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政府委員(尾崎護君) 必ずしも詳細について存じているわけではございませんが、私も大分前になりますが昭和五十年から五十三年までワシントンに勤務したことがございまして、そのときの記憶等で申し上げますと、アメリカの場合には下院の歳入
委員会というのが非常に強い権限を有しておりまして、税法につきましては下院の歳入
委員会を通じて提出されるというのが慣行になっているわけでございます。
御承知のように、完全な三権分立でございますから、
政府側といいますか大統領府あるいは財務省の意見というのは、形の上ではあくまでメッセージ、あるいは下院の歳入
委員長などに法案をお出しいただくその内容につきましてお願いをする手紙というようなふうにお考えいただいてよろしいかと思います。もちろんそういう議会との関係を生じます前に、
一般国民に対しまして直接大統領がこのような
税制改正をしたいということを呼びかけまして知らせまして、そして
一般国民の支持を求めるというようなことも行われるわけでございますけれども、通常の
税制改正といたしましては、財務省等がいろいろ考えたものも自分で法案を出すことができませんので、それを議会の関係者に説明する、そして議員立法という、議員立法といいますか、それしか立法がないんですが、それでやっていただくということになるわけでございます。
そこで、議会が開かれますと、議会でいわゆる証言という形で
政府側の意見を述べるわけでございますが、慣例によりますと大体財務
長官が一番最初の証言をするということになっておりまして、そこで
政府側の意見を十分に述べるということをするわけでございます。アメリカの例などを横から見ておりましても、そのような証言だけで終わるわけではございませんで、やはり議会のスタッフあるいは議員直接に財務省あるいは内国歳入庁等が活発に働きかけを行いまして、できるだけ自分たちの考え方が通るようにという努力もいたしているようでございます。上院の方には御承知の財政
委員会がございまして、下院を通りました後上院で非常に大きな修正が加えられるというようなことが珍しくないというところがまたアメリカらしいところでございまして、その結果、両院協議会等で今度はその調整を行う。そして法律として出しましても、御承知のように、その内容によりましては大統領がビートーをするということができるわけでございまして、これを議会が三分の二の多数をもちましてオーバーライドしない限りにおきましては、そのビートーがそのまま効力を持つというようなこともあるわけでございます。
それからまた、
日本と全然違いますのは、ほかの法律に乗っかって税法を通すというようなところがございまして、議会での取引でございますが、そういう
意味で、アメリカの税法というのは
日本の税法と比べますと非常にわかりにくい。あちらこちらにいろいろくっついてしまっているというようなところがございまして、私ども税の問題について
日本から問い合わせがございましたときに、その根拠法規等を勉強するのに大変苦労した記憶がございまして、議会のスタッフのところに伺って話を聞いたりしたこともございます。そういうことで、基本的には我が国のような議院内閣制と違うものですから、法律として
税制ができ上がっていく過程というのはかなり違うように、私はそういう印象を受けました。