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井上章平君 実は、この土地騰貴は昭和六十年あるいは六十一年ごろから始まった。もっともその前に、戦後ずっと地価は上がり続けてきたという実績があるわけでありますが、とりわけ今日の急騰現象は、
最初のきっかけというのは東京都心でのビル需要の急増から始まったと言われておるわけであります。これがたちまち都心から外へ向
かって拡大していった経緯があり、それがさらに飛び火して三大都市圏というような形になっておるわけでありますが、当時のことを思い出しますと、当時土地対策の担当閣僚でさえこの高騰の原因は
政府の土地無策にあるんだというような
お話をされたわけでありますが、特段それについておとがめもなかった。といいますのは、やはり何といっても、地価に対してはなかなか強権を用いて強制的に抑制するというようなことがとり得ない、それだけの
国民的なコンセンサスがなかなか得られないまま今日に来ているというところにあるのではないかと思うわけであります。
今土地
局長から
お話がございましたが、今日、自来もう数年たっておるわけでありますが、さしたる対策の成果を見ることなしに今日を迎えておるんではないかというような感じかするわけであります。これは、やはり本
委員会におきましても、土地の私権は公共のために制限されるべきだ、所有権はせいぜい利用権にすぎないんだ、そういう
認識を持つべきだというような御意見もあったわけでありますが、しかし、我が国におきましては、やはり非常にわずかな土地にしがみついて生きてきたというような、土地に対する執着心は格段に他の
国民に比べると強いんではないか。そのことが今日まで地価対策、土地対策について有効な手段がなかなかとれない最大の理由ではないかと私は思うわけであります。
昨年、ようやく土地基本法が制定されました。これは、そういった今日までの土地に対する
国民の意識を変えようとするまさにコペルニクス的な転換を図ろうとするものでありましょうから、この基本法の実効がどういうふうにこれからあらわれてくるのかということは、実はこれは単なる宣言でありますからこれからの対策いかんにかかっておると思うわけであります。
そこで、私が御提案申し上げたいのは、実は土地の問題、地価抑制ということを考えるには、どうしてこれだけ地価が上昇してきたのかというような、やはり基本的な問題点をはっきり掌握しておく必要があるんではないかと思うわけでありますが、従来から土地は拡大再生産のきかない経済財とされておるわけであります。なるほど土地そのものはそれをさらに拡大し、あるいは土地から土地を生み出すというようなことはあり得ないわけであります。したがって、我が国の限定された国土資源の中で、経済発展、人口増あるいは核家族化による住宅の増加等々による土地の需要に見合うだけの供給がなされない限り、これは地価はタイトに働き上昇が続くということが避けられないと思うわけであります。したがいまして、何としてもやはりこの問題の基本的な
解決策は、供給をいかに需要に見合っただけ図っていくか、つまり供給拡大策をどうするかということにかかっておるんではないかと思うわけであります。
それで、実は神戸のポートアイランドに見られますように、我が国は四方を海に囲まれておるわけでありますから、海を的確に利用することによって国土の平和的な拡大を図れないものかどうかということであります。
私は四国の生まれでありますので、四国を例にとって
お話を進めてみますと、この島は山地急峻でわずか二割弱の平地しかないわけでありまして、そこに四百二十万人の人がひしめき合って暮らしております。たかだか三千八百平方キロに四百二十万でありますから、これは見かけよりはるかに稠密な人口密集地域と言わざるを得ないわけでありますが、仮にこの海岸線を百メーター沖合に出すことができたらおよそ一割の新たな平地が生まれる、千メーター出せばまさに倍増するというような
関係にあるわけであります。もちろんこれはそのままそれが実行できるという趣旨ではありません。いろいろ環境
問題等がございますから、それらがすべてクリアされる必要がありますが、しかし物理的にはそういう
関係にあります。
これを単なる夢物語と見るか、あるいはもう少し現実で取り上げてみますと、例えばオランダでありますが、これはもう皆さん御承知のとおりでありますが、国土面積は九州ほどの小さい国であります。しかも、その四割は海面以下であるわけですが、その海面以下の土地というのは実は干拓等によって、人々の努力によって生み出された人工の国土であります。この国のことわざに、神は海をつくりたもうたが陸地はオランダ人がつくったというような言い方があるようであります。それほど国土の拡大について、これはもちろんそういった地形的な条件が整ったからでありましょうが、そういった実例もあるわけでありますが、こういった
観点から
日本の国土を眺めてみますと、まさに周囲はすべて広大な海であります。国土面積三十七万平方キロ、狭い狭いといって私
どもは国土の狭さを嘆いておりますが、しかし、外に目を向けますと拡大の可能性は相当あるのではないか、極めて大きいのではないかと言わざるを得ないわけであります。しかも今日までそれは確かな実績もあるわけであります。神代の昔、国引き神話というのがありますが、これもそれを象徴したものというとらえ方もあるわけであります。
そこで、ごく卑近な例といたしまして、例えば東京湾でありますけれ
ども、東京湾につきましては明治の初めから干拓されてまいりました。東京都の下町の相当部分は実はそれによって生み出された土地であるわけでありますけれ
ども、今日なお一千平方キロ、山手線の内側のおよそ十六倍の面積を有している湾でありますが、今日までおよそその二割が埋め立てられまして、御承知のように京浜・京葉工業地帯、今日の
日本経済の成長を引っ張ってきた地域がこの埋立地から生まれております。それから住宅用地という
観点から見ましても、私の調べによりますと、およそ十四万戸ほどの家がこの埋立地に立地しておるという実績もあるわけであります。
そこで、国土庁の大都市圏
整備局長さんはお見えでございましょうか。三大都市圏はそれぞれ東京湾、伊勢湾、それから大阪湾という湾を抱えております。これらはいずれもせいぜい平均水深が三十メーターあるいはそれ未満の非常に浅海域でありまして、現に大阪湾では関西新空港がこの湾上で埋め立てによってつくられようとしておるわけでありますが、こういった三大都市圏の圏域計画の中で国土
政策上どういう位置づけをこれらの湾について圏域整備上の
観点からなされておるのか、お教えいただきたいと思うわけであります。