○平井卓志君 私は、自由民主党を代表して、当面する内外の
重要課題について、
総理ほか関係
大臣に質問を行います。
このたびの総
選挙は、
世界の歴史的大
転換の中で二十一世紀の国のかじ取りと
消費税、
政治改革を
中心とした
重要課題について
国民の厳粛な審判を求めたものでありましたが、我が党は厚い信任をいただきました。我々は、この負託を謙虚に受けとめ、自由と民主主義の旗のもとに、
国民のよりよい幸せを目指して一層前進いたすものであります。
思えば、
総理、あなたは昨年八月自由民主党総裁に選任されました。本院創設以来初めて
与野党逆転し、内外ともに多事多難、結党以来の危機の中よりスタートしたのでありますが、今回の
選挙により、
国民はあなたの「
対話と
改革の
政治」に
期待し、
政治の安定を求めて引き続き政権を託したのであります。
今日、
我が国は、
政治改革を初めとして
税制改革、
農業政策、福祉
政策、
土地問題、
経済構造問題などの根本的
解決を迫られております。このためには現行制度への大なたが必要であり、既得権との摩擦や痛みが生じかねません。
対話で
国民の意見を聞くに当たっては、どうか事態を
国民に十分に説明し、
国民の創意を生かし、納得を得るとともに、
国民と
政治をつなぐパイプは通りのよいものとし、強いリーダーシップを発揮していただきたいのであります。あわせて、特定の利害や一部の思惑に偏することのなきよう、公正な
政治を目指していただきたい。
総理は、
政治の
転換期に立って、今回の
国民負託をどう受けとめ政権を担当する
決意か、まず
伺いたい。
さて、本年は、明治二十三年
議会開設以来百年という記念すべき年を迎えました。今日見る豊かで平和な
日本の誕生は、まさしく、先人が築いた
議会制民主主義のもと、
国民の英知と活力によるものと信じます。
衆議院は我が党が
安定過半数を制しましても、
参議院は
過半数割れという厳しい
状況となっております。かつて政党間の泥仕合いにより
国会が混乱に陥り、
国民の信頼をなくした教訓を我々は厳しく受けとめ、
国会が国権の最高機関として与野党協調し、
国民の信頼を得ることを肝に銘ずべきと
考えます。
かのフランス革命の理論家シエイエスは、そもそも上院は何の役に立つのか、それは、もし下院と同意見を持つならば無用な存在であるし、下院と反対の意見を持つならば有害である、かように申しております。時代の経過はあっても、今日でも通ずる含みのある言葉であると受けとめております。
両院における与野党勢力が、
ねじれ現象のもとで与党も野党も自己主張に固執すれば
国民生活に密着する法律案は通りません。我が党としては、野党の皆さんと真摯に話し合いを行い、合意を求めて
政策協調することにやぶさかでありません。そして、
参議院の使命に照らし、
国民サイドに立って徹底した
審議を通じて
国民にわかりやすい
国会を目指していく覚悟であります。
さきに我が党の提唱により、今後の
参議院の運営の
円滑化を図るため、
社会、公明、連合
参議院、民社の各会派の代表者
会議をお願いしたところであり、今後とも合意の
政治を求めつつ、
国民生活の安定向上と
参議院の権威高揚に努めるものであります。
総理も
演説において、
議会政治における
対話と協調の重要性について触れられましたが、改めて
参議院の
議会運営にどう対処していくのか、その
決意を
伺いたい。
今、我が党に強く求められているものは、
長期政権の惰性を反省し、金のかからない
政治を目指して自己革新を行い、公党としての倫理を確立することであります。
このため、我が党では既に
政治改革大綱を取り決め、これに基づき、公職
選挙法改正案が既に成立、施行されていますほか、
政治資金の運用の限定、パーティーの自粛等を定めた
政治資金規正法の改正案及び行為規範の強化や全議員の
資産を公開する立法を提案したところであります。これらの三法律案がセットで成立して初めて実効が上がるものと存じます。未成立の二法案については、与野党間で内容に少々差がございますが、これらを乗り越えて成立させることが
政治の信頼回復の第一歩と存じます。
「信なくんば立たず」の三木精神の流れをくむ
海部総理、あなたが今
政治改革を断行しなければ今後はなかなか難しいと思います。
政治改革こそ、一内閣一仕事としてこの内閣が背負っている最大の命題であります。
海部内閣としてこれにどう臨むのか、
決意を
伺いたい。
私は、金のかからない
政治、
選挙を早急に確立することが
政治改革の原点と
考えます。
金のかかる
政治の最大の根源は、現行の
衆議院の中
選挙区制にあるのではないでしょうか。同一の
選挙区内にあって同一政党の
候補者同士の
対立、抗争にはまことに激しいものがあります。今回、公職
選挙法が改正され、寄附行為が厳しく制約されることになっても、地元へのサービス、利益誘導は旧来のままであり、後援会による多額の資
金集めは依然として続くものと思われます。
現在、
選挙制度については、第八次
選挙制度
審議会で検討中のことでありますが、私は、少数意見も反映できるよう、比例代表制を併置した小
選挙区制がベターと
考えます。
総理の
見解を
伺いたい。
次に、外交問題について
伺います。
昨年来、国際
情勢は劇的に
変化しました。ソ連のペレストロイカに端を発する
改革の動きは燎原の火のように
東欧諸国へと波及し、多くの国で共産党の独裁体制が放棄されるなど、
国内改革が急激に進展しております。こうした動きは、まさに自由と民主主義及び市場
経済という価値を守り、これらの価値を共有する先進民主主義国の一員としての外交を進めてきた戦後の
我が国の選択の正しさを証明するものであったと言えましょう。
また、ソ連、
東欧諸国での
改革の動きを背景として、
米ソを
中心とする東西関係は、対決から
対話と協調へと
変化しつつあり、今や冷戦時代の発想を超えた新しい国際秩序を築くための
努力が開始されています。
このように大きく
変化する国際
社会において、
経済力や技術力を背景とした
我が国の影響力と
責任が高まっているのではないでしょうか。国際秩序の主要な担い手として、
我が国は、新しい国際秩序を建設するため、
経済的役割のみならず、
政治的役割をも積極的に果たしていかねばなりません。
総理は、今後の国際
情勢をいかに展望し、
我が国が新しい国際秩序の構築にいかに貢献していくべきと
考えているのか、
所見を
伺いたい。
総理、
国会日程の慌ただしい中、ブッシュ
大統領との
首脳会談、まことに御苦労さまでありました。
日米両国は、
世界の二大
経済大国として、インフレなき持続的
成長と対外不均衡の是正を促進するために緊密に協力していく必要があると
考えます。
日米関係で焦眉の
課題は
構造問題協議であることは申すまでもありません。本件協議は、
日米の協力と共同作業により、
日米の貿易不均衡の調整の上で障壁となっている
構造問題を識別し、
日米双方がおのおのの
構造問題と取り組んでいくことを目的として、これまで三回の会合が行われました。
経済構造の調整は、
日米貿易不均衡の是正の観点からばかりでなく、
経済の効率化を高めるとともに、
国民生活の質の向上等、
我が国自身のより豊かな将来に資するとの観点から
構造調整努力を積極的に行っていくことば不可欠であります。
今回の
日米会談において、独占禁止法の運用強化、大
規模小売店舗法の撤廃、
公共投資の
拡大、投資市場の開放などについて中間報告に向けて首相の
政治決断の要請がありましたほか、為替相場の安定へ向けた
政策協調、
日米欧三極の
対話の重要性の確認、
日米安保条約の再確認等について忌憚のない意見の交換が行われたようでありますが、その具体的内容と今後
我が国としてこれに取り組む
決意を
伺いたいのであります。
最近の
日米経済摩擦は、今や貿易戦争と言われています。これを
日米二国間の貿易収支で見ると、昨年は四百四十九億ドルの
米国の赤字となっています。対日赤字が一向に減少しないことに対するいら立ちから、
米国内ではスーパー三〇一条の発動や
日本にマーケットシェアを要求すべしとの声も高まっています。
米国ではこのような要求を正当化するための根拠として、
日本社会の特殊性、異質性を強調し、
日本は市場原理が機能しない国である等の主張が勢いを得ていると聞いております。
私は、このような議論は
経済の
実態を反映していないと
考えますが、こうした
米国内の動きに対し、
我が国としていかに対処すべきか、
総理の
所見を
伺いたい。
いずれにしても、
我が国外交の基軸である
日米関係の重要性にかんがみ、問題
解決に向けて国を挙げての一層の
努力に
期待したいと思います。
さて、
総理はこの一月、ポーランド、ハンガリーを含む欧州八カ国を歴訪されました。まさに激変の東欧
情勢のただ中にあって、共産主義の一
党支配の終えんを目の当たりにし、列国
首脳と忌憚のない意見の交換をなし得たことば、東欧の
改革を支援し、米欧とともに
世界の平和と
発展に努める
我が国の姿勢を示すものとして大いに意義があったと思います。
東欧の
民主化は、ひとり欧州だけにとどまらず、アジアへ波及し、
世界の平和と安定に影響を及ぼすものと思います。それだけに、今回
我が国として総額十九億五千万ドルの
経済支援を
中心として、技術協力の実施や青年海外協力隊の派遣など、単に資金のみでなく、技術や経営のノーハウを支援することは、新しい
世界外交へ
日本が踏み出したものとして
評価できるものであります。
現在、
東欧諸国で進行中の
改革の動きがやがて東西欧州の融和から大ヨーロッパへ、さらには東西ドイツの統合へと戦後の国際秩序の
基本的
構造に影響を与えるものと思いますが、
政府は、今回の
変化をどう受けとめ、これら諸国の再建にどう協力していくのでありましょうか。
また、これらの東欧
情勢の急激な
変化及び
米ソ・
マルタ会談に象徴される東西関係の
変化は、当然ながらアジア
情勢にも影響を及ぼすことば必至であろうと思われます。その影響をどう
認識されていますか。
さきに中山外務
大臣がタイ及びマレーシアを訪問した際、両国より
我が国の対東欧援助の開始がASEAN諸国への援助の減少を引き起こすのではないかとの危惧が表明されたと承知しております。アジア諸国に生じつつあるこのような不安に対し、
我が国のアジア重視の姿勢は今後とも不変であることを明らかにしていくことが肝要と
考えられます。この点についての
政府の
考えを
伺いたい。
さて、ソ連は大きくさま変わりしつつあります。ゴルバチョフ書記長のもと新思考外交が展開され、先般の
マルタでの
会談を初め、
米ソ関係を
中心とした東西関係は
対立から
対話の方向へ向かっており、
国内的には一党独裁体制をみずから放棄し、
大統領制の導入を目指しております。
他方、ソ連のアジア・太平洋地域における外交に目を転じれば、対中関係の正常化、カンボジア問題への積極的取り組み等の新しい
政策展開は見られるものの、アジア・太平洋の平和と安定を強化していく上で最も重要な日ソ関係においていまだ新思考が発揮されていないのが現実であります。
こうした折、
さきに我が党の安倍元幹事長は訪ソし、ゴルバチョフ・ソ連最高
会議議長と
会談、来年同議長の来日を確認したほか、北方領土について、安倍氏が英知をもって
解決するしかないと述べたのに対し、よく
考えて善処したいと答えがありました。私は、日ソ間に横たわる北方領土問題を
解決して平和条約を締結すべきものと
考えております。そのためにも、新思考に基づく外交
政策が対日関係にも反映されるよう粘り強い
努力を続けていくことが重要と
考えます。
対ソ外交はシェワルナゼ外相の来日により本格的な展開が
期待されますが、
総理は、現在ソ連で展開されている
改革路線をどう
評価し、その中でいかに北方領土問題の
解決を図り、対ソ外交を進められようとしておられるのか、
所見を
伺いたい。
次に、今後の
我が国の安全保障
政策について
伺います。
さきにも述べたように、現在国際
情勢は大きく動いており、東西冷戦の象徴とも言うべきベルリンの壁が崩壊したことを初めとして、
米ソの軍縮交渉の進展が図られるなど、歴史的な
変化が生じています。大いに歓迎すべきことであります。しかしながら、戦後の
世界を振り返ってみれば、これまで
米ソを
中心とする力の均衡により大きな武力紛争が抑止され、平和と安定が保たれてきたことはよく御承知のとおりであります。このような枠組みが今後どのように
変化して新しい東西関係が図られるのか、現在それを見通すことは非常に困難ではないでしょうか。
私は、
我が国の安全保障、防衛
政策を進めるに当たっては、少なくとも
我が国周辺、すなわち極東地域の軍事力の現状を十分把握するとともに、欧州地域の
変化が今後どのような影響をもたらすかについて慎重に見きわめていく必要があると思います。私は、東西両陣営の軍事力が依然として非常に高いレベルにあること、また、膨大な極東ソ連軍が引き続き航空機や艦艇の質的近代化を図っていること、欧州と極東地域では地理的、
政治的に事情が異なることに着目すれば、
我が国周辺が
緊張緩和と呼べる
状況になるのはまだまだ先のことではないかと
考えます。
このようなことから、私は、今後の不透明かつ流動的な国際
社会の中において
日本が平和と安全を確保していくには、単に平和ムードに流されることなく、国際
情勢の動きを見きわめながら
日米安保条約を堅持し、引き続きみずから着実な防衛
努力を行うとともに、西側諸国の結束を図っていくことが大切であると
考えます。
総理は
我が国の安全保障
政策を今後どう確立していくのか、
所見を
伺いたい。
次に、当面の
経済問題について
伺います。
我が国は、飛躍的な
経済発展により、
GNPで見た
経済規模では
世界経済の一割を超えるシェアを占め、また一人当たり
国民所得も
世界最高の水準に達しております。しかしながら、こうした
経済力は必ずしも
国民一人一人の
生活に生かし切れておらず、高い物価、高い
地価、長い労働時間といった点に見られるように、国の
経済力の高さと
国民の
生活実感との間には依然としてギャップが見られるのもまた事実であります。国の
経済力の高さに見合った豊かさが
国民生活に実感できない現状を
政府ほどのように受けとめ、今後対応されるのか。
特に、豊かさが実感できない理由の
一つとして、物価動向の安定的な推移に対して
我が国の生計費が国際的に見て割高であるといったいわゆる内外価
格差の問題に
国民の関心が高まっていると思います。
総理は、新設した内外価
格差対策推進本部長として内外価
格差の是正に努める旨表明されましたが、
具体策をどう
考えているか、
所見を
伺いたい。
次に、
財政問題について
伺います。
平成二
年度予算の特色は、十五年ぶりに赤字
国債依存体質からの
脱却を図ったこと、また昭和五十七年度補正予算以降中止していた
国債整理基金への定率繰り入れを復活したことであり、さらに本予算と一体をなす
平成元年度補正予算において、厚生年金国庫
負担金繰り延べ分についていわゆる
隠れ借金を圧縮し、返済のめどをつけたことは、本格的な
国際化、
高齢化社会を迎えて
財政再建へ着実に一歩を進めるものとして極めて時宜を得た措置として
評価いたすものであります。これもひとえに我が党・内閣が絶えず歳出の節減
合理化を
中心とした思い切った行
財政改革に真剣に取り組んできた
成果であると思います。
しかしながら、確かに
平成二年度において赤字公債の発行がゼロとなるとしても、来年度末には百六十四兆円という
巨額の
国債発行残高を依然として抱えており、その利払いや償還のための資金が必要であることには変わりはありません。また、
さきにも触れましたが、これまでの
財政支出の繰り延べ等の
隠れ借金がまだかなり残存しているほか、旧国鉄の債務を引き継いだ清算事業団の債務処理が残っていること等を
考え合わせるならば、
財政再建の正念場はこれからと思います。
政府は、赤字公債
脱却後の新しい
財政再建の理念、
目標をどのように
考えているか、
隠れ借金の返済方法、
国債の繰り上げ償還、
建設国債発行の抑制を含めて
伺いたい。
私は、
財政が放漫になるような不用意な
拡大はぜひ避けるべきではありますが、さりとて何が何でも緊縮すればよいという
考えを持つものではありません。
シーリングによる一律削減ではなく、
政策の優先度に応じた選択を行って、
政策にめり張りをつけるべきと
考えます。
シーリング方式の
あり方についてどうお
考えになっていますか。
本年初頭、
経済企画庁は「
平成元年
経済の回顧と
課題 長期拡大と不均衡縮小をめざす
日本経済」を発表し、
住宅、下水道などを
中心に
社会資本の計画的
整備を指摘しています。また、
さきの
日米構造協議においても、米側より
公共投資の増額要求が出されています。こうした内外の要請をまつまでもなく、
日本の
社会資本の
整備が先進諸国に比べておくれていることは事実であり、今こそ
住宅、道路、都市公園、下水道等の
生活環境
社会資本の
整備が急務と思います。
その際、
公共事業を急速に拡充することにより、物価を初め
地価の上昇や環境公害を招くことのなきよう十分考慮して行うべきことは当然でありますが、問題は、
公共事業の過去の配分実績を踏襲した硬直的なものでなく、発想を
転換して、巨大都市圏の
住宅・交通事情や多極分散型の国土利用等を十分踏まえるべきと存じます。これとともに、民間であり余っている資金はまず
国内でこうした部門に優先して使われるべきと存じますが、これら
社会資本の充実と、これに当たって
公共事業の資金配分及び民間資金の活用について
政府はどう
考えておられましょうか。
総理、
大蔵大臣の御
見解を
伺いたいのであります。
次は
税制問題であります。
総
選挙の結果、
消費税見直し定着は新しい民意であると断言できるのであります。我が党・
政府は、先般の
税制改革においては、働き盛りの中堅所得者層を
中心とする重税感や不公平感を解消するため、所得税、住民税について思い切った減税を行うとともに、消費の大きさ、すなわち
生活の規模に応じて広く薄く御
負担いただく
消費税を創設いたしました。この
消費税については、
国民の皆様の御協力により日常
生活に定着しつつありますが、何分にも
我が国にとって全く新しい税でなじみがないため、
国民の皆様に十分御理解いただいていない面があることもまた事実であります。我が党としては、
消費税についての理解を深めていただき、その一層の定着を図る観点から、今回
消費税を見直すことといたしました。
見直しに当たっては、
消費税をめぐる
国民の皆様の声に謙虚かつ真摯に耳を傾け、懸命にその不満の所在を探求しつつ、
消費者の立場を十分考慮し、
国民にとって真に有益な見直しとは何かについて真剣な議論を重ねました。
見直し案においては、まず食料品についてその
負担軽減や非課税化を望む
国民の声にこたえるため、
消費者が購入するすべての飲食料品を非課税とするとともに、事業者間の円滑な取引を確保するとの観点から、
生産から卸売までの事業者間取引については税率を従来の半分である一・五%とする特別低税率制度を設けることといたしました。また、借家住まいの方々にとって食費と並んで大きな比重を占める
住宅家賃を非課税とすることにより、その
負担を大幅に軽減するとともに、同じく要望が多かった出産費や入学金、教科書等を非課税とし、また
社会的に弱い立場の方々に対する配慮として身体障害者用物品、第二種
社会福祉事業、ホームヘルパー等、老人に対する在宅サービス等についても非課税とすることとしております。
水平的公平に資する消費課税が所得に対して何がしかの
逆進性を有することば、いわばこの種の税の固有の性質であります。しかし、
逆進性の
緩和という要請は、
一つの税金だけではなく
税制全体、さらには歳出面における措置を含め、
財政全体で
考えるべき問題であることば言うまでもありません。
今回の見直し案においては、こうした観点から
消費税そのものの中で可能な限りの手当てを講じたほか、所得税や住民税の分野においても年金
生活者に対する一層の減税を実施するとともに、歳出の分野においては高齢者保健福祉推進十カ年戦略を策定し、強力にその対策を推進していくことといたしております。私は、この見直しを通じ、
国民の皆様に
消費税というものをより深く御理解いただき、この税が
国民生活により一層溶け込んでいくことを心より願うものであります。
総理並びに
大蔵大臣から、今回の
消費税の見直しを含め、
消費税の定着に向けての
決意を
伺いたい。
さて、総
選挙の期間中
社会党の発表した「
消費税廃止プログラム2」で示された間接税再
改革案は、一体何でありましょうか。
消費税の
廃止のみ強調し、代案を示さないことによる批判に抗し切れず、物品、流通、サービスを対象に個別間接税を提案したのでありましょうが、全くの場当たり的発想で現実性がなく、無
責任きわまるものであると受けとめております。
政府はこの土井提案をどう受けとめておられましょうか。
総理、総
選挙で認知された我が党のひたむきな見直し案について、賢明な野党諸君が新しい
国民動向を踏まえてこれに十分なる御理解をいただけるならば、さすが良識ある
参議院の本領を発揮するものとして
評価されるのでありますが、野党諸君がこれまでの立場に固執していつまでも突っ張り、不毛の議論を重ねていては
解決の糸口が見出せず、打開の道は開かれません。迷惑するのは
国民自身であります。
さきにも述べたように、我々としては今後とも各会派との真摯な話し合いを通じて一層の御理解をお願いする
決意でありますが、野党各党におかれても、
国民の全体的、
長期的利益の観点から、ぜひとも建設的な対応を図られるよう切望するものであります。
総理はこの
消費税をめぐる先行きをどう
見通して対処していくのか、胸中を明らかにされたいのであります。
〔議長退席、副議長着席〕
次は
農業問題であります。
我が党は、昨年夏の農政不信の原点を厳しく受けとめ、農こそ国のもととして、
国際化で岐路に立つ
日本農業の育成強化に努めてまいりました。改めて申すまでもありませんが、
我が国の
農業は、
国民生活にとって不可欠な食糧の安定
供給のほか、活力ある地域
社会の形成、国土・自然環境の保全など、多面的で重要な役割を果たしてきました。また、自然環境との調和を図りながら、汗を流して働くことを通じて勤勉な
国民性を培うとともに、
日本人の文化、
生活習慣を形成してまいりました。今日の
日本、
日本人があるのも、昔から
農業が基幹
産業として
国民の
生活を支えてきたからにほかなりません。これら
農業の果たす多面的な役割の重要性とともに、現在、農家世帯が四百万戸を数え、地域
経済にとって
農業生産の占める割合が非常に高いことなどを
考え合わせれば、
我が国経済社会の健全な
発展のためには、今後とも
農業の
発展を図っていくことが不可欠であると私は
考えます。
しかしながら、現在、
我が国農業を取り巻く
状況が急速に
変化している中で、農家の方々は
農業の将来に対し大きな不安を抱いております。今後、
農業の一層の
発展を期するために
自民党、
政府のなすべきことは、このような農家の方々の不安を払拭し、安心して
農業を営めるような
長期展望を提示し、積極的な農政を展開していくことだと
考えます。
先日、
政府において農産物の需要と
生産の
長期見通しを策定されたわけでありますが、これを踏まえ、今後どのように農政を展開されるのか、農政の
基本方向について
総理に
伺います。
今日、農家にとって最大の関心事は米の自由化であります。
米国は依然として
市場開放を求める姿勢を見せております。
さきの五カ国農相
会議において
我が国の主張した食糧安全保障に関する提案に関し、食糧安全保障の重要性については各国の理解を得られたものの、食糧安全保障と
我が国の米の自給
政策との関係については、輸出国であるその他の参加国からは異論が示されたと聞いております。
申すまでもなく、米は
我が国国民の主食であり、また
我が国農業生産の三割を占める最も基幹的な農作物であります。さらに、稲作は地域
経済にも大きな比重を占め、水田は国土環境保全等の面でも重要な役割を果たしております。また、米は既に
国内で
生産過剰となっており、関係農家は水田の三割近くについて減反を行うとともに、稲作の一層の
生産性向上へ向けて懸命に
努力しているところであります。
私は、このような
状況に思いをいたせば、米の格別の重要性を踏まえ、米の輸入自由化は断じて行うべきではないと思うものであります。この問題についての
総理及び農林水産
大臣の
決意を
伺いたい。
次に、中小
企業対策について
伺います。
我が国経済が内需主導型の均衡ある
発展を維持していくためには、
東京等からの
企業誘致による地域
産業の振興とあわせて、中小
企業による各地域に根差した技術、文化、観光資源等を生かした新たな
産業起こしを図らねばなりません。実際に、全国各地において中小
企業による地域に密着した個性ある
産業起こしを目指した動きが見られております。しかしながら、こうした動きが成功裏に事業化されるケースは極めて限られており、仮に事業化されても十分な販路を確保できず、経営が行き詰まるなど、開拓された貴重な
産業起こしの芽が地域振興に結びつくことなく埋もれてしまっている場合が多いのが実情であります。
このような現状を踏まえ、地域
産業の活力ある
発展を図るためには、
産業起こしの芽を事業化に結びつけるための総合的な中小
企業施策を実施すべきであると
考えますが、
政府としていかがお
考えでありましょうか。
我が国の好景気は、現在三年を超える長きにわたり継続しておりますが、その好景気にも陰の側面があることを忘れてはなりません。それは、人手不足倒産件数が
平成元年は前年の四倍以上にも増加するなど、中小
企業の健全な
発展にとり大きな阻害要因となっております。こうした人手不足等の背景には、労働時間、福利厚生等の労働環境が大
企業と比べて著しく劣っているという問題があると思われます。しかし、中小
企業の中には、魅力ある職場を提供したくても大
企業と比べて
企業としての体力がない、つまり経営が苦しい、
合理化、省力化あるいは環境
整備がおくれている等の理由で対応したくてもできないところがたくさんあります。このような現状を踏まえ、中小
企業が魅力ある職場を提供できるように、労働時間短縮、福利厚生施設
整備等の労働環境改善を支援したり、また人手不足に対応するための省力化設備の導入、自動化技術の開発を支援するなど設備の近代化を図らねばなりません。
これらについて
政府としていかに対応していくのか、以上、
総理及び通商
産業大臣の
決意を
伺います。
次に、
高齢化社会に対する
社会保障について
伺います。
我が国は、昭和四十五年に高齢者の全人口に占める割合が七%を超えて以来、欧米諸国に例を見ない速さで急速に高齢化が進行しております。
平成二年では五・一人で一人の老人を支えておりますが、
平成十二年には三・七人で一人、高齢化のピークである
平成三十二年には二・三人で一人の老人を支えねばならない超
高齢化社会になってまいります。このような超
高齢化社会を明るい活力にあふれたものになるよう、
社会保障制度の再構築を進めるだけでなく、
社会経済システムや
国民の意識をも変革を進めていくことが二十一世紀までに残された十年間の最大の
課題であると
考えております。
このため我が党・
政府は、昭和六十一年六月に人生八十年時代にふさわしい
経済社会システムの構築を目指して長寿
社会対策大綱を閣議決定し、総合的な対策を進めてまいりましたし、昭和六十三年十月には、「長寿・福祉
社会を実現するための施策の
基本的
考え方と
目標について」と題する
社会保障分野のビジョンを公表いたしております。さらに昨年末には、我が党の要請に基づき、
政府は、高齢者保健福祉推進十カ年戦略として、高齢者の保健福祉分野における
公共サービスの基盤
整備を推進することを決定し、これを受けて
平成二
年度予算編成においても大幅な福祉予算の拡充が図られております。
このように、我が党の
努力により将来の
社会保障のビジョンは次第に明らかにされるとともに、着実に高齢者福祉の充実が進められてきておりますが、二十一世紀に向けて
社会保障制度を今後どのように充実していかれるのか、
総理の
所見を
伺います。
さて、高齢者保健福祉推進十カ年戦略では、ホームヘルパーの大幅増員等在宅福祉サービスの充実が図られることになっていますが、これらの事業の
中心になるのは何といっても市町村であると思います。私は、十カ年戦略を実効あるものにするためには、まずもって実施主体である市町村の取り組み姿勢が変わらなければいけないと信じます。そのためにも、市町村について事業を計画的に行う権限と責務を明らかにするとともに、事業を推進しやすいような福祉サービスの実施体制づくりについて、従来の発想にこだわることなく、大胆に見直しを進め、必要な
財政的支援を惜しんではならないと思います。
総理の
所見を
伺います。
最後に、
土地問題について
伺います。
東京への一極集中は、都市を
中心として
土地高騰を招き、
国民生活を直撃しております。今回の
土地の高騰は、単に
国民の
住宅取得を困難にしただけではなく、
社会資本の
整備や良好な都市環境づくりに大きな支障を及ぼしており、さらに持てる者と持たざる者との
資産格差による不公平感を増大させるなど、
我が国経済の円滑な運営と
社会の安定にとって重大な問題を引き起こしております。
最近、
東京圏では、
東京都や神奈川県を
中心に全体としては
地価の鎮静化が見られるようでありますが、予断を許しません。依然として高値安定であります。大阪圏や名古屋圏においてほかなりの上昇が見られており、さらには地方の主要都市等においても
地価の上昇が目立っております。特に好景気を反映し、民間の金余り
状況が続いていることを
考えれば、今後とも
地価対策を初めとする
土地対策を強力に推進していく必要があります。
さきの
国会において
参議院では、
土地問題の重要性を強く
認識し、与野党を超えて
土地基本法をスピーディーに成立させました。
政府は、これを受けて今後総合的な
土地政策をどう進めるのか、
地価高騰の歯どめ策を具体的にどう
考えているのか。
私が強く指摘いたしたいことば、
公共的な機関である金融機関等は、
土地投機のための融資は厳に慎まれたいのであります。依然として過剰な資金をバックに不動産金融が増大しております。
政府の指導は手ぬるいとの指摘がありますが、いかがでありますか。現状の詳細説明と今後の
決意を
伺いたいのであります。
「
GNP陰で支えて家持てず」、これは
経済大国日本の都市
サラリーマンの悲哀をあらわした川柳であります。申すまでもなく、良質な
住宅は豊かさを実感できる
国民生活の前提であります。大都市における
サラリーマンにとりて、一生働いても家が持てないのでは何のための人生かと、希望が持てません。
我が党では、
東京圏における百万戸
住宅供給作戦を展開する
方針でありますが、
政府として、
大都市地域における
勤労者の
住宅問題にどう臨むのか。
特に私は、
土地税制について、
資産格差の是正、
土地への投機の防止の上からその
あり方を早急に正すべきと思います。農地の
宅地並み課税、法人の遊休
土地や含み
資産等保有、譲渡について今後
土地税制をどう見直すのか、その
基本的な
考えを
総理より明示願いたいのであります。
以上、私は当面する重要
政策について
政府の姿勢をただしてまいりました。いずれの
政策も、その
解決に当たっては
国民の理解と支持、特に
議会における与野党間の合意形成が必須の条件であります。与党と野党がともに自説を固執する限り話し合いは実りません。我々は、
国民負託の原点に立って、お互い相手の立場を知り、異なった意見にも十分耳を傾ける寛容さが必要と思います。
対話と協調により与野党の信頼関係を確立し、建設的な妥協を行うことは
民主政治の行動原理ではないでしょうか。
参議院が正念場を迎えた今日、右の精神を踏まえ、
議会運営の改善と活力ある
審議を全うすれば、
参議院はまさに良識の府として必ずやその真価を発揮し、
国民の負託に十分こたえるであろうことを信じまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔
国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕