか。社会党の質問時間ずっと残っているわけでありますから、あえて私の質問時間中にとは言いませんがね。委員長、これはぜひ取り計らってもらいたいと思います。
  239. 加藤紘一

    加藤委員長 それは、ちょっと問題点をもう一度。日本敵国条項問題についての各国の見解ですね。それじゃまとめられる範囲で——はい。じゃ、理事会で協議いたします。
  240. 和田静夫

    和田(静)委員 そこで総理、私ずばりと聞きたいのですが、この法律案が成立したらイラクの日本人人質を初めすべての人質が解放される、イラク・クウェート問題は解決する方向にぐっと進む、そういうふうに認識されていますか。
  241. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それは、この法律という狭い次元じゃなくて、イラクが決断をして国連決議の趣旨を受け入れてクウェートからの撤退をすれば問題の根本的な解決はすべて図られる、こう思っておりますし、今またそれを目指してのいろいろな各国努力が続けられており、そのような方向に向かっての兆候やあるいは小さな芽が出ておるということがきょうこの委員会の御質疑でも繰り返し出ておるわけでありますから、それが成功するように強く期待をしておるところであります。
  242. 和田静夫

    和田(静)委員 自衛隊を海外に派遣する法的根拠を伺いたいんですよ。この今度の法律案の附則第四条、これはここでも問題になったのですが、私がもう一遍詰めておきたいのは、自衛隊法百条の六に平和協力隊への参加を書いているわけですが、これは果たして自衛隊というものの目的・任務に適合するだろうか。これは防衛庁長官、ぜひあなたの意見を聞かせてもらいたい。  自衛隊の成立には、沿革からいって大きな制約が私はあったはずだと思うのです。すなわち、第二次大戦の反省に立っての日本国憲法制約、それから朝鮮戦争の後の日本の独立に当たっての東西冷戦の状態、あるいは日米安全保障条約との関連による我が国国土を守るという、それ以上には広げないというそういう制約ですね。また極東の範囲をどう見るかという点もあります。そこで、こうした制約からして海外にまで派遣することができるのかどうか。これは、自衛隊法第三条に「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つ」ということを明記してありますよね。そのために直接侵略それから間接侵略に対して我が国を防衛することを主たる任務とする、ついでに言えば必要に応じて公共の秩序維持に当たることもできる、自衛隊の任務はそういうものであるわけですね。今度の中東危機はこの任務に照らして何なのか。直接侵略なのか間接侵略なのか。この点は自衛隊というものの本質を変えることに私はつながりかねないと思っているのです。防衛庁長官、ここは明確にしてください。
  243. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  武力行使の目的を持たないで自衛隊を他国の領土、領海、領空に派遣するということは海外派兵には当たらず海外派遣ということで、これは憲法上許されないものではない、かように考えております。今回の国連平和協力法に基づきまして自衛隊が海外に派遣されますのは海外で平和協力隊が行います平和協力業務に参加するということでございまして、これは憲法上禁止されております海外派兵には当たらない、こういうようなことで、私ども憲法上の問題はないということで今回平和協力法の附則で自衛隊法を改正する、こういうふうに考えたわけでございます。  なお、附則で改正いたします百条の六といいますのは自衛隊法の第八章でございまして、これはただいま委員が御指摘になられました自衛隊法第三条に言います自衛隊の本来の任務以外のその他の任務として位置づけられているわけでございまして、あくまでも平和協力隊が行います平和協力業務に参加、協力するというような位置づけでこの法律案が提出されているわけでございます。その点御理解賜りたいと思います。
  244. 和田静夫

    和田(静)委員 そこは理解できないから何回か問題になったことをもう一遍申し上げているのですけれども、自衛隊が例えば運動会に出るとかあるいは災害出動するとかというような、そういう業務というのはこの自衛隊の本質を私は変えるものではないから、第三条に当てはまらなくても逸脱していると言わなくてもよいとは思いますが、海外に派遣をする、しかもどんな形であろうが武器を持つ、部隊として協力する、しかも自衛隊員の身分を持って協力する、そういうことになれば自衛隊の本質は変わるわけでしょう。第三条に違反すると私は考えているわけです。  もし、どうしても法案にあるような自衛隊の部隊として協力するというのなら、なぜ大胆に第三条を変えて、ちゃんとしっかりした論議を我々としないんですか。三条を変えなければならないのは、私はこれは明確だと思うのですよ。なぜそこのところを避けて通られるんですか。これは防衛庁長官
  245. 石川要三

    ○石川国務大臣 先ほど日吉官房長から、自衛隊の今回のこの国連平和協力隊のかかわり合いの法的な立場につきましていろいろと説明をしたわけでございます。それで大体私としてももうこれ以上の説明、必要ないと思うのですけれども、今さらにまた自衛隊法第三条についてなぜ入れなかったか、こういうような重ねてのお尋ねでございます。  ダブるかもしれませんけれども、今回のこの自衛隊法の一部改正というものは、先ほども答弁いたしましたように、国連平和協力法において、要するに国連平和協力隊の本部長が自衛隊の部隊または隊員に、平和協力隊の行う平和協力業務に参加させる、こういう要請をすることができることになったわけでありまして、これに伴って、これを受けて、本部長の要請があった場合にはその平和協力業務に自衛隊の部隊等、または隊員を参加させることができるとの規定を置いたものでございます。したがって、このために、国連平和協力法案の制定に伴いましてこれと一体不可分をなすもの、このような考えに立ちまして、したがいまして、その附則で改正するということにしたものでございます。確かに先生のその御見解も一つの考え方だと思いますが、私はそのような見解に立っているわけでございます。
  246. 和田静夫

    和田(静)委員 ここの部分、ちょっと時間がなくなりましたから、明日の私の時間にあとの詰めは譲らせてもらいますが、あとわずかな時間でちょっと聞いておきたいのは、部隊として参加した自衛隊の指揮の関係ですが、総理、これ、だれがとられますか。
  247. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この平和協力隊に参加いたします自衛隊も、この本部長の指揮下に入るわけでございます。そして、この法案の第二条第三項にございますように、「内閣総理大臣は、海外派遣に係る平和協力業務の実施に当たり、平和協力業務実施計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。」ということになっております。
  248. 和田静夫

    和田(静)委員 防衛庁長官、自衛隊法九条によって幕僚長が指揮するということは一切ありませんかね。
  249. 石川要三

    ○石川国務大臣 法規のことでございますので、政府委員から正確に答弁させます。
  250. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 平和協力業務に関しましては、ございません。
  251. 和田静夫

    和田(静)委員 これはもう一遍確認をいたします。防衛庁長官、今役人からああいう答弁があったのですが、これはやはり長官か本部長である総理に確認をしておきたいのですが、どういう事態の中でも一切ないわけですね。これは一切ないということを明らかにしてもらいたいのです。一切ないのですか。
  252. 石川要三

    ○石川国務大臣 平和協力隊につきましては、一切ございません。
  253. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 幕僚長が指揮をするということはございません。
  254. 和田静夫

    和田(静)委員 再度答弁されましたから、一切ありませんね。
  255. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 幕僚長が部隊を指揮することは一切ございません。
  256. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて高沢君、和田君の質疑は終了いたしました。  次に、山口那律男君。
  257. 山口那津男

    ○山口(那)委員 通産大臣においては御予定があるようですから、初めに関連する質問をさせていただきます。  まず、中東貢献策の一環として物資協力を行っていると思いますが、四WD車八百台近く、これを中東へ送ったという経過があると思います。これはいつごろどこの要請を受けて、どういう経過を経て送られたものか説明してください。
  258. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 物資協力の調達につきましては、御承知のとおり湾岸平和基金、運営委員会というものの中に湾岸平和基金があるわけでございますが、その湾岸の協力会議の運営委員会においてそれぞれの関係国の要請を踏まえながら調達をされる、私どもはそれを受けまして調達に協力をしておる、こういう形でございますが、その中身につきましては、今御指摘のとおり七百八十五台、これは四輪駆動車を中心とした車両でございます。これは十月の十四日に米国側に引き渡しております。  それ以外に、サウジアラビアにたまたまシャシーと上に乗っけるのと分かれて在庫がございましたのが、たしか七十五台の給水タンク車とそれから五十台の冷凍車、これについても現地で組み立てをいたしまして、また、正確ではございませんが、十月二十日過ぎから米国側に引き渡しを開始した、こういうふうに承知をいたしております。
  259. 山口那津男

    ○山口(那)委員 四WD車の関係については、これは九月の初めでしたか、日本を積み出しておるわけですね。ですから、このGCC、湾岸協力基金との折衝が始まる前に、はるか前にもう事実が進行しているわけです。それに対して、通産省としてはいつごろだれに要請を受けて、どういう経過で送り出したのか。向こうへ到着して陸揚げしたということを聞いているのではなくて、積み出しの経過を聞いているわけです。はっきり御答弁ください。事実関係についてです。
  260. 畠山襄

    ○畠山(襄)政府委員 事実関係についてお答えを申し上げます。  四WD車は、今御指摘のように、九月の初めに米側からそういうものが必要であるという話が外交ルートを通じて参ったわけでございます。しかしながら、その時点では私どもの具体的な予算の手続とかそういうものが決まっておりませんでしたので、通産省といたしましては関係の企業に、もしこれが決まることがあればそのときにはできるだけ提供ができるように用意をしておいてくれということは申し上げたわけでございます。それで、企業の側でそういう場合に備えて輸送その他を実施をしたということでございまして、正式に手続が決まりました段階で、今大臣からお答えのございましたような措置に基づいて提供したということでございます。
  261. 山口那津男

    ○山口(那)委員 企業側に要請したのは通産省ということでしたけれども、通産省がアメリカ側から外交ルートを通じて来たものを受けてなした、こういうお話でした。  外務大臣、この外交ルートを通じて来た内容について事実関係を御答弁ください。
  262. 中山太郎

    中山国務大臣 事実関係でございますので、政府委員から答弁をさしていただきます。
  263. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 この四輪駆動車につきましては、ただいま通産省から御答弁がございましたように、日本の物資協力のスキームが決まった場合になるべく早く車を入手したいという米側からの要請が、九月の初めに外交ルートを通じてあったわけでございます。
  264. 山口那津男

    ○山口(那)委員 アメリカ側からというお話でしたが、これは米軍ですか、それともアメリカの政府ですか。
  265. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 要請がございましたのは米国政府からでございます。
  266. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この四WD車が到着したのは、正確な場所はどこですか。通産省。
  267. 畠山襄

    ○畠山(襄)政府委員 到着をいたしました場所はサウジアラビアのダンマムでございます。
  268. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この車が米軍に引き渡しをされているわけですね。そして、この四WD車以外に、先ほど通産大臣お述べになったトラックシャシーですとか、それに冷凍設備あるいは水を蓄える設備等を積んでいる。  そのほかに、現在進行中の物資協力について事実関係を指摘してください。
  269. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 物資協力につきましてこれまでに供与をいたしましたものは、先ほど通産大臣から御答弁のございましたように、この四輪駆動車とそれから給水タンク車、それから冷凍車でございます。  それで、念のため物資協力の仕組みを申し上げますと、これは、我が国が湾岸平和基金に拠出をいたしました資金を使いまして、湾岸平和基金の運営委員会各国からの要請を受けてそれを検討し、決定をしていくわけでございます。現在、米国あるいはそのほかの国からも要請が来ておりまして、それをこの運営委員会で検討をしている状況というふうに承知をいたしております。
  270. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この物資協力は、直接我が国の行為として行ったわけではなくて、GCCを通じて資金を拠出してやったということですね。だとすれば、これはGCCの行為であって我が国の行為ではないかのようですけれども、こういう経過を経たということは、財政法九条との関係日本が無償で物資あるいは資金を供与できないという原則から、それを避けるためにこういう手続をとった、このように理解してよろしいですか。
  271. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 日本政府といたしましては、今回の事態に際しまして、単に資金面での貢献をするばかりでなく、人的あるいは物的な貢献をすべきではないかということで、現在の体制のもとで考えられるあらゆる可能性を検討いたしまして、それで物資協力については、現在のようにその湾岸平和基金に拠出金を拠出いたしまして、それを使って物資の調達をするという仕組みでこれを行っているわけでございます。
  272. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私が聞いているのは、財政法九条との関係で直接お金を出せないから、GCCあるいはその他の機関を通じてお金を出して、そこの行為として物資を買い求める、引き渡す、こういうやり方をとったのかと、こう聞いているのです。財政法九条との関係お答えください。
  273. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 御指摘のとおり財政法第九条の問題がございます。したがいまして、我が方といたしましては、今回のようにGCCの基金に拠出をいたしまして、それを基金の運営主体であります運営委員会が物資を調達して各国に供与するということで、これを実施しているわけでございます。
  274. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今回のこの協力法が仮に成立した場合には、今言ったような物資協力、これを我が国、我が政府が直接の行為として協力できる、こういうふうになりますか。
  275. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案が成立いたしますれば、この法案関係条項に従いまして我が国政府が直接物資協力を行うということができるようになります。
  276. 山口那津男

    ○山口(那)委員 既に行った、さきにいろいろ挙げられたそのような行為と同様のことが、この協力法が成立すればできるかということを聞いているわけです。どうですか。
  277. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 この法案が成立いたしますと、今条約局長が申し上げましたように、日本政府が直接物資を調達して無償で提供する形もできますが、現在中東貢献策の十億ドルでやっておりますように、国際機関に拠出いたしましてそれで拠出するという方法もできますので、二つの方法が可能であると考えております。したがいまして、どちらの方でやりますかはその都度判断してまいりたい、こう考えております。
  278. 山口那津男

    ○山口(那)委員 通産大臣との関係で、武器輸出三原則のことについて伺います。  この三原則は、武器輸出そのものは憲法上不可能ではない、しかしながら政策的にこのような原則をとるんだ、このように言われているようでありますが、政策的にこの原則をうたうこういう根拠というのはどこにありますか。
  279. 堤富男

    ○堤政府委員 お答えさせていただきます。  武器三原則と申しますのは、現在通産省で所管をしております輸出管理令、これを運用する方針といたしまして、内閣あるいは国会等の決議等を踏まえまして、武器は輸出をしない、あるいは慎むということを決めておるわけでございます。
  280. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この三原則のロというところに「三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、」このような指摘があります。この「精神」、憲法の精神等は三原則を貫く原理だと思いますけれども、この憲法の精神というのは一体どういうことですか。具体的に説明してください。
  281. 堤富男

    ○堤政府委員 三原則の基本的な考え方は、憲法によります国際平和に貢献する、少なくとも国際的な紛争を助長するようなことをしないという、これは憲法の精神から出てきているものでございまして、武器を海外に売るということがいろいろな意味での紛争を助長するということを避けるという考え方からできているものと考えております。
  282. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうしますと、国際の平和を保つために、維持するために、武器が拡散していくことを防止して紛争拡大を防ぐ、このように理解していいわけですね。いいですか。では、そのことだけ。
  283. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 そのとおりでございます。
  284. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうしますと、この原則の精神、憲法の精神に反するような武器の輸出を行ってきた国々が多々あるわけであります。今回の湾岸危機における多国籍軍の大部分はそういう国であります。そうしますと、そういう国々を支援するということは、この我が国の輸出三原則及び憲法の精神から反するんではありませんか。
  285. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 先ほど局長が答弁いたしましたように、この平和協力法案は、もし成立をすれば、あくまでそれは国際的な平和の秩序を確保するというのが目的でございますし、これによって武力紛争を助長するということはない、私どもはこういう判断をいたしておりますので、そういうように御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  286. 山口那津男

    ○山口(那)委員 実際に武器の拡散を許すかどうかということではなくて、今おっしゃった憲法の精神に合致しないんじゃないかということを言っているわけなんです。そのとおりでしょう。
  287. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 先ほど局長が答弁いたしまして私が申し上げたと同じようなことを、先ほどいわゆる憲法の精神はそういうものでございます、そういう解釈でございますということを申し上げたので、私としても、そういう同じ解釈であれば、今度のこの法律の目的があくまで国際平和を確立するということであり、そして結果的に武力を、紛争を助長するものでないということであれば、従来の憲法の解釈から見て問題はない、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  288. 山口那津男

    ○山口(那)委員 もしそのような憲法の精神と合致させるというんであれば、今回の多国籍軍のような国連決議との関係が必ずしも明確でないような行動に対しては、国連の要請を受けるとかあるいは国連の明確な決議を要するとか、そういう場合にのみ支援をすべきであるというのがこの精神を尊重した考え方になるんじゃありませんか。総理、いかがですか。
  289. 堤富男

    ○堤政府委員 これは、今国会で平和協力隊についての性格論等が議論をされておりますが、まず武器三原則というものは武器を海外に輸出しない、あるいは慎むということでございまして、その考え方自身から申しますとそれなりの武器三原則から見た限界というのはあるわけでございまして、憲法と平和部隊との議論は、これはこれまでの議論の中でやりましたとおり憲法の精神を酌んでやっているものという考え方でございます。  それから武器三原則の話、ダブりますが、これは死の商人のように武器を売らないという考え方が基本にございますので、輸出令で武器を海外に輸出するようなものを特に抑えるということでございますので、その点私は、武器三原則の観点から見ましてもこの点は問題ないというふうに思っております。
  290. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今回、この輸出貿易管理令の政令の改正があったと思います。それで武器輸出三原則を強化するような内容の政令改正があったと思いますが、その点について説明してください。
  291. 堤富男

    ○堤政府委員 二つに分けて議論させていただきたいと思います。  一つは、今回政令等を改正いたしましたが、これは、近時ココム規制というものがだんだん緩和されてくるという状況を踏まえまして、貿易管理令をその国際的なコンセンサスに従いましてスリム化した、緩和したというのが条件でございまして、武器三原別の問題を特に強化するという意味ではございません。  それから第二点、武器三原則の観点から、かつて国会等で実効ある措置をとれということを決議を受けたことがございます。それを受けましたときには、輸出令の改正という形ではなくて、実際上の審査体制でございますとか審査の様式等を厳格化するというような形でやったことはございます。
  292. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その別表第一に武器に当たるような項目が列記されているわけでありますけれども、武器として新たに規制対象に追加した部分があるわけですね。それから化学兵器に原材料関係となるようなものもあわせてこれも規制対象にしているわけですね。この点についてわかりやすく説明してください。
  293. 堤富男

    ○堤政府委員 先ほどの御説明、若干舌足らずでございまして、化学兵器につきましては今回二品目追加してございます。大変失礼いたしました。  ただ、これはココムの規制という観点ではなくて、むしろ化学兵器の資材が従来から五十品目、たしか記憶に間違いなければやっておりましたが、これにさらに二品目を追加いたしまして、今回化学兵器関係のものが二品目追加されたということはございます。(山口(那)委員「運動エネルギー兵器は」と呼ぶ)それも入っております。
  294. 山口那津男

    ○山口(那)委員 過去にこの三原則に違反した実例があったようですけれども、どういうものがあったか、指摘してください。
  295. 堤富男

    ○堤政府委員 昭和五十六年でございましたが、大阪のさる鋼材輸出会社がりゅう弾砲ですとか迫撃砲の砲身、俗に言う半製品を通産大臣の承認を受けることなく韓国に輸出した例がございまして、これにつきましては国会等で、その武器輸出の管理の仕方に問題があるのではないかという熱心な御議論をいただきまして、それを受けまして国会決議が出されたわけでございます。これは衆議院、参議院両方とも出されましたが、その中で政府としては実効ある措置をとりなさいということがございましたので、それを受けて、先ほど申し上げましたような審査体系等について厳格な措置をとり、あるいは一般的にそういう可能性のある企業に対して厳格な社内管理をとるようにお願いをした例がございます。
  296. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今の言葉にもあるように、この三原則は厳格に運用されてきている、このように理解いたします。  そこで、この協力隊が小型武器を携行できるということになって外国地域へ派遣されるわけですが、この限度では武器の輸出に当たるということになるわけですね。
  297. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 武器の輸出に当たります。
  298. 山口那津男

    ○山口(那)委員 だとすれば、この三原則に触れる、つまり重大な例外をつくるということになろうかと思いますが、この協力隊が小型武器を携行する場合には、大臣としては許可をされるわけですね。
  299. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 先ほどから申し上げておるとおり、それはあくまでも国際平和の確立、それから国際紛争を助長しない、こういうふうに平和協力隊の任務があると私ども承知をしておりますので、そういう面においては例外的に私は許可をする、こういう考え方でございます。
  300. 山口那津男

    ○山口(那)委員 一たん許可をして日本から出された小型武器あるいはそれに伴う弾薬ですね、これを派遣地、派遣先へ行った場合に融通ができるかどうか。例えば持っていったものを他の者に譲り渡す、あるいは輸出とは違いますけれども他から弾薬あるいは武器を譲り受ける、このようなことができるのですか。
  301. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 これは、今の法律案を読んでおりますと、その中にはしっかりした管理をおやりをいただくということになっておりますし、どうしても必要な場合に対応するという形の法律が書いてございますから、これはそういうふうに私は運用されるもの、こういうふうに理解をいたしておるわけであります。
  302. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうしますと、それは協力法の管理の規定に任せるということであって、一たん許可して出してしまえば、その後どこへどう行くかはこの輸出三原則の運用という面で通産省はかかわらないということになるわけですか。
  303. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 これは、政府責任を持って平和協力隊というのはあるわけでございますので、私ども通産省直接はもちろんその現地に行っておるわけでもございませんけれども、これは法律のとおりしっかりと管理をし、どうしても必要なときに対応するということでございますし、もちろん私どもはそういう面において、しかも護身用にしか使わないということを聞いておりますので、そういう点においてはそういうようなことはないものと私ども理解をいたしておるわけでございます。
  304. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この三原則の趣旨を貫けば、その武器の管理規定においても、武器弾薬の融通等ははっきりできないとかあるいはこういう基準ならばいいとか、そういうことを明記すべきだろうと思いますけれども、いかがですか。
  305. 堤富男

    ○堤政府委員 事務的なことでございますので……。これは先ほど大臣の方から御説明ございましたように、輸出に該当をいたします。輸出の許可をするという格好になると思いますが、当然これは平和協力法によりまして厳格な管理が行われるということを前提といたしますが、さらに輸出許可をする際に、持ち帰りをするということを条件にした許可をすることになろうと思っております。
  306. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この三原則の趣旨をさらに全うするためには、日本から輸出するということだけではなくて、日本から外国の保有のものあるいは外国人保有のものについての移送、あるいは日本を経由しない武器等の輸送についても日本がかかわるべきではない、このように思うんですが、その点いかがですか。
  307. 畠山襄

    ○畠山(襄)政府委員 この物資協力のスキームの中で、今日ただいま外国のものをこの中で輸送していく、しかも武器に当たるというようなものがございませんのでまだ具体的な検討はいたしておりませんけれども、一般論として申し上げれば、その武器輸出三原則と背馳しないような形で、それから国際平和の目的を達成するという両方を考えながら判断をすることになるんだと思います。
  308. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この協力法の輸送の対象は特に限定はないという答弁がずっとあるわけですけれども、この三原則との関係からいえば、今の局長の御答弁にもありますように、趣旨に背馳しないように運用すべきである、このようなお答えだったと思いますが、これは政策の問題ですから、局長さんに答弁いただくよりは、やはり大事な政策を変更するかどうかということですから、総理お答えいただきます。いかがですか。——総理、いかがですか。もう聞いたからいいですよ。
  309. 畠山襄

    ○畠山(襄)政府委員 いえ、ちょっと補足というか、舌足らずだったかもしれません。私が今お答え申し上げましたのは物資協力の点でございまして、輸送協力の点について申し上げたつもりはございませんでしたので、念のため申し上げておきます。
  310. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私の質問は、物資協力について聞いているのではないのですよ。輸送がいいかどうか。つまり、日本から輸出するという狭い意味の場合だけじゃなくて、いろいろな輸送の形態について、この三原則の趣旨からいえば日本が輸送するということは許されないのじゃないか、こういうことを言っているわけです。それについて政策当局のお答え、いかがですか。
  311. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 我が国からの輸出につきましては、先ほど通産省の方からお答えがあったとおりでございます。  輸送との関連につきましては、この法案の第三条二号に規定されております輸送協力でございますが、その対象物、対象になるものにつきまして、この三条において特に制約があるわけではございません。しかしながら、この点につきましては、以前外務大臣から御答弁ございましたように、武力の行使と一体をなすような輸送協力は行えないということでございます。したがいまして、例えば現に戦闘が行われているような場所へ武器弾薬の輸送を行い得ないというのは当然でございまして、そのようなことはいたさないということでございます。
  312. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それは繰り返し答弁されていることでありまして、私が伺っているのは、武器輸出三原則、これは憲法の精神からくるものであって、憲法に直接触れなくても政策としてこのような方針をとるんだということを行ってきているわけでしょう。それを変更しよう、あるいは変更するかのような運用がなされようとしているわけですから、それについてどう考えるのか、明確な御答弁をいただきたいということです。総理あるいは法制局長官、いかがですか。
  313. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この点につきましては、先ほど来通産省の方からも御答弁ございましたが、この武器輸出三原則を変更するというような考えはございません。
  314. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この三原則は、協力法が成立すれば、その限度でもう既に変更になるわけですよ。さらに、その輸出の場合、日本からの輸出の場合だけじゃなくて、日本からの移送、あるいは日本を経由しない輸送、こういうことに日本がかかわるということは武器の拡散に日本が手をかすということになるわけでしょう。そういうことがこの三原則の精神からは許されない、こういうふうに先ほど説明されたじゃないですか。だから、政策の方針としては一貫して、こういうこともやらないということを明言すべきでしょう。そんなふうに考えますが、いかがですか。
  315. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、平和の破壊をむしろ抑えなければならぬ、そして平和を維持しなければならぬという立場で、いかなる協力ができるかを決めておるのがこの平和協力法でありますし、今いろいろ御議論になっております武器輸出三原則というのは、私に言わしむれば、この平和協力隊が護身用に必要なときに持っていくけん銃なんかのことなんかも、向こうへ行って売ってくるならいざ知らず、厳重に管理してきちっと身を守るという目的のみに使って、持って帰ってくるわけでありますから、法律論としては輸出になるのですけれども、それは紛争を助長するために持っていくのではなくて、身を守るために、紛争を抑えるという全く別の角度から見た大きな目的に従って動くわけでありますし、紛争が拡大されるときに使われるように置いてきたり売ってきたりするわけでは全くありませんので、そのところは政策的判断としては私は目的が違う、こう考えますが、学問的なことその他については法制局長官から理論的にお答えを申し上げます。私の率直な感覚を今私は申し上げました。
  316. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  先ほど通産大臣あるいは通産省の事務当局からもお話がございましたように、武器輸出の三原則というのは、この方針の最初にもございますように、「平和国家としての我が国立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため、」以下省略いたしますが、そういうふうなことになっておりまして、あくまでも国際紛争等の助長を回避する、こういうことが一つでございます。  それからもう一点は、今総理からおっしゃられましたように、やはり国連決議に基づいて、あるいは国連決議の実効性を確保するためにあくまでも平和的な協力をしたい、こういうことでございまして、全体の立場として、決して紛争を助長したりというふうなことで、小型武器にしましてもあるいは輸送の問題にしましてもそういう観点で行われるものではございませんので、そういう意味で、委員御指摘ではございますけれども、そういうことにはならないものと考えております。
  317. 山口那津男

    ○山口(那)委員 通産大臣、お引き取りいただいて結構でございます。  次に、憲法認識について総理にお尋ねいたしますが、憲法は言うまでもなく最高法規でありまして、これに反する法令はもちろん、条約についても制定、締結できないということになっております。したがって、まず憲法の限界というのはどこなのか、そして、その限界の中で立法政策としてどういうものを選択すべきなのか、こういうふうに論じていくのが議論の筋だろうと思います。しかし、今までともすればその辺が混同された議論が多かったのではないか、このように思います。  そこで、こうした協力法に当たって、その憲法の限界というものについてどのように総理認識されておられるか、簡潔に御答弁ください。
  318. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本国の憲法は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、」生存を決意したと前文に書いております。そして、いずれの国も「自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、」「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務である」、国際協調主義というのでしょうか、これは書いてあります。それから条文の方へいきますと、「武力による威嚇又は武力の行使」は行わない、書いてあります。  私は、今議員がおっしゃるように憲法制約は何だとおっしゃれば、憲法は民主主義とか基本的人権尊重主義とかいろいろございますが、問題を絞ってこの平和協力法の問題に当てていきますと、武力による威嚇または武力の行使を行ってはならない、物事は平和的に解決していくように、そちらの方向へ向かってのみ協力、参加をしていくべきである、日本武力行使の目的を持って戦闘集団を外へ出すというふうなことは憲法の許すところではない。この憲法の解釈はそうでありますから、この平和協力法案をつくるに当たっては、そのところをしっかりと踏まえて検討をさせたつもりでございます。
  319. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ところで、ここに「あたらしい憲法のはなし」という小冊子があるのですが、これは文部省が憲法に対する理解を深めるための副読本として昭和二十二年八月に発行したものです。文部行政にお詳しい総理ですから、これは既に読んだことがおありになるかもしれません。  この本の中にこういうくだりがあります。最初憲法について、   みなさん、あたらしい憲法ができました。そうして昭和二十二年五月三日から、私たち日本国民は、この憲法を守ってゆくことになりました。このあたらしい憲法をこしらえるために、たくさんの人々が、たいへん苦心をなさいました。 そういうフレッシュな書き出しで始まっております。そして戦争放棄のところの説明によりますと、   みなさんの中には、こんどの戦争に、おとうさんやにいさんを送りだされた人も多いでしょう。ごぶじにおかえりになったでしょうか。それともとう々おかえりにならなかったでしょうか。また、くうしゅうで、家やうちの人を、なくされた人も多いでしょう。いまやっと戦争はおわりました。二度とこんなおそろしい、かなしい思いをしたくないと思いませんか。こんな戦争をして、日本の国はどんな利益があったでしょうか。何もありません。た々、おそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。戦争は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。だから、こんどの戦争をしかけた国には、大きな責任があるといわなければなりません。   そこでこんどの憲法では、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。   よその国と争いごとがおこったとき、おだやかにそうだんをして、きまりをつけようというのです。そうしてよその国となかよくして、世界中の国が、よい友だちになってくれるようにすれば、日本の国は、さかえてゆけるのです。   みなさん、あのおそろしい戦争が、二度とおこらないように、また戦争を二度とおこさないようにいたしましょう。 こういう文部省で発行した本があるわけです。  この小冊子について、今のくだり、総理の御感想をお聞かせください。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  320. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 「あたらしい憲法のはなし」、昭和二十二年に文部省がつくったものであること、私も目を通しましたし、おっしゃるとおりのことが書いてございます。ですから、そういう理想的な、すべての国がそういったことになってくれるような理想を願って書かれたものでありますから、私はその考え方はそれはそれなりに評価できる考え方である。日本はそういう意味で平和憲法をつくったのですから。  ただ、残念ながら世界にはときどきそうではない人が、現に今イラクのフセイン大統領、これに適合しておるでしょうか、穏やかにお話をしておるのですけれども、私もラマダン副総理にはよく話してきて、お伝えくださいと言ってきたのですが、なかなか、そうかわかったと言って兵を引いたり人質をすぐ釈放したりされないところに問題があって、要するに理想の姿、あるべき姿というものとまた踏み外した問題が世界には起こるわけでありますから、そういうときにはこの憲法が示しておるように、平和的な手段で、穏やかな話し合いで本当にすべての人がそういったことを聞くように、むしろイラクにもすべての世界国々にも、こういう憲法の精神、趣旨のようなことをみんながしっかりと認識してもらうようになれば、それは日本国憲法が冒頭に書いた「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、」生存をゆだねることができるようになるわけでありますから、そこへ至るまでのその理想を実現するために国連が今いろいろな決議をしたり制裁をしたり、ここに正義に反するものがあるといっていろいろ世界が力を合わせて努力をしておるのでありますから、私はそういう努力が平和的な解決の方向に実っていくことを強く願っておるわけでございます。
  321. 山口那津男

    ○山口(那)委員 我が家のことを申し上げるのは恐縮なんですが、二歳の息子がおりまして、この中東問題のニュースがテレビで流れると、わあ戦いだ戦いだと言って騒ぐのですよ。これは、あるいは中東からの石油によってつくられたかもしれないプラスチックの刀を持ちまして振り回すわけです。この中東というと戦争と直結して考えるようなイメージ、そういう漠然たるイメージというものが国民の間に定着してしまっているようでありますが、これは果たしてマスコミがそういうものを流し過ぎるから悪いのでしょうかね。それとも政府議論の展開の仕方が大きく影響しているのかもしれませんね。その辺について、総理としてはどうお考えになりますか。
  322. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の湾岸危機で確かにお宅の二歳の坊ちゃんまで刀を振り回さなければならぬほど恐怖感を与えたのは、やはりイラクの問答無用の力による侵攻、侵略ということがこの平和な時代にまだ現にあるということではないでしょうか。私はそうとしか受け取れません。そしてさっきおっしゃいましたように、世の中はできるだけ平和な話し合いで片つけるようにすべきだ、私全くそうだと思うのですよ。また、そうしなければならぬと思っておるのです。  ところが、いつかもここで申し上げてしまいましたが、お尋ねがあったから言いますけれども、この法案は残念ながらまだすべての御家庭に配布になっておりません。ですから、この第二条に「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」ということは、率直に言って周知徹底されていないのではないか。政府は戦闘部隊を出すとか、戦闘機を出すとか、戦車を出すとか、そんなことはゆめゆめ考えておりませんし、一度もそんなこと申し上げたことございません。  けれども、やはり今非常に情報化時代といいますか、ニュース解説の時間とか解説の時間に必ずその戦車が出ていったり火を吐く戦闘部隊が行進されれば、そのことだけをごらんになると、あ、そういうことなのかなあと短絡的にお考えになったり、あるいは現に、現に行われたことは一つの国家武力による侵略、併合という事実だものですから、ああ、そうするとああいったことになるのかという錯覚が起こる可能性もあるわけで、政府がそれをやると言っておるわけでは決してございませんので、どうかその点は山口先生には御理解をいただきたいと思うのです。この法案のどこを読んでも、戦闘部隊に武器を持たせてそのままどんどん出すのだということでは決してございませんので、これはおわかりをいただきたいと思います。
  323. 山口那津男

    ○山口(那)委員 次に、「参加」と「協力」について統一見解が先週出されましたけれども、私、幾らこれを読んでもますます混乱してわかりにくくなるばかりで、改めてこの内容について伺いたいわけです。  初めに、語義についてちょっと確認的に伺っておきます。  この協力というのは参加を含む広い意味での関与形態をあらわすものだ、こういう指摘がありますが、従来の答弁ですと、参加と協力は異なるものだ、そして協力ならば合憲であり、参加ならば違憲である、このように御答弁があったかのように思いますが、この協力という概念をこの統一見解で変えたのですか。
  324. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 語義を変えたかという御質問ですが、私の方で語義を変えたことはございません。従来、参加と協力というふうに対比して申し上げているときというふうなことで協力のお話を申し上げておりますが、協力自身につきましては、そういう意味では、ここにございますように、いわば参加と協力という対比して申し上げるようなときはどちらかといえば狭い意味のことを申し上げておりますし、協力というのは一般的に申し上げれば力を合わせて何かをする、こういう意味では当然広い方の語義もいわゆる国語としてはあり得るし、また、それも当然のことと、かように考えております。
  325. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうすると、この参加を含む関与形態の協力というのは国語的意味であって、今回の平和協力法における協力という解釈として述べているわけではない、そういうことになりますね。
  326. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 今申し上げましたのは決してそういう意味で申し上げたわけではございませんで、例えば従来も、その任務・目的に武力行使を伴わないもの、こういうふうなものの協力、あるいは、そういうものに対しての一番端的な例は停戦監視団のようなものでございましょうか、そういうものに対しての参加というものもあり得る、参加といいますか、そういう意味で広い意味協力というのはあり得る、こういうことでございます。
  327. 山口那津男

    ○山口(那)委員 次に、「「参加」に至らない「協力こという言葉が使われていますが、これは「参加」が「司令官の指揮」ということで定義されていますから、国連軍の司令官の指揮に入らないあらゆる関与形態を指す、このように理解していいですね。
  328. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ここで、先日出しました資料によりまして、「「参加」と「協力」とが考えられる。」と言った上で、「「協力」とは、「国連軍」に対する右の「参加」を含む広い意味での関与形態を表すものであり、当該「国連軍」の組織の外にあって行う「参加」に至らない各種の支援をも含む」、かように書いてございまして、そういう意味協力というのは、いわば前にありますような「指揮下に入り、その一員として行動することを意味」するというのとまた対比した意味で申し上げておる、こういうことでございます。
  329. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そして、その指揮下に入らない場合であっても武力行使と一体となるものは違憲だ、こういうわけですから、この「武力行使と一体となるようなもの」というのは参加も含むという広い概念である、このように理解していいわけですね。  もう一度申し上げましょうか。指揮に入らない場合、指揮下に入らない、つまり参加に当たらないという場合でも武力行使と一体となるものは違憲だ、こういうふうに書いてあるわけですね。しかし、この「武力行使と一体となるようなもの」というのは、これは参加を含んだ、つま協力の一形態でありますから、参加をも含む広い、参加よりも広い概念だ、こういうふうになると思いますけれども、そう理解していいですか。
  330. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 法案との関係がございますので、私から御答弁申し上げます。  ただいま御指摘の点につきましては、前回の統一見解の四項におきまして「右の「参加」に至らない「協力」については、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであっても、それがすべて許されないわけではなく、当該「国連軍」の武力行使と一体となるようなものは憲法上許されないが、当該「国連軍」の武力行使と一体とならないようなものは憲法上許されると解される。」というふうになっておりまして、ここで対象になっておりますいわゆる協力は、この「「参加」に至らない「協力」」、言いかえれば狭い意味協力ということだと解しております。その場合に、これが仮にいわゆる国連軍の目的・任務が武力行使を伴うものであっても、それが狭い意味協力、すなわちこの組織の外から行う協力、こういうようなものである場合には、武力行使とは一体とならなければできるし、一体となれば憲法上許されない、こういう趣旨でございます。  繰り返しになりますが、ここではいわゆる狭い意味協力について論議しているというふうに考えております。
  331. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私が聞きたかったのは、その参加との関係なんですね。参加が許されないというのは指揮下に入るから、これは九条の根本からくるわけですけれども、指揮下に入るということは当然に武力行使と一体となる、だから許されない。しかし、この参加にならないような協力形態であっても、武力行使と一体と理解される場合には憲法上許されない、こういうわけでしょう。ですからこれは、武力行使と一体となるか否かという概念は、参加よりもより広い概念である、こういうふうに理解できると思うのですが、どうですかと聞いているわけです。
  332. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 まず第一に、参加という場合に、五十五年の答弁書にもございますように、その任務・目的が武力行使を伴わないもの、これに対する参加は、これは幾ら参加し指揮官のもとに入って一体化しましても、もとが大体武力行使を伴わないものでございます。それは我が国から見て武力行使とはとても考えられない、こういうことがまずございます。  それからもう一方で、いわゆるここで言うと狭い意味協力でございますけれども、狭い意味協力でも、協力といえば何が何でも全部許されるということではなくて、それがもうまさに武力の行使と一体化してしまうようなもの、これは許されない、こういう観点を申し上げているわけでございます。
  333. 山口那津男

    ○山口(那)委員 語義のことを言っていてもしようがないですから、次に移ります。  この間の市川質問では、昭和五十五年の鈴木内閣の答弁書、この答弁書が、国連軍について、その目的・任務が武力行使を伴うものであれば参加は違憲である、このようになっていたことから、その国連軍を多国籍軍に置きかえたとしても違憲になりますよ、こういうことで、そのとおりですという御答弁が総理からも法制局長官からもあったと思います。  そこで、その質問で一番聞きたかったことは、これは、多国籍軍への参加と協力、これがどう区別できるのかという多国籍軍との関係において一番聞きたいわけですね。ところがこの統一見解においては、この多国籍軍との関係というのは何ら言及されてないのですよ。これでは何が何だかわからない。この多国籍軍との関係についてどのように理解したらいいのですか。
  334. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 従来の、昭和五十五年の政府質問主意書に対する答弁書はおきまして、「いわゆる「国連軍」」、従来設けられました「いわゆる「国連軍」」についての答弁を申し上げております。そういう意味で、今回のも同じように「国連軍」という形で書いてございます。その「関与のあり方としては、」と、そういう形で書いてございますが、これは格別多国籍軍であってもその考え方には変わりはない、かように考えております。したがいまして、多国籍軍がその任務・目的に武力行使を伴うものであれば、これに対する参加ということは許されないし、それに対する協力というのは、武力行使と一体になるようなものでなければ許される、これが先日お出ししましたものからの演繹したところだろうと思います。
  335. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうだとすると、参加というのは、「指揮下に入り、その一員として行動すること」と、こういうふうに言われているわけですが、多国籍軍にはこうした統一した指揮官というものが全く考えられないのじゃないですか。多国籍軍の場合に指揮下に入る、つまり参加になるということがどうなっているのか。これは明確じゃありません。どういうことになるのですか。
  336. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 多国籍軍は文字どおり多国籍軍でございまして、ただいま仰せのとおり、統一した指揮系統というのはないわけでございます。これは、それぞれこのような軍隊を派遣した国の指揮下にあるわけでございます。したがいまして、この参加の問題につきましては、これは仮定の問題でございますが、何が問題かと申しますれば、そのような個別の派遣国の指揮下に入るかどうかという問題でございまして、この法案との関係で申しますれば、もとよりそのような任務の平和協力隊を出すということは全く想定されていないわけでございます。
  337. 山口那津男

    ○山口(那)委員 もう一つ、その協力というのは、「「国連軍」の組織の外にあって行う「参加」に至らない各種の支援をも含む」、こういうふうになっていますが、多国籍軍には統一指揮系統もないばかりでなく、組織というものも考えられないわけですね。考えにくいわけです。そうすると、「組織の外」というのはこの多国籍軍の場合どういうふうに理解すればいいのですか。
  338. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 これはただいま御答弁申し上げたことと関係があると思いますが、この場合、これを多国籍軍と置きかえた場合におきましては、そのそれぞれの軍隊の組織というふうにおとりいただいていいと思います。
  339. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうなると、個々の軍隊の中に混在して入っている場合には、これは参加に当たらない、こういうふうに受け取れそうですけれども、それはともかくとして、さきの五十五年の鈴木内閣の答弁書、これは自衛隊の関与の対象である国連軍、この国連軍の性格が違憲判断の基準であった。つまり、その任務・目的が武力行使を伴うか否か、そういう国連軍の性格が判断の基準であったと思います。答弁書は、協力なら許されるとかどうとかということは一言も書いてありません。  そこで、今回の見解で「「参加」に至らない「協力」」なら許される場合があるということになるわけですが、この鈴木答弁書の見解を変えるものである、変更するものであるということになりますか。
  340. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 結論から申し上げれば、全然鈴木内閣当時の答弁書の結論を変えるものではない、かように考えております。と申しますのは、この答弁書におきましても、当該部分だけ申し上げれば、先日から何回か出ておりますが、いわゆる国連軍、これは過去におきました国連軍でございますが、   いわゆる「国連軍」は、個々の事例によりその目的・任務が異なるので、それへの参加の可否を一律に論ずることはできないが、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないと考えている。これに対し、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴わないものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないわけではないが、現行自衛隊法上は自衛隊にそのような任務を与えていないので、これに参加することは許されないと考えている。 この部分を変えることでは毛頭ございません。
  341. 山口那津男

    ○山口(那)委員 鈴木内閣の答弁書は、国連軍が武力行使の目的・任務を伴うか否かということで区別されていたわけですね。その限りでは明快なわけです。そして、長い間安定した運用理解を得てきたわけですね。  しかし今回、その参加という意味が縮められた、協力との解釈によって縮められたように受け取られるわけですね。これは重大な変更じゃありませんか。少なくとも国民は、武力行使を伴う、そういう目的・任務を持つ国連軍について自衛隊がかかわることは違憲である、こういうふうに簡明に理解してきているわけですよ。それが、協力ならば許される、参加の意味はここまでだと今回ぐっと縮めて解釈しているんじゃありませんか。これは大幅な変更だと思いますが。
  342. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 決して意味を縮めているとかいうことではございませんで、前回の五十五年におきましても、いわばその参加すること、それによって、その参加するもとになるいわゆる国連軍がその任務・目的において武力行使を伴うということであれば、いわばそれと一体化するということは、みずからは実力の行使を行わなくともいわば全体としてそういうふうに評価される、それが翻って我が国にとって武力の行使を許さないという憲法から見て問題だ、こういう前提でございますので、我が方が、いわゆる入り込むというとまた先回と同じことになりますが、指揮下に入り、その一員となって行動する、こういうことになれば、それ自身が、先方がそういう武力の行使を目的・任務に伴うものというところの中へ入り込むわけでございますから、そういう意味でそういう評価を受けても仕方がなかろう、そういうものは許されないんだということでございまして、この前回の五十五年の「参加」の意味も、まさにそういう入り込んだ形における評価を逆に憲法上どう見るか、こういうことで書いているわけでございますので、全然意味を縮めたりするものではございません。(「関与形態については制限を設けてなかったんだ」と呼ぶ者あり)
  343. 山口那津男

    ○山口(那)委員 おっしゃるとおりでして、関与形態について何ら言及がなかったんですよ。だから、参加というのは非常に一般的な関与形態として理解されてきたはずです。私もそう理解してきました。しかし今回、一体性とか協力とかいう言葉を持ち出すことによってその参加の内容が、つまり関与形態がぐっと縮められた。指揮下に入るなんということはこれまで一遍も出たことないですよ。戦後三十五年以上、憲法の解釈において一回も出たことないんですよ。これは重大な変更じゃありませんか。納得できませんね。
  344. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 これは先回もお答え申し上げたところでございますが、憲法上許されるあるいは憲法上許されないということは何から来るかといえば、我が国として武力の行使を行うことはできない、そういうことから来るわけでございます。武力の行使を行うことができないといいますのは、仮に我が国が実力の行使を伴わなくとも、その任務・目的に武力行使を伴うそういういわゆる国連軍の中に参加する、そこの指揮下に入り、それの一員となって行動する、こういうときにはまさにそう見られるから、武力の行使を行っていると見られるからいけない、憲法上許されないんだ、こういうことでございますし、その目的・任務が武力の行使を伴わないいわゆる国連軍であれば、これはいかに我が方が入り込んでその指揮下に入り、あるいはその一員となるということによっても武力の行使とはならないわけでございます。したがって憲法上許される、こういうのが従来の五十五年の答弁書でございますし、その立場をいささかも変えてはいるわけではございません。
  345. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この「「参加」に至らない「協力」」を武力行使と一体となるか否かで合憲性を判断しようというのが今度の見解のようですけれども、この一体性ということも何が何だかさっぱりわからないんですよ。これはあれですか、空間的、時間的にどうにかなると、ここまでは一体だ、ここまでは一体でない、そういう判断ができるんですか。例えば、この紛争地域にまで武器弾薬等を輸送しないまでも、その手前でとめたとしても、それが使われたらどうなるんですか。武力行使を行う一月前に運んだ弾薬が実際に使われたらどうなるんですか。これは一体でしょう、そう見られませんか。一体というのはどういうことですか。
  346. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 実際に生起いたします武力紛争というのは大変千差万別であると思います。したがいまして、この問題は結局その具体的な紛争に即してケース・バイ・ケースに判断せざるを得ない問題であると思います。  非常に典型的な例として従来挙げられておりますのは、例えば地上で戦闘が行われておりまして、それに空挺部隊から弾薬を補給するというようなものにつきましては、その空挺部隊から弾薬を落とすというような活動それ自体は補給かもしれませんが、しかし、そのような場合には武力行使と一体となるとみなされるのではないかというふうに考えておりますが、ただ、初めに申し上げましたように、実際の武力紛争というのは大変千差万別で、いろいろな状況があると思います。したがいまして、そのような状況に即してケース・バイ・ケースに判断する必要があるというふうに考えております。
  347. 山口那津男

    ○山口(那)委員 これは憲法問題なんですよ。どこまでが憲法で許されて、どこまでが許されないか。許される範囲で政策の選択はあり得るかもしれないけれども憲法に違反するか否かはその場合のケース・バイ・ケースで判断するなんて、こんないいかげんなことじゃ困りますよ。一体性があるかないか、これは重大なメルクマールです。どうやって、どういう手続で判断していくのですか。実施計画で判断して、このときはある、このときはないとやるわけですか。そんなことじゃ、憲法に反するかどうか、我々国民一般はわからないですよ。また、それに参加しようとする国民だって、どこまでが憲法で許されることなのか、全然これじゃ判断できません。もう少しわかりやすく説明してください。
  348. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 例えば湾岸の情勢に関しまして、あらかじめこれこれの協力をするというような一般的、抽象的な計画を立てるということではございませんで、個々具体的なニーズなり要請なりを踏まえて、個々の状況に照らして実施計画をつくっていくわけでございます。この実施計画そのものは、平和協力本部で作成いたしまして、平和協力会議の諮問を経て閣議決定をする、そこで慎重な判断を行うということでございます。
  349. 山口那津男

    ○山口(那)委員 以前、安全保障特別委員会で私が法制局長官にお尋ねしたことがあるのですが、刑法の関係で、共同正犯あるいはさらに広く共謀共同正犯という考え方があります。そういう考え方に立てば、武力行使と一体というのは、まさにこの共同正犯あるいは共謀共同正犯に当たるような場合と同じなんじゃないですか。明快に答えてください。
  350. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 確かに、先日の委員会におきまして委員からそういうお尋ねを受けました。私、そのときに必ずしも明快にお答えしたとはちょっと思えないわけで、そういう記憶がございます。  それで、いわゆる刑法におきます共同正犯といったような観念とこの場合とが全く同じであるのかどうか、私ちょっと自信がございません。といいますのは、今回のここで問題になりますのは、憲法九条の目から見てそれが武力行使となるのかならないのか、こういうことでございまして、そういう例えば補給なら補給という行為がございましたときに、それがいわゆる現実に行われております武力の行使と一体になる、どこから見ても、どこから見てもというより、客観的に見ましてそういう武力の行使と認められる、こういうことが問題だという意味でございまして、それは、そのときには我が国として武力の行使を行ってはならないという規範に外れる、こういうことでございますので、いわゆる狭い意味協力、これによりまして行っても武力の行使と見られないようなものはまたございましょうし、それで、先ほど非常に限界が不明確だとおっしゃいましたけれども、確かに法律上あるいは憲法上の目から見ればそういう線があるとしても、政策的に、ただいま条約局長が説明されましたように、それのぎりぎりまでやらなければならないあるいはぎりぎりとはどこだということと、政策的な選択としてどこでとめるかというのとはまたおのずから別個の問題であろう、かように思います。
  351. 山口那津男

    ○山口(那)委員 共犯との関係はひとまずおいて、外患罪というのがあります、外患援助罪。これはどういう規定かといいますと、外国からの武力行使があったときに「之ニ与シテ其軍務ニ服シ其他之ニ軍事上ノ利益ヲ与ヘタル者」、これは重罰に処せられる、死刑以下とあります。その軍事上の利益を与えた者というのはどういうことを言うかといいますと、武器、弾薬、糧食、医薬品などの支給、運搬、軍事情報の提供、部隊の誘導、兵員の輸送、このような外国武力行使に有利な有形無形の手段の供与一切を言う、こういうふうに言われているわけです。これは一般的な理解ですよ。  そして、さらに共犯との関係でいえば、共同正犯というのはまさに正犯、武力行使をやった者と同じように評価されるわけです。どういう場合かといえば、武力行使が実行行為だとすれば、それをやることがわかっていて同じ目的のもとに協力した、支援した、こういうことになるわけですよ。だから、一体性という考え方を仮に言い張るのであれば、そのように理解するのが極めて筋の通った、素直な理解だと思いますが、いかがですか。
  352. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国内法の関係につきましては、あるいは必要に応じてまた法制局長官の方から御答弁があるかもしれませんが、私は、この問題は今何を念頭に置いているかと申しますれば、やはりこの国際社会が侵略者であるイラクに対してどのような制裁を加えるかということで国際的に協力しているわけでございます。したがいまして、これはすぐれて国際社会、国際法の世界の問題でございまして、そのような問題につきましても、もちろん国内法の何と申しますか、類推ということが助けになることはございますけれども、ただ、やはり国内法である刑法をそのまま当てはめられるかどうかということになると、これは私、必ずしもそうはいかないのではないかというふうに考えます。
  353. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今、刑法の解釈そのものを言っているのじゃないのですよ。この共犯の理論というのは、最も関与の形態について精緻にわかりやすく述べたものなんですよ。だから、それを類推の手がかりにして私は述べているだけなんです。一体性ということが必ずしも明確じゃないから、共犯に例えてみればこういうことになるのじゃないかということを申し上げているわけです。一体性についてもっとわかりやすく述べてくださいよ。  例えば、戦闘地域に至らなければ、至らない空間の範囲で武器弾薬を輸送することは許されるのですか、どうですか。
  354. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほども申し上げましたように、実際の武力紛争というのは大変複雑な状況であると思います。したがいまして、その与件の一部だけを取り出しまして、この場合はどうか、あの場合はどうかということを判断するのは大変難しいと思います。ただいまおっしゃいました空間的な関係というのも、幾つか、たくさんある要素の一つではあると思いますが、それのみならずいろいろな態様、状況を総合的に判断して決めるべき問題であるというふうに考えます。
  355. 山口那津男

    ○山口(那)委員 総合勘案して具体的に決めるというのは、でき上がった法律憲法で許された法律の解釈のときに言うことですよ。憲法判断ですから、これは明快に述べてもらわなければ、どこまで許されるかどうか、国民もわからないし、国際的にも通用しませんよ。  今、空間のことを申し上げましたけれども、時間的にどうですか。さっき言ったように、武力行使に至る一カ月前に武器弾薬を将来紛争地域になるべき場所へ運んだ、それで実際に使われた、これはまさに一体と見るのが普通じゃないですか。
  356. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 大変繰り返しになって申しわけございませんけれども、実際の武力紛争というのはいろいろな要素があるわけでございますので、一カ月前ならよくて一週間前なら悪いとか、そういうことを実際の事例から離れてここであれこれ申し上げるというのは適当でないと思います。したがいまして、やはり具体的な案件に即して判断する、ケース・バイ・ケースに判断していくと申し上げるほかないと思います。
  357. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そういう答弁に終始するのであれば、あなた自体が一体性の判断がわかってないということですよ。我々もわかりません。明快にしてください。もう一回、統一見解出し直したらどうですか。一体性の中身についてこれ何にも説明されてないのですよ。そんなケース・バイ・ケースでは困りますよ。何とかしてください、これ。
  358. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員長代理 委員長から申し上げます。  それでは、質問者山口君がもう少し理解ができるように、今までの答弁を整理してもう一度御答弁をお願いします。工藤内閣法制局長官
  359. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 この武力の行使と一体をなすという答弁は、何も今回初めて申し上げることではございません。実はこれは二、三回ございますが、昭和三十四年の参議院予算委員会におきまして、例えば米軍と一体をなすような行動をして補給業務をすることは憲法上違法ではないかと思いますという、これは亡くなられた林修三元長官が答えているところでございますし、さらに昭和五十七年には参議院の外務委員会におきまして、これも元長官でございますが、角田の方から、一体をなすような行動をして補給業務をやる、これはその補給という観念の方から見るのじゃなくて、それ自体が武力行使の内容をなすような、直接それにくっついている、こういうものはむしろ武力行使としてとらえられる、そして憲法に反するというような意味で林元長官が言われた、これは先ほどの三十四年のを引きましてそういう答えを申し上げているわけでございます。したがいまして、この武力行使と一体をなすという概念あるいはそういう憲法上の判断ということは、そういうときからずっと言われてきているところでございます。  なお、具体的にというお話でございますが、これは先ほど条約局長からも答弁がございましたように個々のケースで申し上げるべきところだろうと思いますが、例えば典型例としてこういうのは入らないあるいはこういうのは入るというふうなところはあるいはあろうかと思いますが、それではその中でぎりぎりのところどこだというところにつきましては、先ほど申し上げましたように、それから一歩下がった政策的な判断、かようなものがあり得ることと存じます。
  360. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その林長官と角田長官の答弁というのは何にも答えてないのですよ。一体であれば許されないと言っているだけであって、一体性の中身なんか何にも言ってないのですよ。角田長官の答えというのは、直接くっつく場合、これは武力行使と同視できる、こう言っているのですよ。だけれども、今言っている協力というのは違うでしょう。「「参加」に至らない「協力」」、これは武力行使と一体となればだめだと言っているのでしょう。さきの答弁とは違うのですよ。また、事後的に後で考えて、いろいろ考えてみたら憲法違反だったとかそうでなかったとか、こういう基準では困るのですよ。事前に明快になっていなければ我々わからない。法律が合憲なのか違憲なのか、それすらもわかりませんよ。距離的なメルクマールで判断するのですか、それとも時間的なメルクマールで判断するのですか、どっちなんですか。さっきから聞いているけれども、全然わかりません。明快に答弁してください。
  361. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 考え方につきましては、ただいま法制局長官が答弁されたとおりであると思います。この三十四年の林法制局長官の御答弁、それからその後の五十七年の角田元長官の御答弁、いずれもこの米軍の行動と一体となすような補給業務に関する問題でございますが、このような具体的な行動と一体となすかどうかという判断は、先ほど来申し上げていますように、単に空間的という関係だけではございませんで、その他の諸要素を勘案して、その具体的な案件に即してそれぞれ判断せざるを得ない、これをあらかじめ一般的、抽象的に申し上げることは大変難しいということでございます。
  362. 山口那津男

    ○山口(那)委員 あらかじめ判断できない、またその基準も必ずしも明確でない、これでは基準としての意味なさないでしょう。これ、何で統一見解出したんだ。これでは統一見解になりませんよ。  また、ついでに伺いますが、武力の行使のみを今まで言ってきましたけれども武力による威嚇というのも憲法上禁じられていますね。これについての答弁も今まで必ずしも明確ではありません。この武力による威嚇というのはどういうことをいうのですか。
  363. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 先に武力の行使の方から申し上げた方がよろしいかと思いますが、憲法の九条一項におきまして、いわゆる戦争と武力の行使、これを書き分けておりますところから、いわゆる国際法上の戦争、宣戦布告をし、あるいは最後通牒を出すというふうな、そういう形式的な意味の戦争に至らない戦闘行為、実質的意味における戦争に属する軍事行動、こういうものをいうと説明されております。  そこで、武力による威嚇の方でございますが、通常、現実にはいまだ武力を行使しない、今のような形、武力を行使しないが自国の主張、要求を入れなければ武力を行使するという意思、態度を示すことによって相手国を威嚇すること、このように説明されているところでございます。
  364. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうしますと、武力による威嚇、つまクウェートから撤退しろ、そうしなければ攻撃するかもしれませんよ、こうやって多国籍軍は武力によって制圧しているのではないですか。単なる抑止にとどまって攻撃しませんなんとは宣言していませんね。さらに、十万人もさらに増派する、こういうことまで言っているのでしょう。これはまさに武力による威嚇ですよ。そうでしょう。武力の行使と武力の威嚇による関与の仕方は全然違うのです。ですから、これによってどうなるのか、一体性というのはどうやって判断するのか。もう一度統一見解出し直してくださいよ。中途半端では困ります。多国籍軍を含めて、武力の威嚇を含めて、どうやって武力行使あるいは威嚇との一体性を判断するのか、わかりやすくもう一度統一見解出し直してください。これは政府が出した統一見解なんですよ。我々にはわからないのです。政府の方でわかりやすく説明する義務があるじゃありませんか。統一見解出し直してください。
  365. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 武力による威嚇という点にお触れになりました。この点につきましては、先ほど法制局長官から明快な御答弁があったと思います。  今回の事態に即して言いますれば、八月二日に何が起こったかといえば、イラクが武力の行使をしてまさに侵略をしたわけでございます。それに対して国連がこれの回復、平和の回復をしようとして今みんなが協力しているというところでございまして、多国籍軍が展開して抑止力を行使しているという実態があるわけでございますが、これはいわゆる武力による威嚇ということではなくて、イラクの侵略に対して安保理が一連の決議を採択して、これに対して各国協力しているということでございます。したがいまして、これは武力による威嚇というよりは、以前外務大臣からも御答弁ございましたが、国際社会協力してイラクに対して抑止力を働かせている、こういうふうに考えるべきものというふうに考えております。
  366. 山口那津男

    ○山口(那)委員 武力行使というのは、実力に係る概念です。国連決議があったかないか、そんなこと関係ないのですよ。武力の威嚇も同じことですよ。国連の加盟国が多数参加しているから正当化されるものじゃないのです。我が憲法の解釈として、武力行使と見られるか、あるいは武力による威嚇と見られるか、それが問題なんですよ。それから先ほど引用された林長官や角田長官等の答弁、これは安保条約との関係で述べられているわけです。今回のように自衛隊の海外派遣へ絡めて論じられたものではないのですよ。だから、必ずしもあの答弁を引用されてもわかりにくいわけですけれどもね。  いずれにしても、幾ら繰り返し言われようとも全然わからないですね、一体性について。ちゃんとわかりやすく説明してくださいよ。さっきから言っているように、時間的な概念なのか空間的な概念なのか、どうやって一体性を判断するのか。
  367. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員長代理 答弁ありますか——もう一遍答弁しますか。柳井条約局長
  368. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど来申し上げておりますように、やはり具体的なケースに即して判断すべき問題であるというのが基本でございます。委員の仰せられたような空間的な要素あるいは時間的な要素というものも確かにあると思います。しかしながらこれも、それぞれの具体的な武力紛争がどのような態様のもとで行われるかという点を離れて、そのような二つの要素だけで抽象的に決定するということはできないと思います。結局は具体的なケースに即して判断するというふうに申し上げるほかないと思います。
  369. 山口那津男

    ○山口(那)委員 具体的にいろいろなものを勘案するといったって、何をどういう基準で勘案するのか全然わからないじゃないですか。しかも、これが合憲か違憲かというのは最高裁判所じゃ判断できない問題ですよ。この国会で明らかにしなければ明快になりませんよ。どうやって判断するのですか。その基準、一体性、全くわからないですよ。ケース・バイ・ケースとさっきから繰り返し繰り返し述べているだけじゃありませんか。わかりやすく述べてくださいよ。もう一度統一見解出した方がいいんじゃないんですか。(発言する者あり)だったら、こういう統一見解出さなきゃいいんだよ。
  370. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員長代理 山口君に申し上げます。  政府の答弁は先ほど来一貫して行われているわけでありますので、質疑を続行してください。
  371. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私の聞いていることに全然答えてませんよ。
  372. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員長代理 委員長から申し上げます。  質疑を続行してください。
  373. 山口那津男

    ○山口(那)委員 同じこと繰り返していてもしようがないです。
  374. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員長代理 山口那津男君に申し上げます。質疑を続行してください。
  375. 山口那津男

    ○山口(那)委員 質問をもう一度言いますけれども武力行使と一体となるものは許されない、こういう見解を述べているわけですけれども、この一体性が何なのかということは明らかじゃないわけです。それは距離的な関係で判断するのか、あるいは時間的な関係なのか、その両方なのか、どういう基準で具体的な個々のファクターというものを違憲か合憲か総合判断していくのか、この基準すら明確じゃないのですよ。一体性という言葉を、さっきから具体的な総合判断をするという言葉を繰り返しているだけであって、どういう場合に一体と判断されるのか、これが明確じゃないわけです。これは後で裁判をやって最高裁で判断できるような性質のものじゃありません。ですから、これは国会で明らかにしなければ、しかも事前に予測可能なものとしてこの判断基準が示されなければ、これは我々到底納得できませんよ。  そういう意味で今回の統一見解だけでは、今の答弁を伺っただけでは不明確なままです。ですから、もう一度明らかにしてください。言葉で答弁できないようであれば、これは武力による威嚇の場合、武力行使の場合、さらに国連軍、多国籍軍の場合、これを含めて明快にもう一度統一見解を出していただく、これが私の質問の趣旨です。
  376. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 私の方が先ほどから問題にしております考え方の基準と申しますのは、やはり憲法九条から発するわけでございます。そういう意味で、いわゆる我が国武力の行使と見られることになるかどうか。我が国武力の行使をしてはならない、こういうことでございますから、あるいは武力による威嚇まで含めても結構でございますが、そういうふうに見られるかどうか。そういうふうなものであれば憲法違反と言われ、それは憲法上許されない、こういうことでございます。そういう観点から、要するに憲法九条から端を発して見るべきである、こういうことでございます。  したがいまして、直接に武力の行使をするのはもちろん許されない。それから、他のものがやっている、けれどもそれに対して協力をする、その協力をすることが、先ほど過去の答弁例を申し上げましたけれども、それがまさに武力の行使と客観的に見られる、そういうものとくっついているとか、過去の答弁例で引きましたけれども、そういうふうな行動に該当することになる、これは憲法の目から見て許されない、こういう意味でまず基準を申し上げているわけでございます。  それを具体的に当てはめといいますか、そういう観点から申し上げますと、まさに先ほどからの条約局長お答えにありますように、非常にいろいろなケースがあり得るということでございますが、あえてその判断基準の一、二を申し上げれば、先ほど距離的とか時間的とかおっしゃられましたけれども、現にその他のものが戦闘行動を行っている、あるいは行おうとしている、そういった地点とこちら側の行動との間の距離といいますか地理的関係といいますか、そういうふうなものもございますでしょうし、それから我が方のやります具体的な行為の内容もございますでしょうし、あるいはそういう他の、武力行使を現にしているようなものとの関係におきまして、どの程度それに密接になっているかという問題もありましょうし、あるいはその相手方、相手方といいますのはその協力しようとしている相手方の活動の現況、こういったものもございます。そういったことを総合勘案する必要がある、こういうふうに申し上げているわけでございます。  それで、過去に問題があると言いましたようなケースにつきましては、例えば現に戦闘が行われているというふうなところでそういう前線へ武器弾薬を供給するようなこと、輸送するようなこと、あるいはそういった現に戦闘が行われているような医療部隊のところにいわば組み込まれるような形でと申しますか、そういうふうな形でまさに医療活動をするような場合、こういうふうなのは今のような点から見て問題があろうということでございますし、逆にそういう戦闘行為のところから一線を画されるようなところで、そういうところまで医薬品や食料品を輸送するようなこと、こういうふうなことは当然今のような憲法九条の判断基準からして問題はなかろう、こういうことでございます。したがいまして、両端はある程度申し上げられる、こういうことだと思います。
  377. 山口那津男

    ○山口(那)委員 両端を今挙げられましたけれども、まさに限界がどういうふうに明確に判断できるかがこれは大事なんでありまして、今の御答弁だけでもなお十分わかりません。  したがいまして、時間も時間ですから、これに対してはもうちょっと明快な基準を出していただきたい。その意味で、統一見解をもう一度出し直すか、あるいは明確なメルクマールを示されるか、そういうことを要求して、私の質問を終わります。
  378. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員長代理 これにて山口那津男君の質疑は終了いたしました。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  379. 加藤紘一

    加藤委員長 次に、東中光雄君。
  380. 東中光雄

    東中委員 私は、先週金曜日に補給艦のことについて質問をいたしました。外務大臣は、補給艦の場合は、国連決議六百六十五号を受けてペルシャ湾に展開している多国籍軍、アメリカ、フランス、イギリス等の艦に実効性を確保するために協力をし補給をするんだ、こういうふうに答弁をされました。このことについてでありますが、ペルシャ湾に展開しているアメリカ、イギリス、フランス軍等という、そのペルシャ湾というのはどこなのかということであります。  八月の十六日にブッシュ大統領が米海軍に、ペルシャ湾、アカバ湾等における経済措置の実効性を確保するためイラク向け輸送船の臨検及び必要最小限度の武力行使をすることを指示をしたということが、外務省が平成二年十月二日、外務省名で「イラクのクウェイト侵攻」と題する文書、私ここへ持ってきていますが、衆議院の安保特の理事会に示されました。だから、ここに言うペルシャ湾、アカバ湾等における臨検及び必要最小限度の武力行使を行うその地域は、一体どこなのかということをまずお聞きしたいわけであります。いわゆるインターセプションゾーン、阻止地域だ、こういうふうに言われておるところだと思うのですが、その範囲はどこからどこまでですか、まずお伺いします。
  381. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 一般的に申しまして、ペルシャ湾、いわゆるイラン、イラク、それから湾岸各国に囲まれております水域、それからアカバ湾は、紅海の奥にございますヨルダンのアカバからこちら側にございます湾ということでございまして、特定の、その何と申しますか明確な定義というものはないのではないかと思います。
  382. 東中光雄

    東中委員 ここに私、八月十七日付のワシントン・ポストを持ってきています。これによりますと、インターセプションゾーン、いわゆる阻止海域でしょうが、北緯二十七度以南のペルシャ湾、オマーン湾、東経三十四度十分以東、北緯二十七度以北の紅梅ということで米国はインターセプションゾーンを設定した。大きな見出しで地図を入れて、この地域でありまして、これ見てもらったらわかりますが、相当広い地域を書いています。ここで、おっしゃった米軍、フランス軍、そしてイギリス軍などと言われましたが、アラブ連合らしいのですが、それが外務省の文書によると最小限の武力行使を行うということを指示したと。これは外務省自身が書いているのですから、だからここでの米軍等の活動は武力行使、最低限の武力行使、これをやっているのです。それに補給艦が出ていって協力をする、こういうことをこの間言われたんですよ。こういうのはまさに武力行使に一体になってそれに対して補給をやっている、そのゾーン内でやっている、こういうことですから、こういう補給艦を派遣するんだ、そういうことになりませんか。外務大臣、どうですか。
  383. 中山太郎

    中山国務大臣 まだこの法案が成立していない現段階での御質問でございますから、私は輸送業務に関する一例を申し上げたようなことでございまして、この法律が成立をした後は、この実施業務の内容、それをまたこの平和協力会議に諮問をして、さらに閣議にかけて決定をするということでございますから、今委員がお尋ねのようなケースの個々の場合、例えば一つの例でございますが、今お話しのように、現状の中でこの補給艦が出るということはないわけでありますから、その点はひとつ混同しないように御理解をいただきたいと思います。
  384. 東中光雄

    東中委員 恐れ入りましたね。私たちは、補給艦なんというようなものはいわゆる輸送艦じゃないんだ、戦闘部隊に随伴をしてそして戦闘活動をやるものに武器弾薬、給油をやる、こういうものなんですよ、そんなものを持っていくんですかと言うて聞いたのに対して、あなたは、ペルシャ湾に展開しているアメリカ軍、フランス軍、イギリス軍とわざわざ順番が普通に言うのと違う順番で言われたんですがね、これは国連における発言から見てそういう発言をしているのですけれども、そういうことの米軍に対して補給艦を出すんだと言うたんじゃないですか。まだ法律が決まってないのに、法律が決まって実施されたら、そして計画の中へそれを入れて、これは送るんですという答弁ですよ。この間の答弁、そうでないなんということを今ごろ言うたら通用しません。それについて総理大臣もはっきりと言うているんですよ。例えば、これは十月二十二日の参議院予算委員会での峯山議員とのいろいろなやりとりの中で、「海上及び航空における輸送業務に使用する自衛隊の装備としては、補給艦及び輸送機以外は考えておりません。」だから、この二つははっきり考えておるんだということを言うているんですね。補給艦というのは、もう一貫して言うんですよ。我々はおかしいな、おかしいなと思っておったら、ほかのことを言うたら、そういうことは要請されておりませんという答弁があったでしょう、ずっと。しかし、補給艦は言うんですよ。輸送機も言うんです。これは要請されているから、湾岸地域から要請されておるから、だから早いこと法律つくってこれを進めていくのだ、こういう態勢になっているんですよ。  だから、この法律をつくれば、まさにその地域で戦闘——外務省自身が、私たちは必ずしもそうとは思いませんけれども、ただ中国代表なんかはそういうことはできないと、六百六十五号で武力を行使するというようなことはできないとはっきり発言していますわね。アメリカはあの会議のときに採択のすぐ後で、最小限の武力行使はできる、それだけの権限はあるんだ、アメリカは最低限の武力行使をやるんだと言うていると、日本の外務省はこの国会へ渡した文書の中にはっきりと、武力行使を、最低限の武力行使を指示したと書いてある。そして、その後二十五日になって、国連安保理は対イラク経済制裁の徹底のための限定的な武力行使を事実上容認する決議六百六十五号を採択した、こう書いていますよ。  だから、六百六十五号は、既にやられておる最低限の、あるいは限定された武力行使を、条約上認めるんじゃなくて、決議として認めるんじゃなしに、事実上容認する決議をした、武力行使をやっている、そういうのがあなた方の立場でしょう。武力行使にまたがることはやらないんだと言うとって、武力行使をやっているという米軍に対して、その場所で、ペルシャ湾で、そこで補給をする、戦闘のための。そういう答弁をされたんです。それでもいいんですか、その答弁はそのまま維持されるんですか、どうですか。
  385. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 先生の外務省が出した資料なるものを私ちょっと今見せていただかないとわかりませんが、私たちが以前に国会の方から資料提出要求がありましてお出しした中には、国連の一連の決議、それと、安保理が八月二十五日に決議六六五を採択した際に各国がいかなる発言をしたかという、その各国の発言をまとめた資料をお出しいたしました。  もしもそのことでありますれば、アメリカはその際、決議六六五の採択に当たりまして、「安保理は本決議によって制裁決議の実効性を確保するために各国に武器の使用を認めた。」というふうに発言しております。中国につきましては、先ほど先生が言われましたとおりです。英国につきましては、「今次決議により最小限の武器使用が認められた。」というふうに述べております。フランスは、「今次決議は、海上における経済制裁の実施の検証を行うために武器の使用が許されることを規定したものである。」こういう資料を提出いたしました。
  386. 東中光雄

    東中委員 外務大臣、あなたの言われた答弁について私は聞いているのですよ。あなたの言われたのは、ペルシャ湾に展開をしている米軍、フランス軍、イギリス軍などということを言われた。そして、活動しているんでしょう。その活動の中身は何かといえば、外務省が出した文書——国連局長知らぬと言う。知らぬのやったら黙ってなさいと言いたいのですが、安保特の理事会へわざわざ外務省と書いて、こんな文書めったに出さぬでしょう。なかなか署名しないで、メモみたいなのは出しますけれどもね。「平成二年十月二日 外務省」とちゃんと書いてあるのですよ。これを理事会で配ったのですよ。そして、局長が今ちょっと差し支えますのでと言って、かわりの人が来て、参事官か審議官か知りませんが説明をした。その文書に明文で二回にわたって書いているのですよ。最低限の武力行使をブッシュは指示をしたと。そして、そのままじゃぐあい悪いからやっさもっさもめましたね。それで封鎖という言葉も出て、こんなものは封鎖と言わないんだと、国連事務当局としてはだめだということで、正確じゃないということで消されたのです。  そういう中で、今度は、六百六十五号は事実上限定的な武力行使を容認するものだと外務省が言うたんでしょう。そうしておいて、六百六十五号に基づく米軍の行動に対して、補給艦で補給をするんだ、協力をするんだ、この法律ができれば、ということを言われたんですから、それならまさに武力行使に一体になった、武力の行使と言うておるんですから、それに補給するんですから一体でしょう、その武力行使をしている場所で。それでなおそれをそのまま維持するんですか。維持するんだったら、こんなものは許されない。口で言うていることと実際にやることとまるっきり違うということになるわけですが、どうですか。
  387. 中山太郎

    中山国務大臣 今このペルシャ湾の、この間の一例を私が、委員の発言の中でペルシャ湾というお話がありましたから私はそのような話をいたしておりますが、現に法律が成立もしておりませんし、御審議をいただいている最中でございますから、現在補給艦を出すことは政府はできません、それは。当たり前のことでございます。だから法律上それができない。この法案が御審議をいただいて成立をした暁にどのような国際情勢になっているかも、今日この問題の解決のために国際社会国連中心として努力しているわけですから、そのような、事実現在の時点とこの法案が成立した時点とでは国際情勢は一変している可能性が極めて大きいと私は認識をしております。  そういう中で私どもは、この法律案がもし成立をさしていただく日が来て、そうしてこの法律を施行する際には、実施計画あるいは平和協力会議あるいは閣議にかけて、そして個々の武力と一体になるような戦争、すなわち戦闘が行われているような地域には行かないということでございますから、その点は明確にお答えを申し上げておきます。
  388. 東中光雄

    東中委員 そういうふうに抽象的に言いながら、もしこの法律ができた場合には、ペルシャ湾に展開しているそのアメリカ軍と、わざわざフランス軍、イギリス軍等と言われたんです。国連国連事務当局がやった説明では、アメリカ、フランス、イギリス、アラブ連合の行動は国連決議の枠外であるという声明を出しましたね、報道官が。そのところに言うておるのと同じように、順番もアメリカ、フランス、イギリス等なんです、アラブ連合はなくなって。だから、これは明白な、法律ができたらそうします、そうするために今法律審議をお願いしているんですということなんです。国民みんなそうとったんです。それでは、この間言われたのは何ですか。一例と言いましたが、そのほかのこともやる、それもやりますと局長も言うたということですよ、一例というんだから。もっとほかにもあるんだ、よう似たものがあるんだということだと私は聞きました。一体何ですか。
  389. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 大臣御自身も一例として挙げられたということを申されておるわけでございますが、先週の金曜日の審議におきましても、防衛庁の方から、この補給艦というのは必ずしも洋上の補給だけではなくて、港に荷物を届けるというようなこともその一つの例として挙げているわけでございます。  また、大臣からもお話がございましたように、この武力の行使と一体となるような形で行うという趣旨でお答えになったわけではございませんで、単なる一例としてそのような可能性をお挙げになったというふうに考えております。
  390. 東中光雄

    東中委員 武力行使と一体となったものでないとしての一例であった、ほかもあるけれどもこれは一例だ。これは条約局長も、この間防衛局長も一例として認めたんだからそういうこともあり得るということを認めたわけですね。そのほかの例もあるかも、百例あるかもしれぬけれども、これも一例なんだと認めたわけですね。  その行為が、六百六十五に従ってと言うたけれども、それは事実は違うんだけれども、ペルシャ湾でやっているそういう米軍に対して補給行為をやる、それも補給艦でやる。こういう戦闘行為——現に外務省が実力行使だ、武力の行使だと言うている。外務省自身が言うているのですから。それから、アメリカ代表も六百六十五号を採決されたらすぐに発言をして、この決議は武力の行使をすることができる、それ以上の幅の広いものである、そしてアメリカは武力行使をやりますということをまた終わりの方で言うていますよ、今国連局長ちょっと言いましたけれども。それに対して、最も大きな日本の、世界に十しかないのですよ、アメリカに五隻しかない、日本に四隻あるというこの補給艦、こいつを持っていって、そして戦闘部隊の中心で座って補給するというのですよ。武器弾薬、給油するというのですよ。それが武力行使と一体になっておるものではない一例なんだ、こう言われたことになるのですね、今のやつを全部整理すれば。そうですか。戦闘しておる部隊に対して、武力行使をやっている部隊に給油をする、その場所で。しかしこれは武力行為と一体にならない、一体でないことの一例なんだ、こういうことになります。そういうことでいいのですか。あなた方の言うている一体論というのは基準が明らかでないということでしたが、今もまた一体になってないその一例だと言うのですね。そうですね。どうですか。
  391. 中山太郎

    中山国務大臣 武力行使と一体となるようなことはやらないというのがこの法の精神でございます。
  392. 東中光雄

    東中委員 武力行使と一体となるようなことはやらないが、ペルシャ湾で外務省が言う武力の行使をやっている米軍、イギリス軍、フランス軍などに八千三百トンの補給艦が行ってそのゾーンの中で給油をするということが、これが一体となっておるものにはならないんだ、その一例なんだと。今のやつを、まあ中学校は無理かもしれぬけれども高等学校の生徒に整理させたら、その一例として挙げたことになる、論理的にそうなりますね。しかも、この法律は一体としてはだめなんです、この法律武力行使と一体となるものはだめなんだと言うている内容が、実はこういう補給艦による給油は戦闘場面でやるのは一体にならない一例なんだ、そういう論理を言うんだったら、これはもう天下は承知しませんよ、あなた。余りにもひど過ぎるじゃありませんか。どうなんです。
  393. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 まだ私ここに金曜日の議事録を持っておりませんが、私の記憶では、大臣はペルシャ湾に展開しているそういう国々の海軍に補給をすることもあり得るということをおっしゃったと記憶しておりますが、ただ、武力を行使中のそういう軍に補給するということはおっしゃってなかったと思いますし、また、繰り返しいろいろな御議論の中で、この法案の上で行い得ないこととしては、武力の行使と一体となるような協力は行い得ないということを述べられておられるわけでございます。
  394. 東中光雄

    東中委員 速記も持ってきておりませんがと、そんなあやふやなことで言いなさんな。そういうことを発言する立場にないじゃないですか。私たちはそれを起こして、厳格にそれを見て言うているのです、そしてそういう結論になると。だから、あなた方の言われている、武力と一体となるものはやらないということを何遍も言うているのは聞いていますよ。しかし、その中身は一体何なのかということになったら、具体的例で言うたら補給艦を出すと言うたでしょう。総理も、総理に聞きますが、補給艦のほかに、先ほど読んだ文ですね。「海上及び航空における輸送業務に使用する自衛隊の装備」、これは協力隊ですよ。協力隊に使用する自衛隊の装備としては「補給艦及び輸送機以外は考えておりません。」この二つは考えておる。ここで言う輸送機というのは何ですか。防衛庁ちょっと答えてください。
  395. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それは、日本の自衛隊というものはきょうまで専守防衛で、足の長いものや、外へ出ていったり、そういったことを前提とした装備を持っておりませんので、私が念のために、想定されるものは物資の輸送とか医療班の派遣とかいろいろなものがあるが、どんなものが出せるのかと言って聞いてみましたら、補給艦が四隻と航空機はC130というプロペラ型のやつが十三機と、これがすべてでございます、ですから、出せるとすればこの中で業務に差しさわりのない程度、その四分の一ぐらいのところが出せとおっしゃれば出せるぎりぎりのものかもしれません、こういう一覧表をもらったものですから、必要なときには、じゃ利用できるのはこれとこれだけなんだな、そして聞いたわけであります。そういう意味です。
  396. 東中光雄

    東中委員 だから、総理大臣の答弁ですから綸言汗のごとしなんですよ。この法律ができた場合に出せるものは何なのかと言うて防衛庁にいろいろ聞いたら、そしたら補給艦と航空機。その輸送機はC130だということまで今言われました。前について言えば、先ほど議論しましたから、私は今の総理の答弁で、この法律を何と思うているのかということがよくわかりました。  もう一つ、C130について聞きます。  C130は何に使う、どういう部隊なのかということですが、物資を運ぶというんだったら、船では輸送船があるけれども、輸送艦はだめだというのでしょう。C130というのは、日本から中東まで飛んでいけるような、足は長くないのです。補給艦とは違うのです。これは何をやるのかといいますと、ことしの五月二十五日から六月二十五日までC130H部隊派米訓練というのをやっています。何をやっているのかといいますと、低空でずっと飛んでいって、そして敵に捕捉されないようにして、そして物を輸送していって投下する、そういう投下する輸送をやるということなんで、海部総理大臣はその同じ日の審議で、「この法律をつくるときにその問題には厳しく対処したつもりでありますけれども、拠点輸送を考えてそこへ輸送するということでありますから、想定しておったのは。」だから、C130を出すということを言っているのだ。拠点輸送ということを言っているのですね。  拠点というのは、軍事的な用語でいきますと、米国防省がつくっている軍事用語辞典によりますと、「防御陣地内の主要地点で、通常、強固に要塞化され、自動火器で重装備され、その防護のため他の陣地がその周辺に集められている。」そういう拠点へ向かって輸送していくのだ、C130でずっと運んでいって、そこへ投下して。その訓練を、日本ではできないからというてアメリカまでわざわざ行って去年とことしはやっているんです。  そのC130、日本に十機ですね。現在十機しかない。(海部内閣総理大臣「十三機」と呼ぶ)十三機にする計画です。だから、それを今度は向こうへ出すというのでしょう。全く戦争に参加をするということじゃありませんか。自衛隊に聞いたら、自衛隊は向こうへ行って役に立つのだったらこの二つだろうと言うた、だからその二つを挙げたんだとあなた先ほど言うたじゃありませんか。戦争への参加ですよ、これは。
  397. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 目的意識を持って人の話を、言わないことまで言ったと言ってこじつけるのは、これは正確な議論の態度じゃありません。私は、提出できるとすればどうなんだと言ったら、これとこれだという一覧表をもらったので、そうなのかと素直に思って答えたわけで、それから貢献策最初考えましたときに、物を輸送するとき、それは陸上へ持っていったり前線へ持っていったりできませんから、ですからそこまで、港までとかあるいは一定の空港までとか、そういうところまで拠点に輸送をしよう、まことにそういう素直な考え方で、送って帰ってくるためには船と飛行機が要るということで、民間の船と飛行機をお願いするころからそういうことを認定しておったわけでありまして、私は東中議員のように軍人の経験ありませんから、軍事用語は知りません。軍事用語を目的意識を持って使っておるわけでも絶対にありませんし、またそのようなことはしないということは、内閣の法制局で武力と一体の行為はしたいということの例示として再三挙げておることでありますから、それはどんなことがあろうとも、業務計画の段階で絶対にそれは想定しませんし、認めませんし、慎重に対応していきますし、戦争をやっておるような現場やそんな第一線へ行って重火器、重何とかで守っておるとかとおっしゃいましたですね。そんな古い観念で私はやっておるわけじゃございません、そういったことは知りませんから。一定まで、戦場じゃないところまで必要なものを送っていこう、そのために、あるものは何だと言って聞いたらこれだと言ったから正直に申し上げておるだけでありますから、それは素直にお受け取りをいただいて議論していただきたいと思います。
  398. 東中光雄

    東中委員 自衛隊の装備としては補給艦及び輸送機であります、こう言うているんですね。その輸送機はC130である、ここまで言うてはるのです。自衛隊の装備としては、補給艦というのは、戦闘団の中におってそれを動かすためのことをやるのが任務なんだ、武器、弾薬、燃料をやって戦闘艦の、戦闘部隊が戦闘するのを補給する、これが任務なんだ。装備はそうなんです。C130といえば、超低空で飛んでいって捕捉されないようにして空中投下をやる、そういう装備なんですよ。自衛隊の装備としてはこの二つしか考えてませんと。この二つは、まさにアメリカが非常に要求している重要なものなんですよ。あなたが知らぬだけなんです。知らぬで、聞いたらそう言うたからそう答えているんだ、これじゃ日本はどこへ連れていかれるやらわかったもんじゃない。断じて許せませんよ。こんなむちゃくちゃなことありますか。  輸送艦について言うても、この間の——輸送艦について聞いているんです。輸送艦についてこの間聞きました。そしたら、防衛庁の防衛局長だったと思いますが、これは足が短くて、荒波があったら行く能力がないんだ。本来は車両なんかを輸送するものなんだから。日本海周辺ではこれでどんどん運んでいるわけですから、補給艦では趣ばないんですから。車両なんか運ぶのにはこれなんで、それを使わないのは、足が短いから、荒波があるといかぬから、要するに能力がないから今回の場合は出せませんという答弁したのです。今回の場合です。中東までは行けぬということなんです。  この法律中東問題のためにやっているんでしょうけれども法律法律として存在するのですから、この次はどこかわからぬわけですよ。それで輸送艦、行くでしょう。だから、輸送艦はあの三条二号の輸送のための手段たり得ない、部隊としてですよ、というふうなことは言えないのです。入っておるわけです。入っておるけれども、今は使わない、今度は使うかもしれぬ、こういうことになる。法制局長官、そうじゃございませんか。どうも法律解釈と政策とごっちゃにして答える面がありますので、長官ちょっとお答え願いたい。
  399. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 まず、私から事実関係お答えしたいと思いますけれども、自衛隊は、そもそもが我が国の防衛のためにあるわけでございますので、いろいろな装備を持ち、いろいろな訓練をやっていることは事実でございます。  ただ、その中で今回平和協力業務の中の補給業務にもし御協力できるものがあるとすれば何かということでございましたから、それは船であれば補給艦であり、飛行機であれば輸送機、輸送機の中で一番大きいものはC130、こういう御答弁を申し上げた次第でございます。
  400. 東中光雄

    東中委員 何を言うているんですか、あなた。同時に私は、輸送艦はどうなのかと言うて聞いた。そうしたら、輸送艦は兵員あるいは車両等を運ぶ輸送業務を担当する部隊であるということは認めたんです。しかし、その航行能力が低いこと、荒海を長期間航行するには耐え得ない構造でありますから、今回のような協力業務につき得ないということでございますと答弁したんです。速記を写しているんですよ、こっちは。そう言うたことについての責任を追及しているときに、それについての解釈を問題にしているときに、何をその前のことを言うているんですか。そういうのは時間稼ぎの、言語道断ですよ。ごまかしです。この法律がごまかしたというだけじゃなしに、答弁態度もごまかしに終始している。輸送艦は、自衛隊の部隊として三条二号に言うておる輸送業務に参加し得る、法律上入り得るのか得ないのかということを法制局長官、ひとつはっきりと答えていただきたい。
  401. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  法律上の仕組みを私の方から御説明すれば、それは三条の二号で輸送等が書いてございますが、この上で格別補給艦というふうに書いてあるわけではございません。それはもうおっしゃるとおりでございます。ただ、先ほどの実態問題、あるいはこれまでいろいろございますが、実施計画あるいはここでやります業務の内容、さらには二条二項で言っております武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならぬ、こういったことを総合いたしますれば、事実問題プラス今のような法律上の制約、これによりましておのずから制限がかかってくる、かように従来申し上げているところでございます。
  402. 東中光雄

    東中委員 だから、武力による威嚇あるいは武力の行使にわたらない範囲において自衛隊の部隊が使用できるというふうに三条二号は解釈ができる。そして輸送艦、補給艦じゃなしに輸送艦は、その輸送業務に部隊として参加できるものではないのか。輸送艦ならば武力の行使にかかわる、あるいは武力による威嚇にかかわってきてだめだ、補給艦ならいいけれども輸送艦はだめなんだ、そういうことではないでしょうということを、法解釈として、行動として法制局長官どうですかと言っているのですから、どうです。
  403. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 今御質問のように、法律的に補給艦ならどう、輸送艦ならどうというふうなことは一切書いてございません。それは御指摘のとおりでございます。  ただ、一方におきまして、自衛隊が憲法上認められますのは、あくまでも我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織ということで認められているわけでございますから、それが保有する能力といいますか、それも当然その範囲に限られております。したがって、先ほど総理からお答えございましたように、足の長いあるいは当然に海外にどんどん出ていけるようなそういう装備を持っていない、まあそういう実態問題を私の方からお答えするのは余り適当ではないかもしれませんけれども、そういうのを考え合わせれば先ほどのような答弁が出てくるものと考えております。
  404. 東中光雄

    東中委員 もう一回法制局長官にお伺いするのですが、国連決議六百六十五号を受けてペルシャ湾に展開している多国籍軍、アメリカ、フランス、イギリス等の艦、軍艦のことだと思いますが、艦とおっしゃいました。が実効性を確保するために、日本の補給艦がペルシャ湾で活動している艦に武器弾薬その他の補給をやる行為は、現在の時点で、現在の時点の話ですから、それはあなたのおっしゃる武力の行使と一体をなすものに入るのか入らないのか。一例として外務大臣挙げたと言うのですが、その一例は武力の行使並びに武力の威嚇と一体のものということになるかならないか、御見解を承りたい。
  405. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 私は先ほどから、武力の行使との一体性ということを山口委員に対して御説明申し上げました。そのときにも、憲法九条との関係で問題になる、憲法九条で我が国武力の行使をしてはならないという関係で問題になる、そういう意味で、武力の行使との一体性というのは、あくまでもそれが武力の行使そのものと見られるかどうか、こういうところから見るべきものであって、その当てはめの部分につきましては、私の方、得意とするところじゃございませんので、そういう意味では、当てはめの問題はむしろ条約局長なりなんなりから先ほど申し上げているところでございます。今の御質問にも、ちょっと私の方から端的にお答えするわけには……。ただ、憲法九条の目から見た武力の行使そのものと見られるようなことはいかぬ、こういうことは申し上げられると思います。
  406. 東中光雄

    東中委員 それじゃ条約局長に聞きましょう。条約局長は、あれは一例である。あとは百例あるのか千例あるのか知りませんが、とにかく一例であることは間違いないわけですね。その一例、要するにペルシャ湾に展開している多国籍軍、アメリカ、フランス、イギリス等の軍艦に武器弾薬、給油を日本の補給艦がやる行為、それは一例にすぎない、ほかのことをやるかもしれぬ、こうおっしゃるのですが、その一例について言えば、それは武力と一体になりた行為、武力による威嚇または武力の行使と一体になったものになるのかならないのか。ならないならならないと言うてほしいし、なるならなると言うてほしい。どういう判断ですか。実際に適用するのは条約局長あたりがやるんだというような法制局長官のお話でございますので、お伺いします。
  407. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいまは、幸いにして中東地域武力紛争が行われているわけではございません。現在多国籍軍が展開している状況でございます。私どもがいろいろな機会に申し上げましたことは、武力行使と一体となるような補給活動、補給活動それ自体は武力行使というものではございませんけれども、しかし、これが武力行使と一体となるような場合にはこれは行い得ないということを申し上げているわけでございます。したがいまして、現在展開している多国籍軍の艦隊に仮に何らかの補給活動を行うことがあるといたしましても、具体的な事例に即して見て、そのような艦隊が現に武力行使を行っていないという状況であれば、これは単なる補給ということになりますので、そのような場合には武力行使と一体となるものとしてできない活動ではないということでございます。したがいまして、現在の状況で見れば武力行使を行っていないと思いますので、そのような状況で補給活動を行うということは法律上の可能性としてはあるわけでございます。  ただ、今後具体的な要請があって、あるいは具体的な事例に即して、我が国としてそのような協力を行うことが適当と認める場合において、万が一武力行使と一体になるような状況になれば、それは行い得ないということでございます。
  408. 東中光雄

    東中委員 今武力紛争は行われていないという新しい言葉を使いましたが、外務省のこの文書には、限定的な武力行使を行っている、最小限度の武力行使を大統領が指示をしてそれをやっていると。それで、それが封鎖かどうかということで国連で随分議論になったんでしょうが。そして六百六十五号が出たんでしょうが。どっちにしても、日本の外務省は国会に対して、武力の行使という言葉を使ったんですよ。その行動をやっている部隊に対して補給をするということはいいのかどうか。今は武力紛争ではありませんから、武力紛争が起こったときはそれと一体になるかどうかについてよく検討しなければいかぬ、そんな無責任な話がありますか。それでは、この安保特に出した外務省の名前入りの文書は一体どうするんですか。国会に対して何と考えているんですか。条約局長がそういう事情についてよく知らないというなら、中近東アフリカ局長のかわりに来た人がこれを出したのですから、外務省として。その点はどうなんですか。
  409. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘になりました点でございますが、ブッシュ大統領が最小限の武力行使を指示したということと、現実に武力行使が行われているかどうかということは一応別問題だろうと思います。ブッシュ大統領が武力行使を指示したということは、アメリカの艦隊にそのような権限を与えたということでございまして、それが実際武力行使を行っているかどうかというのは、これはそれぞれの事態に即して判断すべき問題だと思います。
  410. 東中光雄

    東中委員 発砲したかどうか、我が国協力するかせぬかということを言うている相手方の軍隊がどういう行動をやったかどうかということについて、外務省はつかんでいないということか。中東地域において米軍が一切発砲してないか、拿捕してないか、あるいは、封鎖という言葉をジャーナリストが使ったような、そういう事態がなかったかどうか。そして国連事務総局が、報道官が、アメリカ、フランス、イギリス及びアラブ連合がクウェートとサウジとの合意のもとに行っている行動、この事態は国連決議の文脈上のものではない、枠外のものだという声明を出して、そして六百六十五号がつくられるようになったんでしょう。武力行使はやられたんですよ。そして、いつでも拡大できるように米軍側は留保しているんです。だから、六百六十五号が採択された直後に、アメリカはこれで武力行使の権限があるんだ、そしてアメリカは武力行使をやりますということを言っているじゃありませんか。目的の完遂のために必要な限りでの最小限の武力の行使を行う、批准されたばかりの六百六十五号の中で認められた権限は、軍事力の行使を、それが必要とされる状況において最低限に行使できるものとして十分幅広いものである、そういう権限がある、そして、アメリカはやるのだ、こう言っておる。現に現場で大砲を撃っている、撃ったこともある。そういう部隊に対して、その戦闘艦に補給する八千三百トンのとんでもない補給艦を、アメリカだってたった五隻しか持っていない、それをそこへ出してくれ、出しますと言うて国会でも答弁しておいて、それは一例なんだと言って、一例としてやるんだと言う。それならもうはっきりと武力行使の加担じゃないか。どうですか。それは納得できません。話が合わぬです。
  411. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案上何ができるかということで、一、二例を差し上げたわけでございますが、ただ、現在何か具体的にそのような要請が来てそのようなことをやろうとしているわけではございません。したがいまして、現実にそのようなことを行うことになった場合におきまして、それが武力行使と一体となるようなものであるかどうかという点はその時点で判断しなければならないわけでございますが、現実に今そういうことをやろうとしているわけではないわけでございます。ですから、これも仮定の問題でございますのでちょっとお答えしにくいのですが、仮にそのような艦隊が武力行使を行っている、そのようなところに直接補給をするというようなことは武力行使と一体になると考えられますので、そのようなことはできないということも申し上げている次第でございます。
  412. 東中光雄

    東中委員 仮定の問題じゃないんですよ。私が例えばと言って言ったんじゃなしに、外務大臣が、ペルシャ湾に展開しているアメリカ、フランス、イギリス等の艦、いわゆる多国籍軍に補給するんだ。現に展開しているんでしょう、ペルシャ湾に。その内容は、どうして展開するようになったかといったら、ブッシュ大統領の命令もあった、そういうことから展開しているんでしょう。国連でも大いに問題になっているんでしょう。仮定の問題じゃないですよ。そして、それをやるということは一例として、局長も認めたじゃないの、一例と言うて。仮定じゃなくて、そういう状態が起こったらこの法律ではやれないんだということをはっきりさせなさいと言っている。それもはっきりしないままでいったら、それはもうそのときになったらやりますよ。何ぼでもやります。一体という概念が極めて不明確だから。そういう現在のペルシャ湾で武力行使をやっているというのは、外務省の文書に書いてあるんだから。その外務省が、仮定だなんて、よう言うてますわ。だめです。
  413. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 重ねてのお尋ねでございますので、いま一度答弁させていただきますが、これまで幾つか例を挙げて申し上げましたことは、この法案上何ができるかということでございまして、現在そのような具体的な要請があって、今これから何をしようという趣旨で申し上げたわけではございません。  繰り返しになって恐縮でございますけれども、万一現在展開中の部隊が武力行使を行って、そこに直接補給するというようなことになれば、これは武力行使と一体となるというふうに考えられますので、そのようなことはできないということを再三申し上げているわけでございます。ただ、展開しているということは、それ自体は武力行使を行っているというものではございませんので、武力行使等を行っていないところに補給するということはできるであろう、そういう関係でございます。
  414. 東中光雄

    東中委員 展開して遊んでいるのじゃないのですよ。インターセプションという言葉は普通に使われていますね。現に臨検と書いてあるでしょう。その次に、拿捕までやっているじゃないですか。強制連行までやっているじゃないですか。鉄砲撃って、そして沈没をさすことはしないまでも、機関をつぶすということだってあり得るんだということを言っているじゃありませんか。現に何をやっているのかわからぬ。わからぬその中東における軍隊に対して、貢献策だと言って十億ドルも二十億ドルも出す、そんなばかなことがありますか。借地指揮権を持っているのはアメリカの大統領でしょう。それが現にやっているその行為を——私が言うのじゃないのですよ。外務省の文書で限定的な武力行使、最低限の武力行使と書いてある。しかも、それに協力することが、仮定の問題だとかと言うたってだめです。そういうことは許されない。法律ができて、要請があってもそういうことは許されないということを、外務大臣、言えますか。いや、それは情勢見て、わからぬ、こういうことになりますか。どっちですか。
  415. 中山太郎

    中山国務大臣 現に戦闘が行われているところには送らないというのがこの法律の考え方であります。
  416. 東中光雄

    東中委員 そんなことは法律のどこにも書いてないのです。あなたは、補給艦を送りますとこの間言うたではないですか。それで、今度は送りませんでは話にならぬのです。ペルシャ湾で今現に武力の行使が行われていると外務省が言うているのだから、そんな無責任なことは許せません。時間がありませんので、この問題はきっちり整理をして、改めて徹底的に追及させてもらいます。こんなものをいいかげんにしておったら何をやり出すかわからぬというふうに思います。  もう一点だけ、時間が余りありませんので聞いておきたいのですが、紛争によって生じた被害の復旧の活動についてでありますが、この間の答弁で外務大臣は、軍用飛行場だからそれは行けぬ。修理に行けぬ、滑走路がやられても。しかし、民間飛行場なら行ってもいいという趣旨の答弁をされました。  そうしたら、「紛争によって生じた被害」、道路の破壊、橋がつぶされる、そこらじゅうの家が壊される、これも紛争による被害ですね。そういう事態が起こったときには、それの復旧のために、自衛隊の施設部隊というのがありますからね、それを派遣するということがこの法律上はできるのかできないのか、伺いたいと思います。
  417. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ここで主として考えておりますことは、戦争によっていろいろな被害が出る、これを戦後に復旧する、復興するために協力するということを想定しているわけでございます。したがいまして、紛争の終了後に、町が壊されたあるいは橋が落とされた、そういう状況のもとでそのような復旧作業を行うことに協力するということは、この法律上できることでございます。
  418. 東中光雄

    東中委員 あなたは国会を侮辱するつもりかね。何ということを言っているんだよ。今紛争の終了後にと言ったのですね。この条文を見てごらんなさい。三条二号のロとハは「紛争終了後の」何何、「紛争終了後の」何々と書いてあるのですね。そして、今の問題は、「紛争によって生じた被害の復旧のための活動」と書いてあるのですよ。紛争中、紛争直後、紛争が済んでから後の復旧なんて、こんなもの何も関係ないですよ。紛争によって生じた被害でしょう。それが紛争終了後なんというようなことをぬけぬけとよく言いますね。この条文から見たって、文理上だって許されぬと思う。そういういいかげんなことで済むと思うのですか。外務省というのはいいかげんな、概略しか言わぬ外務省か。何ということですか。はっきりしなさい。
  419. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 私は先ほど、主として紛争終了後の復旧であるということを確かに御答弁申し上げました。ただ、これは紛争終了前のことを排除しているということまでは申し上げておりません。  ただ、戦災復旧が、法案三条二号等に規定する「紛争によって生じた被害の復旧」ということにつきましては、通常は仮に紛争終了前のことでございましても武力行使を伴うものではないと考えられまして、そのような意味では、憲法上許容され、また平和協力業務として実施は可能であろうと思います。  ただし、紛争終了前であれば、万一このような活動が、このような活動と申しますのは、災害復旧の活動が武力の行使と一体をなすような行動であるというふうにみなされる場合には、これは憲法上許されないことでございます。したがいまして、今まで申し上げていたことの原則のこの場合における適用ということになるわけでございます。
  420. 東中光雄

    東中委員 あなた何を言うているのですか。道路や橋や民家が壊された。紛争中ですよ、紛争によって生じた被害です。それの復旧に協力隊として行くのか、部隊としては施設隊がそういうことができるようになっておるから、そういうことをやれるようにこの法律はなっているのかなってないのかと聞いているのですよ。ところが武力の行使云々と言う。軍用飛行場はだめだ、やれませんと外務大臣言うたのです。民間飛行場ならやりますと言うたのですよ。橋や道路が破壊された場合にどうなのかと聞いているのだから、行くんですか、行かないんですか、行けないんですか。行くのがいいかどうかという政策判断じゃないんです。法律上は「紛争によって生じた被害の復旧」ということで幾らでも行けるようになっているんじゃないですか。それでは、道路復旧に行ったらあかんというふうになっていますか、この法律で。そこを聞いているのです。
  421. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 三条二号には確かに何らの限定も置いておりません。ただ、この法案全体の構造といたしまして、また憲法制約ということがあるわけでございますから、憲法の枠内で作成している法案でございます。そして、成立の上は憲法の枠内で実施される法案でございますので、その意味で、先ほど来申し上げておりますように、ここの三条二号に掲げられているいろいろな活動が万が一武力行使と一体となるような場合には、これは憲法上行い得ない。したがって、この法律上も行い得ないということを申し上げている次第でございます。
  422. 東中光雄

    東中委員 蓄音器が回っておるようなことばかり言っているんですね。だって、武力の行使、武力による威嚇あるいは武力と一体にならないように、そういうふうにしますということを言っているだけじゃないですか。具体的に言うたら、橋は、道路は、軍用飛行場はだめだと言うけれども、そういうものはやれるのかやれないのか。施設隊はブルドーザーもあるし、施設も十分あるんだから、それで部隊で行って、そして直すということは、行くのがそのときの情勢でいいか悪いかは別としてですよ、そういう政策判断は計画をつくるときにやったらいいんですよ。しかし、法律によっては送れることになっているということをまずはっきりさせなさい。そして、あと政策的にはどうしますというのはこれはそのときの内閣によって何をやるやらわからぬ、法律は何でもできるようになっておるということが問題だと私は聞いているんですから、防衛庁長官、施設隊が行けるか行けないか、道路や橋やそれから飛行場の復旧に。それだけ聞いて質問を終わります。
  423. 石川要三

    ○石川国務大臣 条約局長も今委員質問の趣旨にちゃんと答えていると思っているのですね。答えていると思っているのです。私は、その与えられた任務の中にも、今戦争でいろいろと壊れた橋や何かそういうものは直せる、そのために行けることは事実だと思う。ただし、そういう作業は、再三言うように、戦争に巻き込まれていわゆる武力行使と一体になるかならないかが問題だ。そこを要するに平和協力会議できちんと精査して、その上で大丈夫だというときに我々が作業に当たる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  424. 東中光雄

    東中委員 時間ですから、やむを得ません。終わります。
  425. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて東中光雄君の質疑は終了をいたしました。  次に、伊藤英成君。
  426. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、今回のこの議論をいろいろ聞いておりましていろいろ思います。それは、この世界情勢の変化やらあるいはその中で日本の位置づけが本当に大きくなっている。そういう中で、これからの日本外交をどういうふうにしていくかという意味で極めて重要な問題を取り扱っているわけですね。そのときに、今国民の合意というのが極めて重要な問題であるわけでありますけれども、しかし、このいろんな議論を聞いておりますと、いかにもわかりにくいな、わかりにくい議論をしているなということであります。それはいろんな言葉の問題もある。本日も、例えば武力行使と一体となっているか一体となっていないかというような問題も含めて、こういうのはなかなかわかりませんよね。わからない。ましていわんや国民もわからない。そういう中でいろいろ議論をされますと、何かほかのねらいがあるんじゃないかしらん、あるいはほかの意図があるんじゃないかしらん、こういうふうに思うはずでありますよね。  そんな意味で、まず最初にお聞きしたいのは、現在のあのイラクの状況について、イラクの状況というか、現在のあの地域の状況についてどういうふうに認識をするかということについて伺いたいのですが、あの八月二日にイラクがクウェートを侵略する、そしてその武力紛争はジュネーブ条約等のいわゆる戦時国際法規の適用を受けるのかどうか、それについてまず政府の見解をお聞きいたします。
  427. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  ジュネーブ諸条約は、武力紛争が行われる場合におきまして、紛争当事国間で適用されるわけでございますが、現在存在しますような事態、これがさらにまた武力紛争に発展するということになりますれば、これらの諸条約は適用されると考えます。  このいわゆるジュネーブ諸条約と申しますのは、戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する条約、それから海上にある軍隊の傷者、病者、難船者の状態の改善に関する条約、第三条約が捕虜の待遇に関する条約、それから第四条約と言われますのが戦時における文民の保護に関するジュネーブ条約ということでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、これは紛争当事国間で適用になるということでございます。
  428. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 これは言うまでもありませんけれども、第一次大戦以後、要するに戦争を禁止しよう、その戦争の禁止を免れるために、戦争に至らないいわゆる武力行使という名目のもとに事実上戦争である侵略行為というのがどんどん起こったわけですよね。そして、歴史的に見ても、国際連盟の規約あるいは不戦条約にもかかわらず第二次世界大戦が勃発したということであります。そういう反省のもとに、国連憲章ももはや戦争という言葉を一般には用いておりません。だから、国際関係における「武力による威嚇又は武力の行使」というような言葉を使っております。もちろん、国連憲章の中には例外として四十二条でも五十一条でも見られたりいたしますが、一般的には今申し上げたとおりであります。  それで、一九四九年の今のジュネーブ条約は、違法か合法かを問わず、すべての国際武力紛争に対して適用される、こういうふうになっていますね。これはそういうふうになっております。そして、今回の状況を見れば、イラクは要するに侵略行為をしたということであります。そして、国連の決議も、例えば九月十三日に採択されました決議の六百六十六には、イラクが戦時における文民の保護に関する一九四九年八月十二日のジュネーブ条約も含めた国際的人道法規に沿って第三国民の安全と福祉に対して十分に責任を持つことを再確認するというようなことをうたったり、あるいはその決議の六七〇においては、戦時における文民の保護に関する四九年八月十二日のジュネーブ条約はクウェートに適用され、また、同条約締約国であるイラクはそれを遵守する義務がある、特に同条約のもと、同国の犯した重大な違反に責任があることを再確認するというふうに述べておりますよね。要するに、今のあの地域の状況は、いわゆる戦時国際法現が、先ほどの局長の言によれば、それぞれの当事国が云々という話はありますけれども、実際にはそれが適用される、あるいは準用される状況というふうに考えますが、いかがですか。
  429. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど委員が的確に仰せられましたとおり、戦前におきましては、いわゆる戦争という行為そのものが必ずしも違法というふうには考えられておらなかったわけでございますが、それがだんだん国際法の発達とともに、戦争という形でなくとも武力行使一般が違法化されるようになる。また、戦前におきましては、戦時と平時と、そして戦争を行っている匡と中立国というふうに截然と分かれていたわけでございますが、戦後におきましては、武力行使が一般的に違法化されることに伴いまして、この戦時法規の適用関係というのは、戦前のような形そのままではございませんけれども、しかしながら、特にこの紛争に巻き込まれた紛争当事国あるいは第三国の人たちの人道的な取り扱いという観点から、特にこのジュネーブ諸条約において発展してきたものであるというふうに考えております。したがいまして、特にこの人道的な取り扱いという観点から、このような場合に適用があるということは言えると思います。  なお、第四条約、すなわち文民の保護に関する条約につきましては、私さっき紛争当事国間で一般的にこの四条約が適用されるということを申し上げましたけれども、文氏の保護に関する条約につきましては、必ずしもそうでない場合にも一の場合に適用があるということでございますので、この点補足させていただきます。
  430. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話は、だからこそあの地域はその戦時法規が適用される、あるいはそれが準用されるというぐらいの状況にある地域だということではありませんか。
  431. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 イラクがクウェートを侵略いたしまして、そこで大きな武力紛争があったわけでございますが、そのような場合に、このジュネーブ諸条約が適用される場合がいろいろあろうかと思います。
  432. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今条約局長が言われたとおりに、あそこは実は危険なところなんですね。そういう地域であります。今まであの地域が危険かどうかというのでしょうか、危険なところにはやらない云々という話がいろいろ出たりいたしました。  それに関連して一つお聞きしますけれども、この国連平和協力隊は、これは国際法上、軍隊でありますか。
  433. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国連平和協力隊は、国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議を受けまして行われる国際連合平和維持活動その他の活動に対しまして、武力の行使または武力による威嚇を伴わない平和協力業務を行って協力することを目的としている組織でございます。したがって、平和協力隊自体は軍隊とは言えないと思います。  他方、現在法案で考えております平和協力隊には自衛隊の参加をしていただくということを考えているわけでございますが、この自衛隊は、日本国憲法上必要最小限度を超える実力を保持しない等の厳しい制約がございますけれども、しかし通常の観念で国際的に見ますと、国際法上は軍隊として取り扱われまして、自衛官も国際法上の軍隊の構成員として取り扱われることになると思います。この点につきましては、自衛隊の部隊等または自衛官が平和協力隊の業務に参加している場合におきましてもこの自衛隊の身分は保持するわけでございますので、この点変わりはないと考えます。  これを総合いたしますと、平和協力隊自体は軍隊とは言えないと思いますが、平和協力隊を構成する自衛隊の部隊等または自衛官につきましては、それぞれ国際法上軍隊または軍隊の構成員という地位を持っておりまして、国際法上はそのように扱われるというふうに考えております。
  434. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 この隊員の中で、自衛隊員以外の人は武器を持ちますか。
  435. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この法案の二十七条で、治安状況が悪い等の場合、特に必要と認められる場合には、この平和協力隊の隊員が護身用の武器、小型武器と言っておりますが、これの限度は、けん銃そして小銃ということでございますが、その程度の護身用の武器を貸与されることがある。常に持つということではございませんが、この貸与される対象は、自衛隊から来られる方だけではなくて、平和協力隊の隊員一般でございます。
  436. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 この協力隊は、多国籍軍を支援する、あるいは支援することもあると言った方がいいかもしれませんが、そういう形になりますよね。したがって、イラクから見れば、この協力隊は、あるいは日本は、いわゆる敵性を持っている、敵対国の形になりますよね、というふうになると私は思うのです。そして、今言われたように武器も持つこともあるというふうなことになれば、自衛隊員以外の方たちも制服を着、ワッペンもつけて、そして武器も保有するということになれば、いわゆる正規軍の兵力とならなくても、いわゆる不正規ですね、不正規の兵力としてこれはいわゆる軍人扱いになるのじゃありませんか。
  437. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国連平和協力隊の海外派遣等の協力につきましては、繰り返しになりますけれども武力による威嚇または武力の行使に当たる行為は行わないという基本原則にのっとって行われるわけでございます。また、平和協力隊の行う具体的な平和協力業務の実施に当たりましては、その時点での国際情勢等を十分勘案いたしまして、派遣先を含む基本方針等につきまして慎重に法案所定の手続を経て決定するわけでございまして、平和協力隊が紛争に巻き込まれるような事態が起こらないように万全を期する所存でございます。したがいまして、例えば平和協力隊員が捕虜になるというような事態は実際問題として想定しておりませんけれども、ただ、国際法上の理論的な問題についてあえて申し上げますれば、次のようなことになると思います。  先ほど申し上げましたように、自衛隊の部隊等あるいは自衛官が国際法上軍隊あるいは軍隊の構成員として扱われるわけでございますが、戦争犠牲者の保護に関するジュネーブ諸条約との関係におきましては、我が国紛争当事国にならない限り、自衛官もあるいは文官もこの文民の保護に関する条約、いわゆる第四条約と言っておりますけれども、そのような場合には、すなわち紛争当事国に我が国がなっていない場合におきましては、この第四条約の保護を受けるということになるわけでございます。この場合には、自衛官も文官も同じような保護を受けるということでございまして、例えで一例を挙げますと、捕まったような人は軍事的に利用されてはならない、あるいは虐待をしてはならない、人質にしてはならないというようないろいろな保護規定が適用になるという関係であると思います。
  438. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のは、まず最初に、紛争にならないように云々ということを言われました。しかし、起こるかもしれませんね、起こるかもしれない。したがって、もしも起こったらどういうふうになるのだろうか、するのだろうかということをこれは考えなければなりません。当然の話ですよね。まず、それはそういうふうに考える。そして、もしも起こったときに、先ほど申し上げたように、そのときは日本が多国籍軍に支援をする、あるいは武器、弾薬、兵員までというような格好になるといたしましょう。そのときの日本は、紙争が起こった状況、今申し上げたような格好で日本が支援をしている。そういうところを考えますと、そのときに協力隊の中の自衛隊の人は、これは軍人扱いをいたしますよと。そして、いわゆる自衛隊以外の文民の人たち、いわゆる民間人なんかもその中には入っている、その人たちは武器も持ちますしワッペンもつける、そういう格好になっている。しかも、ちゃんとした指揮者がいて、その下で働いているという格好になっているときに、この人たちは、もしもさっきのあれで捕まったとき、スパイとして処罰されたり、あるいは重罪として処刑を受けるということはないのですね。
  439. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 平和協力隊の海外派遣につきまして、慎重を期するという点につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。ただ、にもかかわらず万一紛争に巻き込まれたときはどうなるかというお尋ねだと思います。  他国との関係我が国紛争当事国というふうに見られることは、実際問題としては余りないとは思いますけれども、仮にある国が我が国紛争当事国とみなすという場合の協力隊員の国際法上の取り扱いにつきまして、あえて純理論的な観点から申し述べますれば、次のようなことになろうかと思います。  一般論といたしましては、その場合、国際法上軍隊の構成員とみなされる自衛隊員とそれ以外の隊員につきましては、自衛隊員に関しましてはジュネーブ条約の第一から第三までの条約の適用を受けることになるわけでございます。そして、それ以外の隊員はいわゆる文民の保護に関する第四条約の適用を受けるということになるわけでございますが、相対的に見ますと、どちらかといいますと、文民の保護の方が厚いということが言えると思います。  第一に、自衛官である平和協力隊員につきましては、御案内のとおり第三条約第四条Aの(1)というのがございますが、ここに言う「紛争当事国の軍隊の構成員」として捕虜の取り扱いを受けることになるわけでございます。で、自衛官でない平和協力隊員につきましては、文民の保護に関するいわゆる第四条約の第四条によりまして、被保護者、ここは捕虜という言葉は使っておりませんが、被保護者としてこの条約の保護を受けるわけでございます。  捕虜に関しましては、捕虜をその権力下に置いた国は、捕虜を抑留することができるわけでございますが、文民の保護に関する条約で被保護者という扱いを受けます場合には、占領国を害する一定の犯罪を行った場合や、あるいは安全上絶対に必要な場合等のほかには被保護者を抑留できないというふうになっております。また、仮に被保護者が例外的な場合に抑留された場合におきましても、その待遇は捕虜の抑留の場合とは異なる点が幾つかあると思います。  若干長くなりますので、一応その辺で省略させていただきます。
  440. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の再確認をいたしますけれども、この条約の中で、先ほど私がちょっと申し上げました不正規の兵力となる四つの要件というのが出ております。一つは、部下のために責任を負う統率者がいること、二つ目には、遠方より認識し得る固有の特殊標章を有すること、三番目には、公然と武器を携行していること、四番目には、戦争の法規、慣例を遵守すること、と四つの要件が出ておりますが、先ほど申し上げたように、その例えば民間の隊員、これが捕まったときには、さっき申し上げたような措置を受けるということはないんですね。要点だけ答えてください。
  441. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほどお読みになりました条項につきましては、いわゆる戦闘員のことを考えている規定だと思います。平和協力隊の隊員、自衛隊以外の隊員でございますが、その場合には、むしろ、先ほど申し上げましたように文民の保護に関するジュネーブ条約の方の適用を受けるというふうに考えております。
  442. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 次に、その隊員の皆さん方が働いていらっしゃるときに突如として交戦状態に入ったとします。そのときに、総理は危険な場所へは送らないよというふうに言っていらっしゃいますけれども、もしもそういう交戦状態に一たび入ったときに、協力隊の人たちは逃げ帰ってくるのでしょうか、どうするんでしょうか。
  443. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 いろいろな状況があり得ると思いますけれども、そのように予期せざる状況におきまして不幸にして戦闘状態が起こった、そこに平和協力隊がいるという場合におきましては、基本的にはこれは計画の変更ということをやりまして、そのような状況を回避する、場合によっては引き揚げてくるということを考えております。
  444. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 例えば、ほかのアメリカやらイギリスやらフランスやらいろいろな国の人たちと一緒にいろいろな業務についているといたしましょう。物品の輸送をやっているかもしれない、通信の業務をしているかもしれない、あるいは検査、修理云々ということが出ておりますが、そういうことをやっているかもしれない。そういう他の国の人たちと一緒に仕事をしているときに、日本の自衛隊員の方々が一緒にしているといたしますね。そのときに一たん事が起こったとしたときに、日本の自衛隊の人たちだけがさっさと帰るということになるのだろうか。もしもそうしたときに、日本に対するそういう人たちの評価はどうなるのかな、あるいは、そのときに帰ってくる、計画の変更かもしれませんが、帰ってくる自衛隊員の人たちの気持ちはどういうことになるのかなというふうに思いますが、国際的にそれはどういう評価を受けることになると思われますか。
  445. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 御案内のとおり、この法案で規定しております平和協力隊というものは、武力の行使等を行わないという基本的な限定のもとで、三条二号に掲げておりますような業務を行うものでございます。したがいまして、自衛隊から参加される部隊と、あるいは隊員につきましても、これは戦闘部隊ではないわけでございますので、元来この平和協力隊の任務、能力には限界があるわけでございます。したがいまして、そのようなことは、当然国際的に協力を行うときには、あらかじめ関係国あるいは国連にそのような性格については周知しておく必要があると思います。そのような意味におきまして、一定の限界を持った平和協力隊でございますので、また先ほども申し上げましたように、現に戦闘が行われている場所あるいは戦闘が行われる蓋然性の高いところにはもともと出さないように運用するということでございますので、そのような事態でほかの諸国の軍隊がとる行動と別な行動をとるということになっても、これはある程度いたし方のないことであるというふうに考えております。
  446. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 防衛庁長官に伺いますけれども防衛庁長官が、自分の配下であります自衛隊員の人たちに、こういうことで行ってくれというふうにしてやるのでしょう。そのときに、今申し上げたような格好で帰ってくるといたします。防衛庁長官としてどのように思われますか。
  447. 石川要三

    ○石川国務大臣 今、ちょっと失礼ですけれども、帰ってくる、こういうことを表現されましたが……
  448. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 帰るかどうか知りませんが、ある紛争が起こりますね。起こったときに、日本の自衛隊だけが計画変更で、少なくとも、ほかの国の人たちと一緒に仕事をしていたんだけれども、その場から離れて帰っちゃうか、ほかのところに移動するのかわかりませんが、離れてしまうわけですよ。
  449. 石川要三

    ○石川国務大臣 もうこの法案が提案されて国会が始まってから、この問題についてはいろいろと議論が重ねられてまいりました。今、具体的な例を挙げまして、そういうときの長官としての一つの考えといいますか、その所感を問われたわけでありますけれども、いろいろなケースがあるからこれはなかなか難しいと思います。  しかし、これは再三総理も申し上げているし、外務大臣も申されているし、私からも申しておりますけれども、いずれにしましても、この平和協力隊というものは、いわゆるそのときの国際情勢、軍事情勢あるいはその他地域の情勢、あらゆる角度から万全を期して、要するに安全というものを確保して、その前提のもとに協力隊としての行動が行われるわけであります。その中に自衛隊も参画するわけでありまして、そういうことから見て、多国籍軍とともに要するに行動を一にしてやるというふうには私は理解をしておりません。したがって、先ほど条約局長が申しましたように、すべて安全の上に、そしてまた万が一、万々が一そういうことがあるとするならば、やはりそれは業務の内容、そういう計画というものの変更ということが当然行われる、こういうふうに理解しております。
  450. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 これは総理にもお伺いしておきますが、今のようなときに日本の自衛隊の人だけは帰す、少なくともその場所を——他の国の人たちと一緒に作業していたとしましょう。そのときに、日本の自衛隊だけはその場所を離して移動をさせる、帰すということになるのでしょうね、ということでよろしいんですね。これは簡単にお願いします。
  451. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 戦闘部隊が戦闘に参加しておるのじゃございませんから、多国籍軍と一緒になって戦闘をする、共同作業をするということも全く想定しておりませんし、平和協力隊としてできるだけの、分に応じた業務計画をきちっとつくって、初めから戦闘の行われているようなところには出さないという方針で慎重に対処していくつもりでありますから、戦闘部隊ではない、武力行使はしないということでありますので、その点はきちっと一線を引いた協力になると思います。
  452. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 いわゆる武力行使というか、戦闘行為をやっているかどうかわからない。多分それどころじゃないのですよね。今送ろうとしているところは、ずっとずっと遠いところで要するに仕事をするという格好になります。そうしますと、どういうことが起こるかわかりませんよね。ミサイルもあるし何もあるというところでやるわけでありますから、ずっと遠くにいてもそういうことですよ。だから、例えば医療業務にしても、どこかで車か何かの修理でもするというようなことだってあるかもしれません。それはいわゆる戦闘行為といいますか、前線と比べますとずっと遠いところでやっているかもしれませんが、同じことがきっと起こるんだろうなということですよ。
  453. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それはお答えをいたしましたように、事情がそんなに変わってくるなれば、これは計画変更をして、その土地土地の実情に応じた判断をして、隊長が撤収をするとか、計画変更に従って他のところへ移動するとか帰ってくるとか、それは具体的にいろいろなケースが予想されると思います。今から予断して、こういうときはこうこうというようなことはちょっと申し上げかねますが、業務計画のときに慎重に対処していきます。
  454. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 それでは、一番最初に私は、あの湾岸地域というのが実は本当に危険な、要するに危ないところであるということを申し上げましたよね。そうすると、例えばサウジアラビアには行くことになると思われますか。
  455. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは全く見通しがつきませんからわかりませんけれども貢献策のときにはサウジアラビアのダンマムというところまで協力した、物資の輸送をいたしたということでありますが、情勢が変われば、それはまたそのときにおいて判断をすることに相なります。
  456. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 これは何が起こるかわからないわけでありますから、この協力隊の皆さん方が最小限の武器を携行をして、例えば今の話ですと、サウジに行くといたします。その可能性は私は非常に強いと思うのですよ、高いと思うのです。そのときに、例えばイスラエルやサウジの人たちは一般市民までもがいわゆる毒ガス攻撃に対する防御を考えているそうであります。じゃ、この協力隊の人たちは毒ガス攻撃に対する防御という考慮はされますか。
  457. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この二十七条の小型武器は、先ほどちょっと申し上げましたように、現地の治安状況が悪いというようなことを想定して、特に必要があると認めるときに貸与するというものでございます。  それで、毒ガスというようなお話でございますが、これはその戦闘地域あるいは戦闘の行われそうな状況ということに非常に関係あると思います。したがいまして、そのようなところには海外派遣しないという考えでおりますが、今、したがいましてその毒ガスマスクを持っていくというような案が具体的にあるわけではございません、ございませんけれども、必要があればそのようなものも持っていくこともあり得ないことではないと思います。  いずれにいたしましても、この小型武器に比べましてより防御的な装備であるということは言えると思います。
  458. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 ドイツ軍は地中海に展開していますが、毒ガス対策もしているそうでありますね。そして、ガスは風に乗ってくるわけでありますから、ひょっとして起これば毒ガス云々ということはどうしても起こる、そういう可能性はあるというふうに思わなきゃなりませんですね。そうすると今のは大丈夫ですか。
  459. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 具体的な派遣計画に即しましてどのような装備を持っていくかということは、その案件それぞれの状況に照らして、業務計画を決定する際に決めていくということになるものでございます。したがいまして、どのような装備を持っていくかということはその際に決めるということでございます。先ほどの小型武器あるいは防毒マスクというようなものにつきましても、これは必ず持っていく必要があるとは必ずしも思いませんし、具体的にその状況に照らして決めていくということで考えております。
  460. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 時間がだんだん追っておりますのでちょっと急ぎますけれども、この法案の三十一条に「民間の協力等」というところがありますけれども、そこの、特に許認可権を持つ担当省庁から協力を要請をする場合、これは一体どのくらいの強制力を持つと考えられますか。
  461. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 三十一条の第一項は、「本部長は、第四章の規定による措置によっては平和協力業務を十分に実施することができないと認めるとき、又は物資協力を実施するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長の協力を得て、物品の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供について」いわゆる民間の「協力を求めることができる。」ということでございまして、政府協力を求めることができるということでございますから、強制力はございません。
  462. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 実は、例えば船だとか民間の飛行機とかそういうものを協力要請をしようという話が起こったりして、そのときに断れない、許認可権を持っていて断ることができない、だから労働組合か何かに反対をしてもらおうかというようなことが起こらないとも限らないと思ったりしますが、それほど強く要請をするということはありませんというふうに考えていいのですか。
  463. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 まず、「関係行政機関の長の協力を得て、」これは必ずしも通じてではなくて、「本部長は、」「関係行政機関の長の協力を得て、」というふうになっておりますし、「求めることができる。」ということでございます。  それで、このような協力要請があった場合に民間はどうするかどうかにつきましては、これは全く任意でございます。ただ、精神的に、第一条の目的にも書いてありますように、要員の派遣あるいは物資の協力、あるいは政府だけではなく民間の広い協力も得て、必要な場合にいろいろな対応できるという体制を整備するということが眼目で、その一環といたしまして民間の方の協力要請もうたってあるわけでございますが、いずれにいたしましても、その際には「適正な対価を支払う」ということ等も第二項で定めてございます。
  464. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 協力隊員に対する処遇についてちょっと聞きたいのですが、まず最初に、自衛隊員の場合の手当、これは派遣するとき、手当というのは今どのくらいのことを考えているのですか。
  465. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 国連平和協力隊に参加していただきまして海外に派遣される場合には、まず本俸でございます。これは例えば自衛隊の場合は、自衛隊の給与法に基づく本俸の支給がございます。その次に出張旅費、プラス今新しい法律のもとで二十四条に「平和協力手当」というものが書いてございますが、そういうものが支給されるということでございます。  なお、平和協力手当の中身につきましては今鋭意検討中でございまして、まだ具体的なものはここで御説明できません。
  466. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 大体どのくらいになるということですか。
  467. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 これは、国内にありますいろいろな手当も参考にしながら検討はいたしておりますけれども、同時に、この平和協力隊の方は海外に派遣される、海外で勤務していただく、そういう特殊事情も踏まえて今検討中でございまして、具体的なことを今申し上げる段階にはございません。ただいま具体的に、例えば何%ぐらいとか幾らぐらいかという具体的な数字あるいはパーセントまで申し上げる段階ではございません。
  468. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 大蔵大臣も来ておりますので一つだけ伺いたいのですが、自衛隊員も、実は民間もある意味では同じなんですけれども、保険に入っていますね。個人の任意保険に入っております。彼らがその地に行ったときに、万一の場合その免責条項にかかって支払われないということが起こります。そのときに、その免責条項を棚上げするかあるいは戦時保険に入るかということが起こると思うのですが、この問題についてはどのように考えていますか。
  469. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先日、これは米沢委員からも御提起がございましたけれども基本的には民間の契約の問題でありますから、当局から免責規定を棚上げするように強制することはできないわけでありますが、保険の範囲内で実務上どのような取り扱いを行うことが可能であるか、また適正であるかというのを現在研究をいたしております。  なお、多少補足をして申し上げますならば、確かに現在の民間生命保険会社が引き受けております保険契約の現状というものは、戦争などによって死亡した場合の保険金支払いについて、商法において戦争その他の変乱により生じた損失は免責、ただし、契約者の積立金は払い戻すとされているのが実態であります。しかし一方では、生命保険約款におきましては、各社によって相違がありますので概況で申しますと、原則は免責であるが保険の計算基礎に及ぼす影響が少ないときには全額または削減して支払う、あるいは逆に、原則は支払うが保険の計算基礎に影響を及ぼすときには保険金を削減するとなっているわけであります。こうした状況について、当局としても、また業界としても検討を進めている最中という状況でございます。  また、例えば損害保険の場合の傷害保険につきましては、英国のロイズ社に戦争危険を担保する傷害保険があるということを聞いておりますが、残念ながら私はまだその詳細を承知をいたしておりません。ただ、日本におきましても、海外旅行傷害保険には戦争危険担保特約を附帯することによりまして、戦争あるいは外国武力行使、内乱など及びこれらに随伴して生じた事故による傷害、死亡、後遺障害について保険カバーを得ることができるようになっております。  戦争危険担保特約つきの海外旅行傷害保険を引き受け得るか否か、これは基本的には個々の保険会社の判断の問題でありますけれども、集積がされる危険がどの程度になるのか、あるいは再保険によってどの程度まで危険の分散を図れるかなどが、引き受けの可否あるいは引受保険金額など引受条件の決定のポイントになるでありましょう。今、戦争の危険が懸念されます地域の駐在員などに対しましては、戦争危険担保特約つきの海外旅行傷害保険の引き受けが行われている例が多いというのが実態でございます。我々として目下勉強をいたしているさなかであります。
  470. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今回のこの法案は、総理は危険なところには送らないということを言っておられますけれども、私は、実はそれは危険はある、そういうところに送るんだ、だから国連平和協力隊というものをつくろうと思ったんだと思うのですね。ところが危険なところに送りません、こういうふうになりますと、この法案はなかなかそれは厄介だ、いろいろその解釈も厄介な解釈になってくるということだと私は思うのです。だから、この法案はそれはつくり直すかなんかしないとだめだなという感じをいたします。  そこで、今回のこの国連平和協力法がもしも通らない、成立しないとしたときには、しなかったらどんな支障が考えられるか、国際的に孤立をすると思われるのか、あるいは総理はいわゆる国際公約をこれはしているのかどうか、あるいは医療チームの派遣だとかあるいは物資の輸送等々の中東貢献策の実施に当たって支障を来すのか、あるいは、もしも通らなかったら総理責任についてどう考えるか、伺います。
  471. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 抽象的に言えば、危険が伴う地域は非常に広くございます。私が言っている危険なところへというのは、あらかじめ戦闘が行われているような具体的な危険な地域には送りませんという自分の心情を何回も吐露しておるわけでありまして、そのことは具体的な業務計画の段階ではっきりとさせていきたい、こう思っておるのです。  それからさらに、具体的にいろいろお尋ねありましたが、この法律日本があくまで自主的にこのような協力、このような努力、できるだけのことをしていこうということでやっておるわけでありまして、世界に向かって公約したとか、そんな角度のものではありませんが、これをすることによりてせっかく機能し始めてきている国連平和維持活動というものに対して、日本もただ演説とビラだけじゃなくて出て行って協力をしよう、日本も一緒になってできるだけの協力をしよう、こういうことを願ってつくっておる法案でありますから、きょうまで世界の大きな歴史の中で日本が初めて平和と繁栄のために積極的に貢献していきます、また先般のサミットでも、今後の十年は民主主義への十年だと言いました。私どもがベルリンで日本外交を述べたときも、大きく移り変わる中で、きのうまでは手を差し伸べることができなかった体制の違う国々の人にも手を差し伸べます、インドでは、非同盟・中立であったSAARCの人々にも、政治的にも経済的にも日本出てこいと言われれば出ていって御協力もします、世界的な規模の平和と繁栄にできるだけ協力をして民主主義というものが定着していくように努力をしていきたい、積極的に世界枠組みづくりに貢献していきたいというのが私どもの願いでありますから、その一環としてこの平和協力法というものもつくって、そういった仕組みや体制が日本になかったことの御批判を随分いただいておりますから、その御批判を甘んじて受けると同時に、今後そういったことがないように、まずその仕組みをつくっていこうということで努力をしておりますので、どうぞそのようにお認めをいただきたいと思います。  そして、何事につきましても責任というものは非常に大きくて重いものであるということを、私は昨年総理に就任以来厳しくみずからに言い聞かせて精魂込めて毎日毎日やっておるわけでございますので、どうか御理解をいただきますように、この法案を成立させるためにどうしたらいいかという御議論を深めていただいて成立させていただきますように心からお願いを申し上げる次第でございます。
  472. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 ちょっと確認をいたしますが、この法案について、いわば国際公約的になっているということではないのですね。
  473. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 委員が何を想定して国際公約という言葉で再三お詰めになるのか、私はちょっと真意が伺ってないのでわかりませんけれども世界に向かってこの法律を通しますということは決して申しておりません。それは国会議論してくださることであって、そういう考え方で日本国際協力ができるように、許された範囲内で何ができるだろうか、できない、できない、いけない、いけないじゃなくて、何ができるだろうかということを日本は今一生懸命努力をしていこうと思って法律を出しておるのでありますから、あくまでこれは日本世界に対する自主的な努力でありまして、それを世界の人々がどう見てくださるか、あるいは認めてくださるのかどうかということは、全く別の次元の問題であると私は心得ております。
  474. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の問題に関してもう一つだけ伺いますが、今回こういう法律が成立をしない、そして国連平和協力隊のようなものができなくても、例えば日米関係に与える影響、もしもできなかったら日米関係に与える影響はどのように考えられますか。
  475. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日米関係というのは極めて大切な二国間関係であります。そして、今回の場合でも、国際社会の正義を守るために迅速に行動をして、まず多国籍軍の先駆けになって抑止力をしいて、あれ以上の平和の破壊が行われないように、サウジのところでとどまるように行った米国の行為というものは、私は評価しております。そして、そういったことによって今度は国際社会の正義を守るために国連の決議があり、世界の人がそれを認め、アラブもヨーロッパもアジアの一部もそれに加わって今、回復活動をしておるわけです。それと同時に、もう一つは、あの地域があのことによって抑えられておる、おさまっておるということ。もしあれが当初報道されたように、サウジの油田も、あの辺の油田が全部壊滅的な影響を受けたらどうなるかといえば、これは世界の経済にとって大変な大きな影響になってまいります。そういった意味からいっても、これは私は、国連の決議というものが守られて、しかも平和的に解決されていくことが極めて望ましいわけであります。  今、政府貢献策を決めていろいろ努力しておる中で、細々ですが、いろいろな貢献策もしております。同時に、資金協力資金援助もしております。そういったことについては高い評価をする、世界じゅうに歓迎されるだろうという評価も、アメリカからも聞いておりますし、その他の国からも聞いておりますし、湾岸の首脳からも、そのことは感謝するという言葉も私は率直に聞いてまいりました。我々ができる限りやっておる努力というものは、これは認めて、評価も受けておると私は確信をしております。  したがいまして、このことができたらどうなるか、できなかったらどうなるかということは、これは最初に申し上げたように相手国が判断されることで、私は精いっぱいの努力をしておるということで、きょうまでの貢献策の中でさらにそれを実らせようという努力を見ておってもらえば、通らないことに対して何か言われるとか通ることに対して何か言われるとか、これは先の問題でございますから、私は何回も言うように、ぜひ通していただきたいという気持ちでお願いしておりますので、予断と憶測で具体的な物を言うことは差し控えさせていただきたいと考えます。
  476. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 先ほども申し上げましたけれども、私は、実はきょうの論議もそうでありますが、あるいは今日までずっと国会での議論も聞いていましても思うのですけれども、この国連平和協力法、これができて実行しようというふうにしたときも、今までの答弁のされ方あるいは政府姿勢あるいは憲法の解釈等々、そういうものから見たときに、実際に例えばあの湾岸地域でできることは非常に少ないんだろうな、限られてしまうんだろうなという気がいたします。恐らく最初総理なりあるいは皆さん方が、あるいは関心ある人たちが、現在の状況の中で日本の果たす役割は何だろう、その中で、金やあるいは物だけじゃいけなくて人の面でも貢献をしようというふうに考えたときと、そしてそういうものを実際にやろうとしたときのギャップを私は非常に感じるのですよね。恐らく私は総理もそうだろうと思うのですよ。だから、この法律のいわば実効性というか、目的とするところの実効性というのは極めて限られたものになってしまうというふうに私は思うのです。本当にこれでいいのかなというふうに思うのですよね。本当にいいんだろうかというふうに私は思います。  それで、総理が今申し上げたような格好でいろいろ努力をされたんでしょうけれども、私は、この問題のためのアプローチというか、やり方がやはり問題じゃないのかなという気がするのですよ。それは、見ていまして、これは多分国民の多くの人もそう思っていると思うのですが、今回のことをやろうとしたときにいかにも小手先じゃないんだろうかしらん、あるいは近視眼的に物をやっているんじゃないかしらん、あるいはこそくなやり方をしていやせぬかしらん、そして、最初に申し上げましたけれども、言葉遣いでも、あるいは派遣と派兵がどうの、あるいは協力と参加がどうだとか、あるいは武力行使と一体であるか一体でないかというような話もしたりしますけれども、こういうものも何か詭弁じゃないんだろうかなというふうに映ったりするのですよ。なぜなんだろうか、なぜそんなふうに思うんだろうか、あるいはその課題に対して本当に本質的にやっているかな、あるいは長期的な視点でやっているかなといったときに、なかなかそういう感じが見えない。なぜそうなんだろうということだと思うのですよね。  それは、私はこういうことだと思うのですよ。総理自身が、じゃ世界の中で日本役割をどういうふうに果たすかという見識のもとに、その政治、外交における強い、よく言われることですが、哲学というか信念というのがどうもよく見えないなということだと思うんですね。だから、発言についても、どうするかといったときに何回も変わったり、これはもちろん総理だけの問題じゃありませんが、いろいろ変わったりするということが起こったりするのです。  だから私は、この自衛隊の問題にしてもそうですが、これからどうしようかというふうに考えたときに、本当に日本がこれから本心からどういうふうにしよう、こう思ったならば、まず一つは、正々堂々と、例えば憲法改正ということもあるかもしれない、あるいは世界情勢の変化を踏まえて憲法の解釈をこういうふうに考える、あるいはそういうこともあるかもしらぬ。そして、あるいは自衛隊法の問題についても、ちゃんと自衛隊法の改正をするというようなやり方もある。あるいはまた、今までのいろんな憲法を初めとしたそういう解釈の範囲内で国際外交を進めようとしたときに、世界理解を得ようと思ったらほかのやり方もあるかもしれない。それは例えば、非常にわかりやすい原則のもとに、あるいは限られた分野で自衛隊を送るよという考え方もある。あるいは、自衛隊の派遣はこれは全然やりません、日本は全然やりません、そのかわりといいましょうか、やらないけれども、例えば経済やらあるいは技術やらあるいは文化やら、こういうものでこういうふうにちゃんとやっていきますということも考えられると思うのです。いわば、見ていますといわゆる日本がこれからどうやってやっていくんだというドクトリンといいましょうか、そういうものがよく見えない、あるいはいろいろなものをやっていくことのタイミングもそうだということだと思うのです。  したがって、こういうのを見ていますと、日本がこれから本当に世界から信頼をされる国になるだろうか、あるいは尊敬される国になるんだろうか、あるいはそれなりに威厳もある国として世界の国から見られるんだろうかというふうに考えたときに、私は本当に大丈夫かなということを思ったりするのです。そういう意味で、総理責任は極めて大きいのだと思うのですが、そのことをお伺いをして、質問を終わります。
  477. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、先ほどお答えの中で、総理大臣責任というものが極めて大きく、重いことは厳しく自覚をして毎日やってきましたと申し上げました。同時に、今度の問題につきましても、日本憲法理念国連憲章の掲げておる平和の理念と、目指すところは世界の平和と繁栄ということでありますから、私がベルリンで演説してきたことも、ニューデリーの国会で話したことも、日本はこれから平和と繁栄のために、きょうまでの持てる技術力とか経験を生かして、民主主義のために、民主化をしよう、自由化をしようという国々に積極的に協力をしてまいります、そして冷戦時代の終わった中に、そちらの方面でお役に立ちたいということを何度も申し上げてきました。その考えは今も変わりません。その考えを変えたこともありません。  そういう中で突然起こったのがイラクのクウェート侵略、侵攻という暴挙ですから、そういう新しい世界秩序づくり枠組みづくりの中にあのような無法な軍事力による制圧を認めていいのか、黙って見ておっていいのかというのが、今の国連中心となった世界の、国際社会の動きだと思いますから、これは従来の十八世紀的な戦争とかあるいはA国とB国の紛争というものじゃなくて、国際社会と正義に反する平和の破壊者との問題でありますから、これを容認してはいかぬ、このままこれを既成事実にしちゃいかぬというので国際社会の経済制裁が行われ、局面を転回するという努力が起こっておりますので、その中でできることは何であろうか。今も貢献策は決めて行い始めておりますが、体制や法の仕組みもなかったので、せめて許される限度で体制や法の仕組みをつくって、これからお役に立っていこうということでございます。  この法律さえ通らないとなると、アメリカや世界国々がどう見るかということは、アメリカがどう見るかということは、予断と憶測で物を言わぬと言いましたけれども世界のこういう国際化時代協力日本もしたらどうか、できることがあるではないかという批判が起こることを私は極めて憂えるわけでありまして、何とか許される範囲内でのぎりぎりの協力というものはその次元に立ってお認めをいただきたい。そのかわり、平和の理念というものをきちっと守りながら慎重に対応をしていきましょうという決意で臨んでおりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
  478. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 終わります。
  479. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて伊藤英成君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三十日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十五分散会