○安恒
良一君 私は、日本
社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となっております
平成二年度総予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。
世界は今戦後四十年間続いてきた東西の冷戦構造に終止符を打ち、本格的な緊張緩和と軍縮の時代に入っております。一九八七年末のINF全廃条約を初め、東西間の相次ぐ軍縮提案、そして昨年十二月のマルタ島での米ソ首脳会談、さらに今年六日の米ソ首脳会談による大幅な核軍縮への着手など、デタントは急速なスピードで進んでおります。にもかかわらず、
政府は旧態依然たるソ連脅威論に取りつかれたまま、やみくもに軍事力拡大の道を推し進めてまいりました。その結果、今や我が国は世界有数の軍事大国となり、近隣アジア諸国に脅威を与えるというゆゆしい事態を招いているのであります。
また、国内では、史上空前の広がりを見せたリクルート疑獄が、灰色の
議員の道義的
政治的責任をあいまいにしたまま風化寸前の状況に追いやられようとしております。さきの
衆議院選挙でみそぎは終わったとする
選挙洗礼論で逃げ切ろうとする一方、
政治倫理の
確立に手をつけようとせず、現在の中
選挙区制が諸悪の根源であるかのごとく宣伝し、
選挙制度の改悪を図ろうとすることは、問題のすりかえであり、
野党つぶしをねらった戦術で、断じて認めることはできません。
さらに、昨年の本院における消費税廃止の決定にもかかわらず、
政府はこれを無視し、
海部内閣の
選挙公約であった消費税の思い切った見直しはほんの小手先だけの表面的な修正だけでお茶を濁し、消費税の持つ本質的欠陥には何ら手をつけておらず、完全な公約
違反となっているのであります。
政府・
自民党の国民不在、国民生活圧迫の
政治姿勢に強く抗議をし、以下順次反対の理由を申し述べます。
反対理由の第一は、国民がこぞって反対をする消費税が予算に組み込まれていることであります。
一昨年、
政府・
自民党は死んだふり解散で三百の議席をかさに着て、大型間接税は導入しないとの公約をほごにし、議会制民主主義のルールを無視した強行採決の連続で消費税の導入を図ったのであります。しかし、昨年の参議院において消費税は廃止すべきものと決定されたものであり、そのまま凍結ないし棚上げすべきことが当然であるにもかかわらず、本院の意思を踏みにじり予算に計上していることは断じて認めることができません。世界でもまれに見る食料品から人間の生命に関連する諸経費にまで課税する上、消費者の支払った消費税がそのまま国庫に納入されず、簡易課税
制度や限界控除
制度を利用して業者が金もうけできる仕組みが内包されているなど前代未聞であり、絶対に許すことができません。
反対理由の第二は、
政府の税収見積もりが極めてずさんに行われていることであります。
政府は、六十一年度以降の日本経済の本質的構造変化を見落とすという重大な過ちを犯し、その結果、六十一年度二兆四千億、六十二年度五兆四千億、六十三年度には五兆七千億に上る巨額の税の過小見積もりという過ちを犯してきたのであります。かつて竹下元
総理は大蔵大臣時代に、一%は誤差のうちと、一%以内なら許されるとの見解を示したものの、近年の誤差率は六ないし八%にも達し、誤差率記録の更新をばく進中であります。今年に入り、いわゆるトリプル安が起きたにもかかわらず、景気そのものには大きな変化は見られず、元年度税収も再び相当の過小見積もりになることは必至であり、その見積もりの上に立てられた二年度税収見積もりもまた誤ったものであることは言うまでもなく、このようなずさんきわまりない見積もり予算は到底認められません。
反対理由の第三は、国民生活関連予算が抑えられている一方で、防衛
関係費の突出が相変わらず続いていることであります。
昭和五十八年度を一〇〇とした
平成二年度の防衛
関係費は一五五・六と、この間実に五六%も拡大をしております。社会保障
関係費は二七%、文教及び科学技術振興費はわずか六%しか増加しておらず、
政府・
自民党のもとでいかに防衛費が優遇される一方で国民生活が圧迫されてきたかを物語っております。
政府は、今年度の社会保障費の伸びが六・六%と防衛費
関係の六・一を上回ったことを殊さらに吹聴しておりますが、そのからくりは、
平成二年度まで繰り延べてきた厚生年金国庫負担金を本年度から繰り入れることによるものであり、何ら社会保障予算が実質的に増大したものではなく、全く見せかけの増大と言わざるを得ず、このような軍事優先、国民生活切り捨ての予算は到底認めることはできません。
反対理由の第四は、
政府の見通しをはるかに上回って国民負担率が上昇していることであります。
租税負担率に社会保障負担率を加えた国民負担率は、昭和五十五年の三一・三%から六十年度は三五・三%へ、そして本年度は四〇・四%へと、この十年間で九・一%も上昇したのであります。その結果、六十三年度に
政府が提示した
平成十二年度の国民負担率の見通しに十年も早く到達し、このままでは
平成十二年には五割を超えるおそれ十分と言わなければなりません。
政府は、国民に明言した増税なき財政再建の公約に従い、異常に上昇した国民負担率を是正するために思い切った減税を実施すべきであります。にもかかわらず、
政府は将来の福祉社会の明確なグランドデザインも示さず、なし崩し的に負担率だけを引き上げていこうとしており、このような
政府のこそくな手段は絶対に許すことはできません。
反対理由の第五は、
政府の予算書及び国会提出の資料が全く審議する立場に立ってつくられていないことであります。
予算額が妥当か否かを判断するには、単価と数量が明確になっていることが
大前提であることは、会計の根本原則であることは明らかであります。にもかかわらず、予算書はおろか各費目明細書を見ましても、単価と数量が明確に示されていることはほとんどなく、これを明らかにしない予算書で六十六兆円余に上る予算を審議せよと言うのは、予算審議権の妨害であり、国会と国民を愚弄するのも甚だしいと言わざるを得ません。今や世界最大の援助国となったODA予算についても、総額はわかっていてもプロジェクトの内訳は全く不明であるし、
政府の資料も重要施策の中身や税収見積もりがなぜそのようになるか何
一つ明らかにしておりません。歳出予算のほとんどが項目別に総額を記載して、
政策の内容を示そうとしない
政府の姿勢は厳しく糾弾されなければなりません。
最後に、
政府・
自民党の
衆議院段階で参議院の議決まで縛ろうとした国会ルール無視のごり押しによって、三十五年ぶりという暫定補正予算を余儀なくされたことは極めて重大であります。その責任は挙げて
政府・
自民党にあることは明らかであります。二度とこのようなルール無視の国会運営を行わないよう強く抗議し、
政府・
自民党の猛省を求めて私の反対討論を終わります。(拍手)