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説明員(
大谷禎男君) 現物出資につきましては、設立の際のものであれ
会社設立後の
新株発行の際のものであれ、
原則として検査役の調査が必要であるということにされております。ただ、その場合でも、
一定の場合には当事者の責任で、あるいは弁護士の証明を受けることによって検査役の調査を省略することができるというような特例措置が認められていることは御案内のとおりでございます。
そこで、今
委員御
指摘の双方の違いということになるわけでございますが、まず設立の際の現物出資についての特例を見ますと、財産の規模が
一定の範囲にとどまっている場合には当事者の責任において処理することを認めるということにされておりますが、その場合の範囲というのは、目的財産の
価格の総額が
資本の五分の一を超えず、かつ五百万円を超えないときということとされております。すなわち、
資本に対する割合が五分の一以内におさまっており、かつ絶対額としても五百万円を超えないときとされているのであります。
これに対しまして
新株発行の際の現物出資の特例を見ますと、これは二百八十条ノ八でございますが二つの基準がございます。
一つは、
資本に対する割合基準でございまして、現物出資者に対して与える
株式の総数がその当時における
発行済み
株式の総数の十分の一を超えず、かつ新たに
発行する
株式の数の五分の一を超えないときということにされております。それからもう
一つは、それとは別の独立の基準といたしまして、目的財産の
価格の総額が五百万円を超えないときというふうにされております。このように、設立の場合と
新株発行の場合とを比べますと相当に開きがあるわけでございます。
その
趣旨でございますけれども、まず設立の際の現物出資について申しますと、設立の際にはそのときの出資の総額がとりあえずは
会社の純資産の全部を占めるということになります。したがって、その全体の出資の中で現物出資がどれだけの比重を占めるかということも大変重要な問題になります。そういう観点から、まずその
資本の全体に対する割合というものを
考えなければならないであろうということから、全体の二〇%までの範囲であれば当事者の責任で処理を認めるということがまず出てくるわけでございます。しかし、その場合には二〇%の範囲におさまってさえいればいいのかということになりますと、
資本の額が極めて高額に上るという場合には二〇%と申しましても絶対額としては相当高額に当たるということが
考えられるわけでございます。それは必ずしも適当ではないのではないか、やはり経済的な常識を加味しますと、絶対額としてもおのずから
限度があるであろう。そういうことから、全体の二〇%におさまっているとともに、絶対額としても五百万円程度までの財産であることを要するというのが設立の場合の
制限の
趣旨であるわけでございます。
一方、
新株発行の場合ですと、先ほど御紹介いたしましたように二つの基準がございます。
一つは、
株式総数。これは
資本というふうに置きかえても大体当てはまると思うわけでございますけれども、そういう
既存の
資本に対する割合基準というものだけをまず
考えております。
説明が重複いたしますけれども、その割合基準と申しますのは、これまでの全体の
株式の中で十分の一の範囲内にとどまっているということであると同時に、当該
新株発行で増資がされるその範囲で五分の一にとどまっているということ、これも設立の際と基本的には同じ発想になるわけでありますけれども、その
新株発行の際の
株式の中で五分の一ぐらいの範囲におさまっていれば当事者の責任、取締役の責任において処理をすることを認める。しかし、この五分の一というものもその
新株発行のスケールが極めて大きいということになって、現在それまである
資本との
関係で余りに大きなものになるということになりますと、場合によっては
資本に対する脅威というものが懸念される。そういうことから、
既存の
株式の全体というものとの
バランスも
考える必要がある。それまでに形成された
資本との
関係、すなわち
発行済み
株式の総数との
関係で十分の一という範囲内にとどまっている必要があろうというふうに
考えられているわけであります。
もう
一つは、設立の際の現物出資と非常に際立った違いと申すことができるかと思いますが、全く独立の基準といたしまして、目的財産の
価格の総額が五百万円を超えないというようなものであれば
資本との
関係を問わないで
取締役会の責任において処理するということを認めているところでございます。これは、もう既に設立された
会社といたしまして経営管理機構が完備し、かつ相当の規模の
資本が形成されているということを
考えますと、
取締役会による
それなりの慎重な経営が行われるであろうということと、既に相当の
資本の基礎があって、少なくとも設立の際ほどには心配をする必要がないというようなことが
考えられている。
それから、さらには検査役の調査をお願いするということになりますと、その調査の費用として平均的にも百万円程度の
金額は要するというふうに言われております。そういたしますと、百万円の費用を払わさせてもなお検査役の調査を求めるのが適当な財産はどの程度のものかということが問題になるわけであります。
例えば、財産の
価格が二百万とか三百万とかいうようなものであってもなお百万円の費用をかけさせるというのは、経済的な感覚からいたしますといかにも非常識な感じがいたします。そうしますと、その程度の
金額を調査費用としてかけさせてもなお調査を求めるのが適当だとされる財産というのはやはり五百万円程度を超えるものではないのか。それを下回る財産についてはそういう調査というものを求めるのは必ずしも適当ではない、それは取締役の責任において処理させる、万が一後で不適切な評価があったという場合には取締役にその責任を担保させるという
法制度をとるのが合理的ではないかということから五百万円というような基準の設定がされたということなわけでございます。
やや
説明が散漫にわたって恐縮でございましたけれども、そういうことでございます。