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井上計君 官房長官のお気持ちはわかりました。
ただ、私はあえて申し上げておきます。周恩来
総理がそう言われたことについて感銘を受けられたこと、これは当然でしょう。ただ事実
認識をひとつしていただかなきゃ困るということは、言えば
日本が長い日中戦争の間大変な被害、迷惑をかけた交戦相手は蒋介石政権なんですね。終戦のときに、昭和二十年の八月十五日、厳密にはその前日ですけれ
ども、恨みに対し徳をもって行うという蒋介石総統の布告、それによって
日本に賠償を一切求めない、天皇制を護持する、
日本の分割占領は反対である、軍官民二百何十万を半年以内に無条件で送還をするという有名な布告があるわけですね。そして、昭和二十七年に正式に中華民国と
日本との国交回復のときに、平和条約の締結のときに、そこで正式に賠償の放棄をしてあるわけですよ。だから、現在の中華人民
共和国政府は実は賠償を放棄したんじゃないんですね。この事実
認識はひとつしていただきたい。これは余り知られておりません。あえてこの機会に申し上げておきます。
さてそこで、時間がありませんから、幾つも申し上げたいことがあるんですがまた別の機会に譲りたいと思いますが、端的に申し上げますけれ
ども、現在我が国は台湾に対しては非常に冷たい態度をとっておる、中国に遠慮して。台湾のマスコミは
日本の中国政策というのは土下座
外交である、あるいはもうあきれ果てて物が言えぬと言うほど、そのような実は論調もあるぐらい長い間中国に対して大変な遠慮をしてきていますね。ガットの申請の問題しかりです。それから特に
政府要人、
政府の人たち、公務員が台湾へ渡航することを禁止していますよね。
李総統がこの間新聞
記者会見で言っていますけれ
ども、李総統は京大卒業、京大の同級生の学者に講演を依頼したら、国立大学の教授であるから
外務省の許可がおりないと、こういうことで断られたということさえ新聞
記者会見で発表して、大変台湾の人たちは怒っておるわけですね。経済
会議がありましても、
日本からの出席は要するに課長補佐クラスがオブザーバーで出るだけである。こういうことが続いておったんでは、私は
日本と台湾との間の問題の改善どころかますます改悪される。
総理、先ほどおっしゃったように、
アジアのこれからの発展のためにどういう
日本が役割を示すか、どういう
日本が責任を持つかということを考えていくときに、あえて私は端的に申し上げますけれ
ども、従来の中国に対する政策、台湾に対する政策をこの際やっぱり変える必要がある。これが
アジアのためであり、さらに中国のためである。
中国は事実上台湾と随分接近していますよね。去年の五月の
アジア世銀の総会では台湾の経済
部長、
日本でいうと大蔵大臣ですが、これを団長とした代表団を正式に受け入れしているわけですよ。中国がそうしているのになぜ
日本がこういう状態を続けていかなくちゃいけないのか。私は大いに反省をしていかなくてはならぬと、こう思います。お答えをいただきたいことがあるんですけれ
ども、お
立場上できにくい問題もあるでありましょうから、一方的な問題提起と意見発表だけにしておきます。
以上で終わります。